中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会(第8回) 議事録

日時

 令和4年10月20日(木)16時00分~18時30分

場所

 WEBによる開催

議事

(1)有識者等からのヒアリング

(2)その他

議事録

午後4時00分 開会

地球環境局総務課長
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会(第8回)を開催いたします。
 環境省地球環境局総務課長の小笠原です。よろしくお願いいたします。
 本日の小委員会はWebでの開催とし、YouTubeの環境省動画チャンネルで同時配信しております。
 本日は、委員総数17名中、現段階で13名、最終的には15名のご予定でございますが、現段階で13名の委員にご出席いただいており、定足数の要件を満たし、小委員会として成立していることをご報告いたします。
 なお、本日は、小野委員、山本委員がご欠席でございます。
 このほか、資料1の名簿のとおり、オブザーバーや関係省庁からもご参加いただいております。
 それでは、以後の進行を大塚委員長にお願いいたします。
 
大塚委員長
 前回の会議におきましては、環境省による「今後10年を見据えた取組の方向性」の案についてご議論をいただきました。その中で、十分に議論ができなかった金融、人材育成、国土利用、DXなどを中心に、本日は有識者をお招きして、議論を深めていきたいと考えております。
 委員の皆様におかれましては、カーボンニュートラルの実現という観点から、それぞれの分野でどのような取組が求められるのか、本日のヒアリングを通じてさらなるご助言などをいただければと思います。
 それでは、議題1、有識者等からのヒアリングに入りますが、まずは、前回ご欠席の三日月委員から、今後の取組の方向性に関して資料を提出いただいておりますので、三日月委員にご発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
三日月専門委員
 ありがとうございます。滋賀県知事の三日月です。
 本日は、全国知事会脱炭素・地球温暖化対策本部の副本部長の立場から「脱炭素化に向けた地域の主体的な取組の更なる推進に向けて」、説明をさせていただきます。
 2枚目のスライドをご覧ください。脱炭素化に向けた全国知事会の取組の方向性につきましては、一つは、多様なステークホルダーとの共創、二つ目として、地方自らの積極的な行動の二本の柱を掲げております。まさに、地方、地域こそ、この脱炭素化の取組を率先すべきと考えております。
 具体的には、政府、経済界、国民の皆様とともに、企業への支援やライフスタイルの創造・発信に取り組みますとともに、地方脱炭素の旗振り役となる公共部門が率先して取り組み、脱炭素化の牽引役としての役割を果たしていくこととしております。
 実現に向けては、前回、出席させていただいたときに述べましたとおり、財源、人材、情報共有が課題だと考えておりまして、その解決に向けて国の積極的な支援をお願いしたいと存じます。
 3枚目のスライドをご覧ください。脱炭素化を進めていくためには、私たち国民のライフスタイルの転換が急務であると考えております。環境省では、脱炭素に向けた国民の行動変容、ライフスタイル転換に向けたうねり、ムーブメントを起こす新しい国民運動を開始すると伺っております。
 ちなみに滋賀県でも令和2年1月に「しがCO2ネットゼロムーブメント」キックオフを宣言いたしまして、私たち県民、事業者等のあらゆる主体が一丸となった取組を進めているところです。特に今年度からはネットゼロに関連する情報を一元化して発信するプラットフォームサイトの創設ですとか、ネットゼロ社会の構築に向け、官民が一体となって課題の共有や連携を図る場であるコンソーシアムの組成を進めているところです。
 また、カーボンクレジットの普及拡大も進めておりまして、2日間で6万人を動員いたしました音楽イベント、これは西川貴教さんの「イナズマロックフェス」をカーボンオフセットで開催するなど、民間とも連携した取組を進めております。
 こうしたライフスタイルの転換に向けては、情報の見える化や自分ごと化を通じた行動の変容が重要であると考えておりまして、国におかれては、そのための人材支援や情報の共有をお願いしたいと存じます。
 最後、4枚目のスライドですが、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロを表明した自治体は、9月30日時点で785自治体となっております。脱炭素先行地域につきましては、滋賀県の米原市を含めて第1回目で26地域が採択されたところです。脱炭素先行地域の取組に加えまして、脱炭素の基盤となる重点対策を実施するため、全国においてそれぞれの地域の個性や強みを生かし、地域住民や企業を巻き込んだ主体的な取組が検討されているところです。
 また、全国知事会におきましては、脱炭素社会の実現に向けた共通の目標となる行動宣言を今年7月に行いました。新築建築物のZEB Ready相当以上や公用車は、原則、電動車を目指すとともに、再エネ電力への切替に最大限取り組むとしたところでございます。
 この委員会の場でもGXに向けて脱炭素を成長のエンジンとする観点から議論が行われていると承知しておりますが、地域のGX、ひいては、地域脱炭素のさらなる加速化のため、地方財政措置も含め、地方の取組に対し、質、量、共に充実した大胆な支援をお願いしたいと存じます。
 なお、最後に一言、カーボンプライシング(CP)につきましては、別途検討されていると伺っておりますが、成長志向型のカーボンプライシングの最大限の活用に向けて議論を加速化していただきますことも併せて強く要望し、私の発言とさせていただきます。
 ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。三日月委員、貴重なご意見をどうもありがとうございました。
 それでは、ヒアリングに入りたいと思います。
 本日の進め方に関しまして、環境省から説明をお願いいたします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 環境省脱炭素社会移行推進室長の伊藤でございます。資料3に基づきまして、簡単にご説明したいと思います。
 次のページですけれども、本日、冒頭、大塚委員長からもご説明がありましたが、金融、人材育成、国土・土地利用、DXということで、お示ししている7名の方にご参加いただき、議論を深めていただきたいと思っております。
 特に金融ですけれども、GX、官民協調で150兆円の脱炭素投資を実現していくということで、民間投資と組合せで投資効果を最大限化していくという観点から、公的金融機関などが果たしている役割について、3名の方にヒアリングをさせていただきます。何とぞ、よろしくお願いいたします。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、プレゼンテーションに入りますが、時間の都合上、各10分程度でお願いいたします。
 早速ですが、日本銀行の宿谷様からプレゼンテーションをお願いいたします。
 
日本銀行(宿谷企画役)
 本日は、日本銀行において金融政策面での気候変動問題の取組として実施しております民間の気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションについてご説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
 まず、冒頭なのですけれども、前提といたしまして、日本銀行としましては、気候変動問題について、将来にわたって、社会、経済に広範な影響を及ぼし得るグローバルな課題であるとの認識の下、物価の安定と金融システムの安定という日本銀行の使命に沿って気候変動に関する取組を進めるというスタンスでございます。
 昨年7月に金融政策、金融システム、調査研究、国際金融など、様々な分野における包括的な取組方針を決定、公表しております。この際の取組方針と各種施策のポイントにつきましては、資料末尾におつけしておりますので、必要に応じて後ほどご覧いただければと思います。
 その昨年7月の取組方針の下、金融政策面の取組といたしまして、気候変動分野での金融機関の多様な取組を支援するために、新たな資金供給を実施すると掲げておりましたところ、昨年9月に導入しました、気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションというものを本日はご紹介させていただきます。
 冒頭のタイトルにありますとおり、金融機関の間では気候変動対応オペですとか、グリーンオペというふうに呼称されております。
 では、資料の1ページをご覧ください。まず、本制度の枠組みの概要をご説明いたします。
 まず、制度の趣旨ですが、本オペレーションは、民間における気候変動対応を支援するための資金供給ということでございます。具体的には、民間金融機関が行っているわが国の気候変動対応に資する投融資の残高の範囲内で、日本銀行から、その民間金融機関に対してバックファイナンスを行うということを通じて、民間部門における気候変動対応を支援するというものでございます。
 そもそも、金融政策は広く経済全体に働きかけるものでありますので、日本銀行としては、特定の産業や個別具体的な企業へのミクロの資源配分についての判断をするというようなことをできるだけ回避するという観点から、資料上、対象投融資の項目にありますとおり、わが国の気候変動対応に資する投融資として日本銀行から大きな類型を示した上で金融機関が判断するというものになっております。この対象投融資については、追ってご説明いたします。
 続いて、貸付けの対象となる金融機関なのですが、こちらはTCFDの4項目の開示や気候変動対応に資する投融資の目標や実績の開示を求めておりまして、こうした一定の開示を求めることで本制度の利用に係る規律づけを図っております。
 続きまして、貸付期間ですが、こちらは1年としております。
 気候変動関連融資は、一般的に長期にわたるものが多いことは私どもも承知しておりますが、どういった投融資が気候変動対応に資するかどうかの基準や分類については、引き続きタクソノミーをめぐる議論など、外部環境が流動的であるため、そうした変化への柔軟性を確保するという観点から、このように貸付期間を1年とした上で、期日を迎えるごとに繰り返しご利用いただくことで、事実上、長期のバックファイナンスになるような形としております。
 貸付利率ですが、こちらは0%ということで、金融機関にとって低利な調達を可能にしております。
 また、各金融機関に対する日本銀行からの貸付限度額、すなわち、各金融機関の利用限度額ですけれども、これは1年のバックファイナンスであるという性質上、各金融機関が行っている残存期間が1年以上の気候変動対応に資する投融資の残高の範囲内というふうにしております。貸付限度額につきましては、このほかの制限は設けておりませんので、金融機関による投融資が拡大すれば、本制度での利用も拡大可能な仕組みとなっております。
 一番下、実施期間のところですけれども、気候変動問題の対応は長期にわたって取り組む必要があるほか、政府におかれても2050年カーボンニュートラルに向け、まずは2030年の温室効果ガス削減目標を設定しているということも踏まえまして、2030年度としております。
 以上が制度全体の概要になります。簡単にポイントをまとめますと、中央銀行としてミクロな資源配分には立ち入らないようにすること、それから、気候変動をめぐる外部環境が流動的であることを勘案しまして、気候変動に資する投融資であるかどうかといったところについては、金融機関の判断に委ねて柔軟性を確保しつつ、金融機関に一定の開示を求めることで利用の規律づけを図るというのが、私どもの制度設計における工夫ということになります。
 続きまして、2ページをご覧ください。制度の概要のうち、対象投融資というところについて少しブレークダウンしていきますが、資金供給の対象としてわが国の気候変動対応に資する投融資というふうに述べてきておりますけれども、その中に「わが国」と「気候変動対応に資する」という二つの要件がございます。
 順番は前後しますけれども、まず、「気候変動対応に資する」の具体的な判断基準について、こちらは、国際原則や政府の指針に適合するグリーンローン/ボンド、サステナビリティ・リンク・ローン/ボンド、トランジション・ファイナンスという3類型と、これらに準じるものとしております。
 こうしたものに該当すると金融機関が判断したものについて、その判断基準や、プロセス等を開示いただくことを条件とすることで、一定の規律の下に民間部門における取組の進展にも柔軟に対応できるという格好にしております。
 なお、ここで具体的に想定しております国際原則や指針を具体的に申し上げますと、この夏に改定された環境省のグリーンローン原則、グリーンボンド原則、サステナビリティ・リンク・ローン、ボンドガイドラインですとか、ICMAのグリーンボンド原則、ローンマーケット協会のグリーンローン原則、それから、トランジション・ファイナンスで申し上げれば、金融庁、経産省、環境省策定のクライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針などとなりますので、こちらを参照していただきまして、これに適合するものを対象と想定しております。
 また、これらに準じる投融資としましては、例えば金融機関と取引先企業の相対取引であることから、グリーンローン原則で求められている定期的な開示そのものは行われないのですけれども、資金使途自体はグリーンローン原則に掲げるグリーンプロジェクトに該当する融資ですとか、こちらの資料で例として挙げております、いわゆるポジティブ・インパクト・ファイナンスなどを想定しております。
 続いて、「わが国」という要件についてですけれども、資料に挙げております、わが国の温室効果ガス排出量を削減するものその他の国内を実施場所とするもの、それから、国内実施ということに限らず、サプライチェーンを通じてこれに貢献するものなどのほか、海外を実施場所とするもののうち、二国間クレジット制度を通じてわが国の温室効果ガス排出削減目標の達成に貢献するものとしております。
 わが国を要件とする考え方の背景ですけれども、当然、気候変動問題はグローバルな問題でありますけれども、その対応に当たっては、国際的な合意の下で各国政府が取組を進めているほか、各国政府の政策は、基本的に自国に関する気候変動対応を目的としているということと認識しておりますので、そうしたことから、私ども、日本銀行もわが国の中央銀行としてわが国の気候変動対応に資する取組を後押しするという制度設計を行うことが適当と考えております。
 続きまして、3ページ目をご覧ください。こうした制度設計の下、実際の資金供給の実績なのですけれども、これまで昨年12月、本年7月と2回実施しておりまして、次回は年明け1月に3回目の実施ということになります。
 引き続き関心のある金融機関から照会なども多くありまして、この資金供給の対象先になりたい方々の追加公募などを行いながら、年2回の頻度でオペを実施していく予定になります。この間、貸付残高ですけれども、2兆円、3.6兆円と増加しておりますほか、貸付対象先のところですけれども、こちらも43先、63先と増加しております。
 続きまして、4ページに貸付対象先の業態別の数字を出しておりますのでご覧ください。業態名で、例えば地銀、信金などで広がりが見られていることが見てとれるかと思います。民間部門における気候変動対応が進むとともに、私どものこの制度の利用も進むということを期待しているところであります。
 以上、金融政策面での日本銀行の取組をご紹介させていただきましたが、わが国の気候変動対応は進行中であると認識しております。私どもとしても、こうした資金供給の実施や冒頭ご紹介した各種施策を通じて民間における多様な取組を支援していければと考えております。
 私からの説明は以上になります。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 次に、日本政策投資銀行の吉田様からプレゼンテーションをお願いいたします。
 
