中央環境審議会第69回地球環境部会・産業構造審議会環境部会第地球環境小委員会合同会合(第27回)議事概要

日時

2007年11月30日(金)9時00分~12時00分

場所

ベルサール神田 イベントホール

出席委員

茅委員長、浅野部会長代理、青木委員、浅岡委員、飯田委員、石坂委員、猪野委員、植田委員、潮田委員、及川委員、逢見委員、大塚委員、鹿島委員、勝俣委員、河野委員、小林委員、佐和委員、塩田委員、関澤委員、高橋委員、高村委員、千葉委員、名尾委員、永里委員、長辻委員、中村委員、南學委員、新美委員、馬田委員、原沢委員、桝井委員、三橋委員、森嶌委員、山口(光)委員、山本委員、米本委員


1.

重要事項項目について(営業時間の見直しなど、店舗への排出削減対策)

 経済産業省から資料1、永里旭リサーチセンター代表取締役社長から資料2、山口フランチャイズチェーン協会環境委員会委員長から資料3に沿って説明があった。

2.

委員の発言及び質疑

  • コンビニについては、16%ほど原単位が違うとのことであったが、利用状況調査によれば実際はもっと少ないデータも確認できる。また、霞ヶ関あたりでは11時頃には閉店している。この辺、もう少し細かいデータを出して頂きたい。
  • 原単位目標の根拠は、床面積掛ける営業時間に対するキロワットアワーとなっているが、営業時間を長くすることによって原単位を上げることでき、不適切。
  • 深夜営業については、安全の面からも店員を二人置いていると思うが、労働費用の観点からも見直しが出来るのではないか。
  • 年中無休24時間営業のビジネスモデルは、必ずしもコンビニのビジネスモデルとは言えない。諸外国では、年中無休でないところもある。日本国内においても、全てが年中無休24時間営業を行っているわけではない。したがって、本当に年中無休24時間でないと出来ないものなのか検証する必要がある。「一人一日1kg」との国民運動を実施しようとしている現在、24時間営業の見直しは影響力があると思う。コンビニは、営業時間を短くすることによって、痛みを伴いながらCO2削減に取り組むことの担い手となる必要がある。
  • 営業時間が24時間営業から16時間営業に減ったからといって、省エネが進むとは思っていない。防災・防犯効果という観点から、24時間営業は効果があることも理解している。ただ、逆にこういうところにまで省エネ対策が進んでいるのでいれば、国民に対する影響は大きい。
  • 青少年は、コンビニが24時間営業しているために夜中遊んでいるとの側面もある。規制するのは行き過ぎかもしれないが、経産省と業界で話し合って調整をしてほしい。
  • コンビニだけがターゲットにされているのはおかしい。この議論はもっと幅広く行うべき。例えば、百貨店の中で冷房温度を上げても、数年前と比べて消費者の受容性ははるかに高くなっている。このようなことと連動して議論する必要がある。ドイツでは夕方6時過ぎには店は閉まっており、フランスでも日曜日には店が閉まっている。国民はそれを受容している。我が国でも、将来的にはこのような方向性が普及してくるだろう。
  • この会合で議論を行うと、どうしても大都会の話になってしまう。田舎もある。ケースバイケースで論じることが国民の了解を取るためにも必要。
  • 地域又は事業者の実状は多様。そのような多様性の実状を加味して、一律でない上手い知恵を出す必要がある。
  • いまの温暖化の状況を非常事態と捉えるか通常の状態と捉えるかによって判断が分かれる。いまは非常事態にあると考えるべき。営業の自由を掲げると、利便性やエネルギーを使用する体制を優先せざるを得ない。24時間営業で省エネ努力ができるのであれば、16時間営業を前提とした努力もできるはず。企業は与えられた制約条件で最善の努力をするもの。
  • 消費者に痛みを与えるとの考え方は妥当とは思われない。電力料金が風力発電や太陽光発電といった原価の高い電力を前提とした料金であっても、消費者は受け入れるもの。消費者は非常事態における負担は受け入れても良いと考えているはず。

○茅委員長

  • このような問題は、消費者行動に影響を与えるシステムを作ることが大切。消費者は、企業の場合と異なり、簡単にその行動を律することができない。したがって、社会のシステムの方を変革して影響を与える必要がある。24時間営業を16時間営業にするのもこのような考え方の一環。16時間営業になれば企業はそれに対応できるはず。コンビニに限らずテレビなど、消費者に影響を与えるものについて、社会の流れとして考えていくことが重要。

