中央環境審議会地球環境部会第3回気候変動に関する国際戦略専門委員会議事録

開催日時

平成16年7月23日(金) 10:00~13:00

開催場所

虎ノ門パストラル新館4階「プリムローズ」

出席委員

(委員長) 西岡 秀三
(委員) 明日香 壽川  甲斐沼 美紀子
亀山 康子  住  明正
高橋 一生  高村 ゆかり
新澤 秀則  原沢 英夫
松橋 隆治
 
 三村 信男

議題

1. 気候変動による影響と適応について
2. 中長期的な目標の設定について
3. その他
  

配付資料

資料1  気候変動問題と社会経済の発展シナリオ
資料2  気候変動問題と技術の役割
資料3  気候変動問題に関する国際的な戦略について(これまでにいただいたご意見)
参考資料  気候変動枠組条約第20回補助機関会合(SB20)概要と評価

議事録

午後10時02分開会

○水野国際対策室長 若干遅れておられる先生方がいらっしゃいますが、定刻となりましたので、ただいまから気候変動に関する国際戦略専門委員会第3回会合を開催したいと思います。
 審議に先立ちまして、環境省におきまして7月1日付で人事異動がございましたので、ご紹介をさせていただきます。
 地球環境審議官の松本でございます。

○松本地球環境審議官 松本でございます。よろしくお願いいたします。

○水野国際対策室長 それから、人事異動ではございませんが、今回初めて出席させていただきますのでご紹介させていただきますが、大臣官房審議官の桜井でございます。

○桜井審議官 桜井でございます。よろしくお願いします。

○水野国際対策室長 それから、申し遅れましたが、私、国際対策室長の水野でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事進行につきましては、西岡委員長、よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 皆さんおはようございます。本日は第3回になりますけれども、お手元の議事次第にございますように、主として3つの議題がございます。その他も含めますと4つになりますが、最初が、気候変動と社会経済の発展シナリオ、2つ目が気候変動問題と技術の役割、そしてこれまでの議論の整理ということになっております。
 最初の議題につきましては、甲斐沼委員の方から約1時間ぐらいの範囲で質疑応答も含めて発表いただきたいと思っておりますし、また後ほどの2つにつきましても同様に事務局の方からご説明いただきたいというぐあいに考えております。
 13時までという3時間の長丁場でございます。時間があったら休みを取りたいんですが、通常そう言いながらそのまま進んでしまうというような例になっておりますが、できたらそのようにしたいと思っております。
 まず最初に、資料の確認ということで事務局の方からお願いします。

○瀧口国際対策室長補佐 それでは、事務局の方から資料の確認をさせていただきます。お手元の資料をご参照ください。まず、議事次第がございます。それから、資料1が気候変動問題と社会経済の発展シナリオ。甲斐沼委員に作成していただいた資料です。資料2が気候変動問題と技術の役割。これもパワーポイントの資料です。それから、資料3が気候変動問題に関する国際的な戦略について(これまでにいただいたご意見)というA4縦の資料でございます。それから、参考資料といたしまして、先月ドイツのボンで開催されました気候変動枠組条約の第20回補助機関会合の概要と評価という資料を添付させていただいております。
 それから、委員の皆様方には前回のこの委員会の議事録を合わせて配布させていただいております。そのほかの皆様におかれましては、この前回の議事録、環境省のホームページにも掲載しておりますので、そちらの方をご参照いただければと思います。
 また、加えまして、次回、それから次々回の委員会の日程調整につきまして、委員の皆様のお手元にそのご都合を記入していただく紙を配布させていただいております。各自ご記入の上、終了後に机の上に置いておいていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 資料の過不足等ありましたら、事務局までお申しつけください。よろしくお願いします。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。資料の不足、多分ないと思いますが。
 まず、議論に入る前にですけれども、いつもこういう会議で突然話が始まりますと、一体どういう位置づけで何を議論するのかわからなくなりますが、これまで何回か審議をしてきて大体わかっておられると思いますけれども、全体のこの専門委員会の議論と議題との関係について、事務局の方からちょっとおさらいをしていただければと思います。

○水野国際対策室長 それでは、ごく簡単に今回の議論の位置づけをご説明させていただきたいと思います。
 資料3の一番最後のページをごらんいただければと思います。これは第1回目の会議の際にもごらんいただいた資料でございますが、今回の検討の大体の流れを示したものでございます。大きく分けて2つの部分に分けて議論いただこうというふうに考えておりまして、まず最初が、上の大きな点線で囲われたところでございますけれども、地球規模のシステム、これがいかにあるべきかということについてのご議論をいただいて、それをもとに具体的に下の点線にありますような、制度あるいは枠組の構築というのはどういうふうにあるべきかという議論に移っていただこうというふうに考えております。
 今回までの3回で大体、上段の地球規模のシステムがいかにあるべきかということについての議論をひとまず終えていただきまして、次回からは主に下の枠組の話に移っていただきたいというふうに考えております。
 前回、それから前々回につきましては、その上の段の特に現状認識あるいは科学が明らかにしてきたことというものを中心に整理をいただきまして、特に影響がどういったところまで明らかになっているかどうかということについて、特に不確実性との関係なども踏まえながらご議論をいただいたというふうに思っております。
 それから、もう1点は、中長期目標の設定ということにつきまして、どのように考えるべきかということについてご議論いただいたわけでございます。それがこの上の点線の枠でいきますと、中心の「現状の認識」というようなところに位置するかと思いますけれども、今回はその下の四角にありますような「目的を実現するためのアプローチ」ということで、1つはシナリオの話、もう1つは技術の話ということについて、特に中心的にご議論いただきたいというふうに考えているわけでございます。
 これまでもシナリオの議論につきましては何回か言及されてきたわけでございますけれども、特にシナリオというものは、これまでの議論にもございましたように、その解釈が非常に重要な意味を持っているということがございますし、またその影響あるいは対策の議論につきましても、このシナリオをもとに議論がされるということでございますので、このシナリオの位置づけというものをはっきりさせておく必要があるということで、ここの部分につきまして甲斐沼委員にご紹介いただきまして、それをもとにご議論いただければというふうに思っております。
 それから、今後の対策というものを考えるに当たりましては、技術というものの役割が非常に重要であるという議論もいただいているわけでございますけれども、この技術の普及あるいは開発というものについての考え方についてもいろいろな考え方があり得るということでございますので、これにつきましては事務局からプレゼンテーションさせていただきまして、それをもとに議論をしていただければというふうに思っております。
 それから、繰り返しになりますけれども、今回まででひとまずこの地球規模のシステムというところについての議論をまとめていただきまして、それをもとに次回以降枠組の議論に移っていただければというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 とかく次期枠組の議論になりますと、下の方をどんどん進めていくと、一体どういうバックグラウンドでこの議論をしているのかわからなくなるということもございまして、まず最初に世界全体でどういうことを念頭に入れておかないといけないかということについての勉強をしておこうというのが前段の話でありまして、これまで、これで3回目になりますが、3回目ぐらいで大体この議論をまとめておきたいというのが今日の会議の要旨でございます。
 特にございませんでしょうか。
 もしないようでしたら、それでは議題の1に移りまして、甲斐沼委員の方から、気候変動問題と社会経済の発展シナリオについてというお話をいただきたいと思います。