日本政策投資銀行(吉田室長)
 今回は、弊社、DBJの脱炭素に向けた取組ということでご説明をさせていただきます。
 1ページ目でございますが、当行は、1960年代からまさに公害防止というところからスタートとしておりまして、気候変動の対応に向けて、もうかれこれ50年、60年近く行ってきているということでございます。
 特に2000年代に入ってからは、世界初の環境格付融資ということで非財務資本を評価するような取組、さらに、2011年からはDBJのGreen Building認証、あとGRESBの投資ということでグリーンファイナンスの拡大、さらには、2014年からは、DBJ自体がグリーンボンドを発行するということで、直接金融のほうでも資本市場の拡大ということについても取組をさせていただいてきたということでございます。
 さらに、2017年からは、我々のサステナビリティ経営をより深化させるという観点で、昨年取りまとめた中期経営計画において、グリット(GRIT)というふうに言っていますけれど、戦略を策定し、より強力に進めていくということをやっております。
 次のページでございますが、この中期経営計画で定めているDBJのGRIT戦略というものです。2030年から2050年、2050年のカーボンニュートラルに向けて、まず我々として、Green、Resilience、Innovation、Transition、こういう分野に力点を置きながら投融資活動をやっていこうということで考えております。
 Greenというのは、言わずもがなでございますが、そこに至るパスとしてのTransitionということも重視しながらやっていくというところ。あと、Innovationにつきましては、デジタル化みたいなことも含めて、日本社会が変わっていくところへの新しい技術への支援ということでもやらせていただいております。さらに、特色があるところはこのResilienceというところでございますが、気候変動についても、そもそも人間の経済社会が持続可能たらしめるためにやっているということだと思っておりますが、日本の場合は、そもそも気候変動以外にも地震であるとか、非常に大きな災害があったりする国でもございますので、そういうものからのしなやかな復興、復旧ということも必要でございますし、コロナ禍における投融資という点でも、ソーシャルの観点からも非常に重要だということでResilienceという項目を入れさせていただいて、このGRITの分野でDBJの投融資活動を強化しているというところでございます。
 下のほうに金額を書いておりますが、この5年間の弊社の第5次中期経営計画で総額13兆円程度の投融資を想定しておりますが、そのうち5.5兆円、約4割程度をこれらの分野に投じていこうという計画を、足元、進めております。
 次のページでございます。こうしたことを進めていくためには、やはり我々、先導しながらリスクマネー供給ということもやっていかなければいけないというところでございまして、これは政府とDBJとのジョイントで半額ずつ資金を出し合いながら疑似ファンドみたいなものを作らせていただいておりますが、これは特定投資業務ということで、そもそもは、このリスクマネー供給をしていくための仕組みとして講じられているものでございますが、この特定投資業務を通じて、DBJもリスクを取りながら、金融機関との連携、協働をさせていただきながら、裾野を広げていこうという取組を、続けているというところでございます。
 4ページ目ですが、特定投資業務の中に三つの特色ある資金枠というものを設けておりまして、ライフサイエンス、あと、新型コロナからの復興、成長基盤ファンド、3番目がまさにグリーン分野ということで、グリーン投資促進ファンドということで2021年2月に設置をしておりまして、こちら、資金枠として400億円、さらにここからの民間と連携ということで約800億円程度の規模感でこの枠の運用をしているということでございます。
 これに限らず、DBJの独自の資金枠としてやっている部分、あと、シニアローンとして対応している部分というものもございます。
 次のページでございますが、特徴的な取組といたしまして、これはローンの話でございますが、トランジションに向けての資金というのも強化しておりまして、トランジションについては、国内外でいろんな捉えられ方をしておりますが、日本としてはやはりこのトランジションというのを強化してやっていく必要があるということでございまして、DBJもこれらの案件を積み重ねることでトランジション・ファイナンスのマーケットを拡大させていこうということでやっております。
 その例として二つ書いておりますが、一つ目が商船三井さんの例でございます。こちら、船の業界、基本的にまず燃料が石油であると、重油であるというところからLNGを燃料とする船に切り替えていく。こちらについては、IMOが定めているトランジションのパスウエイに今乗っているということで、トランジション・ローンとして初めて経済産業省のクライメート・トランジション・ファイナンスのモデル事業に採択をしていただきながら、シンジケート・ローンということを組みながら、地銀さんにも参加していただいて、日本の金融業界にも広く行き渡るような形でのファイナンスを組成させていただいているというものでございます。
 もう一つ、川崎重工さんの事例を書かせていただいておりますが、これもDBJの環境格付時代から培ってきた対話というものを生かしながら、サステナビリティ・リンク・ローンというのを組成して、DBJ-対話型サステナビリティ・リンク・ローンというふうに称しながらやっているものでございます。こちらはトランジションのロードマップというよりも、まさに水素の社会の構築に向けて必要な事業について、このSPTsというのを設けながら、しっかりKPI化しながら、そこを基点にし、サステナビリティ・リンク・ローンを打っているというものでございます。まさに、この目標を設定するところに対話というものが非常に大事になるわけでございまして、我々が対話をしながら、会社様とSPTsを設けていったというところに最大の特色があるのかなというふうに思っております。
 こちらも水素サプライチェーンの構築に対して非常に重要な取組ということで地銀さんの方々にも入っていただいて、シンジケート・ローンという形で組成をさせていただいております。
 このようにトランジション・ファイナンスについても、いわゆるラベルつきのトランジション・ファイナンスというものと、こういうサステナビリティ・リンク・ローンのような形でカスタマイズしながら企業のトランジションというのを広い意味で支援していくという取組があろうかと思っています。この両軸で、弊社としては日本の脱炭素社会に向けた移行というのをファイナンス面から支援をさせていただきたいというふうに思っております。
 次のページでございますが、また少し違った観点での取組でございますが、今度はクライメート・テック・ベンチャーというところに対する取組になります。こちらは、つばめBHBという、オンサイト型のアンモニアの供給システムをやっている会社様へのサポートでして、ベンチャーの資金についても積極的に出していこうということでやらせていただいております。
 ここには書いておりませんが、核融合であるとか、蓄電池であるとか、様々なクライメート・テック・ベンチャーというのが出てきておりますので、そういうところについてもDBJとして一定の資金枠を投じながら、促進をしていこうということでやらせていただいております。
 続きまして、地域の観点でございます。次のページでございますが、ご案内のとおり、今、日本の各地域、水素・アンモニアをどこに入れていくかという議論をしておりますが、この地図で書いてありますとおり、石炭火力とかが多く立地しているところを中心に受入拠点港の議論というのが進んでいるというふうに理解しております。
 脱炭素というものを本当の意味で日本の中に社会実装していくためには、やはりまず初めに、我々も非常に感じているところでございますが、地域においていろんな意味でのリスクと機会というのが先行してやはり顕在化していくというふうに思っております。
 先般、ニュースとかにも出ておりましたが、製油所さんが工場を閉鎖する、製鉄所の高炉が閉鎖していくということが、実際、地方で行われているわけでございますけれど、そのままでは地方の産業転換が進まないという形になりますので、地方の産業構造の転換と併せて、この脱炭素の取組を進めていかなければ、そこで動きが止まってしまうというふうに思っておりますので、今年度、弊社としては地域×移行、トランジションというところで、地域からこの脱炭素の動きをしっかりサポートしていこうという動きを、日本全体に弊社も10個支店がございますので、取組を進めているというところでございます。
 次のページでございますが、そういう中で、弊社が参加している地域の協議会・検討会というものが、一覧で書いておりますが、地域においては、個社で脱炭素を進めていくというのは限界があるという中で、面的な対応をしていく必要があるということで、こういう協議会というものが立ち上がっておりまして、金融の観点からサポートすべく、弊社も入らせていただいております。
 ただ、こちらについては、参加の数が多ければ多いほど、その輪としては広がっていくわけでございますが、実際に進めるとなると、やはりコアな会社さんがいる地域、いない地域というところで分かれていくところも正直あるかなというのを思っております。やはり基点となるような会社さんと地元資本というのをつなぎ合わせていくということが実際に動かす上では非常に大事になるのではないかなというふうに感じております。
 そういう観点で、地方の地元資本、地銀さんと、東京資本で地元に工場があるような会社さんの動きをつなげていくという役割が大事になっていまして、そういう観点で弊社に対する期待があるのかなというふうに思っておりまして、微力ではございますが、こういう協議会に参加しながら、両面の観点でサポートをさせていただいているということでございます。
 その一つの例が四国中央市の例でございます。紙・パ産業の一大集積地ということで、大王製紙さんと丸住製紙さんという大きな製紙会社さんがいらっしゃるわけでございますが、これは地元資本でございますけれど、両者ともやはり競合していた先ではあります。ただ、これから脱炭素をしていく中で、今まで石炭火力をたいて自家発で、その熱で紙を作っていたわけなのですけれど、石炭がなかなか使えなくなるという中で、どのように次のエネルギーを調達していけばいいかということを考えなきゃいけないと。両者ともそういうことを考えていたのですが、今までの競合関係の中でなかなかお互いに腹を割って話せないという中で、弊社のほうはそこをつながせていただいて、地銀さんも参画し、地方自治体さんも参画していただいて、この協議会というのを事務局としてやらせていただいています。
 その一つの効果として、実は大王さんと丸住さんが連携協定のようなことを今年度も結んでおりまして、それを地元の中でも協力してサポート、動くような取組が出てきているということも非常に重要かなというふうに思っております。まだまだ先が長い取組かと思っておりますけれども、まさに地域における脱炭素というのは、そういう息が長いところ、さらに、いろんな関係者をつないでいきながら取組を進めていくということが大事になるかなと思っていますので、そういうところで貢献してまいりたいと思っております。
 政策投資銀行からは以上でございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 次に、国際協力銀行関根様からプレゼンテーションをお願いいたします。
 
国際協力銀行(関根審議役)
 国際協力銀行からは、舞台が国外ということで、国外との関わりという意味でグローバルなGX、これに関わりながら日本の産業のビジネス機会につなげていくという視点、日本のGXに対する貢献として、安定的なグリーン燃料というものの調達を実現していくというところに貢献していくという視点、それから、グローバルな国際協調の下でのGXへの取組といったものが3本柱として重要な取組でございますところ、本日はJBICとしてのポリシー、それから制度、さらには国際的なエンゲージメントの状況、そして、具体的な金融ツールを使ってどういうアプローチでプロジェクトを実現しているかということをお話しさせていただければと思います。
 資料、2ページ目のポリシーのところでございますが、私ども、中期経営計画におきまして、地球規模への課題の対処という中で、いわゆる脱炭素社会の実現に向けたエネルギー変革への対応、それから、社会的課題解決に資する事業に対する支援といったものを重要な軸として、まず最初に掲げております。この中にはグリーンファイナンス、トランジション、あるいはソーシャルインパクトファイナンスというところが重点化されてございます。
 3ページ目でございますが、グリーンファイナンス、トランジションファイナンス、ソーシャルインパクトファイナンスというものを、イメージとして掲げております。4ページ目、私どものポリシーとしては、大きな柱として、ESGというところで整理をしております。これは、昨年10月COPの前に、JBIC ESGポリシーというものを初めて制定いたしまして公表したものでございます。
 その中で気候変動問題への対応方針が右側にございますが、私どもといたしまして、大きな宣言ということで、2030年までに自らのGHG排出量ネットゼロの達成と、さらには、2050年といったところまで投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロの達成を追求していくといった宣言、目標を掲げてございます。その実現のために、気候変動ファイナンスの強化、あるいは情報開示、環境社会に配慮した出融資等の取組といったことで、様々な具体的な取組をアップデートしているということでございます。
 国際的な取組の中でのネットゼロの実現といったものは容易ではございませんところ、まず、具体的な取組としてこれからご説明させていただきたいと思います。
 5ページ目でございますけれども、こちらは今年の7月に創設いたしましたグローバル投資強化ファシリティといったものの説明になってございます。このグローバル投資強化ファシリティに2本柱を立ててございまして、その一つの柱がサステナビリティ推進ウインドウというものでございます。こちらの柱の対象となる事業につきましては、私どもの中で優遇的な条件でご融資が可能といった形に制度として立ち上げてございます。
 具体的な対象が次の6ページ目になります。下段にございます主な対象分野というところをご覧いただくと分かりやすいかと存じます。
 再生可能エネルギー・次世代エネルギーといったものから始まりまして、省エネルギーの技術を導入した設備投資といったものは、かなり網羅的にご支援可能な状況にしております。さらには、技術を使ったいわゆるグリーン化、グリーンイノベーションと呼んでいますけれども、こういった分野もご支援の対象としております。
 それに加えまして、昨今のサステナビリティの課題解決という観点から、下に掲げております温暖化防止以外の地球環境保全分野につきましても、例えば海洋プラスチック対策等の支援といったところも対象にすることで、網羅的にサステナビリティ投資というものを促すような仕組みを導入しております。
 1点、紙上は掲げていないのですけれども、いわゆるトランジション・ファイナンスと言われるものについて、化石燃料の扱いというものは明記しておりませんが、これにつきましては、やはりカーボンニュートラルに向かってしっかりと削減を達成しながら進めていくプロジェクトであれば、化石燃料といったものであっても支援可能といった状況にしておりますので、いわゆるアジアの実情も踏まえた上でのトランジションというものも、こちらの仕組みをもって支援をしていくという考え方に立ってございます。
 7ページ目が、そういったアジアにおける個別の事情に応じた、いわゆるグリーン化、カーボンニュートラル化といったものをどのようなアプローチで支援していくかということでございます。
 エンゲージメントという柱でございますけれども、こちらについては、やはり今後成長が当面見込まれて、さらに、追加的な大幅な電力分野の投資をしなければいけないといった国、具体的にはベトナム、あるいはインドネシアといったところと、そのトランジションに向けた道筋というものについての意見交換をハイレベル、あるいは実務レベルも含めて重ねております。つい最近もベトナムとは議論をしたところでございますけれども、こういった議論を通じて、中長期的なところで目指す方向性というものを確認しながら、それに必要な投資というものを支援していこうと、関わりながら支援をしていくというアプローチを取っております。その中で仮に途中段階での化石燃料の投資といったものがあったとしても、将来像というものを確認しながら、トランジション・ファイナンスとして支援をしていくという考え方でございます。
 次の8ページ目ですが、これは幅広い国や、あるいは金融機関等とのMOU、協定を基にした会話ということでございます。
 こちらの特徴ですけれども、新たなトランジションというものを議論していこうというのが、先ほどベトナム、インドネシアの例ですが、それを実現するツールとして水素燃料、あるいはアンモニア燃料といったものが課題解決につながるということでございますので、その供給側との会話を重ねて、供給プロジェクトというものを実現していくというようなところを上流から開発を進めていくという考え方です。例えばアラブ首長国連邦ですとかサウジアラビア、こちらは、将来、供給側になるという考え方の下、会話をしておりますし、欧州投資銀行と協力しながらこういったものを具体的なプロジェクトに進めていくといったことで幅広く関係者をつくりながら、巻き込みながらGXを進めていくという考え方でございます。
 9ページ目はベトナムの例でございますが、ここのポイントとしては、こういった会話を通じて、今のベトナムの政策というものが、左側のパイチャートをご覧いただきますと、これまでの石炭依存から大幅に石炭依存を減らしていくと。さらに、今、検討中でございますので、ガス・石炭といったところはさらに割合として減っていく絵になっていくのではないかというふうに見込んでおりますけれども、こういった大きな転換というものについて、現実的なプロジェクトの実現といった方法、あるいはフレームワーク、民間投資をどのように呼んでいくかといった制度的な設計の提言といったものもしながら支えていくという考え方でアプローチをしていくというものでございます。
 その次は同様の事例でインドネシアですが、大きなトレンドとしては同様でございますので、説明は省略させていただきます。
 11ページ目は、インドネシアにおけるガスということで、石炭の依存からガス、あるいは再エネに転換していくという中で、そのガスの事業を実現するために、ガスの受入れターミナルとガス火力発電を一体的に、しかもプロジェクトのリスクを取るような形でファイナンスをまとめたという例でございます。
 その次のページは地熱プロジェクトということで典型的な再エネプロジェクトでございます。
 13ページ目に私どもが金融ツールを使ってどのようにプロジェクトを実現していくかという例がございますが、特徴的な例のみ、ご説明をさせていただきます。
 まず最初に、16ページ目でございます。こちらは、JBICの出資機能を活用したものでございますが、中国電力さんとパートナーを組みまして、フィジーの国営の電力公社に対して44%の出資を共同でするというものに参画をしております。ここのポイントでございますけれども、真ん中に赤字でハイライトしておりますが、フィジーが2036年までに再生可能エネルギーに転換していくというような目標を掲げておりまして、この具体的な実現のマップを描き、そしてプロジェクトを実現するというところについて、中国電力さんと共同しながら、今、関わっているという状況でございます。
 さらには、そういった新しい再生可能エネルギー化の転換において、JBICとしては、関係のある例えばオーストラリア政府、あるいは国際機関という意味ではIFC、あるいは、米国のDFCといったところと常に状況をアップデートしておりまして、新たなプロジェクトの実現をこういった協力国とともに協力しながら実現していくという、関わっていくアプローチということでご紹介をさせていただきます。
 さらに17ページ目でございます。こちらは、途上国に対して再生可能エネルギーの事業実現のための資金を流すというものなのですが、これはファンド自体の運営はBlackRockさんという有名なファンド運営会社が運営しているファンドでございますが、特徴として、ドイツ、フランスの公的金融機関と組みまして、このファンドのいわゆるファーストロスというのでしょうか、劣後性の資金というところを支えておりまして、クッションを提供しております。そのクッションの下、民間資金が入ってくるということで、途上国への再生可能エネルギープロジェクトへの資金管理というものを実現しているものでございます。こういったリスクテイク機能というものを使った民間資金の導入というところが特徴的な在り方というものでございます。
 18ページ目でございますけれども、左側をご紹介いたします。カリフォルニアにおける水素ステーションの建設、運営事業でございますが、カリフォルニアについては、こういったカーボンニュートラルに資するようなプロジェクトについてのクレジットのような優遇制度がございまして、こういったものを踏まえて、民間の企業さんとともに出資をして事業に参画しているものでございます。
 これも制度に依存するというものでございますので、カリフォルニア州政府と議論しながら、制度の運営の方向性も確認しながら事業をしております。JBICの狙いとしましては、こういった事業に関わることもそうですが、こういった制度についての知見を深めまして、こういった制度のアジアへの投与可能性ですとか、そういったものを実際に事業で体験している者として還流できないかということも狙いとして参画しており、特徴的なものでございます。
 19ページ目でございます。こちらは、水素関連ファンドということで、これは1億ユーロということで、いわゆるアンカー投資家、プロジェクトに関われる投資家というステータスで参加をしております。水素というのを冒頭申し上げましたが、まだまだ水素プロジェクトは黎明期ということで、この水素バリューチェーンを構成する様々なプロジェクトの状況を把握して、それらを一体的に開発していく必要があるということで、その開発にファンドを経由して参加していくとともに、個別プロジェクトについての日本企業の参画の可能性というのを、今、模索していると、こういったつなぎ機能を果たすという意味で、先んじてリスクマネーという形で参加しているというアプローチを取っています。
 次の20ページ目につきましては、右側をご紹介しますが、これは、いわゆる技術としては東大発のスタートアップの蓄電池の技術でございまして、短時間の応答で出力を大きく出せるというところに特徴があるというものでございます。
 再生可能エネルギーが多い系統ですと周波数調整サービスとして大いに力を発揮するということで、アイルランド島の課題解決というような事業に、これも出資というものを使って参加しているということでございます。
 また、狙いとしましても、ここの経験を、例えば太平洋の島しょ国といったような同様の状況に置かれているようなところに横展開していくといったことも、そういった機能も果たせるのではないかということも狙いとして参加しているというものでございます。
 21ページ、22ページ目は、気候変動以外の取組ということで、リサイクルといったものや、廃棄物ということで、現地の課題解決に日本のノウハウを、リスクマネーを通じて投与していくということの活動の例でございます。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございました。
 ここまでの三つのプレゼンテーションを通して、ご質問やご意見を頂戴できればと思います。ご発言される方は、順次指名させていただきますので、挙手ボタンをクリックしてください。質問される場合には、お答えいただきたい方を最初に述べてからお願いいたします。
 なお、日本政策投資銀行の吉田様は17時頃に退出される予定ですので、吉田様に質問のある方はそれまでにお願いしたいと思います。
 では、馬奈木委員、お願いします。
 
