中央環境審議会 地球環境部会(第102回) 議事録

日時

平成24年3月23日 15:00~18:01

場所

サンケイプラザ4階『ホール』

議事次第

1.開会

2.議題

(1)
2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会における議論の状況について
(2)
国内排出量取引制度の課題整理に関する検討会における検討結果の報告について
(3)
今後のスケジュール
(4)
その他

3.閉会

配布資料

資料1
2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会での検討状況(中期目標に関するこれまでのWG報告の概要等)
資料2
国内排出量取引制度の課題整理に関する検討会における検討結果について
資料3
今後のスケジュール
参考資料1-1
2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会での検討方針
参考資料2
  1. ① エネルギー供給WG報告資料
  2. ② 参考資料
  3. ③ 参考資料(電源評価整理表フォーマット(案))
  4. ④ 補足説明資料
参考資料3
住宅・建築物WG報告資料
参考資料4
  1. ① 地域づくりWG報告資料
  2. ② 参考資料(土地利用・交通)
  3. ③ 参考資料(地区・街区)
  4. ④ 参考資料(物流)
参考資料5
  1. ① 低炭素ビジネスWG報告資料
  2. ② 参考資料
参考資料6
各事業者へのヒアリング議事概要及びヒアリング資料

午後 3時00分 開会

地球温暖化対策課長
それでは、定刻でございますので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会第102回会合を開始いたします。本日、委員総数36名中、既に過半数の委員にご出席いただいておりますので、定足数に達しております。また、本日の審議については、公開となっております。では、以降議事進行について、鈴木部会長にお願いいたします。

鈴木部会長
それでは、始めさせていただきます。まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

地球温暖化対策課長
いつものように、お手元に議事次第がございますが、その下半分に配付資料とございます。資料1が2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会の検討状況、資料2が国内排出量取引制度の課題整理に関する検討会における検討結果、資料3が、これもいつもの1枚紙ですが、今後のスケジュールについてと。それから資料番号はついておりませんが、浅岡委員からご提出のあった「中央環境審議会地球環境部会第102回会合」と書いてある、3月23日という日付のついたA4の1枚紙が、資料番号は打っておりませんけれども、配付されておると思います。
それから、テーブル席のみの配付になっておりますが、参考資料の1から参考資料の6まで、いずれもこれまでの議論の下敷きとなる非常に大部の資料でございますが、参考資料1、2、3、4、5、6と、それぞれございます。
また、テーブル席については、国内排出量取引制度の課題整理報告書という、報告書本体自体も置かせていただいておりますので、宜しくお願いいたします。もし不足がございましたら、事務局のほうに要望してくださるよう、お願いいたします。以上です。

鈴木部会長
宜しいでしょうか。大変大部の資料がございます。
それでは、議事に入らせていただきたいと思いますが、本日の議題は議事次第にございますように、2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会における議論の状況、これは前回、小委員会の中に作られております八つのワーキンググループのうち半分についてご報告をいただいております。残る四つのワーキンググループにつきましての検討の進行状況をご紹介いただくと、そういうことであります。
二つ目は、国内排出量取引制度の課題整理に関する検討会、これは環境省のほうでおつくりいただいていた検討会ですが、この検討結果の報告が出ており、これにつきまして、ご紹介をいただく、この二つが主たる議題でございます。その他今後のスケジュール等になっております。
では、一つ目の議題といたしまして、前回第101回の地球環境部会ですが、この後に開催されました2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会、ここで報告されましたワーキンググループの検討状況につきまして、まず事務局のほうから報告をいただき、ご議論をいただきたいと思います。

低炭素社会推進室長
それでは、資料1に基づきまして、2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会での検討状況につきまして、ご報告をさせていただきます。
おめくりいただきまして、ワーキンググループの構成が2ページ目に記載されておりますけれども、全部で八つのワーキンググループを設置をいたしまして、検討を進め、小委員会、そして地球環境部会の検討の素材を提供していくというものでございます。前回四つのワーキンググループにつきましてご報告を申し上げ、残り住宅、地域、エネルギー供給そして低炭素ビジネスの各ワーキンググループにつきまして、今回ご報告を申し上げます。
早速各ワーキンググループのとりまとめ(概要)についてご説明を申し上げます。5ページ目でございますが、今回第1といたしまして、住宅ワーキンググループの内容でございます。
続く6ページ目に、本年度の検討の概要というものが記載されております。本年度の主な検討事項というところが各記載されておりますけれども、マルの1といたしまして、将来の冷暖房需要であるとか、家電の使用などの水準につきまして、東日本大震災の影響、また近年のトレンド等をもとに見直しを行ったというのが大きな作業になってございます。
真ん中のところで、低炭素社会における住宅建築物像というものを記載しておりますが、住宅建築物につきましては、寿命が非常に長いというところがございますので、2050年でも現在の施策に基づくものが残るということがございますので、2050年までにストック平均でCO2ゼロエミッションを目指していくということをターゲットにしつつ、また2ポツといたしまして、同時に生活の質の向上を目指すということで、健康性、遮音性などの高い住宅になる。またマルの3といたしまして、こういった外皮性能を向上させていくということ、自立・分散型のエネルギーを普及させていくこと、こういったものは災害に対する強靭性の向上にもつながるということですので、QOLの向上もあわせて目指していくということが、目指すべき姿というものでございます。
そして、ワーキンググループのまとめといたしましては、三つ記載されておりますけれども、特に3ポツでございますけれども、これら目標達成に向けては、規制また経済支援、こういったものを適切に組み合わせた投資が必須であるというところでございます。
具体的なエネルギーの消費量の推計などが7ページ目に記載されておりますけれども、こういったものを後押しするために、どのような施策が必要なのかということを8ページ目、9ページ目にロードマップということで整理をしております。
8ページ目につきましては、新築住宅の低炭素化、既築住宅の低炭素化、そしてそれらに共通する施策という、大きく三つに分けて2020年、30年そして50年に向けてのロードマップを整理しております。新築住宅、既築住宅につきましては、それぞれ大まかな施策の内容といたしましては左に欄が設けておりますけれども、性能を表示していくということ、また環境水準などの規制を導入していくというところが、大きなポイントとなっておりまして、施策のケース分けによって導入の時期、また強度が違っているというロードマップになっております。
また既築の住宅につきましては、住んでいる方々が対応できるようにということで、住宅の温室効果ガスの診断を行っていくというような内容が、重要な施策として記載されています。
また、業務部門につきましても同様に新築・既築の分け、あと共通部門ということで、対策設備の低炭素化についての主な施策を、ロードマップとして整理をしたというものでございます。
続きまして、低炭素ビジネスワーキンググループの議論というものでございます。こちらにつきましては、昨年度はものづくりワーキンググループという形で検討を進めてきたというものでございますけれども、この度は低炭素ビジネスワーキンググループということで改組いたしまして、検討をさらに深めてきたというものでございます。
そういった面でいきますと、追加的視点ということで、四つほど新たな視点を加えて検討を深めてきたということでございますが、1番目といたしましては、昨年度のワーキンググループ提言、これをリバイスしたというものから始まりまして、新たな低炭素ビジネスの可能性を検討するということで、ものづくりに加えましてサービスも提供していくという、新たな形を示しているということ。
また、マルの3といたしまして、震災を踏まえてSustainability/Smart/Safety & Securityという、こういった三つの「S」を念頭に置いての検討を深め、プロセスイノベーションによる省エネの可能性の数値をヒアリング等でリバイスをしてきたというものでございます。
その下、低炭素ビジネスの定義と検討範囲というところがございますけれども、実際の製造工程であるプロセスイノベーション、さらに製品を使うということによる低炭素化、また関連のイノベーションといたしまして、これらの低炭素化社会に間接的に寄与する素材、サービスを提供していく、こういった新たなビジネスの可能性を追及したというもの。さらに低炭素ビジネスを下支えする企業といたしまして、金融、教育というものの重要性について検討を深めてきたというものでございます。
おめくりいただきまして、真ん中のページ、12ページ目でございますが、低炭素型の投資を進めていくということでいきますと、実際の低炭素化を進める左のほうに記載されております再生可能エネルギーなどの事業、こういったものを進めるということも重要でありますけれども、それを支えるための金融機関、また年金の運用など、こういった社会全体を有機的につなげていくというパッケージとしての取組の重要性を検討したところでございます。
また、13ページ目につきましては、製造工程によって省エネがどれぐらい対応可能なのかということにつきまして、業界団体のヒアリングを通じまして、活動量の将来見通し、また省エネの可能量について推計を行ったというものでございます。
ただし、ここに記載されておりますのが暫定値ということでございまして、追加的なヒアリングもさせていただいておるというところでございますので、今後、確定に向けて作業を進めていきたいというふうには考えておりますし、右の表につきましては素材4業種の主だった取組、それに加えまして分野横断技術といたしまして、中小企業も含めた省エネ技術がどれぐらい対応可能なのかということも検討を深めたというものでございます。
続くページにつきましては、低炭素ビジネスの構築に当たりまして、具体的な施策の提案というところでございます。震災また原発事故なども踏まえまして、需要家の意識が変化をしてきているということでございますので、それらの変化をとらえたビジネスの内容、またそれを下支えするための施策の具体例を整理をし、提示をしております。
まとめのところにございますように、こういった意識の変革ということが見られますので、これらをとらえ、さらに発展させていく可能性があるということでございますので、政府といたしましても、これらを支えるための施策を打っていく必要があるというまとめ。また、中ほどでございますけれども、持続的に民間投資が行われるような仕組み、金融スキームの構築が必要であり、そういったものが持続的に生み出されるためには、政府が中長期的に安定した政策を掲示していくという必要性が指摘されたところでございます。
続きまして、地域ワーキングのとりまとめでございます。
地域ワーキンググループの検討概要(1)といたしまして、昨年度からの作業、また震災を踏まえての新たな視点が整理されております。昨年まで行ってきておりました作業といたしましては、モーダルシフトの促進、また土地利用の集約化、コンパクトシティへの転換ということに加えまして、地域エネルギーの活用をいかにしていくのかということ、こういった点を深めてきたところでございます。
これに加えまして、今回の震災を踏まえ、土地利用の集約化という方向性につきましては、低炭素化のみならず防災、減災という視点であるとか、長期的な温暖化影響への適応への備え、こういった視点も重要であるということ。
さらに、地域において対策議論を検討するに当たりましては、防災、減災またエネルギーの確保ということを統合的に考えていく必要があるという視点を新たに入れまして、低炭素地域づくりのための七つの方策を提示をしてきたというのが今回のワーキンググループの特色でございまして。例えば、各主体が長期を見据えた魅力ある地域像を共有し、地域のエネルギーの確保、また交通政策、こういったものを深めていくということが方策としてとりまとめたところでございます。
ページの中ほどにあります17ページでございますけれども、地域づくりワーキングの検討の概要(2)といたしまして、今申し上げました七つの方策のうち、いかに計画的な対策をとるかというところで、温暖化対策、法に基づく地域の計画の中にエネルギー政策などの対応を盛り込んでいくという方策についても、検討をして提示をしてきたというところでございますし、また、中小の自治体におきましても、対応検討ができるようにということで、次のページで、(3)でございますけれども、具体的な検討ができる、素材を与えるということから、地区・街区での低炭素化がどれぐらい効果が発揮できるのかということを推計するツールの開発も行ってきているところでございまして、こういったものを活用していただきながら、地域での対話を進め、具体的な対応を行っていただく道筋をつけてきたというものでございます。
続く(4)のページでございますが、具体的な対策・施策のメニューというものを表にまとめておりますけれども、大きく分野といたしましては、土地利用・交通分野が一つ、そして地区・街区での取組、低炭素物流分野という、この三つに分類をしながら、対策の強度に応じまして低位、中位、高位ということで、具体的な施策のメニューの整理をしたというものでございます。
例えば、土地利用・交通分野でいきますと、高位の分野でいきますと、都市中心部への自動車の流入規制なども有効であるということであるとか、あと地区・街区の分野でいきますと、一番最後の部分でございますが、地域の熱供給を供給地域におけるエネルギー需要家の接続検討義務、こういったものを設けることも有効であろうということをまとめたところでございます。
その下、5ポツまとめといたしまして、大きく四つにとりまとめておりますけれども、その中でも特に低炭素型の地域をつくっていくということのためには、大胆な対策・施策による後押しが必要だということで、具体的な施策の明示の重要性をうたっているというところでございます。
続きまして、エネルギー供給ワーキングのとりまとめでございます。こちらにつきましては、火力発電をはじめとしまして、コジェネレーションなどの分散型電源、そして再生可能エネルギーについて議論を深めたというものでございます。
ページの中ほどにありますページ21ページ目でございますけれども、火力発電につきましては、将来的な省エネの進展というものによって、量的には減少の方向だということでは予測はされておりますけれども、他方でSafety+3Eという観点から考えますと、電力システムの安定運用など、重要な役割を果たし続けるということで、不可欠な電源として位置づけられるということではございます。
そういった中で、どのような対策が必要なのかということが、二つ目のマルに整理されておりますけれども、マルの1といたしましては、火力発電については導入の際にはその時点での最新の高効率な設備を導入する。また、将来的にCO2を貯蔵するということも考えられますので、CCSへの備えというところも重要だということでございます。これらを考え合わせてどのような対策によって、化石燃料のクリーン化を進めるのかということでございますが、案1から案3などのケースを設定をしつつ、議論を深めたというものでございます。
一方コジェネレーションなどの分散型電源につきましては、マルの1といたしまして、熱需要が存在し、省エネ・省CO2が見込まれる需要家に対しては積極的に導入すべきものだということでございます。そういったものを後押しするという面でいきますと、その下マルの2でございますけれども、さまざまな制約がございますので、これらをどのように乗り越えていくのかということの検討の重要性が指摘をされ、具体的な方策についてワーキンググループでも検討を深めたというものでございます。
また、続く真ん中にありますページの22でございますけれども、再生可能エネルギーの導入見込量についても検討を深めたというものでございます。こちらにつきましては、大きく2種類に分類をしながら検討を深めたというところで、導入する地点によってコストが大きく変わり得る再生可能エネルギー、例えば小水力であるとか、地熱、バイオマス、風力、こういったものと、あと設置場所によってそれほど大きなコストの変動がない太陽光の二つに分けて検討を進めたというものであります。
こちらにつきましては、施策の強度に応じて低位、中位、高位というふうに分けておりますけども、太陽光などコストの際、設置場所に応じてのコストの変動がないものにつきましては、支援レベルを事業回収の見込み、IRRで示しながら低位では6%、中位では8%、上位では10%程度の支援があった場合には、どれぐらい導入が促進されるのかということを中心に検討をしましたし、また中小水力、風力などにつきましては、震災前に想定をされていたものから2050年断面での導入ポテンシャルを、最大限に発揮できるような支援策を考えての2020年、30年の断面というところで、導入量を推計したというものでございます。その下のグラフには、その結果が2020年、30年という形で記載されております。
また、これら再生可能エネルギーを導入するための負担、また系統への影響というものも検討しておりまして、中ほどページの23ページ目でございますけれども、特に系統への影響につきましては、ページの右のほうでございますけれども、太陽光発電、そして風力発電の導入量が高位のケースにおける2030年の系統の運用というものを想定をし、どれぐらい入り得るのかというのを検討したというものでございまして。右下のグラフを見ていただきますと、全国で見ても、無対策時では7.1%分は再生可能電源の出力抑制をしなければいけないということでありますけれども、需要を供給の状況に合わせるなど、あとは既存の揚水発電を使うというようなことによって、その割合を大きく引き下げることができるということも検証ができたところでございます。
また、続くページ、真ん中の24ページ目でございますけれども、どのような支援策が考えられるのか、また経済的以外の障壁もさまざま考えられるというところで、それらを洗い出した上で、太陽光の考え方を示したというのがページの右の分でございます。
以上が、ワーキンググループ残りの四つの部分でございまして、それ以降が前回ご報告したものを、参考としておつけをしてございます。
若干飛びますが、中ほどにありますページの47ページ目以降が、小委員会におきまして、それぞれワーキンググループから報告があった際の、ご意見を整理したものでございます。事務局といたしましては、これらのご意見また本日の部会でのご議論を踏まえまして、これらワーキンググループの素材を統合いたしまして、日本全体のCO2の計算などを行い、また議論を深めていただきたいというふうに思っております。
また、ページが飛びますが、中ほどにあります93ページ目まで飛んでいただければと思います。こちらにはエネルギー需要サイドの事業者へのヒアリング結果、概要というものがつけてございまして、こちらは中央環境審議会での温暖化対策の検討と並行いたしまして、総合エネルギー調査会において、エネルギー政策が検討されているということでございますので、両審議会の委員、またこの後、検討を行います経済モデルを用いた分析を行っている研究機関の方々の、合同でのヒアリングということで行わせていただいたものでございます。
おめくりいただきまして、ヒアリング概要というものが中ほど94ページ目というものが書いてあるものでございますけれども。ヒアリング先といたしましては、8団体にお話を伺ったというものでございまして、産業分野、運輸分野、そして民生部門ということでお話を伺っております。その概要がページ中ほど3ポツから結果概要が記載しております。
まず産業部門につきましては、活動量の将来見通し、そして省エネルギー対策の導入の可能性について、お話を伺ったというものでございます。こちらにつきましては環境省、経産省のほうでそれら見込みなどについて試算をお示しし、業界に見ていただきながらヒアリングを行ったというものでございます。
まず(1)といたしましてセメント業界については、活動量の見込みについては違和感がないというお話もございましたし、(2)といたしまして鉄鋼業につきましては成長率の設定の一つであります成長ケースにつきましては、活動量の見込みについては違和感がないということではございます。また、経済成長の慎重ケースにつきましては、この1.2億トンと同様の見込みになるというコメントもあったということでございまして、現在輸出の需要がどれぐらい考えられるのか、またどのような製品が輸出される見込みなどかなど、さらに詳細なお話を伺っているところでございます。
(3)といたしまして、製紙業につきましては、2020年につきましては、活動量の違和感はないということではありましたが、2030年の推計は業界としては行っていないということで、コメントはできないという旨のお話がございました。
続くページに(4)といたしまして、化学業ということでございます。こちらにつきましては、過去の公式のデータからGDPの伸びとエチレンの内需というのがほぼ連動しているということとのお話であったわけですが、省庁のほうから提示をしたものについてはGDPは伸びるけれども、活動量については減少しているというものだったので、前提の置き方がわからないと判断ができないというようなお話もございましたので、こちらについても詳細を詰めているというところでございます。
さらに省エネルギーがどのような対策が考えられるかということにつきましては、(5)についてであります。こちらにつきましても各業界の方々からは、従来の省エネ努力の結果といたしまして、世界最高水準のエネルギー効率を達成しているというようなお話、また各省庁のほうで提示をいたしました今後の省エネルギー対策のリストアップについても違和感がないというお話がございました。今後の取組といたしましては、設備の更新のタイミングなどを見ながら、それが進んでいくというお話もございます。
以上が、産業分野でございますけれども、運輸部門につきましては、燃費向上などの単体対策に加えまして、交通流対策であるとか、エコドライブなどの総合的な対策が不可欠だというご指摘もございましたし、また民生分野といたしまして、建築物のお話の部分でございますが、特に既築対策が重要だというようなお話もあったというところでございまして、これらを踏まえながら、将来の活動量の設定を行っていくというものでございます。
以上が、ヒアリングの概要というものでございますが、続く真ん中のページでいきますと、98からが2013年以降の小委員会におきまして、ワーキンググループの報告を受けたわけでございますが、特に中期目標に関して、どのような形になるのかというものをとりまとめたものでございます。
中ほどの97ページの部分でございますが、こちらが中期目標に関して中環審からエネルギー・環境会議に、最終的には選択肢の原案を報告するということにはなるわけでございますが、その構成のイメージの素案をお示ししたものでございます。
中期目標につきましては、2020年、そして2030年というものでございます。そして中身といたしましては大きく分けますと三つのパーツからなろうかというふうに思っておりまして、国内排出削減、そして吸収源対策、国際貢献というパーツになっております。
中ほど赤い部分につきましては、国内排出削減、こちらは小委員会のほうで選択肢の素案を議論いたしまして、地球環境部会のほうに報告をし、部会におきましては国内排出削減も含めました全体像を議論し、素案をつくっていただく、原案をつくっていただくという流れになろうかと思っております。
また、吸収源対策につきましては、現在農水省のほうの審議会において検討が進められているということでございますので、その内容について中環審の報告をいただくということで、さらに深めていただければと思っておりますし、また国際貢献につきましては、2国間オフセット・クレジット制度についての検討内容、またCDMの活用方策についての内容について報告をさせていただき、議論をいただきたいというふうに思っておりまして、その時期につきましては吸収源対策、国際貢献につきましては4月の部会で議論をいただきたいというふうに思っております。
以上が、最終的な報告の構成イメージというものでございますけれども、中ほどの99ページに国内排出削減のケースごとの主な施策ということで、まとめたものでございます。先ほども住宅、産業、エネルギー供給ということでお話ししましたし、また前回自動車についてもご報告をいたしまして、そこの資料に記載されたものを低位ケース、中位ケース、高位ケースということで分類したものでございます。
主だったものを書いておりますので、このほか、さまざまなものがございますけれども、イメージとしてはこのようなものが対策として考えられるというものでございますし、続く100ページ目以降には、それぞれの分野ごとに2020年、30年の対策の導入量、そしてそれを支えるための施策をとりまとめているものが続いております。
また、101ページ目につきましては、それらの対策をとった場合の、エネルギー消費量の予測というものを、これは自動車分野でございますがつけておりまして、固定ケースに比べて低位、中位、高位の対策をとった場合に、どれほどのエネルギー消費になるのかというものを記載しております。
同様な構成といたしまして、102ページ目以降に住宅建築物分野、そして105ページ目からが産業分野、そして107ページ目からがエネルギー供給、そしてここでは再エネ関連部分に絞っておりますが、そのほか化石燃料のクリーン化なども、実際のワーキンググループの資料にはございますけれども、こういったものをとりまとめております。
続く110ページ目につきましてですが、これらワーキンググループから示されました検討の素材をもとに、今後事務局のほうで作業させていただきまして、ここに掲げてございますような素材をさらに提供させていただきながら、検討をいただければというふうに思っております。
まず一つ目といたしましては、温室効果ガス排出量算出をし、それをもとに議論をいただくというものでございまして、これら見ていただきますと選択肢ごとにモデルを使いながら計算をいたしまして、エネルギーミックスの状況、また電力のCO2の排出係数を算出いたしまして、国全体、さらに部門ごとの温室効果ガスの排出量を算出するということを考えてございます。その際に必要となります原子力発電の選択肢につきましては、現在、同時並行で議論を進められております総合資源エネルギー調査会での議論が行われておりますので、それを踏まえての作業を実施したいというふうに考えております。
これらエネルギーミックスなどの計算につきましては、総合エネルギー調でもモデルを使った計算というものが予定されておりまして、日本エネルギー経済研究所のモデルを使っての計算ということでありますし、また中立性、客観性を担保するために、この中環審でお示ししたいと思っております国立環境研究所のモデルと比較検討するという手続になっております。
二つ目といたしましては、選択肢の議論に資するデータの算出というところでございます。こちらにつきましては、例えばこの選択肢を実現するためにどれぐらいの追加費用が必要なのか、また化石燃料を節約できるという場合などがございますので、回避可能な損失はどれぐらいあるのかなどについてデータを算出し、ご議論をいただければと思っております。
三つ目といたしましては、経済モデルによるさらなる分析ということでございまして、選択肢ごとに経済的な効果、また影響、家計への負担などを計算していきたいというふうに思っております。現時点でいきますと、総合エネ調と同種のモデル、同じモデルを使っていきたいというふうに考えておりまして、大阪大学、慶應大学、国環研、地球環境産業技術研究機構の各研究機関に計算をお願いしていきたいというふうに思っております。ただ、モデルの限界というようなものも当然ございますので、それに留意しつつ、解釈、表現ぶりについては気をつけていきたいというふうには考えてございます。
以上が、今後の作業についてのご紹介でございますが、具体的にどのような計算モデルを使うのかというものが、112ページ目以降に記載されてございます。中ほどのページ番号112ページにつきましては、前回、一昨年の末に中間整理を行いました中長期ロードマップでの手順を示してございますけれども、こちらにつきましてもワーキンググループを設置し、素材を検討いただいた上で、必要な対策・施策について3ケースに分けて、計算を行ってきたというものでございます。
具体的には、国立環境研究所のAIMモデルを使いながらエネルギー消費量、温室効果ガスの排出量、そして対策導入のための必要な費用などを分析を行い、それらを議論いただいて、最終的に中間的なとりまとめを行ってきたというのが、前回の流れになっております。
今回も同様のことを考えておりますが、113ページ目、中ほどのページ番号でございますが、こちらにつきましてもワーキンググループからの素材を活用しつつ、小委員会また部会での議論を踏まえ、AIMモデル、技術モデルを使っての計算ということで、主なアウトプットとしましては、中ほどに黒ポツで四つ例示が書いておりますけれども、このようなものをお示ししながら、さらに議論を深めていただければと思っております。
その後ろがモデルの概要や、前回のアウトプットなどをくっつけておりますので、後ほどご参考にしていただければと思います。
最後に、これらの素材資料についての扱いについて、123ページ以降に、小委員会で事務局からお配りさせていただいた情報が書いてございます。特に系統の対策費用であるとか、固定価格買取制度についての議論というものは、中長期ロードマップの中間整理から議論を深めてきたというものでございますが、小委員会、各ワーキンググループから出されてきたものにつきましては、小委員会での議論をいただくための素材を提供したというものであるという扱いを明示させていただいたという資料でございます。資料1は、以上でございます。

