中央環境審議会地球環境部会(第92回)議事録

1.日時

平成22年12月28日 13:02~15:59

2.場所

東海大学校友会館 阿蘇の間

3.議事次第

  1. 1.中長期ロードマップ小委員会中間整理について
  2. 2.その他

配付資料

  • 資料    中長期の温室効果ガス削減目標を実現するための対策・施策の具体的な姿(中長期ロードマップ)(中間整理)
  • 参考資料1 中長期ロードマップを受けた温室効果ガス排出量の試算(12月21日再計算)
  • 参考資料2 経済モデルによる経済影響分析
  • 参考資料3 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ各WGの現時点でのとりまとめ
  • 参考資料4 低炭素社会の実現に向けて
          (低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet) 第二回年次会合統合報告書)
  • 参考資料5 2009年度(平成21年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について

議事録

午後1時02分 開会

○地球温暖化対策課長 若干遅れていらっしゃる委員の先生方はいらっしゃいますけれども、定刻を過ぎましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会の第92回会合を開催いたします。
 本日は、年末の大変慌ただしいところをご参集賜りまして、誠にありがとうございます。
 委員総数40名中過半数の委員のご出席をいただいておりますので、定足数に達してございます。
 また、本日の審議は公開とさせていただきたいと思います。
 では、以降の議事進行につきましては、鈴木部会長にお願い申し上げます。

○鈴木部会長 数日前にこの部会を開いたばかりでありますが、今日が今年最後でございますので、どうぞご安心なさってください。
 今日は、議題といたしまして、中長期ロードマップ小委員会でおまとめいただきました中間整理につきまして、委員の方々からいろいろご意見を伺い、さらにそれぞれのご意見を今後の整理に生かしていただくという位置づけであります。ぎょっとするような資料が机の上にありますが、これに全部目を通していただくにはとても時間が足りませんので、要領よく進めさせていただこうと思っております。
 それでは、配付資料の確認を事務局のほうからお願いいたします。

○地球温暖化対策課長 それでは、議事次第に資料のリストがございますけれども、ご確認いただきたいと思います。
 まず、番号のついてございません資料といたしまして、中長期ロードマップの中間整理という2センチほどのもの、これが今日のメインの資料でございます。
 それから、参考資料でございますけれども、参考資料1から3は基本的に12月21日のロードマップ小委員会で配られたものと同じでございますけれども、参考資料1といたしまして、中長期ロードマップを受けた温室効果ガス排出量の試算の関係の資料がございます。参考資料2といたしまして、これは薄めでございますけれども、経済モデルによる経済影響分析。それから参考資料3、番号がついておりませんが大変分厚い5センチほどのもの、これが中長期ロードマップの各ワーキンググループの現時点でのとりまとめというものでございます。それからこれも番号がございませんけれども、カラーの印刷で参考資料4でございますけれども「低炭素社会の実現に向けて」というLCS-RNetの報告書がございます。それから参考資料5でございますけれども、これは昨日発表いたしました2009年度の温室効果ガス排出量(速報値)についてという資料がございます。
 なお参考資料3、この分厚いものにつきましては今日の時点ではメインテーブル、委員の方々限りということでございます。参考資料1から3については今日中には中長期ロードマップ小委員会の資料としてホームページにアップする予定でございますのでご参照ください。また今日は大変資料が多うございますので委員の皆様方につきましては会議後このテーブルの上に置いていただければ、それぞれの皆様のところに後日郵送したいと思っております。郵送ですので来年になってしまいますので、もし急いで見たい方はホームページのほうでご確認いただければと思います。
 以上でございますけれども不足等ございましたらば事務局までお申し出いただければと思います。

○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、本日はこの膨大な資料をおまとめいただきました中長期ロードマップ小委員会のまとめに関しましてご報告をいただくということで、中間整理という段階のものとなっております。このロードマップにつきましては、4月に小委員会を設置させていただきましてから、国内削減分を15%、20%、25%という3つのケースについて試算を行うといったこと、さらにさまざまな検討を通じまして、3月でしたか、環境大臣試案も出ております。このようなものの精査をしていただいてまいりました。その状況報告を含めまして、ご説明を後ほどいただくことにいたします。
 その前に、議事に入ります前に、昨日発表いたしました2009年度(平成21年度)の温室効果ガス排出量(速報値)につきまして、参考資料5に基づいて事務局のほうから説明をしていただきます。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

○低炭素社会推進室長 参考資料5に基づきまして、2009年度の温室効果ガス排出量(速報値)の内容をお話し申し上げます。
 1ページ目、枠囲いの下にございますが、今回は2009年度の温室効果ガス総排出量を速報値として取りまとめております。値といたしましては、12億900万トンということでございました。こちらにつきまして、京都議定書の規定に定めます基準年と比較いたしますと、4.1%の減少という位置づけになります。また、その前の年、2008年度の総排出量と比べますと、5.7%の減少ということでございまして、後ほど出てまいりますが、産業部門を始めとして各部門の二酸化炭素排出量が大幅に減少しているという状況になってございます。
 これらの背景といたしましては、3パラグラフ目にございますけれども、その原因といたしましては、2008年10月に発生いたしました金融危機が引き続き2009年度にも影響を与えておりまして、各部門でのエネルギー需要が減少しているということが一つ。もう一つが、原子力発電施設の設備利用率が上昇してきておりまして、それに伴いまして電力の排出原単位が改善されているというのが大きな原因となってございます。
 具体的な内容でございますが、4ページ目に毎年の比較ができるグラフがございますけれども、グラフの左のところに基準年ということで、原則1990年、これが排出量といたしましては12億6,100万トンとなってございまして、この値を横に点線で比較のために伸ばしてございます。今回の速報値は2009年のところでございますが、12億900万トンということでございまして、基準年と比べますと4.1%、前年度と比べますと5.7%減っているというものでございます。こちらにつきましては、このグラフの一番右に書いてございますけれども、そのほかに森林吸収源対策といたしまして3.8%、また政府が京都メカニズムで購入したクレジット分で1.6%というものを別途目標として行動しております。これとの比較になるということでございまして、かなり深掘りはされてはきておりますが、逆に2010年度に入りましてかなり景気対策等の効果も出てまいりますので、今後引き続き温暖化対策を引き締めてやっていかなければいけないという状況かと思います。
 5ページ目以降に分野ごとの増減を表にしてございますけれども、表1のところにはガス種類別の増減を記載してございます。二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素につきましては、それぞれ前年度から比べますと、かなり減っている状況にございます。そういった中で特徴的なのが代替フロン等3ガスの中のHFCの部分でございまして、こちらはオゾン層保護の観点からHCFCをHFCに代替しているということに伴いまして漏出等が増え、前年度から比べますと10.2%増加という結果になってございます。
 部門ごとのエネルギー起源CO2につきましては、表2にまとめてございますが、各分野とも前年度から比べると減っているという状況でございます。
 以上が排出量の速報値でございまして、確定値につきましては、年が明けまして来年の4月から5月ぐらいに例年取りまとめておりまして、その結果を条約事務局のほうに通報するという予定になってございます。
 以上でございます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
 ただいま説明いただきましたことにつきまして、特段何かご質問あるいはご意見などございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 これは速報値ということで、4、5カ月いたしますと確定値が出るというものでございます。
 2009年は経済不況等の問題でむしろ下がった。これをデカップリングするというのはなかなか難しいんでしょうね。

○低炭素社会推進室長 経済影響のほかにも、省エネ対策、低CO2型のエネルギーに切りかえる等の努力が進捗しておりますけれども、それを上回っての景気後退の影響ということかと思っております。

○鈴木部会長 一応2009年まではめでたしめでたしといった感じではあるのですが、これから後は多分また厳しい状況になっていくのではないかと予想されるわけでございます。
 それでは、次に本題のほうに進みたいと思います。時間が限られておりますので、資料、中長期ロードマップ小委員会の中間整理につきましては、事務局からご説明をいただき、その上で委員の方々からご意見をいただきたいと思います。
 事務局の説明の前に、中長期ロードマップ小委員会の委員長としてまとめられました西岡委員のほうからまずご報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○西岡委員 どうもありがとうございます。中長期ロードマップ小委員会からの報告でございます。詳細は後ほど事務局のほうから説明いただきたいと思います。私のほうでは、経緯あるいは全体的な見方についてのお話をしたいと思っております。
 まず、昨年度末、今年になりますけれども、3月31日、2020年25%削減あるいは2050年80%削減に向けての環境大臣試案というものが発表されました。この環境大臣試案に対しまして、企業、NPO、そして国民各層からの意見を聴取して、その内容を踏まえながら精査を行うということで、本年4月からこの中央環境審議会地球環境部会のもとに中長期ロードマップ小委員会が設置されまして、これまでに19回の議論を重ねております。本日はその内容を中間整理という形で報告させていただきたいと思っております。
 ヒアリングでございますけれども、37の関連企業あるいは団体からのヒアリングを行いました。そして、主な論点に係る意見の整理を行い、分野別のワーキンググループにおける検討、技術モデル・経済モデルの分析、後ほど説明がございますが、それを踏まえまして小委員会での議論を重ねて、この中間整理ということで、お手元に大部のものがございます。皆さん、量のことをおっしゃいますけれども、中の質もなかなか立派なものでございますので、コストベネフィットは決して悪くないと考えております。この取りまとめに当たっては、この小委員会で私も含めて全20人の議員で19回の議論を行ったのですけれども、分野別の各ワーキンググループにおきましては延べ101人と50回の議論を行ったという、なかなかの知恵の塊がこの5センチに詰まっております。
 関係の委員や専門家の皆様には、中間整理の取りまとめに当たって、非常に多くの貢献、ご尽力をいただいております。まず、小委員会の委員長として一言お礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 小委員会では、2050年80%削減に向け、またその途上にある2020年25%の削減を達成するにはどういう手だてがあるか、どういう順番でやっていかなければいけないかといったことにつきまして、さらには我々自身がどのように変わっていかなければいけないかということもさまざま検討いたしました。詳細は事務局から後ほど報告いただきますが、私の所感といたしましては、まず第一に、2020年に向けての詳細な対策の積み上げ、施策のラインアップ、解決すべき課題については概ね出そろった。これが中間整理という言葉で、これは言ってみれば両論併記といいますか、各論併記という形で取りまとめてございますので、これを政策のほうでも十分勘案いただきまして、さらにプッシュしていただければと思っております。
 また、これは温暖化対策基本法案が通ればということでございますけれども、将来、今までどおり中長期計画等々を定めるということになりましたら、その基本計画あるいは実施計画の基礎となるものができたのではないかなと思っております。
 3番目でございますけれども、もちろん、技術の進歩は非常に速いものですから、これはどんどんブラッシュアップしていく必要があるかと思います。しかしながら、一番大切なのは、これはまだ仮といいましょうか、中間整理の形ではありますけれども、行動に移せるものはどんどん進めていただきたいというのが私の感想でございます。
 こうやってロードマップの精査を一つ一つ見ていきますと、全体の方向もわかってきたし、また将来のビジョンあるいは課題も明快になってきたと思いますけれども、非常に重要なこととしましては、何といっても安定な気候という環境資源を守るためには、ただではできない。誰かが汗をかかなければいけない、このようなロードマップも書かなければいけない、あるいはお金も出さなければいけないということがあるかと思います。これを守るために日本が国の内外でどのように貢献できるかという観点からこのロードマップを考えてまいりました。
 また、もう一つ、高い目標を掲げて、日本の社会変革を進める、低炭素社会構築に向けて、国際的な競争にどうやって打ち勝つか、世界をどうやって引っ張っていくかという観点が非常に大切だと考えております。
 このようなことでございますので、これは、課題や留意点は非常に明らかになってきたわけでございますけれども、さらに皆様のご意見を入れて、また政策・対策を強めていただき、実現可能性の向上に向けた精査を行っていただきたいと思います。
 経済モデルの分析は後ほど説明がございますけれども、これをよく見ていただきますと、政策展開、どういう手を打ったらどういう効果があるかといったことについての試算もいろいろ進んでおります。先ほど委員長からもお話がありましたように、この我々の作業というのは、国内削減分15%、20%、25%ということで幅を持たせて検討しております。そして、その難易度をわかりやすく示していくことが今後の課題ではないかなと思っております。
 日本は、内外の低炭素社会構築に向けて、市場に予見可能性を与える。これは、よくビジネスの方とお話ししていますと、政府の方針をぴしっと決めてもらわないとなかなか先へ進めないということがございます。また、低炭素社会への投資リスクを低下させるために、できるだけ早期に我々が目指すべき国内削減の規模を示すということが非常に大切だと思っております。
 以上が私の感想でございますけれども、お手元に全く違った刷り物が一つあります。こういったブルーの表紙の「低炭素社会の実現に向けて」というパンフレットでございます。このパンフレットは何かといいますと、ちょうど2ページぐらいあけていただきますと経緯が書いてございますけれども、洞爺湖サミットのときに環境大臣会合が開かれまして、そして、今後世界的に低炭素社会へ向けていくだろうし、そのときに各国でこのような方策を検討している研究者を集めてお互いに意見を交換し合えば、さらに効果の高い計画が得られるのではないかということで、日本が提案した研究者のネットワークでございます。どういう研究者がいるかといいますと、最初の表紙のところにいろいろなロゴがありますけれども、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、さらにはインド、中国、韓国、抜かしたかもしれませんけれども、等々の研究者が集まりまして、こういうロードマップ等々をやっていくにはどういうグッドプラクティスがあるかといったことを話し合いました。これで2回目になりますけれども、4ページ、5ページを簡単にご紹介申し上げます。なぜかといいますと、我々のこの検討におきましてもこういうことが非常に重要だということでございます。中には、研究者が集まって、政策は何をやっているのだなどという愚痴めいたことも書いていなくはないですけれども、そのようなものだと思ってちょっと見ていただければ幸いであります。
 例えば、最初に、低炭素研究と政策策定は進展を遂げている。どの国もこういったロードマップ等々をつくり、そして今や既に先進国では実行段階に移っている。計画ではなくて既に一歩前へ踏み出しているということで、PDCAサイクルに入っているということを言っております。途上国はこれからNAMA等々でこういうことに取り組んでいくだろうということで、先進国からのそういった意味での知識移転も必要であると。
 2番目に、これも我々の委員会、小委員会でも問題になったことですが、短期的にはコストであっても長期的には利益となり十分報われるということをすべてのステークホルダーに理解させること、これが一番難しい。どうしても短期的な利益だけを考えてしまって、将来それが気候を守るためにやっているのだということであるとか、さらには長期的にはそれが利益になって返ってくるのだということをわからせる、あるいは勉強する、あるいは解析するということは、非常に難しいことである。みんな、これをしっかりやらなければいけないなどという我々の悩みが書いてございます。
 3番目にありますのは、実行可能で効果のある政策を立案する際には、社会を構成するさまざまな要素を十分理解しておかねばならない。これは、省庁横断でやるべき仕事でありまして、必ずしもこれが低炭素あるいはエネルギー等々の計画だけではなく、国土計画あるいは農業の計画等々とすべて関係してくるということで、国を挙げてやる必要があるということを指摘しています。
 その次は、技術と研究開発だけでは低炭素社会を実現することはできない。いろいろな文化・制度・社会インフラ等々が非常にネックになるのだということであります。
 私は昨日、金沢の環境省のモデルハウスプロジェクト、エコハウスプロジェクトの見学をしてきたのですけれども、地方では、これを機会に地域の大工さん等々を糾合いたしまして、いい地方興しにしたいということがあります。我々のロードマップでも常に問題になりましたのが、果たして木造家屋あるいは既存家屋の見識を変えていくということに対して、地元の大工さんの知識で間に合うのだろうかということが必ず出てきます。これはロードマップの最初に人をどうやって教育するかということが出ておりますけれども、金沢では研修に100人を募集いたしましたところ即日400人集まっているという状況で、さらに企業にはいろいろなアイデアを募集しましたら、もうエコハウスに取っつけ切れないほどのアイデアがいっぱい出てきた。壁が非常に湿度を保つような材料をつくったり、あるいはどこの窓をあけたらどういう風向きで温度がどれくらいになるかとか、いろいろなことが出てきたということで、そういう工夫も非常に要るのではないか。
 一番下に行きますけれども、これから経済モデルの話がございます。いつも経済モデルの話がありますと、時にはメディアではその結果だけが報道されるものですから、前提がどうなってそうなったかといったことがなかなかわからない。モデルにつきましては、我々も研究者として非常に力を入れておりますけれども、それはどういう前提でこういう論理だからこうなるということをきちんと説明する必要があるということも、共通の悩みとして言っているわけであります。
 あと2点だけ申し上げますけれども、低炭素社会の実現にはさまざまな階層の主体をつなぎ合わせる重層的なガバナンスが必要である。これは、昔だと単に中央政府が法律を出して、それが規則に落ちていき、条例という具合にいったのですけれども、この問題は政府あるいは地域の自治体、コミュニティ、そして市民が一体となってやらなければいけない。あるいは、これまでは供給側がすべてのエネルギーあるいは低炭素についての責任を負って頑張っていただいたわけでございますが、それだけでは間に合わなくなって、スマートグリッドに見るような需要と供給が一体になった形でのガバナンスが出てくる。そういうときに一番トップへいきそうなのは都市ではないか。そこの段落の下から2行目に書いてありますが、都市というのは一番まとまりがいい形であるから、今の東京都等々がやっておりますように、そこがリードするという形もあるということであります。
 そして、この3番目にありますように、民間セクターを望ましい方向に誘導することが一番大切であるということです。今非常に短期な目での投資が、将来の高炭素型の社会にいわゆるロックインするようなことがないように、早目に誘導していく必要があるといったことがあります。
 私どもは、こういうことを我々の委員会の中でも十分検討したつもりでございます。皆さんのご意見をいただきまして、さらにいいものにしていきたいと考えております。どうも長い間ありがとうございました。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
 それでは、事務局のほうからこの中間整理について説明をお願いします。

