中央環境審議会地球環境部会(第2回懇談会)議事録

日時

平成19年10月3日 13:30~16:30

場所

航空会館703会議室

出席委員

(部会長)   鈴木 基之
(委員)    浅岡 美恵 浅野 直人
        佐和 隆光 猪野 博行
(臨時委員)
        青木 保之 石坂 匡身
        浦野 紘平 及川 武久
        鹿島 茂  川上 隆朗
        木下 寛之 小林 悦夫
        須藤 隆一 高橋 一生
        中上 英俊 永里 善彦
        西岡 秀三 桝井 成夫
        三橋 規宏 森嶌 昭夫
        横山 裕道         

議事次第

低炭素社会の検討について

 ○尾島俊雄 早稲田大学創造理工学部建築学科教授
 ○原田 泰  株式会社大和総研チーフエコノミスト
 ○薗田綾子 株式会社クレアン代表取締役

配付資料

資料1     低炭素社会の検討について
        (早稲田大学創造理工学部建築学科教授 尾島俊雄)
資料2     環境保護と低炭素社会についてのan economistの見方
        (株式会社大和総研チーフエコノミスト 原田 泰)
資料3     「低炭素社会づくり」長期ビジョンについて
        (株式会社クレアン代表取締役 薗田綾子)
資料4     中央環境審議会地球環境部会懇談会(低炭素社会)の開催日程
参考資料    地球温暖化をめぐる国際的動向について

議事

13時30分 開会

○鈴木部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会第2回の懇談会を開催させていただきます。
 本日の審議は公開となっておりますことを報告させていただきます。
 それではまず、事務局の方から資料の確認をお願いいたします。

○市場メカニズム室長 資料の確認をさせていただきます。
 お手元の議事次第の後に委員名簿、それから資料1といたしまして今日ご発表いただきます尾島先生の資料、資料2としまして大和総研の原田様の資料、資料3といたしまして株式会社クレアンの薗田様の資料、それから資料4といたしましてこの懇談会の開催日程ということで、第7回までの開催日程、それからプレゼンテーションをしていただく有識者の皆様のリストができておりますので、ご参照ください。
 それから、参考資料といたしまして「地球温暖化対策をめぐる国際的動向について」ということで、9月にベルリンで行われましたG20対話、それから先般9月下旬に行われましたニューヨークでのハイレベル会合、それからワシントンでの主要経済国会合の結果の概要についての資料をつけてございます。
 それから、部数の関係でメインテーブルだけでございますけれども、今日3番目にお話しいただきます薗田様の方からパンフレットを2つ配付していただいております。
 以上でございますので、不足等ございましたら、事務局の方までお申しつけください。

○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
 それでは、早速議事に入りたいと思いますが、議事に入ります前に、前回森島委員の方からこの懇談会の位置づけ等につきましてのご質問、ご意見がございました。それにつきまして、今日は実は森島先生はちょっと遅れて来られますが、いらっしゃる前にというわけではないんですが、私の方から一応この検討についてのメモを準備いたしましたので、ご説明させていただきます。
 まず、低炭素社会づくりの検討は、長期的な課題として非常に重要と考えているわけであります。その検討は、国際的な流れをつくっていく上でも現時点から検討を進めておき、日本が適時適切に考えを示せるように準備しておく必要がある、また、地球環境部会が長期的な課題についての知見を深める、これはこの部会が抱える短中期的な課題の検討にも有効に反映されるものと考えているわけであります。他方で、本件は短い期間ですぐに最終的な取りまとめができるという性格の課題ではないことも承知しております。
 この懇談会におきましては、幅広い外部の有識者の方々からヒアリングを行い、議論を重ねることによりまして知見を深めていきたい。そして、節目節目におきまして、その時点までの議論の成果を取りまとめて、環境省にインプットさせていただく。こういうような形にしたいと思います。当面、洞爺湖サミットがございますので、本年12月に論点整理をして一段階の取りまとめをしたいと思っております。
 したがって、確たる周期を定めまして、諮問、答申という従来のスタイルはここではとりませんが、また有識者、ヒアリングの間は、極めて過密なスケジュールとなることもございます。そういうことから、定足数を満たすということが非常に難しいことが想定されますので、委員の方々への負担感を減ずるということもありまして、懇談会形式とさせていただきます。そして、その節目節目におきます部会としての取りまとめ、これを議論する際には従来どおりの部会形式とさせていただきたいと思います。
 なお、低炭素社会の検討は21世紀環境立国戦略、これは5月に特別部会でまとめさせていただきましたが、これにつきましては部会長であります私から特別部会におきまして、地球環境部会でこのヒアリングを行って検討を進めていくということはご報告いたしております。
 大体そういうようなところなんですが、皆様いろいろご心配になっておられるのは、ポスト京都の次期枠組みのあり方等について、ここでどういう形で審議をするのかということであろうかと思いますが、当面京都議定書目標達成計画の第一約束期間の検討につきまして、集中的に検討を行っている段階でございますので、この点につきましては政府内に4大臣会合等も設けられている関係もあり、当面すぐにここで取り上げるというような状況とはなっておりません。それだけご了解いただければと思います。
 それでは、ちょっと長くなりましたが、本日は前回に引き続きまして第2回目ということで、低炭素社会に関する有識者ヒアリングを行わせていただきます。
 今日は、大変お忙しいところを3名の先生方においでいただいて、お話をお伺いすることになっております。
 それでは、早速最初の有識者ヒアリングということで、もうご紹介するまでもないと思いますが、建築あるいは都市問題に関して非常に幅広くご活躍でいらっしゃいまして、早稲田大学の建築学科の尾島俊雄先生に今日の皮切りのお話をお伺いするということにいたしております。
 では、先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○尾島教授 それでは、最初に建築、都市の分野から、この問題についてお話をしたいと思います。
 この8月下旬に、建築学会でポスト京都の問題で研究協議会を開きましたときに、浅野先生、それから中上先生、茅先生がお見えになって建築学会としてお話を伺ったんですけれども、そのときは建築学会の立場として、私は建築家としてはこんなことを考えておりますというお話をしたのを最初に2枚ほどお話をしたいと思います。
 まず、建物、シェルターとして、建物自体として、それから建物の中には設備、この2つがこの問題にかかわりますので、まず建物自体のことなんですけれども、10項目ほど挙げました。建物自体で30%ぐらい削減できるんじゃないかというのが常識的なお話で、まず日本の建築様式なんですけれども、本来夏を旨とする日本の建築様式が、昨今の日本の建築はおかしいよという。世界中の建築様式が日本に入っておりまして、まさに風土、気候に適した地産地消型の建物ではなくて、もうスウェーデンハウスから、三井ホームじゃないけれども、世界中の建物が日本の住居になっております。これを日本的な建築様式にすれば、30%ぐらい削減できるんじゃないのと。
 それから、3Rの問題ですが、リユース、リデュース、リサイクルとありますけれども、これは前に鈴木先生にご指導いただいて、完全リサイクル住宅にすれば、これは50%ぐらい明らかに削減できる。そのモデルをつくり実証したわけです。それから、スケルトン・インフィルということで、今200年住居ということが言われておりますけれども、200年もつのはスケルトン、いわゆる柱壁部分だけでありまして、周辺の設備、インテリアはやっぱり20年ぐらいで取りかえるということです。ですから、これもうまくやって30%。
 それから、今高気密、高断熱で、ともかく自然の風が入らない家、自然の光が入らない家づくりをしております。自然をうまく使えば20%削減できる。それから、外壁ですけれども、高気密、高断熱の結果、今シックハウスみたいなことが起こっております。何かを一生懸命節約すると何かが抜けている。しかも、建物は中間期、夜もありますので、これも外壁をうまくやれば20%。
 あと、外乱ですね、外側のヒートアイランド対策があります。外側の屋上、あるいは庭の打ち水とか、こんなことをやると10%ぐらいとか。
 あと、形態で、コンパクトシティみたいなものとか、マイカー規制もありますけれども、建築的には10%ぐらいですね。
 あと、ライフスタイル、サマータイムですね、バカンス、クールビズがありますが、これは年間10%。
 用途に応じた建物の計画。コンバージョンでいろいろとつくりかえられる建物に最初からやっておこうと。
 あるいは、最近建物の冷房負荷がものすごく増えているのは、コンピューター等、あるいはガラス張りの建物、中のOA機器、こんなことが問題で、建物自体で30%ぐらいはいけるんじゃないかというのがまず10項目。
 それから、建物の中の設備ですけれども、これは建物の機器効率、エアコンの効率とか暖房の効率ですが、これが30%ぐらい、かなりいける。
 それから、最適運転ですね、運転方法。これはインバーターが入ったり、いろいろな負荷運転、部分負荷の効率で20%ぐらいです。
 あと、更新の問題ですね。コンピューター機能がうまくなくなるとすぐ買いかえますけれども、建物はなかなかかえられないわけです。そういったものをもう少しうまくやれば10%とか。
 それから、未利用エネルギー。都市的なエネルギーで、ごみの排熱利用とか都市の未利用エネルギーがありますけれども、それが20%とかですね。
 あと、今CDMの問題が起こっておりますけれども、ベースラインが決まっていないわけです。ベースラインをきちんと定めれば、これも10%。
 新エネルギーで住宅に入ってくる量、これもせいぜい10%ぐらいなのかなと。
 あるいは、省エネルギーの問題のマーク、いろいろマークをつけたり、これも15%ぐらいとか。
 その他いろいろありますけれども、こんなことですり合わせでせいぜい20%ぐらいは常識的には節約できる量かなと。こんなことを建築界として、各技術者レベルで努力できることの目標はこのくらいなのかという話を建築学会の立場でお話ししたのがこの前の8月下旬の話です。
 それで、用途別の建物の原単位、ベースラインが定まらないと幾ら節約したのかということがわからないわけです。1995年までの約1万例ぐらいの調査なんですけれども、住宅に関しては中上先生が非常に詳しくやっておられますけれども、オフィスとか各種デパートの延べ床面積がどのぐらいあるのかというのが左の欄にあります。これは偏差値なんですけれども、例えばオフィスですと全エネルギー消費量は430±200とあります。あるいは、今データセンターがものすごく負荷を使うんですけれども、1平米年間当たり1,100±400とか、こうやってものすごく偏差値が高くてばらついているわけです。したがって、一律に建物が平米幾らエネルギーを使うのといっても、これほどのばらつきがあるということです。
 ですから、この原単位に建物の延べ床は1年に幾ら使うのという、原単位に例えば東京都の都心の延べ床面積が幾らかなと掛けましても、一番右端にありまように石油換算で880万トンとか3,400万トン。要するにある建物というのは本当に一平米幾ら使うのというのはあまりにもばらけているという。冷房、暖房、給湯は、電力、照明を含めて、ものすごくばらついているということです。この辺のところを少し理解してもらった方がいいのかなということです。
 東京都が2005年にある基準値をつくっておりますけれども、この基準値は左の方の私の研究室でいろいろなデータを集めたものの調査と比較しますと、まあまあ真ん中よりもちょっと東京都は多いのかなと。しかし、この数値は本当にばらついている数値ですので、何を持ってということは言えないということですね。これだけはぜひご理解いただければと思います。CO2もそうなんですが。
 ちなみに24時間のオフィス系だけで、データセンターというのが上にあります。データセンターというのはコンピューターの負荷がものすごく要るわけです。それに対して一般オフィス、インテリジェントビルがあります。こんなふうにこのぐらい差があるということです。したがって、昔工業用水なんかで工場は冷却水を随分使っていたんですけれども、今の都心の建物はものすごい冷却をしないと建物は維持できないという。ですから、本来工業用水は民生の建物の冷却に欲しいぐらいです。これは経産省に何度も申し上げているんですけれども、そんなことで建物、都市が暑くなるのも、こういう激しい建物からのエネルギー消費量、冷却に要するエネルギーが必要だということを理解して、これがすごく増えているわけです。
 ちょっと古い建物の例なんですけれども、一般オフィスでも月別の変動があります。照明とか冷暖房がありますけれども、一番左が一般のオフィス、それから高層ビル、超高層。ですから、超高層の建物になりますと、ガラス化の負荷とか、あるいは外気が入らないとか等々を含めまして、年間の負荷が大体3倍ぐらいになっていることが左の一般から見るとわかります。照明の負荷の変動もあります。右の照明だけちょっとずれておりますけれども、そんなことで、どれぐらい建物がエネルギーを使っているかということがこれでわかると思います。
 さらに、住宅。これは中上先生がよくこの分野をご存じだと思いますけれども、札幌から沖縄まですごく違うということですね。これも何を持って標準にするかということを含めて、全国場所によって、しかもこれはある団地の建物の例なんですけれども、左が戸建て、右が団地の平均的なものなんですけれども、これとて先ほどのように5倍ぐらいから10倍も平米当たりの消費量が違うということです。この辺をどう考えるかということ。
 それから、Degree-Daysという外気温の変動、日射、そういうものを入れて、暖房期、冷房期、中間期とあります。室温が、やはり暖房期は低く、夏はうんと暑くということですね。こんなふうに調整はしてはいるんですけれども、中間期は、高気密、高断熱になりますと、下にありますように日射負荷とか、これはガラス窓がすごく多くなっています。日射負荷がそのまま冷房負荷になります。逆に、暖房ではマイナスになるわけです。
 あと、OA機器はコンピューター等を含めて、ものすごく建物にこういったコンピューターが増えておりまして、CPU関係ですね。今の図のデータセンターは10倍ぐらい使っていると思うんです。したがって、冷房負荷がものすごく大きくなって、冬でも冷房が必要だという、こんなような変動で、かつてDegree-Daysとエネルギー消費量がスライドした時代があったんですけれども、今ほとんどこれがスライドしない。こんな状況がわかります。ガラスとコンピューターがものすごく影響しているということ。
 それから、27~28年間の差なんですけれども、これは東京に関して1972年から99年までです。この間に人間はちょっと増えました。工場は逆に減っております。自動車が少し増えて、自動車は3相当増加しているんですけれども、エネルギー消費量はこのくらいですね。建物が3倍ぐらいに膨らんでいるのは、内部熱負荷、高気密、高断熱、通風性がなくなったとかこんな問題で、建物からの熱負荷がこんなに増えているということがCO2問題、あるいはまたエネルギー問題に影響していると。こんなことで、建物がいまだに増え続けている。
 これから都市問題に少し入ってくるわけですけれども、これはバカンスです。とにかく真ん中の東京都心部はヒートランド問題、暑くなっています。これが冷房負荷をものすごく押し上げているんですけれども、郊外、軽井沢から八ヶ岳にかけて温度差が随分、4度、5度温度差がある。東京からマイカーで、2日間以上滞在の避暑に行ってもらうと、確実にエネルギー消費が減るということです。
 ということで、都心のバカンスで本当に1ヵ月人が半分になると、ものすごく都市のエネルギーが減るということです。こんなことで、東京なんかの場合には首都圏、真ん中の暑いところはどんどん暑くなっておりますけれども、郊外に1日か2日以上滞在してもらうと、交通エネルギーとの差が十分に出てくるということ。こんなことで、クールビズだけじゃなくてバカンスの問題を取り上げてもらえればいいなと都市的な面から考えております。
 それから、都心部なんですけれども、都心部の都心居住が進んでいますけれども、都市で分散型電源とかコジェネレート化というのがあります。そうしますと、都心では排気ガスも出るんですけれども、郊外の火力発電所、こういった負荷を減らすことになるわけですね。そういう意味は、地球全体としては都心における分散型電源立地とかコジェネというのは、地球レベルでは寄与する。さらに、郊外から都心に居住が増えるということは、バイカーからバイエレベータ時代ですね。これは明らかに郊外の負荷を減らし、都心で影響が減ってくる。
 ちなみにどのくらい行けるだろうかということで、左の下の方、交通は1990年時点で、2010年まで35%で、5%増えております。建物が20年間で20%も増えている。工場は少し減っていると。こんな状態に対して、都心居住とうまい形でやれば、2020年までに交通を減らす手段、建物の負荷を先ほどのように20%、30%減らす方法。工場は自然減、あるいは効率が上がっていますので、東京都レベルであれば2020年までに70%ぐらい。2010年で1990年以前から20%上がっています。100から120ですね。それを2020年までに完全に先ほどの計画を実行すれば70%まで下がるのかなと。東京都は2050年に50%までということを言っておりますので、そうしますと交通とか建物とか工場の分担がこのくらいの比率だといけるかもしれないと。こんなことで勝手な数字をはじいております。
 それから、地方の問題で、今コンパクトシティの問題なんかが出ておりますけれども、地方の交通のエネルギーは東京に比べて2倍ぐらい使っているわけです。建物も2倍も使っていると。これを地方都市にあっても都心居住型にし、あるいは農山村においてはバイオマスをうまく使うとか、そうすれば少なくとも半減させることも不可能ではないとか、こんなことは少なくとも技術的には言えると。
 それから、大都市の問題で、ごみの排熱利用、都市の有効利用ですけれども、これはパリの例が右側にあります。30年前にパリと東京を同じ蒸気の排熱利用のネットワークをつくる計画をしまして、パリは着実に今日50%をごみの排熱で賄っております。東京都がまだ0%という。地域暖房が大分増えておりますけれども、赤い幹線は600億ぐらいかかりますけれども、これができますと40万トンぐらいは少なくともCO2換算で減りますということです。
 これは環境省にも申し上げているんですが、これまでのごみ焼却炉は周りに熱を使うところがなかったので、自家発電をやっております。パリは自家発電に5割、地域暖房に5割。地域暖房といいましても蒸気は冷房もできますから、パリに比べると東京の密度は、冷暖房をあわせますと土地当たりの負荷密度が年間2倍ぐらいあるわけです。したがって、ものすごく有効にこれが使えるわけで、そろそろ東京都心にあってはこのくらいのプラントを結んでいただければ、年間ここだけで40万トンのCO2が節減できます。
 さらに、環八の周辺の焼却炉を入れますと、これはコペンハーゲン並みの年間150万トンぐらいのCO2を削減できる。これもヨーロッパ各国はもう既にやってきたんですね。この20~30年間着実にやってきたんですけれども、東京もそろそろこういう問題に取り組んでいただきたいということを環境省にかねてから申し上げております。
 ということで、一種のクローズドシステムをバイオスフィアの地球レベルで、都市建物においてもこういう自然の風や雨や、あるいは太陽を含めて緑等、クローズドでのシステム。これはキャンパスレベルとか、あるいは都市レベル、これは愛知万博の例でやろうとしたんですが、うまくいかなかったんです。やっぱり半クローズド空間を考えて、そこにある自然の太陽や雨や、あるいは外から入ってくるインプットエネルギー、その差のシステムCOPみたいなものをきちんと計算しようと思ったらできる。ドイツなんかではかなりそれをやっておりますので、交通あるいは冷暖房、そういったものをすべてのエネルギー含めて、シティとかキャンパス、あるいは地域レベルでのシステムCOPみたいなものを計算するということが必要な段階に入ったのではないかというふうに考えております。
 自然の風の道なんですけれども、一雨降りますと、本当に都心の温度は3度も下がります。打ち水を幾らやっても周辺だけなんですけれども。ですから、自然の雨というのはすごい冷却力がある。
 あるいは、風なんですけれども、卓越した南風、あるいは東京湾からの下の方に沿ってくる海風、こういったものをうまく取り入れて風の道をつくりますと、さっき申し上げたように2割は節減できるということです。かなりの量で、しかも海際のところの冷却力が相当強いということです。これは2年間の国交省の大規模調査でかなりわかってきましたので、建物の配置の仕方とか緑の置き方、あるいは水の道のところに風が流れる。これは当たり前のことを地球の高低差を使いながら都市の環境気候図をつくっていくということで、これはドイツではもうベルリンなんかではきちんとつくっております。何とか東京、あるいは名古屋とか大阪でもやってほしいということを申し上げるんですけれども、しかしこれをどうやってオーソライズするかということは非常に難しい問題です。試案としては出し続けているわけですけれども、しかしどこかでこういったものをオーソライズしながら、少なくとも風道に関しては高層建物の壁になるようなものを避けるとか、そういったことを今から環境の事前評価の中で入れていきたいというふうに思っております。
 そういうことで、生産コストに対して環境のコストというのを、環境税ではなくて生産にかかるコストは、今度はゴミ廃棄物を還元するわけですから、税ではなくて、それはコストという概念で。ちょうど今、東京都でもそうなんですが、上水に対して下水料は同じなんですね。同じように、エネルギーを使ったら、それ以上の還元のためのお金がかかるんだという、上水道料金に対して同額の下水道料金を払っているという。生産に要するコストに対して、還元に要するコストを、むしろ生産コスト以上見ないことには、この産業循環は成り立たない。
 建築だけに関して言うならば、バージン材を使ったものを完全に再資源化するという完全リサイクル住宅。これは鈴木先生のご指導で産業連鎖型と自然の生態連鎖型の2軒の実物をつくったわけです。95%ぐらい完全にリサイクルできるという、建築だけでもそんな仕掛けが実現できたわけです。しかし、コストの見方を変えないと、社会には還元しない、こんなことを感じたわけであります。
 以上で私の報告を終わらせていただきます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
 30分ほどいろいろご質問をさせていただいてよろしいでしょうか。
 それでは、委員の先生方からご質問、あるいはご意見があろうかと思いますので、お持ちの方は名札を立てていただければと思います。
 それでは、そちらから順番に。

