令和4年度第4回石綿健康被害救済小委員会議事録

開催日時

令和4年12月20日(火) 13:00-15:00

開催場所

Web会議方式により開催

議事次第

1.開会

2.議事

(1)石綿健康被害救済制度の施行状況について

(2)その他

議事録

午後1時00分 開会
○小笠原主査 それでは、定刻になりましたので、ただいまより令和4年度第4回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を開催いたします。
 環境保健部環境保健企画管理課石綿健康被害対策室の小笠原でございます。議事の開始まで進行を務めさせていただきます。
 委員の皆様におかれましては、ご多忙のところご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、Web会議での開催とさせていただいております。会議中、音声が聞きにくいなどの不具合がございましたら、事務局までお電話、またはWeb会議のチャット機能でお知らせください。機器の不具合等によりご発言いただけなかった場合には、お電話にてご意見をいただきまして、後日、議事録に掲載させていただきます。
 本日の会議は公開であり、環境省大臣官房環境保健部環境保健企画管理課公式動画チャンネルでライブ配信を行っております。
 発言のご意思のある委員におかれましては、お名前の横にあります挙手アイコンをクリックしていただくか、チャット機能で発言したい旨をお知らせ願います。
 委員長から指名を受けた場合、マイクのミュートを解除してご発言いただきますようお願いいたします。ご発言の後には再びミュートにしていただくとともに、挙手アイコンを忘れずにクリックして、元に戻すよう操作をお願いいたします。
 また、本委員会は原則公開で開催いたしますが、石綿による健康被害を受けた方など傍聴が困難な方への迅速な情報提供を図るため、議事録が公開されるまでの間に限り、会議の音声を公開することといたしております。
 本日は、小委員会委員10名のうち、8名のご出席をいただいており、定足数を満たしております。
 また、本日はヒアリングを行うため、立命館大学の吉村良一先生、森裕之先生にお越しいただいております。
 なお、ヒアリングに当たっては、予定経過時間の2分前に呼び鈴を1回、予定時間経過時に呼び鈴を2回、事務局から鳴らしますので、発言をまとめる参考としていただければ幸いです。
 それでは次に、本日の資料の確認をいたします。
 資料は事前にメールでお送りしております。議事次第、資料、委員提出資料、ヒアリング資料、ヒアリング資料(参考)及び参考資料1から4まででございます。
 説明に当たっては、事務局が画面上に資料を共有して進行いたします。傍聴されている方におかれましては、環境省ホームページの環境保健部会石綿健康被害救済小委員会のページにアップロードしておりますので、そちらをご覧いただきますようお願いいたします。
 なお、本小委員会に係る前回までの資料につきましても、当該ホームページに掲載されておりますので、必要に応じてご覧ください。
 それでは、ここからの議事進行は浅野委員長にお願いしたいと思います。
 浅野委員長、よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 それでは、本日もお集まりいただきまして、ありがとうございます。議事に入りたいと思いますが、まずヒアリングを行いまして、その後個別論点の残されたものについての議論を行いたいと思います。
 本日は、審議の参考にするために、有識者からヒアリングを行いたいと考えておりまして、先ほど事務局からご紹介ありましたように、立命館大学の吉村先生、森先生、お二人にお話をしていただくことにいたしました。お二人で合わせて20分ということでお願いしていまして、大変短い時間で恐縮でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 それではどうぞ吉村先生、お話をお願いいたします。
○吉村氏 吉村です。発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。浅野先生、新美先生、お久しぶりですけれども。大塚さん、今日午前中、原賠審、ご苦労さまでした。連チャンで大変だと思います。ちょっと余計なことを申しました。
 お送りした資料と基本は同じなんですけれども、ちょっと図表などを付け加えましたので、私のほうで共有しながら、この資料を使いながら説明させていただきます。
 私どもの研究会というのは、ここにもございますように、2020年春、コロナが始まった頃から活動を開始して、この3種類の提言を発表させていただいております。今日はこの二つ目の提言の中心部分について、問題提起的にお話しさせていただきたいと思います。
 研究会のメンバー等は、ここに挙がっておりますように、法律関係だけではなく、財政学あるいはお医者さんとか、そういう方も含めた学際的な研究会であります。
 まず、現在の救済制度が発足して十何年たつんですけども、発足以来、取りわけこの数年間、アスベストの被害救済に関しては大きな変化があるというふうに認識しております。
 裁判例という点で言えば、参考文献としてつけさせていただいた、伊藤論文が示しているように、多くの裁判例、あるいは和解事例まで含めると、相当多くが国及び企業の責任を認めたり、あるいはそれに匹敵するような補償をするというふうなことが進んできております。業種はここに挙がっているように、多種多様でありますけれども、基本的にはアスベスト製品の製造及びそれを主として利用している、そういう事業者ということになります。
 それから労働現場でのばく露だけじゃなくて、作業した人が衣服について持ち帰っている、いわゆる家庭内ばく露とか、あるいは工場周辺のばく露について救済が認められた事案があります。後者はクボタの事例がそれに当たります。
 ご承知のように、公害健康被害補償法というのが1979年代にできましたけれども、この大気汚染に関する被害については、民事責任を踏まえたものというふうにされています。補償水準も高いわけですけれども、このきっかけになったのは、これもご承知のように、四日市公害訴訟の判決であります。
 四日市公害訴訟の判決というのは、これは当然のことなんですけれども、認められたのは、四日市コンビナートを形成する企業の責任でありますし、原告は周辺住民であります。ただ、それを踏まえながら、全国広く指定地域の患者に対する補償が実現したわけであります。
 したがって、ここで言う民事責任を踏まえてというのは、訴訟において責任が認められた、あるいはもし訴訟になったら民事責任が認められるという意味じゃなくて、言わば疾病の原因物質を排出する事業者集団の集団的な責任が前提となっているというふうに理解をしております。
 こういうふうな経緯を踏まえれば、やはり現在の救済法についても、公害健康被害補償法策定の時期と同様に、その性格について再検討すべき時期に来ているのではないかと、これがまず申し上げたいことの1点であります。
 現在のアスベストの被害の救済の体系は、もうこれは説明するまでもないと思いますけれども、労災補償と、それから現行の救済法でかなり救済内容に格差があります。
 この間、建設アスベストについては、国及び一部の建材メーカーの責任が最高裁で確定したということもあって、その後、建設アスベスト給付金という制度がつくられて、もうスタートしているわけですけれども、これは言わばこういう補償の上に乗っかる、慰謝料的な性格を持ったものですので、これが付け加わったことによって、格差が埋まっているわけではありません。むしろ場合によっては広がっている部分があるという、これが一つの現状であります。
 その結果、先ほど言ったような家庭内ばく露とか環境ばく露の被災者等への救済は、まだまだ不十分なままですし、職業ばく露についても、一人親方についての責任は認められましたけれども、裁判が起こせないとか、あるいは裁判上の証明に個別的な因果関係を含めて非常に困難だという被災者が多数存在するということも、これもよく知られた事実であります。
 こういうふうな問題点あるいは限界を踏まえて、同時に先ほど申したような、今日の段階における様々な裁判例や和解事例等での救済の積み重ねということを前提にしながら、改めて救済制度の在り方を検討すべきであると、これが申し上げたいことの要点であります。
 じゃあどういうふうな形でそれを考えるかということなんですが、まず基本的には、ここに挙げましたのは、宮本憲一先生、環境経済学の泰斗でありますが、その言葉を引用しましたけれども、責任というものを踏まえた救済制度を考えるべきだと。ただ、その責任というのは、これから申しますように、法的な責任、これは賠償責任ですけれども、これに狭く限定する必要はなくて、多様なレベルの責任があると。それに応じた費用負担を考えて救済制度を構築すべきである、これが言いたいことの1点であります。
 じゃあ、多様な責任とはどういうものかということなんですが、時間の関係で簡単に申し上げますけれども、まず当然、法的な責任ですね。民事責任。ただこの場合、訴訟で問題になる民事責任というのは、基本的には個別的因果関係が証明されなければ駄目だと。もちろん一定の程度において、719条1項の、ないしその類推によって、個別的因果関係の立証責任の転換というのは、裁判所が行っているんですけれども、基本的にはそうです。ただ、救済制度を考えるときには、ここで言う責任というのは、個別的因果関係を前提にせずに、集団としての責任ということでも成り立ち得るのではないかと、これが1点目ですね。
