中央環境審議会土壌農薬部会 土壌制度小委員会(第4回)議事録

日時

平成13年12月14日(金)10:00~12:00

場所

環境省第1会議室(22階)

出席委員

委員長  村岡 浩爾 臨時委員  鈴木 英夫
 中野 璋代
 中杉 修身
 岸井 隆幸
委員  桝井 成夫
 浅野 直人
 小早川光郎
臨時委員  大塚 直
 河内 哲
 櫻井 治彦
 嶌田 道夫
専門委員  細見 正明
 柴田 健吉
 大山 智
 菅野 利徳

欠席委員

委員  藤井 絢子
臨時委員  高橋 滋
 福島 徹二

委員以外の出席者

環境省 環境管理局長、水環境部長、水環境部企画課長、土壌環境課長、農薬環境管理室長、地下水・地盤環境室長、事務局
オブザーバー 国土交通省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、総務省、その他
その他 一般傍聴者

議題

(1) 今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ素案等について
(2) その他

配布資料

資料4-1 中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会委員名簿
資料4-2 中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会(第3回)議事要旨
資料4-3 今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ素案
資料4-4 今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ素案に係る説明資料

議事

【事務局】 ただいまから中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会の第4回を開催する。本日は、藤井委員、高橋委員及び福島委員から欠席の御連絡をいただいており、委員総数19名中16名の御出席を予定しているが、既に定足数を満たしている。
 まず、配布資料の確認をさせていただく。
 (配布資料の確認がなされた)
 それでは、小委員長に議事進行の方をよろしくお願いする。

【小委員長】 議事に入る前に、今後の小委員会のスケジュールについて、お伝えする。
 当初、次回20日に小委員会としてのまとめをいただくという考えだったが、これまでの委員会において、もう少し時間をかけるべきとの御意見もあったことから、次回の20日はさらに論議を進めて、その大方のまとめでもってパブリックコメントにかけたい。パブリックコンメントの締め切りを約1カ月後とし、1月の中下旬に、最終の小委員会を開催し、小委員会としてのまとめをいただくこととしたい。そのため、今日は引き続き前回からの課題について十分御議論いただきたい。今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめの素案等についてを議題とする。
 それでは、資料4-3、4-4について、事務局から御説明願う。

【事務局】 (資料4-3、4-4に基づいて説明)

【小委員長】 資料4-3は4(5)汚染原因者の責任というところが新たに加えられ、7今後の課題で、(1)の点について、新たに整理されている。
 さらに、前回までに委員からいただいた課題について、資料4-4で図表的にまとめてあるので、資料4-4に沿って、説明資料1から説明資料7について順次意見を伺う。
 説明資料1は全体のイメージなので、この中の各論的なまとめは説明資料2以降となる。各論にかかわることは後の説明資料のところで御議論いただく。

【柴田専門委員】 その前に前回の会議の話で、過去の問題とこれからの問題についての区別をどう考えるかという話については、委員長からもこの場で討議していただけるという話だが、それについての事務当局の考え方を伺いたい。
 また、地方を回っていて一番話題にのぼったのは、基金についてだが、基金の規模について、具体的な内容を教えていただきたい。
 それから、基金の拠出に際して、拠出金は課税の対象となるのか、非課税になるのか、税処理、受け皿の体制など内容をさきに教えていただきたい。

【小委員長】 後半は後の議論の中に含まれるかもしれないが、一つ目のことについて、事務局から簡単に説明願う。

【水環境部企画課長】 第1点目の問題については、御議論をいただきたいと思う。
 基金の規模については、政府の予算編成作業中なので、確定的なことは申し上げられないが、財政当局は否定的ではなく、希望が持てると思っている。税制についても、政府、与党の税の審議が今日まで行われているところで、最大限基金に対する拠出金の損金算入を確保すべく要望しているところである。

【柴田専門委員】 事務当局としてどのぐらいの基金規模を考えているのか。要望ベースでよいので、どのぐらいの予算を必要としていて、我々の方でどれだけ負担するかという話がないと、審議しても、結局どれだけのものなのかが全然テーブルに出てこないので、話ができない。基金について、どの程度必要だと考えるか、その中で我々が相応分の負担をするとしたら、どの程度の規模になるか、という話がないと、地方へ行って話をしても、いったい幾らの話をしているんだという話になる。この間も聞いたが、いつまでそれを出さないつもりか。一般の人からも募集するのかという話が出たので、教えていただきたい。

【小委員長】 事務当局として、開示できない点は述べなくてよいが、何か答えられることはあるか。

【水環境部企画課長】 規模について明言はできないが、考え方としては、要する費用の規模は、どういう対策を想定するかにかかわるもので、極端に言えばすべて浄化をするという考え方に立てば、膨大な費用になると思うが、随時この委員会で御議論いただいたように、人の健康に対するリスクというものを考えた上で、複数の選択肢の中から直接人の健康に関わるものを遮断することを考えた場合とでは、費用もおのずと変わってくる。それに相応する金額を要望している。

【小委員長】 柴田委員におかれては、後ほど支援措置のところで、ほかの委員からも意見をいただきながら、議論いただくということで御理解いただきたい。
 それでは、説明資料の1から、御議論いただきたい。

【菅野専門委員】 本文の2ページの(1)の最後のところで、自然的要因により、汚染がある場合は、この制度の対象外で、別途検討すべきとされているが、健康被害の防止を法の目的として考えるときに、本当にそれでよいのか。自然的要因による汚染の対策は、多分公的な分野が対応すべきエリアだと思うが、そこをどうするかということは事業者の活動原因による汚染と、バランスを考えて、自然的要因のところも行政サイドできっちりやるのだから、民間の活動に伴う汚染対策もやってくださいということではないのか。
 また、自然汚染と産業活動が原因の汚染とが重複しているような場合、いろいろな調査をした結果、両方の要因があるという場合に、実際にはどのように汚染の除去などのリスク低減措置を講ずるかという点を整理しておく必要があるのではないか。具体的なケースでどういうことがあり得るのかは必ずしも明らかではないが、こういう別途検討という文章処理では不十分ではないか。
 さらに、調査の義務を負う者は土地所有者等と書いてあって、具体的には所有者、または占有者、管理者ということだが、所有者と占有者、管理者の間の関係はどういう基準で整理するのか、クリアにしておいた方がよいのではないか。もし考え方があればお聞かせいただきたい。

【小委員長】 自然由来については、やはりはっきりさせる必要もあるかと思う。その点について中杉委員、いかがか。

【中杉臨時委員】 菅野委員の言われるのは一つの考え方だと思うが、自然由来の汚染というのは前に申し上げたが、言葉がおかしいのだが、実際には日本の地下水で砒素の環境基準を超えているのは、2%程度あるはずである。これは土壌そのものの地質の問題なので、例えばある特定の地域、どこどこの平野は全体的にそういう状況にある。もしそれを何とかしようということになると、それこそ日本全土をひっくり返すという話になるので、この中で一緒に議論するのはとても無理な話で、別途検討すべきことである。そういう場所だということをはっきり把握して、調査をして、整理しておくことも一つの対応で、そういう状態であることがわかれば、それに対して触れないだろう。人に曝露される前の段階で抑えるということも可能なわけである。それを今、地下水の方で環境省も調査をしているし、そういうところは実態的に別途把握していく話で、ここで一緒に議論するというのは非常に難しいのではないかと思う。
 もう一つ、菅野委員が言われた自然的要因の上に人為的なものが重なったらどうするのかということについて、私の考えを申し上げる。自然的要因である程度の濃度になっていれば、そういうところには人間活動による負荷を与えてはいけない。
 いずれにせよ、自然の状態よりも濃度を下げるところまで責任を負うことはないと思うが、自然の高濃度の状態があるから人為的な汚染が付加されてもよいではないか、という話ではないと考えている。

