中央環境審議会総合政策部会 環境研究・技術開発推進戦略専門委員会(第17回) 会議録

日時

平成29年1月11日(水)16:56~18:50

場所

環境省 第2・3会議室

議事次第

1.開会

2.議事

(1)環境研究総合推進費の一部業務の独立行政法人環境再生保全機構への移転について(報告)

(2)国立研究開発法人国立環境研究所の第4期中長期目標・計画の策定について(報告)

(3)環境研究・環境技術開発の推進戦略 平成28年度フォローアップ結果について(報告)

(4)その他

3.閉会

配付資料一覧

【資料】

資料1    中央環境審議会総合政策部会環境研究・技術開発推進戦略専門委員会委員名簿

資料2    環境研究総合推進費の一部業務の移管について

資料3    国立研究開発法人国立環境研究所第4期中長期目標・計画について

資料4-1  「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」平成28年度フォローアップ結果(概要)

資料4-2  「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」平成28年度フォローアップ結果

資料5    総合科学技術・イノベーション会議の動向について

【参考資料:机上配付】

参考資料1 環境研究・環境技術開発の推進戦略について(平成27年8月20日中央環境審議会答申)

参考資料2 国立研究開発法人国立環境研究所第4期中長期計画

参考資料3 環境基本計画(平成24年4月27日閣議決定)

出席者

    委員:安井 至委員、岡田光正委員、白石寛明委員、高村典子委員、

       指宿尭嗣委員、甲斐沼美紀子委員、塚原正徳委員、

       森本幸裕委員、山口耕二委員

オブザーバー:一般社団法人国際環境研究協会 安岡研究主監、国立環境研究所 榑林企画部長

   環境省:奥主総合環境政策局長、白石総合環境政策局総務課長

       太田環境研究技術室長、中島環境研究技術室室長補佐

       近藤環境研究技術室室長補佐、高松環境研究技術室主査

       寺西環境研究技術室調整係員

議事

【太田室長】 それでは、定刻前でございますが、委員の先生方、皆さんおそろいでございますので、ただいまより、中央環境審議会総合政策部会第17回環境研究・技術開発推進戦略専門委員会を開会いたします。

 開会に当たりまして、奥主環境省総合環境政策局長より、一言ご挨拶を申し上げます。

【奥主局長】 総合環境政策局長の奥主でございます。専門委員会の開会に当たり、一言ご挨拶申し上げたいと思います。

 まず、委員の先生方におかれましては、年始早々、お忙しい中、本専門委員会にご出席いただき誠にありがとうございます。また、平成27年8月に答申としてまとめていただきました本推進戦略の審議にご尽力いただきましたことは、改めて感謝申し上げます。

 推進戦略の答申から1年以上が経過しましたので、本日は推進戦略の進捗状況の報告等をいたしたいと考えております。本日は推進戦略の答申の中で言及されました環境研究・技術開発の資金制度、国立環境研究所のあり方などを踏まえた対応、答申以降の環境研究・技術開発の進捗状況等について、報告することとしております。平成27年8月に答申をいただいて以降、環境を取り巻く社会の情勢は大きく変化してきております。昨年11月には、我が国も批准したパリ協定が発効し、地球温暖化対策を一層推進する必要があります。環境省としても、CO2の2030年26%削減目標、さらには2050年の80%削減という長期目標の達成に向けた排出削減策を進めるとともに、その中で気候変動への適応策等も進めてまいりたいと考えております。このようなことなどを踏まえ、次期推進戦略に盛り込むべきことも議論していただければと考えております。

 本日は主に報告のみとなりますが、今後も環境研究・技術開発を効果的に推進し、持続可能な社会を築いていくために、引き続きご指導いただければと考えておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。

【太田室長】 本日は前回の本専門委員会から約1年半近く経過しておりますので、改めて委員の皆様及び事務局等の紹介をさせていただきたいと思います。

 まず、資料1に本専門委員会の委員名簿がございますが、これに従いまして、委員の皆様から、ご紹介をさせていただきたいと思います。

 まず、委員長の一般財団法人持続性推進機構理事長の安井委員長でございます。

【安井委員長】 安井でございます。よろしくお願いします。

【太田室長】 続きまして、放送大学教授の岡田委員でございます。

【岡田委員】 岡田でございます。よろしくお願いします。

【太田室長】 続きまして、国立研究開発法人国立環境研究所環境リスク・健康研究センターフェローの白石委員でございます。

【白石委員】 白石でございます。よろしくお願いします。

【太田室長】 同じく、国立環境研究所生物・生態系環境研究センターフェローの高村委員でございます。

【高村委員】 高村でございます。よろしくお願いいたします。

【太田室長】 次は、本日ご欠席でございますが、早稲田大学大学院法務研究科教授の大塚臨時委員。

 それから同じく、本日ご欠席ですが、東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター特任教授の荻本臨時委員。

 続きまして、一般社団法人産業環境管理協会技術顧問の指宿専門委員でございます。

【指宿委員】 指宿です。よろしくお願いします。

【太田室長】 続きまして、公益財団法人地球環境戦略研究機関研究顧問の甲斐沼専門委員でございます。

【甲斐沼委員】 甲斐沼でございます。よろしくお願いいたします。

【太田室長】 本日ご欠席でございますが、筑波大学システム情報系社会工学域教授の谷口専門委員。

 続きまして、一般社団法人日本産業機械工業会環境装置部会幹事会幹事長の塚原専門委員でございます。

【塚原委員】 塚原でございます。よろしくお願いいたします。

【太田室長】 続きまして、本日ご欠席でございますが、北海道大学大学院工学研究院教授の松藤専門委員。

 続きまして、京都学園大学バイオ環境学部特任教授の森本専門委員でございます。

【森本委員】 森本でございます。よろしくお願いします。

【太田室長】 続きまして、三友プラントサービス株式会社営業副本部長の山口専門委員でございます。

【山口委員】 よろしくお願いいたします。

【太田室長】 本日はオブザーバーといたしまして、環境省競争的資金プログラムディレクターである、一般社団法人国際環境研究協会の安岡研究主監にお越しいただいております。

 また、国立環境研究所の榑林企画部長にも、ご出席いただいております。

 続きまして、事務局の環境省の紹介をさせていただきます。

 先ほどご挨拶いたしました総合環境政策局長の奥主でございます。

 続きまして、総合環境政策局総務課長の白石でございます。

 続きまして、環境研究技術室室長補佐の中島でございます。

 同じく、近藤でございます。

 それから、主査の高松でございます。

 私、環境研究技術室長の太田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 議事に入ります前に、本日の配付資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元にお配りした議事次第の順に従いまして、確認させていただきたいと思います。皆様の右側に、本日の資料をご用意させていただいております。

 資料1は、先ほどご説明させていただきましたが、本専門委員会の委員名簿でございます。資料2でございますが、A4横の資料でございます。「環境研究総合推進費の一部業務移管について」でございます。資料3でございますが、「国立研究開発法人国立環境研究所第4期中長期目標・計画について」でございます。資料4-1といたしまして、「『環境研究・環境技術開発の推進戦略について』平成28年度フォローアップ結果(概要)」でございます。資料4-2は冊子でございます。同じくフォローアップ結果でございます。それから資料5として、「総合科学技術・イノベーション会議の動向について」でございます。

 それから左側に参考資料、机上配付の冊子といたしまして、3種類の資料をご用意させていただいております。番号はついてございませんが、上から順番に、平成27年8月に答申いただきました「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」でございます。それから二つ目の冊子でございますが、「国立環境研究所の第4期中長期計画」でございます。この冊子の後半のほうに、中長期目標も入っております。それから最後に、「環境基本計画」でございます。

 お配りいたしました資料は以上でございますけれども、過不足等ございましたら事務局までお申しつけください。よろしいですか。

(なし)

【太田室長】 それでは、これ以降の進行は安井委員長にお願いしたいと思います。安井委員長、よろしくお願いいたします。

【安井委員長】 それでは、よろしくお願いいたします。

 本日でございますけど、先ほど総合環境政策局長の奥主様からのご挨拶にもありましたように、ほぼ報告だけですので、適宜ご質問をいただければと思う次第です。

 繰り返しになりますが、1年以上経過いたしました推進戦略について、これを踏まえた取組の状況の報告というのが趣旨でございます。

 それでは議題の順番で参りたいと思います。

 それでは第1番目、「環境研究総合推進費の一部業務の移転」について、報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【近藤室長補佐】 環境研究推進費の一部業務の移管につきまして、お手元の資料2に基づき、説明させていただきます。

 めくっていただきまして、最初に推進費の概要でございますが、ご存知のとおり、目的につきましては、競争的資金として、環境政策の推進にとって不可欠な科学的知見の集積及び技術開発の促進を行っています。

 資料左側の中段の事業概要ですが、行政ニーズを提示して新規課題の公募を採択する仕組みが最大の特徴となりますが、平成28年度は6件の戦略研究を含めまして148件の研究課題を、予算52.8億円で実施しています。研究課題ごとの予算規模といたしましては、戦略的研究課題で年間一件当たり平均2.3億円程度、一般課題で年間一件当たり平均2,600万円程度の規模となっております。

 事業の進め方につきましては、資料左半分の流れのとおりです。公募、審査から研究開発、研究成果の評価、活用までを一サイクルとして、戦略的研究で期間5年以内、それから環境問題対応型等の一般課題で3年以内としています。

 続きまして、次のページに参りまして、競争的資金に係る方針についてです。

 本専門委員会で審議いただきました「環境研究・環境技術開発の推進戦略について(平成27年8月20日中央環境審議会答申)」において、推進費の改善点として、他府省の研究資金制度の運営状況も参考にしながら、手続の簡素化や予算の弾力的な執行などによる、研究者にとっての利便性の向上や審査・評価等の業務の効率化が図れるような体制を構築されることが望まれるとされています。