馬奈木臨時委員
 馬奈木です。ありがとうございます。
 最初に知事のムーブメントの話から、やはり制度的なボランタリークレジットマーケットを国際的な基準で日本も参画する必要性が大事であり、それが個々の金融の方々が話されている地域ごとのいろいろなリンクで協議会がある中で、よりはっきりした軸になるのかなという感想を持ちました。
 途中で出てきました水素・アンモニアなどのお話で一番印象的だったのが、今現在、サプライチェーンでは、これで解決できるというものが何もないというところです。我々も、ライフサイクルでのハイドロジェン、水素の分析結果をやっておりますけれども、現時点では、トランジション・ファイナンスを考える際に、あくまで既存のリニューアブルでもないことも両論併記できちんと理解しながら、エネルギー安全保障も含めてぜひやっていただきたいというふうに思いました。
 質問といたしましては、JBICとDBJの方々にサプライチェーンでどういうシナリオであればアンモニア・水素がうまくいくかということまで踏まえて検討されているかどうかを伺いたいと思いました。
 また、日銀の方も、大きな金融機関として、クライメートのファイナンスが大事というインパクトを、昨年度、地銀を含めて明確なメッセージをされましたので、すばらしい取組と思いました。
 以上です。よろしくお願いします。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 そうしましたら、国際協力銀行関根様、お答えいただけますでしょうか。
 
国際協力銀行(関根審議役)
 ありがとうございます。サプライチェーン全体で見たCO2排出もそうですし、それからコストをどう現実的なところで落としていくかということについては、今、多くのフィージビリティスタディが日本政府の資金も含めて走っております。そういったフィージビリティスタディを通じてできることというものを研究しながら、将来に備えているといったのが現状でございます。
 
大塚委員長
 日本政策投資銀行さんにもご質問がありましたけれど、吉田様お答えいただけますでしょうか。
 
日本政策投資銀行(吉田室長)
 国際協力銀行様からありましたとおり、水素・アンモニアは日本では調達できませんので、まずそれを海外から持ってきます。価格、量というところをどのように確保していくかというところは、まさに日本政府も含めて、今、議論されているというふうに承知しています。
 特にDBJにおいては、それを日本国内に持ってきてどこでどういう手段で持ってくるか。船ということですけれど、その船において、必要な改造をしていかなければいけないというところ。さらに、それをどこに拠点として着けるか、その拠点が後背地にどういう需要を抱えてやっていくか。ここからは日本国内にどのように展開していくか。そのためにはタンクであるとかパイプであるとか、そういうものが必要になってきます。そこで、先ほどの協議会が出てくるわけなのですが、やはり基点となる会社さんが必要になってきますので、基点となる会社さんと対話しながら、そのプロジェクトを進めていくため、徐々に価格面、量の両面でフィージビリティスタディを進めながら、予見可能性を持ってプロジェクトが進展できるよう、DBJとしても政府等においても情報発信、働きかけ等をやらせていただいているというところでございます。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 日本銀行さんに対しては、コメントがございましたが、日本銀行宿谷様、何かお答えいただくことはございますでしょうか。
 
日本銀行(宿谷企画役)
 少し補足的なところでございますけれども、2ページ目のところで対象投融資ということでトランジション・ファイナンスを入れさせていただいております。やはり、私どもも、CO2の多排出産業においては、長期的な戦略に沿って脱炭素の取組を行っていただくというのがやはり重要なことだと思っておりまして、日本において重要な金融手法だと認識しておりますので、気候変動対応に資するということでトランジション・ファイナンスもバックファイナンスの対象とさせていただいております。
 以上、補足です。
 
大塚委員長
 では、森田委員、お願いします。
 
森田専門委員
 ありがとうございます。
 金融関係で本当にいろいろな動きがあるということが分かり、大変勉強になりました。
 私からは、DBJの吉田様と、JBICの関根様に質問させていただければと思います。
 基本的な質問になってしまうかもしれませんが、DBJの吉田様にお伺いしたいのは、新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンドというのがスライドにありましたが、グリーンリカバリーをしていく中で、こういったファンドからの資金もグリーンに移行するところに活用されたのでしょうか。やはり目の前のコロナからの回復に焦点が置かれて、なかなかそういったグリーンな移行には活用されなかったのかということを一つお伺いしたいです。もう一つが、いろいろな地域でカーボンニュートラル協議会というのがあることを、今知ったのですけれども、カーボンニュートラル協議会がどのぐらいあるのかをイメージできていないのですが、そういったものが幅広く広がっていく上で、このカーボンニュートラル協議会間をつなぐもの、それぞれ学んだことや教訓をほかのところにも生かすなど、そういった地域レベルの議論を広げるような動きというのがあるのでしょうか。そのことを吉田様にお伺いしたいです。JBICの関根様には、今回、欧米などともいろいろ国際的に連携し、多様なファイナンスの仕組みがあるということも学んだのですけれども、ヨーロッパのEIBとも連携しているという話がありましたが、EIBとJBICでグリーン、脱炭素などの支援の中で、少し方針なども違う部分もあると思います。EIBやほかの欧米の機関等もそうですが、途上国を支援するに当たって、具体的な連携についてどのような議論があるのでしょうか。例えばアジアですと、日本が支援をリードしていくと思うのですが、アジアの途上国支援においても、EIBなどとも連携しながら何かやろうという動きもあるのかということをお伺いできればと思います。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、吉田様、森田委員からの質問にお答えいただけますでしょうか。
 
日本政策投資銀行(吉田室長)
 ありがとうございます。
 新型コロナリバイバルの成長基盤強化ファンドの中にそういうものが含まれているかというところなのですけれど、当時は、日本の中においてのグリーンの政策というのはまだ議論途上ということもありましたが、例えば、燃費の効率がいいものだったりとか、そういうものは含まれていたかなというふうに思っております。
 明確にど真ん中のグリーンということじゃないですけれど、やはり効率がいいものというところの投資を促進していくような形で、我々としてもリスクマネーを供給させていただくという形になっております。
 真正面のグリーンというのは、こちらで別途措置されておりますグリーン投資促進ファンドというところで対応をさせていただくということでございますが、こういうもので読めないようなものもいっぱいありますので、それはDBJの本体のほうの資金というところでリスクマネー供給をさせていただいているという状況でございます。
 もう一つ、地方の協議会同士をつなぐような話というところなのですが、私どもの10個支店でこの前も対話をしていたのですが、今、地域のほうでは、まさに日本全国で、隣も含めて、どういうことが実態として行われているのか、何が起きているのかというのを知りたいというニーズが非常に強いなというふうに思っておりまして、実は、そこはいろんな方がやられているとは思うのですけれど、弊社もほかの地域でこういうことが起きていますということを各地域にお知らせするような機会も非常に増えておりまして、そういうニーズが増えているなというのを本当にひしひしと感じております。
 なかなか全国の協議会ということをすべからく知っている方は、いらっしゃるわけではないのですけれど、我々も自分たちが関与しているようなところでほかの地域が知りたいというニーズには、極力、そこについてお示ししながら、各地域での活動の参考にしていただくということを取り組ませていただいているところでございます。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 協議会がどのように広がっていくのかというようなことを森田委員は聞きたかったみたいですけれど、協議会は幾つぐらいあるのでしょうか。
 
日本政策投資銀行(吉田室長)
 弊社も全部は数え切れていないというか、我々が参加しているものは何となく分かるのですけれど、正確な数自体はうまく把握できていないかなというふうに思っております。申し訳ございません。
 
森田専門委員
 ありがとうございます。
 
大塚委員長
 では、あと、竹ケ原委員と髙村委員からご質問をいただいて、お答えをいただこうかと思います。竹ケ原委員、お願いします。
 
竹ケ原臨時委員
 お三方のご説明、ありがとうございました。サステナブルファイナンスの拡大に向けて公的金融が果たしている役割、一覧にするという機会、なかなかないので大変勉強になりました。
 宿谷さんにご質問できればと思っています。気候変動対応オペですが、対象先、残高ともに広がっていますし、地域への利用が拡大しているということで、誘導効果が発揮されていることがよく分かりました。
 今後の方向性についてのご質問なのですが、対象金融機関の要件としてTCFD開示を求めていらっしゃいます。TCFDは、ご案内のとおり、金融機関に関してはファイナンスド・エミッション、いわゆるスコープ3の開示の方向に動いていまして、今まさにポートフォリオベースでどうするかというのを、みんな準備をしている最中だと思うのですけれど、今後、この気候変動対応オペの適用に関して、こういったファイナンスド・エミッションの開示の有無のような要素が影響を与えることはあり得るのかというのを教えていただきたい、これが1点目であります。
 2点目は、先ほど来、議論になっているトランジション・ファイナンスなのですが、現状、引用いただいたような基本指針に則した開示がなされているかどうかということが要件だとは思うのですが、結構、この辺りは非常に微妙なところがあって、どこまでのコミットメントを引き出すかによって、グリーンにもなるし、下手するとブラウンにもなりかねないようなところがあります。この点、取りあえず、金融機関が判断したらそれでよしということなのか、もう少し踏み込まれる余地が、ミクロは入らないという話ではあるのですけれど、ご方針としてあるのか、についてお聞かせください。地域レベルで考えると、こういったトランジション・ファイナンスの誘導の面で金融機関がどこまで頑張れるかが肝のような気がしていまして、この気候変動対応オペの誘導力がさらに効くのであれば、非常に効果があるのだろうなと感じたので、聞かせていただきたいと思っております。
 以上、2点であります。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、髙村委員、お願いします。
 
