中央環境審議会土壌農薬部会 土壌汚染技術基準等専門委員会(第2回)

日時

平成14年7月16日(火)10:00~13:10

場所

東条インペリアルパレス(3階)

出席委員

委員長
委員
臨時委員
 村岡 浩爾
 浅野 直人
 大塚  直
 櫻井 治彦
 中杉 修身
 福島 徹二
 眞柄 泰基
 森田 昌敏
専門委員  佐藤 洋
 鈴木 規之
 冨永 衞
 細見 正明
 三木 博史

委員以外の出席者

環境省: 環境管理局長、水環境部長、水環境部企画課長、土壌環境課長、地下水・地盤環境室長、事務局
オブザーバー:関係省庁等
ヒアリング対象者: 青山俊介(構想日本「地質環境保全研究会」)、浅見和紀(社団法人 不動産協会事務局次長)、高橋秀夫(社団法人 日本経済団体連合会 土壌汚染対策ワーキング・グループ) 
その他:一般傍聴者(公募による)

議題

(1)関係者からのヒアリング
(2)土壌汚染対策法に係る技術的事項について

配布資料

資料2-1 中央環境審議会土壌農薬部会土壌汚染技術基準等専門委員会委員名簿
資料2-2関係者からのヒアリング
資料2-3土壌汚染対策法に係る技術的事項(I)
資料2-4土壌汚染対策法に係る技術的事項(II)
参考資料2-1 「土壌の直接摂取によるリスク評価等について」 (平成13年8月 土壌の含有量リスク評価検討会報告)
参考資料2-2 中央環境審議会土壌農薬部会土壌汚染技術基準等専門委員会 (第1回)議事要旨

議事

(事務局)
ただいまから、中央環境審議会土壌農薬部会土壌汚染技術基準等専門委員会の第2回を開催させていただく。
それでは本日の配付資料について御確認をさせていただく。

(配付資料の確認)
それでは村岡委員長、議事進行の方よろしくお願いする。  

(1)関係者からのヒアリング   

(村岡委員長)
それでは、議事次第に従い、早速始めさせていただく。
本日は最初に45分ばかり時間をいただき、要望があった関係者から、本専門委員会で審議している事項に関してのヒアリングを行いたい。
今日おいでいただいている関係者は、構想日本「地質環境保全研究会」の青山俊介氏、社団法人不動産協会の事務局次長の浅見和紀氏、社団法人日本経済団体連合会土壌汚染対策ワーキング・グループの高橋秀夫氏である。それぞれ各人10分以内の御説明時間とさせていただき、その後、4~5分くらい、委員と発表者の間で質疑応答をさせていただきたい。
それでは、先ほど紹介した順番でヒアリングを行う。最初に構想日本の青山氏、よろしくお願いする。   

(青山氏)
構想日本では、地質環境保全研究会を昨年度から立ち上げた。その前の2年間は、構想日本の方々も含めた形での汚染土壌研究会というのを平成11年からやっていたわけであるが、13年度に法制度の話が出てきて、自分たちの意見も反映できるようにしたいということで、構想日本の中に地質環境保全研究会を新たにつくり、法制度の中で意見が反映できるようにというような活動を1年ばかりやってきた。そういう中で、附帯決議においていろいろな形で反映していただけたことを非常にありがたく思っている。今日はこういう意見の陳述の機会をいただき感謝申し上げる。
我々が汚染土壌研究会をつくったのは、地質環境保全というよりも汚染土壌ということに着目してこれからの時代の中で、従来臨海部にあった汚染土壌等が国土の中に拡散していく危険があるのではないかという視点からである。その視点から主な意見を述べさせていただく。今日御提示されているいろいろな技術的基準などからは若干離れる面があるかもしれないが、御容赦いただきたい。
まず、1点目に汚染土壌の管理という視点からの対応である。この法律は主に地質環境の保全と健康被害の防止という形でつくられているが、我々の視点で一番大きかったのは、汚染土壌そのものが建設残土やそのほかに混じって動いていくということである。汚染土壌は量的には建設残土総量に比べればほんのわずかであるが、その汚染土壌という情報がないために、きちんとしたところに入らない。逆に言えば、今、汚染土壌が一般の土砂に混じって臨海部の埋立地、あるいは建設工事現場、それ以外には主に水源地域の谷戸と圃場整備での下材に入っていると思われる。もしそういうところに入り込むようなことがあれば、非常にリスクは大きくなるという点を研究会では指摘してきた。
この視点から見て、今回の法の枠組の中で搬出された汚染土を管理していくというのは非常に難しいと思う。そういうものが農地とか、水源地域に入らないような仕組みを政省令等の中に反映していただければと思っている。これは、附帯決議の中でも指摘されていることなので、是非御検討いただきたい。環境省では、廃棄物行政と土壌環境保全行政という二つの分野をお持ちになっているわけであるが、廃棄物的なものの一つとしての汚染土壌というものをこれからどう扱うのかということを、是非どこかで念頭に置いて御議論していただきたい。必ずしも廃棄物で扱えということではなくて、膨大なものの一部が廃棄物・汚染土であって、例えば残土全体を廃棄物的な扱いをするというのは不合理な話だと思う。そうならないためにも汚染土壌、特に搬出される汚染土について、何らかのケアできる対策の仕組みが必要と思っている。
例えば、廃棄物処理法において一定の条件の汚染土は、廃棄物として準用する。これもあまりいいことではないとは思っているが、情報さえしっかりしていれば、処分場の覆土材とかいろんな形で活用していけば管理できるものだと思うが、それがなかなかない。また、意図的な搬出・不法処分に対する罰則という形での対応が必要かと思う。汚染の危惧がある土砂搬出は指定区域に関してはチェックできるわけであるが、我々が従来目にしているのは、操業中の大きい工場の中でも汚染土を搬出するということは、非常にあり得る話であると見ている。だから、搬出土砂に対する簡易なスクリーニングなどの予防処置の仕組みが、指定区域以外のものについてもあればと考える。これも履歴等の中で、特にそういう問題のないものについては必要ないということでよく出てくるが、過度の負担ということとの関係で検討の視点に入れていただければと思っている。
2点目が、農地とか水源地域での残土の受け入れ側の注意喚起ということである。これはいくら搬出側を管理しているといっても、実際の責任は搬出側だけでなくて、受け入れている側にもあって、従前はこういうものについて安直な受け入れをやっていたという例もあると思う。こういったものが圃場に入ったときに、どこに入ったか全く分からなくなり、入ったという事実だけが残ってしまう。搬出されたところでは確かに汚染土があった場合に、どうしても風評被害とかの問題が起こってくるだろう。そういうことを含めて、受け入れ側がきちっとした対策をやる。例えば、残土の大概の搬入というのは、最近では一定の契約条件の中でやっているわけである。最近我々がやる調査でもよく農家・圃場組合自体がその工場の土地まで行ってどういう土砂が入るのかを事前調査することもやっている。ただ、そうでないところもあると思うので、こういうことに対する契約モデルなどを提供できないかと思う。
それから3点目として、簡易な汚染土壌の存在の把握のためのスクリーニング調査もやはり重要だろう。指定区域のような形で、今回のような技術的基準に沿ったものでやるのではなくて、自発的な意味でその地域の由来とか、搬出土砂の由来等についての簡易な調査方法とか、義務化までいかなくても一つの責任ということが加えられないかと思っている。
4点目、怠惰とか意図的な情報隠し、不法行為というのがまだまだある。特に怠惰というか、知らなかった、あるいは、そういうことだということが分からなかったという形で言われる場合が非常に多いわけであるが、結果的にはそういうことでの被害はかなり出てくると想定される。これらに対する何らかの規制的な規定ができないかと思う。
最後に5点目、廃棄物処分場の閉鎖後管理・廃止ということが廃棄物処理行政の中でこれから非常に大きい問題になっている。我々がやっている廃棄物調査の中でも、まともにやっている処分場でも30年たっても廃止できない。閉鎖しても廃止できないということで、30年たっても、放流水質がなかなか目標水質まで落ちないということが現実に起こりそうである。むしろ早くそういう水質になるような対策をする技術の開発というものが今進んできているわけであるが、汚染土壌地ということと処分場の跡地というのは、今回は分けた形で議論しているが、基本的な構造は同じようなものを持っていると思う。関係行政の中で、両方を所管されたということも含めて、この点についてある程度整合のある方法・仕組みというものを御検討いただければと思う。
全体としては、廃棄物処理と今回の土壌環境管理という話の中で、分けて考えることと共通項があることの両方があると思うが、不法的な話については、どうしても廃棄物処理法的な対応が必要になる。ただ、廃棄物処理法的な対応を全部にかけるというのは、また非常に不合理な点もあると思う。逆に言えば、そういう行為がされないような仕組みというのがあれば、合理的な形で運用できるのではないかと考える。
かなり偏った視点での意見であると思うが、地質環境保全研究会の中の3分の2ぐらいがこの点についての議論だったわけである。我々の方では、むしろ汚染土壌管理法という法律なのか、というふうな議論をしたことがあって、今回は土地に非常に着目をしているが、もう一方で土砂が動くということの中で、特に臨海部での土砂がこれから内陸へ行くということは、明らかな状況として出てきているから、それに対する現実的な対応の仕組みが組み込まれてくればありがたい。   

(村岡委員長)
それでは、委員の方からの御質問等があればお願いする。   

(中杉委員)
青山氏の今のお話のようにそのとおりだと思うが、もう制度を作ってしまっており、この法律の中でやれることとやれないことがあるが、制度を作るときの議論の中でも、調査の時期をいつにするかというのは非常に大きな問題で、調査の時期をもっと早めることができれば、今言われたような話はかなり片がつく問題であったのかもしれない。ただ、過度な負担には異議があって、搬出時にも調査が必要と申し上げたがそうでなくなった。そういう意味では別途そういう検討が必要であると思っているが、研究会でどういう議論をされていたのか、特に鉱山跡地のような自然由来の土地からの汚染土壌の搬出の問題についてどのような議論があったのかお聞かせ願いたい。   

