中央環境審議会地球環境部会第5回気候変動に関する国際戦略専門委員会議事録

開催日時

平成16年10月5日(金)10:03~13:03

開催場所

環境省 5階共同第7会議室

出席委員

(委員長) 西岡 秀三
(委員) 明日香 壽川  甲斐沼 美紀子
亀山 康子  工藤 拓毅
高橋 一生  高村 ゆかり
松橋 隆治
 
 三村 信男

議題

1. 「気候変動枠組条約及び京都議定書の概要」について
2. 「米国の気候変動対策」について
3. 「EUの気候変動対策」について
4. 「国際社会における政府の役割と国家間合意のあり方」について
5. 「気候変動に対する更なる行動に関する非公式会合」の結果(報告)
6. 「第14回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」の結果(報告)
  

配布資料

資料1  気候変動枠組条約及び京都議定書の概要
資料2  米国の気候変動対策
資料3  EUの気候変動対策
資料4  国際社会における政府の役割と国家間合意のあり方
参考資料1  気候変動に対する更なる行動に関する非公式会合(概要と評価)
参考資料2  第14回地球温暖化アジア太平洋地域セミナーの結果について
参考資料3  ロシアの京都議定書批准の閣議決定について

議事録

午前 10時03分開会

○水野国際対策室長 まだ、若干お見えになられていない先生方がいらっしゃいますが、定刻でございますので、ただいまから気候変動に関する国際戦略専門委員会第5回会合を開催したいと思います。
 それでは、議事進行につきましては、西岡先生、よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 皆さん、おはようございます。
 この委員会は、気候変動に関する国際戦略専門委員会、次の長期の国際的なメカニズムをどうやってつくっていくかということに対する材料を提供しようという委員会でございます。地球益あるいは国益を考えて、長期にどういうメカニズムが国際的にできればいいかなということを検討したいということかと思います。
 きのうも某所で、京都議定書の成り立ちの話をみんなと話をしていました中で、あのとき我々がいろいろ考えていないような材料がいっぱい出てきた。例えば吸収であったり、京メカであったり、いろいろなことがあったんじゃないかなというぐあいに考えております。そういう反省も含めまして、今後の交渉あるいはメカニズムの策定に参加するに当たって十分の知識を集めておこうというのが、この専門委員会でございまして、個別のよし悪しにつきましては、またこの上の地球環境部会の方に報告して、さらに検討するということになっております。ですから、皆さんには漏れのないアイデアを、どういうものがあるかということを、ここで集約したいというぐあいに考えております。
 これは前置きでございますが、本日の議事でございますけれども、お手元の議事次第にございますように、6つの議題がございます。主として1から4のところが主要な議題ということになりまして、あとは報告ということになりますけれども、それぞれ事務局から説明していただきます。
 本日は、特に、先日行われました外務省主催の気候変動に対する更なる行動に関する非公式会合というのが開かれまして、その結果についてご報告いただきたいということで、外務省の小西地球環境問題担当大使も本専門委員会にお越しいただいております。
 どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 本日の会合、10時から13時までということで約3時間ございます。
 それでは事務局、まず資料の確認をお願いします。

○瀧口室長補佐 資料の確認をさせていただきます。
 まず、お手元の議事次第に資料一覧というのがございますが、資料1が横長のパワーポイントの「気候変動枠組条約及び京都議定書の概要」という資料でございます。資料2が「米国の気候変動対策」、資料3が「EUの気候変動対策」、資料4が、国環研の亀山委員に準備していただきました「気候変動に関する将来枠組み:国際社会における政府の役割と国家間合意のあり方」という資料でございます。それから、参考資料1といたしまして「気候変動に対する更なる行動に関する非公式会合の概要と評価」ということで、外務省に用意していただいた資料です。参考資料2が、「第14回地球温暖化アジア太平洋地域セミナーの結果について」、参考資料3が「ロシアの京都議定書批准の閣議決定について」ということになっております。参考資料3につきましては、後ほど簡単にご説明させていただきます。
 それから、先日、前回の専門委員会までにまとめていただきました、これまでの審議のまとめを印刷物にしたものを配付させていただいております。委員の皆様方には、その英訳版も配付させていただいております。
 以上が資料の一覧でございます。不足等ございましたら事務局の方にお申しつけください。
 それから、委員の皆様方につきましては、次回の委員会は10月26日に予定しているということをご連絡しているかと思いますが、その次の委員会は11月中下旬以降を予定しておりまして、またいつもどおり、委員の皆様のお手元に1枚の予定を伺わせていただく紙を置かせていただいておりますので、お帰りまでに記入して、置いていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、簡単に参考資料3をご説明させていただきます。「ロシアの京都議定書批准の閣議決定について」という資料でございますが、先週来、京都議定書のロシアの批准プロセスに関しまして動きがありましたので、その報告をさせていただきます。
 まず、参考資料3の裏面を見ていただければと思いますが、京都議定書の発効要件には2つございまして、1つ目が55カ国以上の国が締結をするということ。2つ目が、締結した附属書I国、先進国の合計の二酸化炭素の1990年の排出量が、全附属書I国の合計の排出量の55%以上になること、という2つ要件がございまして、最初の要件は既に満たしております。
 それで、2つ目の要件ですが、下の円グラフを見ていただきますと、批准した国が影で示している部分でございます。アメリカが批准しないという方針を変えておりませんので、この後、ロシアが批准すれば、京都議定書は発効するという状況になっております。
 そうした状況で、表に戻っていただきまして、先週の木曜日、9月30日に行われました閣議におきまして、政府は京都議定書を批准するという法案を承認いたしまして、これが国会の会議に提出されるということになりました。また同時に省庁は、この3カ月間で京都議定書から発生する義務と権利の実施に関する包括的な行動計画――これは日本でいいますと大綱のようなものだと思いますが――に関する提案を用意するということが決定されております。京都議定書の発効は、将来枠組の議論にも大きく関係してくるかと思いますので、ご紹介させていただきました。
 それから、加盟情報ですが、また裏に戻っていただきまして、今のところ、アメリカとオーストラリアが京都議定書は批准しないという方針でありますが、オーストラリアの総選挙が10月9日に行われることになっておりまして、与党は批准しないという方針でありますが、野党は、この選挙に勝ったら議定書に批准するというふうに言っておりまして、こちらも注目されるところであります。
 以上であります。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 お手元の資料の不足は多分ないと思いますが、もしありましたら事務局にお申し出いただきたいと思います。
 それでは、本日の議題の説明を事務局の方からいただきたいと思います。

○水野国際対策室長 それでは、議題についてご説明します。
 議事次第にございますように、本日の議題は6つございます。まず1つ目が「気候変動枠組条約及び京都議定書の概要」について、2番目が「米国の気候変動対策」について、3番目が「EUの気候変動対策」について、4番目が「国際社会における政府の役割と国家間合意のあり方」について、5番目が先ほどご紹介のありました「気候変動に関する更なる行動に関する非公式会合」の結果報告、6番目が「第14回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」の結果報告でございます。
 最初の議題から3番目の議題までにつきましては事務局から、4番目の議題につきましては亀山委員から、そして5番目の議題につきましては小西大使から、さらに6番目の議題につきましては事務局から説明をさせていただきまして、各議題ごとに議論をいただければというふうに思っております。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 全体のスケジュールといたしましては、あと2回ぐらい、この会議を考えておりまして、最後は、COP10に向けてある程度のものをつくっておこうということになるかと思います。一番最後の会議は、そのまとめということで、その1つ前、すなわち次回になりますけれども、それにつきましては、かなり具体的な案等についても検討していく必要があるというぐあいに考えております。そういう中で、きょうの議題が設定されております。特に京都議定書の問題につきましては、ついつい京都議定書というと何%なんという話ばっかりありますけれども、大きく長期を見ても、その中に重要な要件が、かなり織り込まれている。それがどういうスピリットを持っていったかといったことについて、もう一度レビューしてみようということで、京都議定書の概要について、水野さん、よろしくお願いします。

○水野国際対策室長 それでは、資料1につきましてご説明させていただきます。まさにこの資料1のここでご説明をさせていただく趣旨は、今、西岡委員長からご説明がございましたように、今後の枠組について議論をいただく際の前提として、京都議定書あるいは気候変動枠組条約の仕組み、あるいは各国の義務規定等について再確認をさせていただくという趣旨でございます。
 (スライド)
 内容につきましては、ここにございますように4つに分けておりまして、まず批准国はどういった国があるかとうこと、それから簡単なこれまでの経緯、そして気候変動枠組条約の概要と京都議定書の概要というふうになっておりますが、主に先ほど申しましたように趣旨から3番目と4番目を中心にご説明をさせていただければというふうに思っております。
 (スライド)
 まず最初が、気候変動枠組条約、それから京都議定書の批准国の概要でございます。
 (スライド)
 この図は、それぞれの仕組みの中に、どういった国が含まれているかというものを簡単に図示したものでございまして、全部の国を示したものではございませんけれども、代表的な国をそれぞれのカテゴリーに分類をしております。現在、気候変動枠組条約を批准している国が189カ国ございまして、そのうち、京都議定書の批准国が125カ国、京都議定書を批准していない国は64カ国ということで、大体3分の2が京都議定書を批准しているということになります。
 それから、京都議定書を批准している国のうち、33カ国が先進国と市場経済移行国ということになっておりまして、そのほかに中進国・途上国が92カ国ということになっております。ですから、その中で、割合としては中進国・途上国が先進国側の3倍の数、存在するということでございます。
 一方、京都議定書の批准国が右側にございますけれども、先進国ではここにございますような6カ国ございますが、特に排出量の観点からいって重要なのは最初の3カ国、アメリカ、オーストラリア、ロシアでございます。このうち、ロシアにつきましては、先ほどご説明させていただきましたように、具体的な批准に向けたプロセスが動きつつありまして、間もなく、点線にありますように、京都議定書の批准国に移行するのではないかというふうに期待をしているところでございます。またオーストラリアについても、場合によってはこちらに移る可能性もございます。アメリカにつきましては、引き続きここにとどまるということでございます。
 そのほかに小さい国としては、リヒテンシュタイン、モナコ、クロアチアなどがございます。
 それから、京都議定書の批准国のうち、途上国といたしましても58カ国、依然として残っておりまして、特にサウジ等の産油国は基本的にすべて未批准国の方に入っておりまして、京都議定書の方の枠組には入ってきていないという状況でございます。
 (スライド)
 続きまして、これまでの経緯につきまして、これは簡単にご説明させていただきたいと思います。
 (スライド)
 気候変動枠組条約は、リオデジャネイロで開催されました地球サミット、92年6月にて署名が開始されまして、94年3月には条約が発効しております。それから、COP1でベルリン・マンデートということで、気候変動枠組条約の、端的にいいますと、そこでの約束では、温暖化問題に対応するためには不十分であるという判断がなされまして、具体的に排出量の削減を目指した枠組をつくる必要があるという認識がなされました。このベルリン・マンデートに基づいて、具体的な成果として採択されたのが、COP3の京都議定書でございます。97年12月ということでございます。
 (スライド)
 京都議定書は、まだ具体的な大きな枠組でございますので、細かい実施の細目については決まっておりませんでしたので、それからCOP6、COP7と進むに従いまして、具体的な運用上のルールが交渉され、決定されていきました。一旦、COP6では、合意が不成立になったわけでございますけれども、COP6の再会合で、ボン合意というものがなされまして、大方の運用ルールにつきましては、COP7のマラケシュ合意で決定をされました。それからニューデリー宣言等々ありまして、現在に至っているというわけでございます。
 (スライド)
 これは参考上でございますけれども、国際交渉とIPCCとの関係を図示したものでございまして、それぞれの重要な時期にIPCCの報告書が発表されておりまして、具体的な交渉にも大きな役割を与えたのではないかというふうに考えられております。
 (スライド)
 続きまして、気候変動枠組条約の概要についてご説明をさせていただきたいと思います。
 (スライド)
 まず、条約の概要ですが、3ページにわたってご説明させていただきたいと思いますが、まず最初に究極の目的でございます。これは既にこの委員会でも議論をいただいたところでございますが、この条約の目的は、温室効果ガスの濃度を安定化させることでございまして、その安定化のレベルを気候システムに対して、危険な人為的干渉を及ぼすことにならない水準で安定化させるということを目標にしておりまして、またここには書いてございませんが、そのための期間についても、具体的な規定がございます。
 それから、原則として定められておりますのが、「共通だが差異のある責任」ということと、各国の能力に従って気候系を保護するという原則が立てられております。
 それから、各国に課されている具体的な責務でございますけれども、これは簡単に要約をしておりますが、まず、すべての締約国への責務と、先進国の責務に分けられます。そして先進国の責務は、さらに市場経済移行国を含むものと含まない、それ以外の先進国だけに課される義務がございますので、3つに分けて考えることができます。
 まず最初の、すべての締約国の義務でございますけれども、1つ目の代表的なものが、排出・吸収目録をつくる。そして、それを更新して、報告をするということが1つ目でございます。
 2つ目は、緩和・適応措置を含む計画を策定・実施・公表するということでございまして、緩和・適合措置を含む計画をつくるのは途上国、先進国にかかわらず課されている責務ということになっております。
 続きまして、2番目が先進国、これは市場経済移行国を含む責務でございますけれども、これにつきましては、条約の条文が非常に複雑な規定になっておりますが、これを簡単に要約してしまうと誤解を生じる可能性があるんですが、あえて簡単にここではしておりますが、まず1つ目は、温室効果ガスの人為的排出のより長期的な傾向を是正するような政策を策定し、対応措置を講じるということでございまして、2番目が、その1に関する情報を定期的に締約国会議に報告するということで、さらに条件がついていまして、下に小さくて見えにくいですが、[2]の報告は温室効果ガスの排出を2000年までに1990年の水準に戻すのが目的で行う、ということで、2000年までに1990年のレベルに排出量を戻すということが、排出削減の1つの目標ということで関連づけられている。直接的な義務ではございませんけれども、関連づけられているということでございます。
 それから、3番目に市場経済移行国以外の先進国の責務として、途上国への資金あるいは技術の移転ということが定められております。
 (スライド)
 続きまして、まず、国別報告書の部分につきまして、少し詳しく見ております。これは条約の規定に基づいて各国が条約事務局に提出するものでございますが、これまでの実績といたしましては、先進国は、これまで三次にわたって国別報告書を基本的に提出をしております。第四次国別報告書の提出期限は2005年末というふうになっています。途上国の方も、これは第1回目の国別報告書を出している国がほとんどでございますけれども、第1回目の国別報告書につきましては、大体5分の4弱が報告をしておりまして、比較的成績はいいというような状況になっております。
 それで、この国別報告書でございますけれども、これは気候変動対策の基礎となる基本的な情報がすべて含まれておりますので、大変重要な役割を担うべきものというふうに考えられます。具体的な内容ですが、まず温室効果ガスの排出・吸収の目録、それから具体的な削減、適用策あるいは緩和策の具体的な措置の内容等を記載することになっております。さらに先進国は、先ほど申しましたように途上国というよりも、厳しい目標義務が定められているわけでございますけれども、それに関する具体的な政策措置について、予測される効果、それがどのぐらいの削減につながるのかということについても、記載することが求められております。
 さらには、これらの報告書につきまして、特に先進国のものにつきましては、COP決定によるものでございますけれども、レビュープロセスというのがございまして、審査チームが送られまして、詳細な妥当性についての評価が、審査が行われるというようなプロセスが動いております。
 (スライド)
 続きまして、この気候変動枠組条約の仕組みにつきましては、見直しの規定がございます。義務が次第に強化される仕組みが、その中に内在化されているということでございまして、これが京都議定書につながる1つのきっかけとなったわけでございます。それで、具体的には先ほど申し上げましたように、第1回目COP1でベルリン・マンデートの採択ということにつながるわけでございまして、このベルリン・マンデートの中では、現行の条約の約束は不十分であるということが結論づけられております。
 具体的にどういった点で不十分かということは、まず1つは、1990年レベルの安定化というものが、法的拘束力がない努力目標であるということで、しかも多くの国が達成できない見通しだったということが1つ。それから、2000年以降の具体的な取組に関する規定がないということがございます。こういったことがございましたので、1997年のCOP3における議定書またはその他の法的文書の採択を目指して検討を開始する、ということで定められております。
 なお、このベルリン・マンデートで1つ重要な点は、途上国に関しては、追加的な新たな義務を導入しないということが定められているということでございます。こういったベルリン・マンデートをもとに京都議定書の採択へとつながっていくわけでございます。
 (スライド)
 先ほど説明させていただいた各国の振り分けを、もう少し詳しく見ているものでございますけれども、分類をしたものでございます。まず、ここで先ほど説明をしていなかった分について、説明を追加させていただきたいと思いますが、EUというグループが、非常にユニークな位置を占めているわけですけれども、EU全体としても削減目標量というものは、京都議定書などでは定められているわけですけれども、それに対応する形で、附属書I国に入っているのはEUの15カ国ということでございまして、それ以外のEUの国々としてはチェコ、ハンガリー、ポーランドなどもございます。
 それから、下線を引いてあるのはOECD諸国でございますけれども、OECD諸国の中でも韓国とメキシコは非附属書I国の方にカテゴライズされるということで、要するにグループ分けがきれいに区別されているというわけでは、実は必ずしもなくて、いろいろな重なりがあるということでございます。
 それから、ここには書いてございませんが、EUの中でも、さらに非附属書I国のところもマルタ等がございます。
 それから、非附属書I国の方を見ていただきたいんですが、全体で150カ国というふうにございますが、大きく幾つかのグループに分けることができます。先ほどOECD諸国として韓国、メキシコを紹介させていただきましたが、こういった国々、このグループの中では非常に先進的な国々のほかにも、幾つかのグループがございます。非常に特徴的なのが、後ろの2つ、後発途上国と小島嶼国でございまして、これは以前に、ここでもご議論いただきましたが、要するに、排出削減の義務といいますか、努力が必要とされるというよりは、むしろ適応等の、被害にいかに対応するかということが重要な観点になってくる国々でございますけれども、こういった国々が非常に多いということでございます。それぞれ3分の1ずつですから、これを2つ合わせると大体3分の2が、非附属書I国の中の150カ国の中の3分の2を、この2つのグループで占めるということでございまして、実は非附属書I国といいますと、中国、インド等に焦点を当てられることが多いわけですけれども、国の数としては、こういった国々が属するグループがはるかに多い。つまり実際に排出削減を求められる国々よりも、影響にいかに対応するかというようなことが緊急の課題になっている国々が非常に多い、ということでございます。
 それから、もう一つ特徴的なグループとしては、産油国というものがございまして、OPEC諸国で、ここには11カ国ということで整理をさせていただいておりますけれども、こういった国々もございまして、これまた独特の動き方を示しているわけであり。
 (スライド)
 これは先ほどご紹介させていただきました各国のそれぞれの分類ごとの義務を、もう一度整理したものでございますので、余り繰り返さないようにしたいと思いますけれども、全般的な義務といたしましては、代表的なものとしては、インベントリの作成と緩和適用のための計画の作成、あるいは実施というものが課されておりまして、附属書I国の義務といたしましては、さらに追加的に強めの緩和措置を講じるということがございます。
 さらに黄色でくくったのが特に附属書II国ということで、先ほど申しました市場経済移行国以外の国々の、要するに日本などを含む国々の義務でございますけれども、端的に申しまして、資金の供与というところは特に強調されております。あるいは技術移転というところが義務として特に強調をされております。
 (スライド)
 次は京都議定書の概要についてご説明をいたします。
 (スライド)
 これが京都議定書の概要でございます。簡単に整理をさせていただいておりますが、ここにも幾つか非常に重要なポイントがございます。まず、対象ガスですが、6種類のガスということで定められておりまして、温室効果を持つガスは、この6種類に限られないわけですけれども、基本的にはこの6種類について京都議定書が定められたということが1つ重要な点としてございます。
 それから、次に吸収源、特に森林等の吸収源の二酸化炭素吸収量を算入するということが定められているわけでございまして、吸収源の位置づけというものも非常に重要な京都議定書の1つのツールということになっております。したがいまして、今後の議論にあっても、これをどうするかということが1つ論点になるわけでございます。
 基準年が1990年なんですが、代替フロンについては95年でもいいということになっておりまして、年度がずれていくということがございます。
 約束期間が5年間、しかも基準年から大体20年後の5年間ということになっておりまして、この期間の長さ、あるいは基準年からの距離といったものも1つの特徴だろうというふうに思います。
 それから、数値目標が国によって差別化されたということも大きな目標でございまして、日本、アメリカ、EUとそれぞれ違う値が定められておりますし、先進国全体で少なくとも5%ということがございますが、差別化されたということ、それから、現在、例えばイギリス等で2050年までに60%の削減というようなことがいわれておりますけれども、それと比べて、いかに少ないレベルの目標が設定されているかということも1つの特徴かと思います。
 それから、さらなる特徴といたしましては、京都メカニズム、JI/CDM、それから排出量取引という仕組みが設けられたということが、非常に大きな特徴であろうと思います。
 さらに一番上にございますように、削減目標量は課されましたが、政策ポリシー・アンド・メジャーズの選択につきましては、各国に委ねられたということも1つの大きな特徴だというふうに考えられます。各国は自由に目標を達成する方法を選ぶことができるということでございます。
 (スライド)
 これは京都議定書の義務を簡単に整理したものでございますけれども、この表をごらんいただくとよくわかりますように、附属書I国の緩和措置以外のところは、基本的にはほとんど気候変動枠組条約に準じるということになっておりまして、簡単に言いますと、途上国には京都議定書に参加することに追加的な義務は生じないというようなことになっております。したがいまして、京都議定書というのは、附属書I国の緩和措置に関する議定書であるという性格を持っております。この具体的な内容につきましては、先ほどもご紹介しましたように、先進国全体で5%削減するということ、それから、進捗状況の評価ということで、2005年までに約束の達成に当たっての明らかな進捗を実現している、ということを示すことが求められております。さらには2007年には、排出・吸収量推計のための国内制度を整備するというようなことも定められております。あと、配慮事項等も若干ございます。
 以上が簡単な京都議定書上の義務の概要でございます。
 (スライド)
 最後にマラケシュ合意についてちょっとご説明をしたいと思います。
 (スライド)
 COP7で決まりましたマラケシュ合意は、運用上の具体的な方法について定められたものでございまして、大枠につきましては、もちろん京都議定書で定まっているわけでございますので、京都議定書は基本的な枠組を与えているわけですが、その具体的な運用の方法としまして、幾つかの重要なポイントが定められました。まず、途上国問題については基金を、キャパシティビルディングとか、技術移転等にかかわる基金を設置するということが定められました。
 それから京都メカニズムにつきましては、利用に制限を設けるかどうかというようなことが大きな論点にあったわけでございますけれども、基本的には自由に使えるということが、幾つかの観点で定められたわけでございます。
 ただし、次の吸収源のところにございますように、吸収源につきましては、CDMシンクにつきましては、一定の限定がかかっておりますし、それは吸収源そのものの利用につきましても森林管理の部分につきましては上限を設けるということで、日本については全体で最大3.9%の吸収量を確保できることになっておりますけれども、いずれにいたしましても上限が設けられたということが吸収源の大きな特徴でございまして、ほかのものとは大きな違いが出ております。
 最後に遵守の問題でございますが、これはまだ一部、一性格につきまして議論の積み残しがございますけれども、その具体的な遵守の中身としては、目標が達成できなかった場合には、超過分の1.3倍を次期目標に上積みするということは決まっておりまして、その法的拘束力を持たせるかどうかということについては、引き続き、第1回の議定書締約国会合で議論する、あるいは決定するということで、まだ積み残しがあるということでございます。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 京都議定書、それから枠組条約が混乱されていろいろと引用されたりしますけれども、非常によく整理していただいたと思います。何か皆さんの方でご質問あるいはご意見ございますか。専門の方にはよくご存じの点も非常に多かったと思います。