○須藤委員 大変有益なお話を伺いまして、ありがとうございました。なるほどと感銘を受けたわけでございますが、二、三簡単なことをお伺いしたいと思います。
 廃棄物の熱を地域で生かされていない、地域の熱システムの中に入っていない分の問題が、なぜそういうことが東京でできないんでしょうかというのが、克服しなければいけない点は何かというのが1点目。
 それから2点目は、風の道というのは当然納得のできるお話なんですが、都市計画の中でこういうものは従来から考慮されなかったんでしょうかというのが2点目。
 3点目は、私は主として水の仕事をやっているんですが、前々からなぜ水道料金と下水道料金が同じで、私の考えでは下水道の方が2倍ではなくて、3倍なり、5倍なりが多分コストとしてかかるので、この辺も私も先生のご意見に共鳴するところなので、その辺についてもコメントをいただければと思います。ありがとうございました。

○尾島氏 最初のごみの問題ですが、東京都に限らず、全国のごみ焼却炉はどんどん大型化して、収集エリアが広がって、少なくともダイオキシン問題とかそういうことを含めて、効率よいたき方をすると。その結果、周辺に熱が出ましても、その熱を使う場所がないということで、仕方なしに発電をするということです。ところが、その発電効率がNEDOデータ、あるいは私どもの研究室のデータでも最大20%なわけです。パリをごらんになるとわかりますが、80%ぐらい熱をうまく使っているわけです。ということで、周辺に熱を使う場所がない状態、それが一番で、しかし気がつくと東京の場合には地域暖房で相当ネットワークができてきましたから、かなりすぐ間近に熱を使うところが出てきましので、そろそろということで。
 それから、風の道に関しては、建築は僕らの学生時代は必ず家は夏を旨としてではありませんけれども、配置図を書きますと、当然南北方向と、どっちが南か北かと同時に、その地域はどっちから風が吹くのということ、風配図を必ず書いたんです。ですから、夏はどこから風が通ってどこへ抜けていくかという、建物の中に風が通る空間を必ず書いていたんです。丸ビルもそうです。昔の丸ビルは真ん中に穴があいていますね。ですから、必ず中間期、夏もそうなんですが、風が通り抜けるように天井を高くしたり、あるいは南北に必ず窓をつくったり、下から上にとか、そんなふうに配置図の中で必ず風の方向を書いていたんです。
 だけど、昨今冷暖房が完備しますと、なるべく冷暖房負荷を計算しなくていいように、間違いなく計算できるように、高断熱、高気密、シェルターにしちゃったんです。そうしますと、中間期分をどっちかにしなければいけないということを含めて、気がつけば風向きなんか無視していいという状態です。
 あと、設備で、しかもこの前も学会で申し上げたんですが、建築の設計料というのはコストに対しての何%が設計料なんですね。ですから、建設費が高ければ高いほど、設備が高ければ高くつくほど設計料が入るんです。技術者ですから、なるべくでかい設備を入れた方が、設備の設計料はもうかりますから。という悪循環が風の道なんか無視していいような形にしてしまった。
 したがって、外側の風の向きは関係ありませんから、東京なんかの場合は海風がどこまで来ようと全然関係ないという。結果としては、ほとんどが外側の環境を無視した形で建物の設計をしてしまったと。これは単なる戸建てじゃなくて、高層建築でも全く同じで、いつの間にかこの20~30年は冷暖房が完全に普及した段階で、風向き、太陽の向きさえ無視するような感じになってしまった。
 それから、上水下水に関しては全くそのとおりで、私も上水よりは多分下水の方が高いでしょうね。ということで、そういうことをきちんと原価計算しながらとる方法。ですから、5%、10%の消費税に対する環境税じゃなくて、これは還元するのにかかるわけです。ですから、そんなものを地球レベルで、きちんとこれはかかりますよと、コストとして。使ったら還元しなければいけないわけですから、そういう考え方みたいなものをやはり定着させるときではないかなと思っております。

○鈴木部会長 鹿島委員。

○鹿島委員 ありがとうございました。3点ほどお伺いしたいと思います。
 1点目は、最初に清掃工場からの熱利用の話で、これは例えば下水道のネットワークとかそういうのを使えるんでしょうかというのが1点目でございます。技術的なことで申し訳ございません。
 2点目は、いろいろな都市という単位なのか、あるいは地域なのかという、ある地域の中で自然エネルギーをどのぐらい、あるいはその他を含めて使えるかという、こういう話を図5とか図6で見せていただいたんですけれども、こういう診断なりをやるためのスキルとか、あるいはどのぐらいの能力があったらいいんでしょうか。
 私は交通屋なんですが、交通でいくと実は信号をいろいろやりたいんですけれども、これをちゃんとやるためにはやっぱりかなり人と手間がかかるという、なかなかそこに今はかけていただけないということがあって、先生のこういうことをやると、まずそのプランをつくらないといけない、現状をちゃんとつかまないといけないのかなというので、何か参考にさせていただけたらと思うので、こういうのをやるとしたらどのぐらいの手間とか予算とか、あるいは人間がかかるんでしょうかということをお伺いしたいと思います。
 それから3点目は、ちょっと今日のお話とはずれてしまうのかもしれませんが、ちょっと私も学生時代に都市計画を習いまして、もともと所有権という主権の中で強い権限を何の保障もなく制限をしたというのは、19世紀末ぐらいに病気がいっぱいはやって、これはお金持ちも貧乏な人もみんな平等にその被害に遭うと。ですから、これを何とかするために土地利用規制ですとか、あるいはその他の規制を所有権に保障なくかけることができたんだと、こういうふうな話をしていただきました。
 そのときに実は2つあって、私の記憶が間違っているかもしれませんけれども、ドイツはこれを技術開発で何とかしようと、イギリスは今のような規制をしようと。どっちがどっちということはないんですけれども、実は今の温暖化の状況を、そうやって客観的に見ていてはいけないのかもしれませんけれども、何となく見せていただくと、19世紀のころのちょうど都市の中に急速に人口が集まり始めていろいろな問題が起こって、これが貧富を問わずにいろいろな影響を与え始めたという時代と何となく似ているのかもしれないと考えると、何か先生のお話のような幾つかの、例えば風の道の規制の問題ですとか、あるいはその他、都市の中での生活をしていくための規制というのも、そういう今申し上げたような観点から説明をしていくと、都市計画の中で実行できるのではないかなというような気もするんですけれども、先生はいかがお考えかお話しいただけたらと思います。
 以上でございます。

○尾島教授 最初、下水道系なんですけれども、下水道の排熱利用に関してはスウェーデンなんかはものすごく進んでいまして、日本でも生下水ではなくて、処理した水をヒートポンプの熱源水にして、COPが5とか6と、非常に効率よい地域冷房を始めております。冷暖房です。
 ですから、千葉とか、あるいは後楽とかということで、東京都心にも、あるいは全国的にも、下水道の処理した水を熱源としてヒートポンプ熱源水にして、それを地域冷暖房にするということで、非常に効率よく、これはもうかっております。
 むしろ今考えているのは生下水中のところに東京駅周辺の銭瓶町の下水ポンプ場がありますね。ああいったところに、熱をとりながら都心部のところでの冷暖房の熱源水として使うということですね。これもNEDOなんかの予算を何度も請求しながら、しかし最後は下水道局はメンテナンスはだれがするんですかということで、詰まったらどうするんですかということで。
 しかし、もうスウェーデンでは先駆的な例がありますからということで、そんなことで下水道の処理水はもとより、熱源として使う形でヒートポンプ用の熱源水として使う、冷房暖房を含めてCOPが5とか6になりますので、これは空気熱利用よりははるかに効率よく、多分20~30%ぐらい節減できると。これは都市全体に下水道が回っておりますので、それでは随分可能だと思います。
 それから、自然のメッシュですね。去年、おととしと国交省でヒートアイランド問題の総合技術開発プロジェクトの予算が出ましたので、これは5メートルメッシュ。ですから、建物の5メートル間隔ぐらい、上下方向、水平方向を含めて5メートル間隔のグリッドで、10キロ圏の解析を地球シミュレーターを使って丸1日動かしてやりまして、相当正確なものを出しました。ですから、お金さえあればものすごく正確に今風の流れが解析できます。それをパソコンレベルで今ブレークダウンしながら地方自治体が使えるようなところまで持っていくために、3年間の総合技術開発プロジェクトは終わったんですけれども、この2年間をかけてフォローアップしております。多分そういった温度差、風のところまで計算できますので、私は大気汚染関係には十分使えるようなものも、あるいは交通に使えるようなものに、間もなくなるんではないかなと思っております。
 それから、シビルミニマムという言葉が10年ほど前に随分普及したことがありますが、私はいつも日本の場合城下町として、城の中はともかく、やっぱり住民が棄民であって、何かあったら捨てられてしまうと、焼かれてしまうとか、それくらいの都市の発展の仕方をしたので、スプロールしちゃっているんですね。したがって、大陸のような羅城都市、いわゆる城で囲まれた全市民が一丸となって城の中に立てこもる城市ではないですね。
 大陸の場合、完全にシビルミニマムの思想、全員が一丸となって、領主のためにじゃなくて自分の生命のために守ることで、都市の人たちの権利と義務がかなりしっかりしていたような気がするんです。
 日本の場合には、侍はともかくとして、この100年ぐらいで、本当の市民になった人たちですから。シビルミニマム的な発想に対しては、都市の守るべき倫理観とか道徳とかを含めて。
 なかなかその問題に対しては、都市計画をやっている立場からも非常に難しいような気がいたします。
 ヨーロッパの場合は、かなりその辺のところ、お互いに理解もされますよね。例えば、都市環境の気候図をつくって、この辺は空気が流れるとか、この辺はたまりますとかというのに対して、非常に市民が協力的な雰囲気もあるようです。

○鈴木部会長 よろしいですか。
 それでは、青木委員。

○青木委員 建物関係についてちょっとお伺いしたいんですが、先ほどの資料で建物が3倍排熱量が増えているというお話がございました。この理由について、ヒントになるようなお話をいろいろ伺っているわけでございますけれども、設備とかいろいろ、テレビとかそういった機具等が原因かとは思いますが、これの増えた理由についてまとめて、またそれを先生はどういうふうにすれば下げられるとお考えになっているのか。いろいろヒントはいただいているわけでございますけれども、少しまとめてお話をいただけるとありがたいと思います。
 それから、ちょっと個人的ですが、実は私は大正年代に建てた貸家普請の家に住んでいるんですけれども、2階建てですが、夏なんかは1階の部屋は扇風機だけで十分過ごせます。最近の東京の戸建ての建物を見ていますと、非常に窓が小さくて、もちろん耐震の問題とか防火の問題があるわけでございますけれども、最近の機材等を考えれば、もっと窓を大きくして、特に夏は窓を開けて風を通すというような建て方があってもいいのではないかと思うんですけれども、その辺についてどういうふうにお考えになっておられるか、もしお聞かせいただければ幸いです。

○尾島教授 小林官房長の家、エコハウス、あれは建築界の人たちはちゃんと勉強すべきだと、私は大学院の学生にも教科書にしろと言っているぐらい、建築家の人ほどそういうことに対して無神経ですよね。しかも、一般の人は選ばれるときに、やっぱり今建て売り住宅で、いろいろな量産化された家で、車を買うような形で住宅を買っておられますよね。そういうのがもう半分を超えております。
 そんなことで、先生のようなそういう本当に身近な大工さんとか、自分の生活に合わせてゆっくり建物を建てていく人が増えてきますと、私はもう少しこういうことに対して敏感になっていくと思うんですが、今のところはあまりにも無責任ですね。建てたときの感じ、あるいは建物そのものを見るよりも、家具を見て建物を買うぐらい、あるいはカーテンを見て建物を買うんじゃないかと思うぐらいに、気軽に住宅を買っておられる感じがします。
 そんなことで答えにもなりませんけれども、当たり前の家を当たり前の形で、あるいは日本的な建築様式をいつ取り戻せるのかなということですね。どうもこの10年ぐらいの間はまだ絶望的で、でもそういう当たり前の家をつくろうという動きがものすごく地場の工務店とか大工さんから動き始めております。ですからバブル時代や高度成長時代の、ともかくもすごい建物がつくられた時代はそろそろ終わりなのかなと。
 要するに、建築家の設計じゃない建物が、僕らから見ると機械屋さんが設計した建物だという、逆に建築家が参加させてもらえない形で、妙なデザイナーが入りますともう住宅メーカーが邪魔だぐらいに。また、建築の卒業生は住宅メーカーにはあまり入らないですね。多くゼネコンに入っても、住宅のレベルに入っていくのは建築屋さんじゃない人たちが逆に設計を。トヨタなんかもあれでしょう、トヨタ自動車でトヨタホームをつくっているわけですね。ということで、経済産業省が逆に住宅産業を手がけているぐらいの感じで。例えば、早稲田の建築学科の場合なんかは、本当に目の敵にするようなぐらいの今の住宅産業のあり方なので、もう少し当たり前の人たちが増えてきてくれるといいかなという気が私自身はしております。

