環境と金融に関する専門委員会(第6回)議事録

日時

平成22年4月16日(金)10:00~12:09

場所

ホテルフロラシオン青山 芙蓉 東の間

議事次第

  1. 開会
  2. 議題
    1.  (1)企業の環境関連情報の開示の促進について
    2.  (2)報告書骨子(案)について
  3. 閉会

配付資料

資料1 環境と金融に関する専門委員会委員名簿
資料2-1 環境金融促進のための環境関連情報開示の促進について
資料2-2 投資家向け制度開示におけるサステナビリティ情報の位置付け
資料2-3 サステナビリティ開示の国際動向
資料3 環境と金融に関する専門委員会 報告書骨子(案)
資料4-1 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(概要)
資料4-2 ロードマップにおける分野ごとの投資額とその根拠

議事内容

午前10時00分 開会

○末吉委員長 皆様、おはようございます。時間になりましたので始めます。
 今日は寒い中、委員の皆様ありがとうございます。佐藤さんと筑紫さんと本郷さんがご都合で欠席と伺っております。
 それからまた、名簿をいただきましたけれども、100名を超す皆様方に今日はお集まりいただいておりまして、本当にありがとうございます。
 今朝、BBC放送を見ておりましたら、アイスランドの火山の爆発でヨーロッパの飛行場がほとんど閉鎖だそうですね。JALも引き返したと。数日前にはチベット高原で大変な地震が起きて、多くの方が被災に遭っておられます。わずか3カ月前にはハイチの地震でした。この間、インドネシアでも起きております。日本は三寒四温といいますけど、一寒一温で農業生産が非常に打撃を受けているようであります。まさに、我々は自然の猛威の前で人間の弱さを思い知らされているわけですけれども、その自然を何とか守ろうという大きな目的での会議が、この専門委員会ではないかと思っております。
 それでは、早速、議事に入ります。今日はまず、企業の環境関連情報の開示の促進ということで、私は非常に重要なテーマだと思っておりますけれども、それについて議論を進めてまいりたいと思います。
 では、始めるに当たりまして、まず事務局のほうから10分程度ご説明いただきたいと思います。お願いいたします。

○小笠原環境経済課長補佐 それでは私から、資料2-1に基づきまして、基本的な論点についてご説明させていただきます。
 その後、水口委員、それから公認会計士協会の森さんからご報告をいただきます。
 資料2-1でございますけれども、まず1といたしまして、企業の環境関連情報開示の意義でございますけれども、環境問題であるとか、その解決のための政策導入というのは企業価値に大きな影響を与えるものかと思います。そして、こうした企業の環境問題に対応に関する情報というのが適切に開示・提供されれば、投資家にとってその企業価値の予測というのが可能となり、投資家保護に資するのではないかというのが1点目でございます。
 また、環境政策の推進という観点から考えますと、そうした企業の環境関連情報が適切に開示・提供されることによって、投資家の投資判断に当たっての環境情報の織り込みが促進されるのではないか。そして、こうしたことが進むと、環境に取り組む企業ほどマーケットにおいて高く評価され、そうした対応に遅れた企業はリスクが高いと評価されるとか、そういった市場が形成される。そういったことが企業の取組促進に資するのではないかということを書いております。
 また、これは投資のみならず、融資等のその他のファイナンスを行う場合についても同様ではないかと思われます。
 このように、企業の環境関連情報開示というのは、低炭素社会実現に向けて環境金融を促進していくための基盤的施策として重要であるのではないかということを書いております。
 参考までに、皆様ご承知のとおり、資産除去債務についての会計基準が2011年3月期から強制適用されますので、アスベストであるとかPCBであるとか、土壌汚染対策費等の環境債務については計上されることとなります。また、国内排出量取引制度の導入後は、保有する排出枠であるとかその償却義務について、企業会計基準に従って財務諸表上表示することになります。
 こういった財務情報については、会計基準に従って適正に表示をするものでございますが、今日のペーパーは、それ以外の非財務情報を中心にどのような適切な情報開示を促進していくかということで書いております。
 まず2.で、有価証券報告書を通じた環境関連情報の開示でございますけれども、有価証券報告書、環境の観点から見た意義というのは、まずこれ、当然ながら投資家保護のために必要な投資情報を開示する場であると。特質としては、財務情報と同一媒体内で環境関連情報が開示されることによって、両者を関連付けやすくなるという、そういう特性があるものかと思います。
 2ページ目のほうにいきまして、(2)でございますけれども、投資家による活用促進する上で、じゃ、どんな課題があるかということでございますが、こういった環境への対応であるとか、それに伴うマーケットの意識の変化というのは、企業にとって新たなビジネスチャンスであるとともに、事業上のリスクともなり得るものであると。ただ、現在の有価証券報告書に何を記載するかというのは、それぞれの経営者の判断でされているものかと思いますけれども、一方で、投資家がそうした環境に関するリスクや事業機会の可能性を判断するための材料というのが十分に提供されているのかどうかといった点があるかと思います。
 こうした点を解決するための対応策の例として、いろいろなオプションを並べてみますと、マトリックス的に考えますと、まず一つは、金融商品取引法関係の法令による対応というのがあり得るのかと思います。例えば、金融証券取引法の改正によって、何らかの環境関連情報記載の義務付けをするであるとか、内閣府令の様式の改正であるとかいったことが理論的には考えられるオプションであるかと思います。
 ただ、金融商品取引法の側から物事を見ますと、法律上、有価証券報告書というのは投資家保護のため必要かつ適当な情報を記載する書類とされていますので、その投資家保護のために必要かつ適当な場合は、環境情報であれ環境情報以外であれ記載しなければならないという、既にそういう制度になっているというのが金融商品取引法の側から見た物事でございます。
 [2]は、現行法令をそのままとした場合に、前提とした場合に、じゃどのような、ガイダンスの発行であるとか、何を書けばいいのかという、グッドプラクティスの積み重ねということでオプションを書いております。1)は、アメリカでは証券取引委員会がそういった規則をもとにして、じゃ、いかなる情報を開示すべきかについて、ガイダンスを発行しております。後で、公認会計士協会の森さんのほうから説明があるかと思いますが、そういった取組がされていて、それで日本でそういった取組をするということも理論的には考えられるオプションであるかと思います。
 また、むしろ民間の側の自主的な動きとして、2)でございますけれども、今、何を書けばいいのかというのがよくわからないじゃないかといった声も聞かれる。そういうことを踏まえると、じゃ、各側の、環境関連情報開示に前向きな企業、それからそうした情報を求める投資家、それから会計士であるとか政府とかが共同して、じゃ、何を書くのかといったケーススタディの実施を通じて具体例を積み重ねつつ、記載例の作成、ガイダンスの発行等、そういう実績を積み重ねながら、一歩一歩地道にやっていくことがいいのではないかと、そういった考え方もあり得るかと思います。
 その際には、有価証券報告書のみならず、アニュアルレポートとかそういったものも含めて考えていくのもいいのではないか、といったことも考えられるかと思います。
 続いて3ページのほうにいきまして、環境報告書による環境情報の開示でございますが、環境報告書の開示の意義としては、もともと環境報告書でございますけれども、有価証券報告書と比べた場合には環境に特化した報告書でございます。もちろん、CSR報告書とかそういう形である場合のほうが最近は増えておりますけれども、環境負荷指標とその推移であるとか、算定方法であるとか、環境対策であるとかいったことを、幅広くより詳しく、情報量が有価証券報告書に比べると圧倒的に多く開示することができるといったことがあるかと思います。
 その一方で(2)でございますけれども、投資家による活用を促進する上での課題としましては、比較可能性の向上、信頼性の向上ということが、これは以前から言われていることでございます。
 対応策の例、これも理論的に考えられるオプションというのをマトリックス的に考えていきますと、環境報告書の作成・公表義務の範囲の拡大ということがあるかと思います。
 今、環境配慮促進法という平成16年制定の法律に基づきまして、一定の公的法人、独立行政法人、国立大学法人につきましては、環境報告書の作成・公表が義務となっていますけれども、この範囲を広げるかどうかといったことが理論的なオプションとしてあるかと思います。
 ただし、この点については昨年、中央環境審議会の環境配慮促進法のレビューに関する小委員会がございまして、そこにおいて議論がなされまして、3ページについている表のところで環境報告書の作成数、作成割合自体は右肩上がりに増えている、若干、平成19年に少し落ちていたりもするんですけれども、ということを踏まえて、平成21年3月段階でございますけれども今回の評価に当たっては、企業による環境報告書の自主的な作成・公表の取組の促進に期待することが適当であるというふうにされているところでございます。
 それから、これも、[2]は現行法令を前提とした上でということですけれども、じゃ、主要な指標等の記載の標準化の取組を促進していけないかというもので、今、環境報告ガイドラインについては主要な手法等を一覧にして、なるべく書くようにしてくださいねという一覧表が後ろで参考資料でつけておりますけれども、こういった一覧表のテンプレート、さらに見直した上で、こういったのがいろいろな環境報告書、CSR報告書にわかりやすく掲載されるような普及を促進していくというのが、漸進的な取組としてはあるのではないかということを書いております。
 それから、4.はこれも既に第4回の専門委員会でもご報告した事項でございますけれども、ブルームバーグがESG情報の提供をやっていると、ESG情報といろいろな財務情報とあわせて見ることができるといった取組を始めておられます。
 それから、トムソン・ロイターも今秋にこうしたサービスを開始する予定といったようなことも聞いております。
 それから5.でございますけれども、環境株価インデックスの提供ということで、投資家が環境配慮投資を行いにくい理由の一つとして、じゃ、どんな企業が環境配慮企業なのということが、個々の投資家にとっては非常にわかりにくいといったことがあるかと思います。
 こうした観点から企業を選別して構築された環境株価インデックスがあれば、個人投資家も含めて、環境配慮投資がより容易・安価なものになるのではないかということが考えられるかと思います。
 経済産業省さんも環境力の見える化ということで、一昨年来検討されて取り組んでおりますけれども、こういった取組というのは非常に有用なものかと思います。
 民間企業の取組としては、日経系のQUICKが環境株価指数、後ろに参考としてつけておりますけれども、を今年の1月から始められていたり、それからFTSEさんも環境オポチュニティ日本株指数といったことを始められていますけれども、さらに通常の事業活動における環境配慮に優れた日本企業の環境株価インデックスといったものの開発も含めて、こういった株価インデックスが提供されて、さらにそれと連動したETFが、上場投資信託が提供されることによって、環境配慮投資というのがより安価・容易なものになるのではないかということを書いております。
 参考としては、環境報告ガイドラインの抜粋であるとか、参考3としては日経QUICKの株価指数の資料、それから参考4としてはFTSEの環境オポチュニティ日本株指数をつけて、そのファクトシートなんかもつけておりますので、お時間のあるときにご参照いただければと思います。

○末吉委員長 どうも小笠原さん、ありがとうございました。非常に網羅的なものを簡便にご説明いただいて、ありがとうございます。
 引き続いて、水口委員と森さん、今日はありがとうございます。お二人から合計で15分程度をめどでお願いいたします。

