環境影響評価制度専門委員会(第1回)議事録
開催日時
平成21年9月4日(金)13:00~15:00
開催場所
三田共用会議所 3階 大会議室
議事次第
- 開会
- 議題
- (一)環境影響評価制度専門委員会の運営について
- (二)環境影響評価制度総合研究会報告書について
- (三)その他
- 閉会
配付資料
資料1 | 環境影響評価制度専門委員会委員名簿 |
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資料2 | 今後の環境影響評価制度の在り方について(諮問書及び付議書(写)) |
資料3 | 中央環境審議会議事運営規則 |
資料4 | 中央環境審議会総合政策部会の小委員会及び専門委員会の運営方針について |
資料5 | 環境影響評価制度専門委員会の設置について |
資料6 | 中央環境審議会総合政策部会の小委員会及び専門委員会の設置について |
資料7 | 環境影響評価制度総合研究会報告書の概要 |
参考資料
参考資料1 | 環境影響評価法の仕組み |
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参考資料2 | 環境影響評価法の対象事業 |
(以下、委員限り) | |
参考資料3 | 環境影響評価制度総合研究会報告書 |
参考資料4 | 環境影響評価法 |
参考資料5 | 環境影響評価法施行令 |
参考資料6 | 環境影響評価法第四条第九項の規定により主務大臣及び国土交通大臣が定めるべき基準並びに同法第十一条第三項及び第十二条第二項の規定により主務大臣が定めるべき指針に関する基本的事項 |
議事録
午後 1時00分 開会
○花岡課長 定刻となりましたので、これより第1回中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度専門委員会を開催いたします。本日は、大変ご多忙中のところご参集いただき、誠にありがとうございます。
私は、環境省総合環境政策局環境影響評価課長の花岡でございます。しばらくの間、進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
専門委員会の開催に当たり、小林事務次官からごあいさつ申し上げます。よろしくお願いいたします。
○小林事務次官 この7月に事務次官に就任いたしました小林でございます。よろしくお願いいたします。
この第1回の環境影響評価制度専門委員会の開催に当たりまして一言ごあいさつを申し上げます。
委員の皆様方におかれましては、平素より環境行政の推進につきまして格別のご指導、ご協力賜りまして厚く御礼申し上げます。また、本日は大変お忙しい中ご参集を賜りまして、また本専門委員会の委員にご就任を賜りまして、重ねて御礼を申し上げます。
ご存じのとおりでございますけれども、この環境影響評価法、施行されてからもう既に今年で10年目を迎えております。その間、この環境影響評価が果たすべき機能あるいは技術手法、こういったようなこと、それからそれを取り巻く社会情勢、大分この10年間に変化をしてきてございます。もとよりこの環境影響評価法の附則におきまして、10年の見直しという規定があったわけでございますけれども、さらに最近閣議決定をされております第三次環境基本計画におきまして、この10年の節目にもう一度この施行の状況というのを検討を加えて、その結果に基づいて法の見直しを含めて必要な措置を講ずるということが規定をされているところでございます。
そういうことで、昨年の6月から約1年間かけましてこの環境影響評価制度総合研究会でございますけれども、こちらにおきましてアセス制度の実施状況、諸課題についてご議論をいただいたということでございます。
その間、今日は白石が来ておりますけれども、担当の局長として私、出席をさせていただきました。大変お世話になりましたけれども、その報告書が今年の7月に取りまとめられたところでございます。この報告書を踏まえまして、さらに調査審議を行っていただくということで、今般、中央環境審議会のこの総合施策部会のもとにこの専門委員会を設置させていただいたと、こういうことになったわけでございます。
委員の皆様方におかれましては、日本におきます環境影響評価制度の一層よい制度の実現に向けまして、今後お忙しい中、貴重なご意見をいろいろ賜ることになろうかと思いますけれども、ぜひともこの仕事、よりよいものとしてなし遂げていただきますようお願いいたしまして、甚だ粗辞でございますけれども、冒頭のお願いとごあいさつとさせていただきます。
本日は本当にお忙しいところをありがとうございます。
○花岡課長 議事に入ります前に、本日の配付資料についてご確認いただきたいと思います。
○沼田課長補佐 お手元の議事次第と配付資料一覧をご確認ください。
本日の配付資料でございますが、まず資料1としまして環境影響評価制度専門委員会委員名簿、資料2としまして今後の環境影響評価制度の在り方について(諮問書及び付議書)、資料3としまして中央環境審議会議事運営規則、資料4としまして中央環境審議会総合政策部会の小委員会及び専門委員会の運営方針について、資料5としまして環境影響評価制度専門委員会の設置について、資料6は中央環境審議会総合政策部会の小委員会及び専門委員会の設置について、資料7が環境影響評価制度総合研究会報告書の概要です。
続いて、参考資料1としまして環境影響評価法の仕組み、参考資料2としまして環境影響評価法の対象事業。また、これ以降はメインテーブルの委員限りでございますが、参考資料3としまして環境影響評価制度総合研究会報告書、参考資料4として環境影響評価法、参考資料5としまして同法施行令、参考資料6としまして同法に基づく基本的事項の環境大臣告示、以上、関係法令の全文をおつけしております。
資料の不足等ございましたら事務局までお申しつけください。
○花岡課長 本日の専門委員会は第1回目の会議でございますので、ここで委員の先生方のご紹介をさせていただきます。
浅野直人委員、石田憲治委員、猪野博行委員、大塚直委員、田中充委員、吉田正人委員、以上の方々のほかに崎田裕子委員、中川浩明委員、屋井鉄雄委員、鷲谷いづみ委員にも委員にご就任いただいておりますが、本日はご欠席となっております。
続きまして、本日出席しています事務局のご紹介をさせていただきます。
白石順一総合環境政策局長でございます。
三好信俊大臣官房審議官でございます。
川上尚貴総務課長でございます。
山本昌宏環境影響審査室長でございます。
沼田正樹課長補佐でございます。
竹本明生課長補佐でございます。
馬場康弘室長補佐でございます。
私、9月1日付で総合環境政策局環境影響評価課長を拝命いたしました花岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
次に、本専門委員会の委員長でございますが、鈴木総合政策部会長のご指名により浅野先生にお願いしたいということになっております。事前に委員の皆様方にはお諮りしているところでございますが、ご了承いただければと思います。
これより先の議事進行について浅野委員長にお願いをしたいと思います。
また、プレス、報道の方々に申し上げます。冒頭のカメラ撮りはここまでということでお願いいたします。よろしくお願いいたします。
それでは、浅野委員長、議事の進行をお願いいたします。
○浅野委員長 浅野でございます。座ったままで失礼いたします。
先ほど事務次官からごあいさつにもございましたように、環境影響評価の法律が施行されまして10年ということになります。これまでのアセスの運用実績は、それなりのものがあったと思われますが、しかし経験を積んでまいりますといろいろと見直しをしなければならない部分が出てまいります。
お話しにありましたように1年かけて環境影響評価制度総合研究会が報告書をまとめたわけでございますが、報告書は全般的に問題点を拾うということで、やや網羅的に取り上げたということと、それからご意見が区々分かれるような点もございましたので、一つにご意見を絞り込むということはいたしませんで、それぞれのご意見についてきちっとご紹介をし、問題点が明らかになるようにということで報告書をまとめたわけでございますが、これだけでは制度の見直しということにはなりません。中央環境審議会での審議ということになりますと、これまでは言ってみれば両論併記的に書かれたものについてもある程度の絞りをかけなければなりませんし、どういう方向で法の手直しをする必要があるか、しなくていいのかということについては、資料の整理をした上で審議会にお示ししてそこでご議論をいただくことになるのではないかと思います。そのためにこの専門委員会が設置されたわけでございます。
むろん専門委員会には、原案についての決定権限があるわけでございませんので最終的には総合環境政策部会にお諮りをするということになりますが、文字通り専門委員会として専門知識を有する者が部会の審議をよりスムーズに進めるために委員会の審議を進めていくことになると思います。あまり長い時間審議を行うことができないかもしれませんが、集中的に議論を進めていきたいと思いますから、委員の先生方にはどうぞよろしくご協力をお願い申し上げます。
それでは、本日の議題は2つございまして、専門委員会の運営について、まずご了解いただくということがございます。それからもう一つは、先ほどから出ております研究会の報告書の内容をかいつまんでご紹介をし、本日は専門委員会の委員の先生方から、第1回目でございますのでご自由にご意見を賜るということにしたいと思います。
それでは、まず議題の1、専門委員会の運営について、やや事務的な話にはなりますが、事務局からのご説明をいただきます。よろしくお願いいたします。
○沼田課長補佐 それでは、本専門委員会の運営につきまして、資料2番から6番をもとにご説明をさせていただきます。
まず、資料2をご覧ください。こちらは、今後の環境影響評価制度の在り方についてといたしまして、本年8月19日付で環境大臣から中央環境審議会会長にあてて諮問を行ったものの写しでございます。また、資料2の裏側でございますが、同じく8月19日付をもちまして中央環境審議会会長から総合政策部会に同諮問の付議を行っております。
続きまして資料3でございます。こちらは中央環境審議会議事運営規則でございまして、内容は従来の議事運営規則から特に改正はしておりませんが、2ページ目、第9条に専門委員会の設置について規定をしております。「部会は、必要に応じ、その定めるところにより、専門の事項を調査するため、専門委員会を置くことができる。」「専門委員会に委員長を置き、部会長の指名によりこれを定める。」という規定を置いております。
次の資料4が、中央環境審議会総合政策部会の小委員会及び専門委員会の運営方針についてでございます。順番に要点を申し上げますと、まず1番が会議の公開及び出席者としまして、(1)が会議の公開。小委員会及び専門委員会は、公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合又は特定の者に不当な利益若しくは不利益をもたらすおそれがある場合には非公開とし、それ以外の場合には公開するものとする。公開又は非公開の取扱いは、当該小委員会又は専門委員会の委員長が決めるものとする。
また、(2)代理出席ですが、代理出席は認めないこととしておりまして、欠席した委員等につきましては、事務局から資料送付等によって会議の状況を伝えるものとされております。
また、2番が会議録等でございますが、まず(1)会議録の内容として、小委員会、専門委員会の会議録の調製に当たっては、当該会議に出席した委員等の了承を得るものとする。また、会議録の配付につきましては、当該小委員会又は専門委員会に属する委員等に配付するものとする。
また、小委員会及び専門委員会の会議録及び議事要旨は、公開するものとするといった規定が置かれてございます。
次の資料5が、環境影響評価制度専門委員会の設置についてとしまして、本年7月30日に総合政策部会に本専門委員会の設置をお諮りした際にも同様の資料を使用しております。