○工藤委員 基本的な情報の共有化ということですっきり整理されていてわかりやすく、ありがとうございました。1点、特に枠組条約の原則のところに、さまざまな対応措置や政策措置が、正確な訳は忘れましたけれども、できるだけ経済効率的方法を考えましょうという、政策手段の特性等についてのプリンシプルが書かれていたと記憶しております。結局、国際条約というのは結構原則が非常に大事なものですから、その辺もいろいろな情報を出すときに、同時に理解を求めることが大事であると思います。

○西岡委員長 高橋委員。

○高橋委員 ありがとうございます。非常に整理されたご説明ありがとうございました。改めてこうやって振り返ってみると、非常に特徴的なのは、随分クラシックな枠組なんだなという感じを受けます。21世紀を通じて国際社会が非常に大きく変わっていく方向との関係で、これをかなり、いろいろこれから見直していく必要があるなという感じを、今、お話を伺っていて非常に受けました。
 1つは、もう既に、かなりこの20年ほどいろいろな作業を行われてきていますけれども、実質上、非公式な専門家の会合などを通じて、お互いに情報共有したり、お互いに影響を与え合ったりしていくことが、非常に重要な作業になりそうだな、今まで以上に、そういう状況が出てきそうだなという感じを受けます。特に途上国との関係では、そういうことを通じて、実質上の影響力を及ぼしていくということ、これまでもやっていましたが、これがある意味で核心のような感じがいたしますが、それは一切、この規定の中にはないわけで、それが非常にないことが重要で、それをやることが重要だというような感じがいたします。
 2つ目には、途上国も含めてのことなんですが、国際社会、普通、私どもの分野でやっておりますのは、21世紀を通じて、恐らく主権国家300ぐらいになるであろうというふうに予測されておりますが、あるいはそれ以上かもしれません。今後、いろいろな国がいろいろな形で分裂していって、国家の数がふえてくるということですが、そういうこととの対応というのが、こういう法的なインストゥルメントを、今後強化していく場合にも非常に重要になるわけですが、それに対して、どういうふうに考えておくかということを、一応頭の体操が非常に重要になるなという感じがします。
 また、特にEUが1つの特別なステータスを与えられているというようなことからしますと、もう既にEUが15から25になったように、さらにその先のアジェンダも既に設定され初めておりますが、そういうことを含めて、国の数の問題、カテゴリーの問題というのが、どんどん大きくなってくると思います。そのカテゴリーの問題としましては、移行国というのも確かに90年代、重要なコンセプトでしたが、これはもう恐らく数年先には、こんな発想というのは許されるはずがないというふうに思います。
 また、OPECそのものがいろいろな形で変化してきていますし、一番大きな産油国ではロシアがこれに参加するということになると、さらにOPEC自身の意味も変わってくるでしょうし、インドネシアが参加すればさらに変わる。そういうことを考えますと、OPECというのは1つのカテゴリーで、いろいろな影響力を持っていた1970年代と、これから10年ぐらいとの関係が非常に変わってくるであろうという感じもします。
 また、韓国、メキシコがOECDには入ったけれども、これでは古典的な途上国のカテゴリーに入っているというようなことを初め、恐らく先進途上国の位置づけというのが、これまた大きく変わっていくだろうという感じがします。
 そうしますと、この国際社会における国のカテゴリー化の問題、数の問題、そういうことが一連のこととしていろいろ出てくる。この状況に関して、かなり整理して考えておかないと、この先のイニシアティブ、対応、そういうものに関して、いろいろ不具合が出てくるかなという気がします。
 それから、差異のある責任に関して、恐らくもう少しきめの細かい詰めというのが、今後必要になってくるような感じもします。途上国自身が持っている技術が、他の途上国に、より重要なことの認識というのが強まってくると思いますが、そういう状況で、途上国自身がそれを義務的に国際社会に対して表現していくというようなことも必要でしょうし、ただ、そういう国は、もしかしたらそういう資金の余裕はないかもしれない。そうすると、資金と技術と一括して差異のある責任といっていたのを、資金と技術両方というカテゴリーと、技術だけのカテゴリーと分けていいのかもしれないという状況も、多分出てくるような感じがいたします。
 それと最後に、4点目になりますが、法的拘束力が、プログラムという内容を持った側面と、それから規範という側面を持った側面と、その両方を含んでいるこういうインストゥルメントに関して、どういうふうに整理して考えておいたらいいのか、違反した場合の罰則ということ、あるいはプログラムを、どうも十分促進できなかったという、十分さの程度の問題のようなところ、そういうのが非常に難しい内容を抱えている分野だなというふうに思います。そのあたりに関しましても、かなり緻密な議論が、この先、必要になってくるのではないかという印象を持ちました。
 以上の4点です。ありがとうございました。

○明日香委員 質問というか、もし情報をご存じでしたら教えていただきたいんですけれども、ロシアの話なんですけれど、ロシアが批准を前向きに決めていくという話の中身で、実際に京都メカニズムを使ってロシアが何かを売ったり買ったりするときに、ある程度のキャパシティなり条件が必要だと思うんですけれども、そこら辺は、ロシアはある程度見通しが出たから、そういう方向に向けたのか、そこら辺の情報があれば、ちょっと教えていただきたいんですが。インベントリーの話とか、そこら辺の話です。

○西岡委員長 ほかにございますか。
 では、今、いろいろご意見、ご質問が出ましたけれども、対応ありましたらお願いします。

○水野国際対策室長 それでは、まず高橋先生からご指導いただきました幾つかの点について簡単にちょっとコメントをさせていただきたいと思いますが、まず最初に、全体的な考え方といたしまして、今回、京都議定書あるいは気候変動枠組条約の仕組みをご紹介させていただきましたのは、最初に委員長の方からもご説明がございましたように、今後、これをいかに発展させていくかということについてご議論いただく際の基盤として、これをご理解いただきたい、その上でご議論いただきたいということでご紹介をさせていただいたものでございまして、まさに、今、ご指摘をいただきましたような点につきまして、重要な論点はさらに議論を、今後深めていただければというふうに思っておりますので、会議の具体的な議題として、場合によっては、今後ご議論をいただければというふうに思っております。
 具体的な内容についてですが、まず最初に、非公式のプロセスの重要性というものが、ご指摘をいただきました。この点につきましては、我々のみならず各省庁とも、非常に需要なことであるというふうに理解をしておりまして、まさにその点で、今回、外務省の方からも大使にお越しをいただきまして、非公式会合の結果についてご報告をいただくということにしておりますし、我々のAPセミナーにつきましても、そういったプロセスの一環というふうに考えております。
 これは、単にご紹介をするというだけではなくて、今後、これをいかに発展させ、あるいはCOPのプロセスにコントリビュートしていくのかということについての、1つの現状認識、現状把握をしていただければということで、ご紹介させていただくというものでございますので、また、今後議論を深めていただければというふうに思っております。我々も非公式プロセスの重要性を非常に強く感じているところでございます。
 それから、次にカテゴリー分けの重要性について、ご指摘がございました。特に、市場経済移行国などというカテゴリーは、今後、成り立たないのではないかというご指摘もいただきまして、まさに、そういったことだろうというふうに思いますが、このカテゴリー分けにつきましては、実は将来の枠組のコミットメントをどういうふうにつくっていくかということの中で、研究もいろいろされておりまして、前回も明日香先生などからもご紹介いただきました、例えばマルチステージのモデルというようなものが、例えばカテゴリーを最初から先進国・途上国というふうに分けてしまうのではなくて、いろいろなクライテリアで国々を区別して、それに応じて適切なコミットメントを課すというような仕組みでございますし、そういった意味では、このカテゴリーをどうつくるかというものは、まさに今、議論されているところでございます。
 したがいまして、これは今後、国際的にも議論の焦点にますますなっていく論点だろうと思いますので、これはしっかり、この委員会でもご議論いただければというふうに思っております。
 特に、先ほどの、「共通だが差異ある責任」のところにつきましてもご指摘いただきましたが、これについても、今のところはカテゴリー分けということについては、あくまで排出量のコミットメントにリンクさせた形でしか議論されていない部分が多いんですが、こういったものを基本的にはカテゴリー分けということにつながってくる部分だと思います。そういった意味では、そういったことも含めて、どういったカテゴリー分けが重要なのかということについては、ご議論いただければというふうに思っております。
 ちなみに、このカテゴリー分けというものを、この仕組みをいかに効果的な、意味あるものとするかということにも、当然響いてきますし、それ以前の交渉の段階でも、各国のスタンスをそれで固定化してしまう傾向が、どうもありまして、今も先進国と途上国の二分法が非常に強く国際社会で行き渡っておりまして、それが国際交渉をなかなか進展させていかない1つの要因ではないかというようなことも指摘をされるようなこともございます。そういった意味では、このカテゴリー分けというものをどうしていくのかということは、非常に今後の交渉が成功するかどうかということにもかかわってくる、非常に重要な問題だということでございますので、こういったことについて、どう考えればいいのかということについては、またご議論をいただければというふうに思っております。
 それから、法的拘束力というものが、プログラム、それから規範という両面があるということにつきましてご指摘を受けました。これにつきましては、現在、まだよく考えておりませんので、またちょっと勉強させていただきたいというふうに思っております。
 それから、明日香委員からは、ロシアの批准の動きの背景の情報についてご指摘がございましたが、我々も実は情報につきましては、現在のところ、ほとんどは報道情報でしか把握できていない状況でございまして、報道の中では大きく3つぐらい代表的な例がかけられていたと思いますが、その1つには、JI等を通じて経済的な利益を得るという機会を逃す手はない、という考えが動いているのではないかという指摘もございましたが、具体的にキャパシティとしてどこまで動いたから、こういった動きにつながっているという情報は、今のところ入っておらない状況でございます。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 一番最初に工藤委員からの、非常に短いご指摘だったんですけれども、今後、環境のことだけではなく、当然、持続的な発展だとか、日本の経済発展、世界の経済発展を考えた場合、非常に重要なところを忘れてはならない、という話でしたが。

