第3回 環境基本計画点検小委員会議事録

日時

平成19年8月3日(金)

場所

環境省 総合環境政策局 環境計画課

出席委員

鈴木基之委員長、浅野直人委員、大塚直委員、武内和彦委員、和気洋子委員、植田和弘委員、小澤紀美子委員、長辻象平委員

(総合政策部会からの出席委員)
佐和隆光委員、花井圭子委員、鷲谷いづみ委員、青木保之委員、石坂匡身委員、河野正男委員、塩田澄夫委員、善養寺幸子委員、高橋康夫委員、永里善彦委員、中野璋代委員、福川伸次委員、森嶌昭夫委員

議事内容

午後2時05分 開会

○弥元環境計画課長 まだお見えでない委員もいらっしゃいますけれども、時間が参りましたので、始めさせていただきたいと思います。
 議事に入ります前に、お手元の配付資料のご確認をお願いいたします。
 まず「重点調査事項に係る点検結果」各省からご提出いただいたものを束ねてございます。資料1の[1][2]、資料2[1][2]、資料3[1][2]を綴じてある資料でございます。
 それから、参考資料1「第三次環境基本計画の点検の進め方について」、参考資料2「平成19年点検 重点調査事項」、それから、参考資料3といたしまして委員会の名簿がお席に配付されていようかと思います。
 また、委員の席上には参考資料を配付しておりますので、適宜ごらんいただければと思います。
 足りない資料などございましたら、お申しつけいただければ補わせていただきますが、よろしゅうございますでしょうか。
 なお、マイクをご使用いただきます際には、スタンドにありますスイッチを押してからご発言いただければと思います。同時に5本までしか使用できませんので、ご発言が終わりましたら随時スイッチを切っていただければと思います。
 それでは鈴木委員長、よろしくお願いいたします。

○鈴木委員長 ただいまから第3回環境基本計画点検小委員会を開催させていただきます。
 前回の第2回におきまして、ヒアリング等々の結果を検討していただきました。本日は3つの重点点検分野について、主として関係府省の方々からのご報告をいただくことになっておりますが、テーマといたしましては「都市における良好な大気環境の確保に関する取組」「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」「長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の整備」、それぞれの分野に2つずつの重点調査事項が挙げられております。
 各関係府省から、このヒアリングのために資料を準備していただきましたが、それぞれのところからお話を伺うのは時間的に厳しいということもございまして、ここにご出席いただいておりますが、説明は主として環境省からお願いし、必要があれば他のところからもご説明をお願いする、そういう形で進めさせていただきます。
 早速、最初の重点点検分野である「都市における良好な大気環境の確保に向けた取組」のうち、最初の重点調査事項「環境的に持続可能な交通システム実現のための取組」について説明をお願いしたいと思います。
 これは警察庁、国土交通省、そして環境省がヒアリング府省となっております。
 初めに、環境省から概要について説明をお願いいたします。

○弥元環境計画課長 右肩に資料1[1]と書いてあります数ページの資料が対象でございます。
 「環境的に持続可能な交通システム実現のための取組」ということで、調査内容項目が2つ示されております。
 まず、a)交通流円滑化のための施策の現状と公共交通利用促進のための経済的手法を含めた具体的実現手法の課題でございます。
 警察庁、国土交通省、環境省が連携いたしまして、環境的に持続可能な交通─ESTと呼んでおりますけれども、この実現の支援を実施しておるところでございます。平成18年度におきましては全国で21カ所のモデル事業を実施しておりますし、平成19年度は27カ所のモデル地域におきまして、関係省庁連携のもとで事業を実施してまいりたいと考えております。
 また、国土交通省の施策といたしまして、さまざまなものが行われておりますけれども、環状道路等幹線道路ネットワークの整備、交差点改良等の道路構造の改善、公共交通機関の利用を促進するための都市の基盤整備、あるいは自動車交通需要の調整、それから高度道路交通システム─ITS、こういったものなどの交通流円滑化対策を行っているところでございます。
 各都市圏におきまして、環境負荷の軽減を政策目標に掲げる戦略的な都市交通施策を促進するために、総合都市交通体系調査の手引を策定しているところでございます。
 さらに、警察庁でございますけれども、交通流の円滑化対策といたしまして、幹線道路等において信号機の集中制御化、系統化、感応化等の高度化を行うなど、交通安全施設等の整備を進めているところでございます。
 また、公共交通利用の促進のために、バス専用優先レーン等の設置あるいはバス専用の信号制御等を行う公共車両優先システム─PTPSを整備しているところでございます。
 2つ目の調査内容項目であるb)物流のグリーン化でございます。
 これにつきましては、経済産業省と国土交通省及び関係団体が協力して運営しておりますグリーン物流パートナーシップ会議が国土交通省に設置されております。荷主企業と物流事業者が協働して行うCO排出量削減のための取組を支援するために、こういった組織を通じまして、先進性のある工夫が見られるモデル事業と、このモデル事業を参考にCO削減取組の拡大を目指す普及事業、こういった2段階の事業を認定しておりまして、平成18年度はモデル事業といたしまして14件、普及事業といたしまして64件を推進決定事業として認定しているところでございます。
 なお、こういった施策の効果あるいは定量的な評価につきましては、施策等の継続的取組を通じて知見の蓄積が必要だというのが現状だと考えておりますので、今後の検討課題と考えておるところでございます。

○鈴木委員長 本日は、先ほど申し上げましたように6点の重点調査事項をご審議いただくことになります。したがいまして、準備されております3時間の時間の中では1つについて約30分。今、5分程度でご説明いただきましたので、20分以内ぐらいでいろいろご議論いただく。大変時間が限られて恐縮ですが、そのようなことでお願いいたします。
 それでは、ただいまの交通システムの関係府省、国土交通省、警察庁の方から何か補足でのご説明はございますでしょうか。
 それでは、ご質問のあります委員は札を立てていただけますでしょうか。
 青木委員からお願いいたします。

○青木委員 自転車道の関係についてお伺いしたいと思います。
 環境基本計画の中にも自転車の活用については書いてございますし、新聞報道などを見ますと、都市部の自転車利用等についてもいろいろ基準を決めてやっておられるようですが、やはり全体として自転車に対する取組を強めていく必要があるのではないか。
 地方部におきましても、例えば自転車によるツーリズムというのは西洋等では非常に盛んでありますけれども、日本ではまだまだのようでございます。これはいろいろインフラの整備とか、いろいろな仕組みができていないということもあろうかと思います。また、都市部でも、私は基本的に日本の道路はまだ貧弱で、非常に足りないと思っておりますが、大都市の中央部におきましても自転車は歩道を走りますと非常に危険でありますが、自転車道を確保するだけの余裕がないといったところもあると思います。
 当面のそういったものに対する対策等について、お考えがあれば伺いたいと思いますし、将来的には、この貧弱な日本の道路をもっときちんと整備していただきたい。オーストラリアのシドニーなどでは、バスについても専用道路をつくっていると聞いておりますが、そういった交通の分離をやっていくべきであろうと基本的に思いますが、その辺のことについてお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

○佐和委員 統計上といいますか、運輸部門は1997年の京都議定書以降、恐らく最も予想外のCO排出量の減少という実績を示しているわけですね。その要因としては、主として物流面でのエイジ転換といったことの効果が非常に大きいと承っておりますが、2004年度から2005年度にかけて乗用車の排出量も減ったわけですね。その辺について、国土交通省として要因分析ですね、つまり平均的な燃費効率が目に見えてよくなったとか、あるいは乗用車の台数そのものの伸びが鈍ったとか、いろいろな理由が考えられると思うのですが、その辺を分析していただきたいというのが1つ。
 それから、公共交通機関の利用促進ということで、例えば、私が住んでおります京都市でも、今出川通りというかなり北の方の通りに1本LRTを通すことを計画して、低床型のバスをとりあえず走らせてみて沿線住民のアンケートをとったら、意外にネガティブな意見の方が多かったということで、京都市自体も躊躇しているようですが、そのLRTの普及等について、国としての施策をお伺いしたいと思います。

○武内委員 交通の流れを円滑化することがCO排出の削減だとか都市の持続可能性に貢献するというのは、必ずしもそうでないことがあるのではないかと、ちょっと考えさせられることがあります。
 それは宇都宮市で、商業の立地というのは延べ床面積で見ると郊外の方が2倍ぐらい大きくなっていて、どんどん郊外に店舗が移っているのですけれども、そこで郊外で交通渋滞が発生しているということで、その交通渋滞を解消しようといろいろな取組をすると、ますます郊外に店舗が移転してしまって中心市街地が寂れていく、こういうふうなことになるわけで、したがって、交通流の円滑化というのは、全体としてはどういう都市構造を誘導していくのかということ抜きに議論できないと思います。
 一方で、そういう日本の、特に地方都市ですと、公共交通だけで広大な郊外地をカバーすることはなかなか難しいということを考えあわせると、総合的な施策という形でこういうものを展開しないと、こういう1つの軸だけで議論していくことには限界があるのではないか、そんなことを思ったりしたのですけれども、その辺についてのお考えをぜひお聞かせいただければと思います。

○浅野委員 ここでは、良好な大気環境の確保というテーマを論じているわけですから、そういうことに絞っての議論になるかと思いますけれども、特にここで調査項目としてお聞きしている中に、公共交通利用促進のための経済的手法を含めた具体的実現手法の課題をどうとらえ、どのようなことがこれまで行われたかというご質問を差し上げたところ、ICカードの総合支援というものが、そのまま経済的手法と言えるかどうかは疑わしいのですが、かろうじて一つの手法ではないかと思われるものがお答えとして出されております。しかし、それ以外の事跡は何もないと理解してよろしいのでしょうか。
 例えば、社会実験として有料道路の利用についてさまざまな工夫をするというようなことが、これまでにも各地で行われてきているわけですが、それは国土交通省としては余り重視していないということなのでしょうか、これが質問です。
 それから、今の武内委員からのご質問にも関連することではありますが、これはもともと環境基本計画の中に書いていなかったことですから、我々の責任でもあるわけでしょうけれども、交通流の問題というよりも、都市における大気環境あるいは騒音の問題を現実に現場で考えたときには、道路ネットワークを整備することが唯一の解決手段でない場合が結構多く、道路の維持管理をきちっとすることが果的であるということがいえるわけです。現に地方整備局などでは、透水性舗装を相当普及させるといった努力をしておられるわけで、そのようなことを環境面からももっときちっと位置づけ、新しい道路ネットワークをつくることばかりに予算をつけるのではなくて、もう少し路面の補修といったことに予算を回すべきではないかと前から考えているわけですが、ぜひお考えいただきたい。この点について、今後どのように予算面でもお考えなのかをお聞きしたいということでございます。

○鈴木委員長 主として国土交通省にお答えいただくご質問が多かったかと思いますが。

○国土交通省 まず、自転車等に関してお答えいたします。
 自転車道に関しましては、本年5月から警察庁と合同で、新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会を開催いたしまして、まさに7月に提言をいただいたところでございます。その提言を踏まえまして、警察庁等関係機関と連携して、自転車走行空間の確保を図るための各種取組をこれから積極的に進めてまいる所存でございます。
 続きまして、ちょっと質問飛びますけれども、有料道路の料金引き下げの件がございました。
 確かに、高速道路の料金引き下げによる既存高速ネットワークの効率的活用、機能強化のための料金引き下げに伴う効果と影響を把握する社会実験をしているところでございますけれども、まさにその効果とか影響の検証を踏まえてという形になるかと思います。
 それから、路面の透水性舗装等というお話がございましたけれども、まさに一部、実験的にやっているところがございます。こちらはその効果等の検証を踏まえまして、今後の方針等を決めていくところでございます。

○浅野委員 透水性舗装に限定することもなくて、凸凹の路面がちゃんと定期的に維持されるだけでもかなり騒音は下がります。ですから、透水性舗装が低騒音だからそれをやります、あとはもういいですというよりも、市街地道路を常にきちっと維持しておくことが持っている環境面でのメリットをもう少し考える必要がある。
 もちろん、これはほとんど直轄ではないので、国土交通省に言ってもしようがないのかもしれませんけれども、国土交通省がしっかり姿勢を示されれば、自治体管理の道路についてもそういう方向に意味があるということが言えるだろうと思うのです。
 よろしくお願いします。

○国土交通省 続きまして、佐和委員からご質問のありました、乗用車からの排出量が減った要因についてという点でございますけれども、まさにご指摘のありました燃費につきましては、メーカーが生産する自動車の燃費自体がトップランナー基準によってどんどんよくなっているという点、それから、市場に投入されたそういう車に対して、グリーン税制によってより燃費のいいものが選ばれている。そういう点において、世の中で動いている自動車全体の燃費が上がっているという点は、まずあろうかと思います。
 それから、公共交通の利用促進を進めている関係で、ちょっと今、具体的なデータがございませんが、たしか1台当たりの車の走行距離も最近減少してございまして、そういう面、燃費の面なり1台当たりの走行距離、そういう側面で乗用車からの排出量が減少してきていると認識してございます。
 それから、今、グリーン税制の件を申し上げましたけれども、グリーン税制などは、先ほど浅野委員からご指摘がありました経済的手法の1つになるのかなとも考えてございます。

○国土交通省 残りの部分をお答えさせていただきたいと思います。
 佐和委員の2点目、LRTの普及に対してどういう考えかというお話がありました。
 京都の今出川の社会実験の話は、私どももよく存じております。社会実験の準備期間がどうだったかという議論も含めて、終わった後の検証も含めて、地元で異論があることも存じ上げておりますが、全体といたしましては、今、LRTの普及が非常に進み始めております。富山ライトレールの成功の事例に見ますように、非常に注目を浴びているわけでございますが、国土交通省では平成18年から、複数の局にまたがりましてLRTプロジェクトをつくり、これを推進しようということでございます。
 さて、それに先立ちまして、平成9年度あたりからは道路の一部、道路本体もしくは道路の付属物として路面電車の走行空間の改築を補助する制度がスタートしておりますし、さらに、LRTプロジェクトでは、建屋だとか車庫だとかの補助ができる。さらに車両につきましても、これは鉄道局の方から補助ができるということで、こういうことをやっております。1つ目が富山であったわけですけれども、2つ目として堺の例とか、いろいろそういうものが出始めているところでございます。
 さらに法律的にも、LRTにつきましては軌道法が根拠法になりますけれども、軌道法の中での上下分離というのが、さきの国会で成立いたしました地域公共交通活性化再生法。その中で、軌道運送高度化事業としてそれが実現することになっております。そういった事業面、さらに法的な整備も含めまして、LRTにつきましては整備してきております。今後一層の普及に努めたいと考えております。
 あと、武内委員からお話がございました。商業の郊外立地が進んでいる、それが負のスパイラル的に中心市街地が衰退していって、また郊外に移っているのではないかというお話でございました。
 新しい時代の都市計画はいかにあるべきかという諮問が国土交通大臣からされておりまして、それにこたえる意味で去年2月に一次答申がされております。それを踏まえまして、実はまちづくり3法を改正したわけでございます。その中では、これからは拡散型の都市構造ではなく集約型の都市構造、いわゆるコンパクトなまちづくりを進めるべきだとしておりまして、そのためには、郊外における大規模な集客施設の立地抑制、具体的には、都市計画の準工業地域において1万平米以上の大規模な集約施設は立地抑制しようということでブレーキを踏んで、あとアクセルとして、中心市街地に対しまして、例えばまちづくり交付金のような事業を適用しまして活性化しようということをやっております。
 さらに、今回、大臣答申を7月20日にいただきましたけれども、そういう中で、集約型の都市構造を進めるために歩いて暮らせる拠点をつくる。さらに、その拠点を結ぶという意味での公共交通を整備していく。そういった意味では、自主採算性ということだけではなくて、公共としてそれを支える、公金を投入していく、そういうふうなロジックをつくって支援していくべきではないかということを答申としていただいております。
 そういうふうに頑張っておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。

