中長期ロードマップ小委員会(第14回)議事録

日時

平成22年10月15日 9:01~11:59

場所

全国都市会館 第1会議室

議事内容

  1. 1.開会
  2. 2.議題
    1. (1)分野別の中間報告(その3)について
    2. (2)分野別の中間報告を受けた温室効果ガス排出量の試算について
    3. (3)その他
  3. 3.閉会

配付資料

資料1 自動車WG中間報告資料
資料2 中長期ロードマップを受けた温室効果ガス排出量の試算(再計算)
参考資料1 環境省地球環境局の組織改編について
参考資料2 地球温暖化対策基本法案の閣議決定について
参考資料3 自動車WG委員名簿
参考資料4 対策導入量等の根拠資料

午前9時01分 開会

○地球温暖化対策課長 おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会中長期ロードマップ小委員会の第14回会合を開始いたします。
 今回でございますけれども、前回に引き続きまして、分野ごとにワーキンググループからの中間報告ということで、本日は自動車ワーキングからご報告をいただくことになっております。その後、分野別の中間報告を受けた温室効果ガス排出量の試算ということで、国立環境研究所において技術積み上げモデルの再計算をしていただいておりますので、その結果をご報告いただきまして、ご議論を賜りたいと考えております。
 本日、委員の過半数のご出席をいただいております。
 また、これまでと同様、審議は公開とさせていただきます。
 また、笹之内委員はご欠席でございますけれども、説明員といたしまして、トヨタ自動車株式会社環境部環境室長の岡山様にご出席いただいております。
 今後の進行につきまして、西岡委員長にお願い申し上げます。

○西岡委員長 おはようございます。それでは、これは第14回になりますけれども、ロードマップ小委員会を始めたいと思います。
 まず最初に資料の確認をお願いします。

○地球温暖化対策課長 お手元の資料でございますけれども、議事次第の後、資料1といたしまして、自動車WGの中間報告、資料2といたしまして、温室効果ガス排出量の試算(再計算)ということで、国環研の資料がございます。
 それから、参考資料が4つございます。参考資料1といたしまして、「地球環境保全行政の新体制について」という1枚紙。参考資料2といたしまして、「地球温暖化対策基本方案の閣議決定について」、それから、参考資料3といたしまして、自動車WGの委員の名簿がございます。それから、参考資料4でございますが、これは委員の先生方のみでございますけれども、今日ご説明があります再計算の対策導入量等の細かい根拠の資料でございます。大変大部でございますので、傍聴の方につきましては、後日、環境省のホームページに掲載いたしますので、それをご覧いただければということでご容赦をいただければと思っております。
 それから、この際、参考資料1と2につきまして簡単にご報告させていただきます。
 まず、参考資料1でございますけれども、「地球環境保全行政の新体制について」ということで、10月1日付けで環境省内の組織改編がございました。その関係で、総務課の下に低炭素社会推進室というものを新たに設置いたしまして、本日議論いただきますロードマップを含め、地球温暖化政策の企画・立案、中長期的な戦略の検討体制を強化いたしまして、今後、地球温暖化対策課と一体となりまして、対策を推進していくという体制でございます。加えて、国際交渉につきましては、新たに国際連携課が設けられまして、その下に国際地球温暖化対策室ということで、国際協力と一体となって温暖化の国際交渉も進めていくという体制でございます。
 10月1日付けで低炭素社会推進室室長に着任いたしました土居でございます。

○低炭素社会推進室長 土居と申します。よろしくお願いいたします。

○地球温暖化対策課長 それから、参考資料2でございますけれども、地球温暖化対策基本法案、前回の国会で審議未了として廃案になってございますけれども、同法案につきまして、同じ内容で10月8日に閣議決定いたしまして、今週、国会に提出をしております。これについてもご報告をさせていただきます。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。組織が極めて複雑になりつつという感じを受けますが。
 本日でございますけれども、先ほどお話がございましたように、議題は主に2つございます。最初に自動車のほうでございますけれども、10時を目処にディスカッションも終わりたいと思います。その後、温室効果ガス排出量の積み上げ計算、これが一つの重要なことでございますので、残りの時間をこれに使いたいという具合に考えておりますので、よろしくご協力願いたいと思います。
 それでは、議題の1つ目ですけれども、分野別の中間報告ということで、自動車WGより、資料1を用いまして、ご説明をお願いしたいと思います。
 本日は、自動車WGの座長であります大聖委員が都合でご出席できないということでございますので、早稲田大学の草鹿教授より、座長代理としてご説明願いたいと思います。よろしくお願いします。

○草鹿座長代理 ただいまご紹介にあずかりました草鹿でございます。資料1でございますけれども、順を追って、表紙のような内容になりますけれども、ご説明していきたいと思います。
 まず、3ページ目ですけれども、昨年度の自動車分野ロードマップのレビューを簡単にさせていただきますと、現状と課題としましては、CO2の排出量の2割を運輸部門は占めておりますから、当然これの削減が非常に重要になってくるということになります。現在、乗用車が全220モデルのうち数モデルが市場に投入された段階であって、現在の保有台数7500万台に占める環境対応車の割合はいまだ1%程度であると、およそ100万台ぐらいになっています。ですから、海外市場の動向も踏まえまして、環境対応車の更なる普及を図る必要があるというのが、昨年度の現状と課題になっています。
 特に低炭素社会構築に向けてのキーコンセプトとしましては、現在、環境対応車が、次世代自動車ですね、普及創明期でありますから、一つは、車両総重量、日当たり走行距離に応じて、環境対応車の導入を図っていく、これは車の用途に分けて使い分けることが必要になってくると思います。それから、投資の回収が十分に可能な環境対応車市場の構築が非常に重要になってくると思います。ですから、長期・中期のための主要能力な対策としましては、255モデルのうち76モデルを次世代自動車化するということと、新車販売訳490万台のうち250万台程度になれば非常に低炭素化が図れるということを考えております。そのためには、すべての車格で環境対応車を選択可能にするということが重要になってきます。
 これをグラフにしたのが次のページになります。昨年度のロードマップで言いますと、2020年に25%削減と。そこの内訳としましては、燃費改善技術、青色ですね。それから、次世代自動車の普及技術が緑色、それから、バイオ燃料の導入、利用の適正化、交通流対策というのが挙げられまして、具体的には、ロードマップとしては5ページに示されますけれども、横軸に時間軸をとりまして、縦軸に、赤が大枠の施策、それから、その内訳の◆のところが細かい施策をご紹介させていただいたと思います。
 昨年度の結果の中で、6ページになりますけれども、いろいろな副次的効果もあるんですけれども、青色の帯でいいますと、CO2、大気汚染、騒音、ヒートアイランドの軽減、それから、環境対応車が普及することによって電気自動車とか電池関連のビジネスが出てくる可能性があるということになります。ただ、その下の視点と課題になりますけれども、海外の自動車事情、それから、燃料市場の動向も念頭に置いた戦略が必要であると。
 それから、日当たりの走行量、車両総重量に応じて、普及の見込まれる環境対応車の種類が異なると予想されますので、それぞれの自動車の特性に応じた施策を講じることが重要ということになります。それから、完成力が非常に大きいですから、すぐに売っても効果が出るわけではなくて、新車の燃費が改善されてから効果が出るまでには一定程度の年数がかかるということが挙げられます。それから、新モデルの開発には開発コストが非常にかかるということが昨年度の課題でありました。
 それから、今年度は、これらの結果を受けまして、8ページに示されますように、大きく分けて4つの項目の改善点を考えております。1つは昨年度のシナリオの点検・精査、2番目は施策効果の定量化と施策の追加的な検討を図っていきたいということ、それから、3番目としましては、自動車単体ということも挙げられるんですけれども、例えば交通流対策などは他の地域づくりワーキングなどと連携して調整していく必要がありますので、こういうことを実施していきたい。4番目には鉄道・船舶・航空分野の昨年度のシナリオの点検・精査を行うということが挙げられています。
 今のを表にしたのが次の9ページになります。自動車ワーキングとしましては、そこに○印がありますように、主に単体対策を行うということと、地域づくりワーキングと交通流において連携を図るということ、それから、エネルギーワーキングでは系統電力の低炭素化の値なども最新の値に連携してアップデートしていきたいというふうに考えております。
 10ページ目に入りますけれども、まず、追加検討項目としましては、昨年度のシナリオ点検・精査の中の燃費改善技術について精査を行いました。自動車の燃費改善に関しましては、従来のエンジン車を想定していますけれども、鉄を使用するということと、高精度で大量生産が可能な機械加工技術を持っているという日本特有の技術を生かした、いまだに非常に重要なテクノロジーの一つなんですけれども、その燃費改善技術を下のグラフに挙げておりますように、2015年の燃費基準をベースに考えていきまして、2005年に比べておおよそ20%の効率改善があると。それから、2050年で約30%の効率改善があるということに加えまして、この値を使って従来車の燃費改善技術による削減量をもう一度再計算したということになります。
 それから、2番目には、次世代自動車の燃費と普及台数に関しまして、11ページになりますけれども、プラグインハイブリッド自動車の燃費を最新の資料に基づいて変更いたしました。これは表にありますように、プラグインハイブリッド自動車の値が、昨年度はCO2の削減量が多く出てくるような傾向にありましたので、この値を少し変えたようになりまして、昨年度のロードマップと本年度のロードマップのところでPHVのところを見ていただくとわかると思います。ですから、これによって若干CO2の排出量は増えるような傾向になりましたけれども、それも含めてEV、ストロングハイブリッド、マイルドハイブリッド、マイクロハイブリッド、それから、PHVのところですね。クリーンディーゼルと、その下のようなグラフになっております。
 12ページになりますけれども、もう一つは普及台数の観点で、ここは昨年度のシナリオによりますと、2020年度次世代自動車の想定販売モデルが76モデルになっていますから、このモデルについてはいろいろなご意見もあるんですけれども、さらに昨年度のシナリオから変更する必要があるかどうか現在精査中でございます。
 続きまして、13ページに移りたいと思います。バイオ燃料の導入量ですけれども、今年度はエネルギー基本計画に基づきまして、2020年の全国のガソリン消費量の3%以上ということでございますから、これがバイオ燃料に導入されるとして、2020年、バイオ燃料導入量は、原油換算70万KLとなります。このときの削減量を昨年に比べますと、一番下の表を見ていただくとわかりますように、0.3Mt-CO2が削減量としては増えているということを書いております。
 続きまして、14ページですけれども、環境性能に優れた自動車に対する税制・補助金の効果というのをもう一度調べ直してみました。まず、グリーン税制というのは、14ページの表でいきますと、赤枠になっておりますけれども、これは2001年4月1日から始めておりまして、一つは排ガスと燃費性能に優れた自動車の税率を軽減するということと、新規登録から一定年数以上経過した自動車の税率を重課するというものです。
 この下の表でいうと、上の横軸、横のカラムが排出ガスです。それから、縦軸が燃費です。この両方でなるべくアンドになっているものが税制としては優遇されるような形になっているというもので、次の下の青色のところが重量税、エコカー減税と呼ばれているものですけれども、これが2008年度から表として入ってきているということになります。それから、黄色の部分ですけれども、昨今話題になっていますエコカー補助金のほうですね、2010年9月7日で終了しましたけれども、この効果がどのくらいあったのかというのも今後の施策を考える上では重要ですので、調査し直してみました。
 15ページの場合ですと、例えばホンダのフィット、あるいはトヨタのクラウン、それから、日野のプロフィアと呼ばれているのが、買い替えを行った場合にどのくらいお安くなったかということを示したものがこちらのグラフです。一番下の右はガソリン乗用車あるいはディーゼルトラックの重課の例を表しております。ですから、フィットを例にとりますと、合計では8万9,550円お安くなるということと、廃車がある場合は25万円の補助金があると、こういうような形になります。
 これがどのくらい効果があったかというのが次の16ページになります。横軸に年代をとりまして、縦軸に販売台数比率をとっております。まず青いカーブを見ていただきますと、2001年4月からグリーン税制が開始されていますけれども、それまでのラインの傾きから、結構上に膨らんで離れていることがわかります。
 これは燃費基準の達成比率を表しておりますけれども、明らかに2001年4月のグリーン税制開始とともに広がっていますので、効果があったものと考えていまして、赤いラインは燃費基準15%を達成した車の比率、緑色のラインが燃費基準25%達成比率ですけれども、これは皆様ご存じのとおり、2009年4月のエコカー減税補助金開始とともに、急峻な傾きの増加を見せているということがわかります。ですから、枠のところに書いてありますように、この効果はあったというふうに十分に認められますし、これからは、エコカー補助金が終了したわけですけれども、これに伴う影響を引き続き注視するにしております。
 17ページになりますけれども、これも税制と補助金の効果を表したものになりますけれども、減税と補助金の相乗効果によって概ね次世代自動車は10%を超える割合に達しているということが、こちらのグラフからわかっております。終了した施策については今後注目してケアして見ていく必要があるということをその下に書いてあります。
 続きまして、18ページですけれども、これは登録抹消効果がどのくらいあったかということになります。青色が乗用車の13年超過車、右側がディーゼルトラックの11年超過車の青と赤で割合を表しています。青色のもの、あるいは、緑色のラインが急激に増えた部分というのが、その効果が認められる部分なんですけれども、2001年前後のところで緑色の傾きが少し上がっているとも見えるわけで、これはグリーン税制の開始直後の増加傾向が少し認められるということになりますけれども、まだ完全には明確に評価できていないので、重課に対する経年車の廃車促進効果というのはこれからもさらに検討していきたいと考えています。
 次に6番目、19ページですけれども、エコカー補助金による経年車の廃車効果を表したのが下のグラフになります。緑色の13年、廃車処理台数を見てみますと、2008年から2009年にいくときに増加傾向にあるということと、赤色の棒グラフのところですけれども、廃車効果が非常に高いということになりますので、経年車の廃車効果というのは非常に高いものがあったというふうに結論づけられます。
 以上をまとめますと、20ページに税制をまとめていますけれども、グリーン税制による減税は効果があったということが言えると思います。それから、重課については明確には評価できませんけれども、若干、経年車の廃車の促進に寄与している可能性があるということです。それから、同時期に導入されたエコカー減税、エコカー補助金は、次世代自動車の販売シェアの拡大と燃費基準超過達成車の導入促進を大幅に加速したと評価できます。ですけれども、これが終了したので、少しケアをして見ていきたいというのがまとめになります。
 あと、一番下になりますけれども、ガソリン車・ディーゼル車と単純な燃料消費量の違いでは燃費性能やCO2排出量を比較できない、EVとかPHV、これはいわゆる燃料だけを使用してないエネルギーを持っていますので、この自動車に対しては環境性能を適切に評価する手法を整備した上で、高性能のガソリン車・ディーゼル車を含めて環境性能に優れた自動車の普及を促進させる制度にする必要があると考えております。あとは、もう皆様ご存じですけれども、エコカー補助金というのは経年車の廃車を促進する効果が明確に認められたということになります。
 続きまして、21ページのカーシェアリングについて検討した結果についてご報告させていただきたいと思います。まず、バックグラウンドとしては、特にスイスが有名ですけれども、欧米諸国においてカーシェアリングが普及しているということです。それから、下のグラフですけれども、日本においてもここ数年で急速に加速しているもので、特に都市部の有効な交通手段として今後普及が見込まれるものであります。
 この効果を算出するわけですけれども、この効果としては公共機関の利用増加ということがまず1つ、それから、自動車の利用の抑制につながるということです。ですから、走行距離自体が6割から8割減少することが見込まれておりまして、CO2の削減効果が大きいものと考えています。それから、都市の交通混雑とか渋滞の緩和にも寄与する見込みがあるということです。それから、カーシェアリングとレンタカーの大きな違いというのは、カーシェアリングの場合、短距離・短時間で利用されることが多いですから、こういうような使用の仕方というとぴんとくる方も多いんですけれども、EV利用に適しているということになります。ですから、よりEVを導入することによってCO2の削減効果が大きいものと考えています。
 23ページに移りますけれども、これでCO2がどのくらい減るのかということを試算するわけですけれども、まず都市部、これは三大圏や政令指定都市を含んでいますけれども、この人口の1%ぐらいということになります。ですから、それほど大きいものではないわけですけれども、この1%までは利用者が増加するものと考えております。これによって計算した結果、あとは自動車の走行距離の変化と、車両がEVによる効果を持っていて、EVが半数になるということを考えますと、カーシェアリングの利用者数が86万人とすると、下の表にありますように、CO2の削減量としては1.0Mtの削減量が見込めるということになります。
 しかしながら、カーシェアリングの普及の問題点としては、まず認知不足であるということ、それから、公共施設・公共交通機関との連携で、特にまちづくりとの連携が必要になってくるということになります。ですから、普及の支援としては、高度なEV導入費用に加えて、駐車場の電源の確保、それから、EV購入、充電インフラの整備というのが重要になってくるということが挙げられました。
 続きまして、25ページのエコドライブにまいります。エコドライブ自体でCO2が削減できるということと、最近、自動車会社さんでも一部やられていますけれども、非常に高度化されたナビゲーション、テレマティクスというような言い方をしていますけれども、これによって省燃費ルートへの誘導とか、エコドライブソフトの利用を通じて、利用者自体がさらに学習を進めてCO2の削減を図ることができるということで、個人所有と法人所有とがあるんですけれども、これらにこの2つを導入した場合にどういうふうになるかというのを計算してみました。
 次は26ページになりますけれども、台数としては5700万台で、個人所有が3800万台、それから、法人所有者の白ナンバーが1900万台になります。これに走行距離を掛けたものを試算したグラフの右側です。実は法人のものというのは台数は少ないですけれども、走行距離が多いので、概ね55%ぐらいを占めることになります。ですから、全体でいうと66%ということになりますけれども、特にこの場合、取組が遅れている中小企業に重点を置いて、ナビゲーションシステムを活用した削減取組を促進するような追加の施策を検討していきたいと考えています。
 次の27ページには計算の過程が書いてあります。保有ベースで約8割の自動車に何らかの形でエコドライブツールというのは搭載されているだろうと。最近車を買った方はほとんどついていると思います。あとは、エコドライブツールによって実践された場合の燃費改善効果を10%、それから、テレマティクスを活用してエコドライブが実践された場合は16%、プラス6%と仮定しました。それから、実践割合を高める追加的な施策を行うことで、エコドライブ実践割合を、機器を導入した場合について、法人では最大9割、個人では最大6割に引き上げるというような計算をしまして、28ページのような結果になっています。
 まず、法人に関しましては、今年度のシナリオとしましては、エコドライブの実施と、プラス高度化ナビゲーションの導入ということで、施策なしの1520万台から、エコドライブは施策なしではそのうちの3割の460万台ですけれども、施策をすることによって9割に引き上げて1370万台で、それのおのおのについてCO2の削減効果が10%ありますよと。それから、高度化ナビゲーションも同じですけれども、380万台のうち施策があると、エコドライブでそのうちの9割、それから、施策があるうちは1520万台の9割ということになりますから、プラス6%削減を考慮して、一番右側の削減量になりますけれども、3.8Mtと1.7Mt、個人では1.3Mtと0.4Mtということになります。合計で7.2MtのCO2の削減を見込みました。
 これも追加の検討事項としましては、まず一つは、エコドライブの有効性とか交通事故低減のCO2の削減効果以外の効果も踏まえた状況を国民に啓発していくことを強化する必要がある。それから、低コストの自動車については、もう少し簡単な装置を活用したエコドライブの啓発が重要であるということが考えられます。
 あと、OBDと言われていますけれども、車載診断装置がついているものがあって、これがアクセスをランダムにできないからOBDがOBDたるゆえんなんですけれども、この評価に関してはOBDを活用して、必要な運転情報の貯蓄とか、読出しに関しては取出しができるような対策があればより有効に働くということは考えています。
 あと、法人向けの施策としては、大手はそれほど問題ないんですけれども、特に中小の法人に関しては、そのもの自体の効果を説明して理解させるということと、高度化ナビゲーションなどを活用した高い取組を実践してもらうための支援措置を講じる必要があると考えています。あとは、エコドライブコンテストなどの表彰制度をより充実させるということ。
 それから、個人向けとしては、例えばショッピングセンターの利用によって、「エコドライブできました」ということになると、事業者がサービスポイントを付与することによって、より動機づけを明確にしてやる、こういうようなシステムを構築することができれば、より普及できるということになります。
 それから、車両の運転情報を取り出して活用することができることによって、エコドライブを定量的に評価するシステムを開発することができます。例えば、これによって保険料軽減に充填できるようなサービスを展開するような形が望ましいということになります。あとは、運転免許の更新時や教習所においては、エコドライブに関する講習の機会をより充実させていくということになります。
 最後の31ページで、自動車分野のシナリオ案のほうに入りますけれども、これらの新しく加えた項目も加えまして、今年度は、まず「最大導入ケース」ですけれども、一番下の表の右側になりますが、自動車販売台数の2台に1台が次世代自動車と、それから、乗用車の燃費改善効果が2005年比で75%向上していくということと、バイオ燃料が3%相当、それから、一般向けエコドライブは促進施策による効果を最大限見込んだ実施とか、シェアリングも最大見込んだ導入を考えまして、もう一つは、施策を考えた最大導入に関して、施策がなければどのような形になっていくかというのを基準導入ケースとして算出しました。
 次に、32ページと33ページを両方見比べていただくと、最大導入ケースと基準導入ケースの設定の違いがわかるんですけれども、まず次世代自動車の販売台数が50%、それから10%プラスアルファということが大きく関わってきます。それから、バイオ燃料の値と利用者の適正化というところで、先ほど言ったような違いがありまして、結論からいいますと、34ページ、35ページのグラフを両方比べてみていただくとわかるんですけれども、2020年に最大導入ケースであると概ね青色と緑色、それから、黄色、橙色、赤ということになりますけれども、最大導入ケースの場合で25%削減が図れる。それから、施策の補助がないといった場合の基準導入ケースに関しては17%になります。特に緑色の部分が非常に大きく違っているということが、このグラフからわかると思っています。
 36ページは、今後の考え方になりますけれども、まず一つは、グラフから見ましたように、青色の部分が非常に大きいということがわかると思います。これはどちらの場合も大きくなるわけですけれども、これは高性能のガソリン車とディーゼル車を含めてより環境性能に優れた自動車の普及を加速化させるために、環境性能の対応をよりきめ細かく考慮した税制・補助制度を検討する必要があると考えています。当面は2015年の燃費基準の早期達成と超過達成を促進する観点も重要であるということと、併せて引き続きNOxをはじめとした排出ガスの低減を促進する観点も重要であると考えています。
 それから、2番目としては、2020年度の燃費基準については、欧米燃費規制の手法や水準も参考としまして、これは未達度に応じて罰金を払う方式ですけれども、今後普及が期待される燃費向上技術の進展・普及見通しについて適切に評価し、可能な限り高い目標を設定することが必要と考えています。
 それから、車格とか用途、燃料(ガソリン、ディーゼル)の違いによらず、燃費改善効果が図られて、次世代自動車の開発にも裨益するような横断的技術開発の支援が効率的・効果的と考えられます。具体的にいうと汎用型の回生システムとか、排熱エネルギー電力回収システム、こういったものは両方に共通するもので、支援が必要ではないかということを考えています。
 4番目は、1台あたりの走行距離が多い自動車に対しては、やはり次世代自動車への転換が重要であるということ。
 それから、5番目では、カーシェアリングの促進にあたっては、まず一般国民の方の認知度が十分でないので普及活動に努めるということと、特に都市の導入環境の整備等の支援施策の充実を図ることも重要であると考えています。
 エコドライブの促進に関しては、環境対策はもとより、事故率の軽減という副次的な効果も含めまして、その有効性を国民に広く啓発していくということ、それから、法人所有者、個人所有者のそれぞれを対象に、継続的な実施を促すインセンティブを付与する施策の充実を図ることが重要である。
 7番目のバイオ燃料に関しましては、製造プラントの建設等を促進する必要があって、これは燃料コストの観点からですけれども、支援施策の充実を図ることが重要である。
 8番目は、交通流対策、貨物輸送効率改善等の物流対策は、自動車分野におけるCO2削減の対策として重要であって、これは地域ワーキングの方々と連携して検討していかなければいけない事柄であるということが言えます。
 39ページになりますけれども、今後の検討課題としては、現在、最大導入ケースと基準ケースを検討してまいりましたので、同じように途中の中間値、20%削減、15%削減と、このケースについても検討していきたいと考えています。それには、燃費改善技術導入の見通しと、次世代自動車の普及の見通しの精査が重要になると考えています。
 それから、鉄道・船舶・航空分野のシナリオについては、現在、専門家へのヒアリングを実施中でありまして、その結果を精査してシナリオを検討していきたいと考えています。
 それから、目標達成のための施策というのが重要になってきますので、追加的な施策の具体化とか、その効果に対する値の精緻化を図っていきたいと考えています。
 それから、各ワーキングとの調整、具体的には電力CO2排出係数、走行量の値のアップデート、それから、まちづくりとの連携ということが挙げられます。それから、これらの環境対策効果に加えて、ターゲットとした施策がどのくらいの副次的効果を持っているかということも併せて検討できればということを考えております。
 ちょっと長くなりましたけれども、以上であります。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ワーキンググループの皆さんにお礼を申し上げたいと思います。ほかの計画との整合も大分とれてきたような感じがいたします。
 それでは、委員の方のご意見を求めたいと思いますが、例によりまして札を立てていただければ、そちらのほうからまいりたいと思います。いかがでしょうか、パーフェクトで、あまりいかない……。
 それでは、則武委員のほうからお願いします。

