カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第1回)議事録

日  時

平成30年7月30日(月)  13:00 ~ 16:00

場  所

三田共用会議所 1階講堂
(東京都港区三田2-1-8)

議  題

(1)脱炭素社会に向けた動向

(2)その他

配付資料

資料1-1 カーボンプライシングについて(諮問)

資料1-2 カーボンプライシングについて(付議)

資料1-3 カーボンプライシングの活用に関する小委員会の設置について

資料1-4 カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿

資料1-5 カーボンプライシングの活用に関する小委員会の運営方針について

資料1-6 中央環境審議会関係法令等

資料2   脱炭素社会に向けた動向

参考資料1-1 「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」取りまとめ概要

参考資料1-2 「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」取りまとめ

議事録

午後1時01分 開会


鮎川市場メカニズム室長
それでは、ただいま定刻になりましたので、第1回中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会を開始いたします。
会議の開催に当たりまして、環境大臣の中川よりご挨拶をさせていただきます。


中川環境大臣
環境大臣の中川雅治でございます。
委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中お集まりいただきまして、心から御礼申し上げます。
今月は豪雨に見舞われ、多大な人的、経済的被害が発生いたしました。
また、先週は、今週もですね、そうなるわけでありますけれども、日本各地で記録的な猛暑となりました。そして、台風12号が非常に変則的な進路で、また各地に大雨をもたらせております。本当にこの異常気象というものが大変な猛威を振るっておりまして、多くの方がお亡くなりになったわけであります。心からお悔やみを申し上げたいと思います。
今、政府は必死で、この西日本に降りました豪雨による復旧、復興の作業をしておりますし、環境省も災害廃棄物の迅速な処理に向けて、今、大変な努力をしているところでございます。
国連の専門機関であります世界気象機関、WMOは、今回見られている現象は、温室効果ガス濃度の増加による長期的な地球温暖化の傾向と関係しているという見解を述べております。
また、気候変動に関する政府間パネル、IPCCの報告書によれば、今後、地球温暖化が進展した場合、猛暑や豪雨に見舞われるリスクがさらに高まるとされております。このようなリスクを避けるためにも、脱炭素社会への移行が必要であります。
ご承知のとおり、パリ協定やSDGsをきっかけに、世界は脱炭素で持続可能な経済社会に向けて、各国の政府も企業も既に大きく舵を切っております。
金融に目を向けましても、世界ではESG投資が大きな潮流となっております。
金融の主要プレーヤーが一堂に会するESG金融懇談会におきましても、我が国の金融業界が脱炭素を含む金融ESGについて積極的に取り組むことの必要性が共有されております。
もはや我が国も、世界の動きに遅れをとるわけにはいきません。従来型の経済・社会から脱炭素社会への移行に向けて、資金を初め、あらゆる資源の配分を行っていくことが重要であります。
この点、安倍総理大臣からも、本年6月4日の未来投資会議において、環境と成長の好循環をどんどん回転させ、ビジネス主導の技術革新を促すパラダイム転換が求められており、そうした方向性の下、パリ協定に基づく長期戦略について、これまでの常識にとらわれない新たなビジョンとして策定すべく、検討作業を加速化するよう指示があったところでございます。
この有識者会議も、間もなく発足するという状況でございます。
この脱炭素社会への移行のためには、炭素排出について、社会の隅々まで価格シグナルを送ることで、あらゆる主体による排出削減の創意工夫を促すカーボンプライシングが有効な手段の一つになり得ると考えております。
このことから、皆様ご承知のとおり、昨年6月に有識者から構成される「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」を設置いたしまして、我が国のカーボンプライシングの活用のあり方について大局的な見地から論点を整理していただきました。様々な方向性について、検討を行っていただきました。この検討会の取りまとめにおきましては、「様々なステークホルダーから意見を聞きながら、国民的な議論として、我が国にとって最適なカーボンプライシングの形についてさらに検討を深めていく」こと等を望むとされているところでございます。
これを踏まえまして、学識経験者に加え、経済界、市民団体、投資家など、多様な主体にご参画いただき、脱炭素社会に向けて、あらゆる資源の戦略的な配分を促し、新たな経済成長につなげていく原動力としてのカーボンプライシングの可能性について調査審議いただくよう、私から中央環境審議会に諮問いたしまして、この小委員会の設置に至ったところでございます。
我が国におきましては、カーボンプライシングの可能性について、今なお多様な意見があると承知しております。
一方、諸外国におきましては、カーボンプライシングに対する課題を乗り越えるための様々な工夫がなされております。こうした先行事例も参考にすれば、我が国においてもカーボンプライシングを活用できるものと考えております。
本日お集まりいただいている委員の皆様におかれましては、カーボンプライシングの効果や課題について闊達なご意見を頂戴し、その可能性について精力的なご議論をいただきますようお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。


鮎川市場メカニズム室長
ありがとうございました。
中川大臣は公務のため、ここで退席をさせていただきます。どうぞご了承ください。


(中川環境大臣 退席)


鮎川市場メカニズム室長
それでは、続きまして、本日ご出席の委員の先生方をご紹介させていただきます。時間が限られておりますので、大変恐縮ではございますが、事務局からのご紹介ということにさせていただきたいと思います。
まず、福岡大学名誉教授の浅野直人委員でございます。
続きまして、早稲田大学政治経済学術院教授・環境経済経営研究所所長の有村俊秀委員でございます。
続きまして、日本気候リーダーパートナーシップ共同代表の石田建一委員でございます。
続きまして、自然エネルギー財団常務理事の大野輝之委員でございます。
続きまして、東京大学大学院経済学研究科教授の大橋弘委員でございます。
続きまして、大和総研調査本部主席研究員の河口真理子委員でございます。
続きまして、日本社会事業大学学長・東京大学名誉教授の神野直彦委員でございます。
続きまして、WWFジャパン自然保護室次長、昭和女子大学グローバルビジネス学部特任教授の小西雅子委員でございます。
続きまして、名古屋大学大学院環境学研究科教授の高村ゆかり委員でございます。
続きまして、日本鉄鋼連盟エネルギー技術委員長の手塚宏之委員でございます。
東京大学大学院総合文化研究科教授の前田章委員でございます。
続きまして、電気事業連合会副会長の廣江譲委員でございます。
続きまして、CDP事務局ジャパンディレクター、PRI事務局ジャパンヘッドの森澤充世委員でございます。
最後に、大阪大学大学院経済学研究科准教授の安田洋祐委員でございます。
なお、本日、ご出席の予定ではございますが、日本経済研究センター理事長の岩田一政委員、EY Japan CCaSSリーダー、気候変動・サステナビリティサービスプリンシバルの牛島慶一委員、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授の遠藤典子委員、早稲田大学法学部教授、大塚直委員、京都大学大学院経済学研究科教授の諸富徹委員は、追ってご到着の予定でございます。
なお、日本税理士連合会会長の神津信一委員、慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗委員、日本経済団体連合会専務理事の根本勝則委員、国立環境研究所社会環境システム研究センター統合環境経済研究所研究室長の増井利彦委員、一橋大学大学院法学研究科教授の吉村政穗委員は、本日所用のためご欠席でございます。
本委員会につきましては、後ほどご説明いたします運営方針に基づきまして、中央環境審議会地球環境部会の安井部会長のご指名によりまして、浅野委員に委員長をお願いしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず、議事に先立ちまして、資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の資料1枚目の議事次第の資料一覧をご覧ください。
資料1-1といたしまして、カーボンプライシングについて(諮問)。
資料1-2といたしまして、カーボンプライシングについて(付議)。
資料1-3といたしまして、カーボンプライシングの活用に関する小委員会の設置について。
資料1-4といたしまして、カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿。
資料1-5といたしまして、カーボンプライシングの活用に関する小委員会の運営方針について。
資料1-6といたしまして、中央環境審議会関係法令等。
資料2といたしまして、脱炭素社会に向けた動向。
最後、参考資料1-1「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」取りまとめ概要及び参考資料1-2「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」取りまとめ。
参考資料につきましては、お手元のこちらのタブレットのみに入れてございます。紙資料といたしましては用意しておりませんので、こちらのほうを適宜ご参照いただければと思います。
資料の不足、落丁等がございましたら、お手数ですが事務局までお申しつけください。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、浅野先生、以後の進行をお願いいたします。
マスコミ関係の方におかれましては、撮影はここまでということでさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、委員長、よろしくお願いいたします。


浅野委員長
それでは、安井部会長から指名をいただきましたので、私が小委員会の委員長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
本日は7月30日ということでございますけども、あと、もうちょっとしますと11月になります。実は、11月19日は環境基本法が公布・施行された日で、もう約25年ということになります。
この環境基本法の22条に、経済的手法を使った政策の動かし方についての条文があるわけですが、経済的な負担を課す措置についてはしっかり研究せよと書いてあって、もし、どうしてもやりたい場合には国民の理解を得なければならない。それから、国際的な協調ということもしっかり考えるべきと、こんなことが書いてありまして、25年前からカーボンプライシングの考え方が環境政策上、重要であることは認められてきているわけです。
しかし、残念ながら基本法は、今、言いましたようにいろいろ条件をつけて、それをやるときはこういう点を考慮せよと書いているわけですが、考えてみますと、国際的な協調という点については、昨今の世界の動きをみますと日本はかなり遅れているわけですから、いまやクリアできたという感じですし、しっかり研究という点については神野先生のご尽力でこの小委員会に先立つ検討会で随分丁寧にご検討いただき報告をまとめてくださいましたので、あと、残っていることは、国民の理解を得るためにどうするかということなのだろうと、こんな感じがいたしております。
今まで随分長い間、中央環境審議会でも幾つかの委員会でカーボンプライシングの考え方についての議論をしてきております。しかし環境基本計画策定検討の際の議論もそうでしたし、さまざまな場での議論もそうでしたが抽象的な議論が多過ぎたような気がします。しかし、もうそろそろそういう論議議論は終わりということにしませんと、25年何をやってきたのだということになってしまうと思います。
本日、会議をしておりますこの三田の共用会議所は、実は私にとっては随分思い出の深い会議場でございまして、いろんな重要な環境政策の方針を決める話をここでやってまいりました。特に現行のアセス法は、ここでほとんどの議論をまとめたわけでした。アセス法は、最初にそれをやらなきゃいけないなという議論が審議会議の場で始まってから現行の法律が現実に施行されるまでに24年ぐらいかかっているんですけども、それでもちゃんと法律の施行まできているのですが、カーボンプライスのほうは、まだ25年たってもまだ入り口の論議議論が続いているということは甚だ遺憾なことであるとも言えます。この小委員会では、なんとか手がかりをつけないといけないだろうと思っておりますので、ぜひ、皆様方のご協力と忌憚のないご発言をお願いいたしたいと思います。
それでは、まず、本日の会議に先だって、環境大臣から中央環境審議会に諮問をいただきました。さらにそれを受けて、審議会会長から地球環境部会へ付議され、さらに小委員会の設置が決められ、運営方針に関する地球環境部会の決定が行われておりますので、これらにつきまして事務局から説明をいただきます。


鮎川市場メカニズム室長
それでは、資料に基づきまして、簡単にご説明いたしたいと思います。
資料をご覧いただきます。まず、最初の1-1が、委員長がおっしゃいました大臣からの諮問ということでございます。
諮問理由といたしまして、パリ協定やSDGsを踏まえまして、第5次環境基本計画におきまして、あらゆる観点からのイノベーションの創出、あるいは気候変動問題と経済・社会的課題の同時解決を実現しつつ、多面的に政策を展開することが求められるという状況を受けまして、今後、あらゆる主体に対して、脱炭素社会に向けた資金を含むあらゆる資源の戦略的な配分を促し、新たな経済成長につなげていくドライバーとしてのカーボンプライシングの可能性について、中央環境審議会のご意見を求めるという形で、6月15日に付議をさせていただいております。
それを受けまして、資料1-2といたしまして、同日、中央環境審議会会長の武内会長から地球部会長の安井部会長に充てまして、この付議の内容につきまして、総合施策部会と地球環境部会の両者の所掌に係る内容を含み得るというところでございますが、議事運営規則に基づきまして、地球部会に付議をするという形で会長から地球への付議がなされたわけでございます。
これを受けまして、資料1-3でございますが、6月29日、これは持ち回りということでございますが、地球環境部会決定といたしまして、議事運営規則第8条の小委員会として、カーボンプライシングの活用に関する小委員会を置くということが決定をされております。
これを受けまして、この小委員会の運営方針につきまして、部会長決定ということで29日に決定をされております。会議の公開・非公開に関するルール、出席者に関するルール、会議録の作成等に関するルール、さらには小委員長というところで、これは先ほども申し上げましたが、地球環境部会長の指名によりこれを定めるなどとしております。
さらに、この4の3にございますように、あらかじめ地球環境部会長の指名する委員等が、この職務を代理するということで、小委員長代理についての規定も置いているところでございます。
資料1-6はそれらに基づく根拠となる関係法令等でございます。
こちらからの説明は以上でございます。


浅野委員長
それでは、ただいまの事務局からの説明につきまして、何かご質問等はございますでしょうか。よろしゅうございますか。
特にご質問、ご異議ないようでございますので、このように決められておりますということをご了承いただきますようにお願いいたします。
それでは、ただいまご説明ございました小委員会の運営方針に基づいて、小委員長の代理を指名させていただきたいと思います。
神野先生にお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それから、小委員会の運営方針にありますように、中央環境審議会の基本的な考え方でございますが、代理出席は認めないということにしております。しかしながら、小委員長が必要と認めた場合には、欠席委員の代理の方に説明員としてご出席いただくということにしておりまして、これまでの前例に従いまして、この委員会もそのようにしたいと思います。よろしくお願いいたします。
本日は神津委員の説明員として、和田様がお座りいただいております。
また、根本委員の説明員として、池田様がお座りでございます。
それでは、本日の議題に入りたいと思います。
当小委員会は、先ほど説明いただきました諮問、設置の趣旨にありますように、あらゆる主体に対して脱炭素社会に向けた資金を含むあらゆる資源の戦略的な配分を促し、新たな経済成長につなげていくドライバーとしてのカーボンプライスの可能性について審議するということになっております。
本日は第1回目の会合ということでございますので、まず、脱炭素社会に向けて国内外の動向がどうなっているか。また、我が国の環境面や経済面の現状について認識の共有をしたいということでございます。皆様方には、ぜひ活発なご議論をいただければと思います。
そういう趣旨に沿いまして、事務局で資料を用意いただいておりますから、説明をいただきます。