○水口委員 ありがとうございます。それではお手元の資料2-2をご覧ください。今年の3月に、日本公認会計士協会からこのような研究報告を公表いたしました。今の小笠原さんのご説明とも密接に関連すると思いますので、ご紹介をしたいと思います。
 なお、今日、公認会計士協会から森さんにおいでいただいておりまして、特に国際的な会議に精力的に出席していただいておりますので、国際動向の部分については森さんにご説明いただくことにしまして、私はそれ以外の部分を7分ぐらいでと思っておりますが、7分ぐらいお話をさせていただきたいと思います。
 1枚めくってください。目的というところですが、日本公認会計士協会は、昨年の1月に投資家向け制度開示書類における気候変動情報の開示に関する提言ということで、気候変動情報に関して投資家向けの開示が必要なのだと、このような提言をいたしました。
 その後Q&Aも公表し、8月にはセミナーを行い、今年の1月には大規模なシンポジウムを行うという形でこの議論を進めてまいりました。そして、その中で、その次の段落ですが、気候変動情報に限らず、気候変動も含むサステナビリティ情報全般について、非財務情報としてどのように位置付けるのかということから、根本的に検討していこうということで、今回の研究報告に至りました。
 その隣のページですけれども、サステナビリティ情報とは一体何なのかということですが、持続可能な発展を実現するために地球温暖化や生態系、生物多様性、水、貧困、こういった地球環境問題や社会的な課題に対応していかなければならないわけです。そして、企業活動はこういう問題に密接に関連すると同時に、逆にそれらの課題に対する政策的な対応が企業価値や企業活動にも大きな影響を与える。したがって、企業情報のうち、地球環境問題やその他の社会的課題に関わるものを広く、サステナビリティ情報と呼ぼうということです。
 1枚めくっていただきまして3ページですが、この図の1のところで、この報告が扱っております対象を示しております。この四角全体が財務報告、投資家向けの制度開示というイメージなんですけれども、その中に財務諸表の部分とそれ以外の非財務情報の部分があり、中でもマネジメント・コメンタリー、つまり経営者の説明という部分が今、注目を集めています。
 そのマネジメント・コメンタリーの中といいますか、非財務情報の中におけるサステナビリティ情報を、この報告では対象にしようということです。
 4ページにまいりまして、第<3>章ですが、最初に各国における制度の状況、それから最新の動向についての調査を行いました。この点は詳しくは森さんにご報告いただきたいと思うわけですが、大ざっぱに申しますと、アメリカではSECの規則に基づきまして、もともと環境情報に関しては個別具体的な規定がありました。そして、今年は気候変動情報に関して、ガイダンス文書というものを公表したということです。
 これらの背景には、基本的には投資家の保護のためには必要な情報なんだと、こういうことがあろうかと思います。
 少し飛んでいただきまして10ページですが、ヨーロッパの状況についても研究をしております。特に2003年の会計法現代化指令というEUの指令が、環境社会情報の開示について規定をしておりまして、11ページのところに表4として、その内容が書かれております。
 さらに12ページなんですが、この背景には、真ん中ぐらいですけれども、2000年にリスボンで欧州理事会が開かれ、ここでリスボン戦略というのが決められました。このリスボン戦略の一環として、企業のCSRが推進されてきました。同時に投資における社会や環境への配慮を推進する、そしてその一環の中で、情報開示というものも位置付けられているのではないか。非常に大きな図としては、そのような戦略的な対応が見られるのではないか。このようなことを見いだしてまいりました。
 その後、イギリス・ドイツ等の情報もあるんですが、そこは割愛いたしまして、18ページが日本の状況です。日本でも、もちろん金融商品取引法に基づきまして有価証券報告書が制度化されております。現行の制度におきましても、対処すべき課題や事業等のリスクといった項目の中で、当然、その必要な項目は書かなければならないわけですし、書こうと思えば書けるということになっているわけですが、現状、サステナビリティ情報に関する具体的で明示的な言及はないと、こういう状況であります。
 少し飛んでいただきまして、21ページ、このような国・地域間における相違が何に基づいているのかということについてまとめております。
 (1)、もちろん企業開示制度の枠組が違うということもありまして、証券法規制の中で定められている開示規制と、例えば会社法という枠組であるということもその違いの一因かもしれません。
 また、(2)ですが、より規則主義的な考え方と原則主義的な考え方といった、開示のフレームワークの違い。
 そして、(3)ですけれども、サステナビリティ政策、サステナビリティ課題に対応する政策のあり方の違いということもあるのだろうと。特に「第3に」と書いてあるところですが、ヨーロッパでは先ほど申しましたように、サステナビリティ政策の一環として企業の社会的責任を推進すると、こういう枠組の中で取り組まれているということがあるのではないか。
 さらに(4)ですが、責任投資の広がりの違いも、この情報開示のあり方の違いに反映しているだろうということはあります。
 そして、23ページ、第<4>章ですが、では我が国として制度的に対応する必要があるのかどうかということについて検討をいたしました。
 まず投資家の情報ニーズからの検討ということで、欧米の主要な証券市場を対象としますと、既にサステナビリティ情報を組み込んだインデックスやファンドの組成が行われており、この種の情報は実際に利用されている、そしてますますその利用は高まってきていると、こういうことが書かれております。
 時間の関係もありまして少し急ぎまして、25ページ、政策的観点からの検討ですが、政策的観点からは、その2段落目のところがやはり重要だろうと思います。企業によるサステナビリティ情報の開示を促すことによって、投資家が長期的な課題を投資判断に反映させることができる。企業行動への影響を通じて、サステナビリティ課題の改善、そして長期的に安定的な市場の形成に役立つのではないか。関連するリスクへの適切な対処を十分に行っていたり、低炭素社会においてニーズの高い技術などに投資をしている、そういうことが資本市場から高く評価されるならば、経営者はそのような課題に先駆けて対応しやすくなり、その結果として企業の競争力の向上やリスクの対応が促進される、それがさらに競争力のある経済に結びついていくのだと考えられます。さらに言えば、証券市場の透明性を高めるということからも、将来キャッシュフローの予測可能性を高める上でも、この種の情報は必要なのではないか。
 さらに、26ページですが、国際的動向から考えましても、資本市場の魅力ということを考えた場合に、海外の市場がこのような情報を取り込んでいるときに、我が国の市場インフラとして、これが市場の競争力という観点からも必要なのではないか。
 というようなことを議論しておりまして、最後、4のところですが、そもそも金融商品取引法の目的というのは、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成を諮り、もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することとなっています。これが金融商品取引法の目的ですので、国民経済の健全な発展と投資家の保護という観点からは、やはり資本市場を通して資本が適切に配分されるように適切な情報開示が必要であろうと、このように位置付けておるわけです。
 最後、第<5>章が課題と対応ということになりまして、既に時間を超過しておりますので簡単に申しますが、1のところでは、サステナビリティ情報の基本的な位置付けを明示するということが必要であろうということです。29ページ、今後の対応としては、特に非財務情報のタイムフレームについて、現行制度上の解釈・考え方などを解釈指針というような形で、基本的にどう考えているのかということを示すということは必要ではないか。さらに、2のところでは、より個別的・具体的な指針というようなものを示すということはどうであろうかと、このような考え方を示しております。
 その後、3で個別論点として幾つかの論点を挙げておりますが、時間の関係で項目だけ申します。
 まず30ページ、情報の質の確保は必要である。
 31ページ、罰則が厳しいということが一つの足かせになっているようですので、この罰則に対して、例えば実務的な蓄積を待つという、何らかの手立ては必要ではないか。
 それから32ページですが(3)、実務的な負担を軽減するような対策。
 それから33ページ、適時開示にかかわる検討、そして国際的な整合性を図っていく。こういうことが必要であろうというわけです。
 最後に、34ページ、結論のところをごらんください。このような形で、既に論点は十分に上がってきていると思っておりますので、あとはいかに実践していくかということですが、一つはこのサステナビリティ情報の開示をどのように位置付けるかということに関して、政府を中心に投資家・企業など、関係するステークホルダーが参加する形で検討を開始するということです。公認会計士協会だけの検討ではもはや先に進みませんので、投資家や政府・企業などが共同して具体的に検討をする場が必要なのではないか。これが1点目。
 それから、そのような検討だけではなくて、むしろ我が国における現行の制度や実務を踏まえて議論していくというために、投資家自身が投資分析にこれを活用していくとか、あるいは企業が先行的に自主的な開示を進めていくとか、そういった形でできるところから進めていくということも必要ではないかと考えております。
 ちょっと長くなりましたが、それでは森さん、よろしくお願いいたします。

○森氏 日本公認会計士協会の森と申します。よろしくお願いします。
 私のほうでは「サステナビリティ開示の国際動向」ということで、ざっと説明をさせていただければと思います。
 私は日ごろ、日本公認会計士協会において、この分野あるいは排出量情報の保証等に関する研究・調査を行いながら、あるいは開示に関する国際的な枠組みのフレームワークづくりの議論の中に、ワーキンググループなどに参加している者です。そういった観点からご説明させていただければと思います。
 資料2-3を1ページめくっていただいて、「国際議論にあたっての認識」とございますが、ちょっと順番を変えて、まず、制度とフレームワークの内容からご説明させていただければと思います。
 3ページごらんいただけますでしょうか。「米欧における開示制度上の対応」ということです。先ほど水口さんからご説明ありましたが、特にアメリカとヨーロッパではかなり、最近この分野についての検討あるいは制度的な対応が進んでいる状況です。
 アメリカでは、SECの開示規則と、レギュレーションS-Kというものがございますが、ここで非財務情報に関わる開示の規則を定めているわけですが、その中で環境法の遵守だったりとか、あるいは環境保護に関する訴訟等の開示要請というのは個別に、過去からされていたと。
 これに2010年2月に、規則の中でというよりも、その規則をよりclarify、明らかにするものとして、気候変動開示のガイダンス文書を公表しております。
 その中でItem303という「経営者による財務・経営成績の分析」というセクションだったりとか、あるいは「リスク要因」といったような各要求事項において、気候変動情報についてどのような適応をしていくんだろうかとか、あるいは開示が必要となる場合というのを例示しております。
 その内容については、先ほどお話にありました会計士協会の研究報告の6ページに表2という形で、法規制による影響とか、あるいは国際協定による影響だったり、規制やビジネストレンドがもたらす間接的な影響はどのようなものかとか、あるいは気候変動の物理的な影響という形で、かなり詳しく書いてあるという状況です。
 SECがこのようなものを出すというのはかなり異例で、その背景がやはりありまして、3年くらい前から投資家からの要請というのが強くありました。それを受けて議会のほうでSECに対して、何らかの形で明らかにしなさいという要請があって、それに対しての対応という形で、SECはここに記載しております投資家資本委員会というものを、これだけを議題とするわけではないんですが、投資家がどのような情報ニーズを持っていて、それを開示制度上どのように対応していくんだろうかということを議論する場を設けました。それが去年の7月です。
 そこから半年くらい議論をして、その結果、気候変動情報の開示に関しての指針を、今回作成したと。ただ、これで終わりではなくて、今後、投資家諮問委員会の意見だったり、あるいは公開会議を開いたりとか、そういうプロセスを経て、今回の指針によって適切な対応が企業からされるのかどうかというところを見ながら、より具体的な指針だったりとか、あるいは規則策定の必要性を検討していくということが、このガイダンス文書それ自体にも記載をしておると。また、2月のこの投資家諮問委員会の会議でもESG情報、もう少し広いサステナビリティ全般に関しての作業計画というのが提示されているようです。
 一方、ひるがえって、ヨーロッパのほうですが、ヨーロッパのほうは2003年に会計法現代化指令ということで、これも環境だけに限った話ではないんですけれども、企業の財務的な側面だけではなくて、会社の業績等を理解するために必要な環境社会的な側面の分析を含むということが明示をされていると。その中で非財務的な指標を求めているという状況です。それに対応して、英国だったりそれ以外の各国で、具体的な開示要請をそれぞれで行っていると。
 欧州委員会はこれで終わりという形ではなくて、ちょうど去年から1年間、この2月までワークショップというものを開催して、投資家だったりそのNGOとか関連するステークホルダーを交えて、会計法現代化指令が適切に適用されているかどうかとか、あるいは何らかのより具体的な指針等が必要かどうかということを、意見を聞いて議論する場を設けています。
 これはホームページにかなり詳しく情報が出ていますので、見てみると、どの主体がどのような意見を持っているかというのが非常によくわかるという内容になっています。
 次、めくっていただいて、一方で、国際的な開示フレームワーク。今までの話は制度のお話でした。会計であれば財務諸表を開示するという制度ですけれども、一方で、その会計基準に当たるサステナビリティ関連の開示フレームワークというのはどのような形で今動いているのだろうかというところを、ご説明させていただきます。
 一番上にありますAccounting for Sustainabilityというものがございますが、こちらは2006年に英国のチャールズ皇太子が呼びかけて、賛同する投資家企業、会計士団体、NGO等が参加する形で、そのサステナビリティ情報を年次報告書、審査レポート等ではなくて、企業のアニュアルレポートの中で財務報告と関連付けた形で報告されるとともに、企業内部の意思決定プロセスに組み込まれることを目指して、フレームワークをつくっていくというようなことを検討している組織です。
 下にあるその次のClimate Disclosure Standard Boardと、CDSBというものですが、こちらは気候変動によりフォーカスした形で開示のフレームワーク、ただ、その対象となる書類というのはアニュアルレポートで、開示先は同じく投資家という形になっています。
 ここはもともとは世界経済フォーラムと、あとCDP、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトが連携をしつつ、より広い投資家だったりとか、あるいは会計士、あるいは学者、産業、政府と。日本からは東京電力さんが参加されていますが、そういう形で動いているという状況です。
 次にありますGRI、Global Reporting Initiative、こちらは非常に有名でオランダが本部ですが、自主的な報告書の中での報告ということをうたって、ガイドラインを第1版、第2版、第3版まで出していると。こちらは投資家向けというよりもマルチステークホルダー、従業員、顧客、NGO、地域住民、プラス投資家という形で、さまざまなステークホルダー向けに自主的な開示という形で報告枠組をつくっていると。先行者としてかなり実務的には広がっていて、国際的には今、デファクト的な形で利用されているのかなと。
 ただ、では何で上の2つが必要なのだということで、1つがやはり開示がきわめて総花的になりやすくて、重要な情報は何かということが特に投資家にとってわかりづらいという問題意識があって、もともと自主的な報告をねらったものですので、それを制度的な開示のほうに落とすような枠組が必要でしょうということで、上の2つが動いていると。
 こういう状況、いろいろなものが幾つかある状態で、これを統合していこうという動きがあります。これが昨年12月につくりましょうということがとりあえず合意された状況ですが、International Integrated Reporting Committee、IIRCということで、上のA4S、GRI、WICI、ああ、CDSBが抜けていますね、といったサステナビリティ開示イニシアチブとIASB、国際会計基準審議会とか、あるいはロンドンや東京の証券取引所、で、企業、投資家等が共同で、ラウンドテーブルを12月に開催しまして、とりあえずこういったものが必要でしょうと。それをつくっていくための今は準備をしていて、再来週、その準備会合がロンドンで開かれるという状況です。
 今、制度とフレームワークの状況をお話しさせていただきました。
 2ページで、じゃ、これはどういうふうなバックグラウンド、全体像で、何でこういうことが動いているんだろうかということを、ざっと私のほうの認識としてご説明させていただきたいと思います。
 左上に「従来の開示」、下に「方向性」というふうに示しておりますが、従来、会計情報とか財務諸表というのは極めて重要で、それ以外の情報というのは特に過去においては小さくて、それほど重要ではなくて、だんだんこれがちょっと、その他情報というものが膨らんできていると。
 下の「方向性」というところで財務諸表と、主にマネジメント・コメンタリーという企業が経営戦略だったりリスク情報だったりガバナンス、組織、あるいは非財務的な指標というものを開示していって、企業というのが全体像としてどういうふうな状態で、それがどういう方向に向かっていこうとしているのかということをレポート、報告していくというような開示枠組に動いていっているんだろうと。その要因として、やはりその企業の中で、経営の不確実性が高まっていたり、無形資産が重要性を増していると。
 特にESGという分野に関しては、投資分野からの責任投資がかなり、特にヨーロッパ・アメリカでは極めて大きくなってきていて、そこからの要請が強いということと、さらにあわせてその政策的に、より長期持続的な経済市場だったりとか、あるいは欧州のように環境社会政策というものを取り込んでいったりとか、排出量取引制度のような、また別のマーケットの連動、インセンティブ措置ということを考えていかなければいけないということで、こういう非財務的な情報が重要性を増してきていて、そこの枠組をつくっていこうという形になっていると。
 そこで特に重要視されているなと私のほうで感じているのは、下の将来志向と中長期視点ということで、会計というのはあくまで現在の状態、過去の状態を示す情報で、そこにその将来的な情報を入れるのは見積もりで不確実性が大きくなりやすいと。そこに将来的な情報だったりとか、より中長期的な視点というのを非財務的に説明、あるいはデータという形で示していくということが重要視されていると。そうなってくると、右側に出てくるような気候変動のような、ESGを中心とした中長期的な課題が開示に影響して、それがSECだったり、欧州指令だったりとか、あるいは国際開示フレームワークの開発という動きにつながっていると。
 大前提として、こういう認識のもとで、常にどういうフレームワークをつくっていくんだろうかとか、制度をつくっていくんだろうかという議論をしているなというふうに日ごろ感じております。
 最後に、5ページに飛びまして、「今後の方向性」ということで、じゃこれからどういうふうに向かっていくのだろうかと。これも勝手な私の認識です。各国・地域における制度的な対応と国際フレームワーク開発というものが同時に進行していく、並行してという形かなというふうに思っています。
 制度は、やはり今の状況を見ると、各国だったり地域で評価されていく方向で、アプローチとしては環境・証券・企業当局の連携だったりとか、あるいはSECだったりとか、欧州のように当事者、特に投資家のニーズというのは積極的に取り込んでいこうという動きが強まっているなと思います。
 フレームワークに関しては、地域別でそれぞれ対応しつつ統合か収斂だったり、あるいはその財務報告枠組との連携をどうしていくんだろうとか、あるいはその具体的なKPIの指標の開発をしていくと。これはどちらかというと民間ベースの動きであって、投資家、企業、会計士が中心にフレームワークをつくっていったり、あるいは実務的に投資家が分析をしていく中で重要と考える指標を、欧州のアナリスト協会なんかがかなり具体的な提言を出しています。
 あとはローカルな対応と国際的な対応というのが区別され、それぞれパラレルで動きながら動いていくと。今のところ、緩やかな制度要請で自主的なフレームワークということで動いていますが、これはまだ大分先になるのだろうなと思いますが、明確な制度要請と国際的な何らかの具体的なスタンダード化ということもにらみながら、関係者は動いていると思っています。
 以上です。