○甲斐沼委員 おはようございます。国立環境研究所の甲斐沼でございます。今日は気候変動問題と社会経済の発展シナリオということで、既にご承知の方もいらっしゃると思いますけれども、ご紹介させていただきます。
 今日のお話ですが、社会経済発展シナリオの意味と役割ということと、温暖化対策検討にあたってこの社会経済シナリオというのはどう意味を持っているのかについてご紹介致します。
 地球温暖化対策の検討プロセスでございますが、IPCCの第3次の評価報告書を書きました時点で、こういうフレームに沿って検討してきました。まず、社会経済の発展シナリオ。これには非常に幅広いものがあります。将来の不確実性は非常に大きくて、自然科学の不確実性はもちろんですけれども、社会経済の方の不確実性というのは非常に幅広いものですから、まずそこから押さえていこうということです。まず定性的に議論しまして、それを定量的に温室効果ガスの排出シナリオとしてまとめましたものが、よく引用されておりますSRESシナリオでございます。
 SRESシナリオをベースに大循環モデルによりまして気候変化の予測を気候グループの方でしてくださっていまして、それをベースに既に幾つか影響グループの方でモデル解析を行った影響の結果が出ております。
 SRES排出シナリオ、これは成り行きシナリオと呼ばれているものですけれども、それに対して気候変化緩和に向けた対策シナリオ、post-SRESというものを作成しております。これについて今日ご紹介いたします。
 まず、社会経済の発展シナリオですが、これは環境への配慮を含め、多様な事項を考慮しておりますけれども、地球温暖化に特化した対策というのは講じていないということを前提とした将来の社会経済の発展シナリオでございます。
 予測のベースとなる社会経済発展シナリオでございますけれども、社会に変化をもたらす要因、この下のところでございますけれども、人口でありますとか経済活動、技術発展、あるいはエネルギー、あるいは農業関係の土地利用、森林でありますとか耕作地でありますというような土地利用というものが、将来社会ではどうなるであろうか。非常に伸びていくか、あるいはある程度頭打ちになって下がっていくか。経済発展に関しましても、年率何%ぐらい伸びていくかによって、将来の排出量というのが随分違ってくるわけでございます。それに関連して、技術の発展段階というのも違ってきます。
 こういった情報をベースに、いろいろな将来社会が考えられますけれども、それを2つの軸を使ってSRESシナリオはまとめています。1つはグローバル化が進むのか、地域が孤立化していくのかという、グローバル化と地域主義化の軸。もう1つは経済発展を重視するのか、環境と経済の調和を重視していくのかという軸で、この2つの軸をベースに、4つの社会が描かれています。1つは高成長社会。経済発展を重視しながらグローバル化が進んでいくというような高成長社会です。2つめは、経済発展を重視しているんですけれども、地域主義が浸透してなかなか地域の交流が行われないような社会。これを多元化社会と呼んでいます。SRESの方ではシナリオをA1、A2、B1、B2という記号で呼んでおります。個別に名前をつけるとそれでイメージ化されてしまうということがありまして、記号で表していますが、やはり名前をつけないとイメージがわかないということもありまして、ここでは多元化社会と呼んでおります。
 3つ目は、グローバル化が進んで、さらには環境と経済の調和の方を重視していくというような社会で、これはB1社会、あるいは循環型社会と呼んでおります。4つ目は、環境と経済を調和させながら、しかしグローバル化はそれほど進まないでB2社会で、地域共存型社会と呼んでおります。
 高成長社会でございますけれども、これには幾つかバリエーションがありまして、高度技術を指向しているA1Tと呼んでおります社会。あるいは化石燃料を使い続けているような化石燃料依存型社会。これをA1FI、
fossil-intensiveの略で、A1FIシナリオと呼んでおります。
 これら2つの中間の、このBというのはバランスの意味でございますけれども、調和型シナリオと呼んでおります社会。3つの社会を考えています。この高成長社会というのは、どういった技術を導入するか、原子力が積極的に導入されるかとか、太陽光発電などの新エネルギーのシェアが大きくなるかによって二酸化炭素排出量が大きく違ってきますから、高成長社会を3つに分けまして、合わせてSRESの方では6つのシナリオを検討しております。
 高成長社会は、急激な人口の推移、死亡率とか出生率が低下しまして、全域における非常に高い生産性と経済発展、そして比較的高いエネルギーと物質の需要を持つ社会というものを想定したものでございます。
 お手元の資料の方の9ページ目に3つの指標の数値を示しています。人口あるいは経済成長の関係、あるいは環境の公平性といった観点から、この高成長社会というのがどのような特徴を持つかといいますと、人口は2100年までに一旦少し上がるんですけれども、2100年におきましては大体70億人ぐらいの社会を想定しております。
 GDPは、1990年から2020年までが3.3%、1990年から2050年が3.6%、1990年から2100年を2.9%と想定しております。
 括弧のところ2.8から3.6あるいは2.9から3.7、2.5から3.0と書いてありますけれども、これはシナリオを検討しますのにマーカーシナリオと呼んでいる中心となるシナリオを1つつくりまして、それと必ずしも全く数字が同じというわけではない、いくつかのモデルを比較しております。検討しましたモデルで使っている経済成長率が2.8から3.6となっているということでございます。
 高成長社会の場合、化石燃料依存型と調和型と高度技術指向型社会というこの3つを想定しているわけですが、化石燃料依存型の場合に関しましては、CO2排出量など環境面からいいますと、どちらかというと悪くなるのではないかと懸念されます。高度技術指向型社会の場合にはかなりよくなるというような結果がでています。
 この記号は公平性を意味しており、ここでは1人当たりGDPが途上国とか先進国の間で大分現状よりも格差が少なくなり、1.3倍から1.5倍ぐらいになる。あるいは1人当たりCO2排出量の差がなくなるといったようなシナリオを想定しているということです。
 この高成長社会のシナリオの中で、化石燃料依存型A1FIと呼んでおりますシナリオは、化石燃料の消費量が増えていきます。高度技術指向型のときにはある程度増えたあと、横ばいになります。調和型はその中間ぐらいと推定されます。
 次の多元化社会のシナリオでございますけれども、これは世界の経済や政治がブロック化し、国際的な貿易や人の移動、技術の移転が制限される。このため技術革新は遅れぎみの社会を想定しております。一応経済重視というようなことで世界は進むと想定していますが、実はそのブロック化といいますか、交流が行われないような社会においてはなかなかGDP自体も伸びないというような想定になってしまいまして、お手元の資料にございますように、多元化社会では経済成長率の方は2020年までは2.2%、2050年までは2.3%、2100年も2.3%を想定しております。
 その中におきましては、人口は大きく伸びるという想定でございまして、2100年には150億人ぐらいになるのではないかと想定されております。環境面からも悪くなるし、公平性といいますか、1人当たりGDPなどの格差も、広がっていくというような社会を想定して、そういう社会では化石燃料消費量も伸びますし、後でお示ししますけれども、CO2排出量も非常に伸びていくというような社会でございます。
 次に、循環型社会、B1と呼んでおります社会は、資源利用の効率化、社会制度の整備、環境保全に集中的な投資が起きまして、環境産業の市場が拡大するというようなことを想定している社会でございまして、人口もそんなに伸びないと想定されています。高成長社会と同じで70億人ぐらい。GDPの方は2020年3.1%、2100年には2.5%のGDPの伸びを想定しております。環境面からも非常にいいのではないかというような社会で、公平性も改善されるというような社会でございます。
 次に、地域共存型社会と呼んでおりますB2社会でございますけれども、地域の問題と公平性を重視しまして、ボトムアップの方向で自然との共生に向けて発展を図る社会というのを想定しております。人口に関しても、最初の高成長社会と多元化社会の中間程度、大体2100年の人口が100億人程度。そして、経済成長率は2020年までは3.0%、2100年までは2.2%を想定して、環境面はかなりよくなるのではないか。公平性も改善されるのではないか。化石燃料消費量は伸びながら、ある程度の水準で横ばいになるといったような社会でございます。
 これは既にご紹介したスライドですが、社会経済的要因の特徴といいますか、人口と経済成長率、一次エネルギー消費量のデータでございます。高成長社会、多元化社会、循環型社会、地域共存型社会におきまして、それぞれ人口が低い、高い、低い、中ぐらい。経済成長率は非常に高い、中ぐらい、高い、中ぐらい。一次エネルギー消費量というのは非常に高い、高い、低い、中ぐらいといった想定になっております。
 SRESシナリオにおける技術発展に関しましてどういった技術をこの中で想定しているかということですが、化石燃料依存型高成長社会、A1FIと呼んでおります社会は、化石燃料を使用する既存技術のエネルギー効率が非常に改善されて、また石炭を使い、将来的にずっと使い続けるというような社会でございます。
 調和型高成長社会、A1Bといいますのは、化石燃料と新エネルギーの技術がバランスして発展する社会。
 高度技術指向型高成長社会、A1Tと呼んでおりますのは、新エネルギー、太陽光、風力、バイオマスの大幅な技術革新が起こると想定されている社会でございます。
 多元化社会、A2と呼んでいますのは、技術移転が制限され、技術革新は遅れ気味であるというような社会。
 循環型社会、B1と呼んでおりますのは、新エネルギーの技術革新と共に、資源の減量化でありますとかリサイクルとか再利用というのが進むと想定されています。それによって環境産業も発展していくという社会を想定しております。
 地域共存型社会というのはB1、A1という社会よりも穏やかでありますけれども、広範囲に技術が発展していくといった社会でございます。
 このSRESシナリオの特徴として、100年という長期を視野に入れて将来社会の方向性を経済、社会、環境特性などを考慮して網羅的に検討しているということがあげられます。
 1990年ぐらいからいろいろなシナリオがCO2に関しまして発表されてきましたが、その中で1992年にIS92というシナリオが出まして、94年にIPCCからも特別報告書が出版されました。それをベースに最初検討したのでありますけれども、いろいろな方向、いろいろな社会を考えて、それをベースに議論する必要があるのではないかということで、IPCCの中に特別チームができまして、いろいろな社会の方向性を考えたシナリオを作成したという経緯がございます。
 経済統合や社会的な統合の程度が異なっておりますA1、A2シナリオ、共に持続可能な開発を強調しているが、地域間格差が異なるB1、B2シナリオ、この4種類の代表的シナリオを定量化しております。
 その中でいろいろな議論もあったわけですけれども、今後もまた検討しようということがいわれておりますのは、経済比較を行うために市場為替レート(MER)を採用しておりますけれども、途上国の実情を反映するには購買力平価(PPP)での検討も必要ではないかということです。ただし、長期的、100年という期間で考えますと、長期的な経済指標はこのMERを使ってもPPPを使ってもほとんど変わらないという解析結果は報告されています。貨幣の変換レートの違いよりはシナリオの違いの方が大きいということは言われています。短期的、ここ10年、20年のところを見ますと、この違いというのはありますので、その辺のところをもう少し再検討しましょうということにはなっております。
 また、このSRESというのはこの4つのシナリオ、あるいは高成長の3つを入れますと、6つのシナリオというのは、すべて同等に起こり得るとしていますけれども、その程度について、やはりCO2の排出量ということから見ますと、確率といいますか、起こりやすさというのは違ってくるのではないかというような議論もいまだにございますので、これについてもIPCCの方ではまた議論しましょうということになっております。
 定性的な話を少しお話ししたんですけれども、それに関する定量的シナリオということで、排出シナリオと呼んでおりますものの説明に移ります。
 温室効果ガス排出量の推計でございますけれども、高成長社会、多元化社会シナリオ、循環型社会シナリオ、地域共存型社会シナリオをベースにしまして定量的に推計しております。温室効果ガスの排出量といいますのは、発展シナリオによってきわめて大きな違いが出ることが明らかになっております。
 これはその1例でございますけれども、2100年までを見た場合、この赤のところが高成長社会でございますけれども、化石燃料依存型高成長社会を想定しましたのはこの上側の推計値でございまして、高度技術指向型高成長社会といいますのはこの下側の排出量のパスでございます。この中間のところが調和型高成長社会ででございます。そのほか、循環型社会の排出量はグリーンで示されています。あと、地域共存型社会の排出量の推計がございます。
 SRESシナリオをマーカーシナリオと呼んでおります4つの別々のシナリオグループが作成したものと、A1FI、A1Tというのはサブマーカーのシナリオがございますけれども、それを比較してみますと、人為的起源のCO2排出量の累計に関しましては、A1FIのシナリオが実は一番大きくなっておりまして、次にA2シナリオというのがCO2排出量の累計が大きくなっています。A1Bというのがその中間ぐらいで、B1社会あるいはB2社会、あるいはA1Tの社会では、CO2累積排出量というのがA1FIの半分近くになっております。
 CO2の排出強度と呼ばれております一次エネルギー消費量に対しますCO2排出量の割合を比較しますと、このA2の社会におけるものが一番高くなっておりまして、順位が逆転して、A1FIの方は若干改善されております。A1B、あるいはA1TというのがCO2排出強度が低い社会でございます。
 GDPに対する一次エネルギー消費量の比である一次エネルギー排出強度は、やはりA2シナリオが一番高くなっています。B1社会はリサイクルだとか廃棄物の減量を想定しておりますので、一次エネルギー消費量の強度は非常に低くなっております。その中間ぐらいにA1社会がございます。
 GDPは、A1は一番高く想定しております。その次にB1、そしてB2あるいはA2社会というのがございます。
 人口はA2社会が一番伸びると想定されています。次にB2社会の人口も伸びています。それから、A1社会でございます。
 耕作地については、A2社会の方のマーカーシナリオは土地利用については計算しておりませんので抜けていますが、B2社会の耕作地というのが非常に大きくなっておりまして、あと、B1社会あるいはA1FI社会というのは非常に小さくなっております。
 一次エネルギーの構成ですが、A2シナリオは石炭、原子力ににかなり依存している社会です。A1FIというのは石炭、石油、がす、原子力に依存しております社会です。A1Tというピンクの方はバイオマスあるいはその他再生可能エネルギー、そしてA1Bはバイオマスあるいはその他再生可能エネルギーとガスに依存しているという構成でございます。
 次に、こういったシナリオをベースに、大循環モデルによる気候変化の予測というのを行っております。
 これは多元化社会シナリオを想定した場合の気候の予測の1例でございまして、東大と環境研と共同で開発しているモデルを使って計算したものでございます。これはA2社会で、先ほどお示しした中で一番CO2の排出量の多いものに対応する気候変化の予測でございます。これについては、前回原沢委員の方からもご紹介あったかと思いますけれども、2000年以降急速に気温が、この図は平均気温を示していますが、気温が急速に上昇すると予測されております。特に高緯度地域での上昇率というのが非常に大きいというふうに予測されております。
 その世界平均の気温上昇でございますけれども、IPCCの方では1.4℃から5.8℃上昇すると予測されています。その中で化石燃料依存型社会あるいは多元化社会の気温の上昇度が大きくて、循環型社会の方は低めに出ています。
 これをベースにしました気候変化の影響予測でございますけれども、これも第2回目、原沢委員の方からご説明ありまして、そちらの方の資料を参考にしていただければと思います。
 そのうちの1枚をご説明させていただきますと、この黒のところがSRESの1.5℃から5.8℃という2100年における気温変化の幅でございます。1000あるいは750などと書かれているものは、大気中濃度を1000ppmあるいは750ppmに安定化した場合の気温上昇に対応する幅でございます。
 2100年までに2℃以上上昇すると、全面的な影響が拡大しはじめるということが影響グループの方から言われております。特に影響の方では脆弱なシステム、あるいは極端な気象、悪影響の分布でありますとか、世界経済への影響、破局的事象、こういった5本の柱をベースに検討が進んでいます。特に脆弱的システムへの影響のリスク回避を考えるには、かなり低い気温で抑えなければいけないし、また破局的事象、これはもう絶対に避けなければいけないような事象なので、ここの非常に高いというところは避けるような対策がぜひ必要であるというようなことが言われています。これに関しましては前回原沢委員の方からも詳しく紹介されましたので、省かせていただきます。
 気候変化緩和に向けた対策シナリオについてご紹介します。長期CO2の濃度安定化シナリオ。この図はIPCCの方では450から750ppmの安定化シナリオに関しまして非常に多くの計算がされましたが、そのうちから気候グループの方に提供しましたデータをプロットしたものでございます。このグリーンのところが450ppm安定化濃度への経路。ブルーのところが550ppm。黒が650ppm安定化のための経路です。そして赤のところが750ppm安定化の経路です。
 例えばA1FI社会でのCO2濃度安定化シナリオを考えます。A1FI社会では300から350億トンカーボンのCO2が2100年において排出されると予想されていますが、これを750ppmあるいは650ppm、550ppm、450ppmに安定化していくためには、特に450ppmに安定化するには、かなり早い時期から対策を講じて下げていかなければなかなか達成は難しいということが計算の結果わかっております。
 濃度安定化のための対策の必要量といいますのは発展の道筋に大きく依存しておりまして、例えば先ほどご紹介しました化石燃料依存型のA1FIの社会でありますと、途中からかなり頑張ってCO2を下げなければいけません。特に450ppmに安定化していくためには、かなり早い時期で対策を打つ必要がございます。
 A1Bというのは調和型高成長社会。この社会では対策量はA1F1に比べて少なくて済みます。灰色の幅はいろいろなモデルによる違いです。ほとんどのモデルでかなり早い時期からやはり対策が必要であるという結果が得られています。
 高度技術指向型高成長社会といいますのは、その技術によって最初のうちからかなりCO2排出量が小さくなってくる社会でございます。ですから、こちらの社会の方に進んでいくと、対策というのはA1FIに比べてかなり少なくて済みます。多元化社会はかなり対策が必要となってきます。
 450が多元化シナリオでは抜けていますが、実は多元化社会の中で450ppmに安定化させるパスを描くのが非常に難しくて、かなり変な挙動といいますか、かなり急激にCO2を落とさなければ実現不可能なようなパスになってしまいますので、550、750のところまでを表示しております。
 循環型社会というのは多元化社会に比べて、対策量は少なくて済みます。その中間あたりに、地域共存型社会が位置しています。
 先ほどの図は2150年に大気中二酸化炭素濃度安定化という目標で計算された者です。この図は大気中の二酸化炭素濃度550ppmという目標に対応した二酸化炭素の大気中濃度と排出量のパスでございますが、排出量自体は2150年に大気中濃度が安定化しても、さらに下げ続けなければ安定化が維持できないというような結果を示しています。濃度は排出量の積分値で効いてきますから、かなり早いうちから、対策をしていくことが重要であることを示すグラフと思っております。
 今後の主な検討課題としましては、まず、シナリオで想定されました社会の実現可能性の評価をすることがあげらまえます。各国の実情、技術の利用可能性等を考慮しまして、各シナリオで想定された社会の実現可能性を議論することが必要となってきます。
 安定化目標の絞り込みですが、安定化目標の水準により、導入される政策、技術が異なるため、安定化目標の設定が重要でございます。ただし、安定化目標の設定そのものの議論は、次回からしていただくというふうに聞いております。安定化影響等も考慮して安定化目標の絞り込みというものが重要となってくるというふうに考えております。
 温暖化影響・適応の評価でございますけれども、温暖化の悪影響や適応措置を踏まえた上で社会の発展を考慮することも重要となってきます。
 安定化目標といいますのは、気候変動枠組条約では一応大気中濃度安定化ということが書かれていますが、いろいろな側面から評価する必要があるということで、モデルの方では気温の上昇あるいは気温の上昇率の変化、あるいは水面上昇とか水面上昇率の変化などを入れて、今、検討いたしております。
 今日お示ししましたシナリオの話をまとめますと、地球温暖化問題というのは将来の社会経済の発展プロセスの検討抜きには対処できない。狭い意味での温暖化対策にとどまらない社会経済構造全体の改革を視野に入れた議論が必要となってくるということで、ぜひご議論していただきたいと思っております。
 また、濃度安定化のために必要とされる対策量といいますのは、将来の発展プロセスによって極めて大きく異なっております。ですから、将来対応不可能な事態を招くことを確実に防止するには、できる限り早期から温暖化対策をも組み込んだ発展プロセスを目指していく必要があると思っております。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 シナリオの話というのは非常にわかったようでわかりにくいところがありまして、実際今後例えば日本のシナリオをどう検討するかということを考えたときに、今のAであるとかBであるとかをとるという意味は一体何なんだろう、あるいはそれを想定するという意味は何なんだろうということも議論になるわけです。
 その後、非常に細かい問題としては、多分このシナリオから数字に落とすときにどういう考え方を実際やっているんだろうかというのは、これは結構中身に入らないとわからないところもある。そして、出てきたいろいろな数字をさらに今度どう考えていくかという問題もあるかと思っております。
 皆さんのご意見、あるいはここのところはこういうことではないかというご説明もいただければありがたいと思っております。いかがでしょうか。
 何かございますか。
 三村先生。

