中央環境審議会水環境部会水生生物保全排水規制等専門委員会(第7回) 議事録

日時

平成18年9月13日開催

場所

環境省 水・大気環境局 水環境課


議事録

午後4時30分 開会

○高橋水環境課長補佐 定刻になりましたので、ただいまから第7回水生生物保全排水規制等専門委員会を開催いたします。
 本日は委員11名のうち8名の皆様にご出席をいただいておりますので、専門委員会開催の定足数を満たしております。
 私は、この7月より前任の村山の後任として環境省水環境課で排水基準担当の課長補佐をしております高橋でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、委員会に先立ちまして、水環境課長の望月よりごあいさつを申し上げます。

○望月水環境課長 7月から水環境課長になりました望月でございます。よろしくお願いいたします。今日は、足元の悪い中、緊急にお集まりいただきましてありがとうございました。少し経緯をお話しながら、ごあいさつにかえさせていただきたいと思います。
 この専門委員会は、16年8月に水環境部会から諮問を受けまして、今回、水生生物の保全にかかわる排水規制等のあり方に関する諮問ということで、6回、専門委員会を開催させていただきまして、今年の4月25日の第6回をもちまして報告書をつくっていただいたわけでございます。それを受けまして、7月28日に中央環境審議会の会長に報告し、同日付けで大臣に答申がなされたという経緯がございます。この段階で暫定排水基準もつくられまして、業種等も確定したわけでございますが、その後、その確定した暫定基準の業種をあてはめたところ、下水道業でその辺の調整がとれていないところがございましたので、きょうはその辺についてご報告し、その方向についてご審議をしていただければありがたいと思います。
 少し手間がかかっておりまして、皆様には本当にご迷惑をおかけしておりますけれども、どうぞご容赦いただきまして、今日の審議を進めていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○高橋水環境課長補佐 それでは、議事に入ります前に、本日お配りした資料を確認させていただきます。
 お手元に本日の配付資料として、資料1から5、参考資料1と2という形で、全部で7種類の資料を、議事次第と資料の一覧のペーパーが一式として配付されておりますけれども、漏れ等はございませんでしょうか。
 あと、当方の不手際で、酒井委員の所属について、旧所属をそのまま書いておりました。次回以降修正させていただきたいと思います。本日は大変失礼いたしました。
 また、本日は会場の都合でマイクが各テーブルに1本ずつという形になっておりますので、ご発言なされるときには手にとっていただいてご発言いただければと思います。ちょっとご不便をおかけしますが、よろしくお願いします。
 それでは、議事運営規則に従いまして、本委員会の委員長でいらっしゃいます松尾先生に、今後の議事進行をお願いいたします。

○松尾委員長 皆さん、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。少し遅い時間からでご迷惑をかけたかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。
 本日は第7回の委員会でありますが、前回に引き続いて議事の進行を円滑に進めるようよろしくお願いしたいと思います。
 議題の1が下水道の暫定措置についてということであります。その前に、資料2がありまして、これが第6回水生生物保全排水規制等専門委員会の議事録になっております。この議事録については既に委員の皆様方に個々にご確認をいただいて、既に環境省のホームページに載っているものでありますので、ここでは議事録の確認は省略させていただいて、先へ進めさせていただきたいと思います。見ておられてもしも何かお気づきの点が改めてあれば、どういうふうに修正するのかわかりませんが、事務局へお申し出でいただくということで、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、本題に入って、資料3にかかわると思いますけれども、暫定基準の設定について、事務局からよろしくお願いします。

○高橋水環境課長補佐 それでは、資料3についてご説明をさせていただきます。
 当資料は、第5回委員会の中で資料4という形で、この委員会から報告を策定するにあたりまして、暫定基準を設定することについての確認のために既に一度お配りして、議論していただいている資料でございますが、前回から少し時間があいているということで、下水、亜鉛に関して、どのような考え方で暫定基準を設定したかということについて、確認の意味で本日この資料を配付させていただいております。
 1の業種選定の基本的な考え方ということで、亜鉛は排水処理の困難性の認められる業種であって、特に亜鉛を専ら使用している業種、キレート成分などを多く含む排水処理が困難な業種、それから、「電気めっき施設」とか「酸又はアルカリによる表面処理施設」等を有して、こういったことでデータにバラツキがあって、排水源が多岐にわたるなどの特性があるものであったということ。
 それから、鉱山系の業種、特に休廃止鉱山等からの排出が認められるということ。さらには、電気めっき業等で小規模かつ零細な企業が非常に多いことなど、こういった背景のもとに暫定基準の設置を検討したということでございます。
 それから、業種選定のイメージとしては、これまでの企業等のヒアリングから、鉱業、めっき業、表面処理、無機化学業などが該当するということで、3番に、今回の暫定排水基準を設定した業種の事業名を並べております。鉱業関係、めっき、表面処理関係、それから、無機化学系の業種が最終的に暫定基準の適用を受ける業種として選定されております。
 4番が暫定基準値でございます。現在、これまでの一律排水基準値である5㎎/lを基本とするという形で、これをもとに報告書、さらには報告、答申という形で最終的にいただいているということで、確認のための資料でございます。
 何かございましたら、よろしくお願いします。