○低炭素社会推進室長 それでは、中長期ロードマップ・中間整理の資料に基づきましてご説明申し上げます。
 表紙をおめくりいただきますと目次がございますが、全部で8章から成ってございます。その後ろに別添資料として大部のものがついております。まず、「はじめに」というところで基本的な考え方をまとめつつ、2章でこの小委員会の目的を再度明らかにするという形をとりつつ、4章のほうで分野ごとにそれぞれどのような検討が行われてきたのかということを取りまとめてございます。4章のところで全部で7つの分野を書いておりますけれども、それぞれの分野ごとに構成を同じくしてございまして、この小委員会の中でヒアリング等を行ったわけでございますが、そこで出された主な論点を整理するのが1つ目。2つ目が、分野ごとに設けましたワーキンググループでどのような検討が行われてきたのかというものをまとめてございます。それらを受けまして小委員会本体でどのような意見があったのかということをまとめて、それを分野ごとに構成しております。
 目次の2ページ目でございますけれども、それらご議論のあったものを2050年の姿、2020年~30年の姿というものにまとめ直したものが5章、6章と続きまして、7章目には、1章から6章までで出てまいりましたご議論を改めて中間整理という形で取りまとめてございます。
 では、本体のほうに入ってまいりますけれども、まず4ページ目にはこの小委員会の名簿をつけさせていただき、5ページ目には小委員会でどのような検討がなされたのかという経緯を簡単にまとめておりまして、直近でいきますと12月21日に第19回目が開催され、この中間整理がまとめられたというものでございます。
 7ページ目が「はじめに」ということで第1章でございまして、1パラグラフ目には、温室効果ガスの排出削減を進める重要性について、IPCCの報告書などを引きつつ記載してございます。2パラグラフ目には、検討の前提となります削減目標、2020年の25%削減、2050年の80%削減というのがどのような位置づけになっているのかというのを簡単に記載してございます。3パラグラフ目には、小委員会でどのような議論が行われてきたのかという経緯を書き、最後の4パラグラフ目には、我が国がどのような低炭素社会を目指すのか、アジアや世界の持続可能な発展にどう貢献できるかという国家戦略として検討してきたという経緯を書いてございます。
 おめくりいただきまして8ページ目でございますが、小委員会での検討の目的と基本的な考え方を改めて記載しております。1パラグラフ目には、この地球環境部会で4月に決定いただきました小委員会の設置についてということを改めて書いてございますが、中長期の温室効果ガス削減目標を実現するための対策・施策の具体的な姿、これを中長期ロードマップと呼んで、これにつきまして幅広い関係者からの意見を聴取し、その結果も踏まえ、中長期ロードマップの精査を行うことを目的としてございます。
 この決定に当たって行われましたご議論、また小委員会第1回目でご議論があった内容について、2パラグラフ目に記載しております。
 また、どのような基本的な考え方に立って検討が行われてきたのかというのが、3パラグラフ目に書いてあります。大きく分けますと4つになります。1つ目の「・」でありますが、長期的な国内外での低炭素化につながる確実な温室効果ガスの削減が実現できるかどうかということ。2つ目といたしまして、この目標の実現可能性を十分に検証した上で、経済成長への影響、国際競争力の確保、エネルギーの安定供給、地域活性化といったものを実現していくという視点を持つとともに、経済活動とか国民生活のあり方の転換といったものを含めて、持続可能な発展に資するものとしてのご議論をいただいております。3つ目といたしましては、国内における排出削減の実践に加えまして、世界市場への我が国の環境技術の普及・促進に貢献するという視点も持っていただいております。最後に、経済活動・国民生活に及ぼす影響・効果をわかりやすく示すとともに、国民各界各層の理解を得ていくという視点がまとめられておりまして、この視点に基づきまして後ろの7章のところで中間整理を改めてしております。
 9ページ目が3章ということで検討プロセスを書いてございます。構成といたしましては、まず関係団体、あと国民からのご意見を聞いたヒアリングがございます。2つ目といたしましては、環境省に分野ごとにワーキンググループを設置いたしまして詳細な内容を検討いただいておりまして、その結果につきましては、小委員会に報告され、議論がなされたところでございます。3つ目といたしましては、さまざまな経済影響等を議論するために経済モデルによる分析を行ったということでございまして、国立環境研究所のAIMモデルなども使いながらその分析を行ったということが経緯として書いてございます。
 10ページ目以降が分野ごとの検討ということで、7つの分野ごとにどのような検討がなされたのかというのを書いてございます。
 具体的には11ページ目から書いてございますが、まずマクロフレームといたしまして、2050年にどのような社会であるべきかというものを議論する塊でございますが、ヒアリング等でのご意見、国の将来像のあるべき姿を示して議論すべき等のご議論があった旨記載するとともに、4-1-2といたしまして、マクロフレームワーキンググループでどのような検討がなされたのかということが記載してございます。
 11ページ目の一番下に、2050年に「想定しうる」社会とはいうことで、ワーキンググループでは5つの社会を描写いたしまして、経済成長を志向するのか、また余裕を志向するのかなど、幾つかの切り口でまとめてございまして、ものづくり統括拠点社会とか、12ページ目、メイドインジャパン社会、高付加価値の製品をアジアなどを中心に販売していくという社会、あとサービスブランド社会といたしまして、日本の第三次産業を中心とした社会、4つ目といたしまして資源自立型の社会ということで、できるだけ海外依存を少なくするという社会、5つ目として分かち合い社会ということで分類しつつ議論を深めたところでございます。
 こういった検討の内容を小委員会に報告いただきまして、4-1-3として、小委員会でさまざまな意見が出たところでございます。こちらはまた後ほど、2050年、2020年という形で取りまとめが出てまいります。
 このような形でまとめております。分野ごとに、ものづくりが13ページからでございまして、特に13ページの下に書いてございますが、ものづくりWGといたしましては、「低炭素型スマートものづくり立国」を目指すべきだというご議論もしていただいております。
 次の分野といたしましては、15ページにございますが、住宅・建築物の分野でございます。ヒアリング等での意見といたしましては、一度建てると長期間にわたって存在し続けるので、ストック対策が難しいというご議論もございましたし、ワーキンググループの中でもそのような視点を持っていただき、ご議論いただいたところでございます。
 また、16ページの下のところでございますが、副次的効果ということで、温暖化対策がもたらす効果が省エネ効果だけではなくて、例えば、部屋の中の温度差が少なくなることによって疾患が少なくなるといった副次的な効果もあるということなので、これらの項目の洗い出し、また定量的な詰めも行うべきだというご議論がなされてございます。
 17ページには、それらを受けて小委員会で出てきたご議論でございますが、4つ目のところの最後にございますけれども、これらの施工体制が十分に整うのかという視点も非常に重要だというご議論もいただいております。
 17ページの下からは、4-4といたしまして、自動車分野でございます。こちらにつきましては、ヒアリング等では、歩道・自転車の走行空間の整備も推進すべきだといったお話もいただいております。
 ワーキンググループで詳細にご議論いただきまして、18ページの中ほどにある2020年の対策ごとの導入見込量の検討というところでございますが、こちらにつきましては、次世代自動車の車種ごとの燃費とか、販売のモデル数が幾つになるかなどの精査も行い、2020年導入量の詳細な検討を行っていただいております。
 また、エコドライブ、カーシェアリングといった自動車の使い方も非常に重要でございますが、18ページの下でございますが、それらの対策につきましては、利用者の意識改革が非常に重要だということで、ハード・ソフト両面からの施策も重要だというご指摘をいただいております。
 19ページには、それらの議論を踏まえまして、小委員会での意見というのが4-4-3に書いてございます。特に1つ目のところでございますが、バッテリーの低コスト化といった技術的な課題もクリアしていかなければいけないということでご議論いただいております。
 4-5といたしましては、地域づくりに関して、低炭素型の都市をつくっていく、まちをつくっていくという視点の重要性ということで、ヒアリングなどでも、20ページの上でございますけれども、自動車走行量を大幅に減らすような政策、公共交通機関を充実させるための支援といったものを大胆に進めるべきだというご議論もいただいておりまして、ワーキンググループでも詳細に検討いただいております。
 また、都市部だけではなく、農山漁村の対策も重要だということで、22ページには、農山漁村のモデルイメージをつくりつつ詳細な議論を進行いただいております。
 これらの情報を踏まえて小委員会でのご議論ということでございますが、22ページの下に4-5-3としてありますが、特に、これらのまちづくりを進め、交通流・渋滞対策を進めることがCO2の削減に有効な部分もあるというご指摘もございますし、また省庁横断的な取組であるというご指摘も受けております。
 続く23ページにはエネルギー供給ということで書いてございますが、4-6-2のところでワーキンググループの検討の内容を書いておりまして、中ほどに、議論の内容といたしましては、[1]から[4]まで設定し、議論をする柱立てをしたところでございますが、今回の中間整理まででは、[1]と[2]の再生可能エネルギーの基盤と社会システムがどのように変革するのかというところを中心に検討を行っておりまして、[3]、[4]につきましては今後の課題ということになってございます。
 これらの内容につきまして小委員会で議論いただきまして、25ページのところに小委員会における意見ということでまとめております。1つ目の「・」のところにございますけれども、今回のワーキングの中心が再生可能エネルギーになってございましたので、それに関連いたしまして、原子力の稼働率や新規立地の重要性というのが非常に大事で、今後しっかり検討、書き込みを行っていくべきだという意見などが出てきております。
 これらの部分につきましては、直接的にCO2を削減する対策の分野でございますが、4-7といたしまして、コミュニケーション・マーケティング分野というものの検討もあわせて行ってございます。25ページの下から書いてございますが、省エネ機器や低公害車を普及していくためには、単に買い替えを呼びかけるだけではなく、人々の意識を変え、行動様式を変えていくということが必要になってございますので、このワーキンググループを立ち上げ議論を進めてきたというところでございます。
 それを受けまして小委員会では、27ページの最後から2つ目の「・」でございますが、コミュニケーションというものをもう少し幅広くとらえて、地域単位とかコミュニティ単位でのコミュニケーションというものも重要なので、それの展開が必要だというご意見もいただいてございます。
 これら分野ごとに詳細に検討した内容を2050年という切り口でまとめたのが、29ページ以降でございます。5章ということで、まず5-1といたしましては、分野ごとのワーキンググループにおいてどのような姿が提示されたのかというまとめでございまして、具体的には29ページに表として取りまとめてございます。先ほど4章のほうでご説明いたしました分野ごとに、温暖化対策の進展が進んで、2050年ではどのような社会であるべきかという一つの姿をまとめるとともに、これらの対策が進捗することによって副次的にもたらされる効果につきましても、マルチ・ベネフィットという形で整理しております。
 例えば分野でいきますと、上から2つ目に住宅・建築物分野がございますけれども、こちらにおきましては、温暖化対策の進捗状況といたしましては、2050年において、住宅・建築物ストックの平均でございますけれども、ゼロエミッションを達成しています。省エネの進捗、また太陽光発電などの創エネが普及することによって、トータルとしてはゼロエミッションを達成しているという姿が描かれております。また、自動車につきましては、新車販売の大部分、約9割が次世代自動車になっているということと、エコドライブやカーシェアリングが浸透しているということで、車の使い方も効率化されるという姿が必要になってまいります。一番下のエネルギー供給分野といたしましては、2050年には、原子力発電と再生可能エネルギーを合わせまして、電力のほぼ100%がゼロカーボン電源になっているという姿が一つのイメージとして示されています。一方、マルチ・ベネフィットといたしましては、例えば自動車分野でこれら次世代自動車が普及することによりまして大気汚染物質が削減されるなど、あとは騒音が低減されるといった副次的な効果もあるということで、これらのラインアップと定量化が今後の課題となってございます。
 これらの姿を一つのイメージとしてまとめましたのが、30ページでございます。これは地域ワーキンググループが地方中心都市の例といたしましてイラスト化したものでございますが、対策導入後の姿ということで、下のところにコンパクトシティ化、またLRTなどの公共交通機関が活用される姿が示されております。
 これらの情報をもとに小委員会でどのような議論がなされたかが31ページ以降に書いてございますが、もう一つ、議論のたたき台といたしまして、国立環境研究所のAIMプロジェクトチームが行いました2050年のシナリオ分析モデルを使った分析結果も紹介され、議論されてございます。こちらはシナリオを2本立てまして、シナリオAといたしましては利便性・効率性を追求するという姿、シナリオBとしてはゆとりある生活を求めるという姿で、大きく2つのシナリオを描きつつ2050年の検討を行っておりますが、32ページ、33ページにその結果が載ってございます。2050年に80%削減する場合に需要部門でどのような姿になっている必要があるのか、また下のところでは供給部門でどのような姿になっているのかというのをまとめております。例えばでありますけれども、需要部門の最後のところでありますが、非エネルギー分野でいきますと、代替フロン等3ガスにつきましては排出量ゼロを達成しているという姿がシナリオA・B共通での姿でございます。また、運輸部門の新車の9割以上が次世代自動車になっているということにつきましても、シナリオの違いにかかわらず、達成が必要になってくるというものでございます。
 34ページ目につきましては、では2050年80%削減というものが過去の歴史的なトレンドと比較してどのような強度の施策が必要なのかということを描いたものでございまして、図表5-2-5のところに内容が書いてあります。2050年に80%削減を目指すというときに、エネルギー強度―GDP当たりのエネルギー消費量とか、炭素強度―消費エネルギー単位当たりのCO2の排出量といったものは、過去のトレンドとしてどれぐらいのものなのかということを比較してございます。エネルギー強度につきましては、オイルショック時から経験したものと同じ程度のものを継続して進めなければいけないという結論になっておりますし、また炭素強度につきましては、これまで経験したものの4倍近い年率3%程度の改善をしていく必要があるということで、トレンドとして達成できるものではなく、相当な努力が必要であるということがイメージとして示されております。
 これら検討の結果、留意点としてご意見が出されたのが、34ページ目の下に書いてございますが、さまざまな姿が想定し得ると、利便性・効率性を追求する姿もあり得ますし、ゆとりを追求するという姿もあり得るということでありますけれども、今回の検討の中で追加的に必要とされますのが、「また」のところにありますが、エネルギーの安定供給を考慮したものになっているかどうかなどの検討がまだ追加的に必要であるというご意見も出ているところでございます。
 以上が2050年の姿の検討でございますけれども、続く35ページ目以降が2020年から2030年の姿というものでございます。こちらも幾つかの切り口から検討していただいておりますが、まず35ページ目の下に6-1といたしまして、排出量の推計をまとめております。こちらにつきましては、関係団体からのヒアリング結果、また各ワーキンググループでの検討、そして国立環境研究所のモデルを使った結果などをもとに計算をいたしまして、それらをもとに小委員会でも議論をいただいたというものであります。
 36ページ目には小委員会での議論のまとめが書いてございますが、「・」で4つにまとめられております。こちらにつきましては、まず1つ目のところでございますが、これらヒアリング結果、ワーキンググループでの精査によりまして、2020年に国内15%、20%、25%、これを達成するために必要な対策につきまして、物理的に導入し得る導入見込量が積み上げられたというものでございます。
 また、それらの対策を導入していくためにはさまざまな施策が必要でございますが、それらがラインアップされ、また実施に当たっての課題・留意点が示されたというのが、2つ目の成果として書いてございます。
 3つ目の「・」といたしまして、これらの対策の確度を上げていくという観点からは、どれぐらいの強度の施策を導入する必要があるのかという定量的な検証、また低炭素技術の供給体制をどのように確保していくのか、追加的な負担がどれぐらい発生するのかなど、さらなる詳細な検討が必要であるということでございます。一方で、施策効果の定量的な十分性については予見し得るものではなく、実現の確度を高めていくという観点から、対策の進捗状況をチェックしながらPDCAサイクルを回して、必要に応じて施策の見直し・強化をしていくプロセスを構築していく必要があるとのご意見もございました。
 4つ目といたしましては、この3ケース、15%、20%、25%というケースで検討してまいりましたが、それぞれどれだけ難易度が異なるのかということについて、さらに国民にわかりやすく提示しご議論いただく必要があるという点をご指摘いただいておりますので、どのように提示できるかが今後の課題となってございます。
 38ページには、その削減量につきましてグラフにしたものがございまして、それぞれ15%から25%削減の分量を描いてございます。
 また、39ページには、分野ごとにどれぐらい削減する必要があるのかというのを折れ線グラフで描いてございます。6-1-2の図表でいきますと、業務部門、家庭部門、産業部門といった部門ごとに、2020年までにどれぐらい現状から削減しなければいけないのかということをグラフとして描いてございます。
 これら2020年の排出量を検討するに当たりまして、40ページに留意点としてまとめておりますが、これら見積もられた対策につきましては、予定どおり進展しないリスクもあるということで、それらの対策が必要になってくるということがご議論として出ております。こちらには、例えばということで、原子力発電の設備利用率、新増設が進まなかった場合にどれぐらいのインパクトがあり得るのかということが図表で示してございますし、またこれらの代替案の準備も含めて検討する必要があるというのが今後の課題としてございます。
 これらの対策が普及した後の具体的なイメージがわきやすいようにということで、41ページから各分野ごとに幾つかの対策について例示しております。例えば41ページ、日々の暮らしの家庭部門といたしまして、2つ目の「・」にございますが、エネルギー消費量などを「見える化」することによる対策もございます。こちらにつきましては、スマートメーター、省エネナビといったものの普及・活用が必要になりますが、3ケースによってその普及の台数が違うというのを例示することによってその難易度の違いを表したいと思って例示をしてございます。それを表形式にしたのが43ページ、44ページで、内容的には同じものになってございます。
 これらの対策を導入した場合に追加的に必要になる費用につきまして、44ページから6-3といたしまして検討結果を書いておりますが、初期費用の追加費用として計算してございます。ですので、従来型の技術があるものにつきましては、低炭素型の技術と従来型のものの差額を積み上げているというものであります。ただ、インフラ整備に係る費用についてはこちらの計算には含まれていないというところが注意書きであります。
 推計の結果が44ページの下に書いてありますが、15%ケースでいきますと、10年間で58兆円、20%ケースでは、10年間で78兆円、そして25%ケースとしましては、45ページの上でございますが、97兆円という費用が必要になってくるというものでございます。こちらにつきましては、エネルギー費用が節減できるということで、長期的に見ますと回収が可能であるという推計もなされておりますが、一方で、個々の企業にとってみますと、10年、20年先の省エネメリットを考慮しての投資計画というのは、実態と合致していないというご意見もございました。
 これらのデータをもとに小委員会での議論がなされまして、45ページに大きく3つに分けておりますが、これらの費用につきましては、1つ目の「・」でありますが、国民・企業の負担をわかりやすく示して議論いただくことが必要であるということで、見せ方についてもまだ工夫が必要であるということ。2つ目のところでありますが、さまざまな政策措置によって省エネ製品などの需要を喚起して、これに対する民間投資を興していくというところが鍵になるということで、そのための施策を十分検討するべきだというご意見。また、今日の厳しい国の財政状況を踏まえれば、経済的措置の実施により、民間投資が自発的に行われる環境を整えるということも不可欠だというお話もございました。3つ目といたしましては、これらの費用につきましては、グリーン・イノベーションへつながる投資であるということもありますし、また前半部分でお話ししました副次的効果についても可能な限り定量化して、その数値を考慮すべきだというご議論もございました。
 48ページには、これらの対策の経済分析を行った結果が書いてございます。6-4-1といたしまして、これまでの検討経緯を書いておりますが、最初といたしましては、昨年11月に地球温暖化問題に関する閣僚委員会タスクフォースというものが設置されまして、そこで経済モデルによる分析が始まったところでありまして、さらに今年の3月に大臣試案を示す際にも追加的に分析が行われております。この小委員会におきましても、特に、地球温暖化対策のための税、再生可能エネルギーの全量買取制度、そして国内排出取引制度、この三施策の効果を分析するという観点から、伴委員の伴モデル、そして増井委員のAIMモデルを使っての計算が行われたというものでございます。
 そのほか、これらの経緯で検討されたモデルが49ページに7つ掲載されておりまして、このようなさまざまな特色を持ったものを使いながら幅広く計算をしてきたところでございまして、その結果を51ページ、52ページに、例えばGDPへの影響とか、国民所得への影響ということで示してございます。7つのモデルをそれぞれ色別に描いてございますが、かなりモデルによって特色がありますので、幅を持っての動向になっておりますが、BAUからの乖離率ということでこれらの傾向が示されておりますので、当然のことながら、施策強度を上げていく場合には乖離率が高くなる傾向はあるというのが見てとれるかと思います。
 そして、52ページの下のところにこれらの分析結果を取りまとめております。対策導入量の増加に伴って価格低減効果が考えられますけれども、こういった技術進歩の効果を考慮するかどうかということによりまして経済成長への影響が随分変わってくるということの可能性が示唆されるということがわかりまして、施策を打つ際には、これら低減効果を十分発揮させる施策が必要になってくるというのが提示されたところかと思います。
 また、本委員会での検討の特色であります三施策の影響・効果につきましては、56ページでございますけれども、三施策を一定の条件を置きつつ導入した場合にどのような効果・影響があるのかということを計算した結果でございます。上の第1パラグラフの終わりのところに括弧書きで書いてございますが、今回につきましては、三施策をあわせて導入した場合の効果・影響を分析するということを主眼に置いておりますので、三施策それぞれ単独での分析は今回は行っていないというのが現状でございます。
 また、結論といたしましては、2パラグラフ目にございますが、今回の前提条件でいけば、2020年のエネルギー起源CO2をBAU比で7%から9%程度削減する効果がこの三施策にあったということと、経済影響といたしましては、GDPをBAUと比較いたしましてマイナス0.1%からプラス1%程度乖離させるというものであったというのが今回の結論でございます。
 3パラグラフ目には、さらにその結果が書いてございますが、ここで設定いたしました前提条件では、三施策のみでは15%、25%というものを達成するのは可能にはならなかったということで、そのほかの施策についても総動員して目標を目指していく必要があるということがわかったというものでございます。
 57ページには前提条件の細かなものを記載しておりますし、58ページにはケース別に試算結果を記載してございます。
 59ページには経済分析の取りまとめが書いてあります。最後の3行目のところでございますけれども、国民や企業の負担については、さらにわかりやすく記載していく必要があるということとか、どのような効果や影響があるかについて、誤解を生じさせない形で示していく必要があるというのが今回のまとめでございます。
 60ページからは国際的観点からの検討ということで、15%、20%、25%を国内で達成した場合に、残りを国外での排出クレジットなどを購入する必要があるということから検討を行っております。
 まず、6-5-1といたしまして、国外での排出削減ということで、現行でいきますと、2パラグラフ目でありますが、CDMを活用ということになりますが、承認された省エネ案件が少ないとか、時間がかかるといった課題を抱えておりますので、これらの課題の改善、また二国間協定に基づくクレジットといったものを検討すべきであるということ。
 また、6-5-2といたしまして、国際衡平性でございますが、中長期ロードマップを作成するに当たって、こういった国際的な比較も重要だということではございましたが、現状でいきますと、さまざまな定義・指標が提案されておりまして、短期的にどれかに収斂する可能性は今のところ少ないというものでありますので、どれかに結論づけるというのは困難ではありますけれども、国際的な議論にも貢献していく必要がある。また、対策費用につきましては、60ページの下でありますが、先進国間での衡平の議論があるということでございまして、こちらにつきましては、今回は検討が行われておりませんでしたが、今後の検討課題であるというのが61ページにかけて書いてございます。
 62ページには、現状から2050年までの排出経路の分析ということで、こちらは国立環境研究所のモデルを使ったバックキャストの分析でございまして、2050年80%までの道筋で総費用が最小になる道筋はどのようなものかということでございますが、図の中でいきますと、2020年のところがマイナス16%~マイナス21%の部分を通ると費用が最小化になるということで、議論としては、2020年に到達しておくべき削減量としては、概ね設定としては妥当であるといったご議論もございました。
 これら1章から6章まででご議論いただいて、今後詰めるべき課題などを63ページから議論の中間整理ということで改めて記載してございます。それが66ページまでつながってございます。
 「終わりに」ということで、67ページでございますけれども、中間的整理を行った経緯を改めて記載するとともに、68ページの最後に書いてございますが、さらに、より広い観点から、引き続き国民的議論がなされることを期待するということで、それのたたき台としてこの中間整理が活用されることを小委員会として考えている旨が記載されてございます。
 その後ろはすべて別添資料でございますので、また後ほどご参照いただければと思います。
 駆け足ですが、以上でございます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。大変な内容でございますので、そこを極めて短時間でご説明いただきました。
 それでは、これにつきまして、委員の皆様からのご意見あるいはご質問等をお受けしたいと思います。発言を希望される方は、ネームプレートを立てていただければと思います。
 いつもこちらからですから、今度は和気委員のほうからまいりましょうか。大体70分ぐらいを予定しておりますので、皆様のご判断にお任せいたします。

