中央環境審議会水環境部会(第8回)議事録

日時

平成15年6月25日 開催

場所

環境省環境管理局水環境部企画課

議事

開会

環境省水環境部長あいさつ

議事録の確認

議題

(1) 水生生物の保全等に係る水質環境基準の設定について(第一次報告)
(2) 報告事項
  ・第3回世界水フォーラムの結果について
(3) その他

閉会

配布資料

資料1 中央環境審議会水環境部会委員名簿(平成15年6月25日現在)
資料2 中央環境審議会水環境部会(第7回)議事要旨
資料3 中央環境審議会水環境部会(第7回)会議録(案)(委員限り)
資料4 水生生物の保全に係る水質環境基準の設定について(第一次報告)
資料5 「水生生物の保全に係る水質環境基準の設定について」(中央環境審議会水環境部会水生生物保全環境基準専門委員会報告案)に対する意見募集結果
資料6 第3回世界水フォーラムの結果について
資料7 意見書(佐藤健委員、鈴木英夫委員、平瀬幸一委員、満岡三佶委員から)
資料8 「水生生物の保全に係る水質環境基準の設定について」に対する意見 (平瀬幸一委員から)
参考資料1 中央環境審議会議事運営規則 他

議事

午後4時00分 開会

【盛山課長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第8回の中央環境審議会水環境部会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告させていただきます。
 5月16日付で、大西健男臨時委員にかわりまして、平瀬幸一臨時委員が会長より水環境部会の臨時委員の指名を受けております。

【平瀬委員】 JFEスチールの平瀬でございます。よろしくお願いします。

【盛山課長】 また、これまで当部会の臨時委員をお願いしておりました坂井臨時委員、中西準子臨時委員、藤原臨時委員は、3月26日付で水環境部会の所属が解除されております。
 本日は、委員総数33名中、23名の委員の御出席が予定されております。1名、鈴木委員がちょっと遅れておられるようでございますが、ただいまのところ22名御出席ということでございますので、既に部会開会の定足数を満たしております。
 なお、本日の会議は、「中央環境審議会の運営方針について」に基づきまして、公開としておりますことを御報告いたします。
 それでは、議事に先立ちまして、吉田水環境部長より御挨拶を申し上げます。

【吉田水環境部長】 水環境部長の吉田でございます。第8回の水環境部会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げさせていただきます。
 本日は、先生方、大変お忙しい中お集まりを賜りまして、まことにありがとうございます。本日の部会におきましては、水生生物の保全に係る水質環境の基準の設定について、専門委員会報告をいただきますことを予定しております。本件につきましては、環境大臣からの諮問を受けて、昨年の11月の本部会におきましても、また、本年2月の部会におきましても御審議を賜ってまいりましたが、水生生物保全環境基準専門委員会におきまして、これまでに6回に及ぶ熱心な調査、御審議をいただいたところでございます。本日は、水環境部会としての答申案について御審議を賜りたく、お願いをいたします。
 そのほか、最近の水環境行政の動きにつきまして、若干の御報告事項が予定をされております。
 今回も前回に引き続きまして、活発な御議論、御意見を頂戴いたしたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 簡単ではございますが、冒頭の御挨拶といたします。

【盛山課長】 それでは、議事に入ります前に、お手元の配付資料について御確認いただきたいと存じます。
 議事次第をひっくり返していただきますと、配付資料一覧とございます。資料の1から8まで並びに参考資料の1とございますので、もし不足等ございましたら、準備の段階で我々事務方の方までお申しつけくださるようお願いいたします。
 それでは、これからの会議の進行を村岡部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【村岡部会長】 それでは、ただいまから審議に入ります。
 まず、前回の議事録の確認でございますが、第7回水環境部会の議事録の確認を行いたいと思います。この議事録につきましては、資料3として準備していただいておりますが、この資料は、委員の先生方に御確認いただいた後、事務局で修正いたしまして、再度、各委員の先生方に送付されている資料でございます。そこで、「中央環境審議会水環境部会及び専門委員会の運営方針について」、2の (1)に基づく御了承をいただいたものとして、この場で前回の議事録にしたいと考えます。これでよろしゅうございますか。
             (「異議なし」と呼ぶ者あり)

【村岡部会長】 ありがとうございます。
 それでは、次の議題の (1)でございます。これは、先ほど部長からも御説明がありましたが、水生生物の保全に係る水質環境基準の設定についてでございます。これは、平成14年11月12日付で環境大臣より諮問がございまして、これまで水生生物保全環境基準専門委員会におきまして、御検討をお願いしてまいりました。本日は、その専門委員会の報告を用意していただきました。この報告について御審議いただきまして、当部会として答申案を取りまとめる方向で審議させていただきます。
 これまでの審議経過並びに報告の概要につきましては、専門委員会の委員長をお務めいただきました須藤委員より、また、事務局からも御説明いただきたいと思います。
 それでは、まず、須藤委員長、よろしくお願いいたします。

【須藤委員】 それでは、水生生物保全環境基準専門委員会の委員長を仰せつかっております、須藤でございます。私から水生生物保全環境基準専門委員会報告の概要につきまして、御説明をさせていただきます。
 資料につきましては、委員会報告等を含めまして資料4でございますが、後ほど事務局から報告がございますので、それをめくりながら御覧いただければよろしいかと思います。
 まず、2月28日に開催されました前回の部会におきまして、検討状況を御説明申し上げました。そして、委員の皆様から貴重な御示唆、 御意見をいただきました。その御意見を踏まえまして、その後の専門委員会における検討状況及び結果を報告いたします。
 検討結果の要旨でございますが、まず、4月10日の第4回専門委員会では、部会での御意見を踏まえまして、報告書案の審議を行いました。基準案の導出は、国際的にも定着した最新の科学技術による生態影響の評価方法を用いて行いました。一部御意見がございましたが、プロトコールについてはおおむね合意されました。
 5月8日の第5回専門委員会におきましては、本日、参考資料にもおつけしておりますように、亜鉛の基準値案に係る森田委員の詳細な考察資料が提出され、内容を総合的に検証した上で、専門委員会報告としての合意を得たものであります。
 こうして取りまとめられました専門委員会報告案を5月14日から4週間のパブリックコメントに付しましたところ、産業界を初め多くの方々から総数 500を超えるコメントが寄せられました。
 6月19日の第6回専門委員会におきましては、これらのコメントについて検討を行いました。いずれのコメントについても、専門委員会としての見解を御説明することにより御理解をいただけるものであると判断し、コメントを24に整理し、これについて水生生物保全環境基準専門委員会としての見解を付し、昨日、24日付で公表しているところでございます。これも資料に添付されているかと存じます。
 このような経過によりまして、本日ここに専門委員会報告をすることができたものでございます。詳細につきましては、先ほど申し上げましたように、事務局から説明をいただきますが、専門委員会報告の要点につきまして、資料4の目次に従いまして、私の方からも若干説明をさせていただきます。
 この内容につきましては、前回の中間報告の中でいたしたところでございますので、記憶はあるかと思いますが、新任の委員の先生方もいらっしゃいますので、一応おさらいをさせていただきます。
 まず、「はじめに」といたしまして、現状認識、これまでの経緯、水生生物保全に対する基本的スタンスを示しました。
 次いで、「これまでの対応」におきまして、必要性に対する指摘や関連の取り組みを紹介した上で、「化学物質による水生生物への影響」という項目では、水生生物に対する影響に関する知見の概要を示しました。
 次いで、「水生生物の保全に係る水質目標」において、水質目標設定に当たっての基本的考え方、特に目指す保全の水準や目標値導出等の考え方を示しております。
 「環境基準等の設定」におきましては、環境基準、要監視項目の考え方、監視及び評価のあり方、また、類型のあてはめの基本的な考え方について記述しております。
 「優先検討物質ごとの検討結果」におきましては、導出した亜鉛、アニリン、カドミウム、クロロホルム、2,4-ジクロロフェノール、ナフタレン、フェノール、ホルムアルデヒド、計8物質の目標値をお示ししております。これらの8物質については、公共用水域における検出状況等から位置づけを検討いたしました。最終的には、亜鉛を環境基準項目として、クロロホルム、フェノール、ホルムアルデヒドの3物質を要監視項目として位置づけるべきとの結論に達しております。残り4物質の目標値についても、水生生物への影響の程度を判定する指標として用いることが望ましいと考えられました。環境基準項目と要監視項目を資料4の報告書、ページ19の表2に整理しております。
 さらに、「今後の課題」、「おわりに」を示しまして、報告書といたしております。
 なお、公表しましたパブリックコメントに対する専門委員会の見解については、資料5でお示しいたしております。それもどうぞ御覧になってください。
 これまでも何回か水環境部会に報告いたしておりますので、今さら私の方から環境基準設定の必要性について御説明する必要がないかとも思いますが、従来からの人にとっての良好な水環境保全、これを中心とした行政から、生態系の保全をも視野に入れた水環境保全に関する施策の一環としての水生生物の保全に係る水環境基準の設定、これについては、環境基本計画にも記載されておりますし、また、OECDからも我が国は勧告を受けているところでございます。
 本報告は、部会の御諮問を得た専門委員の専門的、科学的検討の成果であります。部会でのさらなる御検討をいただきまして、諸外国に比べておくれております水生生物の環境基準が、一日も早く我が国においても設定されることを切に希望いたしまして、私の簡単な報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【村岡部会長】 それでは、事務局の方から御説明いただきたいと思います。

