中央環境審議会総合政策部会環境と経済の好循環専門委員会(第6回)議事要旨

日時

平成16年3月18日(木)10-12時

場所

環境省第1会議室

議題

委員会報告案の審議

要旨

委員会報告素案について、事務局からの説明の後、意見交換


○浅野 直人委員

  • 政府の審議会が、これまでの延長線上ではない理想の将来をまず描いてみようというのは、かなり画期的。それだけに国民全員が納得するものはつくりようがないので、そのあたりは割り切るべき。
  • 長い文章は読んでもらえない。今の文章の長さは許容範囲ぎりぎりではないか。

○天野 明弘委員

  • 好循環が始まっていることが実証できる段階まで来ている。「現在好循環のプロセスが起こり始めているのを日本がリードしてしっかりしたものにしていこう」といった趣旨の記述を、最後の部分にでも入れると良いのではないか。

○崎田 裕子委員

  • 冒頭、私たちの行動で日本の元気をつくっていこうと強く明るくアピールする形でスタートしてはどうか。

○安井 至委員

  • 価値の高い富を生み出すようなものを少し買うような生活が環境と経済の好循環の鍵であると言うことが、最後まで読まないとわからない。

○辰巳 菊子委員

  • 今の記述では、5頁「物を買うときは環境への影響を考えてから選択している人」は、6頁「環境保全に関する行動に参加したり接したりしたことがある人」に含まれるように読める。この場合、前者の目標が後者を下回るとおかしい。誤解されないよう、書き方を工夫すべき。

○辻 晴雄委員

  • 「好循環をつくる人々」の中に「大学」とあるが、高専もあるわけで、大学に限定するのではなく「教育機関」のように広く書くべきではないか。
  • 「シェアを拡大した事業者」とあるが、これは競争して他から奪うことを意味する。ここで言いたいのは新しい需要をつくり出すということであり、誤解を生むのではないか。
  • 5頁「~環境への影響を考えてから選択している人」の目標が65%とは弱気すぎないか。2025年には、100%が環境に配慮した消費行動をとることを目指すべきである。また、2025年には中国も環境問題に積極的に取り組んでいるだろうが、その時に日本が優位に立つためには、グランドデザイン、目標でリードしている必要がある。その意味でも65%では弱い。
  • 最後の部分で、生活や産業、教育がどのように変わるのか、ターゲットごとにまとめると、このビジョンが頭に残りやすいのではないか。
  • 20年後の目標は出来るだけたくさん挙げておく方が良いのではないか。例えば、CO2総排出量、排出権、エコツアー発展のためのインフラの整備、指導者の確保など。
  • 今後、他省庁をどう巻き込んでいくかが課題かと思う。

○浅野 直人委員

  • 大学という表現について検討する必要がある。小・中・高については、後のほうで環境教育の話があるので特出ししなくていいのではないか。先生を育てる場所との意図で大学という表現になったのではないかと理解している。
  • 目標が65%というのは確かに弱気だと思う。しかし、循環基本計画では10年後の目標として、90%の人が意識を持ち、50%の人が行動するとあるので、100%は無理だと思う。
  • まとめを最後に付けるとの話があるが、プレスリリースの説明文の中にコンパクトに書いてはどうか。
  • 細かい目標については、このビジョンを受けて従来よりも長期の見通しを持ったものになるかもしれない環境基本計画で考えることができるのではないか。

○天野 明弘委員

  • 一番最初にポイントをまとめて書くべき。近年、重要な文書の前には必ず文書のエグゼブティブサマリーがあるので、つくってはいかがか。また、指標を一番最初に箇条書きにするだけでかなりの役に立つ。

○関 正雄委員

  • 数値目標に、環境に配慮した投資行動を入れるよう検討してはどうか。環境省の調査では、実際に実行している人は少ないが、実行したいと考えている人の割合は多い。
  • 国際貢献で重要なのは人づくり。日本のライフスタイルが海外に根付くことを目指すのであれば、登場人物を外国からの留学生に変え、本国に戻って日本のライフスタイルを定着させていくという話にしてはどうか。

