気候変動影響評価等小委員会(第17回)議事録

日時

平成29年10月25日(水)13:00~14:30

場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター ホール13B

議事次第

1.開会

2.議事

(1)有識者からのヒアリング

(2)その他

3.閉会

配付資料一覧

資料

  議事次第 [PDF 24KB]
資料1

バロネス・ブラウン様 ヒアリング資料 [PDF 686KB]

参考資料

参考資料1

気候変動影響評価等小委員会 委員名簿 [PDF 95KB]

議事録

午後1時 開会

木村気候変動適応室長

 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第17回中央環境審議会地球環境部会気候変動影響評価等小委員会を開催いたします。

 初めに、環境省地球環境局長の森下よりご挨拶申し上げます。

森下地球環境局長

 環境省の地球環境局長、森下でございます。

 本日はお忙しい中、また足元の悪い中、お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。

 本日は、英国気候変動委員会副会長、そして適応小委員会会長のバロネス・ブラウン・オブ・ケンブリッジ様をお招きしております。ご参加いただきまして、本当にありがとうございます。

 バロネス・ブラウン様からは、英国における気候変動影響評価と適応に関する制度の概要、とりわけ2017年に策定をされましたCCRA2という第2次気候変動リスクアセスメントレポートの概要、あるいは適応計画の進捗評価レポートについてご紹介をいただくことになってございます。

 我が国におきましても、この小委員会においてご審議をいただきながら、最新の科学的知見を整理しまして、2020年を目途に第2次気候変動影響評価を行うこととしておりますので、非常に参考になるものだと思われます。また、適応策の充実・強化に向けて、気候リスク情報の基盤整備を進め、各分野で適応策を促進するための法制度についても、現在、関係府省庁とも検討している状況だということもご報告申し上げておきたいと思います。

 今日、ご紹介をいただきます英国の先進事例、これは我が国で気候変動影響評価、適応策の充実・強化を進めていく上で非常に重要なもの、参考になるものだというふうに思っております。ぜひ、委員の皆様方にも、活発な意見交換をよろしくお願いをしたいと申し上げたいと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。

木村気候変動適応室長

 本日の会議でございますけれども、地球環境部会の浅野委員にもご出席いただいております。

 なお、本日の審議は公開とさせていただきます。

 初めに、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第がございまして、資料番号は打ってございませんけれども、本日のヒアリング資料でございます。それから、参考資料1といたしまして、本小委員会の委員名簿がございます。

 資料の不足等がございましたら、事務局までお申しつけください。

 本日は、有識者として、英国気候変動委員会副会長/適応小委員会会長のバロネス・ブラウン・オブ・ケンブリッジ様にお越しいただいております。バロネス・ブラウン様は、エンジニアであり、また英国の貴族院議員、王立協会員でもいらっしゃいます。

 以降の議事進行につきましては、住委員長にお願いいたします。

住委員長

 それでは、時間の限りがございますので、早速議事に入りたいと思います。

 本日の議題は、有識者からのヒアリングとなります。

 まず、バロネス・ブラウン様から、英国における気候変動影響評価と適応政策について講演をいただきます。その後、委員との意見交換に入ります。講演、意見交換ともに、逐次通訳が入りますので、ご留意ください。コメントをされるときは、簡単に、シンプルに、かつ、ゆっくりと、通訳の人が困らないように早口でしゃべるようなことはやめていただきたいということですので、よろしくお願いいたします。

 では、よろしくお願いいたします。

バロネス・ブラウン氏

 ありがとうございます。まず、マイクなしで話したいのですけれども、十分聞こえますでしょうか。よろしいですか。

 本日は、ご招待いただきましてありがとうございます。

 日本がまさに適応・緩和、両面につきまして、どういう取組をされておられるかということを伺うことは大変興味深いことでありまして、ぜひ有用な情報を今回学ばせていただいて、本国に、英国に持ち帰り、そちらの取組の参考とさせていただきたいと願っております。

