中央環境審議会地球環境部会第6回気候変動に関する国際戦略専門委員会議事録

開催日時

平成16年10月26日(火)13:00~16:13

開催場所

三田共用会議所 3階大会議室

出席委員

(委員長) 西岡 秀三
(委員) 明日香 壽川  甲斐沼 美紀子
亀山 康子  工藤 拓毅
住 明 正  高村 ゆかり
原沢 英夫  松橋 隆治
三村 信男
 
 横田 洋三

議題

1. 「第二約束期間以降のコミットメント案」について
2. 「気候変動に対する適応策」について
3. 「中間とりまとめの骨子(案)」について
4. その他
  

配付資料

資料1  第二約束期間以降のコミットメント案について(明日香委員提出資料)
資料2  気候変動に対する適応策(三村委員提出資料)
資料3  中間とりまとめの骨子(案)
参考資料  ロシアの京都議定書批准の状況について

議事録

午後1時00分開会

○水野国際対策室長 それでは、定刻でございますので若干遅れておられる先生方もいら
っしゃいますが、始めさせていただきたいと思います。
ただいまから気候変動に関する国際戦略専門委員会第6回会合を開催したいと思いますそれでは、議事進行につきましては西岡委員長、よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 本日もご多忙のところご参集いただき、どうもありがとうございます。本日、お手元に議事次第がございますけれども、議事が3つございます。これまでの議論が3月からずっとやってきまして、月1ぐらいでやってきましたけれども、特に長期第二約束期間以降の枠組みをどうやってやるかについて、いろんな論点を挙げるというのがこの委員会の仕事でございます。今回とそれからもう1回、COP10前に開かせていただきまして、そこで言ってみればたたき台といったものをまとめておこうということで進んでおります。
 これまでいろいろと論議してまいりましたけれども、今日は主に2つ、議題の1と2にありますけれども、2つについてこれまでの続きということで委員の方のお話を紹介したいと。1つが第二約束期間以降のコミットメントということ。それからもう1つが適応策、このあたりが非常に最近話題になっておりますけれども、これにつきまして2人の委員からお話をうかがって、そして3番目は、それでは最終的に次回とりまとめが出るわけでございますけれども、それをどういうところを気をつけてやっていこうかということで、皆
さんのご意見をいただいておきたいという構成になっております。
 本日、三村委員が1時間くらい遅れるということでございますが、最初に明日香委員からのお話を紹介いたしますが、その前に本日の会合は3時間ということでございますので、途中でできたら休憩を入れたいという具合に考えております。
 まず最初に、資料の確認をちょっとお願いします。それから簡単な説明がありましたらついでにお願いします。

○瀧口室長補佐 資料の確認をさせていただきます。
 議事次第がございまして、資料1がA4横長のパワーポイントの資料で明日香委員にご提出いただいた「第二約束期間以降のコミットメント案について」というものです。資料2が三村委員にご提出いただきました「気候変動に対する適応策」、これもパワーポイントのA4横の資料でございます。それから資料の3が「気候変動問題に関する国際的な戦略について中間とりまとめ骨子(案)」というA4縦の資料でございます。それから参考資料といたしまして、「ロシアの京都議定書批准の状況について」という資料を付けさせていただいております。
 もし資料の不足等ございましたら事務局の方までお申しつけください。
 それから続いてこの参考資料を簡単にご説明させていただきますと、今京都議定書はロシアが批准すればその90日後に発効するという状況にあるわけですが、ここ1カ月ほどの間にロシアの批准の作業が進んでおりまして、先週金曜日、10月22日にロシアの下院、いわゆるデューマと呼ばれております国家院はこの議定書の批准法案を可決しております。この議定書批准につきましては、このあと上院での可決を経て国会での審議を終了いたしまして、その後、プーチン大統領の署名を得て、議定書の批准書が国連に寄託されて事務手続きが終了するということになっております。京都議定書はこのロシアの批准を経て、90日後に発効することになっております。
 この下院の批准承認につきまして、小池環境大臣の方から「ロシアの批准に向けた大きな前身であり、歓迎する」との大臣談話を発表しております。この議定書を発効するということになりますと、またその次をどうするかという議論も本格化するものというふうに考えられるわけです。環境省といたしましては、今後も上院の審議の状況等について引き続き注視していきたいというふうに考えております。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございます。批准のロシアの問題につきましては、今日のあとの議題では特に話題にならないと思いますが、何かご質問ございますか。
(発言する者なし)

○西岡委員長 それでは、次へ進みたいと思います。最初の議題ですけれども、「第二約束期間以降のコミットメント案」ということで、明日香委員からのご説明をお願いしております。コミットメント案といいますと、いかにもハシッとした枠組みが出てきそうな感じもしますけれども、多分どういった論点があって、それをどうその枠組みの中に組み込んでいくか。言ってみればその基礎的な考え方といったものを説明していただけるのではないかと思います。よろしくお願いします。
(スライド)

○明日香委員 ただいまご紹介にあずかりました東北大学の明日香です。よろしくお願いいたします。今お話があったようにコミットメント案というよりもコミットメントの考え方の整理ということで淡々と話してくださいというリクエストがありましたので、淡々と話をしたいと思います。ですが、内容が非常にコントラバーシャルであることは確かですので、後ほどの議論につながるような話にさせていただきたいと思います。
 いろんなコントラバーシャルな議論がたくさんあるのですが、私は一応3つ視点として重要なのではないかなと。単純な言葉なんですけれども、まず合理、理に合うかが1番目、 2番目が倫理、倫理というといろいろ難しいんですけれども、一番基本的な「自分がやられて嫌なことを人にするな」というのが、どこの宗教のどこの国の倫理にも最初の1ページにあるそうなんですけれども、多分そこがポイントにこれからもなっていくと思います。そして3番目が経験、経験というのは既にいろんな技術協力、いろんなコミットメントが国際間なり国内でやられていまして、それの反省なりレビューをして新しいものをつくるべきと考えていくべきではないか。
 その3つ、合理的なところ、倫理的な側面、そして経験、その3つを皆さんお考えになりながらお話を聞いていただければと思います。
 内容としましては構造、評価基準、代表的なコミットメントの提案例、検討する上での視点、まとめというふうに分かれてお話をさせていただきます。
では、最初のコミットメント案の構造に関してお話をさせていただきます。
(スライド)
 構造自体にここにありますように、非常に何段階にもある構造になっております。それぞれの案がこの6つポイントをすべて含んでいるものもありますし、1つだけ含んでいるものもありますし、3つだけ、それぞれ含み方も違うというところは問題があります。順番にお話をさせていただきます。
(スライド)
 まず、今回の委員会でも特に最初の方にお話がありました長期目標の対象とタイムフレーム、かつその対象になります濃度にするのか排出量にするのか、それとも温度上昇の上限値。例えば最初にお話をしますと、EUは温度上昇の上限値というのを最初の長期目標として、一番重要な目標として考えています。ですが、例えば気候変動枠組条約では温度の安定化というのが謳われておりまして、そのどれをとるか。かつそのどれをとった場合に、その3つがどういうような関係になっているのか。ここでまた確実性の問題が出てくるのですが、その確実性を考えながら、どういうような目標数字をとっていくかというのが論点になるかと思います。
 次にタイムフレーム。長期目標というと、やはり2100年なのか2500年なのか2050年なのか、そういったような議論というかそういう数字を決めなければいけないことになると思います。
(スライド)
 では、どういう長期目標を決めるべきなのかというところは非常に大きな論点になったと思います。IPCCがどこまでいってくれているかという問題なんですけれども、多分IPCCはこれしかいっていないんですね。なので、ある意味でIPCCはこれをどう解釈するかというのを政治家なり一般の人、我々に問いかけている。そこで突き放しているんですね。ですが、突き放しているといいながらも、ある程度見えるような形で突き放していまして、この折れ線は私が引いたものですが、今一生懸命科学者なり研究が進んでいる分野というのは、これを確率分布というのでしょうか、閾値を考えてどのような確率分布でどういう事象が起きるかという細かい計算、そういうペーパーがたくさん出ています。
 これはまだ科学がもっともっと進まなければいけないところなんですが、よりリスクが何パーセントという形でこういう事象が起こるということが、今科学者の方がたくさん数字を出していますし、それをどう解釈していくかということになると思います。で、EUの2℃というのは見ていただければわかりますように、その2℃がやはり上限なり閾値として考えるべきなのではないかという、このグラフを見てからの結論だと思われます。
(スライド)

