中央環境審議会水環境部会 瀬戸内海環境保全小委員会(第16回)議事録

議事次第

開会

議題

(1)関係府県・関係団体からのヒアリング

(2)その他

閉会

出席者

委員長 岡田光正委員長
委員

大塚直委員、高村典子委員、西嶋渉委員、三浦秀樹委員、池道彦委員、岩崎誠委員、沖陽子委員、末永慶寛委員、西村修委員、野田幹雄委員、細川恭史委員、柳哲雄委員、山田真知子委員、 鷲尾圭司委員

関係者

大阪府 環境農林水産部 環境管理室 環境保全課 堀川課長

兵庫県 農政環境部 環境管理局 水大気課 吉田班長

大阪大学 大学院 工学研究科 西田教授

徳島大学 環境防災研究センター 上月教授

特定非営利活動法人里海づくり研究会議 田中事務局長

笠岡市立カブトガニ博物館 森信主任学芸員

事務局

環境省:水・大気環境局長、大臣官房審議官、水・大気環境局水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、閉鎖性海域対策室長補佐、閉鎖性海域対策室審査係長、自然環境局国立公園課国立公園利用推進室長補佐

文部科学省:文化庁文化財第二課課長補佐

農林水産省:水産庁増殖推進部漁場資源課長補佐、水産庁漁港漁場整備部計画課計画官

国土交通省:水管理・国土保全局 河川環境課企画専門官、水管理・国土保全局下水道部流域管理官付課長補佐、港湾局海洋・環境課長補佐

議事録

午前10時00分 開会

○佐藤係長 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会水環境部会第16回瀬戸内海環境保全小委員会を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございます。

 本日の出席状況でございますが、委員23名中、15名の委員の御出席をいただいております。また、委員及び臨時委員7名中、5名の御出席をいただき、過半数の定足数を満たしておりますので、本小委員会は成立しておりますことを御報告いたします。

 なお、足利委員、白山委員、清水委員、白石委員、田中委員、佐伯委員、中瀬委員、宮迫委員につきましては、御都合により御欠席との連絡をいただいております。また、三浦委員につきましては、御都合により途中退席いたします。

 また、本日は関係者からヒアリングを実施させていただきますので、発表者の方々を御紹介いたします。

 大阪府環境農林水産部環境管理室環境保全課課長の堀川様でございます。

 兵庫県農政環境部環境管理局水大気課水質班班長の吉田様でございます。

 大阪大学大学院工学研究科教授の西田様でございます。

 徳島大学環境防災研究センター教授の上月様でございます。

 笠岡市立カブトガニ博物館主任学芸員の森信様でございます。

 特定非営利活動法人里海づくり研究会議事務局長の田中様でございます。

それでは、議事に先立ちまして、水・大気環境局長の小野より御挨拶を申し上げます。

○小野水・大気環境局長 おはようございます。環境省の水・大気環境局長の小野でございます。先生方、朝早くから、お忙しいところ、どうも御出席いただきまして、ありがとうございます。

 本日は前回に引き続きまして、年度末の取りまとめに向けて第2回目のヒアリングということでございます。特に先ほど御紹介させていただきましたけれども、大阪府の堀川様、それから兵庫県の吉田様、大阪大学の西田様、徳島大学の上月様、笠岡市立カブトガニ博物館の森信様、里海づくり研究会議の田中様には、大変忙しいところおいでいただいておりまして、本当に感謝いたします。答申の取りまとめに向けて、非常に重要な内容になりますので、ぜひ、よろしくお願いいたしたいと思います。

 ということで、前回に引き続きまして第2回目のヒアリングということでございますので、引き続き活発な御議論をお願いできればと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

○佐藤係長 続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 資料につきましては、環境負荷削減の観点からペーパーレス化の取組を推進しております。お手元のタブレット端末に本日の資料が一式格納されております。タブレットの左上のボタンを押していただき電源を入れて御確認ください。

 議事次第、配席図、資料1~2、参考資料1~2となっております。各資料を御覧になりたいときは、その資料が表示されている部分を一回タップしてください。見終わりましたら、もう一回画面をタップしていただくと左上に矢印が出てきますので、それを押していただくと前の画面に戻ります。

資料の不足やタブレット端末の不具合がありましたら、事務局にお申しつけください。議事中も同様にお申しつけください。

本日の会議は、中央環境審議会の運営方針に基づき、公開とさせていただいております。

なお、プレスの方はこれ以降の写真撮影等はお控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 それでは、この後の議事の進行につきましては岡田委員長にお願いしたいと思います。岡田委員長、よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 はい、かしこまりました。

 委員の皆様方、また、関係者の方々、朝早くからお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 早速ですが、議事に入りたいと思います。

 先ほど、局長の御挨拶がございましたように、今回は2回目のヒアリングでございます。各御説明いただく皆様方からは、大変時間が短くて恐縮ではございますが、それぞれ15分ということで、よろしく御協力のほど、お願いいたします。

質疑応答ではございますが、前半3人の先生にまとめて御説明いただき、その後、一度時間をとり、さらに後半の御説明の後、もう一度時間をとるという形で進めさせていただきます。それから最後に全体を通じての御意見、もしくは御質問をいただく時間をとりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、早速でございますが、前半のお三方に御説明をいただきます。

まず、大阪府の堀川様、よろしくお願いいたします。

○堀川課長 大阪府の環境農林水産部環境管理室環境保全課長の堀川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、資料2-1によりまして、「豊かな大阪湾」の創出に向けた大阪府の取組について、御説明させていただきます。

 2ページの目次を御覧ください。この後、まず瀬戸内法に基づく大阪府の取組について、次に、その計画の推進検討のために設置いたしました懇話会について、次に、現在進めております課題解決に向けた府の取組についての御紹介について、最後に、今後必要と考えております課題解決に向けた方策についてという順で御説明させていただきます。

 3ページをご覧ください。まず、瀬戸内海沿岸の各府県さんと同様に大阪府も瀬戸内法並びに国の基本計画の改定に対応し、平成28年に瀬戸内海の環境保全に関する大阪府計画の変更がございました。計画では、沿岸域の環境の保全、再生及び創出といった目標を掲げた上、大阪湾の特徴であります湾奥部、湾中央部、湾口部のそれぞれによって、水質や生物の生息環境が大きく異なることから、三つのゾーンに区分し、きめ細やかな取組を推進するとしております。

なお、このゾーン区分の設定や計画そのものにつきましては、本日お越しの大阪大学の西田先生にも府の環境審議会の部会の委員に御就任いただきまして、検討に参画いただきましたところでございます

次のページをお願いいたします。大阪府計画では三つのゾーンに分けて取組を進めようとしておりますが、中でも湾奥部は、ここに示させていただいておりますように、埋立地間の海域での栄養塩の偏在、かつて土砂採取をした跡である窪地での貧酸素水塊の発生、垂直護岸が多くて、生物の生息に適した場が少ない、といったような環境保全の課題が多くあります。これらの課題を解決していくことが湾全体の環境保全、再生に重要となりますために、平成29年度に学識経験者、国の出先機関、府や大阪市の港湾並びに関係部局で構成します「豊かな大阪湾」創出手法に関する懇話会を開催しました。ここでは国内外で実施された実際の対策や研究などを持ち寄りまして、それぞれが共有するとともに、実現可能性にとらわれず対策のアイデアについて意見交換や情報交換を行ったところでございます。

次の5ページを御覧ください。ここからは大阪湾の湾奥部を中心とした課題解決に向け、府の環境農林水産部で現在実施しております取組につきまして、(1)の栄養塩の実態調査から(5)の海ごみ対策まで内容を御紹介させていただきます。

なお、もちろん環境農林水産部以外でも港湾や河川環境の部局では、浮遊ごみの回収や底泥の浚渫、あるいは近畿地方整備局様では窪地の埋戻しなど環境改善につながる対策を継続して実施されておられます。

次の6ページを御覧ください。まず、湾奥部での栄養塩類の調査です。通常の大阪湾の環境常時監視では、最も陸域に近い環境基準点でも埋立地の外側ですので、昨年度からこの中央の地図にあるような埋立地の垂直護岸に囲まれた海域で、橋の上や護岸から採水を行いまして、水質を調べて、環境基準点のデータと比較しました。昨年度の表層水の調査結果を右の棒グラフに示しておりますが、中央の地図で黒丸白抜きの文字で1番、2番としているところが環境基準点ですが、このデータが棒グラフの右端の2本です。いずれも短くなっておりますけれども、これに比べまして、埋立地間のデータでは窒素、りんともに高く、特に大阪市内の白丸の①から③までの数値で比べますと、2倍から5倍以上の値も見られ、予想どおりではありますが、実際に高いことが確認されました。

次のページをお願いします。次に湾奥部の、より詳細な実態把握としまして、大阪大学の西田先生にも御協力をいただきまして、堺旧港において降雨時と晴天時に船上から複数地点で栄養塩や溶存酸素量などの表層や底質の調査を実施しました。この堺旧港は江戸時代の港でありまして、現在、ヨットハーバーで遊歩道が整備された親水プロムナードとなっていますが、流入する河川は自己水源がなく雨水だけで、晴天時にはほとんど流入がないので、水質が悪化しやすい環境です。調査項目の一例としまして、降雨時の水温、塩分、溶存酸素量の鉛直分布の結果を右側にお示ししております。この結果をはじめ、全地点において一定深度以下の層ではDOはほぼゼロであり、生物の生息には非常に厳しい環境であることが確認されました。

次の8ページをお願いします。次に今年度から実施しております「豊かな大阪湾」環境改善モデル事業の御紹介です。

これは湾奥部の埋立地の間の垂直護岸に生物生息の場を創出する、あるいは水質改善のための設備を民間の事業者に公募し、実証実験を行うものです。府から事業費の一部を補助しますとともに、府の港湾部が管理している護岸を実証研究の場所として提供しております。2件の対象事業が既に決定しておりまして、事業の①が溝のあるコンクリート板を複数重ねて護岸に設置するもので、これを浜寺水路というところに設置します。事業の②が貝殻入りのユニットを護岸の海底や護岸の壁面に設置するもので、これは泉大津旧港に設置します。いずれもカニとか小型魚などといったような生物の生息の場を創出しようというものです。現在、設置の準備中で、11月ごろから実験に入る予定です。いずれも外海に面した護岸では既に実績のある手法ですけれども、こういった流れの少ない環境で成果が得られるかどうかを実験しようというものです。

次の9ページをお願いします。次に、エコツーリズムの推進です。上の①の「豊かな大阪湾」エコバスツアーは今年度から始めたものであり、先ほど御紹介しました環境改善モデル事業の実証研究の現地を見る、あるいは人工干潟、自然海浜などをバスでめぐり、子どもさん向けには海洋プラスチックなどの啓発、大人向けには魅力スポットの写真撮影会等を行うものです。

下のエコウォークツアーは、平成29年度から年2回、大阪南部の海沿いを走ります南海電鉄さんとのコラボで、途中に啓発のためのブースを設けた海沿いのコースをハイキングコースに選定して歩いてもらうというものです。大阪湾に残された自然海浜が2kmにも満たず、普段、府民が海に接する機会が少ないため、湾の環境の保全再生のためには、まず、大阪湾に残されている美しい景観を持つ魅力あるスポットに出かけていただいて、府民に大阪湾への愛着を持っていただくことがスタート地点であるとの考えで進めているものです。

