中央環境審議会地球環境部会 第13回気候変動に関する国際戦略専門委員会議事録

開催日時

平成18年4月25日(火) 14:00~17:05

開催場所

三田共用会議所 大会議室

出席委員

(委員長)

西岡 秀三

(委員)
明日香 壽川甲斐沼 美紀子
亀山 康子工藤 拓毅
住  明正高橋 一生
高村 ゆかり新澤 秀則
原沢 英夫松橋 隆治

横田 洋三

(報告者)
秋元 氏地球環境産業技術研究機構
藤野 氏国立環境研究所
赤井 氏産業技術総合研究所
岡本 氏

東京海洋大学

事務局

小島地球環境審議官、小林地球環境局長、笹谷審議官
竹本水・大気環境局長、梶原地球温暖化対策課長、山本調整官
水野国際対策室長、名倉研究調査室室長補佐
竹本国際対策室室長補佐、国立環境研究久保田氏

議題

  1. 炭素回収・貯留技術について
  2. 適応対策について
  3. その他

配付資料

資料1-1 経済性評価モデルによる地中貯留ポテンシャルの評価
資料1-2 諸外国における炭素隔離貯留の現状
資料2-1 適応対策に関する最近の動向
資料2-2 気候変動対策としてのサンゴ再生研究

議事録

午後2時00分開会

○水野国際対策室長 それでは、定刻でございますので、ただいまから気候変動に関する国際戦略専門委員会第13回会合を開催いたしたいと思います。なお、中央環境審議会の運営方針に基づきまして、環境への配慮といたしまして、資料につきましては縮小印刷とさせていただいておりますのでご了承ください。
それでは、議事進行につきまして、西岡委員長、よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 皆さん、ご参集どうもありがとうございます。
 今日の議題ですけれども、お手元の1枚紙の議事次第にございますように、このところ、この委員会では、炭素貯留あるいは適応対策ということについてのシリーズで勉強会あるいは意見の交換をしているということでございますが、本日もその2つを続きまして行いたいと思っております。
 今日の議題でございますけれども、そういうテーマでお手元に幾つか配られておりますけれども、RITE地球環境産業技術研究機構の方から秋元主任研究員に来ていただきました。その後、国立環境研究所の藤野主任研究員にそのフォローをお願いしたい。それから、ちょっと休憩をとり、その後に話題を変えまして、適応対策、これは政策的な面が今どういうようになっているかという各国動向、及び東京海洋大学の海洋科学海洋環境学科の岡本先生から、適応対策の技術オプシンについてご説明願います。一応17時までの予定でございますけれども、早く終われればそれに越したことはないと考えております。
 資料の確認をお願いしたいと思います。

○竹本国際対策室室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 お手元に議事次第がございまして、そこに資料番号、タイトルがございますが、資料1-1はRITEの秋元先生から経済性評価モデルによる地中貯留ポテンシャルの評価でございます。資料1-2でございますけれども、国立環境研究所の藤野先生から、諸外国における炭素隔離貯留の現状の資料でございます。資料2-1ですが、事務局側から、適応対策に関する最近の動向、資料2-2といたしまして、気候変動対策としてのサンゴ再生研究、東京海洋大学の岡本先生からのプレゼン資料でございます。過不足等ございましたら、お申しつけください。以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 炭素の回収及び地中あるいは海洋ですけれども、貯留技術につきましては、今後のCO削減の方策の1つの有力なオプションということで、非常に注目を浴びているところでございまして、先回は、産業技術総合研究所の赤井さんに来ていただきまして、IPCCを中心に検討の状況についてお話しいただいたところでございますけれども、本日は、続きましてRITEの秋元主任研究員の方から、この資料にございますように、経済評価モデルによる地中貯留ポテンシャルの評価ということでお話しをいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○秋元氏(地球環境産業技術研究機構) RITEの秋元と申します。本日はお招きいただきありがとうございます。
 本日は「経済性評価モデルによる地中貯留ポテンシャルの評価」と題しまして発表させていただきたいと思います。
 早速ですが、目次、本日発表させていただく内容ですけれども、地中貯留の世界での見通しに関して、最初にご紹介させていただきまして、その後に、日本におけるCO地中貯留の話をさせていただきたいと思います。
 世界の方は、まずIPCCの特別報告書で、どういった貯留ポテンシャルが見込まれているかというお話をさせていただいて、その後、我々で推定している世界の貯留ポテンシャルとその分布の話をさせていただいて、濃度安定化における世界における地中貯留の役割についてご紹介させていただきたいと思います。
 ここでは、貯留技術に関して、後でご紹介させていただきますけれども、排出源と貯留層のマッチングがコストに非常に効いてくるということで、その辺に配慮をすることが重要である、評価するためにはそこが重要になってくるという視点のもとに評価した結果にいてご紹介させていただきたいと思います。
 日本についても、同じことが言えるわけで、排出源と貯留層のマッチングがどうあるかということが非常にコストに効いてくる。ただ、日本独自の問題点等もありますので、その辺も踏まえた上で経済性評価を行って、どの程度の経済的な貯留ポテンシャルが見込めるのかといったことを、モデルを使った評価についてご紹介させていただきたいと思います。
 まず最初に、世界の見通しについてですけれども、もちろんかなりの皆さんがご存じかと思うんですけれども、IPCCの特別報告書、昨年出たものですけれども、そこで紹介されている世界の550ppmに濃度安定化するときのモデル計算によって評価された例です。左側がアメリカのパシフィック・ノースウェスト・ナショナルラボによるモデル評価の例です。右側がオーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA)のモデルによる評価例になっています。同じく、IPCCのシナリオですけれども、SRCCSのB2と言われるベースシナリオに対して550ppmに濃度安定化するときに、どういう役割を各技術が担うのがコスト効率的なのかといったことを評価した例になります。
 左と右では技術の想定、将来の想定等が違いますために、同じような社会状況を想定していましても、BAUといわれるリファレンス係数でのCO排出量、上のラインになりますけれども、そこはかなり左と右のモデルでは違っているというわけです。550ppmに濃度安定化するという部分で、削減量という部分が左と右では大きく違うということかと思うんですけれども、とはいっても、両方に共通してCCSと書いているオレンジの部分になりますけれども、550ppmに濃度安定化するには、このCCS、貯留・隔離技術といったものが非常にコスト効果的であって、削減に大きく寄与するのではないかというのが、このモデルで示されているわけです。
 一方、ただ、先ほどのモデルは、例えばオーストリアのIIASAのモデルですと、11地域に世界を分割している。PNNLの方はもう少し多かったと思うんですけれども、そういった地域分割で評価をしているということです。ただ、貯留を評価しようとした場合には、排出源から回収して輸送して貯留するという形になりますから、輸送コストが非常にかかるという部分に関して、非常に地域を大ざっぱに区分した場合に、適切な評価にならない可能性があるという認識がありまして、もう少し地域をしっかり見て、それでも貯留がどういう位置づけにあるのかといったことを評価しようということで、我々は世界エネルギー評価モデル、DNE21プラスといっていますけれども、そのモデルで評価しているということをご紹介させていただきたいと思います。
 モデルの地域分割を、先ほどは10地域等の地域分割のモデル例を紹介しましたけれども、ここでは非常に地域数が細かくて54地域。さらに米国とか中国とか非常に国土が広いところに関しては、排出源と貯留層のマッチングをしっかりとるために、さらに一国内を分割して合計77地域に分割して、排出源と貯留層の位置関係を考慮しているということです。
 そのほか、エネルギー供給部門や、CCSに関しては技術を個別に積み上げて評価するということをしています。エネルギー需要部門に関しては、非常に需要部門の技術はたくさんありますから、一々細かい技術をなかなかモデル化しにくいので、ここではトップダウン的に、長期間格弾性値を用いて、マクロな扱いでモデル化しているということです。そのほか、主要なモデルに考慮している要素はここにお示ししているとおりです。
 これは、モデルで評価する前に、地域の貯留のポテンシャルの分布を調査しないといけないということで、RITEで独自に推定したものです。これは基本的には、帯水層への地中貯留ということになりますと、堆積盆地の分布しているところには、基本的に貯留できるような形になってくる。これが堆積盆地の分布で、しかもいろいろな深度がどうかとか、層の厚さがどうかといったような情報をもとに推定したものです。赤とか、ちょっと茶色になっているところは、単位面積当たりの貯留ポテンシャルが大きいような地域になっています。ここで見てわかるのは、比較的世界に広く分布しているということがわかるかと思います。
 しかも、その究極的なCO貯留可能量は、陸域で5,600ギガトンカーボン、沿岸海域では1,500ギガトンカーボンぐらいという形で、この推定では推定できるということです。仮に、そのうち10%のみが利用できるとしても、一応CO排出量の100年分程度の貯留が可能になるだろうということです。
 これは、先ほど帯水層貯留というところのポテンシャルをご紹介させていただきましたけれども、そのほか、既に実際にやられている石油増進を図る目的で、COを貯留するということももちろんあるわけで、その石油増進回収における世界のポテンシャルは30.7ギガトンカーボンぐらいと推定できる。その幅は広いということは後でご紹介しますけれども、そのほか廃ガス田にも貯留できる。炭層にも貯留できるということで、こういった貯留可能量が推定できるということです。
 あと、ご紹介するのは、この地域別の、先ほど77地域の分布と言いましたけれども、その地域別に可能量を推定してモデル計算して経済性を評価するということを行っています。
 下の表は、参考までに、IPCCの特別報告書で、どう貯留ポテンシャルが報告されているかということです。ここでも非常に大きいポテンシャルが推定されていて、世界的にも大きいポテンシャルがあるということは間違いないということだろうと思います。我々が推定している推定量も、このレンジに入っているということです。ただ、非常に幅広いレンジがある。非常に小さく推定する場合は、小さいものもあるけれども、大きく推定すればかなりの量になる。ただ、小さい場合であっても、それなりのポテンシャルはあるのだろうというのが、世界的なコンセンサスになりつつあるということかと思います。
 この後は、モデルを分析して、先ほどは技術的なポテンシャルですけれども、では、経済的にどれぐらいが利用できるのかといったことを評価しようというのが、この後のご紹介です。
 まず、今日ご紹介するのは550ppmに濃度安定化するというケースで、IPCCのワーキンググループ1のシナリオを用いた計算についてご紹介します。排出権取引がある場合は、一番上の550ppmのラインを世界で守るという形になりますけれども、そのほか、排出権取引を仮に行わない、各国ごとに目標を書いたケースについてもご紹介しますので、そのケースについては、2010年については京都議定書を守る、2015年以降については、仮に英国提案目標にアネックス1は従うということを想定したケースについてご紹介します。すなわち、赤と青の部分は、アネックス1になっていて、残る黄色い部分のノン・アネックス1で、トータルとして550ppmは達成するというシナリオのもとで計算した例についてご紹介いたします。
 これが、DNE21プラスモデルと77地域に分割したモデルで評価した例になります。左上のグラフの方は、先ほどの550ppmですけれども、排出量取引をなしにして、アネックス1に関しては京都議定書とUKの提案を守るという形で計算したもの。右に関しては、排出量取引でトータルとして550ppmを達成するというシナリオです。若干、左と右で特性は違いまして、左の方が、黄色い部分が地中貯留の量になりますけれども、左の方が地中貯留の貢献度が大きくなる。右の方は若干小さくなって、かわりに省エネルギーの貢献度が大きくなるという形になります。左はさらに原子力の貢献度も大きいという形です。
 すなわち、各国ごとに目標をおきますと、先進国は省エネの余地が非常に限られてきているということで、地中貯留とか原子力への依存度が高くなる、それがコスト効率的なオプションになってくる。ただ、排出量取引がある場合は、途上国で省エネのヨウシが、まだかなり多く残っているというところをうまく利用できるということで、省エネルギーのポテンシャルが排出量取引なしのケースよりも多くなるということです。
 ただ、いずれにしても、先ほども申しましたように、地中貯留はコスト効率的なオプションとして、若干開始時期が左と右で異なっていると思いますけれども、そういった状況になっているということです。すなわち77地域に非常に細かく分割して排出源と貯留層のマッチングをとったとしても、コスト効率的なオプションであろうということです。
 まとめますと、IPCCによれば、世界の地中貯留ポテンシャルは小さく見積もっても、1,700ギガトンCO程度、大きく見積もれば1万ギガトンCOのオーダーとされていて、非常に大きいポテンシャルを有するということです。多くのモデルでCO濃度安定化のためにCCSはコスト効率的なオプションということになっていて、CO削減ポテンシャルも大きいことは示されています。ただ、CCSは排出源と貯留層のマッチングがコスト面から非常に重要で、ただ、それを考慮したとしても、ここで示したようにCCSやCO濃度安定化のために重要なオプションと見られる、ということでまとめたいと思います。
 今、世界の状況でしたけれども、次に日本のCO処理について、もう少し詳しく見たいと思います。まず、最初に貯留量を見るために、コスト面について簡単にご紹介させていただきたいと思います。貯留のコストですけれども、こういうふうにCO分離・回収、輸送、圧入、事前地質調査、モニタリングコストという形で分けてご紹介しますけれども、分離・回収コストに関しては、前回、赤井様の方から、割と詳細な報告がなされているようですので、今日は省略させていただきたいと思います。
 これは、圧入コストを見るために、圧入のオプションがどうかという、簡単に分類を示しています。まず、陸域に圧入するというのが一番上の図です。2番目は、沿岸海域に圧入するんですけれども、陸域から斜めに掘り進んで、大偏  拒掘削といって、ERDと訳しますけれども、掘り進んで沿岸海域の海底下に地中貯留するというもの、海上プラットフォームまで海底パイプラインを伝わって、やぐらを組んで、そこから圧入するというもの。やぐらを組まずに、海底坑口で圧入するという4つのオプションがあるかと思います。これについて、次にコスト面をご紹介したいと思います。
 左上のグラフは、横軸には圧入の深さをとっています。立軸は圧入のコストをとっています。このグラフは年間圧入量が100万トン圧入する場合にどうかというコストを示しています。オプションがあるのは、オンショアと、陸域と、先ほどご紹介したERDでオプションをとっています。さらに、井戸1本当たり何万トン入るかということは非常にコストに効いてくる。ただ、それはいい技術があれば1本当たり余計入るかもしれないけれども、現在の段階では貯留層によってかなり異なりますから、掘ってみないとわからない面が多少あるということです。それによってコストが違うということを示したものになっています。その辺も、後でご紹介をさらにします。
 左下のグラフは、先ほどの海上にプラットフォームを建てて圧入するというものです。右下は、海底に坑口を設けて圧入するというものです。下の2つのグラフは、横軸は上と違っていまして、沿岸からの距離をとっています。距離によって沿岸をどれぐらいパイプラインで輸送するかによって、どうコストが変わるかということを示しています。
 これを見ればわかりますけれども、紫と緑の上のラインですけれども、年間圧入量が20万トンといったような小さい規模になると、非常にコストの上昇が急になってくる。下の2つの青のラインと赤の破線ですけれども、そこは年間100万トン入れる場合ですけれども、100万トン入れる場合ですけれども、100万トンぐらい入れるのであれば、割とラインが寝てくるということで、その辺がコストのキーになってくるということです。
 今度は、COの輸送コストを見たものです。ここでも、年間どれぐらい輸送するかということが非常にコストに効いてくるということを示しているグラフです。左側の4本の線はパイプラインで輸送したもの、右側の方は船舶で輸送したもの、右の2つのピンク色と紫色になりますけれども、そこは、タンカーで輸送するというもののコストになっています。
 パイプラインで見てみますと、規模の経済が非常に強く働く。20万トン輸送する場合と、100万トン輸送する場合では、コストは大分違ってくるということが示されます。あとは日本の場合、陸域パイプラインコストの方が、海域よりも高い可能性があるということが示されています。それをIPCCの特別報告書と比較したものが、このグラフになっています。左側が先ほどのグラフをプロットして、今度は横軸に年間どれぐらい圧入するかの規模をとったもので、縦軸はコストになります。右側のグラフがIPCCの特別報告書の例ですけれども、IPCCの特別報告書で報告されているよりは、日本のCOの輸送コストは非常に高いということが、このグラフからわかるかと思います。しかも、非常に小さい規模の方を見ていますので、そうすると輸送コストが非常に高くなってくるということです。ちょっとIPCCが右側のグラフでかなり大きい輸送量をとってスケール化しているんですけれども、日本ではこんな量の輸送は考えにくいので、現実的なところで100万トンとか、若干大きくてもいけるかと思いますけれども、日本の貯留層は割と小さいものが多いものですから、そういう面から考えると、どうしても輸送コストは高くなってくるということになるかと思います。
 それを、これは先ほどコンポーネント、5つご紹介しましたけれども、それを各ケースにおいて足し合わせたものです。一番上の1番と書いていますのは、石炭火力から化学吸収法で回収して、パイプラインで100キロメートル運んで大偏拒掘削で貯留するというケースです。
 いずれもここでお示ししているのは、COの貯留量は年間100万トン圧入した場合と、坑井1本当たりの年間圧入可能量は50万トンというふうに仮定しています。ただ、オプションとその中では、若干、20万トンの例とかも示していますけれども、基本条件はこのようになっています。そうしますと、1番目の例ですと、トンCO当たり9,000円ぐらいのコストになるということです。これは大体現状におけるコストを示しています。
 安い部分は真ん中の6番とか、8番、9番目といったようなところになりますけれども、パイプラインの輸送距離が20キロとか、すぐ排出権から回収して圧入できるといった部分になりますと、6,000円ぐらいで実行できるというような形になって、非常にマッチングが悪いと、下の方の例に物すごい高いコストもありますけれども、マッチングが悪いと、すごく高くなって、しかも、容量が少ないとすごく高くなる。ただ、状況がよければ6,000円ぐらいでも現状でできるだろうということです。
 今度は、貯留ポテンシャルがどうかということを示したものが、この表になっています。これは、昨年度、RITEにおいて、過去、非常にポテンシャルというものが出ていたんですけれども、最新の知見がこのあたりの研究で蓄積してきたということもあって、ポテンシャルの見直しを行った方がいいということで、昨年度、RITEでポテンシャルの推定をし直しました。その結果がこの例になっています。推定は、まだ科学的知見が不十分な部分もあって、多少、幅があります。これは比較的注意をとったようなものでの推定例になりますけれども、左側の構造性帯水層――これはカテゴリーAと名づけていますけれども――と非構造性帯水層のカテゴリーBという形があります。貯留の概念図を真ん中の方にかいていますので、イメージしていただければわかりますけれども、少しお椀型になっていて、上にたまるような形を、一応カテゴリーAと呼んでいます。右側の方は、フラット型、お椀型が見えないというような形の部分をカテゴリーBとしています。ただ、両者に明確な違いはないという人もいるんですけれども、一応ここではカテゴリーAとBという形で分けています。
 油ガス田をA1としていますけれども、ここは35億トンCOぐらい、日本で貯留できるだろうということです。ただ、油ガス田ですから、まだ採掘している部分が非常に多くて、そこにCOを今すぐ入れられるかどうか、ということはちょっと検討になりますから、後の分析ではA2とA3という形の方を分析しています。
 A2というのは、基礎試錐、井戸を掘って、データをとって、情報を持っているものに関してA2という分類をしています。「基礎物探」と書いていますのは、物理探査で地震探査とか、そういうデータのみで井戸を掘ってなくて、そういうデータがあるものについて、お椀型があるだろうと推定して、貯留量を推定したものが、A3のカテゴリーとしています。これは214億トンCOぐらいと、非常に大きくなってくるということです。カテゴリーA、合計では300億トンぐらいある。非構造性というお椀型がはっきりしないものも入れると、1,160億トンCOぐらい。そうしますと、合計合わせますと、1,461億トンぐらいという形で、非常に膨大な貯留ポテンシャルを見込めるということです。これは中位的な推定の方法で求めたものですけれども、もう少し甘く見積もれば、もっと大きい推定にもなり得るということです。
 では、それらがどれぐらいのコストで圧入貯留できるのかということを示したのが、このグラフになっています。ここでは、カテゴリーA2と、A3と、構造性帯水層といわれるもので、A2の方は井戸を掘った情報があるもの、A3の方は物理探査による情報のみというものですけれども、そのコストがどうかということです。ただ、ここでご注意していただきたいのは、CCS全体のコストではなくて、ここは圧入コストだけを示しています。回収から貯留までのコストとなりますと、どこで回収して、どこで貯留するかという組合せになりますから、なかなかこういうグラフは書きにくいので、ここは圧入コストだけの関係のグラフにしています。
 これを見ますと、青いラインを、まず見ていただきますけれども、そこは井戸1本当たり、年間10万トンしか圧入できないとした場合のケースです。非常にかたい見積もりというケースになります。そのほか、赤い破線のラインは、井戸1本当たり50万トンぐらい圧入できるという例です。一番下のグリーンのラインは、100万トンぐらい圧入するという例です。海外は、大体100万トンは井戸1本当たり行けると聞いています。ただ、日本の場合は非常に入りにくい場合もあるということで、100万トン入れられる場所はそれほど多くないかもしれないということで、これぐらいのレンジで示しているということです。これで見ますと、10万トンしか井戸1本当たり入らないと、2,000円ぐらいから圧入コストだけで2,000円ぐらいになってしまうということです。赤いラインぐらいまで行ければ、大体1,500円ぐらいで、ほとんどのポテンシャルは利用できるだろうということです。カテゴリーA3でも同じようなことが言えまして、赤いラインで見ますと、1,500円ぐらいで大部分のポテンシャルは利用できる、ということになります。
 それらをもとに、マッチングをさらに日本国内でとって評価した例についてご紹介します。ここでは、先ほどは、世界の例では規模の経済については考慮していませんでしたけれども、日本の場合、先ほどご紹介しましたように、設備容量によってコストが非常に変わってくるということですから、それも考慮した上で、では、日本の経済的ポテンシャルはどうなのかといったことを評価しています。
 ここでは、2050年まで評価していまして、陸域は都道府県別に評価分割しています。沿岸海域の帯水層に関しては、今回はカテゴリーA2の非常にかたい部分ですけれども、かたい部分だけをモデル化して、52指定になりますけれども、そこをモデル化して容量がどうかということと、排出源とマッチングがどうかということを含めて評価するということです。しかも、ほかの対策技術に関しても評価するということを行っています。
 これが排出源と貯留層のモデル化したマッチングになっていまして、赤い点が都道府県別の排出源の代表地点をとっています。青い点がカテゴリーA2のポイントをとったものになっています。そこのマッチングを考えて経済性を評価するということを行っています。
 これは、CCSのコストの想定ですけれども、燃焼後の回収の想定としては、こういう値を考慮しているということです。そのほか、燃焼前の回収、IGCCから回収するといったようなことや、サンソウ燃焼発電も考慮するということをしています。
 輸送圧入コストについては、先ほど示したコストでフィックスして、将来的には一応低減しないで……低減する可能性があると思いますけれども、今回の分析では、そこは、かた目にコスト低減はしないという考慮で計算しています。
 あと、事前地質調査コストは、先ほどお示しした中では、それほど大きくなかったと思うんですけれども、基礎試錐データである、今回はA2の評価のみについてご紹介するため、それについては考慮しないということで評価しています。モニタリングコストは、先ほどお示ししたものを入れて評価しているということです。
 そのほかの主な想定としては、新エネルギーのコスト低減は、風力は1%で年率低減する。太陽光については、年率3%で低減するという仮定を置いています。そのほか1人当たりGDP成長率はプラス1.5%といったような仮定を置いて計算しています。
 今日、ご紹介するシミュレーションケースでは、CO排出制約としては、ケース1としては、2050年のGDP当たりのCO排出量を2000年比で2分の1にする。ケース2はもう少し厳しい制約で、2050年のGDP当たりのCO排出量を3分の1にする。これは超長期エネルギー技術ビジョン、赤井さんがされていたものですけれども、それと同じ想定になります。
 あと、先ほどからご紹介しましたように、井戸1本当たり、どれぐらい入るかということも非常にコストに効いてくるということで、ケースAとしては、井戸1本当たり50万トン、ケースBとしては10万トンといったケースで計算した結果についてご紹介します。
 これが、ケース1Aという原単位を2分の1にするという目標を置いた場合のコスト効率的なオプションがどうかということを評価したものです。上の点線の部分がBaUのラインで、そこからグレーのラインまで、どういった技術で削減するのがいいかということですけれども、黄色い部分が地中貯留技術になって、すぐ水色の部分、薄く入っているのが海洋隔離の技術になっています。ここでは、2020年で約6メガトンカーボン/イヤーといった部分が地中貯留でコスト効率的になってくる。2050年では61メガトンカーボンといったような形になって、非常に地中貯留は日本においても、コスト効率的だということで、ここは先ほど、規模が日本の場合小さくて、コストが非常に高くなる可能性がある、輸送コストが特に高くなる可能性があるというお話をさせていただきましたけれども、それにもかかわらず、日本では、なかなかオプションが限られてくる。省エネルギーもなかなか高い省エネルギーしか残っていないということもあって、かなりコスト効率的なオプションに入ってくるであろうというふうに推計できるということです。
 これは、ケース4ケースについて、では、どれぐらい差異があるのかといったことを示したグラフです。先ほどのケース1Aというのが青いラインになっていますけれども、一番上の破線の黒い、一番上に横に書いている部分は、カテゴリーA2という部分の想定した技術的ポテンシャルを示しています。すなわち青い部分が2050年で約半分強ぐらいですか、想定したポテンシャルの半分強ぐらいは経済的な価値を持ってくる、こういう目標を立てた場合に、ということですけれども、価値を持ってくるであろうと推定できるということです。
 ケース2については、もう少し厳しい目標ですけれども、厳しい目標にすると、さらにそれは上がってくるということですけれども、いずれにしろ、半分ぐらいは経済的だろうということです。
 最後になりますけれども、COの限界削減費用がどうかということについてご紹介します。先ほどのケース1Aの部分は青いラインになっていますけれども、だんだん徐々に上がっていくけれども、地中貯留がバックストップ的にコストの上昇を抑えるということで、大体80ドル/トンCOぐらいですか、2030年ぐらいに、それぐらいまで上がりますけれども、あとはここでは回収コストの、若干コスト低減を見込んでいますから、それに伴って、さらにその後は少し下がる傾向もあるということで、コスト上昇を抑えることができるということです。
 一方、CCSがないケースについては、ずっと上がり続ける。破線で、例えばAケース1のNoCCSと書いてある青い破線の部分ですけれども、ずっと上がっていくというような形になって、非常にCCSはコスト上昇を抑制する効果が大きいということです。
 時間を過ぎてすみません。最後のスライドをまとめさせていただきます。
 今の非常に新しい知見によると、日本における地中貯留のポテンシャルは、構造性帯水層の基礎試錐データがあるものに限っても、52億トンCO程度、帯水層全体では1,500億トンCOといったような非常に大きい量が見込まれるということです。
 今回、想定した排出削減目標下では、基礎試錐データがある構造性帯水層に限っても、52億トンCOの約半分程度は、2050年までに経済性を有する可能性がある。なお、RITEとか、経済産業省さんの方でも、地中貯留コスト低減のための技術開発を今も行っていまして、今後、そういうことがうまくいけば、経済的ポテンシャルは、さらに増加することが見込まれると思います。
 加えて、帯水層全体の試錐データ等も得られれば、その経済的ポテンシャルは極めて大きくなるだろうと推定されます。
 そのため、日本国内で、排出削減を進める場合には、排出源と貯留層の位置関係と、貯留層の規模を考慮しても、地中貯留技術はコスト効率的なオプションの1つと見込まれて、そのCO削減効果も大きいというふうに推定されます。
 今後は、より安価に排出削減を実現するためには、日本の場合、輸送コスト部分は非常に効くんですけれども、とは言うものの、分離回収部分は貯留技術にとっては一番コストの大きい部分を占めます。そこのコスト低減というのは、技術的に一番何とかなりそうな部分ですから、そこのコスト低減は技術開発を行う必要があるだろう。あとは輸送コストのマッチングは非常に重要ですから、排出源に近い貯留層をいかに開拓するかといったことも、コスト低減には重要になってくるということかと思います。
 以上、長くなりまして申しわけございませんでした。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 続けて、藤野さんの方にもお願いしたいと思いますが、今、この時点で、何か確認したいことございましょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、続けて藤野さんお願いします。それから、総合的に討論したいと思います。

