中央環境審議会水環境部会ダイオキシン類環境基準専門委員会(第3回)議事録

1.日時

平成14年5月17日(金)14:00~15:45

2.場所

環境省第1会議室(22階)

3.議題

(1) 前回議事録(案)について
(2) ダイオキシン類対策特別措置法に基づく水質の汚濁のうち水底の底質の汚染に係る環境基準の設定等について(報告案)
(3) 底質の処理・処分等に関する暫定指針の改定について
(4) その他   
  

4.配布資料

資料1   中央環境審議会水環境部会ダイオキシン類環境基準専門委員会(第2回)議事録(案)
資料2 ダイオキシン類対策特別措置法に基づく水質の汚濁のうち水底の底質の汚染に係る環境基準の設定等について(報告案)
資料3底質の処理・処分等に関する暫定方針の改定について   
  

5.議事

【瀬川補佐】 それでは定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会水環境部会第3回ダイオキシン類環境基準専門委員会を開催させていただきます。
 本日は委員の皆様方14名のうち現時点で10名の委員の方々に出席いただいておりますので、既に委員会開催要件を満たしております。議事に先立ちまして、石原水環境部長からごあいさつ申し上げます。

【石原水環境部長】 専門委員会の開催にあたりまして、一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中の中、本専門委員会に御出席をたまわりましてありがとうございます。また、日ごろから水環境行政の推進につきまして格別の御指導をたまわっておりまして御礼を申し上げます。ダイオキシン類に係る底質の環境基準につきましては、昨年の12月に中央環境審議会に諮問をさせていただき、本専門委員会の方で検討していただくことになったところでございます。
 本日は第3回目の委員会ということで報告案をおまとめいただきたいというふうに考えております。簡単ではございますけれども、ダイオキシン類の底質環境基準の報告案の検討をお願い申し上げましてごあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【瀬川補佐】 それでは、議事に入ります前に本日お配りいたしました資料を確認させていただきたいと思います。本日資料で用意しておりますのは3つです。まず、資料1は前回委員会の議事録(案)です。資料2につきましては専門委員会の報告案、資料3につきましては底質の処理・処分等の関する暫定指針の改定についてでございます。もし、お手元に不足の資料等ございましたら事務局までお申しつけいただければと思います。
 それでは、議事に入らせていただきます。議事運営規則に従い、本専門委員会の委員長でいらっしゃいます村岡先生に議事進行をお願いいたします。それでは、お願いいたします。

【村岡委員長】 お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。先ほど、石原部長のごあいさつにもありましたとおり、本日はダイオキシン類の底質環境基準について専門委員会の報告案を取りまとめたいとこのように思っておりますので、委員の先生方には活発な御議論をお願いしたいと思います。
 では、早速議題1、前回の議事録(案)についてでございますが、資料1に前回議事録(案)が用意されております。本資料は委員の先生方に御確認いただいた後、事務局で修正されております。内容を確認いただき、さらに修正がございましたら事務局までお願いします。その後、公開ということになるかと思います。
 議題2に行きます。これはダイオキシン類対策特別措置法に基づく水質の汚濁のうち、水底の底質汚染に係る環境基準の設定等について報告案を事務局からまず御説明いただきたいと思います。

