中央環境審議会第70回地球環境部会・産業構造審議会環境部会第地球環境小委員会合同会合(第28回)議事概要

日時

2007年12月7日(金)9時00分~12時00分

場所

大手町サンケイプラザ 4F ホール

出席委員

茅委員長、鈴木部会長、青木委員、碧海委員、浅岡委員、浅野委員、飯田委員、石坂委員、猪野委員、植田委員、浦野委員、及川委員、大塚委員、鹿島委員、黒田委員、河野委員、塩田委員、鈴木(正)委員、関澤委員、高橋委員、千葉委員、名尾委員、中上委員、永里委員、長辻委員、中村委員、原沢委員、桝井委員、三橋委員、米本委員、和気委員


1.

重要事項項目について(サマータイムの導入)

 経済産業省から資料1、中上住環境計画研究所代表取締役所長から資料2、鴨田日本労働弁護団弁護士から資料3に沿って説明があった。

2.

委員の発言及び質疑

  • この問題はかねてより議論されているが、日本の特殊な労働状況に原因がある。勤務している者だけでなく、小売、自営業の者にも共通して言える話。さらに建物の構造上の問題もある。日本は、都心部では、ヨーロッパのような中庭のある建物構造とはなっていない。このような労働状況、街作りを改善することができないで今日に至っている。これは大問題であり、国内排出量取引と環境税と同様、政治的な課題。
  • 対策効果の観点から、この会合では、もっとメリハリを付けて、効果があり、世界が動いている対策に重点を置くべき。
  • 先日の会合で、一部委員から「UNDPで排出量取引はダメとの結論が出た」との発言があったが、決してそのようなことはない。
  • 現在、フレックスタイム制をはじめとして労働の多様化が進んでいるが、こうした労働条件において、今回のサマータイムは成り立つのか。
  • 地球温暖化対策のためにあらゆる対策を進めるという観点から、サマータイムは進めるべき。ただ、難しい問題もあり、問題点を解決して進めていくべき。このような制度を進めて行けば、国民運動を進めることにもつながる。比較的ややこしい問題の一つとして、航空における国際線ダイヤ調整の問題がある。日本は成田空港の利用時間に制約があり、内外の航空会社との調整に時間がかかる。
  • 条件が揃っていないからこそ導入すべき。政策調節ではなく、一種の革命が必要。ある程度無理があるからこそ、導入に意味があるはず。
  • サマータイムは、生活スタイル又は労働環境の変革に対してインパクトを与え得るもの。生活スタイルをもっとゆっくりしたものにするとの考え方を与える機会でもある。
  • 政府が音頭を取るだけではなく、草の根の運動につなげる工夫が必要。
  • 経度の幅が広いとの日本の地理的な特性は、サマータイムの導入には便利。
  • 鴨田先生から弊害がなければ導入すべきとの話があったが、弊害の内容が不明確。サマータイムの導入が原因となって労働時間が伸びるのか疑問。労働時間が守られていないことやサービス残業などの問題があり是正する必要はあるが、これらの問題とサマータイムを導入して世の中がどう変わるかは別の話。この点、明確にしてほしい。
  • 鴨田先生から、サマータイムの部分を除いて自分に賛成できるとの話があった。サマータイムの導入効果は、コンビニ24時間営業と一緒。これによって直接どれだけCO2が削減できるのかを問題としているのではなく、国民に教育効果を図るもの。
  • 政府の中でサマータイムの導入を議論する部署はあるのか。サマータイムは全ての省庁に関係するので、横断的な組織を作った方が良い。
  • サマータイムは、ライフスタイル、ワークスタイルを変えるきっかけとなるものであり、賛成。国民運動では意識啓発が重要であるが、サマータイム制導入によって年に2回時間帯が変わることを機会として、地球温暖化問題を認識させることになるのではないか。国民の意識を高める上でも重要な制度。
  • 鴨田先生は社会的基盤や労働条件が整えばサマータイムを導入しても良いという意見なのか。サマータイムの導入を機会として、労働条件の改善をセットで進めていくチャンスにした方が良い。
  • サマータイムは国民の意識を変えるという意味で良いことではないか。