○松尾委員長 今、ご説明がございましたように、既に皆様方一度この委員会でも検討したことでありますけれども、ちょっと思い出していただくという趣旨でのご説明だったと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、次の資料4に入りたいと思います。これについては、国交省からご説明いただきましょうか。
 よろしくお願いします。

○那須下水道技術開発官 よろしくお願いいたします。
 まず、今日参加させていただいております私どものメンバーをご紹介させていただきたいと思います。
 私は、国土交通省の下水道部下水道企画課で下水道技術開発官をやっております那須と申します。よろしくお願いいたします。
 それから、国土交通省の研究機関であります国土技術政策総合研究所から南山が参る予定でしたが、所用により欠席ということでございます。
 それから、同じく下水道部下水道企画課の伊藤係長でございます。
 それから、国土技術政策総合研究所の山縣研究官でございます。
 以上3名で説明をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、お手元の資料4でございますが、今回、関係の方ともいろいろ調整させていただきまして、今日このような形で下水道の状況ついてご説明させていただく場を設けさせていただきまして、ありがとうございます。今回、亜鉛の暫定措置ということで、非常に多様な処理、排水を受け入れている下水道業としまして、その実態を把握する必要があるということで、今回整理しましたので、それについてご説明をさせていただきたいと思います。
 (1)でございますが、皆様十分ご承知のことだと思いますけれども、水質汚濁防止法における下水道終末処理施設の特殊性について説明をさせていただいています。2つ目のパラグラフまでは一般的な状況ということでございますが、下水道終末処理施設は、水質汚濁防止法上の特定事業場からの排水、それから、そういった規制を受けない生活排水など、さまざまな水を受け入れて処理しています。それを公共用水域に放流している処理施設であると同時に、水質汚濁防止法上の特定事業場としても規制を受ける側になっています。公共用水域に放流する際には、環境省が定めている排水基準を遵守するという義務を負っている施設だということでございます。
 下水道に排出される特定事業場からの排出水というのは、水質汚濁防止法に定める公共用水域に放流されることが免除されるかわりに、下水道に排出されることになりまして、これらの排水基準については、下水道法の中で定める排水基準を守っていただくという形になっておりまして、これにつきましては下水道法で水質汚濁防止法の排水基準省令と同等の数値を定めているということでございます。
 また、下水道の処理施設につきましては、従来から生物処理を基本としておりまして、亜鉛を含めたいろいろな重金属系の物質については、生物処理という特性上、十分に処理ができない物質ということで、前々回の専門委員会の中でもご説明があったかと思いますけれども、生物処理をしている中で、亜鉛などの処理困難物質は基本的には処理できずに、そのまま下水道から公共用水域に放流されてしまうということでございます。
 というのが一般的なところでございますが、今回、暫定措置ということでございまして、一律排水基準という形で全体が守られていけば、下水道の終末処理施設から出てくる水も下水道法の受入基準を守っていただければ、下水道からの水も排水基準を守る形になっていますけれども、今回、亜鉛について暫定措置がとられるということでございます。これにつきましては、専門委員会の中で十分に審議がなされているというふうにお聞きしておりまして、現在の排水処理の一般的な技術水準とか濃度の実態といったものを踏まえて、今回やむなく定めるに至ったと聞いております。
 下水道につきましても、これまでの経緯を踏まえまして、下水道の受入基準につきましても同様の暫定措置という形で扱うことになるわけでございますけれども、今回申し上げたいのは、暫定基準が適用される事業者の排水が下水道に入ることになります。つまり、そういった排水の割合が多い場合に、当該特定事業場が暫定基準を守っている場合でも、下水処理水に流入する亜鉛濃度が上がり、それが下水処理場からの放流水の水質を上げてしまうというおそれがあるということでございます。
 したがいまして、下水道の処理区域内、下水道が特定事業場を受け入れるところに、暫定排水基準が適用される特定事業場がある場合とか、あるいは、処理区内に新たに設置されるような場合、今守れているからといって、将来、暫定排水基準を超えない特定事業場からの排水を下水道が受け入れた場合に、下水道からの放流水が一律排水基準をやむなく超えてしまう可能性があるということが考えられますので、それらに対応するために下水道についても暫定基準を適用していただくことが必要ではないかと考えているということでございます。