○鈴木委員長 ありがとうございました。
 いろいろな施策を立てて推進しておられるわけですが、いろいろご議論ありましたように、都市における持続可能な交通、COの問題もありますが、モーダルシフト、LRT、あるいは自転車も含めて、結局のところ、どういう都市をつくるかというところに帰着するということで、今、お話ありましたように、まちづくり3法などをお考えになるときにも、ぜひ環境面と連携をとっていただいて、その辺をお考えいただくということで、積極的に連携をお願いしたいと思います。
 次のテーマも、そういう意味ではまさにまちづくりに絡む問題でありますが、同じく重点点検分野「都市における良好な大気環境の確保に関する取組」の重点調査事項といたしまして「ヒートアイランド対策のための取組」に移らせていただきたいと思います。
 これは国土交通省と環境省がヒアリング対象府省となっております。
 では、概要のご説明をお願いします。

○弥元環境計画課長 資料1[2]でございます。
 「ヒートアイランド対策のための取組」ということで、2つの調査内容項目が示されております。
 まず、a)地表面被覆の改善でございますけれども、環境省では、学校施設のエコ改修の一環といたしまして屋上緑化等を実施しているところでございます。平成17年度は9校、平成18年度は6校をモデル校として採択しております。
 また、国土交通省では、緑の基本計画の策定を推進し、計画に基づく都市公園事業や緑地保全事業等の一体的実施、道路、河川等との事業間連携、それから民間事業者が行う緑化等との共同によりまして、総合的、計画的に緑とオープンスペースの確保を図っているところでございます。
 緑が少ない市街地では、民間建築物の屋上とか空き地など、敷地内における緑化施設の整備に当たりまして、その計画を市町村長が認定し、固定資産税の軽減を図る緑化施設整備認定制度等の活用によりまして、緑化の推進を図っているところでございます。
 下水道事業を通じまして、下水道処理施設の緑化、下水処理水の有効利用を図るとともに、雨水及び開水路等の施設を活用いたしまして、水と緑のネットワーク形成への取組も推進しているところでございます。
 b)都市形態の改善でございますけれども、環境省におきましては、クールシティ推進事業といたしまして、ヒートアイランド現象の実態把握及び環境影響の調査を実施しております。また、全国の都市における効率的なヒートアイランド対策の推進を支援するために、対策の効果を具体的に評価する手法の検討を進めるとともに、都市ごとのヒートアイランド対策に応じました方向性を示すための指針を新たに作成しようとしているところでございます。
 また、クールシティ中枢街区パイロット事業といたしまして、平成19年度からでございますけれども、ヒートアイランド現象の顕著な街区に対しまして、施設緑化や保水性建材、高反射性塗装など複数のヒートアイランド対策技術を組み合わせまして、一体的に実施しているところでございます。
 さらに、省CO型都市づくりのための面的対策推進事業といたしまして、これは平成19年度からでございますけれども、地域に応じた集約型都市構造に向けたCO排出量削減シミュレーション等の事業に対しまして、補助を行う予定としております。
 国土交通省でございますけれども、都市計画制度の活用の推進といたしまして、都市における空間の利用に当たりまして、環境負荷の小さな都市の構築に向けた都市計画制度の活用の推進を図っているところでございます。
 また、エコまちネットワーク整備事業といたしまして、多くの都市開発が予想されます都市再生緊急整備地域内におきまして、都市開発と一体的に環境負荷の削減を行うことにより効果的、効率的に都市環境の改善を図るため、複数のプラントを接続する熱導管など、都市環境の改善を図るための施設整備等に要する費用について補助しているところでございます。
 さらに、気象等による影響が少なく、外気に比べて水温が安定している下水及び下水処理水の熱を利用したヒートポンプによる冷暖房の導入によってエネルギー消費量の削減を図るため、下水熱の利用のため必要な施設整備に対しまして、下水道事業によって補助をしているところでございます。
 また、国土交通省と経済産業省が共同いたしまして、熱供給事業法に基づく地域冷暖房施設の整備に対して低利融資等の政策支援を行うことにより、熱供給事業の普及促進に努めているところでございます。
 なお、定量的な評価につきましては施策の継続的取組等を通じた知見の蓄積が必要と思われます。今後の検討課題と考えているところでございます。

○鈴木委員長 国土交通省の方から何か補足説明は。よろしいですか。
 それでは、ご質問ございましたらお願いします。

○青木委員 壁面緑化とか屋上緑化のご説明をいただきましたけれども、これがどのくらい進展しているのか。例えば東京でもどこでも結構でございますけれども、かなり進展しているのか、まだまだこれからなのか、その辺の状況についてお教えいただきたいと思います。
 もう一つ、街の緑化で大切なのは街路樹だと思いますけれども、街路樹の整備の方向等について方針があると思いますが、お教えいただきたいと思います。
 ただ、日本の道路というのはまだ非常に貧弱で、街路樹を植えるようなスペースも少ないと思うんですけれども、将来的には、そういったことも含めて道路整備をしていかなければならないと思いますけれども、そういったことについてお考えがあればお示しいただきたいと思います。

○佐和委員 環境省ですけれども、学校エコ改修と環境教育事業でございますね。これ、平成17年度には9校、平成18年度には6校をモデル校としてやりましたと書いてありますけれども、この効果が何か数量的におわかりならば、教えていただきたいと思います。

○武内委員 この議論はヒートアイランドの議論ですけれども、世界のいろいろな都市の政策を見てみますと、脱温暖化型都市づくりとヒートアイランドといったものの関係性について、必ずしも明確になっていなくて、しばしばそれが人々に誤解を与えている。例えば、ヒートアイランドが進むと温暖化が進んでいるとか。
 そこで、1つには、やはりその2つの問題には共通の原因もありますし、また、それぞれのスケールによって違う原因もあるわけですから、この2つをいわば一組として、どこが同じ対策になっていて何が違うのかというあたりを体系的にわかりやすくしていくことが必要なのではないかと思っているのですけれども、そういうふうなことが果たしていいのかどうか。
 例えば今、環境基本計画をパラパラと見ましたけれども、書いてあるところが全然違うのですね。ですからこういうことになってしまっていると思うのですけれども、場合によったら少しそういう見直しが必要なのではないかというのがまず第1番の点です。
 それから、特に屋上緑化あるいは壁面緑化のヒートアイランド軽減効果が言われて久しいわけですけれども、これについてはやや疑問も出てきていて、例えばセダムというのは一般には非常に植えやすくて、みんな植えておりますが、あれは余り水分を蒸発させないので、ヒートアイランド軽減効果はほとんどないんだ、そんなことが言われるようになってきています。これまで植物の種類だとか質ということを余り議論していなかったわけですけれども、そこのところをきちっと議論して、場合によっては都市における生物多様性の回復といったこととうまく組み合わせていくことができるので、そういう議論をさらに一層進めるべきではないかと思うというのが1つです。
 それと、その派生として、やはり屋上緑化なりというのはヒートアイランドだけで議論するよりも、それはもちろん全部集まれば相当な効果になることはわかりますけれども、やはりそれぞれは1つのビルとかそういうものでの緑化ですから、さっき言いましたような生物の多様性とか都市の景観の問題とか、あるいは公開することによって、いわゆる公開空地としての役割とか、むしろそういう多機能な空間として整備していくという観点もとりわけ強調されてしかるべきではないかと思うのですが、その辺についてのお考えを伺いたいと思います。

○浅野委員 ヒートアイランドの問題は、環境基本計画では、良好な大気の確保という項目に位置づけてはいるわけですが、最初からはっきりしているのは、ヒートアイランド現象が激化すれば結果的にこれによってエネルギー消費が増える、つまりヒートアイランドでまたまた冷房の必要が増えて、さらにエネルギー消費が増える。そういう意味でも温暖化との関連性はきわめて強いということだと思われます。ですから、温暖化の影響でヒートアイランドだという誤解を与えることのないように、きちっとした説明をすると同時に、今の点がこの項目の施策のかなり重要なポイントであるということをはっきりさせておいてもいいのではないかと考えます。
 ですから、切り分ける必要はないような気もするのですが、そこら辺の誤解が生じないようにということは武内委員のおっしゃるとおりで、私も賛成であります。
 それから、今のところ実態の解明に努力が払われていることはわかるのですが、行われている施策としては、一体どこにどう焦点が当てて進められているのか、よくわからない面があって、この報告を拝見しても施策そのものが断片的になってしまっているような気がいたします。ヒートアイランド対策の問題を考える場合には、自治体が中心になってというか、その都市を管理している都市の管理主体が責任を持って、統合的にいろいろ対策を立てて、それに対して国が必要な支援をする、あるいは技術的な支援なり財政的な支援なりをするというのが本筋だろうと思うのですね。
 ですから自治体、例えば東京都などのように国の世話にはならないとういうようなご発言をなさる財政力も実力もおありで、しかも集中の利益を享受しておられる自治体は特に、積極的にこの問題に取り組まれるべきではないでしょうか。ですから、国としては地方の中規模都市でいまだったら、ヒートアイランド現象の激化を抑えることができるような都市にしっかり焦点を絞って、そういう所で将来の状況の悪化を防ぐことに重点を置くことが大事なのではないか。
 その辺の、国としての施策のめり張りのつけかたも、よくわからないのです。何となく、やれることはバラバラ断片的に、ばら撒き的にやっているという印象が強いわけです。その辺は改めなければいけないと思うのですが、環境省のお考えはいかがか、あるいは国土交通省はこの点について、どういう都市を対象のフィールドとして施策を展開するべきだというはっきりとした方針をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。

○福川委員 国土交通省にお伺いしたいと思います。環境共生住宅市街地モデル事業とか、エコビル整備事業とか、具体的な施策をいろいろ行っていらっしゃいますが、この中で「これが非常に効果を上げている」という成功事例がもしあれば教えていただきたいと思います。
 2つ目は、先ほど佐和委員もおっしゃいましたが、この効果測定の手法ができているのか。もしそれで効果測定の手法を考慮しながら、施策として何を充実しなければならないとお考えか、それを国土交通省にお伺いしたいと思います。
 もう一つ、環境省にお尋ねしたいのは、今も浅野委員がおっしゃったことと絡むのですけれども、このヒートアイランド現象を解決していくときに一番効果的な施策は何か。ボーリングに例えれば、センターピン、1番ピンは何なのか。10本全部狙うのか、1本倒せばこれが直るということになってくるのか。そういうセンターピン的なものを狙っていくという施策の重点的なものがあるのか、あるいは10本バラバラといろいろやって、その効果を束ねることができるのかどうか、その施策の方向をお伺いしたいと思います。

○善養寺委員 学校エコ改修と環境教育事業についての説明を、多分、環境省の側からされるかと思うのですが、それについて、直接的にかかわっていますので補足的に言わせていただきますと、学校エコ改修と環境教育事業は3カ年で1セットの事業でして、1年目に技術者教育、2年目に学校で行う環境教育プログラムのつくり方に関する学校の先生に対する教育、その段階で設計して3年目に工事になります。今、3年目にかかっているところですので、具体の施設のCO削減量は、数字的にはこれから出てくるところがほとんどです。
 ただ、調査の段階で、いわゆる教育を2年やっておりますので、その教育効果だけで現実、照明エネルギーの削減量が50%ぐらいあったりしまして、全体の10%程度のCOの削減が、施設整備を行う前に実際、数字としては出てきています。
 ただ、本当は、大きく狙うべきところは教育効果でして、かかわった技術者がそこで学んだ知見で営業をかけているということが漏れ聞こえてきます。そういうところを数字としてどうカウントするのかというところで、この事業の評価がまだなかなか認めてもらえない辛いところなのです。そういう波及効果を事業としてどういうふうにカウントするのかが、今後、必要なのではないかと思っています。
 大きく数字が出てくるのはこれからなので、来年度以降に数字が出てくるようになると思います。

○鈴木委員長 それでは、まず国土交通省の方からお願いします。

○国土交通省 緑の関係につきまして、幾つかご質問がありましたので、それについてご説明させていただきます。
 まず、壁面緑化、屋上緑化について、どのぐらいなされているか、今後どうなのかということでございます。
 私ども、平成12年から毎年、全国の屋上緑化等の施工面積の調査を行っております。これは、いわゆるゼネコンですとか屋上緑化を進めておりますメーカー等にアンケート調査を行って把握しているものでございまして、すべてを把握しているわけではありませんけれども、全体の傾向はうかがえるかと思っております。
 その結果でいきますと、平成12年から18年の7年間で約160ヘクタールの緑化がなされていることがわかっております。その中で東京都に着目いたしますと、約3分の1、55ヘクタールが東京都であります。
 各年度別で見ますと、平成12年当時と比べましてかなり増えております。平成12年の施工実績が約13ヘクタールであったものが、平成18年の実績ですと26ヘクタールと、ほぼ倍になっており、ここ3、4年につきましては、25ヘクタールから30ヘクタールの施工実績ということでほぼ横ばいになっておりますけれども、傾向といたしましては、まだしばらくはこのペースで増えていくのではないかと感じております。
 特に最近、中身を見ますと、新築だけでなくて既存の建物の上での緑化も目立ってきておりまして、そういう意味では、まだ屋上緑化等がなされる可能性は非常にあるのかと思います。壁面緑化につきましては、伸びという面では屋上緑化以上に多くございまして、平成12年当時は全国で2,000平米くらいだったものが、平成18年の実績ですと3万6,000平米ということで、かなりの伸び方を見せております。
 もう一つ、屋上緑化に関連いたしまして、その植物が持つ効果、例えばセダムだったらどうかといったことにつきましては、まだ私どもの方でそれぞれの植物の違いに対して、しっかりとした調査、知見を有しているものではございません。ご指摘のところもございますので、今後の検討課題として研究させていただきたいと思っております。
 ちなみに、私どもはどういったものが植えられているかについても調査させていただいておりまして、その調査でいきますと、全体の約2割が芝生主体である。それから、先ほどありましたセダムが主体になっているものが27%、4分の1強ございます。そして複合といいますか、低木から芝生、いろいろ入っているのが約3分の1でございまして、セダムがかなりの量を占めているというのが実際の施工の結果としては出ております。
 それぞれの違いによる効果というものは、今後、検討させていただければと思っております。
 生物多様性への貢献といったことにつきましても、私ども、国土交通省の庁舎で実際、屋上緑化をしまして、昆虫ですとか鳥の飛来数等を把握しております。これについては毎年かなり数が増えており、途中で来なくなったものもございますけれども、かなりのものが確認されております。これは霞が関ということで、皇居が近いこともございまして、そういう意味で、そこからの飛来の中継地点になっているのかなということもございます。そういった意味で、個々の効果のみではなくて、そういったものが点々とモザイク状にあらわれることによって、生物の多様性なりにどう効果を発揮していくのか、これも今後、もう少し面的にとらえて調査をする必要があるのかなと思っております。
 もう一つ、緑の関係で、街路樹についてご質問があったかと思います。
 一義的には道路等の部局の担当になりますけれども、街路樹についてはヒートアイランドの対策という面で、水と緑の公的空間量を確保する、都市の中でそういった水、緑の空間を確保していくという点では、街路樹につきましても非常に大きなウエートを占めてございます。そういった中で、今後とも推進していく方向はございます。
 ただ、緑陰をつくるという点におきましては、その管理の仕方、よく一部の所では丸坊主になってしまったりとか、そういうことがあったりするものですから、いかに緑陰を創出していくかという点では、街路樹の管理の仕方、比較的管理が少なくて済むような道路空間のあり方も、今後の課題としてはあるのかなと思っております。
 一部、交通量の変化に伴いまして、以前、車道であった所を歩道にして緑的な空間を増やしているという例も散見しておりますので、今後、そういった取組がなされていく可能性はあるのかなと思っております。

