中央環境審議会土壌農薬部会 土壌制度小委員会(第1回)議事録

日時

平成13年11月16日(金)10:02~12:10

場所

環境省第1会議室(22階)

出席委員

委員長  村岡 浩爾  専門委員  柴田 健吉
委員  浅野 直人  大山  智
 小早川光郎  菅野 利徳
臨時委員  大塚  直
 櫻井 治彦
 嶌田 道夫
 鈴木 英夫
 福島 徹二

欠席委員

委員  桝井 成夫
 藤井 絢子
臨時委員  河内 哲
 高橋 滋
 中野 璋代
 中杉 修身
 岸井 隆幸
専門委員  細見 正明

委員以外の出席者

環境省: 環境管理局長、水環境部長、水環境部企画課長、土壌環境課長、農薬環境管理室長、地下水・地盤環境室長、事務局
オブザーバー: 国土交通省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、総務省、その他
その他:一般傍聴者

議題

  1. (1)小委員会における審議内容の今後の進め方
  2. (2)「土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)」について
  3. (3)「土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)」に関する意見募集の結果概要について
  4. (4)今後の土壌環境保全対策の在り方について(フリーディスカッション)
  5. (5)その他

配布資料

資料1-1中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会委員名簿
資料1-2今後の土壌環境保全対策の在り方について(諮問書及び付議書(写))
資料1-3中央環境審議会土壌農薬部会の小委員会の設置について
資料1-4中央環境審議会土壌農薬部会の運営方針について
資料1-5「土壌環境保全対策の制度の在り方について」(中間取りまとめ)について
資料1-6「土壌環境保全対策の制度の在り方について」(中間取りまとめ)
(平成13年9月土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会)
資料1-7「土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)」に関する意見募集の結果概要について
参考資料1-1土壌汚染をめぐる最近の状況について
参考資料1-2「土壌の直接摂取によるリスク評価について」(平成13年8月土壌の含有量リスク評価検討会報告書)

議事

【事務局】 ただいまから中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会の第1回を開催する。
まず、議事に先立って、水環境部長より御挨拶申し上げる。

【水環境部長】 (挨拶)
(座席の順に従って紹介)
事務局の方の紹介をさせていただく。
(座席の順に従って紹介)
それでは、次に配布資料の方の確認をさせていただきたく。
(配布資料の確認がなされた)
それでは、小委員長に議事進行の方をお願いする。

【小委員長】 この小委員会は、今年の10月23日に開催された中央環境審議会の土壌農薬部会の決定で設置された。ここでは、今後の土壌環境保全対策の在り方について調査、審議することになっている。
同日付で部会長より指名を受けたので、私が委員長を務めさせていただくことになった。委員の方々には御協力をお願いする。
それでは早速、議事次第に従って議事を進める。まず、小委員会における審議内容及び今後の進め方を議題とする。事務局の方から説明をお願いする。

【土壌環境課長】 (資料1-2、資料1-3,資料1-4に基づいて説明)

【小委員長】 ただいま事務局から説明があった中で、会議の公開性についてもう一度確認しておく。本委員会の公開の取り扱いについては、公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、または特定の者に不当な利益もしくは不利益をもたらすおそれのある場合に一部非公開とすることはあり得る。しかし、原則として、会議及び会議資料は公開、会議録及び議事要旨は公開という形で公開性を高める方向で進めていきたい。
この件について質問等あるか。
それでは、本日の委員会よりこのようにさせていただく。
次の議題に入る。「土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)」である。また、この中間取りまとめに関して意見募集、つまりパブリックコメントをやって、その結果も出ているので、それも議題にしたい。
まず事務局から資料について御説明願う。

【土壌環境課長】 (資料1-5、資料1-6に基づいて説明)

【事務局】 (資料1-7に基づいて説明)

【小委員長】 それでは、ただいま事務局から説明があった内容を踏まえて、委員から御意見とか御提言とかいただきたいと思うが、本日は第1回であるので、広く自由な意見をいただきたい。あらかじめ事務局が各委員にそれぞれの専門、あるいは各界の立場での意見をいただきたいという依頼をしているので、各委員からまず、その意見をいただきたい。また、その後で、ただいまパブリックコメントの説明であったような課題の項目に沿って、順次また私の方で誘導させていただきながらディスカッションを進めていきたい。その中で先程の中間取りまとめに絡むような意見だと、その該当部分をはっきりさせて説明していただきたい。
それでは、座席の順番に意見を伺う。まず柴田専門委員からお願いする。