 これらは文書ではなかなかわかりにくいと思われますので、次のページに暫定基準と下水道との関係について絵で整理させていただきました。点線で囲まれているのは、下水処理施設が受け入れる処理区域のエリアと考えていただきたいと思います。その中にはさまざまな排水があるわけですけれども、大別しますと、一律排水基準が適用される特定事業場と、暫定基準が適用される特定事業場があります。そのほか、生活排水など亜鉛があまり入っていないような排水もあるということでございます。今申し上げましたのは左側でございます。点線で囲んだ灰色のところ、つまり今はない特定事業場ですが、新しく処理区域内に暫定基準が適用されるめっき工場などができた場合も下水処理施設がその排水を受け入れることになります。
 それから、今は5㎎とか2㎎といった、非常によい水を出していただいている特定事業場、暫定基準が適用される場合であっても、企業の努力によっていい水が出されている場合もあるわけですけれども、ラインの増設とか経営状況といったものから、一律基準を超えるような水が下水道に流される可能性もあるという状況の中で、それらを集めている下水道としては、現在2㎎/lという一律排水基準を守れるような場合であっても、将来的にそれを超えてしまう可能性があります。それらの暫定基準が適用される特定事業場排水の割合がある程度大きい場合には、下水道からの水もそれを超えてしまう可能性があるのではないかということでございます。
 理論的にはそういうことなのですけれども、実際どうなのかということについて整理したものが、次のページの(2)今回暫定措置を検討する下水道についてということでございます。
 その次のページをごらんいただきたいと思います。全国の下水処理場について、亜鉛に関して、流入水、放流水の実態、それから、暫定基準が適用される特定事業場が決まったのを受けまして、それらの事業場からの排水の実態を調べ、それらの排水量が処理場のどのぐらいの割合を占めるのかということを調べたものがこの表でございます。2000近くの処理場のデータがあるのですけれども、そのうち、後ほど説明があると思いますが、議論の対象になるもの、すなわち暫定基準が設定された特定事業場排水の割合が多い終末処理場を上から挙げてみました。
 2つ申し上げたいのは、1つは、左側の亜鉛濃度測定結果に書いてあるところで4つほど赤くマークがついていますが、排水中の亜鉛濃度を見たところ、恒常的に亜鉛濃度が年間を通して超えているという実態はないようなのですけれども、それでも3.5とか3.8とか、2を超える流入水あるいは放流水の実態があるということです。それから、暫定基準が適用される特定事業場からの排水の受入量と、処理場が処理している日平均処理水量との比を、一番右のカラムで計算して出しておりますが、処理場によっては暫定基準の適用される特定事業場からの排水割合が多いところがあります。
 例えば、A処理場としておりますが、そこでは86%、Bでは31%、30%、18%というような排水量割合が見られるという状況でございます。こういった処理場においては、現状としては確かに恒常的に処理水の水質はそんなに悪くないという状況ではあっても、排水量割合が多いところでは、先ほど申し上げたことによりまして、将来的に超えるおそれがあるのではないかという心配をしているところでございます。
 以上で説明を終わります。

○松尾委員長 ありがとうございました。
 下水道は受け入れざるを得なくて、受け入れるときの水が暫定基準までだと結果として放流水が基準を超える可能性があるということですよね。
 何かご質問ありましょうか。

○土屋委員 環境省さんに聞きたいんですけれども、今の下水道の方のお話はごもっともと思ったんですが、資料4の2ページ目の図の中で、暫定基準が適用される特定事業場で、新設の場合も理論的にはこういうことなんですか、法律上は。

○高橋水環境課長補佐 下水道の終末処理場に入る特定事業場というのは、水質汚濁防止法の適用を受けていない事業場でございます。これが下水道ではなくて、仮に公共用水域だとして説明させていただきますと、今回の暫定措置につきましては、現在稼働しているもの以外に、新設されるめっき業等についても暫定措置を適用するような考え方になっていると思います、暫定措置を適用する場合には現時点のものと。ですから、亜鉛の場合につきましては、処理技術の困難性という実態もあるということから、早急に対策をとれないケースが、現状稼働しているもの以外にもあると認識しておりますので、新設の特定事業場についても暫定措置を適用するケースはあり得ると思っております。