【瀬川補佐】 それでは、資料2に基づきましてダイオキシン類対策特別措置法に基づく水質汚濁のうち水底の底質の汚染に係る環境基準の設定等について報告案ということで説明をさせていただきます。
 まず初めに、3ページ目のところですが、経緯と底質中ダイオキシン類濃度についてということで解説しております。まず経緯ですが、ダイオキシン類に係る底質の環境基準につきましては、平成11年中央環境審議会水質部会において水の環境基準の審議が行われた際に当時得られていた測定データ等からは短時日の設定が困難とされておりました。環境省では答申後得られました測定データの解析を行い、関連する知見を収集し、また常時監視結果につきましても公表してきたところでございます。
 また、高濃度に汚染されました底質の存在を把握しました自治体では除去など何らかの対策方法について検討を開始しておりまして、対策のための数値目標の必要性が高まってきております。このため12月6日に諮問いたしまして先生方に御議論をいただいているところでございます。
 (2)底質中のダイオキシン類濃度でございますが、平成11年度調査、そして平成12年度常時監視結果を報告しております。平成11年度調査結果では、全国542地点で平均値が5.4、濃度範囲が0.06から230pg-TEQ/gでありました。平成12年度常時監視結果では、全国1,836地点で行われており、平均値は9.6pg-TEQ/g、濃度範囲が0.0011~1,400pg-TEQ/gでありました。
 次に、底質環境基準の必要性でございますが、底質中ダイオキシン類については水への巻き上げ等が考えられますが、環境媒体の中でダイオキシン類に係る環境基準及び対策のための数値基準は設定されていないのは底質だけと。一方、平成11年度に環境庁が実施した調査におきましては、底質のダイオキシン類濃度と当該地点で採取された魚介類中のダイオキシン類濃度との間には相関係数は小さいものの有意な正の相関が認められるということで、魚介類中に底質のダイオキシン類というのは何らかの相関があり、かつ魚介類中のダイオキシン類濃度が低減をされれば人の摂取への低減というのは期待できるのではないかと考えております。また、底質は絶えず水に接触しておりますので、ダイオキシン類で汚染された底質の水への巻き上げ及び溶出により、ダイオキシン類の水への供給源となっているということで対策を実施する必要があると。
 3.で底質環境基準の性格ですが、底質環境基準の性格につきましては、まず底質がどういった状況にあるのかということをまず書いております。大気、水、土壌といった各媒体ごとに既に排出規制なり環境基準の設定がなされているところなのですが、これらの規制により発生源からの発生負荷量は低減してきております。このため、公共用水域の底質に供給されるダイオキシン類濃度は今後とも低減していくだろうと。また、実際にコアサンプルのデータを見ますと表層濃度に関しましては近年下がる傾向になります。規制の進展により今後さらに低減することが期待ができると。このため、ダイオキシン類につきましては、ダイオキシン類の底質環境基準を設定するに当たって、まず勘案すべき事象は現存する汚染底質の対策ということで、対策を講じるための数値基準として設定することが適当とされております。
 さて、基準値ですが、考え方として2つ挙げております。底質中ダイオキシン類が人の健康に影響を及ぼすおそれというのは2つの影響経路、魚介類での取り込み、それから底質から水への巻き上げ・溶出の2つの影響経路が考えられます。魚介類への取り込みを考慮する方式でございますが、先ほど申し上げたように平成11年度に環境庁が行った調査では、底質中ダイオキシン類濃度と魚介類中ダイオキシン類濃度との関係においては相関係数が小さいが有意な相関であるということがわかっております。他方、ダイオキシン類につきましては国民の平均的なダイオキシン類摂取量がTDIに比較して小さく、バランスのとれた食事が大切、また、食品としての魚介類許容上限値は定められていない状況にあります。このため、現時点で対策実施のための底質環境基準の設定において、基準値導出、基準値の具体的な値を導出するのに必要な諸条件は不足しておると、この観点から数値を設定することは現時点では困難な状況にあるとしております。
 [2]水への影響を考慮する方式でございますが、底質中ダイオキシン類はダイオキシン類の水への供給源となっておりまして、影響の程度を勘案して設定するという方式について、ここでは2つ試みをしております。底泥中の間隙水濃度に着目して底質濃度を規定する分配平衡法、そして実際にダイオキシン類に汚染された底泥を用いて水への振とう分配試験を行った結果、この2つを報告に載せております。
 設定手法の中で分配平衡法ですが、底質の間隙水中の化学物質濃度は底質の固相における濃度と平衡状態を形成しております。また、底質固相の濃度は底質の有機物濃度によって変動いたします。つまり、水の分配係数は固相中の濃度と間隙水中濃度との比及び有機炭素と水との分配係数と底質の有機炭素の割合との積の2つの方式であらわすことができるということです。ここで6ページにまいりますけれども、有機炭素と水との分配係数に関しましてはオクタノール、-水分配係数のlogを変数とした換算式から算定することができます。換算式といたしましては複数の学説がございますけれども、本報告ではPCBのlog Kowの値を主に解析していて、かつフランスで底質の基準値を水環境基準の値から導出する際に実際に用いられている指標を用いております。また、log Kowの値に関しましては、アメリカFederal Registerに掲載されました栄養連鎖上、濃縮係数が最も大きいとされるlog Kowの値6.9を用いております。
 ここに間隙水濃度に水の環境基準値である1pg-TEQ/Lで、有機炭素濃度を5%(同手法を用いるドイツ及びフランスと同じ数値)を代入いたしますとおおむね150になります。
 振とう分配試験結果ですけれども、これにつきましては国内の海域及び河川からそれぞれ2検体を採取し、振とう分配試験を行い、試験水中のSS濃度を通常状態まで低減させた場合を計算いたしました。その結果、4検体の平均値は水質濃度を1pg-TEQ/Lに対応したものを計算いたしますと、全試験結果の平均値は196pg-TEQ/gとなっております。
 数値でございますけれども、[1]及び[2]で結果を比較いたしますと、[2]の振とう分配試験結果から導出した数値の方が[1]よりも大きい数値であります。一方、振とう分配試験結果の解析は現時点で得られているデータですので、[1]及び[2]の結果からはダイオキシン類の底質環境基準値は150pg-TEQ/gとすることが適当としております。
 (4)の一日摂取量との関係でございます。ダイオキシン類につきましては食品としての魚介類の許容上限値が定められておりませんけれども、他方、国民の平均的なダイオキシン類摂取量には毎年調査が実施されておりますので、これらの結果を用いまして本報告で提案する底質環境基準値まで対策を各地点で実施した場合、平均的なダイオキシン類の一日摂取量がどの程度になるのかという試算を行っております。
 計算手法ですが、平成12年度におけるダイオキシン類常時監視結果から底質150pg-TEQ/g以上の濃度地点について提案している基準値まで濃度を低減させた場合、全体の底質濃度の平均値が、計算上でございますけれども、現行の9.6から7.8まで低減します。魚介類摂取量のうち、内海魚及び外海魚のダイオキシン類の平均濃度をトータルダイエットスタディの結果及び個別食品調査の結果から計算し、内海魚と外海魚の摂取割合を仮定、内海魚からの摂取量が底質濃度の低減に比して低減すると仮定した場合の魚介類を経由したダイオキシン類の平均摂取量を計算、この結果からさらに食品経由でのダイオキシン類の平均一日摂取量を推定いたしました。この結果、1.5pg-TEQ/kg/dayとなります。
 8ページ目に適用でございますが、適用は全公共用水域に適用、達成期間ですが先ほど「可及的速やかにその維持達成に努める」と。
 それから、測定方法ですが、基本的に底質調査測定マニュアルに書かれた方法とすることが適当としておりますが、常時監視の場合は検出下限未満のものは検出下限の2分の1、対策を行うための汚染範囲同定のための調査の一端として測定を行う場合は原因者に費用負担を求めることがあることから、十分な精度が確保できない定量下限値未満の値を用いるということは適切ではないということでゼロとして算出することとしております。
 なお、測定に当たっては精度管理を徹底し、採泥方法、試料の保存及び分析に当たっての損失あるいは汚染の防止、十分な検出能力・定量下限値及び必要な分析精度の確保を図る必要がございます。測点地点につきましては、平成12年度より継続的に常時監視を行っておりますが、これらの調査を通じて底質濃度が比較的高かった地点に関してはその周辺において測定地点を増加させること、また低濃度の地点については移動させるということも考えられると思います。
 8の評価ですが、これは前回専門委員会の御議論を受けまして若干変えております。ダイオキシン類の底質環境基準を達成しているか否かの判断につきましては測定結果ごとに、また地点ごとにこの評価を行うものとすると。また、過去の測定結果に関しましては当該地点における最新の測定結果をもって基準超過の判断を行うものとすると。なお、基準値を超過する底泥の存在を把握した場合は、可及的速やかに汚染範囲の同定のための詳細調査を実施することが適当としております。
 9番目に底質環境基準と対策ですが、ダイオキシン類の底質環境基準を超える場合には何らかの対策をとり、人への暴露量を低減する必要があります。これら対策手法につきましては現在、しゅんせつ、現位置コンクリート固化及び覆砂などが知られております。手法の決定におきましては汚染地点ごとの評価・検討、環境保全上支障のない手法の選択が必要でございます。また、対策内容の検討に当たりましては、当該地点の汚染の広がりをまず把握しておくということで、詳細調査を実施する必要があるとしております。この場合、面的広がりに加えまして適宜コアサンプル内の濃度などを把握することによって垂直分布をも把握をしていただくと。
 なお、ダイオキシン類に含まれるコプラナーPCBの割合が非常に高い場合、コプラナーPCBは生物濃縮が高いことから対策に当たりましては、範囲設定及び対策手法の選定に当たって特に留意する必要があると。このような調査及び対策の実施に当たりましては、地元関係者に対して当該事業に関する情報提供を十分行うことが重要でございます。また、対策実施内容に関する情報につきましても、都道府県等及び当該対策を実施した者がこれを保管及び提供することが重要でございます。
 今後の課題ですが、現在欧州を中心にTDIの見直しの議論がございます。将来的に我が国においてもTDIの見直しの議論がある場合には、必要に応じその時点におけるダイオキシン類摂取の状況を考慮して、今回制定する底質環境基準が十分なものであるか検証する必要があると。また、底質中のダイオキシン類の魚介類の取り込み及び濃縮、二次汚染源としての底質を含めた環境中の挙動については今後とも調査研究を進めていく必要があると。報告本文については以上でございます。
 12ページからは参考資料になっておりまして、12ページが平成11年度公供用水域の底質と水生生物の濃度分布、13ページは平成12年度のダイオキシン類の環境測定結果の濃度分布になっております。14ページ目は各媒体の環境につきまして模式的にあらわしたものでございます。15ページ目はダイオキシン類の排出総量の推移ということでだんだんと低減をしております。16ページは各地点の平成10年度のダイオキシン類のコアサンプルの調査結果でして、だんだんと低減していっていると。17ページは宍道湖の年代別ダイオキシン類濃度ということでEnviron.Sci.Techの論文を引かせていただきました。18ページが生物湿重量ベースでの底質のダイオキシン類の散布図でございます。相関係数は0.385、有意水準は5%です。有意という形になっております。それから、19ページ、20ページにダイオキシン類異性体とKowの値ということで、各異性体のKowの値をそこに示しております。前々回の専門委員会の資料につけましたものよりも新しいデータがありましたのでここに差しかえをしております。21ページ目はFederal Registerに載っておりました資料をつけておりまして、Trophic level2貝類、Trophic level3魚、Trophic level4鳥類及び哺乳類というのを見ていきますと、ちょうど6.9のところで濃縮が高いということです。それから、振とう分配試験の結果については22ページ、23ページ、24ページの方に示しております。それから、25ページ目、ダイオキシン類一日摂取量の試算に用いた諸元ですが、各数値の設定根拠ですが、内海魚及び外海魚の平均濃度は平成10年度から12年度のトータルダイエットスタディの結果、及び個別調査結果を用いております。個別食品ごとの濃度結果から計算いたしますと、魚介類の全平均が1.6pg-TEQ/g、同様に内海魚平均、外海魚平均を見ております。ただし、平成10年から12年度のトータルダイエットスタディの結果、魚介類からの摂取量というのは71pg-TEQ/dayになっており、単純に魚介類の一日摂取重量の3カ年平均値96グラムなのですが、これでその数値を除しますと0.74pg-TEQ/gとなって、これはみかけの平均濃度となります。内海魚とが外海魚の摂取割合は内海魚4分の1、外海魚4分の3で計算をしております。体重は50キロ、それから魚介類からのダイオキシン類摂取割合は76%としております。計算式ですが、内海魚の平均濃度のみを対策前後の底質平均値の比で低減されるというふうに仮定をおいてここは計算をしております。
 報告案については以上でございます。長くなってすみませんでした。

【村岡委員長】 どうもありがとうございました。これまで委員の先生方に検討いただきましたまとめを報告文の形でこのようにまとめていただいたと、これを説明していただいたわけです。
 それでは、この内容につきまして御議論がございましたらよろしくお願いいたします。