○末吉委員長 水口先生と森さん、ありがとうございました。
 内外の動向、特に国際的な動向、大変参考になりました。ありがとうございました。
 私の印象ですけど、非常にプロアクティブな動きが始まっていると、大きな目標意識、明確な意思を持って動いていると思います。
 実は、予定では25分ほど委員の皆さんに議論いただきたいということなんですが、こんな大きな問題を25分でとてもできませんし、議論があちこち行くのもまた困るので、ちょっと私の勝手なあれなんですけれども、なぜ必要なのか、そもそも必要なのか、whyですよね。それから、だれのためにやるのか。今、もっぱら投資家保護というのが多かったんですけれども。とか、何をといったような、どういう情報開示をすべきか、この辺、非常に関連があると思うんですけど、そういった部分で前半ご議論いただき、次にじゃ、そういう前提でやるとしたらどうやるのがいいのかですね、how。それはボランタリーなのか、規制なのか、あるいは媒体は何にすべきなのかとか、いろいろなことがあると思うんですけれども、ちょっとその2つのグループに分けて、ご意見・議論いただければと思います。
 まず最初に、そもそも論の、なぜ必要なのか、やるべきなのか、やるとしたらだれのために、何のためにというようなところでの、そのためには何をしなければいけないのかというようなところで少しご意見をいただければと思います。
 関さん、どうぞ。

○関委員 大変貴重なご報告ありがとうございました。今のご報告の中で、すごく重要なキーワードが幾つか出ていたと思うんですけれども、一つ水口先生がおっしゃっていたように、そもそも情報開示の制度の背景にあるものですよね。リスボン戦略から始まって、欧州が持続可能性という大きな政策の中に、この情報開示を一つの手段として位置付けているという、そこが非常に大事だと思うんです。
 特にその流れをずっと追っていくと、やっぱりキーワードは一つ、企業としての競争力。企業だけじゃなくて、もっと大きく言えば、国としての競争力、国際競争力という話になると思うんですけれども、今後、プラットフォームをつくって多くの関係者で議論をしていく上でも、忘れていけないキーワードというのはやっぱり競争力をいかに上げていくかということだと思うんです。そのためには、先ほどの、そもそも何を目的としてこういう情報開示制度があるのかということを、常にそこから離れないように議論をしていかなければいけないんじゃないかなというふうに思います。
 そういう観点で言うと、今日、国際的な制度との関連というのが非常に語られたので、これも大事な観点だと思うんですけれども、要はそういう国際的な制度の動きとの整合性を常にとっておくとか、あるいは整合性をとるというよりは、もうちょっと受け身ではなくて積極的に、日本としてのスタンダードを国際的なスタンダードにいかに盛り込んでいくかという、これも競争力という観点にもつながると思うんですけれども、その辺の視点がすごく重要じゃないかなというふうに思います。

○末吉委員長 ご存じのとおり関さんは、ISO26000でここ数年大変ご活躍というかご苦労されているので、大変いい視点をありがとうございました。
 今の点、水口先生、何かレスポンスありますか。

○水口委員 ありがとうございます。全く賛成でして、情報開示というのは市場のためにある、いわば市場の召し使いです。そして市場というのはよりよい社会のためにあるわけです。よりよい社会というのは、競争力があって、住みよい社会であること。持続可能で住みよい社会ができるようなマーケットで、そういうことに取り組む企業と投資家が儲かるような仕組み、そういう社会をつくるためにこの制度は必要なんだろうと思っています。全く賛成です。

○末吉委員長 よりよい社会というとステークホルダーはもっといるでしょう。投資家だけじゃなくて。

○水口委員 そうですね。

○末吉委員 消費者とか一般市民。そういったのはどうなんですか。

○水口委員 消費者や一般市民がサスティナブルな社会に住めるような経済のフレームワークをつくる必要があって、そのためにマーケットはある。今までもそうだったんですね。今までの証券市場も、経済を活性化することによって、私たちはこういう豊かな暮らしができるようになる、そういうことじゃないかなと思っていますけれども。

○末吉委員長 ちょっとマーケットと市民社会が離れ過ぎていたから、問題も起きていたんじゃないんですかね。その辺のギャップも埋まるような情報開示というのも。
 どうぞ、崎田さん。

○崎田委員 ありがとうございます。私も環境を視点にして、やはり社会が元気になって企業も強くなる、そして暮らしもよくなるという、全体の、消費市場もやはり環境をきちんと考えていく、そして金融市場のところでもきちんと環境が評価されていくという、やはりそういう全体像が社会の中で育っていくというのが大変重要だというふうに歩んできました。
 それで、実は2007年の環境報告書ガイドラインの策定をやったときに入らせていただいていたんですけれども、あのときに実は、もっと情報開示を厳しくしたらとか、いろいろな話、とか項目を増やしたらという話があったんですけれども、あのときにまだ、それを厳しくしてもそれを有効に生かす、市民社会が褒め合う、あるいは金融がちゃんとそれを評価するという、そういう社会が育っていないところで、あまりにも情報開示を厳しくしたら大変なんじゃないかという議論をした覚えがあります。でも、やっと金融の皆さんも、やはりここをきちんと強くするというのが大変重要だということで今日のような話になってきているというのが、大変私はうれしく思います。
 その感じからいくと、市民社会の中でそういう枠をみんなで、消費者も関わっていくんだ、そしてそういうところが投資家もきちんと関心を持っていくんだというところが、社会全体でそこを理解して育っていくというところにまだなかなかいっていないという、そこが大変大きなところかなというふうに思います。
 そういう中で、できるだけその情報を増やそうということでいろいろやっているわけですけれども、今日何かそういう資料も出ていますので、後で見ていただければと思いますが、そういう私たちの市民社会のほうも、こういうことを大変重視していくような雰囲気を全体でつくっていくというところが大変重要だと思っております。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 伊東さん、その金融の世界がもっと社会全体との関係、あるいは社会全体を考える金融であってほしいと。そのために情報開示も非常に大きな役割を果たすという今のお話ですけど、どうでしょうか。

○伊東委員 大変大きな、委員長からのお話だと思いますけれども、金融というのは、お金の流れを通じて社会の資源配分をつくっていくもの。そうすると、お金が流れていった経済主体が、企業であれ個人であれ、それがまさしく望ましい経済行動をやっている方向に流していく。それが環境への負荷の軽減であったり、というような流れが、そもそもあると思うんですね。
 そして、そのお金を流していく上で、間接金融の人も直接金融の人も、それから投資家としての直接金融という意味では機関投資家から個人の方々は投資信託等を買うわけですから、そこもそういったような情報開示がわかるようにしていく。基本はこういうフレームがあるんです。
 それで、今日のお話について、私がちょっと思ったことを二、三申し上げますと、一つは関さんのおっしゃるとおりだと思います。それで、ISO26000の動きというのは、日本が相当プロアクティブに影響を与えて、世界のフレームワークをつくっていった話です。それから、今日のこの開示のフレームワークのお話を聞いていても、実務的にはまず定量的なデータを、最初は上場会社から始めて、共通のものが取れるものをまず準備する必要がある。そうすると、やっぱり相当多くの企業がISOの環境規格であるISO14001をやっているので、定量データはそこのフレームワークからかなり取っていったほうが現実的かなと思います。
 それから一方では、森さんのご説明の中の4ページにフレームワークが出ていますけれども、その中で特にGRIについていえば、マテリアリティですね、つまりその企業にとっての将来的な競争力の観点で、どこに独自性があるんですかというところを、定量的な共通指標以外に定性的なところを非常に重きを置いていると思うんですね。
 そして、そこの部分というのは、財務諸表でもそういうところを書くところがありますけれども、実は非財務情報でもそういった定性情報というのはやっぱり非常に重要じゃないかと思います。
 それからもう1点だけ申し上げると、最初はやさしいところから現実的なところからやったらいいと思います。例えばきのうの日経新聞に企業評価の指標の記事(「NICES」)が出ていましたね。あれが、多くの方がごらんになったと思いますが、投資家の視点、消費者の視点、従業員の視点、それから社会の視点、の4つから構成され、4つめの視点「社会」の中にまさしく「環境」も大きく入っていたわけですね。そこでの「環境」はカーボン・ディスクロージャー・プロジェクトみたいに専門的ではないかもしれないけれども、かなり質問状で上場企業にアンケートをして、そこでの情報と公に開示されているアニュアルレポート等の財務情報との組み合わせで指標をつくっているやにお聞きしていますので、現実的にやろうと思えばこのような形でできるわけです。
 現実的にそういうところに歩み出そうとすれば、ベースはあると思うので、できるところから入れていけば宜しいのではないでしょうか。そんなふうに感じました。

○末吉委員長 伊東さん、現場からのご意見ありがとうございました。
 ISO26000なんですけれども、日本は参加してからは非常に熱心なんですけど、一番最初はかやの外に置いてけぼりを食う可能性すらあったような状況でしたので、こういう情報開示において、ああいったようなことの繰り返しをしないほうがいいと思っております。
 どうぞ、藤井先生。