 では、その長期の目標とでは中期・短期はどうなのか。中期・短期は要らないのか。中期・短期を考えたときに、その長期とどういうふうに関係づけるのかという問題になります。まず温室効果ガスの排出量を、どういうふうに考えるかということが問題になります。これは京都のときにも問題になっているのですが、CO2あるいはGHG全体を考えるのか。フロンみたいなものを考えるかどうかということなんですけれども、まさに京都のときには実はあまり皆さん、CO2に限った方がいいというような意見が多かったと私思ってはいるんですが、今ふたを開けてみてCO2に限ってみたら、どうなっていたかというのは非常におもしろいところで、特にそのCDMはCO2以外のガスがある意味ではほかのCO2案件を駆逐しつつある状況ですので、多分京都のときにはこういうことは誰も想像できなかったと。なので、こういう論点一つひとつが将来に大きな影響を及ぼすというのは非常に、そういう意味では重要な怖いところでもあります。
 で、ずっと争点になっています吸収源の扱い、バンカー油、この前もちょっとお話をいたしましたけれども、飛行機なり国際海運由来のCO2排出量をどこにどういうふうに、誰がどのように責任をとるかというのは、もう既にUNFCCCの外でも議論になっております。で、政策措置に関してはまた後ほど詳しくお話させていただきます。
(スライド)
 長期目標の一番の問題点というのは、長期目標だけを決めてしまうとそれで何もやらなくなってしまうのではないかというようなのが一つの意見でした。なので、それに対応するためにはどうしても中期目標を具体的なアクションなりコミットメントを考える必要があるということで、中期目標にもさまざまな意見が出されています。で、コミットメントの期間を1年か5年か10年か、あるいはそれ以外かと。よりバラエティに富んだ案が出されています。
(スライド)
 対象主体、この辺からだんだんコントラバーシャルになっていくのですが、対象主体として地域を考えるのか、国を考えるのか、民間を考えるのか、地方公共団体を考えるのか、NGOを考えるのか、各セクターを考えるのか、そこで国家とは何かとかそういうところまで議論が進みますし、国家の権限、政府はどこまで権力があって義務があってというような法律的な話にも絡まってきています。
 合意の形態も国連、UNFCCCというのは国連条約ですので、その内か外か、UNFCCCが交渉が難航したときにUNFCCC以外のところで交渉するかどうかというような話になります。で、地域間、二国間。今ユニタリズムなりデュアリズムという言葉がよく出てきますが、まずその温暖化の問題でも二国間の流れというのでしょうか、そういう流れがあることも確かでありますし、それを止めようとする流れがあることも確かだと思います。
 様式、これも非常にコントラバーシャルなんですけれども、法的拘束力の有無、不遵守時の措置というのがあります。例えば不遵守したときに今の場合ですと、どちらかというと罰則(ペナルティー)がありますが、ペナルティーではなくて例えば遵守できなかった国に対しては、資金なり技術を提供した方がいいんじゃないかというような考え方もあります。ですが、そのような考え方に関しては例えば日本やアメリカが不遵守したときに、どこの国が技術なり資金を提供してくれるのかなという疑問も持ちますし、先進国に対して、また途上国に対してもそういうような多分区別分けが必要になってくるのではないかと思われます。
(スライド)
 コミットメントの対象と数値目標の性格ですが、まさにここら辺は非常にいろんな案が出ているところです。温室効果ガス排出量だけでも排出総量にするのか、アメリカのブッシュ大統領が出していますコミットメントは排出強度です。で、一人当たりの排出量を全体的に同じレベルにしようとか、何年に何トンにしようとかそのような議論が出ています。で、過去からの累積排出量、これはあとでブラジル提案として出ますけれども、責任論から、特に先進国が産業革命以降出した累積排出量がイコール責任の大きさじゃないかということで、これを基準にして考えていこうというような意見は、特に途上国の方から強いものがあると思います。
 政策・措置なんですが、温室効果ガスの排出量のそういう数値のコミットメントを持ってから、それから政策・措置を持つのか、それとも政策・措置だけを持つのか。これでもまた全然話が違ってくるのですが、具体的に政策・措置とはどういうものがあるかというと、エネルギー効率基準、スタンダードみたいなものをつくる。で、それに統一していくよう努力をすると。
 で、資源の効率的な利用に関しても、またこれもスタンダードみたいなものを考えるということです。で、化石燃料への補助金廃止、再生可能エネルギーの導入量に対してコミットメントをする。数量でコミットメントすると。で、国際的な炭素税の導入。技術開発・協力・移転、ここら辺になると非常に曖昧なものになってきますけれども、政策・措置の一つとして技術協力でそれをもっと発展させた形で、技術協力のプロトコールみたいなものをつくろうという意見もあります。
 今日は私のところは適応措置はあまり議論をしないで、次の三村先生のところでお話になると思うんですけれども、適応措置といわゆる緩和措置のバランスというのでしょうか、政策・措置のところで適応措置もやると。で、適応措置をやったことによって、バランス的に適応の方を弱くするとか強くするとかそういうようなことも議論になっています。
数値目標の性格としましても絶対値か変化率、変化率という言葉はあまりよくないのかもしれませんけれども、先ほど申し上げました排出量にしたら一人当たりの排出量を何トンまでにすると。それ以外では何年度比で何パーセント削減すると。で、何年度比というのが非常に不平等、不公平という議論もありますので、BaUから何パーセント削減するようにすればいいと。この辺もいろんな案が出ていまして、どれがいいというのは単純には言えないというところであります。
(スライド)
 だんだんさらにコントラバーシャルになってくるのですけれども、コミットメントを差異化する必要があると。多分その差異化する必要があるということに関しては共通理解なり共通認識があるとは思うんですが、では、どう差異化するかというのが一番の問題になってきます。
 各国共通の一律目標か、差異化された目標か、京都のときにはアメリカが各国共通の一律目標ということを最後まで主張していたと、私は認識していますが、日本は差異化された目標に最後までこだわったと。で、最終的に1%か2%の差ということで、それはどちらが勝ったかはなかなか難しいところなんですけれども、少なくとも京都に関しては、先ほどの最初のお話に戻りますが、合理的な目標設定、差異化ではなかったと。なので、では、合理的とは何かという話になっていきます。
 で、段階ごとに異なる目標。これもいろいろ意見があるのですけれども、少なくともある程度、その国の発展段階に似合った応分の対応をすると。応分の責任を持つというのが比較的理に合った考え方ではないかと私は個人的に思いますし、多分例としては税金みたいなものを考えますと、税金とどこまで共通点があるかどうか難しいのですが、少なくとも累進的なもの、世界である程度累進的なものに税というのはすべてなっていると思いますので、そのようなある程度その国なり、その人の状況に合せたものにコミットメントをしていくというのは、比較的理に合ったやり方ではないかというような議論は普遍的にあるのではないかと思います。すみません、回りくどい言い方で恐縮ですが。
 次はコミットメントの補完措置。ここも実は一見すると、そうですかということなんですけれども、実は奥が深くて非常に金額に、特に費用に大きく係わってくるところであります。
 柔軟性、繰り越し(バンキング)や借り入れ(ボローイング)がどのような意味を持つかというのは経済学的にも今いろいろ、まだはっきりわかっていないところで戦略的にどういうタイミングで、どういうことをやればどうなるかというのは非常に数学的な問題、理論の話になりまして、実は見えていないところです。
 2番目の市場メカニズムの活用。これももしかしてこれを入れるか入れないかで数兆円、国のコスト費用が変わる可能性があるという意味では非常に大きなものだと思います。
コストの考慮としまして、これはアメリカのシンクタンクが前から言っていることなんですけれども、ある程度コストはオーバーになったらそれ以上払わなくいいと。それはクレジットの価格に上限を付けるという方法もありますし、国のコストということで考えるやり方もあります。ですから、当然そのときにカーボンクレジットの上限をどういうふうに考えるかというところで、簡単に結論は出ないというのが現状だと思います。
(スライド)
 先ほどの最初の6つのいろんな構造があるというふうに申し上げたのですけれども、結論としましては最初に申し上げたように、要素の組み合わせとして整理される。パッケージというと、たくさん詰まっているようなことを想像するかもしれませんけれども、詰まっていないものもありまして、単純にこれだけでやればそれでいいと。数値目標がなくてもいいというようなコミットメント案もあります。で、気候変動枠組条約や京都議定書の交渉の際に、既に取り上げられたコミットメントもあり、それらの経緯を整理しておくことが必要。で、複雑すぎるコミットメント案も問題。
 その2番目のはこれから紹介していきますブラジル提案、Per-Capita Convergence、マルチステージなどがどちらかというと古くから議論されていて、提案されていて、十分に検討されているというような意味合いで紹介させていただきます。
 3番目はマルチステージのときにも話をいたしますけれども、あまり細か過ぎると、簡単に言えばみんなついていけないというようなことが出てきます。で、英語の言い方でKISS、"Keep It Simple Stupid"という言い方があるんですけれども、このコミットメントの話でも多分通用するようなものかもしれません。
(スライド)
 では、いろいろ案があるのですけれども、それを評価しなければいけないと。その評価をするときに価値判断が入るのですけれども、なるべく入らない形で判断しようと皆さん努力をしているのですが、やはりどうしても価値判断が入ってしまうのが現実です。
(スライド)
 その評価基準としてよく言われているのが衡平性、環境保全効果、政治的実現性、実行容易性、コスト効果性。環境保全効果を真ん中に置いた意味合いは、やはりそれが一番優先順位としては高いべきではないかというような考えで真ん中に置かせていただいたのですけれども、例えば中国一国だけが排出削減をたくさんすれば多分衡平性は欠けるかもしれませんけれども、環境保全効果はあるかもしれない。で、政治的実現性ももしかしたらゼロではないかもしれない。だからそのようなまさにトレード・オフみたいなところがありまして、どう考えるかによってその人の社会、国際政治の見方なりもいろんなものが入ってくると思います。
 で、ここにも赤で書かせていただきましたように、どちらかと言えば何のための議論をしているかということが忘れがちではないかと私は思います。例えば政治的実現性だけを考えて、アメリカを入れればいいんだと。じゃあ、アメリカを入れてどうなるんだと。CO2は減るのかということは全然考えていない案がありますので、そういうものは少なくとも温室効果ガスの排出削減という意味合いは非常に少ないよということを認識して、理解した上で議論をするべきだと思っています。
 その2番目に書きましたように、GHGが減るかどうかというのは減ってなんぼという世界でありますので、減らないような案をいろいろ議論してもはっきり言って時間の無駄になり、意味がないのではないかというような、極言すればそういうことも言えると思います。
(スライド)
 評価基準としまして、国ごとの衡平性の確保。実はあとで考えたのですが、これは国ごとプラス多分、一人当たりの人間ごとの衡平性の確保というふうにも読めなければいけないのかなと思ってはいます。この衡平性のところで私紹介させていただいたのですけれども、4つ考えられるのではないか。で、実際、この4つがいろんなコミットメント案で出てきます。ポイントは、これは個人的なポイントなんですけれども、優先順位があるのではないかと。基本的に電気がない地球で今大体16億人、電気がない生活をしているのですが、その人たちに電気は使っちゃだめだよというようなことは、多分誰も言えないのではないかと。
 経済的負担対応力がない人に対して、たくさんCO2を出しているのだから納得しなきゃいけないんですよと、石炭を使わないで天然ガスを使ってくださいというようなことを、石炭も買えないような人たちには多分言えないんじゃないかと。
排出責任というのはその3番目にあって、そうはいってもたくさんCO2を出して、CO2というのははっきりいって汚染物質であり有害なものだというような、単純に考えればそう考えられる物質ですので、それを出したことによって責任を問うと。いわゆる汚染者負担というようなのが3番目に。それはどうしても重要なエクイティーのルールとしてあるべきではないかというのも何となくわかると思います。
 4番目が排出既得権。今まで世の中は何というんでしょうかね、もうそういうものだから満たしているものはそういわれても、前からずっと出しているんだからそれを問われても困るよというような議論というのは、少なくとも前の3つのルールなりエクイティーの原理に対しては説得力が低いことではないかなと考えられると思います。なので、この4つをどういうふうに具体的に数値化するか、この優先順位をもってオペレーショナライズするかというのが、実はコミットメント案を考えるときに非常に重要な要素となってきます。
(スライド)
 代表的なコミットメントの提案例として3つ紹介させていただきます。
(スライド)
 最初はPer-Capita Convergence、この3つ以外にも最初に申し上げたようにいろんな変化形なり組み合わせがありますし、百花繚乱のような状況ではありますが、なぜこの3つかというと、この3つがそれぞれを各国がその政策としてとったときに、CO2がどれだけ減ってそれがどれだけコストがかかるのかと。で、いろんなファクターをちょっと変化させたときに結果がどの程度変わっていくのか。そういう計算がすべてなされたのはこの3つだけなんです。このモデルなのでほかのいろんな案はあるのですが、温暖化対策なりコストがどの程度かかるかという議論は、それはわからない。この3つだけがある意味ではそういうところまでやられている、十分に検討されているという意味でこの3つを紹介させていただきます。
 一人当たりの排出量の収束。これはもともとインドのシンクタンクの方、イギリスのNGOから出された案で、一人当たりの排出量は、大気は公共物ということで排出権を等分に分配すると。で、2050年あるいは2100年に一人当たりで同じ排出量に収束させていくと。で、原理としては先ほど出ましたように平等と主権。今の排出量からすぐできますので、ある意味では既得権を認めているのですけれども、平等という意味では人類みんな平等だというような考え方に則っています。
 で、途上国、先進国で一定の支持を得ているというのは言っても過言ではないと思います。途上国ももちろんいろんな意見があるんですけれども、特に一人他当たりの排出量が低い国にとっては衡平性をアピールしやすい案ですので、一定の支持を得ている。先進国の中でもそういう平等ということに対して非常に親和性を持つ人々にいたっては、例えばPer-Capita Convergenceというのを前から主張していますし、EUも、これをそのままEU案としては取り入れてはいないのですけれども、こういう考え方はある程度取り入れたものになっています。
 一人当たり人類みんな平等というのは比較的わかりやすい、みんながそうだと思いやすい考え方であることは事実ですので一定の支持を得ている。ですが、例えば収束するのを2100年にするのか2050年にするのかで、全然コストなり国ごとの負担というのはまた話が違ってくるということになりますので、そう簡単な話ではありませんし、一人当たりの排出量が多い、今少ないのですけれども、例えばインドなりアフリカに比べて多い。中国などはどちらかというと、これに関しては諸手を挙げて賛成ということではないのです。
(スライド)
 ブラジル提案。これは今UNFCCCで議論されていて、そういう意味では歴史的にいろいろ十分検討されていると。で、いろんなモデラーが関わっていろんなバージョンを考えているという意味では十分検討されている案だとはいえると思います。で、温度上昇に対する寄与度が差異化している。で、先進国の歴史的責任の追求が提案初期の目的であって、UNFCCCの場で検討されている唯一の枠組みです。ですが、パラメーターをちょっと変えることによって、かなり各国の負担なり削減量は変わってきます。特に評価年、開始年、ガスの種類、森林吸収量をカウントするかどうかによって、各国の負担なりコミットメントの大きさは変わってくるという意味で怖いところもあります。
(スライド)
 マルチステージ・アプローチ。これは最後の行で書いてあります。EU案として採用される可能性があるのではないかと個人的に思いますし、EUの方に聞くと比較的人気というか十分に検討されていることは事実だとは思います。で、この前もちょっとお話させていただいたのですが、それぞれのステージに分けてあるステージ、ある段階に、発展段階に入った国はそれなりの応分のコミットメントをする。で、だんだんそれが厳しくなっていくと。そして最初は義務がないけれども、2番目は排出強度、3番目は排出量が安定化していくと。4番目は排出削減をしていくと。例えばいわゆる先進国というのは第4ステージですし、京都議定書で先進国に入っていなかった例えば韓国なりメキシコも、ある手法で考えると第4ステージにいきなり入らなければいけないということになっていきます。
 その閾値の考え方として、一人当たりのGDPと一人当たりの排出量を単純に足して2で割ったものが、先ほどのエクイティーの衡平性の優先順位から考えて一番妥当ではないかといような議論がされています。もちろんこれにもう一つ、他のパラメーターも入れて3で割るとかいろんなバージョンがあるんですけれども、それぞれのバージョンをしたときに各国はどのような排出削減量になるかという計算もされていまして、この2つを2で足したものがどちらかというとソフトランディングというんでしょうか、各国に対してアブノーマルなプロポーションの負担の削減をしないというような計算も、既にそういう研究も結果をなされています。
 これのアプローチのいいところというか悪いところは見ていただければわかりますように、いろんな変化形が無限に可能なんですね。もちろん閾値をどういうふうに考えるかというのもありますし、排出強度にしないのかと。で、安定化の時間を例えば10年にするのか20年にするのか、5年にするのかと。で、いろいろ考え方があります。ですが、ある意味ではあらゆる案がこれに入れられるといいますか、入れ込めるというような意味でもこれから多分EUが出していく案になりますでしょうし、ある意味ではこれが中心の一つとして数値目標を持ったという、持つべきだというような考え方の前提に立った場合には、このアプローチが重要な役割を担っていくのではないかと思われます。
(スライド)
 最初に申し上げましたように、いろいろあっても結局どれだけ削減しなければいけないのかと。で、そういう削減をするのにいくらぐらいお金がかかるかというのが特に政策を決定者は知りたいところでして、先ほど申し上げましたようにその3つに関しては細かい計算がされています。ここではあまり細かい数字の計算方法等に関しては説明いたしませんが、GDPの何パーセント、大体0.何パーセントか多くて1%、でも地域によってちょっと多いところもあるけれども少ないところもあるというようなことだと思います。
 当然、国によっても一人当たりの排出量は多いけれども、一人当たりの所得は低いというような国もありますので、そういう国にとっては一人当たりの排出量が大きく出るような卒業指数の、先ほどの2で割るとか3で割るとかそういう話ですけれども、そのような基準でパラメーターで分けてコミットメントを差別化していきますと厳しくなるというところですね。で、単純に考えてもわかるようにアフリカのような一人当たりの排出量も一人当たりの所得も非常に小さい地域にとっては、最初は何もしなくていいですし、もし京都メカニズム、いわゆるCO2の取引を入れるとすると、かなりクレジットを売ることによって収入が入ってくるということになります。
 その収入なりそのファイナンシャルフローの大きさが、どれだけかというのも既に計算されていまして、もちろんそれはどれだけのコミットメントの大きさになるかというのによるのですが、少なくとも例えば550ppmで安定化する。そう決めたときに世界中で排出できるCO2の量というのは決まりますので、そうすると多分クレジットの価格も大体わかってくると。50ドルが100ドル、200ドルになるんですけれども、それで単純に計算をすると何十兆円のお金が動くということになります。で、どの国からどこの国に動くかというのもある程度計算はされています。
(スライド)
 コストの比較なんですけれども、当然日本にとってどういうインプリケーションをもつかということなんですけれども、これは日本というよりも先進国にとってはそのレジームの違い、例えばマルチステージなりPCC、一人当たりの排出量を2050年、2100年で同じにするというようなのをとったとしても、そういうレジームの違いはあまり関係なくて、温度設定の方が先進国の排出削減必要量に対して大きなインパクトをもつ。具体的にいいますと、550ppmで安定するか650ppmで安定化させるか、その100ppmの違いというのは非常に大きくて、550になればよりそれははっきりするんですけれども、アプローチの違いというのは先進国にとってはそれほど大きくはないと。けれども例えば一人当たりの排出量で2050年で収斂するようなアプローチでは、アフリカほかの国々は一人当たりの排出量が非常に低い、小さな国々は非常に現金収入が、クレジットを得ることによって収入が入るというようなことで途上国によってはアプローチの違いによって、かなり現金収入の違いが出てくるということはいえます。
 いずれにしても550なり650という世界での排出量にキャップ、キャップという言葉はよくないかもしれませんけれども、ある程度制約があるということを認識して、それを目指して分担するなり排出量を分担しようというような考えに立ちますと、で、そのような計算をしていきますと、多くの途上国は2025年ぐらいから削減開始が必要になってくると。で、先進国に比較して一人当たりの排出量を基準にすると……。あとにちょっと衡平性の話に出てくるのですけれども、2025年ぐらいから削減開始が必要で、そのときの一人当たりの排出量というのは先進国が排出削減を始める一人当たりの排出量よりもかなり早い段階で途上国は排出しなければいけないと。それは非常に途上国にとっては不公平だというような議論をしている途上国は非常に多いです。
 かつ、具体的にどの地域、どの国が大変かという話をしますと、一人当たりの排出量を基準とすると、具体的にはロシア、中東欧諸国の負担が増大してくるということになります。先ほどのコストがGDPの何パーセントという数値の紹介をしたと思うのですけれども、やはりあの中でも、特にロシア・中東欧諸国の負担が大きくなってくると。これはそれは当然なんだというような考え方もありますし、いや、それはちょっとかわいそうなのではないかと。かわいそうという言い方はよくないかもしれないんですけれども、ある程度考慮するべきじゃないかというような考え方もあると思いますし、実際にロシアを入れるためにはそこら辺は考慮する必要があるということだとは思います。
(スライド)
 コミットメント案を検討する上での視点です。だんだんまとめになっていくのですが、「科学的な知見のコミットメント案への反映」と。何をもって科学的かというのも非常にコントラバーシャルだと思うんですけれども、多分我々はIPCCの研究をもとにした発展させた研究を参考にするしかないと。それが何をいっているかというと、大体どの計算もこのようなところに落ち着きつつあるとは思います。どういうことかというと、2℃の上昇に押さえるためには気候感度を平均値の2.5とした場合に、2020年にピーク、2030年ごろに1990年レベルまで削減することが必要だと。そのためには先進国が削減を開始する場合よりも、かなり低い一人当たり所得の段階で途上国は削減の開始が必要となる。先進国も当然大幅な削減が必要だと。ただし、コスト的にも技術的にも大幅な削減は不可能ではないと。
 かなりいろんなことをここで言っているんですけれども、まず気候感度の平均値は2.5というのは、今は1.5から4.5というような幅がある気候感度になっています。この気候感度で幅があることをもって温暖化には非常に不可欠だからそれほど対策をしなくてもいいんじゃないかという議論があるとは思います。ですが、私が考える真っ当な考え方というのは、では、その気候感度が確率分布なりしたときに例えば4.5と考えたときに、例えば550ppmで本当に2℃で大丈夫なのかと、2℃ではなくて4℃になるんじゃないかと。4℃以上になる確率はどうなのかというような計算がだんだんされています。
 で、実際に550ppm、CO2イクイバレント(equivalent)なほかのガスを入れてもなんですけれども、それでも2℃に押さえられない可能性、4℃以上になる確率も20%ぐらいあるんじゃないかという計算がされています。その20%というのをどういうふうに考えたかということなんですけれども、例えば交通事故が起こる確率が20%あるような車というのは、多分だれも乗らないでしょうし、多分そこら辺の、1%という議論だと乗る人もいるかもしれないのですけれども、20%とか30%という確率で起こる、4℃以上になる確率がそのようなときにどう考えていくかというのは、多分これからの議論の中心の一つになっていくのではないかと、私は個人的には思っております。
 かつ、衡平性という意味で2番目の途上国に対して枠組みに削減を義務化づけるというのは、非常にある意味では不公平なことだとおそらく途上国の人は考えていると思います。例えば一人あたりのPer-Capita Convergence自体も途上国にとっては人気があるというふうに申し上げたのですが、中国は山が2つといいますか、ある程度先進国はこういうふうに下げて、途上国はこう下げると。だからどっかでこういうふうに先進国は一回ドロップして、途上国は一回アップしてまた下がるというようなのだったらいいけれども、ただ単純に同じようなスピードで途上国が先進国の一人当たり排出量のレベルまでいかないのは、不公平なのではないかというような議論を政府も研究者もしています。
 最後にコスト的にも技術的にも大幅な削減は不可能ではない。これはまさにIPCで書いたことでありまして、もちろんコントラバーシャルなところでもあるわけなんですけれども、一つだけコストに関して言わせていただければ、有名なペーパーなんですけれども、550ppmに下げるにはIPCで10兆円か何百兆円コストがかかる。というような計算がなされているんですけれども、それを世界全体の100年後のGDPの大きさで考えるとどうなるかというようなペーパーがあります。
 それは2100年で達成できるようなGDPというのを、温暖化対策をすることは550ppmに下げることによって人類は2102年まで待たなければいけないと。だからたった2年間の遅れにしかならないと。もちろん、その前提として毎年2%GDPが世界で上昇しているというような前提をおいているのですが、ある意味ではそのコストというのは、絶対それで経済が壊れるとか世界がなくなってしまうというわけではなくて、定常的にGDPが拡大している社会においては、100年を考えたときに数年の遅れでしかないというようなことを議論している研究者がいまして、その人はアメリカの議会でも証言していまして、そこそこ納得する人が多いペーパーでもあります。
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 そうは言いつつも現実的にはインセンティブなりを考えなければいけないと。で、信頼性もなかなか今難しい状況にあるというのが現実だと思います。京都レジームを白紙に戻した場合、他のレジームの構築は可能、これはかなり……書いてあるんですけれども、個人的には京都レジームというのは非常に大切しなければいけないと思いますし、それを壊した場合に、じゃあ、どこの国がついていくのかということは非常に重要な問題だとは思います。
 この前申し上げましたように、例えば大量排出国だけで議論をするというのを仮に考えた場合に、じゃあ、大量排出国はどこなのか。それはちゃんと全部入るのか。どういうコミットメントをするのかという意味では、結局交渉の難しさは同じなのではないかというようなことは、大量排出国である中国の人がそういうふうにおっしゃっていましたので、多分そうなのかなとは思います。で、インセンティブをどう確保するか。このインセンティブという言葉は私はあまり好きではなくて、特に先進国に関してはインセンティブというよりも多分義務なのかなと思っています。例えば税金を考えるときに、インセンティブというよりも最初に義務が出てくるので、特に先進国に関しては義務という側面をもっと認識しなければいけないのではないかなと個人的には思ってはいるんですけれども、それはおいときまして、もっと大きな意味でのインセンティブ。特に数値目標なしに、何もないときで市場メカニズムや政策措置が機能するかという大きな問題があると思います。
 どちらかというと、政策措置を重要視する人たちというのは、数値目標は補完的なものというふうに位置づけている方が多いのですが、まさにこれはちょっと話がひっくり返った話であって、数値目標がなければ多分政策措置も実現しないでしょうし、市場メカニズムも、まして市場もそのように反応するだろうと。もし数値目標がなければカーボンクレジットの価格というのはほぼゼロに近くなるというのが、多分マーケット関係者に聞いたら100人中100人がそういうふうに答えると思いますので、数値目標がなくても市場メカニズムは使える、使うべきだと言っている人たちというのは、多分メカニズム自体がわかっていないのではないかなと、個人的には思います。
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 最後から2番目ですが、もう1つポイントとしては、先ほども申し上げたように何十兆円のお金が京都メカニズムを入れた場合に動くと。ですが、逆に京都メカニズムを入れなかった場合にその何十兆円のコストがより追加的にかかるというふうに考えれば、削減という意味では動いた方がいいというのは単純にモデルが示すところであります。もちろん、この何十兆円と
うのが例えばODAと比べてどうだとか、そういう民間投資とかではどうだとか、そういうような議論が出てくるのかなと思います。
 かつ、もう一つの、これも忘れがちな問題なんですが、特に中東では産油国なのでどちらかというと見えやすくて、中東の国々がいろいろなところで温暖化対策に対して消極的なのはわかりやすいのですが、例えばアフリカでも石油を輸出している国はありますし、ロシアも石油をたくさん輸出しますし、いろんな国が石油なり石炭、天然ガスを輸出しています。そういう国がある意味では影響を受けると。で、先ほど中東なりロシアが一人当たりの排出量が多いので、かつ一人当たりの所得が小さいのでGDPのコストが大きくなると、ほかの国々に対して大きくなるというようなことを申し上げたのですが、プラスこのようなエネルギー源収入、輸出の収入が減るという意味では、それらの国はダブルパンチになるわけなんですね。なので、そういうのをどういうふうに考えるかというのもこれからの争点になりますし、ロシアはいろいろ既に先制パンチというのでしょうか、いろいろ付帯条項を付けているようなのでこの辺はなかなか難しくなってくるとは思います。
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 「日本が進むべき道は?」というのは、ちょっとタイトルとしてはあまり好ましくなかったかもしれないのですが、おそらくEUは「気温上昇2℃以下」、「マルチステージ」をベースとした提案を行う可能性があると思います。もちろん、可能性が絶対100%あるというわけではないのですが、実際問題、EUの中で十分に検討されているものというのが、マルチステージなりトリップティックというEUの中での分担を考えたときに使った方法でして、そのトリップティックというのはセクター別なりいろんな細かい計算をしなければいけないので、特にEU委員会の人たちがこんな細かい難しいのは嫌だといって、どちらかというとマルチステージの方がEU委員会の中では人気があるのは確かだと、そういうふうに聞いております。
 多分そのいろんな方法ができるという、変化形が可能だという意味でもマルチステージ的な考え方を取り入れたアプローチというのは、これから議論の焦点になっていくと思います。ある国が発展段階ごとに応分のコミットメントをすると。それは非常にある意味では理に適った、最初に申し上げた合理的な考え方だとは思われますので、かつそういうふうに思う方も多いと思いますので、これをベースにしていろいろ提案をしていくことになるとは思います。
 一方、アメリカはなかなか、どんな一人当たりの排出量なり一人当たりの所得というものを基準として入れますと、当然アメリカというのは非常に責任もたくさん出してやるというし、お金もあるということなので、たくさんある意味ではコストを払わなければいけない可能性があると。で、単純に言えばODAみたいなものの下手したら数倍、数十倍の金額を途上国に対して払わなければいけないということになると。それを受け入れるかどうかというのはなかなか簡単ではないと思います。
 では、そのときに取引としてアメリカ国内での排出削減はある程度しなくてもいいとか、そういうようなことをしてくる可能性はありますし、実際そのような、ちょっと言葉を変えてマーシャプランという言葉を使っているんですけれども、アメリカが温暖化に対してのマーシャルプランみたいなものを新しくつくればいいというようなことを言っている研究者もいます。ですが、どこまでベースが、お金をいくらぐらい払うのかとか、政府の中でそういうコンセンサスがあるかというのはなかなか難しいところだとは思います。
 途上国の先進国に対する信頼の回復も重要。これはちょっと曖昧な言い方なんですけれども、多分途上国にとってはいろいろ不満がたくさんたまっている。逆に不満がたくさんたまっているから交渉に乗らないと。で、交渉に乗らないから先進国も不満がたまると。だからお互い非常によくない状況になっていると思います。どこかで断ち切らないといけない状況になっていると思います。
 日本はどのような選択や提案をすべきかですが、今までたくさんこういうコミットメント案なり、その構造がありますよという話をしたのですけれども、一つインプリケーションとしましては、やはり濃度をどうするか。もちろん数値目標を決めるかどうかにもよるのですけれども、どのような濃度の数値目標にするかによって、ある意味ではコミットメントの中身というのはだんだん見えてくると。で、アメリカはどうかちょっとおいときまして、特にいわれているEUとの競争力なりはそれほど問題にならないと。それよりも途上国へのリーケージの問題なりそっちの方が実は大きくなってくるし、実際、京都メカニズムというものを入れたときに、今まで以上にお金が動くことになりますので、そのお金をどういうふうに考えるかということを考えなければいけないと。
 アメリカは、アメリカを私どうすればいいか全然わからないのですが、正しいやり方というのはアメリカを無視してやって、アメリカがついてこざるを得ないような状況にもっていくというのが、多分可能かどうかは別にしまして正しいやり方なのかなとは思います。
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 まとめです。次お願いします。
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 最後になりましたけれども、コミットメント案は、各種要素を組み合わせたパッケージとして整理されると。あまり今回の私のお話では整理できなかったので申しわけないのですけれども、ある意味で京都議定書のときの議論と同じような議論が今、もうちょっとは話は進んだかもしれないのですが、構造的には同じような議論がされているという認識は間違ってはいないかなとは思います。ですが、それなりにいろんな案が出されていまして、実はお金がどの程度動くのか。京都メカニズムというのがある程度機能するというのが何となく見えてきましたので、そういったときにどうなるかというような研究は進んでおりますし、そのときいずれにしろ、根本的にはどこに評価のポイントを置くかということに決まってくると。
 コミットメント案への科学的知見の反映、国際交渉における信頼性やインセンティブの確保も重要。科学的知見という意味ではまさにその確率論的な議論はこれから増えてきますので、それをどう判断するか。10%の確率というのを大きいと考えるか小さいと考えるかということでもありますし、インセンティブという意味では、今までODAなりODA以外でもいろんな国際協力の枠組みがあったと思うのですけれども、それの反省も踏まえての新たな枠組みの構築、それをただ変えるのではなくて、それも反省なり直すべきところは直して、かつアディショナルでインクリメンタルな枠組みが必要だということだと思います。
 淡々と話をさせていただきました。また議論がいろいろあると思いますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。ちょっと予定の時間を過ぎていますが、非常に重要な事件ですので、どうも解説ありがとうございました。
 全般にこれから皆さんのご意見をおうかがいしたいと思いますけれども、1つは今のようなコミットメントということ自身を考えてみると、どういう項目があるかということで、今大体まとめていただいた中で足りないところもひよっとしてあるかもしれない。もう1つのひよっとしてあります論点は、こういうコミットメントということ自身の全体の枠組みといいますか、全体の流れの中で本当にこういう形で進むだろうかということも一つあるのではないかなと思いますね。その辺をある程度幅広に予測をしておいてどうでも対応できるように考えておく必要があるのではないかなと、私はお話をおうかがいしながら思っておりました。
 どなたでも結構ですので、どの点からでも結構でございます。ご意見のある方からどうぞ。
 まず、松橋委員。