○和気委員 わかりました。ちょっと風邪気味で、声があまり出ないので恐縮でございます。
 まず1点は、国際的観点からの検討というところで、国際競争力への影響についてどう評価するか、これは難しい部分はあるのですが、きちんと検討していく中でこの議論がもっと一層リアリティーが出てくるという意味では、一日も早くこの国際競争力の問題をきちんと検討する方向に動いていってほしい。これは私自身も含めての仕事なんですけれども、やっていかなければいけないというふうに思います。
 それはそれとして、実は少し長いスパンというか、大きな話をして恐縮でございますし、屋上屋を重ねるような議論になってしまうかもしれませんけれども、15年、およそ20年近く前からこのCO2削減問題が議論されたときに日本のコミットメントの底流にあったのは何だったのだろうと今しみじみと考えるときに、日本の産業経済社会が持っている特性というか、比較優位性がいわば環境に大きく負荷を与えない経済産業構造を構築してきたという自負心がベースにあったのだろうと思います。それを一つの指標で表せば、CO2排出量/GDP、客観的な指標で使えばそういうことになる。相当いい線で日本の社会は環境効率のいい経済運営をしてきた。それがある意味では京都議定書に一歩踏み込んだ底流にあったと私は思っております。
 その後十数年、20年近く世界を見たときに相当、様変わりをしていることは皆さんもご承知のことで、低炭素社会に向けて副次的なさまざまな主観的な喜びや幸福感の指標の違いとかという部分は大いにあると思います。それは残念ながら国際的な評価基準の客観性においてはなかなか難しい。だとすると、今少なくとも使える指標は、経済成長をしながら、あるいは経済を運営しながらいかにCO2負荷を下げるかという意味では、一つきちんと数値的に出しておくべきはCO2/GDPというこの指標ではないかと私は思うんです。その意味からすると、お隣の大国を含めて、相当程度急速に改善している。それは、分母の経済成長率が高いので、分母が高ければ、当然下がります。同時に、先進国から新興国に向けてのいわば広い意味で国際技術移転効果が功を奏し、リープフロッグ効果を反映した形で新興国がCO2負荷を上げずにむしろ下げる方向で経済成長を実現していったという意味では、この15年を含めると、先進国の役割は相当果たしてきていると思います。
 さて、この時代に向けて日本はどのように次に国際的な役割を果たしていくかというときに、京都議定書前後の日本の社会を、もう一度原点に立ち戻ったときに、経済成長をしながらいかにCO2を削減するかということを考えなければいけないのですが、実は残念ながら日本の経済のパイは小さくなっている。国際機関のいろいろな推計から見ると、重立った国のこれから10年、20年の平均経済成長率の中では、日本が一番低い見込みでいきます。何もなかりせばの話ですけれども。そうなると、相対的に経済成長率が低いということは、相対的に経済のパイが相対的に国際的なプレゼンスにおいて小さくなるということになります。そういう中で日本が果たしていくには、経済をうまく営みながらいかにCO2を削減するかということを、環境効率性という概念と言ったらいいのでしょうか、それをもう一度きちんと議論しながらやっていったほうが結果としていいのではないかというのが一つです。
 もう一つは、国際的なプレゼンスや国際的な貢献を議論すると同時に、こんな言い方は変ですけれども、これから未来の日本の社会にどういう経済社会システムを引き継いでいってもらえるかということを考えると、ただ単に国際競争力を維持するとか、今の産業構造への外生的ショックを小さくするのがいいというわけにはいかない。そういう意味では、今やるべきことをやれる範囲でとにかくやるということがすごく重要なんだろうと思います。
 これは、前回の国内排出量取引制度のときには私は発言しなかったのですけれども、少なくとも取引制度を入れておかないと、国内CDMにせよ、国内クレジットの取引にせよ、国内で取引をできる場がないということは、どう見てもある意味では効率的なCO2削減のスキームから言えば不十分です。したがって、排出量取引制度をきちんと導入していくという、その覚悟の上でこのロードマップをきちんと尊重しながら対応していくということが、私はいいだろうと思います。そういう意味では、今日のロードマップの成果は、尊重するというか、尊敬するというか、大変だったと思いますし、多くのことが網羅されて、大変よかったと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 横山委員。