○藤井委員 今、水口先生と森さんのお話を聞きまして、ポイントの一つはやはり国際的動向、統合というか、国際的な流れが非常に大事であると思います。我々の議論もその枠の中でというか、あるいは国際的な論点に提示していくようなものでないと、ジャパン・ローカルでは済まないということが一つだと思います。
 それからもう一つ、SECのガイダンスの話が触れられましたが、サステナビリティ情報、あるいはSECのガイダンスでは非財務情報の扱いですね。ノンファイナンスなんて言っていますけれども、伊東さんも言われたように、それらの情報がマテリアリティかどうかが問われます。ですから何でもかんでも非財務情報を財務諸表に乗せるという話ではありません。
 ただ、この非財務情報のマテリアリティをどう評価するか、というのが実は非常に難しいところです。これがマテリアルであるかどうかということを、もちろん法的なリスクとか物理的なリスクとか、非財務情報についてもそれぞれにおいて扱いが違うわけですけれども、一律のものをSECが提示しているわけではない。そこで非財務情報を評価する経営の判断というのが非常に大事になってくる。もちろんルール化を進めることによって、マテリアルの部分の判断をしやすくなっていくわけですから、政策の整備というか、政策の進展も大事です。しかし、最終的にはそれらを経営が判断するというところがポイントですね。そうした経営の判断を投資家が評価するという流れになってくる。したがって、そこの間をどうつなぐかが非常に大事だと思います。世の中の動向がこうだから、じゃ、形だけ非財務情報の開示の姿を示しても、経営者がそれを判断できないような形では困ります。
 それから、もう1点あえて言えば、森さんの2ページのところの将来志向、中長期的視点というのが大事としています。しかし投資家が判断するのは現在価値です。将来の規制とか、あるいは業況の動向とか、企業の展開等を現在の我々が判断して、将来、今の株価ならもっと上がるに違いないとか、卑近な例として言えば、我々は日々そういう判断を今までもしてきているわけです。つまり、過去・現在・将来のその企業が持っている非財務の価値を、現在価値に転化して評価できるような仕組みの開発を進めていき、経営者はそれを有価証券報告書で開示する仕組みづくりが必要です。そうした開示の内容が適切であると投資家が判断すれば、当然それに応じたリアクションを起こすことになります。それが市場を生かすということではないかなと思います。

○末吉委員長 藤井先生、ありがとうございました。
 今のご指摘の点、僕は非常に大切だと思うんですけれども、森さんもおっしゃったとおり、これはある種の国際間のルールの競争ですよね。ですから、その経営者のマテリアリティの判断のレベル、水準、投資家の判断の水準、社会の判断の水準、あるいは国としての判断の水準、これがこれからの国際競争の優劣を決めていきかねないんだと。多分、そういう問題認識というのは非常に重要なんじゃないかと思います。
 ちょっとこの部分にあれなんですけど、最後お二人。

○竹ケ原委員 ご説明、どうもありがとうございました。大変わかりやすかったです。
 うかがっていて思ったのですが、やはり長期的に環境金融とか、ESG金融という言葉が要らない時代にどんどん欧米は向かっているんだなという印象を強く持ちました。金融市場の効率性というのを以前、私からも問題提起させていただきました。金融市場というのは非常にすぐれていて、ミスプライスのものがあれば、必ず売り買いがさっと行われて瞬時に適正な価格に収斂していく。この資源配分機能がきちんと使えれば、いろいろな問題が解決していくわけですけれども、環境ですとか、今、非財務情報と言われていた部分が十分に反映されているかといえば、そこは弱い。今は、その隙間を埋めるべく環境金融というカテゴリーが存在しているわけですけれど、情報開示が進んでいけば、こうした情報をわざわざ追加的に補正が必要なくなってきますので、市場が本来持つ効率性が発揮されていくのだろうなということです。
 開示の方法に国際的な潮流があるので、これに乗っていくべきだという藤井先生のご指摘も全くそのとおりだと思うのですが、その一方で引っかかっているのが、例えばISO26000で明らかになったCSRの考え方の違いです。私もヨーロッパが長かったんですけど、大陸ヨーロッパのCSRというのは、環境よりは雇用のほうが重かったりします。アメリカはアメリカでまた違いますよね。
 そうすると、国際的なフレームワークには乗るべきなのですが、何を開示対象にするかまで完全に標準化できるかというと、多分、そこは違うと思います。ローカルルールではないのですが、国際的なフレームワークには準拠しつつも、日本企業向けに情報開示内容の重み付けを変えるというのでしょうか、味付けというのはあってもいいのかなと、そんな印象があります。

○末吉委員長 確かに、ローカルフレーバーは必要なんですよね。でも、少し国際社会も受け入れるローカルフレーバーということなんじゃないかと。
 向畑さん、何かご意見ございますか。

○向畑委員 今までの議論をお聞きしていて、私も全くそのとおりだなと。実際、私、運用者という立場で、日本株の株式運用ということにたずさわっているんですけれども、まさに将来志向とか、中長期的視点というのはすごく重要なテーマで、ここをまさにESG的なテーマで掘り下げて、普段SRIの運用をやっているということがあります。ESGの基準はやっぱり国際的であるべきだろうというふうに思います。
 ただ、一方で、私、日本株の担当ということで言いますと、例えばそのグローバルな基準ができたとしてそれにかけるコストが、これから全世界同じぐらいかけるという話になると、やっぱり売上なり、トップラインをどれだけ伸ばせるかと、国としての成長率というのが大きく影響するような気がします。例えば、実際今、欧米なり新興国と比較して日本の成長率は著しく低いとすると単純に規制を適用したときに、企業の収益力が下がるとか、あるいは資産を毀損するとか、BPSが下がるとかPERが落ちるとかいう形で、資本効率も日本の企業の場合あまりよくない方向になると、全体として本当に日本の成長に寄与しているのかというところはやっぱり疑問としてあります。欧米や新興国では、まさにいろいろな企業がプレイヤーとして、新たな参加者というのが次々と生まれてくる土壌というのがあると思うんですね。ただ、日本の場合には、ある程度同じプレイヤーがずっと事業をやっていて、その事業の中で、何とか企業さんの努力で苦労しながら企業内のポジションをちょっとずつ時代に合わせていっているという形で、なかなかベンチャーも生まれにくいですし、既存の事業の方向転換という形になると、どうしてもスピードも鈍くなってくると。結果、競争にも劣後してしまうという可能性も出てくるということで、片や、こういったESGをやらないと中長期的な成長ができませんよということはあるとは思うんですけれども、一方で逆に、やっぱり成長、新たな収益、事業機会になるというからには、そこを支援するような、やっぱりサポートもするシステム、新たな企業が、そこをビジネスチャンスととらえて出てきた企業なり事業に対してどういうふうに、国としてそこにベットするんですかという形の仕組みも、やっぱりあわせて必要ではないかなというふうに思います。
 非財務的情報の重要性というのは私も認識しているつもりですけれども、やっぱり全体として日本として成長していくというところも踏まえて、国際的に基準にも乗っかりながらどうやっていくのか。非常に難しい問題だと思うんですけれども、今、お金がやっぱりグローバルに流れているので、こうすべきだという議論以外に、現実の競争戦略・成長戦略というのも本当に真剣に考えなければいけないなというのを日々感じています。

○末吉委員長 大変これもまた重要なご指摘で、日本はどちらかというと、あえて言えばオールドマネーの中の新分野進出ですけれども、やっぱり全体としてニューマネーをどうやって生み育てていくのか。そのことがこういう開示制度の中で、既存の勢力に有利な開示制度であっては多分ニューマネーは生まれにくくなると思うんですよね。その辺の配慮というの非常に重要かと思います。
 少し時間を過ぎちゃったんですけど、このセッションを終わるに当たって、改めて何を、どういったものの情報開示を求めるのか、あるいはhowといいますか、どういったやり方で、義務かボランタリーか、あるいは媒体その他、こういった面で少し議論いただいて、次のセッションに入りたいと思います。
 いかがでしょうか。ルール化にいくんですかね、規制をつくるんですか。それともレッセフェールなんでしょうか。あるいは、両方なんでしょうか。
 はい、どうぞ。

○伊東委員 さっきの話と少し重複しますが、私は基本的にはそれぞれの企業がどれだけ温暖化ガスを削減したかという定量的な数字、それとリサイクルの数字、いわゆる廃棄物に関しては義務化して定量的に報告してもらうのが現実的で、まあ多くの上場企業はできると思います。一方、特定の企業にとって経営上非常に大きな、環境や規制に基づくリスクを抱えている部分とか、それから競争上非常に有望な環境の技術を有している等、マテリアリティの部分については、開示する枠組だけをつくっておいて、そこへはそれぞれの企業が独自に判断で入れていくとか、そういったことなのかなというふうに私は思います。

○末吉委員長 はい、どうぞ。

○藤井委員 ほかの国のまねをする必要はないのかもしれないのですが、SECのガイダンスではそこのところは、規制リスクと物理リスクと市場リスクのそれぞれについて、マテリアルの部分を開示しなさいとなっています。そのうち規制リスクのところというのは政府の政策ですから、それは日本国政府だけに限らず、EUであったりアメリカであったり、各国当局の政策動向が、自分たちの事業において、どのようなインパクトがあるかということを評価して開示しなさいとなっています
 それから、物理リスクはつまり、企業の持っている固定資産のほか、事業のオペレーションも含めて、それらの資産や事業自体が、温暖化によってどのような影響を受けるのかということを、あるいは受けないということを含めて、マテリアルな影響はどうかということを開示する。市場リスクのほうは、例えば温暖化対応に資する商品を出せば爆発的に売れるとかあるいは売れないとか、そういう情報が入ってきます。そうした評価は個々の経営判断でいろいろと変わってくると思いますが、一応、大まかには3つに分けて、それらの中でのマテリアルな情報を開示するというのがガイダンスの分け方だと思います。

○末吉委員長 非常にクリアな考え方だと思うんですけれども、こういう点はどうですか。
 今あるリスクですね。例えば消費者の動向が変わることによって売上が変化すると。それに対しての今のマテリアリティというと、ある一定の理解が社会の中にあるわけですけれども、例えば温暖化とか、今問題にしているESGの分野の要因というのは、今ある要因と全く違ったプロセスでリスクを起こすんでしょうか、それとも同じなんでしょうか。
 例えば、よく経営者がお客さんのニーズをつかめというわけですけれども、そのニーズの中身が変わると思えば、別にそのリスクのマテリアリティの基準が変わらなくてもいいわけですよね。時代とともにニーズは変化するという場合、いや、自然環境保護を求めるニーズが増えたんだと、だからそのマーケットの変化に対応するということが求められる、こう考えれば、別に特別なことではないという話もあります。でも、今までなかったニーズなんだから、新しく社会の中に新しいリスクの基準が入るんだから、そこはやっぱり新しいシステムやプロセスも必要なんだというふうに考えるのか。
 はい。

○藤井委員 その点については、あまり整理していませんが、消費者のニーズが変わるというのも、例えば温暖化であれば、国際的な行動をとらなければいけないという、政策の要請があるわけですね。それを消費者は自分たちの生活にまで置き換えて、これは地球にとって、人類の将来にとって大事だからと判断して選択する。政府の対応は、そうした判断、選択に資するようなニーズをつくり出していくわけですから、規制リスクと、物理リスクあるいは市場リスクは、実はつながっているということですね。
 ただし、さっきも言いましたがマテリアリティかどうかが問題となってきます。恐らく、一般的マテリアリティな基準というのはないと思います。財務の情報であれば、定量的に評価できるわけですけれども、温暖化関連や環境の非財務情報、あるいはサスティナブル情報については、評価の判断が個々のケースごとに違ってきて、そうだと思う消費者もいるし、そうじゃないと思う消費者もいる。そうした中で、経営がどう判断するかだというのが大事だと思います。その意味では、経営判断が非常に重要ではないでしょうか。経営が自分たちに資する、自分たちが評価する、サステナビリティ情報のマテリアルな点はこうであり、その内容というのはこうだというふうに、開示できるかどうかですね。あるいは、そうした企業の判断の背中を押すような政策・制度があってもいいかもしれないですけれども。
 現実には、そうした枠組みがないと、マーケットが自由に選択するよ、というのは一見良さそうにみえますけれども、実は、評価・判断が企業ごと、消費者ごとにばらばらになってしまい、非財務情報の開示の意味もなさなくなるリスクがあると思います。

○末吉委員長 そうですね。
 ちょっと私が思っている問題意識は、このそもそも論でいくと、背景にあるのが地球温暖化の対策をどうする、そのために経済のあり方を変える、そのために企業行動を変える、そのために投資のあり方を変えなきゃいけない。そういったことのそもそも論にいきますと、温暖化との戦いというのは時間の要請があるんだと。例えば、マーケットが自然に飲み込んでくれる時間がないんだとすれば、少し時間を稼ぐための背中を押すという意味もあるとすれば、情報開示、多分そういう要素もあると思うんですね。
 とすれば、その時間、背中を押す要素を、この情報公開の中にどういう具合に反映させていくのかですね。ですから、マテリアリティの判断においても、今までの常識のマテリアリティでいいのか、それとも少し先取りする形の行動を促せるようなマテリアリティという認識も必要なのかなという、ちょっと言えばそういう感じもするんですけど、いかがでしょうか。

○崎田委員 いろいろ情報開示の中で、例えば現状どうやっているかというのと、どういうふうな方向性で将来目標を立てているかって、その企業姿勢とかそこがすごく重要だと思うんですね。
 ですから、現状と将来の方向性、目標とか、やはりそういうところが全体がきちんと情報開示されて、社会がそれを評価できるような状況になるというのが大変重要なのではないかというふうに思っています。

○末吉委員長 関さん、そのISO26000で新しい制度づくりをずっとやってこられたのですが、これもやっぱり将来へ向かう方向性をつくるという作業ですよね。そういった点からいかがでしょうか。

○関委員 先ほどからも出ていましたけど、会計にしても環境情報にしても、過去のパフォーマンスだけを開示するだけではなくて、むしろこれから必ず広がっていく、ISO26000もそうですけれども、あらゆるセクターが、あるいはすべての組織が持続可能性という価値をその行動の中に盛り込んでいくんだと、そのためのガイダンスということなんで、そういう意味でいくと、いろいろなステークホルダーを巻き込んでいくような、そのきっかけとするような情報開示といいましょうか、コミュニケーションというのもすごく大事だと思うんですね。
 ということからいくと、やはりこれから、中長期的な戦略ですとか展望ですとか、あるいは将来に向けての取り組む方向感とか、そういったものも含めてステークホルダーを巻き込んでいく、エンゲージしていくというような観点からの情報開示もすごく大事だというふうに思います。