○土屋委員 わかりました。

○松尾委員長 私も同じような印象なんだけれども、暫定というのは期間はどうだったですかね。

○高橋水環境課長補佐 亜鉛の暫定措置については、答申の中で5年を目安となっております。

○松尾委員長 それから、下水道の受け入れの基準にも暫定があるという話でしたけれども、それも期限付きというか、それはどういう設定になるんですか。

○那須下水道技術開発官 それにつきましては、きょうは条文を用意しておりませんが、下水道法施行令の9条4の第5項に、一律排水基準があって、それよりゆるいというか、暫定基準が設けられている場合には、そちらの基準を使いなさいというふうになっておりまして、要は自動的に措置されるという形になっております。したがいまして、亜鉛が5年、3年のもあると思いますけれども、5年の場合は5年、3年の場合は3年というふうになるということでございます。

○松尾委員長 わかりました。
 ほかに何かご質問ありましょうか。
 それでは、この説明についてはよろしいでしょうか。次の議論のところで戻っても結構ですから、先へ進めさせていただこうかと思います。
 引き続き、資料5についてご説明いただきたいと思います。

○高橋水環境課長補佐 それでは、資料5について説明させていただきます。
 資料5は5-1、5-2ということで2つのタイプの資料をつけておりますが、実質的にご議論いただくものは資料5-2でございまして、資料5-1はご参考もかねて、これまでに下水道事業関係に暫定措置を適用してきたものにどんなものがあったかということをご紹介するペーパーでございます。
 これまで暫定基準を下水道に適用したものは、ここにあります5つの物質について、排水基準を定める省令の中で言いますと、2回の機会にございまして、1回目の機会が平成6年2月1日付で施行されたもので、このときにはジクロロメタン、1,2・ジクロロエタンといった物質を水質排出基準に新たに追加したもの、それから、砒素が従来0.5㎎/lであった基準を、0.1㎎/lに見直した、そういう省令の改正を実施したときに暫定基準を適用しました。
 ジクロロメタンとジクロロエタンにつきましては、2に書いてありますけれども、ジクロロメタンでしたら、ポリカーボネート製造業、農薬原体製造業からの汚水を受け入れる下水道について、3年間の限定で2.0㎎/lの暫定基準を適用しましたが、平成9年の段階で暫定基準がなくなっております。これはどうしてかと言いますと、暫定基準を適用した業種が6業種ございましたけれども、ジクロロメタンについてはすべての業種の暫定基準が3年で解除されたということで、あわせて下水道も暫定基準の適用がなくなったということでございます。
 ジクロロエタンについても、暫定基準を受けている6業種の中で、二塩化エチレン製造業などといったものの排水を受け入れている下水道について、0.1㎎/lの暫定基準を適用いたしましたけれども、こちらも3年で暫定基準がなくなったということで、あわせて下水の方もなくなっております。
 一方、砒素の関係でございますけれども、砒素につきましては、平成6年に8業種が暫定基準が適用になっておりますが、下水については、温泉を排出する旅館業が昭和49年に特定事業場になった時点で、温泉を流出していた温泉に限って、その水を受け入れる下水道に限って暫定基準0.5㎎、その時点での従来の基準値ですけれども、これを適用しておりました。しかし、温泉については砒素の排水基準の適用除外の対象になっておりまして、その期限についても3年とか5年とか区切っておりませんで、当面の間というような特別な扱いをしております。ですので、下水についても何年という形ではなくて、温泉旅館業をあわせまして、期限としては当面の間という形になっております。こちらは期限を定めない形での暫定的な措置ということでご理解いただければと思っております。
 それから、もう1つの機会は、平成13年にほう素、フッ素、それから、アンモニア系の排水基準が設定された際に、3元素すべてについて暫定基準が適用されたんですけれども、そのうち処理的に困難なほう素とアンモニアについては、下水についても暫定基準を適用いたしました。ほう素についても考え方は砒素と同じで、温泉旅館業からの排水を受け入れるものに限定した下水の暫定基準でして、ほかの暫定基準が適用されている業種からの水を受け入れたものについては、暫定基準の対象外となっております。
 一方、アンモニア系については、1枚めくっていただきまして、裏の方にございますけれども、1つが有機顔料製造業、トリレンジイソシアネート製造業、それから、発電、排出ガス処理にアンモニアガスを使用するものに限る、こういったものの排水を受け入れるものと、もう1つは、モリブデン化合物製造業、ジルコニウム化合物製造業や水酸化ニッケル化合物製造業といったものの排水を受け入れるものについて、2種類の暫定基準がこのとき適用されております。