 二つ目は、法的責任と必ずしも言えないんだけれども、それに準ずる責任という類型があるんではないか。これはちょっと分かりにくいところがあるかと思いますので、少し説明しますと、一言で言えば、危険な物を製造したり、危険な行為を行って、同時にそのことによって利益を得ている者が、予見可能な損害被害を予防しなかったことによる発生する責任で、手がかりは大気汚染訴訟なんですけれども、平成14年に東京地裁が、いわゆる東京大気汚染訴訟における自動車メーカーの責任ということについて、ここに挙げたようなことを言っているのですね。
 2点ポイントがあって、一つは、被告メーカーら、これはディーゼル車を製造販売していた自動車メーカーなんですが、「大量に製造販売する自動車から排出される自動車排ガスの中の有害物質について、最大限かつ不断の企業努力を尽くして、できる限り早期に、これを低減するための技術開発を行い、かつ、開発された新技術を取り入れた自動車を製造、販売すべき社会的責務がある」。同時に、被告自動車メーカーらは、遅くとも昭和48年には、交通量の増大によって、沿道住民がそれにばく露されて呼吸器疾患に罹患するおそれがあることは予見可能であったと。つまり、ここでは、予見可能であって、なすべきことが具体的に特定されているという意味での社会的責務なんですね。いわゆる社会的責任というものはもう少し広いものでありますので、ここで言う社会的責務というのは、予見可能な被害に対して、具体的にこういうことをすべきであったという、そこまで踏み込んだものとして言っております。これが一つの手がかりになるんじゃないかと考えます。
 三つ目は社会的責任ですけれども、これは一般的な意味での社会的責任で、現行の救済法は、一般拠出については、ご承知のようにここに挙がっているような説明で、報償責任という言葉は使っているんですけれども、これは我々損害賠償法の専門家からすると、不法行為における報償責任というのは、もっと具体的な利益の話なので、ここで言うのは、アスベストの使用によって社会全体が経済的利益を得ているという、極めて抽象的なレベルですので、これは広い意味での社会的責任、あるいは社会連帯に基づく責任といってもいいと思いますけれども、そういうものです。これが現在の一般拠出金の基礎になっていると。こういう形で救済制度に一定の費用負担をするということは、これは今後も考えられていいというふうに思います。
 それから四つ目は国の役割なんですけれども、これについては、もちろん賠償責任が認められたという意味では法的責任があり得るんですけれども、やはり国民の負託に応えて、その生活や健康を守るという、言わば国の公的、政策的、あるいは政治的な責任があります。特にアスベスト被害については、ばく露から健康被害の顕在化まで非常に時間がかかります。原因者が明らかにならなかったり、顕在化した時点では既に原因者が存在しなくなるという場合もありますので、そういう場合、救済制度をつくって救済するという、そういう意味では政治的ないし政治的責任があるだろうと、こういうふうに考えました。
 図示すると、中核に法的責任があって、その周辺に法的責任に準ずる責任というグルーピングがあるだろうと。それから、それを取り巻く一般的な意味での社会的責任があって、同時に公的な、ないし制作的な責任があるという、こういう言わばグラデーションのある責任類型を考えられます。
 それを具体的にアスベストについて考えますと、それを考える上で、前提的なポイントが二つあると思います。
 一つは、ばく露の連続性ということで、アスベストによるばく露について、職業ばく露、あるいは家庭内ばく露、あるいは工場周辺における環境ばく露と、いろんなレベルがあるんですけれども、これらは個々別々に、独立してあるものじゃなくて、やはり連続性がある。職業ばく露が家庭内ばく露につながる、あるいは、職業ばく露は工場におけるアスベストがきちんとコントロールされていないということが環境ばく露につながると、こういう意味での連続性があるということを強調したいと思います。
 したがって、責任を考える場合も、やはり一番根本は、このアスベストの製品を作ったり、あるいは使用したり、ここの部分なわけですけれども、ここの部分がきっちりコントロールできておれば、それが広がっていくということはないわけですので、言わばこの連続性を前提にしてどういう責任を負うかということを考えるべきだと、これが1点目です。
 もう一つは、やはりアスベストというのは、顕在化するまでに時間がかかりますので、なかなかその危険性が分からない。したがって、アスベストの危険性について、調査研究するということは非常に大事なんですけれども、それは誰が義務を負っているかということなんですね。国は情報を独占的に有していますし、アスベストというのは社会全体に及んでおりますので、やはり国が調査研究し情報開示をする、必要な規制もするということが大事なんじゃないかと思います。
 国の調査研究という点で言えば、この職業ばく露については、これは例えば厚労省がするとか、環境ばく露については環境省であるとか、そういうことではなくて、やはり国として、一体として、危険性について調査研究し、必要な情報開示等をすべきだと、これが大事だと思います。
 二つ目は、やっぱりアスベストについては、生産したり、あるいは輸入する事業者、あるいはアスベスト製品を製造販売する事業者。これは、やはり自分が取り扱って、国内市場に流通させている製品の危険性について、調査研究を行って危険性が明らかになればその危険が顕在化しないようにする、あるいは警告表示をするというようなことが必要なわけで、そういう点では、やはり調査研究義務を重く負っている。それ以外のアスベストを使用している事業者はどうかということなんですけれども、これはやはり国とかこういう制度業者なんかが、調査研究、あるいは情報開示によって、危険性が明らかになった段階では、やはり自社が使っている、あるいは自社の製品に含まれているアスベストについて、危険性を調査研究すべき義務があるという、こういう2点があります。
 その上で、具体的な話なんですけれども、国については、やっぱり一連の国賠訴訟で法的責任が認められております。もちろんこれは労働安全行政に今のところ限られているわけですけれども、他の行政分野についても、国民の健康を守るための調査研究機能を前提にすれば、法的責任ないしそれに準ずる責任というのはやっぱり負うんじゃないか。ここに書きましたように、ばく露の連続性から見て、労働安全衛生分野で危険だということが認識可能になれば、やっぱり協力して他の行政分野でも調査研究をし、必要な措置を取るべきだったんじゃないかと思います。もちろん国としては、4番目の公的ないし政策的責任も重大だと思います。
 事業者については、まずアスベスト含有建材のメーカーについては、これは一部は十数社ですけれども、既に最高裁で責任が確定しております。市場シェアが大きい一部のメーカーの責任が認められているんですけれども、じゃあそれ以外の建材メーカーについても、そもそも責任がないのかという点で言えば、これらのメーカーは個別的因果関係の立証の困難さから、なかなか法的責任が認められにくいということであって、やはり関与したことは否定し難いので、少なくとも集団的な意味での法的責任があるのではないか。
 同時に、建設作業従事者以外についても、建材メーカーとしては、自分の製品がどういうふうに使われているかということに関わって、様々な対応をすべきではないかというふうに思います。
 他の原料アスベストの生産及び製造業者も、輸入業者を含めて同様に考えていいんだろうというふうに思います。
 アスベストを使用する事業者についても、少なくとも一定時期以降は、やはり必要な警告をすべき、あるいは別のものを使うというようなことをやるべきであったというふうに考えますので、しかもこの使用事業者は、現行の救済法の一般拠出における、一般的・抽象的な意味での利益とは違って、具体的な利益をその活動によって得ているわけですので、やはり責任としては軽いものではないというふうに思います。
 以上の責任の様々なグラデーションを前提にしながら制度設計をして、救済のギャップを埋めるということが今日の段階で必要じゃないかというふうに考えております。
 ここから後は森先生のほうに譲りますので、お願いします。
○森氏 ありがとうございます。
 今、吉村先生からご説明いただいたことを受けて、私のほうで、現行の救済制度と考えられる新しい基金の仕組みですね、これについて整理したというのが、こういう話になります。
 今、共有していただいている図2で書いたものの左側ですけどね。これが現行の制度のイメージですね。現在、これは当てはめるところがありますけれども、まず、法的責任が確定する前に迅速な救済を目的にしてこの制度ができました。現行の制度ができましたので、ここでいうところの、現在の特別拠出金というのは法的責任に準ずる責任に近いです。先ほどの言葉で言うと社会的責務に当たるものに基づいて拠出されているというふうに解釈できるわけです。その背景に、先ほどの社会的責任。ただ、損害賠償上、報償責任という言葉になじまないという話が、吉村先生のほうからもありましたので、これについては一般報償金という、報償責任、責任というかは別にして、これに基づいて、見舞金的な性格としての一般拠出金があると。国のほうは、事務費等を負担するということで、公的ないし政策的責任というのが一定負担されていると、こういう性格だろうと思います。