○水野国際対策室長 すみません、ちょっとコメントを忘れましたが、大変ご指摘のとおりだと思っておりますので、できるだけバランスよく、いろいろな視点をうまく関係者に伝えられるように、今後とも努力をしていきたいというふうに思っております。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 非常に重要なご指摘が幾つか出ました。これにつきましては、多分、第2ラウンドでいろいろと検討していくことになると思います。多分、COP10では多くの、こういった議論があちこちのサイドイベント等々でなされると思います。具体的に今後動いていきますと、今のような国際政治的な力が非常に効いてくるということもあるかと思います。そのあたりにつきましては、ぜひ我々のこの委員会で、次のラウンドで検討していきたいと思います。
 ちょっと時間が押してきましたけれども、次の議題に移りたいと思います。米国の気候変動対策について、これも事務局からお願いします。

○瀧口室長補佐 次に米国の気候変動対策ということで、資料2をご参照ください。
 前回の委員会で、明日香委員からロシア、中東、それから途上国の状況をご説明させていただきましたが、きょうはアメリカとEUの気候変動対策ということでご紹介させていただきます。議題がたくさんございますので、若干かけ足で説明させていただきます。
 (スライド)
 発表内容。基礎データ、それからアメリカの国際的な対応、国内対策、日本からの働きかけということでご説明をさせていただきます。
 (スライド)
 まず、世界全体の排出量の内訳ですが、世界全体でCO2排出量、2000年で約230億トン、CO2換算で出ておりますが、そのうち約4分の1がアメリカから出ております。それから、EUが25カ国で約16%、その次が中国、ロシア、日本という順番になっております。
 (スライド)
 アメリカの排出量の推移ですが、左側のグラフが1990年以降の排出量の推移でございまして、この排出量、90年から2002年で約11.5%、増加をしております。右側が主要国の人口増加率と、それから温室効果ガスの排出量の比較をしたものですが、見ていただきますとわかりますように、この人口増加率が、アメリカは2001年から2025年の見通しですが、中国よりも大きい。日本やフランス、イギリスといったところよりは、ずうっと大きいということで、それにも関係して温室効果ガスの排出量の伸びも高いという予測がされておりまして、いわゆる日本やEUと違って、ダイナミックに動いている、ある意味途上国に近い面もあると言えるのではないかと思います。
 (スライド)
 これが排出量の内訳ですが、1999年のデータですが、CO2排出量が全体の約8割でございます。日本の場合は9割以上ですが、アメリカの場合は約8割ということで、そのほか、メタンが日本などに比べると、少し多いデータになっております。
 CO2排出量のエネルギー起源の内訳ですが、それが右の円グラフでございまして、特に特徴的なのは運輸部門が約3割ということで、大きいというのがアメリカの特徴であろう。特に自動車交通の面による部分が大きいと思いますが、それが特徴であろうというふうに言えるかと思います。
 (スライド)
 これは燃料種別エネルギー供給量の推移ですが、左側のグラフが発電部門の推移でございまして、石炭火力が伸びておりまして、一方で原子力や天然ガスも伸びております。石油は減る傾向にあるようです。輸入依存度が右のグラフでございまして、これは原油や天然ガスといった、こういったところ、輸入依存度がふえておりまして、ここが課題になっておりまして、いかにエネルギーの安定供給を図るかというのが、大統領選の争点の1つにもなっておるようです。
 (スライド)
 自動車交通に関するデータですが、左側のグラフ、1人当たり自動車保有台数でいいますと、アメリカが世界の中でも圧倒的に多くて、それも伸びているということがいえるかと思います。日本も増加をしております。右側が主要国のガソリン価格と課税状況ですが、日本の場合ですと、全体のガソリン価格のうち、約半分以上が燃料税なり付加価値税ということで課されておりますが、アメリカの場合は、それが約4分の1だということで、ほかの国に比べて課税が少なくて、全体のガソリン価格が抑えられているということが読み取れます。
 (スライド)
 次にアメリカの国際的な対応についてご説明させていただきます。
 (スライド)
 92年10月に、気候変動枠組条約をアメリカは締結いたしまして、条約は94年3月に発効しております。
 それから、COP3の京都会議の前のCOP2で、アメリカは法的拘束力のある排出削減目的を指示するということを表明しておりまして、これがCOP3に向けての、いわば大きな流れになったという側面がございます。
 97年12月に、COP3において京都議定書に同意をしております。特に、このとき、交渉におきまして柔軟性メカニズム、いわゆる京都メカニズムの導入や、吸収源の考慮を強く主張しておりました。
 その後、政権が民主党から共和党に変わりまして、2001年3月にブッシュ政権は京都議定書に関しまして、アメリカ経済に深刻な影響を及ぼす、中国やインドなどの途上国に排出抑制義務が課せられていないということを理由に、議定書のプロセスから離脱をしております。
 (スライド)
 この国際的な対応ですが、ブッシュ政権、京都議定書は批准しない方針ということで、特に条約には加盟しておりまして、締結国会議にも参加しておりますが、多国間の枠組よりは二国間協力というのを重視しているような側面がございます。
 それから、「途上国寄りの主張」と書きましたが、ちょっと表現は適切ではないかもしれませんが、途上国に対して排出削減を迫るというよりは、持続可能な開発の推進や、あるいは気候変動の影響に対する適応の重視ということを、最近は主張している傾向がございます。
 それから、特に技術開発分野、気候科学の分野でのイニシアティブを発揮するということで、炭素隔離ですとか、地球規模での観測、水素経済のための国際パートナーシップ、それから最近立ち上げたものでいいますと、メタンの改修利用のパートナーシップ、こういった面でのイニシアティブを発揮しております。
 (スライド)
 特にアメリカの国際対応を考える上で重要なのが、連邦議会の位置づけというのがございまして、アメリカの大統領は、上院の助言と同意を得て条約を締結するという権限を有しておりまして、この場合、上院の出席議員の3分の2以上の賛成を必要とする、という条件がございます。
 COP3の前の1997年7月に、アメリカの上院は、途上国の参加がなく、アメリカの経済に悪影響を及ぼすような議定書に米国は参加すべきではないという、いわゆるバード・ヘーゲル決議と呼ばれておりますが、こういった決議を全会一致で採択したという経緯がございます。
 (スライド)
 これは主な環境条約への参加状況ですが、アメリカと日本を対比させてみますと、日本はほとんど、この環境条約に締結しておりますが、アメリカの場合は批准していない条約、議定書も幾つか見られます。ロッテルダム条約とストックホルム条約は、今、議会に上程しているところだということのようです。
 (スライド)
 次に国内対策の動き、それぞれの主体の取組を紹介させていただきます。
 (スライド)
 連邦政府におきましては、特に事業者による自主的な取組を推奨するということで、長期的には革新的な技術の開発を重視しております。
 目標といたしましては、2012年までにGDP当たりの温室効果ガス排出量を2002年に比べて18%削減するということを掲げておりまして、この目標に沿いまして個別政策として産業界の自主的取組を促進するイニシアティブ。
 それから、2番目、温室効果ガス報告プログラムの改訂ということで、これはエネルギー政策法の規定に基づく改訂ガイドラインを、今、作成しておりまして、これができますと、排出量取引が連邦政府レベルでできる素地ができ上がるという性格を持ったものでございます。
 それから、革新的な技術開発としましては、先ほどご説明しましたような水素エネルギーあるいは炭素隔離といったところに支援をしているということです。
 (スライド)
 これはブッシュ大統領とケリー候補の政策の比較ということです。ことしの11月の大統領選で接戦が予想されておりますが、ブッシュ大統領とケリー候補の政策、異なる部分もありまして、余り変わらない部分もございますが、特に京都議定書に関しましては、ブッシュ大統領は議定書を批准しないという方針に変更なしということですが、ケリー候補の方も、京都議定書は問題解決のための答えではない、米国に求められた短期の引き下げは実行不可能であり、すべての国の義務は長期的には問題解決に不十分だということを言っております。
 一方で、世界をより公平で、かつ効果的な答えに導くために京都プロセスの代替案を提示するということで、国際交渉に積極的に参加して、米国のリーダーシップを取り戻すということも言っております。
 (スライド)
 次に連邦議会の取組ということで、注目されるのが、マッケイン=リーバーマン法案という上院に提出されております法案でございまして、マッケインというのは、共和党の副大統領候補にも名前が挙がりました大物でして、リーバーマンというのが民主党の前回の大統領選の副大統領候補で、いずれも大物議員の超党派の法案ということで、これはいわゆるキャップ・アンド・トレード型の国内排出量取引を設立するというものでして、昨年10月に採決が出されまして、55対43の、否決はされたものの僅差であったということが注目をされております。その後も同様の法案が上院に提出されております。また同じような法案が下院にも提出されております。
 それから、エネルギー政策法の改正ということでいいますと、上下両院でそれぞれ異なる改正案が可決されておりますが、両院協議会においてもまとまらずに、法案成立が見送られたという経緯がございます。両院協議会では一旦合意はされたんですが、実際に法案成立は見送られたということです。
 それから、大気浄化法の改正におきまして、その中でCO2を含めるかどうかというのが1つの争点になっております。
 (スライド)
 マッケイン=リーバーマン法案の投票結果の分布をあらわしたものですが、一番濃いのが2人賛成のところでして、特に北東部と、カリフォルニア、こういったところで賛成しているというのが注目されるところでございます。
 (スライド)
 州レベルではさまざまな取組が進んでおります。特にアメリカの場合は州が大きな権限を有しておりまして、そこが注目されるところです。
 (スライド)
 実績の面でも注目されるところがございまして、これは各国の排出量にそれぞれ州の排出量がどれぐらいに位置されるかというのを示したものですが、実際にアメリカの取組が進んでいる北東部、それからカリフォルニア州をあわせても、ドイツよりも大きいという排出量になりまして、こういったところで対策が進むと、要は、アメリカは京都議定書に入っていないから、全く制約がなくて、排出量がどんどん伸びているという意見がございますが、実際に州レベルで見ると、必ずしもそうではなくて、対策が進んでいるとろもあるかというふうに受けとめられるかと思います。
 (スライド)
 これは州レベルの取組の例ですが、一番左が排出吸収目録ということで、これは各州で、それぞれ州から発生する排出量吸収量をデータとしてちゃんと取りまとめているかどうか、ということで、これは多くの州がそういった試みをしております。
 それから、排出吸収量に関しまして、事業者のそれぞれ排出量を報告させる制度というのも、州レベルでも取組が進んでおりまして、ニュージャージーでは、もう既に、そういう法律を通しておりまして、義務的にそういう報告をしてもらうという制度が確立されておりますし、カリフォルニアでもそれを検討しているとろだということのようです。
 それから、真ん中の排出量取引プログラムは、北東部の州で排出量取引を義務的なキャップアンドトレード型の排出量取引制度を設立するという動きがございます。
 それから、先日も報道されましたが、一番右のところで、カリフォルニアでは自動車からの温室効果ガス排出量に規制を加えるということを、今、法律に基づいて進めております。
 (スライド)
 これは、各種の温室効果ガス排出量の削減目標の例でございます。
 (スライド)
 民間企業レベルでも取り決めが進んでおりまして、一部最大級の電力会社ですとか、あるいはデュポン、シカゴの気候取引所における排出量取引、それから企業行動に対して投資家などからの要請というところが注目されるところです。
 (スライド)
 アメリカ社会の一面をあらわしているかと思いますが、この気候変動対策をめぐりまして訴訟も起きておりまして、例えばEPAが大気浄化法のもとでは温室効果ガスを規制する権限はないという見解を示したことに対して、これを覆すよう、州や市から提訴が起きておりますし、ニューヨーク州やニューヨーク市が排出量の多い電力会社5社に対して、今後10年間で年3%のCO2削減を求める、という訴訟も起こしたということもございました。
 (スライド)
 日本からの働きかけです。
 (スライド)
 日米ハイレベル協議というのが、2001年6月の日米首脳会談での共同声明に基づいて設置しておりまして、これまで3回開催をしております。こういった場を通じてアメリカに京都議定書への復帰、それから建設的な温暖化対策の推進を働きかけております。
 (スライド)
 それから、環境省では、この政府レベルの働きかけに加えまして、国内対策の底上げということに何とか関与できないかということで、政府関係者を含めて自治体や事業者、それから学識経験者やNGOが参加いたしまして、日米間の気候変動対策を話し合うワークショップというのを昨年度から開始しておりまして、主催はIGESとアメリカ側が未来資源研究所というところでお願いしまして開催をしております。
 (スライド)
 特にその中でアメリカ側からあった発言として注目されることは、アメリカの関係者も気候変動問題に関して、何か行動を起さないといけないという意識は有しております。特に、その中でマッケイン=リーバーマン法案が注目を集めているということで、アメリカが国際的に重要な役割を果たすためには、国内対策が先行する必要があるというご意見が複数聞かれました。
 それから、特に州レベルでの取組が進みつつあるということが注目をされるところでして、州の取組が先行して、それが連邦政府レベルの制度につながっていくというのが、これまで環境行政におきまして、よく見られてきた現象だということのようです。
 アメリカ側から、日本やEUが京都議定書のもとで排出削減の技術開発を実現して、アメリカをリードしていくということに対しまして懸念がある。例えば、日本がこういった議定書のもとでハイブリット車等を開発して、それがアメリカで普及するということ、そういう技術開発のおくれということに懸念があるということ、それから、日本が削減対策を進めることが米国の対するプレッシャーになるという意見もございました。
 (スライド)
 最後、まとめです。
 (スライド)
 アメリカ側は、京都議定書を批准しない方針を変えていないわけで、引き続き政府として働きかけが必要だというふうに考えております。
 一方、連邦政府だけではなくて、議会、州、企業レベルでの取組が進みつつあります。
 アメリカ政府が、国際的な対応に積極的に参加するということのためには、国内対策の底上げが重要だということ。
 それから、日本やEUが削減対策を進めていくことが、米国に対するプレッシャーにもなるということ。
 アメリカも参加した次期枠組を構築するためには、米国の状況や、こうした経緯等を考慮することが必要だということが言えるかと思います。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ロシアも参加をするということになりますと、今でも枠組条約では入っているわけですけれども、残ったアメリカをどう国際的枠組に、さらに積極的に向かわせるかということが、グローバルパーティシテーションの1つの重要な課題かなと思います。そういう意味で、米国の今の状況を報告していただきまして、どうもありがとうございます。
 皆さんの方で、何かご意見、どうぞ。三村委員。