○三村委員 意見というよりも質問、大小取り混ぜて3つほど質問があるんですけれども、まず1つは、このSRESのシナリオを考えたときに、世界を幾つぐらいの地域に分けて、それぞれ地域ごとに違ったような出力も実は内部ではあるのかどうかという話が1つです。これは非常に技術的な問題ですけれども。
 2番目は、この9ページのところに総括がされていて、人口だとか経済成長率とか一次エネルギー消費量とか一覧表になっているのですが、今、100年後を考えるということですから、逆にちょっと想像してみると、我々が100年前にいたとして現在をどの程度推定できたかということですが、100年前というと明治の終わりぐらいですかね。それで、そのころから今を考えると、人口の増加率や経済の成長率はこんな低くないのではないかなとちょっと思うんですけれども、SRESシナリオが将来起こり得る可能性のかなり高いところまでカバーしているのかどうか。もっと経済成長率が高くいくようなケースというのはあり得ないのかどうか。その辺はどう検討されているのかというのをちょっと教えていただきたいんですが。
 それから、またちょっとレベルの違う問題で、21ページに出していただきました影響と濃度の関係なんですが、右の方に450ppmから1,000ppmの大気濃度になったときの温度のレンジが書いてあるんですけれども、それとSRESの温度レンジ、1.4℃から5.8℃といわれているものを比べると、大気中の濃度が1,000ppmよりもずっと上にきているものがあるわけです。そうしますと、SRESの最も排出量の多いケースでは、大気中の濃度は何ppmぐらいになるというふうに想定されているのか、ちょっとそこの関係を教えていただければと思うですけれども。
 3点です。

○甲斐沼委員 最初のご質問の地域をどのくらい区分しているのかというのは、モデルによって違っていまして、11地域、12地域というのが多かったのではないかなと思います。SRESの本に載っているのは4地域だけなんですけれども、細かい地域区分で情報を出してほしいという要請はありますが、出版するためには、すべてのデータをチェックして整合性をとれた形で出す必要があります。4地域に関しましても何千件という質問が来ていまして、それに全部答えなければいけないという状況で、これは私自身が関係していたわけではなくて、森田の方がやっていたんですけれども、すぐ対応しないと彼は返事をしなかったというのを全世界にばらまかれて大変な状況になるということで随分回答に時間をとられたようです。地域区分を細分化したデータを公表すると、質問は倍増すると予想されます。データの整合性をすべてのモデルで詳細にチェックできなかったため4地域に集約した形で公表したと聞いています。
 これに関しましては、もう少し細かいレベルで今後出していきたいということで、一部のモデルは出しているものもございます。もし必要であれば提供します。
 2番目なんですけれども、どのくらい過去のデータを押さえているかという点に関しましては、IIASAのグリューブラーという方が、エネルギー効率あるいはGDPの成長率などの過去のデータを網羅的に調べております。
 公表されているデータは4地域の平均です。個々の国のデータは平均値より高い数値になっていたりします。中国のGDPの成長率などは非常に高くなっていたり、バイオマスが随分導入されてCO2排出量は低く抑えられているシナリオもあります。その辺は1つ1つまたチェックしていく必要があるというふうに考えております。
 申しわけないですが、最後の方の濃度につきましては、今、すぐお答えできないので、これは調べてお答えします。(注:A1FIシナリオの2100年の大気中濃度は1250ppm。図中1000ppm安定化シナリオの2100年における大気中濃度は675ppm、安定年は2375年。)

○西岡委員長 3番目については、原沢委員の方で何か。

○ 原沢委員 具体的な数値を覚えてはいないんですが、21ページのこの安定化濃度と気温の関係は、安定化濃度そのものは、例えば1,000ppmだと300年ぐらい先で安定化したときに2100年の温度範囲をとっているのであって、いわゆる1,000ppm安定化のときの気温の上昇とはちょっと違うというのは、この図を見るとき気をつけなければいけないのですけれども、そういう意味ではSRES、それぞれ大気中の濃度、2100年の時点の値はIPCCの報告書に出ていたと思います。数字自体は覚えていないのですけれども。

参考:SRES6ケースの2100年時点の大気中のCO2濃度(IPCC, 2001)
 A1B703ppm
 A1T575
 A1FI958
 A2836
 B1540
 B2611
 IS92a703

○高橋研究調査室長 少し事務局から補足いたします。今、原沢先生がおっしゃったとおりなんですけれども、例えば21ページの1,000ppmで2℃から3.5℃ぐらいですか、これは1,000というのは最終的な安定化濃度でございまして、2100年時点ではこの1,000ppmの安定化シナリオの大気中濃度は600ppm程度でありますので、やはりSRESシナリオの一番高いところ、5.△度というところは2100年時点ではもう800ppmとか900ppmまでいっていますので、これは当然濃度にそういう意味では対応した値になってございます。

○西岡委員長 どうぞ。

○三村委員 やがて議論されることに関係すると思うんですけれども、条約の第2条は、大気中の濃度を安定化させるということを決めているので、結局そこのところが何ppmかというのがいろいろな情報の結節点というか、そこの議論になると思うんですね。だから、例えばこういう図がそのまま出ていくと、SRESは1,000よりずっと高い2,000ppmぐらいのことを考えているのかとか、いろいろな解釈のされ方があるので、余り誤解がないような形で説明をされておいた方がいいのではないかなというのが私の印象です。

○西岡委員長 ほかにご意見ございませんか。
 どうぞ。

○明日香委員 2点質問なんですが、1点目は循環型シナリオですか、その場合に経済成長率がある程度中くらいの前提で計算なさっていらっしゃるんですけれども、逆に環境産業なりリサイクル産業なりそういうものが発展することによって、経済成長率が比較的高くなるという可能性は検討されなかったのか。そこら辺の可能性があるかどうかについてちょっと教えていただければと思います。
 あと、今のご質問にも関わるんですけれども、やはり社会全体が一遍に変わるというわけではなくて、多分途上国と先進国でそれぞれ変わるでしょうし、途上国の方が選択肢は多分4つのシナリオの確率というのは違ってくると思うんですけれども、そこら辺はどういう議論がなされているかについてちょっと教えていただければと思います。

○甲斐沼委員 おっしゃるとおりで、循環型社会というのは経済成長率が高いというふうに想定しています。9ページですが、高成長社会の方は非常に高いと想定していますが、循環型が高いというのは、明日香委員の言われたように環境産業の育成というのを想定しているために高くなっております。

○明日香委員 非常に高くにはいかないと。

○甲斐沼委員 非常に高くはいかないです。高成長社会のようにいろいろなものをどんどんつくって、それを大量に消費してというシナリオではなく、ある程度抑えてはいるので、ただ高いということになっています。大量生産、大量消費ではないにもかかわらずある程度高いということです。

○明日香委員 わかりました。

○甲斐沼委員 もう1点は、先進国、途上国については、4地域シナリオに関しましてもちろん先進国と途上国に分けておりまして、それぞれの国の実情に合わせて検討しております。
 今後の方向としましては、途上国の各国ごとのシナリオが、中国とかインドとかを対象として、国ごとのシナリオが今出てきておりまして、それらをまとめていくことを考えております。

○西岡委員長 ほかにございますか。
 どうぞ。

○住委員 少し教えてほしいのですが、そういうシナリオのときには、各地域なり国がその状況を見て自分が最適になるように動くというようなことがあり得ますよね。そういうようなダイナミックなことというのは、こういうシナリオでは考えているんでしょうか。

○甲斐沼委員 非常にそれは議論があるところで、一方ではもともとA1社会にいる人はそういう人たちの集まりで、A1社会とB1社会の人の構成自体というか、その構成員の性格自体が違っているということを言われる人とか、A社会からB社会に移ることができるという人とかおられます。もともと朝から晩まで働くのが好きな人から構成されている社会とかそうでない人の社会。日本人がそうなのかどうかわからないんですけれども、働き者の社会だとかゆっくりしたことを好む者の社会というのが本質的なのかどうか議論の余地があります。B2シナリオの人たちはもともと違うんだというような意見もありますし、実はA1社会の方に向いていてもやはりもうちょっとゆっくりしたいなということで、特にA2社会では、このままでは危険だからライフスタイルを変えて二酸化炭素排出量を下げようとして、実はゆったりした社会に移るのではないかというような主張をする人ももちろんいらっしゃいますし、いや、実はA2とB2の社会は性格からして違うから、移ることはできないと言われる方もいらっしゃって、こうですというのは実はまだありません。
 ここでは典型的な社会として4つの社会を想定していますが、ただ、現実には世界全域が実は全部A1になるか、全部がA2になるかというのは、それは私もちょっと違うのではないかなと思います。やはり一部の地域ではA2というのは依然としてそういう地域もあるのではないかというふうには考えています。先ほど西岡先生も言われたとおり、いろいろな意見があって、こういう議論したときにもまたいろいろな質問もあって、実は逆に教えていただければと思います。

○住委員 そうすると、もう1つ一般的な質問ですけれども、例えばSRESはグローバルと考えたらこれでいいと思うんですけれども、一方、日本なら日本として、例えばA1社会になったときに日本はどういうオプションがあってどうなるのかいうことはどこかで検討されているんですかね。

○甲斐沼委員 実は今年4月から環境省の地球環境研究推進費で、日本の脱炭素社会を考えようということで西岡先生がリーダーになって研究が開始されています。今、日本のシナリオを考えている最中で、8月ぐらいには第1次案を出そうかということになってます。
 何か、できれば先生の方から。

○西岡委員長 余り公のところでは約束しない方が(笑)。今のお話ですね。100年前の話が出ましたけれども、日本を考えてみたら、多分高成長社会をずっと目指してきて、今ちょっとどっちの方向にいこうかなと考えて、ひょっとして緑へいくのかという軸が1つありますね。けれども、高度技術指向社会の方も決して悪い方向ではないし、どっちになるだろうか。世界自身が非常にグローバライズすると言いながら、今、揺り戻してものすごく地域ローカルな話がでてきている。そうすると、ここで書かれているのは、いろいろな道筋の中でこれぐらいの範囲の中でみんな動くのではないかというような、そういったものなのかなという感じがしますね。
 それで、では今の日本のシナリオはどうなんだろうかというのは非常に悩んでおるところでして、一体シナリオというのは国民の選択の話なのか、あるいは思い切った幅を与えておけばいい話なのかとか、シナリオ自身に対する考え方というのを確立しなければならない。

○原沢委員 2点ほど確認という意味で質問をしたいんですけれども、1つはIPCCでは第4次報告書ではこのSRESを使うことになっているわけですけれども、その後の新しいシナリオをつくろうという動きもあるかと思うので、その辺の動きがわかれば教えていただきたいというのが1つ。
 もうひとつは、例えば化石燃料依存型で今後100年化石燃料を使うという段階で、いわゆる資源量として石油、石炭がかなり逼迫していくというところをどう折り合いをつけたシナリオになっているのか、ちょっと確認という意味で質問させてください。

○甲斐沼委員 最初のご質問ですが、IPCCの方では第4次報告書に関しては新しいシナリオをつくらないということになっています。IPCCの第3次報告書以後に出てきたシナリオを集めて、それをまとめて次のステップに進めようとしています。来年の7月にシナリオの会合が予定されており、その次のシナリオをつくるかつくらないかどうしようかというのを決めることになっています。
 化石燃料なんですけれども、ご指摘のとおり、A2社会あるいはA1FI社会というのは化石燃料を大量に使い続けています。石炭に関しましては埋蔵量があるということで、石炭の方の依存度が非常に高くなっております。RITEのシナリオに、2100年までSRESのシナリオに従うと、A2社会あるいはA1FI社会では資源の残りが少なくなって、資源量の制約から使用量を急激に減らして行かなければいけないというのもございます。
 A1T社会は石油や天然ガスも使いますが、技術革新の成果が現れ、新エネルギーなど、化石燃料以外のエネルギーに移っていきます。

○亀山委員 一番最後の結論部分でおっしゃられた、狭い意味での温暖化対策にとどまらない社会経済構造全体の改革を視野に入れた議論が必要というところは非常に重要だなというふうに感じました。それで、それに関する質問なんですが、ページ25にそれぞれのシナリオにおいて濃度安定化を目指して対策をとるときに、どれぐらい下げていかなきゃいけないのかというのを比較した図があるんですが、シナリオごとに減らさなければいけない排出量というのはそれぞれ違っているというのは非常によくわかるんですが、もともとたくさんワーッと伸ばしておくところを無理やりたくさんワーッと減らしていって、例えば550ppmに落とす場合と、B1のようにもともと排出しないような社会になっていて、ちょっとだけ対策して550ppmに落とす場合。これ、濃度だけ見た場合にはどちらも550ppmなんですが、その550ppmを目指して排出している世界、社会の構造というのは違っているんでしょうか。つまり、A1プラス対策後の世界と、B1プラス対策後の世界を比べたときに、その世界のイメージというのはどのぐらい違うんでしょうか。