鮎川市場メカニズム室長
それでは、資料2に沿いまして、説明をさせていただきます。
非常に大部にわたって恐縮です。大部にわたった資料でございますので、若干端折りながら、要点のみの説明とさせていただきます。
それでは、資料2の2ページの目次をご覧いただきますと、まずは気候変動リスク、あるいはパリ協定とSDGsをめぐる特に金融企業、ビジネスの動きにつきましてが3ページからでございます。さらに、政府の動きとして32ページから。翻って、今度は我が国の現状ということで、43ページ。で、この中では、気候変動問題はもとより、むしろ社会問題、経済問題などもるるご説明をする資料でございます。65ページからは、目指すべき経済・社会の姿、我が国の経済・社会の姿と。さらには78ページとして、日本国内の企業の動きというところでございます。最後に、政策の議論において必要な視点ということで、ファクトを中心に整理をさせていただいております。
では、おめくりいただきまして、まずは世界の動きということでございます。
まず、スライド4をご覧いただきますと、ここから何ページか気候変動リスクに関するご説明がございます。
まず、世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書2018がここでご紹介されておりますが、異常気象あるいは気候変動緩和適応の失敗といったところが、ここ近年非常に高いリスクとして認識をされているということのご紹介でございます。
具体的なリスクとして5ページ以下でございますが、近年の気候変動の影響ということでございます。
もちろん個々の気象事象について、気候変動が直接要因であるかどうかということの証明は、現在なかなか難しゅうございますが、こうした事象につきましては、近年の気候変動の影響がもしさらに増えてくれば、こういった事象が増えてくるといったことは、かなりの確度でわかっているところでございます。
近年で申し上げますとタイの洪水、あるいは27年の豪雨、あるいは、これはトレンドとして打ってございますが、北極海の海氷の様子、あるいは熱中症の被害の状況などなどが近年表れてきているということでございます。
さらに、スライド6でございますが、気象災害の激化傾向ということで、これは世界全体の地震、干ばつ、洪水、嵐についての報告件数と被害総額ということでございますが、近年こういった形でどんどん増えてきているという状況でございます。
さらに、先ほど大臣の挨拶からもございましたが、7ページ、8ページ目が今年の異常気象による被害でございまして、7ページ目が豪雨による被害ということでございます。
8ページが記録的猛暑ということでございまして、国内でも40℃を超えるような温度が観測をされているということでございます。
これにつきましては、先ほど大臣からもご挨拶でございましたが、右下の箱をご覧いただきますと、気候変動の関連につきまして、WMOは一つ一つの異常気象を気候変動が原因であると特定することは不可能であるが、熱波・豪雨の増加は、温室効果ガス濃度の上昇による長期的な傾向と一致をしているという見解を出しておりますし、日本の気象庁におきましても、こういったような40℃前後の暑さといったものは、一つの災害と認識していると。これを長期的に見ると、温暖化の影響が表れてきているといったような見解を出してございます。
こうした気候変動のリスクの高まりを受けまして、世界におきましては9ページにありますとおり、2015年パリにおいて採択されたパリ協定ということでございまして、世界の気温上昇を工業化以前よりも2℃高い水準を下回り、1.5℃に制限することを目指すと。そして、そのためには、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収をバランスさせるという「脱炭素化」の目標を、これはこの協定に参加した全ての国が一致をして、途上国も先進国も合意をしたということでございます。
これを我が国の排出量に置き直して書いてみますと、この10ページでございますが、ご覧のとおり2050年80%というのは目指すべき方向性としてG7でも合意をされた数字ではございますが、これに向けてもし削減していくとなると、今までのペースではなかなか達しないほどのかなりの大幅削減だということでございます。
こうした状況を受けまして、11ページをご覧いただきますと、去る6月4日未来投資会議におきまして、総理発言がございました。これは、国連に提出する長期低排出発展戦略の策定についての総理指示ということでございますが、この趣旨として2行目、もはや温暖化対策は企業にとってコストではなく、競争力の源泉であるといったような認識に基づいて、2番目のパラでございますが、環境と成長の好循環をどんどん回転させ、ビジネス主導の技術革新を促す形へとパラダイム展開が求められているという認識のもと、有識者による長期戦略策定といったもの、検討作業の加速が指示をされたところでございます。
続きまして、SDGs、先ほどもお話がいろいろ出ましたがでございますが、SDGsは国連加盟国の全ての国が設定をした開発目標ということでございまして、13ページをご覧いただきますと、このSDGsというのは、ある意味で一つの大きなビジネスチャンスをもたらす市場といったようなことが、デロイトトーマツの試算で示されているところでございます。
こういったような認識を受けまして、社会的なビジネスの動きといたしまして、14ページ以降、いろんな例を挙げさせていただいております。SDGsによる企業の取組の拡大、あるいは火力から再エネへの転換、あるいはEVシフトといったような形で、世界のマーケット獲得に向けて、この環境というものを視野に入れた企業の動きが世界で加速をしているという状況でございます。
その一つの例といたしまして、15ページでございますが、RE100、調達する電源の100%を再エネにするというような宣言でございますが、今、ここで例示させていただいているのは海外企業ということで、アップル、P&G、ウォルマート、グーグルといった世界的な企業がこういったRE100というものにコミットしていると。
さらには、16ページをご覧いただきますと、バリューチェーン全体、自社のみならず、その企業が関連するバリューチェーン全体を通じて大幅な削減をするといったようなことについてコミットをしているという例も、アップル、グーグル等々にあるということが一つの例として挙げてございます。
さらには、こういった企業の取組につきまして、気候関連財務情報開示タスクフォース(FSB/TCFD)が企業に対して気候変動関連のリスクあるいは機会を財務情報として開示するということを求める提言を2017年6月に提言をしてございます。これにつきましては、日本企業も含め、世界の企業が参加をしているところでございます。
こういった、いわゆるESG情報に関してさまざまな要人から、この重要性についての発言がなされているというのが18ページでございます。
続きまして19ページでございます。今度は企業そのものの取組だけではなくて、投資の面からもこういった動きが進んでいるというところの資料でございます。
まず、責任投資原則(PRI)といったものがございますが、これにつきましては2018年7月現在でこれに対する署名機関が2,017を数えるということで、近年、ここ五、六年で大幅に広がっているものでございまして、ESG情報を考慮した投資行動をとるということを求めるイニシアティブでございます。
もう一つの投資家の行動の例といたしまして、20ページでございますが、化石燃料からのダイベストメント、下の箱書きにございますが、例えば石炭、石油・ガスといった化石燃料のトップ200企業の新規投資を行わない等々、化石燃料に対する投資からの引き上げ、投資の引き上げといったような行動、これが非常に、これもやはりここ数年で増えてきているという例でございます。
その具体的な事例として、21ページにドイツのアリアンツ、22ページにスイスのスイス・リーにつきまして、それぞれ投資あるいは保険提供の停止といったようなことが、石炭に対するダイベストメントとしての例示を挙げさせていただいております。
もう一つの投資家からの働きかけといたしまして、引き上げではなくて、逆に投資先に対して気候変動対策の取組強化を求めると、投資家から求めるという取組も広まっております。このエンゲージメントと言われるもので、「Climate Action100+」といったようなものがイニシアティブとして設置をされてございます。
こうしたような動きを受けまして、ESG投資というのは世界で広まっておりますが、残念ながら、まだ日本の占めるESG投資の残高の割合は、世界から捉えると2.1%ということで、まだまだ日本の市場の中では拡大の余地があるというふうに考えられるというふうに思ってございます。
さらに、こうした取組につきまして、具体的な企業がどんな取組を行っているかというところをSDGsの観点から例示を挙げたのが25ページからでございます。
ユニリーバ、DSM、フィリップス、住友化学等々、25ページ、26ページでこのSDGsの取組の企業の例を挙げてございます。
27ページは、今度は、海外エネルギー会社の脱化石燃料に向けた動きということで、火力発電の縮小、逆にそれに代替するような形で再エネの拡大といったものを進めているといったのが、ヨーロッパを中心に動いているということでございます。
さらに、世界的に大手化学メーカーは事業転換を通じて持続可能な成長を実現ということで、石油化学からの撤退、また、それに代替するように別の環境といった視点の観点からの事業を増やしていくといった形で、事業転換が行われているという例もございます。
さらに、こういったSDGsの取組を進める会社につきましては、この29ページ以降にございますように、ユニリーバやフィリップス、さらには31ページの住友化学といったような形で、それぞれそういった新たな分野、環境の分野における利益あるいは売り上げを伸ばしているといったような事例をご紹介させていただいております。
以上が、世界の気候変動リスクとビジネスの動きということでございます。
さらには、今度は世界の各国政府の動きということで、33ページ以降でございます。
まずは、政策の動向ということでございますが、33ページ、34ページは石炭火力の廃止を目指す国が拡大をしているということで、こちらの33ページ、ヨーロッパでございますが、この緑色の部分が石炭火力から手を引くといったような国でございます。
その脱石炭を目指す国際的な連盟というものも、発足をしているということでございます。
これは脱炭素の具体的な石炭に対する動きでございますが、ここから35ページ以降が小委員会の審議事項でございますカーボンプライシングについての世界の政策動向ということでございます。
1990年代は北欧を中心に炭素税の導入が進みますが、2005年の欧州のEU、ETS。EUの排出量取引制度の導入を皮切りにいたしまして、北米の州レベルでのETSの制度導入が進んでおります。なお、2010年には東京都におきましても、排出量取引制度が導入をされてございます。
これは欧米を中心とした動きでございますが、2010年になりますと、アジア、南米を含む世界中での導入が進むということで、南米ということでございますと2014年のメキシコの炭素税、2015年の韓国の排出量取引、2017年のチリ、コロンビアの炭素税並びに中国の全国レベル、ナショナルレベルでのETSと。さらに、2018年ですと南ア、2019年にシンガポールがそれぞれ炭素税を導入する予定ということで、かなり20年、30年前から比べると、カーボンプライシングのという政策のツールが広がっているということでございます。
それを具体的に幾つか例示を挙げたのが36ページでございます。
さらに37ページをお開きいただきますと、先ほど申し上げた長期戦略にさっと触れましたが、その中でもカーボンプライシングに言及している国がたくさんございます。
以上が政策動向ということでございますが、38ページ以降は政策と経済との関連を少しデータをまとめてございます。
38ページは、OECDが2017年に出した報告でございますが、G20の平均で見たときに現行施策を維持した場合と、気候変動対策財政向上改革を実施した場合とでのGDPのG20平均でのプラス成長がどれぐらいになるかといったようなことの試算をしてございます。それによると、2℃達成目標の可能性、50%強度の場合、66%強度の場合ということで考えておりますが、いずれにしろ、このGDPはプラス成長をするといったような試算をしてございます。
続きまして、事例ということで40ページご覧いただきますと、EUは先ほど申し上げたとおり2005年からEU-ETS排出量取引制度を導入しておりますが、それ以降、経済成長と温室効果ガスの排出量が、GDPは増えるけども、温室効果ガスの排出量は減るという、いわゆるデカップリングの減少が継続して観測をされているということでございまして、このETS対象施設からの排出量は、11年で26%減少しているということで、削減効果を出しながら経済成長を実現しているというのが一つの事例でございます。
で、同じような事例が41ページ、42ページでございますが、同じような事例ですので、すみません、説明は割愛をさせていただきます。
以上が、世界の政府も含めた動きのご説明でございます。
43ページ以降は、我が国の現状ということでございます。
これも皆さんご案内のところではございますが、44ページ以降の、まずは電気・熱配分前の排出量、部門ごとでございますが、エネ転部門の排出量は、近年は増加傾向にあるということでございます。
配分後、45ページの配分後を見ますと、産業部門は全体として漸減、運輸部門は2001年に頭打ち、業務その他部門は足元では少し減少が始まっていると。家庭部門は足元で少し増加が再び始まっているといったような状況でございます。
次に46ページが、エネルギー起源CO2の約4割を占めます電力部門に焦点を当てて、その割合の推移をプロットしたものでございます。電力由来のCO2排出量に占めます火力発電の割合は、震災の影響で原子力発電所の稼働が停止して、その供給不足分が火力発電で代替されたことなどによって、引き続き増加傾向にあるというようなことなどがここで見てとれると思います。
これは基本的なデータでございますが、47ページからは少しそれぞれの分野におきまして、少しご紹介をさせていただきます。
まずは47ページでございます。内閣府が2030年展望と改革タスクフォース報告書というものを平成29年1月に出しておりますが、その中では、今後の大きな内外環境の変化の要因といたしまして、第4次産業革命、あるいは人口移動等々、高齢化等々の課題のうちの一つとして、温室効果ガスの長期大幅排出削減といったものが必要といったようなことが、今後、社会の内外環境の変化の一つの要因になるであろうといったようなことが示されております。
そういったようなものを内訳としまして、49ページでございますが、日本の気候変動以外の課題につきまして、少しご紹介をしたいと思います。
これは皆さんご案内のところだと思いますが、我が国の一人当たりGDPの世界順位、1995年で言えば日本は第3位でございましたが、2017年になりますと24位まで低下をしているといったような状況でございます。
さらには50ページ、人口をご覧いただきますと、生産年齢人口が1995年をピークに減少に転じ、総人口も2008年をピークに現在減少に転じているといったようなこと。さらには次の51ページ、高齢化ということで、今のと連動しているものでございますが、世界に例を見ない速度で高齢化が進行しているというのも、これはご案内のとおりと思います。
その他、財政関係の問題、あるいは無居住化の増加といったようなところを、この3ページぐらいのスライドでご紹介をしてございます。
続きまして、55ページでございますが、GDPの低迷に関する要因を少しここに書かせていただいております。
厚生労働省の労働経済の分析といったような報告書から引き抜いておりますが、1990年以降のGDP成長率の低迷の背景といたしまして、投資とイノベーションの不足といったようなことが指摘をされてございます。
56ページ以降は、その中でも特に設備投資の関連でございますが、設備投資につきましても、近年その増加は伸び悩んでいるといったようなことが56ページ、57ページ、58ページ辺りでデータを載せさせていただいております。
続きまして、59ページでございます。今度は、今までは経済社会問題につきまして、若干事例を載せさせていただきましたが、気候変動と今度は経済との関係につきまして、幾つかデータをまたここでご紹介をさせていただいております。
59ページは、我が国が京都議定書を提出したころですから2002年からでございますが、OECD諸国におきまして、一人当たりGDPで我が国を追い越した国におきましては、大半の国が高い温室効果ガス削減と経済成長、すなわち高いデカップリングを実現しているといったようなことの事例でございます。スイス、スウェーデン、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、いずれも経済成長をきちんと行いながら、排出削減をやっている。もちろん日本も、経済成長プラス排出削減はきちんと成しとげておりますが、その幅といたしましては、残念ながらこういった右側の諸外国と比べると、ちょっともう少しかなといったようなことでございます。
続きまして60ページでございますが、こちらは炭素生産性という指標をもとにちょっと各国比較をしたものでございます。ご案内のとおり、炭素生産性は排出量を分母、GDPを分子にいたしまして、いわばCO21トン当たり幾らの付加価値を生み出しているかといった指標でございますが、この表をご覧いただきますと、左側が各国の実際の炭素生産性の値、右側が1995年を1としたときの伸びということでございますが、特に右をご覧いただきますと、日本が伸び率が一番低いと、この国の中で比べると一番低いといったようなことが見てとれると思います。
もちろん、この炭素生産性の伸び、あるいはその数値につきましてはいろんな要因がございますので、この数字だけで一律に比較するのは難しいかもしれませんが、一つの事象として、こういった形で今後まだ日本、炭素生産性を上げていくといったようなことが、まだまだ必要ではなかろうかというものの一つのデータでございます。
この低迷につきましての要因分析ということで、幾つかのデータをプロットしたものが61ページでございます。で、我が国の炭素生産性の伸びの低迷といたしまして、一つには2011年の大震災による原子力発電所の停止、この影響が非常に大きいというのは確かでございますが、この2011年以前から石炭火力の増加、あるいは再エネの伸び率の低迷といった形で、この炭素生産性の伸び悩みというのは、2011年以前から現象として見られたといったようなことでございます。なので、単に震災からの復興だけでは、要因では、処方箋としては足りないのではないかといったようなことのデータでございます。
以上が、我が国の状況ということでございまして、次は、すみません、端折らせていただきます。
65ページから、目指すべき経済・社会の姿ということで、66ページ以降でございます。
政府におきまして、SDGs実施指針というものを定めておりまして、この中で八つの優先課題というものを策定してございます。その中で幾つか、この環境気候変動と関連するものをご紹介しております。
まず、この八つのうちの4番目として、持続可能で強靭な国土と質の高いインフラ整備といったものも位置づけられておりまして、この中で持続可能なまちづくり、あるいはレジリエントな防災・減災といったようなことが述べられております。
おめくりいただきまして、スライド67におきましては、省エネ、再エネ、気候変動対策、循環型社会といったようなものも八つの優先課題の一つとして位置づけられております。
さらには、関連する自然環境ということでございまして、6といたしまして、68ページでございますが、生物多様性、森林、海洋等の環境の保全といったようなものも位置づけられているということで、冒頭申し上げましたこのSDGsを踏まえた日本の国づくりというものの中の重要な課題として、こういったようなものが挙げられているというご紹介でございます。
69ページは、そういったようなパリ協定、SDGsを踏まえて大きく考え方を転換していくことが必要ではないかといったようなことが、今般、今年の4月17日に閣議決定されました第5次環境基本計画の中でその考え方が示されておりまして、その中で次の70ページでございますが、具体的な持続可能な社会の姿といたしまして、六つの重点戦略、グリーンな経済システムの構築、国土ストックとしての価値の向上、持続可能な地域づくり、健康で心豊かな暮らしの実現、持続可能性を支える技術の開発・普及、さらには国際貢献といったような六つの重点分野がこの基本計画の中で定められているということでございます。
この基本計画の中には、71ページに書いてございますとおり「地域循環共生圏」といったものを創造することで、先ほど申し上げたようなこの重点戦略の達成、それによって見えてくる都市と農山漁村の姿のあり方といったようなものも、この図にあるような形で整理をさせていただいてございます。
この地域というキーワードでこれを活性化することと低炭素化というものを同時に進めていくという視点で、72ページから具体的な事例といたしまして、みやま市の再エネの雇用対策、東邦ガスの熱利用、73ページで竹中工務店のZEB、積水ハウスのZEHの取組、さらには74ページの水俣市の取組、75ページで伊勢志摩の「天空カフェテラス」、さらには、これは国内全体でございますが、木質バイオマス資源の活用と、さらにはその他さまざま地域活性化についての事例を77ページまでで載せさせていただいております。こうした形で、地域が持続可能な形で進みながら、この気候変動対策もきちんとやっていくと、同時に進めていくといったような事例を、幾つか述べさせていただいております。
78ページから、今度は国内企業の動きでございますが、さまざま日本においてもこの動きがありますが、この中では本当に一例でございます。
79ページをご覧いただきますと、先ほどもちょっと出ました積水ハウスのZEH、戸田建設の風力発電所、日立造船の環境・プラント部門の伸び、あるいはLIXILのグローバルな衛生課題への挑戦といったようなこと。
さらに80ページでは、冒頭で世界のRE100の事例をご説明いたしましたが、国内の企業でも7月時点で10社が既にこのRE100に加盟済みといったようなことをご紹介させていただいております。
さらには、国内の先進企業のSDGsの取組の例と、これはほんの一例でございますが、日産、三菱ケミカル、太平洋セメント、日本製紙といったような事例でご紹介させていただいております。
さらには化石燃料という観点から、82、83ページでは、出光興産とコスモエネルギーホールディングスのそれぞれの脱化石燃料を見据えた事業ポートフォリオの変化といったようなものをご紹介をさせていただいております。
さらに84ページでは、企業のみならず、自治体等々の各種団体などの全104団体が参加をしております。7月9日時点でございますが、日本における気候変動対策に取り組む非国家アクターのネットワークといたしまして、気候変動イニシアティブ(JCI)が発足をするといったような、新たな動きも出てきております。
以上が国内の状況、あるいは動きのご紹介でございました。
85ページから、この政策につきましての若干の整理でございます。
86ページは、およそ排出削減のための政策的手法といったようなものを、規制的手法、経済的手法、自主的取組手法、情報的手法、手続的手法といったように分類いたしまして、その概要とメリット、デメリットを記載してございます。こちら辺はちょっと基礎的でございます。皆さんご案内と思いますので、中身の紹介は割愛させていただきます。
87ページの表は、地球温暖化対策計画の主な施策をIPCC AR5、第5次評価報告書による施策の区分でプロットすると、こういったようなものが現在政策としてあるといったようなもののご紹介でございます。
特に気候変動との関係で最近のものといたしましては、88ページ以降、FIT、再生可能エネルギー固定価格買取制度のご紹介をしてございます。こちら、主に経産省さんが施行・運用しておりますが、88ページで、こういった形で再エネの設備が増加しているといったような効果が発現をしているというグラフでございます。
89は、一方でそのコストということでございまして、賦課金単価は年々上昇しておりまして、2018年度はkWh当たりの値段でいうと2.9円。標準家庭で申しますと、1カ月の電力使用量が260kWhの場合ですと、月754円の賦課金の負担ということになるということで、こういった賦課金に支えられて、現在、この再エネの導入が進んでいるということでございます。
こちらは再エネでございますが、省エネルギー、あるいは火力発電の規制等々を定めているものがエネルギーの使用の合理化等に関する法律、いわゆる省エネ法でございまして、その紹介が90ページと91ページにございます。すみません。ただ、91ページ、若干資料が古うございまして、現在住宅建築物の規制につきましては別法に譲っておりますので、省エネ法のほうではやっていないですけども、それ以外の部分につきましては、省エネ法がカバーをしているということでございます。
92ページでございますが、産業界の自主的取組ということで、こちら1997年以降、各業界団体が自主的に目標を設定し、その対策を推進するという形でございまして、この業界団体自主行動計画を策定して取組を進めている産業界の産業エネルギー転換部門は、その参加している企業の排出量が全体の約8割、全部門でいっても約5割の排出量をカバーする温暖化対策計画における産業界取組の中心的役割ということで、位置づけられているものでございます。
93ページでございます。2030年の目標を達成するためのエネルギー転換部門の取組といたしまして、電力業界、協議会の自主的枠組み、さらにはそれを担保するための政策的対応、さらにはその取組を毎年度進捗のレビューを行うといったような形で、現在、2016年以降、こういった取組が、枠組みができて進めてやられるということでございます。
もう一つ、エネルギー転換部門の取組といたしまして、非化石価値取引市場といったものが、先ほどの政策的対応のうちのエネルギー供給構造高度化法に基づく非化石電源の比率目標の達成といったような視点から、非化石価値を顕在化して、それを取引するといったような市場が今年からでき上っているところでございます。
最後に、95ページ以降が、主要な閣議決定ということでございまして、カーボンプライシング関係の決定事項でございます。
95ページは温帯計画でございまして、環境関連税制等のグリーン化について、総合的・体系的に調査・分析を行うなど取り組むといった一方で、国内排出量取引につきましては、雇用の影響、海外の動向等々を見極めながら慎重に検討を行うといったことが、28年の5月に閣議決定をされているところでございます。
環境基本計画、今年の4月でございますが、ここにつきましては、真ん中辺りでございますが、気候変動対策、資源循環等々、資金の流れをシフトする環境金融の拡大を図るとともに、税制全体のグリーン化を推進していくといったようなことが規定をされてございます。
97ページをご覧いただきますと、気候変動対策のところの基本計画が引用されておりますが、最後のパラグラフでございますが、具体的な施策の推進に当たってはというパラグラフでございます。環境・経済・社会の現状と課題を十分認識しつつ、我が国及び諸外国においてカーボンプライシングの導入を初めとした実績、蓄積、教訓があることを踏まえ、環境・経済・社会の統合的な向上に資するような施策の推進を図るといったことが規定をされてございます。
最後に、98ページ以降、今までは政府の規定でございましたが、企業・投資家等によるカーボンプライシングに関する提言、主張でございます。
98ページは、大企業54社がカーボンプライシング導入についてビジネスモデルの策定の方向性を与えるものとして、ポジティブなものを初めとして、こういったような、ここにつきましては、カーボンプライシングをむしろ導入すべきというようなご提言がなされております。
すみません。次を飛ばして100ページでございますが、G7シャルルボワ首脳コミュニケにおきましては、真ん中ほどでございますが、市場に基づくクリーン・エネルギー技術の開発を通じたエネルギーの移行に果たす主要な役割並びにカーボンプライシング、技術的協力及びイノベーションの重要性について、G7として議論を行ったといったものがコミュニケに整理をされております。
101ページでございますが、本日、池田様においでいただいていますが、経団連様からのカーボンプライシングに関する提言をいただいております。
カーボンプライシングは炭素税と排出量取引といった明示的な施策に限定されるものではなく、暗示的な施策を含む広い概念として捉えるべきであると。これが前提であるとした上で、全体の炭素価格、コストを基に、我が国特有の事情、競争力への影響、費用対効果等を総合的に勘案する必要があるというようなことでまとめた上で、我が国におきましては明示的に炭素価格を引き上げる必要性は乏しいと、ないしは排出量取引は運用が難しいといったような形で、明示的カーボンプライシングを導入・拡充することについては反対といったようなご提言を出されております。
以上、非常に雑駁で駆け足でございましたが、事務局からの説明は以上です。


