中央環境審議会第39回地球環境部会・産業構造審議会環境部会地球環境小委員会合同会合(第2回)議事概要

日時

平成18年12月13日(水)10:15~12:30

場所

全電通労働会館2階 全電通ホール

出席委員

茅小委員長、浅野部会長代理、青木委員、碧海委員、秋元委員、天野委員、飯田委員、石坂委員、石谷委員、潮田委員、浦野委員、及川委員、黒田委員、河野委員、佐和委員、塩田委員、清水委員、鈴木正委員、住委員、関澤委員、大聖委員、千葉委員、富永委員、中上委員、永里委員、長辻委員、西岡委員、早瀬委員、桝井委員、三橋委員、横山委員、米本委員



1.

(株)住環境計画研究所中上所長から資料1、(社)日本ビルエネルギー総合管理技術協会(ビルエネ協会)熊谷専務理事・橋本部長から資料2、(株)山武ビルシステムカンパニー下田常務・杉原部長から資料3に基づき説明がなされた。

2.

委員の発言は以下のとおり。

○中上所長から、民生部門のエネルギー消費削減の困難性について御説明があったが、そうなると、やはり産業・運輸等他部門における削減を進める方が効率的というご見解か。

 また、ビルエネ協会から、省エネの優秀事例に対する表彰制度について御説明があったが、表彰制度の表彰主体として適切なのはどのような者か。また、表彰制度以外にビルの省エネ化に対するインセンティブを高める手段としてどのようなものが考えられるか。

○ビルエネ協会から、バブル期に建設されたビルからの排出量が多いとの御説明があったが、これらのビルはどのような特徴を有しているのか。また、その後に建設されたビルにおいては、運用管理面、施設・設備面等の中でどのような点が改善されたのか。(建築物のように、対策に対する)イナーシャの大きいものは早期に政府からのシグナルを出すことが必要。京都議定書の6%削減約束を達成するためには、バブル期のものも新しいものも両方対策を講ずることが必要。また、長期的に目指すべき方向も考えていく必要がある。

○普及啓発が重要。中上所長から、ファミリーレストランにおけるエネルギー消費原単位が高いとの御説明があったが、ファミリーレストランの排出量が業務部門全体に占める割合はいくらか。

○地域冷暖房のコスト及びエネルギー消費削減効果はいくらか。

○今後も経済のサービス産業化が進むと思われるが、産業構造の変化がエネルギー消費に与える影響はどれほどか。

 日本の1人当たりエネルギー消費量はEUと同水準だが、1人当たり電力消費量はEUより多く、米、カナダに続いている。例えば自販機、自動ドア、エスカレーター等、業務部門において無駄な電力消費が行われているのが一因と考えるが、このような無駄な電力消費の割合はどの程度で、どのくらいの削減ポテンシャルがあるのか。

 また、ESCO事業はCDMとして認められうるか。

○この合同会議の目的は2008年~2012年の5年間の削減目標を如何にして達成するかという点。民生部門において対策を講じても、短期間で大きな効果が見込めないのではないか。自由化の影響により、最近4年間で電気料金は業務用については3割、家庭用については1割下がった。このような状況の下では、ビルのオーナーに省エネのインセンティブが湧いてこないのではないか。

○業務部門のエネルギー消費原単位は床面積当たりで示されていることが多いが、営業時間も考慮して原単位を算定すべきではないか。

 また、エネルギー消費統計の整備状況はどうなっているのか。このような統計は、行政の縦割りを廃して、政府一体で取り組むべき。

○照明・家電製品の普及台数が増えているが、将来の見通しが示せるか。また、既に他の委員から御質問があったが、不必要なエネルギー消費はどの程度で、削減ポテンシャルはどの程度見込まれるのか。業務部門において、営業時間に加えて売上高も考慮して原単位を算定した場合、産業部門と比較してどうなるのか。

○暖房と給湯については、エクセルギーの視点が重要。給湯は60度、暖房は40度あれば十分だが、実際はエネルギー消費が過剰になっていると考える。

 また、再生可能エネルギーへの転換が重要。中上所長から太陽熱温水器の投資回収率が高いとの御説明があったが、日本での普及が進まないのはなぜか。

 建物の断熱性能基準については、日本は、次世代(平成11年)基準ですら、デンマークの半分でしかなく、しかも、EUの多くは義務化している一方で、日本は義務化されていない。日本も義務化すべきではないか。また、既設住宅に対してはどのような施策が適当か。

○規制的手法は、エネルギー消費量の多い大規模ビルに対しては有効だが、多数の小規模ビルには対処が難しい。オーナーとテナントで利害の共有化を図り、特に小規模ビルについては省エネの価格インセンティブを高めることが必要ではないか。山武ビルシステムカンパニーの御説明の中で、価格インセンティブを高める対策が必要、ということがあったようだが、そのような理解でよろしいか。また、省エネに関する情報的政策手段は重要だが、表彰以外にどのような手段があるのか。