1番の設置の趣旨でございますが、これは先ほども申し上げましたように、環境影響評価法が平成9年に制定され、平成11年に完全施行されております。同法の附則第7条では、「政府は、この法律の施行後10年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされております。
また、平成18年の第3次環境基本計画におきましても、環境影響評価法については施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて法の見直しを含め、必要な措置を講ずることとされております。環境省におきましては、環境影響評価制度総合研究会を昨年6月に設置いたしまして、本年7月に同研究会の報告書を取りまとめております。法の施行から10年という節目の時期を迎えたことを踏まえ、環境影響評価法の施行の状況及び今後の同制度のあり方について調査を行う専門委員会を置くというものでございます。
次の資料6ですが、こちらは中央環境審議会総合政策部会の小委員会及び専門委員会の設置についてでございます。裏側の6番におきまして、環境影響評価制度専門委員会について記載をしております。環境影響評価制度専門委員会は、環境影響評価法の施行の状況及び今後の環境影響評価制度のあり方について調査を行う。同専門委員会に属すべき委員、臨時委員及び専門委員は、部会長が指名することとされております。
以上が資料2から6の概要でございます。
○浅野委員長 ただいま事務局から専門委員会の設置あるいは役割についてご説明をいただきましたが、何かただいまのご説明に対してのご質問がございますでしょうか。よろしいでしょうか。特にご質問ございませんようでしたら、ただいまのご説明をご了解いただいたということで先へ進めさせていただきたいと思います。
それでは、次に環境影響評価制度総合研究会の報告書について、事務局からの説明をお願いいたします。少し大部にわたりますので、時間をかけて説明いただきますのでよろしくお願いいたします。
○沼田課長補佐 それでは、環境影響評価制度総合研究会報告書の概要につきまして、資料7をもとにご説明させていただきます。
お手元の資料7をご覧ください。
報告書の内容でございますが、まず最初に、環境影響評価制度の変遷及び法制定後の動向を記載してございます。
まず、1番が国の制度の経緯等としまして、環境影響評価につきましては、1969年アメリカにおいて国家環境政策法、通称NEPAと略称しておりますが、これによって制度化され、その後世界各地で制度化が進められております。
日本では、昭和47年に各種公共事業に係る環境保全対策についての閣議了解が行われました。その後、昭和50年代の法制化の取り組みを経て、昭和59年に環境影響評価の実施についての閣議決定を行いました。これによって、政府として統一的なルールに基づく環境影響評価を実施をすることとなっております。
その後、平成5年に施行された環境基本法では、環境影響評価の推進の規定が置かれました。また、翌平成6年に策定された環境基本計画におきまして、環境影響評価制度の今後のあり方については、法制化も含め所要の見直しを行うとされております。
次の2ページに行っていただきまして、こういった経緯を踏まえまして、環境影響評価制度総合研究会における議論、また中央環境審議会における答申を経まして、平成9年3月に環境影響評価法案が閣議決定され、国会へ提出されました。同法案は、国会の審議を経て同年6月に施行され、平成11年から完全施行されております。
また、先ほどの資料の中でもご説明したとおり、同法の附則におきましては、施行から10年を経過した場合において、法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするという規定が置かれております。
次の2番が、地方公共団体の制度の経緯等でございます。
都道府県及び政令指定都市におきましては、昭和51年に川崎市が環境影響評価に関する条例を制定したのを皮切りとしまして、各団体において独自に環境影響評価制度が制定されております。
その後、環境影響評価法の制定なども経まして、現在、都道府県ではすべての都道府県、また18ある政令指定都市の中では14の市で環境影響評価条例が制定・施行されております。
地方公共団体における環境影響評価制度は、手続の大きな流れにつきましては、法に概ね準じたものとなっておりますが、審査会の意見聴取あるいは環境影響評価実施後の事後調査等、独自の特徴も一部に見られております。
次の3ページに行っていただきまして、3番が諸外国の制度でございます。
まず、海外におきましては、1969年アメリカのNEPAによって初めて環境影響評価が制度化されております。その後、1985年に環境影響評価に関するEC指令が採択され、EU加盟国を中心として欧州諸国での環境影響評価手続の制度化が進みました。こういった経緯も経て、現在では多くの主要諸国において環境影響評価制度の取組が進められている状況にございます。
各国の制度は、それぞれの国の計画・事業体系あるいは関連する法規制・社会構造等、こういったものが相違することもありまして、国別にさまざまな特徴を有しております。また、主要諸国では、各種の政策立案あるいは計画策定等についての環境影響評価を戦略的環境アセスメント(SEA)という概念のもとで導入している例が見られます。
続きまして、4番が環境影響評価法制定後の動向でございます。
まず、環境影響評価に関する動向としまして、平成18年の第三次環境基本計画におきまして戦略的環境アセスメント(SEA)に関する共通的なガイドラインの作成を図ることとされておりまして、現在、取組が進められております。また、平成17年に基本的事項、これは事業の種類ごとに主務大臣が定める基準、指針に関して、基本となるべき事項として環境大臣が定める環境大臣告示でございますが、これについて点検、見直しを実施をしております。
また、行政改革・規制改革の分野につきましては、地方分権の進展により各種の事務の多くが政令指定都市、中核市等におろされています。
また、次のページになりますが、三位一体の改革の一環として、補助金を交付金化する取組が進められている、こういった動きがございます。
このほかに電子政府の推進としまして、平成14年以降行政手続オンライン化法、またはe-文書法が制定され、法令に基づく行政機関との手続についてオンラインによる手続も可能となっております。
また、公共事業の分野では、構想・計画の段階から住民等が意見を表明できる場を設け、それを計画に反映させるパブリック・インボルブメント、PIと略称しておりますが、こういった手法が進展しているといった状況が見られます。
次の資料5ページに行っていただきまして、5ページ以降は環境影響評価制度の現状でございます。まず、1番が環境影響評価制度の施行実績ですが、最初に、国による環境影響評価制度の施行実績を見ますと、閣議決定要綱に基づく環境影響評価の実施件数が合計で448件、また環境影響評価法の施行以降、平成20年3月末時点で手続が完了した案件は119件となっております。一方、地方公共団体による環境影響評価制度の施行実績を見ますと、平成19年3月末時点で要綱・指針等に基づくアセスが累計で1,362件、条例に基づく環境影響評価が、これも累計で814件実施されております。
2番が対象事業の現状でございます。
まず、法の対象事業につきましては、現在の環境影響評価法制定時の中央環境審議会答申の中で、規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれがあり、かつ国が実施し、または許認可等を行う事業を対象事業に選定することが適当という考えに基づきまして、現行法では特定の事業種を対象事業としております。現在の法対象事業の一覧につきましては、参考資料の2番としまして対象事業及び規模の一覧をおつけしてございます。
また、地方制度の対象事業ですが、環境影響評価条例では法対象事業と同種の事業でより小規模の事業を対象としているほか、法対象となっていない事業種についても独自に条例の対象事業としているケースがございます。日本の環境影響評価制度では、法と条例が一体となって幅広い事業を対象に環境影響評価が行われる仕組みとなっております。
6ページに行っていただきまして、これ以降がアセス法の個別の手続の説明でございます。参考資料の1番としまして、環境影響評価法全体の仕組みフロー図をおつけしておりますので、こちらもご参照いただきながらお聞きください。
まず、スクリーニングでございます。法の対象事業については必ずアセスの手続を行う一定規模の事業、これを第一種事業と呼んでおりますが、これを定めるとともに、第一種事業に準ずる規模を有する事業、これを第二種事業としまして、第二種事業につきましては個別の事業あるいは地域の違いを踏まえてアセスの実施の必要性を判定する仕組み、通称スクリーニングと呼ばれる手続を導入しております。
スクリーニングの具体的な手続としましては、第二種事業に該当する事業を実施しようとする者は、当該事業の概要等を許認可権者等へ届出を行います。届出を受けた許認可権者は、関係都道府県知事の意見を勘案した上で、当該事業についてアセス手続を実施する必要があるかどうかを判断する仕組みとなっております。
法施行後の動向としましては、第二種事業相当規模の事業につきましても、すべてスクリーニング手続を経ずに環境影響評価の手続がとられております。この理由としましては、法の第二種事業相当の規模の事業は環境影響評価条例でも対象事業として位置づけられておりますので、仮に法に基づくアセスが不要と判断された場合であっても条例に基づくアセス手続の対象となること、これが理由の一つではないかと考えられます。
次に、7ページがスコーピング、方法書の手続でございます。
まず、現行制度の仕組みですが、方法書、スコーピングの具体的な手続としましては、事業者は対象事業に関する環境影響評価の項目あるいは調査、予測、評価の手法といった内容について方法書を作成し、関係地方公共団体への送付、そして公告・縦覧を行います。
方法書について、環境の保全の見地からの意見を有する者あるいは関係地方公共団体は、事業者に対し環境の保全の見地からの意見を述べることができるとされております。
法施行後の動向ですが、法律では方法書の縦覧は事業者自身が行うということになっておりまして、事業者の事務所における縦覧に加えまして、関係地方公共団体の庁舎等で縦覧を行うことが一般的となっております。縦覧場所が限られていることによりまして、方法書の閲覧に当たって制約がある場合も見られます。
また、法律では、説明会の開催は準備書段階のみ義務づけとなっておりまして、方法書段階では義務づけられておりません。ただし、法施行後の実態を見ますと、方法書は最大で500ページを超えるものもございまして、また、さまざまな専門用語が使われていることもあり、住民等の理解が困難な場合もあると考えられます。
地方制度の動向ですが、法律では対象項目となっていないものの、条例で対象項目とされている要素としては、低周波音、電波障害、史跡・文化財、こういった項目がございます。
また、海外の動向としましては、アメリカ等におきまして戦略的環境アセスメントの結果をその後のアセスの手続に活用する制度、通称ティアリングと呼ばれる仕組みが設けられております。
次の8ページが準備書の手続です。
事業者は、報告書手続を経て環境影響評価を実施した後、その結果について準備書を作成し、関係都道府県知事、市町村長に送付をするとともに公告・縦覧を行います。
準備書につきましては、方法書と同様に地域の環境情報を補完する観点から、住民等あるいは地方公共団体が意見を述べることとなっております。
また、現行の法律では、方法書、準備書の各段階におきまして、関係市町村長の意見を集約した上で都道府県知事が事業者に対して意見を述べる仕組みとなっております。
次の6番が評価書の手続でございます。
まず、現行制度の仕組みですが、事業者は準備書の手続を経て環境影響評価書を作成し、これを当該事業の許認可等権者へ送付します。この際、環境大臣は必要に応じて許認可等権者に対して環境保全上の意見を提出し、許認可等権者はその意見を踏まえて事業者に対して環境保全上の意見を提出するという仕組みになっております。
事業者は、許認可等権者の意見を受けて評価書を検討し、必要な修正を行った上で最終的な評価書の公告・縦覧を行います。