 また、研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律、いわゆる研究開発力強化法において、国は公募型研究開発の効率的推進を図るため、その公募型研究開発に係る業務の全部または一部を独立行政法人に移管することが公募型研究開発の効率的推進に資すると認めるときは、可能な限り、これを独立行政法人に移管するものとする、とされています。

 また、可能な限り、数年度にわたり研究開発を行わせる契約を受託者と締結することなどにより、公募型研究開発に係る資金の効率的な使用が図られるよう努めるものとする、とされています。

 以上が、競争的資金に係る主な方針になります。

 次をめくっていただきまして、以上の中央環境審議会の答申、「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」、及び研究開発力強化法を踏まえまして、環境再生保全機構法の一部を改正する法律(機構法)の概要を示したのが、このシートです。

 環境省で実施している競争的資金である推進費の配分業務等を、独立行政法人環境再生保全機構に行わせることで、複数年度にわたる契約の締結を可能にするなど、推進費の効率的、効果的な推進を図ることとして、機構法の一部が改正されました。

 内容につきましては、機構の目的に、研究機関の能力を活用して行う環境の保全に関する研究及び技術開発に係ることを追加しております。

 また、業務の範囲の改正について、大学、国立研究開発法人、その他研究機関の能力を活用して行うとして、いわゆる委託研究として、その効果的な実施を図ることができる環境の保全に関する研究及び技術開発を行うこととしております。

 それから、①に掲げる業務に係る成果の普及、及びその活用を促進することとしております。

 それから、③のところは補助金に該当する項目ですが、環境の保全に関する研究及び技術開発に関し、助成金の交付を行うこととしております。

 それから、3項目に守秘義務規定を新設して、国家公務員の場合と同様に、守秘義務と罰則を設けることとしております。

 以上の内容の改正機構法につきましては、昨年、平成28年4月13日に成立いたしまして、同じく28年10月1日に施行されております。

 最後、4ページ目に、環境再生保全機構への一部業務の移管として、機構へ移管する業務と引き続き環境省が実施する業務について、記載しております。

 まず、右半分の機構に移管する業務について、説明させていただきます。

 (4)新規公募及び審査については、平成28年10月以降の新規課題公募並びに審査業務については、既に機構が公募、審査業務を実施しているところです。

 それから、(5)配分契約業務については、環境再生保全機構に推進費の一部業務を移管した大きなメリットの部分となりますので、少し詳しく説明させていただきます。平成29年度分の契約については、機構が実施することとなっております。

 平成27年度の中環審答申にありました、「手続の簡素化や予算の弾力的な執行等による研究者にとっての利便性の向上を図る」という部分についての具体的な内容といたしましては、研究の進捗に応じた研究費の繰り越し、いわゆる複数年度契約を可能としております。

 それから、年度をまたがる調達等の契約として、平成28年度から推進費におきましても設備等の購入が可能となっておりますが、例えば研究備品をこの1月に発注して、5月に納入し、3月、4月の年度をまたいで調達発注が可能となるというような形にしております。従来ですと、4月を待って発注して、さらに納期がずれるというような形でした。

 それから、概算払いの早期化として、四半期ごとに概算払いを行うことが可能となっております。

 また、そのほかにも移管後の手続、契約等については機構より会計説明会等を適宜開催しまして、各研究課題の担当者向けに詳しく説明することにより、移管後の研究費の適正な執行についても、しっかり対応していく予定にしております。

 それから、一点変更ですが、従来は補助金として資源循環領域における研究事業につきましては平成29年度の新規課題から委託費として実施されて、推進費としての運用の統一を図る予定としております。

 (5)配分契約業務については以上でございますが、(6)研究者支援、研究体制強化については、機構が研究者を支援するプログラムオフィサーを配置するということと、機構の専門性のある職員によって安定かつ継続的な研究者の助言、支援を行い、行政ニーズ、政策検討状況の情報提供などを研究者に行っていく予定にしております。

 以上が、機構が実施することとなりました業務です。

 環境省におきましては、シートの左半分に記載しておりますが、推進費による研究成果の環境政策への一層の貢献を図るべく、推進費の基本方針の検討・策定。(2)戦略研究プロジェクトの形成を含めました行政ニーズなどの策定・提示。(3)環境政策への活用及び制度全体の管理・評価を行うとして、制度の評価であります追跡評価あるいは制度評価、環境政策への研究成果の活用といったところを一層強化していくという予定にしております。

 以上でございます。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの報告に関しまして、何かご質問等があればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。どなたか、ございませんか。

 それでは、私から質問があります。

 右側の6番目のところに、研究費不正及び研究不正の防止とあります。これはなかなか重要な点です。過去にも様々な不正等の実例が、様々な研究費で、大学等では起きていますが、これに関しては何か、どこかから、どういう対策をとったらいいかなどの、ヒアリングなどを行ったのでしょうか。

【近藤室長補佐】 研究費不正及び、ねつ造、改ざんといった研究不正の防止等の対応として、文科省から、特に予防的な措置について、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」が出されています。このガイドラインでは、各研究機関に対して、例えば倫理観点で責任者を設けるとか、研究機関で事前に内部監査をして、研究者に対しても教育指導を行うといったようなことが記載されているのですが、従来、環境省で行っている内容というのは、研究費不正に関わる事案が発生した経緯もあり、その点に関する予防的措置についてはガイドラインを制定して行うということになっています。実際の監査とか、研究費不正も含めて、充実させる必要があるため、ガイドラインに基づく予防的措置として、機構が説明会を実施するなどの対応をしております。同じような説明会は何度も、資金制度によって繰り返し聞くという研究者の方の意見もあるのですが、一通りのことはしっかりやって、特に予防のところは機構で充実して取り組んでいただくという形になると思います。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 ほかに何かございますか。

【指宿委員】 複数年度契約をするということなのですが、例えば中間評価が2年度目にあって、それでもう継続しなくていいなどの結果が出たときに、どういうことになるのでしょうか。それはもう契約を止められるのでしょうか。それとも何か別の措置をされるのでしょうか。

【近藤室長補佐】 その辺は今の仕組みでもそうなっていますので、変更契約という形になってしまいますけれども、対応を引き続き行うということになると思います。

【安井委員長】 多分そうなのでしょうね。

 ほかに何か。

【甲斐沼委員】 さっき、(6)のところでプログラムオフィサーを設置するという記述と、一つ前の業務の範囲の改正というところで、②のところで、①に掲げる業務に係る成果を普及し、その活用を促進することと書いてあるのですが、推進費をいただいていたときに、成果を一般に公表するシンポジウムを開催するのが好ましいとありました。シンポジウムなども、機構で、開催するときの会場を借りること、受付などの手続や、雑多なこともしてくださるのでしょうか。

【近藤室長補佐】 そうですね。個々のシンポジウム等において、研究者が開催する部分については、今までどおり研究者が主催してやるものがありますが、成果報告会や、取りまとめて行うような広報活動などは機構でやっていくことになります。

【安井委員長】 ありがとうございました。

【高村委員】 推進費で経費の執行予定を変更するときなど、今まではすべて、プログラムオフィサーの方にお聞きして、指示を仰いで、環境省に連絡いただいていたものです。これから、配分や契約業務など、予算のことは機構で専門の方がついてくださるのであれば、プログラムオフィサーの方の役割が少し変わるのでしょうか。

【近藤室長補佐】 これまでも単純な経費変更などは、プログラムオフィサーといった研究経歴のある方が見る必要はありませんでしたが、研究内容にリンクして必要な設備を買うとか経費を使うという部分は、事務方だけでは判断がつかないため、プログラムオフィサーに見ていただいておりました。移管後も、事務方だけでは判断がつかない部分はこれまでどおり、プログラムオフィサーに入っていただいて、研究内容を踏まえて、経費についても引き続き見ていただくような形になると思います。

【安井委員長】 よろしいですか。

【安岡研究主監】 基本的には、今までの扱いと同様です。

【安井委員長】 ほかに何かございますか。よろしいですか。

(なし)

【安井委員長】 それでは一応、質問が全部出たということにさせていただきまして、次の議題に参りたいと思っております。

 議題の(2)国環研の第4期の中長期目標・計画の策定について、事務局から説明をお願いします。

【中島室長補佐】 それでは、資料3「国立研究開発法人国立環境研究所第4期中長期目標・計画」について、報告させていただきます。

 1枚おめくりいただきまして、まず国立環境研究所に関する方針として、環境研究・環境技術開発の推進戦略の答申において、環境研究の中核機関としての国立環境研究所の役割として、我が国の環境科学分野において牽引的な役割を担い続ける、政策の具体化、実施の場面においても科学的側面からリーダーシップを発揮する、環境科学の中核的研究機関としての新たな研究テーマの先導、地球温暖化・災害と環境等の社会的な要請の特に強い課題への対応、国立研究開発法人としての環境省との連携強化、研究・技術開発の充実に向けた大学・ほかの国立研究開発法人・地域の環境研究拠点との連携強化、さらには地球規模での課題への貢献に向けた国際的な連携の推進などが挙げられております。

 具体的には、経済・社会的な課題の解決を見据えた統合的な研究の先導、行政施策に資する科学的知見の提供等の推進、大学・地域の環境研究拠点・民間企業等との連携強化、国際的な連携の推進の、4項目が挙げられております。

 こちらを踏まえまして、中長期計画・目標を作成しております。次のページをご覧いただきたいと思います。ここでは、国立環境研究所の目標管理・評価について、説明させていただきます。

 まず、中期目標の設定に当たりましては、左下の①のところですが、国立環境研究開発法人審議会の助言と、総務省の独立行政法人評価制度委員会の意見、また財務大臣への協議を行った上で、平成28年2月29日に環境大臣から中長期目標を指示いたしました。

