中央環境審議会 地球環境部会産業構造審議会 産業技術環境分科会 地球環境小委員会合同会合(第36回)議事録

○小見山環境経済室長  
それでは、定刻になりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会産業構造審議会地球環境小委員会の合同会合を開催いたします。
 私は、事務局の経済産業省環境経済室の小見山でございます。6月27日付で環境経済室長に着任いたしました。よろしくお願いいたします。
 現在、委員総数の過半数の委員にご出席いただいており、定足数に達しております。また、本日の審議は公開とさせていただきます。
 最初に、産業構造審議会の組織変更についてご報告申し上げます。地球環境小委員会の上部組織に当たる環境部会が7月1日に産業技術分科会と統合され、新たに産業技術環境分科会となりました。したがいまして、地球環境小委員会の正式名称が産業技術環境分科会地球環境小委員会となりましたので、形式的な変更でございますが、ご報告させていただきます。
 続いて、環境省、経済産業省両省の幹部に交代がございましたので、この場をお借りしてご報告申し上げます。
 まず、環境省でございますが、地球環境局担当の大臣官房審議官に田中が着任いたしました。本日は出張のため欠席させていただいております。また、総務課の調査官に中山が着任いたしました。

○中山総務課調査官  
中山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○小見山環境経済室長  
地球温暖化対策課フロン等対策官に熊倉が着任いたしました。熊倉はフロン等対策推進室長と市場メカニズム室長を兼務しております。

○熊倉地球温暖化対策課フロン等対策官・市場メカニズム室長  
熊倉です。よろしくお願いいたします。

○小見山環境経済室長  
次に、経済産業省でございますが、産業技術環境局長に片瀬が着任いたしました。本日は出張のため欠席させていただいております。また、環境担当審議官に三田が着任いたしました。

○三田大臣官房審議官  
三田でございます。よろしくお願いいたします。

○小見山環境経済室長  
環境政策課長には渡邊が着任いたしました。

○渡邊環境政策課長  
渡邊です。よろしくお願いいたします。

○小見山環境経済室長  
そして地球環境対策室長には田尻が着任いたしました。

○田尻地球環境対策室長  
田尻です。よろしくお願いします。

○小見山環境経済室長  
次に、配付資料の確認をさせていただきます。
 資料1は「前回(第35回)までに合同会合で頂いた主な御意見」でございます。資料2は「地球温暖化対策に関する現状について」でございます。資料3は「温暖化国際交渉の現状」でございます。資料4は「資料2~3等に関連し、委員から頂いた主な御意見」でございます。資料5「革新的技術の研究開発投資推進体制について」でございます。その他、参考資料が1から7まで添付しております。資料の不足等がございましたら、事務局までお申しつけいただければ幸いでございます。
 それでは、早速議事に移りたいと思います。以降の議事進行は、中央環境審議会地球環境部会の浅野部会長にお願いいたします。

○浅野部会長  
早速議事に入ります。本日の議題は、議事次第にありますとおり、 (1)地球温暖化対策に関する現状について、 (2)温暖化国際交渉の現状について、それから、(3) (1)~(2)等を踏まえた今後の地球温暖化対策の目標や計画の策定に向けた議論、 (4)その他となっております。
 前回の発言をとりまとめました資料1については、既に委員にご確認いただいておりますので、改めて資料の説明は省略させていただき、資料の2から4までを事務局からご説明いただいて、その後、ご発言を希望される委員からご質問やご意見をいただきたいと思います。また、資料5については、本会の議論の対象ではございませんけれども、時間の関係上、あわせて事務局から報告をいただければと思います。では、事務局から説明いただきます。

○小見山環境経済室長  
資料2でございます。横長の「地球温暖化対策に関する現状について」というパワーポイントに基づいてご説明申し上げたいと思います。
 1枚おめくりいただきまして、まず、マクロフレームの現状でございます。実質GDPでございますが、2012年度の実質GDPは 520兆円ということで、2005年度と比較して、 507兆円から13兆円の増加となっているということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、2012年度の総人口でございます。1億 2,800万人でございます。
 下の5ページでございますが、総世帯数でございます。2012年度は 5,420万世帯でございます。
 おめくりいただきまして、業務部門の床面積でございますが、2011年度は震災や全体的な伸びの鈍化を受けて18億3,000万平方メートルでございます。
 7ページ以降は産業別の生産量でございますが、粗鋼生産量は、2012年度は1億740万トンでございます。
 おめくりいただきまして、セメントでございますが、2012年度は震災復興の需要もあって 5,900万トンと若干の伸びを示しているということでございます。
 9ページ、エチレンでございますが、 630万トンということで、前年、前々年から若干の減少を示しているということでございます。
 おめくりいただきまして、10ページ、紙・板紙生産量でございますが、2012年度で 2,570万トン、これも減少傾向ということでございます。
 11ページ、旅客輸送量でございますが、これは2007年から減少の傾向にあるということでございます。
 おめくりいただきまして、12ページ、貨物輸送量でございます。これも2009年が最新のデータでございますが、2007、2008、2009年と、リーマンショックの影響も受けて減少しているということでございます。
 これ以降がエネルギー関係、排出量でございますが、まず、一次エネルギー国内供給でございます。最新のデータは2011年でございますが、5億4,600万キロリットル(原油換算)ということで、前年から減少ということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、最終エネルギー消費も同じような傾向であるということでございます。
 15ページ、発電電力量でございますが、震災以降、原子力の減少に伴って火力88%ということでございます。
 おめくりいただきまして、16ページ、エネルギー起源CO2 排出量でございますが、2010年から2011年にかけては若干の増加を示している。排出原単位の悪化も踏まえたものであるということでございます。
 17ページ、温室効果ガス排出量。2011年は約13億トンの排出量で、前年から若干増でございます。
 1枚おめくりいただきまして、これ以降は部門別でございますが、産業部門は2010年から2011年にかけて若干減少しているということでございます。
 おめくりいただきまして、20ページ、エネルギー消費に関しては、減少でございます。
 21ページに関しては、自主行動計画のご説明でございます。割愛します。
 次の22ページは、低炭素社会実行計画でございます。
 23ページ、産業部門の主な対策でございますが、例えば左側の次世代コークス炉、2013年に2基目が導入されたということでございます。
 1枚おめくりいただきまして24ページ、次は家庭部門でございます。下の25ページをごらんいただくと、最終エネルギー消費量に関しては、震災の影響もあって2011年は減少しているのですが、原単位の悪化を受けて2010年から2011年にかけては1割程度の増加を示しているということでございます。
 おめくりいただきまして、家庭部門の主な対策。左側の新築住宅の省エネ基準の適合率に関しては、48%まで向上しているということでございます。
 27ページ、業務部門でございますが、これも民生部門、家庭部門と同様に、原単位の悪化を受けて30%程度の悪化、2011年に増加を示しているということでございます。
 おめくりいただきまして、28ページでございますが、業務部門の最終エネルギー消費、若干の伸びを示しているということでございます。
 29ページ、業務部門の主な対策でございますが、住宅部門でも見た省エネ基準への適合率は、新築建築物に関しては88%、およそ9割まで増加しているということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、運輸部門でございますが、エネルギー、CO2 ともに2010年から2011年にかけて若干減少しているということでございます。
 おめくりいただきまして、32ページ、次世代自動車でございますが、2011年において電気自動車、ハイブリッドの売り上げが16%まで向上しているということでございます。
 33ページ、エネルギー転換部門でございます。これは発電所、製油所などの自家消費の部分でございますが、排出原単位の悪化を受けてCO2 の排出量、2010から2011年にかけて増加しているということでございます。
 おめくりいただきまして、35ページが電源構成の変化でございます。これは月次データでございますが、震災以降、原子力が減少するに伴って、LNGを中心に火力が拡大しているということでございます。
 おめくりいただきまして、36ページ、総需要電力量でございます。2013年4月、4ヵ月連続で前年度を下回ったということでございます。自家発の比率も若干の伸びを示しているということでございます。
 37ページ、電機事業連合会の資料でございますが、節電が、今年の冬に関しては、平均気温は 0.9度下回ったにもかかわらず電力の合成最大電力量は過去10年で最低になったということで、ある程度の節電の定着が見られるのではないかということでございます。
 おめくりいただきまして38ページ、ここからは再生可能エネルギーでございます。2012年度は固定価格買取制度の導入の初年度でございますが、約20億 kWhの再生可能エネルギーの導入の増加が見られるということでございます。
 下の39ページでございます。固定価格買取制度の下で、2013年2月が最新のデータでございますが、設備認定の駆け込み需要が見られて、運転開始との間の若干の乖離がみられるということでございます。
 おめくりいただきまして、40ページは、その詳細な内訳でございます。
 またおめくりいただきまして42ページ、エネルギー起源以外の温室効果ガスでございますが、代替フロンの放出が多く見込まれることから、麻生内閣の時代から相当増えるという見通しがあったのですけれども、フロン法の改正などを踏まえて今後相当押さえることができる、若干の伸びにとどめることができるという見通しであります。
 43ページ、森林吸収源対策でございますが、ご案内のとおり、第1約束期間 3.8%、第2約束期間 3.5%を目指しているということでございます。
 44ページ以降は、エネ環対策の参考資料を添付させていただきました。
 53ページ以降は世界的なデータを参考に添付しているということでございます。
 以上でございます。

○戸田国際連携課長  
環境省国際連携課の戸田でございますけれども、温暖化国際交渉の現状につきまして、資料3に基づきましてご説明させていただきたいと思います。
 最初のページをおめくりいただきまして、国際交渉の全体像でございますけれども、2020年以降の取り組みと2020年までの取り組みということで、2つのトラックで交渉が進んでいるということでございます。
 3ページは、カンクン合意に基づく2020年目標ということで、これまでもご説明しているとおりでございます。
 4ページ、先進国に適用される手続でございますけれども、左端にございますようにインベントリを毎年提出、隔年報告書を隔年で提出(初回の期限が来年の1月1日)、国別報告書を4年に1度提出となっているということでございます。
 5ページは新興国、途上国における目標の状況、また、6ページにつきましては途上国における手続でございます。
 ここまでは、前々回の3月29日の合同会合でもご説明したところはございますけれども、その後、ダーバン・プラットフォーム特別作業部会が今年度も開かれておりますので、その辺を中心にご説明させていただきたいと思います。ダーバン・プラットフォームの特別作業部会でございますけれども、COP17、ダーバンで設置されたということでございまして、2011年も第1回会合が2回のセッションに分けて開かれたということでございます。
 9ページになりますけれども、今年度開催されたADPの会合の概要でございます。今年度、2回のセッションに分けて開催されておりまして、最近の会合は6月に開催されたということでございまして、その時点までにどういう議論になっているかといいますと、米国から、ここに記載のような、各国が貢献の案を事前に提示し、他国等が検証する事前コンサルテーションを経て確定させるプロセスが必要というような提案がなされておりまして、こういった提案に対してEUが記載のとおりのプロセスを提案しているということでございます。我が国からは、下にございますように、全ての国の参加を前提とした制度が重要である。国際的に合意されたルールのもとで各国が定める約束を基礎としつつ、透明性ある事前及び事後の検証の手続は不可欠というような主張をしてきているという状況でございます。
 おめくりいただきまして、10ページは、もう1つのワークストリームでございます2020年までの排出削減の野心の向上につきまして、このような議論がなされているというご紹介でございます。
 11ページ、今後の予定でありますけれども、今後、第2回のADPの次の会合が次回セッション(11月COP19)の際に開催されるということで、2013年、今年の9月1日までに各国から事務局に意見提出が求められているという状況でございまして、これをとりまとめて11月に議論する予定でございます。
 最後、12ページでございますけれども、オバマ大統領が発表されました米国の気候変動行動計画について、ご紹介したものでございます。
 以上でございます。