髙村委員長代理
 まず、お三方、どうもありがとうございました。私からは、日本銀行の宿谷様に1点、それから、国際協力銀行の関根様に1点、質問させていただければと思っております。
 まず、宿谷様ですけれども、今、竹ケ原さんからもありましたが、この気候変動対応オペ、非常に意味合いのある成果を上げてくださっているというふうに拝見をいたしました。
 特にご質問の点というのは、お三方のご報告の中でも出ておりましたけれども、やはり地域の脱炭素化、あるいは、地域がしっかり移行していくという意味で、スライドの4、5枚目だと思いますけれども、地域の特に中小の企業も含めたトランジションというのが非常に重要かと思っております。
 そのときに、特にサプライチェーンの広い産業、例えば自動車産業などはそうだと思いますけれども、メガバンクさんから地銀、信用金庫とそれぞれ、このサプライチェーンの中で、特に中小企業の皆さんとの関係では、地銀や信用金庫の役割が非常に大きいというふうに思っております。スライド4のところを拝見しますと、地銀の数が増えてきているということでございますけれど、さらに信用金庫等々の数が増えてほしいなという期待感も持っております。
 先ほどの竹ケ原委員のご質問にも関わるかもしれませんけれども、こうした地域の金融が、日銀さんの支援を使っていくための課題なり、あるいは方策という点についてご意見をいただければと思っております。
 それから、二つ目に、JBICの関根様、どうもありがとうございました。相手国との協業の中で対話をし、相手国のニーズをしっかり把握をしながら、かつ、カーボンニュートラルに向けた目標の設定、道筋をつけながら案件を生成していく、あるいは支援をしていくというお取組、大変貴重な取組だと思っております。
 特に、アジアをはじめ、世界の排出量を下げていく、移行していくという意味で重要であると思っておりますが、同時にJBICさんの融資の案件ですので、日本の企業の投資、こうした分野での投資案件を増やしていく、そのことによって日本企業の企業価値を上げていくということは必要だと思っております。
 その際に、日本企業の投資案件をさらにこの分野で増やしていくために、例えば国としてどのような施策が必要か、あるいは、JBICさんのところで考えていらっしゃる方策というのがございましたら、お話を伺えればと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございました。
 では、ただいまのご質問につきまして、お答えをいただければと思います。
 森田委員の続きもございますので、JBICの関根様からお願いします。
 
国際協力銀行(関根審議役)
 ご質問、ありがとうございました。
 それでは、欧米連携の中で様々な連携をしているわけですが、その方針が異なる中で、特にアジアにおける途上国支援を欧米各国がやっていくのかというご質問かと捉えまして、この1年を見ましても、大きく変わってきているというのが実感でございます。
 ご想像のとおり、欧米各国との連携でこういった気候変動対策をやりましょうといいますと、やはりまず最初にリニューアブルエナジー1本での支援ということを掲げてまいります。その形で掲げますと、やはり特にアジアですね。どの国を見ましても、一足飛びにそういったオールリニューアブルということにならないと。どのようにパスウエイを描いていくかと、どういう道筋でカーボンニュートラルにしていくかという現実的な世界があるわけですし、むしろ構えているよりも目先にしっかりと削減が実現できるものを、例えば石炭からガスの転換であったとしても、やることがCO2を目先、減らしていくということにつながっていきますので、そういった現実的な絵を見ながらやっていきましょうということは、日本の立場でもありますし、あるいは、受入国の考え方でもあったわけですが、なかなか欧米とのギャップというのは埋まらなかったというのは実感としてございました。
 ただ、先ほどエネルギー安全保障という議論もございましたけれども、それぞれ先進国もエネルギー安全保障の問題を現実問題として突きつけられている中で、それぞれの途上国の立場というものに対する理解も広がっているのかなというふうに感じております。
 したがいまして、全てのトランジションに対する現実的なプロジェクト、道筋に寄り添っていくというのが日本の立場だと思うのですが、そういった世界に欧米も近づきつつある気配を感じているということでございます。
 ただ、申し上げますと、2週間前にアメリカとオーストラリアの政策金融機関とベトナムに合同ミッションというものを派遣しまして、この中で気候変動対策の具体的な貢献というものを議論いたしました。その調整過程でも、なかなかトランジションの捉え方というものは、まだ完全には合致していないなというところではあります。ただ、地政学的な変化ですとか、それぞれの国がエネルギー安全保障に対する感度が高まっているということの変化とともに、欧米のアジアに対する関わり、しかも、全体的な関わりというものが増えていくモメンタムを感じておりまして、アジアの一員としてのJBICといたしましては、エンゲージをむしろ連携する相手にも広げていくというのでしょうか、粘り強く状況をシェアしていくという努力が必要かなというふうに感じているというところでございます。
 あと、欧州との連携という意味では、アフリカですね。やはり着目されていますので、今度はアフリカにおいては欧州が非常に情報を持っている中でどう関わっていくかということかなと思っております。
 続きまして、髙村委員からのご質問で、日本の投資を増やすための方策ということでございます。これ、まさに日本のビジネス機会に広げていって、場合によっては社会実装を海外で先にやって、その成果を日本に戻していくと。例えば、ご説明したアイルランドのエクセルギーという例は、社会実証がアイルランドは第一号だったわけですけれども、こういったものを戻していくというアプローチが必要だと思っています。
 その方策、なかなかいろいろ難しいところはあるのですが、今日、ご説明したのはJBICのエクイティ機能を使ってということ、リスクテイク機能を使ってということを特にハイライトさせていただきました。リスクテイク機能を使ってなるべく民間との協働で後押しをしながら、プロジェクトをエンカレッジしていくというのでしょうか、こういったアプローチを続けていくということでリスクテイクの強化というものを柱に考えていくのかなというふうに思っております。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、日本銀行の宿谷様、お願いします。
 
日本銀行(宿谷企画役)
 ご質問を三ついただいたと認識しております。
 一つ目、TCFD開示の件ですけれども、現時点におきましては、TCFD開示の4項目について、何らかの開示がされているというような形で、詳細な要件というのは特に設けていないという形ではございます。
 ただ、やはりおっしゃっていただいておりますように、気候変動関連の開示につきましては、国内外で今まさに現在活発な議論がなされているということかと思っておりますので、そこでの議論の動向も踏まえまして、また、その市場の慣行ですとか、そういったところも含めまして、私どもも注視しておりますので、そういったところを踏まえて必要に応じて開示の内容の粒度についても今後見直していくということも考えております。
 二つ目は、トランジション・ファイナンスのところだと思いますけれども、こちらにつきましてもおっしゃるとおり、グリーン、ブラウンの判断が難しいというところは、当然にして金融機関でも持っているところだと思うのですけれども、そこにつきましては、私どもも先ほどちょっと申し上げましたように、政府の指針などに該当しているものというような基準を設けさせていただいて、それに対して金融機関ご自身でご判断いただくということになっております。
 基本的には、そういった形で金融機関に判断を委ねるということでございますけれども、やはりその判断基準について開示していただきますので、その中で市場慣行ですとか、世の中からの見え方なども含めまして、今後そういった目線が切り上がっていくというようなこともあると思いますので、私どもも引き続き情報収集させていただきたいというふうに思っているところでございます。
 
竹ケ原臨時委員
 よく分かりました。ありがとうございました。
 
日本銀行(宿谷企画役)
 三つ目、髙村様からのご質問ですけれども、まさに、今、私どもも裾野が広がっているかなというふうに感じているところでございます。
 やはりまだまだ、例えば先ほどの、TCFD開示がこれからといったような規模の小さい金融機関もいらっしゃるとは思っておりますし、先般も環境省と意見交換をさせていただいたときに、そういう金融機関への啓発活動などもされていらっしゃると伺っておりますので、そういった公の働きかけなどを通じて、ますます金融機関側の理解が広がっていくと、気候変動対応オペの利用にもつながるのかなと思っております。
 私どもとしましても、関心のある金融機関の広がりを感じておりまして、日々、照会事項を受けておりますので、そういった中、ちょっと草の根活動的なところですけれども、サポートさせていただきたいというふうに思っております。
 以上になります。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、武藤委員、お願いします。
 
武藤専門委員
 ありがとうございます。今、アビジャンに来ておりまして、接続が悪く申し訳ございません。
 今、Finance in commonというPublic Development Bankの国際会議に来ておりまして、テーマが「Green and just Transition」でございます。
 関根様にその関連で二つ質問をさせていただきたいと思います。1点目は、先ほどもおっしゃいましたように、これからアフリカのほうでも活動、いろんな議論がされていくということですが、今、アフリカの地に身を置きますと、途上国も先進国も、Socially just Transitionというところで議論を深めていこうと、そういう機運が感じられます。海外に対してsocially justということを求められたときに、これから日本はどうしていくのかというのは、まさにJBICさんも私たちも突きつけられるところですが、展望のようなものはおありか、お伺いしたいと思います。
 2点目は、インパクト投資の方面でもそうですけれども、Catalyst Capitalを含め、出資以外のDe-Risking mechanismをいろいろ要求されていると思います。その辺りで今後の工夫、どんなところがあり得るか、展望をお伺いできればと思います。
 
大塚委員長
 では、JBIC関根様、お願いします。
 
国際協力銀行(関根審議役)
 ありがとうございます。
 非常に高いお題でのご質問をいただきまして、いずれも悩んでいるといいますか、国際社会も悩んでいるのではないかなというふうに感じております。
 Socially just Transitionとまさにおっしゃったとおり、その全体の雇用も格差も、そういったものを配慮しながらGXを進めていくということがもちろん理想ですし、むしろ、掲げたのは欧米が先だったと思うのですけれども、現実として、実際に現場で各国に対して欧米等と連携して議論をするという際に、その議論が中心になることが、私は目撃したことはないということでございまして、まずは、そのトランジションの方向性について、まだギャップがそれぞれの主体者にあると。その中で、ジャストという部分をおろそかにしてはいけないという、まだエールの意見交換に終わっているのかなということで、今後、各国寄り添って議論していくというテーマなのかなというふうに思っております。
 それから、De-Riskingに対する出資以外の方策ということなのですけれども、伝統的に私ども、いわゆる民間として目線にあるバイアビリティ、事業可能性というものの実現のために、各国の制度の提言というものをしてきてまいっております。インドネシア、ベトナムといったところをはじめ、各国、こういった制度に変えれば日本の民間投資が入ってくるよというところで、制度を変えられるというところがもちろん一番De-Riskingになるのかなというふうには思っています。
 その他、伝統的な保証ですとか、そういったものも加えながらなのですけれども、最近、私どもが目指していますのは、日本だけのツールで解決するということではなくて、今、同じ方向性を向いている先進国のツールも使いながら一つの解決を図っていくということです。アメリカの機関の、例えばキャパシティービルディングですとか、欧州の機関のいわゆるグラントですとか、そういったものも集めながら対応していくということで、日本の投資家の課題解決という意味でやっていくためには、先導していく必要があるというふうに思っていますので、そういった世界各地の公的機関のツールを持ち寄ってやっていくと。特に、来年、G7の議長国でございますので、そういったリーダーシップは取りやすいのかなということで、そういったタイミングに備えているというところでございます。
 以上です。
 
大塚委員長
 活発な意見交換、どうもありがとうございました。
 また、日本銀行の宿谷様、日本政策投資銀行の吉田様、国際協力銀行の関根様におかれましては、ご対応いただきまして誠にありがとうございました。
 では、ヒアリングの後半に入りたいと思います。
 「人材育成」、「国土利用」、「DX」の分野につきまして、それぞれ有識者からお話をいただきます。なお、プレゼンテーションは、前半と同様、各10分程度でお願いいたします。
 まず、文部科学省の安里様、轟様からプレゼンテーションをお願いいたします。
 
文部科学省(佐々木課長補佐)
 文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課の佐々木と申します。本来は安里が対応するところだったのですけれども、国会対応が入ってしまいまして、すみませんが、私が代理でご説明をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、スライドを進めていただきまして、3ページ目、文部科学省における環境教育・環境学習関連施策について、ご説明させていただければと思います。
 文部科学省におきましては、環境教育について、こちらに記載してございますように各種取組を行ってございます。
 まず、左上のほうから順番にご説明させていただければと思いますけれども、学習指導要領における環境に関する内容の充実ということで、先般改定されました小学校、中学校、高校の学習指導要領でございます。こちらにおきましては、社会科や理科、技術・家庭科などの科目教科を中心に、環境教育に対する内容を充実しておりまして、各学校において、これに基づいて環境教育に関する教育を行っていただいているというところでございます。
 それから、その次の、環境教育に関する優れた実践の促進及び普及ということで、環境省さんと協力いたしまして、環境教育リーダーの育成研修等の実施、あるいは、その下の健全育成のための体験活動推進事業ということで、こちら補助事業でございますけれども、こちらで学校における体験活動、体験学習の取組を行っている学校への支援を行っているというような取組でございます。
 それから、その下でございます。環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進等ということで、こちら、学校施設において、例えば、省エネとか太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入でございますとか、あるいは木材利用などを行いましたエコスクール、環境を考慮した学校施設の整備を推進しますとともに、そのような施設をエコスクール・プラスとして認定するということで、学校施設そのものを教材として活用することで、そこで学ぶ児童・生徒さんの環境教育を推進するというような取組も実施してございます。
 それから、その下、地域における環境教育の推進ということで、こちらは、社会教育とか青少年教育といった分野でございますけれども、例えば、環境問題をはじめとする地域の課題解決に向けて、公民館などを中心として、関係する機関・団体、地域でそれぞれ活躍しておられる団体などの連携・協力体制を構築しまして、学習活動を実施する取組、こちら、各地域で行われておりますが、そういった取組を全国的に情報提供することなどによって普及啓発を図るというようなことを行ってございます。
 それから、右上のほうに行きまして青少年の体験活動というところでございますけれども、例えば、その一番上の青少年の体験活動を通した自立支援プロジェクトということで、こちらも補助事業でございますけれども、青少年のリアルな体験活動の機会の充実を図るということで、そういった普及啓発でございますとか調査研究を行うとともに、民間企業が実施するような取組に対して顕彰を行うでありますとか、あるいは、その体験活動のモデル事業を実施するといったことで、青少年の自立支援を行うような環境活動を行っているというところを支援しているというところでございます。
 それから、下のほうにございます青少年教育施設における指導者養成及び体験活動の機会の充実ということで、国立の青少年教育施設が全国に28か所ございますけれども、そこにおいて、青少年の体験活動を支援する指導者を養成するでございますとか、あるいは、実際にお子さんたちが、その施設に赴いて体験活動をするような機会をする場の提供を行うということ、それから、民間のいろんな草の根の活動を行っておられる団体がございますので、そういった団体が行っておられる体験活動への助成ということも行っております。
 それから、その右下のところでございますESDの推進ということで、こちら、国際的な取組としてユネスコスクールなどの取組に協力するということで、こちらのような事業を行ってございます。この中で、例えば、学校とか、企業とか、ユネスコ協会とか、いろんな活動を行っている団体さんと協力して、地域におけるESDなどの活動の実践や普及でございますとか、あるいは、そういった活動を行っておられる方々、あるいは、学校でそういう取組を行うユネスコスクールというような取組がございますけれども、そういった関係者が一堂に会して、好事例を共有して、様々な課題について意見交換を行うユネスコスクール全国大会といったものでございますとか、教員関係者への研修というような取組を行って、環境教育活動が普及していくように取組の支援を行っているということを文部科学省で実施してございます。
 まず、環境教育に関する取組の説明については以上でございます。
 続きまして、この大学等における人材育成について、続きのご説明をお願いできればと思います。
 
