中央環境審議会第46回地球環境部会・産業構造審議会環境部会第地球環境小委員会合同会合(第9回)議事概要

日時

平成19年2月7日(水)10:00~12:30

場所

フロラシオン青山「ふじの間」

出席委員

石谷地球環境小委員長代理、大塚委員、青木委員、碧海委員、秋元委員、飯田委員、石坂委員、猪野委員、潮田委員、浦野委員、及川委員、逢見委員、川上委員、木下委員、黒田委員、神津委員、河野委員、小林委員、塩田委員、鈴木(正)委員、須藤委員、住委員 、関澤委員、大聖委員、高村委員、武内委員、永里委員、長辻委員、福川委員、三橋委員、横山委員、和気委員


1.

気候変動に関するパネル(IPCC)第4次報告書第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について

  • 石谷委員長代理から開会の挨拶の後、谷津環境省大臣官房審議官より、参考資料1に基づき、「気候変動に関するパネル(IPCC)第4次報告書第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表」について説明を行った。
  • 須藤委員より、参考資料2に基づき、気候の安定化に向けた緊急メッセージに関する説明を行った。
2.

業務部門、家庭部門(建築物・住宅関係)における温暖化対策について

  • 藤原環境経済室長より、資料1に基づき、「住宅・建築の温室効果ガス排出量の要因分析」について説明が行われた後、三木省エネルギー対策課長より、資料2に基づき、「省エネルギー対策の概要」についての説明が行われた。
  • 坂本雄三 東京大学大学院工学系研究科教授より、資料3に基づき、「住宅・建築の省エネルギー基準の現状と動向」に関する説明が行われた。
  • 伊香賀俊治 慶應義塾大学理工学部教授より、資料4に基づき、「建築関連CO排出量の2050年までの予測」に関する説明が行われた。
  • 鈴木伸夫 社団法人住宅生産団体連合会環境委員会委員長より、資料5に基づき、「戸建住宅における省エネルギー化について」に関する説明が行われた。
  • 佐藤信孝 社団法人建築設備技術者協会理事より、資料6に基づき、「建築物の省エネルギー化の課題」に関する説明が行われた。
  • 中村勉 社団法人日本建築家協会県境行動委員会委員長及び善養寺幸子 社団法人日本建築家協会環境行動委員会委員より、資料7に基づき、「第五世代の環境建築に向けて」に関する説明が行われた。
3.