【浅野委員】 中杉委員が言われたとおりだと思う。考え方としては、二つあって、一つは、どの辺りを社会全体で認容すべきリスクレベルと考えるかということ。ヒ素の話が出てきたが、ヒ素以外で問題になるようなものは我が国ではないのではないのか。つまり、そのことが原因で深刻な風土病がはやっているというような状況はあまり聞かない。
 地球環境研究などの成果を聞くと、中国ではふっ素でかなり健康被害が出ていて、それは全部自然由来だという地域があるというようなことも聞いているが、そういうところの問題は地域特有の問題として考えるべきで、この制度とは切り分けておかないと混乱する。
 我が国で自然由来のものについて、そこを開発をして何か利用しなければならない場合には、それは開発の政策として考えることであって、やはり環境基本法のもとでの環境政策というのは、人の行為によって生じた環境の負荷というのがターゲットであり、そこは切り分けておかないと混乱が起こるだろうし、リスクをどこで受容するかというところの議論が別のところにあって、両方をごちゃごちゃに議論するのは適当でない。それから、所有者、占有者、管理者の関係については、なかなか一律にこうだという形で議論することは難しいが、民法の717条の工作物責任に関しては、一義的にまず占有者に責任を負わせ、占有者に過失がない場合は、最後は所有者は無過失責任であるという構造になっている。既に実体法上そういうものがあるということは一つの参考にはなるかもしれない。

【菅野専門委員】 自然由来の汚染と事業活動由来の汚染が混在しているところは、自然由来の汚染に上乗せさせた分についてのみ、本制度による対策が求められるという整理をするということ、それから、一次的にはやはり土地所有者に責任がかかり、それから汚染原因者との関係を別とすれば、土地所有者と占有者、管理者といったその土地に一定の権利を有している人との間の責任関係は民法に基づく考え方で整理をするという理解でよろしければ一応それで承る。

【小委員長】 自然的要因については整理をはっきりさせる必要性があるように思う。

【小早川委員】 調査の主体の問題だが、今、浅野委員が言われたとおりだと思うが、今日の資料はリスク低減措置は誰に対してどういう手続でやらせるか、誰が費用負担するかということを非常にきっちり整理されてわかりやすくなったと思うが、調査については、それがない。行政的に誰にやらせるか、どういう仕組みでやらせるかということを書き込まないと今の問題もきちんとは整理できないと思われる。実際に、誰が実施するのがよいのかというと、多分所有者といっても全然手がつけられない立場の所有者もいるだろうから、その問題もあるし、それから、浅野委員が言われたのは主として負担の問題だと思うがこれについてもどうするか。民法の原則でいくのか。この場合の調査というのは、これは民法上の所有権なり、賃借権なりに伴う義務ということではなくて、いわば公法上別に付加される義務だとすると、その費用を誰に負担させるかということは別の問題として考えなければいけないということになると思う。
 それから、これもここに書いてないが、汚染原因者をここに登場させるべきかどうかということも、これはもちろん費用負担の次元の話だが、重要な問題としてあると思うので、そのあたりはさらに御検討いただきたい。

【桝井委員】 小早川委員と同様の意見になるかと思うが、結局土地所有者等というのをどう考えるのかということに尽きる。民法でいくのか、公法上の整理か難しいが、土地所有者と、汚染原因者をもっときちんと整理すべきではないか。
 結局土地所有者に帰するような形になっているが、悪いケースを考えてみると、例えば土地所有者で汚染した人がいたとして、その土地を何も言わずに売却して、新たな所有者が発生する。その時点で今度は汚染原因がはっきりすると。汚染原因というか、疑わしいものが出てくるような所有者の移転なども大いにあるわけで、そういう場合はどうなのかも含めて考える必要があるのではないかというのが一つと、調査というものがどういう形で行われるかということも全部これに絡んでくるわけで、ここはやはりもうちょっと議論、あるいは整理しなければいけない。どちらが主で従なのか、あるいはどのように関連し得るのか。ここは議論が必要だと思う。

【浅野委員】 この議論はどういう事態を標準的なモデルとしてイメージして議論するかによって、議論の仕方が随分違ってくる。今、桝井委員が汚染をしておいてそれを譲渡する不届き者がいて、そしてそれを譲り受けた者が調査義務、原状回復義務を課せられるというのはおかしいと言われた、善意の第三者のような議論が出てくる。そういうパターンで直ちに前に汚染した人がいてわかっているというパターンと、相当過去に汚染が起こっていて、それが現在表面に出てきて、大きな問題を起こすというパターンとある。どちらが現実には社会的に深刻な問題を起こしているのかというと、後者の方のパターンである。したがって、この仕組みを仕掛けるときには、後者のような場合を十分に念頭において議論をしないと、制度としては非常におかしなことになってしまう。土壌汚染という汚染現象そのものが、従来我々が考えてきている環境汚染の様々なものとは違うということをまず念頭に置かなければいけない。と言うのは、工場から煙が出るとか、特定施設から排水を出すとかということ自体を抑えていくというのが在来の大気汚染、水質汚濁の施策であって、そこがしっかりできていれば、土壌汚染の問題は起こらないと言ってもいいぐらいである。しかし、残念ながら土壌汚染が起こってしまっているというところからスタートである。土壌汚染が起こっていても、自分の敷地の中だけの問題で、他へ迷惑をかけないのであれば、さしあたり何もやらなくてよいわけだが、自分の敷地の中に汚染物があって、地下水の汚染原因になっているということだと、比喩的な言い方をすれば、自分の土地が煙を出している煙突であったり、自分の土地が特定施設そのものになってしまっていることになる。そういう煙突から煙を出していたり、現に汚水を出しているところを放っておくわけにいかない。原因者論というのは、当然折り込んで議論しなければいけないことは百も承知の上であえて言うと、例えば、自分の土地の中に誰かが爆弾を持ち込んで、その爆弾が爆発しそうな場合は、これは爆弾を除去する責任は持ち込んだ者にあるというのはかなり声高に言えるわけだが、土壌汚染の場合は、残念ながら汚染物質が土地と「附合」しているわけで、汚染物質そのものが既に土壌の中に「附合」している。そうなるとやはり持ち込み型のパターンで思考するのとは違う思考方法でいかざるを得ないという面がある。
 民法を持ち出してどのぐらい役に立つかわからないが、例えば、717条の工作物責任は、工作物に欠陥があるものを、どの業者がつくろうと現に欠陥がある建物があって、それを所有している人は瓦が落ちて通行人の頭にけがをさせたら責任を負うことになっている。このときには原因者、行為者が誰であるかということを問うてないわけで、つまりそこにある欠陥物の存在そのものがまさに原因者であり、行為者であるというとらえ方をしているという整理であるから、それをこの仕組みの中で落としてしまうと、甚だ変なことになってしまうのではないか。
 次に、直近のケースについて言えば、本来は買主が売主との間である種の注意義務を負っているわけであり、その注意義務を超える部分では、民法570条の担保責任として無過失責任を負わせている。さらに悪質な者がいれば、それは詐欺ということになるわけで、つまり、明らかに欠陥があることをわかりながら高い価格で売って売り抜けたような者は、そもそも民事上の観点からも許されないことをしているわけである。また、知らずにやったとしても570条は無過失責任としているわけであって、その求償の仕組みは本来一般法理で扱われるべきであるが、せっかく公法の制度を作る以上は、そこは完全に民事の問題だからそれは訴訟で別途争いなさいなどという冷たい制度では国民の納得は得られない。誰にもわかるよう、この小委員会での議論の流れを踏まえれば、原因者がはっきりわかっている場合はそこにも義務を課すというシステムにして、それで求償の手間を省くという発想法をとっている。これは、極めて合理的であり、かなり昔に汚染が起こっているというモデルを想定して議論していく場合には、やはり、まず責任は所有者かということにせざるを得ないわけで、二つの考え方をどう調整するかという見方からすれば、大体御議論の流れの線に沿って合理的に整理されているのではないか。