○則武委員 3点ほど質問がございます。
 2つのシナリオ、基準導入ケースと最大導入ケースで、どこか見落としているのか、聞き逃したかもしれないのですが、CO2としては実際どのぐらいの差があることになっているのかという点と、それから、最大導入ケースの場合の補助金とその他の施策で、費用がどれぐらいかかるのかというような試算はされているかどうか。この2点で結構ですので、よろしくお願いします。

○西岡委員長 一通り、幾つか言ってからにしますので、メモをとっておいていただきたいと思います。
 増井委員、お願いします。

○増井委員 どうもありがとうございます。1点だけなんですけれども、今回、例えば将来の推計をする際に、世帯数が減少したり、あるいは、人口が減少するというふうなことで、一つの考え方としては、現在、普通車に乗っていらっしゃる方が軽自動車に乗り替えるというようなことも考えられるかと思うんですけれども、そういったことがこの自動車ワーキングの中に反映されているのかどうかという点をお伺いしたいと思います。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 村上委員、お願いします。

○村上委員 私も1点だけ。13年ぐらいたつと廃車したほうがよろしいというようなご説明がございましたが、廃車にしてグリーン車に替えたほうがライフサイクルCO2の観点から見ても文句なしに有利になるのかどうか教えてください。

○西岡委員長 屋井委員、お願いします。

○屋井委員 地域ワーキングのほうとの連携をまた今後ともよろしくお願いしたいということが1点と、質問になりますけれども、例の環境性能に優れた自動車に買い替えていくというのは大変重要な、特に貨物自動車などはそうなんですけれども、今日図面が出ていまして、18ページのところで、これは簡単な質問ではあるんですけれども、2007年ぐらいまでのディーゼルトラックの抹消台数があるんですけれども、ちょっと教えていただきたいのは、抹消台数の比率がどんどん上がっているわけですけれども、2006年、7年あたりで見ると、11年を超過しているような車の割合というか台数というか、かなり増えているような図面になっていましてね。かなりこの割合が増えているんだけれども、抹消比率としては大きくなるというのは、もちろんタームの定義に関わってくるんだと思うんですけれども、そこら辺の読み方がわかりにくいので教えていただきたいと思います。
 それから、カーシェアリングとかエコドライブ、ここら辺は地域ワーキングと若干連携が出てくる場所だと思いますので、今後、検討していきたいと思いますが、単体としての例えばエコドライブのような効果を発揮する部分と、交通流としてそれが混在したときに、どういう現象が起こるのかというところについても、今まさにそこら辺の検討は必要な時期だと思います。ですから、どういうメッセージを出していくかということと同時に、そういうことについても多少分析を進めていく必要があるんだというあたり指示していただけるとよろしいのではないかと思います。よろしくお願いします。

○西岡委員長 安井委員、お願いします。

○安井委員 ありがとうございます。2つほどございまして、1つは、2020に間に合うかどうかは別として、タクシーのEV化ということに特化した検討を行われたかどうかですね。特にタクシーのような業務用だったらバッテリーをガチャッと交換すれば非常に簡単に走行距離も伸ばせるのではないかと思います。
 それからもう一つ、これは全体に関わることなんですけれども、2020はこれでいくのかなという気もしないでもないんですけれども、要するにスタンスの問題で、技術的に不可能だからできないこと、そうではなくて、例えばエネルギー基本計画に書かれているからそれを書くこと、これはなかなか難しい問題だと思うんですよね。その辺のスタンスをどう考えるか。例えば、バイオ燃料というのは技術的には今でもすぐさま多分どこまででも。といっても400万KLぐらいまで増やすことは不可能ではないと。そういうことをどういうふうなスタンスでご検討されたか、答えにくいかもしれませんが、お願いします。

○西岡委員長 それでは、岡山委員、お願いします。

○岡山委員 ありがとうございます。基準導入ケースと最大導入ケースに分けて、特に最大導入ケースについては、必要な追加施設の考え方をまとめていただいたこと、本当にありがたく思います。ありがとうございます。ただ、基準導入ケースにつきましても、自工会は05年比燃費向上35%が精一杯と、これは放っておいていくものではなくて、メーカーが必至に努力してようやくここにいくというものであることをご理解いただければと思います。
 また、もう一点、交通流対策でございますけれども、これは地域ワーキングの取組というふうに分類されております。ただ、交通流対策というのは、運輸のCO2を削減するために非常に重要な施策というふうに考えております。ぜひとも統合的にご検討いただけるようにお願いいたしたいと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、荻本委員ですね。

○荻本委員 3点ございまして。まず、34ページと35ページの図に青と赤で燃費改善と次世代というのがあるんですけれども、例えば、車体の軽量化というような、次世代であろうと、従来型であろうと、共通して改善に役に立つという技術が、これで見ますと、青は従来型の自動車でこれだけの効果があって、緑は次世代だからこのように効果があるというふうに見えるんですけれども、実際その両方にかかるような軽量化という効果はどういうふうに分類されているんでしょうか。つまり、どの種類の車がどれだけ売れるとどのくらい効果があるかというのとどういう関係になっているかを教えていただきたいと。
 2番目なんですが、先ほどナビというのにかなり説明があったんですけれども、例えば従来型自動車に対するナビを考えるという話と、次世代型に関してナビを考えるというのでは、話は似ているんですが、やることが大分変わってきて、やる中身が倍ぐらい増えるはずなんですね、両方に対応するとした場合は。であれば、例えば次世代自動車、またはPHV、またはEVに特化してナビだけをやったほうがいいのではないかと私は思ったりするんですけれども、このあたりの考え方、今どのようにお考えかということが2点目。
 3番目は、この中のCO2またはエネルギーに関係して書いてあるような記述と、産業政策的な観点から書いてある記述というのが若干混じっているような気がして。ですから、例えば産業としてやるんだとすればこういうことが必要、または、エネルギー、CO2とすればこういうことが必要というようなことが、メリハリがつくような報告書になるかどうかというのが3点目です。
 以上です。

