環境と金融に関する専門委員会(第4回)議事録

日時

平成22年2月2日(火)9:58~11:58

場所

ホテルフロラシオン青山 はごろもの間

議事次第

  1. 開会
  2. 議題
      今後の検討に向けて
    • ・ 金融機関・機関投資家の環境金融に関する行動原則
    • ・ 機関投資家の環境配慮投資への参加
    • ・ 投資判断に必要な企業の環境情報の開示
  3. 閉会

配付資料

資料1 環境と金融に関する専門委員会委員名簿
資料2 これまでの検討経緯と今後の検討に向けて
参考資料1 責任投資原則(PRI)全文
参考資料2 環境配慮促進法の施行状況の評価・検討に関する報告書(抜粋)
参考資料3 海外事例の調査結果((財)年金シニアプラン総合研究機構報告書抜粋)
参考資料4 企業の環境情報の開示に関する状況について
参考資料5 投資家に利用しやすい形での情報提供の一例(ブルームバーグのESG情報提供サービス)

議事内容

午前9時58分 開会

○末吉委員長 皆さん、おはようございます。少し定刻より早いんですけれども、皆様おそろいですので始めさせていただきます。
 幸いにも昨夜来の雪が大雪にならずに、少々皆さんの足元悪い中ですけれども、雪景色を楽しみながらおみえいただいたことだと思います。
 まず、初めに委員の皆様方にご出席いただくことを御礼申し上げます。それからまた、今日もたくさん会場におみえいただきまして、本当にありがとうございます。
 ご承知のとおり、今日は4回目なんですけれども、昨年の3回の会合におきましていろんなことを議論してまいりました。この委員会のトータルのスケジュールから見ると、ちょうど折り返し点に差しかかったころだと思います。とすると、当然ながらゴールを目指してということが必要になってまいります。
 そこで、今日は、お手元資料にございますとおりのような3つの分野での議論をさせていただこうかと思っております。
 1つは、仮に日本の金融機関において新しい行動原則、行動の志をつくるとしたらどういったものがあり得るのだろうかというようなことですね。
 それから、2つ目は、本当に機関投資家があるいは多くの金融機関がこういった分野へ新しい視点を持っての投資を取り組むには、そのフレームワークあるいは下支えするシステム、そういったものにどういったものが必要になるのか。
 それから、当然ながら、さまざまな意味での情報開示がこれから要求されると思います。折りしも先月27日にSECがガイドラインの見直しをしました。ここで、温暖化問題がボトムラインに与えるリスクとポテンについて、マテリアルなものについては公開すべきであると。いわゆるリーガルバインディングではないにせよ、ガイドラインの中にそういったことを入れるという新しい動きも出てきました。これは当然予想されたことであります。
 こういったことを受けて、日本においても情報開示はどうあるべきかというような点、これらの3つについて今日は議論をさせていただこうと思っています。
 まず実際の議論に入ります前に、事務局のほうからお話をいただこうと思います。

