中央環境審議会 総合政策部会(第88回)議事録

第88回 中央環境審議会 総合政策部会

平成29年2月28日(火)10:00~11:59

TKPガーデンシティ永田町 ホール2A    

議事次第

1.開会

2.議事

  (1)第四次環境基本計画の見直しについて(諮問)

  (2)その他

3.閉会

配付資料一覧

【資料】

 資料1     環境基本計画について(諮問)

 資料2     第五次環境基本計画の策定について(概要)

 資料3     第五次環境基本計画の策定について

 資料4     社会経済及び環境に関する状況

【参考資料】

 参考資料1   中央環境審議会総合政策部会名簿

 参考資料2   第四次環境基本計画の見直しスケジュール(案)

 参考資料3-1 中央環境審議会総合政策部会の小委員会及び専門委員会について

 参考資料3-2 総合政策部会小委員会及び専門委員会名簿

午前10時00分 開会

○山田環境計画課計画官 定刻になりましたので、ただ今から中央環境審議会第88回総合政策部会を開会いたします。

 議事に入ります前に、お手元の配付資料の御確認をお願いいたします。配付資料については、議事次第の下、配付資料一覧に記載のとおりでございますので、御確認いただき、もし不足している資料等がございましたら、事務局までお申しつけいただきますようお願いいたします。また、環境省では、環境負荷削減の観点から、審議会等のペーパーレス化の取組を推進しております。本日の資料も既に環境省ホームページにアップしておりますので、傍聴される方につきましては、何とぞ御理解、御協力くださいますようお願いいたします。

 本日は、委員、臨時委員総数28名のところ過半数の委員、臨時委員に御出席いただいており、定足数の要件を満たし、部会として成立していることを御報告いたします。

 カメラを撮影されている方は、ここまででお願いいたします。

 本日の総合政策部会は、中央環境審議会委員、臨時委員の改選後、最初の部会でございます。本部会に御所属いただく委員、臨時委員につきましては、参考資料1に名簿がございますが、そちらのとおりでございます。部会長には、中央環境審議会会長の指名によりまして、武内和彦委員に御就任いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。なお、本日御出席の委員、臨時委員につきましては、お配りしている座席表のとおりでございます。

 また、本部会に設置しております小委員会及び専門委員会につきましては、参考資料3-1のとおりでございます。部会長の指名により、それぞれ御所属いただく委員等につきましては、参考資料3-2のとおりでございます。

 ここで、事務局を代表いたしまして、総合環境政策局長の奥主より御挨拶申し上げます。

○奥主総合環境政策局長 総合環境政策局長の奥主でございます。総合政策部会の開催に当たりまして、一言、御挨拶をさせていただきます。

 委員の先生方におかれましては、本日は、年度末を控えお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。また、日頃より環境行政の推進に御理解と御協力をいただき、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 さて、平成24年4月に閣議決定されました第四次環境基本計画は、策定から5年が経過いたしました。その間、平成27年の国連サミットにおけるSDGsの採択、また、昨年のパリ協定の締結など、国内外の状況は大きく変化しております。また、その一方で、平成26年には、「環境・生命文明社会の創造」につきまして、中央環境審議会より意見具申もいただいております。こうした状況を踏まえまして、新たな計画を策定すべく、本日、諮問をさせていただきました。

 我が国の今後の環境政策はいかにあるべきか、様々な観点から御議論いただき、その御議論を踏まえ、新たな環境基本計画の策定をしてまいりたいと考えております。今後とも環境行政につきまして、大所高所からの御指導、御鞭撻をお願いいたしまして、私からの御挨拶とさせていただきます。

 本日は、よろしくお願いいたします。

○山田環境計画課計画官 それでは、今後の進行は武内部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○武内部会長 皆さん、おはようございます。部会長に自分が指名いたしました、武内でございます。

 この総合政策部会は、環境基本計画の見直しをするという、大変大きな役割を担っております。そのような中で、今、局長からも話がありましたように、国際的にはパリ協定、SDGsなどを踏まえて、どのようにして改定していくかということが大きな課題になっております。

 SDGsについては、内閣を中心に本部が設けられ、SDGsの推進について議論がされておりますけれども、いわゆる国の法定計画の中にきちっとSDGsを入れるという点では、この環境基本計画の改定での議論というのが、本格的には初めてのケースになるだろうと思っております。いろいろと目標や指標が多過ぎるというような御意見もあるわけですが、そのような中で、いかにSDGsを体系的に取り入れていくかということが重要になると思っております。

 それからもう一つ、これも局長から話がありましたが、いわゆる循環と共生を組み合わせた「地域循環共生圏」については、もう3年ぐらい前になりますけれども、私が当時会長をしていたときに、当時の環境大臣に対して意見具申という形で、皆さんの御意見を踏まえて提案させていただいたものでございまして、ここで言う循環の中には、環境基本計画は当初よりそうなのですけれども、いわゆる炭素の循環という概念も入っている考え方なのですね。ですから、いわば低炭素社会、循環型社会、それから自然共生社会、この三つを統合した地域圏の形成ということになろうかと思います。

 今、いわゆる地方の創生の問題、人口減少下での社会づくり、それから自然資本をいかに活用するかといったことが、国内で非常に大きな課題となっておりますけれども、そうした課題に対しての解決策を見出す手段として、こうした概念も使っていくとよいのではないかと考えておりまして、是非、そのような観点からの皆さん方の御意見をいただいて、よりよいものに改定を進めていくことができればと思っております。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 以下、座って議事進行をやらせていただきたいと思います。

 それでは、中央環境審議会令第6条第5項により、部会長は、あらかじめ部会長代理を指名することとなっております。つきましては、部会長代理を髙村ゆかり委員にお願いしたく存じます。どうぞよろしくお願いします。

 それでは、議事に入らせていただきます。

 「第四次環境基本計画の見直しについて(諮問)」を議題といたします。

 平成24年4月に策定された本計画は、内外の社会経済の変化や施策の進捗状況に柔軟にかつ適切に対応するため、策定後5年程度が経過した時点を目途に計画内容の見直しを行うこととされております。今般、そのような意味で見直しを開始したいと思います。

 この諮問の趣旨等につきまして、事務局から説明をお願いいたします

○山田環境計画課計画官 それでは、事務局から説明をさせていただきます。

 まず、資料1を御覧いただければと思います。これは本日付けで環境大臣から中央環境審議会会長に諮問がなされたものでして、環境基本法第15条第5項において準用する同条第3項の規定に基づき、次のとおり諮問するということで、「環境の保全に関する基本的な計画(環境基本計画)は、平成24年4月27日閣議決定による変更後の国内外の経済社会の変化を踏まえ、いかにあるべきか。」ということで、諮問をさせていただきました。ちなみに、次のページは、中央環境審議会から総合政策部会に付議をしているという資料でございます。

 資料2を御覧いただければと思います。「第五次環境基本計画の策定について(概要)」という資料がございます。こちらは、これから御説明します資料3の概要となっておりますので、適宜、御参照いただければと思います。

 それでは、資料3を簡単に説明させていただきたいと思います。全体で20分弱ぐらいで説明させていただきます。「第五次環境基本計画の策定について」ということで、2部構成にしてあります。一点目が「第四次環境基本計画策定後の諸情勢と計画の成果・課題」、二点目が「計画見直しの基本的方向」でございます。

 まず、最初の「第四次環境基本計画策定後の諸情勢と計画の成果・課題」でございますが、「第四次環境基本計画策定後の社会経済状況の変化」ということで、まず世界の動きについて六点挙げさせていただきたいと思います。

 一点目、21世紀の経済成長の波は、全世界を覆うようになってきまして、2050年には世界人口の約7割が都市部に居住するという、急速な都市化が進んでいると認識しております。その結果、環境負荷が加速度的に増加するという状況は、今後も進んでいくだろうと思っております。

 二点目、このような世界経済発展ですとか人口増大を踏まえて、開発途上国にも現在の先進国に倣った社会経済システムの維持・拡大が起これば、資源の枯渇ですとか、生態系サービスの供給不全など、更に厳しい環境上の制約に直面する可能性が高いのではないかと考えております。

 三点目、今度は社会的な面ですけれども、イギリスがEUを去年の5月に離脱することを決定しました。また、これも御案内のとおり、今年の1月ですが、アメリカの大統領が交代したこともございます。このように、幾つかの国では、世論の高まりを受けて、これまでの政策の方針からの転換を目指す動きが見られると認識をしております。また、EU諸国ですけれども、議会選挙ですとか大統領選挙を今後控えておりまして、更に大きな変化が起こる可能性もあると思っております。また、国際的なパワーバランスが、新興国の大国化等により一層変化を来しており、既存のガバナンスでの対処が困難な課題もあるのではないかと考えております。

 四点目、このような流れの中でどう対応していくのかということですが、先ほど部会長からもお話がありましたとおり、2015年9月の国連総会において、持続可能な開発のための目標(SDGs)を中心といたします「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全加盟国により採択され、社会、経済、環境に関する様々な課題を2030年に向けて統合的に解決するという意思が共有されたということでございます。さらには、同年12月にパリ協定が採択されまして、国連気候変動枠組条約の全加盟国が参加する国際枠組みが史上初めて合意されたということでございます。さらに、このパリ協定は採択から1年以内という早さで発効を実現しております。

 五点目、2015年3月に仙台で行われました第3回国連防災世界会議におきまして、今後15年の期待される成果といたしまして、災害リスク及び損失の大幅な削減を目指すとされましたが、この中には環境的資産も含まれておりまして、さらに、災害リスクの管理・削減のために自然生態系の活用が有効であるということが認識されているということでございます。

 2ページ目に移りまして、六点目、このような一連の動きに伴って、各国の政府のみならず地方自治体、企業、金融機関、市民等のあらゆる主体の次なる行動が既に始まっており、2030年または今世紀後半という長期にわたる社会・経済の大きな流れとなりつつあると認識しております。

 一方の国内の動きでございますが、一点目、世界的には人口が増えている状況ですけれども、国内は逆に人口が減っておりまして、2060年になりますと、現在の約3分の2まで縮小し、高齢化率が40%近くに急上昇するということが予測されております。さらに、都市圏への人口集中ということもありまして、孤立可能性集落というのが急増し、地方公共団体の運営も厳しくなってくるという状況があると思います。

 二点目、このような状況変化は、国土の管理にも影響が及ぶと認識しておりまして、耕作放棄地の増大ですとか、適切な森林管理の担い手不足の深刻化等を通じまして、昨今拡大する自然災害による被害の一因になっているという指摘もあります。一方、新たな国土利用の機会として捉えるという動きもあると認識しております。

