中央環境審議会地球環境部会「国内制度小委員会」第13回会合議事録

日時

平成13年12月14日(金)14:00~17:00

場所

東條インペリアルパレス 2F 千鳥の間

出席者

(会長)森嶌 昭夫
(委員長)安原 正
(委員)青木 保之
浅野 直人
大塚 直
猿田 勝美
塩田 澄夫
波多野 敬雄
桝本 晃章
村上 忠行
横山 裕道
  浅岡  美恵
  天野 明弘
  小林 悦夫
  佐和 隆光
  西岡 秀三
  福川 伸次
  萬谷 興亞
  甕  滋
  
  
(事務局)川口環境大臣
松本官房長
浜中地球環境審議官
山田大臣官房審議官
小島大臣官房審議官
炭谷地球環境局長
竹本地球環境審議官補佐官
竹内地球温暖化対策課長
石飛地球温暖化対策課調整官
木村研究調査室長
高橋温暖化国際対策推進室長
笠井環境保全対策調査官

議題

(1)京都議定書の締結に向けた国内制度の在り方について(案)
 
 

配布資料

資料1 京都議定書の締結に向けた国内制度の在り方について(案)
参考資料1政府としての温暖化対策の方向性の明確化について
(大塚委員)
参考資料2前回会合以降に各委員から提出された意見

議事

午後2時00分開会

○安原委員長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会「国内制度小委員会」の第13回会合を開催したいと思います。
 本日は、委員各位には大変ご多忙のところご出席いただきましてありがとうございました。
 本日は、川口環境大臣が、本小委員会の議論をぜひ直接聞いておきたいということで、ご多忙のところご出席いただいております。
 それから、本日の審議のやり方でございますが、大臣を含めた環境省側との議論というよりは、むしろ委員同士で活発な議論を展開していただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 それでは、まず資料の確認をお願いいたします。

○事務局 資料1、京都議定書の締結に向けた国内制度の在り方について(案)。参考資料といたしまして、政府としての温暖化対策の方向性の明確化について、大塚委員よりご提出いただいております。その他参考資料といたしまして、前回会合以降に各委員から提出された意見といたしましてを配付させていただいております。その他参考資料といたしまして、温暖化対策に関する企業アンケートの最近の結果を配付させていただいております。
 以上でございます。

○安原委員長 ありがとうございました。
 資料にもし不足がございましたら事務局まで申し出ていただきたいと思います。
 本日は、この資料1の京都議定書の締結に向けた国内制度の在り方について(案)というものにつきましてご審議をいただく予定でございます。国内制度の在り方についてご審議をいただく最終の小委員会となります。審議の予定は、17時までということで3時間を予定しております。ぜひ、ご協力をよろしくお願いいたします。
 では、まず本題に入ります前に前回の小委員会でご審議いただきました京都メカニズムの活用のための仕組みづくり、これに関しまして事務局より補足説明をしていただきます。

○高橋室長 それでは、特に資料はございませんが、前回の委員会で京都メカニズムにつきまして、いろいろご質問をいただきまして、それにつきまして若干補足的にご説明をさせていただきたいと思います。
 1つは、CDMとJIにつきまして、それに取り組む事業者のインセンティブというものについてどう考えているかというようなご質問がございました。環境省では、これまでCDMやJIとして有望な事業の発掘等のために、事業者から応募いただきまして、いわゆるフィージビリティスタディというものを実施してきておりますので、これらは今後とも継続充実していきたいと思っております。
 また、ベースラインの設定等の技術的なことにつきましては、ガイドラインを整備する等事業者の方が実施しやすいような体制の整備、知見の集積というものをやっていきたいと思っております。
 また、これまでの国際交渉におきまして、ODAをCDMに利用できるかということが議論になってきたわけでございまして、日本としてはODAのCDM利用が排除されないようなルールをつくるということで努力をし、それが実現できたと思っております。そういう観点から、ODA等の公的資金を活用したCDM事業の支援というようなものについても政府部内で、検討いたしていきたいと考えております。
 それから、次のご質問としてCDM、JIとして、どのような事業が対象になるのか、こういうものを明らかにしてほしいというようなお話がございました。CDMとしてどういう事業が対象になるかということにつきましては、私どものグループとしてはむしろどういう事業が適当かということについては、ホスト国がその体制にとって何が適切かというような観点から判断すべき事項だということで、対象事業を一定のリストに絞るというようなことについてはむしろ反対をしてまいりました。その結果、原子力と吸収源活動の一部を除いて制約がないということになっております。そういう観点で、事業をリストアップすることは考えておりませんが、ただむしろ先ほど申しましたフィージビリティ調査の結果を踏まえまして、具体的な事例につきまして、事業者の方にいろいろ資料提供をするというようなことで、参考となるような情報については積極的に活用してまいりたいというふうに考えてございます。
 それから、途上国で事業を行うためには、二国間ルールのような国際協定を結ぶ必要があるのではないかというようなご指摘もございましたけれども、現時点で事業実施に当たって、そのような協定が必要だということは必ずしも考えておりません。ただ、当然事業を実施するためには、ホスト国における事業の承認等の手続が必要になりますし、途上国との事業を円滑にするためには、お互いのそういう制度についての理解を深めるとか、あるいはどういう事業が有効かということについての共通認識を持つことが非常に重要でありますので、政府レベルでも事業の対象国との協議とか意見交換の場をつくって、そういう情報も事業者に提供していくというような取り組みが必要だと、この辺も関係省庁と連携をとって対応してまいりたいと考えております。
 それから、事務局への通報義務についていろいろご指摘がございました。附属書I国は2007年の1月1日、または当該議定書が発効した後1年経過した時点の、遅い方までにインベントリとかレジストリの整備状況、そういうものについて議定書実施の体制が整っているということを示す情報を通告する必要があります。したがいまして、日本としても少なくともそれに間に合うようにレジストリを整備していくという必要がありますので、そういう観点でタイミングを逸しないように体制の整備を進めていくところでございます。
 それから、最後にCDM等で投資を行った場合には、投資国がクレジットのすべてを獲得すべきではないか。あるいは、クレジットの発生する期間というのは、その施設が稼動している間は認められるべきではないかというようなご指摘がございました。CDMとかJIを行った場合のホスト国と投資国の間のクレジットの配分につきましては、これは基本的には個々の事業契約によって決められるということですので、必ずしも投資国がすべてのクレジットを獲得するという前提の仕組みにはなっておりません。したがいまして、ホスト国からもこれだけのクレジットが欲しいという要求が出てくるということは排除されておりません。
 それから、クレジットが発生する期間につきましては、JIについては基本的には事業当事者の合意によって決められますので、個々に判断されるということでございます。それから、CDMにつきましては、マラケシュ合意の中で一定のルールが決まっておりまして、あるプロジェクトにおいてクレジットが発生する期間については、1つは最長7年のクレジット期間で2回更新が可能。この場合、2回更新すれば最長21年のクレジットの発生期間が可能であります。あるいは、最大10年で更新なしと、この2つのどちらかを選択するというようなルールが決められております。
 以上でございます。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に対しまして、ご質問、ご意見がありましたら、どうぞご発言ください。
 ご質問ございませんか。
 それでは、資料1の議論の過程でも、CDMとかJIの問題が出てまいりますので、もし後でお気づきの点がございましたら、そのときにあわせてご質問等いただければと思います。
 それでは、資料1の国内制度の在り方について(案)という資料がございますが、これにつきまして事務局からご説明をお願いしたいと思います。
 これにつきましては、前回までの小委員会における各委員のご議論をできるだけ反映するように努めたつもりでございます。
 それでは、竹内課長よろしくお願いします。