○藤原経済産業省環境経済室長

  • 政府内の体制の話、所管の話などがあったが、事務局として持ち帰って検討したい。

○住環境計画研究所代表取締役所長

  • CO2削減効果の計算がいい加減との指摘があったが、自分の記憶では、これは全電源平均と火力平均の両者を併記したため、大きな幅があるように誤解されたのではなかったかと思われる
  • 海外にもヒアリング調査に行ったが、フランスやドイツでは、実際の省エネもさることながら、アナウンスメント効果について、特に小学生・中学生にとって大きな効果があると評価されている。
  • アメリカでは、サマータイム導入を契機として様々な施設が整備されたとのことであり、整備を前提としなくても良いのではとの話と聞いた。
  • 主務官庁の話について、是非決めて頂きたい。内閣官房や内閣府になるのではないかと思うが、ぜひそのような官庁で行ってほしい。
  • フレックスタイム労働時間等を勘案したかとの質問については、これを数値に盛り込むと仮定条件が増えるため、定性条件は極力排除して、得られるデータだけで省エネ量を評価している。
  • 暗い部屋では照明をつけるので効果がないとの指摘があったが、全国の家庭の電力消費の数値を全て集計し、照明の寄与分を一時間ずらしたことだけで評価を行っている。オフィスは、始業となれば電気をつけることになるので、カウントしていない。
  • サマータイムを導入することによる増エネ分については、家庭での冷房の増エネ分はカウントしたが、サマータイムを導入することによってサービス化が進む、またはある産業が活性化することによる増エネ分については、何度か試算はしたが仮定条件等があり曖昧が残る。

○委員の発言及び質疑

  • 労働時間制度の多様化によって状況が違うのではないかとの指摘については、日本で労働時間制度が大きく変わったのは87年、施行が88年であるが、これから20年以上経っているが労働時間の短縮はほとんど進んでいない。しかも、厚生労働省からもデータが示されるように、近時、働き盛りの人で週60時間を超えている割合が増えており、労働時間の二極化が指摘されている。労働時間が多様化された中でこのような二極化が進んでおり、労働時間の短縮が進む保証はない。
  • 弊害の具体的な内容は、一時間の早出で終わってしまいかねないということ。一時間早く出勤して、従来と同じ時間まで働かざるを得ない状況になるとの危険性がある。基本的に、業務量が変わらない限り労働時間の短縮はあり得ない。業務量を減らすために法的な強制ができるかと言えば、それは困難。
  • サマータイムの導入がワークライフバランス、働き方の見直し、省エネ意識の向上などのきっかけになるとの指摘については、コロンブスの卵のようなもので、どちらが先かという、ある種つきない議論。否定はしないが、いまの時短の流れにおいて、ソフトローの世界でサマータイムのようなことを行うことについて、少なくとも労働界で実効性が上がるかについては、否定的に見ざるを得ない。
  • サマータイムの導入は全ての人に影響を与えるので、政府が上から押しつけるのではなく、多くの国民が自らの気持ちで必要と思わない限り、導入すべきではない。

○茅委員長

  • 増エネになる分があるのではとの指摘については、一部のサービス産業について夕方が長くなるため活性化し、その分増エネになるとの考え方があるが、その場合には経済効果により経済が拡大するので、原単位は減る。よって、経済効果の伴う増エネは別途考えるというのが従来の考え方。

