中央環境審議会地球環境部会「京都議定書を巡る最近の状況に関する懇談会」議事録

日時

平成13年6月8日(金)16:32~18:30

場所

東条インペリアルパレス扇の間

出席者

(部会長) 浅野 直人
(小委員長) 安原 正  西岡 秀三
(委員) 青木 保之  大聖 泰弘
浅岡 美恵  槌屋 治紀
天野 明弘  寺門 良二
飯田 哲也  廣野 良吉
飯田 浩史  福川 伸次
及川 武久  藤井 美文
大塚 直  桝井 成夫
木谷 収  松野 太郎
小林 悦夫  松尾 陽
佐和 隆光  三橋 規宏
猿田 勝美  宮 本 一
佐土原 聡  森田 恒幸
塩田 澄夫  谷田部 雅嗣
須藤 隆一  横山 裕道
高橋 一生  渡辺 征夫
高橋 公
(事務局) 川口環境大臣  太田事務次官
山田大臣官房審議官  小島大臣官房審議官
竹本大臣官房参事官  浜中地球環境局長
寺田地球環境局総務課長

 竹内地球温暖化対策課課長

議事次第

京都議定書を巡る最近の状況について



配布資料

基調報告 大塚委員提出資料:京都議定書を巡る最近の状況について
資料1 森田委員提出資料:京都議定書の発効に伴う2010年の各国GDPへの影響について
資料2 森田委員提出資料:京都議定書の発効による温暖化防止効果について
資料3 槌谷委員提出資料:技術革新の原動力は何か -地球温暖化問題の解決のために
資料4 浅岡委員提出資料:Climate Action Network
資料5 浅岡委員提出資料:COP6再開会合に向けた陳情書
資料6 浅岡委員提出資料:新聞意見広告『「京都議定書を救え」アクション第1弾』
資料7 飯田哲也委員提出資料:「日本は米国抜きでも京都議定書を早期に批准すべきである。」
資料8 連合提出資料:「京都議定書からの離脱の撤回と批准・発効にむけた国際合意達成への要請」

議事

午後4時32分開会

○浅野部会長 少し過ぎましたが、ただいまから中央環境審議会地球環境部会「京都議定書をめぐる最近の状況に関する懇談会」を開催させていただきます。
 本年3月に、アメリカ合衆国ブッシュ政権が京都議定書を指示しない旨を表明するなど、温暖化対策に関する状況は、この10年間で最も厳しい時期を迎えております。ところで、ただいま地球環境部会は、国内制度及びシナリオの小委員会を設けて、小委員会の委員から多くのご意見をいただいているところでございます。
 本日は、政府における今後の検討の一助となるように、委員の皆様方の間で自由に意見交換を行っていただきたいと考えております。
 本日は川口大臣が懇談会の議論を直接聞きたいということで、お忙しい中、5時半までという予定でご出席をして下さいました。どうもありがとうございました。
 また、本日は大臣を含め環境庁事務局側とのやりとり、質問というよりも、委員の先生方の間で自由にご議論をしていただくということにしたいと考えておりますので、どうぞその点はご了承いただきたいと存じます。
 本日は初めにまとまったプレゼンテーションをしていただくことにいたしまして、大塚委員に、京都議定書をめぐる最新の状況について論点整理をしていただきました。
 大塚委員、どうぞよろしいお願いいたします。

