中央環境審議会 環境保健部会 石綿健康被害救済小委員会(第7回)議事録

議事録

午後3時00分 開会

○柳田補佐 定刻になりましたので、ただいまから第7回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を開催いたします。
 本日は、小委員会の委員11名のうち、9名の出席をいただいておりますので、定足数を満たしております。
 本日は、前回からの新たな委員といたしまして、兵庫県健康福祉部の太田医監にご出席いただいております。
 また、本日はヒアリングを行うため、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の飯田様、古嶋様、全国建設労働組合総連合の宮本労働対策部長、尼崎市保健所健康福祉局の鈴井参与にお越しいただいております。
 それでは、次に、本日の資料の確認をしたいと思います。
 まず、議事次第をめくっていただきまして、資料1といたしまして、石綿健康被害小委員会の名簿でございます。資料2といたしまして、今後の石綿健康被害救済制度の在り方に関するこれまでの主な意見でございます。それから、ヒアリング資料の一番目といたしまして、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会さんの提出資料でございます。それから、その次は委員限りといたしまして、古嶋様の追加資料がございます。次に、ヒアリング資料2といたしまして、全国建設労働組合総連合さんの提出資料でございます。その後に、全建総連さんのパンフレットがございます。ヒアリング資料の3といたしまして、尼崎市さんの提出資料でございます。それから、ヒアリング資料の4といたしまして、古谷委員の提出資料でございます。それから、参考資料といたしまして、石綿健康被害救済制度に関する資料集の追加資料でございます。
 不足等ございましたら、事務局にお申しつけいただきたいと思います。
 それでは、ここからの議事進行は、浅野委員長にお願いしたいと思います。
 それでは、浅野委員長、よろしくお願いいたします。
 なお、カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 また、傍聴者におかれましては、傍聴券にも記載されておりますとおり、静粛を旨としていただきたいと思いますので、何とぞご遵守をお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、きょう、7回目でございますが、前回までで現行制度のもとでの手直しができるところについては答申をまとめることができました。きょうからは個々の石綿健康被害救済制度の在り方についての審議に入りたいと思います。
 環境省、国は、6月1日からクールビズだと聞いておりますが、きょうはちょっとタイミングが悪く、10日前で、クールビズ期間ではございませんが、上着をおとりいただいて結構でございますので、よろしくお願いいたします。
 きょうは関係者の方々からのご意見を伺うということにいたしまして、その後、時間がありましたら、前回、フリーディスカッションで委員の先生方から意見やご質問があった点について、事務局から説明をいただいた上で意見交換をしたいと思っております。
 きょうはお忙しい中、先ほど、事務局からのご紹介がございましたが、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の飯田様、古嶋様には、おいでいただきまして、ありがとうございました。また、全国建設労働組合総連合の宮本労働対策部長、尼崎市役所健康福祉局の鈴井参与のお二方にも、本当にお忙しいところ、わざわざおいでいただきまして、ありがとうございました。
 大変恐縮でございますが、時間が限られておりますので、10分程度でのご発言をお願いし、その後、私どもからご質問があればご質問申し上げるということにしたいと思います。
 では、まず、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の飯田浩様と古嶋右春様のお二方にご意見を伺いたいと思いますので、どうぞ前の方にお進みいただいて、前のテーブルの方でお話しくださいますように。

○古嶋氏 こんにちは。お世話になります。兵庫県明石市から参りました古嶋右春といいます。きょう、お父さんと娘と一緒に連れてきましたから、どうぞよろしくお願いします。
 私の夫、古嶋美代司は、昭和11年、兵庫県養父市に生まれ育ち、学校を卒業して、尼崎で1956年(昭和31年)から1962年(昭和37年)まで6年1カ月間、日本通運尼崎支店に勤めていました。
 夫は、大型トラックで神戸港からクボタ神崎工場までアスベストを運搬する仕事やクボタ神崎工場内ではピット作業が主で、漁師さんが履く長靴を履いてピットの掃除をさせられていました。
 アスベストの袋は、ドンゴロスでできており、目地の間や破れた穴からアスベストが空気中に舞い上がっていたのに、マスクもしないで、全身真っ白になって作業をしていたと、夫から聞いています。
 1959年(昭和34年)、私たちは結婚し、翌年長女も生まれました。当時の尼崎は、光化学スモッグが頻繁に発生して、環境がよくないからと、長女が1歳のころ、明石へ移り住みました。
 夫は定年後、自治会に参加したり、6人の孫の世話をしながら、穏やかに暮らしていました。ところが、2004年(平成16年)12月、夫は足がむくみ出し、おなかが異様に膨らんで、階段を上がるのがつらくなりました。担当医から「若いころ、アスベストを扱う仕事をしませんでしたか」と訪ねられ、私は初めて夫の口から日通でアスベストを扱う仕事をしたことを聞いたのです。
 私も家族もアスベストに関する知識など全くなく、石綿のことは何となく新聞やテレビで知っている程度でした。担当医がたまたま中皮腫に関する情報を持っておられたので、夫の病気が悪性腹膜中皮腫であることがわかりました。「中皮腫」など、それまで見たことも聞いたこともない病名でした。有効な治療法もないまま、2005年(平成17年)4月30日に、自宅に帰ることなく、68歳で息を引き取りました。
 年末に病院を受診してから、たったの4カ月です。夫が死ぬことの覚悟などできようはずもなく、この中皮腫という病気の恐ろしさを思い知らされました。
 そんな中、同じ年の12月、今度は娘も悪性胸膜中皮腫にかかっていることがわかりました。夫が亡くなって一周忌も終わらないうちに、また身内からアスベストの被害者が出たのです。この残酷な事実を、娘も私も受けとめることができませんでした。
 娘がそれまで住んでいた地域や仕事には、アスベストに関係するものはなく、幼児のころ、日通で働いていた父親との接触のほかに原因が考えられません。私たちは、手をとりながら、「お父ちゃんを恨まんとこうね」と声を殺して泣きました。
 娘は、平成11年に夫(42歳)と死に別れており、女手一つで18歳を筆頭に3人の子供を育てていました。ですから、「子供たちのために私は死ねない。お母ちゃん助けて」と必死に病気と闘いました。
 有効な治療法が見つからない中、温熱療法や漢方薬など、あらゆる方法を積極的に試しました。その費用は月十数万円かかり、娘の場合、パートの仕事もできなくなり、労災が適用がされないので、病気とわかって、すぐに石綿新法の申請をしました。ところが認定期間は5年と切られ、月額10万円の療養手当では、到底一家の家計は賄えるものではありませんでした。
 患者にとって期間を切られたときの精神的なダメージ、短大生を筆頭にまだ小学生を抱える母親にとって、余りにもつらい現実でした。
 娘の容体が日増しに悪くなっていく中、アリムタが認可されましたが、抗がん剤治療に耐えるだけの体力は残されていませんでした。看病の甲斐なく、病気がわかってすぐに2年8カ月、2008年(平成20年)8月31日、48歳の若さで娘はこの世を去りました。
 当時、長女22歳、長男20歳、次男15歳、中学生で、両親を亡くしたため、次男の後見人の手続から始まり、家の登記のことなど、費用も手間も大変でした。
 子供たちの生活は、就職して間もない長女、長男の収入と次男に対しての父の遺族年金で賄っています。内訳は、長女手取り15万、長男手取り12万、遺族年金10万円の生活をしております。
 我が家の場合、長女、長男が就職し、少ないながらも収入があるので、何とかやりくりできていますが、そのため、次男の育英奨学金が対象にならず、教育費用(クラブ費用)をこの中から捻出しなければなりません。
 少なくとも未成年ないし学生に対する保障制度を見直ししなければ、万が一、長女、長男が学生であれば、もしくは失業でもしていれば、到底生活ができものではありません。次男のために長女、長男が犠牲になるようでは、亡くなった両親も浮かばれません。
 私は、大事な夫と娘の命を奪ったアスベストが憎いです。子供たちの幸せを願い、心を残して亡くなった娘が、今のままではかわいそうです。
 それから、ちょっと言わせてください。
 泉南のアスベストの訴訟で、周辺住民に対しての賠償を避けられた件について。娘と同じ苦しみを受けている方が救済の対象にならないのが信じられません。アスベストによる疾患であるのにもかかわらず、労働者じゃないという理由で救済されないのは理不尽です。中皮腫・肺がんだけでなく、国が危険を知りながら使用をし続けたアスベストによる疾患は、ほかにもあるのです。何も知らされず、原因がわからないまま亡くなっていった命も数多くあるのです。せめて、今、苦しんでいる人たちに誠意を見せていただきたいと切に願います。
 それから、この中に、孫が私に手紙をくれています。それ、読む時間がないから、ちょっと中に入れさせてもらっています。両親はいませんが、孫は本当に素直に育っています。ありがたいことだと思っています。どうか、よろしくお願いいたします。