○末吉委員長 どうぞ、水口先生。

○水口委員 すでにたくさんしゃべったのにすいません。3つのことを思いました。まず、何がマテリアリルかはやはり変化していくだろうと思います。それは、規制の影響もあると思いますが、市民社会の成熟ということもあると思うんですね。何をより重視するかという考え方が変化していくということは確かにあって、例えば昔は例えば児童労働が当たり前だと思っていた時代もあるわけですが、今では許されないわけです。このように市民社会はどんどん成熟していくだろう。したがって、マテリアリティはどんどん変わっていく。それを先取りしていくということが必要だと思います。これが1点目です。
 2点目としまして、関さんがおっしゃいましたように、例えば温暖化との戦いというのには時間がない。これは政策として取り組むべき課題なので、さまざまな政策のオプションがあるわけです。例えば、環境税や排出量取引という方法もあるし、一方で情報開示や投資家を動かしていくという方法もあって、いずれもその目的を実現するための政策手段と位置付けられるわけです。ですから、より効率的な政策手段を選ぶということが政府の責任としてあるんだろうと思います。そのように考えて、どこまで規制すべきなのかということを判断する必要があるんじゃないか。これが2点目です。
 3点目として、情報開示の何をどこまで規制するのかという話なんですが、これは伊東さんや藤井先生のおっしゃることと私は基本的には同じで、すべてを規制するというわけにいきませんし、すべてを自主的に任せるというわけにもいかない。これは二者択一ではなくて、非常に厳しいルールが必要な部分から自主的な開示の部分まで、グラデーションがあるんだろうと思います。さらに、規制で対応する場合でも、その項目だけを決めるとか、考え方だけを決めるという、非常に原則主義的な方法から、規則主義的により細かいものを決めていくところまで、いろいろなやり方があって項目によってそこは違いがあるのだと思います。
 この中で、特に自主的な開示については、環境省さんの努力で大分頑張ってきたと思うんですが、一方で、やはりその規制的な対応の部分は、日本はやや遅れているんではないかと思われます。したがって、原則としてその全体のグラデーションがあるわけですけれども、規制的な部分が少し足りないような気がしますので、今はそこを強化していくということは必要じゃないかなと思っています。

○伊東委員 私も今の水口先生の話に非常によく似た話ですが、何をどこまで開示するかは、実は政府の政策と密接不可分だと思います。つまり、排出量取引と温暖化対策税がどういうふうにかかるかということと密接不可分であるということです。排出量取引が何らかの形でかかれば、それぞれの企業がどれだけ排出をしているかというのは当然開示すべきことになってくるということです。排出量取引の掛け方によっても変わってくると思います。
 それから一方、製品についての環境税というのですか、それが固まってくると、直接的な排出の部分ではなくて、いわゆる製品のカーボンフットプリント的な、生産過程やサプライチェーンで環境負荷を非常に少なく生産したことや、消費者の使用段階での省資源という部分での開示というのもあると思います。ただ、それは必ず定量的に何かを開示せよというのではなくて、定性的な枠組みをつくって開示しなさいということではないでしょうか。
 それから、我々金融機関であるならば、自分たちの排出分は排出量取引等がかかってくれば当然、定量的に開示が求められますが、更に融資を通じてどのくらい社会の環境負荷低減に貢献したかというような点は、まさしくメーカーにおけるフットプリントの考え方の金融機関版といえましょうが、そういう項目があれば独自性を持って開示していくと。
 それから最後に、これまで「環境会計」というのがあった訳ですが、普通の会計と独立して、どれだけお金使ってどれだけCO2が下がったかを個別に仕分けるのではなくて、最終的には本来の会計情報に統合していったほうがいいのではないかなと思います。

○末吉委員長 竹ケ原さん、今、伊東さんがおっしゃった政策、政府による規制、ルールとの補完関係、連合性とあったんですけど、実は僕、CDPジャパンをやっているんですけど、海外と日本の企業の回答の非常に特徴は、日本企業はルールに決められたことにものすごく成績がいいんですよ。でも、ルールがないことには非常に弱いんですね。つまり、これから先をどうしようか、ビジョンとか戦略。でも、決められていること、例えば排出量の数字の把握とか、それはもう非常に成績がいいんですね。
 ですから、今の伊東さんのご指摘、非常に重要なんですけれども、政策のカバーする範囲と、こういうところをカバーする範囲とが本当に一致したほうがいいのか、どういう関係にあるのがというのは、これは結構大切なような気もするんですね。いかがでしょうか。

○竹ケ原委員 そうですね。これは多分、関さんにコメントいただいたほうがいいのかもしれないのですが、私がヨーロッパ駐在中に聞いた限りでは、彼らが理解するCSR観では、企業の社会的責任であって義務ではないという点がとても強調されていました。恐らく今回のISO26000ガイドラインでも、企業のCSRはビヨンド・コンプライアンス、コンプライアンスを超えたところで自主的にどこまでコミットするかであり、そこが企業の社会的責任のレベルを判定する要素なのだよという部分は明確に出てくると思います。明確な指針のないところでコミットを決めなければいけませんので、皆、拠り所を求めて、ILOやOECDなどの国際的な合意を参照しながら、コンプライアンスとCSRとの距離感を計っていくという話だと思います。
 そうすると、日本はもともとコンプライアンスの絶対レベルが非常に高いので、ルールを守っているだけでも十分じゃないかという議論も成り立つとは思うのですが、それを超えたコミットを語るというのはやはりハードルの高い話になってくると思います。他方、先ほど来のご議論から思うのですが、財務諸表と同様、数字として開示できるものは結局過去のトラックレコードですよね。しかし、投資家として知りたいのは、その例えばCO2の排出量であれ、リサイクル率であれ、過去のトレンドがそのままリニアに今後5年、10年推移していく会社なのか、そうじゃなくてその先のまた別の展開をその会社は持っているのかどうか、という点だと思うのですが、これこそまさにCSRの世界、つまりコンプライアンスを超えたコミットメントですので、多分ルールでは縛れないと思います。
 そうすると、情報開示ルールというのも、大きく2つに分けて、過去の数字については、重要なものについては何らかの厳格なルールを定めて開示を義務化する。これは多分、日本企業は得意中の得意で、もともと高いコンプライアンスのレベルできちんと把握しているデータを出してくれるでしょう。加えて、その先の見通しを含めた非財務情報については、定性的な記述として、「この問題をどうしていくのか」といった経営者のコメントでも良いのですが、何らかの形でその企業の戦略を語ってもらうような形がとれないものでしょうか。後者の部分でこそ、企業の巧拙、戦略性の有無というのが透けて見えるんじゃないかというところもあります。なにやら足して2で割るような結論なんですけど、そういう開示の仕方もあるのかなと思いました。

○末吉委員長 そうすると、向畑さん、やっぱりこれはファンドマネージャーにしろ、情報を分析する側の能力も相当これから高めるといいますか、視点を変えるという必要が出てきますよね。義務的情報だけでいいのかという話ですよね。

○向畑委員 そうですね。実際、私どもでも、ESGでまず過去を分析し守りというかリスク情報に主眼がありました。それが、SRI・企業もだんだん、マーケットが上向いてきたからというのもあるんでしょうけれども、だんだん守りから攻めに主眼がおかれるようになってきました。世の中、相当、イノベーションが起こっているということで、ESGを事業活動にいかすためのどういった戦略を持っているか、中長期的な先を見すえて、トップがどういう戦略でどういう事業をやっているんだということに視点が広がっています。攻めの視点については各社さん、すごく個性があるというか別々だと思いますが、そこの見極めというのは投資家としても重要だと考えています。世の中的にも、そういったことにマネーは多分、興味を持っていて、開示にうまい下手もあるでしょうけれどもそれなりに納得性の高いもの、可能性の高いものにより多くのお金が流れていくというとことだと思いますので、おっしゃるとおりだと思います。

○末吉委員長 ありがとうございました。
 お話を伺っていますと、リアクティブな部分でとどまっていたらだめだと。リアクティブ、イコール規制という話にすると、そこだけではだめだと。もっとプロアクティブに将来に向かって企業自身が何を考えているのか、そういうところで投資家ないし社会とのダイアログをする必要があると。そういったことに役に立つ情報公開の制度であってほしいというような気がいたします。
 一応、第1セッションをここで終わりにさせていただきます。
 この後、今後の報告書をつくるに当たっての議論を少しさせてください。
 まず、黒川さんからご説明いただきたいと思います。お願いします。