○鈴木部会長

  • ヨーロッパを訪問した際、サマータイムが当然のように導入されており、何ら抵抗なく受け入れていた。なぜ、日本で導入しないのかと疑問であった。
  • 今日、話を聞いて問題点がクリアになった。省エネ効果の精度を高めるのには限界はあるが、一定の効果があるのは確かだと思う。サマータイムの議論は、CO2排出量だけから議論するのではなく、労働環境やライフスタイルなど、我々の生活そのものにかかわる問題であり、この会合で導入を決めるものではない。どこかがきっかけとなって国民的議論を起こしていく必要があるが、国が思い切ってスタートするのも一案。政府としてどこかの部署がきちんと取り上げることが必要であり、内閣府かどこかが中心となって、検討する場を提示してもらいたい。
  • 3.重要事項項目について(断熱材強化など住宅・建築物の排出削減対策)、各省庁からの関連対策の検討状況ヒアリング(経済産業省、国土交通省)
  •   村上慶応義塾大学教授から資料4、経済産業省から資料5、国土交通省から資料6、環境省から資料7に沿って説明があった。
  • 4.委員の発言及び質疑
  • 中小企業CO2排出削減制度について、クレジットの参加者数等について、どのような設計にしているのか。
  • 究極の省エネ社会を作るに当たって、排出権の市場化をどういうイデオロギーで使っていくのか。
  • バイオエタノールの税制要望について、原料は輸入するのか、または国内で賄うのか。バイオエタノールが拡充する場合の供給源をどうするのか確認したい。
  • 中小企業等CO2排出量削減制度について、一見合理的であるが、事業は小規模であり、価格面から大企業にとってインセンティブがあるのか疑問。海外CDMの方が安く買える場合はどうなるのか。クレジットの価格は1t当たり2千円から3千円と計算されているが、本当にそのような価格なのか。
  • 資料5-2では、クレジットの創出期間は10年と仮定して試算されている。この制度は自主行動計画を柱としているが、自主行動計画が存続していくことが前提となっているのか。自主行動計画の効果は否定しないが、今後、激しい削減が予想される中、自主行動計画には一定の限界があるのではないか。
  • 排出量取引が導入された場合、国内CDMはどのような扱いとなるのか。検討会では議論されているのか。
  • 住宅・建築物は一度建築されると長期間使用されるので、長期の対策効果につながり重要な対策。今回、省エネ基準の義務化、適用範囲の拡大・強化がなされるが、実効性を見ながら臨機応変にこのような対策の強化又は法規制の強化を引き続き検討してほしい。
  • 進捗状況の管理について、今日資料が提示されたが、具体性がないので来年の3月までに詰めてほしいが、是非早い段階で示してほしい。また、臨機応変に追加対策の評価を行ってほしい。
  • 資料で追加対策の個票が提出されているが、評価指標や排出削減量の箇所が「検討中」と書かれていたり、空欄の場合や棒線が書かれていたりしている。これらの数字はなるべく早く埋めてほしい。
  • 経済的便益と社会的便益とをいかに組み合わせるかが重要。社会的便益を追求する意識を経済的便益に結びつけることによって相乗効果をもたらすようにすることが工夫のしどころ。
  • 中小企業のCO2排出について、中小企業も排出削減に努めなければならないが、意欲と能力を結びつけることが必要。中小企業等CO2排出削減制度ができることによってこれが促進されるのであれば、我々としても積極的に取り組んでいきたい。
  • 国土交通省に対して、資料6-1に様々な温暖化対策が盛り込まれているが、どんどん進めてほしい。
  • 資料5-3の5頁の家庭における高効率給湯器の普及促進、住宅の省エネ改修の推進、資料4の13頁の誘導策としての断熱改修工事の支援など、資料6-1の14頁の住宅・建築物の省エネ性能の向上など、この辺りの政策を検討してほしい。
  • 意欲的な政策が出始めている。
  • ラベリングについては、ビルや住宅に限らず、消費者に分かる形で導入してほしい。省エネルギーの診断が必要になるが、HEMSの話がトーンダウンしている。新しいIT技術を使ってコストを安く簡便に評価が出来るシステムを検討してほしい。
  • 実際の省エネ量を把握して評価することが2008年から2012年までの一番の課題となる。エネルギー節約を図るためには、実際の現場でのエネルギーの消費効率を確実に拾い上げて評価することを積極的に進めてほしい。
  • 所得階層の低い人たちにとって、今回の灯油価格の値上がりは冬の暖房に大きなインパクトがある。そのような人たちの住宅は、断熱基準が非常に低い建売住宅に住むことを余儀なくされている。住宅レベルの断熱基準は規制する方向で考える必要があるのではないか。