浅野委員長
それでは、ただいま事務局から資料の説明をいただきましたが、大変大部にわたりますので、どこからでもということで進めますと、ちょっと話が拡散してしまいそうな気もしますので、まず、42ページまでです。急速に動き出す世界、世界各国の動き、この部分を中心にご質問、ご意見をいただきたいと思います。続きまして、我が国の現状、目指すべき経済・社会の姿、国内企業の動きの部分、すなわち43ページから84ページまで、ここについてのご質問、ご意見を伺い、最後に、目指すべき経済・社会の実現に向けた政策の議論において必要な視点は何か、85ページ以下の部分について、ご発言をいただければと思っております。
ただ、そうは言いましても、そんなに切られても発言は困ると、あらかじめ用意した原稿を読まなきゃいけないという方もいらっしゃると思いますから、できましたなら流れとしては最後のところが一番総合的な議論になるだろうと思いますが、そこは各自のご判断にお任せいたします。
ちょっとこの席は非常に名札が見にくい位置にあるのですが、ご発言ご希望の方は名札をお立ていただけませんでしょうか。ここにありますこの札でございます。
前から私とおつき合いいただいていらっしゃる方は、大変時間の管理に厳しい浅野で定刻主義者と言われていることはよく存じておりますが、今回はできるだけ闊達なご意見をいただきたいということで事務局にお願いしまして、平素のように2時間ぐらいで全部終わるというようなケチなことは言いませんで、3時間予定いたしました。
ということで、これから大体ほぼ2時間ぐらいですね。時間がございますので、平素と違いましてかなりゆっくりとご発言をいただくことは可能かと思います。
ということでございますが、まず42ページまでの部分を中心にご質問、ご意見がございますでしょうか。先ほど言いましたように、絶対にとは申しませんので、適宜ご判断いただいて、札をお立てください。どうぞ。
この部分はあまりいらっしゃいませんか。
それでは、廣江委員、どうぞ。


廣江委員
ありがとうございます。手短に2点、お願いを申し上げます。
まず一つは、資料の1-3にございましたように、本日以降の議論につきましては、ここにございますカーボンプライシングの可能性について、可能性について審議をするということで、先ほどの委員長のご発言もございましたが、やはり導入ありきではなしに、慎重な議論をぜひお願いしたいというのが1点目であります。
2点目でございますが、その慎重に議論するということであります。もちろんカーボンプライシングが主として地球温暖化対策として考えられているというのは当然だと思いますし、また、地球温暖化というのは非常に重要な問題である、課題であるということも私は同意をするところでございます。
ただ、国民生活にとって大事なことは、地球温暖化も大事ですが、それ以外にも大事な要素というのはございます。そういったものに対して、カーボンプライシングの導入がどのような悪影響を、あるいは副作用を及ぼす可能性があるのかということについて、余りにも短絡的な、楽観的な、どうも根拠に乏しいなと首をかしげざるを得ないような議論ではなしに、ぜひしっかりとした分析・検証のもとにそういう議論を進めていただきたいと考えています。私どもが担っておりますエネルギー供給という観点から申しますと、もちろん地球温暖化も非常に大事ではございますけれども、一方では、エネルギーを安定的に、いかに安く国民の皆さん方にお届けするかということも大きなポイントであります。こういったものに対して、どのような影響があるかということについても、十分に慎重に吟味をする必要があると考えているところでございます。
以上でございます。


浅野委員長
ありがとうございました。
池田さん、どうぞ。


池田説明員
本日は、根本が急用で急遽欠席になり申し訳ございません。代理で池田が発言させていただきます。
小委員会の議論の皮切りに当たり、まず一言申し上げたいと思います。地球温暖化対策の要諦は、世界全体でCO2排出量を削減することにあると思っております。一国に閉じた対策ではなくて、世界全体のCO2排出量削減と世界の持続可能な発展に貢献することが重要です。こうした観点からカーボンプライシングの有効性、可能性について、導入ありきでなく、皆様とご議論させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
資料に関して、各国政府や企業の取組についてご紹介がございました。パリ協定の掲げる目標やSDGsの実現に向けて、日本の経済界は積極的に取組を推進しています。経団連も低炭素社会実行計画の推進はもとより、企業行動憲章を昨年改定いたしまして、SDGsを意識した経営を会員企業に働きかけ、また世界に発信しているところです。私も本日、胸元にSDGsのバッジをつけておりますが、基本的に経団連の幹部はSDGsのバッジをつけて、さまざまなところで活動しています。
また、資料では、諸外国におけるカーボンプライシングの拡大や脱炭素の動きが強調されています。こうした動向を世界の潮流とする声も聞かれますが、各国がそれぞれの国情を踏まえた、とり得る最適な対策を講じることで世界全体のCO2排出量を減らしていくことが重要です。特に我が国の温室効果ガス排出量の約9割はエネルギー起源CO2であり、温暖化対策とエネルギー政策は表裏一体の関係にあります。温暖化対策を考える際には、我が国の、島国で資源に乏しいといった国情を踏まえ、3Eのバランス、すなわち環境はもちろんのこと、経済性や電力の質を含めたエネルギーの安定供給の視点が不可欠であると考えています。
先日、閣議決定された第5次エネルギー基本計画においても、2050年に向けて再エネや原子力、CCS、水素等を組み合わせた化石燃料等、あらゆる選択肢を追求するとされています。世界の潮流のみを判断軸に据えるのではなく、国情や3Eのバランスの視点を踏まえた議論をしていただきたいと考えます。
説明資料では、原子力に関する記述が見当たりませんが、温室効果ガスの大幅削減と経済との両立・統合を考えた場合には、原子力の活用は不可欠であると考えています。資料の面でもご配慮いただきたいと考えます。
以上です。


浅野委員長
どうもありがとうございました。
手塚委員、どうぞ。


手塚委員
はい、どうもありがとうございます。低炭素ビジョン小委員会も含めて、いろいろ温暖化問題について発言してきたんですけど、この委員会は基本的にカーボンプライシングのあり方に関する議論ということなので、そこに絞ったお話をさせていただければと思います。やっぱりこのカーボンプライシングを何のために課すかということが問題でして、基本的に日本でこれを課すということを考えるのであれば、それは日本の温室効果ガスの排出削減に寄与するということが基本的な目的なんだろうと思うのですね。この資料の42ページまでですか、諸外国の例とかを様々ご例示いただいておりまして、さまざまな国でカーボンプライシングについて、いろいろなやり方はあると思いますけれども、導入されているという実績が書かれていますが、ここに書かれているものの裏にどういう数字があるかというのをちょっと見てみたんですね。例えば42ページに、ブリティッシュ・コロンビア州は非常に脱炭素化が進んでいて、カナダの中では他州を上回るエネルギー消費量の削減を達成と書いてあるんですけども、よくよく調べると、07年比で、15年まででCO2排出量が2%しか減っていなくて、エネルギー起源のCO2排出量は横ばいです。ブリティッシュ・コロンビア州は2020年に07年比で33%削減目標ということを掲げているのですけども、達成の目処が立たないということを新聞発表しております。
それから、41ページにカリフォルニア州の例があるのですけども、こちらも2011年から16年の削減は3.3%でして、確かに排出量は減っているんですけれども、実は全米の平均では3.8%減っていますので、カーボンプライシングを鳴り物入りで導入しているカリフォルニアは全米平均には負けているという形です。ちなみに同じ11年から13年の間に、カリフォルニア州の電気代は23%上昇していて、これは全米の電気代が4%しか上がっていないのに対して4倍以上上がっているということですので、多分いろいろ数字の見せ方によって解釈が違ってくるのかなと思われます。
世界で見たときには、やはりカーボンプライシングのいろんな制度を先行して導入しているという意味で、典型的な例がドイツだと思います。これは有名な例で、今や結構知られていると思いますが、2011年ごろからドイツの排出量に関してはほぼ横ばいです。正確に言いますと、11年から17年のドイツの排出量の削減は1.6%なんですね。その間にドイツの家庭用の電気代は、10年から15年ということで若干期間が違うんですけれども、25%も上がっていて、EUの中ではトップクラスになっているということで、非常に膨大な、莫大な費用をかけながら、残念ながら1.6%しか減らすことを実現していないということです。つまり、このカーボンプライシングの制度が有効に機能しているかどうかということは、この委員会でも多分時間があると思いますので、ぜひさまざまな面からご検討いただければと思います。
翻って、このカーボンプライシングあるいはエネルギー諸課税に対して消極的なアメリカですが、これも多分、皆さん、ご存じだと思うんですけども、2007年から16年の10年間で温室効果ガス排出は11.4%減っているんです。つまりカーボンプライシングをやらずに10%以上の削減が実現できている国もある。ちなみに、この間にアメリカの平均の電気代は4%しか上がっていない。つまりカーボンプライシングとは何か別な要因でもってアメリカは脱炭素化と同時に経済の拡大ということを実現しているということです。
あと、35ページに、炭素税の導入のケースとしてカナダ、これが2018年にトルドー政権下で導入するということが紹介されていまして、この中でも、35ページですが、アルバータ州あるいはオンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州、こういうところがカーボンプライシングを導入することに積極的というふうに例示されていますけれども、最新のニュースを見ますと、今年の6月29日にオンタリオ州の新しく選出されたフォード新知事は、炭素税増税に関しては一切廃止する、排出量取引制度にも加わらないということを発表されております。これに続きまして、サスカチュワン州、プリンスエドワード州、ニューファンドランド州、ニューブランズウィック州が、やはりカーボンプライシングの導入に反対するという態度を表明されておりまして、また、近々、選挙がありますアルバータ州もカーボンプライシングに反対している保守党が優勢ということで、政治的に非常にこれはやっぱり不安定なわけです。政権が交代したり、知事がかわったりして方針が大きく変わると、ドミノ倒しのようなことが起きているということがございます。その背景として、カルガリー大学がカナダの議会で50ドル/トンCO2の炭素税を導入すると何が起きるかということを証言しているんですけども、平均的な家庭の可処分所得が、オンタリオ州で707ドル減る、アルバータ州、サスカチュワン州では1,000ドルを超えるというようなレポートがあって、かなりこれが政治的に危機感を募らせているというような報道もなされているようでございます。したがって、最新の動きをぜひ、常にフォローアップしながら、今、世界では多分いろんな国がさまざまな試行錯誤を繰り返しているんだろうと思いますので、どこが本当に有効なものなのかということをぜひご議論をしていただければと思います。
以上です。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
それでは、森澤委員。どうぞ。


森澤委員
委員長のほうから、まず急速に動き出す世界ということで、この辺りで発言ができれば、コメントがあればということをおっしゃっていただきましたので、まずそこのところからですね。RE100ということ、こちらにつきましてはCDPもその事務局を担っております、We Mean Businessへ世界的に推進しておりますけれども、こちらのほうはサプライヤーに対しても求めるということ。先ほどのご紹介のとおりでございますけれども、このことが日本の中小企業でありますところ、こちらも影響を受けてらっしゃると。それは考えざるを得ないところにいらっしゃると。こちらのほうでいただきました、15ページ、16ページのところに記載されておりますけれども、そういった企業さんのサプライヤーである日本企業さん、こちらのほうは、もう既に取引先から自分たちではどのように排出量を削減し、再エネを導入していかないといけないかということを検討しないといけない状況にいらっしゃると。
もう一方で、TCFD、これは日本でも、日本企業さん9社、また、非金融セクター、日本の金融機関が9社ですね。非金融セクターとして、経団連の会長、この日立製作所も署名されていらっしゃいますし、今日来てらっしゃいます、違うところの代表で来てらっしゃいますけれども、積水ハウスさんもこちらのほうに署名していらっしゃるように、これは、投資家のほうがこういった気候変動ということに関して企業がどのように取り組んでいるかということを、金融のほうから見るということで、信用リスクのような形でもう見るような時代になってきたわけなんですね。財務リスクになってくるということになってきます。どのように将来を見ているかということを考えないといけない、そういうプランを立てないといけないというところに世界があります。
私も先週、CDPの会議でロンドンに行っておりましたけれども、ずっとここ近年、アメリカはどうするんだ、中国はどうするんだと話題になり、日本については、全然話題にならないです。残念なことにですね。日本企業さんは優秀にもかかわらず、光らないところになってきています。なぜかといいますと、エネルギーの効率化ということを図ってこられましたが、排出係数を高いものを使ってらっしゃるというところで、削減しているということでは光らないところにいらっしゃるRE100に関しましても、なかなかコミットメントができないところにいらっしゃいます。それを見ていると少し残念に思います。エネルギーの効率化の観点から言えば、日本企業さんは光ってらっしゃったし、そこの部分では、いまだにすごくすぐれてらっしゃると思いますが、排出量ということになりますと、どのように今後、自分たちの戦略を立てていけるか。「Climate Action 100+」というところで日本企業さん10社も入ってらっしゃるというところをご紹介いただきましたけれども、これは自社の排出量だけでなく、サプライヤーの選定も含めて考えていかないといけないということを求められていらっしゃるわけですね。そういった自動車セクターもたくさん入っております。
そういったところが戦略を立てていく中で、排出係数の低い電力が調達できる状況でない。やはりこれは再生可能エネルギーをどのように考えているのかということが話題に入ってきます。それが戦略に入ってくる。それをどのように自分のサプライヤーに対しても働きかけていけないかということを、日本のトップ企業さんも問われてらっしゃるという時代になってきました。そこの中で、日本でサプライヤーさんを維持していこうと、そこの部分での生産を続けていこうと考えるならば、いろいろな観点から、やはり再エネを考えていかないといけないというところに、今、日本企業さんはいらっしゃるというのが世界的な状況だと思います。世界の会議では、残念ながら影が薄くなっているというのが日本の状況ですし、ここでは中国の排出量が多いけれども、ただ一方で、中でもそこに対して削減、一部なりにも削減して光ろうとしているところが見えてきますと、何か中国がやるんじゃないかというふうに思われています。いつもそういった国際的な場で話を聞いている中では、日本人としては残念な思いをしていますがこれは、やはり再生可能エネルギーを考えざるを得ないところにあるんだということを再認識するべきだというふうにいつも感じておりますので、その部分を少しコメントとしてお話しさせていただきました。


