中央環境審議会地球環境部会第8回気候変動に関する国際戦略専門委員会議事録

開催日時

平成17年4月4日(月)午後1時33分~午後4時07分

開催場所

環境省第一会議室(合同庁舎5号館22階)

出席委員

(委員長) 西岡 秀三
(委員) 明日香 壽川  甲斐沼 美紀子
亀山 康子  工藤 拓毅
住  明正  高橋 一生
高村 ゆかり  新澤 秀則
原沢 英夫

 

議題

1. 気候変動政策に関する最近の国際動向について
2. 気候変動の長期目標に関する考察について
3. その他
  

配付資料

資料1  気候変動政策に関する最近の国際動向
資料2  気候変動の長期目標に関する考察(原沢委員提出資料)

議事録

午後1時33分開会

○水野国際対策室長 それでは、定刻でございますので、ただいまから気候変動に関する国際戦略専門委員会(第8回会合)を開催したいと思います。  今回は、前回の開催からしばらくぶりの開催だということ、それから今年に入りまして初めての開催でございますので、まず初めに松本地環境審議官より一言ごあいさつ申し上げます。

○松本地環境審議官 審議官の松本でございます。本日は、年度初めの大変お忙しい中、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。気候変動に関する国際戦略専門委員会の開催に当たりまして一言ごあいさつを申し上げます。  委員の先生方ご承知のとおり、去る2月16日に京都議定書が発効いたしまして、議定書に基づきます温室効果ガスの削減約束が現実のものとなったわけであります。気候変動に対応するためには、世界全体の温室効果ガスを削減する必要があるわけでございますけれども、まず何よりも先進国が率先して削減をするという義務が生じたわけであります。日本にとって削減約束の達成というのは容易ではないわけでありますけれども、これを何としても確実に達成するために、3月29日に行われました地球温暖化対策推進本部におきまして、京都議定書目標達成計画の案が取りまとめられたわけであります。現在この計画案につきましては、国民の皆様方からご意見を募集している最中、パブリックコメントにかけているところでございます。寄せられましたご意見を踏まえまして、4月下旬から5月にかけて、この目標達成計画を正式に閣議決定をするという予定になっているところでございます。  また、京都議定書の発効によりまして、議定書が定めていない2013年以降の気候変動対策の枠組みを国際的に議論する機運が高まっております。ご承知のとおり、京都議定書では、2013年以降の約束について、今年から交渉を開始するということを規定しているわけであります。100年以上の時間的なスケールを有する大変大きな気候変動問題に対処するためには、最新の科学的知見を踏まえまして、この問題に長期的及び中期的にどう取り組むか、これを十分議論いたしまして、それをもとにして具体的な対策の枠組みを構築するということがどうしても必要だろうと思っております。とりわけ気候変動枠組条約の究極目標を達成するために、温度上昇など気候変動による影響をどの程度にまで抑えるか、そのためにどのような目標を設定して対策を講じていくのか、我が国としても議論をする必要があると考えております。  また、今年の7月に予定されておりますG8サミットでは、アフリカ問題にあわせまして気候変動問題が主要議題の1つとして取り上げられることになっております。G8サミットへのインプットを目的に、先般、2月の冒頭にイギリスで開催されました気候変動に関する科学者会合、また3月の中ごろにエネルギー・環境閣僚円卓会合も開かれたわけですが、これらの会合では、気候変動の最新の影響評価や、絶え間なくこの問題に取り組むための長期的な政策シグナルの必要性が議論をされたわけであります。また、来月には、将来の行動も見据えて各国政府の専門家によるセミナーが開催される予定になっております。  この専門委員会では、昨年4月から次期枠組みのあり方についてご検討をいただいているところでありますけれども、国際的な動向を考慮いたしまして、今後もより活発なご議論をしていただければと思っております。また、私ども政府といたしましても、本専門委員会での議論も踏まえまして、将来の枠組みに関する国際交渉において積極的に貢献をしていきたいと思っているところでございます。  どうぞよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。

○水野国際対策室長 それでは、議事進行につきまして、西岡委員長、よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 それでは、第8回の会合ということになりますが、お手元に議事次第がございます。本日は、「気候変動政策に関する最近の国際動向について」ということで、事務局の方から最近の動向をご説明いただいた後、「気候変動の長期目標に関する考察について」ということで論議をお願いしたいと思っております。  今のお話にありましたように、次期の、特に京都以降の枠組みをめぐりまして長期目標の設定というところが重要になってきます。これはまさにサイエンスと政策がちょうどあわさると、ある意味では非常に興味深い、ある意味では非常に重要なポイントに差しかかっていると私は思っております。まず、国際的にどういう形で議論されているか、我々がどういう形で腹を固めなければいけないかといったことの材料を一度検討してみようということで、数回皆さんにご議論いただきたいと思っている次第であります。  ですから、本日の会合は2の方に重点を置いて話を進めていきたいと思っております。時間は16時まで2時間半予定しておりますが、早く終われば終わりたいと思っております。  まず、資料の確認をお願いしたいと思います。

○瀧口室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。  本日は、議事次第のほかに主に資料は2点ございまして、資料1が「気候変動政策に関する最近の国際動向」、資料2が「気候変動の長期目標に関する考察」ということで、国立環境研究所の原沢領域長にご提出いただいた資料でございます。ご確認ください。  それから、先生方に、次々回の専門委員会のご予定伺いという1枚紙を配付させていただいております。次回は4月22日の午前10時から開催させていただく予定にしておりますが、その次につきましては5月9日の週にできれば開催させていただきたいと思しまして、お手元の予定伺いにご記入の上、お机の上に置いておいていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。資料、よろしゅうございますか。


1.気候変動政策に関する最近の国際動向について

○西岡委員長 それでは、議事の1に移りたいと思います。「気候変動政策に関する最近の国際動向について」ということで事務局からご説明をいただきたいと思います。

○水野国際対策室長 それでは、資料1に基づきましてご説明をさせていただきます。  最近の国際動向ということでありまして、特に昨年の12月以降の動きについてご説明をさせていただきます。資料の2ページ、資料の構成ですけれども、大きく6つに分けてご説明をさせていただきます。まず、大きなスケジュールとして、これまで、あるいは今後どのような動きがあるかということ、それからCOP10の結果、3番目として京都議定書の発効で何が起こるか、4番目が米国の状況、5番目が欧州の状況、最後にG8プロセスという流れでございます。  それでは、まず最初に国際的な動きですが、4ページをごらんいただきたいと思います。昨年の12月、COP10がブエノスアイレスで開催されまして、その後、京都議定書が今年の2月16日に発効しております。このCOP10の決定に基づきまして、先ほどごあいさつさせていただいた中にもありましたように、政府専門家セミナーを5月に開催予定でございます。さらにその後COP11及びCOP/MOP1、COP/MOPというのは京都議定書の締約国会合ですけれども、これが今年はカナダで11月末から開かれるということが決定しております。  これと同時並行的に、G8のプロセスの中でも気候変動問題が精力的に検討されておりまして、既に2月から3月にかけまして重要な幾つかの会議が開催されております。1つ目は、原沢先生もご参加いただきました科学者会合、それから3月の中旬にはエネルギーと環境閣僚円卓会合、さらにはG8環境と開発閣僚会合というものが開催されまして、小池環境大臣や高野環境副大臣も参加をしております。  この結果などを踏まえまして、7月のグレンイーグルズ・サミットでも、気候変動問題が主要議題の1つとして議論されるということになっておりまして、こういった結果もCOPプロセスに適宜貢献していくということが考えられております。  今のが大きな流れでございますが、次にCOP10の概要についてご説明いたします。  6ページをごらんください。COP10は、先ほど申しましたように、2月の上旬にアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されました。ちょうど条約発効10周年ということと、京都議定書の発効が確定して初めてのCOPということで、友好的な雰囲気の中で前向きな議論が行われました。  大きな結果としては主に3つございます。  1つ目は、将来の行動に向けて、今年の5月に締約国間で政府専門家セナミーを開催して情報交換を行うということが1つでございます。2つ目に、条約の着実な実施のための協力ということで、とりわけ適応策につきまして、「適応策と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」というものが決議されまして、この中では途上国への資金支援や人材育成の支援などに加えまして、科学的な側面などからの「5カ年行動計画」を策定するということも盛り込まれております。さらには、議定書のさらなる実施に向けまして制度の整備等が図られたということが3点目に挙げられます。  7ページ、8ページが具体的な決定の中身でございますけれども、まず、政府専門家セミナーです。これは5月16・17日にドイツのボンで、補助機関会合の前に開催されるということが既に決定しておりまして、テーマが2つあります。a)が、簡単に言えば、将来の行動に向けてのテーマでありまして、b)が現在既にとられている政策措置についてのテーマということで、将来と現在の政策両方について発表して意見交換を行うということになっております。  結果につきましては、条約事務局が、本セミナーが新しい約束につながるいかなる交渉を開始するものでもないことを念頭に置きつつ、締約国が利用可能なようにするということで、COPプロセスと一定の距離が置かれる形で開かれることになっておりますが、締約国にフィードバックされるということが決まっておりまして、本セミナーの結果が次期枠組みの交渉に向けた議論の呼び水になることが期待されております。  続きまして、8ページ、COP10の大きな成果の2つ目、適応措置に対しての具体的な取り組みですけれども、適応と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画ということでございます。  まず、1番のところが気候変動の悪影響への対応となっておりますが、これはいわゆる適応措置についての具体的な取り組みについての決定でありまして、情報の収集や分析をさらに進めるということや、途上国のキャパシティビルディング、あるいは脆弱性評価等を行うということ、それからワークショップの開催等を決定しております。  2番目の対応措置の実施による影響への対応というのは、要するに、緩和策をとった場合の、主に石油産油国等の経済への影響ということについて、どういうふうな対応をしていくかということですけれども、1つは、専門家会合を開くということが決まっております。  それから、このブエノスアイレス作業計画の中で、さらに「5カ年作業計画」を策定する。これは影響、脆弱性、適応などの科学的、技術的、社会的側面に関する計画ということで、これをつくることが決定されております。  9ページ、10ページは参考までに、COP10のときの各国の発言ぶりを簡単にまとめたものでございます。米国はこれまでと同様に、技術の開発というところに軸足を置いた発言をしております。それから、トップダウンよりもボトムアップが重要だということを言っております。  EUは、地球規模での取り組みが求められるということや、途上国の排出削減努力も重要であるということを指摘しております。  10ページに行っていただきまして、中国につきましては、共通だが差異ある責任の原則が交渉のベースだということ、さらには適応と緩和のバランスが必要、それから技術移転の適切なメカニズムが必要ということを言っております。  インドにつきましては、先進国がさらに排出削減を進めるということが重要だということと、それから技術移転が重要ということを言っております。  キリバスは、途上国も排出削減のコミットメントが必要ということで、このように途上国の中でもかなり温度のようなものがあらわれつつありまして、特に今回の議論では、インドの慎重な姿勢が目立ったというところがございます。  続きまして、11ページから京都議定書の発効についての動きでございます。  12ページですが、京都議定書が発効いたしまして何が変わるのかということを簡単に整理しております。まず1つ目が、もちろん京都議定書上の約束を確実に達成する義務が生じるということ、2つ目といたしましては、議定書の規定に基づきまして、先進国の約束達成についての明らかな進捗の報告をするということが既に議定書に規定されておりますし、さらに2013年以降の約束の検討をするということも規定されておりますので、こういったことが行われます。3番目ですけれども、CDMやJIなどの京都メカニズム、これが現実のものとなりまして、さらに動きが活発化するということが予想されます。  それから、国内的には、改正地球温暖化対策推進法が施行されまして、目標達成計画の策定が、先ほどご説明させていただきましたように、行われているということでございます。  こういったことでございまして、京都議定書の発効に伴いまして、温暖化対策が国内的にも、国際的にも加速するということでございます。  13ページはこれを図示したものでございますので、省略させていただきます。  14ページですけれども、京都議定書の発効に伴いまして衆参両院で国会決議がなされております。参議院では、将来枠組みに関しまして、米国、中国、インドをはじめとした途上国を含む世界各国が参加できる共通の枠組みの構築に向けて、京都議定書の国際合意を踏まえつつ、より実効性の高いスキームとなるように最大限努力せよということがうたわれておりますし、衆議院では、これに加えて科学的知見の充実、技術の開発・普及などについても言及がなされております。  4番目が米国の状況でございます。  16ページ、まずブッシュ政権のスタンスでございますけれども、これはこれまでと基本的に変わっておりません。米国は、気候変動問題を重要な問題だと認識しているけれども、京都議定書には参加しないということで、技術の開発を中心に各国と連携をしながら取り組みを進めていくということであります。実際、その後の動きといたしまして、2月23日には、米・独で技術等に関する共同行動計画を取り結んでおるという動きもございます。  一方、議会の方ではいろいろな動きがありまして、17ページ、18ページに簡単にまとめさせていただきました。  1つ目が、キャップ・アンド・トレードで有名なマッケイン=リーバーマン法案ですが、これが再び提出されております。  それから、ヘーゲル議員(共和党)が技術の普及に焦点を置いて、これは義務的なものではなくてインセンティブ型のものですけれども、そこに書いてありますように、国際、国内、それから税制の3つの法案を提出というようなことも行っております。  18ページに行っていただきまして、ブッシュ政権が提出しておりましたクリアスカイズ法案ですけれども、これはSO2やNO2、あるいは水銀の大気汚染を緩和するという目的で排出量取引を入れるということを趣旨とした法案でございます。これはブッシュ政権が力を入れていたものですが、委員会で、ここでは「採決されなかった」と書いてありますけれども、3月9日に採決されております。採決されまして賛成9、反対9ということで同数になりまして、そこについてはここに書いてあるように、見通しのとおりになったということですけれども、結果、それは通過しなかったということでございます。反対派の主な理由の1つとして、温室効果ガスが対象に含まれていないということを挙げております。  もう1つ、その下にありますのは、ファインスタイン・スノウ合同決議案というものも出されております。この合同決議案というのは、実質的には法案と同等の効力を有するものということですけれども、特に3)、4)にありますように、3)はUNFCCCのもとでの国際交渉に参加すること、あるいは4)にありますように、2℃以上に上昇することを防ぐための長期な目標設定を支持すること、というようなことがうたわれたものが合同決議案として提出されておりまして、米国でもいろいろな、前向きな動きもこういったレベルでは出ているということでございます。  一方、地方自治体や民間の動きですが、これまでも幾つか取り組みをご説明してまいりましたけれども、さらに取り組みが進んでおります。  19ページにありますように、1つには、シアトルでは、京都議定書の目標であります90年比5%削減という約束を市として達成するということで、これを全米に広げるという動きをしておりますし、民間では機関投資家であるカルパースというところが、温暖化対策に関連するプロジェクトに参加するということなどを公表しております。  20ページは環境省の最近の動きでございます。IGESへの委託事業として、IGESとCCAPの主催ということで日米ワークショップを3月末に開催しておりまして、新澤先生にもご参加をいただきました。ここでは、特に今回は、州レベル、自治体レベルでの取り組みに焦点を当てるということで、米の先進的な各州、日本側からも各自治体にご参加をいただきまして、先進的な取り組みについての意見交換や政策担当者間でのネットワークの形成というものを図っていただいたところでございます。  続きまして、21ページ以降、欧州の状況でございます。  まず、大きな流れとして、欧州委員会がコミュニケーションという報告書を出しまして、それから、欧州の環境大臣会合が開催され、さらに3月22・23日には欧州理事会、EU首脳会議が開催されております。  23ページ、欧州委員会の報告でございますが、「(本年2月14日)」となっておりますが、これは「2月9日」の誤りでございますので、訂正をお願いいたしたいと思います。この中では、これまでと同様に、気温上昇を産業革命前と比べて2℃以下に抑えるということを目標としてうたった上で、2050年までに世界の排出量を1990年と比べて15%以上削減することが必要ということをうたっております。そのためには、途上国の参加も必要ですし、政策の対象として、特に航空機などを含める必要があるということ、技術革新をさらに進める必要があるということなどをうたっております。  それから24ページ、環境大臣会合でございますけれども、ここでは2℃に対応するためには、温室効果ガスの濃度を550ppmを十分に下回る水準で安定化させる必要があるということですとか、さらには、2050年までに世界全体で少なくとも15%、恐らく50%もの削減が必要であるということ、さらには、先進国としては、1990年と比べて2020年までに15~30%、2050年までには60~80%という水準での削減の筋道が検討される必要があるということをうたっております。  25ページ、首脳会議の結論文書の中でも、気候変動問題についてしっかりと言及がなされておりまして、まず、2℃を超えるべきではないということを再度確認されております。それから、すべての国による参加を確保しながらオプションを検討すべきということ。先進国については、2020年までに15~30%の削減ということ、それ以降については、環境大臣会合の結論の精神に沿って検討されるべきということがうたわれておりますし、最後に、主要なエネルギー消費国を効果的に含める方法についても考慮されるべきということに言及されております。  このような将来の、特に中長期目標を念頭に置いた議論がEUでも盛んに行われておりまして、今後、EUではこうした結論を踏まえて国際交渉に臨んでくるものと考えられます。  最後に26ページ以降、G8プロセスについてでございます。今年はイギリスが議長国ということで、気候変動問題について特に取り組みを進めようということで、積極的な取り組みを進めております。  まず、ブレア首相のねらいというところですけれども、G8サミットの中では、ブレア首相は、1つは気候変動問題についての科学的合意を得るということ、それから、技術の開発等も含めた具体的な取り組みについて加速をするということについて合意するということ、それから、エネルギー需要が伸びているG8以外の諸国を取り込むということが主に念頭に置かれておりまして、一番最初にご説明いたしましたように、既に幾つかの会議が開催されておりまして、7月の首脳会合に向かうという流れができております。  28ページが科学者会合の結果の簡単な概要でございます。これにつきましては、IPCCの第3次評価報告書以降の新たな科学的知見についての発表や質疑が行われたということであります。大きなポイントとしては、1つ目のポツにありますように、多くの場合に、影響のリスクは以前考えられていたよりも深刻であるということが明らかにされたということ、2番目として、緩和策が遅れた場合には、後からより大きな対策をとらなければいけなくなるということが改めて示されたということ、3番目として、温室効果ガス安定化のための技術オプションにつきましては、既に技術的方法については存在しているということが確認されたということがございます。  次に、エネルギー・環境閣僚円卓会合でございますが、これにつきましては3月15・16日にロンドンで開催されまして、小池環境大臣、平田経済産業大臣、政務官ほかが出席しておりまして、G8のほか、中国、インド等を含む主要20カ国が参加しております。  その成果でございますけれども、結果概要のところにありますように、主要20カ国はさらに連携を強めて、低炭素社会の実現に向けて前進する必要があるという理解が共有されたということ、それから、気候変動政策とエネルギー政策との連携の重要性が確認されたということ、さらに、既存技術については、対策を大きく前進させるものが既にあるということが確認される一方で、将来的には技術革新が重要だということがうたわれております。  続きまして30ページ、環境と開発閣僚会合でございますが、これにつきましてはアフリカと気候変動ということで気候変動問題については議論されまして、この中でアフリカの観測体制の強化や、気候変動対策の開発政策への統合を支援していくということがうたわれておりまして、気候変動問題がアフリカでも重要であるということが確認されたわけでございます。  31ページですが、グレンイーグルズでは、気候変動が主要議題の1つとして議論されるということになっておりまして、イギリスのイニシアティブによりまして、会議にはG8各国のほかアウトリーチセッションで、中国、インド、ブラジル、南アも参加するということが計画されております。  このように、それぞれ国際社会、それから諸外国の動向等を見ましても、将来的な議論の機運が高まっている。特に中長期目標をどう考えるかという機運が高まっているという状況にあるということでございます。  以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。非常に簡潔に最近の動向についてお話しいただきました。  皆さんのご質問がありましたらぜひ受けたいと思っております。このような状況で国際的に物事が動いている中で、日本としても、今後の長期的な交渉に当たってどういう論理を組み立てていくかということが非常に重要になってきて、それがここの委員会の貢献できる1つのポイントではないかと思っております。そういう面から見まして、これまでの流れにつきまして何かご質問ございましょうか。