○鈴木部会長 よろしいですか。
 佐和委員。

○佐和委員 2点お伺いしたいんですけれども、まずこのパワーポイントでいいますと3ページのところですけれども、こういう削減の可能性というのが数字で列挙されているわけでございますが、これは一つの技術的なポテンシャルとしての可能性だと思うんですね。実際にはこういった削減を、あるいは省エネルギー対策をリアライズするというか、実現するためには、放っておいてもご自身それぞれが自分の環境モラルに照らして、こういうことを率先してやるのか、それとも何か国が経済的な支援をすべきだというふうにお考えなのか、あるいは規制を施すべきだというふうにお考えなのか、それとも環境税等の経済的ないわばインセンティブを仕掛けるのが望ましいのか、その辺についてお伺いしたいのが1点。
 それから、もう一点は、若干理解しにくいところがあるんですが、11ページのところに交通、建物、工場と書いてありますね。それで、90年にそれぞれ30、30、40で足して100%と。それは2010年には120%になって、2050年には50%になっているわけですね。これは確かにクールアース50じゃないですけれども、2050年に半減するという数字になっているわけですが、どうもそのパーセントが何となくちょっと抵抗を感じるんです。
 つまり、1990年の排出量を100とすればという話なんでしょうか。そうすると、30、30、40と。そして、交通に関しては、2050年に30が15に減るということで半減されると。そして、建物の場合は3分の2になると。工場は、さらに半分以下になるというような数字になっているのか。これはどういう根拠に基づいて想定された数字なのか。
 あるいは、こういうふうな削減が可能であるためには、どういうふうな革新的な技術の開発というものを前提とされているのか、あるいはどういう産業構造を想定されているのか。つまり、工場がこんなに少なくなるということは、相当日本は製造業が、少なくとも国内では生産拠点を海外に移転するとかということで、撤退しているということになろうかと思うんです。その辺の根拠といいますか、背景を教えていただきたいと思います。

○尾島教授 1点目は、建築の建物の設備側で、このくらい減らすことでそう機能を減らさなくて可能ではないかなということで、A、Bの表で、これは建築学会でもお話しした数字なんです。では、これをどんな形で実現できるか。僕はやっぱり経済的なインセンティブしかないのかなと、こんなふうに思っているです。結局、住民サイドで選択し、あるいは進めるときに、やっぱりこのくらいお金が少なく済みますよとか、例えば設計者が相手を説得する場合にも、そういう言い方が一番楽ですね。設備の機器とエネルギーで、設備の機器がこのくらい高くついても、エネルギーでこれくらい安上がりだからこうなりますと。そうすると、やっぱりエネルギーの単価が幾らかとかいうことで、説得するときやっぱり一般の方々の最終的なせめぎはその辺で設計者が決めてしまうということなんです。
 したがって、エネルギーコストが高くなれば、逆にいい設備を持たせて省エネになるように説明しやすいんです。それは、環境税であれ何であれ。ですから、僕は経済的な制約条件が最終的に一番説明しやすいと、こんなふうに思います。
 それから、図の3のところで、1990年から2010年まで100%から120%になりましたと。この辺の数字は、東京都の資料で72年から99年まで、例えば工場が少し減りました。自動車は少し増えたけれども、建物はこのくらい増えました。このトレンドで、なぜこんなふうな数字になったのかということを議論した経緯があるんです。これは日本の例ではなくて東京の例なんですね、先ほどの大都市の例です。ですから、東京とか大阪とか大都市周辺の工場は、工場再配置等のあれもあったんですけれども、ずっと傾向が続いておりますので、大都市周辺からの工場はやっぱり減っていくんじゃないかと。ですから、日本列島全体ではないということがまず第一です。
 それから、自動車も、だんだん自動車の交通関係で、かなり今公共交通機関にしようとか、ハイブリッドにしようとかいうことで、多分自動車の方の量はこのぐらいまでは減らす努力をされているんじゃないかと。この30年の経過を見ますと。
 というようなことで、2050年東京都はこうしたいと言っているんですね。東京都がこのくらいの数字にしたいと。ですから、あえて東京都がやるとすれば、このくらいの比率なのかと、比率ならできるんじゃないかということを議論しながらつくった数字であります。したがって、目の子だというふうに考えていただいて。これは文献をと言われても困りますので、今日はあくまでもこの辺はパワーポイントですから、あまり参考にされるんじゃなくて、そのくらいの雰囲気で受け取っていただければと思います。

○鈴木部会長 ちょっとマイクのルートがここを通りますので、私の方から2点ほど、半分お願い的なこともあるんですが。
 例えば、霞ヶ関のこういう醜悪な建物がいっぱい並んでいるところで、省エネルギーをするとどうなるという話ではなくて、むしろそのエネルギーを例えば現状の6分の1に減らさざるを得なくなったときに、一体この町はどうなるのかという視点というのは、ここに限らないんですが、例えばそれぞれの住宅であっても、昭和30年代ぐらいの電気使用量に絞ったとしたら、一体どういうことになるのか。そういうようなことをお考えいただけると大変。
 2050年、50%というのは、実は日本だけに限って言えば6分の1ぐらいに減らさないと、地球全体の50%を満たせないんですね。6分の1というのは1つの目安だろうと思っているんですが、そういう場合に今まで先生がおつくりになった建物も含めて、一体どういうことになるのかというあたりをちょっとお考えいただけるとありがたいと思います。
 もう一つは、先ほど建築家がコミットしない建物、確かにそうなんでしょうが、我々から見ますと、有名な建築家の方がおつくりになった建物ぐらい困るものはないというのもあって、東京フォーラムとか何かすごいのはいっぱいあるんですよね。写真にとるときれいなんだけれども、そこに住む人は本当に電気代がかかってしようがないしというような、そういうところで、尾島先生のようなまさにファンクションを、建物の機能というんでしょうか、建物の住むための環境等々を含めてきちんとお考えになる建築家というのは今あまりいらっしゃらないのか、あるいは早稲田の卒業生でなければだめなのか、その辺はどういう状況になっているんでしょうか。

○尾島教授 最初、霞ヶ関の6分の1というのは考えられない数字ですね。

○鈴木部会長 多分、廃墟になる。

○尾島教授 近代建築を維持するのに、エレベーター、照明、エアコンを含めて、6分の1というのはとても考えられない。

○鈴木部会長 どうなるでしょう、6分の1しか電気が使えないとなったら。

○尾島教授 少なくとも、高層建築みたいなものは成り立たない感じがいたします。

○鈴木部会長 しかし、もう既に存在するわけです。

○尾島教授 廃墟になるんじゃないですかね。
 その数字は、もし6分の1という数字を与えられた瞬間に相当考え直して、建築様式から全く考え直さないと。エレベーターがなくては、10階、20階までは上がれませんから。それから、水を上げるにしましても、何を上げるにしても、輸送エネルギーがそんな効率よくいくはずもありませんし、ですから、そういう場合にはまず高層化は絶望だと。6分の1という現状ですね。
 ということで、もし鈴木先生からそういう問題を与えられたら、我々は検討しなければいけないと思います。学会を挙げて検討するように。中上先生、ひとつそういうことで。これは住宅では可能かもしれないけれども、今のオフィスでは、今の工法ではちょっと難しいですね。
 それから、建築の教育の最初の段階で、「建築自由」という言葉があるんですね。建築は自由に建てるべきだという、自由平等の自由です。ですから、それこそが建築家の夢という感じがありますので。ですから、それがなくて最初から規制の中でというと、これは機械的発想という。元来、建築は文学部とか、芸術学部に属しているべき、工学部に属しちゃいかんというぐらいの信念をどこかで持っておられる、いわゆるアーキテクトの世界。
 もともとアーキテクトの建築という定義は、近代建築では、「お墓とモニュメントだけがアーキテクチャー、建築である」ということなんですね。アドルフ・ロースという建築家が1930年代そう言っている。建築、アーキテクチャーは、ビルディングとは違うんですけれども、箱ものというのと違うんですね。機能を満たすものは建築ではないと。したがって建築家教育、アーキテクト教育の中には、基本的には、お墓とモニュメント的な、エネルギーを使うようなものとか用途に寄与するようなもの、そういう概念があまりないということなんですね。多分、東京大学の最初の建築教育もそうだったと思いまして、早稲田でもやはり大学の建築家教育のベースにはそれがあるということです。
 ですから、そういったことで、ある意味ではこれから建築という言葉そのものもヨーロッパ的な建築教育の中にもそういう思想があります。そんなことで、ともかく産業革命以後の建築は従ってアーキテクチャーと言われるような、いわゆる建築、芸術の香りのする建物、そういうものというのはないと言ってもいいかもしれない。そういうことでこの問題は我々の永遠の課題だと考えています。

○鈴木部会長 すみません。
 横山委員。

○横山委員 3点ご質問したいと思います。
 1点目はスライドの3番目ですが、これも先生はあまりまじめに考えないで、目の子でこのぐらいかというようなことで、私もなるほどと納得はしました。ただ、1点納得できないというか、何でこんなに少ないのかなと思うのは、6番目の新エネルギーの活用・グリーン料金というのが10%となっていますけれども、どうしてこんなに低いのか。日ごろ原子力よりも再生可能エネルギーだといっている私からすると、かなり新エネルギーへの期待がないような感じがするんですが、その辺どう考えたらいいかということを教えていただければと思います。
 それから、2点目は青木さんからもありましたけれども、9ページ、東京23区の8月の人口排熱の変化ということで、建物については先ほどご質問がありましたので、工場が逆に減っているということは、エネルギー効率の向上ということとか、あるいは現に工場が減っているのか。その辺のもう少し詳しいことと、この工場の排熱が減ったということを建物の排熱減少に何か利用というか、それを活用というか、これを参考にすることはできないのかということです。
 3点目は、何度か先生は今日のご説明の中で、環境省には申し上げたという言葉を使われたんですが、それに対して環境省はどういう反応だったのか。あるいは、国交省、それから経産省にもいろいろと提言なさっていると思うんですが、ほかの省なんかの反応はどうだったのかということを聞かせていただければと思います。

○尾島教授 1点目の新エネルギーの利用は10%と大変少ない数字なんですが、建物の8割ぐらいは都市でつくられております。都市の中の住居やオフィスにしましても、都市の中では建物に付随した風力とかソーラーとかというのは本当に少ないんですね。ですから、農山村まで入れたものを考えれば、先生がおっしゃるようにソーラーなんかのウエートが高くなると思うんですけれども。都市はどんどん集合住宅化されて、ソーラーコレクターの面積も相対的には減りますし、ですからこんなところが限度なのかな。農村の住宅なんかは、多分この10%じゃなくて、きっと50~60%にいくかもしれませんね。屋根が大きくて、うまい部屋の配置をすれば。
 それから、9ページの工場排熱、あるいは工場は東京の場合にはやはり減っているんですね、省エネルギーというよりも。それから、工場排熱の利用に関しては、川崎の工場排熱とか、福山とかいろいろなところで実は提案し、NEDOなんかでもプロジェクトを出したりしておりますけれども、やっぱり工場が絡みますと本当に民生用に使うエネルギーというのは面倒くさいんですね。工場を停止するときには、別途に自分でボイラーを持つとか、熱供給事業法で厳しい供給規定があって、安定供給がありますと、そんなことをするくらいならやめてくれというのが、実情です。30年来言い続けているんだけれども、実現してないということで、実はほとんど工場からの排熱利用というのはないという状態です。
 それから、先ほどの東京都のごみの焼却排熱の利用はそろそろいかがなものかということを国交省の研究会で去年から立ち上げて、環境省には多分局長レベルの方には、国交省との話し合いの場を通して、年内ぐらいに何か考えてくださるという話を聞いております。二、三年前からかなり具体的な数字とプロジェクトを提言しておりますので、多分小林官房長もご存じだし、それから今日はお見えになっておりませんが、今の水・大気局長の竹本局長にも申し上げておりまして、考えるとおっしゃっていただいておりますので、多分来年あたりには実現するのではないかと期待しております。

○鈴木部会長 では、最後に中上委員。

○中上委員 尾島先生、久しぶりに講義を聞かせていただきまして、ありがとうございます。前回の建築学会のときには、ほんの時間が限られていたものですから、大変懐かしく聞かせていただきました。
 コメントでございます。建築というのは今尾島先生からお話がありましたように、設備の設計をするときも、クライアントからクレームが来ないことを前提にやりますから、必ず安全率を大幅に見込むわけでありまして、そうするとエネルギーの面から見るとどうしても多消費というか、むだが生じるわけです。ただ、それが昨今の情勢で、設備の技術者の発言権がかなり強まってきましたので、エネルギー制約という観点からの設計条件が相当重きを置かれるようになりましたから、いずれ変わってくると思います。
 そういう意味では、パラダイムも変わりつつあるわけですが、一番重要なのはやはりテナント側が意識を変えていただかないと、ビル側あるいは建築側が幾ら努力しても、それをテナントが評価してもらわないと、結局コストとしてもそれが投入されないということになるわけですので、そこをどうするかということです。
 その一つの方法としては、コストに乗せて解決するというやり方もあるでしょうけれども、やはりテナント側の意識を変えるという意味では、先生のお話にもありましたが、ラベリングというような方法をもっと主張して、ユーザーに理解してもらうということが大事じゃないかと思います。
 もう一点は、今先生がお話になったのは都市が中心でございますけれども、ビルでいきますと、いわゆるエンジニアリングされているようなビルは、相当大規模なビルでなければエンジニアが入らないんですね。1万平米以上のビルは、恐らく全ビルの数の1割もないんじゃないかと思います。9割以上はそれ以下ということは、小さいビルになるとなかなかエンジニアリングが入らない。ここをどうするかというのも、同じように都市でも問題があると思います。
 ですから、霞ヶ関だけを見ていると、やっぱりどこか抜け落ちてしまう部分が随分出るわけでして、ここをどうしていくかというのは本当に問題だと思いますので、いずれまたこういう、今はまだ大きなところだけに網をかけてお話をしていますけれども、小さいものをどうするかということが、私どもにとっても非常に大きな問題だと思っております。
 コメントでございます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。

○尾島教授 鈴木先生、せっかく田村次官も今日お見えになっておりますので、ぜひお願いしたい、あるいは鈴木部会長にお願いしたいんですが。例えばごみの排熱でCO2を40万トン節約すると、本当にトン1万円なんていうお金がどこかから出るならば、本当に5年、10年でパイプラインのネットワークができるんですね。
 ですから、デンマークのコペンハーゲンやヘルシンキ、それからパリも延々とパイプラインができているのは、やっぱり助成があるんですよね、何らかの意味で。有効利用だけではなくて、国内での助成策がありますと、国交省も動きやすいということです。ぜひともこのくらいだったらファンドなり助成ができる、CDM、CO2の。そういう数字を出していただけると、F.S.ができるということで、ぜひそれをお願いしたいと思います。
 今日はどうもありがとうございました。

○鈴木部会長 まずは、ごみ処理場を霞ヶ関の真ん中につくれば、非常に短距離に熱が有効利用できるということもありますよね。何かNIMBYシンドロームというのがあって、難しい面があると思うんですが。
 それでは、最初のスピーカーとしてお越しいただきました尾島先生、お忙しいところをどうもありがとうございました。
 それでは、2番目の学識経験者、有識者の方としまして、これもお忙しいところをおいでいただきましたエコノミストの大和総研の原田泰さんでいらっしゃいます。原田さんは、経済企画庁にお入りになって、その後大和の方に移られて、現在チーフエコノミストとして大活躍をしていらっしゃいます。
 それでは、後ほどいろいろご質問させていただきますが、それも含めて1時間以内ぐらいでお願いいたしたいと思います。どうぞよろしく。