○飯田氏 ありがとうございます。
 尼崎の方で患者と家族の会の事務局を担当しております飯田浩と言います。
 今の古嶋さんのケースは、夫が若いときに事故で亡くなって、母子家庭だったわけです。その母子家庭のお母さんまで中皮腫で亡くなってしまって、働き出したばかりの子供たちの賃金と、それから、お父さんの遺族年金、わずかですけれども、それでやりくりをしていかなければいけないという、何にもないという状態です。これだと、若い二人の方も結婚資金や何もためることができなくなってしまうという状態になっているわけです。古嶋さん、76歳ですけれども、お孫さんのお弁当をつくったり、家事全般を彼女が引き受けてやっているという状態なわけです。ぜひ、石綿救済法の改善で、少しでも安心ができるようにしてもらいたいと思います。
 私の方の話に移りますけれども、尼崎という町は、大気汚染がひどくて、公害の指定地域にもなっていたわけですけれども、今は解除になりましたけど、広い地域が公害指定地域になったのが、公害健康被害補償法ができた1973年、昭和48年になっています。
 尼崎市は、日本経済の高度成長の時期に、大気汚染による公害指定地域として非常に有名になりました。好ましいことではありませんけれども、そういうイメージがいまだに定着しているように思います。気管支ぜんそくに苦しむ人がふえて、これまでに累計で1万1,000人の患者さんが公害認定、その多くは気管支ぜんそくなんですけれども、認定をされています。この公害指定地域が1988年の3月に解除をされて、新規の認定も打ち切りになっています。ですから、今、認定中の患者さんは2,000人少々だったというふうに思っていますけれども、打ち切りになってしまいました。
 この大気汚染の影響で、尼崎市は最大時55万程度の人口があったんですけれども、大気汚染だけではありません。工場の移転などの問題もありまして、全体として人口が急激に減っている都市です。
 大気汚染公害によるぜんそくに苦しんでいる患者さんには、補償給付がある。これは中に表を入れておりますので、公害指定の認定患者さんの場合に、特級、1級、2級、3級とありますけれども、どのような補償がなされているかという表を入れておりますけれども、例えば、55歳から59歳の1級の患者さん、1級ということは労働することができないというふうに判定された方です。特級というのは、さらにこれに加えて、介護が必要であるというふうに判定された患者さんですから、1級であれば、月々34万円、男性。これは男女差が非常に激しい法律なので、今の時点で考えると見直すべき内容があるわけですけれども、男性であれば、34万円の障害補償費が支払われていると。これに特級であれば38~9万円、表で見てもらったらわかりますけれども、そういう金額になっているはずです。それから、入院されたり、あるいは、通院の場合、日数が決まっていますけれども、それぞれ3万円から2万円を超える療養のための手当、交通費であるとか、入院したために余分にかかる経費であるとか、そういうものを賄うために療養手当が支払われて、また、不幸にしてお亡くなりになった場合には、約66万円の葬祭料があります。石綿救済法と比べると、雲泥の差になっていると。さらに、遺族に対して、大体平均賃金の70%ぐらいを目安に、月々、このケースですと30万円の遺族補償が10年間にわたって支給されると。ですから、さっきのような古嶋さんのケースでも、何とかこれで息をつないで、無事、長男、長女のお二人も生活を築いていくことができるということになると思うわけです。
 また、これは少し性格が違いますけれども、公害の場合だと、15歳未満の認定患者児童を扶養する場合、今、そういう該当者はもうありませんけれども、11万円から2万円の児童補償手当があると。あるいは、労災でいうと、遺族の方に対しては、小学生から大学生まで月およそ4万円から1万2,000円でしたか、ぐらいまでのそれぞれ月々の就学援護費が出て、学校へ行く教育の問題でつらい思いをしなくて少しでも済むように配慮がされています。
 労災補償の水準には及ばないところがありますけれども、アスベスト被害について、尼崎市民の多くの人というか、ほとんどの人だと思うんですけれども、みんな、公害だというふうに思っていますよね、労災の方以外については。だから、公害と認識しているものだから、石綿救済法と公害補償と、救済と補償という呼び方の違いはありますけれども、どうして同じ被害、片方は工場の中で起こった被害、片方は工場の中の粉じんが、石綿がどんどん外へ飛散して起こった被害、どうして、これにこんなに格差が設けられるのかということについて、納得のいかない人が、当たり前ですけれども、極めて多いということがあります。
 クボタの旧神崎工場周辺の被害者が、今、215名ぐらいでしたか、クボタの方に書類を提出しておりますけれども、この被害者について、国が被害の程度であるとか、どの辺まで被害が及んだのかといった範囲の問題とか、こういうことについては、全く調査を積極的にするということが、私はなかったと思いますけれども、そして、また、司法の関係、弁護士さんであるとか、裁判所であるとか、こうした人たちの手を煩わせることも全くなく、被害者と加害者の直接交渉によって、尼崎ではクボタとの間に救済金制度の早期成立に至るということがありました。配られている資料の中に、救済金の趣旨についてという文書、これはクボタが起案したもので、私どもが一応了解をしているという文書を中に入れておりますので、またごらんになっておいていただいたらというふうに思います。
 2005年、ちょうど5年前になりますけれども、2005年の4月26日に、今は亡くなりました前田恵子さん、土井雅子さん、そして今も療養中の早川義一さんという3人の患者さんが、初めてクボタと面談をするということがありました。この話し合いは、怒号の中でといったものではなくて、終始冷静な雰囲気の中で、仕事で石綿を取り扱ったことがなく、クボタの旧神崎工場の近くに居住していたことしか原因が考えられないこと。抗がん剤や入院費用が高くて経済的に非常に厳しい状態にあること。クボタの従業員への対応に比べて、その適用がない自分たちへの何らかの対応が必要ではないかと考えているといったことが、それぞれ淡々と語られて、これが救済金の制定につながる出発点になっていきました。
 クボタに対しては、これまでに患者さんの側から切実な要望書や仮払いの要請が出されてきています。Aさんは、2006年9月に54歳で亡くなりました。よく覚えているんですが、子供さんの受験の年だったんですね。だから自分がもうこれで亡くなっていくのが残念だけど、やむを得ないとしても、こんなことで子供を大学に行かせられないということにだけは絶対にしたくないと。だから何とかして、そういう補償をとれるように生きている間に頑張ってほしいということを強くおっしゃっていましたし、また、残った妻にマンションの支払いをゆだねるようなことは、とてもできないということをおっしゃっていて、この人は入院しながらでも、当時、小池環境大臣が尼崎に来たようなときは、本当にパジャマででも病院から駆けつけてきて、何とか後の人が、安心とまではいきませんけれども、暮らしていけるような生活の保障になる制度をつくってほしいということを切々と訴えておられました。
 また、Bさんは、この方は非正規の社員で、今は非正規の方が大変多いわけですけれども、社員であるときに発病されて、入院費用はもちろん生活資金の借り入れ、教育ローンの返済で、本当につらい思いをされました。
 ちょっと次のページに最初の受験生である子供さんを残して亡くなられた方の要望書というのを添付しておりますので、見ていただきたいんですけれども、1番、平成11年6月発病以来、かかった医療費を補償してほしいと。実は今回の石綿……。

○浅野委員長 お二人方で20分程度と思っていましたけれども、まだあとお二人にお話をいただいたあと、古谷さんからご意見をいただくために時間が必要ですので、少し簡潔にお願いいたします。

○飯田氏 努力させていただきます。
 端折って見ていただきますけれども、この費用を、実際の石綿救済法では、さかのぼるのは3年しかなかったので、この方が一番医療費のかかった時点は補償はなかったんですね。それから、5番のように非常に生活費が減収になっているということ。
 それと、非常に深刻な問題で、これはほかにも事例があるはずなんですけれども、11番のように、この病気を苦にしたり、将来を不安に感じて、みずから自死をされるというケースがあります。そういうケースの補償についても、きちんとしてほしいというふうに訴えております。
 もう1枚挟んでおります、株式会社クボタ殿という文章がありますけれども、この方は、昭和27年8月生まれの方で、まだ若い方なんですけれども、書いてありますように、病気になったとき、非正規の社員の収入と妻のパートの給料、こういうものを足して、到底生活は成り立たっていかないということを切々と訴えて、クボタとの関係はまだ決まらなかったんですけれども、とにかく、今、お金がないと、療養生活を維持できないということを訴えられた方です。ぜひ、ごらんになっていただきたいというふうに思います。
 それから、もとに戻りますけれども、全国には同じようなケースが、これはたまたま補償が得られているわけですけれども、同じようなケースが数知れずあるというふうに考えられます。しかし、今の石綿救済法は、家族の生活の安心を保障するものには全くなっていない。この法律ができたときは、みんなほっとしたんですね。医療費が払えるから。治療が続けられるということで。しかし、それが落ちついてみると、生活の方が今度はやっていけないということがわかってきた。傷病手当の切れそうな会社員なんかの方は、本当に悲壮なことを電話などでも常々訴えておられます。
 私たちは石綿に対する規制を怠ってきた人たちが、今、どちらかというと、ぬくぬくとお暮らしになって、しかし、その一方で、ほったらかしにされたために想像もしない被害をあびた人たちが、日々の暮らしに怯えなければならないということは、絶対にあってはならない。だから、法律をつくるんだったら、生活が安心できる、少なくとも、あした、あさってのことは考えなくて、もう少し安心して暮らしができる法律にしなければ、つくった意味がないというふうに思うわけです。
 それから、最後に一つだけ、肺がんの問題について、ちょっと触れさせてもらいますけれども、尼崎市は突出して中皮腫の患者の多い都市ですから、当然、石綿に起因する肺がん患者も多いというふうに考えられます。
 しかし、実際、尼崎は肺がんに限らず、がん患者が大変多いということが、最近も何か雑誌で出ておりましたけれども、非常にがんの患者の多い町になってしまっていると。これには経済的な理由で治療を中断せざるを得ないような患者さんが、尼崎の場合、相当おられるんじゃないかということも考えられます。
 石綿に起因する肺がんの認定がなかなか進まないということで、私どもは、ぜひ、市内の肺がんの患者さんの調査を国の方で徹底して進めてもらいたい。例えば、肺がんで石綿救済法で認定されている方、労災で認定されている方、いろいろありますけれども、職業歴や居住歴、クボタからの距離がどうなのか、画像の判定はどうなっているのか、石綿小体がどのぐらい出てくるのか、繊維で言うと何本ぐらいになるのか、あるいは青石綿なのか、茶石綿なのか、白石綿なのか、こうしたことを調べることによって、私自身は、クボタの近隣に限って言えば、まだまだ、というのは言ってこられても、証明が難しいので、ほったらかしになってしまう女性の方なんかが多いんですね。ですから、何とかしてここをきちんと調べていただければというふうに思っております。この調査を進めることによって、居住歴と、あるいは、その時期、年数、距離と石綿ばく露量との関係も明らかになっていくことも当然ありますから、それによって救われる患者さんもふえてくるし、これがまた全国的な環境ばく露の基準としても役に立つと思います。
 ぜひ、肺がんの調査については積極的に進めていただきたい。尼崎のクボタの周辺は、あるいは泉南の周辺も同じなんですけれども、これは、皆さん、こんなことを言ったらおかしいなと思われるかもしれんけど、実は工場の延長なんですよ。工場の中が皆さんが想像しているより度外れてひどかったということで、工場の周辺の人の石綿小体の数とかを見ていると、これは明らかに職業ばく露の水準ですから、実は周辺に工場が広がっていたということなわけです。ですから、先ほども出ました泉南の判決もありましたけれども、工場の中の人はそれなりに救われるけれども、そのほかについては、いわば規制ができなかったために外へ全部噴き出しているわけですから、それは関係ないよというのはひど過ぎるというふうに思っております。
 ぜひ、検討していただくように、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、ただいまのお二方に対して何か委員の先生方からご質問ございますか。よろしゅうございますか。
 飯田さん、よくわかったのですが、肺がん患者の調査は、全く今まで行われていないのでしょうか。