  • 資料4の7頁で「Non-Energy Benefit」は非常に大切な箇所。このうち、「知的生産性の向上」について説明頂きたい。
  • 中小企業対策に関して、京都議定書では今後中国などをどう巻き込んでいくかが重要となるが、中国の郷鎮企業対策が一つの核となる。日本が行っていることが何らかの示唆になれば説得力が増す。国内対策を、今後中国に取り込んでいくとの視点を持って取り組んでほしい。
  • 国内CDM制度について、国内のクレジットを大企業等が購入するとのことだが、購入価格はどのように決まってくるのか。また、EU-ETSで問題となっているような投機的な動きを防ぐ工夫はなされているのか。
  • 国土交通省に対して、地域公共交通活性化・再生総合事業の中で地域の協議会を作るとのことだが、評価はしたいが、どの程度どのような単位で行うのか。
  • 国土交通省に対して、船舶の省エネ対策については、まだモードを作るという段階であるが、いつまでに、どのように作るかは書かれていない。この認識で間違いないか。海外の場合は燃料油など、いろいろな問題があると思うが、国内ではクリアしやすいはず。前倒しで進めてほしい。
  • 地域の協議会について、複数の協議会があり乱立気味。これら協議会の調整はどうするのか。
  • 対策を進めるため、低公害車普及のための税制や住宅のための税制など、各種優遇税制が設けられているが、いまの税制体制を前提とするのではなく、税金全体の考え方を変えていくことが必要。特に都市作りの関係だと、固定資産税や都市計画税など、国土交通省の中でも議論できる話はあるのではないか。
  • 国土交通省に対して、資料6-1の15頁で「集約型都市構造の実現」が述べられているが、是非進めて頂きたい。都市計画の話があったが、地域の温暖化対策の視点をどのように盛り込んでいくのか具体的に教えてほしい。
  • 以前から指摘してきたことであるが、郊外型の大規模集客施設は店舗によっては5万トン以上のCO2を排出しており、削減のための取り組みが必要。何か対策を考えているのか。
  • 経済産業省に対して、資料5-3で省エネ法改正について述べられているが、省エネ法改正によるCO2排出効果はどのように試算されているのか。また、ベンチマークを作るとのことだが、このベンチマークをどのように使っていくのか。1%削減目標との関係でどのように使うのか。
  • 新エネに関して、取り組みを進めるべきとの話が以前よりあるが、グリーン電力証書に関して、一定量について電力ユーザーに対して購入を義務づけるとか、太陽光発電について公共のビルに設置を義務づけするなどの案があると思うが、何か考えはあるか。
  • 中小企業CDMについて、第三者認証機関を使用するとのことであり、評価はできるが、現行の京都クレジットと同様の位置づけするとの記載があり、認証は厳格なものとならざるを得ない。他方、中小企業にとってはあまりコストをかけられず、両にらみで検討したのだと思うが、認証コストはどの程度と考えているのか。
  • 各省庁からいろいろと施策が提出されており進めてほしいが、補助金や租税措置が伴っているものについて、税金を使うことなので、効果の大きいもの、効率的なものを進めることが大切。どのような施策を行うべきか、省庁間の施策で優先度の高いものを進めることが必要。国全体の予算を先に省庁に配分するのではなく、温暖化予算として一度プールして、そこから優先度のあるものに配分することが必要ではないか。
  • 自主行動計画のフォローアップについて、日本経済の今後を考えると、外国資本が入ってくる状況が予想されるが、外資企業は日本企業とはビヘイビアが異なる。自主行動計画に入らない企業が出てきた場合、自主行動計画はどのようになるのか。
  • 住宅・建築物対策について、新築分は効果が出てきているが、既設分のストックについては良いやり方を見つけなければいけない状態。中間報告の中では、ストック対策として、費用対効果の良い改修方法の確立、税制による優遇措置などのインセンティブの必要性が指摘されている。民生部門のCO2が増加する中、中間報告に記載された施策を着実に進めて頂きたい。
  • 追加対策のメニューが出てきたことには安心したが、資料5-4及び資料6-2の個票について、肝心の数字の部分が「検討中」となっているものが多い。報告書をまとめる段階で数字がつかめないとなると、報告書を書きようがない。しっかり年内に数字を出してほしい。
  • 資料6-1について、国土交通省の意欲的な施策メニューは評価したいが、施策がバラバラに出て来ているとの印象。協議会といっても、それを上手く適用出来る地域と出来ない地域がある。地域特性を考える仕組みが必要。メニューがあるだけで終わってしまうとか、数少ないモデル事業が各地でバラバラ実施されるのではなく、それを広げていくことが必要。自治体を中心とするとの発想を国は持つべき。