○大塚委員 大塚でございます。京都議定書をめぐる最近の状況について20分間でお話をさせていただきたいと思います。
 私自身は京都議定書は批准すべきだと考えていますが、そういうことは全く関係なく、本日はできるだけ客観的に現在の状況をお話しして、議論の素材を提供したいと考えます。
 まず、気候変動枠組条約の第2条におきましては、地球温暖化対策の究極の目標について既に定性的な形で規定しているわけであります。そこにおきましては、目標水準といたしまして、気候系に対して危険な人為的な干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させる、ということが決められております。また、目標達成期限につきましては、生態系が気候変動に自然に適応し、食料の生産が脅かされず、かつ経済開発が持続可能な態様で進行することができるような期間内に目標を達成する、ということが決められております。食料の生産が脅かされるというあたりが、特に比較的早い時期に問題になる可能性があると考えられます。
 温暖化に対する国際的取り組みは、今までどういう道筋をたどってきたでしょうか。まず、第一ステップといたしましては、1992年に採択されまして94年に発効いたしました気候変動枠組条約がございます。ここでは締約国は共通だが差異のある責任を負う、とされておりまして、先進国と開発途上国の責任が区別されているということでございます。さらに、この条約におきましては、温室効果ガスの排出量を90年代の終わりまでに、90年レベルの水準に戻すということが努力目標として定められております。数値目標はこの時点で既に出ていたということも、重要な点として申し上げておきたい点であります。
 そして、この条約をさらに進めようということで、97年に採択されました京都議定書におきましては、第二ステップとして2008年から2012年を第1約束期間といたしまして、この期間内での先進国による法的拘束力のある数値目標を達成するということを決めました。先進国全体で5%以上の削減をするということが、議定書で定められているわけであります。
 さらに、第三ステップといたしましては、継続的に議定書を強化し、参加国を拡大していくということが考えられます。第2約束期間、第3約束期間というふうに議定書を継続して強化していくということであります。
 その際、中進国、開発途上国に参加してもらっていくことが考えられるわけですが、そのオプションといたしましては、従来、暗黙に考えられていたものといたしましては、経済力に応じて段階的に実施していくということで、中進国、例えば韓国とか、マレーシアとか、メキシコとか、アルゼンチンとか、そういう国に、まず参加してもらって、それから開発途上国へと広げていくというのが従来の考え方でございました。
 ただ、最近のアメリカの考え方をもとにしますと、むしろ排出量に応じた段階的な実施をしていくことが考えられるわけでありまして、これですと、先進国以外の大量排出国、具体的には中国、インドにまず参加してもらって、それからその他の国に広げていくということが考えられるわけであります。
 京都議定書をめぐる国際的な議論といたしましては、昨年のハーグにおきまして、このようなEU、アンブレラグループ、開発途上国という、それぞれの主体の意見が対立したわけであります。EUとアンブレラグループは、ともに京都議定書を前提といたしまして対立をいたしまして、EUは厳格なルールの適用を求め、アンブレラグループは柔軟なルールをつくるということを求めたわけであります。そして、京都メカニズム、シンク、遵守、途上国支援といった問題につきまして議論がなされたわけですけれども、結局、話がつかず決裂をしてしまったということでございます。
 今年の3月になりまして、ブッシュ政権が京都議定書の不支持を表明しましたが、それによって従来の国際的な議論が、このように分かれるようになりました。EUと我が国は京都議定書については支持をしているわけですけれども、アメリカは不支持ということで、その理由といたしましては、途上国に対する義務づけがない、アメリカの経済に悪影響を及ぼすということを理由にして、不支持を表明したということであります。正式な提案はまだでございますが、正式な提案が、果たして7月に予定されているCOP6bisに間に合うのかどうかということが、そもそもよくわからないという状況になっております。
 そして、EUや日本は、まず先進国による対策をして、その次のステップとして開発途上国の参加について検討するという立場ですけれども、アメリカはアメリカが参加すると同時に、開発途上国の参加も必要だということで、特に中国とインドを対象としているということであります。アメリカの考え方は、途上国の支援については明らかではないということであります。
 現在までに明らかにされている日本政府の方針といたしましては、主に3点があると思います。第1は2002年の、京都議定書発効に向けて最大限努力をするということです。第2は京都議定書へのアメリカの参加を呼びかけるということです。第3は関係国が合意可能、実施可能なルールづくりをするために、国際交渉に全力を尽くすということでございます。しかし、アメリカが参加しないと致しますと、第1点と第2点が両立しないという情勢になる可能性が出てきたということであります。
 アメリカの新提案は、まだ正式なものは出ていないわけですけれども、ささやかれているところから、どのようなことが予測されるかという話をしたいと思います。つまり、ア
メリカは議論をどこまで振り出しに戻すつもりかということです。さかのぼってみますと、
1985年のフィラハ会議で、温暖化について科学的調査が必要だということが打ち出されました。92年に条約がつくられましてプレッジ・アンド・レビューの方式が導入されました。そして、95年以降、COP1、2、3というふうに移るにつれて、先進国の取り組みをするということ、そして法的拘束力のある数値目標を含むということが決められていって、それが97年に合意されたわけです。
 アメリカの提案はどうなるかということですけれども、それぞれの段階と対応させて、A、B、C、D、E案というのを考えてみた場合に、A案というのは、これは科学的調査の研究だけだということですので、ここまでは戻らないということではあると思います。それからE案というのは京都議定書を維持しながら、京都メカニズムの柔軟性を確保するという方法ですが、不支持と言っていますので、E案もあり得ないということです。Bは自主的な目標で行く、Cは京都議定書について全くの再交渉をする、Dは京都議定書の一部改定をするにとどめるという考え方ですが、このB、C、Dのいずれかということになりそうであります。現在ささやかれているところによりますと、どうもB案の法的拘束力のない自主的な目標というのを考えているのではないかというふうに推測されるわけであります。
 そこで次に、我が国がこれからとっていくべき選択肢として考えられるものとして4つを挙げておきたいと思います。第1は米国抜きで京都議定書を発効し、将来のアメリカの参加を期待するというものであります。第2はアメリカが参加できる形で新しい国際合意をすることを模索をするものです。第3は京都議定書の一部改正にとどめて、アメリカの参加を得て議定書を発効させるということです。第4はバーチャル京都議定書と書きましたけれども、これはあたかも京都議定書が発効しているかのように各国が振る舞うということで、実は議定書は発効はしないということです。その4つの選択肢があり得るということを申し上げておきたいと思います。
 そこでまず、第1の選択肢ですが、上に書きましたのが長所で、下に書きましたのが短所です。これは、もう10年もやってきたのだから、議論から実行に移るべきだということで国際的な取り組みを前進させていくという考え方であります。92年にリオで条約について合意をして、2002年にヨハネスブルグで議定書を発効させようという考え方で
あります。ただ、これは将来、アメリカが参加することを期待しているわけですけれども、
将来のアメリカの参加は不確実と言わざるを得ないところもあります。国際合意にアメリカが最初から参加しない場合に最後まで来ないというおそれは確かにあるわけで、国際連盟などはその例だという話もあるわけであります。
 ただ、他方で、アメリカも、今後いろんな選挙がありますし、世論とか産業界の意見もいろいろでございますので、アメリカも変わるかもしれないという一抹の期待もあるということであります。
 次に選択肢2でございますが、これは米国抜きの京都議定書では意味がないというふうに考えて、アメリカが参加できる形で、新しい国際合意を模索するという、そういう選択肢でございます。何といっても排出量の多いアメリカの参加を得て初めて対策が進展するという考え方ですが、これは京都議定書の放棄につながる可能性もあるということになります。アメリカが参加できる形で新しい国際合意がいつできるかは不明でありまして、この方式によりますと、国際社会での温暖化防止条約の進展というのは、アメリカ次第ということになってしまうわけであります。
 次に、選択肢3でございますが、これはアメリカの参加を得て京都議定書を発効させるのですけれども、京都議定書は一部変更させるという考え方であります。これによって先
進国が一体となった温室効果ガスの排出削減が進展する、というメリットがありますけれど
も、マイナス点としては再交渉につながることで、EUとか開発途上国の反発も予想されますので、国際合意ができるかどうかはわからないという問題があります。
 この選択肢3の参考となるものといたしまして、今年の4月21日にニューヨークの非公式閣僚会議でプロンク議長が提示した「合意成立のための5原則」というものがございますので、ご参照いただければと思います。この②で「数値目標があること」とだけ書いてあって、京都議定書の目標となっている数字を動かしてもいいということが暗に示されていると見ることもできます。
 次に選択肢4でございますが、これは京都議定書を発効させずに、先進国がそれぞれ議定書の目標達成に向けて自主的に努力するという選択肢であります。これは先進各国とも、議定書の目的達成に向けて自主的に対策を推進するということになりまして、ただ、アメリカは独自の目標、対策をとる可能性がございますが、何らかのことはするかもしれないということです。
 しかし、これは実態は各国ごとのプレッジ・アンド・レビューでして、この方式が92年以降、条約のもとで効果が上がらなかったことは実証済みであるという問題点があります。つまり、法的拘束力がなければ抜本的な制度改築とか技術革新は進まないおそれが高いということでございます。
 ただ、この方式におきましても、国際的には自主的取り組みであるけれども、国内では法制化をしていくということ、法的拘束力を持たせるということも可能なのではないかということも指摘しておきたいと思います。
 このように4つの選択肢があると考えられるわけですけれども、選択肢を判断するに当たって配慮すべき事項として5点を挙げておきたいと思います。まず第1に、温暖化対策の緊急性についての認識であります。第2は温暖化による影響・被害への責任。第3に環境十全性。第4に将来的な革新的技術開発の可能性。第5に国際的な環境政策における我が国の存在感ということを挙げておきたいと思います。
 第1に温暖化対策の緊急性についての認識でございますが、これはIPCCの第3次報告書において、21世紀中に地球の平均気温が1.4 から5.8 度上昇するということが予測されておりまして、それ以外に、いろいろな影響について既に指摘されているわけであります。
 このような科学者のメッセージをどのように受けとめるかということにつきまして、京都議定書における従来の考え方といたしましては、温暖化というのは将来の問題ではなくて喫緊の課題であるということだったわけですけれども、アメリカの主張は温暖化は科学的に不確実的な部分が多くて長期的に取り組むべき課題だ、という考え方であります。この認識がそもそも食い違っているという問題があるということであります。
 次に、配慮事項の2でございますが、温暖化による影響・被害への責任の問題があります。これは温暖化によって影響・被害が起こるということについて、その不確実性の程度をどのように判断するかという問題であります。最近、ハンセン病の国家賠償の判決も出ましたけれども、政策決定者としての不作為という問題が、将来起こる可能性もあるわけですから、環境損害について政策決定者がどういうふうに判断するのかという問題があります。仮に過失責任的な考えを前提とするのであれば、影響・被害について予見可能性がある、予見されうるということでしたら、これはすぐにでも実効ある対策をとらなければいけないということで、議定書は早く発効しなければいけないということになります。
 これに対してBというのは、アメリカの考え方ですが、これは影響・被害が予見できないということになれば、現在は後悔しない対策を講じるだけでもいい、自主的な目標を掲げて、それをレビューすればいいということになります。ただ、今の説明は過失責任を前提とした考え方でして、不確実であるけれども重大な損害が発生するときには、それを避ける必要があるという予防原則の考え方だと、また違ってきますので、とりあえず過失責任を前提とすると、こういう考え方になるということだけを申し上げておきたいと思います。
 このようなことになってくると、温暖化対策の実行がおくれた場合に、国際社会の責任はどうなるかということでございますけれども、既に現在起こっているかもしれない影響・被害について、先進国が責任を負うということは出てくるわけですし、それから将来起こり得る温暖化による影響・被害について、先進国あるいは一部途上国も入るかもしれませんが、そういう国々が責任を負うという可能性が出てくるということでございます。特に島がなくなってしまうような可能性のあるモルジブとか、低地国のバングラデシュなどの国については、実際に損害が発生する可能性があるということであります。
 次に配慮事項の3に移りたいと思います。環境十全性ということがよく言われるわけですけれども、この環境十全性の観点からしますと、究極的にはすべての国の参加が必要だということになります。ただし、条約によりますと、共通だけれども差異のある責任ということになっているわけであります。
 では、この環境十全性があるような状態に、どうやって持っていくかということでございますが、選択肢Aとしましては、アメリカ抜きで議定書を発効させるということです。これだと、アメリカが将来参加するかどうかは不透明でありますので、アメリカが参加しないと、また途上国も入ってこない可能性が高いということで、環境十全性は達成されないということが批判されているわけであります。
 ただ、選択肢Bのように、アメリカの参加を待って議定書を発効させるという考え方ももちろんあるわけですけれども、アメリカが参加してくれればいいわけですけれども、では、それはいつなのかという問題が出てくるわけで、参加しなければ、いつまでも国際的合意による対策が始まらないおそれもあります。そうすると、将来の途上国参加というのも見込めないおそれも高いわけで、選択肢Bだと、いつまでたってもゼロのままだ、選択
肢Aだと、例えば排出量の30%ぐらいについては、議定書が発効するわけですけれども、選
択肢Bですと、いつまでたってもゼロのままという可能性もある、ということであります。
 開発途上国を参加させるべきだということですけれども、これはアメリカが特に主張しているわけですが、その道筋といたしましては、従来の京都議定書の考え方ですと、先進国の義務を定めた京都議定書を、まず発効させるという考え方であります。これに対してアメリカは先進国と開発途上国が同じタイミングで対策を開始する、という考え方をとっているということであります。もちろん対策の内容とか強さは異なるということで、その点で共通だが差異ある責任というところを満たそうということであります。
 開発途上国の取り組みとして、実際何が考えられるかということですが、現在、講じられている施策のうち、温暖化防止対策に資する対策を取り上げて整理するということから始めれば、負担が少なくていいのではないかということで、それに対して先進国は支援をしていくということが考えられるわけであります。
 この環境十全性について、参考となるデーターといたしまして、これをごらんいただきますと、90年のCO2 の排出量と98年の排出量のCO2 を比べますと、アメリカの先進国の中での排出量の割合はふえております。これに対してEUとEU・アンブレラ以外とロシアと日本を合わせたものは、90年は58%ですが、98年は52.8%になっていまして、むしろ減っているという状況です。
 それから、先進国と途上国を合わせた世界全体の排出量をみますと、途上国の排出量の割合というのは、90年から97年にかけて6%もふえているということでありまして、アメリカや途上国が入ってもらった議定書の発効の方が望ましいということは、これから言えるわけであります。
 次に、配慮事項の4といたしまして、将来的な革新的な技術開発の可能性という問題がございます。選択肢Aというのが、議定書でとられてきた考え方ですけれども、温暖化対策というのは、長期的かつ喫緊の課題なのだということで、早く制度的枠組をつくらなければいけない。既に実用段階にある技術を普及させるなど、現時点で実施可能なあらゆる対策を講じる必要がある、新技術を開発して速やかに普及を図る必要がある、という考え方であります。
 これに対してアメリカの考え方は選択肢Bでございますが、温暖化対策というのは50年
100 年にわたる長期の対策なんだということで、直ちに厳しい対策を講じるのではなくて、
やがて開発される革新的な技術を用いて対策を講じる方が、コストも安くついて効果的だという考え方をとるわけであります。
 次に、配慮事項の5に移りたいと思います。国際的な環境対策における日本の存在感の問題であります。これは国際政治の問題と絡んで参りますけれども、温暖化問題につきましては、先進国間でEUとアメリカが鋭く対立をしています。そして、先進国と開発途上国も対立をしています。この中で京都議定書発効のキャスティングボートを握っていのは我が国とロシアということになるわけで、ロシアが今日の新聞によりますと、京都議定書を堅持すると言っていますので、もし、そのとおりだとすると我が国がキャスティングボートを握るということになると思います。日本とロシアとEU等で90年排出量の58%ということでございまして、京都議定書の発効の要件が、90年の排出量の55%以上ということですので、まさに我が国がキャスティングボートを握っているということになると思います。
 京都議定書を取りまとめた議長国としての我が国の選択が、世界の選択につながるということで、21世紀の環境政策を日本がリードができるかどうか、国際的な信頼を失うかどうかという岐路だというふうに考えることができます。ただ、もっと広く国際政治のことを見ますと、対米協調外交をどうするかとか、対中外交はどうするか、などという話も関連はしてくるということも申し上げておかなければいけない点であります。
 今、申し上げたように、EUとEU・アンブレラ以外と、ロシアと日本を合わせて58%になるということであります。
 以上で、私の報告の本論のところを終わらせていただきますが、最後に補足といたしまして、COP6の再開会合のイメージについて、若干申し上げておきたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、アメリカの提案があるわけですけれども、これが間に合うかどうかという問題があります。間に合わないケース、大枠だけ示されるケース、詳細まで具体的に示されるケースという、それぞれについて考えていかなければいけないということがあります。それからEUとアンブレラとの間で合意ができるかという問題がありまして、この合意というのは、一部の国であっても、とにかく合意が広い意味で成立するかという意味でありますけれども、合意に達する場合と達しないケースと両方あり得る。その上で、先進国で合意に達しても、開発途上国が先進国全体で5%以上の削減ができないということになると反対するという可能性もあるわけでして、こういう国際関係の難問を考えながら、かつ将来世代に恥じないような判断をしなければいけない、ということになります。
 以上で私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。

○浅野部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま要領よくまとめて問題点を整理していただきましたので、このお話しいただいた整理を参考にしながら、委員の皆様方の間で意見交換をお願いいたします。

 大臣は5時半を目途に退席をされますので、できるだけその間に多くの方のご意見をお聞きいただきたいと存じます。まことに恐縮ですが、お一人のご発言は5分以内ということでお願いをいたします。
 それでは、まず、天野先生のお手が挙がりました。それから佐和先生、その後、また順次お願いいたします。
 どうぞ、天野先生。

