中央環境審議会総合政策部会(第54回)議事録
開催日時
平成22年6月16日(水)14:00~17:39
開催場所
三田共用会議所 4階・第4特別会議室
議事次第
- 開会
- 議事
- (一)第三次環境基本計画の進捗状況の第4回点検について
- ○地球温暖化問題に対する取組
- ○地質循環の確保と循環型社会の構築のための取組
- ○生物多様性の保全のための取組
- (二)環境研究・環境技術開発の推進戦略について
- (三)環境と金融の専門委員会の報告について
- (四)その他
- (一)第三次環境基本計画の進捗状況の第4回点検について
- 閉会
配付資料
資料1 | 「地球温暖化問題に対する取組」に係る報告 |
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資料2 | 「物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組」に係る報告 |
資料3 | 「生物多様性の保全のための取組」に係る報告 |
資料4 | 新「環境研究・環境技術開発の推進戦略」(案) |
資料5 | 環境と金融に関する専門委員会 報告書(案) |
資料6 | 環境影響評価法の改正案について |
資料7 | 図で見る環境白書 |
資料8 | OECD対日環境保全成果レビュー「評価及び勧告」 |
参考資料
参考資料1 | 中央環境審議会総合政策部会名簿 |
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参考資料2 | 第三次環境基本計画の進捗状況の第4回点検の今後のスケジュール |
参考資料3 | 第三次環境基本計画の進捗状況の第4回点検の進め方について |
参考資料4 | 研究・技術開発の重点課題ごとの詳細事項の例 |
議事録
午後2時00分 開会
○川上総務課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第54回中央環境審議会総合政策部会を開会いたします。
環境省総合政策局総務課長の川上でございます。本日、部会長に議事進行をお願いするまでのしばらくの間、進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
議事に入ります前に、まずお手元の配付資料のご確認をお願いいたします。
配付資料一覧という最初のメモでございます。資料の1番が「地球温暖化問題に対する取組」に係る報告、資料の2番が「物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組」に係る報告。資料の3番が「生物多様性の保全のための取組」に係る報告、資料の4番が新「環境研究・環境技術開発の推進戦略」(案)、資料の5番が環境と金融に関する専門委員会報告書、資料の6番が環境影響評価法の改正案について、資料番号を打ってございませんが、資料の7番目として、図で見る環境白書、それから、資料の8番が「OECD対日環境保全成果レビュー「評価及び勧告」でございます。
参考資料につきましては、1番目に本部会の名簿、2番目に今後のスケジュール、3番目に第三次環境基本計画の進捗状況の第4回点検の進め方について、最後、4番に研究・技術開発の重点課題ごとの詳細事項の例というものをお手元に配付させていただいているかと存じます。
大変大部な資料でございますけれども、足りない資料などございましたら、事務局までお申しつけいただければと存じます。
なお、マイクをお使いいただきます際には、スタンドにありますスイッチを押してからご発言いただければと存じます。同時に4本まで使用できませんので、ご発言が終られましたら、随時スイッチをお切りください。また、ご発言の際、お近くにマイクがない場合には、マイクを持った職員が参りますので、ご協力をお願いいたします。
本部会にご所属いただいている委員、臨時委員についてのご確認でございます。参考資料の1のとおりになってございます。前回2月22日の本部会から委員の変更がございました。
東北大学教授の生田長人臨時委員が退任されまして、独立行政法人勤労者退職金共済機構理事長代理の櫻井康好臨時委員が新たにご就任いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
○櫻井委員 櫻井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○川上総務課長 ありがとうございます。
また、全国市長会における改選に伴いまして、宮下裕委員が本部会の委員から退任されております。現在まだその後任の方が決まっておられないため、本部会の委員及び臨時委員全体の数は、通常の46名よりも1人少ない45名ということになっております。
なお、本日の部会でございますが、現時点で、45名の方のうち24名の方のご出席をいただいており、定足数の要件でございます過半数を満たしているということをご報告申し上げます。
それでは、今後の進行につきまして、鈴木部会長、よろしくお願いいたします。
○鈴木部会長 それでは、部会長の鈴木でございますが、議事に入らせていただきたいと思います。
本日の議題は、議事次第にございますように3件ございまして、まず第1に、第三次環境基本計画の進捗状況の第4回点検について、これを議題といたします。その後、環境研究・環境技術開発の推進戦略について、そして、環境と金融の専門委員会の報告、これを議題とさせていただきたいと思います。その後、事務局から3点ほど報告を受けることとしておりますが、非常に限られた時間の審議ということもございまして、ご協力をよろしくお願い申し上げたいと思います。
それでは、まず第三次環境基本計画の進捗状況につきまして、第4回の点検について、これを議題といたしますが、参考資料の3をご覧いただきますと、第三次環境基本計画の今年度の点検対象となっております重点分野政策プログラム名は、「地球温暖化に対する取組」「物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組」、そして、「化学物質の環境リスクの低減に向けた取組」、「生物多様性の保全のための取組」、そして、「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」、この5件となっております。
「化学物質の環境リスクの低減に向けた取組」につきましては、前回の総政部会で既にご報告のとおりであります。本日はこの地球温暖化、物質循環、生物多様性、この3件につきまして点検の議論をさせていただくということになります。この3つの分野につきましては、既に2月に開かれた総政部会で決定いたしておりますが、各分野の個別計画のフォローアップが進んでおります。このフォローアップの結果を活用して点検を行うということになっておりますので、その3つのプログラムにつきまして、それぞれのところでの検討の結果を、第三次環境基本計画の全体の進捗状況の点検というフォーマットに即してご報告をいただくと、そういうような形で進めさせていただくことになります。