 三点目、経済面では、デフレからは一定程度脱却が進んで、労働力人口も若干回復傾向にあると思っておりますが、労働生産性はほかの先進国と比べ依然低い状態でございまして、働き方改革等を通じてその改善が図られようとしております。

 四点目、エネルギーについてでございますが、再生可能エネルギーの導入については、FIT制度の施行ですとか、単位当たりの設備コストが世界的に減ってきているという状況がある一方で、原子力発電所の運転停止が長期化をしておりまして、石炭火力発電所の稼働等を通じまして、我が国の温室効果ガス排出量のトレンドは微減にとどまっているという事情があるかと思います。

 五点目、循環分野ですが、循環型社会形成推進基本法が成立して以降、資源効率性ですとか循環利用率が上昇するとともに、最終処分量が減少しているという進捗が見られていると思います。

 六点目、技術革新につきましては、IoT、AI等の急速な普及がありまして、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済構造が根底から転換しつつあることについても指摘されるようになっていると認識しております。

 七点目、さらに、気候変動への対応ですとか地域づくりに関しましては、生物多様性等を活用しましたEco-DRRですとかグリーンインフラストラクチャー、グリーンレジリエンスといった視点での取組が、政産官学それぞれの立場から注目が集まっていると認識しております。

 2ページ目の一番下からですが、「第四次環境基本計画の主な成果」といたしまして、計画策定以降に「生物多様性国家戦略2012-2020」、「第三次循環型社会形成推進基本計画」、「地球温暖化対策計画」、「気候変動の影響への適応計画」、今策定中の「長期低炭素ビジョン(仮称)」といった、各種計画の閣議決定等ですとか、水銀関係の法律の制定、それからPCBの処理推進の特別措置法の改正など、多くの分野で国の施策の進展が見られたと認識しております。また、東日本大震災後の復興の観点ですが、放射性物質による汚染防止のための関係法律の整備ですとか、除染、中間貯蔵施設の整備、汚染廃棄物の処理、健康管理・健康不安対策等につきまして、一定の進捗が見られたと考えております。さらには、東日本大震災の教訓を踏まえまして、各種自然災害に迅速かつ的確に対処するために、災害廃棄物対策、被災ペット対策等について、関連法制度の整備等も図られたと考えております。

 ただ、「第四次環境基本計画の主な課題」ということで、幾つか課題もあると思っておりまして、環境・経済・社会の三分野統合というのは、前から言われている話ですが、どのように達成していくのかという具体的なアプローチが明確ではないと認識しております。

 また、地球温暖化、循環、生物多様性、化学物質等の各分野での個別の行政計画と環境基本計画との関係が、なお明確に整理されていないということもあると思います。

 さらに、多様な主体による行動と参画・協働ですけれども、具体的な内容については、結局、個別の対策・施策を羅列する状況となっておりまして、国民に対しては、分かりにくいものになっていると認識しております。

 さらに、総合的環境指標でございますが、分野ごとの均衡を欠く面があり、環境全体の改善の進捗状況を示すデータとして、まだ十分に活用されていないという面もあると思います。

 東日本大震災復興の関係ですが、帰還困難区域も含めた除染、中間貯蔵施設の整備、汚染廃棄物の処理、健康管理・健康不安対策の実施等について、まだ解決すべき点は多く残されていると思っております。

 これらを踏まえまして、4ページに移りまして、「計画見直しの基本的方向」ということで、五点挙げさせていただきたいと思います。

 まず一点目は、「普遍性を持ちつつ国際・国内情勢等に的確に対応したビジョンづくり」ということでございます。先ほどもご説明いたしましたとおり、持続可能な開発に関する2030アジェンダとパリ協定は、今後数十年にわたる社会経済活動の方向性を根本的に変える「ゲームチェンジャー」としての性質を有しており、金融を始めとした各種媒体を通じたパラダイムシフトが世界的に発生することが想定されております。ヒト・モノ・カネ・情報がボーダーレスに移動する現代におきまして、こうした国際的な潮流が今後の我が国の社会経済にも大きなインパクトを与えると考えております。そのため、積極的かつ着実な実施と国際協力等を通じまして、課題解決に貢献していくことが重要ではないかと考えています。

 特にパリ協定につきましては、明確な長期目標を掲げた上で、その長期目標に対して、世界全体で進捗の確認を行い、その結果を各国の行動、支援の強化に活用するという、「グローバルストックテイク」という仕組みが設けられております。これは、全ての国の参加を確保しながら、効果的なルールに基づくPDCAサイクルを通じまして、各国の目標を以前のものより前進させ、取組の実効性を確保するという点において、永続的な枠組みになっていると認識しております。

 このような流れを踏まえまして、第五次環境基本計画では、今までの普遍的な理念は維持した上で、国際情勢の変化を的確に捉え、それを踏まえた国内対策の発展、国際連携の展開を促すビジョンの提示を目指すべきではないかと考えております。

 二点目ですが、「「持続可能な開発の目標」(SDGs)の考え方の反映」でございます。環境基本計画の掲げる「環境・経済・社会の統合的向上」という考え方は、全ての国を対象として採択されたSDGsの考え方と親和性があると認識しております。これは、SDGsで世界が共有するに至った「統合性」という考え方を環境基本計画が早期に取り入れたことによるものであり、環境基本計画の方向性が適切であるということを示唆するものではないかと考えております。その上で、SDGs がマルチベネフィット、複数の目標に対する統合的な解決、全員参加型、バックキャストという特徴を持っていることを踏まえ、それに則して環境基本計画を見直すべきではないかと考えております。その際は、SDGsの視点により、経済・社会に関する諸課題を環境面から解決するという新たなアプローチに我が国が挑戦するということを強調すべきではないかと考えております。また、理念に加えまして、現実の課題に対するアプローチとして、SDGsの概念を用いて、施策の幅を広げることにより、SDGsを実際にどのように活用するのか、役立てるのかということを示す計画とすべきではないかと考えております。

 三点目でございますが、「環境・経済・社会の統合的向上及び安全を基盤としました低炭素・循環・自然共生の三社会統合に向けた取組の具体化」ということでございます。環境の観点を社会・経済活動を含めた全ての計画・活動に主流化させる、あるいは基盤としての環境を前提に社会・経済を再構成するというアプローチを通じまして、環境政策を推進力として社会・経済の諸課題を「同時解決」するような方策を具体的に提示することが、第五次計画において重要な要素になるのではないかと考えております。

 また、こうした同時解決を実現する上で、環境政策間におきましても、安全を基盤としました低炭素・循環・自然共生の三つの要素につきまして、統合的アプローチを通じ「循環共生型社会」を実現する具体的な方策を示していくことが望ましいのではないかと考えております。

 その際ですが、2030アジェンダで持続可能な開発を、経済、社会及び環境の三つの側面で統合的に達成することが明記されているという点ですとか、これも先ほど部会長からお話がありました、平成26年7月の意見具申で記載されていることも踏まえまして、まずはビジョンを明確にした上で、経済のグリーン化、地域活性化、健康寿命の増進、国土の防災・減災機能の維持・強化等の様々な政策課題のマルチベネフィットを実現し、国民の「豊かさ」「幸福感」「生活の質」の更なる向上に資するような対策・施策を具体的に記載する方向で検討を進めてはどうかと考えております。

 四点目ですが、「個別分野における行政計画を踏まえた重点分野等の設定」でございます。

 重点分野の設定自体につきましては、一定の成果を上げているということから、第五次計画においても、そのアプローチは継続すべきであると考えております。

 第五次計画では、特に分野横断的な課題への対応について、重点的に記載しながら、個別的なところにつきましては、個別分野における行政計画との関係をできるだけ整理し、適切な役割分担の下で検討することにも留意すべきではないかと考えております。

 最後の五点目でございますが、「計画の実効性の確保」でございます。計画の長期的な目標年次につきましては、SDGsですとかパリ協定の趣旨を踏まえまして、分野に応じまして、2030年から今世紀後半までとしつつ、個別の対策・施策については、特にSDGsのバックキャストの考え方を踏まえた上で、5年から10年程度の間に実施するものとして記載し、具体性を確保すべきであると考えております。

 また、環境の状況変化に関するトラッキングをより確実に担保する、客観的な指標の開発を引き続き目指すべきではないかと考えております。その際、SDGsの中で今グローバル指標というものが検討されております。また、施策ごとの個別指標というのもございますので、そういったものを念頭に置きながら検討を進めるべきではないかと考えます。さらに、自然資本等のストックに着目した包括的富など、指標に関して新たに提示されつつあるアプローチを環境基本計画の中でどのように扱うかについても検討を進めるべきではないかと考えております。

 最後ですが、「環境研究・環境技術開発の推進戦略」、これは平成27年の夏にできたものですが、これを環境基本計画に基づいたものとして位置付け、戦略に基づく施策の進行管理を計画の点検と一体化して行うことについても検討を進めるべきではないかと考えております。

 簡単ではございますが、資料3について説明させていただきました。

 資料4ですが、「社会経済及び環境に関する状況」とありまして、かなり大部にわたる資料がございます。これについては説明はいたしませんが、目次というところで100項目、今回用意してございますが、議論の御参考にしていただければと思います。

 それから、参考資料2を御覧いただければと思います。現行の第四次環境基本計画の見直しスケジュールの(案)ということで、雑駁ですが示させていただきました。本日、中央環境審議会に環境大臣から諮問された、ということでございます。その後、環境政策を取り巻く国内外の状況の変化を踏まえて、基本的論点に関する方向性、計画の骨子などについて御審議いただきたいと考えております。8月から9月頃ですが、計画策定に向けた中間取りまとめ、これは計画策定に向けた考え方や骨子ということになると思いますが、こちらを公表させていただき、意見募集を行いたいと考えております。9月以降は、各種団体等との意見交換というのを第四次計画策定のときと同様に行いまして、さらには原案作成に向けた検討も同時並行で行いたいと考えております。平成30年1月から3月頃ですが、原案の取りまとめ、パブリックコメント、最終的には中央環境審議会からの答申を頂きまして、3月から4月頃に、第五次環境基本計画を閣議決定したいというスケジュールで考えております。

 説明は以上でございます。

○武内部会長 どうもありがとうございました。以上、事務局からの説明でございました。

 今日は、第四次環境基本計画の見直しの基本的な方向について、委員の皆さんからの御意見を伺いたいと思いますが、今日は初回でございますので、一通り皆さんに簡単に自己紹介をしていただいて、その後、3分程度で御意見を頂ければと思いますが、そのような進め方でよろしいでしょうか。

 それでは、最後に時間が余ったら、それぞれまた札を立てていただいて、いろいろな御意見、御質問を受けたいと思いますが、最初に髙村部会長代理から順番にお願いしたいと思います。

