中央環境審議会地球環境部会第6回国際環境協力専門委員会議事録
開催日時
平成17年4月21日(木)10:00~11:58
開催場所
合同庁舎5号館 共用第8会議室
出席委員
(委員長) | 浅野 直人 | ||
(委員) | 青山 俊介 | 中村 正久 | |
加藤 久和 | 長谷川 雅世 | ||
小林 悦夫 | 山瀬 一裕 | ||
園田 信雄 | 和気 洋子 | ||
高橋 一生 |
議題
(1) | 専門委員会報告(素案)の検討 | ||
(2) | その他 |
配付資料
資料1 | 専門委員会報告(素案) |
議事録
午前10時00分開会
○田中室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会国際環境協力専門委員会第6回を開催させていただきます。
本日は13名中10名が出席をされております。石田委員、黒川委員、廣野委員におかれましては、今回はご欠席とのご連絡をいただいております。
それでは、浅野委員長、よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 それでは、まず、既にご案内差し上げておりますように、本日は、私ども専門委員会の報告書の内容の審議の、第1回目ということでございます。素案という形でありますが、文章がしっかり書き込まれたものが準備されております。これをもとに、今日は自由にご意見を伺っていきたいと思います。
それでは、資料の確認をお願いいたします。
○関谷補佐 本日お配りした資料は、議事次第資料のほかは1種類でございます。資料1としまして、今後の国際環境協力の在り方について、中央環境審議会の本委員会の報告書の素案でございます。そのほかに委員の皆様のお手元には、先日ご確認をいただいた前回の専門委員会の議事録を配付させていただいております。これにつきましては、もしお差し支えなければ、近日中に環境省のホームページの方に掲載をさせていただきたいと思っております。
以上でございます。
○浅野委員長 それでは、ただいまから議事に入りたいと思います。
まず、報告書の素案について事務局からご説明いただきます。言いわけを申し上げることは大変申しわけないのですが、準備がやや不十分であったために、これまでの委員の先生方のご発言が遺漏なくフォローされているかどうかの確認が、十分にできておりません。そのため、今日は素案という形で出させていただきました。最終的には、もう一回よく議事録を精査して、必要なご意見が反映されるように努力いたします。今日のところはお許しをいただいて、まず事務局から内容を説明しまして、ご発言の内容がこういう趣旨だったのに違った趣旨でとられているとか、大事なご発言が全然反映されていないという点がありましたら、ぜひご指摘いただきたいと思います。
大きな枠組み、シナリオ的なことについては、既に何度かご議論いただきご了承いただいております。これをもとに、この素案が作られておりますから、この段階で大きな枠組みそのものを見直すというようなご議論はないことと存じます。しかし、内容の細かい点、あるいは全体で一貫した考え方が貫かれているかといったような目で見てまいりますと、まだ問題がのこっておるかもしれませんので、そういう目で、ご検討いただきたいと思います。
では、事務局、よろしくお願いします。
○関谷補佐 それでは、資料1をご覧いただきながら説明させていただきます。
1枚めくっていただきますと目次がございます。今回お示ししました素案は、最初の「はじめに」から始まりまして、その後、大きく3つのパートで構成をしております。Iが国際環境協力の理念及び基本方針でございます。IIが国際環境協力の現状と課題でございます。その後IIIで、今後の国際環境協力の取組の方向を示しております。最後に「おわりに」ということで結んでございます。
これから、30分ぐらいかけまして、説明させていただきます。最初のIの部分は、全体のストーリー、哲学に関するところでございますので、丁寧に説明いたします。その後、現状と課題、それから取組の方向につきましては、時間の関係もございますので、要点のみの説明とさせていただきたいと思います。
それでは、「はじめに」から説明させていただきます。ここは平成4年に答申をいただいた以降の国際環境協力を取り巻く状況の変化に関しております。例えば地球環境問題全般が顕在化していること、途上国における貧困、都市集中の問題、先進国での経済活動の高度化などのような状況が生まれたこと。さらに、それに対応して環境面では、国連の環境開発会議が92年に開かれまして、それ以降、国際的な取組が進展してきているということ。その一方で、90年代を通して、持続可能な開発については、なかなか成果が得られなかったということもございます。それを踏まえて、2000年にはミレニアム開発目標を定め、その目標を達成すべく行動していくということが合意されております。これが2ページまでのところに書いてございます。
さらに、2002年にはWSSD、ヨハネスブルグサミットが開催されまして、ここで改めて環境の悪化の問題、貧富の格差の拡大の現状が総括された上で、国際社会オーナーシップが必要だということが確認されております。
現状では、そういった取組の変遷を経て、課題として貧富の格差の問題、あらゆる国におけるガバナンスの確保、国際社会のパートナーシップの問題、それから企業の方々の社会的な責任の充実といったものが、一般的には課題としてとらえているのではないかということでございます。
3ページに参りますと、こういった課題を抱える世界全体を見たときに、"途上国"という言葉でくくることができない多様な社会になってきたということを書いております。
そういった現実を踏まえて、これまでのような、単に先進国対途上国という問題ではなく、発展度合いに応じて、あるいは抱える問題の性質に応じて取組を進めていく必要があります。また、自然資源の不適切な管理といったような問題が紛争を悪化させる原因になっているということも指摘されておりますので、そういった点での対応も必要になってくるということも書いてございます。
地域の問題としましては、アジア太平洋、あるいは東アジアの問題についても書いてございます。
そういった主に国外の状況を踏まえて、我が国の中での変化としては、3ページの中ほどでございますが、ODA大綱が一昨年改定されております。
それから、ODA以外の部分でも、さまざまな取組が活発に行われるようになってきました。それは政府のレベルのみならず、企業、地方公共団体、NGO/NPOを通じた活動が活発になってきたということです。
4ページに参ります。従来の政府対政府の協力だけではなくて、地域内あるいは、その地域の中の準地域内の協力体制の充実、といったものが求められてきているということを書かせていただいております。
こういった状況の変化を踏まえて、平成4年に答申をいただいた「国際環境協力のあり方」を見直す必要が出てくるということで、今回、ご指摘いただいていることを書いてございます。
5ページからは、I.国際環境協力の理念と基本方針ということを述べております。最初に理念、次に目標を記してございます。理念は、我が国のみならず、世界が普遍的に掲げるべきものを書いてございます。「地球環境の保全と持続可能な開発といったものを追求していくためのパートナーシップをつくる」ということを理念として掲げております。ここで「パートナーシップ」という言葉で言っておりますのは、各国が自ら環境保全に資する政策を立案、実施していくことを基本としまして、その上で各国の能力に応じて協力していくことが必要ではないか、ということでございます。
目標については、今後10年程度の期間を念頭に置いて、我が国が国際環境協力を進めるに当たっての目標を書いてございます。ここでは、環境を保全していく上で、各国又は各国の中のさまざまな主体が自律的に環境の管理に取り組む仕組みを構築する、さらにそれを評価していくことが重要ではないかということです。それから、「環境保全」という言葉で、単にやらせるものだけではなくて、MDGの達成を含め、持続可能な開発、あるいは地球規模の環境問題の解決の視点から環境に関する取組を進めていく必要があるということです。目標としては、「地球環境の保全と持続可能な開発を考えた環境管理の仕組みの改善」を提案させていただいております。
この目標自体は、我が国が世界全般を相手として、協力を進めていく上での目標でございます。今後、協力を効果的に、また我が国の限られた資源を有効に使って推進していく上では、重点的な目標を設定する必要があるのではないか。その際に、その協力の結果期待される環境保全上の効果、我が国との社会的、経済的又は地理的な関係、さらには欧州や北米等の先進国との相互補完、こういった観点から、アジア太平洋、とりわけ我が国が属する東アジアを中心として取組を進めるべきではないかということを書かせていただいております。
その上で、6ページから7ページにかけて、東アジアで重点的に取り組んでいくべき理由、またそこで目指すべきことを書かせていただいております。
重点を置く理由としては、例えば人口の面では、世界の人口の3分の1が東アジアに居住しています。また、経済活動の面では、GDPの約2割を、現在、既に生み出しております。それに伴ってエネルギー需要や資源需要も膨大になっており、今後、さらに増大していくことが見込まれております。
したがって、この地域で適切に環境汚染にかかる対策を進めていかないと、地球全体の環境に重大な影響があります。またそれぞれの国も、非常に深刻な環境問題をますます抱えていくということが懸念されるわけであります。
また、東アジア各国は既に域内の各国同士の経済的な関係が非常に深まってきている中で、各国の経済活動が東アジアの環境そのものにお互いに影響を与え、また環境悪化自体が、それぞれの国に影響を与えるといった相互関係があるということではないかと思います。
東アジアの国が環境を良くして環境保全に努めていくことは、地域の環境保全を改善するという意味で重要であります。さらに、この地域の経済成長を持続可能な形にしていく、地域で環境産業の発達を促すという面で、域内の各国がそれぞれ大きなメリットを享受できる可能性があるということから、この地域での協力を推進していく必要があるということでございます。
