中央環境審議会水環境部会 瀬戸内海環境保全小委員会(第11回)議事録

議事次第

開会

議題

(1)関係府県・関係団体からのヒアリング

(2)栄養塩類と水産資源の関係に係る検討について

(3)その他

閉会

議事録

午後1時31分 開会

○島津審査係長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会水環境部会第11回瀬戸内海環境保全小委員会を開催いたします。

 委員の皆様、関係者の皆様におかれましては、本日はお忙しい中、また、お暑い中、ご出席いただき、誠にありがとうございます。

 本日の出席状況でございますが、委員23名中、17名の委員の方にご出席をいただいております。

 なお、大塚委員、高村委員、池委員、江種委員、秦委員、千葉委員につきましては、都合によりご欠席とご連絡をいただいております。

 それでは、まず、議事に先立ちまして、水・大気環境局長の田中よりご挨拶を申し上げます。

○田中水・大気環境局長 皆さん、こんにちは。ただいまご紹介をいただきました田中でございます。7月13日付で環境省の水・大気環境局長を拝命したところでございます。よろしくお願い申し上げます。

 中央環境審議会第11回の瀬戸内海環境保全小委員会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。

 委員の皆様方、瀬戸内海関係府県・関係団体の皆様方におかれましては、平素より瀬戸内海の環境保全の推進にご尽力いただくとともにご理解とご協力をいただきまして、誠にありがとうございます。本日、まだ暑い中ではございますが、ご多忙のところ、ご出席を賜りまして、重ねて御礼を申し上げます。

 まず、先月7月に豪雨災害がございました。亡くなられた方、あるいは被災された方々がたくさんいらっしゃいます。改めまして、哀悼とお見舞いを申し上げるとともに一刻も早い復旧を心からお祈りいたします。

 先ほどニュースなどを見ていましても、今週もまた二つ、西日本のほうに台風が来ているようでございます。非常に心配をいたしておりますけれども、被害が少ないことを祈りますとともに、皆様方におかれましても警戒のほうを、ぜひお願いしたいと思います。

 さて、皆様ご承知のとおり、平成27年の瀬戸内海環境保全特別措置法の改正、瀬戸内海環境保全基本計画の見直しにおきまして、瀬戸内海の湾・灘ごと、季節ごとの地域の実情に応じた施策を実施し、「豊かな海」を目指すということが位置づけられたところでございます。

 新たな「基本計画」では、従前の水質の保全、自然景観の保全に加えまして、新たに「沿岸域の環境の保全、再生及び創出」、「水産資源の持続的な利用の確保」、「水質の管理」、「文化的景観の保全」といったさまざまな観点から、より広範な分野にわたる施策の推進が求められているところでございます。

 また、改正法の附則において、今後の課題として、法施行後5年を目途に、栄養塩類と水産資源の関係に係る調査研究に努めるとともに、瀬戸内海における栄養塩類の管理の在り方について検討を行うことなどが盛り込まれました。

 これを受けまして、平成31年度を目途に「きれいで豊かな海の確保に向けた方策の在り方に関するとりまとめ」を行うことといたしまして、3月の第10回の小委員会におきましてご了承をいただいたところでございます。

 本年度でございますが、栄養塩類と水産資源の関係に係る調査・研究等の状況について把握し、知見の収集・整理、湾・灘ごとの水環境等の変化状況の分析結果なども踏まえ、栄養塩類と水産資源の関係や湾・灘ごとの海域の特性について総合的に検討を行ってまいりたいと考えております。後ほど、こういったことについてご説明をさせていただくことにしております。

 このため、本年度は、特に栄養塩類と水産資源を巡る地域の実情ですとか課題、それから調査研究の状況などを伺うということにしておりまして、早速、瀬戸内海の関係府県・関係団体の皆様、それから研究機関の専門家の方々にお越しいただいて、ヒアリングを実施させていただく予定としているところでございます。お話いただいた内容については、本年度の総合的な検討、それから来年度のとりまとめなどに活かしてまいりたいと考えているところでございます。

 委員の皆様方におかれましては、本年度もいろいろご議論いただくことになると思いますけれども、忌憚のないご意見・ご助言を賜りますようお願いを申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。

○島津審査係長 ありがとうございました。

 続きまして、前回の開催以降に事務局側の幹部で一部異動がありましたので、ご紹介させていただきます。

 田中水・大気環境局長につきましては先ほどご紹介させていただきました。

 皆様から向かって左、上田審議官でございます。

 その左に参りまして、熊谷水環境課長でございます。

 続きまして、皆様から向かって右が山本閉鎖性海域対策室長でございます。

 私は、本日、進行を務めます閉鎖性海域対策室の島津でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 また、本日は議題1でヒアリングをさせていただきます関係府県及び関係団体の方8名にお越しいただいておりますので、ご紹介をさせていただきます。

 まず、大阪府環境農林水産部環境管理室環境保全課の堀川課長でございます。

 兵庫県農政環境部環境管理局水大気課の菅課長でございます。

 香川県環境森林部環境管理課の小蓑課長でございます。

 続きまして、瀬戸内海関係漁連・漁協連絡会議を代表しまして、兵庫県漁業協同組合連合会の代表理事会長である田沼様でございます。

 全国海水養魚協会の中平専務理事でございます。

 兵庫県漁業協同組合連合会の突々専務理事でございます。

 香川県漁業協同組合連合会の嶋野代表理事会長でございます。

 国立研究開発法人水産研究・教育機構の瀬戸内海区水産研究所の阿保グループ長でございます。

 なお、配席の都合上、前半の3府県のヒアリング終了後に、後列の関係団体の皆様方と席を入れかえさせていただきますので、ご承知おきください。

 続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 まず、1枚目が議事次第、2枚目が配席図、その次が資料1、小委員会の委員名簿。資料2がとりまとめに向けた検討の進め方について。資料3-1が、大阪湾における環境保全の現状と課題。資料3-2が、豊かで美しい瀬戸内海に再生するための兵庫県の取組。資料3-3が、香川県における水環境と水産業の課題等。資料4-1が、瀬戸内海を豊かな海とするための課題解決を求める要望書。資料4-2が、魚類養殖業と水環境等を巡る課題について。資料4-3が、兵庫県瀬戸内海のノリ養殖・イカナゴ漁からみた漁場環境と課題。資料4-4が、香川県の魚類養殖と水環境等を巡る課題について。資料5-1が、栄養塩等と水産資源の関係に係る調査・研究状況について。資料5-2が、栄養塩類と水産資源の関係に係る解析について。最後に、参考資料としまして、瀬戸内海環境保全特別措置法と瀬戸内海環境保全基本計画の概要と本文をご用意しております。

 不足等ございましたら、事務局にお申しつけください。それでは、大丈夫でしょうか。

 では、本日の会議は、中央環境審議会の運営方針に基づき公開とさせていただいております。

 なお、プレスの方は、これ以降の写真撮影等はお控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 それでは、この後の議事の進行につきましては岡田委員長にお願いしたいと思います。岡田委員長、よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 はい、かしこまりました。

 委員の皆様方、それから、また、本日は関係府県、関係団体の方々におかれましては、大変ご多用の折、ご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日、ヒアリングの議題がたくさんございますので、早速ですが議事に入りたいと思います。

 最初の議題は、関係府県、関係団体からのヒアリングということになっております。ヒアリングを進めさせていただく前に、事務局より、とりまとめに向けた検討の進め方について、ご説明をお願いいたします。

○坂口室長補佐 資料2をご確認ください。

 資料2が、とりまとめに向けた検討の進め方という資料になってございまして、3ページからが、きれいで豊かな海の確保に向けた検討の進め方ということで、昨年度の小委員会においてご確認いただいた資料でございます。

 4ページをおめくりいただくと、湾・灘ごとの課題への対応、附則の栄養塩等と水産資源の関係に係る調査研究を進めて、管理の在り方等について検討する、こういったものに対応しまして、平成30年度に総合検討を進め、平成31年度に方策の在り方に関するとりまとめを行うというスケジュールで、昨年度の小委員会で、ご確認をいただいたところです。

 1ページにお戻りください。とりまとめに向けた検討の進め方ということで、この2カ年を具体化し、平成30年度は、水環境に係る項目について、湾・灘ごとの海域特性を踏まえた分析・評価を進め、また、瀬戸内海における栄養塩類と水産資源の関係に係る調査・研究等の結果の収集・整理をした上で、これらを基に総合的に検討を行う。平成31年度は、瀬戸内海における環境保全の基本的な考え方や施策の方向性に向けた論点整理を行った上で、改正法及び基本計画に基づく施策の進捗状況の点検等を進めながら、方策の在り方のとりまとめを行うこととしてございます。

 本年度の検討にあたっては、湾・灘ごと、季節ごとに海域特性等の水環境を取り巻く状況や海面利用の状況等が異なることから、水産資源と水環境を巡る地域の課題等について、関係府県・関係団体からヒアリングを実施していきたいと考えてございます。また、栄養塩類と水産資源の関係の調査・研究に関して、国及び地方公共団体の研究機関等から、新たな知見等についてもいただきながら、ヒアリングを進めていきたいと考えてございます。

また、平成31年度の改正法及び基本計画の施策の進捗状況の点検にあたっては、法改正、基本計画変更後の施策の取組状況や現状の課題について、関係省庁・関係府県・関係団体等から、取組状況等についてヒアリングを実施しつつ、検討を進めていきたいと考えてございます。

 2ページが、今ご説明した内容について、整理したものでございます。今回は第11回でございまして、ヒアリングで東部の関係府県の関係団体の方々にお越しいただいているところです。第12回では中西部の関係県・関係団体等にお越しいただきたいと考えてございます。来年度につきましては法改正、あと、基本計画全体の取組状況等についてヒアリングを進めて、方策の在り方に関するとりまとめという形で、現時点のスケジュール案としてお示しさせていただいてございます。

 説明は以上でございます。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 ただいまの説明に関してご質問・ご意見等ございますでしょうか。

 特段よろしいですね。

 ただいま事務局から、2年間のとりまとめに向けた検討の進め方についてご説明がありましたが、この形で進めていくということでよろしいでしょうか。

(は い)

○岡田委員長 はい、ありがとうございます。

 それでは、先ほどご説明がございましたように今回はヒアリングということになります。とりまとめに向けた検討の進め方についてというところで、湾・灘ごと、季節ごとということがございますので、今回のとりまとめに向けてはヒアリングで、各関係府県・団体からのご意見をいただくことが非常に重要になると思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 このため、今回は東部海域の大阪府、兵庫県、香川県、3府県の方に来ていただきました。水産資源や水産業と水環境等を巡る課題、それから、栄養塩類等と水産資源の関係に係る調査・研究の状況等についてご説明をいただきたいと思います。

 各説明者の方々には、それぞれ10分と大変時間が短くて恐縮でございますが、ご協力をお願いいたします。

 また、質疑応答につきましては、3府県ご説明いただいた後にまとめて時間をとりたいと思いますので、ご協力をお願いいたします。

 それでは、早速、大阪府環境農林水産部環境管理室環境保全課長の堀川様からご説明をお願いいたします。

○堀川課長 大阪府の環境管理室環境保全課の堀川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、資料3-1によりまして、大阪湾の、主に大阪府側の水質の状況や、私ども府立の研究所におけます研究の一例についてご紹介させていただきます。

 ページ数は、2アップでコピーしていただいておりますので、真ん中の下辺りに、小さくて申し訳ないのですがページ数を打っております。このページ数でご紹介させていただきます。

 それでは2ページでございます。まず、左側が大阪湾の海底地形の概略でございます。湾の中央部のおよそ水深20mの水深線を境に、東と西で様相が異なっておりますが、湾の約半分を占めます水深20m以下の湾奥東部の大阪府側では海底勾配は小さく、平坦な地形となっております。右の図は、大阪湾の護岸の状況ですが、古くから護岸の埋め立てが進んでおりまして、現在、その多くは港湾施設や工業用地として利用されておりまして、護岸のほとんどが直立護岸になっております。大阪府域の自然海岸は、府域の海岸に占める全体の割合の1%にも満たない状況でございまして、和歌山県との県境に位置する岬町に約1.9km残されているのみでございます。全体に自然の浄化の機能が低く、また、海とのふれあいの場が少ないという状況でございます。

 おめくりいただきまして3ページでございます。ここから水質の状況についてご紹介させていただきます。まずCODでございます。環境基準のAからCの類型ごとに測定値を平均した経年の推移をお示しさせていただいております。C類型が最も陸地側ということです。いずれの類型におきましても、CODは近年は緩やかな減少、または横ばいの傾向で推移してございます。

 続きまして4ページ、窒素・りんでございます。同じように環境基準の類型で、Ⅱ類型になります湾口部と、Ⅳ類型になります湾奥部の平均値の経年推移をお示ししております。平成22年度以降、窒素・りんとも、湾奥、湾口ともに環境基準は達成しております。沖側の湾口部では、窒素は1970年代以降、ほぼ0.1mg/L以下で、りんは、1980年代以降、0.015mg/L以下と、近年に限らず、長期にわたり低い状況が継続しております。

 続きまして5ページでございます。これは、同じように底層DOの、これは年度の最小値の推移を経年で示したものでございます。長期的には、湾奥部、湾口部いずれも底層DOは上昇傾向が見られますけれども、湾奥部のCODで言うところのC類型の海域におきます年度最小値は、基準値の一番緩いといいますか、小さい数字であります2mg/Lも下回っている状況が見られておるということでございます。

 続きまして6ページでございます。これは、大阪湾の水質の環境基準点のデータに加えまして、沿岸の自治体が実施、独自に実施しております常時監視のデータも含めまして、平成24年から26年の3カ年のデータから作成したコンター図でございます。左上のCODにつきましては、全体に緩やかな勾配で、大体2から5mg/Lの間で分布しておりますが、全窒素、全りんにつきましてはCODと状況が少し異なりまして、湾奥部、淀川の河口辺りですけれども、湾の北東部、大阪側の沿岸で勾配がきつくなっておりまして、急激に濃度が高くなっておるという状況が見られます。こういったところではⅣ類型の基準値も超える濃度の地点もある状況になっております。これは大きな河川からの流入負荷があること、また、沿岸で埋立地が入り組んでいて流れが停滞していることなどから、栄養塩類が高濃度で偏在しやすい状況になっているためと考えております。

 次、7ページでございます。これは、赤潮の発生状況の経年の推移でございます。1970年代ごろは50件を超える年もあるという状況でございましたが、近年は減少してきておりまして、年に十数件程度という状況になっております。この赤潮とは別ですが、近年は、水産部局によりますと、有害プランクトンの大量発生によります貝毒が問題となっておりまして、特に今年の貝毒は例年と比較して発生時期が早く2月から始まっており、また、毒量の最高値も高く、発生期間も長期にわたっておりまして、8月下旬の現在でも続いておる状況ということでございます。