(青山氏)
ほとんど議論はしなかった。たしかに鉱山地とか、色々なところに同じような状況というのはあるから、今回と同じような話が出てくると思うが、自然由来の汚染土砂が中へ流れてくるという話は、我々としてはあまり感じていなかった。本当に大きいのかどうかというのは、委員の方がよく御存じなのかもしれない。我々が危惧したのは、日本の場合の汚染土壌地というのは、臨海部の工業地域に集まっていて、今みたいな用途転換の中で明らかに内陸に行かざるを得ない状況があるのでそれをどういうふうにチェックしていくのかということである。過去に鉱山地とかから汚染物質が流れ込んで農地が汚染されたということはあったが、今回は見えない残土という流れの中に紛れ込む可能性がある。ただ、その中でも今回の法律でいいのかと思うのは、例えば油とか有機溶剤の場合には、特に油系はにおいをかいだだけでも農家の方たちにも分かってしまうということで、その意味では廃棄物と同じような性格だと思うが、今の指定物質については、なかなか見た目で判断できないということがあるので、その辺は排出する側に自主的にやってもらう。これもまた規制という話があると非常にきつい。ただ一方では自主的ということの話の中には、そういうことを怠った場合についての罰則とか、あるいは現状復帰とか、違った形でのオブリゲーションが入らないとなかなか難しいと思う。その辺についてどういうふうに組み込んでいただけるのか。最初の御質問について言えば、我々の方ではほとんど検討しなかった。   

(中杉委員)
私が自然由来として考えているのは、鉱山ではなくて、海面の埋め立て地からの土砂である。そこら辺のところが量としては非常に大きな問題になるので、研究会でもその辺をどうするのか。海のところになってくると、自然由来であるか否かの問題とからんで今後いろいろ大きな問題になり得るだろうと思っている。   

(青山氏)
自然由来というのだったらそうなのであるが、例えば議論したのは、東京湾の昭和30年代、40年代、あと洞海湾とか色んな形で浚渫したわけであるが、当然ある程度の汚染はあると思っているが。   

(中杉委員)
汚染ではなくても、自然のままでそういうことが起こるので、それをどうするかというのは非常に頭を悩ます問題だと思うので、研究会でも議論をしていただければありがたい。   

(青山氏)
実は、申しわけないがこの研究会は既に閉じてしまっている。   

(眞柄委員)
青山氏のおっしゃることはそれなりに理解できるが、大きく二つの問題点があると思う。一つはこの法律自体もそうであるが、汚染の定義というのは、例えば健康リスクの問題を考えてみても、健康の意味というのは社会や時代の変遷によって変わるわけであるし、科学的な知見によっても変わるわけであるから、一義的に汚染という言葉だけをとらえて議論するというのは、ある意味では非常に固定的に制度を運用する可能性があって危険なのではないか。それを補完する意味ということになるのかもしれないが、青山氏の言っておられることをきちっと国で実施できるようにするには、我が国土の少なくとも、この法律の対象としている50cmあるいは5mぐらいの土地のインベントリーというか、汚染の状況というか、そういうマップを作るべきである。それは国で作るのか、誰が作るのかということについて、青山氏の研究会で御議論があればどうだっただろうかということと、そして拡散の問題を考えると、今の産廃の制度で行われているマニフェストのようなシステムを導入しなければいけない。つまりインベントリーなりジオロジカルな情報なり、マニフェストということになると、ITの問題と非常に関わってくるわけであるが、この点についてどのようにお考えになっておられるのか。   

(青山氏)
残土については、今、国土交通省を含めてマニフェストというか、流動的なものの押さえは大分できてきていると思う。ただ、実際にはインベントリーというようなお話が出たけれども、それは難しいだろう。基本的には搬入される側で一番問題なのは農地と水源地域の谷戸あたりだと思うが、この搬入される側がもう少し自分たちできちっと、最終的に自分が所有者になってしまう土地にそういうのが入ってくるのをどうするのかというところを一つは強めなくてはいけない。それは注意喚起ということしかないと思う。一方で何らかのスクリーニングの方法があるのかどうか。全部が押さえられなくても、8割押さえられるとか、危険性があるというぐらいのことを工事関係者とか、そこで残土を運び出す人たちが注意喚起ができるような方法論がないのかと感じるが、実際にインベントリーを作るとなると現実的ではないと思う。今回のお話し合いの中でも、こういったグレーゾーンのところをどう扱っていただけるのか。大体リスクの話は、グレーゾーンで起こるので、まともなところではなかなか出てこないということだと思う。   

(村岡委員長)
それでは次に行く。次は不動産協会の浅見氏である。よろしくお願いする。   

(浅見氏)
それでは、意見を述べさせていただくが、私どもは本日のテーマについて、特に技術的な問題についてはほとんど知見を持っていないというか、述べるべき意見はないわけであるが、これまでの法律案の検討の段階から述べさせていただいている意見で、若干これに関連する点があるので、そういう点について意見を述べさせていただきたい。
その前に、私ども不動産協会というのは、土壌汚染の問題についてどういう立場にあるかということを、簡単に御説明をさせていただきたい。私ども不動産協会、いわゆる大手の開発事業者240社ばかりでできている団体で、そのうち昨年でいうと、およそ120から130社がマンションの分譲事業、開発事業を行っている。3大都市圏では、マンションの供給戸数でいうと7割を超えるシェアを持っている団体である。
マンションというのは、土地を取得し、土木工事・建築工事を行い、お客様に分譲する仕事なので、取得する土地によってはこの土壌汚染の問題にぶつかるというケースもある。どのくらいの割合か正確なデータをとっていないが、会員各社に聞いているところによると、マンションの分譲の戸数そのものも、この5年ばかりの間非常に増えてきているので、この汚れた土地を取得して建設し、分譲したマンションの割合も少しずつ増えてきている状況である。
そういう立場から、昨年の審議会における法律案の検討の段階において、色々と意見を述べさせていただいた。主として土地の取得に際しての段階での土壌汚染の調査、あるいは色々な改善等の措置、そういうものをこの法律にどういうふうに盛り込んでいただけるかという観点から意見を述べたわけである。私どもが当初最も望ましい形であると考えていたものとは少しこの法律は違っているが、調査や措置の実施主体であるとか、責任関係、それから最終段階で、いわゆる求償についての規定も盛り込まれたので、私どもの意見や考え方もかなり反映をしていただいたと考えている。私どもの会員各社であるが、この法律によらずとも、用地の取得の契約の際においては、調査であるとか、措置の実施であるとかについて双方でもって契約に盛り込んで、土壌汚染の調査、あるいはそれがきれいに改善されるようにというようなことを契約でもって担保しているという状況である。私ども協会の中においても、この問題について関係の委員会での議論も行ったし、マンションの開発分譲に際しての契約上の問題を中心としたガイドラインのようなものを設けて、会員各社に示している。
本日のテーマとして考えているが、例えば土地汚染状況調査の方法とか、指定区域の指定基準とか、あるいは除去等の措置についての技術的な基準とか、こういう問題について、詳しく今の段階で述べるべき意見を持ち合わせていないが、法案検討の段階でいくつか述べているので、2点だけ意見を述べさせていただきたい。 その前に先ほどのお話にも出てきた調査の契機であるが、この法律では、工場等の廃止等のときということになっているが、私どもの方としては、民民の契約で行っているように契約段階、土地の権利が移転をするときについても、できればこの調査の契機に加えていただきたい。
意見であるが、一つは汚染の除去等の措置の実施についてである。土地の利用転換であるが、将来的に土地の利用の内容が変わる場合については、現在考えられている土壌汚染の除去等の措置である立入禁止であるとか、覆土であるとか、土壌入れ換えであるとか、掘削除去だとか、そういうものを選択して、あるいは組み合わせて行うことになるかと思う。利用転換が将来的に確実だという土地については、土壌の入れ換えとか、あるいは掘削除去というような、いわば厳格な措置をとることを原則としていただきたいというのが第1点である。特に住宅の敷地となる土地については、より厳格な、十分な措置をとることを原則としていただきたいということでお願いする。先ほど申し上げたように、私どものメンバーがいろんな開発事業を行う際には、それを契約によって行うことにしているが、それと同じようにしていただければということである。また先ほどの御発言の中にもあった土壌を外に出すという場合については、その辺のきちんとした措置というか、そういうような仕組みが必要ではないか。
それから2点目は、非常に瑣末な話であるが、汚染のおそれのある土地について都道府県知事が調査の命令をするということであるが、その際、調査の結果汚れてなかったとか、あるいは基準値を下回っていたとか、そういう場合にどうなるのか。当然調査に日数も費用もかかるわけなので、何らかの補てんというか、要した費用の補償というか、そういうようなものを考えていただけないかと考えている。いずれにしても、私どもの立場からすれば、土壌汚染の問題について、いろいろな費用コストがかかるわけであるが、それが最終的にお客様に転嫁されることのないように、汚染された土地が十分にきれいになった形で利用の転換が図れるようにというような観点からの制度の組み立てを是非御検討いただきたい。以上である。   

(村岡委員長)
それでは、委員の方から、何か御質問等あるか。   

(森田委員)
少し技術的な問題が絡んでくるかもしれないが、不動産業界としてはその土地の汚染というものが、パーマネントに汚染していないというふうな場合にどのような基準を念頭に置いておられるのか。あるいは、差し当たり地下水にいかなければいいとか、そういうテンポラリーな基準をクリアして売買できればいいと考えるのか、そのあたりはどう考えているか。   

(浅見氏)
最も望ましいと考えているのは、二つぐらい側面があると思うが、私どもが中心となって考えたのは、いわゆる開発に伴う土地の取引に伴う問題ということである。
それから、もう一つは土地を土地として流通させる、いわゆる仲介行為を行うという場合もあるかと思う。その場合と基本的には同じだと思うが、実際の実務上、最低限どこまでクリアしなければならないという点では少し違うと思っている。それで、一番望ましいのが、例えばマンションを建てて売るという場合についても、将来的にはそのマンション建てかえ等もあり得るわけなので、一番最初の土地をいじる段階で順々にきれいにしておくというのが一番望ましいとは考えている。ただ、その汚染物質によっても、その措置を施すことでその物質自体がどうなるかということによっても違うと思うが、その点で若干考え方が変わってくるのかと思う。例えば地下水を通じて外に流れ出すおそれのあるようなものについては、十分な措置が必要だろうと考えている。下に埋めてしまえば大丈夫だというようなものについては、ある程度の深さについての改良で対応できるのかと思う。それから、外に持ち出す場合については非常に難しいことがあると思うが、同じような観点からの仕掛け、仕組みが必要ではないかと考えている。   

