中央環境審議会総合環境政策部会第3回 環境と経済の好循環専門委員会 議事録

議事内容

平成15年12月19日 午後2時00分 開会

○谷環境計画課長 それでは、議事に入ります前にお手元の配布資料のご確認をお願いをいたします。
 資料の1が「環境と経済の好循環専門委員会」の委員名簿でございます。
 資料の2は、辻委員のご提出いただきました資料でございます。
 資料3は、ちょっと右において養老先生のこの新書版の『いちばん大事なこと』というこちらのご本でございます。養老先生から頂戴をいたしました。
 資料の4は、山本委員の提出資料でございます。
 資料の5は、小林講師のご提出資料でございます。
 資料の6が「環境と経済の好循環専門委員会」の今後の予定でございます。
 資料7-1が「自然エネルギー関係参考資料」がございます。
 資料7-2は、「エコツーリズム推進会議について」でございます。
 資料7-3は資料番号がついてございませんが、「いのちは創れない」といいますパンフレットでございます。
 そのほかメインテーブルの委員の先生方のみ、第1回の議事録、そして、第1回の専門委員会の議事要旨、そして第2回の議事要旨の案がございます。最初の2つは既にご意見を頂戴したもの、最後の第2回の議事要旨は何なりとご意見がございましたら頂戴したいと思います。そのほか、正式の資料ではございませんが、『ゆうゆう』の11月号を、これも山本委員から頂戴して置いてございます。
 なお、本日は、先月16日の選挙結果を受けて栗原孝大牟田市長が中央環境審議会委員と当専門委員会の委員を辞任されまして、その当専門委員会のご後任として黒須隆一八王子市長にご就任いただくことになりました。本日は、黒須市長にご出席をいただいております。
 また、本日は、エコツーリズムについてお話いただくため、財団法人日本交通公社の小林英俊理事に講師としておいでいただきました。小林様は現在、環境大臣が議長を勤めますエコツーリズム推進会議の委員及び幹事会座長としてご活躍をされていらっしゃいます。
 それでは、議事の進行を安原委員長にお願いいたします。

○安原委員長 安原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は年末でもあり、大変お忙しいところを委員の先生方にはご出席いただきまして、ありがとうございました。また、ご多忙のところ前回に引き続き小池大臣にもご出席をいただいております。大臣はご予定が次にございまして、3時ごろ退席される予定になっております。
 本日は、テーマとしましては「自然がはぐくむこころとちから」ということでお願いいたしました委員の方々から発表をしていただき、それに基づいて討議をしていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。きょう発表していただきますのは4名の方でございまして、辻委員、養老委員、山本委員、小林様ということで、その順番でそれぞれ15分程度をめどにご発表をお願いしたいと思います。そのあと、今回初めて出席されました黒須委員の方からご紹介をかねて「環境と経済の好循環について」のご発言をお願いしたいと考えております。その後、事務局から説明がありました後、残りました時間を自由討議にあてたいと考えております。終了時間は16時を予定しておりますので、よろしくご協力をいただきたいと思います。
 それでは早速でございますが、意見発表に移ります。まず、辻委員からお願いいたします。

○辻委員 辻でございます。座って発表させていただきます。本日のテーマは「自然をはぐくむこころとちから」でございますが、後ほどお三方から貴重なお話があると思います。
(以下、パワーポイントを用いて発表)
 私どもは直接自然とあまり関わっておりませんけれども、事務局の皆さんから無公害の創エネルギーの太陽電池あるいはまた省エネルギーの液晶テレビについて、ご報告するようにと言われております。それに加えまして、「経済と環境の好循環」、「自然と経済の関係」について少しご提言を申し上げたいと思います。
 早速でございますけれども、シャープは環境先進企業をキーワードにいたしまして、「スーパーグリーン戦略」を進めております。
 この戦略は次の3つの課題を螺旋状に絡めて進めるスパイラル戦略でございますが、1つ目は、メーカーでございますので独自の環境技術の開発をめざす、スーパーグリーンテクノロジー、2つ目は環境負荷の低い工場づくりをめざす、スーパーグリーンファクトリー,3つ目は環境配慮型商品の創出をめざすスーパーグリーンプロダクトという、この3つに対する徹底した取り組みを現在いたしておるわけでございます。最近は、国内あるいはまたヨーロッパでユーザーや投資家の環境に対する関心が大変高まっていますし、この課題に誠実に応えるメーカーが必ず報いられるという、気持ちを強く持っております。
 具体的に太陽電池について少し実情をご報告申し上げたいと思います。ご承知のとおり、これからご紹介する太陽光発電装置、いわゆる太陽電池は先ほど申し上げましたように、私どものスーパーグリーンプロダクトの主役でございますが、無限の太陽光を電力に変える、そういう無公害の創エネルギーでございます。
 当社が我が国で一番早く生産を開始したのですけれども、1963年でございますからちょうど今年40年になります。わが国のメーカーの2002年度の太陽電池の生産量は25万1,000 キロワットで、大体全世界の44.8%を占めておりますけれども、それは欧州の24%を大きく離しております。ちなみに当社は12万 3,000キロワットでトップの位置を保っているわけでございます。
我が国の太陽光発電というのは実は1994年に、ご承知かと思いますけれども、太陽光発電システムモニター制度というのが始まりまして、国から補助金が出るようになったのです。そしてその結果、それぞれ皆さんのお家の屋根に取り付ける太陽光発電システムの普及のピッチが上がりました。現在、住宅用の4キロワットシステムでは大体年間で約10万円ぐらいの電気代が節約できるだろうと思いますし、また、機器そのものの価格も1994年当時と比べると大体3分の1近くになっているのが現状でございますが。今後ともこの発電効率を上げながらコストダウンを図っていかなければならないと思っておりますが、一方でそういう太陽光と風力発電あるいはまた燃料電池と組み合わせて新しい環境技術の開発も進んできている状況でございます。
 昨年策定されました地球温暖化対策推進大綱に沿って、我が国では2010年度の太陽光発電量の目標を年間 482万キロワットと決めております。これによって年間 188万トンのCO2を削減することができます。これは例えますと東京都の面積の大体3倍近くにあたる 6,000平方キロメートルの広さの森林が吸収するCO2の量に相当いたします。最近、太陽光発電システムの設置台数は増えておりますけれども、ただ困ったことに年々補助金の額は減っております。ただ、補助金が出るということは、国民の環境あるいはまた省エネに対する関心が大変高まっている証拠だというふうにも思っております。と申し上げましても、実際のところ設置台数は現在まだ累計で16万件でございますので、住宅の戸建ての数字が 2,530万件ぐらいでございますから、その 0.6%に過ぎません。これを2010年に 100万件にしようという目標について頑張っている状況でございます。
 先ほどちょっと補助金制度の話を申し上げましたが、これは今回のここのテーマではないのですけれども、2005年度に太陽光発電システムに対する一般国民に対する補助制度は打ち切るという、そういう表明があるやに聞いております。けれども、国民にとって環境に対する関心度が非常に高いし、補助金の意義というのは単なる経済的なメリットだけではなくて、やっぱり国の後ろ盾があるという安心感あるいはまた国に貢献しているという満足感、そういうものがやっぱりこの補助金制度の中には隠されているのだろうと思うのであります。ですから金額の多い少ないは関係なくて、やはり国が力を入れていくビジョンの決意の表明として、引き続き国民への啓蒙の強化などと合わせて支援していただきたいと思っております。
 次に、液晶でございますけれども、この液晶テレビにつきましては大体ご承知の方々もおありかと思いますけれども、ブラウン管のテレビに比べて大体約38から20%ぐらい消費電力が少ない、要するに省エネになりますし、加えてご承知のとおり省スペースであるとか長寿命であるとか軽量であるとか、大変見やすいといった特長がございまして、コストダウンの進展とともに日本だけでなく最近は欧米まで一気に普及し始めております。この液晶テレビはおそらく大体今年で 300万台、2004年度で 750万台、2005年度には 1,500万台というふうに需要が伸びるだろうと思いますが、実際はもう少し早くこのペースは上がるだろうと思っております。しかもご承知のとおり、この12月1日から地上波デジタル放送がスタートいたしまして、そういう地上波デジタルとこの液晶とかプラズマディスプレイというのは、デジタル同士でございますので大変相性がいいというのが特長の1つでございます。
 大変余談になりますが、日本は超円高になりまして世界で一番コストの高い国になったのですけれども、ブラウン管テレビはもうほとんど日本でつくっていません。全部アジアとか中国とかでつくっているのですけれども、ただ12月1日からの地上波デジタル放送のようにデジタルで画像を見てもらうのは、やっぱり液晶テレビとかプラズマテレビで見てもらえると大変きれいなんですよ。そういう液晶とかプラズマのフラットテレビというのは、やっぱり外国産でなくメイド・イン・ジャパン、日本でつくっているんです。こういうところに今後は日本の国の強さをこの環境と合わせて深めていかなければならないのではないかと思うのです。
 例えば2011年にアナログの放送が終わるのですけれども、その時点で日本の各家庭にある1億台のテレビが全部液晶テレビに変わりますと、大体東京都の面積の約 1.4倍、先ほどの話の太陽光ではありませんけれども、CO2が削減できる。要するに東京都の 1.4倍に当たる広さの森林が吸収するCO2の量に相当する。そういう点では大変環境にやさしい21世紀のテレビではないのかなと思っております。
 さて、環境と経済の好循環についての提言でございますけれども、数値的に考える手がかりというのはやっぱり昨年、お決めになりました地球温暖化対策推進大綱のCO2の削減目標がひとつの手がかりになるのだろうと思います。これはご承知のとおり2008年から2012年までの間に1990年比で6%削減するということになっております。ところが、現実は2002年度段階では逆に90年比5%増えている現状から、経団連等では2012年に90年比プラスマイナスゼロに持っていくという現実的な自主目標も掲げておられるようでございますけれども、プラスマイナスゼロをどこまでマイナス6%に近づけていけるか、ここでもう一度専門家の皆さん方の検討をはじめなければならないのかなというふうに思います。私どもも協力していきたいと思っているわけでございます。
 特にCO2の削減は、ここにございますように5つの取り組みで進めることになっておりますけれども、1つ目は、省エネと新エネルギー、原子力、このエネルギー起源のCO2を90年並に抑える。この点につきましては先ほど私どもの業界の例を申し上げましたけれども、例えば液晶テレビにしましても去年までは考えられなかったような新しい流れで普及スピードを増しておりますし、その他の家電商品とかあるいはまた前回ご説明がございましたように、トヨタさんの車の省エネもおそらく想像を超えて進んでいますので、私はこの一番目の削減目標の上方修正は可能ではないのかなと思っています。
 2つ目は、リサイクル等で非エネルギー起源のCO2をマイナス 0.5%にする取り組みでございますけれども、これも家電のリサイクルが先行してスタートし、比較的軌道に乗っております。したがって、これを手本にして各業界でも取り組みを進められると思いますので、これも目標を上げられるのではないのかなと思います。
 3つ目は、革新的技術の開発と国民運動の盛り上げでございますけれども、これは企業の環境技術の開発と工場の革命が一気に進んでまいりました。したがって、今後は民間と運輸部門をどれだけ巻き込めるか、それ次第でマイナス2%の、さらに上をねらえるのではないのかなと私は思っています。
 4つ目は、フロンの問題でございますけれども、放置すると5%増える代替フロンを2%に抑えることになっていますけれども、例えば私たちの例でいいますと、冷蔵庫のノンフロン化が一気に進んでおりますので、これも目標修正の余地があるのではないかなと思っています。
 5つ目は、森林整備等々で吸収量の確保によってCO2を 3.9%減らすということでございますけれども、今回お決めになりましたCOP9では海外の植林の細目が固まりました。では、国内のグリーン化をどうするのかということですけれども、この辺は後ほど養老先生のいわれるように、国民が自然環境に手を入れたら物心ともにメリットが得られる仕組みをどうつくるかということではないかと思います。そのことは私たち経済界の立場からいえば、雇用や所得が増えるビジネスにどう結びつけるかということではないのかなと思っています。
 そういう意味で儲かる農業、儲かる林業といった個別対応も望まれますが、やっぱり自然を豊かにしながら他の産業を伸ばすという、そういうスパイラルな展開が考えられないのかなというふうに思います。例えば日本のやさしい自然の中で、いやしや医療あるいはまたグルメ等々のような親切なサービスを受けたり、あるいはまた農耕、漁業の勉強ができたり、何といっても世界最先端の車あるいは鉄道、ユビキタスITを利用してだれもが思いのままに希望のところに行けて、そして移動中に新しい映像文化を楽しめるような、そういう未知の快適空間が体験できたらいいなと思います。やっぱり国内だけではなくて、海外からの人の集まりも変わるということになるのではないのかな。そういう仕組みなりそういうものができましたら海外の人も目を向けてくれるのではないかなと思います。
 したがって、重ねて申し上げますけれども、我が国のこの農林業あるいはまた漁業・観光あるいは医療・福祉・教育・自動車・鉄道・IT・エレクトロニクス、そういう技術とノウハウを融合させて、従来の「見せるだけ、単なる通りすぎるだけの観光国家」ではなくて、自然とサービス、ハイテクノロジーの恩恵でそういうもので「包み込む環境国家」ができればなというふうに私は考えています。今申し上げたような考え方からするといろんな新しい、我々流にいうとビジネスのスタイルが頭に浮かんでまいりますし、自然に対する、環境に対する国民の関心も高まっておりますので、そういうことをうまくビジネスに結びつけることができた場合、よりスパイラルないい循環ができるのではないのかな、いわば自然の商品価値をどう高めるかということではないのかなと、こう思っております。
 そうしますと、今東京に集中していますけれども、都市から地方への人の移動も可能になってまいると思いますし、そうなりますと、地方の雇用あるいはまた所得の増加を図ることができて、それぞれが自然に、それぞれのところで手を入れるということになろうかと思っております。アジアなどはこれから逆に工業化へ、逆にといいますか放っといたら工業化へどんどん突っ走るでしょうけれども、そういう中で「包み込む環境国家」というふうなことで日本が打ち出すことができましたならば、思いがけない経済波及効果を生めるのではないのかなと思っています。
 資料をいただいた中にグランドデザインを描き、数値を描くというお話がございましたけれども、放送のデジタル化による経済効果は大体10年間で 200兆円というふうに言われ、雇用創出を 711万人というふうに計算されています。私は今後、「包み込む環境国家」のグランドデザインができるとするならば、もう少しタームを長くとって、どうでしょうか、太陽電池でも40年かかったのですから、30年から50年ぐらいのタームで、長い目で一つ計画を立てて巻き込んでいけばいいのではないのかな。そうすることが自然を一方では大事にし、自然を守りながらその中で産業を伸ばしていくという、そういう環境国家を目指すようなグランドデザインができたらなというふうに思っているわけでございます。
 ちょっと時間を超えたかもわかりませんけれども、以上でございます。

