中央環境審議会地球環境部会(第99回)議事録

日時

平成23年12月9日 9:34~11:33

場所

東海大学校友会館『阿蘇の間』

議事次第

  1. (1) 気候変動に関する科学的な取組について
  2. (2) 気候変動への適応について
  3. (3) 今後のスケジュールについて
  4. (4) その他

配付資料

  • 資料1-1 「IPCCの極端現象と災害リスク管理、気候変動の適応に関する報告書(SREX)」について
  • 資料1-2 低炭素社会国際研究ネットワークについて
  • 資料1-3 GOSATによる全球観測について
  • 資料2-1 気候変動適応の方向性について
  • 資料2-2 気候変動影響評価について
  • 資料3   今後のスケジュール
  • 参考資料1 気候変動に関する包括的な枠組みに向けた道筋(日本提案)
  • 参考資料2 世界低炭素成長ビジョン-日本の提言
  • 参考資料3 第四次環境基本計画の見直しに係る重点分野「地球温暖化に関する取組」
  • 参考資料4 各電力会社のピーク電力・電力需要の変化

午後 9時34分 開会

○地球温暖化対策課長
それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会第99回会合を開始いたします。本日、委員総数36名中、過半数の委員に既にご出席いただいておりますので、定足数に達しております。また、本日の審議については公開とさせていただきます。以降の議事進行につきましては、鈴木部会長にお願いいたします。

○鈴木部会長
それでは、第99回の地球環境部会ということになりますが、議事に入らせていただきたいと思います。今日は、いささか多様な議題もございますので、まず、事務局の方から配付資料の確認をお願いいたします。

○地球温暖化対策課長
それでは、お手元、議事次第とありますが、その下に配付資料リストがございますけれども、資料1-1、IPCCの極端現象と災害リスク管理などについて。それから、資料1-2が、低炭素社会国際研究ネットワークについて。資料1-2の別紙というのがございます。それから、資料1-3、GOSATによる全球観測について。これも別紙がございます。それから、資料2-1、気候変動適応の方向性について。これも別紙がついております。それから、資料2-2、気候変動影響評価について。それから、資料3、今後のスケジュールについて。
それから、参考資料が四つございまして、1が日本提案の気候変動に関する包括的な枠組みに向けた道筋。参考資料2が、世界低炭素成長ビジョン。参考資料3が、地球温暖化に関する取組。参考資料4が、各電力会社のピーク電力・電力需要の変化ということになっております。
過不足等ございましたらお申し出いただきますようお願いいたします。
それからカメラ、報道についてはここまでというふうにさせていただきます。宜しくお願いいたします。

○鈴木部会長
それでは、議事に入らせていただきます。
議事次第にございますように、本日議題として4点挙げてあります。一つ目は、気候変動に関する科学的な取組について。二つ目、気候変動への適応について。三つ目は、今後のスケジュール。4番がその他と、こうなっております。
では、まず、議題1、気候変動に関する科学的な取組。これにつきまして、事務局の方から資料1-1から1-3に基づいて説明をお願いいたします。

○研究調査室長補佐
では、議題1に関しまして、IPCCの特別報告書並びに低炭素社会国際研究ネットワーク、それから、温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT」による全球観測について、この三つについてご説明させていただきます。
まず、資料1-1、IPCC「気候変動への適応推進に向けた極端現象及び災害のリスク管理に関する特別報告書」についてでございます。
こちらの特別報告書は、本年11月に、ウガンダ共和国において開催されましたIPCC第34回総会において承認されたものでございます。この報告書では、気候変動と極端な気象及び気候現象の関係並びにこれらの現象の持続可能な開発への影響などに関する科学的文献を評価しております。その評価をもとに、政策決定者等が気候変動に関連する災害リスクの管理及び気候変動への適応施策に利用できるように取りまとめたものでございます。
IPCCの第4次評価報告書というものが2007年に公表されておりますが、この報告書はその公表以降の複数の知見を用いまして、新たに気候変動への適応にどう対応していくかというものをまとめたものでございます。政策決定者向け要約、SPMが承認されております。
先ほどご説明しましたように、今現在の気候変動と極端な気象現象、これらのリスクをいかに評価し、これから災害リスクの管理及び気候変動への適応施策に利用していくかということが報告書作成の背景となっております。
結論の1点目としまして、曝露と脆弱性、極端現象とその影響及び災害損失の観測・所見というものがございます。こちら、幾つかの極端現象が大気中の温室効果ガス濃度の増加を含む人為的影響により変化しているということ、実際にどのような現象が起こっているのか、また、それによりどのような影響及び災害損失が観測されているかというものについて述べています。
より詳細な内容につきましては、資料1-1の後ろにあります別紙をご確認いただければと思います。
2点目としましては、災害リスクの管理と気候変動に対する適応と題しまして、過去の極端現象における経験から、これまでの災害リスク管理と気候変動への適応を統合し、地域、国、国際レベルでの開発の政策と実行に取り組むことはあらゆるレベルで有効であるということで、こちらに関しましては、複数の知見が統一的な見解を示しております。
3点目としまして、極端現象の将来予測とその影響及び災害損失の評価がございます。気候変動モデルでは、21世紀末までに気温の極端な値の大幅な増加を予測しております。例えば20世紀末に20年に一度起こる暑い日は、今世紀末、21世紀末にはほとんどの地域で2年に一度起こる可能性が高い。あるいは、北半球の場合はもうちょっと頻度が落ちますけれど、それでも5年に一度ということで、極端に気温の高い日が起こる頻度が高くなるというものを知見としてまとめてございます。
また、強い降雨の発生頻度、あるいは総降水量に占める強い降雨の割合といいますのが、いわゆるゲリラ豪雨のようなイメージのものでございますけれど、それが世界の多くの地域で増加する可能性が高いとしております。
また、熱帯低気圧の最大風速が増加する可能性が高くなります。ただし、すべての大洋で増加するわけではありません。世界的には熱帯低気圧の発生頻度は減少するか、基本的には変化しない可能性があるということでまとめてございます。
4点目としましては、変化する極端現象及び災害のリスクへの対応となりまして、後悔の少ない対策、英語ではLow Regret Measuresと呼ばれるもの、例えば災害の早期警報ですとかリスクコミュニケーションなど、こういった対策は将来予測される曝露であるとか脆弱性・極端現象の変化に対する初動の取り組みとなりまして、すぐに役立つ、また将来の気候現象の変化に対応する土台ともなるということがまとめられています。また、適応への促進としましては、モニタリング・評価・学習・研究・技術革新を反復するプロセスが、災害リスクを小さくし、適応を促進するというふうにまとめてございます。
資料1-1については以上でございます。
続きまして、資料1-2、低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)についてご報告させていただきます。
このネットワークは、2008年のG8環境大臣会合におきまして、日本の提案により、低炭素社会の形成を科学の面から支えることを目的として、各国の研究機関の経験ですとか知見の共有、対話の促進を行うことを目的として設立されたものでございます。活動は2009年から発足しております。
このネットワークは、G8を中心とします各国を代表する研究機関により構成されておりまして、現在7カ国16機関が参加しております。G8以外の参加国は、インドと韓国の2カ国となっております。このネットワークを通じまして、国際的な低炭素社会政策研究の情報交換等、共有・連携を強化して、成果を国際的な政策及び各国の政策にインプット、あるいはフィードバックするということをしております。日本からは国立環境研究所が参加しております。また地球環境戦略研究機関が事務局として、参加しております。
こちらの活動成果は、今後開催されますG8の環境大臣会合に報告されます。また、そのほか、今ちょうどダーバンで行われておりますけれど、国連気候変動枠組み条約締約国会議やその作業部会のサイドイベント、あるいは世銀の開催しましたセミナーなどの機会を捉えまして、国際的に発信しております。
この低炭素社会形成といいますのは、カンクン合意に盛り込まれておりますように、今後、先進国・途上国の両方で、経済政策や国の発展計画の中心的な事項として位置づけられることが期待されておりまして、現状のLCS-RNetはG8、すなわち先進国を中心とする機関となっておりますが、今後アジアに向けて展開していこうと考えております。
アジアにおける低炭素成長は、世界全体のGHG半減の達成の鍵を握ると考えられており、低炭素研究というものを、先進国だけではなくてアジア各国にも広げ、アジアにおいて、研究交流を基盤とする、代表的な低炭素社会に関する研究者・研究機関のネットワーク形成を図ろうという取組を現在進めております。
これまで、国立環境研究所や、京都大学、IGES等で協力し、また、JICAの活動とも連携しまして、マレーシア、ベトナム、タイでワークショップを開催しております。
また、先般ASEAN+3の環境大臣会合が開催されましたが、こちらにおいて、このLCS-RNetのアジア版の設立というものを提案しております。
資料1-2の別紙には、先般パリで行われました、低炭素社会国際研究ネットワークの第3回年次会合の開催結果がございますので、こちらもあわせてご確認ください。
続きまして、3点目、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」、GOSATによる全球観測についてご報告いたします。
この衛星は、国立環境研究所及び宇宙航空研究開発機構と共同で、世界で唯一の温室効果ガス観測技術衛星として環境省が運用しているものでございます。
GOSATを通じまして、宇宙からの温室効果ガス濃度の全球分布並びにその時間的変動を観測することで、温室効果ガスの地域ごとの吸収・排出量の把握等を行い、環境行政の科学的基盤となることを目的としてございます。
GOSATのこれまでの成果としましては、資料にございますように、平成21年1月に打ち上げ成功。その後、同年5月には初の解析結果を公表しております。その後、順調に観測・運用を続けておりまして、21年10月には観測データ(輝度スペクトルと観測画像)、これはGOSATの成果の一つでございますが、その一般提供を開始しております。そして平成22年2月には、同じく観測データ、こちらは実際のCO2及びメタンの濃度ですが、その一般への提供を開始してございます。また、本来の目的からはちょっと外れておりますけれど、平成22年4月にはアイスランドにおける火山の噴火及び噴煙の観測結果を英国政府に提供するなどの貢献を行っております。
また、裏面に参りまして、本年10月には、全球の月別・地域別の二酸化炭素吸収排出量の推定に成功してございます。こういった形でGOSATのデータを利用することにより、今まで地上観測のみですと、大体200地点ほどの観測データしかとれなかったのですが、GOSATのデータは1万3,000点ほどございますので、これを利用することによって、今までの吸収排出量の推定誤差というものが大幅に低減するということが確認されております。
こちらについては、プレス発表をしておりまして、資料1-3の別紙として報道発表資料をつけてございます。
GOSATによる地球観測の今後としましては、今ご説明しました全球の地域別吸収排出量の推定結果につきまして、まず関連研究者等に提供します。また、それを通じまして、海外の他の機関による同様の解析結果との比較などを通じまして、その妥当性について評価・確認をこれから行ってまいります。その後、一般提供というものを、来年春を目途に計画してございます。
また、GOSATの特徴・強みであります宇宙からの全球の多数点での観測といったものを今後も継続することで、炭素循環の解明ですとか、地球環境の監視、世界の気候政策への貢献をさらに充実させるため、最短で平成28年ごろの、今から5年後ですが、打ち上げを目指して、さらに性能を向上させた後継機開発について、三者で共同して検討を進める予定でございます。
また、今後アメリカなどで二酸化炭素等の温室効果ガスの観測を行う衛星の打ち上げが計画されてございます。GOSATのデータ並びにアメリカ等のこういった観測データを用いまして、温室効果ガスの観測に関する国際的な連携ですとか協力についても取り組んでいく予定でございます。
なお、こちらのGOSATの成果もしくはGOSATを通じました国際貢献につきましては、今ダーバンで行われているCOP17の大臣のステートメントでも、細野大臣が、GOSATを通じた国際的なMRVへの貢献ということで言及いただいております。
また、来年1月には、アメリカで日米の宇宙観測の政策協議、地球観測に関するワークショップがございますので、こちらでGOSATの成果等について発表をする予定でございます。
以上で説明を終わります。

