中央環境審議会水環境部会 瀬戸内海環境保全小委員会(第12回)議事録

議事次第

開会

議題

(1)関係県・関係団体からのヒアリング

(2)栄養塩類と水産資源の関係に係る検討について

(3)その他

閉会

出席者

委員長 岡田光正委員長
委員

足利由紀子委員、大塚直委員、高村典子委員、白山義久委員、長屋信博委員、池道彦委員、岩崎誠委員、上田直子委員、内藤佳奈子委員、中瀬勲委員、西嶋渉委員、西村修委員、細川恭史委員、柳哲雄委員、山田真知子委員、 鷲尾圭司委員

関係県・関係団体

広島県環境保全課 秋山主査

愛媛県環境政策課 山内主幹

大分県環境保全課 荒金補佐

山口県漁業協同組合 渡辺指導部部長

愛媛県漁業協同組合連合会 平井代表理事会長

大分県漁業協同組合 日隈専務理事広委員

事務局

環境省:水・大気環境局長、大臣官房審議官、水・大気環境局総務課長、水・大気環境局水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、閉鎖性海域対策室長補佐、閉鎖性海域対策室審査係長、自然環境局自然環境計画課計画係長

農林水産省:水産庁増殖推進部漁場資源課補佐、水産庁漁港漁場整備部計画課計画官

国土交通省:水管理・国土保全局河川環境課企画専門官、水管理・国土保全局下水道部流域管理官付流域下水道計画調整官、港湾局海洋・環境課長補佐

議事録

午後1時29分 開会

午後4時35分 閉会

○島津係長 皆様お集まりいただきましたので、定刻より少し早いですが、ただいまから中央環境審議会水環境部会第12回瀬戸内海環境保全小委員会を開会いたします。

 委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席をいただき、誠にありがとうございます。

 本日の出席状況ですが、委員23名中17名の出席をいただいております。

 なお、秋山委員、江種委員、沖委員、秦委員、田中委員、千葉委員につきましては、御都合により御欠席と連絡をいただいております。

 また、上田審議官につきましては、所用のため遅れて参ります。

 それでは、まず議事に先立ちまして、水・大気環境局長の田中より御挨拶申し上げます。

○田中局長 環境省水・大気環境局長の田中でございます。

 中央環境審議会第12回瀬戸内海環境保全小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

 委員の皆様、瀬戸内海関係府県、関係団体の皆様におかれましては、平素より瀬戸内海の環境保全の推進に御理解と御協力を賜りまして、誠にありがとうございます。

 本日は御多忙の中、御出席を賜り、重ねて御礼を申し上げます。

 御承知のとおりでございますが、平成27年度の瀬戸内海環境保全特別措置法の改正を受けまして、平成31年度を目途として、きれいで豊かな海の確保に向けた方策の在り方に関するとりまとめを行う予定としております。本小委員会においてこれまでも御議論を進めていただいているところでございます。

 平成31年度の取りまとめに向けまして、昨年8月に開催した前回の小委員会の際にスケジュールをお示ししております。本年度は、まず水質及び底質・底生生物の変化状況や水環境等に係る項目について湾・灘ごとの海域特性等を踏まえた分析、評価を行うとともに、瀬戸内海における栄養塩類と水産資源の関係に係る調査・研究等の結果の収集・整理を行いまして、これらをもとに湾・灘ごとの海域の特性や、栄養塩類と水産資源の関係について総合的に検討を行う予定としております。

 このために、特に栄養塩類と水産資源をめぐる地域の実情及び課題、それから調査・研究の状況などを伺うことを目的としまして、8月の小委員会では瀬戸内海東部の関係府県・関係団体、それから水産の研究機関の専門家にお越しいただきまして、ヒアリングをさせていただいたところでございます。

 これに引き続きまして、本日は、瀬戸内海中西部の関係県・関係団体の方々にお越しいただき、ヒアリングを実施させていただく予定としております。遠いところをありがとうございます。東部、中西部と2回、本年度実施させていただいたヒアリングの内容については、本年度の総合検討と、来年度のきれいで豊かな海の確保に向けた方策の在り方に関するとりまとめの作業に生かしていきたいと考えております。

 本日の2つ目の議題にございますが、栄養塩類と水産資源の関係に係る検討ということで、環境省から幾つかの種に着目し、栄養塩類と水産資源の関係について解析しておりますので、その結果について、後ほど御説明したいと思っております。

 委員の皆様方におかれましては、今回も3時間の長時間となりますが、本日も忌憚のない御意見、御助言を賜りますようお願いを申し上げて、御挨拶とさせていただきます。

 よろしくお願いいたします。

○島津係長 瀬戸内海中西部の関係県・関係団体の方からヒアリングを実施させていただきますので、御紹介させていただきます。

 広島県環境保全課、秋山主査でございます。

○秋山主査 秋山でございます。よろしくお願いいたします。

○島津係長 愛媛県環境局環境政策課の山内主幹でございます。

○山内主幹 山内でございます。よろしくお願いいたします。

○島津係長 大分県環境保全課の荒金補佐でございます。

○荒金補佐 大分県の荒金です。よろしくお願いいたします。

○島津係長 山口県漁業協同組合の渡辺指導部部長でございます。

○渡辺指導部部長 渡辺です。よろしくお願いします。

○島津係長 愛媛県漁業協同組合連合会の平井代表理事会長でございます。

○平井会長 平井です。よろしくお願いします。

○島津係長 大分県漁業協同組合の日隈専務理事でございます。

○日隈専務理事 日隈です。よろしくお願いいたします。

○島津係長 続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 配席図、議事次第の次、資料1が委員会名簿、資料2-1が「広島県内における水環境及び水産業の現状と課題」、資料2-2が「愛媛県の海域環境の状況」、資料2-3が「大分県における瀬戸内海環境保全の取組」、資料3-1が「山口県瀬戸内海域の漁業について」、資料3-2が「愛媛県の養殖業と水環境等を巡る課題について」、資料3-3が「大分豊前海における水環境と水産資源等を巡る諸情勢」、資料4が「栄養塩類と水産資源の関係に係る検討状況について」、参考資料1が前回小委員会でお示しした「とりまとめに向けた検討の進め方について」、参考資料2が瀬戸内海環境保全特別措置法と基本計画の概要と本文になっております。

 不足等ございましたら事務局にお申しつけください。よろしいでしょうか。

 本日の会議は中央環境審議会の運営方針に基づき、公開とさせていただいております。

 なお、プレスの方は、これ以降の写真撮影等はお控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 それでは、この後の議事の進行につきましては岡田委員長にお願いしたいと思います。

 岡田委員長、よろしくお願いします。

○岡田委員長 かしこまりました。

 委員の皆様、瀬戸内海の関係県、関係団体の方々におかれましては、大変御多用の折、御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。

 早速ですが、議事に入りたいと思います。

 最初の議題は、議事次第にございますように、関係県・関係団体からのヒアリングとなっております。広島県、愛媛県、大分県の3県より、水産資源や水産業と水環境等を巡る課題、栄養塩類等と水産資源の関係に係る調査・研究状況等についてということで御説明をいただきます。

 各々の説明者の方々、時間が大変短くて恐縮でございますが、10分を目安にして御協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。質疑応答につきましては、3県御説明いただいた後でまとめて行いたいと思います。

 それでは、早速ですが、広島県環境保全課の秋山様よりよろしくお願いいたします。

○秋山主査 広島県環境保全課の秋山です。よろしくお願いいたします。

 お手元の資料2-1によりまして「広島県の水環境及び水産業の現状と課題」を御紹介させていただきます。

 資料は二段組となっておりますが、右下にページ数がございます。このページ数で進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 では、2ページをご覧ください。広島県の水産業の概要として、地域別の漁業形態を御紹介するために模式図を示しております。

 向かって左側が西、右側が東になります。県西部の広島湾を中心にカキ養殖が行われておりまして、広範囲にイワシ船びき網漁場があります。地図の真ん中辺り、県中央付近ではカキ養殖の他、タチウオ、マダイ等多種類の漁船漁業が行われており、県の東部ではノリ養殖及び小型定置網漁業が主に営まれております。また、東部海域では、ノリ養殖漁場の下の辺りに西部と同様にイワシ船びき網漁場がございます。

 模式図の中で☆で示しておりますのが、名産品もしくは観光資源を表しております。全国一の生産量を誇ります広島かきについては、ご覧のとおり西部・中部地域における名産品となっております。

 それでは、3ページになります。広島県では、平成28年10月に策定しました瀬戸内海の環境の保全に関する広島県計画におきまして、計画の積極的な推進を図るために、昨年4月1日に行政機関、活動団体、漁業者等多様な主体によって構成する湾灘協議会を設置いたしました。県内5つの湾灘を西部、中部、東部の3つに区分した形で協議会を設置しておりまして、各協議会ごとに海域の実情に応じた取組を推進することとしております。

 この3つに区分した海域ごとの水環境の現状について御紹介いたします。

 4ページをご覧ください。西部海域の広島湾における環境基準の類型指定の状況になります。

 CODの類型指定と全窒素・全りんの類型指定をあわせて記載している関係上、実際の類型指定の水域名と一部異なりますが、御了承ください。

 凡例にありますように、●はCODの環境基準点、□は全窒素・全りんの環境基準点になります。

 CODの環境基準につきましては、ご覧いただきますように概ねA類型で、海田湾はB類型となっております。西部にあります大竹港は海田湾と同じくB類型ですが、記載は省略させていただいております。

 全窒素・全りんの環境基準につきましては、海田湾と広島湾北部のみがⅢ類型、それ以外はⅡ類型となっております。

 では、5ページをご覧ください。これ以降は西部海域のCOD、全窒素・全りん等の年平均値の推移をグラフでお示ししております。

 まず、CODになります。グラフにしておりますのは平均値ですので、環境基準値とは単純比較できませんが、状況把握ということで、平均値で記載させていただいております。

 環境基準がどのくらいかということで、B類型の基準値を3mg/Lに、A類型の基準値を2mg/Lに参考として記載しております。

 ご覧のとおり、西部海域の各地域ごとに見ますと、海田湾と広島湾北部については近年少し上昇傾向にあるというところでございます。また、こちらのグラフの始まりの昭和52年度当初から見て低下していますのは呉地先水域のみで、その他の水域については同等か、もしくは少し上昇傾向にあるということがおわかりいただけるかと思います。

 続きまして6ページ、全窒素の年平均値になります。

 水域区分がCODと若干変わっていますが、いずれの水域も環境基準を達成しておりまして、さらに濃度レベルについては少し低下傾向といった状況がおわかりいただけるかと思います。

 7ページが全りんの年平均値になります。現在の水質レベルは、こちらのグラフが始まっております平成6年度ごろと大体同じくらいという状況です。環境基準は達成していますけれども、全窒素はかなり下がってきている状況で、全りんについては近年少し濃度レベルが増加傾向にあるというところがおわかりいただけるかと思います。

 続きまして、8ページをご覧ください。こちらは透明度を示しております。海域においては過去から全地点で透明度の測定が行われており、漁業者の方は水がかなりきれいになったとおっしゃっておられて、わかりやすい指標として、水質の変化と透明度で何か経年変化がわからないかということで、まとめてみました。

 右上のグラフを見ていただきますと、呉水域については、昭和49年から見ますと1mぐらいだったものが2.5mぐらいに改善していますが、その他の水域についてはそれほど変わらない、もしくはやや改善という形で、明確にこうといった関連については判断できなかったという結果になります。

 一番下の図に示していますのは、広島湾再生推進会議というのがございまして、そこで取りまとめております夏季の透明度の推移になります。こちらは地点と濃度分布を色分けで示しておりまして、見た目わかりやすいので、御紹介させていただきます。

 赤が透明度3m程度、橙が4mで、黄色から緑になるにしたがって透明度が良好と見ていただければと思います。陸域に近い地点では、透明度が低位なのがおわかりいただけるかと思います。

 9ページになります。ここからは中部海域、安芸灘・燧灘の状況になります。

 環境基準の類型指定状況は、一部河川の流入のところ、呉地先海域で黒瀬川下流のところは若干省略して、記載していないところがありますが、ご覧いただきますとおり、CODについてはA類型、全窒素・全りんについてはⅡ類型ということで御理解いただければと思います。

 10ページをご覧ください。CODの年平均値の経年変化になります。変動はありますが、中部海域についてはいずれもA類型の環境基準を下回った値で推移しております。

 1枚めくっていただきまして、11ページは全窒素になります。全窒素は、先ほどの西部海域と同様に、かなり低い値で推移していることがおわかりいただけるかと思います。

 12ページにつきましては、全りんになりますが、全りんは先ほどの西部海域と同じように、環境基準は達成していますが、最近上昇傾向にあるということで、全窒素と若干傾向が違うことがおわかりいただけるかと思います。

 13ページが透明度の推移になります。先ほどの西部海域に比べますと、透明度の数字が中部海域のほうが良好でして、これら水域の透明度は少し高い状況にあることがおわかりいただけるかと思います。

 続きまして、14ページです。東部海域の類型指定の状況になります。3区分になりますが、基本的にはこれから御説明させていただくのは備後灘と備讃瀬戸で、箕島町地先海域は、以降のデータでは省略して紹介しております。

 1枚めくっていただきまして、15ページがCODの推移です。

 変動していますが、近年こちらの両方の水域については、平均値ですが、環境基準よりは低い値が確認されております。記載を省略しています箕島町地先海域については、CODの環境基準については未達成の状況が継続しております。

 16ページです。こちらは全窒素になります。他の海域と同じように、環境基準を達成し、さらにかなり低い値で推移しているという状況を確認しております。

 1枚めくっていただきまして、17ページが全りんになります。これも他の水域と同じですが、近年、環境基準を達成しつつも上昇傾向となっております。

 18ページになりますが、こちらは透明度の推移です。値の記載を省略しました箕島地先は、左側の模式図に示すように河口のところで、汚れが若干ありまして、他の地点に比べますと透明度は少し低い状況になっていますが、他の備讃瀬戸、備後灘については、透明度は近年かなり高くなってきている状況です。