【中西委員】 前回ちょっと休んでしまいましたので、ちょっと戻るような形になって恐縮なのですけれども、私が底質除去基準について考えていることをちょっと述べさせていただきたいと思います。
 底質除去基準、今回考えているダイオキシン類などの底質除去基準というものは、既に汚染された地区を対象にするという限りにおいて、それがすぐに被害と結びつくのでない限り、やはり経済的なことも考えて現状を改善するという発想で進めていくべきもの、あるいはそれでしかできないものだというふうに思っております。ただ、例えば焼却炉から出る排ガス中のダイオキシンの排出対策、規制などというよりも日本人に対するリスクというもので言いますと、底質の除去というのは直接的に効果があるというふうに考えられますから、日本人のダイオキシンの摂取量を減らすことが合理的だという判断に立てば当然それを底質の除去というものを積極的に進めるのが正しいということは言えると思います。
 しかし、その場合ではどういう基準がいいのか、ということを考えるときに、例えば我が国では水田とか都市の土壌とかにダイオキシンの大きなシンクがあるわけですね。ですから、底質の除去対策というのが除去することによってもどんどんそういうシンクから流入して除去対策がエンドレスになるような性質のものであるとすれば、やはりそれはもうそのレベルは残念ながらやる意味がないというふうに言うことができると思うのです。いろいろな底質のダイオキシンの濃度とかいうのをずっと見てきていまして、少なくともやはりグラム当たり100pg-TEQ/gを超えるような地区の汚染というのは、少なくともそういうエンドレスのものではないのではないか、それはすごい100というのは大ざっぱで、実際はもうちょっと数字をきちっと追わなければいけないのかもしれませんが、大体100を超えるような地区の汚染というのはそういう少なくともエンドレスタイプのものではないというふうに思うわけですね。
 まず、だからその意味で私自身は100よりも超えたところに基準値があるのがいいというふうに、自分でまず第一には判断しておりました。少なくとも100以下のところでは、100ではなくてもしかしたら80かもしれません、わかりませんが、少なくとも100以下のところではそういうエンドレスタイプのものになりがちで、底質除去というのはお金がかかるけれども効果が出ないということになるのではないか、というふうに考えています。それでは、その100を超えるところで一体どのぐらいの基準値がいいのだろうか、というふうに考えていたのですが、なかなかその根拠というのが見つからない。しかし、ある種やはり相場観というようなものがあって、その相場観というのはどこから出てくるか、というとやはり費用だと思うのですね。除去の費用というものが余りにもかかるということはやはり全体として困る。つまり費用対効果ということでしか決まらないのではないかと私は思っているわけです。
 それでもう一つは、原因と結果とが割合結びつきやすい濃度というのがやはりあると思うのですね。原因者が全くわからないようなケースである種の濃度になってしまうというふうなことがたくさんあるとすると、それはやはりもう一度考えてみるということになろうかと思います。そういう意味で、ですからこの場合にはやはり純粋に科学的な根拠というよりは費用対効果というところであるレベルが決まってくるものだというふうに思います。しかし、これは私は余りいいことだと思っていないのですけれども、環境省のいろいろなこういう環境対策の中で費用ということを言うというのはタブーになっているというような雰囲気がありまして、なかなかそれを前面に出して議論をすることができないと。これは私は不幸なことだと、日本の国にとって不幸なことだと思っていますが、現実にそういうこと。やはり何か科学的な根拠が欲しいということに、純粋に科学で考えるとというような科学的な根拠が欲しいということになると思うのです。だから、私もなるべくそういう科学的な根拠というものを出すということに協力したいとは思ってはいるのですが、やはり1つだけどうしても気をつけてほしいのは、そこで科学的な根拠を出す余りに、余りにもはっきりした科学的な根拠を出してしまうとやはりうそになるということなのですよね。ですから、ここで報告の中で出していただいている固液の分配と、それからさらに溶出率から出てきた結果というのはおおむね納得します。原則、こういうような形のもので議論をするということは納得します。しかし、現実はそれだけで決めているのではないわけですね。何よりも、ここで言われているものでこういうもし固液の分配だとかあるいは溶出率ということで考えれば当然それを水の環境基準値と合わせるということをやっているわけですから、そういうことをするためには拡散というような、混合というようなことを当然考えなければいけないのですけれども、これを考えていないわけです。ですから、実際にはそういうことを考えたものにしてほしいというふうに思います。ただ、それをすぐにやることはなかなかできないだろうなということはわかります。
 実はすごく古い話なのですけれども、1973年、もう皆さんお若くて全然知らないと思うのですけれども、1973年ごろに水銀の底質基準、除去基準をやはり決めたときに同じようなことをやっているわけですね。そこではどういうことをやったかと言いますと、潮汐の動きによって水が混合するということを考慮してやっています。これもまたでもすごいラフな計算で、1回1回1メートルぐらい動くたびにそれが完全混合で除去されるという、今度は逆のまた基準みたいになっていまして、その方法を使いますと今ここで150という数値が出てきていますが、それの5,000倍ぐらいの濃度まで大丈夫、というような感じになっている。それもまたある種の科学のごまかしという感じがして、それを直接使うのがいいとは思っていない。ただ、環境基準と合わせるときには、そういう希釈とか混合というのを考えなければいけないのだということはぜひぜひ入れてほしいし、その数値を入れないときはそういうものなのだ、入れられないけれどもそういうものを考えなければ本当はいけないのだということはぜひつけ加えてもらいたいというふうに思います。
 それから、あと、このlog Kowというのを6.9というのを選んでいるのも最大の濃縮率に生物濃縮があるところを選ぶというのは何となく私には理屈がよくわからなくて、しかもそれが1つ決めることによって157という数字が出てしまって、それのリコメンデーションされている数値が150と、余りにも直接的な数値が並んでしまうということにむしろ非常に不安を感じてしまうのですね。もうちょっとやはり幅のあるものですよと、同じKowを使うのでももっと幅があるもので、大体このあたりを選びましたというような、やはり十分ゆとりのある考え方をぜひ示してほしいと思います。
 実はダイオキシンの土壌の基準値の1,000ピコグラムというのを決めたときに、そのときに私その委員会で参加していまして、土の接触の量というのをある種リスク評価のところで使っていたわけですね。そのときにはダイオキシン十分緩い基準だったので、土の接触量というのは幾らをカウントしてもリスクには響かないというようなぐらいの感じだったので、データもないので非常に多くの土を食べるという仮定で数値をとって使ったわけです。そのときはもうデータがないからこれにしよう、しようがない、急いでいるからというようなことで使ったのですけれども、実際は今度、今土壌の基準で水銀だとかカドミだとか鉛とかというのを決めるときに、それも今度そのまま使っているわけですね。ダイオキシンで使ったからという理由で。そのとき言われていた、なぜこれを使うかという理由というのは全部吹っ飛んでしまって、ただその数値だけが土の接触量このぐらいというような感じでそのまま使われてしまっているのです。私、すごく責任を感じてしまって、ではあのときもっともっと土の接触量についてきちっと議論をしておかなかったからこういうことになってしまったのかということで、非常に悔やんでいるところなのです。ですから、ここで出されてきている数値の150とかあるいは200とか250とか、そういうあたりの数値というのは私は費用対効果の点から見ても多分そのあたりがいいところだろうなという感じはしていますけれども、根拠として余りにも純粋な科学を持ってきて、逆にその科学をおとしめないでほしいというふうに希望する次第です。

【村岡委員長】 どうもありがとうございました。いろいろこの基準を決めるに当たっての過程での先生の御意見を拝聴したところですが、委員の先生方にただいまの中西委員の御発言に対して関連する意見とか、あるいは御質問もあろうかと思いますが、事務局の方も含めまして何か意見がございましたらお伺いしたいと思いますがいかがでしょうか。

【中杉委員】 中西先生の考え方の基本的なところといいますか、最初に費用対効果、これは最初に第1回の委員会のときに、この辺は基準は対策基準ですよと、大気と水の基準と違いますよということを、私が対策基準と、それをはっきりさせたというのはそこでもそういうものだというふうになっているのだろうと思いますね。そうは言いながら我々がお金がこれだけしかないからここまでしかできませんよ、ということでいいのかどうかという判断をするときに何かの数字が必要だろうし、試算をしてみる必要があるだろうということは問題としてあって、ここでいろいろやってきたのだろうというふうに考えています。ですから、この最初の部分が明示的に書かれていないというのは中西委員の御指摘のとおりかもしれませんけれども、私はこの溶出だとか分配というのは一応そういうふうな形で確かめの1つの、完全ではないけれども、そうしたものの方法というふうに解釈しています。
 例えば今の分配の方でも間隙水という形で評価をしていますけれども、ダイオキシンの場合に本当にこれが使えるのかどうかということが1つありまして、先ほどの調査委員会の考え方を入れようと、多分底質が間隙水のところで溶出してそれが上がってくるというよりは、底質を巻き上げられて、上の部分で平衡になるというようなこともシナリオとしてはもう一つ考えられるわけですね。そうなると、そのときには拡散・希釈をどういうふうに考えるのかと、また別な話で出てくるのだろうと思います。そういういろいろな問題が確かにあるのだろうというふうに思いますので、あくまでもここでやったのはそういう確かめをしたものだというふうな位置づけで私は考えています。それで最後のところでどうしているのかというと、魚に換算してみたらこの程度だと言うことになります。やはりこの試料、こういうシナリオを入れてやるとこのぐらいでおさまったと。これは相場観として出てくるのは今、人間の日本人の何%ぐらい4ピコグラムを超えているかという数字が、これは表に余り出てきませんけれども、あらあら数%ぐらいだろうというのと、この底質の基準を決めたときに多分数%ぐらいが超えるだろうとというのが一致します。そういういろいろなものを合わせて判断をしていくのだろうと思うのです。そこら辺のところを細かく全部こういうところに載せる必要があるのかどうかというのは1つ疑問があるところだろうと思います。
 それからもう一つ、中西委員が言われたのは土壌の含有量の話、私も少し絡んでいるものですから弁解をしておきますと、あれはダイオキシン類の数字をそのまま持ってきたわけでは必ずしもありません。一応どのぐらい食べるかというのを幼稚園の生徒を使って観察をしています。明確なものはなかなか出てこないのですけれども、その結果を見てあの数字で少し大きい目だけれどもとりあえずいいのではないか、という判断をしていますので、あの数字はただ持ってきたというわけではない。

【中西委員】 ただ、日本のデータでは使えないからとかと書いていませんでしたか。

【中杉委員】 いえ、あの後も。

【中西委員】 その後のことで。日本でやったのだけれども、ちゃんとした数字が得られないので……。

【中杉委員】 いえいえ、だけど一応あの数字で扱ってそんなに間違いというか、安全サイドを見ているとしています。安全サイドどのぐらいにしているかという話はもちろん議論あると思います。あれをもう一回崩すだけの根拠は得られていないということであれを用いるということですので、そのまま持ってきたと言われるのは少し誤解ではないかと思います。確かにデータが足りないという議論はあると思います。