○原田氏 大和総研の原田です。このような重要な会議にお招きいただきまして、大変ありがとうございます。
 私は、最初経済企画庁に入りました。そのとき、まだ環境省ではなく環境庁と言っておられたのですが、環境庁に出向させていただきました。もう30年以上前の随分昔なのですが、そこで入ったばかりで、廊下をばたばたと歩いておりました。今お名前の出た竹本局長とか、南川局長とかと一緒に遊んだり仕事をしたりした経験がございます。
 その後、環境について特に何かするということはなかったのですが、であるにもかかわらず私が呼ばれましたのは、環境保護と低炭素社会について、違う観点から何か話をしろということだと思います。経済学にはちゃんと環境経済学という分野もありまして、委員をされておられます植田先生、今日はいらっしゃっていないと思いますが、植田先生という立派な専門家もいらっしゃるのに何で私が出てきたかというと、この問題について何か違う切り口でお話をするということだと思いますので、an economistの見方ということでお話をさせていただきたいと思います。エコノミストの見方ではなくて、あるエコノミストの見方という意味です。英語は不定冠詞という便利なものがあるので、そういう意味になると思います。
 専門家でもないし、あまり体系的に考えたことがないので、幾つかのトピックについて考えをお話しさせていただきたいと思います。
 全部で1時間ということですが、皆様方非常に活発にご議論されているようですし、私もぜひ皆様方から教えていただきたいと思いますので、なるべく短めにお話ししたいと思います。
 ここで書いてあるようなことについて、an economistのビューを述べたいということです。その全体の発想は、環境を保護するというのは、ものを使わないようにするということですから、エコノマイズするということです。投入を最小限にするということですから、それは効率的にもなるわけで、効率的なものは環境にもよいと思います。
 まず、人口減少ですが、これは環境の観点からはよいことであるのは間違いないと思います。これから環境負荷を減らすのは大変だというご議論をされていたのですが、100年後には人口が半分以下になりますので、環境負荷を半分にするのは、そんな難しくのではないかという気がします。
 それからまた、環境制約について、私は素人ですのでよくわからないのですが、一人当たりの汚染をなるべく平等にしようと考えているとすると、日本のように一人当たりでは、例えばアメリカなどに比べてあまり汚染していない国は、世界的な環境制約の中でむしろ有利な立場になるのではないかと思います。ですから、世界的な環境制約が一人当たりだというふうになるとすれば、人口減少というのはさらに間違いなくよいことではないかというように思います。
 結局人間がいるから環境負荷があるわけですから、人間が減れば必ず環境負荷は減っていくわけで、何も人口を増やさなくてもいいのではないか。環境の観点からはもっと人口が減った方がいいということを環境省高官の方がおっしゃってもいいのではないかと思います。
 それから、農業保護とばらまき政策ということですが、ばらまき政策というのは評判が悪いわけですけれども、同じばらまくにも効率的なばらまき方と非効率なばらまき方があると思います。非効率なばらまき方というのは、例えば公共投資でばらまくというのは非効率なわけです。つまり、農林水産業を保護するために漁港をつくったりスーパー林道をつくったりすれば、それは必ず鉄も使うしコンクリートも使うわけですし、自然も破壊するわけです。だから、どうしても食えなくて困っているという人がいるのでしたら、その人にお金を配った方が、絶対的に安いし、絶対的に環境保護だと思います。ですから、農家へ直接ばらまいて関税を引き下げた方がいいと思います。炭素排出量は農家への所得保障の方が明らかに低いに決まっていると思います。
 だから、無理やり攻めの農政というようなことを総理の所信表明演説にも書いてあるわけですけれども、それは機械式大規模農業をやって輸出もできるようにしようということだと思いますが、無理やりにそういうことをする、つまり人為的に機械とコンクリートを用いるということはやめた方がいいと思います。所得保障支払いというのは、平均的コストと平均的販売価格の差を払うということですから、効率改善のインセンティブはあるわけです。平均よりも効率的につくれる人は得をすることになりますから、これは効率改善のインセンティブがあるわけで、特に悪いわけではないと思います。もっといい方法があるかもしれません。しかし、公共事業で農業を保護するよりはずっといいと私は思います。
 現実に、世界の先進国を見てみますと、ばらまき国家と購入国家というのがあると思います。北欧とか大陸ヨーロッパの国というのは、GDPの50%が税金です。アメリカや日本はGDPの30~40%が税で、北欧の方が税が高いわけです。経済学で考えますと、税をとるということは人々の効率的に行動しようというインセンティブをゆがめるわけですから、貧乏になるはずです。ところが、ヨーロッパは日本より豊かです。アメリカはヨーロッパよりさらに豊かですけれども、アメリカ、ヨーロッパ、日本の順で豊かです。だから、ヨーロッパは日本より豊かです。
 何でヨーロッパは税金が高いのに豊かであるかと考えてみますと、ヨーロッパは個人に再配分している。日本は地方自治体や建設業などに再配分して、そこから個人へ何となくお金が回るようにする。そういうことをやっているから、日本は低い税であるにもかかわらず、ヨーロッパより貧しくなっていると思います。
 これは皆様方のお手元の資料にはついておりません。これはインターネットや本からとってきたもので、ここでお見せするのはかまわないが、継続的にお見せするのは問題があるだろうと思ったからです。
 これはすばらしい山並みだと思いますが、右の方に白いものがありまして、これがスーパー林道です。何もこんなことをする必要はない。ほかっておけばいいじゃないか。食えないんだったら、お金を配ればいいと私は思います。林道工事でこんなになってしまうのですね。だから、遠くからも見えるぐらいに山が傷ついているということになるわけです。
 ダム工事も、私はエコノミストで、別に何が何でも自然を保護するべきだとは考えておりません。人間の生活の方が、人間が豊かな生活をする方が、環境よりも大事だと思っていると思われて構わないと思っておりますが、あまり必要のないことで自然を破壊することはないと思います。こんな巨大な工事が本当に必要なのか、疑問を持っております。
 これは沖縄の赤土の流出を書いたものです。白黒の写真で、本からコピーしてとってきたものですで、わかりにくいですが、大変な自然破壊の状況があるわけです。お金を渡すのは人の心を卑しくするという方もいらっしゃるのですが、自然を破壊する方がもっと人の心を卑しくすると私は思っております。
 これは宮崎の正倉院、何か地域興しなのだと思うのですが、この真ん中に正倉院と全く同じ建物をものすごく木を使ってつくったということです。それはそれで大変立派な建物のようですが、その右の方に杉林がいろいろ切り倒されているのがわかります。それから、上の方の杉林も、ちゃんと管理されているようには思えません。だから、例えばこういう人工美林を守るとか、そういうことに高い費用で人の手間をかけて守るというのは、ばかげているのではないかと私は思っております。
 これは空から見た大規模林道です。本当にこんなことが必要なのだろうかと思います。
 先ほどのように農業保護のために公共事業で手伝ってあげる、国のお金で手伝ってあげるというのは、自然を破壊するだけであって、ほとんど良いことはないのではないか。もしどうしても暮らせないのでしたら、直接補助してしまった方がよほど良いと思います。
 それから、里山景観とか人工美林も、人手とコストを使って守るべきではないと思います。つまり、日本はこれから人口が減っていって、人がいないわけです。ですから、人手を節約して守ろうとすると、スーパー林道のようなものをつくって、なるべく人がいなくてもできるようにとなってくるわけです。それは自然破壊だと思います。ですから、なるべく何もしなくて済むようにするのが一番いいと思います。縄文時代の森、照葉樹林の森に返せばいいのであって、里山とか人工美林の保護などはするべきではないと思います。照葉樹林の森の方が、環境的には人工美林よりもずっと価値があると思います。本当に価値があるかどうか、素人ですのでわかりませんが、私は価値があると思います。
 そもそも里山景観とか人工美林とか、そういうものは日本庭園のようなものです。日本庭園というのは、非常に手間がかかるわけです。これは何かというと、殿様や豪商から庶民がお金を返してもらうものだと私は思うのです。つまり植木屋さんが行って、木をながめて、これで1日手当5万とかいってとるわけですけれども、こんなことは公共事業のお金ではできないわけですし、金持ちもですらできないわけです。ですから、日本庭園をつくっている限り、田園調布にしろ、あるいは神戸の芦屋、六麓荘、あのあたりだって、親が金持ちでも子供の代になればすぐにだめになってしまうわけです。つまり、日本庭園というコンセプト自体が間違っているのだと私は思います。
 今日本の奥様方は、日本庭園ではなくて、イングリッシュガーデンをやってらっしゃるわけです。イングリッシュガーデンというのはイギリスの市民階級が考えた庭の革新です。それ以前のヨーロッパの庭園はベルサイユ庭園です。ベルサイユ庭園というのは、木を非常にきれいに伐ってあります。つまり、ものすごい手間がかかるわけです。あれはフランスのブルボン朝の王様から、フランスの庶民がお金を返してもらうための庭なんです。つまり、そうやって職人がいっぱい行って、農民から取り立てたお金を植木屋が返してもらう。そういうものがベルサイユ庭園です。だから、貧乏人と大金持ちがいる国の庭なんです。
 イングリッシュガーデンというのは、産業革命によってみんなが豊かになった後の庭です。そうすると職人が高いわけです。普通の人々も庭を欲しくなったわけです。庭は欲しいけれども、ベルサイユ庭園なんかつくれない。だから、専業主婦が一人でマネージできる庭ということを考えた、それがイングリッシュガーデンです。だから、今、日本でイングリッシュガーデンがはやっているわけです。専業主婦が一人でマネージできる庭、それがイングリッシュガーデンのコンセプトです。
 専業主婦の庭からさらに発展して、ダブルインカムの庭、ダブルインカムの庭をどうしたらいいのか、そういう革新も私は必要だと思います。人がいない、人手の高い日本は、なるべく何もしないで守れる自然に戻さないといけないと思います。
 次に、人口密度ですけれども、これも高い方が環境保護的だと思う。自然の中に住むと、これはむしろ環境破壊であって、コンパクトシティこそが環境保護的になると思います。先ほど、ビルにエレベーターがあったらエネルギーを使って困るというお話されていましたけれども、もちろんビルの中ではエレベーターでエネルギーを使うと思うのですが、ビルからビルへ車で行ったら、もっとエネルギーを使うわけです。ですから、ビルの中で暮らしていたら、むしろエネルギーは使わない。
 高齢社会の日本において、だんだん人は歩けなくなってくる。2040年ぐらいには人口の4割が65歳以上になるわけで、65歳以上でもまだかくしゃくとされている方が多いと思いますけれども、75になるとかくしゃくとされている方は、永田町あたりの方はほとんどかくしゃくとされていますけれども、あそこは何か異常な世界であって、普通の人はやっぱり75歳ぐらいになるとかなりくたびれてしまう。そうすると、高層ビルに住んでいて、エレベーターで下にお店があるのが一番エネルギーを使わないし、人手もかからない。そういう住み方かもしれないと思います。
 コンパクトシティこそが環境保護的だと思います。これは環境白書のグラフですが、左側は横軸は人口密度で、人口密度が高いほど縦軸の自動車依存率が低くなるというグラフです。その右は、運輸部門における一人当たりCO2排出量を縦軸に書いて横軸に人口密度を書くと、人口密度が高いほどCO2排出量が減るというグラフです。ですから、コンパクトに住んで、周りを全部照葉樹林の森に戻してしまうのが、恐らく一番環境保護的だろうと思います。
 ここで前橋市と高知市の比較がありまして、高知市の方がコンパクトです。これが前橋市で、赤いところが人口が集中している所ですが、ともかく人が広範に住んでいるというのがわかります。広範に住んでいると、左上に横棒グラフがありまして、ここに自動車、ハイヤー、タクシーを使う率が高くなるというのがあります。
 こっちが高知市で、地方都市ですから自動車、ハイヤー、タクシーはそれなりに使っているのですが、前橋市に比べれば低いです。
 コンパクトシティの実現のためにどうすればいいかということですが、例えばシャッター通りがあるわけで、こういうものは貸すなり売るなりしてもらわないと困るわけです。自分でちゃんとやるならいいんですけれども、何で貸さないのか、何で売らないのかという問題がある。一度貸すと借家法による営業保障の可能性があるということになります。借家法は廃止した方がいい。
 それから、高い相続税と事業継承税制というのもあります。相続税が高くて事業継承税制が低くて、シャッター通りに店を持っていれば、安く相続できるわけです。どうすればいいかというと、相続税は廃止できなくても大幅に引き下げる方がいいと思います。そうすれば事業継承税制もやめることができます。
 それから、安い固定資産税は引き上げるしかないと思います。
 公共投資によって高額で土地を買い上げてもらうチャンスというのがあるわけです。こういうこともやめるべきです。少なくとも公共投資の土地代に国費を投入することは禁止すべきだと思います。地方自治体の税金で公共用地の土地を買うべきだと思います。そうすれば、高く買うことがなくなると思います。
 あと、路面電車など公的交通機関の設置というのも要るだろうというように思います。
 それから、日本の住宅取得はなぜ建てかえされるのかという問題もあります。つまり、建てかえると住宅ストックを壊すわけですから、壊せばそれだけむだに環境負荷を引き起こすわけです。これの理由としては、住宅市場の非効率という面もあります。それから、急激な生活水準の向上と、新しい技術の発展があると思います。
 つまり、ヨーロッパやアメリカの人たちが中古住宅に住むというか、むしろそれがいいと思うのは、あるときに一番いいものをつくったから、もうそれでいいという発想があるからです。けれども、日本はどんどんいいものが出てくる。例えば、二重ガラスとか外断熱とか床暖房とか、そういうものがどんどん出てきて、なかなかこれがいいという基本的なコンセプトが固まらないという問題があります。
 これはなかなか難しいことで、政策的なことは非常に難しいだろうと思います。
 それから、個性的な住宅をつくり過ぎるというのがあります。例えば、私は二世帯住宅を禁止したらいいというように思います。つまり、二世帯住宅は後どうしようもなくなってしまって、売れないです。壊すしかなくなってしまう。だから、転売目的の住宅建設が主流になればいいわけです。つまり、日本の人たちは自分の家族にカスタムメイドのものをつくって、それがウルトラカスタムメイドなものですから、ほかの人には使えないものをつくるということになって、中古住宅の流通が減ってしまうわけです。
 これからの話はちょっと環境保護から離れるかもしれませんが、アメリカではどこでも豪邸が売られています。左側にアメリカの都市がいろいろ書いてあって、100万ドル以上の住宅が何戸売られているのかということをヤフーリアルエステートで検索した結果です。例えば、アトランタで969軒の住宅が売られていて、マディソンというのは人口10万ぐらいですが、ここでも26軒も売られている。ところが、右側が日本ですが、東京だけで売られていて、あとはほとんど売られていない。
 しかも問題は、アメリカは、ニューヨークは新築のコンドミニアムが多いのですが、それ以外はほとんど中古住宅です。ところが、日本では中古住宅の豪邸はほとんど売られていない。つまり一度つくったストックを大事にしていないということになる。これは環境破壊的だと思います。
 アメリカの1億円、100万ドル住宅は、このぐらいのレベルになります。ただ、壊さないで100年ぐらい使っている。日本の家は20年で壊されてしまうわけですから、日本の家より5倍ぐらい豪華だと思いますが、家だけの環境負荷を考えたら、アメリカの1億ドル住宅と日本の住宅の環境負荷は同じだということになります。もちろん暖房、冷房がとんでもなくお金がかかると思いますので、こちらは環境負荷も大きいと思います。
 時間も過ぎてしまいましたので、後は環境の問題とも離れますので省略させていただきます。
 それから、環境保護について私は幾つか疑問を持っております。皆様には不愉快な問いかもしれないのですが、せっかくの機会ですので、お聞きしてみたいと思います。
 地球シミュレータというのは本当に地球温度を正しく予測できているのかといつも疑問に思っております。ただ、これは経済学のモデルが当てにならないがゆえの邪推であることを期待しております。
 リサイクルが本当に環境保護になっているのかも疑問です。私は善良な市民ですので、ペットボトルとか紙パックをいつも洗ってちゃんと捨てているのですが、あれは洗うと環境負荷を出すのではないか。そのまま捨てて焼いてしまった方が環境負荷にならないのではないかという気もします。
 ダイオキシンを規制しているのは日本だけだといろいろなところに書いてあります。ダイオキシンの摂取量の95%は食品からで、その源泉は農薬であるということなのですけれども、非常にハイテクなやり方で焼かなければいけないものなのか疑問に思っています。
 結論として、効率的なものは炭素排出量においても効率的で、エネルギー効率が高ければ、NOX、SOX、CO2、いずれに排出量も小さいわけです。なるべく無駄なことをしないのが非常に重要だと思います。そういう意味で、効率的なばらまき政策というのは環境保護的だと思います。
 公費を個人に配ることができないというのは思い込みにすぎなくて、この思い込みが環境を破壊していると思います。実際には、年金で膨大に配っているわけですから、環境保護のために公共事業を減らして個人に配っていけない理由はないと思います。
 以上で私のお話を終わらせていただきます。私は素人ですので、ぜひ皆様方から忌憚のないご批判をいただければ大変ありがたいと思います。
 どうもご清聴ありがとうございました。

○鈴木部会長 それでは、委員の方々から、時間が限られていますので、ご質問、ご意見をお持ちの方は名札を立てていただいて、一通りご質問、ご意見を伺ってからお答えいただこうかと思います。
 では、浅野委員からまいりましょうか。

○浅野委員 大変刺激的なお話で、興味深く伺いました。環境の問題に関して疑問というところは多分ほかの方々がおっしゃるだろうと思いますので、私は特にコメントを申し上げる気はありません。
 スーパー林道の問題についてですが、確かにスーパー林道のような形のものがいいかどうかと言われると、おっしゃるとおりだという気がします。しかし、大変頭が痛いなと思っていますのは、森林の吸収源の問題で、きちっと手を入れなければいけない。そうすると、やはりどうしても人が入れるような森林でない限りは保全ができないという悩みがあるわけですね。ですから、比較的道路に近いところの森林の手入れはできるんですけれども、奥になればなるほど全く手入れができないという状況になっていて、しかも森林労働者は次々に高齢化していきますから、昔のように山の中まで入り込んで草をかき分けてというのはできなくなってしまっていると。
 そのために、今3.8%を確保するためには、私はあまり林道をつくるために予算を使うことはけしからんと正直思っていたんですけれども、どうも現実に考えてみると、それをやらない限り3.8%はおぼつかないという状況もあるわけですね。その点についてはやはりどうバランスをとるかという問題があるような気がするので、今のようなことについてはどうお答えになるかということをお聞きしたいなということ。
 それから、あとはマイナーなことですからどうでもいいんですが、営業保障の問題が出てくるのは借家法があるかどうかというよりも、そもそもそこに一つの権利があるかどうかですから、借家法を廃止してしまって、民法の賃借権は当然出てくるわけですから、民法の賃借権もだめだと言わない限り、しょせんこの問題は解決できないので、ややその辺の話は短絡的かなという気がしました。
 それから、公共投資の土地代への国費投入禁止というご提案は、土地の高額化を維持するという点ではおかしいというご主張なんだろうと思いますけれども、別に国交省の肩を持つわけじゃないんですが、地方レベルでの公共投資としての資産価値があるものと、それからやはり全国的なレベルでの価値があるものという仕分けが一応現在の政策の中ではあるというふうに考えていまして、確かに地方公共団体が投資をして、しかし実際の便益は全国民が受けるというようなところについて、地方公共団体が土地を取得しろというのもどうも合理的じゃないような気がするんで、そういう便益を受けるものの幅の違いということを無視してこの議論を成り立つかどうか、これについてちょっと疑問に思いましたので、もう少しお考えを聞きたいということです。
 申しわけありません。私はちょっと時間がないので、出てしまいますので、後で議事録を拝見いたします。大変、失礼。

○鈴木部会長 浦野委員。

○浦野委員 細かいところでは幾つもいろいろお話を伺いたいことがあるんですが、一つわからないことがあったので、ちょっと追加のご説明をお願いしたいのは、人口が減ると一人当たりの環境負荷がむしろよくなるかのようなことがこの3枚目に書いてあるわけですが、人口が減ってもそれほど建物とかその他が減るわけじゃないので、むしろ一人当たりの環境負荷は増えるのではないかというふうに私は思っていたんですが、その辺をちょっとご説明いただきたい。
 それから、今いろいろ農業の保障なんていうのがあって、政党間でも議論になっていますが、所得保障はまだこれから制度設計が細かくされるのでわからないんですが、これが本当にこういう形で効率改善のインセンティブになり得るのか。どちらかというと、ならないんじゃないかという議論が多いと思うんですが、この辺についてもうちょっとご説明がいただければと。
 ほか、ダイオキシンの問題とかその他いろいろ細々ありますけれども、それは温暖化の話とか長期的なことにはそれほど影響ないので、ご質問は控えさせていただきます。

