中央環境審議会土壌農薬部会 土壌農薬部会第7回農薬専門委員会議事録

日時

平成14年11月11日(月) 14:01~16:10

場所

環境省第2会議室

議題

(1) 水産動植物に対する毒性に係る登録保留基準の改定について
(2) その他

配布資料

資料1 中央環境審議会 土壌農薬部会 農薬専門委員会委員名簿
資料2 水産動植物に対する毒性に係る登録保留基準の改定について(報告案)
資料3 PEC算定における農薬の普及率の考え方
参考資料1 「21世紀における我が国の農薬生態影響評価の方向について」
 (平成11年1月環境庁水質保全局)
参考資料2 「我が国における農薬生態影響評価の当面の在り方について(農薬生態影響評価検討会第2次中間報告)」
 (平成14年5月環境省水環境部)
参考資料3 生物種間の生態毒性値の比較
参考資料4 委員の意見

議事

【事務局】 それでは定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会土壌農薬部会第7回農薬専門委員会を開催させていただきます。
 委員の先生の皆様におかれましては、お忙しい中、ご出席いただきましてありがとうございます。
 次に、委員の異動及び出欠でございますけれども、ちょっとご紹介がございまして、若林臨時委員におかれましては11月5日付で土壌農薬部会にご所属いただくことになり、今回からの農薬専門委員会にもご参画いただくことにことになりましたので、よろしくお願いいたします。
 本日の委員のご出欠でございますけれども、事前に亀若委員、眞柄委員、井上委員、北原委員、廣瀬委員及び米谷委員からご欠席との連絡をいただいております。中杉委員はご出席の予定でございます。若干遅れているようでございます。
 続きまして、本日の審議に入る前に石原水環境部長よりご挨拶がございます。

【石原部長】 第7回の農薬専門委員会の開催に当たりまして、一言ご挨拶申し上げます。
 先生方には大変ご多用中のところご出席いただきまして、大変有り難うございます。本日は登録保留基準の改定についてご審議をお願いをすることになっております。いつもの登録保留基準値の検討とは異なり、枠組みの改定ということでのご審議をお願いをすることになっております。
 農薬の生態系への影響評価につきましては、平成11年に基本的考え方、今年の5月に第2次中間報告をお取りまとめいただきまして、検討を重ねてきたところでございます。本日はこれまでの検討結果をベースに、現在、コイの急性毒性で定めております水産動植物の登録保留基準をさらに広げるような形にしたいと考えております。
 よろしくご審議のほどをお願いいたします。

【事務局】 続きまして、審議に入ります前に、本日の配付資料についてご確認いただきたいと思います。

【事務局】 では資料の確認をさせていただきます。
 まず、本日の資料ですけれども、議事次第という紙がございまして、それから、その下に資料1といたしまして、各委員の名簿。それから、資料2としまして、「水産動植物に対する毒性に係る登録保留基準の改定について(報告案)」とございます。ちょっとクリップどめしていますが、それと一体の資料といたしまして、「農薬専門委員会報告参考資料一覧」というものがそのすぐ後ろについているかと思います。この2つあわせて資料2でございます。それから、資料3といたしまして、「PEC算定における農薬の普及率の考え方について」1枚紙が入ってございます。それから、その後に前回各先生方に資料送付した際には入っていませんでしたが、参考資料3としまして「生物種間の生態毒性値の比較」という一覧表を入れてございます。それから、本日のご欠席の亀若委員からご意見のペーパーが出ておりますので、それを参考資料4と入れさせていただいています。それから、参考資料1としまして農薬生態影響評価検討会の中間報告についてということで、これはプレスリリースした紙々を入れさせていただいております。それから、参考資料2といたしまして、農薬生態影響評価検討会第2次中間報告についてというものが入っております。それから、委員の先生方のみになりますが、環境省で別途、他の部局でも生態影響の関係の検討会が行われておりまして、まず1つ目に、「生態系保全のための化学物質の審査規制の導入について」ということで、その報告書の概要ペーパーと報告書本体を入れてさせていただいております。それから、「水生生物保全に係る水質目標について」ということで、これは水環境部企画課の方でございますが、その概要と報告書本体を入れさせていただいております。
 一応、以上でございます。

【事務局】 第1次中間報告と第2次中間報告で事前にお送りしておりますけれど、もし先生方で今お手元にない、参考にしたいということでありますれば事務局にお申し出いただければ用意してございます。
 特に資料等について必要になりましたらそのときにご要望いただきたいと思います。
 それでは、須藤委員長、議事進行をお願いしたいと思います。

【須藤委員長】 それでは、委員の先生方、事務局の皆様、本日は大変ご多用の中をお集まりいただきまして、誠に有り難うございます。農薬専門委員会は今月の1日に第6回を開いたばかりでありまして、また再度お集まりをいただきまして、大変恐縮いたしております。これから、水産動植物に対する毒性に係る登録保留基準の改定についてご審議をいただくことになっております。早速、議事を進めさせていただきたいと思います。
 事務局の方から、先ほどお話しいただきました資料について、この問題に関する部分のご説明をお願いをいたします。座ったままでどうぞ。