鈴木部会長
ありがとうございました。小委員会のワーキンググループにおける検討の結果の、概要をお話しいただいたということになりますが。これでワーキンググループ、八つございますワーキンググループのそれぞれにつきまして、前回と今回で一応お話を伺い、まだ進行中といいますか、いろいろこれから未確定の部分を確定させていくとか、精度をある意味では高めていっていただくというようなことになろうかと思いますが。
この段階で四つのワーキンググループの主査をなさいました先生の内、今日はお二人、こちらのほうにお見えいただいております。低炭素ビジネスワーキンググループの座長をされました藤井委員、それからエネルギー供給ワーキンググループのほうの座長をされました大塚委員がおいでですので、まず何か補足あるいは、とりまとめにあってご苦労なさった点などのご紹介など、もしお話がありましたらお願いしたいと思います。

藤井委員
低炭素ビジネスワーキンググループの藤井でございます。補足というか、一つはもちろん、この温暖化対応あるいはエネルギー対応というのは、企業、産業部門にとってコストの増加にはなるわけですけれども、このワーキングで取り上げましたように、産業全体で見れば、新しい投資機会、市場の拡大、ということにもつながるということで、かつその市場というのは我が国だけではなくて、特に中国、アジアという、既に多くの企業がアジアにおいて環境ビジネスの展開をされておると思いますが、そういった形で我が国の経済今後2020年、30年、50年にらんでいく中で、産業の一つの成長源の柱になっていくと、そんなような理解でこの検討をまとめました。それを順調に進めていくためにも、適正な政策の支援、プラスここで取り上げました金融、お金が財政だけではなくて、民間の、とりわけ年金資金の、年金資金はAIJのようにだまされることを思えば、しっかりとしたこうした、将来我が国だけじゃなく、地球全体の低炭素化に資する形の投資に安定的な形でお金が流れていくような仕組みづくり、これは金融界の力、ご協力が大変要るわけですけれども、そういうものが必要であると、ここで知恵が問われるということだと思います。以上でございます。

鈴木部会長
では、大塚委員。

大塚委員
先ほどご説明いただいたとおりでございますけども、スライド22についてだけちょっと申し上げさせていただきますが。これは再生可能エネルギーの導入による便益と負担を定量的に打ち出したものでございまして、定量的に検証して数字を積み上げたということでございます。
メリットとしては、その上のほうに書いてあるように温室効果ガスの削減だけじゃなく、産業国際競争力の強化とか、雇用創出とか、エネルギーの需給率向上、それから先ほど藤井委員がおっしゃった化石燃料調達による資金流出抑制効果などが考えられます。
負担については、買取制度についての負担に関しては、この左の下のほう書いてあるようなことが高位、中位、低位それぞれについて出てくるということで。負担が大きくなれば導入率も増えるということと、負担が低ければ導入率も低くなるという、その中で選択をしていく必要があるということでございます。この数字は、我が国の産業連関表を使って打ち出したものでございます。
それから、参考資料の2-4というのがございまして、こちらでエネルギー供給ワーキンググループの補足をしておりますが、本当にごく簡単にだけ申し上げさせていただきますけども。2ページでございますけども、住宅用の太陽光発電が2020年度までに1,400万キロワットを設置するという見通しは過大かどうかということが、まず問題となりますが、これについては従来の見通しよりもむしろ少ない、私もあまり過大なことを申し上げて、後で国民に批判されるのも嫌なものですから、できるだけかたくというふうに申し上げているわけですけれども、精査をしておりまして、従来の数字よりもむしろ低くしているということを、申し上げておきたいところでございます。
それから、7ページでございますが、太陽光の支援策の一つとして固定価格買取制度の検討結果が示されているけども、諸外国の例であって、日本での検討が不足しているかということでございますが、これは我が国の太陽光発電がどうなるかということについて精査をしておりまして、先ほど申し上げたように我が国の産業連関表を使っているということを申し上げておきたいと思います。
それから13ページですけども、系統への影響についてでございますけども、2030年時点までに想定される影響についての分析を定量的に行ったということでございます。その二つ目のマルにありますように、ブロック単位での一体運用という、東日本を例えば送電線について一体で運用するということとか、電気自動車とかヒートポンプ式の供給などの活用によって、需要のほうを能動化して、そちらのほうであまり需要を過大にしないようにしていただくということ。それから揚水発電を活用して、これも需要はあまりオープンにしないということにつながるわけですけども。
さらに最終的には必要に応じては再生可能エネルギーをもし非常に増えてしまう、余計になってしまうという場合には、出力抑制も考えるということで、できるだけ蓄電池を使わないで系統対策費用を少なくする。そうは言っても、その一番下にあるようなぐらいはかかるわけですけども、少なくするということをねらっているということでございます。以上でございます。

鈴木部会長
ありがとうございました。あと二つのワーキンググループの座長の方は、こちらの委員ではありませんが、このワーキンググループに参加された先生方、あるいは西岡先生、全体の小委員会の座長として、何かこの段階でご発言がありましたら。

西岡委員
先回もお話ししましたし、申し上げることはございません。今の段階だと選択肢を計算するための道具立て、考え方というのをちょうど整理したところでございますので、ぜひこの委員会、あるいはもっといろいろな面から、どういう観点がこれから要るのだろうかということをぜひご指摘いただき、それに応じてまた、その選択肢をつくるための道具立ても変えなきゃいけないものですから、是非インプットをお願いしたいと思います。