それでは、早速ですが、「地球温暖化問題に対する取組」につきましての報告をお願いいたします。高橋地球温暖化対策課長、よろしくお願いいたします。
○高橋地球温暖化対策課長 温暖化対策課長の高橋でございます。それでは、資料の1をご覧いただきたいと思います。これによりまして、「地球温暖化問題に対する取組」ということで報告させていただきます。
これについては3つの重点事項がございます。1つが、京都議定書の6%削減約束の確実な達成のための取組、2番目として、温室効果ガスの濃度の安定化に向けた中長期的な継続的な排出削減の取組、3番目といたしまして、地球温暖化による避けられない影響への適応のための取組ということでございます。一括して説明いたします。
まず最初に、6%約束の達成ということでございます。これにつきましては、頭にございますように、京都議定書目標の達成状況、それから、補足性の原則を踏まえた京都メカニズムのクレジット取得、それから、森林吸収源対策の推進という3つの観点でございます。
まず、前回の第2回点検における指摘内容が1ページにございますけれども、改訂された目達計画に盛り込まれた対策を着実に推進する、それから、京都メカニズムの活用、それから、すべての主体が参加して6%の約束を達成していく、それから、吸収源対策の適切な総合的な推進というところが指摘されてございます。
2ページ目からは取組状況でございます。まず最初が、京都議定書目標の達成状況でございます。
3ページ目にグラフがございますけれども、直近のデータとしては平成20年度、2008年度のデータが直近でございますけれども、総排出量は12億8,200万トンということで、基準年の90年に比べますと、1.6%上回っているということでございます。前年度、2007年に比べますと、金融危機の影響によりまして急激な景気後退があったということで、前年度比では6.4%の減少ということになってございます。
京都議定書の達成という観点での評価でございますけれども、2ページ目の下側でございますけれども、2008年度は第1約束期間の初年度でございますけれども、2008年単年度で見てみますと、政府としては森林吸収量を最大3.8%まで確保するということで進めてございます。また、政府としてのクレジットの取得、これは基準年排出量の1.6%までということで進めてございます。そういう取組が順調に進むという前提を置きますと、2008年単年度に限ってみると、京都議定書の目標達成の目安に達しているということが言えるのではないかと思っております。
具体的には、2ページにございますように、先ほど申しました森林の3.8%、それから、政府としてのクレジットとしての1.6%、それから、2008年度につきましては、電気事業連合会様のほうで約6,400万トン、これは基準年排出量の5%に相当するクレジットで、電事連の自主行動計画の目標達成に必要なクレジットということで、国に無償で移転をしていただいております。それをすべて加味いたしますと、2008年度の値としては-8.8という数字が出てまいります。ですから、-6%よりもさらに深掘りできているということで、これはあくまでも単年度の推計、政府の取組が順調にいったという前提でのものでございますけれども、そういうレベルまできているということでございます。
4ページ以降、クレジットの取得等でございます。クレジットについては、環境・経産両省でNEDOに委託して、クレジットの取得事業を18年度からやってございますけれども、1億トンという目標に対して、9,580万トン程度の契約が既に終っているということでございます。森林吸収については、林野庁を中心に間伐等の森林整備を進めてございますけれども、現時点では、京都議定書のルールに従って計算すると約3.4%に相当する吸収量を確保できているということで、3.8%に向けて対策を進めているという状況でございます。
今後の政策に向けた提言としての論点を幾つか挙げてございます。1つは、先ほど申しましたように、森林吸収あるいは海外クレジットの取得等を加味すれば、現時点では京都議定書の目標達成が可能なレベルにきておりますけれども、今後、景気の回復等もございます、さらに気を緩めることなく対策を着実に進めていく必要があるのではないか。京都メカニズムについても、引き続き補足性の原則を踏まえつつ獲得を進めてまいりますけれども、特にこれまで契約したものについてのグリーニングの実施等が課題になっているということでございます。
次に6ページ、調査事項の2でございますけれども、中長期的な取組ということで、これについては、本来、[1]に入るようなものも含めて個別の施策、対策をすべてこのところでまとめてございます。観点としては、中長期的な継続的な排出削減のための取組ということと、2013年以降の新たな国際枠組みに向けたリーダーシップの発揮という2つの観点でございます。
第2回の点検における指摘事項でございますけれども、6ページからでございますが、これについては、平成20年7月に閣議決定されました低炭素社会づくり行動計画というものをベースにして、この行動計画に盛り込まれた取組を基本的に進めていくべきだということでご指摘をいただいてございます。細かい説明は省かせていただきますけれども、技術革新、太陽光発電、次世代自動車、省エネ機器の普及、それから、排出量取引の試行的な実施、農林水産分野の対策、バイオマス等の対策、それから、7ページにはいわゆる都市、地域づくり、それから、教育とかビジネススタイル、ライフスタイルの変革、こういうようなことについての低炭素社会づくり行動計画を踏まえた提言をいただいております。
また、さらに中期目標について、この時点では平成21年のしかるべき時期に設定すべきということもご指摘をいただいております。また、20年7月、洞爺湖サミットが行われたわけでございますけれども、その成果も踏まえて2013年以降の新たな国際枠組みの構築に向けて主導的な役割を果たすべきということをいただいてございます。
また、主な取組状況ということでございますけれども、ご案内のとおりこのご指摘をいただいた後、政権交代もございまして、新たな展開が図られているということでございますけれども、7ページの下からは、鳩山総理の昨年9月の演説を踏まえた内容でございますけれども、2020年までの90年比25%の排出削減目標、その前提条件となる、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築、あるいは、意欲的な目標の合意という前提を付した上での25%の目標、あるいは、2050年までに80%削減するという長期目標を掲げている。
そのために、8ページでございますけれども、キャップ・アンド・トレード型の国内排出量取引制度、地球温暖化対策のための税、あるいは、全量固定価格買取制度を含めたあらゆる政策を総動員していくということが挙げてございます。
8ページの上からでございますけれども、これを踏まえて我が国の基本的な方向性を明らかにするということを目的に、基本原則あるいは各主体の責務、それから、先ほど申しました排出量の中長期的な目標、それから、総合的・計画的な推進のための基本計画、あるいは、先ほど申しました3本柱を含めた基本的な施策、そういうものを盛り込んだ地球温暖化対策基本法案を本年3月に閣議決定をして、国会に提出をしてございます。