○黒川環境計画課長補佐 説明いたします。
 資料の2とありますものと、あと参考資料とついておりますもの、その両方を参照いただきながらご覧いただければと思います。
 まず、資料の2のほうですが、1の検討の経緯というふうにありますけれども、これまでこういったことを検討してまいりましたということでございまして、まず第1回については現状の紹介、検討の項目・進め方ということで、こういった検討項目について議論していきましょうということを承認いただきましたということでありまして、まず環境と金融の関わり全般ということで、例えば金融機関が則るべき行動原則のあり方といったようなことですとか、環境に配慮した投資の促進ということで、投資家による環境投資の判断のために必要な情報提供のあり方ですとか、機関投資家による環境投資・社会的責任投資の促進といったようなことですとか、さらには環境に配慮した融資の促進、保険の促進といったことを検討課題として挙げられたということでございます。
 これを受けまして、第2回、第3回では関係者からのヒアリングということでありまして、主に具体的な環境ビジネスというものに着目しまして、そういったものを拡大するために必要な金融商品ですとかサービス、政策といったことについてのご提案をいただいたということであろうかと思います。
 裏にまいりまして、そうなってきますと、残っております課題は先ほど末吉委員長からもお話がありましたが、金融機関の行動原則といったことですとか、機関投資家による環境投資、投資判断のために必要な情報提供といったような議論があまりなされていないのかなと思いますので、本日、第4回は今後の検討に向けてということでありまして、そういった3点を中心に今後の検討に向けた粗ごなしの議論をしていただければなというふうに思っております。
 その後、2月25日の次回と3月下旬のその次ということで、個別検討項目、先ほど挙げました3つも含めた個別の検討項目についてもう少し深い議論をいただいた上で、4月ごろの第7回で報告書を取りまとめるというふうに進めたいなと思っております。
 中身に入ってまいりますが、本日ご議論いただきたい3点目の1つでございますが、金融機関・機関投資家の環境金融に関する行動原則ということであります。
 こういったものとしては、参考資料1とありますように、責任投資原則、PRIというものがあるわけでございますが、これがなかなか日本の金融機関ですとか機関投資家にとってあまりメリットがないですとか、あるいはなかなか知られていない面もあるんじゃないかということでありまして、そういうものの日本の機関が取り組みやすい日本版をつくって普及していくというようなアイデアでございます。
 ご議論いただきたいいろんな論点があろうかと思いますけれども、例えば行動原則に盛り込まれるべき内容ということでありまして、どういったものが盛り込まれるべきか。例えば投融資判断の際の考慮ですとか、投融資先の環境配慮取組の促進ですとか、そういった金融商品の開発ですとか、自らの取組状況の開示といったようなものが考えられるかと思います。
 そういった内容に加えまして、こういったものをつくるといったときには恐らく手続面というのもあわせて重要になってくるわけでございまして、多くの関係者の参加が得られるそういった策定の手続ですとか、継続的な取組を確保する仕組み、つくりっぱなしですとか、署名しっぱなしになるということではいけませんので、継続的な取組を確保できる仕組み。ただ、煩雑でもないほどよい仕組みはどんなものなのでしょうかといったようなことが議論いただければなというふうに思っています。
 参考資料をちょっとご紹介しておきますと、責任投資原則の本文をつけておりまして、国連の責任投資原則というものではどういうことが書かれておるかといいますと、この責任投資原則は、参考資料1の一番上にありますように、「私たち機関投資家には」と書いてありますように、機関投資家を対象とした原則ということでありますので、金融機関も対象となると若干変わってまいるかもしれませんが、幾つかの原則が挙げられていまして、まず1つ目に、投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込みますといったこと。
 2番目として、活動的な株式所有者になって活動するんだというようなこと。
 次のページにまいりまして、投資対象の主体に対してESG課題についての開示を求めるといったようなこと。
 4番目として、資産運用業界に対する働きかけをしますというようなこと。
 5番目として、参加者の間で協働、ネットワーク、プラットホーム、イニシアチブといったような形で協働しますといったようなこと。
 6番目として、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告しますといったようなことが規定されているということであります。
 さらには、手続面ということで申しますと、これはUNEP FIが事務局になりまして、融資の機関投資家が案を作成するという形でつくられたということでございます。
 そういったことを踏まえて行動原則というものをつくるとしたらどういうふうにしたらいいだろうかというのを、本日はご議論をいただければというのが1点目でございます。
 2点目にまいりますのが、機関投資家の環境配慮投資への参加ということでございます。
 これまでも、本委員会でも、機関投資家の環境配慮投資が非常に重要だというのは何度も指摘されてきたところでありますけれども、では具体的にはということがちょっとまだ課題としてあるのかなというふうに思っております。
 まず、1つ目が機関投資家に実際に取り組んでもらうための仕組みづくりということでございまして、例えば後で紹介しますけれども、イギリスでは取組状況を開示するような、そういう法制度があるというようなことも聞いております。
 一方では、法制度的な仕組みでなくてもそういった実際に取り組んでもらうための仕組みというのもあり得るのかなというふうに思っておりまして、機関投資家の取組が重要だというのはまさにそのとおりなんですけれども、ではどのようにやってもらえばいいんだろうかということがなかなかまだ見えてきていないというところが1点目でございます。
 次が、受託者責任との関係ということでありまして、これは実務上はもうあまりやろうとする人にとっての障害にはなっていないということのようではありますけれども、ただ、やれない、やりたくないことの言い訳にはなり得るような側面もあるかと思いますので、やはりここをちゃんとこういう公開の審議会、専門委員会の場で整理するというのはやはり意味があるんじゃないかなというふうに思っております。
 次に、具体的な投資の方法論というふうに書いてございますけれども、では具体的に機関投資家が環境配慮投資、SRIをやろうとしたときに、なかなか例えば商品の選択肢が少ないですとか、いろんな具体的にやろうとしてもなかなか問題が発生するということもあるかと思いますので、こういった課題があるのでこういった解決が必要なんじゃないかといったご議論もいただければというふうに思っております。
 また、参考資料をつけてございまして、参考資料2ということで、参考資料のほうの7ページ以降でございますけれども、これは昨年3月に同じ中央環境審議会の環境に配慮した事業活動の促進に関する小委員会、この専門委員会の中にも入っていただいておられる方がおりますけれども、そこでの報告で同種の機関投資家の環境配慮投資への参加というご議論もいただきましたので、議論の重複は避けるという意味で、そのときはこの辺まで議論は進んだのかということをご紹介させていただきます。
 1枚めくっていただきまして、8ページはSRIの現状というようなことを紹介してございますが、9ページにまいりまして、受託者責任との関係につきましては、真ん中辺りにアンダーラインが引いてある部分がございます。受託者責任については、欧米でも長く議論があったが、1999年5月にアメリカ労働省が解釈を示したと。いろいろ書いてございますが、一番下の二、三行を見ていただきますと、SRIを排するものではなく、SRIが他の運用方法と「経済的に競合しうる」ものである限りは、受託者責任に反しないといったような解釈。これは、アメリカではそういう解釈が通用しているということのようでございます。
 次に、そのページの下のほうのアンダーラインでございますが、イギリスのことでございますけれども、先ほど実際に取り組んでもらうための仕組みづくりというふうなことを申し上げましたが、イギリスにおいては年金法の改正によって自分の年金基金がどういうことを取り組んでいるかということを開示しなさいということが決められているということでございます。これはちょっとまた後ろのほうで、各国の状況もいろいろ調べたものがございますので、あわせて紹介いたします。
 といったようなことですとか、あとはまたページをめくっていただきまして、11ページをご覧いただきまして、例えば11ページの一番上のところですけれども、年金積立金管理運用独立行政法人、これはいわゆる公的年金を運用している法人でございますが、そういうところでは、2つ目のポツの3行目辺りを見ていただきますと、パッシブ運用を中心としておりますけれども、アクティブ運用をしておる部分もあるということのようでございます。
 ただ、その中でSRI、2番目のポツの一番下の行ですけれども、投資先企業の環境への取組は特に考慮されていないということでございます。
 一方で、年金基金については、各企業年金によってはそういうSRIが実施されているところもあるというようなことでございます。
 次に、もう1ページめくっていただきまして、12ページをご覧いただきまして、いろんな議論もいただいた上で、結論的な部分としては12ページの下の3つのポツでございまして、年金管理運用法人、先ほど申し上げた独立行政法人ですけれども、そういった巨大な運用資産について真に国民の利益となるよう、社会の持続可能性を高めることにも留意して運用することが必要だというようなことを提言しているということでございます。
 さらに、具体的な話として、そのポツの一番下の行でございますが、既にアクティブ運用を行っている一部の資産について、SRI運用を含めることは、比較的容易に実施可能だろうと。アクティブ運用の一種でございますので、そういったものであれば比較的大体すぐ簡単なのではないかといったようなことでございます。
 さらには、国家公務員共済ですとか企業年金基金の一部では既にSRI運用が行われている部分もございますということのようでございます。
 一番下のポツでありますが、イギリスと同様に、我が国においても、年金基金等の投資方針の中に記載を求めるといったことも検討に値するといったようなことが提言されているというのがこの3月の報告書の結論ということでございます。
 さらにもう一つご紹介いたしますのが、13ページでございますけれども、これが財団法人年金シニアプラン総合研究機構というところが、先月こういう報告書を発表したということでございまして、海外の年金基金の調査をして、ESGファクターへの取組に関する調査をしてきたということのようでございます。
 めくっていただきまして14ページでございますが、大体こういった14ページに一覧のありますヨーロッパとアメリカ、カナダの年金基金について取材をしてきたということでございます。
 具体的な中身としましては、17ページからご覧いただきまして、それぞれの機関ごとのやっておることの中身を1個1個紹介しておるんでございますが、全部は紹介できませんので、カリフォルニア州職員退職年金基金、いわゆるカルパースといっておるものでございますけれども、ではどういったことをやっておるかということを1つ紹介させていただきます。
 17ページの下のほうでございますが、2.2のESG投資に関する取組ということで、きっかけというふうにございますが、1980年代からパッシブ運用の一環としてコーポレート・ガバナンスへの関与を開始したと。環境についても、めくっていただきまして、2004年4月から投資行動を開始したというようなことでございます。
 具体的にはどういうことをやっておるかということでございますけれども、18ページの真ん中辺り、2.4、実施しているESG投資手法というふうにございますが、大別して5種類のESG投資を実行しているということでございまして、エンゲージメント、議決権行使などのエンゲージメントということと、コーポレート・ガバナンス・ファンド、環境テーマ・ファンド、インテグレーション、ネガティブ・スクリーニングということをやっておるということでございまして、具体的にはその下、2.5から出てまいりまして、2.5ではネガティブ・スクリーニングとして、例えばスーダン政府がひどい人権抑圧をもたらした、そういったものをネガティブ・スクリーニングをしておるといったようなことをしているということでございます。
 次に、19ページにまいりまして、テーマ・ファンドということでは、コーポレート・ガバナンス・ファンドですとか、環境テーマ・ファンド、森林への直接投資といったそういう特定のテーマに着目したファンド、これをそういう形で運用しているというものがあるということでございます。
 環境については、環境テーマ・ファンドという19ページの真ん中辺りの■にありますけれども、環境テクノロジー・ファンドということで、代替エネルギー技術、水や大気の浄化技術、クリーン・マテリアルといったものに投資するファンドが1つあり、さらには環境不動産投資といったようなものもしておるということでございます。
 2.7のエンゲージメントということで、議決権行使も含む手段としてこういった形で、例えば2007年から2008年度は32の株主提案を行ったというようなことが記載されてございます。
 さらには、めくっていただきまして20ページ、インテグレーションというふうに書いてございますけれども、投資判断の過程でいろんな部分でESGを考慮して統合して運用しているといったこともやっておるということでありまして、要すれば、さまざまな手法で、単一の手法ではなくいろんな手法でESGを考慮してやっておるという組み合わせをしておるというのが特徴であろうかなというふうに思います。
 次に、21ページにまいりまして、各国のESG答申に関する法規制についてということでございまして、各国ごとにさまざまな法規制なりいろんなものがあるということであります。それぞれこの一覧表にございますが、濃い黒のところ、イギリス、スウェーデン、ドイツ、イタリア、フランス、オーストラリア、ニュージーランドといったところは、ESG投資に関するどういうことをやっておるかということに関する何らかの開示要求の法規制があるというようなことでございます。中身はそれぞれの国ごとに若干違うようでございますが、そういった法律があるというようなのがこういった国。薄い灰色のところがガイドライン・アプローチと書いておりますが、ノルウェー、オランダ、スイスといったところは、法で開示要求まではされていないんですけれども、ガイドラインをつくって開示が推奨されておるといったようなところでございます。
 中身も1つ、2つご紹介しておきますと、一番有名なのがイギリスでございまして、22ページをご覧いただきまして、年金法改正、これが2000年から施行されたということでございます。社会、環境、倫理に関する考慮をする場合はその内容について開示するといったようなことが、そういった開示をさせるといったことでそういうことがより進むようになったという効果が非常にあったという評価がなされておりますということでございます。
 そのほかにも、例えば23ページを見ていただきまして、ドイツであれば英国同様の開示に関するもので、年金基金は、これは受益者に対してでありますが、受益者に対して倫理、社会、環境の問題についての考慮をしている場合は書面で報告しなければならないといったようなことが定められておるということでございます。
 こういったようなものが、年金シニアプラン総合研究機構さんが調査された結果ということでございます。これ調査結果自体は非常に何百ページもの大部になるもので、非常にいろんな書いてあるものでございますが、簡単に紹介だけさせていただきました。
 また、もとの資料2という1枚紙のほうに戻っていただきまして、3つの議題をと本日はと申し上げましたその3つ目でございますが、投資判断に必要な企業の環境情報の開示というふうに書いてございます。
 当然、環境配慮投資をしようと思えば、ではどういう企業がどういう環境配慮をしているのというそういう情報が必要になるわけでございますが、一般論でいえば簡単なんですけれども、ではどういった内容、開示されるべき情報の内容が必要で、どういった媒体で開示されることが、内容はあってもばらばらにいろんな形で出ているとわからなくなりますので、どういう媒体でというのも重要なことでございます。
 そこに例ということで書いておりますが、例の2行のうち上のほうが媒体のほうでありまして、有価証券報告書というものに記載すべきであるという議論もございますし、環境報告書が既にかなり作成、公表されている企業が多いので、そこで結構なことがわかるといったような議論もございます。
 内容ということに関していえば、これは特に有価証券報告書に関する議論でございますが、気候変動に関わるリスクですとか機会、こういったようなものはそもそも現状の有価証券報告書のルールに即していっても開示されてもよいのではないかといったような議論もあるところでございます。こういったようなことも含めまして、どういったような内容の情報が、どういった形で開示されるべきなんだろうかといったようなご議論でございます。
 次に、投資家に利用しやすい形で提供される仕組みというふうにございますが、先ほど有価証券報告書といったこととも絡む、要するに、投資家が有価証券報告書のようなものはよく見るみたいな議論があって、会計報告書はなかなか見ないといったようなこともあるわけでございますけれども、その有価証券報告書に限らず、開示された一次情報が見やすい形でというのも大事ですけれども、二次、三次に加工された形で利用しやすい形で提供される、そういったこれは純粋な商業サービスとして行われる場合もあるでしょうけれども、そこに何らかの政策的な仕組みがあって利用しやすい形になるというようなパターンもあるかと思います。
 いずれにしても、いろんな形、商業的なサービスであり政策が絡む形であれ、投資家に利用しやすい形になるというのはどういう姿なんだろうかということについても議論をいただければなというふうに思っております。
 ということで、またちょっと参考資料をご紹介いたしますと、参考資料の29ページ、参考資料の4というところでございます。
 これは、企業の環境情報の開示に関する状況についてということでありまして、主に環境報告書について記載しております。なかなか細かいことまでは書いてございませんけれども、これは毎年環境省が行っております環境にやさしい企業行動調査の企業の環境情報の開示に関する部分の結果を抜粋したものということでございますけれども、環境に関するデータ、取組等の情報公開についてということで、公開しているというふうに回答した企業が半分近くに及んでおるといったようなことでございます。
 次に、2のところで環境報告書の作成・公表の状況についてということで、環境報告書を作成というのも引き続きかなり取組が広がりつつあるということでございます。
 環境報告書についていいますと、次1枚めくっていただきまして31ページでございますが、環境省におきまして、環境報告ガイドラインというのを作成しておりまして、どういったような項目をどういったような形で記載するのがいいんじゃないだろうかという推奨するガイドラインでございますが、こういったようなものをつくっておるというような形でございまして、逆に申しますと、こういったものをつくっておるということは、こういったちゃんとどういうことが書いてあって、どういう中身が書いてあるのかというのはある程度統一化しないとなかなか使いにくいという問題意識が当然ながらあるわけでございます。
 次、もう一枚めくっていただきまして33ページでございますが、先ほど投資家に利用しやすい形で提供される仕組みというふうに申し上げましたが、いろんな形で利用しやすい形でというのはあると思いますけれども、その一例といたしまして、最近ブルームバーグが始めましたESGデータの情報提供サービスというのを簡単に紹介させていただきますと、ブルームバーグ、ご存じだと思いますが、端末がいろんな金融機関とかに置いてございまして、そこにまとめて、株価のデータですとか、いろんなデータが届くといったようなそういうシステムでございますけれども、その中でいろんな企業のESGデータ、これが情報提供されるようになったということでございまして、左側にございますようにESGデータ、E、環境のデータは59項目、Sのデータ、S、ソーシャルですね、社会のデータが26、ガバナンスが15、そういったデータ項目について、これこの右の表に出ているのはたまたまトヨタ自動車のページなんでございますけれども、についてこういったいろんな計100個近くのデータ項目についてずらっと情報が出てくるといったようなものでございます。データソースは企業の公開報告書ですとか、いろんなアンケート結果とか、そういったものを使っておるということでございます。
 さらに1枚めくっていただきまして、34ページでございます。先ほどはトヨタ自動車という特定の1社の全体の表が見られるわけですが、これを逆にといいますか、特定の項目についていろんな企業のリスト、順位別リストみたいなのが出せるようなシステムになっておりまして、これはいろんな会社について、黒い右側の表のところ、細かくなりますけれども、CO2の排出量ですとかエネルギーの消費量ですとか電気の使用量といったものがずらっとリスト化されて、これは当然ソートもできますので、そういったものの順番がわかるような、ランキングがわかるようなシステムにもなっておるということでございます。
 といったようなことがございまして、3つ目の論点は、投資判断に必要な企業の環境情報の開示といったようなことでございまして、本日はこの3つ、金融機関・機関投資家の環境金融に関する行動原則というのをつくるとすれば、どういった中身、どういった手続といったものが有効なのでしょうかというのが1つ。
 2つ目が、機関投資家の環境配慮投資への参加ということでございまして、機関投資家の環境配慮投資が重要だというのはもう非常に何度も指摘いただいたんでございますが、では実際に取り組もうとしたときにそれを促進するための仕組み、これはどういったものがよいんでしょうかということ。法制度ということも申しましたが、一足飛びに法制度とまではいかなくても、こういったものがあるんだろうかといったようなことですとか、そういったようなこと。
 あと、3つ目が、投資判断に必要な企業の環境情報の開示ということで、情報開示の中身と媒体。あとはそれをどうやったら投資家にとって利用しやすい形になるんだろうか。そのためには何らか政策的な関与が必要なのだろうかといったようなことについて、本日はご議論をいただければなということでございます。
 以上でございます。

○末吉委員長 黒川さん、ありがとうございました。
 資料に基づく詳しいご説明をお聞きしていますと、欧米では理念とかあるいはガイドライン、さらには法的手当て、あるいは企業ベース、プライベートセクターでは行動原則というようなことが進んでいます。さらにはもう具体的な活用も始まっていると。こういったお話を伺いますと、日本ももっともっと議論すべき分野が山積しているなと、あるいはもっと日本も早く動かなければという感じを強くいたします。
 一つ感じましたのは、環境という視点は非常に重要なんですけれども、環境に限らず企業全体の視点、あるいは社会から見たときどうだろうかという、非常に視点が広がってきているというような印象も強く持ちます。
 今日は冒頭申し上げましたとおり、3つの分野での議論をさせていただきます。残り時間がほぼ1時間半ですので、1つを30分ということで、この大きなテーマを30分で何もできないと思いますけれども、とりあえずの粗ごなしの議論をしたいと思います。
 まず、初めに行動原則であります。これについてはいろんなご意見がおありだと思いますけれども、正直言いまして、世界には原則なるものが乱立しております。その上になぜ今さらと、先ほどの審議会のレポートを見ると、私も推進の責任を負っているPRIを署名するのがいいんじゃないかというようなコメントもありましたけれども、そういったことも含めて、日本の行動原則というのについて議論を進めたいと思います。どなたからでも結構でございますので、ぜひご意見を賜りたいと思います。