○永里旭リサーチセンター代表取締役社長

  • コンビニがあるから犯罪を防げているとの事実はあると思うが、小売店舗等に関する世論調査が内閣府大臣官房政府広報室から出ているが、それによるとコンビニがあることによってかえって犯罪を助長しているとのデータも出ている。
  • コンビニだけをターゲットとしている訳ではない。テレビもそう。
  • 「国民の痛みを伴う」という言葉が不適切であれば、「国民そのものがそのような事実を認識してほしい」ということを言いたかった。問題は、コンビニを利用する生活者の方にあるということ。
  • 一部のコンビニ経営者は24時間営業の見直しを主張しており、業界で検討してほしい。

○山口フランチャイズチェーン協会環境委員会委員長

  • ご指摘頂いた点については、引き続き検討していきたい。
  • 24時間営業の現状システムについて、加盟店であるフランチャイズのオーナーの自主的事業との観点から、全般を考え直す必要がある。
  • 24時間営業によって、社会的仕組みの中で何を果たしていけるのか。現在、セーフティーステーションや災害支援などについての取組を行っている。社会的役割として何が出来るか、引き続き検討していきたい。

○浅野部会長代理

  • 今日の議論で結論が出るわけではない。自動車の問題と似たところがあり、地域特性はあると思われる。都会で50メートル置きにコンビニがある場合、当番制で営業すれば良いとの考えもあるだろうし、田舎の場合はまた事情が異なる。
  • 社会的役割については、24時間営業による社会的役割とコンビニがあることによる社会的役割を混同せず議論することが必要。

3.重要検討項目について(国内排出量取引制度の導入)

  •   経済産業省及び環境省から資料4、山口東京大学先端科学技術研究センター特任教授から資料5、岡福井県立大学経済・経営学研究科教授から資料6、諸富京都大学大学院公共政策連携研究部准教授から資料7、明日香東北大学東北阿アジア研究センター教授から資料8に沿って説明があった。