一言申し上げますと、この法案につきましては、今日がまさに国会の最終日でございますけれども、衆議院で採択された後、参議院に回って審議が行われてございましたけれども、最終的な法案の取扱いは今日決まると思いますけれども、現時点においては恐らく廃案になるだろうということでございます。昨日も菅総理が国会で所信の答弁をしてございましたけれども、この温暖化対策については引き続き基本的な方針を変えずに進めていくということでございます。また、小沢環境大臣も、今日の記者会見等でもこの基本法案についてはできるだけ早く再提出をしたいということで発言されてございますけれども、法案としてはそういう状況になってございます。
それに加えまして、8ページ目の下半分でございますけれども、この法案の審議と関連いたしまして、基本法案が成立いたしますと、それを踏まえて基本的な計画等をつくることになってございますけれども、温暖化対策の中長期的な計画ということで、中環審では中長期ロードマップ小委員会というものを設置いたしまして、中長期的な対策の具体的な姿、「小沢試案」というものが出ておりますけれども、それをたたき台として検討を始めてございます。また、資源エネルギー庁のほうでもエネルギーの基本的な計画をつくっているということでございます。そういうものを踏まえて、いずれは政府全体としての中長期的な計画をつくっていくという方向で政府の中では検討を進めていると。その過程においては幅広い意見を聴取して進めていくということでございます。
それから、具体的な個別の政策につきましては、8ページの下から、先ほどご紹介しました低炭素社会づくり行動計画に沿った対策の進捗状況が書いてございます。かいつまんで申しますと、9ページ、太陽光発電については、昨年の11月から新たな買取制度が開始されたということでございます。また、さらに全量固定価格買取制度の検討が進んでいるということでございます。次世代自動車についても、エコカー減税等によりましてさらなる普及が図られているというところでございます。
排出量取引については昨年から試行が行われております。また、先ほどご説明しました基本法案においては、法の施行後1年以内に具体的な排出量取引制度の成案をうるということが盛り込まれているところでございます。試行については多くの参加をいただいております。これを見直ししながら継続していくということで、本格的制度の導入の備えていくということでございます。
税のグリーン化についても、10ページでございますけれども、特に昨年12月にまとめられました、平成22年度税制改正大綱におきまして、地球温暖化対策のための税については、平成23年度実施に向けた成案をうるべくさらに検討を進めるということでございまして、この方針に沿って検討が進められていると、この旨は基本法案にも盛り込まれているということでございます。
少し飛ばしまして、11ページ、地域づくりということでは、環境モデル都市を選定して、優良事例の推進が行われております。環境学習、あるいは、ライフスタイル等でございますけれども、特に11ページの下、「チャレンジ25キャンペーン」ということで、これまで進めてきた-6%という取組をさらに発展させまして、「チャレンジ25」という新たな国民運動を新政権の下進めているということでございます。
それから、11ページの下から、国際交渉でございますけれども、昨年7月のG8、イタリアサミットで世界での排出量の半減、あるいは、先進国としては80%以上削減する、あるいは、気温上昇を産業革命前と比べて2℃以下に抑えるというような認識が共有されました。そういうものをベースに鳩山総理の国連演説もございました。
また、COP15におきまして、テイクノートという形ではございましたけれども、コペンハーゲン合意というものがとりまとめられております。また、その過程の中で、日本としても、「鳩山イニシアティブ」ということで、途上国に対する支援の充実についてもコミットしているところでございます。コペンハーゲン合意に基づきまして、我が国も、先ほど申しました前提条件付きの基準比25%という2020年目標を提出してございます。今後ともリーダーシップを発揮していきたいということでございます。
今後の政策に向けた提言というのが12ページの下からございますけれども、1つは、80%削減という2050年、長期目標、これは大変野心的な意欲的な目標でございます。これに向けて直ちに中期目標、前提条件が満たされる間においても、排出量取引、税、固定価格買取制度をはじめとする施策の推進について積極的に進めていく必要があるのではないかということでございます。
また、13ページ、25%目標については、中長期ロードマップ等様々な検討を進めてございますけれども、今後とも政府としての計画をまとめるべく幅広い意見聴取をしながら、具体化を進めていくということでございます。国内排出量取引制度につきましては、1年以内に成案をうるということで、これも環境省の小委員会をはじめ政府の中の検討が今始まっております。具体的な制度設計を進めていくということでございます。税についても、先ほど申しましたような方針に沿って、実現に向けた検討を進めていくということであります。
再生可能エネルギーの全量価格買取制度についても、経済産業省を中心に検討しておりますけれども、制度の創設に向けて施策を講じていくということでございます。それ以外に、カーボンオフセットの取組も書いてございます。
また、国際枠組みについては、13ページの一番下からでございますけれども、コペンハーゲン合意を踏まえながら、2013年以降の次期枠組みの構築が課題になっているということで、日本としても積極的にリーダーシップを発揮していく必要があると。
それから、最後に書いてございますのは、低炭素化等の技術や製品という日本の企業の強みを生かす取組ということで、低炭素の技術、製品の普及を通した日本の貢献というものも、目標達成に反映するというような仕組みも含めて検討していくことが必要ではないかということでございます。
それから、15ページに入りまして、3つ目の調査事項ということで、いわゆる適応についての取組でございます。これについては、温暖化に対して脆弱な途上国における適応対策を進めていくための支援、もう一つは、我が国における適応を進めるための情報収集、調査研究等の推進という観点でまとめてございます。
第2回点検における調査事項ということで、15ページに書いてございますけれども、1つは、途上国の支援ということで、クールアース・パートナーシップ、あるいは、適応基金による支援ということが挙げられてございますけれども、途上国における適応を進めるための支援、あるいは、そのための技術的なガイドラインの制定等の取組が指摘されてございます。
3つ目の○以降は、我が国における適応策ということで、健康でございますとか、農業分野、そういうところを含めて影響とその適応についての情報収集、調査研究の推進、それから、気象庁と連携して進めています地球観測連携拠点をはじめとする国内における影響のモニタリング、それから、地球環境研究推進費等、いわゆる試験研究制度を的確に進めることによって、行政ニーズを踏まえた調査研究を進めていくということが提言されてございます。