○水口委員
 いつも最初に発言してしまうのですが、まずおっしゃるとおり原則はいろいろあって、PRIもあり、赤道原則もあり、それからUNEPは銀行声明というのを出しておりますから、それに署名すればいいではないかという考えもあろうかと思います。
 しかし、日本の金融資産1,400兆の半分が預貯金で、銀行は大手3行だけではなくて、地域金融機関などもあります。そうしますと、なかなかUNEPの銀行声明やPRIにすぐに署名するかというと、現実的にはちょっと合わないという可能性もあると思いますので、日本で日本版の環境行動原則というのをつくるということは、やはり意味があるのではないかと考えております。
 PRIは、署名した機関の資金総額が18兆ドルですから、成功していると思うんですけれども、PRIが成功した理由は何だろうかというふうに道々考えてまいりました。6つ要因があると思うんですが、第一に策定する初期の段階から大手の金融機関や機関投資家が議論に参画して、金融機関自身の手でつくってきた原則であるということです。これが第1のポイントだと思います。
 第2のポイントは、それを国連事務総長がリーダーシップをとって推奨したということです。
 第3のポイントは、内容のよさだと思うんですね。そのうたわれている内容が社会から受け入れられるような、いわば高い理念を掲げた内容だったということです。
 4つ目は、いわゆるチェックメカニズムというんでしょうか、アカウンタビリティを果たすという仕組みがあって、原則の実行がどのようになっているのかということについて報告をし、それを社会にも公表する。こういう仕組みを盛り込んでいるということです。
 5つ目が、署名機関同士のコミュニケーションの仕組みを作ったことです。クリアリングハウスという仕組みがあるんだそうですが、署名した機関同士がお互いに意見交換することによって取組をより進めていく仕組みです。このように個々の署名機関がばらばらに行動するのではなくて、連携するという仕組みをつくっているということが第5のポイントです。
 最後の6個目が、事務局体制だと思うんですね。事務局をきちんと持っていて、そこが推進役をしているということです。日本でも環境行動原則をつくるのであれば、同じようなことが必要ではないかと思います。少なくとも、この原則をつくるに当たって、ここにも書かれておりますけれども、やはり最初に志のある金融機関さんにお集まりいただいて、一緒に議論しながら原則をつくっていくということが必要だろうと思いますし、署名を求めるときに、ここは中央環境審議会でありますから、環境大臣のイニシアチブで署名を求めるとか、あるいは、総理大臣のイニシアチブで署名を求めるなど、いずれにしろ、日本の金融機関が署名しやすいような、国を挙げて推進するんだという体制が必要だろうと思います。
 しかし、最も重要なことは、この後の話にも関わってくると思うんですけれども、金融機関の環境配慮行動を促すかぎは、コミットメントとアカウンタビリティの2つだということだと思うんです。例えばイギリスの年金法の改正の場合も、コミットメントをして、それがどう行われているかということについてアカウンタビリティを果たす。それは金融機関の環境行動原則もそうですし、年金法の改正もそうですし、あるいは融資ポリシーの公開ということもそうかもしれません。すべてコミットメントとアカウンタビリティという2つを確立することができれば、あとは社会との対話に任せるということが可能になってくるのかなと思っております。
 以上です。

○末吉委員長 ありがとうございました。
 PRIの6つの成功の要因をお話しいただいてありがとうございます。私もこれからPRIの宣伝に使います。
 多少私自身が関わったことで補足しますと、大手の金融機関がプロセスに参加したということでいえば、これは2005年初めにコフィー・アナン事務総長が呼びかけて始まりました。それまでの議論を踏まえてでありますけれども、実際の発足の2006年4月まで1年有余かけて世界から80名のエキスパートを集めました。そこでの議論の結果が6つの原則にまとめられたということであります。
 それから、内容が、社会が受けたということですけれども、全世界に共通して持ってもらうためには何が必要かということを非常に議論したのであります。多くの金融機関、より多くの投資家、金融機関が受け入れられやすい原則にしようと。
 それから、アカウンタビリティでいえば、原則の何番目かに書いてありますけれども、自らの行動についても情報公開しますと自らにも情報公開を要求しておりますし、事務局が非常に、今ロンドンにありますけれども、非常にしっかりしているというのも確かにそうであります。
 今日の委員の4名の方が実はPRIの署名機関でいらっしゃいます。もし、そちらのほうから意見がありましたらお願いします。

○関委員 まず、行動原則をつくる際の一つの整理といいますか考え方について2点申し上げたいと思います。まず、ここに金融機関・機関投資家と中ポツで書いてあるように、いわゆるサービスプロバイダーとアセットオーナーと、この2つの視点があるわけですよね。しかしこの委員会のメンバー構成自体もそうなんですが、やや機関投資家の行動原則という視点が不足しがちであると。ですから、原則をつくるのであれば、その部分をきちんと意識して盛り込んでおくということが大切だと思います。
 それから、PRIには私ども損保ジャパンも署名をしておるんですけれども、社内でもそういう議論がありましたし、恐らくこれは日本の金融機関に共通の傾向ではないかと思うんですが、どうしても行動原則というとそれを充足していないと署名できないと考える傾向がある。日本の金融機関や日本の企業は生真面目で、これこれの項目についてはまだできていないから署名はできないんだ、というスタンスになりがちなんですね。
 そこで、こういう原則をつくるときの考え方ですが、広く金融機関に署名をしてもらいたいから、みんなが楽々乗り越えられる低いハードルで原則をつくるという考え方もあると思います。しかし私はそうではなくて、やはり目指すべきところはある程度高いレベルといいますか、アスピレーションとして設定して、現時点で100点がとれている必要はないので、そこへ向かって一歩一歩階段を上がっていくというような考え方でつくるべきではないかなと思いますね。
 また、水口先生がおっしゃったように、署名機関同士のコミュニケーションが大事だと思います。具体的な仕組みとしてグッドプラクティスを共有する仕組みをつくって、そういうものを共有しながら目標に向かって一歩一歩近づいていく、こういうアプローチが有効ではないかなと思います。

○末吉委員長 関さん、ありがとうございます。
 100%できているものは今さらやることはないんですよね。どうぞ、お続けくださいという話ですから、これから社会が必要とするものをゼロからでもいいからみんなで一緒につくりましょう、そのためには共通の哲学や理念や行動原則を持ちましょうということですので、将来に向けてのコミットメント、これは非常に重要だと思います。
 いかがでしょうか。

○筑紫委員 まず、この参考資料なんですけれども、海外の事例とかも含めて、とてもいい資料になっておりまして、それにまず最初お礼を申し上げたいと思います。
 それで、ちょっと意見をサインについて、このPRIで、では日本版のPRIをつくるかどうかということの前に、ちょっと細かいことなんですが、私が後で言うのを忘れるかもしれないので、資料の中の11ページですけれども、オランダの公務員年金について「ABP」と書いているんですが、これはもう大分前に「APG」に変わりましたのでということですね。
 もう一つは、12ページの下のほうに、国家公務員共済組合及び企業年金基金の一部において既にSRIをしていると。そして、地方公務員共済組合、私立学校共済組合があるんですけれども、公立学校共済組合もありますので、これはぜひ入れてくださいというこの2つです。
 それから、PRIについて日本版をつくるということは非常に私も大賛成でございまして、いろいろ年金、機関投資家さんを含めて伺ったときに、実務担当の方たちがやはりどうしてもまず日本語でPRIのサインに必要な組織としてのポリシーとか、どんなことを書いているんでしょうねとかいうような状況で、誰にも聞けないとか、何かいい資料があったらくださいとかということで、そういう気持ちはあるんですけれども、では具体的に実務の人がやるときの、もう既にPRIにサインをしたところからの例えばこういうふうにやりましたとかというような情報の提供もなかなかないといいますか、誰に聞けばいいんでしょうというような感じで、私どもも帰って海外の年金基金さんのSRIポリシーとか、そういったものの英語になったものとかで手に入れたものを差し上げたりとか、そういう中で、でもではこれを私がひとりでするんですかというような状況で、本当に実務の方にとっては物すごく苦しい。
 それから、ではトップの方とお話しをしても、自分がつくるわけではないので、実務の方がもう手一杯ですと。毎日のデイリーのことでもう手一杯ですと言われると、そこででは増やしてあげるだけのものがないということになりますと、いや、いいことなんだけれども、実際には難しいということを非常によく聞かれますので、この日本版ということでJPRIというような名前でおつくりになりまして、既にサインをされたところがアドバイスをしたりとか、先ほど関さんからのお話もありましたように、ベストプラクティスというようなものを決めたりとかいうようなことでなさったり、あともう一つは、実はPRIってサインした後も結構大変ということで、実際にプログレスレポートがちゃんとしていないと、プログレスレポートを出さなければいけないんですが、キックオフということで追い出される可能性もありますよね。というようなこととかで、やっぱりこういうものにサインをする、コミットメントをするということの重大さといいますか、ソフトなんですけれども、ソフトに言ってくるんですけれども、では実際にサインした後は結構厳しいですし、世界に対してコミットメントをしたよとなったときには、あれは言葉のあやでしたというようなことでは絶対に通らないということに対するものがありまして、そういう意味ではやはりJPRIというのをつくったことが、結局日本企業のPRIへの参加というものをマネジメントしていく、そのことのサポートにもなるというような形にしていかなければいけないと思います。
 しかし、それができれば、大変よいものができて、結局は日本の国益に非常にかなうことだと思います。ぜひJPRIというものをつくる方向で行っていただきたいと思います。

○末吉委員長 ありがとうございました。
 いずれにしても、日本の企業社会の中ではどうやってトップに理解してもらうのかは、現実的な非常に大きな壁なんでしょうね。それをどうするかですよね。そういう意味では、水口先生がおっしゃった内閣総理大臣がこういうのを推奨するなんていうのは一つの手かもしれませんですね。
 ほかにいかがですか。皆さん、賛成派のほうが多いんですけれども。
 どうぞ、向畑先生。