7ページにいきますと、その協力のための枠組みの構築について、どういった考え方で実施していくかということでございます。東アジアは、既にさまざまな発展段階の国々から成っております。我が国はこれまで東アジアの各国に対して、特にODAを集中的に供与してきましたが、今後は国ごとの経済成長に応じて、ODAの役割というものも変化していくと思われます。具体的に言えば、引き続き貧困削減を初めとして、基礎的な要求の充足が必要な国、インフラ整備が必要な国もありますが、他方でODA供与の対象から外れてくる国も出てくることが予想されています。現に既に韓国、シンガポール、ブルネイが対象国ではなくなっています。こうした国々については、それと並行して、民間セクターの役割というものが重要になってくるということで、こういった世界全体の活動をいかに持続可能なものにしていくのかが課題になってくると思われます。
そうしますと、今後10年で東アジアにおいては、特にこういった社会経済のダイナミックな変化を的確に踏まえて、単に政府の供与ではなく、企業その他のさまざまな主体との間で、どのような環境協力の関係を構築するか、それを枠組みとして構築していくかというところが重要であり、そういう取組を進めていく必要があるのではないかということでございます。
以上を踏まえて、8ページから10ページにかけて、今後の国際環境協力の基本方針を5点にまとめております。
まず第1点は、国際的な枠組みづくりへの積極的な関与でございます。地球環境保全、持続可能な開発の実現に向けての世界的な枠組みづくりが、既にある程度できてきております。今後、これをさらに充実させていくということが重要です。その際には我が国が積極的に関与するべきであります。その場合には、他の先進国や有力な途上国との間の二国間の政策対話を十分行った上で、多国間の交渉に臨むことが必要であると思います。
2点目は、東アジア諸国との協働(パートナーシップ)に基づく協力です。先ほど説明申し上げたような特徴を持つ東アジアですが、対等な協力関係をいかに構築していくかということが、今後は特に重要になってくるのではないか。それぞれの国が地域の環境問題を自らの問題としてとらえて、責任を持って取り組むということが重要であり、そういったことが地域の全体、さらには世界の利益になるという認識を共有するよう努めていく必要があると考えております。協力に当たっては、諸国の対処能力にさまざまな違いがありますので、そういった能力の違い、立場の違いを尊重しながら、協力関係を深める必要があります。また、この地域では、何も我が国だけが環境協力を行っているわけではありません。他の先進諸国や国際機関も積極的な取組を行っていますので、こういった関係者とも十分対話を行って連携を図る必要があるのではないかと思います。それから、我が国がリーダーシップを発揮していくべき、ということがよく言われますが、この東アジアにおける取組を今後進めていくに当たっては、社会経済の活動全般において、環境保全を追求していくことが特に大事なことです。我が国はこれまで、あるいは現在も追求している環境と経済の統合、あるいは持続可能な社会の実現に向けた努力を積極的に各国と共有する。またそれを踏まえて、各国の事情に応じた適正な対策・施策の立案、実施のために、各国と協働していく。そういった面でのリーダーシップが求められているのではないかと思っております。
9ページに参りまして、3点目の基本方針です。さまざまな主体による取組の促進・主体間の連携強化であります。ここでは、さまざまな主体として、政府以外に地方公共団体、企業、NPOなどを掲げおります。こういったさまざまな主体の役割というものをそれぞれが担い、さらには相手方の国の主体とも連携していくことが重要ではないかということでございます。その場合、繰り返しになりますが、経済活動の状況、相手国の状況に応じて民間セクターの役割、ODAの役割などを十分踏まえまして、それぞれの主体の活動を組み合わせていくことが必要であろうと思います。特に中進国では、民間セクターの今後の取組、特に市場を通じて技術を移転、普及させていくという取組も含めて、民間セクターの役割が期待されるところであります。また、各国の地域社会の取組を進めていくことも重要でして、その場合には、さまざまな主体が参加をし、きちんと情報が公開され、またさまざまな施策の策定プロセスに参加を促していく取組も必要であろうと思います。
4点目は、こういった国際環境協力を進めるに当たって必要な、我が国の国内体制の整備です。これまでも体制の整備は叫ばれてきましたし、行われてきましたが、今後は政府、ODAを中心とする体制の評価のみならず、今述べてまいりましたような国際環境協力の場の広がり、かかわる主体の多様化、こういったものを踏まえた基盤づくりが必要であろうということでございます。
5点目が、重点分野を考慮した協力でございます。先ほど「はじめに」のところで若干触れさせていただきましたが、これまで国際的にはさまざまなイニシアティブ、目標設定といったものがなされております。例えばMDGの中でも環境の持続可能性といったものが掲げられておりますし、10ページに参りますと、WSSDを機会に、このアジア太平洋でもプノンペン・プラットフォーム等の中で、さまざまな重点的な課題、分野が挙げられております。それから、最近の情報としましては、我が国環境省も主体となって活動したアジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)の中でも、分野別の提言としてさまざまな重点分野が書かれております。こういった流れを踏まえると、国際的に重点とされている分野としては、淡水資源、エネルギー・気候変動、土地管理と生物多様性、都市環境の問題、横断的なものになりますが、教育・キャパシティ・ビルディングといったものが重点的に考えられます。したがって、今後、我が国が取組を行う場合にも、こういった重点分野を考慮することが必要ではないかと思います。またその際、我が国に豊富に蓄積されている公害対策、モニタリング、環境教育といった知見、経験、比較優位性を十分に生かして取り組むという視点が重要であると思っております。
また、国際社会全般の課題としまして、貧困削減、新たな貿易体制への対応、紛争の予防という問題も、環境問題との関連を指摘されておりますので、こういった面も考慮する必要があるということであります。
2-2の配慮すべき事項としましては、成果を重視すべきこと、効率性の確保、公正の確保、多様性への対応、国民参加の配慮を掲げてございます。これらについては、とりわけODAなど公的セクターによる協力について、これまでも要請されてきたことではございますが、その他、さまざまな協力についても当てはまることなのではないかということでございます。以上が理念と基本方針でございます。
続きまして、現状と課題のところでございます。世界的な枠組みづくり、地域の問題、多様な主体の取組、協力の推進体制基盤の問題という大きな4つの塊でまとめてございます。
1番目が国際的な枠組みづくりの現状と課題でございます。これにつきましては、これまでさまざまな国際条件あるいは行動計画がつくられてきております。中でも今年度に関しては、京都議定書がようやく発効しました。他方で途上国を含む地球規模での問題については、今後、将来の枠組みの議論が、まさに始まろうとしている。それから、気候変動による悪影響の問題も、まだこれからという状況でございます。
それから、貿易の環境につきましては、WTOの議論の行方というものが不透明になっておりますが、他方でFTAの中でも環境の問題も取り上げられたという状況にございます。
14ページは地域の問題について書いてございます。2-1といたしまして、政策対話でございます。まず二国間の政策対話としては、我が国は中国、韓国との間で環境保護協力協定を持っております。分野別ですと、渡り鳥の条約、あるいは協定といったものを、中国その他の国と結んでおります。気候変動につきましては、米国、中国との間の政策対話等を行っております。
ODAに関しては、政策協議が主要な供与国と行われておりますが、環境の分野に関しての体系的な議論は、必ずしもされているわけではないようであります。
先ほど申し上げたとおり、FTA、EPAの交渉でも環境は取り上げられております。
地域の政策対話としましては、日中韓の三カ国の大臣会合、あるいはESCAPの環境大臣会合、ASEAN+3の大臣会合など、さまざまな政策対話は進んできております。
我が国としては、91年からエコ・アジアということで、アジア太平洋の環境大臣の会合も引き続きやっております。
それから、先ほどご紹介しましたAPFEDの取組も政策対話として挙げられるものかと思います。
15ページに参りますと、情報・研究ネットワーク、環境管理の問題の現状でございます。これについては、我が国も分野別に、例えば酸性雨のモニタリングネットワークをEANETと称し、東アジアで進めておりますし、最近では黄砂のモニタリングネットワークの構築にも努めております。
情報・データの分野に行きますと、16ページですが、アジア太平洋の環境白書のようなものをつくっていこうという動きが、さまざまな機関で進められております。またデータベースの作成といったものも分野別には進められております。
ただ、こういった情報が必ずしも体系的に利用しやすい形で整備されていないということが言えるかと思います。
共同研究の問題については、我が国の主導で、アジア太平洋の地球変動研究ネットワーク(APN)を推進しております。また、地球環境戦略研究機関(IGES)も共同研究を推進しております。
こういった共同研究も進んできておりますが、今後の課題としては、いかにこれを各国の政策立案につなげていくかではないかと思います。
17ページに参りますと、(3)といたしまして地域各国の環境管理能力の現状でございます。先ほどから東アジアはかなり経済発展が進んできたと申し上げておりますが、現実の問題としては、東アジアでも多くの国々で、まだ社会全体の環境意識が十分でない、政府機関の能力、人材が不足しているといった問題は引き続きあります。
他方、東アジアの中を見ますと、韓国やASEANの一部の中進国が、他の地域諸国を支援するといった例も増えてきておりますので、今後、南南協力も含めて、我が国も地域全体の能力の向上に貢献するということが期待されていると思われます。
我が国も、JICAの研修に代表されるように、さまざまな能力向上の取組をしてまいりました。今後はより地域全体の環境管理といったものを視点として持って、プログラムをつくったり、各国と能力向上の実施体制をつくったりする必要があるのではないかということであります。
地方公共団体、地域社会の環境の管理能力につきましては、アジア各国で地方分権が進んでいるといったことも踏まえると、今後重要な課題になっていくと思われます。