合同会合委員の発言

 業務部門、家庭部門(建築物・住宅関係)における温暖化対策の取組について、委員からの発言及び発言への回答は以下のとおり。

  • 住宅が個人資産であると共に社会ストックである以上、良質な住宅を作るということは、個人の責任に帰せられるだけでなく、社会としても責任を持つべきものと認識。
  • 建築物の省エネ基準は、新築建築物の80%が基準を達成しているのに対し、住宅については32%の達成率となっており、基準の達成状況がかなり低く、建築物でも残り20%近く達成していないこととなる。OECD諸国の中で、私が知っている中で住宅・建築物の省エネ基準が義務化がされていないのは日本だけではないかと思うが、日本において住宅・建築物の省エネ基準を義務化できない理由はどこにあるのかを教えて欲しい。
  • 本日も、既築対策が色々と出てきているが、目達計画を改めて振り返ってみると、新築対策しか入っていない。それから何年も経っているが、未だに問題認識のレベルに留まっている。具体的にどのように政策プログラムに落としていくのかということについて、経済産業省からお伺いしたい。
  • 建築物におけるエネルギー消費は、暖房・給湯部分での消費が大きい。新しい省エネ基準では、エネルギー供給側に対する対策も盛り込まれているとのことだが、1次エネルギーやCOだけで評価するのではなく、エクセルギーとしてのロスがどのようになっているか、ということも併せて評価すべき。エクセルギーロスから考えれば、COP6のヒートポンプよりもソーラー温水器の方がはるかに良いこともあり得る。
    また、エアコンの空気暖房よりも、輻射暖房の方が、住まい手にとっても快適ということもある。住宅におけるエネルギー知見をもっと充実させる必要がある。
  • 環境教育について、もっとも必要なのは建築家の底上げ。建築家の中には、断熱を増すと建物の中が蒸し暑くなるといったことをいまだに言う人や、太陽熱温水器の存在すら知らない人もおり、建築家の底上げ、特にエネルギー知識を増やす取組みが重要。
  • 省エネ機器については、省エネ法やトップランナー制度等により、高効率なエアコンや給湯器でもエコキュート等の高効率給湯器が出てきており、機器の効率化が進んでいる。それとあいまって、住宅・建築物についての断熱性能を高めることで、効果が大きくなると認識している。
  • 新築については、省エネ基準達成に向けた取組が進んでいるものの、その割合は非常に低い。一方既築については、これまで対策が打たれていない状況。資料3の中に、窓の断熱だけでも効果が大きく、COの削減ポテンシャルが大きいといった説明があったが、こうした削減ポテンシャルの大きい既築住宅・建築物対策について、施策の中に反映するようにして欲しい。
  • 今回の審議は、京都議定書目標達成計画の評価・見直しのために行っているとの認識であるが、本日の説明の中で、これまでの対策の結果として、どこまで削減が進み、目標達成の見込みはどうなるのかといった話があるかと思ったが、一切なかった。この点について、説明願いたい。
  • 資料4で、都道府県別でCO排出量の推計が示されており、たとえば、北海道と沖縄とではCO排出の状況が違うという説明もがあった。日本は北から南まで気象条件が大きく異なるので、細かく評価をし、地域毎で考えることが必要であり、地域特性を踏まえた省エネの対策を立てて頂きたい。
  • 国内の木材の自給率は20%を切っており、国内で建設される木造住宅の80%以上は輸入材を使っているという現実がある。木材の自給率を高める方向で、建設をする側での対応は何か考えられないか。
  • 本日のヒアリングの対象分野は、全国民が対象となる話であるので、扱いが非常に難しい問題であると認識。そのため、特に行政の責務が非常に重要である。省エネ法は、新築が対象で既築がカバーされていないので、既築部分での対応は非常に重要。
  • 住宅の省エネを進めるには、国民意識向上のための国民への広報活動が基本的に重要であるが、行政として、それ以上に立ち入った対応を検討する必要があろう。例えば、既存の住宅のエネルギー効率を向上する場合には税制上の優遇措置を講じるなどの方法は考えられないのか。先ほどの話では、住宅の効率改善は、部分的に行おうとしても2~300万円もの費用がかかってしまうとのことであり、なかなか手が着かないのが現状。こういった課題をきめ細かく改善する具体策を考えて行くことが重要なポイント。
  • 業務ビルのテナント問題について説明があったが、電気料金などを共益費の形で毎月定額を取られてしまうのであれば、テナント側で省エネ意識が働かないだろう。この点について、法的な対策や行政上の措置は考えられないか。
  • 善養寺さんから色々とご説明いただき、大変興味深く聞かせてもらった。その中で行政に対して様々な提言を行っているとの話だったが、提言に対する行政サイドの反応はどのようになっているか。
  • 住宅・建築物の分野では、短期でできることは限られており、2008年度までの対策という意味では非常に難しい。今回の説明の中で20年、30年先でどうするかといったことも話されていたが、このような長期的観点から意義を検討していくことが重要。
  • 温暖化対策の中で、政策効果の面から考えた場合、省エネ対 策は最も大きな柱。長期的に住宅・建築物の省エネを進めるためにどのような手法で行っていくかということを考えるべき。補助金を大量投入して省エネを進めるというのは邪道であり、基本は、規制強化で追い込んでいくしかない。
  • 個人が住宅に投資する場合の判断要素の中で、温暖化の観点は優先順位が低い。温暖化対策のために何百万円も投資する人はほとんどいない。長い目で見て、個人が住宅の建て替えを行うときに、省エネ対策も入るようにすることが、現実的な方法である。
  • 色々なところで色々な方が指摘されているが、それについてどのように対応するかの検討がされていないこと、また、対応が取られていないことが一番の問題。