○松橋委員 大変まとめてお話をしていただきましてありがとうございました。後半の方は特にコントラバーシャルで難しいのですが、前半後半通じまして、明日香先生のお話の中にあった科学的な知見のコミットメント案への反映ということに関しまして、若干コメントさせていただきたいと思います。
 先週、私、環境研の甲斐沼さんや何かと一緒にIPCCのLead Author会合に出かけてまいりましたWorking GroupIIIで対策の方なんですが、ちょうどそこでもこの話が出ておりまして、一つにはキー・バルネラビリティーズ(key vulnerabilities)ということで気候変動に関する危険な不可逆変化をどうやって抑えるか。どこのレベルで抑えたらいいのかという議論がクロスカッティングイシュ-(cross-cutting issue)という中で議論されております。
 全般を通じて感じましたことは、私自身はエンジニアリングの出身で対策というエネルギーシステムをきちんと技術的に見ていこうという立場なんですけれども、そういう研究者もおりますし、中には一定の意図を持って来ている人もいると。例えば大国政府と非常に結びついた石油業界の方がインダストリーのまとめをやっていたりとかですね。そうかと思うと、さっき550という話がありましたが、450ppmあたりを閾値というふうに言いたいNGOの方がいたりということで、非常に理系のまじめな研究者というとあれなんですが、に混じって、つまり国益という……国益だけじゃないな、いろんな組織のいろんな意図をもって発言する方が入り交じっているものですから。私も実は最初のアセスメント、90年のアセスメントレポートのときからドクターの学生で関わってはいたんですが、やはり座り心地のよくない会合ではありました。誰が何を持っているのか非常に見通しにくい難しいことでございました。
 ただ、いずれにしましてもIPCCの第4次レポート、これから数年をかけてまとめられるわけで、おそらくポスト京都の制度づくりにも一定の影響があると思います。今までIPCCはポリシーレラバント(policy relevant)ではないと言っていたのですが、今回ははっきりとポリシーレラバントであると。ただしポリシーニュートラルですと、政策には関係あることは書くけれども、どうしろということを具体的には言わないというような立場。そしてその中でキー・バルネラビリティーズというのが出てきて、それが2℃なのかあるいは450なのか550なのか。そういうようなことを論文をレビューする形でレポートに盛り込まれるのだと思うんですね。そうすると、それがIPCCのレポートに載ったという形で、おそらくポスト京都の制度の議論に一定程度の影響が否応なく出てくるのだと思います。
 当然、国家としてやるわけですから国益とか国家としての戦略、日本として取り組む場合は日本の国益、国家としての戦略ということと合せてもちろん地球環境をどうやって守るかという、さっき明日香先生がおっしゃられたようなことも総合的に勘案しながら出していくんでしょうが、私は正直一人の研究者として思いますのは、2℃の上昇とかあるいは550とか、こういうことに対して自然科学というか、住先生からごらんになれば一目瞭然なんですが、これに対して本当の意味での自然科学的な根拠はないということは、おそらくはっきりしていると思います。
 ただ、確実にはっきりするまで待つことはできないわけでして、どこかでリスク管理のための意思決定をしなければいけないのですから、その意味で例えば原沢先生も努力されているわけです。そういう意味ではせめてメイド・イン・ジャパンというか日本発の、日本のトップの自然科学の研究者を集めて、現状のトップの知見でリスク管理をするためにエキスパートジャッジメントで、どこまで抑えれば現状の知見としては危険な不可逆変化を抑える可能性が何パーセントあるのかという、それは非常に難しいことですが、自然科学の専門家のトップの方以上の判断を我々がすることはできないわけでして、できれば日本で一番優れたレベルの研究者を集めて、そういうペーパーを書いて、そしてIPCCのレポートに盛り込みたい。そうでないと一方的に欧米のペースでものが進んでいく。それは欧米といってもヨーロッパとアメリカと立場は違うわけですが、いずれにせよ彼らのペースで進んで引きずられていく可能性が高いなと思っております。
 とりあえず1点目これで終えます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。ほかにございましょうか。
 亀山委員どうぞ。

○亀山委員 すみません、私ちょっと今日このあと退席しなければならないので、先にコメントさせていただきます。きっとこれは次に三村先生のお話と大分関わってくることでしょうけれども、先ほどの松橋先生のご意見に同意する意見でございます。
やはり目標で2℃とか550ppmというのが大事だというのが一方であり、他方ではコミットメントの話があり、なかなかその間を結びつけるのがうまくいっていないのが現状だと思いまして、私もそのコミットメントのこの枠組みに関する研究をここ一、二年やっているわけですが、そこがどうも私自身歯がゆいところでございます。
 今日の明日香先生のお話も皆さん聞いていておわかりになったと思いますけれども、適応措置についてどう扱うべきかということに関する提案というのが、今のところほとんどなされてないのだと思うんですね。で、下手に適応の話をすると途上国に持っていかれるという危機感があって、政府の方もなかなか慎重なんですが、きっともう適応という話は途上国の話ではなくて、先進国を含めて全部の国がそろそろまじめに考えていかなければならないこと。
 そして例えば今回の台風の被害も、個別の台風の被害がこれが温暖化の影響によるものであるということはきっと科学者どなたも言えないし、言いたくないし、で、適応措置の話をしようというと、どの被害が温暖化によるものであるのかわからないために「難しいですね」というところで終わっちゃっているのが現実なんですけれども、そこで多分立ち止まっていてはいけないんだと思うんですね。
 とりあえず、例えば私は環境省の方にやっていただければなと思うのは、台風で今年何人が亡くなって、いくつの家が水没して自動車が何台だめになって、損保の方に多分聞けば大体わかるかと思うんですけれども、農作物の被害はどれぐらいあってという総額も全部出していただいて、この金額がもしかしたら温暖化の影響ではないかもしれないけれども、これぐらいの被害が日本で起きたんですよというのを数字でまず見せていただきたい。それで、じゃあ、それの対策をとるのに、これだけの対策はとってもいいんじゃないですかという話を、どうにかそういう形でもっていかないと。きっとこのコミットメントの枠組みの話というのは、いつも何か概念論的な話で終わってしまったり政治の力に振り回されたりしてしまうんじゃないかなということを考えている今日この頃でございます。
 以上です。