 19ページになります。これは3つの海域の、CODの環境基準点のデータだけですけれども、湾・灘ごとの底層DOの年最小値の経年変化を示させていただいております。底層DOとしてサンプリングを開始した平成24年度からのデータしかございませんでしたので、過去数年間のデータで恐縮ですが、このような状況で、広島湾が最低値ですけれども、CODの環境基準点というところで見ると、概ね3mg/Lを超えて推移している状況になっております。

 続きまして、20ページです。広島県の発生負荷量の推移をグラフでお示ししております。現在策定しています第8次水質総量削減計画では、現在の水質を悪化させないことを目途として、削減目標量は前回の第7次計画と同値としております。

 発生負荷量の推移を見ていただきますと、全窒素・全りんについては総量規制が開始された以降のデータしかございませんので、過去数回分しかないのですが、CODについては1978年当時の99トンに比べますと、2016年度は44トンと半減している状況です。全窒素については大体同じくらい、全りんについては少し削減して8割程度になったという状況になっております。

 1枚めくっていただきまして、21ページに水産業の状況を数値でお示ししております。

 こちらは主要魚種等別生産量のグラフになります。左上のグラフが漁業産出額の推移、左下のグラフがカキの生産実績となります。左上の漁業産出額をご覧いただければおわかりのように、広島県では、近年はオレンジ色の海面養殖業が産出額の70%以上を占めておりまして、海面漁業につきましては1990年、平成2年ごろと比較しますと半減しているような状況になります。

 海面養殖業の主体ですが、右下のグラフに記載しておりますように、カキとノリが主要で、カキについては、最初に御紹介したように全国一の生産量を誇っております。

 左下のカキ生産実績ですけれども、近年は生産管理ということで、生産量の目標を水産部局で2万トンと設定しておりまして、若干目標にいっていない年もありますが、概ねその目標に相当する生産量となっております。

 右上の魚種別生産量では、少しわかりにくくて恐縮ですけれども、△と点線で示したかたくちいわしの生産量がかなり変動していることと、その他の魚種についてもやや低下傾向にあります。特にかたくちいわしの漁獲量については、西部海域と東部海域で漁場がありますが、東部海域では、理由はよくわかりませんが、変動が大きいといったことを聞いております。

 22ページになります。赤潮と漁獲量の関係がわかるかなということでお示ししているものです。上の青グラフが海面漁業の生産量と赤潮の発生件数、下の赤グラフが海面養殖業の生産量と赤潮発生件数のグラフになります。赤潮発生件数は右側に数字が載っていますが、近年10件も発生していない状況でして、さらに漁業被害についても、広島県では最近発生しておりません。赤潮の発生要因としまして水産部局では、特定の地域、近年は東部海域のほうでよく発生するのですが、その地域では底泥に沈積した休眠胞子があって、水温が適温になる夏場に発芽してプランクトンが発生しやすくなっており、養殖漁業はないのですが、高水温と底泥撹拌ですとか河川から供給された栄養塩類が原因なのか、その辺の確証はないのですが、そういった条件が関わって発生するのではないかということです。

 漁業被害が発生していないということについてですが、赤潮の発生場所が魚類の養殖場からは離れていること、また、発生密度自体も低いということなどから、被害が発生していないのではないかと考えているところです。

 それでは最後、23ページがまとめになります。

 駆け足で大変恐縮ですけれども、広島県におきます課題としましては、先ほど御紹介しましたように、CODの発生負荷量は過去から比べますと半減しているにもかかわらず、環境基準の未達成水域が依然として存在していることです。また、全窒素が低減される一方、全りんについては増加傾向の水域があります 。また、こちらにカキの養殖における採苗不良とか成育不良等々ございますように、水産業において漁獲の不良といったことが発生しております。

 カキの採苗不良につきましては水産部局でいろいろ検討を行っておりまして、今年度から3年間、採苗安定化事業として取組を行っているということです。これは通常は沖合にありますマガキの産卵用の親貝の養殖いかだを、海水の分析結果をもとに広島湾奥、栄養塩類が豊富な湾ということでそちらへ再配置しまして、採苗の終了後に再度沖合にいかだを戻すといったことを漁業者様に情報を伝達しながら行っています。昨年度も実証試験として実施しておりまして、昨年度はそれでも50%の採苗率だったということですが、今年度は100%でした。ただ、豪雨災害による影響も考えられますので、好成績の要因、今年はとれ過ぎるぐらい採苗がよかったということについての要因は不明ですけれども、今までの採苗不良の要因がカキ幼生の成育に必要な小型プランクトンが少ないため、要はプランクトンがいても食べられる大きさのものが少ないという状況が原因ではないかという仮説を立てて、現在、調査・研究を進めていると聞いております。

 先ほど3つの海域で御紹介させていただきましたように、また水産業等の特徴も違いますので、湾灘協議会の場で関係者のご意見を頂きながら、湾・灘ごとの目指すべき姿について検討を進めて行きたいと考えております。

 

 以上です。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 続きまして、愛媛県環境局環境政策課の山内様より御説明をお願いします。

○山内主幹 愛媛県の山内と申します。よろしくお願いいたします。

 資料2-2をご覧いただけたらと思います。広島県さんと同じく1枚に2ページお示ししていますので、右下のページ数で御説明させていただきます。

 最初の写真ですが、本県と広島県とをつなぐ西瀬戸自動車道、通称しまなみ海道と呼ばれる来島海峡大橋をお示ししております。

 資料2ページをお願いします。本県は、大きく燧灘、伊予灘、豊後水道の3海域に区分されております。各海域において海岸の地形が異なるとともに、水域の利用状況にもそれぞれ特徴がございます。

 最初に、海域ごとの特徴を御説明させていただきます。資料3ページをお願いします。まず、燧灘でございます。古くから工業が盛んな地域でございまして、かつて遠浅の砂浜や塩田を埋め立てて工業地を造成した歴史がございます。製造業が盛んで、東のほうから四国中央市の紙パルプ、新居浜・西条市の化学・金属工業、今治市の造船やタオルなどが有名となっております。漁業につきましては底びき網などの沿岸漁業のほか、西条市等の沿岸では、ノリ養殖なども行われております。

 その次の伊予灘ですが、平坦な海岸線が特徴となっております。松山市を中心としまして、県内では最も人口が多い地域となっております。産業では、化学繊維や機械工業などの製造業が立地しております。また、本県の1級河川の重信川、肱川はいずれも伊予灘へ流入しております。漁業につきましては、底びき網漁などのさまざまな沿岸漁業が盛んとなっております。

 次に、4ページをご覧願います。豊後水道、いわゆる宇和海ですが、先ほどの燧灘や伊予灘とは異なっておりまして、複雑な海岸線を持つリアス式海岸となっております。このリアスの波静かな入江を利用しました養殖業が盛んで、タイや真珠につきましては日本一の生産量を誇っております。写真にありますミカン畑と養殖いかだのような、いかにも本県らしい風景を宇和海沿岸の各地で見ることができます。

 次に、資料5ページをお願いします。ここからは、各海域の水質につきまして御説明いたします。本県では、海域を燧灘の東部、中西部、北西部、それから伊予灘、宇和海の大きく5つに分けて類型指定して、水質監視を行っております。CODにつきましては、燧灘中西部をさらに伊予三島土居海域、新居浜海域、西条海域、東予海域の4つに分けて類型指定をしております。また、CODにつきましては沿岸部や港湾内をB類型またはC類型に、それ以外はA類型に指定しております。全窒素・全りんにつきましては、全てⅡ類型に指定しております。

 次に、資料6ページをお願いします。まず、CODの経年変化をお示しします。

 6ページは燧灘東部海域のCODをお示ししております。ごくわずかですが微増傾向でございまして、特に平成13年から23年くらいまではその傾向が強くなっているところです。この海域の沿岸部には紙・パルプ工業が多く立地しておりまして、発生負荷量的には低減しておるところでございますが、瀬戸内海の中央部という地形的な影響等もありまして、水質にはダイレクトな効果が表れていない状況となっております。

 また、A類型の海域につきましては、環境基準が未達成の状況が継続しているところでございます。

 次に、7ページをお願いします。続きまして、松山海域と宇和島海域のCODの経年変化をお示ししております。概ね横ばい傾向でございますが、松山海域のB類型及びC類型の海域では低下傾向が確認できます。これらは生活排水対策等による水質改善が反映されてきているものと考えております。

 続いて、資料9ページをお願いします。こちらは本県の海域ごとの全窒素の経年変化をグラフにしたものです。当初はⅡ類型の環境基準を超えておりましたが、近年は概ね横ばい傾向でございまして、全ての海域で環境基準を達成している状況でございます。

 続きまして、資料10ページをお願いします。こちらは全りんの経年変化のグラフでございます。全窒素と同様の傾向でして、近年は全ての海域で環境基準を達成している状況となっております。

 続きまして、資料11ページをお願いいたします。水産業の関連としまして、漁業被害を伴う赤潮の発生状況をお示ししております。昭和50年ごろに比べますと件数自体は減少しておりますが、いまだに年間10件程度の発生が見られます。先ほど申しましたとおり、全窒素・全りんにつきましては環境基準を達成してはおりますが、毎年このように赤潮の発生が継続しているところでございます。

 続きまして、資料12ページをお願いいたします。このページには、本県の発生負荷量の推移についてお示ししています。COD、窒素、りんにつきましては、これまで総量削減計画を定めて削減してまいりました。これによりまして、お示しのとおり、いずれも削減している状況となっております。

 なお、本県の発生負荷の特徴としましては、CODにつきましては、産業系のうち紙パルプ工業の負荷が大きなウェィトを占めているところでございます。先ほど申しましたとおり、紙・パルプ工業は燧灘の四国中央市付近に集中して立地しているところでございます。

 また、窒素・りんでございますが、その他系の負荷のうち、海面養殖業からの負荷が本県においては大きなウェィトを占めております。海面養殖が宇和海において非常に盛んな状況です。

 最後に13ページでございますが、まとめとしまして今後の課題等をお示ししております。他の府県同様、これまでの工場、事業場に対する規制、それから生活排水処理施設の整備等によりまして、陸域から海域への負荷の流入を削減してまいりました。しかしながら、CODにつきましては一部の海域において環境基準を超過している状況であり、今後もこれらの対策を継続する必要があるものと考えております。

 また、窒素・りんにつきましては、負荷の削減によりまして近年は継続して環境基準は達成しておりますが、一方で、赤潮の発生はなくなっていない状況となっております。本県は養殖業が非常に盛んでございまして、赤潮が発生しますとその被害は甚大なものになることから、少なくとも現状の水質を維持する必要があるかと考えております。

 以上で御説明を終わります。御清聴ありがとうございました。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 引き続きまして、大分県環境保全課の荒金様より御説明をお願いいたします。

○荒金課長補佐 大分県環境保全課、荒金です。

 資料2-3をもとに御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、大分県における瀬戸内海環境保全の取組について説明いたします。

 写真は、私が別府市出身なので、別府湾と別府港を載せさせていただきました。

 それではスライドの下のほう、少し見にくいですが、大分県の海域の概況1をご覧ください。

 この後、大分県の海域の状況、課題等を説明するに当たって大分県がどういう海域で成り立っているかをまずお示しします。

 県北のほうに周防灘、中部に伊予灘、そして南部に豊後水道という3つの大きな海域から成っておりまして、それぞれに特徴的な湾灘等、こちら黄色で書いてあるものですが、それぞれ有しております。

 すみません、大変小さくて見にくいですが、3つグラフがございます。平成26年度までと古いデータで申し訳ないですが、環境基準の達成率ということで、各灘ごと、海域ごとにこちらのグラフでお示ししておりまして、概ね達成していますが、CODに関しては時たま未達成の部分がありまして、特に周防灘については、環境基準を達成していない年が結構ある状況になっております。

 次ページをお願いいたします。大分県の海域の概況2ということで、底質分布図と、右側に水生生物の保全に係る環境基準の類型指定状況を上げております。

 底質分布図につきましては、真ん中にあります別府湾につきましては、シルト質粘土または粘土質シルトで構成されております。県南、図で言うと下のほうになります佐伯湾等に関しましては、粘土質シルトとなっておりまして、その他の海域についてはほとんど砂及びシルトといった状況になっております。

 右側の地図ですけれども、大分県の水生生物の類型指定ということで、平成26年に完了しております。左端の上のほうが国が類型指定する海域になっておりまして、こちらも、御案内のとおり平成29年5月22日に類型の指定が完了しておりますので、大分県の場合、現在、全海域で生物の保全に関する類型指定がされている状況です。

 この濃い青が生物特Aになっておりまして、薄いところが生物Aですが、保護水面であったり貴重な生物、カブトガニとか、そういう広大な干潟が広がっている場所に関しましては、多数の藻場、干潟があるということで特Aと指定させていただいております。

 その下、3枚目のスライドをお願いします。こちらは大分県の海域のCODの状況、年平均になります。2000年、2001年がポコッと飛び出ているのは何らか特別理由があったのかと調べたのですが、特段これといって理由は見つかりませんでした。

 この色で言うと濃い紅色、豊前地先海域におきましては、最初の環境基準の達成状況と同じく、CODが一番高い状況になっているのですが、全体的にはやや減少傾向という感じで、近年は地域ごとのCODの差が昔よりは若干、特に豊前地先海域ですが、狭まっているというのが見てとれると思います。

 4ページをお願いいたします。こちらは全窒素の推移ですが、経年的に見ると、全体としてはやや減少傾向にあるかと思われます。湾の間で見ると別府湾、この薄緑色が一番高い状況ですが、響灘及び周防灘、点線の部分は低い状況で、他の湾に比べるとそういう傾向が見られると思います。

 5ページの全りんに関しましては、横ばいもしくは増えているのか、それもはっきり言えないぐらいの状況になっておりまして、響灘及び周防灘が一番低い状況になっております。

