中央環境審議会 環境保健部会 石綿健康被害判定小委員会・審査分科会合同会議(第5回) 議事録

日時

平成29年6月28日(水)13:30~15:30

場所

中央合同庁舎第5号館19階 環境省第2・3会議室

議題

(1)医学的判定の状況等について(公開)

(2)医学的解析調査の状況等について(公開)

(3)中皮腫登録事業の状況等について(公開)

(4)事例検討について(非公開)

議事録

午後3時01分 開会

  • 高城室長 定刻となりましたので、第5回の中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害判定小委員会・審査分科会合同会議のほうを開催させていただきます。
     冒頭に、傍聴者の方にお願いがございます。
     本日の合同会議の前半部分に関しましては公開でございますが、傍聴者の方におかれましては、傍聴券記載の留意事項を遵守していただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
     また、カメラ撮りにつきましては冒頭のみとさせていただき、審議内容の録音につきましては控えていただきますようお願い申し上げます。
     本日は、委員及び臨時委員の先生方3名と、専門委員の先生方24名、あわせて27名の先生方にご出席をいただいております。
     なお、本日の合同会議につきましては、報告事項に関しましては公開とさせていただいております。また、医学的判定に関しましては、個別の症例に係る医学的資料を取り扱う部分がございますことから非公開とさせていただいております。
     また、一方で、独立行政法人環境再生保全機構の職員もオブザーバーとして参加出席させていただいておりますことをあらかじめお断りいたしております。
     なお、本日のご出席の紹介につきましては、お手元にございます座席表をもちまして紹介にかえさせていただきたいと思います。
     それでは、開催に当たりまして、部長の梅田より一言ご挨拶を申し上げます。
  • 梅田部長 環境保健部長の梅田でございます。
     本日はお忙しいところ、第5回石綿健康被害判定小委員会・審査分科会合同会議にご出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
     また、委員の先生方におかれましては、日ごろより石綿健康被害救済制度の運営、とりわけ医学的判定に格別のご理解、ご尽力をいただいておりますことを、厚く御礼申し上げます。
     石綿による健康被害につきましては、引き続き救済制度に基づいて迅速に救済を図っていくということが重要でございます。この救済制度を、今後も安定的かつ着実に運営していく上で、判定小委員会及び審査分科会が担う役割は、欠くことのできない極めて重要なものと認識しております。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
     また、昨年の11月のこの会議のときにご報告、ご紹介したのですが、昨年は、石綿による健康被害の救済に関する法律の一部改正法が、ちょうど施行後5年を迎えるということで、中央環境審議会石綿健康被害救済小委員会において、検討が行われました。
     現行の救済制度の施行状況の評価検討を行って、その報告書案を前回の、去年11月のこの会のときにお話しさせていただいたところでございますが、その内容が昨年末に報告書として取りまとめられたということで、そのことの話も、きょうこの後でさせていただくことになっております。
     報告書では、良性石綿胸水のうち重篤な病態について、新たに救済対象として取り扱うことができるか、その基準も含めて検討することや、今後、現行制度の安定的かつ着実な運営を行いつつ、非認定者の実態調査やさらなる制度周知等を可及的速やかに行い、5年以内に改めて見直しを行うべきという、そのような方向性が示されたところでございます。
     本日の合同会議におきましては、報告書で示された良性石綿胸水のうち重篤な病態等についてご審議をいただくほか、救済制度をめぐる最新の情報について共有し、また、医学的判定のあり方について意見交換をいただければと思っております。
     限られた時間ではございますが、委員の先生方におかれましては、石綿健康被害救済制度の徹底的かつ着実な運営に向けまして、忌憚のないご意見書、ご助言を賜りますようお願い申し上げて、私からのご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
  • 高城室長 それでは、カメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
     以後の進行につきましては、判定小委員会の岸本委員長にお願いしたいと思いますが、議事録の作成の関係上、本日、ご発言をいただく際には、お名前をおっしゃってからご発言いただきます、ようお願いいたします。
     それでは岸本委員長、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  • 岸本委員長 それではまず、事務局より配付資料の確認をお願いしたいと思います。