【事務局】 ではご説明させていただきます。
 お手元の資料2をまずお開きいただきまして、これを中心に進めさせていただきます。適宜専門委員会報告参考資料一覧というものも参考にしつつご説明させていただきたいと思います。
 冒頭、部長よりご挨拶の中にもございましたけれども、須藤農薬専門委員長を座長にいたしました農薬生態影響評価検討会が、平成11年に第1次中間報告、これは農薬の生態系評価の基本的考え方をまとめたものであり、それを踏まえてさらに具体的な検討に入りまして、本年5月に第2次中間報告を公表しました。この第2次中間報告というのは第1次中間報告の趣旨を生かして、それを現在の制度の中に入れ込むにはどうしたらいいかという検討を重ねてきたものでございます。そういったものをベースにこの農薬専門委員会報告(案)というものをつくらせていただきました。簡単にご説明させていただきます。
 まず、1ページでございます。背景ですが、ご存じのように新しい環境基本計画におきましては、持続可能な社会の構築のためにすべての社会経済活動は生態系の構造と機能を維持できるような範囲内で、また価値を将来にわたって減ずることのないよう行われる必要があるということで、この中で、農薬を含めた様々な化学物質による生態系に対する影響の適切な評価と管理を視野に入れて、化学物質対策を推進する必要があるということを謳ってございます。これにつきましては、さらに、その後今年の3月27日に地球環境保全に関する関係閣僚会議が決定した新生物多様性国家戦略についても同様な記述がございます。こういった観点を踏まえて、先ほど申し上げましたように須藤専門委員長を座長にする農薬生態影響評価検討会、ここで精力的に検討を重ねてまいりまして、本年5月に第2次中間報告を取りまとめたということでございます。
 ここで、新環境基本計画の趣旨を生かしつつ、従来の対応に加えて農薬の環境リスクの評価・管理制度の中に実質的に生態系の保全を視野に入れた取り組みを強化することは喫緊の課題である、そして具体化できるところから一部でも早く具体化していくことが重要であるとの認識に立って、技術的手法が確立している水域生態系においてまず当面の施策のさらなる具体化を図るということを提言いただきまして、報告をまとめていただきました。
 それを踏まえまして、それに該当する登録保留基準でございます3条2項の環境大臣が定める「水産動植物に対する毒性に係る登録保留基準」を改定するということで、今回のご議論になっているわけでございます。
 現状どうなっているかということが次でございます。まず、登録段階(上市前段階)のリスク管理措置、これが登録保留基準でございますけれども、いわゆる入り口規制でございます。農薬は農薬取締法に基づいて登録の段階で10項目ほど登録要件がございます。そのうち、人への影響なり環境保全という観点からは4項目あり、環境大臣が基準を定めています。いわゆる登録保留基準というものでございますが、その中で水産動植物の被害の未然防止というものがございます。これは四角で囲ってございますように、「当該種類の農薬が、その相当の普及状態のもとに申請書の記載に従って一般的に使用されるとした場合に、その水産動植物に対する毒性の強さ、その毒性の相当日数にわたる持続性から見て、多くの場合その使用に伴うと認められる水産動植物の被害が発生し、その被害が著しいものとなるおそれがある」と、こういう法律上の要件がございます。具体的に環境大臣が登録保留基準を現在決めているわけでございますが、それは1ページの最後のところに書いてございますけれども、水田で使用される農薬であって、以下の要件のすべてを満たす場合に登録を保留するということで、1つは10a当たりの有効成分投下量が0.1キログラム以下の場合は、コイに対する48時間の半数致死濃度、いわゆるLC50が0.1ppm以下。10a当たりの有効成分投下量が0.1キログラムを超える場合は、コイに対する48時間の半数致死濃度を有効成分投下量で割った値が1以下。これは(a)と趣旨は同じでございます。それと、コイに対する毒性の消失日数が通常の使用条件下において7日以上であること、ということでございます。
 これが基準でございますが、さらにそれ以外の登録の段階でどういうことをやっているかといいますと、「農薬の登録申請に係る試験成績」ということで、いわゆる試験ガイドラインでございますが、これによって農取法に基づく申請時には、魚類の急性毒性試験のほかミジンコ類急性遊泳阻害、繁殖試験、藻類生長阻害試験等の試験成績を提出することとされておりまして、その結果を踏まえて使用上の注意事項等をラベルに記載されているいうことでございます。
 今のところで、例えば参考資料をお開きいただいて、参考資料の6ページでございますが、現在のコイとミジンコの急性毒性試験の濃度でこのような分類分けをして、A、B、Bs、C類となっておりまして、C類が一番厳しくて、A類は何も問題ないということなのですけれども、こういった使用上の注意事項をラベルに記載するということを登録保留基準以外の措置として登録時にやっているということです。例えば、C類は魚介類に強い影響を及ぼすので河川、湖沼、海域、養魚田などに本剤が飛散、流入するおそれのある場所では使用しないことというふうにはなって、それなりにその毒性値に基づいた注意事項になっております。
 さらに、本文に戻りまして(2)でございますが、農取法では登録段階だけではなくて、いわゆる登録後の規制も用意されてございまして、そういう使用段階においてもリスク管理ができるということになっております。例えば登録農薬が不適切な使用によって水産動植物への被害を生ずるおそれがあるときは、農林水産大臣はいわゆる農薬安全使用基準を定め、都道府県に適正使用の指導を指導しております。これは指導事項でありまして、参考資料の2にございます。
 それと、もう一つは少し厳しい規制でございますが、その相当広範囲でまとまって使用されるときに著しい水産動植物へ危害が発生するおそれがあるものは、政令で水質汚濁性農薬というものに指定しまして、その問題があるような一定地域をゾーニングしまして、その地域の中では都道府県知事の許可を事前に得なくてはいけないというような規制になっております。
 この水質汚濁性農薬と申しますのは、この水産動植物への影響と、いわゆる人の健康への両方の概念がございますが、水産動植物の影響の観点での水質汚濁性農薬につきましては、現在、テロドリン、エンドリン等6つを有効成分とする薬剤がございますが、現在登録があるものについては、ベンゾエピン、ロテノン、両方とも殺虫剤でございますが、これら2つのみとなっております。
 次に現行のリスク管理措置の課題と農薬による生態影響の実態ということでございます。(1)としまして、現行のリスク管理措置の課題、これは現行のリスク管理措置は水産動植物への被害の防止に一定の役割を果たしました。これは昔PCPといわれる除草剤等が魚類に相当被害を及ぼしたということでこういう基準をつくったのですけれども、これは当時の、昭和38年ですが、農林省が定めたものがそのまま現在でも踏襲されておるわけでございまして、現在の知見等に踏まえると以下のような課題があると考えられております。
 まず、比較的感受性の低いコイの魚毒性のみに一応着目した基準であり、他の魚種への影響というのは考慮していないこと。また、甲殻類や藻類への影響を評価していないため、「水産動植物」といった場合に必ずしも十分ではないということが1点ございます。
 もう一点は、種類によって農薬の毒性の強さを考慮しない一律の基準として設定され、これは0.1ppm以下という、要するにハザードだけで基準が決まっていること。したがって、その環境中でのいわゆる曝露量ということを十分考慮されていないということで、現在のリスクアナリシスという観点からいうと、ハザードだけしかみていない基準になっているということでございます。
 3点目としまして、畑や果樹園等水田以外で使用される農薬については、水田で使用されるものに比べて水系への流入の可能性が低いということで、この基準の対象から除外されているということでございます。
 こういった課題のほか、農薬による生態系への影響の実態、農薬による水域生態系への影響について、環境省がこれまで実施した調査によると、参考資料4の方にも載っていますけれども、1つは野外調査で農薬の散布前後で水中プランクトンの個体数や種数の減少も一部で見られたけれども、自然のサイクルによるものか、農薬によるものか定かでない、と。また、降雨の影響、他の環境要因の変化等もあることから、対照区を設定しがたいこともあって、現在のフィールドでの調査からはこの農薬の影響のみを分離して評価・区別することは困難だったという結論が1つございます。その一方で、農薬散布したその実環境の河川水を採取してきまして、そこでメダカ、ミジンコをその中で、その水を使って毒性試験をした結果では、河川水中の農薬濃度がミジンコの半数遊泳阻害濃度を超えて100%の遊泳阻害を示していたものも見られた。これはいわゆる大きな河川水でも同様の結果も見られたので農薬が農地周辺の水生生物に影響を与えている可能性がある。こういったことから、必ずしもはっきりはしないんですけれども、ただ可能性としては農薬が我が国の水域生態系に何らかの影響を与えている可能性は否定し得ないという結論になり、これは第2次中間報告にも盛り込んだものでございます。こういった状況でございます。
 一方、欧米主要国は現状どのようなリスク評価・管理をしているかというところが4番目の項目でございます。既に欧米諸国では我が国と比べてそのような評価・管理制度は整備されておりまして、こういったものも参考になるのではないかということでございます。ただし、諸外国の環境条件と我が国の環境条件というのはおのずと違うものがございます。そういったものも考慮しなければいけないということでございます。
 (1)としまして、登録申請に必要な試験、データセットでございますが、これは総じて水生生物の室内毒性試験については大体一致しておりまして、いわゆる魚類、ミジンコ、藻類の3点セットです。さらにケースによってはマイクロコズム、メソコズム、野外試験、環境中モニタリング等の結果を用いて評価しています。
 評価手法は毒性値と、環境中予測濃度いわゆるPECを比較して評価する手法を用いるのが一般的でありますと。さらに、評価については段階的ないわゆるTierシステムをとっています。このTierシステムと申しますのは第1段階においては費用がかからない簡便な試験方法、あるいは、例えばシミュレーションモデル、ただしこれらはかなり安全サイドに立った結果が得られるような試験方法ですが、これによって評価を行う。それでクリアできればそれでもういいのですけれども、クリアできない場合にはより精度の高い、しかしながら費用がかかる試験方法に移行して、それで得られた結果でさらにクリアできるかどうかを確認して評価を行うということです。最初から費用も時間もかかる試験方法に拠らないで、安全サイドに立って簡便な試験からスタートしていって、要するに費用とか時間に無駄のないようなことをしていこうという方式でございます。
 それと、生態毒性試験方法についての国際調和は進んでおりますけれども、評価に用いる毒性値は国によって異なっております。生態系に影響ないと考えられる、いわゆる無影響濃度、予測無影響濃度はこれらの毒性値から推定されますけれども、半数致死濃度とか半数影響濃度、あるいは最大無作用量を用いている国が多い。
 曝露経路としては米国では地表流出とドリフトを考慮していますが、ドイツではドリフトのみを対象としているということで、作物の種類、生育状況、散布地点からの距離に応じて散布した農薬が水系に流入する割合を示す標準表が作成されております。これは、我が国の、後の方でご説明しますPECの算定の際にも参考にさせていただいていますが、こういったものでございます。逆に我が国は水田農業が重要でございますので、水田のような直接水系に流入するようなものは余り一般的でないので、こういった国では考慮されていないということでございます。
 リスク判定は(3)でございますが、その有害性と曝露をそれぞれ定量化して、その比をとってリスク判定を行っている。その値がある一定の基準といいますか数値を超える場合には、曝露量をより低くするために使用量の削減とか使用方法の制限等のリスク削減を行う。例えば、ドイツ、アメリカでは使用の制限に対して安全距離ということで、バッファーゾーンを設けて農薬の飛散による河川等への流入を少なくしているということでございます。
 それともう一つはリスク便益、いわゆるリスクベネフィット分析でございますが、これは農薬生態系評価においては農薬の便益を評価する考え方を、我が国では制度としてはまだないんですが、多くの農薬登録国では支持されております。例えばアメリカとかドイツでは生態影響の面で否定的評価がされた農薬であっても、それを使用することによる生態学的、社会的、経済的な便益及び代替剤のリスクと便益等を比較分析して、登録の可否を総合的に判断するということでございます。ただ、具体的にどういうふうにやっているのかというところはまだもう一つわからなくて、どうもケース・バイ・ケースのようでございます。ですから、ガイドラインというようなものが整備されているわけではないようでございます。
 こういった現状、それと諸外国の状況等も踏まえて、次の項目の、「登録保留基準の改定の必要性及び方向」でございます。
 以上のような状況を踏まえまして、農薬の水域生態系への影響を未然に防止する観点ということを考えた場合に、現行の登録保留基準については、生態系への影響を評価する視点を取り入れて、より注意深く登録段階の評価を行う必要がある。具体的には以下の観点から基準改定を行ったらどうかということでございます。
 まず1番目として、評価対象生物種を増やすこと、2番目として、毒性値として曝露量を比較する、いわゆるリスクというものによる評価方法に改めること、3番目としまして、水田使用農薬だけではなくて、畑、果樹園等で使用される農薬についても評価対象とすること、ということでございます。
 そういったことで、それを具体的にどうするかということでございますが、それが次のページの「登録保留基準の改定の内容」でございます。基本的考え方としまして、まず生態系保全の目標と評価の基本的考え方でございますが、どこの何を保全することを目標とするかでございますが、これは農薬の生態系への影響の程度を実環境において定量的に分離・特定することが困難な現状では、少なくとも河川等の公共用水域の水質環境基準点のあるような地点においては、農薬取締法が保全対象としている水産動植物への影響が出ないように現状の評価手法を改善し、農薬による生態系への影響の可能性を現状より小さくするということを当面の目標にすべきである。
 それと評価手法としましては、まず現行の登録保留要件の「水産動植物の被害が発生し、かつ、・・・著しい」という観点から、現行の考え方と同様、急性毒性に着目したらどうか。評価対象生物種は、水域生態系における生産者を代表する藻類、一次消費者を代表する甲殻類、二次消費者を代表する魚類とすべきである。さらに農薬を農地等に単回散布し、公共用水域に流出又は飛散した場合の公共用水域中での農薬の濃度(PEC)と、その魚類、甲殻類、藻類の代表種の急性毒性試験から得られた急性影響濃度(AEC)、Acute Effect Concentrationと名づけましたが、こういったものを比較することによってリスク評価を行う。
 リスク評価においては試験と評価コストの効率化を図るために、先ほど申し上げましたような段階制を採用する。その結果、PECがAECを上回る場合は登録を保留する。AECの数値を登録保留基準とする。ただし、PECがAECを下回る場合であってもリスク評価の結果を踏まえて使用方法や使用場所の制限といった注意事項のラベル表示への反映、環境モニタリングの実施、農薬安全使用基準の設定等、このようなきめ細かな措置も講じていく必要があるということでございます。
 それで、(2)登録保留基準の内容というので告示のイメージをこう書いてございますが、ちょっとこれは後回しにしまして、次の6ページに行きまして(3)で、(1)のところに出てきましたPECの具体的な算出方法はどういうふうに考えるかということでございます。それから別紙でございまして、別紙はこの同じ資料の9ページでございます。かなり技術的で細かくていろいろな数式が出てくるんですけれども、ちょっと概略を簡単にご説明させていただきます。
 この環境中予測濃度の考え方でございますが、基本的事項としまして公共用水域の農薬の曝露経路としては地表流出とドリフト、水路等への直接飛散ということなんですけれど、こういったものが主なものである。従来は地表流出のみ扱ってきましたけれども、水生生物の影響を評価するPECは、それ以外にもドリフトも考慮すべきであるということです。
 水田使用農薬の濃度推定については、先ほどの段階制でございますが、これは3段階でやったらどうかということでございます。第1段階は数値計算による算定、ただし、より安全サイドに立ったもの。第2段階は水質汚濁性試験等のデータ、これは既に水質汚濁の登録保留基準を設定する際の試験としてライシメータ試験、実際に撒いて水中濃度を図る試験がございますが、このデータを用いるとより環境に近いデータが得られるので、それをベースにした算定をする。第3段階では水田圃場での、実際に撒いてみてその水中の農薬濃度がどうなるかという試験の、3段階の試験でより実態に近い形でやっていく。もちろん、今申し上げましたように第2段階、第3段階になるほど費用がかかるわけでございます。畑地等の非水田使用農薬については2段階で考えて、第1段階で数値計算による算定、第2段階では地表流出試験等のデータを用いるということでございます。
 それぞれについては各生態毒性試験の期間に対応した予測濃度を算定するといっていますが、これはどういうことかというと、先ほどの3点セットでも、魚類は96時間、ミジンコは48時間、藻類は72時間の試験期間、すなわち、それぞれ4日、2日、3日となっていますので、こういった試験生物が農薬に曝露する試験期間を想定した濃度算定をしましょうということでございます。
 そこの表にPEC算出の根拠データと書いてございますが、表面流出、河川へのドリフト、水田についてはさらに排水路のドリフト、こういった曝露経路を考慮しまして、水田では第1段階数値計算、第2段階では水質汚濁性試験、第3段階では水田圃場試験の結果を用いる。水田以外のものについては、第1段階は一定値を当てはめ、第2段階では地表流出試験の結果を用いるといったもので想定していこうということで、後ろの方にそれをさらに、それについて詳しく述べてございます。