【柴田専門委員】 まずこの委員会の在り方についてであるが、土壌環境保全対策のルールを作ることについては必要だとは思っているが、海外の情勢に基づいて、ただ横並びで作るという形ではなくて、やはり我が国の状況を反映するようなものを検討するようにしていただきたい。
それから、法律を作ったときにどこまでが対象範囲なのか、自治体なり、国はどういうことをやるのかということも具体的に決めるということがあるだろうし、事業の規模とか、事業の範囲に基づいて費用分担についての議論がきちんとなされた上でなければなかなか難しいのではないかと思っている。
それからもう一つ、この土地の取引関係については、複雑な関係もあるので、もう少し時間をかけてきちんとやっていただく方が良いのではないか。特に、今日を初めにして1カ月半でほぼ毎週やって終わるという話であるが、それでは、業界の中に入れて意見を聞いたりするのに時間が足りない。その辺のところを十分に検討していただいて、内容が業界でも十分に理解でき、なおかつ、この委員会に意見が反映できるよう、時間的な余裕ができないものであろうかと考えている。
それから、目的の関係であるが、健康の保護について、人の健康に直接関係ある部分のものと、それから地下水における汚染の話とはやはり若干違うという気がする。実際に地下水自体を利用していないところについてはそんなに対策をやる必要があるのだろうか。特に東京都内など、もう地下水を飲料としているところはほとんど無いにもかかわらず、対策をやる必要があるのかということと、本当にどんな健康被害があるのかということを、もう少し具体的にしてから制度化していただく方が良いのではないかと思う。
それから、土壌の調査の関係であるが、調査の動機として、我々のところだと揮発性のものでテトラクロロエチレン等があるが、その場合、調査の費用として考えると、だいたい100㎡のところの最初の調査で20万から30万かかる。詳細に調査すると100万以上もかかるような話を聞いているので、特に零細なところでは負担が非常に大きいのではないか。
また、テトラクロロエチレンなりトリクロロエタンを使っただけで、調査しなければならないことになるのは厳しいのではないか。先程も言ったように、本当に地下水を使わないところに対策を実施する必要があるのかということである。
そういうことを考えると、やはり国の方で何らかの形で調査をすべき公的なものを設けてもらうことが必要ではないかというように考えている。
調査の信頼性の確保については、やはり信頼性の確保をするために必要な措置を講ずる必要があるのでないかということである。
それから、土地の管理の指定であるが、管理地の指定に必要な溶出基準は、環境の基準とは別に周辺の地下水の利用との関係、飲料を禁止しているかどうかですみ分けして基準を作るべきではないかと考えている。
土地管理の関係については、リスク低減をしたとき、費用がかなりかかるということは、零細なところでは、実際に費用を負担すること自体が難しいのではないかと考えている。つまり、中小企業、特に零細なところについては遡及してリスク低減措置をやれということにすると、現実に我々自体が指導してきたときも行政の指導もあったが、その当時では何ら問題がなかったにもかかわらず、突然今になったらそれが全部問題になるという話があって、水濁法ができてからのものについては当然そういうふうに我々も認識して指導もしている。やっている。しかし、過去の負の遺産まで全部今の人たちに背負わせるということになると、大きな問題が出てくるのではないか。
それから、台帳の調製であるが、完全に整理できたら台帳からも削除してしまうことがないと土地の流通がうまくいかなくなるのではないかと思う。要するにもう終わってきれいになったものについては、台帳に残しておくのではなくて完全に削除してしまう形ができないかということである。
支援策であるが、事業をやめてしまう場合があるとするときに、低利子で借りるとしても、何を担保にして借りるかという話が一つと、返すための手当がない人も対策をやるのかという話になる。やはりそれは確かに必要かもしれないが、基金としてやるのであれば公なところか、それから我々だとテトラクロロエチレンというものを使っているとしたら、それをもともと売っているところからも基金を集める方が良いのではないか。個々の小さいところから集めることは難しいのと、クリーニングの場合、クリーニングで石油系を使っているところと、テトラクロロエチレンを使っているところで費用の負担の仕方が変わってくると当然その競争力にも直接の関係が出てくるので、その辺を少し考えていただきたい。特に廃業になるときに、土地が売れなくなってしまうと完全にやめることもできないという話になる。その辺のところを何らかの形で考えていただきたい。

【小委員長】 次に菅野専門委員、お願いする。

【菅野専門委員】 全国中小企業団体中央会はいろいろな業種の中小企業団体をメンバーにしているので、業種ごとに状況がかなり異なっている。本日は第1回であるので、総論的なところを中心にコメントをさせていただく。
今、柴田専門委員からもお話があったが、昨年の末から今年の9月まで検討会が9回開かれたということであるが、その中には中小企業関係者が入っていない。そういう意味で、これから公式の場で意見を言わせていただくということになるわけだが、先程の話にもあったように、年末までの数回の議論でということである。しかし、その中でいろんな御意見がどこまでこなされるか、非常に危惧を持っている。その点、是非、期限をもう少し弾力的に考えて議論を十分尽くしていただきたいということが第1点である。
特に、今、パブリックコメントを御紹介いただいたが、いろんな問題点が中で指摘されている。9月末の中間取りまとめのところで粗々の方向性が示されているが、それぞれの事項について、具体的にどう処理するのかという議論がまだ整理されていないし、される段階にも至っていないのではないかという気がしている。そういう意味で、ここ数回の議論で本当に事業者がある程度、これなら取り組んでいかなければいけないというところまでいけるのかどうかというところを若干危惧しているので、そういうところも是非、視野に入れていただきたい。
具体論であるが、今、柴田委員からも御指摘があったが、実際に調査等を行う場合は、事業をやめるとか用途変更というようなことを契機に行うと書いてあるが、事業を廃止するとか、用途を変更するというのは、今の事業がうまく成り立っていかなくなったということで、廃業のケースが多いのではないかと思う。そういう場合は事業者に経済体力が残っていないということが圧倒的に多い。その時点で調査をして、これがリスク管理台帳に記されるということに仮になった場合には、ますます担保価値が下がって、事後の対策をとり得る体力が全くなくなるという状況になり得るのではないか。
また、いろいろな業種で今まで一定の時期までは地下浸透ということが場合によると推奨されて行政的には規制対象にもなっていなかったような時代もあったわけで、そういう時期以前の措置についてのコスト負担とか、そういうことについてもっと行政当局が強力にバックアップをするというような体制がないと、いろいろな制度の枠組みをつくっても、それが現実的に、特に中小企業者の場合はワークしないというような形になり得るのではないか。その辺、ダイオキシン対策法とか、そういった他の措置も視野に入れて、もっと強力な国の財政的な支援措置ということを考える必要があるのではないか。
それに加えて、実際には浄化とか、いわゆるリスク低減措置について、後の土地利用形態に応じていろいろな選択肢、弾力的な対応を図って、少しでも現実的な改善努力が図られるような仕組みをつくっていただくことが肝心ではないかと思うが、そういう低減措置をしたようなものについてもリスク管理台帳上、やはりある程度リスク低減が図られたという位置づけを明確にしていただくとか、あくまでも土地の将来の利用に向けて、土地の利用の価値がいつまでも低減したままでつきまとうというようなことがないような、それなりの有効利用が図られるという視野も含めた仕組みを考えていただく必要があるのではないかという気がする。
また、油膜、油の関係であるが、ベンゼンとかが書いてあるが、それ以外のものの扱い等々、検討会の中でも議論があったようにも文言から推察されるわけだが、どこまで対象にするかについては、やはり科学的な知見に基づいて余り合理的な根拠がないものについてまで広く取り込む、過剰規制ということにならないよう、是非そこも配慮していただきたい。
さらに、こういう法制ができると、一定の分野は地方自治体にいろいろな実行等々について委ねざるを得ないということだと思うが、そこで自治体の裁量の範囲を広くされると、事業の展開上の制約が特定の地域が強くなるとか、そういう問題も出てくる。製造事業者空洞化で、国内での存立基盤が、ただでさえ厳しい状況になっている中で、自治体間での余りにも過度な差異が生じないように、国の制度の立案においても、仕組みが余りばらつかないようなものにしていただくことが必要なのではないかと思う。
費用の負担については、先程柴田委員からも低利融資等々ではなかなか対応ができないとあった。税制上の措置とか、あるいは財政、財特法等に基づく支援措置というようなことを改めて強く皆さん方からも御提言をいただくように御期待申し上げる。