○辰巳 菊子委員

  • 「消費者にもこれを知って積極的に検討する姿勢が必要です」をもう少し具体的な記述にして欲しい。例えば、「消費者もこれを知って積極的に選択の基準とすることが必要です」など。
  • なぜ2025年が数値目標の基準になっているのか、3章まで見るとわかるが、2章の前に記述されるべき。

○和気 洋子委員

  • 日本の大学や研究機関に環境問題を学ぶために留学してきた人を登場させると、環境先進国日本というイメージがより具現化するかと思う。
  • 「環境のコストを進んで受け容れる市場」とあるが、コストを反映することだけが好循環の基盤になると言い切っていいのか。間違いではないが、環境の価値を市場に反映させること、にした方がより積極的ではないか。

○黒須 隆一委員

  • 川上対策を推進するため、環境に配慮した事業者が報われる仕組の構築を明示する必要があるのではないか。
  • ごみの適正処理に間違いはないが、むしろ資源化を強調するべき。見出しが「ごみの減量化と適正処理」となっているが、例えば「ごみの減量と資源化」としたほうが適切でないか。
  • ごみの適正処理よりも資源化を強調するため、「廃棄物処理の適正な処理が進むだけではなく」を「再利用や資源化が進み」とした方が良いのではないか。
  • 「差別化」という言葉は紛らわしい。「棲み分け」などではどうか。

○深尾 典男委員

  • なぜ環境と経済の好循環なのかを最初にしっかり定義する必要があるのではないか。従来の経済発展だけを目指すやり方はもう壁に当たっていることと、環境だけを追求することにも未来はないことを明確に意思表示しないと、好循環という言葉が浮いてくる。
  • 2025年には稼働人口は非常に少ない状況が予想される。日本の経済がどういう状況にあるのか、65才以上の人口がどういう役割をはたすのかを明確に意識してビジョンを描かないと空論になる。全体のまとめの中に、日本が20年後に何で食べていくのかを織り込むと説得性が出るのではないか。

○園田 信雄委員

  • 地方と都会という区分でビジョンがまとまりつつあるが、もう一歩踏み込んで「各地域の特色を活かす」という議論がある。環境は、各地域で特性があり、それを活かすことも必要といったことを盛り込んではいかがか。

○筒見 憲三委員

  • 自然エネルギーの活用の部分で書き方の工夫が必要。昨年、エネルギー基本計画が閣議決定されたが、それとの整合性を図るべきである。自然エネルギーよりむしろ「再生可能エネルギー」へと範囲を広げた方がいい。「バイオマスのエネルギー利用、活用」ということもここに入れてもいいのでは。
  • 目標について、再生可能エネルギーなり、自然エネルギーなりの導入目標値というのはエネ庁から出されているが、2025年のものが無いとすれば、このビジョンにそれを踏まえて大幅に導入するということを入れられないか。

○崎田 裕子委員

  • 循環基本計画で3Rの精神をきちんと生かしながら最終的に適正処理をするという全体像が明示されている。「もったいないが生み出す資源」のところの項目の順番など、それに合わせてわかりやすく整理するべき。
  • 「住民、NPOなどと協力して資源回収を徹底したり、」とあるが、現実に資源回収はかなり進んでいるので、「資源回収を徹底したり」に加え「循環利用の環をつなぐ活動も進んでいる」と、いうような文言もいれてはどうか。
  • 第3次産業で活きる環境のわざのところに、「単にものを売るだけでなくそこから生まれるサービスや知恵を」と書かれているが、具体例は省エネの話だけ。もう少し、生活の中のものとの暮らし方や様々な事業のやり方など、すべて入れながらサービスをきちんと活用していく社会、というあたりを書き込んで欲しい。例えば、リユースやレンタルが具体的に描かれていれば、市民もイメージしやすい。
  • コミュニティビジネスが地域を活性化させるようになってきている。「日本の経済社会」の中に、「NPOが単に人をつなぐだけでなくコミュニティビジネスとしてきちんと自立していくような地域社会をつくっていく」といった文言があってもよいのではないか。
  • 「地域とライフスタイル」は、具体的な人物が出てきてわかりやすいが、地域社会の活力の中で生きていることが感じられるような言葉を増やして欲しい。