  • 資料の7について、ようやくお願いした資料が出てきたが、腰が引けているとの印象。「データ入手が可能な限り」と記載されているが、一生懸命収集するとも読めるが、データを入手出来なければやらないとも読める。それでは困る。本当に必要なデータは入手してほしい。統計の集計早期化について関係機関に漠然と依頼するだけではダメであり、具体的なお願いをする必要がある。今の速報値は確報値とズレはあるが、もっと早くデータを入手した結果、このズレが広がるようではダメ。きちんと議論して、資料の内容をもっと丁寧に書いてほしい。
  • 資料5-3の2頁について、間接排出のグラフだけでなく、まずは直接排出の推移を示して、両者の関係を説明することが必要。また、6頁で、事業者単位のエネルギー管理規制に変更する図があるが、事業者単位に対象を広げることは反対しないが、これまでの定期報告制度における事業所単位はやめるのか。もし定期報告制度で事業所単位をやめると、個々の事業所の効率改善を図る、あるいは排出量を削減することにつながらない。
  • 省エネ法については、エネルギー消費について消費総量を減らすとのことだが、CO2も減る必要がある。法律の対象にCO2削減を明確に盛り込むべき。各省がそれぞれ持つ法律の範囲内で対応するのではなく、全体として削減する法律スキームを考えるべき。
  • 住宅について、建築基準法は国民に最低限の住宅を保証するとの第1条の目的があるため規制ができないとの話があるが、寒くてもお金がなければエネルギー消費を我慢するというのが日本の住宅政策であると誤解されないよう、この規定を変えて、最も貧しい者が地震や省エネに対応した住宅を確保できるようにしてほしい。
  • 診断について、住宅と中にある機器を別々に行うのであれば意味がない。
  • 個人の住宅であっても断熱は大きな便益。北海道の例が挙げられたが、東京であっても便益は大きい。自分の家で言えば、省エネ住宅前の住宅と比較して、光熱費が60%削減できた。年間では40%の削減。間接的便益として、健康、快適性の向上は大きい。住宅はそこに住む人の価値観がかかわってくるが、これを評価する方向に世の中が動いていく必要がある。住宅の価値を評価する方法は難しい。自分の家は省エネ住宅になったことでお風呂に入る回数が減った。また、シャワーを利用する機会が増えたが、シャワーでも暖かい。皿洗いでも、お湯を熱くする必要がなくなった。住宅の省エネ化は多面的に普及していく必要がある。
  • 資料5-3において、政策小委員会の報告が12月11日にあるとのことだが、政策小委員会において生活者の意見がどれだけ反映されたのか知りたい。生活者の意見の部分を抜き出して報告してほしい。意見が少ないのであれば、政策小委員会の構成そのものが不十分。
  • 資料6-1で緑化を進めるとの記載があるが、従来植木のあった場所が24時間駐車場に変わっている場合がある。たとえ駐車場であっても周囲に植木を植えることが必要ではないか。駐車場には必ず自動販売機が設置されるが、これまで住宅地で自動販売機がなかったところにも設置されている。
  • 国土交通省の施策は良くなったので、是非推進してほしい。特に税制は実現するように努力してほしい。
  • 12月1日の日本経済新聞の夕刊に、パリではアパートを借りると省エネ契約にサインするとの記事があった。専門業者が建物の構造、断熱性能、冷房構造などを調べて、それぞれのアパートで生活するのにどの程度のエネルギーを使用するのかを計算し目標値を示して、月末の請求時に見比べて判断するもの。民生・業務部門で建物の借り主と貸し主がこのような契約を結ぶことが出来れば、究極の施策の一つだと思う。このような仕組みが日本で成り立ちうるのか、検討すべきか、村上先生の見解を伺いたい。
  • ヨーロッパはCO2問題に関して強硬で厳しいが、これは自然に対する認識の違いがあるのではないか。ヨーロッパの自然は脆弱で、一度破壊されると回復しない。これを破壊してきた反省がある。河川の汚濁についてもOECDでは、古くから課徴金を課している。人間行動の自然に及ぼす影響について敏感である。これに対して、日本の自然は豊かで回復力が非常に強い。そのため人間行動の自然に及ぼす影響について鈍感である。
  • 日本の有識者も同様であるので、政府の役割としては、CO2を排出したとき日本国民にどのような影響を与えるのか、根本的に意識を変えるような具体的な情報を流さないといけないのではないか。「温暖化」という表現では緊迫感を与えない。副題で「気候変動の大激変」などの表現で説明してはどうか。