○西岡委員長 では、工藤委員お願いします。

○工藤委員 松橋委員の今のご意見、私も実は1回目の委員会のときに要領なかなか得ないまま申し上げたことがあったんですけれども。実際にこうやって議論を重ねてくると、最終的に濃度なのか温度なのかというそういったような議論になってきたときに、本当にみんなが信頼たる基本的な考え方、実証的な部分等も含めたそういったコンセンサスがない中でいろいろ議論すれば、今亀山委員が言ったようないろいろな交渉上の不確実性といいますか、思惑等も含めてよくわからなくなってしまうということがあるので、どういうタイムスケジュールでやるかは別にしろ、そういった科学的な、いろいろな意味での国際的合意なり懸案を得られるような検証というプロセスというのは、いろんな意味で非常に重要だというふうに思いました。
 そういった中で、先ほど委員長もちらっとおっしゃったんですが、9ページのそのコミットメント。コミットメントに対する考え方でここでは排出量というものを[1]と書いて、2番目に政策・措置という書かれ方をしていて、明日香委員がご指摘されているコミットメントをするものというのは、この排出量ということを意図されているのかどうなのかというところ、ちょっと気になったのですが。
 私自身の認識では、最近の議論というのはこういった量的なもののみならず、さまざまなコミットメントの仕方が多分あるんじゃないですか。という意見が出てきていると思っているんですけれども、それが今の段階では可能性ということをいろいろ探る意味で言えば、政策・措置の中身、例えば今亀山委員がおっしゃった適応措置のようなものである等々も含めたコミットメントの対象というのが、やり方というのがあるのかなと思うんですが、この辺は[1]だけをコミットメント対象にしているのか。[1]もプラス[2]というこのさまざまなものをイメージされているのかということを、ちょっとご意見でうかがいたかったんですけれども。
 それから結構数字って一人歩きするので逆におうかがいしたかったのは、先ほど20ページでGDP変化等の数字の各地域別のgainといいますか影響の数字が出ていたのですが、すみません、これは聞き漏らしたのかもしれませんけれども、どういったターゲットに対して、例えばミティゲーションだけなのか、そういったさまざまな固定化なり何なりということをいろいろ意図としたコストという概念なのか。ちょっとみえなかったので、もしご説明いただければと思います。
 それから評価基準というのが非常に大事だと思っているんですが、その中で特にこの実行容易性という言葉もできればもうちょっとお聞かせ願えればと。実行容易性というとそういった取組が進む、進まないということに何となく聞き取れるのですが、それっていろんな意味ではコストであるとか、そういったさまざまなものの組み合わせの中での結果としての実行容易性のような気がするのですけれども、そうではなく異なった定義があるのであるならばお教えいただければなと思います。
 あと最後に、さっきも聞き漏らしちゃったんですが、ロシアの付帯事項、留保事項の話がちょうど出て先ほどちょっと質問すればよかったんですけれども、実際にどういったことが明確にロシアは言っているのかと。もし新聞等ではうかがっているんですが、情報等をもし事務局の方でお持ちでしたらお教えいただければありがたいと思います。すみません、長くなりましたが、以上です。

○西岡委員長 それでは、もうお一方、高村委員までお願いします。

○高村委員 2点コメントさせていただければと思います。1つ目は、先ほど松橋先生、亀山さんからご発言がありましたことにかかわりますが、今回の明日香先生からのプレゼンテーションでは分類という形で簡単におふれになっておりましたけれども、現在出されている将来の枠組の提案を見ますと大きく2つのアプローチに分かれているように思います。
 1つは、温暖化防止のための長期の目標を明確に掲げてそれを達成するためにどうするかというアプローチ、ある意味でトップダウン的なアプローチ。もう1つは、アメリカ、それから途上国の位置の重要性にかんがみて、いかにみんなが参加できる合意可能な制度、アクションを合意し構築していくかという、どちらかといいますとボトムアップ的な考え方に基づく提案の2つの軸に分かれているように思います。
 2つについては、それぞれ、長期の目標を重視するトップダウン型は合意可能性の観点から批判があるかと思いますし、短期のアクションを重視する、その合意可能性を重視するアプローチからは、いかに長期的な温暖化防止目標を達成するかという観点からの批判があるかと思います。ここをどうつなげていくかという観点が、制度の議論においては重要にだと思います。その観点から先ほどの松橋先生のご指摘は、一つの具体的に考え得るアクション、とり得る当面の行動といいますか、議論の場となるのではないかと思いました。
 2つ目のコメントは、削減義務の提案に関しては、全体から見ますと削減負担をいかに配分するかという観点からの提案が多くを占めているように思います。そういう意味では制度案、将来の枠組みの提案という観点から欠いている点、重要であるけれども欠いているのではないかという点を3点述べたいと思います。
 1つは、亀山さんからご指摘がありました適応の問題です。これはこのあと議論があると思いますのでここではこれ以上言及しません。
 2つ目は、削減の負担を例えば途上国が負うにしても、そのコストをいかに国際社会が負担していくかという、コスト負担の観点からは資金の移転の問題が重要な論点になると思うのですが、その観点についてはこれまで出されている提案の中ではあまりふれられていないと思います。
 3点目は、温暖化対策総体にかかるコストというのが、相対的にはそうはいっても相当なものであるというふうに考えますと、いわゆるUNFCCCをベースにするとしても、国際社会全体としてこの資金や行動をいかにモビライズするかという点が、将来の枠組みのこれまでの提案の中には欠いているように思います。例えば資金供与機関はUNFCCC以外にもたくさんあるわけですが、その中で途上国の温暖化対策の促進、例えばそうした対策に対しての資金供与のインセンティブというのをどういうふうにつくっていくかという点は、今までの枠組みの提案の中にはないけれども、もう一つ大きく重要な点ではな いかというふうに考えています。
 以上です。

○西岡委員長 そしたらここでいったん切りまして、明日香先生、何か今までのコメントに対するコメントございますか。

○明日香委員 だんだんコントラバーシャルになってきて楽しく、楽しいという言葉はよくないんですけれども。皆さんおっしゃることはそれなりに確かにそうだと思うところはたくさんあります。
 最初に松橋先生のお話にあったのですが、2℃は我々の議論でもあったようにある程度ポリティカルなガイダンスというような、割り切るしかないなと私は個人的には思っています。何で2.1でないのか2.5では何でだめなのか、1.9では何でだめなのかという議論はどうしても出てきますので、そういうのは断ち切ってこれはある程度バリュータッチメントが入ったポリティカルな概念コストですよというような議論をしていくしかないと思います。
 で、まずそれが1点と、あと実際そうはいってもその画一なりコストベネフィット分析ということは必要となってくるとは思うんですが、個人的に言えば例えばそのコストをどう考えるか。将来のコストを5%で割り切ればすぐゼロになってしまいますし、自分の国の被害とほかの国の被害をどう差別化するかという話になると、結局ほかの国はどうでもいいよというようなことになってしまうのかなという危惧があります。なので、あまりコストベネフィットでやるというよりも、もっと大きな枠組みで考えていくしかないのではないのかなと。すみません、あまり私科学者ではないのでちょっと曖昧なことで答えさせていただきたいと思います。
 亀山さんのコミットメントなのか目標、工藤さんのお話にもあった政策措置をコミットメントと考えるかどうかということにもつながるのですが、私は両方とも数値目標も政策・措置もコミットメントの一つの種類だとは思っています。ですが、どちらをより上位に置くかというところで、私は数値目標を優位に置く。多分企業の経営者だったらそういう数値目標を一番トップに置きますし、そういう数値なしでのコミットメントなり具体的なアクションだけを出すような経営企画とかそういう人は、多分すぐクビになりますので、目標というのはインセンティブ、コミットメントの政策措置のインセンティブをつくるためにも不可欠ではないのかなと。
 で、いわゆる政策措置というのは補完的なものでしかないのかなと。私は元企業の経営企画室にいましたので、そこら辺ちょっとわかるかなと思います。
 3番目、なので、政策措置の重要性がないということを言っているだけではないのですけれども、あくまでも補完的なものに過ぎないのだし、目的と手段があって目的が数値目標で手段が政策措置、で、目標がなければ手段を考えてもしようがないのではないのかと。手段だけ考えるというのは、ちょっと順番があべこべになっているのではないかなというのが私の意見です。
 実行容易性なんですけれども、いろんなのがあるんですけれども、例えばメカニズムを使うためには途上国のBaUがどうなるのか。モニタリングが必要だとかそういうような意味合いでの実行容易性というふうに議論されていることが多いかなと。いろんな意味での実行容易性があるんですけれども、先ほどの何十兆円資金フローがあるというのも途上国でのBaUなり、途上国が排出権取引に参加するためのインフラが整っているというような、かつ市場がちゃんと動いているというのが条件になっていますので、そのような実行容易性というのが一つのファクター、基準になっているのかなと思われます。
 で、3つのアプローチでコストがGDP当たりいくらになるかというようなことですが、これは単純にいわゆるマージナルなアベイトメントコストというもののカーブで計算したものです。550と650ppm両方の場合で上限が550で、下限が650ppmになっています。当然マクロ経済的なものは入っていませんで、リーケージとかも入っていませんので、ある意味ではザクッとした数字なんですが、私の知る限りではこういうコストを計算しているのはRIVMというオランダの研究所だけでして、この前チラッチラッと聞いたのですが、日本の国環研なり京都の大学の研究者の方もこういう実際にコスト計算をやろうとしています。で、RIVMの場合はマージナルなアベイトメントコストの2つのデータベースを使っていまして、それほど大きな差はないということなので、多分今のコスト計算、マージナルなアベイトメントコストの計算でできる限りの計算の仕方では、この数字に落ち着くのかなと。で、排出権取引を入れたときにはかなり減る。例えば5%ぐらいだったものが1%になる、そのようなインパクトの大きさで減っていくということになると思います。
 高村さんの長期目標と各評価のアクション、トップダウン、ボトムアップと。私は長期目標があった方がいいという個人的な考えがありますので、あえて具体的なアクションなりボトムアップ的な形は今紹介しなかったという、意図的に政策的に紹介しなかったというところがあります。その理由というのは、やはり長期目標があるからこそボトムアップも必要になってきますし、ボトムアップだけで長期目標が達成されることはない、長期目標は必要になる。技術革新なり開発というのが、ただやるといっただけでやらないというのは今までたくさん例はありますので、スローガンで終わる可能性があるのではないかと。長期目標がなければすべてはただのスローガンになるのかなと。
 実際問題として一つ、私、技術移転を環境保全技術なり省エネ技術の技術移転も研究対象にして、どういうものがあったということを対象にして研究しているのですが、例えば日本の場合、地方でも途上国でもどこでもいいんですけれども、ODAなり経産省のグリーン・エイド・プランで数百億円の技術協力をやっています。
 結局、何があったかというと、ちょっと正直に直接的に申し上げますと、結局は日本企業への補助金みたいな形で、例えば途上国でその技術が普及したというような判断基準で見た場合、成功した例は数える程度しかないと思いますが、それが技術協力なり技術移転の現状でして、もともとそれは両方の問題がありますし、技術協力自体、技術移転自体が難しいことでもあるんですけれども。ただ単純に技術協力をやればいいというそういうコミットメントをするというのは、結局今と同じような政府の失敗なり、一部の企業は一時的に政府が買ってくれるからいいのかもしれませんけれども、それで終わってしまうんじゃないかなという危惧を持っているので、非常に具体的なアクションだけにコミットメントするということに関しては、懐疑的な考え方を持っております。
 最後に負担の分担なんですけれども、多分マルチステージなり今までのほかのコンストラクション・コンバージェンスでも資金移転はいわゆる排出権取引である程度実現されるのではないかと。もちろん、その排出権取引だけではいけないというようなこともあるのかもしれませんけれども、排出権取引をパッと考えただけでも550なり650でかけた場合に数十兆円と。今ODAが5兆円ですので、ODAの10倍ぐらいのお金が動く可能性があると。それで十分、十分というのは変な言い方かもしれないんですけれども、そのようなイメージが多分議論している中にはあるので、新たな資金の枠組み、資金の枠組みというよりもいわゆるトレードを使った枠組みというのがどちらかというと表に出ているのかなと思います。ですが、それも結局CDMでも何でもそうなんですけれども、数値目標がなければお金は動きませんので、繰り返しになりますけれども、目標がなければボトムアップのアクションも起こらないというのが私の考えです。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。ちょっと議事を早めなければいけませんが、ロシアの関係を。

○瀧口室長補佐 工藤委員の方からご質問のありましたロシアが下院が可決した際の付帯条件の話ですが、報道によりますと可決した際にロシアは第一約束期間について可決するのであって、第二約束期間、2013年以降の参加は未定だという条件で可決をしたということですが、これは実際問題、第二約束期間以降の中身というのは決まっていないわけで、そういう意味ではロシアだけではなくてEUや日本もその参加は未定なわけですが、実際に第二約束期間以降の中身が決まりますと、それは例えば京都議定書の改正であれば、その改正議定書に関しましてそれを受け入れるかどうかは、また各国の国会の批准手続等が必要になりますので、実際にロシアの、今回報道された付帯条件というのはそれほど特に何か新しい要素を付け加えるものではないのかなというふうに考えております。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございます。それでは、原沢委員。

○原沢委員 先ほどの松橋委員と亀山委員の話題はIPCCの第二作業部会でも問題になっております。そのIPCCの第二作業部会の執筆者会合が1カ月前ぐらいにあったんですけれども、日本からは5人の方が入っていらっしゃるのですが、残念ながら安定化濃度の係わるキー・バルネラビリティー(key Vulnerability)のところ章に執筆者がいないということが1つ。あと私はIPCCのアジアの章を担当しているのですけれども、そこでも安定化濃度の議論と同時に異常気象と温暖化との関係が議論になっています。そういう意味では科学的にも重要なトピックスになっているということであります。
 それに対して日本の研究はどうかというと、私自身は少し遅れている分野ということがありますけれども、温暖化イニシアチブという中で、戦略的にそういった重要課題を積極的に研究していこうという方向ですし、また環境省の方でもそういった研究をバックアップしていただけるということですから、早急にこういった課題に対して答えを日本として出せるような研究を進めて、それを積極的にIPCCの方にインプットしていくということが重要だと思います。
 松橋先生のおっしゃるとおりだと思います。
ビヨンド京都の問題として、科学的な知見が非常に重要になってくる。そこはやはり日本の研究で押さえていくというのは、今後ともこういった枠組みの議論の中でも重要になってくるのではないかと思います。一応コメントです。

○西岡委員長 松橋委員どうぞ。

○松橋委員 すみません、蛇足になって恐縮なんですけれども。今の原沢先生のお話とも絡んで先ほど明日香さんが2℃はもう割り切って飲み込むしかないとおっしゃったんだけれども、もしそれをはっきりおっしゃるのであれば、それははっきり言って間違っているというふうに、はっきりと申し上げることができますし、ただ、明日香先生の意図はそういうことではなくて、今の流れでいくと科学云々はともかくとして、それがそういう流れになっていかざるを得ないだろうという意図でおっしゃったのだと思いますので……だと思いますが。
 今、原沢先生のお話にもありましたように、日本側も鋭意努力しておりますし、また私としても自然科学の知見はありませんので、そこに立ち入ることはちょっと私自身危険だと思っておりますのでできませんが、それをシステムとして束ねて意思決定に活かしていくようなプロシィジャーについては、ある程度考えているところもありますので、ぜひ長いものに巻かれずにそういうアイデアを出していきたいというふうに考えております。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございます。では、住委員、甲斐沼委員の順番でお願いします。

○住委員 松橋さんが言われましたけれども、やはりサイエンスの現状はWorking GroupIのところでまとめられています。しかし、1+1は2みたいな形で結論を出せというのはやっぱり今の現状では難しいと思います。それは、あまりに自然の全体に関して知らないことが多いので、あくまでも現在の今までの知見に基づいた推測はできるんだけれども、それに基づいて、強制的に社会を変化させるまでの根拠があるかというと、やはりそこまでの根拠は無いだろうと思います。いわゆる科学者の訓練を受けた側からいえば、ポテンシャル的にこうした方がいいよとか、そういう形のガイダンスは可能であると思う。しかし、最後は僕は政策判断になると思う。
 そうすると、安定化濃度というのはいろいろあり得るので、一番のポイントは日本の国として実行可能かという点を考慮すべきと思います。おそらくそこの裏打ちがないと何もいえないような気がします。往々にして僕が心配するのは、えらそうに国際舞台に行って発言してきても、帰って来たら「そんなこと実行できるの」と言われるのが非常に怖いんですね。
 EUは実際できると思っているから強気なんだと思います。全然困らないと思っているような気がします。だからそういう裏打ちがあるとヨーロッパの連中は態度がでかくなって、ああだこうだと言ってくるわけですよ。そういう点で僕はどうしてもやっぱり本当にfeasibleな、日本として一応feasibleなプランがあって、それが何パーセントかという裏打ちがあって上でね。それがあった上で国際的戦略にしていかないとだめであると思います。
 安定化濃度の幅はある程度存在しますし、本当にだ丈夫かという議論を突きつけられますが、今のモデルの現状から考えたら、このモデルでやればこうなったんだということしかやっぱり言えないと思います。だから絶対正しいんだと主張したら、そんなものうそだろうと、直ちに反論されます。したがって、技術を基礎に実行可能な案を提案してゆくことが大事のような気がします。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございます。では、甲斐沼委員お願いします。