(村岡委員長)
他にあるか。それでは、次は日本経団連の高橋氏お願いする。   

(高橋氏)
最初に昨年からの土壌汚染対策法案の審議の過程で、環境省、あるいは中環審と産業界と密接にコミュニケーションをとらせていただき、おかげで、基金の問題については若干双方に違いがあるかと思うが、その点を除けば、大変合理的な法律を作っていただいたということで感謝を申し上げたい。今後引き続き技術的事項をはじめ政省令の作成過程があるので、できるだけ産業界の考え方も斟酌いただいて、我々から見て非常に合理的な法律が、来年1月から施行されることを大変期待している。
その意味で、本日このように産業界に意見陳述の機会を与えられたことを大変うれしく思っているが、一方で専門委員会が5日から始まって、今日を含めて3回終わって中間とりまとめを作られるということで、大変忙しいということと、夏にパブリックコメントを出せるとしても、大変作業が急ピッチなので、我々の作業が十分進んでいないということを申し上げたい。したがって、本日資料として資料2-2の後に日本経団連の意見はあるが、それは金曜日までに各産業界から緊急に意見を出していただき、昨日午後に集中的に討議をして、その結果、事務局の責任でとりまとめたものである。また会長、副会長とか委員長にも、全くこの件は申し上げていないので、事務局の責任でとりまとめた暫定的な性格のものであるということを御理解いただきたい。正式にはパブリックコメントの期間があるので、その期間までに正式に日本経団連の見解としてまとめていきたい。またそういう関係で、各産業界から出された意見をアンケート結果という形で個別意見を全て記載させていただいている。これはいくつか矛盾する点もあるかと思うが、とりあえず我々がアンケートから集計した各産業団体の意見全部を載せたものなので、お時間があれば是非そちらの方も御覧いただきたい。
また、私は事務の者なので、技術的専門家ではない。質疑応答は技術的な事項、あるいは個別業界に関連した事項になった場合に、関係者の方に後ろに控えていただいているので、そちらから回答させていただきたい。
それでは、私のポイントは4つほどだが申し上げたい。レジュメを見ていただくと分かるように、まず最初は調査を行う土地の範囲である。技術的事項として要請したものを見ると、法第3条第1項の関係で土壌汚染状況調査を行う土地の範囲については、原則として使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の全ての区域となっている。そこは100m2で調べる。また汚染が存在する可能性が低い部分として、各都道府県知事が確認できる場合には、900m2で調べればいいとなっているかと思う。これについては大変厳しいと思う。それは大変な調査を強いられると思っている。
例えば次のページのアンケート結果の1ページ目に、「過去の事例を見ても、土壌汚染が発見されるのは有害物質使用特定施設が存在していた場所である」と事業者としては認識しているが、工場敷地全てが土壌汚染が行われているとは思っていない。また、調査対象とすれば「50万m2の土地の事業場の場合を例にとって一つの仮定で出すと、揮発性有機化合物2物質、重金属2物質を使用した場合、4万検体の調査を行うことになる。この調査のために膨大な時間を要するとともに、調査費用についても約4億円ぐらいかかる」ということで、時間的に、コスト的にこの規定では企業にとって非常に使いづらい、大変な負担になるということで、レジュメの1に書いているように、当該事業場の敷地全体ではなくて、原則として有害物質使用特定施設及びプロセス上それに関連のある施設の周辺に限定していただきたい。それ以外の場所については、土地の履歴情報、あるいは特定有害物質の使用状況、あるいは管理状況を見る。そういうことから、例えばオフィス専用とか、あるいは倉庫とか林地とか、そういう形で使われているものについては汚染がないわけだから、調べなくていい。しかも、その中から汚染の可能性が十分あると考える場所についてのみ、調査範囲に含めていただきたいということをお願いしたい。
2番目は具体的な調査方法であるが、これも法第3条第1項の4ページ、5ページに、調査の段階でボーリングを必要とするということが書いてある。文章的にいうと、揮発性有機化合物以外の物質の採取深度については、これらの物質の汚染が存在した場合には、土壌の表層部に当該物質が存在していることが多い。だから具体的には、表層部土壌及びその直下から表層50cm下の土壌の深さ方向に均等に採取する。一方、この方法により土壌汚染が発見されない場合には、当該敷地における汚染の可能性が高い場所、地点において、表層から5mまでボーリングを行い、表層から約50cm以下、及び表層から1mごとに5mの深度まで採取するとなっている。これについて、ボーリングはやりすぎではないかと思う。表層にあるということを言っておきながら、表層に無いからボーリングしろというのでは調査ばかりやっているということになる。直接摂取に係わる含有量調査については、大気中の飛散、表層の汚染が問題になるわけであるから、ボーリングによる深さ方向の調査は、必ずしも必要ではないと思っている。
3番目に行くと、汚染土壌、これは法の第9条第1項の関係で、汚染土壌については、例えばこの技術的事項(I)と1ページの37ページ、第9条第4項の関係で、指定区域内の土壌を他の場所へ搬出してはならないと書いてあって、あたかも汚染土壌は廃棄物であるというような考え方をしていると思う。これについては、汚染土壌を廃棄物に入れることがいいのかどうか。
今、廃棄物リサイクル部会の基本問題専門委員会中間とりまとめで、土砂と建設汚泥・汚染土壌は、みんな廃棄物にして一括してやろうというような考えでやっている。これについては反対である。土砂は4億トンもあり、産業廃棄物と同じぐらい土砂というのは出ているから、この土砂を産業廃棄物にして、ただ捨てていい、最終処分に回していいという考え方はおかしいと思う。土砂というのは、それ自体は適切に管理すれば何の影響もないものである。建設汚泥についてもちゃんと筋を通してリサイクルに回すべきだと思う。汚染土壌についてもあまりひどい汚染は別にして、軽度の汚染の場合には、そこを浄化してリサイクルして、適正な土地に土砂を戻して、適正に管理するのが基本的な方向だと思う。だから、我々はその土壌の問題については、土砂・建設汚泥・汚染土壌、みんな一体化・一本化して、その安全性・品質をコントロールする仕組み、それをリサイクルする仕組みというのを入れて、その上で適切に管理すればいいのであって、最終処分場に回すという安易な考えをとるべきではないと思う。
第4番目、国民へのリスクコミュニケーションであるが、土壌汚染・地下水汚染の問題も含めて、一般にいろんな誤解、理解不足があったと思う。我々の努力不足ということもあって、国民の方に理解されなかったということもあるので、こういうリスクコミュニケーションをとる場合、政省令策定前にどういう情報が流されるべきか、あるいは公平性・平等性の原則、国民がどういうことを理解して、どういうふうに事業者と接すべきかということについて十分な周知徹底を図っていただきたい。以上4点申し上げた。   

(村岡委員長)
それでは、何か質問があるなら、お願いする。   

(中杉委員)
1番目の対象となる土地の範囲ということで、今、有害物質を使用していた地点で汚染があるというお話をされた。私は多くの事例を見ているが、必ずしもそうではない。なぜここでこういう汚染があるのかどうか、原因は何だろうかというのを大いに悩んだことはたくさんある。これは過去に従業員であった方に聞いても、もう古い話で記憶は確かでない。そこまでちゃんと事業者の方で記録をとられているか。例えば、テトラクロロエチレンという有機溶剤を除草のためにまいてしまったというのがある。多分そうではないだろうかという推定であるが。このようなのがあるはずがない、なぜだろう、昔そんなことをやっていたなあ、というようなことがある。だから、有害物質を使用していた地点に限定するというのは非常に難しいだろうと考えている。
それから、具体的な調査方法というところで深さの話である。これはまた別な手当をするという先ほどの青山氏の話のところに絡むが、直接摂取は確かに表層のところだけで、それに対して対応すればいいのであるが、今度それを運び出していくという話になるときにどうなのか。これは今、最後の話から次の汚染土壌の話に変わるが、それはそちらの方でしっかり制度をつくればいいという議論になるかもしれないが、そこをどうするのか。 後ろの方でいくつか、ガスの調査がダブりではないかと書かれているのは非常に心外である。このガス調査は私も十分ではないと考えている。ガスの調査はそういう意味ではやらなくてもいい。ただ、ガスの調査をやらないのであれば、溶出量、含有量の調査をやってもらわなければならない。それを細かい頻度でボーリングしてやるのだろうか。それはできないであろう、ものすごい過度の負担になるという認識のもとに、ガスの濃度で判定していくという意味でこのガス調査を導入した。ガスの調査を導入して、さらにボーリング調査を必ずやれとは言ってなくて、ガスの調査だけで指定区域としての判定を受け入れてもいいという整理にしている。もちろんガスの調査だけで納得がいかない場合にはボーリングをして、汚染がないということを確かめれば外れるという整理にしている。ガスの調査というのは、負担を少なくするという趣旨で入れたものである。   

(高橋氏)
土地の限定について、日本経団連に入っている事業者の場合、非常に広大な土地で事業をやっているということもある。委員がおっしゃるように、かつてばらまかれていたかもしれないという問題があると思うが、そのときはなぜ100m2なのかとか、なぜ900m2なのか、今のところ理論的になぜ3倍なのか、我々はよく分からない。例えば二つに分離するのがいいかどうか、例えばもっと細かく分類して、履歴が少しでも分かるところをもう少し簡易な調査にするとか、そういうことがあっていいと思うので、できれば理論的な根拠みたいなものをお示しいただけると、こういうことで900m2に切ったのかということが分かると思う。
それから搬出される土壌については、別の制度をつくった方がいいと思う。ここは御意見が分かれるところかもしれない。   

(中杉委員)
100m2と900m2の話が出たが、私の認識を申し上げておく。900m2というのは前回も議論があったが、今の指針が1,000m2に1カ所というものであり、1,000m2というと、縦横で正方形を作ろうとすると非常に難しいというので、割り切りで900m2にしたのだと思う。30m×30mというようなことで、今の指針に合わせて若干短くなっている。100m2というのは、この資料に示してあるように、汚染の広がり程度を今まで見てみるとどうしても900m2とか1,000m2では大部分漏れる。それより小さいある確率で漏れてしまうものを漏らさない、100m2より小さいのはあるが、大体100m2に1カ所ぐらいやらないと漏れてしまうという判断で決めている。私はそういうふうに解釈している。   