 それでは、最初に気候変動委員会の適応小委員会(ASC)の活動についてご紹介させていただきます。

 ASC(適応小委員会)は、独立した、政府に対して助言を行う機関でありまして、2008年の気候変動法に基づいて設立されました。我々は、この気候変動によって英国に対して提示されているリスクに関して、政府に助言を与えております。また、そのリスクに対して、英国での準備の進捗状況のモニタリングも行っています。したがって、二つの役割を果たしているということ、第一に助言を与え、第二に政府の進捗状況のモニタリングを行っています。したがって、我々は専門委員会でありまして、規模の小さな事務局によってサポートを受けております。事務局のほうでは、分析を行い、モニタリングを行っています。

 それでは、小委員会のメンバーについてご紹介させていただきます。私が委員長を務め、Ece Ozdemirogluが環境経済学者、そしてJim Hallはシビルエンジニアでありまして、Anne Johnsonは医学関係の実務家、そしてRosalyn Schofieldは食品会社のカンパニーセクレタリーをやっている弁護士、そしてGraham Wynneは環境運動家であります。

 これが、ASCが果たしている役割です。5年ごとに、英国政府は議会に対して、気候変動によって英国が受けているリスクの評価を行います。したがって、5年ごとに、英国においてはCCRA(気候変動リスク評価)を行います。このリスクに対応して、政府が議会に対してNAP(国家適応プログラム)を提示しなければならないということで、このプログラムにおいては、さまざまな英国へのリスクに対する対応策が挙げられているということです。したがって、CCRA(気候変動リスク評価)が発表された翌年には、政府はNAP(国家適応プログラム)を作成しなければならないとされています。

 2年ごとに、ASC(適応小委員会)は、このNAP(国家適応プログラム)に関しての法定報告書を出すことになっています。そして、5年ごとに、ASCはCCRA(気候変動リスク評価)に関する情報としてエビデンスレポートを出すことになっています。今年、ASC(適応小委員会)では、第1次のNAP(政府による国家適応プログラム)に関する第2次CCRA報告書というのを出しました。そして、この6月には、我々はNAPに対する報告を行いました。そして、今年の1月には、政府は議会に対して第2次の英国のNAPに関する報告書を提示いたしました。それ受けて、来年には、このNAPに対するレスポンスとして、政府は第2次NAP(国家適応プログラム)を策定することになっています。したがって、法律で定められている仕組みのもとで、今、まさに2回目のサイクルに突入しつつあるところです。

 それでは、次にCCRA、それから我々ASC(適応小委員会)が政府に出したエビデンスについて、もう少し説明をさせていただきます。

 政府に対してエビデンスを提示するに当たって、政府のほうから、次回のNAP(国家適応プログラム)においては何が優先事項とされるべきなのか、という質問を受けました。

 CCRA1(第1次気候変動リスク評価レポート)においては、洪水リスクと水不足という、水に関連した二つの極端な状況にテーマが集中しておりました。CCRA2(第2次気候変動リスク評価レポート)においては、より包括的な範囲が対象とされておりまして、外から英国に持ち込まれるリスクと、英国の国内の発生のリスク、両方に光を当てます。外から持ち込まれるリスクとして、国際的な面からの影響についても、CCRA2におきましては検討されまして、特に貿易のルートに対する途絶、その中でも特に輸入食料供給に関連したリスクを取り上げました。英国国内のリスクといたしましては、やはり再び洪水リスク、水不足、極端に高い気温、分野横断的なリスク、海水の上昇が取り上げられました。