○甲斐沼委員 高村委員に関する質問のコメントなんですけれども、IPCCの第3グループの第3章の中の一つの節で長期的な目標の中での短期的な戦略をどうするか。あるいは短期的な戦略というのは長期目標の中でどういったふうに位置づけられるかをレビューするところがありまして、その長期の目標というのは2050年から2100年を対象としていますし、短期的には2020年か2025年のところを目標においております。
 先ほど松橋委員の方も言われましたが、IPCCではポリシーレラバントではあるがポリシーニュートラルという立場で報告書を書いています。シナリオの方では、今までは地域的には世界4地域に分けて報告していましたが、やはり政策と関連していくためには、国別のシナリオあるいはセクターについてはもう少し詳しいシナリオを出して議論していく必要があるのではないかなということで、第4次報告書では、地域シナリオのレビューをすることになっています。
 もう1点、先ほどの20ページの各国のコメントの比較で工藤委員からの質問もあったんですけれども、ちょっと細かい話で恐縮なんですけれども、この数値の前提条件を書いておくのが必要だと思います。ここの補足のところに例えば日本のところでブラジル提案は不利というふうに書いてありますけれども、このブラジル提案あるいはC&Cで、どこかの年で一人当たり排出量を例えば2050年、2075年ぐらいで一定になるようなパスを考慮して、いろんなモデルでそれぞれ排出目標に450ppm、550ppmを設定して、GDPへの影響とか計算してますが、その前提条件を明確にしておく必要があると思います。
 そのときに削減の目標が、もちろんかなり重要になってきます。何年に1人当たり排出量を収束さすのかなどの。2050年か2100年かで明日香委員の方もおっしゃったんですけれども、ずいぶん違ってきます。例えばどの時点で、そのブラジル提案とC&Cとかをもとに計算するのかを考えたときに、これは2050年で両方とも一定になるような形で出しているのであるとか、すべての前提条件はもちろん書ききれないでしょうけれども、重要なところの前提条件を書かれた方が良いのではと感じました。
 あと、もう1点、一人当たり排出量を同一にするというのは一番単純な評価指標なんでしょうけれども、地域によってそれぞれエネルギーが非常にたくさん要るところもあるし、そうでもないところもありますし、また途上国では先ほどいったん排出量が上がって下がるとか、先進国の排出量は下がって上がるケースもありうると言った意見があるとかいうふうなことおっしゃっていましたけれども、もちろん、そういった意見もありますし、例えばリープ・フロッギング(leap-frogging)というのですか、途上国の良い技術を導入して急速に省エネが進むといった可能性もあります。途上国でそのリープ・フロッギングのような形でいい制度の方に移行できるというようなことを、みんなで知見を出し合ってそういった方向に進めば、かなり対策もスムーズに行える可能性があるのではというふうに考えています。
 それと同じ意見になるかと思うんですけれども、地域的に違ったエネルギー消費量のパターンもありますし、それぞれの生活様式も違うので、必ずしも全地域の排出目標が同じだというふうなことではなくて、もう少し細かいレベルで条件設定を考えるというのも一つ重要なことかと考えております。コメントです。

○西岡委員長 ありがとうございました。あとで明日香委員には短く答えていただきたいと思います。私の方からは先ほどいくつか、まず温度レベルからずっとやっていくという話がありまして、アンサーティブというような話ございました。最近確か『サイエンス』の最初のページぐらいにアメリカのモデラーのヨウと、それからアンテロノーバとシュレンジンジャーの3人のが載っていまして、それが気候感度とそれから安定化するレベルと、そしてコストの関係はどうなるかなんていう解析が確か載っていて、自分なんかもまだ読んでいないのですけれども、パッと見ただけなんですけれども。そういった一連のつなぎの作業がこういうところにもやっぱり本当は要るんだろうなという具合に感じたというのが1つあります。
 それから2つ目が、もう一つコミットメントなのか交渉なのかわかりませんけれども、一つの基準といいますか、それとしてはやはり次に何かまとまらないと困るなというのが例えば一つあるのかもしれないと思うんですね。それがきちんとしたフレームワークでできなくても、次に希望を残すような形でまとまったというのも一つ大きな進歩ではないかなと思うんですが、そういう成功の指標をどう考えるかというのも、また検討しなければいけない話かなという具合に私は思っております。
 で、明日香さん、あまり時間はございませんが、これまでのコメントでリスポンドするものございますか。

○明日香委員 どうもいろいろありがとうございました。私も意図的にいろいろプロボーキングなところはあるのですが、最後のまとまるということに関しまして、私、この前外務省の──で来た中国の方とお話をする機会があって、彼をいろいろ説得しようと思ったんですが、実はミイラ取りがミイラになりまして、彼は非常に現実主義者で今おっしゃったように、中身がなくてもまとまった方がいいというようなことは、彼はおっしゃっていました。老子の言葉で順事自然という"自ずからなることに従う"という言葉があるのですけれども、なるようになるしかならないよ、みんなそんな高望みしてもだめだよ。というようなことを、その方はおっしゃっていたので、なかなか難しいなと私もそういう認識は持っているのは確かです。
 ですが、それと実際日本が日本案としてこうあるべきだと。理想として出すというのはまたちょっと違う話なのかなとも思います。多分そこでまとまるときは真ん中ぐらいにまとまるというのが、多分世の中の常ですのでと孔子は言っているので。ただ少なくとも最初に日本として案を出すのはまとまるというよりも、日本としてはこう考えるべきだと。だからあまりまとまるというのを考えるのはよくないのではというのが、私の個人的な思いです。
 あと、実行可能性。住先生は、EUは実行可能性がある程度できると思っているからコミットしているんだというお話があったと思うのですが、多分EUの方にそういうことをいうと、「そんなとんでもない」というようなことを、で、多分今EUの排出量取引のNAPでひっちゃかめっちゃかに中身はなっていますし、エネルギーの方と環境の方とは多分非常に対立的な状況になっていますので、EUでもそう簡単にできているものではないのかなと思います。それは日本とどこが違うかということになると、また何かいろいろ難しい問題が出てくるのですが。
 あともう1つ、ちょっと言い忘れたんですけれども。皆さんにも思い出してほしいのは、予防原則をどう考えることだと思うんです。もちろん、科学は言えないというのは確かだと思うんですけれども、でも少なくとも予防原則で考えると、これぐらいは必要なのではないかというようなことは科学者も言える。もしかしたらそれも言えないのかもしれませんけれども、そこら辺はある程度判断はせざるを得ないところだと思うんですね。そこもある意味では政治的な判断になるのかもしれないのですけれども、それをしなかったら何をしているんでしょうかというところにもなりますので、特に予防原則で、かつ実際に気候感度が何パーセント分布しているときに、例えば550に安定化したとしても4℃以上になる確率が10%、20%になるという、多分、先生が『サイエンス』の同じ流れの気候感度の確率というのを、いろいろ考えたときにどうなるかという流れは、今私も研究者がやっているのかなという認識はしていますので、そこら辺で予防原則と確率的なレベルリスク判断というのが出てくるのではないかなと思いました。
 あと、リープ・フロッギングですか。多分それは途上国の人はそんなのは理想であって、自分もやっぱりベンツに乗ってみたいとか、そういうのが感情的なコメントになるのかなと。もちろんリープ・フロッギングというのは必要だと思うんですけれども、多分途上国としてはそう簡単に、それを我々が説得させるためにはものすごく、例えば技術協力でうまく成功しているなり技術移転をちゃんとやるなり、技術移転のためのインフラをつくるなり、そのようなものをつくらないで、ただそうなりますよと言っているだけでは、あちらも納得なり説得されないのではないかなと思います。
 以上です。

○住委員 僕の言いたいことは、科学の方では十分結果も出しているし、全部情報を出しているということです。だから1.5から4.5度という結論でいいと思います。それを例えば幅があまりあるから全然信用できない、不確実性を例えばゼロにしなければ信用できない、と反論されます。その意味は、自分はやりたくないということを言っているだけで、十分不確実性を含めても、科学の側からは、見る人にとっては非常に堅固な、ああ、そうだねと思う結果は出していると思います。
 それを、毎回毎回、いちいち例えばここが違っている、ここが違っていると、そういうふうに突っつかれてくると、個人的にはもうだんだん頭にきて、つきあっている気はないという気分になります。例えば、「天気予報も当らないのにどうして当たるんですか」と毎回毎回聞かれるわけですよ。そのくせ聞いたからといって絶対実行しないんですよ、政治
の世界は。勝手 に自分の都合で変える。そんな連中と、というのは多くの科学者の半分ぐらいは思っているんですが、かといってもそう言ってはお終いだから、それなりに頑張ってやりましょうという気分でがんばっています。科学はそれなりに僕はできる範囲内で正しい情報出しているし、そういう点では、科学は僕は言うことはちゃんと言っていると僕は思っております。

○西岡委員長  時間が大分過ぎてしまいましたけれども、このセッションこれで終りにしたいと思います。今47分ですので55分から再開。ちょっと休みをとりたいと思います。あと、2題ありますけれども、ちょっと短めにやっていただきます。