次のページをお願いします。海底耕耘と攪拌ブロック礁です。上の海底耕耘は水産部局が大阪府漁連さんとの連携で実施しているものです。毎年、大阪湾で発生し、大きな漁業被害をもたらしています貝毒の対策として行っているもので、貝毒プランクトンが無毒の珪藻と競合関係にあることから、貝毒が発生する時期の前に漁船で耕耘機を引くことによりまして、珪藻を巻き上げて、その増殖を促そうというものです。また、湾奥部の海流による海底の養分の攪拌を狙った攪拌礁とともに漁業生産力の向上を狙った取組です。

海底耕耘は今年から始めたものですが、残念ながら今年も長期間貝毒が発生しました。水産部局によりますと、今年が初めての取組でしたので、時期が若干遅れましたので、来年はもっと早い時期にやるなど、さらに工夫して効果を出したいということです。

次の11ページをお願いします。海ごみです。現在、海洋プラスチックごみの問題が注目を集めており、6月に大阪で開催されましたG20サミットでは2050年までに海洋プラスチックごみの新たな汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャンビジョン」が共有されたところです。

大阪府では、海洋プラスチックごみ対策としまして、1月に大阪府・大阪市共同でおおさかプラスチックごみゼロ宣言を行い、環境省様の補助を活用した漁業関係者と連携した海ごみの回収や、企業や市町村と連携したイベントなどを通じた「ごみのポイ捨てはやめよう」という啓発活動を行うなど、取組を行っております。

また、従来から大阪湾を囲む兵庫県さんをはじめ府・県と全ての市町で大阪湾環境保全協議会という団体を構成しまして、統一のチラシや統一の廃プラのグッズを作成して、大阪湾の環境保全や海ごみなどの啓発を連携して行っているところです。

次の12ページをお願いします。海洋プラスチックごみ問題をもう一つ御紹介させていただきます。マイクロプラスチックにつきまして、環境省さんのほうで、日本の近海や瀬戸内海など各地の海で調査が行われておりますが、大阪府でも今年度、大阪湾の北部の堺沖と南部の関空島周辺の2カ所で降雨の多い9月と少ない12月の2回調査を行います。9月は5日に試料を採取して、現在、府立の環境農林水産総合研究所で計数中でございます。近々に結果を公表する予定でございます。

次のページをお願いします。最後のページでございます。ここで今後の必要な方策についてお話しさせていただきます。

大阪湾の環境面での問題解決のために、今後、必要と考えられる方策についてですが、まず、①としまして、湾のゾーンごとの状況に応じた、きめ細やかな対策や栄養塩類の管理の検討です。瀬戸内海全体で考えるなら、湾・灘ごとということですが、大阪湾で考えるなら、湾奥、湾中央、湾口の三つのゾーンごとにということで、海の状況が異なっております。瀬戸内海のほかの地域でも圏域を越えて同様の課題を有する会議とか、逆に同一の海域などは県の漁業の主な漁業形態が違うというようなことから、課題が異なる場合もあろうかと思いますので、季節の状況に応じた水質、それから栄養塩類の管理につきまして、海域の状況に応じた方針を指針のような形で国のほうからお示しいただければと考えております。

次に、②として、「豊かな大阪湾」環境改善モデル事業などの実証実験で効果が確認された環境改善技術の実用化、普及です。「豊かな大阪湾」モデル事業での成果というのは、ちょっと手前みそなんですけれども、多くが垂直護岸などの複雑な形状の埋立地に囲まれました大阪湾の東部、大阪府側ですが、湾奥部におきましては、生物生息の場の創出や流況の改善を効果的に行うためには、都市計画や港湾計画の改定の時期、あるいはそれら計画に基づく設備の更新の時期、あるいはまちづくり事業などの策定の機会、こういったことを捉えて、例えば、環境配慮型の護岸形状への改善を促すような制度づくり等について検討していく必要があるのではないかということで考えております。

次に、③として、大阪湾の環境保全のために、府民一人ひとりの環境への意識の向上や行動の変革です。先ほどお話ししましたとおり、大阪湾の環境の保全、再生のために、まず、府民に大阪湾に愛着を持っていただく必要がありますので、引き続き近隣の自治体等と連携しまして取り組んでまいりたいと考えております。

最後に、④の大阪府計画の実行のために、省庁が連携した国による技術的・財政的支援のところでございますが、例えば、大阪湾の深掘り跡の埋戻しにつきましては、近畿地方整備局さんが先導して実施していただいておりまして、海ごみ回収は環境省様の補助を活用させていただいておりますけれども、国際的な課題であります海ごみの対策、あるいは、その原因が相反する部分があるのではないかと思われる栄養塩の問題と貝毒の対策など、環境省様をはじめ国交省さんや水産庁など、関係省庁一体となりまして自治体に対しまして技術的、あるいは財政的支援をいただきますようお願いいたしまして御説明を終わらせていただきます。

 以上でございます。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、兵庫県の吉田様、よろしくお願いいたします。

○吉田班長 兵庫県水大気課の吉田です。

資料2-2「豊かで美しい瀬戸内海の再生に向けて~兵庫県の取組~」の御説明をいたします。

 まず、本日の内容ですけれども、大きく三つございまして、一つ目が兵庫県計画のお話、二つ目が兵庫県計画に基づきます実施計画の御説明、そして最後に三つ目としまして、課題解決に向けた今後の必要な方策という内容で御説明を申し上げます。

次のスライドを出していただきまして、本県では平成27年10月の瀬戸内海環境保全特別措置法の改定を受けまして、翌28年10月に瀬戸内海の環境の保全に関する兵庫県計画を策定いたしました。

下のシートに移りまして、皆様御存じのとおり、今回は四つの柱のうち、一つ目の沿岸域の環境の保全・再生及び創出に関するもの、それから三つ目の自然景観及び文化的景観の保全に関するものを中心に行いますが、一つ一つの項目について目標と目標達成のための基本的な施策を定めております。

次のスライドに移っていただきまして、実施計画の目標につきましては、まず、沿岸域の環境の保全・再生及び創出に関しての目標では、こちらに記載の六つ、藻場・干潟・砂浜・塩性湿地等保全。再生及び創出から六つ目の環境配慮型構造物の採用までの六つの目標を定めており、3の自然景観及び文化的景観の保全に関する目標では、こちらに記載の五つ、自然公園等の保全からツーリズムの推進、五つの目標を定めております。

次のシートに移っていただきまして、これらの県計画に掲げる5項目につきましては、県計画に基づく豊かで美しい瀬戸内海の再生に向けて実施計画を策定しておりまして、県計画に掲げる施策を着実かつ効果的に進めるために県が実施する各種事業について、平成28年度から32年度の5年計画とし、施策ごとの指標及び目標値を定めることとなっております。こちらの実施計画につきましては、県の環境審議会や湾灘協議会で進捗状況と点検・評価をし、その結果を踏まえ、部局横断的に取り組んでまいりました。部局横断的と申しましたのは、やはり沿岸環境、あるいは水産資源の観点から、港湾部局ですとか、県土の関係、あと水産部局が大きく関与しているためです。

下の実施計画の概要ですけれども、具体的には後ほど詳細を御説明しますが、こちらの概要には、1の沿岸域の環境の保全・再生及び創出に関する施策で、漁場整備開発事業による増殖場の造成として、指標として数字として判断するのは造成面積です。また、次の自然とのふれあい等の場として海浜環境の整備につきましては、養浜量を指標とし、海底耕耘の実施については、こちらは実施面積を指標とし、四つ目の生物の生息・生育空間の再生・創出のための環境配慮型構造物の採用については延長、延べ延長や箇所数を指標とするものとして、わかりやすく評価できるような形としております。

三つ目の自然景観及び文化的景観の保全につきましては、漂流・漂着・海底ごみ対策等の推進については、清掃参加人数ですとか実施面積、また瀬戸内海の島々のネットワークや景観等の資源を活かした取組の推進については、外国人延宿泊者数を指標として実施の進捗管理をいたしております。

次のシートをお願いいたします。先ほど御説明いたしましたが、具体的に沿岸域の環境の保全・再生及び創出に関するものを四つ申し上げましたけれども、一つ目の漁場環境改善につきましては、平成27年度の実績から記載しておりますけれども、実際には28年度から32年度の目標値を掲げておりまして、下の実績値を毎年度評価している形で、漁場面積でしたら水産資源の増殖の見地から漁場整備開発事業による増殖場の造成等を計画的に実施するということで、造成面積を指標として判断し、ほぼ造成面積は目標値と合致する形で目標達成しているという形になっております。

また、下の自然海浜の保全につきましては、養浜量を目標の指標としておりまして、29年度、30年度、32年度と全て目標値は単年度で2,250m3というものが、若干実績は少なく、目標に近づく形で実施をしている形になります。

次のシートに移っていただきまして、同様に海底耕耘の実施面積、下のシートの環境配慮型構造物の採用については、延べの長さを目標として施策を実施しているところです。

次のシートに移りまして、こちらは二つの事業、兵庫県独自の事業で、県で予算を組んで担当部局で実施しているものですけれども、まず、上の「ひょうごの水辺魅力再発見!支援事業」というものは、環境部局では、なかなか護岸を垂直護岸にするとか、環境配慮型に我々の部局でするというのが難しいこともありまして、そうした働きかけは港湾部局にお願いをしているところですけれども、環境部局でできる部分はソフト事業ということで、沿岸部で藻場や干潟を創出するという物理的な活動をしてくださったり、また、それを活用して環境学習をしてくださっている地域団体に年間上限50万円ではありますが、5団体を目処に、毎年度、支援を行っているというものです。こちらは毎年度5団体に対して5団体の応募で、ほぼ採択される形にはなっていますけれども、それぞれ、アマモを植える活動ですとか、海底耕耘をして、ホトトギスマットをなくすような活動をしているとか、それぞれ活動をしていただいているところです。ただ、沿岸域でスキルが必要ということで、普通のごみの収集活動とか、保全活動と比べると、ハードルが高いなというところで、できる地域団体が少ない、また、その団体の高齢化もあって、なかなか地域の活動として継続的にするのが難しいなどの課題がある一方で、地域団体という利点を生かして、地域の子どもたちを巻き込んだ活動もできているという話もありまして、数を増やすということは、県として難しいですけれども、活動の参加者を増やすこととか、もうちょっと範囲を広げていく、これらの活動が単独ではなくて、関係者を巻き込んでネットワーク化づくりのための報告会などの県で主催しまして、また発展するような形で支援しております。

もう一つの兵庫県の事業につきまして、下のシートにありますように、民間事業者による沿岸海域の環境改善への取組促進ということで、民間事業者、特に公害防止組織法の公害防止管理者を持っているような企業さんが集まっている団体がございますので、そちらの団体の勉強会という位置づけで県から環境配慮型護岸を民間事業者さんがお持ちの護岸の近くにつくってもらえないだろうか、それを誘発するような勉強会を開催しております。これを行った理由としましては、平成29年度の8月に、県が瀬戸内海の豊かな海をさらに推進するための諮問を審議会にしておりまして、そちらの一次答申としまして、環境配慮型護岸の促進ということで、自治体レベルではそういった活動の取組が進んでいますが、東播磨地域の護岸の約4割が民間企業がお持ちということで、そちらについての環境配慮型への普及がなかなか進んでいないということで、民間さんが持つ護岸をそういった環境配慮型にしてもらったらどうかという答申を受けておりますので、それの一環として、こういった勉強会をしているというものです。ただ、予算もかかるお話ですので、すぐに民間さんが取り組むというのは、ちょっと難しい。まずはCSRの観点から御協力願えないかと、そのための勉強会、もしもやりたいという手が挙がった場合には、行政にどのような認可が必要であるとか、モニタリングをどのようにしていくかといった、また審議会を設けて援助をしていくという流れをつくってはいますが、現時点ではまだ勉強会というものになっております。