○甲斐沼委員 正確な答えになっているかどうかちょっとわからないんですけれども、例えば16ページの一次エネルギーの厚生の思料で、。
 石炭を多く使う社会だとか石油を多く使う社会、再生可能エネルギーに移行するとか、将来社会像によって使用するエネルギー比率も違っています。A2社会では石炭をかなり使っていますので、石炭に関する技術と進んでいます。その社会での対策としては二酸化炭素の固定化が考えられます。B2社会はエネルギー自体の使用を抑える社会で、ですから社会によっては対策がそれぞれ違っております。

○亀山委員 ちょっと質問の趣旨と申しますか、私の勝手な理解ですと、もともと排出量が余り伸びないような社会に全体の社会の構造自体を変えていくと、CO2を減らす以外の目的でもハッピーな社会になっていくような気がするんですね。A1などのシナリオにいっぱい対策をとって減らすというやり方だと、いかにもそのとる対策は、温暖化問題の解決以外には全然マイナスな対策までも含めないと減らせないような、ちょっと無理して減らすような気がしまして、ちょっとそこのところでどういう社会なのかなということを伺いたかったんですが。

○甲斐沼委員 おっしゃるとおりで、もちろんこれからそれについて議論していただきたいんですけれども、例えばその循環型社会というのは、循環型社会の方に何らか、これもやはり成り行きシナリオといいながら、そちらの方にいくにはある程度政策が必要となってきます。そちらの方を目指していけば、温暖化についても割とハッピーな結果になると思います。逆に、石炭を多く使い続ける社会にいくと、さっきご説明したようにCO2を固定化したりする必要が生じます。海底に貯蔵した場合、2,000年間は環境影響はないということを聞いたことがありますが、では2,000年後にどうなるのかというのも全然スケールが違ってくる話ですが、ちょっとまたピントが外れるかもしれないんですけれども、逆にそういう社会にいくと、今後また次の問題が出てくることは考えられますので、もちろんそういうことを含めて議論していただくのが非常にいいかと思います。そういう意味で書いてあります。

○西岡委員長 ほかにございましょうか。

○高橋委員 このシナリオアプローチをとる場合に、2つ非常に違った性質のものがあると思うんですね、課題によって。1つは世界政治の一番中心の課題に関してシナリオアプローチとる場合。それから、もう1つは、非常に重要であるという認識はあるけれども、必ずしもそれだけが突出しているとは限らないイシューの場合。
 その前者の場合、例えば冷戦機能、米ソの核マネジメントの問題のシナリオアプローチ、いろいろありましたけれども、そういうようなことがあると思いますし、後者の場合には、今この10数年いろいろ取り組まれている一連のグローバルイシューということがあると思うんですが、前者に関しましては、そのイシューそのもののロジックを探っていくと何らか見えるものが非常にはっきりしてくるという特徴があったと思いますし、今は恐らくそれがテロの問題になっていると思います。後者の場合に関して言いますと、必ず個々の問題を扱っていった第2段階として、この問題は幅広く扱わなければなりませんということになります。人口しかり、貧困しかり、今回のこのイシュー、これしかり。
 問題は、そのシナリオアプローチでできるだけはっきりしてほしいなという感じがしますのは、いわゆるブロード・ベースド・アプローチという場合に、今回の温暖化のことに関して言うと、耕作とか人口とか幾つかのディメンションを取り上げて、それとの関係で分析されておられるわけですが、それが出てくる背景というのは一体何なんだろうか。多くの場合非常に我々がいろいろ想定する以外の事柄が個々のイシューで出てくるわけなんですが、このシナリオアプローチをとることによって何がはっきりしてくるのか。それをとることによって前提が間違ってしまうとかえって物事が見えなくなってきてしまう場合もあると思うんですが、いわゆるそのブロード・ベースド・アプローチの先にあるものが何なんだろうかということをはっきりさせていくことが、このシナリオアプローチの恐らく我々がこの問題を考えていく場合に非常に重要な課題なのではないかと思うんですが、今回のこのSRESというんですか、このアプローチをとった場合に、そういう視点から見ると何が見えてくるのかということ。これが第1点。
 それから、第2点は、今後の世界との対応で考えていくと、一方で世界が地球社会という国境を越えた社会というのがどんどん重要度が増していくと同時に、もう一方ではやはり主権国家のそれぞれの国の特徴、社会特徴、そういうものが重要になってくるかと思いますが、その後者に関していいますと、恐らく個々の問題のリンケージが幾つかのカテゴリーで違ってくるんだろうと思うんですね。いわゆるBRICKSと言われる諸国、ブラジル、ロシア、インド、チャイナ、こういうような国の場合には巨大な経済、その巨大な経済の高度成長、それとの関係で我々の問題というのが恐らく出てくるでしょうし、先ほど言っておられましたが、そういう意味で個々の国を分析する、それが出てくるというのは非常に重要なポイントかと思いますが、その場合には恐らく経済成長との問題。
 もう一方で、例えばアフリカの問題なんかをとってみると、貧困が紛争にリンクしていってしまうような状況で、それが世界全体に非常に不安定な状況をもたらしていく。それによって世界の動き全体がdiscontinuityを重要な要素にせざるを得ないような状況。そういうのが出てくると思いますので、そういう場合に我々のこのイシューにどういうインパクトをもたらすのか。そういうような事柄が出てくると思うんです。
 先ほど、シナリオによって地域を4つに分けたり12に分けたり、あるいは国ごとということをおっしゃっていましたが、その場合の2つ目のポイントとしましては、何でそれが重要なのかと。地域に分けること、それから個々の国を扱うこと。そのあたりのところをかなり詰めて考えていった上でその作業をやっていく。それによってシナリオにさらに深みを与えていく、それによって我々が今回のその作業をやっていくときに非常に重要な示唆を与えていただくことになる。そんなことなのではないかなというふうに思います。
 すみません、ちょっと長くなりすぎました。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。何か。

○甲斐沼委員 温暖化のシナリオの結果は幅広く、いろいろな要素がからみあっており議論の絶えないところですが、今回のシナリオ開発に限って言いますと、先ほどおっしゃったように、CO2排出量と一口に言っても、要は大体どのくらいの幅なのであろうかというのが問題意識としてあります。将来、これ以上は大きくならないだろう、これ以下でもないだろうというような。その幅を出すところが一番重要だったのかなというふうに考えておりまして、個々の数値というよりも大体この幅ぐらいに抑えられていて、それをある一定レベル以下に下げるにはどの程度の費用がかかるかを見積もっております。では、具体的に、今、何ができるか。全体を見ながら、今何ができるかというようなことを検討していくには、もちろん先生のおっしゃったいろいろな幅広いところから検討する必要があると思いますので、また先生のご意見をお伺いしたいと思っております。
 あと、地域ごとあるいは国ごとにどこまで考えるのかということですが、今、私どもの方では、インド、中国、これは非常に排出量の面からいっても大きいので個別に対応しております。アジア地域はわりと細かく見ていますが、その他地域、北米、ヨーロッパ、南米だとかは地域別に見ています。いろいろな将来のシナリオを考えた上での削減ポテンシャルを計算して、削減するためのコストはどのくらい必要なのかを推計しています。それを材料として、各国の人たちの議論が活発に行える情報を提供したいと思っております。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 大体一通り終わったと思いますので、このシナリオに関する討議はこれぐらいにしておきまして、また後ほど3つ目の議題で戻ってご議論いただきたいという具合に思っております。
 次の議題に移りたいと思います。次が、気候変動と技術の役割についてということで、これは事務局の方からご説明いただきます。