○竹内課長 それでは、資料1に基づきましてご説明したいと思います。
 前回、これにつきましての項目要素というものを提出させていただいたわけでございますが、それに沿った形でこれまでのご意見などをまとめたものでございます。
 1ページでございますが、はじめにということで、これはこれまでの中央環境審議会での議論の経過がまとめられております。COP3の直後に「今後の地球温暖化防止対策の在り方」ということで、環境庁長官から会長に諮問をさせていただいたわけでございます。それ以降、当時の企画政策部会、あるいはことしになりましての地球環境部会におきまして、精力的なご審議をいただいたところでございます。その間、98年3月には中間答申をいただきまして、それを受けまして「地球温暖化対策の推進に関する法律案」を国会に提出させていただきまして、この法律が成立しております。それ以来、今回おまとめいただきます予定の答申は2回目の答申ということになるかと思います。
 次の2ページでございますが、地球温暖化に関する基本的認識ということで幾つかの項目を掲げております。
 まず(1)では、地球温暖化は既に起きている現実の問題ということで、IPCCの最新の時点、これまでの観測結果によって過去50年間の温暖化の大部分が人間活動に起因しているといったような点、それから将来予測について述べております。
 (2)でございますが、国際社会における取り組みということで、条約の採択・発行が[1]でございます。それから、[2]では京都議定書の2002年発効に向けた国際社会の取り組みということでございまして、条約が92年に採択されて、93年の5月に受諾ということでございまして、[2]にありますように、長期的・継続的な排出削減の第一歩として京都議定書が採択され、各国ごとに法的拘束力のある数値目標が定められ、あるいは京都メカニズムが採用されているというものでございます。
 それから、4ページにまいりますが、3といたしまして、COP7合意を受けた我が国の方針ということで、まず衆参両院がそれぞれ4月に「京都議定書発効のための国際合意の実現に関する決議」というものを全会一致で採択をしております。政府は、COP7の合意を受けまして、去る11月12日に地球温暖化対策推進本部を開催いたしまして2002年の京都議定書締結に向けた準備を本格的に開始することとして、1つは京都議定書の目標を達成するため、現行の大綱を見直す。2つ目に次期通常国会に向けて、京都議定書締結の承認及び京都議定書の締結に必要な国内制度の整備・構築のための準備を本格化することを決定しました。さらには、その決定の中では米国の建設的な対応を引き続き求める、開発途上国を含めた国際的ルールが構築されるよう、最大限の努力を傾けていくということもあわせて決定されております。
 4番目でございますが、我が国における排出量の現状と課題ということで、(1)我が国の温室効果ガス排出量の推移でございますが、最新のデータでございます99年度の総排出量は、基準年比 6.8%の増加となっております。二酸化炭素を除く5つの種類のガスの排出量は、すべて基準年と比較して減少しておりますが、二酸化炭素の排出量は90年度と比較いたしまして9%増加しています。そこで、エネルギー起源の二酸化炭素の排出量につきまして99年度の部門別排出量と大綱の「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」の報告書、97年11月でございますが、これにおける目標の部門別内訳というもので比較をしてみました。
 まず、産業部門の目標の内訳は、基準年比マイナス7%ということで、99年度の実績はプラス0.8ということでございまして、差が8%となっております。それから、民生部門におきましては、実績が17.4%、内訳がプラスマイナス0%ということで、17.4%の差があったということです。それから、運輸部門につきましては、実績がプラス23%、報告書での内訳が17%ということで、差が6%でございます。また、エネルギー転換部門は、実績が11.7%、目標の内訳が5%ということで、差が 6.7%という状況になっているところでございます。
 次に、(2)でございますが、温室効果ガスの増減、この約10年間の増減の要因につきまして分析をしております。
 まず、二酸化炭素排出量増減の要因でございますが、産業部門につきましては、排出量の40%を占めますが、90年度に比較しまして0.8%増ということでほぼ横ばいでございます。これは、エネルギー多消費型の業種から少ない業種への産業構造変化が減少要因となっておりますが、これを相殺するように、生産額当たりのエネルギー消費原単位の増加が排出量の増加に寄与しています。
 それから、運輸部門につきましては、99年度の排出量は23%増加しておりますが、貨物の増加率6%であるのに対しまして、旅客の方が35%です。とりわけ、自家用自動車の伸びが顕著であります。ちなみに、95年度以降で見ますと、自家用乗用車部門の増加率が11%となっております。これは、乗用車の台数、走行量の伸びが原因でございます。この間、乗用車の大型化、あるいは重量化の進展が燃費向上によるCO2 削減効果を減殺する結果となっているところでございます。
 それから、民生の業務部門でございますが、オフィス、店舗などの排出量は20.1%増加しております。しかし、この間の業務用床面積が約27%増加しておりまして、これが主な原因であります。
 家庭の方でございますが、排出量は15%増加しております。この間、世帯数は13%増加しております。それから、家電製品などの普及による一世帯当たりのエネルギー消費量も5%増加しております。
 それから、工業プロセス部門でございますが、石灰石の消費などに伴い排出されるものでございますけれども、これは90年度に比べまして9.5%減少しておりまして、セメント生産量などの減少などが要因として挙げられます。
 それから、廃棄物の部門でございますが、シェアとしては1.9%でございますけれども、90年度と比較しますと86.3%と大きく増加しておりまして、プラスチックなどの焼却量が93%増と、倍近く増加しているところが主な原因でございます。
 メタンと一酸化二窒素の排出量増減ですけれども、メタンが90年度に比較しまして11.2%、一酸化二窒素が20.4%とそれぞれ減少しております。メタンは、水田面積の減少に伴う農業部門での減少など、それから一酸化二窒素につきましては、化学繊維原料の製造を行っている事業場における一酸化二窒素の回収・破戒装置を導入したことが寄与しております。
 それから、HFCなど3ガスでございますけれども、HFCが 2.7%、PFCが 3.4%、SF6が50.1%減少しております。それぞれ、要因はございますが、一番下にございますように、HFC等3ガスにつきましては、オゾン層破壊物質であるHCFCの代替化等による今後の生産の増大が見込まれるというところでございます。
 8ページでございますが、(3)これまでの取り組みと追加的な対策・施策の必要性ということでございますが、我が国は、90年の10月に「地球温暖化防止行動計画」を閣僚会議で策定いたしまして、そこでは2000年以降90年レベルで安定化させるということなどを目標にして、対策を講じてまいりました。この目標は、条約における先進国の努力目標の目標値でございますが、2000年における排出量はまだ確定してませんが、これは達成されていないところです。
 一方、先ほどございましたように、98年6月に本部におきまして、2010年に向けた温室効果ガスの排出削減のための緊急的な施策を取りまとめた大綱が決定されております。そのほか、温暖化対策推進法の制定、あるいは小委員会の開催などが実施されておりますが、さっきも言いましたように、温室効果ガスの排出量は依然として増加しております。ことし7月のこの部会の目標達成シナリオ小委員会の中間取りまとめによりますと、既存の対策・施策だけでは2010年の温室効果ガスの排出量は基準年比プラス8%程度になると予測されておりまして、京都議定書の目標を達成することは困難であることから、追加的な対策・施策を講ずることが必要となっております。
 5番でございます。京都議定書の締結に向けた国内制度ということで、まず京都議定書の特徴ということでございますけれども、京都議定書は、1つは普通の一般的には、条約・規定書は、発効したときから締約国が義務を負うことが通常でございますが、この議定書の場合は、目標達成の義務を負うのが、将来の期間、2008年から2012年までが第1約束期間であることです。
 2つ目に、国内における具体的な政策・措置は、義務的措置として京都議定書に規定されておりませんので、各国の裁量に委ねられております。
 それから、目標達成に当たっての補足的な手段として京都メカニズムという費用対効果の高い仕組みの活用が認められていることといった特徴を持っているということでございます。
 そこで(2)でございますが、議定書の義務が生ずるのは2008年から、それからそれまでの間の社会経済や技術開発等の動向を確実に見通すことはなかなか困難である。したがいまして、京都議定書の目標の確実な達成を図る方法としては2002年の時点で目標達成に必要な対策・施策の全体像を明らかにする。そして、その進捗状況・排出状況等について定期的に定量的な評価を行った上で、対策・施策を見直しながら、京都議定書を達成することのできる対策を柔軟に導入して、目標達成に向けてソフトランディングしていくという方法をとることが適当であろうということです。
 対策・施策の見直しは、議定書の中におきまして、2005年までに議定書に基づく約束の達成に当たって、明らかな進捗を実現していなければならないというふうになっておりまして、まず2005年の前年までに、それから次に第1約束期間の前年である2007年までに行うことが適当であろうと。したがいまして、2002年から2004年まで「第1ステップ」、2005年から2007年までが「第2ステップ」、2008年から2012年までが「第3ステップ」という3つのステップに区分いたしまして、ステップ・バイ・ステップのアプローチを採用していくことが適当ではないかと。
 なお、7月におまとめいただきました中間取りまとめにおきまして整理されましたポリシーミックスは、各ステップにおいて検討対象となり得る対策・施策群でございまして、第1ステップの対策・施策の評価を行った上で、さらに検討・導入を図っていくことが肝要であるということでございます。
 さらに、議定書は条約の究極目標を達成するための第一歩でありまして、第2約束期間以降も視野に入れた長期的な戦略が必要であろうということです。
 (3)費用対効果の高い取り組みを進めることができる国内制度の整備・構築でございまして、議定書の目標を達成するためには、各主体が創意工夫を生かし、費用対効果の高い取り組みを進め、さらに国として必要な施策を講ずべきであろうということです。
 シナリオ小委員会の中間取りまとめにおきまして、約 100種類の技術対策についての経済性評価を行いまして、整備投資の費用とエネルギー費用等の節減額等の比較から、追加的費用のマイナスになる対策も数多く存在することが明らかにされています。具体的には、追加的費用がマイナスになる対策によって削減される排出量は、投資回収年数を法定耐用年数とした場合の対策によれば、全体の排出量の3.7%分に相当いたしますし、投資回収年数を企業関連ものは3年、家庭関連のものは5年とする場合には、全体の排出量のうち1.5%分がこの開発の追加的費用のマイナスになるというふうに言われております。したがいまして、これらをさらに進める、あるいは既存の技術システムとのコスト差が存在する技術の普及のためには、経済的措置を活用したインセンティブを付与するという施策を行うことが必要であろうということでございます。
 また、2008年以降には、国際排出量取引が活用できる国内での個々の対策のコストと国際市場での排出量価格とを比較して安い方を選択できることとなるわけでございます。こうした、費用対効果の高い取り組みが可能になる国際排出量取引が十分活用できるような仕組みを、国内においても2008年までに整備しておく必要があろうということです。
 4番目に、我が国の国内対策の留意点ということであります。
 この対策を行う人々にとりましてコストとして認識されるわけでございますが、温暖化対策は、広範な事業者にとって新事業の大きなチャンスとなるということで、革新的な技術開発や、その他のインフラ整備として適切に誘導することによって、相当規模の投資の機会を創出し、経済対策・雇用対策にもつながるということでございます。
 それから、こうした環境産業の生産増加や革新的技術開発への投資の増加等で消費者側における環境にやさしい消費へのシフトにより、温暖化対策による我が国経済への影響も緩和されることが分析されるわけでございます。さらに、こういった点にとどまらず、京都議定書が発効することに伴いまして実現する温暖化対策の世界市場といったものが我が国をリードすることも目指すべきであるということです。一方、我々のライフスタイルを温室効果ガスの排出の少ない、簡素で質の高いライフスタイルへと変革する。これで、地球環境時代にふさわしいゆとりある真に豊かな暮らしを目指すことも行われたということです。
 6番でございますが、京都議定書の目標を達成する対策・施策の全体像を明らかにする「京都議定書目標達成計画」の法律に基づく策定・評価・見直しということでございます。
 まずこの計画の意義でございますが、先ほど来出てまいりましたように、京都議定書の特徴、あるいはステップ・バイ・ステップのアプローチなどを踏まえますと、法的拘束力のある京都議定書の目標を達成していくためには、目標達成のための対策・施策、その実施スケジュールなどの全体像を明らかにする「計画」、ここでは京都議定書目標達成計画というものを策定し、その実施状況等の評価・見直しを行って、目標に達成する方法をとることが適当であるということです。
 本部は、2001年11月12日に、次期通常国会での京都議定書の締結に向けて、現行の大綱を見直すことを決定しておりますが、この見直しにより、大綱にかわる新たな計画をここでいう目標達成計画として策定することが適当であるということでございます。
 (2)計画の位置づけということで、この計画は日本の目標達成の道筋を明らかにするものであるということで、次の理由から法律に基づく計画とすることが必要であります。
 1つは、国民各界各層が一丸となって取り組むことが必要であろうということでございまして、国民の代表である国会が制定した法律に基づいてこれを策定するということであります。
 それから、目標達成のための具体的な施策措置は、各国の裁量に委ねられているわけであります。したがいまして、政府に具体的措置を盛り込んだ計画の策定を法的に義務づける必要があろうかと思います。
 それから、3番目にこの計画の評価・見直しを計画の策定と同様に法律に基づいて行う必要があるということであります。
 なお、計画の策定・見直しは、国民各界各層の幅広い意見を聞きつつ行うことが適当であろうということであります。
 計画に盛り込む事項でございますが、2002年に策定するこの計画の第1ステップの対策・施策によって、京都議定書の6%削減目標を確実に達成することをわかりやすく、かつ数量的に明らかにする必要があります。
 したがいまして、以下にございますような、1つは目標、2つ目にはそれぞれの役割、3つ目には個々の対策の我が国全体での2010年における導入目標、それによる2010年における削減または吸収見込み量、4つ目にそれぞれの対策の導入促進のための国などの施策、それから5つ目に導入時期などを時間軸で可能な限り明らかにした工程表ということでございます。
 4番目に、評価・見直しでございますが、第1約束期間までの社会経済動向の見通しが不透明であるといった中で、実効性の確保をしていくためには、第2ステップ、第3ステップの開始前にそれぞれ対策の進捗状況などを評価して、見直していくことが不可欠であろうということです。
 この評価・見直しに当たりましては、温室効果ガスのインベントリデータ、対策導入量の状況をあらわすデータ、それから社会経済活動量予測のデータを活用して要因分析を行い、努めているところでございます。
 その中で、インベントリデータにつきましては、最新の社会経済動向を反映した的確な評価を行うため、迅速化を図る必要があります。それから、IPCCガイドライン等に従って算定方法を改善する。あるいは、各主体のとる対策努力が反映される区分や算定方法等について検討して、既存の環境データなどを改善するということが必要だろうといった点が指摘されております。
 7番目に、地方公共団体の対策の推進でございますが、国民一人一人の理解と行動が不可欠でございますが、地域の実情に根ざし、密着した行政を担当する自治体の役割は、主役の一人であるということで、多様な温暖化防止対策を展開していくことが期待されています。とりわけ、住民の日常生活、地元の中小企業などにおける取り組みの推進・支援、廃棄物・公営交通・エネルギー関係の事業、自治体の事業におけるなどに果たす役割は大きいということであります。
 そういった中で、地方分権の趣旨に基づきまして、地域における自然的社会的条件に応じた対策を計画的に推進することができるよう計画を策定することが適当であろう。この計画の策定に当たっては、関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じることとして、後で出てきますが温暖化のセンター、協議会などを活用して、地域ぐるみの対策を支援していくことが必要であろうということです。
 8番でございます。今度は、議定書目標のための排出削減・吸収に関する対策・施策でございます。
 まず、国民各界各層の理解と行動を求める活動の展開ということで、人々の価値観を含めて、ライフスタイルなどを変革していく、このために既存の枠組みを最大限活用して、強力に推進していく。
 また、地球環境時代にふさわしい社会システムとしては、サマータイムや夏季一斉休暇などがございます。これらについても、導入に関しての国民的議論・合意形成を進める必要があろうかということでございます。
 2番目に、日常生活・事業活動におけるステップごとの対策・施策ということで、アといたしまして、日常生活における第1ステップの取り組みということで、その中でまず基盤づくりということで、[1]地球環境時代にふさわしいライフスタイルの形成に向けた運動の全国的展開ということで、80年代以降の温室効果ガスの排出は、日本人のライフスタイルの変化に起因するところが大きいのではないかと見られるわけでございます。
 そこで、ライフスタイルは変えられるものであるわけでありますから、地球環境時代にふわさしいライフスイタイルの形成を目指す運動を全国的かつ長期的に展開していくことが必要であろうということです。
 その中でも、断熱や燃費のよい自動車、効率のよい電気製品など、メーカーなどの供給側と利用側が共同して行っていくことが必要であろうということでございます。
 それから、こうした製品の利用・消費を通じた排出量増大に対する取り組みは、比較的即効性のある分野で、具体的な内容や効果などをわかりやすく示して、運動・キャンペーンを展開していこうと。その際に、こういった取り組みの実施状況、あるいは日常生活における排出量の変化を定点観測するなどの手法を導入することが効果的であろうということです。
 それから、吸収源対策として国民参加の森林づくりも重要であろうということです。
 次に、地域レベルでの取り組みの基盤でございます。
 1つは、センターの指定要件を拡充いたしまして、多くの府県からの要望にもこたえて、都道府県センターの活動の輪を広げ、NPO法人も指定対象の法人に加えることが必要でございます。
 それから、基礎自治体であります市町村におけますパートナーシップによる取り組みを進めていくために、市町村における「協議会」といったものを設置して、具体的なプロジェクト、あるいは実践活動などの企画・合意形成・実施を推進するといったことも必要ではないか。それに対して、国としては先導的な対策プロジェクトに対して支援をしたり、あるいはモデル地域の設定などによって、さまざまな多様性のある取り組みの支援や経験交流などをしていただくということです。
 それから3つ目に、各家庭などにおけます取り組みの促進・支援でございますが、1つは「温暖化対策診断」ということで、家庭などにおいて専門家がさまざまな経済性評価を含めまして、費用対効果が高い方法をきめ細かくアドバイスするという事業を展開することが適当であろうということです。
 それから、家庭などにおける排出量の把握、これも重要でございまして、電力、ガスなどの領収書などに排出量を記載することなどによって、データが提供される仕組みが有効ではないかということです。
 また、電気製品などについてもライフサイクルでの温室効果ガスの排出量に関するデータの公表や提供なども必要であろうということです。
 それから、この分野での日常生活における具体的取り組みということでございますが、各種製品等の供給側と需要側が協働して行うことが必要だろうということです。
 例でございますが、供給側の対策として、基準適合製品の拡充を図る。それから、断熱の次世代基準の普及徹底。低公害車1,000万台の普及。アイドリングストップ装置の普及。国産材を使った住宅等の普及等々といったものが考えられるわけでございます。
 一方で、需要側の取り組みといたしましては、買い換え時により効率のよいものにする。外断熱措置、複層ガラスの実施。家庭用燃料電池を利用する。木材などCO2の少ない資材や製品を利用する。あるいは、エコドライブなどの行動を行う。モーダルシフトなどについて荷主側が積極的に協力するといったような点が例として挙げられているわけであります。
 次に、事業活動におけます第1ステップの取り組みということで、まず現状公共団体、事業者とございまして、実行計画を通じた対策の推進ということで、法律に基づきまして、この計画をより強力に進めていこうという点でございます。
 それから、2番目にグリーン購入の拡充・強化ということで、物品の調達方針を策定して、さらに排出抑制・補給増加に資する物品・資材の購入を促進すべきであろうということです。
 それから、事業者の自主的取り組みについてでございますけれども、経団連の自主行動計画などの自主的取り組みの透明性・客観性などを高めるための基盤づくりというところでございます。経団連自主行動計画などの自主的取り組みは、大きな成果を上げているわけでありますが、事業者の努力や実績が環境報告書などにより一般の目に触れることは少ないなど個別事業者の取り組みの実績についての透明性、客観性は十分に確保されているとは言えないということでありまして、その第1ステップとして、自主的取り組みの一層の推進を図ることを基本として、自主的取り組みの透明性・客観性を高めるための施策を講じるべきであろうということで2つございます。
 1つは、温室効果ガスの排出量の事業者による把握・公表ということでございまして、事業活動に関する排出量・吸収量の総量または原単位を事業者みずからが把握し、公表するというシステムを整備することによって、自主的な取り組みの透明性・客観性を高め、自主的な取り組みの促進に資するという点が1点目であります。
 2点目が、自主取り組みの第三者評価の仕組みということでございまして、現行の計画策定の努力義務に基づきまして、自主的に計画策定などを行っている事業者が、任意にその計画・排出量について民間の第三者の評価を受けることができるという仕組みを整備することが適当であろう、これによって、自主的取り組みの透明性、客観性を高めることが必要であろうということでございます。
 それから、経団連自主行動計画などの自主行動計画の参加業者の拡充と中小企業の自主的取り組みの促進ということでございまして、民生部門、運輸部門の事業者も含めて自主行動計画の拡充が望まれる。さらに、中小事業者につきましては、みずから排出量を簡易に把握し、対策内容を自己チェックするなどの仕組みということを地方団体などが支援していくということが必要であろうということです。
 ウといたしまして、技術対策の導入促進でございまして、費用対効果の高い各種の技術対策から、その導入を促進していくことが必要であろうということでございますが、このようなものを挙げております。
 それからエといたしまして、これは前回までにもあったかと思いますが、温暖化対策に資する製品等のまとまった重要量の確保による生産コストの低減・普及促進ということでございまして、これまで追加的導入コストが高かった製品というものについて、全国の都道府県、あるいは市町村などでいついつまでに何万台導入されるということがあらかじめ予定されれば、量産が可能になるわけでございまして、追加的導入コストも低減する、これにより製品の普及もしやすくなるというようなこともあるわけでございまして、こうしたまとまった需要量を確保するという取り組みも必要ではないかということです。
 それから、日常生活・事業活動における第2ステップの取り組みということでございますが、第2ステップは第1ステップにおける実施状況などを評価して、必要に応じて新たな基盤、あるいは対策を導入するということで、まず日常生活の方でございますが、追加的な基盤の例といたしまして、ライフサイクル・アセスメント情報を公表・提供する制度。追加的な対策の例といたしまして、自動車の小型化や低燃費車への誘導策といったものが挙げられます。
 事業活動におきましては、追加的な基盤の例といたしまして、事業者の実行計画の義務化、政府との間の協定。それから、対策の例といたしましては、新たな技術革新の成果の導入促進ということです。
 3番でございますが、都市・地域基盤整備等による脱温暖化社会の形成ということで、ライフスタイルの変革や事業者の取り組みを円滑に進めていくためには、インフラ整備などによって、脱温暖化型の地域づくりを行っていくことが必要不可欠であろうということであります。
 まずアでございますが、二酸化炭素の排出抑制に資する環境と共生する都市・地域構造を形成するという観点から、都市緑地や屋上・壁面の緑化、都市内の水面の確保などによってヒートアイランド現象の緩和に積極的に取り組む、あるいは熱電供給システム、廃熱を利用するための公共熱導管の整備の効率化等を図る必要があろうというようなことでございます。
 それから、交通体系のグリーン化ということでございまして、運輸に伴う温室効果ガスの排出量を削減するためには、排出の少ない交通体系を構築していくことが必要でございます。鉄道、路面電車などの公共交通の整備、天然ガス自動車用の燃料供給施設などの整備、あるいはITを活用した取り組みといったものが重要であろうということです。
 物流対策といたしましても、内航海運への競争力強化などによるモーダルシフト、あるいは共同輸配送の促進などによる物流の効率化というものが必要だろうということでございます。
 ウといたしまして、循環による脱温暖化型社会づくりですが、資源やエネルギーの利用の面で一層の循環と効率を進めていくことが必要であろうということでございまして、化石燃料の消費の抑制というだけではございませんで、木材などの地域の再生産可能資源の育成・利用、あるいは廃棄物の発生抑制、廃熱の有効利用といったようなことも必要ではないかということであります。
 (4)吸収源対策、これは前回報告書を出させていただいたとおりでございまして、政策担当の条件というのがあるわけでございますが、ことしの10月に策定されました森林・林業基本計画に基づきまして、健全な森林の育成などを着実に進めていくことが必要であるということです。
 その基本計画に示された内容どおりに達成された場合には、議定書の対象の森林全体で、上限値程度の吸収量の確保が可能と推計されるわけです。したがいまして、現状の水準を上回るペースの森林整備などを着実かつ総合的に実施することが不可欠であるということです。
 また、都市緑化、あるいは港湾なども重要であると考えます。
 それから、京都メカニズムでございますが、これは費用対効果が高い対策であろうかと思います。
 そこでまず、特に、CDM事業やJIについて、必要な仕組みを構築することが必要であるということで、具体的にはCDM事業によって発生するクレジットなどを記録する国内登録簿の設置、議定書上必要とされるCDM・JI事業に対する国の承認体制の整備等々を構築していく必要があろうかということでございまして、また2008年からの国際排出量取引制度も含めて、メカニズムが本格的に機能するということでございまして、2007年までには、それまでの知見、経験等を踏まえて、京都メカニズムを本格的に活用するための仕組みを構築していくことが求められております。
 6番目でございますが、経済的手法等でございます。
 まず、温暖化対策税ということでございますが、価格を通じて市場メカニズムを機能させることにより、各経済主体が消費や投資等の行動を、温室効果ガス排出の少ないものとするよう促進する手法であり、また全排出部門を対象とすることが可能な手法であるということですが、温暖化対策税制は、京都議定書の締結の際に必須ではありませんが、導入されれば京都議定書の目標達成をより効率的に実現できる可能性があるというところでございまして、引き続き専門委員会などにおきまして検討を進めていくことが適当であろう。
 イ、国内排出量取引制度でございますが、これも市場メカニズムを通じて効率的な取り組みを促す経済的手法でございます。京都議定書における国際排出量取引制度におきましても、企業などが参加できるようになったことなどを踏まえまして、第1ステップにおいては自主的な取引の実施を支援することが適当であり、また第2ステップにおきましては、第1ステップでの成果や海外の動向等も踏まえつつ、必要に応じ、国内の排出量取引制度の検討を行う必要があるということでございます。
 ウでございますが、こうした税、あるいは排出量取引などの経済的手法を含めた温暖化対策全体の政策パッケージのあり方につきましても、引き続き検討していくことが必要であろうということでございます。
 9、技術開発の促進でございますが、実用化に向けて技術開発を加速させる、市場における速やかな普及を図るという点と、革新的な技術の研究開発を一層強化していくという点が必要ではないかということでございます。
 10、調査研究の推進でございますが、総合科学技術会議の「地球温暖化研究イニシアティブ」に基づきまして、気候メカニズムの解明などにつきまして、政府と一体となって戦略的・集中的に進めていく、あるいは監視・観測体制を強化していくことが必要であろうということでございます。
 最後に、11番の終わりにというところでございますが、京都議定書の目標の達成はたやすいものではないが、この挑戦を克服する過程で、個人レベルでは価値観を転換し、簡素で質の高いライフスタイルを実現すること。地域レベルでは、各主体のパートナーシップにより、地域経済の活性化を図りつつ環境と共生する地域社会を構築すること、国レベルでは、持続可能な経済社会を構築する方向で構造改革を実現し、その取り組みを世界に示していくことにつながり得るものと考えられるということでございます。
 そこで、本小委員会といたしましては、早期に京都議定書を締結するという期待とともに、中長期的な、あるいは継続的な排出削減に向けて、脱温暖化型の社会の構築を期待したいということでございます。
 以上でございます。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、審議に入ります前に大塚委員の方からペーパーを出していただいておりますので、ちょっとこの説明をいただければと思います。