鈴木部会長
今、お話がありましたように、あるいは先ほど今後のスケジュールでもご紹介ありまして、委員の方々は皆様ご承知のように、この夏に一応エネルギー・環境会議のほうで、国民に対して選択肢を準備される。それに向けて環境側としてはこの中央環境審議会から意見を上げていく。資源エネルギー調査会のほうからも上がっていく。原子力委員会のほうからも上がっていくという、そういう形で検討されることになりますが。後ほど、そのスケジュール等の議論があろうかと思いますが、3月、4月いっぱいぐらいでできましたら、環境側としてはある程度の形を整えることができればと、そんなふうな計画で考えているわけであります。
やはり、わかりやすい形で、見えやすいものをきっちりとつくっていくことが必要だろうと思いますが、前回、今回こういう形で検討小委員会、ワーキンググループのお話を伺ったところで、あとこの件に関しましては1時間ぐらい時間がとってあります。委員の方々から、いろいろとご意見あるいはご質問もあろうかと思いますし、コメントをいただければと思います。また名札を立てていただければ、私のほうから指名させていただきます。横山委員から。

横山委員
ありがとうございます。小委員会でも発言していますので、簡潔に述べたいと思います。2点あります。1点目は、ワーキンググループの連携ということについてです。
車の利用ということで、地域ワーキンググループのほうの報告書を見ると、できるだけ要らない車というか、車の利用を極力減らす、あるいは車の要らない都市づくりという観点が色濃く出ているんですけれども、自動車ワーキンググループのほうは、どうもそういう観点が少ないと思います。
二つのワーキンググループが連携していると、もう少し変わった内容になったのではないかという気もします。例えば、今度の大震災でも車で逃げようとして、大渋滞に巻き込まれて逃げ切れなかったというようなケースが、いっぱい出ているわけです。そういうのも考えていくと、何でも安易に車を利用しようというものが、そういう雰囲気というものがあったんだというふうに思います。
この部会でも、今後の温暖化対策ということの中で、地震などの災害に強く、国民の安全・安心につながるものになっているかという観点から議論すべきだということになっていると思うんですが、そういうことからも車をどうするかというのは、もう少し議論していったほうがいいんではないかと思います。
それから2点目は、原子力についてなんですけれども、エネルギー供給ワーキンググループでも原子力については、ほとんど議論してこなかったということですが、原子力をどうするんだ、2020年、2050年にどう原子力を考えるのかという観点がないと、なかなか具体的な議論が進まないというふうに思います。
総合資源エネルギー調査会の検討結果を待ってこちらの部会で議論するということですが、やっぱり、こちらの部会としても原子力の扱いについてはきちんと議論をして、結論を出していくべきではないかと思います。総合資源エネルギー調査会の結論を、そのまま受けてという形だけはとらないでいただきたいというふうに思います。以上です。

三橋委員
資料1の110ページ、今後の作業予定のところでちょっと問題を指摘しておきたい点があります。経済モデルによるさらなる分析というところです。この点については、小委員会でも発言をしましたが、この本会議、環境審議会の地球部会という本会議で、改めて強調しておきたいと思っています。
それは、経済モデルを使ってGHG、温室効果ガスの削減が経済活動や景気、家計にどのような影響を与えるかといったような試算は、一見説得力があるように見えますが、その実は大きな落とし穴があるということを指摘しておきたいと思います。
マクロ経済モデルは一般均衡理論を前提にしているわけです。需要側の消費者は経済合理主義だけで行動する。供給側の企業は、利益極大化を目指して行動する。この両者が市場で出会うことにより、唯一の均衡点、価格と数量が決まるという大前提です。
この前提の上で過去のトレンドをなぞらえる形で、最小二乗法を使って消費関数や設備投資関数をつくるという形で、マクロモデルができています。だから、このようなやり方でつくった消費関数というのは、当然エネルギー多消費型の消費行動が前提になっているし、設備投資関数もエネルギー多消費型の産業構造を前提にしてつくられているわけです。
モデル上では、温室効果ガス、GHGの25%削減や80%削減を達成するための手段として環境税や、外国からの排出権購入が外生変数になります。これらの外生変数は景気にマイナスとして働き、個人消費や企業行動を抑制し、可処分所得を低下させるという結論が出ます。マクロ経済モデルの性格上、そういう結果が出るようにつくられているので、既存のマクロモデルを使う限り、温室効果ガス削減のための政府の政策は、家計を圧迫する結果になるわけです。これは計算しなくても明らかなことです。
したがって、幾つかの専門のマクロ経済を研究している研究所にお願いしても影響の度合いが違うだけで結果は同じです。家計にプラスになるという結論はでてきません。13年以降の対策を考える場合には、経済構造やエネルギー構成比、さらに人口状況などが既存のマクロモデルを作った時代と比べ、様変わりしてくるわけです。
13年以降を考える場合、既存のマクロモデルと離れて、25%削減、80%削減を目指すことが経済成長を高め、可処分所得を引き上げ、家計にプラスになる、そういう新しいモデルを前提にして考える必要があります。過去のトレンドを反映させたこれまでの経済モデルを使って計算すれば、温室効果ガスの削減対策は経済活動にマイナス効果として働いて、家計の負担を増大させていくというネガティブな結果しか得られません。
モデルを使って、温暖化対策は、国民にとって好ましくないという被害者意識を植え付け、それ故にいかに被害を少なくするのかが必要なのだ、という印象を国民に与えるような計算をいくらしても意味がないと私は思います。
温室効果ガスの25%削減、80%削減が経済活動を活発化させ、経済成長を高め、可処分所得を引き上げ、家計を豊かにする、そういう新しい経済モデルを前提にして、2050年の日本の姿を描くべきでだと思います。
これまで政府は、25%削減すると、家計の負担はどのぐらい増えるのかという発想でしか考えてきませんでした。政府がそのような被害者意識を持って、どうして2050年のGHGの削減について国民に協力を求めようとするのか、私には理解できません。
むしろ、この際、過去のトレンドに引きずられたマクロ経済モデルを離れて、25%削減、80%削減が中長期的に見て、経済にプラスに働き、可処分所得を増加させ、家計を豊かにするという前向きの政策シナリオが必要だと思います。

原澤委員
2点。1点はコメントで1点は質問です。
地域ワーキングの15ページ、これまでも議論があったように、地域において防災・減災やエネルギー確保、地域の低炭素化とあわせて総合的に考えていく。これやっぱり非常に重要なポイントになっているかと思います。
その点で、地域の安全・安心という面で、温暖化の影響ということで、これは16ページの上から2行目で、「中長期的に生じる気候変動影響」とあるんですが、もう温暖化の影響は起きているというのが共通認識だと思いますので、中長期ではなくて、もう今起きているということだと思います。
これに関連して、各主体が40年先の長期を見据えた魅力ある地域像を共有ということで、これも非常に重要だと思うんですけども、ただ、地方自治体の環境基本計画、あるいは温暖化対策なんか見ていますと、やはり5年、10年先を想定して計画をつくるのがやっとということですので、こういった新しい考え方を積極的に政府で取り上げて、地方もより低炭素の地域づくりに計画あるいは実施ができるような形の、本格的な施策を打っていただきたいというのが1点目のコメントです。
もう1点は質問なんですが、ヒアリングの結果で94ページ、セメント業、鉄鋼業、2020、2030年もほぼ同じような生産量を維持するということが書かれているわけなんですけども、多分これは今後、いろいろ新興国ですとかアジア途上国がいろいろな変動もあったりするのも考慮されているのかどうか、あるいはもしされていないとすると、この辺の根拠みたいなものがもしあれば、教えていただきたいのが1点で。
その関係で「違和感がない」というキーワードが入っているんですけども、この違和感がないというのをちょっとどう理解したらいいのか、これは純粋な質問ということです。以上です。


中上委員
ありがとうございます。私からは二つほど。
一つは、低炭素ビジネスで小委員会のほうにも出ましたので、そういう発言をした覚えがあるんですが、低炭素ビジネスという切り口にしますと、去年のものづくりとはちょっとイメージが違ってとらえられるかもしれませんので、是非省エネビジネスというものをもう少し深掘りしていただきたい。
例えばESCOというのは全く出てこないわけです。既存のストック改修をしなきゃいけないとあれほど言っておきながら、ESCOが一つも出てこないというのは、低炭素ビジネスというのはどう考えるのかということで、やっぱり若干疑問を持たざるを得ないので、ご検討をお願いしたい。
そういう流れからすると、見える化に関わるいろんなIT絡みのビジネスとか、まだ芽は小さいかもしれませんけど、将来的には随分そういうものを取り入れてやっていかなきゃいけないわけですので、ちょっとそういうことにつながるようなご検討を、お手数ですがやっていただければと思います。
もう1点は、こうやって議論してきていますと、私どこかでお話ししたかもしれませんけれども、結局、先行きのことをお話しなさっているから、つい足元を忘れてしまうわけでありますが、結局、需要構造がどうなっているかということは、今年もまた検討されないんですね。で、先に行っちゃうわけですよ。常にその繰り返しなんですね。需要構造がどうなっているかということをきちっと押さえていただきたい。
事務当局でご苦労なさっている部分もあると思いますけれども、これからどう省エネに取り組もうか、どう新エネを導入していこうかといったときに、需要構造自体がどうなのかということが、中身がよくわからないで、極めてマクロな数字で常に議論が進められていると。これでは結局、過去30年やってきたことと全く同じなんです。だから、是非、その部分についてはどこかできちっと書き込んでいただくなり、あるいはやるという姿勢を示していただきたい。
どのワーキングにも入らないかもしれませんけども、どのワーキングにあっても、やっぱり基本は需要構造なんですよね。
それを産業用、あるいは業務用というようなくくり方した途端に、一見、皆さんわかっているかもしれないけど、業務用といったって、もう千差万別なわけです。受け取るほうの業務用というふうにくくられた人たちは、自分のことではない情報でしか伝わっていないわけです。そういう意味において、需要構造をやっぱり精査するということについては、是非、もう遅きに失していますけれども、是非取り組んでいただきたい。これは私からは要望です。
以上です。

武内委員
4点申し上げたいと思います。既に本文中の中にも少し書き込みがあるんですが、ややもう少し強調したほうがいいと思っておりますのは、気候変動という長期的な変動に対して、レジリアンスの高い社会をつくるということと、それから今回の大震災の結果を受けて、短期的な激甚災害に対してもレジリアンスが高い社会をつくるということを、やはり両面で考え、そして最も最適な社会像を追及していくということが必要であるという観点を、もうちょっと強化すべきであるということだというふうに考えております。
もちろん、この二つは発生のメカニズムが根本的に違いますので、必ずしもその発生側から融合させるということはできないですけれども、例えば沿岸部というようなところを対象にいたしますと、両方に対して脆弱な空間というのが当然浮かび上がってくるわけで、そうしたところについては共通の施策を講じることによって、両面でのレジリアンスの高い社会をつくるということができるというふうなことになって、いわゆるそれに対する費用対効果という点でも、効率的ではないかという観点でございます。
それから今のとやや関連がありますけれども、地域づくりにおける低炭素化を、私はこれは是非自然共生社会の実現と融合させていただきたいというふうに思っております。都市をコンパクトにするという議論は随分あるんですけれども、コンパクトにした後の空間をどうするかということについて、私はむしろそれを自然再生だとか、あるいは今IPCC目標の実現ということで、我が国はこのことについて別途検討しておりますけれども、そういうことに資するような施策として展開していくということが、とりわけ重要なのではないかというふうなことを申し上げたいと思います。
さらにそれが生物多様性の回復に資するばかりでなく、例えばレクリエーションだとか、あるいは高齢化社会における生きがい空間ですとか、あるいはグリーンツーリズム、ブルーツーリズムといったものを通して、新しい地域の価値創造にもつながっていくというふうな、地域活性化の観点もあわせて考えていくということが、重要なんではないかというふうに思っております。
3点目、地熱発電についてでございます。この間規制緩和の方策も含め、急激に議論が進んでおります。これは一種の地球環境政策、エネルギー政策とそれから自然環境保全施策の間の、これまでややこの二つが対立構造になっていたものが、ある程度歩み寄りを示しているということで、私はこれは大変、特に原子力発電事故以降のエネルギー政策を考えると、重要だというふうに考えております。
その際に、生態系への影響とか、あるいは景観への影響、配慮、こういうものについて議論していくということは、極めて重要であるわけですけれども、そのことに先立って私が特に強調しておきたいのは、ここの示した図の中で地熱発電のポーションが書かれていますけれども、このポーションは国立公園でどこまで地熱開発をするかによって全く大きく変わってくるわけなんです。
そのことを理解するためには、いわゆる戦略的環境アセスメントのようなものを、これは集中的に分布している地域は東北と九州ですから、そういうところで事前に行うことを通して、個々の開発業者がここを開発したいといったときにどうするんだという前に、潜在的ポテンシャルを評価して、このぐらいまでなら大丈夫だというふうな、そういうことができるようなことを、やはり早期に開始するのが重要なんではないかということが一つです。
もう一つは、この議論をすると、大体往々にして自然保護の人たちと、それから地熱開発を推進しようという人たちが、全く論点を違えて会話になっていないんです。これを支えるある種の学術的な基盤が全くないというのが、この問題を非常に深刻化させていることにもなっておりますので。そうしたものを同じ土俵の中で議論をするような、そういう学識的な基盤、もちろんこれは、政策的な研究基盤というふうに言うべきだと思いますけれども、その点をやはり強調しておきたいと私は思います。例えば、推進費のようなもので、そのようなものを介することの重要性というのは、指摘してもいいんではないかと思っております。
長くなって恐縮です。四つ目、木造構造物についての評価という点でございます。私は先ほどちょっとご紹介があった、農水省のほうの座長をやっておりまして、その農水省のほうの特に吸収源等の結果についての報告書は、今とりまとめをしておりまして、近く私のほうからとりまとめ結果をお送りさせていただくことができるというふうに思っていますけれども。
そういう中で、吸収源の議論で非常に大きな、今世界のルールの違いができましたのは、従来木を切ると排出というふうになっていたんですが、木造の構造物は、これは一応排出していないと、それを最後に燃したときに排出というふうにルールが今、変わりつつあるというふうに、私は理解をしておりまして。そうなると、これはこの分野では長年の一つの懸案事項でありました都市が木造住宅の、あるいは大型木造構造物の建設を通して、CO2を蓄積する場になるという、そういう論理がやっと可能な状況になったわけでありまして。そういうふうなことと、ここで住宅政策を掲げておりますけれども、これをやはりあわせて考えていくということが必要なんではないかと思っております。
私ちょっと数字は忘れましたけれども、日本全体の森林の蓄積量と比べても、例えば1割とかというふうな程度の蓄積量を都市が発揮しているということですから、これは決して少ない数字ではないというふうに理解をしておりまして、そういう点での検討をやっていただくということが、必要なんではないかというふうに申し上げたいと思います。以上です。