【村岡委員長】 ほかに何か関連して御意見ございますか。森田委員。

【森田委員】 中西先生から貴重な御意見いただきましたし、また事務局の瀬川さんの方も一生懸命まとめていただいて、大体方向はいい方向に来ているかなという感じがいたします。科学的に計算をしたときに、これはもちろん非常に幅がありまして、多分好ましい環境基準というのは10pg-TEQ/gから、それから多分数百pg-TEQ/gまで、ある意味ではいろいろな計算が可能だという、そういうことが現実だろうと思います。したがいまして、例えばカナダ政府などはもう少し、非常に望ましい基準として厳しい数字なんかを示されているということがあります。しかし、日本の現状にある種適合し、かつまた中西先生のおっしゃったようなある種のコストパフォーマンスというのを頭の中に何となく入れてきたところを結果として、100を超えるようなところの数字がリーズナブルではないだろうかというのがある種の専門家集団のコンセンサスベースになってきているということが1つだろうと思いますので、その数字に近いようなところで、しかもリーズナブルな計算がされたというのは力強いことかなというのが私の印象であります。

【村岡委員長】 ありがとうございました。この際、ほかの委員からも何かございましたら。どうぞ、宮崎委員。

【宮崎委員】 費用対効果のことですけれども、もちろんこの報告書はそのあたりのところ、今、森田委員が言われたようにかなり議論が尽くされた上でそのあたりを書かれているというふうに私も理解しておりますけれども、具体的な対策を立てるときに中西委員もおっしゃいましたけれども、具体的なやはりコストをかけたときにどれだけ効果が上がるか、費用対効果のことというところはやはり実際に対策を立てる上では非常に重要なことだと思うものですから、1つのこれは検討していただければいいと思うのですが、方向としては基準はこうだと思いますけれども、具体的に実際的に除去を行うかどうかというのがこれの議論のときにはやはり費用対効果といいますか、そのあたりのところは費用対効果も十分勘案してやるべきであるというふうな趣旨のことを盛り込んでいただければというふうに私もちょっと思います。

【村岡委員長】 ありがとうございます。ほかに何か。

【中杉委員】 ちょっともう一つ。さっき中西先生が言われたことの中で、やっても負荷があるからきれいにしてもまた汚くなるのではないか。それは実際問題、どのぐらいの濃度だということではなく、これは非常に注意しなければいけない話だと思います。私も実際に底質の除去を地方自治体でお手伝いをしています。この基準が決まらないのでどこまでやるのだ、どうしましょうかというのは決まらないのですが、そのときにどうしても気になるのは、底質に入ってきている起源がはっきりしているのかどうかという話が1つ非常に重要なポイントとしてあります。その対策をしっかりしないでどうしても自治体の方は底質だけを取ってしまえばいいというような形で見られるのですけれども、実際にはもとのしっかり押さえないと底質は何回でもきれいにしなければいけない。そこら辺のところは多分この報告書に載せる話ではないかもしれませんけれども、注意をするということで、例えば、これをいろいろな形で出されるときに環境省の方がそういう面は注意を喚起してほしいということです。
 それからもう一つ、さっき森田委員が言われたけれども、この基準はあくまでも望ましいという基準ではないのだろうというふうに思っています。さっきの話で対策基準であって、例えば極端な話では魚を一日90グラムぐらいですか食べるとして、4ピコのうち魚からどれだけとるかという計算をしていって、例えば底質との相関みたいなことで魚の濃度がどのぐらいかを計算をすると数字は出てくるのですけれども、そうなるとある水域の特定の魚をかなり食べていても安全ですよという底質環境基準というのは一方で出てくるわけです。これはいわば望ましいタイプの水と同じような環境基準かなというふうに思いますけれども、実際に今回つくったのはそれだけではなくて、あくまでも魚を全国平均的に食べている、これは市場を通して魚を食べているということを前提にした考え方なのだということをこれも一方できっちりしておいていただかないといけないと思います。これは逆に国民の方がこれでもうすべて安全だというように思われるというのもちょっと心外といいますか、我々の考えているところではないので、注意をしていただければということを一言だけ申し上げておきます。

【村岡委員長】 ありがとうございました。先ほど宮崎委員が中西委員の御意見を踏まえてのことですけれども、除去の費用というものを考えないとこの問題、具体的な実効性のあるものにできないというふうな観点から費用対効果というふうな観点も含めて検討してきたというふうなことをどこかで盛り込めないかというふうなことでしたけれども、盛り込む、盛り込まないも含めまして、もしその点で事務局の方で何かその点について御意見ございましたらお願いします。

【瀬川補佐】 現在の報告案ですと、9ページ、底質環境基準と対策の部分がございまして、第2パラグラフですけれども、対策手法の選定に当たって環境保全上支障のない手法を選択する必要があるとあります。環境保全上同等な程度の効果が得られるのであればどんな手法をおとりになられるのかはそれは対策者の自由、経済原則にのっとるというふうに私ども思っておりますので、文案、今思いつきませんけれども、このパラグラフに挿入できるのではないと思います。

【村岡委員長】 宮崎委員、いかがでしょうか。

【宮崎委員】 ここの対策のところに入れていただくのか検討していただいて、そういう趣旨のことを入れていただければと思います。

【村岡委員長】 わかりました。それはそれとしまして……、何か今の関連でですか。

【森田委員】 費用対効果の議論が今相当進んでいるのですが、実は私もこの費用対効果というのは絶えず考えているのですが、結構内容が難しいのですね。難しいというのは効果というのを例えば何pg-TEQ/gにするということに対してどういう費用がかかるかということはよくわかるのですが、あるいは費用というのは実際にやってみるとわかるのですが、効果というところの概念はかなり幅広い内容を持っていまして、なぜダイオキシン対策をとらなければいけないのか、というところにもう一回行き着いてくるのだろうと思うのですね。つまり、我々あるいは我々の子孫の、あるいは野生生物もあるいはありかもしれませんが、そういった安全性を担保するということの効果、そのために今考えているところがありまして、そこは数値化が非常に難しいということが多分あると思います。つまり、我々の人の命というのは絶えず値段が変動していまして、多分30年前に比べて今豊かな国になりますとどんどん高くなって、生命の値段というのは高くなって、その分だけどんどん効果は上がってきているというか、効果があるような構造になってくると。
 つまり、そういう細かいことに留意することが効果を持つような、そういう社会に今なってきているのだろうと思うのですね。そういう意味では、例えばダイオキシンの基準なんていうのは、新しいWHOの基準なんかで見ますとますますきつい方向にシフトしてくると。それは例えばTDIが日本では4、見ましたけれども、これもし2にするということはたちまちその時点で効果が2倍になってしまうと、これは不確定さは随分持っています。そういう意味で、費用対効果という概念が相当複雑だということはちょっとこの場でも理解しておいていただきたいですね。幾らの濃度にするという、そこのものは簡単に計算できますけれども、実際に我々が得る効果というのはもう少し複雑な内容で、それぞれの社会において少し変わってくると。あるいは我々がどういうことにより価値を見出すかによって変わってくる要素が相当あるのだということも含めて考える。それに関しましては、例えば環境というのはすべての人が、そこから逃れられないというふうな場であるということから、どちらというと多分中西先生が環境だけが独自に物を決定し過ぎているのではないかとちょっとされたような感じがあるのですけれども、そういう要素も少しはあるかもしれません。そういうそこにしか我々は住めないという、そういうものを背景にしてある種決められてきた背景もあるということだろうと思います。また、例えば田んぼの中にかつてペンタクロルフェノールを初めとする農薬を大量にまきまして、そこにかなり大きなシンクがあるということはそれは間違いがなくて、それを全体に我々生きていくのですが、果たしてそれがよかったのかを含めまして、しかも我々はもうそこにいるからしようがないのだということをある種の前提にしなければいけないのだというような、そういうこともちょっとつらいところはあるのですが、相当複雑なことも含んでいるということをちょっと理解しておく必要があるだろうと。

【村岡委員長】 ありがとうございました。

【中西委員】 ちょっといいですか。今の費用対効果なのですけれども、ちょっと森田委員の御意見は問題を複雑にすることによって何もしないという方向に議論を持ち込んでいるのではないかなという印象を持つのですね。それはちょっとした印象でどうということないのですが、もうちょっと手前のところで費用対効果を論ずるのでいいのではないかと。例えば、ダイオキシンを環境中から何グラム取るのにどのぐらいのお金がかかるというような感じのことで、漠然とした一番最初の費用対効果というのは、それは世間一般の発がん確率をどのぐらい減らすのにどのぐらい寄与してというような計算がどうしても必要になりますが、今この委員会のこの報告というのはダイオキシンを特段減らさなければならないほどのリスクがあるというようなことを前提にしない議論にしているわけで、若干ごまかしでという面もあるかと思いますが、そういう直接的なところに触れないでなおかつダイオキシンを減らそうという議論をしているわけですから、そこでいきなりそもそもどのぐらいの生命が助かるか、その生命の価値はどのぐらいか、その歴史的な変遷はどうかということまで考え出すと費用対効果なんか絶対できないので、この中で費用対効果ということを言うのでしたらダイオキシンを環境中からどのぐらい取るのにどのぐらいの費用がかかるという、そういうことでよろしいのではないかというふうに思います。