次のシートをお願いします。次のシートでは、3点目の自然景観及び文化的景観の保全に関するものの実施計画の視点、海底ごみの対策等について、こちらは清掃参加の延べ人数、また、次の下のシートは瀬戸内海の島々ネットワークや景観等の自然を活かした取組の推進ということで、外国人延宿泊者数を指標として評価しております。

こちらにつきましては、環境部局としては、ごみの回収ということで、次のシートを御覧いただきますと、兵庫県の事業としましては、ひょうごクリーンアップキャンペーンというものを環境整備課が実施しております。例年ですと、5月30日のごみゼロの日から7月までの期間、県内各地で環境美化のキャンペーンを行っているところですけれども、今年度はG20もございましたことを受けて、2カ月延長して9月まで、今月末までの実施ということで行っています。資料の一部、令和元年と平成31年度と混在しておりますが、令和元年度ということで御認識いただければと思っております。

下の資料ですが、最後の課題解決に向けた今後の必要な方策ということで、兵庫県としては、豊かで美しい海の創出のために、このようなイメージで出そうと思っております。豊かな美しい瀬戸内海というためには、二つ観点がございまして、まず、生物が生息できるすみかを確保すること、また、生物が生態系ピラミッドをつくるためには、餌である栄養塩を潤沢に出して、ちゃんと低次から高次まで栄養が行き渡るような、その2点が必要であるということから、一つ目のすみかのところには環境配慮型護岸の設置あるとか、藻場・干潟の再生支援事業であるとか、そういったものを考えております。また、2点目の栄養塩の減少に対する供給につきましては、工場であるとか下水処理場からの栄養塩を供給すること、また、それのみでは足りない部分については、直接供給も必要ではないかということで、栄養塩の減少に歯止めをかけるような施策を考えております。

次のシートに移っていただきまして、施策としましては、海域の栄養塩管理の推進としまして、栄養塩供給量の増加、先ほど申し上げましたように、下水処理場を現在栄養塩管理運転ということで、冬場に窒素を高い濃度で排出するということを、現在24処理場が協力いただいているということですが、これをもう少し拡大して栄養塩管理運転の点検をすること。また、工場・事業所の排水処理工程等も、我々は把握していますので、可能な限り栄養塩を出せるところについてはお願いをして窒素濃度を上げていただきたいという取組をしております。また、海域への直接供給の方策については、まだ検討はしていませんが、今後必要になっていく際には研究・検討がいるのではないかということで考えております。

また、二つ目の海域の栄養塩循環メカニズム等の解明につきましては、新聞報道でも御覧になられて御存じの方がいらっしゃるとは思います。播磨灘などでは環境基準の0.3mg/Lを大きく下回る0.17 mg/Lとか、窒素濃度の低い海域がございまして、そういったところに下限値を設定して栄養塩を供給していこうという取組を始めたばかりで、昨日、その下限値の条項を規定した条例の改正案を提案したところでございますけれども、そこはまずは足りないから出していこうというところであります。この下限値の設定の数値化は本当にそれでいいのか、今後どのような方策をとっていけばいいのか、そういったメカニズムですとか、知見の収集というのはまだ途上にありまして、必ずしもわかっている範囲でやっているわけではなくて、わからない部分はやりながら考えながら取り組んでいこうという点が多くございますので、今後、研究や調査を進めて、栄養塩の循環メカニズムの解明が必要ではないかというふうに考えております。こちらにつきましては、県の水産部局と連携してやっていますが、国等の支援もいただけたらというふうに考えています。

また、先ほど申し上げました二つ目の沿岸海域の生物生息場の再生・創出につきましては、支援活動ですとか、民間事業者の環境配慮型への誘導ということで、こちらも事業者に対しての方策を御提案いただけたらというふうには考えております。

その下のシートですが、先ほど申し上げましたが、水産部局のほうで栄養塩とイカナゴについての関係性を調査した結果をお示ししております。下左にありますように、溶存態無機窒素の濃度とイカナゴのシンコの漁獲量というのはかなり連動しているという調査結果が得られておりまして、こちらは今年度で終了ということで、次年度以降、別の魚種でまた調査が続くということですので、こういった調査研究を行いながら、栄養塩をどの程度まで出していくのが望ましい海域の栄養塩濃度となっていくのかというものを今後検討していきたいと考えているところです。

最後のシートに移りまして、兵庫県、国も同じですけれども、今まで富栄養化対策ということで、瀬戸内海全体で水質規制の抑制等を行ってきたところ、水質改善はかなり進んで、きれいな海が取り戻せたというふうにはなったところですけれども、一方で貧栄養化の問題というのが出てきておりまして、我々、瀬戸内海関連13府県26政令各市では、瀬戸内海環境保全知事市長会議でも議論しているところですけれども、湾灘ごとに事情も違えば、状態も違うということで、今後はきめ細やかな対応が必要なんじゃないかというところは一致しているところですけれども、じゃあどうしていくかというところが、なかなか一致できないところで、府県独自で決めていくべくところ、また、必要であれば法制度を変更していただくべきところ、いろいろ議論を重ねて、今後取り組んでいきたいというふうに考えているところです。

最後のシートですけれども、先ほど申し上げましたように、兵庫県では瀬戸法の理念とほぼ同じような形で、新たに県の環境の保全と創造に関する条例の中に、豊かで美しい瀬戸内海を再生するための章立てをいたしまして、この4条、理念、施策、それから事業者・県民の責務、また、栄養塩の適切な管理といった4条を設けまして、今後、瀬戸内海を豊かにして美しい海の創出に取り組んでまいる予定でありますので、今後もよろしくお願いいたします。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 続きまして、大阪大学大学院の西田先生、よろしくお願いいたします。

○西田教授 西田でございます。

 今、大阪府の堀川さんと兵庫県の吉田さんのほうから御説明があって、具体的なお話がありました。私のほうでは、全体的な大阪湾の現況の話をさせていただいて、方策を講じるときに、どんなことを注意したらいいのかという話を中心にさせていただきます。

 実は事務局のほうからは貧酸素水塊とか赤潮の発生のメカニズム、それから水循環の考え方とか、大阪湾の再生の具体的な方策とかも含めて説明してくださいという御依頼がありましたが、皆さん結構御存じだと思いますので、その辺は簡単にお話しさせていただきながら、最終的にはどんなことに留意しながら進めたらいいかというお話をしたいと思います。

 1ページ目を御覧ください。この1ページ目に大阪湾の問題は全て含まれております。湾灘スケールで見ると、大阪湾はこういう形でございまして、拡大すると沿岸域スケールになります。それから、さらに拡大すると港域のスケールになってきます。先ほど、堀川さんのほうからお話があった堺旧港の問題、これはまさに港域ケールの問題で、非常に狭い空間です。去年あれだけ大きな台風がありましたが、鉛直護岸に囲まれ貧酸素水塊は残りましたし、数日後にはまた底質のほうに低酸素層が発達したということで、あれだけ大きな擾乱であっても、すぐまたもとに戻ってしまうというのが湾奥の沿岸域の状況でございます。

 兵庫県さん、それから大阪府さんからいろいろお話がありましたように、大阪湾の水環境問題をもっとマクロに捉えてみると、大きな問題として空間的な問題と時間的な問題、大きく二つあります。1ページ目の図がまさにそうですけども、空間的な問題としては、大きな環境勾配、すなわち水質が湾奥と湾の中央、湾口で変わっているという大きな水質の勾配を持っているというのが一つの大きな問題となっています。これは空間的な問題です。これは湾奥から汚れたものが入ってくる、それから沿岸域の流動が非常に悪い、そこで物質がトラップされてしまうということに起因しています。

 それで、その対策としては、水交換をよくするとか、悪くなってしまった底質を改善することで、例えば、地形改変や、透過型の防波堤をつくるとか、それから浚渫や覆砂をするなど、底質の改善などが対策となります。

それから、もう一つは沿岸域で生物が生息する場、産卵する場が消失してしまったという、それも空間的な大きな問題の一つです。その原因は埋立等によって浅場が失われて、干潟も失われてしまったということになります。その対策としては、藻場・干潟をつくりましょうということになりますし、直立護岸があるならば、生物共生型の直立護岸に変えるということがなされてきました。それは空間的な問題です。

もう一つ、時間的な問題というのを見てみると、最近、ノリの色落ち問題とか、栄養塩の不足問題、これは冬に起こるので、冬だけ栄養塩を供給したらどうかという時間的な問題です。それから、雨が降ると、栄養塩が過剰に供給されて水質が悪くなったり、それも時間的な問題です。それぞれに対して対応策を考えていきましょうというのが、都市域を抱えた都市沿岸域での水質改善の方策と思っています。

2ページ目を御覧ください。どんな因子が絡んでいくかをまとめたものがこれでございます。気象・海象はもちろんのこと、大気から落ちてくる降下煤塵もそうです。春先の黄砂も結構影響しています。それから、陸域からの流入負荷の問題、これに対しては負荷削減の施策がずっと講じられてきました。それから、海域のほうでは、後ほど説明しますが、汚れ(有機物)というのは、内部生産、プランクトンの生産が大きく、有機物は陸域から入ってくるより内部生産の方が非常に大きいです。その結果、底質が悪化してしまう。有機物が海底に積もってヘドロ化して堆積してしまう。その問題が非常に大きいということです。

それから、もう一つ、外洋から入ってくるものもあります。この外洋性のものがCODをアップさせているのではないかとか、栄養の供給に結構大きくかかわっているのではないかという話があります。このことについても簡単に、御説明していきたいと思います。

次の3ページ目を御覧ください。水循環の考え方も一つ御提示させていただきたいと思います。通常、水循環というと、雲ができて雨が降って、地下に浸透し、あふれたものが川に流れ、そして海に行くという水の循環を言いますけれども、それは自然系の循環です。

大阪湾のように都市域を含んだ大阪湾流域圏というふうに考えてみますと、そこには人工系のものがいっぱいあります。ダムがあったり、上下水道があったり、取水のために揚水したり、さらに環境用に導水をしたり、いろんなことをやっています。それは人工系の水循環系というふうに考えることができて、逆にそれは制御ができることになります。ですから、環境を変えたい、改善したいというときには、これをうまく利用し制御することによって、水循環も変えることができるでしょう、物質循環も変えることができるでしょう。先ほど、兵庫県さんのほうで、栄養塩の供給、下水処理場から処理を緩くして冬場だけ栄養塩を供給し、海域の栄養塩濃度を少し上げたいというお話がありました。これはまさに下水道の制御ということになります。

物質として何が大事なのかというと、溶けているものとか、濁りを生じる浮いているもの、それもそうですし、物質としては窒素とかりんとか、さらに貝毒の問題を考えると、珪藻類と競合しケイ素を必要としないプランクトン種に関係するということで、ケイ素というのも一つの重要なファクターになります。それから、有機物も当然重要です。これらを含めて健全な物質循環が成り立つような流域をつくろうというのが目的になっております。

以前は森・川・海というふうに水が流れ物質が循環し、その間に里も入ってきて、里山のような形で物質循環が形成されていましたが、大阪湾のように都市を抱えていますと、その間に都市が入ってきます。都市域の物質循環が都市の川や沿岸の海域の物質循環とか水質、水環境に大きな影響を及ぼすことがあります。