○鈴木委員長 緑の方がおられるときにお伺いしたいんですが、要するに、緑化したことによる実質的なヒートアイランド対策としての効果は、定量的にきちんとはかれるのですか。はかっておられるのですか。160ヘクタールというのは─160万ですかね、この単位は。それでは余りにも大き過ぎるし。

○国土交通省 160ヘクタールです。

○鈴木委員長 たった160ヘクタールですか。3,800万ヘクタールが日本の国土……。

○国土交通省 それは屋上緑化という意味で。

○鈴木委員長 屋上緑化で160ヘクタールだけ。そんなものなのですか。今年度ですか。

○国土交通省 これは過去の累計でございます。

○鈴木委員長 わかりました。この効果をどういうふうに判断されるのですか。
 要するに、ヒートアイランドに対してどういう効果があるかといったことは、定量的にははかれるのですか。例えば水分の蒸発量であるとか蒸散量であるとか、いろいろな評価の仕方があると思いますが。

○国土交通省 いわゆる評価、測定の部分につきましては、今、私どものこれまでの調査なりでやっているものとしましては、蒸散量等を定量的にはかって公表しているというものはございませんで、建物の中に入っていく熱の量がどの程度軽減されるのか、それから建物の表面温度が何度になるのかということは確認しております。

○国土交通省 効果の測定の件で1つ補足でございますが、我々の方でも、国土技術政策総合研究所ヒートアイランド対策効果シミュレーション技術の開発ということで、地球シミュレーターを活用し、具体的にどういった対策を講ずれば温度がどれだけ下がるかといったシミュレーションソフトを開発したところでございまして、今後、それらを行政部局が実務で活用できるモデルにブレークダウンする作業を行うことを考えております。
 続きまして、住宅関係の話がございましたので、そちらの方を回答させていただきます。

○国土交通省 住宅局でございます。
 環境共生住宅市街地モデル事業の成功事例はというご質問をいただいております。
 この事業は、一定規模以上の住宅団地において環境共生施設整備、例えば水の循環を図るような施設ですとか緑化施設を整備する際に一定の補助を行う制度でございます。
 具体の地区に関するデータは持ち合わせておりませんので、概括的なお話だけさせていただきますと、平成5年度からこの制度を実施しておりまして、現在、全国85地区で活用いただいております。平成18年度の実績では6地区でこの事業を実施いただいております。各地の事例を地方公共団体等にお示ししながら、制度の活用を図っていただいている状況でございます。

○国土交通省 続きまして、武内委員からございました脱温暖化対策とヒートアイランド対策とどこが違うのかという話と、浅野委員からございました、ヒートアイランド対策は自治体中心でやるべきところ、国としての施策のめり張りについての話とを、まとめてご説明させていただきます。
 地球温暖化という現象とヒートアイランドという現象が学術的にどういう関係にあるのか、我々の方にも十分な知見はないのですけれども、基本的には、都市の活動がヒートアイランドの要因にもなっており、ひいてはCO排出に大きく影響しているというところで、逆に言うと、都市で対策を講じることがこの2つに効いてくるというのが我々の認識でございまして、それに対して我々として、様々な支援策を講じているところでございます。
 ご指摘のとおり、そうした都市づくり、まちづくりというのは自治体が中心になって行うものでございまして、先ほど冒頭にお話ししました緑化の話もございますし、市街地整備でのエネルギーの面的利用の促進という話もございますし、また下水道の未利用エネルギーの活用など、様々な分野の施策がございますが、既成の市街地に対策を講じる場合、それぞれの現状に応じて対策も変わってくるものか考えております。そのため、どこかの分野だけ対策をやればよいというものではなく、まさに都市行政で持っている様々な施策を総力戦で支援させていただくということであり、逆に言うと、そこがめり張りがないというご理解につながったのかと思います。我々としては、可能な対策を積極的に支援メニューとして用意させていただき、自治体の方にそれらをうまく活用していただくということを考えております。

○環境省 国交省の方から回答あったところもありますが、まず、温暖化対策との関連性というところになりますと、おっしゃるとおり、一部重なるところがあるとは思います。例えば地表面被覆では、アスファルト面が日射部分につきましては50度を超えたりするケースがあるというところに関しては、ヒートアイランド特有の現象であると認識しております。そういったところの対策をしていくことは、やはりヒートアイランド対策として重要ですので、一概に温暖化と一体化すべきかどうかというところについては、今後、議論が必要かと思っております。
 続きまして、植物の質、効果関係についてですが、おっしゃるとおり、セダムについては効果が低いのではないかという議論がなされている部分もございます。そういったところにつきましては、今年度、検討会を立ち上げまして、有識者の先生方からご意見を伺いながら検討していく所存であります。
 続きまして実態解明についてですが、基本的に、ヒートアイランド現象の原因として大きく言われていますのは、地表面被覆といったことと人工廃熱でございまして、そこのところの原因、地域によってどの程度影響が起きているかといった実態把握を、現在、環境省としても行っているところであります。
 続きまして、自治体についての対策でございます。現在、確かに自治体の方が対策を行うべきところが、ご意見ありましたとおり、我々環境省としましても、今年度、自治体がヒートアイランド対策に取り組む指針になり得るようなガイドラインの策定に着手しております。実際、ヒートアイランド現象というのは都市特有の現象となっておりますので、地域によって大きな原因が異なりますので、地域ごとに効果的な対策を選択できるようなガイドラインをつくり、指針となり得るようなものを出していければということで、今年度から検討を始めております。

○弥元環境計画課長 学校エコ改修についてでございますが、善養寺委員にお話しいただきましたように3カ年の事業でありまして、効果についてはこれからになるわけでございます。
 この事業によってのものではございませんけれども、屋上緑化をした場合、半分緑化し、半分コンクリートのままで測定した実例がございます。緑化がない場所では52度の温度だったものが緑化した所では30度に下がっているという実例もあるので、効果があるものということで取り組んでおるところでございます。
 さらに、これは屋上緑化だけではございませんで、3Rとか雨水利用といったものもあわせて、学校という場を使って行う事業ということでございますけれども、単に工事を行うだけでもございませんで、このエコ改修を素材といたしまして、学校を核といたしまして地域ぐるみで環境教育プログラムづくりを進めているところでございます。

○鈴木委員長 先ほどの交通流と同じように、ヒートアイランドも、結局のところはまちづくりということになっていくのかと思いますが、それにしましても、やはりきちんと定量的に施策の評価ができるような仕組みを考えていただくことが必要だろうと思いますので、ぜひその辺、指標ということでできるのかどうかわかりませんが、今後、具体的に進めていただければと思います。

○武内委員 地球温暖化防止、低炭素社会、特に都市における取組とヒートアイランド現象のとらえ方について、今、説明があったのですけれども、多分浅野委員もそう思われていると思うんですが、やや不満であります。
 別に舗装面の熱が高いのと脱温暖化を一緒くたにしろと言っているのではなくて、両方の間の関係性を国民がわかるようにきちっと説明し、訴え、同時に施策として共通するものについては、それを束ねていくような施策の体系化が必要なのではないかということが言いたかったわけで、これは実際にそれを環境基本計画の次の見直しの中でどうするかということは別にして、少なくともそういう観点で評価してみることは現時点で意味のあることではないかと思いますので、最後に申し上げておきたいと思います。

○西尾総合環境政策局長 今、ヒートアイランド自身はやっていないんですけれども、私の理解では、もちろん両現象の間についての解析は必要でありますし、特に、さっき説明しましたように、ヒートアイランド現象を地域性でもってうまく評価するというのは、できているようで、地域で温度をどう把握してうまくシミュレーションするかというのは案外できていないので、今、そこにかかっているという途中段階だと思っています。
 現象の解析はそうなのですけれども、対策はある程度、私は割り切ってやろうと環境管理局長として大気業務を担当していたときも思っていまして、要するに、廃熱のところは基本的には温暖化対策と同じなので、これはもう温暖化対策とシンクロさせて動かしていく。そのほかは、基本的には潜熱の利用、要するに被覆がどうなったとか緑化だとか、潜熱の問題。それから風が通るような都市計画、風がとまってしまうような都市計画、こういう温暖化にない部分と2つあります。
 多分、環境省は、パイロット事業などは温暖化にない部分、風が通るような都市がどうかとか、皇居の冷気だとか新宿御苑の冷気を使ったらどうなるかとか、そういう温暖化にないような部分を少しパイロットでやりました。ただし、全体像が見えないので、各省会議をつくってヒートアイランド大綱を国土交通省と一緒に他の省も巻き込んでつくり、一応点検しているはずだと思います。ですから一応全体像のリストはできている。
 ただ、武内委員が言われたように、そういうことが何かもうちょっとダイナミックにわかるようになって、ぐんぐん進んでいかないのかというところは、まだちょっと、多分に仕掛りだと思いますので、それぞれのパーツがもう少しできればうまくできるのかなとは思っております。
 プラス、これは私個人の感じですけれども、しかし、そうは言っても、実は温暖化で全体に、これから長期的に温度が上がって底が上がってきたときに、ヒートアイランド対策が今のようなことだけでいいのかといった視点も含めて、それはもうちょっと大きく見ていく、議論していくということも、どうもそこはよくわからないなというご指摘はそのとおりで、そういうことも必要なのかなと感じております。
 今、直接ヒートアイランドを担当していないのですが、前のイメージと今の全体を見ていると、そんな感じで私自身は整理させていただいております。

○鈴木委員長 結局ヒートアイランドの原因は、その地域におけるエネルギー消費に尽きるんですよね。それがすべて熱になって、そこへたまっていく。それがまた化石燃料の場合には地球温暖化の温室効果ガスであるというようなこともあるのでしょうが、温まったらそれをどう冷やすかということだけ考えるのがいいのか、温まる原因をどう改善していくのかといったところも─都市形態の改善などというのはそういうところにつながるのかもしれませんが、ぜひ総合的にお考えいただければと思います。

○善養寺委員 先ほどセダムの話が出ておりましたが、国交省も言われたように、蒸発冷却をするための屋上緑化といったら確かに芝生の方が効果があるのですが、建物内に熱を入れないという意味では、水を蒸散してカラカラになりにくいセダムというのは、そのもの自身の冷却効果は少ないんですけれども、植物の体温が高温化しないという現象がありまして、室内に関する影響はセダムの場合でも十分発揮されるのです。特に、水をそれほどあげなくても長期的にグリーンのまま維持できるという点では、芝生よりも、散水しなくても建物内をそれなりに暑くしないという効果はあります。そうすると冷房の使用量が減りますので、外に対する排熱量も減ります。
 ですから、単純に屋上緑化の外側に対する冷却効果だけではなく、中側に対する影響を考えると、それぞれに一長一短があるので、どちらかだけで技術的な評価をしてしまうのは、いかがなものか。総合的に、どういった場合には何がいいかというふうに考えていただきたいと思います。

○鈴木委員長 それはまた別の場でいろいろご議論いただきたいと思います。
 続きまして、重点点検分野「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」に移らせていただきます。
 重点調査事項[1]といたしまして「流域における水循環改善のための取組」。
 これは環境省、国土交通省、農林水産省がヒアリング対象府省となっております。