  • 團医療専門官 医療専門官の團と申します。よろしくお願いいたします。
     では初めに、資料の確認をさせていただきます。
     資料1から資料4までございます。
     資料1、中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害判定小委員会等名簿。
     資料2、石綿健康被害判定小委員会の開催状況等について。
     資料3、平成29年度予算について。資料3-1、医学的所見の解析調査について。資料3-2、石綿健康被害救済制度被認定者の介護等の実態調査に関する検討会について。資料3-3、平成28年度中皮腫登録事業の登録状況等について。
     資料4、医学的判定に係る資料に関する留意事項等の改正について(案)。
     なお、それ以降の非公開の部分の資料がございますが、医学的判定についての議論を開始する前に配付し、確認いたします。
     不足がございましたら事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
  • 岸本委員長 不足の委員の先生方はいらっしゃらないということで、それではまず、報告事項から始めたいと思います。事務局から説明をお願いします。
  • 團医療専門官 医療専門官の團でございます。
     資料に沿ってご説明してまいります。
     それでは資料2をごらんください。石綿健康被害救済小委員会の開催状況等についてです。
     1、石綿健康被害判定小委員会及び審査分科会の開催状況については、平成29年3月末までに、判定小委員会は151回、審査分科会は274回、石綿肺等審査分科会は66回開催しております。
     2、平成28年度における医学的判定の状況は、(1)が認定疾病と判定された件数、(2)が認定疾病でないと判定された件数となってございます。
     (1)が認定疾病と判定された件数について、平成28年度は中皮腫が741件、肺がんが135件、石綿肺が5件、びまん性胸膜肥厚が17件、合計で898件認定されております。これまでの累計は8,511となってございます。
     次に、(2)の認定疾病でないと判定された件数は、中皮腫は56件、肺がん64件、石綿肺21件、びまん性胸膜肥厚36件、合計177件となってございます。
     平成28年度判定件数(1)と(2)の合計が1,075件でございます。この件数が平成28年度にご審議いただいた合計件数になっております。
     また、こちらの資料の件数に関しましては、判定小委員会で判定した件数であり、環境再生保全機構の受付認定状況とは異なります。
     それでは、資料3に進ませていただきます。
  •  平成29年度予算についてでございます。
     こちらは、当石綿室の平成29年度予算の項目です。
     区分として1から7までございます。
     1番の医学的所見の解析調査・診断支援等事業については約4,600万円、2番の中皮腫登録事業について約1,000万円、3番の石綿繊維計測体制整備事業については約1,200万円、4番の動向調査については約500万円、5番の石綿ばく露者の健康管理に係る試行調査については約2億円でございます。
     このように、今後とも石綿健康被害対策について引き続き取り組んでいく所存でございます。
     では、資料3-1に進ませていただきます。
     医学的所見の解析調査についてです。
     平成28年度に行われた医学的解析調査は、石綿肺等の鑑別診断の在り方に関する調査編、FISH法等を用いた中皮腫診断法の開発に関する調査編、石綿関連肺がんの病理学的鑑別法に関する調査編、日本人の石綿小体の分布に関する調査編の4件でございます。
     後ほど、石綿配当の鑑別診断の在り方に関する調査編、FISH法等を用いた中皮腫診断法の開発に関する調査編を、スライドを用いて委員の先生に発表していただきます。
     次に、資料3-2に進ませていただきます。
     石綿健康被害救済制度被認定者の介護等の実態調査に関する検討会についてと、石綿健康被害救済制度被認定者の介護等の実態調査の概要になります。
     内容についてはご参照ください。委員の先生方にも情報共有ということで配付させていただいております。
     続きまして、資料3-3に進ませていただきます。
     平成28年度中皮腫登録事業の登録状況等についてでございます。
     1は、平成28年度に新規に登録されました、中皮腫部位別、性別、年齢階層別集計となっております。
     2は、平成25年度から平成28年度の中皮腫部位別、性別、年齢階層別の累計となってございます。平成28年度は501名の方に同意いただきまして、平成25年度から平成28年度の累計としましては、1,506名の方に同意をいただきました。
     3から10につきましてはご参照ください。
     資料3-3の参考1をご参照ください。
     中皮腫登録に関する主な意見と現状についてです。