○安原委員長 辻委員どうもありがとうございました。具体的な提言を含めて心強い意見を発表いただきましてありがとうございました。
 それでは、続きまして養老委員の方からお願いいたします。

○養老委員 養老でございます。資料といわれたものですから申しわけないのですが、本をお渡ししてあります。人からもらった本というのはあまりありがたくないので、たいていは読まれないかと思うものですから、ごみためへそのままいっても差し支えないのですが、環境問題になりますのでどうぞ。
 書いてあることを簡単に申し上げます。1つは、私前々から環境問題ということを、人間の問題としてとらえるというふうに考えている。私は基礎化学、解剖学の出身でございますからどうしても話が基礎的なところにまいります。普通は自然環境対人間の環境、人工環境というふうに対比させるわけですが、特にアメリカ流の自然観というのはアラスカの自然公園にみるように、人間がいっさい手をつかないところが理想的な自然環境であるという考えですが、私はそういう考え方はとらないと申し上げます。
 もともと日本は伝統的にそういう考えはとっていないと思います。むしろ一つ基本におきましたのは、我々自身、個人が自然環境に相当する身体、からだと、それから人工環境に相当する意識というか脳を持っているという、そういう分け方です。ですから、環境問題って実は自分自身の問題でもあります。ご存じの方も多いと思いますが、我々のからだというのは約1億の生き物が住んでいる生態系であるといわれておりまして、日本ではそれを亡くなりますと全部火葬しますから、戦争中に一億玉砕といっていたのは、それはそのことかなとよく思っているわけです。そういう自分自身が自然を含んでいるという感覚がございませんと、自然環境の話はあさっての話に見えてくる。特に経済と環境というふうに並べますと、なかなかこの両者の関係は、私自身もつかめないと思いました。今申し上げたのが一番基本的なことでございます。
 そういうふうに考えまして例を申し上げますと、例えば日本を見るときに皆さん方はよく北海道、東北、関東、中部、近畿、中国というふうに地方区分をいたしますね、道州制とか言って。その地方区分って何かといいますと、頭の中に日本地図を浮かべていただいて、特に西日本の場合には大阪から琵琶湖に向かってはさみを入れて、舞鶴あたりから琵琶湖へ向かってはさみを入れて、名古屋から琵琶湖に向かってはさみを入れますと、中国という島と紀伊半島という島と、それより東に分かれますね。そして今度は東の方をどうするかというと、中部と関東はいわゆる糸魚川・静岡構造線ではさみを入れます。そして東北と関東はなかなかむずかしいのですが、そこの間にも切れ間を入れますと本州というものは5つ以上の島になります。東北は実は2つぐらいの島が集まっていると思われます。1000万年ぐらい前に本州が島に分かれていた状況が、実はそういった大きな行政区分として表れております。
 それから小さな区分でいいますと、静岡県の古い区分は遠州と駿河と伊豆でございますね。この境ははっきりわかるわけで、遠州と駿河の境はいわゆる中央構造線でありまして、伊豆はもともと島でございますから80万年ぐらい前に本州にぶつかったといわれております。そうしますと、昔の人はそういった自然区分と国という行政の単位とが自然に一致しておりました。今の大きな区分をおそらく今の方は、人間の都合の区分だと考えられていて、そういう自然と人間のやっていることとの対応関係というのは、意外まだよく調べられていないという気がいたします。よく自然環境とおっしゃるのですが、自然環境そのものがどういうものかというのは、私はしようがないので昆虫採集でやっておりますけれども、虫を見ていますと非常に日本の地域によって変わってまいりますので、これも日本列島の自然を反映しているわけです。そういうものの創設的な知識がまだ不足しているという現状を指摘しています。
 次に、こういう話をしておりますと、よくいわれるのですが、本に書かなかったことをちょっと申し上げますと、一番基本的にはこの委員会もそうですし、行政がそもそもそうですけれども、何らかの整合的な、つまり秩序だったことをすることになります。そしてそれは間違いなく人間のからだでいえば特徴であって、からだの方は秩序だっているのかだっていないのかわからないのですが、勝手に上手にやっています。そこに対して意識は考えてやる。考えてやりますと何が起こるかというと、脳味噌の場合がそうなんですが、昼間こうやってしゃべっているのは論理的にしゃべっておりますし、そうやってきちんとしゃべりませんと、何言っているんだかわからないということになる。私はよくそういわれるのですけれども(笑)。
 では、脳味噌が論理的にはたらいている間にずっとそれができるかといいますと、私どもは夜になると必ず寝ます。何で寝るか、寝ている間は意識がないわけで、意識のないときのことを皆さん方は休んでいるというふうにおっしゃいます。休んでいるということはそれこそ環境的にいえばエネルギーを使っていないということですが、実は脳味噌は寝ている間休んでいると皆さんがおっしゃっている間もちゃんとエネルギーを同じように使っています。したがって、これは何に使っているんだろうという問題が当然起こるわけです。寝ている間も起きている間も使うエネルギーは同じだといいますと、私は長い間、学生さんを教えておりましたから、何といいますか非常に心当たりがあるというか納得がいくわけでありまして、学生というのはいままで起きていると思っていたんだけれども、あれは実は寝ていたんだと考えてもいいし、寝ていると思っていたんだけれども、あれは起きていたと思ってもいいわけで(笑)。
 では、その寝ている間に何をしているのかというと、これは専門家の意見は大体一致しておりまして、脳というのは昼間はたらいております。夜は秩序を回復しているのです。つまりどういうことかといいますと、仮に脳を図書館と考えますと、昼間はいろんな人が来て本を勝手に出して机の上に散らかして、最終的に帰っちゃったという状況です。そうすると、司書が夜の間はひたすらはたらいて本を元へ戻すということをやっています。そして次の日からまた改めて同じように使えるようにする。これを専門的な言葉でエントロピーを減少させるといいます。秩序を元へ戻すということはエントロピーを減少させるということです。
 環境問題の一番基本にはその問題が必ずありまして、つまりエネルギーを使うと炭酸ガスが出るというのは、つまりこれはエントロピーの問題。つまりごみがどうしても出てしまうのです。私はもうきれいな話というのはごみためが隠れて見えない話だというふうにはじめから思っております。つまり、脳味噌というのはきちんとものを考えてやって、それを立派だと自分でほめるものなんですけれども、きちんと考えてやったこと、すなわち筋が通って見事にきれいにいくものは、必ずどっかにごみためが隠してあるからそうなっているという考え。そのごみためがある程度以上溜まりますと、さすがに目に見えてきてやり方がおかしいんじゃないかということになる。そのことはこの本では十分に詰めておりません。なぜならば、いわゆるそういった脳自身を含めてのエントロピー問題というのは、実はまだ学問の中では扱われていないと思います。物理的に扱われましたし、情報をエントロピーとして扱うところまではいきましたが、脳自身を含めた上で、つまり整合性のあることがどのくらいいいというとおかしいのですけれども、根本的に成り立つのかということについては、これはまた別な問題になりますから将来の問題としてここでは突っ込まないです。
 こういう話をしますと、最終的に具体的な提案がないということを必ずいわれるんですね。それでこの本の中で最後のところで申し上げてあるのですが、我々自身の生活として都市環境と田舎の環境というものがどうしても必要であろうと。それは我々が意識的な生活を持っていると同時に、いわゆるからだの生活、つまりからだは意識がどう思うと勝手に動いていると申し上げましたが、そういう無意識の部分と両方持っているわけで、その両方を個人の生活にある程度戻していかないといけないというのが、私が考えたことであります。
 からだは勝手にちゃんと昼間働いて、夜寝てくれるわけですけれども、今の皆さん方の暮らしを拝見していると、私が子どもだったころは実は、私は昭和12年生まれですからそのときの日本の5割以上の方は農民であります。そうすると、私の生涯の間に7割以上が今サラリーマンになっておりますから、まったく生活を変えてしまっているのです。これはどう考えても無理がきているはずで、では、どうすればいいのかというと非常に簡単な提案として、1年間適当な期間を田舎で暮らしたらどうですかという提案をしてあります。今は住所は1つしか持ってはいけなくていろんな規制がございますから、そういう規制も考えていったらどうだと。そういうことをしようというと、必ずいろんな問題が起こりますから、まず霞が関からおやりになったらいかがと思いまして、実はその話をちょっとラジオでしましたら、農水の局長が来られて。「オーライニッポン」という、つまり都市と農山漁村の交流を促進する会というのがあります。それの代表になれといわれまして、何か口は災いのもとでその代表を今やらされているんですけれども(笑)。
 それは何のことかというと、実はレジャーでございます。かつてレジャーブームというのがあって、田舎に温泉ホテルなんかをつくったのですけれども、皆さん方、日本人というのは本当にまじめで働き者の人たちで、田舎の温泉旅館へ行って3日いろといったら途中で辛抱できなくなる人たちであります。そんなことをするからいけないので、それだったらはじめからお国がいいつけて、田舎へ行って1カ月働けと言えばいいと私は思っております。田舎へ行って1カ月働けというときに都会の暮らしをされては困るので、それを実際にだれかやっていないかと思ったら、テレビで若い人が番組でそれをやっていますわ、何のことはない。
 そして田舎へ一生行けといったら、これは毛沢東の下放になって怒られちゃいますけれども、私は下放に対しては非常に理解がありまして、中国人の留学生を預かっているときは、部屋の掃除をやらせておりました。1週間くらいたちますと、私もやりますから、彼らは先生を非常に尊敬していますので、そういう部屋の掃除などというのをちゃんと一緒にやってくれますが、1週間ぐらいたちますとおずおずと言い出すんですね。何言い出すかと思うと、中国では偉い人はこういうことはしないんですというのです。ですから、私は今ごろわかったのかと、私は実は毛沢東主義者でおまえは日本に下放されてきたんだよというんですけれども(笑)、からだを使うということをおやりになると、皆さん方も自分の考えが変わるということがおわかりになると思います。
 今の人の一番悪い癖はそういうところで働いたときに、「どう変わるんですか」という質問をなさる。からだにそれを聞いてもだめです。ですから、偉くなった方は何をしているかというと、土曜、日曜にゴルフへ行ったりしていますね。ゴルフをやって何がいいんですかというと、どうもご本人ははかばかしい返事をしないんですけれども、また行くところをみると、調子がいいに違いないんです。実はそれを国民的に何らかの形でやったらどうかという提案を私を申し上げているわけです。
 テレビのタレントが田舎へ行って田植えをしたり大工のまねごとなんかしていますけれども、あれは非常に重要だなと私は思います。それで行ってきりにしろというのではありません。ひるがえって、ですから環境問題というのは自分自身の個人の意識と身体の問題だと申し上げましたが、環境省が典型的にそうであって、私はここに来るたびに思うのですが、環境省も厚生労働省も財務省も法務省も全然区別がつかないのですが、せめて環境省というのだから環境のいいところにしてくれないかと思います。少なくとも半年ぐらいはそれこそ緑というなら緑のところに環境省の職員はいるというふうな形。執務をしているところへ私はときどきうかがうことがあるのですが、とんでもない狭いところに大勢人が詰まっていて、これでいい環境といっているのはどういうことだと、一度新聞に書いたことがあります。それは決して贅沢をしろといっているのではなくて、そういうふうなタイプの環境省は環境省型の生き方というのをここでおやりになっていただかないと説得力がない。
 実は、週休2日というのが始まったころ、私はよくタクシーに乗って鎌倉へ帰るものですからちょうど霞が関の前で仕事をしているという個人タクシーの運転手さんに会いました。霞が関の前でいつも仕事していて、この間、お客さん乗せて午前2時にお客さんを乗せまして、そういう話、古い話ですが、お客さんに聞いたんですよと、お客さんはここで働いておられるんですかと、その方は当時の労働省の方で、そうです、労働省で働いていますと。ひよっとして労働省というのは週休2日で国民に休め休めといった役所ではないですかといったら、そうですと。そこの役所の人が午前2時まで働いていていいんですかと言いましたら、その人はしばらくだまっていて、私の方は国民がちゃんと休めるようになるように、こうやって夜中まで働いておりますという模範的な答えをなさったようですが、これ私は環境問題によく似ていると思うんですね。
 環境省が何らかの形でライフスタイルということをおっしゃるのであれば、やっぱり自分たちの役所からお考えになるのも大事なことではないかというふうに思います。大体、時間でございますので、あとは本を読んでいただくということでお許しいただきたいと思います。どうもありがとうございました。