 右のほうに、今、吉村先生からご説明いただいた内容に基づいて、どうなるのかというのを、これは大きさも、これは金額、基金の規模が大きくなるということを踏まえてですけれども、大きくして書いています。色合いは、右と左、対応させております。
 まず、今回、法的責任が確定したと。ただし、その場合、個別的責任ではなくて集団的責任も考えてよいという話がありましたので、その二つを真ん中の、特別拠出金というふうに名づけていますけれども、法的責任の部分として大きくなるわけです。その背後に、先ほどの法的責任に準ずる責任というものがあるだろうと。この範囲をどうするかというのは、一定の割り切りがどうしても必要だというふうには思います。つまり、建材メーカーだけではなくて、石綿に関わってきた種々の産業を考えてよいのではないかという話がありましたけれども、そういう割り切りの中で、この法的責任に準ずる責任というのを確定させて、そこに準特別拠出金という形で、この責任に応じた拠出金を出してもらうということです。
 一般拠出金については、先ほどもありましたが、基本的には現行の制度をそのまま援用することで、これは引き続き一般的報償責任ということで、事業者に負担してもらうことで、現在の基金制度を拡充することができるというふうに考えております。
 私のほうから、これをまとめたんですけれども、冒頭で吉村先生が、公健法との比較がありましたけれど、公健法も、個別の因果関係に対しては割り切りをしている。また原因者の範囲についても割り切りしているわけです。石綿の場合は、大気汚染よりも、はるかに因果関係は明確になっているというふうに考えられますので、その意味では、ぜひ公健法の経験、世界で初めてつくられた公害健康被害補償制度ですから、それを踏まえて、このアスベスト被害という、古くて新しい、複雑な被害についての、こういった新しい基金制度をぜひご検討いただきたいというふうに考えております。
 以上です。ありがとうございました。
○浅野委員長 吉村先生、森先生、どうもありがとうございました。
○吉村氏 すみません、あと一、二分、多分あるので、一言だけ付け加えさせていただいてよろしいでしょうか。
○浅野委員長 はい。どうぞ、吉村先生。
○吉村氏 はい。最初に申しましたけれども、現行制度発足以後、非常に大きな変化があるというふうに認識しておりますので、やはりこの制度の性格をどう考えるかということについては、本格的な検討をしていただきたいと。我々の提案がそのまま納得していただけるかどうかについては、もちろん議論があるんですけれども、その点についてはぜひお願いしたいと思います。
 大塚さんの環境法の体系書、2020年版の中にも、国の責任が認められた場合の現行の制度の在り方、あるいは場合によっては、救済から補償に転換する可能性があるかどうかということについて、記述をされております。そういう意味でも、ぜひそういう検討をしていただきたいというのが、強調したい点の1点です。
 もう一点は、今日は申しませんでしたけれども、提言の最後の部分に、被害の、特に中皮腫の治療方法等の研究について拠出をすべきではないか、お金を出すべきじゃないかという提言をしております。今日はあまりそこに踏み込むつもりはありませんけれども、私どもの理解としては、この問題というのは、この制度の性格を、社会連帯責任の問題から、やや法的責任にシフトしたような責任に転ずるのかどうかということとは、やや次元の異なった問題で、制度の性格がどうであれ、そういう対応というのは可能だし、また必要なことだと思っております。これは理論的な問題というよりも、どちらかというと政策的な判断の問題ですので、そういう点で、提言の最後のページに書いてありますので、それも後の議論のところでご検討いただければと思います。
 以上です。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは委員の皆様方の中で、今のお二方のご発言についての質問、確認をしたいことがありましたら、どうぞ挙手をお願いいたします。いかがでございますか。
 では、小菅委員、どうぞ。
○小菅委員 吉村先生、森先生、ありがとうございました。お二人のヒアリングでは、制度の性格を再検討すべきだとの発言だったと私は認識いたしました。
 先生方は、石綿救済法は、負担の在り方、給付水準を含めて、時代遅れの制度であるというお考えでしょうか。これだけ原因の根幹が明らかで、補償較差が広がっている状況を見過ごすのは、国の不作為だと感じました。私も義理の父は石綿工場の労働者として被害を受け、夫はその家族として家庭内ばく露の被害を受けましたが、アスベストをどのような形で吸ったのかという違いだけで、大きな補償、救済の較差があることに愕然とします。
 大塚委員は、これまでも原因者負担や汚染者負担原則という拠点からご意見されていますが、本日の吉村先生と森先生のお話について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。併せて新美委員からも意見を伺いたいと思っているところでございます。
○浅野委員長 よろしゅうございますか。
 それでは吉村先生、森先生、今のご質問に対して、ご発言はございますか。
○吉村氏 時代遅れという言い方をするかどうかは別にして、制度発足以来十数年、取りわけここ数年の動きの中では、やっぱり抜本的な、どうするかということを含めて、議論すべき時期に来ているということについては、制度の性格及び給付内容両面において必要だというふうに考えております。時代遅れという表現を使うかどうかはまた別問題ですけれども。
○浅野委員長 ありがとうございました。
 新美委員、どうぞお願いいたします。
○新美委員 非常に面白い話なんですが、この準法的責任ということの意味がちょっと分からないんですが、法的責任とそうでない責任というのは、法律で強制できるかどうかが分水嶺だと思うんですが、この準法的責任というのは、法によって強制できるのか、できないのか、その辺を少し伺いたいということ。
 それからもう一つは、これは森先生になんですけれども、因果関係は明確かということなんですが、損害賠償の、この本件の場合には、アスベストと被害とは明確なんですが、各行為者と被害との間の因果関係が明確かどうかというと、これはご報告にもありましたように明確ではないので、因果関係を明確だということからどういう制度設計をするのかというのは少し伺いたいと。
 それからもう一つは、様々な集団があるということは分かるんですが、その集団のグループ分けの基準というのは一体どこに置くんでしょうか。
 この3点、ちょっとご質問させていただきたいと思います。制度設計においては非常に重要な点だと思いますので、ぜひお話を。
○浅野委員長 はい、じゃあお二方、どうぞ、ご対応くださいますか。
○吉村氏 準法的な責任というのは、裁判で法的な責任が認められて、それが強制執行できるという問題ではないと思います。ただ、こういう言わば政策的な判断、制度設計をするときに、法的責任に準じた形で費用負担なり救済の中身を考えることができる、そういうレベルの問題だというふうに思っております。
 東京大気汚染についても、結局あれも和解で終わったんですけれども、救済制度、あの場合は医療費ですけれども、救済制度に関わって、東京都が制度をつくると。それについて、自動車メーカー7社が相当な金額を拠出をするという、そういう形で制度がスタートいたしました。そういう判断の中に、そういう言わば政策的判断や制度設計をする際に、先ほどの判決における社会的責務という議論が効いているんだろうと、こういうふうに考えましたので、いわゆる政策論あるいは制度論としての概念だというふうにご理解ください。これによって法的な責任が認められたという意味ではございません。
○浅野委員長 森先生、どうぞ。
○森氏 私が先ほど申し上げたのは、新美先生が最初に言われた、原因物質との因果関係は明白だがという話、それを申し上げたつもりで、個々の因果関係が明白という意味で申し上げたのではありませんでした。少し説明が足りなくて誤解を生じさせてしまったこと、ちょっとお詫び申し上げたいと思います。
 以上です。
○浅野委員長 よろしゅうございましょうか。
○吉村氏 グルーピングの話なんですけど、これはあくまで我々としては、一つの試案として出しておりますので、そのとおりになるかどうかは別ですけれども、やはり問題に関わっている責任及び関わり方の度合い、あるいはそれによって得ている利益の種類ですね。社会一般的な利益の問題なのか、あるいは特定具体的な利益をそれによって得ているのか、そういう形でグルーピングしていけば、恐らく一定の判断はできると思いますが、その点については、またさらに議論が必要であれば議論したいと思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。
 新美先生、まだご発言ございますか。
○新美委員 一つ確認ですが、政策の問題だといっても、最後はやっぱり納得してもらうしかない、法的に強制できない責任だという理解でよろしいのでしょうか。