○弥元環境計画課長 資料2[1]でございます。
 「流域における水循環改善のための取組」ということで、調査内容項目が6項目示されております。
 最初の山間部での取組についてでございますけれども、国土交通省におきましては、ダム貯水池における水質の保全のために富栄養化現象への対策、濁水放流長期化対策を実施しております。
 農林水産省でございますけれども、保安林を計画的に指定いたしまして、それぞれの目的に沿った森林機能を確保するため、立木の伐採や土地の形質の変更等を規制するなど、適切な管理・保全を行っております。
 また、自然環境や生活環境の重要な構成要素である森林につきまして、水源かん養等、多面的な機能を維持・増進することによりまして、豊かな国民生活の実現に寄与する環境を創造するために、森林の整備・保全を行っているところでございます。
 また、森林所有者等の林業生産活動の一環として行われる造林、保育、間伐等の森林施業を助長することによりまして、水源のかん養等、森林の多面的機能の発揮を図るとともに、ダム上流の重要な水源地や集落の水源となっている保安林等におきまして、浸透保水能力の高い森林土壌を有する森林の維持・造成を図るなどしているところでございます。
 その他、伐採サイクルの長期化でありますとか複層林化、あるいは針葉樹と広葉樹の混交林化等による多様な森林に誘導するための施策や、ボランティア活動など流域の住民や事業者が参加した森林の保全・整備の取組、森林の公益的機能に着目した基金の活用などに取り組んでいるところでございます。
 b)の農村部及び都市郊外部での取組の状況でございますけれども、農村部といいますと、まず農林水産省でございますけれども、13ページからの記述になります。
 農業の多面的機能を維持・向上させることが水環境の改善を図ることとなるものですから、耕作放棄地発生防止・解消に向けて担い手への農地の利用集積や、新規参入促進を通じた耕作放棄地の有効活用等、各種の施策を積極的に実施しております。また、農村地域における資源循環の促進を図りつつ、農業用用排水の水質保全、農業用用排水施設の機能維持、または農村生活環境の改善を図りまして、あわせて公共用水域の水質保全に寄与するため、農業集落におけるし尿、生活雑排水等の汚水、汚泥または雨水を処理する施設、もしくはそれらの循環利用を目的とした施設を整備する農業集落排水事業を実施しているところであります。
 それから、国土交通省におきましてもさまざまな施策が行われているところでございますが、特定都市河川浸水被害対策法に基づく河川流域指定、及び流域水害対策計画を策定して行う雨水貯留浸透施設の整備、それから都市域を中心とする河川流域における水のネットワーク再生のため、地下空間からの湧水や下水の高度処理水等の利活用水源を積極的に活用するとともに、河川の水を導水して行う都市内の水環境改善、さらには河川における生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観の保全・創出の観点からの多自然川づくりの推進といったようなことを行っております。
 また、発電水利使用のうちの発電取水口や発電ダムから下流区間において維持流量が少なく、河川管理上の支障の著しいものについて、ガイドラインを策定いたしまして、対象となる発電事業者の協力のもとで、水利権の更新時を機会といたしまして、河川の維持流量の確保に努めておりますし、既存ダムの洪水調整容量の一部に、洪水調節に影響を及ぼさない範囲で流水を貯留いたしまして、その貯留した流水を下流河川の環境保全のために適切に放流するといったこと、さらに、流域における水環境を改善するため、水流ルネッサンスII、正式名称は第二期水環境改善緊急行動計画でございますが、これらに基づきまして、河川、都市下水路、湖沼、ダム貯水池等におきまして水環境に積極的に取り組んでいる地元市町村等と河川管理者、下水道管理者及び関係者が一体となりまして、水環境施策を総合的かつ重点的に実施することにより、水質の改善、水量の確保を図っております。
 さらに、下水処理水や雨水を水辺環境のためのせせらぎ用水、あるいはトイレ等の雑用水、その他農業用水などへ活用することによりまして、人間活動に伴う人工的な水の流れが自然の水循環に及ぼす影響を極力緩和する取組を進めているところでございます。
 国土交通省のこれらの施策は、次の調査内容項目でありますc)の都市部での取組でもございます。
 都市部での取組の環境省の施策といたしまして、クールシティ推進事業を挙げることができます。このうち都市内の水路等を活用した実証モデル調査によりまして、都市内水路等によるヒートアイランド抑制効果を検証しているところでございます。
 それから、d)の住民参加の状況でございます。
 各省連携の施策といたしまして、国土交通省と環境省が連携して全国水生生物調査を行っております。流域の住民等が主体となりまして、身近な河川に生息する水生生物の観察等を通じて、簡易な水質調査を行うものでございます。平成18年度は約7万5,000人の参加者を得まして、全国3,489地点において全国水生生物調査が行われました。
 それから、環境省では、いきづく湖沼ふれあいモデル事業といたしまして、地域住民への湖沼への関心を環境教育の実践や自然浄化機能を活用した直接浄化、それから栄養塩の直接の取り出しといった具体的な環境保全活動につなげるため、全国のモデルとなる湖沼を選定いたしまして、地域住民と行政が一体となった活動を行っているところでございます。平成18年度は琵琶湖、霞ヶ浦等9湖沼において実施しているところでございます。
 また、名水百選の関係市町村におきまして、名水シンポジウムを毎年開催しております。住民やNPO等が多数参加しているシンポジウムでございます。
 さらに、水環境保全意識の効用と水環境保全に係る正しい理解の増進を図ることを目的といたしまして、こどもホタレンジャー事業を実施しております。豊かな水環境の象徴であるホタルに着目した、子供たちの水環境保全活動事例報告の募集とか表彰等を行っているところでございます。平成18年度は31団体から応募がございまして、うち5団体に対しまして環境大臣賞等の表彰を行ったところでございます。
 また、国土交通省でございますが、人と河川の豊かなふれあい等、多様な視点で河川を評価する新しい水質指標に基づく住民協働調査を全国の1級河川において実施しているところでございます。
 e)で、事業場における排水の水質管理体制強化のための取組。これは上流も下流も共通でございますが、環境省におきまして、自治体による立入検査のより一層の重点化、効率化を図るため、最近の事案やこれまでの知見を教訓といたしまして、自治体が立入検査マニュアルを策定する際、または既存のマニュアルの見直しを行う際の参考となるように、「水質汚濁防止法に基づく立入検査マニュアル作成の手引き」を策定しているところでございます。
 また、産業界の排水の水質管理につきましては、公害防止に係る環境管理のあり方に関する報告書を取りまとめ、公表するなど、経済産業省と連携して取り組んでいるところでございます。
 f)モニタリングポイント体制維持・強化のための取組の状況でございます。
 まず、環境省でございますけれども、水質監視業務的確化・効率化方策検討調査といたしまして、モニタリングの効率化等に関する実態を把握し、水質汚濁防止法に基づく常時監視の的確かつ効率的な体制を維持するための方策を検討しているところでございます。
 平成18年度は、モニタリングの効率化等に関する実態把握、今後検討すべき課題等の検討を行い、今後は広く都道府県等に示すための手引の策定や、信頼性の高い測定データを確保するための制度管理に関する指針等についての検討を行うこととしております。
 また、国土交通省では1級河川、直轄管理区間でございますけれども、ここにおける水質調査を実施し、公表しているところでございます。

○鈴木委員長 大分丁寧にご説明いただきまして、中身が大変たくさんございますが、農水省、国土交通省の方で何か補足されることはございますか。
 それでは、委員の方々からご質問をお願いします。

○浅野委員 調査事項をご提示するにあたって、流域全体をとらえて、いわば流れの視点からという注文をつけたのですが、それについて、環境省として総括的にどういうことであったのかという説明は何もなくて、パーツの説明しかなかったのですが、全体の取りまとめをした環境省としては、いわば流れの視点からという我々の調査の一番のポイントについてはどういう整理をされたのですか。

○鈴木委員長 大変時間が窮屈ですので、それも質問の1つと考えさせていただきます。

○大塚委員 遅れて来て申しわけありませんでしたが、この部分だけではなくて一般的に感じているのは、割と定性的な文章が多くて、数字が入っているものも中にはあって、それは大変いいと思うのですが、申しわけありませんが、定性的に書かれただけだと点検していることにはなりにくいかと思いますので、できるだけ数字を出していただけるとありがたいと思います。
 例えば今のところで、コメントでモニタリング地点の数等が出ていますけれども、こういうものは中に入れていただけるとよくて、今、ここに出していただいているのはありがたいと思いますけれども、文章の中に入れていただいて、点検の結果に反映させていただけると大変ありがたいと思っております。それが一般的なことでございます。
 それから、今、最後に出てきた4ページのモニタリングのところですけれども、ここにお書きになっているような効率化の方法について、ぜひ検討を進めていただければと思います。
 ここでは書く必要はないのかもしれませんが、既にガイドライン等を決めておられるので、それは第三次基本計画ができる前のことだからお書きにならなかったのかしれませんが、読んでいる人はそんなことはわからないので、ガイドラインをお決めになったこと等もお書きになっていいのではないかと思います。
 それから、国土交通省の調査内容項目b)及びc)でございますけれども、[1]の特定都市河川浸水被害対策法による雨水貯留とか浸透施設の整備はどんどんやっていただきたいんですけれども、同時に、これが地下水汚染とか土壌汚染等を引き起こさないように注意していただきたいので、その点について既にご留意されていることがあれば教えていただきたいと思います。
 それから、国土交通省の調査内容の項目d)ですけれども、河川との関係で住民参加がうまくいったケースと、うまくいっていないケースがあると思います。例えば淀川のケース等あると思いますが、今後、住民参加をどういうふうに進めていくべきか、何かご検討をされていればぜひお書きいただきたいと思います。
 申しわけないのですが、d)のところはやや抽象的で、点検結果としてこれでいいのかという点があるのではないかという気がしております。
 それから、先ほど環境省の方からお話があって、環境省と経産省と両方のお話だと思いますけれども、水質汚濁防止法違反の例がちらほら出てきていますので、公害防止体制の強化というのがあって、公害防止管理制度の報告書を出しておられるのですけれども、これは法制的に強化することも含めて検討されているのかどうか、お伺いしたいと思います。

○植田委員 a)の森林の水源かん養等というところなのですけれども、健全な水循環は、水だけというよりは森林などの公益的機能を充実させないと実現できないわけですね。それに伴って、森林の保全等は大変費用のかかる話だと思うのですね。
 ご存じのとおり、例えば高知県が森林環境税とか、あるいは神奈川でも水源のための税を取り始めているのですけれども、あるいは先ほどのご報告の中でも、上下流で水源地のための基金をつくるとか、いろいろ動きが起こっているのですが、私の質問は、そういうかなりの費用がかかることについて、基本的な費用負担の考え方はどうであると理解しておけばいいか、明確なお考えがあるのではないかと思っているのですけれども、その点だけ確認させていただきたいと思います。

○佐和委員 最近、小学校の社会科の教科書のマーケットで最もシェアが高いという東京書籍の、小学校5年生の下巻を見る機会があったのですね。そうしたら、そこに「美しい川のあるまち京都」ということで、下巻は全部で六十数ページしかないのに、京都は美しい川のまちだということで8ページも割いているのですね。高野川と鴨川がちょうど交わるあたりの写真が出ていて、こんなにきれいだと。ところが、「こんなにきれい」なのは1年間に数日しかないわけですね。つまり、山の方の保水機能が物すごく低下して、普段はほとんど渇水状況にある。
 それで、a)に関して農水省にお伺いしたいのですが、植田委員からも費用がかかるでしょう、その費用をどういう形で負担すればいいのかという話があったわけですが、費用対効果の観点で、つまり、どのぐらいの効果が実際に出ているのか。私は鴨川の近くに住んでいるんですが、どうも鴨川の水量は年々減るばかりで、何か上流の方でやってくれているなら効果が出そうなものなのにと思うのですが、その点いかがでしょうか。

○鷲谷委員 既に皆さんがおっしゃったこととも関連があるのですけれども、流域全体をとらえて流れの視点からとなりますと、それぞれ何か問題がありそうなところで個別に施策があって、それぞれ若干の効果があったというようなことよりも、流域レベルで水そのもの、それから水環境上重要な、窒素とかりんなどの栄養塩などを考えて、どこに主要なプールがありフローがあって、その現状がどうなっているから不健全であり、それぞれそこにどんな施策を加えたことで効果を上げているかといった整理があるといいと思うのですけれども、恐らく調査・研究レベルで環境省の予算が使われているところでは、そういう研究プロジェクトなどもないわけではないと思うのですが、そういう視点でこれを整理することが可能なのかどうか。
 流域全体をとらえて流れの視点を提示しているわけですけれども、どのぐらいそういう視点が持てているのか、ご見解をお聞きできるとありがたいと思います。

○河野委員 国土交通省にお聞きしたいのですが、都市河川浸水被害、雨水の貯留等にかかわってですが、温暖化に伴って、気候変動の一環として我が国でも雨の降り方が変わってきていると感じられております。例えば台風の来る頻度が高いとか、記録的な雨が降るということでありますが、こういうことを国土交通省の最近の調査等で把握しているのかが1つ。
 その上で、環境基本計画の「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」を読むと、こういう気候変動に伴う雨の降り方の変化を考慮に入れた取組については、どうも議論していないように思います。
 そこで、国土交通省の雨水の貯留とか浸透の対策については、気候変動に伴うといいますか、雨の降り方の変化に伴う対策について考慮に入れているのかどうか。入れていないとすると、再検討とか見直しをする必要があるのではないか。見直しをしなくても、結果として雨の降り方が変わってきているなら、それはそれで従来の政策を積み増しするといいますか、それで対応できるのかどうか質問したいと思います。

○永里委員 農水省にお願いしたいと思います。
 13ページに耕作放棄地対策について述べてありますが、棚田の効果についても触れてほしいと思います。コメントいたします。
 日本の文化である稲作漁撈文化というのは、海の水が蒸発し、山に雨を降らす水の循環が背景にあります。ところが今、農民が山で稲をつくらなくなりまして、美しい棚田が荒れてきております。通常、2センチメートルの水を張ると1センチメートルは蒸発し、1センチは地下に染み込みます。
 棚田がなくなるとどのようなことが起こるかといいますと、2つの例を申し上げますが、阿蘇の名水というのがあります。ところが、この名水が枯渇し始めました。そこで専門家が調査したところ、棚田がなくなったからだということがわかったために、稲はつくらなくても、棚田に水を張ることによって名水が蘇ったわけです。阿蘇の土は水の吸収がよいというのも一つの理由であります。
 また、鹿児島の霧島山麓で、無農薬のアイガモ農法による棚田での有機稲作が、今、行われていますが、これによって下の方の井戸水が出るようになったという例もございます。
 こういうことで、棚田の効用についてもちょっと触れてほしいと思います。

○鈴木委員長 比較的厚い点検結果報告にはなっているのですが、多くの委員からご指摘がありましたように、流域全体をとらえて、いわば流れの視点から環境保全上健全な水循環の構築に向けた取組を推進する、こういう観点からしますと、これまでの水をキーワードにした施策が並んでいるというようなことに終わっているのが大変残念なのですが、これは今後、どういう形で流れの視点を持って流域を管理していくのか、まさに各省縦割りを排除するということももちろん─ちょっと言い過ぎかもしれませんが、協力しながら、どういう形で、まさに雨として降ってくるものが最終的に海へ流れ出すまでの流域全体についての総合的な、あるいは統合的な管理をしていく。森林も含め上流、下流の関係、山の保水機能、どのようなことをこれから考えていかれるのか。最初のスタートとしてはこれでいたし方ないかと思うのですが、その辺についてのご決意を各省からお聞きすることになるのかなと。
 そしてまた、それぞれについてご質問がございましたので、それにつきましてもお答えいただければと思います。