 次、8ページでございます。ここからは、栄養塩と漁獲量の関係につきまして、府の環境農林水産総合研究所での研究の成果の一部をご紹介させていただきます。大阪府の湾の南側の泉州地域などでは水質はきれいになって、栄養塩類が足りないのではないかというお声も伺っており、こういった栄養塩類と漁獲量の関係につきまして、府立の研究所で研究を行っておるということです。左のグラフは、府域からのりんの発生負荷量の推計値の推移でございます。1975年ごろまでは増加の傾向で、それ以降は減少。2005年には、1955年とほぼ同レベルまで減少しております。右のグラフの府域の漁獲量の推移と比べていただきますと、漁獲量は、1970年からになっておりますけれども、グラフにない、1970年以前は増加傾向でございまして、1970年ごろまで概ね増加、その後は減少しております。ということで、経年変化の増減だけで判断はできないかもしれませんけれども、りんの発生負荷量の推計値と漁獲量の増減の推移の傾向は、概ね一致するのではないかという資料でございます。

 続きまして9ページですけれども、これは、一方で大阪湾の主要な底生の漁獲物でありますシャコとかタコとかいったものですね、これの漁獲量と、先ほどのりんの発生負荷量の推計値との関係を図示したものでございます。左側のシタ・カレイ類、シャコというのは底泥の汚濁に比較的強い種でございますが、こちらは、発生負荷量と漁獲量の間に正の関係が見られます。一方、汚濁に比較的弱いと言われていますタコ類につきましては、りんの発生負荷量が増加すると漁獲量は逆に減少するという関係が見られる状況になっております。これは府の研究所の研究者の論文から持ってきたものですが、その論文の中には、仮定としまして、栄養塩類の発生負荷以外の要因が無視できる場合には、このような関係が言えるのではないかということの注釈が加えられていることも申し添えさせていただきます。

 このように、魚種によって適切な栄養塩類濃度が異なることも考えられますことから、また、栄養塩類濃度以外にも、例えば埋立地による沿岸の形態の変化によります浅場の減少といったようなこと、あるいは温暖化の影響なども考えられますことから、ご専門の先生方によります、本日のこのような場のご議論につきまして、府としても注視させていただきたいと思っておるところでございます。

 次、10ページでございますけれども、ここからは、大阪府の「瀬戸内海の環境の保全に関する大阪府計画」についてご紹介させていただきます。一昨年の10月に計画の変更をしておりますが、計画の目標につきましては、沿岸域の環境の保全、再生及び創出、水産資源の持続的な利用の確保などと定めた上に、先ほど来申しておりますように、大阪府では湾奥部、湾央部、湾口部といったような状況、位置によって水質や水生生物の状況が大きく異なることから、それぞれ適した取組を進めるとしております。特に湾奥部につきましては、先ほど申し上げましたように流動性が低く、生物の生息に適した場が少ないことなどから、栄養塩類の過度な偏在の解消、生物が生息しやすい場の創出ということを取り組むべき施策として考えております。

 次のページでございます。そういった計画を少しでも進める第一歩としまして、この湾奥部の課題を解決し、「豊かな大阪湾」の創出の手法を探るために、ここに記載しております大学のご専門の先生方や企業の専門家の皆様にお集まりいただきまして、昨年度、懇話会を設置いたしまして、すぐにできないことがほとんどなんですが、実現可能性に捉われず、環境改善のための方策について自由にご議論いただいたような場を持たせていただきました。

 続きまして次のページでございます。今年度は、それらの昨年度の議論の具体化に向けた第一歩といたしまして、まず、湾奥部の水質の現状の実態把握のため、3種類の栄養塩類の調査を考えております。具体的には、①としておりますが、雨天時に下水道の越流水等による河川への流入負荷があるということで、それのために、雨天時に大阪湾の河口部での水質調査を実施するというものです。②は、入り組んだ埋立地と埋立地の間のような水域で滞留している海域の栄養塩類の状況を調査しようとするもの。③は、堺旧港ということで、非常に閉じて河川の流入も少ない水域におきまして、その流れや水質や底質の状況を調査するというもので、昨年の懇話会でもご協力をいただきました大阪大学や、府立の環境農林水産研究所との連携によりまして、現在、調査の準備を進めているところでございます。

 最後、13ページでございます。まとめでございます。このように、大阪湾では、湾奥部と湾口部、あるいは北部と南部で水質の状況や生物の生息環境が異なっております。湾奥部では、複雑な形状の埋立地の間で栄養塩の高い地点もあり、夏には貧酸素水塊の発生も見られます。特に直立護岸が多く、生物の生息に適した場が少ない状況です。このような状況に対応するためには、いわゆる生物共生型の護岸の導入とか浅場の創出、窪地の埋め戻しなども考えられますけれども、いずれも残念ながらすぐに成果を出せるものではありませんが、さまざまなアプローチをしてまいりたいと考えております。湾口部につきましては、適正な栄養塩類と書いてはございますけれども、なかなか難しいところがあるのですが、本日のようなご専門の先生方によるご議論等を経まして、国のほうから方向が示されればと考えておるところでございます。

 以上でございます。

○岡田委員長 どうもありがとうございまして。

 それでは、続きまして、兵庫県農政環境部環境管理局水大気課長の菅様よりご説明をお願いいたします。

○菅課長 引き続きまして、兵庫県水大気課長の菅から、豊かで美しい瀬戸内海に再生するための兵庫県の取組と題しましてご説明いたします。

 まず、シート番号の1ページをご覧ください。これは兵庫県の瀬戸内海側で発生いたします窒素・リンの発生負荷量の推移を示したグラフでございます。1979年、昭和54年では、窒素が88t/日、リンが11.3t/日から、直近の2014年には窒素が48t/日、リン2.3t/日まで削減が進んだところでございます。これらの1979年の負荷量を100といたしますと、2014年は、窒素が55、リンが20という形になります。この発生負荷量の削減に伴いまして、海域の窒素・リン濃度も低下してきたため、兵庫県の第8次総量削減計画では、2019年度に、窒素を48 t/日から52t/日、リンを2.3t/日から2.8t/日に増加するということを目標に掲げておるところでございます。

 シート番号の2ページをお願いいたします。漁獲量と水質の関係を見るために、漁獲量を第1次生産者である植物プランクトンの量に換算いたしました漁獲消費基礎生産と全窒素濃度の推移をグラフに示したものでございます。漁獲消費基礎生産は、「プランクトン食性魚介類」1t当たり植物プランクトンを100t捕食するとし、また、「魚食性魚類」1t当たり植物プランクトンを1,000t捕食するというように想定いたしまして、対象魚種の漁獲量にこれらの数値を乗じて算出したものでございます。グラフを見ていただくとわかりますように、90年代後半から海域の窒素濃度が下がるとともに、この漁獲消費基礎生産も下がっているという形になってございます。

 シート番号の3ページをご覧ください。これは、兵庫県立農林水産技術総合センター、水産技術センターが兵庫県の代表的な魚種でありますイカナゴにつきまして、栄養塩との関係を研究している成果でございます。また、現在、研究結果のとりまとめ中と聞いておるところでございますが、左のグラフで示しておりますとおり、栄養塩の減少と同調いたしまして、イカナゴの漁獲量も減少しているという関係が見えてきましたので、このたびご紹介させていただきます。イカナゴは、動物プランクトンのカイアシ類、これはエビやカニと同じ甲殻類の仲間というふうに聞いておるのですけれども、このカイアシ類を餌としておりますが、最近は痩せた個体が多くなっているというように聞いておるところでございます。右側の写真は、これはカイアシ類を多く食べたシンコ、イカナゴの稚魚を、釜揚げといいましてお湯でゆでますと、おなかの部分、腹の部分が赤くなったものでございます。しかしながら、近年は下の写真のように腹部が、もう赤くならない、「青筋」と呼ばれているらしいのですが、そういった痩せた個体が多くなっているというように聞いておるところでございます。

 シート番号の4ページをご覧ください。イカナゴはもともと北の魚ということで、水温が高くなります7月ごろになりますと海底の砂の中に潜って活動を停止する、夏に眠る、冬眠ならぬ夏眠ということをするらしいのですけれども、夏眠中には餌を食べないため、夏眠前の肥満度が低いと、夏眠明けに成熟できなくなってしまいます。左のグラフにありますとおり、夏眠前の肥満度は近年になるほど低下しており、また、右のグラフは、餌であるカイアシ類との相関を示しておるところですけれども、カイアシ類の減少と相関していることがグラフ上明らかになっているというところでございます。

 シート番号の5ページには、我々兵庫県のほうで、豊かで美しい瀬戸内海の再生に取り組んできておるところですが、さらなる推進をするために、昨年の8月に兵庫県環境審議会に諮問をしておるところでございます。審議の方向性といたしましては二つございまして、一つは、沿岸域の環境の保全、再生及び創出に向けた県の施策につきましての審議ですが、これは本年3月に沿岸工場等による護岸の改善を促す方策として答申をいただいたところでございます。現在、二つ目の豊かな生態系を維持するために必要な海域の窒素・リン濃度を、県独自で設定するということについてご審議いただいておるところでございます。

 シートの6ページをご覧ください。上の地図に赤い線を入れておるところでございますが、これは民間が所有する護岸ということでございまして、概ね兵庫県下の播磨灘につきましては、護岸のうちの6割が公共、残りの4割を民間事業者が管理しているという状況になってございます。公共の岸壁につきましては傾緩斜護岸などが導入されつつあるところですが、民間事業者の護岸の多くは垂直護岸となっておりますので、浅場の造成などの沿岸海域の改善に取り組んでいただく必要があると考えておるところでございます。しかしながら、民間事業者だけで取り組むにはさまざまな課題がありますものですから、学識経験者や漁業関係者など幅広い関係者のご協力をいただきまして、行政が民間事業者を支援する仕組みづくりが必要との答申を県の審議会からいただいておるところでございます。

 支援内容といたしましては、技術・手続に関するものと、改善効果を把握するためのモニタリングに関するものがあります。本年7月には、民間事業者を対象といたしました勉強会を開催いたしまして、大学の研究者から「大阪湾と播磨灘における藻場生態系の現状と課題」をテーマにご講演いただいたところでございます。現在、秋ごろの会議体の発足に向けまして、関係機関と調整を行っているというところでございます。

 シートの7ページをご覧ください。シートの1ページで説明しましたとおり、窒素・燐の発生負荷量の削減を進めてきた結果、Ⅱ類型の海域の全窒素濃度がⅠ類型の基準値を今現在下回っておるというような状況になってございます。窒素・燐は、植物プランクトンの栄養として海域の生態系の維持に必要な物質でございますので、こういったことを踏まえまして、県の環境審議会で、現在この下限値の設定についてご審議をいただいておるというところでございます。

 シートの8ページをご覧ください。参考までに、播磨灘の透明度と底層DOについて少しご説明させていただきます。これは県の水産技術センターが実施いたしました播磨灘の浅海定線調査の結果でございます。上のグラフは、底層DOが低下いたします7月から9月のDO飽和度をグラフにしたものでございます。左側は沿岸域の結果ですが、1980年以降、大きな変化のないことがわかります。また、右側は沖合15地点の結果でございますが、1989年に上昇したようにも見えるところがございますが、1978年ごろと比べれば大差なく、1989年以降も大きな変化は見られないという状況でございます。下のグラフは透明度のグラフですが、これもほぼ横ばいという状況になっております。なお、淡水流入量が多いと、窒素・燐だけではなくて無機粒子の流入量も多くなり、透明度を下げますので、点線で示したところでございます。このように播磨灘では、窒素・燐の発生負荷量の削減に伴いまして、窒素・燐の濃度が低下してきておるところでございますが、DO、飽和度や透明度の関連性については、少し低いというような結果になっておるところでございます。

 次に、シートの9ページをご覧ください。これも参考でございますが、水質シミュレーションの課題について一言述べさせてもらいます。兵庫県から瀬戸内海に流入する窒素が50t/日というところでございますが、漁獲による窒素回収量を推定いたしますと3t/日と、流入の5%から6%になってございます。漁獲量やその餌となる生物がどれだけDINを排出しているかということを考えますと、流入する窒素の数倍になるのではないかと推定しておるところです。このように、植物プランクトンの一次生産のうち排せつ物の窒素による再生産の比率が大きいものではないかと考えておるところでございます。このような排せつによる窒素循環を考慮したシミュレーションも一部あるようですが、その循環速度を流入負荷によってどう変化させるかが大きなポイントになると思っておるところでございます。現時点では、これらの限界があることを踏まえた上で、水質シミュレーションの結果について考察する必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。

 最後に、シート番号の10ページをご覧ください。兵庫県では、豊かで美しい瀬戸内海の再生のために、生物生息域の保全と水質の保全・管理が車の両輪として、両方ともあわせもって進めないといけないと考えております。引き続き、瀬戸内海の再生に向けて施策展開を図ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、香川県環境森林部環境管理課長、小蓑様からご説明をお願いいたします。

○小蓑課長 香川県環境管理課の小蓑でございます。

 早速、資料をご覧になっていただけたらと思います。香川県における水環境と水産業の課題等ということでございます。

 まず、水質につきまして、香川県では海域を大きく3つに分けて類型指定をして、監視を行っております。図を見ていただきますと、黒い境界線と黒い文字で示しているのが3つの海域でございまして、東から東讃海域、真ん中辺りに備讃瀬戸海域、その西に燧灘東部海域という3つの区分がございます。この水域のCODの環境基準につきましては、一部の港湾内等を除き、A類型に指定されております。全窒素、全燐につきましてはⅡ類型に指定されています。

 2の香川県海域の水質の状況ですが、直近の平成28年度のデータによりますと、A類型に指定されている3つの水域におきまして、CODが環境基準を超過している一方で、T-N、T-Pについてはすべての水域で環境基準に適合しています。

 まずCODですが、2ページのグラフを見ていただきますと、グラフ全体では、概ね右肩上がりの上昇傾向ということでございます。全海域が同じような傾向を示しており、平成10年辺りまでは、どの海域も、赤で示すA類型の環境基準を下回っていましたが、それ以降、どこかの海域では環境基準を超え、直近につきましては、すべての海域で環境基準を超過しているといったような状況です。

 次のグラフは、香川県海域のT-Nにつきましてグラフにしたものです。当初は、Ⅱ類型の環境基準を超えていましたが、近年は横ばい傾向で、すべての海域で基準を下回っているといった状況です。

 次の3ページ目は、香川県海域のT-Pでございます。こちらも、窒素と大体同じような傾向でして、近年におきましては、すべての海域で環境基準を下回っているというような状況です。

 3ページ目の3は、香川県の水産の状況でございます。香川県では、その海面漁業のほかに海面養殖業が盛んで、海面養殖につきましては、ブリ類、あるいはノリ等の生産が主なものでございます。ハマチ養殖の発祥地であります香川県では「ひけた鰤」とか、「なおしまハマチ」、「オリーブハマチ」といった名前をつけ、ブランド化してPRを行っており、重要な特産品となっております。秋から冬にかけては養殖ノリが重要な特産物となっています。