○吉村氏 いわゆる法的な、判決の効力というような形で強制できるものではないという点はそのとおりだと思います。
○新美委員 制度設計した場合、行政は強制できるんですか。
○吉村氏 それは行政として、そういう制度、こういう考え方について、言わば納得すれば、それはできると思いますし、それは別に判決がどうのこうのとかいうことではないと思います。要するに政策的な判断の問題ですので。
○浅野委員長 ありがとうございました。
 新美先生、大体お互いの考え方は分かったと思いますので、よろしいですか。
 ほかの委員の方でご発言はございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
 大塚委員、簡潔にお願いします。
○大塚委員 すみません。答えを先ほど求められましたので、一言だけ申します。
 今回の吉村先生と森先生のヒアリングは大変よかったと思っていますけれども、今回出た最高裁判決をきっかけにして、この問題についてさらに考えていく提案をしていただいたということだと思います。立法論として大変大事な点だと思っておりまして、事務局もこのような意見があったことを受け止めていただきたいというふうに思っています。
 もしこれを考えていくとすると、さらに他省庁を巻き込んだり、国会を巻き込んだ、結構いろんなところとの関係も出てくるかと思いますけれども、本日はとにかく、これは環境省としては重要な意見として受け止めていただければいいかということを申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、今日いただきました貴重なご意見については、今後の審議の中でも何とか生かしていきたいというふうに思っております。
 お二方の先生には貴重な時間をいただきまして、本当にありがとうございました。この後、私どもは審議に入りますので、ご退席いただいても問題ございませんので、どうもありがとうございました。
○吉村氏 どうもありがとうございました。
○森氏 ありがとうございました。
○浅野委員長 それでは次に、個別の論点ごとの審議に移りたいと思いますが、事務局から資料の説明をいただきます。よろしくお願いいたします。
○木内石綿健康被害対策室長 石綿健康被害対策室から、議論いただきたい点(たたき台)(その2)と書いた資料で、本日の論点4から6までご説明します。
 前回に引き続きまして、28年の本小委員会の取りまとめと、その後の状況を基に整理しています。
 4番、制度運用ですけれども、ここでの論点は、一つは広報・周知について、それから繊維計測の体制整備・認定申請手続等の合理化についてということです。
 まず4-2、平成28年取りまとめまでの経緯ですけれども、23年6月の中央環境審議会の二次答申においても、この救済制度の運用強化・改善の中で、労災制度の連携強化ですとか、対応の迅速化、そして制度の周知、医療機関等への情報提供を行うべきと指摘があったところです。
 この後、石綿ばく露作業従事歴があると申告があった方について厚生労働省に情報提供する、あるいは、救済制度、労災制度の対象となった中皮腫死亡者数の集計など、労災制度と連携して実施したところです。
 また、認定に係る対応の迅速化のために、医学的判定の考え方について、患者さんの受診、治療をされる医療機関にも周知をする。また、医学的資料について、申請者からではなく、申請者の同意の下、医療機関から直接取り寄せるなどの取組を実施したということです。
 また、制度を広く一般に周知するということで、一般向けの広報活動、医療機関向けの情報提供も実施しました。
 また、平成25年からは、石綿による肺がんの医学的判定のための肺内石綿繊維計測について、迅速に実施できるよう、透過型電子顕微鏡の整備や、人材育成、マニュアル作成等を実施したところです。
 そして、4-3、平成28年取りまとめの抜粋ですけれども、まず中皮腫と診断された方に対して、専門医療機関のリスト、それから救済制度、地域の医療・介護・福祉サービス、緩和医療等に係る総合的な情報を提供することを検討すべきとされました。
 また、一般向けの広報活動を継続しつつ、それと併せて、医療現場での救済制度の申請の勧奨、これができるように、呼吸器に関する学会や、看護師、医療ソーシャルワーカー等との団体を通じて、救済制度や医学的知見の周知を図るべきとされたところです。
 特に、石綿による肺がんについては重点的に医療現場への周知を図るべきとされました。
 また、繊維計測についても、体制を引き続き整備する制度管理を徹底しつつ、計測の迅速化を図るべきということ。
 また、申請書類の電子入力化、あるいは窓口である保健所職員への研修を強化すべきとされたところです。
 4-4、平成28年取りまとめ以後の状況を記載しています。
 中皮腫患者さんへの総合的な情報提供として、平成31年4月から、環境再生保全機構のWebサイトにおいて、診断・治療、公的制度に関する情報を掲載しています。
 また、救済制度についての一般向けの広報活動として、テレビ、新聞、雑誌、ポスター、ラジオ、YouTube、TVer、SNS等、多様な媒体で周知を実施しています。
 また、医療関係者への制度の周知として、救済制度に関する簡易パンフレットも作成して、保健所や医療機関等へ送付するとともに、団体、日本医師会、日本病院会等、また日本癌学会、日本肺癌学会等の学会も通じまして、様々な周知を実施したところです。
 また、医療従事者向けには、特に学会において、セミナーあるいは講習会等を定期的に実施して、診断精度の向上に努めたところです。
 そして、石綿による肺がんについて、ご指摘のあったところですけれども、これについては、令和2年度より、「がん登録を活用した石綿健康被害救済制度の肺がん認定基準に関するデータベース作成に係る業務」を実施し、救済制度への適正な申請につながるよう、医師向けの教育資材として、認定基準に係る画像のデータベースの構築を進めています。今年度中の公開を目指しているところです。
 その下、第1回の本小委員会でもご案内した建設石綿給付金制度について、本年7月から、石綿救済制度の認定者に対しても、個別周知を実施しています。
 繊維計測については、制度管理事業を継続実施し、従来、岡山労災病院で可能だった石綿繊維計測を、新たにJFEテクノリサーチ株式会社、帝人エコ・サイエンス株式会社でもできる体制を整備してきました。
 また、各種手続についても、不要な判定様式を削減する。また、現況届、死亡届の提出を原則不要とするなどによって、医師、被認定者の負担を軽減してきました。
 電子入力可能な申請書等について、既に機構のWebサイトに掲載していますけども、今後、申請のオンライン化を目指しまして、システムの構築についても検討を進めています。
 保健所職員への研修については、簡易パンフレットを作成して、各保健所へ送付するほか、保健所説明会を継続的に開催しています。
 ここまでが28年取りまとめ後の取組状況ですけれども、その下、今年度の本小委員会での意見について、まとめています。
 患者さんへ救済制度の情報を提供するように、医療機関に対して周知をすべきではないかというご意見。
 また、医師の卒前教育に、石綿健康被害救済制度の内容を盛り込んではどうかというご意見。
 民間部門におけるピアサポート活動を周知すべきではないかというご意見。
 また、臨床の現場において、肺がんの患者さんの職歴を聴取すること、あるいは病理診断において石綿小体の有無をよくきちんと観察するといったことについて、医療機関に対して啓発すべきではないかというご意見がございました。
 また、申請者の負担軽減のため、引き続き認定申請手続の簡素化を進めるべきというご意見がございました。
 議論いただきたい点としては、こうした広報・周知、これまでも進めてきましたけれども、さらに推進していくなかで、どういったことが考えられるかということ。
 繊維計測の体制整備・認定申請手続の合理化等についても、何が考えられるかということです。
 続いて、5番、健康管理です。
 5-2にあるとおり、石綿にばく露された方の中長期的な健康管理の在り方を検討する、そのための知見の収集を目的として、平成18年度から、「石綿の健康リスク調査」を実施し、また、平成27年度からは、石綿にばく露された方に対して、定期的なCT検査、エックス線検査等によって健康管理を行う検診モデルについて検討するため、健康管理に係る試行調査というものを実施してきました。
 28年取りまとめにおいては、この試行調査について、対象地域の拡大に努めながら、継続して引き続き検討していくべきということ。また、保健指導に関するマニュアルの作成や、研修会のさらなる充実を図るべきとされたところです。
 5-4に、令和元年度に行われた、試行調査の最終取りまとめの内容をまとめています。
 この検診モデルの中で、まず石綿のばく露を把握するということがスタートですけれども、ご本人からこれを聴取する、丁寧に聴取を行うことによって、参加された方ご自身の自覚を促し、行動変容につなげる。あるいは不安の解消につながるという効果が認められましたけれども、一方で、そのばく露の状況には不確実さが存在して、これだけを根拠に石綿ばく露の程度を判断することは困難だったということです。
 また、医学的所見についても、限局的な胸膜プラークがある場合に、そこから石綿ばく露の程度を把握するには限界があるということ。