○工藤委員 3点ほど確認させてください。  1点目は13ページの、「明らかな進捗」に関する云々というところで、日本の場合は、たしか目標達成計画の内容等をある程度出すということだったのですが、今後UNFCCCなり事務局の中でどのようにレビューをされていくかという具体的なプログラム、スケジュールがもしわかっているようでしたら、お教えいただきたいと思います。  2番目は、27ページでG8サミットの「ブレア首相のねらい」と書いてありますが、これはいわゆるG8の事務局の公式な発表として書かれていることなのか、どちらかというとインベスティゲーション、検討された内容なのか、その辺の事実関係をお教えください。  3番目は、28ページの科学者会合の最後のパラグラフのところで、既に安定化させるための技術的方策は存在しているということを出されていたのですが、この具体的なイメージというのは、あるベースのシナリオから安定化させるという具体的なことに対して、こういった具体的な技術が存在しているという評価がなされていたということなのか、ある意味定性的にこういったような状況であるというふうに判断されたのか、その辺、もし概要がわかりましたらお教えいただきたいと思います。

○水野国際対策室長 それでは、2番目、3番目を先にご説明させていただきます。  まず、ブレア首相の趣旨でございますけれども、これはブレア首相自身が昨年11月に気候変動問題に焦点を当てたスピーチをされておりまして、そこでの言及の仕方、それから、先般のダボス会議でもスピーチをされておりますけれども、そういったところでこういったことをご自身が発言をされているということでございます。  それから、エネルギー・環境閣僚円卓会合でございますけれども、これにつきましては閣僚レベルでの意見交換ということですので、細かい技術的なところについて一つ一つ定量的な分析がなされたということではありませんけれども、具体的な事例等も含めてプレゼンテーションがなされまして、それをもとにこういったことが確認をされたということでございます。ですから、具体的なことも含めてなされております。

○瀧口室長補佐 1点目につきまして、京都議定書に基づきます「明らかな進捗」に関する報告の提出、これは工藤委員がご指摘いただいたように、日本としては、京都議定書の目標達成計画の内容を中心に、目標達成をこういう方法でやっていきますということを報告することになるかと思いますが、それについて、特にどのように各国の報告をレビューするかということはまだ決まっておりません。恐らく同じタイミングで条約に基づく国別報告書というものを出すことになるので、そちらはレビューを受けることになりますので、そういったものと関連させて効率的にレビューされるのではないかと考えております。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。  新澤委員、どうぞ。

○新澤委員 今回のこの委員会のシリーズがどういうスケジュールで進められるかがわかりませんが、EUからこの2月、3月に出されたいろいろな文書がありますけれども、それをこの委員会としてもう少し深く吟味する機会があってもいいのではないかと思います。今回のご説明で終わるというのではなくて、いろいろな重要なメッセージが含まれていると思いますので、各委員で各自勉強するようにということでもいいかもしれませんけれども、一度ここで取り上げていただくのもよろしいかと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。委員会の議題の設定ですけれども、今おっしゃったようなことは、私非常に重要だと思っております。今回は、特にあまり細かい交渉の中身というよりも、一体我々としてどういう論理で長期的な目標を設定していったらいいのだろうかというところに差し当たって焦点を置いて、5月ぐらいまでに、2~3回ぐらいで小さくミニ特集的にやってみようかなという意図が1つあります。その中で、今おっしゃったように、別に私たちはEUのフォローをする必要はないのですけれども、相手がどういう論理で来ているのか、我々はどういう論理でいくのかということはやはり比較検討する必要はあるのではないかと思っております。  事務局の方で何かございますか。

○水野国際対策室長 まさに重要なご指摘だと思います。今回も、今私の方からご説明させていただいた中にもございますし、次の資料2の説明の中でも一部そこら辺についての言及もなされる予定になっておりますけれども、さらに不足する部分につきましては、次回にまとめさせていただいて、ご説明させていただければと思います。

○西岡委員長 ありがとうございました。住委員、どうぞ。

○住委員 2点、聞きたいことがあるのですが、1点目はアメリカの参加のことですけれども、COPのMOP1というのはアメリカは入らないわけです。そしてCOP11にはアメリカは入ってくるわけです。現在でも、基本的には第二約束期間等のことに関しては、COPのラインの枠組みでしようとしているのか、アメリカは京都議定書は死んだと言っているわけですから、COPの枠組みにはアメリカは参加して議論をしてくると言っているのか、そこら辺の今後の展開の枠組みというのを少しお話ししていただきたいということが1つです。  それから、私は国際化の中で非常に気になることがありまして、それはアメリカとか欧州の動きというのは非常に細かく書かれておりますが、日本の動きについて触れられていません。逆に、日本の動きというのをこれと同じように、もし海外にいたとして、日本の動きをここに書いてもらいたいのです。日本は国際的にどのように見られているのかという点に私は非常に興味があります。EUはいろいろなレポートを出していますが、日本のレポートは海外に出ているのでしょうか。どういうスタンスで日本が国際的に発信がどのような効果をもたらしているか?いるのかということを、客観的に日本の動きというものを常にレビューしていった方がいいと思うのです。そうしないと、我々のところもよくわからない部分もありまして、常に自分たちの発信がきちんと出ているかどうかということを確認するのは大事なような気がします。

○水野国際対策室長 2点ご質問いただきましたが、1点目は、アメリカはどういうふうに議論するのかということですが、まず、京都議定書を厳格に、今年から議論を始めなければいけないという部分については、先進国についての次以降の約束について議論するということになっておりますので、京都議定書に参加しない国は当然議論に入らないということになってしまいます。  一方で、京都議定書そのもののレビューのプロセスですとか、気候変動枠組条約そのものについての検討もなされることは可能ということになっておりますし、実際、議定書そのもののレビュープロセスというのは第2回からやるということも入っておりますので、そういった中では、当然アメリカも含めて議論ができるということになります。ですから、どういうふうにしてアメリカを巻き込んでいくのかというのは非常に重要な問題でございますので、まず、議定書を厳格に読んだときにどうかということと同時に、何が必要かということを考えながら、どういった枠組みで交渉するのかということは日本としても考えなければいけないし、そういったことを視野に置いて国際交渉を進めていきたいと思っております。  それから、日本の動きのレビューが重要だと、これはご質問というよりも、むしろご指摘だというふうに思いますので、次回以降しっかりさせていただきたいと思いますが、まず、これまでにつきましては、COP10などでも、まさにこの専門委員会でおまとめをいただきました中間報告を、サイドイベントという形でございますけれども、発表するということで、積極的に我が国としてのこの問題についての検討の状況はアピールをし、さらに各国に訴えていくということはやっておりますし、また引き続きやっていきたいと思っております。ただ、確かにここの資料には載っていないというのは事実でございますので、今後こういった資料をまとめるときには、そういったことも含めてまとめさせていただきたいと思います。