【熊谷補佐】 資料4の方を見ていただけますでしょうか。「水生生物の保全に係る水質環境基準の設定について(第一次報告)」ということで、この報告書の中に記載いただいています内容の要点を御説明申し上げます。
 まず、「はじめに」です。1の「はじめに」として、1ページからになりますが、これまでの水質環境基準の設定の経緯、特に健康項目の取り組み、それから、生活環境項目の取組、こういったこれまでの経緯について記述されております。あわせまして、これまでの取組は、人にとっての良好な環境の保全中心の行政であった。そういうところから、生態系の保全をも視野に入れた水環境保全に関する施策の一環として、水生生物の保全に係る水質環境基準の設定を検討したものといったような内容を記述していただいております。
、 申「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準の項目追加等について」、ここにおきましても水生生物、生態系への影響について考慮することが重要であるというような指摘をいただいております。また、平成6年12月の環境基本計画、旧の環境基本計画ということになろうかと思いますが、そこで記載された内容、また、OECDの環境政策委員会からの勧告の内容等について記述していただいております。
 「 (2)新たな環境基本計画における記述」ということで、3ページ目の上段からになりますけれども、12年12月に策定された新環境基本計画、これらの関連の記述を記載しております。新環境基本計画においては、水質に加え、水量、水生生物、水辺地、これらを視野に入れた水循環の視点の重要性が記述されております。また、政府が優先して取り組むべき施策として水生生物を保全するために望ましい水質についての目標、すなわち、環境基準等の水質目標の検討は、喫緊の課題であるといった内容を記述していただいております。
  (3)にまいります。4ページ目になりますが、「環境省における検討」におきまして、化学物質が水生生物に与える影響とその管理施策について記述しております。水生生物保全に係る水質目標に関する検討、化学物質の審査・規制に関する管理手法の検討の状況、また、農薬に関する管理手法の検討状況等を記述していただいております。
 3にまいりまして、「化学物質による水生生物への影響」ということで、ページ4の一番下の段落からになりますが、「 (1)化学物質が水生生物にもたらすリスク評価の現状」としまして、個別の試験生物への実験室レベルでの毒性評価を活用して、生態系への影響の可能性をできる限り考慮したといったような内容。
  (2)、5ページになりますけれども、そこの上段からですが、水生生物への毒性の発現として、死亡、生育阻害のほか、化学物質によっては麻酔作用、呼吸不全作用等が知られていることといった生態影響に対する知見の記述をいただいております。
  (3)としまして、「フィールドにおける水生生物への影響」、同じく5ページ目の下側からになりますが、人間活動による生物への影響は、開発行為など多様な要因が同時に関与し、1つの化学物質の影響のみを分離して評価することは困難であるといったような内容。また、フィールドにおいても化学物質濃度が高い場合には、水生生物に影響があらわれていることを明示する例が見られるといったようなフィールドでの知見。水生生物の生息許容レベルを超過すれば、魚類の斃死といった事態は見られなくても、被害が生じる可能性は否定できない。水生生物相の多様性が失われ、特定の生物のみ生息できる状況となろう。水生生物の生息も含めた健全な水環境の保全のためには、目指すべき保全の水準を適切に管理していくことが必要といったような内容を記載いただいております。
 4番目で、「水生生物の保全に係る水質目標」ということで、6ページから8ページにかけまして記載いただいております。 (1)としまして、「水質目標の設定に当たっての基本的考え方」としまして、目指すべき保全の水準、特に感受性の高い生物個体の保護までは考慮せず、集団の維持を可能とするレベルで設定したといったような内容。水質による水生生物への影響の未然防止の観点から、水生生物にとって維持することが望ましい水準として目標値を設定した旨、記載いただいております。
 「[2]目標値の導出」の部分では、個別物質ごとに代表的な生物種について、半数致死濃度等に係る再現性のある方法によって得られるデータをもとに、毒性発現しないレベルを確認。その結果に種差・種比等に関する科学的根拠を加味して求めることが適当とした旨、記載いただいております。
 [3]としまして、「対象とする試験生物及び水域区分」の部分におきまして、我が国に生息する魚介類及びその餌生物についても評価の対象としたこと。また、まず、大きく主たる生息域によって淡水域と海域を区分したこと。河川、湖沼については、これを区分せず、淡水域として一括した旨、また、水温因子として、冷水域と温水域に区分したといった内容。淡水域に対して海域については、生息区域により水生生物をグルーピングすることが困難であったということから、当面、一律の区分とすることを適当としたといった内容。また、淡水域・海域とも、産卵場及び感受性の高い幼稚仔等の時期に利用する水域については、より厳しい目標をあてはめることをもあり得るものとしたこと。以上のような内容により、淡水域を4水域、海域について2水域ということに区分して結論としたといった内容を記載いただいております。
  (2)になりまして、8ページ目中ごろから10ページにかけての部分ですが、「目標値の導出方法」としまして、国際的にも定着した最新の評価方法を用い、現時点で利用可能な内外のデータを収集・整理し、我が国の水生生物の生態特性等も踏まえて水質目標値を導出するものとしたといった内容。「ア.水質目標の優先検討対象物質」。水生生物に有害で、生産、使用状況等から水生生物が暴露しやすい物質を優先的に検討すべき物質としたといった内容。
 イとしまして、「毒性評価文献の範囲」としまして、我が国に生息する有用動植物及びその餌生物等を対象としたものとすることが妥当である。死亡、成長・生長、行動、忌避、繁殖等の影響内容に関するものを対象にしたといったような内容を記載いただいております。
 「ウ.評価の考え方」という部分におきましては、信頼性があり、エンドポイントや暴露期間等が本件の内容と合致しており、目標値導出に利用可能と判断されたもののみ目標導出に用いるといった内容を記載いただいております。
 エとしまして、「目標導出の手順等」。魚介類及び餌生物に慢性影響を生じないレベルとして算出される数値の小さい方を採用し目標値とするといった内容。また、慢性影響を優先し、信頼できる慢性毒性値が得られない場合には、急性慢性毒性比を用い、急性毒性値から慢性毒性値を求めるといった内容を採用したといった内容を記載いただいております。
  5番としまして、「環境基準等の設定」。10ページ目の下からになりますけれども、(1)としまして、「水生生物の保全の観点からの環境基準等の位置づけ」としまして、 「環境基準は、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」とされ、政府が定めることとされている。また、生活環境とは、「人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む」と定義されている等の内容を記述いただいております。水生生物の保全の観点からの環境基準等の水質目標の設定は、生活環境という概念の中心にある有用な水生生物及びその餌生物並びにそれらの生育環境の保護を対象とし、生活環境項目として位置づける旨を記載いただいております。
  (2)としまして、「環境基準の設定の判断」、11ページ目になります。施策の必要性に応じて、環境基準項目または要監視項目として位置づけるか否かを判断したといったような内容を記載いただいております。
  (3)としまして、「監視及び評価」。11ページ目の一番下の部分から12ページ目にかけてになります。水生生物の生息状況等を勘案し、適切な地点を選定して行う。原則、月1日以上の測定が適当であるといった内容。また、年平均値による評価が適当である。自然的原因により検出される可能性のある物質については、評価及び対策の検討で配慮する必要があるといった内容を記載いただいております。
 「 (4)類型あてはめ」としまして、12ページ目の後段から14ページ目にかけての部分になりますが、水生生物の保全を図る必要がある水域のすべてにつき行う。水質汚濁が著しく進行しているか、進行するおそれがある水域を優先する。また、水生生物が全く生息しないことが確認される水域及び水生生物の生息に必要な水量、水深等が確保されない水域については、一義的に類型あてはめの必要はないといったような内容。汽水域については、淡水域として取り扱う。塩水湖については、水生生物の生息状況から適切な類型をあてはめることといった内容を記載されています。また、産卵場及び幼稚仔の生息場については、厳密化の余り細切れな区分をせず、連続するような場合には一括してあてはめることが望ましいという内容や、あわせて、達成期間、類型あてはめに当たって把握すべき情報等を記載いただいております。
 6番目としまして、「優先検討物質ごとの検討結果」としまして、14ページ目から16ページ目の前半部分になります。優先検討対象物質の中から26物質を選定し、十分な科学的知見が確保された8物質について目標値を導出しました。15ページの表1に、全亜鉛、アニリン、カドミウム、クロロホルム、2,4-ジクロロフェノール、ナフタレン、フェノール、ホルムアルデヒドの目標値を記載しております。
  (2)としまして、「環境基準項目等の検討」で、16ページ目の終わりの部分から18ページ目にかけてですが、目標値を導出した8物質について、公共用水域常時監視結果等の水質調査結果を用いて検討を行ったといった内容。
 以下、[1]から[8]まで、各物質の結論部分を記載しております。
 [1]の亜鉛。淡水域での超過地点が、測定地点2万点強のうち、 2,000点強の地点。海域では 5,000弱の地点中、一般海域の目標値超過が 200弱、特別域の目標値超過が延べ 400強といったような状況にあり、環境基準項目として設定することとするといった結論を記載いただいております。
 [2]アニリン。目標値の10%値の超過が見られず、当面、環境管理施策及び監視は現時点では必要がないということで、環境状況の判断基準として用いるべきという結論を記載いただいております。
 [3]カドミウムについてですが、既存の測定法において目標値の10分の1程度まで測定することは現時点では困難であり、まず、測定法の確立を行い、全国的な濃度レベルを把握する必要があるといった結論をいただいております。
 [4]のクロロホルムについてですが、公共用水域等において、一般水域の目標値より低いレベルで検出されているが、イワナ・サケマス特別域の目標値については、これを超過する地点がある。このような状況を踏まえ、当面、要監視項目に位置づけ、監視を継続することとするといった結論をいただいております。
 [5]番、2,4-ジクロロフェノールについてですが、目標値及び目標値の10%値の超過は見られなかった。このため、全国的な環境管理施策及び監視は現時点では必要ないということで、当面、環境状況の判断基準として用いるべきという結論をいただいております。
 [6]番のナフタレンですが、目標値及び目標値の10%値の超過は見られなかった。このため、全国的な環境管理施策及び監視は現時点では必要ないと。同様の結論をいただいております。
 [7]のフェノールについてですが、フェノール単体については、地方公共団体独自で行った調査の結果の中には、コイ・フナ域の目標値以上の検出はないものの、イワナ・サケマス域の目標値やイワナ・サケマス特別域、コイ・フナ特別域の目標値以上の値を検出した地点がある。早急に全国的な調査を実施することとし、その結果を待ってさらに検討を行うことが妥当であると。要監視項目として設定するべきであるという結論をいただいております。
 [8]ホルムアルデヒドについては、目標値の超過は見られなかったが、海域において目標値の10%値の超過が見られた。このため、要監視項目と設定し、当面は水質監視を行うこととするという結論をいただいております。
 以上の結論については、19ページに全亜鉛、クロロホルム、フェノール、ホルムアルデヒド、環境基準並びに要監視項目と位置づけるべきとされたものを表の形でお示ししております。また、20ページ目につきましては、表の3としまして、環境基準項目、要監視項目とすべきとされた4項目の測定方法の方式のみを記載しております。詳しい内容については、後半側に記載があります。
 7番目、「今後の課題」としまして、21ページから22ページ目の部分になりますが、科学的知見の追加に伴う必要な追加・見直し作業を継続して行っていくべき。また、魚介類等を用いた毒性試験の実施により、毒性情報の確保を図るべき。環境中濃度調査の実施及び測定法の開発の重要性。また、類型あてはめは、水深等の情報収集の必要性について御審議いただいております。環境基準の維持・達成を図るため、汚染要因や対象項目の特性に応じた適切な環境管理施策の検討が必要であるといったような点をあわせて記載いただきまして、今後の課題としていただいております。
 8番目、最後に「おわりに」の部分ですが、22ページ目になります。生態系の保全をも視野に入れた水環境の保全に関する施策を論じるとき、環境基準の設定にとどまるものではない。これを契機として、水生生物が生息する場の保全を含めた広範な施策を検討することが必要といったような内容をいただいております。
 以上、資料4の概要についての御説明をさせていただきました。
 あわせて、資料5について御説明申し上げます。
 資料5につきましては、先ほど須藤専門委員長から御紹介いただきましたが、水生生物保全環境基準専門委員会の報告としてパブリックコメントに付したもの、これの意見の概要と専門委員会としての見解をおまとめいただいたものでございます。総数 509件。右側の欄に「意見数」という欄がございますが、一件で複数の意見をいただいた方々、その個々の意見について1つというふうに数えまして意見数を入れておりますので、この資料の中では、必ずしも意見数の数とこの提出件数は一致しておりません。全部で 509件の内容を24の質問の内容に整理しまして、その24に対して専門委員会として見解をまとめていただいております。
 ちょっと簡単に御紹介いたしますと、例えば、諸外国の環境基準の設定等と比較して齟齬があるのではないかといったような御意見、また、4ページ目の4番では、基準値の導出手順に問題があるのではないかといった内容。また、7ページ目になりますが、6番目として、慢性毒性データがない状況で基準値を設定しており、検討が不十分ではないかといったような御意見。また、9ページ目、10番目の意見になりますけれども、現行の環境基準、生活環境項目の解釈を拡大しすぎており、水生生物保護の基準設定はそぐわないのではないかといったような御意見。また、もっと厳しい基準を設定すべきではないかといったものとか、類型をもっと細かくすべきといったような御意見もいただいておりますし、環境基準の内容は若干超えるかと思われますが、18番目、19番目、20番目、13ページ目になりますが、排水規制の強化についての反対のコメントや、18、19については環境基準の内容となりますけれども、適切かつ柔軟な見直しが必要であるといった内容。また、コストベネフィットなど総合的な検討が必要ではないかといったような御意見をいただいております。
 詳細については省略させていただきますが、以上です。