 業務部門のエネルギー消費データベースはどのように作ればよいか、また政府の中でこのデータ収集に適しているのはどこか。

○業務用ビルのエネルギー消費のデータが不足しているということだが、具体的にどのような統計が必要か。

 国民の意識付けによってエネルギー消費実態が変化するとのことだが、省エネに資するライフスタイルの在り方について、適当な資料があれば国民に説明しやすいのではないか。

 ESCO事業の伸びが鈍化している理由は何か。

 ビルエネ協会から、2,000m2以上の大規模ビルの評価システムのご紹介があったが、評価の詳細、2,000m2未満の評価を研究しているか伺いたい。

○具体的にどのような対策を講じるか、が重要。具体的な対策がないと(旧大綱の国民各界各層の)「更なる努力」のようなことになりかねない。業務部門の中には多様な業態が含まれているが、どのような分類に沿って検討していくことが最も合理的か。

 目標達成計画における住宅の省エネ化の達成率について、現状をどう評価しているのか。

 ESCO事業の伸びが鈍化しているのは、エネルギー価格の影響によるものと考えてよいか。

 また、ビルエネ協会からテナントビルの省エネ化の困難性について御説明があったが、このようなビルに対する具体的対策としてどのようなものが考えられるのか。

3.

発表者及び事務局からの応答等は以下の通り。

○住環境計画研究所

  • 産業等他部門に業務・家庭部門の分まで負担を押しつけるということではなく、この部門の削減を進めていくべきと考える。ただし、その困難性は十分認識すべき。
  • 国民のライフスタイル変革は重要な視点だが、TVの放映時間制限やガソリンスタンドの営業規制等の思い切った対策は実際には実行が難しい。迂遠かもしれないが、教育によるライフスタイル変革が適当ではないか。
  • 2012年までの対策として効果を持ちうるのは規制しかないのではないか。住宅の省エネ化も自主的な取組の下ではそれほど進捗していない。
  • ファミリーレストランのエネルギー消費が業務部門全体に占める割合については、残念ながら適当なデータを持っていない。
  • 経済の第3次産業化については、その進み方は鈍化しているものの、今後とも継続していくと考えている。また、不必要な電力消費が行われているケースとして、しばしば自販機が例示されるが、既に数兆円の産業に成長しており、これを実際に制限できるかという問題がある。一般的に、何が不必要なエネルギー消費かということを線引きするのは非常に困難であるが、統計データが整備されれば多少の分析が可能かもしれない。大まかな感覚としては、不必要なエネルギー消費の割合は、ビルで5~10%、住宅で10%程度ではないかと思う。
  • 原単位の考え方であるが、流通業の自主行動計画フォローアップにおいては営業時間も考慮して原単位を算定している。いずれにせよ、適切な原単位の取り方は業種別に様々であり、業種ごとに基準が必要になる。

    照明、家電の台数見込みはよく分からない。日本の家庭の家電機器保有台数は国際的に見ても非常に多い水準にある。

  • エクセルギーの考え方は重要だと思うが、一般家庭の理解を促進するのは非常に難しい。ヒートポンプ等の高効率機器の普及が理解を促進させることを期待している。
  • 太陽熱温水器については、押し付け販売等の影響でパブリックイメージが悪くなった。また、エネルギー消費を全て太陽熱でまかなおうとするため、保温タンクの付設が必要となり、結果的に価格が2~30万円と高くなってしまっているのも普及が進まない一因。他のエネルギーとの組み合わせを前提にもっと単純な設備構成とし、価格を下げていくことも必要ではないか。

    断熱基準については、次世代基準で随分水準が上がったと考えており、この基準を達成することにより相当効果が期待できる。これ以上厳しい基準にするためには、壁の厚さを10センチから20センチに厚くする必要があり、工法に大きな影響を与える。次世代基準の義務化は必要と考えており、政府としてもそのベクトルで施策を進めていると認識している。

  • 既設建築物への対応についてはコストが問題。以前の調査例では、建物全体に断熱材、二重ガラスを取り付けた場合に300万円のコストがかかった。この事案では年間の暖房費用は3万円だったので、暖房をゼロにしたとしても、回収に100年かかる計算になり、とても一般的に実行できるものではない。全面改修ではなく、天井・床だけの回収にとどめる場合には費用が軽減されるが、いずれにせよ、建物建築時にしっかりとした対応をとることが重要と考えている。
  • 民生部門のエネルギー消費統計については、現在整備中であるが、ビル内の諸設備のエネルギー消費等、複数省庁にまたがる項目の調整に時間がかかる。また、指定統計のように、統計の厳格さを追求しすぎると利用の際に要因分析等が出来ないことも考えられる。多少ルーズでも良いのではないかと考える。
  • 業務部門の分析に当たっての分類については、様々な切り口が考えられ、決まった解を出すのが難しい。いずれにせよ、今後の議論が必要。