○住委員 COP11、COP12とCOPのシリーズはずっと続いていくわけですか。

○水野国際対策室長 それはずっと続きます。

○住委員 それプラスMOP1、2、3と同時並行でやるというスタイルですか。

○瀧口室長補佐 住委員の2点目のご質問に関しまして補足させていただきますと、今ご説明いたしましたように、この専門委員会の報告書も英訳をして海外にアベイラブルなように提供しております。例えばヨーロッパも、先ほどの説明にありましたように、欧州委員会や環境大臣会合が提言などをまとめておりますが、そのときには、ほかの国はどういうスタンスかということも徹底的に調べておりまして、その際に、日本の動向としてこの専門委員会の報告書なりがレビューされているという状況にございます。

○西岡委員長 今の2つ目の質問は、実はなかなか鋭いところでございまして、確かにこうやって見てみると欧州の動向だとかいろいろ書いてある中に、1枚、日本の動向というのが書かれたときにどう書かれるんだろうかというのは、この委員会だけの話でもないですし、他の省庁の話もございますし、日本として統一的にどう考えているのか、外からわかるような形にする必要があるかなと思っております。  またもう1つ、2月のエクスターのときに、科学者が発表する場として非常に重要だったのですけれども、必ずしも十分なPRが行き届かなかったなということを私自身考えておりまして、そういうところから見ますと、日本での統一した動きというのが欲しいなという気はいたします。  ほかにございますか。

○原沢委員 1点、7ページの政府専門家セミナーの性格ですけれども、政府の専門家のセミナーであって、いわゆる行政的なセミナーと考えてよろしいのですか。それとももう少し研究者を巻き込んだようなセミナーなのか、その辺、教えていただけたらと思います。

○水野国際対策室長 これはCOP10で決定がありまして、その中で「政府専門家セミナー」という言葉を使っているということでございます。これにつきましては、締約国にプレゼンテーションの機会が与えられるということですので、基本的には各国の代表がプレゼンをするということが想定されていると思います。

○西岡委員長 ほかにございますか。

○明日香委員 米国の動きに関するコメントというか、追加情報ですけれども、まず、ヘーゲル議員の法案があると思うのですが、これは私ちょっと勉強したんですけれども、クリントンのときにも同じような法案が出されておりまして、法案というか、CTTI(Clean Energy Technology Initiative)というのがありまして、中身はほとんど同じです。予算は、クリントンの方が半分ぐらいなのですけれども、結局、技術の減税と輸出補助の仕組みで、USのEIAという公的な機関がほとんどアメリカの温室効果ガス排出削減には寄与しないと、0.5%ぐらいしかBAUから減らさないという報告書も出ているので、はっきり言ってどれほど効果があるかというのはいろいろ問題があるところだという評価はアメリカでもあるということです。  もう1つ、州の動きで、排出量取引、CAPをかけてという動きがあって、これはまだ動いているということでここに載っていないのかもしれませんけれども、9つの州が5つの電力会社にCAPをかけるという話があったと思うのですけれども、4月にどの程度、どういうことをやるかということがはっきりするはずだったのですが、それも遅れておりまして、どれだけ、どういうふうな基準でCAPをかけるかというところもまだ見えていないという話を、アメリカのシンクタンクの方から聞いていますので、あちらもかなり遅れているということです。  最後に、これもまだ動いているので載せなかったのかもしれないのですけれども、アメリカの州とニューヨーク市が電力会社を訴えている、集団訴訟をしていると思います。結果がどうなるのかわからないのですが、多分これからこういう責任問題での訴訟というのはいろいろ出てくると思いますし、これからの先進国の枠組みなり途上国の枠組みを決める中で、そういう法的な責任問題というのは非常に重要になると思いますので、ウォッチしていただけるとありがたいと思います。  以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。


2.気候変動の長期目標に関する考察について

○西岡委員長 それでは、そろそろ次の議題に移りたいと思います。  次の議題は「気候変動の長期目標に関する考察」ということで原沢委員からお願いいたします。  ちょっと準備している間に、皆さん、パラパラと見ていただければおわかりと思うのですが、これは主として科学的にどういう状況だろうかということの説明かと思います。もし長期目標を設定するとなりますと、今まで欧州、米国で論議していたような、どの国がどれだけとか、あるいは先進国と途上国はどれだけという話にまで進める必要があるかと思いますが、今日のところは主として科学的な背景ということでお願いしたいと思います。