○鈴木部会長 鹿島委員。

○鹿島委員 ありがとうございます。今日お話しいただいたところにはなかったので、ちょっとご意見をお伺いできたらと思いますが、今日本の場合には京都議定書の約束が難しいかなということで、海外から排出権を買ってきているわけですけれども、そういうものにお金を出すことと、それから国内に向かって、当然それは製品に長期的には転嫁されるんでしょうから、そういう間接的なかけ方と、それから環境税とかという形でかけて減らすのと、今の日本の実情、要するに資金だとかその他を考えたときに、どちらが適当でしょうかねという、ご意見があったらお聞かせいただきたいというのが1点でございます。
 2点目が、現在のところ貿易に関してはどこに帰属するかわからなくて、無視というか、とりあえず困っているわけですけれども、例えば全く日本がいい国になって、そのパテントでみんな食べていけると、ほとんど日本からは出さないと、こういう非常に極端なことを考えると、そういうことを世界中が認めてくれるはずがないじゃないかというと、国際輸送に伴うものの分担関係というのはどうあるべきだろうと。要するに、最終消費国が身を切るのか、生産国なのか、しかも、かつ企業が今グローバル化しているというか、国際企業化している中で、各国に割り振るというのは非常に難しいんではないかという気がするんですが、そのあたりについての先生のご意見をお伺いできたらというふうに思います。
 以上、2点でございます。

○鈴木部会長 木下委員。

○木下委員 私は結論の2つ目と3つ目が非常におもしろいなと思って発言をしたいと思います。
 1つは、3つ目の点は、なるほどこういう指摘もあるかなというふうに思います。それで、2つ目の効率的なばらまき政策は環境保護的というのがもう一つよく理解できないという点でございます。
 4ページの点でございます。4ページに炭素排出量は農家への所得保障の方が低いと、それは機械式大規模農業の推進とコスト削減策という中で、機械式大規模農業は投入量が多くなると。そういう意味で、効率的ではないと言っているのではないかなと思いました。
 その隣におもしろい指摘ですが、次の欄に所得保障は効率改善へのインセンティブがあると。この効率改善の効率という意味がよくわからないんですけれども、平均コストとこの差というふうにしますと、恐らく大規模農家は平均コストが少ないはずですから、こういうふうな保障をやると大規模農家は恐らくは生産量を増やすと、投入を多くするという方向に働くのではないかなというふうに思って。そういう意味で、こういうふうに言えるのかなというのが一つ。
 もう一つは、すべての農家にこういう方式をしますと、日本の農家の大部分は農業所得に非常に依存していない農家でありますから、こういうふうな所得保障支払いをすると、本来生産から撤退するであろう農家までも投入量を増やすというふうになって、これまた効率改善という概念とどうも反するんではないかなというふうに感じました。
 以上です。

○鈴木部会長 須藤委員。

○須藤委員 どうも貴重なお話を伺いまして、ありがとうございました。
 二、三お伺いいたします。
 例えば、先生は里山という言葉で言われているんですが、人が手を加えた里山、あるいは里海、あるいは里川、こういうものは大変環境に価値があるということで、それを保全すべきだというのが環境側の立場なんですが、先生はその辺は一言で言うとほったらかしていた方がよろしいというふうにおっしゃっておられるんですが、それはそこから得られる経済的な利益、あるいは環境の価値、こういうものは抜きにして、金銭的にというだけの意味でございましょうかというのが1点目。
 それから、2点目は、7ページの自然の中に住むことが環境的で、コンパクトシティは環境保護的というんですが、その境目ぐらい、要するに自然とコンパクトシティというのは、市街地といわゆる農村というぐらいの程度の差なんでしょうかということが2番目の問題。
 それから、3番目は、先生のご質問の中にペットボトルや何かのリサイクルはよろしくないと、こうおっしゃって、それは洗うと水が出ると。私はちょっと水の仕事をやっているんで、同じような質問をよく受けるんですが、私の答えは実はこういうふうに答えております。一律に全部洗って流せばいいということではなくて、かなり汚れているもの、あるいは処理施設のないところの川へ流すのは洗って流さない方がいい、燃やした方がいいと。それから、ちょっとゆすぐぐらいで処理施設がきちっとしている場所だったら、廃棄物としてリサイクルした方がいいというふうに答えておりますので、一律にというのはやはりよろしくないんではないかなという感じです。

○鈴木部会長 中上委員。

○中上委員 先ほど中古住宅の流通の話がございましたけれども、確かに米国では300万軒くらい年間流通しておりますから、日本は十数万軒です。日本で流通している住宅は集合住宅だけで、戸建て住宅はほとんど流通しない。それは、上物は評価されないからでありまして、土地だけしか評価されないということで、そういうふうになっているんだろう私は思います。したがって、米国の場合には、省エネ改修というのが必須のアイテムになるわけです。次に売るときに省エネしているかしていないかがローンの利率にかかわったり、価格にかかわってくるものですから、省エネ改修が戸建て住宅でも非常に活発に進んでいるというふうに聞いております。
 そういった意味では、今おっしゃいましたように、中古住宅が健全に流通し始めれば、住宅の省エネ改修だけではペイしないんですが、それが価値としてトータルに評価されるようになれば、また違った省エネ改修というようなムーブメントが起きてくるんじゃないかと思いました。
 私は意見です。

○鈴木部会長 西岡委員。

○西岡委員 6番のところで、地球モデルの話がちょっと出てきましたので、一言ちょっと申し上げておきたいと思います。
 おっしゃるように、地球温暖化というような実験のできない問題でありまして、果たして人為的に温室効果ガスの排出がこれをもたらしているかどうかといった疑問に対しても、非常に難しい答えを出さなければいけない。そのときに、これまでモデルが使われていたということがございます。私は経済モデルでも基本的に構造は同じだと、まずこう思っております。しかしながら、そこでベースになるところの物理法則と経済法則がどっちがどれだけ信用できるかというか、確実になっているかという違いは1つあるだろうと。
 それから、もう一つ、これまで我々が大体予想したところ、悪い方にですけれども、行っているという過去の事実から言いまして、結構使えるんじゃないか。さらには、まだ発展途上にありまして、プロセス研究が非常に進みつつある、あるいは観測データがたくさん出つつある、それからコンピューターの性能がよくなるということがあります。3番目のはあまり理由には実はならないんですけれども。そういった面で、まだこれからの発展、正確になる可能性はまだ残っているんじゃないかと思いまして。ですけれども、おっしゃる当てにならないのは、ひょっとすると同じかもしれない。
 今結構だんだん収斂してきたんですけれども、これはデルファイという意味での収斂じゃ困るんでして、やはり一つ一つプロセスの要因だとか、それから観測地を入れていくことのよって収斂しているというぐらいに考えていただけるとありがたいと思います。

○鈴木部会長 三橋委員。

○三橋委員 2つちょっと質問させてください。
 14ページの日本の住宅ストックのところです。個性的な住宅をつくり過ぎて、二世帯住宅の禁止などと書いてあるわけですね。それで、例えば住宅のつくり方というのは時代、またその耐久性のある100年、150年住宅をつくる、いろいろな思想でつくられているわけですね。それで、例えば北海道なんかだと、人口はもう少なくなってくるし、農家なんかではむしろ三世代住宅でしっかりした住宅をつくって、100年なり150年もつような住宅をつくろうというような取り組みをしているところがあるわけです。そういうところだと、例えば銀行からお金を借りて住宅ローンを払う場合でも三世代で払うとか、あるいはおじいちゃんと孫が話し合うような場をつくるとか、そういうような形で、むしろ三世帯住宅のような大きなしっかりした住宅をつくった方が環境にもいいよというような理念でやっているようなところもあるわけです。
 だから、ここでいう二世帯住宅のイメージはよくわからないわけだけれども、いろいろな住宅がその時代に合うような形でできてくるんで、一律にどういう住宅がいいかというのはなかなか難しいような感じもするんですけれども、ここら辺はいかがなんでしょうかということです。
 それともう一つは、経済のグローバリゼーションの問題についてどういうふうにお考えになっているかというのを伺いたいんです。
 例えば、確かに経済のグローバリゼーションが平時の状態、気候変動とか戦争とかそういう突発事態が起きない場合には経済のグローバリゼーションというのは非常に生産者にとっても消費者にとっても効率的だと思いますけれども、今のように気候変動が非常に激しく起こってしまうというような形で、経済のグローバリゼーションを進める、特に農業でいえばトウモロコシなんかを例にとれば、9割方アメリカから輸入していますと。そうすると、アメリカで大干ばつが起こってトウモロコシができなくなってしまいますというようなことが起こった場合には、むしろ経済のグローバリゼーションという経済原則よりも、それぞれの国の食料の安全保障、そういったような視点の方がより優先度の高い課題になるんじゃないかなという感じがするわけです。
 そうしますと、経済のグローバリゼーションが賛美されている時代というのはむしろ20世紀後半ですかね。第二次世界大戦の後、それほど大きな戦争もない、気候変動もそれほどでもない、そういう時代には当てはまるけれども、大前提が崩れてきた場合に、経済のグローバリゼーションを進めることについては、ある種の製品にとっては非常に国の安全保障みたいなものが損なわれるような感じがするんですけれども、この辺についてはどうお考えになっているのかなということを伺いたいと思います。

○鈴木部会長 横山委員。

○横山委員 2点伺いたいと思います。これまで関連質問があったものなんで、簡潔に言いたいと思います。
 1点目は、京都議定書上の森林吸収というのが、きちんと森林を管理しなさいよということで出てきている考え方だと思うんですが、そういう森林吸収というものに対して、先生はあまり評価をしていないということなのかどうかということが1点。
 それから、この中環審あるいは産構審の合同会合で、排出量取引と環境税というのが非常に大きなテーマになっているわけなんですが、それについて簡単でも結構ですから、日ごろどんなふうに考えているのかというのを聞かせてもらえればと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 時間が大変窮屈になりましたが、適当にまとめて。

○原田氏 非常に有益なコメント、ご質問をいただきまして、ありがとうございました。なるべく全部にお答えしたいと思いますが、時間が限られていることと私の記憶力、吸収能力にも問題がありますので、全部お答えできなかったらお許し下さい。
 最初の、浅野先生のご質問で、森林を手入れしないとちゃんと吸収源にならないというお話ですけれども、それは人工林をつくるからそうなると思うのです。縄文時代は何もしていなかったのですから、縄文の時代の森に戻すということです。縄文の森は人が別に何もしなくてもちゃんとCO2吸収していたのですから、縄文の森に戻すということです。ただ、縄文の森に戻すために人手が必要だということであれば、それは仕方がありません。スーパー林道をつくって縄文の森に戻すというのではなくて、その場合には仕方がないので人手を使って縄文の森に戻すしかないと思います。
 それから、公費投入額は、全国レベルと地域レベルでは違うというお話はそのとおりだと思いますが、現実には地方交付税で、後から国が負担するということもありますので、結局全部国のお金が投入されているのではないかと思います。
 浦野先生の人口が減少するとよくなるということと、一人当たりというのはどういう関係があるのかというお話です。これは私の説明がうまくなかったと思いますけれども、国際的な環境の保護基準というかCO2排出基準が、一人当たりで規制されるようになると、日本のようにあまり環境汚染的でない国は良いのではないかという話が一つ。もう一つは、全体が規制されるのであれば、人口が減った方が良いいう2つの話をしたつもりでしたが、確かに私の話が混乱していたと思います。大変失礼いたしました。
 鹿島委員の排出権の話です。私が素人考えを言ってもいいのですけれども、時間がありません。ちゃんと研究されている、植田先生のような専門家の方のご意見の方が有益だと思います。
 木下先生の効率的なばらまきの話ですけれども、あらゆる人から同じ値段で買うのですから、効率的に生産している人はもうかって、効率的に生産しない人はあまりもうからないという結果になります。ですから、効率的になるインセンティブがあるということです。
 では、効率的にやっている人は、機械や何かをいっぱい使っているのだから、環境汚染的になるだろう。だから、効率的なばらまきは環境保護的ではないのではないかというご質問だと思います。これにつきましては、人為的にコンクリートや機械を使ってやるのではなくて、人々が与えられた状況の中で、一番効率的なように行動するわけですから、その方が、人為的に、国が社会主義的に効率的にするよりも、エネルギー効率が高くて、CO2の排出量も小さいだろうということです。
 須藤先生の里山の価値についてです。私は、里山が縄文の森よりも価値があるかどうかわかりません。わかりませんが、では人手や機械を使って守らなければいけないものかどうかというと、別に守らなくていいのではないか。縄文の森に戻せばいいというのが私の発想です。
 中上先生の中古住宅がちゃんと流通するようになれば、省エネとかも非常に長期的に回収すればいいという話になりますので、そういうことに人々の関心が向くだろうというのはおっしゃるとおりです。
 西岡先生の地球シミュレーションのお話は、エコノミストも物理学者もまじめに勉強するということに尽きるのだと思います。
 三橋先生の北海道で三世代住宅を奨励しているので、一概には言えないというお話です。それはもちろんそうです。一概には言えないというのはそのとおりです。ただ、では北海道で三世代住宅をやって、そうすると三世代目はもう生まれたときからそこに住んで、そこでやって借金を返すことを運命づけられるということになると、それはいかがなものかという気がいたします。職業選択の自由がなくなるのは、まずいと思います。
 それから、食糧安全保障の問題ですけれども、100年後には日本の人口は半分ですから、食糧安全保障の問題もなくなってしまうのではないかと考えております。
 それから、安全というのは現在の贅沢をして安全ということではなくて、いざとなったら芋だけを食べて我慢するという話ですから、また違う話ではないかと思います。つまり、現在の食生活を国内で守るようにすることが食糧安全保障になるのではなくて、いざというときにどうするかという話です。
 それから、もう一つは、エネルギーが来なくなれば、幾ら日本国内で農産物をつくるといっても、結局つくれないわけですから、いろいろなことを総合的に考える必要があると思います。
 横山先生の森林吸収の話ですが、これも縄文の森に戻せば森林で吸収してくれるのではないか。手間がかからないし、コンクリートも要らないと思います。
 排出権取引の話は、素人ながらに不思議な話だと思っています。経済学の基本的な発想に、所有権を確定した後、自由に取引すればうまくいくという考えがあります。ところが、現在、排出権は確定されていない権利です。ある国がどれだけ権利があるのか分からない。排出権を売った後に、まだどんどん増やせるとしたら、それで地球全体として排出量が減るのだろうか。変な話だと思います。一体どうやってある国の現在排出している権利を確定して、そこから排出権を減らしたと言えるのか、私はいつも不思議な話だなと思っておりました。ただし、不思議な話だと思っておりますが、素人ですので、仕組みとかそういうことがよくわからないので、本当に変なものかはわかりません。本当かなと思っているということだけ申し上げたいと思います。
 以上です。どうも大変ありがとうございました。

○鈴木部会長 いろいろとあるかと思いますが、時間がちょうどぴったり1時間で終えていただきまして、かつて環境省におられたということで、ぜひこれを機会に環境関係の面でエコノミストとして、またいろいろご発言いただけるようにお願いしたいと思います。
 どうも、今日は本当にお忙しいところをありがとうございました。

○原田氏 ありがとうございました。皆様方のご質問に全部お答えできたかどうかわかりません。お答えできていなかったらお許し下さい。本日は貴重なご意見をいただき、大変ありがとうございました。

○鈴木部会長 それでは次は、株式会社クレアンの代表取締役でいらっしゃいます薗田綾子さんです。環境ビジネスウィメンの小池さんがおつくりになった本にもご登場されておられます。
 また、1時間弱ぐらいになるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

