中央環境審議会総合政策部会 環境研究技術専門委員会(第5回)会議録

日時

平成13年12月21日(金)午前10時00分~午後12時00分

場所

経済産業省別館9階 944号会議室

出席者

鈴木  継美  委員長
浅野  直人  委員
藤田  正憲  臨時委員
三橋  規宏  臨時委員
安井  至  臨時委員
秋元  肇  専門委員
浦野  紘平  専門委員
大聖  泰弘  専門委員
柘植  綾夫  専門委員
平田  賢  専門委員
森本  幸裕  専門委員
山田  一郎  専門委員
鷲谷  いづみ  専門委員
     
     
三浦  慎悟  臨時委員
村上  忠行  臨時委員
     
井口  泰泉  専門委員
小林  康彦  専門委員
 秀樹  専門委員
西岡  秀三  専門委員
水戸部  啓一  専門委員
安岡  善文  専門委員
吉川  賢  専門委員

中川 総合環境政策局長
青山 総合環境政策局総務課長
木村 環境研究技術室調整専門官

山田 大臣官房審議官
松井 総政局環境研究技術室長

議題

  1. (1)専門委員会報告(案)について
  2. (2)環境研究・環境技術開発の重点化・戦略化に係る今後の検討について

配付資料

資料1   中央環境審議会総合政策部会環境研究技術専門委員会委員名簿
資料2   第4回環境研究技術専門委員会、第2回総合政策部会における主な意見 
資料3   第4回環境研究技術専門委員会、第2回総合政策部会における主な意見
資料4   環境研究・環境技術開発の重点的・戦略的推進方策について(案)(見え消し版)
資料5   環境研究・環境技術開発の重点化、戦略化について(検討メモ)
参考資料1   環境研究・環境技術開発の重点的・戦略的推進方策に関する中間報告 
参考資料2
 
  環境省の科学技術関係予算主要事項の内示状況(速報値)
 

議事

【松井環境研究技術室長】 それでは定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会総合政策部会の第5回の環境研究技術専門委員会を開催いたします。
 昨日、初めての財務省の原案の内示がございまして、その関係で、局長以下、きょうは自民党の環境部会に出ております。そういうこともございまして、早速もう議事に入らさせいただきたいと思いますが、その前にお手元の配付資料の確認をお願いいたします。
 まず、議事次第が1枚紙になっておりますが、この中に資料1と資料2、それから資料5と参考資料の2が入っております。別とじになっておりまして、資料の3と4。それから、前回もお配りしてございますが中間報告、黄色いものでございますけれども、印刷されているもの。それとあと、先生方のお手元に前回の会議録がございます。これにつきましては、お持ち帰りいただきまして、ご発言のところを中心に見ていただきまして、何か修正すべき点がございましたら、事務局の方に言っていただきたいと考えております。
 それでは、鈴木先生、よろしくお願いいたします。

【鈴木委員長】 それでは、早速議事に入りたいと思います。
 前回、活発なご議論をいただきまして、大分事務局、苦労して、なお慌ただしく作業をしたようですが、どこまで進みましたかということも受けて、最初の議題は専門委員会報告(案)についてであります。
 事務局、どうぞ。

【松井環境研究技術室長】 それでは、議題に入ります前に、議事次第のとじてあります一番後ろをごらんいただきたいと思いますが、速報ということで環境省の環境研究技術開発絡み科学技術関係の予算の内示状況でございます。要求額が310億円でございましたが、内示額が306億円となっています。ただ括弧のところで、科学技術振興費でございますが、210億だったものが214億と増額査定という形になっております。もちろんこれは改要求ということで増額要求になるわけでございますが、この辺につきましては補正で浮いたすき間分を積み上げていただいたと。当初、私ども今回中環審でありますとか総合科学技術会議でいろいろ努力して、先生方のご指導もいただきながら努力したわけでございますが、残念ながら予算要求の段階では余りうまくいっていなかったと。そういう面で費用対効果といいますか、努力対効果でいいますと、ことしの予算は余りうまくいっていなかったわけでございますけれども、最後の段階になりまして、環境省の内部、会計課も含め、また財務省もそれなりのところでつけていただいたということで、このような数字になっているところでございます。
 それでは、早速議題1の部分に移りたいと思いますが、資料の2を、3ページでございますがごらんいただきたいと思います。
 先ほど鈴木先生からもお話がございましたように、前回の意見では先生方からいろんなご意見をちょうだいいたしました。それをここに書いているわけでございますが、紹介させていただきますと、まず一番最初でございますけれども、総合科学技術会議の「分野別推進戦略」を受けて、重点化プログラムを見直し、報告書本体に収録する。6月の段階で中間報告をまとめ、9月に分野別推進戦略ができたと。そうしますと、時間的な役割からしてもキャッチボールとすれば投げ返すべきではないかと、そういうご意見だったかと思います。
 それから二つ目でございますが、環境研究、環境技術開発というのは、まずニーズから始まっている。政策サイドから何を目指すために、何を研究しなければならないかという発想で重点化を図る。そのようなご指摘をいただいています。
 また、21世紀型の環境問題の解決のためには、市民社会に環境情報を十分提供して、それを受けた市民からの意志といいますか、市民のニーズ等を汲み上げる必要がある。そのための取組を進めるというようなご意見でございます。
 その次でございますが、これは分野横断につきまして私どもの方から示したものでございますけれども、その中の「相互に密接な関係のある問題事象への取組」、これは既に他のところで取り組んであるところであり、あえてやる必要もないのではないかというようなご意見だったと思います。
 また、次のものでございますが、アジアという特定の地域。そこを取り上げてやるという視点もあるのではないかという指摘でございます。
 次は重点課題の部分。これは日本にとって、我が国にとって重要な環境問題に目が向き過ぎている。国際貢献という立場からの重要な課題もあるのではないかというご指摘でございます。
 それから、研究課題の成果をビジネスに結びつける取組、技術の普及のための取組が重要というご指摘をいただいております。
 それから、分野横断、それから総合的な取り組みの私どもから提出させていただいたペーパーでございますが、これが課題の羅列になっていた。そういうものではなくて、社会的要請とそれに対する取組状況のレビューを実施して、ニーズがありながら研究開発が進んでいない分野を明らかにして、ギャップを埋めていくのが必要である、と。
 それから中間報告と、これは分野別推進戦略も含めてのご指摘かと思いますが、やや書き過ぎかなという、もうちょっと整理して書くべきではないかというご指摘をいただいております。
 あと、モニタリング、予測、ライフスタイル等の個別研究を総合化するものが必要であるというようなご意見もあります。
 次に、これも同じあれですが、大きな流れとしてどういうことが必要かをまず明らかにして、それに従って課題を整理する。私どものお示しした総合的な課題、分野横断的なものの案。特にアセスメントのところ等でございますけれども、課題が細か過ぎたというご指摘でございました。その次も同じでございます。
 以上が前回の第4回環境研究技術専門委員会で先生方からいただいたご指摘でございます。
 その後、第2回の総合政策部会が開かれまして、今回中間報告を報告させていただいたわけでございます。ただ、他にも議題がいっぱいありまして、これについては十分な時間をとることができませんでした。それでも、何人かの先生からご指摘をいただいております。
 それを紹介させていただきますが、2のところでございますけれども、研究費は競争的資金の倍増というようなことが総合科学技術会議でもうたっているわけでございますが、モニタリングも含めた基盤的なものへの予算の確保も必要である、と。
 それから、これは専門委員会でも森嶌先生を初めご指摘をいただいたわけでございますが、学際的、人文社会の研究が必要だといいながら、実際の研究課題のところに余りにそれが少ないのではないか、薄いのではないかというようなご指摘をいただいております。 また、技術の開発の主体というのは民間の企業であるので、その民間の企業が技術開発を行うインセンティブを考えるべきであると。そのようなことが書かれていないのではないかというご指摘をいただきました。
 また、「環境学」といったような、「環境学」の確立というようなことを視野に置いて、この専門委員会で検討をしているのでしょうかと、そのような質問をいただいております。
 以上が前回の総合政策部会における意見でございました。
 それでは、早速専門委員会の報告の中身に入らさせていただきたいと思います。
 前回の専門委員会での先生方のご意見と部会での先生方のご意見を踏まえて、事務局として直したものでございますが、まず資料の4をごらんいただきたいと思います。
 これは、中間報告の見え消しバージョンになっておりまして、どの程度いじったかということがこれを見ていただくとわかるかと思いますが、この中でめくっていただきまして「はじめに」の部分。これは事情が変わっておりますので、そういうことを踏まえて書き直したところでございます。
 あと1章の部分。これは環境研究・環境技術開発の性格及び方向性ということでうたっておりましたが、ここのところを目的、役割、方向性ということで、前回の専門委員会の先生方の意見の中でも、前の1章で取り込むようなことがかなり多かったと考えております。そういったものを書き込むということで入れ込んだことと、あと整理をさせていただきまして書きぶりを直したということ。それと1章、2章の出入れを少ししておりまして、一部2章の方に持っていったものもございます。反面、2章から1章に持ってきたものもございますが、そういうわけで1章につきましてはかなり記述を変えております。訂正、修正を加えております。一方、2章の方でございますけれども、1章、2章の出入りということで、1章の方に移ったものと、逆に1章から2章に移ってきたものがございますが、基本的には第2章の部分はそれほど直しておりません。事情の変更等がございまして直さなければいけない部分等は変えておりますが、それ以外は特に大きな変更がございません。
 それから、第3章でございますが、前回の専門委員会で、中間報告の第3章については参考という形で載せたいと、そのように申し上げたところでございますが、それに対して先生方から第3章をきっちりとそのまま残すべきであると、そのようなご意見もいただいておりまして、今回お示しした案では、中間報告の内容に、先ほど部会においても人文社会科学系のものをもっと取り込むというようなご意見がございました。それについてまだ十分には書き込めてはいないかと思いますが、そういった観点から加えております。
 ただ、例えば分野別推進戦略の中で、地球的規模の水循環、そういったものあるわけでございますが、そこは残念ながらといいますか、時間的な問題もございましてまだできておりません。そういうわけで、基本的には、第3章の重点化プログラムにつきましては中間報告に修正を加えた内容にとどまっております。
 ざっとそのようなことでございますが、細かい内容につきましては木村専門官の方から説明をいたします。