○横山委員 私も、よくまとまっていると思いますし、2050年の80%削減に向けてさまざまな面から迫っているというふうに考えて、評価したいと思います。それを前提に、4点指摘したいと思います。
 1点目は、39ページの上の方の図の「推計された2020年の部門別排出量・削減量」というところで、前から指摘があったのですけれども、これを見ると、産業部門が15~19%減ということで、業務・家庭・運輸に比べるとかなり低いということです。このグラフを見る限り、ほかの3部門は基準年からかなり上向いているのに、産業部門はフラットで来ているということがその根拠にあるのではないかと推測できますけれども、果たしてそれだけでいいのかどうかです。何で産業界だけこんなに少なくていいのかという思いはかなりの人が持っているのではないかと思います。やはり排出量取引小委員会の報告でも同じように産業界に配慮しているのではないかという印象を与えたわけですけれども、これもそのような見方が出てくるのではないかと思います。これまでの省エネ努力が進んでいるとか、国際競争力などを考慮したというなら、その辺のことをもう少し書き込むべきではないかというふうに考えています。
 それから2点目は、次の40ページなんですが、原子力について、この上から2行目のところに、「原子力発電が見込みどおりの設備利用率に達しなかったり、新増設が進まなかったりした場合には、目標とする排出削減量が達成できないおそれがある」。これは、一歩踏み込んだ表現として、前進だと思います。ただ、一歩踏み込んでいるけれども、その場合、ではどうするかということに関しては今後の課題だとしているわけです。それから、ほかのところを見ると、再生可能エネルギーの普及が進まなかった場合や、原子力発電の稼働率向上や新増設が低調であった場合と、再生可能エネルギーと原子力を同列に扱った記述もあるのですけれども、再生可能エネルギーに関しては、どういう進捗状況かというのが逐一わかる状況に対して、原子力に関しては、大事故とか大地震が起こった場合に一気に原発が止まってしまうといったことも十分考えられるわけで、そういう原子力に電力供給あるいは二酸化炭素の排出削減分をかなり頼るようなことでいいのか、今後とも十分議論をしていただきたいなというふうに思います。私は、基本的には原子力への依存度は下げていくべきではないかと思います。
 3番目は、2050年80%削減に向けて、国民への負担を強いることになるかもしれないという指摘も必要なのではないかというふうに思います。表現の問題はあると思いますけれども、この報告書を見る限り居住者の利便性の向上とか、生活の質の向上、あるいは快適な暮らしや魅力的な暮らしといった表現があちこちに出てくるわけですが、それだけでは済まず、場合によっては生活の水準を下げなければならないといったことも起こるのではないかというふうに思います。そうした議論も行って、報告書に盛り込んでいただきたいというふうに思います。あまり支持はされないのではないかということを自覚して申し上げます。
 それから4番目は、この3番目とも関係するのですけれども、一般の人に、2050年に80%削減ということに対して、一般の人はどうしたらいいのかということをもう少し丁寧に説明すべきではないかというふうに思います。そうした観点から、環境教育とか環境学習の充実についてももっと言及していいのではないかと思います。私も、温暖化とオゾン層破壊の違いがわからない人が半分以上だというような現実に接して、そういう状況で温暖化防止を唱えていってもあまり意味がないのではないかと考えております。
 以上です。

○鈴木部会長 では、森嶌委員。

○森嶌委員 最初に、このロードマップ小委員会の方がこれだけのものを詳細に検討されたということに最大の敬意を表します。その上で、少し視点の違うことを申し上げたいと思います。
 これを国民の皆さんが共有するためには、そしてまたこうしなければならないと思うためには、低炭素社会とは何かということについて皆が共通の理解をしておく必要があります。低炭素社会というそのこと自身は、全く無内容です。単に「CO2を出さない社会」であって、どのような社会なのか実態を示していません。皆さんは、2020年、2050年の社会はどういう社会だろうと想定しているのでしょうか。そのときに、ここにも書いてありますが、日本の省エネ技術は優れているというんですけれども、2004年ぐらいから日本はそれまで世界第一位を誇っていた太陽光エネルギー技術でもドイツに抜かれ、今では中国にも生産を抜かれています。ということになりますと、これから10年たったら、今威張っている省エネ技術はどうなるかわからない。そうすると、省エネ技術で日本が世界に立つというときに、ものづくりの何を世界でやっていくのか。日本は、中国に物を輸出しようと思ってもだめ、欧米に輸出しようと思ってもだめということにならないか。では日本は農業でやっていくのか。日本は何で食っていくのかという日本の産業政策についてのビジョンがはっきりしめされていないところで低炭素社会といってみても、現在のバングラデシュみたいな社会が低炭素社会なのでしょうか。その意味では、実態的に2020年、2050年に日本がどういう社会になっているのかということをきちんと見せなければロードマップを示す意味がないと思うんです。
 その意味では、ここに欠けているのは、低炭素ということは書いてあるけれども、日本社会が2020年、2050年にどういうエネルギー状況でどういう成長戦略のもとでどういう具体的な産業構造にあり、人々がどういう生活をしているか、つまりどういうことをして食っているかということをある程度示して、そしてそれを前提とした上で、それで15%削減する、20%削減する、25%削減するにはこういう方法があるということを示すことです。私が視点を変えて申し上げたいと言ったのは、このロードマップを描く前に、例えばですけれども、サービス産業だけで日本国中がやる、ものづくりはよそ様に任せるということなのか、そうだとすると、こういうロードマップ。そうではなくて、ものづくりを中心にやる、しかしCO2を出さないものづくりをやるのだ、そのさいこういう産業は日本に残してかつ15%、20%マイナスだとすると、こういうロードマップがある、ということでないと、抽象的に低炭素社会にする、そして15%・20%削減する、そのさいに排出量取引はこれだけ効くと言われても、それは後の世代に対する責任あるロードマップではないと思います。
 ですから、是非私は、将来の世代に責任を持つためには、日本が2020年、2050年にどういう産業構造や社会構造になっているかということについて具体的なビジョンを打ち出しながら、そのうえで15%、20%、25%マイナスしていくためにはどういうロードマップがあるかということを、世界の動向や、現実のエネルギー、あるいは資源の状況などを前提として、日本は何が売りで何がだめなのかということも想定していかなければいけないと思います。そういうことをやった上でのロードマップでないと、お話は美しいけれども、絵本を見ているような話になってしまいます。先ほどの横山さんのお話ではありませんが、環境教育を受けていない人に低炭素と言ってみても、そうは簡単に乗ってこないということになるのではないかと思います。

○鈴木部会長 長辻委員。

○長辻委員 中長期ロードマップですから、2020年、それから2050年の社会を想定しているわけですけれども、これは今後10年、それから40年になるわけです。この間ですから国民を引っ張っていく力が何よりも必要だと思うんです。そのためには、改善効果が体感でき、また実感できる仕組み、物差しのようなものがあったほうがいいと思うんです。
 先ほど西岡先生のほうから、都市は低炭素社会づくりへ向けた政策プログラムの実験の場であるというお話がありましたけれども、まさしくそのとおりだと思います。加えて都市というのは、グローバルウォーミングとヒートアイランドの両方がかぶってきて、都市生活者はその二重苦にあえいでいるわけですから、その都市をもって改善のために加えられた効果が体感しやすいシステム、これは小さなコンパクトシティなどでイメージができると思うんです。大規模にということを急速に進めるのは難しいでしょうから、産業構造・社会構造の変換というのはさておいて、例えば緑化とか、風の通り道とか、できるところを先に手がけていって、努力すればこれだけの改善がもたらされるんだということが実感できるような小規模なプログラムをこの2020年・2050年のロードマップよりも前倒しの形で小規模な形で導入していくという検討が本気でなされてもいいのではないかと思うんです。もう既にこれは検討されたことかもしれないんですけれども、そういうことを感じておりますので、改めて申し上げました。
 以上です。

○鈴木部会長 永里委員。

○永里委員 ありがとうございます。申し上げたいことの前に、森嶌委員からのご指摘について、私なりの話を少しいたします。ものづくりの話ですけれども、日本のものづくりが優れているのは間違いないんですが、相対的に力を失ってきていることもまた事実であります。今、日本の商品が世界に売れているから、日本はCO2を世界で3.8%程度出しているわけです。もし森嶌委員のご心配のものづくり技術がだめになれば、国際競争力はなくなりますし、したがって生産して売る、世界に輸出するという行為がなくなりますので、エネルギー消費も少なくなります。だから、CO2も出さなくなります。ということは、そういう世界を想定するのか、想定しないのかという問題なのです。このような日本であってはならないと私は思います。だから、逆にやはり技術を磨いていく、技術を進化させていくべきだと、ものづくりの技術をもっともっと極めていくべきだと私は思います。
 そのような観点に立って、今から私の意見を申し上げますが、この大部の報告書に関しましては、6-3、必要な対策費用、44ページあたり、それから6-5-2、国際衡平性、これは60ページ、それから8番の「終わりに」、これは68ページに書いてありますが、この辺について申し上げます。世界全体でCO2を削減するという大局観に立って、2050年50%削減、日本としては80%削減という高い目標を掲げ、それに至る過程として、2030年30%削減を実現するために、優れた日本の技術のさらなる開発と世界への普及を図るべきである。ここをもう一回言います。優れた日本の技術のさらなる開発です。そして世界への普及を図るべきである。世界全体でCO2を大幅に削減するという地球益のために、優れた日本の技術を普及させることこそ国益にかなうものです。ロードマップの実現のために国民がどれだけの痛みを伴うのか、削減コストを明らかにし、きめ細かくパブコメ、シンポジウム開催、環境教育、啓蒙活動を含めて、真摯に対話すべきです。言うまでもないが、国民には国際的に衡平な観点に立った理論を積み重ねた上での数値を示すべきです。
 以上です。

○鈴木部会長 中上委員、どうぞ。

○中上委員 ありがとうございます。私も、森嶌先生のご意見に非常に賛同するんですけれども、そのビジョンを書くべきだということですが、何回か申し上げたかもしれませんが、これは公の立場では書けない、これはまさに民間がやらないと書けないということを私は何回か経験しております。それはもう言わずもがなだと思いますけれども、いろいろな関係する省庁があり、関係する部局があり、監督する産業があるわけですから、これを2050年にある産業がなくなるというドラスティックなことはまず書けない。多分、足し合わせると、みんな産業が成長するようなイメージしか書けないわけですから、私はこれは官ではできないとあきらめております。ですから、これは私や森嶌先生が野に下ってやる以外にないと思っております。
 それから、私は住宅・建築物のワーキンググループでご一緒したわけでありますけれど、この報告書の中では5回ほどしか委員会をやっていないことになっていますけれども、実は番外で土曜日に駆り出されて午後いっぱいずっと議論したなどということもありましたので、皆さんに伝わりませんので、その辺を伝えておきたいと思います。えらく暑いさなかを往生しました。
 それはともかくとしまして、私は「住宅・建築物」という名前が嫌だ、嫌いだということをこの委員会でも申し上げたわけでありますけれども、これをお聞きになると、住宅・建築物はハードなんです。ここで扱っている内容は暮らしのかなりの部分をカバーしていますから、住宅はこれで読み取っていただいてもいいんですけれども、建築物と言ったら何をイメージするか。このメッセージは建築業界だけに出しているように聞こえてしまうわけです。実はそうではなくて、エネルギーの分野では民生は家庭と業務というわけでありますから、本来、業務、なりわいの部分についてやらなければいけない。だから、ここは、ほかのワーキンググループでありますように、「暮らしとなりわい」とか、そのようにして本来は突っ込むべきだったのではないかと思います。何が言いたいかというと、箱物のハードのところ、あるいはある種の設備の大きな部分だけに特化しておりますから、詳細な部分についてはまだまだ積み残しがあるというわけです。だから、ひょっとするとまだまだ深掘りができる可能性もあるわけです。ただ残念ながら、これも何回も申し上げましたが、データがないがゆえにこのレベルでとどまっている。だから、「住宅・建築物」と書いてあるので、民生が全部カバーされたとは読んでいただきたくないわけであります。
 そのように言ってまいりますと、この報告書は誰に対して情報を発信しているのだろうかということであります。今の建築物で言えば、「建築物」と言った以上は、ホテルの方とか、こういう会館の方とかは自分のことではないと思うわけです。住宅ならば、恐らく一般の方々は自分のことかもしれないと思われるかもしれませんけれども、そういう意味で、この情報をいかにそのレベルまで落として、実際の現場でCO2削減に努めていただくか。もちろんそれには関係する建築も関わりますし、機械業界や産業業界も関わりますけれども、当事者に動いてもらわなければいけないわけであります。そういう意味で、どこに対して出すのかということからすれば、これをさらに掘り下げた議論をしなければいけないのですが、聞くところによると、これも仕分けでこの作業がなくなるようなことを聞いておりますから、みんな中途半端で終えてしまうのかと。それで25%などということを世界に向けて言っていると、かえって恥をかくのではないか。
 ちょっと言い過ぎたかもしれませんが、以上です。