○大塚委員 前回、意見を少し申し上げたこととの関係で、ご指摘をさせていただきたいと思います。お時間をとって申しわけありません。
 この小委員会では、既に大詰めに差しかかっているわけですけれども、ここに至って最近ほかの省庁の動きが激しくなっておりますので、それを踏まえた上での検討が必要ではないかということを指摘しておきたいと思います。もう、大詰めに差しかかっていますので、今回の答申だけではなくて、あるいは答申以後の問題にも及ぶということになりますが、幾つか指摘をさせていただきたいと思います。
 先ほどの、今回の案にも出ておりましたように、COP7での合意を受けての政府の合意というのは、11月12日の対策推進本部の決定によると、そこにあるような3つのことが挙げられています。この作業に当たりましては、審議会レベルでは合同審議会、政府レベルでは推進本部での各官庁の政策調整が今後行われるということになりますが、政府一体として温暖化対策というのは推進しなければいけないということが特に要請されると思います。とりわけ、環境省は環境政策をもっぱら司る官庁として、関係官庁の温暖化対策というのを総合総攬して整合性のある温暖化対策の構築に努めていただきたいということを特に申し上げておきたいと思います。
 具体的に、先ほど申し上げました他省庁の動向というのは、産業部門との関係ということになってしまいますが、産業部門における温暖化対策の方向性というものについて、いろいろな考え方が出てきておりますので、ぜひ政府全体として早急に方向性を明確化していただきたいということを強調しておきたいと思います。
 そこで、まず前提として現在産業部門が分担している温室効果ガスの削減目標と排出実績についての確認でございますが、これは先ほどの案の中にもございましたけれども、エネルギー起源のCO2の排出傾向というのは、産業部門は横ばいで、民生・運輸部門というのは増加傾向にあるというのが現状であります。ただ、大綱の目標との関係では、全体では大分減っていると思いますし、いろいろ努力されているとは思いますが、産業界全体では0.8%増ということですので、大綱の目標はマイナス6.7%、先ほどマイナス7%というふうに案にございましたが、さらに7.5%ないし7.8%の削減というのが必要だということであります。
 大綱の目標というのを前提にする限りでは、産業部門というのは90年の排出量に比べて、現状から7.5ないし7.8%の削減が必要ということでございまして、総量との関係でいうと現状から3%の削減をしなければいけない。日本国内の総排出量の関係でいうと、現状から3%の削減をしなければいけないということで、これはかなり大きな数字でして、今後のご努力が必要なことになってきます。
 逆に、産業部門がこのまま横ばいだとすると、京都議定書の6%削減目標というのを達成できないというおそれがあるということでございます。それが前提でございます。
 そこで、産業構造審議会からいろいろな議論、アウトプットが出てきておりますので、それと中央環境審議会の議論の整合性についての検討が必要ではないかというのが2番のところで申し上げたいことでございます。
 産業構造審議会の省エネ法関連の提案といたしましては、産業構造審議会に出された資料によりますと、経団連の自主行動計画につきまして、省エネ法を強化してCO2排出量の観点から、事業場の排出量を推計して、企業ごと業界ごとの排出量を行政が集計をして、これと自主行動計画の目標というのを比較いたしまして、達成が十分でないという業界については、その業界の事業場を総点検して、その結果をもって個々の事業場について勧告・命令ができるようなシステムというのが提案されております。
 現在の省エネ法は、省エネルギーという観点からの法律でございまして、この新しい提案というのは、新たにCO2という環境の観点からデータを集計して、命令・勧告の制度を導入しようというものでございます。このようなアプローチにつきましては、CO2の観点からの勧告・命令の基準というのをどういうふうに合理的、かつ透明性をもって設定できるかという問題とか、自主行動計画の目標との関係をどう整理するかというような、いろいろな検討を要する事項があると思います。それから、費用効率性との関係で申しますと、費用効率性についての配慮というのが特に必要な温暖化防止につきましては、省エネ法が現在持っている個々の事業場ごとに規制手法を用いるという方法は非常に疑問があるところであります。この点は、強調しておきたいと思います。
 しかし、疑問があるといっていても、そういうものができてしまうという可能性もありますので、それについても考えなければいけないわけですけれども、こういう仕組みを構築するということは法的には可能ですので、今後そのような観点からの検討というのが必要になってくるかもしれないと思います。仮に、このような規制をしようとすると、それは従来の省エネルギーの観点からの規制とは違ったCO2の観点からの温暖化防止という環境の観点からの規制を行うというものでありますので、法律に携わる者としては、こういうものの実施に当たっては、「法律による行政」という観点から、新しい法律の根拠がいる。つまり、法律改正が必要だということを特に申し上げておきたいと思います。
 その上で、2つの観点から提案をしたいと思いますが、1つは中央環境審議会が提案している温室効果ガスの排出の把握・公表の実現に当たって、省庁間で整合性のとれた仕組みを考えるということをぜひお願いしたいと思います。
 中央環境審議会においては、企業の温室効果ガスの把握・公表の提案というのがありまして、先ほどの案の中にも入っておりましたが、第1ステップで産業界の自主性を生かして自主行動計画を充実するということにして、その質の向上として第三者検証の仕組みを入れる。そして、温室効果ガスの搬出量を企業が把握して公表するという仕組みを導入するということを提案しているわけであります。
 これに対しまして、産業構造審議会におきましては、行政が企業のエネルギー起源CO2の把握をするということを提案しております。これとの整合性、省エネ法の強化という考え方との整合性をとるといたしますと、中央環境審議会の議論を具体化する場合に、公表のほかに帳簿の作成、備えつけとか、さらに勧告・命令の仕組みを設けるということも考えられるわけであります。また、省エネ法をCO2廃止の観点から活用するというふうに改正するのであれば、その仕組みによって得られる搬出量のデータの情報を公開することによって、中央環境審議会での議論は実現することができるというふうに考えられます。
 つまり、CO2という環境の観点からの法律上の根拠を省エネ法の体系の中に取り込んで、この法律を経済産業省と環境省が共同で運用することによって、統計とかデータベースの共用をして、政策の重複、いわゆる「二重規制」なしに、経済界の負担を最小化するということが実現できるのではないかということであります。また、法技術的に見ますと、別に省エネ法の改正でなくても、地球温暖化対策推進法の改正法で規定するという方法もあると思いますが、その場合にはCO2について省エネ法との調整規定を設けるということが考えられるわけであります。
 いずれにいたしましても、行政が得た情報というのは行政が法律の根拠なしに使っていいという問題ではありませんので、「エネルギー」と「環境」の両方の観点でのデータの共用・共有については、明確な法律の根拠が必要でありますが、そういう省庁間における情報の共有というのは、政府一体としての政策の形成のために、特に必要だというふうに思います。先ほど申しましたように、二重規制という関係でも、規制改革の観点からも、こういうことはぜひやっていただきたいというふうに考えます。
 しかし、ひるがえって考えますと、ウのところで申し上げているところですけれども、最初から行政が企業の温室効果ガスの把握・公表を行うということではなくて、当面は自主的な取り組みとして、企業の主体性を尊重する公表の仕組みというのも考えられるわけです。先ほど申し上げましたように、中央環境審議会ではそういうものを第1ステップとして提案しているわけでして、第三者検証は必要としても、当面はこのままでいいというふうに思いますけれども、先ほど申し上げたように、産業構造審議会の省エネ法改正ということをもし進めていくのであれば、それとの関連では特に省庁間のデータの共有、共用というのが必要だということです。
 それから、そちらの方に勧告・命令の仕組みが入ってしまうのであれば、そういう仕組みも考えられるということを申し上げておきたいと思います。
 それから、2つ目の提案でございますけれども、これは排出量取引に関するものでございます。省エネ法を活用したCO2の勧告・命令制度というのが、仮に入るというふうにいたしますと、それに排出量取引制度というのを導入するということは、比較的容易にできるのではないかということであります。そして、それによって「自主と規制と取引」というのを組み合わせた制度設計をするということを提案しておきたいと思います。
 少し詳しく申し上げますが、中央環境審議会におきましては、先ほど案にもありましたように、第1ステップとして排出量取引を自主的に行っていただくということを提案しているわけであります。中央環境審議会におきましては、市場メカニズムを活用して、経済的手法を主として、規制的手法を従として6%の削減目標を達成するということが今まで有力に主張されてきたと思います。その中では、特に環境税と搬出量取引というのが検討されてきたと思います。これらにつきましては、先ほどの案の中にもありましたように、議定書の締結に当たって必要不可欠な手法というわけではありませんが、費用効率的に温室効果ガスの削減を行っていくというためには重要であり、かつ有用な手法であるというふうに考えられます。第1ステップとしては、自主的な取り組みとしての排出量取引というのを試行的に行うということが提案されてきているわけであります。
 ところが、これと関連して総合エネルギー調査会では、再生可能エネルギーにつきまして、規制と取引を組み合わせたクォーター制度の導入というのが検討されています。これは、再生可能エネルギーについてのRPSと呼ばれるものですけれども、行政が電力事業者に対して一定量の再生可能エネルギーの確保を割り当てしてしまうということですが、そしてエネルギー事業者がその割り当てを確保できないという場合には、勧告・命令及び罰則の措置が講じられるという仕組みになっております。再生可能エネルギーにつきましては、行政が再生可能エネルギーと認定したものについて「証書」を発行しますので、自前の発電所で証書を確保してもいいし、廃棄物発電を行う市町村から購入してもよいというような仕組みになっております。
 この仕組みの中には、再生可能エネルギーの総量の設定や割り当て方法とか、証書の発行とか登録・取引、証書の照合による達成評価など、搬出量取引にとっても参考になる要素が多々含まれておりまして、今後の温室効果ガスの排出量取引の設計に当たって大いに注目されるものであります。さらに、達成されなかった場合の担保措置として、勧告・命令・罰則というのがついていますので、そうなるとこれは取引と規制が組み合わされた新しい制度だということになります。もちろん、勧告・命令・罰則がつくので、これも法律の制定が必要になってくることだろうと思います。
 産業構造審議会が提案しております先ほど申しました省エネ法を活用したCO2の把握・勧告・命令制度というのは、「自主と規制」を組み合わせた制度ですが、今申し上げました再生可能エネルギーのクォーター制度という総合エネルギー調査会のものは、「取引と規制」を組み合わせた制度でございます。この2つの制度が、もし今後実現されるというふうにいたしますと、「自主と規制」のCO2の把握・勧告・命令制度に「取引」の制度が導入されるまで、あと一歩のところまで来ているのではないかというふうに思われます。つまり、省エネ法の改正によるCO2の把握・勧告・命令制度では、個別の事業場が勧告・命令の対象になりますが、CO2の総量削減という観点からは、個別の事業場において排出削減努力を行うということに、特に固執する必要はないわけでして、再生エネルギーのクォーター制度のように、「証書」を購入すれば、個別の事業場は勧告・命令という行政処分は免れるという制度も考えられるわけですし、むしろ産業界にとってはこの方がメリットがあるということになります。つまり、規制だけではなくて取引をつけ加えるということが十分に考えられるし、有用だということであります。
 このように、現在他省庁の政策においては、「自主と規制」、「規制と取引」というものが組み合わせた制度が設計されつつあるのでありまして、今後排出量取引制度が導入されるということも自然の流れであるというふうに言えると思います。前回の委員会において、浅野委員がお話になっていたことと同趣旨であります。さらに、費用効率的な温室効果ガスの削減という観点からしますと、産業構造審議会が提案しているうような「自主と規制」だけでは、削減の社会的な費用が過剰にかかるような非効率な結果になりますので、排出量取引の導入というのは、むしろ必要不可欠といってもよいほどではないかと思います。産業界にとっても、排出量取引を導入した方が有益ではないかということでございます。
 なお、もっともこういう形で規制と合体した形で排出量取引が実現されるということについては、「排出量取引の自主的な設計」という、現在中央環境審議会で今まで考えてきた提案とは少しずれてくるかもしれません。中央環境審議会では、産業界が排出量取引制度というのを自主的に構築するということを提案しているわけですが、取り組みがおくれていくとむしろ規制を軸にしながら、自主的取り組みとか取り引き制度を構築するという流れが、むしろ他省庁の方で出てきているということに客観的に見るとなってくるだろうと思います。それらが感想です。
 最後に、中央環境審議会の審議で特に強調すべきものと考えられることについて、簡単に2つ申し上げておきたいと思います。
 1つは、地球温暖化対策というのは、避けて通れない課題であるという認識が、国民各層に浸透するということが大切であると思います。これについては、政府が地球温暖化対策に関する正確な知識について、大々的な普及とか行動に向けた啓発活動、国民運動といってもいいですが、そういうものをやっていただきたいというふうに思います。
 それから、もう一つは透明性・客観性を確保して、国民に対して開かれた政策展開をするということが特に必要だということを申し上げておきたいと思います。温暖化対策というのは、産業界だけではなくて運輸業とか小売業のような事業者、さらに国民一人一人が実行していかなければいけないことでありまして、そのためにはその努力が公平に報われるというような制度が設計される必要があります。現在、産業界ではほかの部門の温暖化対策が進んでいない分まで負担させられるのではないかという懸念がおありかと思いますが、それはまことにもっともなことだと思いますけれども、逆に民生部門の対策を行う国民が、政府の対策には特定の産業界の意見が反映されているというような印象を持つと民生部門の対策も進まないということになると考えられます。
 そういう不信の悪循環というのを信頼の構造に変えて、国民の各層が積極的に温暖化対策に取り組むということが必要でありまして、そのためにはできるだけデータを公表して、各自がみずからの目でそれを検証することができるような環境をつくるということが特に必要だと思います。行政に関しても、今日では行政が企業を監督しているということだけでは、国民の信頼は必ずしも得られないわけでして、行政が把握しているデータをできるだけ公開するということがないと、対策の強化を要請される国民は納得しないということを申し上げておきたいと思います。つまり、「透明性」と「客観性」の確保というのが、温暖化対策の最も重要なポイントであるということを強調しておきたいと思います。
 以上です。