【鈴木委員長】 木村さん、どうぞ。

【木村専門官】 それでは、主な変更点につきまして、私の方からご説明させていただきたいと思います。資料の3の方をごらんください。
 まず、「はじめに」のところでございますけれども、ここにつきましてはまず最初のところで何を目指すために、環境研究、環境技術開発をやるのかということで、「大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会」から、「持続可能な簡素で質を重視し、地球と共生する社会」へと経済社会システムの転換をしていく、と。そのために新たな価値観とライフスタイルを構築してその定着を図る。
 それから、環境に関する情報を整備しまして、それをわかりやすく国民に伝える。それから、新しい社会の基盤を支える技術を開発する。それを普及する。そのようなことを書き加えております。
 それから、その下のところは基本的に大きな変化はございませんで、それから最後の方でございますけれども、本専門委員会での中間報告が6月にまとまりまして、総合科学技術会議の方で9月に分野別推進戦略がまとまったと、そのようなことを書き加えてございます。
 それから次のページをごらんいただきまして、第1章でございますけれども、先ほど松井室長の方からも説明がありましたけれども、第1章は以前は環境研究・環境技術開発の性格及び方向性ということでございましたけれども、そもそもの目的と、それから社会においてどんな役割を果たしているか。それから方向性と、このような形で整理した方がわかりやすくなるというふうに思いましたので、そのような形で整理をし直しております。
 まず、1.のところですが、環境研究・環境技術開発の基本的な目的というような形にいたしまして、初めのところでございますが、「……基本的な目的は、21世紀において深刻化することが予想される環境問題の解決、持続可能な社会の構築への貢献である」という2行を加えております。
 それの下のところは基本的に大きな変更は加えておりません。
 それから2番目のところでございますが、環境研究・環境技術開発に対する「ニーズ」の「問い」としての整理ということで、これは以前から問いという形のものを設定するということは中間報告段階でも入れているわけですけれども、ニーズ志向の研究である、と。環境研究の特性について先生方からいろいろ意見をいただいたということもありますので、ちょっと「ニーズ」という言葉を加えさせていただきました。
 それで、その個々の研究開発課題というのは、もちろん環境問題の解決というものに向けた具体的なニーズ、環境問題の解決に向かって、研究とか技術開発が解決すべき問題点のことをここではニーズと言うわけでございますけれども、それをしっかり明らかにした上で個々の課題を設定していくことが必要であるということでございます。
 そのニーズを明確化するための手段といたしまして、この「問い」をつくる。その「問い」については根本的な「問い」というものと、それから、それにぶら下がる、根本的な「問い」に答えるための「問い」、さらにその「問い」に答えるための「問い」という形で階層的に設定していくべきであるということを書いてございます。
 このような形で一連の「問い」としてニーズが明確になりましたら、そのニーズに対応して必要な研究開発課題を選定していくことが容易になるだろうということでございます。
 それから、その具体的な課題について、その「問い」に対してどれだけ答えることができるかということをしっかり精査することによりまして、その必要性の評価もできるようになる。それから、その「問い」に基づきまして、研究開発課題を実際に今やられているものを整理することによりまして、どこに穴があいているか、どこがまだしっかりやられていないかというところを明らかにして、一層の取り組みが必要な課題も明らかになっていくだろうということを書いてございます。
 それから、3番目ですが、環境研究・環境技術開発が果たす役割ということで、以下のとおり(1)から(5)まで書いてございます。
 まず一つ目は、環境問題に関する情報の国民への提供ということでございますが、委員の方からもかなりご指摘がありましたけれども、国民への情報提供ということが必要である、と。しばしば、環境問題の国民の理解が十分得られなかったり、あるいはその環境問題に対して必要以上の不安が広がったりする、そのようなことがございますので、一般国民に対して安心できる未来とそれに至る道筋がしっかり見えるようにする、それから、その未来に向けて国民が行動することができるようにする。このようなことのために情報の提供が必要であるということを書いてございます。
 それから、委員の先生からご指摘もありましたように、最近ではやはり政策決定プロセスの中に国民の参加ということが求められているということ、それから、情報公開というものもしっかりやっていかなければいけないということで、国民参加を促す意味での情報提供が必要であるというような形の記述を入れております。
 それから、その次でございますが環境政策への貢献。これは第2章の7というところに以前あったものでございますが、その環境政策の立案・実施に貢献するような知見を提供するということが、環境研究・環境技術開発の役割の一つだと思っております。ですので、環境政策の担当者の側は、現実に直面している政策課題、それでどういうことを研究開発にやっていただきたいのかというニーズを明確化いたしまして、その研究者側に情報提供していくことが必要であるということでございます。
 一方、その政策担当者の方がとらえ切れていないような問題というものも当然あるわけですので、そういったところは研究者サイドの方からこれまで認識されていない新たな環境問題、それを政策課題にのせていけるように、それを政策担当者の側に提示していただく。こういう役割が期待されているということを書いております。
 その次の(3)でございますが、各主体の環境保全に係る取組の支援ということで、さまざまな主体が環境保全のための取組を行う。環境基本計画などでも「参加」というフレーズで書いておるわけですけれども、そういった取組を支えるための情報として活用されることが期待されております。特に、自主的な環境保全活動というものも最近では注目されておりまして、国民、事業者などによって進められているわけですけれども、こういった主体がそれでは何をやったらいいのかといったようなことに対して必要な各種の情報を提供していくということが期待されているということでございます。そのためには、環境研究・環境技術開発を行うサイドにも、国民や事業者などからのニーズを汲み上げるということが重要であるということを書いております。
 (4)国際貢献・国際交流ですが、これは1章の7というところにあったものでございます。若干記述を膨らませておりまして、4ページの上から3行目のところでございますが、我が国が国際的な環境研究・環境技術開発における中核的機能を果たすことを目指しまして、国際的な共同研究の組織化、あるいは人的交流、こういったものの強化を図って研究の国際化に取り組むということが必要である、ということを書いております。
 それからその下ですが、特に途上国に対しましては、現地の研究者、研究機関との共同研究を進めまして、当該途上国における環境問題の解決にも貢献すると同時に、その国におきまして研究開発能力の向上にも貢献していくということが重要であるということを書いております。それから、欧米諸国などとももちろんその二国間、多国間の研究開発協力を構築していくことが重要であるということでございます。
 それから、(5)の環境産業・雇用の創出でございますけれども、これは1章の8というところにありました。基本的に大きな変更はありませんが、前回の委員会などでも指摘を受けておりますが、その環境技術というものをしっかりと市場に乗せまして、その普及を図っていくということが重要である、と。そこがかなり今ネックになっているというところも指摘を受けておりますので、そこの部分、なかなか環境技術は市場に任せていては十分に普及しない。普及しないから企業の研究開発投資も不足しがちだというようなことを書き加えております。そのための取組として、具体的な開発目標を設定する、あるいは技術評価、あるいは金融・税制面での支援措置、こういったものを進めるというようなことを書いております。
 それから4.環境研究・環境技術開発の方向性ということで整理をしております。
 (1)のところは国民のニーズの反映、成果の分かりやすい普及ということでございます。3の(1)のところにも記述しましたけれども、国民の環境問題への理解を促進するための情報提供が重要である。そのため国民との対話を通じて国民のニーズを把握するということが必要である、それから、その結果を課題選定に反映させていくことが必要であるということを書いております。それから、研究をやった後、その研究開発の成果の普及をしっかりやっていく。国民に環境情報を提供いたしまして、その研究開発の必要性に対しての国民の理解を獲得していく、そして連携を得られるようにしていくということが重要であるということを書いております。
 それから、(2)重点化・戦略化。これは1章の方で重点化と言っていたところでございます。基本的に前段、最初のパラグラフは大きな変更がございませんで、2番目のパラグラフのところ、5ページの上から4行目ですが、重点化、戦略化に当たりましては、その2で記述しましたように、先ほど「問い」という形でニーズを明確化することが重要であるということを言っていたわけですけれども、一方で、委員の方からも前回ご指摘ありましたとおり、環境分野の研究開発全般がどこまで取り組まれていて、得られた成果の評価、どこまでの成果が上がっているかということをしっかり評価した上で、ニーズとこの現状の評価の両者に基づきまして、しっかり今後どういうふうに重点的・戦略的に研究開発を行っていくべきなのか、分野、課題、目標等を明らかにしていくということが必要であるということを書いてございます。
 それから、(3)体系的・総合的視点でございますけれども、これは1章の4というところにあったものがベースになっております。前段のところは基本的な変更はございません。[1]のところでございますけれども、ここは、ある環境問題と別の環境問題というのが実はかなり関連がある、と。例えば、前回、分野横断ということで議論していただいた中に、温暖化と大気汚染であるとか、温暖化と生態系の問題とかそんなことがありまして、ある環境負荷が複数の環境問題の原因となるような場合がある。あるいは、ある環境問題が別の環境問題を引き起こすことがあるというふうに複雑に絡み合っておりまして、それから一つの環境問題を解決しようとする対策が別の環境問題を悪化させるというようなトレード・オフが生じている場合もありますので、こういったものを複合的に扱う、統合的に扱う研究をしっかりしていく必要がある、その促進のための仕組みも必要であるということをつけ加えております。
 それから、[2]は、これは学際的に取り組むということで以前からあったものでございます。
 それから、[3]はほかの重要な社会経済問題といたしまして、人口問題、食料問題、安全保障などがあったわけですが、資源・エネルギー問題というのが抜けておりましたので書き加えてございます。
 それから、[4]は学際的な取組に当たって、人文社会科学系の研究との連携を強化するということで以前から入っていた部分でございます。
 6ページに行っていただきまして、(4)対象とする時間の範囲についての配慮。これは前回の委員のご指摘にも、中長期的な目で見て必要な課題をやっていく必要があるというようなご指摘を受けておりますので、ともすれば、現状では現在からせいぜい10年程度を見通した期間の環境問題を扱っている研究が多く、それから、技術開発でもせいぜい10年程度で実用化が期待される課題というものが対象になっているわけですけれども、そうはいっても21世紀には中長期的に環境の状況がかなり悪化するという可能性もあるわけでございますので、やはり中長期的な将来の環境問題についての将来予測をしっかり行うということが重要であるということ。それから、その予測に基づきまして必要な研究開発課題というものを明らかにして、それに取り組んでいくことが必要であるということでございます。
 それから、技術につきましても10年程度では実用化のめどが立たないようなものでありましても、期待される効果を考慮して、基礎的な研究開発に取り組んでいくというようなことが必要であろうということを書いてございます。
 それから、(5)対象地域についての配慮ということ。これも前回、委員の指摘がありましてつけ加えた部分でございますけれども、環境問題というのはすぐれて地域にかかわる問題である場合が多いということでございますので、その対象とする地域についての強い配慮をしていく必要があるということでございます。特に現状で問題が顕在化している地域が優先されるわけですけれども、現在、環境問題が顕在化していない地域でも脆弱性が強い地域というのもございますので、こういった地域に対する配慮を忘れてはいけないということを書いております。
 それから、先ほど来、国際貢献の観点も重要であるということを書いているわけですけれども、我が国の状況を考えますと、東アジアとか東南アジアに対して特に配慮を払って取り組んでいくことが必要であるということを書いてございます。
 それから、(6)目的、性格に応じた配慮。ここの部分は以前1の9だったと思いますが、にある部分が基本的に移ってきているものでございます。
 前段、それから[1]の環境の状況の把握、環境負荷の把握、[2]環境問題の発見、[3]環境変化の予測、環境影響の予測、それから[4]政策立案への貢献。ここの部分にはつきましては基本的に大きな変更はございません。
 それから、[5]のところでございますけれども、対策技術の確立と普及というところでございます。