○瀧口国際対策室長補佐 温暖化対策課の瀧口でございます。それでは、資料2に基づきましてご説明をさせていただきたいと思います。座って説明をさせていただきます。  資料2をごらんください。気候変動問題と技術の役割ということで資料を作成してみました。
 この検討の目的といたしましては、これまでの議論におきまして、この気候を安全なレベルで安定化させるというためには何らかの中長期的な目標を設定するのが有効なのではないかと。それで、そのような目標を達成するために温室効果ガスの排出シナリオの検討も必要だという、そういう議論になっていたかと思います。
 このようなシナリオにおきまして、それではその裏付けとなります技術の展望はどうか。それから技術の開発・導入に要する時間、それから制度との関係等についてご議論をいただければというふうに思っております。
 そこで、3つの論点ということで考えてみました。まず1つが、今後の対策技術の展望はどうかという点。それから、2点目が技術の開発・導入に要する時間、そのタイムフレームの検討。それから、3点目が技術の開発・普及と制度との関係。この3点についてご意見をいただければというふうに思っております。
 まず、最初の論点ですが、対策技術の展望です。
 この対策技術、今後どういったものがあるのかということにつきまして、ちょっとわかりやすく1枚の表にしてみました。まず、「既存技術」と「革新技術」ということで分けておりますが、実際に明確に区分分けができるものでもありませんので、色の濃淡で示しております。
 それから、分野としましては、エネルギー効率の向上、これは主に需要側の技術になるかと思いますし、炭素集約度の低減、実際のエネルギー消費量当たりの炭素分の低減、これは主に供給側の技術になるかと思いますし、その他の技術ということになります。例えばエネルギー効率の向上ですと、既存技術としましては、高性能工業炉ですとか高効率ヒートポンプ等がありますし、革新的な技術ということで言えば燃料電池自動車、それからバイオテクノロジーを利用した素材、こういったことが挙げられるかと思います。
 供給側の技術、炭素集約度の低減で申しますと、もう既にアベイラブルな技術としまして天然ガスのコンバインドサイクル発電等が挙げられますし、超革新的な技術としましては、核融合ですとかあるいは宇宙太陽光発電、こういったものが挙げられるかと思います。
 それから、その他の技術としましては、森林吸収源の増強ですとか、あるいは農畜産物の亜酸化窒素やメタンの除去、こういったものが挙げられるわけです。
 ここに技術の表を挙げておりますが、ここではこの気候変動の緩和という観点から挙げておりまして、そのほかの環境影響やあるいは社会への影響ということもあり得るということに留意が必要かなというふうに考えております。
 CO2削減の手段ということで考えてみますと、CO2排出量は、よく知られておりますように活動量、これは生産量などですが、(活動量)×(活動量あたりのエネルギー消費量)×(エネルギー消費量あたりのCO2排出量)ということで分解できるわけですが、それぞれCO2排出量を削減するためには無駄な生産・消費の見直し、それから活動量あたりのエネルギー消費量に関しましてはエネルギー効率の向上、それからエネルギー消費量あたりのCO2排出量につきましては炭素集約度、これは単位エネルギー当たりの炭素排出量ですが、これの低減というふうに整理ができるわけです。特にこの技術面での検討ということになりますと、後ろの2項ですね。エネルギー効率の向上、それから炭素集約度の低減ということが重要になるかというふうに考えます。
 続きまして、このエネルギー効率の向上と、それから議論になっております安定化目標の関係について、IPCCの報告によりますと、ちょっと図が見にくいですが、横軸で450、550、650、750と書いてありますのがこの目指すべき安定化濃度。縦軸が必要な年率のエネルギー効率の向上度、パーセンテージであらわしております。真ん中あたり、1.0から1.5で帯でありますのが、HISTORICALLY ACHIEVED LEVELSということで、過去これまでどれぐらいエネルギー効率の向上がなされてきたかという範囲でございます。これを見ますと、例えば650あるいは750の安定化濃度の目標ですと、このエネルギー効率の向上という面では過去の実績の大体範囲内あるいはそれ以下でおさまると。450や550ですとそれを超えるような効率向上が求められることもあり得るという、こういった結果になっております。
 一方、炭素集約度の低減とこの安定化目標との関係を考えてみますと、このHISTORICALLY ACHIEVED LEVELSが0.5以下のかなり低いところにございまして、実際に650や750でも求められるのはさらにその上をいっているわけで、どの安定化目標を選ぶにしてもこの炭素集約度の低減というのが1つの大きな課題になるということがこれからわかるかなというふうに思います。
 次、濃度安定化のための対策の必要量ということで、これは先ほどの甲斐沼委員からご説明いただいたのと全く同じ図でございます。幾つかのベースとなるシナリオがございまして、それぞれにつきまして750なり濃度の安定化目標を置いたときにどれぐらいCO2の削減が必要になるかというのを示しておる図であります。
 次の表が、先ほど甲斐沼委員のやりとりの中で触れられたものに関係しているかと思いますが、それぞれのベースとなるシナリオから、ここでは550ppmにもし安定化する場合に、どれぐらい追加的な対策が必要になるかということで、それぞれの対策技術でどれぐらいを削減するかというのを示した一覧表でございます。例えばA1FI、高成長・化石燃料依存型社会ですと、実際にそのベースとなる伸びが大きいものですから、550ppmに削減するためには全部で211億トン削減しないといけないと。そのうち需要の削減で約104億トン、それから赤字で示しております供給側で大体100億トンぐらいですね。炭素回収・隔離で3.9億トンという、こういう技術の見込みを、これ9つのモデルの中央値ですが、こういう結果が出ております。
 これに対しまして、例えば循環型社会のB1ですと、550ppmで安定化するには、総削減量が3.9億トンで済むと。それはもともとそういう社会自体がCO2を余り出さないというようなそういう対策をインボルブした社会になっていますので、追加的な対策は少しで済むと。特にこの需要の削減は少しで済みまして、供給側では例えば再生可能エネルギーで2.8億トンをかせぐというような、このような数字が出ております。
 この対策技術の展望につきまして、先ほど申し上げまして示しましたように、特に炭素集約度の低減につきましてこれまでの実績を上回るスピードが求められておりまして、この分野での技術の開発・普及がとりわけ重要だということがいえるかと思います。
 次に、技術の開発・普及に要する時間ということで少し論点を整理してみました。温室効果ガスの排出シナリオの例ということで、これはイメージ図ですが、横軸に時間スケール、縦軸に世界全体の排出量ということで、かなり乱暴ですが2つの考え方に分けますと、早い段階から着実に削減していくのか、あるいは最初の段階は少し伸びるには仕方ないにしても、ある段階で革新的な技術を投入してそこで一気に削減するかという。これは例えば同じ濃度の安定化目標を目指すとした場合にでも、排出シナリオとしてはこの2種類のパスが描けるかなというふうに思います。
 そうしますと、それぞれのシナリオの見解で、「早期に着実に」を指向する理由としましては、温度の年当たりの上昇速度が、これが大きくなるとまたそれはそれで、実際の例えば2100年なりそれ以降の温度上昇幅に加えて、この上昇速度が例えば生態系なりに効いてくると。その影響を考慮すると、早期に着実に減らしていくのが必要だという意見。
 それから、革新的技術の開発・普及に関して不確実性があるので、今できることからやっていくべきだという理由。
 3点目は、特にこのCO2排出量の大半を占めますエネルギーに関しまして、エネルギーのシステムというのがすぐには置き換わらないと。そういう慣性みたいなのを考慮すると、今できるところから対策を進めていくことが必要だという点。
 次に、今後将来さらに気候変動の深刻さ等について新たな知見が出てくるかもしれないと。そういう場合に、もっと厳しい安定化濃度目標を迫られたときにどうするかという、そのリスクヘッジを兼ねているという点。
 最後が、今から対策に取り組むことで技術開発・設備投資を刺激するという、こういう5点が主に挙げられるかなというふうに考えております。
 一方、「後で一気に」削減するということの理由としましては、対策費用が低減できるということが挙げられます。この場合はこの削減の対策費用ということですので、気候変動の損害コストや適応コスト等は考慮していないわけですが、削減の対策費用ということでは将来の方が安くなるということが挙げられます。
 それから、革新的技術開発のための時間的な余裕ができるという、そういう点が挙げられるかというふうに思います。
 しかし、こういう2つの考え方があるわけですが、実際に例えばこの550ppmという安定化目標をとりました場合に、例を挙げますと、それに至る幾つかのシナリオがIPCCで示されておりますが、これを見ていただいてもわかりますように、いろいろなケースがあるにしても、大体がピークが2050年以前に来ているということがいえるかと思います。そうすると、例えば2030年をピークにするのか2050年をピークにするのかありますが、その20年というのはそれほど大きな差ではないのではないかということが言えるかと思います。大体2050年以前をピークにする必要があるということが多くのモデルの結果が示しております。
 今、見ていただいたのが550ppm安定化の場合ですが、そのほかの最終的なCO2安定化濃度の目標を置いた場合でも、ちょっと1,000ppmは極端な例ですので例外としまして、例えば最終的な安定化濃度が750ppmの場合でも、この安定化濃度に到達するための年間排出量のピークは、一番右の欄になりますが、大体2040年から2060年、2050年ぐらいをめどに世界全体の排出量を削減傾向にしないといけないという、こういう結果になっております。こういうことを考えますと、実際には2050年以前に世界の排出量のピークをもってこないといけないということがいえるかというふうに思います。
 それから、「既存技術」と「革新技術」との関係につきまして、この安定化シナリオを達成するために既存の技術オプションで十分かどうかという論点につきまして、雑誌の『サイエンス』で論争が行われたことがございます。550ppm以下での濃度安定化を達成するためには既存の技術では不十分で、核融合や宇宙太陽光電力発電などの新規の革新技術の開発・活用が必要だという意見の一方で、それを否定するわけではないんですが、長期的な視野からその革新的技術を開発する必要はあるにしても、その濃度の安定化のためには2050年までに相当の排出削減が必要で、そのためには既存の技術の対応が求められるという見解もございます。
 この技術の開発・普及に要するに時間ということで論点を整理しますと、一般に技術の開発に着手して商業化までに時間がかかり、さらに日本で見てもそれは普及するのには時間がかかると。そうすると地球規模で技術が普及していくということを考えるためにはさらに長い時間を要するということがいえるわけです。
 特にエネルギーシステムの場合は要素技術だけではありませんで、供給インフラなどを含めたシステムが整備されて初めて機能するものですから、時間を要するという面があるかと思います。
 また、国境を越えて技術が普及するためには、知的所有権や特許の扱いも課題になるかと思います。この知的所有権や特許の話は開発側にとってはインセンティブとなる一方、利用側にとってはコスト高ということですので、障害にもなり得るわけです。
 次が、6月の気候変動枠組条約の補助機関会合でアメリカのルービンさんという方がプレゼンされた資料の一部ですが、今回の議論にも関係しておりますので引用させていただきました。
 通常、技術開発・普及の線型モデルということで、開発から、商品化、導入、そして普及に至るという、こういう線型で考えがちですが、それで開発にお金を投資してお金の流れがこういって、最後商品ができると。ちょっと商品がネズミ取りか何かで何でこういう例を挙げられたのかよくわかりませんが、ただし、このルービンさんが言うには、実際にはこうはならないというふうに主張されております。
 より現実的なモデルというのは、この開発、商品化、導入、普及の各段階があるにしても、実際に開発から商品化に至って、またそこでいろいろな課題が出てきてそれがまた開発にフィードバックされると。また、商品化から導入に至っても、また導入段階でいろいろ課題が出てきてそれが商品化にまたフィードバックして、またそれが開発に戻る。こういういろいろ行ったり来たりがあって技術というのは普及していくんだということで、「Learning By Doing」「Learning By Using」と書いてありますが、実際に商品を使うことでまた学ぶことがあって、またその普及段階でも学ぶことがあるということで、こういういろいろフィードバックしながら技術というのは開発・普及されていくんだという主張をされております。
 それで、実際にエネルギー技術の開発・普及にどれぐらいの時間を要するかという例を少し調べてみましたが、例えば石炭ガス化複合発電ということでいいますと、これは日本がいろいろ国費を投入して進めてきているプロジェクトですが、基礎研究、要素技術研究の段階がありまして、1981年から87年に1日当たりの石炭投入量40トンのパイロットプラントができております。それが91年から96年に1日当たり200トンのパイロットプラントに拡大されまして、今、この25万キロワットの実証プラントが建設されておりまして、実証試験が2007年から2009年度で行われているわけです。これを見ますと、パイロットプラントの段階で1981年で、実証プラントの試験が終わるのが2009年ということで、ざっと30年ぐらいかかっているわけで、それを踏まえて商業化できるかどうかということですから、商業化してそれが普及に至るまでさらにもっと時間がかかるということがいえるかと思います。
 また、もう1つこのエネルギー技術ですが、原子力を今度は国別に見てみますと、1951年にアメリカで世界初の原子力発電に成功しまして、それが各国で原子力からの発電量の占める割合がどれぐらい変化しているかというのをIEAの資料で調べてみましたところ、アメリカ、日本は1960年なり70年ぐらいから普及が進みまして、今現在アメリカは約20%ぐらい、日本は30%ぐらいを占めております。
 一方、例えばインドは70年時点では日本よりも進んでおったわけですが、今の時点でも大体3%から4%ぐらいのようです。中国の場合は1990年の後半から普及が進みまして、まだ1%程度というこういうことになっております。
 中国やインドもこれから原子力発電の導入というのも本格的に検討されるんだと思いますが、実際にアメリカで原子力発電に成功してから約50年を経ても、日本やアメリカ等の先進国では普及をしても、途上国も含めて地球規模で普及するにはまだ時間がかかるということがいえるかというふうに思います。
 また、既存技術でどれぐらい削減できるかということですが、IPCCの第3次評価報告書によれば、既存技術でも世界全体で2010年で19億から26億トン、2020年で36億から50億トン、いずれも炭素億トンですが、の排出削減が可能ということで、これもこの半分はエネルギー節約分が直接コストを上回る、そういう状態で達成できるということを言っております。
 こういったことを考えますと、この技術の開発・普及のためのアプローチということで、気候変動の不可逆性、それから革新的技術の実現可能性や地球規模で普及に要する時間、技術の開発・普及の現実的なプロセスということを考慮すれば、今後数十年はこの需要・供給双方の既存技術をフル活用して安定化シナリオ達成につなげていくことが必要になるのではないかと。特に地球規模で技術をどうやって普及させていくかという仕組みを確立することが必要なのではないかというふうに考えられるわけです。
 一方、革新的技術の開発というのも重要で、これは長期的な観点に立って進めていくべきではないかというふうに考えられるわけです。
 このアプローチは、より低濃度での安定化濃度を将来求められた場合でも対応可能かというふうに思います。このあたりにつきまして、委員の皆様方のご意見をいただければというふうに思っております。
 3つ目の論点で、技術の開発・普及と制度ですが、大きく分けまして2つ考えられるかと思いまして、まず1つが、何らかの目標あるいは基準を設定してその技術の開発・普及を促進する。需要の刺激型と呼んでおりますが、ちょっとネーミングは適当でないかもしれませんが、こういった制度が考えられるかと思います。例えば環境基準なりあるいは排出ガス基準等を設定して、それを通して技術の開発・普及が促進されるということで、例としましては自動車の排ガス対策技術ですとか、あるいは省エネルギーのトップランナー基準等が考えられるかと思います。
 もう1つは、補助金の交付等により技術の研究開発・普及を支援する、供給支援型というのが制度として考えられるかと思います。これは太陽光発電技術というのが考えられるかと思います。
 実際は太陽光発電につきましてもRPS法等で購入の義務づけ等もなされておりますから、それぞれ1と2の組み合わせということも現実的にはあるわけですが、大きく分けると2つの制度というように分けられるかなというふうに思います。
 それぞれ特徴があるかと思いまして、環境保全の確実性ということで言いますと、実際に需要刺激型の方は、実際に環境保全なり省エネルギーのレベルから設定するものですから、その確実性は高いということがいえるかと思います。技術開発・普及のインセンティブということで言いますと、それぞれ両方それは長所があるかと思いますが、受け入れやすさということで言えば、支援型の方が受け入れやすいということが現実としてあるかと思います。一方、普及に要する時間としては、ある程度タイムフレームを区切った基準設定型の方がその普及ということの時間としては長所があるかというふうに考えられます。
 いずれにしましても短期、中期、長期の目標に対応してこの2つの制度アプローチを組み合わせていくことが重要かというふうに考えられます。また、その短期的に着手すべき取り組みと中・長期を見すえて計画的に進めるべき取り組みの双方が重要で、これがうまくつながるような工夫も必要かなというふうに考えられます。例えば天然ガスのインフラ整備を後々には水素のインフラ整備に発展させていくといったことも考えられるわけです。
 その他の課題としましては、今、特に温室効果ガスの削減、緩和の技術を主に説明したわけですが、前回の議論にもありましたように、最も環境保全型の発展でさえ一部の脆弱システムや地域が気候変動の影響を受けるということから、今後は適応策も重要になるということですので、今後適応対策技術というのも検討していかないといけないというのは課題として挙げられるのではないかと思います。
 この議論をまとめますと、炭素集約度の低減について特に技術の開発、大量普及が必要だという点。それから、技術の開発・普及に要する時間を考慮すると、今後数十年は需要・供給双方の既存技術をフル活用し、安定化シナリオ達成につなげていくということが必要だという点。それから、短期、中期、長期の目標に対応して、技術の開発・普及を促進する制度の設計が必要だという、この3点につきまして結論として挙げさせていただきました。これらについて活発なご議論をいただければというふうに思っております。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 議論に移りたいところではありますが、休みをとるのは今しかないと思いますので、5分間、突然でございますけれども、休みをとりたいと思います。

(休 憩)

○西岡委員長 それでは、そろそろ再開したいと思います。
 あと、この技術の件につきましての討論、それから議題3についてのご説明をいただき、その討論に入るわけでございますが、三村委員が30分でご退席ということもありまして、全体の時間の配分としては、この技術の討論につきましては10分か15分ぐらい、そしてその後論点のご説明をいただき、あと三村先生に一言発言いただいた後、討論に移りたいという具合に考えております。よろしくお願いいたします。
 それでは、今の技術の役割につきましてご意見ございますか。
 松橋委員、どうぞ。

○松橋委員 非常に重要な興味深いご発表ありがとうございます。私どもも主にエネルギーシステムをやっておりまして、温暖化対応で、例えば新しい技術とかそういうシーズが出てきたと。そうするとそれを普及させるためにどこかの地域にアプローチしたりということをやるわけです。ただ、現実にはエネルギーシステムを変えるというのはものすごく難しくて、20ページのようなルービンさんのモデルをご紹介いただいたんですけれども、非常に壁にぶつかる場合が多いですね。1つはインフラがかなりできているところで新しいインフラを入れるというところが大変な抵抗が多いということ。それから、末端で例えば新しい燃料を考えて、今度はこういうふうに変えればできますよといったところで、いや、それはだめだと。お風呂もあるから絶対にそれは受け入れられませんよと、地域では、というようなことが返ってきまして、エネルギーシステムの中間部分、あるいは末端の部分、こういったところで新しい技術、システムを入れるというのは本当に至難の業なんですよね。
 ご紹介された原子力とか石炭ガス化複合の話は、これは供給側の電気事業の関連ですので、ただこれも電気事業が自由化していくという中で彼らも非常にコスト原理でシビアにこれからやっていかざるを得ないので、どれぐらい対応できるかという問題もあると思います。
 私はそれよりむしろ中間部分から末端に近いところで、温暖化という、あるいは環境を広く考慮した新しい技術のシーズはいっぱい芽生えつつありますし、いろいろなものは出てきていると思います。ぜひ政策側にお願いしたいのは、我々が単独でアプローチしてもすぐにそういった地域のバリアではね返されてしまいますので、例えば特区の指定とか、法制度面での考慮とか、そういう面で新しいシーズの適用性を見るようなときに、その場を設けてくださるような、そういうことをぜひやっていただきたい。そういうのがないとエネルギーシステムの革新というのは本当に至難の業です。
 モデルでやるとすぐ変わるんですよね。それは余りきちんとした考慮ができないんですよね。末端のバリアとかそういったところの本当の意味でのバリアはなかなかモデルでは考慮できないものですから、モデルでやっているとすぐこういうふうに水素に変わりますとか出てくるんですけれども、現実には本当にやりたくないというのが業界や末端部分の方のお気持ちでもあったりするので、そういった面での考慮をぜひ政策側にしていただきたいと思います。
 それとともに、それは多様なシーズ出てきますから、今度はインテグレートしていくところではそれをきちっとした評価をして、本当に適合したうまくいくものを今度は育てていくという、そういう仕組みも必要だと思いますので、そういう評価のところは我々もお手伝いできると思うんですが、そういった面でのバリアの突破というか、それをぜひお願いしたいと思います。