○天野委員 大変よく考え抜かれたご説明を伺いました。私もいろいろ考えてはいたのですけれども、最近のニュースなんかを見ておりますと、アンブレラグループの中のオーストラリアが京都議定書を支持しない、というふうなことを言い出しております。それは米国の主張の一つでありますが、中国のような途上国も含めるべきだというようなことをコメントしているというような報道があったりいたしますが、アンブレラグループの中で、先ほど大塚先生がおっしゃったように、日本というのは国際的に表明してきた2002年の発効というスタンスというのがあるわけで、それを堅持していただきたいし、特に発展途上国の援助政策であるとか、あるいは環境政策というのは、日本がこういった外交面で優位を誇れる数少ない戦略的な武器であると思いますので、この点ではオーストラリアに追随するようなことはぜひ避けていただきたいと思います。
 問題は米国の京都議定書に対する考え方ですけれども、これは皆さんご承知のとおり、先ほどのご説明にもありましたけれども、長い間、こういう主張をずうっと続けらきて、最後に決裂したようなところがあります。もっとも米国の中を見ておりますと、共和党の主張と民主党の主張の間には、かなりアイデオロジカルな違いもあるように思います。それが大統領の交代で、こんな形をとったと言えなくもないと思いますが、しかし、恐らく両政党で共通に認識している点としては、米国の経済に対する影響を大変懸念しているという面があると思います。これは、必ずしも数量的な削減、京都議定書に決められたような削減そのものについてではなく、実際にそれをどういう形で実施するかということで、米国は国際的な取引制度と、それからシンクをフルに使うというような主張をしておりまして、それを通して米国経済への影響を下げたいと。
 2つ目は、やはり発展途上国とEUに対する米国の国際競争力の維持といいますか、それから最後は発展途上国の参加を求めるということです。これは国際条約上の視点ということもありますけれども、私はむしろ、先ほど挙げました第1の理由の国際排出取引の中での相手方として発展途上国を考えていて、発展途上国が同時に義務を負う形でないと、そこが進まないということもあるのかと思いますが、そういう点について米国の主張というのは一貫して崩れておりませんので、今回、代替案が出てくるとしても、そういうものがベースになるとすれば10年間の交渉の経緯を考えますと、合意の成立は非常に難しいというふうな印象を持っております。
 ただ、発展途上国の参加につきましては、昨年の11月にアメリカの環境保護庁が、自発的な参加を認める程度でもいいような発表をしていますので、そういう形で合意が成立する可能性があるかもしれません。
 それから、基本的な点で、京都議定書は非常に短期的な目標設定をしているので、それが米国にとっては大変のみにくい、というふうな表現をしたり、50年100 年というような長期の視点が重要であって、それに沿った研究開発、気候問題に関する研究及び技術的な開発投資といったことを重視するというふうなことも、一貫して変わっておりません。
 ですから、多分、何か新しい提案が間に合うように出てくるとすれば、米国はただ単に問題を先送りをしているのではありません、ということを言うためには、
何か政策手段に関して国際的な合意をしましょう、というふうな案が出てくる可能性があるのではないかと思います。
 その手段というのは、一般的な形では市場ベースの手段をフルに活用するという主張が、多分出てくるでしょうし、その中でシンクをどういうふうに扱うかということが、やはり強調されるのではないかと思います。
 それに合わせて、例えば一つの例ですけれども、いろんな部門部門で温暖化の緩和に寄与するような、例えば自動車部門とか、あるいは自然エネルギーの開発というふうなところで国際的に合意をするふうな案、つまり数量目標は余り厳しくしないで、そういった政策手段に関する合意をする、というふうな提案を持ってくる可能性もあるのではないかなというふうに思いますので、そういうふうな案が出てきたときに、我々はどういう対応をするかということも、よく考えておく必要があるのではないか、そんなことを考えております。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 佐和委員、どうぞ。その後、福川委員、寺門委員、廣野委員のお三人の順でお願いいたします。

○佐和委員 私は5分間で十分言えるかどうかわからないんですが、恐らく皆様方が余り今までお聞きになったような見解をご披露することになると思います。
 どういうことかといいますと、アメリカは決して、例えばよく言われますように、石油産業界がブッシュ政権に対して圧力団体として働いて、ああいうことになったのだとか、あるいは原子力ロビーが云々とか、いろいろないいことを言うわけですが、すべては憶測です。私は、アメリカの主張というのは、はっきりした合理性を持っていると思うんです。合理性といっても、こういう問題に関する合理性ですから、別にアメリカの言っていることは正しいと言っているわけではありません。少なくとも京都議定書とは違う論理というのを持ち出そうとしているということなんです。
 ですから、私は結論を先にいうと、日本政府のやるべきことというのは、京都議定書の枠組みを今までのままにしておいた上で、京都議定書の解釈を今までと変えることによって、言ってみれば9条の解釈を変えて自衛隊を持つようなことに類することなんですけれども、ですから、十分、京都議定書の枠組みを維持しつつ、アメリカの意向を組み入れることは可能である。それを提案をするのが日本の政府のやるべきことだと、大臣もいらっしゃるので、ぜひそれを申し上げたいと思います。
 実は、京都会議の大分前から、いろんな議論の流れというのがあるわけです。学者の間でのいろいろな論争というのが。3つ申し上げると、1つは、アーリーアクションかレートアクションか。つまり、今すぐやらなけれはいけないか、あるいは30年先までは何もしなくて、30年先にやったらいいじゃないかという議論です。
 なぜそうなのかといいますと、要するに、今の100 万円は30年間寝かせておけば300 万円ぐらいになるはずですから、当然、先の方が安くつくとか、技術が進歩するからというような議論になるわけです。それはさておき、アーリーアクションというのは、どっちかといえばアメリカのコンサーバーティブな学者というのは、アーリーアクションに対してネガティブだった。もっとゆっくりやればいいんだと。そういう意味で、京都議会議でああいう議定書を決めることに対して根から反対だったわけです。これが1つの論点。
 もう一つの論点が、問題なのはフローとしての排出量か、それとも濃度なのかということです。濃度こそが温暖化の、要するに指標といいますか、温暖化をもたらすのは濃度である。したがって、濃度を上昇させないということは必要なんだけれども、そのために毎年毎年の排出量を一定範囲内に抑え込む必要が、果たしてあるのか否かということです。ですから、そういうことで濃度なのか排出量なのか。これが2番目の論点。
 3つ目の論点が一番重要だと思うんですが、数量アプローチか価格アプローチかなんです。京都議定書は先進国全体で、アネックスワンカントリーズ全体で、少なくとも5%削減ということを決めて、国別にその差異化、差別化をしたわけです。まさにこれは数量アプローチなんです。ただし、多分アメリカがそれだけでは困るということで、ミツションズトレードとか、あるいはCDMとか、ジョインティプロメンテーションなんかを議定書の中に盛り込んだわけです。つまり、これは価格アプローチの方法なわけです。そういうのを持ち込むことによって、アメリカは京都会議において妥協したんだと思うです。
 ところが、その後、EUや途上国が、特にEUがミツションズトレーディングはサプルメンタルと書いているじゃないか、だから、量的な制約を課すべきであるとか、あるいは途上国はCDMに対して非常に懐疑的で、ローハンギングフルーツをとられるのは困るというようなことで、もう一つ門戸を開こうとしないということで、実は科学アプローチの方がなかなかうまく十分に利用できない。そこにアメリカの不満があると思うんです。
 私は何も特別な情報源を持っているわけではなくて新聞だけです。ですから、これはあくまで新聞記事等々から推察した私の推察を申し上げているわけです。とにかく、数量アプロ
ーチで京都議定書が、それが半ば以上を占めているところに対してアメリカが不満を感じていた。科学アプローチ、これは市場経済を重視するアメリカの経済白書などから見れば、非常になじみやすいアプローチなんです。
 それで一体どんなことを考えているのかというと、実は科学アプローチというのは、一例を挙げると、実現性があるかどうかはとにかくとして、例えば38カ国、アネックスワンカントリー全体に一律の炭素税を課するというわけです。そうすると、例えば1トン100 ドルの課税がなされたとすれば、限界的な削減費用が100 ドル以下のような削減機会は全部利用して、つまり、それだけはみんな一生懸命やれば、自主的にやりましょう。ただし限界的な削減コストが100 ドルを超えば、そうしたら税金を払った方がいいということになるわけです。そういうことで、まさに自主的な努力を重視する、というのはそういう意味だと思うんです。
 しかし、実際問題として38カ国全体に、為替レートの問題もありますから、一律の課税をするというのはなかなか実現性はない。それから、もう一つは条約事務局が排出権のようなものを発行して、何らかの形で排出権取引をやる。これもいろいろな問題があるということで、実は私は今のアメリカは京都議定書にかわるものを提案しようとしていろいろ考えているのだけれども、各国が同意するであろうような価格アプローチを主とする提案というのがなかなかやりにくい、難しいという状況にあると思うんです。
 先ほど申し上げましたとおり、京都議定書は数量アプローチを主としているけれども、排出権取引等が導入されているということは、価格アプローチもそれなりに取り込んでいるというわけです。しかし、それに対してEUなどが制約を課そうとしている。そこが大問題なわけです。
 したがって、私はこの数量アプローチと価格アプローチをきちんと吟味した上で、京都議定書はそのままにして、そのミッショントレーディングなんかをもっと利用しやすくするとか、あるいはCDMの認証条件も、そこのところでもっと緩やかなものにするとか、そういうふうなことを行うことによって、京都議定書を守った上でアメリカの納得するような、私は法律のことはよく存じないので、どこまでが議定書を変えないということを意味するのかわかりませんが、例えば付則のような形で、いろいろな条件をつけることによって、いわば妥協案のようなものを、EUとアメリカの両者が納得するような妥協案を提案することは不可能ではないというふうに思っています。
 それから、あと2点……

○浅野部会長 恐れ入りますが、あと2点は後程、文書でお願いいたします。
 それでは、福川委員にお願いいたします。

○福川委員 先ほど米国新提案予測、それから4つの選択肢を非常にわかりやすくお話をいただきました。
 私の知っております情報源も限られておりますから、当たっているかどうかはわかりませんが、まず、アメリカが考えているのは、1つは、私はタイミングの問題だと思います。むしろ2010年というよりもっと先まで、長期の対策を考えたいということを言う学者が非常に多いし、何となく私のNPOなんかでも、そういう感じがいたします。
 それから、中国抜きは考えられないということだと思います。今でも、例えばミサイル防衛問題にしても、あれは中国を念頭に置いて、今、アメリカは非常に覇権主義的な行動をとっていると思いますが、中国が外れているということは、アメリカの頭の中にはないと思います。
 それから、今、佐和先生もおっしゃいましたが、価格機能を入れたい、排出権取引等々の価格アプローチを入れたいということは、当然あると思います。もう一つは技術開発に力を入れたいということがあるように思います。これが、先ほどの選択肢の中で、私が追加的に申し上げたいのは、その4点であります。
 それから、もう一つ、アメリカの政策の意思形成、1つは大統領が決めるということと、もう一つは議会がどう動くかということでありまして、今でも議会がどのくらい民主党が強いかどうかということではありますが、カーター元大統領なんかは、今度のブッシュの新しいエネルギー対策は反対と、こういうふうに言っているわけで、したがって、京都議定書を日本としては最後まで頑張ってみるということが、私は必要だと思いますが、そ
れには、むしろ、今、大統領府と幾らやってもなかなか動かないとすれば、もっと草の根的
な、議会を動かす努力をもう少ししてみる。それには、議会の選挙地盤に働きかけるということであろうと思います。それこそ、浅野先生でも団長にしてキャラバンでも組んで、もっと説得に回るということも必要だと思います。
 それから、私は京都議定書でやるところまでやってみて、その上で、もし新しい提案が出てきて考えるとすれば、そこは若干の柔軟性は保持をしておくという必要性があるように思います。
 それから、中国、インドですが、私はその中国自身が環境問題、温暖化問題に非常に苦心しているという印象を非常に持ちます。特に水の問題が非常に深刻ですし、砂漠化が非常に深刻になっています。ですから、私は、もう少し中国に働きかける。これは食料不足問題が出てきますから、もっと中国に個別に働きかけて、発展途上国に対しての動きを変えるというようなことで、考えられる手を、いろいろ発展途上国にも手を打ってみて、そして、国際世論がどうなるか。京都議定書の実現を守りながらも、ある場合には多少の柔軟性を持つという形で考えるのがいいと思います。
 4分であります。