○飯田氏 行われていないと思います。

○浅野委員長 わかりました。
 それでは、どうもありがとうございました。あと、お二方と、それから、きょう、古谷委員から少し時間を欲しいということでしたので、ご説明いただく必要がございます。
 それでは、続きまして、全国建設労働組合総連合の宮本さんからお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○宮本氏 このような機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。ご紹介いただきました全建総連の宮本でございます。座ってやらせていただきます。
 ヒアリング資料2の方と私どもが2007年の9月1日に作成をいたしました「建設労働者のいのちを守ろう」というパンフ、二つ用意してございますので、よろしくお願いしたいと思います。
 この委員会が労災で補償されない被災者を対象とした制度の在り方の検討ということでありますけれども、職業で被災をしながら給付されないという建設業における現場で作業をしている被災者、こういう方たちに対する給付、あるいは救済という在り方については、労災制度の改善というのは当然あるわけでありますが、その改善の要求とともに、この委員会の中での論議に託すというふうにしたいと思います。
 最初に、全建総連の組織について簡単に触れさせていただきますけれども、まさに1960年、じん肺法が制定されたときに結成をしました。当時は7万人という少ない人数でありましたけれども、現在、70万弱の組織でありまして、50年という中で組織が鋭意前進しております。建設就業者ということで言いますと、現在は517万人、最大のときは685万人と言われていましたけれども、その数値、就業者比率で言えば、13.4%、雇用者ということで言うと、約20%という組織の状況であります。
 大工、左官、電工、そういった方たちの技能労働者を中心に組織をしておりまして、一人親方とか、零細事業主、労働組合がなぜ事業主をというようなお話もあろうかと思いますけれども、建設の場合は特殊でありまして、四つの私ども職階を持っていました。かつて、見習いという、現在は見習いはほとんどありませんけれども、見習いから職人になって、そして一人親方になって、人を使う事業主になるという四つの職階があったということで、こういう方たちがすべて現場で働いてきているというような現状にあります。
 2番目でありますが、そういう中で、私どもの組合員に被害が大変増えていると、こういう状況であります。建設については1950年でありますけれども、建築基準法で定められた耐火製品のアスベスト含有建材、これを使えというような指示のもとで、危険な建材であるということを、ほとんどの方が知らなかった。そういう中で(石綿に)ばく露をしている。そして、現在、その疾患を発症しているということであります。
 建具屋さんとかサッシ屋さんとか、直接そこでアスベストを扱わないでも、同じ現場の中で仕事をしていることによって、あらゆる職種がアスベスト粉じんを浴びる、そういう状況の中で被害を受ける。そして配偶者、事業者、とりわけ小規模な事業者は、奥さんを手元に使う、あるいは現場の清掃に使う、こういうことで家族のばく露、こういうこともありまして、最近、私どもの健康診断においても、有所見者が非常にふえているという状況であります。
 二つ目には、これからの既存建築物の改修や建替工事、そういうことを通じてさらに被害が広がるのではないかという懸念があるということについて記載をさせていただいております。
 三つ目には、就業者比率、冒頭に申し上げましたけれども、ざっと500万人という状況でありますし、680万人から517万人という、減ってはいますけれども、こういう大きな産業の中にばく露が広がっているという意識を持っていただく必要があると思っております。
 4番目でありますけれども、そうした中で、全建総連として、組合員のアスベスト疾患、疾病を早期に発見をして、そして同時に健康管理措置をとるというようなことで、専門医の診断、治療、こういうことを促して、病気が進行していれば労災を申請する取り組みを進めてきました。
 昨年の私どものアンケートによりますと、私どもに53の組合がありますけれども、17の組合で177人が中皮腫、肺がんで認定をされるという状況であります。この間、2006年が179人、2007年が189人、2008年が185人ということで、この間の累計が998人の労災認定者を生み出しています。
 直近1年間、中身を見ますと、一般的には中皮腫が非常に多いと言われておりますけれども、私どもの方では、肺がんと石綿肺が非常に多い。とりわけ首都圏で際立っているという状況であります。なかなか肺がんが救済されないという中にあって、肺がんの比率が高いという状況であります。
 また、救済法においても、昨年は50人ほどの認定が認められているということであります。
 建設業においては、とりわけ一人親方とか自営業者、家族従事者、こういう人たちというのは、517万人の中で約83万人ぐらいだろうと、これが総務省の統計でありますけれども、大体そのぐらいの予測がされています。そういう一人親方に対して、特別加入という制度もありますけれども、その特別加入者の割合というのが非常に少ないと言えると思います。
 [5]のところでありますが、労災保険と救済法を合わせると、230人の給付が行われてきています。救済給付についても、7件ということでありまして、この間の認定では、不支給という事例も非常に多くなっています。不支給事例については5ページの4番目以降に、8件ほどの状況について簡単に列記をしてありますので、ご参照をお願いしたいと思います。
 そういう中で、やはりアスベスト疾患の多くが重篤な疾患になる。もちろん先生方はご存じのことでありますけれども、私どもの中で組合員の患者さんが本当に苦しみながら亡くなっているという現状が、いろんなところで報告をされます。被害が本当に甚大であるということ。それから、建設労働者の多くが、有給休暇とか雇用保険、これに入っていない状況、自営業者、こういう方たちがほとんど給付水準も低い、そういう状況に置かれているという現状であります。
 そういう中で、すべてのアスベスト関連疾患を「漏れなく救済」をしていただく、こういうことが必要なのではないか。所管庁が環境省ということになりますけれども、私どもは厚生労働省や国土交通省、こういう関係省庁と連携しながら、入り組んだ課題についても論議をいただくということが大事なのではないかと思っております。
 とりわけ、[1]から幾つか書いておりますけれども、強調したいことについては、一つは、アスベストにばく露した疾病、多くの場合に別の病名になって見逃されているという現状が、この間、非常に多いということであります。
 その3ページの方にもちょっと書いてございます。私どもの国保組合で運営しておりますけれども、この国保組合の中で早期に発見をするための掘り起こし活動というのをやっております。一つは健康診断のレントゲンフィルムを再読影していただく、専門医の先生方に再読影をしていただくという活動、それから、有所見者のレセプトチェック等々を行っているところであります。再読影については、この間、32の組合で専門医の方に見ていただいたわけですけれども、15万5,000枚を見ていただきまして、プラークがある、所見があると言われているのが、大体9.9%、単純平均でありますけれども、約1割の方にプラークがあるというふうに言われておりまして、今後の病気発症の懸念が強まっているのではないかなと思われます。
 それから、国保組合独自で行っておりますレセプトのチェックでありますけれども、これも関連疾患等々があるということで、二次検診とか専門医への受診を勧めている、こういう活動を行っているわけであります。
 先ほど言いましたように、事例1と事例2ということで東京と神奈川の事例をここに書いてございます。東京の事例については、7ページに表というかグラフがありますけれども、この7ページのところを見ますと、一般病院で全くアスベスト疾患でないという病名がつけられているということです。石綿肺で認定された66名、この石綿肺のうち、レセプトがあった36名について調査をしました。この調査をした結果、石綿肺というふうに当初から診断されていたのは、たった4件しかないと。そのほかは肺気腫だとか気管支ぜんそくだとか、全く違う病名がつけられているということがわかりまして、これが、全国化しているのはないかという懸念をしているところであります。神奈川の事例についても、規模は小さいですけれども、同じような状況であります。
 [2]の方でありますが、そういう中で、現在、当委員会において石綿肺とびまん性胸膜肥厚についての考え方が出されまして、それらが追加される方向だというふうにお聞きをしております。
 また、WHOの方の国際機関の方を見ますと、新たに喉頭がんとか卵巣がんとかが追加をされたということでありますから、そういう病気だけではなくて、本当にパブコメにも記載をされておりましたけれども、やはりそういったがんというのも対象とすべきじゃないかと。私どものある組合では、胃がんの発症率が一般よりも2倍高いという数値もありますから、アスベストと関係があるのではないかという、そういう懸念もあるところであります。
 そういう中で、この石綿救済法における石綿肺やびまん性胸膜肥厚の基準と、労災の基準というのが、全く違うことになるということになれば、いわばダブルスタンダードではないかというふうな懸念があります。そういう中で、すべてアスベストばく露を受けて亡くなったり、病気を発症している人たちに対しては、そういう漏れのない、すき間のない救済というのをぜひ検討していただきたい。
 3番目には、やはり健康管理の問題であります。4ページですけれども、一つは、健康管理手帳の取得ということがありますけれども、それは労災の課題でありますが、一方で、やはり労働者ではないとして交付を拒否されている一人親方、あるいは事業主という者もおります。事業主といっても、かつては労働者としてずっと現場作業に携わってきた方でありますから、こういう方たちに健康管理を担う制度がないということになりますので、そういう意味では、石綿救済法における長期的な健康管理制度をぜひつくっていただきたいということをお願いしたいというふうに思います。
 また、そういう健康管理を担う病院も本当に少ないというふうに私ども思っておりますので、そうした医療機関の拡充というのが必要ではないかなというふうに思っているところであります。
 4番目については、一人親方、事業主、家族従事者、こういった人への抜本的な制度の拡充ということでよろしくお願いしたい。一人親方の場合、私どもの例えば東京の場合、数字はありませんけれども、226人の認定患者を調査したところ、労働者で認定された方が65%、特別加入者で認定された方が35%ということで、特別加入者が半分ぐらいになっています。そういう中で、特別加入者の場合は非常に金額が低くて、8,224円が救済のレベルということになっておりまして、この辺の課題ということについても、労災ということが中心でありますけれども、問題が出ているということであります。
 そういう中で、5番目でありますが、医療研究というのもぜひ進めていただきたいということであります。
 6番目はちょっとダブっておりまして、7番目は、もちろんこれは、ここ(小委員会)の課題ではありませんけれども、今後のばく露対策の強化という課題も総合的な対策という範囲の中でやっていただきたいなと思っているところであります。
 8番目も同じような状況でありますけれども、今、報道によりますと、副大臣級の会合を設置するという報道がありましたけれども、これもぜひ期待をしたいところでありますが、ぜひこの救済法が、労災とか救済法とかで漏れがなく救済、充分な補障ということでやっていただきたいことを願いまして、私の報告とさせていただきたいと思います。
 最後に6ページの方でありますが、この小委員会に向けて若干意見を申し述べさせていただきますが、制度のあり方について小委員会、ここで言うべきことではないかもしれませんけれども、なかなか一人親方、我々の建設に携わる立場の委員さんがいらっしゃらないんじゃないかというふうに思っております。そういう意味では、私どもの推薦する委員もぜひ加えていただきたいということをお願い申し上げまして、私の報告とさせていただきます。
 ありがとうございました。

○浅野委員長 具体的なご提案を含めてお話を伺いましたが、何かご質問がございますでしょうか。
 家族従事者の方が随分たくさんばく露されているというお話はよくわかりました。それで、恐らくそういう方々が、労災特別加入などほとんどしていらっしゃらないだろうということも容易に想像ができるわけで、この法律制度の枠組みの中では、そこをかなり重視して救済しなきゃいけないということを考えながらもこれまで議論を進めてまいりましたので、そこは、私どももわきまえているつもりでおります。なぜ特別加入をしないのかなどという質問をするのは、余り賢い質問ではないということもわかっていまして、それは、できるものなら皆さんなさるだろうと、容易にわかることでありますから、その辺の谷間というのでしょうか、すき間をつくらないようにということを考えて、とりあえず前回までの答申は現行法の中でできることは何とかしましょうということでやったわけですけれども、今後とも検討していきたいと思っております。どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりましたが、尼崎市からのご意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。健康福祉局の鈴井さん、お願いいたします。