(大塚委員)
別の点であるが、汚染土壌を廃棄物として扱うかという問題についてお伺いしておきたい。土砂全体を廃棄物として扱うかどうか、今後廃棄物・リサイクル部会で検討が進められると思う。汚染土壌については、廃掃法の廃棄物の定義では廃棄物は不要物とされるということになっている。その定義は通知レベルで決まっているが、その占有者の意思からしても、あるいは有価か無価かというような話を、そういうものを仮に基準にして考えたとしても、普通これは廃棄物に入ると思う。先ほどおっしゃったように、最終処分場に回せばいいということではないと思っているが、廃棄物にしながらリサイクルの仕組みをつくっていくということには賛成である。廃棄物でない方がいいという積極的な理由が何となく想像できるが、廃棄物の通常の考え方からすると、当然廃棄物に入ると思う。そうではないとすれば、その辺を御説明いただきたい。   

(高橋氏)
廃棄物処理法が適用されると、処理業の許可、処理施設の許可、運搬収集、全てに非常に大変な許可を求められるということがあると思う。業者にしてみると、それは土砂の問題が実は大きいが、土砂を掘削した途端に全部それが廃棄物になってしまうと、建設業者は一遍に廃棄物処理業者になってしまうのだろうか。それは理解できないので、廃棄物処理法にするよりは土砂リサイクル法みたいなものを考えて、土砂を適正に管理する法律のもとに置いた方がいい。まず第一に土砂が、次に建設汚泥が、最後は汚染土壌があると思う。その順番において、適切にリサイクルして土砂を利活用していくという世界を作った方が、はるかに国民的にはメリットがあるのだと思う。   

(大塚委員)
追加して質問であるが、この法律の場合には指定区域を決めて、そこから搬出される土壌というのはある程度特定ができると思う。そういう意味では、一般の土砂と必ずしも同じ議論をする必要はないと思っているが、その点についていかがであるか。また、先ほど青山氏から御指摘があった搬出土壌について簡易なスクリーニング制度を義務づけるかどうかという問題もあると思うが、そういうものを導入するということについては、どのようにお考えか。   

(高橋氏)
土砂を持ち出すときに、どこに持ち出すかという問題にもなると思う。これは、環境省ともなぜこの法律に土砂の持ち出しが入っていないのかと議論をした。土砂を持ち出すのだったら、持ち出す場所の土砂に合わせて基準を作ったり、そこまで浄化させてもいいことではないかと思う。なぜ汚染土壌を土壌汚染対策法で規定せずに、廃棄物処理法を適用させるのかと当時から何度も議論したが、我々産業界の立場からはよく理解できない。だから、青山氏の言われた、軽度のスクリーニングが具体的にどういうことを意味するのか分からないが、少なくとも土砂は持ち出す場所に合わせて、適正に管理する方向に持っていかざるを得ないと思う。それが一番いいし、それができれば土砂というものは決して悪いものだとは思わない。国民的に必要なものだと思うので有効に使っていきたい。要するに、工業専用地域に持ち出すときと、商業地域に持ち出すときと、住宅地域に持ち出すときでは、全部浄化の体制が違って当然だと思う。そういう制度に仕分けないと、土砂が全部完全にリサイクルするんだと言われると、それはまた、そんなことはする必要はないだろうという気持ちもある。適正に管理、覆土とかコンクリートで固めるとかすればいいところもあるから、商業地域や工業地域に持ち出すときには、軽度な管理によって土砂は処分できる。それを住宅地に持ち出すときにはもっと重い管理をするというのが合理的ではないかと思っている。   

(三木委員)
今の絡みで2点ほどあるのだが、青山氏が先ほど言われた不法投棄、あるいは不法行為をなくすためにいろんな調査とか義務規定を強化してほしいという話も認識としては異論はないが、プラスアルファで、なぜ不法投棄が起きるのかということを突き詰めて考えていくと、捨てる場所がない、捨て場が高い、だから仕方なくさばく先を見つけざるを得なくてやっている面もあると思う。ここでよく考えないといけないのは、そういう持ち出し汚染土は法の対象ではないかもしれないが、それはよく使われるような、活用・リサイクルできるような仕組みをきちんとつくるというのがまず大事だと思う。そのためには色々と我々がやっている必要な措置の中で、どういう利用形態、どういう汚染土ならこういう措置でいいというのをきっちり、もっときめ細かく明示する。こういう汚染状況でこういう使い方なら問題ないというものをきちんと示してあげて、不法投棄をせざるを得ないような状況をできるだけ少なくして、使う側のところをより強化しておくというのが不可欠だというのが1点。
今の廃棄物の話であるが、認識として、建設汚泥のときに建設業界あるいは国土交通省としては、旧厚生省と非常に長らく論争を続けて、平成10年にようやく合意をみた。というのは、建設汚泥はどんなに品質をよくしても廃棄物だというレッテルを外せないということが続いていたのであるが、出てきた状態では廃棄物であっても、所定の品質に改質したものは廃棄物扱いをしないということでようやく環境省と国土交通省の間で合意が得られた。ただし、それは各地方自治体に行くと、まだそういう意識が行き渡ってない。だから、各都道府県の環境部局はまだ、いくら改質しても廃棄物なのだということでリサイクルは進まない。   

(村岡委員長)
高橋氏の御意見に絞って欲しい。   

(三木委員)
それで、この汚染土壌についてもここまでは廃棄物だけれども、ここまで改質して、この段階に持ってきたら廃棄物から外すということをきちんとしないといけない。今の高橋氏と委員のやりとりを聞いていて、根本解決にはならないということで、一言御意見を申し上げた。   

(村岡委員長)
特に、高橋氏、何かお答えされることはないか。

(なし)   

(村岡委員長)
それでは、およそ時間もきたのでヒアリングの時間はこれぐらいにしたい。時間の窮屈な中で、それぞれの組織で抱える問題について貴重な御意見をいただき感謝申し上げる。この席では十分議論できないが、内容によっては後ほどの本委員会の中でも関わってくる問題もあったように思うので、そこでまた反映させていただく。
それでは次の議題に入りたい。「土壌汚染対策法に係る技術的事項について」、事務局から資料について御説明願う。  

(2)土壌汚染対策法に係る技術的事項について   

(事務局)(資料2-3、資料2-4、参考資料2-1に基づき説明)   

(村岡委員長)
事務局で説明していただいた技術的事項について討議をしていただくが、技術的事項(I)と(II)があって、(II)については、今日初めて御議論いただくものである。そういうことで、(I)の方から順番に討議していただくが、技術的事項(I)については、前回御議論いただいたときに、色々と質問事項あるいは整理が必要な事項を御指摘いただいた。それを事務局の方でまとめていただき、先ほどの資料の説明になったわけである。資料の2-3であるが、1枚目表紙の裏側に整理・検討課題があって、1から8まで整理していただいたということである。その内容と、その後に前回の技術的資料(I)の修正版ということで、つけていただいている。
それでは、この整理していただいた検討課題の順番に御議論をしていただきたいと思うが、まず1番の法第3条第1項の調査の対象となる土地の範囲について、1ページから2ページであるが、これについて何か御議論はあるか。   

(三木委員)
ここに書いてあることよりも、法の第3条の第1項の最後に、但し書きがあって、環境省令で定めるところにより、当該土地について予定されている利用の方法から見て、健康に係る被害が生じるおそれがない旨の確認を受けたときはこの限りではないと書かれている。利用の方法から見て問題がないという場合のここの解説はどこにあるのか。   

(事務局)
その部分については、技術的事項というよりも、引き続き工場として使う場合というような単純な基準になってくるので、技術的事項ということでこの場で審議するものではないという整理にしている。引き続きその工場として使われるというような基準を考えている。   

(三木委員)
この法律が対象とするのは工場だけの話ではなくて、工場を廃止する場合、もしくは一般の土地のそういった環境被害があるものの両方ある。工場の方はそれでいいとしても、一般の土地の利用方法に応じて汚染がないという確認を受けるときの基準は技術的基準できちんと定めないと、色んな混乱が生じるのではないか。   

(事務局)
第3条の規定というのは、全部工場が廃止される場合の調査ということになっていて、一般の土地の調査というのは、法の第4条の調査になっていて、どういうときに調査をするのかというのは、法の第4条の第1項でその基準を定めることになっている。それについては、先ほどの資料の2-3の技術的事項(I)修正版とある方の43ページのその他、技術的検討が必要な事項というものの1の中で調査の要件、こういう場合に調査を命じるという要件が定められていて、こちらが基準ということになってくる。   

(三木委員)
操業中の工場で汚染が顕在化している場合には、操業中であっても指定できるのか。工場として操業中で汚染があり、周りに影響を及ぼしているというときにはどうなるのか。   

(事務局)
その場合には、第3条の方は工場の廃止時の調査なので、別途、法の第4条の調査が必要かどうかの判断になる。第4条では、土壌汚染により人の健康被害が生じるおそれがある場合に調査を命じることにしていて、操業中の工場・事業場であっても汚染があることが判明して、例えばそこで地下水汚染があって、近隣で地下水を飲用に利用等しているという場合には、当然調査を命じられるということになってくる。   

(三木委員)
第3条の第1項の但し書きはそうは読めない。解説する文にはっきりつけていただくかしない。ここは使用の廃止される工場の土地の調査ということで、但し以降は、その土地が今後どういうふうに使われるかという予定の利用方法から見て、問題がない場合には指定しないと言っているわけであるから、その利用の方法というのは工場として利用するのか、と今おっしゃったわけで、それ以外に利用方法もあるわけである。   

(事務局)
工場あるいは工場以外のものになるときには調査をする。要するに、そこで確認を受けた場合には、調査は要らないと第3条で書いてあるが、どういうときに確認が受けられるかと言えば、引き続きその工場として使う場合であるということを定める予定である。   

(三木委員)
それはどこかに書かれるのか。   

(事務局)
省令で書くことになるが、この場の検討課題というよりは省令の中ということで、パブリックコメントの中では当然それを示すことになる。   

(中杉委員)
これは現状の使用状況、土地利用とかだけではないのかもしれないが、土地の状況を踏まえているということなのだが、当然確認できる範囲では過去にさかのぼってということなのか。逆に言えば、過去にこの土地はこうで、前の事業者にさかのぼってどこまではっきりできるか分からないけれども、それもさかのぼって検討した上で、ここはこういう土地だということを判断をして認めてもらうという解釈でよろしいか。   