 これまでの対策ですが、COD、窒素・りん含有量につきましては、総量削減計画を定めて削減してまいりました。平成29年6月に策定しました第8次計画では、窒素含有量、りん含有量を第7次計画と同じ値としております。

 次の4ページ目のグラフをご覧いただきますと、左が窒素負荷量、右がりん負荷量でございます。窒素負荷量、りん負荷量とも、過去の平成28年度の実績に比べて31年度目標のほうが高い値となっています。これまで、目標値を下回るような実績が出ていますが、最近の栄養塩類の不足といった話もありますので、目標値につきましては、高いままで置いています。

 少し3ページ目に戻っていただきますと、CODにつきましては、平成26年度の実績が24tということでしたが、31年度目標は23tというように、香川県海域の沖合のCODが上がっているというような実態を鑑みまして、目標値を下げた値に設定しております。

 4ページの5、今後の課題等ということでございます。これまでの工場・事業場に対する規制強化、処理施設の整備等により、陸域から海域への栄養塩の流入が削減されており、香川県海域では、水域の平均で見ると環境基準を若干下回るレベルで推移しています。今後もこれまでの対策を継続したいと思っており、水質の悪化、特にCODの上昇を抑制するというような方向で今のところ進めております。

 それから、香川県の沖合の養殖業の分布等を見ますと、ノリ養殖とか魚の養殖がモザイク状になっております。海域ごとに分かれているということではなく、ここで言う湾とか灘とかといった単位ではございません。もう少し狭い水域で見ていきますと、水産業に必要な栄養塩が過不足なく供給されていない水域も存在するのではないか。具体的には、毎年10件前後の赤潮が発生するということと、ノリの色落ちが発生するといったことで、T-N、T-Pが環境基準に適合しているということと、その海が適切に活用できる水質であることというのが、一致していないのではないかといったような状態となっています。今後におきましても、「赤潮」の発生抑制と「ノリの色落ち」の対策などの栄養塩の低下対策、これを両立させることが課題となっておりますので、両方を注視しながら、施策を進めていきたいと考えております。

 以上でございます。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、今までの3府県からのご説明に対しましてご質問等をお願いいたします。ご自由にお願いします。いかがでしょうか。

○秋山委員 大阪府さんのご発表なのですけれども、確認していただきたいのですが、4ページの湾口部のT-Nが、大阪府さんが測定されたもので、平均値で0.3mg/Lぐらいになっておりますけれども、6ページの下の全窒素の表層のところのコンターを見ていると、0.3 mg/Lが、大阪府さんではなく、兵庫県が測定しているところに来てしまっているので、少しそこは確認していただければと思います。

 以上です。

○堀川課長 このコンター図は、もちろん実則データからつくったものですけれども、それと実測の複数点の平均値の比較で、どのような形になっているのか、今すぐにわかりませんので、また確認します。(確認の結果、全窒素のコンターの値に一部誤りがあり、修正。)

○岡田委員長 これは戻って確認していただければと思います。ありがとうございました。

 はい、どうぞ。

○細川委員 細川です。

 大阪府の資料の13ページが、対策とか改善策とかも視野に入れた議論が行われているというご説明で、非常に意欲的だなと思いました。

 大阪府の資料の9ページでは、りん発生負荷量を横軸にとり、縦軸に漁獲量をとると、まさに栄養塩のレベルと水産のレベルとの対比グラフ、出口と入り口をそのままグラフ化し、さまざまな議論がありそうだというご紹介をいただきました。そのときの留意点として、「他の要因の影響が無視できるのであれば」こうではないかというご説明をいただきました。

 同じように考えますと、13ページの湾奥部の課題というのが大きく二つに分かれていて、栄養塩の話と生息場の話と二つ要因をここで掲げているように見えました。そうすると、二つの要因について、個別に栄養塩が偏在しているから減らそう、生息場が少ないから増やそうという対策の議論をする前に、「栄養塩が高いが生息場がある海域」、「栄養塩が高いが生息場がない海域」など、二つの条件を並べてみて、片方の条件だけでなく、両方の条件がどう組み合わさっているかという、海域ごとの特徴を調べてみることをなさると、海域の特徴に応じた海の中の様子が、より対比的にきめ細かく、把握しやすいのではと思います。そうすると、いきなり出口と入り口をプロットするというグラフ以上の何か深い解析ができる余地があるのではないのかというように思いました。府の懇話会の場ででも、いろいろ議論していただければありがたいと思います。

 以上です。

○堀川課長 ご指摘ありがとうございます。ご指摘のとおり、護岸の形状が、垂直護岸が多いということが栄養塩の偏在につながり、当然ながら生物の生息に適していないということで、両方が絡み合っているということで、今後またご意見を参考にして勉強させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他にございますでしょうか。はい、どうぞ。

○鷲尾委員 香川県さんのご報告で、海域のCODがずっと上がり続けてきているという数字が出ている。他の海域では低下から横ばいということが多く事例であるのですけれども、事例として非常に珍しいケース。発生負荷量のほうはずっと削減を続けられているけれども、海域のCODが増えてきているというのは、これ、どう理解したらいいのかという点を1点お聞きしたいと思います。

○小蓑課長 現段階で、原因が特定できてないというのが実態です。少し西にはなりますが、毎年、愛媛県とも情報交換をしていて、その中で、愛媛県側の燧灘海域でも、同様の傾向が出ており、やはり、年々、CODは高くなっていっているというような状況でございます。一つには、難分解性のCODが増えているのではないかとか、底にたまったりんとか窒素が原因になっているのではないかという話をされる方もいらっしゃいますが、科学的なその根拠というのがまだ見つかっていないという状況でございます。

○鷲尾委員 ただ、数値として見ますと、2mg/Lよりもかなり低い状況だったのが2mg/Lの辺りまでやってきているという、汚濁海域でもずっと下がってきて、やっぱり2mg/L辺りに収束している、瀬戸内海全体が、この2mg/Lの辺りのCOD値に平準化されてきているのではないかという現象として見えるのですけれども、この辺りは、CODというのを基準として見ていく上で一定の議論の必要があることではないかと思いました。

○岡田委員長 ありがとうございます。これは環境省のほうも同様に、これから検討しなければいけないことだと思いますので鷲尾委員ご指摘のように、今後の重要な検討課題とさせていただきます。ありがとうございました。

 では、西嶋委員から。

○西嶋委員 香川県さんのほうで最後に、香川県は3海域にまたがっているのですが、その湾・灘よりも、もっと細かい領域のところで管理をしていかなくてはいけないような話がございました。私も、湾・灘という非常に広い共通の課題であれば、その湾とか灘というところで対策はあると思うのですが、今のノリの色落ちの問題とか、非常に局所的な部分で起こっている問題を、今後どのような形で対応されていくか、もし現時点で何かあればよろしくお願いいたします。

○小蓑課長 現時点では、これといった方策は見つかっていないということでございます。ノリの養殖のように、その場所が大体決まっているものと、魚類は移動しながら養殖されているとお聞きしておりますので、漁業者のほうでも対応していただける部分はあるのかとは思いますが、県の環境部局といたしましては、そういったことだけに頼るのではなく、必要とされる水質を確保していきたいということは考えております。ただ、下水処理場での対応とかを計画的にやろうというところまではいっていないというような状況でございます。

○岡田委員長 よろしいですか。では、中瀬委員、どうぞ。

○中瀬委員 兵庫県の菅さんの報告で護岸の話があったのですが、かつて緩傾斜護岸に大分関わったのですけれども、神戸空港の北向きが結構やったと思います。それから、りんくうタウンと関空で大分やりました。時々テレビのニュースで、すごく海藻が繁茂して、魚が集まるというニュースを見るのですが、そこら辺の具体のデータなどは把握されているのでしょうか。

○堀川課長 関空の部分につきましては、随分前に、関空会社自体が護岸の状況、例えば魚類の量の調査とかも実施した事例はございますけれども、例えば、現在までずっと継続的にやっているということは、私の知る限り、ないのかと思っております。

○菅課長 少しうろ覚えになるのですが、例えば神戸空港や、大阪湾フェニックスとかで、それぞれの海域のモニタリングなどをしておるのですけど、これは我々の次のテーマになると思うのですけれども、そういった護岸を改善した場合に、そのモニタリングの仕方とか評価の仕方というのが、まだ厳密に定まっていないというところが課題と思っておりますので、我々はそこを次のテーマとして、そういった研究を少ししていく必要があるかと考えておるところでございます。

○中瀬委員 わかりました。

○岡田委員長 田中委員、どうぞ。

○田中委員 大阪府さんの最後のほうに言われていた、湾央部分における栄養塩の実態調査、これ、すごくチャレンジで、特に雨天時の問題、これを取り組まれるというのは、かなり大きな進歩かと思うのですが、少し気になったのが、そこの部分の話の中に、確かに合流式の問題はあると思うのですけれども、これを調べられるところの神崎川は、たしか大阪府エリアがほとんどだと思うのですけれども、淀川と大和川は府県をまたがっています。ということは、その栄養塩管理の中で雨天時に増える場合、どこからそういうものが来るのかという視点を、大阪府の中だけではなく、この流域、これは多分大阪府だけではなく、他の府県の協力が要ると思うのですけれども、そことの関係をやはり見ていただきたい。

 その辺は、先ほど、その前の8ページで、りんと漁獲量の推移のデータが出てくるのですけど、その左側のグラフで、りんの発生負荷量の推移を、大阪府内のデータだけで取りまとめたら、こんな形だとなっているのですが、他の部分、先ほどの連携しているところの。しかも、それは都市だけでなくて、農地とかノンポイント全体まで含めて、雨天時については、そういう視点でデータを取ったものの解析なり関係を見ていただけるとありがたいと思います。

○堀川課長 12ページのほうの調査、三つご紹介させていただきましたけれども、今、先生からご示唆をいただいた雨天時の流入負荷の調査につきましては、ご指摘のとおり、非常に大きな話の本当に取りかかりだけを、少し今年度やってみようというところでございます。他の埋立地の間の栄養塩類の調査と少し次元が違うレベルで、まず、ここから始めてみようと思います。今後、今のご指摘も踏まえまして、またいろいろ広げていければと考えております。

○岡田委員長 よろしいですね、はい、ありがとうございます。

 沖委員、どうぞ。

○沖委員 ご説明ありがとうございました。

 私は、兵庫県の方にお話を聞かせていただきたいと思うのですけれども、5ページ目、あるいは7ページですか、「生態系維持水質の保全及び管理」の箇所で、県独自の必要な海域の窒素・リン濃度を設定しておられる、あるいは、窒素の下限値の認定、これを検討しておられる。私は、非常にいい試みではないかと思っております。以前から、必要ではないか思っていたのですが、ただ、生態系を維持するためというこの大きな目標に対して、どの軸を中心に、この濃度の設定をしておられるのか、もしよろしければお教えいただきたいのが1点。

 それから、窒素・リン等々の栄養塩濃度はもちろんですけれども、CODに対して何かお考えがあるのかというところです。

 もう1点ですけれども、4ページですが、私、神戸っ子なものですから、イカナゴがとれないと伺いますと非常に心配です。今日このお話を伺いまして、確かに、食物連鎖に原因があること、それが栄養塩濃度と関係していることはよくわかるのですけれども、もう一つ、海水温の上昇によって、イカナゴの生活観が変わっている、つまり、夏眠に入る時期が変わってきているということ、そういう多層的な要因も多々あると思うのですが、そのようなこともご検討しておられるのか、お教えいただければありがたいと思います。

○菅課長 まず、窒素・リンの下限値というところでご質問いただいておるのですけれども、結論を申しますと、県の審議会のほうで、まさに今、議論をしておるというところでございまして、我々の、諮問した側の思いはあるのですけれども、そこはまだ審議会で議論しておるというところで、今回は発言を控えさせていただきたいというように思っております。

 それと、イカナゴの件ですけれども、これは私も環境部局の人間ですので、あまり、このイカナゴに詳しいわけではないのですが、少し研究者の方にお聞きしたところによると、そういった水温の問題も合わせ技みたいな形で、やはり水温が高くなると、その活性といいますか、人間で言うと、私の理解ではおなかが減るということで、そうすると食べたいけれども餌がないというところで、あわせてやはり影響があるのではないかというように聞いておるところでございます。

○岡田委員長 ありがとうございます。

 よろしいですね、はい、上田委員、どうぞ。

○上田委員 大阪湾の例と、それから兵庫県の例ですけれども、大阪湾の方で言えば8ページです。それから、兵庫県さんで言えば3ページですけど、どちらも漁獲量と栄養塩の関係を見ておられます。どちらも、なぜか、そのりん濃度とか窒素濃度が高いところから出発して、それぞれの濃度が低下するに伴って漁獲量も何か減ってきているというので、強く栄養塩に関係があるのではないかという結論が出そうな感じがするのですけれども、それより以前のりんや窒素が低かったときの漁獲量はどうかという検討は、それは、できないからされないのか、それとも、あえてしてないのか、何かそこら辺の理由を教えていただきたいです。

○堀川課長 まず大阪府のほうからお答えさせていただきます。

 8ページのグラフですが、先ほども少し申し上げたのですが、この調査をやっている、研究をやっております大阪府の環境農林水産総合研究所が報告している文章から、このグラフを取ってきていますので、こういう形になっておりますが、別の資料で、大阪府の漁獲量の1970年度以前のデータもございます。それと比べますと、左側の図のりんは1955年からのグラフになっているのですが、口だけでお示ししていなくて申し訳ないのですが、1970年以前の漁獲量の推移は、やっぱり右肩で上がっていくということで、左側のりんと同じような形になっているというのはあります。それより以前のデータというのは、少し今のところ手元にない状況です。

○菅課長 兵庫県も同じような状況でございまして、水産部局のほうが以前から、そういった形で栄養塩の関係を見てきたのですけれども、環境部局の場合は、それより遅くからデータを取り出しておるというところで、基本、我々の手持ちのデータとの関係もあり、こういうグラフにさせていただいているところでございます。

○岡田委員長 ありがとうございました。はい、どうぞ。

○上田委員 それはよくわかります。私も環境局側なのでそうですけど、やっぱりこの問題を扱うときには、水産のほうのデータとよく照らし合わせて、その栄養塩が原因というふうにある程度納得しようと思ったら、その以前のデータというのが非常に大事になってくると思います。例えば、りんや窒素の濃度が低いときは、そういう時の漁獲量は低かったのかというのがあれば、非常に何か納得できると思うのです。ぜひそういうようにデータを解析していただきたいと思います。

 よろしくお願いします。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 よろしいでしょうか。秋山委員、どうぞ。