○鈴井氏 発言させていただきます。よろしくお願いします。
 このたびは、石綿健康被害救済小委員会にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。今回、石綿健康被害救済制度の在り方について、尼崎市の意見を聞いていただけるとのことで馳せ参じました。
 ご存じのように、今回の問題は、尼崎市にあった石綿取り扱い企業の従業員のみならず、石綿の一般環境ばく露により、周辺地域の市民にまで健康被害が及んでいるという報道から、大きな社会問題となりました。
 一般環境ばく露による健康被害であることが最も重大な問題点の一つであると私どもは考えております。健康をつかさどる厚生労働省ではなく、環境をつかさどる環境省が担当しておられるのも、一般環境ばく露という点がポイントになっていると伺っております。
 さて、尼崎市からは3点についてご意見を申し上げたいと思います。まず、第1点目といたしましては、一般環境ばく露による健康被害に十分に配慮した改正としていただきたいということです。日本国内の状況に目を向け、一般環境ばく露の健康被害が心配されている地域で取り扱っていた石綿の種類を見ますと、白石綿よりも角閃石族の青石綿や茶石綿が多かったようです。健康影響の強い角閃石族が、一般環境ばく露による健康被害を大きくした一つの要因かもしれません。
 一方、流通量を見てみますと、国際化学物質安全性計画の報告書にもありますように、全体の95%がクリソタイル、白石綿だったようです。そのためか、健康被害についての報告書も石綿の種類について言及していないものも含め、多くは白石綿の健康影響についてのようです。私どもといたしましては、日本国内で問題になっている一般環境ばく露の多くが角閃石族によるものと思われているにもかかわらず、クリソタイル、白石綿の健康被害データを主に議論が行われ、角閃石族の一般環境ばく露による健康被害について議論の少ないまま終了してしまうのではと危惧しております。
 もちろん、世界的にも角閃石族の一般環境ばく露についての情報が十分ではないので、白石綿の健康影響をもとに検討せざるを得ないとは思いますが、今後、一般環境ばく露の情報は、石綿救済法の際に行われるアンケートなどで集まってまいりますので、ぜひこの情報を有効活用して一般環境ばく露についての解析をさらに進めていただき、一般環境ばく露による健康被害に、対象疾患の範囲でも、それから補償額など救済の内容の面でも配慮していただきますようお願いします。
 例えば、石綿による肺がんについて考えますと、確定診断するためには、石綿小体の測定にかかる経費助成が必要だと思われます。さらに、技術的に極めて困難な石綿繊維そのものを測定する必要がある場合も少なからずあるようです。しかし、これができる施設は、日本国内に一、二カ所しかないそうです。それら施設への人的・財政的サポートや、一般環境ばく露の発症例が多い関西にも同等施設の設置を検討していただければと思います。これらの面も含め、一般環境ばく露による健康被害に十分配慮していただきますようお願いします。
 次に、2点目といたしまして、石綿健康被害救済法にかかわる長期療養者への情報提供のことについて申し上げます。社会問題化して以降、多くの方が早期に発見、治療を受けられるようになり、長期療養中の方々も少しずつではありますが増えてまいりました。最近、聞くようになったご相談としては、医療手帳は5年間の期限とあるが、その後はどうなるのか、不安だというものです。既に今後の扱いについて詳細が決まっているようでしたら、ご本人やご家族に、また各自治体の窓口にも案内をお願いします。療養の必要な方が安心して療養に専念できる制度の拡充をお願いいたします。
 最後に3点目ですけども、アスベスト健康診断、これを石綿救済制度の中で実施していただきたいということについてです。尼崎市で多くの石綿、特に青石綿が使用されていたのは、昭和30年代から40年代ですが、当時、尼崎市にお住まいだった方の多くが、今では他の地域に転居しておられます。平成17年7月頃の健康相談では、北は北海道、南は沖縄まで、全国各地からのご相談がございました。現在、尼崎市を含めまして全国7地域で石綿の健康リスク調査という手法で住民の方々に健康診断を受けていただいておりますが、当時居住していた方々に受けていただくための拠点としては、全く不足しております。遥か遠方にお住まいの方に、尼崎市の健康診断を定期的に複数回受けに来ていただくのは、ご本人にとって負担が大き過ぎると思われます。石綿の環境経由による健康被害につきましては、今後、10年にわたり増加し、30年以上続くという研究予測もあることから、恒久的な措置として健康診断を石綿救済法の中に取り入れ、全国各地で実施していただきますようお願い申し上げます。
 以上3点についてご意見を申し上げました。どうかよろしくお願いいたします。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご意見に対して、ご質問ございますでしょうか。

○古谷委員 尼崎市としては、今の尼崎在住者、あるいは、かつての在住者に被害が多発していることについて、何が原因だというふうに判断されているのかということと、また、その点に関して、国の判断なり国に期待、求めているようなことがあったら、ぜひお聞かせください。

○鈴井氏 今の時点では、国の調査が現在進行形で、確たる証拠はないといったような状況ではあるとは思うのですけれども、当時扱われていた石綿の量というのは、かなり尼崎市の場合は多かったというデータは残っておりますので、それらの影響があったのではないかとは考えております。

○浅野委員長 よろしいですか。ほかにご質問がございますでしょうか。いかがでしょうか。
 きょうのご意見の中では、かつて尼崎市に住んでおられた方、全国散らばっておられるので、拠点をきちんとつくって健康診断をしなければいけないというご意見だったというふうに伺ったわけです。

○鈴井氏 確かに拠点なんでしょうけれども、それもかなり広い範囲で設けていただく必要があるかというふうに思います。少なくとも、今現在の7地域では到底足らないというように考えておりますし、尼崎市だけで言えば、転居した先についてはある程度わかってはおりますけれども、それは、尼崎市だけの話であって、ほかの地域を考える場合、恐らくは全国にまたがっているものと思われますので、最低でも各県1カ所はなければいけないというふうには思うのですけれども。

○浅野委員長 今、7カ所ぐらいでやられている健康診断というのは、どういう項目の診断をやっておられるのでしょうか。

○鈴井氏 項目につきましては、まず詳細な問診を、居住歴、それから職業歴、それから我々の場合は通学歴についてもお伺いしています。その上で、ばく露の可能性のある方に関しては、保健所の方でレントゲンを撮らせていただきます。その結果をご本人さんにお伝えして、指定病院を今3カ所設けておるんですけれども、そちらの指定病院で胸部のCTを撮っていただいて、専門の先生にそのCTの検査の結果をお伝えしていただくようにお願いしております。

○浅野委員長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。いただいたご意見は、今後の検討の中で十分に反映させていきたいと思います。
 どうもきょうはヒアリングにご参加いただきましてありがとうございました。
 それでは、この後、古谷委員から、前回少し時間を欲しいというご要望がございまして、資料をご提出いただきましたので、古谷委員からのご説明をいただくことにいたします。

○古谷委員 ありがとうございます。お手元にヒアリング資料4という形で事務局の方が、参考資料というのを用意していただいているんですが、もしかしたらこれを先に説明していただいた方が順序としていいかなと思ったんですが。