○向畑委員 弊社は金融機関と機関投資家という両面の顔を持っているんですけれども、私は今機関投資家サイドの業務をやっていますので、そちらのほうからちょっとお話をしたいと思います。
 皆さんおっしゃったとおり、高い次元の話をすべきだと思います。目標はやっぱり高くしていきたいと。ただし、実際に機関投資家の実務をやっている人間として、高いレベルでの話というのはたくさんあると思います。弊社もいろんなところに署名をしているということはすごく理解しているつもりなんですけれども、それで、では具体的に何が変わったのかというと、なかなか具体的なアクションとしては、やはり私どもというよりもむしろお客様でまだまだ浸透し切っていないのかなというのが正直な感想でして、行動指針の中には高い目標のほかに、具体的に各社に例えばESGを本当にどのように考えるのかということと、あとそのためにどういう行動をとるのかと、この2点は必ず個別、各論として聞いていくような仕組みというのが必要なんじゃないかなと思います。
 機関投資家ですから、当然例えば株式市場でいいますと、売り手もいますけれども買い手もいてということでマーケットが成り立つわけで、やっぱりいろんな人にいろんな形で参加してもらうべきだと考えます。例えばESGに関しても、消極的な参加で参加する人もいれば、積極的に参加する人もいると。その参加の仕方も、直接投資をしたいという人もいれば、エンゲージメントなり株主提案なりと、いろんな形でESGに関しては関与できるということで、まずESGをどういうふうに考えるんだという根本の問いかけが必要で、その上で、そのために何をするんだというのを各一機関投資家なり、一お客さんごとにそれぞれの頭で考えてもらうことが必要だと思います。そして、考えるに当たっては、トップダウンでコミットメントとして盛り込むということが大事になってくると思いますけれども、例えば年金でいうと加入者の方はどう考えているのかと、傘下にある団体はどういうふうに考えているのかと、こういったことをはっきりさせると、例えば機関投資家サイドも我々扱っているお客さんのお金が、こういったニーズがあるんだということで、商品の例えばリスク水準だとか期待リターンだとか、商品の幅をもっともっと広げることも可能になってきます。
 例えば、私が今担当しているSRIのアクティブファンドという形でいいますと、大体100銘柄ぐらいに投資をしているという形になるんですけれども、もうちょっと広く会社を応援していきたいというニーズがあるとすると、例えばもうちょっと積極度を下げるという話になって、300社とか500社とか投資対象を広くすることでリスクを下げつつ持続的に投資をすることも可能になります。また例えば今は一般的にはベンチマーク運用ということで、大体TOPIXをにらみながらやるわけですけれども、別にTOPIXじゃなくてもいいと、絶対リターンでもいいと、応援していきたい会社を粛々と応援していきたいんだという運用もお客様のニーズがそこにあれば、そういった商品設計が可能になります。ニーズが分かれば、それを粛々とやるということと、あと粛々とやりながらも進化していくと、常に新しい知恵を出していくという仕組みも必要だと思いますので、その辺は一度決めたらもうこうでなきゃいけないと、来年も再来年もこうでなきゃいけないということではなくて、例えば去年はこうこうこういう形で貢献していきましたと、来年はこうこうこういう形で貢献していきますということで、常にニーズを確認しながら、高い目標に対して実際に活動を行っていくほうがよいと思います。。今年はこういうことを重要視してやっていくんだということが、きちんとステップとしてわかるようにしていく。それを加入者の方だとか周りのステークホルダーの方にも知らしめていく、応援の声をもらうという仕組みがないとなかなか、実際に高い目標は掲げましたと。ただ、それに向けてみんな頑張りましょうねと言っても、一般論としては、総論はやっぱり賛成なんだけれども、では各論どうしましょうかと、具体的な活動になかなか結びついてこないということもあるかと思いますので、もう一度そこは自ら考えるべきだろうと。
 私は機関投資家としていろんな企業にCSRの話を聞きに行く機会があります。やっぱり共通していえるのはトップダウンで、トップがきちんとコミットメントしているということと、あと自らその会社の方々が自分の頭で自分の会社のESGって何だろうというのを真剣に考えていらっしゃる会社さんの話というのは我々もしっくりきますし、応援したくなりますし、長続きするということは、これは多分今まで何百社か、何百社も行ってないですね、行きましたけれども、ある程度確信を持った部分でありまして、やり方なんかも例えば事業部制なんかがしっかりしている会社は一度みんなでディスカッションすればあとはだっとおろしていくだけで済むとか、やり方なんかも各社に任せればいいと。ただ、実際ESGで何を重視したいんですか、どのようにESGを考えるんですか、では何をやるんですかといったボトムアップのところの話というのもディスカッションしてもらえるような文言を行動指針の中に入れ込んでいったほうがいいのかなというふうに感じております。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 今、大変重要なご指摘だと思います。こういう原則の最大の弱点は、言うは言うだけれども、実際は何をやっているのと、こういう話だろうと思いますね。ですから、私は今おっしゃったような自らの企業、自分の企業で自分の頭で自分にとってのESGは何だというのを議論してほしい。それは全くそのとおりだと思います。
 ただ、これなかなか日本の企業風土ですぐ行きますかね。奉加帳方式でみんながやるからやるというのでは、署名はぱっと集まるんでしょうけれども、でもそれを社内でどう実践するんでしょうね。

○向畑委員 実際、例えばCSRレポートを各社さん出されていますと、それでやろうということを社内外に宣言しているわけですけれども、やっぱりどういうふうにやるんだろうなというところは非常に重要になってくると思います。我々も企業に伺ったときには、大体こういう方向でやりますということはわかったとしても。では具体的にはどういうことをやるんですかというのは、結構各社さん、やっぱり本気で自分の会社にとってのESGというのは何だという議論がしっかりなされる必要があると思います。消極的でいいということであれば別にそれ以上あまりやる必要がないし、積極的にやるんであれば、では自分の会社の今までの歴史とか体制とかでどういうふうにやっていくんだろうかというのはかなり、事業会社さんでいうと真剣に議論をされてやられていると思います。そのやった状況を周りに開示する仕組みもありますので、その仕組みによって周りからいろんなプレッシャーもかけられることもあります。特に、同業他社さんがどうやっているかというのは皆さん気にされるケースが多いので、実際に具体的なアクションとして起こそうとすると、初めは消極的かもしれませんけれども、それが周りに刺激されて徐々にどんどんレベルが上がっていって、徐々に加速していってという期待はできるんではないかなと前向きに感じております。

○末吉委員長 住友信託さんが投資している、ファンドが投資している会社はいい会社だと、しっかり考えているんだというふうになれば、皆さん広まるんじゃないでしょうか。
 先ほど関さんが、アセットオーナー、ファンドマネジャー、コンサルティング、この3つの参加者がPRIの場合に要るとおっしゃいましたけれども、この原則というのは誰が署名するんですかね。あるいは誰に署名を求めるべきなんでしょうか。その辺いかがでしょうか。

○水口委員 これからできる原則ですか。

○末吉委員長 もう仮につくるとして。あるいはつくる場合に、署名者をどういう人を想定すべきでしょうか。
 はい、どうぞ。

○水口委員 日本版環境金融行動原則の署名者ということですよね。私のイメージでは、銀行さんであれば頭取ですか、一番偉い人ですから、やはり頭取。また、年金基金であれば理事会ではないでしょうか。GPIFの一番偉い人はどこなんでしょうね、政府ということになるんでしょうかね。そういうことではないかなと思っております。
 それともう一つ、ちょっと一言だけ発言したいのですが。
 現場の実践をどう進めるかという話を今うかがっていまして、おっしゃるとおりだと思うんです。現場の実践はすぐにはついていきませんということですよね。
 しかし、ポイントは2つあると思います。1つは、社会との対話ということです。つまり、原則の中に情報を公開します。進捗状況を公開しますということとともに、社会の声を聞きます、ということを入れる。社会と対話をしながら、社会の声を聞いていくことによって実践は進化していくのかなというふうに思っておりまして、そういう社会と対話をする窓口を開くということが大事だと思います。金融機関の側が社会と対話する窓口を開いても、現場の実践が進まないのであれば、それはもう社会のせいなので、それは、日本社会はそこまでだったということになるかもしれませんが、日本の社会も窓口さえ開いていれば、いろんな働きかけができるのかなというのが1つです。
 もう一つは、これは先ほど末吉さんがおっしゃったことで、大変すばらしいなと思ったのですが、PRIをつくるのに1年間という時間をかけたということです。原則の文言を考えるだけなら一晩あれば考えられるかもしれませんが、それにわざわざ1年間も時間をかけて議論してきた。それが大事だと思うんです。そういうことが現場の実践を高めるんだろう。
 つまり、日本でもしこの原則をつくるのであれば、やはり1年ぐらい時間をかけて議論する。そのときに、国民的な議論をするのです。今のこの会議は一応開かれているのでオブザーバーの方はいっぱい来ているんですけれども、そうはいっても、社会全体から見てどのくらい注目されているのかというと、まだまだ知らない人のほうが多いのではないかと思います。もし原則をつくるのであれば、1年間かけてこんな環境行動原則をつくりますよということを大々的に議論して、機運を盛り上げていく。そういう国民的な議論がぐっと盛り上がって、さあ署名しましたということになれば、何もしないというわけにはいかないんじゃないか、そんなふうに思っております。

○黒川環境計画課長補佐 その点でちょっと一言だけ紹介させていただきたい点がありまして、最近、連合が同種のことを検討を始めていまして、昨年から今年中ぐらい、1年ぐらいかけて、要は、連合ですから労働者がなんで、労働者が参加している企業年金ですとか、そういう年金基金がこういうSRIに取り組むべきだという視点からガイドラインのようなものをつくって、いろんな企業年金の基金とか、公的年金もそうですけれども、に働きかけていく。そういうガイドラインをつくるみたいな議論を今1年ぐらいかけて始めているというようなことを聞いております。

○伊東委員 三菱UFJの伊東です。
 この参考資料の1のPRIの原則の5ページに現状の参加機関が載っておりますね、13機関。これを見ますと、私ども三菱UFJの例でも、三菱UFJ信託銀行が署名をしているということなんですね。ここを見てわかることとしては、信託、生損保、それから投信、それから一部年金基金、いわゆる年金の運用のところのいわゆる機関投資家、自分のバランスシートというわけではない形で株式投資をしている。よって、この機関投資家が現状に向けての責任投資原則になっているという、こういう理解だと思うんですね。
 そして、今日の委員長からもお話のあった、それから環境省のご担当者からもあった、一言で言うと広く金融機関、機関投資家に環境金融に関する行動原則をつくろうという非常に大きな発想なわけです。そうしますと、ここから漏れている部分というのは、いわゆる預金を受け入れて、自ら貸し出しをして、社会的な信用創造をしている部分、いわゆる金融機関と言われている銀行、そこのところも含めて考えるべきなのかどうかという点があろうかと思います。
 仮にそういったような信用創造をしている自己勘定でアセットを持っている、いわゆる貸し出し、融資をしているところも含めて考えるとすると、ここの今日のレジュメのほうに例を幾つか書いていただいておりますけれども、行動原則に盛り込まれるべき内容、これも大変いい視点だと思います。間接金融機関も持っているMFG、商業銀行、三菱東京UFJ銀行があるわけですけれども、その視点を加えて考えますと、投融資判断の際の考慮という意味ではいわゆる環境格付がこれに当たると思います。企業のとっている環境配慮行動をちゃんと格付していくと。これはデフォルト率を見る信用格付とはまた別の議論で、環境への取組を前向きに見るという意味でございます。
 それから、次の投融資先の環境取組の促進という意味では、これは2つございます。前向きな意味では、環境配慮行動の項目をちゃんと金融機関からも明示して、それに対しての状況をちゃんと情報をとっていくということですね。
 もう一つは、例えば土壌汚染をやっていないかとか、大規模なプロジェクトでしたら赤道原則というのがありますけれども、大きな生態系の保全とか環境の悪化をやっていないかという、そういうネガティブチェック、そういったことをちゃんと示してフォローしていく。
 それから、次の金融商品の開発ですけれども、ここはまさに今日の日経新聞の一面に出ておった、政府が工程表、ロードマップを示したわけですから、いわゆる金融機関、信用を創造している金融機関もその部門別、例えば家庭とかオフィスとかいった業務部門とか民生部門についてはこういう金融商品をつくっていきます、こういう商品がございますと。例えば太陽光発電の住宅ローンというのはこういうものがあります。それから、電力の買い取り権を担保にしてこういうように長期で出すこともできますと、融資を。そういったような商品をこの政府のロードマップに合わせて部門別に提供していくと、こういったようなことが考えられるかと思います。それによって、一斉に太陽電池とかいろんなものの量産化を促していく。それで、家庭とか企業が、ヒートポンプでもいいんですけれども、そういったものを金融がちゃんとお金を流していくという、ここが重要かと思います。
 それから、最後の取組状況の開示というのを書いていただいていますが、ここはまさしく私が2回目のときに発表させていただいたように2つございます。
 金融機関ですから融資でございますので、直接的に環境負荷が低減していくような、いわゆる直接的な環境融資、そこについての残高の開示ですね。
 もう一方、環境格付という形で、その資金の使途は環境保全じゃなくてもいいんですと、普通の運転資金、設備資金でいいんだけれども、環境に頑張っている企業についてはきちっと間接の金融機関も旗を立てて、それを明示して、その項目を、それをクリアした企業がこのくらい融資があると、こういったものを開示していく。
 つまり、開示情報の透明性を高めていくようなものを入れて、従来、SRIの流れの中で先鞭をつけていただいたものを、いわゆる機関投資家、それを金融機関、いわゆる信用創造をしている融資の範疇まで含めて広げていくと、環境大臣の考えている理念にかなり近づいていくのかなと。そして、メガバンクを初め、心構えとか準備もかなり今申し上げたような方向で進んできているというふうに判断をしております。