【小委員長】 それでは、大山専門委員、お願いする。

【大山専門委員】 私ども不動産業界は宅地開発だとか、住宅開発、あるいはマンション建設分譲等を行っているわけだが、私どもの業界でここ1~2年、土壌汚染についての関心というか、問題意識が急速に実は高まってきている。そうした観点から言うと、今回、中間取りまとめにあるように、一定のルールを設けようと、もって消費者の安全を確保しようという動きについては基本的に賛成をしたいと思っているわけであるが、なぜ今、私どもの業界で土壌汚染の問題が急速に関心が高まっているかということを考えると、4つ程あると思っている。
1点目は、外資系の企業が最近日本で不動産を購入する事例が大変増えている。これはいろいろなバックグラウンドがあると思う。一つは、日本のマーケット、不動産のマーケットが地価が下がったことによって非常に魅力的になったこと等もあるのだろうと思うが、外資系の日本における不動産購入が増えている。そうすると、それに伴って欧米の企業は土壌汚染の問題に非常にナーバスになっているので、厳しい汚染調査をすることが必然になってきている。それが国内の取引においても広がりつつあるということが第1点である。
それから2点目は、現実に私ども不動産業界において、土壌汚染が原因である紛争事例が特にマンション事業において、増えている。マンションを建設分譲した後に、汚染の実態が判明したことで、購入者とのトラブルが大変増えていて、この費用の求償をどのようにするかということで、現実に裁判沙汰になっている事例も幾つかある。業界にとってはそういう意味では大変関心が高く、避けて通れない問題になっている。
3点目は、当然のことながら、こういうことを通して住宅購入者が土壌汚染の問題について大変意識が高まっていると。購入を検討される段階で土壌汚染についての質問、あるいは説明責任をきちんとしなくてはいけない状況になっている。
4点目は、今、不動産の証券化というように言われているが、その過程の中でデューデリジェンスというか、事前の詳細調査の段階で土壌汚染の問題がクローズアップされている、土壌汚染の問題がキャッシュフローに大変大きな影響を及ぼすという観点、そういう認識が一般的になりつつある。そういうバックグラウンドから申し上げると、先程も申し上げたように、中間取りまとめ、これから法制化に向けて一定のルールを確立していくことについて、私ども不動産業界としては基本的には賛成を申し上げたい。是非早急にルールをつくり上げていただきたい。
私どもとしても、幾つかパブリックコメントで意見を出させていただいた。先程の説明の中にもあったが、1点だけこの場でお話をさせていただきたいのは、土壌汚染についての第一義的な責任はどこにあるのかということである。中間取りまとめではそれを土地所有者と定義をされている。それは少し酷ではないか。やはり汚染原因者が第一義的な責任を負うものとして定義されるべきである。そうしないと、現実にその土地を購入をしていろいろ商品化し、最終的にユーザーにお渡しをするわけであるが、その求償ルールもはっきりしないということになると、最終的には一般ユーザーにそういう費用等を転嫁せざるを得ないということになるので、やはり汚染原因者をそういう措置主体の第一義的なものに定義をされるべきではないかと思う。
いずれにしても、土壌の環境保全対策にかかわる当事者それぞれの役割を明確にした上で、特に住宅の敷地等として使用することになる土地については、最終需要者に責任を転嫁することのない制度として構築されなければいけないと考えている。