  • 住宅・建築物の省エネ対策は、新築建築物の対策は進んでいるが、住宅全体の床面積が増えており、CO排出量もトータルでは減ってはいない。
  • 既築住宅については、対策がほとんど進んでいない。技術開発も進んでいない。既築建築の省エネ化を実施しようとした場合に、新築用の技術を使って省エネ化を行うため、既築建築の省エネ対策にお金がかかってしまう。そうではなく、各々の既築建築に適した省エネ技術化のアドバイスが必要だが、これがほとんど出来ていない。実際に相談に行くと、出てくるのは新築建築の技術であり、すごくお金がかかる。私自身昨年既設のマンションにヒートポンプ給湯器を入れたが、ベランダに置いたタンクやヒートポンプが大変格好が悪く、また、電源線が中に入らなかった。業者によれば、新築住宅にヒートポンプ給湯器を入れるマニュアル指導はあるが既築住宅にはなく、自分で工夫しているとのことで、そのため、契約の相談を受けた案件の8割以上を断念せざるを得ないのが悩みとのことであった。既存住宅に省エネ技術を入れていくのが今後の課題であるが、技術の問題だけではなく、工夫が必要であり、合わせてソフト面を教えていくべきではないか。
  • 住宅の省エネ化について、省エネフェアで一般の人に対しアンケートを実施したが、大半の人が住宅の省エネ化についてほとんど知らないという状況であった。もっと普及啓発が必要。
  • 建築主に責任を負わせる議論があるが、建築主は素人であるので、建築業者側の意識改革をしていくことが重要。省エネフェアで建築メーカーに聞いたところ、熱心にやると客が逃げるとのことで、あまり熱心ではなかった。もっと建築業者への働きかけが必要ではないか。
  • 京都議定書目標達成計画の評価・見直しということで、昨年来から各業種からヒアリングを受けた感想を申し上げたい。各業界における民生対策は、業種によって状況・内容がまちまちであり、個別業種による対応だけでは、限界があるのでないかと感じる。是非、政府が各業界を束ねて強く働きかけ、国民的な運動が進むように推進していって欲しい。
  • 例えば、鉄鋼業界でも、わが国全体の民生部門の対策の遅れを懸念しており、業界として環境家計簿などの取組みを自主的に進めているところであるが、国全体においても、産業界の取組みを加速化させるような働きかけを行って欲しい。
  • 民生部門では、国民が排出削減について果たして切迫感をもっているのか、改めて考える必要がある。議定書遵守の大切さや遵守のために必要となる国の負担、目標達成に向かって国民に期待されていることなどを改めて強く訴えていくことが重要。
  • 先ほどの発表でも、良い事例が沢山あったが、省エネ対策に関する国内外の事例を、国民に情報提供すると良い。例えば、英国では、高価な省エネ機器を購入した場合に付加価値税を下げるなど、諸外国でも色々な対策があるので、その対策がそのまま日本に適用できるかどうかは別として、それらの先行事例調査の内容を是非提示して欲しい。
  • 環境教育に関しては、国民運動の展開へとつなげて行くことが重要であり、児童や学生への環境教育が大切である。産業界では、色々な形で地域住民や地域の小学校・中学校への環境教育の提供を行っており、地域とのパイプを持っているので、国として、こうした取組みを上手く使うことが、環境教育推進のヒントになるのではないか。
  • 大綱にしても、目標達成計画にしても、なすべきことはかなりはっきりしているが、どのように実行に結びつけていくかが課題。国全体で対策を推進する力を国には期待する。
  • 伊香賀教授から、北海道と沖縄では根本的にCO削減対策が違うとの指摘があったが、この議論を発展させていくと、日本の地域性を考えることで、省エネ対策に有機的に結びつけることができるのではないか。目標達成計画では、地域性を考慮した対策は非常に少なく、日本全体で同じように進めればよいとなっているが、地域特性を配慮した対策がどのようなものかが分かってくれば、地方自治体毎で、それぞれの施策展開や果たすべき役割が大きく変わってくる可能性がある。日本をいくつかの地域に区分して対策を考えるといったことが、目標達成計画見直しの中で考え得るのか見解を聞かせて欲しい。
  • 今日の発表は最初から最後まで感銘を受けた。その上で感想を述べると、2005年度のエネ起COは、民生部門が全体の14.5%を占めているものの、住宅を新築する人、リフォームをする人、現に住んでいる人といった方々が省エネに関心を持ち、省エネ対策をしようとしても、建築物・住宅の省エネに関する情報がないのが大きな問題。実は今回の資料はそのような情報が満載だが、一般の国民はそれらの情報を持っていない。住宅での省エネは、住む人の住まい方が大切となってくるため、情報を提供して、上手なエネルギー利用に参加してもらう必要がある。そのためには、エネルギー・環境教育や普及啓発が重要だが、行政の取組みが特に大切になってくる。そこで行政に質問だが、資料3の11頁にもあるように、現行省エネ法の対象を広げる予定について教えて欲しい。
  • 住宅・建築物の省エネ対策は、温室効果ガスの削減の上で非常に大きな可能性を秘めているが、その一方で、その実現には様々な課題がある。その観点から、坂本教授に質問がある。資料3の最後に、窓の断熱改修を日本の全住宅で行えば、3,500万トンCOの削減効果が見込めるとの試算があったが、この削減効果は、日本全体の基準排出量の約3%に相当する。全住宅における窓の断熱改修の導入の可能性や、全住宅に導入する場合に、どの程度の期間で達成することが出来ると考えるかを教えて欲しい。
  • 他の先生方の発表で、住宅の省エネ化では、ライフスタイルも大きく影響するとの指摘があったが、省エネ対策とライフスタイルはどのように関係してくるのか、説明してほしい。
  • 善養寺さんからの説明において、民間と行政との協力が不可欠との指摘があったが、逆に言えばこれまでは、民間と行政での協力が進んでこなかったということだと思うが、協力が進まなかった理由は何か。