○安原委員長 養老委員どうもありがとうございました。田舎暮らしの提言ということで非常にユニークなお話をいただきましてありがとうございました。
 それでは続きまして、山本委員の方からお願いいたします。

○山本委員 主婦の友社でこの『ゆうゆう』という50代女性誌をつくっております山本と申します。これからパワーポイントで見ていきますと、はっきりするのですけれどもお願いします。
(以下、パワーポイントを用いて発表)
 50代がアバウト7割、それから60代以上が2割、それ以下が1割ぐらいというふうにアバウトに私は考えております。実は、専業主婦の方が42%、パートとか無職とかそういう方たちを含めますと6割、7割あたりの方が非常に時間大臣でございます。ということで、きょう実はこれから『ゆうゆう』の読者がどんなふうに自然とふれあっているかというような数字を、このためにとったわけではありませので、『ゆうゆう』のためにとった数字の中から拾ってお見せするのですけれども、養老先生が皆さん田舎暮らしをしましょうというご提案をなさったとすれば、ここにいらっしゃる皆さんはオンビジネスの方々ですので、なかなかそうはいわれてもできない。しかし『ゆうゆう』世代は、本当に"ゆうゆう"とそういうものを楽しんでおりますというふうな数字に具体的にはなるというふうに思っております。
 まず、「買いたいもの」というのを見ましたとき、旅行、海外旅行、食べ歩きなどに19%、それからカルチャーとか学校などの趣味、教育に10%ということになっておりまして、若い女性誌ですと洋服だとかバックだとか靴だとかアクセサリーだとかというふうにもの志向なんですけけれども、明らかに50代になってきますと、ものはもうかなり十分、事というところにお金を払うということがわかります。
 具体的にお稽古というふうなところが挙がっていたのですが、実際にではどういうものを現在やっているかというと、スポーツジムとかヨーガとか気孔法などのスポーツ系に45人、これは『ゆうゆう』の場合には何号かに分かれてこれは調査しているのですけれども、母数を全部 200でとっております。必ず 200でとるようにしておりますので、何人なんですけれども4分の1ぐらいの人が、今具体的に運動をやっているというふうなところで、非常に平均的な女性たちなので残念ながら女性問題とか食の安全とかボランティアとか、環境問題などというのもここに入るのではないかと思うのですけれども、何かやっているかと聞かれると、一人ぐらいしかいないというのが具体的な現状です。
 それから今までに習っていたものというところでも同じような数字が出ています。これは細かく見ていただく必要はないのですけれども、50代から60代の女性たちは、今よりこれから習いたいものというのが、まださらにたくさんあるということが上下の表でおわかりいただけるかと思います。
 時間が多分あまりないと思うので、実はエンターテイメント系、文化系のものもきょうお出ししたのですけれども、この辺はちょっと飛ばしていこうと思います。この1年間、ショーとか映画とか演劇とかに行きましたかというようなことを聞いてみました。ザァーッと見ていただければ結構です。それでよく行くものは映画とか、それからときどき行くのが音楽会とか映画とかで、実は演劇などは行ってみますとほとんど50代、60代の女性、特に商業演劇の場合は、もうほとんど50代、60代の女性で占めているというふうに申し上げてもいいくらいなので、それを具体的にとってみたのですけれども、演劇などは意外と少なかったというところです。
 趣味はなんですかと。これは今の流れの中で聞いたものなのですけれども、趣味はなんですかと聞きますと、旅行を挙げた方は半分までいっていませんで4分の1です。それから読書、ガーデニング、この中で赤を入れましたものが自然と何らかの関わりがあるというふうに考えています。ウォーキングですとか登山ですとかドライブですとかというふうなものが挙がってきています。
 これからは旅行についてのデータなのですが、実は日経流通新聞の数カ月前の調査などでも、「豊かな暮らしをするためにあなたがお金を使いたいと思っているものは何でしょう」というふうな質問ですと7割ぐらいの方が第一に旅行、レジャーを挙げていたと思います。私どものデータはもう少し少ない数字なので、これはやりたいものと聞いているわけではなくて、あなたはこの1年間に旅行にどのくらい行きましたかというふうなところで聞いています。
 これをごらんになっていかがでしょうか。先ほどの養老先生のご提案から考えて、少ないと思われますでしょうか。この1年ないという人が17%います。ただ、50代というのを具体的に考えてみますと、私も読者のカードをよく見るんですけれども、具体的にはやはり介護の方をかかえていたりあるいはご主人ですとかご家族、兄弟ですとかというような病人をかかえているというケースも少なくありません。また、お子さんの結婚とかもろもろあって、この1年間は日帰り旅行もできなかったという人で、やっぱりこのくらいの数字は当然いるだろうというふうに思います。ただし、多いと思うか少ないと思うかというのは人によって受け取り方が違うと思うのですけれども、3回から5回行っている人、これは日帰り旅行なんですけれども、約30%です。そしてそれ以上を含めますと50%以上の人が、16回以上などという人が4%ぐらいまでいますので、明らかにこの辺のところで見てみますと、50%を超えている。つまり、この辺の感覚からいうと、1回行ってきたらすぐ次に「どこへ行こうかな」というふうな感じで、常にもう次の旅行、次の旅行というのを予定しないと、このぐらいのサイクルにはならないということがおわかりになるのではないかと思います。
 というふうな感じで、では、どこに行ったかと聞きますと、1位が温泉、このデータ自体が今年の12月号、つまり11月の時点でとっているデータということもかなり関係しているかもしれません。ただし、今大変な温泉ブームですので温泉が1位、それから花見、食の旅、ハイキング、紅葉を見る、ドライブ、これはこの表自体は私の方でこういう項目を挙げて丸をつけてもらったのではなくて、記述式ですので言い方が結構ばらばらしているかと思いますけれども、それでも結構傾向がはっきり出ているのではないかと思います。
 そして次の方にまいります。これは宿泊をともなう旅行を聞きました。さすがに宿泊をともなうとお金の金額もグッと上がってまいりますので、一、二回という人が40%になっていますし、せいぜいで三、五回ぐらいまでのところで7割ぐらいを占めているというふうな感じかと思います。宿泊をともなう旅行の目的はと、これも記述式ですので観光などという何かとてもあいまいな形で出ていますし、それから温泉、ただやはり日帰りと結構違うんだなと思ったのが、友人に会いに行く、同窓会などを含めて人と会う、それからリフレッシュ、家族旅行という帰郷というようなもの、慰安旅行などというのも入っていますけれども、日帰りの旅が目的が花を見に行く、温泉に行くというふうに非常にクリアなのに対して、どちらかというとこれは心の問題というか家族のコミュニケーションであったり、自分のリフレッシュであったり、わりあい心の問題としてとらえている傾向があるかなというふうに私は読みました。
 さて、というふうな私どものざっとしたデータなんですけれども、この辺のデータをもとに私どもは日々記事づくりをしているわけなんですけれども、11月号をお配りいたしましたのは、本来は今もう1月号が出ているので1月号をということになるのですけれども、実はこの辺のデータをもとにほかの雑誌ではめったにあまりやっていないと思うんですけれども、歩く生活などというのを特集においたりしてみました。『ゆうゆう』という雑誌は50代女性の元気ときれいを応援するというふうなことをコンセプトにつくっていますけれども、元気もきれいも促すのがまさに今流行りのウォーキング、歩くことではないかというふうなことで、この企画をとりましたところ、実は1年前にも同じような企画をやって大変大当たりいたしまして、また1年たって同じような企画をやっているというのが現状です。
 実は私の方は、ウォーキング人口が 3,300万人もいるなんてことは、その数字は実は今回調べてみてわかったというのが実情でして、身の回りに歩いている人たちがたくさんいるというのはわかっていたのですけれども、まさかここまでというふうには思っておりませんでした。今の国民スポーツの本当にナンバーワンだそうです。その理由は皆さんお考えになっても単純におわかりになるんじゃないかと思います。
 まず、だれでもすぐにできるスポーツです。テニスとか水泳とかということになれば、それなりに何か練習しないとできませんけれども、ウォーキングなら距離にかまわなければきょうからでも、今すぐにでもだれでもできます。毎日でもできます。自分の家の周りでもできます。場所も選びません。それから服装も選ばなければ道具も要りませんというふうな、この手軽さが何よりなんだと思いますけれども、このウォーキングが流行った一番大きなバックヤードには、やはり今生活習慣病が流行っていて食事と運動といわれるんですけれども、その食事と運動の中の運動は一昔前はジョギングとかいっていましたけれども、それは心臓に負荷がかかり過ぎて、我々の年代はウォーキングが一番からだにいいとお医者さんが推奨されているということが、一番大きなバックにあると思います。
 ただ、もう1つ、私はここには書かなかったんですけれども、環境省の管轄になっているかと思いますが、今は日本ウォーキング協会、以前は歩け歩け協会というふうにいっておりましたけれども、日本ウォーキング協会の功績も大変大きいものがあるのではないかというふうに思っています。本当にだれでも手軽に気軽に参加できるようなウォーキングの里山歩きの会をあっちでもこっちでもやっていまして、大変低額で気軽に参加できるということで、あっという間に本当に3,300 万人というふうな、成人人口の半分に当たるといわれていますけれども、という人たちが何らかの形でウォーキングをやっているというふうに思います。
 私はそれを考えますと、里山歩きをやっているということで「自然がはぐくむこころとちから」というのが今回のテーマですけれども、里山歩きをすることによって、自然とふれあうというところまではかなり多くの人がきているのではないかというふうに思っています。ただ里山歩きぐらいですと、先ほどつつみ込むということを辻委員が提案されましたけれども、見るところからふれあう段階まで私は今大体多くの人がきているのではないかと思うんですけれども。
 自分が今度は具体的にもう少し主体的に歩くことを中心として、自分の遊びとして取り込んでいくということになってきますと、今はそれがもう少し分化してきて分かれてきていてタウンウォーキングのまち歩き派、人形町とか川越とかという所へ行きますと、休みの日はたくさんの人が歩いていますし、カルチャー派といわれるように、例えば「京都・鎌倉を歩く」とか、それから最近は「仏像をみる」、「仏塔をみる」などというのが週刊誌レベルでも雑誌が売れるというくらい流行りになってきています。それから"マニア派"というふうに勝手に名づけたんですけれども、養老先生のように昆虫が好きだから自然の中を歩くという方もいらっしゃるでしょうし、チョウが好きだという方もいらっしゃいますし、写真を撮るのが目的だという方もいます。それから自然派というふうに名づけましたけれども、本当にネイチャリングをなさる方たちというのが一方でいると思いますし、"田舎暮らし派"というふうに書いたんですけれども、地方へ行って農作業をするあるいは里山の整備をするというふうに、ちょっと暮らしの中に結びつけている人たちというのも増えてきています。それからウォーキング派というのを残しましたのは、元来それでもこれだけの距離を歩くぞとか、これだけのタイムで歩くぞという、ウォーキングを競技的にとらえている方たちもいらっしゃいますので、そういう方はそういう方で残っていくのではないかと思います。
 ということで、ウォーキングということでかなり今ふれあうところまできたというふうに思いますけれども、私も辻委員の言葉を借りれば最終的には自然の中に包まれる、自然と本当に対話するというふうなところまでいくと、皆さんが本当に環境問題というのを具体的に自分の問題としてとらえられるようになるのではないかなというふうに思っておりまして、ここをもう一歩本当に自然と本当に向き合う、つき合う、つつみ込まれるというふうなところまでいくにはどうしたらいいかというのが、今の一つの課題かなというふうに考えています。環境教育といいますと、どうしても若い人たちが中心になって、それはもちろん本当にそのとおりなんですけれども、せっかくここまで自然の中に入ってきた人たちに、もう一歩進める方法はないだろうかということを、今後の大きな課題として取り組んでいきたいなというふうに考えております。
 一言、まったくその関連で言わせていただきますと、実は私自身は山歩き派の中に入っておりまして、もう一歩進めて山まで行きますと、本当に自然と対話するというか、自然の怖さというのも十分に味あわされておりますので、本当に否応なく自然と向き合わざるを得なくなる、つき合わざるを得なくなる。昨今の中高年の山の事故が大変多く増えてきていることを考えますと、多分ウォーキングの里山歩きの中からもう一歩進んで山に踏み込んでくる人たちが大変増えている。ただ、残念ながら山になりますと、それなりのノウハウなり知識なりがないと、やはり危険性がともなってくるのですけれども、なかなかそこをうまくつないでくれる場がない。次にエコツアーのお話があるかと思いますが、エコツアーも一つの方法ですけれども、山歩きなどももう一つうまく、そこへ踏み出していきたいという人についてのノウハウが、非常に気軽に身につくような方法があるといいなというふうに考えております。
 以上をもちまして、ありがとうございました。