高村委員
ありがとうございます。3点ほどございます。
既にもうワーキングのほうにオブザーバーで参加をさせていただいて、随分丁寧な報告書をまとめていただいているというふうに思っております。特にワーキングのところでも申し上げましたけれども、再生可能エネルギーの分析に関して、エネルギー供給ワーキングの検討というのは、かなり包括的な、恐らく政策の場面ではなかなかまだ出てきていなかった角度から検討されたものだというふうに拝見をいたしました。
私3点ございますけれども、一つは武内先生の先ほどご発言にかぶるところがございます。交通運輸の対策、それから地域づくりの対策のところなんですけれども、地域づくりのワーキングの検討の中で、都市地域を想定をされた施策は、かなり出てきているように思っているんですけれども、非都市地域の地域づくりという観点が、もう少し丁寧に検討されることがもしできればというのが、一つ目のコメントでございます。
一つの例として、例えば現在でも運輸部門で見ますと、自動車の排出量は明らかに非都市地域のほうが排出が多いわけで。これは人口が少ないにもかかわらず、やはり公共交通のネットワークが撤退をしたり、あるいは運営できなくなっているといったような非都市地域の課題と関わっているというふうに思っております。
そういう意味で、地域づくりの施策を現実のものにしていくという意味において、これは交通分野の政策にも関わるわけでありますけれども、地域の特性をもう少し分けた形で、少なくとも都市地域、非都市地域を分けた形での整理を、もししていただく余地があればという点が1点でございます。恐らくこれは国交省さんのほうでも環境部会で議論をされているというふうに思っておりますので、是非そういう意味では、すり合わせをお願いをしたいということであります。
それから2点目でありますけれども、いずれのワーキングも、やはりかなりの、何らかの経済的インセンティブですとか、それは補助金も含むわけですけれども、何らかのてこ入れ、インセンティブの導入というのが必要だというメッセージが伝わってきているように思います。逆な言い方をすれば、どれだけ必要な財源を充てることができるかというのが、施策の水準を決めるというふうにも言い得るようにも思うわけでありますけれども。そういう意味で、具体的に財源の確保ないしは現在出している支出の削減に、具体的に書き込めるところがもしあるとすれば、それは書いていただくほうがよいのかなというふうに思っております。
例えば、この間G8、G20などでは、化石燃料補助金を漸進的に撤廃していくというのは国際政治的に合意がされている点だと思いますけれども、例えばそうした観点は既に書き込まれていると思いますけれども、出す必要がある。と同時に、全体としてのやはり財源をどうするかということ。これ具体的なオプションまでいかなくても、財源をどうするかというのは重要な論点であるということについては、オプションを提示する際にやはり同時に提示をしていただく必要があるのではないかというふうに思っています。
最後、3点目でございますけれども、報告書の形式として出していただきました今回の資料の1でいきますと、97ページだと思いますけれども。こちらにあります国際貢献のところについて、これは要望でございます。何かといいますと、ここにあります二国間オフセット・クレジット制度、あるいはCDMの活用方策について、中環審で報告して議論をするというのは必要な作業だと思っておりますけれども、2月29日の中環審の議論の中では、やはり大きな観点から国際貢献の、単に数値目標に矮小化しない、基本的な考え方や戦略というものをもう少し議論をする必要があるんじゃないかということも、また多くの委員から指摘があったように理解をしております。
さらにワーキングの中でも、例えば低炭素ビジネスのところでも、国際標準化ですとか、知的保護戦略等も含めた、やはり一定の国際的な貢献といいましょうか、戦略が施策の例としても上がってきておりますので、こうしたワーキングの検討も踏まえた上で、国際貢献の基本的な考え方、戦略といったものもあわせて、この中には盛り込んでいただきたいという要望でございます。以上です。

末吉委員 
ありがとうございます。二つあります。一つはワーキンググループ、もう一つは全体についてです。
ワーキンググループそれぞれ非常に多面的なご検討いただいて、感謝申し上げます。私も大変興味深く読ませていただきました。
ところで、住宅ワーキンググループについてなんですけれども、こういった断熱効果の高い住宅、あるいは建築物をつくるときのコストを誰が負担するのかと。あるいは誰がそのコストをリペイしていくのか。そういった視点を是非ご検討いただければと思うんです。
例えば、個人であれば断熱効果の高い住宅の担保価値を社会制度として高く見ると。そのことによってローンの借り入れ能力が高まるとかですね。あるいはレントにその部分が反映されるような社会的仕組みをして、断熱効果のための追加的投資がしっかりと長期的にリペイされる、そういうようなシステムというようなことも考えていかないと、これつくれ、義務化だ、義務化だけでいいのかという気が一ついたします。
それからもう一つ、低炭素ビジネスのほうなんですけれども。これは情報の共有をどう図るのかということであります。恐らくこれから行われることは、これまでのビジネスの慣行を変えていこうということだと思います。高炭素から低炭素へビジネスのプラクティスを変えていこうとする流れだと思います。とすれば、そのことを社会全体で進めていくにはビジネスが取り組む低炭素への努力を、あるいはやっていること、やってなさを、社会全体がやっぱり共有する必要があると思うんです。その情報に基づいて、それぞれのビジネスのやり方、あり方を社会として判断していくと。
ですから、ソーシャルのステークホルダーの判断材料になるような情報が、社会としてどう共有されるのか。一つは、例えばカーボンやクライメートの情報が、どういった形で情報開示をされるのか。これから多分義務化が進む、グローバルに非常に統一化が進むと思います。あるいはそういった企業の努力を、会計手法としてどう評価して表明していくのか。これはもう既にクライメート・ディスクロージャー・スタンダード・ボードというところが非常に作業に進んできております。ですから、こういったような情報の共有及びその評価のための社会のシステムをどう日本で持つのかというのは重要なような気がいたします。
それから全体についてなんですけれども、あちこちに「義務化」とか「規制」という言葉が出てきます。これは当然そうなんでしょうけれども、当たり前のように「義務化」とか「規制」と書いてありますけれども、やっぱり全体が義務化、規制を受け入れるには、納得性が必要だと思うんです。その納得性を与えるには、こういった規制をしますというだけではなくて、なぜこういった規制が必要になってくるのか、
そのことをもっと突き詰めると、例えば低炭素社会を日本に築くには、これまで私の権利だと思っていたことが、制約を受けるんだと。低炭素社会を日本につくることが、全体のパブリックインタレストに必要なんだから、その前にプライベートな権利が来ると、こういった部分は制約を受けるんです。そういう新しい変化が生まれるんですよ。公と私の関係で、そういった権利義務の関係が変わるんですよと。そういったようなことも、もう少し社会全体に対して訴えていく、そういったことが必要ではないかと思っております。
と同時に、これまで公の義務でなかったことが、新しく発生するんだと思うんですね。そういったことがどういったところで公の義務として発生するのか、そういったこともやはり社会に対して説明する必要があるように思います。
それからもう一つは、低位、中位、高位という、こういう仕分けがあるのは大変いいことだと思うんですけれども、例えば先週でしたっけ、OECDが2050年の環境アウトルックというのを出しました。これによると、温度が3度から6度上がると言っていますよね。あるいは昨年の11月にIAEAもレポートを出しました。これでも最悪のシナリオは6度を超えるんじゃないかと。こういったような世界の将来予測のマクロ観を、どう反映するのかということだと思うんですね。私はそうしたレポートを読む限り、非常に危機感が高いと思いますので、少しこの低位、中位、高位の言葉を見ていますと、全体のそういったような危機感の反映が、私にはちょっと見えないような気がいたします。
と同時に、この問題は何度も申し上げておりますけれども、ビジネスの新しい国際競争を生んでいると思うんです。ですから、是非低位、中位、高位の場合に日本の産業や企業の、あるいはビジネスの、新しい意味での国際競争力をつけるには、どういった考え方で取り組まなきゃいけないのか、そういったこともしっかりと書き込む必要があるんじゃないでしょうか。単純なメイド・イン・ジャパンだけでは、多分勝てないと思うんです。新しいメイド・イン・ジャパンブランドをどうやって築くのか、そういった視点が非常に重要になるような気がいたします。以上です。ありがとうございました。

進藤委員
これはお願いですが、先ほど土居室長からもお話ありました、各業界、産業界のヒアリング、これは一度やっていただいていますが、不十分なところがあるならば、何回でも聞いていただきたいと思います。一部業界には2回目も聞いていただいているとも聞いています。
99ページに低位、中位、高位とありまして、それと成長ケースと慎重ケースというのは関係あるのかどうかよくわかりません。ただ、この三つを見ますと、ベスト・アベイラブル・テクノロジーは低位であろうが、中位であろうが、高位であろうが全部導入する。そして業種横断のところで、この低・中・高の差をつけているという、分類段階になっています。
ヒアリングの中でいろんな段階の差があるとすれば、それを是非反映させるような形にしていただきたいと、思います。これはお願いであります。
それから今、末吉委員から、「IEAのレポートでは、3℃から6℃になっている、これは危機感としてとらえなければならない。」という議論がありましたが、私はIEAのあのレポートは、「2℃は無理だ」ということを言っているということだと思っています。ということであれば、我々はもっと現実的な対応を考える必要があるというのが、私の理解であります。

小林委員
恐れ入ります。何点かございますので、簡潔に申し上げます。
まず1点目は、資料の5ページのところ、住宅建築物ワーキングのところなんですが、ここでQOLの向上事例ということで、断熱性の低いところから高いところに移った場合、有病率が顕著に下がったというふうに書いた資料がついているんですが、これ本当にこの資料、ここで必要なんでしょうかというのがあります。本当にこれが原因で、こういうふうに有病率が下がったんであればいいですけど、別の要因があったとしたら問題ですし、そういうところの検証をきちっとしないで、安易にこれを使われるというのはいかがかという気がします。これが1点です。
それから二つ目が、「東日本大震災を踏まえて」とか、「東日本大震災」という言葉があちらこちらに出てきます。ところが本当に東日本大震災の影響で後の対策が変わってきたのかとよく見ていると、あまりないのが多いんです。
安易に「東日本大震災」という言葉が使われている。これ別に環境省、経産省だけではございません。どこの省庁でも同じことがよく使われます。何か使えばいいように思って使われているんですが、私、実際に阪神大震災を経験した人間として、阪神大震災のときもその後3年か4年ぐらいはよく使われました。しかし5、6年を過ぎると、全く使われなくなりました。
そういうことからも、私は今回の「東日本大震災」という言葉は、あまり安易に使っていただきたくないというふうに思っています。ですから、本当にそういう根拠があるのなら使っていただいてもいいんですが、そうでないところに安易に使われることに対しては、避けていただきたいということです。
それから次は、電力供給関係ですが、これはいろんなワーキングすべてに電力というのが関係してきますので、少し申し上げますが。一つ目は原子力の問題ですが、これは横山委員のほうからもご指摘がありましたが、やはり温暖化対策の中で原子力発電というのは避けて通れない問題だと思います。ほとんど触れておられませんが、やはり原子力発電を今後、再稼働するのか、しないのかというのは、大きな問題だと思います。
そういう意味で、ケーススタディとしてこういう場合はどうだというのをお書きになられて、それを国民の人がいわゆる温暖化対策という視点から、原子力の再稼働について判断をされるというのも必要だと思います。そういう意味で、是非これについては触れていただきたい。
それから次は、再生可能エネルギーのところなんですが、これ再生可能エネルギーを一把一からげで書いておられるんですが、この再生可能エネルギーの中にも安定供給型のものと、お天気任せのものと二つあります。これが資料の中では触れておられるんですが、総括の中でこれ完全もう飛ばされてしまっているんですが、これはやはり分けて議論すべきだと思うんですね。それによって安定供給する火力のほうの影響が大分違ってきます。そういう意味で、是非これは触れていただきたい。
それから新しい問題として、最近議論が出てきておりますが、いわゆる送電について交流から直流送電をしてはどうかという議論が出ておりますが、これについて全く議論されておられません。これは、もう一つ問題は、いわゆる電気の送電ロスというのが結構大きいわけですが、この送電ロスをどう考えるかというのは、重要な問題だと思います。そういう意味で、送電ロスを回避するためのマイクログリッドとか、それから今申し上げた直流送電とか、この辺もこれから数十年議論するんであれば、是非ワーキングの中で議論をしていただければと思います。
以上です。

植田委員
ありがとうございます。1点だけでございますけれども、分析をするときの、特にモデル分析の持っている限界とかいう点については、先ほど三橋委員からご指摘があって、私もそういう面を感じるんですが。しかし同時に何らかの形でモデル分析をすることで、今後の政策等に有用な情報を得るということも、ある程度必要かとは思うんですが。そのときに成長率の設定の問題であります、1点は。
これはもちろん、国全体の内閣府が提示している成長率の設定がありますので、それと違うものをつくるのは難しいと、こういうことは一面であるかと思いますので、ある意味でやむを得ないと思いますし、私もそうせざるを得ないんじゃないかとも思うんですが、やや説明が必要かと思うんです。というのは、2020年とか2030年は人口が減少しているので、1.8とか1.1とかいう成長率は、均衡減少を加味すると相当高い成長率という想定が置かれていると思います。ちょっとリアリティがないんじゃないかと、率直に言って。
だから、置いているからそれも置くというだけじゃなくて、少し考え直す必要がその点でもあるような気がちょっとしますものですから、何らかの説明が必要じゃないかなと。
つまり、このモデル分析で何らかの結果を得たときに、それで何かを言うときに、そもそも高く設定するべきじゃないかと。こういう意見が出た場合にどういうふうにするのかということは、ちょっと検討が必要かなと思います。多分1.1%ぐらい減るとかになりますと、2.9とか、相当高い成長率の設定になっているんじゃないかと、こういう点であります。私自身が関わった計算もまだそれでやっているものですから、どうしたらいいかとなかなか難しいんですけれども、そういう問題点があることは、よく理解しておかないといけないんじゃないか。
もう1点は、成長の中身の問題であります。我々はここでグリーン成長という議論を基本的にはしてきたわけで、従来のGDPとCO2排出、あるいはその前提にはそれぞれの業種の生産活動との関係というのが置かれているわけですけれども、やっぱり成長の仕方を変えるということにも、大事な話じゃないんでしょうか。
そのところが十分、反映されているのかどうかが、全体像としてちょっとわかりにくかったと。個別のところでは、もちろん低炭素ビジネスの話とかいろいろ入っているんですけれども、全体としてそうなっているのかどうかが、ちょっとわかりにくかったものですから、その点も気になりました。要するに、成長の量的想定と質的内容、この二つの面で検討が必要ではないかと、そういうことです。ありがとうございました。

井上委員
総論としてまた繰り返し申し上げますが、選択肢の提示につきましては、S+3E、このバランス、この観点が非常に重要であるということを繰り返し申し上げたい。総合エネルギー調のほうで原子力の議論が色々とされています。比率ゼロから35%程度の議論がされておりますが、こうした議論も踏まえて、中環審でもきっちり3Eのバランスをとるということをお願い申し上げておきたい。
そんな中で、これは一つ質問ですが、例えば総合エネルギー調のほうで三つぐらいのパッケージの選択肢が出てきたときに、そのときに原子力はやはり三つのオプションがある。それが中環審に取り込まれて、高位、中位、低位ということで分析しますと、3掛ける3の9ケースを中環審で提示するのでしょうか。私も頭の整理ができていないので、もし今の方向性があれば教えていただきたい。
それから各論として、火力電源、大量の再生可能エネルギーに関して、エネルギー供給WGでの検討結果について、意見を申し上げます。
一つは火力ですけども、石炭火力は経済性、供給安定性で優れており、重要な電源だと我々考えております。ですからこれを最初から上限を定めて決めつけるべきではないと。やはりエネルギーの安定供給、電力の安定供給を大前提として経済性、環境性、これらのバランスをとるべきである。過度にLNGにやはり依存すべきではない。
それから、加えて火力につきましては、CO2の回収・貯留、キャプチャーレディという敷地の確保の前提といったコメントがありますが、この貯留につきましては、実証試験をこれから行うというところですので、その地点とか商業化の見通しが立っていないという段階で、これを義務づけまでして、果たしてその経済性が悪化するデメリット以上のメリットがあるのかと。やはりここは、「これから検討していく」というところが妥当な表現ではないか。
それから、再生可能エネルギーですが、太陽光と風力の2030年の高位ケースを見ると、あわせて1.3億キロワットとある。これは10社の電力需要が合計1.8億キロワットということと比較しましても、非常に膨大な数字。再生可能エネルギーは当然、温暖化対策として非常に重要だという認識は変わりませんが、やはりその一方で出力は不安定であることに加え高コストという課題があります。それから、必要な電力系統強化対策、これについてもきっちり言及して、責任あるコメント、選択肢として示す必要がある。そういった観点では、エネルギー供給WGの報告書、参考資料まで拝見させていただくと、こういった電力需給調整の分析が詳しく行われております。ただ行われているのですが、一定の割り切りの前提のもとで行われております。
参考資料の中には、太陽光とか風力の大量導入時の出力特性は、現時点では不確実性を伴うといったことや、電圧上昇、潮流変動、それから系統安定度等といった系統制約は考慮していないということなどが、前提としてきっちり書かれているのですが、やはりこういった留意点が検討の前提として、あるいは課題として存在するということを、資料の結論と、それから前提のところにきっちり表しておいていただきたい。
例えば参考資料の2-1の最終ページに「現時点での検討結果のまとめ」があるのですけど、やはりここにはそういった課題が隠れてしまっている。こういった前提があるということをきっちり国民に知らせるべきである。
すこし話がそれますけれども、今日まで関西では10%の冬の節電のお願いをしておりました。ざっと節電の効果も含めた、昨年との気温補正をした需給の下がりを見ますと、5%ぐらいでございました。これには皆様の節電効果が十分あったと、お願いした効果がありまして、大変感謝申し上げるところであります。
一方、我々供給サイドとしましても、火力ユニット全部立ち上げて、全部フルで運転する、あるいは自家発を最大限買い取る、それから他電力からの融通を最大限もらうということを日々、毎日毎日24時間検討しながら、その確保に努めてまいった結果、このように凌いだ訳でございます。そういった実業、現実から見ますと、こういったペーパー上の検討とはあまりにもギャップがあるというのが正直な印象でございます。
したがいまして、繰り返しになりますが、火力電源に関して、やってみた結果、前提が変わったから安定供給ができませんでしたということは、やはり許されませんので、火力電源、石炭も中心としたこの電源のオプションは残した検討をして、皆さんに議論して貰わなければいけないというところを強く申し上げたいと思います。
以上です。