○薗田氏 株式会社クレアンの薗田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 今日はこうしてプレゼンテーションの機会をいただきまして、ありがとうございます。ぜひ皆さんのご質問もお手やわらかによろしくお願いいたします。
 私の方も特に何か専門の研究分野があって、それを追求しているというものではなく、どちらかというと、今は仕事の方ではCSR、企業の社会的責任という分野でいろいろな企業に対してのアドバイスコンサルティング、それからコミュニケーションのツールの方の開発をしています。そういったことを一応仕事でしている者として、あるいは今までマーケティングであったりとか、新メディアの開発、インターネットであったり、新しいメールマガジンの開発であったり、そういったことをしていた立場として、何か少しでもお役に立つようなお話ができればというふうに思っております。
 少しだけクレアンのプロフィールということで、皆様方の方にはこちらのオレンジのこれが会社案内兼サステナビリティレポートということでつくっておりまして、ちょっと2005年として古いんですけれども、参考までに見ていただければと思います。
 設立は1988年で、ちょうど来年20周年になります。私が25歳のときに起業したんですけれども、計算されるとせっかく若づくりしているのがばれてしまうんですけれども、一応来年で20周年になります。社名の方は、クリエイティブな起業家という、フランス語でcreateur- entrepreneurというところから社名をとっております。本社は大阪なんですけれども、今現在スタッフも5分の4ぐらいは東京の方におりまして、5分の1が大阪ということで、40名ほどでやっております。売り上げの方も5億8,800万円と本当に小さい企業で細々とやっておりますけれども、みんなの思いとしては、2020年に向けて事業を通じて、地域、国という枠組みを超えて、地球と人、人と人がつながるような、そういうすばらしいサステナブルな社会を実現したいという思いを持ったメンバーが集まっております。
 今、事業内容はお話ししたようにCSRコンサルティング、それからコミュニケーション等のことをやっておりまして、環境報告書とか、最近CSRレポートという企業さんがいろいろ出されているのが昨年で約1,000社ぐらいあるんですけれども、そちらの方のレポート制作等をやっておりまして、この数年ぐらいですごく増えてきましのたで、この数年間で述べ350社ぐらいの担当をしています。
 例えば、松下電器さんであったりとか資生堂さんであったり、キリンビールさんであったり、どうしてもそういう大手の企業さんになるんですけれども、ちょうど今の大和証券さんの方のレポートも制作しておりますし、最近は銀行さん、商社さん、あるいは証券会社さんと、そういうところの金融機関等も積極的にそういう情報発信をするようになってきましたので、そういったお手伝いの方もしております。
 私の問題意識といいますか、多分これは先生方もそうだと思うんですけれども、今のままではこの社会は持続不可能、当然地球との共生というのも非常に難しいというところに来ていると思います。当然、地球温暖化の問題は本当に日々深刻になっておりますし、ほかのオゾン層破壊であったり、あるいは生態系の破壊の問題、環境だけではなく、途上国における飢餓、貧困の問題であったりとか、あるいは日本社会のおいても本当に私たちの社会が幸せなのかというふうに言われますと、いじめや躁うつ病、あるいはメタボリック症候群等々いろいろな大きな問題がたくさん出てきて、自殺者がこの国では3万人もいるというとんでもない国になってきているというふうに思います。
 ある意味で、この延長線上には、とてもじゃないですけれども持続可能な社会はあり得ないんじゃないか、次の世代の子供たちにバトンタッチしていくのに、本当にこのままでいいのかという問題意識を持っております。
 実際、サステナビリティという言葉が生まれて約20年なんですけれども、そのサステナビリティという考え方で考えると、サステナビリティ社会に向けて進むどころか、反対にさまざまな、いわゆるリオサミット以降国際間の取り決めであったりとか、意識の高揚というのは生まれてきているとは思うんですけれども、実際にはどんどんよくなっているどころか悪くなっていっているんじゃないかと、そういうふうな事態になっていることをまず再認識する必要があるんじゃないかと思っています。
 今までも、もちろんさまざまな行政機関であったりとか、企業であったり、いろいろな取り組みが行われて、ライフスタイルの転換と価値観の転換ということも非常に重要だというふうに言われておりますし、今まですばらしい環境技術というところも出てきていますので、この未来は明るく感じるところもあるかと思います。ただ、反対にシビアに考えていくと、こうしたすばらしい環境技術の登場であったり、あるいは小まめな生活、エコライフというところの徹底も非常に大切なところなんですけれども、私たちはスピードを速めなければいけないというふうに感じています。
 ある意味、ポイント・オブ・ノーリターンというふうに言われていますけれども、タイムリミットが近づいている中で、本当にいろいろなことを変えていくのは今しかないんじゃないか、今変えることによってまだ間に合うかもしれないけれども、もっと遅くなってしまうとどんどん間に合わなくなって、ある意味いろいろな影響が大きくなっていってしまうんじゃないかというふうに考えています。
 そういう意味では、本当に地球温暖化の問題は特に大きな人類の生き残りをかけたような、そういうサバイバルにかかわるテーマであるということを自覚して、早急にライフスタイルと価値観の転換を図ることが日本にも求められていますし、当然それを世界に向けて発信していくことが必要だというふうに思っています。この辺は多分皆さん共通の問題意識だと思うんで、確認のところもあってお話しさせていただきました。
 実際に、2050年美しい星というところのいわゆる合意がなされたわけなんですけれども、実際これは私はすばらしいなというふうに思っていまして、やはり私たちが次の世代の子供たちのことを考え、あるいは25年を1世代とすれば、2050年というのは2世代先になりますから、そういう次世代のことを考えていく、その中で何ができるのかということを国民的なコンセンサスにしていく。こういう考え方に対して、非常に共感を覚えています。
 私自身がこういうベンチャー企業で20年近くやってきて、その中で本当に感じることなんですけれども、ある意味強く思えば願いはかなう、だんだん近づいていく。あるいは、自分がそうなりたいという思いが強ければ強いほど、いろいろな方々を巻きこんでいったりとか、本当にいろいろな助けをいただいて、ビジョンが明確であればあるほど実現化する可能性が高いなというふうに。これは人の意思の力が非常に大きな夢を実現するという、そういったところの原動力になることをあらわしているかと思います。
 反対に、もし非常に立派な理想像ができたとしても、もしかしたら実現できないかもしれないんじゃないかと思った瞬間に、やっぱりその夢は実現できない、あるいは自分の中で高い壁ができてしまって、やはり難しいなというふうに思ってしまう。非常にこの意識のメカニズムといいますか、そういう部分があるんじゃないかというふうに思っています。
 もちろん、クレアンとしても、私が何かこういうことがしたいと思うだけではなく、スタッフとともに、あるいはいろいろな企業さん、いろいろないわゆるステークホルダーの方々と一緒に、自分のためだけの思いではなくて、やはり多くの人に共感してもらうようなもの、サステナブルな社会をつくっていきたいというのは、ある意味本当に社会にかかわるすべての人たちに関係することなんですけれども、そういう強い共感、あるいは強い共鳴を得ることがでるんじゃないかというふうに考えています。
 そういう意味でいうと、これからつくられる持続可能な社会づくりの長期ビジョンについては、できるだけ多くの人が幸せになれるような理想像、そしてそれにいわゆるみんなが共感して共鳴できるようなもの、それが大きな力となっていって、一人ではとても実現できないようなとんでもないような大きなことも実現できるのではないかというふうに考えております。
 あとは、ちょっとネガティブな感じになってしまうんですけれども、まず「低炭素社会」というのを私が聞いたときに、やっぱり非常に暗いイメージを感じてしまったんですね。このイメージもすごく大事だと思いまして、これから社会をどういうふうにしていきたいというと、皆さんキーワードとしては絶対幸せな社会というのははずせないとは思うんですけれども、当然環境面だけではなく、社会全体のビジョンというところが必要ですし、それに達成したいと思わせるイメージが重要なんですが、どうも「低炭素社会」とか、あるいはもしかしたら「持続可能な社会」という言葉も、とてもキーワード的には漢字で難しいイメージというのがあって、どうも暮らしのイメージとか、あるいは楽しさのイメージというところはわいてこないという、そういうところではちょっとこのキーワードも工夫をしていった方がいいんじゃないかというふうには考えています。
 実際、先ほども言いましたビジョン、あるべき理想の社会の姿というところが共有できなければ、なかなかみんなが描いたせっかくのイメージも絵にかいた餅になってしまって、達成へのモチベーションも高まりませんし、一部の人だけがこれをやろうと思ってもなかなかできないわけですから、そういう意味では巻きこんでいくために何かそういういいキーワードがあるんじゃないかと思っています。
 私たちがよくCSRの観点からもいろいろな企業ビジョンを一緒に企業さんとつくったりするんですけれども、そういうときにもこのキーワードというのを非常に大事にします。当然、企業の中での理念を共有できないと、そういう目標であったりとか、いろいろな達成ができませんので、そういう中ではこういうビジョンに対してのいわゆるワーディングといいますか、どういうイメージを描いてもらえるのか、みんなが共感してもらえるのかどうなのかというところは結構ポイントになってきます。
 例えば、ほかの企業さんでやっているときには、こういう地球と共生する幸せな社会ということで、「エコハーモニー&ハッピー社会」とか、「ニコニコ社会」とか、そういう楽しさを感じさせるような、このままではないと思いますけれども、こういったキーワードというのがすごく重要なんじゃないかなというふうに思います。
 あとは、ビジョンを描くときに、これも企業の中でいろいろなCSRのビジョンであったり、あるいは本当に経営戦略にかかわるようなそういうビジョンを描くときに非常に大事にしているのは、一部の人が描くのではなく、できるだけたくさんの人を巻き込んで描いていく。そういうプロセスを非常に大事にしています。
 実は、クレアンでは昨年年末に延べ3日間ぐらいかけてスタッフ40名と一緒に、クレアンが2020年にどういう社会になればいいと思っているのか、あるいはその中で私たちがどういう役割ができるのか、どういう社会にするために企業を動かし、あるいは企業にどういうふうに変わってもらおうと思っているのかということをいろいろ議論をしました。実際議論をする中でみんなの思いがどんどん収れんされてきて、初めは本当にわっと広がるんですけれども、それを集約していって、一つのこういうまとめとしてビジョンの具体化プロジェクトというのをつくりました。
 出てきた内容としては、特に環境だけに限っているわけではないので、本当にいろいろなことが出てきたんですけれども、まずはやっぱり人々の価値観を変えていかなければいけない。ここではやっぱり社会を支えるような規範的な精神。当然物質的な豊かさよりも、精神的な豊かさというところを尊重しようとか、あるいは人を含めてすべての存在、これは本当に自然も含めてなんですけれども、そういった存在に思いやりを持つという価値観が共有されるような、そういう社会にしていきたいとか、あるいは自然との調和を大切にする和の心が尊重され始めている。こういったことで、いろいろな観点からいろいろな思いを集約していきました。
 社会規範としても人間中心の考え方ではなく、自然との調和を基本とする社会規範。あるいは、経済的な価値観としても、お金よりもやはり時間であったり文化であったり、美しいもの、自然などの、そういった豊かさの価値観にもう移っていっている。あるいは、日常生活を支える暮らしや幸せの価値観としても、できるだけ無形物、形にはあらわれていないんだけれども、とても大切なものを改めてきちんと確認して毎日を心豊かに楽しく生きていこう。
 そういうライフスタイルにしていこうという意味で、ちょっと本当にイメージ的ではあるんですけれども、こういったプロジェクトで、では産業とか社会はどんなふうに変わっていけばいいのか、あるいは大企業だけでなく、こういうCSRとか、あるいは社会的責任投資というSRIの観点が当たり前になって、そういう言葉が認識されないぐらい一般化しているような社会にもっていくためにはどうすればいいのか、企業の経営全般に対して、もっともっと社会にかかわる人たちが参画して、参画が一般化するような社会にしていきたい。こういったこともいろいろ話し合いました。
 それから、産業関連のインフラ、エネルギーや資源や物流、こうした仕組みについてもどんなふうに変わっていけばいいのかというのを話し合いをしているうちにどんどん明確なビジョンになってきたと思います。
 あとは、最終的には2020年にそういったものを達成していくためには、まずは2010年、マイルストーンを置いて、2010年であったり、2015年にどういうことを達成しなければいけないのか。逆に、バックキャスティングで、2020年から振り返って、2010年あるいは2015年にどういうことをするのかということも話し合いました。
 ここではちょっと一部だけご紹介しますが、労働環境、特にいろいろな仕事、あるいは皆さん日々忙しくされていると思うんですけれども、でもやっぱりその中でもっと余裕を持っていかないと、本当にいろいろな思いというのが未来的に発想できないと思うんですけれども、その中ではやっぱり労働環境を本当に変えていけばいいんじゃないか。これは、決して最先端の科学技術ではなく、本当にちょっとした意識の変化、あるいは仕組みを変えていこうと思うだけで変わることだと思うんです。
 例えばどういうふうに変えるのかというと、家庭や地域社会での生活時間というのをもっと最大限に尊重した働き方が一般的になる。あるいは、これを支えていく国とか企業とか、あるいは労働環境の整備が行われている。例えば、多様な働き方、働く機会が増えているというとこではどういうことができるのかといえば、ワークシェアリングであったりとか、あるいはセクター間、さまざまな行政とか企業とかNGOとかそういったセクター間での人材交流みたいなものが活発に行われると、もっともっと変わってくるんじゃないか。
 あるいは、当然仕事や労働のとらえ方ということも、最近の若い人たちは大分変わってきているみたいですけれども、お金が要るために仕事というのではなく、本当に社会参画として、あるいは自分たちの役割として、そういうことを仕事を通して喜びを得たりとか、あるいは人の役に立つということをきちんとわかっていく。そういうふうなことをできるような社会になればいいんじゃないかということが話し合われました。
 私が、今日ぜひ言いたいところは、実は今まではどちらかというと前置きなんですけれども、実は未来に向けた人づくりを本当にこれからしていかなければいけないんじゃないかと思っています。今ちょうど21世紀環境立国戦略というのが出まして、これも非常に緻密によくできている戦略だと思うんですけれども、この中でも言われています戦略の7番のところの、特に未来に向けた人づくりという、ここの部分が本当にこれから力を入れてやっていかなければ、やはり最終的に実は先ほどの企業のCSRを進めていくのも人ですし、これからの日本の未来をつくっていくのも人ですので、こういった人づくりというのをどういうふうにやっていくのかというところがポイントになってきます。
 ここでは、実は環境のことももちろんよく知っていて、あるいは環境のいろいろな原体験をしていこうという、そういった戦略なんかも入っているんですけれども、それだけではなく、やはり未来に向けていろいろな物事を考えていく、例えばビジョン策定ができたりとか、あるいはいろいろなシナリオを考えて、もちろん望ましいシナリオだけではなく、望ましくない未来になったときにも、どういうふうな対応をしていくのか、そういったものをシナリオプランニングというふうにいうんですけれども、こういったシナリオプランニング手法のプロセスを通して、そういった本当に変化に対応できるような考え方を身につけた人、あるいはそういった考え方を広めていけるようなイニシアチブを持った人材の育成、リーダー的な人の育成ということが求められてくるんじゃないかと思います。
 あとは、もちろんそれぞれいろいろな専門の分野もあってもいいと思うんですけれども、専門の分野だけではなく、やはり鳥瞰的に本当に全体を俯瞰していろいろな物事を見ることができて、いかなる変化にも本当に対応できるような、そういった理想的な意味ではフレキシビリティを持ったような人材をいかに育てていくかというところが今後のかぎになってくると思います。
 言葉としては、その戦略の7番では、環境を感じ、考え、行動する人づくりというふうになっているんですが、実際には考えるばかりではなく、本当に行動していく、そういった人づくりというところが求められてきます
 ただ、いろいろな環境教育も今施策としては行われているんですけれども、実際に簡単には確かに国民レベルのエコマインドが上がっていったりとか、今日やってすぐ明日何かできるというのが教育の分野ではありませんので、そういった戦略というところも含めながら、さまざまな具体的な要素というのが必要になってくると思います。その中では先ほど言った、いわゆる未来を考えていく、ビジョンづくりをしていくというのが、一つのやり方としては私は非常に効果的なのではないかなというふうに思います。
 それは、例えばサステナビリティの重要性に気づいてもらうとか、あるいはいかに今の経済至上社会から脱却して、本当にビジネス転換を図っていかなければいけないのか。これは実は企業の中でも結構やっているんですけれども、やはり企業の方のマインドがこういったワークショップをやったりとか、そういう教育の機会があると、随分変わってきます。気づくと人間というのはやっぱり変わってきますし、どこでその気づきを得るかだと思うんですけれども、そういったものでどういう発想の転換を持っていくかというところが必要になってくると思います。
 当然、市民側の責任だけでなく、そういうCSRや環境経営を進める企業の中でそういったことがどんどん行われると、アウトプットとしての製品やサービスというのも変わってきますので、今までの従来型の省エネ製品であったりとか、例えば再生可能を考えたようなそういったものだけではなく、もっと未来の社会を見据えたような、いわゆる発想の転換ができたような商品であったりとか、あるいは今大和さんの関係の方もお話しされましたけれども、例えば株式投資などの中にも社会的責任投資というのはもう当たり前に組み込んで応援していくような、そういった環境整備なども、人が変わることで当然こういったもののいろいろなことが変わってきますので、期待できるんではないかなというふうに思っています。
 あとは、いわゆる環境教育を学校で子供たちにするだけではなく、もっと施策としても企業内でのいわゆる社員のエコマインドの育成であったりとか、あるいはそういう社員が先ほど言ったサステナビリティという観点をわかって、さまざまは商品やサービスをつくっていく。そういった企業内でのいわゆる環境教育、あるいはそういう人材育成教育というのも必要になってくると思います。
 例えばの例なんですけれども、実際に松下電器さん、ずっと私どもはレポートの制作とかでお手伝いさせていただいていて、非常にすばらしいなというふうに思いましたのが、地球を愛する市民活動というのをもうここ数年来ずっとやっていらっしゃるんですね。具体的にいうと、例えば環境家計簿をつけましょうとか、あるいはエコバッグを持ちましょうとか、あるいはごみの量を減らしましょうとか。
 そういったことは、当然企業の中の、例えば環境マネジメントシステムでISO14001とかを取得するために、あるいは継続してそのマネジメントシステムを推進するためにやっていることはわかるんですけれども、それだけではなく、やはりおうちに帰ってからもエコライフをやりましょうということを推進していらっしゃって、実際にはそういったいろいろな影響がいろいろな商品の中にも出てきたりとか、あるいは本当に企業風土の中に生まれてきているという、目に見えない部分でのいろいろなメリットが出てきていると思うんです。
 数字で言いますと、昨年では実は4万7,000世帯が環境家計簿をつけて、実際にはCO2の削減に向けて貢献していると。こういったことをどんどん企業の中でもそれぞれ広げていってもらえるような、そういったことができるといいんじゃないかと思っています。
 実際、今回グリーン購入ネットワークというところが500万人を目標に、みんなでレジ袋要りません運動をしましょうということで、これはいろいろな企業さんがコミットをして、クレアンも数は少ないながらコミットをしていこうと思っているんですけれども、そういう500万人という数の人たちがそういうふうにちょっとでも行動を変えていく。考えて、環境に対していろいろなことをやらなければいけないなと思っているだけじゃなくて、ちょっとでも行動を変えていく。そういうところから、またいろいろなところに波及効果があるんじゃないかというふうに期待しています。
 あとは、その環境教育のAプランの実現に向けて、例えばマーケティングの観点からどういうことができるかというところで、ちょっと私が考えているところなんですけれども、これも実はクレアンの事業戦略というか、私たちのどういうふうに社会をよくしていくのかという中で、企業にどういうふうに変わってもらいたいのか、あるいはどういうふうに市民を巻き込んだらいいのかというところで、いつも考えてそういう発想として使っているところなんですけれども、例えば市民といっても、あるいは国民といっても、非常にエコマインドのレベル、先ほどの環境リテラシーであったりとか、あるいは行動しているかどうかという、そういうところのレベルでいうと、やっぱりまだまだ差があります。実際には、非常にエコマインドが高くて、そういうことをやっぱりやっていかなければいけないということで目覚めている層というのは、もう既に3%から5%ぐらいはいるとは思うんですけれども、この人たちはある意味に何も言わなくても、何もしなくても、どんどん自分たちのいわゆるCO2を下げていく方向にシフトしていっていると思うんですね。
 今度はエコマインドが次に高い層としては、環境意識に目覚め始めた層、例えばいろいろな地球温暖化の問題を知ったりとか、あるいはいろいろな企業の中で環境教育を受けたりとか、あるいはいろいろな地域ごとのそういう取り組みの中で、何かやらなければいけないということで目覚め始めて、それを取り入れて、実際には例えばエコプロダクツを買ったりとか、エコカーに乗ったりとか、いろいろな取り組みを始めている層というのも、もしかしたら今は15%ぐらいには増えているんじゃないかと。これは実は三、四年前に1回調査をしたいときのデータを少しリバイスしているんですけれども、多分そのころからいうと、この3年ぐらいで随分変わってきて、上がってきたんじゃないかなというふうに思います。
 ただ、とはいえ、まだまだ実は一番多い層がこの下で、8割ぐらいの層がまだまだこれからというところの段階です。ここの層をどうしていくのかというのが、恐らく戦略的に、例えばマーケティングの観点からいうと、この層をターゲットにしたような施策であったりとか、あるいは逆にインセンティブ的なそういういろいろな仕組みであったりとかというところが必要なんじゃないかというふうに思っています。
 少し解説しますと、レベル3の層というのは、自分にかかわるような、例えば安全、安心にこだわっている。例えば、子供さんができたお母さんなんかは非常に変わりやすかったりするんですけれども、ただどちらかというと環境問題を考えてというよりは、子供の健康のことを考えて、それで例えばシックハウス症候群になりたくないからといって健康住宅を建てるときに、そういういろいろなことに配慮していくとか、あるいは水だったりとか食品だったりというところも非常にこだわって、例えば無農薬のお野菜を選んだりとか。そういう食品を選ぶというのも結果的には環境につながって、排水のところで水を汚さないとか、あるいは土壌の汚染がないとか、あるいはお百姓さんの健康とかというところにもかかわってくるんですけれども、どちらかといえば、自分の子供の健康だったりとか、自分の健康だったりというところにこだわって、実際に安心なものの方がいいということで、そういう商品を選ぶそうです。これが多分20~30%ぐらいいるんじゃないかというふうに思っています。いわゆるロハス層と言われるところの予備軍的なところなのかもしれませんけれども、そういった層の方がその次。
 あとは、法令などのルールができたらきちんと守るよというふうな、割と日本人には多いタイプなんですけれども、みんながやれば私もやるよというふうなところで、マーケティングの世界では結構付和雷同型マーケティングといいまして、この層の方たちはあまり自分の意思が何かあってこれをしたいというわけではなく、どちらかといえば多い方についていくというところのタイプの方です。そういうことで考えると、もしかしたらほかの層の人たちがこの上の、例えば30%から50%ぐらいの人がどんどん環境意識が高くなって、そちらの方に移行していくと、周りがやってるから私もやらなければというふうになってくる。そういう層の方々だと思います。
 あとは、多分無関心な層というのもどうしてもいると思いますので、この人たちも恐らく10%から20%ぐらいはいるんじゃないか。多分何をやってもなかなか響かないというような層になってくると思います。
 アイデアレベルの戦略案なんですけれども、例えば何ができるかというと、レベル5の人に対しては、オピニオンリーダー的な存在になっていただいて、どんどんロールモデルとしてその人のエコライフを世界に向けて発信していく。これが例えば1,000人とか、あるいはもう1万人という規模になってくると、さまざまなエコライフのやり方があると思うんですけれども、自分ではこれは無理だというんじゃなくて、私はこのタイプだったらできるという、そういういろいろなロールモデルになるような、そういったロールモデルをつくっていくということをできると思います。
 実際、先ほどご紹介いただいた環境ビジネスウィメンというのも、元小池環境大臣が懇談会を開いたときのメンバーがそのままネットワーク化して、今30人ほどの環境ビジネスをやっている女性ばかりの集まりというのができているんですけれども、この層をまず100人に広げようと。100人に広げたら、次にエコビジネスをやっている人たちを1,000人ぐらいのネットワークにしていこうと。そういう構想を持っているんですけれども、なかなかこの分野はロールモデルがないと言われていますので、ぜひロールモデルをつくっていきたいというふうに、例えばアイデアとしては考えています。
 それから、もう一つ、レベル4というところでいうと、例えば環境先進企業と一緒に、社員とその家族のエコライフを推進していくような、先ほどの環境家計簿運動や、エコライフの登録者などを、例えば先ほどの500万人というのがありましたけれども、100万人ぐらいをまず目指していきましょうということで、企業、それぞれを巻き込んで行くというやり方も非常にスピード感といいますか、手っ取り早い方法としてはできるんじゃないかというふうに思っています。
 実際に、今例えば松下グループさんだけでも33万人とかいるわけですから、一人一人を変えていくよりは、松下さんに協力してもらって、あるいはいろいろな大手の企業さんでそういう環境経営を推進しているところはたくさん出てきていますので、そういう企業とともにそういったエコライフの推進運動を目指していく。あるいは、エコプレミアムの商品をどんどんつくって、その企業同士が連携して、そういったどういう商品開発をしていけばいいのかとか、あるいは企業の技術担当者を巻き込んだ形で、どういった技術開発が求められるのか、そういったところなんかも議論していくという企業を巻き込んだ活動もできるんじゃないかと思っています。
 企業同士の連携というのは、業界同士ではあっても、いわゆる異業種交流的なものというのはなかなか壁があってできなかったりしますので、そういったさまざまなセクターを巻き込むような活動の場をつくっていくというのも一つの方法だと思っています。
 それから、レベル3とかに関しては、エコ商品を買うことによって何かインセンティブがある、補助金制度であったりとか、あるいは個人で気軽に参加できるようなそういったものも必要だと思います。
 最近はCO2ニュートラルの仕組みをつくられた方もベンチャーでいらっしゃいまして、エコアントレプレナーというんでしょうか、そういう環境に関してどんどんやっていこうという方も増えてきています。例えば、私たちが車に乗ったりとか、あるいは飛行機に乗ったりして当然出していくCO2を実際にニュートラルにしていこうということで、そのCO2の取り引きを実際にちょっとお買い物ゲーム的にやってみよういう発想なんですけれども、それを市民感覚でやっていく仕組みなどの普及というのも考えられると思います。
 実際には、このPEARというカーボン・オフセット・イニシアチブの松尾さんという方がやっていらっしゃる制度なんですけれども、非常にこれは国民意識の高まりもあり、かつ実際に十分たちがどのくらいの、飛行機に乗ったらカーボン・オフセット、大体トン当たり2.5円ぐらいでの取り引きができるんじゃないかということで、これはいわゆる国際的な目標に組み込むというよりは、途上国でのいわゆるCDMを進めて、そちらの方で減らしたものをこちらの方で増えた分で取り引きしていくという制度なんですけれども、こういったものなんかもスキームとしては使えるんじゃないかなというふうには考えています。
 あとは、本当にレベル2ぐらいの方になると、やっぱり省エネを知ることが得するような、本当にお金と比べてどっちが得なのかという、ちょっとあめとむち政策的なところもあるかと思うんですけれども、何かそういう環境誘導策というのが重要になってくると思います。
 あとは、もう一つアイデアとして考えていることなんですけれども、来年洞爺湖サミットもありますので、実際に具体的なアクションというのが日本にも求められてきますし、世界に向けたいわゆる情報発信のそういう要素というところも非常に期待されてきていると思います。
 そこで、例えば低炭素社会についてのいろいろな社会イメージがあったりとか、実際にこれもちょっと拝見したんですけれども、2050年の脱温暖化社会のライフスタイルということで、IT化社会が進んでいったらこんな社会がデザインできるんじゃないかというところが出されてはいるんですけれども、それを実際にどこかで実証実験的にやってみたらいいんじゃないかというのがこの案です。
 ちょうど、今神戸の方にあります六甲アイランドという人工島で、ちょうどそれも来年20周年を迎えるらしいんですけれども、積水ハウスさんなどが中心でつくられた住宅をメインにした人工島があるんですけれども、1万人ぐらい人工島に住んでいらっしゃって、そこで何かそういう環境をテーマにしたような、地域コミュニティー施策はできないかというご相談が来ています。
 私のアイデアとしては、ちょうど来年洞爺湖サミットの前に5月に神戸で環境大臣会議というのが行われるというふうに聞いておりますので、そのタイミングに合わせて、大人たちがつくる未来社会ではなくて、子供たちが、当然7歳の子供たちは2050年にはまだ年齢的には50歳ですし、17歳の子供も60歳なわけで、まだまだ元気なわけですよね。そういう子供たちが2050年あるいは2025年にこんな社会にしたい、こんな町に住んでみたい、こんな暮らしやこんな生活がしたいという、そういった夢を描いて、子供たちがそのビジョンに向けて目標をつくり、それに対してコミットメントをして行動を起こしていく。そういう世界子供環境サミット2050みたいなことができればいいんじゃないかというのを環境ビジネスウィメンのメンバーとは話し合っています。
 先ほどいった六甲アイランドがモデル都市になって、できれば2050年までにCO29割削減、85%から90%というところで、9割削減というのを目標に。そして、2025年までには半減できる、そういうエコ宣言を行って、実際には絵にかいた餅にならないように、具体的に六甲アイランドの中で何ができるのか、実際には例えば交通機関なども非常にクローズドなシステムですから、先ほどの尾島先生のお話でクローズドシステムであったりとか、あるいはコンパクトシティの具現化ということなんかもできるような部分もあるかとは思います。当然環境だけではなくて、次世代も幸せに暮らすことができるような、そういったモデル都市としてどういう要素が必要なのかということなども、住民のアイデアを募集して、ともに未来ビジョンを描いていくということをちょっと考えています。
 実際には未来を担う子供たち、10歳から17歳ぐらいが中心となって、大人はバックアップの舞台に回って、この六甲アイランドの中にはカナディアンアカデミーという、いわゆる外国人の方がたくさんいるスクールがありますので、できればそういう外国人の子供たちも巻き込んで、みんなで未来をつくっていくということが一つのモデルとしてできればいいのではないかというふうに考えています。ちょっとこれは詳しく何か書いていますけれども、今こんなことを考えています。
 今までちょっとお話ししたバックキャスティングの考え方というのは非常に効果的なんですけれども、やっぱり実際にはあるべき社会というイメージが描けても、なかなか具体的なロードマップがあったりとか、実際にやってみる中で、実証実験をしてみる中で、いろいろなパターンが出てくると思います。それに対してどう対応していくのかというふうな、そういう考え方も重要になってくると思います。
 複数の未来を想定する、先ほど言ったシナリオプランニングの手法というのは、未来は本当にだれにも予測できないものなんですけれども、それを前提にさまざまな不確定要素から重要なものを選択して、そのインパクトの大きさから複数のシナリオを導き出してやっていくんですけれども、実際にはそういったことを政府が考えてやる、あるいは行政が考えてこれというふうに、私だけではなく、地域地域でやっていってもらって、その地域地域の考え方というところを共有できるような形にすればいいんじゃないかと思っています。ちょっと事例としては、こういういろいろな企業さんの事例などで、クレアンの方でもお手伝いさせていただいたところもあります。
 ということで、初めのお話に戻るんですが、本当に未来を変えていくのはもう今しかないと思っています。私の大好きなオノ・ヨーコさんの言葉も入れたんですけれども、今の私たちの決断と行動によって、きっと未来は変えられるし、変わることができるんじゃないかと思っていますので、ただ本当にどう行動していくかというところがポイントになってくると思います。
 どうもありがとうございました。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
 委員の先生方から、ご質問あるいはコメントをお願いしたいと思います。
 それでは、今回は向こうからまいりましょうか。永里委員。