 6ページをお願いいたします。これは総量規制の状況を、スライド数が多くなってしまうので窒素・りんは載せずにCODだけ代表で載せさせていただいたのですが、ご覧のとおり、他の府県さんも同じだと思うのですが、産業系のCODの実績に関しては減少しております。生活系のこの青い部分に関しては、やや減少しているのですが、今の大分県の計画としては、産業系を維持しつつ、少しこちらの生活系のCODを減らしていこうという計画を上げております。

 その下、海域における漁獲量の推移ということで、7枚目のスライドをご覧ください。こちらいろいろ資料を載せると結構ショッキングだといろいろな委員さんからいただくのですが、どの海域でも漁獲量、こちらは「漁獲」なので、養殖は入っていない、天然物だけになりますが、激減しております。

 これを見ると豊後水道が一番減っているように見えるのですが、パーセンテージで言うと青の周防灘が一番減っておりまして、今現在、トン数で言うと最盛期の5%ぐらいの状況になっております。豊後水道に関しましても昭和60年から平成24年までで大体6.8万トンほど減っていまして、マイワシ5.1万トン、マグロ1.2万トンで、イワシは魚種の交代、マグロは乱獲が原因かという分析はしていますが、1つの原因だけではなく、複合的な原因が合わさっているのではないかと考えております。

 次、8ページをお願いいたします。今度は赤潮になりますが、海域のCOD等の状況については北側の周防灘、豊前地先辺りが少し高かったのですが、赤潮に関しましては、養殖が特に盛んということで県の南側、豊後水道、こちらの棒グラフで言うと緑のところが件数としては大変多くなっておりまして、こちら養殖も天然のものも非常に漁業が盛んなところですので、結構な被害が発生しております。

 それについては、下の9ページのスライドに被害を受けた実績と言うとあまりよくないのですが、いろいろ掲載しておりまして、主としてカレニア、ミキモトイというのが原因のプランクトンになりますが、この赤潮発生率の原因を究明するのが非常に難しい状況となっておりまして、10ページですが、現状といたしましては、発生を突き止めるというより発生による被害を防ぐという対症療法的なことを行っておりまして、赤潮監視員の設置ですとか、陸上養殖魚に関しては地下の海水を汲み上げて赤潮の影響を受けないようにする等の対策を、今、行っているような状況です。

 これらを踏まえて大分県の県計画ということで、11ページのスライドをお願いいたします。

 一つ一つ説明している時間がないのですが、最初の御挨拶でもありましたように、豊かな海を目指すということで平成28年にこちらの県計画を策定していますが、やはり科学的知見に基づく管理ですとか、漁業者はもちろんのこと一般の方の理解を深めながらこういう県計画を進めていくことが大事かなということで、こちらを掲げております。

 その1つとして、12ページにあります水産多面的機能発揮対策事業ということで、こちらは漁協や各市町村、県から成る対策協議会がございまして、全17組織、12ページの横にいろいろ地図をかいていますが、各地区の特性を生かしたこういう様々な活動内容を、それぞれの組織が行っている状況です。

 13ページは、その他の対策事業として沿岸漁業基盤整備事業ですとか、別府湾で底びき網漁船を活用して海底耕耘を行って、不要物の堆積除去を行ったりですとか、放流対象魚種の資源管理の取組等を行っているところです。

 最後に、14ページです。これは中津市さんに資料を提供していただいたのですが、栄養塩管理運転ということで、中津市の終末処理場でこちらの管理運転を行っております。もともとは、この後の魚連さんの説明に詳しくあると思いますが、ノリ、アサリが非常にとれていた地域だったのですが、今は非常に減っておりまして、栄養不足なのではないかという声が上がりまして、それがきっかけで今、運転を行っているところです。

 ただ、14、15ページに書いてありますが、排水基準がありますので、そのぎりぎりのところで栄養塩を増やす、窒素・りんを増やしていくということで、夏場は特に、それが原因でまた赤潮が発生しても大変ですしということで、なかなか調整が難しいということです。

 放流先への影響把握調査ということで、15ページ、中津市の取組2の真ん中辺に書いてありますが、いろいろ排水ですとか海域の水の状況の調査をしまして、どの程度影響があって、どのように効果が出ているか有識者の方々等を集めて中津市さんで御検討されているところですが、まだ始めて数年というところもありまして、なかなかはっきりと「今こうなって、こういう効果が出ていますよ」という結果が見えていないのが現状です。

 1つとしては、14ページの写真にあります山国川、蛎瀬川の中に中津市終末処理場が位置していますが、これらの川から流れ込む流量に比べて、こちらの終末処理場から出ている水の量がどうしても、山国川等に比べると0.6%程度の排水しか出ませんので、なかなかすぐにこれで窒素・りんがグッと上がってよくなったとはならない状況になっております。

 最後、16ページです。大分県としましては、各種研究機関、市町村、団体さんもあわせて一丸となって、いろいろ有識者会議、環境審議会、うつくし作戦等々の方針を立てて取組を行っていますが、内容が非常に多岐にわたって、また原因もさまざま複合的に合わさっていますので、私個人の感じたことですが、ある程度トピックを絞って、この中津市さんの栄養塩運転もそうですが、横断的に、もっと実効的に、実際に現場にいらっしゃる方々等の意見も聞きながら、もっと綿密に対策を行っていくべきではないかということで、16ページの資料で締めさせていただきました。

 御清聴ありがとうございました。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、今までの3県からの御説明に対しまして、御質問等をお願いいたします。いかがでしょうか。

○池委員 今、大分県さんにもあったのですが、いろいろな要因で漁獲とか水質も変動するのかと思いますが、特に温暖化などはかなり気になる項目になってきていると思います。そういう意味で、それぞれ水温等を測られたときに何かトレンドが出ているのかが少し気になるのですが、もしそういうデータがありましたら教えていただければと思います。

○荒金課長補佐 水温に関しましては特に昔のデータまでは確認していないのですが、最近に関しまして、特に大きな変化が見られたという知見は特には。

○池委員 他の自治体の方はいかがですか。あまり変わらないですか。

○秋山主査 広島県ですが、水温については着目して評価しておりませんので、参考にさせていただきます。

○山内主幹 愛媛県でございますが、本県は衛生環境研究所や水産研究センターで従来から海水温やpHをモニタリングしておりまして、海水温につきましては過去42年間で約0.62℃から0.76℃の水温の緩やかな上昇が確認されているという情報を聞いております。

○岡田委員長 ありがとうございました。他に。

○西嶋委員 大分県さんに伺いたいのですが、赤潮の発生が瀬戸内海全体だと100件前後でずっと推移している中で、豊後水道側が実はかなり増えている。明確に増えている状況であって、豊後水道といいながら、もちろん中央部ではなく、非常に狭い湾のところ、養殖があるようなところで発生している現状があるのですが、現在その抜本的な対策は確立されていないという話がある中で、そういう全体ではなく狭いところでの栄養塩の状況だとか、どのように把握されていて、栄養塩との関係をどのように考えられているのか、お考えがあればぜひ聞かせていただければと思います。

○荒金課長補佐 豊後水道側の栄養塩の関係については、特に海域の変化等を見ますと、最初に資料に載せていただきましたように周防灘、響灘に関しましては低い状況ですが、県南に関してはそこまで、そちらに比べれば中ほどを保って、大きな変化は見られませんし、CODに関しても同じような状況です。また、先ほど申し上げたように、どうしてもこちらの海域は湾・灘が非常に細かいというか、湾が小さいところでの発生になりますので、発生件数が、北側で発生すると1回の赤潮でバッと大きく広がって1件というカウントになりますが、南側だと、ちょこちょこあるとまたそれで件数としてはぐっと上がってしまうということと、やはり非常に養殖と漁業が盛んな場所なので被害も拡大してしまうということで、現在のところ、栄養塩との兼ね合いについてはっきりした知見が得られていないので、赤潮の発生と窒素・りん、さらにCODも含めて、これから抜本的に研究していく必要があると現在、非常に感じているところです。あまり答えになっていなくて、すみません。

○岡田委員長 ありがとうございました。他にございますでしょうか。

 それでは3県の皆様方、どうもありがとうございました。3県のヒアリングを以上で終了させていただきます。

 続きまして、山口県漁協、愛媛県魚連、大分県漁協の関係3団体の皆様方から、水産資源や水産業と水環境等を巡る課題等について御説明をいただきます。

 引き続き、各団体約10分ということで御協力のほどをお願いいたします。

 それでは最初に、山口県の瀬戸内海域の漁業について、渡辺様から御説明をお願いします。

○渡辺指導部部長 山口県漁協の渡辺でございます。よろしくお願いします。

 「山口県瀬戸内海域の漁業について」ということで、資料3-1を使用いたしまして、主に漁業の現状を中心にお話ししたいと思います。

 1枚めくっていただきまして、まず1として、山口県全体の沿岸漁業についてでございます。

 大変小さい図で恐縮でございますが、下の山口県漁業の支店位置図を御参照いただければと思います。

 山口県漁協は、平成18年に山口県のほとんどの漁協が参加して設立された広域漁協でございまして、県内84の支店を10のブロックで管理いたしております。この図にありますように、右下の①から時計回りで⑩までがそのブロックエリアでございます。

 山口県は本州の最西端に位置しまして、三方が、図の⑨⑩エリアの日本海、⑦⑧エリアの響灘及び①から⑥までのエリアの瀬戸内海の3つの海に開けておりまして、その海域には優良な漁場が形成されております。古くからの水産県である当県海域は、日本海及び響灘海域、「外海」と称しますと瀬戸内海海域、「内海」と称します、という環境が異なる漁場を有しておることが特色でございまして、それぞれの海域の特性に応じた多種多様な漁業が営まれております。

 外海では主幹漁業として中型まき網漁業のほか、船びき網漁業等、比較的規模の大きな漁業が多いですが、内海では主幹漁業である小型底びき網漁業をはじめ、ほとんどが漁船規模5トン未満の零細な漁業でございます。

 次に2の、瀬戸内海海域の漁業の特徴についてでございます。山口県瀬戸内海海域の漁場は西部、中東部海域に分かれておりまして、それぞれでその環境に適した漁業が営まれております。図で申しますと、左のほうの④⑤⑥エリアが西部海域、右側の③②①エリアが中東部海域でございます。

西部海域では外洋水が豊後水道と関門海峡から流入して、漁場環境に好影響を与えております。海岸線が比較的単調な各地先の干潟では、採貝藻・刺網漁業が、また、水深40m以下の広域な漁場では小型底びき網、刺網、はえ縄、定置網、ノリ養殖等が行われております。

 中東部海域には多くの島嶼がございまして、複雑な地形と変化に富んだ豊かな好漁場を形成しており、釣、吾智網、小型底びき網、イワシ船びき網、たこ壺漁等の多種多様な漁業が行われております。

 なお、瀬戸内海に流れる大きな7つの河川がございまして、それぞれに内水面漁業権が免許され、アユ、ウナギ、モズクガニ等が採捕されております。

 次ページをお願いいたします。3の、瀬戸内海漁業の現状についてでございます。

 瀬戸内海は陸地部に囲まれた海域でございますが、単位面積当たりの漁業生産性は高く、かつてはエビ類、マダイ、カレイ、フグ等の魚類やタコ類、ナマコ類、アサリ等の貝類も大量に漁獲されておりまして、また、ノリ養殖にも適しているとされておりました。しかしながら、近年、特にアサリの減少とノリ養殖の衰退が著しく、また、比較的安定した漁業とされておりました主力の小型底びき網も、エビ類の減少に伴い水揚げが減少いたしまして、15年ぐらい前から資源量が増えてきましたハモ等へ主要対象魚の転換を図ったものの、漁業経営は厳しさを増しておるところでございます。

 そのような厳しい現状での、4といたしまして、瀬戸内海漁業経営体数の推移でございます。

 下のグラフを御参照ください。棒グラフは、左側が瀬戸内海の漁業経営体数と主要漁業種別経営体数の推移、右が山口県全体、日本海、瀬戸内海別の経営体数の推移をお示ししております。

 平成2年、瀬戸内海の漁業経営体数は4,492でございましたが、平成25年には1,752まで減少しております。約20年間で実に約60%減少しておりまして、特に西部・中部海域の都市部での減少が大きくなっております。漁業種類別では、特にノリ養殖、採貝藻の減少が顕著となっております。

 また、右のグラフでお示ししていますように、日本海側よりも瀬戸内海側のほうが減少スピードが速くなっておるところでございます。この経営体数の減少につきましては、後継者不足が一番でございます。その原因はさまざまな要素がございますが、一番大きな原因は、やはり水揚げが上がらない、イコール儲からないことだと思われます。

 下の円グラフは漁業種類の構成割合をお示ししておりますが、小型底びき網、採貝藻、ノリ養殖の割合が減少しております。これは漁獲対象資源の減少と漁業者の高齢化に伴いまして、その他漁業に含まれます、たこ壺、かご漁等の比較的労働負荷の軽い漁業種類への転換が進んでおるためでございます。

 次ページをお願いいたします。5としましては、資源減少の著しい魚種についてでございます。近年、瀬戸内海海域で漁獲減少が特に著しいのは、エビ類、アサリ、ノリでございます。それぞれの漁獲数量等の減少の推移をグラフでお示ししております。

 まず、エビ類でございます。エビ類は、主に西部から中部海域において小型底びき網で漁獲される、主にエビ煎餅の加工原料となります小型赤エビが主体でございました。この赤エビは平成2年には約7,500トンの生産がございましたが、平成27年には約400トンまで減少しております。

 次に、アサリでございます。大規模な干潟が形成されております西部海域のうちの、特にその西方の干潟において、採貝藻漁業により漁獲されております。平成2年には約3,600トンの生産量があったものの、平成27年には約50トンと、これも激減しておる状況でございます。