 政府に対して、六つの重要分野を第2次の国家適応プログラムにおいては取り上げる必要があると指摘しました。そのうちの五つの分野というのは、即時に、行動(アクション)をとる必要があるもの、それから、もう一つにつきましては、長期的な課題なので、今の時点からリサーチを開始するべきだという分野です。二つの分野、洪水と沿岸の変化につきましては、地元のコミュニティと企業に対して影響が出るということ、それから高温によって実際に生産性や健康に影響が出ると考えられるもの。自然環境のリスクとして我々が指摘したのは、地表、沿岸並びに淡水の環境、そして、非常に重要なのが土壌の質に対する影響が挙げられました。次に国内と国際的な食糧生産に対するリスク、つまり英国が輸入している食品・食料に関するリスク。最後に、将来発生するリスクとして、もっとたくさん資金を投資する必要があるという分野につきましては、新しい種類の病害虫並びに疾病、それから、新規の外来種ということで、英国で気候変動によって今まで国内に存在していなかった種が入り込むリスクです。これが政府が受け入れた六つの優先分野ということで、来年公表が予定されております第2次NAP(国家適応プログラム)のベースとなるものです。

 それでは、政府が提示する国家適応プログラムは、どういう形をとるかということを示したいと思います。これは第1次の国家適応プログラムにおける七つのテーマです。建築環境、インフラ、健康、農業・林業、自然環境、ビジネス、それから地方政府です。複雑なプログラムとなっておりまして、七つのテーマそれぞれにつきまして、四つから六つの目標を掲げられていて、それぞれの目標に関して、とるべき具体的な行動(アクション)が示されており、第1次のプログラムにおいては、370のアクションを英国の政府が気候変動関連のリスクに対してとるとされています。2年ごとに、我々、ASC(適応小委員会)のほうで、それぞれのアクションについての進捗状況に関してモニタリングを行います。

 気候変動の緩和を行って、排出量削減に関連したアクションについてのモニタリングを行うのと比較すると、皆様その辺はおわかりいただけると思いますけれども、適応の分野についてのモニタリングを行うほうがずっと難しいことです。適応におきましては、単純な目標(ターゲット)というのは存在しておりません。英国をよりレジリエント(強靭)にしようとしているのですけれども、そのレジリエント(強靭)ということに関しては、単純な定義はありません。

 例を挙げれば、農業におきまして、各土壌がレジリエント(強靱)であることを、気候変動の中で生産性を維持するために確保しようとしているのですが、それに対する単純な指標はありません。何がレジリエント(強靭)な土壌なのか、強靭な土壌というもののはっきりした定義がないと、それに対するアクション(行動)に関して達成できているのかどうかの判断も難しくなってしまいます。また、それに加えて気候の予測は不確実であるということ、また、気候のインパクト(影響)が地域レベル(ローカルレベル)で出ているということが、さらに難しくしています。

 既に最初のサイクルは完了しました。我々は、まさに学習の道のりであったと捉えています。それを受けて、2回目のサイクルの実効性、効果というのをさらに向上させていきたいと思っていますが、適応の分野における目標をよりクリアに理解するためには、さらなるリサーチが必要だと考えています。気候変動に対する脆弱性を評価するに当たってのフレームワークというのが存在しておりまして、そのフレームワークのもとで、さまざまなリスク要因、また、適応に関する行動(アクション)によって、リスクをどの程度削減することができたのかということを見ようとしています。

 英国政府が採用することを期待する政策は3種類ありまして、その一つ目の分類というのは、後悔しないか、後悔を少なくするためのアクションであります。また、状況を固定化(ロック・イン)してしまうようなことを避けるための政策の決定というのがあります。一つ例を挙げますと、現在、英国においては、かなりの件数の住宅を増やしていますが、今から建設する住宅については、高温に対して適応できるような設計にしようとしています。主要なインフラに関しての政策は、長年のリードタイムがかかるものがあります。例えば、今テムズ川における水を止めるための壁、遮断する壁のようなものがありまして、それはロンドンにおける洪水を予防するのに絶大なる効果がありますけれども、計画されたのは1960年代で、実際に建設が完了したのが1984年ということですので、20年間の企画、建設期間を経たということで、長年のリードタイムがあるインフラにつきましては、今から検討を進めておかなければいけません。