【小委員長】 それでは福島委員、お願いする。

【福島臨時委員】 横浜市では、この土壌汚染について昭和61年から土壌汚染対策の要綱を持っていて、15年ほど運用している。ここの中で、毎年、10件から15、16件ぐらいの届け出があり、対象としているのは、工場、事業場で、ある有害物質を使った履歴のあるところがその工場をやめる、そういうときをとらえている。工場をやめるときには、基本的には例えば更地にしてどこかに売ろうということなので、そこをとらえてやっているが、条件としては1,000㎡以上の面積要件をかけている。メッキについてはシアンがあるので、この要件も少し厳しいが、1,000㎡というのは若干の広さがあるので、例えばクリーニング屋で御夫婦でされているようなところは1,000㎡いかないし、ある割り切りだと思う。
今回の法制化については基本的にこうあるべきだと思う。ただ、この法律は規制法なのか、それとも手続法なのかと、基本的にもちろん規制法だと思うが、今までの例えば排水とか煙の規制は排出口という点を押さえればよかったわけである。その点で測定して違反かどうかは比較的簡単にわかる。ところが、今回のこの土壌汚染は面なので、どこをどのぐらいの密度で図るかというようなことは、ある割り切りになる。もちろん横浜市の要綱でも基本的には1,000㎡あたり5カ所、このクロス、十字、端と真ん中と5カ所を図る。これは、概況調査なのでそれを混ぜる。つまり検体数5つは分析するとお金がかかるので、混ぜて一つにして、その一つのものが基準を超えれば、今度は詳細調査をやっていくという、そんな仕組みであるが、この5カ所は、こういうようにそこの工場のこの辺で使っていたとか、そういうことはもちろん勘案するが、たまたまその5カ所が、もっと高いところが実は敷地の中にあって、ところがその5カ所のクロスの端っこの方だったので該当しないということになると、概況調査をパスして、その後の手続は一切なしとなる。
それで、横浜市では対象になったときには詳細調査をやって、対策をとってもらい、最終的にこのようにきれいになりましたという形の対策終了届出書をもらう。対策終了届出書は2部向こうが持ってきて、1部は私どもがいただくが、もう1部は受理印、何月何日、この書類を受理したという判こを押して返す。そうすると事業者はそれでもって次のお客さんのところに、横浜市の要綱でその対策をとり、このとおり役所の方で浄化対策書を受け取ってもらったと説明して、きれいになったということを説明するのだが、これは別に役所の方できれいになったことを証明しているわけではない。ここのところが問題である。それに、すべての検査なり、もしくは対策に職員が現地に行って確認しているのかと言えばそうではない。とてもそこまではできない。そうすると何となくすり抜けになって、本当は汚染が残っているのかもしれないが、手続としては終わっているという状況が出る可能性が大いにある。行政の方の立入権限なり、指導権限なりを行使し、また対策の計画書を受理するとか、法律で大分厳しくそういうことを行ったとしても、それをすり抜けてその後から汚染がやはりあったんだというときに、行政の責任を追求されるのではないか。特にこれは個人の資産であり、大気とか水のように誰のものでもないのでよいという訳にはいかないところが心配である。
ただ、そうするとやり方としては、これは手続法なのであるが、法律に定まった手続をやっていって、例えば測定方法についても技術マニュアルを作ることになると思うが、先程言ったような何㎡に何カ所のメッシュでとか、そういうことをやっていれば別に汚染が後で見つからなかったとしても、それは一向に構わないのだというような手続法にすれば良いという考え方もあるのかもしれない。
一方、付け加えると、この要綱で先程説明したように、ある基準は定めているが、1,000㎡未満の工場の方が、未満ではあるがこの手続を準じて指導してください、受け取ってくださいという例も幾つかあって、この役所の手続に乗っかってやると、つまり、きれいにしたということである証明として使えるとする、そういう需要も今出てきている。
それに、浄化対策をやっていると、例えば吸引をして有機塩素系の物質であるが、浄化をやると最初は、すぐにきれいになっていく。ところが、ある一定のところにいくと限界になって環境基準まであと少しのところでその環境基準にならない、幾らやってもあともう1、2年かかりそうだとか、そういう状況でやってもなかなかそこまでいかないとか、そういうような例が出てくるので、そういう扱いをどうするのかということが一つある。
それから、もう一つ、ある事例であるが、有機塩素系の汚染があって、それが敷地の中に何カ所かあって、深いところだと5~6メートルとか、その辺までいっている、しかし、次にその工場の土地を買う人が決まっていた。買主は当然のことながらきれいにして、もし、土地が汚れていれば当然、その土地を安く買うことになる、そういう関係があるので、そこの中でこんな解決をした。買う方が少し時間がかかったのであるが、次の建物の設計をした。そうすると敷地の中で基礎を掘らなくても済むような場所に汚れがあるものについてはそのままにしておけば良いわけである。上に覆いか何かをして、基礎でどうしてもいじらなければいけないところに汚染があるものについては、一応基本的にはきれいにはしたが、下の方の深いところがなかなか難しくてお金がかかる。そこで、何も更地のときに深く掘って浄化しなくても、買主が基礎で掘るときに一緒に浄化をすれば非常に安上がりになる。こういうことで、売買の契約、それから次の利用形態とかを見て、そこの中で一番安い方法というか、そういう形でやっていた例もある。