法施行後の動向ですが、手続の最初から法に基づく手続を実施して手続を完了した事業を見ますと、9割以上の案件で何らかの環境影響評価の適切な実施、あるいはより環境に配慮した事業内容への変更を目的とした修正が行われているという状況にございます。
続いて9ページに行っていただきまして、環境影響評価結果の事業への反映でございます。
まず、現行の制度の仕組みですが、許認可等権者は対象事業が環境の保全について適正な配慮がなされるものであるかどうか、これを審査してその結果を許認可等に反映させること。こういった規定を環境影響評価法の中で置いております。
また、基本的事項におきましては、環境保全措置の一つとしまして、必要に応じて事後調査を実施することを位置づけるとともに、事後調査の結果により環境影響が著しいと明らかになった場合の対応の方針、または事後調査結果を公表する旨、こういったことを明らかにすることを求めております。ただし、事後調査の結果についてフォローするための法律上の仕組みは現行法には設けられておりません。
一方で地方制度の動向を見ますと、地方公共団体の環境影響評価条例におきましては、都道府県、政令市、61団体すべての条例におきまして事後調査報告書の提出義務づけ等、何らかの事後調査の手続規定が置かれております。また、法対象事業に対して、条例の事後調査を適用したことがある地方公共団体にアンケートをとった結果、環境大臣の関与が必要という回答が4団体、環境大臣の関与が必要な場合もあると思われるという回答は6団体、それぞれ見られました。
続きまして、10ページが環境影響評価手続における評価の視点です。
まず、現行制度の仕組みですが、閣議決定要綱に基づく環境影響評価の時代には、環境基準などの目標を満足するか否か、このような保全目標クリア型の評価が基本となっておりました。しかし、現行法では、事業者により実行可能な範囲内で環境への影響をできる限り回避し、低減しているかどうかという観点、いわゆるベスト追求型の評価という視点が取り入れられております。
法施行後の動向として、ベスト追求型の評価の具体的な内容ですが、まず現行の基本的事項の中では、評価の視点として、幅広い環境保全対策に係る複数の案を比較検討する手法、または実行可能なよりよい技術が取り入れられているか否かについて検討する手法、こういったものを例示をしております。
この中で複数案の比較検討の実施状況を見ますと、法の手続を実施した終了案件74件のうちおよそ8割の59件において、何らかの環境保全措置の複数案の比較検討の経緯が明示をされているという状況でございます。
続きまして11ページですが、9番、環境影響評価における情報交流でございます。
まず、現行制度の仕組みですが、閣議決定要綱のアセスでは準備書段階のみ住民等による意見提出の機会が設けられておりましたが、現在の環境影響評価法の手続では方法書の手続においても意見提出の機会が設けられております。
また、閣議決定要綱の時代には、意見提出者は事業の関係地域の住民に限定されておりましたが、現在の法律ではこういった地域限定は撤廃されています。
法施行後の動向ですが、環境省では現在、環境影響評価情報支援ネットワークというホームページを開設しておりまして、環境影響評価制度、環境影響評価技術、各種の情報について地方公共団体あるいは関係事業者、さまざまな主体への情報提供を行っております。
次に地方制度の動向としまして、これは手続の電子化に関してですが、現在、環境影響評価図書の電子縦覧、あるいはインターネットによる意見書受付、ともに地方公共団体においては徐々に整備が進められている状況がございます。
また、海外制度の動向。これも手続の電子化の関係ですが、カナダにおきましては、インターネットを活用した情報提供が制度上位置づけられております。また、アメリカ含めその他の諸国におきましても、実態として電子媒体による公開が進められつつあるという状況でございます。
また、情報交流に関連してオーフス条約が2001年に発効しておりまして、同条約の中では環境に関する情報へのアクセス、環境に関する施策決定への参加、あるいは環境関連法令に違反する行為について司法による手続へのアクセスの確保、こういった3分野において各国の法制度化を促すことを目的としております。
次の12ページが、10番戦略的環境アセスメントについてでございます。
まず、国における現行の取組でございますが、平成18年の第三次環境基本計画において、SEAに関する共通的なガイドラインの作成を図ること、これが規定をされたことを踏まえまして、平成19年に環境省においてSEAの共通的な手続等を示す戦略的環境アセスメント導入ガイドラインの取りまとめをしております。
また、翌平成20年には、国土交通省におきましてSEAを含むものとして公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドラインが取りまとめられるなど、現在取組が進められている状況にございます。
次に、地方制度の動向ですが、地方公共団体におきましては平成20年4月時点で、東京都、埼玉県、千葉県、広島市、京都市、この5都県市でSEAの制度が条例もしくは要綱等で導入をされております。
次に、海外制度の動向です。
SEAにつきましては各国に規定がありますが、その規定している法令のレベル、事業の対象範囲、対象となる計画等の内容、こういったものは国によってさまざまでございます。
また、SEAの結果をその後の環境影響評価の手続に活用するティアリング制度につきましては、基本的な考え方は多くの国の環境影響評価制度において導入されていますが、法令上明確に規定されている事例は少ないという状況であります。
次の13ページからが、現行環境影響評価制度の課題でございます。
これは総合研究会での各種関係団体に対するヒアリングの結果、あるいはそれらを踏まえた委員の議論などの結果、出された意見について各テーマごとに整理をしたものでございます。
まず、1番が対象事業でございます。
対象事業の中にも小論点が幾つかございますが、最初が国と地方の役割分担についてです。まず、法の対象事業のあり方については、対象事業の種類あるいは規模について範囲の拡大をすべきではないか、こういった意見がございました。
ただ、その一方で、地方の独自性を生かすことも重要ではないかという意見や、あるいは法律の対象範囲を拡大した場合、従来条例が対象にしている事業を法対象に引き上げることとなりますので、法と条例の関係から適切であるかどうか、こういった意見もございました。
法対象事業の範囲の検討に当たっては、行政全体の動きとして地方分権の流れがあること、また、法と条例が一体となって幅広い事業を対象にしていること、こういったことを踏まえて慎重に対応していくことが求められるとしております。
2点目が法的関与要件です。
これにつきましては、例えば国の許認可を対象事業の要件から外すなど、法的関与要件を対象事業の条件とはせずに、単純に環境負荷の大小で対象事業を決めるべきではないか、こういった対象範囲の拡大を指摘する意見がございました。
一方で、法的関与要件を使って環境保全上の配慮の確保について一定の強制力を担保するという仕組みは現行法の制度の根幹でもありますので、一定の妥当性があるのではないか、こういった意見も見られました。
また、国の法的関与要件のない事業は、地方公共団体の条例で対象としている場合が多く、国と地方の役割分担の観点、こういった点も留意すべきではないかという意見もございました。
続きまして14ページですが、対象事業の続きとしまして、補助金事業の交付金化への対応についてです。
法の施行後の状況の変化としまして、補助金を交付金化する取組が進められております。現行法では、法的関与要件の条件の一つとしまして、国の補助金等の交付対象となる事業、こういった規定を置いておりますが、現在、交付金はこの当該要件の範囲には含まれておりません。
交付金事業を環境影響評価法の対象とすることについては、地方分権との関係に留意が必要ではないか、こういう意見があった一方で、法対象事業に該当する事業種、規模相当に該当する場合であっても、交付金化する事業については現行法の規定では法対象事業とはならないことから、補助金事業の交付金化に伴う必要な措置を行うべきではないか、こういった意見もございました。
報告書の中では、補助金事業の交付金化等の状況を踏まえ、法的関与要件の内容について検討を行う必要があるとしております。
次に、将来的に実施が見込まれる事業種への対応についてです。
今後実施が見込まれる規模の大きい事業としましては、例えば放射性廃棄物処分場の建設、あるいは二酸化炭素の回収・貯留(CCS)こういったものが具体例として考えられます。これらについて、何らかの形で環境影響評価法の対象とするべきではないかという意見がございました。
一方で、これらの事業は、現在、実証試験あるいは技術開発の段階ですので知見も不十分であり、対象事業に加える検討をしていくのは時期尚早ではないかという意見もございました。
将来的に実施が見込まれる事業で現行法の対象になっていないものについては、事業の特性、実施可能性、社会的要請、こういったものについて知見を収集・分析した上で個別に対応を検討する必要があると整理をしております。
次が、条例等による環境影響評価が実施されている事業種への対応としまして、具体的には風力発電施設に関する環境影響評価の取扱について多くの意見が述べられました。
現在、風力発電施設の設置につきましては、NEDOが自主的な環境影響評価のマニュアルを作成しております。また、このほかにも地方公共団体におきまして、条例、要綱等で環境影響評価を義務づける取組が拡大をしています。
15ページに続きますが、一方で研究会での議論としましては、風力発電設置時の環境影響評価について法律による取組に比べて情報公開あるいは客観性の確保が不十分ではないか、法の対象として検討するべきではないか、こういった意見がございました。
その一方で、NEDOのマニュアルによる仕組みがある点に考慮する必要があるという意見、あるいは従来どおりの地方条例の対応で十分ではないかという意見。また、NEDOのマニュアルや条例の運用実態に問題があるのであれば適切な環境影響評価の実施が担保されるように措置が必要ではないか、こういったさまざまな意見が見られました。
現在、条例等により環境影響評価が行われている事業種については、実施状況等を把握し、必要に応じて適切な対応を検討することが必要であると報告書では整理をしております。
また、対象事業に関するその他の課題でございますが、対象事業の範囲を拡大した上で簡易アセスの導入をするべきではないか、こういった指摘がございました。
一方で、簡易アセスについては、現行の第一種事業、第二種事業をなくすなど大きな制度変更を要すること、あるいは条例との関係に留意する必要があることから慎重な検討が必要であるという意見も見られております。
16ページにまいりまして、論点の2番がスコーピングでございます。
まず、方法書段階の説明の充実としまして、現在、方法書の分量が多く内容も専門的であること、あるいは公共事業におけるPI等の取り組みの進展といった状況を踏まえ、方法書の段階でも説明会を義務づけるべきではないかといった意見が多く見られました。
一方で、住民が説明会で求める内容が調査方法ではなく調査の結果であるため、情報のミスマッチを起こすのではないかという意見、あるいは事業内容が明らかになっていない方法書の段階で説明会を行うことには負担感があるといった意見などがございました。
また、このほかにも構想段階などで住民等とのコミュニケーションを行っている事例もあることから、こういった構想段階の取組と関連づけて検討すべきではないかといった意見もございました。
法施行後の状況の変化、方法書段階での説明会に係るこうした意見、指摘も踏まえて、方法書段階の説明の充実に向けた検討を行う必要があると整理をしております。
次に、スコーピングに関する手続の強化としまして、事業者が方法書の手続に先立って環境を改変するおそれがある調査をすることを禁止すべきではないかという指摘がございました。
一方で、この点につきましては、方法書の作成に当たって一定の事前調査が必要な事案もあると考えられるという意見や、一律禁止はすべきではないという意見も見られております。