【村岡委員長】 私はお聞きしておりまして、森田委員のおっしゃるように費用対効果を厳密に考えると大変難しい、困難、それぐらい複雑なものだということはよくわかりますが、この報告書としてここにそれを盛り込むのはちょっと今の段階ではまた次元が違うのかなというように感じます。それと、今、中西委員もおっしゃったし、それから先ほど宮崎委員もおっしゃった、この報告書に反映するとすればそういったことですね。反映するとすればこの9ページの対策の中で正確な文章はまだ検討しなければなりませんけれども、費用対効果を十分に考慮した対策を行うというふうな意味の文章をここで考えるということあたりでこの報告書として、とりあえずまとめられるのではないかと。もちろん、きょうのいただきました多くの意見は議事録にちゃんと残りますので、そういったことでこの報告書の案につきましての対応を考えさせていただきたいと思いますが。宮崎委員、そんなことでよろしいですか。

【宮崎委員】 結構です。

【村岡委員長】 ありがとうございます。

【中杉委員】 結論のまとめ方は異論はないのですが、私もここの中にそういうことも載せろということを申し上げるわけではないのですが、底質の除去とかそれから土壌の浄化もそうですけれども、これは環境省に物申しているわけではないのですが、実際には国会で法律を通すときにそれはどのぐらいのお金がかかるのかということを、前も何回か環境省の方に申し上げたことがあるのだけれども、それは試算してみて国会の審議の場でこれだけお金かかりますよ、という議論がやはりなされていない。それで、どれだけ効果があるのかというのはこれはなかなか森田委員や中西委員の意見もありますけれども、なかなかこれは難しいと思うのですね。それは人の価値観の問題も入ってきますから、それは社会の合意を得る仕組みになっているわけです。ただ、費用がどのぐらいかかりますかというのは試算してやるような方向へ環境省から言ってもいいのではないか、というコメントだけさせていただきます。多分そうしないと環境省苦しくなるのですね。できない、なかなかお金が財務省から出てこない。なのにやれと、両方から攻められて環境省だけが苦しくなるという状況になりますので、私はむしろ環境行政は開き直るべきではないかと思います。これだけお金をくれたらやれると。そうでなければやれないのだというぐらいの話に本当はなるべきだというふうに思っていますので、ちょっと言い過ぎたかもしれませんが一言申し上げます。

【村岡委員長】 ありがとうございました。そのほかにこの報告書の案として報告書にすることにつきましてそのほかの点で……、国包委員どうぞ。

【国包委員】 第1回、第2回、2回とも欠席させていただきまして、きょう初めてで申しわけございません。今一通り御報告とかいただきまして、私は基本的にこういうことで特段の異存はございません。ただ、やはり先ほど中西先生から冒頭でいろいろお話がございましたが、私もこれまでいろいろな議論の経緯をフォローさせていただいておりまして、これはきょうに限ったことではないのですが、やはり1つ御指摘の中で気になりましたのが科学的な説明といいますか、整合といいますか、そういったことにこだわる余りに少し無理がもしかしたらあるかもしれないというところなのですね。ただ、そうかと言って結論の内容が大きく変わるものでは私は恐らくないと思うのです。先ほどのお話でも100という1つの目安の数字のお話がありましたが、そういった事情なり考えましても、それから現実の汚染状況を考えますと150という数字は私はやはり妥当なところだと。特に中西先生も御異存はこれに関してはないように受け取りましたし、そういった点では私も適正。
 ただ、やはり最初例えばKowが6.9ですとかその他いろいろありますけれども、ある程度決めつけないと一応答えが出ないというところがあります。実際にはこれまでのいろいろな過程でそうではなくてもう少しといいますか、もっと幅の広い視野で多分検討した中で最終的に総合的に判断してこれぐらいということ、これは俗に言えば相場観なりなのですけれども、ただ、専門家が何人も寄って長い時間をかけて検討した結果がそうであると。ですから、そういった検討の内容なり幅なり、そういったことがきちんと後に伝わるような形で残すことができればいいなと。具体的に何でそういうことがきちんと残せるかというふうに考えますと、またこれは非常に難しいのですけれども、この報告書に関して言えば例えば参考文献ですとかあるいはそれについて資料、あるいはこの報告書の付属資料といいますか、もし可能であればですけれども、そういったことも含めて補強するようなあるいは補足するような内容を少しきちんと整理をしてくっつけていただければそういったことが一番よろしいのかなというふうに。もちろん今回も含めてですけれども、こういった議論をしたということを議事録に残していただくということも重要です。確かに科学をおとしめるとかというようなお話がありましたが、厳密に見ればこれは一応科学的な筋道は立てつつ最大限頑張ってということがあると思いますけれども、本当に科学かと言われるとなかなか純粋科学とは大いに違うというようなものになって、それはやはり私としてはいたし方ないのかなと、こんなふうに。長くなりましたが。

【村岡委員長】 ありがとうございました。国包委員の御意見の中で幾つかあったと思うのですが、あとの参考資料等につきましてもこれまでこの検討委員会の席上でいろいろ議論をした結果、今回この報告案の参考資料としてこれだけつけましょう、というふうなことで事務局が提案されているのではないかと思います。一応、私が詳しくやっていたわけではありませんけれども、これまでの検討の内容を踏まえましてこの程度の参考資料をつけていただくということで十分ではないかということで判断しております。
 それでは……、どうぞ。

【山田委員】 底質の環境基準を設定した後、それがどう効果があるかというようなことは一日摂取量の関係で解析するわけですけれども、それは非常によろしいことではないかと思うのですが、ここの理解としてはその中にいろいろな仮定の数字あるいは仮定の考え方が入っているということを一応前提にして考えるということで、例えば具体的には魚介類の摂取割合は一応76%としているわけですが、これは現状の摂取割合で将来はその摂取割合が変わる可能性も十分あるわけでして、そういった仮定の上で検証しているということを一応御理解いただければというふうに思っております。

【村岡委員長】 その点で何か事務局ございますか。1つ、この報告書の最後の今後の課題のところにいろいろと今後も研究しなければいけないというふうなことで、それを具体的に網羅するところまでは行っておりませんけれども、そんな感じもございますけれども。

【瀬川補佐】 山田先生おっしゃられるとおり、あくまでも仮定をおいて計算しております。一日摂取量の関係でどうしてもここでこう設定する必要があればこういった仮定を立てざるを得なかったということで御理解いただければと思います。

【村岡委員長】 それでは、いろいろ御議論いただいて……。

【中杉委員】 確認になるんですけれども、8ページのところの7の測定方法のところでゼロと2分の1の使い分けをしておられる。環境測定の結果、2分の1にを用いると環境基準を超えますよね。今度対策をやろうかどうかを判断をするときにゼロで計算するとやらなくていいことも起こります。余りそういうことは起こらないとは思いますが、すき間が出てくるというのは仕方がないと、そういう形で考えようということでこれは提案されているというふうに解釈してよろしいのですね。ですから、環境基準としてみたら基準は超えているけれども対策はしなくてもいいという非常に微妙なすき間でなかなかそこに落ちるのはないのだろうと思いますけれども、そんなふうな解釈ですよ、というのが二重構造になっているというふうにここは読めてしまうのですが、それでよろしいですねという確認ですが。

【瀬川補佐】 実態的なところから申しますと、各異性体の定量下限値未満をゼロ、検出下限値未満を2分の1にした場合、どの程度TEQにきいてくるかということなのですが、これは私も過去の先輩の遺物を見ますと0.4pg-TEQ/g程度ですので、環境基準値をそのまま150で決めていただけるのであれば余りそこにすき間というのは生じないと思います。

【村岡委員長】 ほかにございますか。

【田辺委員】 ちょっと費用対効果のことについて意見を述べさせていただきたいと思うのですけれども、これは僕も計算してみることが必要ではないかと思います。ただ、その結果として計算した結果、相当の費用がかかるということになっても私は環境省はしり込みすべきではない。これ、見方によっては環境分野の公共事業の拡大だとか、あるいは景気対策というような見方もできるように思いますので、柱の部分に内容が挙がっているのは難しくなったという以上に、こういう費用対効果、お金がかかったとしても国民の納得というのは得やすいのではないかというふうに思いますので、ぜひしり込みすることなく費用をかけてもやってほしいというふうに思います。