【小委員長】 私の両隣の委員は審議会の委員でもあるため、後で総合的な意見をいただくとして、鈴木臨時委員、お願いする。

【鈴木臨時委員】 余り時間がないので、各論に入ることはなるべく避けたいと思う。またいずれ意見を申し上げる機会があろうかと思うが、この問題は土壌汚染による人の健康への影響を防止することを基本にして進められるべきことは当然だと考える。しかし、一方においてこの問題は、非常に複雑である。第一に、工場等の用地の汚染の大部分は有害物質の人の健康に対する影響について科学的知見がほとんどない時代、つまり、法律規制もない時代になされたものが、今になって汚染になって出てきているというのが大部分であるので、この点は十分基本的認識として踏まえる必要があるのではないかということである。
それから第二には、リスク管理についてであるが、現在の科学的、技術的レベルでは、単純に割り切れない問題をいろいろ内蔵していると思う。土地の修復についても非常に広範囲、多岐にわたる利害関係の顕在化が予想される。その取り扱い如何によっては大きな社会的混乱、例えば風評被害のようなことが起こり、その反作用として非常に過剰かつ巨額な経済的負担を強いられるということにもなりかねないので、この点でも極めて深刻な問題を内蔵している。
そういうことから、私はこの問題は先程もお話があったように、短時間で決着ができる問題ではない、やはり時間をかけて各界の意見を十分に聞いて判断すべき問題であるとまず第一に感じる。もし仮にできても実効が上がらないということになると、これはかえって変な状態に陥るため、その辺は十分考慮が必要だと考える。
そういうことから、基準の設定なりその他についても合理的で、かつ十分説得可能なものにすることがまず第一に必要である。それから第二に、それを実施するときに効率的でかつ現実的に実効が上がることを見極めて実施すべきである。それから第三に、この制度についてやはり公平感を持ち得る、公平感を担保できるということが非常に大事だと思う。したがって、この3つ、合理的、効率的、公平という観点から、幾つか項目だけ申し上げたい。
特に、基準の設定に当たっては、評価委員会の報告書も読ませていただいたが、もう一度詳細に説明をいただきたい。基本的にはTDI自体が既に十分な安全率を見ている上で、特に土壌の含有量が人の人体にどういうふうに影響を与えるかというくだりについては、土壌の暴露機会の頻度だとか、自然界での希釈だとか、それに人体での吸収の程度、特に胃とか皮膚でどの程度吸収されるのか、人の健康に本当にどういう影響を及ぼすのかというのをやはりもう少し検討する必要があるのではないかと思う。もちろん安全サイドに立てばそれはそれで良いという議論もあるが、この問題が各界に与える影響の大きさ、また、法律で定め義務を生じるということを考えると、その辺はやはり十分に科学的知見を入れ、説得性を持たせることが必要なのではないかと思う。
それからもう一つは、土地の利用形態というのは言うまでもなく山林、農地、宅地、公園、それに工場、いろいろ多岐にわたっており、その立地条件も都会地にあるとか、実質的に隔離地にあるとか、それから鉱床地帯、鉱山地帯にあるとかによって人に対する暴露機会もいろいろ違うわけである。したがって、リスク管理を必要とする濃度の基準等については、やはり土地の利用形態に応じてきめ細かく定められるべきであると考える。これは、外国にも例があるのは御承知のとおりであるが、やはり人体に対するリスクの程度の濃淡、それから国民経済性、その他対策の効率性という観点からも、この点については十分検討が必要ではないかと思われる。
それから、2番目の効率的で現実的ということであるが、このレポートで土地の用途の変更のときに行うということは、これは非常に現実的であり、大変評価ができると思うが、土地の用地の変更とか、リスク管理の実施についてどういうものが具体的にどう対象になるのかということについても、やはり議論が深められるべきだと思う。特にリスク管理の実施については、段階的に基準を設定して汚れているものから先にやるという方式など、そういう事も考えられるのではないかと思う。なぜかというと、土壌というのは、その中の例えば重金属で言うと含有量が少なくなればなるほど取り出すのは難しくなってしまう。これは技術的に、例えば50%のものから90%取り出すのと、1%のものから0.9%取り出すのは技術的な難易度あるいは費用の面でも異なり、汚れの大きいところから段階的に規制を適用していくというのも実効性という意味では一つの方法ではないかと思う。御承知のとおり、過去においても、例えば、日本の自動車のNOxの規制だとか、四日市の煤塵だとか、そういうものについては段階的規制によって非常にうまくいった例がある。アメリカのマスキー法とかに比べると、はるかにうまくいっていったというような例もあるので、その辺も考えるべきである。
それから、先程申し上げたような、ゆえなき風評被害が起こって国民の非常に過度な心配を招くというようなことは、是非、避けるべきであり、台帳、情報公開、コミュニケーションの在り方、こういうものについても十分検討する必要がある。
それから、3番目に公平性の担保、公平感であるが、これはアプリオリイに土地所有者に責任があるという考え方には問題があるのではないか。やはり原因者負担というか、PPPの原則でまず初めに考えるべきではないかと考える。特に、自分が汚したもの、それから他人が汚したもの、他人でも存在するもの、不存在のもの、そのほかに自然汚染、あるいは天災の汚染とかいろいろあるわけで、これらを含めて一義的に所有者がやるべきだと考えるのは論理上も問題があるのではないかという気がする。この辺は他の法律の例もいろいろある。自者汚染、他者汚染の概念を入れているのもあるし、また、費用の負担にしても原因者の他、国、あるいは地方公共団体の共同負担というようなものを決めているのが過去の大部分の例なので、果たして責任のない人のところにまで責任を持っていくというのは、基金の問題も含めて法律的にも問題があるという気がする。特に、過去の先程申し上げたような土地所有者には法律違反も何もないのに結果として汚染が生じたという場合に専ら土地所有者に負担を負わせるということでは、現実的にこの話が進まないと思う。
特にこの土壌汚染は一体どのぐらいお金がかかるかというのを一度教えていただきたいが、一説によると13兆円かかるとか、それから環境省の調査でも2010年の単年度で約5,000億かかるという調査結果もあり、そういうものを一体誰がどうやって負担していけば良いのかというのは、現実問題としてそれを土地所有者だけに委ねる、あるいは責任がなくても委ねるということではなかなか話が進まないのではないか。特に、先程中小企業の皆さんの御意見にもあったように、実際の負担能力なども考えて、ここはひとつ国が相当の決意を持って取り組んでいただかないといけないという感じがする。

【小委員長】 嶌田臨時委員、お願いする。

【嶌田臨時委員】 この検討会の委員をやっていた関係から発言させていただく。要は今まで皆様方が言われた御心配とか御意見については、そのとおりだと思う。ただ、なぜ今こういう制度の在り方について検討しなければならないのか、ということについてもう少し事務局から御説明があった方が良いかもしれない。この中間取りまとめの後ろの方にもいろいろ規制改革会議とか行革といろいろ書いてあるように、政府全体というよりも今の世の中こういう制度を作らなければならないというような状態になっているということが一つあると思う。
そういう中で、皆さんの意見を聞いている限りにおいては、こういう制度を作るということについては別段反対もないようである。ただ、作るに当たってはどういうふうにしていったら良いのかというような御意見だろうと思うので、そういうことであれば、これからいかにそういう現実性のある良い制度ができるかということを検討していったら良いのではないのかという気がする。

