中央環境審議会地球環境部会第1回気候変動に関する国際戦略専門委員会議事録

開催日時

平成16年4月8日(木) 10:00~12:00

開催場所

東条インペリアルパレス5階「曙」の間

出席委員

(委員長) 西岡 秀三
(委員) 明日香 壽川  甲斐沼 美紀子
亀山 康子  工藤 拓毅
住  明正  新澤 秀則
原沢 英夫  三村 信男
横田 洋三

議題

1. 専門委員会の設置について
2. 気候変動に関する科学的知見について
3. 専門委員会での検討事項について
4. その他
  

配付資料

資料1  気候変動に関する国際戦略専門委員会 委員名簿
資料2  気候変動問題に関する今後の国際的な対応の基本的な考え方について
(中間とりまとめ)の概要
資料3  中央環境審議会地球環境部会への気候変動に関する国際戦略専門委員会の設置について
資料4  気候変動に関する科学的知見の整理について
資料5  次期枠組みに関する具体的な検討事項(案)
参考資料1  気候変動問題に関する今後の国際的な対応の基本的な考え方について
(中間とりまとめ)日本語版
参考資料2  Climate Regime Beyond 2012 Basic Considerations (Interim Report)
(中間とりまとめ 英語版)
参考資料3  気候変動に関する国際戦略専門委員会の運営方針について

議事録

午前10時00分開会

○牧谷国際対策室長 おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから気候変動に関する国際戦略専門委員会第1回会合を開催いたします。
 委員会の開始に当たりまして、小島地球環境局長よりご挨拶を申し上げます。

○小島地球環境局長 おはようございます。気候変動に関する国際戦略専門委員会の第1回目の会合の開会に当たりまして、一言ご挨拶申し上げます。この専門委員会は、昨年来、中環審の地球環境部会で第2約束期間以降、つまり2013年以降の取組にあたっての考え方をご審議いただき、基本的な考え方について中間とりまとめをさせていただきました。中間とりまとめは、日本語・英語両方の冊子を作り、それに対して、内外からいろいろ意見が寄せられましたが、さらに具体的な検討をしてほしい、というコメントも多くございました。
 今回、2013年以降の取組のあり方について考えていくための材料として、具体的・専門的な事柄について整理をしていただくために、本専門委員会を設置、し開催をするということの運びとなりに至りました。具体的にどのような取組のあり方が望ましいかということにつきましては、この専門委員会報告がとりまとめられた後、地球環境部会で更にご議論をいただきます。
 地球環境部会の方では、現在、地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しを行っておりますが、京都議定書というのは極めて重要な地球温暖化対策に向けての第一歩でありますけれども、これはまた、逆に第一歩にすぎません。我々は気候変動枠組条約の定める究極的な目標に向かって、その第一歩を歩み始めたにすぎないわけです。本専門委員会における検討に当たりましても、条約の究極的な目的の達成に向かっての道筋と、その中での京都議定書の位置づけ、そして京都議定書から、さらに究極目的の実現へ向かっていくの確かな一歩を歩み出すためにはどうするべきか、ご議論をいただきたいと思います。
 既にヨーロッパにおきましては、その究極目的に掲げられた安定化のレベルについては、濃度では 550ppmであるとか、あるいは気温では2℃の上昇というような議論が出てきておりますし、そのような目標に向かっての中期的な国家目標というものも設定するという状況にございます。そういう長期的な目標をまず設け、その上で2013年以降どうすべきかを考えていく、これはイギリスなどのいわゆるトップダウン・アプローチでございますけれども、それでは、我が国としてはどのようなアプローチが適当か、あるいは各国、どのようなアプローチを検討しているのかということにも留意いただき、具体的な選択肢の整理、そのメリット、デメリットを、専門的な見地から整理していただきたいと思います。
 本日は第1回目でございますので、そのような条約の究極目標、そして地球的規模におけるシステム、あるいは京都議定書、そして京都議定書に続く次期枠組み等についての総括的なご議論をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○牧谷国際対策室長 それでは、本日は第1回目の会合となりので、委員の紹介をさせていただきたいと思います。お手元に座席表と名簿がございますので、ご参照ください。アイウエオ順でご紹介をしてまいります。
 まず、明日香委員でございます。
 甲斐沼委員でございます。
 西岡委員です。
 亀山委員です。
 工藤委員です。
 住委員です。
 新澤委員です。
 三村委員です。
 横田委員です。
 原沢委員です。
 本日、このほか、高橋委員、高村委員、松橋委員は欠席ということで連絡をいただいております。
 続きまして、本日出席しております環境省の幹部職員を紹介申し上げます。
 まず、浜中地球環境審議官でございます。
 小島地球環境局長でございます。
 竹本審議官でございます。
 小林審議官でございます。
 矢野調整官でございます。
 高橋研究調査室長でございます。
 私、牧谷でございます。

○牧谷国際対策室長 本委員会の委員長でございますが、中央環境審議会運営規則第9条第2項に基づく部会長の指名によりまして、中央環境審議会臨時委員の西岡先生にお願いしております。今後の進行は西岡委員長にお願いをいたします。
 それでは、よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 それでは、ご指名ですので、私、この委員会の委員長をさせていただきます。
 この委員会は国際戦略専門委員会でございますが、「国際」という意味から、まずそれは一体世界を意味するのか、あるいは国際的な場に日本の意見を言うのか、あるいはそういうプレイヤーが集まる場の意見を言うのか、いろいろ視点があるのかもしれません。いろいろと議論があるかと思います。しかしながら、この専門委員会自身が、先ほども話がございましたけれども、利害調整の場では全くなくて、こういう論点があるんだということを整理して出すというところに、重要な我々の専門委員としての役目があるのではないかなと思っております。
 余り枝葉の議論に入らず、骨太のところで、まず全体のストーリーを重ねていくということが必要ではないかなと思っております。皆さんのご協力で、役目を遂げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日、議事次第にあるとおり、第1回の会合ということでございますので、まず、議事次第を見ていただきますと、専門委員会の設置のバックグラウンド、その後、気候変動に関する論議の中で一番大切なベーシックになるのは科学的知見かと思いますので、本件についての原沢委員の方からの一通りのご説明。最後に、なるべく多くの時間をとりまして、この専門委員会での検討事項についてということで、事務局からの説明と、それに対する皆さんのご意見を伺いたいというぐあいに思っている次第であります。12時までということで、余り時間がございませんので、コンパクトにいきたいと思っています。
 それでは、資料の確認を事務局の方からお願いいたします。

○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。お手元の資料をごらんください。
 まず最初に、議事次第がございまして、その次に座席表がございます。それから、資料1がこの委員会の名簿でございます。資料2が中環審の地球環境部会でまとめていただいた中間とりまとめの概要、1枚紙でございます。資料3、この専門委員会の設置について地球環境部会の決定。これも1枚紙でございます。資料4が、横長の資料ですが、気候変動に関する科学的知見の整理についてというものでございます。資料5が、次期枠組みに関する具体的な検討事項(案)ということになっております。それから、参考資料1が、資料番号はついておりませんが、お手元にございます地球環境部会の中間とりまとめの報告書でございます。もう一つ、の資料が、これも資料番号はついておりませんが、この報告書の英訳版で、参考資料2になります。それから、参考資料3が、この専門委員会の運営方針でございます。それから、資料一覧の中に載っておりませんが、環境省の方で「STOP THE 温暖化」というパンフレットをつくっておりまして、つい最近でき上がりましたので、参考までに配付させていただきました。
 資料の不足や落丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。
 それから、委員の皆様のお手元には、次回の日程確認のためのシートを置かせていただいておりますので、お帰りまでにご記入いただいて、その場に置いておいていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 資料の不足はございませんですね。
 それでは、議事を進めさせていただきます。
 最初の議題は、専門委員会設置のバックグラウンドということであります。我々がいつまでに、何をしなければいけないかというバックグラウンドをご説明願いたいと思います。

○牧谷国際対策室長 それでは、資料2、資料3に従いましてご説明申し上げます。
 その前に手続的なことでございますが、この本日の委員会の公開についての取り扱いですが、参考資料3をお開きいただきたいと思います。ここに、部会長決定での運営方針が示されておりまして、1の(1)に会議の公開について書いてございまして、[2]に委員長によりまして、今回の公開、非公開の取り扱いを決めると書いてございます。本日の審議内容、資料は、特段、非公開とする理由はないと思われますが、委員長、いかがいたしましょうか。

○西岡委員長 公開でお願いいたします。

○牧谷国際対策室長 それでは、そのようにして進めてまいります。
 それでは、資料2をお願いいたします。この専門委員長の設置に至りました経緯についてのご説明でございまして、冒頭のあいさつにもございましたように、昨年から今年の1月にかけて、気候変動問題に関する今後の国際的な対応の基本的な考え方についての中間まとめをしております。1に検討の趣旨というところがございまして、京都議定書では、具体的には規定をしていない2013年以降の枠組みをどうするのだという気運が国際的に高まっている状況にございます。京都議定書3条9項にも先進国の次期枠組みの検討、遅くても2005年までには開始するということもあり、現に交渉の場でも次期枠組みを念頭に置いた議論というものが起こりつつあります。こうしたことを踏まえて、中環審の地球環境部会において検討報告書を取りまとめたということでございます。
 この中間とりまとめをさらに具体化するために、この専門委員会が設置されましたが、この専門委員会で取りまとめいただきましたならば、また地球環境部会にこの結果を諮りまして、さらに審議をするという段取りを考えております。
 資料3をご覧ください。これは1月30日の地球環境部会で決定をしたもので、2にありますように、この委員会では気候変動に関する将来の国際的な対策にかかる枠組みに関する調査を行う、としております。すなわち、ここでは、利害調整でありますとか、決定を行うということではなく、今後行われる予定になっております地球環境部会での審議に備えまして、その基礎となる資料や、情報の収集、分析を行うということを考えております。
 スケジュールといたしまして、COP10、今年12月にアルゼンチンで開催する予定ですが、これを念頭に、今年の秋のとりまとめを目指して検討をお願いしたいと考えております。
 この内容をどうするかということにつきましては、本日の3番目の議題でお諮りをしたいと思っております。
 次に、また資料2に戻っていただきまして、次期枠組みを検討する上での基本的な考え方を7つにまとめております。これを順次ご紹介してまいります。
 1番目は、「気候変動枠組み条約の究極目的の達成に向けた、たゆまない前進」でありまして、この条約が環境保全のための条約であるということで、この次期枠組みについても環境保全上の実効性を確保するということが重要であろうと考えられます。
 次に、「京都議定書の発効及び約束達成に向けた取組」ということで、次期枠組みの検討に当たって、第1になすべきは、京都議定書の発効とその達成努力ということであるということです。京都議定書は、長い究極目的に向けたプロセスの第一歩であり、この一歩を踏み出さないことには二歩がないわけであります。
 それから、部会では、途上国あるいは未批准国に対して温暖化対策が、経済と好循環を保ちながら実施できるということを示す必要がある。その意味でも京都議定書の発効・約束達成が重要であるということが指摘をされました。
 裏に参りまして、「地球規模の参加」でございます。環境保全の実効性の確保のために地球規模の参加が重要である。米国等、あるいは途上国を含めた参加を得た枠組みの構築が必要であるということが指摘されております。
 次に、「共通だが差異のある責任の原則のもとでの衡平性の確保」。衡平性の確保といった場合に先進国と途上国、それから、先進国間、途上国間とそれぞれあるわけでございますが、それぞれの多様性に応じ、多様化された枠組みの構築ということが指摘されております。
 5番目が、「これまでの国際合意の上に立脚した交渉」でございます。この部分が地球環境部会での最も活発なご議論をいただいた部分でございました。ここに書いてありますのは、これまで国際交渉が条約、議定書という到達点を経て、議定書採択以降も取組が続けられてきており、このような国際合意を経て共通基盤が築かれつつあるので、次期枠組みにおいては、国際合意の上に立脚して、次期枠組みの交渉において究極目的の達成に向けた、たゆまない前進あるいは地球規模の参加といった観点から条約や議定書の仕組みをどのように発展改善していくのか、という視点からの議論が必要である、という指摘がありました。議論の過程では、京都議定書は途上国や、あるいは米国の不参加があったので、これにこだわるべきではないという議論がございましたし、一方で京都議定書を最大限尊重すべきであるという議論もございました。結果としては、このような形でまとめられました。
 次に、「多様な主体が参加しつつ国家を中心とした国際合意プロセス」でございまして、次期枠組み交渉は、条約の上での交渉ということになると考えられますので、最終的な責任は国家に依存する。その過程においては、多様なステークホルダーを巻き込みながら、合意を形成していくことが必要であるという点が指摘されております。
 最後に、「環境と経済の好循環」でございまして、気候変動の対策が経済を発展させる。そしてまた経済が活性化することによって温暖化防止にもなる、こういう好循環を目指した社会構造の変革が必要であるということ。そして、その中で技術の役割が重要であるということが指摘をされております。
 以上が中間とりまとめの概要でございますが、これをパブリックコメントということで、国内、国外に広く意見を求めてとりまとめました。多くの意見、大きな反響をいただきまして、例えば、つい先日には、イギリスの環境大臣からも、非常に前向きのコメントをいただくということもございまして、国際的な議論にも貢献をしたと考えております。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 今の説明のようなバックグラウンドでございますが、何か委員の方で、本件につきましてご質問、ご意見ございましょうか。よろしゅうございますか。