○髙村(ゆ)委員 ありがとうございます。名古屋大学の髙村でございます。法学、特に国際法という、国家間の合意、法的文章を主な研究対象にしております。どうぞよろしくお願いいたします。

 私から、今回の資料3について、幾つか意見を申し上げたいと思っております。若干、大きさ、小ささがあるのですが、一つは、資料3の2ページ目にございます、国内の動きのところのエネルギーのところについてであります。エネルギーといいますか、温室効果ガスの排出量のトレンドについて書いてくださっている上から四つ目の丸でございますけれども、これは資料4のNo.38に、実際の2015年の速報値までの資料がございますが、排出量の動向について、具体的に書いていただいてはどうかと思います。

 2013年までは、特に原子力発電所の運転停止の長期化での排出増ということがあったわけですが、2013年以降、2014年、2015年と、省エネ・再エネで、やはり毎年着実に今排出量が減っているということ、それから、同時にいわゆるエネルギー起源のCO2以外のガスの増加の傾向ということが、これは速報値のプレスリリースに書いてあると思いますけれども、その点は書いていただくことが必要ではないかと思います。

 それと、同じ場所ではございますけれども、これは豊岡さんからもあるかもしれませんが、やはり近年の一つの大きな特徴というのは、地域にある資源を活用してエネルギーを賄い使っていくという、地域分散型のエネルギーの仕組みをつくろうという、地域の努力ということをやはり触れていただくということが、先ほどありました一つの将来ビジョンを見ていく上でも、統合的なビジョンを見ていくという上でも、非常に大事ではないかと思います。

 あと二つだけ申し上げたいと思うのですが、もう一つは、同じく資料3の3ページにありますが、「第四次環境基本計画の主な課題」のところで、一つのキーワード、これは4ページにもつながってまいります、「統合」ということが非常に重要だと思います。SDGsでなぜそのような方向がとられたのかということも含めて、なぜこれが非常に今後重要な課題であるのかということについては、少し掘り下げて書いたほうがよいのではないかということが二点目でございます。

 そして、最後でありますけれども、4ページ以下の「計画見直しの基本的方向」のところで、恐らく今必要なのが、幾つかの時間軸に沿った計画のサイクルをうまく組み合わせて回していくことではないかと思います。一つは長期のビジョン、特にインフラを変更していくような、地域を長期に向けた一定の方向に向けていくようなときには、一定程度の長期のビジョン、計画が必要だと思いますし、同時に中期の具体的な課題について対処をしていく計画のサイクル、より短期の当面の課題といったような、幾つか複数の時間軸の計画プログラムを組み合わせて回していくということが大事になってきているように思っておりまして、それは計画の進捗等の評価にも関わってまいりますが、そうした視点を盛り込んでいただけるとよいのではないかと思っております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、大塚委員、お願いいたします。

○大塚委員 ありがとうございます。総論的なところについて、4点ほど申し上げておきたいと思います。

 一つは、資料3の5ページ、6ページの辺りと関係いたしますけども、「幸福感」、「生活の質」の更なる向上という辺りが非常に重要なテーマとして挙がってきていると思います。これはこれで非常に重要だと思いますので、是非書いておいていただきたいです。

 それとともに、取組を具体化するに当たっては、現在世代の幸福とともに、将来世代の幸福のことも考えなければいけないという大きな問題がございます。2050年とそれ以降についての社会を担うような将来世代についての利益とか幸福についても、是非尊重していただく必要があるということがございますので、これは温暖化の問題等で特に出てくるわけでございますが、このようなことも環境施策に反映させることが重要でございますので、その点を是非入れていただきたいということが第一点でございます。

 第二点としては、既に幾つか書いていただいていますけども、6ページの4行目のところで、ほかの行政計画との関係を整理するということがございまして、これも非常に重要ですので、是非具体的に書いていただきたいと思っています。例えば、温暖化に向けた適応計画、あるいは適応についての環境基本計画と国土形成計画との関係ということが重要になってまいりまして、この二つを、それこそこれも統合することが重要になってきますので、是非、その点を入れていただきたいということが第二点でございます。

 それから第三点でございますけれども、これも5ページに戻りますが、先ほど髙村委員が言われたこととも関係しますが、低炭素・循環・自然共生の三つを統合していくということは非常に重要なアプローチだと思っておりますけども、同時に、この間に齟齬が生じる可能性もございますので、そのような点も是非書き込んでいただきたいということがございます。例えば、高度なリサイクルをしていくときとか、あるいは、廃プラスチックの問題とか焼却の辺りの問題を考えるときに、低炭素の問題と循環の問題の間に若干齟齬が生じる可能性もございますので、統合は大事ですけども、同時に齟齬が生じる場合の解決の仕方についても、方針を示していただく必要があるということが第三点でございます。

 それから第四点ございますけども、包括的富の話が最後に出てまいりまして、これも最近の環境経済学の大きな進展として重要な点だと思っております。自然資本について、ストックに着目するということで、今までにない斬新な試みであって、非常に重要だと思っておりますが、他方で、自然資本と人工資本は本当に代替し得るかという、割と根本的な、強い持続可能性と弱い持続可能性の問題とかも残ってはおりますので、これに関しても、解決されているわけではないと思いますけども、臨界資本と呼ばれる本質的な自然資本はなお残すべきだという、人工資本に必ずしも代替できるわけではないという考え方もございますので、その点についても是非配慮をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 すみません、自己紹介をするんですよね。法律(環境法)をずっと研究してまいりました。どうぞ、今後ともよろしくお願いします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、崎田委員、お願いいたします。

○崎田委員 ありがとうございます。今日、8時から別の会議がありまして、終わってから参りました。遅刻をいたしまして、大変失礼いたしました。私はジャーナリストとして歩んでおりますが、できるだけ暮らしや地域の視点でということで、今、NGOの皆さんとの出会いで、そのような活動なども広めております。全国で環境まちづくりに取り組む方たちのネットワークや、本当に自分たちの普段ベースにしている地域に貢献しようという方たちとのネットワークを生み、環境学習センターの指定管理とか、いろいろな視点で現場も運営しております。よろしくお願いいたします。

 すみません、御説明をきちんと伺っていないので、自分がこのようなところを強調したいと言っていた点が四つぐらいありまして、それだけ発言させていただければと思っております。

 やはり今回、昨年来のパリ協定とか、伊勢志摩サミットで強調された資源の効率的な活用の重要性のような世界的なことが非常に高まっている中で、低炭素に対する目標を脱炭素にするとか、循環のところも、本当にごみゼロを明確につくっていく社会にするにはというような、ある程度、もう大きな目標を掲げながら、現実的なものをみんなで考えて変えていくという、そういうようなビジョンを高く持って、現実をともに変えていくというような視点を大事にしていったらどうかというふうに考えてきました。

 現実を変えるときには、やはりいろんな御意見にもありましたように、自治体もしっかりとキーパーソンになり、その地域がどのようにエネルギー政策とか地域改善のこと、いろいろなことに関わっていくかということが大事だと思いますので、環境政策だけではない、エネルギーとか、国土形成計画とか、多様な計画づくりと連携をしながら、本当に現実を変えていくというところ、どう動かしていくかというところを考えるのが大事だと思っております。

 なお、そのときに、やはり自治体がキーパーソンになるといっても、市民とか社会がビシネススタイル、ライフスタイルをきちんと変えていくというところに移っていかないといけないわけですので、しっかりと、そのようなボトムアップ――ボトムアップではなくて、目標を明確にということが中にありましたけれども、やはり強い目標とボトムアップという、その連携をしっかりつくっていくというところが今回大事なのではないかと思います。

 それを具体化するために、SDGsをしっかりと目線に据えるというのは、私は今回のこの提案は大変すばらしいと思っております。SDGsは世界がこれからのありようとして考えたことですが、これを実現させるには、地域の課題解決にも直結する話で、地域の目線で考えながら、世界が将来を共有するときの指標としては、このSDGsというのは国連が検討を重ねてきた一つの成果であって、私たちも是非活用していければと思っております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、白石委員、お願いいたします。

○白石委員 国立環境研究所の白石でございます。私、化学が出身なもので、化学物質、環境化学物質についていろいろ研究をしております。

 この分野は、WSSDの2020年目標というものがありまして、世界的に化学物質の管理、持続的な利用を目指した化学物質の管理ということがグローバルに進められているんですけども、具体的にはそれぞれの経済圏で独自の政策が行われているという状況があって、例えばRoHSの問題で、これは家電製品ですけれども、日本のメーカーがいろいろと苦労なさっているというようなこともあるということです。

 一方、発展途上国等に目を移しますと、それぞれの国で、別々に、管理が甘いようなところも見られ、そこについての対応が求められているようなところだと思います。

 国内で見ますと、化学物質の管理に関しましては、化審法なり、農取法なり、様々な分野、あるいは環境の質のほうで言いますと水質・大気、あるいはもののほうで見ますと、循環での有害物質というところで、様々な取組がとられているのですけれども、それぞれが必ずしもいわゆる化審法でいう生産の場面から、循環でいう廃棄、あるいはものの循環という分野において、その管理が十分に政策等の連携がとられているというところまでは至っていないということがありまして。ここで基本計画の策定の見直しの要点として統合ということがうたわれていますけれども、統合がこの分野で非常に重要であると感じております。

 一方、資料3の4ページあるいは5ページに、「これまでの~普遍的な理念は維持した上で」とか、「安全を基盤とした低炭素・循環・自然共生の三つの要素について、統合的アプローチを」とるというところです。これは非常に賛成するのですけれども、この中で、三つの要素にだけ着目しますと、安全という部分がおろそかになりがちであろうと想像します。SDGsの中でも、安全の部分に関しては、それほど重点的にうたわれているものではないと認識していますので、この「安全を基盤とした」という点についてしっかりと進めていただきたいと思います。

 化学物質の管理については、WSSD2020年目標はもう達成目前にあるということで、新たな目標が求められているというところです。これも、国際的な観点から、日本から、この計画を見直す中において、国際的な視点でビジョンを提示するということも求められていると思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、髙村典子委員、お願いいたします。

○髙村(典)委員 国立環境研究所の髙村でございます。専門は、生物多様性、保全生態学なのですが、特に淡水域を場としてやっております。4月から、国立環境研究所は琵琶湖分室が開設されますが、そちらのほうに移らせていただくことになります。よろしくお願いいたします。

 生物多様性については、JBO2という評価書を作成していただいたのですが、その結果を見ていただいたら分かりますように、絶滅危惧種は増え続けており、国内の自然環境は劣化しているという評価が厳然と出ており、経済・社会と深く関わらせながら、その保全の仕方を考えていかないといけないという状況になっておりますので、統合化の視点が非常に大切だと思います。