次の図を御覧ください。これは都市の河川の道頓堀です。クルージングがあって、非常にきれいですが、夏場になると、右の写真のようにアオウキクサが異常に発生し、こんな状況になってしまいます。それから、道頓堀のちょっと上流の寝屋川のほうでは、合流式下水道から越流水CSOが入ってきて、直接汚水が流入するために、スカムの発生も起きています。これも対策を、どんな方法でやったらいいのか検討されているところです。

次のページを御覧ください。これは今までの負荷削減の施策です。左上のほうにT-P、T-Nの全窒素、全りんの削減がありますけれども、どんどん減ってきています。これは晴天時のデータです。下のほうを見ていただくと、オレンジ色のものが雨天時のものです。雨天時の例えば淀川の流量がオレンジ色、平水時は青色です。真ん中はT-P、右がT-Nになっていますが、いかに雨によって負荷が供給されるかわかると思います。これは時間的な問題です。寝屋川のところだけ点線になっています。これは実は、先ほど言いましたけれども、合流式下水道の越流水の問題があって、その負荷量が算定できていない。こういう問題もまだあります。

それから、次のページを御覧ください。これは大阪湾の底質の状況です。神戸なので湾奥のほうです。上のほうは西宮、神戸の港になっています。これを見ますと、左上の底層の溶存酸素を見ると、かなり低く3以下になっています。貧酸素の水が底層にたまっているということです。右上の図から、有機物がどのようにたまっているかを見ると、有機物が真ん中辺りに非常に多くたまっています。港湾域の中だけではなくて外にも非常にたまっています。この有機物を安定同位体で調べてみて、どこが起源なのか調べてみると、ほとんどが海域起源、つまり植物性プランクトン起源だとわかります。下の図は、陸域起源の有機物のパーセンテージを示しています。淀川の河口辺りは陸域起源のものがほとんどですけども、ちょっと海域に入ってしまいますと、有機物が多く堆積している辺りはほとんどが海域起源のものであります。ですから、プランクトンが発生して、それが堆積して底質を悪化させていることがわかります。また、それが分解されて溶出し、そういう悪循環が起こっているということになるわけです。ですから、流入負荷を削減したとしても、有機物を削減したとしても、もう既にたまっているものが悪さをしているということになります。

次のページを御覧ください。これは埋立てがどれだけの影響を及ぼすかを表したものです。埋立ての地形と埋立てが行われていない1930年代の地形、その二つを地形だけを変えてシミュレーションした結果です。流れも水質も大きく変わっている。右のほうには、植物性プランクトン、それから底層の溶存酸素の図が描かれています。大分変わっています。過去の地形と現在の地形、これらの地形を変えるだけでも大きな変化が生じ影響が出るということです。

それから、次のページを御覧ください。今、瀬戸内海ではCODが横ばいだったり、少し上昇しています。これは外海の影響なのかどうかということもいろいろ議論されていますけれども、黒潮が接岸するか離岸するかによって、黒潮の水が入ってくるのか、もしくは黒潮の下の栄養塩が豊富な水が入ってくるかによって、大阪湾の水質も大きく変わってきます。

次のページを御覧ください。これは黒潮が離岸したとき、接岸したときを、夏の状況です。硝酸の分布ですけれども、黒潮が離岸すると、黒潮の下のほうの栄養の豊富な水が紀淡海峡を通じて大阪湾に流入して、それが明石海峡のほうまで行っている様子がよくわかると思います。それから接岸していないときには、つまり黒潮が蛇行するようなときには、このような分布になって、湾奥のほうの濃度が高いということになります。

以上がいろいろ現象を示したものですけども、次のページを御覧ください。健全な栄養塩循環というのはどうなのかということを考えてみました。左上が本来の健全な生態系の三角形のピラミッドと考えます。栄養塩が供給され一次生産、二次生産が行われている。富栄養化が起こってしまうと、下のほうの栄養塩供給量が非常に増えるとなると、上のほうが細くなっちゃいます。なぜかというと、底質とか水質が悪化、それから赤潮が発生したり、貧酸素水塊が発生して、生物量が減ってくるということになります。

では、これに対してどうしたかというと、負荷削減施策をしました。その結果、何が起こったかというと、先ほど、兵庫県さんのほうからお話がありましたけども、貧栄養化が起こったのではないかという話に、今なっているわけです。そして、生物生産量が落ちてしまっている。

じゃあ、どうしようかと。栄養塩を供給しましょう。つまり、一番下のところの栄養塩を少し増やしたらもとのピラミッドに戻るかという話をしているところです。

養殖では、例えば水質を変えてあげれば、餌が増えて、多分生産量が増えてくるかと思いますが、自然生態系では産卵の場所とか生育の場が確保されない限り、なかなかもとの状態に戻らない。これがつまり人工干潟をつくりましょう、生物共生型の護岸をつくりましょうという、場をつくっていくという施策につながるかと思います。水質だけではなくて場をつくるということも必要かと思います。

次のページを御覧ください。これはどんな問題があるかまとめたものです。後で御覧いただければと思います。

次のページに続いて、水質改善施策の話です。これは先ほど大阪府さんも兵庫県さんもいろいろ御議論されて御報告されていましたので、特に取り上げる必要もないかと思いますが、これだけのいろいろな施策があります。これをどう講じていくのか、その場に合ったどういう講じ方をするのかということが、今、問題になっているということです。

次のページを御覧ください。これはシミュレーション結果ですけれども、海草の種と考えてもよろしいです。さらに、貝は幼生とも考えられます。そこではどんなふうに浮遊して、どの辺に行くのかというのを調べた結果です。図では、自然の藻場が緑色で囲っています。ピンクで囲っているのは人工的な藻場です。人工的な藻場や自然の藻場を、うまく種が行ったり来たりしていることがわかります。ただ、湾奥のほうを御覧いただきますと、ほとんど発生の場所もないし移動先もないということがわかります。ですから、湾奥のほうに人工的でもいいので、何か供給場を創出することが、生物生産性から見れば、多分効果があるのではないかというのが、このシミュレーション結果でもわかります。

一つの試みとして、次のページ、14ページですけれども、大和川の河口の堺2区に人工干潟をつくりました。これだけの影響ではありませんが、これも影響しているだろうと言われている、アユの遡上が非常に多くなってきています。下の図、右のほうの緑色で描かれているのがアユの遡上の量です。水質が赤と青で描いてありますけれども、水質はどんどんきれいになってきました。アユの遡上に対しては、放流しているからじゃないかという話もありますが、遡上しやすい環境がつくられているのではないかという評価がされています。

次のページを御覧ください。これは国土交通省のほうで事業を進めている浚渫窪地です。埋立てするときに、前面の土をとって埋立てすれば簡単だからということで、前面海域に窪地ができて、東京湾でもいっぱいできています。今、窪地の一つがもう埋め戻しされています。ここに書いてあるところは、実は埋め戻しが終わっています。経済性とか、施工性、それから水質に関しての有効性を考慮しながら、優先順位をつけて検討されて、今、進められているところです。

次のページを御覧ください。これは全く新しいことですけども、見方を変えて、人工の循環に着目しましょうということです。兵庫県と大阪府を分けて示していますけれども、緑が自然の川から供給されている流量です。青と薄い青が人工系です。例えば発電所から出てくる水だとか、事業所から排水される水です。これを見ると、兵庫県は自然の川よりも人工的に供給されているものが大阪府より四、五倍大きい。大阪府は1級河川の淀川、大和川を抱えているにもかかわらず、その半分ぐらいの流量は人工系から放出されています。つまり、これを利用することによって、水循環をよくしたり、水交換を促進したりすることが、多分できるのではないかと考え、今、その効果の研究を進めているところです。発電所の放流が非常に大きいですが、発電所のアセスをこの前、兵庫県でやりましたが、海域への影響が小さいというのが良いという評価になりますが、実は違って、水質が悪くなっている海域を良くする方向に温排水を利用するというのが、実はすごく効果的なのです。あいにく環境アセスではそういうことができません。負の影響を最小化するのではなくて、正の影響評価も必要ではないかなというように考えているところです。その方策についても検討しているところでございます。

次のページを御覧ください。これは留意点をまとめたもので、国も自治体もこのように考えて、ぜひとも環境施策を講じてほしいと考えているところです。

生物多様性の確保、生産性の向上、水質改善は必ずしも同時には達成できません。同時にやるのはなかなか難しいです。

それから、水質改善が必ずしも生物の多様性や生産性の向上につながらない。先ほど言いましたように、きれいになり過ぎてもだめということになります。

それから、場の再生は、その適用可能な水域が限られて、改善効果も限定的であること。幾ら干潟をつくっても、それが保持されない、維持されないということになります。そこはもともと干潟をつくるような場所ではないということになります。ですから、そういうことも考えながら、適用可能な水域をきちんと吟味して、施策を講じる必要があるということです。

それから、構造物を積極的に利用すること。なかなか構造物を利用するという発想はありませんが、構造物を利用しながら、良好な水環境の創造も可能です。つまり物質循環を健全に保たれれば、構造物を積極的につくっても良い。例えば、導流堤、突堤をつくって、水交換が良くなるのであればということです。

それから、もう一つは、順応的管理に関係して、構造物をつくったり、改善したりするときには、撤去・復元が可能なものとすること。これは大前提だと思っています。例えば、漁礁を入れるときに、それが逆効果になったなら、すぐに撤去できるようにしておくというのも必要かと思います。

それと、先ほど言いましたスケールに応じた施策が必要ということです。それから、さっきの湾奥の話も含めて万博はちょうど湾奥の再生の起爆剤になるのではないかと思っているところです。今のところ働きかけをしているところですけれども、この万博会場に護岸も含めて環境共生型のものをつくっていくということが、湾奥の生態系ネットワークにとてもプラスになのではないかと考えています。

最後に、すみません、一つだけ、最後のページです。今、取り組んでいることですが、大阪湾のウェルカムリストというのをつくっているところです。これは大阪湾でやっている生き物一斉調査の実行委員会のアドバイザリーボードになっていただいています山西さんからの御提案で、今までのレッドリストは絶滅危惧種を守りましょうという保全が主でしたが、大阪湾のような再生を考えるときに、どんな生き物で評価したらいいのかということで、回復とか再生をうまく評価できるような生物は何なのか、それをウェルカム・スピーシーズと呼び、こういう生き物が来てくれたらいい、確かに大阪湾はきれいになって再生されていると、そういう生き物を環境再生の目標、指標として役立てていくということで、今、ウェルカムリストをつくっているところでございます。いろんな意義があるので、今、大阪湾再生ではこれに取り組んでいるところでございます。

以上です。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、これまでの御説明に関して御質問等がございましたらお願いいたします。

 鷲尾委員からどうぞ。

○鷲尾委員 ありがとうございます。

 今、西田先生から大阪湾を総合的に見た課題というのは整理していただいて、よくわかりましたが、大阪湾というのは、三つのゾーンに分けられるというような特徴的な性質を持っておりますけれども、どうしても、人間の側ですから、陸からの視点になっています。ですから、埋立地であったり護岸であったり、人間が使う陸の目的で港湾海域設計がされているところの視点であると。これは海の中から見ると、も全て流動阻害物です。最後のほうでおっしゃいましたけど、海域の海水交換であったり、流況改善をどうするかというのが一番大きな構造的な問題ではないかと思い、その視点で考えたときに、海域でどれだけ流動が確保されて、そういう意味では内部生産であったり、さまざまな汚濁負荷を域外に持ち出しているか、その収支のバランスをとるためには流況を見ないといけない。そういうものを何か指標化しておくというのが大事ではないかと。そうしていくと、最後におっしゃったウェルカムリスト、どういう種類が入ってきてくれるか、今までは汚染の指標種が入ってくることに着目していましたけれども、改善された結果として何が出てくるか。大阪湾のもう少し西になりますけれども明石の辺りではナメクジウオがおります。これはヘドロがたまっていたところにはおりませんから、浄化されて砂質になったところに現れてくる、そういう種がいるわけです。