○黒川環境計画課長補佐 説明いたします。資料3をごらんください。「環境と金融に関する専門委員会報告書骨子」という形で、これまで5回会議を開きまして、いろいろご議論いただいたものを整理したものでございます。
 大きく分けると、1.で総論、2.で各論となっていまして、まず1.総論の環境と金融の関わりからご説明いたします。
 まず(1)として、環境問題の解決に向け金融の役割は重要ということでございまして、環境金融というものの役割は金融市場を通じて適切なシグナルを与えることで、企業や個人の行動を変えていくことだということ。
 次に、では具体的にどういう取組があるのかといえば、2つに分類できるでしょうということでございまして、資金の使途が直接的な環境配慮行動であるものということで、もう1つが、環境負荷低減に取り組む経済主体を評価・支援することで、その持続的な行動を促す取組ということでありまして、これは伊東委員から何度かいただいております、環境金融と企業CSRという区分けということになるかと思います。
 次に、特にということで、特に温暖化につきましては25%実現に向けては、後でご説明いたしますが、今後10年間で数十から100兆程度の追加投資が必要というふうに見込まれておりますので、それをどうやってしていくのかということで、金融の大きな役割が期待されるということ。
 次に、その環境金融に取り組む意義といいますのは、それが中長期的な収益につながり得るからということと、収益には直接つながらないとしても、やはりそれは社会的責任としてやるべきなんだという2点があるのではないかということでございます。
 次に(2)といたしまして、じゃ、そういう役割は重要なんだけれどもと、金融機能の特徴を生かしてどういった役割を発揮できるのかということでございます。これは大きく分けると2つになろうかと思いますけれども、1つ目は金融市場を活用することで、市場メカニズムによって効率的に環境配慮行動を促していくということでありまして、竹ケ原委員から何度かございましたけれども、金融の効率性というものを生かして環境配慮行動を促していくということでございます。
 しかし、これは一定の限定が当然ながらありまして、その市場メカニズムがうまく働く範囲でという限定がつくということでございまして、何がどういう補正が必要なのかということになりますと、黒ポツの上2つでございますが、1つ目が、そもそも儲からない、中長期的に別にプラスにならないものはやっぱり取り組まれにくいわけでございまして、規制ですとか経済インセンティブ付与といった政策によって、環境配慮行動をするとそれが収益上プラスになるというエリアを拡大していくと。いけば、そのエリアの中では金融というメカニズムで効率的な配分がなされていくということかと思います。
 もう一つ。2つ目は、本来は現状でも中長期的には儲かるのだから、そういうメカニズムが働くはずなんだけど、情報不足でできていないというエリアがあろうということでございまして、そのために環境配慮行動が長期的な収益予測に反映され、投資家の判断に織り込まれるような、企業の環境情報の開示評価という仕組みが重要、というのが2点目でございます。
 次に下の「○」でございますが、もう一つ、金融の機能としてございますのが、その投融資先の環境配慮行動を評価支援する、モニタリングですとかコンサルティングといった機能が重要ということでございます。特に、中小企業の取組を継続的に評価・支援する地域金融機関の役割といったものも重要ではないか、ということでございます。
 次にまいりまして、2ページでございますが、現状の課題ということでございます。
 現状、もちろんさまざまな取組が行われているわけでございまして、幾つか代表的なものを投資の分野はエコファンド、融資であれば環境格付け融資、保険であれば土壌汚染の保険、あとほかのエリアとしては環境ベンチャーという切り口もあるでしょうし、もっと草の根的な市民の出資によるコミュニティビジネスといったような切り口もあろうかと思いますが、そういったようなさまざまな取組が行われているところということでございます。
 しかし、その金融全体という目で見ますと、やはり香り付けのスパイス的な存在にとどまっているんじゃないかということでございまして、それがメインストリームとしての広がりまでは見られないと。そういった取組を広げていくために、今はもう議論するときではなく、行動すべきときなんだということでございまして、この2.というところで、じゃ各論ということで、具体的な行動を幾つか提案をするという構造ではないかと思っております。
 次に、2.の具体的な政策の検討ということでございます。この具体的な各論は4つ挙げてございます。まず1つ目が、日本版環境金融行動原則の策定ということでございます。これは前回、第5回でご議論いただいたものでございますけれども、いろいろ、そもそもなんでこういうものが必要なんだというご意見もありましたので、まずは既にあるグローバルな行動原則との関係も整理しながら、その金融機関のイニシアチブでそういう行動原則の策定を期待するんだということかと思います。
 何でつくるのかということで言えば、つくるだけでなくて、合意に至るプロセスですとか、策定後のさまざまなステークホルダーとの対話といったことも重要じゃないかといったことですとか、地域金融機関も参加できる原則となるという意義があると、そういったようなことかと思います。
 次、3ページにまいりまして、ここから先は行動原則をつくる場合のその内容でございまして、ここは前回ご議論いただきましたので簡単にいたしますけれども、内容については次のような内容をたたき台として、金融機関のイニシアチブにより検討合意されることを期待すると。
 まず総論として、環境との関係で金融に何が求められているのか。各論として具体的な取組内容。その下の「○」のところで、多くの関係者の参加と継続的な取組を確保するための仕組みとして、こういうものが要るんじゃないかといったようなことを書いてはどうかということとしております。
 次に(2)でございます。先ほど各論4つと申しました2つ目でございますが、25%削減に向けた対策投資促進のために必要な金融の仕組みということでございまして、これまでも何度も25%削減というのに着目してどういう仕組みが要るんだろうかということを議論してはどうかということでございますので、そういうふうにしております。この具体的な中身については別紙ということで、4つ説明した後で別紙を説明させていただきます。
 次に、4つの各論の3つ目でございますが、これは投資家への情報提供を通じた投資判断への環境配慮の織り込み促進ということで、先ほど来ご議論いただきました情報開示の部分ということで、これは先ほどご議論いただいたような内容を記述するということかと思っております。
 次に(4)、4番目の各論ですが、機関投資家による環境配慮投資の促進ということでございまして、これも前回ご議論いただきましたので、ちょっと詳しい説明は省略いたしますが、機関投資家、特に公的性格のある公的年金基金等には、その社会的責任を踏まえて、投資先企業の環境配慮等を投資判断に織り込んでいくことが求められていると。受託者責任との関係でいえば、世界的にはもう受託者責任に反しない、むしろやるべきなんだという方向に向かっているんだということ。機関投資家による取組を進めるには、投資の際の環境配慮の方針が開示する、その投資の際にこういう環境配慮をしているんですというのを開示させることが有効ではないかと。その具体的な仕組みは、法律により開示を義務付けるといった方法もあれば、自主的な開示を促進するという方法もあり得るだろうということ。
 年金基金ですとかそういった人たちが環境配慮の取組を進めるには、その人たちの意思というよりは、資金の潜在的な保有者である加入者、国民がそれを求めている、こういったことが明らかになることも重要であるということかと思います。
 次に、先ほどの各論の2番目、25%削減に向けたということに関する別紙というのが、5ページ、6ページに続いております。
 まず、1.地球温暖化対策に係る中長期ロードマップについてということでございますが、25%削減と一口に言いますが、じゃ、何をするんですかということが、いろいろ今後政府でも議論していかなきゃいけないんですが、とりあえず3月31日に環境大臣試案というのがロードマップとして出されておりますので、それをちょっと簡単にご紹介いたします。
 資料4-1というのをごらんいただきまして、4-1の2ページ目をごらんください。
 4-1の2ページ目、2020年、2050年における部門別排出量の姿というふうにございますけれども、1990年の排出量があり、2020年には25%減らすというシナリオとなっておるわけでございますが、これを大きく見ますと、ものづくり、産業部門あり、家庭、業務、運輸とあるわけですが、やはりその家庭と業務が今後非常に重要だということでございまして、その産業部門、ものづくりというところでいいますと、今後、2020というので▲11%というふうにありますが、2008年から11%ぐらい減らすというふうになっておる一方で、家庭ですとか業務、これは40%を超えるような削減が必要。これは25%全体を真水でやるという場合ですから、実際はもうちょっと真水の数字が少なくなれば、ここも若干小さくなってくるんでしょうけど、いずれにしても産業部門とか運輸部門に比べれば、家庭とか業務というのを非常に強化しなきゃいけないということは、どういう数字になっても共通なんだろうなというふうに思っております。
 それを前提に、資料4-2というものを見ていただきまして、横置きのパワーポイントのものでございますが、その「ロードマップにおける分野ごとの投資額とその根拠」ということでございまして、めくっていただきまして2ページ目でございます。
 「温暖化対策を実施するための追加投資額」ということでございますが、これが2020年までに25%削減、これは真水25にした場合ですけれども、そういった場合、どれぐらいの投資がどの分野に必要なのかというものを整理したものでございます。
 この左側の表がその中身でございまして、まず産業部門、ものづくりで言いますと、この太字になっているところですね、3兆円くらいではないかということ。これ、10年間のトータルですね。次、家庭部門でいいますと、全体で38.8兆円というふうに書いてあるところがあろうかと思います。これを分解しますと、高断熱住宅、住宅の断熱化に20.7兆円、高効率給湯器、太陽熱温水器に11.8兆円で、高効率家電製品、省エネナビに6.3兆円というふうに分解されております。
 次に、業務部門でいいますと、トータルで11.1兆円。これもそれぞれに分解すると、こういう感じという数字がございます。
 次に、運輸部門は8.3兆円とありまして、これも次世代自動車と燃費改善にそれぞれ分解されると。
 次に、非常に家庭と並んで大きな固まりとしてありますのが、エネルギー転換部門、いわゆる再生可能エネルギー中心でございますけれども、太陽光発電22.6兆円をはじめとして、トータルで風力、小水力、バイオマスなども含めて36.9兆円というふうに整理しております。これを全体足しますと99.8兆円ということで、約100兆円ということになっております。これは真水25の場合ですので、ほかのバリエーションも分析はしておりまして、その場合はちょっとずつちっちゃくはなっていくということかと思います。
 これは、右側にいきますと、それぞれ当然、省エネの分のメリットが出てまいりまして、これがこの投資をすることで2020年までに表れるメリットがこの薄い部分の51兆円というところで、同じ機器、2020年以降も使い続けますので、そこで2021年から30年までに生まれるメリットが53兆円ということで、こうした額は長期的に見れば最終的には回収できているんじゃないだろうかというふうに分析をしております。
 というのを前提に、若干、家庭の部分だけ補足的に説明をいたしますと、4ページをごらんいただきまして、家庭部門では、ではどういったような対策が期待されておるのかということでございますけれども、まず住宅の断熱化でいいますと、一番上の新築住宅と書いてある欄があろうかと思いますが、これは2005年、30%、0%と書いてある欄がありますが、これは新しく売られている住宅で省エネ基準に合致しているのが今30%なのでございますが、これを100%にするということが目標の一つ。さらには既築、既につくられている住宅についての改修を年50万戸していくというようなことになっておるということですとか、高効率給湯器についていえば、今はほとんど導入されていないのを2020年時点ではヒートポンプ型が3世帯に1世帯、潜熱回収型が2世帯に1世帯というレベルまで広げていくと。太陽熱温水器も5世帯に1世帯、一番下の太陽光発電についても1,000万世帯ということですので、これも5世帯に1世帯、さらに集合住宅にお住まいの方もいることを考えると、これは持ち家住宅の相当部分につけるというようなことが想定されているということでございます。
 5ページ以降に、その住宅、家庭部門で対策をする場合にどういうコスト構造になっているのかというのをつけてございます。5ページが新しくお家をつくる場合でございまして、左側が太陽光、断熱、給湯、家電というバッケージでやる場合でございまして、大体ざっくり言うと一番下のところ、9から10年で投資回収ができるというふうになっております。ただ、これも当然、物ごとに回収できる年数は違っていまして、一番左の追加投資額と、右側の欄の投資回収額というので、これを割っていただくと何年で回収できるかわかるわけですが、太陽光は10年なんですけど、断熱はやっぱり非常にとりにくいですとか、高効率給湯器は8年くらいとか、そういったような計算になっておるということでございます。
 次、6ページがリフォームの場合でありまして、新築の場合に比べてやっぱり若干、回収しにくくなっておりまして、それは何となれば、やっぱり断熱化するのが、新しくつくるのであればつくり方の問題で済みますけれども、リフォームの場合はどうしても壁とか天井をいじりますと、それだけ高コストになるということでありまして、その分回収しにくくなっておるというのがリフォームの場合。
 その下が、これはもともとお家をお持ちの方に、リフォーム抜き、断熱化をしない太陽光、給湯、家電といった、そういう物だけを置くというパターンでありまして、このパターンは比較的、やっぱり断熱はなかなか回収しにくいので、その分がない分回収はしやすいというような分析になっておると。ざっくりそういうことになっていまして、こういうのがほかの分野にもそれぞれあるというのが、このロードマップの概要ということでございます。
 それを前提に、またもとの資料の3というのに戻っていただきまして、その5ページでございますけれども、そういうロードマップを前提といたしまして、じゃ、具体的にはどういう仕組みだということでございますが、まず既存の主な政策ということでございますが、これはまず、財政投融資資金を活用した融資というのが日本政策金融公庫さんによって行われていまして、いろいろな太陽光、風力、バイオマス、地熱、燃料電池といったようなものですとか、省エネ設備の導入への融資が行われている。若干低い金利の融資が行われているということが1つ。
 2つ目が、環境省の政策でございますが、いろいろなCO2削減に取り組む企業への利子補給の仕組み、これが2つございまして、1つ目が5年以内に5%以上というCO2削減を誓約した企業について、そういう企業が温暖化対策設備の投資を行う際に、1%の利子補給があるということですとか、そうした無利子融資とありますが、さらに厳しい3年6%、5年10%といったような企業に対して、無利子を条件として3%という利子補給が行われるといったような事業を行っておるということですとか。
 次、6ページにまいりまして、[3]でございますが、これ、今の国会で審議中の法律案でございますが、エネルギー環境適合製品の開発・製造事業促進法というのが経済産業省さんのほうでつくっておられまして、これはまずは財政投融資資金を活用した融資ということで、低炭素型の製品を開発・製造する。
 この開発・製造というのが一つのポイントでありまして、要は、省エネ機器とか新エネ機器をつくる人への融資は出るんですけど、そうじゃない、導入する人には行かないという、そういう製造する人に限られているのが一つこの法律のポイントなんですけれども、そういった低炭素型の製品を開発・製造する人に対する融資が、その下の「○」のところで、日本政策金融公庫から民間金融公庫にまず貸され、そこから企業への融資をするという2ステップの形で行われているということ。
 もう一つが、低炭素リース保険というものでありまして、そういった設備をこれはリースの形で導入する場合に、そのリース料が倒産するなどで回収できなくなった場合の保険というのがございます、ということでございます。
 次、(2)、これまでの専門委員会で主な意見ということでありますが、こういった温暖化対策に関する、これまでどういったご意見をいただいていたかというものをまとめてございます。
 まずは、経済的インセンティブですとか規制といったものによって、温暖化対策投資が収益が上がるものか、あるいは実施しなきゃいかんというものになることが、やっぱり金融が成り立つ前提として必要なんじゃないかというようなことですとか、あとは長期的なビジネスモデル構築が可能となるように、政策のほうも長期的にこういうふうなことをやるんだよというふうに言わないと、なかなか長期的なビジネスモデルが構築できないんじゃないかといったようなことですとか。
 先ほど家庭部門、業務部門をどうするのかというのが最大の課題というふうに申しましたけれども、CO2削減投資は当然ながらエネルギーコスト削減によって初期投資費用を回収できるという性質があって、これはこの性質は融資になじむものかと思いますけれども、ただ、家庭部門や業務部門というのはなかなか難しい面もあって、例えば回収期間が非常に長くて、投資効率としては悪いんじゃないかということですとか、家庭とか中小企業については初期投資費用のための融資を受けることが難しいですとか、あるいは借金を増やしたくない、そういったものもあるですとか、あるいは一件一件の投資が小さいので、融資ですとか政策支援を個別にやるというのはなかなか難しい、コストが高い面があるという課題がありまして、しかしさっき申しましたように、4割減らさなきゃいけないという中で、じゃ、どうやって克服するんだろうかというのは重要な論点かと思っております。
 次に、環境ビジネス特有のリスクについて、いろいろな保険的なソリューションを提供することが必要。これは保険会社さんの取組もありましょうし、公的な制度も当然必要であろうということかと思います。さらには、普通の投資融資保険に加えまして、環境ビジネスへのベンチャー投資ですとか、市民風車といった環境コミュニティビジネスといったようなものの促進も必要だというふうにまとめております。
 以上がこれまで5回の会議でいただいた皆様からのご意見を踏まえて、報告書の骨子という形でまとめさせていただきました。ここは少し違うんじゃないかとか、こういった観点も盛り込むべきなんじゃないかといったようなご意見をいただければというふうに思っております。
 以上です。

○末吉委員長 黒川さん、ありがとうございました。最終の報告書のあり方ということなので、これまでの皆さんの熱心な議論を正しく伝えるためのものであると同時に、本当に日本に環境金融が始まると、ただ報告書が出るだけじゃなくて、本当の変化を生むためには何をしなきゃいけないのかということだと思います。
 あと30分程度時間がございますので、ぜひご忌憚のないところでご意見いただければと思います。もちろん、これが最終の決まりじゃなくて、これまでの議論をベースに案ができて、またそれを皆さんにご検討いただくということになると思いますけれども。
 はい、どうぞ。