 第1パラグラフは特に変更がございませんで、第2パラグラフ。こうした対策技術の確立にあたっては、といたしまして、情報通信技術でありますとか、ライフサイエンス、ナノテクノロジー、ここに挙げておりますのは科学技術基本計画の環境以外の重点分野と呼ばれる部分ですが、こういった分野の最新の技術を積極的に活用していくというようなことを書いてございます。
 それから、一番下の行でございますが、普及のための方策について、特に人文社会科学的な研究を含めて検討を行いまして、それに基づいて取組を進めていく必要があるということを若干書き加えてございます。
 それから、8ページに行っていただきまして、最後のところ、「さらに」以下ですが、ここは第2章の3の(3)というところにありました技術体系の転換と言っていたところですけれども、環境負荷の低減を直接の目的とした対策技術だけではなくて、社会を構築している技術体系全般を、大量生産、大量消費、大量廃棄を前提とした技術体系から持続的発展可能な「環の国」日本を支えるような技術体系へと変換していく、そのための取り組みを進める必要があるということを書いてございます。
 それでは、9ページの第2章に入らせていただきます。
 ここにつきましては、まず冒頭のところは簡略化させていただいております。
 それから、1.環境研究・環境技術開発の基盤の整備ということでございますが、前回は情報基盤の整備ということになっていましたけれども、あとの方にありますタイムカプセルの話などもありまして、情報というだけではとらえ切れないものもありますので、こういったタイトルに直させていただいております。
 (1)のところは基本的な環境情報の整備ということで、以前から入ってきたものが基本的に書かれております。
 それから、10ページに行っていただきまして、(2)環境研究・環境技術開発に関する情報の整備でございますけれども、これは技術あるいは研究に関しての情報が自動的に集まるような、そういうネットワークシステムをつくりまして提供をしていく必要がある、と。それから、最後の方でございますが、専門家によりまして、研究、技術開発の動向、到達段階というところについてしっかりしたレビューをしていく、そのための体系的な調査を継続的に行っていくことが重要だということを書いてございます。これは以前から書いてある部分でございます。
 それから、(3)といたしまして、タイムカプセルとしての試料の収集、保存体制の整備等ということで、ここも基本的に前回から書いてございますが、若干その生態系絡みのところ、真ん中のあたりの「……また、地球温暖化による生態系への影響などにより絶滅の恐れのある生物種の増加が危惧される」というようなこと。どちらかというと、前回のものは化学分析のためのタイムカプセルというような色彩が強かったものですから、生態系絡みの部分でのタイムカプセルの記述をふやしているところでございます。
 それから、2の研究開発の評価でございますけれども、11月の総合科学技術会議本会議におきまして、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」が改定、これは答申が出たということでございますけれども、ということがありましたので、そこの部分で変更を加えております。
 若干、その大綱的指針の改定内容をここで紹介させていただいておりまして、従来は課題とそれから研究開発機関の評価をすることになっていたわけでございますが、研究開発施策、これは例えば我が省で持っております競争的資金といったような、こういった制度面、研究開発予算制度の部分を指している言葉でございます。それから、研究者の業績の評価。こういった二つについての評価というものが新たに加わっておりますので、そこを書いているところでございます。それから、評価の公正さと透明性の確保、あるいは評価結果をただ評価するだけではなくて、予算とか人材といった資源配分へ適切に反映させていくということが重要であるということが書いておりますので、その部分の記述を引用しております。
 それからその下になりますけれども、下から3行目、「また、」というところですが、研究開発を含む政策全般の評価につきましては、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」というのが制定されておりまして来年の4月から施行になるというふうに聞いておりますけれども、これに基づいての取組をする必要があるということで入れております。
 それから、次のページですが、3行目「さらに」以下のところ、ここも以前からありましたところですが、環境分野の研究開発全般における現状の評価が必要であるということを、先ほども申しましたけれども、特に環境分野の研究開発というのは、幅広い環境問題を対象としております。それから、多様な分野の科学技術的知見、自然科学、人文科学、社会科学、それを融合して取り組まれているということがございますので、なかなか全体像をとらえることが難しいと我々思っておりまして、そういったために現状評価の取り組みをしっかりやっていく必要があるんだということをここに書かせていただいております。
 それから、環境技術の評価等でございますけれども、冒頭のところに、有用と思われる技術でも環境保全効果についての客観的評価が行われていない、そのために自治体あるいは消費者といったエンドユーザーが安心して使用することができないというようなこともございますので、それが普及が進まない原因になっているというケースもございますので、そのための技術評価が重要であるということを書き加えております。
 (1)(2)のところは基本的には前回と一緒でございまして、(3)として技術体系の転換というのがあったわけですが、そこは1章の方に移っております。
 それから、4.各主体間の連携・交流でございますけれども、これは1章の6というところにあったものを移動させてきたものでございます。
 記述につきましては、最初のパラグラフは特に変更はございません。第2パラグラフ、12ページも特に変更がございませんで、第3パラグラフ、12ページの「また、」というところからですが、ここは先ほど来国民への情報の提供、あるいは国民ニーズを反映することが重要であるということがありまして、よく産・学・官連携というのは総合科学技術会議などでも言われるわけですけれども、ここでは産・学・官・民の、鈴木委員長からのご指摘もありましたので、このような形で連携・交流を進めるという必要があるということを書いております。
 それから、その下の「さらに」のところは1章の7というところにありました、国際貢献・国際交流のうちの、どちらかというと体制整備に係る部分をこちらに移してきたものでございます。
 それから、5.地域における研究開発の推進というところにつきましては、特に大きな変更はございません。
 それから、6.研究資金の拡充と適切な配分でございますけれども、ここについても大きな変更点は特にありません。
 それから、7につきましても特に大きな変更点はございません。
 それから、8.成果の普及・環境政策への反映というところでございますけれども、国民への情報提供が重要であるということを言っておりましたけれども、そのために研究者の方それから研究機関なども国民の環境問題の理解を促進するための活動を行っていくということを奨励するような必要があるということを書いてございます。
 それから、環境政策との連携というところでございますけれども、「研究者と政策担当者の間の対話を始めとする連携体制を確立する必要がある」。このような記述を入れているところでございます。
 9番目につきましては特に大きな変更を加えておりませんけれども、やはり今後も環境問題というものは重要なものでありまして、総合科学技術会議でも恐らく重点的な分野としてしばらくは取り上げられると思いますので、本専門委員会における検討も引き続き実施していくということを書いているところでございます。
 それから、3番目の重点化プログラム。15ページに行っていただきたいと思いますけれども、ここにつきましては、まず、以前は総合科学技術会議の方で推進戦略が行われる、それに反映させていただくためにこのようにまとめましたというようなことを冒頭に書いておりましたけれども、既に推進戦略の方が9月にできておりますので、それを受けて修正を図っているところでございます。基本的には中間報告がベースになりまして、それについて一部研究開発課題を追加するなどの充実化を行ったということを書いております。
 それから、1といたしまして、以前は総合科学技術会議が策定する環境分野の推進戦略という部分があったわけですけれども、そこについて重点化の考え方四つの柱というものがありましたけれども、既に推進戦略ができたということもありますので、ここの部分は削除させていただいております。
 それから、1番目といたしまして、重点化プログラムの選定、「問い」の設定ということでございますが、ここは変わってございません。
 それから2番目、配慮事項のところにつきましても大きくは変えておりません。(1)のところでは、ここの重点化プログラムに取り上げていないような重点的な課題もございますので、それについては今後引き続き検討が必要であるということを書いております。 それから、(2)(3)の部分、モニタリングの充実というところ、それから人文社会科学系の取組の評価というところについては、特に変更なく、書き加えております。
 それから、表1のところも変えておりません。以前からありますとおり、地球温暖化研究プログラム、化学物質環境リスク評価・管理プログラム、20世紀の環境上の負の遺産の解消プログラム、循環型社会の創造プログラム、循環型社会を指させる技術の開発プログラム。自然共生型流域圏・都市再生プログラムと、この三つのプログラムを重点化プログラムとして挙げております。
 17ページ以降は各重点化プログラムの概要を書いているところでございます。
 まず、地球温暖化研究プログラムでございますけれども、変わった部分といたしましては、(2)のところの[2]陸域生態系及び海洋における気候変動フィードバック等炭素循環の将来予測に関する研究ということで、若干、記述の修正を行っております。
 それから、[5]のところ、「高精度かつ長期の予測を可能とする全球・地域気候モデルの開発」となっていたわけですが、開発だけではなくて、これに基づく予測の実施もするというようなことで直しております。
 それから、(3)のところですが、[1]のところ、地球温暖化が生態系、それから食料生産、人間社会等に及ぼす影響とあったわけですけれども、地球規模水循環の変動というのが重点分野、総合科学技術会議の方で重点領域というんでしょうか、になっているということもございますので、「水資源」という言葉もここに入れております。
 それから、(5)のところですが、社会科学的な研究課題を追加するということがありまして、(5)の[5]緩和戦略と適応戦略のベストミックスのあり方に関する研究でありますとか、世紀単位での長期的な温暖化抑制シナリオに関する研究というのを[8]として入れております。
 それから、その下の研究開発を進めるために必要な基盤・システムのところでございますけれども、若干分野横断的なものでありますがここで書いているというものがありまして、そこは1章と2章の方に書いているという整理にいたしまして、ここではそれらの各分野に特有のものを残しております。
 それから、次のページに行っていただきまして、化学物質環境リスク評価・管理プログラムでございますけれども、ここは基本的に大きな変更はございませんで、やはり研究開発を進めるために必要な基盤システムのところを若干横断的なものは消しているということでございます。
 それから、20世紀の環境上の負の遺産の解消プログラムにつきましては特に変更がございません。
 それから、次のページに行っていただきまして、循環型社会の創造プログラムにつきましても、研究開発を進めるための必要な基盤システムのところを横断的な部分は消しているということでございます。
 それから、次のページ、循環型社会を支える技術の開発プログラムもやはり研究開発を進めるために必要な基盤システムのところを修正しているということでございます。
 それから、自然共生型流域圏・都市再生プログラムですけれども、ここも基本的に大きな変更はございませんで、研究開発を進めるために必要な基盤システムのところを修正しているという形でございます。
 それから、ずっと行っていただきまして、27ページのところは各重点化プログラムの枠組の図でございますが、これは最終版には当然入れさせていただきますけれども、今回は省略をさせていただきます。重点化プログラムの若干の見直しに基づきまして、必要があれば図の方も見直す必要があるということでございます。
 それから、最後のページになりますが、「おわりに」でございますけれども、基本的には総合科学技術会議の検討への反映を考慮して、6月に取りまとめた中間報告に所要の修正を加えたものであるということを書いております。
 その次のところは本報告書で行ったことのあらましを書いてございまして、環境問題の解決、持続可能な社会の構築という基本的な目的に沿って行われるものであるということを再確認した。それから、そこから派生する環境研究・環境技術開発の役割、あるいは今後の方向性というものを明らかにしたんだと。
 それから、第2章のところでありますけれども、必要な体制整備のあり方を示した。それから、重要な研究分野について政策ニーズを「問い」として整理し、それに対応して取り組むべき研究開発課題を重点化プログラムとしてまとめたということを書いております。
 その後ですが、一方、環境あるいは科学技術というものを取り巻く状況というのは刻々と変化しておりますので、第3章の重点化プログラムにおいて取り上げられなかった重要な課題もある。そういうことから、今後も環境研究・環境技術開発の重点的・戦略的推進のために、引き続き本専門委員会において検討を続けることとする、というふうにまとめてございます。
 変更になった点を中心に説明させていただきました。以上で終わります。