○安原委員長 大塚委員、どうもありがとうございました。
 他省庁、他の審議会が検討しております施策との関連にも触れて説明いただきました。ありがとうございました。
 それでは、事務局から説明をいただきました資料1の答申案につきまして、委員の間でご議論を願いたいと思います。また、質問でも結構です。
 発言のご希望のある方は名札を立てていただきたいと思います。
 それでは、猿田委員どうぞ。

○猿田委員 委員長から委員の間で議論をというお話がございましたけれども、先ほどご説明いただきました中で、ちょっと確認したい点がありますので、それを申し上げてみたいと思います。あり方について、今までの議論をそれなりに整理されたと思いますので、全体の構成が云々ということではございません。
 まず、13ページ、地方公共団体の対策の推進というところで、下から4行目に地方公共団体が計画を策定することが適当であるということであるわけですが、11ページの京都議定書目標達成計画、これは法律を改正して国がおつくりになるということだろうと思いますけれども、12ページに計画に盛り込むべき事項というのが書いてあります。11ページの3行目に、「京都議定書目標達成計画」(仮称)とあるわけですが、後の地方公共団体、ほかのところで計画と使われているものは、13ページには計画を策定することが適当であるという、この計画というのは、国がおつくりになる京都議定書目標達成計画に準拠したものとして考えられているのかということです。
 18ページには、法律の8条に基づく地方公共団体実行計画を策定しなければならないとあるわけで、ここにも地方公共団体はということで計画を策定することになっているわけですけれども、この辺の実行計画とこの計画との関係はどうなっているのかということが1つでございます。
 そうすれば、12ページの計画に盛り込む事項が、もしこれが京都議定書目標達成計画ということで実行計画とは別に、実行計画は地方公共団体の事業者としての立場でおつくりになるというものですから、こちらの目標達成計画はもっと総括的なものとして達成計画をつくらなければいけないものだろうと思いますけれども、その辺の関係はどうなるのかということでございます。それをちょっとお伺いしておきたいと思います。
 この地方公共団体の場合、市町村まで入れた考えで計画をつくりなさいとおっしゃっているのかどうかということが1つございます。
 それから、次に20ページのところで、日常生活・事業活動における第2ステップの取り組みというのがあるんですが、ここで追加的な対策の例として、小型化や低燃費車への誘導策というのがあります。ところが、第1ステップで十分な対応がなされなかったから第2ステップのところで、指摘しようということだろうと思うんですけれども、例えば14ページを見ますと、日常生活・事業活動における、第1ステップの取り組みのところですけれども、ここでは自動車の運行等を含むとなっておるわけですし、17ページのところではメーカーに対して燃費基準の前倒し達成、より燃費性能のすぐれた車種に対する積極的な開発というのがあるわけで、第1ステップのときから、既にそれをやっているわけなので、あえて第2ステップのところで、20ページの小型化や低燃費車への誘導策というのをここで掲げているということは、第1ステップのところでこういうことが行われなかったということなのかなという感じがするわけで、そういう意味では、第1ステップに対する内容が、もし本来であれば第1ステップの方でこの辺のことは当然行われるべきことだろうと思いますので、第2ステップでここであえてこれを挙げることはない、むしろ第1ステップの方にきちんと明確にしておくべきではないかということです。
 それから、21ページの都市・地域基盤整備の推進というところで、一番下の段落ですけれども、地球温暖化防止の観点を明示的に取り入れて特定地域の都市・地域基盤整備を進めていくための計画の策定とあるわけですが、この計画はまた別の計画だと思いますけれども、ここで特定地域という言葉が出てきたわけですが、これの特定地域というものはどういう形でお決めになるのか。例えば、自動車NOxの場合、全国平均の3倍、4倍のところを特定地域として指定するという一つの基準があるわけですけれども、この場合の特定地域というのはどういうことを想定しておられるのか、それをちょっとお伺いしたいと思います。
 以上でございます。

○安原委員長 それでは、今のはご質問でございますから、竹内課長の方で答えていただきます。

○竹内課長 まず、1点目の地方公共団体の計画と実行計画でございますが、ご案内のように、実行計画は事務事業に関する計画でございます。今回、ここに挙げられております計画は、とりわけ日常生活、あるいは地元の事業者などの取り組みを推進、支援するといった観点、あるいはこれは若干事業計画の中にも入っている部分はあるかもしれませんが、みずからの事業、例えば公営交通とか廃棄物処理事業とか、その中での具体的な温暖化の対策といったものを計画的に進めていくための計画というふうに思っております。
 それから、自動車の小型化でございますが、それは第1ステップで低公害車の1,000万台の普及でありますとか、燃費基準の前倒し達成でございますとか、そういった対策をしていくわけでございますが、それでもと言いますか、低公害車1,000万台ということなどでは大きさを規定するわけじゃないわけでありますが、さらに大型化が進んでいるという場合におきましては、例えば第2ステップで自動車のグリーン税制を拡充するなどによって大型化が抑制されるような方策ということもステップとして考えられるということでございます。
 それから、特定地域は法律で例えば指定するというような考え方ではございませんで、あくまでも一般的な要望がある地域ということでございます。特に、都市基盤、インフラなどを集中的に整備するといったような地域ということでございます。

○猿田委員 今のお話ですべて理解できるわけですけれども、その実行計画と今度の新しい計画、恐らく重複する部分が出てくるだろうと思うんですけれども、実行計画そのものは1道9県、10の自治体しかできてないという報告もあるわけで、その後ふえたかどうか。

○竹内課長 市町村を入れますと500以上です。

○猿田委員 今後も残されたところもまた2つつくらなければいけない、その辺の重複するところを整理できるのか、おつくりになったところもある程度それにプラスすればできますよということになるのか、その辺調整していただかないと、また混乱が起こるのではないか。特に、吸収源対策とかそういうものも今後件数の中に入れていくとすれば、なかなかその辺が逆に難しいものになってくるので、経過そのものが悪いとかそういうことじゃないわけですけれども、検討してみる必要があるんじゃないかなという気がいたします。

○安原委員長 どうもありがとうございました。
 地方の問題が取り上げられておりますので、小林委員さん引き続いてお願いします。

○小林委員 私の方から、地方自治体ということも踏まえながら、3点希望というか要請をしたいと思います。
 1点は、今回のまとめの中で、国内制度といいながらその内容のほとんどが啓発とか誘導にかかわる部分であって、直接的にその温暖化削減につながると言われるようなものがほとんどない。ほとんどが税制の問題とか、こういうふうな問題がすべて後送りになっているということになっているわけでございまして、そういう意味から誘導施策につきましては、予算の中で十分な対応をした施策として実効あるものにしていただきたい。そうしなければ、今までも普及啓発一生懸命やりながら、ほとんどがそれが効果として出てきていない。現実に、産業部門についてはふえなかったと言いながら、それ以外の部門についてはすべてふえてしまっておるし、また産業部門についてもトータルふえてないと言いながら、生産額当たり、原単位あたりのエネルギーの量というのはふえているわけです。それを考えた場合、景気が今の低迷から変わってきた場合、かえってふえてしまうということになってしまうわけで、これを削減の効果があったと評価するのは問題があるのではないか。そういう中で、もう少し強い政策展開がない限り、2005年ですか、第1ステップまでに効果は評価できないのではないか、その不安が大変強いというのが1点目でございます。
 それから、2点目自治体の問題なんですが、地方自治体が役割の重要性をうたっていただき、計画策定について明記されているということについては評価させていただいくわけでございますが、この計画を実効性あるものにするための手段、例えば地方自治体に対して調査権とか、指導権とかそういうふうな部分についてはほとんど触れられていないということで、これですと今までの私どもの方でも計画はつくっているわけですが、すべてが啓発という形で誘導しているわけで、これで本当に計画が達成できるかどうかという点については、少し期待にこたえられないのではないか。そういう意味で、今後法改正が行われるに当たって、この計画策定を明記されると同時に、事業者等に対する調査権とか指導権、こういう部分も付与されていることをぜひお願いしたいと思います。
 これが、もしできない、国においてそういう対策ができないということになった場合、地方自治体としては計画を実効性あるものにするという意味から、条例によって独自に実効あるものにするということを考えざるを得ないと考えます。そういう意味で、ぜひともその辺、国においては一定の誘導をお願いしたいなと思っております。
 それから、3点目なんですが、地球温暖化防止推進センターの件でございますが、指定要件をNPOまで広げるという点については評価させていただくわけですが、これは今まで指定されなかった大きな理由の形式上の問題、これが解除されるだけであって、本来実質上の問題が一つあるわけです。これは、何かというとセンターの運用に当たって、一番重要な財源の問題、これについてはほとんど触れられていない。全国センターも含めまして、現在財源確保というものがないわけで、その中で自主財源で運営しろというのは難しい話でございまして、今のところこれは国においてもそうですし、また地方自治体でもほとんどが委託という形で運用されているわけですが、これはやはり自主財源を持つということが重要でございまして、そういう意味から、国または地方自治体が補助金としてそれを出すようなシステム、または民間資金等を集める基金造成ということを明記していただく必要があるのではないかなと思っております。
 この3点ぜひよろしくお願いします。

○安原委員長 ありがとうございました。
 第1点目のところですが、誘導的な政策が中心で効果が十分出ないんじゃないかというご指摘ですが、確かに具体的な施策としては例が挙げられているわけでございますが、12ページをごらんいただければ、計画に盛り込む事項というところで、今度のドラフトでは第1ステップの対策・施策によって6%の削減目標を確実に達成することをわかりやすく、数量的に明らかにするということで、計画の内容について注文をつけているわけです。ですから、そこを具体的な法律に基づく計画が策定されるときに、そのことが、今ご指摘のようなことが問題ないような形で計画が策定されるというようにしてもらいたいということで答申には明確に表明しているということでございます。ご理解いただきたいと思います。
 それでは、あとは事業者のご意見ということで、桝本委員どうぞ。