 また逆に、胸膜プラークの存在から、石綿関連疾患の発症リスクを推定する、あるいはその発症を予防するための方法については、十分に明らかになっていない、または未確立であり、胸膜プラークの有無の把握から、根拠を持って発症の予防ができるまでの根拠がないということでありました。
 また、CT検査につきましては、特に小さな所見について、エックス線検査に比して優位性がありますが、被ばく量が大きいということもあり、CT検査を行う利益が不利益を上回るとは言い難いと結論されています。
 こうしたことから、公共政策として、一律にこの検診モデルを推進する根拠は弱いとされたところですが、一方で、個人の状況によっては、既存検診を利用する、あるいは任意でCT検査を受けて、石綿ばく露を把握していくことが有効な場合もあり得るとされたところです。
 この取りまとめを踏まえまして、令和2年度からは、既存の住民健診の機会を活用して石綿関連疾患を発見していく、そうした体制の整備に役立つ、そのための「石綿読影の精度確保調査」を実施しています。これは、自治体での石綿関連疾患の読影精度にばらつきがあることから、希望のあった自治体から、読影に使った画像を環境省に集めて、専門の先生方による読影を行い、その結果を自治体にフィードバックする、そういった事業を実施しています。
 また、保健所職員に対する講習会、マニュアルの作成等も実施しています。
 この「読影の精度確保等調査」を今後進めていくに当たり、どういったことが考えられるかが論点です。
 2ページ飛んで8ページです。
 6番、調査研究です。
 一つは、治療研究の推進の在り方について。
 もう一つは、中皮腫登録、そしてがん登録等のデータの活用についてです。
 平成28年の取りまとめにおいては、中皮腫登録、これは23年の二次答申において、「中皮腫の診断・治療に関する調査研究を推進すべき」とされたことを受けていますけれども、25年度から開始した中皮腫登録について、症例の集積を行いつつ、医療機関での中皮腫の診断精度の向上に役立つ情報を提供できるよう検討すべき、また、がん登録制度の趣旨や内容を踏まえた活用方法について、検討すべきとされました。
 6-3です。28年の取りまとめ以後、中皮腫登録については、救済制度で認定を受けた中皮腫患者さんの登録を継続して、累計4,327件集積を行い、その集計について、環境省のWebサイトで情報を公開しています。
 また、がん登録については、先ほどもご説明しましたが、認定基準に関するデータベースを作成して、医師向けの教育資材の公開を準備中です。
 その下、本小委員会でのご意見について、まとめています。
 基金の使途を拡大して、医療研究に使用することの是非についてです。
 第3回、前回の会議において、患者の立場を代表する委員からは、基金の運用益について、使途の拡大を検討すべきではないか。また、石綿について、国の一定の責任が認められたことも踏まえて、治療研究費を拡充すべきではないか。そのことについては、厚生労働省と環境省のそれぞれが見解を示すべきとの意見がありました。
 また、拠出者である経済界を代表する委員からは、基金の元本と運用益は一体のものである。個別の石綿健康被害患者の救済を目的として拠出された基金を、拠出時と別の目的に使用することには同意できないというご意見がありました。
 また、医療界を代表する立場の委員、地方自治体を代表する立場の委員、臨床関係の委員から、これまでの議論を踏まえると基金の治療研究費への使途拡大は困難ではないかというご意見があり、法学の関係の委員から、基金の研究開発に充てることは患者さんのためには望ましいことではあるけれども、これまでの議論を踏まえると、内容面、また手続面において障害があり、当面難しいのではないかというご意見がありました。
 また、複数の委員から、治療研究の推進については、基金の枠組みの外で考えていく必要があり、厚生労働省を中心に検討をすべきではないかとご意見がありました。
 小委員長からは、最後に、基金の使途の拡大ということに関して、前回と同様いろいろ制約が大きいと。治療研究の重要性については異論がないので、その方策について検討を引き続き進めるべきとの発言があったところです。
 引き続きですが、治療研究については、基金の枠組みによらず、これまでの取組をさらに推進するためにどのように進めていくべきか。また、中皮腫登録とがん登録などのデータについて、どのような活用方法が考えられるか、こういった点が論点となってございます。
 事務局からの説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 それではただいまの事務局からの説明を踏まえまして、個別の論点についての意見交換をしたいと思います。
 前回、この委員会での質疑応答の意見交換の際に、ちゃんと顔を、画面を出したほうがいいという委員からのご指摘がございまして、前回そのようにしましたが、特に通信に不都合が生じるということはございませんでした。今回も、前回やったのに今回やらないというのも変な話だと思いますので、差し支えない方はお顔をお出しいただいて、ご発言、あるいは他の委員のご発言についてお聞きいただければというふうに思います。
 ご意見がある方は、どうぞ先ほどからありますように、挙手アイコンでお知らせいただければ、順次お名前をお呼びいたします。
 順番としては、制度運用、健康管理、調査研究ということで、順繰りに議論していきたいと思いますので、小菅委員から出されました資料では、1がまず調査研究についてのご意見なんですが、2から先に始めたいと思いますので、ご了承ください。最後に時間がある限り1のところに戻るということにしたいと思いますので、取りあえず、全部の論点について、既に紙でご意見をお出しくださっておりましたが、小菅委員から、制度運用、広報周知、計測体制、申請手続、この点について、ご発言の書面の趣旨をさらにご説明くださると思いますので、どうぞご発言ください。
 小菅委員、どうぞ。
○小菅委員 詳しく私からの資料にも入れておりますけれども、厚生労働省、環境省、環境再生保全機構が、全く中皮腫をはじめとするアスベスト患者家族に対するピアサポート、グリーフケアに関して周知しておりません。具体的にすべき取組を資料に書いています。単純で簡単なことなのですぐに実行に移していただきたいと思っております。
 また、6月に改正された時効救済制度の周知がほとんどなされておりませんので、死亡小票の活用の問題と併せて、早急に検討、実施が必要なのです。この点についての現状整理の資料を次回提示いただくようにお願いしたいです。
 加えて、現在は医学的資料を申請者が取得、提出することになっていますが、労災保険制度と同様に、申請者の同意書などを用いて、環境再生保全機構から病院等にアクセスして、資料取得する運用に変更していただきたいと思っております。
 また、肺がんの認定者数が、制度設計時の想定から大きく下回り続けている要因に、提出を求めている医師の診断書に、石綿が原因であることの根拠の記入を求めています。この記入を医師ができない、してくれないということで、申請を断念される方がおられるのです。労災と同様に、まず申請受理し、主治医の判断がなくともきちんと審査していただく積極的な運用に改めていただくようにお願いします。
 医師の診断書は、労災保険制度と併用ができる仕組み、労災と同様に申請認定に協力した医師、医療機関には、何らかのインセンティブを与えるべきだと考えております。
 以上でございます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 ほかの委員でこの論点についてご発言ご希望の方は、どうぞ挙手をお願いいたします。
 ございませんでしょうか。
 今、小菅委員からご発言がありました中で、事務局で何か回答できることがありますか。
○木内石綿健康被害対策室長 まずがん患者さんの団体の情報交換への支援については、各地域のがん診療連携拠点病院等に設置されているがん相談支援センターにおいて、個別に患者さんのご事情をお伺いする中で、情報提供が行われています。
 このがん相談支援センター、及びその機能については、環境再生保全機構のWebサイト、先ほどご紹介した総合的情報提供の中でもご紹介しています。
 また、周知について、厚労省から、これまでも様々な媒体を通じて周知を行ってきたところですが、遺族の方に対するさらなる個別周知についても、引き続き検討されているとお伺いしています。
 また、死亡小票、人口動態調査の調査票については、統計法の改正によって、特定の目的以外の利活用ができなくなったことをご理解いただければと思っています。
 また、申請時の医学的資料については、当初の、1枚目の診断書は申請書類と併せて提出いただいていますけれども、その後、追加の資料、病理標本や、画像データ等については、申請者の方の同意の下に、直接医療機関から取得する運用としているところです。
○浅野委員長 はい。
 申請手続に関してのご要望が今小菅委員からございましたが、この点については、今のところは特にお答えはございませんか。
 小菅委員、引き続きご発言をご希望ですか。
○小菅委員 はい。環境省に対してちょっとご質問させていただきます。環境省が直接やらない理由は何なんでしょうか。がん拠点センターを通すだけではなくて、環境省と厚労省で直接届け出たらいいのではないかというふうに思っております。いかがでしょうか。