 また、政策の評価は、科学的なデータに基づいた評価ということ、適切な指標をつくって、常に見ていくということができるような計画をつくっていく必要があるだろうと思います。

 地域に参りますと、生態系に関する価値観は非常に多様であって、それぞれ、いろいろなサービスのトレードオフがあり、それぞれのステークホルダーの人によって考え方も異なるわけで、その合意形成の手法、それに至る手法も提示しながら、地域の人たちがどのように判断をしていくかが考えられるような計画にしていただきたいと思っております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、豊岡委員、お願いいたします。

○豊岡委員 徳島県から参りました、豊岡と申します。まさに地方の動きというか、過疎化・高齢化、最先端の一つでございまして、私は、地域の中で再生可能エネルギーを、地域の主体によって事業化をして、地域が便益を受け取るというような、再生可能エネルギーのあり方ということで、一般社団法人を立ち上げておりまして、風力、小水力、太陽光、バイオマスなど、地域エネルギーに関わっております。

 その中で、ご説明いただいた資料について、ありがたく拝聴したのですが、特に資料3の「第四次環境基本計画の主な課題」というところで、環境・経済・社会を統合して、それをアプローチするというような流れですね、これは地方にとって大変歓迎すべき視点だと思いまして、非常にうれしく思っております。

 そして、地方はいろいろな計画とかビジョンとかを持っているのですが、それが羅列に終わっていて、具体的に問題解決に至っていないというところにも共感をしております。

 私どもが地域の中でそれを考えるときに、なぜそうなるのかということを日々突きつけられております。そして、私どもが一番申し上げたいことは、まず、ビジョンが明確ではないということです。地域が今どのような立場に置かれていて、例えば地域のエネルギー開発にしても、コミュニティパワーの三原則というものがございますが、地域の利害関係者がプロジェクトの大半、もしくは全てを所有しているか、プロジェクトの意思決定はコミュニティによって行われているか、便益は地域に多数もしくは全てが分配されているかどうかというような、コミュニティパワーの考え方ですね、そのような考え方がまだまだ地域の中に落とし込まれていなくて、経済が十分地域の中で回っていないと感じています。

 さらに、それが自治体や、いろいろなことによって理解がされていない。それが社会に役に立つのだということとか、ビジョンの推進が、理解が足りない、人材が足りない。行政では今、人が非常に少なくなり、特に地方行政の中でそのような理解をする人たちを確保することが難しくなっていて、その考えが十分反映されていかなくて、なかなか地域の中で回っていない、そして、情報が偏ってしまっているという問題点を感じております。

 そして、それに対する国の支援策ですね。FITも制度化されましたけれども、十分な地方視点というビジョンが示されておりませんし、便益を地域の中で回すことによる優位性ということも反映されているとは言いがたく、日本のエネルギー政策にとって、必ずしも応援施策が適用していないという不満を地方では感じております。

 それが十分に回り出すと、経済と、地域の問題解決、社会、環境というものが、もっともっと地域の中で具体的に問題解決がなされていくのではないかということを、私どもも、手応えを感じております。引き続き、御指導をよろしくお願いいたします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、南部委員、お願いいたします。

○南部委員 ありがとうございます。労働組合の連合から参りました、南部と申します。よろしくお願いいたします。

 数点、御指摘をさせていただきます。まず、資料3の2ページの国内の動きのところの三つ目の丸でございますが、「経済面では」と始まっておりますが、労働力や生産性に関する記載で、少し唐突感があるかなと感じております。できましたら、ここに経済政策を丁寧にお書きいただくことがよいのではと御意見させていただきます。

 また、4ページの(1)でございます。ここも、「普遍性を持ちつつ国際・国内情勢等に的確に対応したビジョンづくり」という表題になっておりますが、一番目、二番目の丸はほとんど海外、国際情勢、そして最後の丸の最後のところに「それを踏まえた国内対策の発展」とされており、国内のビジョンの提示を目指す記述についても記載が必要ではないかと思います。

 最後、三つ目でございますが、6ページでございます。「計画の実効性の確保」のところですが、2030年に向けたSDGsのバックキャスティングについては、否定はしませんが、政府全体が一体となって政策に取り組まなければ全く意味がないと考えております。各施策において、とりわけ予算当局である財務省、また、他省庁がこのコンセプトを共有することが非常に重要であると思っております。そこで、バックキャスティングのコンセプトを省庁横断的に共有することに関する記載も、必要であると考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、浅野委員、お願いいたします。

○浅野委員 浅野でございます。私も大塚委員と一緒ですが、環境法の国内法を主に勉強してきております。

 今回、第五次環境基本計画ということですが、第一次から考えますと、もう20年たっているわけです。当然のことですが、これまで、第一次、第二次、第三次、第四次と、計画としてはかなり進化を遂げてきていると思います。最初に第一次の計画をつくったころには、全く他の計画がなくて、これが全てだったわけですから、それで全力投球ということをやっていたわけですが、だんだんいろいろな計画が出てきて、現在では、環境基本計画不要論があるぐらいの困った状態になっているのですが、決して不要論にくみすることはできないと思っています。

 というのは、やはり全体を統合する役割を果たすということは、どこか必要なことで、それが環境基本計画だと思いますから、個別の計画があるから、それに全部譲ってしまえばいいということにはならないと思います。

 ただ、ここには目標が長期、中期、いろいろあると書いてありますが、これはちょっと気になるところです。つまり、環境基本計画そのものは、やはり第五次ですから、5年間ということを考えて、しっかり何やるかということを書かなければいけないのですが、全体の環境政策がどうあるべきかということを考えるときには、髙村委員も言われましたし、大塚委員も言われましたけれども、重層的な構造を考えなければいけないと思います。

 というのは、現に、生物多様性は、はなから100年ですよね。それから、今、我々が一生懸命やっています長期ビジョンのほうは、2050年を考えているわけです。それから2030年がSDGsですし、それから2020年は化学物質がもうすぐ終わるとおっしゃいましたけれども、そのようなものもある。だから、一つ一つのものについては、当然いろいろな幅がある。それで、大きな政策の捉え方をするときには、長期の見方、それから中期の見方、短期の見方ということが必要ですが、それを踏まえて、この環境基本計画がどうなのだということを議論していくということになるだろうと思っております。

 これまでの計画の中でもそうだったのですが、特に各論がいろいろに出てくると、環境基本計画が薄くなってしまうということがあるわけですが、一番の原因は、どうやって実現するのかということをきちっと突き詰めて考える余裕がないものですから、こういうことをやったらいいなということしか書いていないんですね。そして、もう第二次、第三次ぐらいのころから、政策を実現するためにはそういう手法があるのかということは、かなり真面目に考えてはきているのですけども、政策を実現する手法というものが書かれているのだが、それと個々の政策とのつながりがないのです。

 ですから、政策手法は総論で書かれていて、個々の政策については個々の政策で各論になってしまっていますから、ここをちゃんとつないでいかなければいけないけれども、環境基本計画で全部を書くことは無理かもしれないのですが、担当する部局が、自分たちのところの政策を実現するときは、どの手法を自分たちは使うのだということを考えることができるような手がかりはしっかり示しておくというのが、多分、この第五次の計画には必要なことだろうと思います。

 いずれにせよ、過去20年にこだわることなく、武内新部会長の下でやられるわけですから、もう思い切って、ここで模様替えということがあってもよいのかもしれません。

 繰り返しますが、第一次計画のときには循環、共生、参加、国際的取組という長期目標を決めたのですけどれも、これはだんだん進化をしてきていて、そのままの形ではないのですね。ですから、今後、何を柱にするのかということについても、思い切って考え直すということはあり得るだろうと思いますから、あまりしがらみにこだわることなく、斬新な考え方でやっていただきたい。とりわけ事務局には大変御苦労をおかけいたしますけども、前の計画をちょちょっと手直しをして写すのが一番楽なんですね。第四次計画は若干そういう傾向があって、手間を省いてしまったようなところがあるのですが、今回は手間をかけていただきたい。是非よろしくお願いいたします。

 そして、一つだけお願いですが、SDGsについてはいろいろ言われているのですけれども、どのような中身かということは、ちゃんとみんな知る必要があります。循環の部会のほうでは、報告書の中にSDGsの全文をきちっと載せているぐらいですけれども、総合政策部会でもそれをやらなければいけません。次回は是非SDGsの、日本語訳でいいですから、資料をつけていただければと思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、岸上委員、お願いいたします。

○岸上委員 岸上と申します。私は、会計士の立場で参加させていただいております。背景を申し上げますと、昨年の夏前までは、会計士協会で国際財務報告基準(IFRS)の導入といったことを担当しておりました。昨年の夏から、統合報告(IIRC)、サステナビリティ報告等、企業報告全般を担当しております関係で、部会に参加させていただいております。日々勉強という状況でございますが、最近考えていることを申し上げさせていただきたいと思います。

 国際的なSDGsの目標を出発点に考えていき、重点分野を絞り込んでいくプロセスになると思います。企業の統合報告とかサステナビリティ報告の考え方の中に、取りまとめるに当たって、重要課題の特定プロセスを経ており、それを報告書の中にもある程度開示するということをやっている企業が多くいらっしゃいます。企業は投資家目線を主に置くわけでございますが、この考え方は環境基本計画のようにたくさんのステークホルダーに対する計画ということでも参考になるのではないかなと考えております。

 具体的には、SDGsの項目の中から環境に関する項目を取り出して、日本にとって重要な項目、これから先、重要になる項目を、いろいろな利害関係者や、識者の方のヒアリング、ないしは議論で特定していくというようなことをやられるということになると思っております。その上で重要度に応じた計画が出され、その達成を長期的に把握していくようなKPI、重要な指標を定めて、モニタリングをしていくということになろうかと思います。

 環境基本計画はそのようなプロセスでつくられていると思いますが、そのプロセスをある程度記載するということも、この計画を読む方にとっても、また、国際的に説明していくに当たっても、有効なのではないかなと思いまして、参考に申し上げさせていただきました。よろしくお願いいたします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、木下委員、お願いいたします。

○木下委員 私は、JAのシンクタンクということで、農協系のシンクタンクに、現在、在籍をいたしております。

 農業にとってみても、環境の問題は極めて重要な課題だと認識をしております。農業生産を通じて環境維持に貢献する一方で、負荷もかけているということを十分認識しながら、今回のこのペーパーを見ますと、資料3の5ページで、経済のグリーン化、地域活性化等々触れられているのは非常に評価したい、そして第五次の基本計画の検討に際してもこれらの点を強調して、重視しながら検討を進めていってもらいたいと思っております。