○工藤委員 最後にもちょっとご紹介いただいたんですけれども、恐らく、私は、前回の方の中間とりまとめの議論に参加しておりございません。ので、あくまでも中間とりまとめの内容を拝見して、その後、パブリックコメントにかけられたという、そこまでの状況までは存じ上げております。いて、実際に将来枠組みに関するこういった議論が、いろいろなところで最近おこなわれやられていて、これはいい、これは悪いといった様々なう意見がいろいろあるということがんだということは、徐々にだんだん社会的に認識されてきていますがつつある中で、中間報告のパブリックコメントなり、例えば先ほどのイギリスのコメントなりといったものが、具体的にどういうものだったのかなということをのが、できれば知ることができれると非常にありがたいなと思ったのですがいう気がしたんですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。

○牧谷国際対策室長 1月30日にこれを取りまとめた際に、パブリックコメントは相当膨大なものをいただきました。工藤委員にはお渡しをしたいと思っております。全体的には賛同する意見が多かったと思っておりますが、部分的には、例えば国際的な合意の上に立脚した交渉という点については、部会でのご議論を反映して、幅広いご意見をいただいたと思います。それから、全体を通じて、より具体的な検討が必要というご意見も多かったようでございまして、この点は今回の専門委員会を設置した1つの理由になっています。
 詳細には、当日の資料などを、後ほどお渡ししたいと思っております。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 他にございましょうか。
 それでは、次の議題に進みたいと思います。次の議題は、気候変動に関する科学的知見ということでございまして、私は、この気候変動の話、交渉の話においては、いつも隠れたプレイヤーがいるという話をいたします。WTOの交渉と違いまして、もう一人、自然という隠れたプレイヤーがおりまして、その辺の状況をよく知らないと、この問題は大枠を間違えてしまうというところがあります。それで、最初に気候変動に関する科学的知見ということで、原沢委員にご説明願いたいということでございます。