 次に、ノリでございます。かつては瀬戸内海全域で養殖が行われておりましたが、現在は西部海域のみで養殖されておりまして、乾海苔生産金額は、右のグラフにございますように平成2年には約35億円ございましたが、平成27年には約3億円まで減少いたしております。これは生産枚数の減少もございますが、色落ちの品質低下によります単価の下落も大きな要因となっております。

 6としましては、それら水産資源と水環境等を巡る課題についてでございます。これまで御説明したとおり、山口県瀬戸内海海域の漁業は大変厳しい状況にございます。その鍵となります水産資源の動向は、水温等の環境の変化に大きく左右され、先ほど説明しました主要魚種の減少要因も、環境要因とそれ以外の多岐にわたる要因があると推察されますが、漁場現場からは以下のような声が出ております。また参考資料としまして、5ページ目以降には、山口県瀬戸内海海域周防灘の栄養塩濃度と水温の推移をお示ししております。

 ①としまして、小型底びき網漁業でのエビ類でございます。減少の一つの要因としては、海底耕耘頻度の低下が考えられます。次ページにイラストをお示ししておりますが、冬期の操業形態でございます第3種底びき網(桁網)漁業は、開口部分に鉄製の爪のついた桁がございまして、海底をかきながら行う漁業でございます。この漁法が結果的に底質改善を図る海底を耕耘することにより、栄養塩の海水中への溶出効果があるという役割も果たしております。

 過度な底びき網の漁獲圧は資源へ悪影響を与えると思われますが、近年の同漁業者の大幅な減少で海底耕耘頻度が低下し、その結果がエビ類等資源の減少の要因の1つになっているのではないかと現場サイドでは言われておるところでございます。

 次に、②としましては、採貝藻漁業でのアサリでございます。減少は、食害を含む複合的要因があると思われます。アサリが減少しました要因は幾つか有り、それらが複合的に影響していると考えられます。これまでの餌料環境を中心とした海の環境の変化が中長期的なアサリの減少に影響を及ぼし、加えて漁業者による一時的な乱獲や、近年ではナルトビエイ等の新たな外的生物による食害が短期的に影響し、減少に拍車をかけたことが大きな要因ではないかとされております。

 このアサリにつきましては全国的に減少している中で、行政とさまざまな対策を講じておるところでございますが、なかなか回復が進んでいない状況でございます。

 次に③としまして、ノリ養殖漁業でございます。衰退の一つの要因は、海水の貧栄養化による品質低下と考えられております。山口県は総量規制基準を厳しく定めておりまして、水質の改善は進んでございます。

 この次のページの、参考資料の栄養塩濃度をご覧いただければと思います。

 真ん中の(b)のグラフにありますように、1999年、平成2年以降、この横軸でございます窒素の低下が大変進んでおります。ただ、この進んでおります平成2年以降からノリの生産量、色落ちの品質低下が顕著になったということでございまして、ここには重なった部分がございます。先ほど申しましたように品質の低下は経営を圧迫し、ノリ養殖業者の廃業が進んでいるのも事実でございます。

 ④としまして、最後のまとめでございます。山口県瀬戸内海海域の漁業環境は年々悪化しております。特に栄養塩低下への対策は喫緊の課題でございます。改正瀬戸法による豊かな海づくりを実現しなければ、後継者不足と高齢化が進行している山口県、特に瀬戸内海海域の漁業経営体は今後も確実に減少し、それにより沿岸域の水産資源の保全と秩序の維持への懸念が強まっているということをまとめといたしまして、御報告を終了いたします。

 御清聴ありがとうございました。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 引き続きまして、愛媛県魚連の平井様から御説明をお願いいたします。

○平井会長 愛媛県漁業協同組合連合会の平井でございます。先日からのど風邪をひいておりまして、お聞き苦しい点があると思いますが、よろしくお願いいたします。

 私からは「愛媛県の養殖業と水環境等を巡る課題について」をお話しさせていただきます。

 資料1ページをご覧ください。愛媛県の海域は、佐田岬半島を境に瀬戸内海と宇和海に大別され、さらに瀬戸内海は東部の燧灘と西部の伊予灘に区分されます。海岸線の総延長は約1,700kmに及び、全国5位の長さとなっています。

 瀬戸内海は魚介類の産卵や成育の場として重要な藻場、干潟に恵まれた生産性の高い海域で、小型底びき網、機船底びき網、一本釣りなどの多種多様な漁船漁業が営まれています。養殖業につきましては、燧灘沿岸域でノリ養殖が盛んに行われているほか、島嶼部ではマダイ養殖や、塩田地跡を利用したクルマエビ養殖なども行われています。

 一方、宇和海は太平洋から黒潮分枝流に乗って来遊するイワシやマアジなどの浮魚資源の好漁場が形成されていることから、沖合ではまき網を中心とする漁船漁業が営まれています。

 また、沿岸域ではリアス式海岸の波静かな入り江を利用したハマチ、マダイなどの魚類養殖や、真珠・真珠母貝養殖などが盛んに行われ、全国屈指の養殖産地として全国的に知られております。

 続きまして、資料2ページをご覧ください。農林水産統計によりますと、愛媛県の平成28年の漁船漁業と養殖業を合わせた総生産量は15万トンで、全国8位となっています。中でも魚類養殖の生産量は6万5,000トンで全国1位の生産を誇っており、マダイにつきましては全国の生産量の約58%を占めています。生産額につきましては913億円で全国3位となっており、そのうち養殖魚の生産額は655億円と、全国1位となっています。

 グラフ下の表にお示ししていますとおり、愛媛県の魚類養殖、真珠養殖、真珠母貝養殖の生産量、生産額はいずれも全国1位の地位を誇っており、多様性に富んだ漁場環境と豊かな漁業資源により、全国でも有数の水産県となっておるわけであります。

 しかしながら、全国屈指の生産を誇っていても、順風満帆というわけではありません。

 昭和39年から平成28年までの生産量と生産額の推移のグラフを見ますと、生産量は昭和59年がピークで24万トン、生産額は平成3年がピークで1,640億円となっていますが、その後は減少を続け、平成28年の生産量はピーク時の約6割、生産額は約5割まで減少してきており、水産資源の減少が懸念されております。

 資料3ページをご覧ください。宇和海は東西を九州と四国に囲まれ、北は吸水瀬戸を経て瀬戸内海に、南は水深100mの陸棚を経て太平洋に、中央部は水深70~90mの平坦な海底地形が見られます。沿岸は渚を持たず、急峻であり、平均水深が40~50mの内湾を数多く有しています。黒潮を起源とする暖水が定期的に表層から侵入する急潮と、底部陸棚斜面から侵入する底入り潮により海水交換が行われており、外洋水の影響を強く受ける海域です。

 資料4ページをご覧ください。宇和海のハマチ養殖は、稚魚のモジャコが宇和海で採捕できたこと、地元にまき網漁業があり餌となるカタクチイワシ、アジなどが容易に、しかも安価に入手できたことと、工場排水や都市排水などによる漁場汚染がほとんどなかったことから急速に発展いたしました。しかしながら、当時は生餌を使用していたため、飛散した餌や魚が食べ残した餌により漁場汚染が進行し、赤潮や魚病が発生するようになりました。このため、系統団体では魚類養殖生け簀の登録制度を導入するとともに、養殖用餌料として環境にやさしいモイスペレットやドライペレットの普及を図り、過密養殖の防止や効率的な餌料投与などを指導、推進してきました。

 宇和海の赤潮発生の件数の推移のグラフを見てください。有害プランクトンであるカレニア、ミキモトイなどによる赤潮が多発しており、養殖業者を悩ませています。この赤潮は平成12年以降、高い頻度で発生しており、右の5月から9月の栄養塩の推移のグラフからわかりますように、近年、栄養塩は減少傾向を示していますが、赤潮の発生は慢性化しつつあります。平成24年には養殖魚を中心に178万匹が死亡し、約12億3,100万円の過去最大の漁業被害が発生しています。赤潮の発生メカニズムの早期解明と防除技術の開発、実用化が待たれるところでございます。

 資料5ページをご覧ください。愛媛県の瀬戸内海は、700を超える島々や穏やかに沖合に向かって広がる平均水深20mの遠浅から成る燧灘と、水深50mの砂泥が中心の平坦な海底地形の伊予灘から成っております。図でお示ししていますとおり、燧灘、伊予灘ともに沿岸域に多くの渚や藻場を有しています。地形的に狭あいで閉鎖的なことから潮流が緩慢で、海水交換も弱く、停滞性の海域となっております。

 資料6ページをご覧ください。高度成長期の昭和39年ごろ、燧灘では紙パルプ産業などの急速な発展に伴い、工場からの排水により水質、底質の悪化が進行しました。藻場の枯死や消失、夏季の海底層での貧酸素水塊や赤潮の発生などにより、魚介類のへい死や逃避による漁獲が減少し、漁業不振が深刻となり、当海域の漁業者の死活問題となりました。

 こうした背景などもあり、国が瀬戸内海環境保全臨時措置法を制定し、水質規制の強化を図ったことにより、瀬戸内海の赤潮発生件数のグラフでお示ししていますとおり、昭和54年以降は瀬戸内海での赤潮の発生は減少いたしております。

 資料7ページをご覧ください。愛媛県のノリ養殖は、燧灘の沿岸と越智郡の島嶼部で行われております。

 ノリの生産枚数・金額の推移のグラフをご覧ください。愛媛県漁連が取り扱っている板海苔の共販実績です。

 生産量のピークは昭和48年度の3億2,400万枚、約26億円ですが、その後、生産量は年々減少してきており、近年は6,000万枚前後でピーク時の約20%まで生産が落ち込んでいます。生産量が減少した主な原因は、水温上昇に伴い秋芽、11月から12月の収穫が減少したことや、春芽、1月~3月については珪藻類の大量発生により栄養塩が低下し、葉体の成長不良や色落ちが発生していることが影響しております。燧灘の2月の栄養塩の推移のグラフにお示ししていますように、色落ちが発生し始めるDIN濃度の目安は3.5μMとされており、近年この濃度を下回って推移しております。

 8ページをご覧ください。平成27年10月に瀬戸内海環境保全特別措置法案が改正され、早3年余りが経過いたしました。改正に際しては新たに生物多様性及び生産性に配慮し、水産資源の持続的利用のための施策が盛り込まれましたが、我々漁業者にとっての海の環境は、依然としてよくなったとの実感はありません。

 海の貧栄養化の問題や赤潮による漁業被害の問題など、多くの課題を抱えており、豊かな海を取り戻すことは容易なことではなく、一朝一夕にできることではないことはわかってはいますが、海が真に豊かで多様性、生産性に富んだかつてのような水産資源の宝庫に再生されることは漁業者の願いであります。

 そのためには国、県、系統団体、漁業者等が一体となって、豊かな海の再生に向けて積極的に施策、活動に取り組んでいくことが重要であると考えておりますので、引き続き御支援、御協力をお願いいたします。

 以上です。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 引き続きまして、大分県漁協の日隈様から御説明をお願いいたします。

○日隈専務理事 大分県漁協の日隈と申します。

 大きなテーマですが今回は時間がございませんので、大分県の豊前海における栄養塩等の経年変化と、主幹の漁業でありましたアサリ採貝漁業とノリ養殖業の衰退の状況について御説明したいと思います。

 まず初めに、豊前海の地形ですが、右上にクロロフィルの衛星画像がございますが、これをイメージしていただきたいと思います。

 豊前海は、下に水深図がございますが、ほぼ全域が10mから20mの浅海域となっております。ここの海域には、日本三大干潟の1つと言われています内海で最大の干潟がございます。

 次のページの右上の写真ですが、これが中津干潟です。この中津干潟は干潟面積が1,347ha、最大干満差が4m、干上がったときには沖合まで約2.3kmほど歩いていけるような広大な干潟でございます。

 このような干潟を有するところの漁業形態ですが、四角の中を読んでみますが、豊前海地域は3,100ha(これは豊前海全体の面積でございますが)に及ぶ広大な干潟域と、その沖合の平坦な浅海域からなり、干潟域は採貝漁業やノリ養殖業が盛んです。それとともに幼稚魚の育成場として重要な役割を果たしているということです。浅海域、沖合のほうではエビ・カレイ類を対象とする小型底びき網や刺網などが営まれているということです。

 下の4ページに漁獲量の魚種別の変遷を描いています。ここのグラフにございますのは、上の大分県図の赤い丸で囲った別府湾以北の瀬戸内海区ということで、農林水産統計年報をもとにしていますので、この区分によりますと、瀬戸内海区となります。

 このグラフを見ていただきますとわかりますが、全体的には1985年から87年にかけてピークがありまして、そこから減少が続いています。特に赤線で示しています貝類をご覧いただくと、1986年から極端に減少している状況がわかります。

 四角の中に書いていますが、特に貝類につきましてはアサリ、ハマグリ等がとれていました。1970年から80年後半ごろまで毎年1万~2万トンとれていた状況ですが、1990年ごろから5,000トンを下回って、以降、低迷が続いている状況です。

 また、魚類についてもだんだん減少している状況です。

 次のページから、水質、栄養塩類の経年変化等を御説明したいと思います。

 5ページですが、広域総合水質調査、環境省さんの測点がございます。グラフの下に617から636と書いていますが、右の図で黒点を赤く塗りつぶしたところがこの定点に当たるわけです。617という測点が中津沖合の中津干潟ということで見ていただければよろしいかと思います。

 全窒素とDIN、無機態窒素の図が左側、全リンと無機態リンが右側の図ですが、見ていただくとわかりますように、窒素に関しては減少傾向、全リンに関しても、ここは減少傾向が示されていると思います。無機態リンについては総じて減少から、今は維持しているといった状況かと思います。

 右の図でピンク色を塗ったところがありますが、ここが著しくDINの濃度が低下しているところでございます。

 6ページは、クロロフィルa濃度等を示しております。左側のグラフが全窒素です。中津干潟、福岡県の617点が中津干潟に当たると申しましたけれども、その赤のところを見ていただくとわかりますが、かなり減少しております。2000年以降、これから見ると2003年ぐらいになりますかね、0.2mg/Lを下回ってどんどん減少しているということです。