○農林水産省 林野庁でございます。
 まず、水循環の関係で、関係省庁積極的に連携していくべきだ、流域という視点で水環境をとらえて取り組んでいくべきだ、農水省としてどういうことをやっていくんだというご質問については、大変難しい課題ではございますが、まず、水関係の関係省庁会議もございますので、そういったものを通じて意見交換しながら施策を進めていくということももちろんございますし、また、個別に森林分野、あるいは河川分野というものについては、相当密接な関係がある分野でもございますので、その分野、分野ごとに協議する仕組みを持っていますので、そういった中で連携を深めていこうと考えております。
 それと、資料にありますけれども、美しい森林づくり推進国民運動ということで、森づくりの関係については、関係省庁のアドホックな会議ですけれども、閣僚会合を開いて、関係省庁が連携しながら、流域、水、森林という観点ではないんですが、森林整備、森づくりをどうやっていくかということを進めているところでございます。
 あと個別のご質問でございますが、まず、植田委員だったと思いますが、森林の費用負担のあり方についてだったと思います。
 皆さんご存じのとおり、森林につきましては水源かん養とか土砂流出防止とか、また二酸化炭素の吸収、地球温暖化の防止、あるいは野生生物の保全とか、さまざまな機能を有しておりまして、そういった役割については広く国民が享受しているということがございます。一方、国有林野、いわゆる市町村有林、県有林を除いた私有林、プライベートの森林については、やはり個人の山ということでございますので、そういう社会的な資本的な位置づけがある一方、プライベートな山であることから、基本的には林業生産活動あるいは所有者の個人的な管理を前提に、一方で社会資本的な位置づけの側面について公的な支援をしていくことから、いわゆる森林整備事業ということで一定の支援を行ったり、あるいは、所有者さん自らではもうこういう山はできませんねといったところにつきましては、治山事業ということで、全額国費と県費で負担して、山づくり保全をやっているところです。
 一方、そういった全体的な流れではありますが、今、林業が非常に厳しい中で、個別にそういった仕組みではなかなか森林整備が進まないという実態もございますので、そういった中で、先ほど委員からご指摘がありましたように、各県での独自課税が進んでおりまして、私が承知している範囲では、平成19年4月1日現在23県が導入しておりまして、今後も福岡県が導入を準備していると聞いております。
 また、各県あるいは市町村レベルで基金を設けてやっておりますが、そういったものについては、もちろん農林水産省といたしましては、森林整備の重要性がさらにそういった取組で広がっていく、普及していくということ、そしてまた森林整備もそれできちんと進んでいくということで、大変ありがたい話だと思っております。
 あと、費用対効果ということで、森林整備が進んでいるはずなのになかなか水の量が変わらないではないかといった、これは佐和委員でしたか、ご指摘がありましたけれども、これにつきましては、確かに以前、広葉樹などの山をスギやヒノキ、あるいはカラマツ、北海道にといてはトドマツなどに転換してきて、現在、人工林、育成林が全国に1,140万ヘクタールございます。そういった中で、間伐しないとやはり下層植生が消失し、表土が流れ、水源かん養機能が低下してきているのではないかということがあります。
 一方、そういう人工林になると、蒸散機能が非常に高いものですから、一方で降った雨をどんどん蒸散させてしまって、水分を消失してしまうということで、水量が減っているということで、先ほどいろいろな形で取り組んでいるということで、間伐を実施して水源かん養機能が高まるよう、今、一生懸命やっているところですが、やはり森林整備とその効果が、ちょっと時間がかかるのかなというのが正直なところです。ただ、そういうことに甘えられませんので、私どもとしては個別には、独立行政法人森林総研での水文試験地といったところでの調査、あるいは私どもで予算立てをして、以前そういう治山事業とか森林整備を行ったところの効果を、個別には、今、いろいろ調査・研究しているところでございます。

○農林水産省 農村振興局でございます。
 今、永里委員から、耕作放棄地の中にということになるかもしれませんけれども、棚田の効用について触れてほしいというご意見がございました。耕作放棄地対策の中にそれを入れるかどうかというのもちょっとありますので、ここは別に起こすかとか、そういうことを検討させていただきたいと思います。

○国土交通省 河川局でございます。
 最初に、流域の視点を持って施策を進めるという点でございますが、当然、河川だけでこういった循環の話をしていくことはできないと思っておりますので、先ほど農水省の方からお話がありましたように、さまざまな省庁、関係者がそれぞれ話し合いながらやっていく必要があるとは当然思ってございます。
 また、個別の質問に関してでございますが、特定都市河川浸水被害対策法において、こちら雨水貯留の施設について、処理といいますか、汚濁物質にどう対応しているのかということでございますが、ちょっと件数が多いので、個別の案件ごとにどうなっているかというところまでは把握できてございませんが、こういった対策、必要に応じてやっていく必要があると考えてございます。
 また、住民参加についてでございますが、河川法においても、河川整備計画をつくる際には住民参加ということで、個別河川においてはさまざまな事情があって、いろいろな進め方になってございますが、基本的には住民の方々に参加していただいて、河川整備を進めていくという方針でございます。
 また、今回挙げさせていただいております個別の案件について、水生生物調査等の調査を行う際にも、実際行っていただいた市民の方々にアンケートをとりまして、実施の方法とか、どういったやり方があるかとか、そういったことについては意見を伺いながら進めている状況でございます。
 また、同じく特定都市河川浸水被害法に関して、今の気候変動等の状況を踏まえて行っているかということでございますが、こちらは、そもそもこの法律ができた際もですが、今、特に集中的な豪雨が各地で起こっている状況、また、都市化によって雨水が浸透していかないといった状況を踏まえて、この法律の枠組みができてございます。こういった形で集中的な豪雨とか気候変動による雨の降り方の変化、そういったものをとらえて行っているところでございます。
 また、河川局全体としましても、そういった気候変動に対応するということで、防災等を含めていろいろな政策行っていく予定で、今、検討を進めているところでございます。

○環境省 まず、流域の視点から、健全な水循環ということで行政を進めていくべきではないかというご指摘でございますけれども、既に国土交通省、農水省からもございましたけれども、水環境問題につきましては、多様な関係者、多様な行政が関係しておりまして、こういった関係者、行政と連携しながら進めていくことが必要であろうかと考えております。
 そういったことでありますが、平成15年になりますけれども、健全な水循環のあり方ということで、関係省庁集まりまして勉強会的なものをやっております。その中で、報告書を出す、あるいは事例調査をするといったことをやっております。こういった取組を今後、各省とも続けながら、健全な水循環とはどういうふうに進めていくべきたといった検討を進めていきたいと考えております。
 一方、個別の分野で申しますと、次の議題にも絡んでくるわけでございますけれども、湖沼とか内湾といったものの水質改善につきましては、まさに流域全体を見て対策を打っていかなくてはいけないということでございます。特に、湖沼法につきましては平成17年に改正いたしまして、これまで、いわゆる排出規制を中心にやってきたわけでございますけれども、市街地あるいは農地からの流出水対策であるとか湖辺の植生の保全、こういった水循環全体を見渡したような施策の芽的なものも盛り込みつつ、施策を進めてきております。
 今後ともこういった方向性を見ながら施策を進めていきたいと考えております。
 もう一つ、大塚委員からモニタリングの効率化について、どうしたのかというご質問をいただいておりました。
 モニタリングの効率化でございますけれども、平成17年度に三位一体改革に伴いまして、「今後のモニタリングのあり方について」ということで処理基準の改定を行っております。この中で、三位一体改革に伴って効率化を進めるようにといったことを策定しておるわけでございますけれども、現在、この辺につきましてもう少し踏み込んだ形で、技術的な観点からどういうふうにやるべきかといったマニュアルを作成しております。本年度、検討いたしまして、遅くとも来年度にはこういったマニュアルを発行いたしまして、より効率的なモニタリングを進めていきたいと考えております。
 もう一点、公害防止体制の強化ということで、法制化の可能性があるのか、法制化を考えているのかというご質問をいただいておりますけれども、これにつきましても、これから検討会を開きまして、今後のあり方を検討していく方向でございます。規制基準の遵守のための公害防止業務の適正化であるとか排出データの記録、監督の適正化、あるいは自治体公害防止監視の充実、こういった点が論点になるかと思いますけれども、現在、これから検討する段階でございますので、法制化するかどうかといった点につきましては、現在のところは未定でございます。

○浅野委員 流域の視点から点検していただきたいという総論的な審議会、部会からのお願いに対して、今、口頭では説明があったわけですが、協議会が設置されていることを承知していたものですから、その後、その協議会がどういう活動をし、どういう成果を上げてこられたかということに関心があって質問したわけです。もしちゃんとした成果が上がっているのであるならば、それを改めて追加資料で出していただきたい。
 その内容によっては、点検報告の中にかなり厳しい記載をしなければいけない可能性があるような気がします。
 それから、先ほど河野委員からご指摘があった異常降雨への対策については、実際に、地方整備局での事業評価などをやっているときにも、どうも全体の流れは、従来からの河川管理、治水という枠組みをいかに着実に進めるかという視点が強過ぎて、新たな状況の変化に十分対応できていないのではないかという気がいたします。相も変わらず50分の1みたいな議論がされているんですが、50分の1の数字そのものも、最近は、その基礎とすべきデータがめちゃくちゃに違っているはずです。つまり、過去50年の平均を見るのか最近10年で見るのかでまるっきり数字が違ってくるのではないでしょうか。そういうところは本省できちっと検討されて出先の施策に反映していかなければいけないだろうと思いますし、私は九州にいるので九州だけだと思っていましたが、最近の異常降雨の現象は全国的に出ていますので、その辺はもう一回、国として国民の生命、財産を守るという観点からも考え直さなければいけないのではないかという気がするわけです。
 そのことは必ずしも環境と直接つながらないかもしれませんけれども、先ほどのご質問との関連もありますので、意見として申し上げておきたいと思います。

○鈴木委員長 いろいろあろうかと思いますが、例えば、国土交通省で多自然型の河川づくり、自然再生推進法などとも絡んでいろいろこういう方向が動いていくときに、一体どのぐらい各省間で連携をとっておられるのか、それが一体どういうふうに評価されていくことになるのか、そういう評価をするときに、今までのような環境基準みたいな、水質をぽっぽっぽっと追いかけていくようなことでいいのか、一体どういう将来像を持っておられるのかというあたりに私は大変興味があるんですが、ぜひ今お答えをということではなく、今後、省にまたがってといいますか、いろいろな領域の水に関連するところをまとめていただいて、ぜひ、淡水域に関しては健全な水循環ということになりますし、海域に関しては次の閉鎖性水域ということになるだろうと思うんですが、その辺のところをよろしくお願いしたいと思います。

○大塚委員 国土交通省にお願いなんですけれども、住民参加のところで、ここは水質調査と水生生物調査等のことだけ書いてあるんですよね。先ほどおっしゃったように、河川法で、河川整備計画で住民参加しているわけで、確かに各地方の話にはなるんでしょうが、具体的な例が挙がってこないと多分点検はできないと思うので、具体的な例を挙げながら、どういうふうにうまくいっているかとか、どういう課題があるかということを書いていただければ大変ありがたいと思います。そこは追加していただけると大変ありがたいということでございます。

○鈴木委員長 いろいろと要望がございますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、時間が大分オーバーしておりますので、次の重点調査事項「閉鎖性水域における環境改善のための取組」に移らせていただきます。
 これにつきましても環境省、国土交通省、農林水産省がヒアリング対象府省となっております。

○弥元環境計画課長 資料2[2]でございます。
 「閉鎖性水域における環境改善のための取組」でございます。
 1つ目の調査内容項目が、汚濁負荷量の削減についての取組でございます。
 まず環境省でございますけれども、さまざまな排水規制を全国で行っております。水質汚濁防止法及び瀬戸内海環境保全特別措置法に基づくものといたしまして、水質総量規制の実施をしておりますし、水質汚濁防止法に基づきまして、窒素及びりんの排水基準による規制も行っておるところでございます。さらに湖沼につきましては、湖沼への流入汚濁負荷割合の高くなっている非特定汚染源対策、未規制でありました小規模事業所からの流入汚濁負荷対策、及び生活排水の窒素・りん処理の高度化のため、各省のデータの収集や事例調査等を実施しておるところでございまして、今後、ガイドライン等を作成していきたいと考えております。
 国土交通省では、湖沼水質保全計画や第二期水環境改善緊急行動計画等に基づきまして、水質浄化事業等を実施しているところでございますし、また、湖沼や三大湾等の閉鎖性水域の汚濁負荷を削減するために、流域別下水道整備総合計画の策定、見直しを進め、これに基づく下水処理施設における高度処理を推進しているところでございます。
 それから、農林水産省について見てみますと、家畜排せつ物の適正な管理ということで、閉鎖性水域に流入する汚濁負荷家畜排せつ物法に適合した家畜排せつ物の適正な管理が行われるよう、畜産環境緊急特別対策事業等により、排せつ物処理施設の整備や適切な運転管理といった技術の普及を推進しておるところでございまして、平成18年度現在、家畜排せつ物法施行状況調査におきまして、99.9%の農家が同法の家畜排せつ物の処理、保管の基準に対応しているところでございます。
 また、環境保全型農業の推進といたしまして、農業の生産性との調和に留意しつつ肥料、農薬の使用低減による環境負荷の軽減に配慮することが重要との観点から、具体的には、農業環境規範の普及・定着といたしまして、食料・農業・農村基本計画に基づいた環境と調和のとれた農業生産活動規範─農業環境規範の策定、及び普及促進、それからエコファーマーの認定、支援措置、化学肥料、化学合成農薬の使用を大幅に低減する先進的な取組への支援の導入、平成18年12月に制定されました有機農業の推進に関する法律に基づく有機農業の推進、さらには平成19年4月の同法に基づく基本方針の策定等により、環境保全型農業を全国的に推進しているところでございます。
 また、農地等から閉鎖性水域に流入いたします汚濁負荷量の削減を推進し、水資源の総合的な保全に資するため、浄化水路や曝気施設等の浄化施設整備等を実施しているところでございます。
 b)閉鎖性海域における失われつつある自然海岸、干潟、藻場等の再生、底質環境の改善に向けた取組の状況についてでございます。
 環境省では、まず、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく埋め立てについての環境保全に対する配慮といたしまして、瀬戸内海における公有水面埋立法に基づく埋め立ての免許または承認に当たりまして、基本方針に沿った環境保全の配慮がなされてきているところでございまして、瀬戸内海環境保全特別措置法の施行以降、埋立面積は大幅に減少しておるところでございます。
 それから、同じく瀬戸内海環境保全特別措置法に基づき、自然海浜保全地区を指定しておるところでございます。平成18年度までに瀬戸内海で91地区が自然海浜保全地区として指定されておるところでございます。
 国土交通省では、渚の創生事業といたしまして、海岸浸食によって失われた砂浜に対しまして、沿岸域等において堆積傾向にある箇所の余剰土砂や、各種の事業によって生じるしゅんせつ土砂を有効活用いたしまして、効率的な海岸浸食対策を進めているところでございます。
 それから、海域浄化対策事業といたしまして、へどろや汚染物質等のしゅんせつ、覆砂による底質環境の改善に取り組んでいるほか、港湾整備により発生するしゅんせつ土砂を有効活用いたしまして、覆砂による底質改善及び干潟、藻場等の再生に取り組んでいるところでございます。
 農林水産省でございますが、漁場環境保全創造事業の実施といたしまして、近年、沿岸域の工業化、大都市化の進展に伴う工業排水、都市排水、各種廃棄物等の流入により沿岸の漁場環境が悪化しておりますが、漁場としての効用の低下が問題となっておりますため、効用の低下している漁場の生産力の回復や、水産資源の生息場の環境改善によりまして水産資源の生息環境の保全、創造に資することを目的に、堆積物の除去、覆砂等による漁場環境の改善に取り組んでいるところでございます。
 c)湖沼における湖辺植生や水生生物の保全・回復のための取組状況でございます。
 環境省におきましては、湖辺植生維持・管理手法確立調査の中で、湖沼の水質改善に資するとされる湖辺の植物につきまして、植物の種類、地域条件等を勘案の上、有識者等の助言を受けながら、水質浄化の観点からの湖辺の植生の適正な維持・管理手法に関するマニュアルを策定しているところでございます。
 国土交通省では、汚濁負荷に関する調査・検討といたしまして、人工湖岸等における湖辺植生等を再生・保全する自然再生事業等を実施し、また、河川水辺の国勢調査によりまして、湖沼周辺に生息する生物の基礎情報を把握しているところでございます。
 また、農林水産省でございますけれども、今後の湖沼漁場整備の取組の推進、湖沼の漁場生産量の維持・増大を図るため、魚介類の産卵・繁殖場や生育場所の復元、改善等の漁場改善技術の開発に取り組んでいるところでございます。
 d)閉鎖性水域に関する調査研究の取組状況でございます。
 環境省におきましては、水質汚濁メカニズムの解明等調査といたしまして、底生生物の生息環境に影響を及ぼす貧酸素水塊の発生機構や、外海水の内湾への影響、海域での有機物の長期分解性等について調査をいたしますし、また、湖沼水質保全計画策定支援調査といたしまして、湖沼の汚濁負荷収支、汚濁の内部生産のメカニズムの把握による水質評価手法の確立、それから地域住民にもわかりやすい新たな水質管理目標の検討を実施いたします。
 さらに、流出水対策推進モデル計画策定調査といたしまして、平成18年4月に改正された湖沼法によりまして、市街地や農地からの流出水対策を推進するために都道府県が策定できることとなりました流出水対策推進計画について、モデル計画を策定しているところでございます。
 国土交通省でございますが、閉鎖性水域における環境モニタリング調査研究といたしまして、平成15年以降、東京、大阪、伊勢、広島の各湾におきまして、関係省庁及び自治体との連携のもと、各湾の再生のための行動計画を策定し、当該計画に基づいた環境モニタリングを含む各種施策の推進を行っているところでございます。
 また、その他関連する施策といたしまして、外洋に面した12の内湾域から外洋域にかけての汚染物質の広がりの状態を把握するために、海水及び海底堆積物中の油分、PCB、重金属、有機すず化合物、CODについての調査を実施しているところでございます。

