中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会(第15回)議事録

1.日時

平成22年3月31日(水)10:00~12:00

2.場所

環境省第一会議室

3.出席委員(敬称略)

(委員長) 櫻井治彦
(委員) 内山巌雄 大前和幸 岡田光正 香山不二雄
佐藤洋 篠原亮太 柴田康行 白石寛明
関澤純 遠山千春 中杉修身 花里孝幸
森田昌敏 (五十音順)

4.議題

  1. 化学物質環境実態調査について
    1.  -[1]平成20年度調査結果について
    2.  -[2]化学物質環境実態調査あり方について
  2. 化学物質の環境リスク初期評価(第8次とりまとめ)について
  3. その他

5.議事

午前10時00分 開会

○事務局(環境安全課) それでは、定刻になりましたので、ただいまから中央環境審議会環境保健部会、第15回化学物質評価専門委員会を開催させていただきます。
 私、本日の司会を務めさせていただきます環境安全課課長補佐の関谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 委員の皆様におかれましては、年度末のお忙し中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、井上委員、菅野委員よりご欠席とのご連絡をいただいております。現在、14名の委員がご出席をいただいてございます。
 それでは、最初に環境省環境保健部長の原より、一言ごあいさつを申し上げます。

○原環境保健部長 皆様、おはようございます。環境保健部長でございます。年度末の本当にお忙しい中ぎりぎりになりまして、第15回の化学物質評価専門委員会を開催させていただきます。
 ご承知のように、この委員会では、いわゆるエコ調査、化学物質環境実態調査、それと化学物質の環境リスク初期評価、この2つについてご議論をしていただいている次第でございます。今日もこの2つについてご議論をいただきたいと思います。
 エコ調査、化学物質環境実態調査は、昭和49年以来、一般環境中における化学物質の残留状況を調査してきております。平成19年度までに1,157物質を調査してきたことになります。本日は、平成20年度の調査において実施しました66の物質(群)についての評価、それと平成21年度調査の進捗状況や平成22年度の調査の実施方針案についてご意見を賜りたいと考えております。
 また、この調査も先ほど申しましたように昭和49年以来続けてきているところでございますが、化審法、先ごろ改正をいたしましたし、また、いわゆるPOPs条約、ストックホルム条約の対象物質の追加もございました。これらの動向を踏まえまして、これからどうしていくのかということにつきまして、別途検討会を設けましてご議論いただきました。本日は、その結果についてご報告を申し上げます。これにつきまして、今後どのような調査が望ましいのか、どうすべきかということについて、併せてご意見を賜れればと考えている次第でございます。
 大きな2つ目は、化学物質の環境リスク初期評価の第8次のとりまとめでございます。平成9年度から化学物質の環境リスク初期評価に着手いたしまして、これまでに7回、結果をとりまとめました。本日は、第8回目のとりまとめに向けての準備ができましたので、検討いただきたいと考えております。過去に約250の物質につきまして初期評価を行ってまいりました。本日の結果を合わせますと272の物質についての初期評価がまとまることになります。これらにつきまして、本日の委員の先生方を中心に検討会におけるご議論、あるいは文献情報の提供や確認の作業、さまざまなご協力をいただいたことを、改めてこの場をかりまして心から御礼を申し上げる次第でございます。
 本日、限られた時間ではございますけれども、以上2点につきまして、先生方の忌憚のないご意見をいただきまして、今後の化学物質対策に生かしていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局(環境安全課) 続きまして、事務局のメンバーに、昨年夏の人事異動がございまして変わってございますので、ご紹介します。
 環境安全課長、早水が就任してございます。

○早水環境安全課長 環境安全課長の早水でございます。8年ぶりに復帰しております。よろしくお願いいたします。

○事務局(環境安全課) それでは、議事に入ります前に資料の確認をさせていただきます。
 大変大部な資料でございますが、お手元にございますので、ご覧いただきたいと存じます。
 議事次第の紙がございまして、そこに配付資料一覧がございます。資料が都合11点と、参考資料が3点ということでございます。
 議事次第の下には資料1の委員名簿、それから座席表がございまして、以下、資料2-1、環境実態調査結果、資料2-2は厚い冊子の実態調査報告書(案)でございます。資料2-3が環境実態調査の進捗状況、資料2-4が平成22年度の環境実態調査の実施方針(案)、資料2-5が環境実態調査のあり方について(概要)、資料2-6は少し厚めのホッチキス止めでございますが、環境実態調査のあり方について。そして、資料3-1が環境リスク初期評価の推進状況について、資料3-2、化学物質の環境リスク初期評価ガイドライン(平成22年1月版)、資料3-3が環境リスク初期評価(第8次とりまとめ)の結果の概要(案)、資料3-4が厚い冊子でございますが、環境リスク初期評価結果(案)。
 以下、参考資料が3点ございます。
 以上、お手元の資料に不足等ございましたら事務局にお申しつけください。よろしゅうございましょうか。
 なお、本日の会議につきましては公開とさせていただいておりますので、よろしくお願いしたいと存じます。
 では、議事に入らせていただきます。
 櫻井委員長、よろしくお願いいたします。

○櫻井委員長 それでは、議事の進行を務めますので、よろしくお願いします。
 早速ですが、最初の議題に入ります。化学物質環境実態調査の結果、進捗状況等についてということでございます。
 平成20年度の化学物質環境実態調査、いわゆるエコ調査の結果、それから平成21年度調査の進捗状況について報告をしていただきます。資料2-1から2-3に基づきまして、事務局から資料の説明をお願いいたします。

○事務局(環境安全課) それでは、議題(1)の[1]でございます。平成20年度調査結果及び平成21年度の調査進捗状況についてご説明させていただきたいと思います。
 資料2-1をご覧いただけますでしょうか。こちらに結果の概要ということでまとめてございます。いわゆるエコ調査と呼ばれているものでございます。最終的には黒本と呼ばれている、まとめさせていただいている調査の結果でございます。
 まず、1.の経緯でございますが、先ほど冒頭のあいさつにもございましたが、昭和48年の国会におきまして附帯決議がなされまして、昭和49年度から調査を実施してきているもので、平成20年度調査は35年目になっております。その後、「プライオリティリスト」という優先的に調査をしていこうという物質のリストをつくりまして、それを10年計画で2回ほど実施してきたところでございますが、その後、化管法の施行でありますとかPOPs条約の発効といった諸般の状況をかんがみまして、この調査につきましていろいろニーズがあろうということで、そういったことを踏まえまして、毎年環境省内の担当部署から、こういった物質の環境残留実態を調査してほしいというふうな要望をもらいまして、それに基づきまして調査するという方式に平成14年度から変えております。
 平成20年度におきましても、そのような考え方で進めさせていただきまして、体系として、経緯の一番最後にございますが、「初期環境調査」、「詳細環境調査」及び「モニタリング調査」という3つの体系で調査を実施してきているところでございます。
 次に、調査の進め方でございます。
 調査対象物質につきましては、担当部署からの要望をもらいまして、一昨年のこの専門委員会におきまして、これらの物質を調査することについてのご評価等をいただいて実施してきたところでございます。その内容といたしましては、2資料の2.の(2)のア.イ.ウ.というところでございます。
 まず、ア.初期環境調査でございますが、2ページ目の最後に、平成20年度は、2-アミノピリジン等24物質(群)を調査対象としたところでございます。
 次に、イ.詳細環境調査でございますが、こちらもアクリル酸ブチル等19物質(群)を調査対象としております。
 ウ.モニタリング調査につきましては、POPs条約対象物質として10物質(群)、アトラジン等その他の物質を加えて、計23物質(群)につきまして調査を実施してきているところでございます。
 続きまして、3.の調査結果でございます。すみませんが、資料2-2のほうをご覧いただけますでしょうか。
 資料2-2の25ページ、こちらに初期環境調査結果の概要が列挙されております。上のほうに「調査結果の概要」とございまして、次の26ページにその詳細の検出状況等の一覧表がございます。この表でございますが、一番上のカラムの左から3番目に水質、次に底質、次に大気と書いてございます。
 媒体ごとにご説明をさせていただきたいと思います。
 まず、水質につきましてですが、こちらの表の水質の9調査対象物質中の4物質が検出されたということでございます。物質調査番号といたしましては、2番のp-アミノフェノール、9番の4,6-ジニトロ-o-クレゾール、20番の4-ヒドロキシ安息香酸メチル、21番の6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、こういったものが検出されております。この中で20番、21番の物質につきましては、今回初めて調査をいたしまして、初めて検出されたという結果になっております。9番の物質でございますが、こちらにつきましては既に過去に調査したことがある物質でございますが、今回初めて検出されたというものでございます。
 次に、底質でございますが、5調査対象物質中の1物質が検出されたということで、17番のo-ニトロアニリンが検出されております。こちらの物質は既に調査したことはございますが、今回初めて検出されたというふうな結果になってございます。
 最後に、大気でございますが、14物質を調査いたしまして、6物質が検出されております。3番の9,10-アントラセンジオン、6番のジエチレングリコール、12番のジベンジルエーテル、19番のo-ニトロトルエン、21番の6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、22番の2-プロパノールというところでございます。こちらにつきましても、3番、6番、12番、21番という物質は、このエコ調査につきまして初めての調査でございまして、初めて検出されたというものでございます。
 以上が結果の概要でございますが、27ページ以降に各物質ごとの調査結果及び、参考といたしまして用途等の情報を記載させていただいているところでございます。
 すみません、31ページのアントラセンジオンのページで誤記がございましたので、訂正させていただきます。こちらの真ん中辺りに、アントラセンジオンの検出状況という表がございますが、この中の「検出頻度」の「検体」と「地点」の数がそれぞれ入れ替わっておりますので、「検体」が「14/14」、「地点」が「5/5」ということで訂正させていただきたいと思います。
 次に、詳細環境調査の結果でございます。資料2-2の107ページをご覧いただけますでしょうか。
 こちらに詳細環境調査結果の概要の記載がございます。先ほどと同様に、次ページに検出状況等の一覧表がございます。詳細環境調査でございますが、水質が11、底質が4、大気が8という数の物質(群)を調査いたしました。
 まず、水質につきましては、11の対象物質(群)の中で8物質(群)が検出されたということでございます。3番のメトリブジン及びその分解物という群、次に6番の4-クロロフェノール、8番の4,4´-ジアミノジフェニルメタン、10番の1,4-ジメチル-2-(1-フェニルエチル)ベンゼン、13番のピペラジン、15番のp-ブロモフェノール、17番のカルバリル及びその分解物という群、19番のメソミル、こういったものが検出されております。このうち、3-1のメトリブジン、3-3のメトリブジン-デスアミノ、3-4のメトリブジン-デスアミノ-ジケト、10番の物質、こちらにつきましては初めて今回調査をいたしまして、初めて検出されているところでございます。あとは、過去に調査をしたときには不検出でしたが、今回初めて検出されたというものでございますが、6番のクロロフェノール、13番、15番、17-1のカルバリル、そして19番のメソミルとなっております。
 それで、108ページの表の中に、例えば3群の中に「夏季」と「秋季」というふうな記載がございますが、平成20年度におきまして、用途が農薬である物質というものにつきましては、農薬調査を夏季に、通常のエコ調査を秋季にそれぞれ実施したということでございます。これまでも農薬調査を実施してきたところでございますが、原則、散布時期のみの調査だったことから、今回それぞれの時期に調査したところでございます。
 続きまして、底質につきまして、4調査対象物質(群)の中で2物質が検出されております。10番の1,4-ジメチル-2-(1-フェニルエチル)ベンゼン、16番、4-tert-ペンチルフェノール、この物質が検出されております。このうち16番の物質につきましては、今回初めて調査をいたしまして、初めて検出されたという結果でございます。
 大気につきましては、8調査対象物質(群)の中で4物質が検出されたところでございます。1番のアクリル酸-n-ブチル、2番のアクロレイン、4番のイソブチルアルコール、5番のキノリンという4物質でございます。このうち、1番、4番、5番の物質につきましては今回初めて調査をいたしまして、初めて検出されたという結果でございます。2番のアクロレインにつきましては過去に調査をしておりましたが、そのときには不検出ということで、今回初めて検出されたという結果でございました。
 詳細調査については以上でございますが、各物質につきましては先ほど同様、110ページ以降に結果等は記載しております。
 最後に、モニタリング調査の結果でございます。
 モニタリング調査におきましては、POPs条約対象の10物質(群)及びHCH、ヘキサクロロシクロヘキサン類、その他アトラジン類、全23物質(群)を調査いたしました。その検出状況でございますが、資料2-2の240ページから243ページにございます表に検出状況一覧をまとめさせていただいております。
 POPs条約の対象物質(群)におけるモニタリング調査というものは、かなり昔から実施しているところでございますが、感度を高める必要があろうと。要するに、モニタリングをやる以上は、ndをなるべく出さないほうがよいのではないかということで、平成14年度から高感度の調査を行うこととなっております。
 そこで、平成14年度から20年度の高感度のモニタリングのデータが集まっているところでございます。平成14年度から平成20年度における経年分析結果というところでございますが、246ページから279ページにございます表12-1から表12-4に、その結果を媒体ごとにまとめてございます。こちらの結果を眺めますと、平成14年度から20年度のデータの推移ということでございますが、各媒体ともにPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向ではないかというふうに考えているところでございます。
 また、POPs条約対象物質以外のいわゆる隔年的に調査している物質(群)につきましては、241ページに戻りますが、水質では、16番のn,n´ジフェルニ-p-フェニレンジアミン類、20番の2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール以外の物質(群)につきましては検出されております。また、底質につきましては、すべての物質につきまして検出されているところでございます。
 次に、生物でございますが、243ページでございます。12番と20番の以外の物質(群)が検出されております。
 次に、大気につきましては、すべての物質(群)について検出されているところでございます。
 以上が結果でございます。
 続きまして、資料2-1の4ページに戻りますが、調査結果の活用といたしまして、各調査結果につきましては、要望いただいた各部署にお返ししまして、こちらのほうで活用されることが期待されているということでございます。こちらのデータにつきましては、あらかじめ精査、それから解析をいただいているところでございます。5ページに表がございますが、これらの会議におきまして、データの精査、解析を行ったところでございます。
 以上が資料2-1の調査結果の概要でございます。
 続きまして、21年度の進捗状況について説明させていただきたいと思います。
 資料2-3でございますが、平成21年度、現在実施している調査の進捗状況でございます。平成21年度におきましても、引き続きまして平成20年度と同様に、初期、詳細、モニタリングという3つの体系で実施しているところでございます。その実施に当たりまして、2.精度管理とございますが、初期、詳細につきましては、複数の分析機関が同一の化学物質の分析を行うというところでございまして、どうしてもバイアスないしそれぞれのばらつきというものがございます。こういったところから、いわゆる共通の標準試薬を配付するとともに、ラウンドロビンなどを行って精度管理を担保するということを試みております。それから、モニタリング調査につきましても、分析機関が年度によって変わる可能性があるということから、やはり継続性をどうしても確認しておかなければならないということでございますので、国立環境研究所のご協力をいただきまして、当該分析機関において有識者が立入調査を行うなど、精度管理の確認に努めているところでございます。
 調査対象物質につきましては省略させていただきたいと思いますが、2ページから4ページまでに、初期、詳細、モニタリングとそれぞれの対象物質を記載させていただいているところでございます。
 説明は以上でございます。