○鈴木部会長 武内委員。

○武内委員 私は、ちょっと久しぶりだったので今日は聞いているだけにしようと思っていたのですが、皆さんのご意見にちょっと触発されて、CO2の削減、低炭素社会というものと、少し広がりを持った21世紀の日本の社会づくりとの間のギャップを埋めるために、もう一つ考えておいたほうがいいのではないかと思うのは、ベースとしての、人工物の環境と経済環境についてはかなり議論されているのですけれども、自然環境を間に介在させて議論していくというところが少し抜けているのではないかと思うんです。
 例を挙げて申し上げますと、コンパクトシティと言っておられて、真ん中に集めると、それでエネルギー効率の非常にいいまちになるというわけですけれども、例えば30ページの絵でも、その周りが緑地になっていますね。だけれども、それぞれの地権者にとってみれば、自分のところがなぜ緑地にあるのか、そしてなぜそっちへ移らなければいけないのか、真ん中にいる人はそれでいいのか、そういう問題とか、ではその費用を誰が負担するのかということとか、これはいろいろと問題が出てくるんです。そういうときに、これは今、都市計画分野で言うと都市の縮退計画というので、これは低炭素とは別に、人口減少の中で都市の効率性を高めるということを考えると、コンパクトシティがいいのではないかという話はあるので、それはそこまででいいんですけれども、問題は、本当に輪になって小さくしなければいけないかということをもうちょっと考えないといけないのではないかと思うんです。
 例えばで言うと、都市におけるさまざまな脆弱性、ヒートアイランドの問題もありましたし、それから気候変動下における豪雨の増加という問題もありますし、かなり今の都市は無理やり市街化していますから、非常に様々に脆弱な環境というのが残っているわけで、そういうところの環境を改善するといったこととコンパクトシティというのをうまく組み合わせていけば、なぜその人たちに動いてもらわなければいけないのか、なぜそこで投資が必要なのかという理由というのははっきりしてくると思うんです。多分その話がもうちょっと広がっていくと、気候変動への適応との関連性とか、あるいは都市の生物多様性、再生との絡みとか、そんな話がどんどん出てきて、より広がりを持って、それでそこでさらに自然環境とあわせてどういう豊かな暮らしができるのかという話にも繋がると思うので、何かこういうところだけ、今扱っている要素が建築とか交通とか産業とかとなっていますので、今のようなところがかなりちょっと抜けているのではないかなと思っていまして、私は否定しているつもりはなくて、その辺をむしろ強化することによって、どういうコンパクトシティが日本の国土にふさわしいようなコンパクトシティなのかという意味での別の提案という形になっていく発展性があるのではないかと思っております。ちょっとお話を聞いていて、そういうことをもう少し、これは今の段階でなくても、先の段階でもいいかもしれませんが、ご検討いただければいいのではないかと思いました。
 以上です。

○鈴木部会長 高村委員。

○高村委員 ありがとうございます。まず、非常に大部の、しかし中長期の目標に総数削減を達成するための施策と課題というものを丁寧に整理していただいた貴重な作業だと思っております。
 2点申し上げたいと思いますが、1点目は、この作業をどう生かしていくかという点でございます。私自身思いますに、もちろん2020年の国際目標がどうなるかというのは、まだ先がわからないところではありますけれども、長期的には低炭素化の道を日本自身が選択する意思は明らかに表明しております。さらに、今回のカンクン合意でも、国として低炭素化発展戦略計画の策定ということは、既にCOPの合意として掲げられているところであります。その意味で、京都議定書の目標達成計画以降の2013年以降の施策ロードマップの策定という作業に早期に手を打つことが必要ではないかと思うわけです。それは、先ほど西岡先生がおっしゃいました財源の点を考えると、様々な検討が必要になりますし、それから前回の国内排出量取引制度小委員会の座長の植田先生、それから先ほど和気先生からもありましたけれども、低炭素型社会へ向けての制度的基盤をつくっていくという観点からはどうしても時間がかかるということを考えると、この作業を生かして、2013年以降の2020年、2050年を展望した施策とロードマップの作業を、仕分けの話がありましたが、むしろ速く進めていただきたいというのが1点目でございます。
 2点目は、どちらかというとむしろマイナーなといいましょうか、しかし武内先生がおっしゃった、ここの文脈では必ずしも書かれていませんけれども、先ほど言いました日本政府としての低炭素型発展の戦略・計画という観点からは、是非盛り込んでいただきたいと思っていることが1点ございます。今回は、国外での排出削減について、国内の排出削減の目標に不足の点をどう埋めるかという文脈での検討でありますので、こうした形の記載になっているかと思います。しかし、もう少し国外での排出削減というものを戦略的に考える必要があるのではないかという点であります。
 最近のイギリスの研究者の研究で、新興国、例えば中国の排出量の約十数%から20%というのが、いわゆる先進国で消費されている財を生産するための排出であるといった指摘がなされております。もちろんこの内容や研究の成果を見る必要があるわけですが、これは一方から見ますと、リーケージの問題と見ることができますが、他方で言いますと、先進国の消費が新興国の排出増の一定部分を生み出していると見ることもできます。そういう意味では、ここに狭い意味での消費者という意味ではなくて、消費における低炭素商品の選択を促す施策というのが、実は単に国内の低炭素化だけではなくて、新興国を含めた生産基盤があるところでの排出の抑制に繋がるという観点、そうした視点を持って戦略をつくる必要があるのではないかと思います。
 また違う観点から言いますと、低炭素型社会技術が優位を得られる国際ルールづくりというのは、国際競争の観点からも非常に重要だと思うわけでありますけれども、例えば、その観点からいきますと、むしろ日本の低炭素型製品あるいは技術が優位を得られるような国際ルールというものをつくるためにどういう戦略を持つのか。例えば、これは気候変動枠組条約のもとでの交渉もそうですが、同時にWTOなどでの低炭素環境産品の議論にどのように臨むのか、そうした国際的な戦略を持って臨むということが必要ではないかと思っています。これは恐らく今回の作業の枠外の観点であろうとは思いますけれども、低炭素型発展戦略計画というものをつくろうということが国際的にCOPで合意されたという文脈でいきますと、その中には是非盛り込んでいただきたい点でございます。
 以上です。

○鈴木部会長 関田委員。

○関田委員 ありがとうございます。非常に大部の資料で、作成に関わられた方々のご苦労に敬意を表します。
 内容について、それから先ほど来委員の先生方からのお話も含めて、コメントをさせていただきます。
 51ページあたりにGDPの推移とかが書かれているのですけれども、いろいろなモデルがあるということでありますが、いわゆるグリーン・イノベーションによるGDPアップとか産業育成といったことが盛り込まれていると思いますが、先ほど森嶌先生のコメントにもありましたように、太陽光発電のモジュールとか、最近、新聞によるとリチウム電池とか、もともと日本が開発して世に出したわけですけれども、そのビジネス段階に入ってくると、中国とか韓国がシェアを拡大するといったことが起こっています。必ずしもグリーン・イノベーションをやったものがすべて日本の富になるということではないし、先ほど永里先生がおっしゃったように、もしこの円高状態が続いていくと、現状でも日本の国際競争力というものはさほど強いものではないということでありますし、研究開発に若干希望を持たれていない先生もおられるのですが、産業界に身を置く者といたしましては、頑張っておりますので、ぜひ産業育成に結びつく施策をお願いしたいと思います。そうでないと違った結果になってしまうのではないかということを危惧いたします。
 それから2番目でございますけれども、ご存じのように今こういうワークをしているのは温室効果ガス削減のためでありますが、これは地球温暖化防止が目的であります。ということで、60ページに国際的なことも書いてあるのですが、この検討の中身がやや国内の仕切りに偏り過ぎているのではないかなと感じます。とにかく、世の中、世界の状況は年々変化しておりまして、数年前には発展途上と称していた中国が、今は最大の温暖化ガス排出国になっている。これがまた来年はどんな状況になるかということも考えますと、先ほど高村先生もいろいろおっしゃっていましたけれども、もうちょっとグローバルな視点というものを入れていかなければいけないのではないかなということであります。
 要するに、我々日本がいわゆる地球温暖化防止にどう役立つかということで、例えば我々は製造段階での省エネ、我々の製品を使ったファイナルプロダクトでの高効率・省エネ化への貢献、それから省エネ技術の海外への展開など、将来に向けた技術開発を今までやってきましたし、今もやっていますし、これからもやっていきたいと思います。いろいろこのロードマップの中に書かれているように、市民生活においては節約というかマインドということも必要でしょうし、現在進めつつある二国間オフセット・メカニズムも一つの有効な手段であろうと思っています。こういうものを実現可能性やグローバルな視点から見ながら、環境と経済の両立を図っていくのかなと思います。今回は中間報告ですので、その辺をまた盛り込んでいただくとありがたいなと思います。資源のない小国日本ですから、その立場というものをよくわきまえた上でのアクションというかロードマップになったらいいなと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 須藤委員。

○須藤委員 ありがとうございます。私は、この前も申し上げましたように、地方公共団体、特に埼玉県とか宮城県とか、幾つかの県の温暖化対策についてお手伝いをしている立場を入れて申し上げたいと思います。
 1つは、56ページの3点セットの削減率が7%と計算されているので、私は7%とはすごくいいなと思ったんですが、先ほど15%でも達成されないからというご説明もあったのですけれども、是非この辺をいつどのように、ロードマップなので、前回の質問ではなかなか先が見えるのか見えないのかわからないようなご回答でもあったのですが、当方、特に埼玉県ではこの4月から東京都とも排出権取引をできるようにしまして、20年までの最初の4年間、次の5年間というので計画を立てて進めております。困ってしまったのは、国がやらないので、早過ぎたのではないかとか、こちらはあおってしまっているので、はしごを外されたと前回申し上げたのですが、どうここを収拾しようかと思って困っているわけですので、もっと情報をたくさん出していただいて、国はやっているんだ、こういう解析もやっているんだと示していただかないと、何か先走りしてしまったということも無きにしもあらずなので、その辺はよろしくご配慮いただきたい。これが1点目です。
 それから2点目は、エネルギー部門でCCSを入れるか入れないかの議論もあったのですが、私は勉強した結果、CCSはちょうど20年から30年か40年ぐらいの間では十分使える技術だろうと思いますので、ロードマップの中でこれを取り込みながら徐々に脱化石化を図っていくプロセスが必要かなと思いました。
 それから3番目は、ここでもいろいろ議論があったのですけれども、コベネフィットの議論があって、定性的にはよくわかるんですが、この技術の中でいろいろ技術開発が必要なんですけれども、あまり大気だ、水だ、土壌だ、いろいろなそういう普通の環境の問題とCO2の削減とをコベネフィットするといった話は出ていないし、またそういう技術も紹介もしていないので、是非両方に役に立つ、一石二鳥だったり、一石三鳥だったりするような技術開発に期待するようなことをロードマップの中に入れていただきたいと思います。

○鈴木部会長 櫻井委員。

○櫻井委員 ありがとうございます。簡単にコメントさせていただきたいと思います。
 低炭素社会の中長期ロードマップというのがここまで具体化されてきたということで、大変大きな成果が上がりつつあるのではないかと思います。21世紀も10年が経過したところで、21世紀半ばの社会像を具体的に描くという作業というのは、高齢化が進んで、一体どうなることやらとか、マイナスのイメージのものが多いですけれども、低炭素社会という切り口で2050年はこのようになるのだということを具体的に示したという意味において、また、我が国の今後の社会が進む道筋を示したという意味で非常に意味があろうかと思います。もちろん、森嶌先生がおっしゃるように、この中で産業社会はどうなるんだというご指摘もあろうかとは思いますが、一方で、方向性が示されれば、企業あるいは個人はこういった取組を始めていくわけです。例えば住宅・建築物ですと、大手のゼネコンから町の工務店まで、関係する供給側は多いわけですが、少なくとも大手は間違いなくそういった方向に進んでいる。もちろん、町の工務店までそれを浸透させるにはどうしたらいいかという課題があることは確かでありますけれども、そういった方向を具体的に示す、つまり、国は、国としての目標をどう持つか、そのための施策をどうするかというのを早急に具体化していく必要があるのではないかと思います。
 ただ、1点申し上げておきたいのは、洞爺湖サミットに向けての政府部内での議論のまとめ方あるいは温暖化対策基本法を国会提出するまでの政府部内での議論に比べますと、最近はやや政府内の議論がまとまりを欠くというのか、拡散化しているというのか、要するにせっかくこういった作業をしていただいたものが政府部内全体で共有されるような方向にいっているのかどうかというところが若干気はなるところでございます。政府の中でどういう議論がなされているかはわかりませんけれども、先日の民主党のPTですか、そのまとめの排出量取引の扱いにも見られますように、全体として低炭素社会へ向かっていくという政府全体の力というのが、やや弱くなっているのではないかという気がします。これは環境省にだけお願いすることではないかもしれませんが、そういった現在の局面を打開する方策といいますか、そういうことについても是非頑張っていただきたいと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 亀山委員。

○亀山委員 亀山です。まずは、ロードマップ小委員会の先生方のご尽力に心より感謝いたします。非常に多くの情報やアイデアが詰まった報告書ができ上がったと感じております。
 私の単純な質問は、これを今後どのようにお使いになるご予定なのでしょうかということを事務局に伺いたいと思います。
 私は個人的には、少なくとも3つの方向で今回つくり上げたものを生かしていただきたいと希望しております。1つ目は、国際的な利用方法でありまして、これにつきましては、先ほど高村先生から非常に、追加的に私が何か申し上げる部分もなく、ご発言してくださったと思います。私も高村先生の意見に賛同するところでございます。
 2つ目は、国総体としての利用方法でございます。これにつきましては、この中間整理の資料の11ページから12ページに、2050年に「想定しうる」社会とはというところで、5つの箇条書きで5種類の社会が想定されております。しばしばマスコミ等で温暖化の議論がなされる際に、排出削減イコールコストといった非常に単純な構図でこの問題が紹介されており、恐らく一般の国民の皆さんはその単純な構図をもとに温暖化対策に賛成したり反対したりしているのではないでしょうか。むしろ、今日こちらでも複数の委員の方の間で議論があったように、今後どのような日本の社会を想定するのかというところからこの温暖化対策の議論を国民の皆さんに紹介していただきたいなと思います。
 3つ目は、地方の活性化という観点でございます。この中間整理の中には地域の活性化という観点も非常に多く取り上げられております。私も、幾つかの地方公共団体の県レベル及び市町村レベルの2020年の排出削減目標の制定に関わりました。それで、特に市町村レベルでは、ほとんど情報がない中で、エクセルレベルで一生懸命計算して2020年の目標を掲げました。このような自治体レベルの目標というのは多分この1年であちこちに見られたと思いますけれども、彼らはこの数字に非常に多くの思いを込めています。私が携わったところでも、例えばこの2020年の削減の中にごみの処理の削減を意図していたり、あるいは交通渋滞の緩和も考えていたり、あるいは非常に高齢化していく社会の中でバスといった公共交通の整理まで含めていたり、いろいろな自分たちの自治体の社会をより豊かなものにしようとしていく夢を2020年の削減目標の中に含めているんです。ですので、是非この今回つくられたロードマップを自治体の方々に配付していただいて、こういうアイデアがあるんだということを見せていただけたらなと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 逢見委員。