○鈴木委員長 農水省、国土交通省の方から何か補足はよろしいでしょうか。
 では、委員の方々からご質問をお願いいたします。

○永里委員 農水省にご質問します。
 資料2[2]の13ページに書いてあります[4]有機農業の推進について質問します。実は5月末に、中国の銘茶を出す所の茶畑に行って目撃したのですが、農薬を噴霧しておりました。それで私が心配したのは、日本でも同じようなことが行われているのではないかということです。生産性を上げるためにそれをやっているということなのですが、ここに「化学肥料、化学合成農薬を使用しないことを基本とする有機農業を推進します」と書いてあります。日本でのチェック体制はどうなっているのでしょうか。

○青木委員 湖沼汚濁負荷量及び負荷削減率の、特に湖沼系のところを見ておりますけれども、市街地系の排出量が、例えば昭和60年に比べますと、いずれのところでも非常に負荷率が高くなっているという資料が出ております。この市街地系というのは、いわゆるノンポイントで市街地から排出される汚濁ということだろうと思うんですけれども、私、かつてアメリカの環境白書を見たときに、車のタイヤとか油等から出てくる汚濁源があって、それが水域に流れ込んでいる、これが汚濁の一つの大きな原因であるということを昔、調べたことがありますけれども、そういうことなんでしょうか。
 この市街地系の汚濁の主たるもの、どういうものが汚濁の中身なのかを教えていただきたいと思います。

○大塚委員 資料の3ページ、環境省のところでございますけれども、非特定汚染源対策、かなり大変なことなのですが、徐々にやっていただいていると思いますけれども、例えばりんについて、前、琵琶湖で問題になったことがありますが、無りん洗剤のようなことでしか販売できないようにするとか、あるいは歯磨き粉とかボディーシャンプーにも使われているようなのですけれども、そういうものを規制することも一つの方法として考えられますが、何かそのようなことをお考えになった上で対策がとられていないのかどうか、お伺いしたいというのが1つございます。
 それから、農水省のa)の家畜排せつ物法ですが、これは割と最近になってできて、できたことはとてもよかったと思っているんですが、この排せつ物が出てきた後、必ずしも堆肥がよく使われていないということを伝え聞いています。堆肥の流通を管理するようなことは法制化を含めて検討する必要はないかとか、あるいは家畜排せつ物法自体についても、環境保全の観点が本当はあると思うんですが、明確には書かれていませんので、環境基準の達成に向けて、この家畜排せつ物法を定めるといったことは考えられないのかというあたりをお伺いしたいと思います。
 関連して、使用禁止になった農薬が農家の納屋等にあって、非特定汚染源になることがあると思うんですけれども、使用禁止になった農薬について何らかの対応ができないか。例えば、生産者に回収してもらうようなことが1つは考えられると思います。なかなか難しいと思いながらお伺いしているのですが、検討すべき点ですので、その点についても教えていただけるとありがたいと思います。

○浅野委員 農水省と国交省に対してですが、環境基本計画をつくった後に出てきた21世紀環境立国戦略の中で、「里海」という新しいキーワードが出ているわけです。ですから、今回の基本計画の点検の中でそのことを意識していない点をとやかく問題にする気はないのですが、今後の方向として、里海という新たなキーワードが出てきたことを踏まえた施策の展開が必要ではないかと考えるわけです。
 そこで、漁場環境保全創造事業というような形で少なくとも漁場についての整備をしようというお話が農水省のペーパーでは出てまいりますし、他方、国交省の方では、渚の方は国交省固有の所管であろうと思いますが、もう一つ、海域浄化対策事業という表示の中に、やはりここにも干潟、藻場の再生というのが出てくるわけですね。この2つの事業は一体どう関連されているのだろうかということが少々気になります。
 もう一つは、本当は水産庁のお仕事なのかもしれないと思いながら、ペーパー上は水産庁は湖沼しか書いておられませんので、そこに質問を向けにくいので、農水省の方に質問ということになるのですが、場合によっては水産庁にもお答えいただいていいと思います。
 今、書かれているこのペーパーの点検結果を見ると、何となくハードの面はわかるのですが、里海という概念は、そもそもハードの整備プラスアルファ、もっとコミュニティの活性化というようなところまで視野を広げていき、第1次産業を生かした地域づくり、そういうものとして里海という概念を大事にしていかなければいけないということが言われているんだろうと思います。
 そういう関心事から見た場合、果たして21世紀環境立国戦略に書かれたような方向が今後どのように展開される可能性があるのか、現段階でもしお考えになっていることがあるならば、お聞きしたい。
 同様のことは、環境省は瀬戸内法に関連させて埋立規制もやっていますし、自然海浜も保全地域も指定しています。ですから、特に制度を改正する必要はないということなのかもしれませんが、いずれにせよ、両方とも「特になし」と書いてあるわけですが、一体「特になし」というのはどういうことなのか。
 特に瀬戸内法に関しては、大阪湾に関してはまだ問題が残っているけれども、それ以外の瀬戸内海一般については、少なくともCOD負荷についてはもう余り心配しなくていい─とは言い切れませんけれども、さらに規制強化しなければならない状況ではないということまではっきりしてきているわけで、少なくとも大阪湾を除くその他の瀬戸内海に関する環境施策というのは、大きく転換を迫られているのではないかという気がするわけですね。
 そういう目から見ると、ただ単に埋立規制をやっています、自然海浜保全地区の指定をしています、これでうまくいっています、そんな話なのだろうか。伝え聞くところによりますと、自治体の方では既に瀬戸内法の改正を願いたい、キーワードとして「里海」という言葉を生かしながらということで、署名もやっておられるようですが、そういう状況の変化がこの点検報告の中には余り出てきていないのですが、この点は環境省、いかがでしょうか。

○農林水産省 農水省生産局でございます。
 最初の有機農業の推進のことで、農薬を使っているなどのチェック体制はどうなっているのかというご質問でございます。
 まず、有機農業に限らず、農業において肥料、農薬を使う場合、特に農薬につきましては法律に基づきまして、農業者には適正に使用する責務が課されておりますので、具体的には、農薬の使用回数、対象作物等の基準に従って農薬を使う義務がございますので、それに従ってやっていただくことになっております。
 そのチェックということになりますが、基本的に、こういった生産物を出荷する場合につきましては、各産地において生産履歴の記帳がされておりまして、その記帳で、どういった農薬を使用したかというチェックがなされてございますので、その時点で明らかに農薬の使用基準に違反した事例がある場合については、基本的には出荷しないといった対応が産地でなされている場合もございます。
 もう一点、使用禁止農薬について回収、対応できないのかというご質問でございますが、これも農薬の話かと存じますが、農薬につきましては、以前、無登録農薬の問題があったこともありまして、たしか平成14年ごろに農薬取締法を改正いたしまして、登録されていない農薬につきましては、そもそも製造から流通、販売、すべて禁止となってございますので、基本的に、現場においてそういった無登録農薬、また、登録農薬であっても対象作物以外のものには当然使用できませんので、もともと使用なされないといったような制度が仕組まれてございますし、あと、その後の使用基準のチェック体制につきましては、先ほど申し上げたとおり、生産履歴記帳のチェックなり、産地の自主検査等で対応しているところでございます。

○大塚委員 登録された農薬を買って、後で使用禁止になった場合のことをお伺いしたかったんです。納屋に残っているものが非特定汚染源になっているのではないか、それにどう対処するかということをおうかがいしたかったのですが。古いものが結構残っていますよね。

○農林水産省 すみません、回収のことまでは、ちょっと今、私からはお答えできないので、そこは調べるということでよろしいでしょうか。
 家畜排せつ物につきましては、別な者がお答えいたします。

○農林水産省 家畜排せつ物法についてご回答させていただきます。
 先生ご指摘のとおり、家畜排せつ物の堆肥がなかなか流通していない点は確かにございまして、そのため、本年4月に家畜排せつ物法に基づく政府の基本方針を新たに見直しました。この中身といたしましては、大きな柱が耕畜連携ということで、畜産農家と畑をやっています耕種農家とを結びつけていくことを大きな柱の1つにしております。また、その耕畜連携を進めるために、耕種農家が堆肥に求めるニーズがいろいろございますので、そのようなニーズに沿った堆肥をつくることを柱として掲げております。
 このような政府の基本方針に基づきまして、都道府県で、またそれぞれの県の実情に合わせた方針をつくってもらうこととしておりまして、本年度中には、ほぼすべての都道府県で新たな基本方針をつくってもらえるのではないかと考えております。
 また、家畜排せつ物法環境基準の達成に向けて運用するべきではないかというご指摘があったかと思いますけれども、この家畜排せつ物法で定められております管理基準に従ってきちんと管理していれば、環境基準はクリアするものと考えております。ただ、その「きちんと管理する」というところにちょっと難点がある場合もございますが、管理基準に従っていない場合には、都道府県が指導とか勧告を行ってきちんと管理するようにというふうに持っていっているところでございます。

○鈴木委員長 畜産関係がおられるところで伺いたいのですが、結局、耕畜連携といって畜産の廃棄物を堆肥にしても、土壌がもう完全に富栄養化しているわけでしょう。窒素がどんどんたまっていって、いずれは雨によって─なぜかというと、輸入飼料を大量に使っておられるからですよ。窒素を大量に輸入農耕飼料が持ち込むわけですね。それをやめないとどうしようもないので、やはりそのためには国産の、耕種でつくられる飼料をブタやウシに食わせるような仕組みまで含めて考えて、要するに、輸入飼料をとめていただければ、こういう内湾の問題なんてあっという間に解決するのではないですか。輸入食料もそうですけれども。

○農林水産省 ご指摘ありがとうございます。確かに窒素収支という観点で考えると、餌のみならず食料をいっぱい輸入しているものですから、窒素がたまるのはもう自明の理でございますが、最近飼料価格が高騰しておりまして、農家の方もなかなか輸入飼料が買えない状況になっておりますので、今、国産飼料をなるべく使ってもらおうという方策を鋭意立てておるところでございます。

○農林水産省 水産庁漁場資源課です。
 浅野委員からご指摘のあった里海の件ですけれども、今回、報告なされています漁場環境保全創造事業は、あくまで漁場としての環境を改善することによって、水産資源を回復させようということを目的に行っている事業です。ただ、委員ご指摘のとおり、今回の21世紀戦略には里海というのが位置づけられていますし、7月に農林水産省が独自でつくりました生物多様性戦略の中でも、ちゃんと里海という概念は位置づけられております。漁業活動とともに親水性のレクリエーションとか、それから漁港が持つ多面的機能を活用するといったような幅広い観点で、これから海に対する施策を行っていくというような形で、その戦略の中にも位置づけられておりますし、平成20年度予算要求も、その観点で予算要求している事業もございます。

○国土交通省 港湾局でございます。
 私ども、これまでしゅんせつ土砂を有効活用いたしまして、干潟、浅場、藻場、そういったものを再生、造成してまいりました。ご指摘ございました里海というキーワードもこれから必要ではないかということ、おっしゃるとおりでございまして、今までつくりっ放しという傾向にあったところでございますけれども、今後は順応的管理を取り入れて、行政がつくったそういった干潟等を地域の方々、あるいはNPOの方々がモニタリングをして、監視していただく、そういった仕組みづくりもこれから進めていきたいと考えております。

○環境省 市街地系の排出負荷が高まっている理由でございますけれども、一面で言いますと、市街地の面積が増えていることがございますので、それに伴って全体の量が増えてくる傾向にございます。
 ただ、その中身でございますけれども、先ほど委員ご指摘の、自動車のタイヤが主たる原因かといったことでございますけれども、これにつきましては今のところ知見がございませんで、恐らくそういったことも原因の1つではあろうと考えておりますけれども、それが主たる原因であるかについては、現在のところ不明でございます。
 ただ、こういった市街地排水、非常に問題でございますので、先ほどもご紹介いたしましたけれども、改正湖沼法では、こういった市街地排水についても対策を講じていく仕組みを新たに設けてございます。
 それからもう一つ、湖沼関係でご質問いただいておりますので、あわせてご回答しておきたいと思いますけれども、りんの関係、シャンプーあるいは歯磨き粉等のりんということでございますけれども、これにつきましても、りんの主たる要因が何であるかといったことにつきましては、指定湖沼が10湖沼ございますけれども、それぞれ流域の状況によって異なってまいるかと思います。確かに生活系の排水が多い所につきましては、恐らくそういったことも原因の1つではないかと考えられますけれども、これにつきましても、現在それが何%であるかとか、何割を占めるかといった明確なデータはございませんので、今後、こういった科学的な知見を集積していくことが必要かと考えております。
 もし仮にこういったことが問題であるということであれば、これにつきましても何らかの方策を講じていく必要があるかとは考えております。