(事務局)
前の事業者まで、どれぐらいさかのぼれるかという問題はあるが、少なくともその工場の存続中にどういう利用をされていたか、今、グラウンドであっても、ちょっと前まで工場として使っていた部分ではないかという部分は当然見る。   

(冨永委員)
調査のところで、費用対効果を考えると相当な時間とコストがかかるというお話が出ていたが、土地の履歴が明白である場合には、都道府県知事に任せるというか、都道府県知事が認めた場合には、その調査対象から外すということがあってもいいと思う。先ほどから中杉委員も心配しておられたように、確かにあるだろう。ちゃんとしたものがあって、土地の履歴が明白な場合には、そういう措置がないと非常に効率の悪い調査になってしまうだろう。非常に時間がかかって、しかも非常に膨大な資料を分析しなくてはいけないというかえって非効率な調査を全部にやってしまうのは無理がある。
もう1点は、土壌汚染が発見されない場合にボーリングするよう言っているのであるが、その場合にはこの法律でやっているのは50cmまであるから、対象外になるのではないか。むしろそういうおそれがあるとか、あるいは別途の情報があったときには、ボーリング調査をやれと明白に別に定めるのではないかと思う。都道府県知事が命令して、ここを調査しろということを、別途ボーリング調査をやるということを定めるべきであると思う。必ずボーリングをしろとする必要はない。ほとんどが無駄な調査になる可能性があると思うがその点はどうなのか。   

(事務局)
まず、前段の都道府県知事が確認すれば、調査する必要はないのではないかということであるが、確実に汚染がないと言えるかというとなかなか難しい面もある。この資料でお示ししているように、グラウンドとか駐車場のように工場としての目的として使っていない部分というのは、調査の対象とする必要はないと思うけれども、他の事業場の敷地などについては、採取率は低いながらも、やはり調査は必要なのではないかと思う。不必要な調査をやらせるのではないかという点については、例えば資料の5ページ、1点でも汚染が判明してしまえば、土地の全区域を指定区域としてその指定を受けるということを了解すれば、それで調査を終了してもよいとするということが一つの解決策になると考えている。   

(村岡委員長)
今の説明にもあったように、ここで一つ無駄な調査を省く手段が一つの例として挙げられているが、また後ほど御議論をいただきたいと思う。
それでは、2番目の指定区域の指定の方法について3ページ、4ページ、その点はいかがか。   

(中杉委員)
3ページ、4ページに移る前に、冨永委員の発言に対して意見を申し上げておく。グラウンドとか従業員用の駐車場の汚染はないから調査の対象にしなくていいのではないかというのは、はっきり自信は持てない。ただ、そうは言いながら、実際には可能性の全く低いところをやらせるのは無駄であるのである程度妥協の線としてはこのぐらいで適切なのかと私は判断している。
それから2のところであるが、これは100m2までの単位で考えているが、さらに細かく事業者の方が調査をすれば、当然それは認めるということはできるのか。さらに細かく調査をして、範囲を狭くとってということも事業者の方はやられるのかどうか。そこはどういうふうに考えておられるのか。今のところは100m2が単位で、100m2の中を細かく割って調査するということもあり得るわけで、いや、これは単に頭の中で体操をやっているような話になるのかもしれないが。   

(事務局)
現在考えているところでは、これは100m2をさらに細かくするというところまでは考えていない。100m2をこれ以上割って、小さくすることに対して、またこれも調査費用がかかるので、おそらく事業者側にもそんなにメリットはないのではないかと思っており、そこまでは想定していない。   

(村岡委員長)
5ページの3の土地所有者の選択も含めて、ひとつ御議論いただきたい。   

(事務局)
先ほど冨永委員からの御質問で、一部お答えしていないところがあった。これは中杉委員の方から一度コメントをいただいており、ここに書いてあるグラウンドや従業員用の駐車場というのは、従来からこういうところであれば確認ができるという例示であって、他に例示があり得るのであれば指針やマニュアル等で整理をしたい。
もう一つの御質問である5mのボーリングというのは、前回もこの場で御議論いただき、いくつか委員の方からコメントをいただいているが、私どもの考え方は前回御説明をさせていただいたように、表層土壌の調査だけで出なかったといった場合にも事例は多くはないが十数%ぐらい、1m、2m、3mあたりで初めて汚染が出てくるというケースはある。もう一つ気にしているのは、意図的に埋め込んでしまうというようなことがあった場合に、せめて1カ所ぐらいボーリングをして確認をしてもらったらいいのではないかと前回御説明しているので、もしも御議論があるのなら、ここでそこは御確認をいただいてお決めいただいた方がありがたい。私どもの提示は100%ではないので、確認をしたいという意識と、もう一つはやはり意図的に埋め込める深さ、50cm程度というのはそれができる深さでもあるので、あるいは実際に盛土をしてしまって、そこがこんもり山になっているけれども、杓子定規にやればそこで大丈夫だという話もあるかもしれない。そんなこともあって、ただ一方でコストはあまりかけたくないので、やはり1カ所ボーリングで確認をしていただく。ただし、それは5mということで、それ以上は深くは要らないということで前回御説明させてもらったので、ここで御議論いただいて、お決めいただけると非常にありがたい。   

(眞柄委員)
非常にとっぴな質問かもしれないが、米軍の基地と自衛隊の施設関係はこの調査の対象になるのか。将来もし返還等があったとき、あるいは基地が廃止されたときにこの法律の対象になるのか。   

(事務局)
米軍の基地については、まずこの法律の対象にはならない。日米地位協定の方で対応するということになる。この法律の対象とはならないが、その土地が返還される際には、防衛施設庁の方で原状回復措置をするということになっているので、これまでも土壌汚染調査については、調査対策指針に基づいてやっていくということになっている。だから今後は、それがこの法に基づいた内容で同じように調査対策が行われるということになろうかと考えている。   

(村岡委員長)
自衛隊の方はどうか。   

(事務局)
自衛隊については、基本的にはこの法律が同じようにかかるという考え方になる。もし工場、事業場というところであるとすれば、それが廃止されるということであれば、第3条の調査もかかるということになる。   

(中杉委員)
埋め込んだのを見つけるという意味では、例えば1点というのはどこの1点をやるのか、意味があるのかどうかという議論になってくる。そういう意味でいくと、一番下の方にあるので問題があるのは、天地返しをして、上に上がってくるという話が一つある。それは、その上がった時々において調査すればいいという話になるかもしれないが。むしろ運び出すという話がひとつ懸念されるので、逆に言えば、そちらの方でしっかり今別な形で制度を検討していただいている中で、そこら辺が担保できるのであれば、それでもいいのかと思う。埋め込んであるのを見つけるという意味では、例えば有害物質を使用している施設の下というところに、そういうものを埋めてはいないだろう。どこを調査をしたらいいかというのは、逆に言うと、さっきも除外していたグラウンドだとか、従業員の駐車場の下だとか、そんなところがむしろ危ない話になりかねないので、趣旨から考えるとやった方がいいと思う。ただ、それをやらないときに懸念される分については、別途のところで手当する必要があるだろう。   

(福島委員)
横浜市で、十何年この土壌汚染の要綱ということでやってきたのであるが、横浜市内だから比較的小さな工場も臨海部の大きなところもあったわけであるが、その経験からすると、どこに出てくるか分からない。例えば変なところで出てきた。使っているプラントからの排水のパイプの途中にひび割れがあって、そこから水が漏れていたらしい。そんなもので高い濃度が出たりする。それと、あともう一つは埋め込みである。昔は廃棄物を工場の敷地の中によく埋めたので、とんでもないところから汚染が発見される。それでここもグラウンド、従業員用の駐車場というのも、頭からはねてしまっていいのだろうか。相当程度、履歴からして、大きな工場の場合によく野球のグラウンドなんか持っているが、ああいうところはずっと昔からグラウンドで大丈夫なのかと思うが、何か知事が判定するというか認めるときに、もう少し細かい考え方でもってやるべきで、頭からはねるという形はどうかと思う。ボーリングについても、埋め込みを探すためにボーリングを1カ所というのは、どこをやったらいいのか分からないから、ボーリングの必要性はないかと思う。   

(冨永委員)
私もそう思う。むしろ汚染のおそれがあるとか、あるいはヒアリングをして、そういう事実らしいというのが分かれば、別途知事は命令を出してそこを調査させるという方がいいと思う。表層だけの調査にしておいて、それ以上のボーリング調査はほとんどが無駄になるだろう。つまり、グラウンドとか事務所の跡地で汚染がありそうだというのが分かれば、そういうおそれがありそうだといったときに調査をかければいい。いつでも命令するということを別途つくった方が、むしろ安全ではないかという気がしている。つまり、もう汚染のおそれがないからといって、でもボーリング調査だけはやれというのは負担になるだけであまり効果はないのではないか。むしろ、いつでも命令ができる、調査をやるという方がいいという気がしている。   

(森田委員)
私の経験を言うと、土壌汚染はどんなふうに存在をしてその全体をどうやって把握することができるかが根本の問題になるという感じがする。その観点から言えば、本来全部ボーリングをしないとよく分からない。ただ、全部をボーリングするとあまりにもコストがかかるので、大部分の汚染が表面にありそうだから表面でまず探ってみる。それでは下の方へ行くまで全く分からない。そんな情報なしで本当にやめてしまっていいのかということで1本ぐらいやろうというのが一つの答えかという感じはする。しかし表面だけで、本当に状態が分かっているとも思えない。ボーリングをして、汚染しているところにうまくヒットさせるのはそんな簡単なことではない。しかし、人間の健康をそこの皮膚の色だけから見ているようで、果たしていいだろうかというのがあるので、下を見るというのはどうしても最低限は必要かという感じがする。   

(眞柄委員)
ボーリングを実際にやるのは帯水層のところをやるということなので、帯水層の場所に到達する可能性が高いところをある程度選んですれば、その敷地内のほかのところに汚染があってもボーリング調査をすることによって、かなりの確度で汚染されているか、いないかを確認することができる。そういう意味では、最低限1カ所はやはりボーリングをしていただくというのがしかるべき判断基準になるのではないかと思う。   