【鈴木委員長】 どうもありがとうございました。
 前回の議論は大枠、あるいはかなりフリーなディスカッションだったんですが、今回それを踏まえて手直しをしていただいたわけですが、できるだけ具体的に、どう直すべきかというところまで踏み込んだ形でもしご意見がおありでしたらご発言願いたい。それで、きょうのご意見を踏まえて、次回の専門委員会でもう一遍修正案を出すということになりますので、お含みおき願いたいと思います。
 どうぞ、浅野委員。

【浅野委員】 ずっとさぼっていたので、もう既に議論済みのことを言ってしまうと申しわけないんですが、全般的には本当によく整理されていて、ちょこちょこと論文を書くのにあちこち盗み取りをするとすごく使いやすくていいなあと思って、早速1カ所さる論文に引用させていただいて、ちゃんと出典まで書きましたが、ありがとうございました。とはいうものの、人文社会科学研究が必要だということが言われたのでそれを入れなきゃいけないという意識が先走っていて、本当に人文社会科学研究の役割とか中身についてはほとんど触れられていないという印象ですね。
 特に、政策研究が人文社会科学研究だという認識は根本的な誤りだと思います。私はすべてのマターについて人文社会科学研究が裏づけになっているとか、お互いに表裏の関係になっているという認識をしているわけです。それを政策研究という領域に閉じ込めてしまったら、しょせん金がかからん研究領域だから、ちょっと500万位つけたらまあ黙るだろうという発想が見え見えで、技術は技術がやります、人文社会科学研究は政策研究です、だから、おれたちがやったものをおまえらがどう使うか考えてくれ、それは任せるよ、と。それはたかだか500万だろう、こっちは5億だよと。これは全然、人文社会科学の人間からいうと許しがたい発想だと。私たちも5億の中に入っていいと、その中で500万もらうなら我慢するけれども、独立国をつくって500万でやれ、おまえら島嶼国だという、そういうのはどうもよくないなと。でも、随所にそういう発想が見えていて、非常に気になりますね。だから……。

【鈴木委員長】 今のご意見、私、大賛成ですが、すべての環境問題を解くために、人文社会科学的な立場の人の研究が同時に、一緒に行われていなければ解けないという具体的な局面が明らかになっているわけですから、そういうふうに考えなきゃいけないということですね。

【浅野委員】 ですから、ちょっとこれ、書き方全体を気をつけていただきたいという気がします。コメントの細かいことは後でまた書面で出します。
 それから、これは場所によりけりなんですが、例えば、総合政策部会とか地球環境部会とか、いろんな部会で常に議論になることですが、「国民」という言葉の使い方です。これは場所によっては国民の方がいい場合があるんだけど、特に環境科学研究という場合に、国民という言葉になじまない要素が余りにも多いんですね。
 例えば、例を挙げると3ページに「国民」と書いてあるんですが、これ、行政の国民というのはまあいいんでしょうけれども、環境問題について国民への適切な情報提供が不足だと。だったら在留外国人には情報を提供する必要がないのかということになるわけで、国民というのは明らかに国籍を意識した言葉ですから、これ多分、僕が言わなくても村上さんがおっしゃるだろうと思うから先に言ってしまうんだけど、おかしいんじゃないかなという気がするんですよね。
 3ページのところの論理が第一おかしいなという気がするんです。情報公開が進展し、行政の国民に対するアカウンタビリティーがある、政策プロセスへの国民の参加を促進するという意味でわかりやすい情報提供が必要であるから、だからそこで環境研究・技術が役割を果たすって、何かちょっとおかしいなという気がする。これだと政策、行政が親方で、技術はそのしもべで、行政のやることに技術は仕えようということになってしまう。こういう構造で果たして本当に答申としてもつのかしらと、おかしいなと。だから、3ページのこの辺の書き方というのはどこか考えなければいけない。
 それから、3ページの3の(2)のところも、政策担当者の側は政策課題に関する研究開発のニーズを明確化する。これ必ずしもここが課題ということでもないんだろうけれども、次の方で出てくるのは研究者側は課題を提示する。課題ベースだけで交流をするというのは全然おかしいわけで、実際に困っているのは課題じゃなくてもっと上のところで困っているわけですから、こういう書きぶりでは全然交流にならないわけで、やはり研究は研究、政策は政策というふうになってしまう。こういう書き方は全然おかしいなと思いますね。
 あと、さっき言いましたように細かいことはずーっと後でまたゆっくり見てコメントを差し上げたいと思っていますけれども、例えば7ページの[2]で、「問題が発見されたときの価値の大きさと発見の遅れがもたらすリスクに対する『保険』」、これ、ちょっと意味不明瞭なんですが、価値とリスクを対置させるというのは非常におかしいですね。恐らく、多分利益とリスクとかそういうふうな、大体普通に使われている常識的な対語があるんだけど、これ全然、何かよくわからない。価値の大きさというの。だから、こういうところの言葉の使い方は、少なくとも科学研究に関する報告書の中ではちょっとまずいと思いますので、これも直してほしいなと。
 それから、環境情報整備のところなんですが。9ページです。基本的な環境情報の整備。ここのところも実際に、私はどらちかというとほとんど研究よりも政策の方に完全にどっぷりつかっていますら、そちらの目から見ると環境の情報という概念と、環境政策に必要な情報という概念は違うんですよ。ここはだから環境に対する情報を整備すればいいという文脈になってしまっているんですが、これでは困ります。むしろ、環境政策に必要な情報は学際的であり、領域を超えるものであり、どういう情報が本当に必要なのかということが大事で、それ自体がまず研究の対象になる。ここでは何か環境に関する知見だけが整理されて、環境情報システムができたらもうそれで終わりという印象になってしまっているわけですが、それは違うと思いますね。
 あと、余り1人で独占したくないんですが……。

【鈴木委員長】 3回分くらいだから。

【浅野委員】 はい、あとはもうおとなしくしておきますが。さっき言ったことの関連で言うと15ページのところで、もし仮にここをちょっと修文の例示をちょっとだけしますと、15ページの一番最後の行のところですが、社会的・経済的・制度的側面から、科学的な知見の評価とか、あるいはさまざまなシステムの評価とか、そういうことも全部社会科学の分野に入ってくるわけですよね。だから、そういう言い方をちょっとするだけで、さっき言ったニュアンスというのは出てくると思います。つまり、あらゆる科学的な知見というものについてもそれに対する評価が常に伴うわけです。その評価は実は技術屋さんがやっているように見えるんだけれども、技術屋さんは完全に社会科学的な分野のやるべきことをやっておられて、それを科学の名のもとに正当化しているわけです。はっきり言って申しわけないけれども。それは多分浦野さんが一番よくわかる話だろうと思うんだけれども。本当は純粋の理学的な知見とかというようなものであれば、それは価値評価なんていうのはないんだけれども、工学の世界に入ったら、もうそこでは政策そのものですよね。だから、そこで協力をしなければどうにもならないわけで、それは社会科学の方でもさぼっているものですから、大聖先生も、浦野先生も、だれも社会科学的な言葉を振り回して一生懸命主張をせざるを得ないという状況にあるわけだから、それはまさに学際的協力が一番必要な分野だという認識があるんですね。だから、その辺のことをちょっとこの辺で上手に入れていけば、さっき私が言った問題提起に対する答えになると思います。
 どうもごめんなさい。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。
 さて、まだほかにございましょうか。平田委員。

【平田委員】 6ページなんですけれど、対象地域についての配慮なんですが、「東アジアとりわけ東南アジア」と規定されるのはどういうわけですか。これ、中国は東南アジアに入らないですよね。最大の問題なのは中国なので、中国で石炭をぼんぼん燃やして、13億でモータリゼーションが始まったらどうするんですか。
 それから、もう一つシベリアを入れなくちゃいけないです。今、シベリアのタイガは森林が吸収源ではなくて、むしろ発生源かもしれないので、やはりシベリアまでこの研究を広げないといけないので、シベリアを含めた東アジアだけで十分で、東南アジアどころの騒ぎじゃないです。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。どうぞ、村上委員。

【村上委員】 3ページの(1)のところ、(2)のところは浅野先生が言っていただきましたが私も同様に考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それで、同じ3ページのところで、果たす役割というのは目的に沿って役割を果たさなきゃいかんということですね。基本的な、余りに常識といえば常識だから抜かしたのか知りませんが、環境研究・環境技術開発というのは、役割というのはやはり環境問題解決への貢献なんですよね。その根っこが抜けちゃってて枝葉のことがだーっと書かれているようです。これはそういう(1)からずっと環境問題解決に貢献するんでしょうけれども、いわゆる研究開発、技術開発というのはそのこと自体が環境問題を解決するという意味合いがなければならない。その一番根本な役割というのが1行も書かれていない。やはり一番初めに環境問題解決への貢献ということで、そこら辺ちょっと書き込まないと、余り常識的過ぎて抜けたのかもしれませんけれども、目的に対する役割と対比できないと、こう思っております。
 以上です。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。浦野委員、どうぞ。

【浦野委員】 3点ほど。私もちょっと途中お休みさせていただいたものであれですけれども。
 まず、我々科学技術の関連を今見てみますと、環境関連も最近資金的にはかなりふえてきているという印象が非常に強いんですが、評価の部分が残念ながらうまくいっていないという実感を非常に強く感じております。
 特にこの場合、我々のような学者・研究者が評価するというだけではなくて、これ自身を、この分野は特にですが、民間企業とかNGO、国民というのか、市民とか、あるいは公益法人とか、評価する側も多様なステークホルダーみたいな形の、関係する人たちが多くの方が評価へ参加するというシステムはここに何も書いていないんですけれども、何となく学者だけがまたこういう会議で評価するというような形ですと、やはりそれはうまくいかないというふうに思います。評価のシステムというのを別途考える必要がある。
 それからもう一つは、第3章は資料にするか、あるいはこういうふうにちゃんとつくるかという話がちょっとあったようですけれども、問いそのものとか、そういうものは非常にいいんですけれども、特に必要な研究開発課題というのがこういうふうに具体的に上がってくると、これ以外のものが何となく抜けてしまうおそれがある。ですから、これはすべて「特に必要な研究課題の例」という表示がいいというふうに思います。特にこれから人文系も含めていろんなものがどんどんどんどん入ってくるべきなのに、むしろここを明記してしまうとほかが入りにくいというおそれがある。特に本題の方に話のある開発途上国の環境問題への貢献とか、そういうのが具体例の中にほとんどないんですよね。具体例というか、特に必要な研究開発課題に人文系統が足りないという話が先ほどありましたけれども、途上国とか、国際的な貢献部分についてのものもかなり少ないという気が私は見えるので、そこら辺を何とかしてほしいと。
 それから、人材育成、これも評価と同時に実は具体的にはとても大事なことなんです。かなり上手に書いてあるけれども、欠けているところは民間で環境研究をやる方々の人材育成というのも私は必要だと思うんですね。何となくこう、官というか、公的なところとか大学とかでの、あるいは独立行政法人での人材育成というのはありますけれども、民間がやはりこういうものをやろうとして技術開発をしている、あるいは商売しようとしていても、本当に社会がどっちを向いていて、どういうことをやるべきかということを理解していないで、国の補助金も大量にもらっていろんな技術開発をしている会社があるんですが、方向違いのものをやって会社にとっても負担の割には成果が出ないというケースがかなり私は見受けられるというふうに思うので、民間の人材育成も産・官・学、まさにあわせて考えていってほしいということを思っています。
 それから、あと浅野先生がおっしゃったものと重なるんですが、やはり環境情報って、私たまたまそういう組織の中にいるようになったんですが、環境情報というと何かモニタリングデータとかその他いろいろな本当に狭い環境情報になっているんですけれども、環境政策に必要な情報というのは本当に不足しているんですね。これは各省庁がいろいろなところで持っているものを、やはり環境省がこの情報をどれだけ持つかというのが非常に今後重要だと思いますので、環境政策あるいは環境研究に必要な基本情報の収集と公開というのは、非常に力を入れていただきたいし、上手に書いていただきたいと思います。
 以上です。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。西岡委員、どうぞ。