○浅野部会長 時間厳守にご協力いただきましてありがとうございます。
 廣野委員、どうぞ。

○廣野委員 ありがとうございます。
 きょうの、この大塚さんのまとめは非常にありがとうございます。私も非常によくできていると思います。
 私の見解は、結論から言いますと、京都議定書を発効させる努力をするということを続けるだけではなくて、発効させるという決意を表明すること、これが重要だと思っております。その理由を次の3点で申し上げます。
 まず、第1点は、米国の姿勢というものをどう見るかということですけれども、先ほど来、出ているところの、例えば価格機構の問題であれ、あるいは技術の問題であれ、これらはだれしもそんなに大きな反対はないと思いますが、それを十分に勘案した形でも、私自身は、このアメリカの姿勢というものは、基本的には自分たちの考え方が、まだまとまっていないので、そこでできるだけ引き伸ばしをするというような基本的な考え方だと思います。そういう意味では、まとまるのを待っているというのも一つのアイデアですが、私はまとまるのが、まだかなり先になるだろうと思いますので、やはり、我々はここでこういうような格好で発効するという決意を申せば、逆にアメリカはもっとスピードを速めてまとめる方向にあるのじゃないかと思います。
 それから、第4番目には、米国の場合に、途上国の参加ということを強く言っているわけですが、私もこれは大賛成です。途上国が参加することが最も好ましい。しかし、ベルリンマンデートがあるわけですから、当然ベルリンマンデーというものを十分に我々が尊重した上でやらなくてはいけない。
 ほかの機会にもちょっと申し上げたんですけれども、先日、ニューヨークヘ行きまして、ニューヨークのCDPの会合に出たわけですが、たまたま私が今、その議長をやっているものですから、各途上国の皆さん方、いろいろなところの、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、インド、インドネシア、中国、南アフリカ、いろんな方々と必ずいろいろ議論をしたわけですけれども、そういうところの方々と話をしていますと、何を言っているかというと、途上国がそこへ参加するのは当然である。途上国としては当然参加しなければいけない。しかし、ベルリンマンデートがあるから、今すぐということはできない。しかし、途上国としても将来、当然自分たちが、特にインドと中国は大きな排出国ですので、当然、中国、インドもそういう方向へ行く。ただし、行くのは条件があって、先進国がちゃんと先進国の責任を認めた上で、彼らとしては入ってくるということでございますので、我々はこの京都議定書を発効させることによって、途上国を参加させる刺激になると、私はそう考えております。これが第2点。
 それから、第3点ですけれども、我が国の環境外交といってもいいと思いますけれども、我が国の今までの環境外交を見ておりますと、対米協調ということを非常に気にしながらやっていると思うんですが、これは私の長年のアメリカのたくさんの国会議員とのつき合いの中で、私自身の持っている結論なんですけれども、それはどういうことかというと、アメリカの国会議員は、アメリカに対して、いわゆる頭を下げる、アメリカに対してヘイヘイする、アメリカの言うことを何でも聞くということを非常に軽蔑いたします。そうじゃなくて、アメリカの主張に対して堂々と、自分たちの主張があれば主張するということを、物すごく彼らは尊敬する。
 そういう意味では対米協調というのは、まさに、どういう意味かと申しますと、日本の主張はもちろん、あらゆる意味で、今、大塚さんがおっしゃったようなことを考えた上でのことですけれども、そういう日本の主張を正面からぶつけることによって、アメリカの国会の方々は非常に大きな、日本に対して素晴らしいいい印象を得る。逆に、それを少しでも曲げて、アメリカに表面的に協調しようとすると、アメリカは非常に軽蔑する。これが長い間のアメリカの国会議員とのつき合いの中で得た私の意見です。そういう意味から申しますと、私は京都議定書でやることは、まさに環境外交という点からも非常にいい点である。
 最後に、これはつけ加えですけれども、やはり京都議定書をつくるために、日本は苦労をしてまいりましたし、また環境こそ、我が国の国際協力の非常に重要な分野であるということを考えれば、日本がリーダーシップをとることが重要である。
 しかし、私はここで大変重要だと思うのは、EU自身も、少しかたくななところがありますので、やはりEU自身が、今回のきょうかあしたぐらいの発表になるかもしれませんけれども、EU自身のそういう新しい発表を、そういうものを十分に勘案した上で、この問題について、必ずや日本が発効するということに決意をすれば、最終的にはアメリカもそれについてこざるを得ないと、私は考えております。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 では、寺門委員、どうぞ。

○寺門委員 技術的な問題というのはよくわかりませんけれども、今の大塚さんの整理されたものを受けとめますと、少なくともAorBという中で、日本がどういう姿勢になるかということだけが、とは申しませんけれども、そういう対立関係を示唆しているわけでありますが、しかし、私は日本のキャステングボートという言葉は非常に広い意味があって、片方についてそれがキャステングボートだという理解の仕方は必ずしも、正確性を欠いていると思いますので、少なくともキャステングボートというのは、対立をさせないというときに初めて、キャステングボートというものが成立するように思います。Aの方についたら、これはもうキャステングボートを捨てたことでもあるわけでありまして、そういう意味では、私は外交の専門家ではありませんが、日本の今の存在というのは、余りそこを極端にAorBということを意識をするということでは、外交の幅というものは非常に狭まる危険性がある。
 少なくとも米国における今までの長い経過は、もちろん大統領が変わったことがありますが、常にあの国は議会での承認というものが非常に重要な意味があって、それは常に不透明でずうっときていました。しかし、今度ブッシュさんにかわられて、ブッシュさんが、この短い期間の中で姿をあらわすかどうかというのは、そう短兵急に出るかどうかということはわからないと思うので、そういう姿の中で、今ここにタイムリミットがあるからAorBだと、こういうふうに決めることは、非常に将来の外交の間口を狭める結果になり、京都議定書という、日本がリーダーシプをとって出したということについて非常に重さがあるということはわかるわけでありますが、しかし、京都議定書の後ろには非常に柔軟なものがついていて、そこには既に議論がずうっときた。それで結果として、そこにまとまらないという今までの外交といいましょうか、国益といいましょうか、そういうものが重なってきて、それはまだ全く変っていない……変っていないかどうか、私、わかりませんけれど、その対立がずうっと続いている。その中で、もう見切りをつけるのだというふうに簡単にいくことについては、非常に危険性があるというふうに私は感じます。国内問題とそれを切り離して考えてもらいたいわけでありますが、国内問題は国内問題として後で我々は考えればいいわけであって、必ずしもそれをつなげて物事を硬直的に進めるということでは、必ず禍根を残す。
 この前、変なことを言いましたけれども、かつての非枢軸国という形になってしまうということは、ここにも書いてありますけれども、非常に先鋭な対立関係というものが、日本がつくったという可能性が逆にいえばある、ということも心しておかなければいけない。だから必ずしも、今、議定書がここで我々は参加したから、それが国際的に貢献したなんていうふうな簡単な問題ではないというふうに私は思います。
 そういう意味では、交渉される方は大変難しい立場ではありますが、ぜひ、間口を広げて、全員が参加するということの上に、次々に……全員といいましょうか、少しでも国際的な条約になっていくという前提の中に物事の土台を置いて、そこから進めていただきたいというふうに思います。
 極点な話をすれば、ほかから見れば、これは国際条約ではないですねと。これは要するに、言ってみれば二国間協定ですねと、それくらい他人から見れば、そういうふうにも写るわけでありまして、そういう危険性だけは、ぜひ避けていただきたいというのが私の考え方でございます。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 では、浅岡委員、お願いします。

○浅岡委員 お手元に、世界のNGOのグループでありますCANが、ちょうどインドネシアで会議をしておりましたので、そこからのメッセージもお配りをしているところでありますが、国としても大変関心ですが、NGO市民のレベルでも、世界のNGOがほんとに日本がどう動くのかということを、まさに見守っている。先ほどの大塚先生のお話にもありましたように、日本が今、この議定書をまさに堅持して、発効させていというく意思を、いつ表明するのか。まさか日本はそうしませんということは、私はないはずだと思います。日本が京都議定書を発効させないといいますか、日本が批准しないと発効しないことは今日、明白なんですから、そういう選択肢は日本においてありようがない。ここにいらっしゃる方も基本的に皆さん、そういう理解では共通であろう。寺門さんのご意見も発効させなくていいということではない、批准しなくていいことではないと私は思います。
 いつ日本が批准の意思を示すのかというタイミングが、とても今、重要になっている。大塚先生のお話の環境外交における日本の存在感ということも言われましたが、ほんとに意味あるときに、しっかりそれを言っていただきたい。それはまさに今だ。7月の再開会合までもう一月もないような段階にきており、日本が批准するといっても、まだ、詰なければいけない部分もあるわけですが批准のカードを交渉のカードとして日本が使う、こういう選択肢は、私は日本にはあり得べからざることだし、あってはならない。そうすることは、国際的に逆に不名誉といいましょうか、不信を招くということになっていると思います。
 ロシアが議定書を批准して発効させていくということを表明したと、きょうの報道にありましたけれども、日本もそうだ。これで流れが決まるわけです。アメリカにもより早い時期に、そこに加わってきてくれるようにするにはどうしたらいいかということはあると思いますけれども、発効に、世界に政治的なモメンタムを与えて議論を加速させて、7月の会議を成功に導くことの可能性というのは、まさに日本の批准意思表明にかかっているというこ
とを重ねて強調したいと思います。
 それが1点ですが、もう一つ、アメリカとの関係というのは、私ども総理にお目にかかってお願いいたしましたときも申し上げたのですが、確かに私は1つの大きな、頭に浮かぶことであろうというふうに思います。しかし、先ほど廣野先生もおっしゃいましたけれども、国内においても、地域においても、国の関係でも、すべて今、パートナーシップの時代です。国際的な関係においてもそうであって、パートナーシップというものは、それぞれが自立して、独立性を持って、それぞれ共通の温暖化防止の目的の下に意見を言っていって、よい結論を見出していこうということでありますから、アメリカが乗ってくれなければ、アメリカに拒否権がある、アメリカに従うしかない、アメリカの案を受け入れるしかないと、こういう前提ですべての議論が動いていくような流れというのは、日本とアメリカとの関係においても、そういう時期は終らなければいけないと思います。今回の場面は国際世論が日本を応援すると思いますし、日本も自立的な意思を示していくことで、アメリカの方針変換を求めなければいけないという場面ですから、ぜひともアメリカに対して、アメリカに従わなければというふうな判断規準というものは、ここではとらないようにしていただきたいと思います。
 と言いますのも、いろいろな方がおっしゃっていますように、当面、アメリカから出てくる提案というのは、随分遠い先のことを、しかも、濃度で安定化するというようなことは言うかもしれませんが、国がそれぞれ数値目標をどうするのかというのは、なかなか遠い話のように思われますし、京都議定書の枠、議定書の重要な柱とは、すり合わせようがないということは、避けがたい状況にあると思います。 それから、もう一点だけ、技術の点で、大塚先生にお示しいただいた中の、将来的な革新的技術開発の可能性というのは、後ろから2枚目のページの表にあるんですけれども、ここで書いていただいていることに加えて、やはり目標が設定されるということが技術開発を促す。寺門さんは、先ほど、それぞれが国内問題と国際問題とは別途切り離して、それぞれ国内は国内でやるんだとおっしゃいしまたけれども、それにも関連いたしますが、やはりちゃんとした目標設定があることが技術の開発を促してきた例はこれまで山とそういう例はあるわけですし、そういう側面でも議定書の発効は大変重要だと思います。