4.委員の発言及び質疑

  • EU-ETSの解釈について、別の視点を提示したい。EU-ETSは1999年にEU機構が突然導入したものだが、EUの立場から見ると、拡大EUの統合圏を巻き込んで新しい市場を作り、かつ地球温暖化対策にも寄与するという名目で、新しいガバナンスのツールを作ったもの。第1フェーズと第2フェーズの国別配分計画は必ずしも厳格ではない。結果的に、旧EUの15カ国の電力セクターが東欧の余った分を買うということで東欧援助する形になっていた。
  • この会合は、日本の温暖化対策について、国の政策を議論し決定していく場。その範囲で議論をすべきであり、学会の議論をする場ではない。
  • 2013年以降の国際交渉において、温室効果ガスの削減目標は現在よりも相当厳しくなることを覚悟しておかなければならない。日本政府自身が2050年までに50%削減目標を掲げており、今後相当厳しく取り組む必要がある。我々はこれまで目達計画で、自主行動計画を軸に据えて、省エネに取り組んできた。欠陥もあるかもしれないが、精一杯やってきた。その体制で今後出来るのか、出来ないのであれば、それに加えて排出権取引を導入すべきかが問題となる。現在EUで行っている排出権取引制度は、排出権取引制度の全てではない。EUは政策として行っている。実験として行っているので上手くいかないのは当たり前である。我が国として、自主行動計画にきちんと取り組み、ポスト京都でも上手くいくのであればよいが、グローバルな流れの中でわが国の手法で上手くいかない可能性があるのであるなら、排出権取引についても、この場で入り口の議論だけではなく検討を開始しておくべきである。
  • 排出権取引が日本に導入されないのは自主行動計画が上手く機能しているからとの意見には疑問。日本のCO2排出量の6割は産業・エネルギー転換部門であり、その中核は電力、鉄鋼である。この両業界は、海外からCDMを購入する予定であり、またそれは数千億円が必要との状況。このような事情があるにもかかわらず、自主行動計画が上手く機能しているとは言えない。
  • IPCCの4次報告書では今後20年から30年が勝負だとしており、これに対応した仕組みを提示する必要がある中、この会合では第一約束期間だけ議論すれば良いとの意見は現状の緊急性から外れた意見である。
  • この会合のミッションを考えると、最大の課題は排出増加の著しい家庭・業務部門の対策を如何にして進めるかということ。産業・エネルギー転換部門は、既に自主行動計画を着実に展開しており、この会合でもその進捗状況は高く評価されているところ。そのような中、排出量取引を京都議定書のタームの中で導入することは全く必要がない。
  • 欧州などを中心に、ポスト京都の国際交渉の関係で、排出量取引制度が拡大の方向にあることは承知しているが、欧州の排出量取引制度はまだまだ課題がある。我々としては、もう少し冷静に見極めることが必要。「クールアース50」など、30年~40年先のことを視野に入れて、またグローバルな枠組みについて議論がある中で、刹那的にドタバタするのは不適切であり、実践的な取り組みを行う企業にとっては大変迷惑。
  • IPCCの4次報告書が出たが、温暖化の影響は進んでいる。危機感を持った上で対策を考えることが必要。
  • 自主行動計画か排出量取引かとの二者択一の議論が進んでいるが、自主行動計画は相応に機能したと考えている。問題があるとすれば、総量ではなくて原単位を採用していることであり、総量が削減できないという状況が発生してくる。
  • 排出量取引は効率性だけで議論されているが、経済的インセンティブが大きく、削減した者にメリットがあるという点で公平性がある。幅広な視点で見ていく必要がある。
  • 自主行動計画を海外に伝えるとの話があったが、世界中は排出量取引に進みつつある中で、自主行動計画の評価をこれから行うのは国際的に難しい。
  • EU-ETSに対する批判があるが、日本はEU-ETSを手本に出来るメリットはある。
  • 制度設計について、すぐにでも準備をして、第一約束期間の始めから自主行動計画から排出量取引にすぐに移行できる形に持っていかないと、温暖化防止という当初の目的は達成できない。
  • 鉄鋼産業界としては、原単位で7.7%、総量でも5.1%と、かなりの削減を行っている。加えて、補完的措置として、業界全体では、かなりの金額を費やして4,400万トンのCDMを購入している。
  • キャップアンドトレードについては、キャップをどのようにかぶせるかの議論が全くできていない。また、環境と経済成長を両立させることが議論のスタートのはず。経済成長、あるいは国際競争力を確保するとの観点から、キャップアンドトレードを導入すると炭素リーケージの問題が出てくると思うが、この点をどのように考えているのか。日本の成長はマイナスとなるおそれがある。この点についても議論がされていない。以上から、排出権取引には反対である。
  • 第一約束期間のみならず、ポスト京都においても、中国、アメリカ、インドが入ることは当然だが、原単位を改善させるというセクトラル・アプローチが重要である。鉄鋼業界としては、世界全体でこの方向で合意して進めようとしている。