文部科学省(轟課長)
 大学等における人材育成について、文科省の環境エネルギー課、轟から説明させていただきます。
 カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリションについてです。
 2050年カーボンニュートラルの実現には、人文・社会科学から自然科学までの幅広い知見が必要です。国・地域の政策やイノベーションの基盤となる科学的知見を創出し、その知を普及する使命を持つ大学の役割に大きな期待が寄せられています。各地域の知の拠点として、地域の脱炭素化を促し、その地域モデルを世界に展開するといったところを狙いとしまして、大学が、国、自治体、企業、国内外の大学等と連携をして、カーボンニュートラルの達成に貢献する大学等コアリションというものを昨年の7月に立ち上げております。これは、その前に、昨年3月に120の大学の長が参加する学長等サミットというのを、当時の文科省の萩生田大臣、それから環境省は小泉大臣、それから経産省は江島副大臣が参加して立ち上げまして、この三省の連携でやっているというものです。具体的には、四つのワーキングと一つの国際というところで活動をしております。ゼロカーボン・キャンパスWG、地域ゼロカーボンWG、イノベーションWG、今回の人材育成WGと、それから、横串を通せる国際連携・協力WGということです。
 次のページをお願いします。今回のテーマである人材育成WGですけれども、61の大学と6の協力機関、計67の機関が参加をしております。具体的には、カーボンニュートラルの教育の事例を、まず大学間で共有するというところを最初にやっております。これからですけれども、カーボンニュートラルの人材の在り方、必要な知識等の分析を行って、共同教育プログラムや教材の開発を検討していくというところを5年かけてやっていくというところを考えています。
 次のページを見ていただいて、現時点で、国公私立大学合計で196の大学等に参加していただいており、非常に大学等の皆様のカーボンニュートラルに対する熱い思いというのがここに表れているのかなと思って、非常に期待をしているところでございます。
 最後に、令和5年度の概算要求について三つほどご紹介させていただきます。
 一つ目は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた革新的技術の創出ということで、重要領域、例えば蓄電池、それから水素・燃料電池、バイオものづくりといった、この領域において大学等における基盤研究をやりながら、それを通じて人材育成を行っていくといったものを要求中です。
 右に行きまして、デジタル・グリーン等の成長分野を牽引する大学・高専の機能強化というところで、成長分野への学部転換等の改革に躊躇なく踏み切れるよう、複数年度にわたる継続的・機動的な財政支援を行うというところで、今、財務省と調整をしているところです。
 最後、一番下ですが、これは、グリーン分野だけに限ったものではないのですけれども、科学技術・イノベーション人材の育成・確保というところで、博士課程後期の学生が研究に専念するための経済的支援及び博士人材が産業界等々を含めて幅広く活躍するため、例えば企業での研究インターンシップ等、こういったものを一体として行う大学を支援するというところで、今、要求をしているところです。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、次に、国立環境研究所の松橋様、お願いします。
 
国立環境研究所(松橋室長)
 国立環境研究所の地域計画研究室の最近の研究の中から、国土・土地利用に関する部分について紹介させていただきます。
 2枚目、全国の市区町村別に、二酸化炭素をどのぐらい排出されているかということの推計をやっております。この地図は交通、乗用車から出てくる1人当たりのCO2排出量の絵です。これまで、こういった研究をやる際に、道路交通センサスに基づく推計を行い、実行計画等の資料として提供するということをしてきました。近年、調査規模の縮小があり、精度が低くなって、都道府県別とか政令指定都市別には分かるのだけれども、それより詳しくは分からないという状態になっていました。最近、車検証の走行距離データを使って、推計することができるようになりました。データの年次よりも大体2年前から3年前ぐらいの走行距離からCO2の排出量が分かるというものです。このデータによって、排出量をチェックしながら対策をやっていくということに貢献できます。大都市圏、中枢都市、県庁所在都市の一部で少ない傾向、県境など人口密度が低く中心都市から遠いところで多いといったことが分かります。
 次、3枚目をお願いします。人口密度が横軸で、縦軸が年間の走行距離です。1台当たりの走行距離にです。人口密度が高いと、1人当たり走行量が小さいということを言われていたのですが、1台当たりの走行量でも明確な関係があります。オレンジ色は島しょ部の値で、人口密度が低くても走行距離が短いところがあります。
 次、4ページ目ですが、地域特性と乗用車の利用特性を表したものです。都市規模として、東京都区部、指定都市、中核市、特例市、一般市、町村と分けています。乗用車の1人当たり台数は大規模な都市ほど少なくて、年次を経るに従って、その差は大きくなってきていることが分かります。排出量も同様です。右上の図の1人当たり走行距離で見ますと、人口規模が大きいところほど早くピークを迎えて、その後、減少に転じていることが分かります。町村部に関しては、1人当たり走行距離が伸び続けています。大きいほどと言ったのですが、中核市は、都市規模の割に特例市よりも走行距離や排出量が大きい特徴があります。つまり、特例市の規模、人口20万人から30万人ぐらいの都市規模のところで、比較的排出量が少ない、走行距離も短い、そういったことが分かっております。
 そこで、対策をどうするかということですが、左側の絵のように土地利用をそのままにして、電気自動車、ハイブリッドに転換する方法もあります。一方で、いろんな手段を組み合わせて、人が集まっているところでは鉄軌道系を使って、徒歩圏で移動できるところを形成していく、市街地から少し距離がある低密度なところへはパーソナルモビリティを使う、こういった組合せというのも必要かと思います。
 次、6ページ目ですけれども、炭素排出量を大幅削減するときに、生活が困らないためには、どれか一つの対策ではなくて、地域に応じていろんな対策を組み合わせていくことがリーズナブルだろうということで、2050年に向けて7割減というのを以前検討したときの内容の表です。大都市圏、地方部、それから都市部、郊外部でそれぞれ取り組みやすいものというのは少しずつ違います。徒歩圏、歩ける範囲を作っていくために集約化する、あるいは都市の広がりを抑える、それから公共交通の利用をしやすくなるようにするということと、それから積載効率をよくする、燃費をよくする、また、燃料を低炭素にしていく、こういったことが必要になります。さらに、低炭素から脱炭素になるに当たっては、脱炭素な電力への転換とか、あるいは脱炭素の燃料というのが必要になってきます。また、こうしたことの組合せをやるためには、温暖化対策、土地利用、交通、再エネなどの計画を連携して動かしていかないと、ちぐはぐになってしまうというところが課題です。
 次、7ページ目です。こちらは家庭の市町村別のCO2排出量です。環境省が家庭CO2統計調査をやっておりまして、その個票から回帰モデルを構築しました。地図の中の左下が、10地方別、3都市階級別という家庭CO2統計の公表値です。モデル化することで、右側のように同じ地方区分の中でも、より詳しく分かります。詳しい係数は参考のほうにつけてあります。暖房度日が違うとか、世帯人員、あるいは建物形式が違うといったようなことで、排出量が変わるということが分かります。特に、こういった色が濃いところでは、断熱性能の向上が特に必要になるかと思います。
 次、8ページ目で、断熱性能の向上のためには、新築のときに合わせて断熱性能を大幅に向上させたり、太陽光パネルを載せる、そういったことが考えられているのですが、一方で、今、空き家というのが非常に増えています。これからも人口が減ってまいりますので、空き家を抑制するということを同時にやって、その新設する建物を減らすということをやってしまいますと、断熱性能の高い建物が入ってこなくなってしまいます。今、ストックの30%を断熱改修するというのが2030年の目標になっていたかと思いますが、これを50%に上げないと、思いどおりの省エネを達成できないという試算です。
 次、9ページ目です。再生可能エネルギーの地域間融通ネットワークの検討というのをしています。各自治体で電力を地産地消、余るものを隣接するほかの自治体へ送電、国全体として再生可能エネルギーで賄う電力を最大化するという設定です。
 再エネとして考えているものは、環境省のREPOSの導入ポテンシャルの数値を使っています。住宅用の太陽光発電、陸上風力、中小水力の発電、地熱を入れています。公共系等の太陽光発電、大規模なものあるいは農地でのソーラーシェアリングはここでは入れていないです。
 あと、左側の図では、洋上風力も少し自治体の努力とは違うかなということで、入れてない場合です。その場合でも、78%の自治体では再エネで電力需要を充足できるという計算になっています。北海道、東北は寒くて、家庭のCO2排出量は多いのですけれども、電力については、再エネの充足率は十分で、余った分を関東ですとか、一部愛知県まで融通することができるという結果になっています。西日本では、少し白く抜けている一部地域では電力需要のほうが多いのでということが分かります。また、広域的な融通は生じないという結果になりました。
 右側のほうが、洋上風力も考慮した場合です。この場合、ほぼ全ての自治体で、電力需要を再エネで充足できるという結果です。ただし、東京都市圏に関しては、洋上風力から広域的な融通が必要になるということになっています。
 注意点としては、化石燃料を使っている産業とか熱、あるいは自動車などの部分が電化していくという部分に関しては、ここでは考えていません。今後、省エネで電力の需要を減らしながら電化を進めるということで、トータルでどこまで再エネでやっていけるかということを検討したものです。
 最後、10ページ目ですけれども、基本的には、地域特性に応じた脱炭素策を組み合わせていくということで重要かと思います。ただ一方で、脱炭素まで達するということを考えると、中長期的には、炭素中立から見て望ましい国土・土地利用とか、建築ストック、交通体系、エネルギー需給等の連携を計画的に誘導することが重要になってきます。
 例えば、地方都市の人口20万人から30万人ぐらいの都市でコンパクト・シティプラスネットワークという形で住みよい都市にするということ。既存住宅の断熱改修を進めながら、集まって住むことを促進する。集合住宅であったり、高齢者向けのシェアハウスといったものもあるかと思います。最後に、再生可能エネルギーの地域間融通、こういったことを計画的に行う必要があると考えています。
 私からは以上になります。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございました。
 では、次に、日本総合研究所の田谷様、お願いします。
 