○浅野部会長 浅岡さん、ちょっと済みません、大臣が退席される時間ですので……。

○浅岡委員 わかりました。
 そこをお願いいたします。

○浅野部会長 大臣、もうちょっとよろしいですか。
 それでは、もうお一人ということですので、三橋委員どうぞ。

○三橋委員 私は非常に残念なことなんですけれども、今のアメリカに温暖化対策をしようとするコンセンサスがないと思うんです。これは私がいろいろ取材して得た感じでも、もちろん大統領、議会、産業界、それから労働組合、すべて温暖化防止対策をしようとする積極的な取り組みがないんです。これまでの議論の中で、もし、アメリカが温暖化防止対策に対して積極的に取り組むというような意思があるならば、いろいろな方法論というのが出てきてしかるべきだろうと思いますけれども、これがないんです。そこで、京都議定書が決まった経緯でも、たまたま民主党のゴアさんが出てきて押し切ったという面があるわけですけれども、産業界以下、そういうコンセンサスはないんですね。
 したがって、もう皆さんご承知のように、京都議定書が成立した後、温暖化問題、環境問題はアメリカの中で、大統領選で取り上げることができなかったんです。そういう状況の中で予想された形で、京都議定書からの離脱ということが表明されてきたわけです。
 私も、アメリカのいろいろなルートがあるわけでもありませんけれども、例えばワールドウオッチのレスター・ブランなんかは、「ブッシュは20世紀から21世紀に向かおうとしているアメリカを19世紀に逆戻りさせようとしている」というふうに怒っていました。しかし、「あなたのような賢明な環境啓蒙家がアメリカにはいっぱいいるし、科学者なんかもいっぱいいるけれども、それが産業界や議会をなぜ動かせないんだ」というようなことを質問したら黙ってしまいましたけれども、彼らもある意味では無力感を感じているわけです。
 そういうことで、私は京都議定書は予定どおり、まずは批准を進めていくということをやるべきだと思うんです。アメリカが何かいい提案を出してきて、それにほかの国が納得するような形の案というのは、まず出てこないというふうに考えた方がいいんじゃないかと思うんです。
 したがって、アメリカのNGOの活動家なんかも、例えば穀倉地帯に大凶作でも起きればアメリカの空気というのは一気に変わるから、そういうような破局現象が起こるのを待つ以外にないんじゃないかというような声もかなりあるんです。
 そういうことから見ても、この際、予定どおりの形で日本ができることを、まずやっていく。もちろん一方でアメリカに呼びかけることは必要ですから、その努力はしていかなければいけないし、その努力としては、今、私が申し上げましたことで、アメリカにコンセンサスができていないとするならば、先ほど、福川委員が言ったみたいに、浅岡さんあたりを団長で、草の根でアメリカじゅうを駆け回ってもらうとか、あるいはそれこそ新聞広告で多くの人たちに問題を喚起するとか、そういうようなことを積極的にやるべきじゃないかと思うんです。
 日本の新聞では、環境とか、気候変動の問題がよく出ていますけれども、アメリカの新聞なんかほとんど出てないし、私がかつて所属していた日経新聞と同じようなウォールストリートジャーナルなんて言うのは、気候変動なんか起こっていないんだ、すべて太陽黒点説で説明できるんだというような論調を紹介したりしているんです。そういうところに対して、アメリカが温暖化防止のために新しいフレームワークを用意して提示できるのかということについては、非常に不信があります。
 京都議定書だって、アメリカが出してきた排出権取引とか、CDMとか、さまざまなものは、アメリカ国内の努力で7%削減しようなんていう気持ちは毛頭ないために出してきたものですよ。ほとんど対外的な努力で実現しようというようなことが見え見えなわけですから、そういうことで世界最大の排出国アメリカなのでぐあいが悪いと思うんです。しかし、ぐあいが悪くても、強国であり、なかなかほかの国の意見に耳をかさないというような国で、ほんとに困ったことなんですけれども、それは日本としては、できることを予定どおりやっていくという以外に手はないんじゃないかな。それとアメリカに対するさまざまな階層への働きかけ、こういったものを同時並行的にやっていくというようなことで、恐らく今の段階では外交ルートで解決できるような問題じゃないと思います。そこまでアメリカのコンセンサスがあるとは、私は思っていません。

○浅野部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ここで大臣は、残念ですけれども、退席されます。
 どうもありがとうございました。
                 (大臣退席)
 それでは、あとお手が挙がっております森田委員が、ペーパーを用意しておられますので森田委員にお願いいたします。その後、槌谷委員が本日ペーパーをお出しですが、ご発言になりますか。

○槌谷委員 はい。

○浅野部会長 では、その後は槌谷委員から、続けて順番にお願いします。
 

○森田委員 お手元の資料1、資料2をもとにご説明いたします。
 私はアメリカ参加のもとで、2002年の京都議定書発効に最大限の努力をすべき、これはもちろん当然でございまして、こうあるべきだと思っておるわけでございますけれども、またそうでなければ、経済的な視点でも、国際的な競争ということで技術開発への、対策技術への開発投資が進まないものですから、対策コストがなかなか低減しない。要するに、こういう国際的なマーケットの競争の中で対策コストを低減していくということが、温暖化対策に一番求められるところだと思いますし、またそういった技術を途上国に普及していくためにも、アメリカの参加のもとで適正な競争を行うということは非常に大切なことだということは前提としながらも、しかし、アメリカがどうしても参加しないというような事態が起きた場合に、我が国はどういう道をとるべきかという議論に対して、幾つかの基礎的な資料を用意しておかなければならないということで、資料1では、アメリカが離脱した場合に、日本にどのような経済影響が出てくるかということ。資料2では、アメリカが離脱した場合、あるいは京都議定書がさらに発効がおくれた場合に、温暖化、温度の上昇という意味から、どういうような影響が出てくるか、この2点についてご説明したいと思います。
 まず、資料1でございますけれども、ここでは、私どもの経済モデルを使いまして幾つかの試算を行った結果を挙げております。ご承知のとおり、経済モデルというのは、いろいろな前提条件によって大きく弾き出される数値が変わってきます。この経済モデルは、マーケットで非常にスムーズな調整が行われるということと、それから、経済成長の見通しというものを、大体よく引用される責任とIMFの経済成長の見通しを基礎にして設定しているということ、それから技術進歩は過去のトレンドを引きずるといいことで、NOxの排出規制のときのように、政策によって、どーんと技術が進むということは仮定していない。こういうことを前提として計算をしております。
 まず、アメリカが議定書に参加するは場合でございますけれども、しかも、国際排出取引に制約を課さない場合、これは実は私どものモデルだけではなくて、IPCCでは11年のモデルの計算結果が推計されておりまして、括弧内に大体日本では0.05%か0.52%、アメリカでは0.24%から1.03%、EUで0.13%から0.81%ぐらいの範囲でGDPの損失が計算されておるわけでございます。アメリカが相対的に低くなっているというのは、アメリカにエネルギー産業を抱えているということでございまして、ただし、これは国際的金融市場というものを考慮していないものですから、アメリカがより原価費用が安いからということで、そちらの方にマーケットを通じて資金が移転するというようなことを考えれば、こういう結果は覆ることがございます。ただし、この範囲内には大体収まるのではないかということでございます。
 それで、この範囲に比べて私どもの推計というのは、例えば排出量取引を上限なしでやった場合に0.14%、0.33%というふうな形で、その中の、どちらかというと低い経済的ロスを算定しております。いろいろな計算によって、この幅はあるわけでございますけれども、きょうは、1例だけを示しまして、もし、感度分析が必要な場合には、後で資料として提出させていただきたいと思います。大体中間的な数値をここに書いてございます。
 私どもの計算が低目というのは、これはベースラインの影響が出ておりまして、例えば中のマサチューセッツ工科大学のモデルは、日本のベースラインを2010年で大体50%増ぐらい見積もってCO2 を延ばしているわけです。そうしたら、ロスが大きくなるのは当たり前のことでございまして、私どもは20%弱という形で大体の国内で予測されている、そういうような数値をもとに計算しております。
 フリーにトレードしますと、削減すべき排出量の72%ぐらいを、日本の場合は買ってくることになります。アメリカの場合48%、EUの場合64%ぐらい。
 では、ここで、アメリカが議定書に不参加の場合にはどうなるかということでございます。この場合には、アメリカはもちろんロスが少なくなりますけれども、日本、EUも0.1 %を切るような形になっています。なぜこんなことが生じるかといいますと、アメリカが買う排出量取引が全く買わないということを前提とするわけでございまして、そうしますと、非常に排出量取引の枠がだぶつきまして、排出量取引価格が非常に下がるわけでございます。ここに書いてございますように、アメリカが入った場合には70ドルぐらいでここは計算しておりますけれども、それが25ドルぐらいに下がってわけでございます。そうしますと、その分、90%ぐらいを買ってきて、日本はGDPのロスを下げることができる。要するに、アメリカが参加するよりも離脱方が、結果的にGDPロスが下がるということになるということでございます。
 ただし、これは排出量のマーケットがしっかりしていなければだめでございます。もしこの排出量取引をやらない場合、国内で全部対策するということになりますと、これはアメリカは離脱した方がマクロ経済ロスが大きくなってくるわけで、それは当たり前のことでございまして、その分、アメリカと国際競争力において劣ることになりますので、それはロスになる。ただし、今までの京都メカニズムが働けば、こういうふうに損失が少なくなるわけです。
 その次のページでございますけれども、排出量取引に、ある程度制約をかける場合でございますけれども、制約はある一つのエグザンプルでかけておりまして何の根拠もございません。例えば、日本は削減量の3分の1、アメリカ、EUは2分の1ぐらいを上限として排出量取引をする。そのかわり日本はちょっと厳しい分だけ1,000 万トンのシンクをかぶせた場合にはどうなるかといいますと、需要量が少なくなりますので、取引価格は非常に落ち込むわけでございます。GDPの影響につきましては、排出量の購入額にも上限がありますので、ロスは自由なトレードよりも大きくなるわけです。
 ただ、これにおいても……