○環境省 里海のご質問についてお答えさせていただきます。
 新法につきましては、委員ご指摘のとおり、瀬戸内海知事・市長会議が中心となって活動されていることは承知しておりますが、法律事項の内容につきましては、現在のところ、まだ承知していない状況でございます。
 それと、21世紀環境立国戦略に里海が位置づけられたことにつきまして、平成20年度に3カ年をかけて里海再生支援事業ということで、国交省、農水省と連携できる部分につきましては、そういう事業、まさしく里山という概念を海の方に持ち込みまして、物質循環、陸域からの栄養源でノリとか魚が育ち、それを食べるということで、物質循環をよくするということで、そういう再生支援事業を展開しようとしておりまして、3カ年でそういう事業を展開しまして、シンポジウム等も開催しまして、将来的にはアジアにそういう概念を発信しようと考えております。

○鷲谷委員 農水省に質問させていただきます。
 最近、環境保全型の農業政策に力を入れていらっしゃることは存じ上げているのですけれども、その効果を簡単な数字で教えていただきたいです。
 慣行農業が今でも行われていて、依然として肥料や農薬が多投入されている農地の面積と、環境と調和するこのような新しいやり方で農業をしている農地の面積の比率は、およそでいいですけれども、現状ではどのぐらいになっているのでしょうか。

○農林水産省 今、委員がおっしゃったような多投入といいますか、慣行農業の面積と、それから環境に配慮した面積がどの程度あるかという統計的なデータは、面積ベースではございません。
 ただ、参考になりますのは、農林水産省は5年に1度センサス調査をやっているのですが、その中で販売農家数について、いわゆる化学肥料、農薬の使用低減に取り組んでいる農業者の数の統計をとってございまして、この農家数のベースで言いますと、平成17年2月時点の調査で約4割近い方が何らか、量的なものまでは把握できていませんが、慣行よりも化学肥料もしくは農薬の使用低減に取り組んでいるというデータはございます。

○鷲谷委員 ほとんど使わない有機農業に取り組んでいらっしゃる農家の比率は、どのぐらいになりますか。

○農林水産省 統計的なものはないんですけれども、ただ、1つ参考となる数値といたしましては、有機農業ということで、有機JAS、有機農産物の認証を受けた事業者の数が把握されておりまして、これが今、約5,000戸ございます。日本の販売農家数は約200万戸でございますので、1%もないんですけれども、いわゆるデータとして把握されている方については、それぐらいおられるということです。

○鈴木委員長 私、ちょっと感想めいたことなのですが、閉鎖性水域と言うと、何を最終的なターゲットにするのかというあたりがどうもよく見えなくて、「里海」という言葉が出てきたということは、やはり豊穣の海というか、そこで水産がなくてはいけない。ある種の人間との関わりがあるということなのでしょうが、水産に関しては余りここで触れられていなくて、藻類の養殖などはあるのかもしれませんが、その辺、最終的に閉鎖性水域というものをどういうふうにするのか。そのときに、さっきちょっと申し上げましたが、今までの環境基準でいいのかどうか、ぜひその辺も今後の課題として考えていかなければいけないのではないかと思います。
 例えば、琵琶湖も「CODを幾つにしなければいけない」というような管理でいいのか、本当に魚を対象とするのだったら一体何を考えていくのか。海域ももちろんそうだと思いますので、ぜひその辺も何かの折にお考えいただければと思います。
 閉鎖性水域も陸域と海の連携ですので、各省間に連携をここでも再度お願いしながら、次に移らせていただきたいと思います。
 あと2つ残っておりますが、次は「長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の整備」横串の課題になりますが、その重点調査事項[1]「環境に関する情報の整備及び提供についての取組状況」。
 ヒアリング対象府省としては、環境省と総務省です。

○弥元環境計画課長 重点調査事項の[1]「環境に関する情報の整備及び提供についての取組状況」でございますが、調査内容項目を3つお示しいただいております。
 まず1つ目でございますけれども、OECDが示している環境指標の3分類(環境への負荷、環境の状態、対策)に合致した環境情報について、関係府省の保有状況及び政府内での統合的な整理管理体制の状況如何でございますが、まず、保有状況についてでございます。
 環境省におきまして環境統計集という形で取りまとめをしておりますもの、件数を中心に、約320件の統計について調査いたしました結果を、後ろのA3の別紙に整理いたしておるところでございます。
 ごらんいただければと思いますけれども、OECDの3分類に応じてP、S、Rに分けて、●をつけておるところでございます。Pがプレッシャー、環境への負荷、Sがステートで環境の状態、Rがレスポンスで対策という対応関係でございます。また、定期的に収集されているかどうかといった項目について質問し、回答を受け、まとめた例、あるいはその頻度、それから保存形態、それから公開方法及び市販の有無といったようなことについても、あわせてこのA3の資料で整理させていただきました。
 環境統計集に掲載されている約300件ある統計につきましては、すべてホームページと印刷物の両方で公開がなされておるところでございます。
 もう一つの質問事項の、政府内での環境情報の統合的な整理・管理体制でございますけれども、これは残念ながら、現在のところはございません。環境省におきまして、環境に関する統計情報を集めたものにつきましては、環境白書あるいは環境統計集などの形で整理し、公表している、そういった取りまとめ方が存在する状況でございます。
 それから、調査内容項目b)でございますけれども、問題分野ごとに、環境圧力の背後にある経済活動等に関する統計情報や対応に関する統計情報を環境指標と関連させて収集するといったことについてでございます。
 現在、各府省が行っておりますさまざまな統計のうち、それらを収集する時点で、環境指標と関連させているものは、調べた結果、少ないという結果が出ております。ただ、集められた統計情報を環境指標となる統計情報と関連させて、それぞれの府省の個々の政策立案などに反映させているところでございます。集める段階ではやはりルーティン的にずっと、ルーティン、ルーティンということで集めているのが現状のようでございます。
 環境統計集におきましては、OECDの3分類、先ほどP、S、Rということで3分類ございましたけれども、そのうちのPにつきまして、環境への負荷とその背後にある人間活動を環境への負荷等の駆動力ということで、ドライビングフォースとしてとらえる考え方が最近、出てきておりますので、P、S、RではなくてD、S、Rということで環境統計集においては整理して3分類し、整理、公表しているところでございます。
 今後、各省庁が有する関係情報を共有化いたしまして、一元的に提供できるような環境情報提供のあり方を検討してまいりたいと考えております。
 それから、調査内容項目c)でございますが、統計情報を環境問題ごとに集約し、国民にわかりやすい形で公表しているかどうかということでございます。
 環境にかかわる統計情報の集約につきましては、環境省において環境統計集として集約するに当たりまして、3分類に沿って体系的に整理しておるところでございますけれども、公表の仕方という点につきまして、各府省におきましてもそれぞれ一生懸命工夫をいたしまして、国民にわかりやすい形での公表に努めているところでございます。
 今後は提供内容や提供の方法等により工夫を凝らしまして、ぜひ国民一人一人の行動に結びついていくような、そういった狙いをもって、各省連携して情報提供を行っていく必要があると考えているところでございます。

○総務省 総務省政策統括官(統計基準担当)では統計法といいますか、統計制度を所管しております。
 お手元の資料では、資料3[1]の3ページに総務省としての回答をつけさせていただいております。
 特に総務省に対しては、政府統計の体系的整備において、環境統計についてどのように取り組んでいるのかということと、統計情報の二次利用の点について、説明しろというご指示をいただいたと理解しております。
 1点目でございますが、私ども、政府の統計を総合調整、企画・立案する立場から、平成15年6月に統計行政の新たな展開方向を取りまとめております。これは統計主管部局の申し合わせでございますが、この中で環境統計の整備についても触れられております。特にそこで指摘されておりましたのは、温室効果ガス等の民生部門等の排出資料について、ちゃんと統計を整備する必要があるというところで、環境省、経済産業省を中心に取り組んでいただいているところでございます。
 3ページの下に書いてございますが、民生業務部門等を含め、エネルギーの消費構造を把握するための統計調査の創設に向け検討というところでございますが、これについては経済産業省の方でエネルギー消費統計、仮称でございますが、こういったものを整備して、その消費量の把握をすると伺っております。
 現在は、この申し合わせという形でそういった統計の体系的整備を進めておるところでございますが、4ページの[2]に書いてございますように、先の通常国会で統計法を60年ぶりに改正いたしまして、新統計法ができました。この中に、公的統計の整備に関する基本的な計画─基本計画を策定し、閣議決定するといった条項が盛り込まれておりまして、これは新しく設けられる統計委員会の意見を聞いて、総務大臣がつくることになってございますが、環境については、こういった基本計画の中でも、統計を重点的に整備すべき分野として位置づけがなされるのではないかと考えてございます。
 もう一点、統計情報の二次利用でございますが、現行統計法のもとにおいては、統計法第15条の目的外使用という形で、総務大臣が承認し、告示した場合についてのみ目的外利用を認めるという限定的な運用をしておるところでございます。ただ、この点につきましても、統計情報を有効に活用しようという観点から、新統計法において、これまでの目的外使用に加えまして、一般からの委託、例えば個票自体は出せませんけれども、「こういったオーダーに応じて集計してくれ」という要請があれば、それに応じてそういった統計表を作成して提供するという仕組み、あるいは個票の匿名性を確保した形で統計データを提供する、こういった新たな仕組みを、学術研究等の一定程度の公益性が認められる場合でございますが、創設することとしておりまして、総務省としては、こういった観点からも、より統計が有効に活用されるように制度の運用に努めてまいりたいと考えてございます。

○鈴木委員長 それでは、委員の方々からご質問をお願いします。

○河野委員 環境問題が国際政治の中で非常に大きな問題になっているわけですが、そうだとすると、国際的に比較可能な環境指標といいますか、こういうものが何らかの形で必要になるだろうと思います。
 先ほど参考資料ということで膨大な環境情報が示されましたが、これは結果として集められたものをOECDの分類で分類したんだと思います。国際機関、どういう情報かは私もはっきり申し上げられないんですが、例えば国連とかユーロスタットとか、米国環境保護庁─EPAと、あるいはAPECとか東アジアといった地域の連携とか、あるいは先ほど申し上げた国際機関で集めているような環境情報について、意図的に集めているのかどうか。
 これは環境省に聞いた方がいいのではないかと思いますが。

○佐和委員 いわゆる温室効果ガスの排出量に関する統計なのですけれども、これは日本の場合、二、三カ月前に2005年度の確報値が出ましたね。これは国際的に見て遅いのか、あるいはごく標準的なのか、あるいは非常に手際よく、早く出している方なのか、そこのところを教えていただきたいと思います。

○大塚委員 4ページの総務省との関係でお伺いしたいと思います。統計情報の二次的利用のところで、第15条ということが書いてあるんですけれども、従来から行政機関等が利用する場合などに限りこれを認めているということですね。これについて、例えば具体的には、やや微妙な問題ですけれども、某事業官庁で集めた情報を環境省が入手できないということは、多分、前から問題になっていて、今でも残っているかと思うんですけれども、そういうことは、第15条との関係では特に問題ないと考えてよろしいのでしょうか。
 この点はかなり微妙な問題ではありますが、環境行政を進めていく上ではかなり重要な問題だと認識しております。

○環境省 環境情報室です。
 最初の質問は、国際的に比較可能ないろいろなデータを、国際機関等から意図的に集めているのかということでございますけれども、例えば今日お配りした資料で言いますと、1ページの地球温暖化のところの温室効果ガスなどというのは、もうご案内のとおり、オークリッチのデータですとかOECDのコンテンゲイムといったものを引っ張ってきたり、あと、ざっと見ていただければおわかりのように、次のページも結構、特にOECD関係のデータは集めているところです。
 白書などを書く際には、こうしたデータを活用しながら、国際比較できるような形でやっているところでございます。個別の環境課題については、まだ我々細かく承知しているわけではございませんけれども、それぞれの担当部局で、例えば農林関係であればFAOですとか、化学物質関係はWHOですとかいったところのデータを集めて業務に生かしているのだろうと思っております。
 2番目のご質問の、温室効果ガス排出量の確定値が遅いのではないかということでございますけれども、正直申し上げて、担当が地球環境局ではないものですから、確定的なことは申し上げられませんが、我々としても、やはり若干遅いだろうなという感じはしております。別途これとは別に、今、公表しているそれぞれのデータについて、一体そのデータを、例えば何年のデータをいつ集めていつ発表しているのか、今、調べているところですので、そういったことを踏まえて、もう少しこのデータが早く出せるのかどうかということ。それは本来そもそも無理─統計上の処理ですとか、データを集めてくるときの、例えば業界から集めなければいけないときには手間がかかるとか、そういう我々としてはどうしようもないところから発生しているものなのか、それとも我々の中の情報処理の遅さから来るものなのか、少し分析したいと思っております。

○浅野委員 前は温室効果ガス排出量の数値の公表がかなり遅かったんですが、ともかく暫定値をできるだけ早く出してほしいとお願いして、暫定値についてはかなり早く発表できるようになっています。しかし、その結果として、何が入手できない情報かがはっきりわかってきたわけです。全国的な統計数字が集まらなければ確定値にならないわけですが、分野によって、分野によって、この数字が早く集まるものと遅く集まるものとバラバラなわけです。ですから、集まらないものについてはしようがありませんので、前年と同じ数字を入れてみたり、あるいはトレンドで伸ばしてみたり、そこはいろいろ推計を工夫しながら数字を入れて、できるだけ早く全体の数字を出すという作業が行われているのですが、現在出しているのは、3分の2ぐらいの情報がともかくまあまあ入るという時期が一応の限界ということでやっているわけですね。
 国際比較で世界に比べて早いか遅いかという比較は、一度も調べてもらったことがないわけですが、当然ですが、国の規模によって、あるいは個々の分野ごとのパーツの情報を迅速に集める仕組みをその国が持っているかによって違ってくるのだろうと思いますけれども、ザクッとした言い方をすれば、日本程度の人工規模、生産規模の国であれば、日本程度のスピードは平均だろうと私は思っております。
 それにしても実際に推計値でやってみると、ふたを開けるとコンマ2ぐらいずれることがわかってきたんですね。これ以上ずれてもしようがない面もあるものですから、ここが一応の限界だろうと思いますけれども、例えば廃棄物関係は、さらにまだ半年以上おくれていますから、これはもっと急げということを盛んに議論していますし、それから、地方公共団体からは統計データは早くあがってくるのに、加工に手間がかかってしまって最後の集計データが遅れるというようなことがありますから、そういったような点は改善の余地があるかもしれません。