飯田委員
ちょっとしばらくご無沙汰していたので、ちょっと浦島太郎なんですが。3.11の事故が起きて、あれだけの事故が、今なお継続中で福島で十数万人の方がまだ戻れない。場合によってはずっと戻れない地域が出るかもしれないという状況でありながら、その事故が起きていないかのような意見がいまだに聞こえるというのは、驚くべきことです。3.11の事故を踏まえて、やはり原子力の事故、これを真摯に受け止めるということが、まず第1だと思います。それこそペーパー上の話ではないわけです。
その観点からまず申し上げると、歴史的に踏まえると、私のすぐ近くに勝俣さんが座っておられたときに、あれは2007年の7月9日に開かれた合同部会で、あのときに私は原子力に関して、せめて、あのときは妥協して妥協して、Contingency Planをつくるべきだと。勝俣さんは原子力こそが温暖化の中心だといった、その1週間後に柏崎刈羽の原発、中越地震が起きて、全原発が停止になったわけです。その上に、しかも今回の地震なわけです。
根本的に原子力を中心とした温暖化対策のエネルギーコンセプトそのものを、もういいかげん変えるべきで、今、総合エネルギー調でもちょっとまだいろんな議論をしていますが、いいかげんこの原子力を中心とするコンセプトを抜け出すことから温暖化対策を変えていかないと、少なくとも中環審から変えていかないことには、なかなかまだ半分原子力村が抜け出ていない総合エネ調では、まだまだ十分に議論し切れないということで。もうContingencyではなくて、そもそも原子力は脱原発を、今後は前提とした新しいエネルギー原則を、少なくともしっかりと打ち出していくということが必要だということで、これはエネルギーワーキングの中でも、今後しっかり議論していく必要があるんじゃないかと思います。
ちょっと細かいところ、先ほど植田さんの意見に重ねると、ビジネスのところは私も全く同感で、このプロセスイノベーション、プロダクトイノベーション全く、これ自身には反対しないんですが、さらにこれを超えた、いわゆる脱物質経済とか、あるいは経営成長の中身を問い直した非物質的な、非エネルギー的な、より付加価値の高い経済のところももう少し射程を広げたほうがいいのかなというのが感想です。
それから97ページ目のこのフレームワークのところで、3点申し上げたいんですが。一つは、これ中期目標だけなんですが、やっぱり2050年のいわば80%以上の削減、これを国内、真水でと。これはやはりきちんと明示をしていただく、どこかに書いてあるのかもしれませんが、していただいたほうがいいのかなということが一つと。
それから中期目標は、基本的には私は国内、真水での25%は堅持すべきだと思うんですが、それが短期的には厳しいとなればここに書いてある2020年と30年の幅を振るというのは、これ自身は現実的かなと思います。
それと総合エネルギー調のほうでいつも気になる議論は、とにかく石炭火力はどんどんやって、海外で安い石炭火力でやって減らせばいいんだという、この国際共有権の議論をする人が異常に多いので、基本的に国内排出が中心なんだということは、きちんとこちらのほうでは打ち出していただくということが必要かなと思っております。
以上です。

浅岡委員
今日は私の提出資料を配ってくださいましてありがとうございました。一つはこの地域だけではなくて、さまざまなところで情報をどう得ていきながら、対策も具体化し、検証し、また改善していくのかということが大事だと思います。
とりわけ、地域でいろいろやっていることの意味があることです。これまでもそうですけど、今後はまさに地域が動いていかなきゃいけないんですけれども、なかなかそれがうまくできてこなかった。
この度、関西電力さんが若干方針を変えられまして、2005年に遡って、大枠ですけれど、この表の1ページの家庭と商業と産業その他、こういう枠での突っ込みの数字なんですけれども、それでもそういうふうに分けて出した。想像して振り分けるのでないことで、2ページの裏を見ますと、同じ地域とは思えない変化があることがわかると思います。
さらに、下にありますように、2ページの下の関西電力の排出係数をもとにして出している数字が、見直し後もそれを反映しておりますので、まさにそこの影響が大きい。こういうことでは今後の検証ができない。エネルギーベースや電力量ベース、排出係数を固定するとかすることとあわせて、経済活動をここに組み込んで、京都地域において経済とCO2排出のデカップリングを達成する視点を入れていこうと、そんな議論をしているところであります。京都市内と京都府下とか、その近隣とか、経済を行政区のエリアで分けて、経済指標を出していくことには無理がありますので、柔軟にやっていこうとしております。
今、関西電力さんとさらに詳細なデータを出してもらうべく相談をしているところでありますけれども、制度的に全国的にできるようにする必要性は、電力に限りません。もろもろの基礎的なデータをいかに取得し、これを開示し、全体の数字だけでなく、その地域に特定した数字も大事です。先ほど末吉さんが、事業者の情報開示と言われたのも同じことだと思います。そういう視点を制度で担保していく必要があると、こう思います。
京都でも議論していることですけれども、これまでの議論の中でもありましたが、やはり全体として経済そのものを維持すると、成長というかはともかく、経済として円滑に維持していくということと、CO2排出削減とを切り離して、大きく削減しつつ経済も維持していこうという大きな視点の目標といいましょうか、価値観といいましょうか、その辺りが見えないように思います。
ワーキンググループに分けてやっていきますと、そういうことができにくいのかもしれないんですけれども、選択肢としてそういう考え方を共有できないとことでは、とても問題だと思います。そうした選択肢を提示し、ここから発信していただくことは、原子力に依存できない実情があるわけですから、それを踏まえながら出していくという点は、中環審に本当に必要なことではないかと思います。
それから、削減をどう実現していくのかというときに、大きな枠組みとして省エネを各分野で最大限やり、再エネを拡大するということにあわせて、燃料転換を進めることが排出削減に必要な不可欠の要素ということははっきりしていると思います。その辺りも選択肢の組み合わせに、ちゃんと見えてくることが必要であろうかと思います。
21ページに、電力についての燃料源としての選択肢という点では、少し踏み込んで書いておられるところがあるのですけれども、電力に限らず、全体として、やはりそういう考え方をとらないと、どうやって大きな削減をしていくんだろうかと思います。
それを、経済にもいい形で回していけるような、何人かの方々から、新たな経済の考え方を取り入れ、発想していきましょうとおっしゃられましたけれども、そういう要素を組み込んだ制度として大きなウエートを占める発電産業部門と大口の部分について、国内排出量取引制度を、政策的に不可欠なものとして、2020年とか30年とか、そんな先のことの議論には必要不可欠という見方が、少なくとも選択肢として入ってこないといけないのではないかと思うんですけれども。
先ほどの話だと原子力についても何も言っておりませんが、こういう制度についても何もおっしゃらず、これから後も別枠で議論をするということになっているようです。しかし、やはりこの中環審として選択肢を、将来の2050年80%以上削減に向けたプロセスとして出していこうというときに、大変寂しいものを感じます。
その寂しさの背景の中に、何人かがご指摘になりましたけれども、産業、大口排出事業者の関連のところで、活動量を現状よりさらに大きく考えておられる。2020年、30年と。先ほど植田先生がおっしゃられたように、人口減少の中で、大きな仮説が固定されたところで議論をされていて、もしそういう道をたどっていくとすれば、日本の経済は本当に大丈夫なんだろうかと、心配になります。
総合エネルギー調査会でも議論しておりますし、その他関連のところで議論をしておりますけれども、中環審として、エネルギー基本計画に絡んで選択肢を提示していくというときであれば、もう少し大胆な問題提起を、少なくともメインの選択肢として提示ができるような議論の組み立て方を、最終とりまとめに向けてやっていただきたいと思います。
それから、最後の原子力の割合について、35%からゼロまでと言われましたが、35と言われました山地委員は、原子力委員会のほうで議論しています意見分類1という現状レベルというのに、震災前の福島事故前の設備容量のレベルを維持していけばというので、35%という数字を言っておりますが、彼は同時に、18%という数字も出しています。どちらがいいと言っておられるわけではなく、実際に35%というような設備容量を震災前のままで確保することは、自分自身でそれは無理なことだとおっしゃっています。数字だけひとり歩きしていくと、そんなふうに聞こえることが問題のもとだと思いますけれども、非常に誤解を招いていることではないかと思います。
以上です。

鈴木部会長
大変重要な、あるいは興味深いご発言もたくさんございまして。幾つかについては事務局のほうから答えさせていただくことになるかと思いますが。

中上委員
私もちょっとお答えしたいことがありましたんで、質問がありました。
二つございまして。一つは末吉委員のほうから、コスト負担は誰がということにまつわって、担保価値だとかローン、レントというお話がありましたけれども、アメリカではこの制度は20年ぐらい前からうまく回っておりますが、日本の場合には戸建て住宅の場合には上物の価値がなくて、土地の値段しか評価されないという、変な形になっていますものですから。省エネしてもその担保価値ということで評価されないんですね。これは是非、もう少し違う面からやり直さなきゃいけないと思っていますので、是非ご支援をお願いしたい。
もう1点は、小林委員から、QOLでこのグラフはいかがと、こうおっしゃったんですが、私はこの住宅の部会のワーキングでもございましたので。これは下に書いてありますように、何人かの先生方の共同の論文でございまして、その中の星先生というのはお医者さんでございまして、1,000サンプルぐらいの中から出た結果だけ、今日示してありますけれども。このほかにも東北大学でもっと疫学的な調査をした例とか一杯ございまして、やはり断熱性が高い住宅の場合には疾病率が低いとか、脳卒中が減るとかというのは検証されておりますので、この数値自体が決してたまたまこうなったというか、そういうものではないということを是非ご理解いただきたいと思います。もし後で時間がありましたら、論文等をまたお届けしたいと思います。
以上です。

鈴木部会長
ある程度の長期的なといいますか、中長期的な将来をやはりきっちりと予測するというときに、かなり質の違う社会をこれから目指していくという、そういうある種の部分部分で不連続的な、一番大きいのは多分、人の考え方が変わっていくだろう。価値観が変わっていく、パラダイムシフトが当然のこととして生じていく。そういうものを考えたときに、現在のマクロモデルの延長上で本当の予測ができるのかというところは、もう極めて重要なところで、多分、皆さんお考えのように難しいだろうと思います。
じゃあどうするのかというときに、その手法がないので、一応は現状の価値観から、ともかくボールを前に投げてみるというようなことしかできないのか。その辺のところは西岡先生に後でお考えを伺えればと思いますが。
エネルギーの需要も含め、供給も含めですね、体制そのものをどうするのか。これはエネルギー改革の3本柱の一つが、やはりその発送電の分離という話が出てきているわけですが、これはもう前から当然それが言われており、延長上に直流送電というものもあっていいわけです。
そういうところまで今、ここで踏み込むのかどうかという点もあるでしょう。それはきっちりとこの夏以降の段階で議論されていくことだろうと思いますので、その辺も視野に入れた上で、やはりここのところでは、現段階での中環審としてというところをきっちりと出していくことが必要だろう。すべてについてばらばらとするよりも、やはり二酸化炭素、あるいは温暖化への対応、そして新しい持続可能な社会に向けてというところで、一つの柱をきっちりとつくっていくことが重要だろうと思います。
社会的な仕組み、あるいは経済的な仕組みもどう変わっていくのか、もうともかくレッセフェール、レッセパッセみたいな、ともかく市場経済万能で来た時代はもう終わったわけですね、90年から20年以上たちまして。そのときにやはり公と私の問題、末吉さんがおっしゃいましたが、そういう形でどういうふうに抑制の効いた市場経済の仕組みを考えていくのか。もしそれができなければ、ある意味ではかなり過激なハードランディングをしなくてはいけなくなるかもしれないという、そういうこともあるわけです。これは温暖化がどこまで進んでいくかというようなことにもあるかもしれませんが、それを防ぐ意味で、ソフトランドするために一体どういうふうに、例えばビジネスを変えていくことができるのか、かなり深刻な問題があるのではないかと思います。
幾つかお答えいただく、先ほどの中上委員のようにレスポンスをいただけるものがあろうかと思いますので、まずは事務局のほうから幾つか出ていた質問に対して対応頂きたいと思います。じゃあ土居さん。