○櫻井委員長 どうもありがとうございました。
 それで、この結果のとりまとめに当たって、専門家から構成される実務者会議で別途精査、解析等をしていただいているわけでありますので、この委員会で皆さんに評価していただく前に、それぞれの実務者会議で座長を務められました白石委員と中杉委員と柴田委員から補足説明などありましたら、一言ずつご発言をお願いしたいと思います。
 初めに、化学物質環境実態調査結果精査等検討実務者会議の座長、更にモニタリング調査の結果に関する解析検討実務者会議でも座長を務めていただきました白石委員、よろしくお願いします。

○白石委員 では、報告いたします。
 化学物質環境実態調査結果精査等検討実務者会議のほうは、資料2-1の一番下にありますように、平成21年8月6日と9月17日、10月21日の3回開催いたしました。例年のように個別報告書すべてを当たりまして、その分析法の妥当性や検出下限値の妥当性、あるいはクロマトグラムから見て適正であるか等について、非常に詳細にすべてを検討いたしました。
 その中で幾つかあったのですけれども、ラウンドロビンテストの結果というのを今年度よく活用しまして、その中で、例えば数字のけたが違うとか、そういったものも発見されまして、その実施機関と何度かやりとりして値を確定していったということがございます。総じて、ここ数年来こういったことをやっておりますので、報告書自体は精査に関わる基本的事項が添えられて出てくるようになって、若干負担感はあるんですけれども、割とスムーズにいくようになっております。そういった形でデータの精査を加え、ndの場合には検出下限値を決定させていただいております。
 その上で解析のほうに回しているわけですけれども、モニタリングは、厚いほうの本文の246ページ、先ほどご紹介がありましたけれども、POPs関係の継続的にモニタリングをしているデータについては、統計的な解析をいたしております。そのすべてのデータを使いまして、それが減少傾向にあるか、変わらないのか、あるいは増えているのかといったことについて、昨年度同様にパラメトリックな方法でやっております。
 1つは、傾きが優位であるかどうかということとその大きさ及び、もう1つ、減少傾向にあるというモデルが適切であるかどうか、変化しているかという2つの点から、かなり厳し目に評価して、矢印が書いてあります。この減少傾向というのは、かなり優位に減少していると思っていただいて結構であろうと思います。ここに矢印と、ポツのところがありますけれども、ここはパラメトリックな方法でやっていますので正規性は確認できなかったということで、これはノンパラメトリックな方法等を今後検討していく必要があるんですけれども、現在この矢印が確認できたということです。
 さらに、昨年度まではすべてのデータ、例えば水域ならば水域で1つにまとめて解析していたんですけれども、河川域、湖沼域、河口域、それぞれ分けて解析すると正規性が見られるということで、そういった解析も行っております。例えば、水質でしたらばヘキサクロロベンゼン、2番目のものは水域全体ではわからないのですけれども、河川域あるいは河口域では減少傾向にあるとか、そういったことがわかります。
 底質でも同様で、248ページ、貝類、魚類、鳥類も、ウミネコとムクドリで全く異種のものを1つの解析方法でやっておりましたけれども、それを分けて解析することによって、こういった減少傾向が見られております。魚類に関しましては、ローカルには見られることがあるんですけれども、全体としては、やっぱり魚類のほうは見られていないということでありました。
 また、大気のほうで興味深いのは、249ページですけれども、6番目のo,p-DDT類、これの減少が著しく見られるということです。
 以上であります。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 続きまして、初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討実務者会議の座長を務められた中杉委員、よろしくお願いいたします。

○中杉委員 白石委員が座長を務められた精査の会議で検討していただいたデータを、初期調査、詳細環境調査について解析するといっても、余り深い解析はしておりません。実は、有害性の情報と照らし合わせてリスク評価をするというのは、それぞれ利用される先でやられることだろうということで、ここでは主に経年的にどんな変化をしているかというようなところの関係で見ていこうということにしております。
 そういう意味でいきますと、ちょっと例を挙げてご説明しますと、先ほど事務局のほうから、前回は検出されなかったが、初めて検出されたということが何物質かございました。その多くは、例えば41ページを見ていただきますと、9番の4,6-ジニトロ-o-クレゾールでございます。これは昭和59年に調査をしていて、今回初めて検出された物質ですけれども、検出下限値をご覧いただくと、過去の調査と今回の調査では検出下限値が大幅に低くなっている。過去の調査では、今回検出された検出範囲というのは見えなくてもおかしくはない、不検出であってもおかしくはないということで、こんな例が非常に多くございます。
 大部分がそうなんですが、中には、112ページのほうに飛んでいただくと、アクロレインというのがございます。アクロレインについては、検出下限値というのが800で、今回の検出範囲が20~500ということで、ほぼ似たようなところがございます。こういうものについては、少し過去の調査結果と比較してみようということをしました。ただ、過去の調査結果といいながら、調査地点が違うと比較しても余り意味がないものですから、同一地点で調査が行われたものを見ております。アクロレインについては、この4地点が該当するわけですけれども、これは明確に過去よりも増えているとか減っているとか、判断をしにくいところでございます。過去の検出下限値と今の検出値がほぼ同じレベルにあるので、明確に判断できないということで、そういう意味では明確に判断できない場合、何も記載してございません。
 今回の調査、初期と詳細を含めて、変化があると記載をした部分をご説明したいと思います。
 最初に、初期調査のほうで32ページの2-クロロニトロベンゼンです。この物質につきましては、33ページのほうに過去に同一地点で行われた調査結果との比較というのを示してございますが、大気のほうで、3年のときに大牟田市役所で検出されています。それが今回は大牟田市役所のほうでは検出されていない。これは検出下限値もほとんど変化をしておりません。こういうことで、減っているのではないかということを考えました。ただ、大気の測定データというのは風向きによって大きく変わってしまうものですから、一応発生源と想定される工場との位置関係などを見まして、この結果はやっぱり減ってきているというふうに考えて差し支えないだろうという判断をしまして、32ページの下から2行目ですが「大気濃度の低下が示唆される」という表現を加えてございます。
 それからもう1カ所、152ページの3-メチルピリジンです。これは過去の調査と同一地点で行われた調査結果が6カ所あります。これはいずれを見ましても過去より減ってきている感じがするということと、それから153ページのほうにPRTRの集計結果がございます。これを見ましても、大気への排出量が大幅に減ってきている。これを併せて考えると、この物質についても大気濃度の低下が示唆されるだろうということで、そういう記載を加えてございます。
 このように明確に判断ができるものについてのみ記載をするということで、解析というのはそういうことをやったということでございます。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 続きまして、POPsモニタリング検討実務者会議の座長を務められた柴田委員からお願いいたします。