【村岡部会長】 どうも、御説明ありがとうございました。
 ここで本議題に関連いたしまして、産業界から意見書をいただいております。あらかじめいただいておりましたので、これを資料7、資料8でお配りしていただいております。この意見をお聞きした後に、またまとめて御議論いただこうかなと、こう思います。
 それでは、産業界を代表されまして、鈴木委員、よろしくお願いいたします。

【鈴木(英)委員】 ありがとうございます。資料7で意見書を4人の連名でお出ししておりますので、これに基づいて御説明させていただきたいと思います。
 日ごろ私は寡黙でありますけれども、本件、やや思い入れがございますので、ちょっと時間を拝借したいと思っております。
 まず、冒頭、専門委員会の皆様方の御努力に対して、心から敬意を表させていただきたいと思います。広範な検討をしていただいたというふうに理解をしております。ただ、本件につきましては、今回、水生生物にかかわる初めてのケースであるということから、専門委員会報告書をこのままで了承することについては、反対をさせていただきたいというのが結論でございます。引き続きこの部会、あるいはまた別の場で十分検討していただきたいというふうに思っております。
 それをもとにしまして意見書を書いてございますが、その前に、私は2月28日の当部会で今日、議事録がついておりますけれども、そのときに、大原則として環境基準の設定は合理的、説得的なものでなければならない。それから、環境基準値というのは、環境改善のため実現可能で実効のある、一気通貫という言葉はよくないんですが、そういうシナリオも視野に入れた上で定めていきたいという要望を申し上げました。このことについて、ただいまの結論が十分取り上げていただいているとは思えないところがあるものですから、その辺を中心に御説明申し上げたいと思います。
 まず、この意見書の1、保全すべき環境、その対象手法はどのようなものであるか明確にすべきであると書いてありますが、そのうちの (1)、多様な生態系に十分対応できるような基準案を作成していただきたいということでありまして、中身をちょっと砕いて御説明申し上げますが、生態系は御承知のように非常に多様でありまして、ある種の生物が生息できない環境がほかの種の生物にとっては最適な環境であるというようなこともあり得るわけであります。今回の淡水域の亜鉛の評価におきましては、ヒラタカゲロウの慢性毒性データに基づきまして、全国一律基準ということで御提案なされているわけであります。専門委員会では、これに対しまして総合レビューを行っておられるということでありますが、淡水域の30μg/Lという値は、ヒラタカゲロウの値がもとになっているわけであります。
 しかしながら、我が国の自然は多様でありまして、そこに住む水生動物も生物もまた多様であります。特に生物の食物連鎖というのは、もう言うまでもないんですが、生物の種類とか生息環境によって好餌性、どの餌が好きか、あるいは餌の代替性があるというふうに認識しております。かつ、川においては上流と下流で生物は異なりますし、海域においても、北海道と沖縄では生物もまた異なるわけであります。こうした複雑な自然の多様性を考えたときに、特定の生物に関するデータで全国一律の環境基準を決めてしまってよいのかということについて、十分な議論が必要ではないかということで (1)が書かれているわけであります。
  (2)の保全すべき水生動物につきましては、ヒラタカゲロウが基準値設定に選ばれましたのは、既存のデータにおきまして、最も亜鉛に対する感受性が高いということからだというふうに理解をしております。すなわち、亜鉛に対しまして最も弱い生物であるから基準値の導出に選ばれていると。ここで考えなければいけないのは、一体環境基準をつくって環境管理を行っていく上で、我々は最も弱い生物に合わせた環境管理を行うべきかどうかという点であります。確かに最も弱い生物が水生生物の保全には不可欠の場合もありますけれども、水生生物を守るためには、最低限何を守る基準として設定すべきかということについて議論が十分なされていないのではないかという感じがするわけであります。最も感受性の高い生物を守るということでありますと、究極的には限りなくゼロに近づくということしかないわけでありまして、特に餌生物の場合には、自然系の中では仮にそれが何かの影響を受けても、ほかの餌が十分あれば魚類の存続というのは可能でありますし、水生生物の群としての保全のために、いかなる餌生物にターゲットを当てるべきかについての議論も必要であろうというふうに考えるわけであります。これが (2)であります。
 それから、次に、大きな2の環境影響の問題でございますが、 (1)に書いてございますように、毒性試験結果は室内実験のデータのみであるといいますか、それが主要な根拠になっているわけであります。私の承知する限り、亜鉛に関するフィールド調査と言えるものは、宮城県の鉱山地帯のバックグラウンドが高い1河川に対する調査があるぐらいでありまして、しかもその調査でも亜鉛が水生生物の生息に影響があるとは断定されてないわけであります。本来、環境基準は慢性毒性値をもって定められるべきでありますが、それが理想論であるということで、急性慢性毒性値の比率の係数によって計算で決めていくという手法が、果たして適切なのかどうか。現実との整合性をとり得るのかというようなことが心配されているわけであります。
 我が国の水生生物の世界でいかなる問題が生じているのかということについては、現実的な例示が必要ではないか思うわけであります。特に亜鉛の環境基準を設定するのであれば、亜鉛によって水生生物に実際どういう影響が生じているのかというのがまだよくわかっておりませんし、単に実験室でのデータのみで十分かどうかということについても検討が必要であります。環境省さんのホームページによりますと、大阪とか北海道の淡水域調査地点のかなりの部分で原案の亜鉛の環境基準を超えているそうでありますが、それでも北海道は魚が豊富でありますし、その辺をどういうふうに評価すればいいのかというのにやや戸惑いを覚えると。言い過ぎかもしれませんが、そういう感じであります。
 それから、裏に行きますけれども、3番目に環境基準の位置づけを明確にすることが前提ということで意見をお出し申し上げております。水生生物の保全にかかわる環境施策については、我が国では今回が初めてということでありますけれども、私はやはり環境基準というのは、一気通貫の政策のもとでも検討されていく必要があるのではないかということを考えます。詳細な排出管理のあり方までは今決められないかもしれませんけれども、排出規制を行うのか、あるいは、行うとした場合、どのように行うのかというようなことについて、基本的な概念をやはり示していただく必要があるのではないかと考えます。
 また、水生生物の保全とはいえ、環境基準が設定されますと、社会的にはこれを超越した場合には、行政や排出者に何らかの対応を求められるということでありまして、人に対する影響と異なりまして、生物に対する影響について、社会的にこれをどう取り扱うかということについて、あらかじめやはり基本的な考え方を明確にしておく必要があると。中央環境審議会としてもやはりその辺のコンセンサスが必要なのではないかという感じがいたします。ぜひこの辺については、本日の議論をもとに、事務局には見解をお示しいただければという感じがいたします。
 それから、次の (2)の「水生生物保全環境基準の位置付け」でありますけれども、今回の議論の根幹は、いかにして水生生物を保全するかということにあります。その目的を達成するためにいかなる施策が必要なのかを考える場合には、果たして即環境基準ということでいいのかどうか。諸外国では指針とか、あるいはクライテリアというような考え方もしておりますし、特に日本は1960年代の後半から公害の経験をいたしました。20年間にわたって大変な努力をしたわけでありますが、その段階で基準値を段階的に設定するという知恵を出して、例えば四日市の問題とか、あるいは自動車のNOxの問題なんかがそうであったわけですが、我が国独自の知恵を出して、結果的には諸外国に比べて非常に先駆けて環境改善を行ったという例もありますので、そういうことも含めて検討が必要ではないかと思われるわけであります。
 次の (3)の「環境基準にするにあたっての判断基準」でありますが、人の健康に係る場合には、モニタリングデータで少しでも超過するポイントがあれば、一般的には環境基準が設定されているということでありますが、しかし、水生生物の保全のために環境基準を同じ条件で設定すべきかどうかということも議論の対象になり得ると思います。全国で超過地点がたくさん観測されていながら、現実的な被害がどこにあるのかというのがはっきり見えない時点で環境基準を設定するということについて、いいのかどうかということも部会として議論をしていただきたいと思います。
 そもそも亜鉛は、人の健康に対しても、あるいは魚に対しても、水生生物にとっても必須物質というふうに考えられておりまして、養殖なんかでは亜鉛をわざわざまぜて与えている例もあるわけであります。最も感受性の高い生物をもとに設定された基準値では、多くの超過地点が日本中で出てまいるのは当然でありまして、逆に亜鉛が不足した場合に水生生物にどういう影響を与えるのかと。成長をとめてしまうのではないかと。生存上、問題があるのではないかというような問題についても明らかにされていないということでありますので、超過をどの程度許容すべきかということについては、まさに社会的コンセンサスの領域であると思いますが、部会としても審議していただきたいと思うわけであります。
 それから、最後に基準案の信頼性のところでありますが、若干誤解があるかもしれませんが、今回の亜鉛の基準値の策定に当たりましては、ある論文を根拠にして計算されているというふうに伺っております。ところが、この論文は国際的に確立された試験方法では必ずしもないとか、データの品質上に問題があるということで、EUでは理由を付してこの論文の採用が却下されているというふうに聞いております。そういう論文を根拠にすることが果たしていいのかどうか。パブリックコメントに対する環境省さんの回答では、本論文は信頼性があるというふうに認定しておられるということでありますが、どなたがどのようにしていかなるプロセス、あるいは根拠で信頼し得ると判断されたのか、その過程もまだ非公開でありますし、よくわからないというところがあります。EUと全く逆の結論が導き出されたものをどういうふうに理解すればいいのか。社会的にも説得力があるのかというようなことについても疑問があるわけであります。
 最後の情報公開のデータの--その前に、 (2)の不足している慢性毒性データの集積については、ここに書いてあるとおりであります。あるいは、データの開示については当然のことと考えております。
 専門委員会の方にあるいは失礼に当たるかもしれませんけれども、ざっくり申し上げまして、今回の基準がヒラタカゲロウについてのビーカーテストというか、室内試験、しかも外国で認められていない実験を基礎にしておりまして、かつ、見るべきフィールド調査もないという中で決められようとしていると。しかも、先般決められました水道基準の亜鉛の基準というのは、1mg/L、つまり 1,000μg/Lであります。今回、ここで提示されている基準は、30μg/L、19ページを拝見しますとそういうことになります、淡水域で。そうすると、水道よりも30倍厳しい基準を今回淡水域について決めると。それから、特定海域につきましては、 100倍水道水よりも厳しい基準を決めるということになっておるわけでありまして、この辺はやはりもっと慎重に検討する必要があるのではないかと思います。
 もとより、この水生生物の方は大事なことでありまして、何としてでも達成しなければいけないと。だからといって国民に過剰な負担を強いることもできないわけでありまして、パブリックコメントでも、先ほどたくさんのパブリックコメントが出ているというお話がありましたが、これの大部分はやはり反対ないし疑問があるという御意見でありまして、そういうパブリックコメントについても軽視すべきではないだろうと思います。
 誤解のないように申し上げますが、達成できそうにないから基準値に反対するということでは決してありません。日本はやはり合理的で説得的な基準値、効率的なシナリオ、そういうものでみんなが納得して一丸となって目的を達成しようという、そういう土壌と機運をつくり上げるということが大事であるというふうに考えておりますので、あえて疑問点を含めて御意見を申し上げたわけであります。
 よろしく委員各位の御理解を賜りたいと思います。ありがとうございました。