○鈴木部会長
資料1から3、三つのトピックスといいましょうか、話題の紹介がありました。それぞれIPCCにおける報告書の紹介、それからLCS-RNetは、これはもともと日英で始まったプロジェクトが広がっていったものですね。

○研究調査室長補佐
はい。

○鈴木部会長
環境省が支援をしておられるGOSATは、このセンサー開発において国環研が大きな役割を果たし、今そのデータを集めて、世界に配信をする、発信をできるような体制になっていると。こういうようなものの現状をご紹介いただきました。いろいろ委員の方々からご質問、あるいはご意見、あるいは補足をしていただくようなこともあろうかと思いますが、いかがでしょうか。名札を、それでは。
じゃあ、こちらから参りましょうか。及川委員から。

○及川委員 まず一つは、資料1-1でお話があったんですけれども。気候予測モデルでは、21世紀末までに極端な値の大幅な増加を予測しているというお話がありましたけれども。これは、やっぱりどういったCO2の増加をもとにしてこういった予測がされたのかということを一つお伺いしたいと思います。このCO2を中心にした温室効果ガスが実際どうなるかということが、この温暖化を決める最大のポイントであるというふうに思うからです。
それからもう一つは、今お話ありましたGOSATのデータですね。これは、本当に私も初めて見たときに、素晴らしい成果が出せるようになったんだなということを、非常に感銘を受けたということがあります。
そして、こういったデータというのが、どの程度の精度があるのかというところがですね、よく見ますと、あれ、こんな値でいいのかなというようなところもあったりするわけで。その辺、現状と、それから、これからどうやってより精度を高めていこうとされているのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。以上です。

○小林委員
1点だけなんですが、資料1-1の2ページの最後のくだりなんですが。いわゆる、変化する極端現象及び災害のリスクへの対応のところの4行目のところに、「また、モニタリング・評価・学習・研究・技術革新を反復するプロセスは」云々というふうに書いてあるんですが。ここのところで、例えばモニタリング等をやることによって、これが、予測して、それに対して対応ができるというふうに読めるんですが、そういうふうに理解していいんでしょうか。
というのは、ここをきちっとやったら対応できるというふうに書いてしまいますと、逆に、モニタリングが不十分だから災害が発生したという批判を受けることになるわけですね。ですから、これ、モニタリングをするかしないかというのは、環境省にとっては重大な問題になると思うんで、そこのところをきちっとご説明いただければと思います。

○住委員
少しGOSATのことについて補足をしておきたいと思います。GOSATは非常に素晴らしいことがあるんですが、やはり皆さんにご理解していただきたいのは、今から10何年前のアデオスで、IMGという、通産を挙げた、そういう宇宙に、原理的にはFourier Trans、FTSというのが非常に知られていたんですが、それを宇宙に上げるという試みは、日本が先頭を切ってやってきて、その大きな流れの中で今日こういう成果が出てきたということを、ある程度皆さん、もう少しご理解をしていただきたいということと、こういう細かな波長域で観測することによって、非常に新たな可能性もどんどん出てきていますので、そういう点で、日本の技術が先頭を切って、それに続いて、いろんな世界がフォローしてきている状況にあるということをご理解いただきたいなと思います。
それから、まあこれは、ぼやきになるんですが、当初から、例えばエアロゾルの効果とか、いろんなことの可能性が、まあ、当然それは問題になるというのは指摘されていたんですが、資金の関係上、そういうのを割と、まあ、サボっているわけじゃないんですが、少し減らして、実際は運用されています。それと、お金の問題は、何でも安きゃいいという最近風潮にあるところがあるのが少し気になっていましてですね。やはり、安かろうなんていうのは、貧乏人的な発想なわけで、もちろん、贅沢をすることはないんですが、やはり必要なものには必要なお金をかけていくということが大事だと思いますので、その辺も皆さんのご理解をいただいて、もうちょっとのお金を出して、いろんなセンサーをつけることによって、やっぱりもっと精度がよくなる可能性か非常にありますので、その辺もご理解いただければと思います。以上です。

○富永委員
ありがとうございます。非常に簡単な質問なんですが。このGOSATで温室効果ガスを測られているわけですけれども、二酸化炭素以外の温室効果ガスは、定常的には、どういうものが測られているんでしょうか。

○永里委員
ありがとうございます。GOSATについてです。資料1-3の2ページ目のGOSATの、ここに分布図が出ています。このことについて、従来、温暖化ガスの原因にCO2が挙げられていて、皆さん、それは納得している人たちが多いと思います。ところが、その中でこういう意見があります。人為的なCO2というのは圧倒的に北半球の方が出ていて、南半球の方は少ないと。人為的にCO2はあまり出してないから、当然のことながら、温暖化は北の方で起こって、南の方では起こらないはずだという学者がいるのに対して、一方の学者が、いや、瞬時にCO2というのはまざるので、世界中が均等にまざっていくというような説明で、温暖化は、だから地球上で全部同じように起こるというふうな言い方に反論されているんですが、この図でいきますと、明らかに北の方が濃くて、南の方が薄いということなので、これはずっと定常的にこういう状態なんだろうかということの質問でございます。以上です。

○新美委員
ありがとうございます。私は専ら言葉の質問なんですが。資料1-1で「可能性が高い」とか「低い確信度」、「高い確信度」という言葉があるんですが、これらの序列がどうなっているのか、ご説明いただきたいということと、それから中程度の証拠とか、証拠の強さが出ているんですが、雰囲気としてはわかるんですけど、どんなところを狙ってこういうことをおっしゃっているのか、表現されているのか、ご説明いただきたいということでございます。以上です。

○西岡委員
資料1-2の低炭素社会国際研究ネットワークについて、ちょっと補足説明させていただきます。私、IGESの仕事を受けまして、事務局長ということでやっております。背景でございますけれども、交渉が、例のごとく遅々として進まない。しかしながら、削減の要求が非常に厳しくなっている。また、その影響も表れてきているということで、ともかく減らすということに対して、もう少し実務的に取り組んでいったらどうかということがございます。世界中で、そういうことに対する、まあ、キャパシティビルディングというと非常に時間がかかるんで、むしろみんな最近はナレッジシェアリングという言い方をしています。みんなが知恵を持ち寄って、早く減らすように政策を打っていこうということでございます。このネットワーク自身も、そういう意味で、いわゆる単なる学会的なというよりも、むしろ政策に直結している人たち、あるいは、そこで苦労している人たちの集まりといったことで、そこでの意見を交換しながら、主体的な政策を進めていく、そのための研究支援をするという目的のネットワークであります。
非常にこの件は緊急性、特に先進国もそうですけれども、途上国で必要になってきています。といいますのは、今、途上国が、カンクン合意、コペンハーゲン合意以降でございますけれども、お金が出るということで、そのお金をどうやってうまく使ってもらうか。そうしないと、2100年頃には、成り行きでいきますと、先進国の3倍も途上国が出すわけですから、途上国が今までと同じような形の発展計画を立てられたんではもたないということもございまして、途上国をどう、計画を低炭素に向けて作らせるかといったことで、世界中が今取り組んでいる。
特にワールドバンク、それからADBとか、それから各国、ドイツ・GTZ、それからアメリカの国務省、それからEUはUNDPと組んでやっている。あるいは、北欧の国はそれぞれの国に入り込んでやっているというような状況があります。幸いにして日本にも、特に文科省のJICA、JST、サトレップスというプログラムがありますし、また、環境省のこのようなネットワークも進んでおりまして、アジアにおいても、こういうものを作って促進していったらどうかということで、日本の一つのリーダーシップにしていきたいなと思っています。残念ながら、日本は日本ブランドというのをはっきりしていないところがありまして、みんな個別にやっているということなので。いつかそいつを日本として、はっきり打ち出す時期が来る必要があるかなという具合に考えています。以上です。

○鈴木部会長
いろいろご質問がありましたがなかなか多様な質問ですので、こちら側で答えられるものは答えていただいて、答えられないものは、専門家がここにおられるますので、そちらに振っていただければいいかと思います。

○研究調査室長補佐
では、まず資料1-1に関するご質問から対応させていただきます。
まず、及川委員のご質問で、どういったCO2の予測をもとに評価されているのかということでございますが、こちら、CO2の濃度のパス自体は、2007年に出ましたIPCC第4次評価報告書、こちらでのシナリオ、六つシナリオがございましたけれど、こちらのシナリオを使って、それをもとにどのぐらいの影響評価が出るのかというものを予測したものでございます。ですので、モデル自体は2007年のものと同じものをベースにつくられているというふうにお考えいただければと思います。
また、小林委員の1の2の最後のところ、「また、モニタリング」以降のこちらにつきましては、モニタリングをすることによりまして、実際に、今どのぐらいの現象が起こっているかというのを把握する、それからモニタリングのデータを集め、知見を蓄積することで災害リスクへの適応を促進でき、リスクを小さくすることができるということです。

○浅野委員
別紙の8ページを指摘して、そこに書いてあるもともとの文章をちゃんと紹介すれば誤解がとけるのではありませんか。別紙については本日説明をうけておりませんから。小林委員のご質問は別紙にちゃんと答えが書いてありますが今日初めてこの資料を拝見しており、別紙を見ていないから質問が出てしまうわけです。必要な部分については別紙をはじめから紹介すべきでした。