日本総合研究所(田谷エキスパート)
 私は、SMBCグループのR&D拠点でありますシリコンバレーラボというところで業務をしておりまして、普段はアメリカに駐在しているのですけれども、今回、デジタル・ビジネスの観点から、気候変動対策ですとかGXに関する動向を調査、情報発信等を行っておりますので、そちらについてのプレゼンをさせていただきます。
 テーマとしましては、DXの潮流から考察するGXの本質という形でプレゼンをさせていただきます。
 私は、これまで、多数のシステム開発プロジェクトに携わった経験ですとか、先進のDX事例を検証してきた経験がございまして、本日は、そのバックグラウンドを生かして、これまで企業が取り組んできたDXの観点を踏まえて、企業が進めるべきGXについて考察をしたいというふうに思います。
 次のページをお願いいたします。気候変動対応につきまして、近年、企業の成長戦略ということで注目されているのがGXでございます。今回は、私なりのGXに関する解釈をご説明させていただきたいのですけれども、GXの本質を追求するに当たって、一つの鍵になるのがデジタルなのではないかというふうに考えています。近年、脱炭素市場というのは急成長することが予測されていまして、企業にとって新たな事業創出の機会となる点が指摘されています。とりわけ、デジタルテクノロジーの活用というのは、気候変動への影響分析ですとか、環境変化に応じた対策の立案と、そういったところを支援する有効な手段であるということが言われております。私は、GXの本質について理解を深めるために、企業が進めてきたデジタル化、そしてDX、この潮流になぞらえて考察を行っていきたいというふうに思います。
 下にお示ししておりますけれども、DXとGXには多くの類似点があるというふうに考えています。
 下の図の上段、青色のところに、デジタル化からDXまでの流れを記載しています。このプロセスで、まず企業が着手するのは、製品開発ですとか、サービス開発ですとか、自社のビジネスに関する業務オペレーションの整理とか把握というところです。STEP1というところです。次に、その整理した内容に基づいて、システム開発などを通して業務のデジタル化を図るプロセス、STEP2というところがあります。ここまでが一般的にデジタル化に当たるプロセスだというふうに認識をしております。そして、さらにビッグデータ、AIですとか、そういった最新のデジタル技術ですとかデータの活用を一層進めるようになると、顧客の立場に立って、ニーズですとか課題をより深く理解するということが可能になってくるということで、顧客が真に求めるサービスを提供するというSTEP3、DXへつながっていくというふうに理解しています。
 一方で、図の下段には、気候変動対応のプロセスについても同様に整理をしております。ここでは、気候変動の施策を大きくカーボンニュートラルの推進と、あとTCFDに基づく情報開示ということで大別しております。
 まず、カーボンニュートラルに関するプロセスを整理しますと、STEP1ということで、Scope1から3における排出量の可視化・把握。次にSTEP2ということで排出量の削減という二つのステップに分けることができるというふうに考えています。
 あと、下のTCFDに関する企業の対応ですけれども、こちらに関してもSTEP1ということで、気候変動関連の指標や財務インパクトの整理。STEP2ということで、各リスクに応じた対策ですとか企業戦略の見直しといったプロセスに分けられます。すなわち、このカーボンニュートラルとTCFDの対応は、それぞれ環境データの収集やモニタリングですとか、自社の置かれた状況を把握するプロセス、STEP1があって、次に、その自社の状況を基に気候変動対応を立案して、推進するというSTEP2というプロセスが来ます。上段のDXの潮流から鑑みますと、後続として想定されるプロセスが、デジタルテクノロジーの活用などによる気候変動対応に関連した新たな社会価値ですとか、サービスの創造といったところに当たって、ここがGX、STEP3というふうに書いておりますが、GXに当たる部分になるのではないかというふうに考えているということです。
 以上をまとめますと、DXとGXというのは、それぞれ現状把握、現状把握に基づくアクション、そして、デジタルやデータを活用した新たな価値の創出という流れに整理することが可能だということで、GXは、DXを進めてきた企業が、そのノウハウを基に新たなグリーンに関連する価値を生み出して、顧客の課題を解決するサービスを提供するというプロセスに当たって、いわゆるそのDXの延長線上にある新たな事業創設の機会と捉えることができるのではないかというのが私の仮説です。
 実際、この後のページで事例の紹介を交えながら、仮説の検証をしていきたいと思います。
 次のページをお願いいたします。気候変動対応を積極的に推進している欧米企業に関する事例を三つ紹介しまして、仮説の検証を行っていきたいと思います。
 まず、ノースカロライナ州に本社を置くHoneywellという企業です。Honeywellは軍需産業品ですとか家電製品、そういったものを幅広く販売するメーカーです。2004年からサステナビリティへの取組を推進しています。近年は、同社の研究投資の半分が顧客の事業環境の改善ですとか社会的な事業成果を向上させる製品開発に費やされています。具体的には、ビルの安全性と省エネを両立するためのデジタルソリューションの提供ですとか、物流業務をデータでモニタリングして、省エネルギーなサプライチェーン管理を行う、デジタルソリューションの提供ですとか、顧客の気候変動対応を支援するためのデジタルサービスを幅広く展開している企業です。
 次のページをお願いいたします。こちらは金融業界に関するGX事例ということでBNP Paribasの例です。BNP Paribasも数年前からサステナブルファイナンスに関連する目標を掲げておりまして、近年は気候変動対策ソリューションを提供するスタートアップとの連携による新しい金融サービスの開発に取り組んでいます。こちらで記載しているものは、BNP ParibasグループのBank of the Westでございますが、こちらはスウェーデンのスタートアップと協業して、サステナブルファイナンスに関連するカードサービスを提供しています。このサービスでは、デビットカードを利用した際のCO2排出量を表示する機能が提供されていまして、利用者がレストランですとかスーパーなどで支払いをした際に、自身の支出に対するCO2排出量をアプリを通して確認することができるというものです。
 次のページをお願いいたします。次にご紹介するのが、ファッション業界に関するGXの事例ですけれども、こちら、LAを拠点にファッション事業を展開していますFred Segalというところの事例です。Fred Segalは、小売店ですとか、メタバースで提供されるサービス、Artcadeというものを提供しています。ArtcadeのNFTギャラリーというものがあるのですけれども、その中では、衣料品ですとかアクセサリーといったバーチャル商品が展開されていまして、顧客はその店舗だけでなくて、メタバース内でも仮想通貨を利用して商品を購入することができるというものです。近年、ファッション業界におきまして、サステナブルな取組を推進する要素ということで注目されているのが、NFTやメタバースということでして、ファッション業界では、商品の生産工程で発生する温室効果ガスが環境への影響が懸念されているということで、こういったバーチャル商品の製造ですとか販売というのは、廃棄物とか過剰消費を削減する有効な方法の一つということで注目されているという事例でございます。
 次のページをお願いいたします。三つの業界の事例をご紹介させていただきましたが、こちらのスライドでは、各GX事例に関する考察をしてまいります。
 まず、メーカー業界の事例に関する考察でございますけれども、Honeywellというのは、元来、自社業務のエネルギー効率化ですとか排出量削減に注力していた企業です。同社の取組には、自分たちの気候変動対応で培ったデジタル活用のノウハウを活かして、さらに次のステップとして、社会課題の解決ですとか顧客の業務革新、気候変動対策の支援まで踏み込んだソリューションに展開させるという一連のプロセスが見られるます。
 次に金融業界の事例ですけれども、BNP Paribasの施策から検証できるのは、顧客の経済活動が気候変動へ与える影響をデジタルですとかデータを活用して可視化して、顧客が気候変動対策に携わる手段を金融サービスに組み込んで提供する点があります。これは、企業がすべき気候変動対応をいち早く察知して、具体的に目標を掲げて施策を推進するというのとともに、顧客の気候変動対策への関心をしっかりと認識して、デジタルを活用して新しい価値を創出したGXの実現事例ではないかと思います。
 三つ目のファッション業界の事例ですけれども、バーチャル商品というのは、まず、メーカー企業の観点で言うと、デザインですとかサンプリング、マーケティングですとか、そういった商品製造の複数のプロセスで活用できるということが言われていまして、衣料品の製造過程で発生する温室効果ガスの排出を大きく減らすことができると期待されています。一方で、消費者の観点で申し上げますと、バーチャル商品というのは気候変動対策に関心を持つ層ですとか、特にサステナブルへの関心が高いとされる層、最近だとZ層ですか、そういったところの共感を獲得して、新しいファッションの価値として顧客の支持を得られる可能性があるということで、ファッション業界における、こういったNFT、メタバースの活用というのが、GX推進を支える重要な要素であるとともに、従来のサプライチェーンですとかサービスの在り方を変える可能性もあるということで、動向には注視が必要であると書いています。
 次のページをお願いいたします。三つの異なる業界のGXに関連する先進事例をご紹介させていただきました。各業界の取組には、気候変動対応で培ったデジタル活用のノウハウを活かして、社会課題の解決ですとか、顧客の業務革新まで踏み込んだソリューションに発展させるという一連のプロセスが見られるということで、これらの事例に共通するのが、企業が自社の気候変動対策にとどまらず、顧客が抱えている課題やニーズを十分に認識して、デジタル技術とかのデータを活用して新たな価値やサービスを創出しているという点です。つまり、これは自社の気候変動対応から、さらにその次のステップのGXに発展させた事例なのではないかというふうに考えます。
 気候変動対応からGXまでの流れを整理すると、これまで企業がデジタル化ですとかDXの中で経験してきた自社の現状把握、現状把握に基づくアクション、そして、デジタルやデータを活用した新たな価値の創出というプロセスと同質のものなのではないかというふうに考えていまして、GXとは、DXを推進してきた企業の経験が大きく生かされる新たな事業創出の機会であると解釈することができるのではないかというものでございます。
 GXを推進する企業には、まずは、自社を取り巻く環境を正確に把握して、環境問題への対応ですとか各種リスクへの対策というのをまずはしっかり定めるとともに、次のステップとして、新たな事業創出の機会に向けて、早い段階から、こういった事例の検証ですとか、そういったところをいろいろ集めて、具体的な方策を検討していくということが求められるのではないかというふうに考えているということです。
 駆け足ではございましたけれども、以上が私のGXに関する考察になります。
 本日、時間の関係で三つの事例しかご紹介できなかったのですが、このほかにも、複数のGX事例をスライドのほうでご紹介していますので、ご参考まで参照いただければと思います。
 私からは以上になります。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、ここまでの三つのプレゼンテーションを通じまして、ご質問、ご意見を頂戴できればと思います。ご発言なさる方は、順次指名をしますので、挙手ボタンをクリックしてください。質問される場合は、お答えいただきたい方を最初に述べていただいてからお願いします。
 では、太田委員、お願いします。
 
太田専門委員
 真庭市長の太田でございます。
 文部科学省と国立環境研究所の関係で、どちらかというと要望をお願いしたいと思います。
 まず、文科省の関係で1ページ目になりますけれども、義務教育について、よくやっていただいて感謝しておりますが、少し宣伝になりますが、真庭市で5年ほど前に造った小学校と、それから学童保育の関係の100%木造校舎があります。北房小学校と、その関係する幼児施設ですが、やはり造ってみると非常にいいんですね。子どもたちにとってもいいということを言われていますが、文科省でも、木造のほうがインフルエンザの罹患率が低いとかというデータも見たことがあるのですが、木造の、あるいは木質の学校なり幼児教育施設をもっと推進していただきたいと思います。また、文科省の負担金も、できたら増額するように持っていっていただきたいです。それから、もう少し科学的なエビデンスといいますか、なかなか類似比較はしにくいと思うのですけれども、木造校舎のほうが子どもの健康上、あるいはその勉学をする意欲とかメンタルの面でも良いというのを、エビデンスをもっと研究していただければありがたいというのが1点です。
 それから、2点目は、環境教育の関係でありますが、ユネスコの関係も出ておりました。できたら、もっと国際的な視点から子どもの環境教育をしていただければありがたいと思います。
 3点目は高等教育、大学の関係ですが、やはりご指摘のように大学は、地域の知の拠点であります。非常に難しいのは分かっていますけども、できたら、環境関係の教員の定数増をして、自治体に週に2日派遣とか、そのぐらいでもいいのですけれども、地域に貢献する大学の教員といいますか、それの定数増をしていただきたいです。
 と申し上げますのは、岡山大学は工学部の再編をして、木造建築関係を隈研吾先生も特別招聘教授という形で行ってもらっているのですけれども、非常に、定数だとかで苦労しております。民間企業の寄附だとか、それによって何とか、木造関係の教官を確保しているのですけれども、少なくとも市町村との関係で、そういう支援をするような、定数増を図ることはできないかということです。
 それから、国立環境研究所の関係でありますが、資料の1ページで、実はショックを受けました。といいますのは、真庭市は非常に広うございますから、市町村別の乗用車CO2の排出量推計ということで、真庭市は岡山県で一番排出量が多いというデータになっております。分析もされていますけれども、やはり、公共交通が弱いのですね。公共交通が弱いため、私どもはEVカーを増やそうということで頑張っていますけれども、公共交通の弱いところを、さらに、JRが廃線にするとかというようなことになりますと、さらに、農山村の公共交通がなくなりCO2が増えていくということもあります。
 現在、走っているのがディーゼル車両でして、JRも脱炭素化ということで、蓄電池を積んだ、いわゆる電動の車両に変えるというようなことを、既に東日本では始めています。公共交通を廃止するというのではなく、むしろ、ディーゼル車両を、蓄電池を積んだ電動車両に変えていくとか、そういうようなことで、国策として公共交通を維持、発展させるというようなことが必要なのではないかということで、意見でございます。
 さらに、ディーゼル車両から電動車両への転換は、電動車両の輸出にもつながり、日本の産業発展にもなってくると思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、馬奈木委員、お願いします。
 
馬奈木臨時委員
 最初に文科省、佐々木様の話で、これは要望ですけれども、環境と健康、各体験の組合せの予算が、非常に措置されていた印象がありました。実際、健康問題が関連すると、よりよい効果があるので、それを反映されているのかと思いました。
 その一方で、子どもの頃に環境に接した、緑に接した方のほうが、年配になって環境意識が高いという研究、及び、環境に対する消費活動がその後も持続するというのがありますので、エビデンスベースドということの重要性で、そういった方向もさらに増額などを検討いただければと思います。
 国土に関することで質問ですが、都市ごとのCO2排出量の差において、地方のほうが集約化によりということをおっしゃっていましたけれど、我々の自動運転の実験から言いますと、地方ほど、高齢の方ほど自動運転への期待というのはあります。そうすると、最大のシナリオでCO2排出量が4割も増えますので、そうすると、今後地方では、実際そんなにCO2が減らないのではないかと思いますけれども、どのようにお考えかお伺いできればと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、広井委員、お願いします。
 
広井専門委員
 どれも本当に印象深かったのですが、国環研の松橋さんのご説明で、先ほどからも話題になっておりますように、地方のほうが、要するに車社会で、CO2排出が1人当たり多くて、東京などのほうが公共交通が密なので1人当たりのCO2排出が低いということですね。これ、結局、ある意味で皮肉なことにといいますか、一極集中したほうがCO2の排出は減るというようなことで、実は以前、AIでシミュレーションをしたときも同じような結果が出ていました。しかしそれはあくまで現状を前提とした話ですので、地方都市の空間デザインとかの在り方が、かなりポイントになってくるかと思いますし、プレゼンの中にありました、地域に応じた削減等の組合せという表が、非常に重要な内容かと思いました。
 私の関心に引き寄せて申しますと、今、地方都市は、シャッター通りになっているところが多いわけですけれども、ここをもう少し、車依存ではない、いわゆる、ウオーカブルな、歩いて楽しめるまちにしていくといった方向が脱炭素にもプラスになるし、その地域経済の活性化にもなるし、人々のQOLといいますか、ウエルビーイングにもプラスになるため、脱炭素とウインウインの姿が実現できるという視点で進めていくのが重要な点かと思いました。
 それで、質問としましては、そういった観点から見たときに、注目してよい試みとか、先駆的な都市とか、そういうのがございましたら教えていただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、淡路委員、お願いします。
 
淡路臨時委員
 千葉銀行の淡路でございます。
 日本総研の田谷さんのプレゼンテーション、大変興味深く拝聴しました。私どもでも、銀行としてDXに本格的、本気で取り組んでおりまして、試行錯誤はありますけれども、資料2-2にあったように、金融機関でも、例えば自分のカードですとか、プラットフォームですとか、メタバースにも、今、試行錯誤して取り組んでいるところですけれども、そういったことを通じて、SDGsに関係する意識改革に携わることができるのだということを改めて感じました。地域金融機関は、その地域全体の意識をどうやって高めていくかということも、私たちの重要な役割であるということなので、とても参考にさせていただきたいと思っております。
 また、1のところで、GXはDXの経験が生かされる新たな価値創出の機会ということなのですけれども、DXをどういうふうに進めていくか、ステップごとにGXも表現されていて、とても私の中で頭が整理された思いです。
 それで、最初のテーマの金融のところに少し戻ってしまいますが、髙村委員もご指摘されていた中小企業のところについて、少し申し上げたいと思うのですけれども、中小企業は、DXもGXもまだ道半ば、あるいは、その入り口に立っている状況の企業が多いと思います。資料でいきますと、STEP1、GXにおいては、STEP1の排出量の可視化、把握のところ、あるいはSTEP2の排出量をどうやって削減していくかというようなステージにいらっしゃる企業が大多数ではないかと思います。
 このゾーンにいらっしゃる中小企業については、私どもが伴走支援するということで、ファイナンスも、厳密な意味でのGXにつながってはいないかもしれませんけれども、意識を高めるというような意味合いでのファイナンスに着手しているところなのですが、恐らく、国全体として、政府の資金を投入する、あるいは、いろんなところから資金を集めてきて、これからトランジション・ファイナンスということで進めていこうとするのは、恐らくSTEP3に関係するところじゃないかと思います。あるいは、STEP2の後半からSTEP3だとすると、多くの中小企業が、今、予定されているような大型のトランジション・ファイナンス向けだとするならば、そこからこぼれ落ちてしまう可能性があります。どうやって中小企業のところにまでファイナンスを広げるか、あるいは、私どもの立場から申し上げると、中小企業でもトランジションに取り組もうとしておられる方々の支援をしたいのですが、リスクも相応に高いわけであって、そのリスクを民間金融機関がどうやって負っていくのか、そこに政府がどうやって補完する制度を設けてくれるのか、そういったところに、今、大変関心がありまして、ちょっと中小企業の置かれている状況について、申し上げたいと思いお話をいたしました。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 取りあえずここで、一旦切らせていただいて、ご回答いただければと思います。
 では、文部科学省の佐々木様、お願いします。
 