○原沢委員 原沢でございます。気候変動に関する科学的知見の整理ということで、資料4に従ってお話ししたいと思います。
 まず、気候政策検討に必要な科学的な知見ということで簡単にまとめておりますけれども、まず、本当に温暖化しているのかどうか。温暖化の検証が重要でありまして、その後、もし温暖化しているとするなら、その原因は何か、原因の究明です。検証と原因の究明がありまして、本当に温暖化しつつあるのであれば、大きな影響があるのかどうか。もしないのであれば、こんなに大きなことにはならないわけですけれども、もし影響があるならば、影響を何とかしなければいけないということで対策があるわけです。が、対策につきましては、2種類ございます。
 まず、1つは、温暖化を止める対策でありまして、これはいわゆる抑制策あるいは削減策と呼ばれている人間活動からの排出量を下げるという話が1つと、温暖化しつつあるという状況を考えますと、その変わっていく状況に対して、人間とか自然の生態系を合わせていく適応策という、2つの対策があるということです。、温暖化問題の解決には、自然現象の解明と影響の予測、さらに対策、この3つが三位一体となって科学的な進歩をしていかないと、なかなか解明ができないということであります。
 実際、地球の気温は上がっているのかどうかということで、左の図は、過去 140年間ぐらいの温度計を使った気温の変化であります。全体的に上がっているということがはわかるかと思います。右が過去 1,000年の気温の変化をあらわしたものでありまして、こういったことから、もう既に温度が上がってきているということで、20世紀の 100年間に、世界の平均気温が 0.6℃ぐらい上がっているということがわかってまいりました。さらに、1990年代の10年間は過去 1,000年で見ても、最も温暖な10年であったということがわかってまいりましたし、1998年は最高気温を記録したということで、2002年が第2位、2003年、昨年ですけれども第3位の記録であったということであります。
 もう少し地域的に見てみますと、全般的に温度が上がってきているということなんですが、特に中緯度から高緯度にかけてが、赤い丸印が気温の上昇をあらわしておりまして、丸の大きさが昇温の大きさをあらわしております。ですから、中緯度から北の方が気温の上昇が大きいということです。、ちょっと注目していただきたいんですが、南極の突端に南極半島というのがあるんですが、ここの上昇も非常に大きいわけです。ですから、地球温暖化とはいっても、世界全体が一様に上がるわけではなくて、特に北の方、南半球でいうと、より南、南極の方が気温の上昇は大きい高いという特徴がございます。
 こういったいろいろな情報を、今からお見せする情報ですけれども、IPCC、気候変動に関する政府間パネルが2001年に出しました、第3次評価報告書というのを基にしております。さらに加えて、この数年間のに新しい知見をご紹介するということにしております。
 人間の出したCO2、あるいは自然のいろいろな炭素が、どう地球を回っているかということで、10年前は、まだわからない部分が大分あったのんですけれども、最近、やっと地球規模の炭素循環が明らかになってきたということで、例えば化石燃料を燃やしますと、そこから 6.3Gt、これは億トンでいいますと、63億トン出てまいります。これりは90年代の1年間の平均ということで63億トン出しております。陸上からは土地利用を変えたりとか、いろいろなことで炭素が出てくるんですけれども、一方、植生が吸収しますので、その差として14億トンが吸収される。海も同じく17億トンをが吸収すされるということで、結果的に32億トンが大気海中にどんどんたまってきているということになります。
 これは、大気中の二酸化炭素の上昇の割合でありまして、産業革命前、1750年ぐらいの状況は 280ppmv、パーセントでいいますと 0.028%、非常に微量な濃度なんですけれども、それがどんどん上がってまいりまして、上を見ていただきますと 280ppmで安定していたのが産業革命以降、急に上がってきて、特に第2次世界大戦後は急激に増えているという状況であります。その下がもう少し拡大したものでありますけれども、1958年ぐらいからずうっとプロットしております。非常にきれいな季節変動をしながら上がってきているということがわかるかと思います。なぜ季節変動するかといいますと、春から夏にかけては、植生のが、光合成が活発になって大気中のCO2を取り込みますので、その分、CO2は減ってくるわけです。秋から冬にかけましては、今度は呼吸の方が勝りますので、CO2が上がってくる。ですから、大気中のCO2というのは、植生ですとか、海洋にの非常に大きな影響を受けて変動しているということがわかるかと思います。
 今、お話ししましたのは 1,000年、1750年ぐらい 280ppmだったのが、2000年には 368ppmになった。これは先ほどのIPCCの分析によりますと、過去42万年間の最高値で、。ですから、42万年間で考えますと、地球はこういった高い二酸化炭素の濃度を経験したことがないということになります。
 これは、つい最近気象庁がの発表した資料なんですけれども、1年間、どれだけ二酸化炭素がふえたかという記録なんですが、例えば2003年、昨年では、1年前に比べまして 2.7から 2.8ppm上がっているということがわかってまいりました。これは、これまでの上がり方に比べると、かなり大きいということで、ちょっと見てみますと、1998年、が高いです。2002年、2003年が高いということで、どうも気温が高くなるとCO2の量も多くなるという傾向にあるということで、これはまだ解析の途中ではありますけれども、どうも気温が高いと、陸上生物圏の呼吸ですとか、土壌有機物の分解が活発になって、二酸化炭素の大気への放出が強まるのではないかということで、この辺についても、今、研究を進めつつあるわけであります。
 だんだん温暖化しているということで、温暖化の原因は何か。 100年後の、あるいは過去の気候の問題ですから、どうやって科学的に解明するかということで、これは1990年ぐらいの時点では非常にいろいろな議論があって、例えば過去の気候(古気候)を再現して、それでもって将来の気候を予測していこうという、パレオアナログ(花粉分析から再現される古気候)ナノコという手法をとるか、あるいは気候モデルを使って、将来の気候を予測しつつ、温暖化の問題を解決するかという非常に大議論があったという話を聞いております。し、結果的に気候モデルといったものを使って、温暖化の問題を解決していこうということを科学者は考えたわけです。
 気候モデルを使って、最近の知見は過去50年間の温暖化というのは、ほとんどは人間活動に起因する、いわゆる人間活動から出た二酸化炭素ですとか、温室効果ガスが原因となって温暖化が進んでいる。
 その根拠となった絵がこれでありまして、過去の1850年ぐらいからの実測値が、ちょっと見づらいんですけれども、赤い線です。それをモデルで再現することを考えたわけです。最初に太陽ですとか、火山噴火、いわゆる自然の要因だけ考えてやりますと、これがモデルの結果なんですけれども、最近の50年間ぐらいは合わないという状況があります。
 今度は逆に、人間の出したCO2だけを入れて計算しますと、最近の方は合うんですけれども、1950年ぐらいが合わない。両方一緒にしますと、かなりぴったり合ってくるということです。、1940年ぐらいがちょっと寒冷化傾向があるんですけれども、そういったことも気候モデルで再現できるようになったということで、気候モデルの再現性をもとにして、将来の気温の予測をやっていく、という、そういうことで気候モデルは、ある意味、温暖化の問題についての一番の科学的にも、将来的に政策的にも重要な役割を果たしているということであります。
 これは、気温の変化を過去 1,000年にわたって示しておりまして、最近の 100年間、さらに今後どこまでいくかということで、先ほどご紹介したような気候のモデルを使って予測したものであります。 1.4℃から 5.8℃。前の1995年のIPCCの報告書に比べると、幅が広がって、かつ上の方に温度範囲が行っているということでありまして、これについて後でご説明しますけれども、かなりフラットであったものが、ここに来て急に上がっているということであります。
 なぜ将来予測がこんなに変わってきたかということなんですが、2つ大きな要因がありまして、1つは排出量の予測のいろいろな状況を想定したということと、気候モデルが進んでまいりまして、いろいろな気候モデルが出ておりますので、いろいろな気候モデルの結果を使って、将来の予測をしたということがあります。
 これが、よく見られる絵なんですけれども、将来の想定を6つ考えました。詳しいことは省きますけれども、ちょっとご注目いただきたいのは、A1FI、Fというのはfossil、化石燃料、Iはintensityで集中型、要するに、化石燃料を使って今後とも高度成長をしていくというA1FIという社会を考えます。ほかにもいろいろあるんですが、もう一つ、B1という社会を考えました。これは、環境に配慮して、環境に優しい省エネ、省資源に徹底したような社会にするようなビジョンであります。
 こういう6つの社会を想定いたしまして、幾つかの、実際にいうと7つの気候モデルを使って予測をします。そうしますと、先ほどお話ししましたように 1.4℃から 5.8℃になるということでありまして、A1FIの一番代表的なモデルを使ったようなものですと、 4.5℃ぐらいになりますし、もし人間の社会が、あしたから環境配慮型の社会になったとすれば、上昇は2℃ぐらいにおさまるということです。ですから、これだけ幅が出てきたといいますのは、こういった6つの種類の将来想定をしたということと、もう一つは、硫酸エアロゾルをより精密に考えたということがあります。
 硫酸エアロゾルは、これは冷却効果を持っているものですから、例えば、今、途上国では非常に急速に成長しておりまして、硫酸エアロゾルが出ているわけなんですけれども、意外と途上国もある経済力を持ちますと、環境配慮、いわゆる環境対策をします。そうすると、今までて想定していたよりも早い段階で、硫酸エアロゾルの排出量が下がるという傾向があったので、そういったものを盛り込みますと、逆に冷却効果が少なく酸くなくなるわけですから、気温の上昇にはね返るということで、少しそれが効いているということです。こういった2つの要因が重なって、こういった幅になっているということであります。
 これを少しまとめますと、前回、第2次評価報告書ではIS92――これはシナリオの名前なんですけれども、排出量の想定を6つ考えてやりました。1990年から2100年の予測が 1.0から 3.5℃、第3次評価報告書は、SRESシナリオ――SRESといいますのは、スぺーシャル・レポート・オン・エミッション・シナリオということで、IPCCのつくりました特別報告書の頭文字をとって、世界的にこういう名前で呼んでいます。その中では、基本的には6つなんですけれども、世界の6研究グループが一緒になりまして計算をしているということで、もう少し細かく見ると、35のシナリオのセットがあるということであります。
 これを後でご紹介します7つの気候モデルを使って予測をしていきますと、その幅が 1.4℃から 5.8℃になったということでありまして、これは、いつもついて回る不確実性の問題で代表的によく出されるんですけれども、実際、不確実性もあることはあるんですけれども、1つは多様の世界を描いたということで、我々の選択の幅が広がったという話が1つあります。
 もう一つは、先ほどお話ししたように、SO2といったエアロゾルの挙動が大分解ってきたので、それを入れ込むことによって、より精密な予測ができるようになったということで、決して科学的な不確実性が増加したわけではないということで、より我々の将来を幅広に考えていったということがあります。
 今、お話ししました不確実性というのはどんなところから来るのかということがこの表でありまして、1つは我々の人間活動が非常に不確実性で、。特に 100年後はどうなるかという話がありまして、科学者はいろいろ考えまして、「予言」でもいけないし、「わからない」ということでもいけない。だったら、今のわかる知見で将来の6つの世界像を描いて、それをベースにして考えていこう。これが1つのシナリオ分析という、科学の分野では新しい手法かと思います。そこには日本の研究グループも大多いに貢献しているということであります。人口がどうなる、経済がどうなる、技術革新がどうなる。あとは土地利用はどうなるという話です。またあとは温室効果ガスもいろいろありますので、そういった排出量はどうなるかというような話です。
 2番目は気候システムそのものの話でありまして、それは先ほどお話ししましたエアロゾルの話ですとか、最近では、すすが非常に話題になっておりますが、そういったいろいろな物質がどういう温暖化する力、あるいは冷却化する力を持っているかというところが、まだよくわかっていないところがあります。あと物理過程そのものです。雲ですとか水蒸気、水、氷です。気候システムそのものは要素の話と、要素間の相互作用がありますので、いわゆるフィードバック効果、これはなかなか難しいところがあるんですけれども、例えば温度が上昇しまして、自然生態系育成体系によるCO2吸収の低下が起きたりとか、あるいは水温上昇によって海流のCO2の吸収が低下するとか、陸と大気と海の関連性が、大分研究が進んだといえ、やはりなかなかわからないところがあるということです。こういったいろいろな不確実性を、1つ総合的な指標としてよく用いられるのが気候感度というものでありまして、これは気候モデルを使っていく際の不確実性をあらわす1つの指標になってきております。
 先ほどお話ししました植生のフィードバックの研究なんですが、これは第3次報告書にありま絵なんすけれども、CO2の増加だけ考えますと、これは植物にとっては栄養分ですから、どんどん吸収しまして、その分、大気中CO2は減ってくるんですけれども、ある段階で頭打ちになってきます。これは、植生の持つ特性でありまして、さらにこれに加えまして気候変化、いわゆる気温上昇も加えますと、どうも2050年ぐらいに、ずうっと吸収源だったものが、吸収力が弱まってくる傾向にあるということがわかってまいりました。
 第3次報告書の場合は、ここまでだったのんですけれども、最近の研究では、気候モデルと植生を扱ったような動同学的な植生モデルというものが進んでまいりましたので、両方をくっつけまして、より地球のシステムに近い形のモデル化がされておりまして、そういった研究も、この二、三年進んでおります。
 それによりますと、例えばこれは累積の炭素の蓄積量なんですけれども、例えば大気中にはどんどんCO2が溜まっていくという状況で、海も逆に今度はたまっていくという状況なんですけれども、例えば植生を考えますと、ずうっと溜まり込んでいくんですが、ある段階で、逆にたまり込みがなくなって、最後は排出源になってしまうというような結果が出ています。これは先ほど見ていただいたものに比べると、より厳しい状況になっているわけなんですけれども、それはフィードバック効果を入れたということによって、植生の役割がより精密にモデルに反映されてきたということでありまして、この研究ではフィードバックを考慮しないとした場合に比べますと、2100年時点の大気中CO2並びに全球の平均気温度は 250ppm並びに 1.5℃違うということがわかったんです。これはあくまでも1つの研究でありますけれども、最近は、こういった動同学的な植生モデルと気候モデルをカップリングした形での研究が進みつつありますので、IPCCの次の報告書、2007年にを予定されていますけれども、そこではかなりこういったものがはっきりわかってくるのではないかと思います。
 先ほどご紹介した気候感度というのは何かということで、これは不確実性の1つの総合指標ということをお話ししましたですけれども、気候感度といいますのは、大気中の二酸化炭素濃度が2倍になったときに、地球の平均気温が何度上がるか、それはある程度長期の時間で何度になったかということです。気候感度と不確実性が密接に関係ありまして、気候モデルを構成する物理過程ですとか、今、お話ししましたフィードバックの不確実性を総合的にあらわしているわけです。第3次報告書の場合は 1.7℃から 4.2℃と評価しておりますし、その前に第2次評価報告書は 1.5℃から 4.5℃、余り幅は変わらないのではないかということで、不確実性が全然下がってないのではないかという議論なんですが、実はそうではなくて、 1.7℃から 4.2℃なんですけれども、その幅の持っている意味が、より厳密にわかってきたということであります。この辺については、今、研究が進んでおりまして、最近の研究ですと、気候感度の確率分布を求める研究も進んでおりますし、IPCCでは、気候感度に関するワークショップをこの8月だと思いますけれども、やりまして、より研究を進めていくような方向でありますので、この不確実性についての評価、あるいは不確実性を下げる努力が、今後ともなされると思います。
 科学的な知見の進歩の例といたしまして、気候モデルを挙げたいと思います。1970年ぐらいから、スーパーコンピュータの発展とともに、気候モデルが進歩してまいりました。最初は大気のみを扱ったような非常にシンプルなものなんですけれども、当時の計算力からいうと、これぐらいがやっとだったんですね。その後、陸面が加わり、海洋と氷が加わり、最近ですと、かなりいろいろな要素が入った形の総合のモデルになっておりますし、将来的には、今、お話ししましたように動的な植生モデルですとか、さらに化学を入れたようなモデルの構築が、今進んでおります。これは、いわゆる要素研究と密接に結びついておりますので、逆にいうと、要素研究が進んだということで、ある程度進んだ段階の知見が気候モデルに反映されているということであります。
 今後、科学はどうなるかということなんですけれども、右端に第4次報告書の目次を持ってまいりました。第11章構成で、ほぼ第3次評価報告書の目次と同じなんですが、注目していただきたいのは、3章、4章、5章、6章に、より観測データを重視するような章がふえております。また、6章は古気候ということで、かなり古い気候を再現したときに、現在の気候や、とどうなるか、あるいは将来の気候とどう関連するなるかというのを、ちゃんとしっかり見ていこうという話です。
 先ほどから来、お話ししたフィードバックの話は、第7章の生物地球科学的な知見ということでここに入っておりますし、さらに第11章では、地球全体の予測はできたので、今後は、国あるいは日本でいいますと県とか地方レベルの気候予測が必要になってくるという、そういったところが第4次報告書では新しい話題になるかと思います。
 この辺になると、またまたいろいろあるんですけれども、気候モデルを中心にちょっとお話しさせていただきますと、1つは気候モデルそのものが進んできましたので、特に日本は、地球シュミレーターという世界で最速のスーパーコンピュータを持っていますので、そういったものを使った研究は、この一、二年は相当進むだろうという話です。
 それと、あと、モニタリングの情報が非常に重要ですので、そういった観測網が整備されて、かつ観測も精度が上がってきているという話です。さらに、気候モデルの要素、となりますようなプロセスの解明が進んでいるということで、雲ですとか、氷、エアロゾル、すす、植生フィードバックといったような、こういったプロセス研究も非常に重要でありますので、今後またどんどん進んでいくかと思います。
 温暖化が進んでいる。温暖化の原因は、どうも人間の活動であるということがわかってまいりました。もし温暖化しているのならば、いろいろなところに影響が出ているはずだろうということになりまして、第3次報告書では、温暖化の影響がはっきり出ているということを結論しております。そのうちの幾つかを挙げたわけですけれども、特に氷河ですとか、積雪ですとか、そういったものについては、かなりはっきりわかってまいりました。
 これはヒマラヤの氷河です。78年、98年、大分後退しております。
 こちらは昨年のヨーロッパの夏に発生した熱波であります。この熱波は、いわゆる異常気象なわけでありまして、これが温暖化と関係があるかどうかは、今はまだはっきり言えないということではあるんですが、大半の科学者が、やはり関係があるのではないか。その証拠探しをしているわけでありますが、一旦一たん熱波などり異常気象が起きますと、被害が非常に甚大ですので、こういった温暖化を50年後、 100年後に気温が上がって影響を受けるだけではなくて、もしかすると、明日にでも異常気象という形になってあらわれて、我々の生活あるいは社会に影響するかもしれないということであります。
 下は干ばつであります。エチオピアでは2002年の穀物収穫量は平年の20%でしかなかった。物理的な影響というのは、最終的には国の人々の影響にもつながってくるということであります。
 昨年の熱波について、もう既に4報か5報、論文とか報告が出ております。そのうちの一部なんですけれども、これはWHO(世界保健機関)が発表したものなんですが、例えば暫定値ということではあるんですが、ニュースでいろいろお聞き及びかとも思いますけれども、フランスでは過剰死亡、。平年に比べて何人余計に死んだかという値がありまして、主として熱中症によるもの、あるいは熱中症と呼吸器疾患とか、そういったものが合併した場合の死者の数が1万 4,000人です。かなり大きなダメージがあったということであります。
 その原因について、今、解明が進んでおりまして、例えばある論文はを過去 500年で見ても最大規模の熱波であったというような解析もございますし、あるいは他ほかの論文では、過去 100年の気温の分布を考えまして、2003年の熱波を位置づけてみますと、46,000年に一度ぐらいの非常にまれな現象であることがわかったということで、異常気象の中でも、さらにまれな異常気象であったということであります。今、この原因は何かということで、先ほど、温暖化との関係が取りざたされているわけですけれども、WMO――気象の総元締めですけれども、そちらの見解では、今すぐには結論は出せない、しばらく時間がかかるということであるんですが、そういう見解です。
 こういったことで、異常気象に関しての論文が半年ぐらいたちますと、続々出てまいりますので、こういったことは非常に温暖化の研究には重要になってくるかと思います。
 これは、異常気象で熱波になると乾燥しますので、干ばつと合わさって森林火災が起きます。結構、森林火災が多くて、ロシア、アメリカ、ポルトガルでは、かなりの面積が焼けてしまっているということで、これは焼けたということの経済的な損失だけではなくて、CO2が大気中にまた出てくるということでありますので、いわゆるフィードバック効果を持つわけであります。まだ森林火災の予測ですとか、それがどれだけ温暖化に影響するかということはわかっていないんですけれども、こういった実態的なものがありますので、将来的にはこういったものも含めて考えていくことになるのではないかと思います。
 このまま温暖化が進むと、将来、どんな影響があらわれるかということで、これは、ばくっとした温暖化の影響姿をあらわしたものなんですけれども、どうも2℃から3℃までは、もしかすると一部の地域あるいは一部の分野でプラスの影響、いわゆる儲かることもあるかもしれないけれども、それ以上になるとほとんどが深刻な影響という、そういう全体像になっています。
 生態系で見ますと、一部の動植物は絶滅、生態系は移動してしまうとか、農業は多くの地域で穀物生産の減少、当面増加地域もあるけれども、というのは先ほどお話ししたように2℃ぐらいまでということです。特に熱帯、亜熱帯の途上国が、こういった影響をもろに被るということがわかってまいっております。
 最近の知見ということで、3つほど挙げておりますけれども、1つは1月に発表されました気候変動によって動植物の絶滅の危機が高まるのではないか。50年後に18℃から35%の種が絶滅する。ある新聞によりますと、 100万種いなくなるという報告がありました。
 もう一つは、気候変動と人間の健康という報告書が出まして、これはCOP9で発表されたということなんですが、現在でも温暖化によって死者が15万人いるという報告で、これは非常にショッキングな報告だったと思います。産業への影響の1つになるんですけれども、温暖化によってスキー場が成り立たなくなるということで、ヨーロッパですとか北米、豪州などはスキー場の閉鎖の危機があるというような論文も出ております。日本でもこういった研究がちょっとありまして、。3℃上がると30%ぐらい来客数が減って、経済も落ち込むというような結果も出ております。
 さらに、温暖化が速いスピードで進みますと、いわゆるサプライズという、びっくりするような現象あるいはアブラクトチェンジ、突然な現象といいますか、私はわかりやすく「超異常現象」といっているんですけれども、そういった現象が起きる可能性があるということが言われておりまして、今、気候モデルを使って検討が進んでおります。
 例えば、世界中じゅうの海を2000年ぐらいかけてゆっくり回るような海流があって、それを熱塩循環というんですけれども、熱、すなわち水温差、それと塩潮ですから塩分差が駆動力となって世界中じゅうをグルーッとめぐるような海流があるんですけれども、これが止まるはもしかすると、とまるかもしれないという議論があります。して、今、気候モデルを使って研究が進んでいるわけなんですけれども、もしこの大循環が止とまりますと、寒冷化するということで、温暖化する一方で、寒冷化するとのでは相殺するのではないかという話もちょっとあることはあるんですけれども、そうではじゃなくて、気候そのものが不安定になって、一部は寒冷化、一部は温暖化で、気候システムがむちゃくちゃになる可能性もあるということです。がありまして、言葉は過激なんですけれども、そういう可能性が起きる現象ということです。
 IPCCの第3次報告書は、これに関しては、21世紀中に起きる確率は非常に小さい。ただ22世紀以降はわからないということですから、今、こういった研究も進んでおります。さらに温暖化が進みますと、ツンドラの永久凍土が溶けてとか、そういったものが急激に温室効果ガスが出るとか、あるいは南極とかグリーングランドの氷床が溶け出すというようなことも、こういったサプライズという中で議論をされております。
 影響は、その地域で大分違うのですけれども、全球レベルで影響を評価していこうということがなされております。5つの視点で見ています。先ほどお示ししました 1.5℃から 5.8℃。例えば脆弱なシステム、これは自然生態系ですけれども、1℃上がっても、自然の方には影響するということがあります。世界経済なんかは2℃ぐらいまでならば、一部の地域、一部の分野ではプラスになることもあるけれども、それを越えると悪影響、こういった図絵がかかれておりまして、そうしますと、温度範囲がなるべく低い方が自然生態系あるいは社会への影響は少なくて済むということかと思います。
 気候変動枠組条約で安定化の濃度ということが言われております。では、何ppmが安定化濃度と言えるのかということについて、科学者はまだ答えを出しておりません。気候変動枠組み条約の究極的な目標は安定化濃度に抑えるために、CO2の排出を減らすということ、そのような安定化のレベルというのは、生態系が自然に適応できる範囲、食料生産あるいは経済開発が脅かされないということを言っています。
 安定化濃度なんですけれども、これはお風呂の絵でありまして、人間から出てくる排出量が水、吸収量が植生ですとか、海洋の吸収量が下のシンクからで、この排出量と出ていく量の差で濃度が決まってまいりますから、どんどん入ってくれば、どんどん高くなってしまうんですけれども、ですから、まず、止とめるには、安定化させるためには排出量を下げると同時に、植生の吸収量を上げる工夫をしなければいけないということになるかと思います。究極的には排出速度と吸収速度を同じにするということが、1つの政策目標になってくるわけなんですけれども、こういうことで安定化濃度が、今、非常に重要な位置づけになってきているということです。
 排出量を考えますと、例えば今後 300年ぐらいで、 550ppmにするには、排出のパス、経路をこういう形に持っていかないと、排出量の安定化はできませんよ。もちろん 1,000ppmの場合、少し高目になっています。こういったことまでが、科学の分野ではわかってきております。
 一覧表にしましたのがこれでありまして、これも非常に数値がいっぱい出ておりまして、意味深いんですが、 550ppmをちょっと見てもらいますと、安定化したときの気温濃度は 3.5℃ぐらいにな行ってしまうし、例えば2300年における温室効果ガスの排出量を考えますと、今の25%ぐらいにしなければいけないということであります。 1,000ppmでも50%ですから、この表自体が複雑な表になっているんですけれども、いずれにしろ、CO2を相当削減しないと、安定化濃度には行かないということが言えるかと思います。
 先ほどご紹介があったように、イギリスではCO2は 550ppmを目標にしようと、スウェーデンでは6ガスを使って 550ppm、ドイツは 450ppmということでありまして、これを、今、目標にして、この安定化を達成するためには、どんな排出パスを通っていったらいいか、そのためには、どういう対策を組み合わせたらいいかという議論が始まっているというわけであります。
 いずれにしろ、世界全体で大幅、かつ早期に削減する必要があるということですから、世界を考えながら、日本のとる対策をとっていかなければいけないということで、今以上に難しいことを科学面でも政策面でも要求されているということになるかと思います。
 これはちょっとショッキングな図絵なのでありますけれども、これも第3次報告書に載っている、ある意味気候の持っている慣性、一旦一たん変化し出したらなかなか止とまらないという図絵であります。例えば排出量をある段階で下げたとしても、CO2の安定化は意外と速いんですけれども、温度の安定化は、またさらに遅おくれて、一番問題なのは氷が溶解けるのはという話はずうっと続くわけです。ですから、早い段階で手を打っておかないと、気候の慣性をとめることはなかなか難しい。これはポンチ絵でありますけれども、こういったことも、今、研究を進めつつあるということであります。
 これは一番最初に見ていただいた図絵なんですけれども、現象、影響、対策が三位一体で解明されていかないと、なかなか温暖化の解決には結びつかないということです。ありますけれども、そういう絵この図をもう一回確認いたしまして、最後の図絵です。
 気候政策にかかる科学的知見の示すところということで、読み上げますと、科学的観測、知見の集約は組織的に行われてきて、科学的な不確実は確実に狭まりつつある。生物、物理、科学的な現象として観測されており、変化は人為起源と見られる。変化による影響は、まだピンポイントでは推定できないけれども、生存基盤を脅かす可能性が大である。気候を安定化するには、いずれにしても、いつか温室効果ガス排出量を今より大幅に削減しなければならない。気候の慣性を、最後に見ていただきました絵を考えるますと、危険を避けるには早目の対策が有効ある。これは、いわゆる予防的な対策ということであります。
 以上、駆け足でしたけれども、最近の知見も含めた上で、温暖化に関する科学的な知見ということでご紹介いたしました。
 以上で終わります。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 今のご発言に対しまして、何かコメント、あるいは疑問、ご質問、ございましょうか。住委員、お願いします。