【大塚臨時委員】 浅野委員の言われたとおりだと思うが、先ほど小早川委員が言われたこととの関係で私の意見を申し上げるが、調査の契機の[1]と[2]の場合で少し考え方が分かれるのではないかと思う。[2]は土壌汚染の可能性が高いことが判明した場合は、周辺で地下水汚染が発見された場合ということなので、これは都道府県知事が介在して、都道府県知事が調査の命令をかけるというようなことが基本的に想定されていると思う。それに対して[1]の方は、廃止時とか、用途の変更時に調査を行うということで、いちいち都道府県知事が入ってこないと思うので、[1]と[2]が大分違うということになるが、[2]は都道府県知事が誰に調査をしてもらうか命令をかけることになるので、土地所有者、管理者、または占有者という非常に幅の広い枠で考えておいて構わないと思うが、[1]の方は都道府県知事が直ちには介在しないと思うので、この中の誰がやるか決めておいた方がよいのではないか。それから、ここでの基本的な考え方というのは、確かに汚染原因者の扱いについては難しい問題があるが、土地の所有者等、土地を実際支配している人の調査義務ぐらいは直ちに考えていいだろうと、つまり、現在の危険を発生させている土地を支配している人が、状態責任として調査義務を負うという考え方が基本にあるので、汚染原因者が最初から土地所有者のところに入っていって、調査をするということは基本的にはあまり想定していないということだと思う。

【菅野専門委員】 申し上げたのはどうあるべきだということではなくて、むしろ考え方を整理し、明らかにしておいた方が後の混乱が生じないのではないかということで、時間も限られているので、事務局の方で合理的なラインで整理をしていただいた方がよい。

【大山専門委員】 議論の中で汚染原因者と土地所有者の関係の話も出てきたので、次の話かもしれないが、リスク低減措置の実施主体をこの案では第一次的には土地所有者としているが、私どもはこの問題についても第一次的にPPPの原則で、汚染原因者の負担と責任によって実施すべきと考えている。不動産業の実態から見ると、土地所有者にリスク低減の義務を課した場合には、いろいろ問題が出てくると思う。第一に土壌汚染に何ら責任のない善意の第三者であるマンションの居住者等が第一次的にリスク低減の実施義務者となってしまう恐れがある。こういうことは果たして国民的な納得が得られるのだろうか。それから、分譲住宅等の建設においては、リスク低減措置等の費用が分譲価格に算入され、結果として、住宅購入者に転嫁され、開発事業者は、汚染の疑いのある土地には、やはり危ないものには手を出さない、きれいになってからでないと手を出さないということになり、土地の取得を控えるという行動に出るため、結果として土地取引に時間がかかり、土地の流動化や都市再生に支障を来すのではないかと思う。
 それから、土地の売買において、汚染されているというリスクを隠して土地を売り抜けてしまえばそれに対する義務は免れるというようなことが公法上許されるというのはいかがなものか。したがって、水濁法の14条にあるように、汚染原因者の責任を明確にした上で、土地所有者がそれに対して協力するという基本的な考え方で、リスク低減措置の問題を考えるべきではないか。

【小委員長】 先ほど菅野委員も言われたように、その論点についてはいろいろ挙がってきていると思うので、事務局の方で整理いただきたい。
 それから、大山委員が言われた、調査の主体、あるいは費用負担で、汚染原因者が一次的に上がってくるのか、あるいは土地所有者なのかといった議論が前から続いている。その点に焦点を絞って、意見をお聞かせいただきたい。

【大塚臨時委員】 確かに難しい問題があるが、土地所有者を第一次的な責任主体として考えている最大の理由というのは、原因者というのは特定するまでにどうしても時間がかかるので、その間放っていていいのかという大問題と、それから一生懸命調べた後でも結局原因者が誰だかわからないという場合が想定されるので、そういう場合に土地を放っておくのかという問題があり、原因者を最初から正面に出すわけにはいかないということだと思う。基本的には土地所有者がリスク低減措置をとって、その後で費用等については原因者が特定されれば原因者に求償していくという仕組みが今考えられている仕組みだと思う。
 もちろん土地所有者がいざという場合には責任を最後まで負うことについては、危険がある土地について支配をしているということ、それから、その危険がまさに現在の危険として存在しているということがある。
 それから、実際に危険がある土地というのは、支配しているのはまさに土地所有者なので、原因者がそこに入っていって浄化をするとか、リスク低減措置をとるということは、土地所有者が異議を申し立てたらできない。土地所有者の合意がないとできないことから、そういう点から考えても原因者を最初から実施主体として考えていくのは必ずしも適切ではないと思う。

【浅野委員】 今、大塚委員が言われたことのほかに、もう一つかなり重要な要素であると思われる点は、リスク低減措置という言葉について、これをクリーンアップすることというように最初からイメージを固定し過ぎてはいけないという点である。よく読んでいくと、立入禁止で済ましてしまう場合もあるとか、被覆で済ましてしまう場合とか、いろんなパターンがあることが書かれている。従って、大山委員御指摘のマンション用地として購入してそこにマンションを建てようとする場合は、現実に汚い土地ではマンションを作りようがないわけで、クリーンアップしなければならないわけだが、あまねく全ての土地がマンション用地になるわけではないのだから、購入しておいてそれを物置として使えばいい場合もあるだろう。そうすると、原因者にすべて責任をとらせるべしということになると、その原因者がどこまでやるのかという話が出てきて、常に最後の最後までやらなければいけないのか、それとも原因者は、どこまでやるのかということを自分では判断できないのに、一次的に責任を負うということになるという非常におかしな事態が起こってしまう。自分が汚した土地を売るという場合と、原因者がはるか昔にいたという場合と、いろんな場合を組み合わせて考えると、やはり現在の土地所有者が将来のその土地の用途も考えて、どこまで措置すればよいのかを考えて、その範囲で低減措置を講じる。簡易な低減措置にとどめておけば当然用途は絞られる。将来にわたっても譲渡については制限は付くが、費用はそうかからないで済む。原因者が全くわからないので求償が不可能な場合は、あきらめてある程度の措置で済ませる場合もあるだろうし、それから、直近に原因者がいるのだから、将来のことまで考えて徹底的に措置しておくという選択をする場合もあるだろうし、その辺はやはり所有者をまず先に立てて、どうするのかを決めさせるべきだろう。原因者を第一次的責任者という構成にすると、結局常に極端から極端なところにしか答えが出せなくなってしまい、かえって場所によっては不合理な結果が出てくるということがあるのではないかと思う。どのような構成にしようと、運用の点でうまくいくはずだが、より無駄な投資をさせられるということは避けられる制度にすべきだと第1回の小委員会のときに申し上げたのはまさにそういうことなのであって、工業用地の中にあり、将来にわたっても工業用地にしか使われそうにないというような場所であれば、そういう形でとどめておく、それで十分だという場合があるだろうから、さまざまな点を考えてみても、大塚委員が言われた理由に加えて、さらに付加するならば、リスク低減措置が弾力的なものであるという制度をつくっていく以上はそうせざるを得ない。もし弾力的なものではなくて、極めてリジットな措置を常に要求するという制度をつくるなら、原因者に責任を負わせなければおかしくなるわけだが、土地の利用の仕方も考慮しながら、周囲の状況も勘案しながら、弾力的にどの程度の措置をするのかはある程度自由に選べるようにした上で、リスクの程度を明らかにしておいて、将来の土地利用についての多少の制限が事実上かかるようにするということはある。さらに、全く何の制約もない、完全にリスク管理地から外れる土地にまで浄化措置をするなら、それもなお結構という段階的な構造になっているので、大山委員の御懸念はわかるが、やはりこういう形でいくのが総合的な観点からは合理性があると考える。