文部科学省(佐々木課長補佐)
 ありがとうございます。
 それでは、ご質問いただいたところで、まず、太田委員からいただいた木造校舎の関係からでございます。こちら、まず、エコスクールの事業につきましては、通常の公立文教施設の設備よりも単価を加算してございますので、予算額に対して、自治体さんからの応募が非常に多くて、なかなかご要望に応え切れていないところはあるのですけれども、予算、単価を上げて推進をしているというところでございます。来年度に向けても、必要な予算を確保できるように、今、財政部局と折衝をしているところでございます。
 それに当たって、おっしゃっていただいた科学的なエビデンスといったものを準備して概算要求、必要性を訴えていけるように、こちらも担当のほうにお伝えして、進めていきたいというふうに考えてございます。ありがとうございます。
 それから、二つ目は国際的な視点というところでございます。こちらは、この後の馬奈木委員のご質問にも関係するところではあるのですけれども、今、資料の中に金額が入ってございますが、括弧の中に入っている金額が、今年度の予算額でございまして、括弧の横に出ている金額が、財政当局に要求している令和5年度要求額というふうになってございます。いずれもそれぞれの事業、来年度に向けて要求をしているところでございますけれども、ESDの推進についても予算を増額要求して、取組を広めていけるように、今、担当が頑張っているところでございます。応援をお願いできればと思います。
 それから、大学のところは、環境エネルギー課さんのほうでご回答いただいてもよろしいでしょうか。
 
文部科学省(轟課長)
 大学関係でご要望があったことは、高等教育局の担当に伝えさせていただきます。教員の定数増というところであったと思いますので、本日の資料の中でも、少しリンクするかというのはありますけれども、学部転換等の改革というのもこれからやっていくというところですから、そういったところに、こういう教員の定員増も関係してくる可能性もあると思いますので、ご要望いただいたことは伝えさせていただきます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 
文部科学省(佐々木課長補佐)
 では、引き続きまして、馬奈木委員からご質問いただいた件でございます。体験活動について、我々も重要性を各所で説明させていただいているところでございますけれども、おっしゃっていただいたのは体験活動と健康の関係でございますが、私どもも、体験活動として子どもたちの自己肯定感と関連があるという話はよくしているのですけれど、健康との関係というところは、確かにこれまであまりなかった観点かと思いますので、これについても、担当部署にお伝えして、エビデンスに基づいて、来年度に向けて増額を確保できるように努力してまいりたいと思っております。引き続き応援をよろしくお願いいたします。
 ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、国立環境研究所の松橋様、お願いできますでしょうか。
 
国立環境研究所(松橋室長)
 まず、太田委員の質問から。真庭市が多くてショックを受けたということ、近隣と比較してやる気になっていただくということが狙いの一つなので、大変ありがたいコメントだと思います。どう対策したらいいかというところで、鉄道を残すというためには、そこから乗り継ぐ適切な規模の乗合交通機関というのがないと、なかなか鉄道単体だと大変だと思います。うまく乗換えができるようにすることが非常に重要かなと思います。鉄道そのものは走行抵抗が非常に低くて済みますし、自動運転にも相性がよいので、ぜひ残せるように、いろんな取組をしてやっていけるといいのではないかと思います。
 二人目、馬奈木委員から、地方で分散している高齢者、自動運転への期待などもあって、なかなか減らないのではないかという指摘だったかと思います。やはり、ある程度自由なお金がある高齢者は、マイカーを使い続けたり、また、高価であっても自動運転のマイカーを購入して、使い続けるということは起き得ると思います。
 一方で、生活に困らないようにという観点では、特例市のようなサイズの都市というのを全国の中に誘導していくということは非常に重要だと考えています。郊外であれば、移動の販売車ですとか、遠隔医療とか、サービス側が動いてやることで、生活に困らないように、一定量サービスをやっていく必要はあるかなと考えています。
 三人目、広井委員からの地方の空間デザインは重要だということ、そのとおりだと思います。5枚目のイラスト右側のような形を地方都市が目指す必要があるかなと思います。郊外部でも中心市街地でも歩けるようなデザインというのは、非常に重要だと思います。共感いたします。
 先駆的な都市については、詳しくはないのですが、松山市の事例を見に行った機会がありました。駐車場が便利なところにあると、どうしても歩きやすいまちができないので、歩きやすさの観点からの優先順位づけをそれぞれの地域でやっていくこと、これまでの優先順位を変えるということが非常に重要かなと考えております。
 以上になります。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、田谷様、お願いします。
 
日本総合研究所(田谷エキスパート)
 どうもありがとうございます。千葉銀行、淡路様からいただいたコメントでございますけれども、千葉銀行様が取り組んでいるDXへの取組や中小企業の課題感の辺りを共有していただいて、私としても非常に勉強になりました。
 環境省が出していたアンケートデータでは、排出量削減目標の設定については上場企業の半数以上が実施、TCFDの情報開示については上場企業の4割程度が着手しているという状況である一方、中小企業の大半は脱炭素化に向けた取組に未着手という状況でした。この状況から、日本の中小企業の多くは、カーボンニュートラルやTCFDの情報開示への対応について現在検討を進めている状況であり、後続のプロセスとなるGXに着手している企業の割合はかなり少ないのではないかと推察しています。その中で、銀行がファイナンス的な観点で中小企業のサポートをするのは非常に大きな役割を果たすことになるのではないかと感じています。
 一方、政策の観点では、企業・官・学が協業して、消費者や中小企業などのニーズやペインポイントを探り、どのような施策が検討できるのかを考えていくことが必要になると思います。実際にGXリーグ等などの政策もあるので、そのような場を活用してGX推進のサポートをしていくことが肝要と思われます。
 また、政策の中ではGXがどのような概念であるのか、どういうところを目指すべきなのかについても明確に示す必要があるのではないかと考えています。GXへのプロセスを明確に示すとともに、GXを推進する企業をファイナンスなどの観点で支援するような枠組みが必要になるのではないかと思います。
 本件については、グリーンデータ×金融データ、グリーンデータ×サプライチェーンデータなど、気候変動に関連するデータと企業が保有するデータを組み合わせて活用し、新しいサービスを顧客に提供するという欧米の事例があるため、日本での施策を検討する上でのベンチマークになるのではないかと思います。
 例えば、官・学・企業連携の中でデータ連携をするなど、どのようなコラボレーションができるか、協業をすることで相乗効果が図れるかをしっかり検討するとともに、スモールスタートでサービス開発を試行するなど、PDCAでプロセスを検証していくことが必要になるのではないかと思っています。
 私が紹介したBNP Paribasの事例は、(気候変動対策に関連する)新サービスに対してどのようなユーザーの反応があるかを確認する実験的な取り組みであるように見えます。実際、消費者がどれだけ気候変動対策に関心があるか、リテールサービスとして今後どのような形で展開が可能であるかなどについて、小規模な範囲で実験をして効果を検証する取り組みであり、一つの参考になると思います。このようなサービスの展開により、気候変動や消費者のトランザクションに関するデータを集めて、顧客のより深いニーズが見つけられれば、一層サービスの幅を広げられる可能性があるのではないかと感じている事例です。
 私からは以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、質問・意見を再開したいと思います。
 浅利委員、お願いします。
 
浅利専門委員
 貴重な情報をありがとうございました。
 まずは文科省さんですけれども、私も、各種の教育現場において、せんだっての学習指導要領の変更により、若年層のほうが、SDGsを含めて、すごく進んでいるという実態を実感しておりまして、すごくありがたく思っているところです。
 ただ、その上で、現場に入っていっても、その教育自体を支えられる人材がすごく不足しているなということを実感しておりまして、今回の発表が、小学生とかの若年層向けと大学生向けとでご担当者も変わっておられましたが、やはり地域単位で、大学であったり地域の方々が、小・中学生を含めた基礎教育にもしっかり関与できて、地域の持続可能性を保っていこうというのが、子どもたちにとっては一番の自分ごと化になると思いますので、そこの連携をできるような今後の施策も考えていっていただきたいなと思いました。その辺りで、もし、こんなことも始まっているよというようなことがあれば、ぜひお聞かせいただけたらなと思います。
 それと、最後のDXの関連でも一つご質問したいのですけれども、資源循環分野の中でも一つ、やはり海外との比較というところでDPP、デジタル製品パスポートの議論が始まっているかなと思います。この辺りでも何かご知見があったら、ぜひ教えていただけたらなと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 では、森田委員、お願いします。
 
森田専門委員
 ありがとうございます。3名の方々の発表、どれも勉強になりました。
 私は、文科省に質問というかコメントをさせていただければと思います。私も、浅利委員と同じように、小学生などの子どもたちの、環境やSDGsに対する関心が高まっているのは、よい教育を考えていただいているからだと思うのですが、私のほうはそういった人材育成と合わせてその先の雇用創出について、もう少しいろいろ検討いただきたいなというふうに思っています。
 せっかくいろいろな人材を育成しても、その先に、それを生かす雇用がないと、やはり意味がないと思います。特に今、アカデミアのほうでも20代、30代を中心としたポスドク問題など、よい人材が育っても、その先に就職がないといった、日本のアカデミアの雇用の問題もあります。今若手研究者を中心とした日本のアカデミアの将来を議論するコミュニティーにも参加しているのですが、アカデミアでもこういう状態である中で、GXに向けた人材を大学でも育てるとのことですが、人材育成とその先の幅広い分野での雇用創出をつなげて、議論していただきたいなと思います。
また人材育成に関しては、国内だけでなく、国際協力の文脈など、国際的に日本のいろいろな人材が活躍するということも視野に入れたほうがよいと思いますし、そういった意味で、教育のレベルも国際的なレベルというところも視野に入れて考えていただきたいなと思っております。
 少し文科省の範囲を超えてしまうのかもしれないのですが、コメントいたします。
 以上です。
 
大塚委員長
 今の点に付け加えて、既に言われていることですが、アカデミアの分野で任期つきの雇用が、大学にポスドクとかドクターで残ることに関してネガティブな影響を与えているようなので、それについて、文科省さんもよくご存じのことだと思いますけれども、何かお答えいただくとありがたいです。
 では、髙村委員、お願いします。
 
髙村委員長代理
 ありがとうございます。文科省の環エネ課の轟さんになろうかと思います。大学コアリションも含めて、この分野で大学、研究開発の人材の育成も含めて、様々検討いただいていると思います。今回の新規予算のところでも、二つあったうちの多分前者は、先ほど、何人かの先生からご質問がありましたけれども、若手の研究者のことも考えた施策の一つとして打ち出されているのだろうというふうに拝見しました。その点は非常に重要だと思っておるのですが、同時に、GX、あるいは日本総研の田谷さんがおっしゃったDX、これらを本当に社会に実装していこうと思うと、新しい産業社会構造の転換を促していく、そういう知識、技術を持った人材が新しく必要とされると思っています。
 恐らく、スライド8の新規予算要求中のデジタル・グリーン等の成長分野を牽引する大学・高専の機能強化のところが、そこを意識された概算要求だと思います。こちらは本当に重要だと思っていまして、例えば、サステナブルファイナンス、前半のトランジション・ファイナンスなんかの例を取っても、やはり、それに関わる基礎的かつ体系的な知識を持って、かつ、その動きの速い国内外の状況をしっかり身につけられる能力を持った人材の育成というのが不可欠になっていると思います。
 それから、先ほど真庭市の太田市長もおっしゃった地域が移行していくときに、地域の、まさに知の拠点としての役割、さらには、地域が移行していくときに、社会人のリスキリングといったようなことも含めて、幾つかは、その期待がされる事項がこの分野は大きいと思っています。
 ご質問は、先ほどのデジタル・グリーン等の成長分野を牽引する大学・高専の機能強化の新規要求予算のところですけれども、具体的に育成する人材、あるいは、開発していこうと想定をされている能力というのはどういうものだというふうに考えられているかという点についてご紹介をいただけないかというふうに思います。各大学や教員の自主的な創意工夫、それから、地域の多様性などもあると思うので、基本的には柔軟なものである必要があると思っているのですが、と言いつつ、しかし、この分野でしっかり基礎的かつ基盤的、知識基盤を持って体系的に理解をして進められるという一定の、知識基盤が必要とされるようにも思っていまして、その意味で、どういう分野で、どういう人材、あるいは能力を開発していこうということを大学に促していこうとされているのかという点です。
 これは、文科省さんだけでなく、実は、多くの方もおっしゃっていましたけれど、政府全体でも考えないといけないところだと思っています。この委員会でも共通して参加されている委員はいらっしゃいますけれども、先般、金融庁のほうからは、サステナブルファイナンスに関してのスキルマップといって、必要とされるスキルあるいは知識というのはどういうものかという項目をお出しになりました。あくまで目安ですけれども、こうしたレフェランスというのは、人材育成開発に当たる大学等の機関にとっても非常に有用だと思っています。これは、恐らく文科省さんだけではないと言ったのはそういう意味でして、それぞれこの大きなGX、DX、両方をやっていく上でも、こうした必要とされる人材・能力についてのレフェランスというものをやはり作っていくということが必要ではないかというふうに思っております。これは要望であり、意見です。
 以上です。
 