 国立環境研究所では、中長期目標をもとに、②の中長期計画を作成いたします。こちらは財務大臣との協議を経て、平成28年3月31日に環境大臣認可という流れになっております。

 また、評価につきましては年度ごとに実施されます。中長期目標期間の全体についても、評価が今後行われていくという形になっております。

 続きまして、1枚めくっていただきまして、第4期中長期目標についてご説明させていただきます。

 目標期間として、平成28年4月1日から平成33年3月31日までの5年間ということになっております。ポイントとして、4点を挙げております。

 1点目では、重点的に取り組むべき課題への総合的な研究の推進といたしまして、推進戦略を踏まえた研究プログラムを設定し、環境研究の中核機関として、従来の個別分野を超えた連携により、総合的に研究を推進します。

 2点目として、環境の保全に関する科学的知見の創出等の推進、そして環境省との施策体系との対応を踏まえて、九つの研究分野を設定しております。

 3点目、国内外機関とのネットワーク、橋渡しの拠点としてのハブ機能の強化をいたします。

 4点目、研究成果の積極的な発信と政策貢献・社会貢献として、環境研究の成果について積極的に発信・提供し、環境政策の立案等に貢献、それらの普及・還元を通じて社会貢献を推進しますとしております。

 続いて、またページをおめくりいただきまして、第4期の中長期計画について、ご説明させていただきます。

 計画期間としては、中長期目標と同じ5年間となっております。

 中長期目標を受けた具体化のポイントとして、4点を挙げております。

 1点目については、課題解決型プログラムです。低炭素、資源循環、自然共生、安全確保、統合の各研究領域に対応する、課題解決型プログラムの具体的な課題を記載しております。

 2点目については、災害環境研究プログラムです。国環研の福島支部を拠点として、福島県及び日本原子力開発機構や、ほかの国内外の関係機関等とも連携して、環境回復研究、環境創生研究、災害環境マネジメント研究のプログラムについて、具体的な取組等について、記載しております。

 3点目については、国内外機関とのネットワーク、橋渡しの拠点としてのハブ機能の強化です。中核的研究期間としての研究連携の強化及びプラットフォーム形成による国内外機関との連携について、記載しております。

 4点目については、研究成果の積極的な発信と政策貢献・社会貢献です。環境研究成果の積極的な発信・提供や、関係審議会への参画をはじめ、環境政策の決定等に必要となる科学的な事項の検討への参画、公開シンポジウムや施設の一般公開など、研究成果を直接、国民に発信して、研究成果の政策貢献と活用促進、社会貢献を推進と記載しております。

 1枚めくっていただきまして、ちょっと字が細かい表になりますが、こちらが先ほどの推進戦略と、中長期目標・計画の各研究プログラム、環境省との施策体系と研究分野の関係を図にしたものでございます。こういった形で統合的に研究を進めていくということになっております。

 続きまして、次のページですが、中長期計画を踏まえた国環研の体制図というものでございます。

 中長期計画におきまして、国立環境研究所の研究と密接な関係を有して、組織的・継続的に実施するべきことが必要・有効な業務であって、かつ国環研が国内外で中核的役割を担うべきものを研究事業と位置づけておりまして、主導的に実施することとしております。

 この研究事業のうち、国内外との研究機関等との連携のもとに実施することが適当というものが、研究事業連携部門として位置づけられております。研究事業として、左側の赤枠で囲ったところの下に6事業ございますが、リスク評価科学事業連携オフィスのみ、研究事業連携部門に位置づけられておりませんので、ちょっと浮いた形になっております。リスク評価科学事業連携オフィスと、赤枠で囲みました研究事業連携部門、研究実施部門の下にございます福島支部というのが今回新たに設置された組織ということになります。

 続きまして、研究プログラムの具体的な内容等について、概略を説明させていただきます。

 問題解決型プログラムとして、①低炭素研究プログラムでは、気候変動に柔軟に対応する持続可能なシナリオづくり、気候変動の緩和・適応策研究、技術開発、地球温暖化現象の解明・予測・対策評価に取り組みます。

 ②資源循環研究プログラムにおきましては、3Rを推進する技術・社会システムの構築、廃棄物の適正処理と処理施設の長寿命化・機能向上に資する研究・技術開発、バイオマス等の廃棄物からのエネルギー回収を推進する技術・システムの構築に取り組みます。

 ③自然共生研究プログラムでは、生物多様性の保全と、それに資する研究・技術開発、森・里・川・海のつながりの保全・再生と生態系サービスの持続的な利用に向けた研究・技術開発に取り組みます。

 ④安全確保研究プログラムでは、化学物質等の包括的なリスク評価・管理に係る研究、大気・水・土壌等の環境管理・改善のための対策技術の高度化及び評価・解明に関する研究に取り組みます。

 ⑤統合研究プログラムでは、持続可能な社会の実現に向けたビジョン・理念の提示、価値観・ライフスタイルの変革、環境問題の解決に資する新たな技術シーズの発掘・活用、災害・事故に伴う環境問題への対応に貢献する研究・技術開発に、人文・社会科学領域や、従来の環境分野の枠を超えた研究コミュニティとの連携を進めながら取り組みます。

 続いて、災害研究プログラムについて、説明させていただきます。ページをめくっていただきまして、①環境回復研究プログラムでは、放射性物質に汚染された廃棄物等の適切な保管・中間貯蔵施設及び、これらの減容・再生利用・処分に関する技術システムの構築や、さまざまな環境中における放射性物質の長期的な動態把握と環境影響評価を実施いたします。

 ②環境創生研究プログラムといたしまして、福島県の浜通り地域を対象として実施してきた、まちづくり支援事業を発展させ、環境配慮型の地域復興に資する地域の環境資源、エネルギー資源を活用した環境創生のモデル事業の設計手法を開発して、技術と社会制度を組み合わせた実現シナリオを構築、その実現による環境・社会・経済面での効果を評価いたします。また、社会モニタリングシステムの開発・構築を通じて、その検証を進めて、持続可能な地域社会を目指した体系的な施策を提案いたします。

 ③災害環境マネジメントプログラムといたしましては、災害廃棄物処理システムの統合的マネジメント手法や、体系的な人材育成システムを開発・活用して、化学物質対策や原発災害への対応力に関する検証研究や、地方環境研究機関等の間のモニタリング・ネットワーク構築を進め、災害環境研究の国内・国際ネットワーク拠点の形成を目指しております。

 最後に、プラットフォーム形成による国内外機関との連携について、説明させていただきます。先ほどの国環研体系図にございました研究事業連携部門の各オフィスにおける具体的な連携のご説明ということになると思います。

 ①衛星観測センターによる、衛星観測に関する研究事業として、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)による大気中温室効果ガス濃度等の全球観測データ等を、国内外のほかの研究機関等との連携プラットフォームを活用して、データの利用の拡大に関して、研究公募による国内外の研究者との共同研究を実施します。

 ②エコチル調査コアセンターによる、子どもの健康と研究に関する全国調査(エコチル調査)に関する研究事業として、標準的な調査・分析手法の確立など、エコチル調査に資する環境保健分野の研究において、環境省の取組と協調して国際連携を推進するなど、国内外のほかの研究機関等との連携プラットフォームを早期に拡充・強化して、収集・分析したデータに基づく研究成果の発信を促進します。

 ③気候変動戦略連携オフィスによる気候変動に関する研究事業として、気候変動情報について、総合的な情報プラットフォームを整備した上で、継続的に情報の収集を行い、活用しやすい情報を広く提供します。

 ④災害環境マネジメント戦略推進オフィスによる災害環境マネジメントに関する研究事業として、過去の災害に伴う環境問題と対応に係る経験や教訓の集積と、その体系化や、研究プログラムによる調査研究による新たな知見の蓄積を効率的・効果的に行うための国内外の研究機関による連携プラットフォームを新たに整備します。

 ⑤社会対話・協働推進オフィスによる社会対話に関する事業として、国環研の研究活動のみならず、国内の環境研究全体を対象に、国内外の他の研究機関との連携プラットフォームを新たに整備し、社会における環境問題・環境研究のさまざまなステークホルダーや市民との間での双方向的な対話や協同を推進するということです。

 以上で、説明を終わります。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 それでは、以上の説明につきまして、何かご質問があればお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。

 私から質問いたしますが、中長期目標と中長期計画が出てきていますが、中長期目標の3番に「橋渡し」という、多くの国の研究機関等が採用しているキーワードが出てきますが、省庁によって、ある程度、定義が違うのかなと思います。環境省もしくは国環研の定義は、少なくとも私が知っている産総研の定義とどうも違いそうな気がしますが、その違いはどんなふうになっていますか。

【榑林企画部長】 産総研などで用いられている橋渡しとは、研究成果を民間企業の事業に結びつけるといったことかと思います。一方で、国環研は研究成果をより広い研究成果に、例えば衛星観測などの例であれば、データを広く他の研究者に使っていただいて、より広い、深い研究に役立てるといった方向もございますし、また地方環境研究所との連携、橋渡しをしながら、より広範な環境施策に資する研究の推進に努めるといったような意味での橋渡しというような意味と理解しております。

【甲斐沼委員】 今の部分に関して、私の見解が違っているのかもしれないので、違っていれば訂正していただければと思います。

 最後のところに「連携のプラットフォームを新たに整備し」、という箇所があって、温暖化の影響や対策を、プラットフォームで地方公共団体の方と一緒に研究しながら、これまでの環境研の財産的な、研究のやり方などを地方と一緒に研究しながら伝えるというようなことなのかなと思いながら、聞いていたところです。

【榑林企画部長】 ありがとうございます。

 今、甲斐沼先生がおっしゃったのも、その一つでして、気候変動の戦略推進オフィスの中で、気候変動適応情報プラットフォームというものを昨年8月に開設しております。ここでは気候変動に関する過去の推進費の研究成果や、それぞれの省庁の持っているような成果、甲斐沼先生にいろいろやっていただいたような研究を含め、地方公共団体がそれぞれの地域の適応計画をつくるときの参考となるような基本的な情報や、あとは人材育成などを通じて、橋渡しにつなげていきたいということを考えております。