○桝本委員 ありがとうございます。
 まず、全体としての総論としての印象を述べさせていただき、各論についてお願いごとを申し上げたいと思います。結果として、皆様方のご議論を受け、かつ呼び起こすことになるのではないかと思っております。
 まず、今小林委員のおっしゃられたことの中で、私どもと言うべきか、私ども企業として大変心配なことがございます。国、あるいは地方自治体の監査権、企業への調査権、こうしたものが欲しいというお話でございますが、お気持ちはよくわかります。しかし、電力会社は各地方から逃げられません。ですから、仮にも監査、調査というようなことになれば甘んじてお受けせざるを得ないわけでございますが、地方財政のこれほどの緊迫の中、さらにはこれから好転する見込みのない中で、仮にも地方自治体等が監査、調査ということを企業にするとしたら、私はそうした自治体から逃げてしまう工場等が大変多くなるのではないかという実際的なことを大変懸念いたします。お気持ちはわかりますけれども、恐らく中小企業を含めてこうしたことについては、大変に拒否の反応が強いのではないかと懸念をまず申し上げます。
 それから、今回の案の全体について、私3点印象深いイメージがございます。
 第1点は、大塚先生がおっしゃられたとおりでございまして、1つはこの報告書のそこここに、前にもお話ししましたが一種の不信の構造があります。最も、私らが懸念いたしますのは、第2ステップで表現は悪いかもわかりませんが、衣の下からよろいを見せるようにして協定化を要請する。あるいは、規制をするという表現が、言葉は違いますがございます。これは、私に言わせればきっとできないだろう、お前らやらないだろう、だから次はこうするよという気持ちをあらわしたものでございまして、私はこうした不信の構造が、この基本報告書の一つに流れていることに大変残念に存じます。だといたしましたら、この不信の構造が行政に対しても、国民や企業は持っております。これは、ここで幾つかの省庁のお名前を挙げるのも大変失礼でございますが、外務省や農水省の例を引くまでもなく、国民や産業界は必ずしもこの不信の構造を、ここにいらっしゃる皆様方が杞憂に思っていることと同じような意味で持っているかもわからないということにご配慮を賜りたい。そういう意味では、大塚先生のおっしゃるとおり、この構造を信頼の構造に変えていく必要があると私は思います。そういう意味で、かねがね経団連と企業は自主的な取り組みをしたい、それに任せてくれということをお願いしているわけでございまして、このことについては十分なご配慮を賜りたいというふうに存じます。
 それから、第2点目これも大塚先生のご指摘のとおりでございます。いわば、既に二重のデータ取り、二重の行政については私どもは避けてもらいたいというお願いを申し上げました。大塚先生のおっしゃられるとおり、既存の仕組み、省エネ法は代表でございます。既に、エネルギー消耗に関する法律として行われ、それが次第に変形し今に至り、先ほどのお話のとおり、これから質を変えようとしております。そうした状況が一つあって、なおかつ、ある一定以上の今の工場はエネルギーの電気、石炭、ガス、油についてのそれぞれの実績の報告を求められ、かつ小さな工場等はその報告を届け出るということに義務づけられております。それで、私は前回から申し上げているように十分ではないか。つまり、いずれにしても、学者の先生がおやりになっても、行政がおやりになっても、企業がおやりになってもCO2の推計は、エネルギー統計、エネルギーデータからいたします。だといたしましたら、そのエネルギーデータを省庁の壁を超えてお取り組みいただきたい。なおかつ、大塚先生のおっしゃられたとおり、総合的取り組みが必要でございます。したがって、先ほどのお話のように、政府全体での取り組みの中で、各省庁データを使い合い、今までの仕組みを使い合い、この問題に取り組んでいただく必要があるというふうに存じます。屋上屋を重ねるようにして、温暖化対策だからといって、これまでのものにさらに上回す行政というものは、私はいかがかというふうに存じます。
 それから、3点目はきょうお配りなさっていただいた水野先生のアンケート調査をぱらぱらっと拝見いたしました。大変におもしろい結果が出ております。残念ながら、水野先生のご指摘は、企業がちゃんとやっていない。中でも、中小企業がだめだと、一言できつく申しますとそういうようなことになっており、したがって、法律をしっかりつくるべきであるというふうにご主張になっているやに見えます。私がもし間違っていたらお許しいただきたいと存じます。
 しかし、私はこれを別な読み方をすれば、中小企業への国民や企業の理解が足りない、不足というだけでは十分ではないと存じます。これは、とりも直さずここにいらっしゃる先生方、あるいは私ら行政の説明不足です。京都から既に4年余がたちました。この間に、いろいろな報道があり、確かにいろいろな説明がありました。私は、十分では全くないと思いました。それを最も象徴するものは言葉です。これは、いろいろな方にお願い申し上げておりますけれども、ぜひこの問題が重要であればあるほどシンク、CDM・JI、京都議定書、そのほかいろいろな言葉がございますが、こうした国民が一つ一つ辞書をひかなければわからないような言葉をさんざん使って、それで国民や中小企業の経営者にわかれということは全く無理だと私は思います。もっともっと、先ほど大塚先生がおっしゃられたように、国民運動としてわかりやすい言葉で、これから規制を受け、場合によっては税を払う、あるいは法律の対象になる人たちに私は大いに働きかけ説明をするべきであるというふうに存じます。
 それだけに、今回の報告書に幾つかある法律の制定ということについては、まだちょっと早い。京都議定書の批准、あるいはそれを推進するということについても、まだ今の視点から申して、まだやることがあるのではないかというふうに存じます。これが、総論としての感想でございます。
 それから、極めて具体的な話で大変恐縮でございますが、5ページに目標値の話が出ております。この目標値、実は私はまだ環境に携わって日が浅いものですから、自分では十分存じませんでした。
 しかし、前から勉強している担当している人たちから言わせると、この目標値という表現自体に問題があるというふうに聞きました。それで、ここにございます、当時の報告書を引っ張り出して見てみました。平成9年11月の、先ほどの基本方向についてという報告でございます。前の報告書でございますが、5、6、7ページ当たりでございますけれども、そこでは目標値という、あるいは目標という言葉は使われておりません。どういう表現になっているかといいますと、期待されるという表現になっておりまして、いわば目標というよりはもうちょっと緩やかな期待ということでございます。その当時の経緯を私が聞きましたところ、要は産業界としては7%近いさらなる削減が難しいかもわからない。努力はするけれども、目標とされるとそれほどの自信がないといいますか、そうした実効性は難しい。したがって、期待という表現にしてほしいということで平成9年にそうした表現になったというふうに説明を聞きました。だといたしますと、既にある報告書の表現のとおり、目標という言葉を期待という言葉なりに変えていただく必要があるのではないかと存じます。
 それから、6ページのアの[1]産業部門でございますが、ここでは産業構造の変化が書かれています。これはそのとおりだと思います。これはお願いでございますが、企業への自主的な努力も何がしかあったに違いないという意味で、企業の自主的努力についてのご評価も言葉として賜ればというふうに存じます。
 それから、10ページ、11ページでございますが、国内対策の留意点につきましては、ここにお書きになっているとおりではありますけれども、ここにある非常にデリケートな表現がございます。例えば、11ページの上から3行目、我が国経済への影響も緩和されるという表現があります。これは、とりも直さず影響が恐れられるということでございます。したがって、私はこの部分についても若干の表現を足す必要があるのではないか。つまり、こうしたマイナス要素が考えられるので、それを回避する必要があるというような表現が、ここにもうちょっとあってもいいかなというふうに存じます。
 それから、11ページと12ページ、ここでは先ほどもお話ししましたように、政府が法律によって後ろだてを持つ必要があるということが、法律という言葉が何回も使われて書かれているわけでございますが、先ほどお話ししたとおり、法律で決めたからこうだというふうに企業や国民に訴えるのではなくて、その前に国民の理解、国民へ訴えるということをしていただく必要があるのではないかと私は存じます。そういう意味では、国民の理解力と国民のいわば協力を得るということに、若干の信頼をお互いに持ちたいものだというふうに存じます。百歩譲りまして、仮にこうした法律が必要だといたしますと、その具体的な実施施行に当たりましては、くれぐれも中小企業の経営者、あるいは国民等への説明、あるいは納得、合意、こうしたものをお願い申し上げたというふうに存じます。
 それから、12ページ、13ページでございますけれども、ここは先ほど大塚先生もおっしゃるように、私もお願い申し上げたとおりでございます。企業の自主的とはいえ把握、公表については、既にデータがある。したがって、これを大いに活用いただきたい。経済産業省では、かねてから省エネ法を活用するという案を今検討されております。これに、環境省にかかわっていただいてご検討を賜りたい。なおかつ、今ITの技術を使いますれば、あらゆるデータが瞬時にして省庁、行政、官民の間を行ったり来たりいたします。こうしたことを活用することを考えるべきだというふうに思います。
 それから、14ページでございますけれども、8の(1)でございます。これは、真ん中のあたりですが、既存の仕組みを最大限に活用しつつ、各界各層・政府一体となった強力に推進する。全くこれはこのとおりでございまして、温暖化推進対策本部において、省庁の壁を超えて、総合的に、あるいは高い立場から一体となってお取り組みいただくことをお願い申し上げます。
 なおかつ、あえて申し上げれば、先般の小泉総理のワーケーション会議の後のコメントの中には、環境政策と経済政策との調整、調和が重要だというご指摘があります。これについても、ご配慮賜りたいというふうに存じます。
 それから、16ページの一番下のところに電力、ガス、ガソリンの代金の領収書、これは一例として挙げていただいております。これにつきましては、努力いたしますが、要は私は電力会社ですが、電力会社、ガス会社等が消費者に情報を出す、いろいろな出し方がございます。そういうようなご主張ということに理解をさせていただいて、これはよく努力することを申し上げます。
 それから、17ページの一番下のところに、家庭用燃料電池というものが加わりました。この家庭用燃料電池は、このとおりかと存じますが、そうであればシナリオ小委員会のシナリオにも大変有力なものとして評価をしていただいている家庭用のヒートポンプの活用についても、ぜひここへ加えていただきたいというふうに存じます。
 それから、19ページでございますが、I、これについては先ほどお話ししましたとおり、既にある仕組みでいいのではないかというふうに存じます。
 それから、IIについては、再三お願い申し上げておりますが、経団連が第三者評価の仕組みを今つくるのを急いでおりまして、これを我々なりに民間として急ぐということを付言させていただきたいと存じます。
 それから、21ページの一番上でございます。先ほどお話ししました第2ステップの中に、政府との間の協定という表現がございます。これについては、再三お願い申し上げておりますが、いわば何もやらなかったむちだぞ、お仕置きだぞ、こういうふうに私なりには読めますので、願わくばこれを例としてお考えいただいているというふうに理解をさせていただきたいというふうに存じます。
 それから、24ページの温暖化対策税でございますが、これはさまざまな議論があること、ヨーロッパ等で実施されていることは十分承知しております。しかし、7月の中間取りまとめでは、雇用や経済への影響があるというようなことはたしか記入されていた。なおかつ、環境庁の試算でもこれは税だけではないと思いますけれども、たしかマイナス0.6%から0.7%何がしまでのマイナスの影響があるという試算は間違いなくあるわけでございますのでその点についての記述と、効率的にという表現がここにございます。一番下の業です。この効率的という表現はどういう意味なのか、私はここでは要らないのではないかというふうに、この表現について疑問を呈しさせていただきたいというふうに存じます。
 それから、25ページの排出量取引でございますけれども、これは、実は既にご案内かと存じます。三菱商事さんとアメリカの企業が一緒になって排出量取引をする。あるいは、各企業や業界がさまざまな試みを始めているということで象徴されますように、いろいろな勉強は既に民間でも始まっております。したがいまして、ここについては慎重に政府にはかかわっていただきたい。極端に申しますと余り政府にかかわらずに、民間の自主的な取り組み、勉強を見守っていただきたい、そういう意味でここに国内制度については特に慎重なご配慮をお願い申し上げたい。中でも、ご案内のとおり国内の本当に排出量を得るところが出てくるか、これについては新しい技術開発の関係もあるので、非常に難しいところもございますだけに、ただ単に検討を行うというよりも慎重な検討、民間の試み、勉強を見守るというような姿勢をお持ちいただければというふうに存じます。
 それから最後ですが、26ページの一番最後の京都議定書の締結でございます。これは、先ほど来お話ししていたことと全くかかわることでございますが、ここでこの場の意見として締結することを期待するという表現があります。百歩譲りましてこの表現をこのままといたしましても、私はこの前にくどいようですが、国民への説明、合意づくり、そうしたものが必要だというふうに存ずるだけに、ここでいきなり締結することを期待するということではなくて、この報告を踏まえ、我が国がまずやるべきは国民への説明、合意等を得ること、こうしたことが必要だという記述が必要である。あるいは、それがなければ締結することを期待するということがちょっと早計ではないかというふうに存じます。
 ありがとうございました。

○安原委員長 ありがとうございました。非常に広範にわたってご意見をいただきました。最初の部分につきましては、全体の感想、印象として承っておきたいと思います。具体的なあと表現に関係してご意見をいただきましたが、これから皆さんの意見を伺いながら深めていきたいと思います。
 特に、産業界の目標値のところでご質問がございましたので、ちょっと事務局からその産業界、約7%減のところをご説明いただきたいと思います。

○竹内課長 97年11月の合同会議の中に今ご指摘のあったような表現で入っております。

○安原委員長 だから、目標値ということですか。

○竹内課長 期待されることが見込まれる。

○安原委員長 期待するという表現になっている、期待値という意味ですか。

○竹内課長 部門によっては見込まれるとかいろいろな使い分けがされているということでございます。

○安原委員長 ですから、大綱としては6%の目標の内訳が示されて、それがずっとブレイクダウンされてきて、産業界としては産業界の基準年との比較では、約7%減ということで内訳はできているということでございますね。

○竹内課長 大綱の中にはございません。その前提となったと言われますのが97年の秋の合同会議での説明資料です。

○安原委員長 それでは、あといろいろ法律が要るかどうかの点等、基本的な点もいろいろご指摘がありましたので、ほかの委員の方にも伺っていきたいと思います。
 それでは福川委員。

○福川委員 若干、大塚委員、あるいは桝本委員とダブるかもしれませんが、私も3点申し上げたいと思います。
 1つは、行政の効率性というお2方も指摘になられた点なんですが、これはもちろん行政だから完璧を期するということもあるわけですけれども、私はなるべく今小さい政府が求められているときに、行政を効率的に展開しているんだということがトーンの中に出てくるといいと思っています。それは、先ほど省庁間の調整、情報のIT化、こういうことが言われておりますが、こういう行政費用をできるだけ少なくする、また国民、あるいは事業者への負担はできるだけ小さくする。しかし、効率を上げていくという形で努力をしているんだという体系が必要に思っております。そうした点で、非常に重要なのが情報公開と政策評価ということで、これが今行政の中で展開されておりますが、この情報公開と政策評価を徹底することによって、非常に効率のいい行政をしていく、省庁間の情報を共有化、あるいはその費用を低減するためのIT化等々の、そういう考え方を入れていただきたいというのが1つであります。
 それから、2つ目が第2ステップの点ですが、ここに第2ステップが若干の例示が書いてございますが、今ここに書いてある、特に20ページのことですと、これも先ほど猿田委員もおっしゃいましたが、確かにできることはできるだけ早くやった方がいいというところもありまして、何か小出しにして後に取って出すというのではなくて、できるものは私は早く出していった方がいいと思います。日常生活と事業活動についてだけ第2ステップが書いてあって、ほかの吸収源対策とか、ほかのものは余り書いてない。特に、吸収源対策というのは、これがうまくいくかいかないかというのは、これは極めて不確実な要因があるので、これをどういうふうに考えるかということも大事だと思います。もしほかのものでも第2ステップで考えられるものは、私はそれなりに書いておくべきだというふうに思うし、ここに書いてある20ページの第2ステップでも第1ステップでできるものはもっと早くしておくし、もし第2ステップにするなら、こういう理由で第2ステップだということをはっきりした方がいいように思います。
 この事業者についての義務化とか政府間協定等々がありますが、これも今後のいわゆる実行の成果を見て、次のステップとしてこういうことを考えていくというのが一つの方向だと思いますが、脅かしてするというのではなくて、できるだけ企業がそれをやりやすくするようないろいろな仕組みを入れた上で、そしてそういった実行を促しつつ、それでも効果が上がらない場合にどうするかという形のニュアンスで書いた方がいい。その方が、努力を伸ばしていくのには役に立つのではないかと思います。
 3点目は、これも皆さんから出ました呼びかけですが、民生についての呼びかけというのは、私はこれはやっぱり相当重要な課題であると思うし、環境省としてもぜひ力を入れて、予算も十分とってやっていただきたいという気がいたします。簡単にできるというものではないわけであります。こういう問題はもちろんシステムも大事ですが、事業者、国民、生活者の意識というのが非常に大事なので、それだけにこれまでも教育等々の問題が強調されましたが、メッセージをできるだけ、強いトーンで出していただきたい、そういう感想を持ちました。
 ありがとうございました。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、次は西岡委員どうぞ。

○西岡委員 3点ほど申し上げたいと思います。
 まず最初は、これまでにもお話のありました情報の関係なんですけれども、私の立場といいましょうか、例えば先ほどご紹介がありましたように、この10年間どこが伸びていたのだろうかとか、それからどこが努力したんだろうかというような分析をしているんですけれども、そうしたとき非常に困りますのが前回申し上げたんですが、統計の数字が非常に区分が粗いというところがありまして、どこが原因になるのかわからないんです。例えば、自家用車の走行距離がなぜ伸びていて、どこで伸びているんだろうかとか、割と細かいことを分析しないと次の手が打てないわけです。今、政策評価というお話がありましたけれども、そういう点から言いますと、さらに割と細かい単位での情報が欲しいなと感じております。
 そういう面から見ますと、これまでのインベントリーを計算する前のデータまで順にさかのぼってやりたいと思うところがあります。それから、原単位の変化、これはいただいているものもございますけれども、それぞれに調べなければいけないところも出てくるということで、この統計につきましては、政策評価のベースですので思い切って整理していただきたい。
 それから、このデータというのは、例えばごみのデータなんていうのは1年半おくれで出てきて手が打ちにくいということもございますので、ぜひ行政のデータの共有化を図っていただいて、スピードのある対応が打てるようなシステムにしていただきたいというぐあいに考えております。それが、第1点です。
 それから、第2点が国民への呼びかけということなんですが、ここでも推進センターの話が出て、私もかかわっておったんですけれども、推進委員の方々もいろいろ言われるけれども一体何をやっていいのかわからないという、組織だけつくったのではだめで、そこに何かの仕掛けが多分要ると思うんです。例えば、NHKのテレビで昔は大気汚染の状況について、ときどき放送があったんですが、天気予報と絡めてあるんですけれども、天気予報の中で暑くなりそうだったら、ことしはこういう状況で暑くなってきて、1度減らすとこれだけ役に立つますよというようなことをPRしてもらうとか、いろいろな意味での仕掛けづくりを早急に進めていただきたい。
 私の方は、今インパクトの提携なんかをやってますけれども、例えば温暖化 110番というようなことをやっておるんですけれども、子供たち、あるいは子供たちだけじゃなくてもいいんですけれども、気候の変化がどんなところに見られるかというようなことで、一つのネットワークでみんなで観察、監視していくといったシステムなんかも総合学習と組み合わせてやるということも考えられるのではないかなというぐあいに考えております。これも、環境省は自然環境データを持っているし、気象庁は気象庁で生物観測しているとか、いろいろな省庁にもまたがっているものですから、このあたりを一つ大きなところからの号令でもって進めていくという必要があるのではないか。これが第2点目です。
 第3点なんですが、これは国内制度ですから余り書かれておりませんけれども、実は国外の状況、特にCDMがどこまでいくかということによって、この国内制度が非常に変わってくるわけですが、それに対してまだここは十分書かれていない気がいたします。特に、私がお願いしたいのがODAとの組み合わせということなんですけれども、私がGEFの方に関係しておりますと、まず基盤の方はODAでやって、非常にCO2が減りそうなところはGEFである。あるいは、日本からの特別なCDMの関係であるといったことの組み合わせが非常に大切になってくると思うので、ぜひ国内制度の問題ではあるんですけれども、そういったODAのうまい活用ということについても本当は書き込んでもらいたいんです。それは今は国内政策だからかなりおっしゃるような政策だけれども、いいかなと思います。
 第4点は、今いろいろ申し上げたことでおわかりのように、この話というのは、あらゆる省庁にまたがっているものですから、何人かの方おっしゃいましたけれども、ぜひ全省庁を横断的、あるいは総合的にこの話を進めるような体制をつくっていただきたいというぐあいに考えます。
 以上です。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、その次塩田委員お願いします。