○浅野委員長 一応、ちょっと古谷委員の方からのお話を先に伺って。

○古谷委員 これは後で説明していただけるわけですね。

○浅野委員長 それは前回の積み残しということですから、後でやります。

○古谷委員 これからの検討に当たっては、アスベスト健康被害補償救済の現状がどうなっているか、整理した上で課題を考えるべきだろうということで用意させていただいた資料です。
 1枚目の下に民主党政策INDEXを入れておいたのは、ちょっとあとの頁の上下の図をわかりやすい配置にするために、ここに入れた方が据わりがいいのでここに置いただけです。
 めくっていただいて2ページ、3ページは、おさらいのようなもので、若干これまでの議論にも出てましたけれども、日本のアスベスト被害がどうなるかというようなこととの絡みで、2ページの上の図は、人口一人当たりのアスベスト消費量のトレンドと国際世界平均を示したものでして、おわかりのとおり、実際問題として、日本がアスベストを使用しなくなったのは、北欧諸国に比べると四半世紀、他の欧米諸国に比べれば15年から25年おくれているということが一目瞭然なわけですけれども、そのような状況も踏まえて、下の方の図は、人口100万人当たりの中皮腫の死亡数のトレンドでして、日本はこんなふうに来ているわけですけれども、果たしてどこまで伸びていくのかというのは、だれもが関心と心配をしているところだろうと思われます。
 3ページ上下は、資料的にざくっと制度の中身の比較を表にしたものです。全建連の宮本さんの話にもありましたように、石綿健康被害救済法というひとつの法律が、今ここで議論している環境省環境再生保全機構が所管している部分以外に、労災時効救済と私ども言ってますけれども、厚生労働省の方の所管している部分もあるということで、それと労災保険を含めて比較表にしています。
 ここで議論している環境省所管分については、短縮して言い表す略語が定まっていないと思うのですけど、私自身ここで使っているような生存中救済、死亡後救済という言い方がとりあえず中身にふさわしいかなというので、こんな書き方をしています。ただ、表の見方は、おわかりのとおり、生存中に医療費と療養手当をもらって、亡くなった後には、死亡後救済をもらえるという仕組みではなくて、生存中救済に該当した方は、死亡後救済はない。逆に死亡後救済は、生存中救済を受けられなかったケースについてのみと。死亡後救済は、当初は、法律が施行される前に既に亡くなった方だけが対象とされていましたけれども、2008年の法改正によって、それ以降であっても、生存中救済を受けることなく亡くなった場合は、同じものが受けられるようになったと。環境省の統計では、この二つを、法改正前と法改正後、別の統計でくくっていることが多いようなんですけれども、ここは、むしろ一緒で考えた方が議論としては整理しやすいのかなという気がしています。
 4ページの上は、環境省が法律をつくり、予算を立てるときに大体どれぐらいの人数を救済することを想定したかという計算についての整理です。きょう配布された参考資料の方で、環境省自身がメモにしてくれています。ざっと見た感じ、基本的に私の理解で間違いないんじゃないかと思っています。それに対して、4ページの下の方は、次にお示しする「すき間ない救済」というのがどれぐらい実現されているのかという検証に当たっての幾つかの前提をここで書いておきました。実は、本日、参考資料の方で、これまでにない、きょう初めて公表されるデータが幾つも示されています。参考資料の裏側の中皮腫死亡者数と各制度における認定等の状況というところで言いますと、このうちローマ字のE、F、Gのデータは、きょう初めて公表されるデータです。したがって、私が計算したときには、このデータがなかったものですから、例えばFの生存中救済を受けていて亡くなられた方がいつ亡くなられた人たちなのかというデータは、これまで公表されたことがなかったので、私のデータの中では、葬祭料をもらった人を3年間で分けて按分しているというような、若干の違いがあります。
 いずれにしろ、こういうデータがきょう出たのは、非常にありがたいことですけど、きょうまで出てこなかったということの方がどうなんだろうかということと、また、どうしても複数の制度にまたがりますから、少なくとも厚生労働省と環境省が一緒になって、この検証をやらなきゃいけないんですけれども、そういうことをやられる仕組みがないと。このこと自体も、見直しの検討課題なんだろうということで指摘しておきたいと思うのです。
 さらに、実際にはこれ以外の制度があります。人数が多いところでいうと、旧国鉄職員あるいは地方公務員など、石綿健康被害救済法の中に、このような制度から給付を受けた場合には、救済法は支給されないという制度が30弱あります。それらの制度によって救済されたアスベスト健康被害のデータも持ってこないと、より正しい検証はできないんですけれども、それについては、現在までのところ、死亡年別のデータがないものですから、検証のしようがない。こういうことも改善することから、どうやったらすき間ない救済が実現できるのかということを考える必要があるんじゃないかというのが問題意識です。
 5ページは、上下とも中皮腫ですけれども、上の図が救済を受けた年度別の件数を示しています。労災保険、時効救済、死亡後救済、生存中救済、このようになっています。救済法による救済は2006年以降であることは当然なわけです。
 下の図は、日本の場合は、中皮腫という診断名で亡くなった方は、1995年からわかるわけですけれども、1995年に500名、中皮腫で亡くなった方々が、実際、どういうふうに救済されているのかというふうに見ますと、大体20%、私の計算では。きょう示された環境省の参考資料を見ますと21%でおおむね同じぐらいですね。大体5分の1ぐらいが、去年の3月までに、2008年度末までに救済を受けているというのが現状です。
 環境省の想定は、実は、1968年からわかりますので、それ以降について全部検証できるんですけれども、古い事例については、確かに中皮腫という診断を受けた人かどうかもわかりませんので、とりあえず、ここでは1995年から2008年に亡くなった方を対象にして示してあります。この期間全体で言いますと、ざっと49.3%ぐらいの人が、これまでに労災補償なり救済給付を受けているという結果になっています。さかのぼるほど少ないというのと、近年でいうと、七十数%、きょうの環境省の参考資料でいうと、一番高い2005年が87.93%になっていますけれども、これぐらい。どう見るかというのは、後でご議論していただければいいんですけれども、私自身としては、やはりまだ満足できる状態ではない。とりわけ、環境再生保全機構が保健所に残っている死亡小票に基づいて、基本的にたどりつける全員に制度を周知するという事業をやった成果が、まだ一部反映されていないところはありますけれども、それでどこまで実現できるのか、埋められるのか、あと今後どうやって埋めていくのか、過去の分はどうなるか、死亡小票が保存されていない事例であっても、今も救済され続けていると思います。ここら辺のところを、古い事例だからということで、果たして請求期限をなくしてしまっていいのだろうかと思います。もともと制度をつくったときに、何十年も前の事例も救うということで始めたわけですけれども、一つには、検証もしないで救済期限をなくすということについては、断固反対です。できれば、一定程度の少なくとも目標を達成するまでの救済請求権の保証だけは確保したいと考えているところです。
 裏の6ページの方は、肺がんについて同様に示しています。ここでは、肺がんをとりあえず、私は、国際的な医学的コンセンサスとして理解してますけれども、中皮腫死亡の2倍の数、アスベストによる肺がん死亡があるだろうという仮定でやっています。環境省の想定は100%ですから、それでやれば、ここに示した数字を2倍にして救済率を考えてもらえばいいわけですけれども、どちらにしろ、肺がんが救えてないというのは、きょうのヒアリングでも出された話を数字で裏づける形になるわけです。
 7ページを見てください。これは、都道府県別のデータです。都道府県別については、先ほどみたいな死亡年別の検証ができないので、ここでは分母は95年から2008年の死亡者数、分子の方には同期間に救済を受けた人数で救済率を計算してますので、ちょっと数字が違うんですけれども、中皮腫のここでいう救済率の平均は、全国42.8%ですけれども、トップの兵庫県は91%行っているんですね。逆に岩手などでは4分の1にすぎない。これは、やはり兵庫県並みを、尼崎の方もきょういらっしゃいますし、どうしたらここまでが実現できるのかということもちゃんと勉強しながらですけれども、やはり実現できているレベルを全国的にできるような工夫が必要だろうと思います。
 下は肺がんですけれども、残念ながら、こういう形で見ても肺がんは非常に格差がある。トップは岡山で4分の1、25%という数字になっていますけれども、低いところでは二、三%しか救われていない、こんな現状です。
 さて、8ページを見ていただきますと、これも先ほどから問題になっている肺がんを、ちょっと別の形から見ているんですけれども、まず上の図を見てください。環境省の資料にもありますように、労災認定の実績で言いますと、中皮腫の認定補償件数に対する肺がんの補償件数というのは、クボタショック以前、2003年以前ですけれども70%でした、平均すると。それが、今、労災保険でいうと、2007年には100%を超えて、またちょっと減っている。労災時効救済については増え続けておりまして、中皮腫よりも肺がんで救済している件数の方が多いと。これに比べて、生存中救済と死亡後救済はこんな状態です。これも一目瞭然で、救済法の場合、中皮腫との比較で見ても肺がんを救えていないということだけは事実だろうと思われます。下の図は、同じようなことですけれども、認定された人と不支給になった人、双方を合わせた総決定件数に対する認定件数の割合で見ても、中皮腫は救済法も労災法も、手続さえすれば認められる率というのは非常に高い率になっています。肺がんについては、労災や労災時効では、それなりに高い、肺がんの労災時効救済については、ちょっとずつ上がっているのですけれども、これはやっぱり環境省・環境再生保全機構の領域で言いますと、手続をしても救済される割合が労災や時効救済と比べて著しく低い結果になっています。
 9ページの上の図ですが、これは、岸本先生たちが今年出された英語の論文からなんですけれども、労災病院の関係で実際に労災認定された石綿肺がんの患者さんが、認定基準でいうところのどういうクライテリアで救われているかということを分析した、岸本先生から補足していただければいいんですけれども、全体で152件を分析していますが、労災認定基準の場合まず、石綿肺の所見があればオーケーだというクライテリアがある。これで救われている方が51件、3分の1ですね。続いて、石綿ばく露作業の従事歴10年以上プラス胸膜プラーク等という条件で救われている方が94件、これがほとんど大多数です。さらに乾燥肺重量1グラム当たり5,000本以上の石綿小体等というクライテリアで認定されている人は、わずか7件となっています。救済法の場合、前回の議論でも言いましたように、石綿ばく露情報を救済に使ってこなかった。ここでいう最後の3番目の石綿小体等の基準しかないわけです。ここの部分でしか救ってないと。ですから、前回、申し上げましたように、新しい基準をつくれということではなくて、石綿肺とびまん性胸膜肥厚について、労災認定基準の考え方を救済法の判定に持ち込むことにしたわけですから、同様のクライテリアを救済法に持ち込むことだけで、現状を劇的に改善することができるということは、確実に言えます。ぜひこれは、法律も政令も省令も改正する必要がないことですので、一刻も早く実現してほしいと考えています。
 9ページの下の図は、今後の議論のためにイメージに示したものです。余り数字や幅は厳密じゃないんですけれども、例えば中皮腫の95年から2008年の全体の救済状況が半分弱ぐらいだよと。そのうち大体半々に、新法の救済と労災補償・労災時効救済というふうになっています。10ページ上の図に行っていただきまして、では本来、労災補償・時効救済と環境省所管の救済がどれぐらいの割合を分担するのか考えてみたいと思います。ばく露の類型分離はいろんな形があると思います。ここに示したのは一つの例ですけれども、これもおさらいですが、救済法というか、環境省の所管としては、ここでいうところの[3]から[6]及び[1]、[2]の労災に特別加入していない自営業者の部分をカバーすることになります。
 そして、10ページの下の図ですけれども、環境再生保全機構自身が、これまでに救済した人たちにアンケートをとって、どこで主にアスベストにばく露したかということを分類しています。これは、内山先生が委員長をなさっている検討会の作業でもありますけれども、このデータによっても、救済法で実際に救済した方の58.4%、約6割の方がアスベストに仕事でばく露したというふうに回答されているわけです。当然、気になるのは、この人たちの中に労災補償や時効救済を受けられる人がいるんじゃないかと。チェックされているんだろうかと心配になります。これまでの私たちとのやりとりで環境省は、どちらに手続をするかというのは、請求人ご本人が判断して決めたことだと。行政としては、できるだけ両方の制度のパンフレットなんかを渡して情報を与えているということですけれども、この人たちが、実は労災かもしれないと気がついたとして、今手続すれば労災の時効救済を受けることはできます。実際、そういう方がいるというデータが、きょう初めて出てきた参考資料に示されている数字の一つでもあるわけですけれども、これ、今はできますけれど、時間がたってしまうと、実際には再来年の春を超えますと請求権がなくなりますから、気がついたときにはできなくなってしまいます。そうなれば、恐らく心情的には、教えてもらえなかった、だまされたというのに近い反応を引き起こす可能性は大いにあります。そういう点からも安易に請求期限を終わらせてはいけないという議論があろうかと思います。
 11ページ上の図は、似たような議論ですけれども、国際的にはどういう議論がされているかということの整理だけしています。一番上に書いておいたのは、専門家の先生方には常識ですけれども、いわゆるヘルシンキ・クライテリアの中身で、中皮腫のほぼすべてがアスベストによるもので、80%は職業ばく露だと。立法過程での答弁なんかも含めて、しばしば80%がアスベストが原因というふうに答えられていることが多いですけれども、改めて言うまでもなく、すべてがアスベスト、80%が職業ばく露というのがヘルシンキ・クライテリアの内容です。
 中皮腫と肺がんの比率については、ここにアフターヘルシンキ論文等を含めて、2倍が国際的コンセンサスと言って、大方の異論はないだろうと思います。中皮腫のうち職業ばく露の割合については、ここに書いてあるような数字が出ています。イギリスのHSE、安全衛生庁のデータは、幾つかの地域で実際に中皮腫全例について、訓練を受けた医師がインタビューをした結果のばく露歴確認で、男女合計すると74から95%が職業ばく露によるという判定になっています。
 あるいは、ことし2月に環境再生保全機構が非労働者のアスベスト被害者に対する救済制度を持っている各国の代表を招いて国際シンポジウムをやってますけれども、フランスの補償制度、これは、どこでアスベストをばく露したかにかかわりなく、同一水準の補償を行っているわけですけれども、制度発足当初は95%ぐらいが職業歴がある人たちだったというふうにおっしゃっていました。若干減ってきて、今85%ぐらいだというふうにディレクターの方がおっしゃっていました。あとオランダとイギリスの場合には、非職業性の中皮腫救済制度を始めているわけですけれども、制度発足時の見積もりで、大体非職業性ばく露の制度が中皮腫全体の30%ぐらいを面倒を見るというふうに予測しています。2月のシンポジウムで、どちらの担当者も、これまでのところ大体見積もりどおりだとおっしゃっています。ですから、仮に8割が職業ばく露だとして、そのうち自営業者の方もいらっしゃるというようなことも考えますと、余り根拠はないですが、11ページの下の図ですけれども、本来、日本の救済法が対象とすべきものは、当初環境省が考えていたような5割ではなく、3割ぐらいで考えるのが多分妥当なんだろうなと考えます。もちろん、これは検証も必要ですが。仮にそうであるとしたら、今の現状は図のようなイメージでとらえられるんじゃないのかと思います。水色で示している、新法で救済されている方々の、実はそのうち半分とかかなりの部分が、本来は労災補償・時効救済を受けられるべき人が紛れ込んでいる可能性はかなり大きいだろうと考えています。
 この図で、まだ救われていないすき間をどうやって埋めるかとか、きょう先ほど来出ていますけれども、給付のレベルをどういうふうにしていくのかとか、そういうこともこれからの検討の重要な課題だろうと思います。
 最後の頁です。十分かどうかわかりませんけれども、最後に挙げておいたのは、きょうから、あるいは次回からのこの検討会で、検討の課題として取り上げていただきたい、取り上げる必要があるだろうと考える項目だけを並べておきました。幾つかの点については、既に4名のヒアリングの方々からも言われています。私自身は、ここではどういう形で改善すべきかという意見は示しておらず、今後の中で皆さんと一緒に議論したいのですけれども、ぜひとも落とさずに検討課題にしていただきたいと思います。とりわけ給付内容、水準を改善していくということは、すべてのヒアリングの方がおっしゃったと思います。あるいは健康管理制度も、この委員会で前からも議論があったんですけれども、本日は尼崎市の方からも強い要請がありました。
 あと、私自身がいま話したように、請求期限というものを、やはり撤廃ないし最延長するということも、実際的に非常に重要な効果のあるところだろうと考えています。掲げた課題を全部は一々は読み上げません。
 下の図の方の項目で挙げておいたのは、本来ならば、環境省単独で議論すべきことではなくて、厚生労働省も含めて、諸省またがった形での、すき間ない救済のための課題だろうと思います。そういう場が、あるいはそういう調整が実現されることを強く望みますけれども、だからといってほうっておくわけにはいかないので、やはりここで取り上げるべき課題としてぜひ考えていただきたい。前回までの議論でやってきた判定基準などをめぐって、役所が二つ別々に検討をして、結果的にそろえばいいということではなくて、そこのところを大枠で何とか整合性を担保できるような仕組みというようなことも、こういう問題意識の中の一つです。
 もちろん、法改正と直接結びつかない事項もあろうかと思います。そのことも含めて、ご一緒に検討して、いい見直しにつなげられていけたらというふうに考えているところです。
 以上です。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの古谷委員のご説明、ご提案に対して、ご質問、ご意見ございますか。あるいはご指摘事項があれば伺いたいです。
 岸本委員、指名がありましたが、いかがでしょうか。