○総務省 大塚委員からのご質問にご回答します。
 第15条のお話で、統計調査によって集められた調査票の目的外使用ということでございますが、先ほどおっしゃったケースがどういったケースだったのか、私もつぶさに把握しておりませんが、基本的に、例えば行政機関から統計調査の目的外使用の申請が上がってくれば、その統計調査に基づくものは使用できる。ただ、例えば行政記録として何省が持っているというものは、現行法第15条の射程には入っていないところです。いわゆる行政記録ですね。ですから、統計調査というものであれば使えるような仕組みに通常なっているのではないかと思います。
 「行政機関等」と書いているところにつきましては、例えば行政機関との共同研究に使う場合ですとか、行政機関等からの委託、補助を受けて行っている調査、そういったものについても、目的外使用申請が上がってきた場合には認める場合がある、そういう運用をしておるところでございます。

○鈴木委員長 無邪気な質問で恐縮ですが、総務省の役割といいますか、結局、具体的な個別のデータは各省がそれぞれ出先を使ったり、地方から上がってきたりして集められるわけですね。そういうところに総務省が、例えば「有効数字はどれぐらいにして、どれくらいのメッシュでデータを集めろとか」そういう要望はこの統計委員会等でなされるのですか。つまり、いろいろなところでとられたデータの整合性をとっていくとか、より使いやすく、他の目的にも使いやすくするとか、そういう努力はどういうふうに。
 そして、そういう要求を出したときに、他の省は聞いてくれるものなのですか。

○総務省 各府省が調査を実施する場合には、一定規模の統計調査であれば総務大臣の承認をとる形になっております。我々は総合調整部局として、例えばこの調査をするなら標本数はこれぐらい必要だろうとか、結果表章としてこういうものがあるべきではないかというのは、個別の審査を通じてやっているところでございます。
 もう一点、総合的に我が国の統計いかにあるべきかという部分については、今はそういった閣議決定等の仕組みはありませんけれども、新統計法のもとでは、そういった基本的な計画を総務大臣が統計委員会に諮問して、統計委員会の意見を聞いて「こういった統計を整備すべし」といった計画をつくることになっておりますので、総合的な統計行政の推進という面では、施行は2年後になりますけれども、もう少し拘束力のあるものができてくるところでございます。
 基本的に、各府省とも審査の過程でいろいろ事務的にもやりとりしますが、そういったところはこちらの意見も入れて、調査を企画していただいていると思っております。

○鈴木委員長 膨大な人間を抱えて工業統計表とかああいうものをつくっておられるようなところは、何かもっと有効に、環境統計や何かに人を振り向けていただけると随分助かるようなところもあるわけですよ。そういうところは一体どういうふうに各省間での調整というか、有効利用というんでしょうか。

○総務省 そういったリソースも含めた再配分みたいな話は、現実的には、これまでなかなか取り組まれておらなかった部分があるのだろうと思いますけれども、今後、基本計画の中でも、重点的にどういった分野に力を注ぐべきかといった話が出てくれば、それを受けた対応を、総合調整部局としてもやっていくんだろうと思います。

○大塚委員 さっきのこととの関係で、各行政機関が行政記録としてとっているものを、統計法上とる統計に格上げすることによって、環境省を含めて利用できるようにすることは、理論上は可能なわけですね。

○総務省 今の統計法が射程しているのは、統計調査によるものなんです。現行の制度では、この制度を使って行政記録を使うということにはなっておりません。ただ、今後、新統計法のもとでは、行政記録でも統計作成のために非常に有効なものがございますので、統計調査のために必要だということになれば、調査実施者が実際に行政データを持っているところに資料の提供を要請することができる、また基幹統計の作成に必要な時は、総務大臣が必要な資料の提供を求めることができるという規定は盛り込まれております。ただ、そこは意見を述べるというところで、絶対出しなさいというところまでの強制権限はないのですけれども、そういった仕組みは新たに盛り込まれております。

○鈴木委員長 それでは次に、同じ重点点検分野「長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の整備」の重点調査事項[2]といたしまして、「戦略的環境アセスメントの取組状況」のヒアリングを始めさせていただきます。
 ヒアリング対象府省は、環境省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、厚生労働省、防衛省です。

○環境省 環境省 環境影響評価課長でございます。
 「戦略的環境アセスメントの取組状況」でございますけれども、大きく課題が2つございます。調査内容項目の1点目、a)にございますとおり、個別の事業の計画、実施に枠組みを与える計画、政策の策定等における環境配慮の現状及び課題について、2点目が、b)でございますけれども、特に共通的ガイドライン等に係る検討実施経緯、今後の実施に向けた課題、対応の整理関係でございます。
 まず1点目の、a)についてでございますけれども、2つ目の「施策の実施状況」のところにありますとおり、これまで国内外の先行事例の調査等を精力的に行ってまいりまして、これを踏まえて、昨年8月でございますけれども、総合研究会におきまして戦略的環境アセス、いわゆるSEAのガイドラインの導入についてご審議いただいたところでございます。
 この総合研究会におきましては、政策段階から事業実施段階に至る一連の流れを整理いたしまして、どの段階を対象に検討を進めるべきか、ご審議いただきました。その中で、検討内容が比較的明瞭で評価の目的、共通の手続、評価方法等の議論が可能な位置・規模の検討段階についてまず議論することが現実的であるということで認識が一致しまして、議論を深めていただきました。結果、位置・規模の検討段階のガイドラインを取りまとめることができたものでございます。
 課題、今後の方向でございますけれども、関係府省におきまして、共通的ガイドラインを踏まえて位置・規模の検討段階におけるSEA導入に向けて取組を進めていただくことにしてございます。
 また、今回、手が届かなかったより上位の計画段階、政策の決定段階におけるSEAに関する検討を進めていくことも課題だと考えてございます。
 課題を踏まえた取組でございますけれども、今回取りまとめたガイドラインを踏まえた取組を進めるために、課題として、環境情報の把握手法、コミュニケーションの充実、そういった基盤整備等の所要の予算、組織面の要求を検討いたしてございます。また、より上位の計画段階、政策決定段階におけるSEAに関する調査の予算関係につきましても、検討中でございます。
 めくっていただきまして、2点目の、共通的ガイドラインの検討関係でございます。
 先ほど概略を触れさせていただいたところでございますけれども、施策の実施状況のとおり、それぞれ専門分野の学識経験者から成る総合研究会におきまして、昨年8月から各省関連のヒアリングも含めまして、精力的にご審議をいただき、位置・規模等の検討段階で複数案の環境的側面の比較・評価、環境配慮事項の整理等により計画の検討に反映させることを主な内容にしまして、共通ガイドラインを取りまとめていただいたところでございます。
 本年4月上旬でございますけれども、関係省、都道府県、政令市に通知しまして、取組を要請したところでございます。
 課題、今後の方向性でございますけれども、現在、関係省で、共通的ガイドラインを踏まえて事業ごとの取り扱いをご検討いただいてございまして、検討の後、実績を積み重ねていただくということで考えてございます。
 また、取組状況を踏まえまして、必要に応じてガイドライン自体を不断に見直していく考えでございます。
 関係省の点検関係、簡単にポイントを述べさせていただきますと、3ページでございますが、経産省関係、独立行政法人中小企業基盤整備機構の宅地造成事業は、今後、事業が想定されないということ、ダム・堰事業も単独建設が想定されず、特段実施しないという考え、また、発電所でございますけれども、取り扱いにつきまして関係者の意見の隔たりが非常に大きく結論が得られなかったということもございまして、対象から除外しております。
 5ページに飛んでいただきまして、国交省でございますが、国交省につきましては、現在、既に一部事業で構想段階における計画策定プロセスの透明性をより明確にするためのガイドラインがございます。これを踏まえて、公共事業の構想段階における計画策定プロセスのあり方についての横断的な考え方を取りまとめていくための研究会を設置して、検討を開始してございまして、精力的にご審議いただいている状況でございます。
 7ページでございますけれども、農林水産省でございます。
 土地改良事業におけるSEA導入ガイドラインの取組について、検討を行うことになってございます。
 9ページでございますが、厚労省です。
 厚労省につきましては、水道事業者等による大規模なダム等の新設等の予定は当面ございません。したがって、取組は特段行っていないという整理です。
 11ページでございますが、防衛省です。
 防衛省につきましては、これまでも関係省の成果に倣ってきた経緯がございます。したがいまして、関係省、とりわけ国交省の成果を参考にして、SEAの取組の導入を検討したい、そういう整理になってございます。

○鈴木委員長 ただいまのご説明に関しまして、ご質問等いかがでしょうか。

○浅野委員 特にご質問がないようでございますので、ご質問というよりもコメントになるかもしれません。各省におかれましては、SEAのガイドラインに沿っての検討を始めていただけているところもあり、あるいは、当面該当する事業がないのでうちは考えるつもりはないというところもあり、あるいは他の省庁で何か出てきたらそれを参考にして考えようというところもあるという状況が、大体わかったわけでありますけれども、今回のガイドラインは、とりあえず第一歩ということで、アセス法の中の対象事業を念頭に置いてということにしてはいるわけですが、しかし、そもそもその考え方として、戦略的環境アセスメントの考え方をさまざまな計画策定に当たって取り入れていただきたいというメッセージはあるわけでございまして、すべての関係府省が、このガイドラインに書いてあるとおり、きちっとそのルールに従ってやってほしいと言っているつもりはなく、考え方として、この考え方を生かしていただきたいという気持ちを示していることはぜひ理解していただくようお願いしたいと思います。
 もう一つは、国交省は非常に熱心にやってくださっているのですが、国交省の所管事業の持っている公共事業の特徴と、他の省庁の事業の持っている役割、機能というのはおのずから違う点があるわけです。つまり、国交省の場合は、まさに国民が直接利便を享受できるような公共インフラの整備をしましょう。言ってみれば、国民が出資している企業が出資者のご意見を聞きながらその直接の利便に資するように仕事をしましょうということをやっているわけですから、そういう場面でPIを大事にするのは当然のことでありますし、その手法というのは十分に生きていく可能性があるわけです。
 しかし、国交省の事業の中にも、事業種によって、環境への影響範囲がどのぐらいかといったこともこれあり、あるいは事業の便益をうける利害関係者がどうかということも大分違ってくるということはあると思うのですね。例えば私、今、空港についてPIに首を突っ込んでいますけれども、空港の場合には利用者がきわめて広範囲にわたります。ただ、ある面的開発でその近辺の者に利便を与え、あるいは環境面での影響を与えるという場合とは違いますから、当然PIの対象になる範囲・関係者が多数にのぼるということが考えられます。
 ですから、一言でPIの手法でと言ってみても、これまた事業種によって当然違いが出てくることは考えられるだろうと思っていますし、事業によっては、むしろ環境面の配慮だけではどうにもならない事業というのがあるだろうと思われます。絶対これはここに立地しなければ仕事ができないというものもあるはずでございます。そういうものについてPIの手法と言ってみても、複数案を考えることがもともと難しいような事業種について、国交省がこんなことをお考えになっているのなら「それっ」と右に倣えで、「うちもこれでやりましょう」と言ったら行き詰まるおそれがある場合もあろうと思います。
 ですから、余り国交省頼みにならず、自分の所管する事業種の特徴については自前でちゃんと考えておいていただかないとまずいのではないだろうか、本当に、この報告に書いてあるように、国交省がガイドラインを示しておやりになったら「それに右に倣えでやります」と言えるような場面でない場合にどうなさるか、逆に心配してしまうわけで、国交省がリードしてくださることを歓迎しながら、やはり各省は自分の所管事業種の特性について、今の段階から十分な検討をしていただければと思います。

○鈴木委員長 他にいかがでしょうか。よろしいですか。
 何か、例えば国交省あるいは他の省からご発言ございますでしょうか。始まったばかりという感じもしないでもないので、これからいろいろな事例が生まれてくるのではないかと思いますし、経産省も、発電所のSEAを除外しておいて「しまったな」と思っておられるかもしれませんしね。やっておけばよかったというようなこともあるかもしれませんし、今後、いろいろな面で展開が生まれてくる可能性もあります。
 これはまた2年後にSEAなどはどういうような状況になっているか。ただ、今、浅野委員からお話がありましたように、SEAそのものを実施するかどうかということもありますが、法といいますか、このSEAの心をぜひ酌み取っていただいて、いろいろな事業にそれを生かしていただくことが大事なのかなと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 委員の先生方、よろしいですか。森嶌先生、最後に何かよろしいですか。

○森嶌委員 実はこれは事業アセスメント手続きのなかでの代替案の提示でありまして、厳格な意味では戦略的アセスメントではありませんけれども、少なくともこれが入ることによって、従来不十分であった環境アセスメントがよりアセスメントらしくなってきたという点で、先ほど浅野委員がおっしゃったように、その第一歩だという意味で私は評価いたします。国交省をはじめ関係省庁におかれましては、ぜひこれからこの議論を通じて、アセスメント法で出発した日本の不十分な環境アセスメントをよりきちっとしたアセスメントにしていただきたい。さらに本格的で戦略的な政策アセスメントとして、もう少し上位の政策あるいは計画段階で─例えば高速道路にするのか鉄道にするのか、それとも飛行機にするのかとか、そういうことも含めて、交通政策が環境に及ぼす影響を総合的に検討していただきたい。学者の言う戦略的なアセスメントの名に値するアセスメント、これは別の機会になると思いますけれども、そこへ省庁が向かっていかれることを期待いたします。今回は、これはこれで大変結構な方向へ向かってやっておられると思いますので、各省庁、ぜひよろしくお願いいたします。

○鈴木委員長 その他、ご発言はよろしいですか。

○和気委員 私も同様の印象を持っております。どの国とどんな内容の貿易自由化交渉あるいは経済連携協定を締結をするかは我が国あるいは締結国の環境にも影響を与えます。ですから、もう少し幅広い概念で戦略的アセスメントの点検をなさると、多分こうした交渉過程に反映されるだろうと思います。その意味ではすでに広義の戦略的アセスメントが行われていると評価できる面もあるのではないかと思います。こうした事例は他にもあるように思われます。施策策定の段階でそもそも環境影響をどの程度見込まれるのか、どの程度考えられるのかということは既に政府、行政の中で行われていると私は認識しております。
 ですから、今日の点検結果よりは実態はもう少し動いているような印象を持っております。

○鈴木委員長 他によろしいでしょうか。
 それでは、いろいろご議論いただきまして、予定の時間も大幅にオーバーしております。これをもちまして基本計画点検小委員会を終了させていただきます。
 SEAに関しましては、また2年の後にこういう形で点検させていただくことになると思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 事務局の方から何か。

○弥元環境計画課長 次回の予定でございますけれども、次回、第4回の点検小委員会は8月24日金曜日を予定させていただいております。2時から4時、場所はまた同じくここでございます。
 あと残り大きな柱2本でございますけれども、「市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり」と「国際的枠組みやルール形成等の国際的取組の推進」この2本についてご点検いただければと思っております。

○鈴木委員長 では、以上をもちまして本会議を終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。

午後5時16分 閉会