 10ページでございますが、PEC算定に用いる環境モデルと標準的シナリオでございます。かなり細かくなるんですけれども、概略をさっと説明させていただくと、(1)でございますが、我が国では農耕地等を流れた地表水はそのほとんどが河川等の公共用水域に流入するということで、このような我が国の地形条件等にかんがみ、環境モデルは圃場と河川で構成するということで、まず面積100平方キロメートルのモデル流域というものを設定します。ここに国土面積に占める水稲作付面積とそれ以外の耕地面積の割合を考慮して、一定の圃場群を設定する。具体的にいいますと、その100平方キロメートルを日本の国土の面積として、水田面積の割合をそれに乗じて約500ヘクタール、それ以外の畑地等は750ヘクタールとし配置する。さらにモデル河川は国土面積に占める河川面積を考慮して2平方キロメートル、このうち6割を本川、4割を支川とする。本川中の流量は、原則1秒間に3立米の流量で流れるというふうに考えます。
 それで、標準的なシナリオとしましては、現実の圃場群では水田と非水田が混在し、しかも一種の農薬が相当程度普及した場合であっても、同一種類の農薬が一斉に散布されるケースが想定されないので、農薬の普及率を水田使用農薬で10%、畑使用農薬で5%とする。この普及率については後でまたご説明します。地上散布の場合は、現実には作物の栽培管理状況にあわせて散布しますので、5日程度の散布日がばらつく。ただし、空散の場合は一斉に撒きますので一日で当該面積は散布されるとします。
 さらに水田使用農薬については、地表流出は定常状態で田面水が一定の表面排水率でモデル河川に流れていく。ドリフトは散布時に発生して直接モデルの河川の支川に流入する。ただし畑地で使用された農薬はドリフトが散布時に生じ、地表流出が規模の大きな降雨時の発生で生じ、ともにモデル河川に流入するが農薬の降雨時には散布しないことから、別々に発生するものとする。これはどういうことかというと、畑から河川に流入することを想定した場合には、地表流出、これは雨が相当降ったときに表面流出はするだろうと。そういった流入経路とドリフトで飛んでいってしまう経路がある。ただし、これは一緒には発生しないので、別々に発生するので、それを別々に算定してて大きな値の方をとるということでございます。
 今申し上げた概念図を11ページに表していますが、こういった100平方キロメートルの点々が国土面積を、この100平方キロに押し込めたといった場合に、水田がこのくらい、畑地がこのくらいとしています。こういう流域面積になる地点を評価地点とし、ここでCを予測しましょうということでございます。
 今言いましたように、水田、非水田の地上防除、航空防除それぞれこういうような考え方であるということで、12ページに標準的シナリオの種類及び考え方で、水田のみで使用する農薬については地表流出、今申し上げましたように田面水が一定の表面排水率で入れかわる。ドリフト経由によって、モデル河川についてはモデル河川の支川へ一定率で飛散し、排水路へ飛散したものがモデル河川に流入する。また、圃場群の一部から排水路へ直接オーバースプレーで入る経路もある。
 それと、畑等につきましては降雨によって表流出が発生し、地表流出となってモデル河川に流入する。それとは別にドリフトが発生する。
 また、水田と非水田の両方に適用になる農薬についてはそれぞれのシナリオで算定してするということでございます。
 次に、いろいろなドリフトの場合にどういうドリフト率にするかというのが書いてございますが、これは細かいところはちょっと割愛させていただきますけれども、例えばドリフト率につきましては、12ページにいろいろなことを考慮して水田、非水田、果樹についてはドリフト率がいくらというふうに書いてありますが、これは13ページの表4というのがございまして、これはドイツで作成されたものですがいろいろな作物によってどのくらいドリフトが発生するかというきめ細かい表がございまして、これは環境省の調査で追試したところ、我が国でも概ね当てはまるということで、これをベースにしまして、前のページになりますけれども、水田、非水田、果樹については支川河川への距離を想定したときの距離で、例えば13メートル、18メートルといったものをこの表から補完しまして、このドリフト率を算定しているわけでございます。
 航空防除の場合はまた別途観点が違いますので、ここに書いてありますようにヘリコプター特有の押し下げ効果等、あるいは風下側において散布境界の内側で行われる等を考慮して、我が方の調査の結果を踏まえてこのようなドリフト率を想定しております。
 また、エ)排水路へのドリフトという水田圃場群のの排水路へのドリフトがございますが、これはまた支川河川とは違って、圃場群から排水路へのドリフト、近いところでございますので1メートルのドリフト率を用いる。オ)でについては、航空防除の場合は農薬は直接排水路に落下するので、そのドリフト率は100%とする。
 こういう前提を置きまして14ページ以下が具体的な算定方法でございます。これは第1段階ということで、まず1番の水田使用農薬の予測濃度の考え方。基本的な考え方は、まず最大地表流出量がどのくらいか。それと河川へのドリフト量はどのくらいか。それと排水量のドリフト量はどのくらいかと。こういったものを出しまして、それをモデル河川の本川の1秒当たりの流量でございます3立米、これと先ほど説明した毒性試験期間、例えばそのPECと比べることになるAECがミジンコの急性毒性試験であればミジンコは48時間ですから、48時間を秒に直したものを代入する。魚であれば96時間、藻類では72時間といったものを用い流量を計算し濃度を求めるという考え方でございます。
 第1段階ではこういう形で散布量とか、ドリフトの寄与日数とか、ドリフトの率とか、そういうような係数を掛けて、基本的には農薬の、例えば分解とか、そういったものは考慮しないような厳しい安全サイドに立ったものでございます。
 15ページでは、諸元を数値として表してありますが、ただ、いろんな散布方法によってもある程度違うので、例えばその表の流出率Fpについては、湛水散布、茎葉散布、箱処理によってもかなり違うので、こういったものはきちっと考慮しています。
 次に、第1段階畑使用農薬につきましては、先ほど申し上げましたように雨が降ったときに地表流出する場合とドリフトする場合、こういった場合で、ドリフトの場合は同じような考え方なんですが、雨による地表流出の場合は通常の状況では雨で流出することは想定されない。降雨による地表流出が発生するような降雨の場合は、川の水も増水するだろうということで、流量として3立米ではなくて11立米を使って濃度を出すこととしております。
 16ページにその諸元がございます。果樹と果樹以外に分けていますが、果樹は背丈が高いので、当然飛んでいく距離も高いので、そういうドリフト率となっています。それと土壌混和とか潅注というのと散布とは違うので、そういったものもきめ細かに考慮しようということでございます。
 第2段階に行きますと少し複雑なんですが、より実態に近いということで、河川予測濃度につきましては水田でございますが、水田の水尻からの流出量と畦畔からしみ出していく流出量と、河川へのドリフト量と、排水路のドリフト量を足しまして、さらに支川河川に流れていくと底質に吸着されるだろうといったのは逆にマイナスといいますか、減少要因に働くだろうというような諸元を考慮しまして、それをその流量で割る。こういった考え方でさらに場合分けしまして、止水期間を設定する場合と設定しない場合を記述してありまして、止水期間を設定しない場合は、今言った基本的な式でいいのですけれども、止水期間を設定する場合は、18ページにありますが、散布時に発生するドリフト量と散布直後に発生する畦畔浸透による流出量の和、これと止水期間終了後に水尻から出てくる排水量と畦畔浸透による流出量、これはそのどっちかがどっちかをカバーするということではありませんので、この両方を見た場合の大きい方をもってPECとするというような考え方でやっています。
 こういったところの水田の濃度につきましては、先ほど申し上げましたように水質汚濁の登録保留基準で使う水中残留試験、こういったものの結果を使っていこうということでございます。
 また、20ページで畑地使用農薬の予測濃度の考え方、第2段階でございますが、これはこういう形でPECの算定ということで今シナリオにしてあるんですが、実はこれは地表流出試験とドリフト試験というのはガイドラインというか試験方法がございません。こういう評価方法として組み入れていく場合にはこれを今後つくらなければいけないということでございます。
 第3段階、これは水田のみでございますが、これも先ほど申し上げましたように実際に水稲を栽培した水田圃場を用いた試験により、水田水中の農薬が散布してどのくらい減るかの結果を用いるものです。これも今ガイドラインがございませんので、これもこのスキームを実際に適用するに当たってはつくっていかなければいけないというものでございます。
 21ページ以下は参考のデータ等でございます。
 それと23ページの別紙2でございますが、今度はPECではなくてAECの方の考え方でございます。試験生物としましては、魚類、甲殻類、藻類、それぞれメダカまたはコイ、オオミジンコ、緑藻、こういったものを選択する。
 試験方法、すなわちガイドラインは、環境省の協力のもとに農水省が策定した申請者に示すガイドラインをベースにする。
 急性影響濃度の導出方法については、用いるエンドポイントを半数の生物に影響のある濃度ということで、急性毒性試験で「LC50」、甲殻類、藻類では「EC50」をもって、農取法の登録保留要件の「水産動植物の被害が発生し、かつ著しい」ということに該当すると考えたらどうか。また、諸外国における急性毒性のエンドポイント、あるいは登録保留基準という法律に基づく規制の根拠となるデータの信頼性を確保する観点、こういったものを考慮して、魚類では「LC50」、甲殻類、藻類では「EC50」にしたらどうかということでございます。
 それと不確実係数の適用。これは試験生物種が必ずしも最も感受性が高い種と断定できないため、第2次中間報告の趣旨も踏まえまして、24ページでございますが、魚類については概ね10倍以内であるので、不確実係数は10、甲殻類についてもオオミジンコと我が国で生息する甲殻類等で概ね10倍以内と考えられるので10、藻類については緑藻が毒性の感受性が高いということがわかっていますので1としたらどうか。そういう毒性データから(3)でございますが、不確実係数で割った値の中で最も低い値を登録保留基準値とする。こういったものを機械的にやるのではなくて、専門家による検討を踏まえた上で、最終的には現在の水質汚濁、ないし作物残留の登録保留と同様に中環審土壌農薬部会への諮問・答申を経て決定される、と。
 その他でございますけれども、この基準値の設定というのは、現地における知見にかんがみて、当面、今の3点セットで基づいて行うとしますが、これらの試験方法より実環境に近い試験系による試験方法の諸外国でも改善が進められているということで、これがそれにかわるものとして国際的にも合意が得られるようなものがあった場合には、当然そういったものに改善していこうということは考えていかなければいけないということでございます。
 別紙3でございますが、今申し上げましたものを簡単な図にするとこういうものになってくるということでございます。AECがPECを超えなければいいけれども、超えたら登録保留ということです。ただしこの網かけの部分はまだできていないので、これをきちっとつくらないと、実は制度としては成り立たないということでございます。ただ、既登録農薬については既に実環境中で使われているところでもございますので、PECに代えて環境モニタリング調査の結果も活用できるというふうに考えたらどうかということです。、もう一度本文の5ページに戻りまして、そういったものを告示ベース、ちょっと法律的な文書で書くとこういうふうになりまして、予測濃度、要するに公共用水域に流出し、又は飛散した場合の当該公共用水域の水中における当該種類の農薬の成分の濃度として予測されるものが、当該種類の農薬の毒性に関する試験成績に基づき環境大臣が定める基準に適合しない場合には登録保留とする。
 ただ、この予測濃度は何かといったときに、さっきの前提として100平方キロメートルという流域面積と、水田500ヘクタール、畑地等750ヘクタール、こういったようなレベルのものを想定するのですよということで、備考ではそれをちゃんと書いてあります。そうしないと、ちょっとした川でも公共用水域だということで、それも評価値に入るということになると本来の前提と違ってしまうので、これの前提を明確にしておくということです。それと基準値ということで、先ほど申し上げました毒性試験から出てきたものを基準値としてここに書くということでございます。
 7ページの上に(6)登録後のリスク管理として、登録後においても環境モニタリングの結果を踏まえてリスク評価を行って、必要に応じて使用基準の設定とか水質汚濁性農薬等のリスク管理を講ずることが重要であるとしています。
 既登録農薬についても同様のリスク管理を行うものとするが、PECの算定に代えて使用現場周辺の公共用水域におけるモニタリング調査の結果を活用できることとする。
 今後の課題としまして、段階的評価を充実させるたの各種試験方法の作成。先ほど申し上げましたように、実はまだ制度して適用するときにできていない試験方法等がありますので、これができないと実は段階的といいながらも、畑地は第2段階のPECが算定できないし、水田は第3段階のPECが算定できないということで、公正な規制ということになりませんので、これは早急につくらなければいけないということでございます。
 それと、一過性の散布の際の回復性試験の必要性と具体的な手法の検討。回復性試験についても検討しておかなければいけない。
 それと(3)としまして、慢性毒性と他の生物種の導入の是非と具体的な手法。慢性影響というのも考えたので、今後、急性影響を導入した後で、またいろんな状況も勘案して慢性影響も考えていかなければいけないということでございます。
 8ページに行きまして(4)複数農薬による相加的・相乗的あるいは拮抗的な影響。これまた非常に難しいのですけれども、1つの農薬だけではなくて複数の農薬が散布されているので、そういった相乗作用みたいなものがあるかどうか。こういったものを考えていかなくてはいけないということでございます。
 (5)でございますが、その他の課題としまして、その慢性影響に対応するようなシミュレーションモデルの開発とか、水域生態系への影響が懸念されている内分泌攪乱作用に係る試験方法、評価方法。これまでの調査研究で明らかになった藻類等に代表される種間、発育段階による薬剤感受性の違い。また実補助、フィールドにおける生態影響については精度の高い実態把握調査、あるいはPEC算定については、水田における複雑な水循環メカニズムを反映した、より実態に即した方式、精度改善、さらにリスク便益の考え方も検討していく必要がある。
 ちょっと、すぐに解決できないものもあるんですけれども、こういったものを中長期的な課題として常に念頭に検討していかなければいけないというふうに考えております。
 最後に、今回の資料は、第2次中間報告をベースにしていますが、第2次中間報告との変更点又は第2次中間報告でペンディングだった部分をどのようにしたかについて簡単にご説明します。まず1点は、第2次中間報告では新規農薬はこの評価の対象をスキームの対象とするけれども、既登録農薬は当面対象としないということでございましたが、これは農薬取締法に基づく登録の有効期間は3年間で、さらに登録をしたい場合は再登録を申請するという制度でございますので、その既登録農薬を対象としないということは制度的にあり得ないので、既登録農薬も対象にしていくというふうに整理をしました。ただし、その場合、先ほど申し上げましたように、もう既に環境中にモニタリング等のデータがございますので、あえてわざわざPECを用いるのではなくて、モニタリングデータがあればそれをPECに代えてリスク評価してもいいじゃないかというふうに考えております。
 2点目は、、LC20とLC50の話が第2次中間報告ではペンディングでございました。規制基準というふうに考えた場合等々、先ほど申し上げましたようにLC50がいいのではないかということで、そういう整理をしました。
 3点目は普及率でございます。これは別途資料3を用意させていただきました。第2次中間報告では、全国の水田、非水田を500ヘクタール、750ヘクタールのモデルとした場合、一種類の農薬がすべての水田又は非水田で使われることがないということで、普及率を水田農薬50%、非水田20%というふうにしました。ただ、この算出根拠を調査してみたところ過去最大の普及率で、しかも、調査した農薬が15農薬を対象とした調査をベースに50%、20%という数字が出てきております。しかし、農薬も最近どんどん出荷量が減っていまして、この5年でも20%以上減っている。耕地面積の減り方よりもずっと農薬の出荷量の減り方が大きいということもあって、もう少し直近の詳しいデータを調べた方がいいのではないかということもございまして、調べてみました。ほぼ目ぼしい228農薬について12農薬年度で調査したところ、資料3の2ページでございますが、大体、水田使用農薬でその80%は普及率10%以内である。畑地用農薬については90%が普及率5%以内であると。これは出荷量を単位面積当たりどのくらい使用するかで割って想定される使用面積を出して、それを農林統計の水田作付面積とか、あるいは畑の面積で割ったものをベースにした数字でございます。新規農薬を想定した場合に世の中に出る前に相当程度の普及といっても、過去最大の50%も普及するということを想定してPECを計算して、それでAECを上回ったから登録保留というのは、必ずしも適正ではないのではないかなということも考えられまして、こういう実態を踏まえて10%、5%でPECを算定する。それで基準を考えていったらどうかということでございます。
 ただ、もちろん10%以上のものも当然あるわけでございますので、過去最大の、50%というのは調べたところありませんでしたけれども、50%、20%というのを1つのポテンシャルというふうに考えて、そういう試算も同時にやってみて、それでもし基準値を超えるような場合は登録した後にモニタリングをきちっとやって、要するに注意深くその推移を見守っていってリスク管理をしていこうと、こういうふうに考えたらどうかということで、その普及率というものをこういうふうに50%、20%、10%、5%を考えてもう少しきめ細かいリスク管理ということでやっていったらどうかということで整理させていただきました。これは大きな点で違うところでございます。
 以上でございまして、後はどうしましょうか、亀若委員のペーパーとか。