○西岡委員長 冨田委員、お願いします。

○冨田委員 ありがとうございます。今朝のNHKの朝のニュースでエコドライブのことをやっていましたが、エコドライブについて1つ質問させていただきます。私自身もエコドライブの講習を受け、実際に経験をしてみて、20%ぐらい燃費が改善したという経験を持っています。なおかつ、急ハンドル、急ブレーキ、急発進もやらないということで、安全性についても非常に効果があるなということを実感しておりまして、その普及を会社の中でもやろうと進めているところです。しかし、ロードマップの議論の中ではこれをどのくらいの効果と見込むかについて、その確実性、実現可能性、確度がどのくらいあるかがポイントだろうと思います。
 エコドライブが効果を発揮するのは、主に町乗りのところで信号待ちなどが多いところでの効果ではないかなと思います。すなわち、低速運転をやればそうかもしれませんけれども、高速道路などではそれほど大きな効果はなく、、町乗りのほうが効果が大きいと理解しています。なおかつ、将来的には次世代自動車が多く普及するということを加味していくと、エコドライブで全走行距離の中で10%燃費が改善できるというのは少し過大ではないのかなという気がしますが、この辺の根拠、実現性の確度という観点からお聞きしたいと思います。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 たくさんございますけれども、難しいところは後にまた補強いたしますので、どうぞ。順番にお願いします。

○草鹿座長代理 どうもありがとうございました。
 則武委員のCO2の34ページと35ページの違いが明確に見えないということですけれども、資料の横のところに表がございますけれども、表の一番右の四角のところで書いてあるのが削減量になります。例えば、両方のグラフを見比べて、34ページ、35ページと、青いパートのところを2020年で、断面で見ると、削減量としては11.4%と11%と、それほどは変わらないでしょうというような見方になります。
 次の緑色のところになりますけれども、これが次世代自動車と言われているEV、ハイブリッド、PHV、NGV、FCVの、特に改善率を表していますけれども、ここが最大導入ケースでいうと5.3%の削減を担っているのに対し、基準導入ケースではそれほど普及が進まない、10%プラスアルファぐらいでしょうという見込みになると、1.2%ぐらいになっているということになります。それから、バイオ燃料の導入も、3%相当ということで見込みますと、0.9%と。それから、こちらは21万KL相当で、0.2%ぐらいですということになります。あと、利用の適正化と交通流対策も一緒なんですけれども、基準導入ケースのほうが、施策なしではこのぐらいしか普及しないでしょうということになって、この差が結論として削減量の差になっているということになっています。
 それから、増井樣からご指摘がありました世帯数は、自動車そのものが減少していくという効果は、前に導入しましたように加味しています。ですから、その効果も入っているということでご理解いただければと思います。
 それから、村上委員のほうからのライフサイクルに関しては、自動車の場合は、製造もさることながら、1台あたりですと、家庭のCO2というのが非常に大きいので、ライフサイクルの観点からも有効であると考えています。
 それから、屋井委員からは交通流に対するメッセージを明確にということで、引き続きメッセージを明確に出せるように是非していきたいと考えています。
 それから、安井委員のほうから、2020年にタクシーのEV化というのが入っておりますけれども、これは効果としては入っていません。ですから、タクシーの中でどのくらいEVが入ってくるかというのはまだ見込めていないような状況になります。それから、バイオ燃料のほうは、これはエネルギー基本計画のほうで3%相当以上ということなので、3%を見込ませていただいたことと、基準導入ケースでは、自動車工業会の方と調整しながら、このような値ですね、21万KLというのを想定していますので、この値を採用させていただいています。
 それから、岡山委員のほうで、自工会……、ちょっと待ってください。あ、岡山委員のほうからは、コメントとしては、35%の燃費改善、あるいは、交通流対策というのを是非統合的にやっていただきたいということで。やはり基準導入ケースというのも非常に重要になりながら、なおかつ、それをプラスアルファで向上させるような施策を是非検討していきたいと考えていることと、交通流対策に関しましては、冒頭でも申したように、まちづくりとか他のワーキングと連携して、ご指摘いただいたように統合的に議論していきたいと考えています。
 それから、荻本委員からの車両の軽量化に関しましては、従来車の燃費改善のところでは考慮しています。ただ、次世代車のほうでは、特に原動機について燃費改善効果を入れていますけれども、軽量化については入れてなかったと記憶しています。従来車のほうは軽量化の技術も入ってこの数字であるというふうにご理解ください。
 あとは、冨田委員から、10%が過大ではないかということでありますけれども、これはそうでもないと考えています。エコドライブをすることによって、例えばホンダさんのホームページなどですと、インサイトに装備されているエコアシストによる燃費改善効果というのが出ていますけれども、結構大きいので、これは10%ぐらいを見込ませていただければなと考えています。
 すみません、雑駁ですけれども、以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 まだ少々時間がございますが、今のご説明でちょっと足りなかったところがございましたら。よろしゅうございますか。
 どうもありがとうございました。それでは、これは中間報告でございますので、またよろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。次の議題は、2つ目、分野別中間報告ということで、中長期のロードマップ、今お話がありましたこれを受けて、温室効果ガスの排出量はどれだけ減るのだろうか増えるのだろうかという話につきまして、国立環境研究所の藤野委員のほうからご説明願いたいと思います。
 50分ぐらいご説明いただきまして、その後、皆さんからコメントをいただきたいと思っています。
 どうぞよろしくお願いします。