○原沢委員 それでは、「気候変動の長期目標に関する考察」ということでご報告いたします。  まず、目次ですが、既にご説明がありましたが、背景についてご説明いたしまして、その後、同じような事柄が並んでおりますけれども、気候変動の科学と検討の枠組み、3番目に影響に関する国際的な知見の整理、4番目に我が国の知見の整理、5番目に長期目標についての考察、最後にまとめをお話ししたいと思います。  この委員会の中間報告におきます科学的な知見の整理、ちょっと復習ですけれども、気候変動枠組条約の究極的な目的の達成ということで、そこでは人為的な影響を防止する水準で大気中の温室効果ガスを安定化することということがあります。これを踏まえた上で、温室効果ガス濃度の安定化のレベルについていろいろな研究成果がありまして、かつ、それを踏まえた上で、いわゆる排出パスの研究も進められているということでありまして、そういった研究成果について前回はまとめております。  気候変動の影響ですけれども、温暖化の影響が既にあらわれているということは世界的にもわかっておりますし、日本の研究事例でもわかっております。今後100年で約2℃上昇すると全面的に悪影響が拡大し始めるのではないかといった影響関係の知見がわかっているということでありまして、そのときにも、長期、2100年以降の、いわゆる安定化というのを達成するための長期レベルの話と、2030年~2050年ぐらいの中期の話と、短期の目標の設定、ここをどう考えていくかという話があったかと思います。  その後、いろいろな報告が、特に影響関係で出ておりまして、例えば北極で気温がかなり上がって大量の氷が消滅しているということで、これはかなりの人数の方が集まって報告書という形で出ておりまして、かなりインパクトの高い報告書になっておりました。  アメリカでもいろいろな影響が出始めているということで、こちらにつきましては、生態系関係の研究者が中心になってまとめておりまして、約150種ぐらいのうちの半分ぐらいのものについて影響が出ているということがわかってまいりました。  2003年はヨーロッパが熱波ということでありまして、その後1年半ぐらいたっているのですが、この間、矢継ぎ早にNature等の論文が出まして、どうも2003年のヨーロッパの熱波は、ある程度人間活動の結果、すなわち温暖化との関係がかなり濃厚になってきたという論文が出されております。  先ほどご紹介がありました、2月の頭にイギリスでAvoiding Dangerous Climate Changeということで、「危険な気候変動を避ける」ということで、科学者を中心にした会合がありました。大体30カ国、200名ぐらいが参加しておりました。最初の日の基調講演では、ベケット環境省の大臣があいさつされたりとか、IPCC議長のパチャウリさんがあいさつされたりとかということで、科学者が集まった会合としてはかなり大きなものになりました。  そこでまたいろいろ議論があったのですが、1つは、気候変動の危険なレベルをどう考えるかということで、研究者の会合ですから、これだという決め打ちをするわけではなくて、それにかかわるいろいろな研究成果が、どんな新しいものがあるかをまとめてみようというスタンスで開催されたものであります。といいますのは、現在気候変動対策の際に用いられる科学的な知見というのは、IPCCの第3次報告書がよく引用されるわけですが、2001年に出たということもありますので、大体2000年ぐらいの科学的な知見を中心にまとめておりますので、その後5年ぐらいたっているということで、この間非常に多くの成果が出ているということもあります。かつまた、IPCCの第4次報告書は2007年をメドに作成しているところでありますので、あと2年間ぐらいはそういったまとまった知見も出てこないということでありますので、今の段階で第3次報告書以降の科学的な知見をまとめているというタイミングになったということであります。  つい最近ですけれども、氷河が後退したりとか、キリマンジャロの氷が消滅したということが報告書として出されております。  ちょっと書かなかったのですが、この3月末には、3年ぐらいかけてまとめられておりましたMillennium Ecosystem Assessmentの報告書が、これは統合報告書、synthesis reportが先に出ましたけれども、公表されたということであります。気候変動もその影響要因の1つの大きなものということで取り上げられております。  次に、EUの最新の動向ということで、先ほどご説明があったことなのであまり繰り返しはしませんが、やはり安定化濃度という条約の究極的な目標をどのように決めるかという話が、先ほどの危険な気候変動のレベルとかなり密接につながってまいりますし、今までは排出量の話ですとか、安定化のレベルの話とか、あとは気温上昇の話とかというのが中心だったのですけれども、影響面からこのいろいろな要因の関係を見ていく必要があるのではないかということで、1つ大きな話題としては、2℃が本当に安全なのか、あるいは危険なのかどうか、そういう議論が特に中心になってまいっております。  今後予想される動きということで、もう既にお話があったわけですけれども、COPのプロセスで大きな議論になってくるかと思いますし、特に2012年以降の取り組みにおいては、先進国は今まで以上に削減量を増やさなければいけないというような話ですとか、その際に、条約の安定化濃度をどう決めるかというようなことが大きな話題になってくるのではないかということであります。EUについては、既にご説明があったように、いろいろな報告を矢継ぎ早に出すとともに、アウトリーチという活動も展開されているということであります。  日本につきましては、先ほどご質問があったように、「我が国も長期的目標に対するポジションが必要?」と、クエスチョンマークがついているような状態でございますので、今回の委員会では、それのたたき台になるような科学的な知見をご説明したいということであります。  次は、科学と検討の枠組みということでありますけれども、これはもう既に前回お話が出ております。人間活動がステージ1でありまして、排出がされて、それが大気の濃度に反映されて、それが気温にはね返って、さらに影響という、このサイクルをグルグル回っているわけですけれども、排出量と安定化濃度の時間差はあまりないのですけれども、どうも安定化濃度と平均気温の上昇、さらに影響ということを考えますと時間差があるということであります。具体的に言いますと、550ppmという安定化濃度は大体2150年ぐらいに達成できるわけですけれども、気温の安定化はさらに先になるということでありますから、非常に超長期を考えながら短期の政策あるいは中期の政策を打っていかなければいけないということでありますので、こういった時間差のあるものをどのように取り扱うかというのは、科学的な面でも非常におもしろい面であるのですけれども、そういう問題が出てきているということであります。これにかかわるいろいろな不確実性があるということでございます。  これも既に前回の委員会等でご説明いたしましたけれども、CO2の安定化濃度、例えば450ppm、550ppmを設定いたしますと、それに対して気温の安定化したときの値は幾らですとか、それまでにどのくらいのCO2を出せるかとか、そういった非常に基本的なところでの知見はIPCCの方でも出ております。  この際、550ppmで見ていただきますと、大体安定化するのが2150年ぐらいでありますし、気温はずっとダラダラと上がっていきまして、気温が安定化するには、2℃以上、およそ3.5℃ぐらいまでいってしまうということであります。2100年で見ますと大体2℃ぐらいの気温上昇ということであります。後でもご説明しますけれども、どこで、いつ、誰が安定化濃度あるいは危険を判断するかということが科学的には非常に重要になってきているということであります。  今言ったことが書いてありますけれども、「危険」をいつ、どこで、「誰」というのはあえて抜かしたのですが、どうやってとらえるかということで、ここでは議論する際の前提条件を整理しておいた方がいいだろうということで、これまでEUの2℃・550ppmということがよく使われてきたわけですけれども、2℃というのもいつから測って2℃なのだろうか。あるいは安定化時の2℃なのか、2100年の2℃なのか。これがどうもいろいろな思惑で使われているようなところがあるので、ここの議論の際にはこういった前提条件を整理しておいて議論する必要があるだろう。誰が危険を判定するかにつきましては、科学の分野あるいは研究の分野では、それはあくまでもバリュー・ジャッジメント、価値判断が入るので、それは政策決定者がやるべきことであって、科学者はそういった価値判断はしないというのがこれまでの流れであったわけです。ですから、ここでは誰が危険と判断するかということはちょっと抜いております。  どんなことが問題になるかといいますと、1つはCO2と、京都ガスと言われているようなメタン、N2Oを含めたそのほかの温室効果ガス、Non-CO2ガスの取り扱い。さらに言いますと、SO2のような冷却効果を持ったようなガスをどう扱うかということです。2番目は、どんな影響分野を危険の判断の対象として扱うか。例えば生態系と地球システムそのものがある程度異変を起こすような温度レベルはかなり違うのではないかということで、どの影響分野を対象にするのかということ。3番目には時間のスケールですとか、4番目には空間スケールとか、影響の集計の仕方、いわゆる指標の話もございます。  その他ということで、これは非常に重要な点ではあるのですけれども、今回はその他ということで、不確実性の問題ですとか、気候以外のリスクの因子、あるいは適応といったものもかなりかかわるのですけれども、これを一緒に議論しますとなかなか全体像がわからないということで、今回は省かさせていただいております。  これは、CO2の濃度と全ガスと言われているGHGの濃度の関係についてご説明用につくった絵でありまして、従来はCO2濃度で議論されていることが多くて、この何年かは、研究面で特にそうなのですけれども、Non-CO2ガス、メタンですとか、N2O、CFCをどうやって取り込んでいくかという話、それが回り回って、対策面でも単にCO2を削減しただけではなくて、Non-CO2ガスの削減ということになってきております。  今お示ししましたのは、IPCCのSRESシナリオのうちのA1Bというタイプのシナリオに基づいて、実際のCO2濃度とその他のCO2以外のガスの濃度も含めて、いわゆるCO2イクイバレントという形での値がどのくらいになっているかということを示したものです。例えばCO2が700ppmぐらいになる場合には、全ガスでやりますと840ppmぐらいになるということです。ですから、CO2以外のガスも相当温暖化に影響を及ぼしているということがわかるかと思います。  ただ、なかなか難しいのは、Non-CO2ガスのうちには計算しやすいものもあれば、冷却効果を持っているSO2のように、非常に短時間で反応してなくなってしまうようなガスも入れると、まだ不確実性が高いというようなところがありますが、流れとしては、CO2だけではなくてNon-CO2ガスも含めていろいろな計算をしていくという方向になってきているのではないかと思います。  こちらも前にお話ししましたが、IPCCの第3次報告書に出ております「Five Reasons of Concerns」、なかなかいい訳語がないのですが、「5つの関心のある分野」という意味だと思います。左側は、今後温暖化が進むと1.4から5.8℃上がるというような幅が書いてありますし、右側の5つのバーは、脆弱なシステムを対象にした場合、極端な気象の影響、3番目が悪影響の分布の話で、4番目が世界経済の話、5番目が破局的な事象ということで、各分野といいますか、影響を見ていく領域について、その影響の多少を、これはかなり定性的ですけれども、白から黄色、さらに赤という形で影響の大きさをあらわしております。  脆弱なシステムということで、例えば生態系の場合はちょっとした温暖化でも影響が出始めますし、あるいは世界経済の場合は、IPCCの第3次報告書によりますと、2℃から3℃ぐらいまでであれば、一部の分野、あるいは一部の地域におい良い影響があることもある。特に北の方の農業といったことについては良い影響があるということで、白い部分があるわけであります。  この5つの分野を、例えばIPCCの第4次報告書でも、こういった分類の仕方で、かつこういった表示の仕方でまとめていこうということで、第4次報告書に章もございます。  気温の上昇、影響を評価する時間の起点ということで、いろいろな報告書にプレ・インダストリアル何とかと書いてあったりするのですが、一方、IPCCなどは、SRESシナリオの起点としては1990年をとっておりますので、IPCCの関係の書類では、気温上昇は1990年をベースに測っているということでありますけれども、EUなどでは「産業革命前」あるいは「工業化前」というキーワードがあります。産業革命というのは広い意味での産業革命で1750年ぐらいかと思うのですけれども、工業化前というのは大体1850年ぐらいを指しているようです。これは幾つかの論文の中に、1861年から1890年の30年を平均したところを起点にしているというようなところもございます。産業革命ごろと工業化ごろというのはほぼ同じぐらいの意味でありますので、いわゆる工業化、産業革命前ということで大体1850年ぐらいを起点にしてやっているようであります。  目標年でありますけれども、安定化濃度の議論であれば、当然安定化したときの気温上昇ということでありますので、例えば550ppmですと、2200年以降に気温は安定化しますので、そのときの安定化の温度を言っている場合が多いかと思うのですが、中には、そういう安定化濃度に至るときに、2100年の時点で何度上がるかということを取り上げている論文もあったりするということで、この辺は今後議論をしていく上で、どういった起点で温度を測っているかとか、あるいはいつの時点の気温の上昇を検討しているかということは、共通の認識として議論しないとなかなかかみ合わないのではないかということであります。  下の方に、EU首脳会議の結論文書においては、産業革命前、これはプレ・インダストリアル何とかという訳だと思うのですが、大体1850年ぐらいの話で2℃ということですから、20世紀中に大体0.6℃上がっているということですから、これから気温上昇として許容されるのは1.4℃くらいということになります。ただし、目標年が明記されていないということがありますので、安定化濃度を扱う場合に、いわゆる安定化したときの気温上昇を言っているのか、あるいは政策目標として1つの目安となります2100年を対象にしているかというのはちょっと注意が必要かと思います。  空間スケールですけれども、温暖化という全般の話を1つの指標であらわすとすると何がいいだろうかということで、これはIPCCでもいろいろ議論がありまして、最終的には地球の年平均気温、Global Mean Temperature、GMTというのを使って温暖化の全体の像を描いていくということをやっております。ただし、地域レベルになりますと、例えば赤道よりも北半球の、例えば北極の方が気温上昇は、地球全体の年平均気温が2℃であっても昇温になりますから、全地球を扱っているのか、地域を扱っているのか、あるいは国レベルを扱っているのかで、ちょっと注意をしなければいけないということかと思います。  集計のルールということで、これは具体的に言うとどんな手法を使うかということでいろいろ提案されております。被影響者(Exposure Unit)という言葉がよく使われますけれども、生態系であるのか、人間個人であるのか、あるいは社会経済なのかという話ですとか、後でもご紹介しますが、地球システムそのものが異変を来すような影響を扱っているのかということで、これは先ほど5つの領域があるというお話をしましたけれども、それに若干かかわるようなことであります。  具体的な影響の指標としては、これはシュナイダーさんという方が提案している5つの指標ということですが、市場の影響ですとか、人命の損失、生物多様性、収入、生活の質、この5つの指標はこれまで研究事例がいっぱいあってうまくまとめられるということであるとよろしいのですが、なかなかこういった指標での取りまとめはなくて、その下にありますような、世界規模でのMillions at Risk、何人影響を受けるかという話ですとか、何パーセント生態系の範囲が縮小するかというような値が使われているのが現状だと思います。  その他ということで、これも非常に重要な点ですけれども、今回はあまり深入りしないのは不確実性の話で、これは前回ちょっとお話ししましたが、シナリオの不確実性ですとか、気候感度の話でとか、フィードバックですとか、その他の要因、あるいは気候変化がなくても社会そのものは動きますから、気候変化がないとしたときに存在するようなベースラインをどうするかという話、さらに、その影響の閾値を、適応策を打つことによって閾値そのものが変わってくるわけでありますので、そういったことも十分検討する必要があるということであります。  次は、国際的な知見の整理ということで、いわゆる温度上昇に対してどんな影響がわかっているかということをまとめてみました。  影響の閾値のタイプ分けということで、これはシュナイダーほかIPCCの19章がこういったところを扱う章ですけれども、そこでの議論でも、どうもこういう閾値のタイプ分けをしそうだということで今日ご報告いたします。  閾値といいますのは、ある値を超えると急激に影響が出るとか、あるいは危険と思われるような範囲に入るという意味で閾値ということを使っております。閾値そのものもある絶対値を言うのか、あるいはある程度過去の蓄積があって、突然危険になるのかという閾値の関数的ないろいろなタイプ分けもあるのですけれども、ここではもう少し一般的なタイプ分けをしております。  タイプ1は、ある値を超えると、ここで重要なのは政策決定者が許容できない、危ないと考える被害をもたらすような値ということでありますので、ここでちょっとバリュー・ジャッジメントが入るのというがタイプ1の閾値の性格としてあります。これは線形の関数であったりとか、あるいはなめらかな変化をする関数系を持っているだろうということで、言いかえてみますと、社会経済的な限界の値ということであります。具体的な例といたしますのは、食料の問題ですとか、水不足の問題、あとは健康の問題とかといったようなことが例として挙げられております。  タイプ2の閾値は、気候システムそのものが、言ってみれば異変を起こすような値ということで、地球物理学的、あるいは生物学的な限界値ということで、前回も議論がありましたような熱塩循環の停止ですとか、氷床が突然解けるとかというような現象が挙げられております。  ですから、閾値と言っても、こういうタイプ分けに代表されますように、議論する際にどちらを扱っているのかという話と、あとは、特にタイプ1の場合は「政策決定者が許容できない」というキーワードが入っておりますので、ここにもうバリュー・ジャッジメントの考え方が入ってしまっているということは確かですが、こういう分け方がされているということでございます。  幾つかの具体的な事例ということで、これは先ほどご紹介があったエクセターの会議の後に、せっかく科学的ないろいろな知見が集まってきたので、横にGMT、気温上昇をとりまして、縦に生態系のいろいろな影響をとった図であります。ちょっとわかりづらくて申しわけないのですけれども、何を言いたかったといいますと、いろいろな影響の結果を1つの絵にあらわしてみるとある程度閾値的なものがわかるのではないかということで書いたのですが、そういうところまでなかなかいかないということで、例えばサンゴ礁の場合は、1℃上がって70%以上危ない、2℃上がりますと90%以上白化現象で損失するということでありますので、サンゴ礁は気候変動に対して脆弱なものである。一方、気温が上がるに従って生息範囲が変わってくるというのを赤い線で書いてありまして、これはかなり幅を持って研究の成果が出されております。これがそういう範囲になっております。  ということで、生態系の場合、どこのレベルになったら危ないかというのは、これだけからはなかなか言えないのですけれども、ある論文によりますと、どうも20%~30%変化するようなところが閾値という考え方もあるのではないかというような文献もございました。  これは前回もお見せしたかと思うのですが、これも横軸にGMT、全球の気温をとりまして、縦軸にマラリアですとか水不足、食料とかをとりまして、これはイギリスの方々がやった研究を1つの図にまとめたものであります。1.5℃~2℃ぐらいになりますと影響がポッと、S字形のカーブを示しておりますので、このあたりが危ない限界ではないかということです。ちょっとご注意いただきたいのは、ここに小さな字が書いてありますけれども、1961年から90年に既に気温上昇しているということで、0.32℃と書いてあります。ですから、始まる時点で0.32℃上がっているよということを言っておりますので、ここで言っております1.5℃~2℃というのは、そういう意味ではこの0.32℃を考慮しなければいけないということかと思います。  先ほど5つの棒を見ていただきましたが、それを少し拡張する形で、Burning Embers Diagramということで、燃えかすになぞらえて、火が燃えて、白から黄色、赤になって、炭になるという状況で、横に気温をとりまして、影響の度合いを色であらわすという形での表現の仕方であります。これは一番上がサンゴ礁でありまして、大体1℃になりますと、赤から黒になっているということで、サンゴ礁の場合は1℃未満でもかなり影響を受けて、1℃が閾値になっているのではないかという話でございます。  ただ、生態系によってはもう少し耐えられるものがあったりしますので、こういったグラフを書きますと、縦に見ていきますと、大体どのくらいが危ないレベルかというのがわかるようになっております。これはIPCCの方でも使っていこうということで、一部検討が始まっているようであります。  こちらはオランダのリーマンズさんが出したサンゴ礁の例ですけれども、やはり97年、98年のエルニーニョのときには、1℃上がってもかなり白化現象があったということがあって、研究事例としては、どうも1℃以下でないとサンゴ礁は危ないという感じであります。  タイプ2の方ですけれども、これについては第3次報告書の中では、例えば海洋大循環については、20世紀中に止まる確率は大変小さいという記述があったのですけれども、その後研究事例が幾つか出てきまして、先ほどお話ししたエクセターの会議でも、海洋大循環が止まる確率はこれまでよりも高くなったという報告も幾つかありました。そのほかにも西南極氷床の話がありまして、西南極氷床が解けますと4~6m海面上昇があるわけですけれども、どうも2℃~4℃ぐらいの気温上昇で崩壊が始まるのではないかという報告があったということでございます。  これは今まで考えられなかったのですが、例えば海に浮いています棚氷が解けますと、いわゆる氷河の流れが変わってきて、それで氷床が解けるようになるのではないかという新しい知見も得られてきているということでございます。ですから、これまでの西南極氷床の安定性に関する研究というのはちょっと楽観的なところがあったのではないかという報告もございました。  グリーンランドにつきましては、大体3℃ぐらい、2.7℃、これを全球平均でいいますと1.5℃ぐらいの昇温ですから、1.5℃になりますとグリーンランドの氷が崩壊してしまう。これが完全に解けますと7mぐらい海面上昇するということですが、IPCCの第3次報告書では数千年というオーダーの記述がありますので、そんなにすぐに影響は出てこないということではあるのですが、グリーンランド氷床の融解についても若干見直しがされつつあるところであります。  次が海洋大循環の話でありまして、シュレジンガーさんをはじめとして、何人かの方は、かなり起こる確率が高くなってきたという報告をされていますが、一方、GCMの結果を調べてみたけれども、21世紀中に起こることはなかったというようなものですとか、こういったいろいろな研究成果が出てきたということであります。1つ挙げるとすれば、こういった破滅的な現象を、これまでは無視するというわけでもないのですけれども、そんなに関心がなかったのですけれども、ここに来て、温暖化というのはこういう大規模な変化を引き起こす可能性、あるいはリスクがどうもあるのではないかという方向で研究が進んでおりますし、そういった発表もされてきております。  これはイギリスのシンポジウムの際に、報告の中の、今お話ししたようないろいろな影響の事柄を一覧表にしてみたものです。例えばサンゴ礁ですと、どうも1℃以上は危ないとか、先ほどお話ししたような氷床ですとか、大循環の話は2℃とか3℃とか、そういうような値が出てきております。これをどう考えるかというところで危険なレベルの判定の問題になるわけですけれども、科学の分野としては、こういったいろいろな影響研究の成果を一覧表にまとめて政策決定者に提供するというところで押さえておく必要があるかもしれないということでございます。  これは先ほどご紹介した影響の表現方法ということで、先ほど紹介したのは生態系の分野だけですけれども、それをいろいろな分野に広げていこうということでやられている事例であります。こういった表現方法がとられつつあるということであります。具体的に言いますと、気温の上昇量と、いわゆる四分位点、25%、50%、75%点を求めるとこういった絵が描けるようになってきているようであります。  食料生産ですとか水資源ということで、これは条約の方には、特に食料生産とか経済発展への影響ということで、そういう意味では食料生産というのは非常に大きなウエイトが置かれているかと思いますけれども、これにつきましても2℃ぐらいまでならば良い影響もあるけれども、それを超えるとどうも、特に熱帯、亜熱帯の途上国では悪影響となってあらわれるのではないかということを書いております。水資源につきましては、その気温が1.5℃ぐらいではないかと書いてあります。  今お話ししたようなことを、これまでどんな研究があるかということで一覧表にしたものであります。これはドイツの報告書から持ってきたものでありまして、こういう形での影響の取りまとめ、何度という記載と、それに対してどんな影響があるかという記載が、今いろいろな報告でまとめられつつあって、こういうものをベースにして危険なレベルを特定していこうという感じの研究であります。  これは水資源でありまして、先ほどの食料に比べますと水資源の場合には研究事例が少ないということで、若干項目数は少なくなっております。こういう形で温暖化の影響、これまではどちらかといいますと、世界地図で示したりとか、そういう方法でやってきたのですけれども、気温の上昇量と影響の関係をいろいろ調べていくという形のまとめ方になってきております。  これらを踏まえまして、かなり大胆ですけれども、閾値というようなもののレベルをまとめてみたものであります。生態系の影響につきましては、サンゴ礁の場合はどうも1℃ぐらい、ほかのものについては1.5℃ぐらい。社会経済システムへの影響については、食料生産では2℃~3℃、途上国の食料生産の影響では2℃ぐらい。水資源の場合は2℃までだろうということであります。ただ、残念ながら、いわゆる温暖化がどのくらいGDPを下げるのかという研究事例は幾つかあるのですけれども、まだ非常に不確実性が高くて、第3次報告書に載っておるのですけれども、それはここでは取り上げておりません。  地球システムへの影響ということで、南極やグリーンランドの氷床を考えますと、どうも1~2℃という範囲におさめる必要があるのではないか。海洋大循環につきましては、どうも3℃という値が多く使われてきているのではないかと思います。ということを1つのまとめとしてお示ししております。  あと、日本の事例ということですが、時間も大分過ぎましたので簡単にしたいと思います。残念ながら、世界じゅうの影響研究に比べると日本の事例は何度で何パーセントというような直截的な研究事例がなかなかなくて、そういう意味では残念なことではあるのですけれども、その影響をご紹介します前に、地球規模の平均気温で何度と言っても、日本の場合は中緯度から北にありますので、ローカルな気温は違いますよということで、これはあくまでも共通の認識ということであります。  これは2001年に環境省が出しました地球温暖化の日本への影響では、11の気候モデルの結果を使って、地球全体では大体3点何度のときに、南日本では4℃、北日本では5℃というようなことでありますし、最近出されましたK1のモデルでは、地球の平均気温が4℃のときに、大体日本の平均気温は4.4℃上昇するということで、1割ぐらい上昇量が高いということかと思います。  日本についても、幾つかの影響分野について、深刻な影響が発現すると予想される気温上昇や海面上昇のレベルについての知見がまとめられつつあるということで、表にしてみたのが次の表であります。いわゆる気温上昇だけではなくて、ある温度を超すと危ない、例えば熱中症の場合などは30℃を超すと危ないということで、そういった情報も入れ込んでおりますので、必ずしも先ほどご紹介したような世界の事例の中に埋め込むわけにはいかないので、日本は日本の表をつくったということであります。  こちらは本委員会の委員でもあります三村先生の方で、日本の事例について、気温上昇と海面上昇の影響についての知見をまとめられた1つの例ということでお持ちしました。個別には省かせていただきます。  これは昨年発表されたものですが、わかりやすいという事例でお持ちしたのですが、日本のブナ林が温暖化影響でどうなるかということで、これは森林総研の研究成果ですけれども、3.6℃気温が上がると約90%ブナが消滅すると、非常にわかりやすい例ということで、こういう事例がいろいろありますと、先ほどご紹介した国際的なテーブルに載せることができるということですけれども、そのためには、影響研究を気温上昇と影響量ということで取りまとめをさらにしなければいけないということになっております。  最後に、気候変動の長期目標についての考察ということで、以上の知見を踏まえてどのようなことが言えるかということであります。  定量的な長期目標を設定するために十分な科学的な知見はあるかということで、基本的には、不十分だがあるということでありますので、暫定的な目標設定を行うために必要な知見はそろっているということであります。ただ、一部の分野については、あるいは地域についてはまだ不十分なところがある。特に経済影響の、お金の面での評価についてはまだまだ知見が少なくて、今日はお示しするわけにはいかなかったということであります。  そこで、考え方としましては、現時点での科学的不確実性を勘案した上で、その中で目標設定を行い、知見の充実に応じて目標を随時修正していく柔軟性が必要だろう。科学的知見が一部不足していることのみを理由に目標設定を避けることは不適切というようなことであります。  2番目が、影響の閾値に関して、現在の科学的知見でどのようなことが言えるのかということで、第3次報告書以降科学的な知見が集積されておりまして、より深刻な温暖化の影響が起きると見積もるような研究事例が増えております。言葉をかえて言いますと、科学者が考えていた以上に温暖化が進んでいるし、将来深刻な影響が出てきそうだということがわかってきたということであります。  こういった影響の研究を踏まえまして、地球規模の影響ということで、分野別の影響の知見が集まりつつありますけれども、気温の上昇量と影響や閾値については以下のとおりと整理されるということで、先ほどご紹介しましたような数値を繰り返し示しております。  3番目ですが、気候変動の長期目標に関する検討を進めるためにどんな知見が必要かということで、まだまだ必要な知見はいろいろあるわけですが、例えば脆弱性評価、これは影響評価に適応能力を加えたような評価ということですけれども、脆弱性評価と影響閾値の特定の問題ですとか、あるいは今後の話になるかと思いますけれども、許容できる温度レベルに対応する安定化すべき温室効果ガスの濃度ですとか、安定化濃度に対応する排出パスですとか、可能な範囲で知見を整理することが必要ということで、先ほどのイギリスの会議でもこういったいろいろな知見が報告されましたし、日本でもこういった取り組みがされておりますので、そういった知見をまとめる必要があるのではないかということです。  さらに、今回はちょっと取り上げませんでしたけれども、適応策あるいは適応能力が非常に重要な役割を果たしてまいりますので、そういった評価もあわせて必要になってきているということであります。  まとめということで、これまでご紹介したようなことをまとめてみました。危険な気温上昇幅のレベルということで、これは世界の年平均気温を対象にしておりますけれども、影響のリスクは以前考えられていたよりも深刻であろう。より低い温度上昇で危険なレベルに到達する可能性があるということがわかってまいりましたし、生態系の場合には1~1.5℃ぐらい、脆弱な途上国を対象にした場合には2℃以下、社会経済システムへの影響ということでは2℃~3℃、いわゆる不可逆な現象、地球システムレベルの話ですと3℃以下が望ましいということ、こういった知見は科学的な知見の充実に応じて随時修正していく柔軟性が必要であるということで、ヨーロッパが2℃と一口に言っておりましても、対象を何にするかによって大分変わってくるのではないか。そのうちのどれを重点にして考えていくかという話が次には出てくるかと思います。  今回は世界平均という形でまとめたのですけれども、具体的に言いすと、既にもう0.6℃上がっているということは注意すべきであろうし、いわゆる地球平均でいろいろ取りまとめておりますので、日本がある中緯度では若干高い昇温になるというのも気にしておく必要があるのではないかということで、注意事項を2つ書かせていただいております。  以上でご報告を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。