 以上です。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 ほかに何かございますか。よくご存知で、もう何もないですか。よろしければ、行ってしまいますが、何かございませんか。どうぞ。

【塚原委員】 体制のところで、先ほど話題になりました連携部門についてですが、オフィスというのが四つ、センターというのが二つあるわけですけれども、具体的にどれぐらいの人員なり予算なりを割いて、この部分を実施していこうという計画になっているのかということを、教えていただけますか。

【榑林企画部長】 そういたしましたら、研究事業連携部門の規模、予算等について、お話し申し上げます。

 実は研究事業連携部門、ここに掲げてありますそれぞれのオフィスですが、研究実施部門である、それぞれのセンターの職員が併任しているというのがほとんどです。こういったところで複数のセンターに関わるような事業を実施したり、例えば、具体的に申しますと、衛星観測センターであれば、地球環境研究センター、それから計測の関係がありますので環境計測研究センターの職員が併任しています。エコチル調査の関係であれば、環境リスク・健康研究センターの職員が併任しているといったような状況です。こういったものについては、それぞれのプログラム等を実施したり、それから地方との連携なんかにも役立てるといったようなことになるということでございます。

 予算は全体的に集計してはいませんが、それぞれのプログラムの一部であるということになろうかと思います。

【甲斐沼委員】 私も教えてほしいと思います。

 災害研究プログラムのところで、①回復研究プログラムで、私はこの分野については全く素人ですが、放射性物質に汚染された廃棄物の減容とか再生利用とかというのが書いてあるのですが、再生利用の研究自体も環境研でされて、それは大体どのぐらいの人数で、どのぐらいの規模といいますか、汚染された物質がどのぐらいまで減量されて、どういったことの再生に使われるのか、私はイメージがつかめないので、教えていただければと思います。

【榑林企画部長】 ありがとうございます。

 災害環境研究に関しましては、昨年4月に福島支部を創設いたしまして、現地に赴いている研究者が20名程度、それから筑波の併任も含めますと、88名ほどおります。あと今お話にあったような話につきましては、中間貯蔵・環境安全事業株式会社と研究連携協定を結び、中間貯蔵に持っていくようなものについて、例えば濃度が濃い部分と薄い部分に分離するようなことによって処分量を数千分の1に減らせないだろうかといったような共同研究に着手しております。それ以外にも、福島支部というところはJAEA(日本原子力研究開発機構)と福島県と、3者が同じところにありまして、毎月一回ぐらい、共同の会議を持ち、連携しながら環境回復や対策、それから市民への情報提供といったことをいたしているところです。

【甲斐沼委員】 再生利用というのは、どういったものですか。

【榑林企画部長】 例えば汚染された土壌がありますが、汚染された土壌に熱をかけて処理することによって、濃度が濃い部分と非常に放射能の低い部分に分離して、低い部分については埋立土として利用できないかといったような研究も含めて、させていただいております。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 ほかに何かございましたら。どうぞ。

【高村委員】 すみません。最後の社会対話に関する事業というのが新しいと思うのですが、従来から研究成果の積極的な発信と政策貢献はやってきて、それでは足りないということで、このような新しい事業というのをつくって、この部分を強化していこうという姿勢だと思うんですね。具体的にどのようなことをするのか、研究にどうフィードバックさせていくのかというところを、お教えいただきたいです。

【榑林企画部長】 具体例で申し上げますと、これまでも公開シンポジウムや一般公開で、一般の方々に見ていただいて、アンケートなども取っていましたが、本年度の公開シンポジウムのときにはステークホルダー対話会合として、NPOの方であるとか、評論家の方、それから政策を担うような方々に、公開シンポジウムを見ていただいた上でいただいたご意見、研究としてどういうことが必要とされているのかといったものを伺うような対話や、そういった場からどういった研究が本当に必要とされているのかといったようなものをくみ上げるような話もさせていただいています。

 それから、社会対話・協働推進オフィスでは、フューチャー・アースの関係で、国内版の関与委員会の事務局機能を担って、フューチャー・アースのエンゲージメントの支援を行うなどもしておりまして、より広い形で、単にこういう研究成果が出ました、こうですよとお知らせをするというよりは、市民の間、それからNPOや企業の間からどんなニーズがあるのかなとか、研究に対して、研究テーマを定めるところからいろいろ対話していこうといったことも含めて、検討させていただいているところです。

【安井委員長】 ほかに何かございますか。どうぞ。

【森本委員】 環境省さんの政策課題かどうかというのはよく知らないのですけど、日本の国の政策課題として、いわゆる国土強靭化というのがあると思うのですけど、あれがいわゆる環境、ここで出ているいろんな課題と関連してくるような感じもあって。国土強靭化というのは環境面からちゃんと考えないと、逆に大変なことになりそうなこともありますので、何かそういうプログラムなど、何か対応を考えられているのかなというのを思った次第です。

 果たしてここで、そういう発言をするのがいいのかどうか、よくわからないのですが、とりあえず思いついたところです。

【榑林企画部長】 国環研のほうで具体的にさせていただいている中では、災害環境研究の中で災害環境マネジメント戦略推進オフィスといったところで、やはり災害時の影響や、廃棄物の関係が中心になりますが、いかに適切に処理できるか、震災後などに、より強靭な社会づくりにどういうふうに生かせるかといったような研究も一部させていただいているところです。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 ほかに何かございますか。

 先ほどフューチャー・アースのキーワードが出てきて、最近私も気になっているのですが、日本のフューチャー・アースはどうも、何となく歩みが遅くて、国環研が頑張ってくださると、やれそうかなという気がするのですよね。やっぱり環境を本当に取り扱っているところぐらいしかできなくて、特にフューチャー・アースの場合、co-production、要するにco-planning辺りからやらなきゃいけないのですが、それができる組織はほかにない、日本中になさそうな気がしているのですね。そんな気がするので、全面的にとは思いませんけれども、やっぱり格好ぐらいつけなきゃいけないのがフューチャー・アースの一つなので、身もふたもないですけど、その辺りをぜひ頑張ってくださるとうれしいな、みたいな感じはしますね。

【榑林企画部長】 ありがとうございます。

 東大に場所を借りまして、今、特任フェローが事務局長をしておりますが、今まで地球温暖化の緩和の研究やプログラムの研究をやっていた、私どもの地球環境センターの江守室長なども、かなり積極的に検討を始めておりますので、また日本の歩みが遅いと言われないように、頑張っていきたいと思います。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 ほか、もしよろしければ、次に行かせていただきます。

 それでは、次でございます。議題の3番目でございまして、推進戦略のフォローアップですので、かなり長くかかるかなと思いますが、よろしくお願いします。

【高松主査】 それでは、環境研究・環境技術開発の推進戦略について、平成28年度フォローアップ結果について、説明いたします。本日の説明といたしましては、資料4-1と4-2がございまして、4-2が本文でございます。4-2は少し長いので、4-1の概要について、主に説明いたします。

 表紙からめくっていただいて、推進戦略の平成28年度フォローアップについてです。

 推進戦略では、フォローアップについて、以下のとおり書いてあります。

 今後の5年間においても、環境面、経済面、社会面での情勢の変化が十分に起こり得る。そのため、本戦略の実施状況について、適切にフォローアップを行い、必要があれば本戦略の内容を、5年を待たずに改定するなど、機動的な対応を取るべきである。

 そのため、環境省といたしましては、平成28年度に、答申以降、環境研究・環境技術開発について、どのような進捗が起こったのかということにつきまして、フォローアップを行いました。

 フォローアップ結果の構成についてです。

 まず、「はじめに」がありまして、そこで推進戦略や本フォローアップの背景と本フォローアップの手法について、説明しております。

 次に、「環境研究・環境技術開発を取り巻く状況変化」について、領域ごとの関連する社会動向や政府の戦略・計画等について説明しております。

 次に、「重点課題の進捗状況」です。後で説明をいたしますが、本年度のフォローアップにつきましては、重点課題の全てを網羅しているわけではございません。重点課題の一部について、進捗状況をフォローアップしておりますので、その重点課題ごとの研究・技術開発の進捗状況について、説明しております。

 次に、「今後に向けた課題と対応の方向」です。これにつきましては、重点課題ごとの今後に向けて取り組むべき課題や対応の方向について、説明しております。

 資料4-2では、フォローアップ結果の後ろに重点課題ごとの個票をつけておりまして、それぞれ研究の採択状況や関連する社会動向等について、説明しております。

 続きまして、推進戦略フォローアップの体制についてです。

 推進戦略については、昨年度、この専門委員会で答申をいただきましたので、環境省で、委託事業にて、環境研究・技術開発の推進戦略フォローアップ検討会を、昨年9月と11月に開催しております。座長については、本日出席いただいております岡田先生に務めていただきました。

 推進戦略のフォローアップ結果につきましては、昨年の年末、12月27日に公表しまして、今後の課題等を公表して、戦略達成を図ることとしております。あわせて、次期推進戦略へ、今後の課題等を反映させていきたいと考えております。

 続きまして、今年度のフォローアップの手法についてです。

 今年度のフォローアップ対象とした重点課題ごとに、推進戦略の進捗状況等や社会動向等をまとめ、進捗状況の評価と社会動向等に照らした推進戦略の改定の必要性を検討し、今後に向けた課題等として取りまとめております。

 今年度、フォローアップの対象とした重点課題としては、右側にある九つの重点課題でございます。統合領域の四つのうち三つ、低炭素領域の全て、あとは自然共生の二つでございます。