【西岡委員】 大きく2点ございますが、その前に先ほど浅野先生のおっしゃった社会科学の取り組みというのは私も非常にもちろん大切だと思っているんですけれども、現実に起こっていることは、例えばここで最後の3のところで温暖化のプロジェクトに幾つかの疑問があるということで、疑問から入っていくというような話があるんですが、こういう疑問を立てるときに、社会科学の人たちがこういうところへ入ってくる基盤がどうもうまくできていないような感じがするんですね。例えば自然共生なんていう話になりますと、いろんな制度的な問題であるとか、それから経済の動向なんていうのは基本的にかかわってくるはずなんですけれども、立案の段階でなかなか人文科学や社会科学の方が入ってこられない情報になっているというのはちょっと何とか変えなきゃいけないんですが、それはここで、どこでそれを入れ込むかというのは人文科学の平板に書かれているところについて、もう少し具体的な仕組みについて書き込む必要があるのではないかなと思っているんですが……。

【鈴木委員長】 それは人文社会科学の役割について書いてあるところを書き直すことになりますよね。

【西岡委員】 ええ、ちょっと……。

【鈴木委員長】 もっと書き込まないと……。

【西岡委員】 もっと仕組みについて、ある程度書き込んでもいいのではないかなと。実際問題起こっているのは、例えば我々今度総合科学技術会議の話でやりましたし、それからいろんな場面で社会科学の人の意見を早く入れようということをやったんですけれども、多くの方は文部省関係の方がおられて、なかなかうまく組織化されていなくて入ってこないという状況があるんですね。ですから、どうしてもどなたかおっしゃったように国立機関の意見ばかり出てきてしまうという問題があるものですから、その辺についても問題提起をしておいた方がいいのではないかなと、一つは思っております。
 それから二つ目、第2点。私、3点って今のは付録なんですが、2点のうち一つは、3ページの(3)のところの書き方なんですが、これも浅野先生それから村上委員もおっしゃったことなんですけれども、ちょっとめり張りの順番がよくわからない。一番最初、今、情報の提供と書いてあるんですけれども、科学研究が果たす役割で一番大切なのが国民への情報の提供かといったら、まず順番としては違うと思うんですね。やはり環境問題として一番大切なものを見つけて、それを解決してその結果を提供するということになると思うんですが、そこの重みをつけた順番で書かれているかどうかわからないということが一つある。もし重みをつけてやるんだとしたら、一番最初に科学技術者がやることというのは、疑問を見つけて、それが非常に世の中のニーズに合っていることと同定してそれを解決する、そして、それを政策に反映させるということで、そういったこと、要するにニーズへの貢献というのが一番最初に私はあるんじゃないかなというぐあいに考えているわけです。それから、その後それを政策に反映し、国民へ提供し、あるいはほかの部分へ敷衍していくというところがあるかと思います。それが第1点。ですから、ちょっと順番を変えるということ、あるいはニーズへの疑問への対応というのを、科学技術のやはりコアとして言ってもらいたいというのがあります。
 それから、二つ目ですが、これはこの書き方はいいということを申し上げたいんですが、科学技術の目標というのは知的好奇心の話を満足するという話だとか、それから産業の基礎になるという話、あるいは、安全・安心のための科学ということがございます。環境につきましては、まず第一は安心・安全のための科学だと思いますので、全体としてこの書きぶり、すなわち後ろの方に、後ろではいけないのかもしれませんが、環境産業雇用の創出の5番目に書いてあって、順番自身は私はいいと思うんですが、最初に申し上げたことについてはちょっと書き加えていただきたいということですね。それが第1点。
 それから、この件についての第2点なんですけれども、やはり科学技術で先ほど知的興味の話を私申し上げましたけれども、これについては国際貢献の中で人類共通の知的財産として重要であるという言い方に入ってきているわけです。しかしながら、これもう少しやはり大きい意味があると思うんです。環境問題をどんどん解いていくとますます基礎的なわからないところがはっきりしてきたり、それから環境問題を勉強した人たちが本当に知的な興味をそこから醸し出すということは当然あり得るわけで、そういった意味での環境科学技術が果たす役割についてももう少し書いていただきたいなと。私、現場を預かっていますと、研究者というのはやはり知的興味を求めてくるものですから、それとちょっとこの整合が非常に難しいんですね。そういった面で知的興味の点についてももう少し書き込んでもらいたいなというのがあります。
 以上がまず第1点であります。
 大きく次の第2点が、9ページからの……。

【鈴木委員長】 全部で10点ぐらいになるんじゃない。

【西岡委員】 大きく、大きく言っておりますが、9ページのところ、体制整備ですけれども、これも私、順番が重みを持って書かれているかどうかわからないので、抜けていたらうまくしますけれども、まず情報の整備ということから入るんですけれども、一番大切なのは先ほどお話がありました人材の確保ですね、今の時点では。お金の方はかなり配慮していただいていると思うんですけれども。ここのところは、13ページに実は人材の確保、組織の整備というふうに書かれてありまして、そこでは今欠けている二つの点が書かれています。私はこれはこれで非常に重要だと思います。まさに私もいつもいつも言っていることなんですが、その前に例えばこの13ページの7.人材の確保のところの3行目に「この人材の確保及び組織の整備に二つの側面があり、」と、欠けている二つの側面が書かれていますが、やはり全体として、1行でいいんですけれども、あるいは幾つかの言葉だけでいいんですけれども、やはり研究する人全体の確保というのをぜひ、に加えてというようにしていただきたい。
 それから、先ほどご指摘のありましたように、環境の問題というのは、いわゆる今まで環境と称してやってきた機関以外にどんどん広がっていますので、そこでの充実を図ってもらいたいと今もご意見がありましたけれども、それについても書き加えていただきたいと。結論としまして、9ページの第2章の頭のところに、頭の3行目「以下に示す」という後に、やや重みをつけて、何かこう数行、この章の読み方といったものについても書き加えてもらいたいんですね。そうしないと、最初から情報というのが一番大切かという話になってしまうという感じで読まれますので、ぜひそうしていただきたいと思うんですが。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。具体的な話がたくさん入っていました。それだけではなしに骨組みに関するインパクトもあると。
 鷲谷さん、どうぞ。

【鷲谷委員】 今の最後のご発言とも関連することなんですけれども、環境研究の発展にとって、やはり一番本質的な問題は担い手の問題だと思うんです。
 それで、15ページから次のページにかけての記述なんですけれども、ちょっとこれでいいのかなというふうな疑問を感じています。それはニーズにこたえるためには担い手を質、量ともにかなり拡充していかなければいけないんじゃないかと思うんですね。今までの研究の現状と問題が非常に多岐にわたって大きいし、深刻な問題があるということから考えると、それがとても重要だと思うんですが、ここに今書かれているのは従来の枠組みといいますか、そういうものに沿って書かれているように思うんです。やはり潜在的な担い手がどこにいるのか、それをどのようにして環境研究に引き込むのかというような視点というのを強調していただきたい。そうなりますと、16ページのほかに、そのほかと書いてあって、おまけのように書いてあるところです。そのあたりをもう少し重視するということも必要なんではないかという感じがするんです。研究の実施のところで、ここでは独立行政法人の研究所とか、そういうようなところが実施の主な主体であるという書き方になっていて、このほかということでおまけにほかの主体が書き込まれているんですけれども、これでその質や量の拡充というのが本当にできるのかどうかという心配があるんですが。すぐにそういうような体制などをつくっていくことは難しいかもしれませんけれども、何か方向性なり道筋について、おまけではない書き方をするということはできないんでしょうかということが1点です。
 もう一つ違うことで簡単に述べてよろしいでしょうか。

【鈴木委員長】 どうぞ。

【鷲谷委員】 全体としてとてもわかりやすくなったと思っているんですけれども、1章と2章の記述の対応、今でもかなり工夫されていて、1章の方向性として書いてあるところとか、3の果たす役割として書いてあるところのそれを実行するための体制としてこういうことが必要だという書き方が一部されているんですけれども、そういう1章と2章の記述の対応について、もう少し強化してもいいんじゃないかと。1章で提起されたことをどういう体制で実施するかということがわかりやすく書かれている部分も少しまとめられて、それ以外で体制として重要な点はちょっと別に整理するというような感じだと、もう少しそういう体制をつくるということ、基盤をつくることの重要性が理解しやすくなるように思います。
 以上です。

【鈴木委員長】 大変ありがとうございました。私個人の感想から言えばよくこれだけ短い時間の間に事務局がこれだけ手直しをするものだと感心はしているのでありますが、それだけにぼろがいっぱい出てくるわけでありまして。そこのところは、きょうはどこがぼろだという話を指摘しなければならないようなところがあります。
 今の鷲谷委員を含めて何人かの委員の言われた中でポイントになりそうなのは、この書き方で人材の供給というか確保とかというときに、若い科学……、これは別に自然科学に限らず、人文社会全般、何でもいいんです、科学をやろうと考える若者をうまく引きつけることができるかというような、そういう命題が隠れているような気がします。何か、すべて行政的な問題に巻き込まれて、そちら側で振り回されるというのでは科学を志向する若者にとっては不満なのではないかなといった感じがあります。
 三橋委員、どうぞ。

【三橋委員】 4ページの(5)の環境産業・雇用の創出というところなんですけれども、ここでの書き方で私はこう考えるんですけれども、現在の市場経済というのは完璧じゃなくて、さまざまな欠点があるわけですね。それにかわるべき経済システムは計画経済しかないために、市場経済が選択されているにすぎないわけです。そういう点で言えば、現在の市場経済というのは、環境コストを市場取引の中に内部化できないために、さまざまな環境の破壊問題などが起こっているわけです。そういう流れの中で言えば、これまでの動脈産業に対して新たに環境産業という部分が加わることによって循環型社会というものは形成されていくんだろうと思うんです。そういう意味でこの環境産業の位置づけというものを、環境負荷の少ない循環型社会をつくっていくためには欠かせない部分なんだろうと思うんですね。この環境産業というものを今の市場経済の中に育て一定のシェアを占めさせていくということが非常に重要であって、それが結果として雇用の創出にもつながっていくというような流れなんだろうと思うんです。
 そして、そのためには今の市場経済をそのまま放置しておけばいつまでたっても環境産業というものは育たないわけです。その場合にはやはり市場経済に対して必要な介入なり経済的措置なりを導入しているということで、環境産業を意図的に育てていくということが必要なんだろうと思うんです。そういうような形で書くと、ここの(5)の流れというのは非常に並列的で立体的ではないんですね。何のために環境産業というものを位置づけていかなくてはいけないのかということは、まさに今の市場経済の欠点を是正するために環境産業というものを育てていかなくてはいけない。あるいは、経済活動を持続可能な形にするために、環境産業というものをしっかりと位置づけていかなくてはいけない。そういうような位置づけが非常に並列的に書かれているような感じがします。この辺はやはりこれまでの動脈産業と環境産業というもののしっかりした位置づけ、そのために現在の不完全な市場経済に対して必要な措置を導入していく、その中で環境産業を発展させていく、それが雇用の創出にもつながっていくんだというような、その立体的な流れが非常に不足して並列的で、実は何を言っているんだかわからないような感じもあるんですね。それをちょっと指摘させていただきたいと思います。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。実は中身の問題だと。
 安岡委員がさっきから挙がっているんですが。