  • 排出量取引については、キャップの義務づけに議論が集中しているが、それ以外の基本的な事項の議論が進んでいない。
  • 現在の自主的な枠組みでは、京都クレジットが発行されれば、取引は自然に発生するはず。我が国でも、京都クレジットは既に相対で、先渡し取引という形で行われている。
  • まずは、取引に関する最低限の議論を先行して行うべき。例えば、政府に京都クレジットを提供した場合は寄付との扱いとなるようだが、これが税制上どのように取り扱われるのか、京都クレジットを購入した場合は消費税が発生するのかなど、このような基本的なことですらまだ決まっていない。排出量取引が円滑に行われるための取引基盤整備を開始していくことが先決。
  • 我が国は2050年に排出量を半減させるとの目標を世界に発信したので、第一約束期間の問題というよりも、中長期的な問題として、取引制度の構築に向けて真正面から取り組んでいくことが必要。世界的な環境意識の高まりを考えると、我が国においても排出量取引は大きく伸びていくと考えられる。我が国として取引制度の在り方、考え方を明確にした上で、世界各国を巻き込んだフリーでフェアーな取引制度の構築を働きかけていくことが期待される。
  • 公平性、実行可能性のある枠組みが提示されないと、キャップを設定するとの方向性には反対せざると得ない。
  • 環境で世界をリードしているEUが提案するものは良いものと日本では考えられている。ところがEU-ETSの場合、訴訟が多発しており、また例えばセメントの場合、EUで定めている枠は甘く自主行動計画の方が優れている。その点で、セクター別アプローチの方が優れている。
  • 企業は自ら取り組んでおり、排出権取引を導入しない日本企業の評価が落ちることはない。日本の業界は、以前は護送船団方式と言われたが、いまはトップランナー方式で頑張っている。経済団体もそれを推奨している。長期的な視野に立って、世界でCO2を削減していくことが重要であり、日本の優れた技術を世界に移転できるような新たなシステムを作る議論をしていくことが必要。
  • (参考資料3のデータに沿って説明)キャップアンドトレードの割当の部分がワークするのか、極めて疑問。将来の生産量を予測することは困難。生産が伸びている産業・企業にとってはペナルティが課せられることになる。人為的な割当が自由競争を歪めることは一目瞭然である。市場の競争に勝って伸びていく産業・企業にペナルティを課すとなると、日本経済の活力を削ぐことになる。国が生産を割り当てるのは計画経済。企業は5年先、10年先を考えて研究開発投資・設備投資を行う。自由な経済活動が保証されていなければ、こうした投資を行うことが出来ず、工場は海外に移転してしまう。
  • キャップアンドトレードには反対。企業や自主行動計画に対する批判のコメントがあるが、我々としては真面目な議論を行いきちんと取り組んできた。目標も引き上げてきた。100を90にしたら、90を80にするのも簡単と思われるかもしれないが、乾いたタオルは絞れない。それでも何とかやっていこうと自主行動計画を進めてきた。
  • 電気を使わない生活に戻るのであれば別だが、我々は化石燃料で生活している。石炭を天然ガスに代えたらインフラをすべて替える必要がある。化石燃料が保つのは、原油で50年、天然ガスで70年、石炭で190年と言われているが、原子力も織り交ぜて、きちんとしたエネルギーの使い方を議論すべき。我々は社会の豊かさをエンジョイしており、これを肯定しながらも何とか取り組みたいと考えているのであり、我々は自主行動計画をしっかりやってきたし、今後もしっかり取り組んでいきたい。
  • 完全な制度はない。より政策効果の上がる制度を選択する必要がある。自主行動計画の下で事業者は努力をしていることは認識しているが、評価が難しい。各業界において、事業者によって削減ポテンシャル、コストが異なることが明らかになっている。自主行動計画の評価が明らかになってはじめて、効果が計られることになると思う。更に削減を進めていこうという時に事業者によって幅があると不公平感を生む。このような点も踏まえて、相対的な評価を行う必要がある。
  • 排出量取引制度について、初期配分の難しさは理解した。オークションが代替する選択肢の一つとして指摘されているが、よりよい初期配分を前提とした制度を考えた場合、制度効果も異なるのではないか。
  • よりよい制度を考えた場合、抽象的な制度の議論から一歩進んで、具体的な制度案を基に議論を進める段階にあるのではないか。
  • 自分の持っているデータでは、日本の主要製造業のエネルギー効率は世界最高水準を達成している。それにもかかわらず費用と労力をかけ自主行動計画を愚直に実行している。必要に応じてCDMも手当している。何としても2012年までの目標達成に努めているのが実状。京都議定書はエネルギー効率を反映せず、かつ一部の国にだけ削減義務を課しているため、国際的な競争条件は大きく歪められている。このような中で、排出量の上限を設定することは、日本の産業・企業が自主行動計画を進める妨げとなる。