18ページに行きますと、企業の環境管理能力については、多国籍企業は我が国の企業も含めて積極的な環境対策をとっている国がある一方で、途上国自体が環境規制の執行が弱いということもあります。必ずしも途上国の国内企業においてまで、きちんとした取組がなされている現実ではないように見受けられます。
2-3ではODAの課題を書いてございます。東アジア中心として我が国のODAは実施されてきたということでございますが、こうしたODAの貢献によって東アジアでの成長と貧困の解消が進展してきたという面も指摘されております。また環境分野におきましても、EcoISDを提唱して、それに基づいての協力というものがなされてきているわけですが、今後は、先ほどから何度か申し上げていますけれども、東アジアを考えますと、経済成長が見込まれている国においては、ODAの役割というのはこれまでよりも限定されてくる、ということがございます。そういった国については、今後、環境ODAの分野においても、より重点的な、より戦略的な活用が必要になってくる。
他方で、東アジアの中でもまだまだ成長が進んでいない、あるいはその他の国でも、その他の地域でもそういった国々がございます。そういうところでは、地域のニーズをきちんと見極めて、持続可能な開発の実現という観点でODAの必要があるのではないかと思います。
国際的な課題の多様化ということで、平和構築、紛争予防、あるいは防災といった面でのODAの活用といったとも必要があると思います。
19ページに参りますと、ODAについて幾つかさらに分析をしております。例えば環境ODAの実績と政策分野の協力では、これまで大きな実績を資材協力や施設建設の部分で、個々に挙げてきたわけですけれども、政策立案などの政策支援型の協力というは、必ずしも重点的ではなかった。それから、供与した機材などの維持管理の問題も指摘されています。
環境ODA実施の枠組みというところで、これまでODAはかなり個別的に実施されたということで、その国全体の環境ガバナンスの向上、環境管理能力向上といったシナリオの中での位置づけが十分ではなかったのではないか。地域全体の環境管理を改善していくという視点が、なかったのではないかということであります。
20ページにいきまして、2-4地域における環境改善の枠組みでございます。ここでは、地域レベル又は準地域レベルで、さまざまな計画づくりというものがなされてきております。現時点では、なかなか実効性のある行動計画といったものになっていない、あるいは北東アジアでは、地域としての共通計画というものを、まだつくっていないという状況にあります。
21ページに参りますと、(2)として、東アジアにおける環境管理の枠組みということがございます。現在、東アジア共同体、東アジアコミュニティそのものの構築というものに向けて準備が進められておりますが、現時点では環境に関する問題が、ここでは主要な課題としては取り上げられておりません。今後、東アジアの環境管理について議論していく場合には、現時点で政策対話などの地域の枠組みとしては、日中韓の環境大臣会合その他各種協定などがございます。こういったものが、今後の東アジア全体の取組の基盤になっていくと思われます。ただ、現時点では、政策対話などにとどまっているというところが問題点・課題としてあると思います。
時間の関係で少し飛ばしますが、23ページからが、我が国の多様な主体による環境協力の現状と課題でございます。地方公共団体の取組としては、技術研修員の受入れ、調査研究といったものが中心になされております。今後、途上国の中央政府の能力の底上げのための役割が期待されておりますが、現時点では、技術研修員の受入れというものが中心になっているという現状でございます。
NGO/NPOの協力については、例えば植林などの実践的な活動、環境教育、調査研究といったことが中心としてなされております。
他方で、日本のNGOの国際的に活動する団体は、依然として数は限られているのではないか。さらにパーマネントな国際的な援助との連携も十分ではないのではないかと考えられます。
3-3としては、企業による環境教育でございます。企業による環境教育といいますと、いわゆる植林のような社会貢献活動がまず思い浮かびますが、今後、特に企業の事業・ビジネスを通した、途上国や地球規模での環境管理の能力向上に特に注目していく必要があるのではないか。また、CSRの推進といった観点からの取組にも注目していく必要があるのではないかと思います。
25ページに参りますと、特に企業による環境教育を進めるに当たっての課題です。企業がビジネスベースで展開を進めていく上では、相手国の社会経済が成熟していく必要があるということ、相手国の環境保全意識と環境保全のための仕組みがきちんと実施されていくということが必要となります。また、知的財産権の保護に関する問題といったものもあり得るのではないかということでございます。
3-4は、大学をはじめとする学術研究機関の協力ということです。留学生の受入れや、共同研究などが進められてきているということであります。
26ページに、そういった取組を進めるに当たっての我が国の体制の問題が書いてございます。まず、情報の問題としましては、先ほどもご紹介しましたように、取組はかなり行われてはおりますが、情報自体をきちっと取り出しやすい、あるいは定期的に更新して使いやすいようにすること、海外に向かって発信していくこと、そういった点が弱いということでございます。
それから、人材の育成と活用というところでございます。「人材」といいますときに、国際的な会議での政策対話、あるいは国際的な計画づくりに携わるような専門家、そういった人材の育成に努めてきていないのではないか。途上国での環境協力活動の専門家として活躍する人材の育成も、必ずしも進んでいないのではないか。さらには、人材として育成された方々の活用という面でも、データバンクに登録していただいた後のアフターケアの問題も含めて、十分に活用されていないのではないかと思います。
それから、資金の問題についても、ここ数年、社会全体、国予算も含めて、国際環境協力にかかわる予算は、それほど大きくなっていないという現状があります。
また国際機関、例えばGEFのような機関の資金を我が国として十分活用できていないという問題もございます。
4-2は、環境協力の推進体制の問題ということです。例えば国際機関に勤務する日本人が非常に少ないのは問題であるということが書かれております。29ページに参りますと、関係機関、政府内の関連府省、それから、自治体との間の連携調整が十分でないといった問題を指摘させていただいております。
30ページに参りますと、地方公共団体、NGO/NPOの協力体制ということで、それぞれ地方公共団体でいえば、内部に国際協力の専門組織を整備することは非常に難しい現状ということ、活動を十分カバーするような資金が得られていないことがあります。
NGOについては、31ページでございますけれども 、先ほど述べましたような状況で、専門家が十分でない、あるいは国際的にイニシアティブをとれる団体まだ少ないということでございます。
企業の面で書かせていただいておりますのは、むしろ今後の取組について望まれることということになるかと思います。現地の企業や現地の政府の環境管理の改善に協力していく、CSRの視点から実施体制を整備していくといったことが望まれるのではないかということでございます。
33ページ以降が今後の取組の方向でございます。
まず枠組みづくりの面でいきますと、我が国としても積極的にかかわっていく必要があるということで、1つは国際的に重点とされている分野でのアプローチづくりに関与する必要があるということでございます。
それから、気候変動の問題につきましては、先ほど述べたような、今後、枠組みづくりといった問題に関与していくべきです。
貿易関係についても、WTO、あるいはFTAの交渉に積極的に関与していくということであろうかと思います。
35ページからが、地域における環境協力の枠組みづくりに向けた我が国のイニシアティブということです。これまでもやってきたような二国間の地域の政策対話を着実に進め、また有効に活用していく。その際は、二国間での環境協力の方向づけといったものも必要であろうかと思いますけれども、地域における環境管理の枠組みの構築に向けて、関係諸国の意識の向上を図っていくことが必要ではないかと思います。
また地域全体でいきますと、さまざまな分野ごとにフォーラムを設けて、これまでも対話を推進してきております。今後、例えば3Rに関する意見の交換、それから酸性雨をはじめとする大気環境管理の枠組みづくりを、重点的に進めていこうということでございます。
37ページからは、情報・研究ネットワークや環境管理能力の強化といったことでございます。これまで既に芽が出てきております、さまざまなモニタリング・ネットワークを育てていく。今後さらに砂漠化あるいは水質や漂着ごみなどの海洋環境も含めて新たなネットワークの構築にも努めていくといったことです。
研究ネットワークについても、さらにAPNを中心にしました取組を進めていくとともに、研究者の間の交流を促進するような措置も必要ではないかということでございます。
途上国の環境管理能力の向上といった面では、今後は、その国々の状況に応じたプログラムを作成していくということで、キャパシティ・アセスメントを実施した上での取組、さらには、南南協力の推進が重点的に実施する必要があるのではないかと書いております。
39ページがODAの関係でございます。これについては、先ほど述べましたように、今後は、より途上国の人材育成あるいは環境に関する制度整備などの政策支援型の協力を推進していく必要があるのではないかと思います。
国別援助計画が最近つくられてきておりますので、こういったものに環境の視点を戦略的に織り込んでいく。また、環境案件についてはMDGの達成などを絡めた案件をつくっていくということが必要なのではないかと思います。
40ページに参りますが、紛争後の復興、あるいは紛争予防、さらには自然災害の発生、防災といった観点でも環境教育が必要であります。こういった面でもODAで取り組んでいく必要があるのではないかということでございます。
41ページが、地域における環境管理の枠組みの構築、その枠組みに基づく環境管理の推進ということでございます。先ほど、現状のところで申し上げましたように、東アジア地域レベルでは、政策対話が行われてきております。そういったものを進めながら、まずは分野別の取組の実績づくりをしていくことが肝要かと考えております。そういったものを進めながら、アジア地域全体の包括的な枠組み構築を目指して取組を進めていくということかと思います。