○秋山委員 補足ですけれども、大阪府さんのデータを見ていただくとわかるように、瀬戸内海で窒素・りんの発生負荷量が一番多かったのは1970年代前半という文献が多く見られております。それ以前の話ですけれども、実は、窒素・りんの発生負荷の流入形態が大きく違っていまして、瀬戸内海では、1973年3月までは、し尿の海洋投棄を海に行っていたと、要するに濃度の低いところに窒素・りんをいっぱいばらまいていたということをやっていましたので、しかも、それ以前の水質データがあまりないということですので、そういった比較が非常にしづらいということがございます。ですから、漁獲データは確かにあるのですけれども、それと環境とのデータを照らし合わせるときに、今と同じスケールでは、少し評価がしづらいということは指摘させていただきたいと思います。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他によろしいですか。それでは、時間になりましたので、3府県へのヒアリングを終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 それでは、ここで約10分の休憩とさせていただきます。それでは、14時45分から再開したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

休憩 14時37分

再開 14時45分

○岡田委員長 それでは、時間になりましたので、議事を再開させていただきます。

 後半は、瀬戸内海関係漁連・漁協連絡会議、全国海水養魚協会、兵庫県漁連、香川県漁連の関係4団体から、水産資源や水産業と水環境等を巡る課題について、ご説明をいただきたいと思います。引き続き、各団体10分ということで、申し訳ございませんがご協力をお願いいたします。

 最初に、瀬戸内海関係漁連・漁協連絡会議を代表いたしまして、兵庫県漁業協同組合連合会代表理事会長の田沼様から、お願いいたします。

○田沼会長 瀬戸内海関係漁連・漁協連絡会議の幹事をさせていただいております田沼です。本日は発言の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。

 初めに、平成27年10月に、瀬戸内海を豊かな海にしようと瀬戸法を改正され、岡田委員長様を初め委員の皆様、そして環境省の方々から、豊かな海への方向転換をご賛同いただきまして、誠にありがとうございます。私たち漁業者も、瀬戸内海を豊かな海にするために資源管理など日々努力をしております。しかし、豊かな海にするために、私たちの力では及ばないたくさんの問題があります。そして、このたび、瀬戸内海の関係する10府県の漁連、漁協で、豊かな海にするための課題について取りまとめた資料を説明させていただきます。

 この書類は、今年の1月に開催された瀬戸内海再生議員連盟に提出したものです。内容がたくさんありますので、今回は栄養塩に関係する問題に絞って三つの話をしたいと思います。

 一つ目は、資料1ページ目の赤い部分です。皆様に、気にかけていただいております瀬戸法の附則である栄養塩の適正な管理の在り方について、改正から5年を遅れないよう、改めてご対応をお願いしたいと思います。また、先ほど、自治体の方から話がありましたが、栄養塩と水産資源との関係性、重要性について、瀬戸法の法文に盛り込んでいただきますようお願い申し上げます。

 二つ目は、資料5ページの(2)をお願いします。栄養塩は、高過ぎると赤潮プランクトンが大発生しやすくなり、魚類養殖に被害を与えます。しかし、近年、瀬戸内海の中でも栄養塩が低い豊後水道のほうで赤潮被害が大きいという状況で、国を挙げてモニタリング体制の整備と赤潮対策を望みます。一方、栄養塩が低過ぎると、ノリ養殖では色落ち被害が発生します。また、プランクトンがわかなくなって、基礎生産が不足し、漁船漁業では水揚げが減っています。さらに、広島などのカキ養殖では、稚貝の採取に悪影響を与えており、海の生き物を育てる力がなくなっています。そして、近年の貧栄養化で珪藻がわかなくなったせいか、瀬戸内海の東部では貝毒のプランクトンが蔓延しており、大きな漁業被害を与えています。これから豊かな海を目指していく上で、魚類養殖も、藻類養殖も、漁船漁業も、ともによい海であるために、栄養塩が高過ぎても低過ぎてもよくなく、湾・灘ごとの漁業を踏まえて、バランスのよい適正な栄養塩の管理がとても大切と考えております。

 そして、三つ目は、5ページ目の(3)のとおり、瀬戸内海ではたくさんの埋立が進み、生物の棲み処がなくなっていることに加え、埋立により潮通しが悪くなり、陸から流れてくる栄養塩や砂が埋立の岸近くに溜まっていること、栄養塩が沖まで行き渡らず、栄養塩が偏っている状況です。埋立や防波堤は、都市開発や防災の面から必要なものですが、一方で、岸近くに栄養塩が溜まらないように潮通しをよくして、溜まった栄養塩を沖に広げるようなことも必要と考えています。また、埋立周辺の海の栄養塩を削減するため、陸から流れてくる栄養塩を減らせば、沖の貧栄養化はより進み、豊かな海ではなくなるので、注意していただきたいと思います。そのためには、海の岸近くで潮通しをよくするということを考えてもらいたいと思います。

 最後に、瀬戸内海の地域ごと、湾・灘ごとに地形や水質、潮流などの状況が違い、漁業を見ても多様な操業形態があるので、瀬戸内海を豊かな海にするためには一律の考えでは無理があると思います。そのためには、瀬戸法に書かれております湾灘協議会の役割が大切と思います。既に各県に環境審議会があり、環境対策を実施されていますが、今の法律や環境基準の達成から見ると、簡単に栄養塩を増やす議論にはならない状況です。また、栄養塩以外にも、藻場や砂場をつくろうとしても予算などが厳しい状況もあります。このような状況ですので、湾・灘ごとの実情を踏まえて、自治体や関係者、研究者からなる湾灘協議会を立ち上げ、責任を与えて、協議された試験的な対策を超法規的に実施できるようにしていただきたいと思います。

 以上、私からの発言をさせていただきまして、どうもありがとうございます。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続き、全国海水養魚協会の専務理事、中平様からご説明をお願いいたします。

○中平専務理事 本日は発言の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。

 本日の議論は瀬戸内ですけれども、せっかくの機会なので、養殖業について全体的な話を協会のほうからさせていただきます。養殖業界は赤潮を物凄く危惧しております。昨今、瀬戸内海では減ってはきておりますけれども、九州管内では、かなり大きい赤潮被害が出ています。この事を念頭に置きまして、養殖業は、どのような水産業かというところからお話しさせていただきたいと思います。

 まず、1ページの下の段になるのですけれども、魚類養殖業の規模・主要産地を日本地図と円グラフで示しております。一目瞭然ですけれども、養殖業、特に魚類養殖、ブリ、マダイ、クロマグロは西日本で中心に養殖されております。先ほどもお話がありましたけれども、魚類養殖の発祥の地というのは瀬戸内海、香川県引田、安戸池で始まったものでありますけれども、それからだんだん発展いたしまして、今現在、生産金額は2,430億円、水産生産額の約15%を占める割合の業界になっております。そして、28年度の農林水産統計の数字ですけれども、愛媛県で26%、鹿児島県で21%、大分9%、熊本8%、長崎7%、その他、西日本中心の業界であります。

 続きまして、2ページ目の上ですけれども、魚類養殖業の課題といたしまして、やはり先ほどお話ししました赤潮被害、これが大きな課題になっております。赤潮により、どうして魚が死ぬかメカニズムとして、プランクトン自身が有毒物質を保持している。あるいは、プランクトンが枯死するときに有毒物質を放出することによって魚が中毒死する、そういう性質の赤潮と、プランクトンが水中に大量に存在することによって、エラに付着して魚が呼吸困難になる場合。3番目といたしまして、プランクトンが枯死して分解されるときに、大量の酸素を消費することによって魚が酸欠状態で死ぬ。そのような状況で、魚類養殖業者といたしましては一夜にして財産が飛ぶ。その懸念性がある赤潮に対しては物凄く危惧しております。この写真が、3年前の九州での被害の写真になるのですけれども、このように、一夜にして生け簀の中に飼っていた魚が浮いて死んでいる、そういう状況であります。

 下の段になりますけれども、これが実際、瀬戸内海での赤潮の発生件数と漁業被害の推移をグラフにしたものであります。この資料は、瀬戸内海漁業調整事務所からいただいております。一目瞭然ですけれども、赤潮の発生件数は減少してきております。先ほどからお話がありますように、いろいろな規制を行い、富栄養塩が減った結果だと思います。ただ、赤潮の発生件数は減ってきているのですけれども、一回起これば、一夜にして魚を殺すという赤潮の発生の被害件数というのはあまり変化がありません。ただ、これは瀬戸内海全域を見たグラフでありまして、香川県のほうは件数が減ってきています。ただ、豊後水道も瀬戸内海に入っていますので、豊後水道では被害件数が最近は増えてきているという、兆候があります。

 そして、次に4ページ、上の段ですけれども、赤潮の発生機構といたしまして、赤潮プランクトンは多種多様で、水域により赤潮の発生メカニズムは特異的です。これは、先ほどから議論がありますように、浜によって、浦によって、地域によって、出てくる赤潮の種類が違います。一概にどうすればいいのかというのは、メカニズム的にもまだわかってきておりません。赤潮プランクトンは常に水中に存在しており、条件が整えばいつでも増殖します。水温・PH・塩分濃度などの物理的環境が赤潮プランクトンの発生に適した環境になることで増殖する。このことは皆さん、よくご存じのことで、先ほどから議論になっています窒素・リン・有機物など栄養塩類が過剰に供給されることも大きな要因であります。この様な認識のもと、先ほどから議論されていますように、どの辺りがいいのかなと、その辺りは我々のほうでは全然わからないので、専門家の先生方に議論していただきたいと思います。

 それともう一つ、一番大きいのはプランクトンの集積ですが、風や波、潮流によって、ある一定地域に集められたときに、一気に密度が濃くなってきて、その海域の魚が死んでいきます。この現象は養殖現場でもよくあるのですけれども、同じ湾の中でも風向きによって、ある特定の場所の魚だけ死ぬ、だから、均等的に考えるのではなしに、こういう条件になったときには一気に10倍、20倍、100倍の密度になる特性があります。

 それで、我々養殖業界も、この赤潮に対して、どの様な対策を今までとってきたか。これは各生産者、個人個人がとってきた方法でもありますし、また、国の指導のもと、いろいろやってきたこともあります。

 その例を六つぐらいここに並べておりますけれども、まず、一つ目として養殖密度を低減する「薄飼い」という方法です、生け簀内の溶存酸素量が減ったときにでも魚が死滅しないように、ある程度、数を低減して生産を行います。生産コストはかかりますが、生産者は頑張っております。

 また、2番目が一番大きな変化とは思うのですけれども餌です。魚類なので、毎日餌を与えます。生餌の場合、どうしても残餌とか、海底に残る餌、あるいはふんによって富栄養塩が発生するので、そういう部分で生餌を減らして次にモイストペレット、これは生餌に対して魚粉、あるいは小麦粉とか、油粕とか、そういうものをまぜてつくった餌で業界自体変わってきております。現在では、EP飼料を使用することにより必要以上に海域を汚さない給餌技術の導入など、業界としても毎日、切磋琢磨しております。

 また、3番目として、物理的な方法ですけれども、生け簀の形態です。横に写真を載せています。これは耐圧フロートを使った生け簀でありまして、赤潮発生時には15mぐらいの海底まで沈めていけます。この様な生け簀を導入して、赤潮が発生したときには、水面に赤潮が多ければ水中に魚を移動する。また、もう一つの方法として大型化の生け簀、香川県、徳島県が発祥ですけど、大型生け簀で、水深が25m~30m、直径が25mから30mの大きな生け簀を構えまして、魚が自発的に環境のいいところに逃げられるような、養殖方法も導入しております。

 また、4番目といたしまして、環境調査への協力ということで、各県の水産試験場において、現場での水の摂取が一番難しく、毎日現場を見ていないので、生産者みずから現場で、何か兆候があれば水を採取して持っていき、検査をしてもらうなど協力体制もとっております。

 5番目といたしまして、餌止め・生け簀の移動・粘土石灰などの散布です。赤潮が発生した場合に、餌止めを行う。溶存酸素の関係から物凄く重要です。また、生け簀の移動も行います。赤潮は、先ほどお話ししましたように、ある一定場所に集まるような、割と広範囲ではない赤潮の場合には、生け簀の曳航を行い、風上の漁場に移動するとか、そういう対策もやっております。また、粘土石灰などの海上散布も行います。上の段の写真になります。海水と一緒に船でずっと海域に散布するという努力もしております。

 また、6番目として、漁場改善計画の取組です。当協会挙げて、今後、養殖業で生き残るために漁場改善計画への参画など、指導を行っております。

 そして、最後ですけれども、魚類養殖の安定成長化ということで書かせていただいています。赤潮被害を根本的に防止することは、まずなかなか不可能だと思います。そのために赤潮が発生したときに、いかに被害を低減するか。その一つの方法として、環境情報のAI化など、予兆管理システムができればと思っております。あるメーカーさんからもお話しいただいているのですけれども、今の日本のAI技術と映像解析技術で、海の定点にカメラを置いておけば、そこで撮影した赤潮の種類まで特定できる。それをピンポイントにしておけば、ある程度、赤潮が発生したときに、その他の条件を過去のデータと照らし合わせたときに、予測で今後どういうふうに広がっていくとか、あるいは収束するとか、そういうのができるのではないか。

 もう一つ、赤潮プランクトンの発生メカニズムの解明、このことは水産研究所に相談していますが、どの様な条件になったときに、どの様に増えていくか、赤潮が増える一つの要因として、やはり栄養塩は物凄く大きな因子であるとは思いますがメカニズムが解明できれば、被害が軽減出来ると考えております。赤潮は物凄く大きな問題で、死活問題でありますので、先生方に今後議論していただきまして、豊かな海ということで、魚類養殖とノリ養殖の相反するところもありますけれども、同じ海を使っていく中で、どの様にバランスをとっていくかというのは、また先生方に考えていただければと思いまして、養殖業界の現状を少しお話しさせていただきました。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、兵庫県漁業協同組合連合会専務理事、突々様よりご説明をお願いいたします。

○突々専務理事 ありがとうございます。貴重な時間をいただきまして感謝申し上げます。

 先ほど、行政のほうからの発表の中で、漁獲量の古いところのデータと、栄養塩の関係のご質問がありましたけれども、1955年のころは、ちょうど高度経済成長が始まった年でして、漁業のほうもそのころから本当に機械化がされていったというところです。埋立もそのころからスタートし、日本の経済自体が、昭和30年を境にどんどん発展していったところに、漁業のほうも同じく、動力船はありましたけれども、ローラーで上げてくるとか、そういう機械化はそのころから始まっていったということで、1970年の公害の時代をあっという間に15年ほどで迎えてしまったということだったと思います。そういうことで、手でやっていた漁業と、機械化された漁業とをデータ的に比較するのは本当に非常に難しいのではないかということを、すみません、先に申し上げたいと思います。