また、このほかにも方法書の記載内容が不十分な場合には、方法書の差し戻しを可能とする仕組みが必要ではないかという意見もございました。
一方で、これにつきましても、こういった措置を課すことは、事業者にとっては早い段階から手続を行うインセンティブをそぐことになるのではないかという意見が見られております。
17ページに入りまして、論点の3番が国の関与でございます。
まず、現状では環境大臣関与がない事業の取扱について。、現在の法の対象事業の中には、公有水面埋立事業のように地方分権の推進等によって事業自体に対する国の許認可がなくなったことから、現在、環境影響評価手続の中で国の関与がなくなっているケースが見られます。地方公共団体に対するアンケートやヒアリングでは、こういったケースに関して環境大臣の関与が必要とする意見が見られました。
総合研究会の議論におきましても、広域的な環境保全等の観点から、手続において環境大臣が関与する機会を設ける必要があるのではないかという多くの指摘をいただきました。
報告書の整理といたしましても、地方分権の流れがある中で都道府県の意思決定に国の関与を単純に拡大することは適当ではないが、今後、地方公共団体の自主性にも留意をしながら、広域的な環境保全の見地から環境大臣が関与するあり方について検討する必要があるとしております。
また、このほかにも方法書段階での環境大臣の関与としまして、環境大臣が評価書の段階だけではなく方法書の段階においても意見を提出すべきではないかといった指摘が見られました。
この点につきましては、現行法における各主体の役割分担を変更しなければならない特段の問題はないのではないかという意見があった一方で、現在の法律でも評価項目の選定等に当たって事業者が主務大臣に助言を求める仕組みがございますので、この規定を受けて、この段階で環境大臣にも助言を求めることができるという工夫ができるのではないかといった意見もございました。
次に、18ページが論点の4番、地方公共団体の関与でございます。
まず最初に、政令指定都市の意見提出としまして、現在は関係市町村長の意見を集約して都道府県知事が事業者に対して意見を述べるという仕組みになっておりますが、この仕組みについて、地方公共団体の側からは、都道府県を介さず事業者に直接意見提出をできる権限を市長に付与することを求めるという要望も見られております。
研究会の議論におきましても、大半の政令市が独自の審査会を持っていることなどを踏まえても、政令指定都市が直接事業者に意見提出する方法が適当ではないか、こういった意見がありました。
また一方で、関係市町村からそれぞれ意見が提出された場合には、事業者の側として取り扱いが難しくなる、こういった考え方もございますので、これに対して事業実施区域あるいは環境影響が及ぶ区域が政令市の区域内に完結する事業の場合には政令市の長が直接事業者へ意見提出をする、こういった案が考えられるという指摘もございました。
また、2点目が複数の地方公共団体にまたがる事業の審査としまして、現在、条例を制定しているすべての都道府県や政令市では、意見形成のための審査会を設置しております。複数の地方公共団体にまたがる事業の場合には、重複審査を回避するために効率的な仕組みが必要ではないか、こういった指摘がございました。
この対応として、複数の都府県にまたがって事業が行われる場合には、関係都府県の合意に基づく審査会の開催あるいは合同による意見提出を可能とする案が考えられるのではないかという意見が研究会の中では出ております。
次の19ページが論点の5番、環境影響評価結果の事業への反映でございます。
まず、1点目が許認可への反映としまして、環境影響評価結果の許認可への反映について、許認可を行う際の環境保全の配慮に関する審査基準を明確にすべきではないかという意見、あるいは許認可権者が許認可の判断を下した場合に環境保全をどう考慮したか、これを公表すべきではないかといった意見がございました。
このうち審査基準の明確化については、現行法のベスト追求型の評価の視点を踏まえると、現行法の趣旨とそぐわないものも出てくるのではないかという意見がございました。
また、許認可に際して環境影響評価結果をどのように配慮したかを公表すること、これにつきましては、手続の実効性の担保にも資することなどから必要性について検討の余地があるという意見もございました。
2点目が事後調査についてです。
事後調査については、環境影響評価の結果を共有することはアセスの質の担保、あるいは技術の発展に有効であるという指摘、あるいは環境影響評価に関して実際の結果を評価する視点が必要であるなど、事後調査の必要性をうかがわせる多くの意見がございました。
また、環境影響評価の質の担保のためには結果を公表すべきとの意見、あるいは国の関与が必要ではないか、こういった意見もございます。
その一方で、事後調査は地域特性等を踏まえながら行うものであるため、一律に法で規定して実施する段階までいくべきではないという意見、あるいはある程度弾力的に対応できることが必要という意見など、柔軟な対応を求める指摘も多く見られています。
20ページにまいりますが、現行法の仕組みの中で許認可等がなされた後の段階でどういった法的根拠によって事後調査を義務づけるか、こういった点についても議論がなされております。これにつきましては事後調査の実施及び報告を許認可等の附款という形で義務づけるという意見、あるいは法で一律に義務づけることもあり得るのではないか、こういった意見が見られております。
3点目が、未着手案件の環境影響評価手続の再実施についてです。
現行法では、手続の終了後、未着手の事業について事業者の判断によって自主的に手続をやり直すことは可能としておりますが、手続の再実施を義務づける規定は置いておりません。この点について研究会の中では、一律に再評価を義務づけること、あるいは環境の状況に変化があった場合に、変化がなかった項目も含めて再手続を行うことは負担が大きいのではないか、こういった意見が見られております。
その一方で、現在の自主的な取組を促進する措置はあり得るのではないかとして、手続終了後に長期間未着手となっている事業について環境の状況に変化等が生じた場合には、許認可権者から、項目を絞った上で追加的な調査を提案し、必要があれば環境保全措置を強化する、こういった仕組みが考えられないかといった指摘がございました。
続いて21ページが論点の6番、環境影響評価手続の電子化でございます。
これにつきましては、現在行政手続の電子化が進展していること、あるいは地方公共団体や海外においても電子媒体による環境影響評価図書の公開などが進展していることを踏まえて図書の電子媒体による縦覧を初め手続の電子化について推進すべき、という指摘が多く見られました。
その一方で、環境影響評価図書には安全保障上問題となる情報あるいは企業機密に属する情報も含まれていることから、情報流出や不正流用を危惧する意見、また、電子メールでの意見集約についてはコンピューターウイルス、迷惑メールといった点を考慮する必要があるという意見がございました。
報告書の中では、法施行後の状況の変化を踏まえ、環境影響評価手続の電子化の推進について検討を行う必要がある。その際には、先ほど述べた懸念の指摘にあるような情報の安全管理、電子メールによる意見の取扱、こういった点のルール整備について留意が必要としております。
続きまして22ページが論点の7番、情報交流でございます。
まず、1点目が方法書意見への対応としまして、現行法では方法書の段階で出された意見への事業者の見解は準備書の中で明らかとされることになっております。この点について、調査着手以前に見解の公開を義務づけるなど、方法書意見への回答を準備書作成前に反映する措置が必要ではないかという意見がございました。その一方で、方法書意見への回答の義務化は、環境影響評価手続の開始が遅れ、方法書本来の趣旨に逆行するのではないかという意見もございました。
また、方法書手続の目的である、より適切な環境情報の収集のためには事業者の見解を公開することよりも住民との理解を促進することが重要であり、方法書段階での説明の充実といった手段が有効ではないかという指摘もございました。
2点目が住民等の意見聴取の強化でございます。
例えば、住民等の意見聴取に関して公聴会の義務化等の措置が必要ではないかという意見が見られました。
現状では住民等からの意見聴取のための措置としましては、地方公共団体による条例に基づく公聴会の開催など、さまざまな取組がなされております。公聴会については、法律での義務化により運用の柔軟性がなくなるのではないかという意見もございました。
公聴会の法による義務化ではなく、わかりやすい図書の作成あるいは各地方公共団体による情報、知見の集約・提供、こういった点を含めて引き続き検討・取組を進めていく必要があると報告書ではまとめをしています。
3点目が住民参加の強化としまして、スクリーニング手続に関係住民等の意見提出権を定めるべきではないかという意見がございました。
この点につきましては、スクリーニングの判定については、主務省令において事業特性と地域特性を要素とする判断基準も示しておりまして、これに加えて主務大臣が有する事業特性に関する知見、あるいは都道府県知事が有する地域の環境情報、こういったものに基づいて客観的な判断が行われる仕組みとなっております。
23ページが情報交流に関する最後の論点としまして、情報の整備でございます。
これにつきましては、情報の集積を容易にするために過去に実施された環境影響評価のデータ、あるいは希少種のデータ、こういったものについて国が整備をして共有化することが必要ではないかという意見がございました。
過去の環境影響評価の結果を含めた各種情報の整備はこれまでも取り組んでいるところでございますが、事業者の効率的な調査の実施にも資するよう、過去の環境影響評価図書の電子縦覧など、関係者と連携しながらより一層取組を進める必要があるとしております。
次に、24ページに行っていただきまして、論点の8番が環境影響評価の内容及び環境影響評価技術でございます。
まず、1点目がリプレース等への対応としまして、火力発電所のリプレースについては、温室効果ガスの削減にも資することから、環境影響評価の手続期間の短縮の可能性について検討していく必要があるのではないかという意見がございました。
その一方で、環境負荷が現状よりも改善するという点をもって手続を簡略にすることはベスト追求型の観点から適当ではなく、期間の短縮については方法書手続の弾力的な活用によって対応すべきという意見もございました。
2点目が複数案の検討です。
環境影響評価の実施に当たって複数案の検討を行うことを法律で義務づけるべきではないかという意見がありました。その一方で、立地に関する複数案など企業経営に関するデータの公表は公正・自由な競争を阻害するのではないかという意見もございました。
また、事業の立地、規模に関する複数案の検討は、現在取組をしております位置・規模段階のSEAによっても促進されるものである点に留意し、当面はSEAの実施の積み重ねが必要ではないかという意見も見られました。
3点目が評価項目の拡大としまして、調査・予測・評価の項目について、歴史的・文化的な環境、あるいは安全確保、こういったものも組み入れるべきではないかという指摘がございました。
これについては、環境基本法の射程範囲との整合について留意が必要ではないかという意見、あるいは個別の事業法、規制法によって対応すべき項目もあるのではないかという意見が見られております。
その一方で、環境基本法の射程範囲を限定的にとらえる必要はなく、項目を追加する余地はあるのではないかという意見、あるいは事業者が自主的に項目を追加することには柔軟な対応を可能とすることも必要ではないかという指摘もございました。
次に25ページが論点の9番目、環境影響評価結果の審査でございます。
1点目が審査会の活用としまして、環境大臣が意見を述べる段階において審査会の活用が必要ではないかという意見がございました。
その一方で、現状も環境大臣意見の形成に当たっては、必要に応じて専門家の意見を聴取している点や、地方公共団体の審査会と重複する可能性がある点に注意が必要ではないかという意見、また審査会の義務づけは事務負担の増大、手続の長期化にもつながる可能性があるといった意見がございました。