○藤野氏(国立環境研究所) ご紹介ありがとうございます。国立環境研究所の藤野と申します。
 今回、私の方から、炭素隔離貯留について諸外国における動向を若干調べたというか、4月に、ボートハウスというオーストラリアのABAREというオーストラリア農業資源経済局が主催している会合がありまして、そちらの方に出たときに、いろいろ教えていただいたものを紹介しながら、ほかの国は一体何を考えているのかというところを、ちょっとお知らせできればと思います。ただ、もちろん秋元さんとか、松橋先生とか、非常に詳しい方がいっぱいいますので、随時、私の誤りを指摘していただきながら、あと、その会合に水野室長もいらっしゃったので、ぜひ補足していただきながら進めたいと思います。
 その会合なんですけれども、これは3回目の会合で、本当は去年、愛知県名古屋で行われるはずだったんですが、ちょうど万博もあったということで私も楽しみにしていたんですけれども、急に中止が決定されました。今年はパリで行われたんですけれども、十数カ国の研究者とハイレベル行政官、例えばアメリカのハーラン・ワトソンとか、そういった行政官も来ていて、合計40名弱の出席がありました。日本からは外務省の西村大使と、経済産業省の坂本室長、あと水野室長、それから私の4名が出席して、オーストラリア主催なので、いっぱいいましたけれども、アメリカに続いて日本が結構たくさん人がいました。
 これは、地球温暖化に関連する全体的なトピックを話したものなんですけれども、10あるセッションのうちの1つがカーボン・キャプチャー・アンド・ストレージが選ばれていました。ほかに全体をブライアン・フィッシャーというエグゼクティブ・ディレクターがやりまして、技術全般はナキという、シナリオの世界では著名な人ですけれども、あと石炭や天然ガス、太陽光、バイオマス。バイオマスはドルフ・ギーレンというIEAの男が発表していました。あと交通・水素はジム・スウィーニーというスタンフォードの先生、産業界はロバート・ディクソンという、これまたIEAの人ですけれども、昔、アイジスにいた人です。あと、経済影響のジェー・エドモンズさん、彼もまたモデルの世界で有名です。それに藤野も一緒にさせていただいて、政策をジョン・ウェイアントという、エナジーモデリングフォーラムを、今、仕切っている人ですけれども、あとバームゼイ、それから技術開発、安定化シナリオ、シクラさんがやりましたけれども、そういったトピックの中の1つの大きなセッションとしてCCSがあります。
 CCSについては、オーストラリアのCO、CRCというものをエルピーター・クック博士と、あとアメリカのPNNLのジェー・エドモンズ博士。本当はジム・ドゥーリーさんという方が来るはずだったんですが、急遽来れなかったので、ジェー・エドモンズがかわりに発表したんですけれども、今日は、その2人の発表のエッセンスのところだけをご紹介したいと思います。
 まず、オーストラリアのピーター・クック博士がどんなことをしゃべったかということなんですけれども、この絵をどう読むのか、私は英語がよくわからなくて、ザ・サード・ウェイという、最初の人はブッシュだというのはよくわかったんですけれども、次の人が一体だれなのかは、私はよくわからなくて、皆さんの方がわかるのかなと思います。ラムズファルトじゃなさそうだし、だれなのだろうかと思いながら、矢印には「プロミスド・テクノロジー」と書いてあって、一体何がプロミスド・テクノロジーなのか。アディクテッド・トゥ・オイルをちょっとちゃかしているのかなと思ったんですけれども、こういうのがあった。
 CCSは、秋元さんの方からのご説明もありましたように、まずキャプチャーする。つかまえる。それをストレージする。今はそれをパイロット・アンド・デモンストレーションプロジェクトというふうな形で実証の段階まで来ている。日本でも長岡とかでもやっています。
 これはひとつ、コストの話なんですけれども、こういったセパレーション・ユニット、分離回収するところのコストも年々下がっている、そういった意味で、技術的にもできるんだということを紹介しています。
 そして、こちらの方はジオロジカル・ストレージ・オプション。幾つかオプションがありまして、1番目は既に枯れたオイル・アンド・ガスのところに埋めるというオプション。2番目は、エンハンスド・オイル・リカバリー、石油増進回収と呼ばれているもので、COを入れることによって、残っている石油を取り出そうという、そういうオプション。3番目は帯水層装置。先ほども、秋元さん、ご説明された。
 4番目が、コール・シーム。炭鉱のところに埋めるやつとか、5番目はコール・ベッド・メタンのところに埋めて、これまた回収にしようとか、またはほかの方法もある。ここには書いてないですけれども、海洋貯留という選択肢ももちろんあります。
 ここでは、ワイバーンというんですかね、COプロジェクトというのが2000年から行われていて、これは300キロ離れたビューラウと読むんですかね、そこからワイバーンまでパイプラインを引いて、COを運んで埋めるという、なかなかすごいことをやっているんですけれども、これで石油の増進回収をやろうというプロジェクトです。こんなふうになっていて、だだっ広いところに、右の奥の方にCOを入れて、左の手前のところから石油をとる。そのためにCOを埋めるというものです。
 これがワイバーンの原油というか、井戸の状況なんですけれども、1967年の1月で日付を打っていますけれども、1967年にピークを迎えて、この原油はどんどん枯れていたみたいなんですね。そこを深くはわからないんですけれども、インヒィル・バーティカル、多分、水で攻めたりとか、それを縦から攻めたり、ホリゾンタルなのか、そうやって回収していったんですけれども、2000年から今度はCOを入れて、アッコウして原因をとろう。2003年まで、それがうまくいっていて、今後も続けてやるというようなことが紹介されています。つまり炭素隔離貯留も、そういった枯れた井戸みたいなところがあったところで、うまく埋めてやるとアイルも出てくる。そうすると、高ベネフィット、福次効果もあってなかなかよろしいのではないかというような事例の紹介でした。
 これはオーストラリアのコストなんですけれども、COソースシンクのコストですけれども、大体見ると、トンCOでアボイデッドコストが15ドルぐらいというふうな感じになっていて、こういった国になると、だだっ広いところに比較的大きなポテンシャルもあるので、コストが安いのかなという印象を受けました。
 そして、これが今、実際で世界各国で行われている炭素隔離貯留の実験サイトなんですけれども、日本でも、長岡と夕張の方で行われている。ワイバーンというのが、アメリカの北の方のカナダの方ですけれども、真ん中の方にあって、あと、ヨーロッパの方にも幾つかサイトがあります。
 これが、今の時点で、どれぐらいのポテンシャルというのがそれぞれ予想されて、隔離貯留の実験がされているかというスケールを示しているものなんですけれども、ワイバーンというところは、2000年から始まって、年間5メガトンの炭素を入れていく。それが9メガトン、12メガトン、17メガトンというふうな形で進んでいる。
 一方、日本の長岡の方を見ると、けたが1つ違うんです。10キロトンなんです。だから、これが5メガトンと比べると500倍ぐらい容量が違う。ただ、実験なので、もちろんそれがすべての実容量を示しているわけではないんですけれども、向こうがやっているスケールというのは、どうもかなり大きいんじゃないかというのが、これも表を見たときの私の印象です。
 彼らはとんでもないことを考えていて、2015年までは技術の発展をさせる。そこからどんどん入れていって、まずは電力、または産業部門、安定高度化から出てくるCOを大規模貯留して、それでCOをフリーにしていく。さらにはトランスポートも水素をつくるときに、例えば天然ガスや石炭から水素をつくるときに、分離回収して埋めることによって、全部ほとんどCCSとセットにすることで100%COフリーにできる。これはオーストラリア対象にやっているものなんですけれども、そういったところまで考えているということです。それだけポテンシャルがあるということですね。
 大体言ったことがここに書かれているんですけれども、まず10年はデモンストレーション、リサーチをどんどん頑張る。15年から実際のリプロイメントをやっていきたい。まずはパワージェネレーション、それからインダストリープロセス。トランスポートまでやってしまおうというところが、なかなか恐ろしいなと。このためには、もちろん彼らも慎重というか、国際的な現実的な合意がなければ、そういったものもできないんだけれども、そのために市場の経済性も含めながら、やっていく必要がある。そういったことで、コストの話なんですけれども、何もしないよりはもちろんコストはかからないし、CCSをどんどん進めていけば、それほど高くないかもしれない。そういったことで550ppmのような目的というのが、Geosequestration、帯水層貯留のようなものでも十分できる。ただし、ここでもあえていっているのが、それはpart of a portfolio incuding renewables, nuclear, energy eefficiency つまり、再生可能エネルギー、原子力、エネルギー効率の改善ですけれども、それとのポートフォリオの中の1つがCCSでありまして、CCSだけですべてが解決できるというわけではないということです。
 次に、ジェー・エドモンズの発表の一部をちょっとご紹介させていただきたいと思うんですけれども、こういう報告書を彼らもつくっていて、Carbon Dioxide Capture and Geologic Storage 彼はモデル屋なので、そういった世界モデルを使って評価しています。
 最初のタイトルは、まさに秋元さんもおっしゃったようなところなんですけれども、Is there enoughCO storage capacity in the woeld? Is it"in the right places"? ちょうどいいところに貯留の場所があるのかどうか、というようなタイトルがついています。
 まず、量なんですけれども、彼らもスレスの活動とかにもかかわっていましたので、例えばSRES(排出シナリオに関する特別報告書)のA1シナリオのG、ガスに頼るようなシナリオでCOを450ppmに抑制するようなケースをとったときに、どれぐらいの炭素の排出に抑えなければいけない、どれだけ炭素を削減しなければいけないかという数字を書いているんですけれども、それは紫色のところで、その量というのは600ギガトンカーボン、それはCOに換算すると、2,220ギガトンCOなんですけれども、それというのが、左の方にCCSのポテンシャルを示していますけれども、3,000ギガトンCO、1万1,000ギガトンCO、これに比べれば、まだまだ行けるというか、これは先ほどの秋元さんの数字より大分大きいかもしれませんけれども、秋元さんの数字をもっても、この600ギガトンCOカーボンはできると思うんですけれども、それだけ、カーボンキャプチャーストレージというのは容量はある、ということを示されています。
 この容量が一体どこにあるかなんですけれども、彼らの調べたところによると、アメリカが圧倒的に多くて、アメリカは4,000ギガトンCO、それから、アメリカの周りにカナダが1,300とか、オーストラリアが700、アフリカとか中国、400とか、中東に500とか、ロシアにも2,100とありますけれども、そういうふうにある。そういった意味で、US、カナダ、オーストラリアはどうもたくさんポテンシャルがあるのではないか。
 一方、日本と韓国、こちらの方が、この数字が秋元さんの先ほどの数字で訂正すると、もっとふえるのかもしれませんけれども、1.4ギガトンCOと、0.5ギガトンCOというふうに彼らの全体的なジオロジカルな推計でやると、こうなっていまして、これを見ると、なかなか厳しいなというところです。
 それに対して、ラージCOポイントソース、つまり大規模なCOを出すところが8,100カ所あって、今、年間14.9ギガトンCO出ていますけれども、それがCO全体の60%に当たりますけれども、それを見ると、日本はたくさん出していまして、それと、例えば炭素隔離貯留のポテンシャルが合うかどうかというところを、彼らはわざわざ日本のことを考えてくれていました。
 ここら辺からは、もっと秋元さんの結果を反映させながら、彼らにもよく考えてもらう必要があると思うんですけれども、これは何のことかというと、2095年までにCOの制約係数を掛けたときに、炭素隔離貯留のポテンシャルの何%まで使うかということです。日本と韓国は振り切れてしまっていて、一方アメリカは10%も使わなくても制約係数を満たせる。ほかにもカナダとか、ロシアとか、オーストラリア、こういったところはそれほどたくさんCO貯留しながらも、ポテンシャルから見たら、それほど使わなくてもいいかもしれないということが示されています。
 また、これもわざわざ日本の解析をしてくださっているんですけれども、550ppmまで、もしCCSのリミットというのがない場合に、日本が一体どういうふうな電力構成になるか。それを見ると、斜線が引いてあるところなんですけれども、大分炭素隔離貯留が入ってくる。天然ガスとのセット、または石炭とのセットで、オイル等もありますけれども、全体の30%強が炭素隔離貯留とセットにした方が経済的にいいんじゃないか。
 一方、もし、ポテンシャルがないとすると、そこの部分が右の方の矢印を書いていますが、太陽光、風力、バイオマス、ここら辺がふえざるを得ないのではないか。私が見るには、もっと太陽光がふえるべきのような気がしますが、それはさて置き、そういったことになるのではないかということを分析しています。
 これが、世界全体の計算のところなんですけれども、もしCCSがない場合、そうなりますと、Fossil Fuel Use 化石燃料のCOを大分抑えないといけない。CCSがあると、それはまだ石炭もそれなりに使うことができる。それを逆に言うと、削減のコストをそれほどかけなくても、気候の安定化に向かうことができるのではないかということです。
 これが、全体の量なんですけれども、今、現時点でやられているのは、こういう量らしいんですけれども、もしこれを先ほどのCCSケースでやると、2005年から2050年の間にアメリカが蓄積する量が8,000MtCO、さらに世界が蓄積する量は30,000MtCOぐらいになる。今、これだけやっていて、将来的にこれぐらいの量をやるのが、どうも彼らがいう経済的な世の中ではないかということです。
 アメリカの中を見ると、どういうことになっているかというと、全部のポテンシャルで3,900ギガトンCO、それぞれ内訳が細かく書いてありますけれども、そういったポテンシャルがある。主に2,730ギガトンCOというのが帯水層です。それからあとラージソースが1,715ありまして、今、年間2.9ギガトンCO、出ていますけれども、年間2.9で、アメリカ、これから出すとしても、単純に100倍しても290ギガトンCOなので、まだまだポテンシャルはあるのかなという感じです。
 ただ、彼も一応経済分析されていまして、ここでどういうふうな分析をされているかというと、例えば今の電力発電プラントにCCSの要素を入れると、28から49ドルトンCOの値段がかかる。新しくつくったところに入れると、20から33ぐらい安くなるとか、そういったことが書かれています。リファイナリーなので製油所のところで入れるとしても、80ドル/トンCOで、まあまあ、それほど高くないのかもしれません。
 それを限界削減コストカーブみたいなもので書かれていますけれども、彼らの推計でいくと、大体これぐらいのレンジ、50ドル/トンCOのレンジで炭素隔離貯留のコストというのを見積もって、やはりポテンシャルがありますし、カナダやオーストラリアとロシアの値段も、恐らく技術的には同じものなので、似てくるのかもしれません。
 彼らのまとめなんですけれども、ほかのいろいろなオプションとも組み合わせながら、炭素隔離貯留というのは、もちろん考えないといけないんですけれども、そうは言いながらも、世界的に見ると、どうもポテンシャルはあるかもしれない、というようなことを言っています。
 私の、あえて私見というか、秋元さんがこういう発表をされたので、ちょっと批判的なコメントを、もしするとするならば、ジェー・エドモンズの発表とか見ていると、日本や韓国のCCSのポテンシャルというのは大分低目に見積もられている。確かに世界の規模からいうと、大分少ないのは間違いないです。また恐らくコストも高い。秋元さんのお示しになっていましたように、埋められる井戸の容量がそれほど大きくないので、スケール・メリットを稼げないという意味で、ほかの国に比べれば高くなってしまう。ただ、日本の削減コストカーブ自体が非常に高いので、そういった意味で、総体的にはCCSの優位性は出てくるかもしれないんですけれども、世界的に見れば、価格は高いというのはどうも間違いないかもしれない。
 あと、オーストラリアやアメリカには莫大なポテンシャルがあります。そういった意味で、地中貯留で十分。海洋貯留をやるインセンティブはどうもなさそうだ。廃油田や、廃ガス田にまず埋めることも可能。まず、やるならばEORのようなものをやって、石油を回収するというようなものから彼らもスタートさせるのかなというところです。
 もし、日本が海洋貯留を行うことになると、環境影響など新たな調査が必要になる。全体的な視点からメリットがあるのかどうかは、精査する必要がある。地中貯留のポテンシャルがどこまであるかというところにもよるんですけれども、もし、地中貯留がマッチングや、実際やってみると、なかなか、おれの庭の裏にそういうのはやってほしくない、という人も出てくるとコストもかかってしまうので、ここら辺が一体どうなるのかなというのは、ちょっと不安なところがあります。
 最後に、取り巻く問題というか、これも全く勝手な自分の意見なんですけれども、地中貯留が、ほとんど行く方向にあるみたいですけれども、もしノーだとすると、石炭や石油、天然ガスの化石燃料を利用制限が早くに始まる。そうすると、再生可能エネルギーや原子力、省エネルギー高効率機器開発が重要になってくる。これというのは、日本やEUなど先端技術開発国というのは、ひょっとしたら有利なるかもしれない。今、どうもイエスの方向になっていますが、そうなると、石炭と化石燃料利用が可能になって、そのほかの技術開発は総体的に遅れるかもしれない。ポテンシャルをいっぱい持っているアメリカやオーストラリア、原油国や、または一部途上国などが有利になるかもしれない。
 海洋貯留、これは認められるかどうかなんですが、イエスだとすると、海に囲まれた国でCO処分が可能になってくる。そうなると、日本等の海洋国は有利になりますけれども、メリットがある国は一部に限られてしまいますので、国際的に受け入れられるのかどうか。
 いずれにしましても、CCSというものは、これだけで地球温暖化を解決できるものではありませんので、ブリッジングテクノロジーだと、再生可能エネルギー、省エネルギー、高効率機器開発、さらに重要制御が多目になりますので、いかに組み合わせていくか。バランスで、そうは言いながら、地球温暖化というのは深刻な問題で、今すぐにでも下げないといけない。しかし、ほかの技術がないというときは、CCSに頼る必要があると思うんですけれども、ただ、CCSに使うお金と再生可能エネルギーに使うお金というのを、一体どういうふうに考えるのかというところも、よくよく考えないと、今、日本はお金も余りなくなってきているし、人も余りいなくなってきているので、どうするのかなというのが個人的な心配です。
 すみません、雑駁になりましたけれども、以上で終わらせていただきます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 今の藤野さんの件につきましてだけ、何かテクニカルなご質問、ございましょうか。先回に引き続き、今日も産業技術総合研究所の赤井分散システムグループ長にお越しいただいておりまして、もし何かコメント、ございましたらお願いしたいんですが。