 それでは、最初の資料を見ていただきたいのですけれども、ノリ養殖とイカナゴ漁から見た漁場環境と課題と書かせていただいていますけれども、これにつきましては、一番は栄養に関係がある、そして、魚としては低位のもの、そういうことで、この2種類を選ばせていただいております。

 2ページのところのグラフですけれども、これは、兵庫県のほうが出したグラフと一緒ですけれども、1999年から2004年のところで窒素の負荷量が大きく下がっている。これは総量規制が始まったところと関係しているということで、一番多い1989年から2014年では半分まで負荷量が減った。その影響を受けてどうなっているかということがDINの溶存態窒素のところで表しておりますけれども、1900年代の5年間では、DINが播磨灘の真ん中ぐらいで大体年平均の表層6μMあったものが、3分の1の2μMぐらいまで年平均としては落ちているという状況にあります。

 その中で、次のページをご覧いただきたいと思います。ノリ養殖がどういうものかというご説明が少し必要かと思いまして、各表を出させていただきました。黄色いところが兵庫県の陸地の部分で、水色に塗っているのがノリ養殖漁場です。淡路島一周を囲むように、それから明石、それと家島諸島、こういうところを中心にノリ養殖の漁場が張られております。ノリ網に何か黒いのがついている、これがノリでして、規模は、1.68メートル幅、20メートルのノリ網を約18万柵から20万柵、兵庫県では張っております。水揚げの金額は1枚当たり10円ほどなので、15億枚から17億枚のノリの生産をしておりまして、昨年では187億円ということで、兵庫県の一次産業の中でもトップクラス、全国のノリ養殖では佐賀に次いで2番目の水揚げ金額です。

 ノリ養殖のほうは、環境に優しい養殖業ということを少し訴えさせていただきたく、そこの左の下に書いておりますけれども、10億枚当たりにどれだけの二酸化炭素を吸い上げて、酸素を出して、窒素・リンを吸収しているかというのを表させていただきました。植物なので、二酸化炭素を吸収し、兵庫県の場合、15億枚のノリをつくったとした場合、6,600tぐらいの二酸化炭素を吸って、窒素にしましたら280tぐらいの窒素をノリ養殖が取り上げているという状況にあります。

 それから、その下のグラフですけれども、九州の有明がノリの産地としては有名ですけれども、瀬戸内海もそれに次いで大きな産地でして、日本のノリ養殖の17%は兵庫県でつくっているという状況です。

 兵庫県のノリの養殖の水揚げの金額と、それから網の張り込み枚数をここにグラフにさせていただきました。色落ちが始まりました1996年ぐらいから頻繁に起こるようになります。震災が1995年でしたので、震災の翌年から、頻繁にノリの色落ちが起こるようになり、2007年には大きな油事故が起こりまして、そのときに張り込み枚数が一気に減少し、生産者が多くやめていったという時代があります。水揚げの金額を見ると、200億円を超えていた時代から、170~180億円で安定的に2000年ぐらいまで続いたのですけれども、ノリの色落ちと、それから需給バランスがあり、つくり過ぎという部分もありまして、値段が安くなったことでノリの生産金額が落ちてきました。その上に、できの悪いものがありまして、色落ちしたノリは安いということで、金額が安定しなくなった2005年ぐらいから、最近の2010年ぐらいまで続いております。その中で生産者がやめていったわけですけれども、日本人は85億枚のノリを食べているのですけれども、そのうちの75億枚程度しか最近できていなくて、需給バランスで、その分、少し単価が上がったことで、もう一度ノリをつくる意欲が湧いてきたということで、ここ二、三年は、ノリのほうは非常に好調な漁業になっております。

 その次のページが、色落ちのノリ等を表しているのですけど、黒いノリは、実際に窒素、リン、カリというアミノ酸になる成分が非常に多く含まれておりまして、甘くておいしいということです。しかしながら、色のないノリは、データを見ましたら、マンガンが非常に多く、これは、もうお茶とかショウガで、非常にこれも大切なミネラルということを言われておりますけれども、そういったものが多いということです。それから、ノリ養殖に必要なのは、DINで見ましたら、色落ちをしない状態の海は3μMの窒素が要ると言われておりまして、安定的に5μMぐらいあれば非常にいい漁場というふうに言われております。その中で、そのグラフですけれども、12月が黒い丸、それから、1月が白い丸、2月が四角、それで3月がバツでグラフに表しているのですけれども、11月から12月に底層の水が鉛直混合で上がってきまして、そして、ノリ養殖が始まると。そのころに、大体10μM以上あると、ノリは非常に好調なスタートを切れるというように考えております。しかしながら、それもノリとしても使っていきますし、鉛直混合が終わったころから、だんだんと消費されるほうが多くなって、3月ぐらいには海藻が生えてこない状態と同じく、ノリもできなくなってくるというのが普通なんですけれども、残念ながら、この1996年から見ていただきたいんですけれども、2月、3月、ひどいときは1月から3μMを下回っているという状況にあります。これはスタートの12月のところが5μMとか、8μMぐらいまでしかない状態でスタートすると、雨がたくさん降れば、それだけ供給が陸からあるわけですけれども、それが十分にないときは、やっぱり落ちるのが激しいです。

 そして、なおかつ次のページを見ていただきたいんですけれども、スケレトネマとか小型の珪藻で覆われている海のときはまだいいんですけれども、窒素をたくさん食べるコシノディスカスとかユーカンピアの大型珪藻が大量発生をするようになっています。これが以前は2月ごろから水温がかなり下がって、ほかのプランクトンが発生しにくい時期に多かったのですけれども、このところは12月とか1月から、このプランクトンが、低い栄養塩になったときに、独占的に、この栄養を食べてしまうという状況が起こっております。そうすると色落ちになる。しかしながら、こういうプランクトンはカキの餌にもなりますので、カキ養殖とかには非常にいいということです。

 それから、次のイカナゴに入る前に、小さい珪藻自体はカイアシ類の餌になりますので、赤腹のイカナゴと言われたカイアシ、動物プランクトンですが、こういったものが多いとイカナゴも豊漁になってくるということです。いずれにしましても、根本的にある程度の濃度の窒素・リンがなければ、ノリだけではなくてカキも、それからイカナゴという低位の魚もとれない状態になりますので、栄養塩濃度のレベルが、かなり以前に戻らないとだめではないかというように漁業者は考えております。

 続きまして、イカナゴのお話をしたいと思います。イカナゴは、兵庫県の場合は2隻の船で一つの網を引いておりまして、それを運ぶ運搬船とで、3隻一組で行っております。特に平成の前、昭和60年ぐらいからイカナゴの釘煮というのがブームになりまして、このイカナゴのシンコは非常に兵庫県にとっては大切な魚です。そして、他の魚にとっても餌になるということで、このイカナゴを追いかけて太平洋のほうからサワラが入ってくる、タイが入ってくるということなので、これはただイカナゴが獲れたらいいということではなくて、イカナゴは他の漁業に対してのエサ生物として物凄く大切だということを漁業者は皆言います。

 そんな中で、次のページですけれども、青い棒グラフが、これが漁獲量です。そして、よく漁業者が減ったから漁獲量が減ったというように言われることがあるので、経営体数も表しました。経営体数は、もう同じく大体250統、船の確認をすると、それの3倍の船が兵庫県の海域でイカナゴやシラスをとっております。1990年ぐらいから2000年ぐらいはまだ順調にいっていたのですけれども、ちょうど震災以降ぐらいから不安定なところが続きまして、漁業者のほうも親の卵の発生指数とか、それから、いつ解禁するか、どれぐらいの大きさになってから解禁するか、昔は25mmぐらいの大きさになったら、もう出漁しようかというところだったんですけれども、今は35mmになることを想定して一斉出漁日を決めております。そういった資源管理が30年前から徹底された漁業種類です。

 そんな中で、次のページをご覧いただきたいと思うのですけれども、イカナゴの生態、生活史ですけれども、イカナゴは、親になると、夏、ゴールデンウィークが明けて大体6月ぐらいになると夏眠、夏眠るという形で、砂の中に潜って夏場をしのぎます。そして、冬の12月ごろになると起き出してきます。水温が下がるころに起き出してきまして、エサを食べて、第1寒波のときに産卵するというように言われておりまして、西風が吹いた、ちょうどクリスマス、12月24日、この辺をめどにイカナゴは産卵します。この産卵したイカナゴがふ化したときに、どれだけのエサがそこの海の中にあるかというのが一番大切というように思っています。12月の下旬に小さい動物プランクトンがいるという状態があってこそ、たくさん卵を産んだ魚が生き残っていく。それから60日間たって、大体30mmから35mmぐらいになったところをシンコ漁という形で漁獲する。昔は、それから養殖用のエサもとっていたのですけれども、このところはエサをとるだけの資源量がないということで、ほぼエサ漁は中止している。それから、フルセ漁、親ですね、親をとる漁業も去年からは中止しております。

 そういう状態の中で、そこに書いております、珪藻がカイアシ類のエサになって、フルセのエサになり、フルセがイカナゴを生み、そしてタイがとっていく。そして、もう一つアサリなども、タコの話が大阪府さんからありましたけれども、栄養塩とタコをいきなり結びつけるのは、やっぱりなかなか難しいのというようには感じますけれども、タコは、やっぱりエビとかカニとか貝、こういう甲殻類のエサを求めていきますので、このアサリがいなくなったというのが一番大きな原因ではないかというように漁業者は感じております。

 いずれにしても、豊かな海にはエサの観点が必要なので、このタイはどこに棲んでいるかということでは、どういう水の環境に棲んでいるかということではなくて、そこにイカナゴがいるか、アサリがいるか、ここには小エビがいるかというようなことが大切というように思います。

 すみません、時間になりましたので、今やっている取組は、下水道の管理運転とかありますけど、最後のページをご覧いただきたいと思います。適正な、豊かな海にするために、漁業者が思うことということで、目指すところは生物の多様性と生産性ということです。その中で、貧栄養でも富栄養でもだめということで、今のⅡ類型以上の海は最低必要というように漁業者は感じております。

 それから、干潟、藻場、砂場があるというところは、そういう海があると少々の栄養が入っても大丈夫ということで、私は、大きな海という言い方をしているのですけれども、許容量の大きな海、今は許容量の小さな海ですけれども、許容量の小さな海でも、適正な栄養塩というのは必要というように考えます。最後に、潮通しのいい海、これは、大阪の湾奥の部分もそうですし、堤防の中は非常に潮だまりがあって回ってこないというようなことを感じております。漁業者は、いずれにしても自分なりのやれることを精いっぱいやっている中で、今の栄養塩の管理というところをよろしくお願いしたいと感じております。

 以上です。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、香川県漁業協同組合連合会代表理事会長の嶋野様よりご説明をお願いいたします。

○嶋野会長 私のほうから、香川県の魚類養殖と水環境等を巡る課題についてということでお話しさせていただきます。

 香川県の海面漁業・養殖業を合わせまして、生産量は、以前の平成2、3年当時は7万t台で推移してきておりますが、増減を繰り返しながら減少傾向にあり、平成28年度は4万3,081tとなっております。また、産出額は平成3年の約402億円をピークに減少傾向にあり、近年では200億円前後で推移しております。平成28年度は218億円となっております。このうち、海面漁業の産出額は85億円、左の図でございますが、海面養殖業の産出額は133億円となっております。海面養殖業が主体の漁業形態であります。この海面養殖業はハマチを主とするブリ類、マダイ、カキ、フグ類、ノリ類、ワカメなど多岐にわたっております。このうち、生産額で一番大きな割合を占めておるのがハマチを主体とするブリ類でございます。

 魚類養殖の歴史でございますが、既にご承知のことと思いますが、海面養殖業は香川県東かがわ市、現在の引田町でございますが、野網和三郎氏が、弱冠20歳で昭和3年に同市の安戸池において、ハマチ養殖を世界で初めて成功させたのが今日の魚類養殖の始まりであります。以降、小割生簀式の養殖が急速に普及したこと、日本経済の高度成長による消費構造が「大衆魚から高級魚へ」と変化したこと、マダイなどの種苗生産技術が開発されたこと等から、急速に魚類養殖業の生産量は拡大いたしました。

 過去の赤潮の被害でございますが、香川県は世界に先駆けて魚類養殖に取り組み、現在まで、その技術を継承してきておりますが、常に順風満帆で進んできたわけではございません。高度成長期には全国的に水質汚濁が進行し、また、有機物負荷の増大等、海洋汚染が問題となっておりました。加えて、養殖業者自身の魚類養殖の多投餌やコスト削減のため密殖により、漁場環境の悪化を招いておりました。香川県においても、同じく漁場環境が悪化していった結果、香川県では、播磨灘で大規模なシャットネラ赤潮の発生と養殖魚の大量斃死が頻発し、養殖業の存続にかかわる大きな問題が発生いたしておりました。ちなみに、昭和47年の兵庫、徳島、香川の赤潮の被害のハマチですが、1,428万尾、当時の金額にして71億円という甚大な被害が起きております。それに端を発しまして、環境改善に向けて、昭和48年に瀬戸内海環境保全臨時特別措置法が制定されまして、瀬戸内海での水質規制が強化されてきております。

 裏面に参りますが、漁業者の取り組みといたしまして、現在、魚類養殖業者は環境改善及び良好な環境維持のため適正養殖可能数量を設定して数量を制限し、養殖密度、小割り生簀の配置にも配慮しております。また、養殖漁場内での水質、底質の改善を図るため、養殖着手前には、必ず海底耕うんを実施し、漁場環境の改善を図っております。その他にも、生餌単独での給餌は原則として行わず、固形配合飼料もしくはモイストペレットの使用に取り組み、飼餌料の種類の制限を行い、漁場に過剰な負荷を与えないように努めております。

 香川県の養殖環境でございますが、香川県の赤潮発生件数は、昭和49年の41件を最高といたしまして、昭和50年代初頭まで30件を超えておりましたが、その後は減少し、近年は10件前後で推移しております。漁業被害は散発的に発生しておりますが、被害金額が1億円を超える赤潮は平成15年以降発生しておりません。しかしながら、今年8月10日ごろに香川県の西部海域でカレニアミキモトイが大量に発生いたしまして、養殖トラフグが1万8,000匹斃死したということがございました。

 全然赤潮がなくなったわけではなく、依然として魚類養殖にとりましては大きな脅威には変わりございません。現在でも毎年のように有害赤潮プランクトンは発生しており、そして、その発生状況に応じて、香川県の魚類養殖関係漁業者等で組織する香川県魚類養殖業赤潮対策本部は、魚類養殖業者に赤潮注意報及び警報を発令し、それを受けた魚類養殖業者は、養殖魚への給餌制限等を実施して被害防止に努めております。

 一方、ハマチ養殖に次ぐ香川県の主たる養殖産物のノリでは、平成14年度以降より、その生産が不安定な状況にございます。不作の主な原因は、先ほど、兵庫の田沼会長さん、また、突々専務さんも言われましたように、海水中の栄養塩低下による色落ちの発生で、特に平成19年度は生産枚数、生産金額ともに最低となっております。近年は3億5,000万枚ほどの生産量で安定しておりますが、引き続き、漁期半ばごろから、栄養塩低下によって色落ち被害が発生しております。