 今後に向けた課題等については、次に述べますような形で定義をいたしました。

 まず、左側ですが、推進戦略に書かれたことのうち、今まで、例えば環境省の行政ニーズの課題採択状況や、その他の研究開発等の課題の採択状況を踏まえて、推進戦略から見て、今までの取組が足りない部分については現行の推進戦略の「進捗状況の評価」として記載しております。

 あわせて、先ほど局長の挨拶にもありましたが、パリ協定など、環境を取り巻く状況は最近かなり大きく動いておりますので、社会動向に照らして推進戦略では記載されていないもの、推進戦略をさらに改定する必要性があるものにつきましては、社会動向等と照らした推進戦略の「改定の必要性」として記載しております。これらを合わせて「今後に向けた課題等」として記載しております。

 次のページからは、フォローアップ結果の概観でございます。

 重点課題ごとに、重点課題の進捗状況と今後に向けた課題等の概要を示しております。

 重点課題1を例に説明いたします。重点課題1は、「持続可能な社会の実現に向けたビジョン・理念の提示」でございます。資料4-2の個票-2のページからのものでございます。

 まず、重点課題の進捗状況につきましては、行政ニーズで二酸化炭素回収・貯留、導入に関する経済的・社会的・制度的側面の研究や循環型社会形成推進政策評価モデルの構築等の研究が採択されております。あわせて、気候変動に係る統合的戦略研究や東アジアの持続可能な社会の実現に向けた制度研究等が採択されております。

 これを受けて、「今後に向けた課題等」につきましては、まず、これは資料4-2の個票-4のページをご覧いただければと思いますが、2015年9月に採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」への知的貢献に資する研究がまだ進んでいないので、これは今後進めていくべきというふうに記載しております。また、あわせて個票-5のページにある、持続可能な社会実現のための自然模倣による社会システムの開発に関する研究というものは行政ニーズとして提示をいたしましたが、採択はされませんでしたので、これについても、引き続き今後の課題として取組を進めてまいりたいと考えております。このような形で、社会動向を踏まえた対応と、あとは行政ニーズ等の採択で足りなかった部分について、今後に向けた課題として列記しております。

 これ以降は、「今後に向けた課題等」につきまして説明いたします。

 まず、次に重点課題2の「持続可能な社会の実現に向けた価値観・ライフスタイルの変革」につきましては、持続可能な開発のための教育や地域づくりに資する研究が推進されており、引き続き着実な推進が期待されるということで、これについては、推進計画の本文で書いてあるものについて、取組が足りないとして記載しております。

 続きまして、重点課題3の「環境問題の解決に資する新たな技術シーズの発掘・活用」についてです。

 これについては、非定常時の災害対応・防災や地方創生における環境配慮等にも貢献する研究が、本文に記載されているが、現状で研究等が進んでいないものです。

 また、行政ニーズで採択されなかった課題としましては、2ぽつ目の、リスク評価手法の比較研究を踏まえた途上国での適応支援のためのリスク移転メカニズムに関わる研究というものでございます。

 あわせて、社会動向を踏まえた今後の改定の必要性につきましては、3ぽつ目と4ぽつ目でございまして、Internet of Things(loT)や人工知能(AI)等の新たな科学技術の進展に伴い、新たな科学技術シーズを取り込み、環境問題の解決に向けた応用を目指した研究が期待されております。あわせて、技術シーズの発掘・活用という視点で、途上国の条件で利用可能な技術等の発掘等が期待されております。

 続きまして、重点課題5について説明いたします。

 重点課題5、「低炭素で気候変動に柔軟に対応する持続可能なシナリオづくり」については、今後に向けた課題としては、まず本文に記載されているが現状で研究等が進んでいないものとして、低炭素社会の実現に向けた行動変容を促す合意形成・コミュニケーション、地域の活力を把握する研究等です。

 行政ニーズで採択されなかったものといたしましては、2ぽつ目の、地方自治体における気候変動適応策の推進体制を構築する手法開発や、低炭素社会の構築と他の政策課題との同時解決を目指した経済的手法に関する総合的研究です。

 あわせて、こちらで温暖化対策計画に基づいてさらに推進戦略自体を改定する必要があるのではないかと考えているのが3ぽつ目でございまして、低炭素型の都市・地域づくりについて、総合的かつ計画的に取り組むためのシナリオづくりに関する研究についてです。

 続きまして、重点課題6についてです。

 重点課題6、「気候変動の緩和策に係る研究・技術開発」については、2ぽつ目では、エネルギー環境イノベーション戦略を踏まえ、我が国の温室効果ガスの抜本的な排出削減のための明確な課題解決のため、中長期を見据えた非連続型の低炭素化技術の研究開発が期待されております。

 続きまして重点課題7、「気候変動への適応策に係る研究・技術開発」についてです。

 これについても、気候変動の影響への適用計画を踏まえたものが、今後に向けた課題等の2ぽつ目でございまして、これについては、これに例示された幅広い分野での適応技術の研究開発や、気候変動影響評価において、重大性、緊急性、確信度が認められた分野における対応についての幅広い研究が期待されております。

 また、第5期科学技術基本計画で言及されておりますビックデータ等については、次の3ぽつ目でございまして、地球環境情報をビッグデータとして捉え、地球環境情報プラットフォームの構築や国際共同研究を通じた、国内外のステークホルダーとの連携・協働研究の推進も期待されております。

 重点課題8、「地球温暖化現象の解明・予測・評価」については、まず、行政ニーズで採択されなかったものとしては、2ぽつ目の、気候変動対策の2020年以降の新たな枠組みの詳細ルール交渉に資する法・政策学的見地を踏まえた研究です。

 また、3ぽつ目、温暖化対策計画を踏まえ、気候変動に脆弱な地域等での地球温暖化影響モニタリング、観測データと社会経済データの統合に資する研究が期待されております。

 続きまして、最後のページの自然共生領域の重点課題12と13について説明いたします。

 重点課題12の「生物多様性の保全とそれに資する科学的知見の充実に向けた研究・技術開発」についてです。

 まず、1ぽつ目で、行政ニーズで採択されなかったものについて言及しております。保護地域における気候変動適応策の計画実施に向けた影響評価及び合意形成手法の開発に係る研究ですとか、鳥獣の効率的・効果的な管理に向けた統合システムの開発ですとか、鰭脚類の管理計画に資する個体群管理手法及び保護管理システムの研究開発ですとか、捕獲した鳥獣の適正かつ効率的な処理・活用システムの開発に関する研究が期待されております。

 また、あわせて本文で言及されておりながら、なかなか対応が認められなかった部分については、2ぽつ目と3ぽつ目で、気候変動の緩和策に関する各種土地利用とのバランスをとりながら、適切な保護区の配置など、広域の保全戦略に関する研究が期待されております。また、生物多様性の四つの危機について、総合的に取り組む研究が期待されております。それとともに、重点課題13にある森・里・川・海のつながりの保全・再生等へ橋渡しされることが期待されております。

 最後の重点課題13、「森・里・川・海のつながりの保全・再生と生態系サービスの持続的な利用に向けた研究・技術開発」についてです。

 まず、生物多様性国家戦略等を踏まえました改定の必要性といたしまして、1ぽつ目の、生物多様性、生態系サービスを流域圏全体として捉えた統合的な地域研究が期待されております。

 2ぽつ目は、行政ニーズで採択されなかったものとして、地域活性化に向けた汽水湖及びその周辺地域における自然環境の保全・再生手法の開発に関する研究が言及されております。また、本文で言及されておりながらまだ足りないというところでは、3ぽつ目でございまして、温暖化緩和策に関連したREDD+、ブルーカーボンの研究が期待されております。

 こちらからは、長くなりましたが、説明は以上となります。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 何か、岡田委員長、補足はございますか。

【岡田委員】 フォローアップにつきましては、なかなか十分なものができたとは、私は必ずしもまだ思っていないところがありまして、毎年のことでございますが、最初にお詫びを申し上げます。

 今回のフォローアップの特色は、補足させていただきますと、この概観を見ていただければわかりますように、「行政ニーズ」という主語が最初に結構出てきて、ちょっとやり過ぎたかなという気がしないでもありません。個票の中にも「行政ニーズ」というのが明確にうたってあります。そうなると、「行政ニーズ」に乗っかっているものがあれば、重点課題の進捗状況でいかにも進んだように見えるのですが、「行政ニーズ」に乗らなかったものをちゃんとやっているかどうかという全体的なところは、この概観の表を見ると、まだまだ全体像が見えにくいという反省をもっております。

 それと、この、つくるときに、まず重点課題があると、それについて重点課題の内容が10あるとすれば、10やったのか5しかやっていないのかというのは、もう少し、今申し上げたように、きちんとすべきであると同時に、それに社会動向というのが、この推進戦略をつくられた時の社会動向があります。ですから、重点課題に入っていてやらなかったものと、社会動向に応じてやるべきだったものが、今後に向けた課題に本来は論理的になるはずなんですが、できる限りそういうふうになるように努力したつもりですが、今見ると必ずしもそうでないかなというところは残っております。

 今回は第1回目、平成27年につくって28年のフォローアップですから、重点課題で10乗っけて10やっている必要はないと言えば、もちろんないかもしれませんが、その辺の不足しているところが今後の課題に十分に載っているかどうかというのをもう少し精査して、次の推進戦略の、例えば推進費の審査なんかに生かせるようになると、これをやる意味がもっと出てくるのではないかという反省の弁を先に申し上げさせていただきます。すみません。

【安井委員長】 大変難しい仕事ですし、とにかく環境省の範囲を超えて、とにかく日本中全部見ているという仕事ですから、なかなかそう簡単ではないのはわかり切っていて、ということだと思います。

 何か、個別の点でも何でも結構でございますけれども。どうぞ。

【岡田委員】 いま一つ言い忘れたんで。ということで、今始まったばかりでございますから、これからやっていきますので、ぜひどんなクレームでも委員長として喜んでお受けしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【安井委員長】 では、特にクレームを歓迎いたしますけれど、何かご意見はございますでしょうか。