○安原委員長 山本委員どうもありがとうございました。
 それでは残念でございますが、小池大臣が退席される時間となりましたのですが、大臣何かございましたらお願いいたします。

○小池大臣 委員の皆さま、本当にお忙しいところ、ご協力を賜わりまして、またいろいろな新しい発想、切り口をお与えいただきまして本当にありがとうございます。
 いくつかのご指摘もございました。まさにこれからの経済とそして環境の好循環、これを私はきっちりとうまく進めるようにいくと、今の日本が、うなだれている日本がシャキッと元気になる一つのきっかけにもなろうと思います。また先だって、COP9でイタリアのミラノに行ってまいりまして、いろんな国々と意見交換をしてまいったんですけれども、この点、つまり環境と経済の好循環ということでいうならば、むしろ日本がモデルになれるぐらいの勢いでやってもいいんじゃないか。むしろ自信を持って私自身帰ってまいりました。また、養老先生がおっしゃいましたけれども、やっぱり櫂より始めよで、官庁省内でもいろいろとやってみるべきことがある。つまり、また国内においてしっかりと実証というか実績をつくることが、また外に向かって話をするときの迫力になるというふうに思っておりますので、この委員会でぜひともさらなるご指摘、そしてご指導を賜われば大変うれしく思っているところでございます。
 ちなみに、たまには環境省も緑の中でとおっしゃいますけれども、司会を今進行していただいているのは谷みどりさんでございまして、環境省内で"みどり"がしっかりと仕切っておりますので、その辺ところちょっと加えさせていただきます。どうも本当にありがとうございます。

○安原委員長 大臣どうもありがとうございました。
(小池大臣 退席)
 それでは、審議を続けたいと思います。次は財団法人日本交通公社の小林理事からでございます。よろしくお願いいたします。