○三村委員 質問があるんですけれども、ちょっと前でしたか、ペンタゴンが報告書を出して、21世紀の世界的な大きな驚異は、テロとかそういうものよりも、気候変動とか、異常気象とか、そういうものの方が大きいんじゃないかというようなことを報告した、とかいうようなのがニュースに流れたことがあるんですけれども、そういう単なる一過性のエポックだったのか、あるいはそういうような問題意識を持ったグループが、アメリカの政府の中にあるのか、ちょっとその辺はどうなのかというのが1つです。
 あと、ことし、日本も8つ台風が上陸して非常に大きな被害を受け、先日の21号だけで89人以上の方が亡くなる、とかいうので、かなり国内でもいろいろ温暖化との関係に関心があるわけですけれども、アメリカの方でもハリケーンが随分来まして、カリブ海の島国を直撃したり、あるいはフロリダ半島に4つぐらい上陸したんですかね。そういうようなことに対するアメリカ国内の世論というのは、どのようなレスポンスをしているのか。もし何かおわかりになったら教えていただきたい。

○西岡委員長 ほかのご質問を先に受けたいと思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ。

○高橋委員 2点ですが、今のご報告を伺って、1点、非常にはっきりしたような気がいたしますのは、核になる州にターゲットを当てた非公式の協議というのが非常に大事ですね。これは非常にデリケートな問題だと思いますので、うまくやっていく必要があるだろう。ただ、一般的な非公式な研究機関同士の意見交換という形で、今のところ、とどまっているのかもしれないですけれども、もう少しストラテジックに、明確にターゲットを当てた作業というのが、ひとつはこの国の場合、大事だろう。州のどういうところにターゲットを当てるかという判断が、非常に大事だろうという感じを受けました。
 それから、もう1点は、今の三村委員のご指摘との関係ですが、国際社会で、それぞれの国を動かすときの、テコのようなものがあると思います。よく言われるのは、同じ問題に関しても違う形で、それぞれの国の関心事項に結びづけていかないと、国際社会は動かせないということです。例えばドイツの場合にはインフレに結びつける、イギリスの場合には失業に結びつける、フランスの場合には文化に結びつける、日本の場合には省庁のけんかに結びつける、ということをよく言われます。その中で、アメリカはセキュリティに結びつけないと動かないということをよく言われます。この場合にはヒューマンセキュリティというコンセプトが非常に重要になってくると思います。それとの関係で、恐らく京都プロトコールの内容は、ヒューマンセキュリティとの関係で、どんな意味を持つかという形で、アメリカに対する仕掛けをいろいろ非公式にしていく必要があるのであろうなという、そういう感じがいたします。
 以上です。

○西岡委員長 ありがとうございました。

○工藤委員 2点ほど……。1点目は、先ほど、人口の将来増加の評価として途上国と同じというご表現をされたのですが、これは多分中身が違います。カナダも同じだと思うのですけれども、両国では社会増的な部分があって、途上国における自然増というような、それに対するいろいろな施策とは、全然内容が違うと思います。その辺の認識は結構大きい課題だと思いますので、共有しておいた方がいいかなと思います。
 2点目は、ブッシュ、ケリーのいろいろな考え方の中で、評価として、今のフレームワークに戻るのは難しそうだねというのが、何となくおっしゃっていた真意だと思いました。今後の対応をいろいろ考えていくときの1つのシナリオとして、今の枠組では米国は戻ってこないというシナリオ、すなわち米国は方針を変えていないから、引き続き行われる働きかけの中身が、いろいろなオプションが考えられるだろうということ。オプションとして考える意味では、そういうシナリオも留意しておく必要があると思いました。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 長くなりますけれども、もう一つ、松橋委員。

○松橋委員 申しわけありません。先ほどの15ページの個別政策で、ブッシュ政権の対策というところで、革新的な技術開発への支援、水素エネルギー、燃料電池の研究開発に対する支援、それから炭素隔離、CO2の地中隔離とか、そういったものの技術開発には支援をしている。それから最後のところで、日米のワークショップをやったところ、アメリカ側には日本が議定書のもとで、温室効果ガス排出削減の技術開発を実現し、米国をリードすることに対しての懸念がある。こういったことを私も感じておるんですけれども、例えばさっきのカーボン・シークエストレーションとか、水素に関していいますと、フューチャージェンというアメリカのアイデアが出ていますね。石炭をガス化してCO2をシフト反応で絞りとって、地中に隔離して、水素を絞りとって、燃料電池とか、その他のエネルギーキャリアとして使っていく。そういったようなところ、そこに付随して水素の燃料電池技術などが絡んでいる。こうした技術に力を入れるんだけれども、こうした技術は、少なくとも議定書の第1約束期間には、とてもとても貢献しそうにないので、そういう短期的な厳しい数値目標にはアメリカは乗りにくい。他方、技術的なインセンティブは、ぜひとっておきたいので、フューチャージェンのようなアイデアですとか、燃料電池自動車ないしハイブリット車のようなものでは、何としても日本におくれをとりたくないというようなこともあるので、その辺が第1約束期間以降、アメリカが議定書と類似しているのか、少し違ってくるのかわかりませんが、戻ってくるための1つのかぎになるのかなと思います。
 例えば、カーボン・シークエストレーションは、技術的にもまだ不確実性がありますが、日本も力を入れている部分ではあるのだけれども、それが例えばCDMとしても認められていませんし、それから、リムーバルユニットとしても認められていないんですよね。この辺の制度との関係。それからアメリカが非常にガソリンが安いという、さっきのデータとあわせると、ハイブリット車とか、燃料電池自動車で非常に燃費のいい車をつくっても、必ずしも消費者の側がそれに乗るインセンティブになってこないというあたり、その辺もあると思うんですが、その辺に関して集めておられる情報とか示唆がありましたら、ちょっと教えていただきたいと思います。

○西岡委員長 この辺で質問をちょっと切らせていただきまして、事務局の方で、お応え願います。

○瀧口室長補佐 そういたしましたら、順番にお答えさせていただきます。
 まず、三村委員のご質問の最初の点の、ペンタゴンのレポートですが、確かにそういうレポートがございまして、我々も入手しましたが、アメリカ政府は、これは公式な報告書ではないと、何かこう委託報告書のような位置づけのような説明をしておりましたが、実際にそういう報告書が出ているということは、そういう問題意識を持った人もいるんだろうというのが、今、予想されるところです。
 それに2点目のハリケーンの件ですが、これは確かに先生ご指摘のとおりでして、8月中旬以降、アイバンですとか、フランシスとか、そういった大型ハリケーンがアメリカの本土を直撃しておりまして、実際ブッシュ大統領が連邦議会に求めた災害対策の緊急予算が100億ドル以上だということですから、巨大な額になっておりますが、これが地球温暖化の影響ではないかという見方も、一部にはあるようです。それほど大きな意見にはなっていないようですが、ただし、地球温暖化が進めば、こういう異常気象なりもふえるということが、徐々にアメリカの中でも認識されつつあるようです。
 それから、高橋委員のご指摘、ご質問で、核になる州なりにターゲットを絞った働きかけで、あるいは非公式な協議というのが重要だというのは、そのとおりだと思います。
 2点目の、アメリカの場合、ヒューマンセキュリティにどう訴えるかということですが、先生のご指摘のとおりかと思いますが、アメリカの場合は、例えば地球温暖化が進めば、この島国が沈むとか、バングラディッシュが洪水で大変なことになるといっても、なかなか余り認識していただけなくて、アメリカ自体に大きな影響が及びますよということになると、自分たちの問題として認識してくれるような面がございまして、実際にアメリカで温暖化対策を進めている人も、そういう主張を多くされているようでして、そういうヒューマンセキュリティということと結びつけるのが特に重要なポイントかと思います。それと結びつけられるかどうかというのはちょっと難しい点があると思いますが、アメリカの場合、ヒューマンセキュリティというのが重要だというのはご指摘のとおりだと思います。
 それから、工藤委員のご指摘の、人口増加の中身の社会増というのは、そのとおりでございます。
 2点目の、ケリーになっても、京都議定書にはなかなか戻ってきそうもないというところで、  原始的な対応というのも考えていく必要があるのではないかというのも、ご指摘のとおりかと思いますので、今はちょっと大統領選で状況がよく見えないところがございますが、アメリカの情勢、それからロシアが批准するとなると、また国際的な世論も変わってくる面もあるでしょうから、そういったところも見せて対応していく必要があるかと思います。
 それから、松橋委員のご指摘に関しまして、確かにアメリカの方はフューチャージェンとか、炭素隔離といったことを進めております。このあたり、ちょっとどれくらい実現可能性があるかどうかというのは、まだ今後、よく見ていく必要があるかと思いますが、ご指摘のとおり、第1約束期間には間にあわないというのは、そのとおりかと思います。
 ハイブリット車に関しまして、ガソリンが安いから、なかなかインセンティブにならないんじゃないかというご指摘もありましたが、実際に、今、原油価格が上昇しているという面もございますし、報道によりますと、アメリカでハイブリット車がかなり売れていて、半年ぐらい待たないと購入できないというのもございますから、実際は、ガソリンが安いという面もありますが、省エネ意識というのも徐々に芽生えつつあるのかなというふうに受けとめております。
 以上です。

○西岡委員長 明日香委員、どうぞ。

○明日香委員 何点かあるんですが、まず、私、いつも言いたいと思っているんですが、ケリーなりアメリカの方が、議定書は実行不可能だと、よくコメントするんですけれども、ロシアからもし買うとすると、という計算をすると、大体304万t-CO2、アメリカは必要になって、大体ロシアはそのくらいあるんですね。大体1tあたり5ドルで計算すると7,500億円ぐらいでアメリカはロシアに払えば、京都議定書は遵守できるんです。なので、コストリーではないし、7,500億円というのは、私、調べたんですが、イージス艦6隻ぐらいでして、最近4隻ぐらい台湾に4,005億円ぐらいで売っているので、コストリーでもないですし、まさに政治的なものであって、ケリーがこういうことを言うのはちょっとよくわからないんですけれども、それが1点。だから、京都議定書というのは、お金を払えれば実現できるという、仕組みをアメリカがつくったということで、アメリカはそれを忘れているとか、言わないとかいうことは確認した方がいいと思います。
 あと、もう一つ、州レベルという話はあったんですけれども、結局はCOPで決めなくてはいけなくて、COPで出てくるのは政府であって、そのCOPで決まったとしても、上院が通るかどうかはわからない。COP3のときに、まさにクリントン政権だったんですけれども、クリントン政権はほとんど上院に出す努力をしなかったと言われているんですね。なので、  COPでアメリカが合意したから、それで成功だ、それで万歳というわけでは全然ないと  いうことを十分認識した方がよい。そのようなアメリカに対してどうするかということなんですけれども、基本的に上院なり、ビジネスの人に対してプレッシャーを、アメリカ以外の国がプレッシャーなり、疎外感を与えていくしかないと思うんです。いろいろなやり方があると思うんですけれども、ヒューマンセキュリティも重要だと思うんですけれども、産業界にとって競争力がロスされる、京都議定書の枠組なり、いろいろな国際的な枠組に入っていないと、産業界が損をするというような意識を、どうつくれるかということだと思います。
 それとも関連するんですけれども、では、我々は何をすればいいかというと、まさに京都議定書がコストリーではなくて、早過ぎるでもなくて、実行可能だということを見せる方法しかないと思うんです。ビジネスはそれが動いて、アメリカは、まさにしてきたことが間違っていて、かつ、京都議定書を進めることが、ビジネスもよくなって、それに対してアメリカのビジネス界が疎外感が減るというような法則、方策をどう考えていくか。具体的には、安定させていくなり、日本がそれに直接、積極的にかかわっていくなり、CDMに積極的にかかわっていく。それでコストリーではない形で目標を達成していくという、それにビジネスが直接かかわっていくと、ビジネスで儲ける人も出てくる、入らない人は損をする、というような仕組みを、どうつくるかということだと思います。
 あと、最後になりますけれど、二国間ということは、アメリカはこれから言ってくると思うんですけれども、例として、もう、ほとんど皆さんは忘れていると思いますが、日米コモンアジェンダというのが、昔ありまして、あれは政府はのったんですけれども、企業はほとんどのらなかったと思うんです。どうしてもアメリカの企業というのは、具体的には日本と競争関係にある業界というのは、アメリカ政府がやれといっても、やらないという経験は、日本の業界の方はよくご存じだと思いますので、二国間でという話というのは、実際にやるのは難しいですし、かつ自動車等なり、いろいろな技術が日本が競合相手となっている場合、アメリカのビジネスはほとんど動かないということは、十分認識した方がいいと思います。
 ペンタゴンの関連ですけれども、1点だけ、私もあれをちょっと調べたんですけれども、ペンタゴンのレポートを書いた人というのは、ペンタゴンから、「最悪のシナリオを考えるとどうなるかというのを淡々と書いてくれ」というような要求で書いた、というふうに本人は火消しというか、責任逃れというか、コメントを各アメリカのマスコミに出していて、なので、どこまでアメリカに影響を与えたり、彼がある程度ポリティカル・ウィルを持ってつくったかというのは、ちょっと疑問でして、だから、あれをもってペンタゴンが変わっているとか、そういうような話ではないかなという気がします。
 以上です。すみません、長くなりました。

○西岡委員長 高村委員。

○高村委員 ご報告いただきまして、まず、なかなか国際交渉とかメディアを通じては、アメリカの連邦レベルの話しか伺う機会がないものですから、そういう意味では、「米国」といったときの、温暖化問題に対する取組と立場の複層性を知ることができて、非常によい報告をいただけたと思っております。
 2点、コメント、意見を述べさせていただきます。1点目は、資料の中で、主な環境条約への参加状況についてご紹介をいただいている資料がございます。採択年で並べる方がよくわかったかもしれませんが、1990年代に入ってから、アメリカは京都議定書以外の条約についてみましても、批准をできないでおります。それは議会との関係にあるわけですけれども、例外的に批准をしている条約を見ますと、1つの特徴があるかと思います。それは、その条約の内容による場合もあるのですけれども、既にアメリカの国内において同等ないしはそれ以上の規制が進んでいるものだといえるかと思います。80年代のモントリオール議定書、ウィーン条約のオゾン層保護の対応もそうですけれども、今、議会に上程中といわれているロッテルダム条約も、これは既にアメリカ国内の規制の方が先行している条約というふうに言われております。
 そういう意味では、まとめのところで触れられておりましたし、高橋委員からもご発言がありましたように、アメリカの国内の対策がどう進んでいくのかということを見ていくことが、連邦からの立場の表明とあわせて、アメリカの動向を判断する上での非常に重要な指標になるのではないかという点が1点です。
 2点目は、将来の制度構築の観点からいきますと、アメリカが将来技術には関心があるけれども、早期の対策になかなか関心がないという、松橋委員のご指摘がありましたけれども、他方で、これまでのこの委員会の議論の中では、早期の削減というのが重要であろうということもまた科学的な知見からは導き出されていたところかと思います。そういう意味では、アメリカをどういう形で制度の中に入ってもらいながら、かつ、温暖化対策をできるだけ早期に進めるかという観点からは、アメリカの国内の温暖化防止に向けた動きを、できるだけうまく刺激をするような制度構築ができないか。制度構築もそうですし、先ほど高橋委員からありましたような、政府レベルでの、あるいはいろいろなレベルでの働きかけというのができないかという点が1点です。
 制度構築の観点の2点目としては、アメリカが仮に入ってこれない段階においても、事実上アメリカが守りたくなってしまうような制度、あるいは条約外にいること、制度外にいることにデメリットを感じるような制度構築が何とかうまくできないかということです。事実上、守りたくなるという、守ってしまうという意味では、89年に採択されて、92年に発効したバーゼル条約の例が示唆的です。バーゼル条約にアメリカは参加をしておりませんが、条約に入っていない国については、廃棄物の越境移動が禁止、非締約国との取引が禁止されておりますので、アメリカに限らずですが、アメリカはバーゼル条約の締約国と二国間条約を結んで、同等の規制を行使することによって、この越境移動が条約の中で認められるようにしております。そういう意味では、バーゼル条約は貿易をベースにした規制の仕組みですけれども、例えばこうした、事実上守ってしまうような制度の仕組みというものができないかというふうに考えています。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかにございませんか。
 私の方で、1点だけですけれども、いわゆる炭素の取引制度について、マッケイン=リーバーマン法案でも言及しており、ある面では世界的な市場を形成するという面で、リーダーシップをとりたいということも言っているわけですけれど、そのあたりについて、どうお考えですかということをお伺いしたいという、その3点です。