○岸本委員 さきほどのパワーポイントで、私の論文は1月になっていますが、たしか5月にフル論文になっております。古谷委員がお示しをしたとおりです。
 それから今、古谷委員が言われた石綿肺がんは中皮腫の2倍だということは、2004年のTossavainenと読むのか、多分フィンランドの人が言っています。インターナショナルに石綿肺がんの定義というのは、石綿肺というじん肺に合併した肺がんということが2000年ごろまで言われていまして、石綿肺の合併のない肺がんの定義というのが、いまだにないんです。私の152例の労災病院間でのスタディなんですが、90%以上、90.1%だったと思うんですが、たばこを吸われる方で、従来言われているとおり、アスベストとたばこを両方吸うと、肺がんの発生頻度が高いというのは確かなんです。本当に石綿単独でどの程度肺がんが発生するのかが一番問題かなとは思うんです。これは学問的な問題ですから、医学的に検討する必要があろうかとは思っております。古谷委員がデータでお出しになられた点は確かにそうで、石綿肺に合併した肺がんで労災認定されている方というのは、メジャーではないことは間違いありません。

○浅野委員長 ありがとうございました。ほかにご意見、ご質問ございますか。
 非認定者のばく露状況調査で、職業ばく露の比率が6割弱。これは内山委員がおやりになっている。

○内山委員 やっているところから、多分おとりになったんだろうと思いますが、どういうばく露経路で中皮腫になられているかということの……。

○浅野委員長 その職業ばく露という。

○古谷委員 実際には、環境再生保全機構が委託を受けて行っています。

○浅野委員長 では、どういうものを職業ばく露というふうにここではしているのかですね。

○泉室長 事務局からお答えします。この調査は申請時に調査票に記入していただき、認定された方について集計するもので、調査票の記載に基づきまして分類しております。職業ばく露と言っているのは、直接石綿を取り扱う、あるいは間接的に石綿を取り扱う職業的なばく露があった方と思われているということです。
 今、引用していただいているのは、恐らく去年発表した数字でございまして、これは18年と19年の累計だと思います。毎年度調査をしておりまして、20年までのデータを間もなく、6月か7月に公表するように準備しております。実は18・19年は救済法と労災の両方に申請をして、救済法でも労災でも認定を受けてその後救済法を辞退された方が抜き切れていないのでが、次に公表するデータではそこを整理しております。このため、職業ばく露の人は、今ご覧になっているものより若干減ってくるかなというふうに思っております。新しいデータが出ましたら報告したいと思います。

○浅野委員長 わかりました。この中には、現実には労災の方も混入はしていると。もっとそれがきちんと労災の給付の対象になっていない方で、職業性のばく露だというアンケート結果が出た方の割合が出てくるということは、今後の我々の検討にとっては極めて重要な基礎データですから、それも今後、できるだけ早く手に入れて、素材に使う必要があるだろうと思います。
 内山委員、いかがですか。

○内山委員 健康影響の委員会で、一番最初の時に、該当地域の全ての死亡小票に基づいて中皮腫で亡くなった方を見つけ出して遺族の方あるいは親族の方にお聞きして、ばく露経路を推定しました。やはりあのときも20%から二十数%が原因のわからない環境ばく露で、七、八割が何らかの職業性のばく露を持っていると考えられました。アスベストを仕事として扱っておられた方ばかりではなくて、数年間アスベストを扱っていたであろう職場に在籍しておられた方や、アスベストを扱う工場に出入りしていた方も、職業性のばく露があったというふうに分類しておりますが、そのすべてが労災対象ではないということです。そのときには、労災を受けられていた方は除外した数が出ております。

○古谷委員 これについては、私もさっきちょっと短い時間で走って言いましたけれども、例えば環境再生保全機構が出てきた書類のすべてについて、この人は労災かどうか全部調べて、労災だったらこっちにということを環境再生保全機構が単独でやり切れるかといったら、それはかなり困難だろうと思うんですね。であるからこそ、何らかの仕組みを考えて、その紛れ込みを環境省と厚生労働省が一緒になってなくしていく、そういう仕組みが必要なんじゃないかなという問題意識を持っています。

○浅野委員長 ありがとうございます。その点はもう一つ、古谷委員にご見解を承りたいのは、労災の場合には、費用負担者についてはっきりしていますね。ですから、それ以外の救済については、費用負担者の問題が実は出てくるということがあるものですから、だからその点については何かイメージがありますか。私は、この水準の差が費用負担者の違いによって出てくるということで、合理的でないという、多分思っておられる。それはよくわかるのです。そこはちゃんと同じようにという議論はあり得るにしても、労災の場合、明らかにこちらは費用負担者が違いますから、それをどう解決したらいいのかが問題ではないでしょうか。

○古谷委員 これは恐らく、そういう給付内容の内容や水準の改善というテーマでじっくり議論した方が、多分整理できていいと思うので、むしろ意見を聞きたかったんですけれども、振られましたので少し意見を述べておきます。おそらく議論する選択肢として、私自身は、例えば三つ選択肢があり得ると思っているんです。一つはフランス型の補償制度です。今回の泉南アスベスト国賠訴訟の判決を見ても、労災保険を受けている方々の補償内容が不十分だと認めているわけですね。そうすると、どうやって対処するかということを考えたときに、今フランスの補償制度は、どこでアスベストにばく露したかどうかを問わず、したがって職業ばく露も環境ばく露も、ばく露不明も全部一緒に、アスベスト被害について100%の損害賠償に近いような補償を提供するための仕組みです。実際には妥当と考える金額をオファーして、それが気に入らなかったら裁判へ行ってくださいということですけれども、したがって、労災保険法と救済法を一緒にして、全部の水準を上げるような制度にする議論です。これは私は一番望ましい制度のあり方だろうと思います。
 もう一つの選択肢としては、例えば労災なんかで言えば、基金をつくるだとか、別立てのプラスアルファを考えてもいいというような在り方もあるのかもしれません。でも、やはり公的な制度としての、ここで言えば救済法自体を改善するということもあり得るんですね。
 私自身の問題意識は、先ほどの尼崎のヒアリングの方が痛切におっしゃられていた言葉をお借りすれば、救済の中身にも不十分なんだと、実際に皆さん感じているんだと。だから改善をしなきゃいけない。改善をしようじゃないか、改善を提案しようじゃないかということになれば、その中での水準とか財源の話は具体的にできるだろうと思います。今、財源については、現状、ほとんど使えていないということになると思いますね。先ほど示したように、中皮腫全体の半分と、肺がんについて中皮腫と同数を救済するという想定で基金を積んだわけですから、ほとんど使えていない。すると、逆にどこまでなら払えるかという議論もあり得ると思います。あるいは、ここまで改善するために足りない分をどうやって積み上げたらよいかという議論もあり得ると思う。そのことを漠然と言うよりも、この検討会でこのように改善するよう提言しましょうという議論のところで、いろんな議論を重ねた方がいいんじゃないかなというふうに考えます。

○浅野委員長 わかりました。ほかにございませんか。
 それでは、特に委員からご発言がないようでありましたら、この後の、先ほど古谷委員からもご指摘ありましたが、前回のフリーディスカッションの中で、追加資料をお願いしたいという要望があって、それに対するきょうは答えが出ていますので、追加資料についての説明をお願いいたします。