○住委員 一言、コメントしておきたいと思います。
 「気候感度」という言葉なんですが、気候感度そのものはモデルの不確実性をあらわす指標ではなくて、気候感度がばらついていることをもって、モデルが不確実なことをあらわしているので、気候感度そのものは、まさしく物理的な量で、CO2をふやしたらどれだけ気候が上がるかという、それは全然、そういう点では物理的デザインされた量ですので、そこのところだけをちょっと、何か、ともすると気候感度がモデルを、不確実性をあらわす指標というふうにちょっと使われているので、そこは訂正しておいてください。

○原沢委員 どうもありがとうございました。ご指摘のとおりに直しておきたいと思います。どうも失礼いたしました。

○西岡委員長 今のお話は気候のモデルの一つ一つの性能をあらわしているものではないということですね。

○住委員 1つのモデルに1つの気候感度が対応するんです。だけど、モデルをちょっと変えれば気候感度は変わる。逆にいうと、我々のモデルがより1つに決まっていないということを1つの指標であらわすには、気候感度という量は非常にいい量なので、だから、我々の自然のシステム気候感度が何度という知識があれば、当然モデルはそれに合うようにつくるわけです。だから、そういう点では、気候感度という量は物理的な量で、それがばらついているということ、それは逆にいうと、モデルの結果がいっぱい違っているということとほぼ同値なんだけれども、それを1つの目安であらわすと、それは気候感度という量を使って、代表的にそれを示しているということですので。

○西岡委員長 ありがとうございました。
 横田委員、どうぞ。

○横田委員 私は国際法、法律の専門家ですので、科学的な知見のところはわからないところが多いんですが、ただ、今のご報告で断片的に知っていたことを非常にきちっと図表、写真などを見せて報告していただいて、私にとっては大変勉強になりました。ありがとうございました。
 1つお伺いしたいのは、今のご報告は、全体として地球全体を対象にしたご報告で、これはこれでもちろん切ることはできないん大事なことですが、例えば京都議定書の交渉を見ても、具体的には国の代表が出てきて、それぞれに自分の国の立場を主張するということになると、大事なのは、気候変動の予測の中で、個々の国に対してどういう影響が出てくるか、これが実はばらばらなんのだろうと思うんのです。ですから、オランダなんていうのはが、この気候変動枠組みに非常に関心があるのは、国土の4分の1が海面下だというところから出てくるという問題があるわけです。
 そういう点でいって、日本の場合に日本の戦略を考えるとした場合に、日本にとってどういうインパクトがあるのかというところの研究がに、私、大変興味があると思っているんのですが、そういう研究がどういうふのように進んでいるのか、どのくらいの到達点にあるのかを、ちょっとお話しいただくとありがたいと思います。