 右側の図がクロロフィルaの推移ですが、赤を見ていただきますと、1999年、2000年より前から減少がかなり著しくなりまして、2008年には突出したピークがございますが、総じてこのレベルで行っているということで、2001年以降に2μg/L水準に低下したまま継続している状況でございます。

 7ページでございます。これは大分県の研究機関で調べたデータをお示ししたものです。そこに浅海定線と書いていますが、これが大分県の調査です。その定点を岸と中間と沖に分けてグラフ化して、無機態窒素の変化を見たものがその下のグラフです。

 岸側が橙色ですけれども、総じて経年的に減少が見られるということです。時たまピークが見られますが、先ほど申しましたようにこの海域は浅海域ですので、陸水から大雨が出ると影響が出てくるということで、このようなピークが時たま出ることがございます。

 その下は漁獲量の変化を載せております。今回はアサリとノリについて御説明したいと思います。

 まず、下のほうに大分県のアサリの漁獲量のグラフがございます。1979年から2014年までのグラフを載せていますが、1985年にピークがございます。2万7,000トンはいっていますかね、それぐらいから急激に減少してきまして、左側のグラフでは少し見づらいので拡大したのが右側のグラフです。1995年から2015年までのデータを載せていますが、これを見ていただきますと非常に厳しい状況がわかると思います。

 下の段の黒丸の1番目ですが、アサリ漁獲量は2002年までは低位ながら安定していたが、2003年に激減し、2006年から2007年に一旦回復が見られましたが、それ以降はほとんど漁獲のない状況が続いているということです。2006年、2007年にピークがございますが、2006年が759トン。これが2億5,900万円ぐらいの水揚げでしたか。それから次の年が687トンということで、これ以降はほとんどとれていない状況です。

 その下の黒丸にございますが、近年のアサリ稚貝の発生状況は比較的良好な年もありますが、夏場を乗り切れない状況で、そのため漁業の回復にまでは至っていない状況です。

 上の段の黒丸にございますが、瀬戸内海最大の干潟、豊前海ではアサリが育たなくなっている。この海域では、陸域からの窒素・リン供給が減って海域のクロロフィル濃度も低下し、年平均2μg/Lに近づいており、アサリの餌となる植物プラントンの量がかなり減ってきているということで、この辺の影響が大きいのかと考えています。これがアサリの成育を阻害している可能性は、水研の研究結果からも指摘されているということです。

 こんなに極端に減っていまして、ここの海域の漁業は今、疲弊している状況です。

 次のページにはノリ養殖の衰退の状況を載せております。1980年から2015年まで載せていますが、これを見ていただくと、黒丸を説明しますと、大分県のノリ養殖生産者は減少傾向にある。1980年には1,342戸あった経営体が現在は14戸と100分の1という形で、ほぼ壊滅状態になっています。大分のノリ養殖生産者の減少の一因として、ノリの品質の悪さが昔から言われていたのですが、共販の平均単価を見ますと全国ワースト1位ということで、こういうことが続いて生産意欲がなくなり、後継者不足、廃業が続いたと思います。

 ちなみに、平成29年度の平均単価を見てみますと、大分は1枚6.9円です。佐賀・有明を見ますと13.2円ということで、倍以上単価が違う。これは平均ですので、いいものだと佐賀・有明は30円するようなものもございますので、全然違うレベルです。

 次の黒丸ですが、かつて大分豊前海一体には10万柵を超えるようなノリ養殖の支柱棚や浮き流し棚がありました。こういう時代には、特にノリ養殖の棚の周辺にはアサリが湧いていたということで、ノリ養殖の現場ではアサリが多穫されていたというのを私も経験しています。

 それから、ノリと植物プランクトンは栄養塩をとり合う関係にございまして、アサリは植物プランクトンを食べて減らすのですが、それを今度は栄養塩として排出し、その栄養塩を今度はノリが吸収するということで循環していたのではないかと考えられます。

 大分県の研究機関の長年の研究から、ノリ養殖の品質の善し悪しの目安として70μg/Lの窒素、DINですけれども、これを基準としていたんですが、現在、2005年以降の状況を見ますと50μg/Lで、10月から12月の月平均の値ですが、冬期のDIN濃度が極度に減っている、ノリの生産に向いていない状況になっているということです。

 以上、昔ながらの豊前海の基幹漁業でありましたアサリの採貝漁業と、ノリ養殖業の衰退の状況を御説明したところです。

 最後のまとめです。当然のことを書いていますが、要望としましては、豊前海の全窒素・全リン濃度が低下を続ける原因を明らかにしていただきたいということと、瀬戸内海に限らず、このようなアサリとかノリというのはどこの海域でも言われますが、その瀬戸内海以外の海域での栄養塩とそれら生物との関係とかこの辺も調査していただければ、今後、我々業界としてどういうことに取り組んでいくべきかが明らかになってくると思いますので、ぜひともその辺の調査・研究をよろしくお願いいたしまして、説明を終わらせていただきます。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、今までの3団体からの御説明に関する御質問、御意見等がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。

○鷲尾委員 御報告ありがとうございます。

 山口県さんのほうで、海底耕耘の頻度が下がったからエビのとれ高が少ないのではないかという話があったのですが、海底耕耘の目的は、底質にたまっている有機物あるいは栄養が耕耘することによって溶出してくることを期待してやっているのだと思いますが、底質そのものの有機物量がここ20~30年の間に随分変わってきているのではないかと思います。だから耕耘しても溶け出してくる栄養が少なくなっている、そういうことも背景にあるのではないかと思いますが、底質の栄養状況は何か把握されていますでしょうか。

○渡辺指導部部長 この意見については底びき網の漁業者が皆さん統一見解として、自分の経験則で言っていることでございまして、そういった計数的な知見はないわけでございます。ただ、エビが減る、この漁法が減る、またエビが減る、そういった連鎖がございますので、やはり海を耕すことが大変大切だと漁業者が経験則から思って申していることでございまして、すみませんが、その辺につきましてはデータを持ち合わせておりません。

○鷲尾委員 ありがとうございます。

 経験則というのは、多分十年二十年前の体験を背景にしていると思うのです。そういう意味では、20年ぐらい前には瀬戸内海の広い範囲で有機物による底質汚染が進行しておりましたから、耕したら耕しただけ栄養供給という面での効果はあったと思うのです。それが貧栄養状態が続いてきて、その栄養分が流れ去ってしまった後またやりますと、同じ海底耕耘でも意味が大分変わってきているのではないかと思います。

 その点、兵庫県等でも播磨灘で海底耕耘やっているところがあるのですが、当初はやはり栄養分が出ているのではないかということがあったのですが、あまり効果がなくなってきているという指摘もありますので、そのあたり、水質の栄養濃度の動向との対応だけではなく、底質に貯金されていた分の栄養がどうなっているかもぜひ見ていただきたいところだと思います。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他にございますでしょうか。

○足利委員 大分県漁協さんに質問させてください。

 私も中津干潟のフィールドで、アサリが一粒もとれなくなってノリがどんどん悪くなって漁師さんがいなくなってというのは目の当たりにして、どうしようというところですが、スライド5ページに環境省さんの広域総合水質調査の測点のデータがあるのですが、勉強不足で申し訳ありません、これはピンクのところが低下が顕著な海域ということでお示しいただいていますが、594番はこれに当てはまらないのでしょうか。

○日隈専務理事 イメージ的に、2ページにクロロフィル濃度の衛星画像がございます。濃いところが赤ですが、関門海峡辺りが非常に栄養塩が高く、これが豊前海、周防灘は反時計回りの恒流があると言われていまして、その栄養塩類が北九州から大分のほうへ流れてくるような状況になっていると思うのですが、そこで、ここで低下が顕著なのは中津辺りぐらいまでということで、高田沖までは、まだそこまでではない。

○足利委員 では、この594のところ、高田沖は比較的クロロフィルとか栄養塩類はあるのでしょうか。

○日隈専務理事 それは当然あると思います。あると思いますが、濃度的には低くなっているということだと思います。

○足利委員 豊前海の窒素とかリンとか栄養塩がどんどん減ってしまっている原因は何だと思われますか。

○日隈専務理事 最後のまとめで要望したのがそれですけれども、我々にはわからないので、その辺を解明していただければ我々の取組が非常に明確になってくるので、ぜひともお願いしたいということです。

○足利委員 普段、海で漁業をされている皆さんのお声にもいろいろな話が、たくさん噂があってなかなか何かに絞れないというのはあるのですが、やはり漁協さんでもなかなか見当がつかない現状でいらっしゃいますか。

○日隈専務理事 そうですね、漁業者の方もいろいろ言われる方が多くて、例えば山国川の上流にダムができたのでなかなか出てこないとか、最近は米作が衰退してきているので水田から肥料分が海に出てこないとか、いろいろな解釈をされると思うのですが、その辺はよくわからないということです。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 今、日隈さんと足利委員で御議論があった点は、環境省の今後の調査の課題として残しておいていただければと思います。

 他にございますでしょうか。

○岩崎委員 大分県漁協さんにお伺いしますが、アサリが減った要因ですが、今日の山口県漁協さんの報告では、長期的な餌料環境の変化を挙げた上で、一時的な乱獲、つまりとり過ぎ、あるいはナルトビエイに象徴される食害、そういうものを山口県さんは挙げていらっしゃるのですが、そういう要因は大分県さんでは今のところないのでしょうか。

○日隈専務理事 当然ございます。今日はテーマとして水環境と水産資源ということでしたので、栄養塩と漁業の衰退について御説明しましたが、うちのほうとしましてもいろいろな要因を考えていまして、例えば大雨の出水時に泥等が出てきますので、それが干潟を被覆してしまうといった状況もございますし、地盤の固化ということで、最近この海域に台風が直撃するようなことがありませんので、海を混ぜるような物理的な作用が働きませんから地盤が固化しているといったことも言われていますし、先ほど山口県からの御報告もありましたけれども、ナルトビエイの関係の食害も言われています。

 ナルトビエイにつきましては、平成19年度から駆除をやっておりまして、それは継続してやっていますが、最近では個体が小型化している状況ですので、ナルトビエイの生息量もだんだん減ってきているのではないかといった推測もされるのですが、この点に関しましては有明でも駆除していますし、よそのところでも駆除しています。

 そういう状況で、栄養塩がこの原因だというのは私ども明確に限定しているわけではありませんで、今回はこのテーマでお話ししたということです。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他にございますでしょうか。

○西嶋委員 山口県さんに質問ですが、エビ類が非常に大きく減少しているというお話で、もちろんエビ類そのものとしての漁獲の問題点を指摘されたのですが、この赤エビというのは大きな魚の餌としてどういう役割をしているのでしょうか。実は、あの程度のものは、カタクチイワシとかは大きな魚の餌になっているという話があるのですが、カタクチイワシ自身は、資源量として出されていますが、今のエビのような極端な減少はしていないことになっています。そういう意味で、甲殻類のほうが大型の魚の餌として、これと同じような形で他の甲殻類も含めて減少しているのであれば非常に大きな影響があるのではないかと思われるのですが、餌としての役割についてどうお考えかお聞かせ願えますか。

○渡辺指導部部長 この赤エビ、多いときは1隻当たりの規制をかけるほどあったのですが、この減り方が非常に顕著でございまして、魚類の餌に求められるようなスピードではなかったものですから、あまりそういう認識は、漁業者としては持っておりません。また、逆にこれが減りまして増えた魚はハモぐらいでございます。ハモがエビをどの程度食べるかはわかりませんが、仮に影響があるとすればハモかというところでございます。ただ、このハモもここに来てまた減少傾向でございます。かといってエビが増えたということもございません。

○西嶋委員 我々タチウオの餌環境を調べているのですが、当初はカタクチイワシとかイカナゴ等が餌のメインではないかと思って調べていたのですが、意外にエビ類も多くて、そういう上のほうの魚だけの話ではなくて、下にいる甲殻類が重要な役割をしているのではないかと今、見ているところです。そういう意味で、エビの漁獲が減ったということは資源量も減っているのだと思いますが、そこが大型の魚の減少に結びついている可能性も非常に高いのではないかということで、質問させていただいたところです。

 ありがとうございました。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他にございますか。

 よろしければ、時間になりましたので3団体へのヒアリングを終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 ここで10分ほど休憩とさせていただきます。15時25分になりましたら議事を再開したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

午後3時17分 休憩

午後3時25分 再開

○岡田委員長 皆様お戻りのようですので、再開したいと思います。

 次の議題は、栄養塩類と水産資源の関係に係る検討についてとなっております。

 資料4になります。環境省から、栄養塩類と水産資源の関係に係る検討状況について御説明をお願いいたします。

○坂口室長補佐 資料4を御確認ください。

 瀬戸内改正法の附則の規定を踏まえまして、まず、環境省では湾・灘ごとの漁獲量の推移について整理を行うとともに、栄養塩類と水産資源の関係について、対象種を選定し解析を試みましたので、その結果について説明させていただきます。

 2ページをご覧ください。瀬戸内海における湾・灘ごとの水産資源の状況を把握するために、図1に示した水産庁による湾・灘区分をもとに漁獲量の推移を整理してございます。

 3ページをご覧ください。瀬戸内海で漁獲されると考えられる魚種について、生息層、生活圏、食性ごとに分類し、この中で漁獲量が多い魚種や、湾・灘ごとの単位で漁獲量の推移を整理してございます。

 なお、一部漁獲量のデータが欠損している年と魚種については、参考として31ページの表2に示しておりますので、後ほど御確認ください。

 4ページをご覧ください。瀬戸内海の総漁獲量及び各湾・灘の漁獲量の推移を図2に、主要魚種の漁獲量の推移を図3に示しております。総漁獲量は1965年から徐々に増加し、1982年、1985年にピークに達した後、減少している状況です。