【小委員長】 それでは、櫻井臨時委員、お願いする。

【櫻井臨時委員】 私は、土壌の含有量リスク評価検討会の一員でもあり、この基準の案を作成する立場にもあったので、その点についてだけ申し上げたいが、まずこういった健康に関する予防の基準の設定ということであるが、今回のこの基準、土壌の直接摂取にかかわる基準、あるいは先に定められている溶出基準、これは水質の基準と同じ数値を考えているわけであるが、いずれもごく標準的な方法で決められていて、十分な説明を求めるという厳しい言葉をいただいたが、これは時間をかければ十分納得していただける数値であると考えている。
私も例えばこの4ページのところで意見の概要というところの上の方に、土壌汚染の環境リスクの管理を図るべき基準、例えば基準値を低く設定すべきであるという意見もあるが、私の考えではこれは低過ぎもしない高過ぎもしない最も妥当な線を専門家が集まって決めた数値で、今のいろいろな根拠を基にすれば再度検討しても同じ数値になってしまうというふうに考える。これはもちろん先程一定の安全率が入っているということであったが、それは例えば動物のデータで人の健康を考えるときに必要な安全率、あるいは健康な人から非常に感受性の高い人もいることから考える安全率というものであって、結局ここで出ている基準を超えている場合には、最も感受性の高いポピュレーションは、あるいは健康影響を受けるかもしれないということは誰もこれを否定することはできないので、したがって、リスク管理が必要なレベルというのを環境基準と違う数値を出してはどうかという意見が21件あったようであるが、私はそれには反対である。環境基準を超えている場合には何らかのリスク管理は必要である。これは大気汚染等でも環境基準を超えてそのまま目標値としているという考えもあるようであるが、目標に近づくために何らかの管理の手段を既に取っているわけで、放っておくわけではない。つまり、この基準を超えていれば放っておいて良いというものではないので、必ず何らかのリスク管理が必要である。ただし、そのリスク管理の方法は現実的に可能な方法、誰でも納得いく方法でやれば良い、それは知恵を集めれば十分できると考えている。
まだいろいろと必要に応じて御意見を、判断したいと思う。

【小委員長】 大塚臨時委員、お願いする。

【大塚臨時委員】 私もこの中間取りまとめの関係の委員にさせていただいていたので、そちらの観点から少しお話をさせていただく。
それでは、5点ほど簡単に申し上げるが、1点目に、今日において土壌汚染についての何らかのリスク低減措置を求める制度が必要とされているというのが、先程嶌田委員も言われたが、各種の政府の会議でも問題にされているし、市民の意識の中にあるのではないかということである。それは土壌汚染の判明件数が増えてきているということであるが、これは氷山の一角に過ぎないと理解されていて、将来的に地下水等が飲めなくなるようなことになる前哨のところで押さえる必要があるということと、直接暴露について何らかの対応を取っていかなかければいけないということがある。ダイオキシンについては、ダイオキシンの対策の特別措置法ができたが、それと同程度のリスクがある場合について放っておくわけにいかないということが前提としてある。
2点目は、先程来幾つか話が出ているように、土地の価格の下落等の問題があるわけであるが、円滑な取引の実施のために汚染地をつかまされて、ばばを引くということがないように、ルールを作る必要があるということが前提となるのではないか。ただ、先程幾つかお話があったように、中小企業等について、特にあるいはクリーニング屋さんとかについて実際にリスク低減措置がとれるような資力がないという問題が当然あるわけであるが、これはすそ切りをするとか、それから融資とか、公的な助成とか、あるいは基金を使って対応していく他にないというように考えている。ここは環境省の腕の見せどころではないかと思う。
3点目であるが、原因者、あるいはそのPPPとの観点から所有者が前面に出ているのはおかしいのではないかという議論もあったが、この考え方自体はこの中間取りまとめでは、結局原因者がわからない場合もあると、それだと制度に穴があいてしまうことになるので、まずその土地所有者に責任を負っていただいて、その後については幾つかの考え方が分かれているところもあるが、その後、原因者に求償するという道を残すのが基本的な筋ではないかと私は考えている。つまり、原因者に対して求償していくという規定は必要だと思っているが、最初に土地所有者が責任を負うと、土地所有者はもちろん自分の管理している土地について危険があればそれについて責任を負うということになるので、そういう窓口としての責任を負うということである。したがって、先程幾つかお話があったが、原因者が誰かわからないというようなことがあって、土地所有者がそれを調べるのが非常に酷な場合に、第三者機関なり、あるいはその自治体などが関与して、そういうものを手助けするという仕組みは必要ではないかと思う。
それから4点目であるが、登録との関係でリスク低減措置が済んだ土地と、これからリスク低減措置をする土地との区別をしてほしいという御意見があったが、これは私も賛成で、せっかくリスク低減措置を取ってもそれが反映されないということでは困るので、リスク低減措置を取った土地についてはそれが直ちに登録が抹消されなくても、何らかの区別をするように考えなければならない。
それから5点目に、土地の利用形態によってリスク低減の仕方とかを変えるべきではないかということであるが、これは確かにヨーロッパにおいてもそういう制度があるが、一つ非常に気になるのは、土地の利用形態というのはその場、その場で売買があると変わるので、そうするとある利用形態から別の利用形態に変わったというときに、もう一度リスク低減措置をやり直すのかということがある。そういう制度が果たして社会的、経済的に良いのかどうかという問題は多分あるだろうと思う。それから、搬出土壌の問題というのも、もう一つあるが、そういう観点からすると、土地の利用形態から分けるというのは確かに一つの考え方ではあるが、必ずしも現実的ではないと考えている。