(中杉委員)
1カ所やったことで、それがどれだけの意味を持ってくるかという話を考えて、変に誤解を受けるのは私は嫌だなという感じがする。1カ所をやってなかったことで、その土地全部がないという保証は全くない。先ほど冨永委員がグラウンドとか駐車場で問題があれば都道府県知事が命令すればいいと言われたが、そんなことはできない。調査しなければ分からないから。俗に言うとリスクを抑えるという意味では、しっかり天地返ししているが、下の土壌と入れ換えたときには調査が必要になってくるだろうし、あるいは外に出ていくときに、いかにそれをちゃんと担保できるか、そういうところをした方がより実効的であろう。1カ所をやって、ここはなかったからなかった、という判断をする、そう思われることの方が非常に怖い。地下水に溶け出してくるやつは、下を掘って地下水をモニタリングすることによってある程度分かるが、含有量の汚染というか、直接摂取の部分については、真ん中でとまっている部分が当然あるから、多分そういう方法も効かない。そういう意味では、その1カ所をやることで両方面のメリットはどれぐらいあるのか。安心を得るというメリットが、汚染が出た企業に関してはあまり高くないのではないか。そういう意味でいくと、そこについてのリスクについては、何か別の段階で管理していく方が適切ではないか。   

(村岡委員長)
先ほど事務局のお話で、表層から掘っていったら、深いところから新たな汚染が見つかった。そういう事例が十数%あるということであったが、この値はかなり大きな値ではないかと思う。そういう点もひとつ勘案して御意見いただきたいと思う。   

(鈴木委員)
調査対象区域になった駐車場等の特定の地域を事前に除外するというのは、中杉委員が言われたような問題に対して十分対応できない可能性を残すような気がする。ただ一方で、全ての土地について、実測による調査をするということができない関係もあるかもしれない。私なりの提案というか、ここで申し上げるとすれば、調査対象区域としては、基本的に特定の土地のリストをあまり変更しない方がいいのではないか。ただし、もちろんある自治体の人たちが今ボーリングの必要を見出せないというケースがあると思うので、そこを除外する理由は、必ず調査の一環として行う。ここは駐車場であるので、当面調査はしない、それを記録に残して、事業所の区域の中のこの区域はこういう理由で除外したが、それによって万が一、次の土地利用が起きたときに、ここが実測の調査がされていないということがトレースできる仕組みをとっておいた方がいいと考えている。   

(村岡委員長)
まだ他に御意見があるかもしれないが、大体一通り各角度からの御意見をいただけたと思うので、時間のこともあるから、次に進ませていただく。
6ページであるが、4番の地下水の飲用利用等の判断基準について。次の5番の7ページもあわせて御議論いただけたらと思うが、どうか。特段御意見ないか。
後でまた全体というか、振り返っていただくことも必要かと思うので、それでは8ページの6番、汚染の除去等の措置に関連するモニタリングについてはどうか。   

(中杉委員)
終わりを設けることができるかどうかという判断は非常に難しい。一つの方法としてはこういうことが考えられるのではないか。地下水に達していないことと、達する可能性が非常に低いということを確認するには、それを上から下へ動いているかどうかというのを確かめる。最初のときに上と縦の方向のプロファイルを見ておいて、例えば10年たったときに調査をやって、それがあまり変わっていないという判断する。どのぐらい変わっているか、このまま場所が少し動くと少し変わってしまうというようなことがあり得るのかもしれない。そこら辺をもう少し技術的に検討しなければいけないのかもしれないが、一つの方法としては、それで動いていないというのを確認する。それで確認できれば、そこでやめるということも一つの方法ではないかと思う。   

(村岡委員長)
関連した御意見はあるか。 それでは、次の7番もあわせて御議論いただこうかと思う。9ページの搬出土砂(土壌)の取扱いについて、何かあるか。   

(三木委員)
今この指定区域から処分のために搬出される汚染土壌については、この第7条第4項ということで規定する。具体的には、例えば25ページから26ページにかけては、土を入れ換えることについて書かれている。出す方の土については26ページの上の箇条書きの一つ目に書いてあるように、他の場所へ搬出してはならないとなっている。適正な処分のためを除くということであるから、管理型もしくは遮断型の廃棄物処分場に持っていく以外はよそに移してはいけないとなっている。
その次の箇条書きは、それを浄化したり、改質したりするための適正な処分のために移す場合についてである。そこの最後の3行が、その搬出先において汚染を拡散させることなく、適正な処分が行われたことを確認することとなっている。これも前回浅野委員とか私とかで、ここのガイドラインなり解説がきちんとないと、まずいのではないかという話をしたところである。
もう一つ、先ほど申したように、取扱い上、改質して廃棄物処分場に持っていくのは廃棄物、不要物であるから、廃棄物処理法の世界で取り扱っていただいて結構かと思うが、それを不要物から有用物に変えてどこかで利用する場合には、これは廃棄物処理法の世界から外していただきたい。これは先ほどの建設汚泥で苦労して、一番ネックになって、廃棄物処分場の逼迫の最大の原因になったものであるから、今度の搬出土砂はもっと量が多いわけである。建設汚泥どころではない量が出てくるので、何らかの一定の品質以上に改質して、適正な利用をする場合については廃棄物とはしない。この土壌汚染対策法の枠の中で取り扱えるようにしていただかないと、国民が最終処分に負担する費用だとか、あるいは有用物として利用しないことによる損失とか、いろんな事業の停滞とか、国民が莫大な社会的費用を負うことになる。そういうことは是非避けていただきたい。   

(村岡委員長)
その点は事務局の方で、どういう構造でこれは考えておられるか。   

(土壌環境課長)
今の点を申し上げておくと、一つは環境省の廃棄物・リサイクル対策部の方が担当しているが、いわゆる中央環境審議会の廃棄物・リサイクル部会で現在取扱いそのものについてその立場からの議論を進めている。
もう一つ申し上げると、今の三木委員の御発言の中で、廃棄物になると最終処分場に行くというお話があったがそうではなくて、最終処分される場合に一定の規制がかかるというのが廃棄物処理法の中身でそこの誤解がないようにお願いしたい。いわゆる再生・リサイクルされるということは、当然廃棄物処理法上も想定され、それを推進していくようなメカニズムが廃棄物処理法の中にも備わっている。このあたりに対しては先ほどの三木委員とは若干異なるが、長い間随分論争があって、建設汚泥の取扱いというのは、平成9年の廃棄物処理法の改正をもって一定の決着がついているという部分はある。このあたりも含めつつ、現在廃棄物リサイクル部会の方で検討がなされているので、この一つの議論を注視はしていきたい。一方で、こちらの土壌汚染対策法の方は御指摘のように、第7条第4項等々で指定区域内からのいわゆる汚染土壌の搬出に係る部分というのが決められ得ることになっているので、そのあたりを廃棄物・リサイクル部会での別途検討を見極めつつ、御意見、御指摘の点に関しては、今後検討させていただきたい。   

(三木委員)
今、廃棄物処理法の中で、リサイクルのことも念頭に置いているというのは、この前の廃棄物処理法の9年の改正を受けて、もともと素性が廃棄物であったものを一定のものに品質を改質したものについては、処分場に持っていくだけではなくて、他の利用を認めるということを言っておられるわけか。   

(土壌環境課長)
当時の決着は、特に建設汚泥だけではないが、いくつかのごみ、いわゆる廃棄物処理法の中に再生利用認定制度というのが平成9年に創設されている。例えば、建設汚泥が一定の状態のものに改質されたというか、例えばスーパー堤防とかで使われる場合には、環境大臣が認定をすることによって、処理業の許可、処理施設の許可が不要になる措置がとられているということである。   

(三木委員)
それは焼け石に水的な措置で、今現在どういうふうに動かしているかというと、再生利用認定制度ではほとんどリサイクルの方は進んでいない。それはなぜかというと、都道府県環境部局の許可がなかなかとれないし、その手続も煩雑だからである。ただ、今現在は自ら利用と有償売却、あるいは自ら利用も有償売却も有用物としての利用ということである。再生利用認定制度も有用物としての利用なのであるが、あくまで環境部局が許可を出して、再生利用を認定するという制度なのである。そうではなく、自ら利用と有償売却とか、そういう市場経済に任せて自らが品質保証体制を作って運用するというのがないと、建設汚泥の場合も実態としては動いていない。だから、廃棄物処理法の世界で動かすには限界がある。だから、これは土壌汚染対策法の世界で、きちんとある一定水準以上に改質したもので有用なものはこの法律の中で扱うようにしていただきたい。これは、指定区域から搬出される土砂についての話であるから、この法律の中で不要物は廃棄物処分場に持っていくようにする。ある程度改質したものは、廃棄物ではなく有用物として利用する。そういうのは廃棄物処理法の世界にはないから、再生利用認定制度なんていうことでお茶を濁されたのでは、世の中が行き詰まってしまう。   

(中杉委員)
三木委員は、指定区域から出るものだけを土壌汚染対策法の中でやれという意味で言われているわけであるのか。法制度上今そうなっている。   

(三木委員)
今、法律の対象はそこにしかない。   

(中杉委員)
そうした場合に、例えば指定区域であるのか、指定区域でないのかといったように、指定区域の区別が非常に煩雑になってこないか。   

(三木委員)
それは初めの一歩で、徐々に広げていけばいいと思っている。今この法律からして廃棄物処理法に全てをゆだねることになってしまうと、他のものもそういうことになりかねない。一番大事なのは、この法律で基本的なスタンスを示して、あとの方もそれに準ずるという体制を作ることである。   

(中杉委員)
それを作るための議論は、十分ここで尽くせるのだけの時間がないと思う。   

(三木委員)
だから指定区域の話だけに限ればいいと思う。   

(中杉委員)
指定区域だけに限って、ここだけでそのものをすぱっとやって、他のとの整合をここに合わせるんだと今言われた。これから拡大していけという話であるか。   

(三木委員)
それはお茶を濁した解決策で、実際の現実問題で実効を上げようと考えた場合には、そこの本当の循環をきちんと作ってあげないと、法律だけ作っても世の中は動かない。だから、規制だけではなく使う側の循環の道を示すということをきちんとやらないといけない。   

(中杉委員)
それは私もそのとおりだと思う。個人的な意見でそんなことができるのかという話があるが、土全体を廃棄物として、廃棄物自体が有価物も廃棄物の中に含んで考えるというのは一つの考え方だと思う。そうなれば、抜本的なことを考えなければいけない。三木委員の主張は、ここで、この中でやると言って、ここでやったものを他に広めていこうと言われるわけであるが、それであれば、ここで全てを決めることになる。それだけの議論はできてないわけである。ここから広げていこうと言われたから、それは全部他を見て議論しないとここから広げることはできないのではないか。   