○泉室長 きょうの資料についてご説明させていただきたいと思います。座って失礼いたします。
 参考資料、救済制度に関する資料集追加資料としてご用意しているものでございます。前回の議論で宿題となっていた資料でございます。
 一つ目は、対象患者数を制度設計当時どのように推計したのかということでございまして、当時の資料がすべて残っているわけではないものですから、わかる範囲でつくっております。全国の中皮腫患者数の将来推計を行い、それから、それをもとに全国の石綿肺がんの患者数の推計を行い、さらにそれを労災制度と救済制度でどれだけ受け持つかというような順番で推計したようでございます。
 まず、全国の中皮腫患者数につきましては、「石綿の使用料170トンにつき1名の中皮腫患者が発生する」と仮定しております。また、潜伏期間を38年と仮定しておりました。
 この170トンにつき1名の根拠でございますが、右側にございますように、先ほど岸本先生がおっしゃったフィンランドのTossavainenという人の論文が出ておりまして、これはどういうものかと申しますと、日本を含まない11カ国、アメリカ、イギリス、ドイツなどでございますが、その11カ国の70年代早期のある特定の年の石綿使用量と、95年以降のある特定の年の中皮腫罹患あるいは死亡者。この20年あるいは25年のインターバルもある資料をもとにして、分析した結果170トンに一人という数字が出ているものでございます。
 この論文をよく読みますと、データが得られたのでこの地域を選択したと書いてありまして、異なる地域、異なる期間を使えば、違う結果が出るだろうとも書いてございますので、この170トンに1名という数字自体が、そんなにかたい数字かといいますと、違う数字もあり得ると、そのようなものだと思っています。
 この当時の推計が今見て妥当かどうかというところを右の欄に書いておりますけれども、18年から20年の中皮腫死亡者数、これは全国につきまして、この170トンに1名の推計でいきますと、3,146人ということになりますが、実測値、実績の死亡数が3,288人ということで、この期間におきましてはよくフィットしているようです。ただ、今後のご議論に供するために、患者数の将来推計については、追って事務局で行いたいというふうに考えております。
 次に、石綿肺がんの患者数でございますが、これは当時、中皮腫の患者数の1.0倍と仮定しております。この根拠でございますが、その当時得られた諸外国の職業ばく露の方に関する報告、それから、日本の労災制度でのそれまでの認定実績というところから、一、二倍とか、0.7倍という数字が出ていたと。職業ばく露の方については、このような数字があるわけですが、職業ばく露以外の方はどうかということについては、余り報告がない状況です。ばく露が比較的低いと思われる職業ばく露以外の方については、職業ばく露の方と比べて肺がん、中皮腫の比率がもう少し低いのではないかということは十分想像できるわけでございます。救済制度は職業ばく露以外の方が入ってくるということで、労災より低いはずでありますが、ただ救済制度の中に入ってくる職業ばく露の方と職業以外のばく露の方の比率というのは、これまた不明ということがありましたので、それをもろもろひっくるめて、仮に1.0としたというようなことです。
 なお、先ほど古谷委員からご説明ありましたけれど、アフターヘルシンキという論文の中にアスベスト労働者の肺がんと中皮腫の比について各種報告のレビュー結果が出ておりまして、0.5対1から30対1というふうにいろんな報告があるけれども、大体2対1とされていることが多いという引用でございます。これはあくまでアスベスト労働者の話であります。さらに、その少し下の段落に、石綿ばく露の量が減ってくれば、当然この数は、1より低い値対1というふうに減ってくる傾向があるというような記載がございます。
 次に、これを今どう評価するかでございますが、療養者、存命中に申請をされた方についての中皮腫、肺がん認定実績でございますが、制度発足から20年度までの累計で、中皮腫が1,718件、肺がん431件ということで、肺がんの方が少なくなっております。
 一方で、労災の方につきましては、中皮腫2,060件、肺がん1,788件ということで、救済法に比較すると、肺がんの比率が高いという状況になっております。
 これにつきましての評価はいろいろあるかと思いますけれども、そもそも先ほど申し上げたように、救済法の対象に入ってくる職業以外のばく露の方については、職業ばく露の方よりも肺がんの割合が、具体的な値は不明ながら、低いと考えられるので、現在の実績が直ちに低いと言えるかどうかというところはなかなか難しいと思っております。ただ一つ事実として明らかなのは、救済法の肺がんの申請数が少ないということであります。療養者について見ますと、中皮腫の申請が3,203件なのに対しまして、肺がんはその半分以下で、1,229件しか申請がないということでございますので、医療機関への啓発などについては、引き続き取り組む必要があるだろうというふうに思っております。
 次に、労災と救済法の割合をどう考えるかでございますが、これは制度設計当時は、中皮腫、肺がんが、5割5割、半分ということで推計しております。
 この根拠でございますが、イギリスの業務災害の障害給付の合計の水準を用いたようでございまして、それによりますと、中皮腫による全死亡者の5割が業務災害の補償の対象になっているということで、5割としたようでございます。
 肺がんについては資料がなかったということで、恐らくこの5割をそのまま引いて、5割としたのであろうと思います。
 これを実績で見てまいりますと、まず平成7年~20年までの中皮腫で亡くなった方について、救済をされた方が労災か石綿救済法かどちらかというふうに数えてみますと、労災が45%、石綿救済法が55%という数字になっておりまして、5割5割に近い実績にはなっております。
 次に、では肺がんについてはどうかということでございますけれども、肺がんにつきましては、救済法の中皮腫の数と比較することで話を進めますが、先ほどから申し上げているように中皮腫の認定の方の約半数が職業ばく露以外の方で、職業ばく露以外の方は職業ばく露の方よりも肺がんの割合が低いだろうということから考えますと、肺がんについては救済制度の割合は5・5ではなくて、救済制度の割合の方が少ないのではないかと、こういうふうに推定されるところでございます。
 そういうわけで、制度発足当時、救済法の対象者を肺がん、中皮腫、1対1で推計したというのは事実でございますが、それは以上のようなわけで、積極的な根拠がないけれども仮にそうしたというような部分が多うございます。ただ、真の値がいずれであるかということは、それを石綿肺がんの定義にもかかわる問題で、なかなか難しいものと思っております。ただ、肺がんの申請が少ないことは確実でございますし、また、医学的所見として用いるいろいろなパラメータを少しふやして、認定の機会をふやしていくということも必要になると思っておりますので、引き続きそこは検討していきたいと思っております。
 次に、中皮腫死亡者数と各制度における認定等の状況ということで、各年に中皮腫で亡くなった方のうち救済を受けた方の率を示しております。
 この数字が平成7年からになっておりますのは、ちょうど死亡統計の分類でありますICD-10が平成7年から導入され、この年から中皮腫という独立した項目の死亡者の数が明らかになっていますので、ここからとしております。
 一番左のカラムが、死亡診断書に基づく中皮腫で死亡された方の数です。それから順に労災認定あるいは特別遺族給付金で認定された方の数、船員保険で対象になった方、石綿救済法の特別遺族弔慰金の方、そこから両方で受けて、結果的に抜けた方を次にあらわしております。それから、制度が始まった後は存命中の認定もございますので、医療費等の支給に係る認定というのは、制度が始まってから存命中に認定を受けられて、その後死亡された方ということです。また、他法令による給付の認定を受けた方の数もございます。
 それで、BとCにつきましては、下に注がございますように、平成20年度以前に給付を受けた方の数ということですので、現時点ではさらにこれは積み上がっているものと思われます。DからFにつきましては、ことしの2月15日までの認定実績までをここに計上しております。亡くなった方のうち救済制度の認定を受けた方の数というのを見ていただきますと、それが一番右のパーセントでございまして、古い時代は二十数%という数字でございますが、一番高いところで平成17年の87.93%、平成18年度が70.57%といった数字になっております。
 先ほど古谷委員から、石綿救済法施行前に亡くなった方と施行後に亡くなってから救済を受けた方は一緒に扱ってもいいのではないかというご意見もありましたが、認定の考え方からすれば、施行前に亡くなった方というのは、特殊ケースでございまして、その方たちは診断に関する情報が少ないというところから、死亡診断書に中皮腫と書いてあれば、もう中皮腫と認めようと、こういう割り切りにしております。ですので、若干の診断の誤りという可能性は残しつつも、それを入れ込んでおりますので、この点からは法施行以前は認定率は高めに出る。また、石綿救済法では、亡くなった時点で同一の生計を営んでいたご遺族から請求ができることになっておりますので、該当するご遺族がいなければ、仮に中皮腫で亡くなっていても認定を受けられないということですので、この数字が100%というところにいくことは、まず難しいのではないかというふうに思っております。
 そのほか、前回基金の状況についての資料をお求めいただいたのですが、21年度の計数整理を行っているところでございますので、次回以降にお示しをしたいと思っております。
 まず、追加資料のご説明でございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。それでは、ただいま、前回の宿題についてお答えをいただきましたが、何か質問なりコメントなりがありましたら、どうぞ。

○古谷委員 言われるとおり、科学的厳密性については、余りここで議論してもという気がしますが、逆にこの推計方法について、どういうふうにやったということが公表されている資料の中で余りきちんとされていないものですから、ちょっと1点だけ確認させてください。多分これ、一番上の潜伏期間38年というのは間違いで、当時の労災認定実績で、潜伏期間36年で発症して、2年間で亡くなるという計算をしたと思います。死亡時点までで38年ということですね。
 〇泉室長 死亡まで38年ということです。

○浅野委員長 それはそういうことですね。わかりました。ほかにございますか。

○古谷委員 あわせて、アスベスト輸入量のデータがわかるのが、1930年のデータから入手できるということ、最初に亡くなるのがその38年後の1968年からということで推計していると思います。また逆に、2004年に原則禁止を導入しましたので、それから38年後の2042年を最後に、中皮腫の死亡者は出ないであろうという推計をされたと思います。どちらにしろあまり科学的な推計でないことは確かなので、事務局が言われるように、患者の将来推計をやっていただいて、この議論に間に合うのなら、ぜひ期待をしたいと思います。この点でも本当は、環境省と厚生労働省が協力して行ってほしいのですが、この環境省がやった推計自身を厚生労働省は認めていないというふうに聞いています。あるいは議論されていないというふうに聞いています。将来予測についても、政府としてというか、国全体としてやるという姿勢がなぜできないのかなという感じがするんです。