○永里委員 ありがとうございました。先生のお話を聞いて、人々に与えるイメージがいかに重要かということや、そして環境教育についても述べられていまして、いろいろ参考になりました。
 ここで、ちょっと先生のご意見を聞きたいことがあります。日本の企業はCO2削減に関しまして、ある種の結果を出しています。それは私が考えるに、プロ集団だからだと思っています。大企業は特にそうなんですが、仕事として減らすことが業務であると思っているんで減らしている。
 その企業人が、一たん家庭に帰ると生活者になるんですが、その企業の構成員である生活者は、必ずしもまじめにやっていないんじゃないかと。こういってはいけないんですけれども、生活者全体というとらえ方でもいい、あるいは国民という言い方をしてもいいんですが、CO2が減らないどころか増えている。それは、日本人として言いにくいことなんですが、民度が低いんじゃないのかなと、環境問題に関して。というのは、ヨーロッパに比べてです。中国に比べてと言っているわけではなくて、ヨーロッパに比べて環境問題に関しまして、どうも幼稚園とか小学校から、あるいは家庭においてプリミティブな形での環境教育がヨーロッパの方にはあって、日本にそれがないのじゃないかと。だから、企業では削減できても家庭ではできないということになっているんじゃないかと思うんですけれども、このことについて先生のコメントをお願いしたいと思います。

○鈴木部会長 森島委員、どうぞ。

○森島委員 薗田さんのお仕事はCSRコンサルティング、ということですが、会社という営利組織が、利益を上げるために環境に関する業務をやっているとすれば、これはソーシャル・レスポンシビリティじゃなくて、本来の営業上の業務としてやっているわけですから、自分の利益のための当たり前のことなんですね。
 さきほど、永里委員は民度が低いと言われましたけれども、私は環境という面では、日本では会社も民度が低いのではないかと思っております。つまり、会社がもうからなくても、あるいは会社のもうけを一時的に犠牲にしてでも長期的な環境の保全のために会社が社会的責任を果たすかということになりますと、日本の会社では、コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ担当部署の人は一生懸命に社会的責任を考えますけれども、経営者、COEのレベルまで行くと動かなくなってしまうことが少なくない。会社がもうからないのにどうやって株主に説明するんだと言って、そこで今の永里委員のおっしゃったことをそのまま使わせていただきますと、一般の人が、うちに帰ったら何もしないのと同じように、会社の経営者は表ではともかく、会社の中ではもうからないことは何もしようとしないというのが今の日本の会社の姿ではないかと思います。
 私はコーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティというのは残念ながら今の日本には言葉だけあって、実体はコーポレート・ソーシャル・イレスポンシビリティか、コーポレート・インベスターズ・レスポンシビリティではないかと思っています。
 1980年代にコーポレートフィランソロピーという言葉が流行しましたが、バブルがはじけて会社がもうからなくなった途端に雲散霧消してしまいました。現在は、もうかっている会社だけがCSRと言って、会社のイメージをよくするためにCSRを議論していますが、会社が一時的な利潤をどこまで削って将来の社会のための投資や行動ができるのでしょうか。
 質問は、CSR・コンサルティングとおっしゃっていましたが、会社がもうからなくても、環境のためには会社のもうけを捨てておやりなさいというコンサルティングをやっておられるかどうか。そして、そのようなコンサルティングをしたときに、どのような場合に会社はありがとうございましたと言って薗田さんの会社の助言に従って短期的な利益を捨てて損失を蒙る株主に対する説明をちゃんとして、社会の長期的な利益のために行動するのかということを伺いたいと思います。

○鈴木部会長 横山委員。

○横山委員 低炭素社会というイメージに対して、暮らしのイメージがわかないし、楽しさが見えてこないというお話でしたけれども、それを聞いてちょっとびっくりというか、おっと思ったんですね。私は低炭素社会というのはいいんじゃないかと思っていましたので、改めて言葉のイメージということで、おもしろく受け取りました。
 それに関連してちょっと伺いたいんですが、やっぱり楽しさが見えてこないとだめだということなわけですが、私は今経済発展と環境保全を両立させるなんて言っていてももうしようがないと。むしろ、生活水準を下げるんだということをどうやって一般の人に納得してもらうかということが重要になっているのに、どこもそれを言い出さないんではないかと。9割削減なんていうのは、生活水準を下げても、精神的な豊かさで満足度はむしろあるというようなことを目指していくべきだと思うんですが、そのイメージからいって生活水準を下げるなんていうのはとんでもないことなのか、いろいろな議論をなさっているということですが、そういうことを議論なさったことがあるのか、あるいは個人的にそういうことに対してどうお考えになるのかということをお聞きしたいと思います。