【須藤委員長】 どうしましょうか。あとは、生物種の毒性値の比較は説明しておいていただいた方がいいでしょう。

【事務局】 はい、これは……。

【須藤委員長】 それも重要なので。

【事務局】 実は亀若委員からの意見を踏まえた資料なので。

【須藤委員長】 では亀若先生の意見も。

【事務局】 亀若委員からコメントが出ていまして、いろいろとありますが、簡単にご説明させていただきますと、参考資料4でございますけれども、まず1番の[1]でございます。要はミジンコとか藻類の半数に影響が出るということで、登録が保留されるのは、厳し過ぎるのではないかというご指摘、ご意見でございます。ただ、これは今の考え方で未然防止という観点から、あるいは既に化審法、水質環境基準の水生生物の保全のための基準ということも考えますと、こういったものを半数に影響が出るということはそれなりに大きなものとして受けとめなければいけないというふうに考えております。
 それと、リスク評価の段階制とAECとの関係で、2番でございますが、リスク評価の段階制を入れるとの考えは望ましいけれども、新規登録の場合、2段階以降のPECがないということで不十分なのではないかというご意見です。これも先ほど申し上げましたように、これは制度が実際に適用されるまでにつくらなければいけないということで早急に対応したいということでございます。
 また[2]は、より実環境に近い試験系云々というところは、AECはいわゆる室内の人工的環境での試験による3点セットのみで登録保留基準とするということであるが段階性になっていないじゃないかというご意見でございます。これは影響濃度の段階制は、諸外国では、例えば急性毒性値で不確実係数をうんと大きくして、慢性毒性値をエンドポイントとして外挿し、それでもし厳し過ぎるのだったら改めて時間とお金をかけて慢性毒性試験をやるというような形の段階制をとっているわけでございますが、我が国では急性毒性でやるということで、これは急性毒性で1本でやれるのではないかなと。ただ、それに代わるようなもう少し実環境に近い試験ができればそれを入れていくということは先ほどご説明したとおりでございます。
 それと[3]は実際影響ははっきりわからなかったのではないかと。河川水をとってきて、ビーカーかフラスコの中でやってみて影響が出たということだけをもって規制するというのは妥当かというお話がございますけれども、はっきり申し上げましてなかなかそういうことをきちっと確認してやるのは困難である以上、そういう可能性も否定し切れないということであれば、それを踏まえた上での対応をとっていかなければいけないということです。これは微妙とは言いつつも、否定し得ないということであれば、この対応をとっていかなければいけないと思っております。
 それと不確実係数の適用の考え方で、この3番のところでございますが、要するにコイが農薬に鈍感だからという発想でミジンコにするのなら、要するにミジンコのデータで事足りるのではないかということで、そういうような生物種間の感受性の違いのデータがあれば出してほしいということもございましたので、参考資料3を作成しました。これは第2次中間報告の中のデータを整理しまして、こういう形にしてあります。
 例えば殺菌剤の、例えばペンタクロロニトロベンゼンとかイソプロチオランは、メダカの方が感受性が高くてオオミジンコの方が低い、要するにオオミジンコの方がメダカよりもこれらの農薬については強いということでありますので、必ずしも常にミジンコの方が魚よりも感受性が高いということにはならないということで、3点セットの意義は失われないということでございます。

【須藤委員長】 資料としてはこれで一括、ご説明をいただきました。
 それでは、委員の先生方からまずご質問もございますでしょうし、それから、今日の専門委員会の皆様の中にはずっとこの検討会の中でご議論いただいた方もいらっしゃるし、もしかしたら今日初めてこの話を伺う方もいらっしゃるかもしれませんが、どうぞ、忌憚のないご意見をいただきたいと思います。どこからも結構でございます。お願いいたします。
 かなり膨大な検討結果を、只今、1時間足らずご説明をいただきましたので、大変要領よくご説明いただいたとは思います。この資料からみますと、報告書の段階でもこれだけの分厚いものでございますし、それぞれの検討会に出された資料を入れますと、多分、何十センチになるかと思うぐらいでございましたので、それを今本当に要領よくご説明いただいたと思いますが、どうぞ繰り返しになっても結構でございますので、委員の先生方のご意見を伺いたいと思います。
 ではどうぞ、中杉委員。

【中杉委員】 3ページのところで。

【須藤委員長】 資料3の3ページですね。

【中杉委員】 環境省がやられた調査の結果が(2)のところで書いてございますけれども、その中で「対照区を設定し難いこともあり」という記述がありますが、この意味合いがどういう意味なのかというのを教えていただけないかと思います。逆に言うと、ある見方をすればどこでも農薬が存在する。だから対照区が設定できないという判断もできるだろうと思いますし、どれということは特定できないですけれど、何らかの農薬はどこでもあって、どれの影響がどうだということははっきりわからなかったという意味なのか。

【須藤委員長】 そうですね、両方あるようですね。

【中杉委員】 「対照区を設定し難い」という意味は、どういう意味があるのかを教えていただきたい。

【須藤委員長】 「……し難い」と。いいですか、その部分は。

【事務局】 これは先ほどの参考資料1にございますけれど、これの7ページに、第2次中間報告の参考資料をそのまま添付してございますけれども、ここでいろいろな野外調査をやっているわけでございますが、プランクトンとか藻類を調べても、例えばこの表1aの7ページの一番最初のところなんかは、これはテニクロールとカルボスルファンの結果、右の方についてありますと、水生昆虫は散布前と比べ種数及び個体数が減少したと。生活史による変動等も考えられ農薬による影響と断定できなかった。個々ございますが、現象とすれば散布時期前後でそういうふうになっているんですけれども、ただ、自然環境でございますので、実験計画のようにように要因をきちっと分離できるような仕組みができないので、蓋然性としてはあっても必ずしも明確かどうかわからないという趣旨でございます。

【須藤委員長】 どうぞ、ご意見があれば。

【中杉委員】 いろいろと説明を頂きましたが、これはその特定の農薬に対して言っていることなのか、農薬一般に関して言っていることなのか。

【事務局】 これは農薬一般ということですね。

【須藤委員長】 一般ですね。 どうぞ、森田先生。

【森田委員】 大変ご努力されて1つまとまってきたのですが、全体としてうまくいくのかなというのを少し心配しているところが実はありまして。
 実は私は有機スズの代替品のリスクアセスメントを、こうPNECとそれからPECを比べて、それが実現可能かというのを幾つかのいろんな物質について少し調べていって、それで非常に苦労しまして。非常に苦労というのは、要するにああいう、農薬もそれに近いんだと思いますが、バイオサイドといったものをこういう観点でやると、有効性の議論なしにやると、みんなアウトになっていくんですね、いろんな物質が。
 それで心配しているというのは、多分そういうことは既にやられているのかもしれませんが、現在使っている農薬について、これを適用したときにどんなふうになっていくかというシミュレーションをちゃんとやられて、それでこのルールを適用して大丈夫だという、そういう判断をされていらっしゃいますでしょうか。

【須藤委員長】 今、実際の既登録の農薬でこれに従ってPEC、PNECで比較したらどうなりますかということでよろしいですね。

【森田委員】 はい。

【事務局】 たくさんのデータで調べたわけではないんですけれども……。

【須藤委員長】 幾つかやったんですね。

【事務局】 幾つかで想定してみたところ、殺虫剤はかなり厳しいことになると思います。ただ、そのときには当初のEC20とか50%そういったことであって、先ほどPECとかそういう実態的にもう少し適正なレベルになると少しは緩和されるのかもしれませんけれども、ある程度、例えば今の状態のままで、そのまま登録が維持される状況にならないのではないかと考えております。

【須藤委員長】 ですから、先生、私座長が余り解説してはいけないのかもしれませんけれども、この検討会をやったときは、先程の普及率というところは50%だったんですね。それから、10%になりましたよね。ですから、シェアが非常に小さくなった。それが1つありますね。それから、LC20とLC50については後で若林先生から解説していただければよろしいんです。検討会のときには、毒性分科会というのがあって、そこからはどうしても、半分死ぬなんていうのはおかしいではないかと。要するにやっぱりどんなにしても、20%じゃないかというようなご意見があって、検討会では20%だった。もうそれ以後いろいろ検討して、50%というのがデータを出すのにもLC50とかEC50というような、50%ですね、半分というので。そのような条件になってからの計算があるやなしやは私も定かではないんだけれども、以前で計算したときにはあったことは事実ですが、ですけれども、それを下げるために10%にしたとかEC50に上げたとか、そういうことはないんです。すべてが入るかどうかというのはそれは疑問ですが、50%のときは確かに少々あったのは確かにございました。ということでございます。

【森田委員】 多分、登録保留基準のところで少し農薬に対して緩くしている部分が1つあって、それは水質の環境の基準点みたいな、そこのところをベースに考えます。

【須藤委員長】 そうです。

【森田委員】 だから、田んぼからすぐ、直近では考えませんというところが1つ緩くなっていますよね。一方で、何というか、LC50とLC20の議論は何かというと、多分、急性毒性で半数死ぬという、そういう毒性のエンドポイントと、EC50というような、影響が見えているだけで別に死ぬわけじゃないというやつを同じ水準に比べてしまっているというのは多分よくないので、したがって、LC側を、急性毒性で死ぬ方をもっと強目にして、バランスをとられようとしたんだと思うんですけれど。

【須藤委員長】 ええ、多分そうだと。

【森田委員】 多分ですね。多分、それは正しいアプローチだと思うんですが、ただそうなると結構きついよという話が1つと。それからもう一つは、10%とか、シェアが小さくなってしまえばいいよという、この議論は結構つらくて、要するに毒性を持っているものが物すごく分散して、ちょうどショットガンみたいに広がっていくんだけど、そういう誘導の方法で農薬の対策はいいのかというのはちょっと残りますね。それがずっとあって。ただ、こういう方向なんだと思うんですよ。だから、方向なのでいいと思うんですが、多分、ドイツなんかで実際にこれを運用しようとする国が、リスク便益アナリシスみたいなのを含めて運用するというのが1つが生活の知恵なんですね。そういう考え方、多分、今の段階で抜けていますけれども、何か入れた方がいいんじゃないですかね。今の知恵は水準点というところに入っています。だから水準点でなくて、もうちょっと便益みたいなもの、概念ですね、これ非常に扱いにくいのかもしれませんけれども、裁量行政というわけでは決してなくて、こういう分野は多分要るんだろうと思いますね。