○浅野委員長 恐らくちゃんと協議をしてはいないのでしょうね。特別法をつくるに当たって、ともかくそれの積算をしなきゃいけないのでやっているから、労災の負担に別にはめるわけでも何でもないので、特に労災の方の推定等をどうするかということは関係ないので、多分協議をしなかっただろうと思います。恐らくちゃんと協議をして、異なる意見が出てきたろうか。そのあたりはどうでしょうね。だから協議をしたけれど、意見が合わなかったというのと、協議そのものもそもそも必要ないというので協議しなかったということと二つの場合が考えられるですが、そのあたりはどうでしょうか。直感的にはそう思うのですがね。

○古谷委員 聞いている話では、170トン当たり1人で一律というのは、要するに歴史的に講じてきた規制措置などの効果が反映されていないと。その分の推計は厚生労働省としては認められないというような立場だったというやに聞いております。

○浅野委員長 多分、今と違って、当時はことほどさように、何事もそういう状況であったので、それはそうかもしれません。これは何ともわかりませんね。
 それで、ほかにございませんでしょうか。とりあえずきょうのところはこのようなデータをいただいたので、これをもとに今後の議論をするということにしたいと思います。
 それから、古谷委員からは課題ということで、10項目挙がっていますが、これらを拝見しますと、いろいろなレベルのものが一緒になっていてというのか、よく考えて書いておられるので、大体見ていくとわかるのですが、法改正を要するもの、運用で解決できるもの、政策的に考えなければいけないもの、そんなものが整理されていますから、これは次回以降の議論の中で、私の方で少し整理をさせていただいて、これまでの論点とあわせてまとめさせていただきます。古谷委員のこの1から10までの順番に、このとおりにやるということはお約束できませんけれども、内容的には漏らさず取り入れますので、よろしいでしょうか。
 それでは、ほかにございませんでしょうか。

○古谷委員 1点、肺がんの話はしばしば議論になっていて、きょう、たまたま尼崎の行政と患者の方たちがいらっしゃって、少し話してくれましたけれども、肺がんが救えていないというか、今の事務局の質問でも、申請が少ないということについて、行政の担当者がどう考えていらっしゃるか。せっかくの機会なので、もし委員長のお許しをいただければお聞かせ願いたいと思います。

○浅野委員長 ちょっと私の方からも、先ほど肺がんの調査をきちんとやってほしいという声がありましたけれども、この点については、事務局何か用意がありますか。これまでどういう取り組みをしてきたのかとかですね。特に尼崎に関してということでした。

○泉室長 尼崎市の方がおっしゃったのは、亡くなった方すべてについてヒアリングをするようなことでしょうか。

○浅野委員長 違いますね。そういう意味ではないですね。尼崎市の方でおっしゃっているのは、むしろ現在ご存命中の方について、きちんと事実調査をしていかなきゃいけないという話だったと私は理解しましたので、そういう理解でよろしいですか。飯田さんの方がおっしゃったのは、もうちょっと広くということですね。

○飯田氏 全数調査をしたらどうかということを言っているんですけれどもね。というのは、尼崎の肺がんの方でも、肺がんの方に限らず、労災認定が尼崎は多いんだけれども、その認定されている人の中に、居住歴がクボタの周辺にあるというケースが非常に多いですね。だから例えば、肺がんで認定されているけれども、その工場では全く青石綿を使っていなかったと。しかし調べてみたら、青石綿しか出てこなかったというケースもあり得るわけです。それで認定が取り消しになることはないんですけれども。ですから全数調査をしたらどうかという意味なんですけれども。

○浅野委員長 この点は、尼崎市としては何かありますか。

○鈴井参与 尼崎市としては、先ほどの飯田さんよりはどっちかというと小さなとらえ方なんですけれども、実際にご相談が、肺がんなんだけれどもアスベストに関係していないのかというようなお問い合わせがあった場合に、どうしても石綿小体を調べないと。一般環境ばく露の場合は認める、認めないの入り口がまずそこです。どうしてもそこの窓口を開けておかないと、検査そのものができないといいますか、認めることすらできないような状況の中で、今のところ、石綿小体をはかるようなところがいまひとつはっきりしない。制度の中でご本人さんが負担するのか、それとも環境再生保全機構の方が負担されるのかというのがはっきりしない。なおかつ、一般環境ばく露の場合は、石綿小体だけでこうだという判定が下るというのはなかなか難しいというふうに聞いておりまして、最終的に石綿繊維そのものを測定されることが多いと。その繊維の測定の部分に関しては、先ほども申し上げましたように、非常に測定をされる技術者が、テクニカルに難しくて、少ないということから考えて、その辺の強化がどうしても必要になってくるんではないかというようなことで申し上げさせていただきました。

○浅野委員長 わかりました。どうぞ。

○泉室長 ご質問の趣旨はわかりました。まず、全数調査というようなところまで実施するプランは、具体的には持っておりません。鈴井参与がおっしゃった小体の計測に関しましては、認定の実務の中では、レントゲン上で、プラーク、線維化の所見がそろわない方について、例えば手術をしている、あるいは生検で標本があると場合には、可能な限り小体計測を行って、小体の数を明らかにする方針です。その小体の数が基準を満たしていれば認定ですが、仮に基準にぎりぎり届かないぐらいであれば、なるべく繊維計測まで行うということで、認定の機会をできるだけふやすようにということで、三浦小委員長のご指導もあって、そういう形で運用しております。今おっしゃったように、患者さんが自力で小体計測をするという道を開かなくても、現時点では事実上対応はできているというふうに思っております。
 それから、今後ですけれども、今まで肺がんの認定を行ってきたさまざまなケースにつきまして、胸膜プラークあるいは肺線維化の所見、あるいは小体・繊維の所見、どの所見で認められてきているのかというところも、よく検討いたしまして、認定のやり方について改善できるところがあるかどうかというところは検証していきたいと思っております。

○浅野委員長 わかりました。現在のやり方はこうだというご説明は、ご説明として承りました。ただ、今後、もっと悉皆的な調査をやるべきであるという可能性は十分ありそうだと思いますし、水俣病の今回の解決の問題などのように、長々と議論していても結局、将来に問題をいつまでもエンドレスで引き延ばすということがないために、どうすればいいのかということをあわせて考えなければならないと思います。これはきょう、問題提起を受けたということがありますから、今後小委員会で議論していきたいと思います。
 それでは、もうあと5分しかございませんが、委員の先生方に2日前に出された判決について、少しご理解をいただいた方がいいかもしれませんが、ちょっと手短にポイントだけ説明をしていただけますか。

○泉室長 それでは、泉南訴訟の判決、19日に出ております。石綿室は、環境省の中でもこの件の直接の担当ではないので、私たちが知る範囲のことということで、簡単にご報告をさせていただきます。
 被告は厚生労働省と環境省、国はその二つでございまして、環境省分については、石綿工場の近隣に居住していて一般環境ばく露の被害を受けたという2名の方がいらっしゃいます。
 論点としては、一つは、その方々について、環境関係法による規制監督権限の不行使、立法不作為というものがあったかどうかということでございますが、ここにつきましては、石綿粉じんによる健康被害の問題が労働者だけでなく、広く一般環境上の問題としてとらえるべきであるという医学的ないし疫学的知見が平成元年までの間に集積されていたと求めるに足りる証拠はないということで、環境関係法については国家賠償責任が否定されたということが一つございます。
 それから、この2名の方が石綿関連の疾患であったかということにつきまして、一人は石綿工場の労働者のご家族の方ですけれども、この方については、びまん性胸膜肥厚または石綿肺の所見を認めることができず、石綿粉じんばく露によるものであることを認めることはできないということで、石綿との関係が否定されております。
 それから、もうお一方は、石綿工場の近隣で農業を営んでいた方でございますが、この方についても、この方の健康被害が石綿粉じんばく露によって生じたものと認めることはできないということされております。環境関係法規の責任、それからお二人の方の石綿との関連性、両方について否定されるという判決でございました。

○古谷委員 私は判決を読んでいまして、これは環境省の事務局へのお願いなんですけれども、私自身、判決の見方として、今言われた2名の被害の方について、判決ではアスベストにばく露した可能性のあることは認めつつ、アスベストによる病気、アスベストによる健康被害、アスベストによる損害があったとまでは認められないとして、いわば入り口のところで排除していますので、逆に言うと、国の責任とか環境行政の責任というのは、今回の判決では十分に検討はされていないというふうにぜひ受けとめてほしいし、受けとめるべきだと考えているということなんです。というのは、普通であれば、その余は判断するまでもなしとして突き放してもいいわけですけれども、そう言わずに、室長が読まれたような幾つかの中途半端な判断が書かれています。判決全体を読んでも、厚労省の責任についての議論と比べて非常に分析が中途半端ですし、直接そのことが敗訴の主な原因になっていません。ですから、今度の判決で、環境行政の過去の責任は問われなかったというふうに受けとめるよりも、今回の判決では、まだ環境行政についての議論が十分されていない。今後まだそのことが問われる可能性が強いのだという、気を引き締めてというか、身を引き締めてというか、そういう構えでいてほしいというふうにぜひお願いしたいと思います。

○浅野委員長 わかりました。判決については、さらに専門的な立場でも検討をした上で、1審の判決ということもあるものですから、その後、多分控訴などはないだろうと思いますけれども、しかし敗訴された原告の側の方からの控訴もないわけではないと思いますし、他の訴訟もありますから、今指摘された点については、私もそれは分析をしてみなければいけないというふうに思っています。環境行政としては何もしなくてもいいんだと、裁判所からお墨つきをもらったというような理解をしているわけではないだろうと思いますので、その点はご指摘のとおりだと思います。
 それでは、本日の小委員会は時間になりましたので、次回以降の予定について、事務局から説明をお願いいたします。

○泉室長 次回以降の予定の前に。本日の資料2をご用意しております。ご説明はいたしませんが、今後の石綿救済制度の在り方について、第1ラウンドの指定疾病の追加についてのご議論の中でいただいたご意見について、一つは制度設計、費用負担の問題、二つ目は救済の対象、給付の在り方、三つ目は健康管理の在り方、そして四つ目として、指定疾病の医学的判定について、5その他ということでまとめております。今後、順次ご議論いただきたいと思っておりますので、ご一読ください。
 それから、これはご報告でございますけれども、4月までの検討で指定疾病の追加をご議論いただきましたけれど、ちょうど本日の閣議で指定疾病、二つの追加が決まっております。施行は7月1日を目指して、各種規定の整備を行っております。ご報告とお礼ということで申し上げます。

○柳田補佐 それでは、次回の小委員会の日程でございますが、これについては現在調整中でございますので、また決まりましたら追ってご連絡させていただきます。
 なお、本日の議事録につきましては、前回までと同様、原案を作成いたしまして、先生方にご確認いただいた後、環境省のホームページに掲載する予定ですので、よろしくお願いいたします。
 それでは、以上で第7回石綿健康被害救済小委員会を終了したいと思います。どうもありがとうございました。

午後5時00分 閉会