○原沢委員 今、先生がおっしゃったことは非常に重要なポイントでありまして、私もIPCCの会議なんかに出ていますと、各国の代表者は、自分の国はどうなるんだと、いう話は非常に関心が高いです。IPCCといたしましては、世界中じゅうの影響研究ということにもつながるんですけれども、アジア、ヨーロッパはどうなるかということで、第4次報告書なんかも、アジア、アフリカと地域分けにしまして地域の情報を集めて、より詳しい成果をまとめ上げるという方向にあります。そういう中で日本はアジアの中にでありまして、アジアの中でIPCCとしてまとめられるんですけれども、なかなか日本だけを扱うわけにもいきません。ので、あくまでも1つの国ということで、ほかにいろいろの国がありますので、そういうところそこで日本の影響については、環境省あるいはほかの省庁も含めて、今、温暖化イニシャティブアチブという総合科学技術が主導しますプログラムが走っております。そういう中でアジアの中の日本、あるいは日本の中の影響というような視点で進められております。特に日本の中の影響については、いろいろな分野の研究が進められておりますがして、ただ、日本の食料を考えていただくと、すぐわかるんですけれども、アジアとか世界とのつながりが非常に大きいです。そういう意味では、日本に軸足を置いて、アジアあるいは国際的な視点シェアで影響を見ていくというような研究がは、今、進められております。
 そういう意味では、今、先生がおっしゃった話は、IPCCでもそうですし、国際的な研究でも、グローバルから地域、地域からさらにピンポイントまではいかないんですけれども、局所の影響についての研究は進められていると思います。

○西岡委員長 今の話にちょっとつけ加えておいた方がいいと思いますけれども、日本の影響を見ようとしますと、日本の気候がどうなるかという細かいメッシュでもって気候モデルから落とした情報が本当は要るんですけれども、これは住先生の方がなさっておられるわけですけれども、非常にまだ目が粗くて、一体、山梨県でどれだけ影響があって、東京都とどう違うかなんていう話はまだまだできない。ですけれども、原沢委員、三村委員が日本の影響ということで、この数年間、ずうっといろいろなケース、いろいろな場所、それからいろいろセクターについての研究を進めておられます。大体わかったとはいかないですが、こういうことがありそうだというのは本にもなったりしておりますので。
 甲斐沼亀山委員。

○甲斐沼亀山委員 まずは非常に包括的なご説明、本当にありがとうございました。私もこういうサイエンス部分では素人なので非常に参考になりました。
 それで、多分、私の質問が関連するのは10ページのスライドだと思うんですが、よく温暖化の話が出てくるときに、 1.4℃から 5.8℃の上昇という数字だけが一人歩きしていまして、重要なのは、この数字から我々がどのようなメッセージを受けて、何をしなければいけないという行動につなげていく部分の解釈だと思うんです。それで、この数字の見方についても、いろいろな意見が出ているわけですが、私などは本当に一番楽観的に見ても 1.4℃上昇するんだというような見方をしてしまうわけですが、今、原沢先生のご説明で、 1.4℃から 5.8という幅が、わざわざこの幅をつけようと、多様ないろいろなシナリオを想定した上で、楽観的な社会だとこうなる、悲観的な社会だとこうなる、というのをやった結果の幅だということが、すごく私は理解できたんです。
 それで、 1.4℃から 5.8という数字を、こんなに幅が広いと、これは不確実性だということを主張する意見もあるわけですが、むしろこれは、 1.4℃は一番楽観的な社会で一番楽観的なモデルの結果で、 5.8というのは一番悲観的な社会における一番悲観的なモデルの結果と見て、その間の、例えば2℃から4℃あたりが一番起こり得る今後の温暖化なんじゃないかなというふうにして解釈しても差し支えないのでしょうか。

○原沢委員 その辺は非常に難しいところと思いますが、ちょっと1つ前の絵で、これは 1.4℃から 5.8℃で、先ほどお話ししましたように6つの将来像を描いているということです。一番悲観的なところは、石油・石炭をじゃぶじゃぶ使って、そのかわり途上国も所得が上がって、所得差が大体 1.6倍ぐらいになる。ある意味、人間社会にとっては理想的な社会なんですが、そのとき 5.8℃上がってしまうという社会がA1FIです。
 一方、B1という社会は、いわゆる省エネ・省資源を徹底した循環型社会の構築ができれば2℃ぐらいにおさまるということです。
 この6つを、IPCCがこの6つれをつくったときに、より起こりやすい世界像はどれかという議論があったんですけれども、IPCCとしては、あくまでもサイエンティフィックな視点から、この6つは同程度に、確率でいうと同確率で扱ってほしいと。そうしないと、ある1つだけが注目されるということは、科学的にこのシナリオの使い方は正しくない。まずそれが1つあります。
 ですけれども、これをつくった日本の研究者グループに聞きますと、どうも3つぐらいに絞れるのじゃないか。ですから、シナリオをつくった研究者グループが、A1T、あるいはB1、B2ぐらいが、今の社会情勢を考えて、将来 100年を考えると、ほかのシナリオよりも、より起こりやすいのではないか。これはだれが選ぶかとなりますと、ある1人の科学者が選ぶわけではなくて、我々の総意としてその社会に向かっていくということだと思うんですけれども、そうしますと、B1の社会というのは2℃ぐらいです。A1Tの社会というのは3℃弱ぐらいですね。
 ですから、そういう意味で、逆に言うと、このシナリオ分析の結果というのは非常に幅広い人類の未来をあらわしているということでありまして、むしろその不確実性は、もちろん下の方と上の方は、これをあらわしているシナリオの数は少ないので、起きる確率というと、私は少ないと思うので、ちょうど灰色の部分が、より、言ってみれば起こりやすさをあらわしていると私は解釈していいと思うんですが、先ほどお話ししたように、その中でもA1Tですとか、B1とかB2、ちなみにA1Tというのは、最新のテクノロジーを入れ込んだ社会ですので、石油・石炭によらない社会という意味ですから、そういう意味では、そういう社会になっていけば2℃ぐらいでおさまる、あるいは3℃ぐらいでおさまる、あるいは4℃ぐらいでおさまるということが議論できるかと思います。
 ですから、不確実性という言葉で、楽観とか悲観というようなことではなくて、人類の将来をしっかり見据えたときの、ある幅としてを、上限と下限を示している。その中の一番起こりやすいのは何かというのは、これから議論していくのではないかなと、私は思うんです。
 ただ、これは、ちょっといろいろ解釈の仕方がありますので、私はそういう解釈をしております。

○三村委員 今のご質問に対する私の解釈みたいなものですけれども、この図は2つの要因が重ねて書いてあると思うんです。今、問題になっているのは、2つの要因というのは、科学的な不確実性がどの程度あるかという話と、それから、将来社会の選択性がどの程度あるか、この2つがあると思うんです。科学的な不確実性というのは、同じシナリオをとったときに、いろいろなモデルで使うと、同じシナリオのはずなのに違う結果が出てしまうというところが科学的なとろです。それが右端の棒のところにあって、あるシナリオで行くと、違うモデルで計算すると、2℃ぐらい違う結果が出てしまいますよというところが、科学的な不確実性というか、モデルに伴う不確実性ということになっているんだと思うんです。
 もし、そんなことは住さんに聞かなければわからないけれども、発達すると、どのモデルで計算してもほとんど差がないような結果が出るということになったらば、そういう意味では科学的な不確実性が非常に狭くなったと言えるのかもしれない。
 もう一つ、将来社会のシナリオについては、これは幾ら科学が発達してもわからないところで、将来どういうふうに社会が展開するかというのは、言ってみれば未来学というか、未来予測みたいな話になるので、それはシナリオというか、我々が想定するしかない。だから、そういう意味では、この 1.4℃から 5.8℃をもってものすごく幅が広い不確実性があるというのは誤りで、不確実性は、先ほど言いましたように、同じシナリオをたどってもモデルによって違う結果が出てしまうというところにあるのであって、全体の散らばりは、将来社会の想定の差に大きく依存している。そういうふうに考えていいのではないかなと思うんです。

○西岡委員長 幸いにして2人物理の方のモデルと、社会の方のモデルで専門家がいらっしゃいます。ぜひ一言。

○住委員 甲斐沼さんが言われたように、悲観的なモデルとか、楽観的なモデルとか、それはないんです。それはうそで、だから、同じモデルを使いましても、いろいろなプロセスの、いろいろな近似が入っていますので、それを変えるだけで、あの程度の差はある。それは研究者側から言うと、逆に言うと、今の場合の知識の中で、不確実性がないというのはほとんど不誠実な研究者であって、そんなものはあり得ないんです。我々が知らないことは山ほどあります。ある程度、知らないことはいっぱいある。それから、そういう点では、どうしても我々の知識の限界があって、ある程度の幅が出る。それをもっといろいろ議論されると、本当の意味では戸惑いがあって、表立って、まだまだ問題が不十分ですと言うと、だから信用できないでしょうという玉が飛んでくるために、いや、そんなことはないよと。だから、言い方が非常につらい部分があって、もっと言えば、完全ではなし、いろいろなわからないところがあるのだけれども、かといって全然だめでもないよ、そこそこ、信用できるんだよという、非常につらいこういう言葉を使わざるを得ないんですが、そういうことです。
 それは、ある程度、地球科学みたいな分野では、もう不可避なんですね。従来、物理の人が必ずこういう批判をするのは、1+1=2という議論ではない。それはそうなんです。絶対は地球科学のことをいって、1+1=2、もしくは実験室でやっているような科学の方法論をもって証明できたかと言われたら、絶対できません。はっきり。それは起きるまで待つのが一番いいことで、だから、そういう点では、ある種の意味で、従来の楽な単純な学問をやっているような原則で、こういう原則、それはよくある生命とか、そういうことは、多分、従来のラボ型の方法論をもってすれば、それは無理なんです。ですから、従来、学問分野では予測というのは非常に事案系ビジネスで、まともな研究者は予測なんかやらないというのが昔の常識だったんですよね。それは逆に言うと、従来の学問というのは起きたことを説明する学問なんですよ。起きたことを説明する学問。従来唯一予測が可能だったのは物づくりで、物をつくっているのはできる。あとはどうでもいいことですけれども、そういう点では、そこのところをよく社会科学というのを理解をしていただいて、この程度の誤差なんていうのは当たり前だということを、つくづくよく理解していただかなければならない。
 あと、先ほど言われた、僕は今、もうちょっとわかりやすいように言うことはできるんですね。例えば、日本の温暖化の影響に関して言いますと、水の問題が一番大きいと思っていまして、ほとんど3つなんですね。日本の、例えば水資源を考えますと、台風と、梅雨と、冬の雪なんです。そうすると、雪は暖かくなるんだから、長野とかあの辺は雪はそう降らなくなるでしょうが、そういう大ざっぱな気温です。それで一番今問題なのは台風で、台風がどうなるかというのと、台風の数は同じであっても、日本に来るかという、この問題はちょっとナイーブな問題があるんですが、そうやって絞っていけば、かなりいろいろな意味での具体的な情報というのは出せると、我々は思っているんです。
 ただ、正直言いまして、何となく我々の研究者の中には、ジアルテイビジネスと言いましたけれども、こういうポリティカルなやつに巻き込まれると、とてつもなく変な玉が飛んできたりして嫌だなという話が、雰囲気的にはあるんです。前の報告書のとき、サンパーが個人攻撃でバーッとされたことがあったりしたので、あまり表立ってパブリックに、ああだこうだと言うと、何かバーッと言われて、いやあ、面倒臭いなという部分が今まではあったんですが、これからは、ちゃんとそれはやっていこうと思っていますし、1つの道は、先ほどお話ししたようにシミュレーターが非常にある意味で出てきまして、少なくともある一定のアルゴリズムでより細かくしていけば、それなりの情報が出てきますので、そうやってやっていくしかないと思います。
 何となく、社会の側のアクセプタンスというのは問題があって、ちょっとモデルが違うと答えが変わるんですね。そうすると、どう言うかというと、それみろ、不完全だ、不確実だという。だけど、変えれば変わるのは当たり前じゃないかと思っているんです。そういうところの使う側の認識を、割と僕はこれから説得していく必要があると思っております。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。