○研究調査室長補佐
失礼いたしました。今、浅野委員のご指摘のとおり、詳細については別紙に書いてございます。

○浅野委員
小林委員のご指摘は、別紙の8ページの「モニタリング」云々という、この言葉を縮めて前で紹介しているので、ちょっと誤解を与えるということになると思います。原文を読めば、そんなに誤解は生じないと思います。それから、新美委員のご質問については、別紙の10ページに表がありますから、これである程度は理解できるのではありませんか。

○小林委員
いや、私が質問したのはですね、ここに書いてあることはわかっているんです。要するに、確率論で発生率が高くなると。それと、実際にモニタリングすることによって災害が事前に予測できるかどうかということとは別問題なんですね。そういう意味で、モニタリングによって事前予測ができるかどうかというのが重大な問題で、これは、凄い誤解を招くおそれがあると思います。だから、確率論の議論はすぐわかるのですが、確率論では災害予測、防止ってできませんのでね、そのことをお聞きしたかったのです。

○研究調査室長補佐
はい。ですから、モニタリングをすることによりまして、ある程度知見が集まれば、その災害に対する備えが高まり、結果としてリスクを低減する手段のひとつとなるということで、モニタリングの重要性というものがここで書かれています。
そういったお返事でよろしいでしょうか。

○小林委員
だから、そこのところを環境省としてきちっと言っておかないと、今度はマスメディアに叩かれますからね、災害が起こったときに。環境省の予測が間違っていると言われますからね。

○研究調査室長補佐
はい。それから、続きまして、新美委員の中程度の確からしさの評価ですが、こちらは今、浅野委員からご指摘ございましたように、別紙の10ページ、一番後ろのページに「不確実性の取り扱い」ということで、IPCCがまとめた資料が書いてございます。確信度に関しましては、証拠、例えば観測データ、これがどのようなタイプなのか、また、その量がどの程度なのか、質やほかの知見との整合性、もしくは研究者間の合意の度合いに基づきまして、定性的な表現でまめられています。
基本的に、こちらの用語は、IPCCの報告書すべてに共通する不確実性の取り扱いということで、この特別報告書に限ったものではありませんで、すべてに共通して、こういった定性的な表現で、この知見、この文章がどのぐらい確からしいかというものを示してございます。

○新美委員
ちょっと宜しいですか。10ページのところはわかるんですけども、例えば「高い一致度」が高い確信、何を指して一致度と言っているのか。高い確信度とどう違うのかというのは、説明が、ここからではわからないんですね。1ページの一番下の「高い一致度」というのは何なのかというのが。少なくともいただいた資料では出てこないし。多分これは確信度の問題になるだろうと思うんですが。これが、「高い一致度」というのと「確信度」というのはどういうふうに関係があるのかというのは、ちょっといただいた資料だけではよくわからないんで。まあ、不確実性の問題を扱っているのはわかるんですけども、どの部分を指しているのか。単なる発生確率ではないはずなんで、どんな証拠評価をしているのか、何を対象にしているのかということがわかるようにしていただくとありがたいという、そういう趣旨です。

○鈴木部会長
これは、原文をご覧いただくと宜しいんでは。すぐ手に入ります。

○浅野委員
一致度というのは、「見解の一致度」というのが別紙に出てくる。要するに学者の間の意見が一致していることを「一致度」と書いているようですね。やっぱりこの要約の文章はとてもわかりにくいので、世の中に出すときはもうちょっと工夫して出していただきたい。それが新美先生の厳しいご指摘だというふうに理解したらどうですか。

○研究調査室長補佐
はい。

○新美委員
結構です。原文があったら、その辺のことを少し出していただければ。

○研究調査室長補佐
はい。
続きまして、資料2に関しましては特段のご質問がなかったと思いますので、資料3、GOSATのほうのご質問に移らせていただきます。
まず、及川委員からいただきましたGOSATデータの精度に関しまして、現在、GOSATの精度はCO2に関しましてプラス・マイナス2ppmというところで、精度としては、極めて高い精度をなっておろうと自負してございます。
また、今後どうやって精度を高めていくかに関しましては、一つには、GOSATの次の後継機では、センサーの開発を通じまして、センサー自体の精度を上げていくということを、行っていこうと思っております。
また、それと同時に、データの検証、また観測したデータをCO2濃度、もしくはメタンの濃度に変換するときに、コンピュータプログラムを組んで実施するのですが、そのプログラムの改善というものを通じまして、誤差を改善するとか、いろんなバイアスを除去する等の作業を通じまして精度を高めていこうとしております。こちらは、今現在運用中のGOSATでも同じような作業を通じて、データの精度を上げていく取組を行っております。
それから、住委員の、こちらはご質問ではなくてご意見ということで受け止めさせていただきましたが、必要なものに必要なお金をということで、今、平成24年度の予算要求をしておるところですが、環境省としましても、必要な予算をいただけるように努力しておるところでございます。 また、富永委員のGOSAT、CO2以外のものでどのような温室効果ガスがとれるのかというご質問でございますが、CO2のほかに、メタンも測定しておりましてデータ提供も行っております。
それから温室効果ガスという意味では、水蒸気の観測も可能ではありますが、データを公表するというようなことは行ってはございません。
それから、永里委員の北半球でCO2の濃度が高いが、これが定常的なものなのかというご質問に関しまして、資料1-3の別紙の、後ろから2枚目にGOSATデータを使いました季節ごとの推定結果、21年7月から22年4月までの夏、秋、冬、春のデータがございます。こちらを見ていただければ排出量の季節的な変動というものが見てとれるかと思います。常に定常的に北半球が高いわけではなく、特に夏場は、北半球は陸地が多くて、植物による光合成でCO2がかなり吸収されておりますので、比較的低い値になっているというような結果が出ております。
以上でご質問にはすべてお答えさせていただいたかと思いますが、もし抜けている点があれば、ご指摘いただければと思います。

○及川委員
今のご説明、GOSATでとれている温室効果ガスで、水蒸気もとれているという話がありましたけれども、これは公表していないというのはなぜなんでしょうか。水蒸気は非常に強力な温室効果ガスですし、それから、水循環とも非常に関係するんで、それは重要なデータじゃないかなと思うんですが、なぜ公表しないんでしょうか。

○研究調査室長補佐
GOSATの特徴としまして、吸光のスペクトル分析で、吸収域のある部分のデータはとれるということがあります。ただ、それを実際に精度の高いデータにするためには、バイアスを除外したり、様々な形でデータ分析、解析をしなければなりませんので、優先度の高いものとしてCO2、メタンを対象にやっております。
水蒸気に関しましては、確かに温室効果の程度は、ガスとしては非常に影響が多いものですが、やはり基本的には、自然の発生によるものでございまして、GOSATは、人為由来でCO2がどの程度排出されているかというのを最終的に見ようと思っておりますので、CO2とメタンの測定をメインターゲットにもともとのプロジェクトが設計されているということでございます。

○鈴木部会長
では、富永委員、中上委員、永里委員。

○富永委員
先ほどの質問の確認ですけれども、二酸化炭素とメタンというのが書かれてあるので、伺ったのは、そのほかにあるかという意味だったんですが。水は別としてですね。ですから、二酸化炭素、水、それからメタン以外の温室効果ガスについての測定というのは行われていないということですか。

○研究調査室長補佐
はい、データ分析した結果として出てくるのが、CO2とメタンだけです。

○富永委員 はい、わかりました。

○中上委員
私は、今の議題じゃないんですが、西岡さんのコメントに対してのコメントですけれども、是非ジャパンブランドをやっていただきたいと思っているわけですが。途上国の場合には、特にこれから成長あるいは生活水準の向上等を含めて需要が膨大に伸びてくることが考えられるわけですから、絶対量が減るということは極めて難しいんですけども、それに対応して供給を追っつけていったんじゃ、供給側で幾ら低炭素を考えても追っつくわけがないんで、いかにこの需要を抑えるということになるわけですね。
そうすると、そうしたときに、やはり日本の省エネ技術というのは、明らかに今世界の最先端を走っているわけですから、こういった日本の最先端の省エネ技術をいかに向こうに移転するかというプログラムを強力に進めていただきたい。そのためには、二国間の今の取引なんかではなくて、もっと今のODAを含めたですね資金の流れを、サプライサイドじゃなくてデマンドサイドに移してもらいたい。これは多分環境省じゃなくて外務省の話かもしれませんけども。そこまで踏み込んで話をしないと、こういう流れになりませんので。是非そういう点からも、環境のみだけではなくて、全体的な資金の流れも含めて、強力にその運動を進めていただきたいと、西岡さんへの要望でございます。宜しくお願いします。

○永里委員
及川委員と同じなんですけれど、CO2と水蒸気の関係で地球温暖化問題はどうなのかということを研究している学者がいますし、水蒸気の状態がどうなっているかということは、極めて地球温暖化と関係があるので、これについて、そういうデータがあるんだったら、むしろそれを公表することによって、いろんな分析が行われて、意味があるとか、意味がないとかいうことも議論できると思います。予算の関係があるんだったら、予算をとって公表した方がいいんじゃないかと思うんです。以上です。

○長辻委員
せっかくの機会なのでお尋ねします。温暖化によって熱帯低気圧の大型化は進むけれども、すべての大洋で増加するわけではないと言われております。増加する海と増加しない海について、今おわかりでしたら教えていただきたいのと、その差が何によって生じるのかということを教えてください。

○西岡委員
中上委員のご指摘、ありがとうございます。まず、現在何が起こっているかというと、NAMAというのがございまして、各国が、将来の計画をうまく立てると先進国からお金が出る、あるいは計画を立てること自身にお金が出ているという状況が、今非常に重要なポイントにある。今従来型の、言ってみれば某国のような多消費型文明を途上国に持ち込んだ計画を立てられると、とてももたないということは明快なわけです。
しかしながら、日本の省エネ技術、あるいは地元における知恵といったものを、どうやってうまく涵養していくかということが、今、多分ポイントになっている。それから、パリの会合の結果を見ていただきますと、やはりロックインという、今、間違った方向に資本投下する、インフラ投下する、エネルギーシステムをつくる、こういうことになりますと、それが50年も続くということになりますので、その辺も十分注意しなきゃいけないというようなことで、いろんな案を出しています。本当に世界中の人が今アジアにめがけていろんなものを、我々もそうですけど、売りつけているところがありまして。非常に慎重に取り組まなきゃいけないなと思っております。
ロックインの話ですと、ロックインというのは、新しくつくるときに間違えないようにしなきゃいけないということなんですけど、逆に、ロックトインというのもありまして、日本のように非常に既存のシステムが強いと、なかなかそこから脱却するのが難しいという指摘もございます。このように、先進国が今までやってきたことを、先進国の会合の方でちゃんと総括して、それをどう途上国の方へ持っていくか。その中で、デマンドサイドの問題というのは非常に大きなところで、これはパリの会合でも非常に強く指摘されているところでございます。