42ページに移りまして、その際には、まず我が国は、既に北東アジアを対象とした日中韓の大臣会合であるとか、NEASPECといった取組を行っておりますので、それを踏まえて、まず北東アジア地域での各国で意見交換、検討といったものを進めるというのが1つの方向性です。それを将来的な東アジアの枠組み構築につなげていくということが必要かと思います。
さらに、東アジア共同体の創設に向けての動きに注目しながら、適切な時期に環境分野についても、東アジアの枠組みづくりの準備を開始できるように検討を進めていくことも必要かと思われます。
将来的に環境管理計画ができた後には、そういった計画の実施状況をモニタリングし、点検評価するメカニズム、政策レビューのようなことも含めて考えていく必要があるということでございます。
43ページからが、我が国の多様な主体による環境協力でございます。まず、地方公共団体による環境協力については、東アジア各国の団体との協力関係の構築ということで、例えばモデル的な協力プロジェクトをODAも活用しながら進めていく。あるいはその地方公共団体の属する地域社会のさまざまなパートナー、市民、NGO、企業、大学などをコーディネートしていただいて、多様な主体と連携によっての国際協力を進めていくことも望まれるのではないかということでございます。
また、NGO/NPOにおいては、まず1つは世界的な枠組みづくりをはじめとする政策提言の部分での活動を伸ばしていただきたいということでございます。東アジア各国の環境意識の向上、あるいは環境改善につながる具体的な行動についての協力もお願いをしたいということであります。
44ページが企業による環境教育ということでございます。これは幾つかの観点で書いてございます。環境的なものとして、こういった取組が期待されているのではないかというものを書かせていただいております。
例えば、企業活動についての協力では、情報の公開、相手国の団体との意見交換から始まって、さまざまなCSR推進のための取組への参加といったことを書いてございます。
貿易に関しては、例えば持続可能な方法で生産された一次産品等の輸入の推進があります。
金融における配慮では、SRIの視点を持って、例えば海外に対する投融資において配慮する、SRIファンドを東アジアの国の企業を対象としたものを設定するということが望まれるのではないかということでございます。
45ページでは、サプライチェーンを通じた現地企業の環境管理能力の向上への貢献、技術的に対応可能な最高水準の対策を率先して実施していただきたい、ということが書いてございます。
学術機関による協力としましては、留学生の積極的な受入れ、ネットワークの強化といったことを通じて、地域の取組の推進に貢献していただけないかということを書いてございます。
46ページからが最後のセクションですが、実施体制の強化でございます。これについては、まず4-1の国内基盤の強化として、環境に関する基礎的な情報や統計、法制度の情報の整備をきちんと進め、それをきちんと海外に発信していく。さらに国の情報ばかりでなく、さまざまな主体の有する情報を活用できるようにアレンジしていくということもあるかと思います。
人的な基盤の強化については、計画的な人材育成、それから開発途上国を中心とした具体的なプロジェクトに従事する人材育成というものを進めていく必要があります。例えば、さまざまな人材育成に関する教育機関などとの連携などが取組の例として書かれております。
48ページに参りますと、(3)として、さまざまな協力の推進のための資金の確保でございます。ODAをはじめとして国の予算の拡充、戦略的な資金投入といったものを、ますます今後考えていく必要があるということなどが書いてございます。
49ページに参りまして、4-2として、新たな協力を進めるための体制の強化ということで、国際機関への人材の戦略的な派遣があります。
(2)として、政府機関、関係機関の連携体制の強化ということで、ODA機関、関係省庁の間の連携、それから各相手国、現地での環境に関する専門家の連携機能の強化、それから、環境協力に取り組むさまざまな機会の対話の場ということを書いてございます。
(3)は、我が国が行っている研修がより効果的になるようにといった問題や、我が国が行う協力活動を現地でサポートするために、途上国の人材をもっと活用していくべきである、といったことを書いております。
(4)は、地方公共団体等による活動をいかに支援していくかということですが、地方公共団体の活動支援としては、情報の提供、JICA、JBIC等の関係機関との協議の場の設置といったことを考えております。
NGO/NPOの活動支援としては、51ページになります。情報の提供、技術面をサポートする専門家の派遣、それから、政策提言型としては、政府からの調査の委託や、意見交換などの交流促進などを掲げております。
企業による取組の支援では、今後、ODA自体で企業の持つ技術を直接的に普及するということは、極めて効果が限られておりますので、より本格的な技術の普及のために、企業実施による取組を継続的にやっていただけるように、我が国政府としても支援をしていく必要があるのではないかと思います。例えば相手国の関連する政策・制度の整備や能力構築等を支援していくといったことが必要なのではないかと思います。
企業の自主的な取組を地域レベルでも推進していくような仕組みを検討する必要があるのではないかというということでございます。
52ページの「おわりに」ですが、こういった協力の背景となる状況が刻々変化してきているということで、この「在り方」は、今後の10年を見据えたものとなっておりますが、5年後ぐらいをめどに、状況を一度見直してみる必要があるのではないかということを書かせていただいております。
長くなりまして恐縮ですが、以上でございます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
ちょっと長いご説明でございましたが、一応全体に目を通すことができたと思います。
これからご意見をいただきます。最初に、大きな骨組的な部分で、少し気がついたことがあるので、委員のみなさまがどう思われるかということをお尋ねしたいなという気がします。
このペーパー自体は、確かに日本の政府としての国際環境協力のあり方の方針をしっかり示していこうということを書いてはあります。今まで以上に地方公共団体、NPO、企業というところにスポットを当てて、それをかなり強調しております。そして今後ともそういうような主体の役割が極めて大きいことを強調していることを読みとれると思います。しかし、改めて全部を通してみると、国があって、地方公共団体があって、NPOがあって、企業があって、それぞれちょうど鵜匠が鵜を操るように、これらを適当に泳がせるというような書き振りになっているという印象が強い。
今までどのぐらいそういうことが実際に行われているかということについては、私は北九州のKITAモデルぐらいしかイメージがないので、自信がない面もあります。しかし、今後の方向としては、企業とNPOとか、企業と地方公共団体とか、さまざまな組み合わせがあり得るはずで、その点が、このペーパーでは抜け落ちていて、何でも全部最後、それぞれ国が束ねていく、それを支援するという書き振りになっています。
もちろん、これも必要ではあるわけですが、例えば、随所に「これらの主体の連携」というような項目をもう一つ設ける。書き込むタネがなければそんなことを書いても仕方がないですが、実際にそういう可能性が、今後ともあるかどうかということです。外国の例を見れば、あってよいだろうと思います。これまで日本で余り本気で取組まれていなかったかもしれないけれども、企業は企業だけでやるのではなくて、企業と自治体とか、企業とNPOといった組み合わせというのは可能性があるかどうかです。
もし、そういうようなことがあるとすれば、意識して議論しなかった面がありますが、可能性がある、あるいはそうすべきだと考えるならば、少し手を入れる必要があるのではないかと思いました。
もう一つは、青山委員からたびたびご指摘があった点です。我が国は失敗の経験も持っている、これをちゃんと輸出しなければいけない、教訓としてこれを輸出できるではないか、というご発言がありました。そのニュアンスが薄らいでしまって、どうも美しい言葉での表現になってしまっている。例えば10ページの「豊富に蓄積されている経験、知見」という書き振りは、美しくしか聞こえない。書き振りとしては、この部分に書き足せばいいと思いますが、例えば8ページのところにも、「そうした経験・取組」というのが下から3行目にありますが、これも何となくサクセスストーリーみたいな経験だけという印象が強い。ここに書くのではなくて、10ページでいいと思いますが、例えばまちづくりがうまくいかなかったとかといった、青山委員のおっしゃったことが反映されていないという印象があります。
それから、もう一つは、極めてマイナーな話です。政府のドキュメントであるために、政府がやったことは元号で標記され、国際機関がやったことは西暦で標記されています。将来的に英訳本を出すことを考えたら、政府がやったことについても、少なくとも括弧書きで西暦を入れておかないと、まずいなと思いました。
まだ若干、「てにおは」で気づいた点はありますが、それは後ほど整理をする段階で、直接、事務局に指示をいたします。
それでは、委員のみなさまからのご意見がありましたら、どうぞ。どなたからでも結構でございます。小林委員、どうぞ。
○小林委員 私自身、こういう報告書を読んだときに、目次を見て、その報告書の意味が大体理解できるというのが目次だと思っています。そういう意味で、目次のつくり方の中が、表現上、これでいいのかなというのが何カ所かありました。
まず1点目は、「国際協力」という言葉と、「環境協力」という言葉が、混在しています。正しくは「国際環境協力」という言葉だと思います。「国際環境協力」を繰り返してもよいのではと思います。
それから、2つ目。大きな問題として気になっていた点です。いわゆる発展途上国に対する環境教育というのは、今までベースとしてありました。先進国といったらおかしいんですが、世界的な枠組みの中での日本の役割というのが、これから相当重要になってくるし、また東アジア、アジアにおける日本がリーダーシップというのであれば、アジアにおける環境利益代表としての日本の役割が重要ではないかと思います。そこの部分が触れられてはいるが、軽いです。もっと、具体的に、どうやるべきかということをきちっと書いていただいた方がいいというのがあります。