○藤野委員 どうもお時間ありがとうございます。今日、名簿を見たらご欠席の先生が3人しかいなくて、稀に見る出席率で、また、こちらから見ると景色が違うのでちょっとビビりながら。ただ、このロードマップの検討会は、各ワーキンググループで今までなかったような検討を、それを時間も相当な回数を繰り返していただきながらやっていただいていまして。できうる限り我々のグループ、モデルのほうはそういうデータを集約して、つじつまが合うか合わないかということをやるんですけれども、我々の理解できる範囲内で何とかそれを反映させようという努力はしておりますけれども、何分調整する時間も正直なところしっかりとれているかどうかというのはもちろんありますので、よく見ていただいて、さらにいいものになるように是非コメントいただければと思います。
 2ページ目をご覧ください。まず最初に、あえて申し上げる必要もないかもわかりませんけれども、中長期推計の目的と意義です。「なぜ中長期の推計を行う必要があるのか」
 3ページ目です。あえてサブタイトルのようなものが上についていますが、「~未だ誰も見たことのない社会への挑戦~」、2050年80%削減、温室効果ガス排出量ですけれども、グラフを見て明らかのように、1940年代、50年代、つまり、第二次世界大戦が終わった後、日本は著しい経済成長を迎えて、それに伴いCO2排出量も増やしてきたんですけれども、グラフで見る限りにおいては、あたかも昔に戻るように、CO2を同じようなスピードで戻していかないと、いわゆる気候の危機を回避できないというようなことが指摘されております。ただし、それを同じような生活水準に戻すのではなく、より高い生活水準の中でそういった社会が実現できるのかどうかという挑戦の中にいるということです。80%そのまままっすぐ伸ばしてしまうと、こういうラインで、今回、後でご紹介します、例えば2020年の排出量削減については、国内削減で25%から15%、それぞれのケースで検討しますけれども、それがどの位置にあるかということが見えます。
 次のスライドをご覧ください。これは、後でもご紹介します2050年温室効果ガス排出量80%削減を実現したときの一つの例ですけれども、どういう条件が必要になりうるんだろうかというものです。まず最終エネルギー消費量を約4割程度、GDPが増えても最終エネルギー消費量は減らしていくと。ただし、それだけでも足りませんで、エネルギーの供給側も相当な努力をする。ゼロエミッション化する、または、民生部門とか電力部門、運輸部門の旅客輸送、または近距離輸送はゼロエミッション化で、せいぜい化石燃料が使えるのは運輸部門の遠距離物流とか、産業部門の高温熱需要とか、そういったところにもっていかないと、80という数字までいかない。我々、2004年の4月から環境省の地球環境総合推進費で、西岡座長がプロジェクトリーダーで5年やったプロジェクトでも70%削減というのをチャレンジしていたんですが、80%になると自由度が少なくなって、こういうようなところを目指していく必要がある。
 5ページ目ですけれども、そういったものをもうちょっと分解して、どういう要因なんだろうかというような分析をしてみますと、これはいわゆる茅恒等式というものです。茅陽一先生が1990年ぐらいに論文を書いたものですけれども、CO2をGDP掛けるエネルギー強度、エネルギーをGDPで割ったものですね。付加価値100万円つくるのにどれだけエネルギーを投入するかとか、そして、炭素強度です、その投入したエネルギーからどれだけCO2が出るかという数字ですけれども、こういうふうに要因分解できます。
 これを年の変化率にしますと、非常に雑駁にいって、変化率の足し算になるんですけれども、例えば73年から90年というオイルショック以降バブルぐらいまでやると、GDPは年3.9%増えていったんですけれども、エネルギー強度、つまりGDPを増やすときのエネルギーの消費量は2.2%ずつ改善されて、また、炭素強度も天然ガスなり原子力なりのシェアが増えて、0.7%改善されていて、CO2は合わせて年0.8%増えていた。90年から08年までみますと、GDPは1%程度、しかしエネルギー強度もあまり改善されず、炭素強度はほとんど0ぐらいな感じで、0.4%増えていた。
 しかし、2020年、15、20、25というようなものを目指そうとしたとき、GDPを例えば1.6%増やそうとすると、エネルギー強度で2.0~2.3とか、炭素強度で1.4~2.3とか、今まで経験したスピードの中で、特に炭素強度については強度を増す。さらには、50年まで目指そうとすると、エネルギー強度で1.4~1.7とか、炭素強度で2.7~3.0とか、こういった数字が見えてきます。これだけ非常に大きなチャレンジが待っているということを示しております。
 スライド6です。こういったものをどうやってやるのかということを、各ワーキンググループで精査してやっていただいているところです。成長の過程につきましては、国内外の低炭素社会の形成に貢献する日本のものづくり。ものづくりワーキンググループという上智大学の藤井良広先生、委員ではありませんけれども、そのグループで検討していただいていたり、地域の資源やエネルギーを活用した地域づくりと地域活性化、屋井先生の地域づくりワーキンググループ等で検討していただいているところ。
 エネルギー強度改善については、快適な暮らしとエネルギー消費のデカップリングの実現ということで、住宅・建築物ワーキンググループ、村上先生のところだったり、また、自動車ワーキンググループ、大聖先生のところだったり、高効率技術の大量普及というところもまた重なっていったり、炭素強度改善のほうは、再生可能エネルギーの大量普及、大塚先生のエネルギー供給ワーキンググループだったり、安全を大前提とした原子力発電の利用拡大または革新的技術のあるRDD&Dとか。全体はマクロフレームワーキンググループだったり、生活者の視点でコミュニケーション・マーケティングワーキンググループだったり、あと、農業なり土地利用の分野で農山漁村のワーキンググループ、牛久保先生のところだったり。そういった成果がこういうものに全部入っていって、実現する道筋が見えていくということです。
 7ページ目に答えを書いてしまっているんですけれども、今回のモデル分析を通じて明らかにした点です。1つは80%削減ですね、国内削減で達成しうる、先ほど示したようなものです。2020年につきましても、技術の組合せの強度がありますけれども、15%、20、25%削減というものは達成しうる。また、2030年についても30%以上の削減というものも試算されます。費用につきましても、対策費用、追加投資額のほぼすべてはエネルギー消費の節約分で回収可能。また、定量的な分析からは投資回収年数というものの考え方についてより深い議論が必要であったり、または、温暖化対策以外のマルチベネフィットというものも非常に重要であると。そして、2050年80%削減に至る排出経路というものを全体を見て分析したところ、90年比で20%付近だったり、2030年で30%以上の点を通過して、達成しうるというような試算も行いました。
 次をご覧ください。今回、分析に用いたモデル群を示しています。スライド9ですけれども、あえて繰り返しになりますが、モデル分析の役割になります。この検討自体は2009年10月のタスクフォースから書いていますが、2008年11月の麻生政権のときの中期目標検討会から延々とこういうことをやっているような気がしております。日本技術モデル、日本経済モデルを使って、当時はエネ研さんだったり、RITEさんだったり、慶応大学の野村先生だったり、日経研究センターとか、そういったグループとモデル比較をやったりとか、ずっと揉まれてきています。低炭素社会シナリオ分析、先ほどご紹介したものですけれども、2004年度から特に2050年のビジョンづくりのところで検討してきました。
 そういった既にある定量の材料を、2009年の12月から始まりました地球温暖化対策に関わる中長期ロードマップ検討会に材料としてご提供しました。そのときは全体検討会、また、住宅・建築物ワーキンググループ、自動車ワーキンググループ、地域づくりワーキンググループ、農山漁村サブワーキンググループ、エネルギー供給ワーキンググループというものがあって、そちらのほうで同じように見ていただいて、精査していただいて、またさらにどんな施策があるのだろうかというものを検討していただきました。
 それを受けて、2010年3月26日に再試算結果を出し、そのうちの一部、25%のケースだけを、環境大臣試案、小沢試案ということで出されて、それが中環審ロードマップ小委員会での一連のヒアリングの対象になったり、または国民対話が行われたり、パブリックコメントが集められたりというようなことがなされました。それを7月29日の時点で、その時点のものを受けて試算をやり直したものを示しています。
 また、政府全体の動きとしまして、6月に新成長戦略が出されましたし、同じく6月にエネルギー基本計画が閣議決定されたり等、温暖化の2020、30、2050の道筋を見る上で非常に重要な方針が示されておりますので、そちらをできうる限り参照する必要もありまして、また、ここの委員会の意見、さらにロードマップ、中間報告がありましたけれども、そちらのことを受けて、今回の再試算(10月15日)を行っております。
 次をご覧ください。10ページ目、いつもモデル分析をやる立場からモデルの見方はよく気をつけてくださいということで、あえて言わせていただいておりますけれども、決して水晶玉のように将来を予測するものではなくて、皆さんが前提とされていることをできる限り正しく理解して、それを組み合わせて示すものです。そういう意味で前提が変わると結果が変わります。3番目で、社会像ですけれども、一つに限定するということは、将来の様々な可能性を捨ててしまいますので、できるだけ多様な社会像を「見える化」したいと思っています。ただ、ここは、安井先生がマクロフレームワーキンググループで座長をしていただいておりますけれども、どんな将来社会の方向性があるんだろうかということについては我々も検討していきたい。そういったものを入れながら、各ワーキンググループの成果を整合性のとれたシナリオにしていくというのが我々の役目でした。
 スライド11に今回使っているモデル3つを示しています。低炭素社会シナリオ分析モデル群ですね。2050年のスナップショット、状況を示すものです。もう一つ、バックキャストモデルという、現時点から2050年までを連続して解を求めるものについても今回チャレンジしております。あと、日本技術モデルです。これは、2008年10月、11月からずっとやっているものですけれども、それで2020年及び2030年の試算をしています。3番目、日本経済モデルですけれども、こちらのほうは10月29日の次回のロードマップ小委員会のほうで検討結果をお示しする予定になっております。
 次をご覧ください。スライド12で、「2050年80%削減の絵姿」というものです。つまり、我々が求める一つのゴールが一体何であるかというものについて検討しているものです。
 スライド13にもう少し具体的なことを書いております。ここでは、シナリオA、シナリオBという2つのシナリオを想定しています。我々がずっと低炭素社会研究でやっていたものがベースになっておりますけれども、Aでは利便性・効率性の追求から、都市への人口、資本の集中が進展するようなケースです。GDPの成長率は比較的高いというか、今ぐらいの1%/年というものを達成するようなものです。Bのほうは、地方に人口ないし資本が比較的分散化するようなシナリオです。GDP成長率はAよりも低いですけれども、物質的豊かさから脱却して、成熟社会を目指すようなものです。具体的にマクロフレームの想定として右側に示しておりますけれども、人口はどちらも減りまして、今、1億2800万人ぐらいいますが、1億人前後になると、それに合わせて世帯数も変化する。また、GDPはAとBで違いますけれども、そういったものでもそれぞれ80%減らせるかどうか。粗鋼生産量、セメント生産量についても、それぞれのシナリオに応じて変化させております。
 スライド14をご覧ください。これは、そういったマクロフレームを前提にしながらも様々な対策を加えたときに、どうすれば80%を実現できるのだろうかというものです。需要部門のほうをみますと、家庭やオフィスでも徹底的な省エネ、太陽エネルギーなどの利用で、ほぼゼロエミッション、ゼロエナジーハウス、ゼロエナジービルディングはほぼすべてになっているということです。化石燃料は、産業部門における原料としての利用とか、高温熱の需要、または、貨物交通部門で大型トラックが長距離を走るとか、そういったところで限定的に使われるというようなものです。
 スライド15は供給サイドのものになっていますけれども、現時点ではCO2を排出しないエネルギーの割合は2割または3割弱ですけれども、それが7割程度になるとか、または、火力発電所を使う場合はCCSレディとかもついていまして、CO2がほぼフリーになっているとか、そういったところを目指すというようなことになります。
 スライド16、今度はシナリオBという地域分散的なものになります。ただ、徹底的に省エネをやるのはどちらも同じことでして、家庭・オフィスいずれにしても徹底的な省エネが進展される。その中で、給湯需要は太陽熱温水器が多く普及するのではないかというようなシナリオになっています。Bの供給サイドのほうですけれども、地域分散的なところもあって、バイオマスも、もう少し多く使うようなことになるということを想定して、こちらでも80%削減できるのではないかというような大きな姿を示しています。いずれにしても非常に大きな変化が2050年までに待っているというか、本気でやるならこれぐらい変えないとできないということを示しています。
 スライド18です。そういった2050年の大きな変化を頭に置きながらも、2020年はあと10年しかありませんから、現実的なところでどういうことを積み重ねて、2030年、2040年、2050年につなげていくか。または、2030年では、後でも説明しますけれども、基本的に2020年の対策の努力を続けながら、2030年も姿が見えないかなというようなことをやっています。
 スライド19に基本姿勢と2010年3月のときにお示しした推計との違いを書いています。基本姿勢としましては、社会経済に関する見通しや技術予測につきましては、各種政府見通し、または各機関の研究成果等をできるだけ参照して、適切な政策措置が入った場合にどのような削減が可能かというものを検討しております。見直しの背景、先ほどの全体のポンチ絵みたいなものでもご説明しましたけれども、3月の公表時点から非常に多くのご意見をいただきましたし、エネルギー基本計画、新成長戦略等が出てきておりますし、さらに各ワーキンググループにおいて精力的な検討をいただいておりますので、そういったところをできうる限り反映させようという意図です。全部で大きく15項目について見直しを行っております。
 スライド20です。そういった中で、前回もご説明しておりますけれども、マクロフレームについても大きな2つの考え方があるのではないかと思っています。「マクロフレーム固定ケース」と「マクロフレーム変動ケース」とで、ちょっとわかりづらいかもしれませんが、そういう名前で呼んでいます。固定ケースというのは、15%を減らそうが、20%を減らそうが、25%を減らそうが、GDPの成長率は変わりませんし、鉄の生産量は変わりませんし、セメントの生産量は変わらないとか、自動車の輸送量は変わらないとか、そういった予測をしているものです。
 マクロフレーム変動ケースというものは、目標の数字の多寡によって、例えば炭素の税額なり、実際かかるお金が変わるのであれば、社会経済フレームが変わって、生産量が一部増えたり減ったりするのではないかというものです。具体的にマクロフレーム変動ケースにおける活動量の想定というものを、下のところに書いておりますけれども、それぞれ2020年、2030年で減るところもあれば、例えばガラス製品のように高断熱住宅向けの需要が増えるというところは増えたりというような予測を、経済モデルと連携させながら計算しております。
 スライド21に、もともと想定しているマクロフレームを、「マクロフレーム固定ケース」と書いていますけれども、示しています。素材生産量等は、中期目標検討委員会における想定値をたたき台にしながら、2030年については一部、AIMモデルを使って延長させて推計したりというものはありますけれども、基本的には今までずっと検討してきたマクロフレームを前提にして計算しているものです。
 次のスライドをご覧ください。スライド22ですけれども、想定の違いを一つずつご説明していきたいと思います。まず、原子力発電ですけれども、6月に出ましたエネルギー基本計画を拝見しますと、新増設の数が、今まで8基と言われていたものが、2020年は9基までいけるのではないかということがありましたので、我々も9基でやったらどうなるんだろうかというようなものにしております。設備利用率につきましても、85%を目指すということが電気事業連合会のほうで言われておりますので、それを踏まえて、前までは国内15、20とかだと、80%というものを85にして、また、国内25だと88までやっていたのを、85に戻したりとか、そういったことをしています。2030年についても、そういった想定値から数字を変更しております。そういった意味で発電電力量がそれぞれのケースで変わってきております。
 次、スライド23、想定の違い(2)ですけれども、産業部門における天然ガス転換というものにつきましては、15%、20%ケースにつきまして、エネルギー基本計画における目標の中で、2020年までに燃料消費に占めるガス比率の5割以上の増加というものだったり、2030年までに燃料消費に占めるガス比率の倍増というものが示されておりますので、そちらの数字を。また、25%ケースについては、事業者のヒアリング等も踏まえて、もう少しいける可能性があるところは積み増ししたりというようなことをしています。
 3番目の世帯数につきましては、変更というか、長期エネルギー需給見通しと同一の想定に修正しました。どういうことかというと、昨今、世帯数の増加傾向が大きくなっていますので、最新のデータに基づいて増加率想定について上方修正を行っています。その分だけCO2は増える要因になります。
 スライド24、想定の違い(3)。4番の高効率給湯器です。表に示しておりますように、今まで、2020年には例えば15%ケースでも3410万台、高効率給湯器が入るとか、25%のケースだと4160万台いけるのではないかと言っていたんですけれども、ヒアリングとか、住宅・建築物ワーキンググループでの検討でも、単身世帯とかなかなか入らないのではないかとか、また、前述の世帯数の増加というところは、単身世帯の増加の影響も大きいのではないかということで、下方修正いたしました。それぞれ2020年、2030年で修正しております。また、燃料電池のほうですけれども、こちらは冨田委員からもどういう数字なのかというご質問もありまして、エネ基本計画等における目標等を見ながらこういう数字を示しております。
 次、スライド25ですけれども、太陽光発電など再生可能エネルギーの想定です。こちらにつきましては一部修正しております。2020年につきまして、今まで3700万KWというものを想定していましたけれども、3500万KWだったり、2030年も微修正しています。こちらのほうはエネルギー供給ワーキンググループで議論していただいていることを受けて修正しております。
 太陽熱温水器につきましても、一部、2020年、2030年、15%ケースのときは下方修正したり、あと、バイオ燃料の年間消費量につきましては、先ほど安井委員からもっといけるのではないかというご指摘もあったのですが、逆にエネルギー基本計画を正しく読んでしまって、減らす方向にやっておりますけれども、そういう数字の下でどういうことになるんだろうかというような分析にしております。
 次、スライド26ですけれども、旅客輸送量です。こちらのほうも、3月の時点でいろいろご議論いただいて、そんなに減るんだろうかというようなことを言われました。今回は、固定ケースについては、トレンドによる減少というものを見込まず、長期エネルギー需給見通しの想定と同じくしました。参照ケースでは、自動車走行台キロのトレンドによる現象を踏まえておりますけれども、対策ケースでは総旅客輸送量について参照ケースと同量とした上で、モーダルシフト等による自動車以外の輸送量の増加というものを見込んでおります。そういう意味で、こちらのほうも前からどちらも数字は増えておりますので、CO2としては増加要因になります。貨物輸送量につきましても、旅客輸送量と比較的近い考え方で、どのケースも今までトレンド的にも減るのではないかという予測をしていたんですけれども、上方修正しております。
 スライド27の住宅の環境基本性能の向上のところですけれども、これは2005年の数字、足元のところは、今まで京都議定書目標達成計画の進捗状況、地球温暖化対策推進本部の値を基に想定していたんですけれども、そんなにいっていないということがわかりましたので、足元の数字を直しました。2020年の目標の数字は今までどおりにしております。
 9番の家電製品・電力機器というものですけれども、こちらは、表を見ていただければと思いますが、今まで、2010年3月推計ではそれぞれトップランナー制度等によって、2005年から2020年、2030年とメーカーの頑張りで、全体の家電製品・電力機器の効率が39%なり64%向上するというようなことを想定していたんですけれども、消費者がそれに応えられるのだろうか、よく枝廣座長のコミュニケーション・マーケティングワーキンググループでもそういう議論がありますけれども、その点も踏まえて、例えば15とか20%ケースになるともうちょっと買い替えのスピードは緩くなるのではないかというような想定を行っております。
 スライド28です。これは自動車の販売平均燃費改善率ですけれども、こちらにつきましては、対策の導入量を最大限にするケースに加えて、現状の対策レベルにとどまるケースを検討して、新たに15、20%ケースを設定しております。プラグインハイブリッド自動車の燃費については、国交省の数値等を基に修正しています。草鹿先生が隣にお座りですけれども、自動車ワーキンググループのほうでさらに検討していただく予定になっています。
 スライド29、鉄道・船舶・航空のエネルギー原単位改善率も、ヒアリング等を加えて示しておりますけれども、こちらも自動車ワーキンググループの先ほどの中間報告でもさらに検討されるということですので、そちらの最新値を更新していきたいと思います。
 スライド30です。もう一つ、CO2以外の分野として、また、エネルギー以外の分野として非エネとかHFCとかがありますけれども、こちらのほうも2010年3月推計では、2007年に国連に提出しましたインベントリーの数字でやっていましたけれども、最新の推計が2010年4月15日に出されましたので、それに基づいて再集計しております。HFCのほうにつきましては、業務用冷凍空調機器の使用時の漏れが非常に大きいということなんですけれども、それが改善するとか、自然冷媒を利用した冷凍・冷蔵・空調装置の開発・普及の加速化が進むとか、そういった想定を置いております。
 スライド31は廃棄物分野の対策内容及び対策導入率ですけれども、一部、この中の委員の先生たちも2009年12月からの検討会でやっていたのとパラレルで、環境省の廃棄物・リサイクル対策部のほうも中長期的な温暖化対策に関わる検討委員会というのをやっていまして、そちらで2020年なり2050年の検討を行っていたんですけれども、そちらのほうの数字を反映させております。
 最後、15番、農業の活動量ですけれども、これは2010年に新たに「食料・農業・農村基本計画」というものを出されておりますので、2020年はその数値、2030年は正直わかりませんが、横ばいということにしています。こちらのほうは、ぜひ牛久保先生がやられている農山漁村サブワーキンググループのほうでもご知見をいただければと思います。
 ちょっと退屈な説明で申し訳ないですけれども、こういった大事な前提をいろいろ修正しながら、果たしてこれを全部組合せるとどうなるかというのが、スライド32以降の話になります。中期目標を達成するためにはどのような対策が必要かということです。
 スライド33にケース設定の考え方を示しております。ここでは、2020年に国内削減のみで25%から15%まで5%刻みでやった場合にどういうことになるか。2030年、名前が変わって、対策下位・中位・上位と書いていますが、基本的にはそれぞれ15、20、25の努力をそのまま2030年まで継続させたらどうなるんだろうかというような試算です。有体(ありてい)にいって、15%ケースについては、施策の強化はもちろん前提なんですけれども、より確実性が高い部分での普及というものを想定していく。25%ケースになると、より強化し、導入ポテンシャルの限界に近いところまで入れる。ただ、マクロフレーム固定ケースの話を今からメインで行いますけれども、もしマクロフレームが変動する、経済活動によって炭素価格が発生して、それによって産業シフトが起こるということがあれば、さらに深掘りするチャンスはあります。
 それぞれ産業部門のところでは、エネルギー多消費産業、省エネ機器とか、こちらのほうはどのケースに応じても常に最高効率の機器を導入するとか、燃料ガス転換については25%ケースでさらに加速するとか、民生部門、高断熱住宅につきましては、最初の段階から基本的にフローとしては2020年でよいものにしていく。高効率給湯器は、先ほど説明したような程度の差がある。運輸部門の自動車販売平均燃費につきましては、それぞれ先ほど自動車ワーキンググループのご説明にもありましたような想定を置くとか。原子力については、どのケースについてもエネルギー基本計画で指摘されているような新設9基が確実に達成される。再生可能エネルギー導入量については、15%ケースでも政府目標になっている一次エネ比10%を達成し、対策が深まっていくとさらに再生可能エネルギーも入っていくというようなケースです。
 スライド34は、先ほど説明した15、20、25と、あと、技術固定ケース、参照ケースというものもあって、技術固定ケースというのは、技術の導入状況とか、エネルギー効率が現状2005年の状態で固定された、フローズンされた、ちょっとあり得ないんですけれども、そういった想定です。参照ケースは、その改善度合いが今までの改善度合いが続くというものと、15、20、25。それから、先ほど申しましたマクロフレームに関わるケースで、2×5の10ケースをやっております。という前提の中で結果はどうなったのかということです。
 スライド35です。これが全部門の姿・排出量です。まず、間接排出量で示しておりますけれども、それぞれの部門でご努力いただいて積み上げた結果としては、15、20、25というものは達成されうるのではないかということです。下に2020年削減量ですね、技術固定ケースとの差を示しています。また、2030年につきましても、それぞれ延長して30とか37とか43%というような削減も見えてくるということがわかりました。
 スライド36をご覧ください。こちらは直接排出量のグラフになります。当然のことながら、こちらのグラフで見ると、家庭部門、業務部門の割合が減りまして、産業部門も一部減りまして、その分、エネルギー転換部門で消費される部分がカウントされております。
 スライド37は、そのときのエネルギー需給の姿を示しています。一次エネルギー供給量としましては、固定ケースだと2005年より増えたりしますが、参照ケースでもほぼ横ばいが減る傾向です。15%、20、25%になればなるほど、一次エネルギー供給量自体も減っていくというような傾向が見えます。最終エネルギー需要量につきましても同様のことが言えます。ただ、参照ケースでも2005年に比べてより減る、徹底的な省エネが需要サイドで起これば、サービスはきちんと供給されながらも需要は減るというような姿が示されております。
 スライド38をご覧ください。今度はマクロフレーム変動ケースのグラフを示しています。一部、若干わかりづらいのは、マクロフレーム固定ケースでも変動ケースでも目標値を15、20、25としているので、合計した数字は同じなんですけれども、一部その中の構成が変わっています。つまり、マクロフレーム変動ケースでは、産業部門の減少がより進みまして、その分、家庭部門とか業務部門は比較的ゆったりというか、対策の進度というものはそこまで深めなくてもよいというような結果になります。
 スライド39はそういった傾向を2030年まで伸ばしたらどうなるかということで、若干、変動ケースで対策中位だと少なくなったり、対策上位だと多くなったりしますが、それぞれ導入の進度を変えていますので、ほぼ同じような結果が出てくる。ただし、中身が大分変わる。同じように産業部門のほうが減りうる、産業シフトが起こってより低炭素な産業になっているということが示されます。
 スライド40です。以降、各部門でどういう対策を考えたかということを示しています。産業部門では世界トップランナーの低炭素ものづくり、ものづくりワーキンググループで検討していただいていますけれども、これが大前提となりながら、エネルギー多消費産業における最高効率機器の導入、高効率の業種横断技術の導入、燃料ガス転換などにより、2020年までに1割強の排出削減となっております。既に日本の産業部門は世界でもトップレベルのエネルギー効率が達成されておりますので、そこからさらに努力して1割削減というような姿になっています。具体的なメニューは下半分のところに示させていただいております。
 スライド41には家庭部門の姿を示させていただいております。家庭部門ではゼロエミッション住宅100%の実現と、これはフローですけれども、向けてエネルギー機器の高効率化、住宅の環境性能の向上、太陽光発電等の設置で、2020年までに4割から5割の排出削減をねらっていく。そのうち、電力排出係数の低減によって14~19%、省エネ技術、創エネ技術等によって、2割、3割削減というようなことを目指すということです。これが2020年ですけれども、2030年になるとさらに削減が進んでいくというようなことです。具体的にどういうふうな対策をやっていくかということを下に示しています。住宅の断熱性能の向上から、空調の高効率化、高効率給湯の普及とか、照明とか、家電製品、計測・制御システムの普及、スマートグリッドとかスマートメーターとかです。あと、太陽光発電の設置です。家電製品の高効率化等がよく効くとか、高効率給湯もかなり影響力があるとか、そういったものが見えてきます。
 次のスライドをご覧ください。業務部門の姿を示しています。比較的家庭部門に近い対策になるかもしれませんけれども、こちらはゼロエミッション建築物のフロー100%実現に向けてエネルギー機器高効率化、建築物の環境性能の向上、太陽光発電の設置等によって、2020年までに4割、5割削減するということです。こちらは、先ほどのも合わせて住宅・建築物ワーキンググループのほうで非常に熱心な、また、精査な議論をいただいていまして、具体的な政策はそちらによるとして、数字としては例えばこういうふうなものをやっていけばそれぞれの対策につながっていくということです。
 スライド43は運輸部門の姿を示しています。運輸部門では、環境対応車をフローで100%導入だったり、低炭素型交通システムの実現に向けて、次世代自動車の導入促進、燃料改善、利用の適正化、交通流対策などによって、2020年までに2割、3割の排出削減というものです。電力排出係数につきましては、現時点でCO2排出に占める電動の移動体、電車とか電気自動車は割合少ないのであまりありませんで、運輸部門における対策によって23~28%削減というふうに示しています。この中で交通流対策等は、地域づくりワーキンググループとの連携も図りながら、そちらの数字をこちらでは参照しながら組み合わせると、下のほうに示しておりますように、燃費改善で半分以上、また、利用の適正化、交通流対策で半分弱というような削減の効果が見えます。
 スライド44は非エネルギー部門の姿です。こちらも量はCO2よりは少ないですけれども、重要になっておりまして、特に代替フロン等の3ガスをどうやって進めていくか、その削減量のところでもFガスの量が多くなっていまして、先ほど前提のところでもご説明しましたけれども、空調機器とか家庭用エアコンの冷媒回収のほうが非常に大事になっていくということです。
 そういった各需要部門の説明ですが、スライド45は供給部門です。再生可能エネルギー導入量ですけれども、我々の試算の結果では、15%ケースでも政府が目標とするような一次エネルギー10%というものは達成しうるのではないか。それぞれ20、25で11、12%、2030年まで延長すると16、17、19とか、そういった数字が見えてきます。それによるCO2削減量のところですけれども、太陽光発電の効果が一番大きくて、次に水力発電とか風力、バイオマス発電といったものが見えます。太陽熱はあまり見えてこない状況です。ここら辺はエネルギー供給ワーキンググループで非常によく精査していただいているところです。
 スライド46ですけれども、発電構成になります。先ほど需要側の最終エネルギー需要なり一次エネルギー供給なりが減少すると申しましたが、発電量自体も固定ケース、参照ケースでは発電量が増えていますし、15、20だと2005年より増えていますが、25だとそれがちょっと減少するような傾向になります。つまり、全体の需要は減りますけれども、電化がかなり進みますので、発電電力量自体は最終需要なり一次エネルギー供給ほどは減らないというか、中には増えているケースもあります、今のところ20%まで増えていますけれども、そういう傾向が見えるということです。その中の、特に影山委員から後で指摘されると思いますけれども、電源構成の割合は非常に重要になってきます。こちらのほうのシナリオでいくと、今まで石炭火力、LNG、石油等火力というものが非常に大きな割合を占めていますけれども、電源自体の非化石化というものが、エネルギー基本計画でもうたわれていますけれども、そういうものを進展させるとこういうようなバランスになるということを示しております。
 スライド47以降はコスト削減費用についても検討しています。スライド47はその考え方を示しています。どういうことかというと、費用の定義も非常に難しくて、いろいろな定義があるので、ここではこういう定義だということなんですけれども、一番下の対策費用というところを見ていただきたいんですけれども、まずこれを計算します。
 何かというと、追加的投資費用×年価に換算する係数をまず計算します。追加的投資費用というのは何かというと、例えば先ほど自動車ワーキンググループでハイブリッド自動車とかプラグインハイブリッドというお話がありましたけれども、同じ性能の既存自動車で安いものに対して、そういう高性能のものを買うときの追加部分のお金、これを追加的投資費用と呼んでいます。
 年価に換算する係数というのは、それを何年で回収しようかということで、3年で回収しようとするとその部分だけ割合が高くなったり、10年でいいやというと年価にすると安くなったりということですけれども、そういう係数を掛けます。あと、年間の維持管理費用とか、エネルギー費用の節約額を計算して、対策費用と名付けています。その対策費用を上の式のGHG削減量ですね、その対策を入れることで年間どれだけCO2が減らせるかというもので割って、削減費用というものを出して、それを絵にしたのが左のグラフになります。
 対策Aとか対策Bというのは、投資回収年数を想定したものの範囲で考えると、お得になるというものを示していて、C以降はその回収年数ではちょっと回収できないのではないかというような考えになります。単位は円/t-CO2ということです。
 それを全部の技術でやったらどうなんだろうかというのがスライド48です。2020年15%のケースですけれども、先ほど申しました回収年数というのは、比較的短いというか、経済用語で「主観的割引率」という言葉があるんですけれども、具体的には産業部門で投資回収年数3~9年ですね。寿命の長いもの、30年とかあるものは9年みたりとか、家庭部門でも、エアコンとか10年ぐらい寿命があっても、投資回収年数を3年でみたりとか、業務部門も3年、運輸部門で、自動車10年、13年とか寿命がありますけれども、5年でみたりとか、そういった比較的短いというか、市場で現時点で観測値に近いようなもので採用すると、先ほど示したマイナスの部分は照明だったり、業務の高効率給湯とか一部見られますけれども、大部分はプラスの削減費用というものになっています。
 これを25%ケースでもやったのがスライド49になります。最初の傾向は変わりません。縮尺がちょっと違うので、そのままでは見づらいかもしれませんけれども、さらに削減が進みますので、より高い対策費用が必要なものも入れていって、25%削減というものを実現するということになります。
 スライド50はまたちょっと難しい絵になっておりますけれども、どういうことかというと、濃い青い部分と薄いグレーみたいな部分があって、さっきまで見ていたのは、この薄いグレーの部分をずっと、短い投資回収年数のご説明をしていたんですけれども、例えば政府の後押しなどによって回収年数が長くなった場合、そうすると濃い青のグラフに変わります。つまり、マイナスの部分が大分増えてくるんですけれども、具体的には産業部門で30年寿命のものだったりするものを、投資回収年数を12年から15年みたりとか、家庭部門でもエアコンとかも寿命に近い年数をみたりとか、そういうことをするとその分だけ省エネ回収できますから、削減費用は安くなくということです。
 上に書いてある32,100円とか1,850円というのは、25%ケースを実現するときの平均コストになります。例えば炭素税を仮にかけるとしたときに、しばしば削減費用の一番上の部分を限界削減費用と呼んで、その部分の炭素価格をかけるというような議論もありますけれども、それだと取りすぎになってしまって、10万円とか炭素価格をかけたって、2万円とかでできる人にとってみるとお得になってしまいますので、その分、平均費用というものでみると32,100円だったり、または、長期の回収年数というものが実現できれば2,000円弱、今言われている世界でのCDMとかクレジットの価格に近いような価格でも削減しうるというようなことが示されております。
 スライド51は、そういったものを全部引っくるめた投資額が一体幾らになるんだろうかということです。
 スライド52にその合計というか、項目別の数字を示しています。これは3月のときにも示していまして、合計値の結論は前からあまり変わっていないんですけれども、15%から25%まで実現させるための追加的な投資額は年平均で6~10兆円、日本のGDPが400兆円ぐらいだとすると、10兆円というのは2.5%ぐらいですけれども、そういった呼び水が必要であろうと。これは投資額なので、それはその設備を設置したことによるベネフィットがどう返ってくるかで、投資がちゃんとリターンするかしないかということになります。
 リターンするかしないかの一つの試算としてスライド53を用意しています。まず、省エネ機器を入れることで、もちろんエネルギー削減費用というもののメリットが出てきますので、それが幾らになるかということを計算しますと、例えば25%ですと、10年間で、合計すると96兆円必要ですが、同じ期間の間に約半分の50兆円、エネルギー費用を節減することができる。さらには、機器の中には、右のポンチ絵で示していますように、2020年に近い段階で導入したものは2030年まで動きうるものもありますので、そういったものを踏まえるとまた半分ぐらい返ってきて、ほぼ相殺されるのではないかということです。これは単純にエネルギーの削減費用だけ見ていますので、例えば住宅・建築物ワーキンググループでお示しになられたような、健康の改善効果とか、高齢者対応のまちづくりによる効果といった、ほかのベネフィットも入れるとまた違う効果が出てくると思われます。
 スライド54は、今まで2050年と2020年、2030年の話をしてきましたけれども、それをつないでみたらどうなるんだろうかということです。
 スライド55をご覧ください。これは全体の概念ですけれども、2050年の最後の80%の絵を描いていますけれども、それを実現させるための排出経路を分析したということです。
 スライド56にもうちょっと具体的に書いていますけれども、バックキャストモデルを開発して、特にこれはマクロフレームワーキンググループのほうでも見ていただいているんですけれども、例えば制約条件としまして、2050年に80%削減するとか、2020年の再生可能エネルギーの割合、一次エネルギー供給に占めるものを10%にするとか、マクロフレームについては、2020年、2030年は今までのもの、2050年も先ほど想定したものを使うとか。技術データについても今までいろいろ出ているものを参照させていただいたり、供給制約を置いたりとか、そういったいろいろな制約も置きながら、その期間の総費用が一番安くなるようなパスというものはないんだろうかということを分析したものになります。
 スライド57に技術の考え方を書いているんですけれども、将来技術がどうやって入っていくのか、これは非常に難しいところで、赤井委員がずっと超長期エネルギービジョンでもやられたりされていましたけれども、我々はモデルのロジックとして入れる考え方としまして、今あるストック技術というものがある時点でそのシェアが減っていって、次のBAT技術、ベスト・アベイラブル・テクノロジーが入っていく。それがある程度のシェアを獲得するならば、また次の技術展開が生まれるのではないかというようなロジックを考えまして、そういうのがモデルの中で再現されたら、最終的に2050年にどんな技術が入っていくのかというような計算をしました。
 具体的に、右に普通乗用車の場合とか家庭部門照明とかがありますが、例えば家庭部門照明を見ていきますと、白熱灯が今の時点で少し入っていますけれども、それが電球型蛍光灯になるとか、さらには高効率照明になって、それも2010年時点の効率が2015年の最新の効率、2020年の最新の効率とか、そういったものにどんどん効率向上改善が、全体のマーケットというか、家の中でも起こっていくというようなイメージです。それをそれぞれの部門で計算しました。
 スライド58は全体を示した結果になるんですけれども、技術固定でやると、2050年に向けても若干減るぐらいで、あまり減りませんが、2050年80%というところを目標にしながら技術進展を見ていくと、例えば2020年だと90年比で16とか21、2030年で30とか36%、そういったものを通っていくのも一つの答ではないかというような結果が見えてきました。
 スライド59です。大分最後に近づいてきました。それでは、どうやってそれをやるんだろうかということです。今回はモデル試算なので、具体的な政策展開については各ワーキンググループの議論に譲りたいところがあるんですが、こういったモデルの定量分析から言えることとしましては、1つは、先ほどいいました回収年数が非常に削減コストに効いてくるということが改めてよくわかりました。下の青い字で示しているものが社会的割引率を使ったものです。つまり、政府等が、長期に投資してもちゃんとリターンがあることをサポートし、信用できるようなマーケットでいくとこういったコストが見えてきますし、短期で回収しないととてもやっていけないというようなことになると、上の赤いところのような主観的割引率を用いたコストになって、そうすると社会的にも非常に投資額が大きくなってしまうというようなことが見えてきます。ここの間をどうやって埋めるかというのが非常に重要なところで、それはそれぞれで議論すべきところなのですが、モデル分析という立場からすると、これは非常に重要な点ではないかということです。
 また、スライド61で示しているものは、削減費用も、いろいろな対策技術がありますが、それぞれでコストが変わってきます。マイナスに近いところは「見える化」なり、生活者なり選択する人たちが適切な選択をできるように、何か促す仕組みが必要ではないかということ。また、マイナスのところでも、2050年80ということになると、ずっと同じ効率でいっても困りますので、トップランナー制度というものは非常に重要だったりということです。
 または、削減費用が高いものになると、炭素への価格付け等を行うことで、それによって削減努力が報われる仕組みというものも必要ですし、さらに高いところになりますと、技術開発普及のための制度構築とか、その支援とか、ここだと研究開発投資のところがあまり明示的にモデルの計算の中に示していませんけれども、そこへの投資も非常に大事になっていくということがこういうモデル結果から見えてきます。
 スライド62です。先ほどは説明していなかったんですが、モデルのほかの役割としましては、何か危機が起こったときに、それは一体どういう意味があるんだろうかということです。例えば原子力発電ですけれども、今回、2020年、設備利用率85%、また、新設9基を想定しておりますけれども、これが万が一実現されなかったら一体どういうことになるんだろうかというようなことです。
 まず最初に右のほうを見ていただきたいんですけれども、例えば長期エネルギー需給見通し等で、原子力発電はこういうふうな見通しが行われてきたのですが、90年から始まって、最新、2010年のものがありますけれども、比較的楽観的に原子力発電の設備利用率を見ているんですが、実際に達成されている数字はどちらも低めの数字が達成されているということが過去の傾向から見えてきます。最新の2010年に行われた長期エネルギー需給見通しの数字をみますと、これも幅がありまして、上のもの、下のものがあって、今回やったのは上の6000万kWを超えるような、6143万kWを採用して数字を分析しています。もう一つ、下のほうの原子力発電の設備利用率の推移です。2000年前ぐらいまでは80%を超える非常に良好な設備利用率が達成されていたんですけれども、地震等もあったりして利用率が減っている時期もありますし、それが2020年どうなっているのかということです。
 左のほうにいきまして、仮に同じ新設9基をやりながら、設備利用率だけが75%までしか達成されなかったということになると、CO2としては3000万t増えることになって、2.4%増加する傾向にあったり、または、設備利用率は達成されても、新設2基しか万が一できなかったとすると4000万tのCO2増加になって、それは3.2%に相当する。または、どっちもうまくいかなくて、設備利用率が75%とか新設2基ということになると、25%目指していたものが20%になってしまうとか、そういった非常に大きな影響力があるということが簡単な分析でもわかってきます。本来、モデルというのはそういった将来の不確実性を数字をもって見通すという役割があると思っています。
 スライド63は何をやったかというと、2030年のときのものを見ていまして、2030年の発電電力量を計算すると、一番下のところになるんですけれども、その中に占める原子力の構成比というのが、15、20、25の延長の対策下位、中位、上位の場合もいずれも50%を超えるようなものになりますので、仮に50%までしか許されない、そこまで原子力で発電できないということになるとそれぞれ2%ぐらい増加させる要因があるということです。ここら辺がスマートグリッド等の活用によって負荷調整されれば実現されうるのかどうかということについてもより深い議論が必要だと思っています。
 スライド64ですけれども、全体的な絵を示しています。我々がやったのは数字をもってそういうのがバランスがとれるかということなんですが、一番大事なところとしては、エネルギー自給率の向上とか、化石燃料輸入量が減少して年間約20兆円の資金流出を抑制できるとか、国内資源の活用によってエネルギー安全保障の確保につながるのではないか。
 または、産業の活性化・雇用創出、低炭素技術・インフラ・ビジネス開発拠点の構築とか、あと、しばしばヒアリングで言われた国際競争力の強化という点について、どれぐらい需要が創出されるのかとか、ジョブが生まれるかというところについては、恐らく次回の中期目標検討委員会の経済モデルの分析でも出てくると思いますけれども、そういった視点にのっとった数字を我々も示さなければいけないなとは思っています。
 あと、地域活性化、徒歩と自転車で暮らせるコンパクトシティの実現とか、地域に存在する再生可能エネルギー資源の活用による地域ビジネスの振興、特にコンパクトシティの実現とか、交通流対策等にも反映させているんですけれども、それ自体が生み出すプラスのベネフィットをどう表現するかというところまでには、数値分析としては至っていないということです。
 あと、快適な暮らしで、ゼロエミ住宅による快適な住まいの実現だったり、次世代自動車の普及による大気汚染物質の削減だったり、日本は大分空気がきれいですけれども、先週行ったハノイはバイクが一杯で、みんなカラフルなマスクをしていて、そういったファッションもあるんだなと思ったんですけれども、いずれにしてもまだ目に見えない大気汚染物質もありますので、そういったものを削減して健康につなげていくとか。そういったマルチベネフィットを見ていくことが非常に重要だと感じています。
 やっと最後にたどりつきましたが、スライド65、まとめです。
 66ですが、一番最初に申し上げたことが繰り返して書いてあります。1つは、80%削減というものは、技術ポテンシャルという意味では達成しうるということです。
 2番目、2020年の排出量削減ですけれども、組合せによって難易度に差はありますが、国内削減で15、20、25というものは見えてくる。
 3番ですけれども、その延長で2030年を分析すると、まだ見ぬ革新的技術というものは含まずに、30~43%の削減が見えてくるということです。
 4番目で、対策費用というもので、最初の呼び水は当然必要で、例えば追加費用で10兆円とかいうものは必要ですが、それは後からエネルギー消費の節約分だけでも返ってくるということです。
 5番目、定量的な分析から、投資回収年数と呼んでいるような、どれぐらいの期間で元をとると考えればよいかということの想定はこの対策費用の考え方に効いてくる。そして、温暖化対策以外のマルチベネフィットを踏まえた対策導入を行えば、削減費用が低くなることがわかっております。
 最後、6番目で、排出経路の分析を通じても、上の2020年とか2030年の目標値に近いところを達成しうるというようなことが示されました。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 非常に大量のお仕事をしていただき、どうもありがとうございました。
 まだ抜けているところは経済的な評価等々だと思いますが、これは次回ということになっております。
 討論の時間は約50分考えております。大量にあると思いますので、できない分につきましては、また後ほど書面での回答等々も含めて対応していただきたいと思います。
 それでは、皆さんのご意見を求めたいと思います。いかがでしょうか。
 それでは、一番早かったのは伴委員ですので。