     こちらは、平成28年11月の第4回合同会議で、中皮腫登録に関するご意見をいただいた主な意見になります。
     周知については、ホームページにて中皮腫登録を解説しており、学会等で周知を実施している現状でございます。
     教育については、診断精度向上のための講習会を継続実施しており、今後、中皮腫登録情報の活用も検討していくことを考えております。
     また、予後情報については、組織型ごとの集計と公表を実施しており、資料3-3の参考に記載されております。
     登録率については、平成28年3月から平成29年2月までに86.4%でございました。
     現状については以上でございます。
     簡単でございますけれども、事務局のほうからの報告事項は以上になります。
  • 岸本委員長 ありがとうございました。
     どなたか、今の團さんの報告に関して、ご質問等はございませんでしょうか。よろしいですか。
     よろしければ、資料3-1という、平成28年度の医学研究で行って今回の留意事項の改正につながるものに関する医学的解析調査について、加藤委員と廣島委員からのご報告を、約10分ほどでお願いしたいと思います。
     それでは加藤委員から、よろしくお願いいたします。
  • 加藤委員 川崎医大総合医療センターの加藤と申します。よろしくお願いします。
     平成27年度まで、画像上、びまん性胸膜肥厚の認定基準を満たして、著しい呼吸機能障害を伴う症例について検討してきたんですけれども、その中に、器質化胸水が、胸水が残ったまま器質化して、状態が固定したことによって著しい呼吸機能障害を呈している症例がある程度の数があることがわかりました。
     今回、その中で呼吸機能に影響を与える程度の器質化胸水を有していて、肺の再膨張が障害され、事実上はびまん性胸膜肥厚と同様の拘束性の呼吸機能障害を来している51症例について、その画像所見と胸水の消長の経過を、後方視的に検討しました。
     対象ですけれども、労災と石綿健康被害救済法で認定された症例の中で205症例、このうち、先ほど申しましたように胸水をある程度有していて、消長が観察できた51例が対象となっています。年齢はそこにあるとおりです。
     CT画像における器質化胸水の要件となるCT所見として、以下の五つを挙げて検討してみました。胸水内部の不均一性、胸水が高吸収化している。胸水内部が不均一になって、このように若干高吸収になっている。
     次、胸水貯留部位における“crow's feet”sign、結局、肺と胸膜が癒着することによって、胸膜に直行するようなこういう線状影が認められるというサイン。
     胸水内にエアー、これは穿刺とかを行っても、このエアーが動かずに中にとどまっていると。器質化をあらわしているというふうに考えて、胸水内のエアー。胸郭の容量低下、こちらのほうが、胸郭の容量が低下していますけれども、長期間固定化することで容量が低下するというようなことと、この胸水の貯留がずっと同じ状態で変わらないという期間を見るということをCTで行いました。
     その結果をまとめたものですけれども、先ほどの不均一、crow's feet、エアー、容量低下、固定というのはこちらで、それが全部認められた症例が4例、エアー、穿刺とかしないと残らないので、これがない、ほかが全部認められたものが41例、残り、エアーと容量低下がないけれども固定化しているものが4例。エアーがなくて固定化がわからなかったものが1例で、crow's feetがなかったものが1例ということですけれども、このcrow's feetがなかったものというものは、ここに字が小さいですけれども、胸水がかなり多量で、それに接した肺がかなり無気肺になったことによって、“crow’s feet”sign自体が確認できないような状態であったというようなことになっています。
     これらの所見について、感度と特異度というような観点で考えたときに、胸水の不均一性はほぼ全症例で認められており、“crow’s feet”signも全症例で認められていて、感度としては非常に高い。容量低下と固定というのも47例、92%で、エアーというのは、頻度としては低いんですけれども、このようなエアーが認められた、胸水を抜いても肺が広がらない症例というのは、器質化しているということに対する特異は極めて高いというふうに考えられます。
     その他、不均一になっている“crow’s feet”sign、このあたりも器質化胸水に対する特異度としては高いと思われて、あと容量低下をしていて状態を固定しているというのがある程度の期間が続けば、これの胸水が器質化した状態として固定化しているということが言えるかと思います。
     各症例の胸水を確認してから器質化するまでの期間、どのくらい経過を追えば器質化したと言えるかということですけれども、結構ばらつきがあって、一番長いもので、これは単位はカ月ですけど、7カ月ということで、結構、2カ月程度ぐらいまでにある程度のものは器質化したということが確認できるというところで、この後に出てくる提案では3カ月あたりで変化がなければ胸水を固定化したとしていいのではないかというようなふうに結果を見て考えております。