○浅野委員長 はい。ご意見として伺っておくということにとどめますか。事務局としては、今のところはそういうことですか。
 そういうご意見だということを十分承って、事務局として対応の可能性については最終の報告をつくるまでのところでしっかり検討していただくことにいたしましょう。
 ほかの委員の方から、この制度運用に関してのご発言がございませんようでしたら、次に健康管理の在り方に移りたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 特にないようでしたら、次に、先ほど事務局が説明いたしました健康管理についての在り方についてのご意見を承りたいと思いますが、これも小菅委員、恐縮でございますが、また紙をお出しくださっておりますから、どうぞ、まず小菅委員からのご発言をいただきたいと思います。
 小菅委員、いかがですか。
○小菅委員 はい。では私のほうから発言させていただきます。
 私からの資料にもつけておりますけれども、石綿ばく露者の恒久的な健康管理制度の構築に向けた具体的な検討を進めていただきますようにお願いしたいと思っているところでございます。
 過去の健康リスク調査、試行調査の対象地域のばく露者に加えて、建設作業者などにおける自営業者等には、石綿健康管理制度がないのです。病気になれば、一部の方には、救済や補償をするけれども、病気になるまでは全部自己責任で健康観察をするというのは無責任です。この辺りの問題整理をして、次回以降、どのような対応が必要なのか、事務局から提示いただきますようにお願いしたいと思っているところでございます。
 以上でございます。
○浅野委員長 はい、ありがとうございます。
 頂きました提出資料には、神戸市の例が出ておりますが、この点については、事務局は何か調査はなさいましたか。
○木内石綿健康被害対策室長 今、健康管理の制度化ということでご意見がありました。先ほどご説明した、試行調査の最終取りまとめの中でも、この点、詳しく記載がありまして、参考資料についていますけれども、集団を対象として、制度として、一律に検診を実施していく場合には、個人の方が任意で検診を受診される場合より強い公共性が必要であると記載されています。様々なデータを検討する中で、集団を対象とした対策型検診の中でCT検査等を用いていくことについては、参加者全体として評価をすると、利益が不利益を上回るとは言えないことから、公共政策として検診モデルを推進する根拠が弱い。
 一方で、個人の状況によっては、既存検診を利用するなどにより健康管理をしていくことが有効であろうということ。
 また一方で、この石綿関連疾患が比較的まれな疾患であるために、読影の体制等、十分ではないことが懸念されると指摘されたところです。
 こうしたことを受けて、現在、読影の精度確保等調査を実施していまして、参加された方の健康管理をする中で、石綿読影をきちんと管理をしていく体制の整備を進めているところです。
○浅野委員長 はい。残念ながら、ちょっとお尋ねしたことにお答えいただけたとは思いませんが、小菅委員から出されましたペーパーの中にある神戸市の例というのは、もう少し具体的に検討するということはあり得ると思いますが、こういう例があるということを見るということが必要だろうと思ったのですが、事務局でまたもう一度裏づけになるようなデータを取ってみてください。ありがとうございました。
 小菅委員、引き続きご発言でしょうか。よろしいですか。
○小菅委員 はい。お願いいたします。
 先ほど、環境省のお話から、ちょっとご発言させていただきたいんですけれども、建設事業者の健康管理は誰が責任を持つとお考えでしょうか。
○木内石綿健康被害対策室長 お答えします。
 繰り返しになりますけれども、一定のばく露が認められる方に対して、対策型検診、公的制度として検診を実施することについて、現状のデータからは支持されないという結論がありまして、現在、市町村で実施をされている検診の中で、早期に石綿関連疾患を発見し、早期の治療につなげていく、このための体制整備を進めているところです。
○浅野委員長 お答えはこのぐらいのお答えということですね。しょうがありません。
 ほかの委員の方からのこのテーマに関してのご発言はございませんでしょうか。健康管理についてということで、今、取り上げております。いかがでございましょうか。
 医学の領域の、岸本先生、何かご発言いただくことはございますか。
○岸本委員 はい。実際に事務局がおっしゃいましたように、最近は低線量CTというのも簡単にできるんですけれども、放射線被ばくと肺がんの発生をディテクトできる確率があがるという医学的に明らかな優位性、言いかえればエビデンスというのがない現状からは、事務局が言われましたように、レントゲンの比較読影というところが一番無難な案ではないかなというふうに思っております。
 私も環境省で行われた北九州の調査に参画いたしましたけれども、アスベストばく露に関して、胸膜プラークの存在が、アスベストばく露の一つのマーカーになるんですけれども、これが全てであるわけでもありません。今まで行ってきた健康管理を広げながら、なおかつ精度を高めながら、また継続していくというのがいいのではないかなというふうに思っております。
 あと、建設労働組合の皆さんに関して、私も岡山県と島根県の皆さん方のチェックをやっておりますので、胸膜プラークは肺がんの石綿ばく露との関連の理由になったりしますので、今後とも考慮されてはどうかなというふうに思っております。
 以上です。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 ほかに何か、このテーマでご発言いただけることはございますでしょうか。
 行政の立場で、中澤委員、何かございますか。なければ結構ですが。
○中澤委員 特に私のほうから意見はございません。
○浅野委員長 はい。よろしゅうございますか。
○小菅委員 小菅なんですけれども、よろしいでしょうか。
○浅野委員長 はい、どうぞ。
○小菅委員 あと一つ、また環境省にちょっとお尋ねしたいと思います。
 建設自営業者と石綿健康管理手帳との関係はどのようにお考えなのでしょうか。
○木内石綿健康被害対策室長 今、ご指摘のあったのは厚生労働省の制度だと思います。環境省としては、広く、対象を限定せずに、住民の方への、特に石綿にばく露された方への健康管理の制度の在り方として検討してきたところですけれども、現状、既存の検診の機会も活用しながら、早期に石綿による疾患を発見できる体制を構築するということで、事業を進めているところでごす。
○浅野委員長 よろしゅうございましょうか。
 この法律の制度の枠組みの中では、特に自営業者さんであるということだけを取り出して、何か特別な対応をするということはなかなかやりづらい制度だというのが、多分環境省の理解の中にあるんだろうと思っておりますが、ご要望があるということについては、どこの制度でどの役所がやるかということはまた別問題ですけれども、考えなくてはいけないかもしれません。本制度の枠組みを超えた何らかの対応が必要であるというようなことについては、それはそれなりにやっぱり委員会としてはものを言うということは必要かもしれないと思います。本制度の中で何ができるか、制度を超えて何ができるか、何をしなきゃいけないかといったような整理をしていかないと、なかなか議論が先に進まないかもしれません。
 ほかに委員の方でご発言ございますか。
 新美委員、何かございますか。よろしいですか。
(なし)
○浅野委員長 それでは、調査研究について、もう一度お願いいたします。治療研究の話とか、データ活用ということについて、本日、事務局からいろいろとお話がございました。これについてのご発言をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。
 それでは、小菅委員、ご発言ください。その後、岸本委員にお願いいたします。
○小菅委員 ありがとうございます。
 本日の吉村先生たちの話の中にもありましたように、国の責任が何度も司法で認定されている経過もあり、国も早急に治療研究の整備のためにお金を出すべきと考えます。
 私どもは、基金を治療研究に活用すべきであり、前回の大塚委員の発言にもあったように、活用できると考えております。
 資料にもつけましたが、政府は、アスベスト被害によって発生した病気を治すことが重要であると考えていると答弁し、併せて、今後についても必要に応じた支援を進めてまいりたい。引き続き関係省庁で連携しつつ必要な支援を進めていく考えであるとの答弁をされています。参議院の附帯決議にもありましたように、あらゆる可能性を排除せずに議論する必要があります。
 その意味で、本日、厚労省が会議に参加していないので、何か議論をしろというのは無理があると思います。この間、厚労省とは何か協議をしているのかと思っていましたら、何もされていないようですし、環境省の不作為ではないですか。
 環境省所管の中皮腫登録制度の拡充に向けた検討は、関係者とすぐにでも始めるべきですし、事務局は、先ほどの点も含めて、どのようにお考えでしょうか。今この瞬間も大きな不安や恐怖の中で戦っている患者、家族がいることを忘れないでほしいと思っております。
 以上です。
○浅野委員長 はい、どうもありがとうございました。
 それでは岸本委員、どうぞご発言をお願いいたします。