主な取組状況として、16ページ以降でございますけれども、IPCCの第4次報告書においても、適応の必要が指摘されてございます。また、先ほどご紹介いたしました温暖化対策基本法案におきましても、適応の実施や推進に関する条項を明記しているということでございます。
具体的な取組については、16ページの下半分からでございますけれども、途上国における適応対策の促進ということでは、「鳩山イニシアティブ」の中で、特に気候変動に脆弱な途上国を対象に支援をしていくということで、具体的には2012年末までに総額で150億ドル、そのうち110億ドルは公的資金ということの支援の表明をしているということでございます。適応基金についても、適応基金理事会というのがございますけれども、大体ルールができまして、動き出してきているということでございます。COP15においても、「鳩山イニシアティブ」を掲げまして、途上国に対する支援について積極的に主張しているところでございます。
17ページからは、我が国国内における影響の観点でございますけれども、気候変動の影響等につきまして、研究費を活用しながら様々な情報をホームページあるいはシンポジウム等で紹介しているということでございます。特に昨年の10月には、我が国における知見をとりまとめた「日本の気候変動とその影響」というものを関係省庁とも連携してまとめてございます。また、国内のモニタリングという観点では、昨年の1月に温室効果ガスの観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)を打ち上げまして、データの提供開始をしているということでございます。
最後のページ、今後の政策に向けた提言でございますけれども、先ほど申しました「いぶき」のデータの活用、それから、温暖化影響については、国全体だけではなくて、各自治体において様々な影響があるわけでございますけれども、自治体が活用できるような情報の整備、提供を進めていく。そういうものによって、今、必ずしも意識が高くない自治体レベルでの適応についても意識の向上を図って、実施を支援していくということがございます。また、国際的にはアジア太平洋地域の途上国を対象にいたしまして、モニタリング・影響評価を促進するという観点での、ネットワークの構築を進めていくということを論点として挙げさせていただいております。
大変駆け足で恐縮でございますけれども、以上でご説明を終りたいと思います。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
では、ただいまの事務局からの説明につきましていろいろとご意見、ご質問があろうかと思います。大変議題が混み合っておりますので、15分程度をかけさせていただきたいと思いますが、ご意見おありの方は名札をお立ていただけますでしょうか。
8名の方になりますでしょうか。では、三浦委員のほうから、なるべく簡潔にお願いいたします。申し訳ありません。
○三浦委員 ありがとうございます。簡単に質問をさせていただきますが、16ページ、17ページにあります途上国における温暖化対策の促進ということで、24年まで150億ドル、あるいは、次のページの概ね平成24年まで150億ドルと用意されていますけれども、この支援の内容ですとか、その支援に対する効果というのが、今後きちんと説明されるのかどうかということをお伺いします。
以上です。
○鈴木部会長 では、福川委員。
○福川委員 13ページにございますが、今度のコペンハーゲン合意を基礎として、さらにこれからの国際的な枠組みについてリーダーシップを発揮すべきであると、こういうことでございますが、主として一番重要な問題は、アメリカと中国に対してどういう交渉方針をするかということが一番肝心だと思いますので、その辺についてどういう具体的な対応をしていかれるかということをお伺したいのが第1でございます。
それから、もう一つは、15ページにございますモニタリングでございます。情報のネットワーク化をしてモニタリングをきちんとしていくというのは対策の基礎だと思いますが、拡充すべきであるということとしておりますが、具体的にどこまで進んで、これからどういうことをしようとしていくのか、お伺いしたいと思います。
以上です。
○鈴木部会長 速水委員。
○速水委員 ありがとうございます。4ページの京都メカニズムのクレジット取得のところなんですけれども、平成18年から開始されて費用対効果を考慮してというふうに書いてございますので、どのぐらいの費用で、どのぐらいのものが、あるいは、どこから購入されているかというようなものが、どこかで調べれば、例えばサイトで公開しているとか、そういうデータをどこで知ることができるのか。もしなければどこかで公表してほしいなというふうな意見でございます。
○鈴木部会長 林委員。
○林委員 15ページの途上国向けのところであります。途上国の都市の特に鉄道が全くできない1,000万都市がどんどん増えてきています。それに対して、日本が有用な技術をたくさん持っております。新幹線を売り出すのが最近話題になっていますけれども、それだけではなくて、都市鉄道のハードとマネジメント、ソフト全体で貢献するということなどが必要だと思います。それに際して、一つはODAのグリーン化、すなわち、CO2削減程度に応じて優先順位づけをきちんとやるべきではないかと。現実には、現在の日本の交通関連ODAの大半は道路建設に向けられています。
もう一方で、ODAについても、これは世界の枠組みになるんですが、CO2を減らすようなODAというものがあるわけでありまして、それに対して、現在CDM等でやられているようなクレジットを、賦与することは、非常に重要だと思っています。具体的にはODAを出すほうと受け入れるほうで折半するようなことを考えているわけですが、CO2を削減するインフラ整備を推進する必要があると思っています。
以上です。
○鈴木部会長 河野委員。
○河野委員 ありがとうございます。二点あります。
一点目は、13ページを中心にすることです。既に温暖化対策についていろいろな取組がされております。それから、今後新しい政策に取り組むということであれば、国民の負担もかなり増えていくということであります。具体的にそれぞれの政策について、コストパフォーマンスがわかる場合には、金額の提示ということができれば、国民に相当の金額がかかるということを理解していただくということは当然のことなので既にやられているかもしれませんが、今後とも相当かかるということの理解を一層図る方策を考えていただければと思います。これは意見であります。
それから、第二点目は、15ページにかかることであります。地球温暖化による避けられない影響のことで、以前の総合政策部会で同様のことを発言した記憶があります。途上国ばかりでなくて、我が国の対応を記述する必要があるということですね。今回は記述されていることは望ましいと思いますが、疫病とか農業生産以外に記述することがあると思います。既に始まっているのかもわかりませんが、ゲリラ的豪雨と言いますか、これに関わる治水問題とか、あるいは、途上国で海面上昇の問題があるとすれば、我が国でも海面上昇の問題があり、さらにこれに関わる護岸の増強問題とか。こういうことは15ページに書かれていません。それが書かれていないために、17ページの対応のところも今言ったどちらかというと工学的・土木的対応のことが記述されていませんし、18ページにもないということでありますので、その辺を考慮する必要があるのではないか。