浅野委員長
どうも、ありがとうございます。
高村委員、どうぞ。


高村委員
ありがとうございます。3点申し上げたいと思うんですけれども、まず、先ほど、中川大臣からもありましたけれども、資料の11に示してくださっているように、総理の指示にあるように、温暖化対策のフェーズがこの間、やはり明確に変わってきたという認識で議論をしなければいけないのではないかという点です。温暖化対策をとることで排出を削減することの意義というのは、もうこの場では言うまでもないと思いますけれども、しかしながら、昨今の災害を見ていると、そもそも温暖化そのもののフェーズが変わったんじゃないかというような感覚を持つ程度の、かなり大きな温暖化が寄与しているんではないかと疑われる、少なくとも推定されるような自然災害が出ているということを認識しながら、温暖化対策のマクロの意義についてももう一度踏まえる必要があると思っています。つまり温暖化対策を進めていくことで、全体としてのリスクを低減していくことこそが国民の生活を守っていくという、そういう側面が明確にあるという点です。
それから、もう一つは、他方で温暖化対策のマクロの意義はもう言うまでもないと申し上げましたが、森澤委員がまさにおっしゃったように、温暖化対策のフェーズが変わったもう一つのやはり大きな側面というのは、排出削減ができる、あるいは排出をしないでビジネスができる企業というものに対しての投資家から見た価値が高くなるということが、そういう投資家の行動に裏打ちされた動きが出てきているということだと思います。言い方を変えれば、高排出のエネルギーシステム、経済行動を伴うということは、むしろ日本の企業、産業の競争力にとってプラスなのかという問いを生じさせる事態が生まれているんだというふうに思っていまして、そういう意味で、先ほど言いました総理の指示を引用させていただきましたけれども、温暖化対策のフェーズが変わったという認識で議論をすべきであるというふうに思います。
もう一つ、これは浅野委員長のほうから、この議論というのは基本法に基づいて国民の理解も涵養しながらということでしたが、その意味で二つ、ぜひ資料に入れていただきたいというふうに思っている点がございます。というのは、共通した認識をつくるためにですけれども、一つは、この間の日本における自然災害起因の保険の支払い額というのが非常に大きくなってきているという点です。これはご存じのとおり2014年に一度、損害保険会社さんは15年以降の保険料の算定の引き上げをされ、かつ保険料の引き受けを35年から10年に短縮されたのは、将来における温暖化のリスクというものが非常にやはり大きく、あるいは不透明なもので、かつ大きくなる可能性が高いという見通しからだと思いますが、今、なおまた損害保険料の引き上げの議論をされていると認識しております。そういう意味で、先ほど、温暖化対策のマクロの意義はもう言うまでもないわけですけれども、しかしながら、そのリスクの大きさというものが、より大きなものになってきているということをわかる資料、先ほど、自然災害金の支払い額というのは一つの参考例になると思いますけれども、入れていただけないかというのが一つです。
それから、もう一つは、これは次のところでお話をしたほうがいいのかもしれませんけれども、日本の金融、あるいは日本の保険会社の脱炭素に向かう動きというのは、この4月以降、顕著になってきているというふうに思っております。一番最近のところでは、日本生命さん、三井住友信託銀行さんが国内外の石炭火力への新規の投融資を原則行わないということを明確にされたと思いますけれども、これは恐らく世界の動きとともに、日本の中でもこの動きは明確になってきていると思いますので、その資料もぜひ付していただけるといいなというふうに思います。
以上です。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
小西委員、どうぞ。


小西委員
ありがとうございます。3点に分けてお話しさせていただければと思います。私の仕事は、主に国際交渉に行って、ずっとパリ協定とかまでの成立を見てきたことだったんですけれども、そのときにいつも思うのは、その国際交渉から戻ってきたときに日本のこの温暖化対策の議論が余りにもアウエー感が強くて、先ほど、森澤委員もおっしゃっておられましたけれども、日本の中において国際的な温暖化対策を強めていくという流れが全く伝わっていないということをすごく感じます。それで、私たちWWFの中でも途上国、特に小島しょ国のオフィサーも数多くおりまして、このパリ協定の中にある2℃だけではなく、1.5℃というものをヨーロッパも含めて非常に真剣に取り上げていることに対して、私たち日本から見ると、2℃でも無理なのに1.5℃なんてという、そういう感覚で見ていたところ、やっぱり昨今の日本でも、こういった異常気象が非常に多く目立つようになりますと、WMOが言ったみたいに、いずれ温暖化が進んだ世界は、こういった異常気象の頻発化するということはもう予測されていますので、やっぱり危機感が共有されてくるのかなと思っております。また、IPCCの1.5℃レポートも10月に出されて、世界的にも議論が深まってくると思いますので、日本もやっぱり積極的にその温暖化対策をどういうふうに導入していくべきかという方向性で議論が全体的に進んでいけばいいなと思っております。
やはりこの温暖化対策といった場合、一つの対策だけでは当然無理だと思いますので、ポリシーミックスが非常に重要だと思っております。やっぱりこれだけ石炭の新設ラッシュを見ても、この価格シグナルというものが働いてないということは残念ながら明らかですので、やはり規制的手法と自主的手法と経済的手法を強めていくということは、もうこれは避けては通れない課題なんだと思っております。ですので、もう入り口の導入議論ではなく、先ほど浅野委員長がおっしゃったような、日本に適したカーボンプライシングはどのような形なのかという方向で、ぜひ個別の議論に入っていければなと思っています。例えば国際競争力にさらされている産業の場合にはどういった制度が適しているのかとか、いろいろな形があると思いますが、WWFでも2008年と2012年に京都大学の諸富先生を初めとした7人の研究者の皆様にポリシーミックスの提案をつくっていただいておりますけれども、2010年から全然カーボンプライシングの議論が進まなかったので、その点はほとんど、この年月、お蔵入りとなっておりました。しかし、今見ても、世界の条項のところの情報以外は日本にそのまま全く適用できる状態で提言があるぐらい日本の議論が全く進んできておりませんでしたので、ぜひ、今回は個別に、日本の産業界、日本の実情、日本の社会に適したカーボンプライシングの議論という形で具体的に進めていければと願っております。
やはり、あともう一つは、日本の中にも、森澤委員もおっしゃったように、非常にプログレッシブな企業さんもいらっしゃいますので、ぜひ今回も、環境省さんのこの84ページの資料にありましたような「Japan Climate Initiative」、特にグローバル企業さんを中心に、日本の中でも非常にプログレッシブな企業さんという声も高まってきておりますので、そういった企業さんの声もぜひ多く取り入れていただいて議論が進んでいければなと思っております。
最後に質問なんですけれども、今後のこの委員会の見通し、例えばどういった形でランディングしていくかといったような見通しがもしあれば、ぜひ教えていただければなと思っております。
以上です。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
では、有村委員、どうぞ。


有村委員
ありがとうございます。最初に、私もちょっと森澤委員と同じような印象を持っているというのを、学識・学術関係者として申し上げたいと思います。先月、4年に1回の環境経済学の世界大会に行ってきたんですけども、10年ぐらい前、8年ぐらい前ですと、非常に日本への関心が高かったのに、今は学会でもあんまり日本への関心がなくなってきているというのと、日本の経済は、昔はエネルギー効率、高かったね、みたいなことをいろんなところで言われるというようなことがあって、非常に寂しく思うというようなところはありました。
さて、幾つか今回の資料に関して、3点、4点ほど申し上げたいと思います。最初に、浅野委員長から25年間何も進んでこなかったというようなお話が、厳しいご指摘があったかと思うんですけれども、世界各国のいろんな政策導入によって、いろんな知見が得られてきたということは一つ言えるんではないかと思います。先ほど、カリフォルニアのほうでのETSは効果がなかったんじゃないかというようなご指摘がありましたけど、それも非常に注意して見なければならないと思います。先ほど、手塚委員のほうから、ほかの州に比べてCO2削減量が少なかったというようなお話がありましたけれども、まず第一に、アメリカもほかの州、北東部10州はRGGI、レッジという排出量取引をやっていますので、そことの見合いでどう見るかというようなところがあるわけですね。
それから、もう一つは、カリフォルニアは1970年代からローゼンフェルト曲線(Rosenfeld Curve)というので知られていますけれども、一人当たり電力消費量がほぼ25年間伸びなかったんですね。他州が1.5倍になっているのにずっと抑えてきたという政策実績があるわけですね。かなりアメリカの中で特異な、かなり規制的手段を導入してきてやってきて、それによってもうかなり下げているので、当然、その後の政策評価というのは、カリフォルニアにおいてはほかの州よりも低くなるというようなことはあると思うんですね。ですので、単純にその時点でのカリフォルニアの排出量の変化とほかの州を比べるということに非常にミスリーディングであると。
それから、これはその国の事情に合った、実情に合った政策が必要であるというご指摘がいろんな方からあったと思うんですけれども、このカーボンプライシングも各国いろいろな諸事情によって設計されています。先ほど、手塚委員からETSは鳴り物入りで入ったと、カリフォルニアはという話があったんですけども、若干そこも注意が必要だというふうに私は思っております。EUの場合は、EU-ETSというのは、確かにもうEUのフラッグシップポリシーで、これで排出削減を進めていくのだというタイプの政策だと思います。カリフォルニアの場合は、先ほど申し上げたように、かなりカリフォルニア・エアリソース・ボード(カリフォルニア州大気資源局)というところが非常に強くて、いろんな規制的手段をたくさん導入してきて、最後に排出量取引で最後の何%かを減らすんだというタイプの政策なんですね。そういったところなので、単純にそういったふうに数字を見るのも非常に難しいのではないかということを申し上げたいと思います。ちょっとこれは経済学的な視点からです。
ただ一方で、経済学者はもう普通、新古典派で考えますと、規制を実施すれば経済は停滞するんだというのが教科書に書いてあるわけですけれども、ここに出てくるいろんな資料を見ると、CO2を減らしたり、カーボンプライシングが中心かどうかわかりませんが、そういった削減をしながら同時に経済成長も実現できているんだといったような知見を過去得られてきているというのは、非常に大きな変化であるということも申し上げたいと思います。
それから、浅野委員長から、たしか世界の話も見ながらいろいろ議論するんだというお話があったというように記憶しています。その点でも、この資料を見ると、ちょっと後半部分かもしれませんが、今、先進国だけではなくて、アジア各国、それから、南米の国、そういったところでもかなり政策が進んできているといったようなところは、やはり過去10年間で見たときに非常に大きな変化であるというふうに認識すべきだと思います。
それから、先ほど政権交代に排出量取引制度は弱いというようなお話があったと思うんですね。各国を見ていると、実際これは非常にご指摘のとおりだと思っていまして、割とある政権がこの政策を導入しようと思って提案が出てきて盛り上がって、でも、選挙でその政権が負けると、また政策が変わるというようなことは世界的な潮流としては実際あるなというふうに思っております。しかし、我が国は非常に政権が安定しておりまして、全くその点心配がないというところは非常に心強いなというふうに思っております。
以上です。


浅野委員長
全然ノーチェックで次々に名札が上がるのを今のところは何にも文句を言わずに認めていますが、あと、まだ二つ、大きな固まりで話をしていただこうと思っているので、あまり前半でどんどん後出しで名札が立ってしまいますと時間がなくなってしまいます。そろそろご遠慮いただいてもいいんじゃないかと思います。もし、後のほうで発言をしたほうがもっとちゃんと言いたいことが言えるという方は名札をおろしていただいて結構です。最初の部分に関連するご発言をお願いいたします。
では、岩田委員、どうぞ。


岩田委員
いいですか、すみません。もしかしたら後のほうがいいかもしれないんですが。


浅野委員長
ああそうですか。では後のほうでお願いできますか。そのほうがいいかもしれませんね。では、後でお願いいたします。
それでは、大野委員、どうぞ。


大野委員
はい、じゃあ、前半に関わることで。世界の動向ということでいろんな資料が出ているんですけども、再生可能エネルギー、自然エネルギーについては、RE100の話は書いてあるんですが、それ以外についてはほとんど記述されてないんですよね。これは、やっぱり資料をもう少し充実してもらったほうがいいんじゃないかなというふうに思います。
自然エネルギーというのは本当に勢いが伸びてきていて、それで2014年だったかな、2015年の段階で、風力発電が設備容量ベースでは世界で、原子力発電所の設備容量を超えて、太陽光発電については2017年、昨年超えたというふうな状況になっています。特に最近特徴的なのは、欧米で進んでいるというだけでなくて、新興国、中国でありますとか、それからインド、あるいはサウジアラビア、あるいは最近はアフリカ連合とか、そういうところが非常に大きな目標を立てて、まさに国のエネルギー供給の中心にしていくという、そういう動きを出しているということについても、紹介をしていただいたほうがいいんじゃないかなというふうに思います。
IEAが「World Energy Outlook」を毎年出していますけども、その昨年度版で見ると、今後の、毎年平均して、どのぐらい世界全体でどの電源が入るかという推計をやっていますが、自然エネルギーについては160ギガワットという圧倒的な量が入ってくると、毎年。火力発電よりもはるかに多いし、原子力発電については4ギガワットでしかないと、そんなふうな状況もございます。
ここで注意すべきなのは、こういう大量の導入というのが、安定供給は気にしないでやっているというわけじゃないんですよね。もう脱炭素化が世界の目標になる中で脱炭素化をしていく、したがって、火力発電はもう使っていくことはできないと。CCSの議論もありますけれども、CCSは少なくとも火力発電の対策としてはもうほとんど現実には検討されていないし、将来展望がないということは明確になっているというふうに思います。それと原子力発電なんですが、原子力発電は高いということがあるので、そういう意味では、脱炭素化を実現していくために自然エネルギー100%を実現していくと。当然これは安定供給も含めて実現していくということが世界的には大きな方向として決まっているんだろうと思います。そういう状況について資料を用意していただきたいし、それから、目標についても、最近、EUがさらに2030年目標を引き上げるという話もございました。それから、話題に出ているカリフォルニア州ですけども、カリフォルニア州は、有村先生がおっしゃったようにいろんな方法で削減をやっていて、そのうちの一つがカーボンプライシングなんですが、同時にもう一つの大きな柱として再生可能エネルギーの導入も柱に掲げていまして、2030年に既に50%という目標を立てています。これを今2045年までに100%にしようという法案も出ているという状況ですので、そういうことについても言及をしていただくといいかなと思いました。
以上です。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
前田委員、どうぞ。


前田委員
東京大学の前田と申します。幾つかしゃべりたいことがあったのですが、お時間がないということで一つだけ申し上げたいと思います。資料では、大体、最初のほう10何ページ辺りからSDGsの話がずっとあって、これの例も含めて、いろんな議論がある中で、その中でちょっとESG投資の話がちょっと挟まっているんですね。これは少しミスリーディングかなというふうに思います。というのは、もちろん、この温暖化の世界の中での議論の中で投資というのは物すごく重要になってきて、これは確かにここ数年、過去五、六年の大きな世界的な潮流で、今まで以上に投資ということが重要視されてきているということは確かだと思います。またこのSDGsの中でも同じように投資ということが重要な位置を占めることは当然であります。一方で、ESG投資も同じ投資でありますが、少し話は異なっていて、イメージとしては、SDGsの中での投資というのは実物の投資、発展途上国への支援であるとか、そういうような投資ですよね。一方で、ESGのほうはもう少し先進国の金融市場の中でのコーポレートファイナンスの問題であると言えます。また金融市場での取引の観点でいうとバイサイド、SDGsのほうは、セルサイドみたいな言い方もできると思います。やはり両者は毛並みが違う。そもそもESGはエンバイロメントだけじゃなくて、ソーシャルとガバナンスが入っていますから、Eとは違うところもたくさん入っている。EとSとGはもちろん関連はしていますが、この関連性とSDGsの中での投資は必ずしも同じ脈絡ではなく、話をいっしょにするのはおかしい、分けて考えるべき、というふうに思うところです。
この温暖化の世界で投資ということはもちろん大変重要なトピックになってきているのは確かで、これについて我々も考えていかなきゃいけないことは確かだろうというふうに思います。