○村上慶應義塾大学教授

  • 断熱効果の波及効果に関して、委員からも指摘があったが、断熱によりシャワーで済むとか、皿洗いでお湯が必要無くなるなど、断熱効果は質の高い生活に結びつく。これらをセットにした省エネ対策を進めるべき。
  • パリのアパートの例は、EPDEと言って、不動産取引の際にエネルギー消費量をセットにして示さなければならないという法律が実施に移されたとのこと。
  • ストックの既設住宅に対する対策について指摘があったが、世界各国で苦慮している。建物対策は大変だが、機器対策は寿命も短いので対応し易い。多少外装をいじっても数百万円かかるが得られる便益は僅かであり、対策は進みにくい。これに耐震改修をセットにするとか、天井や床下に断熱材を入れるなど、お金のかからない工法を考えるのが一つの方法である。

○藤原経済産業省環境経済室長

  • 中小企業等国内CDM制度に関して、本制度の評価・スタンスについては、京都メカニズムと同様、京都議定書の目標達成のための補完的手段として、選択肢の一つを提供するものと考えている。
  • 価格についてのご指摘については、国内クレジットの流通形態は、当面は相対取引であることを念頭に置いており、個々のケースで事情は異なる。京都クレジットの価格も日々変わり得るので、これとの比較はなかなか難しい。事業者から見て、CSR的な価格の観点も含めて、選択肢の一つとして比較考量して頂くのだと思う。
  • クレジットの期間存続を10年としているが、これはあくまでモデル事業で経済的検証用に仮置きしたものに過ぎない。本制度は、原則、京都議定書の期間中を念頭に置いたものである。
  • 排出量取引が導入された場合の取扱いというご指摘があったが、本制度は、自主的な取り組みであることを基本としているので、排出量取引は念頭においていない。
  • 投機的な資金の流入に対する防止策については、共同事業で計画管理をする仕組み、認証基準などにより講じていくことになる。いずれにせよ、制度設計に活かしていきたい。
  • 第三者認証機関の重要性についてご指摘頂いたが、中間報告でも、厳格性と利便性のバランスをいかに取るかがポイントである旨が既に記載されているところ。認証コストについては、経産省において、数年前から補助金を交付し、補助対象事業者の認証コストについても調査しているところであり、バラツキはあるがデータは持っている。補助対象事業者からの話を聞くと、審査コストが相当高いとのことであり、審査人材の育成が課題と考えている。また、同様な技術・機器であれば前例踏襲で審査コストを安くすることについてのニーズもある。来年度に向けて、これら制度インフラ整備に向けた予算要求も行っているところである。
  • 自主行動計画における外国資本の扱いについては、個別に事情は異なると思うが、現段階ではそのような企業にも入って頂くよう働きかけていきたい。外国企業だから環境対策をしないということはないのではないかと思う。一つのヒントとして、自主行動計画は業種単位で行う必要はなく、例えばJIやNTTなど、個別企業またはグループで策定している例もある。いろいろな選択肢を提供しながら、自主的な目標を設定してもらい、それを政府がフォローアップするという仕組みを構築していきたい。