○塩田委員 総論的な意見と具体的な各論的な意見と両方申し上げたいと思いますが、前回1990年以来の実績の評価をして対策を講ずべきだと申し上げた点について、答申案全体の構成を変えて対応していただいたことはありがたいと思います。
 そこで、私が総論的にここで大事だと思う点を申し上げたいと思いますが、第1点は温暖化対策においては、一つ一つの政策でどれだけ温暖化ガスの排出の抑制をする、どのくらいの量の抑制ができるか、量に着目した対策が大事であるということです。これが、必ずしもここでは余り強調されていないように思います。質的にどうであっても、結果的に大きな温暖化ガスの排出の抑制ができる政策というものを重点政策としていくことにコンセンサスをつくるということが大事なんじゃないかと思います。
 そういう意味で、運輸部門について申し上げますと、いろいろな分析から自家用乗用車から排出される温暖化ガスの量が一番問題だということはもうかなりはっきりしてきたわけです。そこで、そういう点に着目して、これは非常に関係省庁も多いと思いますけれども、どういうことを今からやっていくかということをもう少し組織的に考えて、対策を考えていくということが必要なのではないかと思います。
 昨年から1年間この議論をしてきたと思いますけれども、その間にこの分野で進展した政策というのは、自動車税制のグリーン化というのが一つ前進した施策であります。この自家用乗用車の排出量の抑制という観点から、どういう対策が今まで有効であって、これからどういうことが必要なのかということをもう少し突っ込んで検討する必要があるのではないかと思います。今回の答申にそれをまとめることが難しいとしても、これが重点項目であるということは明らかだと思います。
 この答申を見ますと、ユーザーサイドにいろいろ自動車の使用について、アイドリングストップを奨励していたりしていながら、国、あるいは地方公共団体サイドの具体的な施策というのは必ずしも具体的にまとめられていない。ユーザー側として意見を言えば、皆さんもよく経験されていると思いますけれども、同じ距離を例えば10キロぐらいのところを走るのに、道路が混んでいるのと混んでないので、運転時間は10分ぐらいから1時間、2時間というふうに大差が出ることが日常茶飯事に起こっているわけです。こういう問題を放置しておきながら、一人一人のユーザーにもっと排気ガスの排出量を抑制しようということを言っても反発が起こるんじゃないかというふうに思います。こういう観点からのアプローチが必要であると思いますので、自家用乗用車の対策というのを一つ大きな項目として、今まで何をやってきて成功したのか、これから何をやればいいのかということを全体的に考えていく必要があるのではないかと思います。
 それから、2点目ですけれども、温暖化対策の国あるいは地方公共団体の具体的な政策手段というのは、この答申案では必ずしも十分検討されていないと私は思いますので、今申し上げたとおりですけれども、それはそれぞれの政策というのが、それぞれ別の目的の政策で行われていて、それの反射的な効果という場合が多いのではないか、と思います。そういう面が強いんだと思いますけれども、やはりここで温暖化対策として議論するときは、そういうものであっても、温暖化対策の効果というものに着目して、きちんとそれを評価して、この計画の全体の中にどれだけ温暖化対策に効果があるのかということを位置付けをしていくということは、いろいろな意味で効果が大きいのだと思います。
 例えば、交通流の改善というのが政策の目的だとしても、その交通流の改善というのが行われれば、多分温暖化ガスの排出は相当減るだろう、そういうような観点から交通流の改善を温暖化対策にきちんと位置づけるというアプローチも要るんじゃないかと思います。そういうのが全体の評価から抜けているということは片手落ちなんじゃないかと思います。
 それから、似たようなことでは交通流の問題とは別に、乗用車を一人で運転している人が仮に鉄道、あるいはバスに転換したとすれば、温暖化ガスの排出量は皆さんご承知のように鉄道の場合には約10分の1、それからバスの場合は約5分の1に減るということになっております。公共交通機関の整備というのは、大都市を中心にこれまでも推進されてきておりますけれども、将来温暖化対策関係で鉄道、バスへの転換というものの効果が大きいということの可能性があって、それが必要だということであれば、さらに公共交通機関の整備を重点対策にしていくというようなことができるのだと思います。私は、これを今すぐ項目として入れるべきかどうかということについては、関係の当局、あるいは専門家の検討に待ちたいと思いますけれども、公共交通機関と同様に道路の混雑というのも、それがどんどん悪くなっているとは言わないけれども、それを道路混雑を改善すれば、必ず大きな効果はあると思います。
 
 答申の内容について2つ私は意見を言いたいと思います。1つは、交通体系のグリーン化というところがございます。これは、21ページから22ページのところに対策が書いてあるんですけれども、ここに記述されている施策内容というのが、これから具体化されるのでしょうがこの位置づけがよくわからないうえに、その全体の中で当面やるとか、第1ステップとか第2ステップで取り上げる取り上げ方がよくわからないと思います。国と地方公共団体の特に運輸の分野の温暖化防止対策の施策というものをもう少し具体的に体系化した形で整理をすべきではないか、散発的に項目ごとに拾っていくということではなしに、もう少し総合的に体系的に整理すべきではないかと思うわけです。
 それから、もう一つ自家用車の排出抑制の具体策に関しては、ここには触れられていませんけれども、これもどこかに、これは多分自家用車の大型化とか、あるいは自家用車の排出量抑制のところに関連させて、燃費規制の前倒しの実施をもっと、強力に推進すべきだというようなことを書くべきではないかと、こういうふうに思います。
 あと、運輸部門の行政の進め方について多数の委員が自主的な取り組み、それから自主的な結果の公表、そういうものを基準に行政を進めていくべきだということをおっしゃっていたと思います。運輸部分の温暖化対策についても私もそれに賛成です。それは、行政の効率化にもなるだろうしと思うから賛成です。
 
 最後に、温暖化政策の効果というのは、制度としてはエネルギー統計で確認されるということで適切だと思いますけれども、それとともに交通統計とか、あるいはその他のいろいろな指標で運輸部門についても政策の具体的効果が検証できるような形で、いろいろなデータが収集整理されるべきだというふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして波多野委員。

○波多野委員 先ほど、桝本委員の方からこの報告書が不信の構造であるということを言われまして、私もそう思っていませんでしたけれども、ちょっとご指摘になった点を読んでみてなるほど、そういう点が不信の構造なのかと思いましたけれども、私はそれでいいのではないだろうかという感じがいたします。条約を批准するときには 100%の自信を持って批准するのが当たり前で、大概大丈夫だろうというような感じで条約を批准するというのが極めて異例な話なんだと思います。ですから、この報告書も不信といったら何ですけれども、本当に大丈夫かなという要素が残っているのが当たり前であって、信頼します、絶対大丈夫だと思いますからお任せしますというようなことを今の時点で書くのは無理だし、よくないことだと思います。説明の不十分ということはあるかと思いますけれども、この説明といっても、先ほど桝本委員が言われましたように、字句の説明はできると思いますけれども、内容的に何が何%で何が何%ということが説明できてこそ信頼ができるのであって、それができない時点で不信の要素が残っていること、これは非常に結構なことだと思っています。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、萬谷委員。

○萬谷委員 簡潔に4点ほど伺います。
 批准をする前に、我々産業も含めてですけれども、国民みんながある覚悟を決めて批准をする必要がある。決して、今までと同じことをやっていて達成できるわけではない。この文書の中にサマータイム制の導入とか、こういう踏み込んだ言葉がありますが、もっと国民ばかりがいい、耳障りはある意味では悪いかもわからないけれども、そういう発信を大いにしていただきたい。環境省の指導でやってほしいし、我々は応援をしたいと思います。
 2番目、24ページのところに、温暖化対策税効率的に実現できる、その次のページの一番上の方には、我が国の実情に合った具体的な制度面云々と書いてあります。私は、こういうふうに解釈をしております。ヨーロッパが環境税を入れて非常にうまくいった面があることは事実だと思いますが、ヨーロッパという実態だから環境税が有効に機能した。すなわち、まだ目標と実力ととるべき対策の費用対効果が非常に余地があるというシチューションの中では、環境税というものの誘導がうまくできた。日本という、今置かれた一足先に省エネが進んだという社会の中で、どういう制度がうまく機能するのかというのは、これはある意味ではヨーロッパが次の時代に求める一つの見本を示すということになると思います。したがって、環境税は効率的だというふうに決めつける、ヨーロッパの例がそうだから決めつけるんじゃなくて、むしろメーンの言葉は我が国の実績に合ったうまい仕掛けを日本が率先して考えて、むしろ世界に提示していくんだと、こういうふうに僕は思います。
 3つ目、先ほどからエネルギーの話いろいろありましたが、出す人は同じ人ですから、だれがとるかというのは、これは一本に絶対してほしい。
 もう一つお願いしたいのは、定義がなかなかはっきりしてないんです。各国回っても、ある意味では日本ほど詳細なエネルギー統計を持っているところはそんなにたくさんありません。あるところでも定義がばらばらですから、これいつの日にかは国際間でそういう定義統一をやっていかなければ、コンマ何%がどうのというような議論にはとてもならない。だから、日本がむしろ率先垂範して最も合理的な定義、あるいはとり方、評価の仕方というのを長期的な問題として、あるいは国際貢献としてぜひ取り組んでいただきたい。
 それから、4つ目はちょっと小林委員のお話の中で調査権とか指導権とかという言葉の一番最後に、もし国でうまい仕掛けを考えてもらえなければ地方が条例でというふうなお話がありました。地球温暖化問題というのは、国を超えた話であって、条例で地方ごとが取り組み方が違うというようなことで取り組めるような問題じゃないので、もし必要ならば国で統一した方法をぜひ出していただきたい、それをお願いいたします。
 以上です。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、あと希望されている方一通り伺いたいと思います。
 まず、浅野委員、浅岡委員お2人にお伺いいたします。

○浅野委員 いろいろあるんですが、今回のこの作業は何のためにやっているのかということをもう一編ご確認をしたいわけですけれども、京都議定書の締結に向けた国内制度のあり方はどうあるべきかということが問われている課題で、そのためにどういうような国内担保措置を講じるということが適切であるかということに対する答案を書くのが、今の我々の役割であるということです。
 しかし、議論の過程の中で結果的にこれは若干の意見のでこぼこはありますが、ステップ・バイ・ステップでいこうということに関しては、前回もこういう方法でいくということに関しては大体合意ができていると私は理解をしていまして、その線に沿って取りまとめ案ができていると思うわけです。さっき、波多野委員がおっしゃったように、表現振りは違うわけですけれども、批准をしていくためにはどういうことをちゃんとやっておけば批准ができるかということに対する答案として、第1ステップではまず自主的取り組みをメーンに作業をきちっと進めていく手だてを考えて、その上でご議論が必ずしも十分その点について、きょうはなかったんですけれども、私は点検をちゃんとやってこの第1ステップの取り組みというものがきちっと効果を上げたかどうかを見ていって、そこで上がらなければそれは次をやらなければいけないということを言っているだけですから、不信の構造も信頼の構造もないわけです。点検をちゃんとやります、それがうまくいったかどうかを見ましょう。これだけ、第1ステップで用意をしておけば、少なくとも批准という手だてのところにいけるということを我々は考えているということなんです。だから、そういう意味で考えていけばいいわけでありますから、信頼とか不信とかというようなことは、まさに信頼をしますから点検のときにちゃんとできたという実績を上げていただければいいわけで、私は改正の各部の整理がちゃんと信頼してできるという実績があるというふうに思っていますから、やるところはちゃんとやるでしょうということで、それはそれでいいんじゃないでしょうか。最初から、信頼だの不信だのという議論にいく必要はない。その点は、むしろ波多野委員のおっしゃったとおりだと思います。
 ここでは、余り私好きじゃないんですけれども、PECFサイクルという全然国民が聞いてもわからない、はやり言葉が出てこないのは結構なことだと思いますが、確かにそれは背景に考え方としてはあるということですね。点検のシステムに関していいますと、ここで大塚委員が先ほどご意見を出されて、私も国の中の制度があれやこれやばらばらにあることがいいとは思いませんから、統合的にできるものはぜひ統合的にやっていただきたい。自分のところのデータは、他の役所には一切に使わせないなんてけちなことを言うからややしこくなるので、それは日本国政府で得たのであって、要するに国家という一つのものがあるなら、省あって国益なしだと困るわけですから、それはちゃんと伝えるようにしてくれればいいわけです。
 その上で、エネルギー統計ですべてだとおっしゃったことについて私は若干異論があるわけです。というのは、全国のものがわかる。国際的に出す報告としてのインベントリーは確かに早い遅いはあるでしょうが出せます。ところが、パフォーマンスのところまで見ていってどうしたらいいんだろう。だから、全国ネットで動いている企業については自主的取り組みというちゃんとパフォーマンスの管理ができます。では、民生だの運輸だの中小の事業者のようなところのパフォーマンスは、どこがどうやっていくんでしょうかという話なんです。そこで、自治体の役割があるんでしょう。私はさっき、自治体をつくる自己計画以外の計画は一体なんだというお話があったんですが、ちょっとびっくりするわけで、今既に各自治体では制度的には担保されていないにもかかわらず、地域温暖化防止計画を一生懸命つくって呼びかけをやっているわけですから、それをもっときっちりしたものにしていくということが、地域で託されている仕事を進める上では必要なんだという認識をきょうのこの報告書は示しているわけであります。それが、いいの悪いの、悪いと言われたわけじゃないから別に構わないんですけれども、どういう関係にあるのかという議論から始まるのはちょっと奇異な感じがします。
 そこで、パフォーマンスということを見ていくときには、言葉は余り適切ではないかもしれませんが、ローカルインベントリーというものがないと、大きいところは外せと、私は外せという前提ですから、そのことをまず申し上げておいて、外しておいて、それでローカルなところでやらなければいけないのについてはローカルインベントリーがちゃんとつくられるべきだ。そうすると、エネルギー統計だけではだめで、車がどんなに動いているのかということがわからないとうまくいかない面がある。いろいろ、サブ指標のようなものを拾っていかないと、なかなかうまくいきませんよということがあると思います。だから、その辺のところの細かい単位のデータをとる仕組みをどうするかということが大事であって、それは例えばある程度の規模のところについては行政聴取というやり方もあるでしょうし、それからもっと小さいところはPRTRのように原単位の的確なものを把握して、その地域の例えば家庭でのエネルギーの伝え方は大体標準的にこんなものだという原単位で把握できたら、それを掛けていって推計をする。恐らく、北海道と沖縄では全然違うはずです。それを全国のインベントリーでやったって答えは出てこないわけです。だから、そういうものは地域でやるための手だてを用意しなければいけない。その点が若干書き方が弱いのかなということはありますから、小林委員がおっしゃっていることは、その限りにおいて理解をすべきであって、個々の事業所の中に入り込んでいって、データを片っ端から集めることをやらせてくれという趣旨でおっしゃったんじゃないと私は思うわけです。
 それから、もう一つここで確かにちょっと不満が残る面があるわけですけれども、私どもとしては第1ステップで、これで何にもしないで第2ステップに突入するということはあり得ないわけです。ここは、地球環境部会ではあるわけですけれども、中央環境審議会としては、もっと大きなところでは環境基本計画を既に持っていて、そこで戦略的プログラムやりましょうと言っているわけです。その戦略的プログラムの中のかなりのものは温暖化とつながるということは、はっきり認識しておかなければいけないわけで、交通に関してはNOxが片がつけば必ずやってもらえると確信しておりますけれども、環境への負荷の少ない交通というのがあるわけです。そのときには、ただ単に地域の汚染の問題だけではない、もっと温暖化の方までにらんだ全体としてLCA的に見て合一制の高い施策を立てろということになると思うわけです。
 それから、一方循環計画も今つくりつつあるわけですけれども、循環型社会という問題も、これはまさにここに直結する問題であるわけです。だからここでも、ただ単に要領よくごみを処理するだけの計画に絶対にとどめないようにして、最後のところはきちっとここの22ページにある循環による脱温暖化型社会づくり、これが循環型社会と同義であるというコンセプトにしていくことによって、まさに我が国の環境政策が一環したものになるということだと思うんです。そのことを我々は十分意識しながら、この議論をやっていかなければいけないと思います。
 きょうは、この報告書の案の中で22ページあたりのところに書かれていることは、多分事務局はそれを意識して書いておられるだろうと思いますが、もうちょっと書いていいなら、戦略プログラムがあるので、その戦略プログラムと一体的に、ここはもっときちっと体系的に検討して、そのときにとにかく温暖化のことについては絶対忘れないようにするんだということを一言ここで入れておくということなんじゃないかなと思います。
 つまり、この中だけで完結することは無理だろうと思います。それから、先ほど猿田委員が第2ステップで交通のところが、これは第1ステップでいいじゃないかとおっしゃっていたんですが、お気持ちはよくわかるんですけれども、これはどっちかというと第2ステップのところの書き方によるとすごく遠慮した書き方があって、さっき私が言ったような、評価をし点検をして評価をした次に出てくる第2ステップは、それは多少な強行な方法を取らざるを得ないところがある。だから、多分ここで言っているのはそういうことを含めたものになるだろう。しかし、そこまでいく前に第1ステップの途中でも、交通のグリーン化のところで、ひょっとしたらこっちの方で温暖化対策税の議論している場合に、交通のグリーン化の方がどんどん進んでいく可能性があるかもしれません。そういうことが十分あり得るわけですから、それであればそれで済んでしまうかもしれないし、もしそっちがうまくいってないならここのところでもう一回そっちにプッシュをかけるというようなこともあるだろう。それが第2ステップという形で書かれていることの意味ではないかと思いますから、こういう項目は全部第1ステップだという話と、それを具体的に政策手段と結びつけて、こういう政策手段も使いながらやるんだというところも第2ステップにも入れるという話なんですね。やや表現のまずさがあって誤解を与えている部分もありますが、事務局が書いている気持ちはよく私は理解できるなという気がいたします。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、浅岡委員。