○末吉委員長 伊東さん、ありがとうございます。
 では、どうぞ。

○筑紫委員 すみません、先ほど誰がサインをするんですかというのがあったので、それだけ申し上げたいと思います。
 やはりこれはCEOではないでしょうか。私どももサービスプロバイダーとしてサインをしておりますが、私がサインをしましたし、それから三菱UFJ信託銀行も当時の上原社長がサインをしましたし、あと私どもの海外の運用ガイドさんで今度サインすることになったというところもCEOがサインをすると言っておりました。
 以上です。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 実は僕が質問したのはそういうことではなくて、どういう機関が署名機関になるべきか。今当然金融機関を前提に議論しているんですけれども、その金融機関でもどういう金融機関かという議論もあるでしょうし、必ずしも金融機関でなくても趣旨に賛同する人は排除するんですか、それとも広く求めるんですかという議論もあるのかなという質問を実はした次第で。CEOというのは、そういう意味で私全く賛成です。

○向畑委員 私も議長のおっしゃるとおりだと思っていて、多くの関係者の参加ということですから、要は環境って誰もが関係してくるわけですから、私はもうある意味、これは高過ぎる目標かもしれませんけれども、全法人が参加してもいいぐらいの考えです。設立趣意書に書くとか、事後的にでも報告するとか。やっぱりみんながそれぞれの頭で考えて、どういう形で参加するのか、しないのかというのをきちんと考えるという意味で、企業なりいろんな団体はすべてという形で考えていったほうがいいのではないかと思います。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 はい、ではどうぞ。

○竹ヶ原委員 私も、すみません、補強にすぎないのですが、先程からお聞きしていて、JPRIの議論なのか、広く金融機関全部束ねた環境行動原則なのか、その辺が不明確だったので・・・。銀行だけでしたら、ご指摘の通りUNEP FIの金融機関表明がありますし、機関投資家であれば既にPRIがあるわけですから、新たに日本版をつくるんであれば、あまり銀行であるとか機関投資家であるとか区別せずに、できるだけ広く参加させるような形のほうがいいのかなと、そこだけちょっと申し上げたいと思います。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 もう30分過ぎましたので、このテーマはそろそろ終わりにしたいと思うんですけれども、いずれにしても、この行動原則のステークホルダーを誰にするのかということは中身にも非常に大きな影響を与えますし、それから今我々が世界の流れの中でどういう状況に置かれているのかですよね。これから将来に向かってこの原則が日本に何をもたらすべきなのかというようなことなども考えながら中身が決まっていけばいいなと思います。
 それでは、2つ目の分野ということで、機関投資家の環境配慮投資への参加、いろんな仕組み、なかんずく受託者責任という、これ非常に大きなテーマも入っておりますけれども、こちらいかがでしょうか。かなりこれは法律の問題で難しい話なんです。
 どうぞ。

○水口委員
 受託者責任に関しては、UNEP FIが「Fiduciary 2」の報告書を出しておりますので、世界的にはほぼ議論としては受託者責任に反しない、むしろ受託者責任を考えるならばESGを考慮して運用すべきであると、こういう方向に向かっているのではないかと認識しております。もちろん、日本でもそのことを確認するような議論をすることは必要かもしれません。
 それと、機関投資家に取り組んでもらうための仕組みづくりということで、先ほどのお話しの中でもイギリスの年金法の改正のご紹介があったと思いますが、日本でも同様の法制度を設けてはどうでしょうか。ここは上の議論と関わるんですが、行動原則というものをつくって署名するという方法がある一方で、それとは別に、環境や社会についての配慮を行って投資をしているのかどうかという投資方針の開示ということを日本でもアカウンタビリティとして求めていくということはあり得るだろうと思っております。
 アカウンタビリティというのは、資金を提供した人に対して資金を受けた人が説明責任を果たすという義務であるわけですが、法律化されていなくてもアカウンタビリティの責任があるということは、いわば社会のコンセンサスとして成立するわけです。
 しかし、その社会のコンセンサスとして成立しているアカウンタビリティが本当に社会にとって重要で守るべきものであるということになると、それを法制化するということはあるわけです。たとえば会社法も株主に対する情報公開は、当然義務づけているわけですけれども、それは法律で義務づけているからやらなければいけないのではなくて、株主と経営者の関係であれば、当然、経営者はアカウンタビリティを果たさなきゃいけないという関係にあるわけです。それは、今日の議論で言えば、行動原則の話に相当します。
 しかし、そうであってもわざわざ会社法という法律によって義務づけているということがあるわけですね。それは、やっぱり社会的に非常に重要な問題については、自主性に任せるだけでなく、法制化するということも十分にあり得るだろうということです
 最後に、今日の資料の中にもちょっとご紹介いただきましたが、スウェーデンやノルウェーなどの公的年金や政府系の基金に関しては、単なる情報開示ではなくて、法律とかガイドラインによってESGに配慮すること自体を義務化するケースもあります。ノルウェーの場合は、政府系の基金ですけれども、これはノルウェーの政府年金基金法に基づいて倫理ガイドラインというのをつくることになっていて、その倫理ガイドラインの中でESGに配慮するということが決まっております。
 日本でも、たとえば地方公務員共済組合法とその施行令に基づいて、地方公務員共済組合連合会や全国市町村共済組合連合会などは運用の基本方針というのを定めます。この運用の基本方針を定めるのはそれぞれの連合会であるわけですけれども、その運用の基本方針の中に環境や社会にも配慮しながら投資をするという一文を入れるということは十分にあり得るのではないかと、そんなふうに考えております。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 受託者責任でちょっと参考までになんですけれども、PRIを実際につくって実行に移す段階で最大の障壁だったのが、実は受託者責任です。ですから、表向きどんなに立派なことを言っても、現場のファンドマネジャーが動かなければ何も変わりません。では、本当にファンドマネジャーは何が変わらないと動かないのか。それをみんなで議論した際に、受託者責任が大きくファンドマネジャーを縛っているんだと。年金加入者の財務的リターンを極大化することを求められている。だから、それに邪魔するようなことは一切できませんというのが、この種のことが考慮されない原因である。
 ですから、そこでUNEPがやりましたのは、フレッシュフィールズというイギリスの老舗のローファームと一緒になって、世界9カ国の現存する現行の受託者責任に関わる法律を全部チェックしました。その結果として、受託者責任において、今の受託者責任においてもESG問題を考慮することは違反ではありませんと。いや、多くの場合、むしろ求められているんですというのが最初の見解でした。
 さらにその見解が進みまして、もっと積極的に使えと。例えば年金の運用のコンサルタントは自らアセットオーナーにESG問題を考慮すべきですよねと問題提起までしろというのが今の要求です。ですから、非常にポジティブに受託者責任を解釈しております。
 さらに申し上げれば、9カ国のうち明快な手当てのないのが我が祖国ジャパンでありました。単純に行けば、善管注意義務しかないという話であります。
 ですから、私はこの種の議論をするときもほかのときもそうなんですけれども、本当に世の中や社会や経済を変えるには、どこの手当てをしなければ本当に動かないのか、こういう視点といいますか、こういう議論というのは非常に私重要だと思っております。
 それはともかくとして、今のこの分野でいかがでしょうか。法的、法制化というような話も出ているんですけれども、佐藤さんなんかどう、いかがでしょうか。

○佐藤委員 少し難しいんですけれども、先ほどご説明があったとおり、これについては認められるということで違反ではないというお話がありました。
 先ほど、資料の説明にもありましたとおり、この責任についてはこうした観点に関しては問題ないという形で世界では通っているといった中で、いろいろ難しい問題はあるんでしょうけれども、方向としてはそういった中で国内をクリアして進められればいいのかなと。
 その前段としまして、ちょっとお話があったんですけれども、やはり行動原則に絡むところの対象に関してですけれども、水口先生からもお話があったとおり、地域金融機関という立場、そういった立場でなかなか難しいといいますか、今のままではどうなのかなと思いました。こうした原則に、金融機関として積極的に参加していく上ではちょっと中身を考慮していただいて、私どものレベルでもこうした原則に入っていく必要があるのかなと思いました。

○末吉委員長 確かに大都会にいる大金融機関が考える原則だけでは視点が非常に狭まる、あるいはより多くの地域金融機関が自らの意思で参加するには障壁が高過ぎると思われては、これは困りますよね。すべての、もっと言えば地域金融機関こそ地域のコミュニティや環境を守るために自分たちはどう思うんだというようなのは当然にお持ちだと思うんですよ。むしろ都会の銀行のほうが持っていないかもしれませんね。ですから、ぜひそういった御意見などがあればお願いします。

○佐藤委員 今まさに先生からお話があったとおり、私どものお客さんですね、やっぱり環境に配慮した対策をとる企業、それから我々金融機関としての組み合わせというんですか、これが重要じゃないかなと。そういった意味では、この原則というのはなかなか世界的な話というんですかね、あるいは署名されている機関さんも信用創造企業とするとちょっと立場が違うと。ただし、この中身というのは私どもでもやはり今から取り組むべき内容ではないかなという感じがしております。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 機関投資家の環境配慮と支援の参加ということなんですけれども、今少し議論がありますが、機関投資家を包む社会全体や地域全体の視点の話になっているんですけれども、本郷さん、いかがでしょうか。少しマクロの感じから見たときに、機関投資家というのは何を考えるべきでしょうか。

○本郷委員 先ほどから聞いていて、感心して聞いていたもので、あまり私の意見はないんですが、若干補足させていただくと、難し過ぎるね、これは。こういう話は多分一般におりないと思いますね。私はもう税理士をずっとやっていますから、今先ほど佐藤さんがおっしゃったように、ターゲットがどこなのかなというのをまず考えて、受託者といったら年金だったらやっぱり全部一般なのかなと思うんですけれども、でも、このような難しい議論をしていたんじゃ、私はもうこれで終わりだと思うんですね。ちょっと言い方は恐縮ですけれども、それは立派な意見は意見でいいんですが、先ほど筑紫さんがおっしゃったように、やっぱり日本型のダブルスタンダードでもいいですから、もっとわかりやすい基準を1つつくったほうがいいなと。
 それと、基本的にファンドにしてもエクイティにしてもファイナンスにしても、環境にやさしい投資をしたけれども、やっぱりパフォーマンスは悪かったとか、つぶれたというんじゃしょうがないわけですね。
 ですから、今委員長さんおっしゃったように、ファンドマネジャーさんがやっぱりパフォーマンスがいいと思わないと投資しませんよね。
 ですから、幾ら責任投資がどうのこうのといっても、現場は多分動かないと思いますね。動くようにするんだったらどうしたらいいかなというのが1つと、もう一つぜひ視点で考えていただきたいのは、国益をちょっと考えていただきたいんですね。例えば、私は会計やっていますからよくわかるんだけれども、IFRSというのが今度国際財務報告基準に変わったんですが、国際会計基準から。あれなんか見ていると、もうルールがなくなっちゃったんですね。原則だけに変わるわけですから、これが多分アメリカが通って、今度日本が通れば、そういうふうになっちゃうとすると、結局原則だけでやるのはいいんですが、グローバルに戦っている企業でこの原則にあてはまらないと言われたら、それはもうどうしようもないですね。
 そういったことについて、日本の声はほとんど聞こえてこない。ドイツなんか結構利口で、会計基準をやらせてもダブルスタンダードでやっていますから、国内基準は国内基準でやっています。ぜひ日本の基準をつくらないと。だって、世界中に出ている企業というのは何%もないわけでしょう。それはしようがないとしても、グローバルスタンダードで、やっぱりジャパニーズスタンダードでやらないと、どこかの空中戦をやっているような感じがして、地上戦におりていかないんですね。どんどん議論が難しくなってきまして、大体現実的にこんな立派な行動できないですよ、はっきり言って。これは原則ですからいいんですが、もうちょっとわかりやすいほうがいい。
 だって、例えばこれは全部翻訳なんですね。ではCSRって一体何だろうなんてことをちょっとやってみると、日本でもいい基準があるんですね。例えばお天道さんが見ているよとか。それから、後ろめたいことをしていないかとか、そういう独特の伝統的な基準があるわけでしょう。
 だから、私は無理してグローバルの翻訳をしないで、今佐藤さんがおっしゃるように、もし日本で浸透させようとすれば、これはもっとわかりやすくて、もっと何か人口に膾炙してやっていくような基準に変えていかないといけない。せっかく環境省さんもおっしゃっているように、環境を最大のビジネスチャンスにしようとしているやさきですから、やっぱりそれに沿うような形でもうちょっと現実的なことをやっていただきたいなと思って聞いていました。