  • トレードによってなぜ温室効果ガスが削減されるのかについて、納得的な説明はない。
  • 地球温暖化防止のためには、主要排出国が全て参加し、公平な目標が設定され、国際競争でのイコールフッティングが担保されるなかで、技術を軸にして確実に削減していく方法しかないのではないか。日本の役割は、世界最高水準の省エネ技術の普及・移転、革新的な技術開発を推進すること。2050年までに排出量を半減させるためには、官民一体となって、国際連携をとって、革新的な技術開発に総力を挙げて取り組むべきであり、排出量取引はこのような費用も時間もかかる革新的な技術開発に効果がない。第一枠組みだけでなく、将来枠組みにおいても、排出量取引は導入すべきではない。
  • 京都議定書の実施という面から見ると、世界では欧州、日本、カナダの3つ。カナダは問題が起こっており、日本のモデルは2つのうちの一つ。自主行動計画は、関係者が努力しており、かなり効果が上がっていることは認めたい。これで京都議定書の目標達成ができれば良いが、もしできない場合は色々な方向で修正をしてでもやっていくのが近道。
  • 排出権取引は、理論的には良い制度ではあるが、過去の実績を見ると、導入までの調整に時間と労力がかかる。排出の割当をどうするか、その後のフォローアップをどうするか、非常にきめの細かい調整が必要となり、実際問題としてなかなか上手くいかない。また、関係者も賛成しない場合が多い。日本の産業界もこれと同様の考えを持っているものと認識している。排出権取引を一般に導入することは、日本の現状から見て非常に難しいのではないか。
  • 環境省が実施している自主参加型排出量取引制度があるが、参加している事業者は制度をどのように評価しているのか。国の補助制度があるから参加しているのか。もし国の補助制度がなくても、このような制度を作っておくことが排出権を購入できるメリットがあると考える事業者が多いのであれば、そこに市場は成立するはず。
  • 資料4の2頁で、EU-ETSの取引関係を矢印で図解しているが分かりにくい。
  • 資料5の4頁で、経済モデルの信頼性がヨーロッパにはあって日本やアメリカにはないというのはどういうことか。
  • 資料6で初期割当が非効率としているが、オークションで行えば効率的。オークションの意味は、削減総量を固定した上で、市場で炭素税率を決めることに等しい。実際にそれを行うのが難しいので初期割当を行う。古い設備を温存する、新しい投資を阻むとの指摘があるがよく分からない。
  • 排出権取引には必ずしも100%賛成ということではない。排出権の価格は変動し、不確定要素がある。不確実性がないという意味では、環境税の方が望ましい。なお、キャップだけでなくトレードもあり、市場経済国であるアメリカで発祥したものであり、断じて計画経済とは言えない。
  • 自分の意見について、参考資料2を提出している。
  • 初期配分の困難性が議論されている。水質汚染に関して閉鎖性海域の総量規制が存在するが、規制が導入されたときに同じような議論がなされた。現在も総量規制は存在するが、内容についてあまり批判はない。水質汚濁量が50%以上削減されているとの実績もある。このような事例を参考にして、日本版の総量規制を考えてはどうか。EUにこだわる必要はない。
  • キャップの問題ばかり議論されており、トレードの問題が議論されていない。キャップを横に置いて、トレードはできないかについて議論できないか。キャップがないとトレードのためのインセンティブがはたらかないと良く言われるが、既に自主行動計画で実質的なキャップをかけている。海外でお金を出してまで買って来ようとしており、そのお金を国内のトレードに使えないか。その辺を御検討頂きたい。
  • 我々に与えられたテーマは、第一約束期間で排出権取引を導入するか否かであるが、まだけりがついていないのが問題。第一約束期間について、自主行動計画という日本的な取組が進んでいるが、産業界は努力してきた。産業界は責任を果たしていないというのは抽象論。自主行動計画の評価を行わずにこれを頭から否定するのは不適切。
  • 第一約束期間に排出権取引を導入するのであれば、抽象的な議論ではなく具体的なプランを提示してほしい。どのように行えば公平となるのか、どれだけ効果があるのかなど、これらを明らかにしなければ机上の空論。具体案を提示しなければ政府を動かすことにはならない。
  • 2013年以降のポスト議定書の議論になれば、排出権取引についていろいろな議論が出てくる。2~3年後くらいに、総理や大臣から諮問してもらって、しっかりした委員会を作り議論すればよい。この会合で排出権取引という新しいスキームを議論すべきとは、大臣から諮問されていない。第一約束期間については、本日をもって、この会合で排出権取引を議論するのは止めてもらいたい。