 瀬戸内海で漁獲量が多い主要な魚種としては、マイワシ、カタクチイワシとシラス、アサリ類などで、ピーク時にはマイワシの漁獲量が瀬戸内海の総漁獲量の約2割以上を占めるなど、これらの魚種の変動が瀬戸内海の総漁獲量の変動に大きな影響を与えております。

 5ページからは、瀬戸内海で漁獲量が多い主な魚種について、漁獲量の推移を整理してございます。時間の関係上、幾つかの魚種をピックアップして説明させていただきます。

 まず、8ページをご覧ください。左の縦軸に各湾・灘の漁獲量、右の縦軸に瀬戸内海の漁獲量を示してございます。上段のマイワシの漁獲量については、播磨灘での漁獲の急増により1978年に急増し、その後、大阪湾の漁獲の増加により1982年にピークに達した後、1993年にかけて減少してございます。マイワシの資源は海洋環境のレジームシフトと同期して変動することが指摘されており、瀬戸内海の漁獲量は、全国的なマイワシ太平洋系群の資源量の変動傾向と概ね一致してございます。

 8ページ下段のカタクチイワシとシラスの漁獲量は、1985年にピークに達した後、減少してございます。その後、2000年代にかけて増加し、近年は横ばいで推移している状況です。

 9ページは、カタクチイワシとシラスを分けて掲載したものでございます。

 11ページを御確認ください。11ページ上段のイカナゴの漁獲量は、増減を繰り返しながら1980年にピークに達した後、減少を続けてございます。大阪湾、播磨灘、備讃瀬戸での漁獲が多くを占め、その中でも播磨灘の漁獲が最も多くなっています。

 14ページをご覧ください。上段のマダイの漁獲量は、1970年代前半から1984年にかけて瀬戸内海全体では増加した後、概ね横ばいで推移してございます。紀伊水道、大阪湾といった瀬戸内海の東部では、1980年から1990年代ごろから長期的に増加傾向となってございます。

 15ページ上段のアサリ類の漁獲量は、1960年代から増加し、1984年から急増した後に1986年から1991年ごろにかけて急減し、1991年にはピーク時の約9分の1にまで漁獲量が減少してございます。その後も徐々に減少し、2000年代の漁獲量はわずかとなってございます。ピーク時の漁獲量の約9割は、先ほど御紹介のあった周防灘での漁獲となってございます。

 17ページをお開きください。17ページ以降には、各湾・灘における食性ごと、生活圏ごとの漁獲量、及び1965年から2016年までの累積の漁獲量が多かった上位5種について、各湾・灘ごとに漁獲量の推移を整理してございます。

 20ページをご覧ください。紀伊水道は外海と接しており、主な種としてシラス、カタクチイワシ、タチウオ、マイワシといった交流型の魚種の漁獲が多くを占めております。漁獲量の変動としては、1986年にピークに達した後、減少しているという傾向です。

 21ページの大阪湾の漁獲量は、1980年代ごろに多く、1982年にピークに達した後、1990年ごろまで減少し、それ以降は概ね横ばいで推移しております。交流型のカタクチイワシ、シラス、マイワシの漁獲が多く、1982年、80年代のピークはマイワシの漁獲が中心で、それが全体の6割を占めてございます。

 22ページの播磨灘の漁獲量については、1979年のピークはマイワシの加入の影響によるものですが、全体としては主要魚種であるイカナゴが1970年代から長期的に減少していることが、播磨灘全体の漁獲量の減少に大きく影響してございます。

 23ページの備讃瀬戸につきましては、1980年代ごろまではイカナゴの漁獲量が多くを占めておりましたが、その減少が全体の減少に影響しております。また、近年はイカナゴに代わって、他のベントス食型の種が逆転している状況です。

 24ページの燧灘でございますが、1977年までは備後・芸予瀬戸との合算になるため1978年以降を見ると、漁獲量は1985年にピークに達し、その後、1994年にかけて減少しています。カタクチイワシの漁獲量が大半を占めており、その減少が全体の減少に影響してございます。

 25ページの備後・芸予瀬戸では、下段の主要魚種の漁獲量の推移を見ると1993年まではカタクチイワシの漁獲が最も多く、その後、1995年以降はエビ類、マダイ、カレイ、タチウオ等が多く漁獲されており、これらの変動が全体の変動に影響してございます。

 26ページの安芸灘では貝類等の内海型の漁獲が長期的に減少している一方で、カタクチイワシ等の交流型の漁獲量は長期的に増加しており、全体の漁獲量としては概ね横ばいで推移していますが、構成が大きく変わってございます。

 27ページの伊予灘では、主要な魚種であるカタクチイワシが1970年にピークに達した後に、1998年にかけて減少し、その後、横ばいで推移してございます。一方で、シラスは1980年代前半から2000年代にかけて増加し、その後、概ね横ばいで推移しております。

 28ページの周防灘ではアサリ類、その他貝類の漁獲が多く、これらの変動が1970年代、1980年代の漁獲に大きく影響しており、1980年代の増加、その後の減少についてはアサリの変動が大きく影響してございます。

 最後に、29ページをご覧ください。参考として、大分県及び愛媛県の漁獲量から瀬戸内海区の漁獲量を引いて算出した豊後水道の漁獲量を掲載してございます。外海と接続している豊後水道では、紀伊水道と同様にサバ類、マイワシ、アジ等の交流型の魚種が多く漁獲され、これらが大きな変動の要因となってございます。

 30ページに瀬戸内海における漁獲量のまとめを示してございます。瀬戸内海の総漁獲量については、1965年から徐々に増加し、82年、85年にかけてピークに達した後に減少しています。瀬戸内海で漁獲量の多い主要な魚種は、マイワシ、カタクチイワシ・シラス、アサリ類であり、これらの変動が瀬戸内海の総漁獲量の変動に大きな影響を与えています。

 各魚種の漁獲量を見ますと、マイワシ、サバ類、アジ類など交流型の浮魚は瀬戸内海東部で多く漁獲され、アサリ類、エビ類などは周防灘、伊予灘などの瀬戸内海東部で多く漁獲されています。また、マイワシ、サバ類、アジ類のように短期的に増加や減少している種や、イカナゴ、エビ類のように長期的に減少している種、マダイのように一旦増加した後、横ばいで推移している種など、種によって漁獲量の推移はそれぞれ異なってございます。

 次に、各湾・灘の漁獲量として見てみますと、湾・灘単位でも短期的に漁獲量が増加または減少している湾・灘や、長期的に漁獲量が変動している湾・灘など、変動傾向はそれぞれ異なり、ピークも若干異なっている状況です。

 主要な魚種を見ますと、周防灘はアサリやその他貝類、播磨灘、備讃瀬戸はイカナゴ、大阪湾はマイワシ、燧灘はカタクチイワシなど、各湾・灘でそれぞれ異なる魚種の減少、変動が見られました。一方、安芸灘等ではカタクチイワシが増加していたりと、種によって湾・灘ごとに違いも見られました。

 このように、湾・灘ごとに漁獲量を整理する中で、瀬戸内海の総漁獲量の推移と各湾・灘の漁獲量の推移は傾向が必ずしも一致しておらず、異なっています。そして湾・灘によって漁獲量の変動に影響を与える魚種も異なることが見えてまいりました。

 漁獲量の推移については以上です。

 続きまして、32ページをご覧ください。前回の小委員会で本年度の検討方針として示しました、低次生産の変動に係る解析及び、特定の種の生態的特性を踏まえた栄養塩類との関係に係る解析の結果について説明させていただきます。

 まず、2-1、低次生産の変動に係る解析について説明いたします。

 栄養塩類と水産資源の関係を評価するには、栄養塩類から水産資源までの過程にある植物プランクトンや動物プランクトンとの関係について把握することが重要であるため、まずはこれらの低次生産の変動について解析を進めました。

 解析の方法ですが、ある程度広範囲かつ長期にわたり動物プランクトンのデータが得られている大阪湾を対象とし、栄養塩類、植物プランクトン、一次生産量、動物プランクトンの現存量等の変動について確認しました。

 動物プランクトンのデータは、大阪府の公共用水域水質調査により、図6に示す大阪湾東部の12地点で、月1回の頻度で表層1m層から採水されたデータを使用しております。全窒素・全りんに係る類型指定による水域区分に基づき、水域ごとに平均値を算出し、変化傾向等を整理しました。

 解析の結果は33ページからになりますが、34~43ページに各項目の年度平均値及び季節ごとの平均値の変動を示してございます。

 34・35ページの年度平均値の推移をご覧ください。左下のDIN、DIP、右上のChl.a、右下の動物プランクトン及びカイアシ類の現存量を見ますと、各水域ともに1990年ごろから近年にかけて低下する傾向が見られました。

 36ページ以降には季節別の結果をお示ししておりますが、説明は割愛させていただきます。

 44ページを開きください。既往の研究では、動物プランクトンと餌との関係について、カイアシ類の産卵速度、これは生産量の指標になりますけれども、餌濃度の上昇につれて高くなりますが、ある一定の濃度以上では飽和するといった知見が指摘されてございます。

 今回の大阪湾のデータを用いて、図12にDINのデータが得られている1994年度以降の期間のChl.aと動物プランクトンの現存量の年度平均値の関係を整理してみました。これを見ますと、比較的DINの低い右上のⅡ類型の水域や左下のⅢ類型の水域よりも、DIN濃度の高い右下のⅣ類型の水域のほうが全体的な傾きが緩やかとなっており、ある一定の濃度以上で飽和してくるという既存の知見と同様の傾向が見られました。

 加えまして、図13のようにDINとChl.aの関係についても確認したところ、DINが増加するとChl.aが増加するといった関係性、傾向が見られました。

 ただいま説明した内容については、45ページのまとめの黒丸の1つ目と2つ目にお示ししてございます。

 なお、動物プランクトンの現存量はプランクトン食魚等の補食圧の影響や、増殖等には水温の影響、あとは動物プランクトンと植物プランクトンの生産速度や寿命が違うこと等が動物プランクトンの変動に影響を与えている可能性に留意する必要があるといった指摘を受けているところでございます。

 続きまして、47ページをお開きください。こちらからは特定の魚種について、生態に着目して栄養塩類と水産資源の関係に係る解析を行った結果について説明させていただきます。

 解析の対象魚種については、栄養塩類との関係を確認する上で適当か、瀬戸内海の特定の場所の水環境と比較する上で適当かという点を勘案しまして、栄養段階が低く、生活史が概ね瀬戸内海内の特定の範囲や海域で完結する種を選定しました。

 種の選定につきましては、瀬戸内海で漁獲量が多い種として、表3に示す魚種から選定を始めました。このうちマイワシは、先ほど説明したレジームシフトとの関係などが指摘されており、カタクチイワシ・シラスは太平洋で生まれて瀬戸内海に来遊する太平洋系群も多く含まれるということで、内湾の栄養塩類との関係を解析する上では適していないと考えました。

 また、アジ類やサバ類についても同様に、外洋からの加入が大きく影響する交流型の魚種であるため、解析対象としては適していないと判断してございます。

 一方で、イカナゴはプランクトン食性魚で、かつ産卵場などが瀬戸内海の特定の海域に限られています。また、アサリについても主要な餌が植物プランクトンであり、特定の範囲で生活史を終えるため、瀬戸内海の栄養塩類との関係を解析するに当たって、これらの主要魚種の中では適当と考え、本検討ではイカナゴとアサリを対象として解析を行ってございます。

 なお、内海発生群が主流とされる燧灘のカタクチイワシにつきましては、前回の小委員会で阿保先生に御報告いただいたとおり、瀬戸内海区水産研究所で現在、解析等を進めていただいていると伺っております。

 選定したこれらイカナゴとアサリの解析に当たりましては、水産研究の専門家に方法等を確認しつつ、種ごとに生活史等を考慮し、生物の成長等にとって餌資源が重要となる時期や場所を対象として、栄養塩と漁獲量の比較を行ってございます。

 まずはイカナゴの解析結果について御説明させていただきます。50ページをご覧ください。

 解析の対象とした海域は、図19に示すとおり、瀬戸内海での漁獲量が最も多く、長期的に減少が見られている播磨灘としてございます。同様に漁獲がある備讃瀬戸は、イカナゴの漁獲量の減少に海砂利の採取が大きく影響しているという知見がございますので、今回の解析の対象とはしてございません。

 52ページ、53ページに海砂利の採取状況を示させていただいておりますが、詳細な説明は割愛いたしますので、後ほど御確認いただければと思います。

 51ページの図20をご覧ください。播磨灘のイカナゴは、主に播磨灘東部の鹿ノ瀬周辺や中央部の家島周辺で漁獲されているため、水質については図21、22のとおり、その周辺の地点のデータを対象としました。

 55ページをご覧ください。解析対象の期間としては、図25に示すように、平成元年前後で漁獲形態が大きく変化していることから、その影響が含まれないよう、主要な漁期である2月から4月の漁獲量が中心となった1989年、平成元年以降といたしました。

 解析対象時期につきましては、イカナゴの餌環境として重要な孵化後の仔魚期に当たる1月から3月の環境を見ていこうということで進めてございます。なお、冬期の栄養塩は植物プランクトンに消費された状態である可能性も考慮し、冬期全体の栄養塩の状態を見るため、前年11月から当年3月のデータを対象とし、解析を進めてございます。

 57ページをご覧ください。イカナゴは湾・灘ごとの資源量のデータがないため、解析には漁獲量のデータを使用しました。また、餌環境については、播磨灘では大阪湾のような動物プランクトンのデータがないため、栄養塩及びChl.aを用いて解析しております。

 なお、57ページの図27に示すとおり、解析の対象期間においてはNP比がレッドフィールド比を下回っていたことから、栄養塩についてはDINを用いて解析を進めております。

 DINは月1回の測定が行われている浅海定線調査のデータを用い、Chl.aについては、分析方法の変更により県の浅海定線調査のデータが長期の解析には適さないということで、年4回測定されている広域総合水質調査のデータを用いております。