【村岡委員長】 ありがとうございます。ほかにございませんか。
 それでは、この報告案をこの専門委員会の報告としてお認めいただけるかどうかについて諮りたいと思いますが、先ほど来言っておりますような費用対効果、今ただいまの田辺委員の意見も含めまして、9ページの9のとこら辺に何らかの言葉を盛り込むということが考えられると思います。その文面につきましてはここで細かく議論するわけにもいきませんから、大体御趣旨は伺っておりますので文面の作成については私にご一任いただいて、私が事務局と調整した後、関係される委員に配布させていただきたいと思いますけれども、そういう形も含みましてこの報告案を専門委員会の報告としてお認めいただくことはできるでしょうか。いかがですか。

【中西委員】 先ほどのやや科学には今のところいいです。費用対効果のところはそれでもう結構ですが、科学というか、ここの算出に本来やはり拡散とかそういうものは考慮すべきところではあるけれどもというような、そういうこととかあるいはこの幅は実際こうだけれども、例えば6.9を選んだ理由なのですけれども、例えばこういう計算をやっていただく、示していただくということはできるか、例えば東京湾なら東京湾、代表的な底質のところでのウエートをつけた平均で掛けると、組成の、で考えるとKowは幾つぐらいになるとかそういうような、だからここで6.9を選ぶ。実際はこれだけの幅があるのだけれどもこういうものを選ぶ。6.9を選ぶのがいいのかどうかも、ちょっと私はまだそういう平均的な日本のダイオキシンの組成というものを考えたときにそれがいいのかどうかというのは、ちょっとまだ計算していないのですね。6 .9よりもうちょっと小さいところへ行ってしまうのではないかなという感じはしているのですけれども、実際は6~8ぐらいまでの間がありますが、TEQも掛けてウエートを掛けていただいて、そうすると実際はもうちょっと下の方に行くのではないのかなという感じもあるのですけれども、そのあたりのことはいいでしょうかね。

【中杉委員】 そこの考え方が費用対効果みたいなことが絡んできて、不確かさの中では効果をどこまで考えるかという話になったときに、ここでは一番安全サイドを考えて、平均的なことを考えるというのは、科学的にはそうかもしれませんけれども……。

【中西委員】 安全サイドではないでしょう。

【中杉委員】 そうか、逆ですね。

【中西委員】 6.1とか6.4という数字とると……。

【中杉委員】 逆になるのか。

【森田委員】 よろしいですか。6.9のことについて議論がありますので。これは多分報告書の中ではFederal Registerを引用されて6.9にされていると思うのです。6.9が本当にいいだろうかというのは私も非常に精密な計算をやったわけではないのですが、大体そんなものかなという感触を持ってこの数字でいいのだろうというふうに理解します。

【中西委員】 そうであればいいのですけれどもね。

【森田委員】 19ページに参考の各異性体のLog Kowというのがここに書いてありまして、それでここのところは日本はややペンタクロルフェノールに引きずられて、そのために1、2、3、6、7、8の6塩素化のダイオキシンが案外TEQベースで高く、底質あるいは環境の生物の中に蓄積をしているケースが多いということがあります。そこの部分がKowで7を超しているところがありまして、2、3、7、8が6.8なのですが、それよりもちょっと高目のところにこういう数字が並ぶ傾向があるというそんな感じで理解しておったのですが、この数字は酒井さんは少しやっておられましたね。

【酒井委員】 この幅、現状は考えるということの重要性というのは全く御指摘のとおりだと思います。それで、今回のダイオキシンあるいはPCBの一部のダイオキシンはPCBということで今のKowを見た場合は、PCBの3から5塩素あたりの異性体の分布と動態をどう見るかということで、今おっしゃられたように少し6.9より下を評価しなければならないのではないか、ということは多分発生すると思います。大体その趣旨でちょっと御質問したような次第なのですけれども、ただ、発生段階では確かに3ないし5塩素化というのは、当然PCBのこれも異性体ですので支配的になると思うのですけれども、当然そこでまた次の移動メカニズムとして蒸気圧の関係での揮散のメカニズムが働きますので、恐らく底質で今補足されたものはもう少し高率倍になっているのではないか、というように見ております。そういう意味で6ないし8という部分の中で6.9というのはいわゆるPCBを念頭に置いてもあながち悪くない数字ではないか、というように私は見てございます。もちろん、そこを裏づけとして東京湾なりあるいは大阪湾なり内海を中心にして、少しそこの裏づけの数字を確認しておくという作業があればこれは非常に望ましいことだと思いますけれども、あとはちょっと実際の事務的なスケジュールとの関連で可能であればという数字の話になるのではないかと思っています。つまり、結果出た後に方々と少し高率化の趣旨として先生おっしゃっられていた6.9より低いのではないかというところでは少し安心してもいいのではないかと。

【中西委員】 残っている方では、どちらかというとKowが高い方が残りやすいですからね、もしかしてそうなってしまっているならばそれでもういいのですが、もしかしてこれ、実際はもっとだよ、ということになって奇妙にここだけで数値が行っていると、ここだけで逆に言うと数字が変わるという非常に弱いもろい構造になってしまうなという。

【中杉委員】 私勘違いしていたのですけれども、先ほどの話は勘違いしていました。もう一つはこれ溶存態に完全になるという仮定をしていますので、そうすると水ないし同じ濃度といってもそれが魚に移るときはやはりそこのところで同じことを考えなければいけないですね。やはりBCFが水オクタノール分配係数に比例するというような考え方でいくと。実際議論をしていくともう一回水から魚へ行くとき、そこのところで同じ議論をするのでどれを用いるかで、両方が違ってくるともちろん違ってくると思いますけれども、同じものを用いているのであれば余り気にしなくてもいいのかなと、それはちょっと暴論かもしれませんが。一応この仮定が実際には完全に溶けると。

【中西委員】 それで私が言いたいことはだからどうしろということではなくて、要するにこういう1つの根拠だけで行ってしまうと本当はそうではない、我々は総合的に考えているからこれでいいやと思っているのだけれども、出てくるのはこれだけになってしまうと、この計算はすごいだれでも小学生でもできるような感じでみんなやり始めるわけですね。そうすると、逆に言うとこういうものに対して批判が出たりということがあるので、その辺はむしろ幅があって、あるいは東京湾の比例では6.幾つぐらいなのでこの程度がいいというふうに、このぐらいの程度がいいというふうに判断されたというぐらいで間をとっておくとか、何かそういう大人の知恵みたいな書き方をしてほしいなというふうに思うのですよ。

【村岡委員長】 酒井委員、どうですか。

【酒井委員】 そういう意味では最初に言われた潮汐拡散の話も確かに移動メカニズムとしては非常に重要なメカニズムでありまして、その中で今回分配平衡とっているこの理由というのは少し丁寧に確かに一文書き加えた方が私もいいのではないかと思うのです。特にやはり今回はダイオキシンを中心とした問題を考えているがゆえに近海、比較的グローバルでない規模が大事なのだと。しかも日本の場合、内海を抱えているという、そういうことの中では分配平衡を中心に考えていくことというのは、これは我々の健康のためだという、そういう少し断りを書きながら、メカニズムとして潮汐拡散を考えていないことはないよということをはっきりやはり明示をした上でこの計算に入った方が確かにいいのではないかと思います。

【村岡委員長】 わかりました。その6.9という値につきましての議論は確かに今酒井委員がおっしゃったように、第1回のときに酒井委員が指摘されまして、どうしてこれ6..9なのだというふうなことで議論した経過を私も覚えております。そういった結果がこの文章の上で6ページのところで真ん中辺にKowの数値である6.9を用いるものとするという言葉になっておるわけですが、この点をもう少し詳しくといいますか、理由がわかるような書きぶりにするということに改めるということでいかがでしょうか。
 ありがとうございます。それで何か事務局ございますか。

【瀬川補佐】 ちょっと質問させていただきたいのですが、このlog Kow6.9というのは当該資料を御提出いただいた委員からの御指摘で6.9という数字を使っておりますが、底質は、全常時監視結果のすべての異性体を見ているわけではないのですけれども、多様な分布をしておりまして、どのような底質がモデル的な異性体分布としてよろしいのかをわかりかねるので何かヒントでもいただけるとありがたいなと思います。

【中西委員】 東京湾、場所によって違うということを言い出すと、場所によって環境基準変えなければならなくなってしまうわけですよね。だから、どこかやはりモデルをつくるしかないので、東京湾あたりではいかがなものなのでしょうか。こちらは酒井先生の方があるいは詳しい……。

【村岡委員長】 何か事務局ありますか。では、森田委員。

【森田委員】 実は今非常に多く問題になっている地点というのはペンタクロルフェノールの影響が非常に強くて、結果としてPow6.9では足りません。実際はオクタダイオキシンはPow8ありますから、8とそれからTEQに非常によく効いているのは7ぐらいの塩素化物でそれはやはり7.幾らと非常に高いのですね。したがって、6.9というのはもっと塩素数の少ないようなものを含めていて、それが6.9でどうだろうかという話で最初報告書を見させていただいたときに、直感的にはこの辺でよさそうだと思ったのは日本全体をある程度平均していくと多分そんなものになるだろうというふうな印象を持っていたからということであります。多分このサブコミッティの方で少しはその辺計算されていると思うのですが、要するに全体としておかしくない、ただし例えば東京湾のようなところにスペシフィックに当てはめようとするともっと高い数字をつくらなければいけないのではないか、ということは1つあるかもしれません。日本全体としてはまあいいかなと。アメリカはそういう数字を使っていると言ったらそれは参考になるねという、そんな感じでありますが、それは一応内々の話です。