午後2時47分 休憩
午後2時55分 再開

○西岡委員長 それでは再開いたします。次は「気候変動に対する適応策」ということで、資料2、三村先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
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○三村委員 遅れて来て申しわけありませんでした。麻布十番に着くのは結構早かったのです。そこからここまで来るのに若干道に迷いまして、そこからここまで来るのに道に迷うのに気候政策なんかに意見が言えるのかといったことを感じながら、どうも方向がわからないなとか思いながら来たんですが、今日は適応策ということで20分ぐらいでお話させていただきます。
(スライド)
適応策に位置づけと、私はずっと沿岸域をやっていたものですから具体的にどういう話があるか。それから最後に論点ということで。
(スライド)
 気候変動枠組条約の究極の目的というのは、危険でない水準に温室効果ガスを安定化するということですけれども、当然適応策を打てばその危険でない水準というのが上がるということですから、この適応というのは緩和策と並んで気候変動枠組条約の究極の目的を支える2つの対策の柱になっているわけです。
(スライド)
 今までの議論で主に大気中に温室効果ガス、特に二酸化炭素の濃度をどのレベルに安定化するか。それはその濃度がどれだけの危険をもたらすかということに関連があるので、例えばイギリス政府などはこの表にありますように、450、550、750ppm毎にその影響の程度を考えて、安定化のターゲットの濃度を検討するというようなことがされてきたわけです。
(スライド)
一言で適応策の必要性ということをいいますと、現在の対策を打っても大気中の温室効果ガスの濃度は、さらに上昇を続けると。若干の温室効果ガスの濃度の上昇でもあるシステムには大きな影響が生じると。したがって適応策を打つ必要があると。こういう論理なわけです。適応策というと主にこれまでは途上国の対策というふうに考えられていたのですが、今年の気象災害などを背景にして先進国でもやっぱり適応が必要なのではないか。で、非常に象徴的なのですが、今月の10月12日から14日まで2カ国で適応策の会議が行われまして、1つはサモアで途上国、南太平洋の途上国を中心にした適応策の会議が行われて、まったく同じ日にニュージーランドで先進国を対象にした適応策の会議が行われて、両方とも興味があると、こういう話に現在なりつつあります。
(スライド)
 適応策というのは、実は問題の提案自体はかなり前からやられておりまして、新しい話題ではなくてIPCCの第三次評価報告書においてもアダプテーションというチャプターはあります。いろいろなことがそこで述べられているのですが、もう既に私がごくごく簡単に紹介したようなことが多いので詳しくはふれないとして、この論点の5番目ですね。
「適応に要する費用は他の管理あるいは開発費用に比べて小さい」と書いてあるのですけれども、これが本当かどうかというのはまだちゃんと確かめられていないと思います。例えば私どもの計算では、日本の海岸線に張りついている構造物、港とか護岸とか堤防とか、そういうものを1メートルの海面上昇に対して対策をとるだけで、20兆円ぐらいかかるというのです。
 20兆円が安いのか高いのかはちょっとあれだとして、新たに20兆円を投資して海岸対策をやろうとは、今の日本政府は考えないわけです。そういうことでいうと、世界全体で考えたときに、適応に要する費用が本当にほかと比べて安いかどうかというのは、ちょっとちゃんと検討をしておく必要があるのではないかなと、どうやって検討するかはちょっとよくわかりませんが、そういうふうに思います。
(スライド)
 適応に関する認識の中で非常に重要なのは適応能力ということで、適応能力の特性は地域や国、それから同じ国の中での社会集団によって異なる。それから時間的にも変化するので注意を要するということが既に指摘をされています。それから適応能力は、どういう人たちが適応が高いかというと、資金力があって科学技術の知識があって、情報へのアクセスがよくて、技能やインフラが整備されていて社会制度が発達している、それから公平性もあると。そういう国ということですから、当然一般的には先進国の方が適応能力が高くて、途上国の方が適応能力は低いと。つまり同じ気温上昇に対しても先進国と途上国では違う影響の程度が表れる。こういうことを言っているわけです。
 それから2番目の点で、開発、持続性、公平性というところで非常に重要だと思うのは、適応能力の強化は持続可能な開発の推進と同じ方向性を持っているということで、これは非常に重要なポイントで気候政策が気候の安定化を目指せばいいと考えるのか、もっと向こうに世界の安全性を高めて持続可能な開発の方向性を追求するのかというような論点があるような気がするんですけれども、もし適応策がそういうものであれば、影響を対策するためにわざわざ余計なお金を使わなければいけないと考えるか。いや、世界をよくするためにいいお金の使い方なんだと考えるか、そういうところの一つの論点になるかなと思います。
(スライド)
 今まで述べたのが従来のお話なんですが、ちょっと具体的な話ということで沿岸域の話をしたいと思います。
(スライド)
 もう既に紹介されているとおり、20世紀には海面が10センチから20センチぐらい上昇して、1990年代には宇宙からの観測では毎年2.3ミリぐらいずつ海面が平均的に上がっている。こういうようなデータなんですね、そうすると100で20センチぐらいということですけれども。21世紀の予測では低い場合には9センチ、高い場合には88センチぐらいの100年間での海面上昇があるというわけです。
(スライド)
 その要因はさまざまあるということですが。
(スライド)
 一番大きな要因は、このグラフは横軸が年代で縦軸のゼロというのが海面上昇への寄与がプラスマイナスゼロでプラス側が上昇側に寄与するもの、マイナス側が海面、降下側に寄与するものということで、Thermal expansionというのは熱膨張です。
よくいろんなことで話していると、南極の氷と北極の氷が融けて海面が上がりますというようなことをいろんなところでおっしゃる方がおられるのですけれども、それは両方とも間違いで北極の氷は海に浮いていますからいくら融けたって海面は上がらない。南極の氷は今はどっちかというと融けて海面を押し上げる方向よりも、降った雪が降り積もって海面を少し押し下げる方向に働いているのではないかと、こういうふうにいわれているわけですね。ところが、もっとずっと長いレンジで、数百年、千年以上のレンジで考えると、その降り積もった氷河が海に押し出されて氷河になったりあるいはその流れが加速するということで、カタストロフィックな海面上昇につながる。こういうストーリーなわけです。
このブルーの線が熱膨張、それから2番目に大きなのは陸上の氷河、それから山の雪が融けて海に流れ込むと、それからグリーンランドが若干押し上げられる。それからAntarcticaというのは南極ですから、これはやや海面を押し、現状では押し下げる方向に働いているのではないか。こういうことです。
(スライド)
 メカニズムにいろいろいってもあれなので、ちょっと次をお願いします。
(スライド)
 海面の上昇や気候変動が沿岸にどういう影響を及ぼすかというのは、当然自然環境にも人間社会にも影響を及ぼすということで、さまざまな要素に影響を及ぼすわけです。これまでこれらの環境要素に対してどういう影響が生じるかというのを、全部数量的に計算してやろうというようなことをやってきまして、成功したものもあれば成功しなかったものもあります。
(スライド)
 これは砂浜の侵食というもので、海面が上がると砂浜は地形としては生きもののように新しい海面にレスポンスをして自分自身を変形させようとする作用が働くのです。そうしますと、新しい海面の位置で自分自身を形成しようとすると砂が足りないものですから、陸上側の海の上の方にあるようなところの部分の砂を削って沖に運ぶことによって、新しい安定的な海面形状をつくる。こういう理論があるのですが、つまり海面上昇は単に水没だけではなくて、実際の砂の移動と侵食をもたらすということなわけです。
 これは1990年代の真ん中辺に学生さんと一緒にいろいろ調べたやった結果なんですけれども、日本の海岸線は8,688だったかな、ちょっと今数は具体的に忘れましたけれども、それぐらいの区間に分けられているのです。その八千六百なにがしかの海岸全部について砂浜の幅と長さと砂粒の粒径と入ってくる波の大きさを調べまして、20%ぐらいは砂浜だったのですが、このモデルで計算をすると、どれぐらい侵食されるかというのを計算しました。
 それが右の図で、これは全国一律の合計のデータになっていますけれども、30センチの海面上昇で57%の現在の砂浜が侵食される。現在日本には190平方キロメートルの砂浜がありますが、そのうちの過半数は海の中に消えると。それから65センチ、当時は65センチが平均値といわれていたのですけれども、で、82%ぐらいだったかな。それから1メートルの海面の上昇で90%ぐらいの砂浜がなくなるということなわけです。
1つ前に戻してください。
(スライド)
 これはある意味では影響の危険なレベルを決めるグラフになっていまして、もし我々が日本の砂浜は50%消えるところぐらいまでなら、まあ我慢できる水準だと思えばターゲットは30センチの海面上昇をもたらすような温暖化のレベルということになるわけですね。いや、砂浜なら80%はなくなってもいいんじゃないかと、こう思えば60センチぐらい上がってもいい。こういう話になるわけです。
 その判断は、我々はしないけれども。私は個人的な判断はありますけれども。(笑)こういうものがたくさん出てくると、国民投票か何かをすれば皆さんこの辺が我慢の限界、こういうのが出てくるということなわけです。
(スライド)
 その我慢の限界ですが、既に日本の海岸線は痛めつけられていまして、明治から現在までの間に120平方キロの砂浜がなくなったといわれています。それを守るために非常にみっともない、この分野の技術者としては情けない気持ちですけれども、たくさんのブロックを置いて景観を犠牲にしてもこうやって守っているわけです。こうやって守っているものでも30センチの海面上昇ですべて五十何パーセントの砂浜がなくなって、それで内陸側を守るためには全部国土を高いコンクリートの壁で、護岸で囲わなければいけない。こういう状態になるということです。それを容認するかどうかと、こういう話になるわけですね。
(スライド)
 そういうような事例がいろいろほかにもありまして、例えばこれは日本の国で1メートルの海面上昇とその地方での平均的な高潮が襲ったときに、潜在的に海面下に沈むところの分布でして、数値等々についてはこの下の表にあるようなものになっているわけです。
(スライド)
 東京湾の高潮を例えば例にとってみますと、戦後すぐにキティ台風というのがきまして、東京に一番大きな被害を与えた。東京の防災はこのキティ台風の経路を、伊勢湾台風が通ったときに東京にどれぐらい影響を及ぼすかというので防災対策をしているんですね。もし温暖化で台風が10%高くなったらどれぐらい違うかという計算をしました。
(スライド)
 右側が伊勢湾台風級の台風によるものなんですが、千葉県の沖で2メートルを超える高潮が出ている。ところが10%台風が強くなると東京湾の奥半分ぐらい、この濃いブルーのところがすべて2メートル以上の高潮になって、たまたまDと書いたのはこれディズニーランドのDではないんですけれども、ここはディズニーランドのところでして、そこも2メートル以上の高潮に直面する領域になる。こういうことなわけです。
(スライド)
 同じようなことを全国でいろいろやっておりまして、これは名古屋で伊勢湾台風の被災地域と海面上昇による影響地域とを重ねるようなことをやったのですが。
(スライド)
 これは国土交通省で2年ほど前に非常に体系的な勉強会を一緒にやりまして、海面の上昇が起きたときにどこに不具合が生じるか。現在の国土保全システムの問題が生じるかというのを1個1個施設をチェックしたのです。これ見たらわかりますけれども、丸いサークルになっているところが今の設計条件を超えるところということですから、河川の堤防から海岸の水門、排水施設まで、あらゆるところで不具合が生じるというような結果になりました。
(スライド)
 そういうような作業を日本全体で全部やると、日本の海岸は4つの省庁で管理をされているんですけれども、旧運輸省が管理をする港湾と港湾に附属する海岸、大体日本の海岸線の4分の1ぐらいですけれども、それの施設を現在と同じレベルの防護水準にするだけで11兆5,000億円ぐらいかかるという結果です。そのほかに旧建設省系の海岸もあれば水産庁の海岸もありますから、全部合せると20兆円ぐらいになるんじゃないか。こういうのが私の計算結果ということですね。
(スライド)
 ちょっとこれは飛ばしていただいて。時間がないのでちょっと急がせていただきますが。
(スライド)
 では、途上国の場合はどんなことになっているかということですが、南太平洋の島嶼国の例を申し上げます。
(スライド)
 1991年ぐらいから日本のチームと先方のチームとが協力しながら、いろんな形で調査を進めてまいりました。
(スライド)
 実は最近、いろんな国で水没とか海岸侵食が増えてきているというようなことが報告をされていまして、それはエルニーニョの活動が活発になっているとかあるいは海面上昇の結果ではないかとかいろんなことが言われているのですが。
(スライド)
 例えばこれなんかは非常に典型的な例で、どこの海岸にいってもこんな風景なんですね。ヤシの木が海側にみんな傾いでいるんですよ。これは昔は海岸線に沿ってヤシの木がずっと列をなして並んでいたんですね。それがだんだん海の中に投げ出されるような格好になっていると。
 海の中に枯れちゃったヤシの木の根っこがまだ残っているんですね。そういようなところがいろんな島にあります。
(スライド)
 これはツバルという国の例ですけれども、環礁といって海の上に紐のような土地がひょろひょろと顔を出しているような国で、ツバルは面積が26平方キロメートル、人口1万人の国ですけれども、非常に脆弱な国としてよく知られているところなわけです。
(スライド)
 右上にあるのがそのツバルのアトォール、環礁の上の集落で、家が数軒建ったらもう両側の海に挟まれているというようなところで、こういう島は地下に淡水レンズといって淡水の薄い層があるんですけれども、海面の上昇や変動によってその淡水に塩水が入って、既にここではもう塩水で飲料としては使えなくなったと。で、どうやっているかというと雨水だけで生活しているんですね。だから各戸、2メートルぐらいのでっかいコンクリートのタンクを備えていまして、それに雨水を溜めて飲むと。こういうことになっているわけです。
(スライド)
 これは海岸がいろいろやられていますということなんですが。
(スライド)
 こういう島は地図がない島でして、西岡先生も一緒に行かれたときなんですが、簡易測量ですけれども我々は測量しました。そうすると、上の地図のブルーに書いてあるところが平均海面で、この島の一番高いところは平均海面上1.9メートル、で、そういうところの左側の丘みたいなところに人が暮らしているんですね。で、計算をすると大体サイクロンのときには高潮と高浪で5メートルぐらいの波が来るということですから、島の家よりも高い波が来ると、こういうようなことなわけです。
(スライド)
 それで非常に対応力が弱くて、これはあとで読んでいただければわかりますが、MIRAB経済といって非常に外に対する依存性の高い、独自に生きていくことのできないような経済になっていまして。
(スライド)
 ツバル政府はニュージーランドと協定を結んで年間75人ずつ移住をすると。これは環境難民という理由ではなくて通常の移民ということなんですけれども、背景には長期的な人口の移住を考えるというようなところにまで追い込まれているということなわけです。
(スライド)
 適応の技術についてはいろいろあるとして。
(スライド)
 最後、論点ですけれども。
(スライド)
 一番最初に言いましたように緩和策と適応策というのは対策の2つの柱だということですけれども、どういう組み合わせが考えられるか。適応策は往々にしてやればすぐに効果が表れると。緩和策は長期的にとる対策で問題が起きたら適応策を打てばいいんだ。そういうような組み合わせ方を考えられので、本当にそうかなと思うことがあるんですが。
(スライド)
 これは我が国の水害のデータなんですけれども、黒い棒が亡くなった方の数で、59年に伊勢湾台風で5,000人以上が亡くなっていますから非常に高い結果が出ています。そういう戦後50年代の台風の頻発というか襲撃に驚いて、日本政府は急きょ全国の防災対策をとるということで、非常に突貫的な対策を始めるわけです。それによって60年以降、大きな台風があまり来なかったということもあって、死者はどんどん減っていって、ずっと減ってきて最近では死者が出ない年もある。今年になって既に11個の台風が上陸して200人弱、被害額が1兆円ぐらいの被害が出たということですから、今年のデータを加えれば若干黒い棒が立つということになりますけれども。
 そうやってやってきた歴史を考えると、適応策だってやっぱり結構リード時間が長いのではないかと。そんなに危ないから、問題が生じたから、じゃあ、ちょっと資金を出して手当てしましょうというふうにはなかなか言えないんじゃないかな。だからその組み合わせ方も適応策の位置づけというのも応急手当て的なものとは、ちょっと考えない方がいいんじゃないかなというのが、私の印象です。
(スライド)
 論点の2番目ですけれども、これは非常に難しくて、気候変動の適応策と通常のインフラ整備・開発との区別をどのようにするのか。気候変動に対する適応策への援助をどういう考え方でしたらいいか。これはなかなか難しい問題だと思います。けれども、基本的には先ほど言いましたように、適応策の方向性というのは持続可能な開発あるいはある社会、国の安全性を高めるという方向にあるわけですから、そういう前向きな意味というのを考えて国際的な協調というのもすべきではないか。
 ところが論点の3は、じゃあ、その責任は誰にあるのか。実はサモアで非常に印象的な議論がありまして、デンマークから来た専門家が防災対策の責任は、各国の政府とその国の人たち自身に第一義的な責任があると、勇気をもって言い切ったんですね。そしたらば即座に途上国から反論が出まして、そんなこと言ったって我々にはお金もないし技術もない、どうしてくれるんだと、こういう話になったんですね。でもそれはやっぱり通常のベースラインといいますか防災や持続可能な開発についてもベースラインがある。その部分については各国の責任だと。
 でもそれにIncrementalな影響を気候変動がもたらすとすれば、その部分については国際社会が考えなければいけないとか、やっぱり同じような考え方というのを考えるべきなのではないかというふうに思います。
 で、あとはまとめですけれども、もう既にいろいろ論点を申し上げましたので、特に繰り返しません。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。最後のまとめのところ、時間を節約していただきましたけれども、補完策としての適応策、それから非常に弱い国があるという、それから実際に適応策としてはよくハードウェア的なことをいわれるけれども、実はソフトウェア的な話が非常に重要ではないかと。しかしそれをどうやってこの世界で協調してやっていくのだろうかということについては、どうもまだ案がないという状況かなということでまとめていただいていいのではないかと思っております。
 皆さんのご意見、原沢委員。

○原沢委員 コメントと質問ですけれども、今年は台風とか熱波、集中豪雨が集中したということで、温暖化との関係はまだなかなかわからないということですけれども、温暖化しますとやっぱりこういった異常気象が増えてくる。そういう中で、今からやっぱり適応策を打っておく必要があるのではないかと思うわけなんですけれども、そういう意味で台風あるいは集中豪雨の場合は、これまでのいわゆる自然災害という対策の流れ、熱波についてはヒートアイランドという対策の流れがあって、温暖化の問題と既存のいわゆるメインストリームの対策というのを、いかに折り合わせていくかというのが課題になってきているのではないかと思うのですが。
 そういう中でハード、ソフトの面を含めて、今後やはり違った分野との協力関係が実際問題、例えば沿岸の場合は協力関係が取れそうかどうかをお聞きしたいのが1つ。最近温暖化の予測によれば100年で88センチですから、1年で1センチ弱です。いろんなところでもう海面が上昇したという被害が表れている。多分異常潮位ですとか暖水塊とか温暖化にともなって発生するような、その海面上昇に関わるような現象もちょっと表れているのではないかと思うのですが、例えば異常潮位について何が原因で起きているのか、教えていただきたいんですけれども。

○三村委員 2点あったと思いますが、1つは他の分野との協力ということですけれども、これはメインストリーミング・アダプテーションというので世界の議論が気候変動に対する適応策だけをいくら叫んでいてもだめで、本当は国土管理とか環境管理とか防災、それから経済開発、そういう国の根幹を成すようなさまざまな政策の中に、気候変動に対する適応策の要素が組み込まれなければ本当の適応策にならないと。こういう話で、それはまったくそのとおりだと思うんですね。
 可能性はあるかどうかということですけれども、一つの例は、現在国土交通省の人たちと勉強会をやっていまして、方向は従来の防災対策で将来がやっていけるかやっていけないかという点なのです。つまり日本は先ほど紹介しましたように、とにかく硬い構造物で国土を守るという方向の政策を今までずっとやってきたんですけれども、もしそれで十分対応できないのだったら、本当に危ないところからはその人たちに立ち退いてもらうということも考えなければいけないのではないか。これは西欧流の考え方で、ヨーロッパやアメリカなどではリトリート、撤退といってそれがいいんだというふうにいわれているんですね。
 ところが、日本では土地の非常に小さな所有性とかそういうのが強いものですから、先祖伝来の土地を明け渡して移住するというようなことは、住民の方は通常はほとんど受け入れてくださらない。でも将来の国土管理の可能性として、そういう方向性はあるのかないのかというようなことから勉強をしなければいけない。もしそれが、そういうことが組み込まれていけばメインストリームアダプテーションの一つの方向性として、また考えられるかもしれないと思います。
 それから異常潮位の件ですけれども、現在の異常潮位は海水温が高くなっているということと、従来は黒潮が日本の南岸に寄ってきて、非常に黒潮の流路が日本の南岸にずっと寄ってきているということで、ここ数年、潮位が高い状態が続いていまして、例えばちょっと関係ないように見えるのですけれども、有明海の海苔の色落ちのときに、有明海周辺、外側ですね、日本海を含めた潮位が非常に高くて、それが有明海の環境に若干影響を及ぼしたのではないかとか、あるいは瀬戸内海の厳島神社の回廊が水没すると。特に何もないのに水没するというような事態もみんなその異常潮位ということで、これはいわゆる海面上昇ということよりも日本周辺の黒潮の流れ方、それから海水温の上昇というのが大きな原因ではないかというふうにいわれています。

○西岡委員長 工藤委員お願いします。

○工藤委員 1点だけお教えいただきたいのですが、最後の方に論点を出されていて、特に気候変動の適応策と通常インフラ整備との区分って難しいよねと、私もきっとそうなんだろうなと非常に強く感じるのですが、こういったような特徴がある中で、例えば適応策をいろいろ国際的にも進めていきましょうという、そのフレームワークの考え方として数多くの国が一つのガイドラインか何かわかりませんが、こういうディフニッションみたいなことも含めて着々と積み上げながら時間をかけてやっていくという考え方と、当然文化なり何なりで全然考え方が違うだろうから、個別にいろいろな意味で相互に協力し合いながらやっていくようなやり方、結論はないと思うのですが、先生から見てどういうやり方がある意味現実的なのかなという、お考えがもしあればお教えいただきたいと思います。

○三村委員 実際問題としては適応しなければいけない事例というのは、非常に広い分野に及びますし、それからそれぞれの国の事情というのも違いますから個別に1個1個の問題に対応していくという方が実際的だし、効果のあるものができるのではないかと思うんですね。今ここで議論をしているのは、実際に個々の場面でどう有効なものにするかという話と、それから国際的な制度のレベルでそのことをどう組み込むかという話ですから、制度に組み込むということになると、ある程度の統一性というか皆さんがこういうレベルで合意しましょうということが必要ですから。
 個々の国の事情がいろいろ違うから、じゃあ、下でやっていればそれはもう気候変動に対する適応策としては打てたことになりますねという合意ができればいいですけれども、今途上国の人たちはそういう方向にはいっていないですよね。合意の中に途上国の適応策に対する支援も入れようということですから、交渉の中でのこの論点の取り込み方というのは、やっぱりある程度取り込まざるを得ないのではないか。それは実際にどの程度有効かというのはよくわからないけれども、そういうものの要素も入れなければいけないのではないかというふうに思います。

○住委員 温暖化と異常気象と言う場合に、温暖化が何か変な現象を引き起こすのではないかということを意味している場合があるのですが、それは間違っていると思います。温暖化の影響が出てくるのは、それは明らかに自然現象を通して出てくるわけです。だからどんなに雨が降ろうと台風や何が起きようと、それはまったく変なことが起きるわけではなくて自然の変動の一部なのです。そういう点では完全に現在の防災対策とかそういうものと、それは非常に整合性があるのは当然なんですね。
 現在の自然でも、ものすごく大きな変動があって、かつ影響という観点から考えると、温暖化しなくたって現在の気候だってものすごい被害が出ているわけです。だからそれは当然現状を踏まえた上でやっていくということが、僕は非常に大事だと思います。
 そういう点で、だから当然すべての対策、対応策は温暖化だから特別なことがあって、通常の対応策と別ということには僕はならないと思うんですね。すべてが整合的に行われるべきで、いわゆるノーリグレット・ポリシーはそういうことだと思います。すべてやっぱりWin-Winでやってゆかなければならないと思います。
 それからあと災害の場合は、やはり僕は自然の側が同じであっても、社会の側が変われば被害は非常に多く出てきます。例えばフロリダの台風の昔のアンドリュースの例なんかもそうなんですが、安普請の家がいっぱい建ったから被害が出たという側面があります。その台風がフロリダを襲ったときを見ますと、昔の戦前からの豪勢な住宅は全然壊れていない一方、そのそばの安普請の家は全部壊れている。都市部の水害なんかの例でも、本来家を建ててはだめなところにいっぱい建てたりして被害がでてきます。だからそういう点で、社会的な変化の影響ということが非常に大きな災害という場合にはありますので、その部分も同時に見ていかないとダメと思います。何かその要因ごとに分けて温暖化だからこうだ、何とかだと分けてやるというのは、どうも全体像を見失う気がするのです。