 また、これまでの環境面における様々な検討課題を、是非、今後の5年間で、どのようにして解決をしていくのかという道筋についても、基本計画で触れることはできないかもしれませんけれども、基本計画を検討するプロセスで、様々な懸案事項の解決に資するような議論ができればと考えております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、末吉委員、お願いいたします。

○末吉委員 ありがとうございます。末吉と申します。私はもともと銀行員ですので、お金の数え方しか知らないのですけれども、大変幸いなことに、長年、世界の金融という窓を通じて、温暖化問題をたくさん見る機会を与えられてきました。例えば、国連の責任投資原則、PRIというものがありますが、これの創設から普及に関わってきましたし、CDPも同じようにやってきました。先週はたまたまG7のグリーンファイナンスの会議にも参加させていただきました。

 その私が、今、強く感じているのが、気候変動、なかんずく、話題になっておりますパリ協定、SDGsが、ビジネスは当然ですけれども、政治や社会を動かし始めたと、これは強くそう感じております。とすれば、この期に及んでゼロエミッションを受け入れられないビジネスや社会、あるいは国には、将来はないのだということになろうかと思います。それを強く信じております。

 それを申し上げた上で、私自身がこの議論に参加する際に持つべき視点として、幾つかあるのですが、今日は取りあえず二つだけ申し上げますと、それは、協同と競争ということであります。コラボレーションとコンペティションです。もちろん、協同というのはこの地球環境ですね。話題になっておりますSDGsは、たしかPlanetary Boundariesという九つの限界を言っております。これを守るというのが、世界の一員としての日本の当然の義務です。ですから、そういった意味での協同作業というのは非常に重要になります。日本だけ、その枠外にいるというわけにはいきません。

 それからもう一つ忘れてならないのは、競争が始まっているのだということです。これは明らかに世界は脱炭素化、あるいはゼロエミッションに向けての競争の真っただ中に、今いるのだということ。日本はそういう具合に位置付けられていると思います。ですから、特にビジネスにおいては、ゼロエミッションがマーケットドライバーになった、マーケットドライビングフォースになっている、この認識を持つべきだと思います。

 私が見ている限りでは、世界、特に欧米では、こうした競争に勝つために、まず法律をつくる、規制を生み出す、ルールをつくっていく。あるいは、いろいろな社会制度、会計制度、情報開示のあり方、上場基準のあり方、投資や融資の基準のあり方などなどです。こういったことをちゃんとつくって、それで競争に勝つのだという動きが、私は世界では非常に強くなっていると思います。

 ですから、我々もこの環境基本計画を考える上では、決して、never ever、狭いvested interestにとらわれることなく、社会全体、国全体が、どうしたらこういう世界の競争に勝つことができるのか、そういった視点での議論を進めるべきだと、強く思っております。

 それで、最後に一つだけですけれども、地球温暖化問題は、やはりサイエンスの問題だと思います。ですから、サイエンスのことを非常に大事にする。特にデータ、世界の変化が非常に激しいですから、データとかインフォメーション、情報の新鮮さを大事にしていただきたいと思います。もうひょっとすると、去年のデータが今年はout of dateになるような変化の速さだと思いますので、是非、データとかインフォメーションの新鮮さを大切にして議論が進めばと思っております。

 少なくとも我々に要求されているのは、計画をつくるのではなくて、その計画をアクションに移すと、このことが最大の使命ではないかと思っております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、田中委員、お願いいたします。

○田中(里)委員 田中と申します。よろしくお願いいたします。

 私は、広告・広報・マーケティングの専門雑誌「宣伝会議」の編集長を10年ほど務めまして、同時に、2000年からは編集室長として「環境会議」という季刊雑誌の創刊に参加をしました。環境に関する活動を積極的にやっている方と、そうでない方々のギャップがあると認識しましたので、コミュニケーションで、そのギャップを埋められないかということをテーマに活動をしてきました。環境を、経済や暮らしに生かすことを目指し、多様な主体の取材や研究に関わってきています。現在は、2012年に文部科学大臣の認可を得て開学しました事業構想大学院大学で、持続成長をしていくための構想、資源を生かした地域活性の担い手の育成と研究に力を入れています。

 今回、第五次の基本計画で力強い方針を示していただいて、ここに参加できることを大変光栄に感じています。レジュメの冒頭、最初の部分にいろいろな課題を示していただいていますが、地方創生や地域資源への着目が、今、集まっている中、世間の関心は身近なところ、身の回りに目が行くようになっている現状があるかと思います。世界や地球規模の最先端のことも認識、承知しながら、それを自らの周囲について考えて落とし込み、行動することへの関心が高まる傾向にありますので、国内の動きと成果、課題のところの入り方としては、現時点に視点をしっかり置いて始めることが、環境に関する問題意識を社会全体で共有することにもつながると期待します。

 次に、課題解決に向けて、「循環共生型社会」の実現という視点は非常に重要なことであり、担い手となる人を育成し、人の輪を広げていく、ひいては世論が動いていくというふうになるかと思います。政策と人づくりをセットにしていくような取組ができないかを模索できたらと思います。

 AI、IoTにも触れていただいているのですけれども、分断してとらえるのではなく、今の現場の動きの中に組み込んで考えるということが必須かと考えます。

 また、私もこれまで環境に関する様々な活動に、メディアの立場で取材やシンポジウム、イベントなどに参加をしてきましたが、継続性のためには、共通の目標に向けて各主体がどう行動するかということの指針が重要だと心得ています。循環、共生、持続という、すばらしいキーワードがありますので、自分たちの日常の活動が、いかに循環、共生、持続ということにかなっているかということ、この要件を満たしているかということを認識できるような仕組みが、過去には丁寧につくられた時期もあったかと思いますので、この基本計画を受けて、各主体が動けるような、ベースになるような方針、行動計画が出されることが望ましいのかなと思っております。

 最後は、皆さんもご指摘のSDGsのバックキャスティングのお話ですけれども、バックキャスティングというからには、未来の理想の姿が明確に示される必要があるところで、国際レベルでの表示は共有されていますが、日本の共通認識を深めるメッセージが欲しいところです。美しい自然、資源を持つ日本ならではの、日本の環境に裏打ちされた新しい文化を形成していくような、すばらしい文言、絵柄、データ等も表示しながら、理想の姿を明確にして、その上で、あらゆる省庁、行政、地域、企業が参加できるような基本計画になるといいなと思っております。

 多様な切り口から、一つ一つの専門のところをしっかりと押さえながらも、同時に、線引きのない「みんなの基本計画」の策定につながるとよいなと願っています。どうぞよろしくお願いします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、棚橋委員、お願いいたします。

○棚橋委員 棚橋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 小学校の校長をしておりますが、こちらには、全国小中学校環境教育研究会の元会長という立場で出席をさせていただきました。

 資料の中に、SDGsですとか、環境・経済・社会の統合的な向上という言葉が入っておりましたけども、学校でもSDGsを扱うところが増えてきております。また、環境・経済・社会、これに文化を加えて、ユネスコのほうで、ESD、持続可能な開発のための教育ということを進めております。ESDが広まるように、今、研究会でも活動をしているところです。

 今、次期学習指導要領の案が文部科学省から出ています。中を見ますと環境教育という言葉がなくなってしまいました。代わって持続可能な社会に向けた構築という言葉が幾つか出てきています。これからの教育現場で環境に関わる取組が少なくならないか懸念しています。環境省の中には、環境教育推進室という部署がございますので、是非、個別分野の計画の中でESD、それから環境教育の推進ということを書いていただけたらなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、田村委員、お願いいたします。

○田村委員 ありがとうございます。私は、全国の婦人会の団体でございまして、そして、私の出ているところが福井県でございますので、皆さん、一番御存じで、原子力の立地県、一番多い県でございます。3.11以来、原子力のことで、環境というものがいかに経済・産業界、そして人々の生活に影響を与えるものかということを目の当たりにしまして、幸福度日本一の県でございますが、幸福とは何ぞやというぐらい、みんな県民が考えるぐらいの状況でございます。

 私たちの団体では、今、崎田先生にお願いをしておりまして、食品ロス削減に取り組んでおります。県下の焼却炉が、今入れ換える時期になっておりますので、なるべくごみを減量するということで、小さい焼却炉に入れ替えるようにということを、私たち女性ができるという範囲内において、地域においてできることは何かなというと、やはり一番、毎日のことでございますので、食品ロス削減に取り組むということで、県と一緒になって取り組んでおります。

 今、年間50園の幼稚園を回らせていただきまして、子どもたちに、環境そして食料の豊富さということを、豊かな生活をしているということを、一緒になって考えるように教育で回っております。今ほどの棚橋先生がおっしゃったみたいに、子どもが将来これから、環境のことを考えていってほしいなということで、回らせていただいておりまして、全国で、食べ切り、そして水切り、使い切りということで運動をしております。

 現在「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」が全国の都道府県各市町村の自治体が参加されて結成されております。今ではおよそ300の自治体が参加とのことです。私たちもこれから、自分たちがやっていけることを身近に、社会教育団体としてまた消費者として、一人一人がこれからのことを考えて、未来ある子どもたちと一緒になって考えていきたいなと思う活動を、現在、県の委託事業として実施しているところでございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、中村委員、お願いいたします。

○中村委員 ありがとうございます。私は、日本商工会議所という国内に百二十数万社の主に中小企業を会員とする経済団体のエネルギー環境関係の専門委員会から派遣されております。その意味で、どちらかというと中小企業の意見を代弁する形で発言させていただいております。加えて、エネルギー関係企業の環境部門を担っておりますので、その関係の立場も踏まえた上で発言させていただいております。よろしくお願いいたします。

 細かな話は、また手を挙げさせていただけるとのことですので、全般的なことについて、意見を申し上げます。

 まず、資料2の第五次基本計画の考え方をざっと見た上での感想を申し上げます。

 (1)に「国際・国内情勢等に的確に対応したビジョンづくり」と記載していただきました。正しい、大変素晴らしい考え方だと思います。温暖化対策一つとっても、裏には国と国との間の経済戦争という側面もありますので、国際情勢をきちんと把握・分析した上で、環境基本計画を作っていただきたいと思います。中小企業も今やグローバル化しておりますので、この記述は非常に大切なポイントであると考えています。

 SDGsについて申し上げます。まずは周知が大切なのではと思います。大企業の経営者であってもまだSDGsのことをよく知らない方がたくさんいらっしゃるとお聞きしています。ましてや中小企業における認知度はまだまだ低いのではないかと推測します。

 さらに、先ほど浅野先生からもご発言がありましたが、当座は何をするのかを検討することが大切です。したがいまして、この基本計画について議論する際には、計画期間である5年間に何をするのかがきちんと分かるような内容にすることが大事なのではないかと思います。