【安岡委員】 1点、まず前回の議論から関連で質問が一つあります。前回3章に分野横断というところを入れていただいて、そして重点化を付録に回すというような議論があったわけですけれども、私は結果的にはやはりこういうふうに重点化を3章に戻していただいた方が非常に見やすくなって、短い時間にこういうふうに直していただいたのはやはり非常によかったと思います。ただ、せっかく、前回、分野横断というのは1節1章ですか、設けた割に、それがすぽーんと今度抜けるのは何か妙な感じがして、あの議論は一体何だったんだろうかというのが出てきてしまいますので、重点化プログラムという3章のどこか留意点、配慮事項の中でもよろしいと思いますけれども、やはり何か一言コメントがないと、分野横断というのが非常に重要であるということがコメントがないとおかしいのではないかということが1点です。
 それからもう一点は、これも一つ質問になるんですが、総合科学技術会議の議論で環境の分野では地球規模の水循環というのが入って……、あれは抜けたんでしょうか、最終的には。

【松井環境研究技術室長】 入っています。

【安岡委員】 入っていますか。そうすると、ここの表で、どこでしたか表がございますけれども、それから3章の重点化プログラムの中で総合科学技術会議が挙げている5点と、それからここで挙げている4点にちょっと不整合が生じますね。そのことに関するコメントというのがやはり要るのではないかと。別に総合科学技術会議をそのままこちらで踏襲する必要はないと思いますけれども、向こうで環境の分野で入れていることについて、環境省がどういうふうなスタンスでそれを抜いたということをやはりコメントをしないと、何かおかしなことが起きるのではないかと。こんなところなんですけれども。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。
 安井委員、どうぞ。

【安井委員】 全体としては、先ほど浅野先生お褒めになりましたけれども、私も何か今回血が通ったような気がして、この中間の報告よりも随分進歩していると思うんですがちょっと、けちというわけではございませんが、まず1ページの「はじめに」の書き方なんですけど、1行目からずっといって、大量生産、大量何とかでそれで持続型で地球共生社会へと社会経済経済システムの転換を図るのが不可欠である、と。これはおっしゃるとおりなんですけれども、それはそれの一方で、やはり安心・安全の社会という、社会的ニーズを十分満たすためには、これまで粛々とやってきた行政をしっかり継続してやると同時に、後でも出てまいりますけれども、例えば化学物質だと負の遺産というものをきっちり解決しなきゃいけないという、そっちの視点も書いておかないとまずいんじゃないかというような気がするわけでございます。
 以上です。

【鈴木委員長】 平田委員……。藤田委員の方が先に挙がっていたかな。

【藤田委員】 文章的にはほとんど問題はないと私は考えているんですけれども、幾つかの点で少し環境省そのものの多分、ここは文章の表現なのかもわかりませんけれども、何か決意が余り見られないなというふうな感じがします。
 これは、例えば具体的に少し私がかかわっている例でお話ししますと、例えば負の遺産でトリクロロエチレンで汚染された土壌とか地下水を浄化しますと。これは例えばバイオを使う。そうするとバイオを使うのに対して市民はある種のアレルギーを起こしますということで、結局先ほどの3ページの支援というところなんかもそうなんですけれども、非常に淡々と「支援をする」と書かれているんですけれども、実際に例えば現場で説明しようとすると、実はそのデータって、ほとんどないんです。それに対して市民にいろいろ説明をするんですけれども、それじゃ安全ですかと言われたらいつもどこかで詰まってしまいます。だから、そういう何か決意のところが少し欲しいなというのが個人的な意見ですね。それは多分PCBなんかの処理にしましても、実際には非常に大きな方策は立てられているわけです。じゃあ、どうして具体的に進まないのかというのは、それは恐らく地方に任せてしまいますとか企業に任せますとかという。そうすると企業そのものはとてもじゃないけど今それだけの当事者能力を持っていないので、結局、市民とどう対話していいのかわからない。そのあたりのところが少し具体的に出れば、もうちょっと血の通った方策になるんじゃないかなというふうな感じを受けました。
 以上です。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。大聖委員。

【大聖委員】 7ページの[3]ですとか[5]あたりに関係するかと思いますけれども、それからほかのところともちょっと関係しますけれども、環境情報の整備とかモニタリングシステムの整備というのは各所に出てくるんですけれども、結局それは将来の対策を講じるための基礎データになるようなものなんですよね。それに対してその対策が必要だということでいろんな技術開発がこれから行われていって、それを実際に適用することで実際の環境の改善が行われるというそういうストーリーになるわけで、モニタリングですとか環境情報を収集するだけでは不十分なんですよね。ですから、それが余りにも強調されて、それに基づいた将来の対策のあり方が予測されて、それに従って有効な対策であるかどうかということを見極めながらそれをやっていくということになりますので、例えば7ページの[3]の、これは将来の土地利用の変化などの社会経済活動や対策等に関するさまざまなシナリオと書いてあるんですけれども、シミュレーションモデルなどを構築してと、私はこれがすごく大事だと思うんですよね。結局、将来どうしていくんだというのは、やはりある種の予測手法が必要なので、その辺というのは非常にデータベースの活用、モニタリングの整備とそれを利用するという立場から非常に重要だと思っております。
 ですから、そういったことで出てくる技術開発、それからそれを利用してどういうふうに対策を講じていくかというのは、まさに人文社会的な側面を非常に多く含んでいると思いますけれども、そういう中でやはり将来予測の必要性と、結局、対策が有効であるかということをちゃんと予測しながらやるというメカニズムがどこかでうたわれていないといけないなと。そして、結局それが講じられたときのレビュー、評価ということになるんでしょうか、そういったものもきちんとやらないとまずいなというふうに思いますので、その辺の書きぶりを少し強調していただけるとベターではないかというふうに思いました。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。論文を直してもらうプロフェッサーが20人ぐらいいるような感じですから、これは容易なことではないんですが。
 吉川委員、どうぞ。

【吉川委員】 12ページの地域における研究開発の推進ということで、環境問題を国内問題としては地方公共団体の環境部局を中心にして、全体の調整役として進めていくという話は大変いいと思うんですけれども、全体として環境問題ですから、先ほどのように国際貢献であるとかということでの東南アジア、あるいは中国、シベリア等のことを考えますと、そういう海外での問題点というのは、こういうNGOの団体等からが実際に働いていて問題点が出てくるというようなところもやはり視野に入れた形で対応していく必要があるし、そのようなところを少しここに加える必要があるんじゃないかなと思います。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。ちょっとここで私に2分、中座させてください。

【浦野委員】 では、先生がいなくても大丈夫な事務的な話で。
 本題でないので多分鈴木先生がおられなくてもいいだろうと思っているんですが、最後の重点化プログラムの枠組(図)というので、以下のとおり略というのでたびたび略になっていて、これ、前に環境省の各担当の方々が図をつくってくださっているんですね。あれ、ばたばたっと急いでつくって、一応形をつくって、それがそのまま改善されないままなんです。はっきり言って非常に見にくくて汚い、正直言って。正式な報告書に載せるにはちょっとみっともないなというので、もう少し字の大きさだとか配置だとかというデザイン的なものを、中身はいいとしても、何かてんでんばらばらなんです、各部門ごとに。それで見にくいなというのはこれは最初の中間のときの急いでやった図としてはいいかもしれませんが、かなりもう少し何とかしてほしいと思いますのでよろしくどうぞ。

【木村専門官】 正直言って一番厳しいご指摘かなと思うんですが。

【浅野委員】 ついでに、委員長がいない間に。パブコメをやるときのやり方について、僕、ちゃんといなかったから本当に反省のきわみなんだけど。
 この種のもののパブコメって、やはりインターネットにのっけるやり方じゃなくて、環境に関連する学会にぼんと送りつけて、そういうところからちゃんと出してもらうと、分厚くなるかもしれないけれどももうちょっとましなものになるかもしれないなと実は思っている。だけど、「環境」と名がついている学会ってどのぐらいあるかよくわからないんですが、安井先生のところでしっかりデータベースがあって……。

【安井委員】 ないですよ。

【浅野委員】 ないですか。そうですか。

【鈴木委員長】 どうも失礼しました。それでは、議論をもう少し続けようと思います。 平田委員がさっきから挙がっていたんじゃなかったでしょうか。

【平田委員】 どうもありがとうございました。先ほどどなたか環境省としての決意が足りないとおっしゃいましたが、それに類することかもしれませんけれど、総合科学技術会議のエネルギーの部会では、究極の社会としてのイメージというか、やはり水素社会へいかに早く到達するかということを大分強調してあったはずであります。そういう意味で、例えば18ページの(4)とか(5)あたりにやや決意的なというか、環境としてどっちの方向へ引っ張っていくのか。要するに一番最後にシナリオに関する研究というのがあるんですけれども、シナリオを研究しただけではだめなんで、どういうふうに持っていくかということをぜひどこかできちんとやっていただきたいと思います。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。どうぞ、森本委員。

【森本委員】 すみません。
 前段は私の意見も反映されて、大変よく書けているんじゃないかなと思って、7ページの3番、4番と、大変よろしいんじゃないかと思うんですが、これが今まで何人かの先生からご指摘があったように、人文社会系といわゆる工学、あるいは自然科学、生物系との一緒に何か取り組むんだという、そういうことが必要だということがここにちゃんと書かれていると思うんですよね。それが最後の方に重点化プログラムに一たん上がってそれがどこにどう反映しているのかというのがちょっと読みづらくなっているので、具体的な提案がないので申しわけないんですけれども、何かそういうことを明確に書くような、総合的な研究であるとかというのが必要だというのが必要じゃないかというふうにも思います。
 ちなみに、私、手前勝手ですけれども、4月から地球環境学大学院というのを京都大学で独立専攻でつくることになっていまして、それは人文社会系も含めた余りにも大きな組織ではないんですけれども、できるだけお役に立ちたいと思っておりますが、そういうようなときにどのようなところでどのように考えたらいいのなかなと考えると、やはりもともと自分たちのいた固有分野からいろいろアプローチするしかないのか、あるいは何か全体で取り組むような課題があるのかどうかというのがちょっと今考えざるを得ないということになっていまして、もし総合的な取り組みであるとか、今そのような話がうまくどこかに書けるなら書いてもいいのかなというような感じがちょっとしました。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。どうぞ、水戸部委員。