以上です。
○鈴木部会長 山本委員。
○山本委員 ただいまのご意見と共通するんですけれども、温暖化適応策についてこの数年世界の関心は海洋の酸性化、チッピング・エレメンツ、それから、ジオ・エンジニアリング、そういうことがものすごく世界的な関心を呼んでいるわけですけれども、この報告書には全くそういうことが言及されていないというのは大変問題であると。特にジオ・エンジニアリングは、この半年くらいの間に欧米では議会の公聴会とかいろんなことが開かれて、アメリカは政府が研究の予算をつけるというところまできているわけでありまして、「海洋の酸性化」、「チッピング・エレメンツ」、「ジオ・エンジニアリング」と、この3つの言葉はこの報告書のどこかに入らなければいけないと私は考えております。
ありがとうございました。
○鈴木部会長 佐和委員。
○佐和委員 9ページの一番上の○について若干コメントさせていただきたいんですが。少なくとも政府が出力ベースで太陽光発電は2020年までに35倍にすると、そういう目標を掲げているわけですけれども、今、戸建て住宅の普及率というか、屋根についている率というのは、約2%だというふうに私は推測しております。これを仮に戸建て住宅だけで35倍にしようとすれば、70%の戸建て住宅の屋根に太陽電池が取り付けられなければならない。しかし、それは、戸建て住宅といっても必ずしも屋根の斜面が南に向いているとは限らないというようなことを考えると、事実上不可能な数字なんですね。
ということは、今回、フィードインタリフの制度を改革するにあたって次のようなことを行うべきであると。ここでは全量買取制度ということだけについて触れられているわけですが、それに加えて買取対象を、一般の事業者も含めると。例えば広い面積の車庫を持っている人が、いわゆる駐車場を持っている人が、駐車場に屋根をつけて、その上に太陽光発電を張り詰めて、それを全量買い取りするというような制度を導入すれば、駐車場を持っている人は屋根をつけるインセンティブができると。さらに、それによってそこの駐車場を借りている人にとっては大変便益が高まるということになる。
それからもう一点は、日本の場合は、今、10年ということで切っているわけですけれども、ドイツ並みに20年にして、後ほど環境と金融というのが出てくるようですけれども、銀行からお金を借りて、屋根の発電で儲かったお金で10年間ぐらいで返済できて、あとの10年間は返済が済んでいるから、屋根の持ち主といいますか、その住宅の持ち主が丸儲けといったら変ですけれども、丸儲けすると、それぐらいのインセンティブというものを仕掛ける必要があるのではないかと思います。
以上です。
○鈴木部会長 崎田委員。
○崎田委員 ありがとうございます。質問というよりも意見という感じではあるのですけれども。昨年、新政権が将来のCO2削減目標値を強化したということで、今それに伴って、成長戦略の中にも含まれているわけですけれども、各省庁がそれぞれの仕組みの中でどれだけ温暖化対策ができるか検討が進み始めてきていると思っております。ただし、それぞれの省庁がエネルギー政策であったり、住宅政策であったり、森林政策など、熱心にやっていらっしゃいますが、それぞれがきちんと連携をして、どの程度の効果をそれぞれに出そうと、日本全体を制度設計していこうとしているのかということが、国民にわかりやすく発信されていくというのが大変重要だと思っております。
その中で特に規制強化策や義務化策と支援策をどういうバランスで実施して、きちんとCO2削減の効果を上げていくのかというような信頼関係づくりが大切ですし、もう一つの視点では、産業界と、民生部門のいわゆる暮らしと地域社会がどれだけ共に削減していくかなど、そういう形を明確にするとか、そういうところを国家戦略の中でもきちんと位置づけていただくことで、社会全体が納得して進むという、そういう大きな転換点にきているのではないかという感じもしております。そういう意味で、環境省がしっかりと高い目標に沿った提案もしつつ、例えば国家戦略局のようなところで明確にその辺の国の全体像のところを、国民に発信していただくのが大変重要な時期ではないかというふうに思っております。
なお、今、エネルギーとか住宅に関して国土交通省や経済産業省や環境省が連携して、制度設計についての検討会を開始されましたので、そういうことが進むことを期待していますが、どういうことが社会にも求められているんだということを、明確に発信していただくことで、社会がこれからの10年、20年で本気で取り組まなければならない、大きな制度改革と暮らしの改革につながるのではないかと思っております。昨年度の報告チェックではありますけれども、今後の展開のところに少し明確に書いていくということもひとつ必要な視点なのではないかなというふうに感じております。よろしくお願いいたします。
○鈴木部会長 では、大塚委員。
○大塚委員 全体として温暖化対策は最近すごく進んできていますので、それに伴って全般的によくお書きになっていただいていると思いますが、若干細かいですが、二点申し上げておきたい点がございます。
一点は、国際的な交渉の中で、現在それほどクローズアップされていませんけれども、今後緩和についてどういう目標が立てられるかということと恐らくあまり関係なしに、CDM改革をどうするかという問題は残っていくと思いますし、京都クレジット的なものは残っていく可能性が極めて高いんですが、それに関してはほとんど触れられていないというところがあって、何かちょっとお書きいただいたほうがいいのではないかと思います。特にCDMに関しては、ホスト国のほうですけれども、特定の国に集中しているということとか、あるいは、本当に温暖化対策のためになっているのかという問題がございますので、そういうことも含めてお書きいただくことが必要ではないかと思います。
もう一点は、非常に細かい話で恐縮ですが、5ページの最後のところにあるGISの話ですけれども、その後、クレジットの移転を確実に実施するというのはぜひ行っていただきたいと思いますが、ウクライナとの関係については今どういうふうになっているかというのを教えていただけるとありがたいと思います。これは日本国政府のせいではないので、日本国政府の問題ではないと思いますけれども、確実に実施するということが必要だと思いますので、何かお答えいただけるとありがたいと思います。
以上です。
○鈴木部会長 いろいろとご質問、コメントをいただきました。これから第四次の基本計画を考えていく上で生かされるべきこと等もあったと思いますし、また、今別途検討中のロードマップの部分にも反映させなければいけないものもあったかと思います。点検のところでどういう形でこの辺のところを組み込んでいくか。今後への提言というところを充実していくということで、先ほど申し上げました第四次の基本計画に生かしていくということが必要なのかと思います。本年度点検項目には入っておりませんが、例えば国際的な枠組みの問題であったり、長期的な視野を持った科学技術とも大いに関連するわけですが、最終的にまとめる段階ではその辺をどこかに組み込んでいくということになろうかと思います。