○南川地球環境局長

  • これまでヒアリングを行ってきた産業界の自主行動計画では、各団体が定量的な目標を立て、その目標に向け対策を進めているところであるが、本日議論いただいているような民生分野では、そのような業界全体としての定量的目標が設定されておらず、業界としてどのように対策を講じていくか議論がなされていないことが大きい。その意味で、対策としては、技術による対応や問題意識を高めるといった点にとどまっており、民生分野における問題は非常に大きいものと認識。私としては、役所として数字を世に出していくべきと考えており、今後、この審議会で、担当省庁へのヒアリングを通じ、各施策の進捗状況についての数字を出して議論が行えるようにしたいと考えている。

○三木省エネルギー対策課長

  • 住宅の省エネ性能を高めるため、躯体と設備を合わせて基準化すべきとの議論もある。それらの指摘も踏まえ、国土交通省と相談しつつ、総合的に対策を検討していきたい。
  • 既築住宅の対策は難しい分野であるが、省エネ法改正によって、大規模修繕を新たな届出の対象にしており、建築物・住宅のストック対策に糸口を付けたと考えている。また、規制対策と併せて、支援メニューとして、BEMSやESCO、住宅の断熱対策への補助や、窓の断熱改修についてのエネ革税制で優遇措置といった総合的な対策を実施している。