【中西委員】 これぐらいからこれぐらいが大体日本に多いと。それでその中間ぐらいで150幾つになるとか、あるいは6.9ぐらいになるとかいうような書き方をすると現実に困らない書き方ではないかなという感じがするのですけれども。

【村岡委員長】 そうです、私もそのように思いますけれども、森田委員どうですか。

【森田委員】 問題はそんな単純ではなくて、何が単純でないかと言いますと、実は意識されているのは例えば食物、魚の基準値ではないのですが、魚にどうたまるかなんていうのは本当は水面下で意識しているのですね。そうすると、魚にたまっているダイオキシンとかフランとかPCBのそのパターンで物を考えるべきではないかという意見がもう一つあります。

【中西委員】 でも、それを言い出すともっと6.9よりずっと6.5ぐらいにしなければだめですよ。コプラナーPCBを主にしようと思ったら。

【森田委員】 しかもそれが人間だとまた少し違ってくるのです。そういう意味では、実際は相当複雑で、だから並列で比較はできると思うのですね。人ではこういうふうな内容になりそうだと。あるいは魚ではこんなふうであるとか、底泥ではこんなふうだと。

【中西委員】 それはそんなに深入りされない方がいいと思うのですよね。

【村岡委員長】 いろいろ細かくいけばそういうふうな話になるのかもわかりませんが、中西委員の御提案のようにこれぐらいからこれぐらいの間で、ここをとったのはこういう考え方だというふうなことで、この報告書の本文としてはそれでやっていきたいというふうに私は思っておりますが。そして、やはりそれだけでは問題の本質が片づいたわけではありませんので、その点は10ページにある今後の研究課題と研究の材料ということで議事録を起こすということから将来に託すというふうに考えたいと思いますが。
 それでは、この報告案で今のKowの数値のこと、それから費用対効果のこと、その2点に関しまして若干の、若干かどうかわかりませんが、修文をするということを条件にこの報告書案は本専門委員会の報告とすることでお認めいただけますか。
               (異 議 な し)

【村岡委員長】 どうもありがとうございます。
 それでは、今言いましたように、その修文にかかわりましては、私、後でまた事務局と相談させていただきます。
 それで、この最終報告案によりましてパブリックコメントをすることになっております。だから、もう一回次回の専門委員会でそのパブリックコメントを募った後、そこから出てきた意見も含めまして、この場でもう一回御議論いただく機会がございます。そのように御理解いただきたいと思います。
 それでは、次に議題の3に入ります。底質の処理・処分等に関する暫定指針の改定について、事務局から御説明願います。

【横田補佐】 処理・処分に関する暫定指針につきましては改定になりますので、まず現行版の説明から始めさせていただきます。資料3で説明いたします。資料3が今現在の水銀・PCBを対象にした暫定指針ですが、大きく分かれて4つの章で構成されています。1ページになります、第1章が総則で、真ん中ぐらいで第2章、ここがほとんどになりますが5ページの上段のところまでにつきましては監視。5ページの上になりまして第3章で工事の方法など。真ん中の段へ行きまして第4章が保管及び処分という、構成的にはこのようになっております。
 内容について、概略簡単に説明いたします。第1章が総則でありまして、物質の定義とか、ここにそういうことが書かれております。第2章が監視でありまして、大部分がこの監視の部分であり、暫定指針というのは基本的に監視計画という性格になろうかと思います。2-3といたしまして事前の水質調査という項がございます。この中で一般調査で(1)で調査地点、(2)で調査項目ということで、該当するPCBならPCB、水銀なりの有害物質等、あと生活環境項目、あとは透視度または濁度、実際工事自体をコントロールする項目ということで透視度または濁度を考えております。2-3-2で水域の状況によっては日変動の大きいところでは連続調査ということを記載しております。2-3-3が調査報告、採水方法とか分析方法でございまして、一般の方法もしくは分析方法については定められたものを引用してくるという形でございます。
 次に2-4の箇所で工事水域の設定ということを定めております。基本的な考え方として工事水域を決めてその境界線上では基準、つまり水の環境基準を守るように工事をしなさいとなっております。2-5で基本監視点の設定、まさしく工事水域と一般水域の境界線上の基本監視点と境界と、工事地点との間に設ける、実際工事をコントロールする補助監視点の設定になっています。2-6といたしまして境界線上の監視。2-7といたしまして補助監視点の監視となっております。2-9が監視の結果により講ずるべき措置です。2-10で処分地周辺の監視ですね。ここで脱水とか中間処分みたいなものも含めた概念で考えております。脱水処理した水についても処分地周辺からの監視ということです。具体的には監視基準として海防用の余水吐ということがありますが、つまりは排水基準で監視することになります。2-10-2及び3が地下水、大気、2-11のところで工事完了後の調査ということで底質及び水質について基準を満足しているということを確認することです。水銀及びPCBについては基準がございますので魚介類の監視ということで、それぞれの基準を設けております。
 監視の方はおおむね以上でして、第3章が工事の方法の選定になっております。この中では大きくは3-1-[1]と[2]とありまして、封じ込めによる方法か、しゅんせつまたは掘削する方法という2つを想定しております。そのほかとして3-2、3-3などでそれぞれの場合において留意点等を記載しております。
 4章におきまして、それぞれ中間保管なり最終処分の原則ということでそれぞれにおいて留意点を記載しております。
 改正点もしくは確認した点ですが、まず第1章総則につきましてはダイオキシンが加わりますので定義等それに合わせて修正するということでございます。監視につきましては2-1、2-2あたりについては、ほかの法律なり数値なり引用している部分がありますので、追加または修正を考えております。
 2-3の部分ですが、一般調査のところでその他の項目ということを追加することを考えております。具体的に何かというといろいろなところで簡易分析を研究開発されておりますし、また現地の状況によっては例えばコプラナーが大半なところはPCBを追っかけることによってダイオキシンそのものをモニタリングすることが可能である場合もあるというようなことを想定しています。書きぶり自体はまた細かく詰めますが、以上のことを念頭に置いて、何らかの項目を追加するかということを考えております。連続調査とか調査の方法等は当然ダイオキシン類の分析方法を引用する形で追加するという形を考えております。
 境界の監視とか補助点の監視とかは、先ほどのその他の項目の絡みで修正することは多少出てきますが、以外は余り変更はありません。あと2-12の7ページ魚介類の監視ですが、ダイオキシンにつきましては魚介類の基準がございませんので、これは指針としてはダイオキシンについては盛り込まないという形で考えております。
 次に工事の方法ですが、幾つか変更点と、去年とかおととしの対策の方の検討項目で一応SSですけれども確認したということを書かせていただいております。まずは工事方法ですが、選択肢として封じ込め・しゅんせつに加えて無害化という工事方法の選択肢として追加することを考えております。現実に実用化されているものがあるかという問題はあるのですが、将来の研究開発、実用化等も含めて考え選択肢として追加を考えています。当然現地の実際の底質において確認してくださいと、そういう書き方を考えております。
 あと12なり13の調査でコンクリートを添加しての封じ込めとか既存の締切方法、矢板で締切ですとかそういったところの有効性についてラボベースもしくはほかの文献等で確認しております。
 保管及び処分ですが、ちょっと見づらいのですが、4-2のところが太字で書いております。ここの部分ですが現在土壌法のところで、例えば情報管理ということで台帳整理と検討されているところであって、そちらの土壌法の足用に合わせて再整理することを考えています。例えば情報管理で同じような目的のために微妙に違ったようなことをつくりますとかえって現場が混乱しますので、そこら辺は現場が円滑に進められるように微妙に違った同じようなものをつくらないということできっちり整合性をとるということを考えております。それから、あと余水処理方法については実験室スケールですけれども13年等に調査に行って確認しております。
 主な点でございますが、除去指針の修正、進捗状況については以上でございます。

【村岡委員長】 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対しまして何か御意見ございましたらお願いします。では、国包委員どうぞ。

【国包委員】 この現行の指針を見せていただくのは私実は初めてで申しわけないのですが、この第1章総則のところを何度か読ませていただいているのですが、この指針自体がどういったことを目的としてつくられているのか、というのがどうも今のところ読んでまだ明確ではないのです。ちょっと私の読み方が悪いのかもしれないのですが、中身を今ご説明を伺ったり見せていただいた限りでは考えられるのは、こういった場合の行為を効果的にあるいは効率的にやるための指針なのかなとか、それからさらには汚染物質の拡散を防ぐためにとかそういったことが考えられるのですが、もし妥当であればですけれども、今度改正を、修正されるということで、そのときにそういったことも含めて御検討いただければなおありがたいなと思います。それが1点。
 もう一点、ついでにお話させていただきたいのですが、現行では通知ですよね。私よくわからないままお話ししておりますが、通知がいいのかあるいはほかの形のものがいいのかということですけれども、むしろこれは質問ですが、通知ということでこの指針をまた新たなものにされるご予定なのか、あるいはほかのこともお考えにあるのか、その辺のところをちょっと。