○浅岡委員 まず、議論の前提認識のところですけれども、12月14日付の私のメモの1ページ目に、注意点を抜き書きいたしましたけれども、まず認識しなければいけない問題として、産業部門においての削減すべき量が全体の削減量のなかでとても大きい割合を占めているということです。大塚先生のご指摘で、全体の何%とか、目標の何%とかいうふうにパーセンテージでご記入いただいているのでわかりやすくなっているとは思うのですが、これまでの排出量をもとに2010年までの割り振りされている削減量までに、産業部門は3,800万トン、民生業務は 2,500万トン、民生家庭は2,100万トン、なぜか運輸は少なくて1,300万トン必要です。もともと産業マイナス7%、運輸プラス17%との、CO2全体で90年比ゼロに抑えるための割り振りを決めたもので、それ自身に意見があるところですけれども、これをもとにいたしましても大変大きなウエートを占める産業部門での削減を確実に実施する体制は、非常に重要な課題であることが見えやすくなっているということが必要かと思います。
 5、6ページで増減の要因と書かれているところに、若干記述を加えていただきたいことを書きました。産業部門は、この間増減がないとのことですが、少し数字を入れておきましたが、鉱工業生産指数ではマイナス5%ですのに排出量が減少していないことが問題です。産業界の努力がないと言っているわけではなく、これはどこかに問題があるだろうということです。
 産業部門からの排出が全体の40%ほどを占め、電力転換部門、工業プロセスも含めると全体の過半を超えることは改めて指摘することもないことでありまして、産業部門は増加していないとおっしゃっても、本日の時点でもアメリカ、ヨーロッパの諸国と比べまして、産業部門の比率が生半可に高いと、民生、あるいは運輸の部門の割合と比べて日本はまだ産業部門からの排出割合が大きいことも事実でありますから、この報告書だけを読む方に誤解を与えないことが必要だろうと思います。
 それから、何度も申し上げていることですが、日本は省エネ水準ではトップなんだとよく言われますけれども、それは民生や運輸の排出が比較的少なくて、そのためトータルとして成績がよくなっているということでありまして、産業部門だけで比較いたしますと欧米より決して特別いいわけではないということも、何度も申し上げていることですので、誤解が起こらないように記述していただきたいと思います。
 運輸部門の記述で、例えば自家用車がふえているという記述だけですと、一般の方々が自家用車というと家庭の自家用車だと思うかもしれませんが、ここには業務用自家用車も含まれており、それが半分ぐらいあるんじゃないか。でもデータがはっきりしないということであります。
 民生の業務関係では、経団連自主行動計画の報告でも、百貨店等は90年比で82%エネルギー消費が増えている、そういうことが見えることが必要ではないかと思います。私は、産業部門だけ削減すべきと申し上げているんじゃなくて、産業はよくやってる、もういいんだと言うということについては、少し抑止をしなければいけない、バランスがとれないということを申し上げたいのです。
 そこで、先ほどからの議論でも、早期対策はいいことだ、いついつまでこれこれ、いついつからこれこれというふうにできることまでわざわざ先に伸ばすように読めるのはよくないということを何人かがおっしゃられました。私もそれに賛成をします。ステップ・バイ・ステップという方式は、大枠の考え方としては理解できますけれども、それで行動を縛るものではない、おおよその区分であると明記しておくべきです。産業構造審議会の報告ではもっとはっきりと第1ステップは既存施策だけとの記載があり、新たな制度等は第2ステップ送りとの方針が全体を通してみえます。ですから、今回の提案に新たな政策部分がちっとも見えないとの批判が出ているんだと思います。
 新たな政策の導入には一定の時間が必要ですので、今すぐ実施するのは難しく、少し先になるだろうというのは理解できますが、導入すべきかどうかの議論、情報集め、制度設計についての議論を第1ステップからやるべきだということがわかるようにしておいていただきたい。
 また、第1ステップの間にできることは早くやるようにするということも明記していただきたい。というのは、自動車についてメモに書きましたけれども、例えば自動車の燃費基準で見ますと、新規の自動車の燃費は95年は 11.90であったところが、99年は14.86、確かによくなっているわけですけれども、ストックベースで見ますと95年は12.30であって、99年は12.61であります。やはり削減効果があらわれてくるには時間がかかるわけでありまして、時間をむだにしないために早くやる姿勢が見えるようにしていただきたいと思います。
 それから、先ほどからの不信の構造の議論でありますけれども、この問題は日本のルールとか約束とか、法化社会化の問題そのものではないかと思います。桝本委員は、電力会社でいらっしゃって、電気を供給するについて、お客さんに自分でメーターをつくって、自分で点検して報告してください、信頼しますというでしょうか。お客様もちゃんと間違いないようにいたしますとはなるはずがないんです。信じる、信じないじゃなくて、それが現代社会のルールだと思うんです。こうした地球環境問題では、地球上の誰もが互いに情報を共有しながら、全体としてどう削減するかを議論するときになっています。企業の活動についても、ルールが変わっていっていることを理解しないために、不信だなんだということになるのではないかと思うんです。
 独占禁止法という法律は、企業活動では特に重要な法律だと思いますけれども、その目的の中に書かれていますように、公正で自由な競争が目的です。単に自由な競争ではなく、公正な競争は公正なルールに基づいてなされるといことであります。それが基本なのです。
 それから、先ほどの話の中に経済に悪影響があるのは事実じゃないかとの意見がありましたが、産業構造審議会の報告でおもしろかったのは、エネルギー消費効率をGDP比でいうところでは90年から今日までのデータを引用し、各分野の排出割合では70年ごろからのデータを出していて、違う資料で説明しています。GDPに対するエネルギー消費量の変化とか排出量とGDPの変化を70年ごろからみれば、GDPと排出量とはパラレルではない時期が、90年のバブル崩壊直前までの間と、バブル崩壊後の数年です。
 いかにもパラレルであるかのごとく言われていますが、そのように見えるバブル期から崩壊後は日本にとって不幸な時期の話であり、繰り返したくない時です。省エネ水準が高く、これ以上は絞れないんだといわれますが、これもそうではないと何度も申し上げてきました。クリアしていけることはやろうとしていただきたいと思います。
 そこで、実際のこの仕組みをどうしていくかについて、自主的取り組みが望ましいということを何人かからおっしゃられました。自分たちの自主的努力を見守ってほしいと。私は、自主的であるということと、任意であるということとは同義ではないことを申し上げたいと思います。任意というのはやってもやらなくてもいいというものです。ルールがあるところで始めて誰にも自主的な取り組みの意欲が生まれる。先ほどの指摘にもありました水野議員の調査の企業からの意見でも、このことが出ていると思います。フリーライダーがいることがわかっていても自主的に取り組む人が一番いいんでしょうけれども、自主的取組をする人の範囲は限られる。まじめにやる人が損をしない制度のもとで初めて自主的意欲は生まれるものです。
 だからこそ、情報を共有しなければいけないし、情報を出すのはルールとなっていく方向にこれから社会全体が動いていきます。今年4月から施行された行政情報の公開に関する法律では、提出義務に基づいて企業が行政に提出したCO2などのデータは、情報公開法で公開されることになります。そうであれば情報公開請求をされたら出しますよということではなくて、行政側から積極的に当然のこととして出していくというふうに変わっていくと、行政コストも省け、企業側もそうしたものだと考えるようになっていくだろうと思います。
 そこで、先ほど大塚先生のご指摘にありましたが、省エネ法を省エネに関する法律ではなくて、温室効果ガス、CO2の排出削減の法律にするだけではなくて、ほかのガスも含めて温暖化対策の法律に変えようとしているのであれば、もっと開かれた議論をしていくべきです。新しい時代に応じた行政執行体制をどうすべきかという相談をしなければいけない時期に来ているとは思いますけれども、私はせっかく環境省ができたわけですので、環境省は国民運動や国民への啓発だけやればよろしいというふうに自ら考えていないでしょうし、そのようにすべきではないと思います。
 もう一つ、大塚先生のご提案の中で、省エネ法の勧告・命令制度と排出量取引をリンクできるのではないかというご指摘がありましたが、省エネ法は行政として執行すべき部分があるわけですから、それはきちっとやっていただく必要がありますけれども、新たな制度を考えましたときに、私は省エネ法だけではうまく機能しないように思います。省エネ法の勧告・公表制度は行政処分であり、それ以外の実質的利害関係が排出取引には必要なのではないか。それは環境税なのではないかと思います。
 地方で独自の取組すべきでないとおっしゃられましたけれども、私は民生や運輸対策では地方の風土環境に合わせてやる必要がある。あるいは都心イメージとともに取り組んでいくべき部分が大きいと思います。建築の関係でも建築基準法の大枠はありましても、北と南とで違ってもいいと思います。
 最後に、国民に対する呼びかけとか国民運動自身は重要だと思いますが、ただライフスタイルを変えましょうと言っても国民は何のことかわからないし、オドらないと思います。言葉で説明をすることでもないんです。政府が削減を達成して京都議定書を遵守していかなければいけない。政府ははこうする、産業はこうする、だから国民はこうしましょうと言う呼びかけに気迫が感じられればこそ、理解もできるわけであります。NGOとしてはそういう運動をやりたいわけでありまして、やろうという意欲を高めていただくように取組みのスキームをグレードアップしていただくよう期待したいと思っております。長くなりましたが。

○安原委員長 ありがとうございました。
 予定の時間まであともう25分ぐらいしかございません。発言を希望されている方は5人いらっしゃいますので5分でやっていただいても全部時間をとってしまいますので、もう5分以内ということで簡潔にお願いしたいと思います。
 では天野委員。

○天野委員 5分を超えた分は文書で提出してもよろしいでしょうか。これで終わりですか。

○安原委員長 きょうの会合はこれで終わりますので、後は個別にご意見がある方がまだいらっしゃれば、それを伺って個別にご相談して、この案文をどうするか決めていきたいと思っております。