 ほう素、アンモニア系の暫定排水基準については3年という期限でございまして、平成16年に暫定基準の見直しを行っておりますが、一律排水基準を守るのが困難なものが存在している状況であるということから、業種、暫定基準等を見直した上で、3年間の暫定期間の延長を実施しております。この際、実際の排水実態等を踏まえて、ほう素については500㎎/l、これは温泉を使用する旅館業にかかる暫定排水基準と同じ数字でございましたけれども、実態等を踏まえて50㎎/lに数値を落としております。
 それから、アンモニアにつきましては、まず有機顔料製造業と、裏のページの(5)の[1]等の排水基準につきましては、暫定基準等が改善されたということで、こちらについては暫定基準の適用から除外になりました。一方で、改善は見られるものの依然高い濃度の排水を受け入れざるを得ないモリブデン化合物製造業等につきましては、平成16年からは720㎎/lを300㎎/lに改めた上で、引き続き暫定基準を適用しております。そのときも3年の基準ということで、次回の暫定の期限が平成19年6月30日となっておりますので、今後こういったものの見直し作業も当方で進めていかなければいけない課題となっております。
 アンモニアとジクロロメタンの中では、そういったものを受け入れる下水道すべてについて暫定基準を適用しておりましたけれども、砒素とほう素については、温泉を利用する旅館業からの排水を受け入れるものであって、かつ、それらから入ってくる量ですね、Ci、Qiを掛けて、下水道処理場で処理されるすべての排出水の量を、生活排水等を受け入れることによって希釈されても、一律基準値を超えるようなものに限ってということで、そこにございますようなΣのCi、Qiを全排水量Qで除した計算式で計算した上で、暫定措置を適用する下水道業を定めております。
 これがこれまでの下水道にかかる暫定措置の経過でございます。
 引き続き、下水道の暫定措置に関する基本的な考え方と、実際の実態等についてどう扱っていくかということについて、資料5-2で説明いたします。
 1番は暫定措置の基本的な考え方として、今、資料4で国交省さんから説明がありましたように、下水道における亜鉛の取扱いに関しては、亜鉛の受入水質基準は水質汚濁防止法と同等であること。活性汚泥などの生物化学的処理が基本であり、亜鉛など処理困難物質は処理場を経由してそのまま公共用水域に、処理されないで流出するといった特性があるということ。さらには、先ほど2つの下水道処理場で一律排水基準を超える亜鉛の量が、相当量の暫定措置が適用される事業場からの排水を受け入れている下水処理場において実態としてあるということ。
 こういったことを踏まえると、亜鉛にかかる暫定基準値が適用される事業場からの排水を一定割合以上受け入れる下水道については、今、下水道部さんから説明があったように、亜鉛の一律排水基準値を超えるおそれがあると。こういったことを背景にしますと、今回暫定措置の適用を受ける事業場からの排水を受け入れることにより、一律排水基準を守ることが困難な下水道において暫定措置を適用することとするというふうに考えております。
 2番は、実際に暫定措置の適用を受ける下水道ということで、要は暫定基準値を受け入れる下水道においても、生活排水等を受け入れることによって希釈されることによって、一律基準値を守ることが可能な下水道処理場があると思いますので、暫定措置の適用を受ける事業場からの排水を受け入れる下水道の中で、さらにその一部について、一定のものについて暫定措置を適用するというふうに考えるということで、以下のような考え方でいきたいということでございます。
 一般的に下水道から排出される水に含まれる物質の濃度は、下水道で処理されないことを前提にした場合は(1)式のようになります。これは先ほど出てきましたほう素、フッ素の式と基本的な考え方は同じですけれども、ここではすべての排出源から下水道に排出される物質の濃度とその量を掛けて、それをQで割ればΣのCiが、下水処理場から処理されないものであれば、出てくる量になるという単純な式でございます。これが一律排出基準値を超える場合は、暫定措置を適用するという考え方になりまして、先ほど言いました砒素やほう素では、実際にこの手法が用いられているということです。