○伴委員 ありがとうございます。非常に精緻な情報に基づいて大変な作業をされて、私どものモデル側からすると、とてもここまではついていけないというのが正直なところでございます。2点ほどあるのですが。
 藤野委員も今おっしゃったのですが、削減費用のカウントの仕方で、投資の回収年ということについて、これまでの中期目標検討委員会とかタスクフォースでのやり方が間違っていると私は主張してきたわけですが、それを少し取り入れられているというのがございます。間違っている最大の理由は投資回収年、つまり限界削減費用というのがモデルの中で非常に重要な役割を果たすのですが、それは技術モデルから出てくるものに大きく依存して、我々はそれに添うようにモデルのパラメータを決めているわけでございます。そうしたときに、日本の限界削減費用というのは、RITEにしろ、AIMにしても著しく高い。モデルではなかなか出てこないような高い限界削減費用が設定されているわけですが、最大の理由というのは投資回収年が著しく短い。投資回収年で最初の設備費用を割りますので、ここでは3年と言っていますが、もしそれが6年もてばそれだけでコストは半減するわけですね。
 藤野委員の出された今日のスライドの48ページ、47から49にあるのですが、そこで一つの例として挙げると、運輸部門における投資回収年数というのが5年と書かれております。先ほどの自動車のワーキンググループのスライドの18を見ていただきますと、平均の使用年数があり10年を超えているわけであります。つまり、自動車の年あたりのコストを計算するときに5年を使うのに対して、実際には10年使っているという事実があります。それを考慮するだけでもコストは半分になるわけでありま。ここでは主観的とおっしゃっていますが、この主観は現実の10年もつというのと全く異なっているということを我々は知るべきと思います。したがって、他国と比較して日本の限界削減費用が著しく高い最大の原因は、投資回収年を、例えば自動車については5年、5年ですべて買い替えるという前提にしているからです。
 ほかのところでも、例えば家庭部門でいきますと、家庭部門で大きな役割を果たすのは、先ほどの潜熱型の高効率の給湯器とか、あるいは、太陽光も含めてあるかと思うのですが、それがたった3年で廃棄し、次に替わっていくという前提で費用を計算しているわけです。そうしますと、ここでいくと、いずれにしても右のほうの高いところはどんどん高くなってしまう。でも、現実に太陽光を3年で買い替えますでしょうか。そういうことはあり得ないという具合に思っております。産業部門についてもそうでありまして、発電設備を10年で取り替えますか。日本のこれまでの限界削減費用は、10年で取り替えるという前提で発電コストを計算しているわけです。
 そうしたときに、主観的割引率を低くするために、政策的な後押しが必要ということをおっしゃっていますが、企業家からすれば、発電所を建設したときにそれがどういう経過で減価償却をしていくかは法律的に決められているわけであります。もちろん加速度償却というようなやり方があるわけですが、ここでいう10年で発電所をすべてつくり替えるというようなことはしていないはずですね。したがいまして、そういう主観的割引率というあいまいで、かつ、非常にコストを高くするような前提で限界削減費用を計算してきたこれまでのやり方は、私は変えるべきであると思っております。
 運輸部門についてはデータとしてありますので、おかしいということを考えてほしい。今回の限界費用の試算ではそれをしていただいて、スライドの50にこういう形で書いていただきまして、非常にありがたいことと思っています。この限界費用ですとモデルではかなり出しやすくなる数字になっておりまして、それでもまだ少し短いと思うのですが、こういう方向で限界削減費用を見直すということを公式にやっていただきたいと思っております。
 ただ、ちょっと藤野委員の経済学的に見て間違っているのは、スライド50のところで「平均」という言葉を使われていますが、ものの値段というのは平均価格で決まるわけではなくて、限界費用で決まるわけです。限界費用で一番高いコストを測ると、その下の人が儲かるわけで、これはいわゆる生産者余剰と言われるもので、それが我々のモデルでは利益(所得)として計算されるわけです。
 そういう点で、次回の小委員会でご報告申し上げたいんですが、今回随分下げることができたのですが、そこのところは基本的には非常に短い投資回収年、自動車では5年、発電所でも10年で回収するという、著しく高い設備コストを前提になっているのをやめて、現実に合わせれば随分低くなる。もちろん、それで10分の1になることはなくて、せいぜい半分とか3分の1になるとは思うのですが、皆様方には頭に入れて考えていただきたいと思っております。もう一つ質問がございます。
 我々も計算するときにいつも頭が痛いのは、CO2の排出量を何で見るかというところでありまして、ここでは90年が12億6千1百万トンとありますが、これはエネルギー起源のCO2だけではなくて、工業プロセス、廃棄物、それから、いわゆる6ガスと言われているほかのガスも含めたトータルの数字が12億6千1百万トンという数字になっています。ところが、ここでCO2と言っているのは、本当は何のプロセスで出てくるかを見ないといけないのに、ぱっと見るとエネルギー起源のように見えてくる。CO2の内容をもう少し精査して書くということをしていただくほうがいいのではないか。ただ、我々もそれほど分析ができているわけではないですが、以前の試算では、CO2はエネルギー起源と工業プロセス、廃棄物を含めて計算してきたのですが、そうするとその数字ではおかしいと指摘されました。おかしいというのは、中期目標検討委員会でエネルギー起源に限定していたことに由来します。
 そういう意味で、次回にはエネルギー起源に限定してやりますけれども、そうすると数字が変わってくる。これは小さいようですが、1割、2割というかなり大きな比重を占めていますので、そうしたところも含めて考えてみたときに、どこにターゲットをあたるかということは少し考えてほしい。結局、こういう数字を出すと、「いや、その数字は使っていない」とかおっしゃるわけですが、そこのところをどう考えているかを答えていただければと思っております。
 ちょっと長くなりましたけれども、特にガスに関しては、どういう形でやるかということを見ないと、いろいろとシナリオは変わってきてしまいますので、ここの委員会で少し合意をしていただければありがたいと思っております。