○末吉委員長 大変貴重なご意見。
 実は、PRIも1年かかったのは、世界のすべての金融機関、世界のすべての国でわかりやすさを表現するにはどうしたらいいんだろうかということだったんですよ。その結果がああいう文言に実はなっております。
 それから、日本のよさですよね。日本の持っている道徳観も含めたバリューがたくさんあると思います。そのことは大変重要なんですけれども、ただ、一方ではグローバリゼーションの中で、国内で事業をしている方だけがすべて国内にとどまっているかというと、それは実は直接、間接的にやっぱり海外とのつながりも非常に大きいですから、その日本的バリューを海外との水準の中でどういう具合に表現していくのか、世界に知ってもらうのか、あるいは世界のバリューを日本にどう新しくプラスアルファするのか。そういう作業がこれからあらゆる分野で必要になってくるんじゃないかと思いますけれどもね。
 ありがとうございます。
 どうぞ。

○水口委員 すみません、何度も発言しまして。
 お天道さんが見ているのを忘れるなというのはわかりやすいので、私もいいのではないかと思います。ただ、この議論がわかりにくいかどうかは、やはり議論のあるところでして、ご存じない方もいらっしゃるかと思いますのでちょっとご紹介しますと、この1月末ぐらいにNPOのほうでも「どこに行ってる?私のお金」というキャンペーンが始まりました。自分の預けているお金がどこに行っているのかということをちゃんと考えようじゃないかと、そういうキャンペーンを、環境問題や人権の問題など、いろんな問題で活動しているNPOが集まって議論をし始めたんですね。
 ですから、お金の使われ方が私たちの社会の将来を決めるんだという感覚は、何もこういう審議会の場だけでなく、むしろ社会のほうに広がってきているのではないかなという感じがいたします。
 ですから、今の話は空中戦かもしれませんが、徐々に地上戦におりてくるという感じがしました。地上戦におりてくると、それはそれで大変ということはあるんですが、そういうことを思いました。
 もう一つ、それに関連しまして、やはり私たちのお金の使われ方が将来の社会を左右するんだという、そういうことを考えたときに、これも末吉さんの受け売りですけれども、先日シンポジウムの最後に地球の写真を見せていただきまして、この地球というのは祖先からもらったものではなくて、未来から預かったものなんだよと、こういうお話がありました。地球とか環境は未来からの預かり物なんだということはよく言われるわけですが、未来から預かっているというのは、まさに私たちが受託者であるということなんですよね。
 つまり、環境とか住みよい社会というものを、実は私たちは将来の世代から受託しているので、それを適切に管理・運用して次の世代に受け渡していくという責任があるわけです。そのように考えますと、やはり受託者責任という概念自体を拡張して考えていくということも必要ではないか。もっと大きな意味での受託者責任を考えていくということです。それは、ある面では既に法制化されているのかもしれません。例えば銀行法の第1条には銀行業務の公共性にかんがみ、国民経済の健全な発展に資するということが書かれています。ここにそういうことが含まれているのかもしれませんし、金融商品取引法の中にも「健全な経済の発展」という文言があって、その「健全な」というところに含まれているのかもしれませんが、そういうことを少し見直していく必要があるのかなと思いました。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 実はこのセクションは、仕組みとかレポートをどうするかとか、もう少し、今の本郷さんのお話によると若干専門的分野の話になってしまうんですけれども、そこの議論も少ししたいと思っておりましたので、あと10分ほど残っておりますけれども、例えばここにありますような、何というんですか、少し緩やかでも法的な仕組みなんていうのは日本に必要なんだろうかとか、金融機関のこういう取組の成果を報告するのにどうしたらいいのかとか、その辺のところを少し何かご意見いただけないでしょうか。
 では、伊東さん、どうぞ。

○伊東委員 資料編の21ページを見ていたんですが、第5章というところですね。まさに今委員長おっしゃった各国の法規制の有無の一覧が出ております。ここを見ますと感じますのは、やはり、例えば北米とか、なかなかこういったような規制について積極的でなかったところ。一方、オランダに、典型的に市民社会のコンセンサスが、もうESG当たり前みたいなところ、こういうようなところは必ずしも法規制がなくてもガイドラインで自主的に進んできたのかなというふうに思うと思うんですね。
 一方、一応法規制で開示要求をしている国というのは、具体的な国名挙げると差しさわりがあるんで、そういったいうような3段階で考えていくと、今の日本の状況ってどうかなというふうに考えてみることはいいと思います。そうすると、かなり今の政府もどちらかというと、ガイドラインから法規制のところに一部考え始めているのかなみたいな感じになります。
 ただ、法規制のかけ方というのも、必ずこういうことをしろとか、これだけ減らせというようなかけ方ではなくて、例えば金融機関でいうと、今日も金融庁からもお越しいただいていますけれども、金融円滑化法なんかも円滑化の取組を開示してくださいというような、そういうような流れもあるわけですね。
 そして、日本的な風土というのは、例えばこれをESGに当てはめると、受託者責任との矛盾というのはもうあまり意識しなくてもいいところ、先陣の方のご努力によって、そうすると、年金基金が受託者に対してESGの問題について考慮している場合にはそれを開示してくださいというようなことが仮に法的にかかったとすると、日本の機関投資家というのがかなり積極的に開示して一生懸命やるとか、例えばそういうようなやり方から進めるというのもあるのではないかなというふうに思います。

○関委員 1点目に議論をした行動原則との比較でいうと、行動原則のほうは、これは何名かの方からもお話がありましたように、できるだけ広く世間に周知をして賛同を募ると。あくまでも自主的なイニシアチブですから、そういうスタンスで行けばいいと思うんですけれども、2点目の機関投資家への環境配慮、投資行動を促すという点は、これは幅広い主体に呼びかけるというよりはむしろピンポイントで法的な手段をとっていくということだと思うんですね。具体的には、やはり年金基金の情報開示に的を絞って、その仕組みを考えていくということでいいんではないかなと思います。

○伊東委員 ちょっと言い忘れました。今の関さんのご意見に賛成です。
 というのは、先ほど本郷委員からも国際会計基準のIFRSのお話が出ましたが、一般の企業とか、いわゆる信用創造している金融機関は、株式投資がますますしづらくなっています。現状、商業銀行の場合は、株を大量に持っているとそこが評価損益でものすごい経営のインパクトになりますから、そういったことを考えても、年金基金のような他人勘定で運用しているところに的を絞るということが重要だと思います。
 それから、先ほど本郷先生がおっしゃったお話ですが、例えば環境に頑張っている企業への銀行の融資商品を考えても、中小企業宛てのものは、その基準は極めて簡便でございます。例えばエコアクション21をとっていればもうそれでいいですよという具合に。こうした商品と、上場企業宛てのCO2のいろんな排出量を見える化しているものとは全然違います。つまり、顧客セグメントに応じたものを考えていくことが必要だと思います。

○向畑委員 それではまた、機関投資家の実務サイドからの話ですけれども、私も実際に運用していてやっぱり一番苦労するところが時間軸の考え方と、あとどの程度配慮すればいいのかということです。受託者責任という意味で。
 世の中、今長期的な方向性は見えていたとしても、投資をする上で重要視する企業の決算というのは実際には過去1年決算だったのが半年になって、それが今四半期ごとに、かなり短期の話にテーマが行くと。長期を見ていると言いつつも、実際株価の説明をするときには3カ月ごとに出てきた決算でもって説明するというケースが非常に多くて、その辺の時間軸をどういうふうにとらまえているかというのがやっぱりスポンサーさんによってかなり違うなと、企業年金さん、公的年金さん、あと個人さん、いろいろ、企業年金さんの中でもいろいろ温度差があるのかなと。例えばSRIなんだからもうちょっと長い目でやってくれればいいよというふうにおっしゃっていただける企業年金さんも中にはあるかもしれないし、やっぱりそうじゃなくて、3カ月ごとに報告があるんだから、その3カ月の中でベストパフォーマンスを出してくれというところが受託者責任だということで、やっぱり受託者責任の中身、どれが受託者責任を果たしたことになるのかというのがすごくあいまいになっているので、これもさんざん今まで議論されたことですけれども、やっぱりそこのところの整理づけというのは必要なんじゃないかなと。
 先ほどの行動原則のところで、各社さん、自分のところのESGは何なんだということをきちんと考えて、そのためにこういうことやりますということを明文化すれば、それに合わせた設計というのは、先ほども申し上げましたけれどもできますので、それでもって受託者責任を例えば果たしたといえるかもしれません。より高いレベルのESGを求めるという商品設計のもので受託者責任を果たすのか、もうちょっと消極的に果たしているのか。その辺のコミュニケーションを行動原則としてきちんと整理して、そのための実際機関投資家としてどういうことをやっていて、それはスポンサーさんのニーズをこういうふうにちゃんと酌んでいますということをやって、その説明もするという形で、受託者責任を果たしたことになるのではないかということが、実務担当者の気持ちとしてはあります。
 スポンサーさんとのコミュニケーションを通じて受託者責任をどういうふうに整理をするか、そして仕組みをどういうふうに構築していくか、その前に本当にESGをどう考えるかということが根本にあるんじゃないのかなというふうに思います。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 いずれにしても、今ないものをもっと広げていこうということですから、逆に言えば、これからやろうとすることを積極的にするような仕組みをどうつくるのかということと、これから大切になることに対して全く反することを今しているんであれば、それはやめてもらいましょうよというのと、多分両方の議論があるんだろうと思うんですよね。いいことをみんなでしましょうねという話と、もうそういうことをやる時代じゃないですよね、やめましょうよというのが、そういう議論も多分どこかで必要になるんじゃないかと思います。
 それから、時間軸の話は本当に重要な話なんですけれども、もう一方、広い時間で見ると、先ほど来申し上げていますとおり、世界は大きく動き始めておりますから、そういう中で日本が世界の流れの中にどう乗って一緒にやっていくのか。そのために日本の変化のスピードをどう見るべきかですよね。これは10年たったらみんながやっているからそれでいいじゃないかという話なのか。もっと早い時間で変わる必要があるんじゃないでしょうか。だとすれば、そのスピードアップのために、例えば機関投資家自ら何をしなきゃいけないのか。あるいは機関投資家がやることをどう社会としてバックアップするのか。そういった議論も必要になってくるのではないかと思います。
 ここでちょうどこのセッションの時間が終わりましたので、最後の情報開示、情報公開のところに移りたいと思います。
 こちらについて、どうぞ。よければ水口さん、どうぞ口火を切って。