 加えて、(3)の「環境・経済・社会の統合的向上等に向けた取組の具体化」、あるいは、「個別分野の行政計画を踏まえた重点分野の設定」について、環境省は何をコミットしてくださるのかということをお伺いしたいと思います。中小企業の立場から見ると、非常に上から目線の議論に見えます。経済はいろいろな主体で構成されています。経済もそして社会もいろいろなシステムがありいろいろな主体が存在していて、中小企業もその中のシステムの一つです。個々の主体の実情に合わせた取組の多様性をもっと認めていただきたいと考えます。その意味で、ここにきちんと「地方に着目し、マルチベネフィット」と書いてあることは非常に重要なことであり、このように地に足の着いた形で考えていただけたらありがたいと思います。

 それから、個別分野について、特に循環型社会の関係については、特に廃棄物行政において自治体が主体となっている部分も大きい中で、国が果たすべき役割も明確にしっかり考えていただきたいと考えます。

 細かい話はまた手を挙げさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、根本委員、お願いいたします。

○根本委員 ありがとうございます。経団連として参加させていただいております。よろしくお願いいたします。

 私から、記述に関しての要望はございません。今後の進め方のようなところで、1点だけご配慮をお願いさせていただきたいという意味でコメントさせていただきます。

 今回お示しいただきましたもの、これはまさにこれから議論、検討をしていくに当たっての大きな考え方、あるいは、その基本の方向ということについて記述されたものだと思いますので、あれが書かれていない、これが書かれていないという指摘自体も適切ではないと認識しておりますが、その上でのコメントでございます。

 率直な印象として、世界への貢献という視点があまり前面に出ていないなという印象を受けました。また、イノベーションというワードが全く出ていない、なぜだろう、という印象も持ちました。

 これは当然、国内対策を発展、推進するための計画という位置付けかと思いますので、当然だろうという考え方があろうかと思います。ただ、やはりこれから先々、日本の国というものの在り方、あるいはその在りようといったものを考えますと、世界との関わり、あるいは世界への貢献といったテーマ、これはまさに国内の諸課題の解決、これは大変だと思いますが、これに劣らず、同等に大変重要で、避けて通れない課題だと理解しております。

 文中に、「環境・経済・社会の統合的向上」という言葉がございます。恐らく、この言葉の中に意味として含まれているのだろうと理解しておりますけれども、経済界としまして、かねてより必須だと申し上げております、環境と経済の両立、これを実現していくに当たりましては、やはり世界への貢献というものは不可欠だと考えております。

 その貢献を構成する大きな要素といたしましては、技術革新の開発、それも継続的な開発、そしてシステムイノベーションといったようなものが必ず入ってくるかと思いますので、今後、御検討、あるいは御議論していくに当たりましては、こういった世界への貢献、あるいはイノベーション創出のための環境整備といったものにつきましても、御配慮をいただきたいと思っております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、林委員、お願いいたします。

○林委員 私は、長年、交通と土地利用の統合した計画というものはどうしたらよいかという研究をやってきておりまして、途上国だとスマートグロース、それから成熟国だとスマートシュリンクという、スマートシュリンクと言うと嫌がるところもたくさんあるのですが、そういうことをどのようにやったらよいかという研究もやっております。

 別に組織として参加しているわけではないですが、世界交通学会というものがありまして、これは83か国ぐらいから、途上国もたくさんありますが、そこの会長もやらせてもらっています。それから、ローマクラブというものがありまして、こちらも最近から参画をさせてもらっています。

 それで、この内容についてのコメントなのですが、日本にまずいきますと、地方の衰退ということが書かれておりますけども、これは何だということが、具体的に何を考えなければいけないかということは、高齢化と貧困というか、これは地方だけではなくて、日本がもう今、90とか95%、中間層ではなくなっているということがよく報道もされております。そうすると、ここでCO2の話が出ますけれども、一方で、どこかに書いていただいていましたが、QOLとか、ウェルビーイングという話が出ましたけれども、それをどう両立させるかということが非常に重要になってきて、しかも、これが個々人、違った属性を持っている、言ってみれば多属性社会に移行してしまってきているのです。この多属性社会の中で、違った属性の人々のクオリティ・オブ・ライフを向上しながら、低炭素ということも含めて環境を穏やかにできるかということだと思います。

 これは、SDGsでよく出てくる、包摂性とか、インクルーシブネスそのものだと思いますので、そういう方向性をここに書いていただくとよいと思います。

 もう一つ具体的なことなのですが、私は交通とか土木工学の分野ですので、交通のインフラ、防災の堤防のインフラ、あるいは都市計画、あるいは税制も含めますが、そういうものが、個々のものが実施、投資されたときに、果たして、それぞれの人の幸福に寄与しているか、あるいは低炭素に寄与しているか、社会全体のコストを下げているかと、そういう保証がほとんどないですね。

 そういう意味で、この今日のスタンスというのは、それをトータルで見ようというスタンスは私は大変よい、重要なスタンスだと思います。是非そこのところへ、もう少し踏み込んで、その事業とか、税制等も含めた制度に対して、それぞれについてトータルとして、それを実施することによってQOLが上がるかとか、CO2が減るかと、あるいはコストが下がるかという、こういうことをチェックするような制度化をすべきであるということを書いていただければ大変ありがたいと思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、和気委員、お願いいたします。

○和気委員 環境問題に関わって随分古くなりまして、もともとは国際経済学の専門でございますが、かつてIPCC第3次評価報告書のDecision-Making Frameworkという章のリードオーサーとして関わらせていただいたこともあります。そこでは、環境保全はよいことだけれども、それでは具体的にどうするかというときに、様々な他の政策目標との関連において、環境問題がどれだけ優先的に選択されるか、限られた政策資源をどう環境政策に振り分けるかという政策の優先順位と実効性に関する議論などをまとめたところでございます。

 また環境省との関わりにおいてよく思い出すのは、環境と経済の好循環専門委員会といった委員会の設置に関わったことなどです。デカップリングという言葉も出始めた頃でございますけれども、その頃の主たる問題意識は、経済成長と環境保全の両立ということで、開発途上国の経済発展の局面、あるいは経済成長における景気循環の上昇局面における環境問題をどのように管理するかという問題でして、いうなれば持続的成長の実現にむけたアプローチでございました。

 ところが、先進国を中心として、あるいは途上国も含めてですけれども、景気循環が低迷・下降局面になったとき、あるいは経済成長への期待感が弱まり、マクロ経済の制約条件や国内産業保護への傾斜が効いているときに環境問題にどう対処するかについては、実は、あまり議論も研究もされてきていませんでした。世界経済の循環的景気後退局面で保護主義的な動きが目立ち始めている今日において、こうした経済の下振れリスクの増大によって、長期的な政策課題である環境問題が翻弄されかねないという懸念を強く抱いております。

 そのようなことも踏まえながら、本日報告された新たな基本計画策定のフレームワークを読ませていただきました。特に問題があるというわけではないのですけれども、ただ基本的な認識というところで、資料3の世界の動きの中の三つ目のポチについて、ブレグジットに限らず、世界経済における保護主義的な潮流が地球環境問題をグローバルな枠組みで対処しようという機運や動因を少し後退させようとしているのではないかという視点や文言があってもいいかなという気もいたします。

 それからもう一つ、国内の動きの中の最後から二つ目のポチですけれども、すでに前の委員の方もおっしゃっておられましたけど、技術革新でもよいのですけれども、イノベーションの議論は日本国内に限ったことではなくて、世界的に見て国際競争の現場でIoTやAIの技術競争の動きが起こっています。したがって、特に産業競争力などの視点から、こうしたイノベーションの動きと環境問題へのアプローチを総合的に考えられた政策措置がとられれば、我が国の国際競争力にも寄与することになるかもしれません。世界的な動きとして位置づけたほうがよいのではないかと思います。

 加えて、イノベーションは狭く経済だけではなく、人々の仕事の仕方、暮らしぶりなど広く社会生活におけるイノベーションを意味します。こうした社会的イノベーションを含め、基本計画策定における政策キーワードの一つはイノベーションということではないかと思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 一通り皆さんに、簡単に自己紹介と、それから御意見を伺いましたが、まだ少し時間がありますので、幾つか追加の点で御意見、御質問のある方は札を立てていただきたいと思います。

 それでは、髙村部会長代理からお願いいたします。

○髙村(ゆ)委員 ありがとうございます。委員の先生方の御意見を伺って、二つであります。そういう意味では、新しいところではないかもしれないのですが。

 資料3の1(3)、統合に向けた取組の具体化の辺りのところだと思うのですけれども、SDGsのときにもそういうところがあったかと思いますが、特に持続可能な発展という概念が出たときに、やはりこの統合というのが、逆に環境保全の軸足を曖昧にしてしまうのではないかという懸念は他方で指摘をされていたように思います。今日は何人かの先生、例えば、さっき和気先生がまさに典型的におっしゃったのですけれども、環境保全のぶれが生じないということが、非常に大事な、その統合を追及していく、特に具体化していくときに大事なポイントではないかと思います。

 別の言い方を、多分、何人かの先生がされていて、例えば、大塚先生は将来の世代のこと、あるいは、その衝突が起こったときに具体的にどう解決するか、あるいは、白石先生が安全というのを軸にしたというのをおっしゃっていたのも、多分、共通した点だというふうに思いました。

 もう一つは、これは浅野先生からあった点でもありますし、あるいは中村委員からもあった点だと思いますが、環境基本計画、長期のビジョンと同時に、その環境基本計画の枠組みで、それを実現するために何を具体化していくのかということをきちんと、その環境基本計画の位置付けといいましょうか、長期の戦略ビジョンとの関係で位置付けを明確にして、何を具体的にやるべきかということを明確にする必要があると思いました。これは岸上委員もおっしゃったのかもしれませんが、具体的にそれを、どういうふうに、何を重点課題として決めていくかという、そのプロセスそのものを明確に書き込むというのも一つの案かなと思った次第です。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、大塚委員、お願いいたします。

○大塚委員 資料3の1(3)のところでございますけれども、今、髙村委員も言われたように、具体的なその方向性を示すということは、できるだけやれるといいなと思っていますが、各分野のことがございますのでなかなか難しいところもあるかもしれませんけれども、せっかくの環境基本計画ですので、今後の方向性を示していけると大変よろしいかと思います。

 浅野先生もおっしゃいましたけれども、手法との関係でどうやっていくかというのは、かなり具体的な話になると思うのですけれども、それを、方向性だけでも示せると大変よろしいのではないかと思います。