     まとめですけれども、びまん性胸膜肥厚症例は205例認定された症例を集めて、その中で器質化胸水を有してこれが呼吸機能に影響を与えるであろう51症例について検討しました。先ほどの1から5までの項目を基準として検討しました。
     先ほどの結果を示しましたとおり、1に、器質化して高吸収化するということと、“crow’s feet”signというのは必須の所見で、残り3項目のうちの1項目を満たして3点以上、スコア制にして3点以上にすれば、胸水の器質化を来して固定化したというように判断できるだろうというようなことにしました。
     その中で、胸郭の容量低下のみである場合は、その以前の状況によって容量低下している場合も考えられるので、さらに胸水が3カ月間程度、先ほど示した胸水固定までの期間の参考にして3カ月程度の経過観察を行って、胸水の状態に変化がないことを確認して、一応、固定化と判断してよいだろうというふうに考えました。
     以上です。
  • 岸本委員長 どうもありがとうございました。
     良性石綿胸水というのは、環境省の石綿救済法には対象となっておりません。良性石綿胸水がびまん性胸膜肥厚に移行した症例が一番多いというのも従来から言われているということなんですが、今、加藤委員先生がおっしゃったようなクライテリアを持って、CT画像上こういう所見があれば、これは良性石綿胸水がびまん性胸膜肥厚化したものである、肺の再膨張がなくなったと認めていいのではないかというような考え方でどうかという話でありましたが、委員の先生方、何かご質問等はございますでしょうか。
     はい、どうぞ。
  • 楠本委員 国立がん研究センター東病院の楠本と申します。教えてください。
     1番、胸水内部の不均一性を決めるときに、これは単純CTで決めるのか、造影していない場合はどうするのかとか、そこのところの評価方法は。
  • 加藤委員 造影しかない場合と、単純とに分けてはないんですけれども、造影効果があるかどうかは、確かに不均一かどうかというのは問題だとは思うんですけど、基本的には、ある程度経過を見ていくということがあるので、経過を見ながら単純も探してということになるかと。
     造影CT一発だけ見て、それで不均一でというふうには決めがたいので、それだけだと決めがたいなというような所見であれば、それは高吸収化があるとは言え、三角みたいな状態として扱うべきかなというふうに考えます。
  • 楠本委員 先生が検討された51例の中で、多くは単純CTのみがあったというふうに理解してよろしいですか。
  • 加藤委員 そうですね、単純CT、造影しかないものはほとんどなかった。
  • 楠本委員 単純CT画像がほとんどだ、というふうな理解でいいですか。
  • 加藤委員 そうです。
  • 楠本委員 わかりました。ありがとうございます。
  • 加藤委員 フォローするときに造影のみというのはあるかもしれないですけれども。
  • 岸本委員長 ほかにないようでしたら。
     どうぞ、岡委員先生。
  • 岡委員 関東中央病院の岡です。
     委員長にお伺いしたいんですが、びまん性胸膜肥厚というのは、なかなかわかりにくい表記のように思うんですね。
     今おっしゃったようなものも、委員長の先ほどお話の中で、「びまん性胸膜肥厚化した」というニュアンスの表現を使われましたけれども、質問したいのは、このようなものを、びまん性胸膜肥厚、石綿によるびまん性胸膜肥厚というふうに今後は考えるというお考えでしょうか。
  • 岸本委員長 確かに、びまん性胸膜肥厚で著しい呼吸機能障害を起こした場合には、救済法も含めて労災認定されるということなんですが、そのあたりを、今まで胸水がありながら、びまん性胸膜肥厚として認定をしているという事実があったものですから、ですから、今、加藤委員先生が述べられたような基準を満たす人は、本来の意味のびまん性胸膜肥厚ではなくて、びまん性胸膜肥厚化した良性石綿胸水から移行した状態というような、そんな形で認めておあげしたほうが、やはり患者さん等のためになるのではないかと思います。
     実際、肺の再膨張が不可逆化していて呼吸機能障害がある方というのは、予後を見てもそれほど多く良くないので、私もデータを見て、約3年、36カ月くらいの中央値で亡くなられているという現状もあるので、それを、胸水があるからこれは良性石綿胸水であり、びまん性胸膜肥厚としてだと、それで認めないというのは問題があるかと思います。ので、びまん性胸膜肥厚化という言葉を使って、びまん性胸膜肥厚と同じように考えていいのではないかということで、今回、お上げしております。
  • 岡委員 ありがとうございます。
  • 岸本委員長 どうぞ、佐藤委員先生。
  • 佐藤委員 香川保健医療大学の佐藤です。
     この鑑定について教えてください。
     “crow’s feet”signのこの例にあるCTで、この左の肺底部、短い、胸膜から肺の中に伸びて、あとは消えるような線、右の肺底部では、血管陰影というか、中枢のそこからずっと続く線、この場合は、この左の肺底部のようなものを代表として取ったらよろしいんでしょうか。