○瀧口室長補佐 明日香委員と高村委員からご指摘をいただきましたが、それは貴重なご指摘だと思いますので、今後、参考にさせていただきたいと思います。
 それから、西岡委員長からいただいた炭素取引制度は、アメリカが一番関心があるところで、  気候変動取引、もう技術的な企業レベルでの取引が始まっていますが、先日、アメリカの  シンクタンクの方と意見交換した際のお話では、政府も、この国際的な炭素取引にぜひ参加したいと。ただ、問題はキャップだということを言っておったようで、実際にキャップがない  とキャップ・アンド・トレードが働かないものですから、そのあたりがひとつの問題になるかなというふうに思っております。

○西岡委員長 ほかにございますか。明日香委員。

○明日香委員 今、EUとも関連する話で、CO2の取引とも関連する話で、ちょっとご紹介させていただきたいんですけれど、質問ではないんですけれど、今、EUの排出量取引市場に航空業界をどう入れ込むかというICAOの会議が、先週、たしか28日からメイシュかどこかでやっているはずなんです。そこでブレアがEU-ETSの中に、飛行機会社の仕事を入れ込むという提案をしていて、アメリカはそれを反対しているといっているそうです。それに対して、ブラジル、サウジアラビア、そして日本もアメリカの側につくと予想をされているという新聞記事が1週間ほどありまして、まさに今、具体的にEU-ETSが進んでいって、アメリカの企業がそれに入らないことによって、どういうロスが出ると、それに対して、ほかの国がどういうアメリカをサポートするのか、EU-ETSをサポートするのか、排出権取引をサポートするのかというのが動いていますので、ぜひ国土交通省の方に、今、そういう重要な動きがあって、一つ一つが将来にかかわるということを認識していただければなと思っています。
 私、結果がどういうふうになったかわからないんですが、ICAOの判断というのは、多分拘束力はないみたいなんですけれども、破られたことはないことなので、ちょっと注目したいと思っています。

○西岡委員長 どうもありがとうございます。
 それでは、ちょうどいいときですから、EUの方に移りたいと思います。

○瀧口室長補佐 それでは、資料3の方のEUの気候変動対策をご説明させていただきます。
 (スライド)
 EUの基礎データ、それから政策決定の仕組み、これまでの取組、それから特にイギリス  が気候変動問題に積極的に取り組んでおりまして、英国の取組ということをご紹介させていただきます。
 (スライド)
 EUの概要ですが、ことしの5月に10カ国が加盟いたしまして、全体で25カ国になっております。今後も加盟が予想される国がございます。それでEUの25カ国で、経済規模がアメリカに匹敵するものになっておりまして、一大経済圏ができたということがいえるかと思います。
 (スライド)
 これは排出量の推移ですが、90年から2001年までで約2%削減をしているということです。特にドイツやイギリスという排出量の大きい国での排出削減が効いております。
 (スライド)
 これは国別の排出量の推移ですが、ちょっと見にくいところがございますが、ドイツが順調に減らしている。英国も減っているというところで、一方で伸びている国もあるということがいえるかと思います。
 (スライド)
 これはGDP当たり排出量の推移ですが、これもそれぞれ差がございますが、まず全体に減少傾向にある。依然としてギリシャやポルトガルなど高い国もあるということが言えるかと思います。
 (スライド)
 これは1人当たり排出量の排出量の推移でして、日本を参考に書いておりますが、これも横ばいないしは若干ふえているようなところもございますが、アメリカ等と比べると低いということが言えるかと思います。
 (スライド)
 EUの政策決定の仕組みです。
 (スライド)
 まず欧州理事会というのがございまして、この政治レベルの最高意思決定機関ということで、各国の首脳と欧州委員会の委員長より構成されるものです。
 その下に閣僚理事会として、各国の閣僚級の代表により構成されるEUの主たる決定機関がございます。外相理事会や環境大臣の理事会等がございます。
 また、欧州議会ということで、特定分野の立法における理事会との共同決定権、予算の承認権、欧州委員の新任の委員を承認するという権限を有している機会がございます。
 それから、事務局的な位置づけとして欧州委員会というのがございまして、加盟国の合意に基づいて、欧州議会の承認を受けた委員で構成されまして、政策や法案を提案し、それを執行していくという役割を持っております。
 (スライド)
 加盟国家の利害関係に関しましては、それぞれ気候変動に関しましては、閣僚理事会の下に気候政策に関するワーキンググループというのがございまして、そこで事前に合意するというシステムになっておるようです。欧州委員会の中では環境部局以外に、エネルギー運輸部局ですとか、産業部局がございますので、そういったところも調整している。各国間で当然ながら意見が分かれることもございまして、将来枠組の関係する中長期目標などに関しましては、ドイツ、英国などが推進派と言えるかと思いますが、個別の政策の採択の関係では、こうした加盟国も反対をするようなこともあるようです。
 (スライド)
 次に、EUの問題に対する取組をご紹介させていただきます。
 (スライド)
 京都議定書上の目標は、EU全体で8%削減ということでして、加盟国の中で、それぞれ各国の目標が割り振られております。これを排出量との加重平均をすると全体でマイナス8%になるということで、EU全体で8%を達成すれば、それで目標達成と見なされるということです。
 ことしの5月に10カ国がさらに加盟したわけですが、第1約束期間の2008年から2012年は15カ国、旧加盟国の15カ国で、15カ国として計算されるということになっております。
 (スライド)
 これまでは、京都議定書の目標達成のために、さまざまな政策措置を講じてきておりまして、特に注目されるのが、EUの排出量取引でございまして、後で少し簡単にご説明させていただきますが、そのほかにエネルギー製品の課税の指令ですとか、あるいは熱電併給、コジェネレーションの指令ですとか、こういったことを採択しております。
 (スライド)
 EU排出取引制度、これは2005年1月から第1期間が開始される予定になっておりまして、第1期間では、発電所ですとか、製鉄所、石油精製所、こういったところを対象にいたしまして、CO2排出量を対象として、排出量取引制度をEU域内で実施するということが決まっております。第2期間は2008年から2012年ということで、京都議定書の第1約束期間に重なってEU排出量取引を実施するということにしております。排出枠を上回った場合は、罰金等も講じられることになっておりまして、それからEU域外の国内排出量取引制度との連携ということも規定しておりまして、特にノルウェーやカナダとは実質的に、それぞれの国の国内排出量取引制度とEUの取引制度をリンクさせて、それぞれのクレジットが行き来できるという、そういう仕組みが進みつつあるようです。
 それから、JI/CDMのクレジットも利用することもできということになっております。
 (スライド)
 これが、EUの指令に基づきまして、各国が決めます排出枠の割当計画の提出状況ですが、既に提出はされたものの、委員会のレビューが今している段階の国、それから、まだこの案を公表していない国等もございますので、実際に2005年1月からスタートできるかどうかというのが注目されるところであります。
 (スライド)
 将来枠組に関しまして、中長期目標の設定に関しましても、EUは、この議論に、これまでも積極的に行っておりまして、京都議定書の採択される前に、既に閣僚理事会におきまして、温度上昇を産業革命前と比べて2度以内に抑制をするということに合意をしております。それ以降、最近の動きで見ますと、2004年に各国首脳レベルで温室効果ガス削減の長期戦略と目標について、2005年の春までに検討するということを公約しておりまして、その流れで、ことし9月に欧州委員会が長期目標に関しまして、さまざまなステークホルダーの意見を聞くということで、コンサルテーションを開始しております。
 (スライド)
 中長期目標設定に関しまして、それぞれの加盟国、イギリスや、ドイツ、フランスで進んでおるというのは、これまでも紹介したとおりです。
 (スライド)
 産業界の動向ですが、EUが気候変動対策に積極的に取り組むことに関しまして、一部懸念もあるようです。例えば欧州産業連盟でいいますと、2012年以降の削減目標に関しまして、時期尚早な検討事項を盛り込むということへの懸念を表明したということもございます。
 一方で、例えば、BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)に代表されますように、気候変動問題への取組を前向きにとらえるような企業もございまして、特に再生可能なエネルギーやコジェネレーション推進により、ビジネスチャンスを広げるという、そういう企業も一部では出てきているという状況にございます。
 (スライド)
 次に、特にイギリスがこの問題に関しまして積極的に取り組んでおりまして、それに関しましてちょっとご紹介させていただきます。
 (スライド)
 特にイギリスは、2005年のG8サミットの議長国でありまして、また2005年のEUの議長国でもありますので、国際的にもチューナープレイヤーでありますが、ことしの9月にブレア首相が気候変動問題に関しまして、その重要性についてスピーチをしております。
 それから、来年の2月に科学者を集めた会合をするということを言っておりまして、それを踏まえて、来年3月に環境エネルギー閣僚級会合をやりたいと。そこで、ローカーボン・フューチャーというのを議論したいということを言っております。
 それを踏まえて、7月のG8サミットで、気候変動問題を最重要課題の1つとして取り上げる、そういう予定にしております。
 (スライド)
 ことしの9月に行いました、ブレア首相のスピーチは、いろいろこの将来枠組の議論にも関係することを言っておりまして、特に温室効果ガスの増加が続けば、長期的には持続不可能だということで、この問題での対処する上での困難は、その影響が顕在化する前に政治的な決断が求められるということと、一国だけでは解決ができないという2点を挙げております。しかし、この問題には迅速な対応が求められて、行動をするのは今だということも言っておりますし、いろいろ参考になることを言っております。
 (スライド)
 特に、G8での戦略ということで3点を挙げております。それが下から2つ目の「◆」ございますが、3点で、まず、G8での気候変動と科学とその脅威について合意をしたい。その合意を踏まえて、科学技術対策を加速させるためのプロセスについて合意をしたいということを言っております。
 それから、中国やインドなどを緩和・適応対策にも参加してほしいという、この3点をG8での戦略として挙げておりまして、それに先立ちまして、気候科学会合というところで、特に大気中の温室効果濃度が明らかに大き過ぎるレベルはどこか、そのレベルを避けるためにはどのようなオプションがあるかということを検討したい、ということを言っております。
 (スライド)
 最後、まとめです。
 (スライド)
 EUはこれまでも、この気候変動交渉に積極的に取り組んできた面がございまして、排出取引制度を導入するなど、対策の実施にも意欲的に取り組んでいるという面がございます。
 一方、加盟国家によって排出状況が異なりまして、政策にも温度差がありますので、今後、EU拡大により、これらがどうなっていくのかということが注目されるわけです。EUは  将来枠組、中長期目標設定等に関しましても、今後、積極的に取り組んでいく姿勢を示しておりますので、こうしたことを注目していく必要があるとともに、特に来年はイギリスの動向に留意する必要があるかなというふうに思っております。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 非常に簡潔に説明していただきまして、かなり時間を取り戻したような感じがいたしますが、どうですか、皆さん、ご質問、ご意見はございますか。
 どうぞ、甲斐沼委員。

○甲斐沼委員 いろいろなことを簡潔に説明していただきまして、ありがとうございました。
 1件、ちょっと教えて頂きたいのですが、先ほどからのご議論の中で、排出権取引のことが話題になりましたが、現状では、第1約束期間については、ロシアのホット・エアがあるので、排出権価格も、ある程度抑えられるのではないかということを言われています。今後、第2約束期間等を考えた場合、ロシアも2020年、少なくとも2030年には経済が回復し、排出量が増えていくと言われています。将来の動向について、どのようなことが排出権取引に関して議論がされているのかを教えていただければと思います。

○西岡委員長 工藤委員。

○工藤委員 ありがとうございます。すみません、ちょっと4点ほど。
 1点は、7ページ、8ページあたりの1人当たり排出量等の推移を、日本もアメリカも含めて比較をするときに、できればもう少し長期的なスパンで特徴をつかんでおく必要があると思っています。特に1990年以前からアメリカ、ヨーロッパというのは、エネルギー消費原単位が緩やかに減少傾向で推移している中で。急速な効率改善が行われた日本とは全く異なったトレンドを示している、そういった中での'90年基準という点を理解しておく必要がある。 特に、先ほど「減少」という表現を使われましたけれども、2000年、2001年のドイツ等の上昇傾向であるとか、社会的な要因によって減少してきたものが、ある意味使い果たしてきて、現実トレンドの中で経済発展等含めて、ヨーロッパも結構大変になりつつあるという状況にあると思いますので、その辺は、ある意味シビアに評価した方がいいという気がいたします。
 2番目は、14ページでお示しになったエネルギー製品課税の最低税率の指令ですけれども、これを一義的に温暖化対策と位置づけるのはいかがなものかなと思います。これはヨーロッパの中で、最大懸案事項の1つであるエネルギー税制、特に交通用燃料等も含めた加盟各国間の不均衡、その辺の調整が非常に大きな命題としてあります。そういった目的と、結果として増税になる部分、価格に伴う温暖化効果ということを、この指令導入時にうまく強調していたというところがあった。いずれにせよ、EUの内部では、各国間の税制調整というのは、まだいろいろな意味でくすぶっている1つの課題でありまして、その辺も含めて評価しておくべきものだと認識しています。
 そういった意味で、15ページのところで、特にEU-ETSが動き出したときに、これが国際的なデファクトスタンダードになるのかどうかというようなことの判断というのは、当然慎重にやらなければいけない。日本はリンクを考えるときに、本当にどういうパターンがあるのかとか、実際にここにも書かれているとおり、協定というものをベースとして、いろいろなリンクというのは検討されうる。ノルウェーも、総合取引というよりは、一方向で調達すると考えているとか、国によってそれぞれの戦略上、この制度をどう考えるかということをまず決める必要があると思います。その辺の議論はこれから、多分、動き出してから出てくるところだと思っているのですが、いろいろ留意しておく必要があるかなと思っています。
 それから、最後に、今の甲斐沼さんの議論にもちょっと関連するのですが、中長期の議論が出ていますよといったときに、例えばイギリスが長期的な目標設定云々ということを事例で出されているのですが、例えば2050年で6割減らしますといった数字の中身をよくよく聞いてみますと、2020年以降のシナリオというのは、2020年までとは全く異なった、例えば原子力を大幅に導入するとかということをやらないとできないとしている。いわばエネルギー戦略上の背景があり、それに各国の参加が要件であることを述べている。2020年までの話というのは、リニューアブル等でやれるけれども、その先はまだ議論が分かれているというところが正直なところだと思います。そういう意味で、温暖化政策もありますけれども、イギリス固有のエネルギーの政策とリンクした形の中で、彼らがいろいろ物事を言っているということは、ちゃんと留意しておく必要があると思います。これは多分フランスも全く同じではないかと思います。