【水戸部委員】 少し、何といいますか、環境技術開発の方で話をさせていただきたいんですが。
 全体に環境研究の方が相当含まれているわけですけれども、環境技術開発というと7ページの[5]ぐらいが中心になってきまして、ここで見ますとやはりかなり言葉がいろいろ錯綜しておりまして、ここの、例えば民間企業が競争的に取り組むことは期待できる、その一方云々がありまして、これについて言えば基準が設定できない、あるいは、要するに対策技術が確立していないためにできないと言っていながら国の支援が必要だと、あるいは対策技術の確立が重要だと。要するに、ちょっと何を言いたいのかよくわからないということが一つです。
 環境技術の開発を含めて、民間が恐らく中心になる技術開発というのは、どちらかというと、もともと社会的な知見も必要ですし、それから周辺研究が非常に重要になってきますね。ですから、社会的なニーズが発生したときに、それに対応するために技術をつくろうとすると周辺研究が非常に重要になってくる。これは大学等でさまざまな研究がなされれば対応策が見つかる。例えば、ダイオキシンの生成メカニズムがはっきりしないと対策技術がつくれないわけで、その生成メカニズムの研究みたいなものが大学等でやられ、それ以外のさまざまな研究が進んだ中で応用技術として技術開発が進む。それがきちっと使えるものかどうかという評価は当然必要で、したがって全体の中に研究がこういうような分野が必要だとか、あるいは評価、あるいはシミュレーション、それが必要だというのは含まれているわけですが、それをつないでいくということが実は技術開発の一番のキーになるわけです。
 それからもう一つの問題が、先ほど三橋先生がおっしゃったように、これがいわゆる経済的なシステムとして成り立たない限りは社会に出ていかないわけで。ところが、環境問題というのは一般的には従来の経済の仕組みの裏側にあって経済的に成り立たない。これは先ほど議論になっているように、新しい経済原理をどう持ち込むかということが研究されなければいけないだろうと。よくインセンティブだからとかいろんな案はありますけれども、本質的にどういう経済原理に持ち込んでいくことが大事なのかということが当然環境技術の普及促進の裏側に必要なものだというふうに思っています。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。大聖委員、どうぞ。

【大聖委員】 ごめんなさい、いいです。

【鈴木委員長】 もうよろしいかな。一わたり……。どうぞ。

【橘委員】 一つは、一番最初のときに発言したと思うんですけれども、今の環境産業とか雇用の創出のところで、何かこれを読んでいると環境産業がまた環境問題を起こすんじゃないかというような感じがしないわけでも……。余り産業、産業というのもどうかなということを前にもお話ししましたけれども、まだそういうイメージが残っている。特に雇用の創出というような表現を環境省のこういうところで言及しなければいけないことなのかなという、非常に素朴な疑問を感じます。これは副次的なものではないかなと思うんですけれども。
 それから、私どもの役目といいますか、騒音関係、音響関係なんです。これは最初からきょうはもう言うのをやめようかなと思っていたんですけれども、この中には一切物理的な騒音、振動とか、最近問題になっています低周波の問題、こういうのは一切すっぽ抜けているんですね。逆に言えば、そういうのは環境問題とは認めないというような感じに読めるんですけれども、感覚公害、もちろん化学物質とかそういうものとは問題のあり方が随分違いますけれども、やはり非常に日常的な、あるいは感覚公害としての問題というのは依然として残っているわけですから、環境省のこういう大きな方針を述べるところで全然すっぽ抜けているというのは非常に、我々としては非常に不満を感じます。

【鈴木委員長】 橘委員がいらっしゃること自身がその問題の重要性を認めているんだと私は理解しておりましたが。
 村上委員、どうぞ。

【村上委員】 雇用の創出の問題ですが、組合の立場からすると、ぜひ雇用の創出につながってほしいと。現下の雇用情勢とか、小泉改革がまだやらんうちにこんな状況になって、来年はえらいことになるなと思っているんですけれども。目的は雇用の創出ではないと思いますが、それは結果として雇用の創出につながるということは一つの考え方として出していただく。それがやはり環境に対して、資本投下とか、いろんなものを生んでくるんだと思うんです。やはりそういう、うまく連関するように、環境もいろんな原理も持ち込まなきゃいかんと思いますけれども、やはり雇用という視点も入れておかないと、ある意味で経済界の方は我々以上に国内制度小委員会の検討は、雇用が失われるってそんなに失われるのかなと私は反対に疑問に思っておるんですが、そういう議論もございますし、また、環境というのは我が国にとって、大変先進的にやってきて、ある意味でこれから国が果たす役割、そのことを果たすことによっていろんなことが起きてくる。そういうことを我々として循環的にやっていただきたいなという思いもありますので、言葉の使い方はいろいろとあると思いますけれども、「雇用」という言葉はぜひ残していただきたい。これはお願いしておきます。

【鈴木委員長】 環境対策を進めていく上で技術的な展開が起こる。その技術的な展開が社会的にはいろいろな制度を必要とし、新しい人材を必要とする新しい向きが出てくるだろうと。そういうような総体をひっくるめた形の、これは、それこそ社会科学の人たちがもうちょっとまじめにやってくれないといけない領域が残っていて、そこを抜きにして単に雇用を創出すればいいかどうかというふうな議論にだけになってしまうのは私としては余りうれしくないなと。科学技術を考えていく上では、もう少しその辺のところの議論が入り用で、ぜひその辺はどなたか意見を述べてくださる方……。三浦委員の手が挙がっているんじゃないかな。

【三浦委員】 一つお願いがあるんですが、環境研究技術開発の体制整備の中で、これ、前にもお願いしたんですが、一つは確かに評価システム、先ほどのご意見でも市民やNGOまで含む幅広い領域に拡大していくという重要性があると思います。
 それともう一つは、今年の予算も先ほどいただいて、たくさんのお金が回るようですけれども、研究資金の効率的な運営というのが特になんて言っちゃうと怒られそうですが、環境省の場合には私、前もお願いしたんですが、これは研究の継続性とか長期性とかというのを十分踏まえた上で、単年度、そこのところの技術的なところがまだ問題あると思うんですが、いずれにしても例えば夏ぐらいに予算が来て、10月には報告を書いているなんていうのが毎年繰り返されて、しかも報告と予算書のフォームを提出していくということになりますと、区切り区切りで断ち切られながら毎年ようやくつなげていくということに往々にしてなるわけでして、そのところをもうちょっと効率的な運営の仕組みをもぎって、これは全体に考えていく必要があるんだろうと思うんですが、ぜひぜひ、せっかくのお金をうまく回していくという大切さがやはりあるんではないかというふうに思います。そのことが一つ。
 それから、先ほど予算の内容が出てきたんですが、地球環境研究総合推進費、あるいは地球環境保全試験研究費は、地球温暖化研究プログラムといったようなことと対応しているんですが、そのほかに環境技術開発という枠組みはありますし、廃棄物処理というのもあるんですが、もう一つ公害防止というものの実際の位置づけが何かもう一つ、いつもぴったりとしていればいいというものでもないんでしょうけれども、公害防止という枠組みだけで今後もいいかどうか。例えば循環型社会を支える技術だとか創造プログラムだとかといったような、そういうものに対応するような予算枠を、はっきりと市民権を与えるといったようなものが必要なのではないかというふうに思います。
 それから、ちょっと細かい話になるんですが、24、25あたりの話ですけれども、25ページの自然との共生社会への実現に向けてというのが、これ自然共生型流域圏都市再生プログラムで抜本的な問いとして生態系の健全性を損なうと、ずっとある作文なんでずっと見ていたんですが、最後のところ、2-3の特に必要な研究課題開発が、これが果たして自然との共生社会というカテゴリーの中に位置づけとして適切かどうかというのは、例えば有害物質の健康影響とか、浮遊粒子物質の動態モデルとか、ヒートアイランドの抑制、騒音対策、都市環境とか、そういうものがここの枠組みよりもむしろ違うんではないかという気がしますね。ここではむしろ生態系の適切な配置だとか、特に必要なのは[4]にある生態系の環境浄化保全能力といったような、こういうのが全面に出すべきものであって、何かちょっと循環型社会を支える技術とか負の遺産とか、そういうものに入るようなものが幾つかこの中に紛れているのではないかというふうに思いまして……。

【松井環境研究技術室長】 その点でちょっとお答えさせていただきますが、これは自然共生型流域圏だけではなくて、その後に都市再生というのがありまして、その観点からも入れているということでございますので、それは私どもとしては入れる必要があると考えております。

【鈴木委員長】 細かくその辺見ていって議論をするのはちょっときょうの会議の範囲では無理かもしれませんが、ご意見がもし細かい点についてありましたら、先ほど浅野委員も言われましたが、書面でいただけるとまた違うと思います。
 浦野委員、どうぞ。なるべく簡略に。

【浦野委員】 先ほど環境技術が産業との関係、雇用との関係ですが、これは言葉として環境産業、雇用の創出だけ書いてあるわけですが、産業の活性化って、現在ある産業を新たに環境産業をどんどんやっていくということもありますので、活性化とか、雇用の安定化と新たな創出という。現在、雇用が減っていくのを抑えるという効果も非常に大きいような気がしますので、新たな創出だけでなくて産業の活性化とか雇用の安定化というようなキーワードもうまく入れ込んでいけばよろしいんじゃないかなというふうに思っております。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。安井委員、どうぞ。

【安井委員】 今の雇用の点なんでございますが、環境省の出す文書としてどこまで書き込めるかちょっとよくわからない部分がありながらということで発言なんですけれども、先ほど指摘しました1ページの「はじめに」に、一応「持続可能な」というキーワードが出てきております。後の方に行ってしまうと余り出てこないんですけれども、持続可能な、要するにサスティナビリティーという言葉を我々が議論するときには、単に環境的な側面、この環境には資源、エネルギーの供給などを含むんですけれども、そういった環境的な側面だけを満足させればいいという議論は必ずしもしませんで、それと並行してあと二つの要因というか、側面である社会的な側面。例えば、目標のある社会とか、犯罪率を低下させた社会とか、そういうようなものと、それと同時に経済的な側面というのは非常に大きいと。そこまで考えた上で持続可能というものを含めて議論すべきである、それは環境を絡めて議論すべきであるというような言い方をしておりまして、その経済的側面からいうとやはり最大の問題が雇用の確保、安定的供給、創出だろうという気がしないではないんですね。
 したがって、どこまで書き込めるかわかりませんが、少なくとも「持続可能」というキーワードがある限りにおいては、やはりもう少し積極的なスタンスから雇用を書き込んじゃってもいいのではないかと、私は個人的には思っています。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。浅野委員、どうぞ。

【浅野委員】 先ほどの水戸部委員の発言の前半の部分にも関連することですけれども、研究の射程距離として時間範囲についての配慮という、6ページの時間軸のところの記述がやや不足なのかなという気がします。最近、『環境考古学のすすめ』という非常におもしろい本が出てきて、ちょっと紹介をしてやろうと思って読んだんですが、たしかに先を見るためには過去が必要だという。そうすると、その人文社会科学というときに歴史学のようなものとか考古学のようなものが果たす役割があるんですよね。地球環境だって、結構、昔の南極の氷の、何億年前なんて、何万年前なんていうのはやっているわけだろうし。それがあるので、何か先の方ばかりやっていればいいということでもないという、その辺がちょっと落っこっちゃってるなと。
 それから、もう一つの温暖化予算の研究予算の配分をずっとやっているときに、正直言うと非常に生き物系の研究というのは息が長くて、何で毎年毎年同じことをやっているんだろう、なのに全然進歩がないじゃないかと、失礼ながら思うことが多かったんだけれども、やはり考えてみれば時間軸が違う。小野先生から怒られるわけね。おまえの生きている時間と生き物の生きている時間は時間軸が違うと言われて、それはそうだと思うわけで。やはりそちらの方の配慮をしないと、どうしても短期間で、短時間で勝負をつけるということばかりに走っていくと、大事な環境のある部分が欠落するということがあるので、時間軸についての記載をもうちょっと検討して書き込む必要があると思います。