【須藤委員長】 若林先生、今のでいいですか。先ほどの毒性のことを中心に。

【若林委員】 ECのあれですか。ちょっと振られたんですけれど、ではまた議論の誘導するという意味からもちょっと、それでは意を述べさせていただきますと、私自身はやはり今のお話があるにしても、少なくとも公共用水域の場所でいろんな生物がかなり大きなダメージ、EC50とかLC50というレベルで影響を受けるようなレベルにしては、私はまずいというふうに思います。
 やはりこのような生理活性がもともとあるものを規制するというのは非常に難しいということで、随分、最終的にいろいろご苦労されたというので、その点については敬意を払いたいと思うんです。
 多分、今の防汚剤の話と農薬の話というのは、1つ農薬の方がやりいいなというふうに思っていますのは、防汚剤の方ですと、要するに海環境でほかの生物と一緒になったところで同じ水の中にいるということに対して、農薬の場合には水田そのものを今生態系を保全しようという形でやっているわけではなくて、公共用水域、バッファー地帯、水路みたいなところも適用しないで公共用水域に持ってきているということで、私はこれからの対策として、ドイツでちょっと入れているようなバッファーみたいなのは入れられないのかと。より広げるような努力。多分、今の農薬というのは生分解性が非常によくなっておりますので、それから、土壌吸着性のいい農薬も結構多いという中で、休耕田や何かをうまく利用して、そういう形でやっていかざるを得ないんじゃないと。
 今のリスクベネフィットの話がございましたけれど、ある程度、例えばそれも入れられれば入れた方がよろしいと私は思いますけれども、そういうような対策をとる猶予期間みたいなものを持たせるみたいなことがあってもいいかなと。ただ、今、世界的なこういう状況の中で日本だけがこういう、ほかの分野でもそうなんですけれど、要するに開発途上国ですら入れつつあるこういう制度を全く日本の方は、全くと言ったらちょっと言い過ぎなんですけれど、入れないような状況というのはまずいので、やはり前向きに、少なくとも公共用水域では大きな被害が出ないという形をとっていってほしいというふうに思います。
 それと、あとミジンコで規制できるのかという話がありましたけれど、これはもちろんミジンコが第一消費者というような形で書いてありますけれど、これは例えば水産上、結構大事なエビ類の感受性に非常に近いというか、むしろエビ類はミジンコよりはもっと低い濃度で死ぬということで、そういう意味合いからも入れているところがございますので、別に、もちろんミジンコも大事に守らなければいけないとしましても、今回の枠組みの中ではむしろエビを考えて入れているものです。ヨコエビとかですね、淡水では。それから、海水になりますとクルマエビとかいろいろ重要な水産生物がいるということで。
 以上です。

【須藤委員長】 では、先にどうぞ。では中杉先生、次、岡田先生にお願いします。

【中杉委員】 リスク便益のお話が出てきましたけれども、これは実際に今、入れようとするとほとんど不可能であろうというふうに考えます。というのは、人の健康についてもリスク便益分析がよく言われますけれども、人一人の命の値段が幾らだという話にすぐなるわけで、ましてや生態系についてはわからないと思います。そこら辺をどう値段をつけるかというのは全く難しい所で、非常に議論を呼ぶところだろうと思います。
 便益について考えないという話では決してないんだろうというふうに思うんですけれども、それを定量的に、例えばリスク便益分析のところを持っていってやるには日本ではまだまだ距離があって、まだ少し先の話かなと思います。ただ、実際問題として登録申請されてくるときに、そのリスク便益分析は一応なされてくるし、またそれが出てきた段階で当然そういう主張はなされるんだろうというふうに思います。だから、それは定量的にいきなりあれが幾らだから、このリスクによる損失が幾らで便益が幾らだからという議論はまだまだ無理だろうと思いますけれども。ですから、ここで検討していく必要があるというふうに書いてあるぐらいの話ではないかなというふうに思います。

【須藤委員長】 ありがとうございます。では岡田先生が先ほど、手を……。いいですか。ではどうぞ、行本先生。

【行本委員】 まとめて評価スキーム体系図について述べます。野外試験のデータがございますね、環境省さんで試験された。それによりましても、水系生物に影響があったかどうかははっきりわからないというような結果で、生態影響評価は大変難しい分野なのだと思います。どこかで線を引かなくてはいけないと思いますが、急性毒性試験のAEC、この値だけで登録保留基準が決められてしまうというのがどうかなと思います。今、試験方法がまだ不確定な部分がある中で、AECだけでというのがちょっと危ないなというような感じがします。諸外国では慢性毒性の試験などが採用されておりますし、ここにも今後の問題ということで入っていますので、そういう試験も入る余地を残したものをここに採用していただくとありがたいなというような気がします。
 PECの方は、網かけした試験も、この制度が始まるときには決められるというふうに思っていますが、特にこの第1段階、先ほどのAECの問題と違って、中身に少し入るんですけれど、有効成分の投下量だけで計算されるんですね、あと茎葉散布か湛水散布かというような散布方法の違いによるファクターがちょっと入るんですけれど。実際の環境中で、こういうやり方もあるとは思いますけれど、私、散布農薬がどのくらい河川まで到達するかという場合、重要なファクターは、例えば水溶解度だったり、土壌吸着性だったりという化合物の特性だと思いです。それが一切ここに入れられていなくて、それは第2段階の、例えば水田使用の場合は現在のライシメータを使った方法が活用されると思いますが、このライシメーター試験で考慮される、ということになっています。もしそうであればこの数値計算を第1段階とするよりは、第2段階から始めた方が現実的かなというような気がします。第1段階では、この数式に、投下量が何kgか、それから茎葉散布かどうかという数字を入れるだけで恐らく結果が出ると思います。私の見方が間違っているかもしれませんが、そのように考えましたので、この数値計算による予測というのは余り実際的でないなと思いました。

【須藤委員長】 この環境データ、PECを算出するケースですね。PECを出す段階ですね。

【行本委員】 はい。第1段階ですね。
 特に非水田の場合は、今、第2段階の試験法がまだ検討中ということですが、むしろ第2段階の試験が実際に近いものになると思うんです。ですから、数値計算を第1段階として挙げてありますが、余り段階を追っていることになってないというのが私の印象です。数値計算を第1段階とするには、化合物の特性値なども入れた計算式とするといいかと思います。どうせ計算されるのならば、もう少し実際的なものというふうに思いました。

【須藤委員長】 どうもありがとうございました。
 どうぞ、ほかの先生方。では石井先生、どうぞ。

【石井委員】 まず、この制度が始まる、こういうことをやろうといったときに、私も本当に森田先生おっしゃられたようにうまくいくのかなという危惧は確かにあった。というのは、これをやりますと、試験としては3種類を代表として使える。これはもう世界的な動きですし、それはそれで、私はそれでいいと思うのです。問題は一番影響を受けるのは有機リン剤なんですね。有機リン剤を一番使っているのは水田。水田の有機リン剤はオールアウトなんていうことになってうまく制度が動くのかなというのと、先ほどの、ではこの計算式で実際やってみたらどのぐらいになるのかということは、やはりかなり大幅にシミュレーションしてみる必要があると思います。
 それから、さっきのLC50とかLC20の話ですが、私はLC20に反対した理由は、化学物質のいわゆる特性としての毒性を評価するのにLC20よりはLC50がいいという意味で反対したわけでありまして、LC50にしろと言っている、そんなつもりはなかったのです。
 それから、新規とか既存とかという話が先ほど事務局からありましたけれども、やっぱり取締法の骨子からいきますと新規も既存もありませんので、それはいずれ3年回ると登録は、再登録といえども検査をやらなければいけませんので、それはその差は区別をするなんていうことは多分法律上無理だと私も思っています。ですが、やはりこの計算式は、行本さんおっしゃったみたいに、あってもなくてもいいような気が私はするんですよ。結局、試験をやって、環境濃度を何か実験をやってやるというようなことはどうしてもやはり必要だろうと、そういうふうになってくるだろうと思っているんですよね。だから、Tier1、Tier2のところは、Tier2は多少実験が入っていますけれども、そんな気がしまして、Tier1で恐らく、ほとんどの農薬をひっかけられるようになっていると思うんですよね。外れるものはほとんどないと思います。そういう意味で余り意味がないということと、それから、新規と既存の違いというのはそこに大きなシェアの問題がありまして、新規なんてほとんど、ゼロですから、ゼロからスタートするわけですので、こういう計算はまず恐らく意味がないと思いますし、そういうことで、まずこの制度を動かしたときの影響をやはりシミュレーションしてみる必要があるなというのがまとめた感想です。
 先ほど、若林先生がバッファーゾーンのお話をされたんですが、日本でバッファーゾーンはなかなか難しいと思うんですね。水田、特に河川との間にすき間をつくるというのは、これヨーロッパではよくやれていまして、水田のないところはやりやすいんですけれども、日本でこれは難儀だなと私思っているんですね。できればいいですけれど。
 いろんなことを一遍に言いましたけれど、どうぞ次の方に。

【須藤委員長】 では岡田先生、どうぞ。

【岡田委員】 さっき紹介のあった亀若委員の件、ここに書いておりますけれども、結局、水産動植物というのと水生生物というのは分けないということなんですか。そこから言えば水産動植物に対して著しい影響となっていますよね。だけど、ここで言っていることからすれば、水産動植物と水生生物というのは別に区別しないんだというようなお考えでつくっておられるのですか。

【事務局】 いや、水産動植物という中で、魚類……、甲殻、ミジンコもそうなんですけれど。

【岡田委員】 のえさになる、と。

【事務局】 読める、考えることができるということです。
 その水産という意味をどう考えることによりますけれども、必ずしも水産というのはいわゆる漁業としてやっているということだけではなくて、もう少し広い意味も考えられますが、その水生生物、例えば水生昆虫とか、そういったところまでこの中で全然想定はしていませんので、そういう意味では今の枠組みの中での水産動植物というふうに考えて、その中でできるだけ広く考えていきたいなと考えております。

【岡田委員】 水生昆虫などは考えない。

【事務局】 それは少なくともこの試験生物には水生生物がありませんし。

【岡田委員】 この資料2の中で、欧米における現状で書かれているわけですが、我が国の特殊な環境条件、川が流れている。それから、田植えをやる。それから、林がいっぱいある。そういう特殊な環境条件というのは考慮すべきであるというふうに、3ページあたりに書いてあります。今度、24ページあたりになると国際的合意というものがありますね。日本の環境というのはどの国の環境ともみんな違って、環境への影響評価というのは私はもう環境の中で実際にもう、実際の環境の中で試験をすべきだと思っているし、そういうふうな主張をしてきたし、これからもするんですが、そういう日本の環境、特殊な環境条件でマイクロコズムだ、メソコズムだ、そういうところで試験系を、私たちそれを実際につくろうとしているんですが、そういうものができたときにそういう試験方法で国際的合意というのは要らないのではないですか。

【事務局】 まず、第1点の我が国の環境というのは、これはいろんないい面もありまして、例えば先ほどの説明でも申し上げましたけれど、例えば我が国は水田農業は大宗を占めるということで、よその国はそういうのがないから、PECなんかにはそういうのは入れてございます。
 もう一つ、川が急でということは、逆に言うと、それは急性影響で見るということです。ヨーロッパなんかはどちらかというと川がゆっくり流れるので、急性というよりも慢性影響で見る。ですから、エンドポイントなんかも慢性影響で見ているわけですね。急性データを使って不確実係数をうんと小さくして慢性影響を外挿するということをやっている点で慢性、それに対して我が国は急性で。ですから、不確実係数は10ということで、そういう意味でエンドポイントは欧米よりも1けた以上大きくなっているわけです。使うのは急性毒性試験であっても。それも我が国の1つの環境を考慮したということでいいと思います。
 2点目の試験系のお話は、これはやはり評価をする部分であって、実態調査としてその環境に影響があったかなかったとかという、そういう調査であれば、それは日本の環境について考えなければなりません。ある意味での1つの試験系としての、例えば今3点セットでやっていますけれど、もう少し個体群、ポピュレーションをベースにして影響があるかどうかといった場合に、例えばもう少し生物をふやすなり、あるいは同じミジンコでももう少しいろんな状況を考慮してやるということについては、やはりそれは国際的にも考え方というのはそんなにばらつくものではないと思いますし、今の3点セットでやることが、多分ここにおられる先生方も未来永劫これが適切というふうには思ってはいないと思うんですけれども、それに代わるもので、もう少し例えばこういう試験をやればこの影響濃度がわかって、この影響濃度をいかに管理すれば生態系に問題ないんだよというような試験ができれば、当然そのように変わっていくということはあると思うんですが、それはやはりそういう試験系というふうに考えた場合には、そこで用いる試験生物種、若干、国によって生物種に、例えばミジンコをオオミジンコにするか何とかということはあるかもしれませんが、その考え方というのはある程度共通にしていくべきであり、していかなければいけないものではないかなと私は思っております。