○赤井氏(産業技術総合研究所) お二方、非常にまとまったプレゼンされて、いろいろなところで私もそれぞれのご意見は同意するところがあるんですけれども、ひとつコストの問題というのは、かなり日本でコスト高になるということが、いろいろなスタディからどうしてもそうなってしまう。いろいろな原因があるんですけれども、1つはちょうど注入できるレートがかなり限られてしまう、とかいうことがあるんですけれど、そのほかに特殊なものとして、法規制の問題がどうしてもある。例えば海外ですと、お二方よくご存じでしょうけれど、なかり高圧でCOをパイプラインで送ったりすることができるのが、日本ではそこは法規制の問題で圧力が限られてしまって、そのためにパイプの一度に運べる量が限られてしまうとか、そういったいろんな細かい点でコストアップになる要因もあるので、そのあたりもCCSをやるかどうかは別として、やるとしたらそういった整備も必要なのかなという気はします。
 それから、法規制でついでに申し上げると、やはり国内法として、こういうものを実際にやるときには、まだまだいろいろなことを検討する必要があるのかなという気がします。
 とりあえず……。

○西岡委員長 何かご質問、ご意見ございましょうか。

○甲斐沼委員 貴重ないろいろな材料を提供してくださり、どうもありがとうございました。
 確認させて頂きたいのですが、秋元さんのご発表の最後から2番目のスライドですが、コストに関しましては、現在、開発済みのもので、実用可能なものだけを入れていらっしゃるのか、それとも最後のスライドでもご紹介になったような、今後、さらにコスト低減のための技術開発が必要なものも含めておられるのか。CCSではない方で、かなりコストが上がっていますが、そちらに関しても、新しい技術開発を進めた場合には、藤野さんの最後のご意見のところにもありましたように、新しい技術が入ってきたら、CCSを含まない場合に関してもコストが下がってくるという可能性が同じように検討できるのかどうかということをお伺いしたいというのが第1点です。
 次に、輸送コストの問題ですが、日本のCOを隔離してオーストラリアに運んぶという解決策もあるという話を来たことがあるのですが、コストの面で実現可能なのかどうか教えていただければということが第2点です。
 あと、環境影響については、研究がどの程度進んでいるかということと、もう1件ちょっと細かいことですが、9枚目のスライドで、COの削減効果というところで、非常におもしろい結果だと思いますが、排出量取引なしとありの二つの比較がありますが、CCSのところで、こちらの方は、排出量取引ありの場合となしの場合で、CCSを行っている国や、CCSの量が、違ってくるのか。例えば排出量取引ありの場合には、中国のどこかの場所で新たにCCSが適用されるのか、といった情報についてご紹介いただければと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございます。

○秋元氏(地球環境産業技術研究機構) 最初の1番目の質問ですけれども、コスト低減の見通しですけれども、今日、ご紹介させていただいたものは、CCSの回収コストに関しては、ここでちょっとレンジで書いていますけれども、右側に行くのは時点が進むに従って、これぐらい回収効率が上がる、コストも若干、建設費なんかも低減するという想定を置いています。ただ、これは比較的保守的な値だと思います。それで、我々は別途、回収技術等もRITEでも開発していまして、もう少し高い目標を置いて開発を行っています。
 そのほかの技術に関しては、先ほど、限界削減費用はCCSがないケースについて上がるというふうにご紹介しましたけれども、他の技術についても、もちろんコスト低減を見込んでいます。新エネルギーのコスト低減というのが一番上に想定を書いていますけれども、風力発電に関しては年率で1%ずつ低減していく。太陽光発電に関しては年率3%で低減する。現状からしますと、太陽光年率3%で低減していないと思いますので、かなり緩い想定だと思うんですけれども、仮にこれぐらいコストが低減したとしても、CCSがない場合はコスト上昇が起こるというような結果になっているということです。
 2番目のオーストラリアへ持っていくという話ですけれども、基本的には、輸送にはコストが非常にかかって、しかもエネルギーもかかるということで、出たところで貯留するのが一番いいことだと思います。ただ、日本が非常に厳しく、もう持って行き場所がないということであれば、オーストラリアという手もあるかもしれないですけれども、まずはオーストラリアで回収できる部分は回収して、オーストラリアの分はそこに貯留した方が、エネルギー面から見ても、コスト面から見ても、世界にとっていいことだと私は思います。
 3番目の環境影響の評価ですけれども、今、RITEでもどういう影響があるかということは非常に研究しているところです。ただ、こういうリスク評価はどこかで終わりというようなことはなく、どんな技術もそうだと思いますけれども、ずっと続けていくものだろうというふうに、私は個人的には認識しております。
 4番目ですけれども、世界の削減効果ですけれども、これはもちろん地域によって特殊性が、おっしゃられたとおり排出量取引なしとありでは、排出量取引なしの方は先進国で、特に帯水層で貯留するオプションが多い。もちろんアメリカなどは、先ほど話がありましたEORとかも多いですから、ありますけれども、帯水層メインでという形になってくるかと思います。排出量取引ありの場合は、もちろん先進国でもやりますけれども、途上国の比率は比較的ふえてくる。しかも途上国の場合は、ECBMとか、EORとか、そちらの高ベネフィットがある方、副次的に石油が回収できるとか、天然ガスが回収できるとか、そういうものが比較的多目に入ってくるという結果になっております。

○西岡委員長 高橋さん、どうぞ。

○高橋委員 今の質問と、それからお答えの中に一部、私がちょっとわからなかった点も含まれているんですが、お二人の報告を伺っていて、いろいろわからないことをノートしてきましたら6点ございまして、それをちょっと教えていただけたらと思うんですが、どの6点もいかにも素人っぽくて質問するのもちょっと恥ずかしいんですが、とにかく私にとってはちょっと教えていただきたいなというふうに感じたものですから申し上げますと、まず第1点は、何らかのこういう新しい方向に行く場合、その位置づけとして、CCSをブリッジングテクノロジーとして、CCSの持っている可能性と課題というようなことをお話しいただいたと思うんですが、1つは自然ハザード等々も含んで、そういうものとの関係での危機対応能力、リスク評価というのは永遠だというお話がありましたけれども、それがどの程度、今回のいろいろな場所でのこの問題に対する対応のときに重視されているのかということ。これが1点目。
 それから2点目は、少し先になると思うんですが、技術体系をサステイナブルにするためには、何らかの形で民営化の可能性を考える必要もあるんだろうと思うんですが、そうしますと、コストがどの程度になったら民営化という方向がオプションとして出てくるのかどうかということ、そういうことが計算されているのかどうか、それが2点目の質問です。
 それから、3点目の質問は、具体的な国に関してですが、CCSとの関係で、京都プロトコルと米国との関係に対して、どういう意味を持つのか。やはりアメリカは京都プロトコルを重視しなくていいじゃないか、そういうネタがいっぱいあるじゃないか、その1つがこれだというようなことになっちゃうのかどうなのか、その点です。
 それから、4番目は、日本に関しては、オプションとして海洋貯留ということが、可能性としては大きいけれども、環境影響及びコスト等々でいろいろ課題があるというご報告でしたが、このあたりの非常にフルなリサーチというのはされ始めているのかどうなのか、ということ。
 それから、5番目と6番目は国際協力的な色彩のものですが、5番目としまして、こういう分野も、将来的に途上国等々の状況を考えていくと、技術移転ということが非常に大きなテーマになってくるような気がするんですが、将来的な技術移転ということを考えた場合に、大規模なオペレーションは、日本はどうも比較優位はない。それ以外のところで、もしかしたらある技術体系というのは、これから展開できるのかどうかということのような印象を受けましたが、そうしますと、将来的なこの分野での日本の発言権は技術移転能力にかかってくると思うんですが、それも視野に入た作業に、今、なっているのかどうか。
 それから最後ですが、この分野に関しても、恐らくいろいろなインプリケーションが出てくるんじゃないかと思いますので、何らかの形でCCSに関する国際的なガイドラインの形成とか、そういう話になり始めているのかどうなのか、そのあたりを教えていただけたらと思います。ちょっと長くなってすみません。

○西岡委員長 わかる範囲でといいましょうか、ちょっと皆さん、違うところがあるかと思いますけれども、それぞれ分担してお願いいたします。

○秋元氏(地球環境産業技術研究機構) たくさんあって、私の守備範囲を超えているものもあるかと思うので、お二人に一部はお任せしたいと思いますけれども、1番目、自然災害のお話だったと思うんですけれども、COは大気中にもありますから、非常に濃度が高い形で一瞬に吹き出してこない限りは、そしてそこに長時間たまり込むところに、偶然人がそこにいない限りは、そんな事故になるという可能性は多分小さいと思うんです。ただ、私、専門研究者ですから、「ない」とは言わないことにしているんですけれども、ただ、非常に小さいと思います。だけれども、やはりそういう危惧はあると思いますので、継続してそういうリスクの評価は行わなければならないのではないかというのが、先ほど私が言いたかったことです。ちょっとお二人は、また別にあるかもしれません。
 2番目の、民営化するときにコストはどの程度かというお話ですけれども、これは全体的な温暖化政策がどうあるかということに、いかにかかわってくると思うんです。どういうインセンティブが企業に働くかといったこととセットでないと、どれぐらいのコストだったら企業はやるかというのは、全体の国内で企業がどういう制約を受けるのかとか、インセンティブがどう入るのかといったようなことと絡まないと、一概に幾らのコストだったらどうかということは言えないかと思います。EUの場合は、EUETSの形で、そういう排出権取引市場があるので、その排出権取引市場価格をもとに、その価格を見て、企業はやるべきかどうかということは決定できますけれども、今の日本はそういう形になっていませんから、そことの絡みだと思いますので、コストがどの程度で、どうか、ということは一概には今のところは私は言えないというふうに思います。
 3番目、京都プロトコルと米国の関係なんですが、この辺は難しいかなという気はするのは、もちろんアメリカは石油企業もいっぱいメジャーを抱えていますから、その辺にとっては非常にこのオプションは受け入れやすいオプションであって、CO削減に関しては、後ろ向きな部分もありますけれども、メジャーにとってはそれほど拒否するようなオプションではないので、多少アメリカにとっては、この辺の技術を使って削減するということには比較的積極的なのかなというふうに見ています。ただ、それをもって、京都議定書の枠組みのような形に次も復帰してくるのかということは、ちょっと私はわからないと思います。
 4番目の海洋貯留に関しては、海洋貯留は、いろいろRITEでも前から海洋貯留の環境影響評価をずっと続けています。非常に影響は小さいということは、今のところは考えているわけですけれども、なかなか海洋の場合は、世界的に、先ほど藤野さんから紹介ありましたように、地中ですべて済むというような面がありますから、あえて海洋の方に踏み出さなくてもということで、後ろ向きな部分が、最近特に強いかと思います。
 ただ、日本の場合は、先ほど言いましたように、地中処理のポテンシャル、かなりあることはあるというふうに最近の見通しはありますけれども、とは言うものの排出制約を厳しく問おうと思った場合には、日本の場合は海洋隔離というのは重要なコスト効率的なオプションに入ってきますから、その辺と環境影響の評価の部分をうまく絡ませて、世界的に合意をとれるのかどうかということを考えていくべきかなというふうに思います。
 5番目の技術移転ですけれども、日本では、分離化学吸収法の回収技術に関しては世界トップの回収効率を誇っている回収溶液があって、三菱重工さんがつくられていますけれども、KS-1」という吸収液ですけれども、そういうところで技術的な優位性は今のところ持っている。さらにRITEほか、経済産業省様の方の支援を受けて、いろいろな企業とも協力して、さらに効率のいいものをつくろうとしていますので、そういうところで、世界的な優位性を保っていける。さらに、その後の質問になるかもしれませんけれども、技術移転を途上国に対しても貢献していける可能性があるのではないかというふうに思います。
 最後のガイドラインに関しては、多分、赤井さんがお詳しいと思いますので譲りたいと思います。

○藤野氏(国立環境研究所) では、若干違う立場でちょっと話をさせていただきたいと思います。
 私、このCCSの問題を見るたびに、なかなか人間は業が深いなと思っていつも見ているんですけれども、人間が慎ましやかに住んでいる限り、多分CCSのようなものは、ある意味、必要なかったのかもしれない。ただし、豊かな暮らしをしたいとか、余り無理して下げたくないとかということになると、CCSというのは非常に重要になってくる。気候問題が本当に深刻ならば、CCSを早くやって、COを減らすということは、現実的にはあり得るかもしれないというふうに、まず、私はそういうふうに考えます。
 それで、1番目の自然ハザードなんですけれども、WHOのクリス・エビーという人が、去年、スノーマスというところでエナジーモデリングフォーラムを、いつも夏の学校をやっているんですけれども、そこでCOの影響を、先ほど秋元さんがおっしゃったように、COの濃度が高いところに行くと危険がある、というようなことはしゃべったんですけれども、どちらかというと、周りがCCSにポジティブな人が多くて、何か意見がかき消されたような印象があったんですけれど、そういうのをちゃんとチェックしている人はいます。
 それから、3番目のところで、京都プロトコルとアメリカという話なんですけれども、アメリカはCCSというオプションが現実的に認められるようなことになって、自分が有利だというふうに判断をすれば、次のときに、有効なカードだと思って入ってくるという可能性はあるかもしれません。
 日本はそのときに非常に不利になるかもしれません。日本のオプションというのは、そんなにないかもしれない。先ほど、秋元さん、太陽光3%もなかなか厳しい数字ですよとおっしゃっていて、ただ、その太陽光がもし家庭用の屋根で入って、家庭用の20円で戦えばいいんだというふうな話になれば、もうちょっとお金を下げれば20円になるし、もうちょっと補助なり、インセンティブを上げれば20円になるかもしれないので、そこら辺は、今、せっかく日本は世界で一番太陽光をつくっていて、やっているのに、半分がドイツとかヨーロッパへ行っているという現状で、日本で普及量が、今、とどまっているという現状がありますので、そこをどう考えるかというのは、ぜひ環境省の方にも、ほかの方にもお聞きしたいところです。
 それから、あと、途上国の話がありましたけれども、役に立つと思います。先ほどお示ししましたように、中国やインドは、炭素隔離貯留のポテンシャルがありますので、彼ら、特にエナジーサプライ側の人にとってみると非常に魅力的だと思います。
 ただ、私がおそれるのは、それで日本が尊敬されるかどうかというところをおそれます。どういう意味かというと、再生可能エネルギーとか、省エネの技術、日本は今、トップですけれども、そういったものも含めてセットにして、炭素隔離貯留も技術として、我々も開発しているんだ、それを選ぶのはそちらの方の自由だと思いますけれども、いろいろなオプションを持ちながらご提供していくのが個人的にはいいのではないかなと思います。
 私の方の意見は以上です。

○赤井氏(産業技術総合研究所) お二方のお答えで大体いいのかなと思っているんですけれども、まず6番から。
 ガイドラインという意味では、1つは、今、やっているIPCCの総会で、国別の排出インベントリーに、このCCSによる削減分をどう計上するかという改訂版のガイドラインに、そこが含まれていまして、それが1つ、今回認められて、CCSが正式に排出削減技術として認定されることになると思います。
 ただ、それは単に国ごとのカウントの話で、そのほかにガイドラインとおっしゃった意味は、多分、やり方とか、どういうことを制度的にちゃんとやるか、そういうことだと思うんですけれども、それについては、例えばプロジェクトベースだと、ちょうど先週、経済産業省が主催したCCSをCDMとして使えるのかどうか、ということを検討するために国際ワークショップをパリでやっていたんですけれども、そのときに、プロジェクトごとのアカウンティングの方法をどうするのかという議論と同時に、だれが、いつまで、どう管理して責任を持つのか、そういった議論もかなり、今、熱心にされるようになっていまして、そのあたりの議論、走りながら考えるような国もあるのかもしれませんけれども、これから多分熟成してくるんだというふうに考えております。
 それから、これは私がいつも自分でもわからなくて、むしろ教えていただければと思うのが海洋の話とリスクとの絡みで、リスクは2種類あると思うんです。今、RITさんなんかでやられているのは海洋に薄く溶かしてしまって、そういう意味では、実際、影響はないといっていいと思うんですけれども、この部屋の中に何滴か入れるぐらいの規模しかどうせ入れませんから、そうしたときに生物がすぐ死んだりするという影響は、ほとんどあり得ないとは思っているんですけれども、片や地中に入れると想像すると、海洋は入れていても、用がなくなったから、では隔離はやめましょうとやったときには、もうCOは薄まってしまって、あと大気とCOのカーボンサイクルの中に入っているわけです。ところが、地中に入れたときには、やめましたといっても、地中処理屋さんが言うのは、そこに何万年でも何百万年でも、そこに漏れずにあるんだと。漏れるか漏れないどうかは別に、そこにたままっているリスクと薄まってしまったリスクと、どちらがリスクなんだろう。私、個人的には、これは趣味の問題で、薄まった方が気持ち悪くないなと思うんですけれども、そういった観点からリスクをどうとらえるかということも、本気でどこかで議論してほしいなという気がします。
 京都とアメリカ、これは私もいろいろなところでアメリカの役人とか、研究者、コンサル的な人間といろいろつき合っているんですけれど、アメリカの本音はもう一つ読めないんです。そういう意味で、本当に彼らの本音はどこにあるのかというのを、内々にいろいろなルートを使って調べたいなとちょうど思っているところで、例えば、先ほどのどちらかの資料にあったように、アメリカでもヒューチャーアジェンダとか、そういったプロジェクトをやるとか、CSLFみたいな世界的な枠組みをつくるとか、いろいろなことをやっているんですけれども、どこに本当に一生懸命ポリティカルな判断を持って注力しているのか、一生懸命やっているかと思えば、随分いいかげんだったりするので、どうも本音が読めないなと思っている。ちょっとそのあたりは、個人的にも興味があるので、調べたいなと思っています。
 大体そんなところです。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 高村委員、それから、明日香委員。