【大山専門委員】 言われることはわからなくはないが、環境問題ではPPPという原則に照らして、今、御指摘の幾つかの問題というのは、実施の主体と費用の負担というものを分けて考えればかなり整理がつくのではないかなと考えている。

【桝井委員】 同じような話だが、調査の段階において大山委員のおっしゃることはなかなか説得力があると思う。費用の負担の問題とは分けて考えておられるのか。別の問題だと考えておられるのか。調査はこういう形でもよいと思う。汚染原因者負担の問題というのは、調査以降の実際にそこに起きた場合、これはまた別の段階と思っておられるのか。
 もう一つ申し上げたいのは、浅野委員は確かにリスク低減を弾力性を持たせようということで何とかいけるのではないだろうかというお話だが、そういうことは現実的にあるだろうが、そのようなケースは、きちんと整理しておかなければいけないと思う。

【小早川委員】 今の桝井委員の発言に対して大山委員からお答えがあるかもしれないが、その前に私もそこが問題で、実施主体と負担の問題と分けて考えるのが当然だろうと思う。
 調査ではなくて、汚染リスク低減の方に入っているので、7ページの表はその意味では大変わかりやすいのだが、桝井委員が言われたとおり、なぜ汚染原因者がここに出てくるのか、その根拠は何かということをはっきり押さえておく必要があるわけで、実施の方に出てくるというのは多分例外的な話であろう。もちろん立ち入り禁止なんてことを原因者にやらせるわけにはいかないので、これは所有者なり管理者がやるのは当たり前の話である。またその負担を原因者に求償しようということも実際上問題にする必要もない話で、結局は大々的なことをやるときにその費用をどういう根拠で汚染原因者に負担させるのか。この表で言えば一番右の欄の二つ、汚染原因者と書いてあるところのその法的な根拠は何かということになるわけで、先ほど大山委員が水濁法の無過失責任の規定に言及され、だから無過失責任になるのかというのが基本的な問題ではないかと思っているが、その点はまだこのペーパーでははっきりしていない。
 ただ、被害が生じたら無過失責任というのが従来の考え方だが、この場合にリスク管理地に指定されて、何かしないとスムーズに取引ができないということをこの場合被害と考えて、その辺の無過失責任は全部原因者に負わせるのかということになると、従来の議論とはちょっとレベルの違う話ではないかという気もするので、そこはまだはっきりわからないが、どこかで線引きする必要はあるのではないかと思っている。

【岸井臨時委員】 なぜ土地所有者なのかというところについて、アプリケーションが難しいから原則を変えるというのはどうかと思う。逆に原則を土地所有者にするならば、何でここに汚染原因者が出てくるのかという気もするので、これまでの原則であったPPPは守るけれど、実際運用上誰が責任を負わなければできないかという、実務上の問題としての解はあると思う。それが土地所有者でなければ難しいから原則を変えるというのは少し論理が違うのではないかという感じがする。

【鈴木臨時委員】 先ほどの議論と重複するかもしれないが、7ページの表について調査の方も整理した方がよい。
 それから、先ほどから議論されているように、実施主体と費用負担というのは、分けて考えた方がよいと思う。例えば、これは土地所有者等ということにしていただいたので、かなり実施主体の実態は出てきたような気がする。つまり、借地で工場を経営しているような場合には、借地をしている人がやはり調査しないと、ほかの人が入ってきて調査をするなんてことはなかなか難しい。この間もちょっと申し上げたが、お年寄りで土地だけ持っていて、その地代で生活しているような場合に、調査の実施主体は所有者だということで課すのかというような問題がある。実態的にそこを支配している人がやはりやらざるを得ないのではないか。
 それから、費用負担の問題はまた別で、PPPの原則とも絡んで7ページの表の右側の費用負担の下の特に3段に、これがアプリオリに土地所有者等と書いてあり、事実上無理だからと書いてあるが、本当にこういう考え方で制度が動くのか大変疑問を感じる。
 特に先ほども話があったように、自然汚染と併存しているような場合とか、汚染原因者の責任が極めて希薄であるような場合とか、求償したくても時効になっている場合とかいろいろあり、特に資力がない場合、不明な場合、存在しない場合、こういうものについて土地所有者だというのは実態上無理があるのではないか。したがって、先ほど質問があったが、基金の規模や、どういうことを考えているのかということをお伺いしたい。
 私どもは基金はやはり基本的に反対だが、その基金を何に使おうとしておられるのか、まだはっきりしていないと思う。極端なことを言えば、研修に使うこともあるだろうし、こういうものの不明な場合に使うとかいろいろあると思うが、その内容がはっきりしない。それから国からどのぐらい支援いただけるのかはっきりしない中でこの議論をしようとしているから、大変混乱が起こっているのではないかという気がする。したがって、この7ページの表について、費用負担も含めて、調査とリスク管理の両方について、もう少しいろいろなケースを想定しながら、わかりやすい仕組みを作っていただければと思う。そうでないとこれ以上議論をしても堂々巡りになってしまう。

【小委員長】 ただいまの鈴木委員の御意見で費用負担のところは基金、支援措置に絡む問題になる。これについては後ほど改めて議論いただくが、先ほど岸井委員が言われたPPPの原則があるということで、今まとめていただいているこの考え方だとこの考え方について、これも従来からいろいろと広い範囲でそういった原則をどう考えてここに取り込むのかという問題の提示があったように思うが、この点について、少しはっきりさせておく必要がある。