○伊藤 国土交通省住宅局企画官

  • 住宅の省エネ対策としては、最低限の基準の規制化と、ラベリングによる誘導施策の2つのアプローチで施策を実施している。住宅の省エネ性能についてのランクを定め、そのランクを表示することを推進している。このような任意の制度を通じ、買う側が住宅性能を判断して購入する物件を選べるような環境を整えている。また、CASBEE(新築建築物の環境配慮制度)について、評価をラベリングすることを支援しており、大規模建築については、環境評価を条例で義務付けるよう地方自治体にもお願いをしている。
  • 住宅の省エネ化推進のための支援策としては、住宅金融公庫の融資において省エネ効率の高い住宅についての金利引き下げや、CASBEEの評価を容積率算定の際に配慮することや補助金・融資の条件として適用すること等を実施している。
  • また、住宅の省エネ基準を義務化すべきとのご意見があったが、現在の省エネ基準は数年毎に見直して引上げを行っている。最低基準という形で義務化をしてしまった場合、最低基準をクリアしてしまうと、それだけで安心してしまい、住宅の省エネ化が一定レベルで留まってしまう懸念もある。また、義務化した場合は、基準未満の住宅は作ることができなくなるため、国民の負担も増加する。どのくらいのレベルの基準が適当かを決めるには、国民的合意が必要となってくる。
  • 従来、大規模修繕を対象に加えたり、エレベーター等の設備を基準に加えたりするなど、徐々に基準を引上げることで対応してきている。現在、専用部分の設備の基準の引き上げも検討している。今後とも、基本的にこのようなやり方によって全体の省エネ効率を引き上げていきたい。

○坂本教授

  • 省エネ基準について、日本以外の先進国では義務化が行われているとの指摘があったが、国によって省エネ基準の扱いは違っている。例えば、米国・カナダでは、州によって義務化されている州とそうでない州があり、日本と似通った状況となっている。各国の義務化については、建前と運用が違っているので、きちんと調べてみないと、実態はわからない。
  • 省エネ基準を義務化する場合、基準のレベルによっては、建築が行えなくなる業者がでる。零細・中小企業などへの影響を考えた配慮が必要となるだろう。
  • 建築物・住宅の評価を考える場合に、エネルギーを指標にするのではなく、エクセルギーを用いるべきとの意見があった。エクセルギーについては、建築分野でも20年以上前から研究が行われているが、結果的に、エネルギー量でランク付けした場合とエクセルギー量でランク付けした場合、ランキングは変化しない。そもそもエネルギーでの評価も浸透していない状況などをみると、概念の難しいエクセルギーでの評価を進展させることは困難ではないか。
  • 既築技術の開発について指摘があったが、ご紹介した内窓を付けるという対策であるが、この対策は新築住宅では行われず、既築住宅のみに対応した技術である。但し、全体で見ると改修専用の技術は限られており、ご指摘のとおり、改修専用の技術について考えて行かなければならない。窓の断熱改修の見通しについては、経済産業省において支援措置を行っているとの話であり、支援措置により導入が進むことを期待している。

○伊香賀教授

  • 地域特性に応じた対策についてご意見があったが、断熱性能など、特に固定設備などのハード面の利用法で、地域性が大きく表れてくる。省エネ基準においては、特に断熱性については詳細な基準が定められており、一定の対応は出来ていると言えるが、問題は、その地域に住む人がどのような家電を持ち込んでおり、家電をどのように使っているか、結局住まい手自身の省エネ意識がないと、CO削減を進めることは難しい。しかも住む地域によって住民の意識はかなり異なる。目標達成計画の中で、地域ごとに、自治体では少ない職員では対応し切れないこともあることから、地元NPOとの連携方策などが具体的に記述されると良い。

○鈴木 (社)住宅生産団体連合会環境委員会委員長

  • 国産材について、国内の大手メーカーは、国産材の品質・価格・供給量が安定すれば使うと言っているが、昭和30年代からの木材自由化で、国産材の国際競争力が落ちてしまっており、非常に厳しい状況。ただし、住友林業(株)では、国産材の使用を進めており、主な構造部材の約50%が国産材になっている。
  • 京都議定書目標達成計画では、90年度の排出量の3.8%を森林吸収源で対応することとしており、吸収源確保のため、森林整備が謳われているが、対策の中身が不明。3.8%分を確保するには、7~800万m3の木材を伐採・整備しなければならないが、伐採された木材を使うためには、約20万戸の住宅需要が必要となる。こういった点を解決しなければ、国産材利用率の向上は難しい。