○高村委員 ご報告いただきまして、あと質問にお答えいただいて、非常に興味深くうかがっておりました。何度かいろいろな場所でお話をうかがう機会もありましたので、この技術が持っている重要性を重々認識しております。とりわけ、削減シナリオに与える影響ですとか、今、高橋委員の方からもご指摘がありましたが、将来の国際制度に関する交渉に与えるような影響等を考えると、大変大きな社会的な、政策的な意味合いを持っている技術であると考えております。
 私の方からは3点簡潔に申し上げたいと思いますが、1つは若干の懸念でございます。それは、報告の中で、技術の持っている制約、つまりコストが高いという点ですとか、大規模な実用化のタイミングの問題ですとか、立地が地理的に不均衡といいますか制約がある、あるいは実際、上乗せするコストをだれが負担するのかといったような問題があるということをきちんと議論、報告をいただいているかと思うのですが、何分、この技術の持っているポテンシャルの数字が非常に大きいものですから、このポテンシャルの数字だけとってみますと、我々が、今、暮らしている生活のあり方や、社会のあり方を変えなくても、何とかなるのだという、そういう社会に対するメッセージを与えるのではないかという懸念であります。特に技術にしても、社会にしても、既存のものをこのまま維持しようという慣性が働くのは世の道理でありますので、そういう意味で、懸念しますのは、技術についてきちんと社会に対してコミュニケーションをしないと、ほかの技術開発、先ほど、藤野さんの方からもありましたけれども、再生可能エネルギーですとか、あるいは省エネ技術等々の開発への影響、あるいは私たちの化石燃料に依存した社会のあり方そのものの継続を変えていく、そういうインセンティブに対して、チリングエフェクト、一種の冷却効果を与える可能性があるのではないかという点でございます。
 2点目は、この技術の特質として留意をしなければいけないと思いましたのは、この技術は、出したものを処分するという性格の、結局のところエンドパイプの技術であるということです。このことを考ますと、この技術に全面的に依拠していざ失敗をしたときのリスクというのは、排出削減をこれだけするつもりだったのに、できなかったからどうしようというのとは違う性質を持っているのだと思います。先ほど、高橋委員の方からも自然ハザードの問題等のご指摘もありましたけれども、例えばリーケージのリスク、あるいは大規模に排出をしてしまったときの、もちろんローカルな影響もありますけれども、グローバルな意味での温暖化との関係でのリスク、あるいは地殻変動等による漏出のリスクについて、一種、特殊な、すなわち万々一管理を誤った場合には取り返しがつかない性格のリスクであるという認識を持つ必要があるのではないかという点であります。
 3点目は、非常に興味深く思いましたのは、藤野さんの私見のところとかかわるのですけれども、日本にとってのこの技術の意味合いという点であります。日本はそのエネルギー源の多くを外に依存しています。この技術は、化石燃料への依存を前提としていますので、仮に、この技術を日本で大規模に適応したとしても、エネルギー源を国外に大きく依存する状況は変わらないままです。その意味で、日本が将来エネルギー源を継続的、持続的に確保していくという観点から見たときに、この技術がどういう位置を持つのかという点は考える必要があるのではないか思います。
 以上、3点です。

○明日香委員 どうもありがとうございました。私は3点あります。
 まず1つは、この技術は特許がどの程度絡んでいて、それでどういう影響を持つのか、例えばかなり特許がとられているなり、特許で縛られている技術になるのか、それが1つです。
 2番目が、だれがどういうふうに特許をとっているのか、とろうとしているのか、民間なのか、国立の研究機関がかかわっている部分が多いのか、もし民間でしたら、例えば単純ですが、民間の石油会社がかなり頑張ってとっているのか、それこそエクソンモービル社がかなりとっていて、フロンのように、もしかしたらデュポン社がアフロンで行ったように、かなり急激な方向転換が企業として考えられるのか、そこら辺、スペキュレーションとかだと思うんですけれども、皆さんや業界の方がどういふうに見ていらっしゃるか、教えていただければと思います。
 最後は、これもどのように技術が普及するかというシナリオなんですが、少なくとも数十ドル、コストがかかる。何らかのインセンティブが必要だと。先ほど、UTSでという指標があるというふうにおっしゃったんですが、例えばアメリカで入るときには、今、州で排出量取引みたいなものが導入されつつあると思うんですが、ああいうのが大きくなって価格がある程度、何十ドルというときに、民間でも始めるのか。それとも全然違う、もっとトップダウンで、何らかの動きがあると業界の方は考えていらっしゃるのか、そこら辺の、もし雰囲気というのでしょうか、お考え等を教えていただければと思います。

○秋元氏(地球環境産業技術研究機構) すべてにお答えできないかもしれないんですけれども、まず高村先生、ご指摘の件ですけれども、私も非常にこの技術は、新しい技術は多分どういう技術もそうでしょうし、しかも社会的インフラの部分で基盤となるような技術ですから、非常にコミュニケーションをとることが重要であろうと。どういう技術を選択するのかという、コスト面から見て、我々はある程度、長くやってきて自信を持ってコスト的に有利であろうということは言えるんですけれども、それ以外にも社会がどういう技術を受け入れたいのか、受け入れるのかといったことは、別の面があるというのは非常に私も認識していて、私自身もそういう研究もしていて、社会的にどう受容されつつあるのか、されそうなのかといったことに注力している者です。だから、コミュニケーションをどう図っていくかということは非常に重要だということで同意いたします。
 2番目の、リスクのお話ですけれども、これも非常に同意していて、リスクがどうかということをしっかり評価していくということが大事であろうということです。ただ、グローバルに大気にCOが戻るという点に関しては、地中貯留はサイトごとに細かく入れますから、すべてのサイトが全部リークするということは、まずあり得なくて、たとえ多少、若干漏れる可能性は場合によっては、IPCCでも1,000年で1%漏れる可能性があるとか、そういう話は出ています。そういったレベルで漏れる可能性はあるかもしれないですけれども、それも貯留サイトがいろいろありますから、一遍にそれがリークして大気に戻って温暖化に寄与するということは、まずあり得ないだろうということは、確信とは言わないとしても、個人的な研究者としての確信レベルとしては思います。
 あと、化石燃料が依存が続くという、それもそのとおりかもしれません。先ほどの1番目と絡むと思うんですけれども、どういう技術を選択するかというところで、私は思うのは、どれか1つの技術に頼るのではなくて、バランスをとることが、一番コスト的にも重要ですし、再生可能エネルギーや、省エネルギー技術も積極的に開発しないといけないというのは、私も強く同意する次第です。
 ただ、それだけではなかなか大幅な削減ということは難しいのかなというのが、私の実感で、CCSもバランスよく使っていくことが、温暖化解決のためには重要ではないかと考えています。
 明日香先生の特許の件は、私もそれほど明るくはないんですけれども、回収技術に関しては、特許がいろいろ申請されていて、KS-1の先ほどご紹介させていただいた液に関しても、三菱重工さんと関西電力さんが特許を許されていると思います。ただ、回収の技術というのはいろいろさまざまで、今ももっとコストを下げないといけないということで、回収効率を上げるように、いろいろなところで、いろいろな技術的開発がされていますから、それ1つに頼らないといけないというわけではないと思います。
 圧入サイドに関しては、多分、それほど特許に絡む部分が多くかなったのではないかというような、たしかIPCCにそういうような記述もあったような気がします。ちょっと確かではないかもしれません。だから、回収サイトに関してはちょっとあるというところと、あとは場合によったらモニタリング技術といった、COを圧入した後、どう管理するかといったモニタリングの部分に関して、もしかしたら特許は出てくるかもしれないという、そこは個人的な感想です。
 アメリカの州のETS等に関しては、それによってインセンティブが働くかもしれませんけれども、まずは高ベネフィットが生じるということで、EORがまず最初は中心、アメリカはかなりEORのオプションが結構多いので、まずEORという形で進んでいくのではないか。それを見つつ、ETSみたいなシステムが入れば、帯水層へという形になるかなというふうに見ています。

○藤野(国立環境研究所) 高村先生の1番目の、社会のあり方への影響みたいなところですけれども、結局、日本人がどんな社会に住みたいかによると思うんですけれども、結局、皆さんがどんな社会に住みたいかによって、炭素隔離貯留が必要な社会もあれば、ひょっとしたらそういうのも必要でない社会があるかもしれませんし、これは我々はそういった技術の組み合わせを提案してお知らせして、それを見ていただいて、それをだれが判断するかというのは国民であり、政治家が判断するのか、だれが判断するのかとありますけれども、それは、極端な言い方をすると、皆さんがどちらの方向に行きたいのかというところによるのではないかと、そういうふうに勝手に思っています。
 3番目のところで、化石燃料を外から輸入しているのに、日本で埋めて、というような話は、確かにそのとおり。例えば経済産業省の赤井さんのやられていた超長期、こちらの方はオイルピーク論を題材に挙げながら、2050年ぐらいにオイルが使えるようにならないぐらい。ただし、石炭がありますので、その石炭をどうするかということによりますけれども、もし、そういった意味でオイルが使えなくなる、天然ガスも大分少なくなっていくというようなことになったときに、あとは石炭しかありません。石炭と組み合わせてやるかやらないかというような判断になるんじゃないかなというふうに思います。
 明日香委員の方の特許とか、僕は全然詳しくないので、ただ、アメリカの動きなんですけれども、もちろんアメリカは技術の安い高いで、皆さん、動いているかもしれませんけれども、1つ、ことし1月か2月に、ワシントン出張に行ったときに、新聞記事を見て、ああと思ったのは、アメリカ人でさえも、このままaddicted to oil でいいのか、自分たちのライフスタイルもちょっと見直さないといけないんじゃないかなというような意見の記事も出ていますので、必ずしも皆さんが強いというか、そういうサプライサイドだけの考え方で動いているのかどうかというふうに考えていると、逆に、実はボトムアップで、例えばカリフォルニアとか、いろいろやられていますし、日本が足元をすくわれちゃうんじゃないかなということを、最近ちょっと恐れています。
 以上です。

○赤井氏(産業技術総合研究所) 私も、最後でなかなかつけ加えられないんですけれども、高村先生とは、この議題についてもっと中立的な立場でいろいろ議論させていただいて、楽しかった覚えがあるんですけれども、そのときにも申し上げたんですけれども、コミュニケーションの問題、あるいはパブリックアクセプタンス、それがなければ、この技術は到底できるものではないと思っています。ただ、それが本当に個人的にいうと、洗脳してのPAを得るんじゃなくて、技術の本質というのをちゃんと正しく伝えるということが大事なのかなと思っています。
 先ほど、藤野さんからもおっしゃいましたけれども、私がちょっとお手伝いさせていただいた経済産業省の超長期のエネルギービジョンでも、このCCSについては、かなり慎重な見方をメッセージとしている。オイルピーク、天然ガスピークというお話がありましたけれども、例えば石炭を使ってCCSをやれば、CO排出は確かに、ほとんどなくなるんですが、その場合、世界でやってしまうと、石炭でさえ、今世紀中に今の確認埋蔵量はピークを打ってしまう。それぐらいのエネルギー資源論から見ても、インパクトの大きな技術である。到底そんなことはあり得ない。例えば貯留CCS推進論者の人たちが言うような、何千ギガトンとかいう量のCCSをやるなんていうのは、とても現実的ではないと、私は思っております。
 ただ、CCSを日本でやるか、海外でやるかという、その点について言えば、例えば前回もご紹介したノルウェーのスライプナーとか、アルジェリアのインサラといったガス田で、ガスに不純物として入っているCOは、そのままではガスが売れないので、一応分離するのを、今まで普通にやっている。それを今まのでは大気中に戻していたけれども、それをガスを掘ってきたところに埋め戻す。それは私はやっていいことだと思っています。むしろ、COを削減する効果と、それから産業プロセスの中で少しつけ加えればいい。ですから、コスト的にはほとんどアディショナルなコストはほとんどない状況でCO削減ができるのだと、そういうことはどんどんやってもいいのかなと、個人的には思っています。
 それから、EORという石油増進、先ほどワイバーンの話がありましたけれども、あれはちょっと難しくて、EOR、出てきた石油を、FCCCでいうリーケージとして考えるのかどうか。そのあたりはかなり議論があるんですけれども、私は別に石油は、先週もちょっと議論していて、石油はグリーンハウスガスじゃないんだから、別にリーケージと言えないんじゃないかと。燃やしたらリーケージですけれども、それは燃やすところでカウントすべきあるというふうに考えているんですけれども、ただ、EORについては、国際的なNGOの中でも、EORをカウントするのはどうかという議論は確かにあります。
 ただ、そこも私は、既に行われている技術であるので、カウントできるものはカウントしても差し支えはないと思う。ただ、新たにやる帯水層だとか、海洋とか、そういう今までない技術については、かなり慎重な取組みが必要だなと思っています。
 それから、特許については、私も先ほど、お二方が答えられたぐらいのことしか承知しておりませんので、以上です。

○西岡委員長 ありがとうございました。
 このあたりで、CCSに関する検討を終わりたいと思っておりますが、2回続けて、大体の論議ができてきたと思います。先ほど、秋元さんの方からもございましたけれども、いずれにしても温暖化の問題というのは、あらゆる技術を今からできるときに、探求しておかなければいけないという状況でございますので、このCCSも十分1つの大きなオプションであるということで、さらに検討を続けていく必要があるだろうというぐあいに考えております。どうもありがとうございました。
 それでは、5分間休憩しまして、次の議題に移りたいと思っております。

午後3時45分休憩
午後3時52分再開

○西岡委員長 それでは、そろそろ第2部の方に進みたいと思います。
 第2部の方は適応対策に関してですけれども、最近の動向ということで、これは、環境省地球環境局の方からのご説明をお願いしたいと思います。