 政府の国家適応プログラムを小委員会で評価するに当たって、次の三つの質問をしています。まず、各分野に関してプラン(計画)があるのか、それから行動(アクション)がとられているのか、そして、とられている場合には、その脆弱性を削減するのに効果を発揮しているのかどうかです。また、我々が今年に入って国家適応プログラム(NAP)についての2回目のレビューを行ったときに、単純に分析をしたところ、英国政府がとったアクションということに関しては、かなりの進捗が見られました。アクションについては、それを完了しているか、あるいは順調(オン・トラック)に進んでいるということで、そういう意味では、進捗状況の評価はよかったということになります。したがいまして、最初の質問である、アクションがとられているかということに対することはイエスだったのですが、我々にとって一番の疑問というのは、これらのアクションについて、脆弱性を削減していることになっているのかどうかです。

 しかし、我々が行った2回目の評価(CCRC2)ということに関しては、この疑問点に関しては失望させられるような答えが返ってきて、リスクはむしろ上昇していたわけです。そして、気候変動に対するコミュニティが抱えている脆弱性というのは、むしろ高まっていて、自然環境は悪化していました。特に脆弱性で問題があったのは、まず、地表水に関する洪水、それから、高温によって、人間、そしてコミュニティが受けているリスクです。また、自然環境ということで懸念されるのは、ピート(泥炭)と土壌についての劣化が見られたということや、ポリネーター(送粉者)などの重要な品種というのが減少しているということです。

 したがって、私どもが行った2回目の報告においては、脆弱性の削減の進捗ということでは、ご覧のように赤の部分、つまり懸念するべき部分というのが、まだかなり目立って拡大しています。実際に、緑で示されているように、アクションをとるということに関しては進んでいるにもかかわらずです。今年、我々が行ったレポートにおきましては、現在のNAP(国家適応プログラム)でとられているアクションについては、脆弱性を削減するためには、まだ不十分であると言えます。

 それでは、特に懸念するべき分野をご紹介していきますけれども、まず、地表水の洪水、土壌の健康、農地に関しての生物の種の多様性、泥炭土の健康状態に対するインパクト、商業漁業であります。重要な分野で、まだ評価にするために十分な情報が集められていないのが、デジタル通信、インターネット通信の面での強靭性です。このプロセスで我々が学んで、第2回目のサイクルで生かしたいと思っているのは、このリスクに関しての評価のあり方です。来年、政府が新しくNAP(国家適応プログラム)を採択するのを今後待ちたいと思っていますけれども、一つ学んだ点としては、適応の分野における優先課題をより明確に示していかなければいけないということです。また、それぞれの目標ということに関しては、より明確かつ測定可能にしていかなければいけないということです。

 我々は、優先順位づけにもっと焦点を当てなければいけません。第1次の国家適応プログラムにおいては、あまりにも多数のアクションが盛り込まれ過ぎました。アクションの数は、より少なくし、よりはっきりと優先順位づけをしていかなければなりません。また、より効果的なモニタリングと評価を行うことによって、それまでとられているアクションがどの程度のインパクトを実際にもたらしているかを確認する必要があります。まだ、この第2次の国家適応プログラムについても、完璧なものが出てくるということは期待できません。というのは、まだまだ主要な各分野において、レジリエンス(強靭性)というのが実際に何を意味しているかがはっきりしてきていないからであります。この分野、レジリエンスの定義ということでは、今後、国際的な協力をさらに行う余地があるということで、英国といたしましても、ぜひ、日本と各分野、特に自然環境の分野におけるレジリエンスの定義ということで、協力を進めていきたいと思っています。

 我々が行っているレポート、そしてリサーチにつきましては、ホームページで全て公表されておりますので、ご覧いただければ幸いです。

住委員長

 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの講演に対するご質問やご意見を受け付けたいと思います。ご意見がある方は、ネームプレートを立てていただければと思います。順次コメントをいただいて、最後にブラウンさんからの意見をいただくという形にします。何人おられるかわかりませんが、時間が限られておりますので、また、逐次通訳ということですので時間が倍かかるということを勘案して、発言はシンプルにお願いしたいと思います。