○西岡委員長 どうもありがとうございます。
 杉山委員、お願いします。

○杉山委員 ありがとうございました。数字がたくさん出てきているので、1回の説明を聞いて全部把握するのは非常に難しいなという感想があります。
 それでも、若干質問させていただきたいんですが、今ご説明いただいた中で、特に民生、業務部門の中も触れられていて、50年に向けてゼロエミッションという中で、20年、30年の中間的な目標も掲げられている。ただ、そこを具体的に本当にどうしていくのかといったときに、これは従来からあります設備、ヒートポンプなり太陽光パネルありますけれども、本当にそのものだけでそこがリアルにできるのかどうかというところをもう少し突っ込んでいかないといけないのではないかなと。
 ご説明がなかったんですけれども、資料を見てみると、75ページ、77ページ辺りには、住宅、業務部門、それぞれヘムスなりデムス、前のほうのページだと日本語で書いてあるのでなかなか伝わってこないわけですけれども、資料のほうには項目としては入っているわけですね。このヘムス、デムス自体は、スマートグリッドなり、そういった新しい技術を使って、ただ単に高効率なエネルギー使用をやるだけではなくて、家庭・業務部門でできたエネルギーを今度どうやって使っていくかという、社会的なエネルギーの使い方のモデルまで影響してくる、結構大きなものだと私は考えているわけです。
 そういった意味でいくと、今回のやつのモデル自体は了解といいますか、よく理解できるわけですけれども、家庭・業務、これからそこをゼロエミッションに向けてもう少し踏み込んで、何をやっていかなければいけないかというところをもう少し描いたらいかがかなと思います。質問というよりはコメントになってしまいました。
 なおかつ、特に産業界はもとより、この家庭・業務部門をどうしていくのかということに対しては、先ほどの資料の中でも、42ページ辺りで業務部門の建物の環境性能の向上、100%が11年基準以上と。目標としてはすばらしいと思いますけれども、これだけ中小ビルが一杯ある中で本当にやれていくんだろうかということも考えていかなければいけないし、逆に言えば、民生と言われる住宅、中小ビルに対するアプローチをどう具体的に実現化するかというのが、このロードマップ小委員会としてある程度の方向観を出して、政策選択の場に提供していくというのが求められてくるのではないのかなと考えていますので、是非その点のご考慮をお願いしたいと思います。
 以上です。

○西岡委員長 影山委員、お願いします。

○影山委員 大変わかりやすい説明でありがとうございました。
 2020年にCO2を15%、20%、25%削減が達成しうると計算されていますが、これと設備の導入の実現可能性がどのようにリンクしているのかがよくわかりません。各ワーキングでかなり詳細な積み上げをされて、例えば給湯器の導入台数等が調整されていますが、その結果このようになった目標値を、15%、20%、25%という削減目標値を考えながら導入台数を考えているということは、結局、15%、20%、25%に合うように導入台数がつくられたと見て良いのでしょうか。 実現可能性がどうなのかという話と、実際にこの削減率を達成するためにこれだけの台数を入れなければならない、あるいは、効率を上げなければいけないという話、ここの関係がよくわからないのでぜひ教えていただきたい。
 これは大塚先生に聞いたほうが良いかもしれませんが、再生可能エネルギーの導入の見込み量については精査が必要だと考えているのですが、供給ワーキングも含めて、どのくらい精査されたのかと、併せてお聞きしたい。
 それから、電源構成で原子力の割合がかなり高くなっているという中で、私もわかりませんが、そのときの最低負荷がどうなっているかによって、実際の負荷調整ができるかどうか、チェックが必要だと思います。今後、スマートグリッドでその点を全部カバーするのはなかなか辛いと思いますので、そのようなチェックはさらに必要だと思います。
 また、原子力の稼働率と今後の設置基数について心配があるという話があります。確かに実績からみると稼働率が上がっていない状況は、そのとおりだと思います。ただ、これまでの稼働率が下がっている状況は、我々の不祥事や、地震に因るものであり、今は、いろいろな問題点を一つひとつ潰している状況です。海外では稼働率90%を達成している国も相当あることを考えますと、技術で負けているということは絶対ないと我々は考えますので、問題点を潰していけば、稼働率がその辺にまで達することも全く不可能ではないですし、それはやらなければならないと思っています。我々が安全性をもっとしっかり説明することも重要ですが、皆さんのご理解、ご協力がさらに必要だと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
 もう1点だけコメントさせていただきます。エネルギーコストの回収の話ですが、2030年になれば効率化で投資回収、つまり、かかる費用とエネルギーコストの削減と大体同じぐらいになるという説明がありましたが、例えばエネルギーコストの削減というのは、我々の電力収入が減ることになると思うのですが、収入が減った中で、原子力を9基入れていかなければならないということになると思います。電気料金がどうなるのか、これからよく考えていかなければいけなりません。そうなると、エネルギーコストの削減がどのようになるのか、その点はもう一遍チェックをしなければならないので、そこまで考えていいのかどうかを教えていただきたいと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、飯田委員、お願いします。