○竹本国際対策室室長補佐 ではご説明させていただきます。今回、先進国と途上国、2つのサイドからの動向についてご説明いたします。
 まず、先進国でございますけれども、これはOECDのグローバルフォーラムというのが先月ございまして、そこから拾ってきた情報でございます。先進国、定義としてはOECD諸国または附属書I国ということで、メキシコですとか、韓国も入っているんですけれども、先進国の約4分の1が気候変動影響の極めて初期段階、適応策については影響評価の段階にとどまっているという評価をしております。これは各国が国連の気候変動枠組み条約の第3次国別報告書を分析した結果でございまして、時点で言いますと、例えば日本については2002年にこの報告書を出しているということで、最近の情報を加えますと、適応対策もさらに進んでいるということでございまして、2つ目のパラにありますように、大半の先進国というのは適応対策に乗り出しているところと、一部の先進国については国家、セクター、プロジェクトベースの各レベルにおいて、適応対策の実施や開発政策への主流化を図っているという状況にございます。
 事例といたしましては、インフラ整備。主に海面上昇に対応するようなものでございまして、カナダのコンフェデレーションブリッジといいますのは、船が海面が上昇しても通りやすいような設計をしているということですとか、デンマークの地下鉄についても、将来、水位が上がったときに対応するために、50cmほど駅の高さをかさ上げしたり、テムズのバリアについても同様に将来の洪水に備えたような設計をしているというようなものでございます。
 国家政策レベルといたしましては、昨今、ここに例にございますが、フランス、イギリスあるいはフィンランド、カナダといったような国が国家レベルでの適応計画、適応戦略というものをつくっております。詳細は申し上げませんが、例えばイギリスにつきましては、デフラ環境省が中心となりまして、4カ国、イングランドですとか、北アイルランドといった、そういった地域ごとに関連のステークホルダー、例えば民間企業ですとか、研究機関、NGO等に対して気候変動の適応といったものがどういった実像を持っているのか、といったような調査を行いまして、適応政策フレームワークというものをつくり、国民に問いかけていく。今後は適応がうまくいっているような分野についての事例収集ですとか、課題について整理をするということで、今後発展させていく予定というふうになっております。
 また、セクター、地域レベルでの取組みといたしましては、オランダのフラディングディフェンスアクト、洪水を防止するための法令ですとか、アメリカにおいても海岸線を保護するなどの取組みを行っているという事例がございます。
 これもOECDの調査で、単純に過去の気候変動枠組み条約の国別報告書の中で適応についてどれぐらい記述された割合があるかというのを比較したものですが、緑が第2次の報告書、青が第3次評価報告書ということで、比較をすれば、以前よりはだんだんと適用に関する政策措置、記述がふえているが、依然として10%以下というような国が多いということであります。
 適応のセクションの中にどういった内容の記述があるかというものを調べてみますと、先ほども申し上げましたように、かなりの部分が影響ですとか、脆弱性の評価が中心になっている。組織的にどう対応しているか、Institutional issues といったようなものは、イギリスやスペインなんかを除いてほとんど書かれていない。あとは適応のオプションや政策の対応というものまで若干書かれているものもございますが、いずれにしても影響評価が中心であるという状況にあります。
 先進国は、とりあえず簡単にご説明いたしましたが、途上国の動向でございますけれども、こちらはOECDの資料なんですけれども、開発政策における気候リスク、気候変動の考慮についてということでございます。これは開発政策が適応能力を向上する、いわゆるウィンウィンの法則に従うという場合もあるということですとか、影響評価や途上国の適応対策の策定、こういった途上国に対する活動の支援というのは存在するが、国家の開発戦略や予算プロセスの中で検討されている例は、まだ少ない。ドナー国の中には、適応の開発政策への主流化を求める国もあり、こういった気候リスクをスクリームするというツールも開発されている例も見られます。ただし、全体の傾向としては、開発戦略、貧困削減戦略、ドナー国による国別援助戦略には気候変動、あるいはそのリスクについて言及されているものが基本的にはないということであります。
 こういったことから、気候変動政策と開発政策の整合性というのが課題であるという評価が下されておりまして、そういったことは、ちょっと飛ばしますが、先日、パリにおきまして、OECDの環境開発合同大臣会合というものがございまして、OECDは加盟30カ国でございますけれども、環境担当閣僚、我が国からは小島地球環境審議官が出席しております。このほか開発協力の担当閣僚ですとか、環境系の国際金融機関などなどが参加をして、開発政策と環境を主流化、メインストリーミング、統合するということを、今後一層強化していきましょう、これがとりもなおさず、途上国における気候変動への適応能力を向上させていくことにつながるということで、そういったことに関する閣僚宣言ですとか、共通の目標に向けた報道のための枠組み、例えば優良事例、グッドプラクティスを推進していく、具体的には計画段階での環境影響の評価ですとか、脆弱性の把握を行っていくこと、また、能力開発、途上国のキャパシティビルディングを実施していく、内容としては影響評価ですとか、モニタリングなどなど、あるいは環境政策の測定というところで、より主流化を図っていくといったようなことが合意されております。
 一歩戻りますが、適応に関連する気候変動枠組み条約と京都議定書のもとでの基金の概要と現状についてまとめたものであります。条約、議定書関係では、3つの基金がございまして、これは2001年のCOP7のときに基本的には合意されたものでございまして、1つは後発開発途上国基金、LDCFと呼んでおりますが、低開発国の極度の脆弱性と限られた適応能力を考慮して、これらの国の特別なニーズにこたえるために設置された基金であります。この基金については、既に合計約3,300万ドルの基金が積み上がっておりまして、それには12カ国、具体的にはカナダ、ドイツ、フィンランド、フランス、デンマーク、アイルランド、イタリアなどなど、こういったヨーロッパの国とカナダが拠出をしている。このストックに対して1,200万ドルが計画の策定に現状で使われている。1カ国当たり大体20万ドルぐらいが支払われている状況でございます。
 それで、これはGEF、地球環境基金がこれを運用しておりまして、後ほどご説明しますけれども、40カ国以上が既にお金を受けている。かなりの部分が完成間近の段階に差しかかっております。
 今後なんですけれども、昨年のCOP11におきまして、この基金を適用計画の実施段階、計画をつくるのではなくて、今度は実施段階を支援するために運用していくということに合意されております。
 続きまして、特別気候変動基金、CSSFと呼んでおりますが、こちらは、適応、技術移転、エネルギー、運輸、産業、農業、林業、廃棄物管理、途上国の経済多様化の4分野の活動計画措置を支援することを目的として条約のもとに設置された基金でありまして、こちらもGEFが運用しております。ドナー国は9カ国でございまして、現在、25、100万ドルが積み上がっているということであります。
 これについては、単に適用以外にも技術移転に関するプログラムも使われているということですが、基本的には適応プロジェクトの総体的な気候変動の悪影響の対処を目的としておりまして、実際には能力開発ですとか、プロジェクトの準備作業の啓発などに使われるということになっております。
 3つ目の適応基金なんですが、こちらはCDMの収益の一部、認証排出削減量、CERの2%を気候変動による悪影響への適応費用支援に充当するということが、こういった規定に基づきまして、議定書の発効後に実務的な適応プログラムに融資するために設置された基金でございまして、ご承知のとおり、京都議定書自体、昨年発効したということで、今後、CDMの認証が本格化するということで、これらの基金が具体的に動いていくことになります。
 実は運用について、どこに任せるかということについては、まだ引き続き議論されておりまして、他の基金と同様にGEFに任せようという話もございますが、ここについては、まだ決まっていない状況にございます。
 今後ですけれども、COP/MOP2、ことしの11月にございますけれども、その基金にかするガイダンスですとか、運用のための特定の政策、プログラム優先順位などなどに関するガイダンスが採択される。すなわち、こういった適応基金をどういうふうに使っていくかということについて、これから本格的な議論されていくということになっております。
 続きまして、後発開発途上国基金を使いましたNAPA、国別の適応計画の策定状況について簡単にご紹介いたします。GEFによってというのは、先ほど申し上げたとおりですが、まずは経緯から申し上げすまと、2002年にサモア、カンボジア、エリトリアの3カ国に資金供与承認から始まりまし、2003年には30カ国、2004年には10カ国、2005年には1カ国ということで、現在合計44カ国が資金供与を受けております。このうち既に完成して条約をホームページに公開されているものはサモア、バングラディッシュ、モーリタニアの3カ国。先ほど申し上げましたように残りの国についても完成が間近という状況でございます。
 これが資金供与を受けている国のリストでございまして、アフリカに偏っておりまして、アフリカ31カ国、アジアが7カ国、大洋州5カ国、中南米1カ国。申請はしているけれども、まだ供与されていない国が4カ国ございます。
 次にサモアの適応計画の例でございますが、フレームワークはどういうものかといいますと、これは基本的な話ですが、ビジョンとして気候変動の悪影響に対する適応に対して地域社会の高度な能力を獲得する。ミッションとしては、迅速かつ緊急の適応ニーズを共有して利害関係者ですとか、地域社会のキャパビル、このための戦略を発展させるというもので、目的としては4つありまして、プロジェクト型の作業を開始して実施するというのが1つ。2つ目が人の生命と生活インフラ及び環境を保護する。3つ目が、対策と目標を国家及びセクター別政策及び開発目標に統合していくというもの。4点目として、地域社会、市民、政府の知識の向上を図るというものでございます。
 その計画の中では脆弱性の評価というのを、まずやっておりまして、ちょっと英文が混じっておりますけれども、縦の列が脆弱性の種類でございます。一番上が海岸の侵食に伴う土地の劣化、損失。次が洪水など。3つ目が水の供給の不足ですとか、次が健康のハザード、次が農作物、穀物の崩壊。さらに生物多様性のロスですとか、コミュニティの資産のダメージ、といったようなものに、その原因といたしまして、一番左から海面上昇、次がサイクロンですとか嵐がやってくるといった話です。次がドラウト、干ばつ、洪水、さらに気候の変化ですとか、森林破壊その他の人間活動、次が森林火災、最後が熱帯性のサイクロン、こういったことで、どういうふうにマッチして、各損害の事象がどういった原因があるのかというのを一応評価して、実際にはもっと詳細に見ているんですけれども、こういったものを踏まえた上で、サモアの方でいろいろとステークホルダーなどを議論した上で、作業の内容について特定をして、優先順位をつけております。トッププライオリティはコミュニティにおける水資源を確保するものというもので、上水のプログラムですとか、沿岸部の井戸の保全、再生などが一番重要である。2番目が再植林、修復、コミュニティにおける森林火災の予防というものが挙げられております。3番目が、気候と健康の強調プログラム、健康維持。4つ目が気候の警報システム、5番目が農業と食料安全保障の持続可能性。6番目が区画及び戦略的管理計画。建築物に関するサイクロン対策基準強化などです。次が脆弱な地域に関する沿岸インフラの管理計画の実施。さらに同様に、コミュニティにおける保全計画の確立など、そういったような作業リストをつくっております。実施はこれからということになるわけですけれども、これが今のサモアのご紹介ですけれども、サモアはご存じのとおり、小島諸国に属するものでございまして、続きまして、今度は、アジアのバングラディッシュでございますが、バングラディッシュは低地帯で、こちらもさまざまな気候の影響を既に受けており、今後もさらに受けるというふうに見込まれております。こちらについては、バングラディッシュの環境省が中心になって作成をしておりまして、まず、フレームワークといたしましては、戦略目標と目的ということで、気候の変化と異常気象を含む気候変動の悪影響を提言するとともに、持続可能な開発を推進すると示しまして、特記事項といたしましては、作成段階からステークホルダーとの意見交換を実施している。
 シナリオ分析を重視しておりまして、ここはかなりサイエンティフィックに見ておりまして、具体的には2030年、2050年、2100年の気温、降水量、海面の変化を予測している。
 さらに、水のセクターでの影響が顕著であると評価をしておりまして、洪水ですとか、水の塩分がふえてしまうというような塩害ですとか、干ばつ、及びこれらよって影響される飲料水不足などなどということで、こういったものを踏まえて、15の適応プロジェクトを特定しております。
 また、サモアのときと同様に脆弱性の評価をしておりまして、縦の列の上から穀物、農産物ですとか、漁業、家畜ですとか、インフラなどなど、横軸に左から熱波、エクストリューム・テンパチュア、さらに海面上昇ですとか、干ばつ、洪水、サイクロンなどなど、どれが一番関連が深いかという評価をしております。
 こういったものですとか、将来の予測などを踏まえて、一応作業の内容と、15のうち8つだけ紹介させていただいておりますけれども、各プロジェクトの費用まで一応導き出しておりまして、トップにあるのが沿岸部の新規植林の実施よる気候変動による危険性の削減、2,300万ドルですとか、海面上昇による塩分増加への対抗措置として沿岸部のコミュニティに対する飲料水の提供、3番目のプロジェクトとしては、水資源の管理に関する能力開発ですとか、情報の普及ですとか、さらに洪水のシェルター、災害情報支援センターの建設、あるいは教育のカリキュラムに気候変動問題を導入するとか、都市インフラや産業の回復力の強化、こういったプロジェクトを具体的に示している。これらを、今後動かしていきたいということでございます。
 以上、簡単でございますけれども、各国の動向についてご説明いたしました。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 続けて、具体的な適応対策の例ということで、サンゴの再生研究を東京海洋大学海洋環境学科の岡本先生からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○岡本氏(東京海洋大学) 東京海洋大学の岡本でございます。本日は、我々の続けている研究に対して、このような席でご紹介させていただくような機会をいただいて、本当に恐縮しております。
 発表の演題としては、「気候変動対策としてのサンゴ再生研究」ということでやらせていただきます。サンゴと地球環境とのかかわりあいというものについては、それをとらえる立場の人によって見方が全く変わってくるわけなんですが、例えば、ここで今、いろいろなことを検討されている方々の立場であれば、地球温暖化対策の一環としてかつて注目された炭酸ガスの固定機能の問題あたりが、恐らく興味の対象なんでしょうけれども、私ども生物屋にとってみると、地球温暖化による悪影響というのが、むしろ逆の方で対策を立てなければいけないということで、その中でも特に地質的な海面上昇によるサンゴ礁の島嶼の水没というような問題以前に、本来、生物の多様性の場が消失している、地球上でというか、熱帯雨林と一緒なんですか、最も多様性が豊かな生きたサンゴ礁が消滅している。その消滅によって、サンゴ礁生態系の消滅が海洋全域にどのような影響を与えるのか、これははかり知れない被害があるはずなんですが、幸か不幸か、水の中の出来事は陸上の植物と違って、一般の人の目に余り触れることがない。しかも、きちんとした研究者が、きちんとしたデータに基づいてやっているということがほとんどないものですから、忘れ去られてしまうような世界になっているわけです。
 この中で、COの固定機能に関しましては、いろいろな論議があって、今も論議の最中なんですけれども、サンゴが骨格としてのサンゴ礁をつくるときの石灰化、これは一見、炭酸カルシウムの殻をつくる、サンゴの骨格をつくることによって、炭酸ガスの固定に寄与しているというような見方をされるんですけれども、実は、海水中に大量に存在しているHCOが単に石灰化してしまうと、おまけでCOが出てしまう。石灰化というのは、結局差し引きゼロなんです。むしろ光合成と呼吸の問題です。動物、植物は光合成をし、それから呼吸をしますが、光合成では炭酸ガスを吸収する側、一方、呼吸では逆方向で、今度は炭酸ガスを出す側、その差し引きで純生産量、光合成マイナス呼吸、これでどっちに行っているんというオーダーなんです。ですから、活発にサンゴが生活できるような環境であれば、光合成能力が上回ることによって確かにCOの吸収源になっている。しかし、不健全なサンゴ礁の状態が保たれている現在では、これは地域、それから光の届く深さによって変わってきますので、多分、現在も吸収側には回っていないだろうというふうに踏んでいます。
 一方、悪影響の方なんですけれども、これは2つの意味で悪影響が現在あります。海面が上昇していまっているということ、これによって南の島々は沈む可能性がある。もう一つは南の島々はもともと海洋底が陸地の下に沈み込むことによって、島が少しずつ沈降しているわけですが、この沈降して沈むのをくいとめていたのが、実はサンゴが、沈むより深い、沈むのに合わせて、水面近くで生育して、サンゴ礁を形づくることで島が沈まなかった。ですから、現在は、この分離、地球温暖化に絡んだところで、2つの面で非常に危ない状態になっています。
 生物多様性の場の消失というのは、陸上でいえば山の木が、ある年、丸裸になりました、こういうことが平気で、今、海で起こっています。だけれども、ほとんどの人が注目しない。
 こういった環境の中で、私自身の取組みは、この範囲です。ここについていろ考えているわけです。細かい話は、参考文献だけ、多分、手元にあると思いますので。
 サンゴそのものというのは、一体どんなものかという、すみません、こんな話で。骨格を持ったサンゴがいるわけですが、拡大すると、先に変な粒々があります。この中に、イソギンチャクみたいなサンゴ、これはサンゴ虫といいます。ポリープといったりしますけれども、これがこの中に入っているわけです。そして、昼間の状態というのは、これが閉じて、骨格の中に入り込んでしまっていて、昼間も活動していない。そのかわり、体内に共生している褐虫藻という微細な藻類がいるんですけれども、これが陸上の植物の葉っぱの中の葉緑素なんかと同じように機能して、光合成をしている。昼間、光合成しているから、こんな状態。夜になると触手を伸ばして近寄ってきたゴカイをみんなで捕まえて食べちゃうとか、小さ魚を食べちゃうとか、それから海水中の有機物を食べる、そういったふうな植物として昼間機能し、夜は動物として機能することによって栄養塩類が非常に薄い南の海で、豊かなサンゴ礁生態系を形成しているわけです。
 サンゴ礁というのは、よく"海の熱帯雨林"という言われ方をします。それはサンゴの色を見ていただくと、実は昼間は植物と同じように海洋の基礎生産者として機能しているわけです。光合成を行うことによって、いわゆる食物連鎖をつくり、源となってサンゴ礁生態系を形づくっている。これが海の中での生物多様性の場の象徴として現在あるわけです。ちなみに海洋に住んでいる生物のうちの、いろいろな説があるんですけれども、種類数でいうと4割から9割ぐらいが、サンゴ礁海域に住んでいるともいわれています。