  • 加藤委員 そうですね、全く、どんと突き当たるだけだと“crow’s feet”signとは言えないと思うので、血管が中枢性、末梢のところで肺血の肺がねじれて潰れてということで、胸膜側から来るという、そういう意味合いです。
  • 佐藤委員 わかりました。ありがとうございました。
  • 岸本委員長 どうもありがとうございました。
     じゃあ時間が。また、これは高城室長からまたお話がありますので、とりあえず今の加藤委員先生のご発表はここで終わりまして、続いて、廣島委員に、FISH法を用いた中皮腫診断法の開発に関する研究のお話をしていただきたいと思います。
  • 廣島委員 東京女子医科大学八千代医療センターの廣島です。よろしくお願いします。
     中皮腫の病理診断について、説明させていただきます。
     中皮腫の診断には、上皮型中皮腫か肉腫型中皮腫かのどちらを念頭に置くかによって考え方が異なります。
     上皮型中皮腫は癌腫と反応性中皮を鑑別する必要があります。癌腫との鑑別には、免疫染色が有用であり、中皮のマーカーと癌腫のマーカーを検討することによって、かなり正確に診断できます。
     一方、反応性中皮と上皮型中皮腫は鑑別が難しく、免疫染色ではEMA、desminなどが有用であると論文に書かれており、GLUT-1も当初の論文では中皮腫は全例陽性で、反応性中皮は陰性と書かれておりますが、その後の検討で、これらはそれほど確実ではないことがわかりました。
     一方、FISHでp16を検討しますと、上皮型中皮腫は約6割が、p16が欠失していますが、反応性中皮には欠失は見られませんので、p16の欠失の有無の検討は両者の鑑別に有用です。
     また、臨床経過を見れば、反応性中皮と上皮型中皮腫の鑑別は明らかです。
     肉腫型中皮腫か肉腫かに関しては、肉腫型中皮腫では中皮のマーカーの陽性率が低いので、keratinが陽性であることと、腫瘍が胸膜に沿って発育していることで、肉腫との鑑別を行います。肉腫はkeratinが通常陰性で、限局性腫瘤を形成します。
     また、肉腫のマーカー、例えば筋肉への分化を示すマーカー、神経への分化を示すマーカーなどを検討します。
     また、ある肉腫では特有の遺伝子の転座が起きています。例えば、左下に示したのは滑膜肉腫のFISHの結果です。滑膜肉腫はしばしば肉腫型中皮腫との鑑別が問題になります。
     滑膜肉腫は、18番染色体の転座が起きます。この転座が起きているものを滑膜肉腫と診断しますので、100%転座が起きています。これをFISHで検討しますと、赤と緑のシグナルが分かれ、break apartと呼びます。このことによって滑膜肉腫と診断できます。
     肉腫型中皮腫か胸膜炎かについても、鑑別が難しいです。
     免疫染色では、胸膜炎は採取された生検標本の表面がcytokeratinが陽性で、肉腫型中皮腫は胸膜全層が陽性になると言われておりますが、これも生検標本ですと必ずしも判断できません。一方、p16の欠失は、肉腫型中皮腫ではほぼ全例に認め、胸膜炎では認めないことから、両者の鑑別に有用です。右下に、p16の欠失を示す肉腫型中皮腫のFISHの所見を示しました。
     p16の欠失の頻度は、今までの論文で、上皮型中皮腫は6割程度であると報告されています。肉腫型中皮腫に関して、私たちは22例の肉腫型中皮腫を検討して、全例に欠失が認められることを報告しましたが、そののち米国から二つの報告があり、肉腫型中皮腫におけるp16の欠失の頻度は約8割であり、2割は欠失がないと報告されています。
     本研究では3施設共同で検討を行い、胸膜中皮腫262例、腹膜中皮腫29例を検討しました。その結果、上皮型中皮腫では73.5%がp16の欠失を認めます。二相型中皮腫も92%に欠失を認めます。これは今まで二相型中皮腫において報告されたp16の欠失の頻度よりもかなり高いです。肉腫型中皮腫に関しては51例を3施設で検討しましたが、全例に欠失を認めました。腹膜中皮腫については、各組織型とも5割程度の症例が欠失を認めました。
     次に、中皮腫以外の疾患でp16の欠失がどの程度見られるかを検討しました。
     肺がんが中皮腫との鑑別に問題になりますが、肺がんでは、大細胞癌は症例が少なくて、2例しか検討しておりませんが、100%に欠失がありました。
     その他の組織型については約3割の症例がp16の欠失を認めました。卵巣癌は、大半は欠失を認めませんが、1例だけ明細胞型の卵巣癌で欠失を認めました。膵臓癌は5割が欠失を認めました。
     ここに示した骨肉腫は、胸膜に発生した骨肉腫ですが、全例欠失を認めました。上皮型中皮腫との鑑別が問題になります高分化乳頭型中皮腫を2例検討しましたが欠失は認めませんでした。
     今までの論文で、神経膠腫、膀胱癌、腎臓癌、骨肉腫、この骨肉腫は一般の骨肉腫です、Ewing肉腫、平滑筋肉腫などでもp16の欠失が報告されております。
     次に、BAP1について説明いたします。