【仁井課長】 一番最初のこのそもそもの指針って何だという話ですが、先ほどの御議論の中でも水銀の暫定除去基準の話が出てまいりましたけれども、昭和50年ですかね、底質の暫定除去基準という形で水銀・PCBの暫定除去基準を示しております。除去あるいは封じ込めを行う、そういったときに環境保全上の配慮をどういう形でやったらいいのか、ということを取りまとめて指針として示したものということでございます。見ていただければ先ほど御説明いたしましたけれども、実際その工事方法の選択なり何なりというのは水域の管理者であります河川管理者、あるいは港湾管理者がそこの状況に応じて技術的な検討を踏まえて行うという部分がございますので、比較的大ざっぱな形で書いている部分でございますし、あといわば環境配慮としてどういう形でそのモニタリングをして、そこでの工事に伴って周辺に対しておかしなことがないようにということをチェックしていくかといったことを中心にまとめたものでございます。そういった性質のものですので、今回先ほどの報告案という形でダイオキシンについて、これはダイオキシン類対策特別措置法に基づく環境基準になるわけですが、基準が決まっていくとその基準を超える部分について除去等の対策をするといったときに、ではどういう注意をしたらいいのかという話で、ある意味では項目が1つふえたということですから本質的な意味での違いはないのですが、やはりダイオキシンの場合ですと公定法のみでモニタリングをしていくと分析の結果が出るまでに非常に時間がかかる、あるいはお金もかかるといったところが今までの項目についてと比べて大きく違うところでございます。最初に申し上げましたようにその他の項目というようなところで今いろいろ言われている簡易的な手法、いわゆるバイオを使ったような手法なり、あるいはもう少しそこでの底質の異性体分布からそれだけ見ればいいとかそういったところでの関係を見出すことによって、いわばその監視の部分についてダイオキシンだからということで、採用することが妥当な注意というものを書き込んでいければいいのではないだろうかというふうに思っております。
 それから、出す形式でございますが、従前通知という形で出されております。現在、このような個別の環境対策はすべて自治義務という整理になっていますので、どういう形式で出したにしてもある意味で情報提供の域を超えないだろうと思いますけれども、現時点では同じ形式を考えればと思います。

【国包委員】 大したことではありませんですけれども、この第1章のところ、非常に環境保護の趣旨なり目的なり間接的な書き方で書いてあるものですから、もう少し直接的にこういったことを意図してつくったのだということが明確に書いてあれば初めての方にもわかりやすいかなと思います。

【中杉委員】 ちょっとよろしいですか。多分国包先生、私がこう解釈すると間違いなので、ダイオキシンの底質の環境基準というのはこの指針のどこに出てくるのというの話が一番の問題ではないかなと思います。私の解釈で行けば2段目の(3)の除去底質というその[3]で改めてダイオキシンの底質環境基準を超える云々が入ってくる、そういう解釈なのですね、この整理は。このままだったらダイオキシンの今の基準をつくったものが全然入ってこないので、多分そこの注のところで[1][2]があって[3]のところに、ダイオキシンの底質環境基準というのはそこにしか出てこない、多分。
 それでもう一つ、ちょっと私が質問させていただきたいのですけれども、コンクリートの封じ込めの話なのですが、今までのものは全部溶出基準ですよね。溶出基準ですから封じ込めして、溶出基準これとこれだけかというのが何とかなるなという、それでもちょっとおかしいところがあるのですが、今度は含有基準ですからコンクリートのまぜ具合によって、大量に混ぜてしまえば効果があるなしにかかわらず、コンクリートが溶出を防止するとかそういう効果ではなくて、薄めてしまうというので基準を十分クリアできてしまうのではないかと思います。今度、コンクリートをつくってはかれば、含有はかればいいわけですから、2倍上というのは。

【中西委員】 コンクリート詰めしなくても……。

【中杉委員】 そうそう。

【中西委員】 そっちに捨てれば1,000ppm以下だからいいということにはならない。

【中杉委員】 だから、そこら辺のところをどういうふうに考えるのですか、という話が1つ。ちょっと嫌らしいところ、そこのところをうまく抜けておかないといけません。

【中西委員】 大丈夫だと思うけれども。

【横田補佐】 基本的な考えとしては土壌と一緒で、周辺と遮断しておくようにという考え方です。ただ、おっしゃるとおり変な抜け道にはならないように、文章の整理という段階できっちり見ていきたいと思います。

【村岡委員長】 ほかに、酒井委員どうぞ。

【酒井委員】 3章工事の方法等に無害化を追加されるということなので、ちょっと私の理解不足であれば御指摘いただきたいと思います。この辺は4章の4-2処分の原則のところで入ってくる方がより適切ではないか、というようにちょっと読ませていただいたのですが。と言いますのが3章の工事の方法等というのは、これはまさに現場の底質の対処方策が中心に書かれてありまして、それで現地に封じ込めるかあるいはしゅんせつするかと、そして、それぞれの留意点が書いてあるわけですね。だから、オンサイトで海の底なりあるいは湖の底で、湖の底なら関係あるかどうか知りませんけれども、オンサイトで無害化したのを適用できる技術があれば、それはここに書くのは適切だと思いますけれども、今少なくとも私が知る範囲でそれに応用し得るような無害化の技術があるかとはちょっとまだ理解をしておらないということで、よりこの4-2処分の原則のところで無害化というのをつけ足されるのがいいのではないかと思ったのですがいかがでございましょうか。

【横田補佐】 3章のところで書いているのはまさしく現地での無害化ということを想定しております。水の底というわけではないのですが、その隣あたりの現地でプラントをつくってとかを考えています。確かにおっしゃられるとおり、現在現実的に適用できる技術があるのかと言われるとないのでしょうけれども、適用されないと技術開発さえも封じ込めてしまうというまたことになってしまい、それもミスリーディングだということで書いております。また、第4章につきましては土壌の方もそういう形になっていたかと思いますので、そこら辺もまた横並びで整理していきたいと思います。

【中杉委員】 現地でと現地でないということで整理をされると、ちょっとおかしいように思うのですが、現地でやるものというので封じ込めをするにしても中間処理みたいなやり方があるのですよね。多分これはよくわからないと。細かいところに多分ダイオキシン類が集積していると粗いものとか少ないということもあります。そうすると現地ででも何らかの形で分級沈降みたいなことをして分けてしまうと高濃度の分と低濃度の分、問題ない分と問題ある分に大きく分けられる可能性がある。これは実際やってみないといけないのですけれども、そのときに水の管理をどうするとかいろいろ難しい問題ありますけれども、そういうふうなところも踏まえてそういう技術が排除されないような、配慮をしていただければというふうに思いますけれども。

【仁井課長】 基本的には先ほど申し上げましたように、どちらと言うと処理・処分に当たって工事にかかわる周辺環境への配慮ということで、余り工事工法そのものみたいな、まさにそこの港湾管理者あるいは河川管理者、下水道管理者が知恵を働かせてといった部分も変に拘束することをしたくはないと思っております。底質対策というとかなり幅のある水域が思いうかぶのですが、もちろんそれも当然これの対象になるのですが、比較的小さな水路みたいなものも対象となりまして、こうした場合には締め切ってしまって完全にドライにしてという工法が適用可能なところもこの指針の中でカバーしていることになっております。今これまでの対策事業でみますと、箇所数でいくとそういうのが小さな水路を上下流締め切って完全にドライにしてそこをといったようなところも多くあります。そうなるとほとんど土を吸う場合と変わらないといったようなそんな状況はございます。

【村岡委員長】 ほかにございますか。
(な し)

【村岡委員長】ないようでございます。いろいろ貴重な御意見をいただきましたので、これを参考に事務局の方で御検討を続けていただきたいと思います。
 それでは、次に議題の4でその他に移ります。事務局から何かあるでしょうか。

【瀬川補佐】 今後の予定ということで申し上げます。専門委員会報告案につきましては文章を修正後、今後パブリックコメントの手続を進めたいと考えています。これらコメントを加えて次回専門委員会を開催したいというふうに考えておりまして、次回の専門委員会につきましては6月の中旬から下旬ごろということで予定しております。日程につきましてはこの委員会終了後にここにいらっしゃる先生方に関しましては、日程調整表を配付させていただきますので、よろしく御記入のほどお願いいたします。また、当委員会の運営方針で議事録を作成し、公表することとなっております。後日、事務局から議事録案の方を作成し、各先生方にお送りいたしますので御発言内容について御確認いただきますようお願いいたします。

【村岡委員長】 ありがとうございました。以上で予定されました議題が済みました。
 それでは次回はパブリックコメントの結果を踏まえまして、専門委員会を開催したいということでございますので、また事務局の方でいつやるか御検討いただきたいと思います。
 それでは、どうも長時間熱心な御議論いただきましてありがとうございました。本日はこれで終わりたいと思います。