○土居低炭素社会推進室長 
続きまして、資料4でございます。今ご説明申し上げました資料2、3に関連しまして、委員の方々からいただいた意見を分類したものでございます。
 1ページおめくりいただきまして、2ページ目から分類をさせていただいて掲載しております。まず、温室効果ガス削減目標に関していただいた意見でございます。
 上のところでありますが、目標の在り方・性格について、5ついただいております。1つ目、海外削減分についても目標が必要であるというご意見。2つ目の黒丸でありますが、最高の効率を維持し改善を継続するという行動も強調すべきだというご意見。3つ目、CO2 排出目標は幅をもったものなど柔軟性が必要である、できれば行動目標のほうが望ましいというご意見。4つ目の丸でありますが、一義的(固定的)な目標値なのか、幅をもった目標値なのか、数値ではなく行動計画型の目標なのか、こういったことに関して認識を共有化すべきだというご意見。そして、CO2 排出目標が各分野の生産量を制約するようなものにならないようにする必要があるというご意見をいただいております。
 目標の策定時期・タイミングにつきましては、COP19までには目標と計画を提出する必要があるというご意見。2つ目のところですが、想定は難しいけれども、幅をもった削減目標を早期に設定するということで、国際交渉に臨むべきというご意見をいただいております。
 目標の検討手順・検討要素については、7ついただいておりまして、1つ目でありますが、現実的なエネルギー戦略をまず再構築した上で、整合性のとれた温暖化対策を検討すべきというご意見。2つ目ですが、実質GDPの成長率は日本再興戦略との整合性を図る必要があるというご意見。3つ目でありますが、経済成長目標との整合性、エネルギー見通しとの整合性が必要というご意見をいただいております。4つ目ですが、COP19に提出するために、これまでの議論を基本として目標と計画を設定すべきである、そして、時間的経過を踏まえた修正を施すべきというご意見がありました。5つ目でありますが、モデル等の再計算に当たっては、実績値を考慮して2020年の目標を再設定することが必要というご意見があります。6つ目ですが、米国におけるシェールガスの利用など、大きな前提条件の変化、そして、それらを背景にした米国の新しい方針が世界の温暖化対策議論に与える影響についてみきわめていく必要があるというご意見があります。7つ目ですが、再生可能エネルギーの導入量、省エネ量をはじめとして、多くの課題が残っており、適切に見直しするべきというご意見がございました。
 目標の水準につきましては、あまりにも低い目標値を掲げると信頼性を損なうというご意見、もう1つが、我が国が突出して厳しい目標を負うことがあってはならないということで、実現可能な対策、施策をボトムアップで積み上げていくべきというご意見があります。
 3ページ目ですが、今後の施策に関してでございます。
 1つ目が計画についてでございます。2つ目の黒丸、S+3Eのバランスのとれた議論が必要である、安全確保を大前提に原子力発電の活用をしていくことが極めて重要というご意見がございました。
 今後の温暖化対策について、総論につきましては6つほどあります。正確な予測が困難な状況のもとで、短期、長期を見据えた対策が重要であるということが1つ目。短期的には、国民の経済負担をできるだけ最小化しつつ高効率技術、再生可能エネルギーの導入、燃料転換が図れるかどうかが課題であるということ。3つ目、資源・エネルギー情勢、経済情勢、国際交渉における立ち位置、こういったものを考えていく必要があるというもの。4つ目ですが、ライフスタイル、ビジネススタイル、都市の在り方の変革などについても政府一丸となって各省庁連携で目指すべきというご意見。5つ目ですが、製品ライフサイクル全体での相乗効果を上げるために、連携の取り組みが必要であるということ。6つ目でありますが、節電への取り組みを省エネルギー対策として継続して実施していくことが必要であるというご意見がありました。
 エネルギー転換部門につきましては、FIT政策については、価格上昇、そして技術進展のバランスをきちんと監視して推進していく必要があるというご意見と、地域が活性化するような施策が必要というご意見がありました。
 産業・運輸部門対策につきましては、低炭素社会実行計画を柱に据えるべきだということ。2つ目、未策定の57業種について早期に何らかの計画を策定するべきだというご意見。また、CO2 排出原単位の増加、景気回復という中でより一層の取り組みが期待されるというご意見。4つ目、ニーズに対応した予算措置により省エネルギーを加速する必要があるというご意見もありました。下から2つ目ですが、民生部門、運輸部門の対策に産業界が貢献していくことが不可欠であると。貢献した企業へのインセンティブ、そして、利用段階においての評価ができる方法論の開発が必要というご意見がございました。3ページ下から4ページ目にかけてですが、都市部では自動車の流入規制地域の拡大、パークアンドライド、こういったもので公共交通機関の活用を推進する必要があるということがございました。あと、電気スタンドなどの基盤整備が必要であるというご意見がございます。
 民生部門につきましては、既存住宅・ビルの排出削減を明確にすべきということで、英国のグリーン・ディール対策などがモデルになるというご意見もございました。
 あと、その他の部門といたしましては、HFCやブラックカーボンなどの非CO2 温室効果ガス排出も重視すべきというご意見があります。
 その他といたしまして、国民経済への影響については、制度的制約を可能な限り取り入れてモデル計算をすべきというご意見。あと、隠れたコスト、リバウンド効果についても考慮すべき、科学技術振興については予算措置を含めてコミットメントすることが必要というご意見をいただいております。
 国際交渉につきましては、次期枠組み交渉について、主要国の原発議論を慎重に見極めていく必要があるというご意見と、国際的な負担の不公平感があると国民の削減努力に力が入りにくくなるという意見。3つ目といたしまして、内外の政策要請をともに満たす交渉スタンスをとる必要があるということと、原発・エネルギーの課題を乗り越えて国際貢献する必要があるというスタンスが必要であるというご意見をいただいております。4つ目といたしましては、BATの最大導入を前提とする目標設定を行うボトムアップ方式が有効であるというご意見と、途上国、新興国が先進国と同様に削減に取り組むことを促していく、そして、それをやるためには、国際的に検証する方法を軸に検討を進めるべきというご意見をいただいております。4ページ目下は、MRVが適切に実行されることが極めて重要というご意見をいただいております。
 5ページ目、交渉一般でございますが、米国内で火力発電所のCO2 排出基準の調整状況を注視していくべきだというご意見と、米国がCCSを伴わない新たな石炭火力の新設を行うべきではないという主張をしておりますが、我が国は先進的な火力発電技術を海外に普及するということで、方向性が異なっているが、これをどのように理解すべきか検討すべきだということ。3つ目でありますが、米国は中国、インドなど、個別の対話を重視していくという打ち出しをしておりますが、国連を基軸にした議論をどう考えていくのかということがあります。あと、フロン類について、国際条約・議定書間の調整を日本が主導すべきではないかというご意見もあります。5つ目といたしまして、気候変動枠組み条約以外にも広く検討すべきだということがございます。個別の事案としましては、LED、ハイブリッド車など、技術可能性、量産効果がフィットした事例をもっとアピールすべきだということがあります。
 途上国支援としましては、日本の経験、ノウハウを活かしてGHGを下げていくことが重要だということ、あと、インベントリの開発などの支援は国際貢献としては非常に大きいというご意見。新興国、途上国のニーズに合った技術の移転が望ましいというご意見がありました。
 続く二国間クレジット制度でございますが、クレジットの付与による付加価値がないと国際的な広がりは期待できないというご意見、2つ目としましては、インセンティブを与えるルールを早急に確定する必要があるということ、3つ目としましては、制度設計の具体論の検討を急ぐべきだというご意見もございました。
 目標との関係といたしましては、通常の企業活動を通じた経営合理化の温暖化対策上の価値を認識してコミットメントの一部とすべきだと。あと、一番下のところでありますが、二国間クレジット制度による海外での削減量を我が国のCO2 削減目標のコミットメントとして織り込むことは難しいというご意見。そして、6ページ目上でありますけれども、削減目標とは別枠で考えるべきだというご意見もいただいております。
 その他といたしましては、排出枠取引制度につきましては、海外クレジットとの関係だけから論ずべきものではないというご意見もありました。
 技術開発につきましては、科学技術政策が重要だということ、あと、長期に見た技術開発をどのようにしていくのか、エネルギー戦略の立案が必要だというご意見。
 最後に、その他といたしまして、適応に関しましては、適応情報、データの集積と利用、こういったものの仕組みが必要だというご意見をいただいております。いただいた意見の集約は、以上のものでございます。

○山田環境企画調整官  
資料5についてご説明いたします。
 前回の合同会合で環境技術について議論いただいた際には、調整中となっておりました環境エネルギー技術革新計画の策定について、総合科学技術会議にて行われることが決まりまして、具体的な議論が始まっていますことを、まずご報告いたします。また、本資料にあります前回ご指摘のありました革新技術の開発については、総合科学技術会議で6月7日にまとめられました戦略に記載されていますとともに、環境エネルギー技術革新計画の議論の論点といたしましても取り上げられておりますので、本資料に記載させていただいております。
 裏面には、参考といたしまして、欧米の事例を記載しております。
 以上になります。

○浅野部会長  
ただいまご説明をいただきましたが、特に資料4を中心にご意見をいただければと思います。発言をご希望の方、恐れ入りますが、札をお立ていただけませんでしょうか。
 産構審側から順番にお願いいたします。石田委員からお願いします。石田委員、内山委員、圓山代理、この順番で、まずお願いいたします。