○水口委員 ちょっと遠慮していたんですけれども、すみません。
 情報開示につきましては、環境報告書、CSR報告書が非常に進んできているというのはたいへん喜ばしいことで、これは環境省の努力もありましたし、私たちも表彰制度などをつくって後押ししてきたところです。これは非常に意義のあることだと思っております。
 ただ、この環境報告書というのは自主的な開示ですので、よい企業が自分たちの情報を公開してますますよくなっていくという仕組みとしては非常にうまく機能しているんですが、投資のための情報という意味では、限界があります。第1に、すべての企業が公表しているわけではありません。第2に、基準が統一されているわけではないので、バウンダリーがばらばらで、比較できる情報になっていません。しかも、第3に、必ずしもすべての投資家が見るとは限らない。こういうこともありまして、すべての投資家が必ず見る、有価証券報告書の中でも最低限必要な情報は提供すべきではないかと、こういうふうに考えます。
 また、環境報告書やCSR報告書は、環境や社会に関するアカウンタビリティとして、投資家だけではなくて社会全体に対して報告をしているのに対して、有価証券報告書というのは、やはり投資判断のツールとしてあるわけですから、財務的な影響との関連性ということに焦点を絞って情報を提供していくということも必要なのではないかと思います。
 末吉さんの冒頭の話にありましたように、SECはガイダンス文書を公表するということです。これは、新たな法律や規制をつくるということではなくて、現行の法律の中でも既に気候リスクについては開示しなければならない義務が発生しているにも関わらず、そのことが明確になっていないので、現行の枠内でこういうことは必要なんだということを明確化するためのガイドラインを提供するわけです。
 日本にも同じように企業内容開示府令という府令がありまして、有価証券報告書の開示内容については内閣府令において決まっているわけです。そして、その内閣府令の解釈に関して、金融庁の総務企画局のほうから企業内容等の開示に関する留意事項について、(通称・企業内容等開示ガイドライン)というものが出ていますので、こういったガイドラインの中で現行の解釈の中で気候リスク情報について考えていくということもあり得るかと思います。
 また、イギリスでは、その種のガイドラインをDefraという、環境省に相当する役所が出しているという例もあるようですので、必ずしも金融庁がすべてをするということではなくて、専門的な知識のある環境省のほうが、環境問題に関して財務的なインパクトのある問題はこういうことであるというガイダンス的なものを公表するということもあり得るのではないか。いろんな方法があるんではないかというふうに思います。

○末吉委員長 ありがとうございました。
 世界の情報開示の動きを見ていますと、やっぱり根底にあるのは、ESG情報が非常にマテリアルな情報になってきたと。投資判断や企業を見る際に、ESG情報なしでは、もっと言うと不可能になってきたと。だから、ESG情報の開示が必要なんだと。その情報をもって社会のステークホルダー、なかんずく消費者や投資家や社会そのものが、あるいは行政機関もですけれども、その企業を正しく判断していく、適切な評価をしていく。そういう仕組みをつくろうというのが多分流れのような気がいたします。
 そこで、本当にESGというのは企業の評価にとってマテリアルなんですかね。あるいは、今後、マテリアルになるというのを日本の投資の世界、あるいは企業の世界、ビジネスの世界で本当に共有しているんでしょうか。あるいは、していないとしたら、する必要があるんでしょうか。その辺いかがでしょうか。
 はい、では。

○竹ヶ原委員 若干逆説的になっちゃうかもしれないんですが、実際に実務でやっていて、例えばこんなケースがあります。
 ある会社の廃棄物の排出量データを時系列で追っていましたら半減していました。これは素晴らしいと思って他の項目をみてみると、排水データではBODの値が著増している。結局、色々と調べてみると、製品構成に大きな変化があって、これが環境パフォーマンスに反映されたということです。商品構成の変化は、売上高や利益率の変化に反映されているので、このケースでは、素直に財務データから入った方がよく、環境データから帰納的にみようとすると、木をみて森を見ずになって混乱してしまうことになります。
 従って、先程ご指摘があったとおり、自社にとってESGは何なのかという点を個々の投資家なり金融機関がきちんと軸として持つことが必要だということになります。マテリアリティとして重要だから情報開示を進めろ進めろとなると、今度は開示された情報の渦の中に巻き込まれてしまって、評価がぶれるという別の問題が惹起されるのではないかと思います。
 もちろん、情報開示が進むことは否定しませんが、生の環境データに直面する事態を考えると、どこか通訳なり解釈なりする機能を持つ必要があるのではないかと思います。先程の例のように、CO2、廃棄物、水、すべてのデータが同じ方向に動くとは限らず、むしろデータ同士が一見矛盾した動きをすることが多いですから、軸の設定って結構難しいんじゃないかなという印象が個人的にはあります。

○末吉委員長 ある種の標準化とか統一化なんて必要なんでしょうね。
 筑紫さん何かあれば、どうぞ。

○筑紫委員 私どもはやはり実感として、ESGがマテリアリティになり得るのかということについて、それはなり得ると実感として思いますけれども、ここのところで実感として思えるといいますか、あるいは分析できる。だから、アナリストが必要なわけですね。
 それで、ESGと財務の情報というものをリンクさせるといいますか、そしてそこのところにマテリアリティになり得るものというのを探すのが仕事なので、それはなり得るんですが、それで皆さんがそれをわからなきゃいけないとは思わない。私どもが先にわかるので私どもにビジネスチャンスがあるわけで、ある程度の標準化はしても、多分そこのところで全員がそれを共有できる日は来ないでしょうと。来るかもしれないけれども、先にわかった人が先に投資をする。だから投資は妙味があるということだと思いますので、今のようなマテリアリティになり得るかということは、それはなり得ると思う方は投資をし、なり得る、でも、わからない人も非常に多いです。

○末吉委員長 それはもうおっしゃるとおりで、ですから、私はそのことをもっと敷衍すると、金融機関もさることながら、今日お聞きになっている方、企業の方も多いと思うんですけれども、これから自分の企業がどう評価されるのかが、隠れて投資家が、特に海外の投資家が、そういうESG情報を見て差別化を始めるんだと。そういう世界の流れにエクイティファイナンスをする、あるいはいろんな意味でファイナンスを受ける企業サイドもこの問題はしっかりと考えないと自分の損になりますよという話ですよね。僕は非常にマクロ的に見ると、日本がそういうリスクにさらされているんだと思いますよね。
 はい、どうぞ。

○関委員 ESG情報にも幅広く多々ありますので、すべての要素がマテリアルかどうかというのは、非常に難しい問題だし一概には言えないと思いますが、一つ確実に言えるのは、カーボン、つまり気候変動に対する取組がリスクでありオポチュニティでありというのは、もうこれは間違いないんだと思うんですね。ESG全体がすべてマテリアルかというと、なかなかそれは言えないんだと。
 それから、もう一つ参考までに、先月、日中のCSR対話のミッションで上海と北京にいったんですが、中国のCSRレポートないしは環境報告書の発行企業数が昨年もう600社を超えているんですね。日本が今1,200社くらいです。もちろん母数は違うし単純比較はできないですが、少なくとも伸び率でいうとすごい勢いで中国企業の報告書発行が増えています。
 それから、国家機関の社会科学院の調査だと、中国国内でのCSRに関する研究論文の数がこの5年で10倍ぐらいに増えていて、去年は1,200本くらいの論文が書かれている。
 何を言いたいかというと、中国は独自の報告書作成基準というのをつくろうという傾向が強く現につくっているんですけれども、ただ、それをつくる際に世界のCSRだとかESGだとかカーボン情報だとかということを徹底的に研究したうえで、中国の現状に合うようにアレンジをしています。中国は間違いなくトップダウンですごい勢いでCSRの普及を図っていますし、情報開示ということにも世界の動向を調査研究しそれをふまえて非常に積極的に取り組んでいるということです。
 先ほど日本独自のCSRという話が出て、日本なりの価値観、伝統とか文化とか価値観とか、そういうものを大切にしなきゃいけないというお話がありました。それももっともですが、少なくともグローバルな動きを見て、それを深く理解した上で、そこに日本の独自性を付加していくということでないと危ないなというふうに思います。

○末吉委員長 自己満足も必要だけれども、対外競争力もちゃんとどうキープするかという話ですよね。
 はい、どうぞ。

○水口委員 ESGはマテリアルになり得るのかというご質問でしたが、会計士の立場からすれば、マテリアリティのあるESG問題は開示してくださいということでありまして、それは重要性があるものは開示するというルールになっているということです。これが1点目。
 2点目は、歴史的に見れば、環境や社会の問題はどんどんマテリアルになっていく。つまり、環境や社会に配慮しない行動が、長い目で見て企業にとってペイしないということは、それはもう水俣病の時代から明らかなわけでして、環境や社会に被害を与えるものは徐々に規制になったり、社会の批判にあったりして、企業活動の中に内部化されているということは歴史的には明らかだと思います。
 ですから、恐らく多くのESG問題はこれからマテリアルになっていくと思いますし、特に気候リスク情報は既にそういう段階に来ているだろうというふうに思います。これが2点目です。
 3点目は、そういうマテリアルな問題がすべての人にわかる必要があるのかどうかという問題です。筑紫さんがおっしゃるのは筑紫さんのお立場としてはもちろんそのとおりだろうと思うんですね。運用機関の方はそれを早く見つけるのがお仕事ですから、そうやってお仕事をされているわけです。
 一方、会計士の立場からいたしますと、情報開示というのは投資家保護という観点からも考える必要があります。本当に先端の問題は、当然、筑紫さんですとかいろんな運用機関の方が見つけてきて、それを利益につなげていくというのがアルファを求めるという投資としてはそうなんだろうと思います。一方で、かなり共通項のある部分につきましては、普通の一般の投資家でも情報が得られるように有価証券報告書の中に開示していく。つまり、情報を持っている人が偏っていて、情報にあまりにも非対称性がありますと、市場というものに対する信頼感が失われて、市場自体を縮小させかねないので、ある程度公平に情報が行き渡るようにしなきゃいけない。そういうことで、例えば研究開発の状況とか、事業等のリスクとか、そういうことについては有価証券報告書で書くようにということで、だんだん情報開示が進んできたわけです。環境や社会に関する情報も、多分そういう流れの中にあるので、これはどちらがどうということではなくて、少しずつ時代の進化とともに開示すべき範囲が広がっていき、共通のコンセンサスができたところから開示の中に含まれていくという、そういう流れではないかというふうに思っております。

○末吉委員長 見事な解説、ありがとうございます。
 実は僕は少しそういうご質問をした背景には、PRIが生まれた歴史的背景が実はこういうことであったんです。2006年に出ていますけれども、2005年から議論が始まりました。ですから、2004年、2003年、2002年ぐらいから議論があったんです。その中でこういうことがあったんですよね。
 マーケット、特に企業サイドでは既にESG、環境問題を中心にこの種の対応が進んでいると。にも関わらず、金融機関が動いていないと、何も認識がないんじゃないかと。だから、マーケットの変化に投資家を含む金融がもっともっとキャッチアップしろというのが1つですね。と同時に、金融機関がキャッチアップすることによって、産業サイド、企業サイドのこの種の問題への取組をもっと促進できるんじゃないかと。そういう相乗作用を求めるというのが、実は議論の背景にあったわけですね。
 そういったことを考えますと、日本において、こういう退廃はよくないのかもしれませんけれども、産業界では相当進んでいるにも関わらず、金融機関だけがもたもたして何もやっていないじゃないかと、早く追いついてこいよということなのか。いや、産業界もいま一つだからここは一緒にやりましょうよという話なのかというのも、多分我々考えなきゃいけないんです。それはなぜかというと、金融機関が今の状況の中で何をすべきかという自覚といいますか、責任と役割をどう感じるのか、そのことが私は、例えば原則の中にどういったものを入れようということへの一番の発露になるような気がしてならないからであります。
 いずれにしましても、もう少しこのお話をお聞きしたいんですけれども。いかがですか。
 はい、どうぞ、伊東さん。