そういうところの環境を維持するか、再生が進んでいるかというのは、まさに流況環境ということが非常に大きくなるので、そういう海の中から見たときに、湾奥の環境というのは今後どうしたらいいか。発電所の排水ということがありましたけども、今後、自然エネルギーの買取価格が法定価格じゃなくなってくる可能性があります。そうすると、港湾域で発生した自然エネルギーの使い道に困ることが生じます。それを海域の流動に変えることによって回復改善につながっていくのではないかということ。

そういう意味では、環境部局だけではない、ほかのプレイヤーが参画していける仕組みが必要なのではないかと思いますので、兵庫県さんが詳しく御説明いただきましたが、環境部局だけではなく流域総合計画、流総計画の改定という形で栄養塩の下限値を設定していこうという動きをされております。流域総合計画ということになると、土木部局も入ってくるわけですので、そういうところを巻き込んだ取組が動き始めているというのは、非常に勇気づけられるところだと思います。そういう海域の流動環境、それから、水質管理のあり方、そういうものにほかの部局を巻き込むという点が非常に重要ではないかと思いました。

意見として加えさせていただきました。

○岡田委員長 ありがとうございました。今の点はよろしいですね。

西嶋委員、どうぞ。すみません、若干時間が押しているので簡潔にお願いいたします。

○西嶋委員 大阪府さんに質問です。攪拌ブロック礁が、随分もう既に159基設置されていますが、この効果というのがどうなのかという御知見があれば教えていただきたいと思います。

○堀川課長 これは水産部局で設置しているものですけれども、今のところは明確に定量的には効果が把握できていないというのが現状です。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 まだあるかもしれませんが、またヒアリングを続けたいと思いますので、先に進ませていただきます。実は本日、御欠席ですが、白山委員から兵庫県に対して質問とコメントを預かっております。事務局から報告をお願いいたします。

○佐藤係長 兵庫県のプレゼンに関しまして、2点質問があります。1点目が、「課題解決の方策等に赤潮発生に関するデータや内容が見当たりませんが、赤潮というのは問題になっていないのか、あるいは発生がないのかというのを教えていただければ幸いです」ということ。2点目が、「自然海浜の保全に関して潜堤を設置するアイデアが紹介されていますが、この構造物でも海水の交換が減少し悪影響が出るものと懸念されると思いますが、その辺の検討はどう進められているか」、その2点について御質問がございました。

○岡田委員長 吉田様のほうからお願いいたします。

○吉田班長 具体的に全て回答するのは難しいと思われますので、次回にということでよろしいでしょうか。

○岡田委員長 そういうことでよろしくお願いいたします。

 それでは、まだ御質問はあるかもしれませんが、少し時間が押しておりますので、続いて後半のお三方からの御説明をいただきたいと思います。

 それでは、最初に徳島大学の上月先生、よろしくお願いいたします。

○上月教授 徳島大学の上月です。

 私からは直立護岸の話をさせていただきたいと思います。かなりマニアックな話かもしれませんが、お聞きください。

 1ページ目を見ていただきまして、直立護岸、大阪湾は日本で一番古くから埋立てが始まったところで、見ていただいたらわかるように、右手の赤いところが全て直立護岸になっていまして、大体400kmぐらいあります。これが全部ほとんど直立護岸になっているというふうなことです。

 私は、その湾奥の尼崎というところで主に研究をしています。次、めくっていただくと、直立護岸・堤防に関する法律というのが関連するものがいくつかありまして、これは瀬戸内海の環境保全特別措置法、2015年に改正されましたが、そのときに環境配慮型構造物を採用していきましょうというふうになりました。これと2018年に、これは私どものマニアの間の願いで、直立構造物を積極的に変えていこうというふうなことを法律の中に入れてほしいということで、省令として入れていただきました。これに先立ちまして2014年に生物共生型港湾構造物の整備、維持管理に対するガイドラインというものもできていまして、かなり法整備的には全国的なものとしては整備されているという状態にあります。

平成27年度には、環境省も国交省も推していますが、グリーンインフラをどんどん進めていきましょうというふうなことで、この中にも右下に護岸パネルがありますが、生物共生型のものを港湾にも入れていきましょうというふうなことになっています。

配慮技術ですが、どういったものかというと、私は土木出身なのですが、栗原先生が1988年に、随分古い話ですが、エコテクノロジーという、こういう本を出版されまして、これでどんどん港湾部であっても岩礁生体系というものをモデルにできますよというふうなことで、望ましいそういうふうな共生型の構造物をつくっていこうというふうになりました。

実際、尼崎港というところで、大阪湾の一番湾奥になりますが、ここの生物相を見てみますと、右手にありますが、ムラサキイガイとコウロエンカワヒバリガイということで、大体2種で80%ぐらい、こういうことでびっしり二枚貝がついているということですが、こういうところでも、表層部には酸素があるということで、餌も豊富だということで、こういう場所の構造を複雑にしたり、材料を工夫するというふうなことをしていくと、共生型になるのではないかというふうに思いました。もちろん、安価で、それで船舶の往来を妨げないというふうなことを基本に考えていきましょうということです。

続きまして、事例①と書いていまして、エコシステム式の防波堤と書いていますが、これは国交省の四国整備局と一緒に開発したものですが、先ほどの壁面についています二枚貝でしたら、物の流れが二枚貝の懸濁質をとって、そのまま落としてしまうという一方的な流れですが、内部に生き物の生息場所をつくっていこうというふうなことをすると、中で物質の循環というものが起こるだろうというふうなことです。実際に愛媛県の三島川之江港にこの防波堤のケーソンを10基起きまして、今も設置されていますが、こういったものですが、特徴は床の高さを変えて、浅場というものをつくってみたというふうなことです。

実際置いてみると、この周辺の天然の磯場に出てくるようなマナマコとかカサゴとか、そういったようなものが出てきまして、それと、あと、周辺の住民とかにCVMというような、そういう調査をしますと、大体費用対効果は7.5とか、漁師に聞くと、漁はできなませんが、この周辺に結構ナマコが出てきたり、そういうものがあるというようなことをヒアリングで聞いています。

次のページにありますのが、同位体の比で、植物連鎖を描いたものですが、左手にあるのが、一般の防波堤周辺の生物相です。右手にあるのがエコシステムの防波堤の中にいたような生き物で、こういうふうなものをつくっていくと、里海というものが目指す、太く・長く・滑らかな、そういう物質循環というものをつくっていく一つのきっかけになっていくというふうに思われます。

 もっと小規模ものでということで、これは呉で五洋建設の方が提案されたものですけど、護岸をつくるときに、ちょっとくぼみをつくったらどうかというようなことで、くぼみのつくり方もいろいろ検討され、一番効果がありそうだというのが、中にタイドプールというもので、日陰にしないとあれですから、日陰になるようなタイドプールをつくっておくと、この中に、めくっていただくと、いろんな生き物がついて、砂がたまったりすると、そこにアサリもついていましたよというような報告がありました。

あと、これは事例③ですが、既設の直立の護岸に余裕があれば、階段式のこういう構造物を置いてはどうですかというふうなことで、これは尼崎港内の護岸に浅場を創出するというふうなことで、これは環境省の事業の一つで、ここに床を置いてみましたというふうなことです。こういうことをするだけでも、生き物が随分ついてくるというふうなことです。

あと、そのほかに、もっと簡単にということで、海藻を直立の岸壁の中につけられないかというふうなことで、これはビニロン繊維を護岸にはわせてやるというのとワカメの種と一緒に設置すると、随分ワカメが成長していくというふうなものが見られました。これは数年やっていくと、天然の尼崎産のワカメがつくというふうなことも見られるようになりました。普通、こういうのがなければ、護岸に二枚貝がついているだけといいますが、こういうやわらかい揺動するような基質というのを置いてみると、こういう海藻もつきますというふうなことでした。

あと、さらに、奥に運河というものがあり、ここに慢性的にほぼ低層が無酸素になっているようなところで、底質には生き物は全くいないというところですが、こういうところに、静穏であるというふうなことを利用して、もっと簡単に、こういうかごの中にネットを置いておくというだけでも、そこに生き物が結構入ってきますよというふうなことで、見てみると、メバルであるとか、ウナギなんかも入ってきて、そういうふうに非常に単調な環境ではあり、工夫の仕方によっては、いろんな生き物のすみかであったりしますというふうなことがわかってきました。

事例⑥ですが、ロープを張っているだけというところも、こういうところが無酸素になると、生き物が避難場所になるというふうなことで、右手にあるのはロープに鈴なりになってカサゴが避難しているというふうな格好ですね。

コンクリート自体の性状も変えてみたらどうかというふうなことで、これは民間の会社とアルギニンというものをコンクリートに混和させると、微細藻類がたくさんついて、これがヨコエビ等の蝟集する場所になってきたというふうなこともわかってきました。

こういうふうに技術的、制度的になって、さらにそういうのを継続するには、地域の人をどういうふうに巻き込んでいくかということですが、今はよくミズベリングということで、河川を中心にされており、こういうのを10年ぐらい前から地域の中学生などを巻き込んで、こういうワカメの栽培実験をするというふうなことだとか、運河では、前に一回「うんぱく」ということでしています。

大阪湾というのが古い海なので、今日、文化庁の方は帰られましたが、神様がたくさんいる海ですね。そういうふうなところとか、それとか大阪湾の見守りネットとかということで、人が集う海ということで、にぎやかなところです。そういうふうに人が海にかかわりたいというふうに人がたくさんいるところなので、こうした人たちを巻き込むと、こういう協働の仕組みというのも取り組みやすいところです。

今後、期待するところですが、護岸とか堤防がだんだん更新する時期になっています。この写真を見ると、改善前と改善後という資料があったので、写真を撮りましたが、残念なことに、こういうちょっと古ぼけたところを直すときに、直していただいてよかったが、全く前のような形にしていただいているというふうなことですね。こういうときに、環境配慮を少しでもしていただくと、非常に効率のいい事業になるというふうに思いました。

続いて、次のページには東日本大震災のときの港湾構造物が被災したところですが、基本、原型復旧というのが原則ですというふうなことですが、創造的復興というふうにも言っているので、ぜひ、こういう災害時には、毎年、こういう港湾の構造物が被害に遭っていますが、こういうときに少し配慮をしていただければというふうに思います。

次のページは、河川の災害復旧の方針ですが、災害復旧事業においても、多自然型川づくりを徹底しましょうというふうに通達がつくられています。

続きまして、多自然河川というところで、こういう河川関係者は「小わざ」でも多自然にできますよというふうなものを盛んにつくられています。見ていただいたらわかるように、市民なんかが石を置くというふうなことをしていますが、私が前段に話をしたような、ちょっと簡単なことでも生き物がついて楽しめるというふうな港にできますよというふうなことなので、こつこつと直立護岸にも環境配慮というのはできるのではないかというふうに思いました。

最後、生垣助成のご案内と書いていますが、これは品川区の事例ですけれども、民有地だからできないということでなくて、政策としてこういうふうに緑豊かな街づくりというふうに打つのだったら、当然そこにお金も助成金を出せますよというふうなことですね。ですから、護岸・堤防も、民有地であっても、こういうふうな取組が可能ではないかというふうには思っています。