○西岡委員長 非常にいいご指摘をいただきましてどうもありがとうございました。
 新澤委員。

○新澤委員 ただいまの松橋委員と重なる面もあるんですけれども、甲斐沼委員のご報告の結論で、社会構造、経済構造全体の改革ということでしたので、単体の技術の話に入ってしまうとかなりちょっと議論として幅が狭いなということを感想として持っていて、それで松橋委員のような、制度の要因とかそういったものにも視点を向けていただきたいというふうに思いました。
 6ページなんですけれども、これはいろいろなところでよく見る式なんですけれども、この活動量とエネルギー効率、炭素集約度を掛けてCO2排出量が決まるということなんですけれども、私これで重要だと思うのは、この3つの要素のバランスですよね。これは政策手段としてどういうものを使うかによるんですけれども、現在はややこの真ん中の項目に偏りすぎているのではないか。むだな生産や消費という言葉はちょっと価値判断をはさんでいて、私どもの分野では使わないんですけれども、ただ、バランスは必要であるということですね。環境省が推薦しておられる環境税という政策手段はこのバランスがとれるものであるはずですので、バランスをとることが重要であるということと、そのためには政策手段も一歩進まなければいけないということがいえると思います。
 それから、26ページですけれども、この分類は、私でしたら価格を使うか価格を使わないかというような分類をしたいと思うんです。このページを説明なさっているときにRPSの話もちらっとされたんですけれども、環境税であるとか排出権取引とかといったことが入りませんよね、この分類ですと。ですから、実際に環境省が検討しておられることとちょっと違うので、ここはもうちょっと工夫をした方がいいのではないか。私は価格と非価格の分類の方が重要であろうと思います。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございます。
 住委員、どうぞ。

○住委員 技術の場合に、僕も今言われたことと同じ意見を持つんですが、非常に個別の技術に特化していると思います。逆に言うとやさしいところだけやっていて、難しいところはほかに回していると思います。しかし、実際難しいところというのは、制度とか慣習とか、それから個人の利害というところが非常に大きいような気がするんですね。
 例えば都市政策とか明らかに、例えば交通問題でもそうですけれども、大きな無駄なエネルギーが使われている部分があるのを一切捨象して、技術的な対応しても無駄なような気がします。例えばいかに効率的な車をつくったって、たくさんの人が買ったら総量ふえますよね。だから、全体の制度設計みたいなところをやはりこれからちゃんとやらないと僕はやはりだめなような気がします。
 結局、全体のシステムを考慮した技術を展開してゆくのが非常に大事で、個別対応は、民間に任せればよくて、むしろ非常に不合理な側面のある行政だとか交通問題などを、個人とは違う視点で国として考えていくことが必要ではないかなと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。ほかにございますか。
 どうぞ。

○明日香委員 10ページの排出削減要因でどういうシナリオでどれだけ必要かというのでこの数字見ておもしろいと思ったんですが、まず、高成長・高度技術指向型というのは、単純に言えば原子力と炭素回収に依存するという、ある意味では2つの技術だけに依存するという、そういう高度技術と言いながらも基本的にこの2つの技術だけに依存するというシナリオなのかなと。なので、リスク分散という意味では非常に危ういものなのかなというふうに思いました。
 あと、高成長化石燃料依存型を、いろいろあるんですけれども、さっきの質問にも関わるんですけれども、実際これをやると、どうやってやるかにもよるんですけれども、GDPにどういうふうに影響するのかなと。高成長自体がもしかしたらそのやり方によっては不可能になるのではないのかなというふうに思いました。
 先ほどの私の質問、循環型社会が実は成長率がアンダーエスティメートされているのではないかなという考えによるもので、すみません、実際には、モデルの前提では既に中くらいではなくて高かったんですけれども、質問の背景にはその高成長シナリオというのは実際高成長ではないのではないのかなというような疑問がありました。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。ほかにございますか。
 どうぞ、高村委員。

○高村委員 ご報告を受けて、技術の役割というのがこの問題を考えていく上で非常に重要だということを改めて認識をいたしました。先ほどの甲斐沼先生の方からのご報告も踏まえると、技術がどういう形で発展し、普及をしていくかということによって排出のシナリオ、あるいはその対策のあり方ということも変わってくるということであるかと思います。
 その上で2点申し上げたいと思いますけれども、1つは、もう既にこれは諸先生方ご指摘の点でもありますが、技術の革新と普及を進める要因が何なのかという点であります。今、住先生も新澤先生も松橋先生もおっしゃいましたが、政策の重要性というものが改めて技術の革新、開発と普及の点で重要であるということです。ここで政策というのは、単に単体の技術の開発の観点からだけではなく、それを支える制度ですとかインフラをどう築いていくかという意味での政策の重要性であるかと思います。
 そういう意味では、これも甲斐沼先生のご報告の結論にありましたけれども、そうした政策も含めてどういう社会ビジョンを私たちがつくっていくのかということが問われているのだろうと思います。
 合わせて、この技術革新を進める要因の点でもう1点発着いたしますけれども、今回の6月の補助機関の会合でのミティゲーションのワークショップの中で技術革新の1つの大きな要因として政策、そしてその中でも規制の役割というものが報告の中でも指摘がありましたし、議論の中でも指摘がありました。1970年代のオイルショック時に日本において省エネ技術が非常に進んだという点も指摘をされた点であります。
 そういう意味では新澤先生がおっしゃった「価格の規制」かもしれませんが、いかにこうした技術革新を進める政策とそれに向けての方向性、形は規制という形をとるかもしれませんが、温暖化対策を進めるという方向性を明確に出していくことが重要ではないかと思います。この議論は恐らく中長期の目標設定の際にも考慮しなければならない点ではないかというふうに考えます。
 2つ目の点ですけれども、技術の評価ということについて、松橋委員の方からもありましたが、技術が与える社会や環境への影響という点を同時にやはり考えていかざるを得ないのではないかと考えております。二酸化炭素の削減にはなるけれども、例えば生態系に対して、あるいは海洋の環境に対して悪影響を与える恐れがあるという技術をどういうふうに評価をしていくのか。技術の使用される方法や場所によってもそれは恐らく変わってくると思いますけれども、そうした考慮が恐らく必要だろうと考えます。
 もう1つ、技術が与える環境への影響、社会への影響という点では、とりわけ将来技術、革新的技術に対する考え方として、これらが実際にどの程度どのようなタイミングでどの時点で実現をするかがはっきり今の段階では予測ができないような段階での、既存の技術や対策を軽視してしまうようなインセンティブ、あるいはそれを阻害しかねないような形での政策の方向づけというのは避けられるべきであろうというふうに思います。それは、先ほど指摘もありました将来技術が一般に入っていく、それが普及していく、それを支える制度が新しくなるには相当な時間がかかり、その間できうる対策が見過ごされかねないという問題とも関わってまいります。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかにございましょうか。
 どうぞ。

○亀山委員 今まで発言された委員の先生方の皆さんの共通認識として、単体の技術だけではなく、それを支える制度あるいはその社会ビジョン全体について考えていかなきゃいけないということをおっしゃったのではないかというふうに理解しております。
 それで、多分この委員会、第4回目以降、制度の話になっていくということですので、では、その皆さんのご意見が制度という意味でどういう意味を、インプリケーションがあるのかというのをちょっと考えていまして、ということは、世界が今後技術をみんなで一緒に普及させていこうとするときに、多分個別の単体の技術に関する合意だけでは不十分であって、それぞれの国の社会がそれぞれ新しい技術を普及させやすいような社会制度を導入させていくことに合意することが必要になってくるのではないかなということを感じました。
 これは事務局のご発表を聞いてというよりかは、むしろ委員の皆様方のコメントを受けて私が持った感想です。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。ほかにございましょうか。
 どうぞ。

○高橋委員 非常に見事に整理して問題点を指摘していただきまして、私の頭の中の整理も大分つきました。
 3点ございますが、まず第1点は、18ページの技術の普及に要する時間ということに関してです。これを地球規模で考えたときには、具体的にはこの3つ目の黒ポチ、これが恐らく戦略的に考えて最も重要なことなんだろうという気がしますので、この点をどういうふうに深めていくかということが重要なのかなというふうに思います。
 それから2つ目には、20ページなんですが、より現実的なモデル、ルービン氏のモデル。多分、こういうようなことだろうというふうに思いますが、そうしますと、かなり市場経済、そのありようが重要になってくるのかなという気が非常にします。市場経済のありようによってこのループの太さ、速度、そういうようなものがかなり変わってくるんだろうなという印象を持ちました。それが2つ目のポンイトです。市場経済のいろいろなあり方というのをこの20ページのモデルとの関係でかなり突っ込んで考えていく必要があるだろうという点。
 それから、3点目はここに出ていないんですが、やはり技術のことを考えていきますと、必ず特定の目的を明確にして技術開発していくということ、プラス思いもよらないような技術、これをどうやってこの目的のために使っていくかということがいろいろ出てくるはずですので、それも問題の整理の中にどういうふうに位置づけるかということ、これが恐らく非常に重要なんだろうと思いますので、それを何らかの形ではっきりさせるとしたらどういうことになるのか、もともとはっきりしないものなのかどうなのか、そのあたりのことをやはり考えてみる必要があるかと思います。
 以上の3点です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、大体一巡いたしました。この技術の問題は特にこの委員会で考えなきゃいけないことは、長期的に技術の問題を日本の国の問題として考えるというのが1つありますし、それから途上国の対応ということもあるかと思います。さらには先進国間の競争力の問題といったことからも、その技術をしっかりとした視点で取り上げておく必要があるかという具合に思っている次第です。
 何か特に事務局の方で、今の論議の中でございませんでしょうか。なければ、また後ほどということにしていただきまして、それでは、次の議題に移りたいと思います。次は、事務局の方からこれまでの論点の整理をしたものということでございます。