○高村委員 2点ご質問です。今の住先生のコメントに関わるかと思いますが、先ほど三村先生からはIncrementalなコストの部分をどう気候変動の枠組みの中で対応するかといったご示唆をいただいたと思うんですが、どれぐらいIncrementalなコストを明確に分けることが可能なのかという問題です。多分この点は生物多様性条約など他の条約の議論でもincrementalなコストをめぐる同様な議論があるかと思うのですが。その点が1点です。
2つ目は、より大きな枠組からの質問ですが、アダプテーションの位置づけというのは途上国が一番関心を持っており、、途上国の参加を将来の枠組みの中にどう位置づけるかという観点からも重要だと思うんですが、実際にこのアダプテーションというのを2013年以降の、あるいは中長期の気候変動の枠組みの中でどういうふうに位置づけるべきかという点について、三村先生からご示唆がいただければというふうに思います。
 以上です。

○三村委員 Incrementalの非常に具体的な例は、まず住先生のおっしゃったことの中で気候変動の影響に対する対策をとるときに、通常の災害対策なんかの延長線上にするという話のときに、要するに毎年毎年、政府とかいろんな人がそれをやっているのだから、日々のあるいは年々の管理の中で対応すれば将来の気候変動にもすべて対応できると考えるか、そうではなくて、将来もし海面が50センチ上がるというような条件があるのだったらば、プラスアルファーをやらなければいけないと考えるかというところが一つのポイントだと思いますね。Incrementalというのはそういうことで、この間もサモアの会議である政府のプロジェクトの人が言っていましたけれども、海面の上昇を考えなければ護岸の整備の費用はこういうことになって、将来の整備も含めると大体これぐらいになると。ところが、海面の上昇を考えると、もっと高水準の維持とか将来の増強なんかが必要になるから、費用がこんなふうになってくると。で、そういう違いを最初の段階で組み込んでおくと、より増加する費用が低めに抑えることができる。それがいいアダプテーションなんだと。こういうような論理なんですよね。だからIncrementalの一つの例としては、今言ったようなことです。
 それから中長期にどういうふうに位置づけるかというのは、これは非常に難しくてどういうふうにしたらいいんだろうかというのを考えていて、逆に私が皆さんからお考えを、この場で議論をしていただければと思いますが、ちょっと具体的なアイデアが特にあるわけではありません。

○西岡委員長 では、松橋委員、明日香委員お願いします。

○松橋委員 すみません、要するにそのIncrementalというお話でちょっとあれしたんですけれども、住先生の先ほどのご指摘も、例えば台風なんかの場合は自然現象としての台風の頻度と、それから温暖化が進行しているが故にそれがより頻発するというようなところの分け方というか、Incrementalにこれが温暖化の影響で、これだけ台風が増えているあるいはエネルギーが強くなっているというようなところは非常に区別が難しいというような意味なのかなと、私なりには解釈しているんですが、間違っているかもしれませんが。
ただ、三村先生のおっしゃった海面上昇という話であれば、少なくとも気体値しては温暖化が進むことによって、さっきのお話で砂浜が30センチ上昇すると五十何パーセント失われると。もちろんこれ自体が確率分布をしているそんな論文も出ていますので、この通りになるというよりはこれを中心にまた不確実性があるかと思いますが、これの被害ということは確実にあるのでしょうし、またツバルのように住む場所がなくなって強制的に退去しなければいけないというほどでなくても、例えば日本の砂浜であっても。
 例えば東京湾奥の大して水もきれいでないところであっても、近隣住民にとっては非常に憩いの場になっているわけですから、そういった砂浜でストレスを癒すとか恋人たちは散歩をするとか、あるいは海水浴をするとか、そういった機会が失われるということだけでももちろん十分被害というふうに。逆にその砂浜があることの便益ということは、これ算定することが可能かと思いますので、その分は少なくとも温暖化の失われる便益として計算できるのではないかなと思います。もちろん、住む場所がなくなるという深刻さとは若干異にすると思います。

○明日香委員 2点あるのですけれども、1点目は三村先生がちらっとおっしゃった国民投票というお話だったのですけれども。先ほども、じゃあ、誰がどういう判断をするかというのが私のセッションのときに議論になりまして、三村先生がご自身なり多分国内の政策決定のプロセスに関わることになると思うんですけれども、三村先生のお考えというんでしょうかね、本質的な問題でもあると思うんですけれども、国民投票を例にとってお考えをちょっとおっしゃっていただければということ。
 あと、2点目は将来の交渉の中で適応がどうなのかで、適応のプロトコールをつくるとかつくらないとかいう話はあって、私が聞いたのはCOP8のときに、そのインドのときに、インド政府は適応の議定書みたいな形でそういう話があったんですけれども、AOSISが最終的には、ちょっと確かなことはわからないのですけれども、読んだものには反対したと。その理由というのは緩和の方に集中するべきだというか関心が薄れるのが問題だというので、AOSISが反対したというのは聞いております。かつ具体的に今度のCOP10ですか、アルゼンチンで適応議定書というのがまた一つの争点になるという話を聞いているのですが、ある途上国の人に言わせると、途上国の中でもその適応の定義から対策なり非常にバラエティがある考え方があって、とてもまとまりそうにないと。だから適応議定書といっても結局は何もまとまらないんじゃないかということを、途上国の方がおっしゃっていたのですけれども、そこら辺、今実際、途上国適応の専門の方といろいろお付き合いがある三村先生のご意見をおうかがいしたいのですが。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。ほかにいらっしゃいますか。
 横田委員どうぞ。

○横田委員 私の専門は国際法ですが、ご存じのとおり、海洋法というのが国際法の中の重要な部分を占めています。その中で今の海面上昇などの関連で国際法の分野で問題になっているのが島や岩礁の水没です。日本の場合には沖ノ鳥島というのがありまして、かつてはあそこはかなりのスペースがあったようですが、多分大きな波によって侵食されたというのが理由だと思いますけれども、ひよっとしたら海面上昇の影響もあったかもしれませんが、もう今では畳二、三畳分しか残っていません。日本政府は200億円かけてこれ以上の侵食をさせないようにといって、回りにがっちりと波を押さえるコンクリートの壁をつくりました。
 何でそんなことをやるのかというと、人が住むとかそういうことではなくて、あそこが日本の領土であって、仮に海洋法条約でいうところの島であるとすれば、あの周辺に排他的経済水域200海里が取れ、これは日本にとって大変重要な排他的な漁場になります。その下の資源ということも考えられますが、今当面、漁業資源が大きいと思います。これが水没したときには、そういう広い漁場が一挙にしてなくなることになります。
 こういう状況というのはおそらく日本だけではなくて、フィリピン、インドネシアなどの多島諸国、それから先ほどから名前が出ていますツバルとかその周辺の国は、一つの島が水没したことによって広大な排他的経済水域を失うことになります。逆にいえば遠洋漁業にとってはそこに入っていけるという、国の間の相当の利害関係の出入りが出てくるという問題があります。今のところ、そういうことは国際法学者もあまり研究していません。日本の沖ノ鳥島だけは日本が一生懸命頑張っていますが、それ以外のところについてはどういう状況なのかということについては調査も行われていません。
 ただ、かなり実質的な経済的利害が関わった部分があって、ご存じのとおり中国はもう沖ノ鳥島は経済水域が取れる島ではないとはっきり言い出しています。したがって中国の漁船がそれまでの日本の経済水域に入って漁業活動を営めると、こういうふうに主張しています。こういう問題が今後、国際関係の分野では出てくるということで、これはコメントです。
 次に質問なのですが、教えていただきたいのは、東京の下町は例えば浅草あたりまで、かつて江戸時代は海だったと聞いています。で、浅草海苔というのがそういうことであの辺でも採れたのだという話を私は聞いたことがあるのですが、いずれにしても私の子どものころに比べても海岸線は相当に東京湾の中に入り込んでいるように思います。もちろん埋立てとそれから堆積の影響力が多いのだろうと素人ながらに想像するのですが、何か私が聞いている海面上昇、そしてその侵食されて土地がなくなっているという話と、それから東京に関してはかつては三田の慶応大学のキャンパスのすぐ先は海だったという話を、慶応の先生に聞いたこともあるのですが、東京湾のあの状況というのは、そういう海面上昇とかそういうこととまったく関係なく、何か別の理由でしょうか。自然科学の分野ではどういうふうに説明されているのか。もしできたら教えていただきたいと思います。

○三村委員 では、お二人の質問について答えられる範囲で、時間もないのでごく簡単に。
 まず、危険な水準を誰がどう判断するかということですけれども、これは最終的には国民、世論とかあるいはその世論を反映した政府とか、そういう人たちがその判断をするということだと思います。そのために科学とかあるいは技術者の側は、情報を出さなければいけないのですけれども、適応が可能な場合については何が起こるかというとお金がかかるという格好で問題が起こると思うんですね。適応するためにはお金がかかる、そういう費用がどれぐらい余計にかかりますかとかですね。
 それから、海岸線の侵食についてはこれは適応不可能なんですね。沖の方にいっちゃった砂を全部岸に寄せ戻すことはできないですから、そういう適応不可能な現象、不可逆的に起こってしまう現象はどういうことが起こりますかという、そういう情報をちゃんと皆さんに与えて、どのレベルの費用までならば負担する意思があるかとか、あるいはどの現象までなら我慢できるかということを皆さんに判断していただかなければいけない。こういうふうに思います。
 それから途上国の適応に対するスタンスということですけれども、これは昔から見たらかなりそういう面でのニーズは高くなっている。特に今年南太平洋でもニウエという三十何メートルぐらいある台地状の島があるのですけれども、そこにハリケーンが襲って島の上の集落が全部根こそぎ流されちゃったというような例があって、30メートルより高いところに波がきちゃうんだよとかいうことで、もう何とかしてもらわないと困っちゃうと。こういうようなことで、この間のワークショップでは適応ということは非常に現実的なニーズ、それから水資源の問題とかそういうことは非常に強いニーズがありました。
 それから沖ノ鳥島はちょっと私ふれなかったのですけれども、説明していただいてどうもありがとうございました。それから東京湾ですけれども、東京湾の海岸線は完全に人工的にどんどん沖の方に出ていますから、海面の上昇とか波の作用があるにもかかわらず自然がどんどん土砂を運んで広大な東京の下町をつくってくれたというものではないように思います。
 戦後、高度経済成長のときに東京の江東区の一部は5メートルを超える地盤沈下を起しました。ですからゼロメートル地帯というのは、東京の東の3分の1ぐらいの地域がゼロメートル地帯ですけれども、あれはもしも高い海岸堤防を全部はずして、水門とか何か全部はずしてしまったら、あっと言う間に水の底になっちゃうような所で、東京湾の外郭堤防というか、外郭堤防はちょっと沖なんですが、メインの堤防の設計高さは海面上8メートルということになっています。それはどういうふうにやるかというと、満潮のときに伊勢湾台風級の台風が来て、そのときにさらに波が来て、それから1.5メートルだったかな、の余裕高をさらにその上に持たせるということで、内側のマイナス3メートルとかマイナス2メートルの土地を守っている。
 こういうようなことで、ちょっと私が説明した砂浜の侵食という話は、東京湾の様子とはまったく違うところの話ということです。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。さて、時間がなくなってこれで終わります。
例えば日本の対応としては先ほどの住さんのお話からおうかがいしますと、やはり今ある防災のシステムをもう少し嵩上げしておくというのが一番いいやり方ではないかなと、例えば思うわけですね。それをいつやるかという話。それから日本が、さらに国際的にはODAでいろいろとそういう土木の工事もやっているわけですから、そういうところの基準もどんどん高めていけば、自然にそういう具合になっていくという可能性はあるかと思います。それから3つ目が、国際的に今GEF等々でお金は出している。気候変動資金というのはできている。しかしながらそれをどう分配するかという問題がありまして、これに対しても何らかのアイデアを出す必要があるのかもしれません。
 さて、今の件で終わりまして、最後10分しかございませんが、次の課題ということをちょっとお話をいただきまして、皆さんのご意見を短くいただきたいと思います。どうぞ。

○水野国際対策室長 それでは、資料3につきまして、ごく簡単にご説明をさせていただきます。これは中間とりまとめをCOP10の前にまとめていただくということで、その骨子案としてまとめさせていただいたものでございます。したがいまして、基本的にはそれぞれの項目は既にご議論いただいたところを整理している部分が多ございますので、これにつきましては詳しくはまた次回、その骨子ではなくて本当の案をまたご議論いただくときに議論いただければと思いますが、事前によく注意しておくべき点等があれば、また後ほど事務局の方にでもご指摘をいただければと思いますので、ごく簡単にいきたいと思います。ただ一番最後に、「今後の検討課題」と書いてあるところだけは、新たに付け加えておりますので、そこについては若干ご議論いただければと思っております。
 まず、骨子案の構成でございますけれども、1から5までの節につきましては、9月にまとめていただきましたこれまでの新経過のとりまとめというものを基本的にそのまま利用するということで、地球規模のシステムのあり方ということで現状認識等々の部分につきましては、それをそのまま踏まえたということにさせていただいております。6から10までが新しく入ってきているわけですけれども、まず6は、これまでの国際合意の上に立脚した将来枠組みを設計することは必要かつ現実的だということで、条約あるいは議定書の仕組みを把握することは重要だということを書いております。
 続きまして、7番目の「将来枠組みの構築にあたっての視点」としては既にご議論いただきましたリスク管理の考え方、それから衡平性の取扱い、それから炭素中立社会の意味、ここは以前事務局からの資料では炭素制約社会の意味ということで資料を用意させていただきましたが、ちょっと言葉を適切なものに訂正をさせていただいております。そしてこうしたことの結論として、一つの結論として(3)の中ほどにございますように、こうしたことと、共通だが差異ある責任の原則あるいは予防的アプローチの考え方などを考え合せますと、将来枠組みにおいてはアメリカを含む先進国における十分な排出削減の確実な達成ということと、途上国、とりわけ大国の意味ある参加と、具体的な緩和努力というものをともに実現する枠組みとすることが必要ではないかということを書かせていただいております。それから炭素中立社会への挑戦は、環境と経済との好循環あるいは持続可能な発展への好機ととらえるべきであるということも書かせていただいております。
 それから4番目としましては、「政府の役割と国家間の合意のあり方」、これもご議論いただいた部分でございます。
 続きまして、8節では「各国の取組状況等」ということで、各国が参加可能であり、かつ実効性、効率性等が確保された制度を目指す必要があるということで、各国の取組状況等を整理しましたということでございます。アメリカにつきましては、ご承知のとおりということでまとめさせていただいております。EUも既にご議論いただいたとおりまとめさせていただいております。
 3番のロシアのところにつきましては、以前ご議論いただいたときから状況がかなり変わっておりますので、若干事務局の方で修正をさせていただきました。つまり具体的には遠からず京都議定書を批准するものと見込まれるということで、今後の必要な措置として
は特にロシア国内体制への整備とかJIプロジェクトの形成・実施の促進に積極的に取り組む必要があるということと、そうした成功を将来枠組みの設計に結びつけるためにも、よいものとしていく必要があるということ等々でございます。
 それから(4)が「中国・インドを含む途上国」の役割ということで、既にご議論いただいたところを整理をさせていただいております。
 それから9番のところ、「将来枠組みのあり方について」のところは、まさに本日ご議論いただいたところということで、基本的には空欄になっております。「コミットメントに関する各種提案」と、それから「適応問題の現状と課題」ということで書いておりますが、これは今回のご議論を踏まえまして、次回の中間とりまとめ案の中に適切に盛り込んでいきたいというふうに考えております。
 最後が先ほどちょっと申しました「今後の検討課題」というところで若干ご議論をいただければと思いますが、まずは「さらなる検討の視点」というところは、既にご議論いただいたところでもあるわけでございますけれども、1つ目は、価値観をもっとポジティブにして気候変動問題に取り組む必要があるということが1点と、日本としての戦略を持ってこの問題に取り組むことが求められる。この2点を既に9月のこれまでの審議経過のとりまとめでもご指摘をいただいておりましたし、本日もその戦略を持つ必要があるということは指摘があったかと思
います。
 こうしたことを踏まえまして、来年またCOP10以降もこの専門委員会でご議論いただく重要な課題としてどんなものがあるかというものをひとまず列挙をさせていただいております。
 まずはそれぞれの各種対策オプション、これは対策というと狭い意味ではなくていろいろなバリエーションも含めたオプションが提案されるというようなこともございますので、さらなる分析をどんどん進めていく必要があるということは当然第一番目にあるわけですけれども、そのほかに日本とのかかわりということが特に重要かと思いまして。
まず1つは、日本において脱温暖化社会を実現するというのは具体的にはどうやってやればいいのかというようなことについてのシナリオ及びそれに向けた日本のあり方等々についての検討。
 さらには、具体的な対策オプションというものが日本にどういった影響を与えるという
ことを踏まえた上で、日本の戦略をどうつくるかといったこと。
 それから次に書いてございますのは、次期約束、枠組みをどうつくるかという議論が中心になっているわけでございますけれども、その外側との関係あるいはその制度の中でもいろいろな義務等々の面で差別化が図られる、差異化が図られるということがあるとすれば、その関係をどうとらえるのかということ。
 それから、京都メカニズムというもの。これは非常に重要な京都議定書の一つのシステムなわけでございますけれども、この位置づけを将来どうしていくのか。さらには先ほどもご指摘にございましたが、資金メカニズムをどうしていくのか、どう考えていくのかということ。さらに、これは議論としては既にいただいておるわけでございますけれども、温暖化対策と経済との好循環、これが重要だという指摘はいただいているわけでございますが、では、そのためには何をすればいいのかと。制度的に何か考えておく必要はあるのかどうなのか。それは別途配慮すればいいだけのことなのかどうかということも論点かと思います。
 さらには、より多様な枠組みで補足という意味では、地域間協力ですとか非公式プレゼンス、あるいは自治体レベルでの合意等々の役割と発展の可能性などについても整理が必要かというふうに考えられます。
 以上でございます。