【鈴木委員長】 今の国の予算制度のお金の使い方の制度の中で、非常に短い期間にお金を使わなければならなかったりする縛りがかかっちゃうと。今、浅野委員が言われたような問題から言えば、例えば医学、人の健康にかかわる、あるいは生態系の健康状態にかかわって疫学的研究をやろうというと、少なくとも10年はかかるわけですね。10年かかる予算をどこでどう保証して、どんなふうに研究を進めるかといえば、今の国のお金の使い方ではなかなかできない。何か新しいシステムを工夫しなければ、そういう研究は我が国では成立していかないという現状にあるわけです。これはもう、随分前からぎゃあぎゃあ言っていて、少しずつ少しずつ変化してよくなってきている部分がないわけではないんです。けれども、やはり本当に長期的に腰を据えて、例えば少なくとも10年単位で物を見ようなんていう研究を支える能力は、我が国の政府にはないですね、今のところ。
 秋元委員、どうぞ。

【秋元委員】 すみません、風邪を引いていてちょっとお聞き苦しいかと思うんですけれども、この報告書でいうと13ページの人材の確保・組織の整備、ここに関連するところだと思うんですが、この報告書全体のトーンが、今、我が国で行われている環境研究をどう役に立てるか、どう方向づけるかというのはその視点に全部貫かれていると思うんですね。
 もう一つ非常に欠けているところというのは、むしろ研究そのものをどうやって底上げして国際競争力をつけるかという部分が非常に欠けている。それがまず具体的なあれからいうと、13ページの7のところの書き方だと、人材の確保・組織の整備には二つの側面がありって、第一が研究の管理だとか、規格管理の部門の整理、第二は研究の開発を行い、実施部門の整理であると書かれているんだけれども、まずこの順番からしておかしいんじゃないかと思うんですね。今はやはり実体的に本当にその研究を担う部門をどう整備して、もうちょっと国際競争力をつけるかというのは、やはり我が国にとっては非常に求められているところで、それが最初に来て、それをいかにうまく管理して進行させるかという、それはそれをうまくやるための一つの仕組みなんで、それが第二の方に来るぐらいのことが本当じゃないかなと思うんですね。
 それから、あとの中身のところでは、第二の実施部門についてはという13ページの一番下からのところに関しては、先ほど鷲谷さんからもちょっとご指摘があったけれども、環境省のテリトリーの中だけの議論に、どうもそういう書きぶりになっているので、それで行政法人云々と、こういうものがずっと先に来ているんですけれども、もうちょっとこの環境研究を日本全体で考えたときには、ちょっと書きぶりも違ってくるのではないかなと。特にアメリカなんかと比べて、まず日本の、特に一番私に近い地球環境研究というようなところから見ると、NASAとかNOAAとかというところが日本はほとんどないに等しいんです。そこが担っていない。その分を大学なんかがかなり担っているわけで、実体的には。そういうところと国環研を初めとする独立行政法人、その他のそういう行政関連の研究所というのが支えているという、そういう構造だと思うんです。だから、その辺をオールジャパンというか、そういう環境省テリトリーだけに限らずに、もうちょっと大きくとらえて書いた方が、我が国の環境研究はいかにあるべきかというところの構図がもっと見えてくるんじゃないかなと思うんですけれども。

【鈴木委員長】 松井さん。

【松井環境研究技術室長】 1点、前段の部分で第一と第二が逆ではないかと。確かにそのとおりだと思いますので直したいと思いますが、気持ちを込めていいますと、私どもの部屋人数が足りないのでそんなこともありまして、第一をまず置いてしまったのではないかと、そういうふうに思います。
 それとあと、オールジャパンというのは確かにそのとおりでございまして、気持ちとしては環境省だけのことを書いているつもりはございませんので、全体ということで書いているつもりでございますが配慮が足りないのかなとは思います。

【鈴木委員長】 一わたり、少なくとも一わたりはご意見を伺ったような気が、まだご発言のない方もいらっしゃるかもしれませんが、この案についての議論はここで一段落として、いただいた意見を一生懸命参照しながら、もう一遍事務局が苦労して作業をして、この次の委員会に提出していただくということにしたいと思います。
 まだ議題が若干残っているんですが、環境研究・環境技術開発の重点化、戦略化に係る今後の検討についてという、これは……。事務局、どうぞ。

【松井環境研究技術室長】 本日これだけたくさんのご意見をちょうだいすると思っておりませんでしたので、実はこの2の議題も必要ということで、途中、安岡先生でありますとか、何名かの先生方にご指摘いただきましたように、特に3章の重点化につきましては、分野別の推進戦略で取り上げた、地球的規模の水循環が入っていないということがあるわけでございますけれども、それに対応した課題など、これまでの専門委員会における検討で抜けている課題があるんではないかということで、引き続き重点化については検討していきたいと。あわせて戦略化ということでどんなことをやっていけばいいのかと。今回の専門委員会の報告をいただいた後の部会の中環審の答申につきましても、性格としては一時答申的なものにして引き続き検討は進めていきたいと考えております。
 その理由としましては、分野別別推進戦略については毎年見直すというようなこともございますし、4月に入りますと総合科学技術会議の方におきまして資源配分の方針も決める、と。そのようなこともございますので、引き続き検討をしていきたい。
 その際にどんなことを検討していればいいのか。実は私ども事務局サイドでもちょっとよくわからない部分がございまして、先生方からご自由なご意見をお伺いしたいと、そんなことがありましてつくったものでございますが、時間がもうなくなってきておりますので、引き続き次回、次回は余りたくさん意見をちょうだいしないように直したいと思っておりますけれども、続けて検討していきたいと。どんなことを残された重点化について検討するために、それからあと、戦略を持ってやるためにどんなことをやっていけばいいのかということにつきまして、これから先生方のいろんなご意見をちょうだいしたいということで本日用意したものでございます。ちょっと時間の関係もございますので、本日は……。

【鈴木委員長】 きょう、もう既に済んじゃっている感じですよね。この、今の取り上げてある議題から言えば。
 それにもう一つ、これは老婆心ですけれども、どう直してもこのくらいの議論は起こりますよ、毎回。それはもう覚悟しておかないといけないとは思います。
 どうぞ、審議官。

【山田審議官】 一つコメントとそれからもう一つ質問なんですけれども、一つは要するに環境政策が目指すものというのはここに余り書いていないんですけれども、昨年の年末、ちょうど1年前に閣議決定してもらいました環境基本計画を毎年見直すということになっておりまして、これも年明け早々取りかかることになっておりまして、なるべくその作業を見ながらそれを実現する一つのツールとして環境の科学技術のリソースを投入していきたいと実はそういうふうに思っておりまして、それを何となくここに十分書き込むというのはできていないなと。ただ気持ちとしては、アドミニストレーションとしては常にそういうことを思っておるわけです。
 一つせっかくの機会ですから実はお聞きしたいんですが、1年間、本当に大変なお時間をいただいてやってきて感謝しているんですが、先ほどちょっと予算の数字もご紹介させていただいたと思うんですが、一応プラス8億円、競争的経費3本と見ますと6億円なんですけれども、率にすると4%、日本の政府全体が4.8ですが、文部科学省の大学整備の経費を除くと相当大きな伸びになっておりまして、政府全体がマイナスで、しかも公共事業は10%マイナスで、環境省も実は省とすると今のところマイナスでして、公共事業を入れると相当大きなマイナス、除いても結構マイナス、今のところマイナスですが、最後は多分、横に戻すかぐらいの感じなものですから、一応1年間いただいたご議論はなるべくそこの中で現実のプロジェクトに生かしていきたいと思っておるんですが、例えばこのレポートをちょっと外れまして、そういう政府の持っているリソースを使うために、この場が果たしてきた役割をどういうふうにごらんになっているのか。あるいは、今回、結構夏前にばたばたとやっていただきまして、自然共生型流域圏・都市再生という非常に新しい切り口を総合科学技術会議に提示できたり、あるいは温暖化対策も非常に対策技術中心だったところを監視・観測という伝統的な切り口もしっかり位置づけることができたとか、私どもとしてはこう思っておるんですが、両方の場にかかわられている先生もいらっしゃいますし、また、むしろこの場の委員とされていて、一般の新聞なりテレビを見ていて、例えば総合科学技術会議がそれ自体、あるいは現在の政府全体に仕上がった姿をどう見ているか、これは先ほども予算の単年度主義もありますが、独法化で非常にうまくできている部分もありますし、あるいは特殊法人の出資金でうまくいっていたところを今度は逆にそうでなくするという別の動きもありますけれども、具体的にどんなふうに1年間の印象を持たれているか、せっかくの機会ですからお聞かせいただければ非常に幸いでございます。

【鈴木委員長】 今、委員の先生方お一人お一人にお聞きするわけにもいきますまい。ぐるっと回ったら1時間かかる。いみじくも今審議官がご自分で評価を下された部分があって、そういう意味では私個人から言えば、割に忌憚のない意見がたくさん出て、しかもその中には向きをはっきり変えて、こっち向いてこういうふうに歩かないとだめだよということを意味するようなポイントが何点も出ていたと思います。それが報告書にそのままの形で生きてくるとは夢にも思っていませんし、独特の、何ていうのかな、こういう文章の持っている調子があるわけですから、もっと平たい言葉で書かれなきゃいけない部分もあるんだろうと思います。だけれども、それはほかのメディアをお持ちの方もいらっしゃるわけでしょうし、これからの環境科学全体の研究の展開の中に、違った形で生きるぐらいの議論をしたんじゃないかなと、そんなふうに思っています。いや、そんなことないとおっしゃる方もいるかもしれませんが、どなたかお一人か2人。

【浅野委員】 予算が伸びるというのはある意味では当たり前のことと風潮があるわけですが、問題はやはり伸びた予算がどこにどう配られるかの問題。そこがやはり最大の課題ではないでしょうかね。ばらまくことはよくないと思うんですよ。ばらまいてはいけないんですが、しかし、どうもやはり何かこう人材がいないということと、人材を育てるということとの谷間みたいなのがあって、どこかに集中してしまっている。だから、少数のところにすごく負担が集まっていて、増えた予算が本当に生きるためにどうしたらいいのかということを真剣に考える時期に来ていると思いますね。予算を増やすということについてはもっと大いに努力をしなければいけないんですが、それをどう生かしていくかということが今、喫緊の課題という気がします。

【鈴木委員長】 もう平田先生ので最後にしましょう。

【平田委員】 では一言だけ。
 今、環境「庁」から「省」になられて、やはり随分大きく前進されたと思いますが、経済産業省とか、国土交通省とか他省庁にやはり指示をするというか、錦の御旗は環境でございますのでやはり高く掲げて、他省庁を引っ張っていくという覚悟は必要だと思います。ぜひその姿勢を出していただきたい。

【鈴木委員長】 最後にインカレッジメントが入って。
 ほかに何かありますか、事務局。

【松井環境研究技術室長】 ありません。

【鈴木委員長】 これでよろしいですか。
 それでは、きょうの会議はこれで終わりにいたします。どうもありがとうございました。