最後の25ページ目ですが、直立護岸・堤防への環境配慮を進めるためにということですが、これは山西先生と一緒に瀬戸内海の研究会議のときに委託研究を受けまして、それで私のほうから提案させてもらったものです。ぜひ、こういう内容を目標設定から災害復旧の工事の事業というものに生かしてくださいというふうなことですが、こういうのをぜひ参考にしていただければ、非常にありがたいなというふうには思っています。

最後、漫画ですが、法制度もある程度そろっていますし、技術もありますよと。協働の仕組みというものも、協働も最近は皆さん、非常にかかわってみたいという方もいますので、行政がそういう仕事をつくっていくというのをしていただければ、この歯車が回って、環境配慮ができるなというふうに思いました。

最後、いらんことを言いましたけれども、以上です。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 続きまして、笠岡市立カブトガニ博物館の森信様、よろしくお願いいたします。

○森信主任学芸員 お世話になります。カブトガニ博物館の学芸員の森信と申します。それではよろしくお願いいたします。

 カブトガニの生態・笠岡のカブトガニ繁殖地の歴史と現状・課題についてということで御報告させていただきます。

 次のページをお願いします。内容につきましては、まず、カブトガニというものはどういうものかということについての御説明、続きまして、笠岡の繁殖地の歴史、次に、笠岡のカブトガニ、繁殖地をつくることによって、どういうふうにカブトガニの生息数が推移していったかというようなことについて、最後に、今やっている保護とこういうことが考えられるのではないかということで、今後の課題ということでお話をさせていただこうと思います。よろしくお願いします。

 次のページをお願いします。まず、カブトガニについてですが、日本のカブトガニは、メスの場合は成体になると60cm、3kgになります。オスの場合は50cm、約半分の重さで1.5kgになります。日本のカブトガニと言いましたが、日本を含むアジアには3種類おります。ここに、すみません、書いていませんが、そのうちのカブトガニという種類しか日本には生息しておりません。あとアメリカの東海岸にアメリカカブトガニという種類もいます。世界中で4種類のカブトガニが、今、生息しております。

 それで日本のカブトガニですけれども、下にありますとおり、水温18℃以上になると活動することになります。ということは、1年の半分は休眠ということで、ずっと眠っているような状況になります。

 次のページをお願いします。カブトガニのライフサイクルです。では、どういうふうなカブトガニは生活史をやっているかということになり、産卵は6月~8月の潮の高い中潮から次の中潮になるぐらい、潮が高いのときに、夜、大体砂浜で行います。これは笠岡に限りの話ですけれども、もう少し、九州のほうに行くと、5月の下旬ぐらいから産卵が見られると。大体35日ぐらいすると、外卵膜という白い、生まれたときには乳白色をしています。それがはがれて回転卵といって、卵の中で胚胎、子どもが回るような状態になります。大体受精してから50日ぐらいすると、一齢幼生といって卵から出てきます。卵から出てきたカブトガニの幼生はすぐに砂浜からはい出て、今度は干潟のほうに移動します。その大きさは大体7mmぐらいの大きさになっていて、干潟で約5年ぐらい生育して、第10齢幼生という大きさになると、全長13cmぐらいになり、干潟から移動して深いほうに移動します。それからさらに5年ぐらい成長して、成体といって、メスならば卵を産む、オスならば精子を出せる体になります。

 寿命についてなんですけれども、実はよくわかっておりません。カブトガニは、先ほども言いましたように、脱皮をして大きくなりますが、成体になると脱皮をしなくなります。なので、寿命というのがわかっていませんが、飼育記録では20年生きたという記録があるので、大体成体になってからさらに20年ぐらい生きるのではないかと考えられています。

 次、お願いします。これは実はアメリカカブトガニの脱皮殻で、大体1.3倍ぐらい、もう少し小さくなると、1.5倍になります。脱皮をして、大体1.3から1.5倍ぐらいの大きさになります。

 次、お願いします。カブトガニが生息するには、干潟がなくてはならない環境です。先ほどにもありましたけれども、カブトガニの卵から生まれたものは、すぐに砂からはい出て干潟に移動します。それで脱皮を繰り返して、第10齢幼生という大きさ、先ほど言いましたように、大きさとしましては13cmぐらいの大きさ、時間として約5年間は干潟で生息するような環境です。だからカブトガニの子どもというのは干潟がないと生息ができません。

 次、お願いします。続きまして、笠岡の繁殖地の歴史です。笠岡というところは、自分たちが住んでいる場所とか農地とかを干拓によって広げていった場所です。昭和3年に、実は生江浜海岸という海岸が天然記念物カブトガニ繁殖地として国の指定を受けました。場所としては、上のほうです。生江浜海岸というところがありますが、そこが旧カブトガニの繁殖地の指定地になります。昭和44年になりますけれども、着工からすると、昭和41年からですが、笠岡湾干拓、ここにある黄色の部分ですけれども、この1,841haですけれども、これが昭和41年から始まって平成2年に完成した笠岡湾干拓の土地です。それで、今現在の神島水道というところがありますが、青い部分、それが追加指定ということで天然記念物の指定を受けました。平成6年にはもう生江浜海岸のほとんどの砂浜が残っておりませんので、解除となって、今の神島水道というところが天然記念物カブトガニ繁殖地として現在に至るところになっております。

 次、お願いします。これが干拓地の今の海の関係、それを航空写真で見たものですけれども、干拓前というのは昭和49年の写真になります。閉め切り堤防ができていますが、まだ海の状態というような状況になっています。

 次、お願いします。さらに航空写真になります。そうすると、昭和44年の航空写真で薄く見えているところが昔は干潟になっていた部分、平成8年、これ以上の写真がありません。こうして見ると、干潟がとてもやせてしまっているなという環境になっています。右のほうだと陸続きになっています。

 次、お願いします。昭和30年代の干潟はかなりの数のカブトガニが生息していましたが、これまた古い写真でたくさんカブトガニがいる写真がなんですが、大干拓とそれに伴う水質悪化によって、笠岡のカブトガニは一時危機的状況になりました。干潟の干拓地を歩いて、カブトガニの死骸を採取した写真ですけれども、中学生が持っているのがカブトガニの死骸です。

 次、お願いします。笠岡のカブトガニの生息数です。昭和59年から平成30年、去年までのカブトガニの捕獲数がこれになります。一時期、平成15年から平成22年ごろの間なんかは10匹程度捕まるぐらいの状況でした。

 続きまして、カブトガニの昭和46年から平成30年までの笠岡のカブトガニの幼生を確認した数です。それによると、干拓をしてから、一気に減っています。特に昭和54年から平成9年まではほとんどゼロということになります。それ以後は放流をしていますので、上がっていますが、そういう流れでした。

 次、お願いします。今度は産卵です。砂浜にどれぐらいカブトガニが卵を産んでいるかという結果が、昭和53年から平成30年までの結果はこういうふうになっています。昭和53年、54年が非常に増えていますが、これは干拓をしたことによって、本当なら、もっと奥までカブトガニが産卵に来ていたものが、それ以上は入れなくなったので、今現在残っている繁殖地にとても多く生んだので、非常に産卵箇所数が多いという結果になっています。ただ、それ以降、ほとんどゼロですね。だから、産卵しても育たないような環境になっています。平成9年から平成30年まで、これは最初の昭和53年、54年は高い箇所数になっているのに、ほとんどゼロですけれども、拡大してみると、最近になって徐々に増えているような状況になっています。

 カブトガニの保護と今後の課題ということで、実際にカブトガニを保護するためには、次の2点が要かなというふうに考えております。まず、一つはカブトガニの人工飼育、これは実際に今もずっと行っている平成7年からカブトガニの人工飼育を、一生懸命育てています。そのほかに生息地の保全ということで、実際には河川の流入する河口付近の砂浜を守らなければいけない、これは産卵場所なので産卵場所の確保ですね。あとはその近くにある干潟、これは幼生の生息地なので、干潟を守らなければならないだろうと思います。あとは汚染されていない海水ということで、これは幼生とか成体の生息地ですので、全体を保全していかなければいけないかなと考えています。

 次、お願いします。カブトガニの幼生放流ですね。ほとんど1年、例えば、今年取り上げた卵があると、何年の7月ぐらいに幼生放流ということで、一般公募によってこういうふうに放流しています。

 それとカブトガニの成体放流といいまして、これは例えば冬にカブトガニの成体がとれても、先ほど申し上げましたとおり、水温18℃以下になると、動きませんので、一時カブトガニを保護します。それを温かい水温になるまで保護して、その後で成体放流をしようということで、これも一般公募、もしくはそのときに来館なさっているお客様と一緒に放流するということをやっています。

 続きまして、カブトガニの保護啓発運動ということで、これはカブトガニの繁殖地にアサリを掘りに来られる方がおられますので、そのアサリはここで掘っちゃいけないですよということで、啓発運動ということをやっています。これは年に2回やっておりまして、大体の1回の啓発運動で参加者人数は約200名ということになります。あとは海岸クリーン作戦といいまして、大体7月20日を保護月間ということで決めていて、7月に1,000人規模の海岸クリーン作戦ということで繁殖地と繁殖地の近辺の海岸のごみを回収する清掃活動をやっています。

 続きまして、地元の小学校、中学校、高校との連携ですけれども、出前講座ということで、カブトガニの生態とか、幼生の飼育の仕方とか、そういうことをやっています。地元の高校生なんかも、実際に飼ったり、カブトガニが生息する池がありますが、その中で実際にカブトガニの卵を採卵するという体験なんかもやっています。

 そのほかに、今まではカブトガニについてですけれども、実際に浄化船による海水浄化実験ということで、これはカブトガニの繁殖地の近くの水をきれいにしようという浄化実験ですね。2002年に3カ月ほど行いました。

 それと下水道の普及などによる水質改善保全、カブトガニが住みやすい環境を守るためにということで、下水道の普及もやっております。これも平成5年からやっておりまして、徐々に水質のほうもよくなってきたかなという部分があります。

 現状です。毎年継続的に産卵とかも見られるようになりました。幼生も育っているのが確認されています。上の写真、こういうふうに幼生の脱皮殻も採取できるようにはだんだんになっています。捕獲される成体の数というのは、一旦はほとんどゼロということに、10固体以下になりましたが、これも現在では50固体ぐらいまでは回復するようになりました。アマモ場も以前に比べると、増えたように思います。

 課題ですけれども、いつまで幼生の大量飼育をということを継続していくかということになります。もともと笠岡は非常に広大な干潟とかもありましたが、これは干拓によって失われてしまいましたので、カブトガニが無尽蔵に大量飼育をしておろしていくということも考えていかなければならないかなと思います。まだその時点ではないとは思いますけれども、今後はそういうことも考えていかなきゃいけないかなとは思います。

 あとはアサリ掘りなどの小さな現状変更行為、先ほどもありましたように、保護啓発運動というのをやっておりますが、なかなかアサリ掘りというのがなくならないので、どういうふうに小さな現状変更行為を少なくしていくかというのが課題になっています。

 そのほかに、天然記念物になっておりますので、その中で人工的に構造物をつくるというのは非常に苦しいことになります。なので、指定地により近くの、あるいは別の場所に繁殖地というものを、生息する場所というものを確保するということも考えていかなければならないかなというふうに考えています。