○甲斐沼委員 先ほどの幾つかのシナリオの、どれが起こりやすいか起こりやすくないかという話は、原沢委員のおっしゃったとおり、どれも等確率で、どれも起こりう得るとしていうような形で考えられたものであります。して、このページのこの図というのは、ほかの委員の先生方もおっしゃったように、2つの情報がごっちゃになっていて入っているので、一見わかりやすく表示されていますが、情報が多いのでわかりにくい面もあります。て別の面から見るとわかりにくくなっているとおっしゃった。科学的不確実性と将来社会の不確実性が含まれています。ただ、先ほど原沢委員の方ほうで、A1T、B1、B2の3つのシナリオぐらいが、今の社会情勢を考えて、ほかのシナリオよりも、より起こりやすいのではないかとおっしゃったのですが、ぐらいとおっしゃったんですけれども、私の方の考えとしましては、今挙げている6つのたようなシナリオは等確率に起こって、現時点ではどれも起こりうるシナリオと思っています。A2はCO2の排出量の面からは一番悲観的なシナリオですが、A2社会に行く可能性はあります。現実にはA2というのが一番この中では、どちらかというと悲観的な社会なんですけれども、A2というシナリオは環境よりも経済発展に重きに置いたシナリオですが、で、だけど、実は地域ブロック化してしまって、経済発展の方もうまくいかなくて、技術も進まなくて、CO2の排出量はふ増えてしまうというようなシナリオなんですけれども、です。A1T、B1、B2というのは、どちらかというとCO2の側排出量の観点からいえば、こういう方向に進んでほ欲しいというシナリオです。、こういったいろいろなシナリオを書いた1一つの理由は、いろいろな社会の発展方向があ有り得うる中で、だけど、こういったできるだけ望ましい社会にこれから進んでいくには、先ほどおっしゃったように技術がをどういった形で導入されればよいかといったような望ましい社会システムへ進んでいく方向があり得るかというのを、いろいろな形で情報を種々の角度から提供をするという、それが1つのシナリオの役割かなというふうに感じていますことにあると思っています。

○明日香委員 ご意見をお伺いできればと思うんですが、中長期的な対策を考えるときにさまざまな不確実性があって、単純に今いろいろ削減するよりも、将来的に対策のコスト低下なり、新しい流通技術ができて、それまで待った方がいいという経済学者の議論があると思うんですが、そのような議論に対して、今、お話にあった気候科学なり生物地球科学の観点から、どのような議論が可能になりますでしょうか。

○原沢委員 私自身は、どちらかというと、影響の分野をやっておりまして、将来の経済的な効果だけを考えた安定化ですと、例えば影響面の考慮が余りされていないんですよね。関数としては入ってはいると思うんですけれども。そうしますと、例えば、自然生態系への影響から、あとは国の影響とか途上国、先進国の影響というのは、どうやって入れ込むのかな。将来の安定化濃度を考えるために、影響の要素を盛り込んだ形で考えていかなければいけない。そのとき、問題になるのは自然の価値づけ、あるいは人間の命の価値づけというのがないと、経済評価ができないんですよね。そこをどうやって政策と影響と科学と結びつけていくかというところは、今後必要になってきているのではないかと思います。ただ、影響面から見ますと、後に延ばすほど、影響は出てきておりますし、現段階では、まだ異常気象と温暖化の関係はわからないんですけれども、ただ、予防原則からしますと、そういったものも考えて、温暖化というのは中長期で影響があらわれるのではなくて、短期的にも影響があらわれる。そういった両面性を入れ込んだ上で経済評価という形になるかと思うんですけれども、やっていかないと、ちょっと温暖化の問題の影響を見失ってしまうのではないかなと思っています。
 逆に言うと、影響関係の研究は、なかなか経済評価できないものですから、物理的な影響評価までは行っているんですけれども、なかなか経済評価できないものですから、もう一歩進めない。ある意味で影響研究者と、経済の研究者が一緒になって、この問題を解決していかなければいけないと、私自身は思っていますが、ただ、なかなか難しい問題だと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 そろそろ、この科学的知見についての議論は、このあたりにしたいと思います。影響というのは、地球全体でみんながそれぞれ住まって持っているところで、場所の価値が全然変わってくるということが基本的なことでありまして、それをどう織り込んでいくかというのは、本当は最後の一番重要なところなんですけれども、議論からいいますと、ちょっと研究がおくれているような感じを私は受けております。
 また、この問題は一つ一つの枠組み等を検討する際にも戻ってくる話ではないかなと考えておりますので、またそのときに議論したいと思っています。
 横田先生、何時にお出になりますでしょうか。

○横田委員 40分に。

○西岡委員長 それまでに先生に5分のコメントをいただける予定で、次の説明を牧谷室長からお願いします。

○牧谷国際対策室長 それでは、資料5をお願いいたします。この専門委員会で、今後どのような議論をすべきかということについてのペーパーでございまして、その項目と、それぞれの論点を挙げております。
 まず全体像を把握するために、5ページをお願いいたします。これが今回、検討の全体構造でございまして、上半分が地球規模のシステム、下半分が枠組・制度の構築ということでありまして、枠組・制度の構築を今後、検討していくわけですが、その前提、準備として地球規模のシステムがいかにあるべきか、という大きな議論をいただいた上で具体論に入っていくという構成を考えてございます。
 斜体で書いてある部分は中間とりまとめでまとめられた7つの事項を書いております。まず上の方ですが、目的としては環境保全の観点からの検討ですので、中長期的に全世界、世界全体の温室効果ガスを削減するということであろうかと思います。この目的のために、「現状の認識」というところで、科学的知見の整理ということで、影響や不確実性についての認識を整理し、その上で、「目的を実現するためのアプローチ」として、どんなものがあるかということについて、ここでは3点挙げております。
 それから、「望ましい社会」については、環境と経済の好循環をどう考えるかということでございます。こういった準備の上で枠組みの検討に入っていくわけですが、まず、次期枠組みの検討に当たっての考え方、原則を検討し、それから、現在の取組の整理や、より具体的な枠組を設計する上での条件として、地球規模の参加、衡平性の確保、国際合意の上に立脚するということ、それから、国家を中心とした国際合意プロセスという条件についてのご検討をいただいた上で、「具体的な枠組みのオプション」の検討を進めてはいかがかということでございます。一つ一つについては、また資料5の1ページに戻ってご説明いたします。
 以上のような全体構造の中で、まず「目的」については、「気候変動枠組条約の目的達成」ということで、次に2番の「検討の考え方」でございます。中間とりまとめにおいて、7つの基本的考え方がまとめられていますが、さらに次期枠組みの具体論となった場合に、どういう原則、評価軸で考えていけばいいかについて、ご議論いただければと考えております。
 3番が、「科学的知見」ですが、気候変動のメカニズムや影響について、どこまで進んだか、その中で不確実性が、どこまで減少して、今残っている不確実性は、あと何があるのかというようなご議論。それから、温室効果ガス濃度の安定化レベル、それから許容排出量については、ある安定化レベルを想定した場合に、あとどれだけ排出することが許容されるのかといった議論でございまして、最終的にはこの許容排出量をどのように世界的に、あるいは時間スケールの中で負担していくのかということが、温暖化対策の検討になるかと思います。次に、これを踏まえた上で世界全体、日本のエネルギー消費や、温室効果ガス排出量の現状と将来はどうなっているのかという議論、これを踏まえると、許容排出量との間でギャップが生ずると考えられます。
 ここまでが、問題の認識と設定ということになると思います。では、それに対してどうするのかというところが2ページでございます。まず、削減シナリオについて、原沢委員のご議論にもありましたように、どのような削減シナリオを考えるべきか、安定化レベルあるいは温度上昇の上限値といった目標値を決めるということが可能適切であるか、もしそうであれば、どのような数値や行動がいいか、留意点は何かということについての議論でございます。必ずしも中長期目標を決めるということを、ここで書いているわけではございませんが、議論をすることは非常に重要であると思います。
 次に「技術の役割」については、中間とりまとめの中でも指摘されました。具体的にどのような技術が、どのようなタイミングで導入可能か、その普及開発の上での課題は何かについての議論です。
 それから、4の(1)のシナリオの議論がございましたが、このシナリオとの関係。それから、政策が果たす役割と国際協力の可能性といった議論です。
 次に、「適応」については、気候変動の影響が既に起こっているし、今後も避けられないということですので、それに対してどう適応措置を位置づけていくのか、緩和措置との関係をどう考えるべきか、ということについての議論です。
 5番の「政策アプローチ」については、1から4までを踏まえた政策形成の上でのアプローチに関するもので、具体的には地球規模での環境リスク管理をどう進めるのか、その際には科学的不確実性があるわけですが、これに対するストラテジーについての議論です。 100年先を見据えた上で50年、30年、20年と、政策をどのように継ぎ目なく、つなげていくのかという議論もお願いしたいと思います。
 6番の「経済と環境の好循環」については、今後の社会、経済の将来の発展をどのような方向に持っていくべきかということ。それから、市場メカニズムが非常に重要であろうと思われます。これについて、現在の京都メカニズムをどう発展させるかという議論です。
 ここまでが、先ほどの上半分のグローバルな部分の議論に対応しますが、以下、制度、枠組みの議論です。まず、現在の取組の整理ということで、これまでの経緯や、各国の取組の最新状況を整理すること、その中でコストの議論、排出削減コスト、影響に対するコスト、この辺は難しいというお話もありましたけれども、削減コストが高い低いというのは、結局のところ影響コストに比べた場合どうか、と議論をするのが本当であろうと思います。、この議論も、可能な範囲でお願いいたします。
 それから、気候変動対策を実施することによる副次的な利益、あるいは他の政策との相乗効果といったところもポイントになると思います。
 6.で「具体的な枠組みを設定する上での条件」のについては、中間とりまとめでも指摘された(1)「地球規模の参加」をどうしていくかということです。
 この検討に当たって、例えば各国の価値観や倫理観がそれぞれの国の政治文化に反映し、それが国際交渉の場でも現れてくるので、これを正確に理解しておくことが必要と思われます。
 それから、米国、EU、それから途上国の中でも中国、インドといった大排出国、中進国、東欧諸国、後発途上国と、それぞれいろいろな交渉ポジションがありますが、これに関する分析。その上で、将来枠組みの参加のために、どのようなインセンティブがあるのかについて、ご議論をお願いしたいと思います。
 (2)「共通だが差異のある責任原則のもとでの衡平性の確保」については、衡平性の確保には、先進国と途上国間の衡平性、先進国間、途上国間での衡平性、さらには国単位での排出総量の相対的な大きさを、どう考慮すべきかについてもご議論をお願いいたします。
 (3)「国家を中心とした合意プロセス」については、中間とりまとめの中でご説明をした論点についてのご議論をお願いしたいと思います。
 最後に、これらを総合する形での具体的な枠組みのオプションについては、考え方としては、「これまでの国際合意の上に立脚した枠組み」ということでございます。京都議定書や気候変動枠組条約の基本構造の整理が必要と思われます。京都議定書における6%、基準年90年といった数字の議論と、基本構造の議論を分離しながら、この議論をお願いしたいと思っています。
 次に、条約、議定書との関係とありますが、ここは、中間とりまとめにありますとおり、「環境保全の実効性の確保」や「地球規模の参加」といった観点から、現在の条約、議定書の仕組をどのように発展・改善させていくのかという観点からの議論でございます。
 その次に、基本構造をブレークダウンした構成要素について、例えば対象年、対象ガス等に関してどのように考えるかという議論。最後に、具体的なコミットメントの形式にはどういうものがあり、どのような長短があるかという、オプションの提示と評価に関する議論です。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 以上、原案といたしまして、こういうことを論議していこうということが示されたわけであります。内容あるいは検討の仕方、手順等々につきまして、残りの時間で検討していきたいというぐあいに考えております。
 横田委員、どうぞ。