【小委員長】 それでは、小早川委員、お願いする。

【小早川委員】 私は、専門は行政法であるが、今日は第1回なので法律屋として基本的に何が問題なのかをやや抽象的ではあるが、一言申し上げたい。
先程来、この問題の基本、中心は、こういう施策が必要であるということは一応前提にして、誰の負担でやるかということだと思うが、所有者と原因者、それから公的負担、この3つの間でどう考えるかということだろうと思う。もちろん、公的負担がある程度出てくるのかもしれないが、それはもちろんなぜそれが正当化されるのかという理由づけがなければいけない。いずれにせよ、それは補完的なものに止まると思う。補完的と言ってもかなり大きな補完かもしれないが、しかし、それはあくまでも補完的なものである。基本的には、所有者と原因者のどっちかということで、先程来、原因者の方ではないかという発言が複数あった。私も、ここは制度の立て方、対策の設計の仕方として両方あるとは思うわけであるが、今日申し上げたいのは、この検討会でまとめいただいた、所有者を主体として仕組みを設計するという、そういうやり方も可能ではないか。原因者に着目した制度も別にあり得るかもしれないが、こういう制度はおそらく可能である。この小委員会ではそういう可能な制度について、そういう土俵を認めた上で、土俵の上で、ではどういうふうに相撲をとっていくかという議論をすべきではないかということである。
私は、民法学者ではないが、この問題、やはり土地所有権をどう考えるかということであって、土地所有者は、先程大塚委員も言われたが、自らの土地の使用収益に伴って公共の危険を生じさせてはいけないのだという、その原則があるわけである。そのことが憲法で言えば29条2項で、財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律でこれを定めるということになっている、その「公共の福祉に適合するように」というところになるのだろうと思う。
問題を実際的に考えると、先程からお話があるように、土地の取引という局面に注目して、その際にこの土地はこういう土地であるということを明示して取引をするというのは当然であって、この汚染された土壌であるかどうかということは、当然この今のご時世では取引の際に明示されるべき事項だと考えられるわけで、ポイントはそこにあると思う。
そういうデータの開示がされる条件が整っていれば、あとは所有者がそのために必要な何かをせざるを得ない。そしてまたその負担を最終的に所有者が背負い込むのか、それとも原因者を探究してそこに負担を求めるのかということで、合理的な制度が基本的にはできるのではないかと思う。ただ、もちろんそうは申しても、その所有者のなすべきことがきちんとできるというために、行政、公共がいかなる支援をすべきかという問題は非常に大きいし、それから法学部の講義で昔から言われていることで言えば、法的安定性ということは大事であり、昔はやって良いと思われていたことが、ある日突然それはだめだと、遡って負担しろということになるのは、やはりこれは法の世界でも好ましくないことであり、別の言葉で言えば激変緩和措置というのは、必要であろうと思う。
そういうことで、土俵としてはこの土俵を一応認めた上で、余り時間がないようであるが、一生懸命相撲をとってみてはどうかというのが私の意見である。
もう一つは、別なことであるが、先程も発言があったように、パブリックコメントをどうするか。既に行われたものは多分マニュアルどおりのパブリックコメントではない、その役所の政策を提示した上でされているというわけでもないわけで、今後、どこかの段階で具体的な案を示し、それについてもう一度意見を求め、それに対してマニュアルどおりに環境省の側からその意見についてはこう考える、あるいはその意見に従ってこういうふうに手直しをするという段階が当然あってしかるべきだと思う。そこは適切なタイミングでお願いしたい。

【小委員長】 それでは最後に、浅野委員、お願いする。

【浅野委員】 いろいろな御意見を今伺っていたが、私は、揚げ足を取るような発言はしたくないが、揚げ足を取ろうと思う人だったら幾らでも揚げ足が取れるような議論もあったような気がする。つまり、人の健康はまず大事だから何とかしなくてはいけない、だけど過去に違法でないとされたことについてそれは今さら問題にされるのも困る。もちろん、対策を講じるべきことは、もっともな話ではあるが、そうは言っても、土地所有者に負担をさせるのもおかしいので、やはり原因者に負わせるべきということになると、結論的には全部国が面倒を見ろという結論しか出てこないわけである。果たしてそれで良いのかということになる。
これは基本的に土壌汚染問題の特色をどこまでしっかり押さえて議論するかということにかかる。つまり、大気汚染や水質汚濁の場合、あるいは一番わかりやすいのは騒音であるが、これは一過性である。大気汚染は、ある意味では残留性があるにしてもそれほどではない。水質汚濁の場合は底質に影響を及ぼしてしまうと相当残留性が出るが、そうでない限りは比較的その場の話。だから原因者の責任を追いかけていかなくてはいけないというのもそれはそれで良いが、土壌汚染は結果が残って、そこに汚染された状態が残っているわけである。その状態は、新たな地下水汚染や健康被害の危険を引き起こすわけであるから、そうすると確かに大もとでは一番の原因者がいる。しかし、現在の危険というのは現在の土地が汚染されているという状況から発生するわけである。そして、過去に遡って原因者に負わせるといっても所詮どこか限度がある。現在、土地を持っている者はやはり現在の自分の持っている土地から出てくる危険を回避する法的な責任がある。ただし、自分の土地の中で自分だけが迷惑を受けるのであれば、それは本人の勝手なので、そこまで法律で口出しをすることはない。しかし、それが他人に迷惑をかけるような状態を引き起こす、現実にそれを引き起こしていたり引き起こす危険性が大きいという場合には、土地所有者が第一次的にこれに対して何らかの対応をしなければいけない。その上で原因者が他にあるならばその原因者のところに求償すべきで、原因者が全くいない場合で資金の点でどうにもならなければその場合に限って公的な支援を求めるべきだ。論理的には、こういう筋道になるべきで、その限りにおいては先程小早川委員が言われたように、中間取りまとめの筋書きは、それなりにきちんと整理ができた筋書きであると思う。
ただ、ここでいろいろな発言を聞いて、私もそうだと思っているのは、土壌汚染の本質を押さえて、その特徴から出てくる議論をすると同時に、ここでは現実に取り上げ、対応を考えるべき汚染のについて、まさに報告書も環境リスクという言い方をしているわけであるが、他の場合のように、この閾値を超えたから直ちにがんになるとか、それから何%の確率でがんになるとか、こういう被害が生ずるというような、そういう被害に直結するような話と全部結びつくレベルの話ばかりでもない。しかし、かなり不確実性もあるものの、その危険性が大きいものもある。それから、将来の危険をもたらすおそれがあるものもある。土地が汚染されていると言っても使い方をコントロールさえすれば放っておいても良いものもある。こういったいろいろな汚染の状況がある。つまり、その辺のところを表現する用語として環境リスクという言葉が使われているのだろうと思う。ところが、リスクという用語を使ったために、確かに様々な誤解を与えたり、様々な議論を呼ぶ可能性はあるわけで、このペーパーの持っている若干の問題点はそこら辺にある。つまり、リスクという言葉は人によって受けとめ方が極めて違うので、リスクと言われたらその瞬間にすごく危ないことだと思ってしまう人もいる。一方では、いやそうでもないというふうにごくごく当たり前にリスクという言葉をとらえる人もいる。その辺の認識が少し人によって違っているのではないかと思う。
この報告書の考え方は、リスクがそのまま極めて危険ということを意味するという使い方はしていない。そうではなくて、リスクがあるのでそれはマネージメントの対象になる、マネージメントのやり方にはいろいろある。対応の仕方もある。先程福島委員がおっしゃったように、いつやるのかということについても、それは結構現実に運用していくところで幅がある。その幅は十分に確保し、やらなくて良いことを無駄にやるというのは本当に無駄なことなので、それは防ぎたい。しかし、本当にやらなければいけないことはきちんとやらなければいけない。そこのところのめり張りをつけるという思想がこの報告書の中は、きちんと出ていると思う。そこをどうやってめり張りのついたシステムにしていき、本当に国民の皆さんが納得できるシステムにするのか。それから、本当にどうにもならない無資力の場合に対策をどうするかという問題も、それはそれとして別途きちんと用意しなければいけない。要するに、時間をかければ良いというものでもないが、与えられた時間の中で十分に検討していくことによって相当の答えは出るのではないかというのが今日の私の意見である。
つまり、リスク管理とは、100かゼロかという、白か黒という議論ではないということを、もしこの小委員会でお互いに合意しながら話をしていくことができれば、どうやって現実的に、先程鈴木委員がおっしゃったように公平性も現実性も効率性も確保できたシステムを作ることもできるし、ここがある程度きちんと合意をつくっていって情報を発信していけば、産業界の方、一般市民の方、それにNGOの方も理解できるというようなものになっていく可能性があるので、努力する価値はあると思う。