【村岡部会長】 どうもありがとうございました。
 資料の8の方は、平瀬委員の名前になっておりますが、いかがいたしましょう。何                                          か……

【平瀬委員】 1点だけ。追加でありますが。

【村岡部会長】 では、どうぞ。

【平瀬委員】 平瀬でございます。
 私、この4月から御縁がありましてこの委員を拝命いたしました。そういう意味では、皆様のこれまでの経緯、議事録等をこの3カ月間、必死で自分なりに読んでこの場にまいっているつもりでございます。その中で、今、鈴木委員がおっしゃった連名の意見書を我々、まとめたわけでございますが、この資料8で、私が今まで3カ月かかって今までの経緯を読んだ結果、幾つかの疑問点、これは意見書の、資料7の方にも入っておりますので、ポイントだけに絞って紹介いたします。
 資料8の下の方に、先ほど経緯、専門委員会の報告もございましたけれども、やはりポイントは全体の環境施策といいますか、水生生物の保全に関するスキームの議論をやはりこの部会でもっとやるべきであると。そうでなければ、何やら環境基準の設定が先行して、環境基準を決めることが目的みたいな感じにどうしても感じられてしまうというのが1点です。
 2点目、次のページ、先ほど来、鈴木委員が申し上げましたように、やはりこのデータ、専門委員の先生方のベースデータを見ますと、文献データ等、カゲロウに限られた慢性毒性データというところから引用され、それはそれなりに僕はデータとしてはそういうものだと認識をいたしました。しかしながら、やはり環境基準というのであれば、水生生物の実態調査に基づく検証がそのベースにないと、これは問題だというふうに思います。
 その一例を申し上げます。このパブリックコメントの3ページ、ナンバー3、検証データで宮城県の鉛川、細倉駅周辺のデータが公開をされています。これは専門委員の先生方もこれを見てジャッジをされたと信じたいんですけれども、この見解に、細倉駅下流、それから、それとほぼ同じと考えられる近傍の地点、鍛冶屋橋というようなことで比較をされておりますが、これは我々鉄連で、ちょっと必要だったら回覧しますが、現地を全部調べてまいりました。そうすると、この細倉橋付近、これは非常に藻が生えて、とにかく特異点であると。この鍛冶屋橋、非常に離れてきれいなところです。そのデータをベースに宮城県は定点観察をされているんですけれども、亜鉛の濃度がはるかに高いところでも、石の下にいる生物はちゃんと存在をしているというようなデータになっております。そういう意味で、私どもはやはり実測のデータに基づいた実証が、やはり環境基準を設定するときに非常に重要であると、そういうふうなことで、この部会でさらなる審議をぜひ継続をすべきであるというふうに訴えたいと思います。
 この豊後橋の平成13年度の調査のところ、これは 730μg 、 730ですよ。そこのところに生物が存在をちゃんとしている。その中にヒラタカゲロウはいたんでしょうかと。それは後で教えていただきたい。私の場合、いたという証拠を持っております。したがって、30μg 云々の話をどうのこうのするつもりはございません。やはり実態の実証データをベースに環境基準というのは決めるべきだと、そういうふうに訴えたいわけです。
 以上です。

【村岡部会長】 どうもありがとうございました。
 初めに報告書案の御説明がありまして、ただいま産業界からの御意見をいただきました。特に産業界からの御意見は、幾つかの項目に整理されまして、御意見としていただいておりますので、その中には専門的な内容もございます。それにつきましては、多分、須藤委員長からお答えいただける部分もあるのではないかと。それから、もう1つは、事務のディスカッションのプロセスとか、あるいは扱った内容に関する信頼性とか、そういったことがありますので、まず、その辺の産業界の御質問にお答えいただくというふうな形からまず始めたいと思いますが。
 それでは、事務局からまず御説明といいますか、御回答といいますか。