○関委員 すみません、ちょっと早目に失礼をしなきゃいけないので、2点ほど述べさせていただきたいんですけれども。
 報告書のまとめに関しては、こういう視点も入れたらいいんじゃないかなと思いますのが、一つは、金融機関、金融セクターとして頑張らなきゃいけない部分もちろんあるんですけれども、やはりこれから低炭素社会をつくっていくために必要なのは、やっぱり、特に政策との連動みたいなものがすごく大事だと思うんですよね。ですから、金融セクターだけじゃなくて、さまざまなセクター、特に政策との連動といったところが重要だというような観点と。それから、金融機能というのは非常に多種多様だと思いますので、金融といったときに割と狭い概念でとらえがちだと思います。保険もそのワン・オブ・ゼムですけれども、多様な金融機能を生かしていくといったような表現もどこかに欲しいなという気がしました。
 それから、もう一つは、ちらっとヒント的な事柄も書いてあるんですけれども、新しいビジネスモデルを後押しするようなところですかね。例えば、機器導入の初期投資が非常に高いと、なかなかそれが障害になると。じゃ、所有するのではなくてリースでそういうものを普及させていったらば、もっと普及が進むんではないかと。そういう何か新しいビジネスモデルを起こして、それをやっていこうというような会社に対して金融の支援をするとか、あるいは、そこで生ずる、このリースの回収不能というのも一つのリスクですけれども、それ以外にもさまざまなリスクがありますので、そういった保険を運用するとか、もちろん補助金もあると思うんですけれども、何かそういった新しいビジネスモデルをスケールアップしていくための金融といったような観点も欲しいなという気がしました。
 以上です。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 2番目の、新しいモデルをつくるというのはぜひやっていかないと、何かこまごましたことを並べて、じゃ、大きな変化、本当の変化って起きないんじゃないかという気がします。
 ですから、関さんのお話を伺うと、銀行だけとか損保だけとかどこだけという話じゃなくて、もっとオール・イン・ワン的なパッケージとしての金融のあり方みたいなものができれば非常にいいなと思うんですけれども。
 一つ、ちょっと質問なんですけど、先にお帰りになるということで。政策との連携という話をおっしゃいましたけれども、温暖化政策あるいは国全体の政策ということでそうなんですけれども、金融政策あるいは金融庁の金融機関との対話の中で、こういったものはどうあるべきか、どういう連携ができるのかということでは、いかがでしょうか。

○関委員 それも非常に重要な観点だと思うんですよね。今日もいろいろな関係各省の長の方もいらっしゃっているので、我々にとっては金融庁さんが一番関連の深い省庁ということになりますけれども、いろいろな政策との連動ということと、政策がまた横で連動するといいますか、各省庁の政策がまた連携がとれて連動しているという中で、金融機関もより大きな力を発揮できると思うんですよね。そこは非常に重要なポイントだというふうに思います。

○末吉委員長 今日もオブザーバーでお出ましいただいていますので、ぜひそういったところを、笹尾さん、よろしくお願いいたします。これはもちろん環境省のほうも、環境省のためだけにやっているわけじゃないということでもありますから、ぜひ大きいところでの連携はよろしくお願いしたいと思います。
 あといかが。はい、どうぞ、竹ケ原さん。

○竹ケ原委員 報告書の骨子は非常によくできていると思います。全く私は異存がないです。特に、前回は、まず日本版の環境金融行動原則を打ち出そうというところにかなりフォーカスされていたのですが、今回は、これと並んで具体策を打ち出していこうというところが前面に出ており、強烈なメッセージになるかなと思いました。
 今、ちょうどお帰りになられましたが、関さんのおっしゃっていた、まさに新しいスキームとか新しいビジネスを動かすためのプラットフォームをつくろうというのをおっしゃっていたと思うんですけど、私もこれは大賛成で、特に後段、6ページに書いていらっしゃる、再三ご指摘の民生部門、家庭と事業、これはやっぱり金融の実務の立場に立てば、一番リスクをとるのが難しいところになりますので、いろいろな主体を巻き込んで、いろいろな形をつくって対応していかなきゃいかん領域だと思うんです。
 若干手前みそですけど、DBJでは大阪ガスさんと組んで、エナジーバンクという一種擬似的なリースの箱を作り、これを利用して高効率の省エネ機器の普及促進に取り組んでいます。わざわざSPCのような箱を作るのは、ガス会社、リース会社、銀行など多くの主体のノウハウと組み合わせるために、そうした仕組みが有効だとの判断がありました。先程ご説明では、いろいろな財が挙げられていましたが、それぞれに例えば残価リスクも違いますし、個性があります。従って、一つのスキームだけが正しいというのではなく、あるものはリース会社さんを介してそのままやればいいし、あるものは特定の財だけを集めた、例えばSPCみたいなものをつくって普及させていく方が良いかもしれません。いろんな主体のノウハウ、保険も含めた金融機能をどんどん放り込んで、いろいろなやり方が乗っかっていくようなプラットフォームを、もしこういう領域でつくって頂ければ、まさに金融を活用した環境問題の解決に対して具体的な処方箋が提示できるのではないかと思います。ぜひこの分書き込んでいただければなと思いました。

○末吉委員長 そのプラットフォームですけれども、個別企業、個別金融機関の創意工夫というのか、競争ですよね、にゆだねるのか、それとも、例えばベンチャーキャピタルのあり方についての制度的制約は何があるのか、あるいは非常にプロジェクトファイナンス的要素も出てきますから、それを進める上で日本の金融制度、仕組みが非常に困った点があるとか、リーガルマターも含めたそういう共通のインタレストのためのフレームワークというのとか、いろいろあると思うんですけど、その辺はどうお考えですか。

○竹ケ原委員 まだ、整理ができていないんですが、漠然のイメージとしては、前も出ていましたオランダのグリーン・ファンド・スキームみたいな考え方というのでしょうか、認定基準か何かで方向性を規定して、あとは創意工夫が行かせるような柔軟なものが望ましいと思います。逆にこのやり方しかないという個別政策の積み上げだと、あんまり柔軟性も創意工夫も発揮できず厳しいところであるかと思います。それ以上具体的に述べる材料を持ち合わせていないのですが、何かみんなが乗れるような、バックファイナンスの仕組みも含めた、大きなフレームワークを環境省ないしこの委員会の方向として打ち出していただけると、いろいろな人に声をかけやすくなるかなというのがあります。
 藤井先生、どうぞ。

○藤井委員 すみません。報告書案ですけれども、細かいところで恐縮ですが、2ページ目の現状と課題の表現ですが、「しかし」と先に書いて、「香り付けのスパイス的存在」とある。これは全く逆の意味になっている。スパイスというのは、やっぱりカレーにはスパイスが不可欠という風に世間では理解するものなので、現在の環境金融のレベルを香り付けのスパイスなんていう表現で表すのは、全く意味が違うのではないですか。そうではなく、きわめて、部分的な状況にとどまっているということは問題なのです。
 そのほかにも、この案には、ちょっと政府の報告書らしからぬ表現が幾つかあります。もっと素直に書いたほうがいいのではないかなという気がします。

○末吉委員長 気持ちはわかる。

○藤井委員 それで、行動原則のところについては前回指摘したようなことで、私は屋上屋を重ねるリスクがまだ消えていないと思います。まあ仮にこれをやるとしても、この1の提言と、4ページ目で機関投資家による環境配慮投資の促進として、「機関投資家(特に公的性格のある公的年金基金等)」に関する提言を書いている。これらを、別立てにして書いているのはなぜなのか。
 つまり、PRIには、各国の公的年金も署名機関として入っているわけですね。それを提言では分けて書くということは、日本では政府内で、環境省が厚生労働省等に「公的機関投資家としての行動」について文句を言えないということなのでしょうか。そんなことはないと思いますが、もし日本版行動原則を提言として書くならば、公的年金こそが機関投資家全体の一つのリード役となって、PRI原則、あるいはその日本版を率先して推進するというような文脈で読めるようにしていただければなと思います。
 それから、3ページ目の総論のところから上から4つ目ですか、「環境を維持すること」の云々と、「・」の2つ目ですね、「環境分野への適切な資源配分を果たすことで」云々と書いていますが、もちろん金融機関がそうした役割を果たすのですけれども、金融機関はは適切な資源配分を果たしている企業を金融面から支援するということです。、あくまでも金融機関はそういう事業者の活動を見て、適正と思うところに資金を出していくわけです。この表現れだと、すべて金融機関の経営者の考えが変われば、経済全体の資源配分が適切にいくかのように思われてしまいます。この辺ももう少し緻密に書いていただきたいなと思います。
 それから、先ほどのフォーラムのところですが、前回も言ったと思うのですが、オランダのグリーン・ファンド・スキームでもいいですし、アメリカにもEPAなどにモデルがあります。アメリカの場合には代替エネルギー分野だけではなくて、幅広く環境にフォーカスしたフォーラムをつくっています。ですから、ここで事務局体制のあり方とか書いていますが、そういうものを考えていくとすれば、より幅の広い、この行動原則に縛られずに、行動原則は全銀協なりがやりたければやるでしょうから、もう少し幅の広い、そうした事業者へのサポート、あるいは公的金融機関の活動との連携も含めたような総合的な政策ができるようなフォーラムを、ぜひ環境省が提言できればいいと思います。アメリカはEPAの中に、金融の最高責任者(CFO)がいるわけです。ぜひそういうものを提言していただければいいというふうに思っています。
 それからもう1点、最後ですが、受託者責任のところです。提言案は「世界的にほぼ受託者責任に反しない」云々と書いています。これではこの論議の傾向を書いているだけです。こうした表現で納得するかというと、もちろん中には納得する人もいるかもしれないけれども、しない人もいるでしょう。つまり、こういう論議のトレンドの背景にあるものを書かなければならない。例えば、アメリカではこの問題でどのような判断をとってきたのか、米労働省見解の評価などを示して、そうした評価が望ましいねというように、事実に即して書いていただきたいなと思うんです。
 以上でございます。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 今までのご発言は、一つの見方をすると、金融自らが自分だけでできる範囲でのものの言い方と、自分たちは全体のお金の流れの役割を担っているのだと、その一役割をもっともっと活用するには、社会全体のステークホルダーとの関係をどう構築していくのかというような、そういう視点からのご議論かと思いますけれども。私も非常に大切に思っていまして、例えば預金者との連携がどうできるのか、あるいは、先ほどの年金の話でいえば、年金加入者の視点から見たものがどう反映されるべきなのか。あるいは消費者ですよね。もちろん、ビジネスの当事者ということもあると思います。
 伊東さん、では、どうぞ。お待たせしました。

○伊東委員 黒川さんのご説明の方向感とか、ポイントは全部正しいと思うんですね。一番のポイントはやっぱり、家庭のところが増えていて、そこの部分の対策をしなくちゃいけないということですよね。投資額も一番多いわけですよね、そこが。その一方で、資料3の別紙のところの具体的な取組は企業を対象としたものだけで、残念ながら家庭を対象とした具体的な取組というのは現状入っていない。ここを解決しなくちゃいけないということですよね、やっぱり25%との関係では。そこのところで悩んでおられるということだと思うんですね。
 具体的な現場の話からすると、弊社では住宅ローンを半期大体8,000億円実行しています。年間でいえば1兆6,000億円やっているんです。その一方で直近の3カ月で、いわゆるソーラーパネル等の環境配慮型のローンは3カ月で10億強です。つまり、半期に8,000億やっている中で、現状、せいぜい二、三十億のものを、相当の割合まで環境配慮型の住宅ローンにしなくちゃいけないということです。そこをどうするかというところが一番ポイントなわけですね。
 金融機関は環境配慮型の住宅に対しては金利優遇も行っていますが、絶対金利水準が低い為にあまり訴求できない。では年間の返済負担額を減らすために借入期間の延長を行うといっても、お客様のほうも将来が非常に不安なものですから、あんまり長くしたくないということが、本音としてあるようです。それから、エコポイントもようやく30万ぐらい入りましたけれども、住宅ローン減税のほうが利きが大きいわけですよね。そういう実態に即した考えに基づいてやっていく必要があると思うんですね。
 そうすると、私としては、視点として2つ申し上げたいと思います。
 1つは、金融とメーカーとの連携だと思います。ここで黒川さんのご説明があった太陽光パネルの話とか、高効率給湯器とか、こういったものというのは、生産量が飛躍的に増えれば、パソコンがそうであったように、それから携帯電話がそうであったように、飛躍的に1個の値段というのは下がるはずなんですよね。だから、現状の投資額に基づいての考え方だと思うんです。そうすると、やっぱり金融とメーカーがもっともっと連携することによって、本当に政府の言う、それと要するに量産化による価格低下と、それを普及させていく現実的な普及スピードのフィージビリティですよね。そこをちゃんと見る必要があるわけですよ。それはメーカーと、それを金融面からも最初の投資をサポートする、それに政府も入る。ここの連携がないと、現実的な計画にならないということです。将来的に、こういうピッチで生産していけばここまで初期投資が落ちます。となると、一気に投資回収期間が短くなるわけですよね。そこもにらんだ個人のところの、住宅のところの金融の仕組みをつくるということですよ。
 それから、今の話は個人が資産で持つわけですよね、太陽光パネルにしても断熱材も。もう一つは、これだけ住宅ローンを抱えている方は負担等全部わかっているわけですから、政府と金融が連携して、そこの場所だけお借りして太陽光パネルを設置していくような計画ですよね。そこでリースの形もあるかもしれません。そして太陽光ローンだったら、売電収入でどのくらいまで回収できるかと、こういうこともできますよね。そして、じゃ本当に電力ができなかったことに備えて、保険会社さんから補償をしてもらうとか、そういう独創的なスキームを個人、家庭のところでつくっていかないと、多分この計画はいかないと思います。
 そして、今年度、恐らく排出量取引とか温暖化対策税の話がだんだんと決まってくれば、そこで上がってきた政府としての収入を、じゃ補助金とか電力買い取りでどういうふうに持っていくか。つまり最後は、金融だけじゃなくて、官民連携ですよね。そういったような総合パッケージを立てなくちゃいけない。そういった中で金融の役割を考えていく。
 それから、最後にもう1点申し上げると、財界の人もいろいろな人も25%、真水のフィージビリティが2020年まで本当に大丈夫かというのを心配しているわけですね。その一方で、多くの日本国民が何を思っているかというと、これだけ省エネ技術が進んでいるわけだから、1単位削減する限界費用が、内外で全然違うじゃないかと思っているわけですよね。つまり、先ほど申し上げたような省エネ機器の量産化と普及のスピードのフィージビリティを、メーカーとも連携して見ていく中で、本当に難しい部分があるとするならば、それは鳩山イニシアチブは13億トン、世界のCO2、日本の1国分以上ですよね、それを削減すると言っているわけで、そのために一兆何千億でしたかお金も出すと言っているわけですから、海外も含めて日本の技術を使う。
 そうすると、今日は政策投資銀行さんが委員に出ておられますけど、JBICですよね。JBICと民間の金融機関がそこで金融の機能を使って日本の環境技術で、グローバルな環境負荷も低減して、それを排出権として日本国のために取るというか、そこも大事な金融の役割なんじゃないですか。それも最後に補完的に僕は入れたほうがいいのではないかなと思います。
 以上です。