 少しわかりやすくというか、イメージをしていただくために、分子を排出源ごとに細分化したものが(2)式でございます。Citというか、tが小文字で書いてあるものが暫定基準が適用される事業場から下水道に排出される物質の濃度とか水の量でございます。ifは、いわゆるfがフチにあるものは、一律排水基準が適用される事業場ごとに下水に排出される物質の濃度及び水の量でございまして、Cih、Qihというものはその他の生活排水等に含まれる物質の濃度でございまして、Qは下水から排出される水の量、Sは一律排水基準値でございます。
 ここで、先ほどのほう素等がどのように考えられていたかということをご説明いたしますと、Cihは生活排水等いわゆる希釈効果が期待できる水でございますが、個々の家庭ごとに排出される物質の濃度、いわゆるCihを個々に特定することは非常に困難であるということ。それから、その上でCihが比較的小さいと判断できる場合は、希釈効果という面で公共用水域の環境負荷に対して安全側に考えるという背景にしますと、Cihを0とするということは、希釈効果を過大に見積もれば、環境基準に対しても安全の方向で、下水道にはちょっと厳しい側となりますけれども、考えることができるので、とりあえずここはCihをネグって0にするというような方式を用いております。
 亜鉛についても同様にCih=0として計算するのが妥当ではないかと判断しております。こちらは下水道部さんからいただいた資料を参考に数字を入れさせていただいていますけれども、全国の下水処理場の流入水の亜鉛の平均値が0.12㎎程度ということでございますので、0とすることで、安全側にすることでも問題はないのではないかということを考えております。
 砒素及びほう素の場合においては、さらに暫定措置の対象とする下水道は、温泉を利用する旅館業からの排水を受け入れるものに限定しているということで、旅館業以外からの負荷をあまり受けないような場所にある下水道がほとんどであったということで、Cifと呼ばれている、暫定措置を受けない事業場からの負荷についても0としてしまっても大きな影響はない。このことも環境負荷で考えてみますと、安全側に配慮したことになるということで、結果的に温泉を利用する旅館業からの排水の負荷によってのみの判断をしたということになります。
 この計算式で亜鉛について検証してみますと、(2)式においてCitを暫定基準値である最大の5ということで、Cif、Cihを0、一律排水基準値のSを2とすると、そういった数式を入れると、下水処理場から排出される水の量分の暫定基準が適用される事業場から流入する水の量が0.4、すなわち40%を超えると、Citが5、いわゆる暫定基準値が上限で出された場合には、一律の排水基準値を超えるということになりますので、40%以上の場合だと暫定措置を適用することになります。
 先ほどの下水道部さんからの資料4の一番最後の表で見てみますと、これに該当する処理場はA処理場ただ一つでございますが、実態を見ますと、30%であるC処理場でも一律排水基準値を超えているという実態があるということでございまして、亜鉛においてはCifを、ほう素、砒素のように0と考えることは適正ではないのかと。このことが亜鉛の排出源が多岐にわたっているという特性と答申の中で書いてございました、こういった亜鉛の特性から、暫定措置の適用を受けていない事業場からの排水に含まれる亜鉛についても負荷を、いわゆる希釈効果を低減させている、逆に言えば負荷を増やしているということから、ほう素や砒素のようにはネグレないということになります。
 そういったことで考えますと、全亜鉛にかかる下水道への暫定措置の適用要件は(3)式のような形で、暫定措置を適用する事業場からの負荷と、暫定措置を受けない事業場からの負荷を足したものを、下水からの流出水で割ったものが2を超えるようなケースについて適用するというような考え方になると思います。
 この考え方に沿って、下水道部さんで検討していただいた結果を聞いたところによりますと、A処理場、B処理場、C処理場がCitを5とした場合は、一律排水基準を超えるケースがあるということでございますので、今回のこの考え方に基づきますと、A、B、Cの3つの処理場において、現状では暫定措置が適用される可能性があると考えております。
 最後に暫定基準値でございます。先ほどの資料4の表に戻っていただきまして、A処理場において暫定基準が適用されている特定事業場からの排水量が86%を占めているということでございますので、仮にそれ以外からの亜鉛の負荷が一切ないとしましても、暫定基準の事業場からの排水濃度が5であった場合、下水道から排水される亜鉛の濃度は少なくとも4.3になるおそれがあるとことでございます。したがって、亜鉛の暫定基準値についても、他の暫定基準値を受ける事業場と同様に、これまでの一律排水基準である5㎎/lを適用することがよろしいのではないかと考えております。
 以上で資料の説明を終わらせていただきます。