【須藤委員長】 どうぞ。今の問題でいいんですね。

【若林委員】 今の問題にかかわってくるんですけれど、野外調査で影響を評価することは難しかったという報告がございますけれど、私の記憶している限りでは結局毎年殺虫剤などを、除草剤などをまく水域を対象とせざるを得ないということで、もう既にまく前から……。

【須藤委員長】 影響を受けている。

【若林委員】 ええ、要するに生物層が非常にプアなんですね、甲殻類なんかおりませんし。それで1年目の調査が終わったときに、例えばそこに従来いた生物、あるいは上流にいるようなものをそのまま放流するか、あるいはケージなりなんなりで飼ってやるということはできないのかというような提案ぐらいまでしたんですけれど、結局そういうことはできなかったので、もともといないところにまいて調査をするみたいな、極論しますとそんなような調査になって、現場での評価は非常に難しかったという面がございました。
 それをちょっと補足。

【須藤委員長】 はい。

【岡田委員】 若林委員のところと、私たちの場合からするとちょっと違うんですね。私たちが試験している茨城県のあのあたりは小高い丘があって、田んぼがあって、川があってと、田んぼずっと繰り返して行くわけですね。その一つの水田層の一番奥、谷津田の一番奥なんですよ。ですから、上には林があるだけなんですね。前にはもっと上にも水田があったんですけれども、使わないからアシが生えたりいろいろ林みたいな状態で水田は、だめになった。試験田も使える範囲で一番上の使っていなかった水田で、そこには農薬が入っていなかったんです。そういう自然の、本当にもう家庭排水も何も入ってこない、そういうところの40aぐらいを使って農薬処理 をする。模擬水田ですかね、それが川(排水路)のような流れをつくる。そこで実際に生物の動きを見ている。もちろん入れる農薬の量、流れている水の量、それから農薬の濃度の経時的変化というのは、全部見て、試験をしているんです。去年と今年と試験をして、去年のデータはごらんいただいたはずですけれど、報告している状態です。

【須藤委員長】 ありがとうございます。
 では山本先生、どうぞ。

【山本委員】 農薬だけがいろんな化学物質の中で、今の生態影響について、食糧生産に使っているんだから別だと言えるようなもう時代ではないと。もう世界的にもそうだし、化審法の方でもいろいろ進んでいる、いろんな形でやっているわけだから、私はもうこういう状況で何か手を打っていかなければいけないというふうには当然考えているわけで。それで、しかも今回のこの提案というのが曝露量評価まで入れた評価にまでやっと来たなと。今までは毒性データだけが考慮されてきたが今回曝露量評価が入ってきたということで、まさに評価したいんですけれども。ただ、平成11年に須藤先生がおまとめになった第1次中間報告から見ますと随分後退しているなというのが実感であります。
 なぜ後退しているかということはいろんな事情があるんでしょうけれども、それを今ここでお聞きするということではないんですが、リスクというようなことについての考え方が、これまで普通に人に対するリスクということを考えてきたのと、生態リスクというのはちょっと別に考えないといけないと思うんですね。これは人は、人一人が何か影響があると、これはあってはならないというのは大原則で今まで走ってきていると思うんです。生態リスクと言ったときに、ここでリスク、リスクと言っているのは、僕はその種に対するハザードがその現場で起きるかどうかということだけが議論されていて、生態リスクという視点ではないのではないかと。生態リスクというふうな話になったときには、やはりその起きたハザードがその生態系全体にとってどういう意義を持っているのかというところまで評価した上で、こういった生態系は非常に都合が悪いんじゃないかというところに行かないといけないと思うんです。そういう意味で考えていきますと、今の急性毒性値で、そこで、例えば先ほど若林先生のお話がありましたLC20なりLC50の話がありましたけれども、これはどっちをとっても、そのハザードだけを考えている場合には問題だと思うんですね。非常にポピュレーションが多い場合にはLC90でも問題のない生物もおるし、非常にポピュレーションが少ない場合にはLC20だって非常に危ない場合もあるということは当然あるわけですね。そういう意味でどこをとるかというのは、まさにLC20かLC50かといったときには生態系の意義というか、シグニフィカンスを考えた上で決定されるべきものだろうというふうに考えております。
 結局、何が言いたいのかといいますと、このTierの問題でPECの方は非常に細かな計算でいろんなことがされているのにもかかわらず、その生態毒性の方のTierが全くないということが一番に感じた話でして。ただ、一番最初に申し上げましたように、これ何かやらないといけない、すぐにでもやらないといけないというような状況ではあるということから考えましたら、現在の農取法の中で何か考えていかないといけないということで、農薬環境管理室の方でも随分苦労されたんだろうと思うんですね。そういう意味で、前には水産動植物が出てきながら、23ページには、先ほど若林先生ご指摘のように、生産者、消費者という言葉が出てきたりというようなところがあるんだろうと思うんです。
 だから、結局最後のスキームの右の急性毒性値の絵が、右の箱の中で、下に括弧がつけられておって、こういった国際的に云々と、確立した段階で検討していくというように書いてありますが、実はガイドラインとしては一定のもので、これでやりましょうということはないのだろうけれども、試験方法としてはいろいろあって、ケース・バイ・ケースでEUでもEPAでもやられているわけですよね。実際にそういうデータが要求されているわけです。そうすると、こういう使い方をするのは、これについてはこういう場面で使うんだという、農薬についてはそういったものを直ちに入れていったらいいと僕は思うんです。いろんなタイプの試験があると思います。そういう試験をケース・バイ・ケースで入れるような、そういったことをこっちの左側のPECの方で、非水田のものをすぐにこの猶予期間に検討しないといけないというようなのと同時に、やはり僕は第2ステップ、毒性評価の方のTierの第2ステップ、あるいは第3ステップ、高次試験を、HARAPでもいろいろ報告は出ていますから、そういったところを入れるような検討をすぐにでも開始するというようなことを考えないといけないんではないかというふうに思います。
 したがってこの委員会が、おそらくこの登録保留基準の基準値を決める委員会がここか、さらにもう少し専門家で組織されるのかわかりませんが、そういったところのワーキング的なところで、こういう試験をすぐにでも整理して検討していくようなことが1つ必要だろう。高次の試験も必要ですし、それから、生物種についても今の水産動植物という観点から、農取法の中でやる以上はしようがないんですけれども、別の生物種も考えてみるというようなことだろうと思います。
 もう一点、24ページなんですけれど、真ん中あたりに藻類に対する不確実係数がありますよね。これ、緑藻全てが感受性が高いので1とすると書いてありますけれども、緑藻は決して感受性が高くなくて、セレナストラムが非常に感受性が高いというだけで、クロレラやクラミドモナスはうんと、セレナストラムに比べると100倍ぐらいは低いので、ここはちょっと表現は考えた方がいいのではないかという感じがします。
 以上です。

【事務局】 それは明記した方が……。

【山本委員】 いや、ここで当該試験種はというふうに書けばいかがでしょうか。何かそういうような表現だと思いますね。

【須藤委員長】 緑藻は……、当該試験種はですね。
 どうぞ、岡田先生。

【岡田委員】 私、生物屋なので非常に乱暴なことを言いますけれど、そのLC20もLC50もLC90もというのは、出すときはLC50というのが妥当なところだと思いますけれど、だけど生態系あたりで何%の死亡率が出たといったって、次の世代はみんな前の世代とすっかり同じになるんですよ。

【山本委員】 だから、それは私申し上げたようにその種によって、ポピュレーションの多いスピーシーズは、LC90でとったって、また十分、時期というか、次のシーズンというか、もとのレベルに戻るし、非常にポピュレーションの少ないようなスピーシーズがあれば、LC20だって回復不能なやつもおるというようなことは当然、私も微生物生態学ですけれども、それはそういう場面というのはあると思うんですよね。
 だから、一律にどれでいくかということ。ですから、まさにここのファーストTierでやるところのLC50とかLC20とかで使うのであれば、これはまさにファーストTierの大ざっぱなスクリーニングであって、やはりそこでどうもここは危なそうだぞというやつはきちんとハイアーTierにいかないといけないのではないかという、申し上げているのは、先生がおっしゃるのと同じ意味です。

【岡田委員】 それで結構なんです。だから、釈迦に説法するつもりはないんですけれど……。

【山本委員】 そんなつもりはないんですけれども。

【岡田委員】 卵を20産むやつも卵を1万産むやつも一世代経過して、次の世代に継承する、親になったときには一対になっているのが普通なんですね。これが減ったりふえたりしたら絶滅するか暴発するか、どっちかであって。

【山本委員】 そうですよね。

【岡田委員】 これが生物……。

【山本委員】 おっしゃっていることと同じことを申し上げているつもりなんですけれど。

【須藤委員長】 では金森先生いかがですか。

【金森委員】 従来から農薬の生態系への影響については色々と懸念され、登録保留基準の枠組みに対する問題意識が消費者側にも少なくありませんでした。当局および関係各位のご尽力によって、この問題が色々と検討された意義は大きいと思います。検討結果をベースにして今回、登録保留基準の枠組みを改訂することは、生態系を保全するうえで必要なことであり賛成です。

【須藤委員長】 要するにこういう水産動植物に対しても……。

【金森委員】 はい、登録保留基準値の審査の際に、水域生態系への影響についてこれでいいのかと不安感を抱く例もありますから。

【須藤委員長】 あれは人の健康ですよね。

【金森委員】 ですからそういう意味では、遅ればせながらというと大変申しわけないですけれども、踏み出すということは非常に貴重ではないかと思うんです。
 ガイドラインなどもどこまで日本の参考になるかわかりませんけれども、ワーキンググループなどですぐに検討していただきたいですね。最後にお聞きしようと思っていたんですが、改訂はいつ頃を目途に考えていらっしゃるのでしょうか。

【須藤委員長】 それは皆さんのご審議がある程度進んだ段階で、今後の予定で、これ専門委員会なので、この審議結果については部会に上げないといけません。部会のご審議を再度仰ぎ、諮問、答申というのは部会からいたしますので、今日は専門の部分をやらせていただいているわけですから。

【金森委員】 そうですね。多分、国民のニーズとしてはこういう枠組みに早く、改定してほしいという意向が強いと思うんですね。ですから、数値についてはさらに議論が必要であったら、データもまた精査しなければいけない部分もあるかと思うんですけれども・・・。
 それから、日本独自の環境特性もあるかと思いますが、大きな枠組みは国際整合化していく潮流ではないでしょうか。なお、先程、第1次中間報告より、多少後退なさったところはあるというご批判はありましたけれども……。

【須藤委員長】 いやいや、かなりあります。

【金森委員】 でも、新しい枠組みに踏み切ることが一番期待されていることだと思います。

【須藤委員長】 どうもありがとうございます。伊東委員、どうぞ、もしございましたら。

【伊東委員】 専門じゃないので中身についてははっきり理解できないところも多いのでございますけれど、全体のお話を聞きまして、私ども農薬を使う立場から……。

【須藤委員長】 そうですね。

【伊東委員】 いずれにしろ、既登録の農薬を含めて3年ごとに更新というところに、こういう基準ができたときに、一部登録の保留で結果的に登録農薬から失効になるというような場面もあるのではないかなというふうに思いますけれど、その辺のところ、特に水田だとか、各県で主要に使っているような農薬は、万が一ですよ、こういうあれで失効になったとき、水産動植物ですからその辺の影響というところで影響はそう大きくないとは思いますけれど、いずれにしても失効したということになると、今まで使っていた農薬ということで、別の意味のまた反響で大げさに農薬、今までひどいのを使っていたというようなとらえ方をされないようなこともちょっと考えて。実際にどういうのがどういうふうにひっかかってくるのか。