 以上です。ありがとうございました。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

 続きまして、里海づくり研究会の田中様からお願いいたします。

○田中事務局長 田中でございます。よろしくお願いします。

私どもが三十数年間、岡山県で取り組んでまいりましたことを紹介させていただきます。写真と図がほとんどですので、どんどん送っていきます。よろしくお願いいたします。

この三十数年間で瀬戸内海の環境は随分と様変わりいたしました。1980年代には、赤潮が頻発して死の海とまで言われましたが、岡山ではノリ養殖、カキ養殖の生産がピークを迎え、魚もエビもシャコも大変たくさんとれまして、浜はにぎわっておりました。

1990年代に入りまして、栄養塩の減少傾向、海水温の上昇傾向が出てまいりまして、漁獲量は少しずつ減少、2000年以降は貧栄養化と海水温の上昇が非常に顕著になりまして、漁獲量はさらに落ち込み、生物多様性も低下いたしました。

皆さん、御承知のとおり、瀬戸内海の漁獲量はピーク時の4割ぐらいになっておりますが、一番上から2番目、黄色の部分これは貝類を示しておりますが、非常に激減しておりまして、これも大きなマイナスになっております。

二枚貝類は海洋生態系を支える物質循環の大きな担い手でございます。干潟・藻場は生食連鎖・微生物ループ・腐食連鎖という3つの食物連鎖が複雑に作用して物質循環の核となる場所ですが、これも皆さん、御承知のとおり、大幅に減少しております。この図は1950年代の岡山県海面の様子です。緑色のところは全てアマモ場で、その内側にあるのが干潟、これらが1950年代まではそれぞれ4,300ha、4,100haもありましたけれども、1980年代には9割以上が失われてしまいます。

これに対して、どうにかしなければということで立ち上がってくれたのが備前市日生町の漁師たちです。日生のアマモ場面積の推移を見てみますと、1950年代590haだったものがどんどん減って、1980年代には12ha、これがさらに5haまで減っていきます。

それで何をしてきたかですが、34年間ひたすら種をとって播き続けてきました。

ただ種をまくだけでは、なかなか生えてくれません。いろいろと底質改良剤を使って底質改善を行ったり、アマモの種子の保存・管理の方法を工夫したり、透明度を上げるために湾口部にカキ養殖筏を持ってきたり、思いついたことは何でもいたしました。土のう式播種法といいまして、アマモの着床・活着を確実にさせる技術も考案しました。

最終的にアマモの種の生育環境に何が一番いいのかということに行き当たりまして、これがカキ殻です。日生町はカキ養殖の産地でございますので、一番手軽に入るものが結局一番効果があることがわかりました。

それをガイドラインにしまして、10cmから20cmぐらいの薄い層でまけば、それで十分効果があることがわかりまして、底質改良を加速化してまいります。

2011年に日生藻場造成推進協議会が、日生町漁協の正組合員83名で構成されました。これも今では後継者も含めて参加することになりまして、今、127名まで膨らんでおります。

これまでのアマモ場の推移を追ってみたいと思います。590haから12haになり、さらに5haになりました。1985年から種まきを開始して20年かけて38haまで何とか戻すことができました。その後は順調に増えていきまして、2011年には200haまで回復し、この時点で播いた種の数1億粒を超えました。2015年には250haになっております。

さらに2012年から新たな活動が始まりました。生協おかやまコープと日生町漁協と私ども里海づくり研究会議と岡山県がアマモ場造成活動に係る4者協定を締結し、都市部、岡山市などの一般市民の皆さんが参加するようになりました。漁師さんとともに一般の人々が花を摘み取り、種を選別し、種をまく、これをずっと続けております。

また、2011年にアマモ場が200haに拡大したころから、新たな問題が発生をいたします。大量の流れ藻が海面下を漂流して航行の妨げになり始めます。また、流れ藻が海岸や港に漂着して、異臭を放ち出しまして、地域住民の迷惑になってまいりました。それを解決してくれたのが日生中学校3学年200人の子ども達でございます。子ども達により流れ藻回収大作戦が実施されるようになりまして、これまで花を摘み取っていたものが、流れ藻回収で全て種子が確保できるようになりまして、花を摘み取る必要がなくなりました。

アマモ流れ藻回収から種とり、種の選別、種まきまで、毎年、漁師さんたちとともに子どもたちが活動しております。

さらに2017年からは小学校も参加するようになりまして、この写真は、小学生と中学生が一緒になってアマモの苗づくりをしているところでございます。子どもたちは、アマモの苗の成長を観察して観察記録をとっていきます。

これでできた苗は私どもが預かりまして、潜水して定植し、この写真のように下の右端にありますように立派に今は種をつけてくれております。

さらに2017年から岡山市の岡山学芸館高校も参画するようになりまして、小・中・高校生の連携体制が立ち上がりました。高校生は研究活動をしておりまして、毎年、テーマを決めて研究を進め、これも毎年公開シンポジウム等で発表しています。

さらに大きいことが起こりました。2015年にカキ殻を活用した米づくりが始まりまして、里海米という名称をつけて、新たなブランド米が誕生いたしました。このコンセプトと味が評判を呼びまして、どんどん作付面積が増えまして、2020年度には4万俵、さらに2年後には10万俵を超える勢いでございます。今現在でも岡山県下の農協が全て参画をしておりまして、その後、酒米も里海米でつくるようになり、「里海の環」という日本酒も誕生いたしました。これがきっかけになりまして、農業関係者もアマモ場再生活動に参画するようになりました。この写真は一般市民と農業関係者による活動の写真です。

さらに2017年2月に備前市里海里山ブランド推進協議会という組織が立ち上がりまして、農業団体、森林組合、商工会、観光協会、料理人、備前焼作家など、これまで孤軍奮闘してきたあらゆるステークホルダーが日生町漁協の活動を軸に集いまして、新たな地域おこしに奔走しております。

これまでの日生での取組、活動は既に岡山県下沿岸全域に広がっており、アマモ場再生活動とともに海ごみ対策にも取り組んでおりますが、里山資本主義で有名になりました真庭市や鏡野町等の里山の人たちも海の森づくりに協力してくれるようになりまして、「地域と世代をこえて=里海・里山・“まち”」をつなぐ」運動に広がっております。

今、アマモ場の面積につきましては、岡山県全体で1950年代に4,300haだったのが550haまでに一時期減少いたしましたけれども、2015年時点で1,845haまで回復をしております。

物質の流れというのは、河川、あるいは地下水を通じて海に流れ込みますが、太陽エネルギーによってる水の循環が生み出され、海があるからこそ森が育まれるということになります。

また、漁業の営みによって海から陸への回帰が生み出され、古くは塩の道を通じて人と物が交わることで森・川・里・海がつながってまいりました。

これから「アマモとカキの里海」日生がやりたいことです。海洋教育、海洋体験、海洋研究を柱に30以上の実践プログラムを駆使しまして、里山から里海へ、里海から里山へ、そして都市部から里海・里山へ、里海と里山と“まち”をつなぎ、人とモノの交流を促進し、循環型社会の実現のための拠点として発展をしていくべく新たな事業の計画を進めているところでございます。

これまでの30年間の技術的な成果でございますが、まず、アマモ場造成技術指針、それからカキ殻利用に係るガイドラインが二つ、カキ殻を使い、カキ殻を敷設したりすき込みますと、さまざまな小型動物が増殖をいたします。そのメカニズムですが、原地盤にカキ殻を敷設したりすき込んだりいたしますと、透水性等が向上して、物理化学環境が改善をいたします。そういたしますと、ベントスが徐々に多様化してまいりますが、それに応じてバイオターベーションの作用によって底質環境がさらに改善され、さらにカキ殻によって底泥の再懸濁が抑えられるために濁度が減少して、付着藻類なども繁茂してまいります。まさに正のスパイラルに転換するわけです。

これはメッシュのパイプにカキ殻を積めたものですが、たくさん小型動物が増殖しますが、これを活用して実験をしました。

上の写真を見ていただきますと、セディメントトラップで採取した有機物を投与いたしますと、1時間後、3時間後、6時間後と、見る見る透明になってまいります。何が起きているかと言いますと、濁度が急激に減少しますが、有機態窒素は1時間後まで増加した後に急減します。それに応じてDINは直線的に増加してまいります。

これを動物群別に分けて水槽実験をしてみました。フジツボ、ホヤ、二枚貝、カイメン、マガキ等で比較をしましたところ、繰り返し投入した有機物をどんどん吸収して分解していきます。この後、単位重量当たりの解析をいたしましたけれども、結論から申しますと、物質浄化の担い手は二枚貝類だけではないということが分かりました。ホヤ、カイメン等の人間にとって有用ではない生き物も含めて、いかに多様な動物を増やすかという視点が一番大事なことではないでしょうか。

これまで私たちは干潟と藻場の再生というのが一番大事なものとして取り組んでまいりました。もちろん、これは引き続き最も重要なことです。しかし、干潟と藻場は水深数メートルの範囲までで、また干潟も藻場も一気呵成に再生させるということは非常に困難です。

そこで、岡山県では、潮下帯よりもっと深い10mを超えるような水深帯も含めた広域的な海域での生物相の多様化のために、2015年に新たなカキ殻を使った底質改善のガイドラインをつくりました。これは2015年から岡山県で着手された干潟・藻場を含む浅海域から10m以上の水深帯までのカキ殻を活用した、「太く・長く・滑らかな、そして速やかな物質循環の実現」に向けた事業のイメージ図でございます。

最後に、2011年から2019年に地球規模での気候変動が海洋に与える影響を予測すべく研究が続けられておりましたネレウスプログラムが完結いたしまして、報告書が公表されました。実に戦慄を覚えるような内容でございまして、2050年までには、水温上昇に伴い、赤道周辺に魚がいなくなり北極圏に魚が増えて、溶存酸素濃度が減って、魚が小型化します。さらには海洋酸性化がこれまでにない速度で進行してサンゴや貝類が大打撃を被るという内容でございました。

これを目の当たりにして、我々はこれからどう対応すればいいのかという思いでございます。

以上でございます。

○岡田委員長 どうもありがとうございました。

それでは、これまでの御説明に関しまして御質問等がございましたらお願いいたします。

 沖先生から。

○沖委員 岡山県立大学の沖でございます。

今回、岡山県のほうからすばらしいモデル事業を2件御報告いただいて、非常にうれしく拝聴させていただいておりました。しかもどちらの事業も最初非常に苦労なさっているときを、私、よくよく存じておりますので、ここまで御発展されたことに本当にうれしく思っております。

お話を伺っておりまして、やはり、イベント等を通じて地元の方、それから環境教育、特に、小・中・高まで巻き込んでおやりになっていらっしゃるということで、これは非常にありがたいことですが、その上の大学が入っていません。備前市やあるいは笠岡市の市長ともよくお話をしますが、地元に大きな大学がないということで、大学生を集めにくいということを申していらっしゃいました。やはり、チューターにしろ、高校生は研究してくれますけれども、それをオーソライズして、次のステップに持っていってくれるのは、大学生、院生等々でございます。その辺のところは何か今後お考えなっていらっしゃるのかどうか、それを両モデル地区の方からお聞きしたいと思います。

○田中事務局長 今日は時間の関係で御紹介しませんでしたが、実は中学生の活動に対して、全国の大学の大学生たちがNPOを通じて手伝いに来てくれています。ですから、大学もかかわっておりまして、今は備前市そのものが国際学生ボランティア協会IUVSAさんですが、と連携協定を結んでおりまして、大学生も参画しております。また、それはもっと拡大していく形で考えていきたいと思います。