○柴田委員 それでは、ごく簡単にご報告させていただきます。
 私どものほうでは、いわゆるモニタリング調査のデータの精度管理を中心として解析を行っておりまして、白石委員のほうで先ほどご説明いただきました経年変化の解析を行うための元データのほうの整理をしているという形になります。それで、今年度につきましても、先ほど環境省のほうからご説明ございましたように、基本的には各分析機関の立入調査を行うということ、それから実際に実データを眺めて確認をするという作業を中心として行っております。
 これまでの結果ですと、もう数年来、分析機関が変わっておりませんということもございまして、各施設ともほとんど指摘する事項がないくらいにきちんと仕事をしていただいているというふうに感じております。
 データのほうにつきましても、本当に重箱の隅をつつくような話になってきていて、今年1点だけ、DDTに関して少し濃度が高くて、検量線の範囲を超えているものがあって、それは測り直しをしていただきましたけれども、結果的には問題なかったというような形になっております。
 それで、データのほうに関してですけれども、こちらは我々のほうは経年変化というよりは、地域別の特性などの評価をしておりますけれども、データをこの表から読み取るのはちょっと難しいので口頭で説明させていただきますと、例えばヘプタクロルとクロルデン、ヘプタクロルはもともと日本の中では農薬としては一部、例えば北海道等で使われた経緯がございますけれども、あとはむしろクロルデンの不純物という形で入ってきているという経緯があって、全国のヘプタクロルとクロルデンを縦軸、横軸にプロットしてみますと、かなりの地点で実は一直線上にのってまいります。要するに、クロルデンの中に含まれている不純物としてのヘプタクロルが実際には別途検出されるということで、ほとんど濃度レベルがいつも一定の割合になりますので、縦軸、横軸でプロットしますと直線上にのってくるんですが、北海道だけはヘプタクロル側にずれてくるということで、これは大気についても底質についても、また水質についても基本的には毎年同じような傾向が見えてまいります。そういった地域特性は多少ありそうだというようなことは、これまでの結果から見えてまいりました。
 それから、これもちょっとデータからは読み取りにくいので口頭で説明させていただきますけれども、日本では農薬登録がされておりませんでした農薬の一つのトキサフェンについて、確かに底質、水質については、ずっとここndが続いております。一方で、生物中では比較的濃度レベルが高く見えてまいりまして、特に日本の沿岸の魚の中でいいますと、ウェットベースで見ると、実は茨城沖のサンマが一番高いというような数字が出てまいります。これは指数ベースで換算しますとほかの魚と余り変わりませんで、ウェットベースで見てしまうと、東京湾のスズキよりも沖合にいるサンマのほうのトキサフェン濃度が高いと見えるんですけれども、指数ベースで見ますと大体同じような形になりますが、いずれにしましても日本の沿岸のほうが高いという傾向は全くなくて、外洋から沿岸まで恐らく同じようなレベルで存在していて、日本の周辺が特に動いていることはないと。ただし、世界的に見ると太平洋沿岸の地域差は恐らくあるんだろうというふうに思われる物質で、トキサフェンについては、むしろ全国的な汚染が日本の沿岸を見ていても見えるのではないかというふうに考えております。
 以上です。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 ただいまのそれぞれのご説明内容も踏まえた上で、この資料等に関しましてご質問、ご意見等ございましたらどうぞ。

○遠山委員 何点かについて質問と意見を述べさせていただきます。
 主に今の化学的な分析の精度管理とか、そちらの化学の分析の観点から非常によく調査をしていただいているというふうに理解をいたしました。
 それで、幾つかあるんですが、サンプリングの場所の問題とか、特にモニタリングの生物のサンプリングの仕方、分析の仕方、そちらに関しては余りご説明がなかったんですが、それは今質問してよろしいですか。

○櫻井委員長 はい。

○遠山委員 そうしますと、例えば資料2-2の厚い本、これは単にタイプミスかもしれませんが、207ページの表3-1のちょうど真ん中辺りのムラサキイガイ、検体番号1番が226.2~22.6という、これは226.2というのは多分違っているんだろうというふうには思いますが、その下のイガイ(鳴門)ですが、153.0~474.9、そのほか三けたになっていますが、これもあり得ないですよね。そういう個別の問題を1つ感じました。
 それから、209ページですが、表3-3の平成20年度モニタリング調査(生物 鳥類)、これは1検体で、検体番号1の中に生物が不明で個体数が39と。つまりウミネコ39羽、それを一緒くたに、どこの部分のどの、要するに体全体をホモジナイズしてつぶしてサンプリングしたのか、鳥ですからかなり大きいですから、肝臓とか特定の臓器を使ったのか、あるいはこれを食べる人はいませんけれども、筋肉だけを測ったのかとか、それによっても値は変わってきますので、まずサンプリングの仕方、まとめ方、分析の仕方。実際それをどういうふうに活用するかということを考えたときに、もう少しやり方があるのではないのかなと。これは別に今年だけに限ったことじゃないですが、この会議は年に1回しかなくて、いつもここで言いますと、検討しますということになって、来年になるとまた同じことになるのですが、その点があります。
 あともう1つは、先ほど柴田先生がご説明いただいたように、この表をどういうふうに活用するかというところで、柴田先生がおっしゃったような形で、表では読めないけれどもということで、かみ砕いてインプットを言っていただいたわけですが、そういうことをむしろ、柴田先生が言われたようなことを含めてこの書類に書いていただけると、この調査の意味がより一層学術的にも、また環境省の調査としても意味があるものになるんじゃないかなというふうに思います。
 以上です。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 何かコメントなさいますでしょうか。

○事務局(環境安全課) ありがとうございました。
 まず、1点目のイガイ等の体重でございますが、こちらは……

○遠山委員 単純な間違い。

○事務局(環境安全課) そうですね、再度確認させていただきたいと思います。
 それともう1つ、生物の試料の採取方法等でございますが、先生のご指摘いただいているところは十分承知しているところではございますが、一応こういった試料採取等につきましての手引きというものを設けておりまして、その中で、例えばムクドリにつきましては50羽程度を1検体するというようなところで、採取部位は胸の筋肉と、そういうふうな取り扱いということになっているところでございます。
 ですから、今後の調査に向けまして、こういった手引きの内容が適切なのかどうかというところかとは思いますので、次の議題ではございますが、あり方検討会を今年度開催しておりまして、いずれにしてもこの手引きの内容を見直すということになっておりますので、その一環として検討していきたいと考えております。

○櫻井委員長 はい、どうぞ。

○早水環境安全課長 私のほうから1点補足ですが、私も以前、若いころにこの黒本調査を担当していましたが、先ほどのイガイとムラサキイガイの件ですけれども、これは体重の数字ですので、鳴門のイガイだけ非常に大きいものだということです。ほかのムラサキイガイは小さいんですけれども、そこだけ特異的に大きいというというふうに聞いております。

○櫻井委員長 そうですか。誰もがこれは間違いかなと思ってしまうんですけれども、そうではない。

○遠山委員 上のほうは。

○早水環境安全課長 上のほうは右と左が逆になっていて、小さいほうから大きいほうに記載すべきです。226.2というのは、タイプミスかもしれませんが、1つだけ大きいのがあったのかもしれませんので確認します。

○櫻井委員長 完璧であることは望めないにいたしましても、できるだけ今後も間違いのないようにしていただければと思います。
 また、柴田委員が先ほどしていただいたようなわかりやすいコメントを記載しておいていただければというようなご要望もございましたが、それもご検討いただければと思います。
 ほかに何かご発言ございますでしょうか。
 それでは、次に進みたいと思います。
 なお、一応この資料の内容につきまして、概ねご了解いただいたということでよろしゅうございますでしょうか。
 ありがとうございました。平成20年度化学物質環境実態調査結果の概要、ただいまのちょっとした修正が必要な部分もあるかもしれませんが、それを実施した後、概要として公表する。概要としては特段問題はないということで取り計らっていただきたいと思います。
 次に移りますが、化学物質環境実態調査のあり方について、平成22年度調査の実施方針、その2つ、これは資料2-4から資料2-6に基づいて、事務局のほうから説明をお願いいたします。

○事務局(環境安全課) 続きまして、議題(1)の[2]でございます。資料2-4から資料2-6でございます。
 まず、化学物質環境実態調査のあり方についてご説明させていただきたいと思います。資料2-5が概要で、2-6がその本体となっております。
 まず、資料2-5でございますが、1.といたしまして、背景・経緯等の記載がございます。こちらは、先ほどご説明させていただいた内容と若干重なっておりますので、前半の部分は割愛させていただきたいと思いますが、簡単に、このあり方に係る背景でございますが、今般の化審法の改正やPOPs条約対象物質の追加、そういったところの背景がございまして、環境中の化学物質に係るこういった状況の変化から、今日的な施策課題により迅速かつ適切に対応しようということで、環境省における各種化学物質に係る施策等において、より一層有効に活用していただきたいといったところから検討したものでございます。
 検討に当たりましては、これまでに実施されました調査及びその結果の活用の中から課題を抽出するほかに、地方公共団体へのアンケートを行いまして、2-5の2ページにございますが、中杉先生を座長とした先生方から化学物質環境実態調査のあり方に関する検討会でご議論いただいたところでございます。
 具体的には、化学物質環境実態調査における調査体系、運用方針及びその他関連事項について見直していただきまして、今後のあり方について提言をとりまとめていただいたところでございます。
 次の2.検討会報告の主な内容でございますが、まず、初期環境調査及び詳細環境調査につきましては、調査結果の環境リスク評価などにおける活用を見据えた見直しを行うとしているところでございます。
 具体的には、2つ目の○にございますが、初期環境調査は、従来は一般環境中の環境残留状況というものを基本的には把握していなかったと。今後は、そういったところを踏まえまして、例えば全国レベルで見て高濃度になると見込まれる地域がPRTRデータ等によりまして明らかであるといった場合に、その原因となる排出源に近い一般環境の調査地点において、その存在状況を確認するといったこと。
 3つ目の○でございますが、詳細環境調査につきましては、化審法の優先評価化学物質のリスク評価等について検討するということから、初期環境調査で対象とする排出源を考慮した高濃度が予想される調査地点に加えまして、排出源を特に考慮しない一般環境の調査地点においても全国的な存在状況を把握していこうといったところでございます。そのために、初期、詳細環境調査におきましても、環境調査結果の活用の目的に応じまして調査地点の選定を柔軟に行っていこうといったところでございます。
 また、モニタリング調査でございますが、従前どおり化審法の第一種特定物質やPOPs条約対象物質の環境中での残留状況の経年変化を見ていこうというところから、基本的な方針は変更していないところでございます。ただ、効率的に調査を進めていこうというところから、調査地点や調査頻度などを見直していこうと。また、POPs条約に対応すべく人体試料につきましても今後調査していこうといったところでございます。
 今ご説明いたしました内容といたしましては、本体の2-6のほうに、例えば7ページに、あり方に関する検討結果といたしまして、エコ調査の調査体系というところで、調査目的、初期環境調査、詳細環境調査、モニタリング調査といったところの記載をしております。
 また、運用方針の骨子でございますが、9ページ、原則的な調査実施方針についてというところで、調査対象物質、調査対象地域及び地点、調査対象媒体という記述がございます。もう1つトーンダウンした運用につきましては、11ページ以降に記載がございます。
 そしてまた、このエコ調査というものでございますが、化学物質関連部署からの要望を受けましてから結果公表までの時間を要しているというところから、調査の各段階におきまして、実施内容や手順を見直すなど運用上の改善を図りながら、調査結果の公表を従来より早くするといった提言もいただいているところでございます。
 こういった検討会のご提言を踏まえまして、環境省といたしましても、平成22年度以降、順次実施していくというふうに考えているところでございます。
 続きまして、資料2-4の平成22年度の実施方針(案)でございます。
 先ほども申し上げましたが、平成22年度以降の調査につきましては、エコ調査のあり方検討会の結果を踏まえまして実施する予定としております。調査体系につきましては、初期、詳細、モニタリングというふうな3体系で実施すると。そして、調査対象の物質選定につきましては、関係部署のほうから個別に要望いただいて調査を実施するというところでございます。
 まず、過去に要望のあった物質ですが、今回新たに分析法の開発を行った物質といたしまして、2ページ、3ページにございますリストにまとめさせていただいております。こういった物質について、今回開発を行ったところでございます。
 次に、今回、例えば化審法や環境リスク初期評価等の部署から新たに要望いただいた物質というところで、4~6ページのリストにございます物質でございます。差し支えなければ、この物質、この媒体で調査を今後進めさせていただきたいと考えているところでございます。
 簡単ではございますが、以上でございます。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 今回のとりまとめに当たりまして、専門家から構成される検討会で議論いただいたわけでありますが、まず、検討会で座長を務められた中杉委員から補足説明などございましたら、ご発言をお願いいたします。