2点目が、地方公共団体の審査会に関する取組としまして、地方公共団体の審査について審査基準の明確化が必要ではないかという意見、あるいは各団体の審査会を横断する連絡会など支援策が必要ではないかという指摘がございました。
まず、1点目の審査基準の明確化についてはベスト追求型の評価の視点を阻害する面がある点に注意が必要ではないかという意見がございました。また、審査に関する知見については、現在も環境省と地方公共団体の間で知見の共有あるいは情報提供の促進を図っておりますが、こういった取組を引き続き進めていく必要があるとしております。
26ページが論点の10点目、戦略的環境アセスメントでございます。
まず、SEAの制度化については、法制化について早急に取り組むべきという意見が見られております。
その一方で、SEAは現在具体的な事業への適用が始められたばかりの段階ですので、当面はガイドラインに基づく実施事例の積み重ねが重要ではないかという指摘、あるいは性急な法制化によってSEAが形骸化することを懸念する意見も見られております。
また、2点目ですが、SEAの結果を環境影響評価手続に活用するティアリングにつきましては、SEAとその後の手続の整合性を持たせるべきであり、こういった仕組みを検討すべきではないかというご指摘を多くいただいております。
次に27ページが論点の最後11点目、その他の課題でございます。
まず1点目が、不服申立・訴訟手続でございますが、これについては環境影響評価の手続や評価に問題がある場合に不服申立あるいは訴訟ができる手続が必要ではないかという指摘がございました。
環境という公益を保護するための訴訟制度は、欧州のみならずアジア諸国においても導入が進んでいることから、環境影響評価手続においても制度構築が必要ではないかという意見が見られております。
環境影響評価に関する訴訟制度を構築しようとする場合、日本のこれまでの判例を踏まえますと、環境影響評価法の対象事業について許認可等の手続に対する抗告訴訟を起こすという手法が最も現実的と考えられます。
ただし、この場合も原告の適格が認められるためには法律上の利益が必要となりますが、この点については団体訴訟の導入によって対応すべきではないかといった意見がございました。
団体訴訟の導入につきましては、環境影響評価の内容そのものを対象に違法性を判断することは困難ではないか、あるいは環境の利益を代表する団体を認定することは困難ではないかといった個別の点を懸念する意見などもございました。
また、27ページの一番下ですが、このほかにもアセス手続の過程で意見を提出した者については法律上の利益があるという整理をして、そういった事業の許認可について抗告訴訟の原告の適格を認めるという方法が考えられるのではないか、こういったご意見も出ております。
また、研究会ではこうした法律上の観点からの議論に加えまして、計画の策定過程において意見聴取を行っているほかの制度への波及を懸念する意見、あるいは事業計画をつくる過程で環境以外の面も検討する必要がある中で、環境に特化してこういった訴訟を認めることについて慎重に対応すべきではないかという意見など、慎重な検討を求める多くの意見が見られております。
報告書の整理といたしましては、環境影響評価法に広く訴訟手続を導入することについては、具体的な制度化のための検討を速やかに開始すべきであるとする意見がある一方で、先ほどご説明したようなほかの制度との整合性あるいは実態面への悪影響を懸念する意見が多く見られました。
研究会におけるこれらの意見を踏まえ、環境影響評価法における訴訟手続の法制度化については、その必要性も含めて慎重に検討を進める必要があるとしております。
その他の2点目が、実務者の技術向上について。
これについては、資格制度や技術向上の検討をすべき、あるいは地方公共団体の能力の強化を図るべき、こういった指摘がございました。現在、技術向上については各種のガイドの取りまとめ、あるいは情報提供の促進を進めております。
資料の最後、29ページでございますが、その他の論点としましては、地方公共団体の制度との関係として、現在の61条第2号の「(この法律の規定に反しないものに限る。)」という限定を削除すべきとの意見、あるいはPFI事業について、環境影響評価の実施者と運営主体が異なることから、法制度上も対応を検討すべきといったご意見がございました。報告書では、それぞれの論点について事実関係の整理を行っております。
また、報告書の最後でございますが、今後の検討の方向としまして、現在の我が国の環境影響評価制度には、これまでご説明したような今後検討が必要な課題が見られるとした上で、こういった課題の中には見直しに向けた具体的な検討を早急に行うべき課題だけでなく、中長期的な課題として引き続き検討を続ける必要のあるものも含まれている。この点に留意をした上で、本研究会の成果を引用しつつ、法制度の見直しも含め、今後の制度のあり方について検討が進められることを期待するものであるとしております。
以上が資料7、総合研究会報告書の概要でございます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまご説明をいただきました研究会の報告書の概要ということでありましたが、40分程度かなり丁寧にご説明をいただきました。報告書のポイントはこれで整理されたと思います。
事務次官はここで、所用のために退室されます。どうもありがとうございました。
(小林事務次官 退室)
○浅野委員長 それでは、これからただいまご説明いただきました報告書についてご意見なり、コメントなりをいただきたいと思います。本日は第1回目ということもありますので、比較的自由にご意見をいただきたいと思いますが、田中委員から、早目に退室をする必要があるので先に発言を許してほしいというお申し出いただいております。
田中委員どうぞ。
○田中委員 ありがとうございます。
私も、ただいま紹介がありました総合研究会のメンバーとして加わらせていただきまして、この報告書の取りまとめに参画させていただいたものですから、何点か気がついたことがございます。恐らく報告書の中に述べられていることと少し重複いたしますけれども、まず全体的な検討の進め方、それからあと個別の幾つかのコメントをさせていただきたいと思います。
1つは、総合研究会の報告をいただきました内容ですが、アセスメント制度に係る多くの関係者、環境NGO・NPO、自治体、産業界、あるいは法曹界の関係者の皆さんからご意見を聞いて取りまとめられております。そういう点では、今後のアセス制度のあり方についての方向性なり、あるいはそのあり方を提示するということについては、おおよそこの中に論点、議論の枠組みといったようなものは概ね含まれているのではないかというふうに考えます。これが1つでございます。
2つ目に、とはいえ少し読んでみると、やはり全体の印象として両論併記のようなところになっている、あるいはそういう印象を持つところもあるんですが、しかし表現の強弱であるとか内容を具体的に見ていきますと、相当な部分や事項については方向性としては少し収斂していると思います。内容面の工夫であるとか、あるいはある程度のコンセンサスができつつある。これは、例えば電子化の話なんかもそういう部分だと思います。こういう論点もあります。これらの論点も、それなりに含まれておりますので、おおよその方向性はそうした点については取りまとめることができるのではないかということであります。
ただし、今のご報告の最後にもございましたが、さらに言えば論点の中には早急に検討して具体的な方向性を出すべき課題もあり、他方では制度全体を見据えながら中長期的に少し射程を広くして検討を重ねていく論点もあると。確かにこういう整理もありましたので、今後はそこいらあたりも少し留意しながら、当面急がれる課題について中心的に整理していく、そういうことも必要ではないかというふうに思います。
全体的に、進め方としては以上2点でございます。
それでは、個別のことを3点ほど申し上げたいと思います。
1つは対象事業の話でございます。対象事業の中に、どのような形で対象事業も組み込んでいくかということがございました。特に法的関与要件の扱いであるとか、あるいは交付金化の扱いでございます。これは、確かに国の関与がある事業を中心に構成するということで、そういうやり方が原則だろうなと思いますが、特に交付金の扱いについて、確かに現行法では法的関与要件として交付金というのはこの要件の範囲に含まれていない部分があると思います。そこで、実際に地方分権との関係で留意が必要だというご意見もありましたけれども、実際に現在各省において、どういう形で交付金が支給されて対象事業となっているのか、あるいはアセス法に該当するような大規模事業がどのような交付金の支給対象になっているのかということで、対象事業の実態であるとか、あるいは交付金支給の実績のようなものを調べて出していただけないかどうか、これが1点でございます。
それから、2つ目はまた別の論点ですが、地方との関わりの中で、政令市についてはアセス制度について独立したいわば審査体制をお持ちになっている。そこで、意見提出権限については、現行では政令市長は知事に出すという形になっておりますが、これを直接提出できる仕組みにしたらどうか、こういう議論も研究会の中で行われました。私は、そうした直接提出できる権限というのやはり妥当性があるのかなと考えます。これについては、自治体の側のヒアリングにおきましても、都道府県も含めて肯定的な意見が出ていると思いますので、前向きに検討してはどうだろうかということです。これが2点目です。
それから、個別の論点で3点目が事後調査のことであります。
これも、いろいろな議論が研究会の中で出まして、大変活発に意見交換はできたと思うんですが、事後調査を行うことで結局アセス手続の終了後に実際にどういう評価が行われて、その結果として一体どのような実態になっているか。その事後的にフォローするということは大変重要でありまして、アセス結果の実効性を確保するという点でも重要だと思います。これについては、ぜひ前向きに検討してほしいと思います。
あわせて、この事後調査について事業者が自主的に行っているというご意見もたしか事業者サイドから出たかと思いますので、法対象要件でこうした事後調査がどの程度行えたのか。その結果、事後調査をどのように活用されているのか。この点についての実績といいますか、実態を整理していただいたらどうかなと。これも要望ということになろうかと思います。
長くなって申し訳ございませんでしたけれども、意見を整理してまいりましたので、以上述べさせていただきました。ありがとうございます。
○浅野委員長 ありがとうございました。
ただいまの田中委員からご意見、あるいはご要望ということで出てきているので事務局にお尋ねしますが、まず最初のほうで言われた交付金の対象となっている事業がどんなもので、実績がどうなっているかということについては、これは資料を集め得る可能性がありますか。
○沼田課長補佐 交付金の所管官庁は多岐にわたっておりますので、環境省から各省に資料化の際には調査をかける必要も恐らくあります。次回すぐお示しできるかどうかはわかりませんが、資料の準備に向けて調査をしてみたいと思います。現行すぐにお示しできるものはございませんので。
○浅野委員長 それでは、これはご要望もありましたし必要なことだろうと思いますので、全部網羅的に調べることができるかどうかは別として、わかる限りデータを用意してください。
それからフォローアップについても、これもなかなか実態を把握するというのは難しいとも思うのですが、この点はどうですか。
○沼田課長補佐 事後調査につきましても予算事業等で、これまで一部の事例について調査というのは行っていますが、悉皆的な調査というのは行っておりません。今回、ご指摘いただいた点については、これも交付金と同様に事業者や関係者に調査をする必要はあるかと思いますが、ある程度全体像が調べ得るかどうか調査の上、資料として整理を検討してまいります。多少は時間がかかるかと思います。
○浅野委員長 わかりました。ちょっと難しいような気がします。
ただ、これまでの実績で、環境省が関与した国の調査については、事後調査が行われたような場合には環境省に報告が来る例があるのでしょうか、全く来ないのでしょうか。