 御助言、ありがとうございました。

○沖委員 ありがとうございます。ぜひ発展させていただければと思います。

○森信主任学芸員 笠岡市のほうは、地元というか、他県、広島県のほうになりますが、福山大学という大学とは提携をしておりまして、特にカブトガニの行動調査の件に関しては先生がおられまして、その先生とは一緒にやっておるということはやっておりますが、病気等、カブトガニはよくわからないところが非常に多くて、実は大学と一緒にやりたいというふうに思っていますが、なかなかできいいないような状況ではあります。

○沖委員 どんどん発展していただきたいと思います。ありがとうございました。

○岡田委員長 ありがとうございました。

ほかにございますか。

末永先生、どうぞ。

○末永委員 今の沖先生からの御質問に関連しますが、先ほど、御発表、ありがとうございました。

田中様の御発表の中にもうちの大学からも教育学部と、あとフロリダのエッカード大学も海外からかなり参画させていただいて、御指導いただいたのは本当にありがとうございました。

やはり、これだけ具体的にアマモが増えたというのは、全国的にとても貴重な例だと思っております。なので、言うのは簡単ですが、他海域での実証例というものを、今後増やしていきたいという御予定等はございますか。

○田中事務局長 すみません。もっと広げる予定がということですね。

○末永委員 例えば、瀬戸内海で言えば、岡山県だけではなくて。

○田中事務局長 実は、そういったことも仕掛けておりまして、去年は大崎上島に呼んでいただきまして、一緒にこれからまたアマモ場再生活動を進めていこうということで、大崎上島から地元の組合長さん、それから熊谷さんという会社が一緒に参画して活動しております。それから、そのノウハウを持ち帰ってもらって、今年から地元でやるようになっておりますし、そのほかに、弓削島とも交流がございまして、それはアマモを使った藻塩づくりの技術交流も含めてやっております。

○末永委員 そうですね。広島の大崎上島がやられていますね。ありがとうございます。

○岡田委員長 ありがとうございました。ほかに、

どうぞ、大塚委員。

○大塚委員 大変貴重なお話、ありがとうございます。環境省にお伺いしたいですけれども、実施に際して、構造物の環境配慮も明記されることだろうと思いますけれども、環境影響評価で、その点はプラスの環境影響というような評価がなされているのかどうか教えていただけますか。そういう方向が必要ではないかと思いますけれども。

○浜名室長補佐 担当課に確認させてください。申し訳ないです。

○大塚委員 私が知っていなければいけませんが、申し訳ないです。

○岡田委員長 では、これは次回までに調べていただいて御回答いただければと思います。

 ほかにございますか。

 本日欠席されております白山委員から上月先生に質問とコメントを預かっているそうです。事務局からお願いいたします。

○佐藤係長 11ページ目に、安定同位体を分析した結果がありますが、イタボガキ科のδNの値が二つのグラフで大きく異なりますが、この理由について教えてください。

○岡田委員長 かなり専門的な質問ですが、上月先生、今の時点でわかる範囲で、どうぞ、11ページですね。

○上月教授 細かく見ていただきましたね。よくあることだと言い方をしたら申し訳ありませんが、多分、三つ部屋がありまして、ケーソンの中に、床の違いがありまして、多分、その床の高さにある生き物をよっても、少々食べるものが違うから、こういう結果になったのではないかというふうに思いますが、確かなことはこれ以上、今のところ、わかりません。また、必要であれば、実際やってみた学生と相談して回答したいと思います。

○岡田委員長 これは細かい点ですので、先生にもう一度御検討いただいて、後の機会でまたお答えいただければというふうに思います。ありがとうございました。

ほかによろしいですか。

○末永委員 今の発表以外でもよろしいですか。

先ほどの西嶋委員からの御質問に関してなんですが、実はこれは大阪府から当時頼まれまして、水産課のほうから頼まれまして、複数の構造物を使う場合に、大阪湾の流動に対してどのように最適に配置したらいいのかとか、そういった非常にテクニカルな依頼が、当時の水産課の御担当の方が、とにかくテクニカルな根拠にこだわられる非常に厳しい方だったので、それでいろいろな実験、あるいはシミュレーションを駆使して、さらには現地に複数の構造物を実際に置いて効果を検証した上で、この事業が始まったという経緯にかかわったことがあります。その後、先ほど、西田先生のほうからもございましたように、実験が終わった後はちゃんと引き上げて、それを回収したということを経て、事業開始後もいろいろ実験、あるいは現地調査に立ち会わせていただいたこともあります。

当時、今もう御退官されたようですが、今、大阪府の水産研究所のほうに行かれている方との情報交換によると、地元の岸和田の漁協さんのほうからの話では、小魚のレベルでかなり効果が上がっているというお話を伺っておりますので、引き続きモニタリングのデータがあれば、私のほうも知りたいなと思っているところでございます。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 西嶋先生、よろしいですね。

ほかにございますか。

それでは、今、末永先生もそうですが、全体、前のお三方のお話も含めて御質問等がございましたら、承りたいと思いますが、よろしいでしょうか。

どうぞ。

○岩崎委員 岩崎でございます。

私、田中さんとは旧知で、3年前に日生でアマモサミットというのがあったときに、私、参加していて、非常に勉強になり、さらに取組が発展しているのを大変うれしいと思います。

 全体的印象ですけれども、やはり、大阪湾の人工藻場をどうするかという話、日生のアマモ、やはり方法論が一口に里海、あるいは基本計画の理念にしても、全然やり方と方法論が違う。一律の方法論というのは、なかなか難しいような気もするのですよね。ですから、今後の基本計画のあり方を考えていく上で、湾灘ごとの協議会というのはまだしもうたってありますけれども、まさに、より地域に根差した方法論、あるいは、例えば、さっきの大阪湾のウェルカムという話がありましたけれども、地域、海域の特性に応じた方法論が必要になる。その中で、私は広島のほうにおりますから、日生のような地域が一体となった取組というのは、現実問題としてなかなか、特に広島湾を考えますと、なかなかそこまで行っていないという中で、日生は非常に有用なモデルだと思うのですけれども、同じところで同じようなものが根づくかというと、なかなか僕は難しい問題があると。地域の住民、あるいは漁業者が主体となって、それぞれの地域の特性に応じた方法論を生み出していくと。そのための議論を加速するような方向で、今後の基本計画のあり方も考えていくべきだなという印象を持ちました。これは意見です。

○岡田委員長 ありがとうございます。これは今後事務局がまとめていく上で御検討いただければと思います。

 ほかにございますか。

どうぞ。今のように御意見でも承りたいと思います。

○鷲尾委員 今日、御発表いただいたそれぞれ継続的なモニタリングを続けていられています。それによってさまざまな実証されてきたことがあると思いますが、大学の研究者というのは、競争的資金で活動しないと仕方がないので、何年かしたら資金が切れて終わってしまうというように継続性が担保されない。その点、何年というモニタリングを続けておられるところの動力というのは、どうされているのか。それぞれ事情は違うと思いますが、地方行政であれば、行政機関が継続的な調査をするというのはありますが、どちらかというと、半分民間、あるいは地域の住民の方々が中心に進めていくときに、動力をどう確保していくのかというのは非常に大きな課題ではないかと思います。

田中さんに、何かお聞きしたいです。

○田中事務局長 活動が始まって最初の25年間というのは、完全に漁師のボランティアです。私は当時、県におりましたけれども、一銭も出ていないです。燃料費さえ出さない。それはなぜかというと、自分事としてやってもらわないと継続しないという思いがありまして、一切公的なお金を使わずにやりましたが、その後、大変ありがたいことに、水産庁さんから生態系保全交付金が入ってきまして、今はその交付金を非常にありがたく活用させていただいております。ですから、定期的にやる分布調査はその資金で対応可能ですし、かなり助かっています。できたらできるだけ続けていただきたいですが、ただ、これもいつまで続くかわからないですね。先ほど御紹介しましたが、里海と里山と都市部をつなぐ交流拠点にしたいとお話ししましたが、それは、もう今既に地元で一般社団法人を立ち上げまして、運営をしていく算段をしております。そこで利益を上げて、いろんな物販も含めて、さまざまな利益を上げて、その一部を運営経費に充てていきますというような形で、しようとしているところでございます。

○岡田委員長 ありがとうございました。

ほかによろしいですか。

そろそろ、それでは時間になりましたので、本日のヒアリングはここまでとさせていただきます。御発表いただいた皆様方、本当にありがとうございました。

まだ質疑の中で宿題になったものが残っておりますが、これは持ち帰って整理いただき、次回以降の小委員会で事務局から回答させていただければというふうに思います。

今回のヒアリングですが、審議の中で追加的なヒアリングが必要になるかどうか、これは随時検討するということになっております。現時点でヒアリングの対象の方が、もし、こういう方がということで、追加等で御意見、御要望がありましたら承りたいと思いますが、いかがでしょうか。特段現時点ではよろしいですか。

どうぞ。

○岩崎委員 やはり、もう既にこの間から申し上げているように、マイクロプラスチックのモニタリングというのは、やはり、もう共通の課題となってきますので、一つは環境省が既にやっていらっしゃるマイクロプラスチックの瀬戸内海における調査結果を出していただきたいというのと、できれば、マイクロプラスチック問題の専門家がおいでいただくなら非常にありがたいなとは思っております。どうしても難しいならばあれですけれども、要望しておきます。

○岡田委員長 ありがとうございました。これは環境省のほうで御検討いただければと思います。

それでは、あと、よろしいですかね。

議題の2のその他ですが、事務局、何かございますか。

○佐藤係長 前回、宿題となっていた徳島県の施肥材に関する質問に対する回答を預かっておりますので、この場で御報告させていただければと思います。

 鷲尾委員からいただきました養殖全体に効果を上げるには、何tの施肥が必要になるかについて、施肥材が幾ら必要になるかは養殖場のスケールによっても異なるので一概には答えられません。今回用いた施肥材では半径1.5m程度には効果があるので、そこから必要量を逆算することになります。また、気象や海象等の条件が合えば、さらに効果範囲が広がることもわかっているので、事業化についてはその点も考慮した施肥材や設置箇所等の改良が必要になると考えております。また、スケールアップした想定のシミュレーションがあるかについては、現在のところはありません。施肥材の周辺や施肥材を使用した養殖場周辺におけるDIN濃度やプランクトンの分析については、今後の要検討課題としております。

また、末永委員からいただいております栄養塩濃度の極端に落ちる冬場においてのユーカンピアを代表とする植物プランクトンの分析結果があるかについては、紀伊水道の以北の沿岸のノリ、ワカメ養殖場において10月から3月にかけてユーカンピアとコシノディスカスを係数にしております。それよると、食物プランクトンが上昇するに従いまして、付近の栄養塩が低下する傾向が見られるとのことです。

以上です。

○岡田委員長 ありがとうございました。よろしいですか。

それでは、本日の議題は全て終了いたしました。

長時間にわたりまして御議論いただきまして、本当にありがとうございました。

それでは事務局にお返しいたします。

○佐藤係長 委員長、議事進行、ありがとうございました。

次回の小委員会は10月8日火曜日、13時半から引き続き関係者からのヒアリングを実施する予定にしております。

委員の先生方におかれましては、取りまとめに向け、今後ともよろしくお願いいたします。

また、本日の議事録については、委員の皆様及び御説明いただきました関係者の方々にはまとまり次第、お送りさせていただきますので、御確認をお願いいたします。御確認いただいた議事録は環境省ウエブサイトにて公開いたします。

それでは説明いただきました関係者の皆様、ありがとうございました。

以上をもちまして、第16回の小委員会を閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

午後0時03分 閉会