○中杉委員 この検討に当たって、基本的になぜ検討したかということのねらいですけれども、1つは、先ほどの資料の説明の最後にありました、この結果の活用がなかなか十分にいっていないというところをもう少し踏まえようと、そこを活用できるような形にしようということ。それからもう1つは、化学物質という名前ではないですけれども、同じ物質でほかの調査を環境省でもたくさんやっています。それとの整合がうまくとれていないというところを少し考え直そうと、そこら辺が大きなポイント。それから実際には、調査をやっていても、先ほど遠山委員のご指摘があったことにちょっと関連するのですけれども、調査の地点が余り適切でないので、結果として調査結果が使えないというようなこともありまして、そういうところも少し見直しをしていこうということで考えてございます。
 具体的には、化学物質関連施策と関連を持たせようということで、資料2-6の11ページの図1を見ていただきますと、先ほど化学物質環境実態調査では有害性等の評価はやらないというふうに申し上げましたけれども、これはやらないのでは困るので、併せてやるような形にするということで、この後で出てきます環境リスク初期評価との連携をうまくとる必要があるだろうということで、全部がそうじゃないですけれども、大防法だとか水濁法だとか、ほかの部署から来るものについては、環境リスク初期評価と併せて対象物質を選んでいくようなことを考えていこうということを一つのあれとしています。
 そのほか、化審法が変わりまして、優先評価化学物質をどうやって順番に評価していくかと、段階的にリスク評価が必要になってきます。その段階に合わせて、ばく露のほうの情報も精度がいろいろ求められてきます。基本的にはモデルを使うという考え方なのですが、モデルに合わせて、環境実態調査の結果を併せてばく露評価に使っていこうということで、化審法とか化管法、ExTEND2005のほうの物質について、選択的に選んでいって調査をしていこうと。これは要望ということではなくて、各室からの要望もあるのですが、実態調査のほうでも、ある考え方をもって選択していってはどうかということを入れてございます。
 それともう1つは、ほかの物質調査との絡みもあるんですけれども、11ページの3段落目にあります農薬についてでございます。農薬については、今、黒本エコ調査のやり方では、年平均値を到底求められないような状態になっています。たまたま高いときをつかまえるか、使っていない低いときをつかまえるか、それを年3回ぐらいで平均しても年平均は出てきません。そういう意味で、農薬管理室のほうで、この資料の後ろのほうに載っていますけれども、農薬残留対策総合調査ということで個々の農薬について調査をしているわけです。そちらのほうが適切であろうということで、基本的にはそちらにお任せしようということをしています。こちらで調査した結果をばく露評価の結果に使うと、適切な評価ができないということが大きな理由でございます。
 それから、調査対象のところというのは、従前はどこで使っているかという情報がないままに調査をやっていました。ところが、今、PRTR対象物質は、PRTRの排出源の情報があります。それと、これから化審法が改正されると、精度指標の届出が出てくるようになります。そういう情報を評価すると、どこが高いかということが想定される地点が出てくるだろうと。そういうものを抜き出して、そういうところを踏まえた調査体系を組んでいこうと。初期環境調査については、濃度が高そうなところを調べる。それから詳細調査については、一般的に調べるわけですから、濃度が高そうなところもその中に加えていくと、そういうふうな調査の体系にしていこうではないかと。これは実際には地方自治体のご協力を得なければいけないものですから、環境省がここでというふうにごり押しができるかどうかというのは、なかなか難しい話なんですが、そこら辺は協議をして進めていきたいというふうなことでございます。
 そのほか、調査のやり方について、実際にどういうふうにやったらいいかという面については、効率化だとか技術の向上というような面について、どうしたらいいかということは課題として挙げてございますけれども、全体として、今までのやり方よりも、より活用してもらえるような形、活用できるような形に調査の体系を変えていこうということで、この報告書をとりまとめさせていただきました。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 それでは、報告書の内容、それから22年度の実施方針につきまして、ご意見、ご質問ございましたらどうぞ。はい。

○香山委員 POPs条約に対応のために人体の試料を調べるという発表がありましたが、その中身について教えていただけませんか。

○事務局(環境安全課) むやみにこれからゼロのスタートをするつもりはございませんので、現在考えているところでございますが、ダイオキシン類を初めとする化学物質の人への蓄積量調査といったものを現在環境省で行っているところでございますので、その中で余った試料、採取したもので余ったものについて、可能な範囲で対象物質についても分析していこうというふうに考えております。

○早水環境安全課長 資料で言いますと、2-6の15ページの表に今ご説明した旨が若干書かれております。

○香山委員 例えばUNEP、WHOのグローバル・ヒューマンミルクモニタリングのやり方では、母乳をプールしてその中のPOPsを測るということをされておりますが、個々に明らかに1名ずつ測るというふうに書いてあるというのが、国際的に日本の汚染状況を公表するための測定を行うというのと合うのかどうか、そういうことがちょっと気になったものですから、個々ではっきりと1名ずつ測りますと書いてあるのが、WHO、UNEPなどのデータに合わせるのかどうかということをちょっと教えていただきたいなと思いまして。

○早水環境安全課長 今ご指摘の点は今までの検討に入っておりませんでしたので、実施に当たりまして考慮いたします。ありがとうございました。

○櫻井委員長 どうぞ。

○柴田委員 今ご指摘いただいた点ですけれども、ストックホルム条約に関しては、条約の中でグローバルモニタリングプランというのをつくって、その手法についてはガイダンスドキュメントというものをつくって、そこでいろいろと整合性をとって国際比較ができるようにしようというような形で動いております。ちょうどそのガイダンスドキュメントが、昨年の5月にストックホルム条約の対象物質がこれまでの12物質から21物質に一気に増えたということもございまして、第4回の締約国会議での決議を受けて、ガイダンスドキュメントの改訂作業というのが今年度スタートすることになっております。今年度といいますか、来年度になりますけれども、今年の4月からスタートすることになっておりまして、4月の2週目からガイダンスドキュメントの改訂作業が始まります。そこの過程で、今、先生のご指摘の点を含めて、今後国際比較をするための議論というものが進むと思っております。
 これまでの流れの中で、先ほどご指摘いただいた点について言いますと、やはり途上国を含んだ形で国際比較をしようとすると、今現実に使えるスキームとしてはWHOがこれまでやってきたブレストミルクの中のダイオキシンやPOPs等の分析に関するところを、やはりベースにせざるを得ないというところがあって、第1回の有効性評価のためのデータの取得の部分を、そのスキームをのせた形でこれまで動いてきております。それが1つのスタンダードになっておりますので、そこに合わせるということは1つ考えられます。ただ、それは逆に言いますと、途上国でも何とかデータを出してほしいという最低線という形でスタートしていますので、そこに必ずしも合わせなければいけないということではないというふうに私は理解しています。
 例えばAMAPなどでは、全く別に血液の中の分析を北極圏のエスキモー等のデータとして提出をしているということもあって、そういう幾つかの、結局比較は残念ながらできないんですけれども、これまで動いていて比較的大規模にデータをとってきた部分がある程度ガイダンスドキュメントのほうにも書き込まれて、そこを少し標準化していこうという考え方は示されておりますけれども、例えば日本の場合にこういった活動が続いていけば、そこからまた長期的にこういう視点でやってほしいという提案をすることは当然できますし、実際にガイダンスドキュメントの第1回目のバージョンでも、日本のPOPsの大気のモニタリング手法というのが書き込まれておりますので、そういうことについては今後もこちらからインプットしていければというふうに思います。
 以上です。

○櫻井委員長 はい、どうぞ。

○香山委員 柴田委員のご意見は全く賛成でありまして、ただ、最低限の比較ができるとか、被検者の条件をそろえるとか、そういうことをきちっとデザインの中に入れていって、最終的にできるだけ詳しいデータが欲しいわけですが、プールするところは残ったものでちょっとプールすればいいとか、そういう部分を入れていただきたいということです。
 以上です。

○櫻井委員長 はい、どうぞ。

○佐藤委員 今のPOPs条約対応で何を測るかという話なのですけれども、母乳を測るという意味合いは、やはり生物学的に考えてみても非常に大事なんだろうというふうに私は思うんですね。子どもがばく露されるときの経路というのを考えてみると、母親経由臍帯血というか、胎児側にうつるというのもありますけれども、やはり出生後に母乳経由のばく露というのは、かなり大きい部分があるのだろうというふうに考えています。
 そういう意味においては、モニタリングで何を使うのかというのとはまた別にして、実際のばく露あるいはリスク評価をするという意味においては、やはり母乳というのを忘れてはいけないんだろうというふうに思って、血液で見ていくというのは日本独自のやり方でやって、それはそれでいいと思いますけれども、母乳のことは忘れてというわけじゃないだろうと思うんですが、採取や何かかなり難しい点もあるかもしれませんけれども、国際比較のためだけではなくて、リスク評価なんかのためにもそういうことをやっていただきたいというふうに思います。それが第1点です。
 もう1つ、私、ダイオキシン類を初めとする化学物質の人への蓄積量調査というのに関わっているわけなのですけれども、人体試料をモニタリングのほうでもやるという話はちらちらと聞こえてきたのですが、たしか公式に話を聞くのはこれが初めてではないかと。この間、ダイオキシンのほうの検討会もやったんですけれども、そのときの話には出てこなかったように思うのです。それはそれでいいんですけれども、ダイオキシンの調査についてはかなり採血をするということで、実際の測定もさることながら、調査自身かなり手がかかっているということもあるわけなんですね。今伺ったところだと、もし残余が出ればそれを使うということで安心したんですけれども、ダイオキシンの調査の場合、通常の例えば臨床検査なんかに比べてみて、かなりの量の採血をいたしますので、それに更にのせてくれということになってしまうと、これはまたなかなか大変だなというふうに考えていたんですけれども、一応ダイオキシンの測定をきちっと担保するために、若干の余裕というのは多分あるんだろうと思うので、その辺をうまく利活用していただければ、それはそれでいいんだろうというふうに思っております。
 以上です。