○逢見委員 まずは、中長期ロードマップ小委員会の皆さんが精力的な作業でこのような報告をまとめられたことについて、敬意を表したいと思います。その上で幾つかコメントを申し上げたいと思います。
 この報告書が、例えば2020年で15・20・25%の3つのシナリオで国民に、さあどれを選びますかと、そういうものを示したものではないと。逆にそう使われると、この報告の意味が矮小化されてしまうのではないかと思います。そういう意味で、「はじめに」のところにも書かれてございますけれども、国家戦略であると。要するに、ただ単に温室効果ガスを削減するというイメージを描いているだけではなくて、どのような社会をつくろうとしているのか、どのような産業構造を目指そうとしているのか、そういう国家戦略との関わりで低炭素社会が描かれるということを強調する必要があると思います。そういう意味で、政府は新成長戦略をまとめているわけです。その中でグリーン・イノベーションの促進、それから総合的な政策パッケージによって我が国のトップレベルの環境ユースを普及促進していく、いわゆる環境エネルギー大国・立国というものを目指すということが示されているわけです。そういう国が示す戦略との整合性といいますか、そういうものも十分意識したものにすべきだと思います。
 その上で、もちろん単一のシナリオを示すことではなくて、複数のシナリオを示して、選択できるものとする必要がある。そういう選択肢を示すという中で、今我が国が抱えている課題、ただ単に国民負担がどうなるかということだけではなくて、環境関連の産業の成長のビジョン、見通し、あるいは地域社会を活性化する上でこうした低炭素社会化というものはどのように貢献し得るのかとか、雇用の中で新たに創出される雇用とはどういうものであるのか、一方で既存産業で縮小する部分があると思いますが、そういった部分についてどのような対策をとるのかということが示されて、我が国の将来のあるべき姿とこの低炭素の施策というものはどのように組み合わせていったらいいかということが国民に示される必要があるだろうと思います。
 それから、実現可能性の中で、これは67ページですか、2つ目のパラグラフで、「これまでのトレンドでは困難と考えられる課題について、ソフト・ハード両面であらゆる施策を総動員し、産学官の努力と国民1人ひとりの取組を結集する」という文章がございますが、あらゆる施策を総動員するということではなくて、ポリシーミックスというのは、実際に排出削減効果のある施策を最適に組み合わせていくということだと思いますので、あらゆるものを総動員してやっていくのだというメッセージは、正確な意味のポリシーミックス相乗効果というものとちょっと誤解を与える部分ではないかと思います。そういう実現可能性という観点からも、そうしたきちんとした政策の最適な組み合わせをしていくというメッセージが示される必要があるのではないかと思います。
 最後に、民生部門についてでございます。ロードマップ小委員会でも民生部門についていろいろな議論が各ワーキンググループで検討されたとは思います。ただ、総合的に民生部門でどういうものをやるのかという部分がまだ十分示されていないように思います。特に高齢化が進み、そして単身世帯化も進んでいる、全体として人口減少社会であるという中で、これから2050年に向けて進めていくわけですが、そういう中で民生部門で何をやっていくのか。特に初期投資は、そのままで国民に負担を初期投資で求めるというのはなかなか困難なところがあると思いますから、どういった政策的な支援をやるのかということで、総合的な民生部門対策についてさらに踏み込んだ議論をする必要があると思います。それから、これから国民各層の議論を期待するという意味で、どのように進めていくのかということも当然何らかの発信が必要だろうと思います。温暖化対策基本法案はまだ国会で議論にかかっている途中でございますが、その中には国民各層の意見を政策に反映していくということが書かれております。こうした国民的議論・対話・合意形成の仕組みをつくっていくということの中で、全体として低炭素社会に国民合意のもとで進んでいく仕組み、対話の仕組みというのをあわせて示す必要があるのではないかと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 大塚委員。

○大塚委員 エネルギーのところにちょっと関わっておりましたので、その点からちょっと簡単に申し上げておきたいと思います。
 再生可能エネルギーのところがこのエネルギー供給ワーキンググループでは今回最も重視されて検討がなされたわけですけれども、先ほど来ご議論がございますように、新成長戦略なども考えながら、グリーン成長とかグリーン・イノベーションということを考えて検討したということでございます。例えば266ページに再生可能エネルギーの普及拡大がもたらす便益というのが載っていますけれども、経済の活性化と雇用の創出、それからエネルギーの自給率の向上、この辺をねらって再生可能エネルギーの普及拡大をしていこうと。既に閣議決定されている再生可能エネルギーの2020年10%というものに向けて何をやっていったらいいか、その後2050年というのももちろんあるわけですけれども、ということを検討したわけでございます。確かに、今までリチウム電池とか太陽光発電とか、日本で技術開発がなされてきたのですけれども、あまり日本で生産が進んでいないというのは、政策の多少の失敗というのもあったと思いますけれども、これは恐らく環境省だけではなくて、他省庁も含めて是非ご検討いただかなければいけない点でして、今回のロードマップは、こういうことができるということを示しているという非常に貴重な知恵の結晶だともちろん思いますけれども、他方で本当に実現するためにはしなければいけないことというのがさらにあるわけですので、そういう点も含めて、是非実現していっていただきたいと思っております。
 それから、細かいことですけれども、CCSに関しては、287ページにございますように、2020年まではプラントの整備等の検討をするぐらいしかちょっと難しいのではないかと考えておりまして、2020年以降導入するというのが、現在のスピードだと最速というか、最もあり得べき状況ではないかと考えているところでございます。
 国際衡平性については、先ほど来幾つかご指摘がございましたけれども、今回はそれほど検討しているわけではありませんので、書き方もちょっとページ数が少ないと思いますけれども、これはなお課題が残っているというのはそこに書いてあるとおりだと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 及川委員。

○及川委員 現在、京都議定書の第1約束期間なわけです。それで日本は2012年までに6%削減しなければならないという状況でありまして、そのうちの3.8%は、3分の2ぐらいに当たりますけれども、森林吸収で賄おうと計画しているわけです。そういったときに、この将来を考えたときに、2020年とか2050年、この将来に対してこういう森林の取り扱いをどのように考えてこの報告書をまとめられたのか、あまりその辺の言及がなかったように思うので、お尋ねする次第であります。
 そして、森林に関して言えば、日本は面積では3分の2が森林に覆われているということで、非常に森林大国なわけです。ですけれども、日本で使っている木材の自給率はわずか20%しかないわけです。80%は外国から輸入したものを使っているという状況でして、これは環境省だけではなくて農水省との関連で考えていくべきものだと思うんですけれども、そういう環境と林業という産業をどうやってうまく両立させていくのかといった論議が必要なように思います。
 そして、将来の気候に対する対応を考えるときに、今年は非常に記録的な暑さだったわけです。こういった状況がこれから先もっともっと激しくなるのではないかと思うんです。それで、今までお話がありましたように、低炭素社会というお話を伺いますと、二酸化炭素を中心とした温室効果ガスが減るようなイメージを湧かせるのですけれども、これは決して減ったりはしなくて、上昇がそれほど大きくならないということなわけです。ですから、温暖化はどんどん進んでいくんだと思うんです。それで将来を考えたときに、どの程度の温暖化が進んで、そしてなおかつ水資源のような問題がどうなっているのか、そういうことを想定した上での対応を考えていく必要があるのではないかと思います。
 それで、環境省は環境庁の時代から地球環境研究推進費という科学研究費を支給しておりまして、これは科学研究を発展させる上で非常に大きな役割を果たしてきたと思います。そして、そういった成果の中にはこういった政策にも生かせるものがいろいろあり得ると思うんですけれども、そういったものを生かす環境省としてのシステム化がなされていないのではないかなという感じがいたします。せっかく大事な宝がいっぱい環境省には貯まっているので、それを有効に生かして将来的な対応を考えていただきたいということです。
 それで、最近話題になっておりますけれども、炭化水素を効率的に生産する藻類が見つかったといったことがございます。これがうまくいけば石油代替になり得るわけですけれども、まだまだ実験段階でどうなるかわかりませんが、こういった萌芽的な研究をさらに発展できるような方向性というのも是非力を入れていただきたいということです。
 以上です。

○鈴木部会長 岩村委員。

○岩村委員 私からは2点申し上げたいと思います。
 1点は、中間整理の整理の仕方の問題です。今回の整理は、部門別に項目を全部合わせて、大変わかりやすくなった点は評価したいと思いますが、逆に部門別にした結果、その狭間に落っこちてしまっているような話はどこかに書く必要があるのではないか。というのは、例えば19ページで次世代自動車のことで電気自動車は、先ほど来出ているリチウム電池を始め二次電池の開発というのが肝というか最後のポイントになるわけですが、これについては世界中で今一生懸命やっていますね。中国、アメリカ、ヨーロッパはもちろんやっています。日本もやっています。ただ、自動車だけに特化しているのは日本なのかなという気もします。というのは、再生可能エネルギーはどうしても、電力会社に買ってもらう、買ってもらわないは別として、夜間は電気が起きない。また、風力であれば、風がなければ起きない。その間を繋ぐためにも二次電池の役割が非常に大きいんだと思います。最近アラブ諸国などは、あんなに石油がある国が、この話にえらく興味を持っているんです。あり余る太陽光を使おうということで、二次電池さえあれば別に発電所も要らないということで、彼らはすごく興味を持っています。そういう中で、日本では本当にそこがやられているかどうか。特に今回は自動車のところに書いてあるんですけれども、次世代のところには書いていない。家庭など、ほかの分野にもあると思うんですけれども、そういった話をどこかにまとめて書かないと、これから日本が戦略的にやっていかなければいけない大きな話の一つだと思うんですが、残念ながら自動車だけというのは寂しいなと。そういう意味で、部門を超えているというか、共通する事項をどこかに書くべきではないかと。この話は、さっきも出ましたけれども、利用者サイドです。この案というのは、産業とか、中心産業界、建築業であったり、メーカーであったり、そういったところの義務というか、やるべきことが書いてある。一方で、指摘もありましたように、利用者のほうの節電といった意識の向上とか、そういった話は全部に共通していると思うんです。自動車にも書いてありますけれども、ほかにもあると思うので、そういったことをどこかに大ぐくりで書いたらどうか。その整理の仕方が一つだと思います。
 それからもう一つは、いろいろ留意点や課題が書いてありますけれども、戦略という視点からもうちょっとしっかり書かれた方がいいのではないかなと。例えば、「必要な政策的支援を多面的に講じていく」と、そうではなくて、こういうことをやるんだと、例えば電気自動車を日本は90%でしたか、ちょっと忘れましたけれども、2050年に向けてやっていく、そのために目標を掲げるという話、それに向けた政策を講じると、多面的ではなくて、戦略的な政策を講じるという話。特に二次電池の話は世界的に、アメリカなども国を挙げてやっていますし、日本は各自動車メーカーが中心になって電気会社と組んでやっていますけれども、もうちょっと国家戦略があってもいいのかなという視点が書かれたらどうかと思います。
 そういう意味でもう1点、先ほどご指摘がありましたけれども、60ページの国際的観点からの検討のところで、これは前にも申し上げたんですけれども、先進国の排出削減を差異化するために提案されている指標の中に、生産原単位当たりの排出量、まさにこういったことを日本が政策的に戦略的に強調する。これ以下のものはもうこれから世界ではつくっていかない、石炭火力で言えば、日本の水準以下のものはつくっていかないとか、そういったことを国として戦略を立てるべきではないかという気がするんです。ほかにもあると思います。いずれにしても、国にこういう戦略を立てろということを言うのがこの審議会の役割ではないかと思います。
 以上でございます。

○鈴木部会長 浅野委員。

○浅野委員 私も、ほかの委員のコメントと同様に、よく問題点を整理していただけたと思います。関係された多くの方々のご努力には感謝申し上げたいと思います。
 ところで、これをどう使うのかという発言が何人かの委員から出されたわけですが、その点は私も同じように考えることがあります。来年は環境基本計画の見直しの時期にちょうどかかっているわけです。生物多様性についても国家戦略2010を一応ことし策定していますけれども、名古屋でのCOP10の成果を受けてまたもう一遍検討するといった議論があります。それから循環型社会形成推進の領域についても、来年の環境基本計画を受ける形で、再来年は循環基本計画の見直しをする年になっているわけです。各基本的な計画がそれぞれのところでばらばらに勝手に検討されるということは決して好ましいことではないわけで、どこかできちんとした繋がりをつけていかなければいけないということがあると思います。とりわけ、鈴木部会長は環境基本計画検討の責任者でもいらっしゃいますから、特にこの点を気にしなければいけないと思いますけれども、本日示されたこのロードマップの考え方は、これからさらに固められていくでしょうし、国民的な合意ができるように議論していくということになると思うのですが、あまりゆっくりしたペースで検討がなされていると、環境基本計画の作業と合わなくなってしまうというおそれがありますので、その辺をどうするか。このロードマップというものをどういう位置づけで考えるのかということを一度この部会としては確認しておく必要があるだろうと思います。
 先ほど及川委員から森林の話が出てきたのですが、さらに及川委員は適応の重要性ということも少し示唆しておられますけれども、どうもこのロードマップは緩和の方に関して主に考えているという印象が強い。能書きの中には低炭素社会のイメージも示すということが書いてありますけれども、そうはそうであっても、表紙を見るとやっぱり温室効果ガス発生の抑制、緩和の方だということになっているわけですから、もっと全体的に、気候変動・地球温暖化対策としてトータルに考える場合には、適応をどうするのかということをも含めた戦略がもう一つ上位に必要なのかもしれません。それは恐らく地球温暖化の基本法ができたときに考えられるものになってくる。こちらはそれを細かく示し、道筋を示す、どっちかというと中位計画的な位置づけになるような気がするわけです。しかし、この中に示されているアイデアには非常に重要なものがありますし、2050年の80%をしっかり見据えてという基本線も非常に重要でありますから、どういう形でこれを次の環境基本計画の中でどこまで取り入れるのか、考え方をどう採用するのか、計画間での整合性を持たせるのか、これが今後、中環審としての作業になるということを感じております。