○岸本委員 ありがとうございます。
 実際、私、40年中皮腫と関わってまいりました、治療に関して、ニボルマブ、イピリムマブ、非常に効果がありました。しかし、ほかにいろいろ、私が関与したものだけでも10以上のお薬を対象として、治療を行った経緯があるんですけれども、このようにいいものはなかったということでございました。じゃあ、今、治療に、この薬剤これをやれば絶対にいいというようなものがあるようでしたら、私もやるべきだと思うんですけれども、今、世界を見渡してもそういうものがない現状ではなかなか臨床試験は難しいというふうに思っております。
 一方、我々石綿健康被害判定小委員会は、皆さん方を認定するために、この15年、非常に努力してきたわけであります。例えば中皮腫であっても、病理組織標本の新たな免疫染色方法があれば、それをすぐに使って判定の参考にする。診断を確定できるようなレベルであれば、すぐに認定するということをやってまいりました。例えばBAP1とかMTAPというのが核に欠失があれば、たとえ腫瘍性の胸膜肥厚がなくても中皮腫として認めよう、断定しようというふうに、世界的にも第一線のことをやってまいりました。
 平成28年のとき、この小委員会では、良性石綿胸水というのが対象疾病じゃないということで、何とかしろというふうに言われました。良性石綿胸水自体は重篤な病気ではないんですけれども、その中で、胸水が長い間たまってくるものは、確かに重症である場合もあるので、こういう病態は認定しようということで、すぐさま調査に当たりまして、画像上の認定基準を定めて、これで胸水のたまったものもびまん性胸膜肥厚としようということで認定条件を決定して、すぐにこれを実行しました。そのため、現在、びまん性胸膜肥厚として認定される方の大半は、この器質化胸水を伴った症例でございます。
 そういうことで、我々判定小委員会は非常に努力していますし、その努力は認定に直結して参りました。現実に調査研究をやれば、患者の皆さんをより多く認定しようということでございますので、治療、治療と言わずに、もっと大きな目で見て、こういう診断における調査研究も非常に重要でございますので、この救済制度を所管する環境省においては、適切な運営のために、診断のための調査研究、こちらのほうに重点を置いていただきたいというふうに思っております。
 以上です。
○浅野委員長 はい、ありがとうございます。
 岸本先生のおっしゃりたいことは、治療研究そのものを厚労省がしっかりやらなきゃいけないということは当然という前提の基で、環境省の中の仕事としては、むしろ認定の際の迅速化、あるいは必要なことについての情報を十分獲得するための調査研究もなおやらなくてはいけない、そういうご趣旨のご発言と理解してよろしゅうございますか。
○岸本委員 はい。もうそのとおりで、前回も申しましたように、健康保険で通っている薬を使って行う調査研究というのは、厚労省やPMDAにお願いすれば、決してできないわけではないということでございます。認可されているお薬を使わせていただいて治験をやることは、厚労省やPMDAにお願いして、決してできないことではないと思います。このことを環境省でこれを言うのは、私は少し視点がずれていると思います。
 環境省は、一般の皆さんを対象として、その方々が中皮腫や肺がんになった際に、これを素早く認定しようということでございます。
 事務局がおっしゃいました石綿繊維に関しましても、石綿小体が5,000本未満で認定されない方は素早く石綿繊維を測定して、そちらのほうでも検討するということは、今、潤沢にできておりますので、これは皆さん方にお伝えしておきたいなと思います。
 以上です。
○浅野委員長 はい。ほかの委員の方のご発言はございませんでしょうか。
 小菅委員の挙手が挙がっています。どうぞ、ご発言ご希望でしたらご発言ください。
○小菅委員 はい、ありがとうございます。
 ただいまの岸本委員の発言に対して、ちょっと発言させていただきます。
 今、世界的に有意な結果がどんどん出てきております。その代表的なものに、カーティー療法がございます。そのように、3回目でも、3人の医師の先生方がヒアリングしていただきましたように、現状での考えではなく、ぜひこれからのことを、本当にこの前、3人の先生方のヒアリングのように、世界的な結果が出ておりますので、それを日本に取り入れていただきたいというふうに私は思っております。
 本当に、今、研究支援をしないでいつするのかということで、私は本当に、患者さんが、先ほども申しましたように、一日一日、明日がもうないような状況で苦しんでおられる患者さんのために、私は本当に治療研究に向けて、否定的ではなくて、本当に一人でも多くの患者さんを救うために、治療研究を進めていただきたいというふうに思っているところでございます。
 岸本委員のおっしゃったように、今まで40年間、この中皮腫に対しての研究もされてきたとは思うんですけれども、この前の3人の医師の先生方のヒアリングのように、ぜひ世界的な結果が出ておりますので、それに向けて、日本でもぜひ環境省また厚労省も含めまして、研究治療に推進していただきたいということを私は申し上げたいと思います。
 以上でございます。
○浅野委員長 はい、ありがとうございました。
 調査研究のテーマについて、さらにご発言の方はございませんでしょうか。
○小菅委員 本日厚労省が来ていないことに対しても、やはりこの治療研究に向けては、3回目でも厚労省と一緒に連携して、治療研究を進めたほうがいいんじゃないかというお話もありましたように、ぜひ本当、この4回目は、厚労省にもぜひ参加していただきたいと思っておりましたので、本当に厚労省が参加されていないことに対して、本当に不思議に思っておりますので、ぜひ環境省、ぜひよろしくお願いしたいと思っております。
○浅野委員長 分かりました。
 ほかの委員の方からご発言ございますか。
 どうぞ、環境省からありましたらどうぞ。
○木内石綿健康被害対策室長 まず、疾病の治療研究に関すること、これは既にご案内のとおり、厚生労働省等の、他の省庁の所管となっています。
 一方、環境省で運用している石綿健康被害救済制度は、石綿健康被害の特殊性に鑑みまして、社会全体で被害者の迅速な救済を図るという制度です。
 基金については、当該、その目的に沿って拠出されたものであり、この拠出された基金を、所掌範囲を超えて別の目的に支出していくことは難しいと考えています。
 一方で、環境省として、これまで救済制度の着実な運用、またこの制度運用に役立つ調査研究、そして運用の中で集まるデータの集積、こうしたことに取り組み、結果も公表してきました。こうしたことの、さらに効果的な推進については、この委員会でのご意見も踏まえて、関係者のご意見をさらに聞いていきたいと考えています。
 また、中皮腫の治療研究、小菅委員提出の資料にあるとおり、環境省で、前回の委員会で委員からいただいた意見について、厚労省とも大変密に協議をいたしました。そうした中で、中皮腫の治療研究に関する政府支援としては、厚生労働省において財政的な支援を行ってきたところであり、今後についても必要に応じた支援を進めていくと、こうした形で、政府としての統一見解がまとまっています。
 本小委員会は、環境省の審議会であり、環境省の施策について意見をいただくということですが、この委員会で意見があったということについては、厚生労働省等の関係省庁にも伝えていきたいと考えています。
○浅野委員長 はい。よろしゅうございましょうか。環境法設置法によると、環境省は他の省庁に関しても、環境政策に関しては積極的に意見を述べることができることになっていますから、当審議会が環境省に対する意見を述べるというときには、環境省が他省庁に対して、ちゃんと要望を出してくれということを審議会としては述べることも可能だと思っています。小菅委員が言われるように、厚労省の取組について、当審議会は一言もものが言えないというような理解はしておりません。要望としてはしっかり出すことができると思いますが、ただ問題は、最終的に向こうが分かりましたといってどれだけのことができるかという、そこのところのフォローアップは、残念なことになかなか、直接は環境省じゃないものですからやりにくいという面がございますけれども、調査研究が必要であって、特に治療研究については必要性があって、それを所管する省庁で一段の努力をしていただきたいということは、これまでも、るる申し上げてきたわけで、そのことについては環境省からも情報としては伝わっていると理解しております。当審議会としてそのことを改めて確認するということは、私も決して無駄ではないと思っております。
 何かご発言をいただける委員はございませんか。大塚委員はいかがでしょうか。よろしいですか。
○大塚委員 特に追加することはございません。前回申し上げたとおり、拠出者との間のちょっと鉄のおきてがおありなようなので、国会を巻き込み、また厚労省とも関係を踏まえて、ちょっと障害がございますので、それを踏まえて考えていく必要があるかなというふうに思っております。ありがとうございます。
○浅野委員長 はい、ありがとうございました。
 それでは、いかがでございましょうか。
 特にご発言のない委員の方で、今日特にご発言のご希望はございますか。髙田委員、中澤委員、よろしゅうございましょうか。岩村委員も特に本日はご発言ございませんが、よろしゅうございますか。