質疑応答

○西岡委員長 予定の時間としてはあと1時間ぐらいございます。皆さんからご質問、ご意見を伺いたいのですけれども、まず、今発表がありました事実についてのご質問、あるいは危険なレベルとか温度とか、そういうことに対する考え方についてのご質問あるいはご意見、さらに、我々がそういうことを判断するにはどういったことを検討しなければいけないかということに対するご意見もいただければと思っております。  まず、委員の方からご意見をお伺いしたいし、また、事務局からの方からもご質問いただければと思います。何かございましょうか。

○甲斐沼委員 いろいろまとめていただきまして、ありがとうございます。確認といいますか、質問と一緒ですけれども、大気中の濃度安定化ということと、今ご説明いただいた、主に影響の側から、何度ぐらいが問題ということで、気温上昇についての議論が集中的に行われてきているということですけれども、原沢委員の方からもタイムラグが非常に大きいとのご説明でしたが、濃度と気温上昇との間のタイムラグについての確認です。気温上昇の方を2150年ぐらいまでを安定化ということであれば、濃度の方は何年ぐらいを目標にされているのかということが1つです。  もう1つは、5ページのところで、550ppm安定化しても2℃を超える確率が高いということですが、この550ppmというのは温室効果ガスを全て含むのか、CO2なのかということです。  それから、温室効果ガスとCO2の関係でもう1点確認というか、ご質問ですが、12ページで温室効果ガス濃度とCO2濃度の関係の一例が載っているのです。これは気温の方が制約条件で、例えば2℃以下、2150年までに安定化するときのCO2濃度と温室効果ガス濃度のパスをけんとうされたものなのか、パスを選択する基準は何かということと、もう1点は、CO2濃度だけを目標にした場合には、CO2と温室効果ガスというのは比例的に動くのか、それともCO2濃度の方を安定化のために一生懸命努力して下げたときに、逆に、ほかのNon-CO2と言われているものが上がる可能性はないのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。

○原沢委員 非常に重要な点の質問でありまして、最初に、いわゆる2℃と言っていることの考え方みたいな話ですけれども、10ページの絵ですが、例えば550ppmの安定化をする場合には、CO2が安定化するのが大体2150年ぐらい、タイムラグがあってその後に気温の安定化になりますけれども、そうすると3.5℃まで上がるということですので、いわゆる安定化濃度といいますのは、ヨーロッパで言っている2℃というのは、安定化したときの気温を言っているのではないか。そうすると、気温の安定化は2150年以降になりますので、超長期の気温の上昇量を対象にしているのではないかと思います。ここは、いわゆる2100年時点の上昇なのか、安定化時点の気温上昇なのかということが、私自身もいろいろな報告書、あるいは論文を読んでもまだはっきりわからないところがあるのですが、ただ、温暖化は2100年で終わるわけではありませんので、最終的には安定化したときの気温を2℃と言っているのではないか、これは個人的に思っております。  2つ目が、CO2のみか、全ガスのみかということですけれども、例えばイギリスの場合の550ppmは全ガスを入れております。ですから、CO2のほかに京都ガスと言われているメタン等5種類、さらにCFCが入っておりまして、対流圏のオゾンと、あとSO2も入っていると思います。ですから、SO2が入っているというのはちょっとみそではあるのですけれども、そういう意味では、全ガスを取り上げた研究事例がイギリスの会議では報告されたということであります。  3番目が、12ページの絵ですが、これはSRES-A1Bのシナリオにのっとって計算したものでありまして、具体的に言いますと、A1Bのシナリオの、例えばCO2の2100年時点の濃度ですとか、いろいろな時点の濃度が出ておりますし、さらに、いろいろなガスの放射強制力が出ておりますので、それでCO2の濃度が600ppmですと、温室効果ガス全体では730ppm相当になりますよということで、これは何を言いたかったといいますと、CO2だけで扱うのか、CO2以外のガスも扱うのかによって考え方が違ってきますし、これまではCO2濃度を中心にやってきたことはたしかですけれども、今後は温室効果ガス全体で議論をしていく必要があるだろうということの一例で出しております。  その際に、2100年まではSRESシナリオで、Non-CO2ガスの将来予測値みたいなものがあるのですけれども、2100年以降のNon-CO2ガスの想定値がないので、結局2100年時点の値を伸ばして使っているとか、あるいはご質問にもありましたように、CO2濃度の何割かがNon-CO2ガスだと仮定してやるというぐらいの方法しか今の段階ではないということであります。ここで出しましたのは、全温室効果ガスを扱うのか、CO2を扱うのかで取り扱いが違ってくるのではないかということで、その一例としてお出ししまして、その辺は議論の際に確認をしておく必要があるのではないかということです。  最後に、Non-CO2ガスの扱いを比例的にやるというのは、2100年以降のデータが、今の段階では共通で使えるものがなかったりするので、そういう意味では研究面でもNon-CO2ガスの扱いというのはちょっと統一されていないところがあったりしますが、エクセターでの研究報告では、全ガスを扱った場合ということでの議論が中心になってきたということだと思います。

○西岡委員長 今の件でクライファイするところはございましょうか。  1%CO2で伸ばしていたという意味は、CO2等価の放射強制力を与えたということですから、実際のCO2は、そのうちの何パーセントかで、あとは入っているということですね。予測をやるときと政策をやるときといろいろ混乱があるかと思います。  ほかにございましょうか。

○住委員 グリーンランドの氷床の崩壊のことですが、従来ですと、海面上昇に関しては南極が太るので、氷床の解ける寄与が小さくてという話になっていたと思うのですが、それが、ここでとりわけグリーンランドの氷床の崩壊が取り上げられて影響が大きいというのは、グリーランの地域にとってという意味ですか。

○原沢委員 ここではタイプ2の閾値の例ということでお出ししたのですけれども、グリーンランドの氷床については第3次報告書のときにも言われておりますので、それを持ってきております。どうもグリーンランド氷床の融解が予想以上に速く進んでいるのではないかというのが、先ほどの氷河の流れがかなり影響しているのではないかという新しい知見も出てきたということで、ここでお示ししましたのは、あくまでもタイプ2の閾値の例ということで、西南極氷床とグリーンランドの氷床と海洋大循環、そういう意味では、グリーンランドの氷床が解けると、7mだったと思いますけれども、そういう形で不可逆な現象が一たん起こると止まらないということで、そういう意味では気候システムそのものにかかわる重要なプロセスの影響ということで取り上げているということでありまして、タイプ2の例ということでお示ししました。