     2011年にBAP1遺伝子の異常が中皮腫に高頻度に見られることが報告がされました。2015年になりますと、免疫染色でBAP1蛋白を検討することによって、中皮腫と反応性中皮を鑑別できることが報告されました。これは中皮腫ではBAP1蛋白が消失して、反応性中皮ではBAP1蛋白が消失しないので、その鑑別が可能であるという内容です。そして、胸水などの体腔液を用いたセルブロックでの免疫染色でも、BAP1蛋白の消失の検討は有用であると報告されております。
     2016年になりますと、肺がんや卵巣癌などでは、BAP1蛋白が消失することは極めてまれであることが報告されました。これらの報告によりますと、肺がん、卵巣癌でBAP1蛋白が消失するのは約300例のうち1例で、極めてまれです。BAP1蛋白が免疫染色で消失していたら、中皮腫である可能性は大変高いということになります。
     スライドで、右下に示した症例は、当初二相型中皮腫であろうと思っておりましたが、BAP1蛋白を検討したところ、上皮性成分はBAP1蛋白が消失し、紡錘形細胞はBAP1が保たれておりますので、二相型中皮腫ではなく上皮型中皮腫と考えるべきだと思います。
     右下のスライドはセルブロックで、炎症性細胞が背景に認められ、BAP1蛋白は保たれておりますが、クラスターの核はBAP1蛋白が消失しておりますので、中皮腫と診断できます。もちろん、これは免疫染色で中皮由来であることを確認する必要があります。
     本研究では、3施設合同で胸膜中皮腫、腹膜中皮腫を検討しました。上皮型中皮腫では63.8%でBAP1蛋白が消失し、二相型中皮腫では55%が消失していました。
     肉腫型中皮腫は症例数が14例と少ないですが、消失は認められませんでした。
     腹膜中皮腫は検討症例が少ないですが、55%に消失が認められました。女性の腹膜中皮腫がBAP1蛋白の消失の頻度がやや低い傾向にありました。
     次に、胸膜に転移を来し得る腫瘍、すなわち中皮腫以外の腫瘍におけるBAP1蛋白の消失を検討しました。肺がん、乳癌、胃癌など、全てBAP1蛋白の消失は見られませんでした。腎臓の淡明細胞がんのみ、25%の症例にBAP1蛋白の消失が見られました。今までの報告で、肝内胆管癌やメラノサイト系腫瘍でもBAP1蛋白の消失が報告されております。
     まとめです。FISHによるp16の欠失の検討により、中皮腫と反応性変化の鑑別は可能です。特に肉腫型中皮腫と胸膜炎の鑑別には、p16の検討は有用です。
     しかしながら、肺がんの約30%はp16の欠失が認められますので、FISHでp16の欠失があるからといって中皮腫と診断することはできません。
     免疫染色によりBAP1蛋白の消失を検討することによって、上皮型中皮腫あるいは二相型中皮腫と反応性変化との鑑別は可能です。
     しかしながら、腎淡明細胞癌や肝内胆管癌、メラノサイト系腫瘍などでもBAP1蛋白が消失しますので注意が必要です。
     以上です。
  • 岸本委員長 廣島委員先生、ありがとうございました。
     どなたかご質問ございませんでしょうか。p16のFISH法によるdeletionの診断意義ということでした。
     相田委員先生、どうぞ。
  • 相田委員 国際医療福祉大学の相田ですけれども。
     ヘテロ接合性欠失に関して、ホモ接合性の欠失と同じように悪性マーカーとして、ホモ接合性と同様の域を持つと考えていいんでしょうか。
  • 廣島委員 今回検討した肉腫型中皮腫の3例に、ヘテロ接合性欠失がありとしましたが、この3例は、ホモ接合性欠失も存在いたします。ホモ接合性欠失のCut-off値は、施設によって異なりますが10%あるいは14%にしています。ヘテロ接合性欠失は、今回は50%の細胞がヘテロ接合性欠失を示すものをヘテロと接合性欠失しました。
     しかしながら、そのヘテロ接合性欠失を示す症例は、残りの10%以上の細胞がホモ接合性欠失を示しますので、ホモ接合性欠失があることになります。
     まれにヘテロ接合性欠失があって、ホモ接合性欠失が見られない症例があります。これに関しては、福岡大学の鍋島先生が検討されました。PCRで検討した結果、本物のヘテロ接合性欠失が半分、ホモ接合性欠失が半分という結果を出されています。
     また、大きいprobeを用いるとヘテロ接合性欠失に見えることがあり、小さいprobeを用いることによってホモ接合性欠失であることを証明できることもあります。これも福岡大学の鍋島先生の検討です。
     このように、ヘテロ接合性欠失に見えても、実はFISHの技術上の問題で、実はホモ接合性欠失の可能性もありますが、真のヘテロ接合性欠失もあります。p16は癌抑制遺伝子ですので、ヘテロ接合性欠失は片方のアレルのみに欠失が見られるため、もう一つのアレルには、突然変異やmethylationなどの遺伝子異常が起きているために中皮腫になったと考えられます。
  • 相田委員 そうすると、通常の検査でもってヘテロ結合性しかなかった場合は、どういうふうに解釈すればよろしいですか。
  • 廣島委員 短いprobeをお持ちでしたら、再検討すれば結果が得られます。それでも欠失を認めない場合は、必ずしも腫瘍性を意味しないと思います。
     何か起きているということはわかりますが、必ずしも腫瘍を意味しません。