 最後に、目指すべき瀬戸内海の環境でございますが、過度な環境改善は魚類養殖業以外の他の養殖業や漁業に対して、生産力の低下に繋がっていくと思われます。瀬戸内海を「豊かな海」として後世に引き継いでいくためには、より多くの視点から「バランスのとれた栄養塩の海」になるよう、適切に管理していくことが重要であろうかと思います。その結果、我々漁業者も豊かになり、良質でより多くの海産物を、より多くの国民に届けることができるようになると考えております。

 これで香川県漁連の報告は終わらせていただきます。以上です。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、今までの4団体からのご説明に関しまして、ご質問、ご意見等がございましたら伺いたいと思います。よろしくお願いします。

○足利委員 ありがとうございました。兵庫県漁連さんにお伺いしたいんですが、ページ7、最後から3枚目のシートのところで、貧栄養になった今の漁業者の取組みというところに、②番で、堰やダムからの放水のお願いと、それから、⑥番のため池のかいぼりという項目が掲載されているのですけど、これ、具体的に、今実施していらっしゃるか、どんな形でしていらっしゃるかと、あと、それによって、何らかの形で成果が、漁獲が上がっているかとか、また、これからこんな形で調査をされるとかいうのを具体的に教えていただきたい。

○突々専務理事 まず、最初の②の堰やダムからの放水のお願いというのは、1回しまして、2年したのかな、工業用のダムの放水をしたものですから、費用対効果として、そこまでの効果というのは、やっぱりないのではないかということで、効果はあったのですけれども、その2回やったところで中止になりました。

 かいぼりの件ですけれども、かいぼりは、平成20年ぐらいから、漁業者とその農家の取組みとして行われてきまして、淡路のほうからスタートしたのですけれども、評価をされて、明石地区にもそれが今、波及しておりまして、県のほうも、かいぼりをすることによって池の強度をもう一度整備し直し、それと貯水量を上げるということで、災害に非常にいいということで、補助も助成も出ておりまして、これは引き続きずっと積極的に行っています。漁業者が参加していないところでも、かいぼりは行われておりますし、漁業者は数%そこには参加して、一緒にかいぼりをしているという状況です。

 その結果としては、海の近くのかいぼりのときには、私のところにノリ研究所がありますので、そこでデータをとっておりまして、効果は一時的にはあるというようなところです。全体的に、これだけの水で、どうこうであるということではないと思います。

○足利委員 やられる時期というのは、当然、ノリの時期よりは前で、ノリの時期とは違う時期にされたりするのでしょうか。

○田沼会長 お百姓さんのほうと一緒になって、1月の末に、腐葉土ですか、あれをかき出すということで、一日がかりで、小さな池ですけれども、40人か50人ぐらいで一生懸命やっておるのですけれども、いかんせん川までは遠い、海までは遠いというのがありますけど、ずっと計ってみますと、海の岸近くにはあるのですけれども、沖に出ると栄養塩が少ないということもあります。正直なところ、出てないというのもあります。だけど、その水が当たるところは、ノリは黒くなるという現状は確かに見えています。

○足利委員 ありがとうございます。

○岡田委員長 よろしいですか。

 他にございますでしょうか。はい、どうぞ。

○岩崎委員 岩崎と申します。

 兵庫県漁連の方の発表の中に、先ほど聞こうと思っていたことを少し口にされたので、確認方ですけれども、いろいろこれまでの議論を通して総合すると、栄養塩の減少が漁獲量の減少に相関性があるというのは、私もそう思うのですが、その要因として、漁獲高の減少が、いわゆる魚価の低迷による漁業者の廃業、もしくは高齢化によるマンパワーの不足による、つまり漁師さんが減ると、あるいは、その力が十分でないがゆえに、漁獲高も減るのではないかという、その点を検証しておかないと、相関性の正確な議論につながらないと思うので、その辺の補足方、この業態による、確かにイカナゴの漁獲量で言うと経営体数は減ってないので、そういう要因は排除できると思うのです。その辺をもう少し詳しくお話しいただけませんでしょうか。

○突々専務理事 イカナゴのところだけでしましたけれども、もう一つ、小型底びき網という漁具で操業しているところも、こういう同じようなデータを出しているのですけれども、経営体数は半分になっているのですけど、1990年代のところだけ、漁獲量が逆に増えて、それから徐々に減っているという状態がありまして、漁業者の減っているところでの漁獲量の減少だけでは、そのグラフは説明できないという、今日つけてないのですけど、そういうグラフもあります。

 だから、漁業者の感覚は、もう間違いなく漁獲量が減っているというところからスタートしているので、漁獲量と栄養塩のところというところまではわかりませんけれども、低位の魚とか、アサリが減ったこととか、もう今年ですね、1カ月以内のことですけど、夏の海が物凄く透明なのですね。それで、タコを放流するためにつけている船で、底が、5m見えるのです。夏場に。そういう海になってしまっているのが、会長にも、こんなんどうなんですかと言うたら、「これ、春の海やな」と言うのです。春は透明度がよくて、ノリのいかりが見えるような海ですけれども、やっぱり夏になると表層にプランクトンが発生して、やはり緑っぽい海になるのが当たり前だったのですけど、今の海は、夏場は、ちょっと沖へ出ると、もう本当に5m、7mという透明度になってしまっているのは、生き物がいないという感覚を漁業者が持っている。これはもう確かなことで、湾の中も、港の中も底が見えますから。そういう状態です。

○岩崎委員 もう一つ、このイカナゴの漁獲量の分で、これはJFさんの推定等で、2018年度のところは極端に、これは少ないというような捉え方でいいのですかね。

○突々専務理事 これは統計が出てないので、こういう書き方をしていますけど、去年より少しだけ多かったのではないかと、それも少し操業日数が少しだけ多かったものですから、こういう状態で、一日に獲れている量というのは、もう本当に同じぐらいだったかというようには思っております。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他によろしいですかね。はい、どうぞ。

○山田委員 兵庫県の漁業協同組合さんにお伺いしたいのですけれども、最終ページから1ページめくって、貧栄養になった漁業者の取組みというところで、先ほどおっしゃったところで、①番目の下水処理場での栄養塩管理運転のお願いというのがあります。これですけれども、これの効果の状態だとか、あるいは、下水処理場水を流したことによって、明らかに赤潮が出たのかどうか、そこら辺のところを教えてください。

○突々専務理事 これにつきましては、前回、水産庁さんからの報告もあったと思うのですけれども、栄養塩自体が流れているところは、間違いなくノリの色落ちというところは止まります。その水が流れている場所です。そういうことですけど、全体の海に広がるかといったらそうではないので、今の下水処理場の栄養塩管理運転というのは、夏場に下げて、冬場を上げて、平均したら下水道法の基準の中を守っていこうという考え方であります。

 まだ実施されていないのですけども、兵庫県の播磨灘流総計画が変更になっておりまして、もうすぐ実施される。今、国交省のほうに行っているようですけれども、そこからおりてきた段階で実行される流総計画の中の目的に、「豊かな海」というのが初めて入ってきました。それは物すごくありがたいなと思っているのですけれども、その中の、下水道から出る窒素の放流濃度は約1.5倍の数値まで上げるという計画になっておりまして、大きく期待をしているところですけど、今までテスト的にやっている中では、幾らか上げているのですけど、まだ本当は下水道法の中でいくと、もっと上げられるのに少し上がっている程度というところで、具体的な効果を期待するまでの濃度の部分ではなかったというように思います。今後はもう少し期待できるところまで実行されるのではないと考えています。

○山田委員 ありがとうございます。

 そうしますと、濃度的な面と、あと放流季節、赤潮のことを心配して、寒冷な季節に放流されるということになると思うのですけれども、夏場もそういうふうに透明になっているのだったら、試しに、これは少し危ないですか。夏場にも少し。

○突々専務理事 漁船、漁業のほうからいくと、夏場も上げて海に貯金してほしいという気持ちはあります。実際、夏場の表層の今のDINの濃度というのは、プランクトンに使われているので、非常に低い状態です。実際に赤潮が起こるのは、私は赤潮の原因まではわかりませんけど、状況からいくと、大雨が降って、川からの今の海の濃度の10倍ぐらいの栄養がたくさん流れてきて、お天道さんが照ったら赤潮が発生するという梅雨明けのときに、海はそういう状態になるというのは、漁業者は皆さん知っているので、どういう海にしたらいいかというところは、私がこうあるべきだということは非常に言いにくいですけど、プランクトンが要るということは間違いないので、そういう状態のときに必要な栄養が最低ある海というのは、目指すべきところとは思います。

○山田委員 ありがとうございます。

それで、栄養塩がある程度上がって、これは香川県漁連さんの2ページ目のほうですけれど、赤潮発生による漁業被害がだんだん落ちているという現状、それを一緒に考え合わせてみますと、夏場の例えば、今、おっしゃった大雨が降って、河川からどっと栄養塩が入ってきて、そして塩分が下がる。その後、日照が続くとか、そういうようなところを、気象なんかをにらみ合わせて、ぜひ、国土交通省さんと連携されて、気象をにらみながら、夏場の栄養塩放流についても試みられてはいかがかと思いました。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他に。

○鷲尾委員 今の補足になりますけれども、下水処理場の栄養塩管理運転というのは、兵庫県の明石市ではもう20年来やっておりまして、やはり、直近の漁場、ノリ漁場については効果がある。しかし、非常に流動性の高い漁場ですので、すぐに拡散してしまうので、広い範囲での効果というのは期待できません。

 下水処理場をこう管理運転したらいいとは言いましても、その放流先が停滞水域であれば、やはり、それは問題になってくると思います。ですから、湾奥部のようなところでは従来どおり、きっちり浄化を進める必要があろうと思いますが、今、兵庫県漁連さんの発表事例にありますように、明石海峡から加古川、そういう播磨灘の沿岸のように潮通しのいいところでは、特にノリ養殖で放流した栄養分が回収できるという、そういう季節に限れば、非常に効果が考えられるのではないかと思いますので、流総計画で、そういうレベルを上げられるということになると、もう1段高いレベルでの追跡調査ができるのではないかと期待しております。

 それと、こういった貧栄養化というような環境激変に対する緩和策として、今、水質管理の話が出ておりますけれども、漁業者のほうは、そういう環境が変わったことに対して、緩和策じゃなくて適応策をさまざまに練っております。先ほど、魚類養殖のほうでも密度を下げて病気になりにくいような管理をしたり、あるいは、餌の管理をしたりということの持続的養殖生産確保法というのがありますので、自分たちで責任をとりながらやっております。

 また、ノリ養殖のほうでも、従来の栄養の多いときに多収性の品種を使っていたのですけれども、低い栄養環境でもじっくりと育つような品種を選ぶことによって、漁獲の減少というのを緩和する、適合させていく、そういう対策をとって何とか生きながらえているところですので、それをうまくバランスをとって、こういう新しい試みが進められることを願っております。

 以上、補足でした。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他に。

○突々専務理事 今、鷲尾委員から、この辺の表現は非常に難しいと、僕は思っています。魚類養殖も平成になってから、いろんな技術の進歩と、赤潮は瀬戸内海で100件ぐらいをずっとキープしている中で、ある程度、被害を抑え、でも、ずっと被害はあるんだという報告ですけども、漁船漁業のほうは、一番よかったというか、どういう時代に戻してほしいかというと、やっぱり1990年じゃなくて2000年前後、この辺のところが、兵庫県の水揚げが一番多かったのも、実は震災の年でして、その前後という、2000年のころの栄養だけを見てみましたら、今の大方倍近いところの栄養があった。だから適正な栄養と言いながら、窒素が倍あったときにも、実は赤潮が100件まで落ちている中で、いろんな漁業があったということ。10%上げてほしいとか、20%上げてほしいとかというレベルではなくて、もう少し大幅な栄養塩のアップをテストしない限り、今の海は戻ってこないというように漁業者は考えております。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他によろしいですか。

○白山委員 私は瀬戸内海の漁連の方のお示しになっている「瀬戸内海を豊かな海とするための要望」の参考資料の、この文書がすばらしい内容だと思うのです。赤枠で、もちろん漁連の方の文書ですから、赤潮がなくて、漁獲量の高い海をお望みだというのは、よくわかりますけれども、でも、(1)では、例えば、藻場、干潟の再生とか、本当に豊かな生態系としての瀬戸内海の海を元にという、あるべき姿にすべきだということをいの一番にお書きになっていらっしゃって、この視点を、漁業を豊かに行うための最も根本的な視点として、栄養塩が多い少ないというだけではなく、こういうところをしっかりと議論すべきではないかということを一つ思いました。

 一方、養殖漁業の、中平様のご発言の中で、魚類養殖の安定成長化の最後のスライドですけれども、センサー等からの各種情報の入手とか、いろいろとお書きになっているのですが、私、これもコメントになって大変申し訳ないのですが、海洋の生態系というのは、年の平均値で議論をするのはナンセンスで、連続的な変化の中で、どうものを考えるかというのが非常に重要な視点で、そういう意味から言うと、月に1回、水試の船が行って、水をとってきて、それがその一月の代表値として使われて、しかも、それの年平均値で基準値を下回ったとか、下回らないとかという議論はそろそろやめて、例えば、先ほどの大阪府のご説明では、1年の最小のDOの値というのを評価としてお使いになっていましたけれども、もう一夜にして大きな被害が起きるわけですから、連続的なデータと連続的なモニタリングという、そういう視点をしっかり持って、今後の豊かな海をつくるために、周りのステークホルダーはどういうことをやればいいかというのは考える必要があるのではないかとい思います。

 漁業者の方々の視点は、そういうしっかりした視点をお持ちで、いろいろきちっとしたデータに基づいたご意見をいただいておりまして、委員会としては、じっくりと議論をして、いいご提案を差し上げられればいいなと思いました。

 以上です。

○岡田委員長 ありがとうございました。

今、逆に先生からおまとめいただいたので、他にご質問等ございますか。よろしいですか。

(なし)

○岡田委員長 それでは、ちょうど時間になりましたので、4団体へのヒアリングを終了させていただきます。

 どうも本日はありがとうございました。

 それでは、次の議題でございます。栄養塩類と水産資源の関係に係る検討についてということになっています。

 水産研究・教育機構、瀬戸内海区水産研究所の阿保様より資料5-1になります、栄養塩等と水産資源の関係に係る調査・研究状況についてといたしまして、栄養塩類等と水産資源の関係についての調査・研究において、着目すべき点、それから、瀬戸内海区水産研究所を中心にいたしまして、本年度実施されている調査・研究の概要についてご説明をいただきます。よろしくお願いいたします。