それでは、今いただきましたご質問、ご意見に関しまして、高橋さんのほうから。
○高橋地球温暖化対策課長 少し分担して答えますけれども、まず、今、鈴木部会長がおっしゃられたように、今回の記述で不十分なところ、特に適応の問題もございましたし、政府全体としての取組、それをいかに社会に発信していくか、この辺につきましてさらに記述を充実すべく検討したいと思います。
個別のご質問でございますけれども、一つは、速水委員からのクレジット購入についての実績。これは、個別の購入の費用については、ほかのクレジット購入にも影響を与えますので、公表してございませんが、どこの国からどういうプロジェクトをどれだけ買ったかということについてはホームページで公開しております。これはNEDOあるいは環境省、経産省のホームページから見ていただけますので、ご覧いただければと思います。
それから、国民に対する負担を明確にするということ。これもいろんなところでやってございます。特に中長期ロードマップの中で、小沢試案の中でも幾つか上げてございますけれども、いろんなモデルによって結果が違ってくるということもございまして、この辺はプラスマイナスいろんな影響、いろんな前提条件によって変わってまいりますけれども、その辺は幅広くお示ししながら、引き続ききちんと理解いただけるに努力をしてまいりたいと思っております。
それから、佐和委員のほうから買取についてご指摘がございました。買取制度につきましては、今、経産省を中心に検討してございますけれども、おっしゃられたような買取の対象についても、家庭のみならず事業者も含めるという案もオプションで出てございます。私どもとしても非常に野心的な再生可能エネルギーの導入目標を掲げてございますので、目標の実現に向けてきちんとした買取制度になるように、私どもとしても協力をしてまいりたいと思っております。それから、金融についてもおっしゃるとおりで、後ほど報告があるかと思いますけれども、いわゆる金融的な手法を使って太陽光パネル等の導入を促進することも重要かと思っております。
それから、崎田委員のご指摘に若干お答えしますけれども、おっしゃられたように、住宅の分野等をはじめとして、今、経産省あるいは国土交通省と連携をしていろいろな検討も進めてございます。また、中長期ロードマップ小委員会のほうで、それらを全体的なすべての分野を通じて25%の目標達成に向けた道筋を検討してございます。そういう中で幅広くいろんな業界からもご意見を聞き、また、関係省庁とも連携をして政府全体としての取組につながるように進めてまいりたいと考えております。
国際交渉の関係で若干補足をさせていただきます。
○瀧口国際対策室長 地球環境局の国際対策室長をしております瀧口です。よろしくお願いします。今ご質問いただいた点で気候変動の国際交渉に関係する部分をお答えさせていただきます。
まず、三浦委員のほうから、「途上国支援の内容等をきちんと説明されるのか」ということでしたけれども、私どもきちんと説明していきたいと思っております。150億ドルの中には、無償の資金協力もあれば、世界銀行の基金への拠出もあれば、JBICのスキーム等を通じた協力等もありますけれども、そういったものをどういうスキームで、どんな協力をしたのかという点を、ちゃんと説明責任を果していきたいと思っています。それから、途上国に対しても、日本がどういう貢献をしているのかというところはちゃんと説明をしていきたいと思っています。
それから、福川委員のほうから、今後の国際交渉に関しまして、アメリカ、中国が重要なので、そこをどう対応していくのかというご質問をいただきました。まさにご指摘のとおりであります。アメリカと中国合わせて世界全体の排出量の約4割を占めておりますから、その二国の対応が非常に重要だというのは我々も認識しておりまして、この二国も含めた主要国が入る公平かつ実効性のある枠組みを目指しているわけですけれども、具体的にはこうした国への対応については、あらゆるレベルで働きかけを行っています。
首脳レベルの会談でも必ず気候変動問題について働きかけをしておりますし、個別に申しますと、アメリカのほうは昨年下院のほうでエネルギー・気候変動の法案が可決されました。これはキャップ・アンド・トレード型の排出量取引も含むものであります。同じエネルギー、気候変動関連の法案が今、上院に提案されて審議されている最中ですけれども、それに対して我々は注目をして、関心を持って見ているところであります。
それから、国際枠組みをアメリカと一緒につくろうということで、途上国の削減行動のMRVと呼んでおりますが、そういう測定、報告、検証の透明性の確保を充実させようということで、アメリカと日本、ほかにオーストラリア等とも一緒に提案したりしております。それから、中国に対しましては、環境省も、コ・ベネフィットと言っておりますけれども、温室効果ガス削減と大気汚染物質層の2つ、一石二鳥で削減を進めるような、例えば発電所のエネルギー効率の改善といったものも進めておりますし、あるいは、アジア太平洋地域パートナーシップのような形で中国とも官民で協力を進めているところです。
それから、林委員のほうからODAのグリーン化というご指摘がありました。これもそのとおりでありまして、進めていきたいと思っています。それから、こうしたCO2を削減するODAについてクレジット化するようなことが重要ではないかというご指摘がありました。我々も同じ認識を持っておりまして、今回、国会で議論されました温暖化対策の基本法案の中でも、日本の技術や製品が海外で温室効果ガス削減に貢献している部分をちゃんと評価できるような仕組みをつくるというところが入っておりまして、そういうところの検討も今後進めていきたいというふうに思っております
この国際交渉関係で大塚委員のほうから、CDM改革等がこの資料では触れられていないというご指摘がありましたが、それもご指摘のとおりでして、国際交渉の場面ではCDMをもっと使いやすいものにするというのを日本としていつも主張している部分です。
それから最後に、グリーン・インベストメント・スキーム(GIS)という、いわゆる排出量取引で日本が排出枠を買った分の日本が出したお金を相手国での環境対策に使ってもらうというスキームがございますが、ウクライナとのやりとりの中で、大塚委員のご指摘はウクライナが最近政治的な体制の変更がありまして、新しい政権が日本からの資金を旧政権が不透明な形で使ってしまったという指摘をして、それが二、三カ月前に問題になったことがありました。それに関しましては、環境省も現地まで人を派遣して確認した結果、日本からいったお金が不正に使われたということはなくて、ウクライナの財務省にあることを確認したという報告を受けております。
以上です。
○高橋地球温暖化対策課長 もしよろしければ、モニタリングと適応について若干補足をさせていただきます。