【白石委員】 重点課題を幾つか選ばれてフォローアップされているのですが、選んだ順番づけというのですかね、を教えていただければありがたいです。

 実は、私が今多分関係しているだろうと思う重点課題14みたいなのものは、環境基本計画の進捗状況の点検が、これと同時期にやられているんですね。それとあわせなかった理由みたいなものがあれば、教えていただきたいなと思っています。

【寺西調整係員】 お答えいたします。

 まず初めに、環境基本計画の点検とは少し違う話になりますが、まず、この重点課題をなぜ選んだか、この組み合わせにしたかということについてです。以前から、フォローアップに関しては、毎年、全部をフォローアップして、毎年そんなに進んでいるのかというような議論はもともとからありました。ですので、隔年にしてはどうかというようなお話がありまして、半分の重点課題をフォローアップして、次年度にもう半分をフォローアップしていく。そしてもう次の年にもまた初めにやった半分をフォローアップするのであれば、2年ごとにフォローアップをしているという形になります。これは環境基本計画の隔年で点検をしているものと、形は同じなのかなというようになっています。

 そして、今回統合領域の1、2、3、そして低炭素領域、自然共生領域を選んだというところにどのような意図があったのかというところですが、やはり低炭素領域と統合領域の1、2、3というのは、持続可能なビジョンなどといった長期的なものに関わってくるものが多くあり、そうすると、やはり低炭素のものと合わせてフォローアップしたほうが、効率がいいのではないかというところがありました。

 あとは、全体的な重点課題の数でバランスをとったというところもございます。

 また、統合領域の4に関しては、災害研究で、特に災害廃棄物などの課題もございますので、資源循環領域のものとタイミングを同じにしてフォローアップしたほうが、より効率的にできるのではないかというようなことから、この組合せになっております。

 そして、環境基本計画に関しましては、確かに先ほどから言及されたように、隔年で点検をしているところでして、手元に今年度がどの分野で来年度がどの分野でという情報がないのですが、環境基本計画の分野と完全に合わせてやると、今年度と来年度のフォローアップの重点課題数のバランスが悪かったというような事情がありまして、必ずしも完全に同じ年にフォローアップをしていないというところはございます。

 この後の議題の「その他」で少し言及することにはなるのですが、環境基本計画の点検というものと、この推進戦略のフォローアップというものとが、現行で別々に動いているところがあり、そこをもう少し連携していくべきであるというところが、前回の推進戦略でも文章として書かれています。ですので、その検討も今後はしていかなければいけないのかなというところです。今回のフォローアップが隔年となっていて、このような領域の分け方になったという経緯はそのようなところでございます。

【安井委員長】 よろしいですか。いろいろ事情があったということでございますが。

 それでは、ほかに何かございませんか。かなりじっくり検討すれば幾らでも出てくるんでしょうけれど。はい、どうぞ。

【安岡研究主監】 この推進戦略の構造は、一応皆さんにご理解いただいていたほうがいいと思います。この委員会自身は中央環境審議会のもとですので、オールジャパンで議論をしていただいています。それを5年に1回出していただいています。ですから、重点課題というのは、あくまでも日本としてこういうことをやるべしというのを、5年に1回定めていただいている。

 その中で、先ほど来言葉が出ています「行政ニーズ」というのは、これは環境省がその中でこういうことをやってほしいというのを、政策を実際に実行しています課室が定めています。これは毎年変わります。ですから、やってほしいというレベルが一つ下がってくるわけです。

 一方で、研究のこのシステム自身は公募になっていますから、研究者はこういうことをやりたいというのを、逆側から出してきます。当然、それはミスマッチが起きるわけです。重点課題の中と、重点課題に挙げられたテーマと「行政ニーズ」が挙げているテーマも違うところがある。さらに、研究者がやりたいと思って提案してきている課題もミスマッチがある。ミスマッチという言い方が正しいかどうかわかりませんけれど、合わない、合致しない部分が出てくる。それを毎年見ていただくのが、フォローアップ委員会という構造になります。

 岡田委員が、先ほど弁解というふうに言葉を使われましたけれど、「行政ニーズ」で取り上げられているものと、取り上げられていないというのは、そこのミスマッチもあるということですから、私はそこの部分をきちっと見ていただくのはいいなというふうに思っています。ただ、それを最終的に、この重点課題がきちっとオールジャパンでやられているかどうか、ほかの省庁も含めてですね。ここの部分は見ていくということが重要になるわけで、そこの部分は非常に難しい作業と。実際にやってこられたと思いますけれど、なかなか難しい作業になるというふうに思っています。これは全体の構造の話です。

 以上です。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 確かにそのとおりなのでなかなか難しいのは、これもずっと永遠に完成しないかもしれませんよね。作業量からいったって、何からやったって、それはなかなか難しい話なので。という非常に多大なるチャレンジをやっているという感じがずっとありますよね。

【安岡研究主監】 ほかの省庁のファンディングも、基本的にこういうのをやってほしいというのと研究者がやりたいというのに、ミスマッチはやっぱり起きるんですね、どうしても。それをどうやって埋めていくかというところは、一つの課題だと思います。

【安井委員長】 研究というのは、勝手なことができるのが研究だと、研究者は思っていますからね。だから、どうしたってミスマッチが起きなかったらおかしいので、その辺りはしようがないんでしょうね。特に文科系はもう完全にそうですものね。

 さて、何かほかにございますか。

(なし)

【安井委員長】 それでは、よろしければ次に行きたいと思います。議題(4)は「その他」なのですね。だけど、「その他」ですが、ここが結構重要なことになるかと思います。先にお考えをいただけるのであれば、この推進戦略、平成27年8月20日の答申、今世の中のいろんな流れがちょっと加速ぎみでございますが、それを見たときに、場合によったら、先ほど事務局からもいろいろとご発言がありましたけど、どこか変えるところが必要なんじゃないかみたいなご議論がもしあれば、このご説明の後にご意見をいただくような感じになるかと思いますので、「その他」というと、普通はすっと終わってしまうのですけど、この「その他」は必ずしもそうではないということです。

 それでは、ご説明をいただきたいと思います。

【高松主査】 それでは、先ほどお話がありましたが、「その他」として推進戦略の答申以降に、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議関係で幾つか動きがございましたので、議論の前に、その前提として幾つか主なものを説明いたします。

 資料5をご覧ください。

 まず、「第5期科学技術基本計画」についてです。これについては、昨年1月22日に閣議決定されたものです。

 少しかいつまんで説明をいたしますと、科学技術基本計画自体は5カ年計画でございまして、平成23年8月に閣議決定した第4期計画にかわるものとして、平成28年1月22日に閣議決定されたものです。

 環境分野については、「経済・社会的課題への対応」において、エネルギーの安定確保とエネルギー利用の効率化、資源の安定的な確保と循環的な利用、食品安全、生活環境、労働衛生等の確保、地球規模の気候変動への対応、生物多様性への対応等を、「持続的な成長と地域社会の自律的な発展」として環境を考慮した資源の有効利用・資源循環を取り上げております。

 また、科学技術基本計画の推進に当たっての重要事項として、主に「科学技術イノベーションの基盤的な力の強化」として資金改革の強化(競争的資金等の使い勝手の改善等)を、「科学技術イノベーションの推進機能の強化」として国立研究開発法人改革とともに取り上げております。

 続きまして、「科学技術イノベーション総合戦略2016」についてです。これは昨年の5月24日閣議決定されたものです。これは、第5期科学技術基本計画の年次計画です。

 安倍政権においても、科学技術イノベーションは成長戦略の重要な柱と位置づけられておりますので、これは年度計画として総合戦略が策定されているものです。

 第5期科学技術基本計画で示された、2016年度から2020年度における科学技術イノベーション政策の方向性の下、2016年度から2017年度において重きを置くべき取組を示しております。この戦略において環境省に関係するものは、これから述べるものです。

 まず、持続的な成長と地域社会の自律的な発展の中の、エネルギー、資源、食料の安定的な確保のうち、クリーンなエネルギー供給の安定化と低コスト化ですとか、水素社会の実現に向けた新規技術や蓄電池の活用等によるエネルギー利用の安定化、革新的な材料・デバイス等の幅広い分野への適用、エネルギー・環境イノベーション戦略の推進というものでございます。エネルギー・環境イノベーション戦略につきましては、次で申し述べます。

 あとは、地球規模課題への対応と世界の発展への貢献の中の、地球環境情報プラットフォームの構築というものです。

 続きまして、「エネルギー・環境イノベーション戦略」についてです。これは、平成28年4月19日、総合科学技術・イノベーション会議決定です。

 これについては、先ほど申し上げた二つ閣議決定が5カ年計画の年次計画であるのに対し、2050年を目標にした中長期的な目標でございます。

 これを踏まえて、研究開発を集中的に強化すべき有望な革新技術分野を特定して、そのインパクトや実用化、普及のための開発課題を整理するとの総理指示に基づいて取りまとめられたものです。

 2050年ごろに、世界全体で温室効果ガスの抜本的な排出削減を実現するというイノベーション創出をターゲットとしております。有望な革新技術分野を特定しておりまして、それが、「エネルギーシステム統合技術」ですとか、「省エネルギー分野」、「蓄エネルギー分野」、「創エネルギー分野」、「二酸化炭素固定化・有効利用」に関する技術が特定されております。

 それぞれの決定等につきまして、概要等につきましては、資料5の別添1から3につけておりますので、ご覧ください。

 こちらからは以上でございます。

【安井委員長】 ということでございまして、世の中は変わっていって、特に総合科学技術・イノベーション会議のやっていることが結構進んでいるということでございます。この中身はご存知かもしれませんが、こういったことに対して、最初ご質問いただいてもよろしいと思いますけれども、何か我々として、どこかでやはり少し早目の推進戦略の改定バージョンというものをつくる必要があるかどうかみたいなことを含めて、ご意見いただければと思います。何かございますか。じっくりご覧いただかないと、ご意見も出ないかもしれないですが。