浅野委員長
はい、ありがとうございました。ご注意をいただきました。事務局、もう一遍、資料を整理するときに検討してください。ありがとうございました。
それでは、次に、43ページから84ページまでを中心に、この部分でご発言をいただければと思います。
それでは、岩田委員、どうぞ。


岩田委員
どうもありがとうございます。後半の部分につきましては、特に、私、注目しておりますのは。


浅野委員長
ちょっとマイクの入りが悪いので、恐れ入ります。


岩田委員
いいですか。参考資料のほうで閣議決定の文章がありまして、例えば、これはページ数で言うと、95ページから97ページまでですね。これは、これまで日本に一番適当なカーボンプライシングは何かというご議論が今行われたと思いますが、この30年4月が恐らく、4月の閣議決定が今、日本政府が示しているポジションということになろうかと思うんですね。そこで、そこの文章をよく読んでみますと、一つはカーボンプライシングについて税制全体のグリーン化ということが唱えられておりまして、私もこの税制全体のグリーン化というのはとても重要なことだと思うんですね。日本は、12年に地球温暖化税というのを入れましたが、あれは1トン当たり289円ということで非常に低い水準で、この資料の前のほうにもシンガポールが、やっぱり400円ぐらいですかね、5シンガポールドルを入れましたというお話が、紹介がございましたが、日本は289円。その一方で、やっぱりその前のほうの資料で、フランス政府の長期の取組ということで、これは100ユーロというのを2030年に導入しますということが明記されております。それで、グローバルにも、私、昨年、T20というドイツでのシンクタンクのG20を準備する会合に出たんですが、そこにStiglitzさんとSternさんがお二人お出になりまして、お二人でダイアログをワンセッションやっていたんですが、それはちょうどその直前にCarbon Pricing Leadership Coalitionという、これはワールドバンクとフランス政府が後ろ押しをしている国際的な組織ですけれども、そこが提案した内容を一生懸命ご説明になったんですね。その内容というのは、2020年までに40ドルから80ドル、これ1トン当たりですね、排出量。30年までに50ドルから100ドル。この幅がありますのは、発展途上国と先進国では少し差があってもいいという、恐らくそういうお考えだと思いますが、日本は先進国、仮にこのStiglitzさんとSternさんの提案を受け入れるとすれば、20年まで80ドル、そして、30年までには100ドルというようなことを考えるべきではないかと私自身は思うんですが、ただ、289円とギャップが非常に大きいわけで、ただ、思いますのは、この税制のグリーン化ということをどこまで本腰でおやりになるのか。エネルギー関係、環境関係、車体課税も含めてやると、我々の計算では6,000円から7,000円、もしかすると8,000円かな、そのぐらいの税になるんですね。そうしますと、エネルギー課税全体をこのカーボンプライシング、炭素税に変えますと、実は20年の目標にかなり接近するんですよね。ですから、私、Stiglitzさん、Sternさんがおっしゃっている目標というのは、日本にとって、決して非現実的な目標では全くないんじゃないかと思いますね。むしろ、日本政府としては、そういうことをはっきり、わかりやすいのは100ドルというのは非常にわかりやすいと思いますけど、というようなことを、例えば長期の取組として考えると。ただ、長期はそういうことですけど、現実には、例えば来年、再来年は、そこに行くために何をすべきかというようなことを、やっぱり骨太の方針をぜひここで出していただきたいというふうに思っています。
以上です。


浅野委員長
どうも、ありがとうございます。
それでは、河口委員、どうぞ。


河口委員
ありがとうございます。後半、ちょっとさっき下げたので、前半の部分を若干絡めながらお話ししたいと思うんですけれども、2番目のパートのところでぜひ申し上げたいのは、59ページのこの図ですね。これいつ見てもショッキングな図で、この間まで昨年までの図があって、昨年はもっと悲惨な日本の図だったと思うんですが、何でこうなっちゃったのかなという分析はぜひしていただきたいと思います。いつもエネルギーに課税をするとか、CO2を課税すると経済が悪くなるからという議論はあるんですけれども、いやいや、課税してなくたってこうだったでしょという事実をどういうふうに分析するのかというところからではないと、これからでも、そのカーボンに値段をかけると経済を停滞させるというふうな議論が繰り返しになってしまう。これは一体何でこうなってしまって、他国が違うのかという分析と絡めてやっていただくといいのかなという気がいたします。
それから、第1部のところでいろいろなデータを見せていただいて、各国の意識の違いとか、それに対して経済界から違うよということもあって、それはそれでそうだと思うんですけれども、ここ3カ月、半年間で状況はすごく変わっていると。先週、今週でも環境に関する見方というのは全然変わっていて、昨日、一昨日も熱海のホテルで窓ガラスが全部割れちゃいましたみたいな、それを見て、やはり意識が変わっていて、小田原では救急車も何か水につかって持ち上がっちゃいましたみたいな状況になる中で、そこで温暖化対策をとらなかったときのコストというのが経済分析だけではもう済まない状況になっています。毎日のように気象庁が、命に関わるような状況ですみたいなことを言っているということは、そういうふうなレベル感で物は変わってきていて、先ほど、高村先生がおっしゃったように、損害保険のリスクというのはどのぐらいのデメリットがあるのかみたいな経済的な部分も、できれば今年に入ってから、加速度的に変わっているので、去年までの状況とは違います。海外では今年になって、今ちょうどアメリカではカリフォルニアが燃えていて大変というような状況ですので、去年までのこの経済的な分析の議論と、今年になってから、これがどのぐらい加速化していったかというようなところはぜひ入れていただきたいですし、そして、そのカーボンプライシングをどう位置づけるのかと。ご指摘もあったとおり、カーボンプライシングはオールマイティーではないので、これだけでは何ができるということでもないということにもなりかねないんですけれども、やはり気候変動対策というのはアダプテーションと、緩和と削減と適応と両方ありまして、緩和の中心としてカーボンプライシングがあるわけですけれども、全体の中のメッセージとして、やはり今までただで出しまくっていたカーボンというものに値段をきっちりつけていって、違う経済に行くんだというメッセージ性の部分というのは非常にきっちり出していただくべきであって、そういうものであると。で、その傘の下にいろいろな対策というものを考えていかないと、やはりそれぞれの立場によって意見がばらばらになると。また、それをやることによって特定の産業とかがデメリットを受けるのだとか、それはまた別で議論をするというような形に持っていかないと、ちょっと難しいのかなという気がいたします。
それから、日本企業の株価、評価なんですけれども、相対的な評価ということで考えますと、カーボンをちゃんと考慮していない日本企業の経営というものは中長期的に評価できるかどうかという軸で、ESG投資家が評価をするようになってきている中で、これはそういうことを考えていませんという日本企業のあり方ですと、ESG投資家、で、私は結構、仕事上でそういうふうなのをアレンジしたりするんですけれども、お話にならないというね、もうベースとしてお話にならないというような状況があります。
それから、PRIのデータが途中になるのは、ちょっとミスリーディングではないかというご指摘もあったんですけれども、それは上場株の売買だけを想定されていると思うのですが、PRIのデータにしても、私、JCIFで日本の数字もつくっているNGOの責任者をやっていますけれども、これはそれ以外のものも全部含んだ数字ですので、上場株の運用だけではありませんので、世界のトレンドとしてお金がどっちに向いているかということで判断いただければいいかなと思います。
以上です。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。安田委員、どうぞ。


安田委員
私も前半で札を上げていたけど、おろした組なので、ここまでの議論を踏まえた発言をさせていただきたいと思います。
昨年度の検討会からメンバーを務めているんですけれども、その際にもちょっと発言させていただいたことと重なりはするんですが、一つ、今回の資料で日本政府の取組、そして、日本企業の取組で、海外の取組、いろんな形で現状どういう状況なのかというのが整理されている点はいいんですけれども、本来知りたいのは、よそがどうだ、うちがどうだという話じゃないはずなんですね。どの点が重要かというと、カーボンプライシングを入れたときに、じゃあ、仮に日本の今までの取組が遅れているとすれば、それがカーボンプライシングによってどの程度加速するのかというところで、現状の立ち位置というよりかは変化率が一番重要なところですね。非常に先進的な環境への取組をしている国であっても、カーボンプライシングを入れれば、さらに取組が加速するかもしれない。その変化率を議論するべきなのに、現状の位置がどこかということにかなり議論が傾斜しているのを懸念する次第です。なので、例えばカーボンプライシング導入、まあ導入派と言い方はどうですか、導入に賛同されている方は、現状、こういった日本のやや遅れている状況がある中で、カーボンプライシングを入れることによってどういうプラスの効果が期待できるか、逆に慎重に検討すべきじゃないか。主に財界の方はそうだと思うんですけれども、今、自分たちが取り組んでいる仕組みがカーボンプライシングを入れることによってどう減速するか、どう効果が損なわれるのかというところをやっぱり具体的に議論していくと、そのCPを入れたときの変化率がどうなのかという将来像が見えやすくなるのではないかと思いました。
それにちょっと付言して、冒頭で、すみません、委員の名前、廣江委員ですかね、廣江委員だったと思いますけれども、慎重な議論が必要だというところには同意なんですが、もう一個気をつけていかなきゃいけないのは、カーボンプライシングの是非ではなくて、カーボンプライシングをどう設計するかと。国によってもそうですし、単純に税率一つとってみてもそうですし、あとは時間軸で一定程度、最初導入してもその後で経過観測しながら柔軟に制度を変えていく、あるいは私自身が昨年度の懇談会で提案しましたけれども、単に、例えば炭素税のようなものをとって終わりではなくて、パフォーマンスのいい企業には補助金として還流するというアイデアもあります。なので、さまざまな、そのカーボンプライシングといってもさまざまな施策があるので、どういった施策をどの分野にやっていくかという、やっぱり具体的なデザインをしていくと。是非ではなくて、どうデザインするかで、いろんな形で日本に合ったデザインをしてみて、それでもやっぱりコストのほうが大きいということであれば導入をしないと、そういった形で、単なる是非ではなくて、CPといっても幅が広いので、具体的な制度設計に踏み込むような意見が出てくるとおもしろいと思います。
最後に1点、脱炭素社会へという目標に関しては、これは委員の皆さんも方向性として異論はないと思いますので、その際に、今まで上がってきている論点、この資料の中でもそうですけれども、CO2を減らさなければいけない、長期的なサステーナブルな社会とがあるんですけど、単純に経済的に考えてみたときに、とりあえずあれですね、温暖化の話を仮に忘れたとして、経済的に考えたときに何が起きているかというと、脱炭素、CO2を減らしていくということは、第一義的にはエネルギーにおける化石燃料の依存体質を下げていくということになると思います。依存体質を下げたときに何が期待できるかというと、その経済を動かす根幹にあるエネルギーの恐らく限界費用を下げると。それが多分、経済的に見たときに一番大きいポイントじゃないかと思っています。社会を動かすためには、いろんなネットワークで我々はつながっているわけですけれども、情報に関してはコミュニケーションのネットワーク、物流に関してモビリティーネットワーク、それを支えるエネルギーネットワーク、この三つがどんどんどんどん今、低コスト化している。人によっては、限界費用ゼロ社会とかいうふうなキャッチワードで言っている方もいらっしゃいますけれども、インターネット一つイメージしてみても、これだけ我々が自由につながるような背景には莫大な投資があるわけですから、現状それをほぼ限界費用、追加的なコストゼロでみんな使えると。これこそが今、経済をドライブしていると。翻ってエネルギー状況を見てみると、このまま化石燃料依存体質でいくと、確かに足元の単価は安いのかもしれないんですけど、長期的に限界費用を下げられなくなる。それはよその国、成功するかどうか断言はできないですけれども、ヨーロッパを中心に再生可能エネルギーのウエートを高めていって、将来、エネルギーの限界費用が下がったときに、かなり日本は30年後、50年後に厳しい状況に置かれるんではないかと。
ということで言うと、恐らく財界の方は、今現状の、例えば経団連さんなら経団連さんの加盟企業の動向であるとか、現状のエネルギー科学にかなり焦点が当たる、それはもう当たり前のことで、どうしたって目の見えるメンバーのことが頭に浮かぶというのはもう避けられないことだと思うんですけれども、これ政府で議論するというのは、やっぱり50年後や100年後をイメージして、そのために民間企業ではやりにくいような政策方針を出すということに意味があるので、そういった長期的な限界費用をどうやって下げていくかという経済的な視点ですね、温暖化とはまた別の切り口ですけれども、そこもちょっと触れると、これは多分、今日いらっしゃっている委員の方は皆さん、日本のことを考えていると思うんですけれども、今を考えるか、将来を考えるかというのは1個切り口になると思います。
以上です。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
それでは、池田さん、どうぞ。


池田説明員
2回目の発言で恐縮です。資料では、さまざまなマクロ指標が掲載されています。例えば指標の一つである炭素生産性は、産業のサービス化が進めば進むほど高い水準になるなど、産業構造の違いといった、さまざまな要因によって影響を受けます。こうした指標をもとに政策を議論する場合には、単純に相関やトレンドを見ることなく、その背景を含めた丁寧な分析が求められると考えています。
資料、60ページにおいて、アメリカのデカップリングについて触れています。先ほど、手塚委員からご説明がありましたが、これはシェール革命やIT等の技術革新といったイノベーションに負うところが大きいと考えられます。長期の大幅削減を実現するに当たっては、イノベーションの不断の創出が不可欠であり、その重要な担い手である民間企業の活力を生かすことが不可欠です。炭素税や排出量取引といった手法は、もう既に国際的に高い水準にあるエネルギーコストのさらなる上昇を招き、民間の投資の原資を奪うことでイノベーションを阻害しかねないと、強い懸念を持っているところです。我が国はものづくり立国であり、エネルギー多消費産業や中小企業の国際競争力に悪影響を与えることがあればゆゆしき事態になると考えています。国際的なイコールフッティングを確保しつつ、冒頭、発言したように、いかにして地球規模での大幅削減につながるイノベーションを誘発するのかという視点から、他の政策手段や、費用対効果といったものを比較して、追加的なカーボンプライシングの必要性を検討していただきたいと考えています。
以上です。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
大野委員、どうぞ。


大野委員
日本の話ということですけども、さっき、その再生可能エネルギーが増えているという話を申し上げたんですけども、これから脱炭素社会をどういうふうに実現していくかという道筋を考えるといろんな議論があると思うんですが、今年の4月に、日本も入っている国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が2050年までのロードマップというのを出していて、これから脱炭素化実現のために必要なエネルギー起源の温室効果ガス削減の94%は自然エネルギーの導入とエネルギー効率化の二つで実現できるんだと、そういう推計をしています。この94%という数値は、推計機関によって違いはあるだろうけども、いずれにしろ、自然エネルギー、再生可能エネルギーとエネルギー効率化という、この二つの手段が大きな主要なものであるという認識はほぼ世界共通だと思うんですよ。こういう観点からいって、日本の現状はどうなのかなというふうに考えてみると、再生可能エネルギーはご承知のとおり、2017年まで増えてはきましたけども、まだ16%で止まっていると。これはやっぱり相当前もって進んできた欧米の国々に比べると遅れている、アメリカに比べても遅れているという状況です。これはあんまり資料の中に入っていませんけども。
もう一つの、じゃあ、エネルギー効率化はどうなのかということなんですが、これは今日の資料の63ページに、製造業のエネルギー消費原単位の推移というのがあります。これはエネルギー白書からとられたデータ、経産省さんのデータだと思うんですけども、これを見ていただきますと、もう80年代の後半から、要するに30年間ですよね、30年間変わってないんですよ。日本は、確かにオイルショックのときには、ここも70年代からというのがありますから、かなりその省エネが進んだんですけども、その後もうずっとフラットのままなんですよね。その前の資料が出ていますけど、その間に各国いろんな取組をやっていて、もう世界的に省エネ大国とはとても言えない状況になっていると。
ということを考えてみると、日本はこれから脱炭素化を目指す上で二つのもっとも重要な手段、再生可能エネルギーの導入でも遅れているし、エネルギー効率化でも遅れていると、やっぱりこういう現実をしっかりと見る必要があるんだと思うんです。それを大きな挽回をするためにどういう対策があるかということの一つとしてカーボンプライシングというのがあると思うんですが、二つ目に申し上げたいのは、今の日本の温室効果ガス、なかんずくCO2に対する、国がどういう政策をとっているかというと、これは実効性のある対策が何もとられてないというのが、本当にこれは驚くべき状況だなというふうに言わざるを得ないと思うんです。日本の場合は、公害行政、環境行政というのは、例えば大気汚染が1960年代、70年代に問題になったときには、例えば硫黄酸化物、SOxに対しては、いろんな大気汚染防止法で、いろんな規制を入れました。それから、その後、自動車なんかが増えてきて、NOx、窒素酸化物に対しても対策を入れました。こういう環境破壊物質に対しては、排出規制値が決まっていたり、あるいはSOxの総量規制も行われているわけですよね。こういうことがあるのに対して、じゃあ二酸化炭素については何があるだろうかというふうに言うと、要するに規制的手法というのは、さっきの資料では省エネ法が規制的措置に入っていったけど、あれはやっぱり努力目標ですから本当の規制とは言わない。少なくともSOx、NOxに対して入っているものとは全く違う。もちろんCO2の発生の形態とSOx、NOxとは違いますから、CO2に対しても規制的手法がいいのかどうかわからないですけども、少なくともそれが、規制的手法がなじまないのであれば、やっぱりもっとより効果的な方法として経済的手法、カーボンプライシングの導入があってしかるべきなのに、それも入っていない。要するに日本という国は、今最も人類にとって、あるいは国民の生命・安全・健康にとって脅威となっている、この環境汚染物質に対して、実効性のある政策が、何も入ってないと、そういう異常な状態にあるんですよね。それが、やはり冒頭に申し上げたような自然エネルギー導入やエネルギー効率化の遅れにつながっているんだというふうに思うんですよ。そういう意味で、やはりぜひこの場で議論をしていただいて、カーボンプライシングの導入について具体的な検討をしていただきたいというふうに思います。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
では、前田委員、どうぞ。