○松尾委員長 ありがとうございました。
 数字上の解説とか式の意味等がおわかりいただけたと思いますが、ご質問、その他いかがでしょうか。
 では、私から一つ。さっきの図で新設される可能性のあるというのがありましたよね。それはこの計算ではどうするんですか。

○高橋水環境課長補佐 新設されるということは、暫定基準の適用を受ける事業場からの排水の割合が増えるケースになると思いますので、その時点で改めて(3)式で算出していただいて、その結果2という一律排水基準を超えるようなケースになれば、暫定基準の適用を受ける下水処理場、ここでいうD処理場のようなものでそういうケースが発生した場合は改めて検討してというか、この式で検証して暫定基準の適用を受ける処理場として追加するケースはあり得ると考えております。

○松尾委員長 わかりました。そうすると、そのたびにこの委員会を開くんですか。それとも、自動的にそういう処理場は暫定基準が適用される処理場というふうになるんですか。

○高橋水環境課長補佐 この式(3)について省令で定めておきます。逆に言えば、式(3)の考え方で今後省令等を考えてよろしいと、妥当であるという結論をいただければ、それを省令に記すことによって、既にそれは委員会で承認させていただいた式でありますので、それを関係する自治体、実際に認定する自治体で適用した場合はすべてオーケーというふうに考えております。

○松尾委員長 わかりました。そのようなことですけれども、どうでしょうか。式(3)と(2)の違いというのは、Cihを0とするかしないかということですか。

○高橋水環境課長補佐 はい、そうです。負荷としてそれを見なくていいかどうかというのは議論のあるところだと思うんですけれども、これを入れますと、考えなければいけない数字が非常に多岐にわたるものですから、環境への安全側に配慮するならば0とした方が、判定する場合に簡易になるのではないかと考えたからでございます。

○松尾委員長 その辺はいいですか。ご理解いただけますか。どっちが安全なのかというのはいいんですかね。0にしておけば。この数字が高くなると……。

○高橋水環境課長補佐 2を超える確率が増えますので。仮に生活排水の数字を入れますと、2を超える可能性が高くなるということは、暫定基準の適用を受ける下水場が増える可能性があるということになりますので。それは場合によっては環境に対する負荷を増す要因になる可能性があるというふうに考えておりますので、なるべく厳しい方ということでいけば0かなと思っております。

○松尾委員長 わかりました。
 ほかにご質問ありますか。

○酒井委員 この式(3)を、さっきの省令を今後見直す必要があるときの基本式にするというのは、亜鉛の場合ということでよろしいんですね。

○高橋水環境課長補佐 はい、亜鉛の場合ということで。すべての物質というふうには。

○酒井委員 そういうことではなくてね。

○高橋水環境課長補佐 基本的には(2)式ですべての物質について考えまして、それはそれぞれの物質の個々の特性に応じて新たに別の算式が出てくると思っております。実際、ほう素と砒素の場合ですと、さらに暫定基準以外の事業場からの負荷もネグってしまうような考え方になっています。基本的な考え方はすべて同じ中で、それぞれの特性に合わせて与える負荷を変化させていくというような考えだと思います。

○酒井委員 そうすると、今後、別の新たな規制項目が出てきて暫定の必要が出てきた場合、基本的には(2)式ですが、場合によっては(3)式とか。また、(3)式をもう少しモデュファイした新たな式をこの物質については使うと、委員会の中で合意が得られればと、そういう進め方ということでよろしいですかね。

○高橋水環境課長補佐 はい、そのように考えております。

○松尾委員長 よろしいですか。

○酒井委員 そうすると亜鉛の暫定基準のときは(3)式を書くわけね。(3)式というか(2)式のCihが0ですと、この式を使いますと。ほかのほう素とかなんとかだったら、また違うかもしれませんということになるわけですね。

○高橋水環境課長補佐 はい。実際の条文の中ではもう少し簡易に。原点は(1)式になりますので、法律の条文的には(1)式のイメージのものを書きまして、CiとQiの定義を水質排出基準の適用を受ける事業場から排出される水に含まれる物質の濃度にしますと、(3)式と同じイメージになりますので、省令の条文の中ではそういった書き方の検討もさせていただこうかなと思っております。考え方は(3)式なんですけれども、法律の条文の中ではそういう表現の仕方もあり得るかと思っております。

○宮委員 先ほど、新設の場合は、それが出てきたときにもう一度計算をし直すという考え方だったと思うんですけれども、例えば既設の場合で水量などが非常に変わってしまう可能性もあるわけですね。そういう場合の見直しというのは各自治体に任せることになるのでしょうか。