【大塚臨時委員】 公害一般についてPPPの原則は確かにあるが、外国法の話をするとドイツでもアメリカでも、この土壌汚染に関しては、土地所有者等、占有者も含めてであるが、土地を支配している人の責任等、それから原因者の責任は全く対等である。それはPPPといっても、もともと費用負担の原則なので、実施のことは考えていないということは先ほどから皆さんの御意見があったとおりなのだが、もともとこの責任については通常の公害とはちょっと違うということを申し上げておかなければいけない。それはほかのものと違って、大気汚染とか水質汚濁というのは、公共的な領域に対しての侵害とか、被害の発生とか、汚染という問題だが、土壌というのはあくまでその土地の問題であって、土地については基本的には私有地なので私人が所有している、そういうものの汚染だというところが、ほかの公共財に対して汚染を広げていく場合とは全然違うということをまず申し上げておかなければいけない。したがって、PPPといっても、通常の公害と同じようにPPPをそのまま適用していけばよいというわけではない。
 そういう場合に二つの責任があるということなのだが、PPPと同じように行為の責任、つまり原因者の責任という行為責任の問題と、それからその土地を支配している人、所有者が基本だが、所有者の状態責任の問題との2つが対等なものとしてあるというのがもともとの考え方である。それであれば対等で連帯責任にすればよいではないかということも考えられなくはないし、ドイツとかアメリカではそうやっているが、我が国の場合、どちらでもよいと思うが、行政が裁量で選べますというのは余りにも便宜的ではないかということで、どちらかを優先しようとすると、最初に実施してもらうのはやはり実際に土地を支配している土地所有者だろうというのがこの制度で、それは原因者の方に求償してもらい、もちろん原因者が最初から明らかな場合は原因者にやってもらうこともあるが、実施するのは土地所有者が基本で、求償の先は原因者だというのが基本的な考え方である。もちろん原因者がわからない場合に、基金を使わなければいけないということはあるが、基本的な考え方として、行為責任と状態責任というのが、この問題については対等のものとしてあるということを、普通の公害とは少し違うということを特に強調しておきたい。

【菅野専門委員】 冒頭自然汚染の話であまり深入りしなかったが、自然由来の汚染のレベルが結構高くて、そこに人為的汚染が多少加わり、結果的に規制の基準を超えてしまったような場合、すなわち、マージナルな付加的な汚染でリスク管理地になってしまうことがあるかもしれない。その場合のリスク低減等の措置費用負担をどうするのかについても整理をしていただいた方がよいのではないか。リスク低減措置の費用について、7ページの表は比較的わかりやすいく整理されているが、過剰なコスト負担を強いることはないという考え方で、リスク低減措置の内容も土地の利用状況に応じて選択できるという考え方で整理されているのは非常に現実的な対応でよいと思うが、過去の汚染原因者がわかっている場合に、今、一定のリスク低減措置で十分であろうと判断されるような利用がされている土地においても、汚染原因者が特定をされていてリスク低減措置のコストを求償できるのだから、現在の土地所有者としては、浄化までしてほしいということにはならない。今の利用形態では一般の人は立ち入らないけれども、将来的に土地の価値を高く保つために、やはり浄化措置までとってほしいという場合が現実の問題としてあり得るのではないか。場合によっては当面は立入禁止といったリスク低減策でよいが、10年後に浄化をすることを約束されるという形で、最終的に浄化に追い込まれることにならないか。このような不安を解消し、原則的な考え方をもう少し掘り下げて整理をしていく必要があると思っている。

【浅野委員】 今の御意見を聞きながら、どこまでどうすればいいのか、例えば用途を考えてこうすべき、というようなガイドライン的なものを用意しておくことは必要かもしれない。仮に基金を作って、無資力パターンの場合に基金を投入するというときに、下手をすると早いもの勝ちになり、必要ないけれども先に手を挙げて先に大声を出した方にお金がどっと流れてしまい、後に本当に必要なところにはお金がないという事態が起こるということは防がないと、せっかくの社会システムが崩れてしまう心配がある。
 現実に例えば自然保護の場合に、どこがよい保護に値するのかというクライテリアのないまま、余り価値のないところの先に予算を投入してしまうというような現象が起こっていることから、確かに考えなければいけないことだろうと思う。この辺は運用段階のこともにらんで、事務局として今から意識して考えておかれる必要があるのかもしれない。

【菅野専門委員】 今の話、すなわち、運用に当たっての考え方や基準を明確にしておくことが肝要と思う。自治体が調査や浄化措置に関する命令等を出す場合に、どこまでやらせるのかというところの基準にかかわる話なので、その辺の検討もぜひ十分に行われるようお願いしたい。

【中杉臨時委員】 多分、今回の制度の一つの柱は、リスク低減措置を選択できるというところである。これは過剰な負担を求めないということで、そこにメルクマールをつくると、それがひとり歩きをする。そこは、それぞれケース・バイ・ケースで考えていただき、当然、将来土地が売れなくなれば、浄化してくださいということは当然あり得ると思う。それはそのときの当事者間で決めざるを得ない話だと思う。これをいちいち公的に決めてしまうと、従来と何ら変わりなく、今回の制度の特徴的なところが消えてしまうと思う。
 それからもう一つ、先ほどの自然由来の話なんですが、これも難しい話で、超えている部分と言われるが、これはベニスの商人ではないが、1ポンドの肉をとってあと血を流したらいけないよというような話になりかねない。実態的には超えている部分については、それではここの超えている部分だけ取り出すというのはなかなか難しい話だと思う。実態的なことを考えると、そういうことは配慮はするけれども、次は自然由来がある、ベースにこれだけあるから、その超えている部分だけ対策しようというのは、技術的には難しいという感想を持っている。考え方としてはそうだろうと思うけれども。

【岸井臨時委員】 1ページ目のシステムの問題で、後ろのページに書いていないことを申し上げる。1点目は調査をした結果がしっかり残るようにしていただきたい。つまり先ほど委員が言われたように、むだなことを何回もやる必要もないわけで、きちんと措置が終わっているという記録を保存すべきで、台帳からなくなってしまったら後がどうなるかよく見えないので、そこははっきりさせていただきたい。
 2点目は、リスク管理をしたときに、実効性を持たせたいので、土地の改変等に伴うところで、土地の改変等を行うとするものは届け出をすると書いてあるが、実際には土地の改変には、そこをチェックする機構としては開発許可の制度と建築確認制度が一つは考えられるが、多分それでも今の制度ではかかってこない。例えば、駐車場なんかが一番危ないと思う。こういった情報をなるべく幅広く市民に提供するということをしっかりとやらなければいけない。台帳にただ持っておけばいいということではなくて、そういう制度をやはり中にビルトインしておくことが必要だと思う。

【菅野専門委員】 地下水の飲用利用等がされている場合、されていない場合ということだが、どこで誰が飲用の有無を明確化するのか。実際は利用されていないということで事が処理されているときに、事後になって私のところはたまに飲むことがあるんですというような話になると前提が大きく変わるわけで、この辺は誰がどういう基準で調査判断するのかを明確化しておくべきである。実務上は大変だと思うが、コスト負担も含めて、自治体にきっちりやっていただけるということを、明らかにしていただいた方がよい。

【柴田専門委員】 冒頭でも話したが、汚染原因者は結局時効がないという話で生きている限りということになる。現実の問題として、汚したという意識がなくて、そのとき行政や何もしなかった人たちのことを議論しないでやっていくとクリーニングをやった人は死ぬまで自分で土地を持っているかという議論になるので、その辺のところ時効があるのか、ないのか。それから、どこまでの責任でやるのかという話がないと、結局1回でもクリーニングならクリーニングをやった人は土地がある限り、生きている限り求償されて、いつでもやらされるという話になると、非常に変な話が出てくると思う。この間も話したが、良くないことだと知ってから汚したことについては、当然責任を負うべきだと思うが、それ以前に誰も良くないことだと思っていなくてやっていることについて、時効がなくいつまでもやらなければならないという話については、しっかり議論していただかないと、我々の関係者も多分いろいろなことを義務づけられる人たちも納得できない部分だと思うので、そこを整理していただきたい。