天野委員

 8ページのスライドで、アダプテーションについて、レジリエントな程度を示す指標がないというお話でしたが、例えば洪水のリスクを考えますと、どの程度の安全性があるかというのは、統計的に現在評価をしていると思うのですが、将来の気候の予測があれば、そういった将来の統計の予測値というのも使えるのではないかと思っています。英国では、そういった統計値を使う、例えばフラッドリスクの評価において、統計値というのを気候変動の文脈で使っておられるかどうかというのを聞かせていただきたいのが一つと、テムズバリアの話をされまして、非常に長い時間のかかるインフラ整備については、早目にやるということでしたけれども、そういった指標、評価の指標がないにもかかわらず投資をするというのは、財務当局の抵抗があると思うのですが、それについてどう対処されているかということを教えてください。

高橋委員

 ご説明ありがとうございます。

 英国のCCRAは今回が第2回になりますが、第1回の際には、リスクスコアリングの手順が非常に特徴的だったという理解をしております。マグニチュード(重大性)、ライクリーフッド(生起確率)、アージェンシー(緊急性)、この三つの観点で、リスクの大きさについて評価されていました。日本の第1回目の気候リスク評価でも、英国のCCRAのリスクスコアリングのやり方からいろんなことを習ったと理解しています。一方で、今回のCCRA2では、リスクスコアリングではなくて、アージェンシースコアリングというのが使われていると聞きました。なぜそのようにリスクの大きさを評価する方法を変更したのか、プライオリティーのつけ方について、どのような考え方の変化があったのか、お伺いしたいと思います。

高村委員

 ありがとうございます。この委員会の作業にも、大変役に立つご報告をいただいたと思います。改めてお礼申し上げたいと思います。

 2点、ご質問がございますが、一つの重要なご指摘というのは、プライオリティーを明確にするということであったかと思います。それに関して二つご質問がありますけれども、1点目は、プライオリティーを選ぶ、セレクトするなり、あるいは決める際に、どういうふうにされたのかという点です。専門性や地理的な条件、あるいは経済的な条件によっても、プライオリティーの決め方というのはいろいろあると思うんですが、何らかのクライテリア、プライオリティーを決めるクライテリアというものがあったのかどうかという点です。

 二つ目は、同じくプライオリティーについてですけれども、今回、六つの優先課題(優先事項)をコミッティーで決められて、ガバメントがエンドーズされたということですけれども、これが第2回の国家適応計画にどのように反映をされるのかという点についてお尋ねしたいと思います。

平田委員

 情報豊かなプレゼンテーションをどうもありがとうございました。私も二つ、方法論的な質問をさせていただきます。

 このアセスメントレポート、これを作成する手順について、どういった手順をとられたのかというのをお伺いしたいと思います。例えばIPCCの第5次報告書のように、レビューのプロセスを経て得たものなのか、あるいは皆さんで信用できるデータを自分自身でお集めになったのか、そういった点、1点目、お伺いしたいと思います。

 2点目は、高村先生と非常に同じくプライオリティーについてお聞かせ願いたいのですが、お話の中で、インパクトを考慮してということがお話の中にありましたけど、インパクトというのは、アクションの結果として表れるものなので、それを先にどのようにインパクトを評価できるのかと。そういった点をお伺いしたいと思います。

磯部委員

 ブラウン先生のお話では、リスクアセスメントをブラウン先生のサブコミッティーでやるというお話でしたが、適応策を提案するということは全くやらないのでしょうか。それは全て政府がやる仕事ということで整理をされているのでしょうか。