○天野 明弘委員

  • 「資源・エネルギーの循環型社会」の中に、省資源・省エネいうのが表に出てきているが、環境とどうつながるのかわかりにくい。省資源・省エネをする根拠が「自然の循環に対する人間の介入を減らすこと」というようなことを書き込まないと、資源が足りなくなるから省資源・省エネというだけの感じに捉えられる懸念がある。
  • 環境負荷削減のための費用を誰かが負担しなければならないという問題があるわけだが、根本的には、今ある環境が価値を持っていて、それが無くなることが大きな損害を与え、その問題への対応として費用がかかるということ。「環境のコストを進んで受け容れる市場」を「環境の価値を進んで評価する市場」に変えてはどうか。

○小倉 康嗣委員

  • 2025年の将来像のところで、そもそも好循環とは何かということだが、現在は、経済を発展させようとすると環境に悪いことがあるから好循環が必要。2025年には環境に良いことをすると経済が良くなる社会になり、経済発展すれば自然と環境が良くなり、何も問題がなくなる。そのように好循環する社会だということを、定義として入れたらいい。
  • 産業界としては技術発展に取り組むわけだが、例えば太陽光、風力発電が今の電力より安ければ自然と自然エネルギーは増える。「日本の経済社会」の後の括弧の前に、「今コストが高くて買えないような環境配慮型商品が安くなり、そちらを買う方が得になるような技術発展をしていかなければならない」などと入れてはどうか。また、便利になっても環境に悪影響を与えない技術的発展が必要。
  • 「環境にやさしい消費者が~」で、「環境にやさしい」というのは非常に抽象的。「環境に関心を持つ消費者が生み出す生活様式」のような言葉の方がいいのではないか。
  • 「経済のサービス化と環境」のところで経済のサービス化というのはおかしい。むしろ、「環境のサービス化」という言葉の方がいいのではないか。

○辰巳 菊子委員

  • 黒須委員から、環境に配慮した企業が報われるという文言を入れて欲しいという話があったが、同じように環境に配慮した消費者が報われることも入れて欲しい。
  • 「ビジョンが目指すもの」の中に、「互いに信頼感をもってそれぞれの役割を分担しながら~」とあるものの、好循環を生むための企業と消費者の信頼感というのは、企業の社会的責任。こういったはやり言葉を入れるのも良いのではないか。

○深尾 典男委員

  • 「日本発の最先端環境商品」「第3次産業で活きる環境のわざ」となっているが、現状で製造業のサービス産業化が進んでいる(例:あかり安心サービス、カーシェアリング)。この新しいサービス産業化の概念をぜひ入れて欲しい。
  • 「自然関係の目標」について、自然に踏み込んでいくことは自然破壊につながりかねないので、こういう目標を立てるなら、身近な自然の回復と、そういったものを含めた自然の中での過ごし方といったものも書いた方がいいのではないか。

○浅野 直人委員

  • 自然の中で過ごすことについては、日比谷公園も自然だよという考え方もあり、感性のレベルで捉えるようにしたいが、誤解を生じないよう、そのようなニュアンスを示した方がよいかもしれない。
  • コミュニティビジネスについては、これが全国を席巻するようになれば立派なビジネスだという意見もあり、書くならば「日本の経済社会」より地域のところの方がよいのではないか。
  • 好循環の説明など、後の方にでてくる言葉と、前の方にでてくる言葉があり、もう一度見直した方がよいだろう。

○関 正雄委員

  • 「わざを後押しする環境志向の消費者」中に、環境コミュニケーションとあるが、消費者が質問し行政・事業者が答える言うことしか書いていない。行政・事業者から消費者に対する働きかけ、パートナーシップを組んだ活動など、コミュニケーションの多面性や、ダイナミックな面をこの文章に盛り込むべき。