「環境管理」という言葉があちこち使われていますが、読んでいると、意味合いが違います。これはきちっと言葉を整理された方がいいのではという気がします。
「現状と課題」と書いてありますが、現状を書いて、課題のないのがたくさんあります。現状を書いて、それで問題がないのであれば、問題がない。課題があるなら、課題があると書いていただいた方がいいと思います。課題がないのがいっぱいありますし、逆に現状の後に対策が書いてあるのがあるんですね。この辺は整理をする必要性があるのではないか。
先ほど、委員長からご指摘がありました地方自治体、NPO、この辺の部分が少し上滑りであります。いわゆる環境教育をやる主体側の情報交換、伝達の部分がほとんど抜け落ちています。よくあることですが、相手国へ行って、日本の企業と団体がバッティングしています。お互いに情報を知らないまま動いているというのが多く見られます。国際環境教育センターがありながら、なぜ機能しないのかと先日も言っていたのですが、その辺の情報交換の体制というのを、きちっとつくっていただきたいなというのが1つあります。
それから、「2-3 ODA等」というのは表題としては大変無責任な書き方なので、これはきちっとした表題に直していただければと思います。
一般的な話としては以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。
ほかの委員の方でご発言ありますか。総論的な部分で高橋委員からご指摘がありますでしょうか。
○高橋委員 その前に質問ですが、これは何回ぐらいかけて協議するのですか。
○浅野委員長 今後のスケジュールは後でということだったのですが、田中室長、ご説明をお願いできますか。
○田中室長 予定としては、本日ご意見をいただいて、また、後ほど細かい意見も出てくると思いますので、連休明けぐらいから、一度パブリックコメントで皆さんのご意見をいただきます。その後、1、2回ぐらい専門委員会を開催して、取りまとめをしていただこうというのが、今の考え方でありますけれども、それは先生方のご意見次第でございます。
○浅野委員長 よろしいでしょうか。私も、パブリックコメントが最後に来て、ほとんどそこでは直しようがなくなってしまうのでは意味がないと思いますので、事務局案に私は賛成しています。少し粗削りですけれども、できれば、このままパブリックコメントにかけ、率直なご批判をいただいて、今日のみなさんのご意見も全部パブリックコメント後の修正の中にきちっと織り込む、ということでいいのではないかと考えております。あまりにも、これではみっともないという部分があれば、直した上てパブリックコメントにかけることにいたしましょう。
○高橋委員 分かりました。そういう前提で、幾つか、今の段階でできるだけ短くコメントをさせていただきます。
パブリックコメントにかける前に、ぜひ修正していただきたいと思う点だけ、申し上げます。
カバーしているところは大体いいのだろうと思いますが、私が非常に違和感を覚える点が2つございます。その2点を、まず指摘させていただきたいと思います。
今、ご指摘のありました最初のあたり 、5ページ、6ページ、7ページぐらいです。1点は、どうもこの発想は、極めて1990年代前半風だなという感じするということです。それは何かといいますと、国際環境協力は国際環境協力として、それが中心になって進んでいるという色彩が非常に濃厚に出ているわけです。ところが、国際環境協力が非常に大事な形になってきていますのは、それがいろいろな異種分野と関連しながら国際環境協力も重要な要素になってきているというふうに、この10年間ぐらい変わってきていると思うんですね。そこがうまくキャプチャーできていない。ところどころ、要素はあります。MDGに対する配慮だとか、要するに、MDGというのは典型的ですが、いろいろな要素が絡み合って国際社会の課題群をつくっていっているという認識が、今、世界で共通になってきていると思います。
その点を表現するとしますと、多分、一番最初だと思います。5ページ目の「理念」のタイトル、「有限の地球環境の保全」、そこにプラス「と地球公共財の構築」と。地球公共財の一環として国際環境協力が非常に重要だという位置づけをすることが、21世紀の初頭のこの作業としては、10年前とは違うということで、非常に重要だというふうに、私は認識しております。
もう1点は、「目標」の、6ページ、7ページのところです。東アジア、これはいいのですが、今、日本が非常にじたばたしている状況、これはグローバルプレイヤーとして、この30年ぐらい努力してきたけれども、それを前提に安保理常任理事国になろうということを非常に努力しているという状況だと思います。そうすると、日本がグローバルプレイヤーだというのを非常に明確にしなければならない。それを何十年か前のようにローカルプレイヤーとしての責任という表現を一番前に出すというのは、これは実に愚策だと思います。今、日本が努力していることを非常にアンダーマインすることになると思います。
したがいまして、アプローチとしては、最初のあたりにはっきり出して、一方で世界的な課題群の中で二、三、日本がイニシアティブをグローバルにとっていくということを指摘すると同時に、もう一方で地理的に見れば、ここにあるようにアジア太平洋から世界へという、そういう視点の中で東アジアというものを、時系列的にいえば、まず最初に重点の地域と考える。そういうふうにすればグローバルな色彩と、ローカルな色彩とが、はっきり出る。これは構想としてはその両方を表に出さないと、今の日本の、世界との関係での責任のとりようとしては非常にまずいのではないかと思います。
あとの点はまた後ほど申し上げます。
○浅野委員長 ありがとうございました。
解答まで用意していただいての発言ですから、なかなか大変な作業だと思いますが、今の点は少し考えて修文をするということにいたしましょう。
中村委員、どうぞ。
○中村委員 今の高橋先生のご発言にも関係しますが、この「東アジア」、「北東アジア」、「アジア太平洋」という言葉の整理、これらの地域的な考え方と、先ほどのグローバルなつながりというのが、6ページの最後の図でよいのでしょうか。これからかなり書き変えられるということであれば、「東アジア」「北東アジア」、そうすると、今までの経験の「東南アジア」あたりの話のつながりというのを少し考えていただきたいな、という気がします。
それから、2つ目が、先ほどの浅野先生のご発言にも関係しますが、今までの実績として、例えば地方公共団体、特に私は地方公共団体での活動をしているのですが、実績として、こういう大きな枠組みのイニシアティブに、一定の方向づけなり貢献をするようなものの整理の仕方、そういうものと、他のいろいろな活動と相対的に見たときに、一体何を例に挙げるのか、挙げないのかというのがあります。そういうことは横断的に整理していただかないと、これだけを突出して出すというようなことは、なかなか難しいのではないかなということを、事務局の方で考えていただきたいと思います。
3つ目が、先ほどの浅野先生のお話で、中央環境審議会の親の方の部会で、省庁間で環境にかかわる大きな枠組みの話は整理していただける、ということですけれども、例えば淡水資源の問題がここに入っていますが、ここにあらわれていないものの他省庁との関係、あるいは環境と健康、福祉などとの関係で、親の会議で整理されるものの前出しというようなものがあった方が、全体としても分かりやすさが出てくるのではないかと思います。具体的なアイデアがあるわけではないですが、何か欲しいなという気がします。
○浅野委員長 ありがとうございました。
7ページの図に関しての、中村委員からのご指摘ですが、北東アジアまではいいとして、東南アジアのイメージを、この円錐型の図の中でどう入れていくかというのは、ちょっと私も迷うところがあります。事務局、何か今の点についてお答えがありますか。
○関谷補佐 1つの図でご説明するのはなかなか難しいと思いますが、東南アジア中心にODAも含めて、これまで協力が行われてきたという現実、我が国が特に環境政策対話という面で、今、北東アジアというものを我々としてやっているという新たなトレンド、これから目指す方向、その3つをきちんと丁寧に説明するということだと思います。そういう形で対応したいと思います。
○浅野委員長 加藤委員、どうぞ。
○加藤委員 たまたま、今、その議論が出ましたので、6ページの注に一応東アジアとしてイメージしているのは東南アジアも含む、という説明はありますが、図になると、そこがはっきりしないので、そういう若干、誤解を生じかねないところもあると思います。また、実質的内容として、これまでやってきた東南アジアとの協力という面が、どこかで強く打ち出されればいいのではないかなと思います。別に事務局に変わって申し上げているわけではありませんが。それより最初に委員長から出された課題に関してですが、私も若干、その懸念というか問題意識を共有しております。前々回のときに、環境等開発に関するアジア太平洋フォーラム(APFED)、これは政府間の会議ではありませんが、これが報告書を採択したということで、それとのある程度の連携、そこで何が言われているかも取り上げたらいいのではないかということを申し上げました。今回の案を見ますと、大分、それが取り入れられているようで、大変ありがたいと思います。このAPFEDの報告書で強調されている点は、いずれも、まさに委員長がおっしゃったような、あらゆる多様な主体間の連携というか、パートナーシップとネットワークの構築ということです。それが強くあらわされるといいと思います。具体的には、例えばそれぞれ組織なりあるいは仕組みとしてナレッジセンターのようなものをつくるとか、あるいはセンター・オブ・エクセレンス間のネットワークをつくるとか、民間の企業だけではありませんけれども、現存するサステーナブル・ディベロプメント・フォーラム、名前は国によって違いますが、ナショナルカウンシル・フォー・サステーナブル・ディベロプメントのようなものの地域版を考えて、かなり具体的な提案がなされている。それをどうするのだということすが、この10年間をめどとした今後の我が国の国際環境協力の計画の中で、必ずしもそこまで目指せるかどうかは分かりません。方向性として非常に分かりやすいのは、例えばこういったものを集大成して、ヨーロッパにありますが環境保護庁という名前で、まさにナレッジセンターになるようなもの、場合によってはアセスメント、各国の状況も含めて、地域全体の状況をも、アセスメントもそこが行うようなナレッジセンターのような存在を究極の目標に置きながら、こういった過程をたどって地域全体としての取組を進めていく、という考え方が強くあらわれているようにも思います。