 一方、もう一つの防波堤機能というのを持っています。もちろん、自分たちにとっては非常に心地よい景観、環境をつくり出してくれているわけです。ほとんどの場合、サンゴに対しては、この部分が注目されるばかりで、海の中で、外洋での植物プランクトンの分布なんていうのは、非常にすかすかな状態ですから、それがすごく集まった場所、サンゴ礁であり藻場であるという場所、そこが非常に重要だという部分で、我々いろいろな研究を進めているわけです。
 一方、地球環境の生物指標として非常に重要な役割を担っています。これはもともとサンゴというのはそこに着生したら、そこで育つしかない。またそこで育つしかないんだけれども、今まで長いこと、億という単位、生き延びてきた生物であるわけですが、それがここの二、三十年の間でほとんど消滅してきている。ということは、海の中で長いこと生きてきられていたサンゴが住めない海になってしまっている。それは、多分、そんなに遠くない将来、このままでいったら、地球上に人もまともに住めなくなるだろうというようなことの先駆的な、いわゆるセンサーというふうに考えた方がよろしいのではないかと思います。
 実はサンゴが消滅する原因には、いろいろな理由があるんですが、過去に問題にされてきたいろいろな部分というのは、実はその近くに住んでいる人たちが一生懸命頑張れば何とかなってしまう。例えば開発による被害とか、赤土の流出で富栄養化だというのは、サンゴ礁がある海域の人たちが、本気でその気になれば簡単に何とかなるわけです。オニヒトデについても、とにかく、とる努力さえすれば何とかなる。
 ところが、現在、1998年から地球規模で始まった水温の上昇によるサンゴの白化、それによる死滅、これは対処しようがない。
 こちらは沖縄の石垣島の方の石西礁湖という場所なんですけれども、1998年に白化しているときの状況です。
 ここでちょっと言葉の定義だけ。こうやって固まっている部分、これがサンゴ礁です。こちらは白化後死滅してしまったサンゴ礁で、サンゴはいません。どちらもサンゴ礁です。ただしサンゴ礁にはサンゴが健全に育っているサンゴ礁と、サンゴが育っていないサンゴ礁の2種類があります。石西礁湖、以後紹介していく部分については、まだ人為的な負荷が比較的少ない海域なものですからも、まだまだ生き残っていますが、沖縄本島、沖縄島の全域は、実はサンゴ礁はあるけれども、サンゴは絶滅状態です。ただ、こういうことは余り行政関係の方はおっしゃらない。
 実際にどのくれい水温が上がっているか。皆さん、いろいろなことをご存じと思いますけれども、例えば那覇港の水温でいうと、過去70年の計測データに基づいてそのままシミュレーションすると、この線が平均水温なんですけれども、最高水温が少しずつ上がっている。それから、沖縄本島では、サンゴが22.9℃を超えるような水温が長く続くと、サンゴの白化が始まる。白化が長く続くと死んでしまう。この境目あたりが1998年だったわけです。98年時点で、世界じゅうで結構大変だということになって、いろいろなストーリーが組まれているんですけれども、そのシナリオというのは、ここ20年、30年のうちにサンゴの白化が多発して、基本的にサンゴは全部滅びるだろうという最悪のシナリオが想定されています。
 ただし、このシナリオに対して、白化の惰性はどんなに頑張っても、そんなにとまらないと思いますので、最高水温の上昇に対してサンゴが適応することが、もしできれば、絶滅からは免れる、そういった新しい別のシナリオもあります。
 私自身がサンゴの再生研究を始めたきっかけも、例えば直系15mくらいあって、1個のサンゴ陽性が江戸時代ぐらいに着生して、今まで育ってきている。こういったのがどんどんなくなっていく。そのときに、自分は何ができるのだろうかということでいろいろやっているわけですが、可能性のあるシナリオというのは、歴史をひもといてみると、ちょっと出るみたいな雰囲気があります。例えば、サンゴがどのくらいの温度を超えたら、その地域で白化するか。例えばガラパゴスのようにちょっと冷たい海ですと、27.5℃ぐらいが大体限界水温になっています。ところが、例えばオマーンだとかといような場所だと、31.3℃が白化が始まる水温になっている。つまり歴史的にサンゴは生息海域の水温に適応してきたわけです。ということは、大きなサンゴがどんどん死んでいるわけですが、小さなサンゴを死ぬ数よりもっとたんさん植えることによってふやしてやって、絶滅するまでの時間を稼ぐというシナリオもあるんじゃないか。その時間を稼ぐ間に、サンゴが高温態勢を得ることを期待する。
 これは現在我々がいろいろなことをやって、環境省さんも自然再生事業としてやっている石西礁湖と呼ばれる海域で、石垣島と西表島の間にある日本では最大のサンゴ礁です。現在、日本のサンゴは海水温の上昇で、もう死滅過程に入っているんですけれども、私と仲間の野島先生の2人で「石西礁湖のサンゴ礁再生プログラム」というような表題をつけて、2002年度からは再生に努めております。
 なぜ石西礁湖という海域がキーワードになっているのかというと、1つは、沖縄本島の場合に1998年の白化だけで、9割以上のサンゴが死んでしまいました。ところが石西礁湖の場合は、人為的な負荷が少ないための98年の白化でも全滅はしなかった。その後、2001年の白化でもそんなに死なない。2003年の白化でも死なない。ということで、まだここの海域は絶滅までの時間的余裕があるということ、それから広さゆえに、受精卵と幼生が滞留できる広さを持っている。それから、自己再生産能力が現在も維持されている。あともう一つは位置的に黒潮流域に対するサンゴの幼生の供給源になっているであろう。ですから、死に絶えた沖縄本島のサンゴ、このあたりもほとんど死に絶えているんですけれども、石西礁湖を元気に保っておけば、ほかの海域への幼生供給源として何とかなるんじゃないかというシナリオです。
 環境省さんの方でも2005年度からは、石西礁湖自然再生事業として稚サンゴを大量育成して、移植して、再生産力を強化していこうという事業をスタートしておりまして、私ども協力させていただいております。
 実は、これは、1998年の白化の前にサンゴがどのくらいあったかという調査をして、このマップができ上がった瞬間に、98年のサンゴの白化が起きてしまって、えらいことになったということなんですが、98年の前の時点で、この日本最大のサンゴ礁にどのくらいサンゴがあったか。対象面積276平方キロメートルに対して、サンゴそのものが占める面積というのはせいぜい16平方キロメートル。つまり非常に広いサンゴ礁海域でありながら、実際のサンゴはせいぜい4キロ四方しかない。また4キロ四方のサンゴというのはどのくらいの数かといったら、1平方メートル当たり10個のサンゴ、10株のサンゴとしたら、たかだか1億6,000万。つまり、この時代に戻すには1億6,000万のサンゴを何とかしてやれば済む。意外とサンゴ礁海域のサンゴは小さくて何とかなるんじゃないか。
 実は、今、守ろうとしているのはこの海域なんです。本当にサンゴが、子供たちをたくさん加えてやると自然に再生する、高温に対して対応できる可能性があるのか。これも長いこと調べていますと、結構、思った以上に石西礁湖の北側のリーフ、竹富島からコハマ島、ここまでつながっている北側のリーフ、総延長約10キロありますが、これは1998年にサンゴが白化したときの状況です。このスケールは数字が入っているのは10センチ単位で入っています。大きなサンゴがほとんど白化して、すぐに死んでも形は崩れないんですけれども、その後、2003年2月段階では、新しい小さなサンゴが加わってきているんですけれども、基本的に大きかったサンゴは全滅してしまった。
 しかし、これはことしの2月ですけれども、このころ小さかったもの、新規加入群によって、現在は再生途上にあるわけです。この間に98年にあったサンゴは全滅したんですが、その後、新たに加入してきたサンゴが、実は2001年と2003年の再々度の白化に対して打ち勝っている。そうすると、ここに現在あるサンゴ群集は、温帯性能力を持っていると判断してもいいんじゃないかなという考え方があるわけです。ですから、これと同じことを自然の再生能力だけに頼っていますと、南側のサンゴは全滅しますので、こちらを何とかしなければいけない。
 これは、サンゴの再生法を説明してあるんですが、例えば枝サンゴがあって、枝サンゴの枝を折って、サンゴ礁リーフに植えてやる。これはよく断片移植という言い方をします。これは無性生殖なんですが、今、おきなわ本島でいえば、枝を折るサンゴさえない。また一方、石西礁湖では、このサンゴがいまだに一斉産卵によって非常に多数の幼生を生み続けています。雌雄同体なんですけれども、一斉産卵によって受精卵ができて幼生になって、その幼生が好みのつく場所につけてやって、我々、セラミックの着床具というものを使っているんですけれども、一斉産卵の直前に大量設置して、小さなサンゴまで育てて、それをサンゴ礁に植えるなり、または人工基盤に植える。こういったやり方で再生する。これは稚サンゴの移植で有性生殖の世界なわけです。従来は、この手法がとられてきたんですけれども、現在、この形で、我々は今、いろいろなことをやっているわけです。
 これは石西礁湖での一斉産卵の状況なんですけれども、初夏の満月の夜、22時から23時の間に100種類を超えるサンゴが一斉に産卵します。ことしは来月の5月13日の予定なんですけれども、そういうときに、これは卵ではなくて、卵子と精子が束になったバンドルと呼ばれているものなんですけれども、こういったものが非常に大量に生み出されます。そのときに、海面上の船から見ると、えっ? というような、びっくりするような数のものが生まれているわけです。この一斉産卵によって無数の幼生が産出されるんですけれども、着生適地にうまく着生できて、そこで小さなサンゴになることができるのは1万個に1個もいない。それだったら、ほとんど流れ去ったり、死に絶えてしまうものを、うまく新しい場所に着床させてサンゴとして育って、自然界にまた帰してやろうというのが、現在の研究内容なんですが、そういったことを可能にするには、10センチ四方で厚さ13ミリの板なんですが、再生産力の評価に使っていて、実はサンゴの幼生というのは、例えば板を水平に置いておくと、板の内側の下の面、縁から細大でも12ミリ以内ぐらいのところに着生します。1年間たってじっくりと育って、1年目ぐらいにちょっと芽をだしてきます。それからは成長が早くなるわけです。うまくこの機能を使って、側面についたり、上の面についたりしたものは全部ほかの生物に食べられてしまってサンゴになれない。例えばちょっと横穴をあけてやったどうなるかというような、こういう実験と、もう一つは海の中で、これは直系1センチサイズですけれども、1歳のサンゴなんです。この1歳のサンゴがどういう経歴をたどって1歳になったのかというところを、例えばコア抜いてやって、コア抜くとサンゴ礁は炭酸カルシウムのかたまりですから、真っ白な状況で、この中に無数の生物の起源による穴がある。その穴の中に着生して、1年間じっくり育って、表に出てきて、小さなサンゴになる。こういった実験とフィールドの両面から攻める。この実際もすべて海中ですけれども、どういうものを使ったらサンゴの再生に寄与できるようなものを開発できるか。
 これは運用性、サンゴの着生、セイザン、移植するときの足、こういったものを組み合わせたのを開発してみたわけです。日本には幸い、こういったものを非常に大量に安くつくってくれる伝統技術、瀬戸物、ただし釉薬は塗らない素焼きの瀬戸物ですけれども、瀬戸物でこまのようなものをつくってみたわけです。それを一斉産卵の直前に海中に設置して、あとは放ったらかしにしておくと、これは10ミリですから、1年たつと大体5ミリから6ミリぐらいのサンゴ、その後は成長が速くなって、横から顔を出してくる。
 これはちょっと大き過ぎるんですけれども、この途中ぐらいで移植に使おうという考え方です。
 現在は、これは960個のユニットにしたものなんですけれども、こういったものを幼生の着生適地、自然界で稚サンゴがたくさん着生する場所、しない場所がありますので、そういったところを選定しながら、この着生後を乗せた架台を設置して、これは1年2カ月ぐらいなんですが、そうすると、きちんとした海岸、サンゴ礁、リーフが残っているところでは、着生後、直植えすることによって、直接穴をあけて接着剤を入れて挿入することによって、サンゴの回復が図れる。
 一方、実はサンゴ礁の海域ではかなりの海域がこういう状態になっています。これは、テーブル状のサンゴというのは非常にかたいサンゴ礁の上とか、基質のあるところに生育するんですが、枝サンゴというのは比較的基質がないところにより沿うような形で生きているわけなんですが、一たん白化の影響で死んでしまうと、瓦れき状になってしまう。しかも、この表面は微細藻類に覆われてしまって、そういう泥をつかまえたりしていることによって、ほかの生物が着生できない。サンゴが着生できないだけではなくて、海草も着生できない。二度とサンゴ礁には戻らない海域だし、それからサンゴ礁どころか、普通のシナリオでいうと、サンゴが死亡したサンゴ礁というのは海草になるんですけれども、藻場にもなれない。こういったところが沖縄本島の周辺全部、それから石西礁湖のかなりの部分でもこういった状態があります。
 こういったところでは、これにかわる人工基盤を使うというのがやむを得ない選択になるわけですが、我々はこの人工基盤として、商品名ですけれども「マリンブロック」と呼ばれている鉄鋼スラグの炭酸固化用を使ってやっております。鉄鋼スラグというのは、鋼の製造時にできる副産物です。生石灰を非常に大きく含んでいます。このスラグを細かく砕いて、枠に入れて、その同じ工場から出る炭酸ガスを通してやって、CaOを炭酸カルシウムにしてやる。炭酸カルシウムというのはサンゴ礁と一緒なんですね。これによって鉄鋼スラグをかためた材質なんですけれども、実験レベルで非常に小さい25センチ角のものを使っているんですけれども、非常に微細な多孔質で間隙率が40%ほどある。海中でも非常に安定している素材で、アルカリ性を高めない。しかも、コンクリートと違って養生は一切不要です。これがサンゴと非常に相性がよろしいんですね。
 今、こちらにある着床具をこの上に、小規模な実験ですけれども、植えつけて、実際にマリンブロックというものをどうやってつくるかという部分なんですけれども、先ほどの同じ25センチ角のものに、サンゴがまだ見えない段階で移植した着床具で、約1年8カ月ぐらいで、この状態、びっくりするぐらい、きちんとサンゴが育っていてくれて、この材質が目に見えないうよなサイズのサンゴに対しても害を与えない。要は非常に相性がよろしい。こういう呼び方を本島はしてはいけなんですが、私の頭の中のイメージでは、人工サンゴ礁である。しかも人工サンゴ礁に日本古来の技術、瀬戸物を使って、そこでサンゴを救える、こんな物語がだんだんできてきたわけです。
 我々の本当の研究目的というのは、日本でいうと三百六十何種類あるサンゴの一つ一つの種類が、どのような成長をするのか、ということも1つ興味のあることですが、マリンブロックの上に移植したものが、約10カ月後に、ちょっと見えにくいんですが、ここにちょっと広がる。これがさらに2カ月後にちょっと広がった後に、少しボチボチが出てきて、広がるのとボチボチが出るのがどんどん非常に短期間の間に起こって、1年6カ月ぐらい後には、こういった何となくサンゴの形になっている。しかも、非常に成長が速い。種類ごとに調べていくというのが私たちの研究の1つなんですけれども、そういったことに関しても、非常にありがたい素材です。
 そういったことがわかったものですから、セラミック着床具を使ったサンゴの再生だけでなくて、人工基盤についても本格的にやろうじゃないかということで、昨年度から大型の1トンタイプのマリンブロックを使ったサンゴの移植実験を進めております。この結果も、もうしばらくすると表に出てきます。
 石西礁湖のサンゴ礁再生プログラムとして始めたわけですけれども、自然再生事業にも取り入れられている。このプログラムのポイントなんですけれども、実は従来のサンゴ、それから魚を何とかしようという世界とはかなり違った要素を持っています。自然の再生産力を利用しているということです。死んでしまう幼生を救ってやるというような意味もあります。
 2番目が一番大きな特徴なんですけれども、稚サンゴまでの生育し生産する、このプロセスは自然界の生存競争に任せてしまう。生き残ったものだけを使う。ですから、着生から移植までを、すべてのプロセスをサンゴが生育する海中で行う。使っている素材は瀬戸物と鉄鋼スラグが含んだ炭酸カルシウムですから、自然素材。事業規模は、例えば私、1,000円あるから10個やります、という人は10個やればいい。国が本気になってやるのであれば、これも可能。規模は自由に選べるということです。これで、今、鋭意、実験と事業を進めているんですが、こうなると、我々も次の課題。
 皆さん、よくご存じのように、サンゴが死滅することで困っている国々、ここへの協力ということもメニューに入ってまいります。先ほどちょっと口頭で説明した、島がどんどん沈んでいって、その部分、これは俯瞰図で、斜め線から下が断面図になっています。島はチャールズ・ダーウィンの陸地の沈降説ということで、だんだん島の周りにサンゴができ、島がどんどん沈んでいって、環礁と島ができる。最後は環礁になるけれども、サンゴが沈む速度に同調するように育っていることによって、島は沈んでも陸地は残る。これが現在の南の島の現状なわけです。これが上からは海水面が高くなり、沈んでいっても、サンゴがいないから、堡礁してくれない。ダブルパンチで、沈んでいくのは目に見えているわけです。
 こういうところで、こういった地形の外側にあるのがサンゴ礁、この中にある部分がラグーンと呼ばれる場所です。このときに、例えば基礎生産者を守るということだけを考えると、サンゴ礁抜きにして、ラグーンの中に炭酸カルシウムのサンゴ質の砂の中に、先ほどの死んでいた枝サンゴみたいなところがたくさんあります。ここで健全にサンゴが育っていることによって、基礎生産者として機能して、サンゴ礁生態系をつくるわけですが、こういったところに関しては、着床具単独、もし買い手が強固であれば、着床具の移植、それから砂地とか礫の場合には人工基盤を併用すればいい。それから、サンゴ礁に対しては、防波堤機能ということがありますので、人工基質と防波堤型の防波構造物を併用して、そこでのサンゴの再生ということが考えられるのではなかろうか。
 ほんの一例ですけれども、例えばどんなシナリオがあるのかなということで、とりあえず、数字なんですが、例えば2年くらいの事業化調整で、割と大事なのが、サンゴの一斉産卵時期の把握、稚サンゴの着生適地を選定するということ、こんなようなことを若干行った後で、ラグーンの中の実験、礁湖の中の実験、こういったもので2ヘクタールオーダー、それからその先に本気で外側のリーフを守ろうといった、長さ200メートル、1ヘクタール程度でやるとしたら、こんな感じてじょうね、という試算です。
 我々の再生のイメージというのは、サンゴ礁に生きたサンゴがないわけではなくて、立派なサンゴ礁がいつまでも続き、そこにサンゴがきれいに育っていて、人類が地球環境の生物指標とともに快適に生活できる環境を、サンゴを指標として保持していくように努めてくれたらありがたいのだけれども、という思いを込めて、こんなイメージと思っています。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 温暖化でサンゴ等の白化が進んだり、あるいは海面の問題で絶滅が進んでおりますけれども、それに対する再生事業ということでお話しいただきました。
 もうあと10分ぐらいしかない、申しわけない状況になっておりけれども、これまでの適応策、あるいはサンゴの再生等々につきまして何かご質問ございましょうか。全体といたしまして、国際的には適応策の話は大分進んできた、また多分IPCCの方では、かなり思っていたより変化が進んでいるといった結論が出るかなと思っておりますけれども、そういう面からいきますと、適応対策というのを国内外両方ともきちんと進めていく必要が出てくるのではないかなと思っておりますが、今日は、そういう面で1つの、こういうことをやるのだといったことが明快になったのではないかなと思っています。
 亀山委員、どうぞ。