低炭素社会推進室長
まず、ワーキンググループ間の連携ということのご質問をいただきまして、特に自動車と地域に関してのお話ございましたが、両ワーキンググループとも初めとしまして、今年検討に当たりましたワーキンググループ間の連携ということを前回もご指摘いただいておりましたので、強めていったというものでございます。この両ワーキンググループにつきましては、総合的な交通流対策の重要性ということにつきましては、一致しているというところでございまして、そこの検討につきましては特に地域での輸送量、交通量の対策というところに重きを置いてのお話。一方、自動車につきましては、主に単体対策を受け持っておりましたので、ここの委員なども両方にオブザーバー参加するなどして、連携を深めて検討が進んできたというところでございます。
あと、原子力の扱いの部分でございますけれども、原子力のケース分けも入れ込んだ形でCO2の排出量、また温暖化の対策の姿をおつくりをして、お示しをし、部会でも議論いただきたいというふうに思っております。
経済モデルを使っての分析というところについて、特に限界があるというご指摘はそのとおりだというふうに考えておりますけれども、最終的には国民への経済的な影響、また効果、こういうものがどうなるのかということをあわせて示すということが求められておりますので、そういった面でいきますと、そういった限界がどこにあるのか、またそれをどのように読み解いてあらわしていくのかということが、非常に重要だと考えておりますので、今後とも議論を深めていただきたいと思っておりますので、事務局からも提示をさせていただきたいと思っております。
業界のヒアリングの結果についてでございますが、特に輸出が一定割合あるという業種につきましては、どこにどのような製品が輸出が今現在されていて、今後どうなるのかというところを、深くヒアリングをさせていただいているというところで。そういった面でいきますと、アジアの経済成長、また需要がどういうところにあるのかというところが重要だというお話が、ヒアリングのところでもございましたし、その内容についてデータをいただきながら深めているというものでございます。
また、「違和感がない」という表現ぶりが資料にはありますけれども、主に業界のほうでも2020年、30年と先を見越した、確定した姿を示して、確定しているわけではないんだけども、さまざまなデータを両省から示しながら議論した中では、それほど大きな疑問などはないという意味での「違和感がない」というお答えだったというふうに認識しております。
また、低炭素ビジネスの部分で、かなり要約の中では限定した書きぶりになっていると思いますけれども、そのほかのワーキンググループの中でも対策を進めていく上で、ビジネスとして確立していくべきだというものを幅広く出して記述しておりますので、そういったものをわかりやすくしていきたいというふうに思っております。
あと需要構造の分析が非常に重要だというところでご指摘いただいておりますが、非常にそれはごもっともなところでございまして、データの把握、またはその解析については環境省としても、これまで以上に力を入れていきたいというふうに思っていますし、また引き続き資料2の資料の中でも、環境省の事業の中で把握したデータについても分析をしておりますので、そういったものも活用しながら、議論を深めていきたいというふうに思っております。
日本全体、また地域での短中期、長期のレジリアンスの高い社会をつくっていくという視点も重要だというご指摘でございまして、そういった面でいきますと、地域づくり、また分散エネルギーをどう活用していくのかなどの視点の中で、そういったものも明確にしていきたいというふうに思っております。
また自然共生型の社会にしていく、また循環型社会との連携というのは、非常に重要だということでございます。そのとおりであると思っておりまして、特にそういった面でいきますと、地域の活性化につなげていくという視点で温暖化、またこれら二つの社会の両立を、どのように変えていくのかという視点を、是非持っていきたいというふうに思っております。
また、地熱発電につきましては、これまでも環境省のほうでどのぐらいポテンシャルがあるのかということを、エリアなども分けながら進めてきておりますけれども、この度考え方を月内に通知を改正をして示すということもございますので、その内容も踏まえて、さらにポテンシャルがどれぐらいあるのかということを深掘りしていきたいというふうに考えております。
また、優良事例ができるように学識的な基盤が必要だなどご指摘もいただきましたので、どのような方策があり得るのかということを考えていきたいと思っております。
あと吸収源に絡みまして、木造建築物の重要性ということがございます。ご指摘いただきましたので、4月に入りまして吸収源の議論をする際には、そのような視点について明確にしていきたいというふうに思っております。
また、財源については重要な論点であるということで、明示していくべきだというお話もございましたので、その点、どのように書くべきなのかということを深めていきたいと思っております。
あと住宅につきましては中上委員からご回答ありましたけども、住宅ワーキングの中でいきますと、表示をきちんとして、それに基づいて中古住宅であるとか、賃貸がより省エネ型のものが進むようにということを目指しはしておりますが、考え方自体を明確になるようにしていきたいというふうに思っております。
あと業界ヒアリングなどにつきましても、先ほど申し上げましたように輸出先の内容、また商品、製品がどのような内容なのかということを詳細にお話を伺っておりますので、それを踏まえたケース設定にしていきたいというふうに考えております。
あと震災の影響というところが非常に多く記述がなされているということでございますので、いま一度チェックをしていきたいというふうに思っております。また、再生可能エネルギーの内容ごとに安定したもの、不安定な部分、分けての表示が要約版に不足しているというお話でございましたのですが、工夫をしていきたいと思いますし、また送電ロスのご指摘などもありましたので、どのような方策があるのかということも、議論を深めていきたいと思っております。
あと成長率の設定につきましては、説明ぶり、きちんと説明が必要だということでございますので、事務局としても準備していきたいというふうに思っております。選択肢のケース分けにつきましては、原発のケース分けの状況も見ながら、どれぐらいの状況になるのかというのをお示ししながら、議論していただきたいというふうに思っておりますし、また再エネの課題、また分析が割り切ってのお話だというご指摘もございますが、環境省として入手可能な最大限のデータを使いながらの分析ではございますけれども、やはり一定程度制約があるというところでございますので、是非データを提供いただきながら、分析をさらに詳細にさせていただきたいというふうに思っております。
あと国際貢献につきましては、4月に入って報告をし、まだ議論いただきたいと思っておりますが、現状でいきますと、国際貢献分というのは補完的な扱いであるということでありますので、そういった扱いをどうするのかということも議論をいただきたいというふうに思っております。
事務局からは以上でございます。

鈴木部会長
この段階で、何かご発言ございますでしょうか。大塚委員。

大塚委員
エネルギー供給ワーキンググループとして、私の意見としてちょっと申し上げておきたいと思いますけども。幾つか質問いただきまして、どうもありがとうございました。既に事務局からお答えいただきましたので、それ以外の部分だけお話ししたいと思いますが。武内委員から言われました地熱発電について、国立公園の中で戦略アセスを行っていくことが非常に重要だというのは、私もそのとおりだと思っておりまして、事業を進めていく上でも、事前にそういうことをやらないとまずいのではないかと考えております。
それから、小林委員が言われました送電ロスを考えるかどうかということについては、直流の話はちょっとここには出てきていなくて恐縮ですが、23ページの中の下のほうですけど、配電電圧の昇圧とかというのは、その点を考えて検討しているものでございます。安定供給型とそうでない再生可能エネルギーを分けるということは、スライド21にはもう少し出てきていますが、さらに精査していきたいと思います。
それから、井上委員から言われました石炭火力についてでございますが、石炭火力は確かに価格は安定しているのですが、あと輸入に関して安定した輸入先があるというメリットがございますけれども、CO2の排出原単位はLNGの1.9倍ということがありまして、温暖化対策の観点からは、それほど重視する案はちょっと出しにくいということはあろうかと思いまして、スライド22には案の1から案の3を出しておりまして、その中で検討していくということでございます。
さらに既に18石炭火力の発電所がリプレースすべきものが出ていますので、少なくともリプレースする施設を検討すれば、それ以上増設する必要があるかどうかについては、慎重に判断していっていいのではないかと、個人的には思っているところでございます。
それからCCSレディにつきまして、地点の見通しがないということとの関係でございますけれども、これについてはBATで考えていっていただければというふうに思っていまして、現段階で考えられる適用可能な技術を考えた上で、敷地の対応をしていただけるとありがたいと思っています。全くしないというようなことになってしまうと、後から手遅れになってしまうのではないかということを怖れているところでございます。
以上でございます。


西岡委員
先回も申し上げたようなことになってしまうかもしれません。
まず第1に、世界的にこの低炭素化というのが、まだすぐ目の前の話ではないにしても、非常にトランジションの時代だという言い方をいつもされるわけですね。これまでエネルギーで発達してきた技術社会をどう変えていくかということで、そういう取組を世界的にいろんな国がやっている。これはもう国際会議等でよく言われることですけれども、ということをまず念頭に置いていただきたい。
トランジションといいますから、やっぱり単なるGDPの成長といった意味ではなくて、OECDのほうでもいろんなQOLの指標というものを使ったりして、やっぱり成長の中身が問われるというお話、今日いただきましたけれども、全くそうだと思います。
で、これに関連いたしまして、低炭素のビジネスがございました。お話のほうはどちらかというと産業だけだったわけですけれども、大きくインフラだとかエネルギーのインフラ、国土のインフラ、交通のインフラ、すべてのものがやっぱり、そっちの方向に向かって変わっていかなきゃいけないという、そういう広がりを、私はもっと考えるべきではないかなと、私、作業を見ている立場から思っている次第であります。
このような転換のときというのは、どういう形で計画を立てていくかということがございます。必ず、やはり人間の欲といいましょうか、については順番があるわけで、昔からこれも申し上げましたけど、下のほうからいくとまず生存、それから安全、そして利便性があって快適、こういう言ってみればピラミッドがありまして、まず安全とか生存とかいうところが下のほうにある。先ほど3E+Sという言葉がありました。これは我々こちらでも十分考える必要でございますけれども、業界の方々も十分考えていただきたいところがある。
その上に利便というのがあるわけでして、我々がここで低炭素社会といっているとき、気候の安定という、非常に安全の問題を一番トッププライオリティに置いて、そしてその中でどう利便性、あるいは快適性を考えていくか、ベストの利益あるいは利便性、あるいは快適性というものを考えていくかというのが、我々のここで与えられた使命ではないかなというぐあいに考えているわけであります。
選択肢というときに、この部会では先ほどから説明がありますように、政策の強度ということで、選択肢の一つの軸、まだまだこれから議論をする必要がありますけれども、出しているわけであります。中身は何かといいますと、我々がそこで問われているのは、我々が次の世代のためにどれだけ今の世代が苦労するか、汗をかくか、お金出すか、いろいろありますけれども、そういうことが結局問われているわけです、この温暖化の問題。
温暖化の問題、いろいろ批判もあるかもしれませんけども、これはほぼそれを防止していくということは必然であり、かつ世界の流れになっている。経済の流れ、社会の流れになっている。そうしたときに、いかに早くそれに到達する、早いほうが次の世代に負担が少ないわけですけれども、その度合いをあなた方はどれだけ覚悟があるのかということが、今問われている、そういう選択肢として政策の強度というのが多分出ているのではないかなという具合に、私は理解しております。
このやり方といたしましては、やはりそういうことでしたら、2050年辺りの気候の安定のためのターゲットをしっかりとピンどめいたしまして、そこからそれをやるために何を今やらないといけないか、これを現状にあまりとらわれることなく、どのような政策が自由に考えて打てるんだろうか、それがどう効果的なんだろうか、効率的なんだろうかということをバックキャスト的にやっていく。もちろんバックキャストだけでなく現状の問題を十分認識して、それをどうつなげていくかということが、これからの論議で出てくると思いますけれども、そのような形で私ども今まで作業をしてきたということでございます。
ですから、私が申し上げましたそういったフレームの中で、どういう選択肢が今後も考えていくべきかということを、皆さんに議論していただきたい。やはり国民の選択肢というのは、例えばいろいろなエネルギーミックスの組み合わせの中に埋もれてしまわないように、明確にその点の論点がはっきりするような仕組み、計画、選択肢といったものを、これから我々はつくっていく必要があるんじゃないかなと、そういう具合に考えております。
以上です。

鈴木部会長
ありがとうございました。是非宜しくお願いしたいと思います。また次回、あと地球環境部会が4月に3回ぐらい予定されているんでしょうか、それぞれのところで小委員会のご議論を聞かせていただくことになろうかと思います。では、そういうことで、最後に藤井先生に締めていただきましょうか。

藤井委員
すみません。手短に。低炭素ビジネスワーキンググループについてのご質問もありました。先ほど事務局のご説明に補足して、中上委員からご指摘のあったESCOの部分について。要所にはないんですが、参考資料の5-1のほうには非常にESCOについて重視しておりまして、ESCOという表現ではないですが、スライドナンバーの21とか20、20では明らかにこれは多様なエネルギーサービス事業者というのは、既存のESCOに加えて再生エネルギー、あるいは蓄電等の、あるいはコンサル、多様なサービスに展開していくということを据えております。
それから需要サイドについては、我々も非常に重視しまして、ここにありますように生活者及び事業者、それぞれ1、2の変化というものを踏まえた上で供給サイドの提案をしております。この需要サイドの変化というのは非常に顕著にあらわれているわけです。まくら言葉で使っているわけではなくて、明らかにスライドの13を見ていただければわかりますように、震災、あるいは原発事故において、生活者の価値観の変化というのはこの薄い赤のほうに、震災後になって暮らし方についての変化、特に生活の無駄をなくすとか、そういう意識が高まっていると。これが一時的かもしれませんけれども、一時的ではないという表現があるわけです。
これは、これまで低炭素社会ということは、我々は当たり前のように使っておりますけれども、そのスライドの12を見ていただければわかりますように、一般の人々はよくわからないんです。これが本当にいいことなのか、悪いことなのか、どうでもいいことなのか、さっぱりわからないというのが、意見が分かれている。しかし、震災後にここがクリアに安全性ということが、安心・安全の世界が崩れたと、脅かされたということで、それはすなわち原発事故であります。したがって、私たちは3Sという形で、Smart/ SustainabilityそしてSafetyとSecurityなので、Sは四つかもしれないんですけど。つまり安全性ということが低炭素社会が表現する上での、実は身近な我々の感覚から言うと、一種の代理変数としてわかりやすい、低炭素ということはこういうことなのかと。エネルギーが、あるいは生活が脅かされる。安定したエネルギー源でないと、安心できるエネルギー源でないと、こういうことになるんだというふうに変化が明らかに起きているのではないかというのが、私の理解でございます。したがいまして、そういう上に立ったビジネスというのが、しかし大きく展開できるであろうと。
それからもう一つ、末吉委員が言われました情報の共有のところ、これも非常に大事なところで、これについても26枚目のスライドのところで、十分な情報提供がなされていないので、先行して低炭素ビジネスをやったり、取組をやっても評価できない、されないというところが大きな壁になっていると。ここをクリアしなきゃいけないということです。
それから、我々の一つの特徴は、金融も強化、重視しているわけですから、金融の評価においても情報開示がしっかりしなければ、金融機関は神様ではありませんので、評価できない。この辺を強化していかなきゃいけない。
なぜ金融を重視するかと言えば、高村委員が言われたような財源の問題なんです。我が国1,000兆の累積債務を抱えている中で、この追加財源、90兆あるいはコストカバーできると言いながらも、恐らく政府は首を振っても出てこないです。そでを振ってもですか。したがって民間の資金をいかに使うかという知恵を出さない限り、絵に描いたもちに終わってしまいますよということで、ここを強化しております。以上でございます。

鈴木部会長
ありがとうございました。それでは予定の時間も大変オーバーしておりまして、この後ひとつまた重要な議題がございますので、そちらへ移らせていただきます。
資料2として準備されておりますが、国内排出量取引制度の課題整理に関する検討会、これが環境省のほうで動かされまして、その検討結果の報告を事務局からまず資料の説明をいただきまして、それから検討会の座長、植田委員がお務めいただきましたので、植田委員からコメントをその後でいただくと、そういうふうに進めさせていただきます。それでは。