○阿保グループ長 瀬戸内水研の阿保と申します。本日は小委員会にお招きいただきまして、ありがとうございます。

 今、ご紹介いただきましたように、私のほうからは、今年度から我々水産研究・教育機構が中心となって取り組んでいる水産庁事業の内容について紹介しながら、議題にある水産資源と栄養塩の関係を調査する上で、どういった視点に着目しながら、我々が進めているかというような点についてご紹介させていただけたらと思います。

 まず、資料の下のほうの1ページ、瀬戸内海の漁業生産量の推移ですけども、これはもう皆さんご存じのように、瀬戸内海の漁獲量というのは1980年代をピークに近年低迷しているということでございます。

 次の1枚めくって2ページですけども、この海の漁業生産に影響を及ぼす要因としてはさまざまなものがありまして、ここにありますように、例えば、地球規模の気候変動、それから生息場所の減少・消失、海洋汚染・水質の悪化、餌生物の減少・変化、それから漁獲圧の増加など、さまざまな要因があるわけです。

 瀬戸内海においては、高度経済成長期の富栄養化によって水質の悪化、赤潮の発生などが漁業生産に悪影響を及ぼしていたわけですけども、その後、一連の環境施策によって非常に水質が改善されましたが、その一方で、近年は貧栄養化が問題となって、餌生物の減少や変化が漁業生産に影響しているのではないかという懸念が生じているところであります。

 その下の3ページですけれども、これは海洋の生態系ピラミッドですけども、海洋の生態系においては、捕食ですとか、漁獲圧によって全体の生物量を調節しているような場合と、逆に、餌のほうが上位の生物を調節する場合があるのですけども、瀬戸内海においては、近年、貧栄養化が問題となっているということで、ボトムアップ効果という、餌が上位生物を調節するというような状況にあるのではないかと考えているところです。

 右側のエネルギーフローを見ますと、ノリに関しては栄養塩を直接利用するわけですけども、そのほかの多くの水産生物というのは、間にさまざまな餌生物を介しております。したがって栄養塩とこれら水産資源との関係を解明するためには、当然、餌生物と栄養塩の関係、餌生物と水産生物との関係を把握していく必要があるということであります。

 次、4ページですけども、最初に、栄養塩を直接利用するノリについてですけども、これは左側が窒素発生負荷量と海域の栄養塩濃度ですけども、ご存じのように、総量規制によりまして、発生負荷が1990年後半から下がるのに対応して、海域の栄養塩濃度が下がっています。一方、ノリの生産量につきましては、養殖技術の発展によって1980年代まで、ずっと生産量が伸びた後、横ばいで推移していたのですけども、栄養塩濃度の低下にリンクするように、栄養塩不足によるノリ色落ちが発生しまして、生産が低迷している状態が続いたということでありまして、海域の栄養塩を直接利用するノリについては、栄養塩の影響が明らかであろうと考えているところです。

 その下の5ページですけども、一方、ノリ以外の生産生物については、漁獲量の推移というのもさまざまであります。左の図を見ましても、全体として、近年低迷している傾向の種類が多いですけども、その変動というのは、かなりさまざまな状態であります。

 右側のエネルギーフローを見ましても、多くの水産生物というのは、栄養塩を直接利用するのではなく、例えば、底生藻類、ベントス、それから植物プランクトン、動物プランクトンですとか、さまざまな餌生物が栄養塩と水産生物の間にありまして、栄養塩と水産資源との関係というのは、種によってさまざまであるということですので、この関係解明には、餌生物と水産生物資源の解明は欠かせない。しかも、餌生物については、海域によっても異なりますので、それぞれきめ細かに解析していく必要があるだろうと考えているところであります。

 6ページを見ていただきまして、これは昨年4月に水産庁さんが策定された水産基本計画ですけども、この中でもこういった状況の中、栄養塩と漁場生産力との関係は科学的に調査が必要だということで、漁場の生産力、特に二枚貝・小型魚類・ノリ等を回復していくことについて必要な調査を推進するということを掲げておられます。

 この方針に沿って、平成30年度からは漁場改善推進事業の中で、栄養塩の水産資源に及ぼす影響の調査というのを開始されております。

この事業については、我々水産研究・教育機構が代表機関として受託して、研究を実施しているところであります。

この事業は、かなり広範囲の水産資源に及ぼす栄養塩の影響を調査するということで、その研究対象はかなり広くなっておりまして、底生性の微細藻類、二枚貝生産、藻場生産、ノリ・珪藻類、それから小型浮魚の餌環境、生産量という形で幅広く事業を実施しているところです。

 本日はこの内容について紹介しながら、それぞれの課題で、どういった視点で着目しているかということをご紹介させていただければと考えております。

 では、課題ごとに内容等を紹介させていただきたいと思います。

 次めくっていただきまして、8ページですけども、まず、1つ目の課題、栄養塩が底生性の微細藻類に及ぼす影響解明ということについてご説明させていただきますけども、底生性の微細藻類というのは、潮間帯・潮下帯、干潟や浅海域における一次生産者として知られておりまして、近年、二枚貝の餌生物としては、植物プランクトンに加えて底生の微細藻類も重要であることが指摘されてきております。例えば、潮間帯における底生微細藻類の生物量というのは微細藻類全体の8割に相当しますし、潮下帯における底生微細藻類の生物量というのは植物プランクトンに匹敵するということで、二枚貝等の浅海域の生物にとって非常に重要な餌生物であろうということであります。

 しかしながら、その下を見ていただきますと、底生性の微細藻類については、出現種や現存量に関する基礎的な情報すら不足しているというのが現状でして、ましてや栄養塩等の環境変化に対する応答については明らかになっていないという状況です。

 そういうことで、この課題の中では非常に情報の不足している微細藻類について現状把握、それから、餌としての重要性の解明、それから栄養塩が微細藻類の動態に及ぼす影響を解明するための調査というのを本事業により開始しているところであります。

 続きまして、めくっていただきまして、10ページ、2つ目の課題ですけれども、これは栄養塩が二枚貝生産に及ぼす影響解明という部分です。

 栄養塩と二枚貝生産に関するこれまでの研究の中では、浜口の研究事例が重要なものとなっております。浜口の研究では、瀬戸内海の中で最大のアサリ・ハマグリ漁場であった周防灘で解析を行った結果、その生産量の減少というのが水温上昇と栄養塩濃度の低下であるということが明らかにされております。

 左下の図を見ますと、これは中津干潟を含む周防灘海域のアサリ漁獲量と冬季水温、それから、夏の栄養塩濃度、DIN濃度との関係を示しておりますけども、まず、冬季水温が上がると、漁獲量が下がる点につきましては、恐らくナルトビエイですとか、食害生物が間接的に影響をしていると考えております。

 また、その他にも右側の表に示すように、仮説検証型のパス解析をさらに細かい海域に対して行っておりまして、例えば、周防灘のA海域におきましては餌欠乏が減少の要因であると。一方、B海域においては、餌欠乏ではなく乱獲が減少要因というような結果になっております。また、海洋環境変動につきましては、水温、塩分、DO、窒素濃度が要因として挙げられております。この中で塩分につきましては、このマイナスというのは、塩分が上がると漁獲量が下がるということですけども、塩分が上がるということは、栄養塩を豊富に含んだ河川水の流入が少ないということに対応しますので、これもやはり栄養塩に関連したファクターであるということになります。

 ということで、細かく見ていくと、海域によって要因というのは異なるのですけども、周防灘に関しては、水温など他の要因もあるのですけども、餌欠乏や栄養塩濃度といった、いわゆる貧栄養化に関する要因が資源量減少の要因の1つであるという結果になっております。

 本事業の中では、周防灘の解析については、その後の最新のデータを追加して続けるとともに、周防灘以外の瀬戸内海の海域においても、同様の調査・分析をする予定としておるところであります。

 次に、その下の11ページですけども、これは二枚貝の餌に関する研究ですけども、二枚貝についてはかなり小型の植物プランクトンが餌として重要なことが知られております。

 左の図は、広島湾におけるサイズ別の植物プランクトンの現存量を示しているのですけども、この結果というのが最近のマガキの採苗不良というのが餌不足であるということを示している図になります。マガキの採苗というのは夏場7月、8月に実施するのですけども、マガキの幼生というのは、かなり小さな植物プランクトンを餌として利用します。見てみますと、1994年というのは採苗不良が起こった年ですけども、1994年の7月、8月には小型のピコプランクトンの部分が非常に少ないということで、餌不足であった可能性が示唆されます。近年、広島湾では非常に採苗が不安定で、採苗不良の年がたびたび発生するのですけども、この採苗不良については、こういった幼生の餌不足が原因である可能性が指摘されているところであります。

 瀬戸内海では、貧栄養化によって大型の植物プランクトンが優先する傾向にあるのですけども、瀬戸内海の中では比較的栄養塩の豊富な広島湾においても、こういった貧栄養化による幼生の餌不足というのが採苗不良を招いている可能性が指摘されております。

 また、右は小型の植物プランクトンが餌として重要ということで、小型のプランクトンに対して次世代シーケンサーを用いたような新しい技術の研究も進めているということでございます。

 次、12ページ、3つ目、栄養塩が藻場生産に及ぼす影響解明の課題ですけども、藻場生態系というのは、大型藻類ですとか、葉上の微細藻類が一次生産者で、その上の葉上の小型の甲殻類とかの飼料生物が二次生産者、藻場についているような魚がより高次な生産者として生態系を構成しているのですけれども、それぞれについて栄養塩が現存量や生産量に及ぼす影響を既存知見のレビューとか、新たな調査・実験によって解明していこうという課題です。

 13ページにその例を示しておりますけども、大型藻類の栄養状態を評価しようということで、ここでは一年生のアカモクを栄養塩濃度の違う水槽内で培養しまして、その藻体内の窒素含量と成長量を調べました。

 左側のグラフを見ますと、窒素含量が1.5%で成長が飽和するということで、この1.5%を下回っていると、海藻が栄養不足状態であるということが示唆されます。

 その右側が実際に周防大島の天然アカモクの藻体内窒素含量を調べたものですが、9月の初期成長期と、それから、3月、4月、5月の成熟期には、1.5%を下回っておって、栄養塩が不足している状態にあることが示唆されました。

 14ページを見てもらいますと、藻場の一次生産に貧栄養化が影響している可能性が示されたわけですけれども、さらに高次の生物生産へ影響を見るために、現在、ヨコエビですとか、餌料生物の飼育技術を確立しまして、こういった栄養不足の海藻を食べた場合の高次の生産への影響についても実験を進めているところであります。

 少し時間がないので、その下が、珪藻類に及ぼす影響解明ということですけども、ノリですとか、色落ち原因ケイ藻については既に研究が多いということで、ここでは、それ以外の基礎生産を支える珪藻類について休眠期細胞の分布調査を行って、現状把握と過去との比較を行うこととしています。

 また、外海起源の窒素・リンの推定とその長期変動についても解析を進めておりまして、近年の瀬戸内海では、特に東部海域において、窒素の減少が陸起源の減少が主要因で、外海起源の経年変化による影響は少ないという結果が出ております。

 最後の課題、栄養塩が小型浮魚生産量に及ぼす影響解明ですけども、ここでは栄養塩と餌料環境の関係および餌料環境と小型浮魚の生産量の因果関係の評価を行っているのですけども、我々としては、燧灘のカタクチイワシ、特に稚魚であるシラス漁獲の関係について研究を進めることとしています。

 燧灘のカタクチイワシに関しては、これまで比較的研究データがそろっておりまして、貧栄養化による餌不足と漁獲量低迷との関係が見えてきている研究対象であります。また、燧灘のカタクチイワシというのは、内海系群がほとんどでありまして、外海からの影響が少ないということで、瀬戸内海の貧栄養化を解析する上でふさわしい対象ということで考えております。

 具体的な内容は17ページですけども、餌料環境につきましては、カタクチの餌生物であるメソ動物プランクトン、カイアシ類とかが入りますけども、それらのデータというのが少ないということもありますので、新たに採集、それから、種レベルの分析を行うということと過去のデータとの比較も行って、現状把握するということです。

 また、小型浮魚の燧灘のカタクチイワシの胃内容物調査も同時に行いまして、餌料環境を見ていくということと、数値生態系モデルを用いて栄養塩から動物プランクトンの動態への変動の様子を解析するというような部分もチャレンジすることとしております。

 次、18ページは、最後、浮魚生産量と栄養塩との因果関係の評価ですけども、ここでは燧灘を中心にさまざまな現場データをとりまして、低次生産環境のモニタリングを行うとともに、餌料環境を介した加入量と低次生産環境のシナリオ解析ということで、栄養塩と漁業生産との因果関係の評価を行っていくこととしております。

 ということで、最後に背景と内容等をまとめておりますけども、今後の課題としましては、先ほども申し上げたように、栄養塩と水産資源は多くの場合、直接つながりませんので、その間にある餌生物が重要ということで、今後もデータ蓄積が重要であろうと考えているということと、餌生物と水産資源の関係というのは、種によってさまざまですので、いろんな種について関係を解明するために、より詳細な検討を今後も続けていく必要があると考えております。

 これまでの研究の結果、幾つかの種について、幾つかの場所においては、かなり栄養塩と水産資源、生産との関係性というのが見えてきましたので、瀬戸内海において栄養塩不足というのが、餌不足を介して水産資源の低迷に影響しているということが示唆されているところであります。

 以上で終わらせていただきます。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続き、環境省から資料5-2、栄養塩類と水産資源の関係に係る検討方針についてご説明をお願いいたします。

○坂口室長補佐 総合的な今年度の検討に向けての栄養塩類と水産資源の関係の分析評価の進め方について説明します。昨年度は、魚種ごと及び府県ごとに漁獲量の長期的な推移を整理し、また、魚種ごとの漁獲量の変動要因について論文等の既往の知見の整理を行いました。

 その中で、今後の検討方針としては、昨年度整理したこれまでの知見も参考にしつつ、生物の生息場、基礎生産や餌資源の関係、生活史等の生態的特性、湾・灘ごとの海域特性に着目して、考察を進めるという大きな方針を示させていただいてございます。

 本年度は、これについて湾・灘ごとに漁獲量の推移と水質等の水環境の変化傾向の整理を行うとともに、下記の1と2の観点に着目して、分析・評価を進めていきたいと考えてございます。

 1つ目ですが、特定種の生態的特性を踏まえた栄養塩類との関係に係る分析等ということで、栄養段階が低いなど栄養塩類との関係を確認する上で、適当と考えられる種に着目していく。卵から仔魚期や成魚期、産卵期などの生活史が、概ね瀬戸内海内の特定の湾や灘や場所で完結するなど、瀬戸内海の場の水環境の変化と生物側の変化を比較する上で、適当と考えられる種やデータに着目していくというような形で詳細の分析を進めていきたいということで考えてございます。