○沼田課長補佐 資料でも先ほどご説明したとおり、基本的事項で事後調査の実施についてアセス図書に書くようにと、こういうことは書いておりますが、制度上、環境省にその報告が上がってくる仕組みはございませんので、そういったものについて公式にこれまで集めているデータはございません。
○浅野委員長 公式には集まらないとしても、非公式にも来ないわけですね、要するに。
○沼田課長補佐 それを調べるためには環境省が自前で調査を行う必要がございます。
○浅野委員長 条例等についての事案はどうでしょうか。
条例は明文で定めている場合があるので、幾つかちょっとサンプリングをして問い合わせをかければ条例に関してはわかるのではないか。前の総合研究会のときには実証的に検討せず、やや観念的に頭の中で考えて議論をしたという面があるので大変ですが。これも全部調べろというご意見ではなく、事例的にわかれば参考になるというご趣旨だと思いますので、可能な限り調査の努力をするということにさせていただきたいと思います。
それでは、どうぞ他の委員からご発言をいただきたいのでございますが、今日はやや欠席者多いのですけれども、欠席委員からの事前の書面でのコメントなどはいただけていますか。
○花岡課長 それはまだいただいておりません。確認はしておりましたけれども、まだ届いておりません。
○浅野委員長 それでは特に欠席委員からのこの段階での書面でのご意見はいただいておりませんので、比較的時間がございますから、時間制限などとは申しませんので存分にご発言をいただければ思いますが、石田委員からどうぞお願いいたします。
○石田委員 私もこの総合研究会に参加をさせていただいていましたが、今日は専門委員会の初回ですので、個別というよりも全般的なことで、議論に参加させていただくに当たって考えているところを順不同で幾つか述べさせていただきたいと思います。
まず、法制度の見直しを含めた議論ではありますけれども、先ほど来話題に上ってきていますように、10年間の中でいろいろ実績が出ているという面もございましょうから、言ってみれば堅持すべきポイントというような視点での、これは見直しを要すべきということと裏腹でございますけれども、実際に社会での実効性とか効果・効用、あるいはこのアセス法の理念の崇高性というとちょっと大げさでございますけれども、本来、制定当初から載っている、今後も堅持するべきポイントというような議論が、これは落としてはならないと考えております。
2点目は、もともと制度をつくったときにも課題としては内在していたはずのものが、いろんな社会の変容の中で顕在化してきたというような観点からの議論でございます。具体的には研究会の取りまとめの中にも出てきていましたような個別法で対処すべきような議論との仕分けといいますか、いわば仕分けの視点かと思いますけれども、地方分権の流れの中で国の責務と地方の分担というようなこともこのたぐいの議論の中で取り上げられるのかなと思います。
例えば、地方に委ねるという形での分権の推進ということももちろん重要でございますけれども、その委ねた行く末がうまく円滑に進むための国の責務というような、どうしてもそういう視点が落とされがちになりますので、そこはきちっと見据えていかなくてはならないと考えております。
それから、3点目は少し一般的な言い方になろうかと思いますが、時間軸をきちんと踏まえた戦略的視点といいますか、中長期的なものと短期的なものの仕分けに関する議論です。現状の社会の熟度に照らしてどの範囲を当面のハードルの高さにするかということと、そうした今回の見直しを含めた新しい要素のインプットにおいて、これから誘導していくべき少し上位の視点をどう玉込めしておくかというようなことが非常に重要なのではないかと思います。そうした視点で議論をすることが実際の社会にこのアセスがきちっと定着していくためにも重要ではないかと考えております。
ちょっと雑駁な申し方になりましたが、とりあえず以上のことを申し述べさせていただきます。
○浅野委員長 ありがとうございました。
それでは、猪野委員どうぞお願いいたします。
○猪野委員 まず最初に、この委員会に提出していただきました環境影響評価制度総合研究会報告書についてこの1年間にわたって検討していただいた浅野座長以下、ほかの委員の方や、また事務局の方々のご努力に対しまして敬意を表したいと思います。
それから、ただいま沼田さんのほうから説明がありましたように、研究会での検討の結果は両論併記というような形で書いてございます。中には両論併記以上の意見も幾つかあるようですが、実際に説明を受けて、なるほどそういうこともあるのかというようなことが非常にわかりやすくまとめられているというような気がいたしました。今後、これでまとめられた中身に対しまして、本委員会で見直すべきところが出てくるのか、そういう視点で議論をしていくと思いますけれども、その議論に当たりまして2つ申し上げたいと思っております。
まず1つ目は、いろいろ意見が出ておりましたけれども、実際に困っているものはどういうものなのかという点をもう少しはっきりさせることであります。要するに何が基本的な問題なのか、中心的なものをはっきりつかむことが非常に大事だと考えております。
2つ目として、今ちょうど低炭素社会に向かっているわけですが、今回の環境影響評価制度改正で少しでもそういう方向に役立てるものがあるのかどうか、考える必要があると思います。
1つ目の現行の環境影響評価制度は、事業者の計画に対して行政、地域の皆様、また専門家の方々のご意見が十分反映される仕組みとなっていると思っておりまして、その仕組みの中では事業計画の変更も十分可能であります。その意味では、本制度は全般的には機能していると思っております。
また、総合研究会の中では対象事業の拡大だとか、SEAの法制化等の新たな手続の提案もありましたけれども、何が課題なのか、いま一度明確にする必要があると思います。その上で、早期に取り組む必要があるのかどうか、まだまだ実施事例の積み重ねが必要なものであるか、それらも整理した上で本委員会として議論できればと思います。
特に、新たな手続を導入する場合には、民間事業者の過度な負担を招きかねないために、特に慎重な議論が必要ではないかと思っております。
それから、対象事業の拡大につきましては、早期に取り組む必要があるのか否かの観点からも検討されるべきであって、また法アセスの対象はナショナルミニマムという考え方から、地域特性を有する事業については地方での対応でもよいのではないかと考えております。
また、SEAにつきましては、事例の積み重ねがまだ少ない段階であり、法制化するには少し時期尚早ではないかと思っております。さらに、国の事業と民間事業とでは事業計画の考え方が違っておりますので、その辺の考慮も必要ではないかと思っております。つまり、民間事業者においては、SEAの手続の際に事業戦略に関わる重要情報については開示することが難しく、これも今、先ほどの報告書の意見の中にもございましたけれども、民間事業者に一律にそういう手続を課すことには問題があるのではないかと思っております。
最後に低炭素化の方向で、例えば火力発電所のリプレースの話もこの中に載っておりましたが、リプレースの場合には現状非悪化ということも踏まえて、少しでも早目に新しいものを建設できるよう、その為の手続を簡略化できるかといった観点も必要ではないかと思っております。今後検討に当たって、以上の点も踏まえて議論ができればと思っております。
以上でございます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
それでは、大塚委員お願いいたします。
○大塚委員 私もこの総合研究会に属させていただきましたので、そこで議論に参加させていただきましたけれども、まず全体的に先ほど田中委員もおっしゃいましたけれども、論点は概ね出尽くしているのではないかと考えておりまして、それを今後の検討に使っていけるものが題材としては出てきているというふうに考えてよろしいと思っております。
その上で、これも田中委員が先ほどおっしゃったことですが、早急に取り組むべき課題と中長期的に取り組むべき課題と恐らく2種類に分かれると思いますので、今回の検討会におきましても、どちらの問題なのかということを常に配慮しながら議論していく必要があるのではないかと考えております。
個別の点でございますけれども、幾つか細かい話をしていきたいと思いますが、まず主に4点申し上げて、あとちょっと細かい話をさせていただきます。
まず、スコーピングについてでございますけれども、これは住民とその事業者さんとの間のコミュニケーションを図るという点で非常に重要な柱の一つであると考えられるものだと思います。そこで、報告書の中である程度方向性が出ているのではないかというふうに私は考えていますけれども、1つは、方法書段階での説明会の開催という問題がございます。これは、場合によっては事業者さんに若干負担になる可能性はないわけではないですが、かなり専門的な資料が大部のものが出てきているということもございまして、読んでもわからないということは往々にしてあると思いますので、説明会の開催というのはぜひ検討していただいたほうがいいのではないか、規定を入れることを考えたほうがいいのではないかということがございます。
それからもう一つ、アセスの図書の縦覧の電子化の問題がございまして、こちらはほとんど方向性としては出ているのではないかと思いますけれども、これも実際にアセス図書を多くの人が見られるように、あるいは簡易に見られるようになるという点で重要な課題であると思います。これもちょっと事務局にこの点についてお願いしたいんですけれども、ただ、アセスの図書の縦覧の電子化に関しては、情報面で情報の安全管理という点から若干の問題が指摘されていたかと思います。特に、事業者さんからそういう問題が出てきていたと思いますので、ただ既に電子化は行っている例もあるようなので、実際にそういう場合にどういうふうに行っているのか、あるいは事業者さんにおいて何か問題がもしかしてあるのかどうかとか、そういうことをご調査いただけるとありがたいと思っております。
それから2つ目でございますけれども、国の関与につきまして一部、特に公有水面埋立の関係でございますけれども、環境大臣の関与がなくなってしまった例があるということがございますけれども、これにつきましては地方分権に関して配慮するということはぜひとも必要なことでございますけれども、他方でこの間の総合研究会においても、こういう場合に環境大臣の関与を認めるということに関して否定的な意見はなかったということもございますし、実際に環境大臣の意見がないことが問題だというふうにされた例もあって、地方自治体にアンケートをとったところ、そういうものを入れてほしいということが出ているようですので、この点に関する環境大臣の関与というのはぜひ進めていっていただいたほうがいいのではないかと思っています。
自治体が行う事業であるということと、環境大臣に意見を言ってもらうということは全然別のことでございますし、知事が免許権を持っているということと公益的な環境影響の観点から環境大臣が意見を言うということは全然別のことで、両立し得ることでございますので、ぜひこの点に関しては積極的に対応していただけるとよろしいと思います。
それから第3点でございますけれども、訴訟に関して最後のほうに、先ほどお話しいただいていますけれども、これは重要な課題でございますので、幾つかの課題は指摘されてはいますけれども、重要な論点としてぜひ検討を進めていきたいと思います。しっかり対応していきたいと考えています。
先ほどご説明がございましたように、個人とか団体として意見を言った人について法律上の利益を考えるという考え方と、それから意見を言っているとか言わないとかということとは関係なしに、団体訴訟を認めていくという考え方と恐らく2つあり得ると思いますけれども、どちらでも構わないと思いますが、訴訟に関して何らかの突破口が開けるような検討は進めたほうがいいのではないかと思っています。