○石田委員  
ありがとうございます。いきなり細かい話で恐縮なのですけれども、私の専門に近い細かい話をさせていただきますので、ご容赦ください。
 2つございます。1つは、発電に占める水力の割合をどう考えるかでございます。2番目は、EVの今後のことについてどう考えるかでございます。
 まず、水力発電でございますけれども、出身を申し上げます。私、土木工学の出身でございますので、ひいきをしているのかもわかりませんけれども、少しダム擁護をさせていただきます。ただし、ダム擁護といっても、これからダムをどんどん建設するということではなくて、既存のダムをどううまく使っていくかということでございます。発電電力量で再生可能エネルギーは10%ぐらいでございますけれども、そのうちの8割以上が水力発電であるという事実は、もう一度強く認識しておくべきかと思いました。
 そこで、ダムの有効活用をさらにやろうということでございますけれども、これは余りお金がかからなくできるのではないかなという、我々の仲間が日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の水環境委員会でいろいろ研究しておりまして、そこからの情報を紹介させていただきたいと思います。
 1つは、ダムのオペレーションを変えるということでございます。ダムは、大きくいうと目的が2つあって、利水と治水でございます。台風とか集中豪雨のシーズンになりますと、治水のためにはダムはなるべく空にしておくほうがいいということでございますけれども、空にすればするほど利水に使える分が、すなわち、発電に回せる分が少なくなるわけでございます。このオペレーションというのは、随分前から同じルールでやっておられる。気象予測とか、いろいろな情報ネットワークの発展があって、もうちょっと効率が上げられるのではないか、うまいダムの使い方ができるのではないかということを考えるべきであろうということでございます。
 2番目は、水力発電というのはスイッチを押してからピークにいくまで、十数秒でピーク発電になります。ですから、ピークの需要に対応できるという意味で、非常に強力な、いい特性をもっているのですけれども、そうすると、下流にいろいろご迷惑をかけますので、既存の大ダムをより有効活用するために、ダムのすぐ下流に小さいダムをつくって、一旦そこで貯留して徐々に流すという小規模な投資も、関係者の方がおられますので、ぜひお考えいただければなと思います。
 3番目は、ダムのかさ上げを考えたらいかがかと。北海道で実例がございますけれども、これはちょっと投資が伴いますが、ダムの湛水面積は上に行けば行くほど広くなりますので、1メーターぐらい上げるだけでためる水の量が随分変わってまいります。そういたしますと、我々の仲間の推論によると、年間で 700億から 800億 kWhが活用で生み出されると。かなり大きな量でございますので、関係者の方に、ぜひお考えいただければと思います。
 すみません、長くなって恐縮ですけれども、2番目はEVでございます。これから普及が進むことを強力に進めなくてはならないのですけれども、実際にどれだけの電力量といいますか、実道で走行できるのか、電費といいますか、それがどこにも公表されておりません。販売のカタログ値と実道上ではかなり値が異なっているというようなことも言われています。このようなデータは、スマートシティにおける電力需要の見積もりに重要な部分になることも予想されるのですけれども、そういうデータが十分ではありません。データの収集と公表について、市民の力行うことも、インボルブメントを強めるためにも必要かと思いますので、申し上げました。
 回答は結構でございます。

○浅野部会長  
ありがとうございました。内山委員、どうぞ。

○内山委員  
事前に提出した意見を資料4に反映していただきまして、ありがとうございました。
 1点だけ、追加コメントをさせていただきます。5ページの国際交渉一般、2つ目の黒丸、CCSについて、CCSを伴わない新たな石炭火力発電所の新設を行うべきでないという米国の主張に対してわが国が取るべき対応です。化石燃料の中で資源量からみて石炭が最も多いので、この石炭の技術政策を日本は無視すべきではないと思います。
 ご存じのように、世界の発電技術の半分近くが石炭火力発電所でありますから、より効率のよい石炭技術を提供していくというのは、日本としては、むしろ積極的に実施すべきであると思います。米国は、基本的にはシェールガスの開発で天然ガスを基軸にこれからのエネルギー戦略を国際的に展開しようという思惑があると思いますので、米国の政策にそのまま乗る必要はないと判断します。
 以上です。

○浅野部会長 
ありがとうございました。圓山代理、どうぞ。

○奥平委員(圓山代理)  
本日、奥平の代理でまいりました圓山と申します。意見を事前に出さなかったものですから、自工会の意見を少し述べたいと思います。
 資料2の30ページに、運輸部門のCO2 排出量というのがあります。ポチ2つ目に書いてありますが、90年と比べますと約 1,300万トンは増加していますけれども、グラフをごらんになっていただくと、2000年をピークに順次下がっているという状況にあります。2008年、2009年、リーマンショックで削減が過大でしたので、少し持ち上げるとなだらかに下がってきているということです。
 この要因について少し説明したいと思いますけれども、1つは、省エネ法下で燃費基準というのがあって、2000年から強化されまして、2010年にはトップランナー法が入り、2015年、2020年と世界トップレベルの基準ができています。この削減は、2020年にどれぐらいまで下がるかという想定もしておりまして、1億 8,000万トン、もしくは2億トンぐらいまで下がっていくのではないかと考えています。こうしたものは、電気自動車とか、ハイブリッドとか、次世代自動車による貢献が非常に高いのですけれども、こうした高い商品を普及させるためのインセンティブという施策がございます。これは、32ページにグラフがありますけれども、インセンティブの導入によりまして、実際にそういう車が飛躍的に伸びているという状況があります。
 そういった車の単体だけの対策ではなく、もう少し幅広い対策がこの削減に寄与しておりまして、1つは、貨物の輸送効率の向上というのがあります。それから、ドライバーの方がエコドライブをされています。特に貨物では、 100%近くエコドライブをされています。もう1点は、交通量を改善することで渋滞を緩和すると。交通量は、道路をつくるという構造的なものから、ITS等を使って車と情報通信しながら適切なナビゲーションをするということも含まれます。
 こういったことを我々自工会としましては、統合的アプローチと呼んでおりますけれども、ここで申し上げたかったのは、単体という対策だけではなく、システム的な広がりをもって考えることで、削減の一層の深掘りが可能になるのではないかということであります。
 それから、もう1点だけ。日本の燃費基準、あるいは普及のためのインセンティブといった施策は、国際的にも非常に貢献できる余地があると思っています。特に途上国においては、こういった日本のいい制度を展開することで、運輸部門のCO2 削減につなげられるのではないかと考えています。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。崎田委員、お願いいたします。続いて杉山委員、豊田委員の順にご発言いただきます。

○崎田委員  
ありがとうございます。崎田です。
 私は、地域とか社会の視点で、できるだけ温暖化対策をしっかりと進めていき、そのような現実をつくっていくことで心豊かな、しっかりとした社会をつくる流れにもっていくのが、大変重要だと思っております。
 資料4の3ページの真ん中辺、今後の温暖化対策の総論の中の4つ目の丸に事前提出意見をまとめていただきましたけれども、新しい技術を面的に広げる施策とか社会システムの大胆な変革によるライフスタイル、ビジネススタイル、都市の在り方の変革などに政府一丸となって各省連携で目指すべきというように書かせていただきました。これをゼロから取り組むのだったら大変難しい話なわけですけれども、例えば、自治体で今、低炭素社会づくりの地域計画を全国各地でつくっているところが多いと思います。私もそういう会議に民間の立場として委員に入らせていただいたりすることが大変多いわけですけれども、そういうときに、技術的なご専門家の方は、コージェネレーションとか太陽光パネルをしっかり入れて、どれだけ省エネ、創エネしていくのかというお話になりますが、そういう潮流の中でどれだけ情報もつながって、高齢化社会の中でも豊かに助け合える社会になっていけるのかというような夢を描こうというような地域の方が大変多いです。
 今、私は、環境学習拠点の現場は新宿にもっておりますけれども、スマート新宿をみんなでつくろうというかけ声のもとに、どのような地域づくりをしたいかということを事あるごとに呼びかけています。都会の中での心豊かな低炭素社会づくりと、それだけではなくて、都市の暮らしでは削減しきれない環境負荷を考えて地方都市の森林を再生することにきちんと資金を出す、汗をかく――今、全国の自治体などでも地方に森をもつというようなこともやっておりますけれども、都市と地域の連携の中で、全国の森林整備などもきちんと進み、豊かになっていくというような関係をつくることが大事なのだと思います。
 それで、先ほどの項目のところに、例えば企業や学校の夏休みの長期化、IT活用による遠隔勤務の大幅導入などで、都市のCO2 対策と過疎地域の活性化を両立することができるというように書かせていただきましたけれども、IターンやUターン定着も含め、都市と地域、両方が、豊かに暮らしながら都市型の暮らしからのCO2 を大幅に削減する、やはりそういうことを全員で取り組んでいこうと思えば、できる、あるいは、やらなければいけないというところに来ていると思います。ぜひ、そういうところを大胆に実践し、社会システム変革をみんなでつくっていく、そういうことが、この時期に大切なことだと思っております。よろしくお願いします。