○佐藤 (社)建築設備技術者協会理事

  • 省エネ法の数値基準は届出制のため、これまでは設計者責任で数字を提出していたが、最近は、建築物の環境配慮制度が地方で普及し始め、この制度下でこの数値が評価指標として利用されているので、数値の妥当性についてのチェック機能が働き、省エネ基準の実効性が高まっている。従ってこの様な制度の地域への普及拡大が有効である。
  • 建築物の環境配慮に関する取り組みは、都市部ではある程度共通化できるが、地域ではそれぞれ気候風土や文化が異なるので、地域の特徴を織り込むべきとの指摘は重要と認識。
  • 住宅や建築物におけるエネルギー消費実態は、設備の使用時間などで大きく変わるため、ライフスタイルをどのように考えるかが重要である。設備の使用時間の抑制などは、経済効率とも結びつくので簡単に変えることはできないが、エネルギーに関する情報を開示することで、使う側が考えるきっかけを与えることが必要。

○中村 (社)日本建築家協会環境行動委員会委員長

  • 国産材の話については、フローリングメーカーと協力して、フローリングに使用する木材にCO排出履歴を付与する試みを行っている。CO排出履歴が普及すれば、輸入木材と国産材でCO排出がトータルでどちらが多いかが比較することができ、トータルの排出量が低い国産材の普及が進むと考えられる。
  • 貸しビルについても、トータルで評価したCO排出履歴やエネルギー消費量をラベリング制度で付けることができれば、不動産情報としても活用でき、建築物の省エネの促進につなげることができる。
  • 2011年に開催するUIA(国際建築家連合)東京大会においては、アジアを対象として環境技術の農山村地域での導入を進めていきたい。
  • 環境教育に関して、建築家の環境意識が低いとの指摘があったが、なかなか難しいのが現実。日本建築家協会では、地方の建築家に集まってもらってエコ改修教育を実施しており、効果があがっている。
  • 省エネ基準の義務化に関して意見があったが、現在、普及が進んできているCASBEEは規制ではなくラベリング制度として評価をするべき。省エネは楽しいことだという意識にならないと、進んで省エネが行われない。環境や省エネが楽しいという認識になる方法を大事にすべき。