【盛山課長】 それでは、大変詳しく、また、わかりやすく御意見をちょうだいしたものでございますので、このまず4人のお名前での意見書、あるいは今、平瀬委員の方からもちょうだいしました。第1点目の方はその意見書の方にも含まれるような、そういうことかと思いますので、この4人の資料7のお名前での意見書について、我々の考え方というんでしょうか、順次述べさせていただきます。
 まず、1の第1、「多様な生態系に則した基準案にすべき」ということでございます。おっしゃるとおりでございます。我々も同じように考えているわけでございまして、これにつきましては、議論を済ませたというんでしょうか、議論をしまして、専門委員会の報告にも、3の (3)になりますけれども、入っているところであります。御指摘の、例えば亜鉛の基準値案につきましては、淡水域につきましては、イワナ、ヒラタカゲロウの慢性毒性、あるいは、緑藻、ワムシ、ミジンコの急性毒性、これらを根拠にしまして、各水生生物の保全のための評価値を算定し、これらを総合的に判断して基準値としました。各毒性の情報からは、4~130μg/Lと、こういうような評価値が算定できまして、これらの中から最終的に30μgとしております。結果的にはヒラタカゲロウの算出値と同一となっております。さらに、導出された基準値案につきまして、総合的な検証も行いました。全国一律の基準値として妥当な数値であるという結論をいただいたと承知しております。
 それから、1の (2)の「保全すべき水生生物の明確化が必要」というところでございます。これについても、保全すべき水生生物の明確化が必要というのはおっしゃるとおりかと思いますが、これも議論を一応したつもりでございます。報告書の中でも、4の (1)、あるいは (2)といったところで含まれているかと思います。今回の環境基準等の設定は、生活環境という概念の中心にあります有用な水生生物、そして、それらの餌生物並びにそれらの生育環境と、こういったものの保護を対象とすると、こういうことであります。
 基準値のレベルは、公共用水域における水生生物の生息の確保という観点から、世代交代が適切に行われますよう、水生生物の個体群レベルでの存続への影響の防止をすることが必要であるということで、特に感受性の高い生物、個体個体、1つ1つという意味ですが、それの保護までは考慮せず、集団の維持、群としてということですね、これを可能とするレベルとしております。
 目標値の導出に当たっては、毒性試験結果が得られた魚介類を、主たる生息域から、先ほど説明しましたように3つの水域に区分しております。また、餌生物につきましても、それらを餌として食べます魚類に影響を及ぼすことから対象としております。それから、魚介類につきましては、種比を用いまして、当該水域の最も感受性が高い個体群の維持を可能とするレベルで目標値を設定しております。また、餌生物につきましては、御指摘のとおり、一般的に魚介類が同じもの、1つだけの餌を食べると、こういうことではないと思いますので、アメリカのEPAが採用している手法と同じ手法として、同じ属の幾何平均値をとった上で属間の最小値をとるということで差別化を図っております。
 それから、2番目の「現実に環境影響が生じているか否かを検証すべきである」という点でございます。これにつきましても議論をさせていただきました。専門委員会報告の3の (1)のところでございますが、一般論でいいますと、人間活動による生物への影響として、フィールドで観察されますのは環境中の金属や化学物質というものだけではなくて、例えばダムですとか河川の改修ですとか、そういう開発行為によります生息域の消失といったような多様な要因が関与するために、1つの物質による生態系への影響の程度、実際のフィールドで定量的に分離、特定することは困難でございます。ということで、目標値の導出に当たっては、実環境中の濃度レベルによると、こういうことではなくて、個別物質ごとに再現性のある方法によって得られた試験生物のデータをもとに、毒性の発現が生じないレベルから演繹的に求めると、こういうことにしてございます。
 その次が、3点目のまず (1)でございます。初めての水生生物保全環境基準に対する合意形成ということでございます。これにつきましては、御指摘のとおりかと思います。本日御用意しました専門委員会の報告、これらは先ほど鈴木委員からの御発言もございましたが、部会での御意見、御示唆、あるいは、5月からのパブリックコメントを踏まえた6回にわたる検討の成果として取りまとめたものであります。産業界の委員からのペーパーの内容については、それなりに織り込まれていると考えております。しかしながら、御意見を頂戴しましたとおり、初めての水生生物の保全に係る水質環境基準でございますので、基本的な概念、全体スキームなど、水環境部会として十分な御議論を頂戴することが望ましいというふうに考えております。
 その次、3の (2)、「水生生物保全環境基準の位置付け」についてでございますが、これについても議論はさせていただきました。専門委員会報告の5の (2)あたりかと思います。環境基準ですとかガイドライン、クライテリア、いろいろな言葉がございますが、これらの設定につきましては、各国のそれぞれの法体系の水質保全行政の中で定められております。各国ともこれら各種行政施策の目標なりツールなり、そういうものとして用いられておりますので、用語と法的規制措置との結びつき、その機能といったような関係は様々でございます。ということでございますので、諸外国の取扱いにつきましては、我が国との制度上の相違点を踏まえて検討をしたつもりでございます。すなわち、導出された目標値につきましては、すべてを環境基準とするということではございません。施策の必要性に応じまして、環境基準項目、または要監視項目、こういったふうに分けております。
 具体的には先ほど御説明があったかと思いますが、公共用水域等における検出状況等から見まして、全国的に目標値を超える地点があるもの、あるいは、目標値に近いレベルにあるものについて環境基準項目とするという区分。そして、第二の区分としまして、引き続き検出状況等に関する知見の集積に努めるべきものにつきましては要監視項目とし、第三としまして、今申しました第一、あるいは第二の基準、要監視に該当しない物質につきましては、目標値を公表しまして、事故時等の影響の判断を判定する指標とすることとしております。
 3の (3)でございます。「環境基準にするにあたっての判断基準」ということかと思います。そもそも論にもなるところでございます。環境基準といいますのは、行政上の目標としての基準でございます。環境を保全するという点で支障を防止するための規制、あるいはその他個別の具体的な施策の実施に当たりまして、最終的に我々のところでありますと水でございますが、それ以外にも大気でございますとか、土壌でございますとか、騒音でございますとか、そういったことにつきまして、どの程度の状態に保っていくのかということを目標に施策を実施していくという観点から、あるべき姿としての目標を定めたものが環境基本法に基づきます環境基準でございます。環境基準というのはそういうことでございますので、その法的性格はあくまで行政上の目標でありまして、事業の活動等に関しまして、直接的な規制ということでの数字として働くものではございません。
 現在、人の健康の保護に関する環境基準と生活環境の保全に関する環境基準というふうに、大きく2つにカテゴリーが分かれておりますけれども、その達成期間や暫定目標の設定といった点で異なる扱いがなされております。人の健康の保護に関する環境基準は、設定後、直ちに達成され、維持されるよう努めるものとされております。やはりこれは人の健康に直接影響があるからということであります。しかしながら、生活環境の保全に関する環境基準につきましては、施策の推進と相まって、可及的速やかにその達成や維持を図るものとされております。
 また、水質汚濁が極めて著しいため、水質の改善のための施策を総合的に講じても、期間内における達成が困難と考えられる水域につきましては、当面、暫定的な改善目標値等を適宜設定するといったことで、段階的に当該水域というんでしょうか、地域の水質改善を図りつつ、極力環境基準の速やかな達成を期するものというふうにもされております。今般、導入を検討しております水生生物の保全に係る環境基準は、人の健康の保護の観点からではなく、生活環境の保全の観点から設定されるものでありますので、こういう点で今までの人に対する健康項目に要されるものとは少し違う施策の強度、あるいは導入のスピードというんでしょうか、それが求められているものというふうに私どもは解しております。
 これはちょっとこの先の話になろうかと思いますが、環境基準設定後に議論されます本環境基準達成・維持のための各種管理施策の検討に当たりましては、人の健康の保護の観点からの基準との違いを十分に勘案して検討していきたいと我々は考えております。こういった部分につきまして、今述べましたようなことにつきまして、ある程度この中環審の水部会の場で我々もお話もしてきたつもりでございますし、こういった場以外でもお話をしてきたつもりでございますが、残念ながらなかなかうまく--我々の不徳の致すところなんでございましょうが、余りよく伝わっていないのではないかなと思っております。こういう点につきましては、今後努力をしていきたいと思いますが、御指摘のこれら1から3の点につきましては、御満足いけるレベルかどうかは別にしまして、私が記憶する限り、第1回目の本部会でもある程度の御議論がなされましたし、専門委員会でも第1回目、第2回目はこういったところを中心に議論が行われたというふうに私は記憶しております。
 それから、4番目、今回の基準値案の導出過程の信頼性に疑義があると、こういうことでございますが、 (1)、 (2)は後で専門委員の先生の方からお答えいただきたいと思います。
  (3)の審議過程のデータの開示、これにつきまして私の方からお答えさせていただきます。これにつきまして、毒性の評価、その他いろいろな情報は、これまでも毒性評価分科会の報告を公表したり、また、専門委員会以降、すべて公開するなど、検討状況についての通常とられる情報公開は十分に行ってきたつもりでございます。しかしながら、環境基準の設定が広く国民に影響を及ぼすということから、現状に甘んずることなく、今後さらに透明性の確保のための措置を講じてまいりたいと考えております。具体的には、例えば毒性の評価を行った分科会の資料ですとか、議事概要の公表、個別論文の採否の理由の公表等を行うなど、検討の状況につきまして、透明性の確保を図っていきたい。また、環境基準の位置づけを含めまして、一般の理解が深まるような政策構造の充実を図りたいと思っております。
 なお、特に毒性の関係でございますけれども、これは諸外国もそのようであると伺っておりますが、毒性の試験の検討といいますのは、一般的に非公開ということが多いようでございます。その理由としましては、個別の各企業のインハウスのデータも出していただいて検討すると。こういった関係で非公開としているというようなことが多いやに伺っているものですから、情報公開を原則としつつ、適切な評価に支障を生じることがないよう、できるだけ努力していきたいと思います。
 また、これは可能な限り広範なデータを広く国民が利用するという観点から、個別企業におかれても、毒性試験が行われました場合には、積極的に公表していっていただければ、さらに一層オープンな形になるのではないかというふうに期待しております。
 とりあえず私の方からは以上でございます。

【村岡部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、専門的な分野につきまして、須藤委員、お願いできますか。

【須藤委員】 それでは、先ほど鈴木委員、それから平瀬委員から大変貴重なコメントをいただきまして、大変ありがとうございました。また、その中で水生生物の保全というものは、何としてでも達成しなければならないとおっしゃっていただきましたので、大変うれしく思いましたし、私どもと全く意見が一致していると、思いました。しかしながら、委員の方から、そのプロセスで疑義があるという御指摘でございますので、その部分についてだけお答えさせていただきます。
 4の (1)になりましょうか、信頼性が不十分ということについて、これは科学者としては大変残念でありますが、私どもの理解を申し上げます。本文献の毒性試験は、試験方法や結果には問題はなく、目標値の設定に用いたことに問題はないと判断をいたしました。なお、この判断につきましては、本日、出席をしています若林委員が毒性分科会のリーダーとして、約10人ほどのこの分野の専門家と協議をしてまず決めたということだけお伝えさせていただきます。
 それから、EUのリスクアセスメントにおきましては、当然ですが、世界では英文で発表された論文のみを評価しておりますが、和文で書きました論文については、我が国のものは当然採択されていないというのもあったかと思われます。本専門委員会におきましては、当然日本語で発表されたものも対象にしましたから、関連の邦文論文も検討した結果、信頼し得る内容と判断して、先ほどのヒラタカゲロウについても信頼性のある論文と判断をいたしました。
 それから、2番目の慢性毒性データの集積でございますが、これにつきましては、ここに御指摘のとおりでございまして、公共用水域において通常維持されるべき水質の水準を検討することでございますので、慢性影響の観点から目標を設定するということはおっしゃるとおりで、私も当然そう思っております。したがって、原則として信頼できる慢性毒性試験がある場合には、これを目標値の導出に用いるといたしましたけれども、他方、すべてがあるわけではございません。それから、慢性毒性試験も、当然でありますが、費用及び技術的な制約等もございますので、少ないのも事実でございます。信頼できる慢性毒性試験結果が得られない場合には、米国及び英国におきましても利用されている手法と同様に、信頼できる急性毒性試験結果があるのであるならば、ACR、すなわち急性毒性慢性比を用いて毒性値を求めたということでありますので、慢性毒性試験をもっとやらなければいけないということは私どもも承知いたしております。
 こうした目標値の導出手順につきましては、国際的にも調和がとれたものでございまして、日本だけがこういうことをやったというわけではございませんので、妥当であると考えております。さらに、導出された目標値について、IPCSのEHCや最近の毒性試験結果も勘案した検証を行った結果、妥当であるという結論を専門委員会として得ましたので、先ほどの4の (1)、 (2)についてのお答えにさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