これが1つの参考になるのではないかと思いますが、それを具体的にどこまで解明できるか、まだこの委員会の中でも議論を要することかもしれません。もう少し具体的なイメージ、目標とか理念は書かれているのですが、では、結果、どこを目指すのか、というところが少し明らかにすることができるといいなと思います。個々の分野についてはいろいろ、どうするのかということが書かれていますが、それが全体とどうつながるのかというところが、少なくともアジア重点とするアジア太平洋地域については、まだ見えてこないかなという気がします。
それからもう1点。高橋委員も言われたと思いますが、大学等の研究教育機関における協力ということが、最後に書かれています。場所の問題は別にして、こういう研究、取組は既に進んでおります。さらに最近では、必ずしも途上国だけではなくて、先進国、途上国、それから日本の大学、その他教育研究機関を交えて、特定の問題についてのコンソーシアムを組む、それ向けの学会をつくって共同研究を行う、あるいはそれぞれの国から研究者、教育者を受け入れて研究を行う、さらには学生も受け入れて、お互いに互換性のある単位を与えるというようなところまでいっております。この分野での環境協力におけるこういった方面の展開というのも考えられるではないかと思います。
その点で、最後に載っているのですが、あるいは若干その前にあります研究機関等の協力、連携のところとあわせて、大学等の協力研究機関もあわせて、こういう動きと課題があって、どういうふうに進めるという記述があると、さらに強化されるのではないかと思います。
以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。
最後の点は、加藤委員に大学研究機関の立場でのご発言をきちっといただいて織り込まなければいけないと思っておりました。今のご発言にさらにもう少し補足をしていただく形でやらなければいけないと思っています。
25ページには課題まで書いてありますが、その後の次の体制のところでは、すっぽり抜けてしまって、大学は用済みのような形になっているので、これもちょっとまずいと思います。最終的にはちゃんと位置づけなければいけないだろうと思います。園田委員、どうぞ。
○園田委員 全体を初めて読ませていただいて、またご説明いただいて、全体の印象は、ストーリー的にすべての項目が網羅されていて、まとまってきているという気がします。私どもが前回、前々回で申し上げたことを、いろいろな意味でちりばめていただいております。知財の話とか、標準化の推進とか、そういう国レベルでの話も、そこかしこに入っておりまして、特に業界同士で話をするというようなことも、まだ1歩2歩の段階ですけれども始めておりまして、そこに官庁の方も入っていただいて指導いただいている。そんなことも入っております。そういう意味では、中身は大体でき上がってきているのではないかなという印象を持っております。
ただ、2、3点申し上げますと、最初に高橋先生がおっしゃったように、私の立場で見ていましても、出発点が、世界の動き、アジアの認識とか、WSSDぐらいの話から一挙に東アジアに飛ぶんですね。決してそうではなくて、ヨーロッパ、アメリカの状態がどうなっているのか、私どもの本当のビジネスの中で、今、最大の課題はRoHSでありELV、多分自動車ならそうでしょうし、WEEEなわけでございまして、ヨーロッパの動きそのものに、もっと日本が逆に先進性を発信していく、そういう時期にあると思います。そこが実戦の場として東アジアだというようなストーリーにすべきだし、そうでなければならないと思っております。一番私どもには違和感のないのは、そんなストーリーだてになるのではないかなと思います。
もう一つ企業の立場で、少し違和感があるのは、植林とか、CSRとか、担当役員とか、非常に大きな立場からやるべきだ、というような論調が少しあります。私はもう少し泥臭く、自分たちの企業のビジネスをどうやって進めるか、それが本当に技術移転になり、逆に環境教育になっていくという思いの方が強いです。したがいまして、そこの部分の書き方もあちこちに出ておりますけれども、決して否定はしておりません、CSRは大事でございますが、CSRの定義というのは欧米と日本では全く受け取り方が違いまして、多分、人権とか、そんな話よりも、日本では非常に素直に企業の社会的責任ということでとらえられて、何でもかんでもすべきだと。少しこれは行き過ぎじゃないかと思っています。もう少し泥臭くビジネス中心に、我々はやっていきたいと思っております。
具体的な例として申しますと、ODAということが、私どもはCDMということをやらねばならんと思っていますが、なぜそれに変わってはいかんのかというぐらいに思っているわけです。そんな話を泥臭く、ビジネスとして進める。そんな立場が違和感なく受け取れます。
最後に、浅野先生がおっしゃった、いろいろな主体間の協力というお話は、まさにそのとおりだと思っています。企業と国、企業とNPO、企業とその他の団体との連携というのは、これからもますます必要になってくると思っております。私どももその中で何か役割を果たすことができれば、ぜひ、取り組んでいきたい、そんなところでございます。
以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。それでは、和気委員、どうぞ。
○和気委員 今までの各委員の先生方のお話、全くすべて同感です。
それに加えて、この10年で何がどう変わったのかな、あるいは世界的な視点で何が日本ができるのかな、というところで、せっかくこれから10年先を見通すとすれば、少し書き振りを変えていただきたいところが1点ございます。
具体的にどこというわけではないですが、要するに、化学物質とか、さまざまな技術の進歩も含めて、環境リスクという視点で物を考えていこうということです。「予防的原則」という言葉も一方でよく使われます。したがって日本が経験した過去の事例を、そのまま当てはめるということではなくて、既に非常にリスクのある社会活動、生活経済活動の中で、いかにそれをうまくマネジメントするのか、まさに環境マネジメントというのはリスクマネジメントとかぶっているところもありますが、そういう意味では環境リスクを、いかに意思決定の中で反映させるか。もっと言えば、不確実性のもとで、いかに政策決定するかということです。主に先進国を中心とした、そういう環境リスクのもとで政策決定なり、経済活動なりしていくという、そこの部分がいかに地球規模で広がっていくかというところを少し考えますと、私どもは、いかに観察、観測し、そして知見を集め、集めた知見・情報を共有して、それをいかに評価するのか、そういう仕組み・ネットワークがあって初めて政策の成果なりが判定できるわけです。その政策の成果を判定する前の段階が、今、環境協力の中では重要だということです。10ページの、2-2の「国際環境協力を進める上での配慮すべき事項」の第4に「情報の提供」というのがあります。ここの第1に環境協力の成果を重視するとありますが、では成果をどうやってはかるの、という話に実はなります。日本が成果があるといっても、相手方がどう見るかわからない。国際的にどう評価されるか分かりませんので、第1の成果の前に、情報を共有し、お互いに評価できるシステムを構築していくという、そのネットワークづくりがまずは大事かなというふうに思っております。以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。
おっしゃることはよく理解できます。どういう文脈で、どんなふうに入れ込むか、ちょっと事務局も悩ましいところですが、ご趣旨を必ず組み入れるようにしなければいけないと思います。ありがとうございました。山瀬委員、どうぞ。
○山瀬委員 今、和気先生がおっしゃったことと同じようなことを言おうと思っていました。ただ、先ほど、高橋先生とか、和気先生もおっしゃったグローバルな流れというのが、この10年は激しくて、すごい嵐の中に巻き込まれたという実感を持っています。そういう流れをキャッチしながら、対応していかなければだめなのですが、先ほど園田先生もおっしゃっていたように、もうちょっと泥臭いというか、現場の状況というのは、世の中のグローバルな流れとは別にあります。現場では、そういう風とは違うところで木がどんどん切られているといった、いろいろな状況があるわけです。その辺にどういう光を当てるのか、その視点もちょっと持っていないと、仕方ないのではないかなという気がします。
今の2-2の国際協力の配慮事項のところに関連して、この報告書は、網羅的で、全体はとらえていますが、目玉というか、この委員会らしい主張は一体何だろうかなという疑問が湧きます。例えば成果重視とか、効率性の確保とかは、JICAとかODAの世界ではいつも言われている話です。現場でやっていると、実は違うのでないか、効率性とか成果だけでは評価できないのではないかと思っています。JICAではPDMを使って指標化して、いろいろなことを評価しようとしますが、環境分野での協力というのは、実はそうではないのではないかと思っています。
例えばインドネシアでここ10年ほど生物多様性保全のための協力を行ってきました。その一環で、現在は植物標本館の建設を無償資金協力で行っています。計画段階でその施設がどれだけ地域の人々の役に立つかを外務省から問われました。私たちは植物標本館建設に協力するのは、それとは違う意味を持っているのだと思っています。インドネシア・ボゴール植物園に蓄積されている標本は世界に誇るものです。オランダ時代からのものも多くあり、保存状態は決してよくありません。標本の台紙などがボロボロになっています。そこで今後100年を見据えてきちんと標本が残るようにしようというのがこのプロジェクトです。地域住民に光を当てるというより、世界的財産をどう守っていくか、空間的、時間的スケールで見たときに意味を持ってくるものだと思っています。一般的にODAの世界で語られている地域社会にどう貢献するのかというような話と、ちょっと違うと思います。この委員会なり、環境省が、国際的な環境協力をやるといったときにその辺の視点の違いの重要性も強調すべきだと思います。外務省やJICA、JBICでも、環境配慮型協力が強調されていますが、その後追いをしていてもしようがないのではないかと思います。そういう視点は一方ですごく重要ですが、それとは違う視点というのを少し出した方がいいのではないかと思います。ここら辺の成果重視とか、効率で、どうも引っかかる感じはする。先ほど園田委員がおっしゃったような、足元というか、泥臭いサイドからいうと、ちょっとそこが気になるという感じです。