○浅野部会長 森田委員、もう少し簡潔にお願いします。

○森田委員 そうですね。
 議定書が不参加の場合には、アメリカが買わないものですから、ロスが低くなる。
 これで何がわかるかといいますと、環境にいいとか何とかというのは抜きで、我が国の国益から考えた場合には、我が国が米国抜きで参加するという選択をとらざるを得なくなった場合でも、我が国の経済的影響は国際排出権マーケットがうまく活性化してくれれば、むしろ影響は下がるということが言えるという1つの資料でございます。
 それから、もう一つ、資料2の方は、温度の上昇との関係で見ておりますが、これはシナリオを3つ用意いたしました。1つは先進国が、京都議定書をアメリカの参加の上でやっていく。それから途上国は2030年ごろから10年間0.5 %の割合で削減していく。先進国は10年間で5%、この京都議定書を強化してずうっと100 年間やっていくということでございます。どうして発展途上国は0.5 %かといいますと、大体21世紀末で1人当たりのCO2 の排出量が、途上国と先進国が大体これで同じぐらいになります。そういうようなことで、このシナリオを描いております。ここで大体550 ppm 、産業革命以前の約2倍のCO2 の濃度になります。
 シナリオにはアメリカがおくれて2030年に大体30%、ブッシュさんがおっしゃっている対策をやったとしても、今、2010年で30%伸びますから、2030年ぐいらで30%ぐらいに抑えるのが精いっぱいだろうというような前提でやりまして、途上国は2040年からにずれ込む。
 シナリオ3は、先進国は全部2030年までずれ込んで、途上国は2050年になるというシナリオでいきます。
 そうしますと、次のページを見ていただきますと、計算結果でそれぞれの年で基本上昇がどれぐらいになるかということでございますけれども、シナリオ1、すなわちここでアメリカも参加して、京都議定書を守り、その同じペースでがーっと 100年減らしたとしても、2度以上の上昇をどうしても引き起こしてしまう。これは気候感度が2.5 度ぐらいのときでございますけれども、大変な温度の上昇は覚悟しなければいけないということでございます。
 したがいまして、もしアメリカがおくれて、それによって途上国の参加の対応がおくれますと、どんどん温度は上昇していくということです。ここで0.1 度とか0.15度上がるというのは大したことないと思われるかもわかりませんけれども、我々、モデル計算をやっ
ている者にとっては、0. 1度下げることがいかに大変なことかということでございます。
 このことは何かというと、もしアメリカが離脱した場合に、かなり我々の次の世代に大きな負担をかけるということが想定できますし、アメリカが参加しなくても、しないということを口実に全員が対策を延ばしてしまうと、さらにその負担をかなり大きく後世に転嫁してしまうということで、どうしても、今、2度で、影響研究というのはなかなか格差がありますけれども、我々の研究者の勘で言いますと、大体2度上昇というのは非常に危ない影響を想定できるというものです。将来、これが1度とか1. 5度ぐらいに温度を下げなければいかんといったときに、かなりの負担を次の世代にかけていくということで、アメリカ抜きであっても、やはり何らかの手を打たなければいけないということの基礎資料にしていただければと思います。
 以上でございます。

○浅野部会長 ありがとうございました。データづくりに大変苦労しておられるということがわかったものですから、異例なことですが、発言時間を長く認めてしまいました。
 このあとのご発言は、おそれ入りますが5分以内でお願いいたします。

○槌谷委員 システム技術研究所の槌谷です。私は技術開発にかかわる問題をお話ししたいと思います。
 過去の技術革新の例を資料3にちょっと書き出してみたんですが、技術革新の多くは、技術のシーズから始まるのと、ニーズ、必要性から始まるものとあると言われていますが、そこに書き出しました自動車のエンジンであるとか、ハイブリッドカー、燃料電池、太陽電池、風力発電、これらは技術革新の原動力として、さまざまな国の法律であるとか、ある特定の企業の技術開発方針であるとか、そういったものによって支えられて出発しているということが言えると思います。太陽電池は日本におけるサンシャイン計画、風力発電は北ヨーロッパでのいろいろな開発というようなことが背景にあります。それから、最近では省エネルギー建築ということで、高層ビルでもパッシブソーラーの技術を取り入れるというようなことが始まっていますし、いろいろな技術が取り入れられつつあるわけですが、この背後にある物事は一体何であろうかということを次のページにちょっと書きました。
 いろいろな技術者と議論をすると、技術者が企業の中で新しい技術開発のテーマを何にするかという議論をするときに、環境の問題を解決するような技術を開発したいといった場合に、これは一体、だれがそういうことを要求しているのかという場合に、政府の方針である、政府がこういうことを目標に掲げているということが、非常に説得力が大きいというような話を私は聞くことが多い。この社会が何を必要としているか、技術者はそれを聞くことによってテーマを選んで開発をするということが非常に多いということです。
 技術革新の目標をこの中から、見ていただくとわかると思いますが、例えばブッシュ政権がこういう議定書から離脱するというようなことをすれば、アメリカでは今、一番話題になっている燃料電池の開発などに、おくれを生み出すというような可能性があると思います。実際に今の技術の世界では、エレクトロニクスやバイオテクノロジー分野以外では新しい機能の開発テーマが少なくなっていて、環境や資源の開発、そういう技術開発のテーマをふやしていきたいと、みんなが考えているということが言えると思います。
 そういうときに、技術革新の背後にあるものというのは、そういうことが必要なんだということを継続的に出していかないと、技術開発に時間がかかりますので、アーリーアクションは高くつくからという議論がアメリカであって、その会議に参加したことがありますが、技術革新は非常に時間がかかります。例えば前側のページにある電球型蛍光灯というのは、石油ショック直後にそういうものがアイデアとしてフィリップスから出ていましたが、やっと今ごろになって電力消費が4分の1から5分の1というようなものが普通の白熱電球にかわってつくというふうになった。20年ぐらいかかっているんですね。
 例えば、皆さん、この部屋には白熱電球がたくさんあって、蛍光灯ならばこれが4分の1になるというふうに言うことができると思うんですが、例えば私が持っているこの懐中電灯は、一番下に書いてあるLED、発光ダイオードを利用したものです。最近はこういうものがつくられています。発光ダイオードを使うと、電食の消費量を蛍光灯のさらに半分にすることができますから、この部屋についている電力は、これを使うと結局8分の1ぐらいにできそうなんです。これは数年のうちに蛍光灯の2倍ぐらいの効率になるだろうといわれていますから、例えば、上手にそういう開発を進めれば、日本じゅうで使っている照明灯は全部発光ダイオードで照明するというようなことも可能ではないかと、私は考えています。
 というようなことがありますので、ぜひ技術革新を進めるその背景になる、社会的にそういうことを必要としているということを、ぜひ続けられるようにしていただきたいと思
います。

○浅野部会長 ありがとうございました。時間を守っていただきましてありがとうございました。
 それでは、高橋委員、須藤委員、そして大変申しわけないんですが、飯田委員と塩田委員の順でお願いいたします。それでなお時間がありましたら、大聖委員にお願いいたします。大変恐縮でございます。
 それではよろしくお願いいたします。

○高橋(公)委員 連合の高橋と申します。村上委員がILOに行っておりまして、私が同じ中央環境審議会の地域保健部会の委員をやらせていただいているという関係で、きょう参加させていただきました。
 基本的には連合の立場としては、この京都議定書につきましては、早期批准・発効という立場で、この間、政府にも要請してまいりましたし、お手元資料8に、アメリカ政府に対しても、過日、要請を申し上げているということであります。
 連合の上部団体というのは国際自由労連という組織がブリュッセルにございまして、世界の2億3,000 万人ぐらいの労働者を組織している上部団体でございまして、そこの中でも、この環境問題についての専門委員会がございまして議論させていただいているということでございます。5月に行われましたICFTUの執行委員会でも、鷲尾会長がここの副会長でございまして、その中でも世界の労働組合に対してアメリカの京都議定書からの離脱について影響力を行使して、何とか京都議定書に復帰されるように働きかけをやってほしいというようなことをお願いしているという状況であります。
 現状、アメリカの離脱問題が深刻な状況になっているだろうというふうに思うんですけれども、基本的にはこの現状、地球を取り巻く温暖化の現状をどのように認識するのかということがポイントだろうというふうに思います。まだ5年、10年の先、猶予があって、それで対策を講じて間に合うという認識ならば、それはいろいろな対応があるのだろうけれども、私ども連合としては、基本的には持続可能な発展ということを前提に、この国は、あるいは地球は続けられる必要があるという認識のもとに、そのためにも、既に待ったなしの段階に温暖化の状況が来ているという立場に立っております。その立場から連合としては先ほど申しましたように、この京都議定書の早期批准・発効は早急に行うべきだと思っております。
 過日のCOP6にも連合としては代表団を現地に派遣しまして、世界の労働組合に対して影響力を行使し、できるだけ京都議定書の合意にこぎつけるようにというようなことを取り組んで参りましたけれども、引き続きそういった立場からこの早期批准・発効に向けた取り組みを行っていきたいというふうに思っております。
 そういった意味で我が国政府に対しても、その京都議定書の合意に向けたさまざまな問題点についての妥協の問題とか、あるいはやりとりの問題について、基本的には一切注文をつけてはおりません。基本的にはできるだけ速やかに早期批准・発効という観点から、合意を取りつけるような努力をしていただきたいというスタンスでお願いしている、というようなことであります。
 いろいろと状況が難しいということがあろうかと思いますけれども、我が国政府におかれましては、最後までアメリカの説得に努力していただきまして、それで合意ということ、それでも、なかなか説得し切れないということになれば、その段階ではやむを得ず、アメリカ抜きでも批准・発効ということでステップを踏んでいく必要があるのではないか、というふうに思っております。その理由につきましては、るる先生方がおっしゃっておりますように、この京都議定書の発効に向けた10年間の交渉の結果とか、あるいは今回、この問題が合意に至らなくて、それで現状のまま据え置かれるということになれば、この温暖化の状況は、より加速度的に悪化するだろうということが懸念されているという観点から、ぜひともぎりぎりの交渉を政府にお願いしたいし、そしてまた、速やかに早期発効に向けて、我が国政府としても国内体制の整備を含めて、ご努力願たいというふうに思っております。
 またプラス・アルファとしてですけれども、連合としては3年前からライフスタイルの見直し運動に取り組んでおりますし、昨年の7月には、労働ブロックの5つの団体を集めまして「ライフスタイルの見直しを考える環境会議」という会議をつくりまして、現在ライフスタイルの見直しに取り組んでおりまして、この環境会議も、実は「ストップ温暖化」というファミリーパレードというデモを、あした予定しておりまして、その呼びかけ団体にも環境会議が入っておりまして、あしたNHK前から渋谷を通って代々木公園まで、午後、都民に対してそういう取り組みをやっていくということを準備しているという状況です。
 以上、報告までであります。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 それでは、高橋一オ委員、お願いいたします。