 それから、あと2点ほどですけれども、一つは、林委員のお話との関係で、提案されましたけれども、人口減少との関係の問題というのは、やはりかなり重要な問題に今後なってくることがございまして、先ほど2060年代8,000万人台というなかなか衝撃的な話もございましたが、地方でのコンパクトシティ化の問題とか、あるいはいろいろな意味の縮減がなされていってしまうので、上下水道の問題とか、様々なサービスに関して、コンパクトシティ化をしていかないと、コストの面も含めて、やっていけなくなってしまうという大きな問題がございます。

 その点は、環境とも大いに関係するので、まさに環境と社会と経済の統合という話の、一種の話になってしまいますけれども、これはシュリンクの中での統合ということを考えなくてはいけないということになってしまいますが、是非入れていく必要がある、必須の問題の一つではないかということ、これはあまり、何かわくわくする話では必ずしもないのですけれども、対応していかなければいけない大きな一つの課題だと思います。

 それと関連してもう一つ、災害に強い国土ということも結構大きな問題ですので、防災との関係、これも大地震が増えているような状況もございますので、防災との関係で国土についての検討を、環境との関係でも考えていく。例えば、これは具体的な、PRTRの問題になってしまいますけれども、工場とか事業場で保有しておられる有害物質について、何らかの形で情報をあらかじめ出しておいていただくということが、現在、PRTRではなされていませんので、消防法の問題はもちろんあるのですが、環境との関係でもその問題がありまして、大地震のときにその保管量、あるいは保管している物質を、あらかじめ一定のところに知らせておくことが非常に重要だという問題がございますので、それも関連させて議論して、あるいは書き込んでいただくと大変よいのではないかということです。

 それから二つ目ですけれども、別の観点で、先ほど将来世代のことを申しましたが、フューチャー・デザインという、西條先生のところが中心になってやっていらっしゃる議論がございますので、それについても是非入れていただくとよいと思いますし、環境法の基本原則との関係の問題も、今までずっと計画の最初のほうには書いていただいていますけれども、それを是非維持していただきたいと思っています。特に予防原則の問題は相変わらず重要な問題ですので、温暖化等の関係もそうですし、化学物質との関係ではサイクルにも入っていますので、これを是非入れていただきたいということがございます。

 それから、環境と社会と経済の中で、特に環境の問題について、今まで低炭素と循環と生物多様性と安心ということがいろいろ出てきていたのですけれども、この関係をどうするかということも、是非考えていかなければいけない問題です。今までは三つの、低炭素・循環・生物多様性が上のほうにあって、一番下に安心があるということを第四次環境基本計画では考えてきたと思いますが、それも維持していただいてもよいのですけれども、資源政策については、むしろ温暖化とか生物多様性のほうが基盤にあって、資源政策はその上にあるのではないかというふうにも、だんだん考えられてきておりますので、これは気候変動のほうが非常に喫緊の課題になっているということがあると思うのですけれども、そういう考え方の変化があるとすれば、そういうものも反映させていただく必要があるのではないかということを申し上げておきます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、崎田委員、お願いいたします。

○崎田委員 ありがとうございます。3点ほど付け加えさせていただきたいと思って手を挙げました。

 一つ目は、先ほど和気委員が社会イノベーションというお話をされました。私も技術のイノベーションと、そういうことをきっかけとして、社会がきちんと変わっていくという、先ほどライフスタイル、ビジネススタイルと申し上げましたけれども、そのところに変化を起こしていくということが非常に大事なところだと思っております。

 特にそういうときに、何か大きなことから起こるだけではなくて、休みの取り方、最近金曜日休みの取り方とか、国の委員会なども開かれていますが、休みをどういう時期に、どう取るかということだけでも、多くの人が地方都市に行って、自然を育てるというところに付き合うことができるようになったり、いろいろな変化がありますので、環境分野から社会イノベーションをどういうふうに起こしていくかということを真剣に考えてもよいのではないかと思いました。

 2番目に、先ほど私も発言しませんでしたが、リスクと暮らすという視点はきちんと入れておかなければいけないと思っております。リスクは、化学物質などの化学品と暮らすという視点と、放射線などと暮らすということと両面あると思いますけれども、化学物質の場合には、いろいろな化学品を活用しながら私たちは暮らしているわけですけれども、そういう暮らし方というのはあまり考えずに、ただ、もうリスク怖いという話に割にいきがちだったりしますので、きちんと、どう学び、どう暮らしていくかというようなことも考えながら、事業者の方、市民のみんなが協力し合いながら暮らすということも踏まえて、どうリスクを学び、暮らすかという、そういうところも大変大事なところだというふうに思っております。

 最後の三点目ですが、先ほど、環境教育の「環境」という言葉が入らなくなったというお話がありました。今、地域などを見ていると、やはり少子高齢、あるいは地域活性化になるようなところのテーマが、どんどん、いろいろ上に上がってきて、ほとんど大きな話のときに環境ということが出てこないということがあります。そういう意味で、できるだけ環境というだけではなく、環境の課題を解決しながら、地域のコミュニティはしっかりとどういうふうに活性化していくのかとか、そういう意味で、環境・経済・社会・文化をつないで、どういうふうに地域が活性化していくのかというような視点で、きちんと今後の環境政策の分野から提案をしていくとか、いろいろな、からめ手というか、総合政策を考えながら提案していくということも非常に大事な時期に来ているのではないかと感じております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、白石委員、お願いいたします。

○白石委員 私からは1点だけ。資料3の2ページ目で、和気委員からもコメントがあったのですけれども、国内の動きの下から2番目と3番目ですね、「循環分野では」というところと、「他方、技術革新については」というところについてです。

 他方、技術革新については云々かんぬんの急速な普及に伴い、従来の社会経済構造が根底から転換しつつあると、こういう流れなのですけれども、モノのインターネットとか、人工知能の普及「に伴って」、この大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会構造が根底から転換しつつあるということではないと思いますので、直すとすると「とともに」だと思います。

 ただ、上との並びからすると、私は評価が過大なのかもしれませんけれども、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会構造が変化してきたということは、第一に循環型社会形成推進基本法の成立以降の話だと思いますので、ここの成果として、上のほうにつなげたほうがよろしいのではないかという感じを受けます。

 その上で、この国内の動きということで、技術革新について、インターネットあるいは人工知能、いわゆる情報システムについて述べられているのですけれども、これは確かに、現在イノベーションが進んでいるというところで、ビッグデータの活用、収集、それを用いた統合型社会をつくる、三つを統合するためには必ず情報の共有が必要ですので、そういったところで、ビジョンにつながるところとしては、この技術革新、特に情報システム型のイノベーションについて言及しておいてもよいのかなと感じました。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、豊岡委員、お願いいたします。

○豊岡委員 いろいろ御意見を伺って、非常に参考になりまして、特に、経済性についてです。経済性が、再生可能エネルギーについても、あまりちゃんと試算がされていない、経済効果が試算されていないということを非常に感じます。特に地域経済において、私たちも単独で2,500人の村で幾らぐらいのエネルギーを使っていて、幾らぐらいの経済効果があるのかということを試算してみました。

 2,500人の村のときに、8億円のエネルギーを毎年、村の人たちが払っています。これを少しでも地域で回すということを我々は目指して、エネルギーの開発を進めております。そして、地域の経済効果が再エネと非常に親和性があり、さらに、再生可能エネルギーは地域でポテンシャルが非常に高いということから、非常に地域への経済効果への親和性が高いという実感を持っております。

 こういうことの試算を、もう少ししっかりとしていただきまして、どれぐらいの経済効果が見込めるのか、どれぐらいのポテンシャルで地域への支援ができるのか。新しい産業を地方で興すということは非常に困難です。農林水産業も衰退しており、人手も足りないということで、産業としては、再エネは非常に親和性があって、経済効果をもっとしっかりと試算していただけるようにお願いをしたいと思います。

 そして、さらに再エネについての理解が非常に足りないと感じています。これは地域でも足りないし、日本全国でも全く再エネについての御理解が足りない。しかも、熱について、全く日本は遅れていると感じております。これは、話すと長くなるので、もう少し再エネが本当にどれぐらい導入が可能であろうか、どれぐらいの設備投資がかかって、どれぐらいの運転費が浮くのであろうかというような全体的なコストと、それとポテンシャルのバランスをしっかりと見ていただきたい、盛り込んでいただきたい、把握していただきたいと思っています。

 私どもは、環境団体のWWFジャパンと一緒にやっておるのですけれども、そこからの提案において、エネルギーシナリオが提案されておりますところによると、2025年から2030年には、再生可能エネルギーへの設備投資が運転費用を下回る、つまりは、再エネによって、初めはコストは掛かるけれども、割に合ってきて、それからは非常に燃料費のコストを削減して、プラスに転じるであろうという試算が出ております。こういうことをもう少し検証して、地域経済において、地域の産業において、どのような効果があるのかという具体性をもって御提案をいただけたらと思います。

 三点目が、プレーヤーについてです。中村委員からも、地方の意見として出ましたプレーヤー、上から目線ではないか、じゃあ何をしてくれるんだ、というような地域の実感を持ってのお言葉だったと思います。私も同感でございます。

 今までは環境省というと、環境セクターの方々のプレーヤーが非常に多かったと思いますが、私どもが一緒にやっているのが、金融のプレーヤーとの連携、それと企業のプレーヤーとの連携ということを重点的に考えております。ここの目線をもっと広げて、マルチベネフィットということで、プレーヤーを広く捉えて、親和性を考えるときに、もっともっとたくさんの地域プレーヤーを巻き込むことができるのだというような視点も、是非盛り込んでいただきたいと思いました。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、中村委員、お願いいたします。

○中村委員 個別具体的に、この計画の見直しの基本的方向について意見を申し上げます。

 一点目は、先ほど申し上げました資料3の2(1)「普遍性を持ちつつ国際・国内情勢等に的確に対応したビジョンづくり」というところについてです。他の分野との関係を明確にするということが書いてあると考えており、この点について意見を申し上げます。多分、地球温暖化対策との関係を明確にしていただいたのかなと思っています。

 浅野先生がいらっしゃるので非常に申し上げにくいのですが、現在、策定に向けた議論が進められている長期低炭素ビジョンでは、例えば、2050年80%削減を前提として国内対策を優先すると明確に書いてあります。一方で、第五次環境基本計画の策定に関する今日の配布資料には、国際協力を通じて課題解決を見ていく、若しくは国際情勢の変化を的確に捉えてと記載されています。この部分は、言い換えれば、2050年80%減というのには、前提条件があり例えば海外や他国の動向を見て、それがきちんと同じ歩調を取るのだったらそうすると書いてあると解釈しています。また国際連携という意味では、日本は全世界の3.8%しかCO2を排出していない中で、日本が一番役に立つのは技術支援等を通じて途上国のCO2を減らすという方法も極めて有効かと思います。長期低炭素ビジョンと手元の資料に記載されている内容を比較し、基本的考え方にやや齟齬があるのではないかと感じており、その辺の整合性をきちんと説明していただきたいと考えます。