○水野国際対策室長 それでは、資料3に基づきましてご説明をさせていただきます。資料3は、「気候変動問題に関する国際的な戦略について」という表題をつけておりますが、これまでにいただきましたご意見あるいは発表いただいた資料をもとに論点を整理させていただいたものでございます。後でまたいろいろご議論いただければというふうに思っております。
 これまでのいただいたご意見につきましては、事務局の方では大きく4つに分けまして整理をさせていただきました。順を追って説明をさせていただきます。
 まず、1点目は、気候変動問題の特徴ということでございます。これにつきましては、まず気候変動問題は影響が長期、それから原因、影響が地球規模、さらには影響の大きさが深刻であるということで、人類の生存基盤に関わるというような特徴があるというようなことから、地球規模での環境リスク管理という問題であるということでございます。  それから、2点目は、地球温暖化問題の特徴といたしまして、加害者と被害者の非対称性があるということでございまして、必ずしも自己責任のリスクではないというところに特徴があるというご指摘をいただいております。この点はさらには、地球公共財をどうやって形成していくかということにもつながるというご指摘もございました。
 これにつきましてはちょっと事務局の方で補足資料を用意させていただきましたので、6ページ、7ページをごらんいただければというふうに思います。
 6ページの円グラフ、それから表は各国のCO2排出量を示したものでございますけれども、下の表で16番目、排出量の多い方の国から16番目まで、インドネシアがございますが、EUが25カ国でございますので、この16番目までで計40カ国ございます。この40カ国で大体世界のCO2の84%がこの40カ国で排出されているという現実がございます。
 一方で被害を特に受けやすい国ということで、7ページの方をごらんいただきたいんですが、7ページの表の左側には特に脆弱な国の種類ということで島嶼国等、いろいろな特徴を持つ国々というのを整理しておりますが、この右にありますような後発開発途上国あるいはその他の小島嶼国連合加盟国などは、今申しました脆弱な国の種類のいずれかに当てはまるというような特徴を持っております。
 また、7ページの表の欄外に書いてございますように、後発途上国、これらの48カ国でのCO2排出量は全体でわずか0.46%という割合にしかすぎませんし、小島嶼国を含めましても1.1%ということで、先ほどの排出国との非対称性というのが極めてはっきりするということで、参考までにつけさせていただきました。
 すみませんが、もう一度1ページに戻っていただきまして、3つ目の○でございますが、今は非対照性というところを特に強調させていただきましたが、一方で必ずしも被害国と加害国というものが明確に分かれない場合があるということのご指摘もいただいておりまして、特に例えば日本などの場合には、食糧というのは大部分が輸入に頼っているということで、食糧安全保障という面でも気候変動というものの影響が重要になるということでございます。
 最後の点は、特に適応ということによって影響の閾値というものも変わってくるということで、適応というものが視点として重要であるということがあったかと思います。
 続きまして、科学的な知見の集積ということでございます。まず最初は、不確実性ということに関してでございますけれども、不確実性ということについては、まずは科学的な不確実性というものは狭まっているということが指摘がございました。それから、不確実性ということにつきましては、科学的な不確実性ということと、それから社会経済シナリオをどう選択するかという面での意思決定での不確実性というようなことがございますが、特に全体の不確実性は後者に依存しているというご指摘がございました。
 続きまして、2ページをごらんいただきたいと思います。2ページの最初の2点は主に現状認識に関わる部分でございますけれども、まず、事実として過去50年間の温暖化のほとんどは人間活動に起因している。それから、温暖化の影響は現実にあらわれ始めている。日本でも具体例があるというご指摘をいただきました。
 続きまして、次の3点はいわば影響の質のような問題でございますけれども、まず、上から3番目の○につきましては、気温上昇が小さい段階では好影響を一部の地域にはもたらす場合もあるということでございますが、一方で温度の上昇幅がある程度以上になりますと悪影響が卓越するということで、特に熱帯・亜熱帯の途上国では影響が深刻になるということでございます。
 続きまして、温暖化は一般的には中長期的な影響ということが中心に言われているわけでございますが、必ずしもそれだけではなくて、短期的にも、特に異常気象ということの発生頻度あるいは規模が変化する可能性ということが指摘されているということがありました。これまでは研究の面でも平均的な影響というものが中心でありましたが、徐々に異常気象の発生というような研究に視点が移りつつあるということでございます。
 さらには、破局的事象についてでございますけれども、これについては21世紀中には発生する可能性は低いと見込まれているものの、早期に温暖化が進めばそういった現象の発生確率も高まるという可能性があることも指摘をされました。
 続きまして、その次の○からは、早期対策の必要性等に関する部分でございますけれども、まず、気候の慣性を考慮すると、危険を避けるためには早期の対策が有効であるということが指摘をされております。これは今回もあった議論かと思います。
 それから、どのような安定化濃度等を目標にするにしても、目標達成のためにはいずれにしても早急に大規模な排出削減努力が必要であるということでございます。
 それから、一方で、いずれの安定化濃度を目指すにしても、ある程度の影響は不可避ということで、適応対策が重要ということもございました。
 それから、2ページ目の一番最後でございますけれども、知識の共有ということで、科学的な知識をできるだけ客観的に共有するための努力が必要だという指摘もございました。  続きまして、3ページ目でございます。3ページ目の一番上は費用の面でございますけれども、費用ということを考えるに当たっては、削減対策コストだけではなくて、影響によるコスト、さらには適応対策のコストというものも考慮する必要があるという指摘をいただいております。
 次に、3番目の価値判断及び不確実性を伴う中での政策決定というところでございます。
 まず最初に、条約の第2条の究極目的等の関係での危険な水準等の判定については、いずれにしても価値判断を含むと。そういう要素があるということでございますので、価値判断を含む問題と科学的な知見の問題をどのように切りわけて、かつうまく連携していくのかということが重要であるということでございます。
 次は、タイムフレームのような問題でございますが、CO2排出量がこのまま増加すれば地球が温暖化するというのは、いずれにしても不確実性があるといっても共通認識であるということで、問題は、この10年、20年で何をやるかだという議論がございました。  続きまして、今の点とも関係をしますけれども、ある程度の不確実性が存在するにしても、人類が大幅な排出削減をしなければいけないというのは明白だということで、不確実性があるかどうかということと排出削減の必要性は別であるという指摘もいただいております。
 次の点は、どのような判断を最終的に国がするにしても、さまざまなステークホルダーとの対話あるいは協力というものが重要であるということをご指摘いただいております。
 3ページの最後の2つの点は、不確実性の科学の分野での取扱いというような問題でございますけれども、IPCCでは不確実性に関する知識というものも科学的な知見として評価していくという傾向があるということで、一番下にありますように、例えばリスクの確率論というようなものを論じるというようなこともされているという紹介もございました。
 続きまして、4ページをごらんいただきたいと思います。これは4ページの上のところは政策判断に当たっての主に配慮すべき事項というようなことかと思いますけれども、まず最初の配慮すべき事項として衡平性の観点が重要であるという指摘がございました。特に衡平性に関しては国家間の衡平性、それから国内の関係者間の衡平性、それから世代間の衡平性の3つがあるということを指摘をいただいております。
 それから、政策決定の問題については多様な側面があるということで、1つにはリスクをどのように地球規模で管理していくかという問題でもありますし、あるいは南北間の衡平性の問題でもありますし、さらには将来世代とのリスク配分の問題、あるいはコスト配分の問題でもあるというような多面的な側面があるというご指摘もございました。
 さらには、これは先ほどの2番の最後の点とも共通しますけれども、科学的な知見についての社会的な認識が必ずしも追いついていないので、そのギャップを埋めることが重要であると指摘をいただいております。
 最後に、中長期的な目標の設定の問題でございます。まず最初の点は、中長期的な目標の設定の意義ということでございますけれども、まず長期目標については、気候変動によるある程度の影響が不可避の中で、国際社会が進むべき方向と取り組むべき課題を示すという位置づけをすることができるのではないかということ。一方で、中期目標については、長期的な目標の達成に向けたマイルストーンという意味があるのではないかという指摘をいただいております。
 それから、中長期目標の設定のステージでございますけれども、これはそこに示してありますようなステージ1から5までのような、いずれのステージにおいても設定可能であるという指摘もございました。
 一方、国際的な動向を見ますと、主な欧州諸国では既に長期目標ですとかあるいは中期目標を設定しているという事実があるという紹介もございました。
 それから、4ページの最後の点でございますけれども、具体的な目標の設定のあり方ですけれども、長期目標については必ずしも数字で表すのは難しいというような面もありまして、まずは言葉で表現をした上で、その上で具体的に、今わかっているような範囲で目標を示すのがよいと。さらには、その状況がわかってきたときにそのわかってきたことを組み込めるように柔軟性を持たせておくことが必要だという指摘もございました。
 一方で、中期的な目標についてはもう少し具体的でもよいのではないかということでございます。
 次も、中長期目標の意義に関係することでございますけれども、これは何ができて何をしなければならないかということについての指標としての役割が期待できるということで、特に共通認識の形成ですとか、問題提起の意味ということは重要だということで、プロセスについての意義を強調したご指摘がございました。
 それから、不確実性を伴うリスクの管理に関しての具体的なあり方について3点ほど手法が考えられるというご紹介がございまして、1つは、先ほど申しましたように、一定期間後に目標を見直すということ。それから、安全側に立った目標を設定するということ。それから、不確実性そのものの程度もはっきりさせながら目標を設定するというような手法が考えられるのではないかという指摘があったかというふうに理解しております。
 続きまして、目標を設定するに際しては、単に目標だけというのを考えていてはだめで、社会ビジョンをどう描くかということ。さらには排出経路をどう考えるかということについても合わせて考えなければ解というのは出てこないという指摘もありました。
 それから、環境分野では、これまで物事をdamage limitationという側面で見すぎていたのではないかと。むしろもう少しプラスの側面、これをどうやって最大化していくかということで、ポジティブな面を出していくということも重要ではないかということがございました。
 最後になりますが、本日の議論とも関係しますが、技術というものについてその要素をどう活用していくかということ。さらには技術の開発・普及に関して努力した主体が評価されるようなフレームワークも重要であるというような指摘もいただいたところであります。
 以上でございます。

○西岡委員長 ありがとうございました。
 三村委員、何かございますか。

○三村委員 ちょっと次に土木学会の会合がありまして、早めに退出させていただくので、申しわけありません。
 機会を与えていただいたので3点ほど感想のようなことを言いたいんですけれども、1つは、今日の議論を聞いておりまして、この委員会で検討することが国際的な戦略を、要するに地球全体のことを考えるものと、それから国内の対策をどうするのかというのとどうも2つ課題があって、ときどきそれが入り交じったりしているように思いました。どちらも恐らく議論としては必要なんだと思います。
 それから、2番目は、国際的な課題ですけれども、これは中長期目標を決めるというのは私ぜひ必要だと思っているんですが、先ほど技術の議論のときに亀山さんが非常にうまくまとめてくださって、制度とか社会ビジョンのレベルまで考えて技術の将来展望を考えなきゃいけないと、こういうお話だったんですけれども、国際のレベルで考えると、では、国際的にいい技術を導入する制度というのはどういうものだろうというと、なかなかイメージがはっきりしないというか、なかなか難しいような気がするんですね。
 それで、中期目標、長期目標を考えた上で、そういう方向にどうもっていくかというところが、やはりかなり知恵というか、みんなで議論をすべきところだと思います。
 1つは、意識的に国際的に合意をしてそっちにもっていきましょうという政治的な意思を形成していくという方向があります。もう1つは経済システムの中に組み込んで、どうしてもそうなってしまうというような、省エネやりたくなくてもどうしてもそっちの方に動いてしまうとか、そういうような何かうまい仕掛けを考える必要があるのではないか。
 私が今まで聞いた中では、例えば炭素市場の形成とか、CDMとかというのは途上国にとってもかなりアトラクティブな仕掛けになっているので、そういうようなことを考えたらいいのではないか。時間がないと言いながらこんなことを言うのもあれですが、私は大学で講義していまして、学生さん余り講義を聞いてくれないものだから最近いろいろ考えて、聞きたくなくても聞いてしまう講義とか、わかりたくなくてもわかってしまう水理学とか、そういうのをいろいろやっています。
 南太平洋の途上国と随分おつきあいがあるんですけれども、最初CDMが導入、提案されたときには総スカンもいいところで、これは先進国が免罪符を提案しているんだというのですごくネガティブだったんですが、最近そういう人たちと話をしていると、これは我々の将来にも役に立つことを言ってくれているというふうに大分認識が変わってきているんですね。ですから、ポジティブシンキングでいきましょうというのが最後にありましたけれども、途上国にとっても温暖化対策が持続可能な開発の非常にいい手段になるということがわかってもらえるような仕掛けを考えるというのが非常に私は重要なのではないかと思います。
 それから、3番目は国内対策ですけれども、国内対策は状況がよくわかるし、いろいろなこれまでの経緯もありますので、具体的な制度論や、環境税とかそういうものも含めた制度論まで踏み込んだかなり具体的な議論が可能なのではないかなと思います。
 次回以降どういう議論をするのかということを考えながら、感想ですけれども、以上でございます。

○西岡委員長 今、次回以降という話がありましたけれども、抜けているものは特にありませんか。

○三村委員 いいえ。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、皆さんのご意見をいただきたいと思います。1つは今まで皆さんがご発表なさった、あるいはご意見が十分に反映されているかどうかということかと思います。さらには、まだこういうところが抜けているのではないかということもあってもいいのではないかなと思います。
 どうぞ。

○高橋委員 この1週間か2週間ほどの状況、新潟その他のことを考えると、1つの非常に重要な点が出てくるように思います。それは、要するに我々が考えていることの大事な要素というのは、対弱者政策というのが非常に重要な要素になる、ならざるを得ない。それは国内でもそうだし、世界的に見てもそうだし、それが非常にドラマティックに今回残念ながらはっきりしたのではないかという気がしますので、その点やはりここで一番最後、7ページあたりに出ている表なども前提にしながら、我々の問題、関心としてはっきりさせる必要があるだろうというふうに思います。
 以上、1点だけです。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。

○住委員 非常にマイナーですが、2ページの一番上ですが、過去50年間の温暖化のほとんどは人間活動に起因しているというふうに断言するとやはりちょっとまずいと思います。やはり普通は、「と考えられる」とか何とかしたほうがいいと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかにございますか。新澤委員。

○新澤委員 前回行われた中長期的な目標値の設定に関してですけれども、今日も、例えば高村委員から中長期目標というのは技術を誘導する役割があるとか、あるいは松橋委員からはエネルギーインフラに関してかなり中長期的な見通しというものが必要であるという趣旨のご発言。これはエネルギーインフラだけに限らないと思うんですけれども、京都議定書のような10年刻みですと、なかなかインフラの投資決定に対しては短いと思うんですね。そういう意味で中長期的な見通しというものは、その技術の誘導であるとか、さまざまな物的、制度的インフラの誘導という点で重要であるということも、よく読めばその種のことが書いてあるように思いますが、ちょっとつけ加えていただいたらいいと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかにございましょうか。原沢委員。

○原沢委員 今日は特に技術の点でよくまとめていただいたと思うのですけれども、先ほどの例えば対策技術の具体例というようなことで、例えば核融合とか宇宙太陽光発電が入っています。100年、200年後には実用化すると思うのですけれども、こうした革新的な技術といっても、今の段階で近い将来実用化できるようなものとないものがあるのではないか、この辺の仕分けというのが重要になってきている。そういう意味で、「その他」というところにある森林の吸収の話、最近ですと炭素隔離や貯蔵の技術がかなり進んできたりしている。IPCCでも本格的に取り上げる状況がありますので、特にこの技術という面では現時点で技術評価が温暖化対策を考える際の1つの大きな柱として、非常に重要と思います。
 それとあと、適応技術という話がありまして、よく緩和技術と適応技術をどうやってうまく組み合わせていくかという話があるんですけれども、まだ次元の違う話を統一した場で議論できるようなところまでまだいっていないということではあるんですが、技術という視点で適応技術ととらえていくと、両者を議論できる1つの方向かと思います。
 それと三村先生がおっしゃったように、何も意識しなくてもCO2削減ができるような社会、これは理想的な社会でありますけれども、そういった視点も1つ重要かなと。例えば、今は車社会ですけれども、車がなくても生活していけるような都市というのはある意味1つの方向だと思いますし、そういう中で幅広く技術というのをとらえて考えていった方がいいのではないかという気がしました。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。