  • 限界排出削減費用を最小化するとの議論については、改善で十分との観点から議論してほしい。効率性だけでなく、インセンティブや透明性の確保が重要との観点からは、排出量取引はかなり有効な手段。技術開発にも資する。ただ、制度設計上、期間は長くする必要はある。
  • 自主行動計画には業務や運輸部門も含まれており、産業界がこれまで取り組んで来たことを批判するものではない。目標達成計画との関係では、7.6%削減までいかないと達成したとは言いにくい。
  • 割当について議論があるが、自主行動計画を前提として、既に合意があったとしてそこから始める方法はある。効率性を考えるのであればオークションという方法があるが、短期的に2か月に1回程度の頻度でオークションを実施し、売上高全額を政府が持っていくのではなく、かなりの部分を消化する方法で対応する方法が検討されている。やり方はいくらでも検討の余地がある。
  • 炭素リーケージは重要な問題だが、排出権取引の問題だけでなく、海外に進出するのは人件費等々の要因もある。価格上昇の問題も指摘されたが、ある種のセーフティバルブのようなものを検討するなど、制度設計の仕方の問題。
  • 日本の経済活動である生産や消費は市場で担われている。したがって、市場が温暖化防止機能を持つことが重要。価格を付けることが一番分かり易い。削減技術は市場があることにより活かされる。また、その市場があることが次の技術を作ることの動機にもなる。EU-ETSは、そのことを机上の議論ではなく、実際にみることができるという意味で意義がある。制度の利害・特質も、一般論では出来ず、具体的な制度設計の下での制度を見ないと分からないことが分かったのは重要。
  • キャップの必要性について、総量規制としてキャップをかける必要があるか否かで意見が分かれたが、世界全体でキャップがかからないと温暖化防止はできないことははっきりしている。キャップをかけた上で取引する制度を作るのか、キャップを割り当てて実行していくのかが問題となるが、割り当てて実行させる方法がワークするのか疑問。割当は一種の配分である。価格を付けることが資産を生み出す側面がある問題、価格の不確実性の問題もある。理論的に可能性のあるものについて、現実の制度が改善することでどれほど理論に近づくのか、あるいは初期の目的にどれだけ近づけることができるのか、また近づけた制度が他の制度と比べて良いのか否か、これらを考える必要がる。市場の意味は、業種・企業を越えて、横断的に市場のシグナルが働くこと。
  • 排出量取引は、金融商品的側面を持つという点に留意する必要がある。これはグローバルな炭素市場が出来てくることにも関係する。排出権取引制度は国内での取引を作り出す制度であり、資金が国内に貫流するとの側面もある。外から買ってくるよりも国内経済上意味がある。
  • 11月14日に経団連としてのフォローアップを発表したが、2006年度の実績では、1990年比でマイナス1.5%の成果を上げている。マイナスになるのはこれで7年連続である。今回のフォローアップでは17業種が目標の引き上げを行った。持続的にエネルギー効率を向上させる動きがはたらいてきている。税や規制的措置ではない自主行動計画本来の温暖化防止効果が現れてきていると理解している。
  • 産業界の取り組みが上手く機能して実績を上げている日本への排出量取引の導入は必要ないと考えている。
  • 産業界だけではなく、排出量が伸びている業務・家庭の方も十分取り組んでいく必要があるが、長期的視点に立った革新的技術の開発が重要。排出量取引制度では、本来技術開発に投資すべき資金が排出枠の購入に流れる。企業の技術をベースとして、地球規模での排出削減を進めていくべき。
  • 長期的な視野が必要。革新的技術によるだけでなく、現在又は近い将来に可能なもので何とか取り組んでいくというIPCCの流れをよく理解して取組を立てるべき。日本だけが独自の時間空間を持つとか、国際的な話とは別に日本だけで出来るということであれば、産業界の意見も当てはまるが、地球規模ではそんな余裕はない。もっと視野を広げて、過去の実績にこだわらず取り組んでほしい。キャップについては、活動量が増えても排出量は減らす必要があるということを念頭に置いた政策の議論が必要。
  • 欧州はlearning by doingで対策を進めている。未知の分野には、時間がないので、取り組みながら制度設計を進めている。日本の産業界からは「具体的なプランを示してほしい」との発言があったが、そのような受け身の姿勢は残念。
  • 公平性、初期割当の問題が指摘されているが、自主行動計画においてきちんと配分ができているのであれば、割当問題はそれほど議論にはならない。しかし、そうはなっておらず、取り組んでいる業種が負担をしているとの問題があると考えている。この点、透明性が確保されておらず、自主行動計画は評価できない。日本政府は省エネ法に基づく詳細なデータを有しており、訴訟が起こらない仕組みを作ることは可能。価格暴騰の問題、トレードの仕組みなど、我々は学ばなければならないことが多い。EUのモデルやアメリカの法案の事例もあり、また政府は排出実績についても詳細なデータも持っているので、十分キャッチ・アップは可能。