【小委員長】 ただいまの柴田委員の御意見も前から聞いており、まだはっきりした意見の交換がないのではないかと思う。特に今の御発言に対して議論いただきたい。

【細見専門委員】 この委員会のメンバーも、事業者というか、それぞれの立場で議論されているわけだが、一方で土壌汚染の場合、土壌汚染があって、その周りに居住されている住民の方というか、市民の立場からの議論がいささか少ないのではないかと思う。
 浅野委員が工作物責任というか、落ちて結局周りに住んでいる人が被害を受けてしまうということに関して、やはり何らかの対応すべく状態責任だとかというので、今、土地の所有者責任を第一にやっていこうということで議論は進んでいるわけで、責任論で確かに過去にさかのぼってどうかという問題に関しては、それは住民の側から見ると、今の汚染がどうなのかということも考えていかないといけないのではないか。法律論的に私も素人なのでわからないが、ただ住民の立場で、土壌汚染の今回問題になっているのはその辺にあるのではないかと思う。

【菅野専門委員】 土壌汚染対策を何とか考えていこうというこの場の議論は、多分そういう趣旨でなされているんだと思う。いずれにせよ過去の負の遺産である土壌汚染をどういう費用負担でどう処理するか、現実的に対応可能な仕組みとして作っていかなければいけないということで検討しているのだと思う。したがって、対策をどこまで遡及させるかということに関して、PPPの原則で、汚染原因者が特定される場合、リスク低減措置をとる義務を無限に遡って負わせるというところを、もう少し現実的対応可能性ということもを踏まえながら、助成の仕組みなどを裏打ちさせながら御議論いただくということではないか。
 また、助成策については後で議論されるのだと思うが、例えば地下浸透が原則的に禁止されたのは平成元年だと思うので、それ以降の地下浸透による汚染について汚染原因者の責任を問うことはある程度考え方としてあり得ると思うが、それ以前のものについてはやはり助成ということをどこまで真剣に考えていただけるのか、それ以前には科学的知見も不十分で、行政も地下浸透を推奨・黙認していたのだから、行政の責任という問題もあるわけで、それこはバランスをとって、後の支援策のところでぜひ議論していただきたい。

【浅野委員】 菅野委員の今の御発言は現実的な着地点を考えての御発言だと思うし、実際にはそういう扱いは考慮せざるを得ないんだろうと思うが、御存知のように、地下水の浄化に関してはその議論は既に先例としては通り抜けており、浄化に関しては、それは過去のものについても浄化命令が出るということになっている。
 問題は、ここのところが実に悩ましい問題なのだが、原因者を前に出せと言われると、それが前に出れば出るほどこの話は後ろ向きになる。土地所有者と言う限りは、土地所有者が現在の危険をともかく支配しているわけだから、その責任は現在の責任であるということできちんと責任を追求できる。自分が原因者でかつ土地所有者であるような場合は、これはいたしかたないことだと思う。過去に原因者がいて、現在の所有者は過去の原因者から何代か譲渡を受けて現在の所有者であるというパターンが実は1番悩ましい。その場合でも今の私どもの発想から言うと、現在の所有者がまず正面に出ざるを得ないわけだが、当然この場合は求償の可能性ありということになる。
 この求償の問題をどこまで公法上の制度の中に入れ込むかということも、甚だ難しい問題だという気がするが、単純に民事上の問題ということにすると、まず一つは売買契約での担保責任があるので、直接の売主、買主の当事者間ではこれで処罰される。それから、過去に遡るとき、債権者代位権か何か使うということになってくるか、ということになるが、100年まで遡るなどということはおよそ考えようがないわけで、どこか切らざるを得ない。したがって、やはり公法上の制度として原因者をまず真正面に出すというのでない限りは、余り明瞭に何年という形で切ることは得策ではない。つまり、自らが原因者である場合、先程申し上げたとおり時効はおおよそ問題にならないだろう。つまり水濁法とのバランスがあるので、是非そうしておかなければならない。
 譲渡型の場合はどうするかについて、そこは必ずしも明確ではないが、原因者が明瞭な場合には原因者にともかく負担をお願いができるというわけである。ではどこまで行くのかというと、どこかで線を引っ張って何年と切ることが本当に合理的かどうか。そうすると、他のところにも影響がある。これは純粋に求償の問題ということだけで言うなら普通の時効の論理を修正して、何かの手当てをすることもできるけれども、この構造の中では何年という形で切ってしまうというのは難しいのではないかと思う。
 原因者がわかっているとしても、考えようによっては例えば、鉱業法の鉱害の賠償責任は、全部鉱害発生時の鉱業権者に集中させている。どうしてそれでいいのかというと、鉱業権譲渡の段階で負担の調整がついているはずということで、説明されてきているわけだ。そうすると、そういう形で譲渡行為が介在する場合は、譲渡価格の話がどうであったかという議論をすることもできるのだが、それまで持ち出して話をややこしくするとすっきりした制度にならないので、あとは学者の論文に任せるということになると思われる。

【鈴木臨時委員】 今の時効の問題は、先ほど申し上げた誰がやるかというのと、負担をどうするかという話だと思う。
 例えば、今委員が言われた鉱業法がそうだが、鉱排水処理などについては、原因者の責任の範囲内で負担するということになっており、自然汚染については、国も地方自治体もお金を出す。鉱山を経営した者は、経営した期間に応じて比率を計算して負担している。そういうことから、農用地も過去に蓄積されたものは責任を追求しないことになっていると思うので、その辺はやはり国がどこまで力を入れるかという話に帰着するのではないかという気がする。

【岸井臨時委員】 いろいろな問題があって、皆でやらなければいけないというのは一致していて、汚染原因者か、土地所有者かという議論はいろいろある中で、現実的にどういうことができそうかということは、それほど多く定義を持っているわけではないが、考え方を変えだすと話がまた大変混乱するというのが率直な印象である。
 時効に関しても、個人的にはなかなか難しいと思うので、同時にもう一つ心配なのは、こういう経済状況の中で、用途変換をしたいというのは、いわばその土地を処理して自分の経営を新しくするなり、廃業するなりというケースだが、その際に例えば非常に悪いものが出てきてしまったとすると、当然これは担保物件としては価値がないわけで、それにかかる処理の費用を考えると、とても市場に出回れないということで、担保物件の価値がないので当然倒産になる。そのときにはこの責任は誰に移るのかということも少し明確にしておかなければ、国なのか、都道府県なのか、市町村なのか、あるいは債権を持っている銀行なのか、ということも少しは議論しておかなければいけないのではないか。
 それから、今日、議事録を拝見したが、これは事務局にお願いだが、この議事録は何も書いていないに等しく、国民に対してどいう議論をされたのかというのが全くわからないままではいけないと思う。もう少し議論の内容を、限られた範囲で結構だが、出した方が我々の責任として果たしているということになるのではないか。

【小委員長】 いろいろ難しい面があるということで、どういう点が難しいか整理できるほど意見はいただいているが、結局は費用負担とか、支援体制ということに問題が移っていくだろうということなので、その辺の議論に移りたいと思うが、岸井委員が言われた議事録の内容のことについては、後ほど私の責任で事務局に相談させていただく。