 58ページからが解析の結果になります。

 59・60ページの図28から図29に、播磨灘のイカナゴの漁獲量と漁場周辺のDIN及びChl.aとの比較を示しております。また、各年の漁獲量の変動は、気象・海象条件等の影響によりばらつきが生じる可能性もあることから、中長期的な変動傾向を捉えるため、3年移動平均したグラフを下段に示してございます。

 59ページの図28(1)のイカナゴの漁獲量とDINは、年による変動が大きいものの、ともに1990年代前半から2010年前後にかけて低下傾向が見られ、長期的に類似した変動傾向を示してございます。

 60ページを御確認ください。図29(1)のChl.aの変動は、年による変動が大きいものの、長期的には概ね横ばいで推移しております。一方で、イカナゴの漁獲量は長期的に減少しているということで、漁獲量とChl.aの間には明瞭な関係が見られませんでした。これは、短期的な変動が大きいと考えられるChl.aについては四半期に1回のみのデータを用いたため、必ずしも当該年の植物プランクトンの出現傾向を捉えられていない可能性が考えられると考察してございます。

 また、植物プランクトンは近年、種組成が変化しており、そのことが動物プランクトンの現存量に影響を及ぼしていることが考えられるといった指摘があるため、漁場周辺の植物プラクトンの種組成の変化についても確認を行いました。

 61ページをご覧ください。広域総合水質調査による植物プランクトンのデータを用いて、対象海域の冬季における種組成の変化を整理してございます。62ページに種組成及び細胞密度の変化をお示ししました。

 図31をご覧いただくと、1996年ごろからグラフの青色で示しているスケルトネマの割合が大きく減少し、赤色のキートケロスや薄い緑色のユーカンピアの割合が増加しているということで、植物プランクトンの構成の変化が見られます。このように種組成の変化が見られる海域では、Chl.aが横ばいであった場合でも動物プランクトンとの餌環境が変化している可能性があり、このことが、イカナゴ漁獲量とChl.aの変動傾向に明瞭な関係が見られなかった要因の1つではないかと考察してございます。

 62ページの1段落目をご覧ください。種組成の変化については室内実験の結果から、水質改善による水柱光量の増加によってスケルトネマの増殖の優位さが減少するといったことが要因として考えられるという既存の報告がございます。また、植物プランクトンの量や種組成の変化については、栄養塩、光環境及び水温といった環境要因と種の特性等との関係について、引き続き知見が蓄積されることが重要だと考えてございます。

 64ページをご覧ください。これ以降は、これまでに報告されているイカナゴの餌資源との関係に関する知見を整理してございます。

 兵庫県水産技術センターでは、2008年から2017年の期間を対象として播磨灘のイカナゴの主要な夏眠場である鹿ノ瀬周辺において、夏眠直後の肥満度と夏眠前のイカナゴの餌であるカイアシ類の個体数との関係を比較、検討されてございます。

 65ページの図33をご覧ください。比較の結果、カイアシ類の個体数とイカナゴの肥満度には有意な正の相関があり、イカナゴの餌料生物であるカイアシ類の減少がイカナゴの肥満度を低下させる要因であることが示唆されたという報告が得られてございます。

 また、65ページの下の知見でございますが、給餌量を調整したイカナゴの飼育実験の結果によると、イカナゴの成熟に必要な夏眠開始期の肥満度は概ね4.2と推定されてございます。

 66ページ、67ページでは、イカナゴの資源変動に影響を及ぼすその他の要因として指摘されている、水温についても確認を行いました。

 これまでの研究において、66ページの図35に示すように、夏眠期間中の水温が高くなるほどへい死率が高くなり、28℃に達すると極端にへい死率が高くなることが報告されております。

 そこで、67ページの右下のほうに播磨灘の主要な夏眠場である鹿ノ瀬近傍における夏季の下層水温を整理してみました。図37を見ていただくと、1989年以降の水温は、極端にへい死率が高くなるとされる28℃には至っておらず、また、水温については、この期間横ばいで推移しており、減少傾向にあるイカナゴの漁獲量と水温の関係は不明瞭でした。

 68ページに、これまで説明してきました栄養塩類とイカナゴに係る解析のまとめをお示ししております。

 解析手法については上段に整理していますが、イカナゴの成長等にとって餌資源が重要となる時期や場所を対象として解析を行いました。解析に当たっては、海砂利等、他の要因を排除して期間等を設定するとともに、イカナゴ資源の変動に影響を及ぼす水温といった要因についても確認を行いました。

 解析の結果ですが、播磨灘のイカナゴの漁獲量と漁場周辺のDINは長期的に類似した変動傾向を示していました。

 また、これまでの研究成果にある「イカナゴの餌料生物であるカイアシ類の減少が、夏眠期前の肥満度を低下させる要因となっている」といった知見とともに「給餌量を調整した伊勢湾のイカナゴの飼育実験の結果等によると、イカナゴの成熟に必要な夏眠開始期の肥満度は4.2と推定される」といったイカナゴの生理的な特性の報告等を踏まえますと、栄養塩濃度が大きく減少している播磨灘東部のイカナゴ資源に対しては、栄養塩や、植物プランクトン、動物プランクトン等の餌環境といった低次生態系の変化が影響を与えている可能性があるのではないかといったことが示唆されました。

 イカナゴと栄養塩との関係については、以上でございます。

 次に、アサリの解析結果について御説明いたします。69ページをご覧ください。

 イカナゴと同様、解析に当たっては、アサリ資源にとって餌資源が重要となる時期や場所を選定し、絞り込んで解析を進めました。

 対象海域は、69ページの図38に示すとおり、瀬戸内海で漁獲量が多い周防灘としています。

 アサリは潮間帯から水深10m程度の浅海域に生息しており、また、70ページの図39に示すとおり、漁場は周防灘の中でも山口県から大分県までの沿岸域に位置しているため、図40のとおり、アサリの主な生息域の近傍の沿岸域の地点のデータを対象としました。

 71ページをご覧ください。対象期間は、1985年から1991年までの急激な漁獲量の減少については漁業形態の変化等による過剰な漁獲といった要因が指摘されているため、1991年以降の減少に絞って解析してみることとしました。

 解析の対象時期は、周防灘のアサリの産卵期が5月~6月と9月~10月で、春季と秋季の発生群であることから、アサリの親貝の成熟に必要な産卵期前の3月~5月と、7月~9月のデータを対象としました。

 続いて、75ページをご覧ください。アサリは資源量が算出されていないため、解析には漁獲量のデータを使用してございます。

 餌環境については、以前の小委員会でも底生微細藻類が重要ではないかという指摘がございましたが、長期的なデータが現在得られていないため、今回の解析では栄養塩及びChl.aを用いました。

 周防灘のアサリは概ね1年半から2年程度で成長し、漁獲されるとされています。このため、当該年の漁獲量には前年及び前々年の春季と、前々年の秋季に親貝から産卵されたアサリが関係すると考えられますので、3月~5月については前年及び前々年の年平均、7月~9月については前々年の栄養塩及びChl.aのデータを解析に用いました。

 図44のとおり、解析対象期間のうち、2000年前半までの3月~5月のNP比はレッドフィールド比を上回っておりますが、2000年以降の3月~5月及び7月~9月のNP比はレッドフィールド比と同程度である期間が多いことから、栄養塩はDINとDIPの両方について解析を行ってございます。

 なお、3月~5月と栄養塩については、月1回の測定が行われている浅海定線調査のデータを使用しました。

 76ページからが解析の結果になります。周防灘のアサリの漁獲量と、主な生息域近傍の沿岸域の栄養塩及びChl.aとの比較を78ページから81ページに示しました。78ページ、79ページが前年、前々年の3月~5月の平均水質データと比較したもので、80ページ、81ページは前々年の7月~9月の水質データと比較したものでございます。79ページと81ページには、イカナゴと同様に、3年移動平均したものをお示ししました。

 78ページの図45(2)をご覧ください。1991年から2003年についてはNP比がレッドフィールド比を上回り、DIPの変化が海域の基礎生産に及ぼす影響が大きいと考えられるため、上から2つ目のDIPのグラフの御確認いただけると幸いです。

 DIPは1994年から1998年にかけて上昇した後、2002年ごろにかけて低下しており、アサリの漁獲量と類似した変動傾向が見られました。一方で、図46のChl.aについては長期的に概ね横ばいで推移しており、アサリの漁獲量の変動と明瞭な関係は見られませんでした。

 80ページにお示しした7月~9月の栄養塩類については、いずれの項目もアサリの漁獲量と類似した変動は見られませんでした。

 82、83ページでは、これらの結果の相関関係を確認するため、アサリの漁獲量が100トン以下まで減少する前の1991年から2002年のDIN・DIP・Chl.aとアサリの漁獲量との相関関係をお示ししております。

 82ページに示しました3月~5月のDIN、DIPとアサリ漁獲量の関係を見ると、特に右上のDIPと高い相関関係が見られ、右下のChl.aとは明瞭な関係は見られませんでした。

 83ページに示しました7月~9月のDIN、DIP、Chl.aとアサリ漁獲量の関係を見ると、いずれも関係が明瞭ではございませんでした。

 76、77ページを1度お開きください。ただいま説明した内容を四角の中にまとめてございます。

 Chl.aと明瞭な関係が見られなかったことについては、イカナゴ同様、短期的な変動が大きいと考えられるChl.aは月1回のみのデータで必ずしも対象時期の植物プランクトンの出現傾向を捉えていない可能性が考えられます。また、Chl.aのデータがアサリ漁場の直接的なデータではなく近傍の水質データを用いて解析したため、必ずしも漁場の餌環境の状況が反映されていない可能性があるのではないかと考察してございます。

 また、アサリの餌料としましては、植物プランクトンの他に底生微細藻類が重要であると言われており、アサリ漁場のChl.a濃度と底生微細藻類の変化についても見る必要があるという御指摘も、以前に受けております。

 また、7月~9月のDIN、DIPと漁獲量にも明瞭な関係が見られませんでした。これは、7月~9月のDINを見ると実は3月~5月よりも低位で推移している一方で、Chl.aは3月~5月よりも高い値を示している。このDINとChl.aの関係から、7月~9月は栄養塩が植物プランクトンに消費されている状態であった可能性が考えられると考察してございます。

 84ページをお開きください。84ページからは、これまで報告されているアサリと栄養塩類、餌資源との関係に関する知見を整理してございます。

 84ページの図55に示すとおり、豊前海では、漁獲量と沿岸域の基礎生産力の関係に関する報告がございます。

 また、86ページの図57に示すとおり、山口県の周防灘海域のアサリ干潟漁場では、底層の海水に含まれる植物色素量等が多いほどアサリの生残率や肥満度が高い傾向が見られたという報告がされてございます。

 また、1ページお戻りいただいて85ページの上の四角の2つ目でございますけれども、食害、底質環境、夏季の高水温、貧酸素水塊などの要因を排除した垂下式の実験系では、Chl.aが高い測点ほどアサリの軟体部の重量の増加が見られたことが報告されてございます。

 87ページをおめくりください。87ページからは、アサリの資源変動に影響を及ぼす栄養塩以外の要因に関する知見を整理してございます。夏季の高温化による影響、ナルトビエイなどによる食害の影響といったものも指摘されてございます。

 90ページ以降は、これまで御説明してきた栄養塩類とアサリに係る解析結果のまとめでございます。

 解析手法については、上段に整理してございますが、アサリにとって餌資源が重要となる産卵期前の時期を対象として解析を進めました。

 解析の結果、周防灘のアサリの漁獲量と主な生息域である沿岸域のDIPは1991年から2002年にかけて類似した変動傾向を示していました。沿岸域のChl.aは長期的に横ばい傾向であり、アサリの漁獲量の変動と明瞭な関係は見られませんでした。

 また、これまでの研究成果によると、海域の植物プランクトン量がアサリの成長や生残率、肥満度に関係があるといった餌環境との関係について報告がなされてございます。

 アサリと栄養塩類との関係について解析を行うには、先ほどお示ししたとおり、アサリ漁場におけるChl.aや底層微細藻類に関するデータや知見がさらに蓄積されることが重要と考えており、現在、前回の小委員会で瀬戸内海区水産研究所の阿保先生から御発表いただいたとおり、栄養塩類が二枚貝等の餌となる底生性の微細藻類に及ぼす影響の解明に関する研究がテーマとして設定され、研究が進められてございます。

 こういった研究の成果も加えて、今後、アサリと栄養塩との関係について見ていく必要があると考えてございます。

 環境省からの説明は、以上になります。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 ただいまの環境省からの御説明に関しまして、御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。

○柳委員 63ページの図32(2)の説明がなかったのですが、図29(2)と比べるとかなり相関が高くなっています。つまり沿岸のChl.aは沖合のChl.aよりもイカナゴの資源量に直結していると考えていいのでしょうか。

○島津係長 Chl.a濃度については広域総合水質調査地点の全地点でデータがありますが、種組成の変化については一部の地点でしかデータが採取されていないため、変動傾向を見るために今回はイカナゴの漁場よりもかなり広い範囲の、61ページの上の図にありますように、沿岸域に多少近いような地点も用いて図32(2)のグラフを作成しております。今回はイカナゴの漁場に絞って解析したため、比較対象としては、図29のChl.aと漁獲量で比較しているところでございます。

 また、Chl.aと漁獲量については、一時期は関係がありそうにも見えますが、Chl.aは長期的には横ばいで推移しているのではないかと見ているところでございます。

○柳委員 イカナゴの場合は、Chl.aよりも直接はカイアシ等の動プラを食べています。だから、これでもまだミッシングリンクがあるわけで、動プラまで入れるとしたら、なぜ大阪湾のイカナゴと栄養塩、植プラ、動プラで揃えて解析をやらないのでしょうか。

○坂口室長補佐 大阪湾のイカナゴ資源については、播磨灘からの加入の状況が風とか流れの状況によって変動するという指摘もございますので、長期的に主要な漁場の漁獲量のデータのある播磨灘を解析の対象としています。動物プランクトンにつきましては、ご指摘のとおり見ていかないといけないということで、兵庫県の水産試験場で、現在、動物プランクトンのデータ等を採取して餌環境をより精緻に見ていこうと調査が進められていると伺っております。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他にございますでしょうか。よろしいですか。