○横田委員 私の方の都合で、最初にコメントさせていただいて恐縮でございます。ごく簡単に申し上げます。
 先ほど、議論のありました不確実性の問題ですが、これは科学的に厳密にいえば不確実性は常につきまとうということで、それをいかに少なくしたとしても、それは出てくるわけなんですが、政策的に考えますと、それを前提にしてどうするか、という問題を決めなければいけないわけで、す。その場合に出てきている1つの考え方は、ご存じのとおり、ほかの環境条約でもあることなんのですが、環境の場合には一旦破壊されると、取り返しがつかなくなるおそれがあるということを考慮して、予防原則、ちょっと先ほど原沢委員が使われた「予防」とは違うんのですが、英語でプリコーシャナリーメジャー(precautionary measure)、あるいはプリコーシャナリープリンシプルといっている、不確実であったとしても、かなり高い確率で起こりそうだということがわかっている場合には、それが起こることを前提に、それをどう防止したらいいかということを、まず合意しおく。そして、それをとにかくやる。その上で、科学的な知見がはっきりしてきた時点で、それをやる必要がない、あるいは緩めてもいいということがわかったときには緩めていくという、ことです。先に措置をとってしまうという、この考え方を、この気候変動枠組み、あるいは京都議定書の枠の中でどこまでとらえていけるのか、これはひとつ政策的な問題だろうと思います。
 それから、最初にいろいろお話があったように、最終的には交渉は国単位で行いますが、国の中のステークホルダーズ(関係当事者)というのがいろいろあるということで、企業もありますし、NGOもありますし、そのほか自治体とかいろいろなものがあるわけですが、多分、これをどう集約していくかということが非常に難しくて、国家としても、最終的にはこれが方針だと出てきたとしても、国内の人たちがみんなそれを合意しているわけではなくて、真っ向から反対する意見もある中で、多分、整理一本化されていくのだろうと思います。
 この問題は、すべてのステークホルダーズが、とにかく協力しなければいけない分野ですので、できるだけ関係者が合意できるような仕組みをつくらなければいけない。したがって、国の政策を立てていく場合には、可能性のある関係者から意見聴取をして、それを取り入れる形でもって協力してもらう体制をつくる必要があるという気がいたします。その意味では、私たち専門家の議論だけではなくて、実際に影響を受ける人たちの意見を十分に聴取する必要があると思うんのですが、その場合に、非常に重要なのは、私、さきほどちょっと質問した点なんのですけれども、具体的に日本にどういう影響があるのか、日本の国内の誰に、どういう影響があるのか、これをはっきりと、これも不確実性の枠の中ではありますけれども、ステークホルダーズにはっきり示して、産業界にも実はこういうマイナスの影響が出てくる確実率が非常に高いんです、ということをはっきり理解してもらう。産業にもいろいろあるわけですから、それもまた個別に考えていく。これを絶えず緻密にやっていかないと、関係者の同意を得ることが難しいのかなという気がいたしております。
 あと、二、三ですが、経済の問題だけに議論を限ってはいけないということも指摘しておきたいと思います。技術と経済だけに限ってはいけないということは大変重要な点で、先ほども委員どなたかがおっしゃられたように、価値観とか人々の生活スタイルとか、そういうことも十分に考慮を入れた政策にしていかないと、実効性が伴わなくなるという気がいたします。
 その上で、経済が果たす役割は非常に大きい。それから、技術の果たす役割が大きいんのですが、その部分については、私の専門の方からいいますと、研究を進める場合の研究費の問題がひとつありますけれども、。やはりこれは国家的な事業ですから、国はもっとこういうところに予算を割いて研究費を出してもらうということはが大事なんですが、。ところで、実は特許の問題が1つあって、特許があることによって企業は研究意欲が出てくるわけなんのですが、他方で、企業が特許をとりますと、ほかのところがその技術を使えなくなって、せっかくいい技術であったとしてもお金を払わなければ使えないということで、人類全体は、使えない分、不利益を被るんのですが、企業はそれで利益をこうむ得る。企業の言い分は、自分たちが金を使って、これを開発したのだから当然だということになるわけですが、世界全体の環境政策ということからいうと、これは問題があるのだろうと思います。この技術と特許の関係を、きちっと制度的にはっきりさせる必要があるのではないかと思います。
 一応、最初ですので、これだけで終わりたいと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかの委員の方のご意見を……。工藤委員、どうぞ。

○工藤委員 かなり幅広にやるのに、この期間でできるのかと懸念したというか、大変だなと思いました。ったんですけれども、1点、ちょっと確認させていただきたいのんですが、最後の方の4ページあたりの説明のときに、具体的なコミットメントの正式な評価、先ほど、最初のご挨拶あいさつにあったこの委員会の位置付けなのんですけれども、こういったオプションには、様々なものいろいろな事があってりますよね。それはどういう内容であるって云々という、そういうことをちゃんといろいろな意味で分析することとした形でやりましょうというところまでは認識しておりました。いたんですが、しかし、そこからさらに「評価」という言葉が入ってくると、ある程度方向性を出していくというようなことに近くなるような気がするのんですが、その位置付けだけ、ちょっともう一度確認させてください。
 そういった意味で、将来のフレームワークについての話も、いろいろなところで既に議論がどんどん進んでいるという現状がありますので、そうしいったものをきっちりレビューした上で、どういったオプションがあるかという議論を行うといったプロセスを経るといった進め方がませんと、若干関連のときに進んでいっちゃうと、なかなか先が見えなくなっちゃうと思いますので、その辺は大事であるかなという気がします。
 それから、今、私はも将来的にはいろいろな排出量を減らすしていくというミティゲーションやの話であるとか、適応の方も含めてなんですけれども、技術のみたいな要素がもかなり大事だと思っていて、そうしたいった技術をどう活用していくかというフレームワークの考え方と、実際にそういった技術に対して、いろいろ貢献した、そういったことに対して努力した主体ことの主体がいろいろ評価されるような、報われるような、そういったフレームワークの考え方をみたいな中心にプリンシプル的なものを、ある程度考える必要があるのではないかなという気が、個人的には思いします。
 それから、最後に、実は私もパブコメ上で実は申し上げたのですが、5ページの、先ほどの科学的知見の認識の話なんですが、本当にここの図で示された地点で行うという認識でいいラインであるのかなと。私僕はもしかしたら、もう少し違っていて、究極目的の達成云々という、議定書の前の条約の方の、そこのところについても社会的な認識実はまだクリアになっていないのではんじゃないか。ここまでやらなければいけない、その目的に向かってやりましょう、ということは理解されていたとしても、科学的に具体的なところは実はまだよくわからない。そこにいろいろな科学的な不確実性存立性がありるのであって、そこのところがなかなかクリアにできないからこそ、それぞれの主体からが、ある意味、いろいろな意見が出てくるのでは集約のあるところもあるんじゃないか。そのため、そこら辺の認識は科学的知見の、先ほど来、出ている不確実性を、科学的視点いわゆるサイエンスの世界から、社会もしくは交渉の世界にどの様にうやって伝えていくのかんですかといった議論のことも含めた位置というのは、実はここではなくて、もう少し上にあるのんじゃないではないかな。科学的不確実性を社会的な認識の合意に持っていく話はそのくらい、実は大きないポイントではなんじゃないかなと個人的には思っています。

○西岡委員長 時間がございませんので、ほかに意見を……。

○新澤委員 5ページにの、まず地球規模の上から下に矢印がありますけれども、上の方は、やや抽象的になりがちなものではないかと思います。むしろ、何回、これをやるかわからないんですけれども、下の方で実際に、今、いろいろな国がやっていることを積み上げていく、という支店も必要ではないかと思います。むしろ、私は経済ですので、対策には空間では必ずコストが必要で、自然的な影響の話は、先ほどあったんですけれども、コストをどの程度負担しようとしているかというのは、現在の議論を見れば、ある程度わかると思うんです。そういった、現在、例えばEUで、今、排出源権取引の議論をやっているんですけれども、ああいう中そのなかでどういう議論が行われているかとか、京都メカニズム、京都議定書が発効しなくてもCDMにつなげますよとか、ああそういう議論があって、既にその中に、2013年以降の枠組みに関して、絵が出始めているということを、思います。この図でいうと、ボトムアップ、下から上へ持ち上げるような視点というものも起きて持っていいのではないか、というふうに思います。
 ちょっと抽象的な言い方なんですけれども……

○三村委員 全体の枠組みの中で、ちょっと私が思いますのは、4ページの具体的なオプションというところの書き方が、意識としてはミティゲーションというか、排出削減をどうするかというところに、かなり焦点が絞られているんじゃないかなと思うんですが、全体の感じからすると、排出削減と適応を、どの程度バランスをとるのか、適応策をどの程度含めるのかというのは、かなり大きな問題になるんじゃないかなと思います。
 というのは、前の方の2ページのところで、政策形成のためのアプローチの中で、地球規模での環境リスク管理をどのように進めるかという論点は非常に大切で、例えばこういう観点であれば、米国あるいは途上国も含めて非常に合意しやすい、そういう観点に立ったら、単に削減するだけではなくて、出てきている影響にどう対応するのか、というところまで含めて考えてほしいという論点はすぐに出てくると思うんです。
 それで、5ページのこの枠組みの構図を見ますと、上の地球規模のシステムの中には、例えば現状の認識で、科学的知見の整理、影響や不確実性の問題とか、目的を実現するためのアプローチというところで、適応対策の位置づけとか、そういうことが書いてあるんですが、下の枠組み制度になってくると、その部分がちょっと弱くなっているというか、落ちているような感じもあるので、それは今後の議論だと思いますけれども、どの程度のバランスというか、どういう組み合わせにするのが、一番世界的に合意が得やすいかというようなことを考えるべきではないかなと思います。
 それとの関連で、4ページ目の、ちょっと細かい話ですけれども、構成要素の中に、対象年、対象ガス、基準年とか、要するに排出削減を考えたような項目が入っているんですが、例えば各国に、自分の国の影響評価して、その対策費が幾らだと考えますかとか、その対策費を捻出するためにはどういうふうにしたらいいでしょうかとか、そういうことまで枠組みの中で答えてもらうようにすれば、おのずと排出削減のための対策費と、影響のための対策費を各国が比べなければいけなくなる、そういうような形で今のような要素を持ち込むことも可能なんじゃないかなと思います。