○高橋水環境課長補佐 基本的に当方で省令を定めて、考え方をつくった後、いわゆる水質排出基準の行政の場合は、各都道府県及び中核市、政令指定都市を含む政令市といったところが判断して、各自治体で判断が困難な場合においては環境省との協議というか、相談を受けるような形にしておりますので、自治体で判断されることになると思います。
 水量の件に関しては、実態から見ると厳しい2つのところでも常に超えていないということを見てみると、水量の変動の中においても、現状ではBとDの処理場については超えることがないのかもしれませんし、AとCの処理場についても水量の変動の中で起きているものだと思いますので、そういったものは実態から見てもある程度包括されているのではないかと考えております。

○松尾委員長 いいですか。
 工場が閉鎖されちゃうかもしれませんよね。そうすると急に水質がよくなると。そのときは暫定を外すんですか。それとも、期間は3年後に見直す、これは5年後に見直すということなんですが、それまではそのままいくんですかね。実際の行政上どうしておられるんですか。

○高橋水環境課長補佐 その判断は、今どちらという決めは即座に決まることではないというふうに考えております。ただ、負荷が大きいものが廃止されれば、下水処理の中で負荷を増やしていくようなことがないということを前提にすれば、暫定基準値のままにしておいても、実際に排出される水はきれいになるので、総量規制みたいなことをしていれば、どこかがなくなったら自分のところを増やそうという概念があるかもしれませんが、現在は個々に規制をかけているという実態から見れば、全体的にはよくなるので、暫定措置はそのまま残しておいても問題はないのかなと思います。

○松尾委員長 ありがとうございました。
 ほかに何か発言ありますか。
 それでは、今のような考え方でいきたいということでありまして、そうすると何を確認すればいいということですが、資料5-2に基づくもので、さっきご説明があった省令の中では文言等を少し整理していただくことになると思いますけれども、最終的に暫定基準の適用を受ける事業場と同様に、一律排水基準値5㎎/lを適用すると。そこについてよろしいかということでありますけれども、どうでしょうか。
 それでいいんだね。

○高橋水環境課長補佐 はい。

○松尾委員長 それでは、特にご異議がなければ、そういうことで、今説明してくださったような方針に沿って下水道の暫定措置の決め方を決めたということにしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、事務局に返しますから、あとをよろしくお願いします。

○高橋水環境課長補佐 どうもありがとうございました。
 そういたしましたら、本日、下水道事業について暫定措置を適用し、(3)のような考え方で暫定排出基準値は5㎎/lであるという考え方をご了解いただいたということで、このご了解をもとに、既に答申でいただいております亜鉛に関する排水基準を、2㎎/lに変更する排水基準を定める省令の改正に向けた手続きを今後進めさせていただきたいと思っております。
 具体的に今イメージしておりますスケジュールとしましては、きょうの議論を踏まえた上で、速やかに改正する省令の案をつくりまして、これについて約1カ月間のパブリックコメントを実施いたしまして、パブリックコメント終了後に省令の公布を受けて、その後施行ということでやっております。既に答申を一度受けて半年近くたっておりますので、速やかに施行したいという考えからも、パブリックコメントと、それの事務手続き等を踏まえますと、二、三カ月の範囲でできるものと思っていますので、年内には新しい排水基準が施行できるように進めてまいりたいと思っております。
 また、これまで同様議事録を作成しまして、公開することになっておりますので、後日、今まで同様議事録の案を作成いたしまして、各委員にお送りいたしますので、発言内容についてご確認いただきますようよろしくお願いいたします。

○松尾委員長 よろしいでしょうか。そういう手順で進めていますけれども、この専門委員会だけの結論でパブリックコメントをやれば、省令の改定でいいんですね。水質部会とか親の審議会にはかけなくてもいいわけですか。

○高橋水環境課長補佐 一昨日、水質部会長の須藤さんとお話する機会を得まして、今回のことに関しては基本的なものは答申ではなくて、下水道という部分的なものに関する技術的な見地なので、同委員会の結論をもって、部会の報告とか部会での結論は省略しても構わないかというご意見をいただいたので、そのように進めさせていただきたいと思います。

○松尾委員長 そういうことのようでございますので、きょうの決定で、あとはパブリックコメント等の手続きを進めていただくということでいきたいと思います。
 それでは、本日は予定よりちょっと早めに終わりましたが、これで委員会を終了させていただきたいと思います。どうも皆さんありがとうございました。

午後5時28分 閉会