○伊東委員 今の委員長のお話を聞かせていただいて、やはり企業の持続的な成長とか、サステナビリティを考えたときに、それは財務情報で数字として見えるもの、いわゆる目に見えるタンジブルなものと、それに対してインタンジブルな目に見えない企業資産、ここが大きく影響していることは多分間違いがないんではないでしょうか。
 インタンジブルな見えない資産を考えたときに、ESGはそうですね。それからもう一つのEとしては、社員のエンゲージメントというんですか、生き生きとやりがいや成長実感を持ってやっているか。ここら辺のところというのは非常に重要な企業が存続していくためのサステナビリティの要素だと思います。
 また、筑紫さんのおっしゃったことも、水口さんのおっしゃったこともそのとおりだと思います。そうなってくると、ESG、Eは2つ、エンゲージメントとエンバイロメントがあるわけですけれども、インタンジブルな部分の中で、環境に関するものというのは割とデータ的に数字で拾いやすいものが多いなという実感を持っています。
 そうすると、いわゆる英国とかヨーロッパでもう既に起こっているaccounting for sustainabilityの考え方というんですか、つまりそれは従来環境報告書が特別なものであったりとか、それから日本の環境報告書のガイドライン、あれをつくったとき、私も金融機関代表で委員をやっていたんですけれども、やっぱり難しいんですよね、非常に精緻で。上場企業で広くお金を集めている場合はそれなりに細かく開示しなくちゃいけないんだろうけれども、それを全部入れる必要はなくて、また、特別な環境だけの報告書ではなくて、いわゆるメーンストリームの年次報告書、つまり有価証券報告書と統合していく。今申し上げているのは、先ほどの水口さんのお考えと多分似ていると思うんですけれども、そういったものをまず環境の数字が見えるところからやっていく。そうすると、それはいわゆる上場会社のところからやっていって、投資をする機関投資家が横並びで比較ができて、財務情報と非財務情報との関係がサステナビリティと財務パフォーマンス、そこが関連づけて見れるようにしていく、流れとしてはそういうところなんじゃないでしょうか。それを大企業から始めてだんだんと項目が練れてきたらば、その幾つかは中小企業にも当てはめていく。例えば今でも組織化された税理士さんには中小企業の財務情報がWeb上で流れており、税理士さんと金融機関が回線で繋がっていて、あっという間に財務情報が銀行にも入ってくる仕組みは構築されている訳ですから、非財務情報の重要なものもこのルートで入ってきて、そうすると中小でもそれが生かされていく。そして、金融機関にエンバイロメントについてのデータとデフォルト率との関係性が5年とか6年とかデータが蓄積されれば、最終的には中小企業の信用格付にも反映できるかどうかの研究が進んでいく。将来的にはこういう流れかと思います。

○末吉委員長 佐藤さん、今、伊東さんのほうから、大企業で始まるのがやがて中小企業にもいい形で引き継がれればという話がありました。いかがですか。

○佐藤委員 ご指摘のとおりだと思います。参考資料の4で、ここが対象先が大きいところですから、その先でも5割ということ。私どものお取引先は、わずかで少ないと思いますけれども、今この資料等見まして、私どもの地域内でディスクロージャーはやっておるんですけれども、この間発表していただいた都銀さんのCSRレポートを拝見しておりまして、私どもも、もう少し環境面の開示をすることが大事だと思います。
 それから、やはり中小企業レベルにおいても、この辺がこれから選ばれる要素。当面まだ大企業が中心でしょうけれども、将来的にはそういったところにつながるというのを、私どもが啓蒙あるいは指導する必要性があるのかなと思いました。

○末吉委員長 今、このテーマで中小企業の取引先と議論されて話は続くんですか。うまく会話が成り立つんですか、中小企業の方と。

○佐藤委員 いろいろレベルがありまして、この間私ども京都議定書の無利子の融資を認定されまして、1月15日から始めておるんですけれども、そうした商品については非常にお客さんが興味を持っておりまして、お客さんというのはやっぱりこういった面で非常に関心が強い。ただ、なかなか今設備投資をしようという企業は少ない。そういった面でいくと、今こうした分野で設備投資に向かっていこうという割合というのは非常に少ないのが現実なのかというのが正直なところです。

○末吉委員長 お金は出すよと言ってもなかなか難しい。

○佐藤委員 私ども、早く実績を残したいと思ってやっているんですけれども、対象先は非常に少ないです。ただし、こうしたレベルでやっていこうというお客さんは制度に熱心ですし、補助金のことも勉強されていますし、そうした面では前向きに取り組む企業は全くないわけではありません。

○末吉委員長 ぜひ好事例が増えることを祈っております。
 向畑さん、一番今現場におられるんですけれども、運用のほうから見て情報開示はどうご覧になっているんですか。

○向畑委員 実際、いろんな形で情報開示をされているんですけれども、やっぱり皆さんご指摘のあるとおり、なかなか横比較もできないし、その基準自体も会計基準ほどきっちりとしたものではありません。特にESGが非財務情報に影響を及ぼすんじゃないかということで、その辺もいろいろ我々もバックテストとかやっているんですけれども、なかなかうまい結果が出てこない。したがって、お客さんにもなかなか定量的に説明ができないというすごくジレンマを感じているんですけれども、逆に、さっき筑紫さんがおっしゃられたように、わからないところがやっぱりリターンの源泉であって、みんなが明らかになってしまうと、それは市場に織り込まれてしまうと。そのわからないところというのは、個別に聞きに行かないとしようがないなと思っていまして、いろんな公開情報でとっかかりを我々も見つけて、実際にその話を聞きに行き、そこでいろんなアイデアを模索するといった作業をやっていまして、1つの数字なんかでも、例えば従業員満足度だとか離職率がどうだとか、実は離職率が増えていくと悪い会社なのかというと、逆に社長のモチベーションがすごくて、やる気のない人はどんどんやめていくけれども、逆にやる気がある人間がいっぱい入ってきて、実は強い会社になっているんですよということもあり得るかもしれないし、やっぱり数字の解釈っていろいろあるなと思います。それは、自分の会社のESGがどういうところにあって、そのためにどういうふうなやり方をしていてという一連の流れ、仮説と検証と、あとそれが実際に業績に結びついているかどうかといった作業が必要となります。この辺の確信度を深めながら我々は投資行動をとっていくんですけれども、その辺のツールとしていろんな形で出ているCSR情報というのはすごく有益だとは思っているんですけれども、なかなかマテリアリティも会社によってばらばらであったり、本当に私も一括でこういった情報が見れて、その中から自分が関心のあるところにどんどん入っていけるような仕組みがあればすごく便利だなというふうに思うんですけれども、実際問題、では何がどうなんだろうといった議論になったときには、本当に各社各様の対応をしているので、そこはなかなか結論がないなというのが実態のところです。
 一番我々関心があるのは、やっぱり変化度なんです。投資という観点では、水準も大事ですが、タイミングという意味では変化が重要となります。特に金融危機の後、世の中は変わったと思っていますので、そこでうまく次の10年成長していける会社、次の10年、20年で、そういった会社に投資をしていきたいという長期の目線というのはぜひ持っていきたいと思っているので、そういった会社をどういう手法で探しますかといったときに、単なる四半期ごとの決算の数字だけ見ていては先が見えませんので、いろいろなESGの情報を重要視しているのですが、例えばCO2排出量と利益の関係とかいろいろとってみたりとかしているんですけれども、なかなかうまくいっていません。ただその辺は開示情報が増えればいろんなテストをする人も増えると思うので、その中でいい法則というのが見つかるかもしれませんし、秩序を持った形でディスクローズというのはしていくべきだというふうに思います。

○末吉委員長 今おっしゃった中で、最後のところは僕非常に重要だと思っておりまして、スクリーニングが進んで、最後の絞り込みのときは投資する人が必要であればインタビューなり何でも情報とりますよね。でも、最初のユニバースをつくるとき、あるいは一次スクリーニングをするときに日本の企業がどれだけひっかかるのかひっかからないのかというのは、日本全体から見て非常に私は大切なことのような気がするんですよね。
 ですから、少なくとも一次スクリーニングにひっかかるような、世界が求めている情報を日本の企業がこの分野でどう出していくのか。そういった視点というのは金融機関にとってもですけれども、エクイティファイナンスを受ける企業サイドから見ても、聞いてきたら詳しいこと言うよだけでは、多分済まないんじゃないかと思うんですよね。ですから、そういった配慮もこの情報公開の中にしていく必要があるんじゃないかと思います。
 本郷さん、いかがですか。

○本郷委員 すみません、勝手なこと言いまして。
 グローバルを無視するという話では全然ないんで、ただ、グローバルにやる場合にはぜひ国益を考えてやっていただきたいというのが私の主張です。
 もう一つ、今佐藤委員の話にちょっと敷衍するんですけれども、比較的こういうことに関心のある中小企業は、やっぱり業績がいいんですよね。これは私の経験値で、全く興味ないところはやっぱり業績悪いんですね。これは経験値ですが、そういうふうに思います。
 それと、環境報告書ですが、私これはせっかく独立行政法人まで行っていますから、これはもうぜひ1億円まで落としていただきたい、法制化を、義務化を。そうすると全然違いますから。今行政法人まででしたよね。あとは任意ですよね。これ絶対やってほしいんです。1億円でいいですから、1億円以上の会社でいいですから。これは前から私そう思っています。全然違いますから、そうなると。
 それとあとは、有価証券報告書は資産除去債務が今年できますから、あれで随分オフバランスがオンバランス化されますから、大分違ってくるんだろうなという気は、上場会社なんか、そんな感じがします。そういうことです。すみません。

○末吉委員長 ありがとうございました。
 大変おもしろいお話です。どうもありがとうございました。
 先ほど中小企業でもしっかりしている経営者はちゃんとやって業績もいいんだというお話でありましたけれども、世界の多くの投資家もこの種の問題、社会の変化に敏感に反応する、そのことをこれを通じて見ているんだと。つまり、経営者、CEOのクオリティを見ているんだという話もよく聞きます。
 ですから、これは必ずしも出てくる情報の数字のよさ悪さだけではなくて、経営者の取組姿勢が問われているんだというようなことでないかと思いますね。
 そろそろいただいた時間がまいりましたけれども、もとより非常に大きなテーマを1つ30分ずつ議論するのが土台無理な話でありまして、今日の粗ごなしのとっかかりとしてはいろんなご意見をいただくことができたのではないかと思っております。
 では、ここでお返ししていいですか。

○黒川環境計画課長補佐 ありがとうございます。
 今後の日程ですけれども、次回は2月25日の午前中ということになります。6回目、7回目はまだ日程決まっておりませんが、3月終わり、4月辺りを予定しております。
 次回と次々回の2回をかけまして、幾つかあります個別の検討項目について審議を深めるという会にしたいと思っております。最後、3回後の会が最終、報告書をまとめる会という形にしたいと思っております。
 以上です。

○末吉委員長 どうも今日は委員の皆さん、ありがとうございました。それから、会場にお越しの皆さんもありがとうございました。
 多分、日は高く上って雪も解けたかと思いますけれども、お足元には気をつけてお帰りになってください。
 また、では次回、お会いいたしましょう。どうもありがとうございました。

午前11時58分 閉会