○筒見 憲三委員

  • 「単にモノを売るのではなくそこから生まれるサービス」と書かれているが、サービスというのは消費者にとって何が1番いいのかを考えてビジネスを行うという考え方。さらに、社会・環境に視点をおいてビジネスを展開するのが本来のサービス業。このような起業家、社会起業家を育てなければならないとの視点を入れるのも、人材育成の意味でいいのではないか。

○天野 明弘委員

  • 「経済のサービス化」という表現は、第3次産業をふくらますという本来の趣旨ではない捉えられ方をしてしまう恐れがある。消費者の求めているのは機能で、それを環境負荷の少ない形でつくり出すというのが、ここでいう本来の「サービス化」ということ。誤解を受けないよう工夫が必要。

○和気 洋子委員

  • 環境と経済の好循環の中で自然を位置づけると、その自然を残すためのコスト負担が重要なポイント。自然を守るためのコストを誰かが負担して自然がはぐぐまれるという構図が見えてこない。

○浅野 直人委員

  • 里山など、人間の生活や経済活動がなければ自然が守れない面もある。そこに好循環の一つの芽があり得る。自然を守るコスト負担は、上下流の問題など、いろいろな話につながる。工夫して好循環と経済の話に結びつけることができるのではないか。

○安井 至委員

  • 2025年に日本が何で食べているのかが問題になるようならば、「日本の経済社会」というタイトルは不適切かもしれないが、残すならば「環境汚染と経済とのデカップリングはすでに、実現した。とりあえずエネルギーと経済とのデカップリングを実現し、その後、物質と経済とのデカップリングを目指す」といった記述が必要ではないか。
  • 「資源・エネルギーの循環型社会」の見出しについて、厳密に言えば、エネルギーが循環できるのは、核燃料ぐらいなもので、この表現には違和感がある。資源が循環しエネルギー効率の高い循環型社会などが良いのではないか。

○崎田 裕子委員

  • 産業界の方々にとって、今後10年くらい、化学物質対策は事業活動の大きな投資分野となると思うが、入れなくて良いか。

○安井 至委員

  • 化学物質対策は大変重要だが、好循環とは別の問題かもしれない。化学物質管理・情報産業の育成に大きな影響を与えるとは思う。

○天野 明弘委員

  • 企業の化学物質の取り扱いとそれに関する情報開示は、コミュニケーションの問題でもあり、積極的な企業が高い評価を受けるという意味では、ビジョンに入っていると考えられる。

○浅野 直人委員

  • 日本はスタンダードづくりのところでいつも負けてしまっているが、本来、環境は日本の得意分野なので、リーダッシップをとっていこうということが副題に込められた意味ではないか。

○辰巳 菊子委員

  • 「環境にやさしい消費者が生み出す所得と雇用」では、日本と海外の関係として、国内で良いものを作って、それを海外のものと差別化してやっていくことが読み取れるが、これだけでないのではないか。このビジョンに盛り込むべきかはわからないが、フェアトレードのようなもので途上国を支えていけないと、持続可能ではないかもしれない。

○天野 明弘委員

  • 好循環を拡大するために一番必要なのは情報。日本の経済社会を好循環に導くには、消費者が欲しい情報を手に入れられるようになる政策が必要であることを、一般論でいいのではっきり書いて欲しい。

○和気 洋子委員

  • FTAなど国際協定が自由市場を作る方向で動いていく中、「地域協定が多面的に進んでいく中で環境配慮型の規制、環境協定などをきちんとやっていこう」とういうようなものが具体的にあるといいと思うので、可能なら盛り込んで欲しい。

○小倉 康嗣委員

  • この文章では、産業界などが努力しなければならないということはわかるが、消費者が実際に何をしなければならなのかというイメージが足りないように感じる。

○浅野 直人委員

  • 企業で働く人も家に帰れば消費者であり、企業の環境教育が直結する。縦割りの世界ではない。

○天野 明弘委員

  • 最近では、生産者、消費者などと分けるのではなく、ステークホルダーとして捉え、その間でどう情報をやりとりをするかを考えている。