○鈴木部会長
いろいろ事務局で答えにくいご質問もあったかと思います。GOSATに大変ご関心が強くて、そこで水分、水蒸気の問題ですね。これは住委員。

○住委員
水蒸気に関しては、GOSATが唯一のデータソースではなくて、ほかのいろんな衛星からも水蒸気のデータは手に入ります。そこで、実は、GOSATのデータが加わることによって、全球の水蒸気場の情報がどの程度よくなるかということを確認することが非常に大事で、それに関しては、ヨーロピアンセンターという、ヨーロッパの中期情報、でかいところがあるんですが、そこが非常に興味を持っていて、そこで今JAXAの方からデータを送ってあります。送って、それで、本当にそれが、要するに天気予報をやっているグループは、変なデータが来てもらっても非常に困るので、ちゃんとしたデータが来ない限りは使わないというのが原則なので、そこで今チェックをしているという段階ですので、それが、インパクトがあるということがわかれば、リリースをするでしょうし、全体で使われるというふうに思っております。

○鈴木部会長
あと、LCS、Low Carbon Societyに関しましても、大変いろいろとご指摘を。今日までですかね、COP17が開かれていますが。

○研究調査室長補佐
はい。

○鈴木部会長
何かそれに関する情報が今日あたり出るのではないかと思いましたが、新聞記事程度のものしか我々はわからないんですが。日本もアフリカに支援をするとか、そういう意味で、先ほどのNAMAに相当するようなものになるのか、どういうことなのか、なかなか見えないでいますし、西岡先生が中心となってやっておられる、このLCSが、国際的にも広がってきた、これが一体、世界的な動向に、どういう形で影響を与えられるのか。その辺をむしろ国として考えることがあってもいいのかもしれませんね。
もう、京都議定書延長に反対、反対と言っていたってしようがないので、その後、それじゃあ反対するなら我が国はどうするのかというところで、こういう動きをきっちりと生かしていくことも必要なのではないかという感じがいたします。
これはまた継続して、地球環境部会でそれぞれの分野での進捗状況をご報告いただくということで宜しいでしょうか。あとはいいですか。

○研究調査室長補佐
長辻委員からのご質問ですが、今、手元にちょっと詳細な資料がございませんので、後ほどということで。

○長辻委員
後で、それじゃあお願いします。

○研究調査室長補佐
はい。

○鈴木部会長
異常気象の一つの典型は、台風というか、熱帯低気圧に関して。大気中に水蒸気濃度が上がっていることが、この熱帯低気圧の勢力を高め、発生する被害を大きくしている、そういうようなことが言われているわけですので、その辺も少し長い目でしっかりと見ていくことが必要かと思います。
さて、それでは、次の議題に入らせていただきたいと思いますが、議題の(2)気候変動への適応につきまして。これも事務局から、資料2-1、2-2を使って説明をお願いいたします。