○善養寺 (社)日本建築家協会環境行動委員会委員

  • 詳しい内容については、「エコビルディング・エコハウスの普及を目指して」を参考にしていただきたいが、その30頁にあるように、CASBEEは、消費者に情報をどう伝えるかが肝心。指標は必要だが、消費者に光熱費がどれくらいになるのかといった予想値を示すなどわかりやすいことが、消費者にとって大きなインセンティブになる。
  • 建築家の技術養成の件については、建築家が技術を習得する目的は、自身に対する仕事の需要を高めたいという意識から来るが、省エネ技術や省エネに詳しい建築家に対する市場がなければ、建築家自身も勉強をせず、建築家が育っていかないだろう。現在のように、価格だけを重視し建築家の個人が持つ能力の差を評価しない環境では、建築家の学ぶ意識が育たない。グリーン契約といった価格以外の要素(技術や知見)を重視して契約をする制度は重要。
  • 今回の内容に関する政策提言については、国土交通省に政策提言を行っており、自民党の環境部会でも提言させていただいている。対応については、グリーン税制などについて検討したいと国土交通省から聞いているが、重要なことは、行政側が全ての最低基準を勝手に定めて作ることではなく、消費者に正しい情報を与える仕組みをどのように作るかを考えるべき。つまり、基準の真実がブラックボックスとなっている部分を消費者に分かるようにすることが必要だ。現実には、建築の構造に関わる新しい保険制度を議論する委員会の場に実務を行っている構造設計者がいないなど、現場の状況を踏まえていない。
  • 技術者の養成は、草の根から行っていかなければならない。さらに、一般国民が環境やCO排出のために建築方法を選択するという意識を高めるため、行政・自治体自らの積極的な取組が必要であるが、環境に税金は使えないという声も聞かれることから、地方の現場からの意識改革が必要。
  • 今まで、官民が協力し合って対策が出来なかったのはなぜか、という問いについては、国が一方的に民間に規制を行うばかりであるため、規制する側と規制される側という対等でない立場になってしまうことから、官民の協力をするという関係にはなり得ない。トップランナーで一生懸命にやっている企業と行政が一緒にやっていくということをすれば、協力体制が出来たと思う。
  • 建築基準法で、建築物の省エネ基準については義務化をすべき。人間の心理として、義務化しても、一部(例えば100分の15)は基準を守らない人が出てくるが、逆に義務化しなければ、今度はがんばるのは一部の人(100分の15)だけである。基準の定め方によって、行動基準が変化するという心理面での効果を行政は認識して、規制などを考えるべきである。
  • 省エネ基準の義務化は賛成であるが、現在の建築建材の認定制度の問題で危ない建材も大量に出回っており、制度を改善せず、省エネ基準の規制をすることは石油系断熱材を大量供給することになる。それでは、関東大震災が起これば東京は火の海であり、建物のCO削減努力も意味が無くなってしまう。国土交通省所管の建築建材の認定制度は問題であり、経済産業省のJISのように毎年チェックするような、抜本的な見直しをすべき。本来、建築基準法に適合させても建材の管理は経済産業省で一括すべき。建築基準法は戦後直後のままの法律で、現在にあっていない。今回の改正に、一気に改善すべきであっても、それがなぜ進まないのかと言えば、行政の担当者数人では対応できない。現状の環境問題も踏まえ、古すぎる建築基準法・建築関連制度は、そろそろ抜本的改正を、経済産業省・環境省・国土交通省・内閣府等が連携して改正すべき。

○藤原環境経済室長

  • 産業部門での民生分野対策については極めて重要と認識しており、本年度の自主行動計画フォローアップの評価の重要な視点の一つと位置付けている。そのため、まず、非製造業における民生分野対策については、自主行動計画の策定などにより強化拡充を図りたいと考えている。一方、製造業の事務所対策として、例えば本社ビルでの排出をフォローする方法などについて、経団連とも相談して対策を考えていきたい。
  • 業務ビルのオーナーとテナントでの省エネ意識の違いについてご指摘があったが、電気料金の分担の話などで裁判に発展しているといった事情も聞いており、本省としても商業テナントについては実態を調査して、国交省・環境省とも連携しつつ検討を進めていきたい。

○南川地球環境局長

  • 省エネ技術の住宅への普及のために税制面での優遇を行おうとすると、数が多いため、500~1,000億円程度必要となってくる。住宅については、相当の覚悟を決めて行わないと、普及は難しい。
  • 温暖化問題についての普及啓蒙に関しては、最近、ようやく気候変動の問題に関する認識が定着しつつあるという印象を受けている。例えば農業被害などが温暖化によるものであるという認識を持つ人が多くなってきている。今後、審議会の先生方や民間のお力を借りるなどして、温暖化問題に関する啓蒙をしっかりと進めていきたい。
  • 「学校エコ改修と環境教育事業」がやっと理解を得、全国での取組みが進んでいる。学校が率先して取り組むことで、地域での範を示すことにつながり、環境教育にもなるため、今後も取組みを更に進めていきたい。
  • 森林吸収源3.8%については、来年度予算から765億円の予算が確保され、間伐を中心に森林を整備していくことになる。必ずしも国産材の普及に対する直接の効果にはならないが、間伐を行うことで残った森林の幹を太くすることとなり、森林の成長によってCO吸収3.8%を確保することができると考えている。