それから4つ目でございますが、SEAに関しては重要な課題だとこれも考えています。これについては、特に先ほどご説明がありましたように、SEAを進めていくときに、それが後で事業アセスのほうの手続にどういうふうに活用されるかということが重要なポイントだと思いますので、ティアリングの問題でございますけれども、現在のガイドラインを進めていくという上でもティアリングの問題を実際に行えるようにしないと、SEAを行うインセンティブというのがあまり働かないという問題がございますので、ティアリングについて特に検討する必要があるのではないかと考えております。
細かい点として、あと田中委員が先ほどおっしゃったことに若干追加的に私の意見を申し上げますが、まず、交付金化しているものに関して国のアセスの対象にするかどうかという点ですが、これは確かに国の関与は補助金のときよりは減っているということにはなると思いますけれども、他方で国のアセスの対象を減らすことが望ましいのかという問題もあると思いますので、そういうことも考えたときに、国が何らかの関与をしていれば、別に補助金ほどの関与ではないということではあると思いますが、交付金ぐらいの関与でも構わないという考え方は十分に成り立つのではないかと思います。
それから、事後調査につきましては、先ほどもご説明がありましたけれども、これは実際に幾つかの例で最初にアセスをしていたときの予測と、実際にその事業を行った後、開発とかを行った後での環境影響とが実は大分変わってしまったという例は少なくないようでございます。そういうことを考えると、何らかの対応はやはりする必要があるというふうに思われますので、しかも事後調査を行うということに関して事業者さんに何かのインセンティブを与えないと、あまりやりたくはないという方が多いのではないかと思いますので、そういう観点から許認可の条件として、附款として事後調査を行うという方向性というのはあるべき一つの方向性ではないかと考えています。
最後にもう一つですが、許認可の判断のときにアセスの結果を反映していただくというのは、もともとアセス法の大きな柱なんですけれども、そこを実効性あらしめるために、許認可をするときに環境への影響を配慮して許認可をしたということに関して、理由をつけていただくということとか、あるいは33条に言う環境保全への配慮と、それからほかの公益との比較衡量について経緯を公表していただくというようなことは、この法律の最も重要な柱であるアセスの結果の許認可への反映ということを実効あらしめるためにも非常に重要なことではないかと考えております。
以上でございます。
○浅野委員長 ありがとうございました。
それでは、吉田委員どうぞお願いいたします。
○吉田委員 吉田でございます。私はこの研究会には属しておりませんで、今回から参加させていただきました。
1つは生物多様性条約の中でも環境影響評価ということがうたわれておりますし、また生物多様性基本法の中でも戦略的アセスを推進するということを通じて生物多様性の保全ということがうたわれているわけでございますので、そういったことに今回のこの検討、それに続く法改正というようなものが資するものになるかという視点。
それからもう一つは、私自身日本自然保護協会というNGOの出身でございまして、現在もその理事をしているということから、この環境影響評価が住民とのコミュニケーションの手段となっているか、単に影響を予測評価するというだけではなくて環境アセスメントという制度を通じてコミュニケーションを深めていくという目的があると思いますので、そういったものに資するものになるかと。その主に2つの側面から申し上げたいと思います。
まず、後者のほうから申し上げますと、この資料7の16ページにスコーピングの段階の方法書段階の説明の充実についてということがございます。住民からすると、この方法書段階というのが初めて事業について詳しく知る機会でもございます。調査の方法について意見を言うというのは専門的になかなか難しい面もあるのですが、初めて環境影響評価のプロセスに参加するという重要な局面でもありますので、方法書段階での説明会を義務化するということはぜひ入れたほうがいいのではないかと思います。
また、電子化というものについては、これはもう当然なんじゃないかと思います。21ページに電子化というのがあり、報告書の中でも幾つかの問題点をクリアしながらなるべく進めるということかと思います。全国どこからでも意見を言えるということを考えると、当然ではないかと思います。
それから、22ページ、23ページに情報交流ということで、コミュニケーションということに関しては重要なことが書いてあります。1つは方法書で意見を言ったときにそれがどう反映されたのか。反映されるにしても、反映されないにしても、それがわかるのが準備書段階であるというのはあまりにも遅過ぎる。環境影響評価法ができて、その先駆けとして前倒しでやった愛知万博のアセスのときも、実際の準備書が出る2週間前ぐらいには方法書に対する意見の反映方法について回答はありましたが、あまりにも遅過ぎるため、方法書に対して意見を言う人がだんだん少なくなっていってしまう原因の一つではないかと思います。そういった面では、方法書に対する意見への回答というのは早目にしていただくということが必要かと思います。
また、公聴会等についての意見聴取の機会ということがありますが、これも非常に大事なことです。地方自治体の審議会においては公聴会などをやって、関係する専門家の方などの意見も聞いております。審議会の委員の方がカバーできる専門的な範囲というのはすべてではありませんので、そういった面からすると、こういう公聴会を設けるということは非常に大事ではないかと思います。
最後に、27ページの不服申立・訴訟手続に関することで、これに関しては少し慎重な書き方がしてございます。一方で、私は環境影響評価法ができて、それほどひどい運用が行われることはないというふうには思っていたのですが、実際には、例えば私がいろいろ意見申し上げている辺野古における普天間飛行場の移設に関するアセスメントに関しては方法書の開示などについても、住民参加という面では問題があり、現在、訴訟なども起こされているわけです。最終的な手段として住民が意見を言える、市民団体が意見を言えるという手続としてやはりきちっと検討すべきであると思っております。
次に、生物多様性保全上、もちろん環境影響評価は生物多様性保全上だけの問題ではないということは重々存じておりますけれども、特に生物多様性保全上の点で申し上げると、重要なのは、この地球規模あるいは日本という規模での広域的な視点で生物多様性保全にこの環境影響評価をやった結果がつながっていくのかというのが、実質的な観点として非常に重要だと思います。
そういった面で、広域的な観点で判断がされるということが非常に重要です。例えば13ページの対象事業のところでいきますと、二種事業についてどうするかということもございます。生物多様性保全という観点を考えますと、全国規模で少なくなっているような生態系で行われる事業などについては、全国一律75%とかそういう問題ではなく、そういった重要な生態系で行われる事業は必ず環境影響評価をやるという判断も必要ではないかと思います。
たとえば、干潟生態系は8万ヘクタールもあったものが戦後40%もなくなってしまって、非常に重要な生態系ですが、必ずしも自然公園などでカバーされているわけではない。そういった生態系で行われる事業についてはきちっと環境影響評価をやるべきですが、公有水面埋立法に関しては許認可権限が国から都道府県に行ったために大臣の意見が言えなくなってしまう、こういった問題についてきちっと対処していくべきではないかと思っております。そういった重要な生態系については、環境大臣がきちっと意見を言えるということも非常に大事なことだとだと考えます。
また、19ページで事後調査のことがございますけれども、事後調査というのはまずは環境保全措置というのを考えて、それに対応するように事後調査をやっていくということだと思います。現在、個別の事業を行うことによる影響、要するにマイナスになるのをゼロにするというのが環境保全措置の目標になっていると思いますが、これでは今後の生物多様性の保全回復もできない。新生物多様性国家戦略のときまでは、これ以上生物多様性の損失というものを起こさないというのが目標だったわけですけれども、第三次生物多様性国家戦略では、生態系のネットワーク化というのが目標に掲げられました。そうすると、環境影響評価における環境保全措置の目標も、マイナスをゼロにするというものではなく、ゼロをさらにプラスにしていくという目標が掲げられてしかるべきだと思います。これはなかなか難しいことです。例えば猛禽類の東日本と西日本の結節点にあるようなところだったら、そこで切ってしまったらまずいわけで、それをつなげていくという視点で考えなくちゃいけない。そのような視点で保全措置をとり、モニタリングをしていくといった視点が重要なんじゃないかなと思います。
そう考えると、単に現在ある知見でそこで行った調査に基づく知見だけで判断するのではなくて、環境省を初めたくさんの省庁が持っている国土の生物多様性情報というものに基づいて、戦略的アセスの計画段階で判断していくということが絶対必要だと感じております。
ちょっとまだ抜けているところがあるかもしれませんけれども、大体以上でございます。
○浅野委員長 ありがとうございました。
今日、ご出席いただいた委員からは一わたりご意見をいただけましたが、さらに他の委員のご発言を聞いておられて何かありますでしょうか。
猪野委員いかがでしょうか。
○猪野委員 まだいろいろ高所から見るのと、もうは一方の現実に現場で事業をやるところの実際の感覚と、やはりその辺りに距離があるのかもしれません。それをこういう委員会の中で、縮めていく必要があると思っております。
その意味で、これまでに開発されてきた事業に対して本当に問題があったのかどうか、仮にあったとすれば、どういうところが問題だったのか、少し過去の事例をひもといて、ここはあまりうまくいかなかったとか、本当に問題の数が多いのかも含めてぜひ調べられて参考にする必要があるのではないかと思っております。
○浅野委員長 ありがとうございました。
石田委員はいかがですか。
○石田委員 特に賛成とか反対とかいうことじゃなくて、今、吉田委員がおっしゃったことに関連する意見です。環境影響評価の法律の枠の中で特に生物多様性などは象徴的だと思うのですが、なかなか効果が出るのに時間がかかる問題は2つの視点でとらえたときに、再生したり増進したりというようなことと、それから吉田委員の言葉をおかりすれば、マイナスをゼロにするというような言い方に分かれると思うのです。
マイナスをゼロにすることによって自然が再生していく速度に応じて本来の環境が復元していけるというようなこと、そういう点で環境影響評価法が規制すべき意味が大きいと思うのですが、それは法律の世界で何らかのアクションを起こしても効果が出るまでに非常に時間がかかりますので、それをもって法律の制度、規制が不十分だというふうに短絡することは、他の要素と横並びにしたときに非常にアンバランスが生じると思います。ですから、そこの視点というのはなかなか難しい問題で、定量的に評価した効果が簡単に出るものと長期的にしか出ないものが存在しますので、最小限破壊をゼロにするというようなことの意味というのをしっかりとらえなきゃいけないと思います。
○浅野委員長 これから少し議論をしていかなくてはいけないこともいろいろあるわけですが、今日のご欠席の委員からご発言をいただけなかったので、まだまだほかの立場からのご意見もあるかもしれません。しかし、伺っておりまして、まず、総合研究会報告書では最後の部分で全部一度に実現するということが無理かもしれない。つまり、構造的な問題をきちっと解決しないと、なかなか一度には解決できない問題もあるが、さはさりながら今すぐやろうと思えばできることもあるのではないですか。それには早急に取り組むべきではないでしょうかという言い方をしているわけです。この点については、今日の専門委員会の段階でのご意見でもほぼ同様なことがご意見としては出ていると考えました。
ですから、全部の問題を一律・一度に扱うというよりは、すぐできることと少しさかのぼって考えてどうしたらいいかというような問題とを今後少し仕分けをしながら議論をしていくとをしていくことが必要ではないか。あるいは、報告書に沿って議論するにしても、この部分は今の仕分けでいえばどちらのグループに属する議論なのかという点を明確にしながら議論をしていきたいと思います。そうしませんと議論が輻輳してしまうというおそれがあるような気がします。