○天野委員 それでは、できるだけ簡潔にお話しします。
 まず、8ページの議定書の義務の書き方ですけれども、私はこれでは大変議定書の義務がダウンプレーされているというか軽く書かれているような感じがいたします。つまり、削減の義務に関してはここに書いてあるとおりですけれども、議定書には一般的な義務というのがありまして、それは締結すれば必ず義務としてかかってくるわけであります。ですから、2008年まで何の義務も生じないような表現というのは修正が必要だと思います。
 それから、京都議定書の政策措置は、義務的措置としては決められていないで、裁量に委ねられているとありますが、その下にありますように、京都メカニズムをもし使うのであればその適格性の条件というのは必ず満たさなければいけませんので、全く使う気がなければ自由にやってもいいということでしょうけれども、この書き方も少しおかしいというふうに思います。
 それから12ページですが、(3)で第1ステップの対策・施策によって、京都議定書の6%削減目標を確実に達成すると書いてありますが、これだと第2ステップというのは何をするのかという疑問が起こりますので、もう少しわかりやすく書いていただきたいというふうに思います。
 それから、10ページに国際的な排出取引の話が出てきます。24ページにも同じようなことが書いてありますが、全体としてCDMとJIについては、なるべく早く対応するということですけれども、排出取引に関しては2008年になってから考えましょうというような書き方をしているんですが、附属書I国の締約国の中では、例えばEUが2005年からスタートするとか、あるいは英国のように2002年から始めるという国もあるわけで、そういうふうなことが行われなければ、日本の国内でこれからしようとしている主体がどういう学習が行えるのかということがわからないわけで、しかももし京都議定書を使う気であれば、2006年中にそういう体制をつくりなさいという規定もマラケシュ合意にあるわけですから、18年になってから国際的な取り組みを考えるというのは、私にはとても理解できないということであります。
 それから、3番目の件としましては、19ページから20ページに事業者の温室効果ガスの排出の把握・公表の部分があります。先ほども議論になりましたけれども、我が国ではたしかに省エネ法があって、それに従って随分ときちっとしたデータが取られているというのは事実でありますけれども、これは省エネルギーという目的でつくられたものでして、しかも第一種の事業者というあたりをカバーしているわけですから、そこから外れているものは扱わないとか、エネルギー安全保障の政策的な視点とは違った環境保全というような視点でつくられた制度ではありませんので、いずれは情報の通報という目的を達成できるような制度に切りかえていく必要があって、重複は困りますけれども、これがあるから大丈夫という議論ではないと思うんですね。そして、海外ではそういうことの準備のために、事業者が自主的に計算して登録をして第三者評価を受けるという制度が試行されていくわけですが、そういうところにわが国も貢献をして、そういう自主的な取り組みを国内でもいろいろやってみるという試みがあまり見られないのは、大変不思議に思います。ですから、そういう点をやはり環境省としては取り上げて、環境報告書とか環境会計とかについてのガイドラインが国内で非常にいい効果を上げているのと同じように、この取り組みに関しても実施していかれたらどうかというふうに思うわけです。
 それから、24ページの真ん中あたりに年数で2008年とか2007年とかいうのが出てきますが、2007年までにはというとこれは2007年の年末までにはととれますので、これは間違いですから、2006年中にと書いておくのが適当ではないかと思います。
 それから、次の25ページですけれども、ここでは2005年からEUの取り組みが導入されているとか、アメリカの自主的な取り組みがあると書いてありますけれども、もう既に2002年から英国がスタートするというのが落ちていますので、これも入れていただきたいと思います。それから、第2ステップというのは2005年から2007年ということになりますが、この段階であればはっきりと国内の排出量取引制度を導入するというふうなことで検討するということにしないと間に合わないと思うんです。ですから、第1ステップ、第2ステップというふうに分かれてますけれども、第1ステップというのは、第2ステップでやることは違いますけれども、第2ステップでやる必要のあることの準備を第1ステップでやるというのがこういうシークエンスだと思います。ちょっとこのステップ・バイ・ステップというのが誤解されているきらいがあって、私は漸進的な導入というのをいろんな政策について考えるべきだということを言ってるんですが、その場合には全容がわかっていて、実施はステップ・バイ・ステップでやるというのが本来の趣旨であって、ここのような書き方をしますと先送りになっちゃうんですね。第1ステップでやることをまず決めて、第2ステップは後で考えるということであれば、これはステップ・バイ・ステップではなくてただ先送りしているということですから、前進的導入でもなんでもないというふうに私は思います。ほかにもっと大きいことで申し上げたいこといっぱいあるんですけれども、時間がありませんので、1つだけつけ加えさせていただきます。
 先ほどから、国民に対して流れる情報が非常に少ないという議論があります。私も大いにそうだと思います。特に今回の交渉の経緯とか、IPCCの第3次評価報告書など、内容に関して国民がどれぐらい知らされているか、事態の重大さをどれぐらい浸透しているか。IPCCの第3作業部会というのが非常に綿密に政策手段についての検討をしているわけですが、その情報が日本の事業者、国民、労働者、いろいろな人たちにどれだけ共有されているか、大変心寒い気持ちがいたします。これは、言葉の問題があると思います。COP7でマラケシュ合意という膨大な資料が出ましたけれども、あれについて完全に理解している日本人が何%いるでしょうか。これが必要ではないはずはないわけで、そういう努力をどこかできちんとやっていただきたいというふうに思います。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、大塚委員は最後に回っていただいて甕委員、それから横山委員お願いします。

○甕委員 私は、吸収源対策、森林問題について発言してまいりましたが、それがある程度といいますか、かなり取り込まれておりますから結構かと思います。
 ただ一つだけ注文しておきたいと思います。それは、大きな7番の地方公共団体のところですね。この森林問題について、地方公共団体が果たす役割は、これは非常に大きいわけです。国の森林林業基本計画といいましても、それは県の地域森林計画、あるいは市町村の森林整備計画ということで、実際には管理され整備をされていくという仕組みであります。また、市町村独自でこの森林の問題についてはいろいろな努力対策を講じておるわけでありますし、また国民に対する啓発といいましても、公共団体の住民に対する働きかけというものが実際には非常に効果があるわけですから、ここで森林管理、あるいは森林整備の問題についても触れていただきたい。実際に、具体的な排出抑制対策についての例示が幾つかございますので、そういったレベルでいきますと、取り上げておかれるのがいいのではなかろうかと思います。
 なお、屋上緑化を含む緑化等とありますが、これは趣旨が全然違いますので念のために申し上げておきます。
 以上です。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、横山委員。

○横山委員 報告書全体を読んでみて、やっぱり6%の削減目標を達成するというのはそう簡単ではないな、非常に難しいものだなということを改めて思いました。やっぱり小さいことの一つずつの積み重ねが後できいてくるんだということを痛感した次第です。その意味から見ると、国民各界、各層が一丸となって取り組めという表現はそのとおりだと思うんですが、私は一般の市民はまだまだ政府とか企業に対する不信の構造があるのではないかというふうに思います。ですから、今度の大綱を見直してつくる京都議定書目標達成計画に、今度は違うんだと、これだけ政府もやるし、企業にもやってもらうんだというような表現をぜひ入れてほしいと思います。そういう意味からいうと、私はまだまだ事業者、企業に対する不信の構造に満ちているのは、ある意味ではやむを得ないし、もっともっと厳しく要求していってもいいのではないかと思います。
 それから、2点目ですが、全体を読んでみて私が一番なるほどというか気に入ったのは、一番最後の終わりにというところの、個人レベルでは価値観を転換し、簡素で質の高いライフスタイルを実現することということでした。ただし、これは政府とか企業の方々がしっかりやってくれないと、自分たちはやらないのにこんなことを国民に要求するのかということになると思いますので、それを前提として価値観を転換して、簡素で質の高いライフスタイルというものをぜひ広めて、どういうものがそういうものなのか、例えば10年後というものがどういう生活になっているといいのかとか、そういうことを示していただければというふうに思います。価値観の転換とか抽象的な表現だけじゃなくて、具体的なことが出てくれば、それだけ一般の人たちもわかって、それほど重要な問題だなという意識は高まるのではないかと思います。
 それから、3番目は、原子力の話で一言で言って、20ページにはまだまだ、国民の理解を得つつ進める原子力の開発利用等を推進するという表現が残りまして、私はとやかく言うつもりはありませんけれども、今後地球温暖化と原子力の関係というのは切っても切り離せないと思います。電力会社とか政府は、温暖化防止の切り札として原子力を開発していきたいと。一方で、3回あった住民投票ともみんな過半数は原子力拒否の姿勢を示しているわけで、その辺のところを議論しないままこういう表現で、今度の新しい計画にも安全性の確保を前提としたということを書くのでは、やっぱり政府とか企業は何を考えているんだろう、原子力をこんな簡単に単に進めるんだ、開発するんだというふうに理解し、なかなか政府も企業も本気になっているんだというふうには受け取らないと思います。今後ともこういう中環審の場で原子力をどうするのか、これを本当に温暖化防止の切り札と考えていいのかというようなことを議論して、わかりやすい表現でぜひ書いていただきたいなというふうに思います。
 以上です。

○安原委員長 ありがとうございました。
 では青木委員。

○青木委員 いろいろ重複するところがありますので、1点だけ簡単に申し上げておきたいと思います。
 私も、乗用車依存の、あるいは車依存社会からの転換を図っていくということを強力にしていくべきじゃないかと思いますが、そういう点からいいますと、14ページの一番下の段落のところに、いろいろライフスタイルが書いてありますが、こういったところに、乗用車への依存度の増大というような認識を入れておいた方がいいのではないかということが1点です。
 そして、それと関連していろいろ公共交通機関への転換だとか、自転車道の整備とか、書いてございますけれども、インフラの整備はもとより大事だと思いますが、インフラ整備の前にそういった車をできるだけ使わないで済むところは車を使わない。あるいは、何回か車を使わなければならないのを一遍にするようにしていくとか、そういったような車の使い方、逆に言えば道の使い方、これは公共資本ですから国民の財産であるわけですが、それをいかにうまく使っていくかということ、うまく使ってもらえばかなりのことができるわけで、渋滞だって解消するかもしれない。そういうような認識が、インフラを整備すればいいんだという認識が非常に強く出ていて、意識を変革して、公共交通機関を利用してもらうとか、あるいはそういう意識を持ってもらうという観点の記述がちょっと乏しいように思いますので、そういった面を考えていただければありがたいと思います。
 以上です。

○安原委員長 ありがとうございました。
 それでは、最後のご発言ということで大塚委員お願いします。

○大塚委員 3点申し上げたいと思います。
 1点は、私の先ほど申し上げた信頼の構造という言葉がひとり歩きしましたので、ちょっと本意の使い方の話をしなかったということになってしまいますが、私が申し上げたかったのは、公平、公正なルールがないと信頼構造が生まれないということで、そのためには、先ほど浅岡委員がおっしゃったようにフリーライダーができないようなことが必要だということと、それから情報の公表が必要だということを申し上げたかったということでございますので、ちょっと釈明をしておきたいと思います。
 そういう信頼構造をつくるためにも、ルールをつくるということが非常に重要になってきますので、その観点からもみんなが公平に努力をしていくという方式をとるためには法律が必要になってくるということになります。それは、直ちにということでは必ずしもないわけですけれども、情報を公表していって、それらの目標を達成していないという場合には、法律をつくるとか、あるいは大変かもしれませんが協定をつくっていくということが必要になってくるだろうというふうに思います。既に、省エネ法というのは先ほど強化というお話がありましたので、仮に環境省が何もしなくても省エネ法は強化されていく可能性は高いわけです。先ほど申し上げたように、これは環境の観点からの新しい規制ということになりますので、法律の改正ということは絶対に必要になってくると思いますけれども、こういう動きは既に他省庁でも出てきているんだということを強調しておきたいと思います。それが第1点でございます。
 それから、第2点ですけれども、排出量取引についてちょっと申し上げておきたいと思うんですが、排出量取引については必ずしも民間の方、産業界の方でも前向きの姿勢ではないようなふうに承ったわけですが、省エネ法を強化してCO2関係での規制の仕組みが入るとどういうことになるかというと、キャップアンドトレードのキャップがかかるということなんです。排出量の取引制度が入らなくてもキャップがかかるんです。それは、毎年1%減らせとか、そういうかなり無理な話なんだろうと思うんですけれども、各工場についてキャップがかかるので、キャップアンドトレードのキャップは既にかかってしまっているということで、排出量取引をそれに入れた方がいいと私申し上げているのは、むしろ産業界にとってその方が有利だと思うんです。というのは、各工場について、工場ごとにCO2の削減に費用がかかるところとかからないところがあるのに、同じように一律の削減を命ぜられるということは、非常に費用がかかるところについては非効率な結果になるということになります。ですから、それを容易に減らせるようにCO2を自分のところで削減するよりも、排出量取引で排出量を買った方が安く済むというところはそういうふうにすればよいということで、むしろ行政処分がかからないような、監視の手段を排出量取引が与えてくれるというふうにお考えいただいた方がよろしいかと思います。
 ですから、キャップが省エネ法で規制がかかってしまうので、むしろ取引を入れた方が産業界にとってもいいだろうということであります。それ以外にも国際的な排出量取引制度は放っておいても進んでいきますので、ラーニング・バイ・ドゥーイングということをしていくためには、乗り遅れないように早めに導入した方がいいだろうということも申し上げておきたいと思います。
 それから、第3点ですけれども、省エネ法におけるデータを省庁間で共有していくべきだという話を先ほど申しました。これは、浅岡委員おっしゃったように、情報公開法ができましたので、開示請求をすれば出てくるはずだと思いますが、ただ市民等が一件一件開示請求していくのは大変だということがございますので、省庁積極的に共有、公表するという制度が必要だろうと思います。先ほど申しましたように、データについては行政の各省が、ほうっておけば共用できるというものではないので、この点についてはデータについて共用するための法律上の根拠というのが必要になってまいりますので、環境省もぜひその点頑張っていただければというふうに思います。
 最後の点は、もし11ページ、13ページ当たりにつけ加えることができれば、そういうデータの共用のための法的根拠をつけ加えるべきだというようなことについて、もしお書きいただけたら大変ありがたいというふうに思います。

○安原委員長 ありがとうございました。
 最後に、竹内課長からちょっと発言が求められておりますのでお願いします。

○竹内課長 先ほど、桝本委員の方から97年の環境審議会合同会議の報告書の内容について、産業部門は期待されると、自信がないのでそういうふうな表現になったということでございますが、正確に申し上げますと、その中ではもちろん3分野書いてございます。産業分野、90年比マイナス7%を削減することが期待される。それから、民生分野におきまして、90年比に同水準に抑えることが期待される。それから、さらに運輸部門に至ってはプラス17%の増加が予想されるということで、産業部門だけ自信がないから期待されるという表現になっているわけではないということです。さらに、期待される、予想されるのそれぞれの言葉遣いの差はあるでしょうし、それから削減するというのと抑えるというものの差もあるというふうに考えますと、産業分野が一番期待されていたのではないかと思います。
 それで、3分野立ち上げましてプラスマイナスゼロというのはご案内のとおりかと思いますが、さらに大綱の中におきましては、6%削減目標の達成に向けた方針という中に、京都議定書における我が国の6%削減目標については、二酸化炭素、メタン、二酸化窒素の排出量については97年11月の地球温暖化問題への国内対策に関する合同会議の報告書に従い2.5%の削減を達成するというふうになっておるわけでございまして、この2.5%の内訳は、ご案内のようにCO2が3分野でプラスマイナスゼロ、メタンがマイナス0.5、それから技術革新、国民努力によるものがマイナス2ということでございますから、この報告書に従い2.5%の削減を達成するということで、これらが目標ではないということはなかなか言いにくいのではないかと思います。
 以上でございます。

○安原委員長 ありがとうございました。
 これで、発言を希望されました方、全員意見を伺いました。残念ながら予定した時間があと数分ということになっております。伺いましたところ、この会場も次の予定があるということで延長も少々しかできないということでございますので、この案文の確定をどうするかということでございます。きょう、いろいろなたくさんの意見をいただきましたので、この場でここで調整するということは不可能でございますので、発言をいただきました各委員と個別に連絡を取らせていただきましてご相談しながら案文を固めたいと思います。そして、私の方でそれを取りまとめさせていただきまして、12月20日に予定されております地球環境部会の方に、国内制度小委員会の審議のまとめということで、この答申案を報告させていただきたいと考えておりますが、いかがでございましょうか。
 よろしゅうございましょうか。
 それでは、そのような取り扱いにさせていただきたいと思います。
 その後でございますが、12月20日の地球環境部会で報告しました後、広く一般の方々のご意見を伺うということでパブリックコメントにする予定になっております。そのパブリックコメントの結果を踏まえまして、年明けに開催が予定されております地球環境部会において、最終的に取りまとめまして、川口環境大臣に答申するということにさせていただきたいと考えております。
 次回の12月20日の地球環境部会は2時から5時までということで、この東条インペリアルパレスの5階で開催を予定しておりますので、委員の方はご出席をよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、国内制度のあり方について、13回にわたりまして審議を重ねてまいりました。毎回毎回、大変熱心にご議論をいただきまして、貴重な意見をいただきましたことを厚く御礼を申し上げたいと思います。
 それでは、これをもちまして国内制度小委員会の審議を終わりたいと思います。
 桝本委員どうぞ。

○桝本委員 パブリックコメントでございますが、従来型のインターネットのホームページで意見をとるということではなくて、例えば各地域地域で説明会並びに意見聴取ということを計画的におやりいただくという案をぜひご検討賜りたいと存じます。

○安原委員長 ご要望として承っておきます。日程の関係がありまして、具体的にどうするか、これから事務局の方で詰めてもらいたいと考えております。
 それでは、どうも長時間ありがとうございました。川口大臣どうもありがとうございました。

午後5時00分閉会