 二点目です。将来の長期的な目標をピンポイントで定めてバックキャストすることは非常に危険であるということをSDGsについても申し上げたいと思います。例えば企業経営では目標が明確な3年若しくは5年くらいのスパンにおける目標達成に向けてバックキャストの考え方を取り入れることは非常に効果があると思います。しかし、目標が非常に不確実な長期的なものについてバックキャストで物事を考えると施策が硬直化して非常に危険なことになります。通常、そのような場合、企業はシナリオ・プランニングといって複数のシナリオを考え、世の中がもしこうなった場合はこうしよう、こうなった場合はこうしようと、複数のシナリオを立てて戦略を練ります。その意味では、SDGsの目標は非常に素晴らしいと思いますが、特にこの基本計画は5年間程度ということも踏まえ、バックキャストの考え方を取り入れることになったとしても柔軟性を持っていただきたい、言い換えれば硬直性を持たないような形でのバックキャストをお願いします。

 それから、三つ目の環境・経済・社会の統合について、環境の視点を主流化させると書かれています。これは、実は第四次環境基本計画の中の地球温暖化のところには、エネルギー政策の検討と表裏一体で進めていくと書かれています。主流化させるということは、先ほど責任をとっていただけるのですねと聞いてしまいましたが、やはりここでは、経済と環境の両立を基本的考え方に据え、特に温暖化対策については、基本的にエネルギーと環境は表裏一体ですので、これらの点を踏まえて今後の検討を進めるべきと考えます。

 三点目です。計画の実効性確保のため、今後、第四次計画の点検結果や様々な主体を対象としたヒアリング等を踏まえて議論を進めると思います。参考資料に記載されている、9月以降に各種団体等と意見交換を行う際に、地方の中小企業の意見を聞く機会を設けていただき、その結果も踏まえて、実行可能な形で計画を作っていただけたら有難いと思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、林委員、お願いいたします。

○林委員 先ほど個人に分解して考えるという、こういうことをどこかへ書き込むべきだと言いましたが、一つ忘れていました。個人と空間分解ですね。というのは、先ほどから災害の話が出ているのですが、一体どうやってそれを一緒に考えるのかということがあります。災害の場合だと、土石流は10m、あるいは30m離れただけで、片方は死ななくてはいけないし、片方はどうもないということがあります。そうすると、このSDGsをどう落とし込んでいくかといったときに、個人と空間をきちっと、そこまで下りていって理解する、それから評価するということが必要ではないかということです。

 その際に一つ提案なのですが、パフォーマンスで見るというやり方がよいと思います。これはヴァイツゼッカーが提案していた、ファクター4と言っていましたが、アフルエンスを2倍にするのだけれども、資源消費を半分にと、そういう概念がありました。2掛ける2でファクター4と言っていましたが、その後それだけではなくて、分子のほうは、そのGDPではなくて豊かさという、もっと一般的なQOL、そういうことも最近では出てきているので、一般的に言うとすると、クオリティ・オブ・ライフと地球社会への負荷という、その比率をとって見ていく、それを具体の指標になるべく落としていって、大きく見ていくことがよいのではないかと思います。さらに、できればそれを個人・空間に分解しながら、きめ細やかに見ていくと、そういうところが必要であって、それがインフラの計画であるとか、先ほどの堤防と、土地をかさ上げするとの、どちらを高くしたらいいかとか、そういうことが全部含まれてきますので、そういう見方がよろしいかと思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、末吉委員、お願いいたします。

○末吉委員 ありがとうございます。私は、この世界情勢を読むときに、八方にらみが非常に重要だという気がしております。世界の変化は、一つの変化が理路整然と行われているわけではなくて、マルチプレーヤーが様々な動きをしているのだと思います。例えば、国レベルの政策のぶれの話がありましたけれども、トランプ米国大統領が夕べ、EPAの予算を大幅カットすると言いました。こういったことが起きます。でも、だからといってアメリカが大きく変わるかというと、変わらないと思います。企業は市場にコミットしておりますから。逆に言うと、コミットした企業と競争する日本の企業が、トランプの政策を見て競争するのでしょうか。それとも、自分の競争相手の産業、競争相手の企業の動きを見て競争するのでしょうか。

 それから、アメリカでいけば、国、連邦政府は変わるかもしれないけれども、例えばカリフォルニア州は全く変わらない、もっと強化した温暖化政策をとる。それから、ある意味では、その都市間の競争が始まっている。これ、国際金融都市、金融センターになるための競争で、例えば今、パリがロンドンを非常に攻め立てているわけです。こういったことが起きる中で、じゃあ東京はどうするんだという話になります。これは日本の企業にとっては、自分のマザーマーケットの、キャピタルマーケットがどうなるかということで、非常に重要なテーマだと思います。

 あるいは、企業でいけば商業ルールが変わるわけです。これは国の政策がどうなろうと関係なく国境を越えてきます。ですから、ある大きなバイヤーが、サプライヤーにある要求をすると、それを受けないと、もうビジネスができなくなるわけです。それは国の政策がどうなろうと関係なく、そのものを買う企業が、これが大事だと思えば、そういうルールが適用されていくわけです。こういったことを見ますと、現実にいろいろな動きが起きている中で物事を考えていくという、そういうものの見方が私は非常に重要だと思っております。

 そこで、私が一つ申し上げたいのは、温暖化問題、温暖化の状況、気候変動が悪化をし続ける限り、この方向性は変わりようがないのだと思います。ますます圧力が強まっていく、これは非常に大きな本流の流れだと思います。幾つかの支流が出るかもしれませんけれども。ですから、その大きな本流が、ちゃんとその上に我々は乗って議論をしていかないと、さざなみに影響されて本流を失うということはだめですし、それから、そもそもこれは、総合的な、長期的な計画をつくると言われているわけですから。

 長期的というと、今でいくと2050年、あるいは2050年以降の21世紀の後半、それがまさにパリ協定がゼロエミッションを目指すと言っているわけですから、そういった長期目標に向かう大きな本流の中に日本が、あるいは日本のビジネスや、日本の社会が、あるいは個人の生き方が、どうやってうまく乗っていくのかと。その中で、いかにして我々が勝利者になるのか、その中で日本の社会の幸せと同時にアジア、世界の幸せを築いていくのか、そういったようなマクロの考え方は、やっぱりいつもベースに置いた議論をするべきではないかと思っております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、浅野委員、お願いいたします。

○浅野委員 中村委員から御指摘がありましたので、一言だけ申し上げておきますが、明日、また小委員会を開きますので、ちょっと古いデータでのお話ではないかという気もいたします。

 とりわけ、この今日出されたペーパー、これは総合環境政策局がつくったもので、小委員会はもちろん地球環境局がやっているわけですが、局の間で発想が丸っきり違うという指摘をされましたが、それはちょっと改めていただきたいと思います。同じ人間が関わっておりますので、決して矛盾はいたしておりません。小委員会のほうで言っていますのは、海外でちゃんとやれば、国内でやらなくていいというような動きに対して、そうではありませんよと言っているだけなのです。

 それからもう一つ、ピンポイントで目標を決めてとおっしゃっていますけれども、それは、もう既に議論の中で是正されておりまして、ゴールとターゲットが違うということは、髙村委員も指摘されましたし、大体小委員会で合意されていて、ターゲットとゴールは違う、80というのはゴールであると、大体この辺にいきましょうねいうことを言っている。ということを前提にすると、バックキャストの考え方もぎちぎちとした議論をやろうという話ではないのですね。そこは一言だけ申し上げておきます、立場上、言わなければいけませんので。

○武内部会長 ありがとうございました。

 大変有意義なたくさんの御意見を頂きまして、どうもありがとうございました。

 それでは、奥主局長に、最後、締めくくりの発言をお願いしたいと思います。

○奥主総合環境政策局長 先生方、本日はどうも、様々な意見をありがとうございました。本日は事務局として議論の論点を示したということでございまして、本日の先生方からの御意見を踏まえまして、今後、環境基本計画の策定について資料等を提示しながら、先生方の御意見を伺ってまいりたいと思います。

 本日頂いた意見の中で幾つか、私のほうから、基本的なところで申し述べたい点を申し述べさせていただきたいと思います。

 いろいろな先生方から、この環境基本計画のターゲットということで御意見がございました。長期、中期、短期といろいろありますけれども、この環境基本計画は、確かに今後5年間を目指した行政計画という性格もありますけれども、今後の長期的な環境政策の基本的な考え方を示すという位置付けもあると思います。長期的な目標、ビジョン、5年間でしっかりやらなければならないものを書き分けた上で、議論をさせていただきたいと思っております。

 それから、SDGsのことでございます。中村委員から、そもそもSDGsって何だというところからというお話がありました。これは、それとの関連で、地域とのつながり、地域における様々な取組をしていく上で、プレーヤーとして、環境団体もありますし、企業もありますし、当然自治体もあるわけです。そういった中で、今後の環境政策を進めていく上で、地域における取組は非常に重要だということ、再生可能エネルギーをピックアップしてございますけれども、様々な先生方から御意見を頂きました。

 そういったことを踏まえると、SDGs、そもそも何だと言われると、我々としては、基本計画とは別に周知を図っていかなければならないというのは当然ありますけれども、この基本計画を議論していく上で、様々なプレーヤーがどういったことをきっかけにして取組をしていったらよいかという指針を、基本計画の中で少しでも示せればよいかなということが、まず思ったところでございます。

 三点目といたしましては、環境・経済・社会の統合ということについて、様々な議論がございました。これにつきましては、26年に中環審でも意見具申として頂いたところでございますので、それをどう具体化していくかということにつきましては、まさに今後の基本計画の一つの柱になると思いますので、また先生方の御意見を頂ければと思っている次第でございます。

 本日はありがとうございました。

○武内部会長 それでは、これで議事を終了とさせていただきたいと思います。

 最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。

○山田環境計画課計画官 ありがとうございました。

 本日の議事録につきましては、事務局で取りまとめを行い、委員の皆様に御確認いただいた後、環境省ホームページに掲載させていただきます。

 また、次回の部会の開催予定について御連絡いたします。次回、第89回総合政策部会は平成29年4月27日、木曜日、午前中を予定しております。詳細は後日連絡させていただきます。

○武内部会長 それでは終了させていただきます。どうもありがとうございました。

午前11時59分 閉会