○山口東京大学先端科学技術研究センター特任教授

  • 上流規制の意見は全く出なかったこと、各委員とも2013年以降の話をしており、現実的に2012年までの第一約束期間では実施出来ないことが確認できた。また、国際動向は変化するもの。
  • 自主的な手法は総量規制でないと思っている人が多いが、総量規制である。経済界で約束しており、政府が入ってこの審議会でも議論している。直接規制と自主的手法の絶妙な組み合わせになっている。総量規制をやらないで自主的なのはおかしいとの意見は誤り。

○岡福井県立大学経済・経営学研究科教授

  • EU-ETSと自主行動計画の両方とも理想的な制度ではない。自主行動計画は、目標を高める、あるいは原単位目標を総量目標にするなど、改善の方向が見える。EU-ETSの改善の方向は、全量オークションによる配分ができるかどうか。もしEUが電力を除く部門に全量オークションを導入したら評価できる。

○諸富京都大学大学院公共政策連携研究部准教授

  • 一部委員から具体案がないとの指摘を受けたが、「脱炭素社会と排出量取引」との本を日本評論社から出版しており、そこで詳細な具体案が提示されている。参考にしてほしい。

○明日香東北大学東北アジア研究センター教授

  • どれだけ減らすべきかとの認識が異なるということ。IPCCや首相の話を無視するのであれば、自分は何もする必要はない。世界は日本を優等生とは思っていない。国社会の現実、首相の意見を聞いて、日本が2割、3割の排出量を減らすのに本当にトレードは必要ないのか。企業に100人聞いたら、100人トレードがあった方が良いと言うはず。総量規制を行いどれだけ排出量を減らす必要があるかとの前提で、トレードが必要か否かを聞いてほしい。

○高橋環境省市場メカニズム室長

  • 自主参加型排出量取引について、国内排出量取引の知見を蓄積するために2005年度から実施しているが、これまで150社が参加している。基本的には補助金を交付して目標を約束して取引をしてもらうが、一部補助金なしでも参加したいとの企業もある。今後はそのような企業の参加も含め、知見の蓄積を進めていきたい。

○藤原経済産業省環境経済室長

  • 京都クレジットの取引について複数の委員からコメントがあったが、国、民間企業ともにクレジットの取得が進んでいる。税務会計の問題、登録簿の改善の問題、金融関連商品としての問題などについては、大塚委員を座長として、今月から京都クレジット流通基盤整備検討会を開催しており、環境省と金融庁にもオブザーバーとして出席して頂いて、検討進めているところである。

○茅委員長

  • 委員の意見は自主行動計画かキャップアンドトレードかの2つに分かれているが、審議会としてこの段階でまとめるのは不可能だと思う。ただ、明確にすべきことは、これは第一約束期間、2012年までの話ということ。自主行動計画は2010年をターゲットとしており、それより先の議論になると話が異なってくる。
  • 自主行動計画が十分か不十分かについては、自主行動計画の評価をこの会合で行っており、その結果は事務局側から示してもらえばよい。排出量の多い電事連、鉄鋼連盟については、いまの段階では目標未達成ではあるが、両業界ともCDMの購入でこれを埋めると約束しており、それを信用すれば自主行動計画は目標を達成できる。
  • キャップアンドトレードのキャップの決め方について、今回の会合ではあまり意見を聞くことが出来なかった。一部委員から、現在の自主行動計画のラインをベースにする案が示されたが、それでは自主行動計画とほとんど一緒になってしまう。キャップはキャップとして設定する必要があり、具体的な設定方法を示してもらう必要がある。一番難しい問題である。