【須藤委員長】 これはもう少し進めていかないと。

【伊東委員】 これからシミュレーションしていくような話もありましたので、その辺特に、県によって同じ水田の殺虫剤でも、メーンの薬はちょっと違うんですけれど、全体をならすと普及率はこんな程度だということはよくわかりましたけれども、その辺のところをちょっと事前に、少し……。

【須藤委員長】 もう少し明示しておいてほしいということですね。

【伊東委員】 と考えています。

【須藤委員長】 ありがとうございます。櫻井先生、何かございますでしょうか。

【櫻井委員】 まず最初に、ちょっと疑問がありましたのは、この生態影響野外調査結果の問題なんですね。その疑問というのはもう既にお答えが出ているんですが、このやった場所がどういう場所であったか。もう既に過去の曝露の影響を受けていたところだったのか、そうではないのか。もし過去の影響を受けている場所でしたら、若林委員おっしゃったとおり、単回曝露、こういう実験で影響が出ないのも当たり前かもしれないと。でも岡田委員がその場所は過去の影響を受けたところではなかったということ。

【須藤委員長】 それは岡田先生がやられた場所はそうなのですよね。今、当方でやったのは長野県なんです。

【櫻井委員】 これはそうではないですか。

【須藤委員長】 違うんです。

【櫻井委員】 ああ、そうですか。

【須藤委員長】 ちょっとそれはコメントしていただいた方がいいかな。環境省、いや、私がこれも答えてはいけないのだけれども、こういう場所を選んで、県やさまざまなご協力をいただく場所というのは広範囲でもございますし、なかなか難しい点がありまして。長野県がそれに協力をいただいて、これだったら何とかいけるかなと思う場所なんですけれども。あとどうぞ。
 今のぐらいで答えは、過去の影響を受けている場所ですよね。過去のといってはおかしい。否定できない場所ですね。

【櫻井委員】 それではついでに質問で、調査対象生物種というので水生昆虫類136種と、いろいろ書いてあるわけです。生物の多様性という意味で、最初の段階のそのデータを専門の方がどう評価されたのか。つまり、多様性が十分保たれている場所だとお考えだったのかどうなのかというのを。

【須藤委員長】 これはそうではない。

【若林委員】 わからない。

【須藤委員長】 わからなかったのね。

【若林委員】 いや、私は……。

【須藤委員長】 そのデータは、ここの場で解析は、毒性分科会ではやらなかったのね。それは、ではそちらでお答えください。多様性が十分確保されている場であったかどうか。

【事務局】 多様性がどうかという問題に関しては、詳しくモニタリングワーキングでは検討しなかったのですが、野外調査において、調査地域の中央部を幹線排水路があって、そこがメインの調査地点ですが、その対照区として通常農薬が使われていないような場所からその川に流れ込む河川でも調査を行い、そこでの生物種の変動に対して、幹線排水路において農薬の散布前後の変動がどうであったかというような比較の仕方をしましょうというのがこの調査の趣旨でありまして、農薬が流れ込むような河川と、対照区の河川では、住んでいる生き物の種類も違いますので一概には比較できないんですが、対照区と比較してみても農薬による著しい影響が見られませんでした。従いまして、生物種が多様なのかということに関しては議論がされなかったという状況です。

【須藤委員長】 よろしいでしょうか。

【櫻井委員】 大変、その判断は難しいなというふうに思いますが、そうした中で私は当然こういう方法を取り入れて、管理の方向に踏み出すことに大賛成。ですけれども、懸念が絶無かといえばそうでなくて、やはり当面、若干その散布する薬剤に困るというようなことになるのかならないのか。十分、代替薬剤が準備されていて、アウトになるものがあったとして、それで大きな混乱もなしにそういうふうに移行できるならば何の問題もない。

【須藤委員長】 先ほどの伊東委員のご心配ですね。

【櫻井委員】 ええ。そうでないならば、段階的に移行するとか、懸命な判断をするべきなんじゃないかと。それ以上、ここに出ているデータではちょっと判断ができないというのが私の感想です。

【須藤委員長】 どうもありがとうございました。
 安藤先生、どうぞ。最後になってすみません。

【安藤委員】 各先生方と大体意見は同じなんですけれども、基本的にこういう考え方、生態影響というものが必要だということは、前々からこの部会では議論しておりましたし、私もそう思いました。ですから、そういう点では非常にご苦労なさったなということは全くそのとおりだというふうに思うんです。ただ、幾つかやはり、ちょっと大丈夫かなということがございまして、それは森田先生、あるいは石井先生がおっしゃいましたけれども、既存でもう使われている農薬でひっかかるものはえらく出てくるんじゃないかという気がどうしてもしてしまう。つまり幾つかのシミュレーションをやはりやっておかないと、アウトになるのはかなり出てきてしまうのではないかなという、そんな気がいたします。
 それから2番目としては、これは人の健康影響がまずあって……。

【須藤委員長】 そうです。

【安藤委員】 その後、これが来るわけですね。

【須藤委員長】 そう、いや、同時というか。

【安藤委員】 同時なのですか。

【須藤委員長】 新規では同時ですよね。

【安藤委員】 新規の場合は同時になるわけですか。
 そうしますと、人の場合は慢性的なお話ということがあって、これはどちらかというと急性という観点ですよね。ですから、それから考えると、いろいろな見方をするという観点から考えるとリーズナブルなのかなという気もいたします。
 そこの考え方がまだちょっと、私、整理ができていないということがあるんですが、そういう状況があって、具体的にこの第1段階、第2段階、第3段階ということを考えた場合、人の曝露形態でも、あるいは健康影響を考えた場合でも具体的にTier1的な評価というか、シミュレーションというのはなかなかできていない。なおかつ、これを生態系に応用しようという考え方はわかりますが、なかなか難しい問題があるのだろうなと。かといって、やらなきゃ先に進みませませんから、それは非常に結構なんですが、どうしても第1段階でそこでひっかける、ふるいにかけてしまおうという話だけでは進まないのかなという気もいたします。
 そんなことを思うわけですので、具体的に動き出すについてはある程度フレキシブルな対応ができるような書き方というか、そういうことをしておいた方がいいのではないかと、そんな気がいたしております。

【須藤委員長】 ありがとうございます。
 では、どうぞ中杉先生。

【中杉委員】 私のあれは、今の安藤先生のご意見に絡んでの話なんですけれど、私のTier1の解釈は、試験をやらなければいけない物質を選ぶということで、その段階でいいか悪いかの判断ではないのだろうと思うんですね。そういう意味ではそこで出たからいいという話ではなくて、かなり広い範囲、先ほど落ちるものはほとんどないという、石井先生が言われたかと思いますけれども、それはそれで試験をしなくて済むものは除いていこうという判断で、それはそれでいいのではないかなというふうに思います。
 そのほかの部分を私もこれもちょっと全体を読ませていただくと、いろんな設定が平均的なところでやられていますよね。予測のところでも、日本全国、平均的な設定の中でやっているというところがありまして、それでは本当に日本全国平均なのかというような話があります。この農薬の普及率、私の解釈が間違っているのかもしれませんけれども、畑地農薬の場合には、農薬というのは作物と非常に密接な関係があって、作物の畑というのは地域によって物すごくばらつきがあるはずなので、そういう意味では、そういう面から見ると本当にこの畑地、水田使用農薬が5%以下ということで言えるのかどうかというのは少し疑問があります。そうはいいながら、一応の管理としてはこんな形でやっていくのだろうと。先ほど山本先生がほかの生物への影響もと言われましたけれども、それでは現状ではルーチンにそういう試験対象でやられるようなところがあるかという話……。

【山本委員】 もちろん。

【中杉委員】 そんなことも踏まえますと、これで仕方がないのかなと、これはこれで仕方がないのかなと思っています。
 ただ、ちょっと気になるのは、登録後の管理という、リスク管理というところが非常にあっさりと書かれていて、そこをもう少しうまく活用するべきであろうと、そこがもう少し書き込まれるべきではないかというふうに私は考えています。
 ここで審査で落としてしまったものを、登録後の管理のところで何か拾っていくと、そこをフェアにしないと、やたらと前が厳しくなるだけになってしまうし、うまくそこら辺のところをもう少し書き込んでもらいたいなと思います。この辺がよくわからないので。今回は当面の、特に対象になっていないんですけれども、そこら辺をもう少し考えていく必要があるなと思います。
 もう一つ言いますと、既登録農薬の扱いについてモニタリング調査結果を活用すると書いてありますけれども、ではモニタリングって、だれがどういうふうにやるんですかという問題が残ります。これも農薬の環境濃度は、ご存じのようにはかるときによって違いますから、そこら辺にあるデータを持ってきても何の意味もならない。ではこれはどういうふうにやるんですかというようなところも、もう少し、今の段階で書き込む必要はないのかもしれませんけれど、実際に使っている段階をどう管理していくか書くべきであろうと思います。これは既存の審査の場合も含めて、もう少しきめ細かく検討していく必要があるんだろうというふうに考えています。

【須藤委員長】 ありがとうございました。
 それではすみません、では森田先生と岡田先生続いて、もう予定した時間が近づいてきましたので、どうぞお願いいたします。まだほかに。よろしいですか、では森田先生と岡田先生にお願いします。
 では、森田先生から。

【森田委員】 最初の発言は少し私の理解の不足で、もうちょっと、要するに今使っている農薬が使いにくくなるのではないかと思っていたんですが、実はそうではないみたいですね。

【須藤委員長】 そうじゃないですね。

【森田委員】 全然、そうじゃなくて、生態毒性の評価については大体PNECと、それからPNECと呼ばれるような無影響濃度、あるいは最大無作用濃量というNOECみたいな、それと、それから予測されるPECを比べて、それでそれが無影響濃度を超えているときは影響があるという、そういう判断でやっている。

【須藤委員長】 そうです。

【森田委員】 よく後ろの方を読んでみると、PNECでもなくNOECでもなくて、通常、PNECとかNOECというのは影響レベルの10分の1とか100分の1ぐらい設定されていますので、実は農薬だけ10倍とか100倍緩くしてしまっているんです。

【須藤委員長】 そうです。

【森田委員】 そのために、決して現状の農薬がひっかかることがないという構造だというのに今気づきました。

【若林委員】 いや、ひっかかりますよ。

【須藤委員長】 少しは……。

【森田委員】 ひっかかりますか。最初の、前進だという意味はそういう意味だったんですね。
 ちょっとそんなので、第1段階、こういう形で進んでいくというのは悪くないかなというものはちょっと理解したと。

【須藤委員長】 前言とちょっと意味が違う。

【森田委員】 違うというところをやっとわかったんです。

【須藤委員長】 そうですか。それは説明が足りなかった。事務局が悪いですね、ここは。すみません。ではどうぞ。いいですか、そこまで。

【森田委員】 それであと、最初の議論で亀若先生がおっしゃっていますが、LC50とそれからEC50とを並列に並べているというのは、原理的には余り正しくないかもしれませんね。EC20とかなんかの方が概念としてはいいかもしれない。

【須藤委員長】 無影響濃度と……。

【森田委員】 ええ。それが1つと、それからもう一つは、ちょっと少し将来的に考えていただきたいのは、やっぱり農薬の実態というのに配慮するということを組み合わせながらだと思うんですが、諸外国はNOECとかPNECを基準にして今考えているというふうな、国際的な流れもいずれ入れていくような方向が要るんではないかというのを少し考えていたんです。

【須藤委員長】 ありがとうございます。

【山本委員】 ちょっとよろしいですか。ごく簡単に。
 私もPNEC、NOECでいいと思うんです。ところが、フラスコの中の試験でPNEC、NOECをとったのでは意味がないということをさっき申し上げて、ハイアーTierできちんとそこらあたりを押さえないといけないのではないかという、そういう意見です。

【須藤委員長】 そういう意見ですね。ありがとうございました。
 では岡田先生、どうぞよろしく。

【岡田委員】 この別紙の評価スキームの体系図というので、どういうふうに実際に進めていかれるのかということなんですが、その環境中予測濃度のPECの方も、第2段階、第3段階で黒くなっている。まだ、方向がわかっていないというところがあるし、それから、急性影響濃度のAECの方でもやはり実環境に近い試験系での試験を考えておられると思うんです。そのときに急性毒性試験の数値で農薬登録保留基準を設定しまうと、そのデータだけが先に走って、後で困るようなことは起こりはしないかということなんですけれど、どういうふうに進めるかがわからないので、どういうふうに進めるかということと、それから、今の最後のところもお答えいただけたらと思います。