○浅野部会長  
ありがとうございました。杉山委員、どうぞ。

○杉山委員  
事前に意見を提出させていただいていて、それが資料4と資料4の参考ということで、そちらに長い作文を3つほどつけています。そちらで詳しいことはごらんいただきたいと思います。
 今、私から申し上げたいことは、資料4の4ページで、その他のところに3点ほどあるのですが、これは私が意見提出させていただいたことなのですけれども、いろいろ書いてあったので、分類に困って、ここにあると思うのです。ちょっと中身を説明して、あと、コンテクストを申し上げたいと思います。
 1つ目が、温暖化対策の国民経済への影響について、今後のモデル試算では、制度的制約を可能な限り取り入れて実施することが望ましいと。その次の点が、対策・施策のコスト評価について、隠れたコストやリバウンド効果についても考慮するべきとあるのですが、学界では、この辺は考慮しないと試算として不適切であるという認識が深まっている部分ですので、コンテクストとしては、こういった要素を考慮して計算した上で、2020年目標を出すべきだろうと思います。経済の温暖化対策の費用が、こういったものを考慮することで倍ほども違ってくるということがよくありますので、そういう意味では、2ページの真ん中にあります2020年目標の検討手順・検討要素のところに移していただきたいと思います。
 内容についてちょっとご説明しますと、隠れたコスト、リバウンド効果というのは、この間ご説明しましたので、省きますが、あるいは添付の長い作文を見ていただければ書いてありますが、もう1つの制度的制約というものですね。これは何のことかというと、モデルで温暖化対策の費用を計算しようとするときに、全部門で同じ率の炭素税を掛けますといった前提を置いて計算するのですけれども、現実には、国際競争力への配慮から産業部門を免税ないし減税にするということが、どこの国でも行われている。恐らく同じようなことを日本もやることになるでしょうと。だとすれば、その前提で計算するとどうですかと。そうすると、炭素税が民生部門とか運輸部門とか、ある意味、効きの悪いところに高くなっていくということで、国民経済全体としては、費用は余計にかかるというような結論になっていく傾向があります。
 そういった形で、現実の制度は経済モデルで想定されるようなシンプルなものではなくて、もっとさまざまな、政治経済的な配慮をした上で決まっていくと。それが、モデルの言葉でいうと「制度的制約」という制約条件の1つとなって全体のコストを押し上げる傾向があるということです。この点についても、2020年目標の検討要素として取り入れなければいけないということです。
 資料4の3点目ですけれども、行動を強調するコミットメントをする上で、理科教育、基礎科学を含めた温暖化対策及び持続可能な開発に資する科学技術振興について、予算措置を含めてコミットすると申し上げています。これは、まず話が、1つは2020年ないしそれ以降の日本国内の排出について議論されているわけですけれども、今、国際交渉で、資料3でご説明いただきましたけれども、数値目標のもつ法的拘束力については、まだ議論が大きく開いている状態だと思います。つまり、数値目標といっても、京都議定書のような法的拘束力のある目標なのか、それとも、国内の計画としての位置づけであって国際的には法的拘束力がないものなのか、それはどちらも可能性がある。かつ、CO2 の排出という結果だけではなくて、行動をコミットするという可能性もまだ十分に開かれていて、その行動をきちんと表明、コミットしたほうが、よりよいでしょうというのが、まず第1点です。
 かつ、行動をコミットするというときに、いろいろなやり口があって、もちろんBATの導入などもあるのですけれども、私は、ここで1つ大事だと思っているのは、科学技術の振興についてです。月初めにIPCCの会合でエチオピアに行ってきましたけれども、走っている車は、みんなトヨタさんの車でした。現地の人に話を聞くと、日本車はすばらしい、頑丈で役に立つすばらしいものだと。
 日本が尊敬されているのは物を通じてだということをどこに行っても痛感しますけれども、そういった背景に立って、日本は温暖化対策として真剣に科学と技術に投資しますという計画ないし予算といったものについて、きちんとコミットする、これは、私は世界の人に共鳴するやり方だと思っています。そういう中で、新しい太陽電池とか、新しいバッテリーとか、今ある方式とは全く違う、安くてみんなに愛される、CO2 を出さない製品をつくっていく。そういったことをやるといえば、かなりの支持が得られるのではないかと思います。そういった行動のほうが国内の数値目標よりも、温暖化防止のためにも本質的でありますし、そういうことをやったほうがいい。
 そういうわけで、3ポツ目の「行動を強調するコミットメント」は、「温暖化国際交渉の次期枠組み交渉」のところに、私としては置いていただきたいと思っています。

○浅野部会長  
ありがとうございました。事務局で、今のご指摘に沿って、どこに入れるかを考えていただきましょう。豊田委員、どうぞ。

○豊田委員  
ありがとうございます。この主な意見リストの整理を踏まえて、2点ほど申し上げたいと思います。
 1つは、2020年目標の在り方・性格と技術開発の関係なのですけれども、最新の気候変動科学をフォローして、私ども委員は当然ですが、国民的に共有する必要があるのではないかということを申し上げたいと思います。CO2 の濃度と温暖化の進展スピードは、従来思われていたよりも、より時間がかかるという見方がふえていると聞いています。また、従来の 450ppmシナリオの実現が現実的には困難化しているわけですけれども、むしろ、一度は 450ppmシナリオから離れて、オーバーシュートしても新たな技術のもとで 450ppmシナリオに戻ってくるという、オーバーシュートシナリオの議論が大分深まっている、そういうことを主張する方々も随分増えてきていると理解しております。IPCCの第5次報告書には、そういった考え方も反映される可能性が非常に強いように聞いておりますし、そういった最新の気候変動科学についての情報を、ぜひ共有していただきたい、事務局のお考えも伺いたいと思います。
 それと、技術開発ということを申し上げたのですが、オーバーシュートシナリオを考えた場合には、一度、濃度の高まった状況から濃度を急速に低めていく技術が必要になるわけです。その場合には、低カーボンとかゼロカーボンでは不十分で、いわば吸収カーボンとでもいいますか、ゼロ以下のものにしていく技術が要る。そうだとすると、人工光合成というようなものが代表的なものになり、俗にいうCCU、カーボン・キャプチャー・アンド・ユースといった新しい技術が必要になってくるのだろうと思います。これは自然界の光合成のスピードを上げるというよりは、化学プロセスによって、触媒を用いて、むしろ低コストでCO2 を吸収して有機化合物をつくっていく、ノーベル化学賞を受賞された根岸博士が、食料とか新素材の製造にもつながるものを開発すべきということもおっしゃっていますが、そういった視点が重要です。従って、新しい気候変動科学と、それに基づく新しい技術開発を進めていくという考え方を、ぜひ日本はもつべきではないかというのが第1点です。
 もう1点は、2020年目標の策定時期・タイミング、あるいは検討手順・検討要素に絡めてでございますけれども、一言でいえば、エネルギー基本計画と削減目標の見直しの作業は、ぜひ同時並行的に、整合性をもってやっていただきたいということでございます。このご意見の中にも整理されていますけれども、今、私どもが伺っているところによりますと、基本計画自身は今年中に見直すが、エネルギーミックスについては今年中には作業は終わらないというように伺っております。そういたしますと、幅をもってであろうと温暖化目標を国際的にコミットしていくことは、拙速のそしりをまぬがれない、むしろ、説明に窮して日本のクレディビリティーにかかわる問題になってくると懸念いたします。
 COP19に向けては、むしろ、数値目標のあるなしにかかわらず、全員参加で現実的で公平な枠組みづくりという考え方を堂々と提唱していけば十分であると思います。むしろ、説明に窮するような削減目標は非生産的であると思います。私自身は、個人的にはエネルギーミックスは可能な限り早くつくるべきだと考えておりますけれども、原子力の再稼働の状況もなかなかわかりにくいですし、再生可能エネルギーは導入されても、太陽光の発電量にしてみれば10分の1ぐらいになってしまうという状況もよくみないといけないという、事務局のご説明もよくわかります。エネルギーミックスをつくる際に、それと整合性のある削減目標を、そのタイミングでつくっていただくことが重要ではないか、それが日本の信頼性を会得する道ではないかと思います。
 以上でございます。

○浅野部会長  
ありがとうございました。松橋委員、どうぞ。

○松橋委員  
今の2020年目標の在り方について、それから、海外での問題、低炭素社会実行計画について、3点、簡単に指摘させていただきたいと思います。
 2020年目標については、今、豊田委員のおっしゃったとおり、非常に難しい問題があろうかと思います。現段階では、ここにありますように幅をもった目標を出すのか、あるいは、さっき杉山委員が言われたような行動計画型のものなのか、まだはっきりとしない、はっきりすることはできないであろうと思います。
 仮に行動計画型のもので、例えばエネルギー多消費産業の鉄のような技術でどのぐらいまで効率を上げることができるのか、あるいは、発電効率、最終需要の製品で自動車とか、電気製品とか、こういった、日本が世界トップの効率の製品を提供できるような、そういった効率のようなものを出していくのも、1つの行動計画型のあり方なのかもしれません。現時点では予断を許さないところがあるかと思いますが、ここで我々が考えなければいけないことは、人類全体の地球温暖化問題と考えたときに、どのようにすれば最も人類の温暖化の緩和に貢献できるのか。いずれの形にしましても、行動計画型のものにしましても、これをどうやって海外に広げていくのかということがパッケージになって考えられていないと、日本自体のCO2 排出量は、人口の減少に伴い徐々に小さくなっていく可能性がありますので、日本の占める割合が小さくなっていく。ですから、世界に対してどう貢献していくのかという観点が必要であろうと思います。
 先ほど、その意味で、米国の動きとして、CCSを伴わない石炭火力が認められないような、そういう政策的な動きがあると。内山委員がおっしゃったように、途上国におきましては特に石炭火力は重要で、やはり、かの国の、いわゆる持続可能な発展の必須の項目、電力、インフラを増やしていく。その中で安い石炭火力がどうしても欲しいというのは、とめようがない。そして、途上国においてCCSを義務化するのは非常に難しいということは、言うまでもないことであると思います。
 ただし、アメリカが気候変動アクションプランを発表する前から、例えばワールドバンクのIFCなどに働きかけていたこととして、例えば kWh当たりのCO2 排出量は 800グラム以上のものをつくらないように。これは、CCSを義務化するということではなくて、超々臨界のような、優れた効率のものでなければファイナンスをかけない、そのような動きは前からありましたので、これが、今やオバマの第2政権になって表面に出てきたと考えるならば、CCSを伴わないものはつくらせないというのは、余りにも途上国には無理がありますが、超々臨界以上の非常に優れたものを世界に対して日本も貢献していく。その場合に、JBICやJICA、こういったものがワールドバンクとある意味で役割分担をしながら、そういったところにファイナンスをかけていくような仕組みをつくっていくことが重要であろうと思っています。
 それで、今の絡みでいいますと、二国間クレジットの議論があるのですけれども、最初のところに、クレジット付与による付加価値がないと国際的な広がりが期待できないとあるのですが、これで気をつけなければいけないのは、CDMがどうして問題を起こしたかということを我々は認識しなければいけなくて、1つは追加性の問題である。すなわち、排出権がなければもうからない、こういったものはCDMとして認めないという、これがCDMをシュリンクさせる1つの大きな要因になっている。もう1つは、ローハンギングフルーツを防ぎたいという途上国の思惑があるのか。詳しいことは明らかではありませんが、ベースラインが非常に保守的になって、上位15%であるとか、最初の5期であるとか、そういったところにベースラインを引っ張ろうと保守的にしていく、そのことでクレジットが非常に小さくなる、このことがCDMを縮小するもう1つの原因になっている。
 したがって、我々は、この轍を踏んではいけないので、その根源は何にあるかというと、やはりクレジットに金銭価値をつくるということが保守的になる大きな要因の1つなのです。ですから、我々は、いい技術を世界に広めていく、提供していくことが大前提で、それによってCO2 を削減していくということが大きな目標であるならば、クレジットに金銭価値が何が何でもつかなければいけないというところを少し慎重に考えておく必要はあって、ちなみに、JBICのJ―MRVとGREENというファイナンスの仕組みでは、クレジットはありませんが、金利等々、ほかのところで促進する仕組みができております。
 二国間クレジットは、今後交渉がどうなるかわかりませんが、JBIC、JICAのようなファイナンスとうまく役割分担をして、オールジャパンとして、トータルとしてちゃんと技術移転が進むように、あるいは技術の世界普及が進むように、我々は考えていく必要があろうと思っております。
 3点目、低炭素社会実行計画の産業・運輸部門の中で、製品や技術のCO2 排出量を製造段階だけでなく利用段階においても評価できる方法論の開発が必要ということで、全く同意見でございます。低炭素社会実行計画の中でも、いわば悲願のようになっておりますが、これをきちんと、公平に、客観的に評価する仕組みがまだできておりません。しかし、CDMやJ―MRVの方法論の中では、このようなコンセプトに基づくものができつつありますので、ぜひここを、国を挙げて知恵を絞り、公平に評価して低炭素社会実行計画の中に定量的に取り込んでいく、そういうことを考えていく必要があろうと思います。ただし、そのときに、今、経産省と環境省が多大なご尽力を払って発足したJクレジットという新しい制度との絡み、一長一短を考えながら、その方法論を開発していくべきだろうと思っております。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。これからのお二方は、中環審、産構審双方方の審議会にご所属でいらっしゃいますが、進藤委員、大塚委員の順にご発言をいただきます。