○西岡委員長 もう一つ、松橋委員、お願いします。

○松橋委員 今の工藤さんのご指摘に非常に同感でして、要するに議定書の第1約束期間の数値目標というのは、別にこれで温暖化を抑制できるとか、緩和できるというようなものではありませんので、長期的にカーボンのサイクルに科学的不確実性がまだありますけれども、CO2濃度の安定化のためには、さっきの18ページの絵のような、かなり大幅なCO2の排出量削減をやらなければいけない。温室効果ガスですね。そうなりますと、それはエネルギーシステムをやってきた立場からすると、物すごく難しい話で、微量廃棄物を集めてどこかに捨てるというのとは桁が違うことなので、その辺を我が国としても、世界全体としても、かなり長期的に考えていかないといけないのではないかなと思います。
 1つには、さっき申し上げたカーボン・シークエストレーションというのは、廃棄物を回収して処分するような形で、CO2を回収して地中貯留とか、海洋に処分するわけですが、これは私も現在の研究の状況を見ていて、まだまだ非常に不確実性が大きいですし、穴を掘って炭層に入れるとか、そういうようなものも、まだそれが安定的に入っているかどうか、あるいは1本穴を掘って、どの程度のCO2を吸着できるかというと、まだまだ全くCO2の大層を減らすというような技術には、現状では成り得ていない。
 その一方で、イギリスの6割削減ですとか、ドイツの45から6割というのは、ちょこちょこっとした省エネでやれるものではとてもないので、エネルギーシステムが相当抜本的に変わっている。水素経済ですとか、さっき工藤さんからお話があった原子力の話、そういったようなものでして、そのためには、例えば日本でそういうことを考える場合は、今度は電気事業とか、ガス事業、それから石油業界、自動車業界、こういったかなり大きな産業界が相当協力をして、そこに政府も調整役として入って、そして巨額の投資がかかって、数十年間の時間がかかるような投資を長期的、戦略的にやっていかなくてはいけない。そのために、むだな投資にならないように、調整やすみ分けも必要ですし、相当な意思決定が必要になると思います。
 その後にEU-ETSの話があるんですが、私、正直言って排出量取引とか、そういった制度で、こういった抜本的な時間のかかる設備投資が実現されるとは、そう言うとお叱りを受けるでしょうが、そういう制度で実現できるとはちょっと思っていませんので、長期の提言のためには、政府の調整能力、それから産業界、官民挙げた大きな意思決定がどうしても必要になると思っております。
 以上です。

○西岡委員長 最後に三村委員。

○三村委員 23ページのブレア首相のスピーチの最後の2つの点というのが、私、非常に印象的だったんですけれど、その前から、お話、伺いながら、ひとつ研究機関の役割というのをどのように考えるかなと思いながら聞いていて、ちょうど最後に出てきたのでそう思ったんですけれども、EUの人たちといろいろと話をしていると、例えばドイツでポツダム気候研究所というのをつくって、この問題が重要だとなったら200人以上ぐらいの研究者を集めて、気候問題の科学から政策に至る研究を始めた。イギリスでも最近チンダルセンターというものを立ち上げて、同様の規模の研究をしたり、あるいはハードレーセンターでやったりとか、さらに先日お話を伺ったら、もうドイツとイギリスでばらばらにやるというのもあれだから、EU全体で1つの大きな研究機関のネットワークにするか、というような話まで出ている、というようなことなんです。
 ですから、どういう制度設計にするかとか、そういう具体的な政策のところに下りてくる前の段階で、非常に幅広くいろいろな科学研究の、研究者のレベルで研究して、それが国際的に  交流されるというようなことというのは、ある意味では、下地をつくっていく意味で非常に重要なんじゃないかなと思います。
 そういうので、ちょっと日本の状況を見ると、いろいろなところで研究がされたり、あるいは総合開発会議に地球温暖化研究イニシアティブがあったりするわけですけれども、その規模とか、ダイナミズムというのが、EUなどのものと比べると、もうちょっと頑張らなければいけないんじゃないか。あるいはそれをさらに展開することによって、アジア全体を巻き込んで、そういうような動きがつくれるかもしれない。そういうような下地をつくっていくということも非常に重要なんじゃないかなと思いました。
 それから、今、ここで将来の枠組で、例えば排出量取引をどうするかとか、そういうような議論がされているんですけれども、ブレア首相の最後の点、23ページの最後にある点で、気候科学会合などを開催して、大気中の温室効果ガス濃度が明らかに大き過ぎるレベルはどこかを議論をして決めたいと。つまり将来のターゲットになる濃度とか、そういう非常に大きなものを決めていこうとしているので、もしかしたら、世界が将来ターゲットにすべき閾値といいますか、安定化濃度のレベルとか、そういう非常に大きな枠組が、こういう議論の中から浮かび上がってくる可能性があると思うんです。そういうのに対して、我が国がどういうような態度をとるかとか、あるいは我が国の研究者がどれぐらいの知見を持っているか、あるいは貢献することができるか、そういうことも非常に大きな論点なんじゃないかと思います。

○西岡委員長 まだあと2人いらっしゃいますが、この辺で中間のお答えをいただきたいんですけれども。

○瀧口室長補佐 甲斐沼委員、工藤委員、松橋委員、三村委員からご指摘、ご質問をいただきまして、ご指摘の部分はそのとおりかと思いますので、参考にさせていただきたいと思います。
 それで、1点、甲斐沼委員からいただいた質問で、今後、排出量取引の関係で、ロシアの  ホット・エアとの関連のご質問がございましたが、第1約束期間に関しましては、プーチン大統領がみずから、ロシアはいわゆる排出枠を売って外貨を稼ぐということは考えていない、というふうに大統領みずからが言っております。それは恐らく、JIの方のプロジェクトやら投資を重視したいということではないかと思います。実際に排出枠を売ると、それで価格が下がってしまって、JIのインセンティブが失われるという面もありますから、今のところ、排出枠の余った分を売るということは、ロシアは考えていないようです。この排出量取引の問題と、それを第2約束期間の議論で、次期枠組の議論で、どう議論をしていくかというのは、ご指摘のとおり、1つの大きなテーマかと思います。
 以上です。

○西岡委員長 では、高橋委員。

○高橋委員 ありがとうございます。このEUとの関係というのは、先ほどのアメリカに対する対策と丸っきり逆の方向で、世界をどうやって引っ張っていくかというときのパートナーとして位置づける、そういうことだろうと思いますが、特に途上国などに対して、これから働きかけていかなくてはならない時期に入ると思いますが、そのときに、EUと日本とは共通認識を持っていることが非常に重要だと思います。共通認識に関しまして、1つはどういうカテゴリーの、どういう種類の国に、どういう働きかけをするかというようなことで、例えば非常に大きな、ダイナミックな国としてよく挙げられますBRICsというようなカテゴリーの4カ国がありますが、そういうような国に対してどうするのか、あるいは先進途上国に対してどうするのか、逆に最貧国に対してどうするのか、というようなことについての共通認識、優先度の認識、それともう一つは、それぞれ地勢学的にそれなりの国際社会での役割というのがはっきりしていますので、地理的な意味での役割分担ということも、そこでは出てくるかと思いますが、そういうことに関しても共通認識をはっきり持っておく。その優先順位の確定、それから、地理的な役割分担、そういうようなことに関して、EUと日本で、ある程度の協議が恐らく行われているんじゃないかと思うんですが、これに関してかなりはっきりした線を出して、それを世界に示す。恐らく、それはEUと日本の途上国に対しての政策になると同時に、それが何らかの影響を米国などにも及ぼすんじゃないかという気がいたしますが、そういう作業に関して、どういうような具体的な、これからのアクション、アジェンダが日本政府の方としてあるのか、それをお伺いさせていただきたいと思います。

○西岡委員長 明日香委員、お願いします。

○明日香委員 すみません、コメントなんですけれど、私ども、限られた情報なんですけれども、EUの方に、「ロシアとWTOで取引をしたんですよね、どっちが言い出したんですか」というような質問をしましたら、「ロシアの方だと認識している」と、何人かの方はおっしゃっていたので、多分、今回もロシアから言い出したので、さすがにロシアもそれを反故にはできなかったのかなと、私は個人的には考えております。ご参考までなんですけれども。
 あともう一つ、具体的に将来枠組が、どのような具体的な枠組で、今、三村先生からも  おっしゃったように、どういう研究を、どうやっているかという話なんですが、ご存じのように、EUの場合はEUの中でのCOP3での決定をどういうふうに振り分けるかというのは、  トリプティークという方法で、RIVMというところが、ある程度案を出して、それをベースにいろいろ数字が決まった。RIVMの研究所というのは、そういう意味ではEUのシンクタンクなり、ブレーンみたいな形になっていると思います。
 そこの方と最近話す機会がありまして、「どうですか」と言いますと、皆さんご存じのように、大体3つぐらいのシナリオというか枠組が考えられる。マルチステージという話もありますし、EUの中でのトリプティークをもうちょっとグローバルにしたグローバル・トリプティークと、あとコントラクション・アンド・コンバージェンス、それの派生、どのようなオプションを考えるかというのは、今、具体的議論をしているんですが、EUの中では、RIVM中心に、この3つがどうだこうだという形で、どれがいいという議論は、かなりこの一、二年、集中的にやっていると思いますし、RIVMの方に言わせると、トリプティークというのは、ちょっと細か過ぎる。なので、EU委員会としては、マルチステージを好む方が多いということは、RIVMの方がおっしゃっていました。なので、ある意味では、非常に何でも取り込めるものでして、RIVMが、今、出したオプション以外にも、どういう段階で、どういう条件を使うかで、いろいろできるんですけれども、基本的にマルチステージ・ファミリーという形で、ある程度EUは固まっていくのかなというふうに、私は認識しています。
 それをいつごろ出すかという話も、ちょっとこの前したんですけれども、今、EU-ETSで忙しいので細かい議論はしていないと。ですが、来年の3月ぐらいに、そういう具体的な話をEUの中でやって、次の次のCOPに向けて、ある程度、そういうマルチステージをベースにした議論をしていくんじゃないかなという話をしていましたし、私もそう思っております。
 マルチステージの場合は、現時点ではある地域で、2100年、2500年で大きな2℃なり、550と決めたときにどうなるかという議論をしているんですが、今、彼らがやっていることは、地域、各国ごとの具体的な数字を入れ込んで検討している。かつ、2100年、2150年にある程度計算をしたときに、そういう枠を考えたときに、2020年、2030年でどのような、例えば、どの 国が何%削減とか、そのような細かい計算を、今これからするというふうにRIVMの方がおっしゃっていました。
 なので、これからどういうふうになるかわからないんですけれども、少なくとも研究機関なり、EUのシンクタンクというのは、そのようなEU委員会といろいろフィードバックしながら、そういう方向に動いていっているのかなというふうに私は思っています。
 以上です。

○西岡委員長 高村委員。

○高村委員 2点、ご意見、述べさせていただきたいと思います。
 工藤委員の方からご指摘のあった内容に重なりますけれども、EUの場合、温暖化対策として、こうした、今、紹介があった内容を進めていると同時に、他方で、それは中長期のエネルギーセキュリティの問題を常に念頭に置いて進めているということ、逆にいいますと、中長期のエネルギーのあり方、これは松橋先生がご指摘になりましたが、エネルギーのあり方について、どう考えるかということを、その基軸に座えて進めているという点だと思います。それは、しばしば言われますけれども、資源の制約の問題ですとか、あるいは化石燃料を特に中東に依存しているという点で、中東の政治的不安定要因をどういうふうに解消をしていくか、といったような問題とかかわっております。
 もう一つ、2点と申し上げましたが、細かな点で、きょうのご報告のところで、補足といいますか申し上げたいのは、17枚目のスライドなんですが、第6次の環境行動計画は2002年の最終決定、9月の文章だと思います。2001年というのは、多分、提案がなされたのが2001年だと思うんですが。なぜ申し上げるかというと、10年の計画ですので、2012年までのスコープの計画であるということを明確にしたい趣旨での発言です。
 それから、これも細かいところですけれども、2004年9月に始まったステークホルダーのコンサルテーションですが、2005年の2月ないしは3月の欧州理事会で、このコンサルテーションを受けて、最初の公式の議論を始めるということを非公式に聞いております。
 コメントの2点目に申し上げますが、EUの排出量取引制度について、こちらも工藤委員の方からありましたけれども、多分、短期的な効果の観点、すなわち既存の政策措置ではうまく京都議定書の削減目標の達成が難しいという展望とあわせて、多分に将来の制度構築に向けての国際的な戦略の位置づけがあるというふうに考えております。これは特にCDM/JIで得られたクレジットを利用できるというリンキングの指令、9月に採択されたばかりの指令ですけれども、こちらには恐らくロシア、それから中国をはじめとする途上国に対するそれぞれの国における温暖化への努力を促すEUのメッセージが含まれているか、というふうに思います。
 そういう意味では、もちろんこの委員会においては、将来の制度の枠組の議論をしていくわけですけれども、いかにアメリカや途上国の参加を確保していくかということも同時に関心となっている中で、非公式の話し合いあるいは公の場での交渉のあり方とあわせて、我が国がとる国内政策のあり方が、1つの国際的な戦略として、どう位置づくのかのかという視点というのは、重要ではないかというふうに思っております。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、事務局の方で……

○瀧口室長補佐 それぞれ貴重なご指摘をいただきましてありがとうございました。
 1点、高橋委員からいただいた質問の部分をお答えさせていただきたいと思いますが、高橋委員のご指摘のとおり、地理的な役割分担といいますか、EUとの協力というのは、特に重要な点かと思いまして、我々、EUの方と話していると、「日本は将来枠組に関して中国や韓国と何か話をしているのか」と盛んに聞かれるところでして、日本はアジアの中での役割分担というか、そういうのを期待されているのかなというふうに思うことがよくございます。
 それで、それに関しまして、きょう、この後ご紹介していただく外務省の非公式会合、こちらの方には中国や、韓国、インドの方も参加しておりますし、また環境省の方で行いましたアジア代表地区セミナーというのもございますので、なかなかすぐにお答えが出るわけではありませんが、先生にご指摘いただいた地理的な役割分担といいますか、そういったところも念頭に置きながら、今後やっていく必要があるのかなというふうには思っております。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、このセションはこれで打ち切りにいたします。
 13時からバックキャストしますと、ちょっと時間が短くなってきました。ですが、説明を亀山委員の方でごゆっくりいただきたく存じます。