○ビルエネ協会

  • 現場の声を聞く限り、表彰制度の実施主体は国が良いと考える。
  • 表彰制度以外のインセンティブとしては、基本的に新たな仕組みを作るのではなく、現行の施策の改善・拡張が適当と考える。例えば、税制における減価償却期間の短縮化や補助金手続の簡素化などが有効ではないか。
  • 不必要な電力使用がどのくらいかということについては、考え方が難しい。直感的には10%程度は減らせるのではないか。
  • 売上高も考慮した原単位は、商業部門においては必要だが、残念ながら今までのところ算出したことがない。
  • 大規模ビルのエネルギー効率評価については、BAMSの使用を進めているが、簡素化することも検討している。

○山武

  • バブル期に建設された建物はエネルギー管理ではなく快適性に重点を置いている。例えば制御を複雑にして冷暖房を同時に行えるシステムを採用していることもあるが、このような建物は省エネ診断の効果が大きくなる。
  • 民間企業が省エネのための設備改善を行う場合の目安は、回収年数が3年を下回るかどうかという点。また、ESCO事業では「クリームスキミング」という言葉がある。これは、投資回収の良いものから悪いものまで並べて提示すると、民間企業は良いもののみを実行して、悪いものは二度と着手しなくなることで、この点の解消も大きな課題。
  • 地域冷暖房は有効であり、経済産業省も工業地帯において補助金等による支援を行っている。ただし、それぞれの建物のエネルギー使用のピークが違うので、カバーするためのエネルギー源が必要となり、結局非効率になることがある。また、管理コストが自前のエネルギー源を保有する場合に比べて2~3倍になってしまうことも課題である。
  • 電気料金が下がったことにより、省エネ投資の回収率が悪くなり、投資が減少するという点は実感しているところである。
  • ESCO事業が停滞しているのではないかというご指摘があったが、確かに業務部門の伸びは鈍化しているが、産業部門も含むトータル件数は堅実に伸びていると認識している。しかしながら、投資回収率が良い案件が少なくなっていること等により、ESCO事業者の利益率は低下している。

○資源エネルギー庁 江崎エネルギー政策企画室長

  • 平成17年からエネルギー消費統計を始めており、44万事業者のエネルギー消費実態を調査している。現在、業種ごとに適切な調査方法を模索しており、統計結果を安定させるべく検討を継続しているところである。

○環境省

  • 事務局としては、審議会の議論を規制や減税措置などの具体的な対策に結びつけていきたいと考えている。
  • ESCO事業がCDMになるのかという御質問があったが、CDMは議定書上削減義務を負わない国における排出量削減プロジェクトであり、国内での排出削減はCDMとはならない。

○住環境計画研究所

  • 一般消費者の省エネへの取組は非常に遅れている。規制的なものがないと国民行動が変わらないと思う。
  • 10年前にも審議会で本日と似たようなテーマでプレゼンする機会があったが、その際に提言した内容は、これまでにそれなりに進捗している。当時は、ESCOのビジネスモデルさえなかったが、今ではその伸びを議論するほどになっている。省エネ基準の強化、トップランナーの品目数増大も行われた。製品のラベリング制度も導入された。一方、マル適マークのようなビルのラベリングはまだ実現されていない。ビルエネルギー管理士制度やシステム機器の省エネ化も未だである。
  • 消費者向けの情報提供も不十分。若い世代への教育が重要。
4.

経済産業省本部審議官、環境省谷津審議官から、資料4に基づきCOP12、COP/MOP2の概要と評価、今後の次期枠組の議論の進め方などについて説明。その後の質疑は以下のとおり。

○スターンレビューのプレゼンがなされたとのことだが、どのような受け止め方をされたか。

○このような会議については、いつも結果を事後報告される。なかなか公表しにくい面はあろうが、日本政府としてどのような方針で臨むのか、事前に関係者から意見を聞く場が必要ではないか。縦割りの役所による対応では限界がある。

○政府としても、総理に対応方針を相談した上でしっかりした意思決定を行い、環境外交で失敗しないようにすることが必要。

○本部審議官

  • スターンレビューのプレゼンについては、こういうものが報告されたこと自体は現地で高い評価を受けていたが、内容について突っ込んだ議論は無かったものと認識している。また、会議での対処方針は、全排出国が参加できる次期枠組みの構築について、この審議会での検討内容も十分に踏まえた上で対応してきたと考えている。

○谷津審議官

  • 次期枠組みの交渉は京都議定書採択プロセスよりも難しいと考えている。これまでも随時環境大臣からも総理に報告しながら進めているが、各界各層の意見をききながら政府としてしっかりとした方針をもって対応したい。G8日本サミットが非常に重要。
5.

資料5に基づいて経済産業省藤原室長から、今後の日程について説明の後、閉会。(12月26日の流通業界に対するヒアリングにおいて、流通業界関係の自主行動計画のフォローアップを行う予定としているが、当該業界が目標としているエネルギー原単位については、ご指摘のあった営業時間の要素も既に取り入れられている旨併せて説明。)