【小委員長】 ここで、今までいろいろお聞きになった上で、指摘をしたいとか、あるいはコメントを加えたいというふうな方もいらっしゃるのではないかと思う。
どなたか意見はないか。福島委員から、お願いする。

【福島臨時委員】 一つだけ、誰に対応策をとらせるかということで、やはり考え方が今までも両方あったみたいで、横浜市の要綱では工場を対象にしてやめるときに、やめるときというのはたまたま建物を壊したりするから検査がしやすいということもあるのであるが、これは当然所有者という考え方である。今まで工場をやっていたわけだから。神奈川県は公害関係の条例を持っていて、県の条例の中ではそうではなくて、そこの土地の区画形質の変更をするものと規定されている。つまり、工場の跡地を買ったそのマンションの業者だとか、今、土地を持っている所有者である。所有者が削るときにいろいろと問題が出てくるので、それで条例ではその今まさに土地を持っている人ということで、その人が調査もして対策もするのだと。結果、実際に水面下で、ここ汚れていたからこの間のお金、もうちょっと安くしろというようなことがあるのかもしれないが、そんな行政の方でも今まで二つで、基本的には要綱の場合でも工場の場合だと持っている人なので、そんな形になっている。

【浅野委員】 結局どの範囲を対象にするかということと、それから現実にクリーンアップのような具体的な対策を講じさせることに中心を置くのか、それともかなり幅広に対策を講じるべき場所をはっきりさせて、それに応じてとるべき措置を幾つかの段階を設けてあらかじめ明らかにして、実際やるかどうかはそのときのケースで考えるというふうになるのか、全体の仕掛けの問題があるので、今の福島委員の御発言はよくわかるが、それはいろいろなやり方があるだろうと思う。

【菅野専門委員】 いろいろ中間取りまとめの中でも話があったように、一定規模以上とか用途変更というのは具体的にどういう要件で何をもって用途変更とみなすのかとか、一般の人が立ち入る地域というのがどういう基準かというのは、もう少し具体的なイメージがないと事業者の中でどこまでやらなくてはいけないのかというところのイメージがわかない。また、所有者と原因者との関係であるが、例えば所有者は、原因者がわかっているので浄化までしたいが、原因者は被覆だけでも良いではないかというような感じで、対策費用の範囲もどこでどういう費用を合理的とみなして、どこまで求償権を持つのかというようなところが非常にあいまいなような気がする。そういう問題はある程度整理をして一度事業者の方、あるいは一般の国民の方の意見も聞かないといけないと思うが、やはり中間取りまとめから具体化までいくには、もう少し詰めなくてはいけない事項があると思うので、是非どこかの段階で明らかにしていただいて、また意見を出させていただくということをよろしくお願い申し上げる。

【小委員長】 他にいかがか。

【鈴木臨時委員】 若干、私の発言が誤解を生んだ向きもあるかもしれないが、私が申し上げているのは、要するに最後に浅野委員がおっしゃったように、やるべきことはやらなければいけない。しかし、やらなくても良いことまでやることはないだろうということを申し上げたかったまでである。

【小委員長】 初めに各委員からいろいろな立場から御意見をいただいて、私も聞いていて中間取りまとめの判断の仕方ということでいろいろな立場があるとは思うが、重要な意見をいただいたのではないかと思う。
いただいた御意見は事務局の方で整理していただいて、課題が共通なところもあろうかと思うが、課題ごとにまた次の議題に反映するような討議の仕方を導いていただきたい。
そういうことで今日は、一応貴重な御意見をいただいたということで、審議の方はこれで終わらせていただきたい。今後のこの小委員会の予定等について、事務局から説明をお願いする。

【土壌環境課長】 本日は、極めて短時間の中で中身の濃い御意見いただき、感謝申し上げる。私どもとしても、今、委員長からも御紹介があったように、課題別に論点を一応整理させていただき、それに基づいて次回以降御議論いただきたい。
それで、次回の日程であるが、次回は22日の木曜日、15時からということでお願いしたい。次回まで非常に日数も少ないが、今日の御議論なりも整理させていただいて、可能ならば事前に次回の資料の案を送らさせていただく。よろしくお願いしたい。

【小委員長】 本日の資料の公開についてであるが、委員限りということでお配りしてあるのは、委員限りとし、それ以外のものについては公表することとする。
それでは、これを以て第1回の土壌制度小委員会を終了させていただく。