(村岡委員長)
この法律の扱う範囲というものがまずあって、それから外のことについては外の方で考えられるような法律があるというふうに理解をしているのであるが、大塚委員、その辺の法的な仕組みはどうであるか。   

(三木委員)
今そうはなってないわけである。今はゼロ、空白地帯になっていると思う。   

(村岡委員長)
大塚委員どうか。   

(大塚委員)
法律の制度としては、搬出土壌自体は、この後、廃掃法とかほかの法律で扱う問題になるので、ここで最後のところまで決めるということは無理だと思う。三木委員の御指摘、御懸念というのは、私も非常に気になるところではある。
それから、有価物であっても廃棄物という扱いにして、汚染土壌を浄化すれば、それはリサイクルをしていくような仕組みを作らなくてはいけないと思ってはいるが、そこまで全部土壌汚染対策法で扱うというのは無理ではないか。   

(三木委員)
今言っているのは、今現在、廃棄物処理法で汚染土壌を扱うということにはなっていないということである。   

(大塚委員)
一般的な考えでいくときに、不要物ではあるので、通常を考えれば廃棄物として扱うことは十分可能なものだということがまずある。その後で、汚染土壌を浄化すれば廃棄物でなくなるというようなことはもちろん可能だと思うけれど、出た時点では廃棄物になると考えていくのが通常の考え方ではないか。   

(三木委員)
出た時点では不要物で、不要物のまま処理すれば廃棄物処理法でいいと私も思う。ただし、不要物でなくして有用物として循環させる場合には、再生利用認定制度とかいう廃棄物処理法の枠の中でやっていくと、手続だとかいろんな制約が多くて実際は動かない。それは建設汚泥でも嫌というほど痛感していることで、そうならないために、有用物として改質したものについては廃棄物処理法で扱わないようにしないといけない。その扱いは汚染土壌についても、廃棄物処理法で扱うと決まっていないわけである。ましてや、有用物にしたものは廃棄物処理法で扱わないというのは当然だと思う。   

(眞柄委員)
この資料の36ページに掘削除去措置というのがある。今三木委員がおっしゃっているのは、このときに取り出された汚染土壌が指定区域外に出ていくと最終処分場に行く。これは廃棄物だと思う。汚染を除去して、またトラックに乗せどこか別の指定区域であったところの土を取り除いたところに入れれば循環である。   

(三木委員)
もっと指定区域以外のところで使ってもいいわけである。   

(眞柄委員)
他のところで使ってもいいのではないかという意味であるか。   

(三木委員)
それが、一番一般的な姿なのである。   

(眞柄委員)
36ページに下の図でいうと、他の指定区域の取り除いたところに戻してもいいよということに限定しているから、もうちょっと幅を広げてもいいのではないかという御意見なのか。   

(三木委員)
36ページの下もそうなのであるが、例えば34ページも同じようなのがある。36ページの[10]というのは掘削除去処置で浄化に近い形で、これは必ず最終処分場に持っていけという措置なのである。   

(眞柄委員)
36ページは、下に行って汚染を除去したら、再利用ということか。   

(三木委員)
かなり限定的なメニューであると思う。一般的なメニューというのが34ページの[5]の方なのであるが、場外に出してきれいにしてから埋め戻すということになるのは、どちらにもないメニューである。だから[10]でも[5]でもどちらでもいいのであるが、出した土を最終処分場に持っていかないで指定区域内にまた戻してもいいし、どこかほかの場所で使ってもいい。[10]の方の、ここに書いていないメニューというのを考える必要がある。メニューが足りないということと、それを扱うときには、廃棄物処理法ではない世界で扱うようにしないといけない。   

(中杉委員)
全体をうまく動かさなければいけないというのは、そのとおりだと思うが、改正廃棄物処理法の中で扱うのがいいのかどうかというのはこの検討会で決める話ではない。総合的に決める必要があるだろうということは確かである。この法律の中で、そういう他での議論と整合をとれなくなるようなことまで決めてしまっていいのか。そういう議論も十分できずに、ある部分だけでという話はよくない。   

(三木委員)
技術的基準でいうと、例えば26ページについて先ほど来言っているように、要するに箇条書きが二つあって、他の場所に搬出してはいけない、これはもう最終処分しかないと言っている箇条書きと、その下のきちんと技術的基準に適合したものにしてほしいという箇条書きがある。要は改質して、ほかの場所に有用物として使うメニューも加えてほしいということである。それは技術的基準をきちんと定めて、こういう改質をして、こういう利用法のときにはそれを認めようという技術的基準も作ろうということである。   

(中杉委員)
技術的基準というか、他で議論しているものを含めて、そちらとの整合をとる必要があるだろう。ここで処分といっている言葉自体の定義は難しい。処分と言ったときに、埋立処分地に持っていくことが処分だという定義とは解釈していない。   

(土壌環境課長)
議論が続いていて、大変、委員の関心の深い問題であると思う。もともとこの話は、かなり根の深いような問題ではないかという気がしており、少し引きとらせて考えさせていただいて、間に合えば次回にどういうことが今実態としてあって、ここに書いてあるものをもう少し掘り下げたところで、今の御議論のようなことを提出させていただければと思っている。   

(三木委員)
一言だけ。要は法律の中で整合をいくらとっても、世の中の仕組みの中で循環の整合をとっておかないと動かないということである。   

(村岡委員長)
三木委員の御指摘の内容について、大方の委員の方も御理解はされていると思うが、ひとまずこの議論はペンディングにさせていただく。先ほど土壌環境課長が言われたように、もう少し整理してみて三木委員が納得のいかれるようなことになるか、あるいは何か別の方法があるかということを、次の段階で考えさせていただくということにしたい。
それでは、ひとまず9ページ7番、搬出土砂、他に違った意見がなければ8番も、11ページの措置命令の発出等についてを含めて。   

(冨永委員)
汚染の除去等の措置に関連するモニタリングであるが、委員からさっき御指摘されたように、1番についてはちょっと難しいだろうと思う。2番、3番で、これは大丈夫となったとき、特に3番であるが、これは指定区域の解除はあり得るのか。不溶化、掘削除去したり、あるいは原位置浄化装置をやってしまったときに、指定解除ということをどこかに明記しなければならないのではないか。あるいは2番でも、もしもそれでもう出てこないということになれば、指定区域を解除するということはあり得ると考えるが。   

(事務局)
ここでは、省令で定める内容というのを基本に考えているので、こういう書き方をさせていただいているが、御指摘のとおり(3)の掘削除去措置と原位置浄化措置のモニタリングについては、基準を超過しない状態が2年間継続することが確認がされれば、これで指定は解除されるということになる。ただし、ここで書くことではないので、書いていないだけである。
同じように2番であるが、これは不溶化措置及び封じ込めの措置のモニタリングについては、同じようなモニタリングによって、この措置自体は終了したということである。措置が終了したということであるが、こちらの措置については汚染はまだ残っており、指定区域は解除はされない。以上のような整理をしている。   

(村岡委員長)
他に御意見あるか。それでは、8つほどの前からの検討事項に加えて整理された後で、前回示していただいた文案の修正がなされている。1ページから始まっているが、資料の2-3(I)であるが、アンダーラインのところを書きかえられたということである。あまり細かいところまで議論はできないと思うが、先ほどの御説明も踏まえて御意見があれば言っていただきたい。
この文案は、差しあたって修正していただいた部分で、当然今日の御議論も踏まえて、また修正がなされると思う。
よろしいか。

(特に意見なし)

それでは、とりあえず技術的事項の(I)については、先ほどの土壌の搬出という点について、まだ整理し切れていない部分があるが、それ以外の全体について、色んな意見をいただきほぼ問題が出尽くしたのではないか。そういう段階で、事務局でもそれを踏まえて次回、この(I)についての報告はもう作成いただけるのではないか。そういう段階に来ておるというふうに判断させていただく。事務局は次回にはこの報告文案をひとつ作成していただくようにお願いしたい。
それでは、残りの時間で技術的事項の(II)について、御意見をいただきたいと思う。これも大変大事な内容なので、多分色んな意見が出ると思うが、今日は残り時間も少ないので、多分意見の積み残しが出るのではないかと思う。そういった場合には、後日また事務局に意見を提出していただくということも含めて、これからの時間を御議論いただきたい。
資料の2-4であるが、いかがか。事務局の説明は6ページの表である。別紙と書いてあるこの表、ここに至るまでの経緯、考え方を説明いただいたわけで、議論の対象もそのあたりにあるのではないかと思う。いかがか。   

(佐藤委員)
2ページ目の土壌の摂食量の話であるが、子供の時代の6年間で200mg、一生涯の平均の場合、子供の6年間と大人の64年間の平均で109mgということにしているわけである。これでいいのかと色々疑問に思っていたのであるが、カドミウムなんかの場合で生涯暴露の蓄積量を考える場合には、これの109mgで私もいいと思うが、例えば水銀にしろ、他の金属にしろ、その半減期を考えてみた場合に、子供の6年間の暴露でもって既に吸収され、サチュレーションに達するわけである。一生涯の暴露だと言いつつも、例えばある量の暴露があれば、子供の200mgをとっている6年間の間に、既にサチュレーションに到達してしまうということがあるので、その半減期が子供の6年よりもかなり長いもの以外、つまりカドミウム以外はこの109mgを使うというのは、論理的におかしいのではないか。   

(事務局)
先ほど御説明をさせていただいたように、そこの部分は私どもも認識した上で個別物質ごとに検討した結果ということで整理をさせていただいた。1ページの方の論理の最初の4行ぐらいにあるように、カドミウム以外の物質については一生涯を通じて、常にどういう時期であっても、例えばTDI等の10%、あるいは水道水からの摂取量と同程度ということを達成すべきすべきものであるという考え方を示させていただいた。しかしながら以下のところで書いてあるのは、一方でということで、ここにあるように、暴露頻度の設定値、あるいは分析方法を今後検討していただくが、今想定しているような分析方法から見れば、そこでまた十分な安全率を見ているのではないか。そこら辺の総合的なバランスをかんがみれば、特に今お示しをさせていただいた要措置レベルを変えるに至らなくてもいいのではないかということを御説明させていただいた。むしろ、そこについて御議論をいただくという意味で、この数値を出させていただいたわけである。要措置レベルの際にも、佐藤委員にも御議論いただき、おまとめいただいたものではあるが、そこは今申し上げたようなところを総合的な判断をさせていただいて、いかがであるかというところで御意見をいただければと思っている。   