○進藤委員  
ありがとうございます。今の松橋委員、豊田委員のご主張には、全面的に私も同意するものでありますが、オーバーラップすることは避けまして、3点~4点のみお願いと報告をしたいと思います。 
 1つは、米国のワシントンで開催された米中戦略経済対話で、5分野の地球温暖化対策で協力するということが米中の間で合意されています。これは新聞でいろいろ報道されているわけですけれども、オバマ大統領も、主要新興経済国との二国間協力をこれから進めていくということになっています。要は、この地球温暖化問題というのは、環境問題でもありますけれども、産業政策の問題であり外交の問題でもありますので、ぜひ、このアメリカの動きをどう解釈し、どう評価するのか、これを政府関係者、3省の中で評価した上で、我々の議論とどういう関係にあるのか整理していただきたいと思うわけであります。二国間交渉といって、日本の頭越しに、もう二大国がこういうことを決めました、したがって、その枠の中で日本はやってくださいなどということにならないようにしたいと思います。これは、ぜひお願いしたい。
 その背景は、できるならばアメリカと歩調を合わせてやったほうが、いいのではないかということであります。意見の違うところもかなりありますけれども、プレッジ・アンド・レビューでやろうとか、アメリカが言っていることもかなり同調できるところがあるので、歩調を合わせられるところはできるだけ合わせていく、こういう考え方の中で、ぜひ評価をお願いしたい。これが1点。
 それから、革新的技術開発のところ、このように政府の中で位置づけていただいて、ありがたいと思っております。経団連も、このエネルギー低炭素関連技術に関するアンケートを今しておりまして、近くまとめて公表するつもりでおりますので、産業界の意見なりを計画作成の段階では踏まえていただきたい。予算措置や規制改革などが必要になってくると思いますが、そういう革新的な技術の開発に取り組みたいと思っております。ここをぜひお願いしたい。
 3番目は、目標の性格の議論です。私のレポートに3種類書いたのですが、要するに、一義的に1つの目標を決めるのか、これは、エネルギー基本計画もエネルギーミックスも決まらない中で難しいと思うのです。それから、幅をもってというのですけれども、結局、幅はどう考えても仮置きでしかない。そうすると、こういう場合、こういう場合という話にしかならない。今、前の両委員がいわれたように、具体的に何をやるのだと。要するに、行動計画、アクションプランの計画にする。BATは各産業界は絶対に導入いたしますと宣言するとか、個人的にはそうならざるを得ないのではないかと思っておりますけれども、ここはいろいろな議論があると思いますので、これから議論していきたいと思っています。
 もう1つ、論点に書かれていないのは、この前の会議で内山先生が言われた基準年の見直しの件です。2012年を基準年にすべきではないかと内山先生が言われたときに、私は目からうろこが落ちたような気がしました。それはそうだ、我々がこれから行動計画をやるのに過去の基準で今と全く違ったところからあたかもスタートしたような形でやるというのは、インセンティブもモチベーションもわかないのです。そういうのが、まず1つです。今の世の中が余りにも変わってしまって、中国、インド、要するに新興国でかなりのCO2 を出している状況の中で90年を維持する、それが前提になったものですから先進国と新興国という分かれ方になってしまう。したがって、90年というのは、そろそろ整理する必要があるのではないか。
 2005年なのか2012年なのかということがあるのですが、2012年が私としてはベストですが、ただこれも、日本だけ原発の事故を起こしたので2012年からにしてくださいというのにどの程度の説得性があるのか。となると、アメリカと歩調を合わせるという議論にもつながってきますけれども、2005年というのは1つの考え方なのかなと思います。レポートの中で私も論点を書くのを忘れましたので。そこの議論も、ひとつ忘れないですべきではないかと思います。
 この4点でございます。ありがとうございました。

○浅野部会長  
ありがとうございました。大塚委員、お願いします。

○大塚委員  
意見は資料4の7ページに提示させていただいておりますが、2点だけ申し上げさせていただきたいと思います。
 1つは、日本も世界の中の一員ですので、資料の3の2ページにも出ておりますように2020年以降の取り組みについては2015年のCOP21で採択することになっておりますので、今年のCOP19で何らかの目標、計画を出すというのは、必須ではないかということがあるということを申し上げておきたいと思います。
 そういうときに、今までの議論を基本にするしかないということがあると思いますけれども、ただ、シェールガスの輸入決定など、いろいろ変わってきていることもありますので、それを踏まえて、今まで考えてきたことを修正するのが現実的だと思います。
 2つ目でございますが、二国間クレジットについてですけれども、二国間クレジットのルールがどういうものかということについては、まだ全く確定していないようなところがございます。既に協定のようなもの、署名とか始まっていますが、ルール自体があまり確定していないというのは困ったことなので、早急に確定していっていただければと思っております。
 これとの関係で、先ほど松橋先生からご議論がございましたけれども、CDMが問題だというのは私も同感なのですが、追加性を全くなくしてしまっていいのかというのは私は疑問に思っています。先ほど松橋先生がおっしゃった、ベースラインが保守的過ぎるというのは私もそのように思っていまして、まさに、そこを変えるべきだと思っていますけれども、追加性の議論を全くなくしてしまうと、一体何のためにやるのか、ちょっとよくわからないところも出てくるものですから。根本的な問題なので、議論していく必要があると思いますけれども、経済的インセンティブがないと民間の企業にやっていただくということ自体が非常に難しくなってくるのではないか、広がりのある議論ができなくなるのではないかということを恐れております。
 そういう意味で、追加性は残しつつ、さらに、ベースラインを保守的にしないようなことは考えていくべきではないかと私自身は考えていますけれども、とにかく、ルールを早急に確定していく必要があると思います。
 それから、出していないことですけれども、追加的に。フロンのバンクの対策という問題がございます。これは、CFCとか、これから出てくるHFCについてもございますが、特に途上国においてバンク対策が必要だということは言われており、今までのフロン、あるいは代替フロンが放出されることにこれからなるわけですけれども、それに関しての対策が全くなされていないようなところがあるということでございます。
 ご案内のように、フロンはCO2 に比べて温室効果ガスの係数が高いですから、これを放置しておくことは非常に問題だと思いますけれども、1つの方法としては、二国間クレジットについて、ぜひ使っていただくことを考えていただけないかということがございまして、日本産業界は特に非常に倫理的にお考えになっていただけるところがございますので、こういう世界的な取り組みに穴があいているところを日本が主導的にやるというのは、意味が大きいのではないかということを申し上げておきたいと思います。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。では、藤井委員どうそ。

○藤井委員  
ありがとうございます。私は事前に意見を出しており、資料4(別添)の5ページにありますので、これを見ていただければと思うのですが、追加ということで意見を述べさせてもらいます。この事前意見の中でも指摘していますが、今も大塚先生、その以前に松橋先生が言われた二国間クレジットについて述べます。大塚先生が言われた点で大体説明されているのですが、クレジットというのは、要するに、ビジネスにとってみれば追加キャッシュフローです。これがなくて回っていけば、もちろんいいのですけれども、企業としてみれば追加キャッシュフローが得られるかどうかで当然収益にかかわってきます。まさに、これ(クレジット)があるからこそ、低炭素ビジネスに市場の資金を誘導できる。制度の議論は確かにおっしゃるとおりあるのですけれども、クレジットのない二国間支援であれば、これはODAでやるか、あるいはビジネスでやっても通常のビジネスでの判断でしかならず、広がりは起きてこない。これは明白だと思いますので、その辺を考慮した制度設計は、当然クレジット付与を前提にしてやることだと思います。
 追加なのですが、資料2の7ページ、粗鋼生産量の2020年の推計として、長期需給見通し、エネ環のものをそのまま使っておられる点です。直近、個別の名前を挙げませんけれども、鉄鋼業会社が高炉の休止等を相次いで発表されている中で、2020年の鉄鋼業の生産見通しが、本当にここに示しているような水準にまで戻っていくのか。景気循環の議論もありますけれども、構造的な課題が、鉄鋼業、あるいは10ページの紙・板紙生産などには、当然あるのではないかと思います。もちろん、鉄鋼業も今後、市場を拡大される、国内市場を拡大されるというご決意かもしれませんけれども果たして実現可能か。こうした見通しを立てる際は、業界のアンケート、意見だけではなくて、日本には優秀な金融アナリストがおりますので、そういう人たちに、内外の需給を見て、日本の各主要セクターの将来見通しはどのようなものかということも調べて、ぜひ資料として出していただきたい。我々は国の審議会ですので、国の意見を決めるときに、より客観的、公平な見通しの上に立って議論するべきだと思います。
 それから、同様なことで、同じ資料の15ページ、エネルギーミックスの評価について述べます。現在、原発の再稼働問題がありますので、将来見通しの中で明確な方向性は立てられないことは理解できますが、我々がやっている議論は、当面の目標としましてCOP19までに対策の是非論を論ずるわけですから、再稼働の方向が固まらなくても、今あるデータでどのように推計していくのかということをやらざるを得ないと思うのです。そう考えますと、先のエネ環での議論で、我々は合同会議で幾つかの選択肢として出したデータは、政治的な意図が入ったものではなくて、我々の議論の中から出てきたものだったと思います。したがって、そういうものも1つの材料として、将来エネルギーの見通し、2020年の見通しに、どのように推計できるのか、できないのかということも議論した上でないと、我々としては適正な対策を出せないのではないかと思います。
 もう1つ、最後に、対策のコストの問題です。確かに温暖化対策のコストはかかります。これも国民経済にも非常に影響するわけですけれども、対策をなぜやるかといえば、影響を削減するためです。対策のコストというのは、影響のコストとの見合いでかかってくるわけです。もちろん、温暖化の場合は1国だけの影響ではなくてグローバルに影響するわけですけれども、我々は、なぜ対策をやるのかということの意味を、影響のコストとの比較で議論するべきだと思うのです。対策コストは低いほうがいいに決まっていますけれども、対策をやらないと影響が大きくなってしまう場合はやらざるを得ない。その軽重ということは、全体のマクロの、日本経済が被る温暖化による影響の程度について一定の推計を行った上で議論することが基本だと思います。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。長谷川委員、中根委員、冨田委員の順にご発言いただきます。