○西岡委員長 グリーンランドの融解については最近そういう例が報告されてきて、注目を浴びているのではないかと思います。  ほかにございましょうか。

○工藤委員 43ページの最後にまとめられた内容についてちょっとご確認したいのですけれども、いろいろお話を伺って、排出量から、それの因果関係で濃度、そして気温上昇並びに影響、これを今はどちらかというと地球全体の平均なり何なりで話をしているけれども、実は地域的に要因が違ったり、もしくは地域の内容によって違ったりということで、そのいろいろな組み合わせの中に不確実性がたくさんあるのだけれども、そういうものをいろいろ検証しながら柔軟に云々というふうにとれたのですけれども、逆に言いますと、43ページの整理の仕方で、例えば危険なレベルに到達するのも内容によってはいろいろバラツキがある。さらに地域なり何なり、日本に対しては10%ぐらい温度上昇の可能性があるからもう少し高く出るかもしれないと、そういうような可能性も聞きとれる一方で、それを裏返しにしますと、例えば今議論されている2℃というのは、その1つの温度の設定の仕方というものに対してどのくらい意味があるのかということがだんだんわからなくなってきてしまったんです。  当然のことながら、国際的なコンセンサスということになれば、地域的な自分たちの影響の度合いというものが当然重要になってくるし、それとは別に世界、地球全体でもやりましょうと、そういったことをいろいろ調整していかなければいけないということだと思うのですが、その辺の整理の仕方が私の頭の中でよくわからなくなってしまったのですが、最後おっしゃりたかったのはどういう趣旨なのかということです。

○原沢委員 非常に難しいご質問で、最後のまとめの1つのポイントは、危険のレベルというのは一通りではないということをお話ししたかったわけです。例えば生態系への影響というものを人類が非常に重要だと考えれば、これは1℃~1.5℃ぐらいにしないといけません。ただ、条約で言っております3つのポイントとしては、生態系への影響と、食料生産、あとは経済社会の発展という3つの分野をそれなりに守っていくという話だとすると、生態系も入ってきますとかなり低くしなければいけないということになりますし、あるいは人間社会がまず重要だということであれば、社会経済の中でも、途上国と先進国では影響の閾値が違うだろう。そうしますと、途上国を対象にした社会経済であれば2℃ぐらいまでに抑えなければいけないし、もし先進国を中心にした社会であれば2℃~3℃までは大丈夫ではないかというような、そういう危険なレベルを見ていく視点としてはこういった分け方の見方があるのではないか。それを相対的に言って、例えばEUのように2℃ということであれば、生態系と社会経済がある程度危険でない水準で今後もやっていくということに位置づけられるのではないか。  あと、全球と地域の話ですけれども、おっしゃるとおり全球で議論しつつありまして、例えばヨーロッパと日本では気温の上昇の出方が違うということでありますので、日本としては、全球よりも高い気温になりますから、より低いレベルでの温度上昇にしければ日本への影響が出てくるということになるかと思います。そういう意味では、日本というのはあまり前面に出していなかったのですけれども、日本への影響ということを考えれば、全球に比べると低目の設定をしないと日本への影響は避けられないということになるのではないかと思います。  ただ、その辺になりますと、今回は、こういう国際的ないろいろな研究のデータ、日本のデータを踏まえた形で、全球平均気温というのを1つの指標として、今問題になっている2℃の議論について関連する知見をまとめたということでありますので、日本と世界の関係については、また次の段階で排出量の関係も出てくるかと思うのですけれども、日本にとって何度までというような議論があれば一番よかったのですけれども、まだそこまでの、いわゆる影響研究の事例あるいは成果がちょっと不足しているということだと思います。そういう意味では、今回はどちらかというと、世界全体での問題というとらえ方をしているということです。

○西岡委員長 いかがでしょうか。  このまとめですけれども、ここで結論を示すべきか、ちょっと検討が要る、というのは、我々が示せるのは、こういう状況だったらこうなるよと、それは割と確実性を持って研究の成果として出る。既にこれだけの温度上昇で、これだけのことがあらわれているという事実でもって示すことはできる。けれども、そこから先、一体危険ということを誰が判断するのか。今話が出ていたように、それは日本ではなく、日本は適応性が高いから2℃上がっても、3℃上がっても大丈夫かもしれないということもあります。しかし、途上国の人たちはと考えると、みんな主体によって違う、国によって違う、いろいろ違うわけです。そのジャッジというのは多分社会的に決めるのが方向だとは思います。  しかしながら、そう言ってほうり出したときに、いわゆる専門家に対する風当たりとしては、「君ら、そういうことについて何も言ってくれないのか」と言われるのも何だと、非常に難しいところにいるのではないかと思っております。基本的に科学者は事実をまず示すことが第一段階であるが、それに対してあるジャッジを、ある程度はやる必要があるのではないかと私は思っているのですけれども、非常に難しい。ですけれども、それがコンセンサスで決まるような話まで我々は口を出せない可能性もある。

○原沢委員 委員長おっしゃるとおり、「望ましい」と書いた途端にバリュー・ジャッジメントが入っているのです。そういう意味では、研究成果のまとめ方として、ああいう表をどんどん出しても、そうですかという話ですから、一歩踏み込んだ科学者、研究者としてのリコメンデーションみたいなものが、そこまで書き込んでしまったところがあるのですけれども、1つのポイントとしては、誰が危険と判断するかというのは、ほうり出してしまっては一歩も進まないということで、ある程度研究者サイドも、これぐらいの幅で考えないと危ないですよという、表だけではなくてメッセージも出していく必要が、もしかするとあるのではないかという話が1つです。  2℃、2℃と言っておりますけれども、どこに視点を置くかによってかなり違うのではないかということで、そういう意味では社会経済だけがうまくいけばいいのか、生態系はどうするんだという、温暖化に限らず環境評価みたいな話も入ってきてしまわざるを得ないということであります。ただ、ここでは生態系と途上国と先進国では大分閾値が違うのではないかという話と、また、地球規模の気候システムそのものが変わるような現象というのはまたちょっと扱いが違うのではないか。そういう意味では、IPCCの第3次報告書が示しました5つの分野というのは、ある意味、こういった問題を検討する場合の1つのうまいカテゴリー分けになっているのではないか。そういう意味で2℃と一言で言われているような数値が、何をもって2℃としている、どこを対象として2℃としている、そういうところの議論が研究面あるいは科学面では必要になってきているのではないか。そういう意味では、それと具体的な政策決定はまだかなりギャップがあるのではないかと思っております。

○明日香委員 質問とコメントですけれども、まず、私も被害のペーパーをいろいろ読んだんですけれども、オックスフォード大学のパリーさんの研究がかなり中心になっていると思うのですが、彼はたしかIPCCの第2グループの議長だったと思うのですけれども、第4次報告書で彼がどういうような役割を担っているのかということと、あと、彼が書いた有名な「Millions at Risk」ですか、あのペーパーの延長線上で、例えば何万人飢餓人口が増えるとか、そういう数字がよりエリージョアルになって、かつ細かくなって、より信頼性が高くなって第4次報告書で出てくるのか、そこら辺の見通しをお伺いしたいと思います。  あと、原沢先生が先ほどGDPとか経済的な、ソーシャル・エコノミックなものは、あえて除外したというふうにおっしゃっていたと思うのですけれども、パリーさんは、ある意味ではそういうものを入れようとしていると思いますので、そこら辺の、GDPは入らないかもしれませんけれども、何万人なり、フード・フラクションが何パーセント上がるかとか、そういう方向で進むのか、そこら辺を教えていただければと思います。はやりソーシャル・エコノミックなところが一番一般的の人に対しても、個人的にもアピーリングですので、そこら辺のところを教えていただければと思います。  2点目はコメントですけれども、どうして2℃かという私の考え方ですが、その人為的なところとか、そこは置いておいて、多分何もしなくても2℃は上がってしまうというので、2℃~5.8℃というのは非常に幅があるように思えるのですけれども、少なくとも2℃以下にはならないというところで、なるべく人為的な影響を少なくするというのが1つあるのではないか。あと、2℃以降、例えば3℃、4℃になることによって被害が、ここにもあるのですけれども、S字曲線的に急激に上がる。2℃を超えると非常に指数関数的に被害が大きくなるということはあるのではないか。  あと、1℃でも2℃でも、多分途上国でのGDPなり影響はひどくなると思うのですが、2℃以上になると先進国もある意味では影響を受ける。ですから、途上国だけではなくて先進国もかなりソーシャル・エコノミックな影響を受けるという意味で、2℃というのがある程度大きなメルクマールになるのかなと、その3つを、私は責任論とかを抜いて考えております。

○原沢委員 1点目のパリーさんの件ですけれども、これは1%、CO2増でやられた研究成果で、水の研究、食料の研究、健康の研究というそれぞれペーパーが出ておりまして、それをパリーさんのグループがまとめ上げて、こういう形で示したということでありまして、これは第3次報告書に載っているものであります。そのあと、ご存じのように、IPCCではSRESシナリオということで6つのシナリオを使った影響研究を推奨しているといいますか、それを世界標準という形でやっております。影響研究もSRESに応じた形での機構モデルの将来予測を使って影響研究をしていることがあります。  その結果を今パリーさんたちのグループがまとめておりまして、この前のエクセターの会議のときには、研究成果という形では出てこなかったのですけれども、どうもその後こういった解析を進めているようです。ペーパーなどを見てみますと、SRESシナリオそのものが、人口そのものが変化しておりますので、例えば影響人口で見ると、結構影響そのものがこれに比べると非常に減少傾向に出てしまうというような、SRESシナリオを使うがゆえの問題もちょっと出てきているようです。ですから、逆に言うと、SRESシナリオに基づいていろいろやった研究成果を、こういう形でうまくまとめられるかどうかというのはちょっと悩んでいるところがあるようでありまして、特に人口というような指標では十分影響の全体像を出し切れないようなところがあるようであります。  いずれにしても、パリーさんたちのグループはイギリスだけではなくて、世界的にも影響研究のトップランナーでございますので、SRESシナリオを使った影響研究を、うまい形でのまとめ方で近々出してこられるのではないかと思います。ただ、先ほどお話ししましたように、エクセターの会議では、まだSRESシナリオ、計算そのものは終わっているわけですが、こういう形での表示はなかったということであります。  IPCCの中では、パリーさんたちのグループがある程度主導的にやっているというところはあるのですけれども、やはりヨーロッパ系の影響研究が進んでいるなということがあります。1つは、温暖化の影響の検出事例も第3次報告書に比べて格段に増えているという話が1つと、予想よりも影響の被害が出てきそうだということでまとめていかれるのではないかと思います。  それに関連しまして、2番目のGDPがどれぐらい減るかということで、第3次報告書にもそういったグラフがあるのですけれども、かなりばらついております。といいますのは、ある程度の温暖化ですとかえってGDPが上がる場合もあったりします。ある温度範囲を超えるとGDPがかなり減るということがあるのですが、IPCCの第3次報告書の図表そのものはかえって誤解を招くのではないかということで今回は落としたのですけれども、そうは言っても、そういった被害の金銭評価みたいなものは影響研究としては非常に重要になってきております。  ただ、サンゴ礁の価値ですとか、人の命の価値というのは金銭価値ではなかなかあらわせないというところで苦労がありまして、1つは影響人口という形での表示の仕方ですとか、あるいはGDPのロスみたいな形での表示の仕方があるということではあるのですけれども、そういう意味では、金銭評価ができていけば、ミティゲーションの方との、かかる費用との比較もできたりするので、大分前からそれは望まれてはいるのですけれども、これは環境評価の壁があるということであります。  ただ、ある報告の中では、どうもGDPが3~5%ぐらい減ると、影響として結構大きいのではないかというような記述もあったりしますので、今後そういった社会経済的な影響という分野では、GDPにどのくらいの影響があるというのが1つの指標になっていく可能性もあるかなと個人的には思っていますけれども、影響研究と経済評価がこれまで十分できてこなかったので、事例がないということであります。  あと、2℃の考え方については、おっしゃるとおり、先進国と途上国で適応力も違いますし、感受性も違うということで、どういったところで考えていったらいいのかという話は、まとめをする段階でわからなくなってきたということもありますし、最終的に、誰が危険というのを判断するのか。そういうときに研究者としての役割は何なのかと、結構問題は大きなという感じを受けております。IPCCそのものは、いわゆるバリュー・ジャッジメントをするとか、政策にべったりしたような研究はしない、あるいは活動はしないというのが原則ではあるのですけれども、やはり条約第2条の安定化濃度と危険なレベルみたいな話は、ある程度研究者が一歩踏み込んだメッセージを出していかないといけないのではないか。そういう意味では、エクセターの会議では一歩、二歩踏み込んだような研究報告もされておりますので、今後そういった科学者の方からのメッセージもより強くなっていくのではないかと思っています。