【村岡部会長】 ありがとうございました。
 この部会に出席していただいている委員の中には、専門委員会の委員を兼ねておられる委員もございます。また、そうでなくてもいろいろとこの問題について専門的にお詳しい方、あるいはこの議題に関しまして興味がおありの委員の先生方、たくさんいらっしゃると思いますので、広くそういった委員の方々から御意見等をいただきたいと思います。
 若林委員、手を挙げられましたので、ちょっと……

【平瀬委員】 部会長、すみません。ちょっと企画課長のお答えの中で、大事なことなので、1つだけ確認させてほしいんですけれども。
 私の誤解でなければよろしいんですけれども、こういう環境基準を決めるときに、実証データはいろいろあるので、それは考えないというふうにおっしゃっているんですか。要するに、こういうラボデータとか分析データからだけ決めると、そういうことをおっしゃっているわけではないですね。

【盛山課長】 先週の6月19日の専門委員会でも、パブリックコメントの関係で同じような議論が1つあったかと思います。そのときの議論といいますのは、具体的な、例えば今回の鉛川というんですか、ここのデータについて、我々の判断としましては、今後、やはり範囲による影響があるのではないかというふうには見ておりますが、フィールドでの調査というんですか、実際のそこの調査というのは、1つの物質、例えば今回は亜鉛でございますけれども、それについてだけの影響を具体的なフィールドで見るというのは難しいものですから、全体の傾向を見るという点では、実際のフィールドのを使うわけなんでありますが、具体的な毒性の影響、その他についてはフィールドではないラボでございますね、実験室でのデータを使う、これが一般的ではなかろうかと、こう考えてやっているわけです。

【村岡部会長】 それでは、若林委員、手を挙げておられましたので、どうぞ。

【若林委員】 産業界からのいろいろアドバイスをありがとうございました。私、いろいろな検討に今携わっておりまして、ちょうど1年ぐらい前に化審法の改正に関して、経済産業省の委員会に出たときに、産業界の多くの人から、時期尚早でまだ進めるべきではないというような御意見をいただいたんですけれども、今の鈴木委員の御意見ですと、大筋水生生物を守る施策を進めるということについては同意されているというか、推進したいというお考えをお持ちだということを聞いて、まず、それは安心いたしました。
 それで、4番の話から先にさせていただきたいんですけれども、信頼性がないというか、プロセスに問題があるということは、私を含めて、委員そのものが信頼できないというふうに言われているような気がいたしまして、委員を代表しまして、少し答えさせていただきたいんですけれども。
 まず、このヒラタカゲロウの試験がガイドラインに沿っていないというようなコメントがございましたけれども、今、OECD等のガイドラインができている試験方法はある程度限られておりまして、それに関しましては、参考資料の18ページを見ていただきたいんですけれども、この委員会というのはもう5年ぐらい前からずっと基本的な検討を進めておりまして、こういう条件に合ったものを基本的に採用するということをやっております。ただし、3種の生物、魚と藻類とミジンコ以外のものに関しまして、特に底生昆虫の慢性影響の試験方法というのは、まだ確立したものがございませんので、ガイドラインそのものがないという状況です。今、須藤委員長の方からも御説明ありましたように、外国語でパブリッシュしたレポートの前に、かなり丁寧な試験方法に関する検討をやっております。それで、例えば水質エンドがないとか、いろいろな検討をやった結果を受けてこのレポートになっております。
 それで、私、10年間IMOのGESAMPという組織に属していまして、既に 1,000近くの化学物質の評価を諸外国の委員とともにやっておりますし、それから、WHOのクライテリアにも関係いたしましたけれども、先ほど、EUが認めていないものの全く逆だというような評価をされましたけれども、やはりその委員会、委員会で多少評価の仕方が変わってきて、要するにある委員会で採用されても、ほかのところで採用されないというようなことはございます。ただ、我々は甲殻類の専門家もおりますし、そういうものがきちんと原論文、あるいはそこら辺の参考論文までさかのぼって読んで、少なくとも我々の委員会では採用していいというふうに判断をいたしております。
 それから、急性毒性と慢性毒性の関連ですけれども、健康影響と異なりまして、水生生物に対する慢性影響の試験データは、今回用いているのは非常に限られたエンドポイントだけです、死亡と成長と繁殖と。それだけでやっていますと、結構、健康影響の人には本当なのというような言われ方をしますけれども、Acute Chronic Ratioというのは、化合物群によってかなりきちんとしたデータが出ております。それに基づいてOECDもそうですし、諸外国でも慢性影響がとれないものについては、Acut eChronic Ratioを用いて算出をするというのは、ごく一般的に行われております。
 それで、産業界の方にもたくさん話したので、少しいいですか。私は30年来ずっと、どうして我が国は諸外国には既に入っているようなシステムが入っていないのかということで、ずっと水生生物を保護するような何らかの施策を進めるべきだということを主張してまいりました。この委員会にも、当初の水生生物を守る等々の委員会の一番最初から参画しておりますけれども、その委員会でまず始まったのは、生態系を守ろうということだったんです。だけれども、結局今の環境基準というものが既に法律で定められておりますので、それではどうして法律を変えないで水生生物を守れるかということで、餌生物ということを入れたということになっています。
 それで、参考資料の20ページに最終慢性毒性値の導出手順というのがございますけれども、多分私の記憶ですと、こういうものはもう既にパブリッシュしていますし、それから、それに基づいて導出したデータも既にかなり前にパブリッシュしています。それから、このシステムそのものも、私の記憶では部会で承認されていると思っております。こういうやはり日本的な仕組みを入れて何とか、なるたけ多くの水生生物を守ろうとしているというのが今の取り組みだと私は思っています。
 それで、現場を見ろというお話なんですけれども、現場は結局汚染されていれば、汚染に合った生態系ができていると。たとえそこに場合によってはヒラタカゲロウがいても、それは非常に強い耐性を持っているものが生まれてしまっているということで、要するに、望ましいというか、健全な生態系からはかなり大きく外れているというふうに私は認識しております。
 それで、特定の生物がいなくなりますと、生態系というのはがたがたと崩れていくものでございます。そういう意味から、1つの生物でそういうような基準を決めても、生態系に対して大きな影響を及ぼすという意味から、困ると言ったらいいんでしょうか、それでやることによって生態系を守ることができると。ただし、今回の場合には、本当に日本的なやり方だったんですけれども、日本での有用生物とその餌生物ということで、場合によったらもっとその主要生物が食べないようなものまで入れますと、もっと厳しい基準になった可能性はございます。
 それから、今回出たデータにつきましては、その仕組みでやった上に、専門委員会で森田委員の方が諸外国で出ているWHOのクライテリアや何かを全部もう一度検討して、それなりにそれらと比較しても、余り大きな違いはないというか、おかしな値になっていないということはこの間の専門委員会で発言されております。

【村岡部会長】 ほかの委員からもいろいろ御意見をいただきたいと思いますが。

【池田(駿)委員】 私の方から、河川工学の見地から少し御意見を申し上げたいと思います。
 河川工学ではBODとかCODとかというのはよく使われるんですが、そのほかに指標生物を使った生物学的な水質環境分布というのが行われています。ここで検討しおりますイワナ・サケマス類というのは、指標生物でいいますと1の分類でございまして、これは森下郁子さんが提案した水質階級なんですが、最も河川工学の分野では使われているというものであります。そこではヒラタカゲロウは1の分類で、魚類としましては、イワナ・サケマス類、イワナとかヤマメ類になっているんですね。ところが、コイとかフナというのは3級でありまして、そこには昆虫類としてヒラタカゲロウは出ておりません。そこではやはりトンボだとかゲンゴロウ、あるいはユスリカという種類が書かれていまして、明らかに私はコイ・フナ域と、それからヤマメとかイワナ類が住んでいる場所では、昆虫の種類が違うだろうと思うんです。
 そういう観点から、この基準の導出根拠になったこの資料4の別紙の1を拝見しますと、これはちょっと私、よくわからないんですが、イワナ・サケマス域とコイ・フナ域の餌の生物が全く同一なんですね、よく見ますと。これは非常に奇異な感じがします。多分、イワナ・サケマス類が食べている餌の生物と、コイ・フナ域でコイだとかフナが食べている餌生物は当然違うわけだと思うんですね。そういう面で、コイ・フナ域でヒラタカゲロウ類を使って30という毒性値がデータとしてありますので、その結果を使っているんだと思うんですが。その合理性というのは、私はまだよく理解できないところがありまして、そのあたりを少し御説明をいただければありがたいと思います。こういう環境基準というのは、やはり思い入れの問題ではなくて、やはり合理性が必要だと私は思いますので、御説明いただければ幸いかと思います。

【村岡部会長】 ありがとうございます。
 御質問というふうな形でしたが、ちょっと広く初めに御意見をいただきたいと思いますので、先ほど手を挙げられた方、佐藤委員、どうぞ。