○長谷川委員  
ありがとうございます。
 まず、温暖化交渉のところでございます。産業界でも従来より、いわゆるプレッジ&レビュー方式の重要性を提唱してきました。また、透明性、信頼性を確保する観点から、MRVの適切な実施が極めて重要であると主張してまいりました。これと合致します最近の気候変動の国連交渉での各国が目標、対策を自己決定して国際的にレビューする仕組み、米国が提案されましたところにEUも乗ってこられて、先進国の支持を集めているというのは、大変喜ばしいことで、ボトムアップ・アプローチが進むのは大変良いことと思うのですが、この議論に、途上国や新興国の合意が得られるように早い交渉の段階から進めていく必要があると思います。
 今後、全ての国に適用るます2020年以降の将来枠組みにおきましては、途上国や新興国の参加が大変重要でございます。排出量の多い国や能力を有する途上国や新興国からは、様々な抵抗が予測されるわけですけれども、先進国と同様、削減に取り組むことが不可欠ですので、各国の自主性を重んじ、国際的に検証する方式ということをベースに検討を進めるべきであり、こういう議論の中で日本がリーダーシップを発揮していただきたいということをお願いしたいと思います。
 加えまして、目標の設定に関しては、いろいろな議論がございますけれども一番念頭に置いていただきたいのは、やはり国益を第一に考えていただきまして、国富の流出に繋がるようなことはないように、議論をお進めいただきたいと思っております。
 以上でございます。

○浅野部会長  
ありがとうございました。中根委員、どうぞ。

○中根委員  
ありがとうございます。2020年の目標についていえば、杉山委員がいろいろご指摘なさったことは非常に理解できますし、そのとおりだと思うのです。つまり、2020年ぐらいになるとフォーキャストでやらざるを得ないという状況にある。ただ、私が非常に大事だと思っているのは、世界全体で2050年にはなるべく早く半分にしなければいけないし、さらに減らしていかなければいけないという、気候を安定化させるために実現すべき排出のカーブははっきりしているのだということについては、合意していることが大事だと思います。
 そういう意味で、2020年とか2050年にという時点での縦軸の数値だけ議論したときに、いろいろと削減の努力をしないとか、再生エネルギーを自然エネルギーに移していくという強固な意志をもっていない、それが揺らいでいるかのような誤解を与えることについては、注意しなければいけない。そういう意味で、いろいろな事情によって横軸が伸び縮みすることはあっても、実現すべきカーブは変わらないのだという合意だけでは、しっかりキープしないといけない。
 その意味で、豊田委員がご指摘なさったオーバーシュートシナリオについて申し上げると、いろいろな事情でオーバーシュートすることがあったときに、それは、大規模にマイナスカーボン、世界でマイナスカーボンにしなければいけない、その技術を世界中で大規模に導入しなければいけないことになってしまうと読むべきではないかと私は思います。
 ですから、2020年について、フォーキャストでいかざるを得ないということで目標が変わることについては現実的だと思いますが、最終的に安定化するためには、これまで議論されているカーブがあり、それが、削減が遅くなれば安定化する温度が高まり適応の費用が増えるということについては、メッセージをきちんとキープしていかないと、世界に対しても、国民に対しても、企業に対しても誤ったメッセージを与えるのではないかと考えます。横軸が伸び縮みすることがあってもカーブは変わらないのだという、そこはきちんともっていなければいけないと思います。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。冨田委員、どうぞ。

○冨田委員  
ありがとうございます。私は事前に意見提出をしておりませんでしたので、温暖化対策計画について、どなたからも指摘されていない3点について、かいつまんで申し上げたいと思います。 
 1点目は、計画策定をする際に踏まえるべき現状認識のところです。震災と原発事故を踏まえて、いろいろな対策がとられていて、この夏も節電が行われているわけですが、空調分野だけではなくて照明についても、非常時の一時的な取り組みだけではなくて当たり前の取り組みとして定着してきたところが少なくないと感じております。
 また、参考資料の中にありますが、エネルギー基本計画の見直しの議論の中では、大震災と原発事故により顕在化したこととして、例えばコージェネなどによる分散型エネルギーの有効性を取り上げて、安定供給やBCP、このような観点から導入促進をするという議論がされています。まだ震災から2年しか経っていないので、統計データの中にはまだ出てきていないということかもしれませんけれども、こうした需要側のニーズ、あるいは状況変化、こういうものを踏まえて、エネルギー政策と表裏一体となる温暖化対策計画をつくるべきだと考えます。
 2点目は、ハードの対策とソフトの対策という観点です。温暖化対策には、高効率機器を導入するといったハード対策のほかに、設備の使い方、あるいはライフスタイルを変えるといったソフトの対策もあり、両方とも重要だと思います。ソフトの対策の方は、その効果が推定しにくいところもあって、ハードの対策よりも劣位に置かれることがままあるかと思いますが、例えば、設備購入ということを考えたときに、効率のいい機器を選ぶという価値観をもってもらうのは非常に大事だと思うのです。それは、まさにソフトの対策なのではないだろうかと思うわけです。そういう、需要側の行動変容を促す手段として、例えば家庭エコ診断があると思うのですけれども、このようなソフトの対策の重要性はもっと認識されるべきではないかと思います。
 3点目は、今日配られた資料の一番最後、参考資料7の意見のところです。この中に、コージェネによるCO2 削減効果について書かれているわけですけれども、削減量の算定に使用する電気のCO2 排出係数の問題と私は理解しました。私もこの問題については、これまで地球環境部会で何度となく発言して、指摘をしてきたところであります。またその話かと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、いまだに結論を得ていない状況です。
 この問題は、コージェネに限らず系統電力の使用量を増やす温暖化対策、あるいは減らす温暖化対策、全ての対策に関係するものであります。例えば、京都議定書目標達成計画の中には、様々な対策が列記されておりますけれども、そこで使用されている削減量の算定に使われている電気の係数も様々という状態であります。温暖化対策による削減効果を適切に評価するということは、温暖化問題に立ち向かう上での基本中の基本であり、これから策定する地球温暖化対策計画では、削減量算定に使用する電気の係数についての考え方を決めていただきたいと考えます。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。大聖委員、どうぞ。

○大聖委員  
これまでご発言があった以外で、私が非常に重要と考えております点を2、3指摘させていただきたいと思います。これまでの温暖化対策でいろいろな法律、制度、それから政策、あるいは、それに関連するいろいろなインセンティブが講じられてきておりますけれども、それらがもたらすCO2 の削減の有効性が厳密に評価されていないのではないかと非常に危惧しております。そのためには、もう少し精度の高い効果、評価が必要であります。
 今後も、諸施策が講じられると思いますけれども、過去の評価のやり方をもう1度見直していただくということと、その政策の有効性を高めるためには、モニタリングとかデータのサンプリング、解析が必要だと思います。そういったものを可能にするのには、最近クラウドコンピューティングとか、ビッグデータの解析などの手法とも手がけられつつありますので、そういった手法も最大限活用していただきたいと思います。
 もう1つ、省エネ法で公示されている省エネ性能と、実際に利用されている現場での性能というのが、実は乖離しているということが常態化しています。そういったことに対しても、ぜひ注目し、その乖離を埋める技術開発の努力、それから、政策誘導が必要だと思っております。例えば車にしろ、家電もそうですし、あらゆるところに乖離が見られますので、そういうことをぜひ埋めていく必要があります。
 最後に、私共大学の立場から、人材の育成ですとか科学技術の振興にかかわる責務ということを考えておりまして、それに関連して、科学技術に関する産官学の連携、それから、先ほど来指摘があります国際貢献の取り組み、こういったものを実はセットでやるような取り組みがあるべきではないかなと。我々も、微力ですけれども、国際貢献を東アジアを中心にいろいろやっておりますけれども、そういった面でも産官学の取り組みをぜひご検討いただきたいと思います。
 それから、さっき指摘した、政策の有効性をきちんと評価するということは、結局は国民の税金を使っていろいろな政策をやるわけですから、国民への説明の透明性を高めることにもなりますので、ぜひ、そういった面にもご注目いただきたいと思います。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。井上委員、どうぞ。

○井上委員  
ありがとうございます。7月も終盤に近づいてきまして、COP19に向けて目標の見直しの議論というのを、我々が正面から直面する時期にまいりました。そういう時期になりましたので、意見書を出しているのですけれども、1点申し上げたいのと水力の話、それから二国間クレジットの話、3点申し上げたいと思います。
 1つは、モデル分析の前提条件となるようなデータが今回の資料でも配付されております。今後は一定条件の下で、まず、技術モデルによりまして2020年のCO2 排出量を見積もって、その後、経済影響分析を行った上で目標の見直しを議論するという手順になるかと思うのですが、CO2 総排出量にこだわって、数値として25%の目標を見直すことはかなり無理のある作業だと思います。
 と申しますのは、昨年のエネ環会議の中で、省エネに関しましては、杉山委員から指摘がありましたような対策、施策に伴う隠れたコスト、それからリバウンド効果といったものが加味されていなかった。それから、再エネに関しましては実現性に疑問がある数値でございました。それに続く経済影響分析モデルにつきましても4種類ございまして、分析結果も4者4様でございました。その中身の理解や議論に時間を要しましたし、共通認識も得られなかったと理解しております。
 加えまして、現在のこの原子力の再稼働の課題、温暖化対策としましては原子力の稼働率によるCO2 の排出量の増減の幅は、ご承知のとおり億トンのオーダーで変わってまいります。相当大きな幅とならざるを得ません。現状をみれば、原子力委員会の適合性審査の開始を受けまして、私共電気事業連合会は、再稼働に向けてご理解が得られますように真摯に対応しているところではございますが、当面、根拠をもってこの幅を狭めるということは、我々電気事業者にとっても、あるいは関係省庁にとっても、まして政府にとっても、いろいろな立場からでも非常に難しい道のりではないかと思います。そのため、エネルギー基本計画の議論でも近々のうちにエネルギーミックスが示される状況ではない。
 こういった状況ですので、タイトなタイムスケジュールの中、CO2 削減目標の定量的な見直しは現実的には無理ということになろうかと思います。このような状況下ですから、何人かの委員からご指摘がございましたけれども、可能な範囲で行動を目標に掲げて、これを実施していくということが現実的であって、これがすなわち責任のあるエネルギー政策の構築、25%削減目標のゼロベースの見直し、攻めの地球温暖化外交戦略という総理指示の意図するところの回答ではないかというのが意見でございます。
 それから、石田委員からございました水力の細かい改良のご指摘はごもっともでございまして、我々も小規模が維持流量発電といった、数百キロワットの開発を重ねております。ご意見を踏まえまして継続的に検討していくとともに、自主行動計画のフォローアップの中でもそういった成果を示していきたいと思います。
 最後に、二国間クレジットでございますが、松橋委員から金銭的価値をつけることによるデメリットが指摘されまして、これは全く私もそのように考えております。ただ、一方、民間の企業が手を出すには、金銭価値をもたせたインセンティブも必要であるというご意見もございました。過去の経験を率直に個人的意見として申し上げますと、クレジットにお金がついて価格が乱高下するといった状況でございますので、企業として投資、あるいは資産としてそれを会計整理していくには非常に悩ましい、難しいことでございました。したがいまして、やはり金銭的価値というのは過去の実績から難しいのではないかというのが私の個人的な意見でございます。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。安井委員、お願いいたします。