○高橋(一)委員 時間が少ないようですので簡単に申し上げます。
 森田委員のお話から、もしアメリカ離脱ということは防げないとしても、日本は今までのスタンスを守るという結論は、ほぼはっきり出てくるように思いますので、私はそれは一応担保するとして、アメリカをどうに動かすかという、その一点だけに関して、かつ今まで、いろいろお話を聞かせていただいた、特に福川委員、廣野委員のご発言は、私は非常に大事だと思いますが、それに一点だけ加えた形で発言させていただきます。
 私はアメリカを動かすということに関して、二十何年か前のことを思い出すのですが、私、そのとき、OECDの事務総長の補佐官に任命されまして、事務総長から国際参謀の要諦第1課、レッスン1ということで言われたことを思い出します。主要国をどうに動かすかということ。
 ドイツを動かすときには必ずインフレとの関係で動かすこと。フランスを動かすときは必ず文化を持ち出すこと。イギリスを動かすときは必ず失業を持ち出すこと。日本を動かすときには省庁間のけんかを利用しろ。アメリカを動かすときは必ず安全保障問題と結びつけろということでした。恐らくこのアメリカの体質というのは冷戦が終わっても同じだろうと思います。
 今回の場合、アメリカを動かすということ、今までここでご議論をされたようなことプラス・アルファ、今回のテーマをどうやって安全保障のテーマとリンクさせるか、それがないとアメリカは動かないだろうと思います。その安全保障とリンクは環境問題に関しての安全保障とのリンクではないと思います。恐らく今、アメリカが冷戦後、初めて戦略を世界的に見直そうとしている、その戦略間との関係でリールだろうと思います。その観点からこの問題に対しても取り組む必要があるのだろうと思います。
 これをさらに申し上げますと、実に時間を食うテーマだと思いますが、環境イシュー内部での議論では、アメリカは私は基本的には動かないと思います。安全保障と結びつけること、それが極めて大事だということだと思います。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。できれば詳細には、何かメモでもいただければと思います。ありがとうございます。
 須藤委員、どうぞ。

○須藤委員 二、三分でやらせていただきます。
 当然でありますが、これは京都議定書の批准というのが目的なのではなくて、本来は地球温暖化をいかにおくらせるかということが目的なので、そのためには当然、目標が必要だ。その目標を早目に決めるという意味では、アメリカを入れて議定書を批准するというのは当然でございますが、それを最大限努力をしていただきたい、こういうふうに思います。
 その1つの方法は、途上国の、特に大国である中国、先ほどもおっしゃっていたんですが、私、もともと水の仕事をやっているんですが、温暖化の最も早いうちに影響を受けるのは水の問題で、中国ではなかろうかと予測をしているのですが、最近は中国も環境問題の関心が急激に高まっておりますので、その意識を国際的に活用するというのも大切だろうと思います。
 それから、もう一つは、何となく我が国の国内的な努力というのが国際的に見えない部分が多分多いのではなかろうかなという気がします。私が不勉強かもしれませんが、国内のいろいろな、先ほどからおっしゃっているような努力というのを、国際的にも活用していって意識を高める必要が、多分あるのではなかろうか。EUなんかは、多分そういう努力が、かなり見える気がするのですが、我が国は見えない。
 ローカルな話で大変恐縮なんだけれども、仙台で、今、地球温室化効果ガスの削減計画を立てることの仕事を手伝っている部分があるんですが、仙台なんかですと、もう1990年に対して16%もCO2 がふえているのですね。そんなことで、2010年になったら何十パーセントも急に削減をしなければいけないなんていうことが、現実には不可能なような話がいっぱい出てくることもあると思うので、CO2 のようなものは多分、ほかの公害問題とか環境の問題と違って、急速に幾ら減らすなんてことはできるはずがないんですね。ですから、そういう意味では年次計画でいろいろやって、それが国際的にも見えるようなスケジュールのようなものを示す必要が、私はあるのではなかろうかなと思っております。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 それでは、飯田哲也委員にお願い致します。

○飯田(哲)委員 私の方は、私のメモではないのですが、東北大学の明日香先生のメモをいただいたので提出させていただきましたが、趣旨は私も同じで、時間がありませんので、要は究極の選択に関して政治的な腹決めが必要であろう。それは米国抜きでも京都議定書を早期に批准するということを、政治的に腹決めしておくべきだという点では、明日香先生と全く一緒です。明日香先生のメモは、またお読みいただいて、非常に説得力のあるメモですし、米国内部は既にブッシュの環境政策はわずか3分の1の支持しかない。それから、25%を尊重し過ぎて75%を無視するべきではない。それから、競争力の低下に関しては、先ほど技術開発の話もありましたし、発効をさせた方が競争力はむしろ増す。構造改革も促す。そして途上国の義務に関しては、余りに今までの議論は雑駁ではないかというような話が書いてある。
 私が申し上げたいのは、基本的には、ちょうど歴史の皮肉といいますか、欧州と米国の、ある意味で環境政策におけるイデオロギー対立、欧州は基本的には予防原則を環境政策の哲学に90年代に入って完全に持っております。米国は先ほど佐和先生が言われたような近代合理主義で、ちょうどその対立の間にスポッとはまって京都議定書がちょうどそこに入ってしまった。これが京都議定書ではなくて、例えばストックホルム議定書とか、ジュネーブ議定書という名前であれば、若干、問題は違ったのかもしれませんが、やはり最後に米国抜きで発効するのか、やはり米国を待つのかという腹決めをするときに、大きな歴史観といいますか歴史のダイナミズムと、こういう言葉で言えるかどうかあれですけれども、愛国心というもので、ぎりぎりの判断をしておくべきであろう。
大きな歴史観、歴史のダイナミズムとは何かというと、やはりここ近年の環境外交の潮流においては、環境、平和、人権といったものにおいて、ますますいわゆる規範性、ノーマティブな方向に向かっている。 最も参考になるのが、対人地雷全面禁止条約のときのオタワプロセスだと思うんです。かつては大国の交渉で、とにかく1カ国でも大国が拒否すれば、何ら発効しなかった条約が、カナダを中心とする小国が、まず発効させて、徐々に大国を巻き込んでいったという歴史のダイナミズムが、明らかに90年代、そして21世紀にかけては見られているわけです。ですから、米国を待つという議論は、私は何ら正当性はないというふうに思っています。
 それから、もう一つ、愛国心というのは、今、環境関係の会議、これはアカデミズムだけではなくて政治的ないろんな会合、どこに行っても「京都」という言葉が出ない会合はほとんどないです。これは今、非常にプラスのイメージ、ボジティブなイメージで京都が語られているわけです。これを、もし仮に、今ちょうど日本がキャステングボートを握っていて、みずから消し去った後の京都が、国際的にどういうふうに認識されるか、そのことをきちんと政治的に考えるべきだろう。そうした場合に、この京都議定書をみずから葬り去る幾つかのオプションが先ほどありましたけれども、そういう選択は私は少なくとも考えられないというふうに思います。
 最後に、この場として、きょう、意見交換会ということなんですが、今この時点のこの場で、どういうことが求められているのかということを、あるいはどういうことをなさろうとしているのかということを部会長にちょっと1点お伺いしたいと思います。
 私の提案としては、少なくとも中央環境審議会地球環境部会プラスきょう参加のメンバーでは、早期発効すべというメッセージを強く出すべきではないかというふうに思います。
 以上です。

○浅野部会長 塩田委員、どうぞ。

○塩田委員 私も結論だけ簡単に言います。
 私ももちろんアメリカが参加した形で条約が発効するのが望ましいから、そのために最大限努力するということは当然なんですが、アメリカが入らない場合に、日本が国際的にどういう立場をとるかいうことに関して、アメリカが入らない場合には、結局、京都議定書というのは非常に大きく見ますと、日本とEUとロシアで発効させるということになると思いますので、その状態がかなり長い間続くということのインパクトというものを冷静に事前に分析をする必要があると思います。私は京都議定書を発効させることのメリットというのは物すごくあるということを、もちろん認めますから、そればできればもちろんいいんですが、その前に日本とECとロシアだけで、この制度を発足させるということのこれからのインプリケーションというものを、もう少し深刻に考える方がいいかもしれないというこいとが1点です。
 私は米国と少し交渉とかそういうことをしたことがございますが、アメリカはこの条約を、もし米国を入れないで発効させた場合には、将来参加することはないと私は思います。
 それから、アメリカが入らなければ、中国をこの条約に入れるということが、将来とも非常に難しくなるのではないか。そういうふうに思います。
 そういうことを冷静に考えた上で、最終判断をすべきだというふうに考えます。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 それでは、安原委員。

○安原小委員長 大塚委員が議論のベースになるいい資料を用意していただきましたので、大塚委員の資料をベースにしまして、結論だけ申し上げたいと思います。
 日本政府の方で、これまで懸命の努力をしてきていただいた、そのことは高く評価いたしますが、米国が不支持を撤回して交渉に乗ってくるとか、あるいは具体的な提案を出す段階に、なかなか至っていない。しかし、COP6の再開会合も間もなく開かれるというタイミングにだんだんなってきているわけでございますから、そろそろ日本が、米国が参加しない場合どうするのだということで、皆、世界的にも関心を持たれておりますし、国内でもそれについての議論が盛んに行われている状況にございますので、やはり、もうそろそろその点の方針を、日本政府として出すべきタイミングに来ているのではないかと思います。
 その場合は、やはり選択肢1に示されておりますように、どうしても米国が入らないということであれば、米国抜きの京都議定書の発効をするんだ、将来の米国の参加を期待するということを明確に内外に方針として出すべきではないかと思います。
 その場合、広く国民の理解を得るために、6%削減を達成するための具体的な方策も明らかにすることが肝要ではないかと思っております。
 さはさりながら、それはアメリカが参加することは極めて重要ですし、それが望ましいわけでございますから、そういう方針を明らかにすると同時に、米国にさらに引き続き働きかけを強め、交渉に乗ってくるように努力すべきだと思います。
 アメリカが乗ってくるかどうかわかりませんが、その場合の選択肢2、3が示されておりますけれども、京都議定書とは別の枠組みを模索という選択肢はとるべきではないのではないか。これだけの多くの参加国が多年にわたって交渉をした結果の成果が京都議定書でございますから、これとは別の枠組みを模索しても、関係国で合意に達する見通しはないと思われますので、この選択肢はないのではないかと思います。
 それから、そうだとすると、選択肢3でございますが、この一部改正というのはどの範囲かということですが、この大塚委員の資料で、プロンク議長の基本的な原則というのが示されておりますが、そういうものを踏まえて、京都議定書の基本原則に触れない範囲内の項目に限って、ある程度の期限も切って、米国と交渉するということは十分考えられるのではないかと思われます。
 しかし、その場合でも、短期間で交渉が決着するかどうかというのは、なかなか見通しも立たないと思いますし、それから、一部の事項に限って交渉するとしても、全面的な再交渉につながっていくおそれは、ここに示されているようにあると思いますが、そういうことにならないような範囲内で交渉を進める必要があると思います。
 そういう意味でも、あらかじめ選択肢1の方針を示した上で交渉するということがいいのではないかと思われます。
 選択肢4は、もう京都議定書の発効ではなくて、自主的なプレッジ・アンド・レビューということですから、これは効果が上がらない方式であるということで、論外ではないかと思います。
 そうだとすると、まず、日本の方針を明らかにした上で米国と交渉をして、一部改正の方式で、うまく合意ができれば米国の参加が得られて発効。しかし、米国がどうしても参加しないのであれば、やはり基本原則に戻って米国抜きでも京都議定書を早期に発効させるアクションをとるということにせざるを得ないのではないかと考えられます。
 以上でございます。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 大聖委員、どうぞ。