(佐藤委員)
いずれにしても数値そのものについての議論ではなく、考え方としてこの109mgを使うのは、筋が通らないのではないか。365日暴露されるというのも、今おっしゃったような、どれぐらい胃の中で、あるいは腸の中で溶けて吸収されるかということを考えると、非常な安全率に考慮しているというのはもちろん理解するが、だからといって、その摂食量を109mgにするのではなくて、子供は200mgにしたとすれば、その200mgをとっている間に十分サチュレーションに到達するほどであるのだからその109mgを使うのは論理的に矛盾しているのではないか。安全率とか何とかの話を考えるのはそれとは違うところで考えておいた方がいいような気がする。   

(櫻井委員)
この要措置レベルとして前に出したときにはこの考え方が入っていたのであるが、改めて考え直す過程で佐藤委員と全く同じように私も感じている。つまりこの6年と64年に分けて、それぞれ平均してならした値109mgをとるということについては、佐藤委員が御指摘になったように、生物学的半減期だけでなくて、どれだけの期間で中毒なり影響が成立するかということと両方絡んでおるが、この中でカドミウム以外のものは慢性中毒とはいっても、5年とか6年の間に一定のレベルの暴露があれば、当然中毒は成立するということであるから、その期間をやはり慎重に考えるのは当然だと思う。そういう立場でいろいろ考えたわけであるが、結果としてここに出ている数値は、まだ小児の時期だけを考えたとしても、若干の安全性はとれていると判断している。
例えばこの109mgというのは少し安全側に振っているわけである。100mgをとらないで109mgにしているというのは。子供の時期を考えて、若干安全側に振っているけれど、一応100mgというものを考えたとする。この100mgという数字は、大人の場合に、ほぼ水道の基準に準拠しているので、10%TDIというか、全体の許容摂取量の10%から、ものによってはもうちょっと多いものもあるようだが、それぐらいのレベルに落ち着いている数字なのである。ところが、大人の場合には100mgというのをとっているが、これは実質的には95パーセンタイルで、平均的には50mgぐらいになる。だから平均的な大人はコンスタントに50mgを毎日食べているとすると、許容1日摂取量の5%ぐらいの範囲に落ち着いているわけである。子供の場合には100mgと200mgというのは、先ほど申し上げたように、95パーセンタイルでとっており、平均的には50mgから100mgぐらいの摂取量というのが、諸外国等のデータから見てもそうなっているので、子供が100mgを毎日とっているとすると、大人で100mgで10%、子供で100mgなら10%かといくと、それはやはり体重当たりということがあって、10%より多くなると思う。要するに子供の場合、安全性の幅が減ってくると思う。それと体重が少ない分、大人よりも摂取量が少なければいいわけであるが、少なくないということであるから、その分許容1日摂取量に対するその比率は増えてくる。大人の場合には5%ぐらい、子供の場合には2、30%になるのではないか。あるいはもうちょっと多くなるかもしれないが、そういう意味ではTDIという、要するに許容1日摂取量に対して、子供は安全性の幅は大分減ると思う、この数字であると。しかし、50%を超えることはないだろう。これは個別によく計算しないといけないが、それぐらいに落ち着いていると思う。だから、決してそんなに余裕のある数字ではないので、できればこの半分ぐらいにしたいというのは、率直な希望であるが。しかし、こういうものは低くすればそれだけ安全性の幅は増えるが、この数値は妥当な安全性はとれていると総合的には考えている。   

(佐藤委員)
今の櫻井委員のようにお話しいただけるとよく理解できる。それでもこの平均で109mgだというのは、やはり論理的には私はおかしいと思う。結果はいいのであるが、考え方を書く上ではこれは誤解を招き得る話だと今でも思っている。   

(森田委員)
お二人で既に話はされているが、ここで一番重要になってくるのは、鉛という元素の汚染だろうと思う。なぜ鉛が問題なのかと言うと、特に幼児期の鉛の摂取というのは、知能の発育に相当悪い影響を及ぼす。あるいは多動症なんていうのが最近よく言われていて、それが非常に増えてきていると言われているが、そういった現象と鉛の中毒というのは、観察する限り類似している現象であると考えられる。そしてまた、国民の、国家の安全というのは知能であるということを考えると、どうしてもそこのところにある種の力点を置かざるを得ない。しかも鉛は、幼児期に摂取するというところが一番のポイントで、しかも半減期はそれほど劇的には長くないので、幼児期の数年間の摂取をできれば抑えた方がよいというのは、毒性学の一つのトレンドになってきていると思う。その点で佐藤委員がおっしゃったのも、その数年間といったところで、しかも子供の鉛の基準などを考えるときに、この109mgというのをベースに考えたということだけで本当によいのかという御意見は、非常にもっともなので、どこかに、ある種の説明をつけ加えておく必要があるのかもしれない。
もう一つ、それではそんなふうにしていくと、実は土の中の鉛というのは極端に厳しい数字になってしまって、我々の社会がそんな簡単に回らなくなってしまうというのも若干の懸念されるところである。したがって、ある種の判断として150mg/kg以下というのが今提案されていて、それは必ずしも余裕はないけれども、耐えられる範囲であろうという櫻井委員の御意見ももっともな話だと考えている。
ただし、ここのところは余裕があまりないので、例えば鉛の測定法とかで、あまり余裕のない方向を設定するよりも、あるいは相当安全を見積もったような分析が多分、要措置レベルと対応した形で今までいろんなところで分析されてきているのだと思う。例えばガラス状に固化してしまった鉛を溶かすというのは極端とは思うが、そうでない程度には鉛を相当、安全側で評価するというのとあわせて組み合わされるのであればこういう数字もよいのかという感じがする。   

(眞柄委員)
鉛のことであるが、来年の春から10µg/lになるが、この10µg/lというのが子供の血中濃度で10µg/dl以下だと障害が出ないという疫学のデータからもともと出されている数字である。それ以前の50µgの水道の水質基準をいわば10年間の時限で設定したときに、空気と食品とハウスダストからの暴露量を10年前に求めて、そのときに50µgでも水道水からの摂取をしていても、10µg/dlという血中濃度を超えないということを確認して、50という数字を決めた経緯がある。そういう意味で、果たして109mgか200mgかよく分からないが、鉛に関しては今回の10という数字を設定しておけば多分問題はないと思っている。
ちょっと他のことで申し上げたかったのであるが、シアンについては遊離シアンになっている。ほう素とふっ素もどちらかというと、ふっ素イオンとほう酸の動物実験から、ほう素の基準値を設定をしているので、試験法の段階で、少なくとも代謝の中でふっ素イオンやあるいはほう素イオンになるようなものをできるだけ正確に反映できるような試験方法を設定していただければ、言うなればまだ科学的に必ずしも十分我々が自信を持って言えない土壌の摂取量の部分の補強になるのではないかと思っているのでお願いしたい。   

(櫻井委員)
追加の御説明をさせていただきたいが、結局、大人が100mg、子供が200mg摂取するという数値、デフォルト値を使っているわけで、それが相当安全側であるという事務局の御説明はそのとおりである。そこのところなのであるが、ダイオキシンのときにはそれを使ったわけである。ダイオキシンの場合には、それ以外の食品からの暴露等も十分考えられるので、土壌にあまり大きな分け前というか、暴露の割り当てはできないわけで、どうしても安全ということを考えて95パーセンタイル、平均ではなくて、土壌摂取量の95パーセンタイルぐらいの数値を使っているわけである。今回もそれを使っているわけなのである。実際には、平均値は大体子供が100mg、大人が50mgぐらいだということであるので、この場合には、実際には平均的な考え方でいいと思っている。例えば10%ないし20%を割り当てているわけであるから、それが例えば100mgでなくて200mg、摂食する人は10%でなくて20%になる。あるいは15%が30%になる。いずれにしてもまだ余裕があるわけである。それで、水道に100mg、10%割り当てたり、土壌に2、30%割り当てたとしても、両方が常に最大の摂取をする人だと、同時に1人で起こるという確率は非常に低い。さらにほかの空気、あるいは食品からの摂取が全てその人において理論最大量が一致するという確率は非常に低いということから考えて、平均値で考えてまず間違いないだろうというのが基本にある。   

(村岡委員長)
何か関連する御意見とか、別の観点の御意見はあるか。
大変ナイーブな内容を議論しているわけで、これ以上意見がないということでもなかろうかと思うが、時間が過ぎていて今日はここで合意を得るようなことにはできないかもしれないので、意見だけ伺うということになるかもしれない。御遠慮なく何か御意見があったらお聞かせいただきたい。
それでは、時間も来ているので、この技術的事項の(II)について、非常に貴重な意見をいただいたということにさせていただきたい。
なお、この議論の内容は、次回にまた報告案のスタイルまでできるかどうか分からないが、もう1回事務局の方で意見を反映させた整理をしていただきたいと思う。
なお、このほかに今日意見は出なかったが、別の観点からの御意見もあると思うので、それについては大体1週間ぐらい、7月22日ぐらいまでに事務局に提出していただきたいと思う。そうしていただくと次の議論に反映できるかと思う。
次回は、この専門委員会としての報告(案)、これを議論いただくことになる。今日お聞きのように、ちょっと整理し切れなかった点もあるが、大体関連する御意見は全体としていただけたと思うので、積み残しの分はそれとして、報告(案)のレベルで討議ができるよう期待している。
それでは、事務局の方で次回の日程等について、御説明いただきたい。   

(事務局)
それでは、次回は改めてまた日時を御連絡しようと思うが、できれば8月の上旬ぐらいの予定で開催させていただきたい。
また、先ほど委員長からお話があったように、来週の月曜日ぐらいまでに何か御意見があればいただければと思う。できれば次回報告の案みたいなものを御提示させていただいて、そこで御議論いただいて、可能ならばそれをパブリックコメントにかけるような、そんなことを次回御議論いただければと思っている。   

(村岡委員長)
それでは、これで第2回の土壌汚染技術基準等専門委員会を終了させていただきたいと思う。長い時間協力いただき感謝申し上げる。