○亀山委員 後半の2つのご発表、どうもありがとうございました。
 特に岡本先生のお話は、私、非常にわくわくして聞かせていただきまして、大変勉強になりました。
 個人的な質問は山ほど今、思い浮かんでいるんですけれども、時間もございませんので、むしろ、若干、私が懸念を感じましたその前のご発表について、1つだけ質問させていただきたいと思います。
 この専門委員会でも、あるいは国際的なここ数年の議論の中でも、適応対策に関する議論は非常に多くの時間を割いて議論されるようになってきています。私は、何で適用対策について話し合われなければならないのかという重要性は2つあると思っています。
 1つは、当然のことでありますが、適応対策を進めるために適応対策について議論する。当たり前でございます。
 2つ目の目的は、抑制策を健全に議論していくためには、適応対策についても議論を進めないといけないというふうに感じます。つまり、二酸化炭素をどれぐらい削減していくのかという話をするときに、コストがかかるからやりたくないというようなことが必ず出てくるわけですけれども、そのようなコストの議論をするときに、この対策をとらなかったら何が起きるのかということを踏まえないで、抑制策のコストの話だけを進めていっただけでは、バランスがとれていないわけで、そういう意味で抑制策を進めていくためにも対応策について議論していかなければいけないというふうに、私は考えるわけです。
 それで、今日のご発表なんですが、非常に多くのスライドのベージ数が途上国について割かれておりました。途上国の方で適応対策の議論を進めるのは、もちろん途上国で適応能力が先進国と比べて、ないということでありますとか、今までの交渉の経緯でNAPAをつくることが義務づけられるようになったというようなことがございまして、このように情報がよく出てくるようになったということは、私もよく承知をしているわけですけれども、私が質問したいのは、むしろ先進国でNAPAのような適応計画についての議論というのは、どれぐらい進んでいるのかどうかということについて、もしご存じであれば、環境省さんの方で情報があれば教えていただきたいと思っています。
 竹本さんのご説明された3ページ目のスライドで、国家政策レベルというところで、イギリスしか出ていないんですけれども、このようなストラテジー、あるいはフレームワークというものをつくるためには、国内でステークホルダーとの議論があったというようなことを、ちらっとおっしゃったかと思います。今後、適応策について議論していくためには、この場のような専門家、あるいは研究者レベルだけの情報共有だけにとどまらず、一般のステークホルダーの方との議論を通じて、このような計画というものをつくっていくわけでしょうから、そういう意味でも、そのような計画をつくるというプロセス自体も大切なのではないかと思っております。
 その意味で、改めて伺いたいのは、ほかの先進国でどのぐらい、このような計画をつくるという状況が進んでいるのか、この2つは、単なる大勢のうちの2つの例なのか、あるいは2つだけしかないのか。イギリスについて少しご説明されましたけれども、イギリス国内の適応だけについて書かれているのか、あるいは途上国にどのようなことができるのかといったことも含めて幅広く書かれているのか等でございます。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかにご質問。原沢委員。