その上で、さっき田中委員からも調べてほしいというご要望がありました。これはなかなか難しい要求をいただいたと思うのですが、頑張っていただき事務局でできるだけの具体的な資料を出していただきたい。
それから猪野委員からも、これまで一体どこが本当に困った課題なのかを明らかにする必要があるというご意見がありました。困ったというときには実は2通りあるわけですね。つまり、猪野委員のお立場のように事業者の立場で困るということが一杯ありますし、それから他方ではそうじゃない環境にご関心がある団体や環境部局の立場でこれは困ったということがあって、困ったというときにはこの2通りの種類があるわけです。これらの困ったという問題を両方の立場からお出しいただいて総合研究会での議論をしてきたつもりでおりますが、困ったということについては両方の立場でどこがどう足りないんだということを、もう一度ひょっとすると整理をしてみなきゃいけないかもしれませんので、この点も最終報告では、研究会報告書ありきという形での報告をまとめてもそれでは説得力がありませんので、もう一回考えてみる必要があるだろうと思いました。
そこで、田中委員から言われた2つの点に加えて、大塚委員からのご意見、ご指摘、確かにそうかなというふうに思ったんですが、電子化については常識だよということがかなり研究会でも出てきたんですが、しかし他方では問題があるんじゃないかということがありますから、これは既に先行事例がありますので、少し自治体からのヒアリングなり聞き取りをやってみて本当に困った問題がなかったか、あるいは事業者の立場で自治体がやっておられる電子化という手続で実際におやりになったときに困ったことがあったかどうか。あるいは、センシティブな貴重種の所在場所についてあまり出したくないというような場合、書面で扱っているものと電子媒体にする場合とで何か差を設けるというようなことが実例としてあるのか、あるいはそれはどういう問題があるのかとか、いろいろと考えてみなくてはいけない問題がありそうな気がします。
なお、方法書や準備書を開示するときに電子化するということと同時に意見のやりとりについても電子化ということが言われてはいるわけですが、これについては研究会報告でも、準備書、方法書の電子化に比べるとやや慎重であってもいいというようなことがあって、つまり着いた、着かないというようなトラブルが起こったときにどうするんだろうかと。あるいは、情報の漏えいといいますか、個人情報が漏れてしまうというようなことをどう防ぐのかとかと議論がありましたから、この辺についても可能な限り、少し実際に問題がなかったかどうかということを調べてみる必要があるかもしれません。ここら辺は短い時間で大変きびしいことではございますけれども、事務局としては頑張って調べていただければと思います。
その上で、やはり今日、大塚委員のご意見の中でも出ましたように、根本的に許認可要件ということを頭にかぶせているのは、それがアセスの実効性担保のためには最も効率的であるということがあるからだという考え方でこれまで来ているわけですが、その枠の中で考えたとしても、なおかつ交付金化というときに環境大臣が意見を述べることが許認可権者の権限の侵害に当たるわけでもないんだというような新しい指摘は、研究会段階で出てこなかったことですから、もう一遍よく考えさせていただかなくてはいけないと思いましたし、それから公有水面埋立に関しても、それを取り入れるという場合に、許認可権限の問題ということと別の形でこれをきちんと説明できるかどうかという議論があるだろうと思います。
加えてもう一つは、条例ではそもそも許認可要件とは無関係にアセスをかませているということは事実で、それ自体が条例の本質みたいなものですから、アセス法は再度そちらのほうに目を向けてみて取り入れる余地があるのかどうかということを、研究会では十分時間がなかったので議論していません。しかし、これは少し中長期というようなことも含めて考えてみて、もしそれを入れるとすると、法の構造そのものの抜本的な見直しということになりますから簡単にはいかないと思いますが、やはり考えておかないと将来的な枠組みの拡大というのが非常に難しいとか、新規のプログラムが出てきた場合に、それを取り入れるのが非常にやりづらくなるということがありますから、この際議論をしておく必要があろうかと思いました。
また、生物多様性に関しては、吉田委員からのご指摘は、今まであまりなかったポイントを突いておられたご指摘だと思いますので、少し記録をもう一度起こしてみて考えさせていただきたいと思います。何となく従来型のアセスのフレームの中にいきなり生物多様性の保全の観点を入れるという認識で議論をやり過ぎていましたが、ちょっと違うなというふうに思ったのは、実際にアセスをやっている場合に、今の事業アセスメントというのは影響範囲のとらえ方が非常に狭いという現実があります。予算の問題もある、人員の問題もある、情報の問題もあるといういろんなことがあってやむを得ないといえばやむを得ないのですけれども、でも実際にはたかだか何ヘクタールかの事業予定地にいる生き物というのは自由に飛び回っているのに、自由に飛び回ってところで全く無視して、何ヘクタールかの事業予定地の中だけの挙動を見て、良い悪いという議論をやる傾向があるわけですね。そうすると、これは事業者にそこまで全部負担を負わせることがいいかどうかは別として、動き回っているものについてきちんとそれが評価できる仕組みがないと、本来のアセスになっていないということは現場ではもうずっと前から気がついてきているわけです。
そうすると、これはアセスの制度とかシステムそのもののもう少し補助的なシステムのようなものを入れておくとか、あるいは吉田委員が言われるように、やっぱり国全体の立場から広域的な見地からの評価というものがどこかでできるような仕組みがなきゃいけない。それは事業者や自治体だけではできないというようなことがあった場合に、どこまで国がその意味での関与をしてサポートをするのかということは、新しい論点としてはあり得るなと思ったわけです。
ですから、そういうような目で見ていくと、生物多様性の基本法で言っている宿題に対して、アセス法の枠にこだわらないで答えを書いていくという余地がありますから、そのことについても良く考えてみて、我々の専門委員会の報告の中で答えが完全に出るかどうかは別としても、頭出しぐらいのことはできるかもしれないと思いました。この辺はまた改めて今後の専門委員会を進めていく中で吉田委員にも知恵をおかしいただいて考えてみようとえてみてはどうか。あるいは、そういうやや事業予定地を越える広域的な生き物の動きについて、これまでのアセスの中でどのぐらい実際にうまくそういうものが評価できてきたのかということは、吉田委員の団体も情報を持っておられると思うので、その辺の情報を少しいただきながら考えることができるかなと思った次第です。
というわけで、今日は第1ラウンドでしたから、ある程度ご自由にご意見をいただくということで、大変貴重なご意見をいただくことができました。これを十分整理をした上で、第2回目以降の議論の論点の整理をしていきたいと思いますが、事務局として何か特に今日専門委員の先生方にさらに何か聞いておきたいということがありますか。よろしいですか。
それでは、予定の時間あと10分ありますが、この際、特に何かまだご意見ございますでしょうか。吉田委員いかがですか。
○吉田委員 先ほどの生物多様性との関連については、少し舌足らずだったところもありますが、例えば生態系のネットワーク化との関連ということで申し上げると、戦略的アセスをやればある程度わかってくることですが、広い地域の中でその場所はどうしても野生生物の移動とかそういったことを考えると、あいにく一番都合が悪いところだというような場合には、そういった視点の段階で戦略的アセスで回避するというやり方もあるでしょう。環境保全措置をとるときに、生物多様性オフセットとか、HEP(ハビタット評価手続)によって評価しミティゲーションバンキングによって代償措置をするということが果たしていいことかということはいろいろ議論はあるかと思いますが、場合によってはそれをやることで、つながっていない棲息地がうまくつながる可能性もあるわけです。そういった視点を戦略的アセスにも、あるいは事業アセスの中の環境保全措置や事後調査にも取り入れていくべきではないかなと思ってお話しした次第です。
○浅野委員長 ありがとうございます。
事後調査についても、さっき言い忘れましたが、何となく事後調査、事後調査という抽象的な議論だけがひとり歩きしている面もあるのですが、保全措置を講じると準備書、評価書に書いておいて、その保全措置が本当に実効性があるものであったかどうかを追いかけていくということは、評価書の枠内の事項ということになり得るわけですから、そういう意味で事後調査は全く独立の新しい手続だと言わないで、現行法の手続の中にはめ込むという余地がどこかありそうな気がいたします。
ですから、このあたりも一度今までの基本的考え方や各省のマニュアルなんかももう一回精査した上で、どこまで入り得るのかとか、どこは少し立法的に手をつけておかなきゃいけないのかというような議論ができるかもしれませんので、この辺も少し勉強してみる必要があるのかと思いました。ありがとうございます。
大塚委員、いかがですか。
○大塚委員 既に座長に非常に立派にまとめていただきましたのでないんですが、1点だけ、今の生物多様性オフセットとか、移植というのはミティゲーションの話だと思いますが、それに関して思ったのは、アメリカの制度にはオフセットの話とか、ミティゲーションバンキングというものもあります。そこまで議論がいくのかどうかわかりませんが、ミティゲーションに関して今基本的事項である程度定めていると思いますが、もう少し深掘りをする可能性を検討する必要があると考えております。
○浅野委員長 ありがとうございます。
では、ほかによろしゅうございましょうか。
では、今日の議題の2については以上で終わらせていただきまして、その次の議題3、その他について事務局から説明をお願いいたします。
○沼田課長補佐 次回以降の専門委員会の日程でございますが、委員各位には既にご連絡をしていますとおり、次回第2回は10月15日木曜日15時から17時、さらにその次の第3回は10月28日水曜日の15時から17時を予定しております。場所に関しましては、事務局から改めて後日ご連絡をいたします。よろしくお願いします。
○浅野委員長 では、次回、次々回もよろしくお願いいたします。
最後に白石局長からごあいさつをいただきます。よろしくお願いします。
○白石局長 お時間いただきましてありがとうございます。
冒頭、次官からごあいさつ申し上げましたとおり、10年目の節目ということで、アセスメント法の施行状況、今後の制度のあり方、いろいろご検討いただければと思っております。
今、いろいろご指示、ご指摘いただきましたデータ、あるいは現場の声を聞くためのヒアリング等々いろいろな作業というのをできる限りのことを委員長のご指導のもとでやらせていただきたいと思います。
委員長のほうでうまくまとめてもいただきましたけれども、私が伺っておりましてもいろいろなキーワード、例えば国と地方の役割分担のあり方であるとか、あるいは現場における実行可能性をよく踏まえるべきであるという話、それから生物多様性との関係、さらには当面のゴールイメージと将来の方向性の玉込めと、すぐにやれることと将来のことを考えることと2つに分けてという別のおっしゃり方もありましたけれども、いろいろなキーワードありまして、これからも精力的なご議論を重ねていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。事務局としても頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくご指導ください。
以上でございます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
では、本日はこれで専門委員会を終わらせていただきます。どうも長時間ご協力いただきましてありがとうございました。
午後 2時57分 閉会