○飯田委員 私も手短に2点。まず、全体としては、昨年のタスクフォースから始まり、今回のロードマップに場所を移してやってきた、モデルに関してはある種の集大成的に非常によく詰められたなと思います。
 1点目は、先ほど伴先生も議論された限界削減費用は、昨年のタスクフォースからずっとここはいつも問題の根源というか、先ほどの伴先生のご指摘のとおり投資回収年数が余りに非現実的で、それが高値だったという部分が一つ。
 もう一つ、これはもともと藤野さんの持論でもあったマルチベネフィットの部分を入れないと、これはミスリーディングではないかと。例えば、48ページ目の図を見ていくと、家庭の省エネ住宅というのはむちゃくちゃ高くなっているわけですね。しかしながら、日本の省エネのレベルというのは極めてレベルが低くて、例えばヨーロッパの断熱基準あたりでいうと、例えばノルウェー、北欧などは大体2027年にはもう完全に無暖房級にするぐらいの超高断熱になるわけです。
 それを全部CO2で割ったらもちろん高いわけですけれども、原則には当然、安全で快適な住宅、硬質な社会ストックという部分があって、CO2で全部割り算するのか、ベースとしてほかのマルチベネフィットがあって、CO2のためにさらに追加する部分、正味というのは一体この部分丸ごとなのかという部分はしっかり考えていかないと、極めてミスリーディングですし、その前にある太陽光発電もそうですね。48円から回避可能原価6円を引いた42円は全部CO2なのかと。今のエネルギー・セキュリティの話もあり、あるいは、太陽光発電に関しては産業政策という側面も、雇用政策、あるいはグリーンニューディール、様々な側面がある中で、それを全部CO2に乗せたら高いのは当たり前で。にもかかわらずなぜ48円で可能ということを考えると、CO2の部分は一体幾らなのかということを1個1個精査していかないと、極めてミスリーディングになるのではないかというところは、先ほどの投資回収と併せて、それを両方重ねていくとまるで違った限界削減費用になるのではないかというふうに私は思っております。
 2点目は、原子力の先ほどの話で、62ページのコンティンジェンシーというか、パラメータを振っていただいたのは、政府の中で出てきた文書でここを入れていただいたのは画期的なことだと思います。もともとあった2006年から始まった目達計画の中では、片や柏崎刈羽の原発が起こって、全基停止が起こっている真っ最中に、とにかく88%プラス何基というのがびくとも動かないというようなことから、2基、75%のほうが恐らく現実的であろうというふうに思いますので、むしろこれを見据えた対策をこれから精査していかなければいけない。現時点ではこういう添付資料の形で入るだけでも非常に意味がある。
 これがなぜ現実的か。もう一点落ちている点は、日本の原子力発電は老朽化が相当に進んでいるということです。政府全体としては60年稼働に向けて、美浜もついに40年超えで、これからある種のチキンレース的にいつまで運転できるのかという話になっていますが、世界の原子力発電の平均寿命というのは20年台です、30年を超えてないんですね。ましてや、耐震基準のバックチェックもまともに行われていない中で、果たして今あるのが無限に続くわけではなくて、今年あたりから40年超えが次々出てくるわけで、それはプラス9基では補えない。あるいは、プラス14基でも補えないレベルでの急速な減少のリスクもあるということ。そして、稼働率はそんな簡単な問題ではないということを、私はいろいろ現場も見知っておりますので、日本の温暖化対策としてこのコンティンジェンシープランが、あと一、二年するとメインプランになって、それに対する代替シナリオというのを真剣に考えないといけない時代が目の前にくるのではないかというふうに私は思っております。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 こちらへまいりまして、岡山委員。

○岡山委員 ありがとうございます。2点ほどお伺いしたいことがございます。
 一つは、先ほどもお話ございました限界削減費用のところでございます。私ども現場にいる者からの感覚で申しますと、投資回収は現在3年でさえも投資を躊躇せざるを得ないというのが企業の現状かと思います。その中で、3年から9年というものが主観的な割引率、企業が自発的に行うものであって、さらに産業でいいますと、12年から15年、これは何らかの政策があればできるんですよと、だから25%ができるんですよというふうなロジック展開に思いますけれども、その辺について国民生活にどのようなことが起こりうるのか、私ども一人ひとりにどのような経済的な影響があるのかというのを明らかにしていただいた上で、結論を導いていただければと思います。車の話も何回も出ておりましたけれども、自分自身もそうですけれども、5年で元がとれるといって車を買っておりません。まさに8年で元がとれるからといって、車を買っていただけるようなお客様は非常に少ないかと思います。その辺のところも十分ご検討いただければと思います
 また、繰り返しになりますけれども、先ほど草鹿先生のほうから自動車ワーキングのところで、最大導入ケースに関しても課題が非常にたくさんあるというふうに言っていただいております。このような数字だけ一人歩きしないように、常に課題がたくさんあって、それにはいろんな政策が必要であるのですよというものを併記いただけますと、助かります。よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 安井委員、お願いします。

○安井委員 まずは膨大な作業量に敬意を表したいと思います。
 そこで、藤野委員は「まだ見たことのない技術は使っていない」とおっしゃっておられるんだけれども、今日ご説明いただいておりませんけれども、例えば75ページの照明の効率が、2020年に166lm/Wと。これは新規技術だと思いますけれども、LEDがここまでいくかどうかというのは、多分まだ見ぬ技術かなというのも一部入っているような気がいたします。
 それから、これはひょっとすると私の誤解かもしれませんが、ページ28にございます2030年の燃費改善率が100%越していて、自動車というのは走ると発電するのかなと、そういう数値もあったりして。2030年ですから、計算されていないかもしれませんが。28ページの2030年の一番右下。ひょっとすると誤解かもわかりません。よくわかりません。いずれにしても……。

○藤野委員 2倍になるということですね。

○安井委員 2倍になるんですか。といったら50%削減……。これは増加、改善率、改善率ね。

○藤野委員 改善率ですね。

○安井委員 削減率ではなくて改善率ね。では、2倍ということですね。わかりました。では、私の誤解ということで。
 あと、もう一つ、残念ながら見たこともない技術は確かに少ないのかもしれないんだけれども、確かに見たこともない普及率なんですよね。それで、この部分を一体どうするのかということになりますと、枝廣座長のコミュニケーション・マーケティングワーキンググループの責任なのかもしれないんだけれども、日本人のマインド、これまでもいろんな方にいろいろと説得を試みてみて、どうしても古い冷蔵庫に愛着があるから使いたい、ゴミになるのが嫌だと、こういうマインドをどれほど改善できるのかと、これまた環境省の問題かもしれないんですけれどもね。それはエネルギー的にも金銭的にも絶対得するのに頑としてやらないという国民性をどうするのか。例えば、我々の今の職務に関わると、扇風機というのは大体30年以上のものは40年までに確実に火を噴くんですよ。それを幾ら言ってもやめてもらえない。そういうようなところを考えたときに、普及率というのを、経済的な動機だけでは動かない日本人というのを一体どういうふうにするのかというのは非常に大きな問題。これはコメントでございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 屋井委員、お願いします。

○屋井委員 今回もまた膨大な計算をしていただいて、わかりやすい資料をご提供いただき、どうもありがとうございました。
 26ページに輸送量の関係の設定があるわけですけれども、確かに将来を考えて、特に貨物輸送量等が自然体でどんどん減っていくんだというのも、対策を抜きにしてはなかなか考えにくいところもあるなというような、そんな発言をした記憶もあるんですけれども。今回の設定で特に固定ケースと参照ケース、あるいは、対策ケースというものを、貨物輸送量については同じ数字にしていましてね。こういう考え方もあるんだろうけれども、前回かなり減っていくというのが今回増えるという設定にもなっていますので、一つぐらいある程度減るような設定があっても、それも必要なのではないかなという気もするんですよね。
 そこら辺とちょっと関連するのは、43ページ辺りを見ていまして、今の貨物というのは恐らく総量で、モーダルではないということで、人流のほうは多少トレンドにある現象を踏まえて、参照ケースや対策ケースで数字が将来変わるわけですけれども、貨物のほうは変わっていないということを今申し上げたんですが。一方で、43ページのほうでCO2の排出あるいは削減量に関していうと、例えば貨物自動車についても対策ケースで減っていますよね。この理由は、総量はある程度増えるんだけれども、CO2としては、ここに書いてあるような様々な対策、施策によって変わってくるわけだし、交通流対策についても、貨物輸送量の低炭素化やモーダルシフト等があるということで、この効果が結構入っているのではないかなと思うんですね。
 そこら辺の資料は今日はないんだけれども、もしも貨物の低炭素化、特に単体としてのということになってくると、先ほどの話と関わってきて、先ほどの資料でも貨物ディーゼル車の平均車齢はまだ伸びている感じもありますよね、先ほどの議論と関わりますけれどもね。そういうようなことも踏まえたときに、この効果をどこまで見れるのかということと、一方で、それを実現するとなったらかなり積極的な対策が行われている、単体だけではなくて、モーダルシフト等についても考えているとすれば。どういう対策が行われているかということをきっちりと明記していけば、あるいは、それを積極的に進めていけば、交通量についてもこれだけ減らせますよとかということは一定程度説得力があるわけですね。それを抜きにして自然体でどんどん減りますよということに対しては一定の異論はあるんだけれども、説明がついてくるとそれなりの設定の根拠になってくるのではないかと思います。ここに書かれていることだけですので、計算の中身についてはわかっていないかもしれませんが、そういうふうに感じました。
 それから、もう一点だけ。先ほども出てきましたマルチベネフィット、地域づくりのほうは特にそうなわけですけれども、住宅ももちろんあるし、住宅を受けていく地域という基盤ですよね。それから、社会インフラみたいな基盤、こういうものも一定程度、マルチベネフィット、快適な暮らしであったり、将来の魅力的な地域をつくっていくというような点でいうと、藤野さんはまさにそういうことをやっておられますけれども、重要な視点なんですけれども、一方で、そういうものが、限界削減費用というときには、どうしても表現できないからスポンと抜けてしまうというのはいつも心配しながら見ているんですね。ただ、そこには書き切れないなということも確かだと思います。
 ただし、64ページ辺りを見ていくと、そこに極めてよく関わるのは、こういった低炭素社会を実現するためには、地域というプラットフォームと地域という単位で将来の目標を共有していくような仕組みだとか取組というのは今まで以上に重要で、それは低炭素ということを契機にしながら一層強めていって、そこで形成されていくソーシャル・キャピタルみたいなものかもけれども、地域のある一定程度の組織というものがいろんな場面で力を発揮してくれるわけだし、継続的な低炭素化にも力を発揮してくれるわけでね。そういうものも形成されるというのは非常に大きなマルチベネフィットの一つであろうし、そういうものも書き入れてくるとそこら辺も多少見えてくるかなとか、関わりが出てくるかなという感じもしますので。何となく新技術と何かを投入するということで、それが効果だという見え方と違うものを何とかうまく、私はあまりアイデアなくて申し上げているんだけれども、うまくこういうところに入れ込んでいただけるといいような気がしました。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 村上委員。

○村上委員 非常に包括的で緻密な報告、ありがとうございました。
 最初に実現可能性の問題でございまして、これは影山委員や安井委員も指摘されましたけれども、私ども担当させていただいた民生部門の例えば高効率給湯器などにおきましても、下方修正はしているんですけれども、やや目標達成的な色彩があることは否定できないところでございますね。ですから、今後、表現においてそういうことを少し配慮する必要があるのではないかと考えております。
 それから、限界削減量に関しまして、伴委員、飯田委員、今、屋井委員からもご発言がございましたが、先ほどの伴先生の投資回収年数の問題、あるいは、飯田委員や屋井委員のマルチベネフィット、私どもはエナジーベネフィットと言っているのでございますけれども、全面的に賛成でございます。それに関しまして、例えば48ページに、さっきも飯田委員言われましたけれども、一番右にきているのが省エネ住宅でございまして、これは投資回収年数を長くしても、やっぱり右にきていまして。
 こういう分野で一番有名なのは、マッキンゼーが世界全体を対象にしてやっていて、それでは住宅の対策はもっとはるかにいいんです。場合によってはマイナスにきているところもございます。それは暖房の条件とか違いますから、簡単には言えないんですけれども、マッキンゼーでは、例えば建物寿命などは30年から70年にしております。投資回収年数をどう置くかということはいろいろな立場がございますから、簡単には決められないけれども、世界にはそういう立場もあるんだということでございます。50ページに、投資回収年数を長くするということと、産業界におけるリスクヘッジというのは変動しますから、ここにございますように、政策の後押しとかいったことをセットにしないと、一方的に投資回収年数を長くした計算をすべきだということは言いにくいかと思います。
 それから、全体的印象として、一番最後のところにエネルギー・セキュリティの問題がございましたけれども、エネルギー自給率の向上ですね。日本国にとってCO2も大事ですけれども、セキュリティはそれ以上に大事ではないかと僕は思っておりまして、もっと強く書いてもよろしいのではないかと、そういう印象でございます。
 大変立派な報告、ありがとうございました。

○西岡委員長 では、則武委員、お願いします。

○則武委員 もう何人かの先生方がお話された点ですけれども、投資回収、今、実質上企業が3年で判断せざるを得ないのはなぜかという点もちょっと考えていただく必要があるかなと思います。基本的には採算がとれるからといって投資できるわけではないというのが、もともと企業の投資余力というものが上限としてあって、その中で割り振られるという点、まさに研究開発投資を押さえてということも難しいこともあります。その点からいくと、全体のここでの投資額が通常行われている企業の投資に比べてどのぐらいのウエートになるのかというのをちょっとご検討いただきたいなと思います。
 併せて、これは個人も同じで、個人の場合、現状でも住宅ローンで住宅を建てて、自動車も自動車のローンという形になっていて、それに追加で借入ができるのかという点もかなり問題が出てくるのではないかなと思うので、個人の投資も現状のローンとかの状況と比べてどうなるのかという点も必要ではないかなと。場合によっては、それを政策で何とかできるものなのかどうかというのをご検討いただければと思います。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 冨田委員ですね。

○冨田委員 ありがとうございます。多くの方がおっしゃられていますので、私は2点だけにしたいと思います。
 ページの33のところですが、ケース設定の考え方というまとめが書かれておりますけれども、このまとめ方が私は非常に違和感があります。というのは、15%、20、25、このケースに応じて結果が出てくるわけでは決してないと思います。それぞれの対策をどこまでやるかということと目標設定とは基本的には直接的には関わりあいがないと思います。通常ケース、一生懸命やったケース、最大導入とか、いろんな言い方がありますけれども、仮にそういう3つのケースを考えたときに、横並びを見てそれぞれの対策に応じて同じような考え方で取組をすると。それを縦で足し合わせてみたときに、結果としてどのくらいの2020年の真水での削減になるかと、そういう結果が出てくるわけで、目標設定が高ければ高い取組ができるということでは決してないとと思います。
 もう一点は、限界削減費用のところですが、産業界で12~15年となっています。仮にこのような取組を産業界が求められるとすれば、それこそ生産シフトがますます進んでしまうということを懸念します。だからこそ、政策の後押しが必要と書かれているのだろうと思いますが、ではその政策の後押しが実行できるものなのか、効力が本当にあるのかと、企業がそういう行動をとるインセンティブになるのかということについては全くわからないので、そういう状況の中で、2050年あるいは2020年の対策は達成しうるとまとめられているのは、全く時期尚早だろうと思います。
 以上です。

○西岡委員長 荻本委員。

○荻本委員 2点あります。まず、リスクということを解析していただいて、どうもありがとうございます。原子力という例が出ているんですが、いろんなところにリスクがあるということなので、1例に限らず出せるだけ出していただいたほうがいいかなと。というのは、どんなところにリスクがあるのかというのは、お一人お一人の理解の中身によるところが多いので、それをなるべく平たく見せるというのが非常に重要なかと思います。
 ここから先は言うだけ自分のところに返ってきそうな気がしないでもないんですが、各ワーキングがやったことを整理されているという側面がありますから。リスクの中で社会的なインフラが成立してはじめて可能になるもの、例えば電気的な自動車の充電装置がなければ売りようがないとか、または、配電線とかガスですとか、ICTのインフラがなければ成立するはずがないというようなものは、恐らく巨大なリスクがあるはずなんですね。これは、先ほど述べられたような、照明がペイするかどうかよくわからないのでなかなか導入できないよねというものとは全く違ったリスクがあると思いますので。ここまで言えば各ワーキングは出してねというだけの話になってしまうんですが、整理の仕方としてそういうリスクも幾つかあるというようなところを深掘りして整理していかないといけないかなというふうに思いました。
 もう一点は、先ほどちょっと自動車のところで出たんですが、消費者ですね。儲かるから買い替えるとは限らないというようなご発言もあったんですが、人の気持ちほど移り変わりやすいものはないと。ある日みんながそういう気になったら一瞬で変わってしまう。ですから、この検討会自体もそうですし、企業さんもそうなんだけれども、今の人たちの意識はこうだからきっとこれしかないよねと思って、大失敗することがないように。逆に言うと、私はこのごろ車を買おうと思ってないのでわからないんですが、車のパンフレットには「この車を買うと今の燃料代だと5年で回収できます」と実際に書いてあるんですかね。書いてあるとすれば、それをもっと積極的に説明するということで買う方の意識を変えていくというのは、極めて地道で実の上がりそうなリスクの回避法かなと思います。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、藤野さん、お願いします。