 もう一つ、英国にはテムズ川の河口を含んで広いウエットランドがありますが、それに対する適応策というものは、何か考えられているものがあるのでしょうか。

 もう一つ、洪水についてはいかがでしょうか。

野尻委員

 お話ありがとうございました。

 お話を聞きまして、このCCRAというのが、主として政府、ポリシーメーカーに対するものだということがわかったわけです。それから、ミティゲーションは指標化が比較的易しいということもお話しいただきました。

 私、ちょっと、一つお伝えしたいのは、私の考え方としては、アダプテーションとミティゲーションをもう少し組み合わせたアプローチというのがあるのではないかというふうに考えています。というのは、アダプテーションは、大きな気候変動が起こった場合は、大きなアダプテーションの努力が必要だということを周知させるような方向性を取り入れるということは、お考えになっていないのかなと思いました。それは結局、大きな気候変動で大きな適応努力が必要ということは、そういうことを一般の市民の方に知らせるという努力が、国のミティゲーションを進めるということにつながると思いますので、そういったアプローチがないのかなというところを感じたところです。

安岡委員

 私の質問は、このコミッティーがさまざまな関係するステークホルダーをどうやって取り込んでいるのかという、セクター間の連携をどういうようにとろうとしておられるのかをちょっとお伺いしたいと思います。その下のもちろんアダプテーションに関するものも含んでいるという質問になります。例えばここの委員会、日本のこの委員会は、研究者、アカデミアの人たちが非常に多いわけですけれども、本当にアダプテーションを考える上では、これからビジネスセクターとか、いろんなセクターを入れて考えなければいけない。特にプライオリティーを決めるときには、そういうことが必要になると思いますけれども、英国でやられているこのコミッティーの運営の中で、さまざまなセクターをどういうふうに取り込んでいくのか、そういうふうな方針を決めておられるのかどうかを聞きたいと思います。

住委員長

 時間に限りがありますので、ここで答えてもらいます。

バロネス・ブラウン氏

 まず、洪水リスクに関しては、おっしゃるとおりだと思います。私も賛同します。洪水リスクというのは、適応ということに関しては、対策と結果の定義が比較的簡単にでき、政府のほうでも結果を出すのにかかるコストが算出しやすいということで、英国のほうでも、それはやっている分野です。我々、統計の予測の数字を使ってやっていますし、それで政府は洪水のリスクにさらされた住宅の件数を削減する、具体的な数値目標が設定されているのですが、実際の効果を測って、考えてやっています。

 それから、スコアリングの方法がCCRAの1と2では変更されたということで、私は1のほうには関わっていなかったので、どうしてスコアリングが赤と緑の方法に変更されたのかは存じませんが、もしご関心があれば、事務局のチームに調べてもらって、後日、お答えできるようにいたします。

 次に、二つ目のご質問、方法論と優先順位づけということだったので一緒にお答えします。CCRAにおいては、かなり多くのエビデンスを、200人もの専門家を登用して集めました。そして、非常に広く文献にも当たりました。そういう意味では、IPCCに似たようなプロセスを経たということです。それから、ASCの内部の専門家が、それぞれの専門分野において、外部の200人の専門家と事務局とともに、どこの分野で最大のインパクトをもたらすことができるのか、そのタイムスケールとか切迫性とかコスト便益などを見まして、そして専門家の判断としての優先順位づけということで、CCRA2向けに六つのプライオリティーエリア(優先分野)というのを提示しました。多くの分野、例えば自然環境においては、コスト便益分析が難しいので、自然資本(ナチュラルキャピタル)という概念を用いて、財務省に対して、自然環境を保護する、ないしは向上するということが、政策的にとってどれだけ価値があるかということを訴えようとしました。この自然資本のもたらす価値という分野でも、ぜひ日本との協力を進めたいと思います。これは今大変発展している分野、考え方ですので、協力することが出来れば非常に貴重だと思います。