【須藤委員長】 それは一応、皆さんの議論を聞いてからお話をいただこうと思ったんだけれど、それも含めて先にやっちゃってください。

【事務局】 まず、今のお話でPECのところのこの網かけの部分はTierといいながらも、欠けた部分でございます、これは早急につくらなければいけないと。これは公正じゃなくなってしまいますので。
 それで、さらに、当然、場合によっては第2段階とかでひっかかったものは第3段階のガイドラインがないと登録できない場合も出てくるわけですから、これはつくらないといけない。さらにガイドラインをつくってから当然それを踏まえて、準備期間というかデータ作成期間がございますので、それは経過期間というふうにみなくてはいけないということを考えております。
 ただし、この右側の方のこれは、これをちょっとこちらのように直接的に今こういうものがというところが今なくて、これは、今、山本先生からご指摘にありましたようにもちろん検討していくつもりではありますけれども、これがないがためにこのスキーム全体がいつまでたっても動かないということは、これはちょっとどうなのかなというふうに思っています。
 それでおっしゃったように3点セットで当面スタートし、その後で新たな知見得られたらら基準値が変更することはあるのかということであれば、それは当然そういう新たな試験方法で確立されたものを使って、より実態に近いデータとして出てくれば、その場合は基準値が変わるということは当然あり得る話です。ただ、これが事務局としてもいつまでにできるかということがわからない状況において、もちろん検討はするにしても、それができるまではずっと制度として動かないということは、それはちょっと幾らなんでもこういう状況でありますので、とりあえず当面この先ほどのペーパーに書いてもございましたように、これでやっていった上で新たな知見でそういうものが、これに代わるものが出てきたら、その段階で、それが要するに真の値に近いということでしょうから、それは基準値が変わるということはあり得るというふうに考えたらいいんじゃないかと思っています。

【須藤委員長】 ありがとうございました。大体予定した時間に近づいてまいりまして、多くの先生からこの問題についての懸念あるいはご心配、あるいは、本当に運用できるのかどうかというようなところまで言及していただいたものもございますし、それぞれのお立場で100%これでよろしいとおっしゃった方は多分どなたもいらっしゃらなかったろうと思います。
 これは検討会のときからずっと続いている問題でございます。最初の報告書は大変よかったけれども2番目の報告になってから随分悪くなったのではないか、トーンダウンしているじゃないかというようなご指摘は、山本先生から今直接いただいたわけですが、ほかの先生からもたくさんそれはいただきました。
 というのは、当然、生態系影響を化学物質の中で入れていくというその理念については、最初の報告書を読んでいただければおわかりのように大変立派に書けていると私自身も思いますし、座長をおあずかりして、その段階では大変自慢するようなストーリーでもあったと思います。しかしながら、これを制度にのせていくという段階になりますと、早々理想どおりにいかない。例えば、今、いろいろお話がございましたように対象水域やら、それから対象生物やら、それから試験生物やら、さまざまなことによって問題が出てくる。また不確実係数をどうするか、その試験も、毒性でとるのか慢性でとるのか、一つ一つ挙げていけば切りがないほど、枚挙にいとまがないわけでございました。しかしながら、何とかこれをある程度出発させようということになったときに、まあまあ大方の合意とは言いませんけれども、概ねご賛成を得られる程度のところにまとめ上げたのが今日の事務局からのご説明であったかと思います。
 ということで、こういう問題というのは行政の継続性やら行政の制度として進んでいる問題なので、100%ご満足いただけないのは私も十分承知はいたしておりますが、今、先生方がおっしゃっていただいたような部分で、部分的に直さなくてはいけない部分も多分あろうかと思います。あるいは字句等も一部修正しなければいけない問題は多分あるだろうと、こういうふうに思います。それから、私自身もこのような、先ほどいろんな先生にもおっしゃっていただいたんですが、試験方法は、第2段階以降がございません。そういう第2段階試験、例えばマイクロコズムだ、メソコズムだの、模擬環境だの、そういう試験方法自身は、言われてはいるものの、なかなか我が国では、岡田先生は進めてくださっているわけですが、なかなかそういうものも実際にはございません。そういうものの試験研究も多分必要であろうというようなことも1行ぐらい入れてもいいのかなという気もしております。
 そういうことを考えて部分的な修正をやらせていただくということで、この原案を大体お認めをいただけますでしょうか。
 ということでよろしいでしょうか。どうぞ。

【山本委員】 このさっきの、私、何度も言っているようですが、毒性評価のところの括弧の中で「国際的に合意が得られたものが確立した場合には」という非常に回りくどい言い方で、しかも導入を検討というのはどうもやらない、余り当面やらないというようなふうに聞こえるんですが、そんなことではないですね。

【須藤委員長】 それはない。

【事務局】 それはないと……。

【山本委員】 私はむしろ、このPECの方で網かけをかけてある程度に括弧を外して、網かけをかけるぐらいでTier2とか、何かそんなような形まで入れておかないと、今度新しい検討会ができても、やはり先生がこの3年間苦労なさったようになかなか前へ行かないと思うんです、そこが。と思うんですが、もう時間もないのでこれ以上言えませんけれども。

【須藤委員長】 それはよろしいね。

【事務局】 ただ、それは検討しますけれど、PECのような具体的にこういうものがあってというところまで……。

【須藤委員長】 持っていけるかどうかは。

【事務局】 それはなぜこう書いたかというと、やはりそれだけきちっとしたものではないといけないということです。この基準値のベースになるものなので、余りふわっと書いて、先生方からまたいろんな意味であやふやな解釈をされても混乱すると思うので、こう書いたものです。

【須藤委員長】 あいまい過ぎるかもしれませんね。

【事務局】 これはもう本当にPECが比べるべき基準値となるものでありますので、そういったものとなり得るものということで書いた。もちろん検討しますけれども、今、こういった原案があって、これをやればこれになるんだというようなものは事務局としてないものなので、しかも我が国だけでこういうものというふうに言っても、これらは結構国際整合の話もありますので、こういうふうに書かせていただきました。
 検討しないということではないんですけれど、ただ、PECの試験ガイドラインと同列に今ここにすぐにでもできそうな形で書けと言われると、ちょっとそれはまたいろんな意味で誤解を生じますので、それがなければいつまでたってもこのスキーム動がかないという話になりますので、そういう意味で、持って回ったかもしれないんですけれどもこういう書き方をしました。
 ですから、PECの試験ガイドラインと同列の意味でここにこう書けと言われると、それはちょっと私ども1年ぐらいでできるかどうかというのは非常に自信がないので、それを今、ここに書くべきということになるとそれはなかなか困難だと……。

【須藤委員長】 課題には書いてあるから。

【事務局】 課題には書きますけれども、スキームの中に同じようなので今書き込むという話になりますと、ちょっと……。

【須藤委員長】 義務が生じてしまうし、それで可能性、やっぱり今からやるには展望がないといけないね。

【事務局】 ええ、それはもうある程度の原案があって、それで3点セットに代わる試験としてそれにより影響濃度に関する数値が出て、これで影響濃度だというようなものがある程度あればいいのですけれども、いろいろと私も勉強させてもらっていますけれども、直ちにそういったものでここに置き代えるような、原案みたいなものは今の段階でまだまだすぐにあるとは思えないので、今の段階でそこまでここに書き込んでしまうと、かえって混乱を生じてしまうのではないかなと思います。検討はしますが。

【須藤委員長】 検討はいいとして。行本先生、簡単にお願いします。

【行本委員】 この試験ですけれども、例えば農薬開発する企業の方でこういった毒性試験、もう少し実際の圃場に近いような試験をやってきたとして、正しい結果をあらわすような試験であれば、その辺もちょっと検討するような、できるような余地を残せないでしょうか。基準値という数字であらわすのにちょっとそぐわないかもしれないですけれども、企業によってはいろいろな試験をしてくるのではないでしょうか。それらを、だめですよというよりは、そういうのは今後試験法の確立に役に立つかもしれないし、データを蓄積する必要もあると思います。そういうのをここに何らかの形で入れておくといいかなというふうに思います。

【若林委員】 ちょっとよろしいですか。すぐに終わります。
 今の枠組みはあくまでも一過性に、急性に散布したときに、水産上重要なものに対する影響で、生態系が入っていないわけですよね。生態系保全とか、そういうことでやっていくわけじゃないこの今の図の中で、変に入れることはかなり難しいような気がします。

【行本委員】 いろいろあると思うんですが。

【若林委員】 それで、通常はPECとかPNECとかそういう形で、むしろ慢性的に影響があるときにやるということなんですけれど、今のPECは長期影響というのはなかなかできないよと、長期的な濃度予測はできないよという中もありまして、それから、農薬というのはかなり一過的に作用すると。必ずしもそうではないんですけれどね、現実。その中でできている枠組みの中での試験方法だということでございます。

【須藤委員長】 ありがとうございます。
 今の行本先生のご意見は、実は第1次報告書をそのまま今度の実験調査に移していけば生態系影響というになるだろう思うんですが、それを制度にのせるような試験法というのは不十分であったというためにこういう形になってしまったので、この中の検討課題でも当然です。
 一応、制度としてこういう形で水産動植物の影響を登録保留基準の中に考慮していくということをスタートさせるという意味での答申ですか、これは土壌農薬部会がいたしますが、これを具体的にいろんな審査をいただくのは今度先生方でございます。何回もこれからはいろいろ審議する場、あるいは試験法等についてもお願いをしなければいけない場面というのも、また同じ委員会になるかどうかわかりませんが、とにかくそういう形で進めていく、いかなればいけないと思っております。
 ということで、多分、これからずっと審議していっても何時間でもかかるほどの内容なんですが、とにかくどこかで区切りをつけて、次の問題は次に移すということという段階をやっぱり踏んだ方が私はよろしいかと思います。専門委員会でございますので、この辺のところでご了解をいただいて、修正はもちろんいたしますが、ただ、全部先生方のご意見を入れられるかどうかというのは事務局と相談しますし、速記もとっておりますので、ここはこういたしましたということについては後でご連絡はいたします。
 ということでよろしゅうございましょうか。

                 (異議なし)

【須藤委員長】 大変、委員長として勝手ではございますが、これを前に進めなければいけないということもございますし、実際にはこの問題、いろんなところでいろんな形で3年間、4年間、審議をいたしてまいりましたので、不十分なことは十分承知はいたしておりますけれども、とりあえずこの段階でスタートさせていただくということでご了解をいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 ということで、その他をどうぞ。これからの進め方をお願いいたします。

【事務局】 今、委員長からお話ありまして、一部修文等という必要があるところをした上で12月5日の土壌農薬部会にご報告させていただきまして、告示改正という形で、これは枠組みの改正でございまして、農業資材審議会の諮問事項でございますので、農林水産省の方に開催をお願いをしています。12月の第2週もしくは3週ということで調整してもらっておるところなんですけれども、まだ、いつかというところは決まっていないんですけれど、いずれ開催がありますので、資材審議会の諮問答申を経た上でパブリックコメントをして、最終的には告示改正をしていくというふうに考えております。

【須藤委員長】 よろしゅうございましょうか。
 あと、特にその他はほかに。どうぞ。

【事務局】 ちょっと1点、資料の修正を。資料2の参考資料の3ページに、農薬安全使用基準というところがあるんですが、そこの真ん中に【水産動植物の被害の防止に関する安全使用基準】(農林水産省公表)とあるのですが、そのイのところで、下から2行目に「空容器、空袋等は、焼却等により」と書いてあるんですが、今、廃掃法の関係で焼却だめということになっていまして、実際は「廃棄物処理業者への処理の委託等により」というふうになっているものですから、その点をちょっと、物は具体的なものをお配りいたしますので。

【須藤委員長】 はい。では、その修文の部分は、大事なところでありますので、お気づきにならなかった方もいらっしゃると思いますので。
 それでは、これで会を閉じてよろしいですか。いいですか、これで。

【事務局】 はい。

【須藤委員長】 それではまだ議論不十分な点もございますが、本専門委員会はこれからもこの問題についていろいろな形でご協力をいただいたり、またご審議に加わっていただくようになると思いますので、これをもって終了させていただきます。
 どうもお疲れさまでございました。