市場メカニズム室長
それでは、お手元の資料2をご覧ください。1枚めくっていただきまして、2ページに検討の経緯が書いてございます。前段閣僚委員会(平成22年12月28日)の排出量取引に関する記述の抜粋を設けておりますが、排出量取引制度については主要3策の中でも、これについて慎重に検討を行うとされたところでございますが、その際の見極め事項として、産業やまた雇用への影響、海外の動向等、幾つかの時点は指摘をされたところでございます。このため、慎重に検討を行うために必要なさまざまな事項を整理するという目的で、この検討会を昨年設置させていただき、調査分析を実施したところでございます。
検討事項は下に書いてございますが、閣僚委員会で指摘された事項のうち、そうした事実の確認の整理ということに見合うものとして3点、経済影響分析、先行施策評価、海外動向調査というものを実施したところでございます。
3ページをご覧ください。検討会の委員でございます。基本的に事実関係を整理するということで学術的な見地から行うということで、そうした分野の専門家の方にご参集いただいたところでございます。
4ページをご覧ください。4ページだけはこの検討会の報告書ではなくて、検討会の検討をお願いした事務局からの説明書きでございますが、この調査分析の結果というものについては、その分析、例えば特にとりわけ経済影響分析等について、さまざまな仮定を置いておりますが、そうしたものは現行の議論をされている災害特措法であるとか、新しい税でありますとか、また排出量取引制度の導入に関する議論、さまざまな議論について何ら予断を与えるものではないという断り書きと、また経済影響分析、先ほど繰り返しになりますが、前提がこの分析をスタートした時点が昨年でございますので、これから行おうとしている、その全体の分析と一部全体そろっていないところがあるというものを、お断わり書きをしております。
ただ、そうしたものではあるんですけれども、とりわけこの検討課題のうち経済影響分析、これから中心にご説明いたします5ページ以下のものにつきましては、こちらの中環審の小委での議論にも、大いに参考になるものと考えまして、報告をさせていただくという次第でございます。
1枚開きまして6ページをご覧ください。経済影響分析についての基本的考え方を整理しております。まず一つ目のポツですが、一般均衡分析というものを用いて、その導入するケースと導入しないケースというものの比較をして、GDPの成長率はどうなったか、個別CO2の付加価値がどうなったか、雇用への影響はどうか、そういったものを調べております。一般均衡分析についたAIM/CGEを用いています。
また、社会全体のマクロのフレームワークといったものについては、東日本大震災以降の影響を可能な限り前提条件に盛り込むとしたところでございます。導入するとしたケース、排出量取引制度のケースにつきましては、中環審の排出量取引制度小委員会でとりまとめられた中間整理、これに基づいて、そのモデルを組み立てたところでございます。そうした制度を導入した場合に、どういった対策が事業者において、対象者において行われるかというものにつきましては、環境省で収集しました削減ポテンシャル調査等の結果に基づいて、限界削減コストカーブを作成して想定をしたというところでございます。
7ページ、8ページをご覧ください。前提条件でございます。先ほどの基本的な考え方で触れたところを、ほぼ具体的に書いたものということですが、例えばマクロフレームですけれども、先ほど成長戦略のシナリオと慎重ケースというのがありましたが、1.8、1.1、こういったものを使わせていただいておりますし、その下段は中環審の一昨年の排出量取引制度小委の仮定を用いさせていただいているところでございます。
9ページ、10ページをご覧ください。まず排出枠を設定する考え方ですけれども、これは中環審の考え方は、削減ポテンシャルに応じて事業者に排出枠を設定をするんだというのが結論でございました。これは、例えばヨーロッパのように一律10%削減というふうなもので、トップダウンではないということですが、それをどういうふうにモデルにあらわすかということですが、10ページのコストカーブを見ていただきますと、これは削減の対策の費用、安いものから左から順番に高いものを並べていって、なおかつ削減量のポテンシャルに応じて幅をつくる。したがって面積が削減の量になるというものですが。
例えば削減ポテンシャルに応じてということなので、そこが公平になるように2,500円とか4,500円、トン当たりの限界削減費用、こちらで排出枠を設定して、それ以下の対策が実施されるように排出枠を工夫して設定をしていくという考え方をとっています。したがって、それ以下の対策を既に多くとられている事業者の方にとってみれば、削減の量は少なく、とられていない事業者は多くというふうな形になるものでございます。
11ページをちょっとご覧いただきますと、実際に対策がどのぐらい実施をされているのかということが書いてありますが、横が今度はちょっとグラフが変わりまして、対策コストなんですけれども、0円よりも安いもの、今回0円というのは3年で投資回収が、燃料費とか電気代でできるかどうかというところで見ているんですが、0円より安いものでも実施率が低いものがかなりあるというところが、今回の分析の前提となっております。
ちょっと戻っていただきまして、10ページのグラフをもう一度見ていただきますと、今度はこの縦が削減コストなので、左側のほう、0円以下の割と面積が大きいところ、こちらがもう既にかなり実施済みではなくて、かなりのところまで残っているということが考えられます。
また、後で出てくるんですが、削減の量はかなり見込めるんですが、経済域は小さく出ているというのは、まさにこの3年で回収できるところが促されるというふうな仮定を置いてモデルを分析しているということになることでございます。
12ページに飛びまして、シナリオですが、一応導入する、導入しないといったときに、外的な前提が幾つか変わるかもしれないので、複数のシナリオを用意しました。低成長の場合、慎重ケースの場合と成長戦略の場合、また節電の取組というのがずっと2020年まで続く場合、そうでない場合、投資判断基準年数が3年の場合、長目になる場合と、こういうものを考えました。
13ページをご覧ください。導入するケースにつきましては、ここで書いてありますのは価格を4,500円か2,500円にするというのが中環審の考え方で、とにかく4,500、2,500というのは、国際的な研究機関、また国際的な機関が将来の外部クレジットの費用、2020年ごろの予測したものの上限値、下限値をとっておりますが、それにあわせて一応キャップを設定したというものです。それとETSaというのは一律にやった場合はどうかというものでございます。それぞれについて外部クレジットの単価の想定を置いてございます。
14ページ以降、分析結果でございますが、まず影響でなくて効果のほうでございます。BAUケースに比べてどのぐらい下がるかということですので、BAUケースはグラフでいいますと上から二つ目のグラフになります。そこからの差で見ますと、ETSbからdのグラフにつきましては、基本的に四角で囲んだ4.5%~4.7%の削減が可能であろうと。これは対象事業者のみでございますが、日本全体に直しますと1.8%ぐらいの削減というものが見込めるのではないかということでございます。
一律にやった場合はETSaのケースということで、さらに深掘りが可能ということになっていますが、グラフではETSaのクレジット反映前、反映後とありますが、このETSaの場合、外部クレジット2,500円としたので、2,500円までは対策は国内でやるんですが、超えるものについては全部クレジットを買うという形になるので、こういうふうなグラフになったところでございます。
こうした効果について、影響はどうかと見たものが15ページでございます。経済成長率への影響というのはBAUのケースで、こちらは成長ケースでやっていますけれども、1.82というものに対して1.81ということで、ほとんど差がないということでございます。
これを業種別に見た場合が16ページですが、どちらかと言えば、プラスに転じているのは大きい順でいいますと産業機械、一般機械、鉄鋼業でございまして、低目に出るのが石油精製業でございます。ただ縦軸はこれ、ゼロからはかっているんじゃなくて、0.988から1.006というところなんで、差が大きく見えるようにしていますので、イメージのところはご注意いただければと思います。
17ページは各部門の影響というのは、当然プラスとマイナスの影響がありますので、そうしたものがトータルでネットでどうなっているかというのが、先ほどの表ですけども、そのプラスマイナスというのは、あえて出したものがこちらでございます。ここまでは産業部門ですが、業務部門につきましては、先ほどの石油精製部門との逆で、ガス、熱供給部門が増えてございます。こちらはエネルギー需要の低減、燃料転換の影響というものかと考えております。
19ページをご覧ください。先ほど導入ケースのさまざまな場合分けとあわせて、シナリオについても分けたものを書いてございます。こちらにつきましては、基本的にはBAUの場合と導入ケースのこの差が影響だと見ていただきますと、数字はもちろん、低位になれば成長率が低いので、出るCO2の量も減りますからあれなんですが、この両者、右と左の差というものがほとんど比較対象、基本ケースと低位、節電見込む、見込まないと、そういったものの差と変わらないというのが出てくるかと思います。絶対値は変わるんですが、相対的な差というものは変わらないというところでございます。
雇用への影響につきましても、経済への影響というものは、先ほど言ったような程度のものでございますので、実際に雇用者の減というのは、2020年までに0.7~2.4万人の減少というふうなことが出ておりまして、これをどう評価するかですが、例えばというと、生産年齢人口の減少幅と比較すると、それほど大きくないのではないかというふうに考えております。
最後21ページですが、考察でございますが、その制度の設計次第、排出量取引制度の設計次第では一定の削減効果は確保しつつも、経済とか雇用への影響というのは一定以下に押さえることが可能であったと。これはひとえにその理由として、マル1とマル2で書いてありますが、短期で削減対策に必要な費用、それを回収できるもの、これが確実に実施されるということが促されると。そうした対策というのはまだ残っているという、プラスの要因とまたそれに対してマイナスの要因としては、削減対策をしないといけない、外部クレジットを購入しなければいけない。それらの効果が相殺をされたということではないかというふうに考えてございます。以上が経済影響でございます。
国内先行施策評価以下につきましては、直接にというふうなものは特にありませんので、後でお読みいただければと思います。海外動向調査も排出量取引制度の海外での動向を紹介しておりますので、お読みいただければと。時間の関係で割愛します。
最後に一言だけ戻りますと、今回の報告書というところで4ページで少し書かせていただいたところと関係するんですが、今回の結論がいわゆる示唆するものとして、これで排出量取引制度をすぐ導入しないといけないという議論ではなくて、まず産業部門における削減のポテンシャルが現在どのぐらいあって、それをどういうふうな形で施策で担保をしていくのか。またその場合、経済影響が出るのか出ないのか、そうした議論をする場合に、このデータというものがまた結果というものが参考になるかと考え、今回報告をさせていただいた次第でございます。
以上、駆け足になりましたが、説明を終わらせていただきます。

鈴木部会長
それでは、座長を務められました植田委員のほうから、補足なりコメントなりを。

植田委員
ありがとうございます。今室長のほうから説明があったとおりでございますので、特につけ加えるというわけではございませんけれども、資料の2にあります10ページ、限界削減コストカーブというものですが、これは作成方法にも書いてございますように、削減ポテンシャル調査のときのいろんな情報その他、活用いたしまして、改めて書き直した。単に文献をそのまま入れたというんじゃないんです。そのことが一つ大事な私は点だと、こういうふうに思います。そうしますと、この図でわかりますように、ゼロ以下、つまり対策をしたほうが利益になるはずの対策がかなりあると、技術的にはですね、ということであります。
実際に11ページのところに見ておりますように、そのうち実施されていないものがかなりあるということがわかったわけです。そういう3年で投資回収できるような対策でも、実施されていないものが多数ある。こういうファクト・ファインディングといいますか、事実が確認できたことは、私は大変意義があったのではないかと、こういうふうに理解しておりまして。それと、そうしたら排出量取引制度との関係の問題でありますが、従来排出量取引制度というと、一律にぱっとキャップをかけまして、キャップをかけるとトレードが起こるじゃないかと。このことによって、できるだけ少ない費用である目標を達成すると、こういうことなんですが、ここでは一工夫している点は制度設計上、削減ポテンシャルに合わせて、限界削減費用の大きさにあわせた形でそのキャップをかけると。だから、最初からそうしちゃっているということなんです。
そのことによってほとんど経済影響が出ない形で、先ほど申し上げた実施されていない、利益が出るはずの対策で、実施されていないものがあるものは、当然入ってくるようになるということになるので、かなりの削減量が経済影響が非常に少ない形、小さい形で実現できるという、これは制度設計上の問題ですけれども、そういうことが確認できたというのは、私は大変意義のあることではないかというふうに思っております。
もちろん、用いました分析モデル自体は、一般均衡分析と雇用面では産業連関分析ということですから、極めて標準的な方法を用いたと、こういうことでございますが、実態を把握して制度設計を工夫したことによって、先ほど結論ということで言っていただいたような、それほどの大きな影響を与えない形で、一定の削減を可能にすると、こういうことが確認できたと、こういうことかなと思います。
もちろん、課題はたくさん残っておりまして、先ほど示しました10ページの限界削減費用のカーブというのは、やや極端な言い方かもしれませんが、毎日変化していると、技術が変わっていきますので。そういう性格のものなので、それにあわせて検討するということも必要ですし。
もう1点、皆さんも疑問に思われたと思うんですが、なぜ、そうしたらもうかるはずの対策は実施されていないんだという、なぞのようなことがあるわけです。経済学者としては困っちゃうわけですけれども。でもそういうことがあるんじゃないかということなので、それはどういうことで実際にそういうふうになっているかということを、次は検討していくということが大きな課題じゃないのかなというふうに思っている次第です。
もう少し経済影響については、今回雇用とか産業、業種別への影響ということですが、もう少し消費者への影響とか、そういうところにも広げて検討するということも、もちろん必要かと思っております。そういう課題は残っておりますが、先ほど申し上げたようなことがわかったという点で、貴重な報告書になっているのではないかというふうに思っている次第です。
以上でございました。ありがとうございました。

鈴木部会長
ありがとうございました。それではただいまのご報告につきまして、いろいろとご質問あるいはコメントなどお持ちの委員がいらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。今度はそちらから、浅岡委員のほうからまいりましょうか。

浅岡委員
先ほども少し触れましたけれども、今回とても踏み込んで実態把握をし、日々変わるものをアップデートしながら検証していただいて、より説得性のあるものになったという面が一つと、もう一つは、やはりEUETSの第1フェーズ、第2フェーズでの成功もあれば失敗もあるというか、遅れて参加するときにその失敗を生かし、キャッチアップをしながらやっていくという工夫も、この中に入れるべきと思います。ポテンシャルに重視してベンチマークを入れ、またオークション開始との、EUの新しい第3フェーズの動きへのアプローチとしてお考えになっている側面もあるのかなと思ったりいたします。
いずれにしましても、日本の直接排出の65ページも占める大きな排出源である電力及び産業部門のところにちゃんとした政策がないなか、アジアにおいても韓国や中国でも経済的にも合理的な方法で誘導していく施策として動き出し、議論が具体化して現実化していくということが見えてきている状況になりつつあると、私も感じます。

井上委員
私、この報告書の公表されたのを見て、大いに予断を持った一人でございます。このタイトルでこの報告書の中身を公表されたということで、驚きました。この中環審の場で、これを材料にするのであれば、ネガティブコストの対策が何故今、導入・実現されていないのかということについて、産業界も含め、徹底的に分析する必要があると思います。
例えば、炭素に1円価格をかければ、対策は全部進むという理解なのですかという疑問がございますし、今まさに国会で温暖化対策税が議論されていますが、それが導入されればこれは全部実現できるのでしょうか。いろんな議論、疑問がわいてきますので、これはやはり業界と十分議論をする必要があると思います。
繰り返し申し上げますが、我々産業界としましては、排出量取引制度というのは、公平なキャップの設定が非常に困難であること、それから、経済統制的な制度であること、企業の活力がそがれて研究開発にもお金が回らない、そういった理由から、やはりキャップ・アンド・トレードの導入には反対という立場でございます。

大塚委員
植田先生がさっき報告されましたので、あまり申し上げることはないんですけれども、3年で回収されるような対策がなかなかとられていないというのは、ほかに投資をすべきものがあったりして、機会費用との関係でそうなっていることは想像できるわけですけれども。しかし、それなりにメリットがあるものでも対応がなされていないということが、そういうものがたくさんあるということが今回わかったということが、一つの大きな成果だと思いますので。
これについて、例えば排出量取引制度を入れて対応しないと、そこがかかるようなことになれば対応していただけるようになるのではないかということが予想されるということが、非常に大きな成果だったと思っております。
以上でございます。

進藤委員
一言申し上げます。このレポートの経緯とレジティマシーについて質問があります。排出量取引については22年に、中環審の地球温暖化部会の下に、たしか小委員会ができて、そこに産業界も入って、大変な議論をしたと聞いております。
結果的に両論併記となって、その後COP16を迎える中で、資料にも記述があるように、12月に玄葉大臣が中心になって、排出権取引は「慎重に検討する」ということになったと記憶しています。こういうことで、今はまだマーケットもできていないので、先行して実施している自主行動計画とかいろんなことの進捗状況を見定めて「慎重に検討する」という結論を出したわけです。
この検討会をやっておられるということは、僕は知らなかったのですが、これは環境省の判断として、一つの価値観があって、この検討をやろうということになったのでしょうか。そういうことなのだろうと思いますが、これを議論するのであれば、産業界もきちんと入らせてもらって、メリット・デメリット等かなりあったわけですから、もう一度正々と議論をしていくべきだと、思います。
それから10ページ、11ページ、これらの案件はペイする話なんですね。これらは、投資が回収できる案件です。これは多分、気づいていないのではないかと思います。こういう分析は非常に大事だと思います。我々企業も、省エネでエネルギーが節約されるから、投資をしてCO2も減らすんだということで、投資をしていくわけです。ただ、他の投資案件との収益性の比較はあるでしょう。
しかし、これをやらせるために、なぜ排出権取引制度を入れないといけないのか。ここが一番の議論です。是非ここはきちんとデメリット、メリットも含めて、もう1回議論するんであれば正々と議論させていただきたいと思います。