前田委員
はい、すみません、東京大学の前田と申します。
先ほどからの皆さんのご意見のなかに、世界の中での日本の位置づけみたいなお話が大分あったと思います。そもそも地球温暖化問題、Climate Change問題というのは、経済活動から発生した影響が国際的に及ぶというものです。その影響というのは、直接的には金銭的価値で測れるものとそうでないものとがあるとは思いますが、いずれであっても経済社会に対する影響みたいなものであり、やっぱり経済とは切っても切り離せない。かつ、影響は国際的ですから政治的な問題も外交的な問題も絡んでくることになる。つまり、気候変動問題というのは、ある意味、国際政治経済問題であると言えます。よって、国内だけに目を向けていてはいけないんだろうなとは思うところです。そういった意味で、今回の資料の中で、我が国の現状から始まって国内企業の動きまでのお話がありますけれども、こうやって日本の現状をまとめていただくというのは大変興味深くて、こういうことをきちんと踏まえて世界の中での日本の位置付けを議論するということが大変大事なことだと思うんです。
そうしたことを念頭において我が国の現状、これをこの資料の中で見ると、大変残念というか、日本はそもそもこれで大丈夫なのか、という気がするように思います。あんまり良い未来がないように思えます。特にスライド49にある一人当たりのGDPの順位を見てみると、日本はどんどん下がってきています。その後、資料の後ろのほうには、生産性が低いとかいう話もありますし、設備も老朽化してきているという話、財政的にも赤字が大変増えているというお話もたくさんありますし、あまり明るい未来がないのかなというふうには思うところです。この49ページは、もちろんアメリカドルでの換算ですから為替の影響も大きくなっています。特に95年辺りから比べると円は断然弱くなっていますので、為替が大きく影響しているというのは確かです。一方で、為替自体も国力を表すものですから、円が弱いということは国力も低いというような考え方もできるわけですね。そういう意味でも、確かに日本の凋落というんですか、そういう言い方はあんまりよくないのかもしれないんですが、凋落は甚だしく明確というふうには思うところですね。
また、こうしたことは、今回この資料でまとめて頂いた産業だけに限らないことだと思います。この資料にはない、もう少し人材であるとか教育であるとか、そういうところについても一緒です。我々、大学業界において高等教育の現場にいると、日本の高等教育の世界の中での位置づけというのを考えてみると、やっぱり目を覆うばかりとまでは言わないものの、決して褒められたものではないというふうに思っています。
だから、もう少し日本のこうした現状を踏まえて考えることが重要です。どうやって昔の日本の経済、世界に評価された日本の経済に戻していくかというのは、もちろん簡単に答えは出ないもので、多くの方々が分析し、研究しているところではありますけど、この現状とあり得る将来を踏まえながら、日本は国際政治と国際経済の場で自身をどう位置付けるか、考える必要があると思います。そもそも気候変動問題というのは国際政治経済問題です。日本がこのなかでどう対処するかは、国際社会での自身の立ち位置に直接的に関係するものだろうというように思います。


浅野委員長
ありがとうございます。
環境基本計画なんかをつくるときに、なかなか悲観的なことを書きづらいので、半分危惧の念を持ちながらも少し明るい未来しか書いていない面がありますが、でも、こういうことで、まず前提としてこれだけの事実があるんだということが出てくることが重要なことだろうと思うし、データは環境省のデータじゃないものも多いものですから、各省とも認識を持っていることは間違いありませんね。
それを踏まえて、でもこれをどうやって克服するかということが、多分、出された諮問の意図でもあろうかと思います。ご指摘ありがとうございます。
遠藤委員、どうぞ。お待たせしました。


遠藤委員
ありがとうございます。先ほど安田委員がご発言をされましたが、私もカーボンプライス検討会に続き出席をさせていただいておりまして、今回の資料を拝読させていただいた印象としては、検討会での議論を再現するような資料であるように思います。
委員の皆様におかれましては、地球温暖化、気候変動問題に対して対策を行わなくてはならないということについて、ほとんど異論がないことでありますし、G20を機に日本の国際的なリーダーシップをしっかり示していかなければならないということについても、一致していると思います。もし検討会から一歩進むとすると、3つの側面を考慮するべきと考えています。先ずは排出量の削減。この程度減らすためにはどの程度のプライシングにしなくてはならないのか、そして、その際、もし副作用があるとすると経済的なインパクトはどのぐらいなのか、研究論文を博捜する限り非常に実証が難しいということは前回の検討会でもご説明があったのですが、それなくしては、カーボンプライシングの是非を巡るこれまでの議論に終始してしまうかと私も思っております。
次に税制をグリーン化するという側面ならば、例えば法人税を含めた税制の設計、それと、検討会にて土居委員からご提案がありましたけれども、輸出の際の優遇措置であるとか、そういった詳細設計が必要になるというふうに思われます。
最後に、エネルギー供給構造の転換の側面では、カーボンプライシングがエネルギーの供給構造の変化にどのくらいのインパクトを与えるのか。それは、ほかの例えば高度化法などの制度と比較をしてどのぐらいの威力があるものなのかということを、検討していかなくてはならないと思います。ここには、先ほどから出ております石炭火力への投資のシュリンクのインパクトも関係してくると考えます。
これら三つの側面において具体的議論が進んでいくことが、カーボンプライシングの実現に向けた一歩となるように思われます。
私のほうからは以上です。


浅野委員長
ありがとうございました。
どれだけ下げなきゃいけないかということに関して、長期的にはもう既に80%ということは一応出てはいるんですけど、プロセスでどこまでの段階でどうかということについては、必ずしも明確にはなっていない。
先ほど既に大臣のお話もありましたけど、近々その辺の検討が政府として始まるということですから、この段階でいきなりそこから話を始めるのは難しかろうと思いますけれども、議論がどういうようなことを狙いにしているのかということをもっと整理せよという点では、確かに今日の事務局資料はまだ十分できていないことはそのとおりです。さらに検討をしてほしいと思っている、していくことになるだろうと思います。
大塚委員、お願いします。


大塚委員
別件があり遅れてきてしまって申し訳なかったんですけれども、この63ページまでのところのこの議論としては、やはり炭素生産性に関して、日本がこの10年、20年の間、ヨーロッパに比べてかなり遅れてしまっていることが一つの大きな特徴として出されており、カーボンプライシングを入れた国のほうが、むしろ経済成長と炭素の排出量の減少というデカップリングに成功したという、そういうことを日本との関係でどう考えるかというのが大きな問題として突きつけられているのだろうと思います。
これに関して、カーボンプライシングを入れても経済成長に対して問題がなかったということが、ある種の仮説として出てきているということだと思います。一般的に見て、私も自主行動計画とかには多少フォローアップのところで関わらせていただいたので、欧州と比べて炭素生産性についてこんな結果になってしまったのは、すごくショックでした。多分、経済界の方は実際にご努力をなさっておられたので、私なんかよりもっとずっとショックだったと思うんですけれども、それをどう見るのかというのは、経済界の方も含めてちゃんと議論していかなきゃいけないことだと思っています。
ここで考えているのは、現在日本にある課題である、CO2の排出量があまり減っていないこととか、GDPが増えていないということとか、あるいは、産業界のほうで企業がかなり内部留保を持っておられるとかということを含めて、それらに対する対策の一つとして、このカーボンプライシングを導入すべきではないかという問題です。このように環境政策によって現在日本にある課題を解決するというのは、第五次環境基本計画でも打ち出された重要な考え方だと思います。ただこれは一種の仮説に基づいていますので、もっと別の原因があるとか、ここはこういうふうにしたほうがいいとかという見解があれば、それも含めてまさにここで議論していくのが非常に大事であると考えております。
目的とするところはやはり炭素生産性を上げ、CO2の排出量を減らしてGDPは増やすという、デカップリングを進めていくということだと思いますし、その点は多分、どなたもそんなに異論はないことだと思いますので、それを実現していくためにカーボンプライシングが一つの大きな重要な方策だと思いますけれども、実際にどのような仕組みを入れるかを考えていくのが、非常に重要であることを申し上げておきたいと思います。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
大橋委員、どうぞ。


大橋委員
ありがとうございます。私は、大学に属している人間で、政策評価などをアカデミックな観点から分析させていただいているのですけど、その観点からちょっと申し上げます。あらゆる政策はトレードオフの中で決定しているんだと思います。ネガティブな側面がない政策選択って、ほとんど私は聞いたことがなくて、あり得ないんだと思います。やっぱりバランスのとれた議論を入り口でしておかないと、なんかエピソードベースみたいになっちゃって、あれか、これかみたいな議論に終始しちゃうのかなと。そのエピソードベースの議論の出口ってないんじゃないかなというふうに思います。
そういう意味でいうと、ある程度深掘りした分析に基づいた議論もちょっとしていかないと、なかなかお互い、取りつく島がなくなっちゃうんではないかということを若干懸念しています。
それに関わる点、2点申し上げます。一つは、私が目についたところで、炭素税を入れるとGDPが上がるという論点です。これだけ見せられると、どういうメカニズムでそうなっているかというところ、全くなく、これだけ見せてもあまり議論にならないかなという感じがします。恐らく供給側でいうと、電源の代替性みたいなものも含めて、いろんな価格による供給側のシフトもあるでしょうし、あるいは、需要側でいったって、各種用途別の需要の弾力性に基づく何らかのインセンティブづけがあって、そこがどうなのかということで、GDPの成長に結びつくところもあるし、結びつかないところもあると思います。そのとき、我が国はどうなんだというふうなちょっともう少し分析をしていかないといけないのかなと。
そうした中で、じゃあネガティブな側面があれば、それをどう補っていくのかというのがやっぱり政策のパッケージだと思うのです。ただ単に、先ほどもおっしゃった、誰か委員の方がおっしゃっていますけど、価格を入れたからいいんだという話じゃなくて、どう入れるのかというところをちょっと考えないといけないのかなと思います。
2点目は、後半に関わるところですけど、カーボンプライシングがイノベーションを促すというところなんですが、私はこの条件はあると思うんですけど、それは、基本的に相対価格を上げることで技術の公正な競争を促す中でイノベーションができてくるということなんじゃないかなと思います。
で、これは、全くこれまでやってこなかったかというと、そんなことはなくて、規制であれ、ここでいうところの暗黙的な炭素価格とおっしゃっているところだと思いますけれども、そうしたものもありながら、今回、もう少し明示的なものも補完する上で重要なんじゃないかとおっしゃっているのか、あるいは、それも含めてちょっと全体を考えていくのか、ちょっとそういうところも本当はちゃんと議論しないといけないのかなと思います。
OECDの実効炭素価格の中には、こうしたものの中には折り込めていない、要するに我が国は取り込んでいるだけれど、国際的にうまく発信し切れていないものも実は随分あるんじゃないかというふうに思います。
先ほど、岩田先生のほうからも税制を広く捉えるというふうなことをおっしゃっていただいて、私もそういう意味では、この相対価格を変えるという意味はFITもある意味、それと同じ趣旨、お金を出すのか、あるいは今回は課税をするのかという、相対価格を変えるという意味では裏腹の関係にはあるので、そういうものもあわせて、きちっと環境省さんの所掌はあるのかもしれませんが、ちょっと幅広い国益の観点から広く議論するということも他方で重要なんじゃないかと、かようのように思いました。
以上です。ありがとうございます。


浅野委員長
どうも、ありがとうございます。
諸富委員、どうぞ。


諸富委員
先生方のご意見を聞いていますと、日本の炭素生産性の低迷に関してショックを受けた、衝撃を受けたというようなご発言も複数あったかと思いますけれども、要は、なぜ炭素生産性が低迷しているかというと、一つは温室効果ガスの削減に失敗してきているということと、もう一つは付加価値を上げることができない、付加価値を上げることに失敗してきているという、そのどちらか、あるいは両方が複合的に効いてしまっているということだと思うんですね。
ですので、逆に言いますと、カーボンプライシングを入れた国のほうが炭素生産性が向上しているということは、どうやらカーボンプライシングというのは生産性にプラスに寄与している可能性すらあるんじゃないか。むしろ逆に、カーボンプライシングを下げたからといって炭素生産性を上げることはできていなかったということを日本が証明してしまっているということでもありますよね。
ですので、逆説的ですけれども、一つ、この議論の中でカーボンプライシングをどう捉えるかという議論をする場合に、カーボンプライシングを今までは成長に対する足かせであったり、産業国際競争力にマイナスの要因であるというふうに言われてきたわけですけれども、実はそうではなくて、カーボンプライシングは成長促進要因ですらあったのではなかったのかと。
例えばスライドの今日配られている資料の38ページにもOECDが2017年の文献で気候変動対策が経済成長に寄与するという観点からデータを出していますけれども、このような視点が実はあり得るし、その背後に、この絵のおもしろいのは、緑色で構造改革、グリーンイノベーションに対するプラスの効果がかなり大きく効いているという話になっているんですよね。ですから、カーボンプライシングは実は単に温室効果ガスを減らすだけじゃなくて、これは温暖化対策なのでカーボンプライシングだけじゃなんですけれども、例えば産業構造の転換を後押ししながら個別企業レベル、産業レベルでいうと事業構造の入れ替えを促して、より付加価値の高いビジネス領域に企業が移っていくことを後押しする効果を持っていたかもしれないですね。
ちょうどカーボンプライシング、この前の検討会でヒアリングで来ていただいたDSM社のヒアリングがまさに、プレゼンテーションがまさにそうだったように、昔、炭鉱業だったDSM社がどんどんそこから脱却して、今や健康産業に事業構造の入れ替えをやって変わってきたと。そして、その利益率たるや、2桁をたたき出している、非常に高収益、高付加価値企業になっているということですね。
ですので、高付加価値領域にビジネス構造を転換していくということが同時に脱炭素、ビジネスにおける脱炭素と重なり合うようにして事業構造転換を遂げて企業としても成長を遂げてきたという実例を我々は見せていただいたわけですけれども、一国レベルでそういうことが起きているんじゃないかということも、これ、仮説ですけれども。
で、カーボンプライシングがそのための主たる手段とは言わないですけれども、それを後押しする手段になっていた可能性について、この場でさらに分析を進めていく。つまり、カーボンプライシングが単に温暖化対策の手段、もちろん温暖化対策の手段なんですけれども、産業構造政策というか、成長戦略の手段としても位置づけられるのではないかということですよね。
もちろん、カーボンプライシングそのものを何もせずにぽんと入れたら、影響は出ますし、短期においては特に影響が出ますが、そこはもうさまざまな知見が積み重なっていまして、どうすれば国際競争力を損なわないような入れ方ができるか、何と組み合わせればいいのか、どうポリシーミックスを効かせればいいのかという知見はもう山ほど蓄積されていますので、それを適用していくことが、実はマクロ経済、あるいは産業の構造転換にとってプラスにつながるんじゃないかという、逆説的な命題を、ちょっと私の委員としての個人の意見ですけれども、導くことができれば、カーボンプライシングに関するポジティブな合意形成が可能になっていくのではないかなというふうに考えます。
以上でございます。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
それでは、最後の85ページ以下の目指すべき経済・社会の実現に向けた政策の議論において必要な視点は何かと、この点についてのご発言をいただきたいと思います。
今日まだご発言のない委員もいらっしゃいますので、まず、ご発言のない委員については時間制限を設けません。それ以外の方については、もう20人おられて残りの時間は約40分強でございますので、単純計算すれば一人の持ち時間は2分ぐらいということになりそうですが、この際、ぜひ一言はご発言をいただいてお帰りいただきたいと思いますので、まだご発言のない委員にご発言をいただいて、その後、安田委員から順番にご発言をいただくことにさせていただきます。
それでは、牛島委員どうぞ。