○小林講師 財団法人日本交通公社の小林でございます。よろしくお願いいたします。11月に小池大臣の肝入りでエコツーリズム推進会議というのができまして、エコツーリズムというと多分何だろうと思われた方もいらっしゃると思うので、きょうはエコツーリズムとはどういうことかという、あまりむずかしい話ではなくて実態を中心にお話ししながら、それが経済とどう関わるのか、私は逆に環境と関わることが経済的価値を持つと思っているのですが、こういったことをお話できればと思います。
(以下、パワーポイントを用いて発表)
 早速、現状ですが、エコツーリズムという言葉は聞かれたことがあるけれども、どんなことなんだろうという実態をまずお話ししたいと思います。いくつか代表的な事例をお話ししたいと思うのですが、これは知床の例なんですけれども、知床の斜里町が知床財団というものをつくりまして、自然保護活動と同時に自然を案内しております。ここのおもしろさというのはマニアックな人だけを集めるのではなくて、一般の観光旅行、我々JTBがやっているような旅行に専門家が乗り込んできて、バスガイドさん以外にそういう専門家の方が乗ってきて案内するのです。こういう旅行は今どんどん進んでおりまして、単なるバスガイドさんだけではだめなんだと。やっぱり自然の専門家に乗ってもらわなければならないというような流れが出てきているという事例です。
 これは民間で早くからエコツーリズムをやっている自然学校なんですけれども、富士山麓にありますホールアースです。ここのおもしろさは例えば関西からの修学旅行で1日は富士山麓で自然体験ができて、次の日はディズニーランドへ行くというものです。子どもたちに聞きますと、ディズニーランドよりも実は自然の中の方がおもしろかったよというアンケートが多くなるのです。行く前はディズニーランドを何で2日にしてくれないんだという話なんですが、実際に行ってみると子どもたちにも非常に評判がいいということです。今では年間約6万人扱っています。ここのおもしろいところは、さらに自分たちで宿泊施設をつくってしまうと地元が潤わないということで、わざとつくらないのです。そのことによって地域に宿泊だけで約8~9億円の経済効果を及ぼしているのです。つまり、何もない森とプログラムというアイデアだけでそれだけの需要を起こしているという意味で、これは非常におもしろい事例です。ちなみに、最近こういうことが商売になるということで、ほかの自然学校もたくさんできています。
 これも民間なんですけれども、星のリゾートが一事業業務として自然ガイド案内を立ち上げまして、今年これを別法人、つまり株式会社にしましたけれども、ここの社長の星野さんという方は非常に広い考え方で、自分のところの事業なんですけれども、軽井沢のあらゆる宿泊施設に案内を出して人を集める。軽井沢の一つ新しいリゾートの魅力にしようということでやっております。もう1つ、おもしろいことは、単なるガイドではなくて三泊四日程度で軽井沢の自然を徹底的に楽しむというツアーをやっておりまして、これも非常に人気があります。
 次は、屋久島なんですけれども、屋久島野外活動総合センターというエコツアーで、これも民間企業です。もともとは3人でそのうち1人が環境省の元レンジャーなんですけれども、この3人で始めて今は8人の会社です。とりあえず食えるようになるまで10年かかりましたという話です。
 ここのおもしろいところは、写真にありますように自分の足で自然の中を歩くということ。カヌーを使って川を楽しむあるいはスキューバーダイビングで海に行く。いずれのプログラムも1万 5千円です。代表のマツモトさんに、なぜスキューバーダイビングもカヌーも歩くのも同じ値段なんですかと聞きましたら、我々が売っているのは屋久島の自然の仕組みという情報を売っているのです。だから遊び方も種類によって値段は変えないのです。つまり、遊び方というのは手法であって目的は屋久島のことを知ってもらうことなんだと。ですから同じ値段で売っているんですよという。これは非常におもしろい発想だと思うのです。
 今では屋久島はこういうレジャーガイドが 100人以上おりまして、最近ではその質の問題が次のステップとして取り上げらています。ちなみに、こういう動きが出てきたおかげで屋久町の人口というのが、若干ですけれども増えております。
 次は、これは中山間地のモデルとなると思っているのですけれども、飯田市で進めている地域エコツーリズム。グリーンでありエコなんですけれども、地域ごと丸ごとで人を受け入れようと。おもしろいのはもともとグリーンツーリズム的発想なんですが、それだけですと人は呼べないということで、この写真に出ていますけれども、天竜川で川下りを始めたのです。そのためにニュージランドからインストラクターを呼んできまして、これを目玉にして人を呼び込み、そのあと農家実習をやるんですね。飯田市周辺だけで 400の農家がこのプログラムに参加しています。96年は実は学校の数でいうと6から7学校だったのですが、今は 220団体、わずか7年ぐらいで急成長しまして、まちぐるみで取り組んでいる非常におもしろい場所です。そのほか西表含めていろいろまだあるのですけれども、今代表的な事例を紹介しました。
 では、エコツーリズムと今までの観光とは何が違うんですかという話をよく聞くのですけれども、エコツーリズムという言葉でいうと、エコロジーを見せるツーリズムなんですね。エコロジーを見せるとは何なのかということなんですけれども、私はこんなふうに考えています。生態系を見せるというのは言葉でいうと簡単なんですが、なかなかむずかしいんですね。よくお話をするのは水族館を事例にお話するのですが、今までの水族館というのは最近行かれてないかもしれないですが、汽車窓式といって順番にガラスの窓があるんですね。水族館って実は昔は一生のうちに3回しか行かないといわれたのです。子どものときと子どもが生まれたときと、孫が生まれたときですね。
 ところが最近の評価は違うのです。何回行ってもおもしろい、何でおもしろいかというと今までみたいな汽車窓ではなくて、あるテーマのもとに大きな水族館をつくるのです。最近ですと沖縄の美ら海(ちゅらうみ)というのが非常に有名なんですけれども、もともとは大阪の海遊館がこれの走りなんですね。どうしているかというと、生態展示ということで、例えば海遊館ですとビルの4階にあたる大きな水槽に黒潮の生き物というのをテーマにいろんな魚を入れちゃうんです。そうすると、自分の目当ての魚を探すのは大変なんですが、その魚はどういう環境あるいはほかの魚とどういう関係で棲んでいるかというのがわかるわけですね。もっと簡単にいうと、見ているだけで楽しいんです。いろんな魚が上を泳いだり真ん中泳いだり、下を泳いだりしているわけですね。そういうものを見る、つまり関係性を見ているわけなんですね。ですから、行くたびに違うわけですから、行ってぼけっとしていてもいいわけなんです。
 実際に美ら海(ちゅらうみ)水族館などは座席がつくってあって、じぃっと座れるようになっているんですね。こういうのが新しい水族館の見せ方なんです。つまり、従来の知識として知るということあるいは水族館がコレクションをするとか、そういうことではないんですね。新しい水族館というのは生態系を見せようという、いわゆる疑似コスモス的な、ミクロコスモスですね。そしてそれぞれの水族館でテーマがあります。例えばいわきですと、親潮と黒潮はどう違うのか。潮目の海では両側に大きな水槽があってその間を人が歩けるのです。見ているとおもしろいのは冷たい水の魚というのは動きが遅いんですね。暖かい水のところの魚は速いのです。そういうのが一目でわかるんですね。そういうストーリーを見せるということが新しい水族館です。今大体5割がこういうふうになっています。
 つまり、観光もこれと同じだと思っているんですね。それぞれ別個に今まで見せていたのが従来の観光ですね。次々スポットを回っていくわけです。ところがこれからの観光はエコ的、エコツーリズム的観光というのは、それぞれがどう関わっているのか。人と地形、植物とか動物はどう関わって暮らしているのか。そのことが結果としてどういう文化を残してきたのかとか、あるいはそのためにどこにどういうものが蓄積してきたか。こういったことを見せるわけなんですね。そうすると、何が起こるかというと一つひとつ見ると大したものではなくても、ストーリーの中でそれを知るとおもしろいんです。これはどこの場所でもこんなことができるんですね。逆にいうと、地域の人も「あっ、自分のところってこういうところだったのか」とわかるわけです。ですから、地域全体が観光資源化するというのがエコツーリズム的な観光なんです。これからの21世紀の観光に非常に合うのではないかなと思います。
 もう1つ、よく聞かれるのが「エコツーリズムって野生動物を見ることじゃないの」とか「カヌーでマングローブの中を行くことでしょう」といわれるのですけれども、実はそうじゃないんですね。時間がありませんのでちょっとはしょりますけれども、これはオーストラリアの観光といいますか旅行にこんなマークが貼ってあるのです。24あるのですけれども、1つの旅行にこんなことあんなこと、こんなことといっぱい貼ってあるんですね、1つだけのものもあるのですけれども。その中に野生生物を見る旅行、環境を知る旅行とあるのです。日本でいうとこれはみんなエコツアーなんですけれども、そうではなくてその中にエコツーリズムというのがあるのです。どういうものかというと、環境に対するインパクトを最小にするような方法で運営管理されている。そういう旅行のことだと書いてあるのです。
 それはどういうことかというと、野生生物を見る見方あるいは環境教育という要素が入っていても、自然に対してどのようなインパクトを与えているかという、そういう考え方がエコツーリズムなんです。ですから、よくいわれるのはエコツーリズムというと、小さなマーケットの話でしょうといわれるけれども、そうではなくてエコツーリズムというのはすべての活動に関わる話なんですね。そう考えないと、たかだか5%とか10%のことに対して大騒ぎすることないんです。そうではなくて、あらゆる旅行とか活動はエコツーリズム的になる可能性を持っているということで、こういう幅のある非常におもしろい考え方なのです。
 ですから、1つの旅行を見てこれがエコツーリズムでこれはエコツーリズムではないとかは判断できないんですね。時間がなくなってきましたので、これはいくつかこういうことだということで先へ進みます。次にまいります。
 つまり、少し整理しますと、今まで観光というのは観光産業、環境はただ環境、つまり環境活動家が勝手にやっているよという話だったのです。コミュニティも「どうもうちのところに観光客がくるけれども、あまり関係ないよね」と考えています。それぞれ3つがバラバラでした。あるいはコミュニティの中に他の産業も入りますけれども、これも観光とは関係ないよねという話だったのですけれども、今はこれが重なってくる、あるいは重ならないと新しい形で持続可能ではないだろうと思っているわけです。
 観光産業と地域コミュニティが関わると、地域貢献という話になります。そして観光産業と環境が関わると、環境への配慮した観光という形になります。そしてコミュニティの環境が絡むと、どうやってそれを保護していくか。コミュニティがどう関わるのかという話になるんです。この実は真ん中に楽しく学びながら環境にも地域コミュニティ、地域経済にも関われる観光産業のあり方があるのではないかと、ここにエコツーリズムの可能性があるわけですね。もっとも楽しく学ぶためには、それをわかりやすく説明しないといけない。説明するために環境のことがよくわかっている研究機関がないといけないんですね。ですから、エコツーリズムと自然体験型観光、環境教育との関係で見るとこういう形の旅行があるということです。
 細かく話している時間がないのですけれども、1つは経済との関わりによってスモールビジネスが起こせるという、これは数年前に国際エコツーリズム年というのがあって、私オーストラリアの会議に出たのですが、その会議でその1年間、エコツーリズムの支援を日本でいう中小企業庁が支援するというのでびっくりしたのです。環境庁ではないんですかと聞きましたら、「そうじゃないんだよ」と、もう既にそういうことはビジネスとして起こっているから中小企業庁で育てているのです。ちなみに、オーストラリアではエコツーリズムに関わっている事業者は 4千あります。それぞれの地域で1人から多くて七、八人ぐらいでいろんな事業を起こしています。これがおもしろいところなんですね。
 それから当然、地域のいろんな資源の関係性を知るわけですから、住民の意識が向上する。もう1つおもしろいのは、こういうところに参加していろんなことを学ぶと、普段の生活の中にそういうことを考えようという意識が芽生えてくるのです。今まで旅行というのは非日常ですから日常とは遠い方がいいのだと、関係ないんだといっていたのですが、非日常で得てきたものを日常で活かせるというクロスオーバーになったのです。これは先ほどいいましたように、どこの地域でもできる可能性があると、プログラムさえうまく考えれば。そして自然環境に役立つということですね。では、どこでもできるのかというと実はそうではなくて、そのためにいろんな仕掛けがあるのですけれども、ちょっときょうは時間がありませんので、1つだけおもしろいお話をします。
 実は、受け手側だけではなくて、行く側も実は意識改革をしないといけないんですね。これは何かというと、オーストラリアにカカドウという大きな国立公園があるのですが、ここへ行くといろんなマニュアルを売っているのです。これは小学生の高学年を連れてくる先生用のマニュアルなんです。ちなみに業者側のマニュアルもあって、うちの国立公園へ人を連れてくるなら最低これぐらいのことは知っていてねというマニュアルも売っているんですね。これは非常におもしろいんですよ。
 話を戻しますと、学校の先生が連れてくる前に何を子どもたちに教えたらいいか。国立公園に来たらどんなことをすればいいか。帰ったらどんなことを話し合ってほしいかという 130ページぐらいのマニュアルなんです。その中の1つに非常におもしろいのは、国立公園へ連れてきたらそれぞれの子どもたちに下にあるような、こういうふうに子どもの絵が真ん中に描いてあります。こういう真っ白な紙を持たせて、みんなが見えないところにばらばらに座らせてくださいと。それで子どもたちに、あなたが今座ったところで聞こえてくる音、音の大きさとか高さとかリズムとか、そういったものがどっから聞こえてきたのか、この白い紙に書きなさいと書いてあるのです。そうすると、いろんな形の波形とか点々とかいろいろ書くわけです。で、何を知ってほしいのかというと、この熱帯雨林がいかに多様性にとんでいるのかということを子どもに気がつかさせなさいと書いてあるのです。つまり、なぜいろんな音がいろんなところに聞こえてくるのという質問をしろと書いてあるのです。
日本だとどうなるかというと、この国立公園には植物が何種類で動物・昆虫が何種類、鳥が何種類、すごいでしょうと、それはすぐ忘れるんですね。そうではなくて子どもが自分の感覚でそういう多様性を知るということを教えるわけですね。これもそうですけれども、いろんな遊び方のプログラムがあります。
ここまでですと何か環境教育っぽいなと思われるかもしれませんが、実はそうではなくて、私の考えはエコツーリズムの本質というのは、こういうところで1時間ぐらいぼけっとすることだと思うのです。一番大好きな場所なんですけれども、ここは(資料5ページ写真参照)カカドウ国立公園の丘の上なんですけれども、大湿原の向こうに夕日が沈んでいくのです。この湿原にカササギなどという雁が数万羽棲んでいる。それが風にのってその鳴き声が聞こえてくるのです。ここではみんな何もしないのです。1時間ぐらいぼけっとしているのです。最初、日本人の観光客を連れていって10分ぐらい写真を撮ると、みんな早く帰ろうよというのです。そうではなくてここで1時間いるんだというと、みんな最初は「うーん」とか言っているんですけれども、そのうち一緒になって座って、ここが一番よかったとあとで言うのです。つまり、学校教育っていろんなことを教えることではなくて、自分で感じる場とかの機会をつくってあげるのが、実はエコツーリズムなんですね。ここは非常におもしろいです。
 これはまた別な国立公園なんですけれども、水色の服を着ている人がネイチャーガイドなんですが、きょうは僕のとっておきの場所に連れて行ってあげるよというのです。いろんなところを説明したあとに連れて行ってくれるのです。その海岸でお昼を食べるのですけれども、エイとかサメとか海ガメがときどき顔をパッと出すのです。運がよければジュゴンも出てくるので、こういうところで1時間ぐらいぼけっとしていると、めちゃくちゃに印象に残るんですね。これが実はエコツーリズムの本質だと私は思っております。
 最後はちょっととばしますけれども、では、実はこんなことで本当に経済よくなるのかというお話なんですが、これはオーストリアのチロルにあるレッヒ村なのですが、40年前には 120ベットのいわゆる普通の牧場のある寒村だったのですが、今は 6,748ベットの高級リゾートです。ちなみにダイアナさんを含めてヨーロッパの皇室が泊まりにくるという高級リゾートです。高級というか高質なリゾートなんですね。ここの人たちは環境のことをめちゃくちゃ大事にしているのです。そのことが非常に高いお金をとれるいいリゾートになっているんですね。
 どんなことをやっているかというと、これはスキー場の夏なんです。ここのスキー場の社長と話しました。社長にお宅のスキー場では草植えているんだって、夏になったら花が咲くような草でしょうといいましたら、何言っているんだよ、単なるグラスじゃないんだと、これは大学と研究してどういう植物であれば侵食に強くて話が咲くのかというのを研究したんだよと、おまえがいうようにグラスの種をただ植えたのではないんだというのです。
 そして冬にはどうしているかというと、植物というのは凍結しないでホルモンを出すのだそうです。最初に寒さがきていったん緩んで、もう一回寒くなるとそのホルモンが一番出る。そのときに人工雪を一気にかぶせちゃう、そうすると侵食されにくいと。そういうことを大学と一緒になって研究しているというのです。つまり、ここが侵食されると下に土砂が流れて環境汚染になるということを徹底的に研究している。もっとおもしろいのは、住民がお金を出し合ってトンネルを掘っちゃったのです。何でトンネル掘ったのと、そのトンネルの話を聞いたので見に行ったのですが、せっかく雪国へ来たのに車がそばを通ったらいやでしょうと、たがらみんなでお金を出して車を下を通れるようににしちゃったというのです。そんなことしたらツアーのお金が高くなるじゃないかと。でも、そういうことをわかって払ってくれる人がくればいいんだよということで、実はそういうお客さんがいるかどうか日本では問題なのですが。
 環境の質を高くすることによって、いいお客さんが来てますます評判になるというのです。そういう仕掛けをつくっています。ちなみ電気カート2台がすれ違えるぐらいのトンネルを掘っています。そして当然こういうところですから、いい意味での規制がいっぱいあるのですけれども統一感があるんですね。
 これも高級ホテルなのですけれども、道路側からみると大したことないなと思うのですが、向こうから見ると立派なプール、エステ、サウナというすごい施設がそろっています。
 指さしているのは何かといいますと、チロル州ではこういう環境の基準を決めて、これを通ったところにはマークをあげているのです。これを実は商売に使っているのではないかと思って聞いたところ、いや、やることは当然だからやっているということで、日本人はちょっとだめだなと思っているのですけれども、こういうおじさんがにこにこと指さしているのがマークです。ちなみに、ビンなんかもいろんな色分けをして収拾しているのです。
 これも近くの環境にいいホテルを見に行ったのですが、もっと面白いのは、観光で儲けたお金を農業育成に使っているのです。何でそんなことやっているんだと、周辺の農家から倍の値段で乳製品とかを買っているのです。あるいはみんなでお金を出し合って屠殺人(肉処理業者)を雇って農家のためになるようにしているのです。何でこんなことをやっているかというと、環境がいいからいいお客さんが来るのであって、観光が周辺の産業を支えなければいけないという意識なんですね。それでこんなおもしろいことをやっているということですね。
 ちょっと時間オーバーしたということなのでこれで終わりますけれども、環境というのは実はよくするとお金になるというのは、なかなか口で言ってもわからないのですが、現実にこういうふうにやっているところがあるというのを見てくると、やっぱり環境って大事にしないといけないなと、あるいはそういう仕組みをつくらないといけないなということがわかると思います。最後になりましたけれども、ですからエコツーリズムというのは単なる自然体験の旅行をいっているわけでも環境教育型の旅行をいっているわけでもなくて、もっと深いところで環境と観光あるいは他の産業が関わっているといお話だと思います。
 時間がまいりました。どうも失礼しました。