 例えば、成長段階に応じて生息場や餌資源が変化することから、特に生物の成長等にとって餌資源が重要となる時期や場所といったところについて、この時期や場所の栄養塩類、餌資源、水産資源の状況等を比較していきたいと考えてございます。

 あわせて先ほど阿保先生からもございましたが、水産資源の変化に影響を及ぼすと考えられる環境項目及び餌の競合等についても各種の生態的特性を踏まえて確認をしていきたいと考えてございます。

 ②ですけれども、低次生産の変動に係る分析等として、栄養塩類から魚類に至るプロセスは、栄養塩類、植物プランクトン、動物プランクトン、プランクトン食性魚類、魚食性魚類という流れになってございますので、瀬戸内海の一次生産及び二次生産の状況についてもあわせてデータを整理し把握していきたいと考えてございます。

 このため、ある程度広い広範囲かつ長期間にわたりプランクトンデータがとられている海域を対象として、植物・動物プランクトンの長期的な変動状況について確認を進めていきたいと考えてございます。

 説明は以上になります。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの阿保先生、それから環境省からのご説明に関してご意見、ご質問等がございましたら、承りたいと思います。

○柳委員 坂口さんの②ですけど、さっきの阿保さんにも共通するのだけど、考えられているのは、生食食物連鎖だけですよね、これ。植物プランクトンから動物プランクトンにいく、プランクトンの食物ピラミッド。実際には腐食食物連鎖がありますよね。デトリタスを始点とする、さっきの二枚貝も一部そうですけど。そのパスというのは多分、前、香川の山本さんがやられたエコパス計算だと、瀬戸内海東部では生食食物連鎖と同じぐらいなのですね、太さ。それから微生物ループ。パスそのものは、生食食物連鎖だけだと、やっぱり魚の生産に対してどう効くかというのは、はっきりさせなくてはいけない。

 言いたいのは、生食食物連鎖の中にもマイクロビアルが入っていますから、植物プランクトンから動物プランクトンに行くルートに、バクテリアはどうするのとなるでしょう。それがどのぐらい占めるかという話もやらないと、栄養塩が実際どれまで上に行くかという話。

 もっと重要なのは、今言った生食食物連鎖だけではなしに、腐食食物連鎖もやっておかないと、栄養塩が魚のどこに行くかというのは、定量的にはわからない。

○岡田委員長 これは、どうぞ、阿保先生。

○阿保グループ長 先生、おっしゃるとおりなのですけども、限られた時間と人員で何からやるかということで、まず、動物プランクトン、カタクチイワシをうちの場合はやっているのですけども、まずは直接の餌である動物プランクトンに着目しています。

 もちろん、うちの課題では、生態系モデルも入っていますので、その際には、当然、マイクロビアルループについても入れることになるとは思うのですけども、まずは現場調査としては動物プランクトンをと考えています。

○柳委員 その生態系のやつに腐食食物連鎖も入れて。できないことないと思う。

○阿保グループ長 ただ、現場調査としては動物プランクトンをメインに。動物プランクトン自体もかなりデータが不足しているので、その辺をきっちり過去のデータ、それから新たなデータを含めてやる予定にしております。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他に。

○白山委員 最近、瀬戸内海でいわゆるミズクラゲの問題が非常に大きいわけです。それが動物プランクトンを食べてしまうという話はかなりよく聞くのですけれども、それはこの議論の中ではどういう位置づけになっているのかお聞かせ願いたいと思います。

○岡田委員長 どちらに。両方ですか。

○白山委員 両方ですね。

○阿保グループ長 まずは、その辺は栄養塩が生態系の質とかにどう与えているかということで考えています。説明のときはかなり単純なものを出すのですけども、当然、その中には、先ほど柳先生からあったような腐食の生態系もありますし、クラゲの影響もあると思うのですけども、我々の燧灘での調査でも、クラゲに対しても一応データ等の収集は予定はしております。

○坂口室長補佐 栄養塩と水産資源の関係の分析・評価に当たって、専門家の先生方にもヒアリング等を進めます。その中でもクラゲについて指摘は出てございますので、考察する際にはそういった観点も含めて、限られたデータの中で、どこまで知見が得られているかというところもあるかとは思うのですけれども、ご指摘を踏まえて検討させていただければと思います。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 他に。

○岩崎委員 申し訳ない、少し不勉強なので、ぜひ、資料5-2の位置づけについて教えてほしいのですけども、これは小委員会の議題であり、議論であるので、小委員会としてもろもろ取りまとめるというのはわかるのですが、例えば、これによる調査、分析・評価、確認、これは誰がやるのですか。環境省がやるのですか。そうした場合、瀬戸内海区さんの水産庁予算による研究との整合性、関係性がどうなるのか。つまり、資料5-2の主体、主語は、誰がどうやってというようなことを、よくわからないので教えてください。

○坂口室長補佐 こちらは両面入っていまして、データをいただいて我々で解析等ができる部分は、もちろん専門家のヒアリング等を踏まえて、どういったものを突き合わせてみていったらいいかというのをご意見いただきながら、解析をしていきたいというのが1つと、あと、さきほどの水研機構や、あと府県の試験研究機関の得られている知見等も踏まえて、最終的に総合的評価の中で、こういった視点で得られているような知見を整理してまとめていきたいと考えてございます。

○岩崎委員 今やっていることの取りまとめは来年度いっぱいですよね。またこの場で、環境省としての見解を頂戴して議論をするということでしょうか。

○坂口室長補佐 本日、資料2でご説明しましたが、本年度末の小委員会で長期的な水環境の変化の傾向や、湾・灘ごとの課題をとりまとめていくとともに、栄養塩類と水産資源については、環境省の業務で解析したものと、研究機関の知見等も含め今年度末時点で得られている様々な知見を整理してまとめていく予定にしております。

○上田委員 阿保先生の9ページです。底生の微細藻類に及ぼす栄養塩の影響というのをどうやって見るかというのは、かなりいろいろな手法があると思うのですけれども、どういうことをお考えでしょうか。

○阿保グループ長 まずは現場調査で、実際の現場の現存量とかいろいろ調べて。

○上田委員 現場の何をお調べになるのですか。

○阿保グループ長 微細藻類の現存量、それから生産量になります。それと別に室内実験の、培養実験で栄養塩添加した場合ですとか、さまざまな実験も考えております。

○上田委員 現場で栄養塩の、例えば直上水の栄養塩とか、底質から溶出している栄養塩とか、底質そのものでやるとか、いろいろあります。よく底質のTN/TPとかしますけど、それがどう底生藻類に影響しているかというのは、ほとんど解析されていませんよね。そういうのはされないで、室内実験に持っていかれるのですか。

○阿保グループ長 ただ、現場でも、そもそも微細藻類の現存量とか、研究自身が少ないので、まずは幾つかの特徴ある海域でやって、おっしゃられたような解析を考えています。

○上田委員 わかるような、わからないような。ありがとうございました。

○秋山委員 これは意見というよりも感想ですけれども、阿保先生の18ページの因果関係の評価、影響解明ですね、これは非常に私も関心を持っているところです。

 それで、ちょっと感想ですけども、例えば、3ページをご覧いただきまして、阿保先生のほうから、近年の瀬戸内海の水産資源の低迷はボトムアップ効果だと。私もそう思うのですけども、ただ、一時的に見ると、例えば、カタクチイワシなどは、ご存じのように、特に兵庫県ですと、外海からの影響がある分、水域もありますし、それを外海からの影響が多いときは、当然その瞬間には、そういう部分に関してはトップダウン的な効果も出てきますので、そういったこともきちっと、抜かりはないと思うのですけども、評価していただければと思います。

 それと、5ページの左側のグラフで、カタクチイワシとイカナゴの漁獲量を見ると、これは瀬戸内海全体ですので、わかりにくいのですけれども、兵庫県だけで見ると、カタクチイワシとイカナゴは、数字的には競合しているような傾向がはっきりと見られています。要するに、餌を競合するということもあるでしょうし、あるいは、互いの稚魚を食べ合うと。時期が違いますから、そういった影響も出てくるのかと思っていまして、海で起きているメカニズムをきちっと評価していくことが、水産庁さんには当たり前のことだと思いますけれども、環境省さんにもお願いしたいなと思っているところです。

 これは感想です。

○阿保グループ長 おっしゃるとおりですけども、非常にいろんな種が、いろんな海域にいるので、全てをやることはいきなり無理なので、まずは我々としては、おっしゃられたような外海の影響が少ない燧灘でカタクチイワシを選んだ。しかも、まだ未発表のデータなので、今回入れていないのですけども、そこではかなり飼育実験とかでも親生物の餌不足が次の初期加入に影響しているとか、親の餌環境と子どもの餌環境、両方が効いているということで、本当に餌不足と漁獲低迷の関係が見えてきていますので、まずはそういうわかりやすいところから片づけていくという方針で、その後はおっしゃるとおり、じっくりやっていく必要があるとは考えています。

○岡田委員長 少し手短にどうぞ。

○秋山委員 補足しますと、要するに、解析結果と現実との食い違いはどうしても出てきますので、その際に私の言ったことを評価していただければと、そういう意味でございます。

○岡田委員長 次に、田中委員と内藤委員、すみません、時間が押していますので、手短にお願いします。

○田中委員 今年度は栄養塩と水産資源に関する解析を中心にされると思うのですが、来年度に向けての話の中で、施策の部分で重要になってくるのが陸域側での対応と海の応答の問題、ここがどういう進められるのか、よく見えないところがあるのです。環境省のほうで、このシナリオでは、そこまでまだ入っていないのですが、先ほどの説明の中で、例えば、阿保先生のほうの15ページ辺りのところで、外海の部分と、それから陸域の由来、これはどうやってされているのかよくわからないのですが、この中の陸域側が本当にどう変わってきて、その原因となる部分が何から来ているのか。今、さわれるのが下水道の話が中心になっているのですが、他の施策の部分も当然絡んでくるはずなので、そこがどういうふうにこれから進められるのかが、少しよく見えない。この辺は、すぐに今年やれということではないのかもしれませんが、先ほども大阪府の方とか、いろんな話があったのですけども、つながりが見えていないので、そこ全体をまとめるようなシナリオ設定を環境省でやっていただかないといけないのではないかと思います。

○岡田委員長 ありがとうございました。よろしいですね、今のは。

 では、内藤委員、どうぞ。

○内藤委員 阿保先生のご説明の中の15ページ、栄養塩がノリ及び珪藻類に及ぼす影響解明のところの①番で、ターゲットを珪藻の休眠期細胞にしているのですけれども、これはどういった目的でされているのですか。

○阿保グループ長 まずは栄養塩と遊泳細胞との関係、なかなか栄養塩は変動も大きいですし、植物プランクトン自体も昨日と今日では変わるし、なかなか長期的な変動は見えにくいということで、一方、休眠期細胞ですと底泥に存在するのですけども、過去の履歴をある程度フィルタをかけたような形できれいに見えるのではないかということで、これを選んでいるということです。遊泳細胞の調査結果なら毎年、各府県含め、いろいろあるので、まずは抜けているところをやろうということで考えています。

○内藤委員 私のこれまでの知識の中では、休眠期細胞の分布を瀬戸内海の底泥とかで行って、それでどういったものが発現してくるから、次にどのような発生が来るのかというのを予測するというところで見てきていたと思うのですけれども、過去にもデータがあるので、そういったところで、研究例の多いノリの色落ちの珪藻類を除くというのは、どういった意味合いを示しているのかと思ったのですけれども。

○阿保グループ長 ここに入れたのが誤解を与えたかもしれないのですけれども、事業を進める上で、赤潮事業とかは、他事業でいっぱいその辺はやっているので、この紹介した事業の中では除くという意味合いがあったのと、我々の観点としては、種組成の変遷とかを休眠期細胞からある程度見えないかということは考えております。

○内藤委員 そうですね、種組成の変遷を見るための休眠期細胞の分布の解明ですね。

 そういったところで、環境省さんが挙げられている適当と考えられる種に着目するというところとかもつながってくると思うのですけれども、限定するのではなくて、分布なので、休眠期細胞がどういうように分布されているのかというのは、海域ごとに見ていったほうがいいのではないかなと感じました。

 以上です。

○岡田委員長 ありがとうございました。

○西嶋委員 すみません、短くということで。

 藻場の生産のところで、ヨコエビを取り上げられて、非常にいいというか、重要だと思っています。我々はタチウオの胃内容物を見たときに、最初研究を始めたときは、いわゆるプランクトン食魚が餌の中心になっているのではないかと思ったのですが、思った以上に甲殻類が多くて、ソコシラエビとかがかなり出てきているのです。そういう意味で、今、考えられているのは動物プランクトンと魚という流れの中に、実は結構、魚食魚類でも餌として甲殻類の寄与が大きいのではないかということは、感想として思っているので、ぜひ、この辺り、やっていただければと思っています。よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 まだまだご意見はあると思いますが、時間が来ていますので、以上にさせていただきます。

 ただし、今日、ご説明の時間もかなり限られていましたし、それからご質問、ご意見をいただく時間も限られていましたので、お帰りになってから、お帰り途中でも結構ですが、気になること等がございましたら、ぜひ、事務局にご意見、ご質問をお寄せいただければと思います。場合によっては、それに応じて、今日ご説明いただいた関係府県、研究機関の方に再度ご説明を求めるかもしれませんが、ぜひ、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 そういう形で、限られた小委員会の時間でございますので、効率よく審議し、最終的にいい答申にしたいと思いますので、よろしくご協力のほど、お願いいたします。

 それでは、今日の報告に基づいて関係府県、省庁、研究機関におかれましては、引き続き調査・研究、知見の整理を進めていただき、次回以降、また検討状況等をご報告いただきますようお願い申し上げます。

 それでは、本日、非常に長時間にわたりましてご議論いただきまして、本当にありがとうございました。特に本日、ご説明いただきました関係府県、関係団体の皆様、それから瀬戸内海区水産研究所の阿保様には厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

 それでは、事務局にお返しいたします。

○島津審査係長 次回の小委員会は、説明にもございましたが、中西部海域の関係者を中心にヒアリングを実施するとともに、調査・研究の状況について報告をする予定としております。可能であれば、年内を目途に開催したいと考えており、具体的な時期につきましては、委員長とご相談の上、ご連絡させていただきます。

 また、本日は関係府県、関係団体の皆様、瀬戸内海区水産研究所の阿保様から、さまざまな観点から貴重なご意見、ご説明いただきまして、誠にありがとうございました。

 また、委員の先生方におかれましても、本年度の総合検討、来年度の取りまとめに向け、今後ともよろしくお願いいたします。

 最後に1点ですが、本日の議事録につきましては、委員の皆様とヒアリングいただきました関係者の方々に、速記がまとまり次第、お送りいたしますので、ご確認お願い申し上げます。ご確認いただいた議事録は、環境省のウエブサイトで公開させていただきたいと思います

 それでは以上をもちまして、第11回の瀬戸内海環境保全小委員会を閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。

午後4時35分 閉会