○研究調査室長補佐
気候変動適応並びに気候変動の影響評価について、ご説明させていただきます。
まず、資料2-1、気候変動適応の方向性についてでございますが、環境省では、これまでも気候変動の影響の評価やそれに対する適応策、もしくは気候変動に関するデータの収集といった活動を行っておりました。これらの取組をまとめさせていただいたのが、2ページ目にあります、これまでの環境省の取組の資料でございます。
まず1994年には温暖化問題検討委員会、温暖化影響評価ワーキンググループを設置、「地球温暖化の日本への影響」という冊子を取りまとめ、公表しております。この「日本への影響」に関しましては、2001年まで毎年出しております。その後2009年には、温暖化の観測・予測及び影響評価統合レポートという名称で統合的にレポートとしてまとめさせていただいております。 また、2005年から2009年にわたり地球温暖化の影響の総合的評価に関する研究を、環境省の環境研究総合推進費の戦略課題という形で取り上げております。
2010年からは、同じく推進費の戦略課題として、温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究を進めているところです。
2008年には気候変動への賢い適応、2010年には気候変動適応の方向性という形で、気候変動に具体的にどういうふうに適応していくかというものに関する報告をまとめさせていただいております。
また、今年度の予定としましては、気候変動の影響によって起こった、もしくは今後影響がみられるかもしれない事象に関する統計データの整備を予定しておりまして、年度内にポータルサイトを開設する予定でございます。
資料の3ページ目に行きまして、「気候変動の適応の方向性」ですが、目的としましては、国並びに地方公共団体における適応策の検討・計画・実施を支援するために作成しております。内容としましては、適応策の基本的な方向性をまとめ、また個別具体的な対策ではなくて、各分野に共通的な具体化に向けた基本的な事項を示した冊子でございます。また、実際に適応に取り組む自治体の方の役に立つように、適応策の意義ですとか、必要性の浸透、理解を助けるための例示並びに資料集なども設けてございます。
この、「方向性」は、有識者から成ります検討会をつくり、ここで議論していただいた結果をまとめてございます。検討会の構成並びに活動は、次の4ページにございます。
検討会の活動としましては、2010年5月から4度にわたり、方向性について検討、その結果を、2010年11月に公表しております。この「方向性」に関しましては冊子のほか、リーフレットにもまとめております。リーフレットのほうは環境省のホームページからもご覧いただけますので、ご興味あるようであれば、ぜひご覧いただければと思います。
「気候変動適応の方向性」の具体的な内容ですが、まず適応策の類型化をしてございます。適応策には、短期的な適応策、既に生じている気候変動に起因する可能性が高い影響、これに対して応急的な適応策や復旧対策をとるという短期的な取組と、気候変動予測モデルでシナリオに基づいて予測された中長期的な気候変動に対応する適応策、こちらは、時間のスケールとして、10年から100年ぐらいのかなり長いものも含まれますが、これに対応する中長期的、適応策の、二つに分けてございます。
短期的な適応策に関しましては、適応という位置づけの有無とは別に、既に農作物の品質低下や収量低下に対する対策ですとか、品種改良、栽培手法の改良など、既に実施されている施策も多く見られます。また、中長期的な適応策としましては、河川や海岸堤防の整備、既存設備の機能向上等の取組が相当いたします。
6ページに移っていただきまして、その他適応策に資するものですが、今の類型にあった具体的な適応策、それ以外に、先ほどモニタリングのご質問も出ましたけれど、情報基盤の整備ということで、観測データ、気候予測、リスク評価などの基盤情報、情報を利用するためのシステム作り、地域専門家との連携強化、また住民やその他の関係者への情報共有、普及啓発等を通じた意識向上、さらに人材の育成並びに既存の人材の活用、研究・技術開発の推進などといったものを適応策に資するものということでまとめさせていただいております。
次、7ページですが、こちらは実際に適応策・適応計画を立てるときの具体的な手順をまとめたものでございます。
フローを見ていただければ大体おわかりになるかと思いますが、まず、いずれにしても、過去どういったことが起こっていたのかという観測データの分析や、既存の施策に既に含まれている対策、そういったものを点検し、その結果を用いまして、気候変動やその影響のモニタリングとして既存のデータ・知見で足りないところを、[2]でモニタリングを計画し、実施していただきます。そのモニタリング結果をもとに、実際に、気候変動とその影響を予測し、その影響や脆弱性、回復力の評価及びそれらを踏まえたリスク評価を行うという流れになります。この間、適宜、住民並びに関係各者のコミュニケーション、情報共有を図っていただいて意識向上に努めていただきたいと思います。
これら計画段階の準備が終わった後に、実際に適応策、取組を進めていただく手順になります。適応策のまず必要性ですとか優先順位、コスト分析も含めまして、実際に何を今やるべきか、何が必要なのかというのは、地域ごとに優先順位が変わってまいるかと思いますので、それを把握していただく、そして優先順位を把握していただいて次に、具体的な適応策を計画して、実施していただくという流れになります。
また、やりっ放しではやはりよくありませんので、適応策の進捗状況ですとか効果を把握、評価していただいて、それをまた適宜フィードバック、見直しをしていただいて、最初の計画の準備段階、実際にその影響がどうなったか、もしくは計画を立てた以降の気候変動がどういう状況にあるのかというのをフィードバックして、順次計画を改善していただきたいというふうに考えております。
8ページ目に参りまして観測データ、モニタリングについてですが、具体的には過去の観測データの分析ですとか、既存の施策に含まれるものを点検するということで、こちらは既に自治体などで取り組まれている、もしくは手元にあるデータを総点検していただくという作業になります。そちらをもとにしまして、データが不足していて課題がわからない、優先分野がわからないといったときに、その不足を補うためのモニタリングをやっていただく形になります。
また、モニタリングしたデータを解析するために、当然、人材も基盤も必要ですので、そういった人材育成ですとか基盤整備を行っていただくといったような形になります。
9ページ目に参りまして、こちらのマトリックスは実際に気候変動による影響の傾向をどのように把握したらいいかというものを示したものでございます。
左側に気象要素としまして、気温と降水量というのがあります。上の欄に行きまして、観測や将来予測でどういう情報があるのか。観測や将来予測は、日本の長期的な傾向といったものが既に気象庁などから出ておりますので、こちらから引っ張っていただいて、あとは実際にその地域のデータを使って、当該地域の傾向を評価していただく形になりますと。
また、それぞれのセクター別の影響としまして、実際にどういう影響があるかというものもまとめてあります。こちら右側は主に文献から引っ張ってこられるものなんですが、こういった影響が考えられるというのを整理していただきまして、10ページ目にあります影響の将来予測にすすみます。
とはいいましても、気候変動の影響の予測というのは、専門的な分野ですので、おいそれとできるものではありません。国や研究機関が、国レベル、地域レベルで予測をやっておりますので、その予測結果を活用していただければと思います。
具体的に、活用が可能な予測としましては、例として示してあります文部科学省がやっております21世紀気候変動予測革新プログラムですとか、もしくは、先ほどご説明しました環境省が戦略課題としてやっております温暖化の影響評価・適応政策に関する総合的な研究など、こういったデータをそれぞれご活用いただければと思います。また、地方公共団体で独自の予測ができるところは、大学等の研究機関と共同して取り組んでいただくということも一案かと思います。
とは申しましても、自治体独自の予測の取組は、現状ではまだほとんどありませんので、当面は既存の予測結果を活用しつつ、今後の研究の進展に応じて、最新知見を逐次活用し、役立てていただければというふうに考えております。
11ページですが、こちらは影響や脆弱性、回復力やリスク評価についてまとめた図でございます。気候変動へのリスク評価といいますのは、実際にどういう影響があるのか、もしくは、その地域がどのぐらい脆弱なのか、また、その地域がどのぐらい回復力があるのか、この三つを考慮して、実際のリスクを評価する形になります。
具体的には12ページにあるように、各分野で実際にどういう影響が出ているのか、もしくは、この地域でどこが弱いのか、影響を受けやすいのか、また、どの地域が回復力があるのか、適応できるのかといったことを、情報を総合的・体系的に整理・評価していただいて、それをリスクマップなどにまとめていただくという形になります。
例えば台風の強大化ですとか、大雨の増加などに対して、脆弱性が低いところ、要するにその影響によって被害の発生が少ない地域もございますし、もしくは、被害が発生しても回復力、特に防災計画などがしっかりしていれば、それほど被害は低減できるといったことがございます。このように、同じ影響でも、地域によって、その実際のリスクというのが変わってきますので、こういったものをもとにリスク評価をしていただくということです。
次、13枚目に行きまして、適応策の必要性及び優先順位の把握ですが、将来の予測というのはどうしても不確実性が伴います。ですので、詳細なコスト分析ですとか、便益の分析もなかなか難しい。そもそも、気候変動の影響自体、確実に起こるとは言い切れないものですし、いつ起こるとも言えないものですので、実際には、やはり地域ごとにある程度政治的な判断が伴うと考えられます。
例えばEUなどで必要性や優先順位をどう考えているのかといいますと、まずは、短期的影響に対して応急措置をとります。とりあえず今、目先で起こっている被害に対しては、やはりこれを優先的にやるというような考えで取組を進めています。
2点目としましては、後悔しない(no regret)。先ほどのIPCC報告書では、「後悔の少ない適応策」とありましたが、同じような意味合いで、気候変動の程度にかかわらず、社会経済的な便益を得られるようなもの、たとえば。もともと洪水リスクの高い地域、これは、気候変動があってもなくてもやはりリスクは高いですから、そういったところへの対策を優先的に行っていこうという形になります。
また3点目の考え方としましては、「win-win」の適応策ということで、気候変動の影響、適応だけではなくて、それ以外の問題にも対応し得る、例えば植林活動ですとか大気汚染対策、こういったものを進めていこうというのがEUの考え方でございます。
14ページは、重要性の把握の事例です。こちらの図はリスク評価のときに割合よく出てくる図かと思いますが、ここにあるのはイギリス・リバプール市の事例です。こちらでは、影響の深刻さや発生の可能性をもとに、重要性・優先度を評価するというものです。可能性の高さ、影響の大きさをそれぞれ4レベルに分け、全部で16のマトリックスで点数化する形となります。
可能性が高くて重大性の高いものは高いスコアで、まずこちらを優先する。それから、可能性が高いけれど影響の軽微なもの、可能性は低いけれど重大な影響のあるものといったものを、点数化することによって、どちらを優先とするか評価していきます。基本的には右上のスコアの高いものを優先的にやっていくという形になります。こういったものも事例の例としてこの冊子の中で取り上げさせていただいております。
15ページに行きまして、適応策の立案・実施ですが、冊子の中で提案しておりますのは、一つには、適応に関する庁内の推進体制を整えること。情報共有や意見交換会の場を設けるという形になります。と申しますのは、適応策はいろいろな分野にまたがっておりますので、一つの部局だけでどうにかなるというものではありません。やはりこういった全体的な取組というのが大事だと考えられるからです。
とはいえ、すべて新規に立案するわけではなく、既存の防災計画ですとか都市計画といった枠組みや仕組みがございますので、これに適応の視点を持ち込むような形で効果的・効率的に取組が進められるものと考えられます。
また、そうはいっても、やはり足りない部分があるかと思いますので、先ほどのリスク評価分析をもとに、足りない部分については新規に立案を行っていただく、また、既存の計画やですとか分野別施策に組み込まれたものにつきましては、分野間の整合性や連携を強化していく。特に影響に関するデータやモニタリング結果、こういったものの共有は、先ほどの最初のステップでもございましたように、非常に重要なものと考えております。
16ページに行きまして、進捗・効果の把握・評価と定期的見直しですが、こちらで書いておりますのは、適応策の実施後は定期的な見直しが必要ですということ。一つには、科学的知見が進歩しておりますので、それに伴う見直しがまず1点目、それから、2点目としましては、その適応策をとった後の進捗状況ですとか、具体的な効果を踏まえた見直しということで、リスク評価やモニタリングの在り方を見直す、もしくは、適応策の進捗や効果を把握した上で、効果が上がっているもの、効果が上がっていないものを整理し、見直すというようなことが考えられます。
17ページ、統合的な適応策・基盤強化の施策並びに住民とのコミュニケーションですが、統合的な適応策といいますのは、国並びに自治体の統合計画の中に気候変動の適応への取組を位置づけるということです。また、部局間の連携を促進し、分野横断的に取り組むべき課題を抽出することです。
それから、基盤強化。最初にご説明しましたように、人材育成ですとか、技術開発・研究開発といった、基盤の強化を行い、また、整備が十分でない基礎データの整備を行うということです。住民並びに関係各者のコミュニケーションや情報共有は適宜図っていただいて、それぞれの理解を深めることで、意思決定の円滑化を図られることが期待されております。
最後、18ページですが、今後の予定としまして、気候変動の影響ですとか適応策に関する研究開発の推進、とりわけ自治体レベルでの、影響の評価ですとか、予測手法の開発が非常に重要なテーマだと環境省は認識しております。そのため、先ほど来ご説明しております、推進費の戦略課題として、一つには温暖化の影響評価・適応政策に関する総合的研究、こちらは、従来、国とかの大きなスケールでやっておりました影響評価を、もうちょっと小さなレベルでできないかというような研究をしております。
また、文科省がやっております気候変動適応戦略イニシアチブや、DIAS(データ統合・解析システム)、こういったものとの連携を考えています。
また、情報提供としましては、気候変動の影響統計データについて、今年度中にポータルサイトと統計レポートの発表を予定しております。また、統合レポート、こちらは、2009年に最初のレポートを作成しておりますが、その後の新しい知見を織り込んだ統合レポートを、やはり今年度中に作成し、公表する予定です。また、こちらの場でもご議論いただきましたけれど、政府として行うべき適応策の基本方針の策定といったものにも取り組んで参りたいと思います。
資料2-1の別紙ですが、こちらは、実際に九州・沖縄地方を対象に行われている適応検討調査業務の資料でございます。
九州地方環境事務所は、平成21年に、他省庁の地方支部局ですとか、自治体の担当者による情報共有会というのを独自に立ち上げられまして、こういった形で、既に省庁をまたいでといいますか、分野横断的に適応策に関する検討会を開催して、また、温暖化対策の専門家も参加して、活発な意見交換、議論が行われていると聞いております。こういった自治体における取り組み事例は好事例、グッド・プラクティスですので、我々も非常に注目しておりまして、今後こういった取組に関して、何らかの形で支援ができればと思っております。
なお、こちらの検討会は、部会の委員でいらっしゃる浅野先生が中心となってご尽力いただいているというふうに伺っております。
続きまして、資料2-2、気候変動の影響評価についてでございます。
今の適応の取り組みの説明と重複いたしますけれど、環境省では気候変動の適応策の着実な推進のために、有識者や関係省庁、地方自治体の協力を得て、気候変動の影響に関する知見や適応策の実施に当たっての考え方、留意事項、各主体種対の役割等についてのとりまとめを行っております。
具体的には、資料にあります通り、平成20年度に「気候変動への賢い適応」、21年度には「日本の気候変動とその影響」、また今さきほどご説明しました「気候変動適応の方向性」や「気候変動影響統計」といった形で取組成果をまとめておるところでございます。また、環境研究総合推進費等を活用し、気候変動の影響や適応に関する研究を実施し、科学的な知見の蓄積に努めております。
資料の3番目、平成24年度、来年度の取組についてですが、気候変動枠組み条約のカンクン合意におきまして、各国が適応のための行動を強化するとされております。また、京都議定書の第一約束期間以降、我が国として取り組む包括的な温暖化対策に適応策を盛り込むということを見据えまして、まずその土台となる科学的知見を整理することを、平成24年度は計画しております。
具体的には、最新の知見を取りまとめまして、日本の気候変動とその影響を関係省庁と共同で取りまとめる予定でございます。
以上で説明を終わります。

○鈴木部会長
いよいよCO2の削減がままならないとどうなるか。ジャムステックの計算ですか、もう今後はCO2の排出をゼロにしても、温暖化の上昇が止まらない。CO2を、むしろ大気中から回収する方法を考えていかなくてはいけないというシミュレーションの結果もあるわけで。環境省も、ミティゲーション(緩和)の方はあきらめたというわけではないんですが、ともかくアダプテーション(適応)もパラレルに(平行して)、強力に進めなきゃいけないということだろうと思います。この方向性については、これももういわば先生方もご覧いただけば、ごく当たり前のことだろうと思いますが、最後のところで「政府として行うべき適応策の基本方針をこれから策定していく」、こういうことですので、第4次の基本計画にもこれはしっかりと書き込んでいかなければいけない。具体的にどうするのか。自治体にお願いしますというだけではしようがないので、やはり国としてどうするのかというようなことを詰めておかなくてはいけないということだろうと思います。今説明いただきましたことに関しまして、ご質問、あるいはご意見、あろうかと思いますので、また名札を立てていただければと思います。それでは、今度はこちらから参りましょうか。横山委員の方から。

○横山委員
ありがとうございます。今の温暖化、気候変動適応策と、それから今回の大震災のような防災対策に絡んで、1点申し上げたいというふうに思います。
津波対策で、防潮堤とか、そういう堤防構築というのは、実は台風時の高潮対策とか、それはまさに温暖化の適応策と絡んでくると思います。それから、洪水と津波の関係とか、いろいろ両方が関係してくることがあると思います。先ほどの説明で、既存の防災計画に適応策を盛り込むようなことも考えたいというお話をなさったんですが、この報告書を見ると、その辺が全く書かれてないんですね。今後、防災対策と温暖化対策、適応策まで含めて、両方ともクローズアップされてくるわけですが、ばらばらに検討が進むようなのはまずいと思いますので、その辺は検討をしていただきたいと思います。
それから、今は各種の研究とか事業など、全部大震災の復興・復旧策とどう絡むかということがかなり焦点になっていると思いますが、気候変動の適応策でも、その辺を是非意識して今後やっていただきたいというふうに思います。以上です。