○安原委員長 小林さん、どうもありがとうございました。これできょう意見発表をお願いしておりました4人の方の説明がおわりました。
 それでは、冒頭に申し上げましたように、今回初めてご出席いただきました黒須委員の方から簡単なご紹介と現時点における環境と経済の好循環のお考えにつきまして、ご意見をいただければと思います。よろしいお願いたしいます。

○黒須委員 ご紹介いただきました八王子市長の黒須隆一でございます。新たに委員として就任をさせていただいたわけでございますけれども、自治体関係者は私一人ということで若干緊張いたしておりますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
 私は、現在全国市長会の廃棄物処理対策特別委員会の副委員長を務めております。また、東京都の自然環境保全審議会の委員、また圏央道というのをご存じだと思いますけれども、首都圏中央連絡自動車道建設促進協議会の会長等も今務めさせていただいているわけでございます。環境と経済の好循環というテーマでございますけれども、これは改めて申し上げるまでもないのですが、現状の経済活動、これの環境への負荷あるいはまた鉱物資源の枯渇ということにもつながっているわけでございまして、環境問題が今や地球規模での大きな課題となっていることは改めていうまでもないことでございまして、全国の自治体の代表としてこの委員会に参加をさせていただく機会をいただいたということを、私、大変うれしく思っております。
 全国市長会の廃棄物対策特別委員会での活動でございますけれども、私は本年の6月に副委員長に就任をいたしたわけでございますが、目的は廃棄物処理対策のあり方等に関する調査検討を行っているわけでございまして、現状の重点課題が今3つございまして、ダイオキシンの発生を抑制するための施設改善の取組みということでございまして、これは清掃工場、ごみの焼却場でございますが、この焼却場を新しくするかというときに、古い焼却場の煙突の解体ということがこれ今大変大きな課題になっておりまして、かつてはひとつの煙突を規模にもよりますけれども、 3,000万とか 5,000万程度で解体ができたわけですけれども、今はダイオキシンの処理というもの、これを義務づけられておりまして、一本解体をするのに5億円前後かかるということでございまして、これが今自治体の大変大きな課題になっておりまして、財政的な支援をぜひ考えてほしいというような取組みもいたしているところでございます。
 また、容器包装廃棄物の発生抑制及び不法投棄防止策の仕組みづくりにも今取り組んでおりますと同時に、もう1つが家電製品のリサイクルの推進、これらが今大きな課題とて取り組んでいるところでございます。また、せっかくの機会でございますので、私どもまち八王子での環境への取組みというものをちょっとお話をさせていただきたいと思います。
 まず、私どものまちの人口でございますが、現在53万人でございます。面積は 186平方キロメートル、これは都心の皆さんはこの方がわかりやすいと思うのですけれども、山手線の内側のちょうど3倍の面積でございます。ですから、面積としてはかなり広い面積を有しております。現在、最先端技術産業の分野で活躍をしている中小企業が 2,000社ございます。また、大学も21ございまして、11万 4,000人の学生さんが学んでおられます。また、当然都心に近いわけでございますので、都心から40キロ圏内というようなこともございまして、ベットタウンでもあるわけでございます。そういう意味では首都圏の文字通りの中核都市のひとつと、こういうふうに私どもは認識をいたしておるわけでございます。
 2年前でございますけれども、2001年を私どもの八王子市の環境元年という位置づけをいたしまして、環境基本条例の制定をいたしました。現在その条例に沿いまして、市民の皆さんそしてまた事業者、また私ども行政との協働によります環境基本計画を今、具体的行動計画として策定をいたしております。今、お話しましたように面積が非常に広いということもございますので、それぞれの地域を6つの地区に分かれて、それぞれの地域でこの基本計画を今つくっているところでございます。
 毎年私どもは世論調査をやっているのですけれども、ことしも9月にやりましたが、その中で90%の市民の皆さんが、八王子にこれからも住み続けたいという、すなわち定住意向を持っておりまして、そのこと大変私どももうれしいことでございますけれども、その90%近い方々の半分以上、約60%の方々の最大の八王子市に住み続けたい理由として、緑豊かな自然環境を挙げているわけでございます。
 高尾山は多分ご存じの方多いかろうと思いますけれども、高尾山はわずか標高 600メートルの山でございますけれども、年間 250万人の方がのぼられます。これは世界一だそうでございまして、その高尾山を中心にして明治の森国定公園等もございます。ですから、森林の保全ということと観光産業の育成というのは、これはひとつの私どもテーマになっておりまして、ことしの春には"環境とふるさとづくり"ということをテーマにいたしまして、環境NGOの財団法人オイスカさんと一緒に勉強しまして、約 500名のボランティアの皆さんのお力添えをいただいて、この中には留学生の方とか各国の大使館員の方々も大変大勢さん参加をしていただいて植林ですね、植樹作業を行いました。
 私どもの今後の課題といたしましては、環境と経済の好循環を目指すためにも地方自治体として市民、事業者と協力をしながら地域からの取組みを進めてまいりたい。このように考えておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました。

○安原委員長 黒須委員どうもありがとうございました。養老委員も今回初めてのご出席でございますが、先ほど意見発表をいただきましたので、特にございましたら何か……省略させていただいてよろしゅうございますか。
 それではそうさせていただきます。それではありがとうございました。次に事務局の方から説明がございましたらお願いします。

○谷環境計画課長 事務局から資料をご説明させていただきます。まず、資料6の1枚紙をごらんください。資料6「環境と経済の好循環専門委員会」の今後の予定案でございます。第4回でございますが、1月16日、15時から、次回は「もったいないが生み出す資源」ということでJFEの小倉委員、そして今お話をいただきました八王子市長、そしてNPOの代表といたしまして崎田委員、それから講師といたしまして帝人の長島副社長からリサイクルのお話をいただき、また前回の会議のときにご発表をいただけるというご意見をいただきました深尾委員からご発表をいただくという予定でございます。その後の日程もこちらに書いてございます。
 次に資料7-1でございますが、これは自然エネルギーの関係の参考資料ということで、世界のエネルギー需給見通し、日本のエネルギー需給量、それから新エネルギーの今後の見通しなどの参考資料でございます。
 また次の7-2は、先ほど小林先生からご説明ございましたエコツーリズムの推進会議でございますけれども、大臣のイニシアチブでこのような開催要領ですとか委員名簿ですとか、今後の検討スケジュールなどがふれてございます。こちらの様子も適宜勘案しながら今後報告のとりまとめに移ってまいりたいと思います。あとの資料はもうご参考まででございます。
 以上でございます。

○安原委員長 はい、ありがとうございました。では、この資料説明はよろしいですか、「新エネルギー」は。

○谷環境計画課長 はい。

○安原委員長 では、各自でご参照いただけるかと思います。大変皆さん、発言時間につきましてはご協力いただきましてありがとうございました。大体予定どおりでございまして、あと27分ぐらい残っておりますので、これまでのご発表に対するご質問とかあるいはご意見等ございましたら自由にご発言をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○小倉委員 ちょっと感想みたいなものでもあるんですが、きょうのお話聞いていましても消費者が本当に環境にいいことって何かということが、データも含めて情報として持っているかという問題提起なんですけれども。「環境と経済の好循環」ということは、環境にいい製品がバンバン売れているようであれば、わざわざ環境と経済に好循環などという必要はないわけで、やっぱり環境にいい商品というのは多少高いということで、それがきちんと売れれば好循環であると。それはおそらく旅行なんかでもそうなんでしょうけれども、商品なんか特にそうだと思うんですね。
 その中で商品を買う人たちは我々消費者であって、その消費者とのインターフェースのところで情報がどうもつながっていないんじゃないかと。例えばシャープの製品がこんなにCO2が少ないというのを伝えるには途中に入る流通っていうんですか、ものを、家電製品を売っている場所にそれがもっときちんと書いてあれば、我々はおそらく商品を買い換えるときに、多少高いかもしれないけれども、これはCO2が少なければこれを買おうじゃないかというふうにもなるのではないか。という意味でも、やはり流通はできるだけ安くてたくさん利益のあるものばかり売る傾向になる。そこでも、もう少し環境にいいものをもっと売るということが必要になってくると。
 要するに何が言いたいかというと、消費者とのインターフェースのところにもっと情報をきちんと掲げて、我々消費者が見えるような形にすると好循環という意味ではよくなるのではないかなと思いました。