○明日香委員 中長期的な目標値の設定に関してなんですけれども、先ほどの話ともまず最初に関わるんですが、やはり政府の役割がどの程度重要かという判断というか、例えば先ほどの革新的な技術に依存する、海洋貯留なり原子力というのはまさに政府が非常に頑張らなきゃいけないという。だからそういう社会を我々が認めるかどうかということなのかなというのがまず1点補足です。
 あと、経済システムに入れ込むという話があったと思うんですけれども、CDMのお話があったと思うんですけれども、私はCDMを研究しているといえば研究しているんですけれども、最近は非常にペシミスティックになっていまして、やはり安い価格が問題なんですね。あと、現時点で例えば2012年以降のクレジットを買う人というのはほとんどいないんですね。ということは、2012年以降の枠組で例えば数値目標がないとか、京都議定書が発効していないとか、日本国内で排出権取引が入っていないという状況のときには、今の日本の企業が持っているクレジットはEUの排出権取引で使われないものでなければ、多分紙切れになってしまうと思うんですね。
 将来的に数値目標が2012年以降なくなったら、多分CDMで関わっている人たちの大部分は僕は失業すると思っているんですけれども、それが多分現実だと思います。
 なので、そういう意味では数値目標がなければCDMも多分なくなってしまうのではないかなというのが私の見通しです。
 最後に、中長期目標の議論をするときにどうしてもポリティカル・アクセプタビリティーというんでしょうか、ポリティカル・フィージビリティーという議論にもなるんですけれども、そういう具体的な数値目標を決定するのは国際社会で決めるのは難しいという議論になるんですが、それと、では日本政府がそういうのを出さないというのはまた別の話だと思うんですね。もし、実際問題として日本政府が何らかの具体的な数値目標なり中長期の目標値を出していけば、EUと日本でcoalition(連携)みたいなのができて、それでアメリカも動くかもしれない、ロシアも動くかもしれないと。だから、そういう意味では日本次第のところがありまして、国際的な合意ができないからやらないとかいう議論というのはちょっとロジカルではないということを強調したいと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかにございましょうか。どうぞ、高村委員。

○高村委員 先ほど三村先生が第1点目にご指摘なさった点、この委員会は国際的な戦略について議論する委員会であるという役割を担っているわけですけれども、同時に、今、明日香先生の方からもありました、日本のポジションといいますか、日本がどういう形でこの国際戦略に対していくのかという点も恐らくある程度考えなければいけないのだろうかというふうに思っております。そういう意味ではこの発言は質問でもあります。
 なぜかといいますと、1つには例えばこの今日の議論でも、社会的ビジョンの重要性などの指摘を私もいたしましたが、ほかの委員からもそうした指摘が出されております。日本は高度に化石燃料に依存をしていくけれども、ほかのところは循環型でといったような、そういう恐らくポジションというのは国際的にはなかなか難しいんだろうというふうに思いますので、そういう意味ではいかなる社会ビジョンを持った国際制度、戦略を展望するのかということは、恐らく日本がどういうビジョンを持つのかというところに返ってくるというふうに思うからです。
 第2点目は、これはむしろ外交上の問題かもしれませんが、この問題で我が国がどう国際社会で役割を果たすのか。あるいはより具体的には国連の中でと言ってもいいのかもしれませんが、こうした外交上の戦略との関係でも私たち日本でどういう態度をとるのか、どういう考え方を持つのかということはやはり迫られるのではないかというふうに思います。この点は質問とコメントを合わせたものです。
 以上です。

○西岡委員長 後ほど、またどなたかに答えていただくといたしまして、ほかにございましょうか。
 私の方も幾つか申し上げたいところがありまして、1つはこのまとめですけれども、当初気候変動の特徴あるいは科学の知見ということがございます。環境省の役割としてこの科学的なバックグラウンドをはっきりしておくというのは非常に大切なことではないかと思っておりまして、これは非常にいいかと思います。
 この前、私はIPCCの統合報告書のスコーピング会合というのに出てきましたけれども、結局余り枝葉のことを考えないで、やはり既に温暖化が進んでいるかどうかに対する答えあるいはそれがどういう影響をもたらすのかということに対する答え、それが人為的かどうかに対する答え。さらにはそれを抑制していく方法、特に今度は適応の話が非常に多かったんですけれども、あり方、すなわち技術についてきちんとした答えを出していこうということを言っております。余り枝葉のこと、不確実性ということではなく、今わかっているところでどんな手を打つべきかということを考える際に、この科学的な話というのは非常に重要かと私は思っております。
 それから、2つ目ですけれども、細かい技術の話はもちろんケアしていただきたいんですけれども、やはり大きく社会をこっちの方向に向いているよということを提示することが、特に環境省の役割ではないかと思っております。といいますのは、もう1つ海外調査をいたしまして、特に欧州の方の話を聞きますと、欧州は、国によってちょっとずつ温度差があるにしましても、今後のエネルギーや技術の方向というのはこの温暖化の問題でかなり方向づけられるということを念頭に置いて大号令をかけているといった感じがいたします。その方向がいいか悪いかは、私はもう少し議論する必要がありますけれども、その方向を示せば、先ほどのエネルギーインフラの話等々もそれを大前提にして動いていくのではないかなと思っておりまして、そのことをきちんと方向づけるというのが2つ目の重要なことではないかと思っております。
 3つ目が、ポジティブシンキングという話がございまして、ヨーロッパなどはそういう社会がそういくという見通し、ちょっとそれがうまくいくかどうかよくわからないところがあるんですが、そういう見通しのもとでどう技術競争に勝ち抜いていくかということですね。このことを自分たちの国力を充実していく方に使っていこうという、まさにポジティブシンキングがあるかと思います。
 それから、4つ目が幾つか技術の話がございまして、その中で、これも個別の技術というよりもやはり技術の性格を見たリスク、技術リスクというのをどう考えていくかといったところを念頭に考えていく必要がある。その点で、大体今の紙の中にはそのあたりはよく書かれているかなと思っております。
 ちょっと足りないなと思いますのは、私が申し上げました2つ目の政策の方向について、こんなことがあるよという、今これ打ち出す必要は私は今はないと思います。なぜかといいますと、今後のもろもろの交渉の中でいろいろ考えていく必要がある問題ではあるかと思いますけれども、こういう選択があるのではないかということをいくらかは述べてもいいのではないかなというぐらいに私は思っています。
 以上が私の感想でございます。
 先ほど高村委員の方からも幾つかのご質問がありました。どなたか。それから、全体についてもし何かありましたら。

○水野国際対策室長 先ほど高村先生からのご質問という形で発言があったわけですけれども、ご質問と言いつつ、基本的にそこで説明をしていただいたことがそのとおりかなというふうに思っております。要するに国際的な枠組として世界がどういうふうな方向にいくべきかという議論と、日本としてどのような対策をとるべきかと。これは先ほど三村委員からもご指摘があったかと思いますけれども、これは混乱しないように分けて頭の中を整理する必要があるということがある一方で、両方は必ずしも分離したものではなくて、密接に関係しているということを意識しながら議論いただくことが必要だろうというふうに思っております。
 特にこの専門委員会は、そもそもは京都議定書の中で次期枠組交渉は2005年にも遅くとも始めなければいけないというようなことがありまして、それを念頭に置きつつ議論をスタートしていただいたわけでございますけれども、また、それを目指して各国でも実際に世界的な目指すべき目標はどうあるべきかということをもう既に議論が始まっているということで、日本としてもそのスタンスを持たないわけにはいかないということがあって議論を始めさせていただいたわけです。
 ただ、日本として世界がどうあるべきかということを議論するに当たっても、やはりそれが日本に対してどういうインプリケーションがあるのか、あるいはそれが日本として本当に受け入れられるものなのかということを抜きに議論をしていても、この場はあくまで科学的な客観的な立場から調査をいただくということで、最終的にはまた地球部会の方で議論いただくということにしても、そういった基礎的な情報が与えられていない中で世界だけのことを情報として部会に上げても、やはり調査が不十分ということになろうかというふうに思いますので、そういった意味では両方を区別しつつも、その関係をしっかりと見すえながら議論いただくということが大事だろうというふうに思っております。
 以上です。

○西岡委員長 ほかに何かございますか。委員の方で何かつけ加えることは。

○住委員 僕はやはりこれは気候変動問題に関する日本の国際的な戦略であるべきで、ともすれば国際的枠組は何か外側にあって、日本はそれに対してアジャストしていけばいいということが今まで多かったんですけれども、やはり違っていて、要するに単純に言えば、日本の国はこれから21世紀、言葉は悪いですけれども、うまく立ち回っていくためにも国際的に、悪い言葉で言えば引き回していくべきかということの観点で僕は考えるべきだと思います。
 そういう点ではちょっと欠けているのは、ほかの国がどう思っているとか、ほとんどこういうのをネタにみんなそれぞれ考えているわけですよね。ヨーロッパだって自分の国の将来を考えているし、みんなそれぞれオプションを持っているわけですから。だから、そういう出すかどうかは別にしても、冷静なストラテジックな観点で、だから説得するのは日本の国が将来うまくいくためにも、例えば京都議定書の枠組をつくった方がいいという主張をするのか、それはやめた方がいいと。とにかく全部やはり最後は日本の国をどうするかという、どうやってその社会に生きていくかということを明確にしつつ、国民に訴えていくという、やはりそういうことが非常に大事だと僕は思うんですね。そうでないと、何となく世界のことを議論するときに、何かよそのものみたいな感じで議論されると、この京都議定書の問題もちょっと違うような気がしますので、そういうところをこれからは明確に出していった方がいいと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかにございますか。
 本委員会は専門委員会ということでありまして、論点を幾つか整理し、それに対応する事実を明らかにしておくというのが基本的な仕事です。あと、その結果がいつ、どういう時点で、どういう場面で使われなきゃいけないかという見通しについても、大体何となくあるのではないかなとは思っておりますけれども、まだちょっとそこまで議論するのは早いのかなと思います。
 ですけれども、今おっしゃったように、我々が国際的なことを単なる研究者的に、あるいは学者的に論じているというものでは全くなくて、日本の国がどうものごとを進めるかということのための情報提供であるかという具合に認識しております。
 ほかにございますか。
 ちょっと1つだけ気にかかっているのは、この全体の絵の中で科学的な部分でまだ1つだけちょっと抜けている。ちょっと難しいんですけれども、スタビライゼーションレベルのもろもろの関係なんですね。今、いろいろな目標があったりppmの話があったり、シナリオがあったり、危険度があったりするんだけれども、一体具体的にそれがどういう道筋でスタビライズしていくべきかということについて、今研究が猛烈になされているところなものですから、ちょっとご報告しにくい。しかし、それがないと何となく半分わかったようで、また別の話をしているような感じがちょっといたします。それがもし必要でしたらまた後でやってもいいのではないかなという具合に思っております。
 ほかに何か。
 どうぞ。

○明日香委員 CDM絡みで補足なんですけれども、CDMをやるには五、六年ぐらいリードタイムがあるんですね。なので、それこそナットソースの方とかに聞けばわかるんですけれども、さっきも申し上げたように、2010年以降のクレジットを買う人はほとんどいませんし、2006年ぐらいまでに将来の枠組がはっきり見えないと、CDMやる人は多分だれもいないと。つくる人がいないということになるとは思います。

○西岡委員長 早めに少し目標になるものを設定していかないとものが動かないということですね、全体的にですね。
 それでは、今日は議論はこれぐらいにいたしまして、次回からは後半の枠組制度の方の話に入っていきたいと思います。
 何かその他ということで、今後の予定になりましょうか。

○水野国際対策室長 それでは、今後のスケジュールにつきまして、ごく簡単にお話をさせていただきたいと思いますけれども、これは第1回のときの議論の初めにもご紹介をさせていただいたと思いますが、COP10が今年の12月6日からアルゼンチンで開催されるということでございますので、それを1つの目印にいたしまして、この専門委員会としては秋ごろまでにはひとまず議論を整理いただきたいというふうに思っております。そのためには、まずは今回以降も月に1回ほどのペースで、ちょっと大変ではございますけれども、議論いただければというふうに思っております。次回からは、先ほどちょっと話をさせていただきましたように、主として次期枠組の制度設計ということに議論を移らせていただければというふうに思っております。
 なお、一応COP10を前にということをお話を申し上げましたけれども、当然この議論はCOP10で終わるものではございませんで、むしろスタートしたばかりということで、各国の議論もこれから盛んになってくるということだろうと思いますので、COP10以降も引き続き世界での検討の状況なども踏まえながら引き続きご議論をいただければというふうに思っております。
 なお、ちょっとごく簡単にですが、参考資料でCOP10の位置づけをちょっと紹介させていただければと思いますけれども、参考資料はSB20補助機関会合の概要と評価ということございますけれども、その1枚目の一番頭にございますように、このSB20ではCOP10をどういうふうに位置づけるかということについて議論がされたわけでございますけれども、その四角の一番上にございますように、京都議定書上は2005年までには次期枠組に向けた議論を開始すべしということが規定されているということを念頭に、COP10はこれに向けた予備的かつ分析的な議論を始める好機ということで認識をされまして、閣僚級会合ではパネルディスカッションということで、これまで以上にインタラクティブな議論を閣僚レベルでしていただこうということで、特に重要な議題としては、4つパネルをつくるということなんですが、そのうち特に重要なものとしては、「条約10周年:これまでの成果と将来の課題」、Accomplishments and Future Challengesということで、徐々にその時期に向かっての議論が始まりつつあるということでございますので、ますますこの専門委員会でのとりまとめというものが重要な役割、重要な意味を持ってくるというふうに思っておりますので、ひとつ引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、後ほど事務局の方から確認のお願いが来るかと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、どうも本日はありがとうございました。

午後 0時59分閉会