○三橋委員
資料2-1の5ページ、「適応策の類型」と書いてあるところです。短期目標は、これでよいと思いますが、中長期を10年から100年とひとまとめにして、非常に長いスパンで考えていますね。適応策を考える場合には、中期の分析が重要な役割を持っていると思います。適応策の類型に当たっては、短期、中期、長期の三つに区分して、短期は何年頃まで、中期は何年頃まで、長期は何年頃までを考えているかをはっきり示した方がよいのではないか。10年から100年を中長期として、ひとまとめにしてしまうと、誤解を与えると思います。
適応策で重要なのはむしろ短期と中期なので、時間軸をはっきり区切って、短期の適応策、中期の適応策と具体的に提示する工夫が必要だと思います。
それともう一つは、適応策の表示の仕方ですが、国の役割、地方自治体の役割、地域住民の役割をマトリックスで表示すれば分かりやすいのではないか。例えば縦軸に国がすべき適応策、地方自治体がすべき適応策、地位住民がすべき適応策、横軸に短期、中期、長期をとり、9つの時間軸マトリックスを埋めるようにすれば、国、地方自治体、地域住民が短期、中期、長期にどのような適応策とるのが望ましいか一目で分かるのではないか、というのが私の提案です。以上です。

○藤井委員
13ページの適応策の必要性及び優先順位の把握のところの最初のところで、費用対効果、費用分析あるいは便益分析は難しいということで、優先順位等については地域ごとの政治判断というふうに書かれているんですが、もちろん、そういう選択肢というのは、最終的にはそうなるのかもしれませんが、極力やはりそのコスト、費用便益の分析というのは幅を持っても、推計として出していく方向と、それから、地域ごとで政治判断によって違うというのも、やはり国全体のまず政治判断があった上で、国ごとの選択肢という手順ではないかなというふうに思います。 それから、14ページのリバプールの、これはあくまでも事例なんで、このとおりではない、運用するときに違うと思うんですが、重要性の把握の、特にこういった、財務じゃない、非財務の情報の把握のときに、これですと、例えば可能性が非常に低いけれども重大だという場合は、低いわけですよね。確率論だけで言うとこうなっちゃうんですけども、現実に震災対応とか、可能性は低いんだけども、確率的には低いんだけども、実際に起きちゃうとシリアスな状況になるということが現実に起きているわけですから、これは一つの手法として使うんですが、
今言ったような、可能性が低い、あるいは、非常に低いか、あるいは、低いとは確率的には言えるけれども、起きると壊滅的な状況になるという場合への対応というものを、やはりその重要性の中で、とりわけ非財務の重要性として把握するということも並行して、特に気候変動については議論していかなきゃいけないのではないかなというふうに思います。以上です。

○原澤委員
資料2-1に関連して、幾つかコメントです。一つは、追加情報としまして、先ほどご紹介があった環境省のS-8と呼んでいるプロジェクトですが、その中では、影響について研究だけでなくて、地方自治体と組んで、いかに影響を地域で予測して、適応策をつくっていくかという話を今進めています。こうした知見を多くの方に知ってもらうために、10月13日に発足した地域適応フォーラムが動き出しました。そこを通じて研究成果を一早くお伝えするとともに、自治体の取組も、知見を共有する、そういったプラットフォームになっています。それが動き始めたということです。
あと、国際的な動きですけども、94年にIPCCの特別報告書第1号として、影響適応についてのガイドラインが作成されており、それを今、IPCCではないですけども、影響の国際的な研究者が集まって、改定をしようという動きがあります。研究者として加わっていきたいということであります。
それと、IPCCの今のSRESシナリオが、社会経済シナリオとして使われているわけですが、この次のバージョンのSSP(Shared Socio-ecosystem Pathways)という、新しい社会経済シナリオが作られつつあって、それは影響、適応を念頭に置いたシナリオになっています。そういったところにも日本として貢献していくべきで、実際貢献もしているということであります。以上は追加情報であります。
実際、地域の影響適応では、なかなか困難な面があるということで、一つは気候モデルの予測値がまだ粗いので、それを地域にどう落としていくかというダウンスケールの問題と、地域に必要なデータがいろんな部署に分かれているので、そのデータ集めというのは結構大変です。あとは、いろんな適応策を比較検討する際に、コスト分析が非常に重要だと思うんですが、なかなか、自然系、あるいは工学系の研究者だけではカバーし切れないので、是非経済系の方も入っていただいて、研究を進められればと思っております。3点お話ししました。

○西岡委員
私も追加のコメントがございますが。まず第一に、現在、私も革新プログラムの方で、モデルとそれから影響をつなげるということを役目を与えられております。その中で、先ほど長期・中期・短期という話がございましたけれども、主として中期のモデル、これは30年を目指したモデルなんですけども、大体もう排出量も大体固定しているということがあって、そんなに変動がないだろうと。そこを非常に綿密に精査いたしまして、そこでの詳細なモデルを、この適応にも使えるかなということでやっています。
2点目でございますけれども、申し上げたいのは、省庁間の協調は、このプロジェクトに関して、少なくとも研究に関しては、非常によくできているということを理解していただきたい。丁度2008年、この年表を見ますとその頃には「統合レポート」という言い方をしておりますけれども、これは文科省、それから気象庁、そして環境省の方々が皆集まりまして、日本全体でこういう状況だなということを把握したということで、非常に順調に進んでいるのではないかなと思っています。
3番目ですけど、全体の流れといたしまして、もう大体のことはわかってきたので、いよいよ地方自治体、地域に落とした具体的な方策をやっていくという時代に入ってきたという流れがあります。
4点目でございますけれども、先ほどのデータの共有、すなわち革新モデルから出た非常に精密でハイレゾリューションのモデルの結果、これは共有する、しかもそれを世界で共有し、そして日本で共有するということで、データベースをきちんと作って、それをみんなで使えるような形に今しております。これを、JICAであったり、ジャムステックであったり、いろんな途上国の方にも売ろうというか、利用してもらうということで進んでいるということを申し上げたいと思います。以上です。

○新美委員
ありがとうございます。いよいよ適応ということなんですが、適応を考えるときには、何に対する適応なのかということを明確にしないと、適切な適応策は出てこないだろうと思います。これは、先ほどの三橋委員の発言にも関連してくるんですが、短期的、中期的というもので、ある程度対象を具体化しないと、適応策そのものも非常に抽象的なものになっちゃいますので、対応すべき対象の特定のためのシステムといいますか、枠組みをどう作るかというのが非常に大事だろうと思います。先ほどありましたように、リスクそのものは地域ごとに多様であるし、社会的、経済的、様々なリスクがあるということでありましたので、それをどういうプライオリティでいくのかというのを、単に自治体で任せてもいいのかどうかということもありますし、その辺の仕組みを考えていく必要があるかと思います。その中では、とりわけ、システムを考えたときには、先ほどのデータとか、専門家というのをそろえるのは当然ですけども、それぞれのステークホルダーが責任を持って動けるような、どんな当事者を、どういうふうに組み合わせるのか、そういうことも考えていかなければいけないだろうと思います。例えば7ページで示されているその手順ですか、「具体的手順」と書いてありますけれども、この中で、誰がどう絡むのかというのは必ずしも見えてこないし、これ、単純に、まず国がやって次が自治体というわけでもなさそうな気がするんですね。ある意味で複雑に入り組んだシステムというのが必要になってくると思います。
そういう意味では、まずリスクの特定、対象にすべきリスクの特定のところで、どういう仕組みをつくるかということから、まず考えていく必要があるのではないかと、そういうふうに考えます。以上です。

○鈴木部会長
では、長辻委員。ちょっと時間が厳しくなってきそうですので、簡潔に以降、お願いしたいと思います。

○長辻委員
わかりました。
これを拝見して感じたことですが、気候変動の被害とか影響を受ける、いわば被影響群というか、要適応群というか、こういうもろもろの生き物、具体的に言えば、魚類だとか、農作物だとか、もっと言えば、人間が昔から関わってきた伝統文化とか、こういうものに対して、温暖化の影響は随分いろんな形で及んでいると思いますが、それらに対するモニタリングシステムがまだ少し弱いのではないかという印象を私は受けております。
というのは、昆虫などは凄い勢いで南から北に向けて分布の北限を広げておりますし、そのスピードは非常に速いものであります。さらに陸上よりも水中においてより急速な変化が進行しております。こうした個別のことに目を向けてもしようがないんじゃないかというご意見もあろうかと思いますが、しかし、生態系は種のネットワークで構成されていますので、こうした個別の要素を総合化して見ていくという、そのモニタリングが非常に重要であろうと思います。このことは自然だけでなくて人間の精神活動にも、また人間と自然との関わりが培ってきた伝統文化、このあたりにも影響を及ぼしていくことがありますので、もっと力を入れていただきたいと思います。
それともう一点が、気候の変動についてです。その勢いが、非常に増してきているのが気になるところです。最近ですと、2,000ミリを上回るような雨が数日のうちに降って、今まではちょっと考えられなかったような山体崩壊が深層から起きる、いわゆる深層崩壊ですが、これが頻発し始めています。それから洪水に対しては、河川の氾濫を防ぐために、従来ならば、下流から上流に向けて堤防をつくっていたわけですが、それでは時間もコストも非常にかかるということで、輪中の形式を始めた。非常にいい方法なのですが、今回、和歌山でしたか、この輪中の形式の堤防でさえ大雨で破られてしまうという被害が生じています。想像を上回るペースで変動が進んでいるわけですから、リスク予想に関しては、一歩踏み込んだ対応が必要なのではないかというふうに思っています。以上です。

○中上委員
3点ほど。一つは、13ページの「win-win」というところがありましたけども、エネルギーでも、省エネをするとwin-winというので、ノン・エナジー・ベネフィットという言い方をするのですけども、環境だからノン・エンバイロンメント・ベネフィットかなと思ったんですが。要するに直接的な効果だけではなくて間接的な効果ということについて、やっぱりもう少し着目して訴えないと、一般の方々にはなかなか現実感を持ってもらえないんじゃないかと思うので、是非この辺は頑張っていただきたいと思います。
もう一つは、17ページに「モニタリング」とありますが、モニタリングというと、何か先ほどのGOSATじゃありませんけど、えらくハードウェアに凝ったようなイメージがありますが、やはり基本はデータベースですので、データベースを是非充実していただきたい。特に、消費者の立場から言えば、自分たちの暮らしとエネルギーと、結果として環境がどうなったかということを一体で示さないと、どうもよそごとに見えてしまうというのがあるんじゃないかと思います。
最後は、ちょっとコメントといいますか、困ったなと思ったんですが、やっぱり暑くなってくるわけでありますから、猛暑日が増えるというふうに一覧表に入っておりますが、冬が暖かくなると。住宅の保温構造化をやると、どちらかというと暖房用のエネルギーは減るわけでありますが、冷房用のエネルギーについてはむしろ保温構造化が徹底してくると、逆に冷房しないと住めないような住宅になりかねないわけでありまして。この辺、なかなか悩ましいなという気がいたしました。最後は感想です。以上です。