○研究調査室 研究調査室です。福川委員からご指摘ありましたモニタリングの観測についてですが、17ページの一番下にあります地球観測連携拠点というのがありまして、こちらは総合科学技術会議の地球観測の推進戦略というものに基づきまして、環境省、気象庁が協働して温暖化分野の観測拠点をつくっております。この書きぶりがやや淡白なので充実させたいと思いますが、昨年度は例えば地球観測のニーズ調査とか実施計画、それから、関係府省の連絡会議、それから、観測データの標準化、観測プラットフォームの相互利用に向けた調整案等を検討してございます。少し報告の書きぶりを充実させたいと思います。
それから、山本委員からご指摘ありました海洋酸性化、それから、ジオ・エンジニアリングでございます。ジオ・エンジニアリングの動向については、察知はしておりまして、これを今後の提言に書き込めればと思います。それから、海洋酸性化につきましては、今年度、IPCCからの要請を受けまして、我が国で専門家の会合を開催するべく準備をしてございます。これは背景情報でございます。
それから、河野委員よりゲリラ豪雨、海面上昇の点をご指摘いただきました。こちらは、17ページにありますとおり、国内のややバクッとした影響は推進費というもので把握しております。今年度からまた別枠をつくりまして、もう少し実態レベルにスケールダウンした影響とか評価といったものを、今後3年間で実施すべく準備をしております。こういったきめの細かい影響への対応という部分を提言に入れ込ませていただければと思います。
以上です。
○鈴木部会長 大体よろしいでしょうか。
いろいろお答えいただきましたが、例えば地球観測に関するGEOS(地球観測衛星)のデータなども、これはネットワーク化されているとは言いながら、それぞれの自治体が十分に使いこなせるような形にはまだなっていないですね。そういうようなところは環境省の側からむしろ要求していく。
それから、河野委員からご質問の例えば国民負担がどうなるんだというようなところも大変重要なところなので、その辺も環境省としては、可能な限りいろいろとデータをブレークダウンするなり、あるいは、推定をするなりという形で、国民の理解を深めるという方向に努力していただくというのが必要かと思いました。
また何か追加がございましたら、後ほどお伺いすることにいたしまして、次の報告に進ませていただきたいと思います。
続きまして、「物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組」、これにつきましては、循環型社会推進室長の大森さんのほうからですか。
○大森循環型社会推進室長 では、資料2に基づきまして、「物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組」に関してご報告いたします。循環型社会の構築につきましては、循環型社会形成推進基本計画の第二次の計画がございまして、その点検について毎年度点検を行っておりますが、第2回の点検結果を本年の3月に中央環境審議会のほうからご報告いただきまして、その結果を閣議報告したところでございます。そのフォローアップの結果を中心にご説明をさせていただきます。
環境基本計画での重点調査事項が3つございます。その1つ目といたしまして、1ページ目のところでございますが、自然の物質循環と社会経済システムの物質循環、両方を視野に入れた適正な物質循環の確保というのが調査事項になっております。その中でa、b、cと調査のポイントがございます。
1枚めくっていただきまして、1つ目の3Rの一層の推進に関する取組につきましては、循環型社会形成推進基本計画に基づいて各種取組を全般的に進めているところでございます。
2つ目に、低炭素社会形成、自然共生社会形成と統合的に展開する循環型社会形成に向けた取組につきましては、循環型社会と低炭素社会の統合的な取組の推進に関しましては、2ページ目の真ん中のほうにありますように、リデュース、リユースを中心とした循環利用推進の取組を進めるとともに、[2]で書いてございますが、廃棄物発電導入等による熱回収の徹底ということで、高効率な廃棄物発電施設、バイオマス利用施設の支援を行っております。特に循環型社会形成推進交付金におきまして、地方公共団体が整備する高効率ごみ発電施設整備に対する交付率を2分の1とするということで支援を行っているところでございます。また、バイオマス系循環資源の有効活用につきましては、平成21年にできましたバイオマス活用推進基本法の施行などに基づいて、一層進めていく予定となっております。
3ページに移っていただきまして、そのほか静脈物流システムの構築なども進めていくということでございます。
(2)になりますが、循環型社会と自然共生社会の統合的な取組に関しましては、[1]にありますが、「生物多様性国家戦略2010」におきまして、自然共生社会と循環型社会の統合的な取組の推進を盛り込んでいるところでございます。また、自然界での再生可能な資源の持続可能な利用推進ということで、バイオマスの利活用や、森林の適切な整備、それから、里地里山の保全等の取組、それから、住宅の長寿命化への取組など、各種取組を進めているところでございます。
4ページのほうに移っていただきまして、3つ目の調査ポイントでございます。地域活性化につながる地域循環圏の形成に向けた取組が3つ目の調査点でございます。地域循環圏につきましては、第二次循環基本計画の重点事項でございまして、地域の特性を生かして循環資源の性質に応じて最適な規模で地域循環圏を構築していくというのが循環基本計画に盛り込まれた点でございます。
それを達成するために、[1]のところでは、最適な規模の地域循環圏をつくっていくために、地域ブロックレベルで地域計画を策定していくということを現在進めているところでございます。具体的には、地方環境事務所が中心となりまして、地域計画をつくるための調査を行っているところでございます。また、先ほども触れましたが、循環型社会形成推進交付金によりまして、地域循環圏の拠点整備を行うなどの支援をしているところでございます。
それから、循環資源の性質別の地域循環圏の構築といたしましては、先進的な取組として、廃棄物系のバイオマス利活用の推進、それから、エコタウンの推進などを行っているところでございます。バイオマス系の循環資源の利用促進につきましては、バイオマスタウン構想などに基づきまして、平成22年度までに300地区を目標にバイオマスタウン構想をつくっていただくような取組を進めているという状況でございます。
それから、5ページ目に移っていただきまして、そのほかに下水汚泥の有効利用、それから、エのところでございますが、製品系循環資源の利用ということで、レアメタルのリサイクルシステムの構築を進めるために、使用済の小型家電の回収モデル事業、効率的な回収方法の検討を現在行っているところでございます。
それから、循環型社会ビジネス市場の拡大につきましては、循環基本計画で目標としておりますのが、平成27年度に循環型社会ビジネスの規模を12年度と比べて2倍にするという目標を設定しておりまして、そこを目指して、現在、市場規模、雇用規模とも、5ページの下の表で見ていただけますように規模が増加しているところでございます。