○安井委員  
ありがとうございます。前回、ご出席の委員の方をまず対象といたしまして、現状認識を共有すべきであるということを主張させていただきました。そういたしましたら、今回、大変な努力をされたようでございまして、資料2という形で予想の3倍ぐらいの量の資料が出てまいりまして、大変包括的でございますので、感謝申し上げたいと思いますが、その割には、他の委員の皆様方から余り評価されていなかったので、どうも中身がいまいちだったのかなというような気もいたします。
 先ほど来お話がございますように、2020年の話を議論しようと思いますと、ここからフォーキャストでいく以外ないのです。そうなりますと、これを延長した時にどういうカーブになるのかというのがまず重要なのですけれども、例えばいろいろな数値がございますが、そもそもこれをこのようにカーブをひねったときに、削減量といいますか、排出量の方がいいのかもしれませんが、排出量がどのぐらい下がるのかが全くわからないわけです。
 それで、その中で唯一ちゃんとパーセンテージで出ていたのが43ページの森林吸収源で、これはこのページで完結していますので、全く関係ないので、これはこれでご立派というしかないのでありますけれども、要するに、こういった形にならないと、そもそも削減量を決めることができるのかできないのか、行動計画型とか幅をもたせなければいけないのかという議論すら、多分ここからではできないという気がするのです。
 全部おやりいただくのは無理かとは思いますけれども、例えば太陽光の発電の導入量がどうなっているというのがありましたら、これがこのぐらいのカーブでいって、このぐらいのところまでの実績でいくと、大体何%減るのだという数値が脇に出るだけでもやはり実感は出てくると思うのです。
 ですから、COP19があって、多分最初のハードルはそこだと思うので、そこまでに余り時間がないときに議論を加速するということを、確かにいろいろな政治情勢等あって、私も加速するのに危機を感じておられる事務局がよくわかるのですけれども、多分次回は大丈夫だと思いますので、ぜひそういった形で数値をもう少しわかりやすい形、要するにこれをこれだけ対策をとったらこのようになるのだというようなことが数値レベルで若干分かりやすいような形に資料を作り直していただけると大変ありがたいと思います。今日までの資料の作成、大変ありがとうございました。

○浅野部会長  
 若干追加の発言をいただける余地が出てきました。
 荻本委員、末吉委員、そして松尾委員、辰巳委員、秋元委員の順にご発言をお願いいたします。

○荻本委員  
今まで出ていなかったであろう観点なのですけれども、非常に多くの人たちが温暖化対策というか低炭素化という努力をすることに関しては、やはり情報にどうやってアクセスできるかが大切だと思います。
 そのためには、山ほどいろいろな活動が行われているのですが、例えば日本政府のここのポータルに行けばいろいろなところに繋がっているというような入り口ができないかなと。1ヵ所に行けば、そこからいろいろな予算をかけてやられている活動、または今まで省エネをやった活動、そういうところに行けるような情報にたどり着けるポータルができないかなということで、それをやることで企業とか組織的な上からの対策と一人一人のモチベーションが組み合わさるのではないかと思います。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。今、環境省のホームページの中には多少そのような意識をしたものがあって、一度ご覧いただいて、どこをどう改良すればいいかというようなご意見を具体的にいただけるとありがたいと思います。

○荻本委員  
今の問題は、どうしてもまだフラグメントになっていて、カバーし切れていないのです。何が重要かというと、飲食店をやっておられる方が自分が何かやりたいと思った、そういう例は、かなりの例がバックグラウンドにないとどうしても見つからない。そういう観点です。

○浅野部会長  
末吉委員、どうぞ。

○末吉委員  
ありがとうございます。温暖化対策というのは、表でみるとCO2 をどうやって減らすかの話ですけれども、私の見方では、裏側で起きていることは、これからの競争をどういう条件で、あえていえば国際競争のフレームワークづくりが始まっていると私は感じております。ですから、これは国にとっても、地域にとっても、産業にとっても、さらにいえば個別企業にとってどう生き残っていくのかの話だと思います。
 皆さんも新聞でご覧になっていると思うのですけれども、たしか4日前の15日に、アメリカのナスダック 100指数というのに例のテスラ社が採用されました。皆さんがどういう具合に受けとめられるかですけれども、ご存じのとおりナスダック 100指数というのはアメリカのベンチャー企業の集まりで三千数社上場されていますが、そのうちの時価総額と流動性の最も高い100銘柄――これは金融は除かれています――が選ばれて100の指数の構成要員です。皆さんよくご存じのマイクロソフトとかインテルとかグーグル、あるいは中国の百度などが入っているわけですけれども、そこにテスラが入ったのです。
 しかも、私、びっくりしましたのは、テスラが入るときに当然1社落とされているわけです。それが例のオラクルなのだそうです。これは世界第2位とか第3位の非常に大きなソフトウエアの会社で、まさに今流の企業だと私は思います。ところが、テスラはわずか10年前に生まれた企業です。本当のベンチャーです。ようやく今年四半期ベースで黒字になった。でも、今の時価総額が1兆円を超えているのだそうです。わずか10歳のベンチャー企業です。私が非常に感じておりますのは、先ほど申し上げたような新しい競争のフレームワークづくりが始まっている。それは表向き温暖化対策、CO2 削減ですけれども、裏で起きているのはこのような企業のビジネスのダイナミックなトランスフォーメーションが始まっているということだと思うのです。
 一方、私が非常に関心をもっている金融の世界で1つだけ数字を申し上げますと、ある団体がこういう数字を発表しております。世界のプロが運用している資金、運用資産のうちどれほどが環境や社会的責任を考慮しながら投資しているのか。単純に金もうけのための投資ではない。これはESG投資ですとかサステナブル・インベストメントと呼んでおりますけれども、何と一昨年の末で総額で13.6兆ドルなのだそうです。100円にすると 1,360兆円です。一緒になった東証の今度の日本の株式市場のほぼ3倍を買える金額です。これは全体の運用資産の六十数兆ドルの21.8%だそうです。つまり、5分の1が投資の世界でこういうことが当たり前になっている。ヨーロッパでいくとそれが49%なのです。あのアメリカですら11.2%だそうです。実額で 3.7兆ドルです。でも、日本はわずか1兆円で全体の 0.2%しかないのです。3月末の東証の株式の外国人持ち株比率は、たしか私の記憶が正しければ28%です。そういった中にこういった年金基金などが新しい視点をもって投資先を選び始めているわけです。
 そのようなことを申し上げて、この議論のことで申し上げますと、大変いろいろな分野にわたって網羅的な対策が述べられています。でも、私が危惧するのは、基本的な方向性で真逆の議論が起きている、あるいは意見の不一致があります。私が特に感じておりますのは、長期的な成長と環境規制、CO2 抑制がどういう関係にあるのかというところで意見の対立があるように思えてならないのであります。
 かつては成長のためには環境規制は不要なのだ、環境規制のあるところに成長はないのだというような議論だったと思いますけれども、今私が申し上げたようなことは、そのようなこととどういう関係があるのでしょうか。私の見方でいけば、これからの経済成長は環境規制やCO2 対策、生物多様性を前提にした成長でないと、国際的な認知も、国際的な競争も、あるいは国際的な投資も来ないのだという流れが始まったと私は受けとめております。
 ですから、個別のいろいろな具体策も非常に重要ですけれども、この日本という国の経済成長を将来に向かって考えるときに、こういった地球社会が要求する環境規制との関係でどういう位置づけにするとか、言われているカップリングなのか、それともデカップリングなのかといった基本的なところでもっと議論して方向性を一緒にしていかないと、技術でできるできないだけの話ではないのだろうと私は思います。

○浅野部会長  
ありがとうございました。この後は、松尾委員、辰巳委員、秋元委員の順番でご発言をお願いいたします。

○松尾委員  
ありがとうございます。削減目標という意味では短期、長期という見方があって、長期は恐らく、先ほどから議論がありますように、石炭の寿命から考えますと 200年ともいわれておりますので、そういう意味では石炭をどう使っていくか、あるいは光合成等の技術が重要になってくると思います。どう進めていくかだと思います。
 ただ、2020年といいますと、本当に使える技術がどこまで、利用できるかという疑問があるわけで、その意味では2つ考えなければいけないのではないか。
 まず1つは、日本において一番大きな問題は、やはり家庭のエネルギーが増えている。これをどうしていくか。ここにつきましては、意見の中に書かれておりますけれども、やはりライフサイクル全体をもう一遍見直して、積極的な利用を進める上でも、発信だけではなくて規制の緩和も含めて進めていくことが重要ではないかということが1点でございます。
 それから、20年の目標を立てるためには、やはりエネルギー計画がなければこれは非常に難しいというのは事実でございます。ただ、立てられないというのもわかるのですけれども、今世界をみますと、先ほどアメリカのシェールガスの話がありましたが、エネルギーそのものが大きな変化をしております。そうすると、日本においてだけではなくて、日本もエネルギーをどう確保していくか。これは日本だけの議論ではなくて、エネルギーのバランスといいますか、資源のバランスはGHGの削減とあわせて世界レベルで議論をしていく必要があるのではないかと思っておりますので、ぜひその辺も配慮していただければと思います。