○森田委員 化学物質環境実態調査のあり方というか、今後のあり方のことについて若干コメントを申し上げたいんですが、環境安全課のこの調査というのは保健調査室時代から始めて、ずっとある種の化学物質が環境中で一体どのぐらいあるのかを含めて、先進的な調査という位置付けがかなり強かったと思うし、また、それによって世界でかなり評価されてきたかなと、そういう感じもするんですが、今回示されているあり方の方向性を見ていますと、どちらかというと、既存の現局の調査との調整というか、その性格がかなり強く前面に出てきているような感じがあって、ある種のパイオニア的な化学物質調査という役割が環境安全課のプログラムの中にはあったような気がするんですが、そこのところが少し薄まってきているような感じがするのですね。
 例えば、既存のプログラムあるいはPRTRとか、それとの調整というかそういった形の、「連携」という言葉になっているのだと思うのですけれども、その連携が強調され過ぎると、ブレークスルーが起こりにくいかなという感じがしますので、実際に運用されるに当たっては、そのあたりも気をつけて展開してくださるとありがたいと、そういうコメントです。

○中杉委員 森田委員の指摘は、委員会の検討の中でも出てきています。ご指摘のように、活用がどうされるかということを重点に考えましたので、化審法とか化管法とか、ほかの法制度の中でやっているものに強く依存するという方向にシフトしていることは確かです。ただ、そうは言いながら、パイオニア的なものは残しておかなければいけないということで、11ページのところに少しあれなんですが、「その他社会的要因等から」という項目を残しておりまして、パイオニア的なところも、そこで重要なものは拾っていこうというふうな形で整理をしております。
 ただ、全体としてそこの部分が少し薄まってきているというのは、活用というようなことを考えていくと、どうしてもしようがないのかなというふうな判断をさせていただきました。

○櫻井委員長 そろそろ時間も気になってきておりますが……。

○香山委員 ここで測る媒体に関しては、例えば母乳に関しては厚生労働科研費でもう調査が行われておりますので、それともコーディネートしていただきたいということと、それとともに室内環境という意味でも、例えばダストの中の臭素化合物の測定なども将来的に考えるのは、やはり厚生労働省との切り分けがあるのかもしれませんが、環境全体を考える上で人に関わる部分では非常に大事かと思うので、そこら辺も整理をしていただきたいなと思うのですが。

○中杉委員 一応、屋外に出てからのばく露、環境汚染のばく露ということを中心に考えていますので、そこまでは対象には入れていません。昔は黒本調査の中でも、一部の物質については室内空気まで測りましたけれども、今のところは外の空気、外の汚染物質、人体は別としてそういうふうな形で整理をさせていただいています。

○遠山委員 化学物質環境実態調査のほうで統合的にいろいろデータを活用するような方向になっているというのは、僕は非常にこれは賛成なのですが、それと同時に、それ以外の部分、例えば具体的には資料2-6のところで、化学物質環境実態調査以外の調査に関する項目、目次がどこかにあったと思うんですが、言いたいことは、例えばほかの部局を中心として行われる、36ページ、37ページ、38ページ辺りに相当する部分ですが、そういうところから出てきたデータを統合的に環境省としてとりまとめをして、環境全体の現状の把握とばく露実態をちゃんと認識する上で有効に活用できるようにしていただきたいと、そういう要望です。

○櫻井委員長 では、簡潔にどうぞ。

○中杉委員 現実に初期リスク評価なんかでは、この調査結果だけじゃなく、ほかのを加えています。ただ、似たようなものの似たような調査になってしまっているという今の現実がありまして、ほかの調査のほうとも調整をとりながら、この調査はこういう役割、こちらの調査はこういう役割という交通整理をしようとして、今一部始めています。そういうことができれば、より有効に両方の結果が活用できるようになるというふうに思っています。

○櫻井委員長 いろいろ有益なご意見をいただきまして、ありがとうございました。まだあろうかと思いますが、議題が残っておりますので、この件につきましてはこれで打ち切りまして、環境省におかれましては、今日ご指摘のあった点等も踏まえて、検討会報告の内容に沿って今後の調査を進めていただくようにお願いいたします。

○早水環境安全課長 すみません、私のほうから一言お話しさせていただきます。
 今日はいろいろご指摘ありがとうございました。確かにこの黒本調査は、私も最初に担当したときはパイオニアでやってきたわけですけれども、当時は化学物質対策関係の法体系があまりなかった、やっていなかったということもありました。今はPRTRとか、いろいろなほかの制度もできておりますので、そことのインタラクションというのをかなり意識してやっておりますけれども、パイオニア的な部分も残した形で進めていきたいということでございます。
 それから、他部局との連携ということですが、他部局も最初のころはこのような化学物質の調査がなかったということなのですが、今は両方でやっておりますので、うまく連携できるようにしたいと思っています。
 ご指摘のあった人体の試料の件ですけれども、これはやはり非常に慎重に扱わなければいけない部分だと思いますので、これにつきましては、やり方についてもう一度こちらのほうで各部局と調整して内容を検討していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○櫻井委員長 いずれにいたしましても、リスク評価という面からいきますと、あるべき姿に近づいているなというふうに私、思いましたので、例えば初期評価で高濃度ばく露のところをできるだけ見逃さないようにするというようなスキームですね、そのあたりはどこが高濃度かということを推定する方法を開発していただくことが課題としてあるなとは思いますが、今後ともどうぞよろしくご努力のほどお願いいたします。
 では、次に議題を変えまして、化学物質の環境リスク初期評価、いわゆるグレー本の第8次とりまとめについてであります。
 事務局から資料の説明をお願いいたします。