 それでは、特段のご発言はこれ以上はないようでございますので、今日は、吉村先生をはじめ、お二方から積極的なご発言、情報提供のご意見をいただきまして、これを踏まえて、当委員会としての取りまとめをこれからしていくことになるかと思います。
○小菅委員 肺がんの件でちょっと意見をお願いしたいと思います。
○浅野委員長 はい、どうぞ。
○小菅委員 はい。肺がんの判定基準の関係ですけれども、前回、私から、ばく露歴の確認について、環境再生保全機構の方にもご説明いただきたいとお願いしましたけど、ご説明はないのでしょうか。
○浅野委員長 分かりました。
 その点ですが、事務局、今の点はどうですか。
○木内石綿健康被害対策室長 ばく露の情報の把握については、参考資料1の5ページに取りまとめています。石綿肺、びまん性胸膜肥厚では、特徴的な医学的所見ということに難しさがあり、申請者の自己申告により、石綿ばく露歴を出していただいています。
 医学的判定に係る審議の中で、この申告の有無、またその内容について、申告書の記載の範囲で確認しています。これは、石綿ばく露歴単独で判断するのではなく、医学的所見を含めて総合的に判断して、認定基準への適否を判断しているものです。
○浅野委員長 よろしゅうございましょうか。参考資料1-2の部分ですね。今のお話は。
○浅野委員長 小菅委員、まだございましたらどうぞお続けください。
○小菅委員 先ほどの続きでございますけれども、これまでの累積の申請のうち、胸膜プラークがありながらも不認定になった方の割合、そのうち少しでも職業ばく露が疑われた方の割合を示してくださいと、これもお願いしておりましたけれども、この資料も出されておりません。労災及び給付金、一方で救済制度の判断の在り方がダブルスタンダードになっているので、それを分かりやすく示してほしいと資料の準備もお願いしましたが、これも出されておりません。
 本日のように十分な議論ができる資料がないなどの状況では、参議院で決議された附帯決議に関する申請に応じているとは到底言えません。次回の委員会では必ず求められた資料をお示しいただきたいと思っております。
 本日、給付金のばく露歴調査に関する資料が出ていますが、厚労省からの説明があるかと思いましたが、来られていないようですし、きちんとした前提を踏まえた上でないと議論ができませんので、切にお願いしたいものです。
 石綿救済制度と労災では、石綿ばく露の調査方法が根本的に違います。書類審査だけで労災では当たり前にされている本人への聴取がされません。できたばかりの建設アスベスト給付金でもしていることを、判定基準の変更とセットですればできることです。手が足りないなら、人員を増やすように予算請求していただきたいです。建設アスベスト給付金の関係では、社会保険料労務士を職員として募集するなど、具体的な取組がされています。
○浅野委員長 分かりました。
 ご意見として承っておきましょうか。
○木内石綿健康被害対策室長 今、お答えしてよろしいでしょうか。
○浅野委員長 どうぞ。
○木内石綿健康被害対策室長 まず、肺がんで胸膜プラークがあって不認定となった方の数ということですけれども、これはWebサイトに既に掲載していますけれども、前回お出しした参考資料4、肺がんの申請者における石綿ばく露作業従事歴に係る調査報告書の中で、肺がんで申請をされ、調査にご協力をいただけた方の中で、従事歴が10年以上で、胸膜プラークがあり、かつ不認定の方は12名いると、記載されていることをご報告します。これはアンケートに回答された方が358名、うち従事歴10年以上と回答された方が167名、約半分ですね。167名のうち、該当する方が12名ということでした。
 それから、建設アスベスト給付金制度については、先ほどの参考資料1の7ページ以下に、厚労省から頂いた資料をつけています。
 それから、石綿健康被害救済制度における石綿による肺がんの判定については、前回の資料にもありましたが、個々の原因者の特定が困難であるという、石綿による健康被害の特殊性に着目した制度であり、また、ばく露歴の確認が困難なケースが多いという制度的な立てつけです。
 そうした中で、石綿による肺がん、これは肺がんの発症リスクを2倍に高める量の石綿ばく露に該当する場合ですけれども、医学的所見の国際的なコンセンサスがあるので、ばく露歴を厳密に確認するのではなく、医学的所見、客観的なものに基づいて、幅広く認定しているということをご報告します。
○浅野委員長 これはこれまでの環境省の制度運用上の考え方をご説明いただいたということでございますので、これはこういう考え方だというお話しでございます。よろしゅうございますね。
○小菅委員 小菅から、よろしいでしょうか。
○浅野委員長 はい。
○小菅委員 今の環境省のお話からなんですけれども、部分的な調査ではなくて、今まで判定された方のプラークの有意所見の部分を全部出していただきたいと思っております。
○浅野委員長 データを取ることができるかどうかという問題もございますね。
○小菅委員 割合を出していただきたいと思っております。
○浅野委員長 アンケートに答えた方についてのデータであったので、それでは不満だというご意見ですが、可能かどうかについても、さらに……
○小菅委員 そうでございます。
○浅野委員長 できるかどうか、調べてみなきゃ分からないかもしれませんね。
○木内石綿健康被害対策室長 すみません、全ての症例についての集計はございませんが、調査にお答えいただいた方のデータはありますことから、お示ししたということです。現状、そのような状況です。
○浅野委員長 はい。今のところはちょっと残念ながらデータがないというのが事務局の説明でございました。何らかの方法でさらにデータを収集できるかどうか、その可能性については検討していただく必要があるかと思いますので、この点もよろしくお願いいたします。
 さて、他の方で何か本日の三つのテーマについてのご発言はございますでしょうか。ほかの委員の方のご発言がもしあれば、そちらを優先したいと思いますが、いかがですか。ご発言ないようですね。
 では、小菅委員、どうぞ。
○小菅委員 はい。ありがとうございます。
 本日のヒアリングを受けて、多くの新鮮なご意見が出されました。その中で、私も十分な整理ができていませんし、もっと議論が必要だと思っているところです。
 この問題については、前回細川委員からも指摘がありましたように、しっかりと議論することが大切だと考えております。本日だけの議論で何らかの方向性を出すというのはとても無理だと思います。引き続き議論を継続するか、前例があるような、吉村先生や森先生を含めたワーキンググループを設置して、十分な議論が求められるのではないでしょうか。参議院の附帯決議にもあるように、立法府からの要請もあり、丁寧な議論をしていくべきではありませんか。
 中皮腫サポートキャラバン隊の中皮腫患者白書にもこれまで触れていますが、これについてもきちんと説明を伺いたいです。次回ヒアリングを設定いただけますように、切にお願いいたします。
○浅野委員長 次回以降についての進め方について、事務局と相談いたしますが、一応前提としては、次回はこれまでの議論の整理をして、取りまとめの考え方を整理してみようということになっております。その中で、今、言われたことについてどう扱うかということについても、準備をさせたいと思います。
○小菅委員 浅野委員長、最後にお願いなんですけれども、本日も治療研究推進等に関しても含めて、そのほかの課題についても様々な意見をさせていただきました。療養手当を含めて、給付の枠組みなども検討課題が多く、本日の委員会をもって、次回に報告書(案)取りまとめというのはあまりにも早過ぎる。この委員会の2回目でも、患者さん、ご遺族のヒアリングも聞きっ放しじゃありませんか。本日も検討すべき課題、そのために必要な資料を事務局にお願いしたいですし、引き続き必要な議論をしていただくようにお願いしたいと思っています。
 そもそも6月の参議院での附帯決議に対して、政府、環境省としてきちんと応じていることにはらないと思いますので、浅野委員長、ご検討をよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
○浅野委員長 はい。承りました。
 それでは、予定の時間より少し早うございますが、特に委員からのご発言がないようでございましたら、本日はこれで閉会ということにさせていただきたいと思います。
 事務局としては、取りまとめのたたき台をつくっていただくと。それに基づく議論をさらに続けると、こういうことにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の小委員会はこれで終了ということにいたします。どうもありがとうございました。
○小笠原主査 事務局でございます。次回の小委員会の日程については現在調整中ですので決まりましたら追ってご連絡いたします。
 また、本日の議事録につきましては、事務局で原案を作成し、委員の皆様にご確認いただいた後、環境省のホームページに掲載する予定ですので、よろしくお願いいたします。それまでの間につきましては、本委員会の運営方針に基づき、会議の音声を環境省のホームページで掲載する予定でございます。
 それでは、以上になりますので、令和4年度第4回石綿健康被害救済小委員会を終了いたします。ありがとうございました。
 午後3時38分 閉会