 多分、資料があまりに多いのでついていけなかった箇所もあるのではないかと思いますが、何かございますでしょうか。

○細川委員 資料4の最初に御説明があったのを聞き逃したのかもしれませんが、資料4にはノリが含まれていません。ノリについてはどのように扱うのでしょうか。

○坂口室長補佐 資料4については、今回は、栄養塩と水産資源の関係の中で特に海面漁業に絞って解析を実施しておりますが、ノリについては昨年度の小委員で説明したとおり、別途整理を進めておりますので、今年度末に各湾・灘ごとの総合的な取りまとめをしていく中には、ノリについての情報も入れてまとめていきたいと考えています。

○高村委員 前回欠席したので、資料が膨大でついていけなかったのですが、データがすごく出てきて、こういうデータが整理できたことは第一歩ではないかと思います。

 相関を見るというのは、あくまで同時に増えているかどうかということで、因果関係を説明しているものではないものです。また、アサリとか高次のイカナゴは、水質と直接というよりは、餌を食べますからもちろん水質とも関係しているのですが、生息場所とか他の要因も影響してくるわけです。この解析を見ると、他の影響を排除したところだけで相関をとったりですとか、やや主観を入れた解析を行うなど苦労している。科学の論文としては、これは少しいかがなものかという感じで、そういうものでは客観的な説得力に欠けます。

 そのあたりを、今回計画された期間には結論を出すのは無理かもしれませんが、豊かな瀬戸内海を目指すという法律をつくっていただいたので、ここの水域は長期的にきちんとモニタリングを継続し、また、なぜ魚類生産が減っているかを明確にするためにモニタリング項目を再考するなど。TP、TNとCODが説明に多く出てくるのですが、魚類生産はそれだけではなくて他のいろいろな要因、例えば生息場所の要因などいろいろあるわけですし。また、水質といっても、窒素とりんだけではなく、鉄とかマンガンとか、今、海洋酸性化も始まっていますから、pHの変化が貝殻をつくる能力に関わってくるとか、いろいろあるわけで、何か仮説みたいなものを立てつつ、結論を急がないでいただきたい。窒素、りんが少ないと生産性が下がるのはもう自明なので、これだけ窒素とりんが減っていると、それは漁獲全体が減っている要因の100%の要因ではないかもしれないが、何%かの説明力はきっと出てくるわけで、これに加えて、その他にもいろいろな要因を見つけ出していくような作業もしっかりとして、それを今後の豊かな瀬戸内海を目指すものに加えていくとか、「こういう要因が大事」というところを見つけていくことも、こういうところで少しやっていただければと思います。

 あまりうまく言えなくて、すみません。

○坂口室長補佐 今回は附則の検討事項として、まずは栄養塩と水産資源という観点で解析を実施しております。逆に、漁獲量全体と栄養塩を並べて相関だけ見ていても栄養塩との関係がなかなかクリアに見えてこないということで、他の要因を排除して見てみるとどこまで見えてくるのかというところで、ご指摘のとおり栄養塩と直結しているとは言えないのかもしれませんが、低次生態系のところで餌が減っていたりとか、イカナゴに関してはカイアシ類が減っているといった低次生態系の変化が示唆されていると、我々としては現段階でそのような捉え方をしておりますが、先ほど申し上げたように、まさに動物プランクトンを見ていかなければいけないといったところで、水産試験場でも、特に仔魚期の餌環境をさらに見ていこうという話にはなっていますので、そういったところをあわせて、変動要因は評価されていくと思っています。

○高村委員 この大阪湾のデータなどはすばらしいデータで、34や35ページをみますと動物プランクトンもChl.aも一次生産量も栄養塩も全部あるわけです。これだけあれば因果関係分析ができると思います。最近解析手法も発達してきて、2012年の「Science」に載った因果関係分析をはじめ、今、盛んにそういう論文がどんどん出てきています。霞ヶ浦で実は我々もやったのですが、20年間の長期モニタリングのデータで、ワカサギのデータはなかったのですが、どのように食物網が駆動されて霞ヶ浦のワカサギの生産に結びついているかといった、窒素が一次生産量を支えて、それがワムシを支えて、それがカイアシ類からワカサギというような。

 そういった因果関係分析等もできると思うので、行政は限られた期間でやらないといけないと思いますが、推進費等も用いて、研究者がこういったデータを解析して、新しいものを見つけてそれを政策に返していくということをやっていただければと思います。もうこれだけ科学的データがたまっているので、解析が必要です。これが足りない、これが足りないと言っていたら切りがなく、100%データをとることはできないので、推進費の枠を使うとか、そういったことも考えてやっていただければと思います。

○岡田委員長 貴重な御指摘ありがとうございます。

 よろしいですね。

 ご指摘のように、まさに行政ニーズとして、推進費として研究するという方法はあり得ると思います。

 他にございますでしょうか。

○平井会長 今年は大阪湾でチリメンが非常にとれたと聞いております。兵庫でイカナゴが何年もとれないというのも聞いているのですが、減ったところだけ調べるのではなく、非常にとれた海域も調べて、近くの海域で何が違ったか、そういうことを比較するのも大切ではないかと思います。一つの参考として。

 全部でとれるのではなく、そこだけ、例えば太平洋ではなく大阪湾で、なぜそこだけチリメンがとれたのか、例えば、魚ではないが、今年、伊予灘のほうでイカが異常に発生してとれています。それは何が原因かはわからないが、何か海の変化があるのではないかと思うのですが、そのようなところの水質の検査等も今後、必要ではないかと思います。次に進むためにも。

 ぜひそういう視点からも研究してもらえたらと思います。

○岡田委員長 ありがとうございます。

 今の御指摘も、よろしいですね。

 他にございますか。

○鷲尾委員 本当に大変な労作、ありがとうございます。

 イカナゴの62ページの植物プランクトンに関わるところですけれども、種組成のほうはこういうことだったのかと思うのですが、下に細胞数を掲載していますよね。だから組成のほうも細胞数で比を出しているのではないかと思うのですが、植物プランクトンでもスケレトやキートケロスは比較的細胞サイズが小さいものですので、数としては多く上がります。このユーカンピアはその何十倍と大きいですし、さらに大きいコシノディスカスワイレシーがこの図の前半十数年、優先しています。ただ、個数としては出てきませんので、そういう点での反映がどうなのかと。

 クロロフィルとしては測れているはずです。ただ、細胞サイズが100倍以上大きいものになると、カイアシ類が食ってくれるかどうか、そこのつながりが絶たれることによって、60ページの図29の相関のところに影響してくる可能性はあると思いますので、データとしては細胞数でしか計上されていないと思いますが、組成を見れば種ごとの大体のサイズがわかりますので、それに変換したときにどういうことが起きているのかも一考していただけたらと思います。

○岡田委員長 ありがとうございます。

 他にございますか。

○長屋委員 大変なまとめをしていただきまして、本当に感謝申し上げたいと思います。

 今日は3県の漁連・漁協の方々からもいろいろなお話をいただいたところでございまして、さまざまな要因があることはわかっていますけれども、その中で、今、瀬戸内海で漁業の生産がここまで減って、漁業者が今、非常に苦しんでいるということをもう一回考えていただきたい。広範ないろいろなことについての知見を積み上げていただくのはわかるのですが、それが全部終わるまで何も手が打てないということでは漁業者は生きていけないということで何にもならないわけですから、やはりそれぞれの中でここまでまとめていただいたものをどう政策に反映するかという視点をしっかり持って、明らかになったものについてはそれについての手を打っていただくことを、ぜひお願いしたいと思います。

○岡田委員長 よろしいですね。

 他にございますか。

○足利委員 膨大なデータをまとめていただいて、大変勉強になりました。ありがとうございました。

 1つだけ気になったのが、87ページの参考に海水温との関係がありまして、これは中津の、確か大分県の試験場さんの論文だったと思うのですが、夏の高水温で、せっかくアサリの稚貝ができてもみんな死んでしまうのです。それでこれを読むと、さらに浜口先生の論文で、冬季も海水温が高いとアサリに影響がでてしまうと。

 それから64、66ページに、イカナゴも冬に餌を十分食べられていないと、夏に夏眠しているときに高水温になると死んでしまうというデータが出ているのですが、新しいデータをとらなくても環境省さんは海水温のデータとかアメダスのデータをお持ちだと思うので、これだけ高水温の問題が出てくるので、せめて高水温と資源量というか、ここに出ているイカナゴとアサリの問題だけでも比較検討はしていただかないといけないと思っています。

 私、誤解を恐れずに言うと、漁業者のお友達もいっぱいいるのですが、高水温、これだけ温暖化が言われて干潟等の温度が高くなってきていたら、例えば九州の干潟ではアサリはもう無理だという状況がもしかしたらあるかもしれなくて、その場合、いつまでもいつまでも期待してアサリを育てても無理だったら違う魚種に変えて水産業を考えていくといった時代がやってくるのではないかと実は少し感じていまして、そういう将来のためにも、きちんとした、今、手元にあるデータで本当にこれから先、まださらに気温が上がっていくときに大丈夫なのかというのは、もう予測としてどこかが出さないといけないのかと思っています。ぜひその辺の分析もお願いできるとありがたいです。

○岡田委員長 適応策に関する御意見をいただいたと思うのですが、これもよろしいですね。何かあれば。

○坂口室長補佐 今、環境省でも気候変動適応コンソーシアム事業でブロックごとに、水産だけではないのですが、水産資源を含めて、将来予測と適応策の検討等を進めてございますし、当室でも瀬戸内海の水温の長期変動等の解析は進めておりますので、来年度、気候変動の話はテーマとして、基本計画全体を取り扱っていく中で御報告させていただこうと思っておりますので、そこら辺の御報告についてはまた考えさせていただきたいと思います。

 干潟の地温というのは、水温とは大分違って、直接データを収集しないといけない部分もあるかと思いますので、なかなか環境省の基礎調査的なところでは拾えていないのが現状ではございますが、水産研究所等の知見も収集したいと思っております。

○岡田委員長 ありがとうございます。

 まだ御意見あるかと思いますが、予定の時間を若干オーバーしつつありますので、特にということであれば承りたいと思いますが、よろしいですか。

 今日は、何人かの委員から御指摘ございましたように膨大な資料を出していただきました。やはり大部なものですから、高村委員、平井会長等に御意見いただいたようなところは多分、今後の解析にあたっては必要な観点だと思います。また、こういう点でもう少し解析を進めてほしいとか、こういう疑問があるという場合は、ぜひ御意見、御要望を環境省にお寄せいただければ、できないことはできないで仕方がないのですが、いろいろな御意見をいただいて、特に今回は漁連・漁協の方、県の方、現場の方や様々な専門の先生方もいらっしゃいますので、その辺の御意見をいただいて、まとめていくことが、今後こういった解析をする上で非常に役に立つと思いますので、ぜひ御協力のほどをよろしくお願いしたいと思います。

 今回は栄養塩と水産資源でしたが、本年度、先ほどたしか鷲尾先生からも御指摘があったように、水質と底質、それから底生生物の変化や栄養塩類、水産資源といったことについても総合的に評価することを予定しております。

 それから栄養塩と水産資源の関係については本日、御報告ございましたが、第11回の委員会でも説明がありましたとおり、現在、瀬戸内海区の水産研究所、府県の水産試験場等の関係研究機関で適切な栄養塩管理に向けて、栄養塩等が水産資源等の生産に及ぼす影響の解明に係る研究が進められているところでございます。

 特に、先ほど長屋委員から御指摘ございましたように、調べているだけでは何も始まらない。わかった部分からぜひ具体的にスタートしてほしいという御指摘をいただいております。そういう状況でございますので、このような栄養塩管理に関する取組につきましては、新たな科学的知見等を踏まえて実施されていくことになるかと思いますので、地域の関係機関の皆様方につきましては引き続きよろしく御協力のほどをお願いしたいと思います。

 最後、若干駆け足になりましたが、本日の議題は以上でございます。

 この際、最後に何かあれば承りたいと思いますが、よろしいですか。

○山田委員 いろいろ御説明ありがとうございました。

 来年度は気候変動にも取り組むということなので、私が思っていることを言わせていただきますと、今日、DINとかDIP、あるいは栄養塩というご議論があったのですが、先ほど足利委員から御指摘がありましたように、その由来です。由来は3つしかないと考えています。陸域から、あるいは底質からの溶出、あるいは外海からの流入。それらの寄与率について各湾・灘で状況は違うと思うのですが、そこを踏まえた御議論もお願いしたいと思っています。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 よろしいですね。

 それでは、本日は非常に長時間にわたりまして御議論ありがとうございました。

 特に今回、広島県、愛媛県、大分県の関係県、それから山口県、愛媛県、大分県の漁業協同組合の方々には、御説明いただき本当に感謝いたします。ありがとうございました。

 それでは、事務局にお返しいたします。

○島津係長 次回の小委員会では、先ほど委員長からもありましたとおり、長期的な水質の変化傾向や、環境省で実施しました底質・底生生物調査の変化傾向の状況、栄養塩類と水産資源に係る項目等について、湾・灘ごとの海域特性や今回説明しました調査・研究の検討状況を踏まえて、総合的に評価した結果について報告させていただく予定でございます。

 開催時期につきましては、年度内を予定しております。

 委員の先生方におかれましては、本年度の総合検討、また来年度のとりまとめに向けまして引き続きよろしくお願いいたします。

 また、本日の議事録については、速記がまとまり次第、委員の皆様方、また本日御説明いただきました関係者の方々に御確認いただいた上で、環境省のウェブサイトで公開させていただきます。

 関係県、関係団体の皆様、本日はどうもありがとうございました。

 以上をもちまして第12回の小委員会を閉会いたします。

 本日はどうもありがとうございました。