○大聖委員 運輸交通部門に限って、ちょっと発言させていただきます。
 1カ月半ほど前になりますが、例のブッシュ発言以来、アメリカの環境保護庁の招きで、交通分野のCO2削減等に関するミーティングに参加してきました。同長もエネルギー省も大変心配しているというのが実情です。
 その席で、アメリカが条約の批准云々はともかく、交通分野で大量のCO2 を出しているわけです。それの対策に対する実際的で有力なカードが見出せないでいる訳です。ここ何年もの間、燃費規制の強化というのは塩漬け状態になっています。それから、ここ7、8年間連邦予算がトータルで1千何百億という研究費をビッグスリーと自動車関連メーカーに出している低燃費自動車の開発プロジェクトがあり、その成果が見えつつあるものの、その技術が一般の車に活用される見通しがほとんどないので、これは失敗だという議論が議会の間で、今、出てきています。
 そんなことで、アメリカを責めるのは分かりますけれども、具体的な交通分の対策カードがない。一方でヨーロッパですとか日本というのは、ここ数年来、燃費の具体的な目標が定まっていますし、それに向かっていろいろな技術的な展開があると思います。この点で、日欧とアメリカの間に温度差が大きくあると思います。
 その背景には、米国のロスアンゼルスに代表される大都市での自動車による環境悪化の改善の方が、健康への直接的な影響を考えると、優先度が高いという基本的な考え方があります。ですから、燃費の改善はその次のテーマでありまして、なかなか交通分野でCO2 の削減が図られないというのがジレンマにあると思います。CO2の削減は非常に難しい問題でありまして、彼らは自動車の利用を抑制するとか、物流の合理化というようなことも、ちょっと念仏みたいに言っているんですが、これはなかなか一筋縄ではいかないという状況です。日本ももちろん運輸交通部門はCO2 が急増しておりまして、燃費規制だけでは到底だめなんですが、車の利用にかかわる取り組みですとか、あるいは低燃費技術というのを提案しながら、アメリカを置き去りにしないように、是非していただきたいということと、もう一つ、途上国でモータリゼーションが今後急速に進んでいくと思いますので、日本の技術、政策両面での国際貢献というのは極めて大きなものがあります。低燃費技術ですとか、自動車の合理的な利用のあり方ですとか、そういったものを提案したり、技術支援したりすることが、これから全体のCO2削減に大きく寄与するのではないかなと思っております。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 横山委員、どうぞ。

○横山委員 簡単に意見を言いたいと思います。
 私もアメリカがこれだけかたくなな態度をとっている以上、アメリカ抜きで早期発効を行う、COP6の再開会合でEUとか、あるいはロシア等と協調路線をとって、早期発効を目指すという以外、道はないと思います。
 それで、今、何が政府をおくらせているかということを考えたときに、これは私の推測も入りますけれども、環境省と経産省と外務省の間で意見が分かれている。特に経産省がアメリカを待たなければ発効させても意味がない、ということを非常に強く主張しているために、日本政府の態度がなかなかかたまっていないと思います。
 そこで、提案なんですけれども、こんなこと可能かどうかわかりませんが、今、3省庁の間でどんな話し合いをして、それぞれの立場がどうなのかということを、ぜひ明らかにしていただきたい。そこによって、国民が環境省はこういうことを考えているのか、経産省はこんなこと考えているのか、外務省はこうかということがわかって、それで日本のとるべき方向も出てくると思います。ぜひ、官邸も含めていろいろな交渉をなさって、シナリオを描いていると思うんですが、その辺のところも明らかにして、本当に日本として国際社会でどういう態度を示すかというのが、今、一番大事なときに、政府の態度が見えてこないということではいけないのであって、その辺もオープンにしていただきたい。それを明らかにすることによって、早期発効こそ、そういう道しかないのだという国民の声も、それによって高まっていくのではないかと思います。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 ほかに特にご発言ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、本日は懇談会ということで、このような会合を開いたわけでございますが、先ほどご質問もありましたが、本日は予め議題を提示して正規に部会を開くという形はとっておりませんので、ここで部会としての意志決定をすることができないことは、委員の皆様方、ご存じのとおりだと思います。
 しかしながら、ただいままでのご発言の中にも、対立する点が若干はあるわけですが、共通点も幾つかありました。少なくとも、きょう、懇談会に集まった地球環境部会のメンバーの間では、最低この点については一致しているという点は次のようなことでした。
 例えば、どう考えても京都議定書を全く葬り去るようなことはあり得ないであろう。これは政府も、これまでずうっと一貫して言い続けてきていることでありますから、そのことについては全く異論はありませんでした。
 それから、今、横山委員からのお話がありましたように、各省の間で若干、ぶれがあるのかないのか、それはよくわかりませんが、少なくとも現実的に考えれば議定書にアメリカが入ってこなければ、かなり意味がなくなる、あるいは相当効果が下がるであろうという意見が強かったわけです。
 しかし、一方では、アメリカが入らなくてもこれだけの効果はあるんだというデーターも、きょうは出されきたわけです。つまり、少なくともアメリカが議定書に入ってくれた方がいいということは、誰も異論はない。アメリカが入らなくてもいいとはだれも言っていないわけで、入った方がいいということは当然でございます。
 その場合に、これまでのアメリカの行動傾向から見て、こういうことを言うだろうかとか、こう言うであろうとか、こういう提案が出てくるであろうといったことについて、委員の皆さまから今までのご経験を踏まえ、あるいはご研究を踏まえたご発言があったわけであります。このような点は多分、政府の方でも既に十分に検討しておられる中身であったろうと思いますが、しかし、もしかして、きょうの委員のご発言の中にヒントになる点があるとすれば、ぜひ、それも今後の検討の中には入れていただきたいと存じます。
 なお、森嶌会長は、きょうは体調を壊されて、おいでになれなかったのですが、会長がたびたび小委員会の席などでも発言をしておられますことは、政府としては、ともかくアメリカを引き込むということばかり、これまで言ってきたと会長はおっしゃっているわけです。しかし、少なくとももしアメリカの不参加がはっきりした場合に、日本としてはどうするのかということについて、しっかりしたシナリオを書くべき、あるいはアメリカがこういう提案をしてきたときはどう対応するか、という点についてのシナリオを準備しておくべき、ということでした。
 日本政府としての立場表明のタイミングの問題についても、ただいまの懇談会の中では多くの発言がありましたが、少なくともかなり多くの方々は、議定書の批准について我が国の態度をどこかの段階で明らかにすべきであるということでした。ただし、いずれの立場をとるに関して、大塚委員の最初のプレゼンテーションにありましたように、ある1つの選択が絶対的に正しくすべてを満足させるとか、非常にうまくいくという選択ではなく、ある選択をすればこういう点でリアクションを起こるであろう、デメリットがあるであろうということがあるようです。
 ですから、これは、やはり最終的には政策決定者の決断によって、そのどれを選ぶかということにならざるを得ないわけでありまして、例えば、議定書に日本が批准をすればアメリカは、多分ついてくるであろうとおっしゃる方もありますし、反対に、今までの例ではアメリカはあとから議定書には入ってこないであろうという考え方もあります。また、途上国は、日本などの先進国の多くがアメリカが入らずとも批准をすることによって納得をしてついてきてくれるであろう、という見方もありますし、いや、かえってだめだろうという考え方もあります。このあたりの予測は、いずれが正しいかということを、ここで直ちに多数決で決するというような話でもございませんので、大臣はお帰りになりましたが、多くの方々が持っておられる考えについては十分を、局長はお聞きになったと思いますので、銘記しておいていただきたいと思います。
 さらに、余り多く語られておりませんけれども、二、三の委員から出されたご発言の中で、私、部会長として重要だと思っておりますのは、きょうは、専らテーマをこういうテーマでやっておりますから、何となくそこに話が行っているんですけれども、しかし、日本が国内でどれだけの努力をしているのかということについて、国際的に情報発信が足りないのではないかという、須藤委員の意見がございました。これは少なくとも努力をしてきた、と自負しているすべての者が努力をしなければいけないことでありますし、それから今後、我が国はいずれにせよ批准をする努力をするということは、政府の方針であるわけですから、であるならば、一刻も早く批准をするために国内体制にどのような体制を整備すべきかということについて、さらに審議を加速する必要がございます。
 当審議会部会でも小委員会で、今、議論をしているわけでありますけれども、事務局もなかなか人手もない、時間もない、大変な苦労をしながら、その中でもさまざまな検討をしてきておりますので、今後、部会といたしましては、我が国の国内体制の整備について、早く国民に、こういうことをやればこうなるだろうということを、たたき台の形でも姿形を示していく必要はあると思います。
 以上のようなことは、きょうの懇談会のご意見の中で、ほぼ共通する点、あるいはまとめとして申し上げることができる点であったかと思います。
 もし局長の方から何か最後に一言コメントがありでしたら、コメントをいただきたいと思います。

○浜中地峡環境局長 本日は大変お忙しい中を、これほど多数の先生方にわざわざご出席を賜りまして、大変貴重な意見をお聞かせいただいたことにつきまして、心から御礼を申し上げたいと思います。
 各先生からいただきましたご意見、そして最後に部会長からおまとめをいただきました点につきましては、私どもしっかりと受けとめさせていただきまして、また直ちに川口大臣にも報告を申し上げたいというふうに考えております。
 これから、恐らく、私ども聞いております範囲内でも、来週には米国ブッシュ大統領は、初のEUとのサミットなどの目的でもってヨーロッパに出発をされるようでありますので、その直前であります来週の初めごろには、何かおっしゃる可能性もあるというようなことも聞いているわけでございます。それがどのようなものになるかは、予断を許しませんけれども、いろいろな事態が、これから生起するであろう。そういう事態に対しまして、間違いなく行動していくことが、極めて重要な段階になっているというふうに認識をしております。またボン会合までも、あと1カ月近くという段階でございます。
 そういう非常に重要な局面に当たりまして、各先生方から大変貴重な意見を賜りましたことにつきまして、改めて心からの御礼申し上げさせていただきまして、そして私どものこれからの行動に、大いにその意見を参考にさせていただきたいということを申し上げさせていただきまして御礼とさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○浅野部会長 それでは、本日は大変申しわけございませんが、発言を封じるようなことをしてしまいました。5分間というふうに申し上げましたので、佐和先生から、あとまだ2点おありだということでして、大変申しわけございませんでしたが、本日、時間でございます。本日、まだご発言をしたい、あるいは「したい」というのは大変失礼な言い方なんですが、発言をさせてもらえなかったし、あるいはもっと十分にコメントをしたいというご意見もおありだと思いますので、本日の記録もいずれつくられて公表される可能性があると、私は思っておりますので、そのような向きは、ぜひ事務局の方にご連絡をいただきたいと思います。
 申しわけないんですが、もう時間でございますので、これで……(「7月9日の部会で……」の声あり)
 それでは、手短に。

○飯田(哲)委員 きょうはこういう形の懇談会なわけですが、次回、7月9日には正式な地球環境部会が予定されておりますわけで、そこはシナリオ検討委員会と国内制度検討委員会の取りまとめ的な側面が、今のところ、恐らく強いかと思いますが、この問題は改めて、先ほど、横山委員からも3省の検討はどうなっているのだという話もありましたので、しかもCOP6の再開会合の直前でもございますし、この問題は改めて議題に、次回7月9日に出していただいて、少なくとも中央環境審議会として出せるメッセージはその直前で、この京都議定書に関してどういうものがあるのかということを、ちょっとご検討いただけないでしょうか。

○浅野部会長 わかりました。ご要望として承っておきます。
 それでは、本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

午後6時30分閉会