○亀山委員 国立環境研究所の亀山です。
 本日は一番最初の議題として、枠組条約と京都議定書の概要というものを、過去を振り返っておさらいをしたことを踏まえまして、それでは今後、どうしていくべきかということを議論する上で、とりあえず、枠組の具体的な内容に入る以前に、そもそもどういう大まかなプロセスを念頭に置いて、将来枠組を議論すべきかという視点から、今回のテーマ、「気候変動に関する将来枠組み:国際社会における政府の役割と国家間合意のあり方」という題名で簡単にお話しさせていただきたいと思います。
 (スライド)
 発表内容は次の通りでございます。
 (スライド)
 まず最初に、気候変動対策を決定するレベルというところでお話を始めさせていただきたいと思います。
 (スライド)
 私のバックグラウンド、国際政治学なんですが、その学問におきましては、国際的な決定を説明する際に、常に3つのレベルということからスタートするんです。国際的なある問題――一般的においてですが――に対処するために決定というものは、3つのレベルのいずれかにおいて実施されます。
 1つは国際レベル。いわゆる国際条約などが相当いたします。2つ目が国家レベル。これは一般的に、我々、"政府"と呼んでいるところですが、ここのレベルでは国内のインプリメンテーションのための法規制などを決定いたします。そして、その国内レベルというのは、普通の用語では"民間"と呼ばれているところですが、企業や家庭、自治体などが、それぞれ自分たちの行動を決定しているわけです。
 では、この3つのレベルで、どのレベルが決定すべきかという選択に関しましては、決定の性質によって一つ一つが異なってくるわけでございます。
 (スライド)
 さて、では、気候変動の場合は、どのレベルでの決定が妥当なのかということを話す場合に、答えを先に申し上げますと、すべてのレベルでの決定が必要だというふうに説明できます。まず、気候変動問題は、その原因である温室効果ガス排出量がすべての国から排出され、また同時にその結果である気候変動の影響も世界各国で生じているということから、その対処には国際レベルでの議論が必要でございます。
 次に、温室効果ガス排出は国内の産業、交通、民生、すべての分野の活動に関係するわけですので、国際レベルで決定された事項について、国内対策を実施するためには、国家政府レベルでの決定が必要であり、国家、つまり政府はその責任を持つということでございます。
 また、最後に、温室効果ガス排出量抑制する実際の行動主体は、企業や個人などの国内主体でありますので、最も効率的な方法などの検討には、民間レベルの議論が必要となります。
 (スライド)
 それでは改めて、では、2つ目の真ん中に挟まれた国家レベル、つまり政府の役割というのは、どういうものなのかということを、改めてここで考え直してみたいと思います。
 (スライド)
 気候変動対策における政府の役割でございますけれども、近代の国際政治における主要な  行動主体となっております。近年、その構造は複雑化しているが、それでもなお最も重要な地位を占めるといって、どういうふうに複雑化しているのかということについては、次のスライドに出てくるんですけれども、政府に求められている役割というのは、大きく2つございまして、1つは国際レベルの決定過程に、国家の代表として主体的にかかわる。つまり代表団として交渉に参加するわけです。つまり国際レベルの決定に責任を持つのは政府でございます。
 2つ目に、政府は国際レベルでの決定に基づいて必要な国内政策の導入を決定いたします。つまり国際レベルでの決定の実施に責任を持つのも政府でございます。
 (スライド)
 さて、国際政治がどんどん複雑化しているんだよ、ということを図示してみました。従来までの国際関係というものは、図示いたしましたように非常にシンプルでございまして、1つの国の中で、民間、企業や世論が、政府と協議しあって、それで政府が国としての態度を決定いたします。隣の国でも同じようなことが行われて、B国としての態度が決定されるわけです。それでA国とB国が国際社会で交渉して、1つの国際条約なり、必要な合意というものができるわけです。せめて、ここで政府間の非公式な協議というものがあったわけですけれども、主な交渉はこちらのフォーラムでなされていました。
 (スライド)
 しかしながら、近年拡大しつつある国際関係というものは非常に複雑化している。つまり国内アクターの越境活動が急増しているというふうに特徴づけられます。つまり、矢印をいっぱい書きましたけれども、気候変動の交渉に参加された方は、既にごらんになったと思いますけれども、例えば先進国の環境NGOの方が、小さな島国の国の政府のピンバッジをつけて交渉に参加していたりですとか、または先進国の某国の石油会社、石炭会社が雇った弁護士がOPECの交渉代表団の顧問コメンテーターみたいになっていたりするわけです。また、直接、民間同士でも、例えばビジネス同士で非公式の話し合いがあったり、環境保護団体同士がみんなでネットワークを組んだりといった、直接のやりとりもあるわけです。
 ということで、また交渉、COPみたいな会合へ行きますと、ここに参加しているのは国の代表だけではなくて、国内のいろいろな主体が直接ここに参加している。そして傍聴している。時々発言するといった次第でございます。
 (スライド)
 さて、このように、国内レベルに収まっていた従来の民間アクターが、最近は政府を介さずに直接、国外の諸アクターと関係を築く行動がますます拡大しておりまして、今後もさらに拡大していく。
 しかし、このような現象は政府の役割を決して減らすわけではなくて、むしろ新たな役割が政府に求められてきているということでございます。例として、ここは2つ挙げましたけれども、「独禁法の域外適用等、経済のグローバル化への対処」というふうに書きました。これはつまり、前のスライドを思い出していただきますとわかると思うんですが、企業同士が直接政府を介さずに他国に直接投資したり、経済活動するようになっても、企業の活動拠点となる国の規制は受け続けるということでございます。つまり、この企業は外国さんの企業だから私たちは何もできません、と政府は言うわけではないということです。
 あと、「麻薬取締やハイジャック防止等の国際犯罪の対処」というように書きました。これも一個人が直接隣の国の個人に対して被害を及ぼす危険が存在する場合、政府は、例えば自分の国の人が、あの人は外国に行っちゃったから放っておいていいんだとか、逆に外人さんが日本で何か悪いことをしたら、これは外人さんだから取り締まれないんだとか、そういうわけではなくて、あくまで国際規則にのっとって取り締まるということでございますので、政府の役割というのは、むしろ国際政治の複雑化に伴い、役割も複雑化しているというふうに言えるのではないかと思います。
 (スライド)
 ちょっと話は変わるんですが、では、国際レベルにおける合意形成プロセスを、今後どうしていったらいいのかということに話を移していきたいと思います。
 (スライド)
 国際レベルにおける合意のあり方といたしましては、合意の形態は多様でして、まず先ほど少し説明しましたけれども、国家、つまり政府の間の合意と、政府の合意以外の合意というものがあるんです。例えば企業間で自主的に取り決めをするとかが、ここに相当するわけですから、合意といっても、まず、ここと、ここの合意の違いがございます。そして、国家間の合意の中でも、二国間、バイラテラルですとか、地域間、リージョナルですとか、他国間、マルチラテラルといったタイプの合意がございます。そして、そのマルチの中には、一応、国連の外と国連の中という位置づけがございまして、今までの気候変動プロセスというのは、すべてこのマルチの国連内で合意が進んでいるということでございます。これについて、では今後、どうしていったらいいのかということについて話を進めていきたいと思います。
 (スライド)
 さて、現状、つまり国連のもとでの多国間条約のいいところというのは、どういうところがあるのでしょうか。幾つかまとめてみました。
 まず第1の点といたしましては、気候変動問題の把握ということがございます。気候変動に関する抑制策及び適応策が、すべての国の活動に関連する以上、その問題の把握、つまりデータ収集でありますとか、気温上昇や降雨量、異常気象等のモニタリング、排出量取引等の対策等に必要な制度構築には、すべての国の関与が必要ということであります。
 2つ目の点といたしましては、国連という既存の制度の活用という利点がございます。つまり手続きルールや事務局の作業要領など、既存の制度が存在するため、効率的と考えられます。
 また、気候変動問題は、生物多様性や砂漠化条約など、ほかの地球環境問題とも関連するわけですけれども、それぞれ生物多様性条約も砂漠化対処条約も、国連の下に位置づけられておりますので、その相互調整というものが実施され得ます。また、資金供給メカニズムとの関係なども同様でございます。
 3つ目でありますけれども、多国間での合意という重みづけがございます。これは物理的にはかれるわけではないのですけれども、国連の内外にかかわらず、すべての国が合意に参加した条約というものは、数カ国だけが参加したものに比べて重みがあるというふうにいえます。参加国が多いほど、合意達成に時間がかかるおそれはありますけれども、一たん合意された内容はすべての国において重く受けとめられます。その結果、制度の安定性、将来発展性、長期性につながります。
 この点におきまして、先月、9月に実は我々の研究所とIGESと共催で、将来枠組に関するシンポジウムというもの開催いたしまして、そこでインドネシアから来られたアガス=サリという専門家の方が、いみじくもこの点についておっしゃっていまして、ある制度がすべての国においてコンセンサスで合意された制度が、ある数カ国がうまくいかないからといって、失敗だね、といって放棄して、また一から次の制度を議論するとなると、その次の議論で合意された制度に対しても、途上国は、これ、いつまでもつんだろうといって信頼がなかなかできなくなる。だから、今の制度を大切にするということが、将来制度の信頼性を構築する上で大切なんだ、ということを強調されておりまして、その点、途上国の多くの方が感じられていることのように受けとめられました。
 (スライド)
 第4点といたしましては、手続きの正当性。1つ前か2つ前かの、この専門家会合、第何回目か忘れましたけれども、公平性についてとか、あと不確実性の残された問題にどうやって対処していったらいいのかということを議論いたしました。そのときに、そのような問題に関する意思決定には、関係者すべての参加が求められます、ということをお話ししたかと思います。正当性のある手続きを踏んで得られた合意のみが、正当性を持つ合意といえます。
 さらに、これは日本にとってのポイントでございますけれども、日本にとって国連を利用した方がいいのではないか。外交力の最大化。つまり国連のもとで交渉を進める方が、各国と二国間で、それぞれ日米、日ヨーロッパ、日中というふうに交渉を進めるよりも、外交力を最大限に効率的に活用できるものと思われます。特に地球環境問題というものは、対策、技術、人的資源、財政的資源を持つ日本にとって、むしろリーダーシップが一番とりやすいテーマというふうに考えられます。
 (スライド)
 しかしながら、この多国間条約の現状というものは課題もございます。最大の課題が、ここに示したとおり、180以上の国のコンセンサスを得るための代償の大きさでございます。例えば、産油国の消極的な発言に対する忍耐の必要な交渉術でありますとか、すべての国を満足させるために妥協に妥協を重ねた結果、結果として理想から外れていくような合意でありますとか、気候変動対策が目的のはずの交渉に、途上国の強い貧困対策などが盛り込まれてしまうといった問題でありますとか、合意を得るために非常に長い時間をかける、途上国からの態度決定を待つために、夜通し徹夜するはめになったりするわけです。そういうものに、よく嫌気がさしてくる人も、私を含めているわけです。
 このほか、もう一つ国連でのプロセスは問題があるねとおっしゃる方は、アメリカのことを挙げるんです。つまりアメリカは、今のところ、最近、国連というものに対して非常にネガティブな考えを持っていらっしゃって、将来に何か議論を進めるときも、国連というだけで、何となくアメリカが拒否反応持つ。なので、アメリカの参加を求めるためには、国連じゃない方がいいんじゃないかという意見をおっしゃる方がいらっしゃいます。
 しかしながら、これは本当に、先ほどアメリカのところで皆さんが議論されていたとおり、アメリカは決して一方的に国連を拒否するわけではなくて、アメリカが国連を利用できるような状態にある場合は、イラクの問題でも見られたかと思うんですが、一生懸命国連を利用しようとします。それで、利用できないと思った瞬間に国連を切り捨てるんですけれども。ということで、アメリカは決して、はなから国連に対して常に拒否反応を持っているわけではないということが1点です。アメリカはリーダーシップをとれると思ったら、急に国連に近づきます。
 あと2点目としては、国連に拒否反応を持っている人物が、大体上院議員と、あと今の政権です。単独主義を維持している政権。この2つでございますけれども、この態度が、今後とも恒久的に維持されるかというと、そうは考えられない。この2点から、私はここの課題のところに、アメリカについては書き込みませんでした。
 (スライド)
 ということで、気候変動に関する将来枠組の議論の進め方としては、このように考えられます。現状、つまり国連気候変動枠組条約と国連のもとでの多国間協議の進め方には、数多くの長所が見られ、とりわけ日本の外交にとってもメリットとなることから、同プロセスを今後も気候変動に関する国際交渉の中心的なフォーラムとして継続すべきである。
 しかしながら、同時に残されている課題に対処すべく、他種類をプロセスを補足的に利用すべきであろうというふうに考えられます。
 (スライド)
 それで、基本的な部分、つまり現在の枠組条約や京都議定書なおいて対象となっている範囲、すなわち気候変動抑制のための各国の義務でありますとか、国別報告書提出などの情報の共有、途上国への各種支援などについては、今後とも気候変動枠組条約プロセスの中で議論すべきだろうというふうに考えます。
 それと同時に、以上のプロセスを補完するためのほかのプロセスとして、これは先ほど高橋先生がおっしゃったことに、いみじくも私も想定しているわけですが、例えば参加国を限定した上で非公式な場で話し合ったりですとか、対象議題の限定、とりあえず技術だけについて話し合ってみましょうとか、排出量取引だけについて話し合ってみましょうといったプロセス、あるいは国内主体の参加、先ほどアメリカのところで、州を巻き込んだらいいんじゃないかという話がありましたけれども、そういった自治体だけではなく、同業種間での意見交換や、環境保護団体と研究者の意見交換等が考えられます。
 (スライド)
 まとめでございますけれども、気候変動問題は、その性質上、国際、政府、民間のすべてのレベルにおいて対策に向けた決定と、それに基づく行動が伴う必要があると考えます。とりわけ政府においては、近年における民間主体の越境活動の急増に合わせまして、従来の役割に加えて、新たな役割が求められている。
 つまり、ここで実は言いたかったことは、民間が、例えば企業ですけれども、どんどん自由に動いちゃっているのだから、政府が一国で規制してもだめなんだよ、というような主張に対しましては、そうではないと言いたいわけであります。
 3点目ですが、国連のもとにおける多国間協議は気候変動問題を扱う上で、多くの長所があり、今後も、気候変動枠組条約を中心とした国際的な枠組づくりのプロセスを維持すべきであると考えます。
 他方、国連のもとでの多国間協議は180を超える国が参加するために生じる課題もありますので、多様なプロセスによる補完が有効と考えられます。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 将来の枠組、現在の国連の役割等々を含めてサゼスチョンいただいたと考えております。
 時間の方からいいまして、最後に小西大使からの報告も含めまして15分ぐらい残しておきたいと思いますので、簡潔にご意見をお伺いしたいと思います。どうぞ、高橋委員。

○高橋委員 時間の制限もあると思いますので、簡潔に2点、申し上げたいと思います。とてもすばらしいご報告で、頭の整理に非常に役立ったと思います。
 2点のうちの第1点は、12ページ目の国際レベルにおける合意のあり方、この中で、左の枠の横っちょにどけられています「国家間以外の合意」とございますが、恐らく、今後の見通しとしまして、この国家間以外の合意というのは、いろいろな形で重要なものになっていくだろうと、私は思っております。ISOその他、民間でつくるコードのようなもの、あるいは国家以外のアクター同士で自主的に結んでいくようなもの、そういうものが国際社会の中で比重をどんどん大きくしていく。そういう中で、我々の課題というのを扱っていく、そういう環境かなというふうに思います。
 それから、2点目は、米国の問題ですが、国家間合意の問題としまして、20世紀通じて、常に問題になったのが米国でして、恐らく21世紀もそうなんだろうと思います。その観点からしますと、一方で国際連盟とか、あるいは海洋法というような、米国を除いたオプションというのをとってきた経験があります。もう一方で、アメリカの反対ゆえに、非常に内容を薄めてしまったGATTのようなアプローチもあります。
 結果として、少なくも20世紀の経験からしますと、GATTアプローチの方が米国を何とか取り込むためには正解だった。GATTはやがては、もともとの国際貿易協定に近い、ある意味でそれよりも強いWTOに転換していった。それは、米国を乗せた形で貿易ルールというのをずうっと運営してきたからだということかと思います。
 我々にとっての課題は、そうしますと、GATTアプローチというのは、今の状況では余り現実的な感じはいたしません。もう一方で、海洋法はアプローチのままで突っ走っていいのかというと、この分野に関しては、恐らくとてもだめだろう。難しい状況にあると思います。
 ベースは海洋法アプローチ、とりあえずアメリカを除いておくけれども、どうやってそれを、やがは、例えばGATTがWTOになったように、アメリカも乗せていく形にしていくかという努力が、工夫が常に必要だ。海洋法に関しては、それをあきらめちゃったわけですけれども、そういうことじゃなくて、出発点は海洋法アプローチだけれども、それをどうやって、やがてGATTアプローチの方にしていくかということが、国家間合意のあり方として重要なのだろうと思います。国家間合意で、すべての国のことを考えるというよりも、常に問題だったのはアメリカであるし、今後もそうであろうということを、まず考えるべきだろうというふうに思います。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 工藤委員、どうぞ。

○工藤委員 1点だけ、15ページのところで、亀山さんが、あえてアメリカの意思を抜いたというご説明について。国際関係の専門家ではないのですけれども、逆に言えば、状況変化によっては抜ける可能性が出てくる可能性もあるというふうにもとれるわけですよね。それで、事務局の先ほどの資料でも、今の段階でもメリットを得るかもしれない途上国の中でも、まだ批准していない国もある。こういう現状下を考えますと、やはり完全ではないと私は認識していますし、その辺の問題意識がないと、グローバル・パーティシペーションを議論するときに、どうしても欠けてしまう可能性は否定できないと思う。私自身はそこのところは、全会一致的な発想でいうと、妥協に妥協を重ねても、利害関係上、こぼれてしまう可能性は否定できないというところは認識しておく必要があると考えておりまして、できれば課題にポイントとしては入れておいた方がいいかなと思っております。