○末吉委員長 最後のところは大賛成です。
 どうぞ、水口先生。

○水口委員 私も2点あるんですけれども、1つは、2ページ目の環境金融行動原則のところで、私はこれは非常に大賛成で、特に、単に原則を策定するだけでなく、合意に至るプロセスや策定後もさまざまなステークホルダーと対話していく。こういうことは重要だと思っています。
 これはしかし、環境金融行動原則だけの話ではなくて、この環境と金融のあり方というのは、まさにこの国の将来のあり方や方向を議論する話ですので、総論の中でも入れていただきたい。つまり、環境に関して、金融界と政府、それから国民というのでしょうか、NPOや消費者などすべてのステークホルダーが議論できるような、そういう議論の場を構築していく。それが重要なんだということです。
 末吉さんもおっしゃいましたように、金融というのは市民社会と別々なのではなくて、市民社会の中に金融があるのであって、例えば年金基金のお金は国民が出しているものですし、銀行の資金も国民が出しているわけです。ですから、市民社会の中に金融がある。だからこそ彼らが一緒に議論しなきゃいけないんだと、そういうことを総論の中に組み込んでいただきたいなというふうに思っています。これが1点目です。
 2点目は、この委員会は、中央環境審議会の専門委員会ですから、この報告書は中央環境審議会に出るということになろうかと思いますが、中央環境審議会ということになりますと、環境大臣の諮問機関ということですので、これがどのように政策に反映されるかということも重要であろうと思います。これも、先ほど来ありますように、金融機関が自主的に行えることもあるし、しかし政策としなければいけないこともある。政策として何をするのかということを明確にするということが非常に重要です。明確になっているのかもしれませんけれども。
 これは藤井先生もおっしゃいましたが、例えば機関投資家、公的年金に関して、例えば公的年金の資金の運用の仕方というのは、まさに政府が決めているわけですね。政府の方針に従っているわけですから、そういう部分はもっと踏み込んでもいいかもしれませんし、受託者責任に関しても政府として見解を明らかにするという方向もあるかもしれません。
 また、先ほど申しました対話の場というのでしょうか、金融界と政府と市民社会が対話をする場の設定、こういうことも政策としてあり得るだろうと思います。既に円卓会議だとか、新しい公共という考え方は提起されているわけですから、そこと非常に連携する議論ですね、そういうところにこの議論をきちんと組み込んでいく、そのようなことが必要ではないかなというふうに思いました。

○末吉委員長 大変重要なことだと思います。ぜひ物が動くための新しいものの考え方ね、理念とか、あるいは金融が本当に社会の基本的インフラとして、金融界の自覚だけじゃなくて、本当に社会のために動く金融になるのか、そういったことが道筋が見えるようなことが出てくると大変いいなと思います。
 どうぞ。

○向畑委員 私は運用者の立場からということで、公的年金さんの話が出ましたけれども、今、一般論ですけれども公的年金さんの世界、日本全体かもしれませんが、やっぱり株式運用というとだんだんアクティブ運用からパッシブ運用へといった流れが続いていました。そこからもう一回、じゃ環境投資だということで、アクティブ運用にするという形にすると、そこにはやっぱり相当なハードルがあると思うんですね。そこには当然説明責任も出てくるので、多分、ごく一般的なパターンとしては、公的年金さんが例えばSRIなり環境投資をやるとなったときには、それなりの説明責任が生まれるので、どうしても規範重視というか守り重視の説明がまずは求められるということになると思うんです。ただ、それはやっぱり株式投資という、特に日本も成長するということにベットするのであれば、やっぱり新しいビジネスとしてのプラットフォームの仕組みをちゃんとつくったうえで、いやいや、守りだけじゃなくて、ちゃんと攻めもあるんだよということが合意として流れるような仕組みというのがやっぱり必要になってくるのではないかなと思います。
 一概には言えませんがスポンサーさんの中には、今の世の中の動向を非常にビビッドに感じ攻めのESGに関心をもたれるところが増えてきましたし、実際攻めのESGにスポットを当てる我々のある意味チャレンジブルな取組に対してすごく評価をいただいているような先もあります
 それと、攻めのESGに関して日本の持つESGの技術で日本の国自体をイノベーションしていくという活動も一つあるでしょうし、あるいはその技術をもって海外で稼ぎ、その稼ぎを日本に落とすといったような、やり方などいろいろあると思うんですけれども、そういったときに、報告書でちょっと触れていただきたいというか、触れたほうがいいんじゃないかなというのは、やはり税金のところだと思うんですね。企業に対する法人税や、スポンサーサイドとしての個人に対する相続税などイノベーションしていくためには、税金の問題については幅広くもう一度議論すべきことではないかなと。その辺が報告書にやっぱり一部盛られるべきではないのかなと。これは新しいビジネスのプラットフォームの中の一部として、短期的な補助金よりもイノベーションが起こる可能性があるのではないかなというふうに思います。
 イノベーションが起こっているといいながらも、なかなか日本の場合には、企業淘汰というのがやっぱり進まないと。同じプレイヤーがちょっとずつ形態を変えて、大企業さんの場合は何とか生きながらえていくということもありますし、中小企業さんの場合にはやっぱりできるだけつぶしたくないという思惑があって、なかなか競争力のない企業さんなり、競争力のない産業が粛々として残ってしまうという構造もあろうかと思いますので、やっぱり新しいビジネス・プラットフォームをちゃんとつくれば、新しい流れに産業としても移行できる仕組みができると思いますので、関さんはじめ皆さんおっしゃった、新しいプラットフォームのところというのは、議論を聞いていると、こういうのを情報開示すべきだとか、どうしても守りの情報をどう開示するかというところがすごく多いように感じましたので、同じレベルで攻めのところ、それも小手先の仕組みではなくて、大きな流れを変えるようなプラットフォームの議論というのも必要ではないかなというふうに思います。

○末吉委員長 非常にポジティブなコメント。
 ちょっと関連で質問1つあるんですけれども、日本全体、ジャパンパッシングという言葉ありますけど、どうも日本株パッシングというのがマーケットで起きているような気がするんですけれども、こういったものをもっと盛り返していくためには、この環境金融、それを通じて日本の企業行動が変わる、経済が変わる、あるいはキャピタルマーケットが変わるんだと。こういったような魅力、レポートにもあったんですけれども、その辺、どう考えていらっしゃいますか。そういったことは、この中にもっとうたい込むというのなんかはいかがなんでしょうか。

○向畑委員 普段感じていますのは、日本株のファンドマネージャーやっていて日本は環境技術が非常に高いとずっと思っていたわけですけれども、どうも最近、例えば中国でも技術の進歩が著しくて、ESGというのは事業活動を行う上で必要条件で、日本企業こそがその必要条件を満たしている企業という認識だったんですけれども、もう世界中がみんな方向性として、事業活動を行う上での必要条件としてESGを認識していますので、、ちょっとずつ日本の競争力が「相対的に」劣後している可能性はないんだろうかと思うことがあります。日本には技術があるとはいいながらも、やっぱりマーケットの方向性としてはみんな同じだとすると、マーケット的にはその変化率・変化幅が重要視されているような気がします。。海外企業で、ESGをあまりやってこなかった企業が強烈にやるようになってきて、ルールも彼らの優位なように設定されると、国内での成長余力が相対的に乏しい日本は相対的に劣後してしまっているのではないかという不安がありまして、そこをもう一度、日本企業をどういうふうに、まあ、日本企業だけではなくて全体もそうかもしれませんけれども、もう一度戦略的にちょっと何かが必要なのか。多分もっと革新的なことをもっとスピード感をもってやらないといけないという思いはあります。

○末吉委員長 どうもありがとうございます。
 はい、どうぞ、崎田さん。

○崎田委員 すみません、話がちょっと戻りますが、先ほどからステークホルダーとして市民社会がきちんと機能していくことが大事だという、ご専門家の皆様からのお話もありました。それで、市民がやはりそういう話し合いの場に入るとかそういうことも大事ですが、自分たちがきちんと貯蓄を、そちらのエコのほうに向かうとか、いろいろなことが必要なわけですけれども、そういう環境配慮型のお家をつくることに応援していただくようなファンドとか、いろいろなものももうできているというお話で、例えばそういうもので、環境配慮、自分の暮らしにきちんとお金を投資して使った人に対して、何らかのほかの場での優遇政策とか、先ほど税制の優遇の話もありました、何かそういう全体像というところがきちんと回っていくといいなというふうにすごく思いました。
 それで、もう一つ、今、家庭や事業者部門がCO2の排出量が大変多いという、この問題解決するために、この金融の視点の中に、地域とか自治体とかそういう視点は入れておかなくていいのかなとちょっと思ったんですね。広がり過ぎかもしれませんけれども、自治体がやはり自分たちのそういう地域の課題を解決するときに、地域金融やほかのこういう金融と連携して、どういうふうな政策をつくるかということも大変重要になってくるんではないかというふうな感じもいたしました。

○末吉委員長 いや、それは当然そうだと思います。今日は佐藤委員がお休みですけれども、地域金融機関の参加も当然必要ですし、政策という場合には、別に中央政府の政策だけじゃありませんので、地方自治体行政の政策もありますから。逆に言うと、もっと草の根を高めるには、大切ですよね。

○崎田委員 そうなんですね。ですから、こういう今回のまとまりの、多様なステークホルダーの交流、今後のコミュニケーションが必要というところに、やはり政策の中のそういう、国だけではない地方自治体の、それもきちんとわかるような雰囲気で、ステークホルダーの中に一つ入れておいていただくといろいろなことが動くかなと、ふと思いました。
 なお、いろんな委員の皆さん、あるいは金融の皆さんが、環境ビジネスにきちんと応援するような場をつくることが大事なんではないかというふうに言っていただきまして、やはりそういうことは大変重要だというふうに思っております。なお、以前、ヒアリングで来たそういう投資家の方が、やはりそれを評価する評価軸の整備とか、そういう全体像のシステムづくりというのが大変重要ではないかと盛んにおっしゃっていまして、そういうことも含めてきちんと進むといいなというふうに思っております。

○末吉委員長 この提言が本当にインプルメンテーションの段階に入るか入らないか、そこですよね。言うだけじゃだめですけどね。
 今日いただいている時間をちょっと過ぎてしまったんですけれども、何か最後にご意見ございますでしょうか。
 私は、この委員会の冒頭で、たしかこういうことを申し上げたと思います。ここで議論することは確かに金融の話ではあるけれども、これは今日、会場に来ておられる皆様方も含めて、企業の問題でもある、消費者の問題でもある、社会全体の問題でもあるというようなことを申し上げました。だから、ぜひこの環境金融という一つの窓口を通じて、日本の国がもっと元気のある、世界にとって役に立つ国になっていくんだと。そういった中で、21世紀日本が、明るい未来が展望できる、そういった国になってほしいという、そういうのが多分、一番根底にある皆さんの共通の願いなんだろうと思いますね。
 ですから、ぜひこれを金融の話とか、25%削減のための手段だとか、そんなふうには思わずに、日本という国をもっともっと元気のあるいい国にする、世界にとってありがたい国にするにはどうしたらいいのか。ぜひそういうような視点をもって、この報告書などができてくると大変いいなと、個人的には思っております。
 今日も長時間、本当にご議論ありがとうございました。最後に、これは黒川さんのほうにお願いいたします。

○黒川環境計画課長補佐 次回日程はまた調整させていただきますが、5月を予定しております。また個別のご相談もいろいろさせていただきながら、報告書案というものをつくりまして、それを次回の議題としたいというふうに考えております。
 以上です。

○末吉委員長 どうも今日は100名を超えるお客様いただきまして、本当にありがとうございました。冬に戻ったような寒さですけれども、このホテルをお出になるときに、ちょっと振り返って見てください。赤いハナミズキと白いハナミズキがきれいな花を咲かせております。それでも愛でながら、ぜひお帰りになってください。
 どうも、委員の皆様も含めて、今日は大変ありがとうございました。

午後12時09分 閉会