 どうぞ。

【白石委員】 質問でいいですか。簡単なところで。「科学技術イノベーション総合戦略2016」3章のところに、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化というのがあって、そのところで「オープンサイエンスの推進」がありますが、これは今の推進費ではどうなっているのでしょうか。

【近藤室長補佐】 総合戦略のオープンサイエンスの推進を受けて、平成29年度から推進費についてプラットフォームをつくっていこうということで、まず来年度、これまで推進費に統合されて以降の研究成果を棚卸調査して、それをできるだけ機械判別可能なデータで、メタデータといいますが、それをつくってカタログサイト、内閣官房に政府全体のサイトがありますが、推進費の部分は、環境省で取っかかりをつくってまとめていこうと考えています。

 ただ、研究の領域により、どういうデータがどういう形でとられたかというのをオープンデータにするときに、研究者間ではそのデータが使えるようなところはありますが、研究者仲間から外れた人がなかなか使いづらいといったところがあります。領域によってどういうふうにすればそれが使えるようになるかというのは定義が違いますので、その辺は2、3年かかると思いますが、今後どういう形にすればオープンデータ、研究者でとったデータがほかの仲間でもどういう条件で、どういうような、限定をすれば使えるのかといったところを整理していこうというのを、まさに来年以降にやっていこうというところでございます。

【安井委員長】 いかがですか。何か。

 オープンデータということなのかどうかわかりませんが、文科省のDIASという試みがあって、地球環境データをどんどん入れているものがありますが、現実に今起きていることは、やっぱり使える人しか使えない。ただ、企業に内容を全部公開することによって、できたら企業に無料でデータをやるから、何かつくってよというのがうまくいくかどうかというのがあるんですけど、なかなかそこもうまくいかない。

 一方、世の中、WatsonなどというIBMのマシンは、とにかくワーッとビッグデータを文字の格好でもってそれで人工知能が動くわけですよね。だから、本当にどういうやり方がいいのかというのが、今変革期でよくわからないですよね。

 その辺りを方針として本当に、具体的な話でこういうものに書けるのか書けないのか、どうもまだ怪しいような気もするし。DIASはやっと、何となくやっと形になってきました。あれはちょっと先行し過ぎて、何でもいいからデータをためておこう、ためておけばいいだろうと思って始めたものが、やっと使い道が出てくるかなぐらいなんで、今なんかやると同じ轍を踏みそうな気もしないと。そんな感じですかね。

 ちょっと白石先生の発言に、答えにはなっていないと思いますけれど、そんな感じかと思いますね。

【白石委員】 あるいはデータをため込んでおいて。

【安井委員長】 そうなんです。データをため込んでおけば、誰かが使うだろうと思ってDIASは最初に始まって、やっと何となく使えるかな、みたいになるまで何年かかかっているんだろうね。

【安岡研究主監】 15年。

【安井委員長】 15年かかっているんですね。

【安岡研究主監】 ためるという話とオープンにするという話は、全く違う種類の話で、一緒に進もうとしています。文部科学省でもオープンサイエンスというか、オープンデータのために何をしたらいいかという議論が、やっぱりされています。非常に難しいのは、プラットフォームをつくるということと、そこの中身のデータをどこまでオープンにできるかということです。DIASも基本的にはたまってはいるんですけれども、非常に制限つきのデータが多くて、必ずしもオープンになっていません。それがゆえに使いにくいという声が出てしまう。特に民間の方がですね。

 ですから、そういう話が一方であり、推進費みたいな研究の成果をどうやってデータ化するかという非常に大きな問題もあって、これはもう先ほど環境省からご説明がありましたように、多分これからの議論になるだろうと。

 大分前に、文部科学省が研究者にアンケートをとって、持っているデータをオープンにする気があるかどうかといったら、あるデータポリシーのもとで幾らでもオープンにしますと、ただし、あるフォーマットにそろえてデータを自分で整理して出してくださいといったら、それは勘弁してくださいと回答がありました。こういうことになるので、それを一つ解決する手段として、SNSが挙げられています。

 NASAもデータを全部構造化して出したというEOSDISというのが昔ありまして、ところがこれは重くなっちゃってだめで、それをSNSにして、ある種の人たちが自分たちの上で自由なフォーマットで、その人のフォーマットで出すようにする。それはお互いに、契約のもとに使える人は使えるようにするというようなSNSのシステムにあるわけですけれど、そういうものにしたほうがもっと広がるのではないかという議論もあって、今後、重いDIASのような仕組みにするか、本当に自由にみんなが載せておいて、誰でも見られるようにするかと、そういう議論を多分推進費のデータも今後どうしていったらいいかというので、検討していかなければいけないだろうなと。

 ただ、決定的な解は、私はなかなか見つからないだろうなという気はしています。ちょっと余計なことでしたが。

【安井委員長】 ほかに何かございませんでしょうか。

 「エネルギー・環境イノベーション戦略」は、これでもって環境省は何か動くのかな。来年度は何か動くのでしたっけ。

【寺西調整係員】 環境省の対応ですが、この「エネルギー・環境イノベーション戦略」について、主にこの分野に該当する施策をやっているのは地球温暖化対策課というところでして、あまり詳細までここでお答えることはできないのですが、内閣府で中心となってこの戦略を取りまとめまして、この戦略の推進として、今年度から推進ワーキングというものを立てて、各省、環境省、経産省、文科省などで、どのような施策があるかというところを抽出して、推進のワーキングで議論して進めていこうという動きは、今年度から進められているところです。

【安井委員長】 文科と経産はこれで何かをやるみたいですね。どういう形になるのか。

 あとは、何かございませんでしょうか。質問でも結構でございますし、ただお答えは出せるかどうかちょっとわかりませんが。

【指宿委員】 前の資料にもよく出たのは、国内外との協調というのがかなり頻繁に用語として出てきます。国内については地方研とかそういう話があるのですが、海外とどういうふうに協調するのかというのは、資料を見てもなかなか見当たらないなというふうに感じます。何か資料にないのか、あるいはなかなかアイデアがないのかという気がします。

【安井委員長】 何かお答えがあればあれですけど、そうでなければ、でもやっぱり国際的な枠組みはないわけではないのが多いですよね。例えば整備した要請だって、あれはどう動いているか知らないけど、IPBESというのがないわけじゃないし、もちろんIPCCがあるし。

【太田室長】 そうですね。国際的な対応につきましては、推進戦略の中でも27ページに、研究技術開発成果の社会実装や国際転換に資する施策の推進というところにも記述させていただいているところでございまして、IPCCへの貢献ですとかIPBESでの貢献、その他水銀のモニタリングほかさまざまな環境分野で国際的な連携・協調・貢献をさせていただいているところでございますし、国立環境研究所でもその中核的な役割を担っているところです。

【指宿委員】 そういうものが技術開発とか、そういうところにどういうふうに反映されていくというか、そこがちょっと見えないのですね。そこを何か、うまくつなげられないかなと。

【安井委員長】 だから、技術開発ってイノベーション戦略になるんですけど、このイノベーションというものと、そういうデータの共有って、多分レベルが違うんじゃない。なかなかイノベーションをどこかと一緒にやるというのは、共同研究はあり得るかもれないけど、協力研究というレベルはないのかもしれないです。

【指宿委員】 競争研究。

【安井委員長】 競争研究になっちゃうんじゃないのかな。そういう気がしますけどね。

 あと何かございませんでしょうか。

 今日結論を出すというわけじゃありませんけども、何か、例えばマイナーチェンジをこれに、先ほど申し上げた27年8月20日バージョンのこの答申に、マイナーチェンジをやるべきという理由がかなりあるとお考えであれば、ご発言をいただいたほうがいいということですね。

 多分、イノベーション絡みの話がかなり強調された格好でこのように政府から出ているわけで、それに対して、このままでいけるのかというのが、一つの心配ごとなんですね。だから、イノベーション絡みの研究というのは、しかし、本当に環境省は自分のテリトリーなのかどうかもよくわからない部分があって、いや、例えば環境分析技術なんか明らかにテリトリーなんだけど、一体どこからどこまでがテリトリーなのかもよくわからない状況で、それをどう書く、絡むという難しい問題もあって、必ずすぐやらなきゃいけないという結論でもないかなと思います。

 どうですかね、皆さんにちょっとご意見を一言ずつぐらいは伺いたいと思います。お一人で1分ぐらいずつしゃべっていただけるとうれしいなみたいな感じで。特になしというのもありで、岡田先生からいってみますか。イノベーション絡みの話がどっと日本中出ているわけですけど、それに対して、この推進戦略を変えるべきか、変えざるべきか。

【岡田委員】 まだわからないですね。

【安井委員長】 わからない。

【岡田委員】 やめておこう。

【安井委員長】 やめておきますか。どうぞ。

【白石委員】 どうしましょうかね。この推進戦略自体が科学技術基本計画と環境基本計画を受けてみたいな形で、初めのところに書いてあるのですが、この科学技術基本計画は、確かにこの資料5の2ページ目の冒頭にこれは環境絡みのことでと書いてあります。オールジャパンだとそうなのかもしれないけど、環境省の試験研究費で、推進費でやるようなものがここにどれだけ含まれているのかなというのが、少し弱いなという気がして、特に、大きく変えるような必要はあんまりないのかなというように思います。先ほど言ったオープンサイエンスとかそういった潮流を受けては、何か書き加えることがあるのかもしれないなという、単に印象ですけれども。

 イノベーション絡みだと、また別の推進費を立てて、イノベーション絡みのこの環境省はそちらの技術のほうに打って出るみたいなことがあればあるかもしれませんけれど、このパイの中でここまで範囲を広げるのは難しいかなという印象です。