  • 相田委員 どうもありがとうございます。
  • 岸本委員長 ほかに。
     どうぞ、村上委員先生。
  • 村上委員 関門医療センターの村上です。
     BAP1についてお尋ねします。
     こちらの先生の結果を見ますと、BAP1蛋白の消失が、肉腫型で0%ということです。ということは、二相型と肉腫型で発生のメカニズムが少し違うのだろうかということが第1点。
     第2点は、二相型の場合に、上皮様の部分は欠失があって、紡錘形の部分には欠失がないというようなことがあってもよさそうな気がしますが、先ほどの先生のご説明だと、それは上皮型にするべきだというふうなお話があったと思います。
     欠失と出現が混在するようなことはないということでしょうか、二相型で。
  • 廣島委員 肉腫型中皮腫と二相型中皮腫は、発生のメカニズムが違うのではないかと思います。FISHの検討から肉腫型は100%欠失があることから、それだけでも、腫瘍になりますので、BAP1の遺伝子異常は必ずしも必要としません。
     それから、二相型で紡錘形細胞にBAP1の消失がなくてもこれは腫瘍でいいのではないかという考え方もあるかと思いますが、肉腫型中皮腫は悪性度が高いので、紡錐形細胞が、正常に戻ってしまうということはないと思います。紡錘形細胞だけに異常があって、上皮型が正常ということはあるかもしれません。
     私は、19例ほど二相型中皮腫を検討しましたが、BAP1の消失の有無は上皮性成分と紡錐形成分で一致し、両方に異常があるものがほとんどで、両方に異常がないものが数例でした。
  • 村上委員 ありがとうございました。
     すみません。私が勘違いしていて、マイナスとプラスを逆に考えていたんですけど、ありがとうございました。
  • 岸本委員長 よろしいでしょうか。
     ご質問はないということで、今の二つの医学的解析調査をもとにしまして、この内容を踏まえた留意事項等の改正案について、事務局より説明していただきたいと思います。
  • 高城室長 事務局の石綿室でございます。
     先生方、大変貴重なご討議をありがとうございました。
     私どものほうで、これらの知見ということをまとめさせていただいて、こちらのほうは、石綿健康被害判定小委員会の医学的判定に係る資料に関する留意事項というものを小委員会名で出させていただいているところでございますけれども、今般の主にこの二つの研究成果をいただきましたので、事務局のほうでこの留意事項等につきまして改正案を作成した次第でございます。
     なお、この改正に当たりまして、研究の成果、それから先生方にもいろいろとご意見を伺いながらつくってきたものであることを申し添えます。
     こちらのものですけれども、まず、向かって左手のほうが、現行のものを改正したバージョンになっておりまして、下線部が、変わっているところという位置づけになっております。
     1ページ目に見ていただいている部分で言いますと、今回、病理の関係、中皮腫の診断に関して、いわゆるBAP1の知見が出てきましたので、こちらのほうが現行には反映されていないというようなところでしたので、こちらを現行改正後に、BAP1蛋白が陰性である場合は云々という部分を加えさせていただいているという部分でございます。
     また、これらの見直しに伴いまして、その他の免疫染色に係るマーカーにつきましても、先生方からご意見いただきまして、若干整理させていただいた部分がございますので、簡単にご説明いたしますと、1ページ目の向かって右手に、現行でGLUT-1の話が出ておりますけれども、こちらにつきましては、2ページ目にいきまして、(エ)のほうです。こちらのほうに移動させていただいているというところでございます。
     また、2ページ目の中で、向かって右手のほうにIMP3とCD146というのがございます。これらにつきましても、現在の知見を踏まえて、IMP3についてはこちらに明記する必要もないのではないかということで、こちらのCD146のほうだけGLUT-1とあわせて記載させていただいているという点でございます。
     以上が、病理のご発表部分での改正点でございます。
     次に、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚というところでございます。
     こちらにつきましても、いわゆる胸水を伴うような胸膜疾患につきまして、具体的な考え方について記載がございませんで、委員長のほうからご紹介もありましたように、びまん性胸膜肥厚という病態に準じた状況ということで、新たに今回、調査研究の結果で得られた結果を踏まえまして反映させていただいたものが、向かって左手の2ページから3ページにかけてでございます。
     先ほど言われました5点のポイントのご指摘がありましたけれども、4点目と5点目、すなわち、胸郭容量の低下、それから胸水量につきましては、こちらのほうでは④として、一体的に整理させていただきました。