○浅野部会長代理

  • この合同会合は、第一約束期間にどうするかを議論する場であると認識している。
  • 自主行動計画については、この合同会合でも、評価するということでは一致している。更に効率性を高めるためにどうしたら良いかについて、自主行動計画の中でのトレード、また、既に経産省が考えている、大企業が自社で削減できない分について中小企業に援助することで削減した分を自主行動計画の中で評価できる仕組みを設けてはどうかとの議論もある。新エネについても、事実上排出量取引と同じ仕組みもある。このような内容について、第一約束期間で考えなくて良いという総意があったとは思わない。一部委員からも、第一約束期間にできることがあれば考えなければならないとの指摘もあった。
  • 5.各省庁からの関連対策の検討状況ヒアリング(環境省(環境税の導入(重要検討項目)を含む。))
  •   環境省から資料9に沿って説明があった。
  • 6.委員の発言及び質疑応答
  • 新エネの仕組み系の追加対策は検討しないのか。新エネは長期的に支援する仕組みがないとサポートできないとの認識を環境省にもってほしい。
  • 石油石炭税について、これまで三段階で上がってきているが、今後どうするのか。
  • 環境税については長い間の議論があるが、ヨーロッパではかなり前から排出量取引と共に炭素税の話はあり、両制度とも検討を進めてほしい。
  • 資料9-1の13頁で、「中間報告に記載のある対策のうち法制度による対応が考えられる項目」を上げているが、省エネ法は今般改正が見込まれているが、省エネの問題と省CO2の問題は若干ずれるところがあり、省CO2の観点からの対策も引き続き検討してほしい。
  • 廃棄物発電が伸びていない。未だにゴミ焼却との発想しかなく、熱回収との発想で、環境省で更に推進してほしい。
  • 家庭部門の対策について、国民が排出抑制に資する製品・サービスを例えばエコマークのような形で表示するとの発想を是非御願いしたい。
  • 地方自治体の問題として、例えば地域版の目標達成計画を各都道府県に作らせ、それに対する権限と指導能力を発揮できるような法的な位置づけを是非配慮してほしい。
  • 第一約束期間は来年から始まるが、是非これについての検証とフォローアップを厳正に行っていくことを明記してほしい。
  • 環境税に反対する人の理由は3つ。一つは経済成長を低下させるとの理由。これについては税収中立として、個人及び法人の所得税減税を行えば、プラスとマイナスの効果は相殺され、どうなるか分からないが絶対値としては小さくなる。税は、家計・企業から政府への強制的な所得移転であり、その移転した税収を政府が上手に利用すれば、トータルで見た場合にはGDPにネガティブな影響があるわけではない。効果について、効果がないとの意見が多いが、短期的な効果は小さいが、例えば自動車の走行距離を減らすことはないが、新しい車を買うときには燃費の良い車を買うことになるので、中長期的には効果がある。国際競争力を損なうとの批判もあるが、軽減措置や、輸出する時には水際で税を払い戻し、輸入するときには水際で税を取るとの水際措置を講じることが可能である。
  • 資料9-1では、まず「国民運動の実施」の項目が出てくるが、政府は広報としてテレビやインターネットを通じて情報を流すべき。国民の環境意識を高めるためにはマスコミ対策が重要。
  • 環境税について、資料では中小企業に配慮していると記載されているが、原油高騰の中、原価は上がっても転嫁はできない状態。反対である。
  • 法制度の追加的対策について、現行の省エネ法は排出削減の実効性があまりなく、確実な排出削減のため、省エネ法の執行を確実に行ってほしい。
  • 電気事業者の排出係数に京メカを使うだけでなく、国内の排出削減を進めるインセンティブを与えるためにも、グリーン電力証書など、算定・報告・公表制度の見直しも検討してほしい。
  • 目標達成計画の進捗状況管理が重要。毎年行うとともに、5年間を見通して行う際に、統計値の見直しの際に時間がかかったり、過不足があったりする。是非、次回までに確実で早い進行管理の枠組みを提示してほしい。
  • 環境税の最大の目的は、産業構造、エネルギー構造、消費構造を変えるということ。財源を集めて省エネ部門に使うというのは次の段階。産業構造、エネルギー多消費型産業構造、化石燃料依存型産業構造を変えるために環境税が必要。
  • 2012年までの5年間、すぐに対応できるものは環境税しかない。したがって、これを即刻導入して、6%削減を実現することを堂々と目指すべき。
  • 自主行動計画と排出権取引について、ここは国民の立場で目標達成計画を議論する場であり、産業界の立場で反対の声を言う場ではない。もっと国民の立場で議論すべき。

○浅野部会長代理

  • この会合は合同会議であり、産業構造審議会としてのミッションもあることは理解する必要がある。最後の議題について発言漏れがあれば、後ほど事務局から説明はあるが、書面でコメントを提出してほしい。
  • 一部委員から発言はあったが、最初の取りまとめの段階で、5年間どうやって達成しつつあるのかをチェックできるシステムが必要である。その点どうするか、次回、事務局より示してほしい。

○委員の発言及び質疑

  • ここは目標達成計画を議論する場であるが、目標達成計画に関する政策を議論するところである。現在の計画では、自主行動計画と省エネ法その他の仕組みで取り組んでいるが、この後により厳しい目標が出てくるであろうことも踏まえながら今回の目標達成計画の達成を考えると、政策を議論する場としては、今の段階で排出権取引の議論を行わないということを決めてしまうのではなく、賛成・反対の意見を含め、今後も検討を進めていくことは必要であり、可能ではないか。

○茅委員長

  • 自主行動計画は第一約束期間までの目標しか定めていないため、それ以降のことについては比較できないということを言いたかった。当然、それ以降のことを議論して頂くことは可能であり、キャップアンドトレードの議論を行うのも結構である。

7.その他

○徳田環境省地球温暖化対策課長

  • 本日のご発言に追加すべき質問・コメント等がありましたら、12月7日金曜日までに書面にて事務局まで提出頂きたい。また、本日の議事概要については、事務局でとりまとめの上、数日中に、委員の皆様に案を送付したい。皆様に送付後、1週間で環境省及び経済産業省のホームページに掲載する予定である。諸事情により一週間内にご返事を頂くことができない委員分についても、いったんは暫定版としてホームページに掲載させていただき、後ほど、修正があれば差し替えたい。
  • 次回は、12月7日金曜日の9時から、大手町サンケイプラザにて開催する予定。経済産業省、国土交通省からのヒアリング及び重点検討項目として「サマータイムの導入」「断熱強化など、住宅・建築物の排出削減対策」についてご審議頂く。

(文責 事務局)