○原沢委員 岡本先生の話題提供、非常に感銘を受けたんですが、例えばIPCCの中でも生態系についての適応策というのは、かなり限定的だろうということで、例えば温暖化したときに生物が移動できるような経路(パス)をつくっておくこととか、そういうレベルにとどまっているわけです。そういう意味で、今日、ご紹介のあったサンゴ礁の再生というのは非常に大きなインパクトを持っているのではないかと思うんです。
 質問は、こういったサンゴ礁再生の研究あるいは実際にそれを応用するような研究は、国際的にどんな状況であって、温暖化との関連でよくやられているのか、あるいは岡本先生のグループは、先進的な取組みをされているのか、その辺をちょっと教えていただきたいんですけれども。

○西岡委員長 もう一つ、高橋委員からの質問をお伺いします。

○高橋委員 途上国の適応政策に関してなんですが、途上国のこういう作業のとき一番やってはいけないことは、外の人間があれこれやっちゃうことで、つい、いらいらしてやっちゃうんですが、今回の場合にも、そういうことをやっちゃうとまずいなと思っているんですが、バングラディッシュのところなどの例で見てみますと、特記事項の一番最初に、「計画作成に当たりステークホルダーとの意見交換を実施」。非常に先進国向きに、こういうのが出てくるわけなんですが、だれがそれをやっているのか。その政策立案を実際にやっている人たちがどういう人たちなのか、そういうところに関しての議論というのが、今回のグローバルフォーラムのときにあったかどうか、それをお教えいただければと思います。その1点だけです。

○西顔委員長 ほかにございませんか。
 それでは、これで、お答えいただいて終わりにしたいと思っております。最初に、岡本先生の方から。

○岡本氏(東京海洋大学) サンゴの再生とか、その辺の努力の現状なんですけれども、実は世界ではほとんどされておりません。その理由は、アメリカの場合はメキシコ湾側とか、フロリダがサンゴ礁のナショナルサンクチュアリとして保護している海域なんですけれども、実は1980年代に、サンゴ礁が全部藻場に変わっちゃたというフェーズシフトがありまして、今、フロリダのサンゴ礁にはサンゴがほとんどありません。それでも、絶滅から防ぐという意味で、海洋タイキョク「ノア」、そういう、いろいろなところがたくさんNGOはありますけれども、基本的にノアが中心になって、今あるサンゴを殺さないように、そういう努力をしています。
 それから、世界最大サンゴ礁を持っているオーストラリアは、余りにも広大であるがゆえに、何も手をつけない状態で今まで来ています。逆に日本のように、例えば石西礁湖のように、割と狭いところにサンゴが密にあるというところは、グレートバリアリーフでも余りないものですから、研究に手のつけようがない。
 それから、東南アジアの国々は、本当にサンゴが死ぬことで、漁場としてのサンゴ礁が壊滅的な被害を受けているんですが、そこでは、まだ、白化どころか人為的な破壊が次々と進んでいる。東南アジアの国々に対しては、今はワールドバンクからの支援というような形で、そこに住んでいる人たちが、少なくともサンゴは壊さないようにしようよ、それから陸域からの汚染物質の流出を極力減らそうよという、教育を続けているレベルです。ですから、正直いって、世界のどこもサンゴの再生の努力は余りしていない。保全まではしているというところです。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、環境省の方から幾つかの疑問に……。

○竹本国際対策室室長補佐 コメントありがとうございます。
 まず、亀山先生でございますけれども、当方で把握しておりますのは、イギリス、フランス、カナダ、フィンランドでございます。ここのすべてがかなり最近に策定されたものと思われます。例えばイギリスについては2005年11月に策定されまして、DEFRAが中心になって策定しまして、関係省庁との協議を開始しつつ、パブリック・コメントを1月末までに募集した。その後の結果については、まだ公表されていない状況です。
 それから、例えばカナダについてはカナダの環境省と天然資源省が政府としてかかわり、あと、13の州政府と協力して委員会をつくって策定している、といったような状況がございます。
 いずれにしても、まだ、計画について、例えば将来のインフラ計画を具体的に示して、気候変動の適応に対抗していくというレベルではなくて、まずは、具体的にどういった影響があって、今後セクターごとにどういった影響が出るのかというのを分析しているようなレベルで、また、普及啓発を進めていくことが重要ですとか、関係者間、企業ですとか、NGOも含めた人たちとのネットワーキングを充実していこう、といったようなレベルにとどまっているようでございます。
 また、イギリスについては、ステップ・バイ・ステップといいますか、3つのステージで、これを完成させていく。とりあえずは、まず第1ステージとして気候変動の適応について国家の実情を把握していくということで、関係者から情報を収集しているという段階にございます。
 また必要に応じまして、本件については次回以降、もし機会がございましたらご説明したいと思います。
 高橋先生のご質問でございますけれども、取り急ぎ、バングラディッシュの計画のところを拝見しましたところ、ステークホルダーとの意見交換というものについては、例えば分野別では農業従事者ですとか、漁業ですとか、あるいは産業界の人とかと意見交換をしたといったようなことが書かれておりまして、あと、地域で計画策定に当たってワークショップを開いている。サブナショナルといいますか、国内で4カ所ぐらいの地域で、それぞれ会議を開催したといったようなことが書かれております。策定主体は環境森林省ということでございますが、ただ、ガイドラインというものがございまして、実際には明記はされておりませんけれども、当然、これの策定段階では、国際機関ですとか、恐らく先進国の科学者などの知見というものが使われているのだと推測されます。
 以上でございます。

○西岡委員長 最後の件ですけれども、私もGEFのスタッフといいますか、サイエンスエンドテクノロジカルアドバイザリーパネルというところにおりまして、ちょうどアダプテーションのことを数年前まで担当しておったんですが、今、高橋先生の危惧なさったようなことが指摘されていまして、必ずその地域々々の、むしろ社会制度とか、伝統だとか、知恵だとか、協力の仕方だとか、そういうことが一番大切だということで、余り先進国から口を出さないようにしようよというガイドを出して覚えはあります。
 それが、昨年、私、モントリオールの方で、GEFの方の執行状況の話を聞いたんですけれども、確かに地元主体でほとんどそういうことを話し合うというのを、まず第1ステップにしているということで、かなりいろいろな面で変わってきたのではないかなと思っております。
 よろしゅうございますか。
 それでは、遅くなって申しわけございませんでした。この本日の会合はこれで終わりますけれども、何か、次をどうしようかという話がございましょうか。

○水野国際対策室長 次回の専門委員会でございますけれども、今般も含めまして、適応問題、新制度の問題につきまして、かなり有意義な情報についてプレゼンテーションいただきましたし、また活発なご議論をいただいておりますので、次回は、これまでの結果を簡単にまとめておいてはどうかということで、一言一句、議論していただくような、今までの中間報告というようなきちっとした形ではないにしても、これまでの成果を一たん取りまとめさせていただいて、それについてご議論いただければと、もちろん必要な情報について追加のものがあれば、ご議論いただければというふうに思っております。
 具体的なスケジュールにつきましては、また追って調整をさせていただければと思いますけれども、来月、補助機関会合等ございますので、恐らくはそれ以降ということで調整をさせていただければというふうに思っております。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日の会合、これで終了いたします。

午後5時05分閉会

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