牛島委員
すみません、遅れてまいりました。失礼いたしました。今回初めて参加させていただきます、EY Japanの牛島と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
EYの前は事業会社におりました。また、現在、クライアント企業と一緒に環境問題についてさまざま検討をさせていただいているという立場上、ニュートラルではありながらも、ビジネスに立脚して検討して参りたいと考えています。既にご発言あったものと重複したりするかもしれないんですけれども、そもそも論として、カーボンプライシングだけで環境問題が解決するとは思っておりません。一方、ここ数年、こういった問題をずっと見てきている中で、やはりパリ協定以降、劇的に風向きが変わったというふうに私も感じております。この変化は、かつて、いわゆる環境保護して扱われていた問題が、経済問題、ビジネスの競争といった観点で捉えられ始めています。日本の場合はどうしても環境は環境、あるいはCSRはCSR、ビジネスはビジネス、というように、個別最適で取り組むも、いつまでたっても議論は平行線を辿りがちです。方や、特に欧米、ヨーロッパ中心だと思いますけれども、環境の問題を経済のメカニズム、ビジネスのルールのメカニズムの中に入れ、統合した議論をしはじめたという印象を持っております。その大きなトリガーが、従来、環境問題を語る主役は、どちらかというと環境団体ですとか、あるいは技術者という人が中心だったものが、COP21以降は投資家がメーンなアクターになってきております。
ふっと思うんですけれども、日本でこれだけカーボンプライシングや環境規制がビジネスの足かせ、制約になり得る議論となり、歩みが遅くなるところを、なぜ欧米や中国、更にASEANは、前向きに実行できるのだろうかと。彼らの国の企業も当然ながら嫌がっているだろうと思うんですけれども、同じような境遇だと思うんですけれども、何で彼らはそういうふうなことを堂々と世界に発信してやって、日本はなぜやれないのかと考えることがあります。それだけ、彼らに得があって、日本だけが損する可能性があるような問題なのかと、時折感じるんですね。
そこはぜひ、さまざま研究されている方がいらっしゃると思いますので、この議論の中で解き明かしていっていただければというふうに思うんですけれども、ビジネスはグローバルにつながっておりますので、政府が仮に何もやらなかったとしても、遅かれ早かれ一部のグローバル企業というのはやらざるを得なくなってやり始めるだろうと。取り残されるのは、恐らく国内市場でビジネスしている企業といった、国際競争にさらされていない会社が、将来、取り組みに乗り遅れる煽りを受ける可能性が出てくるんだろうなと、こういうふうにこの流れというのを感じております。
日本だけで世界のステークホルダーを相手に伍して闘えればいいんですけれども、残念ながら日本語でのメッセージは日本人ぐらいしか見ないんですね。どうしたって世界中に同胞のいる英語圏の人たち、あるいは、これからは中国語圏の人たちが、マーケットのサイズからすると世界のルールを変える力を持っているだろうと。日本がその中でどういうふうにポジションをとっていくのかとは、今後を占うターニングポイントにいるのかなというふうに思っています。
企業においては、この気候変動にかかわらず、先ほどESGというお話もありましたけれども、ほぼほぼ開示に対する強い要求が出てきております。これは国の政策でもそうですし、投資家からもそうです。これはなぜ開示をそれだけ求めるのかというのは、当然ながら、その情報の受け手がその情報でもって何かを選別するわけですね。つまり意思決定の判断にそれを取り入れるということになります。
TCFDという一つの気候変動に関する開示の枠組みというのがありますけれども、これも気候変動が将来のバランスシート、将来のキャッシュフローに及ぼす影響を開示しなさいという、こういうルールであります。
つまり、この辺りというのは、いわゆるバランスシート上に今までなかったようなファクターを外部性の内部化とでも言いましょうか、オンバランス化していくというふうな、こういう流れにあるんだろうというふうに思います。


浅野委員長
申し訳ありませんが、ちょっと長いので。


牛島委員 
はい、わかりました。
こうした流れの中でカーボンプライシングというものが企業にとって一瞬は足かせになるかもしれないんですけれども、将来的には健全なコーポレートガバナンスですとか、あるいはイノベーションの一つのトリガーになり得るのかなというふうに思います。
これからの議論の中で、先進国としての日本がどういうふうなポジションを経済的にもとっていくのかというふうなところで、この議論というのは非常に重要かなというふうに考えて、今日参っております。よろしくお願いします。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
和田さん、どうぞ。


和田説明員
日本税理士会連合会専務理事の和田でございます。本日は神津会長が所用で欠席のため、私がかわりに参加させていただきました。
今回、環境省から声をかけていただき、初めてこの議論に参加することになりました。まずは、皆様のご意見をお聞きし、どのような議論がなされているかをしっかり理解したうえで、カーボンプライシングのあり方について、税務の専門家の立場から議論させていただきたいと思います。また、私たちの顧問先である中小企業への影響という視点も重要だと考えています。
仮にこのカーボンプライシングが導入された場合に、どういうメリットがあるのか、どういう弊害があるのかということを議論するためには、具体的な制度案が必要だと思います。理論だけでは進まないところが必ず出てきます。次回以降、そのような方向性での議論をお願いしたいと思います。


浅野委員長
どうも、ありがとうございます。
それでは、石田委員、どうぞ。それから委員長代理にもご発言をいただかなきゃいけないのですが、まず、石田委員、どうぞ。


石田委員
JCLPという気候変動に対する危機感を共有する企業の集まりがあり、その立場で発言をさせていただきます。
お陰様で、今までお話があったESG投資に関しては、私が属する企業は高い評価を得ていますが、やはり日本全体の競争力を高めるのが目標です。例えば、私は、積水ハウスから来ていますが、ゼロエネルギーハウスの比率は七十何%ですが、まだ日本全体としては1割に満たない水準です。これでは日本全体もよくならないし、世界全体もよくなりません。業界全体、日本全体を良くすることが課題です。
もう一つ、心配なのは日本の競争力です。先ほどもありましたが、例えばRE100に関して、大手のアップルさんがイビデンさんに対して自社のラインだけRE100にしろというお話がありましたけど、これは、サプライチェーン全体で世界がそういう傾向にある中で、一つの重要な兆候です。これを日本全体で言われたらどうなるかを考えておかなくてはいけません。再エネなどの脱炭素化は日本はやらなくてもいいと言ったら、サプライチェーンから外されます。それが進めば日本全体がサプライチェーンから外されるという危惧があります。いくら個別の企業が頑張っても、日本全体がサプライチェーンから外されてしまうというおそれがあります。それにカーボンプライシングはどう関係するのかいう話ですが、やはり再エネなどの脱炭素インフラを日本全体で導入しやすい環境をつくるというのが重要で、その点ではカーボンプライシングは重要だと思います。
もう一つが、ここで述べられていないのですが、例えば今トランプが関税をかけるといって大騒ぎをしていますが、カーボンプライシングは、今、アメリカの企業でメジャーの石油会社でさえも導入に賛成しているという傾向があります。
ですから、アメリカもヨーロッパもカーボンプライシングを導入し、日本だけカーボンプライシングを導入しない場合、カーボンプライシングをかけていない国から輸入をするときには、カーボンプライシング税を導入される恐れもあるわけです。その場合、我々が頑張っても、そんな税金をかけられたら国際競争で勝てません。このようなリスクも踏まえて、やっぱり国際的な動向は日本だけで考えても駄目で、世界全体を踏まえた議論をしていただいたほうが良いと思います。
以上です。


浅野委員長
どうも、ありがとうございます。
神野先生には最後にまとめのご発言をお願いしようと思っていましたが、最後時間切れになるといけませんので、ここでご発言ください。


神野委員長代理
私、環境の専門家ではないので、感想めいたことになるかもしれませんけれども、さまざまな政策分野でSDGsなんというのは参考基準にされているんですね。
それはなぜかというと、私は背後に二つの理念があるかと思うんですね。一つは、人類は運命を共有しているというのが一つだと思うんですね。それから、人類は共有している運命について、共同責任、連帯責任を負っているんだ。多分この二つが、さまざまな問題を解くときの基準になっているんじゃないかと思います。
それで、カーボンプライシングのような問題をこうした観点から少し具体的に位置づけると、私、財政をやっていますので、財政と市場という観点から言えば、財政については、つまり、これからそういう認識を持つかというのは、これから新しい時代に私たちは足を踏み入れようとしているという認識のもとに、財政のほうで税をどう考えていくのかというと、先ほど岩田先生と全く結論が同じになるんですが、税制全体のグリーン化、つまり、税制全体に公平の基準としてグリーン化、つまり、環境という視点で公平性を考えて税制を立て直すということが必要になってきているというのが一つですね。
それから、もう一つは、市場のほうも、本来市場というのは、論理的にいえば、資源のやりくりを最適にやるというメカニズムを持っているはずなので、新しい時代のこれからの市場についていえば、先ほど河口委員が言ったのと同じことだと思いますが、カーボンプライシングの意義というのは、市場を、新しい意味での最適な資源配分を模索する一つの試みだというふうに思うんですね。
したがって、環境政策を打つ上で、さまざまに、さまざまな政策をミックスしていくということが重要なんですけれども、先ほど河口委員がおっしゃったように、その一つのいわばさまざまな政策を打っていく前提として、市場機構そのものをもう一回見直してみるという作業がどうしても必要なのではないかと、そういうふうに感じております。
以上でございます。


浅野委員長
どうも、ありがとうございました。それでは、残り30分になりましたので、さっきおひとり持ち時間が2分あると申しあげましたが、2分は無理です。ご発言パスの方は、どうぞご遠慮なく、大歓迎ですので、パスとおっしゃってください。
安田委員から順にお願いいたします。


安田委員
今後の議論の進め方に関して、大橋委員からエピソードに基づいた話だと出口が見えないというお話、それは半分同意、半分ちょっと異論もありまして、一つは、出せる範囲でエビデンス、データ分析を盛り込むというのは強く賛成です。ただ、扱っている対象がGDPのマクロ経済学になりますし、環境的な施策に関してもなかなかやっぱり過去のデータというのは限られている部分もあるので、出せる範囲では出すんだけど、50年、100年を見たときには、やっぱりエビソードの持つ力もあるんじゃないかと、その観点から、今日の皆さんのご発言を聞いていて、エビソードはたくさん出てくるんですけれども、ちょっと僕自身、もう消化できない部分がありました。それは、どういうことかというと、民間の取組として、RE100とかESG投資とか、非常に諸外国を中心に進んでいると。であれば、日本企業もそれに巻き込まれるんだったら、カーボンプライシングとか入れる、入れない関係なく、民間からプレッシャーを感じるんじゃないかというような話にも持っていけるわけですよね。遅れているという話を聞くと、じゃあCPを入れなきゃという感じになりそうなんですけれども、民間のプレッシャーだけで日本が変わっていく、いや、日本企業は変わっていくんであれば要らないという議論もできるんで、そのエピソードをもとにどういう議論がしないのかというところがやや見えなかったと。
あとは、国際会議であるとか学会に行って、日本の存在感がないと。それは確かに一日本人としては残念なんですけど、期待されていないんだったらCPを入れなくても、誰も何も文句は言わないという発想もできるわけで、いや、存在感がないから、なぜCPを入れるべきなのかという、そこの論理に若干飛躍を感じました。
じゃあ、飛躍を感じない論理として何があるかということで、一つまだお話ししていない論点を言って終わりにしたいんですけれども、遠藤委員からエネルギーの話が出ました。エネルギーミックスに関して政府は見通しを出しているわけですよね。一方で、電力、発電の自由化というのを進めています。本来、電源を自由化して市場に任せるということと、それをやりつつ一方で、電源構成を計画するというのは、あまり相性がいい話ではなくて、全部国策でやれるんだったら、それは達成できるでしょうけれども、市場に任しつつゴールを設けると、その際に、せっかく自由化しているので、具体的に、あなたはこの発電方法で発電しなさいということを直接指導するというのは非常に筋が悪いと思うんですが、そこにこういったカーボンプライシングのような間接的に科学シグナルを通じて政府が目指しているエネルギーミックスからずれそうなときに、ある程度調整をする手段として一定の意義があるんじゃないかなというふうに感じました。
以上で。


浅野委員長
諸富委員、いかがですか。


諸富委員
やっぱり先進企業の取組とか、産業の取組がいっぱい紹介されたんですけれども、確かにそれで進んでいく分はありますが、それを経済全体の動きに広げるにはカーボンプライシングはやっぱりいいですし、カーボンプライシングを入れれば、そういう先進的な取組をやっているところがより報われるという意味で、公正経済になるんじゃないかなというふうに思います。
以上でございます。


浅野委員長
森澤委員、どうぞ。


森澤委員
パリ協定が導入されたときに大きく変わった、その前後で変わったのは投資家だと思うんですね。世界の投資家が変わらないといけないということで、もうここで長期の視点の投資家、ここが環境ということを自分たちの資産の中で見るようになった。それに日本の投資家もようやく動き始めたわけなんですが、グローバルの企業はそれにさらされていて気づいて動いていらっしゃると。もうカーボンプライシンが導入されても勝てるような低炭素化、脱炭素化のビジネスを図っていらっしゃる。
一方で、よく海外の投資家にも日本固有のこととしてちょっとお話しすることは、再エネ価格は日本では高いんだと。先ほどRE100を導入している企業、アメリカ企業とか多いわけですけれども、これは導入したほうが、再エネのほうが安いと。日本では感じられない、考えられないようなことですけれども、それに切り替えたほうが安かったとか、そういう企業さんがたくさんあるんです。そこに日本市場はなっていない、どうしてかと。そこの部分に今回カーボンプライシングが導入されても勝てるような企業をつくっていく、そして、それのためには何をしないといけないかということを次のセッション、次の回に議論していただければと思います。


浅野委員長
廣江委員、どうぞ。


廣江委員
ありがとうございます。私の理解では、先ほど森澤委員ですか、本日の資料に再エネはいっぱい書いてあると、原子力はないと、こういうご指摘がありました。私ども、全くそこは同感ですか、多分視点は正反対なんだろうというふうに思います。
私ども、エネルギー産業の人間は、もちろんCO2の問題、大変大きな責任を持っているというのはわかっています。私ども、今まで取り組んできましたのは、CO2の排出原単位、すなわち1kWhの電気をお使いにいただくときに、できるだけCO2の排出量を少なくするということで取り組んでまいりました。
震災前ですが、ご記憶のとおり、G7の中では我が国は世界で3番目に低い、すなわち、フランス、カナダに次いで低いCO2原単位の国でありました。ご承知のように、カナダは大量の水力資源を持っています。日本はそうはいきませんで、フランスほどではありませんが、できるだけ原子力の比率を国民の皆さん方がご理解いただける範囲で入れていくということで、そういった数字を実現しました。
残念ながら震災の後、ああいう大きな事故を起こしてしまいました。福島の皆さん方に大変なご苦労をおかけしてしまっています。それから国民の皆さん方には、CO2の排出原単位がとうとうドイツを飛び越えてしまうぐらいに上がってしまった、あるいは、電気代が上がってしまったということで、大変なご迷惑をおかけしたということであります。震災後、現在、9基の原子力発電所が稼働をしています。その結果といたしまして、非常に遅いペースでありますが、確実にCO2の排出原単位が低下をしているというのは、事実であります。原子力といいますのは、確実にCO2を減らす有力な手段だと思いますし、当然ながら、安定供給あるいは経済性の面でも非常に強い力を持っています。
じゃあこの再稼働が、どういった力でできるのかでありますと、これは極めて現場の人たちの努力と、それから地元の皆さん方の協力、ご理解であります。これは新設、リプレースであっても全く同じことが言えると思います。そういう面で、カーボンプライシングを入れて果たして今のご理解や努力が加速されるのかということについては甚だ疑問でございますけれども、いずれにしましても原子力の持っている力、あるいは、その力をできるだけ国民のために発揮するという方法について、ぜひご検討をいただきたいと考えています。
以上です。


浅野委員長
前田委員、どうぞ。


前田委員
東京大学の前田でございます。今日、皆さんのいろんな意見を聞いて大変おもしろかったです。
資料を見ていて99ページですね。企業によるカーボンプライシング導入促進というお話がありました。「20年以上カーボンプライシングの議論は経済学者が行っていたが、現在、政府によるカーボンプライシングの導入を支持しているのは企業だけである。」と、この「経済学者が行っていた」、これはもうおっしゃるとおりで、汚染物質の抑制という点では1970年ぐらいから議論がありますから、もう50年近く、あるいは、税金、ピグー税の議論だったら1920年ぐらいからありますから、100年近くまさに経済学者はこういう議論をずっとしてきたというふうに思います。冒頭に浅野委員長から25年間の検討があるというお話もあったと思います。
そういう意味では、大変大変長い議論ではあるんですが、ただ、こういう長い時間の経過の中で、ピュアな100年前あるいは50年前の経済学の議論が現時点にそのままピュアに当てはめられるとは言えないと思います。現代社会はどんどん複雑になっています。実際、普通に考えれば規制の導入を企業が支持するというのは、やはり得する人、損する人がいるわけですよね。ある新しい規制制度を入れると、それ以前のあらゆる経済制度がたくさんあり、それらはそもそもがゆがみまくっているといえると思いますが、それらがさらにゆがむことになると思います。ディストーションがいっぱいかかっているところへさらにディストーションがかかることになる。
そういう意味で、新たにここに制度を入れるということは、それにより本当に誰が得して誰が損するか、それが本当に公平なのか、つまりEquityという概念をもう少し改めて考え直す必要があると思います。それは国内だけじゃなくて、国際間でのEquityという概念をもう少し捉え直した上で、次のステップというふうに考えるべきかと思うところです。
以上です。