○事務局(環境リスク評価室) それでは、ご説明をさせていただきます環境リスク評価室の補佐をしております筒井と申します。
 資料3-1でございます。環境リスク初期評価の概要、今までの推進状況につきまして、資料3-1でご説明しております。簡単にご説明させていただきたいと思います。
 化学物質の初期リスク評価でございますけれども、人の健康、それから生態系に対する有害性を特定した上で、用量、反応関係を整理する「有害性評価」と、環境経由のばく露量の「ばく露評価」を行った上で、両者の比較でリスクの程度を判定しているというものでございます。
 この初期リスク評価の特徴でございますけれども、1.の下の2つのパラグラフに書いてありますけれども、基本的にスクリーニング的な評価であるということでございます。初期評価という名前のとおりでございまして、この世の中にあるいろいろな化学物質につきまして、環境省として更なる検討を要するものかどうか、当面検討しなくていいものなのかというのを判断するというようなものでございます。そういうものでございますので、我々としては、基本的にはリスクを見逃さないようにということで、安全側に立ったようなリスク評価という形になっておることをここでは申し上げたいと思っております。
 これまでの推進状況でございますけれども、今まで160物質、健康、生態面、両面から評価をしておりまして、さらに生態リスク評価につきましては、ある程度スキームが健康に比べれば簡単ということで、追加で137物質の評価をやっているということでございます。この160と137の間にはダブりがございます。
 それから、第8次とりまとめについてということでございまして、今回の第8次とりまとめでは、基本的に環境リスク初期評価、両面から評価をする物質につきましては16物質、それから追加的に評価をする物質として7物質について評価をしております。これにつきましては、次の2ページのところでございますけれども、基本的に各部局からの要望プラス、エコ調査などの環境モニタリング調査の検出状況、これらを踏まえまして、最終的に専門家の先生方に判断をしていただいて選定をしているということでございます。個別の選定物質については、3-1-3ページにございますけれども、また後ほど細かいご説明をさせていただきますので、ここでは飛ばさせていただきます。
 とりまとめの体制でございますけれども、次のページ、横長で検討体制というものがあるかと思います。「環境リスク初期評価(第8次とりまとめ)の検討体制」ということでございます。おおむね2年間の審議を経まして、検討とりまとめになっております。
 全体とりまとめとして企画委員会というものを設置しておりまして、その下にばく露評価分科会、健康リスク評価分科会、生態リスク評価分科会というものを設置しております。企画委員会については内山先生に座長をしていただいておりまして、ばく露評価につきましては中杉先生に座長をしていただいております。健康リスク評価につきましては内山先生に座長をしていただいておりまして、生態リスク評価につきましては、現在、花里先生に座長をしていただいているところでございます。
 資料3-1、概要の説明は以上でございまして、次に資料3-2でございます。化学物質の環境リスク初期評価ガイドラインということでございますけれども、これはどういう形で初期評価をやっているかということを細かく、縷々説明しているものでございます。毎年これはお示しさせていただいているところでございますけれども、基本的にばく露評価につきましては、過去10年の環境モニタリングデータを基に、ばく露量を決定するということでございまして、もちろんそこの中で生産量とか製造禁止とか、いろんな規制がかかったところは評価をしていくと、さらに、そのばく露評価の中で異常値と思われるものも一応見ていくというようなかたちで、ばく露評価検討会の専門家の議論を経た上で環境データを基にして、ばく露量を決定するとなっています。
 また、先ほど来ちょっと話がでていますけれども、実際の環境モニタリングというものが本当に高濃度域をとらえているのかという議論もありますので、PRTR物質につきましては、大気、水のモデルを動かした上で、そこからも一応検討をしております。その結果は評価のためのキーデータとはしていませんけれども、今後情報収集が必要かどうかという判断基準にその結果が利用されているところでございます。
 健康リスク初期評価でございますけれども、基本的にはこれは従前と変わりませんで、無毒性量を予測最大ばく露量等の比較でMOEというのを求めまして、14ページにありますけれども、このMOEの段階によってリスクを判断しています。
 生態リスク評価につきましては、23ページにちょっと書いてありますけれども、予測環境中濃度(PEC)というのと予測無影響濃度(PNEC)との比較でリスク評価をしているということでございます。
 今年度この中では少しマイナーというか、細かな変更をしておりまして、そこの部分を簡単に紹介させていただきます。
 6ページでございます。ここにばく露評価のところで、特に事故などで発生したような環境濃度、こういうものにつきましては、今まで専門委員会の先生方のご判断で個別に排除してきたわけでございますけれども、ガイドラインの中にしっかりこれを位置付けたということが1点ございます。
 それから21ページ、これは生態リスク評価のところでございますけれども、網かけになっておりますけれども、リスク評価の中で生態リスク評価につきましては、すべての文献を先生方に査読をしていただいて信頼性評価をしているところでございますけれども、国際機関とか他国でやっているようなリスク評価書の中で、本リスク評価と同じような信頼性検討をされていると考えられるものについて、本初期評価と同じようなかたちで「信頼性有り」「信頼性有り(制限付)」「信頼性なし」「評価不能」というような段階での評価がなされている場合には、それをそのまま引用するということもできるように今年度からしたということでございます。
 同様に、生態リスク評価についてはすべて原著を査読しているのですけれども、これにつきましても、諸外国や国際機関でのリスク評価書の中で、原著までいかなくても記載内容が、十分に採用性判断ができるようなものであれば、これは評価に利用するというようなかたちで積極的に利用していくというようなことで今回改正をしております。
 資料3-2につきましては、非常に簡単でございますけれども、以上でございます。
 資料3-3でございます。今回の8次とりまとめの概要につきましてご説明をさせていただきたいと思います。
 「はじめに」のところは、今までご説明したことでありますので飛ばさせていただきまして、「環境リスク初期評価の概要」というところでございますが、この辺のところももう既にご説明をしているところでございますけれども、評価のとりまとめに当たって、本専門委員会にご意見をいただいているところでございます。
 それで、この環境リスク初期評価の結果を踏まえて、環境省内のいろいろな機関、水とか大気の規制関係をやるところで、さらに詳細な調査を行うための、そういうような取組を促していくというところが一つの目的となってきております。
 次でございますけれども、構成、対象物質、この辺のところは先ほどご説明申し上げましたので省略させていただきまして、評価の方法につきましても、先ほど非常に簡単に、健康リスク、それから生態リスクの評価の方法をご説明しましたので、MOE、PEC/PNECというもので基本的には評価をしているということでございます。そのほか、リスクの判定結果を踏まえながら、総合的な判定ということでコメントなどをそれぞれのところに付していただいているところでございます。
 3.環境リスク初期評価(第8次とりとまめ)の結果の概要ということでございます。今回の8次とりまとめにつきましては、先ほど来申していますけれども、環境リスク初期評価については16物質、生態リスク評価については7物質ということでございます。ただ、この16の中に1つ、2,5-ジメチルアニリンというのがございまして、これは7次とりまとめで生態の初期リスク評価が間に合わなかったところがございますので、これについては加えてとりまとめたということでございます。
 その結果でございますけれども、環境リスク初期評価ということで、基本的に健康面、生態面の双方の評価を同時並行的にやっていくというような物質でございますけれども、これにつきましては16物質やっておりまして、健康リスク初期評価の観点から詳細な評価を行う候補として3価クロム化合物、それからナフタレン、生態リスク評価の観点からは3価クロム化合物、ジブチルスズ化合物となっております。
 関連情報の収集が必要というものでございますけれども、これはB1、B2というふうに分けております。B1というのは、基本的にMOEとかPEC/PNEC比が出て、かつここで左にあるようにですね、情報収集に努める必要があるというふうに判断されたものでございまして、これについては健康リスクについては3物質、ジブチルスズ化合物、セリウム及びその化合物、1,1,2,2-テトラクロロエタンという形になっていまして、生態リスクについてはなしとなり、さらにB2と書いてありますが、これはいわゆるMOEとかPEC/PNEC比が算出不能なのだけれども、専門家の総合的判断として関連情報収集に努める必要があるだろうというような物質でございまして、これが、健康リスク初期評価が1物質、2,4,6-トリクロロフェノール、生態系リスク初期評価がチタン及びその化合物とフラオランテンというかたちになっております。
 その他の物質については、現時点で更なる作業の必要性は低いという判断となっております。
 それから、生態リスク初期評価につきまして、次のページ(3)にありますけれども、追加的に実施をした生態リスク初期評価というのがございます。生態リスク初期評価につきましては水生生物による初期評価ということでございまして、健康面に比べまして比較的評価が早くというか、スムーズにできるところもありますので、追加で実施しているところでございまして、今回7物質の評価を行っております。そこの中で詳細な評価を行う候補として2物質、鉛及びその化合物、それからポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテルという形になっております。
 関連情報の収集が必要ということで、B1、いわゆるPEC/PNEC比が出て、かつ関連情報の収集が必要というカテゴリーに入ったというものは0物質でございます。B2ということでございますけれども、これはPEC/PNEC比が出てこないということでございますけれども、総合的に考えて関連情報の収集、それから生産量等のウォッチをしていく必要があるだろうという物質が4物質ありまして、クロルピリホス、ピリダフェンチオン、ブタクロール、ペルメトリンということでございます。最後でございますけれども、現時点では更なる評価の必要はないというものがシクロヘキセンということになっております。
 詳細につきまして、健康リスク初期評価、生態リスク初期評価の順にご説明をさせていただきたいと思います。

○事務局(環境リスク評価室) それでは、資料3-3についておりますA3の開きの表、「健康リスク初期評価結果一覧(案)(16物質)」、こちらをご覧いただけますでしょうか。
 まず、今回詳細な評価を行う候補といたしまして3価クロム化合物、それからナフタレンと、2つの物質が挙がっておりますので、それについてまずはご説明いたします。
 3価クロム化合物、物質番号2番目の物質でございますけれども、こちらにつきまして、いわゆるばく露経路、吸入の中で、一般環境大気、こちらからリスク判定、MOEが5という結果が出まして、こちらについては詳細な評価を行う候補とさせていただいております。
 また14番目、ナフタレン、こちらにつきましてでございますが、吸入の部分、一般環境大気、MOEが70ということで、こちらについては情報収集に努める必要があると、そういう結果にとどまっているわけでございますけれども、室内空気、こちらにつきましてはMOEが算出できなかったにもかかわらず、詳細評価を行う候補というふうにさせていただいています。
 こちらにつきましては、資料3-4、分厚い資料でございますけれども、「健康リスク初期評価結果(案)」の<1>-315にページにございます。ばく露評価についての(3)表2.2をご覧いただければと思いますけれども、こちらについては全国的なデータが存在せず、東京都が調査地域でございます。最大値が非常にばらつきが大きくて、こちらについて全国的なばく露濃度というものが把握できなかったためにリスク評価ができないと、健康リスクの判定ができないということになってしまいました。ただ、この中で局所地域のデータとして報告のあった最大値120μg/m3、こちらから算出したMOEが0.16ということで、室内空気については詳細評価を行う候補と考えられるとさせていただいているところでございます。
 また、その他の物質につきまして、先ほどの表に戻りまして5番目、ジブチルスズ化合物につきましては、淡水・食物からのばく露に対してMOEが71ということで、情報収集に努める必要があるとしています。また7番、セリウム及びその化合物、こちらにつきましては一般環境大気からの吸入に対してMOEが92ということで、こちらも情報収集に努める必要があると。さらに9番目、1,1,2,2-テトラクロロエタンにつきましても、一般環境大気でMOEが22ということで、さらに12番目の物質、2,4,6-トリクロロフェノール、こちらにつきましては、経口ばく露に対して、魚類摂取による経口ばく露量を考慮いたしまして、情報収集に努める必要があるという評価をさせていただいています。
 健康リスク初期評価に関しましては、以上でございます。

○事務局(環境リスク評価室) それでは、生態リスクの評価結果についてご説明をさせていただきたいと思います。
 資料3-3でいいますと一番後ろに載っております。一番最後に、生態リスク初期評価結果一覧ということで、16物質プラス7物質書いてあります。順番にご説明させていただきたいと思います。
 詳細な評価を行う候補として、この16物質の中では、3価クロムとジブチルスズということになっております。
 3価クロムにつきましては、資料3-4の分厚いほうの資料で<1>-20ページからいろいろ書いてあるのですけれども、基本的に<1>-26ページに公共用水域での測定結果等が書いてあります。3価クロム自体を測るということは、2001年に全国調査でやられておりまして、全国47地点中10地点で検出されたということで、最大値が13であったということで、ここで淡水のPECが13、それから海水については10以下という話になっているということでございます。PNECでございますけれども、これにつきましては、甲殻類オオミジンコの慢性毒性のNOEC、繁殖阻害のところから導出されまして、アセスメント係数、これは3物質そろわなかったということで100でございますけれども、PNECは結果として0.47μg/Lということで、PEC/PNEC比が28という状況になっております。この13という値につきましては、愛知県の日光川ということでございまして、その次の値が3μg/Lということで、これが非常に多くあるということでございまして、これも踏まえれば詳細な評価の候補ということは妥当な判断と考えております。
 それから、ジブチルスズ化合物でございますけれども、これについては<1>-96ページからいろいろと書かれております。ばく露評価につきましては、過去に2005年と2001年に調査がされておりまして、<1>-102ページに細かいデータが出てきておりますけれども、2005年の調査では26地点中12地点で検出をされているところでございまして、そこでの最大値が0.035でございます。これは淡水ですね。
 一方、海水のほうで、実は2005年のデータで、18地点中7地点で出てきているとされ、そこで0.17という値が出てきております。これがもとで、0.17がPECというかたちになっておりまして、一方で、毒性から導き出されるPNECでございますけれども、これは甲殻類オオミジンコの急性毒性のデータからで、アセスメント係数、これは3つそろっていますので、急性ですので100を掛けて、結果的には0.17μg/Lという形になってきております。これは、ちょうど同じような数字でございますけれども、PEC/PNEC比が1という値でございます。これにつきましては、1というぎりぎりの値ではあるのですけれども、この値から、このデータを下げるような理由もないというようなことでございまして、ここでは詳細な評価を行うべき候補ということで、1という値ながらも詳細な評価を行う候補として挙げさせていただいているところでございます。
 そのほか、この16物質の中で少しコメントなのですけれども、チタン、フルオランテンにつきましては、ここに書いてありますけれども、チタンについては、やはり非常に有害性の評価も難しいということと、その有害性評価につきまして確たる信頼できるデータが出てきていないというようなことでございまして、判断はできないのだけれども、やはり総合的に判断して、知見の収集等を進めた上で判断がなされるべきということをコメントいただいています。これは<1>-191ページのところにございます。基本的に初期リスク評価のところで、今のデータでは有害性は認められていないけれども、有害性情報の集積や評価手法の確立がなされた後に改めてリスク評価をするべきということでございます。
 それから、フルオランテンにつきましては、PNECのほうは導出なされているわけでございますけれども、PECのほうがデータ上、ND、定量下限未満ということになっているのですが、それのPEC/PNEC比が2以下ということになりまして、ちょっと判断がしがたいということでございまして、この辺のところをさらにきちっとPEC/PNEC比が導出できるような必要な検討をした上で、必要があれば再度評価の対象にしていくというかたちになると思います。そういう意味で情報収集を進めるというような形になっております。
 次に、裏でございまして、生態リスク初期評価の7物質追加実施分ということでございます。これも簡単にご説明させていただきますけれども、詳細リスク評価の候補となりましたのが鉛でございます。これはPECが190という値でございまして、PEC/PNEC比を見ると非常に高い値が出てしまっているのですけれども、190とかなり高い値で異常値かなというところもあったのですけれども、そこの異常値の確信が持てなかったというところでございます。その190の次の値としては十数μg/Lというレベルで、PEC/PNEC比はかなり落ちてはくるわけでございますけれども、それでも詳細評価を行う候補という判定には変わりはないだろうということでございます。鉛については、PNECは藻類、珪藻類の急性毒性にアセスメント係数、これは3生物種そろっていますので100ということでございまして、0.2という値が出ておりまして、これと比べると、やはり十数μg/Lでも詳細評価を行う候補となるというようなことでございます。
 それから、ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテルでございます。これにつきましては全国調査の結果でございますけれども、これは多摩川の浅川だったと思うのですけれども、そこでPECとして7.3μg/Lという値が算出をされております。一方でPNECとしては、オオミジンコの慢性毒性のデータから、アセスメント係数、これは慢性ですけれども、3生物種そろわなかったということで100というアセス係数になっており、これは2.4というPNECが出てきております。この2.4と7.3の比較では3という形になります。これも、次の物質になりますと、このPNECよりも低い値になってくるというようなところでございます。例えば1ぐらいの値というものになってくるわけでございますけれども、一番上の値というものを排除する理由もないということで、広く使われているような物でもありますので、詳細評価の候補という形になっております。
 そのほかでございますけれども、ここでは農薬系のものも要望があったということでございまして、生態リスクからの評価をしていますけれども、やはりすべてのところで書いてありますけれども、PEC/PNEC比を見ていく中で、PEC/PNEC比を定量的に定めるのは非常に難しいということで、PEC/PNEC比上は、判定はできないけれども、ただ、過去の調査で出ているとか、クロルピリホスなどは建材での利用が規制されたとかいうこともありまして、それからビリダフェンチオンは平成19年で失効しているというようなこともありまして、その後のモニタリングデータなどもウォッチしながら情報収集を進めていった上で、きちっと判断をしていくべきというようなご示唆をいただいております。
 生態リスク評価の説明については以上でございまして、最後、簡単に今後の対応ということでございまして、資料3-3の「今後の対応」ということでございます。
 先ほども少し申し上げましたけれども、この結果を踏まえて、関係部局にこの結果についてはご連絡をしているところでございまして、また関係部局でも、初期リスク評価の活用ということでございまして、更に詳細な評価を行うための、こういうような結果が出ればリストに入れていただけるというような話にもなってきておりますので、そこでの取組の誘導等を図っていきたいと思っております。また、情報収集が必要なものについては、我々から更なるモニタリングの実施とか、生態試験の実施とか、そういうようなところをやっていった上で、更にまた必要があれば、後のリスク評価の中にのせていって、環境リスクの初期評価を進めていきたいというように考えております。
 以上でございます。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 これにつきましては、あらかじめ分科会等でご審議されているわけでありますが、それぞれの座長、委員長等をお務めになったお三方からご発言をお願いいたします。
 最初、全体とりまとめの企画委員会、それから健康リスク評価分科会の委員長と座長を務められた内山委員、お願いいたします。