【高村委員】 難しいのであまり言えませんが、具体的な環境の保全・管理は、環境省だけじゃなくて、省庁連携で実施する必要があると思います。環境省が農水とか、経産とかと協力して、ここに挑んでいく姿勢みたいなものは強くもっていただくことが大切だと思います。環境を守るというのは、結局は産業界のほうが、生産部門のところがかなり協力してくださらないと、なかなか進まないようなところもありますので、そういう姿勢は大事かなというふうには思います。

【指宿委員】 先ほどちょっと質問をしたようなところで、環境省の研究というのがデータベースとか、そういうところに多くて、イノベーションのほうは技術開発というようなところが重点に書いてある。そこを、どういうふうにうまくつなげるかというのが、今日資料を見ていて思うところです。

 特に、例えばこの推進戦略で13、14ページですかね、重点課題の3というのが「環境問題の解決に資する新たな技術シーズの発掘・活用」なんですよね。ここに何かをもう少し書き込んでいくというのがあるのではというふうに感じるのですが。

【安井委員長】 これ、そういうふうにも読めますが、14ページの「発掘・活用」という言葉は結構、実を言うと意味深なんですね。要するに、技術シーズというものをつくるのが本当にあるのか、環境省のテリトリーの中であるのは、多分ほかの省庁にないところはそうだけど、それじゃ、基礎研究から全部やるのかという話を言われたときに、それはないわけで、だからこの発掘というのは、かなり意味深なんですよね。だから、推進費にこういう技術をゼロから開発しますという申請等があると、私は大体否定的にバツをつけてしまいます。そういう辺りが本当はどうなのかなという話なんですよね。

 一番恐れているのは、文科省の例えば科研費とかそういう予算がとれなくなったから、環境省の研究費に出そうなどという研究者が増えるのを恐れているわけですよ。

ちょっと回します。いかがですか。

【甲斐沼委員】 非常に難しい問題ですが、ただ、ここに、ここにというのは技術開発の推進戦略のほうには割と基本的なことが全部書かれていて、今回、例えば私の関係するところだと、「エネルギー・環境イノベーション戦略」のところで、今もいろんな総合システムが要ると。ただこういう、ここで環境省の推進戦略のほう、例えば低炭素領域で、低炭素社会を実現しなければいけないという話がメーンでいろんな研究を出してほしいという中では、もちろんこういうことが全部あっての低炭素社会になってくるので、この推進費のほうでどういったアウトプットを、こういうところで使っていただけるようなアウトプットを出していくかということのほうが、今は重要じゃないかなと。

 こちらのほうを特に変えるということはなく、この中で大体網羅されているような感じがしますので、むしろ、もっと積極的に成果が反映できるようなものをピックアップしてやっていただくのが、重要かなというふうに考えております。

 例えばこの「エネルギー・環境イノベーション戦略」の最後のところ、国際共同研究開発の推進とか、やっぱりこの研究成果がG7とかG20とかICEF等々でも活用していただけるような成果は、この目標というか、こういう研究を推進しますというところには、そういった必要な研究が書かれているのではないかなというふうに思います。低炭素領域に限ってなんですけれども、言えるのかなというふうに感じています。

【塚原委員】 私は、主に資源循環領域というところが担当なので、この領域で見てみますと、今の推進戦略には重点課題が三つあります。キーワードでいうと3Rの推進、廃棄物の適正処理と処理施設の長寿命化、そしてバイオマス系廃棄物からのエネルギー回収が出てきています。これをイノベーションというところに結びつけようと思いますと、もう少し、多分幅の広い視点から見るというようなことが必要なのだと思います。エネルギーに関する科学技術イノベーション総合戦略の方を見てみると、エネルギーバリューチェーンの最適化であるとか、あるいは効率的、効果的なインフラ維持管理というような部分がこれに対応するのですが、このような広いところから見た上で何かイノベーションがあるのか、その中で、環境省が担当するところに何か役割があるのかというような見方をしていかないと、今ここにあるテーマでのイノベーションというのもなかなか見出しにくいというように感じております。

【森本委員】 これを拝見していまして、かなり前になりますけれども、国立環境研究所が未来社会のシナリオを研究されるときに、ドラえもん型の社会とサツキとメイ型かというもの、ありましたね。

【甲斐沼委員】 サツキとメイ。

【森本委員】 そうです。サツキとメイ型のあれをやられたのを思い出していたのですが、これはどうもドラえもん型ばっかり、そんな感じがして、イノベーションというのはドラえもん型しかないのかというところは、環境省さんとしてどこかにちゃんともっておかなければいけないのかなというのが感想です。

 そういう意味で拝見しますと、この科学技術基本計画の中で第2章のここをどういう具合に対応していくかということかと思うのですが、どうもなかなかサツキとメイ型というのは難しいのですが、僕がさっき申しましたような、例えばこれは自然災害に対する強靭な社会の実現というのが入っているのですが、これをエコロジカルに見ると、強靭で動かないがっちりしたものでいきましょうという発想は、実はエコロジカルには矛盾していて、むしろ柳に風型というのですか、回復力、レジリエントな社会というのは、強靭というよりも回復がうまくいくという意味なので、これはかなり誤解というか意図的にこういう誤解するように使われているような気がしています。

 この辺り、以前、日本学術会議が「復興・国土強靭化における生態系インフラストラクチャー活用のすすめ」というのを、災害復興に関してまとめられていますけれど、ああいう線がもう一つのイノベーションみたいなもので位置づけられると、いわゆるグリーンインフラストラクチャーなんかで今少し世の中が動いているのを、環境省さん側からの心を入れたものに変えていくことができます。だから、社会実装というか、その辺を含めた研究、推進戦略ができていったらいいなというのが感想です。どんなふうに書き込んでいったらいいかというのは、ちょっと今アイデアは持ち合わせていないのですが。これは、このまま黙っていると大変まずいことになりそうな懸念があります。

【山口委員】 イノベーションを技術と見ると、やはり環境省らしさというか、その環境省の持っている強さというのが出ないような気がしますね。あくまでもイノベーションを興す技術というのは、イノベーションを興す一つのツールにすぎないわけでありまして、本来であれば、その技術をもってそれをいかに社会に定着させるか、社会で回すようにするかと、これが大事だと思うわけですね。したがって、環境省さん、もしくは国環研さんが何か技術を開発する、エネルギーの技術とかそういう技術を開発するのではなくて、それはむしろ文科省さんの大学の先生とか、あとは経済産業省の仕事だと思っていますので、やはり環境省さんらしいイノベーションを支える力は何かと考えると、それはそういう技術なりさまざまなツールを使ってイノベーションを興すときに、環境へのリスクは発生しないのか。例えば大気とか水とか土壌とか、そういう環境にリスクを与えることはないのかということを考えながら、社会システムはどうあるべきだと。そういうことではないのかなと思います。

 産総研とか経産省系は産業界と一緒になりまして技術そのもの、デバイスとかを、新しいエネルギー、水素社会とかをつくるわけですけれども、そういうものが環境リスク、環境省さんのお持ち、もしくは国環研さんなどがお持ちの技術をもって、技術ではなくて力をもってどう評価するかとか、ちょっと話が大分ダブってしまいましたけども、やっぱり技術ではないと。イノベーションを興すのはツールにすぎないと、そのツールをいかに活用するかということを、環境面でいろいろと評価していくと。この辺が、大事なんではないかなと。

 したがって、資料5で書いてある環境イノベーションでいろんな、バリューチェーンとか、クリーンエネルギー供給システムとかこういうのはやらせればいいんであって、それを環境リスクという側面で評価すると、そういうことも一つあるのではないかなと、そのような気がいたしました。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 私も一言、それでは。

 今山口委員からおっしゃっていただいたことの繰り返しになってしますのですが、大体今のイノベーションの定義というのは、シュンペーター流というのが一般的なんだけど、そのシュンペーター流の定義だと、イノベーションというのは技術革新じゃないんだよね。技術ができて、それが社会に普及して、それで社会が変わることがイノベーション。それが、だから一番最初の技術のネタをつくるところまでやるのか環境省が、というとそうじゃなくて、多分2番目や3番目をやるんじゃないかなと。

 だから、その技術がいかにうまく、うまくという意味は正しくと言ったほうがいいのかもしれませんけど、社会で使われるようになって、それで社会が変わっていくという、その辺りで人々の技術の重要性が例えば非常に難しかったら、そういうところは環境省の問題かもしれない。そんなような対応かなという気がするんですよね。

 だから、その辺がちょっとこの推進戦略の今のバージョンに十分書かれていないかどうか、ちょっとその辺だけチェックを個人的にはしたいかなみたいな、そんな気がちらっとしているんですね。

【山口委員】 そうですね。新しいイノベーションを興す場合の、環境影響評価もやっぱり環境省の役割にあると思うんですよね。

【安井委員長】 おっしゃるとおりで、環境影響評価、特に日本という国は化学物質に関しては、とにかくそういう国だったものですから、それの二の舞をやらないんだろうな、本当に、というようなところは多分重要ではあって、そのようなところが本当にこれ表現できているかどうかだけは、ちょっとチェックしたいかなという気が個人的にはちらっとするというぐらいなんですけどね。

 いずれにしても、ここでここをやる、やらないというのを決めるわけではございませんので、今日はこんなところで終わりにしてよろしいでしょうかね。何か追加がございますか。よろしゅうございましょうか。

 それでは、室長、何か最後にまとめていただければ。

【太田室長】 本日は貴重なご意見をたくさんいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の議事録につきましては、委員の皆様方にご確認いただきました後に、環境省のホームページで公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 なお、次回の本専門委員会につきましては、来年度になりましてから開催する予定でございますが、日程等につきましては、また別途ご調整させていただきたく考えているところでございます。引き続きよろしくお願いいたします。

【安井委員長】 というわけで閉会でございます。本日はありがとうございました。