○浅野部会長  
ありがとうございました。辰巳委員、どうぞ。

○辰巳委員  
すみません、意見も出さず、ここのところで最後にお時間を頂戴できてありがとうございます。
 先ほど末吉委員の高尚なお話があって、私もまさにあのことは非常に重要なことだと思っております。長期的に日本の国、あるいは世界がどうなっていくかということを考えていくべきだというのは全くのベースで、私も同意します。
 それで、環境省さんも経産省さんも、家庭でのCO2 削減の具体策が今までもいろいろとられてきております。そういうのをぜひもう少し具体的に書き込んでいっていただきたいと思っておりまして、ここにあるライフサイクルのお話は、私、以前にも申し上げたかと思うのですけれども、国として取り組んでおります例えばカーボンオフセット制度とかカーボンフットプリント制度もありますもので、そのような具体的なものを通じて、私たちに商品選択に関してどうしていったらどのぐらい減るのだというような数値的なお話を入れていっていただけるといいなと思いました。
 あと、資料2で書いていただいている中で気になったことがあります。それは、12ページに貨物の減少というのが書かれていて、本当にほかのものに比べて減少の仕方が激しいのです。それでいて、かつ20年に目標値が非常に高く書かれていて、どう進めていくのかというのは、多分、国土交通省さんとかいろいろなところとの関係もあると思うのですけれども、ぜひ具体的な話が知りたいと私は思っております。
 例えば今、事業者さんなどはライフサイクルを考える折に、運用のところのシフトを変えるということを随分取り組まれていると思うのです。トラック便を鉄道便に変えようとかというお話は何度も聞いたことがあったのですが、その割には随分下を向いてしまっていると思いました。
 それで、例えばヨーロッパなどではトラックがそのまま鉄道に乗る。日本はコンテナに入れて、鉄道ではコンテナを運ぶという形がメインなのですけれども、あるところまではトラックで行って、トラックがそのまま鉄道に乗れるという方策もあり得るような気がするので、それがもうちょっと検討されてもいいのかなと思いました。
 もう1つ、全く書かれていなかったのが資料4で、気になっているのですけれども、過去よりいわれている都市のヒートアイランド対策なのです。今も、地下鉄に乗っていて地下鉄から外に出ると、都内などは道路が熱くなっていて大変だと思っているのです。だから、例えば道路の素材とか、壁素材とか、熱吸収ができるような新しい開発とかという方向にももう少し力を上げていっていただけるといいなと思っていまして、そういう具体的な話をもうちょっと書き込んでいっていただけるとわかりやすいかと思っております。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。秋元委員、どうぞ。

○秋元委員  
ちょうど言おうと思っていたところの議論があったのですけれども、目標の考え方という部分で、これまでの目標の検討でも温暖化対策した方が成長するとかといった議論が結構あったかと思います。ご意見の中でも温暖化影響被害を踏まえて検討すべきだということは、まさにそのとおりだと私も思います。ただ、その場合は、温暖化影響被害という部分の不確実性が非常に大きくて、なかなか緩和策と対等に評価できなくて、どのレベルの緩和策がいいのかがはっきりしないという問題があるかと思います。
 ただ、これまでの議論、研究からすると、例えば2℃目標というのは、温暖化影響被害と緩和策を含めて評価する課題ではないかというのが、かなり大きい議論ではないかと思います。もちろんここは割引率がどれぐらいかとか、非常に不確実性の大きい話なので、はっきりしない部分があるので、そういうところの事実の認識をしっかり共有するというのはまさに私も賛成です。
 その際に、グリーン成長をどう考えるのかということを考えたときに、1つはやはり環境の外部費用、温暖化の外部費用を内製化する。内製化した部分に関しては成長する可能性がありますので、先ほど言いましたように、不確実だけれども、原則としてはそれを内製化してその対策をとるというのが必要だろうと思います。
 もう1つは、需給ギャップが存在するときには、再エネとかいろいろなグリーンな投資を行うことによって需給ギャップを埋めてやるというのも、1つ、短期的な成長の姿はあり得るかもしれない。ただ、それは余り大きいものではなくて、短期的に需給ギャップがあるときに限ってだろうと思います。
 あとは日本の製品が海外に売れるかどうか、いい環境製品が海外に展開できるかどうかによって日本が成長できるかどうか、そして世界でウイン・ウインの関係を築けるかどうかという点があるだろうと思います。
 あと、企業レベルのCSRの部分で少し有利な部分があるかもしれない。ただ、それは大きい部分ではないというのが大きな評価になっていると思います。
 ちょっと細かいことを申し上げましたけれども、いろいろなグリーン成長の可能性があると思いますが、ばくっとただ議論するのではなくて、どういう要素があって、それがどれぐらい寄与でき得るのかということをもう少し細かく詰めていくことが重要ではないかというのが1点目です。
 もう一点だけ申し上げますと、国際的な情報について、今日少しありましたけれども、例えば米国のオバマ政権がしゃべるわけです。ただ、その国のいろいろな政治事情が非常にあって、ご承知のように、米国の場合は上院で通らないと全然うまくいかないという部分が国際交渉上は非常に強くあります。そういった政治的な制約が各国いろいろあって、政治家はパフォーマンスでいろいろ好きなことをいう場合もありますので、その本当の、奥のところを深く読まないと、字面だけを捉えると誤解してしまう。こういう資料は政府からはなかなか出しにくいかもしれませんけれども、国の事情がいろいろあるということを踏まえて我々は冷静にいろいろな数字を読まないといけないというのがもう一点。
 もう1つ、海外の話だけ申し上げますと、例えば今、英国とかドイツは、マーケットであるとかそういう中で石炭火力の比率がここ1、2年で非常に急速に伸びている。米国はシェールガスでCO2 が下がっていますけれども、ドイツや英国では石炭シフトが急速に進んできているという事情もありますので、そういう最新の情勢についてももう少し冷静に、最新のものをウオッチしていくことが重要ではないかと思います。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。村上委員と原澤委員が札を上げておられますので、恐縮ですが、1分ずつご発言ください。

○村上委員
ありがとうございます。まず、分野別の分析や予測は昨年度までの作業でかなり終わっているから、それを十分活用して欲しいということ。
 欠けているものが2つあり、1つは、横断的に対策をみて、日本国としてどういう分野の対応策が一番最適か、最も効率的かという議論が欠けている。もう1つが、今、秋元委員がおっしゃったけれども、グリーン成長です。環境対策のところは、コベネフィットとグリーン成長というのは言葉では言われていますが、具体的な分析がほとんどなされていない。私は、それが一番欠けているところではないかと思います。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございます。原澤委員どうそ。

○原澤委員  
2点。1点は、メモをお出ししたのですが、その中に質問が幾つかありまして、それに対しましては、昨日、事務局から丁寧な回答をいただきました。とできればそういった回答についても共通の情報としていただければいいのではないかと思います。
 2点目が、COP19に提出するために目標と計画を設定するべきということに賛成いたします。今日の資料1はこれまでの議論で、資料4は今回の議論ということで、議論はどこまで行っても尽きないと思うのですけれども、ある程度意見が出そろった段階でぜひ審議を加速して、COP19に間に合うような形で結論を出していただくようなスケジュールで進めていただきたいと思います。
 以上です。

○浅野部会長  
ありがとうございました。
 これまでの各委員のご意見を踏まえて、山地委員長に一言お願いいたします。

○山地委員長  
COP19への対応を議論するこの合同会合のミッションはなかなか厳しいと思っていたのですけれども、3回目になって少し希望の光というとちょっとオーバーなのですが、私には多少光がみえてきたかなと思います。
 ちょっと細かいことからいいますと、冒頭の石田先生の水力の話が私には興味深くて、ダムのかさ上げで年間 700から800億kWh増といいましたよね。 700億とか800億kWhというのは太陽電池にすると 7,000万kWから 8,000万kW分に相当しますので、すごいものです。だから、コストベネフィットをいろいろ比較してより深く検討されるとよいと思います。この発電量は井上さんがおっしゃった維持流量発電とは2桁ぐらい規模が大きいので、検討に値すると思います。
 しかし、これはスペシフィックなことで、もっと大きいのは、目標に関することです。2020年のCO2削減目標について、日本から再提案を出せというわけですけれども、そのときに数値目標の扱いについて、幅で出す、あるいは一本にまとめるという議論だったのだけれども、幅でも非常に大変だという認識が多分共有されたと思うのです。幅を出したらなぜその幅かということの説明が要るわけです。原子力の再稼働がどうなるかみえない中で、幅で出しても窮地に陥ることは目にみえているのではないか。
 一方、別の観点で言えば、長期的な数値目標は、今日オーバーシュートシナリオの話がありましたけれども、従来は2050年で世界で半減、先進国80%減という話でしたが、オーバーシュートシナリオを考えると必ずしもそう単純ではなくなっていく。そうすると、2020年のグローバル目標自体も少し変わってくるということになります。
 そもそも京都議定書の数値目標は先進国に課せられて途上国には課せられていなかったのだけれども、この間に新興国が物すごく伸びた。先ほど90年基準という話もありましたが、そのころとは全く世界が変わっている。そういうことを考えてみると、これはかなり覚悟を決めていわなければいけないのですけれども、数値目標中心の今の温暖化対策目標をもう少し行動にコミットする目標に切りかえていく、1つの流れを変える提案を日本ができるかどうかということを私は皆さんのご意見を聞きながら考えていました。
 グローバルな貢献が大事であることは共有された認識ですから、日本の行動によってグローバルにどう貢献できるかに着目する必要がある。そういう捉え方をすると、よく製造と利用のところの、製造ばかり見えて利用のところが見みえないという不満もあったのですけど、これはアカウント方式として消費に帰属させるCO2 発生量をとらえればよいわけで、国際貢献という行動のコミットなら、そこもカバーできます。かつ、日本の技術力を考えると、相当リアリティーのある提案ができる。
 これがあるから数値目標は要らないのだというつもりは私は毛頭ございませんけれども、少なくとも、行動にコミットする目標をあわせて発言するというのは非常にいい方向ではないか。私が希望の光といったのはむしろこちらのほうでございまして、今後議論を詰めていきたいと思います。きょうはどうもありがとうございました。

○浅野部会長  
もう残りの時間がなくて、今日は事務局にお答えをいただく時間がございませんが、先ほど原澤委員からのご質問に対しては事務局から丁寧なお答えをいただいたとのことでした。確かにもったいない話で、その回答は、独占しないで皆に示していただいた方がいいと思います。
 それから、安井委員からもご指摘がありましたが、今日の議論の中で山地委員長は希望の光が見えてきたとおっしゃったのですが、私は、意見の違いが少しはっきりしてきたという気もします。ただ、どこかで答えを出さなければいけないというのが我々の役割でありますから、それにむけて全力を挙げていかなくてはなるまいと思います。
 もう1つ、我が国がこの問題の外交交渉でどのようなことを、今後きちんとやっていくのだということを一体どこで決めるのだろう。我々はそれを前提にして考えなければいけないのか、我々がこのように交渉してくれといったら通るのか、その辺が新しい問題として出てきたと思っていますので、これはぜひ事務局でよく詰めていただいて、政府の中で今後どうするのだということを考えていただかないと、ここの議論がひょっとしたら行き詰ってしまうかもしれない。今のところは、きちんとCOPに備えてしかるべく計画をつくれ、といわれて、それをこの合同会議でやらなければいけないと思っているものですから、さあ、これからどうするかという、かなり難しい話になりそうだとも感じております。
 さて、以上で本日の議事を終了いたしたいと思います。事務局、よろしくお願いいたします。

○小見山環境経済室長  
ご議論どうもありがとうございました。いただいたご意見とご質問に関しては、改めてご回答等申し上げたいと思います。議事録に関しましては、事務局でとりまとめいただきまして、皆様にご確認いただきました後にホームページに掲載させていただきたいと思います。
 本日はどうもありがとうございました。

○浅野部会長  
以上で本日の議事を終了いたします。次回の日程は追ってご連絡いたします。どうもありがとうございました。

――了――