○江崎資エ庁総合政策課エネルギー企画室長

  • 総合エネルギー統計を作成している観点から、実績値の把握について説明したい。
  • 国連に報告している実績値の関係で、精緻なものを求められている。他方、関係部署に対しては、出来るだけ早くデータを出して頂くよう求めている。ただ、ご理解頂きたいのは、統計を作る場合には、各事業者から調査票を提出頂いたら即出来る訳ではなく、照会に2、3か月かかる場合もある。数十の統計においてこれらが出揃って始めて調整できるのであり、世界では最速で行っても13か月かかると言われている。それでは遅いのではということで、我々は速報値を出しているが、残念ながら数%の誤差が発生している。国全体で13%増えた、減ったとの議論を行っている時に、数%の誤差が出ることは妥当ではないと考えている。このため、我々としては、出来るだけ確報値を早く作りたいと考えており、関係部署には、統計が出版される前に統計データを頂けるよう働きかけている。

○三木資エ庁省エネルギー対策課長

  • 省エネ法改正について複数の質問を頂いた。
  • 改正に伴うCO2削減効果については、現在試算中である。省エネ部会でも審議中であるが、制度設計においては、法制局等との調整を含めて、最大限効果が出せるようにしたい。
  • ベンチマーク制度の使い方については、一つ目は省エネ法のエネルギー管理のチェックの中で総合的評価の一つとして使っていきたい。二つ目としては、各工場、事業者間の比較、パフォーマンスの可視化に活用していきたい。三つ目は、国際的発信として、日本はセクター的アプローチを提唱しているが、その参考になるよう模範を示していきたい。
  • 事業者を対象とすることで事業者管理はどうするのかとの質問については、省エネ法の体系をコンビニ等も含めた事業者単位に広げようと考えているが、他方、現場の管理も重要と考えており、いまのエネルギー管理指定工場の管理者に来てもらうこともやっていただく予定であり、また工場毎のデータも引き続き提出して頂く予定である。これらデータは温対法の報告制度におけるCO2排出量のベースにもなっている。
  • 政策小委員会で消費者の意見を聞いているのかとのご指摘については、政策小委員会は中上委員に委員長を務めて頂いているが、消費者代表の方にも入って頂いており、毎回消費者代表の方々からコメントを頂いている。議事も公開している。

○渡邊資エ庁新エネルギー対策課長

  • バイオエタノールについて、サトウキビやトウモロコシからエタノールを作り直接ガソリンに混ぜる方式と石油精製から生じるイソブテンとの化合物であるETBEの2つの方式がある。ETBEについては海外から輸入している状況。国内で作られるバイオエタノールは量のない状況。ガソリン使用量は約6,000万キロリットルであるが、揮発油等に関する品質確認の法律では3%までガソリンにエタノールを混ぜることが可能であり、ガソリン使用量のすべてにエタノールを混合する場合、180万キロリットルのエタノールが必要となる。これを国内のバイオエタノールで賄うことは当面は無理であり、輸入に頼らざるを得ない状況。海外からの輸入先としてはブラジルくらいと承知している。他方、国内のバイオエタノールについては、関係府省が連携して大幅な生産拡大に向けた工程表を作成しており、中長期的にはセルロース系からバイオエタノールを作っていく取り組みを進めて行こうとしているところ。
  • グリーン電力証書や太陽光の義務づけについては、現在のところ導入の義務づけではなくて支援策を講じることで進めていきたいと考えている。