【事務局】 岸井委員の言われたことについて、ここで示しているのは議事要旨であり、会議録は別途準備を行っており、第1回目の会議録を、委員にお届けし、確認いただいた上で公開となる。

【岸井臨時委員】 公開されるということか。

【事務局】 公開される。

【小委員長】 それでは、7ページ、8ページあたり、費用負担の表、それに絡んで支援措置の具体的な内容について、議論を進めていただきたい。

【鈴木臨時委員】 2のところにも関連するが、技術基準とか、実施のやり方のもう少し詳細なアイデアを是非いただきたい。例えば、地下水のモニタリングを実施すると書いてあるが、一体いつまでやるのかという問題がある。どういう条件になったらやめていいのか、それから井戸を飲用しているかどうかに関して言えば、水道に転換してしまった方が国民経済上いいという場合もあり得るので、そういう余地も残しておくとか、それから汚染対策の順序として、先ほどの委員の御発言にあった国のお金がなくなってしまうのではないかということも含めて、やはりひどいところから順番にやるとか、その辺も含めて技術基準をもう少しはっきりしていただいて、議論した方がいいのではないかという気がする。

【小委員長】 技術の点で、何かあるか。

【中杉臨時委員】 今の話には個人的にいろいろ意見があるが、細かいところは資料7ページの今後の課題のところで、そこで多分議論する話ではないかと思うが、個人的には地下水は基準を超過していれば、下がるまではモニタリングが必要だと思う。

【櫻井臨時委員】 技術的事項は、これから審議されることだと思うが、調査の方法とその判定がなかなか難しいと思う。直接摂取の場合等でも、基準はあくまで平均値、曝露の平均値ということを考えているので、一定の広さの複数サンプリングを行って一部だけ汚染しているときに、今度全体の土地を指定するのか。どういうふうに区切るのかというような話がすぐ出てきて、非常に大きい問題だと思う。それはこれから検討すべきことだと思う。

【菅野専門委員】 3ページの調査の契機のところで、表に整理をしていただいてわかりやすくはなっているが、かなりの中小企業事業者の場合は、事業場と居住施設が一体になっている。要するに、事業所と住むところが一体になっているケースが多い。したがって、自分の事業をやめて廃業してしまったときでも、そのままそこの建物に住んでいるケースが結構あると思うが、その場合は、外観上の実態は全く変わらないが、用途変更ありとみなすのかみなさないのか。従前どおり自分の宅地として利用する場合には調査義務を負うのかどうかについても、整理をしておく必要がある。こういう場合について調査義務を負うのは、上の工作物とか土地を掘りおこすなど、変更するときといった明確な基準で整理をしておいた方がよい。

【浅野委員】 今の点は主観的にどうであるかではなく、明らかに登記の地目が変わったとか、あるいは第三者も入り込むような共同利用形態に変わるとか、あるいは建物を取り壊して建て直すとか、今委員が言われたような何かの担保がない限りは無理で、恐らく、法律事項ではなく、運用上の問題というところなのではないかと思うが、確かにそれを余りリジットにやり過ぎてうまくいかないということは心配だろうから、意味のある御発言だと思う。記録にとどめて制度の発足に当たって参考にしていただきたい。

【大山専門委員】 7ページの表だが、汚染原因者が明らかな場合で二つのケース。資力がある場合、ない場合。いきなりこの資力という考え方を持ち込んでいるのは非常にわかりにくい。それで資力がない場合は土地所有者等、資力のない土地所有者に負担されるのかという話にもなってしまうので、これは汚染原因者が不明な場合、存在しない場合に土地所有者となるかもしれないが、ここはあくまでもやはり支援措置とセットで考えるべきだと思う。

【中野臨時委員】 先ほど鈴木委員が言われたように、土地所有者が市民とか高齢者の場合とかいろいろあって、その責任が負えない場合があると思う。負えない場合、市民がいろいろな支援を国とかいろいろなところにお願いするということは大変なことなので、先ほど皆さんが言われたように、やはりしっかりした基準を設けていくべきだと思う。7ページに中小企業者に対する配慮とあるが、中小企業者だけではなくて、その中に何か市民が入り込める何か一言入っていたらどうかと思う。

【浅野委員】 先ほどのことと今のこととあわせて、市民が、という話はそれでよくわかる。ただ、自らが汚染者であるパターンの所有者というのがまず第一になり、その場合は今のようなお話はおおよそ出てこない。誰かが汚した土地であるけれども知らずに買っている場合が問題である。しかし、最近では、買う場合にどういう土地か、わかるはずだから、これはあまり重んずる余地がないのではないか。恐らくおっしゃるのは遠い昔に全然知らないときに汚染されていた土地を、全く知らずに買った、あるいは、土地の形状が全然変わっていて、過去の汚染の事実がわからなかったが、急に問題が表面化したという場合が問題で、特に市民がということではなくて、汚染原因者がはっきりしない、求償もできないというときにどうしたらよいかという議論になる。そのときには、しっかりした支援の仕組みがないと穴あきがが起こってしまうから困るので、審議会としてしっかり国に意見を申し上げて、穴あきにならないようにしてほしいと言っておく必要があるということだと思う。
 資力がない場合と存在しない場合というのをここで分けたのは、明らかであるという場合と、明らかでない場合というのを区別したのだろうけれど、大山委員が言われるように、この整理はもうちょっと仕分けをし直してもよいかもしれない。
 例えば、不存在の場合というのはつまり法人が解散してしまった場合は不存在となっているので、個人の場合は相続人がいるが、法人の場合は解散してしまって不存在というのがあって、そういう場合と全くわからない場合というのは質が違う。だから、これはもう少しすっきり整理ができるかもしれないので、事務局でもう一度考えていただきたい。

【小委員長】 この表の一番下の二つで、汚染原因者が不明な場合、あるいは存在しない場合。それから、下から三つ目の資力のない場合について、もう少し整理をする必要があるかもしれないが、そういった場合に費用負担とか、実施主体をどのように考えるかという点について、先ほど来の御意見だと、結局国がどの程度までこれを補助できるのかという問題にかかわる問題ではないかという点で意見がとまっているが、もう少し話を進めていただいて、ここで事務局が答えられるような内容もあれば、御質問等いただきたい。

【桝井委員】 この基金の問題に最終的に帰着しかかるところで、この際、優先順位がどうなんだという意見の中で必要な考え方を整理しなければいけないのではないか。この制度でねらうものが、そこに汚染がある場合の健康被害というのを何とかしようということと、現実にこの都市を含めて土地、マンションなんかの話もあるわけだが、土地の利用という面との二つの中がごちゃごちゃしていると順位というのはなかなかつけにくいのではないか。どういうポジショリングなんだということを考えなかえればいけないと思う。基金を使う際にはそこははっきりさせる必要がある。