○浅野委員長 おっしゃるとおりで、この部分が私もちょっと引っかかっていました。むしろ「環境効率性」と言わなければいけないのでしょうが、それが抜けているなという感じはありますね。
それでは、青山委員、どうぞ。
○青山委員 5ページの「理念」のところに、「経済社会は、国際的に密接な相互依存関係の中で営まれて……」と記述されていますが、私はこの「相互依存関係」というのは、弱いという感じがします。一番重要な視点は「密接不可分な関係」になってきたというところにあると思っています。地球環境を共有しているという意味では相互依存ということでできると思いますが、経済は密接不可分であって、特にアジアではそうなってきてしまっているということだと思います。
その点でいいますと、政府間協力とかということ以上に、どうしても経済活動というものを通じた協力のウエートが高まっています。先ほどの園田先生の話もそうだと思いますが、そういうことを重視していかなければいけない。密接不可分になってくるということは、日本で起こった、象徴的には水俣病のような産業公害が、アジアなど今度は国際的な拡がりの中で起こるかもしれない。そういう問題に対して、先ほどのリスクもそうだと思いますが、どう対応していくのかということも、重要な課題の一つではないかと思います。
それと、過去のクリーナープロダクト、省エネ、あるいは原料歩留まりを向上させる、というような日本の経験や技術、それから先ほど浅野先生からも言っていただきましたけれども、失敗的な教訓も協力を進める上での貴重な財産です。私は必ずしも都市形成が全部失敗したとは思っていませんけれども、需要対応型で安全、安定供給で代謝系インフラなどを整備したことの問題点が、今、はっきり出てきているということ、あるいは高齢化とか、少子化ということを余り考えずに、住宅、都市づくりをすすめたことなどは、今のアジアにとっては非常に大きい教訓と捉えることができます。こういうところは個別企業というよりも、国や自治体が移転を担うことが必要です。個別企業がそこのところを幾ら言ってもなかなか難しい面があるかなと思います。そういうことを是非加えていただきたい。
先ほど言いました経済と不可分ということの文脈の中で、どうしても企業の環境協力や活動の書き方に違和感があります。なぜ最初に植林とか、そういう形がきてしまうのかと思います。企業の本来活動を通じての環境協力を軸に記述すべきではないでしょうか。多くの日本の資本が途上国に、あるいは海外に出ていっているわけです。そこでは環境規格ということも当該企業のみならず、日本でいえば下請け企業という言葉をよく使いましたけれども、関連企業でも当然対応していくよう教育、移転をすすめているなど、いろいろなケースで出てきたときに、それを1つの題材として、日本でそれを経験した人が現地の研修にも入っていくとかという形で、広めていく方が効果が上がるのではないかなと感じています。
先ほど、CSRということ自体の言葉の使い方、問題もありましたけれども、日本の企業がCSRとか、あるいはいろいろなグローバルな規格というものに対して、どう対応していくのかということは、もう現実に対応しなければならない話ですから、そういう中で、ぜひ環境協力分野の対応を実現していくようなトーンが、全体として欲しいと思いました。
まだありますけれども、あとは紙でコメントを出したいと思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。
それでは、長谷川委員、どうぞ。
○長谷川委員 ありがとうございます。もう皆様のおっしゃいましたことと重複するようなことばかりになるかもしれません。まず、企業のやっている植林というようなことに関しては、私は最初のころから申していましたが、企業が自分たちの実業としてやっていることと、社会貢献としてやっていることを分けて考えて書かないと、混乱する部分が出てくるかなと思います。社会貢献の部分は非常に小さなことですが、受ける側の人たちにとっては、それはとても必要な資金協力だったりすることもあるし、活動だったりすることもあります。役割のところを明確化して書いたらいかがかなという感じがいたします。
それから、園田委員も言っておられましたが、CSRというのが、今の日本では余りにもはやり言葉になってしまっていると思われます。実はWBCSDなどでも、CSRというのは、もう古い。CR、コーポレート・レスポンシビリティだということで、企業にだけ、社会責任を求めるのではなく、社会の中での企業の役割という風に、もっと大きく見た方がいいのではないかとかいわれています。WBCSDが言っているだけで、その考え方だけが正しいと言っているわけではないですが、この報告書を何年かたってみたときに、陳腐化しないような書き方をしなければいけないかなと思います。
そうしましたときに、幾つか固有名詞が使われております。WBCSDもそうです。ですから、グローバルコンパクトのときも、実は前のときにもコメントさせていただいたのですが、そのような企業倫理の規範とか、そういうふうに書いて、1つ1つを個別にあらわさない方がいいのではないか、というようなコメントをさせていただいた記憶もございます。この固有名詞の使い方をどうするかというのも、考えた方がいいと思います。また、今さらですが、この報告書は英語でも配信するのかどうなのかということでして、そうしたときにも、外から読まれて矛盾のないような、日本の国内だけでお手盛りでやるというようなことがないような報告書にしていけたらいいのではないかと思っております。
○浅野委員長 ありがとうございます。
私は当然、英語になるものと、最初から思っていましたが、その点は、田中室長、間違いないですね。
○田中室長 はい。
○浅野委員長 ありがとうございます。
まだ時間はございます。高橋委員、さらにコメントいただけますか。
○高橋委員 多少ディテールにわたることかもしれませんが、4点ほどあります。まず、13ページの最後のところに、「自由貿易協定」となっていますが、これは総理の発案で名前が変わったはずです。「地域経済協力協定」に統合して、今後使うということになったはずですので、揃えたほうががいいだろうと思います。
2点目は、全体の作業の中で、落としどころが見えてくるもの、見えてこないものは両方あって当然しかるべきだと思うんです。ただ、幾つか落としどころをつくれそうなはずなのに書いてないな、というようなところが気になります。それを2点申し上げます。
落としどころがちゃんと出ていますのは、多様なアクター間の協議の場をつくるというようなこと。それはそれでいいと思いますが、それに類したことで、1つは37ページのところに、共同研究等々の部分があります。このところは、既にいろいろなところで、いろいろな作業をやっています。問題は、お互いの状況というのを、もう少しお互いに知って、さらにそれをどうやって相乗効果を高めて、全体の作業を強化していくかという段階にあるのではないかと思います。その関係機関のタスクフォースをここで提言するというようなことがあっていいのではないかと思います。
もう1点は46ページ、47ページあたりのところです。「人材育成」というのがあります。人材育成に関する一連の要素は、既にあるような気がいたします。これは政府であり、国際機関であり、研究機関であり、大学であり、部分的には企業、地方自治体等々も含めて、そういうのをどうやって人材育成の視点から、いろいろな順序立てをして、いろいろ経験させて、世界的なプレイヤーにしていくかということを考える、それは十分できるような気がします。そのためのタスクフォースをつくるということがあっていいだろうというふうに思います。そのタスクフォースというのが、研究と人材育成に関してあってよかろうというのが2点目です。
3点目は42ページの下のあたりですが、「環境政策レビュー」というようなことがあります。これをするためには非常にコンペタントな国際事務局がないと意味あることができないのが、非常にはっきりしているわけです。ところが、何十年か前と違いまして、古典的な国際事務局をつくる必要は全然ないわけです。今ある状況からしますと、いろいろな研究機関を有効利用するのが非常に重要なことだろうと思います。そこにはNGOも入れて、有効利用すれば、ここで書かれているものが実行可能になるような気がします。そのあたりのところは、多少具体的な表現をとれば、これがさらに実行可能なものであるという表現になり得るような感じがします。
最後は10ページ目です。後ろの方にも出てきますが、10ページ目の下の方、「貧困削減、新貿易体制への対応、紛争予防につながる環境協力」。ここのところは、紛争予防だけではなく、紛争解決についてもですが、環境が決定的に重要な分野になります。もう既にそうなっています。その扱いが小さ過ぎるのではないか、世界の実態とかけ離れ過ぎているというような気がします。紛争絡みのところは、もっとハイライトを当てた書き振りにしていいように思います。以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。小林委員、どうぞ。
○小林委員 2点あったのですが、1点は、今、高橋委員の方からご指摘がありました。紛争予防のところ、現状が10ページにあって、次に課題が20ページにあって、対策が40ページにあります。これがうまくつながっていないですね。紛争予防のために環境対策が必要だというのが10と20ページに書いてあるのですが、40ページのところに来ると、紛争のことしか書いてなくて、紛争予防のことにほとんど触れられていない。ここのところは、今、高橋委員が言われたように、括弧書きでさらりと書くのではなくて、ちゃんと項立てをするなりして、ここのところはこれからの大きな課題として、きちっと整理をされた方がいいのではないかという感じがしました。
対策のところでは、紛争後の復興時の対策と、紛争予防のための対策が入っていながら、紛争予防の環境協力というのがほとんど書かれていないので、もう少しきちっと書いていただいた方がいいと思いました。