大塚委員長
 大変大きく、重要なテーマを挙げていただいたと思います。
 では、鶴崎委員、お願いします。
 
鶴崎専門委員
 お三方にご発表いただき、ありがとうございました。大変勉強になりました。
 文科省さんへのコメント、ご質問が続いているところ、私も同じで恐縮なのですけれども、弊社でも、地域でのSDGs教育ということで、長崎県壱岐市の中学校の取組をお手伝いさせていただいております。3年ほどやってきているのですけれども、その中で、学校の子どもたちを通じて、その家族であるとか、地域社会の大人たちに少し気づきを与えて、意識を醸成していこうというような形で、環境教育を通じた消費者といいますか、全世代に対する教育を目指して活動しています。
 ただ、この3年やっていく中で、いきなり学校にお任せするというのは難しいということもありまして、初年度はかなりお手伝いをして、講師として弊社の研究員が赴くような形で活動をしてまいりましたが、3年ぐらいたつと、学校の先生方にお任せできるような状況になってきています。ただ、こういった活動を遠隔から支えていくというのはなかなか難しいところでもありますので、やはり地域で、学校での環境教育を支えられるような、そういう人材といいますか機関が必要ではないかと考えています。
 それを考えたときに、先ほど来、大学でのコアリションというお話が出ていますけれども、例えば大学の人たち、学生さんなのか、研究室の方なのかは分かりませんけれども、そうした方々が地域の学校に入って、何か子どもたちへの教育のお手伝いをするような、そういった場づくりができないかというようなことを今日の議論を聞いていて感じました。
 そのために、例えば大学では就職の支援などで職員の方が学生のサポートをされていると思うのですけれども、そういうリソースを一部お借りして、地域の企業あるいは金融機関などと一緒に学校教育をサポートするような、それがある種の就業体験、インターンシップになるような、そういった形を考えられないかというようなことを、ジャストアイデアなのですけれども、思いました。
 そういう中で、文科省さんのほうで、既に様々な取組をされていると思いますし、環境省でも、環境教育ということでかなりの取組がされているかと思うのですけれども、既に大学をそうした地域での環境教育に巻き込んでいくような流れというのが出ているのかどうか、そうしたところを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
 
大塚委員長
 伊藤委員と冨田オブザーバーで、ご質問、ご意見を締め切らせていただこうと思いますが、多少手短にお願いできれば大変ありがたいです。
 では、伊藤委員、お願いします。
 
伊藤専門委員
 大変いろんなことを教えていただいて、この問題には、いろんなアプローチからやるということが必要だったのですけれど、これは個人的な感想なのですが、ここの議論で非常に大事なのは、個別の分野でいろんなことをミクロでやらないと全体が動かないということと同時に、そういうことをやった結果として、マクロで、気候変動の問題がどれだけ動くのかということをきちっと押さえておく必要があると思います。
 例えば、今日、教育のお話があって、大変いろんなことをやっていらっしゃるのですけれど、では、それをトータルにまとめたときに、どれくらいの成果が、例えば数年後に期待ができるのかとか、あるいは、今日の前半の金融機関が、いろんな試みをやっていらして、すばらしいと思うのですけれども、実際には、政府の補助金とか規制だとか、いろんなものと混在した中で、いろんな活動が行われるわけで、例えば、今議論になっている気候変動対応が成長にもつながるというような観点と、今の金融の話というのはマクロでどうつながるのかということは、ぜひ議論しておく必要があるのかなと思いました。
 DXとGXの関係も、非常に興味深い分析で、DXとGXに似た面があるというのがよく分かったのですけれども、一方で、日本ではDXが非常に遅いと言われているわけですが、もし、その要因がGXにも当てはまるとすると、今日お話のあったような変化が日本で進むということに対して、そう楽観的にはなれないような面があるかもしれません。何か、その辺りについて、DXとGXを加速化するような政策があるのかどうかということは非常に気になります。
 それから、最後の公共交通機関の話で、地方ではなかなか厳しいということがよく分かったのですけれど、ここでもやはり我々が考えておかなければいけないのは、日本全体の人口が、どんどん少子高齢化していく中で、例えば公共交通機関の代表である鉄道は、地方でなかなか維持が難しいのだろうと思います。そのため、そういう人口の大きな変化の中で、特に地方の交通体系をどうするかということについて、もう少し、詰めた議論が必要なのかなと思いました。
 質問というよりも感想でございます。どうもありがとうございます。
 
大塚委員長
 貴重なご意見として、受け取らせていただきたいと思います。
 では、富田オブザーバー、お願いします。
 
冨田オブザーバー
 時間のない中でありがとうございます。
 私からは、今日のお話を伺わせていただきますと、やはり従業員の意識改革というのが大変重要なんだなということを改めて感じさせていただきましたので、その観点で2点です。
 1点目は、文科省の方にですが、先ほど、髙村先生からもご指摘をされていましたが、人材育成という観点でいきますと、やはり社会人の学び直しのプログラムも重要だと思いますが、この辺りについて、今後の見解などがありましたら教えていただきたいと思います。
 それから、もう一点が田谷様にですけれども、先ほど、先駆的な事例とそのDX、GXの関係でご示唆いただいたのですが、ここに対して、実際に企業の中では、従業員に対しての意識改革は大事だと思うのですけれど、そうしたものがどういうようなプロセスを経て行われているのか、もし研究をされている中で事例などありましたら、ご教示いただきたいと思います。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 では、文科省さんから、お答えいただけますでしょうか。
 
文部科学省(佐々木課長補佐)
 ありがとうございます。
 それでは、浅利委員のご質問から、人材不足が地域単位で連携できるような仕組みなどということだったと思うのですけれども、先ほどご説明させていただきました環境教育の実践普及というところで、環境省さんと連携・協力しまして、地域も含めて、先生以外も含めて、環境教育とか、そういう学習を推進するリーダー育成研修というのを行っておりまして、そういった中で、地域の人材育成にも取り組んでございます。また、ユネスコスクールというところでも、こちらは国際的な取組ということもございますけれども、一方で、地域によって環境の状況というのは違いますので、そういった学校の周りの地域の自然や環境なんかを学んで、それを通じて、環境についての意識を深めていくというような取組を行っております。我々としても、そういった取組をする学校の支援をしていきたいというふうに考えているところでございます。
 それから森田委員のポスドクの問題のところは轟課長にお願いしてもよろしいでしょうか。
 
文部科学省(轟課長)
 デジタル・グリーンの成長分野を牽引する大学・高専等の機能強化のお話だったと思いますけれども、具体には、まさに学部等の再編等による特定成長分野ということで、そこにデジタル・グリーン等ということで例示がされているのですけれども、そういったところへの転換等を支援していくというのが一つ目。それから、高等専門学校の機能強化もやっていけたらというのを考えているのと、トップレベルの情報人材の育成支援といったところが支援メニューとして、今挙がっており、財務省と折衝をしているというところです。
 
文部科学省(佐々木課長補佐)
 鶴崎委員から、SDGsの長崎県の取組についてのお話の中で、地域で、そういう学習活動を支えていく人材・機関が必要というようなお話があり、大学が、例えば学校の教育に入っていくような仕組みというところでございますけれども、例えば、今、新しい学習指導要領の下で総合的な探求の時間というような時間がございまして、かなり自由に、それこそ各学校で工夫していただいて、外部の先生方を招き入れて、いろんな取組ができるような形になってございます。例えば、そういう時間を使っていただくことで、いろんな取組が各地で行われてございますけれども、そういった好事例を我々としても地域に普及していきたいなというふうには思ってございます。
 それから、伊藤委員から、例えば、こういった教育活動をいろいろやってみて、それがどれぐらい実際の排出量の削減につながっているのかというところでございますけれども、我々も、教育活動を行うことで皆さんの意識が高まるというようなところについては、いろんな調査とか効果の測定をやっているところでございますけれども、実際それが、どれぐらいCO2排出量の削減につながっているのかというところまでは、正直なかなか、把握が難しいところでございますので、そこは中・長期的な課題として承って、各担当と相談させていただければというふうに思っております。
 それから、冨田オブザーバーから、社会人の学び直しというお話がございましたけれども、生涯学習というか社会人の学び直し、リカレント教育というところは、昨年来からかなり社会的にも要請されているところでございます。今、文部科学省のほうで、例えば転職される、失業された方とか、あるいは、転職を考えている方が新しい知識を身につけて、これから成長される分野に転職できるようなプログラム開発を大学や専門学校などに開発してもらって、それを受講してもらうというような取組を、進めているところでございまして、これも、来年度に向けて概算要求、さらに拡充を要求しているところでございます。そういった取組を行う大学等を支援するということで、取組を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 
大塚委員長
 森田委員へのご回答と髙村委員へのご回答が、少し混ざった感じがします。森田委員のほうは、人材を育成しても、その雇用の創出を考えてほしいということで、髙村委員のほうは、具体的人材として、どういう能力が必要と考えているかということだったのですけれど、先ほどのお答えは、特に雇用の創出との関係について、あまりお答えいただいていない気もしますが、いかがでしょうか。
 
文部科学省(轟課長)
 資料の最後のページに、企業の雇用につながるところがあります。例えばグリーントランスフォーメーションの革新的技術創出の件ですけれども、これは、実は、前例がありまして、10年で、例えば蓄電池の分野で、全国でチーム型の研究開発を行って、最大で400人ぐらいの先生たち、あるいは学生が関わっていたものなのですけれども、そこで出てきた成果は、10年で100名以上の博士をまず輩出していると。それから、500人程度、その関連の企業に就職しているというようなこともありますので、こういうプロジェクトをやることによって、GXの人材が企業に出ていくというところがあると思います。
 それから、この下の科学技術・イノベーションの人材育成・確保のところは、まさに、このプログラムの中に企業での研究インターンシップ等を組み込んで、一体として行っていく大学を支援するということですので、こういったところでも、人材を企業に輩出していく、あるいは企業の雇用につなげていくというところがビルトインされているというところでございます。
 
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、田谷様、お願いします。
 
日本総合研究所(田谷エキスパート)
 まずは浅利様からいただいたDPPに関する件ですが、私がご紹介させていただいたHoneywellの事例が一つの参考になると考えています。彼らは、物流や資源などをデジタルでモニタリングして把握するようなサービスを提供しております。近年、Honeywellのように、エンタープライズ企業がシステム開発をする際の手法として、ローコードやノーコードなどのSaaSを活用して、自社用のシステムやサービス開発を行うケースが多いと感じています。
 しかし、ある製品を製造する際に、どのような原料を使って、どこで加工されて、最終的にどういう製品になるかというフローをデジタルで管理する場合、先進のデジタルツールの活用に知見がない企業がローコードやノーコードツールを使って、自社のサプライチェーン管理システムを一から作るというのはかなり難しいと考えられます。
 そのような企業の課題解決に着目したのがHoneywellであり、彼らはSaaSを活用して、サプライチェーン内の資源や物流のモニタリングをデジタルで一元管理できるソリューションを開発し、それをユーザー企業向けに提供しています。ユーザー企業は、このようなソリューションを活用することで(自社で一からシステムを作る必要がなく)、DPPやサプライチェーンの管理を行えるようになる、という事例です。
 次に、伊藤様からいただいたGXを加速させる仕組みなどへのご質問に対する回答です。気候変動対応は、アメリカでは近年まれに見る大きなビジネスチャンスとして認識されている側面がありますが、実はGXという言葉や概念はあまり浸透していません。アメリカ政府の取り組みからは、カーボンニュートラルやTCFDの推進を企業に促している動きが見られます。
 そのような背景から、アメリカの気候変動市場にはグローバル企業が多く参入しており、企業にとってはビジネス拡大のために気候変動への対応は必須である(市場参入に乗り遅れたら、マーケットを獲得できない)というインセンティブが働いていると考えられます。
 一方、日本ではカーボンニュートラルやTCFDについて、企業の責務として実施しなければならないという感覚が強いのではないかと推察しています。日本企業のGXを後押しするためには、政府がGXまでのロードマップを示すことや、GXの概念を示していくことが必要になると思います。例えば、GXリーグを活用してGXに関する先進事例を検証して日本企業に紹介したり、官・学・企業が協業して消費者のニーズやペインポイントを探り、それを解決するための施策を検討するような政策が必要になるのではないかと考えています。
 また、GXの推進におけるエコシステム内のデータ活用や、サービスを提供する対象であるペルソナの設定、どのようなペルソナが気候変動に関心があるかなど、サービス利用者のニーズを十分に把握する必要があると思います。ペルソナやニーズに基づき、より具体的な施策やGXを実現するまでの道筋を政府が具体的に示して手厚くサポートすることが一つの有力な施策になるのではないかと考えます。
 最後に、冨田様からいただいたGXに関する従業員の意識改革という観点ですが、本テーマに関しては今回十分に分析していないため、具体的な事例は申し上げられません。
 ただし、関連情報を申し上げますと、GXを推進する企業の多くは、まずカーボンニュートラルに関する長期的な目標を大きく設定し、その目標の達成に向けて気候変動対策に関連する施策の推進や新しいサービスの提供を始めているという特徴が挙げられます。
 一般的には、企業内にはイノベーションチームやDXチームがおり、(GXのような)新規施策には、そのチーム内で新しいサービスを検討して試行的に開発をしてリリースし、顧客の反応を伺ったり改良を重ねたりしています。そのような小さな成功事例を積み重ね、新規施策に関する取り組みが定着してきた後に全社的な施策に拡大していく、全従業員に施策を示していく、という方式が見られるため、参考情報ということでご連携させていただきます。
 以上です。
 
大塚委員長
 具体的な話までしていただいて、ありがとうございました。
 環境省におきましては、ただいまの意見交換を踏まえながら、今後の取組の方向性をブラッシュアップしていただければと思います。
 活発な意見交換、どうもありがとうございました。また、文部科学省の佐々木様、轟様、国立環境研究所の松橋様、日本総合研究所の田谷様におかれましては、ご対応いただきましてありがとうございました。
 では、最後に議題の(2)その他につきまして何かございましたら、事務局からお願いいたします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 遅くまで、大変貴重なプレゼン、ご議論、誠にありがとうございました。
 委員長からご指示がありましたとおり、本日いただいたご意見については、整理させていただきまして、次回、前回事務局からお出しした「今後10年を見据えた取組の方向性」の検討事案につきまして、改めてご議論いただきたいと思います。
 なお、次回の開催は、11月25日15時からを予定させていただいております。よろしくお願いいたします。
 以上です。
 
大塚委員長
 では、本日の議事はこれで終了させていただきます。円滑な進行、どうもありがとうございました。
 事務局にお返しいたします。
 
地球環境局総務課長
 どうもありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、事務局で作成の上、委員の皆様に確認いただきました後に、ホームページに掲載させていただきます。
 

午後6時46分 閉会