末吉委員
ありがとうございます。このカーブを見せていただいたときに真っ先に思い出したのがマッキンゼーの同じカーブでありまして、世界の常識でみんながこのカーブを知っているのが、ようやく日本でも具体的にこういうケースで出てきたというのは、私大変うれしく思いました。
それから、東京都のETS導入の際に、実はここでやった、入れるとプラスになるますよと、こういった作業もやって導入されたと聞いておりますので、こういったこと大変有益かなと思っております。
先ほどESCOの事業の重要性がお話ありましたけども、例えばこれなんかESCO事業の一つの事業モデルになり得るのかですね。あるいは、銀行は今キャッシュフローベースの貸し出しなんて言っていますから、コストを回収できるキャッシュフローで銀行ローンを貸して、こういった設備投資をしていくとか、いろいろな私、工夫ができると思うんです。その資金的な裏づけと、それから、きっかけを何で与えるかというところが、これから非常に重要な議論になると思いますけれども。以上です。

高村委員
ありがとうございます。非常におもしろい検討結果だと拝見をしております。といいますのは、以前も発言をさせていただきましたが、自主行動計画のフォローアップをしていますと、大体3年ぐらいで投資回収をしているようなケースというのが、まま見られるわけでありますけれども、しかし、今回の検討結果を見ると、やっていらっしゃるところはやっていらっしゃるけれども、業種の中でもまだそれだけの投資されていない、あるいは一つの業種の中でも、そこで取組のレベルについて違いがあるということがわかったということだと思います。
恐らく現時点でもですけれども、2020年あるいはさらに取組対策進めていくときに、やはりある人は頑張るけれども、ある人は頑張らなくてもいいようになっているという形の公平性を欠く制度というのが、やはり一番取組のインセンティブを失わせるというふうに思っております。
そういう意味で私、排出量取引制度を離れても、この知見というのは非常に重要な点で、むしろ存在している削減ポテンシャルを、どう現実のものにするかというオプションは幾つもあってもいい。しかし、その中でこのオプションを削減ポテンシャルを現実化する一つの方策として取引制度の可能性というのは、検討の一つとしては、やはりしっかり入れていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。
以上です。

冨田委員
ありがとうございます。私は小委員会のほうでも同じご説明を受けて、2度目ですが、改めてお聞きして思うのは、これはタイトルがこういう排出量取引制度の課題を整理しましたということになっておりますけれども、限界削減コスト2,500円、あるいは4,500円レベルの対策を施すと、このくらいの経済影響が出てくるということを分析されたということであって、排出量取引制度について、経済影響があまり大きくないということを示したものではない。極めてミスリーディングなタイトルではないかと思います。
現実にマスコミ等で報道されている中身についても、排出量取引制度でそれほど経済影響がなくて、これだけ削減できるというような報道もあるわけで、世の中で読む人は間違った読み取りをしてしまう可能性が高いと思います。
このスタディの中で、先ほど進藤委員もおっしゃいましたけれども、投資回収年数3年以下のものは、これほどやられていない。私にとってはにわかに信じられない状況なわけですけれども、アンケートをとられていらっしゃるのであれば、なぜやられないのかと。それを実施してもらうための施策としては、どういうものが考えられるだろうかという研究に発展させていただくと宜しいのではないでしょうか。必ずしも排出量取引制度で、うまくこれが推進できるということではないのではないかと考えます。
以上です。


中上委員
削減カーブを拝見しまして、本当に何年も開始しなくて、即座にプラスになるのなら、なぜやらないかと、これは進藤委員もおっしゃったように気づいていないんじゃないかといったような、どういう業種でこういう答えが出てきているのか、それをお聞きしたかったのが一つ。
それと、末吉委員からもお話がありましたけれども、プロジェクトファイナンスみたいなことがあれば、こういうのが進むんじゃないかと思うんですけど、日本の場合にはこの種の規模でプロジェクトファイナンス的な融資を金融機関がやってくれないんです。したがってESCOの場合も非常に苦労しています。ESCOの場合のペイバックタイムは10年とか15年という年数ですから、もうこんなのはあっという間に進まなきゃいけない話だと思います。
そういう意味からすると、政府の例えばバックアップというのは債務補償だとか、途上国ではそういうモデル、スキームで非常に中国なんかESCOが大躍進をしているわけですけれども。直接的なプロジェクトにお金を出すんじゃなくて、債務補償的なやり方でプロジェクトファイナンスというものをもし活性化させると、にわかに顕在化するんじゃないかと思いますので、是非、どこかで考えていただきたいと思います。

永里委員
ありがとうございます。前回小委員会でこの意見を言いましたので、繰り返しになると時間泥棒みたいな感じになるので本当は避けたいんですが、とにかく利用者である産業界の人が、この検討会に入っていないんで、いろいろと問題があろうかと思いますし、この10ページの図なんかでも、産業界の人が入ったらまた違うほうになったのかもしれません。
この10ページの図というのは、先ほど末吉委員もおっしゃいましたけど、西岡委員とか、皆さんこの種の図、似たような図を見ておりますし。これはこれで我々としては研究開発に金を使って、こういう投資回収していくということこそが重要であって、排出権取引でこういうことをやるよりは、そっちのほうが宜しいというのが我々の持論なんです。そういうことも含めて、もっといろいろと産業界の意見を吸収しながら、検討してほしかったなというのが一つです。
それからもう一つは、この検討会において、低炭素社会を目指している排出権取引なのですから、エネルギーセキュリティとの関係でどう考えるかという、もっと大所高所等の検討が加わったらよかったかなと、これは私のコメントです。
以上です。

新美委員
ありがとうございます。私はやはり同じこの10ページの表をもとに、コメントさせていただきたいと思います。
この研究の目的は、そもそも冒頭にあるように排出権取引というのを政策として入れるかどうかといったら、全く中立的であるというふうに思っておりまして、むしろこのデータが出たということを、先ほど何人かの委員の先生がおっしゃったように、知らない事業者もいるんじゃないかなということが、一番重要だと思うんです。
いわば私、オフセット・クレジットのほうをやっていますけれども、現在どういう排出をしているのかを知るというのが、これは見える化が算定・報告・公表制度ですが、むしろポテンシャルがどれだけあるかというのを見えるようにする、あるいは自覚するようにするというのが、政策論としては重要なんじゃないのか。
それが結局、研究投資に回して削減は後回しとか、技術でカバーするというのもあるでしょうけども、まずどれだけ削減できるのかということを、各事業者の人が知るということが一番大事だと思いますので、そのための施策ないしは政策というのを考えてもいいんじゃないか。排出量取引というのは、その中の一つであり得るということだと思うんです。ほかにもやり方いろいろあると思うんですが、最低限、知ってもらうということを少し検討したらいいんじゃないかと、そういうふうに思います。
以上です。


藤井委員
論点のこの10ページですけども、取り組まない理由は簡単で何も首をひねることはなくて、規制がないから、規制がないところに新規設備投資をしてやるという企業は少ない、これは当たり前のことで。ですから、規制をかければ、その中で一番合理的な選択をするということになると思います。
それから。キャップとトレードをやっぱり別と考えていただいたほうがいいと思うんです。キャップは規制です。それがしかし人為的にかけると、一律にかけると誤差が生じるので、経済的に合理性を保つためにトレードしてもいいですよということですので、トレードに反対ならキャップは賛成なのかということですけれども、私ちょっと経済界の方のご意見は、キャップかけて、キャップには反対しないのかと。温暖化が本当に顕著にあらわれてくれば、キャップかけざるを得ないです、企業も生活も。それも反対するわけにいかないですよね。
それからこういった計算は非常にいいと思うんですけど、これを有効にしていくには、要するに技術の評価を公的にリバイスしていく、BAUのデータベースをつくる必要がある。我々の低炭素ビジネスワーキンググループではそれをちょっと言及しているんですが。温暖化技術に限らず、環境の技術についての一番望ましい、今現在の技術は何かということを、EUではデータベース、膨大なものをつくって、業種ごとに開示しております。そのようなものを我が国も当然必要になってくると思います。それは民間の方が、民間の企業の方が情報を開示して、それを公的に精査して、もちろん、企業秘密もありますので、どこまですべて出せるかですけれども、そういった官民の協力活動が要ると思います。
それからもう一つ、こういった作業をするのは非常に有益だと思うんですが、せっかく先ほどもありました東日本大震災、あるいは原発の作業を経てやっておられるわけですから、この間で起きているエネルギーの逼迫に対応して、じゃあ、日本型ではなくてEU型の直接燃焼の業種にかけた場合にはどうなんだ。
それから今、最大の課題は電力が石炭エネルギーを原発稼働ができないので、石炭火力を増やしているわけですから、それによってGHGガスが増えているわけです。じゃあ、アメリカのレッジでやっているような電力だけを対象にした排出権取引ということも考えられますし、CPU、ETSも一番最初はデンマークの電力に対するトレードでした。
ですから、何も一番望ましいというか、理想的な姿を絵に描いて追及するだけじゃなくて、できるものから、かつ緊急なものから、こういった対策をやっていくということも研究・検討していただいて、是非取り組んでいただきたいと思います。

三橋委員
経済成長率の、前提に疑問があります。2011年から2020年、成長戦略シナリオに沿って1.8%とか1.1%が前提になっています。過去20年の経済成長率は、年率で1%前後で停滞しており、恐らく現実の2020年までの成長率としては高過ぎる、実際にはゼロ成長かマイナス成長が妥当ではないかと思います。
それともう一つ、13ページです。キャップをかけるというのは政策で、規制ではありません。エネルギー構造を変えていく、あるいはCO2の排出削減を減らしていくというためにキャップをかぶせるわけですから、キャップは政策そのもので、規制と受け取るべきではありません。
ここに掲げてあるキャップあるいはクレジットの金額、このくらいの金額が想定できれば、クレジットの取引は活発化し、キャップによるCO2削減効果は大きいと思います。しかし現実のクレジット価格は、今、トン当たりのCO2の価格で、500円以下というような状況です。このような状況が、2020年まで続くようだと、CO2の取引市場の存在意義が薄れてしまうのではないかと思います。ただ、そういう問題があるにしても、高めのキャップを前提にして推計すると、CO2の排出量取引市場の存在は、CO2の削減に一定の効果があるということが証明されたこと自体は、評価できるのではなきかとは思います。
もともと排出量取引制度というのは、1単位のCO2を削減させるために、どうやったら一番コストが安く上がるのかというところがスタート点です。排出量取引制度はそのひとつですが、今度の試算で経済合理性に沿った結果が、出て来たのは一定評価できると思っています。

鈴木部会長
いろいろとご意見あるいはコメントありましたが、事務局の方からお答えになりますか。

市場メカニズム室長
幾つかご質問等もありましたので、答えたいと思います。
順番にというか、まとめて4種類ぐらいのご質問があったかと思います。まず、この報告書自体が何か予断を与えるのではないか、産業界が入っていないのではないか、導入というこの結論の方向性といった、そういうまず検討の位置づけについてのご質問があったので。
これについては、あえてパワーポイントのほうでは検討の経緯の後ろと、今回のオプションについてという注意書きをつけたんですが、報告書のほうもちょっとお手元に配っているかと思うんですけれども、結論として、だから導入すべきというようなことは書いていなくて、慎重に検討を行うために必要なデータを整理をしてみたということです。これがまさに議論のスタートになればいいのかなというふうに思って書いたところで、口頭でも説明はしましたが、なかなか言葉が足りなかったところがあるかもしれません。
二つ目でございますが、何人かの多くの委員からご指摘がありましたけれども、まさにMACカーブと呼んでいる限界削減コストカーブですけれども、ここの議論を我々としても、今後のこちらでの議論に参考になるだろうと思って、提示をさせていただきました。多くの人からもっと産業界との対話の中でこの議論を詰めていって、現実とも照らし合わせていけばいいのではないか、そうしたご議論もございましたし。
また、このパートではなくて資料1のほうですか、委員のほうから産業界のヒアリングはどんどんやってほしいというふうな話もありましたので、今後この実態をどこまで把握できるのかというような時間との関係もございますが、少し事務局の中で考えて、今後の議論に供せるような、そのファクトのところを、カーブのところを少し整理ができたらと思います。
我々のほうでも少しアンケートをかけたりしております。実際にこのデータは算定・報告・公表制度の対象になっているすべての事業所にお送りしまして、技術リストを提示して大体5割ぐらいの回答数をいただいてつくったものでございます。ただ、アンケートでございますから、回答率はかなりいいものかなと思っているんですけれども、実際に話をして確認をしていくと違ったことも出てくるかと思います。
そうした確かなデータの上にしっかりとした対策施策というものの議論ができればと思いますので。ちょっと今後、特にカーブのところをどういうふうにさらにいいものにしていくのか、また、先ほど、なぜこれが入らないのかといったところの分析等についても、少し事務局の中で考えてみたいというふうに思います。
あと、モデルのケースについて2,500円とか、あと電力直接にしたらいいのではないかということで、モデルのケース分けは、あまりたくさんあると作業の限界もあったんでこれぐらいに絞ったんですが、さらにこれをする必要があるのかどうかというのは、そのデータの出そろったところを見て考えると、そのときにはこれに絞ったものではなくて、全体のAIMの分析のほうも出ているでしょうから、あまりそういったものが意味がなさないというのであれば、そのときにまた判断をしたいと思います。
最後に対策・施策というものを考えていく上で、そういう選択肢の一つというふうなものとして、排出量取引もというお話があったかと思います。これらにつきましては、これをどういうふうに担保をするのかというのは、こちらの報告書でも排出量取引がいいとかというふうに書いているんではなくて、それに必要な議論ということなんで、その結果、こちらの中で選択肢を提示した上で、どういうこれから議論になっていくのかというは、その中での議論かなと思っていますので。特にこれだけ排出量取引だけとりたてて何か議論をするというのではなくて、全体の中でまずはご議論いただければいいのかと思います。
以上4点、お答えさせていただきました。

鈴木部会長
ありがとうございました。この限界削減コストのグラフが大変皆さんに評価をいただきました。やっぱり、多分、報告書の中には、緻密にその辺が触れておられるんでしょうが、それぞれの業界からいろいろと多分、データを集められてつくられたと思いますが。技術的ないろんな革新その他も日進月歩でもありますし、必要があればそこがまた、開発されるというところがありますので。この辺のもとになるデータも、是非オープンにして、わかりやすい形で示していただくとですね。この11ページの図だけ見ますと、化学産業が削減余地が大きいような印象を与えますが、多分緻密なデータをお出しいただいたために、こういうふうに見えているという面もあるかもしれません。
また、対策コストが物すごく高いものであっても、しっかりと入れておられるというのは、こういうところは、むしろエクスプリシットに皆さんに評価されるような、そういう後押しをしてさしあげるといいようなことも必要かもしれません。大変、有意義な検討をしていただいたと思います。タイトルは確かにミスリーディングな面もあるのかもしれませんが、その辺は別といたしまして、ここを出発点として今後、検討を進めていただくということだろうと思います。
それでは、予定の時間に達してしまいまして、あとは資料3というのがまだ残っています。これは今後のスケジュールですね。それでは、これは事務局のほうから説明をお願いいたします。

低炭素社会推進室長
資料3で今後のスケジュールでございます。
裏面に今後の開催予定が書いてございますが、次回が4月4日でございますが、これまで各ワーキンググループからの報告をもとに、小委員会また部会で議論いただきましたので、それの内容をもとに技術モデルを使いまして、エネルギー消費量などの計算、試算結果のご提言をさせていただきながら、検討を深めていただきたいというふうに思っておりまして、4月につきましては、合計3回、予定をしておるというものでございます。
以上でございます。

地球温暖化対策課長
委員の皆様におかれましては、活発なご議論大変ありがとうございました。次回の日程につきましては、今説明しましたとおり4月4日でございます。詳細につきましては、追って事務局よりご連絡を申し上げます。また議事録につきましては事務局でとりまとめまして、委員の皆様にご確認をいただきました後にホームページに掲載をさせていただく予定でございます。宜しくお願い申し上げます。

鈴木部会長
それでは、本日の議事をこれをもって終了させていただきたいと思います。どうも遅くまでありがとうございました。

午後 6時01分 閉会