【浅野委員】 今の御発言は基本的にそうだと思う面がある。環境の制度としてつくるというところからスタートしているわけで、そこをやはり最後の最後まできちっと守っていかなければならないだろう。地価安定のための制度なら別の役所がやるべきだということになる。やはりここでは健康リスクというキーワードが極めて重要なキーワードで、そこからスタートしてそこに戻るということでなければならないと思う。
 基金を作って、基金をどう使うのかということに関しても、ここにはリスク・コミュニケーションとか、いろんなことがずらっと並び過ぎてしまっていて、ややあいまいな面がある。助成ということに関しても、最初から助成という言い方が表に出るのがいいのかという気が若干する。健康リスクという点で考えているわけなので、政策的にはやはり目的達成のために何としてもやることをやってもらわなければいけないということになるわけだが、一方では大塚委員が言われるように、個人の所有権が前提として認められていて、公費を投入すると地価が上がって、個人にその利益が返ってくる。農林政策のように補助金を好む組織ですら受益者負担金というのがあるのだから、そういう話を一切抜きにして公費を投入して、それであとは私有財産なんですということだけだったら、恐らく財政当局が絶対に乗ってこないと思う。
 それに譲渡型の場合が多分問題で、本来契約の中でやるべきことをまず一次的にはやって、そこで最大限私人対私人の契約の中で、契約上の責任をお互いが果たさなければいけない。買った方も買った方としての責任がある。そこのところでの全ての手だてを尽くした上で、なおかつ穴があいていて、健康リスク上どうにもならないからやらなければいけないというときにはこの助成措置が動く。こういうストーリーにしておかないと、事務方も財務省に行ってもひっぱたかれて帰ってくるという可能性がある。その辺のところが審議会では全く議論されていなかったわけではないということは申し上げておきたい。

【菅野専門委員】 支援策のところだが、内容が低利融資みたいな話が中心になっており、基金を活用した支援事業の書き方が浅野委員からのお話もあったが、汚染原因者が不明等により汚染原因者でない土地所有者が対策をやらなければいけない場合の助成とか、リスク・コミュニケーションというような形に限定されていて、資力がない場合や本法施行以前に遡って過去の事業活動に伴う汚染で事業者あるいはその相続人など、リスク低減措置を行わねばならないことについての意識が極めて希薄な人まで網をかけることとなる場合についての支援策というのがここの中では読み切れない。
 現実に浄化を行うということになると、平米あたり数十万円はかかるとも言われているが、土地の価格は、地方に行くと、平米10万円もする土地はほとんどないことに照らすと、土地を全て処分しても費用が出ない場合がある。相続税では、物納という制度があるけれども、土地を差し出しても費用をまかなえないということで、万歳をしないといけないというようなことになりはしないから、やはり支援策は、先程述べた資力の乏しい場合といったことと絡めて現実的な対応が可能な仕組みを真剣に考えていく必要があると思う。融資というのは返済能力がある場合しか貸してもらえない。したがって、廃業したような事業者には、金融機関、保証機関は絶対融資や保証はできない。低利融資を中心に支援策を考えておられると、不十分なのではないかなという気がする。
 また、事業をやめるときに調査を行わせ、必要があれば対策を講じてもらうということは事業者にも認識をしてもらうことが必要だと思うが、予め、やめるときのための費用を、例えば引当金、準備金として税制面でも積めるような仕組みを、これは基金に対する出えんのときのいわゆる損金算入とか、対策のための施設に係る固定資産税の軽減とは別の税制だが、是非前向きに考えておく必要があると思う。

【中杉臨時委員】 二つだけ個人的な考え方を申し上げる。一つは、先程柴田委員のお話があったように、国が過去に規制していなかったところは、それは何らかの責任はあるだろうから、ある程度国が基金を出すというのは当然だろうと個人的に考えている。それがどのぐらいになるかというのは、環境省がこれだけ出すといっても、それがそっくりそのまま出せるわけではないので、そう簡単には言えないとは思うが。それともう一つは、これは実態的にはいろんなオプションを作っている。どこから順番にやるかというと、当然人の健康に対するリスクが高いところから順番にやっていくわけだが、全部浄化しなさいということをこの制度は必ずしも求めているわけではない。一番重要なのは汚染があることを知ろうということが制度の一番の根幹で、それを知っておけばその後のリスクというのは浄化までいかなくても何か対応ができる。そうするとやはり全体の基金がどれだけあるかというと、中でどこまでできるかという話が議論になってくる。それでは足らないという話になれば、また基金が必要という話になると思うが、基金の大きさで最初に全部をという話ではない。
 もう一つ重要な視点は、調査する、移る、売買という意見が一番大きいということである。売買が大きいと、資力のあるなしの話ではなくて、実際には民々で企業同士であれば当然こういうことをやらないと売れない話になる。そういう意味では、一般の住民の方とか、そういうことがなかなか把握できていない人に対する売買をどう担保していくかという話が重要だと思うので、そういう意味でいくと、確かに基金がなければできない部分があるが、できるところまでやるという性格のものがあるのではないか。それをできるところがなければ、それは社会としてもっと負担していかなければならないということでつくり込んでいかなければいけない。最初にこうだからといって、これだけしかやらないからこの制度はだめだという話ではないと思う。

【小委員長】 時間が迫っているが、それでは柴田委員を最後に意見をお願いする。

【柴田専門委員】 先程浅野委員のお話の中で、個人の場合は、相続してずっと責任が続き、法人の場合は、そこで消えたら誰が責任を負うかというとなくなってしまうという話だと、やはり中小企業の人たちは永遠にその仕事をやめて、先々代のときにやったこともずっと背負っていかなければならないというのがさっきの時効の問題も含めて、非常に不公平な話になってしまう。企業だったら名義変更して変わっていけば違いますよと。私は親から相続しているけれども、責任だけはずっと来ているよという話になるので、その辺もやっていただくと説明しやすいと思うのでよろしくお願いする。

【大塚臨時委員】 先程岸井委員が言われた話で別の議論に移ってしまったのでお話できなかったのだが、一度リスク低減措置がされて浄化まで済んだ場合に、台帳から抹消するかどうかという問題があるが、抹消していただいた方がよいと思う。浄化をするときのインセンティブということを考えると、幾ら浄化をしても抹消しないで残っていると土地の価格が全然上がらず、全然インセンティブが働かないという問題があるので、必ずしも法的な問題ではないが抹消していただいた方がよいと思う。
 実際にイギリスで1990年に環境保護法ができたときに、汚染の可能性のある土地は全て登録をするという制度をとろうとして、崩壊して失敗して95年に新しく制度をつくったときには完全に汚染が確実な土地だけを登録するという仕組みに変わったが、こういうものを残しておくと、実際には動かなくなるのではないかと思う。
 それからあと1点、情報提供だが、現在の公害防止事業費事業者負担法はダイオキシンについて、あるいは農地の土壌汚染については遡及責任を認めていて時効の制度はないので、それとの関係という問題もあるということを、先程時効の問題について一つだけ指摘しておく。

【小委員長】 おおよそ時間が来てしまったので、もっと議論のしたいところだが、一応いろんな意見をいただいたので、これをもとに事務局の方で問題の整理をしていただきたい。
 なお、もう少し議論を別の点でしたかったのは、資料4-3の最後の今後の課題というところです。これはこのようにまとめていただいており、これは実施に際して、今後の運用の面で考えるべき問題ということで、大体御理解いただけると思うが、これ以外にどんな問題を現段階で抱えておかなければいけないか、この技術的な事項だけではなく、次の中長期的な視点からの問題提起というものも一つお気づきの点があれば、次回にでも伺いたい。
 それでは、次回は20日だが、初めに申し上げたように、パブリックコメントという非常に重要な制度に20日には入れるようにしたいと思う。そういうことで、20日の委員会にはパブリックコメントに出す当委員会のまとめとしての結果を得るような議論を展開していただくことにしたい。
 最後に資料の公開について、委員限りとされているものを除き、公開することとする。

 それでは、これをもって第4回の土壌制度小委員会を終了させていただく。