○鈴木部会長 浅岡委員。

○浅岡委員 私たち市民セクター側でも、排出量取引につきまして、あるいはこのロードマップにつきましても、中間整理をよく学び、またレスポンスもしていくようにしていきたいと思っていますが、そういうときに考える視点を3つの観点から申し上げたいと思います。
 1つは、カンクンの今回の合意の中で、先進国も途上国においても、低炭素開発戦略をつくって報告もし、あるいは策定を支援していこうというのがあります。これは途上国もそうだという点で、大きな発想の転換といいましょうか、流れが動いています。日本がどうするかということも、世界中がそういう視点で動くという中で考えていかなければならないと思います。ロードマップというのは、日本国内における低炭素開発戦略構築の一歩だろうと思いますし、途上国も同じことを考えるべきだからこそ先進国の目標に国際貢献分という議論をしているのだと思います。そのときに政策に踏み込んだ議論がないと戦略的にはならないという話でありました。先ほどの報告の中で、これまでの民主党政権が掲げてきました3つの政策を全部足し合わせても十分な効果にならない。それら政策の前提が57ページに書いてあり、ある意味でこれらの政策では不十分だということを示しているわけですが、残念ながら民主党のPT、さらに今日、政府の閣僚委員会で先送りまたは取引制度については宙ぶらりんになってしまったのは大変残念な状況だと思います。こういう問題は、大きな政治のトップの意思があって初めて市場の予見可能性も効き、戦略もきちんと立つ。そういう意味で日本は残念な状況ですけれども、そこを促していくような流れをつくっていくために、こういう検討がされていかなければいけないと思います。
 そういう観点から一つだけ私が気になったことを申しますと、メイドインジャパンというのがありまして、もう一方で国内の素材系などは、設備が老朽化していたり、更新が難しい、更新の負担が重いとも書かれています。昨日、コマツ製作所についてでしたか、5年間は追いつけないような製品は国内でつくる、そのほかのものは海外の需要地でしっかり最新技術を用いて製造すると報道されていました。製造業もそういう割り振りで、鉄鋼なども同じように考えていくべきときに来ているだろう。それらも戦略的観点から組み込んでもらいたいと思う点です。
 国内政策を考えるとき、図表も記述も全部間接排出でデザインされていることが大きな問題を残すと思います。約3割を占める産業もそうですが、同じく3割の発電所問題が裏に隠れてしまって見えない。再生可能エネルギーと原子力がセットになるとの点は横山先生からお話がありましたけれども、再生可能エネルギーにつきましても、では具体的にどういう政策なのかということが問題です。この記述にリアリティーがあるのかという点とか、こんなに太陽光偏重でいいのかという点もある。その上、裏付けとなる政策が不十分である。そういう意味で、原子力の代替シナリオの検討はとても重要だと思いますし、再生可能エネルギーにつきましてももっと大胆なシナリオに基づいて、これから次のステップを踏んでいただきたい。2030年に、原子力と再生可能エネルギーの両方を合わせて年70%という合わせた数字しかない。内訳がないのでは、目標にならないと思います。
 3番目のところは、地域についてですが、民生、運輸部分に今回のロードマップは集中しておりまして、具体的に言えば、地域にかかることにもなります。地域から考えて地域戦略として考えるという視点は出していただいているのですけれども、私たちが地域でやっている観点から見ますと、地域で温暖化対策をやるというときは、もっと幅広い観点から地域独自の戦略をつくり上げていく。CO2削減ということだけでは地域政策は進まなくて、そういう地域社会づくりそのものを考え直すという視点で私たちは考えております。これら両方をうまく合わせ、今回の提案をもとにしながら、地域、ローカルによって全然対応策も違いますので、そうしたレスポンスを早くやっていって、大きな枠では国の対策なくしては進まないところはありますけれども、やれるところを進めるという作業も急がれていると思いました。

○鈴木部会長 相澤委員。

○相澤委員 ありがとうございます。まずは、8カ月の長きにわたりまして、根を詰めた作業をされた小委員会の委員長を初め皆さまの努力に敬意を表したいと思います。
 このロードマップ検討に当たりましては、3つの観点、すなわち国際的公平性、国民負担レベルの妥当性、実現可能性が重要でありまして、これが確保されないということになれば、目標値についても改めて現実を踏まえた見直しが必要ではないかと考えておりますし、今までもそのように申してまいりました。今回の報告書を見せていただきますと、そういう意味で課題あるいは検討すべきテーマは幅広くピックアップされていて、それなりに評価できると思います。ただ、何をするのかという具体的な方策、あるいは定量的な評価、といった一歩踏み込んだ、現実に即した、地に足のついたところにまで至っていない。そういう意味で中間整理になるのかと思いますが、今後そういった具体的な方策あるいは定量的な評価、施策の検討が非常に重要であり、これがなくてはロードマップとして体をなさないのではないかと考えている次第でございます。
 その3点の中で、まず国際的公平性でございますが、何人かの先生方からもご意見がありましたが、日本の経済の維持ということからも国際競争力は極めて重要でございまして、このCO2削減目標の達成のために実施する対策・施策によって国際競争力に大きな影響を与える可能性があるということも間違いないわけでございます。今後この国際競争力をいかに維持していくか、その上で地球環境に貢献していくか、この議論が最も大事なポイントではないかと思います。この議論を今後さらに深めていく必要があるのではないかと思います。何人かの先生方からもお話がありましたが、やはり日本の強みといたしましては、様々な低炭素製品をつくり出す技術力であり、また火力発電熱効率や石油製品、鉄鋼製品などの生産の際のエネルギー効率は世界トップレベルでございます。この強みを損なうことなく世界のCO2削減に貢献するにはどうしたらいいか、十分に議論を深めていく必要があると考えております。
 2点目、国民負担レベルの妥当性でございますが、この点については、産業や家庭、あるいは業務部門もそうでございますが、経済的な負担の目安が精緻に示されてはいないということが言えると思います。その結果、対策・施策の妥当性や実現可能性について正しく判断できるまでのデータにはなっていない。これも中間整理ですから、仕方がないことだと思いますが、今後それにつきましてもさらなる深掘りが必要だと考えます。例えば、3ケースによりまして追加投資額が58兆円から97兆円と示されておりますが、株式会社というのはそれが簡単にできるというものではない。あるいは家庭、業務部門において、大幅なCO2削減の推計がありますが、これには果たしてどれくらいのコストがかかるのかといったことも明確になっていない。そういった現実を踏まえた議論あるいは負担レベルが明確になった議論が一層必要ではないかと考えます。
 それから、実現可能性につきましては、特に配慮する必要がありますのは、設備投資や技術導入を実施するタイミングあるいはその成果が出てくるタイミング、すなわち時間軸の概念がもう少し重要視されてもいいのではないかと考えます。2020年までには10年しかありません。それに対して設備投資や技術開発にはその倍程度の時間はどうしても必要になります。これは産業界だけでなくて、家庭においても同じことだと思います。すべての分野で時間軸について、もう少し現実に即した見方が必要ではないかと考えております。
 4点目になりますが、経済影響の分析において、いろいろな経済モデルを使った分析がされております。その分析におけるモデルの使い方によって、追加的対策をとらない場合からの乖離に差があるという結果が出ておりますが、ただ差がありますというだけでは済まなくて、どんなモデルが厳しくて、どんなモデルが緩くてという両方のモデルの中身についてもう少し慎重な突っ込んだ議論をしていただくことが、特に経済モデルは素人にとってはわかりにくいものですから、一般の皆さまの理解を得るという観点からも、その点をもう少し深めていただくことが必要ではないかと思います。
 それから、以上とは別に2点、加えさせていただきます。1点目は、エネルギーセキュリティという点でございます。いろいろな議論が先生方から出ておりましたけれども、エネルギー資源をすべて海外に委ねている日本の場合、エネルギーセキュリティという意味から、もう少し慎重な議論が必要ではないか。特に、石炭はCO2をたくさん発生するということで悪者視されますが、石炭ほどエネルギーセキュリティ上安心して頼れるものはないということも事実であります。その点も含めて、エネルギーセキュリティについて、もう一歩踏み込んだ検討をしていただきたいと思います。
 2点目は、既にお話も出ておりますが、二国間クレジットを含む海外展開も視野に入れたロードマップの作成が非常に大事になってくるのではないかと思います。単一枠組みによる地球レベルでのCO2削減という方向に向かいましても、世界に日本の技術を活用し、それを我々のメリットとして活用していくというシステムあるいはそれに関係する国際ルールづくりも非常に重要になってくると思います。その点も含めてこの委員会の中で検討していただくことが大事ではないかと思います。
 いずれにしましても、全体としては課題あるいは検討すべき事項が広くピックアップされて、そういう意味では大変いいと思いますが、一方でその課題あるいは検討すべきテーマをさらに一歩進めて具体的かつ定量的に進めることが今後の課題であると思います。中期目標は罰則が科せられるかもしれない数値であるということをよくよく肝に銘じて、実現可能性あるいは国民負担レベルの妥当性、国際的公平性が確保されるという確認をしつつ一歩一歩進めていくことが大事だと思います。それに必要な十分な材料をこの場で検討、提示していただいて、一般の国民の皆さまが十分理解できるような、そして議論に巻き込んでいくような、そういった検討をさらに進めていただきたいと思います。
 以上でございます。

○鈴木部会長 冨田委員、ご発言ですか。簡潔にお願いします。

○冨田委員 ありがとうございます。ロードマップの小委員会に参加した者として、最後に発言させていただきます。
 皆さんからこういうところがまだまだ足りないというところをご指摘いただいたわけですが、これは今は中間整理ということで、まだ国民に向かってこういうメッセージを発信しようというところまで議論はできていないものだと私は理解しております。その上で、今の委員の皆さんのご要望をお聞きして一番印象に残ったのは、これで日本としてどういう社会を目指すだろうか、それは実現性のある社会なのか、そういう社会だったらみんなで一緒に向かっていこうよというメッセージが発信されなければならないのかなと考えました。本日の部会の冒頭、事務局のほうから2009年の速報値について紹介されましたけれども、吸収量、それから京都メカニズム、なおかつ民間事業者が調達したCDMクレジット、こういうものを合わせると、単年度レベルではありますけれども、マイナス6%をかなり超えた削減ということになっているわけですが、この結果を見て私が思うのは、これが私たちが目指した社会なのかと、2009年ではありますけれども、満足はとてもできていないと。何を申し上げたいかといいますと、言わずもがなですが、温室効果ガスの排出量というのはあくまでも制約条件ということであって、その排出量の小さい社会が我々が目指している目標としている社会ということでは必ずしもないということがあるのではないかなと思います。排出量というのが目的関数であるならば、もう少し満足感があってもいいのかなと思いますが、私はこれで満足できる社会になったとはとても思えないということです。そういう意味から考えると、私たちが目指す社会というのは、地球規模の温暖化問題に対して我が国の果たすべき役割というのを考えたときに、どういう社会なのだろうか。そういう意味からすれば、90年比で2020年マイナス25%というのが本当に妥当なのかどうか。真水の割合というのはどのくらいのレベルであるべきだろうか。国外の排出削減のカウントを補完的に見るという考え方もこの中に書かれていますけれども、それが本当に妥当なのだろうかというところまで立ち返って議論する必要があるのではないかなと考えました。
 以上、コメントさせていただきます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。大勢の委員の方からいろいろと質問もありましたし、あるいはご意見をいただきました。70分の予定が90分になってしまいましたので、ちょっと後が窮屈になりますが、いろいろと今後、中間整理をまたこの段階から次の段階へ進めていただく小委員会としては、西岡先生を始め皆様に大変頑張っていただかなければいけない大変な課題がいろいろとあったと思います。
 やはり大きいのは、将来2050年のビジョンが、ここではマクロフレームといったところでまとめられてはいますが、具体的に見えない。要するにどういう炭素制約の中で、そしてまたグローバル化が進行していく。途上国では2050年になると人口が80億ぐらいになるのでしょうか。今50億ぐらいですね。そのような社会の中で日本が一体どういう役割を果たしていくのか。そういうところできっちりと我が国として生きていく生き方、国際的な構造を前提にして、産業構造も、今大変楽しんでおられる大きな産業がそのまま残るなどとはとても考えられないわけです。そこでは一体どうなっていくのか。ですから、現状の延長上で考えるような想像力の乏しいことでは困る。全く新しい社会をイメージするぐらいのことが多分必要なのだろうと思います。そのようなことを小委員会にお願いするといっても、これはとても大変なことではありますが、いろいろとお考えいただいて、またこちらのほうでご議論させていただく機会を持つ必要があるのかもしれません。
 そして、こういうロードマップ、これもまた大変なことですが、これがもしつくられていったとしたときに、それを一体誰に向けて発信していくのか。国際的な発信あるいは一般国民に対していろいろとあると思いますが、この800ページのものをご覧くださいといっても多分それほど暇な方もいらっしゃらないかもしれませんが、これをわかりやすい形で発信していく。しかしながら、また問題は、それを具体的な政策としてインプリメンテーションしていくことが今の日本でどのようにあり得るのか。これは、ないとは言いませんが、非常に難しいということもあろうかと思います。しかしながら、そこを環境省がきちんと考えていく。これは本当は環境省だけの問題でないことはもちろん当たり前のことなんですが、ほかの場所においてこういう国家長期戦略を考える場所が残念ながらないというのが今の日本の実情ではないかと私自身は憂えておりまして、2007年に21世紀環境立国戦略を考えたのもこの環境省の中環審であったわけですが、本当は総合的に国の中心のどこかに、政策局か、どこでもいいのですが、こういう国家戦略をきちんと考えていただく場所がなければいけない。しかしながら、残念ながら現状はなかなかそういうことが難しい状況になっている。したがって、私は環境省はいずれ持続可能省と名前を変えてもいいと思うぐらいなんですが、持続可能な、サステイナブルな国家像はいかにあるべきかといったことをここで、タイトルは「中長期の温室効果ガス削減目標を実現するための対策・施策の具体的な姿」を検討する小委員会ということにはなっておりますが、これを一つの大きな骨として、国の将来像を考える一つのきっかけにしていただくのがいいのでないかと思っております。これは全く私の個人的ないろいろな思いがこもっていることをちょっと吐露させていただきました。
 今いろいろ委員の皆様方からご質問、ご意見等がございましたけれども、これはどうしましょうか。事務局のほうからお答えになれる範囲で、あるいはまた……。それでは、まず局長のほうから。