 質問で、ASCがリスク評価のエビデンスを示しているが、誰がその対応の措置について決めているのかというのがありました。それは英国政府の責任だと思っていますが、その際、ASCとしても政府をサポートしています。ASCとしては、法定報告書を2年に1回議会に出すだけなので、それを行っている間の年に関してはリサーチプロジェクトを手がけております。来年は、対策の効果、実効性ということに関するエビデンスに関してのリサーチプロジェクトを行おうとされておりまして、自然環境のレジリエンスの定義を行うということで、これをぜひDEFRA(環境・食料・農村地域省)がNAP(国家適応プログラム)を策定するに当たって参考にしてほしいと考えています。

 適応と緩和について、組み合わせが役に立つのではないかという指摘がありました。いいポイントだと思いますが、気候変動の効果を見ていくということは、一般市民が緩和措置の重要性を理解する上で役に立つと思います。例えば、土壌の修復であるとか、数多くの対策というのは、実際には適応面でも、また炭素隔離、緩和の面でも、両方メリットがあるというのがありますので、その両面において、いい効果が出るという対策があると思います。

 民間企業の関与というお話がありました。気候変動法について本日私が説明できなかった内容として、Adaptation Reporting Power(適応報告指令)があります。政府は、この権限にのっとって、企業に対して適応措置について報告義務を課すことができます。例えば、水道業界、電力業界は、法律にのっとって、適応措置についての報告を政府にしなければなりません。水不足に対するレジリエンスとの関連で、政府にとっては、これは非常に重要な権限になります。また、英国においては、気候変動リスクに関しては、公開会社に対して自主的な報告を行うことを奨励しています。例えば、企業が株主総会などにおいて、投資家、株主を対象に、気候変動のリスクについての説明をすることや、気候変動との関連で海外の供給先についてのリスクが発生するというような問題を提起することなどを奨励しており、これは気候変動のアジェンダに対する意識向上に役に立ちます。

住委員長

 どうもありがとうございました。

 最後に少しお聞きしたいのですが、セクレタリーの人数はどのくらいかということと、その活動の予算規模がどのくらいかということと、それから、報告はガバメントにすると言っていらっしゃいますが、それは例えば環境大臣を通すのか、それとも首相に直接言うのか、その辺の具体的なインタラクションのことを教えていただけませんでしょうか。

パロネス・ブラウン氏

 事務局は5名でありまして、その予算につきましては、我々、内部で使う予算と、外部、例えば大学に対してリサーチを委託するというような予算も持っています。また、より広い科学者コミュニティとのつき合いがありますので、多くの専門家は無償で我々に応じてくれます。我々の予算は、年間で100万ポンドを切るぐらいです。

 我々は、定期的にDEFRAの職員と連絡をとり合っていますが、正式にレポートを出す先は議会になります。大臣や首相ではなくて、議会です。日本でも同じような課題、チャレンジを抱えていらっしゃると思いますが、英国も、やはりDEFRAに対して報告を出しているのだろうと見られている、そういうイメージがあります。しかし、建築物環境、インフラ、住宅に対する洪水のリスクなどは、所管はむしろDCLG(コミュニティ・地方政府省)でありまして、我々が出すレコメンデーション(提言)というのは、むしろそちらが受け手になります。DEFRAとDCLGの間柄というのはいろいろありまして、そういう意味では、省庁の関係というのは少し難しいチャレンジになることがあります。

住委員長

 どうもありがとうございました。時間が来ましたので、これで意見交換を終わりにしたいと思います。

 皆さん、バロネス・ブラウンさんに盛大な拍手をお願いいたします。

 それでは、最後の議題がその他ということですので、事務局から、何かありましたらお願いいたします。

木村気候変動適応室長

 本日は、活発なご議論をありがとうございました。

 次回の会議につきましては、また改めまして、委員の皆様方にご連絡をしたいと思います。

 また、議事録につきましては、委員の皆様にご確認いただきました後、環境省のホームページに掲載をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

住委員長

 それでは、終わりにしたいと思います。どうもご苦労さまでした。

午後2時30分 閉会