○西岡委員長 今のお話のように最初の1から5は既にあるもの。それから6から8、9、10のところまでは今回も含めましていろいろと設けたところであるかと思います。そうなりますと、今後ということで多分COP10以降、こういうこともやらなければいけないのではないかということで書かれているかと思います。思ったよりロシアの批准の話があって、全般的にスピードが何か早まっているような感じもいたしますね、世間の動きがといいましょうか。
 それで今皆さんのご意見で一番大切なのは、日本が戦略性を持って事にあたるということが一番大切ではないか。そのためには広くどういう状況が起こるかということを、よく場を認識すること。それから日本ではどういうことができるかということをきちんとおさめてから対応する必要があるだろうというのが、皆さんの多くのご意見が出たわけであります。
 私、ちょっと一つ質問なんですが、この委員会自身は国際的な戦略ということを書いてありまして、それと今後の検討の中では国内的な話があるという具合になっておりますが、この辺はどう考えているのか。ちょっとそれだけ簡単にご意見いただけますか。

○水野国際対策室長 その部分につきましては、基本的には今後の国際戦略を考えていく上で、どうしても一体不可分なところがあるということでご指摘をいただいているということを背景に整理をさせていただいたということでございますので、あくまで今後の国際戦略を検討していく上で、必要な範囲で国内のあり方をご議論いただければというふうに思っております。

○西岡委員長 今のような話、皆さんのご意見非常にクイックにいただきたいのですが、向こうの方からいきましょう。明日香さん、どんどんいきますので用意しといて。

○明日香委員 では、クイックに、何か難しい問題かもしれませんが、ロシアとのこれからのいろんな意味での交渉というのが第一約束期間の遵守の話にもなりますし、第二約束期間のロシアをどう入れるかにもよりますし、京都メカニズムが動くかどうかというのが途上国がCDMを通してなり、ロシアみたいなホット・エアを通して第二約束期間に関わるインセンティブになるということになると思うのです。
 何を言いたいかというと、これから日本政府がどういう形でクレジットを買うかが結構第二約束期間にも関わってくると。そこら辺のいくらで買うとか、それを買ったからロシアにはちゃんと入ってもらうとか途上国はこのくらいで買わないと多分だめだろうなとか、そういういろんなシミュレーションをしながら考えていかなければいけないでしょうねという、非常に難しいんですけれども、そういう意味ではロシアが入ってくることによって、実際にロシアから買ってくるということを、国民の合意も含めてそろそろ考えていかなければいけないのではないでしょうかということです。
以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。ちょっと時間延びるかもしれませんけれども、非常にコンパクトに、しかし言いたいことは言ってください。三村委員どうぞ。

○三村委員 2点あります。1つは、脱温暖化社会という言葉が使われていますけれども、これはどういう意味かとか市民権を得ている言葉かとか、ちょっとそれが1つですね。
 それから2番目は、先ほど西岡先生が我が国がODAとかそういうものいろいろやっているので、その中で対応しましょうとおっしゃったのですが、これは非常に重要な示唆だと思っていまして、例えばCDMとかそういうものは従来のODAに対してアディショナルにやらなければいけないと。こういうことになっているんですけれども、もしODAの仕組みの中にCDMだとか適応の援助というのを入れ込むことができたら、我が国は非常に途上国に対する援助の大きなポテンシャルを持っていると思うんですね、既にこれだけやっているわけですから。
 だから何とかそういう従来のODAとかそういうものの中に温暖化対策の効果を入れ込むような国際的な合意ができれば、我が国としては非常に大きな貢献ができるのではないかと思います。

○西岡委員長 横田委員お願いします。

○横田委員 今後の検討課題に2点付け加えさせていただきます。1つは、企業、それからNGOをどういう形でこの枠組みの中に入れていくかという方法を、やはり具体的に考えた方がいいだろうと思います。ご存じのとおり国連ではグローバルコンパクトというのが始まっていまして、極めて弱い形ですが企業に対する働きかけをしています。環境問題について企業が国連と協力していこうということを約束するわけなのですが、そこにもう少し具体的な中身が入ると効果的になるかもしれないと思います。これが1つですね。
 それからもう1つは、私は法律をやっているものですから、例えば温暖化ガスをコントロールする特許とかそういう工業所有権の問題に関心があります。環境に関する新技術をどうやって広く使ってもらうようにできるのかということです。ご存じのとおり企業は自分が開発した技術については高い金をもらわなければ技術を渡しませんから、それだとせっかく技術があっても全然広く使われないわけですね。そうかといって企業の開発意欲を失うような形で、せっかく開発したものが全く経済的な利益がないとするとこれも問題です。このバランスをどうとるかというのが結構大事な問題だろうなという気がいたしますので、その辺を少し研究してみたいと思います。

○西岡委員長 松橋委員お願いします。

○松橋委員 1点だけクイックに。ターミノロジーですが、炭素中立社会というのが我々普通にカーボン・ニュートラルというとバイオマスエナジーのようにネットでミッションを出さないエネルギーとかそういうようなものをカーボン・ニュートラルというので、ここはどうも濃度安定化ということを言っているようですので、しかもその危険でない濃度でというようなニュアンスがあるようですが、そこのtermをちょっと整理された方が誤解を招きにくいのではないかなというふうに思います。

○西岡委員長 ほかにございますか。はい、どうぞ。

○工藤委員 今日の明日香委員等々の話のディスカッションとその6.で書かれている文言の強さというのが、私自身はちょっと違うのかな。例えば現状の枠組みの必要という、もしくは現実的であるといういろんな意味では結論的な議論がなされたかどうか、ちょっと私も途中スケジュールで欠席しがちだったものでこの辺ちょっとよくわからなかったので、あとででも結構ですのでお教えいただければと思います。
 そういう意味では今日もコミットメントの話が出たときに、具体的数値目標の考え方というこういう数値目標に限定した考え方ではなくて、コミットメントのいろいろな意味で方法論がたくさんあるかもしれないという、そういう可能性の議論だったような気がするのですが、その辺の書き方というのはいろんな意味で議論の内容を反映するのであるならば、書かれた方がいいのかな。そういう意味でも経緯や実績ということに加えて、やはり問題点みたいなものがあるからいろいろ議論があるわけですので、その辺の現状認識というのは明確にしておく必要があるのかなと思いました。
 細かい話はいろいろあるんですが、一つ、特にEUのところのくだりで最後に「連携の可能性等を探っていくことが必要。」ということが突然入っているのですけれども、これも議論されたのかどうかちょっと私わからないのですが、逆に次回のところで議論されればいいんでしょうけれども、私はこれ唐突にちょっと見えたので。それとは加えて、アメリカは例えば参加が必要と書いてあって、EUは連携、で、ロシアは考慮して、途上国は緩和努力の確保、この辺の組み合わせはきっと戦略ですよね。だからその辺の戦略の組み合わせという意味で、例えば今のEUの話とかというのはちょっとよく見えなかったところがございまして、もし次回、いろいろご説明いただければありがたいな。
 それと最後はやっぱり委員長がおっしゃったように、日本の戦略を考えるにあたっての今後の検討課題の中で、こういった日本のシナリオ云々というのは本当に適当かどうかというのは、僕もちょっとよく見えなかったところがあります。国内対策というものと国際戦略というものの意義づけというものを課題の中でどういうふうに、国内対策というところが、国内の社会の実現云々というところはどういうふうにつなげるのかというのは、ちょっとよく見えなかったなというのが個人的な感想です。
 以上です。

○西岡委員長 ほかにございませんか。

○住委員 僕はやっぱりこういう話のときに一番気になるのは、21世紀の日本での少子高齢化というのをどういうふうに取り上げるかということがはっきりしないとダメなような気がします。依然として右肩上がりのような経済成長に21世紀を考える、人口も例えば1億2,000でずっとやるんだという前提で考えるのか、もう7,000万でいいやと考えるかで結論が違ってきます。まず腹を決めておいて、日本という国は2100年には7,000万でいくんだ、それでちゃんとできるようにするのだったら、ここ40年ぐらいは、「もうすぐみんな死んじゃうからごめんね、我慢してね」ということだってできるわけです。先がわかっていれば耐えれるわけです。
 エネルギー需給動向でも全部の動向が、多分すべての見通しが右肩上がりになっているんじゃないかと思いますが、7,000万といったら相当な、大正時代に戻るわけですから大きく変わります。トータルなグランドデザインがないまま、ストラテジーをつくっても何か足元からガラガラガラ壊れていくような気がしないでもないということ。
 それから、僕は廃棄物の人から言われたのですけれども、将来的には、炭素の問題よりも前にごみがもう出せなくなってくるといわれています。逆にいうと今ごみを輸出したりしていますが、ごみをどうするかという問題は結構大きくなってきます。日本は埋め立てる場所がないといいます。そうすると、日本では、とどのつまりは燃やした方がいい、という選択をしなければならないかもしれません。
 だからCO2の問題だけを考えていてはダメで、環境問題は全部つながっていますので常にエネルギーの需給動向の問題とか廃棄物とかごみ問題とか、いろんなことを同時に見据えて総合的な戦略を考えてゆく必要があります。そうでない限り、国の行政レベルで問題を持っていっても、こっちの役所はこう言っていた、あっちはこうだと必ず多分調整でパンクしてしまうような気がします。何かそういう意味での総合性をやはりどこかで言われた方がよいと思います。

○西岡委員長 よろしゅうございますか。何かそちらの方でお話ございますか。

○水野国際対策室長 それでは、簡単にちょっとコメントできるところをコメントさせていただきたいと思います。
 まずロシアの件、端的にホットウエアをどうかというような話かと思いますが、基本的にはこれは中間とりまとめということで各国にPRしていくというようなことも考えられるわけでございまして、その点では具体的にありていに書くということはなかなか難しいと思いますが、そこについては既にロシアのところの4ページの一番上から3つ目のポツがそういった意図を含んで、要するに「プロジェクトの取組の成功などに基づき、削減約束が的確に達成されることが」というふうに書いているのはそういう趣旨ですが、いずれまたご議論いただくときにはそういうご議論もいただければというふうに思います。
それから続いて、ODAとの関係等々のご指摘もございました。これにつきましては今のここに書いてございます「今後の検討課題」というところでは、京都メカニズムの位置づけとかあるいは資金メカニズムの考え方を包含するより広い視点で、要するに国際連携あるいは途上国の開発協力みたいなものをどう考えていくかということだと思いますので、ここに書いてある議題をより膨らませた形で議論をいただくということになろうかと思います。
 それから続きまして、企業とかNGOを入れるという、これも大変また重要なご指摘かと思いますが、これは一番最後のポツのいろいろな枠組み等々の役割あるいは位置づけということの中の1つということだと思うのですが、「等」ということではしょるのではなくて、はっきりと企業とかNGOの取組みの役割というものも合せて議論をいただくということにする必要があろうかということだと思います。
 それから特許を、先生お出しになってしまいましたが、技術についての特許等の問題については、既に前回のこれまでの審議経過のとりまとめの特に技術の議論のところで、問題点としては指摘をいただいている点かと思います。したがいまして、これにつきましてはまた再び返ってくる場面が出てくれば、そこでさらに深堀をして議論をいただければというふうに思っております。
 それから、中立という言葉をもう少し検討した方がいいのではないかということでございますが、これについては意図としてはまさにおっしゃったように、濃度というよりはむしろ最初にご指摘をいただいた、吸収と排出がバランスするというような意味での理想的な社会を目指すと。脱温暖化社会も似たような意味でございますけれども、そういったニュアンスを出すためにちょっと使ったわけでございますけれども、再度検討はもう一度させていただきたいと思います。
 それから数値目標の考え方だけではなくて、もうちょっと幅広い意見があるということ。それから、問題点があるというような等々についての指摘についてもちゃんと書き込むべきだというのは、まさにそのとおりだと思いますので、そういった論点があるということについてはしっかり書き込ませていただきたいということと、さらにEU等のEUの一番最後のところの書き方が、違和感ということでお話ございました。これはご議論をいただいた部分でございまして、実際EUはここに枠組みで大きく括ってある中では京都議定書に参加している意味では、日本と立場を同じにするという意味ではEUしかないということもございまして、そういった意味では既に京都議定書参加国の間同士ということもあり、今後の枠組みのあり方の議論をリードしていくという意味で連携が必要ではないかというご議論をいただいたということで、まとめさせていただきましたが、また次回も議論をいただければというふうに思います。
 それから、住先生からご指摘をいただきました少子高齢化社会の問題ですとか、それからごみなんか出せなくなるというような点につきましては、まさに日本において脱温暖化社会を実現するためのシナリオという中で、そのシナリオを考える中で温暖化問題だけを考えるのではなくて、もうちょっと包括的な視点も含めて考えていく中で、脱温暖化社会をいかに考えていくのかということで議論をいただくということだろうかと思いますので、その議論をいただくときにはそういった点も留意をして議論を進めさせていただければというふうに思っております。
 最後に国内対策とこの議論を結びつけるのか難しいというお話もあったかと思いますが、これにつきましては、やはり国内対策と国際対策の仕分けというのはなかなか難しいというのはご指摘のとおりかと思いますが、一方で指摘としては何度もこの委員会で、国内にどういうインプリケーションがあるのかということを踏まえた上で、国際戦略を構築しなければいけないというご指摘をいただいておりますので、そこについてはまさに具体的に抽象論で議論をしていても線が引けませんので、具体的に議論をしていく中でどこまで議論をするのかということをご議論をいただければというふうに思います。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。それでは皆さん、ご審議どうもありがとうございました。私の方で一つ、この中間とりまとめ、今戦略のところにつきましては、「戦略について」とございますけれども、十分な論議はまだされていないと思うんですね。戦略というのはどこに絞っていくかとか、どういうストーリーでいくかという話は、まだこの段階ではどちらかというとこういう論点があるねというところで、その辺はちょっとメリハリをはっきりした方がひよっとしていいかなという気もいたします。それはまたご相談ですけれども、中途半端に戦略的な話を入れるよりも、まだこういう論点でこれを組み入れてどうやっていくかということ、次の段階でもいいのかと思っています。
 これはCOP10に向かってどういう具合に考えて、これをまとめていくかというのはそちらの主導でやっていただければいいと思いますけれども、私ちょっとそんなことを今考えました。
 今後の検討課題のところで、今後の検討の(1)のところはその戦略性を持った今度検討をしようじゃないかという話で、その個別の内容が下に書いてあるという具合にも考えられるかなと思っていますので、その辺を留意していただければと私は思っております。よろしゅうございますか。
 それでは皆さん、どうもありがとうございました。今日もまたちょっと遅れまして申しわけありませんでした。

午後4時13分閉会