○安原委員長 ありがとうございます。崎田委員どうぞ。

○崎田委員 今、消費者にわかりやすい情報をというお話がありまして、それはきょうの自然の話にちょっとつなげて、ちょっとひとつ意見を言わせていただきたいと思って手を挙げました。
 きょうのお話をうかがっていて、結局人と自然の共生っていつもみんなで話し合っていますけれども、人と自然が共生する社会をつくると、地球が元気になるだけじゃなくて人間も元気になるし、そして地域も元気になって経済社会が好循環になっていく。そういう社会がつくれるんだよという、何かそういうようなイメージが見えてきたんじゃないかなというふうな感じがするんですね。
 そのときに、いろいろあったとしても具体的な情報として、きょうひとつすごく感じたのは、例えば『ゆうゆう』の中の読者というか消費者が、好きなこととか旅とかガーデニングとかいろいろなことがありますけれども、今既にある情報、今既にある行動、そこに環境的な視点を入れるとどういうふうにつながるのかという、そういう情報がうまくつながっていけばとても素敵な環境状況とかライフスタイルがすぐにできていくような気がするんですね。そういうふうにまったく新しいことをしなければいけないというのではなくて、今あるそういうさまざまな消費者が好きなこと、楽しみでやっていることに環境的な視点を入れる。もちろん、エコツーリズムのお話もそうですが、そうすると、どうなるかということをはっきり見せていくということが好循環につながる、すごく早い道なんだというふうにきょうは感じました。  そのときに情報だけではなくて、あとつなぎ手の人というのが必要なんだと思いますが、今までいわゆる93年の環境基本計画のあと、全国の都道府県や市町村でかなり環境リーダーとかいろいろな環境に関心のある人、環境活動のつなぎ手の養成とか地方自治体もすごく進んできているので、例えばそういう方たちが今環境活動としてやっているようなグループが、市民活動とかNPOが多いのですが、そういうグループとこういう現実の状況とがうまくつながるような、そんな仕掛けとか情報提供を持っていくという、そういうこともあるんじゃないかなというふうに感じました。

○安原委員長 どうもありがとうございました。重要な点をご指摘いただきました。

○安井委員 やはり小倉委員のお話にちょっと触発されまして発言いたしますが、今おっしゃったのはそのとおりでございまして、やはりインターフェースのところでしっかりと情報が伝わなければいけないという意識を持っているのでありますけれども、我々がやっている小さないくつかの研究の中で、環境情報というものを見て、実をいうとそれだけでは消費者は動かないという結論なんですね。
 なぜ動かないのかといいますと、その情報を受け取るだけの知識体系を持っていないということが非常に重要で、これははっきり言えば環境教育をいつからやるかという話になってしまうんですけれども、その環境教育も小学校、中学校の教育からやっていたら10年表、20年かかってしまいますので、それを何かショートカットして小さなコミュニティとかほかのところでもって少し早い教育手段が行われないと、そういう環境情報というもの、そのものはあまり有効には使えないということが、どうも今の定説のようでございます。
 そのほかにもいろいろ情報に関してはございまして、先ほどのシャープの辻さんからお話いただいたような話も、世の中にはいろいろなことをおっしゃる方がおられて、例えば太陽電池の話でも、結局最終的にはエネルギー源になっていないということを堂々とおっしゃる方もおられるんですよね。そういうことに対して、確かにどこからどこまで考えるか非常にむずかしいところはありますけれども、やはり事業者側としてもちゃんとしたデータをぜひ出していただきたいし、液晶テレビについても確かにランニングは消費電力は少ないのですけれども、製造のときの半導体プロセスにどのぐらいエネルギーを取っているかとか、そういうようなところを突っ込まれてしまうとなかなか答えが出ないというようなこともあって、十分な情報でないという部分もまだあって、情報そのものの脆弱性といいますか、それも改善しなければいけないのかなとは思っていますが。

○安原委員長 ありがとうございます。何か辻委員ございますか。

○辻委員 トヨタさんもおられるので製造業からまたいろいろあるとは思いますが。今、小倉さんがおっしゃったことにつきましては、確かに店頭の中での徹底ということはひとつあると思います。ただ、私どもは物をつくっている立場なんですけれども、環境に対する関心度というのは、ユーザーはやっぱり以前と比べて大変高くなっていますよ。特に見ていますと高齢者より若い人の方が、冷蔵庫にしたって洗濯機にしたって何にしたって、その統計はちょっと取っていませんけれども、大変関心度が高いなと。したがって、例えば商品なんかの場合はもう環境というキーワードでものづくりのあらゆる面で、要するに商品企画をする段階で環境という問題をひとつのテーマにもう入れてあるのです。製品をつくるときに、これは環境に対してどれだけプラスがあるかということですね。
 そこまでやっぱり考えてものづくりをやっておるのですけれども、今おっしゃったことに対する、もちろんPRということは確かに必要だと思いますね。特に省エネとかいうものに対する関心度は私たちの想像以上に高いというのがまず1つです。それからもう1つ、先ほどの発表の中で山本さんから里山の話、ウォーキングの話がありましたね。私はそのとおりだと思うんですが、そこでつつみ込むと私が申し上げたのは、もうひとつ突っ込んで自然を守り、自然を警備するという、そういうところまでやっぱりもっていく。そうすることがひいては自分たちのメリットになる。先ほどエコツーリズムとかで最後の方からお話がありましたですけれども、ああいう形になれば新しい仕組みも軌道に乗るのではないのかなというふうに思います。
 それから液晶テレビはいいけれども、つくっているところでたくさん使っているじゃないかということでございますけれども、それは先ほど私が申し上げましたように、少なくとも新しい商品をつくる、新しい工場をつくるといったときには、環境負荷がかからないようなことについて、つくり手側は大変努力をしているんですよね。もちろん、それはPRが不足かもしれません。だけれどもそれはものをつくるわけですから、どうしてもやっぱりエネルギーは使うわけですけれども、同じエネルギーを使うにしても環境負荷のかからないような工場にするためにはどうしてるのかということは、また何かの機会にお話をしてもいいと思いますけれども、そういうことについては先ほど3つ申し上げましたけれども、絶対はずしてはいないというふうにご報告しておきたいと思います。

○安原委員長 どうもありがとうございます。ほかに、神津カンナさん。

○神津委員 ちょっとお伺いしたいなと思いまして、液晶テレビとプラズマテレビの比較のことがちょっと出ていましたけれども、プラズマは私は持っているわけではないのですけれども、この前ちょっと持っているところに行って来たら、かなりやっぱり排熱というか熱が非常に出て、狭い部屋で見ていたら暖房いらないから結構節約になるかなとは思ったんですが。
 でも、夏になるとこれまずいよなとかちょっと思ったり、でも、やはり今は経済的に元気がない時代ですからああやってちょっと元気のよさそうな、もう液晶テレビは当然、液晶テレビの方がずっとあれなんですけれども、でも、プラズマみたいなのが出てきて、ちょっと経済が悪いときに元気のいい商品が出てくると、多少そういうことはあまり大目にみるではないですけれども、「まあ、いいか」というようなところもあって、まさにこの環境と経済の好循環ではないですけれども、多少何か、まだこれは改良の余地があるかなと思っても元気のいいものに対しては、やっぱりちょっとあまりは言いにくいというようなところもないわけじゃないかなと思って、この辺はシャープさん一人にお伺いするのでは申しわけないなとは思うのですけれども、どんな感じなのかなというところをちょっとお伺いしたいと。
 それからこの前、飛騨の高山にちょっと仕事に行きましたらば、名古屋からのJRの中で外国の方のツアーというかツーリストの方が結構いらっしゃって、隣だったのでちょっと話を聞いたらば、今は京都とか奈良とかあんなところに行ってもおもしろくないので、その方はオーストラリアからいらっしゃっている方でしたけれども、向こうで出ている観光の本には、とにかく高山、行きにくいんだけれども高山まで行って、レンタカーをするなり何なりして白川郷まで行くというルートが非常に流行っていると。で、流行っているって、「ああー、そうですか」なんて言っていたら、帰りの電車にもまたツアーの人がいたので、「あっ、本当に流行っているんだ」と、2組見ただけで流行っているといっていいかどうかわからないのですけれども、ちょっとそういうことも思いまて、これは日本の中での観光の話ですけれども、例えば外国の方から見て、日本はそうそうもう魅力のあるエキゾチックという意味では魅力のあるところではなくなってきているのかもしれないけれども、現実的に今日本に来ようとしたら何を見ようとしている方が多いのかなというのもちょっと聞きたいなと思ったところの1つです。

○辻委員 プラズマテレビは当社ではつくっておりませんので(笑)、あまりよそのメーカーさんのことをいうのはと思いますけれども、そんなに暖房の代わりになるということは絶対ないと思います(笑)。これはちょっと、そのメーカーさんに代わって申し上げておきたいと思います。確かに液晶とプラズマテレビと比較したらということはあるかもわかりません。。
 なおかつ、技術の進歩でございますし、先ほど言いましたように環境技術と申し上げましたですけれども、プラズマにしましても液晶テレビにしましても、ここ数年でもっともっとレベルを上げれるだろうと思っております。
 それと今おっしゃったあとの環境の問題ですね。そういう国にしたいですね。外国の人が日本へ行って、普通の自然な環境、観光だけでなくて何かを学びとる。しかもその自然の中に自然を守り、自然をつつみ込んで、そして環境・観光王国だと。そこから何かを学びたいというふうなものにすれば、まずアジアの中でリードできると思うんですね。
 それはヨーロッパのスイスなどは優れたところがありますけれども、そういう人たちが勉強に来るというものにね、それは日本はできると思うんですね。だからそういうのはITとかいろんなものをひっくるめてやればいいわけなんで、しかも長寿の国ですし、なるほどと、そういう生活をしているのかと。そういうことで必ず別の分野でも勉強になるからひとつ兼ねて行こうかという国にしたいなと思うんですけれども。

○安原委員長 今の点でエコツーリズムについてどうぞ。

○小林講師 実は私、本業は観光マーケティングなんですね。今、神津先生おっしゃったことまさしくそうで、今人気は実は高山・白川郷というのは外国の方には結構隠れた人気があるのです。ところが売る方、我々がいまだにやっぱり京都・日光・鎌倉だよねと思っているんですね。そこのギャップが非常にあるんですね。例えば長野でカナダ人が地元の旅行会社をやっているのです。何やっているかというと、自転車に乗って道祖神を回ったり農家を回るのです。これは外国の人たちにものすごい人気なんです。
 ところが日本の方は、そんなの売れないよと思っているんですが、今おっしゃったように発想を変えて、日本の田舎って実はすごくきれいなんだよということをもっとアピールできばおもしろいなと思っております。ありがとうございます。

○安原委員長 どうもありがとうございました。小倉委員。

○小倉委員 インターフェースの件でちょっと誤解のないように申し上げておきますと、製造者が一生懸命宣伝するのですが、インターフェースでもう少し努力すると、もっと要は近づけるんじゃないか。例えば我々消費者から見ると、蛍光灯がいいというのはわかる。だけどそれをインターフェースのところでもっとそれを売り込む努力というのはあるんじゃないかと。エコツーリズムはまさしくそうだと思うのは、エコという、本来は旅行を売っているわけですけれども、エコの旅行を売るというインターフェースでものすごい努力されているということだと思うんですね。
 なぜ、そんなことをいうかというと、我々は素材産業なので素材産業は例えば 6.5%シリコンをプリウスに売る。プリウスは環境にいいことは皆さんよくわかっている。我々例えば半導体産業からでてくるウエハーから液晶をつくって、今度はシャープさんに売ると。そうやって我々の素材が製品内、製品が消費者に行くまでにものすごく時間がかかる。そういう中でどっかのインターフェースでもっと環境にいいものが売れるような何か努力があるといいんじゃないかなということだと思います。そうすると、製造者がもっと報われるんじゃないかなという気がしました。