もう1点は、ちょっと説明を聞いていて思いつきで申しわけないですが、地方公共団体、NGO/NPO、それから企業の国際協力に対する在外公館の支援というのはどうなっているのだろうかというのが、すごく気になりました。これは諸外国ではどうされているのかよく分からないですが、日本の場合、ほとんど民間の国際協力に対する在外公館の支援というのはゼロに近いですね。ここのところ、やってほしいなと思いますが、本当にできるかどうかは分かりませんが、現実は行っていることさえ知らないというのがほとんどだと思うので、できたら在外公館において状況の把握と、特に邦人保護というような部分での支援を、何か記述していただけたら助かるなという気がします。
○浅野委員長 最後の点は少し研究をさせていただきます。ほかによろしいでしょうか。青山委員、どうぞ。
○青山委員 この間、私が発言したように、例えば中国の鉄鋼業だけで日本の総CO2排出量の3分の2近くを排出することが予想される中で、日本の鉄鋼業が中国と環境協力するということが報道されました。実は産業間同士の国際協力が、技術移転を含めて極めて重要になってきているということがあると思います。多分、日本では、欧米がよくやるような社会貢献的な対応よりも、経済活動のなかで環境協力を進める方が有効であり、合っているという気もいたします。日本がこれだけの環境技術がある産業を形成してきているということを踏まえ、是非国際的な産業間協力ということを企業の貢献の中に入れていただければと思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。中村委員、どうぞ。
○中村委員 2つあります。先生方のご議論の中でもありましたが、もう少しはっきりしていただくと理解しやすいなと思うところがあります。先ほど高橋先生がおっしゃられた公共財、グローバル・パブリック・グッドとしての環境の扱い方に対して、日本がどういうふうにコミットしていくのかと。例えば先ほど山瀬先生が言われたインドネシアの生物多様性の話というのは、グローバル・パブリック・グッドである生物多様性に対しての日本の貢献の部分で、こういう国際的な日本としての戦略的な位置づけを考えた場合に、地域が東アジア中心でなくても、日本の非常に大きな力を発揮できるというような、論理的な構築ができるのかどうかということです。
それから、もう一つは、英語にされるということであった場合の問題です。3ページ、4ページの略語表は、あくまでもここの報告書に出てきた英文表記の略語をここに入れましたということでした。これがある程度、この報告書の性格づけをあらわしています。この略語表があらわしているような印象のものというのは、かなり環境省ベースの環境技術協力というものに特化しています。WHOの同じ環境技術協力、炭素分野の環境技術協力のことを今やっていますが、出てくる用語というのが、セットが全く違います。これでよければいいですが、英語になって外に出たときには、日本の国際環境協力ということになりますので、その辺、どういうふうに整理していくのかなというのが気にはなります。この辺は、浅野先生の親委員会で整理されることなのか分かりませんが、出てくる用語、セットが違って、例えばMDGだとか、CSDだとか、そういうものは非常にオーバーラップしますが、かなり特化した環境協力ということかなと思います。これをどうするかという問題は気になりました。
○浅野委員長 ありがとうございました。
最後の点については、全体をどうするのかという、かなり難しい問題でもあります。よく建前として、「中央環境審議会はあくまでも環境政策の観点から議論をするのであって」と申し上げてはいます。おっしゃるように、全体構造からいうと国際環境協力というのは、当然各省にまたがる事柄であります。環境省それ自体、設置法の中に各省に対する勧告権がありますから、必要なことは言えるという面があります。その限りにおいては中央環境審議会は、他の省庁の管轄にまたがるものについても、比較的遠慮なく物が言える構造になっていると思います。各論的におっしゃったことをどうするかというのは、事務局に勉強いただきますが、確かに、とりあえず略語表は国内向けに出すときに、わからない人に見せるために書いたという理解を私はしていて、このままこれが英語版のときに出るかどうかはあまり考えていませんでした。全体として、ここの中でどこまで他の省庁にかかわることが入り込むかというのは、力量の問題と情報量の問題があるので、つらい面もあります。最終的には、中央環境審議会から環境大臣に対して答申申し上げるということになるわけですので、当然環境省の中だけで完結するようなものでいいはずはないという意見は、親委員会では出るに決まっています。そのことは十分に、あらかじめ考えなければいけないと思います。
もし、この点に関して、現段階で小島局長、何かコメントいただければ。
○小島局長 今回のご議論で、大分イメージがわいてきました。世界の枠組みというグローバルな観点から、環境協力というのをどう考えるかということ、「環境協力」とは何か、ということに戻ってしまうわけですが、今までは環境協力とODAがイコールでした。そうではないところの環境協力というのは、こういうと少し変ですが、実は国の政策としては外れているところでした。民間の協力に対して、国の政策として何をするのか、東アジアというのはいろいろな国があってODAが切れるところは、そのODAという政策手段を使って環境協力をするということはもうできません。ODAが切れた後の相手国との交渉力って、何を使うのかというのが、今、現実的な課題になっているわけです。ODAが切れる国が東アジアにおいてどんどん出てくることは望ましいことですけれども、その後、どういう手段を使うかというのは、これは環境省だけではなくて、日本政府全体が、そういう国とどうつき合っていくかという話になるわけです。アジアだけを見てもそういうことになります。こういうことをどういうふうに明確に書くかということかと思います。
それから、ODAを卒業する国が増えていく中で、そのODAは一体どこへ流れていくのかというグローバルな視点からいくと、アジアにもそういう国がありますが、世界的に見るとアフリカだとか、そういうところに流れていこうとしているわけです。日本はアフリカにもっと金を出せという話になるかもしれません。日本はこれまでODAをアジアに集中的にやってきましたが、ODAも順番に国を移動しているわけです。そういうところのODAの目から見ると、動きがちょっと違っているという、ODAの目から見た協力という視点と、アジアが多様化しているというところの視点をどう結びつけていくのかなというのが、ストーリーを書くときの大きな視点だと思います。そういう意味での政府全体として、どうつき合っていくのか、あるいは、どういうふうに協力というものつくっていくのかということだと思います。
先進国との間の国際環境協力とはあまり言葉では言わないですが、では、北東アジアでいった場合、OECDの中に入っている韓国とはどうするのかということになるわけです。その場合には、ビジネスでという議論になります。そこの政策手段というのは、いろいろな政策対話ということになっていて、もはや手段はODAではないわけです。そこの議論をどうするかなというところの整理だと思います。
そういう意味で、政府全体とか、グローバルな枠組みとか、そういう中での東アジアの共同体という全体の動きの中で、環境というものをどういうふうにやっていくのかということです。
それから、ESCAPということで考えたとき、アジア太平洋という枠組みで全部書いていますけれども、ここでは東アジアとなっているので、太平洋諸国が見たら、どういうふうに思うかなとか、いろいろなことは考えております。またご意見をいただきながら整理をしたいと思っています。
○浅野委員長 ありがとうございました。
それでは、本日の予定の時間になりました。
今後のスケジュールについて、田中室長からお願いします。
○田中室長 今日のご意見を踏まえて、どこをどう手直しするかということを検討します。
それで、1点、和気先生のお話にあったパフォーマンス、リスクなどをはかるのをどこかに、というお話ですが、例えば情報のところでモニタリングなどの話がありますので、そこあたりで何とかできるかなということも含めて考えていきたいと思います。
まず、事務局で作業をいたします。それから 、その他お気づきの点がございましたら、できれば連休前ぐらいにいただいて、その作業の中に入れ込みたいと思います。連休開け5月半ばぐらいからパブリックコメントを開始しようと考えております。それまでの間に一度、先生方にフィードバックさせていただいて、最低限の形をつくって、パブリックコメントにかけたいと思っております。
次回につきましては、今のところ先生方のご予定をお聞きして6月16日あるいは6月20日のどちらかでと考えております。詳細につきましては追ってご連絡をさせていただきます。
パブリックコメントをいたしますが、それとともに、もう一度、意見交換会・説明会というものもやりたいと思っております。今のところ5月下旬に、関西の方で一度話を伺いたいというふうに思っております。そのときに、今まで聞いていなかったセクターですとか、新たにこういう分野も聞くべき、というようなこともあると思いますので、もし先生方の中で、ご希望の方がいらっしゃいましたら、またご案内をさせていただきたいと思っております。
○浅野委員長 ということでございます。東京でばかり会合を行うというのは、私の好みではありません。できるだけ東京以外のところに出かけることが必要であると力説をいたしました。関西も、しばしばこのような機会に恵まれておりますので、もっと違う場所もと考えもいたしましたが、スピーカーを求めるとすれば関西しかないなということでございます。またご案内を差し上げますので、特に関西にご在住の委員の先生方にはご協力をお願いいたします。
それから、先ほど申しましたが、今日のご意見の中には、最終案に取り込むにはかなり考えなければいけない部分もあります。パブリックコメント案として出すときに、今日のご意見を完全に網羅的に入れることは難しいかもしれません。多少ご不満を残す形で、ということにならざるを得ないかもしれません。個人的な事情で、来週から公的な活動をしばらくできなくなりますので、事務局との連絡がうまくいかなくなるという事情がございます。先生方にパブリックコメント案としてお示しするものが不十分であるということについてはご容赦ください。パブリックコメントを受けた最終案の段階では、可能な限り反映をさせるという努力をお約束いたします。
それでは、本日、予定の時間が参りましたので、専門委員会はこれで終了させていただきます。
今日の議事録については取りまとめまして、いつものようにメールでお送りすることになると思います。
本日はこれで散会いたします。
○田中室長 どうもありがとうございました。
午前11時58分閉会