○内山委員 それでは、手短にご説明させていただきます。
 企画委員会では、候補になる物質、それの選定ですとか、それから最後の表にありました総合的な判定というところで、これはリスク判定をした後に総合的に判定をするということを特に企画委員会で議題として取り上げると。それからガイドライン等の全体に関わる問題も、改正すべきところは改正するということを行いました。
 それから、健康リスク分科会では、非常に膨大な作業を担当の先生方に文献を割り当てて評価を行っていただく。それを皆さんで会合を持ちまして、また質疑を通しながらブラッシュアップしていくという大変な作業を行いました。
 今回、特に問題になりましたのは、先ほどのA3の表を見ていただくとわかりますように、7番と8番、セリウムとかチタンは、文献をピックアップしていきますと、ナノ材料としての文献が出てまいります。これは一応レビューをいたしましたけれども、今回はまだナノ粒子あるいはナノ材料としてのリスク評価の手法といいますか、あるいは毒性をどういうふうに評価するというところはまだ明確ではありませんので、今回はナノ材料としての評価は除いたものをリスク初期評価いたしました。
 それから、総合的な判定という一番右の欄が、従来わかりにくいということもありましたので、「リスクの判定」が主に厚い報告書に書いてあるところですが、それ以下に「しかし」ですとか「なお」で書いたところですね、それを含めまして総合的な判定ということをさせていただきました。これは、だんだん物質が多くなってきて、ばく露評価等がない物質も扱ってまいりますので、余り評価ができないという×、×が多くなり、で初期リスク評価はこれで終わりということでは使い道がないということがありますので、多少シミュレーションをしていただきました。それから環境中での存在状態、今後の生産量等の動向というものを含めて、最終的に総合的な判定をさせていただいたということでございます。特に今回はナフタレンにつきましては、(■)ということで判定させていただきましたが、これは先ほどご説明いただきましたように、ナフタレンは、特に室内で防虫剤として使われているということが多く、ガイドラインの改訂にありました事故ですとか、それから特殊な場合ということではありませんが、全国的なデータがあるものに関してリスク判定を行うという原則にしておりましたので、これはまだデータが少ないということも含め、また同じような用途のパラジクロロベンゼンは、室内のほうが圧倒的に濃度が高いということが起こるわけですので、これはもう少し詳細な調査を行う必要があるだろうということで、(■)にさせていただいたということです。その他、以前に、判定条件がはっきりしないというご指摘がありましたので、今度は少し*印が多くなって申し訳ないのですが、なぜこうなったかというところを注として加えさせていただいたということでございます。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 次に、ばく露評価分科会の座長を務められた中杉委員からお願いいたします。

○中杉委員 事務局からご説明ありました2点でございます。
 1つは、ガイドラインを少し変えた、資料3-2を変えた部分でございますけれども、具体的に今回例がございますので、ご説明したいと思います。
 資料3-4の<1>-58ページをご覧ください。1,1-ジクロロエタンの例でございますけれども、公共用水域・淡水の2段目のデータを見ていただきますと、最大値が2.6という数字がございます。この数字が出たところは、実は1,2-ジクロロエタン、これは環境基準項目ですけれども、環境基準を超えているところでございまして、そこの自治体がその原因を調査したところ、周辺にごみが埋められていたということがございます。そういうのは通常のことではない、特にイベント的に高いものであると、そういうものを入れてしまうと大変であるということで外そうということで、次のデータということで0.27というのを採用させていただいたと、そういうやり方をしていますということでございます。
 それからもう1つ、先ほどの環境実態調査の話とも絡むんですが、実際には必ずしも濃度が高いところを調査しているわけではないので、PRTRの結果なんかを見ますと、濃度をこの場所が、一番高いところを把握できているかどうかという位置的な確認をしまして、できていない場合には、PRTRの排出量でモデル推計をして、その結果と比較しながら評価をしていくというような方法を採用しています。今回の物質については、そういうふうな検討をしても問題がないということで、それを特に生かしたというのはほとんどございません。でも、今後はそういうような形でやっていくということでございます。
 そういうことで見ていきますと、過去のPRTRのデータがないころに評価した物質についてもそういうものがございますので、今若干そういうものについても見直しの作業を進めております。いずれご報告できるかと思います。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 次に、生態リスク評価分科会の座長を務められた花里委員からご発言をお願いいたします。

○花里委員 それでは、資料3-3のおしまいの2ページから、先ほど事務局からも説明がありましたけれども、これに基づいて説明をさせていただこうと思います。
 まずは、環境リスク評価ということで16物質がありまして、その中の生態リスク初期評価結果なんですけれども、■のところは詳細な評価が必要だということになっているんですけれども、先ほど▲のところの説明がありましたが、一番下のフルオランテンは、我々のほうで魚類、甲殻類、それから藻類を中心とした毒性試験の論文を精査した結果、ルールにのっとって出したPNEC、予測無影響濃度よりも、環境中の予測濃度PECの値の検出限界がPNECよりも高いということで、この場合はもしかしたらかなり低い濃度かもしれないんだけれども、それがわからないということで、情報収集に努めるということになっています。この場合は、やはりばく露評価が一つの課題だというふうに考えられます。
 それから、チタンのことなんですけれども、先ほど内山委員からもお話がありましたけれども、ここでは、まずはナノ材料としての評価を除くということで行いました。それについては幾つか文献はあったんですけれども、ただ、信頼できる文献がなかったことから評価ができていないんですが、ただし、例えば具体的に申し上げましょうか、資料3-4、分厚いほうのところの<1>-189ページなのですけれども、ここにその他を含めると9件の論文があったのです。これはどれも信頼できるデータではないですけれども、ただ、これを見る限り、かなり毒性値は高いということ。そもそもこの水溶解度というのはかなり低いですから、この物質に関してはそれほど大きな問題にはならないだろうと、なっていないだろうというふうに考えています。ただし、もちろん信頼できるデータがないわけですから、今後も情報の収集に努めていく必要があるということです。
 あともう1つ、ナノ材料なのですけれども、我々のところでは、ナノ材料についても検討したんですが、これについては、ばく露のデータがないということ、それからこれは普通の化学物質と違うわけで、水の中の溶存体として入るわけではないですから、これの試験方法も確立されていないということで、今後の課題ということで残っています。今回については評価できないということなんです。
 ただ、こういうナノ材料というのは、今後いろいろとつくられて環境中に出る可能性があるので、これはやっぱり今後の大きな課題だと思います、ナノ材料に対しての評価ということですね。
 それから、最後のページの生態リスク初期評価だけを行った7物質です。これについても▲のものが幾つかあります。これも先ほどのフルオランテンと同じように、PNECがかなり低くて、そしてPEC、予測環境中濃度の検出下限値がPNECよりも高いということで評価ができないということです。これらの物質は農薬ですから、かなりPNECは低くなるんですが、やはりこの場合もばく露評価ですね、それが課題になると思います。
 以上です。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 座長の進行管理が甘くてご迷惑をおかけしておりますが、ちょうど予定の時間になってしまいましたが、少し延長することをお許しいただいて、ぜひ幾つかご質問、ご討議いただきたいと思います。
 関澤委員、どうぞ。