【佐藤委員】 先ほど産業界の意見書の中に名を連ねておる1名でございますけれども、日本製紙連合会の副会長でございます。三菱製紙の社長の佐藤でございます。
 今回提案されております生態系保全の観点を踏まえて水質環境基準値を設定する考え方については、大変画期的でございまして、大きな意義があると考えております。それゆえに、水生生物の影響に着目した水質環境基準の基準値の設定でございますが、これに当たっては、やはりデータの蓄積を図って、科学的な妥当性を十分検証すべきであろうと思います。亜鉛の淡水域、海水域の基準値に対する疑義とか、あるいは、今、先生の方からお話がありました川の下流域、コイ・フナ領域について、ヒラタカゲロウの成長を根拠にするのがいいのかというような疑義も感じておるところでございます。
 それとともに、亜鉛を環境基準項目として設定した理由でございますけれども、目標値を超過する地点が多いと。淡水域で約11%、海域ではおよそ5%であり、発生頻度が高いためであるというふうに先ほどの第一次報告の16ページに書かれております。しかし、その目標値の妥当性についての議論に異論があるわけでございまして、それが適切であるかどうかというのが問題とされているのであります。答申されている目標値をオーバーしている地点は、淡水でもって 2,294地点もあるんだと。それから、海域で 597地点もあるんだと。これも16ページに書いてあるところでございます。その数値の分布は、ヒストグラムで見ますと非常に幅広く分布しておりますので、オーバーの程度に応じてサンプリングをしていくということで、現実に水生生物にどのような具体的な環境影響が生じているかと、そういったフィールド調査がここでは必ず有効になってくると。その結果をやはり加味して環境基準値を設定することが、最低限必要な科学的アプローチであろうと思います。
 また、亜鉛は生物にとっては必須元素ということでもありますし、たまたま昨日の日経新聞の夕刊の健康欄にも書いてありましたけれども、人の場合には亜鉛の摂取が不足すると味覚の障害を起こすということもありますし、先ほど鈴木委員の方からは、水生生物に対しても必須だというような知見も表明されました。その水生生物の保全環境基準、水生生物保全の環境基準第1号がこの亜鉛でございますので、この基準値の設定に関しましては、フィールド調査まで踏み込んでやることによって、その中で目標値の妥当性に対する知見を得るとともに、水生生物に対する環境基準の目的とか、位置づけとか、達成の手段とか、そういったようなことについての論議が深められるというふうに思います。
 そのほかに、3つの要監視項目というのは、出現の頻度が少ないということで要監視項目になっているんでしょうから、クロロホルムとフェノールとホルムアルデヒドでございますけれども、これらの指針値についても同様にフィールド調査を行って検証を進めるべきだと思います。
 以上の意見でございますけれども、配付されておりますパブリックコメントの意見を見ましても、私と同様な意見を含めて、非常に多くの反対意見がございますので、いわば憲法とでもいうべきこの環境基準値の設定につきましては、さらに時間をかけて検討を深める必要があるというふうに考えます。
 以上でございます。

【村岡部会長】 ありがとうございます。
 ほかの委員、いかがでしょうか。
 高岩委員、どうぞ。

【高岩委員】 私、水産の立場から心配な点について二、三お願いといいますか、お尋ねしたいと思うんですが。
 専門の先生方が、専門委員会を6回にわたっての御審議につきましては、大変な御苦労だと思っていますし、特に今私どもにとりましても食の安全、安心という問題が大変厳しく問われるときですから、当然のことながら環境基準というものは設定されてしかるべきものだと思っておりますけれども、今回の場合は、生活環境保全を目的とすることでございますが、一般的にはなかなか今までのような人体に対する有害か無害かというような判断しかされんのではないかと。そういうことが我々にとっては大変心配される1点でございます。
 既に数値を決めますと、オーバーしている海域から水揚げされる魚が有害だとか無害とかいうことで、風評被害の的になりはせんのかなというような心配を持っております。実際に今月の初めに厚生労働省が発表した妊娠している人とか、あるいは妊娠の可能性のある人は、水銀の高いキンメダイは摂取しないようにした方がいいというような注意喚起があったために、キンメダイがほとんど売れなくなったこと。ここでもう一言、「一般の人には全く関係ありませんよ」という一言をつけていただければこういったことはなかったと思うんですが、今回の発表というのは極めてそういう点では配慮が足らんがために、その漁業者が生産ができなくなったというようなことでございます。
 それから、もう1点は、今回設定されますと、既に亜鉛の値でオーバーされている河川や海域が多くあるということが載っておりますけれども、この地域に対する影響はどうなのかなと心配している立場におります。
 いずれにしましても、もっともっと調査し、基準設定につきましては何も異論はございませんけれども、できるだけ慎重にやって、不安を与えないような形で発表してほしいなと。お願いでございます。
 以上でございます。

【村岡部会長】 ほかに意見ございますか。
 高橋委員、どうぞ。

【高橋委員】 意見書の1の (2)のところの最後の文章、「特に代替性のある餌生物を最終的な保護対象とすべきかの議論が必要である」というところについて、水生生物に多少かかわっている者として意見を述べたいと思います。
 先ほど若林委員もおっしゃいましたけれども、私はこの今回の取り組みについては、本当は生態系を守る、生物多様性保全という観点をしっかり入れてほしいと願っていました。けれども、現在の法体系の中で実現するために魚類と餌生物という、そういう生物を対象にするということになったというふうに理解しています。その理解でいいのでしょうね。
 それで、ヒラタカゲロウがいなくなっても、魚はほかのものを食べたらええやないかということだと思うんですが、私のもともとの生態系保全、生物多様性保全という考え方から申しますと、そういうものではないのですと言いたいのです。もっと具体的に申しますと、ヒラタカゲロウ、私は上流域の魚をやっておりますので、それほど詳しいわけではございませんが、石の表面にくっつく水生昆虫で、かなり強い流れでも流されないような形体をして、石の表面をはい回って生殖、餌を食べています。それが少なくなりますと、まず、餌になるものですね、石の表面のフローラに大きな変化が生じると思います。ですから、ヒラタカゲロウだけがいなくなって、ほかがそれまでと同じ状態ということは絶対あり得ないです。
 現場を見ていないので、私何とも言えませんけれども、宮城県の細倉駅下流と鍛冶屋橋と、この比較のところで書いてございます点ですね、先ほど何か細倉駅の方は藻類がたくさん生えていてとおっしゃっておりましたか。そういう違いそのものがヒラタカゲロウの減少によるものかもしれないですね。ヒラタカゲロウが減少することによって藻類がふえてきているという可能性もあります。でも、これは現場を見ていないので断言はできませんけれども。そういうふうに、1つの種がいなくなることによって、連鎖的にいろいろな変化が起きてくると。そういう、場合によっては予測できないような変化も起こり得るわけですから、余り簡単にヒラタカゲロウだけいなくなったっていいではないかというふうには言っていただきたくないと思います。
 それから、先ほど若林委員がおっしゃいましたけれども、自然状態としてある物質がちょっと多かったところには、耐性のある特殊な生物が存在するということはよくあることです。例えば、魚類でいいますと、恐山湖にウグイがおります。想像もできないようなことですけれども、元気で生活している。よそからウグイをそこへ持ってきたら生きていけるかどうかということは、ちょっと疑問だと思うんですけれども。そういうこともございますので、なかなか現場の評価というのは難しいです。現場はやはり考える上でのデータにもしなければいけないと思いますけれども、その評価というのはなかなか難しいなという気がします。
 それから、生物多様性とか生態系保全ということがなぜ大切かと。まず人間が大事ではないかという考えもあると思うんですけれども、そこら辺の線引きというのは、また私自身とても難しいものだなと思います。
 また、ちょっと話がずれてしまうかもしれませんけれども、地球の歴史の中で、ドミナントな生物が入れかわってしまうような大きな多様性の喪失の時期というのが何回かあったわけですね。一番新しいのは 6,500万年前の中生代から新生代に変わった時期ですね、恐竜の絶滅の時期としてよく知られている。現在、この地球上での生物多様性の喪失というのは、その 6,500万年前をしのぐと言われています。そういう時期に私たちは生きている。人類にとって初めてそういう事態を迎えている。ですから、何が起こるのだろうかと。私たち自身の生存の基盤が、実は失われていっているのではないかと。そういう非常に困難な時代に直面していることが推察されるわけです。今もこの基準を決めることによっていろいろ難しい面があるんですけれども、そういうことも考えた上で私たちはこの困難な事態に対処していかないといけないと、そういう決意が必要だというふうに思っています。

【村岡部会長】 ありがとうございました。
 この部会は、限られた時間でやっておりますので、私、意識的に質問もあるような御意見、あるいは反論も多分あろうかと思いますが、それを抑えておりまして、できるだけ広く委員の先生方から御意見をいただくということに今は徹しております。それで、こういう時間で余り残りもないんですか、あと1人ぐらいかなと思いますが。先に手を挙げられた……あと2人に限らせてもらいます。

【満岡委員】 私は化学産業会なのですが、今日色々御説明を聞きましたが、やはり亜鉛のベースになっているデータの信頼性については勉強したいと思います。また、フィールドで基準値をオーバーしているところが多いのですが、その状況をつかむことは重要と考えます。我が国と同様な環境基準を設定している英国ではフィールド調査を実施して設定していると聞きます。その他の国ではクライテリア的であって環境基準ではないのではないでしょうか。環境基準とするなら、超えているところで何が起こっているのか調査が必要と思います。
一つの物質を管理していった場合、全体的なバランスはいいのか、特に生物にとって有用元素である亜鉛を管理した場合、他の生物で欠乏症になるとか、逆の面からの考察も必要ではないでしょうか。餌は代替できるが、有用元素の亜鉛は代替不可能。亜鉛は世の中で広く、既に相当な期間しようされて来ており、おそらくあるバランスに来ているのではないでしょうか。そういう中で適応も起こっているのではないのかなと。一律に管理する、そのレベルによっては新たな生態系のアンバランスが生じないか、そんな思いもあって環境基準は慎重にと、意見として言わさせていただきました。