○桑田国土交通省環境政策課長

  • 住宅に関しては、快適性を追求しつつ省エネを推進することが重要。個人財産としての壁をどう考えるか、誘導と規制のバランスをどう取るかがポイント。
  • ストックをどうするかについては、普及は難しいと思うが、誘導ということで税制のインセンティブが重要と考えており、今回の税制改正でも、ストック改修に要した費用について20万円を限度として額の10%を税額から控除する制度を要求しているところ。
  • 協議会又は自治体との連携についてご指摘頂いたが、複数の市町村が共同して協議会を立ち上げても問題ない。実績については、今年の秋から制度がスタートしたが、11月には第一号として富山市で協議会が設置され計画作りの動きが出てきている。いずれにしても、国が押しつけるのではなく、地方の自主的な取り組みを尊重する形で普及に努めていきたい。
  • 海の対策のスケジュールについてご質問があったが、今後5年間のロードマップを考えている。平成20年から22年の3か年においては、まずは海の10モード指標を開発することとしているが、それと並行して第三者認証システムも検討したい。その後の平成23年及び24年では、パイロット事業を行っていきたい。
  • 都市計画の中に温暖化の話を盛り込めないかとのご指摘については、都市計画を作成するに際してはCO2削減対策もそうだが、高齢化対策としてのバリアフリー化など、地域として視野に入れるべき事項は複数あり、それらは地域によっても異なるため、一律の形で盛り込ませるのは難しい。
  • 前々回の会合(11月21日の第26回会合)で、建築基準法の改正によって風力発電施設の設置が遅れるのは困るとのコメントがあったが、確かに建築基準法においては高さが15mを越えるものは一定規模以上の構築物として適用対象となる。今回の施行令改正では、高さが60mを越える工作物については、特に振動面を考慮して構造安定性を確認する必要性があるとの観点から、国土交通大臣の認定を受けるようにしたところである。現時点で風力発電施設の認定申請は出てきていないが、認定申請が出てきた際には行政の責任として速やかに認定手続きを進めたい。建築基準法の改正直後は運用で遅延が見られる問題があったが、運用を円滑に進めるための措置も講じており、停滞した状況は着実に改善しつつあると認識している。

○徳田環境省地球温暖化対策課長

  • 進捗状況の管理について複数の委員からご意見を頂いたが、更に具体的な方向について検討していきたい。
  • 対策の優先順位にいてのご指摘については、現在、あらゆる対策の具体化と削減効果の算出に取り組んでいる段階である。
  • 検討体制については、予算・税制においては、例えばバイオエタノールや省エネ住宅について関係省庁で共同して要望しているところである。

○鈴木部会長

  • 評価、見直しも集結に近づいている。意欲的な新対策・追加対策・深掘りを積極的に提出頂いたところであり、今後詰めは必要だと思うが、歓迎したい。
  • 国土交通省と経産省から提出された対策の個票資料について、排出削減見込み量の精度を上げることは難しいと思うが、ぜひ数字をきちんと報告できるようにしてほしい。
  • 新エネルギー対策に関して、目標達成計画では、原油換算で1,910万キロリットル、CO2換算では4,690万トンとなっており、非常に大きな削減を見越している。これをどのように実現するのか、追加対策・深掘り対策などを最終報告書に分かりやすく記載してほしい。
  • 進捗管理については、来年度以降、随時対策の追加・評価を図っていく必要がある。第一約束期間においても、目標達成計画の見直しが必要となれば、臨機応変に対応していかなければならない。
  • 各省、様々な対策に取り組んでいるが、総合的に判断する必要がある。施策のプライオリティ付け、連携を図っていくことが重要。

○藤原経済産業省環境経済室長

  • 追加コメントがあれば、一週間以内、12月14日までに書面にて事務局までご提出頂きたい。また、議事録の公表タイミングについても、従来どおり送付から1週間とさせて頂きたい。
  • 次回は、12月14日の金曜日の9時から、虎ノ門パストラルの鳳凰の間で、最終報告案を審議頂く予定である。

(文責 事務局)