○西岡委員長 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 別件で遅れて失礼しました。質問は43ページのところに関してですが、前の方は非常に大事なご報告だったと思いますが、残念ながら聞けておりませんので、その最後のところだけですが、その中のチェックの2番目、脆弱な途上国における影響の抑制、2℃以下が望ましいという部分ですが、先ほどからのお話にもありましたが、これを文章にする場合、非常にデリケートに表現してほしいなという感じがいたします。温暖化の今後の交渉プロセスで途上国のこともあるわけですが、それ以外に、今年この作業のプロセスの流れで考えてみましても、9月に、いわゆるMDG、ミレニアム開発目標に関する首脳会議がニューヨークで行われますし、また、12月にはWTOの閣僚会議、これは開発に関する貿易ラウンドと言われている閣僚会議が行われますし、そういうものが国際社会の重要なアジェンダになっているときに、この2℃の多くの部分というのは、恐らく我々の生活の結果、途上国にも影響が大きく出てくるということに違いないわけですので、そこら辺のところ、一方で非常に大きな、大事な交渉を行っているときに、こういうものがネガディブなものとして多分交渉の妨げになっていくに違いないという気がしますので、それに対して我々は我々なりのスタンスをきちんと持っているという表現が必要であろうと思います。  それから、最後のGDPに関してですが、これはコメントですが、大体今の先進国のこの150年ぐらいのパフォーマンスで見ますと年平均2%ぐらいで成長してきました。その途中のところでいろいろ乱高下があって、問題が起こって、第一次大戦、第二次大戦などをやってきたわけです。それが1つです。その間日本はどうだったかといいますと、大体3%ぐらいだった。それが日本が先進国に追いつき追い越せという状況だったわけです。途上国のこの数十年のパフォーマンスを見てみますと、これが大体3~4%ぐらいの間で推移しているわけです。ネット1人当たり成長が2%ないと社会の不安定に結びつくというのが非常にはっきりしたパターンで出てきまして、そうしますと、例えばアフリカのように人口増が年2%近いというようなところですと、それプラス2%つけなければなりません。そういうものが最低限度の要件としてGDPの指標というのを考えるときには念頭に置いておかないといけないだろうというふうに思います。  以上です。

○原沢委員 最初の質問は、全くそのとおりだなと思ってお聞きしたのですけれども、やはり脆弱な途上国における影響とあえて書いたのですけれども、2℃というのは、そういう意味では、例えば小島嶼国ですとか、沿岸域の国々を考えると、やはり2℃でもかなり影響が出るということになってくるのではないかと思います。そういう意味ではちょっと甘い評価になっていると思うのですけれども、そういう意味では0.6℃進んでいるので、あと1.5℃までということではありますけれども、その辺の社会経済の面から先進国、途上国、途上国も熱帯、亜熱帯の途上国と小島嶼国ではやはり危険なレベルが大分違うのではないかということで、その意味では、この辺の数字は見直しをしなければいけないのではないかと、ご質問を受けて考えた次第です。  2番目の経済の影響というのは、あまり具体例がない段階ではあるのですけれども、今お話があったように、これまでの経済成長から学んだ数字というのは非常に重要になってくるのではないかと思いますので、その辺、我々ができるかどうかという問題ではないのですけれども、社会経済の影響を考える場合の1つの指標としては、今お話があったようなレベルというのは目安になっていくのかなと思った次第です。

○高村委員 非常に詳細なご報告をいただいて、どうもありがとうございました。お話を伺いまして、まず前提として申し上げたいのは、こうした温暖化防止のための長期目標を、このような場で議論することの意味というのは非常に大きいと思っております。これはEUでも議論が始まり、アメリカの上院の一部からも提案が出てきているという政策的な状況がまずあるので日本でもということがあるのだろうと思いますけれども、同時に、削減をどやっていくかというポジションはいろいろ分かれていて議論があるわけですが、しかしながら、温暖化を防止するために何とかしようという「着地点」はおそらく共有できるわけです。そのために、目標達成する着地点が一体どういうものなのかということについて、科学から今の段階でわかっていることを明確にしていただいた、わからないことも明確にしていただいたということで、その観点からこうした議論は重要だと考えております。私からは、どちらかというとクラフィケーションのご質問が3つと要望が1つでございます。  1つ目は、43ページにあります危険な気温上昇幅のレベルについてです。1つのレファレンスとして先生から出していただいていると思いますが、これは先生が報告の前半のところでおっしゃっていた、いわゆる時間的な枠組みという観点からいうと、これは工業化の段階を基準にして、工業化以降気温の安定化がこの温度レベルであるという理解でよろしいのでしょうか。これが1点目です。  2点目は、20ページから25ページあたりのところで、いくつかの影響とその影響が出てくる気温上昇との関係について整理をしていただいているかと思うのですけれども、例えばサンゴ礁が白化していくに伴って、おそらく海洋生態系に対して大きく影響があるかと思います。20%、30%の海洋生態系が何らかの形でサンゴ礁に依存しているという研究結果もあると了解しております。ある1つの影響が生じることによるほかへの影響というのは、こういう研究の中では考慮されているのかどうか、あるいはどのくらい考慮されているのかという点でございます。これはおそらく経済との関係でもそうで、海洋生態系等への影響はおそらく漁業等への影響にもつながっていくものだと思うのですけれども、このあたりの相互の影響の関係についてどのくらいわかっていて、あるいはどのくらい考慮されているのかということについてお聞きしたいというのが2点目です。  3点目はご質問と要望とをかねあわせたものかと思いますが、今後のこの委員会や政策決定の場面での議論において、先ほど工藤委員からもご発言がありましたけれども、日本にとってどういう意味を持つのかという観点はやはり大事な視点だと思っております。しかしながら、そこまで影響レベルでわかるのにもう少し時間がかかりそうだということも了解しておりますが、例えば2℃気温上昇した社会というのは一体どういう社会なのかといったような形での社会像を描くことというのがある程度可能なのかどうかという点でございます。といいますのは、これを議論していくときに、まさに価値判断というのが大事になってくるわけですが、政策決定をされていく側でも、果たしてそれが国民にとって受容可能なリスクなのかどうかということの判断、国民がどう思っているかというのは非常に大事な点だと思いますので、わかりやすく国民に影響を伝えていくという点で、何かいい工夫がないかという趣旨でございます。  そして、4点目は今後の議論について要望でございますけれども、EUないしはアメリカの上院の提案の中で、2℃といったような数字を持った長期の目標というのが提唱されておりますが、その数字、数値というのが一体どういう経過で決定をされ、提示をされているのかという点について、先ほど新澤委員の方からもEUについてご指摘がありましたが、恐らくその中では、今までの科学的知見を踏まえた上で、この数値というのがやはり重要な鍵だという判断があってのことだというふうに推測をいたします。そういう意味では、EUですとかアメリカの上院への提案というのが一体どういう背景を持って出されてきているのかについて委員会にご紹介をいただけると議論の参考になるなというふうに感じました。  以上です。

○原沢委員 まず最初の質問ですけれども、度を起点にしてという、そこまでの認識はなくて、基本的に絶対的な気温の上昇と影響ということで出しておりますから、EUなどは産業革命から測るということを主張しているわけですけれども、そこまでの議論は、この中では考えておりませんでした。ただ、安定化したときの気温を扱っているという意識であります。  2番目の海洋生態系とサンゴ礁のように、生態系としての影響評価みたいなものがどこまで進んでいるかということですけれども、特に海洋の場合は非常に複雑でありますし、現象そのものもまだわかっていないところもあったりしますので、影響面では、いわゆる直接的な影響までであって、間接的な影響も含めて海洋生態系全体への影響というところまではまだ行っていないと思います。例えば食料などの場合も、直接的なお米とか小麦への影響の物理的な影響と、さらに一歩進めた地域の経済への影響、さらに貿易を通じた国際的な影響ということで、分野によってはかなり間接的な影響まで含めた研究が進められておりますけれども、生態系につきましては、全体像そのものがわかっていないということもあるのですけれども、比較的直截的な影響ということにとどまっているかと思います。  あと、2℃上昇したような世界はどうかということですが、例えば昨年の7月の東京の気温は2℃平年より高いということがありますので、これが長期にわたって2℃高い世界を描けるかどうかということで、前回でしたか、2℃上がったときの平均的な影響の項目をお出ししたのですけれども、それを日本について書けるかどうかについては、今そういった研究そのものがあまりないのでお話しできないのですけれども、例えばSRESシナリオのように、将来こういう形になるよということを描くビジョンはありますので、そういう意味では、そういう世界を、例えば5℃上がったらどうなるとか、2℃上がったらどうなるとかという話は、むしろ社会の方の、いわゆる将来像ともちょっとかかわってくるかなということで、ただ、描けるかどうかは今の段階では難しいけれども、描いていくような努力を研究者の方はしなければいけないのではないかと思っています。  最後の、いわゆる2℃のルーツみたいな話も、いろいろ探しまして、EUの場合は1996年にEuropean Councilですか、そちらでまず取り上げられたようですけれども、そちらではIPCCの第2次報告書、1995年のいろいろな記述を見てという記載がございます。ところが、ドイツは1990年ぐらいに、もう1℃上昇ですとか、10年で0.1℃、0.2℃というような議論をしているペーパーがありますので、2℃、あるいは10年間に0点何度というような知見は90年ぐらいから使われていた感じがあります。  ただ、こういう科学的な論文があるので、それを引いているということよりも、例えば過去40万年間の気温上昇などを見ますと、0.2℃まで上がっていないとか、そういうかなり広範な知見をベースにしてある意味決めているようなところがあって、それがEUですとか、イギリス、ドイツ、オランダ、それぞれがある程度値を使い始めて、最近では2℃・550ppm、さらに400ppmとかという形での独自性を出したような目標設定というか、研究成果を踏まえた値の出し方になってきていると思います。  そういう意味で、ルーツを探すのは非常に重要だということでいろいろ探したのですけれども、この論文によってこうなっているというよりも、いろいろな知見を総合して、その段階で各国あるいはEUが定めているということのようです。ただ、その後もいろいろ研究成果が出てきておりますので、逐次そういう新しい成果も見ながら、気温上昇の閾値みたいなものとか、安定化濃度についても550ppmではだめで、さらに400ppmとか450ppmという議論もされておりますので、常に最新の科学的な知見を取り入れながら、そういう安定化濃度の設定ですとか、気温の上昇率、あるいは気温の上昇の量みたいなものを検討しているということで、それを政策的な目標にも結びつけているということではないかと思います。

○亀山委員 まず、詳細な説明をありがとうございました。ご説明を伺いながら、こういったメッセージがどうしたら一般の方々にとってインパクトのあるメッセージになるのだろうかということを考えておりまして、徐々に2℃上がっていくのも非常に不気味ではありますけれども、最も一般の関心を引くのは、いわゆる極端な気象と言われているエクストリームイベンツとか、エクストリームウエザー、例えば去年の夏に高温が何日続いたとか、あるいは一回の大雨で何人流されたとか、そういうことの方が新聞の表紙に踊ったりするわけです。エクストリームイベンツの話を持ってくるのは、もちろん人々の関心を引くという上でも重要でありますし、あと、適応しづらいという点からも重要だと思うのです。徐々に暖かくなったりすると、農業あるいは海面上昇に対する適応というのはある程度できますが、一発来る異常気象に対してはなかなか適応しづらいのではないかと思います。  今日のご発表を伺っていて、意外とエクストリームイベンツに関する部分がなかったように感じたのですが、それはいわゆるエクストリームイベンツということ自体が科学者の関心を引いていないのか、あるいは予測が難しいのであまり研究成果がないのか、少なくとも異常気象の数が増えてきているというような、過去に関するグラフとかは幾つか見たことがあると思うのですが、将来、先ほど高村先生が将来の社会像とおっしゃいましたけれども、2℃上がったときに、例えば東京の夏で35℃以上の日が何日増えるとか、そういったような研究成果というのはないのでしょうか。

○原沢委員 異常気象は、先ほどの5つの領域のうちの2番目が異常気象ということで領域としては上がっているのですが、2℃・550ppmの議論とは直結しないところがあります。ただ、温暖化の影響研究の中では非常に重点を置いて議論をしています。ただ、現時点で温暖化と異常気象との関係ははっきり言えないとか、あるいは異常気象の将来予測値がこれまでなくて、50年後、100年後のいわゆる平均的な気温の変化とか、降水量の変化に対する影響研究というのはあったのですけれども、いわゆる異常気象の将来予測値をもとにした影響研究そのものはなくて、やっと最近異常気象のシナリオとして使えるような気候モデルの結果が出始めてきたという状況であります。  そういう状況の中で重要になってくるのは過去の観測データということですけれども、これはIPCCの第3次報告書にも、台風が増えるかどうかとか、アジアモンスーンが増えるかどうかとか、エルニーニョが増えるかどうかについては、過去の記録からはっきり言えないということがありまして、ただ、気候モデルでは一部、例えばエルニーニョに似た現象が再現できたりとか、台風が減るかもしれないけれども、大きくなるかもしれないという気象モデルを使った研究と観測値を使った解析、両方で異常気象と温暖化の影響を見ているところがあります。そういう意味では、今後だんだん知見が増えてくるのではないかと思いますけれども、現段階では異常気象と温暖化にかかわるような知見が増えてはいても少ないということでございます。  今回取り上げた2℃とか、550ppmに安定化したときにどういう異常気象が起こるかというところまで、関係をはっきり示すような研究事例はないという感じだと思います。ただ、それは異常気象と温暖化の影響は関係ないということではなくて、非常に関心は高いんだけれども、それをバックアップするような科学な知見が少ないので、どちらかというと、影響面ではそういうことを積極的に言いたいんだけれども、やはりあくまでも科学的な知見にベースを置いた議論をしなければいけないということで、そういう意味では、IPCCなどでも各地域、あるいは各省の影響研究者はちょっと悩んでいるところはあります。ですから、関心としては非常に高いのですが、それを研究面としてバックアップするような研究は、増えてはいるんだけれども、まだ十分ではないという感じだと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。その件は特に住さんにご発言いただきたいと思います。