○武内委員
二つ申し上げたいと思いますが、一つは、気候変動適応ということを言うときには、生態系とか生物多様性との関係が、非常に関連が深まってくるというのに対して、ここでは、農業とか水資源とかということは、かなり明確に書かれておりますし工学的な適応策というのも書かれているんですが、その生態系適応のようなものをもう少しやはり強調する必要があるのではないかと思うんですね。特に生物多様性条約の方で気候変動が生態系に対して及ぼす影響が非常に深刻なので、それに対して対策を講じなきゃいけないということは、去年の名古屋で非常に明確に言われるようになっておりますし、カンクンの適応フレームワークの中でもそのようなことが書かれておりますが。やはりちょっと、今までですと、気候変動適応を議論しているグループと生物多様性を議論しているグループは全然、会話してないんですね。それをそのまんまにして、それぞれがそれぞれに話をしているという、その状態を是非何とかしなきゃいけないし。同じことが多分今度できましたIPベースをどう使うかということにも関わってくると思いますので。これを見ると、九州の方は生態系が入って、これ、優秀ですね。ですから、ちょっとその辺を今後やっていく必要があるのではないか。
もう一つは、横山委員が言われたこととの関係ですけれども、それこそ短期というのはこの気候変動の短期ですけれども、そうではなくて、いわゆる激甚災害に対する適応といいますか、それに対する適応というか、それを賢く避けるような、レジリアントな社会ということが今言われていますけれども。そういうものと、長期的に気候変動でじわじわと来るようなことに対する、その対策を二つうまく組み合わせて、両方にとって都合のいい施策を講じるというふうな、そういう文脈でここはもうちょっと強化すべきじゃないか。多分、これ、主たる議論は、震災以前の議論なので、そういうところがあまり意識されていないと思うんですけども、
これは日本だけじゃなくて、例えば東南アジアで、非常に地盤の脆弱なところが、やはりスマトラ沖の大津波で被害を受けたというようなことの話にもつながっていったりするわけですけれども、そういうようなことをやはり、あわせて考えていくというふうな意味で、短期的、長期的というような言葉の使い分けをするということも重要なんじゃないかなと思うんですね。 一例として、最近ギアという国際環境会議が開催されて、そのときに、ストックホルム・レジリアンス・センターの人がやって来て、それで、例えば低いところの脆弱なところを、むしろ自然再生する方が経済的にも最も効果的な対策であるという、そういう報告があったんですね。
それと同じようなことが震災の被災地にも言える可能性もあるわけで、そういう意味で、さっき最初に申し上げた気候変動適応と、それから生態系再生みたいな話をうまくつなげるというのは、そういうストーリーも描けるというふうに思いますので、その辺をちょっと強化して考えていただきたいと思います。以上です。

○小林委員
恐れ入ります。地方自治体の立場からなんですが、先ほどから各委員の皆さん方から、地方自治体の役割というお話が多々出てきておるわけなんですが。今、地方自治体の問題として一番大きな問題は、実は国と地方自治体の役割というのが大変不明確なんですよね。特に温対法の中で、その辺が明確に書かれていない。そのために、地方自治体の、特に環境部局で、なかなか予算がとれないという状況にあるのです。もっと、地方自治体はこういう仕事をしなければならないというのを、もっと法制度上からきちっと明確に示していただきたい。そうしないと、今、地方自治体ではなかなか動けないという状況にあります。その辺を是非お願いしたい。
そんな中で、大変情報不足になっています。情報がなかなか来ないということがございます。時々環境省に、「情報がないのでください」という連絡をすると、この間も言われたんですが、「インターネットのホームページに載っていますから見てください」と、こういうご返事が返ってきた。大変不親切だという話がありました。そういうことで、まあ載っているのはいいんですが、そういうことをできたら文書で、ここに載っていますよとか、今こういうのを公表しましたというようなことを情報として流してほしい。記者発表しましたとホームページに載せられても地方自治体はそれを探すだけの逆に人材がないと、人手が足らないという状況にございます。そういう点で、もう少しご親切にお願いをしたい。そういう意味で、実は地方の環境事務所がほとんど機能していないとは言わないのですが、地方自治体との連携が大変今問題だという意見が出ています。そういう意味で、環境事務所をどうお使いいただけるかというのを是非お願いしたい。最後になりますが、今、地方自治体は大変財源不足でございます。これは地方分権が変な方向に行ったと私は思っているんですが、そういう意味から、何か対策、対応をしないと、このままでは地方自治体は動けないと思いますので、是非宜しくお願いしたいと思います。

○大塚委員
既に各委員がおっしゃったことと重なりますが、2点、簡単に申し上げますけども、一つは、これは国民に対して示していくことを考えるとすると、温暖化によってどういう問題が起きるので、それぞれの問題についてどういうふうに適応するかということを分けて書かないと、伝わらないと思うんですね。これはさっき新美委員がおっしゃったことと関係しますけども。 特に、例えば生態系の話とかは、既に各委員がおっしゃったように、出てこないので、人間に対する影響の方が先に検討されるのは自然のことだとは思いますが、結局、生態系への影響があると人類にももちろん影響が出てくるわけですので、是非そこも含めてお書きいただけるとありがたいと思いました。
それからスライド7の、ページ、7ページのところのところ、これも新美委員もおっしゃいましたけど、これは手順としては非常にいいと思うんですけど、やはりもうちょっと具体的なものにしないと使えないんじゃないかなという感じがしていて。誰が何をやるかということが、これだとちょっとよくわからないので、将来的にはもっと具体的なものしていかないといけないのかなというふうに思いました。以上です。

○及川委員
この資料2-1で、はじめの方にお話があった温暖化がどういった具合に進行しているかというふうな解析についてですけれども、これに関しては、かなり気象庁が前からやっていたように思うんですね。それで、気象庁との連携というのが必要だと思うんですが、具体的にどういうふうに進められているのかというのを一つお伺いしたいということがあります。
それからもう一つは、適応にも関係しますけれども、温暖化が進行して、国内でもいろいろ影響が出るわけですけれども、それ以上に海外での影響というのがよくあるわけですね。去年ですとロシアでの大干ばつとか、その前ですとオーストラリアの大干ばつがありまして、小麦の収量が大幅に減ったということがございまして。日本はかなりの量を輸入しているわけですけれども、小麦の値段が上がるとか、そういったようなこともあるわけですから、単に国内だけではなくて世界的な視野で見ていただきたいということがございます。
それから、環境省では、環境研究所の中に地球環境研究センターができたのが1990年だったと思うんですけれども、そのときに、これからどういった研究をやったらいいかという論議があったわけですね。それは、ここにいらっしゃいます西岡先生が中心になって論議を進められたと。それで私も参加したんでけれども、それを契機として、地球環境研究推進費という、科学的な研究をするということが始まったということがあります。それでもう20年以上になるんですけれども、そういった基盤というのが非常に大きな役割を果たしてきているというふうに感じております。それで、最近までは、単なる科学的な研究だけに終始したように思うんですけれども、最近では、そういった研究をこういった政策の場にいかに生かすかという方向で取組が進められているように感じておりまして、それは是非、これからも強力にやっていただきたいということがございます。
それから、その推進費の中で、1993年から岐阜県の高山の森林でCO2フラックスを連続してはかるという研究が、現在も進められていると思いますけれども、この研究は93年から始まったわけですけれども、あるところで、もう数年やったところで、もうこれ以上やるのはモニタリングであると。研究ではないんだというふうなことで、一時打ち切られたというふうなことがあったわけですね。それで、ちょっと先ほど出てきましたけれど、モニタリングの重要性というお話が出てきまして、最近環境省では「モニタリング1000」といったような試みも始められまして、日本を北から南までいろんなサイトを決めて、モニタリングをきちっとやっていこうというふうな取組もされているわけですけれども、その辺の宣伝といいますか、していただくといいんではないかなというふうに思いました。

○枝廣委員
ありがとうございます。住民とのコミュニケーション、情報共有ということで、質問です。
多くの市民は、「緩和」とか「適応」という言葉自体もほとんど知らない人が多いと思っています。緩和については、実際に日々の暮らしの中で行動を変えてもらう必要があるので、それはしっかりと共有し、普及啓発していく必要があるし、その中では、中上委員のおっしゃっていたように、ノン・エナジー・ベネフィット等、いろいろな訴求をしていく必要があると思っています。一方、適応については、農業に関わっている等ではない、ごく普通の市民に対して、本当にどの程度、その国民への共有もしくは普及啓発が必要なんだろうかと。国がやることはすべからく普及啓発というのが最後に出口の一つとしてついてくるんですが、しかし、全国民に対して何かある程度目指してらっしゃることがあるのか。それとも、いろいろなリスク分析をして、ピンポイントで絞った上で、ある対象になる人たちへの普及啓発というような、そういったプロセスを考えることも必要かと思うんですが、この国民へのコミュニケーション、情報共有ということで、何を目指して、どのように進める計画でいらっしゃるのか、そのあたりを教えていただければと思います。

○井上委員
電気事業と「適応」という観点から申し上げますと、やはり我々の事業は、インフラ、基礎のインフラ事業ですので、常に自然災害と闘っております。台風とか雷とか、それから水害とか、そういったものへの対応、技術のレベルアップ、系統の強化、こういったものを通じて、短期的には「適応」という対応策がとられています。それから、これを水平展開することによって、その中長期的な適応策にもなっていると考えるのですが、それをさらに一歩進めようと思うと、やはり科学的な知見を集積していただいて、その基本はこの13ページにありますような、no regretであり、win-winといった適応策であろうと、こう考えます。
それから、win-winの中には海外への技術協力であったり、事業協力といった視点もあるのではないかと思いますので、そういった方向でまとめていただき、検討していただければと思います。以上です。

○浅野委員
いろいろご意見がありました。小林委員が言われた、環境省の地方事務所の役割でありますけども、九州では、恐らく本当に地方環境事務所がやるべきことをやっているという気がします。ほとんどの関係する各省の出先機関が集まってくださっておりますし、気象台も来ていますし、九州・沖縄の各県が全部集まってくださって、政令市も入っているというようなことでありますので。ここで情報交換ができるという体制が今できつつある。やはり一番影響を受ける地域であるということもあるわけですが、一つのモデルケースということになるのではないかと思っています。
しかし、実際やってみますと、この中での問題がいろいろありまして、やはり自治体の中で環境部局にしか認識がない。他の部局は、自分たちがやっていることが適応に関係があることすらわかっていないといった悩みを聞かされます。ですから、やはり自治体に動いてもらうためには、情報発信を自治体に対してしっかりやっていかなくてはいけないということはそのとおりだと思います。それから、実は同じようなテーマで、全国知事会で検討を3年ぐらいかけてやったことがあるわけですが、そのときにはっきりわかったのは、地域でも、温暖化によるさまざまな変化についての情報が断片的にしか集まってなくて、継続して、一貫したデータのストックができていない。つまり、予算が途中で切れちゃうもんだから、あるモニタリングがばっと切れちゃって、全然変化がわからないというようなことが明らかになりました。この辺のところから整えていかないといけないのではないかと思います。
最後に、項目はやはりそれぞれの地域で、地域特性を考えながら、どの事象を重点的に考えるかということは自ずから違ってくるだろうと思いますから、あまり全国で一律にフォーマットをつくってやるという発想ではだめなので、もっと大元のところの考え方はしっかり示すけれども、それをじゃあ地域で、どういう手順で地域の問題を発掘し、それを進めていくときに、国がどう支援するか、こっちの方をむしろ重点に考えていく。この問題は、緩和と違ってトップダウンでは絶対うまくいかないというのが、私の主張です。