○浅野委員 もうあと1回の専門委員会のヒアリングというか意見発表がおわると、次は報告書素案の検討ということになっているので、少し心配をしながらなのですが。
 今までのところはどちらかというと、情報の受け手の側の受け方の問題が大きいということが前回を含めてかなり話題になっていまして、それはまったくそのとおりです。この問題をどうするかというのは非常に大きな課題だと思います。しかし、情報の素材の提供をする側、つまり今度は環境省の問題ですけれども、環境省がこういう「商品」を売るときに、あまりにもその「商品」の売り方がばらばらなんですね。例えばエコツーリズムについての検討が行われている。で、こっちでは好循環が検討されているといろんなものがあって、インターネットのホームページを見ていてもあまりにも多くものが同時に検討されて、それぞれの相互のつながりがよくわからないというところがある。
 エコツーリズムについても、私は検討が進められるのは非常にいいと思います。というのは、これはやっぱり新しい「商品」であって商品のブランドがよくわからないので、いかがわしい「商品」が意外と出回ってしまうおそれがある。だからこれはこういうのはいかがわしいのでおかしい。これは本物だよ、より本物に近いよということを明らかにしていくことによって、変な「商品」を駆逐していかないといけませんから、大いに検討が行われるべきなんですが、そういう場の検討と我々がやっている検討とどうつながるのか。これをよく意識してもらわないといけません。
 それから2000年に環境基本計画をにつくりまして、それから3年がすぎてしまったわけですけれども、もうあと2年立ったら見直しをしなければいけないという時期になりますから、そのこと十分に意識しながら現在の環境基本計画の中で示されている内容とのつながり、そういう意味での接点をしっかり考えてまとめをしていかないと、何か次から次へといろんなドキュメントが出るのですが、いっぱい報告が並んでいて互いの内容がさっぱりわからないということはまずいと思われます。せっかくこの会は、総合政策部会の専門委員会として置かれたという意味が生かされるように、そのあたりをぜひ事務局も考えながら準備をやっていただきたいと思います。この発言は今ひとつ、抽象的すぎてうまく説明していることにはならないですけれども。
 きょうの会の中で話題になりました情報の質をどう担保するかという安井委員のご指摘は大きな問題だろうと思います。あまりにもいろんな情報が出てきてすべてが等価値で扱われてしまうこと。よくあることですが、例えば科学的知見に関して訴訟の場面で原告が出す証拠と被告が出す証拠と本当にその価値がどうかを無視して、裁判官はこれをみんな同じに評価してしまうことがある。そこで専門家には全く無視される話が判決理由の中でまるで、真実であるかのように使われたりするということがあるわけです。どっかでやっぱり情報の品質管理をしっかりしておかないといけないわけで、その問題がこの好循環の課題の中ではかなり大きな課題だということを認識する必要があるといえましょう。

○安原委員長 どうもありがとうございました。それでは、笹之内さん、そのあと筒見さん。

○笹之内委員 感想ですけれども、きょうのお話も非常におもしろかったんですけれども。ただ、注意しないといけないのは、きょうのはどちらかというと環境そのものが、これがひとつの商品性を持っているわけですよね。ところが全体の産業を見ると、必ずしも環境を商品魅力として売るものではないものがあるわけなんですね。例えば私どもはプリウスである面では成功したんですけれども、しかし売上の大半は、環境がいいから車を買うという人はまだまだ少ないんですね。これはこの間のCOP9に私行きましてもトランスポーテーションというセクションでいろんな議論があって、みんなが環境配慮性能の車を買えばいいんだということになるのですけれども、確かにマーケットがそうなってくれば我々はそういうものを出していくと。
 だけど、よく考えてみると、きょうのお話のようなのは非常に素晴らしい例で、環境そのものが商品性に直結していると。ただ、直結しないものをどうしていくかということ。どちらかというと、そっちの方が市場規模は大きいわけです。では、そのときにだれがそのマーケットを誘導していくかというのをやはり十分議論しないと。それが、時にはそれは企業がやるべきだと。先ほど言ったインターフェースの話ですね。企業がそういうマーケットを誘導していくべきだというと、いや、そんな尊大な気はありませんと、我々はなにしろオプションをそろえて環境がいいと思ったら、それを買ってくれる人はそれを買う。それが増えたらそこへビジネスのウエイトをおく。その辺をきちっと議論していかないと、なかなか実行が上がっていかないと思うようにきょう感じました。  以上です。

○筒見委員 前回と今回で2回、いろいろな方々のお話を大変おもしろく聞かせていただいたんですけれども。私なりにちょっと頭を整理しようと思ってさっきから考えていたのですが、環境と経済の好循環ということを考えるうえで、大きく分けて完全に2つ全然別のことがここで話されているような気がしています。
 例えば私自身のことでいいますと、この今の肩書のこういう省エネルギーをビジネスにするというのは、いわゆる経営者の立場で話をしますと、環境と経済の両立というと、やっぱり環境というものを自分の問題としてとらえるのではなくて、あくまで企業の戦略上の問題として、いかにそれを自らの会社の利益とバランスさせていくか。そういう発想をして、要するにビジネスとして環境をとらえていくという発想になるんですね。
 そういうお話もきょうは、例えばエコツーリズムでもそういう発想なのかなという気がするんですね。ただ、もう1つの局面で、私自身も経営者の立場を離れれば、一市民として、この環境問題等も考えなければいけないと思っているのですが、その場合、やっぱり環境問題というのは自分自身のまさに問題であるという養老先生のお話もありましたけれども、まったくそのとおりだと思うんですね。そうしたときに一市民として環境と経済の両立といったら何ができるのかというようなことで、今日、自然と親しむあるいは自然の中に自ら入っていくとか、そういうようなお話が非常におもしろく感じたんですけれどもね。
 それはやっぱり、私が特に企業人だからビジネスマンだからそう思うのかもしれませんけれども、ビジネスマンの今の立場で話すときと、自分がもう家へ帰れば本当に一市民であり消費者であるわけですけれども、そういう立場とまったく違うというかひとつの人間なんですけれども,違った視点でものを考える。あるいは環境と経済を考えると思うので、やっぱりそういうような大きな整理の仕方が必要なのかなと。そうしないと非常に、例えば聞いている方が混乱してしまう。これは企業のために今やっているのかな。あるいはこれは本当にその一人ひとりの人間のことを変えていかなければいけないといわれているのかなというのが、非常に混在しているように感じていまして、ちょっとそういう感想を申し上げたいと思います。  以上です。

○山本委員 今、筒見さんのおっしゃられたことよくわかるんですけれども、確かにちょっと何か言い訳っぽいのですが、私の話というのは、それこそ一個人、市民の立場からがどういうふうにというようなところから、お話を申し上げたつもりなことは確かなんですが。ただ、例えば企業がこの商品が環境にいいよ、だからこれを買ってほしい。ということで、どうマーケットをつくっていくかというようなことを先ほどからおっしゃっていらっしゃいますけれども、今度は一個人の立場からその情報を受け取るときに、いくらその形でダァーッとたくさんの情報が流れてきて、じゃあ、それを皆さん買いますかというふうに考えたときに、「うーん、私はある部分はそれで説得されて買う、しかしある部分の人たちは一見遠回りのようだけれども、自分自身が自然とふれあうことによって、自然がものすごく好きで、だから自然を大事にしなければいけない。そのためには環境をどう自分自身の生活の中でも環境を意識していかなければいけないというふうに、頭から論理で教わることよりも、心の中で自分が好きだとか、心地よいとか楽しいとかというようなところから受けたいった方が、本当に環境によい生活が実践できるのではないか、そして商品もチョイスしていくことになるんじゃないかというふうなところろから、お話申し上げて、ただし里山を歩いたから環境型人間になると単純には思えないので、そこのつなぐところがなかなかむずかしいですねというふうに、申し上げたつもりですし、それを崎田さんがまた同じようにおっしゃってくださったので、そこが私も情報を扱う人間なんですけれども、そこがもう1つ、つながっていくところがむずかしいなと思ったのですが、実はそんなに反対のことだというふうにはまったく思っておりません、ということを申し上げておきたかった。

○崎田委員 今のことにも関連するのですが、実は環境教育とか子どもたちの環境の体験活動など企画をしたり、仕掛けている立場からいいますと、本当に子どもたちとかできるだけ年齢が低い時期に自然体験活動をいっぱいしている、あるいは自然にいっぱいふれあいながら暮らしている人たちというのは、大きくなっても何かものを判断するときに、本当に自然と共生するというようなそういう観点でのものの判断に自然にできるようになっていく。それが心地いいなという、そういう気持ちになっていく人がすごく多いという、そういうことがすごくあるものですから、自然とできるだけふれあう時間を増やしていくということは重要だということで、いろいろやられているわけですけれども。
 そういう視点も考えれば、やはり先ほど来の、あまりむずかしく考えるよりは自然体験活動を増やす、あるいは自然とふれあう部分を今の人たちが増やしていくことで、そういう仕掛けが自然に増えていくことで、経済も活性化していくようになれば、それはとても素晴らしいことだしというふうに、何か私は自然に受けとめて、きょうのいろいろいなお話をとらえさせていただいておりました。それで結果的にいろいろな面で活性化していけばいいなというふうに感じておりますが。

○安原委員長 ありがとうございました。まだいろいろご意見があると思いますが、時間もまいりましたので、もし追加的に意見をという方は事務局の方に連絡なりあるいは文書で出していただくなりしていただければ結構でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
 きょうは非常に興味深いお話をしていただきました。そしてそのあとの自由討議でも重要な論点につきましても意見交換をしていただきました。もう一回、廃棄物問題等を中心に今回と同じようなやり方でやらせていただきまして、そのあと、報告書のまとめに入っていくわけでございますが、どういう具合にまとめていったらいいかという観点につきましても、きょういろいろ意見を出していただきましたので、それを参考にさせていただきたいと思います。
 この委員会が始まりしたときに提示がありましたように、経済と環境の好循環をするような具体的なケースについてのビジョンづくりをやっていこうと。その後、具体的なビジョンの材料になるものを、前回と今回ということで出していただきまして、もう一回出していただくということでございます。お話の中身によっては、メーカーサイドのいろんな努力をわかりやすくお話いただいています。その努力をされているのが消費者にどう届くか。そこの間をつなぐ情報が非常に重要だと。それがスムーズに渡って消費者サイド、生活者サイドでそれに反応するようにしてもらうためにはどうしたらいいかという、つなぎの情報のところが重要だというのが、前回も今回もあったと思います。そこは報告書でも重要な論点として取り上げていければと思います。
 それから消費者がサイドが、崎田さんあるいは山本さんがおっしゃったように自然とふれあうあるいは行政を体験するというような形を通じて生活者あるいは消費者の意識が変わってくる。そうすることが、非常を情報をきちっとキャッチして反応することにつながること、またはフィードバックされるのではないかと思いますが、そこら辺の議論をこれから残された会合のたびに深めていければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 きょうは以上でございます。次回は先ほど事務局から話がありましたように、1月16日、15時からでございますので、ご出席のほどよろしくお願いいたします。きょうは熱心なご討議、いつもでございますが、ありがとうございました。これをもちまして、閉会とさせていただきます。

午後4時06分 閉会