○明日香委員 私は「参加」という言葉にこだわっているんですけれども、参加というのは、もともとアメリカが途上国のミーニングフルニフル・パーティシペーションという言葉を、途上国が意義ある参加をしていないという経緯で使って、そのままミーニングフルニフルが抜けてしまって、参加が、何となく途上国の問題を考えるときにも参加していない、というような文脈で使われていることが多いと思うんですけれども、これは途上国にとっては話が違う話でありまして、途上国は参加していると主張しています。考え方としては、「参加」というよりも、それぞれの国が応分の役割というんでしょうか、そういうことを考えていく、というふうに話を具体的に持っていった方が、あいまいな姿勢を排除できますし、より具体的な道筋が、途上国の中にもいろいろな国がありますし、先進国の中でも日本の役割、アメリカの役割というのがありますので、そこら辺を考えれば、「参加」という言葉はもうちょっと気をつけて使うなり、使わない方がいいんじゃないかなとは思うんです。
 あと、地球規模の参加というのも、必ずしもみんなが参加すればいいという単純な話ではありませんし、現実的な、政治的な状況を考えれば、いろいろな分担的部分的な参加の仕方も念頭にしていった方がいいし、必ずしも地球規模参加が絶対条件であって、かつそれがベストであるとか限らない。かえってマイナスになることも、参加の仕方によってあるかなと思います。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 他にございましょうか。
 それでは、大体ご意見が出たようです。幾つかございましたし、横田委員の方から非常に全体的な話がございました。それから、工藤委員の方では、数点、気をつけなければいけないところ、新澤委員の方からはボトムアップのフィードバック、それから適応対策をどう入れるか、それから参加ということの意味、いろいろな参加の仕方があるということを念頭に置いて、我々、論議しなければいけないかというような話かと思います。
 工藤委員に1つ質問があるんですが、最後の条約の大基のところとの科学的知見という意味は、どういうことでしょうか。

○工藤委員 先ほどの不確実性の話をしているときに、要は何ppmにしたらいいとか、どのくらい温度上昇があるかといったような、そういったようなものの科学的な解釈と、実際、それらの情報がを前提として世の中に出ていく際にのは、例えば実は具体的な数字として、例えば 450ppm℃だ 500ppm℃だということが、あるべき云々ということを、違う解釈で消化系統で消化して花が咲いていると使われていたりするのではないかしていて、それが逆に言えば、その結果として本当にそうなの? という疑問もことも当然出てきてしまっているのではないかということですなと。だから、温暖化問題に取り組んでいくというこの絵姿が望ましい世界という、そういったような概念というのに対しては、皆みんなそれぞれ否定はしていないんだと僕は思っているのんですが、具体的な中味の話になったときに、科学的な知見が、必ずしも明確に伝わって、かつ評価されていないのではないかということがある。って、そういう意味では、社会全体ではまだ具体的な将来のに向かっていく方向性に関するの中の科学的な評価はというのは、私自身はまだ固まっていないのではないかと思うのです。例えばIPCCではこう述べているいうことを言っているけれども、そうではない実はこうじゃないですかという科学者の批判もみたいなものも、まだところどころ出てきたりするわけです。そういったの状況はを、私自身はそっちの方の専門家ではないので、よくわからないんですけれども、はたから見ていると、科学的にそれはまだよくわかっていないのではないかなという様ふうにも見えてしまう。これが社会全体の現状なのではんじゃないかと個人的には見ています。間違っていたらゼンコウしてください。

○住委員 全般にかかわることなんですが、西岡さんが最初言われたように、国際戦略というのがどういう意味かという問題で、多分、これをちょっと見たときに、どこまで書けばいいのか、国益というか、日本国にとってどうかというのが、非常にきれいなあれに思えるんですけれども、恐らく、僕は、多分一番問題になるのは、例えば、露骨に言えば、多少他がだめになっても、うちだけ、日本だけ生き延びればいいと国民は思っているかもしれないわけだから、だから、その辺のところを、要するに日本の国としてどう転んでもいいからどうだというのは、そういう部分が、どうするのか、ちょっと気になる。ものすごく、スーッと書かれているような気がするんですね。だから、国際的で非常に麗しくていいんだけれども、本音ベースでいったときに、ちょっとそこが僕は気になりました。

○西岡委員長 他にございましょうか。
 それでは、牧谷さんの方で、今までのご質問に対して何か……

○牧谷国際対策室長 多くの有益なご意見ありがとうございました。
 1点、私から、工藤委員からのご質問についてお答えしたいと思います。最後に、4ページのコミットメントの評価とあるという点のご指摘でありましたが、冒頭申しましたように、この専門委員会のマンデートは、来るべき地球環境部会での審議に備えて、必要な情報や資料を分析収集するということです。したがって、本専門委員会において、これが良いとか悪いとか、確定的なレコメンデーションをいただく必要はございません。「評価」という言葉が、そのようなイメージを与えたのかもしれませんが、特徴を整理するというところまでと理解しております。
 以上です。

○西岡委員長 私も「評価」というのは、例えばこういう手を打ったらこういう数値になりますよという話はやっておくべきではないか。それをどう、どれを選ぶかは我々の仕事ではないのではないかなという具合に解釈をしております。
 それから、主体が評価されるようになって、非常に重要な話で、これは日本という国も1つの主体でして、これからちゃんと評価されるようなというか、そういうことも多分ベースラインにはかなりあるんじゃないか。私、一番最初に、国際戦略の「国際」というのは世界全体なのか、1つとして、それが一番理想的なものをつくっていく、これはむしろ国際政治学のいろいろなカテゴリーの中に、そういう話があるみたいですけれども、そういう1つのものをつくっていくのか、あるいは単なる国という、あるいは国ではないものの烏合の衆の集まりで、自然にそういう形になっていってしまうものなのかとか、あるいはどこかの国がリーダーシップをとって決めていくようなものなのか、多分いろいろな論議があって、その辺が我々の議論の非常に大きなベースになっているんじゃないか。しかしながら、こういうことを言ってはいけないのかもしれませんが、やっぱり国益というのは、1つのベースラインとして大いに論議をしていくべきではないかなという具合に思っております。これは今のところの個人的な意見でございます。
 小島局長どうぞ。

○小島地球環境局長 最初の会合ですので、議論の方向についてお話をいたします。科学的な知見の議論については、いわゆる条約の究極目標の安定化レベルについて、現在、まだ日本ではそれほど議論にはなっていませんが、今後の交渉の中で、どのレベルを安定化の目標と置くのか、大体どの辺を念頭に置いて議論するのか、ということが非常に重要なことだと思っています。それから、タイムスケジュールについて、地球全体を考えたときに、どのくらいの時間が残されているのか。この安定化レベルと、タイムスケジュールという2つの軸をフレームとして念頭に置いて、次期枠組みを考えるということが必要だと思います。また、交渉の問題では、EUの議論については先ほど少し出ましたけれども、今言ったような議論が交渉の場で今後出てくるということは当然想定をされるところで、そのときに日本側としての考えを何も持っていないというわけにはいかないだろうと思います。
 安定化レベルに関する意見については、いろいろな幅がありますし、どういう影響があるかを明らかにしていく上でも、科学的な知見の強化というのは非常に重要なことです。EUの議論においてもそうですが、長期的なゴールがなければ、低い安定化レベルであっても達成が難しいという側面もあります。先ほどの原沢先生の議論で、科学的な不確実性と社会の不確実性と2つの不確実性の議論がありましたが、社会の不確実性は、学問から言えば未来学かもしれませんけれども、交渉のサイドから言えば、国際交渉を通じて、どういう社会にしていくかという、いわゆる我々自身の決定が不確実だから社会の不確実性にもつながるわけで、学問の対象とされる現実の政治プロセスから言えば、そこをどういう交渉で決めていくかという問題だろうと思いますし、IPCCからの政策決定者へのメッセージというのも、そういう趣旨だろうと思っています。それが1点目です。
 それから、2点目は、日本への影響の研究は、先ほど原沢先生がおっしゃいました日本固有の影響と、日本の生活というものが世界と非常に強い相互依存関係にあって、生態系、食料、経済活動という3つが気候変動枠組条約の究極目的の部分には書いてありますけれども、食料というのは外国から輸入しているものも多いわけですから、日本だけ大丈夫であっても、食料の供給先がだめになってしまうと、輸入できない。お金でかき集めてくるという人もいますけれども、そもそもないとかき集められないわけですから、国益という観点からは、現在、世界と相互依存関係が非常に緊密な日本としては、どこまでのレンジで日本への影響というものを考えていくのかという研究も必要であろうと思います。
 それから、3つ目は、持続可能な開発を達成する状態に持っていくということが安定化であるということだと思いますけれども、先ほど議論がありましたように 1.4℃あるいは2℃、3℃という気温上昇、気候変化が避けられないとすれば、当然その影響が出てくるということに対して、緩和に加え適応が、次の大きな問題となってきます。気候変化が避けられないという議論を前提にすれば、緩和と適応の2つが議論の両輪になってくると思います。特に途上国は、適応に関心を持っていますから、適応に関する議論はもう少し深堀していただいた方がいいのではないかと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 あと少々ございますが、何か……。三村委員。

○三村委員 今の小島局長のご発言に二、三コメントさせていただきたいんですが、まず、安定化レベルの話ですけれども、何ppmにしたらいいかというのは、私の考えでは、影響から見て、何度上昇したら致命的なというか、耐えられない影響があらわれるかということにかかってきていると思うんですけれども、少し難しいのは、いろいろなセクターとか国によって耐えられる限界の温度上昇とか、海面上昇のレベルが違う、そういうところがあるので、その辺は少しこの場でデータを整理して、我が国にとっては、どの程度の温度上昇が非常に大きな甚大な影響を及ぼすのかとか、それが途上国に行った場合にはどうなるかという、そういうことを議論する必要があるのではないかなというふうに思います。
 例えば、1つだけ例を挙げますと、陸上の生態系というのは徐々に変わっていくということですが、海の中でサンゴ礁が痛めつけられる温度は、実は水温が現状から1℃ぐらい上がったら、もう相当程度白化が起きて、サンゴ礁の生態系は非常にダメージを受けるというデータもあるので、ものによって、考えなければいけない安定化レベルというのは違ってきているかもしれない。そういうものを総体的に見て、どうなのかということをちゃんと捉える。社会現象でいうと、日本の国にとっての安定化レベルというのはどういうもので、途上国にとってはどうなのか、そういういうところをきちんと考えることが必要ではないかと思います。

○西岡委員長 それでは、大体時間も参りましたので、この辺で今日の議論はお終いにしようかと思っております。一番、私としては望みたいのは、なるべく、余り固定観念にとらわれないで、自由に幅広に検討していきたいというのが1つ。それから、参加とか公開とかいろいろな言葉もございますけれども、多くの人の衆知を集めていきたいということを考えております。
 今後の予定につきまして、何かございましょうか。どういう手順といいましょうか、ステップでやっていくか……

○牧谷国際対策室長 次回は、冒頭ご説明しましたように5月中下旬を予定しております。決まりましたらご連絡をしたいと思います。3回目以降については、状況を見ながらセットしてまいりたいと思います。

○西岡委員長 冒頭にございましたように、もしCOP10を1つの仲介になるかどうかわかりませんけれども目標として、とりまとめていくとなりますと、かなり厳しいスケジュールステップになるかと思いますので、皆さん、よろしくご協力ください。
 それでは、本日の会議はこれで終わります。
 どうもありがとうございました。

午後12時00分閉会