○関澤委員 すみません、時間をいただきます。
 個々の物質の検討もさることながら、リスク評価の進め方、それから最終的にはリスク評価は何のためにやっているのかという目的ですが、リスク管理の対策を、特に行政ですから、環境省としては対策に結びつけていくために何がなされるべきかという判断の根拠として使われるのだろうと思います。そうしますと、全体として、前の議題でも討論されましたが、測定のほうはどんどん精細化、精密化が進んでいますが、他方健康リスク評価に関しましては、不確実性係数の当てはめについて、LOAELからNOAELとか、試験期間の短い場合とか、それから発がんの可能性についてそれぞれ10、10、10というような非常に大きな値を適用しております。
 しかし、国際機関であるIPCSなどは、発がん性リスク評価のハーモニゼーションについては、例えばモードオブアクションすなわち作用様式をもっときちっと見ると、動物での実験は人に当てはまらないことが多く見られるというようなことをいっております。そういったことで、スクリーニング評価とはいえ、データの検討抜きで余りに安全側に見積もって物事を判断していくというのは、いかがなものかというように考えます。
 そういったことで、基本的なお話で非常に恐縮なんですが、リスク管理の実行可能性との関係をよく考えて今後進めていっていただきたいということがひとつです。次に室内空気汚染のリスク評価についてですが、これも委員会では申し上げましたが、環境省としてリスク評価をやるとお答えいただいたのですが、室内空気汚染のリスク管理担当である厚生労働省が室内空気対策について責任を持つので、そういうところの専門家グループ、あるいは行政とも密接に連携して、リスク評価を今後進めていっていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

○櫻井委員長 大変基本的な問題のご指摘ございましたが、何かお答えになりますか。これは今後考えるべき重要課題だと思いますけれども。

○塚本環境リスク評価室長 ありがとうございます。2点ご指摘をいただきました。
 安全係数の考え方ですね、毎年国際的な状況の進展などもあろうと思いますので、そういったことに遅れないように、アップデートの努力を続けてまいりたいと思いますので、引き続きまた検討会の場でもご指導いただければと思っております。
 それから室内空気の件、全く当然のご指摘をいただいております。私どもも本日のこの委員会の結果として、本報告書をご承認いただきました暁には、きちんと関係の省庁に情報提供し、注意喚起をお願いするということを考えております。

○櫻井委員長 次、どうぞ、森田委員。

○森田委員 いつもこの初期リスク評価については、もう少し初期リスク評価の精度を上げてほしいという発言を繰り返しているんですが、今回も1つだけ指摘しておきたいのですが、3価クロム化合物なんですけれども、結論として詳細リスク評価のほうに移そうという、そのこと自体は悪くないんですが、そこに至るまでの初期リスク評価が相当荒っぽい感じがいたします。例えば資料3-4の22ページを見ますと、ここでは表3.3で経口ばく露による健康リスク、そしてMargin of Exposureの算定をされておりまして、それから表3.4で吸入ばく露による健康リスクというのが、やはりMOEで算定されて、結論的に言えば、3.4の表から、環境、大気の健康リスクについては詳細に考えなければいけないという結論なんですが、しかしよく見てみますと、一方の3.3のMOEが体重1キログラム当たり150ミリグラムという非常に毒性の少ない数字が設定されていて、もう1つの吸入ばく露のほうは1立方メートル当たり0.005ミリグラムという数値になっています。これを、例えばですが体重50キロの人が20立米吸うと仮定いたしますと、1日当たり0.002mg/kgに相当すると。
 何を言っているかというと、3.3の数字と3.4の数字が、一言で言えば、10の5乗ぐらい乖離している。経口ばく露は、吸収効率の問題とかそういうのがあって、100分の1とかそういうことは十分あり得ると思うんですが、ここまでずれてくると、何かおかしいのではないかというのが直感的に出てきます。したがいまして、吸入ばく露は、ばく露というのが一つのやり方でこういうふうになってくると、これはいいと思いますが、多分両立しない表が並んでいるような感じがいたします。そういう意味で、そこの穴を埋めるような作業を少しやっていただきたい。これがまず1つですね。
 それからもう1つ、クロムのこの種の議論をするときに、3価クロムと書いてありますけれども、実はクロムというのは、割合、金属錯体の中でも安定性のいい元素でありまして、化学形態が相当長時間維持できるようなそういう物質でもありますし、また私も若干関わったことがあるんですが、3価クロムが対糖因子だといって糖尿病の薬の開発みたいな、そういう研究が随分行われた時期がありまして、それも当然、それに結合するリガンドによって効果が違ってくるということがあります。
 そういう意味では、クロムの問題を考える上では、化学形態をどうしても抜きにできない、これが1つありますので、したがって、この後の生態リスクの評価のところでも、その実験がどういう化学形態の上でやられたのか、それが実際の河川の中で存在し得る形態なのかどうかもちゃんと詰めなければいけないと。
 それから第3が、これはもっと難しいですが、実は低濃度のクロムの分析は非常に難しい元素です。その理由は、クロムは身の回りにたくさんありまして、特にいろんな研究資材などもステンレスでできていたりしまして、結果的にはクロムのときにコンタミネーションを測っているケースが少なからずあるのですね。そういう意味を含めて相当難しい物質を扱っていらっしゃるんですが、そこのところは、できるだけ初期リスクの段階である程度精密にしておいていただきたいというのが希望でございます。

○櫻井委員長 はい、どうぞ。

○中杉委員 化学形態の問題は非常に重要だということは十分承知しておりますけれども、これは初期リスクの段階だということで、森田委員が言われたような話は詳細リスク評価のときに十分検討しなければいけないだろうというふうに考えています。
 それから、ここで使っている大気のデータというのは、環境省の大気環境課でやっている有害大気汚染物モニタリング調査結果で一応検討していただいて、管理されているデータであるというふうに理解をして使っております。

○櫻井委員長 簡単にどうぞ。

○遠山委員 では、簡単に申し上げます。
 1つは資料3-2、ガイドラインの文書の2ページ目の「ばく露量評価」のところの「評価の方法の概要」の(1)健康リスク初期評価のためのばく露量の評価の「化学物質」からの文章ですが、そこからずっといきまして、その文章が長いんですが、非常にわかりにくいと思います。特に3行目から「安全側に立った評価の観点からその大部分がカバーされる高濃度側のデータによって人のばく露量の評価を行う」というその流れがちょっとわかりにくいので、もし可能ならばもう少しわかりやすく書き直していただきたいと、そういうお願いです。
 あともう1点よろしいでしょうか。

○櫻井委員長 どうぞ。

○遠山委員 別のことですが、資料3-3の先ほどのA3のところで16物質がありまして、人の健康リスク初期評価ですが、5番目のジブチルスズ化合物、ここで淡水・食物、0.035と71という数字が出ているんですが、この淡水というのが公共用水域のものであると。これをもとのほうに立ち返りますと、厚い本の資料3-4の<1>-104ページ、ここになるわけですが、そこで公共用水域・淡水で0.00006、一方、食物からの予測最大ばく露量のほうが大きいわけですから、飲料水と公共用水域のその区別がどうなっているのか、それが1つです。
 それから、もう1点ついでに言ってしまうと、その下の表2.6のところに公共用水域濃度の淡水がありまして、水生生物のほうですが、それが2005年のデータで0.0015というのを使ってあって、これが先ほどのA3の紙の次に出てくるエコのほうの水生生物では、こちらの0.0015を使ってデータのリスク評価をされているんです。
 1つは最初の問題と、2つ目は、健康リスク評価のほうの人のばく露量に使った淡水のデータと水生生物のほうのデータと使い分けをどうしたかという2つ、質問です。

○中杉委員 淡水というのは、飲料水のデータがあれば飲料水のデータを優先しています。それを使うことにしていて、飲料水のデータがない場合に、浄水をしても除けないという安全側を見ようということで淡水のデータを使うというルールにしています。
 それから、データは同じものを使っているはずですけれども、後で検討します。両方とも換算をしていますので、ばく露量に換算して飲料水をどれだけ飲んでということで、濃度から換算して、同じ数字を使ってやっているはずです。後でチェックをしておきます。

○櫻井委員長 では、よろしいでしょうか。
 そろそろ区切りをつけなければいけないと思います。十分意見は出していただいたと思いますので、とりまとめさせていただきます。
 資料の内容について、概ねご了解いただいたかと……

○事務局(環境リスク評価室) 委員長、すみません、1点よろしいでしょうか。

○櫻井委員長 どうぞ。

○事務局(環境リスク評価室) 申し訳ありません。
 先ほど森田委員からご指摘ありましたクロムの経口ばく露、それから吸入ばく露が大きくMOEが異なるという点について、追加でご説明をさせていただきます。
 分厚い資料の<1>-40ページ、こちらにもございます。経口ばく露につきましては、いわゆる消化管からの吸収についてと、吸入ばく露については局所の、つまり肺胞上皮に与えている影響ということで、違った場所への影響ということから、これだけ大きな数字の乖離があるということをこちらのほうに書かせていただいたので、こういう形でお答えをしたいというふうに思っています。
 以上です。

○事務局(環境リスク評価室) すみません、あと1点だけ。
 遠山先生からいただいた先ほどの生態のジブチルスズの関係でございますけれども、これは生態のほうでは最大濃度で基本的にPEC/PNEC比を見ていまして、生態の最終的判断につきましては、海水のデータ0.17μg/Lと、PEC/PNEC比がちょうど1ということでございまして、そういうかたちになっておりますので、ご説明させていただきます。

○櫻井委員長 それでは、改めてお諮りいたします。
 この資料の内容につきまして、概ねご了解いただいたということで、そのように第8次とりまとめとして公表することとしてよろしいでしょうか。
 ご了承いただいたと思いますので、そのように取り計らってください。どうもありがとうございました。
 最後の議題、その他で3件ほど案件ございますが、いずれも報告事項ですけれども、ごく簡潔にご報告いただけますか。どうぞ。

○事務局(環境安全課) 参考資料1から3でございますが、こちらはいずれもPOPs条約における我が国の対応を示したものでございます。COP4の結果、POPRC5の結果、東アジアPOPsモニタリングワークショップの結果ということでございます。時間の関係で、内容については割愛させていただきますが、このような結果でございました。
 以上でございます。

○櫻井委員長 以上で、予定しておりました議題は終了になります。
 あと、事務局から事務連絡事項がありましたらどうぞ。

○事務局(環境安全課) 本日は、長時間にわたりましてご議論ありがとうございました。本日ご評価をいただきました化学物質環境実態調査、平成20年度の調査結果及び化学物質の環境リスク初期評価(第8次とりまとめ)の概要につきましては、本日のご議論を踏まえまして、今日午後にも公表するように取り計らいたいと考えてございます。
 また、「化学物質と環境」いわゆる黒本及び、「化学物質の環境リスク初期評価」のグレー本につきましては、精査の後、冊子として公表するとともに、委員の皆様にも送付させていただきたいと考えてございます。
 それから、本日の議事録につきましては、追ってご確認をいただきました後に公表したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 なお、本日の配付資料、大変大部でございます。そのまま机の上に置いていただきますれば、私どものほうからお送りさせていただきます。
 最後に、平成22年度次年度の開催につきましてでございますが、改めて日程調整をさせていただきます。場合によっては複数回開催するということも考えられますので、その際はよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○櫻井委員長 それでは、以上で第15回化学物質評価専門委員会を閉会いたします。
 どうもありがとうございました。

午後0時16分 閉会