     すなわち、胸郭容量の低下のいずれかの所見が認められる場合においては、おおむね3カ月以上の間隔で撮影された画像から、胸水量が増加していないと判断できる場合という形で、二つを1個にまとめさせていただいたところでございます。
     また、呼吸機能の障害のチェックにつきましても、救済の観点から、これらの呼吸機能検査、(1)に記載されているような、CT上このような要件がクリアされている場合には、呼吸機能検査を採用して差し支えないことと整理させていただいているところでございます。
     また、これらの留意事項の改正に伴いまして、実際に医療機関のほうで現場のドクターにチェックしていただく点に、様式というものがございます。それらにつきましても改正案をお示しさせていただきます。
     おめくりいただきまして、資料4の別紙という、3ページ裏の別紙という形になりますけれども、こちらの下線を書いてあるところが今回加えているところでございます。
     これは、このまま下線が残るということではなくて、今回、わかりやすいように、ここの部分を追加させていただいているというところでございます。
     胸水のチェック欄において、CT画像上の所見で、先ほどご紹介のあった胸水の不均一性などを含めて4点でございます。こちらのチェックをしていただくこと。
     これらに当たっては、※2というところに書いてありますけれども、胸郭容量低下という部分にチェックがつく場合には、おおむね3カ月以上あいたCTで確認してくださいというようなことを書いているところでございます。
     また、隣のページでございます。
     主に呼吸機能障害に係る情報ということの留意点を様式に記載しているところでございますけれども、今回ご紹介したところ、呼吸機能の先生のほうから、※5の部分でございますが、AaDO2の計算、大気中の酸素分圧を150Torr、呼吸商を0.83という形でやってくださいというここの部分は今までなかったのですけれども、このように、いわゆるテキスト本には書いてあるということですので、ここの部分も入れたらどうかとご提案を受けましたので今回反映させていただいているところでございます。
     事務局からのご説明は以上でございます。よろしくお願いします。
  • 岸本委員長 よろしいでしょうか。
     今、留意事項の改正点を高城室長より述べていただきましたが、疑義のある委員の先生方は、ご所属を述べて、ご質問等をお願いできたらと思っております。
     時間は十分とっております。いかがでしょうか。
     加藤委員先生と廣島委員先生の研究を生かして、この救済制度に新たに項目をつけ加えようという、そういう発想でございます。
     稲瀬委員先生、どうぞ。
  • 稲瀬委員 東京医科歯科大学の稲瀬です。  非常に些末なことですけれども、3カ月の「カ」を平仮名か片仮名かということで、留意事項では平仮名になっておりまして、こちらの用紙では片仮名になっていますが、これは行政的にこうするものであれば別に何の異存もないんですけど、あえてお伝えしました。
  • 高城室長 ありがとうございます。
     こちらのほうは統一させていただきます。失礼しました。
  • 岸本委員長 ほかによろしいでしょうか。
     よろしければ、今、室長が述べられたような形で、この留意事項を変更するということになるわけですね。この会でこれは決定する、決定事項というのはそういう格好でいいでしょうか。
  • 高城室長 はい。よろしくお願いしたいと思います。
     こちらのほうは判定小委員会名で出されるものでございますので、皆さんに集まっていただいたときにご用意いただけるとありがたいと思っております。
  • 岸本委員長 今、資料4ということでご説明がありまして、委員の先生方がいいというふうに賛同いただければ、判定小委員会名でこのように留意事項を変更するということで、よろしいですね。
     よろしいでしょうか。手が挙がらないようなので、お認めいただいたということで、留意事項の改正については、今、室長が述べられた資料4のように改正するということで、よろしかったら、じゃあ拍手でお願いできたら。
  • (拍手)
  • 岸本委員長 ありがとうございました。
     原案どおり認めさせていただくということで、ありがとうございました。
     じゃあ、今までの決定事項は公開部分の報告事項でございまして、これから以上は個別事案の検討ということになりますので、マイクを事務局のほうへお返ししたいと思います。
  • 團医療専門官 岸本委員長、ありがとうございました。
     では、本日の議事録につきましては、原案を作成いたしまして、先生方にご送付させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。
     それでは、医学的判定についての議事に移りたいと思います。
     傍聴席の皆様におかれましては、ご退室をお願いしたいと思います。
     準備等がございますので、5分間の休憩を挟ませていただきたいと思います。
     14時25分開始とさせていただきます。ありがとうございました。
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