○地球環境局長 それでは、個別の問題にお答えする前に、私のほうからこの報告書を今時点で環境省としてどうするつもりかといったことについてお話ししたいと思います。
 本年4月に私どものほうもこちらにお願いいたしましてこの検討を開始したときに念頭にありましたのは、今、国会で継続審議になっております基本法が成立しているであろう、したがって次は基本法の中にあります基本計画の策定という制度全体での策定作業ということになるであろうということを想定し、その作業のためには年内ぐらいには一つのまとめをつけていただきたいと申し上げたところでございます。残念ながら諸般の政治状況あるいはさきの国会での予算審議の状況等々ありまして基本法はまだ成立しておらず継続審議という扱いになっておりますけれども、環境省としては、まずこの基本法を全力を挙げて次の通常国会で成立させる。その後、基本計画の策定作業に、これは政府全体の作業ということになりますので、今どういうボディーでどういう形で検討するのかというのはまだ決定されておりませんけれども、そういう段階に入るということでございます。まずはその基本法にうたっておりますところの基本計画の策定作業への素材として使用するということが第一でございます。もちろん、この基本法はなくても、実際は今日浅野先生からお話がありましたけれども、環境基本計画という作業も別途ございます。あるいは、今日COP16でのカンクン・アグリーメントについての言及も何人かの先生からいただきましたけれども、我が国としての一つの低炭素社会づくりの計画というものは早晩つくらざるを得ません。そうした我が国全体の計画づくりのための一つの有力な情報としてこれを使わせていただくというのが、一つの政府全体の中でこれをどう使うかということでございます。
 また、環境省としてどうこれから検討していくのかということでございます。既に今、部会長からもお話がございましたけれども、これはあくまで中間整理でございまして、ある意味でまだまだ詰めなければならないところがいっぱいあるということは、これは小委員会の先生方からも、さらに言えばワーキンググループの先生方からも、また本日の部会のご意見でもいろいろとご指摘を受けたところでございます。したがいまして、この検討作業というのは、状況も科学も日々変化するわけでございますから、ある種の永続的なものになるのではないかと思っております。今日、仕分けられたではないかというお話もございましたけれども、これは別にこの作業がけしからんと言われたわけではなくて、あたかも形式的に丸投げしているように見えたから怒られたのでありまして、そんなことはないということで、こうした検討に必要な経費については来年度予算案でも確保されておりますので、こういう検討は引き続きやっていきたい。それを引き続きやっていく中で、どういうやり方をしながらこの中環審でどういう運びをするのか、また今までと同じようなペースでやるというのはなかなか小委員会としても大変だなと思いますので、その辺は部会長、それから小委員長とよくご相談しながら考えてまいりたいと思っております。
 それから、今は役所の取り扱いの話でございますけれども、最後に今日も何人かの先生方からお話がありましたが、これはこの800ページのどんというものをつくっただけで役割が終わるものとは思っておりません。地球温暖化対策というのは国民一般の方々に広く議論していただき、さらにいろいろな幅広いアイデアを出していただくということがなければならないし、そういうことをやりながら合意形成をしていくというものであろうかと思います。ただその中で、実は今日もお話がございましたけれども、なかなか大胆なビジョンとか、そういうものは役人とか審議会というとやりにくいものですから、これを一つの素材として、これは非常に多くの先生方が非常な熱意を持っておやりいただき、公開の議論をやってきたものですから、素材としては非常にいいものをいただいたと思っております。ただ、この素材は、先ほど部会長からもありましたけれども、これを読んで何か言ってみろといっても多くの方々はとても無理ということでございましょうから、実をいいますと、本日ご出席の委員の方々あるいはワーキンググループに参加した方々も含めまして、この作業に携わっていただいた各分野で大変発言力もあり影響力もある先生方には、この作業を是非幅広く紹介していただきたいなと思いますし、私どももそういう機会をつくりたい。あるいはこの分厚いものをコンパクトにして、国民の皆様の議論の素材たり得るようなものもつくってみたい。そのような格好で、国民的議論の素材として、これをできるだけ生かしていきたいということも考えているところでございます。
 あとは個別の話になります。

○低炭素社会推進室長 詳細につきましてご説明を申し上げます。
 まず、国際競争力に関しまして、様々ご意見をいただきました。この中間整理をするに当たりましても小委員会で国際競争力、また国際衡平性に関してご議論いただいたところではございまして、重要性についてはかなり小委員会のほうでもご指摘いただいておりますけれども、議論といたしましては、この中間整理の段階では事務局としてもまだ十分な素材を提供し切れていなかったという部分がございますので、今後引き続き検討していただきたいと思っております。その際には、日本が持っております省エネ技術といったものをいかにグローバルな視点で打ち出していくのか、また二国間のクレジット制度などについてもご議論いただけるように準備してまいりたいと思っております。
 あと、様々な声を聞くべきというお話もございました。例えば、環境省といたしましては、各相手に対応いたしました見え方の資料も準備して、お話をさらに伺っていきたいと思っております。特に、実現可能性をさらに高めていくという観点からも、技術情報もさらに幅広く集めていきたいと思っておりますので、様々なツールを使いましてお声を集めてまいりたいと考えております。
 どのような社会に持っていくべきなのかという姿につきまして、これまた数多くのご意見を賜りました。この作業の中でいきますと、マクロフレームのワーキンググループでご議論いただいているところではございますけれども、今日いただきましたご意見をお伝えして、さらに深掘りをしていきたいと考えておりますし、またそれぞれの分野ごとのロードマップとの関連づけについても強化していきたいと考えてございます。
 あと、まちづくり関係につきまして、都市街区レベルでの対応、また都市が持っている脆弱な面を改善していくという視点をさらにつけ加えたり、適応との組み合わせというお話もいただきました。特にその分野につきましては、まちづくりのワーキンググループにおいて検討いただいておりましたけれども、さらに年度末に向けまして議論が深掘りをされることになってございますので、今日いただきました様々なご意見につきましてワーキンググループにも適切にインプットいたしまして、議論を深めていきたいと考えております。特に、どのようなコンパクトシティが望ましいのか、日本に適応しているのかという議論についても示唆をいただきましたので、その可能性についても議論を深めてまいりたいと思ってございます。
 特に活用の方策につきまして、自治体からも我々のところに問い合わせが数多く来ておりまして、特に自治体の計画を考えるに当たりまして、技術情報が足りないというお話も幅広くいただいておりますので、今回取りまとめをいただきました様々な技術情報につきましても幅広くお伝えしていきたいと思っております。また、地域で様々、温暖化の説明をする場面もございますので、そういった機会も最大限に活用して情報を提供していきたいと考えてございます。それに当たりましては、コベネフィットな面があるということがございましたので、ワーキンググループ、小委員会でも副次的な効果をさらに深掘りをして、定量的な評価ができるものについては作業を進め、情報を集めていきたいと思っております。
 森林吸収源につきましてご指摘いただきましたが、温暖化対策としては重要な対策・施策であるということは認識しておりますけれども、今回のロードマップにおける議論に際しましては、この森林吸収源の扱いについて国際的な議論も今まだなされているところであるということもございましたので、まずは削減のところについて集中的に行ったということでございまして、今後その国際的なルールの動向も見ながら森林吸収源については扱いをしていきたいと思っております。
 また、取りまとめの方針といたしまして、戦略的な視点でのまとめが足りないというお話もございましたので、各分野、技術が戦略的にどこを伸ばしていくのかということもわかりやすい方式で取りまとめをしたいと思っておりますので、この中間整理をたたき台にさらに議論を小委員会のほうにお願いしたいと思っております。
 地域での対策につきましては、ワーキンググループで4つの視点ということで取りまとめをしておりまして、現在作業をしているところでございますので、さらに地域の方々が活動しやすいような視点を盛り込んでいくことをお願いしたいと思っております。
 国民負担の妥当性の議論についてでございますが、今回の中間整理につきましては、どちらかといいますとマスでの額というものの示し方になっておりまして、特に中間整理のまとめの中でも15%~25%の3ケースごとに難易度がなかなかわかりにくいというお話もございましたので、今後の議論としまして、そのメリハリがわかるような形でデータを整理し、ご議論いただけるように、事務局としても準備してまいりたいと思いますし、今後の議論に当たりましては、エネルギーセキュリティ面での議論も加えまして、さらに深掘りをしていくようにということは、7章の中間整理にも取りまとめておりますので、その視点を踏まえて議論ができるように、事務局としても資料を準備していきたいと思っております。
 本日の中身につきましては、小委員会、またワーキンググループの方々にきちんとお伝えして、議論の深掘りをお願いしたいと思っております。
 以上でございます。

○鈴木部会長 追加ですか。時間があまりございませんので、では要点を簡潔に。

○安井委員 それでは一つ。いろいろな先生方から2050年はどんな社会かと、一応マクロフレームというものの座長をやらせていただきまして、全体では副座長でございますが、そのときに本当に2050年と一口で言いますけれども、実を言いますと、そのあたりで恐らく産業あるいは実業界の中心になっている人はまだ生まれていないんです。ですから、はっきりわかるわけがない。だから、これからどういう教育をするかなどということも本当に非常に重要だということでございますから、いろいろな可能性を示すしか方法はないということでございます。その中で一番大きな議論は、日本の環境技術は本当にどうなのかと。森嶌先生から、太陽電池技術は抜かれているではないかと。あれは実を言いますと、太陽電池は簡単だから中国でもできるというのが実情でございまして、リチウム電池もそうです。簡単だからアメリカでもできる。岩村先生から、アラブはほかの太陽光電池等々に非常に関心があるというご指摘がございましたが、実を言いますと、日本にもNAS電池という1社しかつくっていない、とんでもない電池がございます。ところが、これは先ほど中上委員からございましたけれども、一つの制約として、ある企業にだけ有利な情報は出せないという枠組みの中での情報ですので、それをご理解いただいた上で読み下していただきたいというのが一つでございます。いろいろ頑張りますが、どうしても2050年のマクロフレームというのは、これからそれぞれ今書きましたものに関しまして、どんなエネルギー構造になっているかとか、どのぐらいの資源が必要なのかとちょっと定量化したシナリオは書きたいと思いますけれども、基本的に非常に難しいということをご理解いただきたい。しかも単一の世界になるわけがない、どうせモザイク構造になるということだと思いますので、よろしくご理解いただきたいと思います。
 以上です。

○中上委員 今回の資料は非常に大部なものですから、すべて網羅されているようにとられるかもしれませんけれども、抜けているものがいっぱいあるわけでして、そういうのはどうするのか。例えば、環境省でも検討していたサマータイムはどうなるのかとか、24時間型の生活をどうするのかとか、休日制度をどうするのかとか、こういうのはどこにも入っていないわけです。そういうことも漏れなくやるようにしておかないと、これだけ厚いものを見ると、みんな入っていると思ってしまうのではないかと思いますので。
 それともう1点です。どういうイメージになるかということですけれども、それはCO2を減らすということとエネルギーは違うんですけれども、2050年に80%減らすということを家庭用で考えてみますと、エネルギー消費量水準では大体4分の1から5分の1になるんです、1世帯当たりが。これは現在の単身者が使っているエネルギーのさらに半分以下がその原単位ということになる。ただ、これはエネルギー消費ですから、CO2とはまた違うわけです。この辺をどのようにしてイメージとしてちゃんと訴えていくかというのは、悩ましい問題ですけれども、描ける絵もあるわけですから、描いていかなければいけないんだろうなと思います。
 すみません、以上です。

○鈴木部会長 いろいろとご注文をいただきまして、やはりここは西岡先生にご決意を述べていただくという……。

○西岡委員 皆さんにお礼を申し上げます。非常に広い枠組みでたくさんのご意見をいただきまして、ますます、重荷ではなく、重責というのを感じたわけであります。
 考えてみますと、環境のことを問題にして、そこから日本全体を論じるなどというのは、この20年たってようやくそういう時代になってしまったということかなと思っております。そういう意味で、例えば幾つもの問題が出てきた。特に世界にどうやって発信していくかという話が非常に重要だと思います。それから、例えばエネルギーセキュリティといったほかのメリット・デメリットも考えていかなければいけない。今でも10兆、20兆というお金が石油の代金として外に投じられているわけですけれども、こういうのをどう中に持っていって省エネ対策費をつくっていくかということもあるかと思います。ちょうど低炭素社会ということがそういう方向で世界の大きな流れになったということを利用して、これまでの技術の維持といったことではなくて、是非攻めの方にどうやって向かっていくかということを成長戦略の中でいろいろ考えていかなければいけない。皆さんから激励、ご叱正なのか、叱咤なのか、いろいろいただきまして、私ができるかどうかは別にしまして、この委員会のほうで是非さらにいいものにしていきたい。
 しかし、私は本当のことを言うと、大体のことはもう80%出ているわけですから、一歩進めてほしいんです、どういう意味でも。これは、政府のほうも強い政策を是非出していただきたい。政党のほうは強いポリティカル・ウィルを出してもらいたい。そして、都市がリードしていただきたい。そして、国民一人一人がやる気になってやっていただきたい。先ほどこういうことに対する話がございました。説明をどうするかという話についても、我々の大きな宿題だと思っております。
 本当に皆様、いろいろとご意見をありがとうございました。

○鈴木部会長 ありがとうございました。実はこの地球環境部会はこの形ではこれが最後の部会ということにもなります。もちろん、この小委員会はそのまま継続していただかなければいけませんし、いろいろ問題はまだ山積しているわけでございます。年の最後で本当は忘年会にでも行きたいところですが、それでは最後の締めを寺田局長のほうからお願いいたします。

○地球環境局長 どうも本当に、本当は冒頭にお礼を申し上げるべきだったと思いますけれども、この12月28日というとんでもない日付で、こういう日付でないと皆さんにはお集まりいただけなかったもので結果論としてそうなってしまったのでございますけれども、こんな日にこのようなことをやりまして誠に申し訳ないにもかかわらず多数の委員の先生方にご参画いただきまして、本当にありがとうございました。
 また、ただいま部会長からお話がありましたように、中央環境審議会の任期が2年ということになっております。したがいまして、この地球環境部会というのも来年1月の総会に諮って上でまた構成が変わるということになります。この2年間、本当にありがとうございました。特に今年の4月以降は、国内排出量取引制度小委員会、そして中長期ロードマップ小委員会、この2つの小委員会にご参画いただきました先生方には、非常識なほど頻繁に小委員会を開催させていただきまして、本当にいろいろとお知恵を拝借し、立派なお仕事をしていただきまして、誠に感謝にたえないところでございます。
 もちろん地球環境部会も続きますし、2つの小委員会もいずれも中間整理ということでございますから、様々な形で、ちょっと具体的なスケジュールはまたのご相談ということになると思いますけれども、検討は継続いたします。引き続き部会に残っていただける先生方には、さらにご指導をお願いいたします。また、今回退任になる方には、この間の様々なご指導、ご鞭撻に深くお礼を申し上げたいと思っております。
 来年のことはまた来年ごあいさつすればいいのかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、まずは基本法の成立ということでございますけれども、一方で来年COP17が南アフリカのダーバンで行われるところでございます。今回COP16で感じたことではございますけれども、様々な国際的な問題にダーバンの地で対応するためには、我が国の国内の地球温暖化防止対策がかなりの程度具体的に目に見える形で進んでいないと、恐らく世界、国際社会の理解は得られないだろうと思っております。そういう意味では、枠組みだけの話ではなくて、例えば予算の一つ一つにしろ、個別具体の施策にしろ、より具体的に一歩一歩着実に対策を進めていかなければならないと考えておりますので、引き続き来年もご指導、ご鞭撻の段、よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。

○鈴木部会長 それでは、これをもちまして本日の地球環境部会を終了させていただきたいと思います。
 最後に事務局から連絡がございます。

○地球温暖化対策課長 本日も長時間にわたりまして、ありがとうございました。
 冒頭申し上げましたけれども、本日お配りした資料は大変大部でございますので、委員の皆様におかれましてはその場に残していただければ、通常事務局から連絡を差し上げておりますところに郵送させていただきます。それ以外の郵送先をご希望の場合には、ちょっとその旨メモを残していただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

○鈴木部会長 それでは、これで終了したいと思います。
 どうぞよいお年をお迎えください。

午後3時59分 閉会