○住委員 原沢さんに言うことではないのですが、私はこの話を聞いたときに、国として出すときには、やはり国の戦略というのが非常に大事なような気がするのです。そういう点で知りたいのは、どうしてブレアがあそこまで言えるのだろうか、その背景は何だろうかということです。ブッシュの背景は非常にわかりやすくて、アメリカは、彼らは自国の運命は国際にゆだねないと宣言しているわけです。ですから、結局、自分たちの運命は自分たちが決めるから、国際条約でごちゃごちゃ言われる筋合いはない、ほうっておいてくれというのがアメリカのスタンスだと思います。そういうところの動向、欧州がなぜこれだけ、まさか純真に、そんなに身を犠牲にして世の中のために尽くそうと思っているとは僕は思いませんので、彼らがどうしてそれを言えるのかという分析が必要だと思います。  今度は逆に、これは長期戦略ですから、2100年の日本というのはどうなっていると考えるのだろうか?ということが大事です。膨大に発展する中国、インドを控えて、日本はその中でどういう位置であって、しかも少子高齢化、7,000万の日本になって、どうするのか?シュリンクして、日陰でこっそりと生きるのか、否か。そういうトータルのイメージがあって、その中で1つはこういうような気候変動の戦略があると思います。現在、政府がやろうとしていることは、こういう科学的な知見をベースにした国際交渉だと思います。多分COPとかそういう場所というのは、科学の舞台を用いて、全然違うドラマをやっているという理解をしておりますので、日本の将来に関する腹のくくり方が非常に大事なような気がします。多くの国民の人が不安なのは、「どうなるんだろうね、ほんとは」というところだと思います。年金も社会も、みんないろいろなことを言うので、要するに、非常に不安にかられているだけだと思うのです。その辺で、そこをきちんと出していくことが非常に大事だと思います。  それから、地球温暖化の影響評価でも、インフラの関係と、その人の経済状態によって受けるところが非常に違うので、そこを査証してやると違うような気がするのです。それから、例えば現在でも中国やインドでエネルギーにアクセスできない人が膨大にいるわけです。そうすると、途上国の発展ということを考えたときには、ある種のエネルギー供給が必要です。そのためには非常に効率的なエネルギー開発をすることが必要です。ですから、地球全体をどうするかというグローバルな見通しが必要です。それは日本の長期戦略の境界線条件だと思うのです。それから、公表することではないけれども、例えば日本一国で対処したら、この程度で何とかやっていけるとか、ミニマムはこのくらいでやれるとか、うまくいけば、仲良くやればこうなりますとか、何かそういう具体的なプランが大事なような気がします。  あと1つは、こういう気候変動とかいろいろなものは領域が大きい方が得なのです、影響が薄まるから。ですから、欧州でも、イギリス一国で、例えばこういう変動を吸収しようとするのと、欧州全域で対応するのでは影響が異なります。そういう点で日本の場合を考えると、非常に小さい島国で、この日本だけで全部のものを吸収してやっていこうとすると、ハンディが大きくなるということは理解をしておいた方がいい。そういう点では、好きか嫌いかは別として、お隣の国とか、広く東アジアの国を含めたような視点というのは絶対不可欠で、その中で日本がどうなるかということだと僕は思います。

○工藤委員 私が最初に申し上げた質問の趣旨は、日本に影響がどうのこうのということよりも、いろいろ伺って、2℃の持つ意味というのがより詳細化すると、地域的目標の評価の項目的にいろいろなバラツキといいますか、見方があるという前提に立って出ている2℃ですよねということがわかったという意味です。結局、今議論になっている温度の話というのは、この数字をもとにして交渉しましょうかという議論が出ている、出ていない、それに対してどう対応するかといったときに、この数字そのものがどういう意味を持っているのか、そして、自分たちはどう考えているのかということをきちんと出せないと、どういうふうに議論するんだろうというのが見えなかったということがあって、今住先生がおっしゃったこととか、原沢さんがいろいろおっしゃっている内容、すなわちEUとかはどういうビヘービアでこういうことを考えているのかというのは、逆に議論をする意味でも大事なことなのかなという気がしております。そういうことを考えると、いわゆる単一的な温度というものをいろいろな意味の共通のターゲットに本当にうまくできるかどうかというのは、逆に科学的知見がいっぱいわかればわかるほどだんだん難しくなる、そういった要素、要因もはらんでいるのかなという印象を受けたということです。

○明日香委員 住先生に対してコメントというか、ブレアがなぜあそこまで頑張るのかということですが、私の理解では、EUの声明の中にも、EUの国際競争力のためにも頑張るという言葉が入っているのです。たしかリソマ宣言というのがあって、そこでEUの活力を頑張らなければいけないと。それで考え方が違って、この問題は逆にEUの国際競争力を長期的には高めるんだと、技術的、経済的に高めるというような認識がまずあると思います。  もう1つ、これはたまたまCOP10を持ってきたのですけれども、不確実性のもとでどのような判断をすべきかという研究を3年間イギリスでやっているのです。ディスペラーというところはすごく参考になるのですけれども、単にロジカルにこういう問題で、こういうふうにと、先ほどのExposure Unitをどう設定するか、レセプターをどう設定するか、誰が決めるかとか、そこら辺を細かく温暖化以外のいろいろな事例でやっていって、それを温暖化に当てはめるとこうなると、そこら辺のプロセスを3年間ぐらいやって2℃という結論がある程度出できたのかなと推測します。日本は、そういうのは多分ゼロに近いのでなかなか難しいと思うのですが、多分イギリスなりEUはそういうものをバックボーンにして2℃というのが出てきたのではないかと、これはお持ちしたので参考になるのではないかと思います。  最後に原沢先生に質問ですけれども、2℃と同時に550ppm、CO2でという話がずっとあって、私の認識では、550ppmですと2℃は難しいと、75%をオーバーシュートする確率があるというような認識が一般的になっていって、条約では濃度というのはあるのですけれども、濃度ではなくて温度でやった方がいいのではないかという議論がエクスターでもあったような気がするのですが、そこら辺の認識といいますか、どういう動きになっているのかとか、あと、気象感度に関して今日はお話に出なかったのですが、それもいろいろバラツキはあるけれども、確率的に、統計的な議論をしていくと、大体3.5℃ぐらいになるのではないかという話に落ちつきつつあると私は認識しているのですけれども、そこら辺のご意見を教えていただければと思います。

○原沢委員 基本的に、条約の究極的な目標が安定化濃度ということですけれども、安定化濃度と排出量と気温上昇と影響、これがこれまではバラバラっとした研究だったので、これを総合的に見ていくことが必要だろうと思います。特に安定化濃度の話と、気温上昇と影響、これまでは影響の視点が抜けていたので、それを今回はかなり強化しようという方向にあるのかなと思います。  今お話があったように、気候感度も考慮して、確率分布で研究をしていこうという話がヨーロッパでは進んでおりまして、先ほどご紹介あったように、550ppmで安定化しても、当然2℃を超える確率が高いというのは、安定化の気温が3.5℃ですから当然ですけれども、だったらどうするかというと、400ppmにしたり450ppmにして、最初高くしてまた低くするとか、そういういろいろな安定化濃度を気温上昇も見ながら、政策に役立つような情報をつくっていこうというところで研究が一歩進んでいるかなという感じです。  特に確率的な評価をすることによって、これまで見えていなかったことが見えてくるということもありますし、特に気温と安定化濃度の関係も1対1の関係ではないというところがわかってきたし、安定化濃度は、どちらかというと、プログラマティックという表現が使われているように、安定化濃度だけで議論しますと、排出量の問題と影響と気温の問題と結びつかないということがあるので、どちらかというと、まずGMTで温暖化の指標としてとらえて、それと安定化濃度、排出量、あるいは影響と結びつける1つの要素にしようというところでこの何年か研究が進んでいるかなと思っています。  そういう意味では、条約そのものが安定化濃度ということではなくて、安定化濃度は1つの重要なテーマではあるのですけれども、その周りを固めるところの排出量と気温上昇と影響、これをいかにうまく組み合わせて研究していくか、さらにそこに確率的な要素を踏まえて、気候感度もまだ1.5~4.5という振れがあるので、もし高い方に振れたらどうなるか、低い方に振れたらどうなるか、それも最近は11℃まで行くという話もあったりしますので、そういったときに、意外とヨーロッパの研究者というのは早く問題に食いついて答えを出して、それを発表していく。特にイギリスはそういう戦略的な研究といいますか、例えばCOPの前には必ずイギリスのハドレーセンターなどは最新の成果を出して、それで議論を先導していくというと大げさですけれども、やはり研究成果をうまく見せているところがあったりしまして、そういう意味でも、ちょっと問題がずれましたけれども、影響研究は影響研究にとどまるだけではなくて、かなり政策にも使われるんだという前提で影響研究を進めていく必要があるだろうし、今の問題としては、安定化濃度と排出量と気温上昇と影響、四位一体で研究していくということがある意味重要かなと思っております。

○高橋委員 確認ですが、この委員会、「気候変動に関する国際戦略専門委員会」というふうになっているわけですが、今までの作業は、一方で関係あるいろいろな要素に関するこれまでの知見が、どういうものに関してはどの程度の確度である、どういうものに関してはどの程度不確実性が高いかということを確認してくる作業があった。と同時に、国際社会でどういう地域はどんなふうに動いているということを、これまた情報として確認してきたということかと思います。  これは確認ですが、その上で、さて、では日本はどうすると、それを親委員会が考えるための下敷きをこの委員会が提供するということがこの委員会の、名前からすると、私はそういうマンデートなのではないかと思うのですが、今までの作業に基づいて、さてどうするというフェーズが次の段階あたりからあるのかどうか、それを議長、事務局に確認いたしたいと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。ちょうど終了間際になって次回以降の予定等々ありますので、まず、事務局の方から予定について、今のご質問に対応するようなお話をお願いいたします。

○水野国際対策室長 それでは、次回の予定を含めましてご説明させていただきます。  本日、前段で最近の国際的な動向についてご説明させていただいたのですが、その中で1つには、次期といいますか、京都以降の枠組みについての議論の機運が高まっているということ、そして、特にEUなどを中心に中長期目標というものについて、EUなどですと、具体的な数字とかというものを出しながら議論をしているということで、日本としても、それに対する考え方をどうしていくのかということについて考え方を整理しておく必要があるということで、今回もそれにポジションをつくるための基礎を、専門的観点から現在の最新の知見というレベルでおまとめいただくということで、まさに中環審の専門委員会を再開させていただいたということでございます。  ですから、今回の中環審専門委員会のご議論というのは、1つは焦点をそこに当てたところでまとめをしていただくということで、それは専門的観点から、現在中長期目標について言えることはこういうことですということをおまとめいただいて、それをもとに、当然ながら我々として政策的に検討を加えて、政府部内でも議論をし、国際交渉に臨んでいくということでございまして、まずは、当面中長期目標ということについて専門的観点からどこまで言えるかということを、今言った背景をもとに整理をいただきたいということでございます。  そういったことでございますので、コンパクトに、数回の議論で状況をおまとめいただければと思っておりまして、次回は既にご案内をさせていただいておりますとおり、4月22日の午前中に第9回を開催させていただきたいと考えておりまして、そのときに、原沢先生のプレゼンテーションの資料の中にも、中長期目標に関する検討をするために、さらにどんな知見が必要かという中で、許容できる温度レベルに対応する安定化すべき温室効果ガスの濃度ですとか、それに向けたパスについての議論もする必要があるということで、これについて知見を整理することが必要というご指摘もいただいておりますので、そこについてさらに議論をしていただく材料をお示しして、議論をいただいて、さらにもう一度総合的な議論をいただいた上で、現在の状況についておまとめいただければと思っております。  次々回につきましては、冒頭にご説明させていただきましたとおり、5月9日の週にできればということで、今アンケートをさせていただいておりますので、その結果をもとに追って決めさせていただければと思っておりまして、その結果を踏まえて、報告書という形にさせていただければと思っております。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。  今のようなお話で、サイエンスと政策の関係について3回ぐらいでまとめるということは結構だと思います。先ほどオーバーシュートというお話もございまして、最近の研究成果で、オーバーシュートすると生態系がもとに戻るのは大変だという結果が、この前RΣRの報告会で聞きました。そういう話も入ってくるかと思います。  それはそれで進めたいと思っておりますが、もう1つ、皆さんが別に提起された問題、ここで扱うかどうかということについての問題もある。ここには気候政策を中心に国際政策の専門家も何人もいらっしゃるわけですから、一番最後のあたりで皆さんが提起なさった、一体気候の問題と国全体の政策の問題をどう考えていくかという話もいつかやった方がいいのかなとは思っております。後でまた調整したいと思います。  実際、私、昨年欧州を回ってきて話を聞いた限りでは、気候の問題というのは、エネルギーの安全保障の面から言うと絶対必要な話なんだということがまず第一の認識ですから、エネルギー担当省あるいは産業担当省が非常に力を入れてやっているということもあります。それから、フランスなどは明らかに中国をターゲットにして新しい技術、アメリカの技術ではなくて新しい欧州型の技術が売れるんだということを公言しておったわけです。そういった全体の政策の中で動いていくと思っておりますので、国全体の政策の中でどういう意味を持っているかということの議論もいつかはやる必要があると思っております。タイミングについては交渉のこともございますので、また考えたいと思っております。  今日は、高村先生におっしゃっていただきましたけれども、世界全体の着地点というのが、大体こんな形で論議されているんだということが1つわかったということ、それから、まだまだ研究をしなければいけないところ、詰めなければいけないところ、あるいは欧州はどういうつもりでこういう話をしているんだというような点だとか、幾つかの宿題が出たのではないかと思います。できるところをこの2回で片づけて、また次のステップに行けばいいのではないかと思っております。  事務局の方から何かございましょうか。  それでは、どうもありがとうございました。あと、議事録につきましては、また皆さんにお送りいたしますので、ご修正いただきたいと思います。  長時間、どうもありがとうございました。

午後4時07分閉会