○藤野委員 大変有益で、また、長い拙い発表をちゃんと聞いていただいて、コメントいただいて本当にありがとうございます。
 まず、伴委員のご指摘の投資回収年数、これについては賛否両論、その後もご意見あって、長い目というか、2020年、2030年、2050年で社会全体のコストでみれば、それはいつ投資して、いつ回収するという話ですので、そのタイミングを見るということだと思うんですね。当然、省エネ機器を入れれば最初の初期費用は高い。それをどれぐらい緩和されるかというので、短い投資回収年数があるのか、長い投資回収年数があるのかというお話ですので、経済モデルで、社会的コストという観点で見れば、当然、長い投資回収年数で分析したほうがそれにふさわしい答えになりますし。経営学的な視点で最初の投資判断をするかしないかというようなことでやられるならば、それは先ほど何人かおっしゃったように、今は投資余力がないとか、お金を出せないとかというようなことになるのかなと私自身は考えています。RITEnお秋元さんとの議論では、僕は「長くてもいのではないか」と言うと、秋元さんに「いやいや、マーケットはそうではないなよ」と言われて、延々と同じことを言い続けて、兄弟弟子なんですが、そこはずっと同じことを言っているような気がします。
 あと、伴委員から出ました2つ目のCO2排出量とか、ノンCO2ですね、メタンとかN20とかフロンとか、それぞれやっていて、その区別がわかりづらいというところで、そちらのほうは表現をきちんとして、よりわかりやすく資料のほうを精査していきたいと思います。
 2番目、杉山委員のほうからもいろいろご指摘いただき、ありがとうございます。スマートグリッド、HEMS、BEMSの効果のほうなんですけれども、エコドライブにも若干似たところがあるかもしれませんが、やれば効果があります。ただ、機器の効率が上がっていくとその効果も薄まっていく場合もあります。ただ、スマートグリッドが大量に普及している場所は、今まだ実験でいろいろ行われている段階なので、そちらも見込みながら、随時そこの値は更新していく必要があるかなと思っています。
 その中で、具体的に何をやっていけばいいか示してほしいというご指摘ですが、本当にもっともで、うちの嫁も「とにかく何をやればいいか教えてくれ」と、隣で研究している人にそういう言い方をして、「では、何をやればいいんだろうか」というので、エアコンぐらい買い替えようかというので買い替えたんですけれども、こちらのほうは特にコミュニケーション・マーケティングワーキンググループとか、各ワーキンググループのほうで具体的な絵を描くという作業もあると思いますし、もっと大きなところへいくとマクロフレームのほうにも関わってくると思いますけれども、そういうところと協力してよりビビッドな絵がかけないかなということは思います。その中で、業務部門で中小ビルとかいった難しいところはどうなるんだろうかということについては、特に住宅・建築物ワーキンググループの村上先生を中心としたところと協力して、どうやったら実現していくのだろうかというところを考えていきたいと思います。
 3番目の影山委員からご指摘いただいたところですけれども、CO2排出量、今回は15、20、25という目標があったときにどうやって達成しうるんだというところを示したという意味では、そういうところの実現可能性を示したということでございます。再生可能エネルギー導入量の精査については、もちろんエネルギー供給ワーキンググループの大塚先生のところとさらにやっていく必要がありますし、あと、電源構成の原子力の割合の最低負荷のほうは非常に重要なところで、是非考えてまた検討していきたいと思っています。
 原子力の稼働率、新設のところは、飯田委員とちょっと見解が違うような感じもしましたけれども、モデルの役割は、いみじくも荻本委員がおっしゃったように、何か起こったときにどういうことが見通せるんだろうか、そのために何かをやろうという示唆を与えるものだと思いますので、そうならないようにどうすればいいかということを、それぞれが努力して示していっていただければいいかなと思います。
 あと、エネルギーコスト回収のところで、電力収入が減って原子力に投資できないのではないかというところは、単体のところだと確かにそういう面はあるかもしれません。社会全体としてはコストは回収されるというところで、単体ということなると、それぞれのところでもっともっと苦しくなるところもあるでしょうし、逆にもっと成長する、新たな発展を迎えるところもあるでしょうし、その調整は本当に政府の役割になるのかなと思います。
 飯田委員のほうから限界削減費用話もありましたけれども、その中にマルチベネフィットをどうやって組み込むか。ここは、僕は村上先生がやられているノンエナジーベネフィットを定量化する作業というものがそのチャレンジの最先端にいると思うんですけれども、片や僕ももっと示したいというときに、エビデンスベースでやらない限りにおいてはお話になってしまって、「ああ、よかったね」というので、実際の投資判断なり消費の選択の判断に結びつくかというふうになると、消費者なり生活者の心は移ろいやすいという話もありましたけれども、具体的に示せるものをまず入れていくのかなと。
 自分ももっと入れろという発言もしながら、そう言われるとそういう逆の発言もしてしまうんですけれども、入れることは非常に大事で、我々がやった分析はCO2でありエネルギー至上主義の分析で、そこの観点から見ていますけれども、本来我々がほしいのは低炭素社会ではなくて、持続可能な社会というか、もっと暮らしやすい社会だったりとか。低炭素社会も私はそのための道具だと思っていますけれども、そこにいくための入口が、日本なり温暖化を言っている国はそちらから上っていって、最終的にはもっと安全だったりとか、リスクが少ないとか、そういう社会に向かえばいいと思うんです。そういった意味で、例えば高齢化というのは日本でも最先端の問題ですし、そういうものも考えると、住宅のほうによりよい質の高い住宅をつくるために投資するということは、エネルギー、CO2の価値を超えたものも十分ありうるのかなとは思っているんですけれども、そこは定量化できないと削減費用のほうには落とし込めないという現実があります。
 岡山委員のほうから、限界削減費用を企業としてそんなに長くできないというご指摘もあったり、最大導入ケースでも課題がたくさんあるということで、それは本当にごもっともなところで、別添で参考資料4というのを委員限りで、余りに部数が多いので、印刷していない方もいらっしゃいますけれども、そちらの根拠資料というものも用意していますが、そこもちょっと注意してもう一度精査していきたいと思っています。
 安井委員からはまだ見ぬ照明効率だねというご指摘で、こちらのほうは経済産業省等の技術導入の見込みを見ながらやっていますけれども、本当の技術のバックグラウンドについては、そういったところの見直しのデータをもう少し見ていきたいと思います。あと、見たこともない普及率というのは全くご指摘のとおりで、その後に村上先生からもご指摘あったように、目標があって、それを達成するための普及率というものも考えながらやったときに、どういうチャレンジがあるんだろうかというところで見ているところもあります。ただ、見たことがないからできないからやめようと、この場でそう言ってしまったら全部終わってしまうので、ということかなと思います。
 あと、屋井委員から、輸送量の扱いで、上方修正しすぎたというわけではないんですけれども、ケースによって差をつけるべきだというのは、私も全くそのとおりだと思っておりますので、自動車ワーキンググループ及び地域づくりワーキンググループの方々とさらにここは精査していきたいと思います。削減の効果については、この資料で十分ご説明できていないところもあったかもしれませんので、適宜追ってフォローしたいと思います。
 それから、マルチベネフィットですね、地域の魅力等をどうやって伝えていくか、僕自身、低炭素社会に住んでいて、それがうれしいかどうかというとわからなくて、持続可能な社会なり、安全な社会なり、そちらのほうが大事だと思いますけれども、そういった過程で、低炭素で入りながらソーシャル・キャピタルをきちんとつくっていく、人のつながりをつくって、社会インフラのつながりをつくっていくということは、エネルギー・セキュリティなりヒューマン・セキュリティというところで非常に重要なのではないかと思います。それをどうストーリーの中に入れていくか、単純なエネルギー、CO2の話だけに終わらせないということは非常に大事な指摘だと思います。
 村上委員からご指摘いただいたところで、半分答えを言っていただいたところがあると思いますけれども、実現可能性の点だったり、限界削減費用も、世界を見ればマッキンゼーのように使用期間の間の投資回収年数を見て、それで分析していったり、ノンエナジーベネフィットもある程度組み入れたりとかいうところももちろんあって、それは我々がどう判断するかの話だと思います。単純に今お金がなくて投資できないからやめようというのがある意味短い投資回収年数の考え方ですし、いやいや、それは長期に見て返ってくるんだから、その分を減価償却で早くローンを返して、あとはただで儲かるという、後で儲かっている部分もちゃんと最初から入れようという長い投資回収年数というものの考え方だと思います。
 その後、則武委員のほうから、現実、企業の投資余力がかなり厳しくなっているねというお話で、ここはまさにチェックすべきところで、ものづくりワーキンググループといったところとも協力して、また、個人の投資も。ただ、高齢者、貯蓄はまだありますので、そちらのほうとのバランスで一体どれぐらいできるのか。追加投資だけで10兆円と言っていますけれども、炭素税2,000円で集めたとして、政府が集められる金額というのは3兆円にも満たないので、それだととても足りませんので、そこをどう考えていくかというのは非常に重要な視点だと思います。
 冨田委員のほうから、影山委員とほぼ同じ指摘で、15、20、25という話で、それに応じてというところです。我々は目標というものをモデルに与えて、それが達成しうる解を求めるのがモデルの役割で、それに匹敵する技術ポテンシャルはあるということは、今回お示しできたのかなと思っています。普及の進度とか、それを後押しする政策というところは、ご指摘のように課題はまだ多くあって、その点を岡山委員もご指摘されたんだと思いますけれども、そういうところも確かに指摘しながらも、ポテンシャルはあるということです。
 また、産業界で、投資回収年数を短くすると生産シフトが進むというところですけれども、逆に正しく省エネ技術を開発する努力を評価しないと、さらにチャレンジする企業の芽も摘んでしまうおそれもありますので、そういったものをどういうふうに考えたらいいかというところはぜひ、ものづくりワーキンググループ等も含めながら考えていただけたらと思っています。
 最後、荻本委員からリスクの解析、出せるだけ出そうと、ごもっともだと言いたいのですけれども、時間の範囲と言ったら言い訳になってしまいますので。それは感度解析をやってどのパラメータが効くとか、または、そもそもその前提になっている要素がこけてしまったら、それはどういう意味なんだろうかというのを示すのはまさにモデルの役割ですので、そちらのほうは、研究にも密接に関わりますので、検討していきたいと思います。
 その中で非常に重要なご指摘があって、成立する社会インフラの前提があるのではないかということで、そこがもうちょっとビビッドに見えないと、杉山委員が家庭の中での対策の姿が見えないというのと同じように、社会の中での姿が見えないと、上の普及率ばかり議論しても、肝心のインフラが整っていないと、電気自動車を幾ら増やしたって充電スタンドがなかったら走らないわけで、そういった点は非常に重要だと思います。一方で、送配電も強化しなければいけないところもあれば、逆にそこは要らなくなる場合もあるのかもしれませんし、そこら辺のメリハリですね。第二次世界大戦が終わってインフラは一巡して、また新たにいろいろなものを直していくタイミングなのかもしれませんけれども、注意して見ないと国家の投資余力というものがなくなってきているところもありますので。でも、そうなると、この委員会はどこまでいってしまうのだろうかというのはありますが。
 あと、最後、人は移ろ気だというのは、今まで我々はモデルなり、環境研究所自体もそうですけれども、人間の行動、ビヘイビアのモニタリングがあまりきちんとできていないところもありますけれども、そのチャレンジというのを、コミュニケーション・マーケティング・ワーキンググループでアンケート調査を始めていますけれども、逆にリスクかもしれないしうまく伝えればもっと進むのかもしれません。でも、そこの挑戦は続けていかないと。せっかくロードマップをつくっても、アンケートの項目に「3月にあった小沢試案を知っていますか」と、あえてみんな知らないという答えになりそうな項目をつくったんですけれども、小沢試案自体を知っている必要があるかどうかは別としても、こういうチャレンジがあって、それはやる価値があるのではないかということは、もっと多くの人に共有していただく必要があるかなと思っていまして、それを適切にマーケティング的に伝える技術が必要かなと思っております。
 お答えになっているでしょうか。以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 まだ幾つか答えられていないところもあるかと思いますが、次の作業に十分組み入れていただきたいと思います。
 今日のお話、全体の絵が見えてきたというところがよかったのではないかと思っています。長期にやるぞとか、やれるかなというような感じで、非常に挑戦的な目標がだんだんはっきりしてきたところがあるかと思っております。幾つかポイントがありましたけれども、国際的にこういう研究をやっている人たちの集まりがこの前ありまして、そこでも同じことがあったのは、計画もいいけれども、次に国民をどうやってそれに乗せていくかというところに全体の重点が移りつつある。国民への説明につきましては、研究者、それからメーカーの方々、政府ともども、そういう方向にぜひ動いていただきたいというのが2点目であります。
 3点目ですけれども、モデルではカバーできないコベネフィット、マルチベネフィット、もろもろございます。特にモデルはあくまでも整合性をとるため、あるいは、その方向で全体としてまとめて示すという機能がありますけれども、どうしても抜け落ちるところがあって、そのほうが非常に大切だというところがあります。それが今お話ありました新しいまちづくりであったり、快適な国土づくり、あるいは、新しい社会形成というところにあるかと思います。それを常に忘れないようにしていただきたいということがあります。
 それから、15、20、25という数字に並んだシナリオのつくり方についてですけれども、今、我々がいる温暖化を対象にした転換、トランジションと言っていますけれども、そういう時代で何が求められているかというと、必ずしもフォーワードキャスティングだけではない。バックキャスティング、全体の目標に向かってどうやって進めていくか、そのときのボトルネックはどこにあるか、どういう政策でそれをクリアしなければいけないかということが検討されるべきであるかと思います。
 これはある面では全く新しい、これまでは科学技術も進歩するから、それに向かってそれをどう利用していくかというだけの話の計画だったわけですけれども、今後はそういうことではなく、何としてもやらなければいけないところもあるということがございました。それを考慮した計画づくりになっているということはご理解願いたいと思っています。もちろん、それぞれのセグメントに落としたときに、必ずしもそれがトップダウンでいくかどうかというのはまた別でございますけれども、全体の計画の態度としてはそういうことだと私は思っております。
 私のほうからもちょっと意見を述べさせてもらいまして、この会を終わりたいと思いますけれども、何か連絡事項がありますか。

○地球温暖化対策課長 本日もありがとうございました。さらに追加的な質問とかご意見があれば、参考資料4も含めて、事務局のほうにいただければと思います。
 次回の日程でございますけれども、10月29日、金曜日の9時から12時、場所は霞が関ビルの東海大学校友会の望星の間でございますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。

○西岡委員長 それでは、本日はこれで参会いたします。どうも皆さんありがとうございました。

午前11時59分 閉会