浅野委員長
池田さん、どうぞ。


池田説明員
資料で紹介されているとおり、我が国においては明示的なカーボンプライシングとして、温対税が既に導入されています。加えて、暗示的なカーボンプライシングとして石油・石炭税を初めとするエネルギー諸税、省エネ法、高度化法、FIT等、さまざまな施策が講じられています。温対税、石油石炭税、電促税、FIT制度の国民負担は、既に3兆円に上るという話もあります。89ページにFIT賦課金の推移が載っていますが、2030年に向けてますます国民負担が上がっていくことは、既定路線となっています。こうした政策パッケージ全体について効果検証を行い、結果を明らかにした上で、追加的なカーボンプライシングの必要性を議論していくことが重要だと思っています。
次に、産業政策、経済への影響について、先ほどものづくり産業の国際競争力の観点からの指摘をさせていただきましたが、今後、AI、IoT革命、Society5.0を実現していくといった中で、日本の電気料金が高過ぎてデータセンターが国内に立地できないということが、このデジタル経済、データ競争の中で日本の覇権と国際競争の覇権の中でどのようになっていくのかといったこともぜひ考えていただきたいと思っています。
明示的なカーボンプライシングと理論と運用の間には乖離があります。一旦導入すると廃止が難しいという面も十分ご配慮いただきたいと思います。
いずれにしても、全体を通じて明示的なカーボンプライシングというのは、国民や企業に直接的な負荷を課すものです。説明責任を果たすためにもEBPM、Evidence Based Policy Makingの観点から、絶えず科学的な見地に基づいて定量的な分析検証をお願いしたいと考えます。
以上です。


浅野委員長
手塚委員。どうぞ。


手塚委員
pessimisticな話が多かったので、少しoptimisticなポイント2点だけ指摘させていただきます。
先ほど、大野委員が63ページで日本の製造業のエネルギー原単位が90年代からずっと停滞しているということが指摘されていましたけれども、実は、これは分母が最終エネルギー消費で見ているんですね。私ども、例えば鉄鋼会社の製鉄所の省エネは、90年代に入りましてクラシックな省エネは大分やり尽くした関係で、副生ガスの利用であるとか、所内の排熱の回収利用であるとか、あるいは廃棄物を利用した発電であるとか、単純な省エネとは別な、それまで捨てていたエネルギーを有効に使って生産に回すという使い方をしています。つまり、こうした努力の成果は一次エネルギー投入の抑止効果には出てくるんですけれども、最終エネルギー消費で見てしまうと停滞するという統計のあやのようなものにちょっとはまっているんではないかという点でございます。
2点目は、先ほど岩田委員からご指摘がありました世界のカーボンプライスを提唱されているStiglitz教授についてです。この方は、一昨年、環境省の長期低炭素ビジョン小委員会に来られて、私も議論をさせていただいたんですけれども、この際に、日本では70年代から上流の化石燃料に、いわゆる石石税と称する諸課税をかけていて、それがCO2トンあたり4,000円ぐらいまで行っていますという話をしたら、教授が何とおっしゃったかというと、「日本は自分が考えているカーボンプライスのもう半分以上はやっていて、世界の先行モデルになり得る、もっと自信を持つべきだと」いう主旨のことをおっしゃっております。ですので、ここで皆さんが考えられている「日本は周回遅れ」ということは、必ずしもこの世界の統一見解にはならないんじゃないかということでございます。
ただ1点、pessimisticな話をつけ加えますと、実は、日本の経済と環境を両立させるためには、日本の産業の輸出競争力を維持するということが絶対使命条件になると思います。この日本の貿易の最大の輸出相手国であるアメリカ、輸出額で15兆円、輸出総額に占める割合で20%の貿易相手国なんですけれども、ここが7月19日に下院でResolution119というのを賛成多数で可決しています。これは何を言っているかというと、カーボンタックスには反対するという議決です。435人の下院議員のうち229人が賛成し、その中には民主党の議員が7人入っております。Resolutionの具体的な中身はどこかでご覧になっていただければといいと思いますけれども、基本的に、炭素税はアメリカのエネルギーコストを押し上げて産業競争力を押し下げる。したがって、アメリカの家族並びにビジネスにdetrimental(有害)であるということで米国の国益に反するという内容です。このResolutionをアメリカ議会は7月19日に通しています。
つまり、こういう国と貿易競争をしていかなきゃいけない日本の中で、どういう水準の炭素価格、あるいはカーボンプライシングをやらなきゃいけないかということは、ぜひ定量的な面も含めてご議論いただければと思います。


浅野委員長
高村委員。どうぞ。


高村委員
ありがとうございます。2点申し上げたいと思いますけれども、1点目は、既に安田委員ほか、特に経済学の先生方が強く指摘があったと思いますけれども、恐らく、もう一般的なカーボンプライシングの是非の議論から、具体的な制度案に基づく議論の段階に入るべきではないかというふうに思います。これは、安田委員もおっしゃいましたように、最終的にプロコンを考えて導入しないという選択肢も保留した上で、それをすることによってどういうプラス・マイナスが本当に生じるのかという検討をしないと、やっぱり本当に導入するべきなのか、するべきでないのかという議論に進むのができないという段階に至っているように思います。これが1点目です。
それから二つ目は、日本の状況を踏まえて議論することは非常に大事だというふうに思っております。これは、岩田先生等々からもご指摘があったとおりで、日本の場合、エネルギー起源の排出量、カーボンプライシングの文脈でいえば、エネルギー起源の排出量が八十数%~90%台ということですから、エネルギー分野の転換をどう図るかというのが実に重要な課題だというふうに思うからです。
本日、アメリカの排出削減、あるいはカーボンプライシングとの関係でいろいろ議論がありましたけれども、これは池田さんが適切にご指摘いただいたように、基本的にガス火力のコストが石炭火力よりも安いという状況が、アメリカではもう既に生じているということだと思います。したがって、アメリカでカーボンプライシングなしに起きていることを日本でカーボンプライシングなしにできるのかということは、やはり考える必要があると思います。
というのは、日本の場合、2015年のエネルギーミックス、2030年の目標を決めたときの議論のときに、電源ごとの発電コストの2030年の試算を既にしているわけですが、残念ながら2030年段階でも石炭火力のコストのほうがCO2コスト、現行の制度のCO2コストを入れても、ガス火力よりも石炭火力のほうが安いわけですよね。で、これは、今、石炭火力の新設が生じているというのは、それの一種の傍証……。


浅野委員長
すみません、ちょっと短目にしてください。


高村委員
失礼しました。傍証だと思いますけれども、そういう意味では、きちんとこのエネルギー分野の転換をどう図るのかという観点で日本の議論はするべきだろうというふうに思います。


浅野委員長
小西委員、どうぞ。


小西委員 
手短に2点。先ほどからもお話があるように、ずっとこの議論がオブザーバーの議論、他国は導入したらこうだった、他国はどうだった、他国から学ぶということはいいんですけれども、やっぱり2050年に80%削減というのが、そもそもやはりどうやって実現していくかということがやっぱりスタートだと思いますので、ここはやはり当事者になって、プレーヤーになって、先ほどから諸富委員とか安田委員がおっしゃっておられるように、具体論に入っていきたいなと思っております。
あと、やっぱり石田委員がおっしゃったように、これ、排出量取引制度、特にカーボンプライシングの議論の中でも、これを入れないデメリットというのもこれからは検討するべきではないかなと思います。今まで先進国だけに排出量取引制度が入っていた時代とは違って、今、中国、韓国、東南アジアでも入ってきていますので、やはりこれからリンケージとかが議論が進んできた場合の日本が入っていないデメリットということも検討しなければならないんじゃないかなと思います。


浅野委員長
和田さん、よろしいですか。
はい。神野先生もよろしいですか。
では、河口委員、どうぞ。


河口委員
ありがとうございます。この問題なんですけれども、複眼的に本来は見るべきだと思います。一つは長期的なビジョンということ、もう一つは現実問題、日々の経済、そして暮らしということです。
ビジョンということで考えますと、欧米は何でこんなこと進んでいるんだという議論があるんですけど、私はもう1980年代、70年代から欧米はもう脱炭素社会に移行するというふうに決めていると思います。だから90年にIPCCの報告書が出て、リオの地球サミット、その他一連出てきています。TCFDが最近出てきているわけですけれども、これは英国政府の肝いりです。
ですので、イギリスという石炭文明をつくった国は、もう、これアウトだから次へ行こうというビジョンのもと、ただ、それを余りにも急にやるといろいろと経済的に問題になるから、いろいろな形で経済的に一番ダメージが少ないような、社会的にいいような形の仕組みをつくりつつ動かしているんではないかなというふうに思います。
ですので、そういった感じのビジョンを我々も一つは持つべきで、それはイギリスとかヨーロッパのビジョンなんで、日本は別でもいいんですけど、じゃあ、具体的にどうするのかということでは、経済的には、今、急激な形で入れるといろんなデメリットがあるとか、いろいろなお話があります。また、税金だけで入れるのか、パッケージでやるべきだと思います。財源として得たものをイノベーションに使う、またはアダプテーション、防災に使う、いろいろな形でトータルで我々として脱炭素というのをどう考えるべきか、その非常にシンボリックな部分としてカーボンプライシングがあって、下に全部それをセットで、有機的に結びつくようなセットで考えていく、そういうような土台を考えるべきだというふうに思います。
以上です。


浅野委員長
大橋委員。どうぞ。


大橋委員
先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、せっかくここに時間を費やして多くの方がいらっしゃっているので、しっかりとしたロジックのある、論理の骨の太いものをしっかりつくれるようなことができればなと。
やはりそのためにも省庁の枠にとらわれずに、他省庁を巻き込むような大きなビジョンというものもつくっていくことは重要だろうなと思います。
以上です。


浅野委員長
大野委員、どうぞ。


大野委員
私が申し上げたいことは、ぜひ具体的な議論を早く始めていただきたいということです。今日の資料の見たとき、またここからやるのかなという感じを持ちました。
私は、2007年に東京都でキャップ&トレード制度の導入を担当したんですが、そのとき、経団連から出た意見書で覚えているのは、どのような改善を図っても排出量取引制度の導入に反対であると、こう言い切られておりました。そういう意味で、やっぱり反対というスタンスを決めているところで幾ら入り口を議論してもしようがないので、具体的にどういう制度が可能なのかということを具体的に議論してほしいと。
そういう意味で1点ご紹介したいのは、資料にも入れていただきましたが、「気候変動イニシアティブ」というのが、7月6日に104の団体で立ち上がりました。それから3週間ですけれども、既に154団体、50団体増えております。ここはJapan CLPさんのような非常に先進的に取り組んでいる企業もございますけれども、それ以外の非常に幅広い団体が入っていて、やはり気候変動対策を進めていこうというベースは非常に広がっているんじゃないかなというふうに思います。


浅野委員長
大塚委員、どうぞ。


大塚委員
ポリシーミックスが非常に重要だというご指摘がございましたが、それはそのとおりなんですけれども、今日の資料にあまり入っておらず、まだ足していただければと思いますけど、やはり税に関して言うと、石炭が非常に優遇されているというのが大きな問題であり、重要な点ではないかと思います。
さらに、ほかの手法としては規制というのがあるわけですけれども、先ほど大野委員が言われたことでもございますが、省エネ法は勧告とか命令の規定はあることはありますが、それが使われることがないという、そういう法律になっておりまして、非常に行政指導的な法律になってしまっているという実情がございますので、そういう中で考えていかなければいけないという問題がございますし、さらに、自主的な取組に関しても自主行動計画等で一生懸命やっていただいてきたところではございますけれども、先ほど申し上げたように、炭素生産性に関しては、残念ながらあまり効果が大きくなかったというようなところも出てきているようなところもございまして、そういう中でカーボンプライシングというのを考えていく必要があるということで、具体的な制度設計をぜひ早く考えていくべきであると考えております。


浅野委員長
遠藤委員、どうぞ。


遠藤委員
私も先ほど申し上げたことが初回に申し上げるべき全てでございますが、先ほど私が3番目に挙げましたエネルギー供給構造の転換の点からいきますと、カーボンプライシングだけでエネルギー供給構造転換ができるわけではないと考えておりますので、今後の議論の中で、またそのような視点で発言して参りたいと思っております。


浅野委員長
牛島委員、どうぞ。


牛島委員
どうしても現実、今、目先を見ると、さまざまな困難な課題に目が行きがちだと思います。ですので、私もバックキャスティングで将来どういうふうな日本のあり方にすべきなのかというふうなところから考えるというふうなところも一つあるのかなというふうに感じました。


浅野委員長
岩田委員、どうぞ、お願いします。


岩田委員
先ほどSternさんとStiglitzさんの提案をご紹介いたしましたけれども、30年100ドルというふうに申し上げましたけど、それでも足りるかどうか、80%に行けるかどうかというのはまだわからないと思います。これは、カナダがそういう試算をやっていますけど、かなり幅がありまして、まだまだそれでも足らなくて、倍にしなければいけないということもあり得るということはちょっと申し上げておかなきゃいけないかなというのが一つと、ただ、もう一つ反対のことを言うようで申し訳ありませんが、今のデジタライゼーションといいますか、スマートに、全て経済がスマートになるということは、省エネが思ったよりも経済構造が大きく変わる中で、大きく変化して、省エネが思ったよりも進むという、こちらの側面もありまして、これはですから、経済構造全体がこの先、つまり2050年までどのように変わっていくのか、これは恐らくインタンジブル・アセットが中心で、しかもデジタルが中心で、AIがもしかすると人間のかわりをしてくれるようになるかもしれませんし、しかし、そのときに電気が増えるという説もありますし、やっぱり節約されるという。なかなか予測が難しいところがありますけれども、経済構造の変化ということも同時に考えていく必要があるというふうに思っております。


浅野委員長
石田委員。どうぞ。


石田委員
カーボンプライシングが削減に効果があるというふうに仮定して、具体的に導入する場合に一番の問題はやはり弱者にしわ寄せが行くということじゃないかなと思います。
ですから、やはり多くの国民に賛同をいただくという方法を具体的に検討して、導入ができるように考えたほうがいいんではないかなというふうに思います。


浅野委員長
有村委員。どうぞ。


有村委員
ありがとうございます。先ほどからたくさんの委員から出ているように、私も具体的なデザインからやっぱり話をして、そのデザインに基づいていろいろ議論していくということが必要になってくるというふうに思います。
特に日本の経済を考えますと、やはり鉄鋼産業とか、エネルギーをたくさん使うところが非常に強い部分でもあると。そういったところにどういった配慮をすることによっていろんなバランスをとることができるのかという経済分析もかなり蓄積があると思いますので、そういったものを踏まえて議論すべきだと思います。
ただ一方で、もう一つデザインを議論するのに、私、昨年の議論と、それから2010年のときの議論も参加させていただいたんですが、目的と手段を一緒に我々のところに振られてきて、その目的・目標がちょっとどこだかわからないというところで、漠然と制度を議論するのは非常に難しいなと思います。具体的には何年ぐらいにどこのセクターでどのくらいの目標があるから、そのためにどうするんだというような話があると議論は明確になるかなと思います。
それと、あと、グリーン税制に関して、私も非常に賛成しておりまして、特に税収を法人税に使うことによって経済の活性化につながる可能性があるという視点はとても大事だと思います。それだけで経済成長するというわけではないけれども、一定の緩和措置はできると思います。
ただ、その際に、先ほど大橋委員からもあったと思いますが、石油石炭税とか、ちょっとほかの省庁の話、関連かもしれませんが、全体を見直すと、石油石炭税、かなり大きな金額になっているのは事実ですし、国際的に見ると、そこは日本の企業は非常に負担している部分だというふうに認識されていると思いますので、そういったところも視点として大事になってくるだろうというふうに思います。
それから、あと、各国の資料が出てきましたけれども、日本国内にも東京都と埼玉と排出量取引制度を導入している例がありますので、そのお話というのは、昨年度の委員は伺ってはいますけれども、そういった視点も取り入れていくということが大事ではないかと思います。
以上です。


浅野委員長
どうもありがとうございました。最後は大変端折ってのご発言を求めて申し訳ありませんでした。
大変熱心にご議論をいただきましたが、今日、今後の議論の進め方についてもいろいろとご意見がありました。この点については、さらに次回どのように議論を進めていくかについては、事務局とも相談をしながら考えていきたいと思います。
何しろ諮問されている内容は、カーボンプライスを導入するときにどういう制度をつくればいいのかという、そこまで踏み込んだ諮問ではないのですけれども、しかし、ドライバーとして、つまり新たな経済成長につなげていくドライバーとしてカーボンプライシングは機能し得るだろうか、し得るとしたらどういう形であれば、それが機能するかと、そのことを明確にしてほしいというのがとりあえず諮問の内容であります。最低限、それに応えなきゃいけない。だから、カーボンプライスは全く意味がありませんというような答えはなかなか出しづらい面もあるわけですが、さまざまな観点からのご議論をいただきながら、どういうことであるならば可能性があるんだと。あるいは、ともかく日本でこれをどう考えていくべきなのかということについて、一歩先に進むということは、当然必要なことだろうと思います。
我々が議論を進める傍らで、先ほどちょっとマイクが入っていなくて失礼しましたが、長期の目標をどうするかということについて、中環審としては既に低炭素ビジョンを出しているわけですけれども、政府としての目標の議論が始まりますので、それを見ながら、それがはっきり固まってくれば、そのためにカーボンプライスをどう機能するかということをもっと明確に打ち出せる可能性もあるわけです。ここは、全体のタイミングがどうなるかということを見ながら考えることなので、今のところまだ、なかなか予断も難しい面もありますが、並行して横を見ながら、この議論をどこまで深めるかということはできると思います。
今日はどうもありがとうございました。
それでは、神野先生、何か、よろしゅうございますか。
では、事務局からお伝えすることがありましたらどうぞ。


鮎川市場メカニズム室長
本日はどうもありがとうございました。次回の予定等につきましては、本日のご議論も踏まえましてまた委員長とご相談した上で、また事務局より追ってご連絡を差し上げます。
本日はどうもありがとうございました。


浅野委員長
それでは、本日はこれで閉会いたします。ありがとうございます。


午後 3時58分 閉会