○西岡委員長 これまでの2点について……。

○亀山委員 お二人とも、貴重なご意見、ありがとうございました。お二人のご意見に全く賛成でございます。アメリカに関する考え方というのは、きっと個人によっても大分差があるかと思うんですが、工藤さんがいみじくもおっしゃったように、アメリカが参加するか、しないかはわからない。きっと、それは国連プロセスであるか否かでアメリカの参加、不参加が決まるのではなくて、あるレジームがアメリカにとってベネフィットをもたらすかどうかによって決定されるだろうというふうに考えております。ですので、それを踏まえた上で、きっと、この課題と書いたページ15には、書くべきだったと思っております。
 また、特に高橋先生からの、海洋法かGATTか、どちらもそれだけではだめで、出発点は海洋法で、GATTに近づけていくというアプローチ、非常に明快なご説明だったと思いまして、私もそのようなご意見を踏まえた上で、今後、もう少し具体的な進め方に関する議論ができるようになりたいと思います。
 以上でございます。

○西岡委員長 明日香委員、どうぞ。

○明日香委員 私はグローバルパーティシペーションというのは、ある程度、よくない言葉かもしれませんが、幻想なんじゃないかなと、実は思っておりますので、もちろんこだわるんですけれども、それが絶対条件ではないという認識を持った方がいいと思っておりまして、しかしながら、今、主にやっていますUNFCCCのもとでやるかどうかという話なんですが、私は個人的にはUNFCCCのもとでということで、いろいろな方にインタビューして、この問題をどう考えるかというのを聞きました。この前、外務省の非公式会合に来た途上国の方に聞いたところ、彼が言うには、UNFCCCで、本当にだめになったら、大量排出国のグループで考えることはあるだろう。でも、それは、UNFCCCの交渉が本当にデッド・ロックというか、動かなくなった場合だと。
 かつ、条件が3つありまして、一番目は、すべての大量排出国が入っていること。ということは、大量排出国という定義が必要ですし、大量排出国が入っているかということ、どの国が入るかということです。2番目は、当然、排出削減なり排出抑制の条件、中身がどうなっているか。3番目はUNFCCCとの関係。その3点が非常に重要だと。よく考えると、結局、UNFCCCの中での交渉と同じくらいの難しさであって、よく言われるように、国連でだめだから大量排出国、もうちょっと少ない国でやればいいという簡単な話ではなくて、交渉の難しさなり、徹夜やらをしなければいけないということでは、同じようなことだというふうに途上国の方は認識していました。
 なので、よく大量排出国なり、UNFCCCの外という議論はあるんですけれども、それは僕の認識では、特に米国なりを中心とした研究者が、何となくベースがなくて言っているようなところがありまして、実際に、例えばアメリカ政府が途上国にそういう形で動いているとか、日本はまだしていないと思いますけれども、日本政府がそういう形で話を動かそうとしている、途上国がそういうふうにアプローチを受けている、途上国はそれに乗ろうとしている、そういうようなレベルの議論ではないと、私は認識しています。
 以上です。

○西岡委員長 ほかにございますか。
 それでは、亀山委員。

○亀山委員 明日香委員、どうもありがとうございました。コメントとして受けとめてよろしいわけですよね。おっしゃるとおりだと思いますし、追加的なインプット、ありがとうございました。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、これまでも、いろいろとどの場面でコミュニケーションを続けていくかというお話がございまして、ちょうど外務省の方で非公式会合というのを9月15日に開いています。きょうは、特命全権大使、地球環境問題担当小西大使においでいただいております。ひとつよろしくお願いします。

○小西外務省地球環境問題担当大使 外務省の小西でございます。きょうは、この委員会に非公式会合についてご報告させていただく機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
 この会合は、9月15日、16日、ブラジルの外務省のバルガスという環境局長と私が共同議長を務めるという形で、先進国、途上国を含め18カ国、それからECからの参加を得て、また日本からは環境省及び経済産業省の方にもご出席いただきました。
 この会合でございますけれども、自由かつ率直な意見交換をするということで、必ずしも政府の公式な立場に縛られて発言するということではない。それから、また発言する内容につては、対外的には引用しないという、だれがどう言ったということは引用しないという、一応約束事になっております。
 今回の会合は3回目でございますけれども、特に前日の14日に専門家会合を行いまして、ここにいらっしゃる甲斐沼先生、それから多くの専門家の方々に大変なご協力をいただきました。
 まず、専門家会合と、それから非公式会合との対話というところから入らせていただきますけれども、モデルの専門家によるいろいろな説明について、モデルそのものについて、モデルが現実を十分に反映しているのかどうか、それから、一体、新しくとった政策や技術の効果などがどういうふうに反映されていくのか、またモデルが使っているデータの質、特に途上国においては、データが不備ではないかといったような点が指摘されましたけれども、モデルは政策決定、あるいは交渉において非常に有用な役割を果たし得るので、ぜひとも、そういう科学的な知見が、政策決定とか交渉過程に生かすことができるように努力していくことが大切だということで、皆さんの意見が一致しておりました。
 それから、モデルの作成の能力については、特に甲斐沼先生の方から、アジア諸国との協力の現状などについてご紹介がありまして、途上国の、いわゆるキャパシティビルディング、能力を向上させるために、どういうことをしなければいけないかという、そういう議論がございました。キャパシティビルディングそのものによる能力の向上が大切なことはもちろんですけれども、そういう過程を通じまして、途上国と先進国との間に、この問題についての共通の認識が得られる、あるいは信頼関係が生まれるということも大切ではないか、ということが言われました。
 それから、当然のことでありますけれども、交渉の当事者、それから政策決定者との間の意思疎通、これは将来、十分に図っていく必要があるという点もご指摘されました。
 それから、第2点でございますけれども、温暖化対策に対する途上国の姿勢、総じて肯定的な印象を私は受けております。例えば、メキシコなどが国別報告書を、大変な、こんなのがあるけれども、自分たちは、今、準備しているとか、中国とかブラジルなどからも、省エネの努力とか、再生可能エネルギーの比重を高めるための努力を、こういうふうにやっているんだというように、それぞれの途上国が、それなりに努力しているという説明がございました。
 ただ、途上国の立場といたしましては、まず先進国が京都議定書の数値目標を達成して、途上国に必要な資金の提供、あるいは技術移転をもっと一層、実質的にやっていく必要がある。そういう前提のもとで、持続可能な開発に影響を与えない限度内で、自分たちはさらなる温暖化対策に取り組むことが可能なのであるという立場でございました。
 それから、第3のところでございますけれども、適応の問題、これは気候変動の影響によると見られる自然災害で、途上国は特に弱い立場にあるので、この問題はのっぴきならぬ、緊急に対応しないといけないということで、特に12月のアルゼンチンのCOP10では、この問題を優先的に取り上げるべきだという意見が、幾つかの途上国からも表明されまして、先進国も問題が重要だということは認めておりまして、ただ、適応との関係も考慮しながら、総合的に取り組んでいく必要があるのではないかという意見が表明されました。適応の問題というのは、科学的な知見が、削減努力に関する場合よりも、どうも余りやられていないということもありますし、枠組条約の中でどういうふうに、余り気にしたところがないということ、あるいは緩和と適応との間にどういうリンクを考えるべきなのかということが、論点として挙げられまして、今後、引き続き、こういう点を、よく議論していく必要があるということになりました。
 また、適応の問題についてもそうなんですが、温暖化防止一般において、技術が持っている役割、潜在能力というか、果たし得る役割というものが極めて重要だということは、多くの参加者から指摘されました。
 それから、第4点でございますが、将来の枠組に関する議論においては、環境省の竹本審議官から、この審議会のお考えをご紹介いただきました。
 それで、この会合は非公式会合ということですので、性格としてはそうなんですけれども、せっかく、こういう有益な意見交換が行われたので、何らかの形でこれをアルゼンチンで行われる12月のCOP10で生かしていくべきではないかという強い期待が表明されました。
 それから、12月のCOP10で、では、将来の枠組みについてどういう議論をするべきなのかということにつきましては、先進国は非常に堂々と、公式な場で議論すべきではないかということではございましたけれども、途上国の方では、その点は、まず先進国が義務を果たして、技術援助、あるいは資金の提供において十分実が上がって初めて、そういうことについて話し合う環境が整うのだという立場から、やや腰の引けた立場ではありましたけれども、総じて、今後とも真剣に取り組んでいくということが必要であるという点については、みんなの意見が一致したと思います。
 そういうことで、この会合は私自身が非常に学ぶところも多くございましたし、非常に有益な機会だったと思います。後ほど甲斐沼先生の方から、何かコメントをいただければ幸いだと思います。
 また、この会合の冒頭で、高橋委員から、この種の非公式会合の役割の意義ということについてご指摘がありましたし、また各委員の先生方から、非常に貴重なご意見やご示唆をいただきましたので、今後、私どもが努力していく上で、ぜひ念頭に置かせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 この会合も3回目になりまして、日本がこういう形でリードしていくということで、この会合を開いておられることに非常に敬意を表する次第であります。
 甲斐沼委員、どうぞ。

○甲斐沼委員 私どもも、モデルの専門家と政策決定者とが交流できるような、貴重な機会を与えて下さって非常に感謝しております。
 その中でも、例えば中国の代表の方の中に、私どもで開発しておりますモデルを博士課程で研究され、その後国際政治の場で活躍されている、ジャン・ケジュンさんとという方もおられ、彼はモデルもわかっているし、国際政治の中でも活躍されているということで、活発な議論ができたと思っています。
 あと、例えばUNFCCCのインドと中国の国別報告書に、かなり主体的にかかわっている方にも、AIMのモデルで博士号を取得された方とか、あるいは環境省の推進費のエコ・フェローとして研究された方がおられますが、彼らの研究成果が今回の非公式会合の資料を作成する際に随分役にたちました。推進費の研究費を1991年から10年以上頂いていますが、その中で途上国共同研究をしており、10年以上一緒に研究をしてきた途上国のシュクラ教授も非公式会合に参加して下さりました。随分時間はかかりますが、温暖化の科学的な研究をされ、さらに国際政治の中で活躍される人材の育成をシュクラ教授などにご協力頂き推進してきましたが、今後とも、非常に大切なことと思っております。
 また、今回、インドの代表としてゴーシュ博士が参加されていました。博士は経済モデルで博士号をとられた方で、私どもがインドで開催されたCOP8の期間中に、AIMのサイドイベントをしたときにも来て頂いた方で、AIMについて理解して頂いています。 10年以上にわたる地道な努力といいますか、研究成果に興味を持って下さっていると理解しております。
 今後も人材育成も含めた研究の推進にご協力頂ければ非常にありがたいと思っております。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ブレア首相が言っているように、科学のいろいろなことがだんだん役に立ってくるということが言えるかと思います。ほかにどうでしょうか。何かございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、もう一つ残しておりますので、次の議題にお願いいたします。

○水野国際対策室長 それでは、参考資料2について簡単に、時間も押しておりますので、ご説明させていただきます。
 第14回の地球温暖化アジア太平洋地域セミナーの概要でございます。この取組も先ほどと同様に非公式なプロセスということの重要性を、我々として認識をいたしまして取り組んでいる活動の1つでございまして、今回で14回、14年にわたって取組を続けているということでございます。
 また、この非公式な取組につきましては、特に地域の連携というものを重視しまして、アジア太平洋地域に焦点を絞って連携の取組を進めているということでございます。この取組につきましては、ことしは環境省とオーストラリア・グリーンハウスオフィスの共催で、ちょうど外務省の非公式会合の翌週に、オーストラリアで開催をいたしまして、西岡先生に議長を務めていただいて開催したものでございます。
 この取組も長年、14回も続けておりますと、だんだんと地域に定着してきているというところが非常に重要なことではないかと思っておりまして、今回も19カ国からの参加をいただきましたし、2ページの最初にありますように、非常に多くの国際機関、14国際機関からも参加をいただいておりまして、例えば国連の気候変動枠組条約のプレスの中でも特に言及されるようなことにもなっておりまして、そういった意味では、こういった取組というのは短期的な成果を得るということに、必ずしも焦点が当たるということはなくて、長期的に継続していくということが、非常に大切ではないかというふうに考えているところであります。
 また、こういった取組は、先ほど申しましたように非公式の取組ではございますけれども、こういった取組の中で、各国間の信頼醸成が非常に図られつつあるということ、それからこういった議論をしていく中で、一般論、抽象論ではなくて、地域の実情の個別具体の問題点、あるいは取組課題の対処法などが具体的に挙がってくるというところが、非常に重要なのではないかなというふうに考えております。
 具体的な成果につきましては、後で、後ろの方にチェアマンズ・サマリーということでつけておりますので、ごらんいただければと思いますが、キー・ファインディングスということで、2ページの4に(1)から(7)までに書いてございますような点が、特に重要な点として整理をされました。
 まず、科学の重要性ということが1点目、それから、ここでも適応戦略の重要性ということが特に焦点を当てられました。
 それから、3番目の緩和対策と持続可能な発展と同時に達成できる機会が存在しているというのは、非常に多くの具体的な事例が紹介されまして、緩和政策というものが具体的に途上国の具体的な発展に役立つというものが、いろいろな豊富な事例で紹介をされまして、大変力強く思った次第でございます。
 それから、先ほどもちょっと紹介をさせていただきましたが、個別具体的に見ていきますと、各国レベル、さらに下って地域レベルでの現状、問題認識等々が非常に重要だということが認識されまして、地域レベルでの取組というものを、さらに国を下って地域レベルでの個別具体の事情ですとか、背景状況などを勘案しての取組が重要であるということが認識をされました。
 しかしながら、一方では、長期的に問題解決のためには、さらに抜本的な取組が必要だということも、同時に指摘をされております。さらに地域の中での取組を推進しく中で、キャパシティビルディングの発展ということが、よく強調されるわけですけれども、キャパシティビルディングをしていく上では、まずその前提として、問題認識というものが大事だということ、問題認識とキャパシティビルディングをつなげていくことが必要だということと、それからキャパシティというものを発展させる、というところに焦点が当たりがちではありますが、それだけではなくて、そのキャパシティをいかに維持していくか、ということが重要だということが強調されました。
 そして、最後に、そうした具体的な取組の紹介、あるいは意見情報交換などを通じまして、今後のこの地域での協力の可能性というものが共通認識とされまして、さらなる協力の機会を統合して、また見極めていくことで、地域内での対話と協力を一層進めていくことができるということが確認をされた次第でございます。
 今、ご紹介させていただきましたように、この取組につきましては、だんだん発展をしつつありまして、非公式のプロセスではありますが、そろそろ公式のプロセスへの貢献ということも重要だということで認識をされておりまして、その下に書いてございますように、次回セミナーは、気候変動枠組条約の中の具体的なプロセスの1つとして、開催が予定されております第6条に関する教育等の条項でございますけれども、6条に関するワークショップというものが、地域ごとに1つずつやることになっておるんですが、アフリカとアジアと南米の方でやることになっておりますが、それが1つのアジアのワークショップと共同で開催をしようということで、さらにAPセミナーを発展させていくということについても、可能性を検討しようということが話し合われたところでございまして、我々としても、この取組をますます発展させつつ、COPプロセスへの貢献を目指していきたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 先ほどの外務省の非公式会合でもご報告がありましたように、研究といった取組、あるいはアジア・パシフィックセミナーといった非常に長い取組が、だんだん実を結んできたなという感じが非常にいたします。どうもありがとうございました。
 何かコメントございましょうか。
 それでは、本日はどうもありがとうございました。非常に密な議論がたくさん出まして、今後への課題もたくさん出たと思います。冒頭に申し上げましたように、あと2回ぐらい、COP10までに、この会合を開きまして、皆さんのご意見を集約したいと思っております。何度も申しますが、これは専門委員会でございますので、余り1つの意見だけではなく、非常に広い意見を、何とか全貌を見てみたいということがございますので、ぜひ今後とも、そういう材料を集めていただきたいというぐあいに考えております。

○瀧口室長補佐 1件、資料にミスプリントがございました。資料3のEUの気候変動対策のところですが、申しわけありませんでした。18ページ目のところでして、中長期目標設定に関する議論(続き)というところで、最後のところですが、フランスの目標が1人当たりCO2排出量が「0.5MtC」に抑制となっておりますが、これは「0.5tC」ですので、100万倍も違いまして、申しわけありません。(笑い)
 それから、次回は10月26日、火曜日の1時から4時まで、三田共用会議所で予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 あと、議事録の確認をまたお願いするかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。

午後 1時03分閉会