○鈴木部会長 浦野委員。

○浦野委員 重複するものも今先生方の意見でありますので、それは省略して、私はたまたま安全とか安心というところをかなり専門にやってきた関係で、今どこへ行っても安心、安全というのが売りになっていて、それが商品もあり、企業もあれば、あるいは役所もそういうことを盛んに言うわけですけれども、そのときに母親がどうこうという、安心なものを子供にということもあるんですが、そのときの安心、安全というは非常に目先というか、短期のものしか見ていないですね。そうすると、過剰に過敏になって、かえって環境負荷が増えるようなことが非常に多いというふうに私は思っておりまして、そういうことが結果的には長期の安心、安全を破壊しているという問題になると。温暖化の問題なんかはその典型的な問題です。
 それから、こんな社会にしたいというときに、どうしてもITがあるとよくなるようなことを言うんですが、逆にITによって便利さ快適さをどんどん要求するようになると、かえって環境負荷が増えてくるおそれもすごくあると。
 そういう意味で、やっぱり長期を考えて行動できるかというところをどう教えられるかというところが非常に難しく、特に、レベル1はしようがないとして、2、3に対してその辺をどういうふうに考えてやるか。あるいは、それは企業でも同じことなんですけれども、企業の方は森島先生にお話しいただいたので省略しますけれども、その辺をどういうふうに考えられるかというのをちょっとコメントがあれば追加していただきたい。

○鈴木部会長 須藤委員。

○須藤委員 どうもありがとうございます。今の浦野先生と言葉のいい方が違うのかもしれませんが、こういう活動をしているとうちの社だけ、あるいは私だけやらなくたっていいじゃない、みんながやっていないんだから、やらなくたっていいじゃないというのが非常に多いと思うんですが、その辺の切り込みの仕方、あるいはどういうふうにそれに対応しているのかお伺いしたいのが1点目。
 それから、2点目は松下電器のようないい例をお話になっているんですが、一般には私は児童生徒をどういうふうにこの中に巻き込んでいくかということで、企業でお仕事をされているから、それはなかなか難しいと思うんですが、企業人であってもお子さんは皆さんいらっしゃるわけなんで、その児童生徒の巻き込み方をどういうふうにお考えになっているのか、2点目。
 3点目は、お話しにならなかったんですけれども、こういうライフスタイル、ワークスタイルの変更の中で、活動の中で、私はサマータイムというのが非常にいい一つの例だと思うんですが、サマータイムについてどうお考えになっているかお聞かせください。この3点です。

○鈴木部会長 それでは。7、8分になりましたが、よろしくお願いします。

○薗田氏 皆さん、本当にすごいいいポイントをご指摘いただいて、ありがとうございます。
 まずは、民度が低いというお話しなんですけれども、正直言って、やはり私も環境先進国のドイツやスウェーデンとかを見ていますと、やっぱりまだまだ日本は遅れているところはあると思います。ただ、実際にスウェーデンに行っていろいろなお話を数年前に聞いてきたんですけれども、15年ぐらい前にものすごく環境教育というのを熱心にやられたのが、だんだん成果が出てきているというところはあると思うんですね。
 そういう意味では、まだ日本の場合はそういう施策がちょっとスウェーデンよりは後から始めていったので、逆にこれからやっていくことによって、私はどんどん民度は上がっていくと思いますし、実際にはここ2年ぐらいの間に、例えばあるアル・ゴアの映画がはやったりとか、あるいは「豪快な号外」というのをごらんになった方はいらっしゃいますでしょうか。市民たちが地球温暖化をみんなに知ってもらおうということで、新聞をつくってばらまきをしたんですけれども、その数が120万部という数の号外をまいて皆さんに知らせていった。それも、たまたまお笑い芸人の方が地球温暖化のことを知って、これは大変だからみんなに呼びかけようということで、実際にはみんなに呼びかけた中で約1億円ぐらいの寄付を集めて、そういったことを呼びかけていった。本当に北は北海道から、南は沖縄まで、いろいろな市民が動き始めてそういう活動をやった。ちょっと草の根活動的なところはあるんですけれども、そういったものも始まってきている。
 そういう意味で言うと、まだまだ無関心層もあるんですけれども,目覚め始めた層がどんどん動き始めたなというところは私自身は肌感覚ではありますので、そういう意味ではこれからの環境教育がすごく重要だと思いますし、ある意味子供たちの環境教育とともに、子供たちがおうちに帰ってお父さん、お母さんに対して、もっとこんなことをやらなければだめなんじゃないということも含めて親子の環境教育、あるいはやっぱり企業内での環境教育というのが必要だというふうに思います。
 ご指摘は非常に痛いところを突かれているんですけれども、日本の企業の中でも先ほどの森嶋先生のお話じゃないですけれども、やっぱり企業は利益にかかわらないとやらないというところは明確に持っている経営層もあります。私もレポートのトップインタビューでいろいろなトップの方にお会いする機会があって、そのときにいろいろな環境の意識もお聞きするんですけれども、実際に非常にそういうことを感じて、考えてやっていらっしゃる方もいないわけではありませんけれども、まだまだ企業とその環境、あるいはCSRを進めていく中で利益につながらなければ、それは後回しになってしまうというところは確かにあります。
 それを私たちは何とか、長期的に見ていけば絶対にCSRというのは戦略としては有効ですよという言い方をしています。短期的に見るとコストも合いませんし、多分そこにかけるマンパワーであったりとか、あるいはコストのところでは全然合わないかもしれないんですけれども、実際に長期的にそういう企業を見ていこうという、逆に株主や投資家を増やしていきましょうという、反対にインベスター戦略の方までお話をし始めています。
 まだまだそれも本当にこれからのところではありますけれども、CSRの企業のとらえ方としては、ソーシャル・レスポンシビリティのレスポンシビリティを責任ととらえずに、信頼というふうにとらえてくださいということを私たちは言っています。信頼という以上は、いわゆる企業の中で幾ら頑張ってやっても社会が信頼しないと、社会の立場から見た企業の信頼ですから、社会に対してどういうふうに自分たちがそういうことを、例えば環境についてもそうですし、ほかのいろいろなCSRの側面についてもそうなんですけれども、やっていかないと、あるいは本業の製品やサービスの中でどんなふうに事業を持続可能にしていく、あるいはそれは企業の持続可能性だけではなく、社会の持続可能性や地球の持続可能性まで考えたような、そういったものをできるだけ推進していくようなことを仕事でしておりますので、逆にそういう企業ばかりが出てきたら、クレアンはきっと仕事がなくなってしまうので、反対に言えばそういう社会になればいいなというふうには思うんですけれども、まだまだ私たちの仕事が忙しいということは、そういう企業さんがなかなかたくさんいるなという感じではあります。
 実際、少しずつ本当に動き始めているというところで、さっきの須藤先生の松下電器さんのお話になるんですけれども、確かに松下電器さんほどやっているところは少ないです。例えば、CSRのいろいろなランキングとか環境のランキングとかをやっても、確かにトップクラスでやっている10社と、あるいはランキングの中でも500社から、その下に出てこないようなところというのは全然もちろん活動のレベルも違いますし、その中でやっていらっしゃる社員の方の意識レベルも違いますので、それを本当にどんなふうに上げていくかというところなんです。
 ただ、ちょっと期待ができるところとしては、最近はいわゆるサプライチェーンマネジメントという考え方で、いわゆる大企業が取引先の企業と一緒にやっていこうとか、あるいは取引先の企業の次の部品メーカーさんとか、あるいは本当にいろいろなサービスをやっているところがあるんですが、そういうところとみんなでやっていこうという動きが出てきていますので、逆にそういうところまで巻き込んで企業の方の意識も変わり、かつ、それがおうちに帰ってもやっていこうという動きにつながっていけばいいんじゃないかと思っています。
 あとは、投資家というところの視点からなんですけれども、最近実はカーボン・ディスクロージャー・プロジェクトというCO2をどれだけ排出しているかというのを公開していきましょうというアンケートが、社長あてとか会長あてに企業のところに来ています。このアンケートの発信者は、投資家であったりとか、そういう投資する機関だったりするんですけれども、そういう機関投資家とか個人投資家がそういうふうなことを教えてくださいという形で、企業に対して揺れ動かしが出てきているというところもあります。
 それに対して、経営層としても当然環境の問題については、特に地球温暖化の問題については、例えば食品メーカーであったら原材料の調達のところで、本当に安定した調達ができるのかとか、あるいは例えば先日も味の素さんとお話をして、味の素さんなんかもトウモロコシが高騰するといきなり値段が上がってしまう。それは例えばバイオエタノールとの争いであったりとか、あるいはそういう食料の安定供給ができないと、実際自分たちの企業のリスクになってしまうというところで考えると、温暖化の問題をだんだん企業もいわゆるリスクと、それから逆にチャンスとしてとらえ始めたんです。
 それを先にやっていくことによって、ほかの企業と差別化ができるとか、あるいはそれを先にやっていくことによって、お客様も巻き込んでいったりすることによって、ここの企業はいわゆる環境ブランド、あるいはCSRブランドで信頼できる企業なんだな、こういう企業の商品を買っていったらいいんだなという企業のいわゆるブランド戦略というところまで今私たちは考えて、お話をしていっているというところはあります。
 そういう意味でいうと、本当は長期的な視点で考えるしかなかなか問題の解決にはつながらないんですけれども、そういったお話などをし始めています。ただ、一番重要なのは、恐らくこれは社長の教育なんですね。教育というと口幅ったいんですけれども、例えば森島先生もいろいろご苦労されているところもあると思うんですが、そういういろいろなレポートを出されている企業さんなんかでも、社長の意識がみんな高いかというと、時々担当者が書いたりしている原稿なんかもありますので、やっぱり社長が本当にみずから語って、みずからそういう環境だけじゃなく、そういう持続可能な社会に対してのコミットをしていく。そういう意味では、社長の意識をどう変えていくのかというところがあると思います。
 これは日本の国でいうと、多分総理大臣の意識をどう変えるのかというところなので、今回ぜひ総理にもそういう意識を持っていただきたいなと思います。企業もボトムアップの取り組みもありますけれども、やっぱりトップダウンというのは一番効果的ですので、ボトムアップとトップダウンをどういうふうにしていくのか、本当に総理であったり、いわゆる国会にいらっしゃる先生方の意識をどう変えていくのかというのが、実は一番日本では大事なところなのかもしれません。
 あとは、低炭素社会のイメージで、楽しさが見えてこないというお話をしたんですけれども、これは本当に個人のいろいろな感覚というところもありますので、私がそういうふうに感じるのと、それから皆さんのお手元に今日ちょっと資料でお持ちしたのが、言の葉さらさらプロジェクトというので、これを実は3年前に私が未来を市民はどういうふうに考えているんだろうかということで、みんなに呼びかけていろいろな夢を語ってもらったプロジェクトなんですね。そのちょうど七夕の風習にちなんで、2025年の願い事をみんなで短冊に書きましょうということで、実際に本当の短冊の紙に書いていただいたのもありますし、ネット上でそういう書き込みができるようなブログみたいなものをつくって、どんどん書き込みをしていっていただいた。
 実際に3年間で1万5,000件近くの短冊が集まってきたんですけれども、ここでは2005年と2006年にやったいろいろなイベントであったりとかシンポジウムであったりとか、皆さんの短冊にどんなものがあったのかというのを一部ご紹介しています。
 私自身がこれをやってとてもほっとしたなと思ったのが、もちろんこういうのに参加する方はいわゆる無関心層ではなく、多分エコマインドでいうとレベルが3以上の人だとは思うんですけれども、実際には未来に対して、例えば最後の10ページのところでよく出てくるキーワードによる分析というのがあるんですけれども、上位30位の部分では「暮らし」であったり、「家族」、「幸せ」、「みんな」、「楽しい」、「世界」、「健康」、「笑って」、「平和」、「子供」とかこういったキーワードがとにかく多かったんですね。「お金」というのはもちろんあったんですけれども、どちらかといえばお金という価値観よりは、例えばみんなと一緒にいる時間とか、みんなと過ごせる楽しさとか、そういうところに価値観が移りつつあるんじゃないかなとちょっと思ったので、これは本当に一部のデータではありますけれども、例えばこういった国民全体にそういうことを問うてみると、もうちょっと具体的にイメージというのもつかめるんじゃないかなと思います。
 この言の葉さらさらプロジェクトは今年も3年目でやったんですけれども、今年はミュージックテレビジョンという、若者たちがいろいろコンサートをやっているメンバーの方が集まってするイベントがあるんですけれども、そこがぜひこれをやりたいということで、10代の若者たちと一緒に、ミュージックテレビジョンのコンサートに来た人たちにもそういう願いごとを書いていただいて。私の感覚では、逆に10代、20代の前半の人の方がすごく感受性が豊かな部分、地球温暖化のこととか、環境問題について、結構真剣に考え始めているんじゃないかなと思います。
 最近は、マイ箸運動というのが始まってきて、私も10年前からマイ箸をずっと持っていたんですけれども、ここに来ていろいろな方々からマイ箸をどういうふうに普及していくのか、広めていくのかとか、あるいはテレビや新聞などの取材もすごく多くなってきて、ちょっとメディアも取り上げ方が変わってきたかなというふうには思います。ちょっと明るい話をするとそういうふうに変わりつつもあると思いますし、キーワードについては本当に感覚的に私がそう感じただけなので、ぜひ皆さんのご意見も聞いていただければいいんじゃないかなというふうに思います。
 それから、浦野委員の話で、安心、安全について、これも確かに企業さんとすごく悩んでいるところで、安全を追求していくと、例えばある商品の原材料のところの調達段階からトレーサビリティをやっていくとしたら、本当にそれに対してのものすごくパワーもかかりますし、当然コストもかかってくる。お客様は、いわゆるユーザーの方々はできるだけ安全なものが、あるいは安全情報が欲しいというふうにおっしゃるんですけれども、安心のレベルというのは、やっぱりこのエコマインドのレベルと同じぐらいいろいろ違うと思うんです。どこまで安全な情報を出しても、あそこは信用できないというふうに言われてしまうかもしれないので、その辺は逆に企業としても悩みながら、今どこまでの情報をどこまで正確に伝えればいいのかというふうなことはやり始めています。
 ただ、結論はないんですけれども、私たちが最近言っていることの一つとしては、先ほどのCSRにも共通するんですけれども、やっぱり最後は人なんじゃないかなというふうには思っています。
 例えば、私があるメーカーの社員で、こういう考え方でこういうふうにやっているんですよという本当にいろいろな人にしていると、きっと薗田綾子を信頼して安心してもらえるんじゃないかなというのがあると思うんです。幾ら私の顔が出ずにいろいろな情報を出し続けたとしても、やっぱりそれはどこかに不安な部分というのが残ってしまうんじゃないか。
 そうすると、最終的には、例えば松下電器さんであったり、先ほどの味の素さんであったりという、そこに対してどんな人がどういう思いで働いていて、あるいはどういう理念を共有して、どういうことを具体的にやっているのかということが、人を通してきちんと伝わっていけば、もっと安全な内容が人々の安心というところに変わってくるんじゃないかなと思いますので、最終的にはやっぱり人がキーになってくるんじゃないかなと思います。
 それから、もう一つ、そういう意味では安全はやり過ぎると絶対に環境破壊にはつながるとは思います。だから、やり過ぎないでどこまでのレベルで安全を確保していくのか、あるいは安全な情報というのをきちんと伝えて理解してもらえるのかというところなので、何でもやり過ぎはいけないと思います。
 ペットボトルなんかでも、ドイツとかスウェーデンに行くと傷だらけのペットボトルで水が売られていて、別にみんなそれを平気で買っているわけなんですけれども、日本の中でそれは飲料メーカーさんもいろいろ工夫してやろうとしてはいるんですけれども、やっぱりそれだと難しいというふうなところで、やっぱり日本の感覚というのは結構完璧主義、パーフェクトを目指したいというところはあると思いますから、その辺を考えた上での戦略が必要になってくると思います。
 あと、最後の一つ、ITによってライフスタイルを変えていくというのは逆に破壊するんじゃないか、私もそれはそう思います。だから、どちらかというとちょっと批判ではないんですけれども、このIT社会のエコデザインのこういうスタイルをしていると、多分本当に環境とか生活も豊かになるのかなというのはちょっと疑問には思うところがありますので、それも含めてやっぱり今までのやり方、あるいはITに依存しないで、ITはあくまで便利なツールであったりとか仕組みなので、それをするために私たちが生きるのかというところからスタートして、もう一回議論をした方がいいんじゃないかと思っています。
 そういう意味では、先ほどのサマータイムなども、どんどん導入していった方がいいと思いますし、いろいろなことをチャレンジしてみてやってみる中で、企業でいうとテストマーケティングという便利なやり方があるんですね。いろいろなエリアでテストしてみて、だめだったらまたやめていったりとか、変えていったりというやり方もありますので、一斉に全国民でやりましょうというよりも、どこかのエリアで、あるいはどこかの企業でそういうことをやっていきましょうというふうなことがあると、非常に進みやすいんじゃないかなと思います。
 もう時間もないんですけれども、1件だけ。そのサマータイムについては、例えば電車の会社のところがサマータイムをやってみたいというお話をされていて、それはなぜかというと、電車が混む時間というのが限られてるわけなんですけれども、できれば分散してくれた方が、電車会社としても非常に環境的にも経営的にもいいので、例えば新宿だったら新宿界隈の企業さんだけでもサマータイムを一遍導入してみてやってみたら、電車会社としても非常にいいというお話もありましたので、例えばそういうところを巻き込んでやっていくなんていうのも一つの方法としてはあるんじゃないないかなとは思います。
 すみません、皆さんのご質問に十分答えられなかったかもしれませんが。

○鈴木部会長 十分お答えいただいたんじゃないかと思います。
 本当にどうもありがとうございました。今日は大変楽しいお話をいただきました。
 それでは、本日の予定はここまでということですが、次回。

○市場メカニズム室長 次回のお知らせだけ事務局から一言。
 次回は10月11日木曜日、9時半から12時半ということで、場所は三田の共用会議所になりますので、よろしくお願い申し上げます。以上でございます。

○鈴木部会長 それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

16時39分 閉会