【村岡部会長】 ありがとうございます。
 それでは、真柄委員、どうぞ。余り時間もありませんので……

【真柄委員】 時間をとらないでやります。
 私は、環境基本法、基本計画で水生生物のことを考える環境基準をつくるときには、基本的には先ほどからお話になっているように多様性指標をどうやって維持するかと。まさにレッドデータブックでどんどんなくなっている水生生物がいるわけですから、それに対してどうするかというのは、本来環境省の仕事だと思っていました。しかし、先ほどからあるように、環境基本法で今の枠組みでいくとすれば、こういうやり方しか水生生物に配慮した環境基準はできないんだという、やはり枠があるということを認識した上で環境基準のあり方を検討してやられるということだと思います。
 それから、専門委員会の御報告につきましては、私自身は水道法の水質基準の改正に関する部会の委員長をしていましたし、WHOの仕事をやっておりますので、いろいろ御議論のおっしゃることはよくわかります。それは、今のいわゆる閾値を決めることができる科学の限界を超えていらっしゃることを産業界の方々は要求されているんだろうというふうに認識をしております。
 WHOでも、先ほど亜鉛は1mg/Lというお話がございましたが、そのとおりです。これは、あくまでも人が水を飲んで渋いと感じる、そういう観点から決めている数字です。同時に、WHOのドキュメントは、これはエッセンシャルエレメントであるから、それの話を考慮して決めるのと、それから、悪影響を防ぐ観点から決めるのとは別な話だと、これは分けて考えなければいけないという、そういう議論になっています。
 それで、しかしそうは言っても、ではどこまで必要だというデータが出てくれば、それを今度は考慮して基準値を見直そうではないかという手続、プロトコルになっております。専門委員会の報告でも、新しい知見が出るに応じて見直すというふうに最後に書かれていらっしゃいますので、私はそういうスタンスを是非とっていただきたいというふうに思います。
 結局、人のことで言えば、人が死ぬか人が病気になるかというエビデンスがないと基準が決められないという話ではもうなくなっている時代ですので、そういう意味ではGLPで、あるいはGLPに近いところでやられたデータをベースにある程度の値を決めるというのは、現在の科学水準ではやむを得ないことだろうというふうに理解しなければいけないだろうと思います。
 それから、課長がおっしゃられましたが、私は日本の環境基準は基準値がクライテリアだと思っています。決してスタンダードではありません。水道の水質基準は基準です。でも、環境基準は望ましい行政目標ですから、逆に今回の専門委員会の報告を踏まえて、この基準値をこれからどうやって運用していくかということをできればもう1回部会を開いて議論していただきたいと思います。数値ではありません。この基準をこれから環境政策としてどうやって展開していくか、あるいは水域のあてはめの仕方をどんな原則でやったらいいかとか、そういう観点でもう1回部会を開いていただきたい。専門委員会の数値としてはこれは結構ですけれども、部会としてはそういうことをぜひ議論していくべきだというのが私の意見です。

【村岡部会長】 ありがとうございます。
 これで打ち切りというふうに言いましたけれども、さっき同時に中杉さんが手を挙げられましたので、公平性を守る意味から中杉さんの御意見を。

【中杉委員】 私は専門委員会に参加していないので、専門委員会の報告書を見せていただきますと、今、各皆さんの御意見を伺っていて感じた点を4つぐらい申し上げます。
 1つは、フィールド調査の話がありました。これは多分事務局が、というか、若林先生が御説明になったように、非常に難しいんだろうなと。これは池田先生とか鈴木先生が御専門なのでお伺いしたいんですが、人の健康の場合もフィールドを実際に見てくると非常に難しい。職業暴露みたいなところ、そういう特殊な条件のところでなければなかなか難しいのかなというふうに思って見ているんですが。実際にそういうふうなことがフィールドでうまく見つかってくるんだろうかと。それを突き詰めていくと、結局はいつまでもできない話になってしまうというふうに思います。
 2つ目は、鈴木委員が言われた一番弱いところをやっているのではないかという点です。これは報告書を読んでみますと、私なりの解釈でいきますと、決してそんなことはない。一番弱いということでいきますと、これを見ていくと、別紙の1ですね、緑藻類、これは急性毒性だから入れていないという形になっていますけれども、急性毒性を生じる濃度は普通は慢性毒性より高いんですけれども、低い値になっている。これは本来、この一番弱いところをやるならこれであるし、あるいは、いろいろな生物でやっていないということで、安全係数を当然見なければいけないわけです。これは安全係数を見ないというふうにしています。そういう意味では、一番弱いものを守るという姿勢でこれは貫いているわけではないというのが2つ目です。
 それから、3つ目は、対策についてどうするかという話は、今、真柄先生が言われたように、基準ができてそれをどう担保していくかという話については、これは私自身は--環境省の方は、課長が先ほど「生態系については」というふうに言われましたけれども、今検討している健康影響からの環境基準の項目の専門委員会でも私は発言をさせていただきましたけれども、従来型の環境基準の10倍で排出基準という、そういうリジッドなことというのももうそろそろ見直すべきだと。そういう時期に来ているだろうというふうに考えています。ですから、今回も当然そういうことは大いに議論していくべきだろうというふうに考えています。
 4つ目でございますけれども、もう1つ、全体の中で議論をしていかなければいけないという、生態影響を守るときに。そういう意味では、もう一方の方で、若林先生も言われたように、化審法が動いています。化審法の議論をするときに、化審法で使っていいものは、こちらの例えば水の方では、ちゃんとこういうふうなことで管理ができていますよということになりますと、それを踏まえた上で化審法の議論ができるんだろうと思うんです。こちらの方でそれがいつまでたってもできない、将来、先になるという話になったりすると、今度は化審法の方でそれを見込んだ形で少し厳しく見なければいけないという議論になるのではないかと。そこら辺を、全体をバランスよく考えるということが必要ではないかというふうに私は思っております。

【村岡部会長】 ありがとうございます。
 いろいろたくさんの意見をいただいておりますが……

【若林委員】 1分だけヒラタカゲロウの御質問の答えさせていただけますか。だめですか。

【村岡部会長】 1分だけですか?

【若林委員】 1分だけ。

【村岡部会長】 では。

【若林委員】 池田先生から御質問がありましたので。先生がおっしゃるのは、汚濁階級との関連のコイとフナだと思います。ここで分けているのは単純水温です。ヒラタカゲロウの今までの文献で生息域を見ますと、19度から32度という分布で、あらゆる河川でヒラタカゲロウ科が存在するということがわかっています。

【村岡部会長】 いただきました意見で、それに対する反論とか、あるいは関連する意見とかいただいておりますと、いつまでたっても時間が終わりませんので、私の判断でこのようにさせていただいたらどうかと思います。今回の議論で、やはりこの水生生物にかかわる環境基準を決めるということは初めてのことでありますから、それなりに慎重でなければいけないということで、これは産業界からの意見でもあります。しかし、どういうわけだかこれまで何回かこの話題を取り上げてきたこの部会でも、余り意見がなくて、今日になって集中したというところがあるんですけれども、それはさておきまして、これだけたくさんいただいた意見でございますが、今ここでまとめるということはちょっと無理かと思いますので、論点を整理してみてはどうかというふうに思います。それを整理していただきまして、やはりこれはもう1回ぐらいは部会を開きまして、今日の延長になるか、あるいは論点を絞ってまた討議していただくか、これはまた私と事務局とで話し合いたいと思いますが、そういう形で次回に議論をさせていただくということにしたいと思います。
 しかし、聞いておりましたら、例えば論点の中でも目標値の導出の考え方とか、あるいはその方策とかいったもの、それから、環境基準の目的そのものについては、いろいろ意見があるものの、大体議論としてはまとまってきておるように思います。あと理解をし合うということになろうかと思うんです。ただ、環境基準の位置づけについては議論いただきましたけれども、やはりこれについてはもう少し討議をいただくということ。それから、真柄委員もおっしゃったように、あとの管理施策のことにつきまして、基本的にどんなことを考えなければいけないかということも大きな話題ではないかと思います。
 そういったことで、論点を整理させていただいた後、次のステップにまいりたいと思いますが、この私の意見に対しまして、事務局は何か御提案等ございますか。

【盛山課長】 委員の先生の御了解が得られれば、そのような形で論点の整理をして、ペーパーをもとにまた是非議論していただければと、こう考えます。

【村岡部会長】 委員の先生、そのような進め方でいかかでしょうか。御了解いただけますか。
             (「異議なし」と呼ぶ者あり)

【村岡部会長】 ありがとうございます。
 何かございますか。

【池田(正)委員】 もし論点の整理をしてくださるんだったら、その中にぜひ1点入れていただきたいことがございます。実は、これは先週の3省合同のある部会で表在化してきたことの1つですが、可溶性の無機亜鉛塩と、難溶性の無機亜鉛塩とでは、明らかに毒性が異なります。ただしデータベースは哺乳類への毒性です。どういう塩かは守秘義務がある会合でございましたので、申し上げられません。事務局でお調べいただければ分かると思います。この分析法を拝見していますと、酸処理をして、しかるべき分析機器にかけることになっています。そうしますと、可溶性も難溶性もみんな一緒に測れてしまいます。こういう時代ですから、可溶性のものと難溶性のものを分けることは易しいことだと思います。今までのややこしい議論のかなりの部分がそれで解けるのではないかという気がして伺っておりました。1点、その部分からの御検討も入れていただければありがたいと思います。

【村岡部会長】 ただいまの池田委員のように、今日の議論を踏まえての話ですが、ちょっとつけ加えたいという意見も後で出てくるかと思うんで、そういった意見がおありでしたら事務局の方に申し出ていただくと。その期限等につきましては、また事務局と私とで相談させていただきますが、そういった形で、余り飛躍した意見はいただきたくないんですけれども、今日の議論の関連する部分ということに限らせていただいた上で、また御意見がありましたら事務局の方でまとめていただくと、このようにさせていただきたいと思います。
 それでは、長くなりましたが、この議題につきましてはこれで終わりますが、引き続きまして議題の2といたしましてその他の報告事項があるようでございます。その点について。

【仁井課長】 資料6にこの3月に開かれました世界水フォーラムの結果について簡単にまとめております。もう時間が押しておりますので、内容については後ほどお読みいただければというふうに思いますが、3月16日から23日までの間と、予定を上回る2万 4,000人の参加という形で実施できたというところでございます。後ほど中を見ていただければというふうに思います。
 以上です。

【村岡部会長】 ありがとうございました。
 あとはその他でございますが、事務局から何かありますか。

【盛山課長】 先ほど部会長からお話がありました論点整理、追加すべき項目でございます。今月中、例えば来週30日の月曜日までに我々の方に何らかの形で御連絡をちょうだいできればというふうに考えております。
 それから、もう1点、次回の部会の関係でございますが、そういったことも踏まえまして、部会長とも論点整理、このあたりも相談の上、日程調整をさせていただきます。決まり次第御案内を差し上げますので、どうぞお繰り合わせの上、御出席をお願いしたいと思います。

【村岡部会長】 本日は非常に活発な御意見をいただきました。本当にどうもありがとうございました。ちょっと時間が超過いたしましたことをお許しいただきまして、本日の部会はこれで閉じさせていただきます。どうもありがとうございました。

午後6時06分 閉会