○鈴木部会長
ありがとうございました。予定の時間を大幅にオーバーしているということもございまして、皆様からいただいたご意見は、今後これを生かしていただいて、もう少し具体的にまとめ直して、またご報告いただくというようなことが必要なのかなという感じがいたしました。
大体いただきましたご意見や、ご質問を通じてしっかりとご指摘をいただいたところがあります。各省の連携であるとか、あるいは国民への開示、啓発、普及、これは非常に難しい問題なんですが、まだそこまで十分に考えられているとは思えない面もあります。ここは一応、現段階での方向性がここに示されているというようなこととお考え下さい。ご指摘いただいたことをどこまで今後考えていくのか。例えば、コスト推計をどうするのかとか、これはもう、ある意味では研究テーマにもなっていくでしょうし、やはり国と地域との関係、あるいは防災との関係、非常に大事なところをいろいろと本日はお出しいただいたと思います。
特に事務局の方から何かお答えになりたいことは。いいですか。
では、これはそういうこととさせて頂きます。適応に関しては、例えば生態系との関連というようなことですと、ここだけでは話が進まない面もありますから、いろんな意味でのインタラクションを、促進していただきながら、適応のあり方を今後詰めていければと思います。
まだ議題が実は残っておりまして、議題(3)今後のスケジュールということですが、それをいただきましてから、いろいろと補足事項がございます。

○低炭素社会推進室長
それでは、資料3に基づきまして、今後のスケジュールについてご説明を申し上げます。
この紙の下のところにございますが、次回につきましては、年明け1月末にこの部会を開催いたしまして、次回、さらに温暖化対策につきまして議論を深掘りをお願いしたいというふうに考えております。その際におきましては年末に議論が進みますエネルギー環境会議での検討状況、またその一部として電気の電源ごとに今コストを計算しておりますのでそのコスト検証委員会の結論などについてもご紹介を申し上げたいと思っております。また、温暖化対策につきまして表裏一体で議論を進めていくというエネルギー政策につきましても、資源エネルギー庁の方で議論が進むということでございますので、その議論の進捗についてもご報告を申し上げたいと思っております。また、夏におまとめいただきました意見具申につきまして、どのような対応をしているのかということにつきましてもご報告を申し上げたいということを考えております。そういったものをご紹介しつつ、具体的な温暖化対策について深掘りの議論をお願いしたいというふうに考えてございます。スケジュールについては以上でございます。
また、参考資料につきまして、ご説明を申し上げます。参考資料1と2につきましては、現在南アフリカで行われておりますCOPの情報でございます。現時点で行きますと、難しい交渉が続いておりまして、現時点で大きな進捗をご紹介することができないということがありますので、こちらでお示ししたものにつきましては、COPが始まるに先立ちまして、温暖化問題の関係閣僚委員会で方向性を取りまとめた資料をつけております。
参考資料1でございますけれども、方向性としては、二つ目の黒ポツにありますが、新しい一つの包括的な法的文書を速やかに採択するというところが日本の最終目標ではございますけれども、これを直ちに実現するということは困難な状況であるという認識のもと、ダーバンでの合意を目指して具体的に提案をするということで、大きく分けると六つの点が掲げられております。 基本的にはカンクンで合意された内容をいかに実現していくのかというところでございまして、カンクン合意の基礎となります仕組み、これの合意、また、2ポツにありますが、各国の排出努力をさらに続けていくということ。三つ目としまして、カンクン合意の中でも非常に重要となります国際的なMRVの具体的な中身について提案をしていくと。特に先進国、また途上国各国がどのようなことを行うのかということを報告するための隔年報告書、これを2013年度に提出するというような提案も行っております。
また、裏面でございますけれども、レビューをきちんとした上で、新たな枠組みを構築していくということで、先ほどありました隔年報告書であるとか、IPCC第5次の評価報告書、こういったものをもとに国際議論を進めていくということ。
六つ目といたしましては、技術・市場・資金、こういったものを総動員をしていくという必要性をうたい、支援の対象といたしましては、特に脆弱でありますアフリカ、小島嶼国、こういったところに重点を置くべきだという提案を行っているというところでございます。
さらに、参考資料2でございますが、先進国との連携、また途上国との連携ということで、より具体的な提案の中身を記載しております。1ページ目の四角、1ポツでありますが、先進国家の連携につきましては、革新的な技術開発などの重要性、また、研究につきましても、国際的な連携を推進するための枠組みの重要性。
また、(3)といたしまして、先ほどもご紹介いたしましたが、「いぶき」をはじめとします観測の連携につきまして提案をしているというところでございます。
おめくりいただきまして、2ページ目には、途上国との連携ということでございまして、こちらにつきましては、CDMをはじめとする市場メカニズムの活用、また二国間の連携の推進ということをうたってございます。具体的に、(1)から(3)まで掲げておりますけれども、特にアジアにつきましては、低炭素の成長を具体化していくための政策対話・協力を推進していくような取組。また、(2)といたしまして、ロードマップの作成などの提案、こういったものをしているというところでございます。
また、3ページ目には、途上国支援という視点でございますけれども、これまで我が国としてコミットメントしております支援を着実に行っていくということとともに、イといたしまして、次の中長期の気候変動のための資金として、緑の気候基金ということが、付加価値が高いものとなるように議論に貢献していくということをうたっております。
また、今回の議論でもございましたが、適応分野に関して十分な配慮が必要だということで、3ページ目、下のところに書いておりますけれども、早期洪水警戒体制の構築であるとか、防災、水、食料安全保障、こういったものでの適応支援、こういったところに力を入れていくということをうたっておるところでございます。
COP17の取組成果につきましては、年明けの地球部会でも詳細にご報告を申し上げたいと思っております。
続きまして、参考資料3でございますけれども、夏から前回までご議論をいただいたものを、地球温暖化に関する取組ということでまとめていただいたものの仕上がり品でございます。 こちらにつきましては、まず、12月14日に開催されます総合政策部会に、浅野委員からご発表いただくという予定で考えておりまして、今後、第4次の環境基本計画の検討に入っていくというところでございます。また、年末に向けまして、エネルギー政策、また温暖化政策の議論が政府全体で進んでまいります。特にエネルギー環境会議において議論が深まるというところでございますので、現時点でおまとめいただきましたこの地球温暖化に関する取組の考え方につきましては、その会議などにインプットをさせていただき、議論を深めていきたいというふうに考えております。
また、今現在聞いておりますエネルギー環境会議での流れといたしましては、温暖化部分の選択肢を春ぐらいまでに検討し、エネルギー政策と表裏一体で検討をしていくということでございますので、当中央環境審議会にその温暖化部分の選択肢を検討するようにというタスクアウトをされるというふうにも聞いております。
また、年末に、そういった面で様々議論が進むということでございますので、年明けの次回の部会におきましては、その詳細についてご報告を申し上げるというところでございます。 なお、この資料3、取組につきましては、中にも明記をしておりますけれども、今後様々な議論が進展していきますので、その内容に基づきまして、必要に応じて修正していくというところでございます。例えば各主体の役割などさらに議論をするべきところがございますので、そういったものを充実させていきたいというふうに考えてございます。
最後、参考資料4でございますけれども、現時点でどのような省エネ、またCO2対策が行われているかという直近のデータのご紹介でございますが、各電力会社の方で、ピーク電力、またキロワットアワー当たりでの取組ということが継続して進んでいるという状況でございます。
3ページ目をご覧いただきますと、東北電力・東京電力でのピーク電源が、前年度に比べましてどれぐらい変化しているのかというものを、月別、週別に並べたものでございます。10月、11月に入りましても、取組が続いているというところで、昨年度比でいきますと10%程度の削減にまずピーク電源ではなっているというところでございますし、また、おめくりいただきまして、5枚目には、キロワットアワー・ベースでの比較でございますが、こちらにつきましても10%程度の削減になっているというのが現状になっております。
そのほかの電力会社の状況におきまして、7ページ目にまずピーク電力という変化でございますが、10月、11月につきましても、5%程度の削減。また、電力需要全体でいきまして、9ページ目、こちらにつきましても5%程度の削減の努力が見られるという状況でございます。事務局からは以上でございます。

○鈴木部会長
ありがとうございました。ただいまの参考資料についてのご説明に、特に何かご質問はございますでしょうか。これはご報告ということでありましたので。

○浅岡委員
1点だけいいですか。先ほどの取りまとめにはもちろん反映はしていないんだと思いますけれども、細野大臣がダーバンで表明されました気候変動税、炭素税等につきましては、どんなような議論が政府内であるのでしょうか。

○鈴木部会長
では、局長から。

○地球環境局長
早ければ、今日、政府としてのその税制の大綱みたいなものをまとめるということでございますので、私どもとしては、できるだけ早く温暖化対策税を入れていただきたいということです。昨年も一応政府としてはお認めいただいておりますので、引き続きお願いできるのではないかなというふうに思っておりますけど。ただ、ちょっと実施時期については、まだ調整中ということで我々も早ければいいと思っておりますけど、最終的にテクニカルな部分もございますので、何月実施でお願いできるかというところは、ちょっとまだ未確定ということでございます。
また、その税を踏まえまして、地方の財源も含めまして、いろいろ手当てをしたいと思っておりますけれども、それについては、予算措置でございますので、また年明け、結果の形でご報告させていただければというふうに思います。

○鈴木部会長
宜しいでしょうか。では、これをもちまして、本日の準備されました議題は終了いたしました。あとは事務局の方からお願いいたします。

○地球温暖化対策課長
次回日程につきましては、先ほど説明いたしましたとおり、1月30日を予定いたしておりますので、詳細はまた追って連絡を差し上げますので宜しくお願いいたします。また、いつものごとく、議事録につきましては事務局でまとめまして、ご確認いただきました後にホームページで掲載をさせていただきますので、宜しくお願いいたします。以上です。

○鈴木部会長
それでは、これをもちまして、第99回の地球環境部会を終了させていただきます。ありがとうございました。

午前11時33分 閉会