6ページ目に移っていただきまして、今後の政策に向けた提言としては、循環型社会、低炭素社会の統合的な取組ということにつきましては、低炭素社会の目標達成に向けまして、例えば廃棄物発電の導入、それから、熱回収促進のための措置というようなことで、持続的な取組を進めていくべきというご提案をいただいています。ここにつきましては、今国会で成立しました廃掃法におきましても、熱回収の促進のための項目を盛り込んでいるところでございまして、さらにそういう取組を強化していくということでございます。
また、循環型社会と自然共生社会の統合的な取組につきましては、バイオマス利活用の取組が進められていますが、低炭素社会との統合的な取組に比べますと、まだ取組が進んでいないことから、バイオマス以外の分野にも取組を進める必要があるというような点が指摘されているところでございます。さらに、ここでは3つの社会の統合も含めたような形で長期的な視野で新しい循環型社会の姿について検討を進めるということも指摘されているところでございます。
また、地域循環圏の形成に向けた取組ということでは、最適な規模の地域循環圏をつくるための地域計画を、各地域ブロックでつくっていくというような指摘がされているとともに、都道府県や市町村で様々なレベルで地域の循環基本計画がつくられているところでございますが、そういった計画に沿った取組が進んでいるかどうかというのは、各地域で様々な視点から評価して、随時見直しを行っていくことが重要だということがございます。
7ページに移っていただきまして、循環資源の性質別の地域循環圏につきましては、個別リサイクル法の取組、ライフスタイルの変革、循環型社会ビジネスの振興など、各種施策を適切に組み合わせて、関係者が連携、協働しながら取り組むことが重要であるということが指摘されているところでございます。
以上で1つ目の重点調査事項を終りまして、8ページ目に移っていただきまして、2つ目の重点調査事項、関係主体の連携や国際的な取組による施策の総合的かつ計画的な推進というところのご説明をさせていただきます。ここも3つ、重点事項として調査を実施しております。
1つ目が、環境負荷の低いライフスタイルに変革するための国民運動や、情報提供の推進ということでございまして、9ページ目のほうを見ていただきますと、そのために環境教育、環境学習という点がございますけれども、これにつきましては、学校教育におきまして、循環型社会の形成に係る内容について、十分に盛り込んでいただくような内容の充実を図っていただくとともに、学校教育だけでなくて、地域のNGOやNPOと連携しながら、生涯学習にも役立つような取組を進めているところでございます。
さらに、[2]の普及啓発のところにつきましては、10月が3R推進月間となっておりますが、そういったところを中心に各種大会の開催、それから、ホームページやパンフレットなどで普及啓発を行っているところでございます。
それから、製品のライフサイクルを通じた環境負荷低減に係る取組の推進ということでは、[1]のところにありますが、サプライチェーン企業間での取組に対する支援を進めているとともに、ものづくりの段階では3R対策の促進に必要な基礎研究を体系的に実施しているという点。
それから、10ページ目に移っていただきまして、先ほどのご説明と重なりますけれども、製品が廃棄・使用済となり、循環的利用と適正処分される段階での対策といたしまして、携帯電話や小型家電についてのリサイクルシステムの構築と、使用済小型家電のリサイクルに係る有害性の評価と適正処理についての検討などを進めているところでございます。
また、3つ目のポイントでございます東アジアにおける持続可能な資源循環の確立に向けた取組の推進というところにつきましては、我が国が2004年以降提唱しております「3Rイニシアティブ」を進めていく上で、アジア各国の3Rの政策を確立するために、3R国家戦略の策定を支援しているところでございます。現在はアジア6カ国で支援をしておりまして、ベトナムやインドネシアにおいて政府による承認手続が進められているところでございます。
また、エコタウンをモデルとした循環型の都市づくりへの協力ということで、10ページ目の一番下のところにございますけれども、例えば川崎市と中国の瀋陽市で行われています協力について、それを支援するための覚書を日中環境大臣間で昨年の6月に行いまして、11ページ目に移っていただきますと、その覚書に基づきまして、2つの都市間での協力を進めているところでございます。
さらにはマルチの取組といたしまして、アジア全体で3Rを進めていく上でのプラットフォームとして、「アジア3R推進フォーラム」という形での基盤を、昨年の11月に会合を開きまして、「アジア3R推進フォーラム」を立ち上げたところでございます。ここには、アジア15カ国の政府代表者と国際機関・援助機関、それから、専門家などが参加しております。このプラットフォームが発足したことで、今後、各国の政策対応の促進や3Rプロジェクト実施の支援の促進などが進んでいくということを考えております。具体的には第2回会合を今年の秋にマレーシアで開催いたしまして、さらに取組を進めていく予定でございます。
それと機を一にいたしまして、アジアでのNGO/NPOのレベルでのネットワークを強化していく「アジア3R推進市民フォーラム」も開催されておりまして、それの支援も引き続き行っていくこととしております。そのほか日・中・韓といった、二国間、多国間を通じた協力の強化ということを進めております。
12ページのほうに移っていただきまして、[4]のところでございますけれども、不適切な輸出入の防止ということで、バーゼル条約とそれに基づく特定有害廃棄物等の輸出入の規制に関する法律に基づきまして、輸出入審査の強化、それから、アジアネットワーク事業ということで、各国における輸出入規制情報の共有化などを行っております。
また、各国の適正処理能力向上の支援も行っているところでございます。
また、12ページの一番下のところで、環境保全上望ましい形での国際移動の円滑化とありますけれども、我が国で処理可能な自社等の国外廃棄物を、対応能力の範囲内で受け入れて適正に処理するということは、アジアの循環型社会づくりにも役立つということで、今国会で成立いたしました廃掃法において措置をいたしているところでございます。
そういったところで、今後の政策に向けた提言というところで、国内では環境教育の一層の推進、それから、循環資源の一層の利用促進を進めていくというようなことが提言されているとともに、国際的にはアジア3R推進フォーラムのプラットフォームの下でそれぞれの取組、具体的なプロジェクトの推進をしていくべきということが提言されているところでございます。
また、日中間での取組など都市間での協力について、中国の例をモデルといたしまして、今後、ほかのアジアの国・地域で展開していくべきというようなことも言われているところでございます。
それから、廃棄物の不法な輸出入防止の取組につきましては、国内監視体制やアジア各国での取組強化が一層重要であるということが指摘されております。
最後になりましたが、15ページ目の重点調査事項ということで、物質フロー等に関するデータの迅速かつ適切な把握、分析と公表という事項がございまして、そこでも廃棄物等の定量情報の拡充、それから、産業界、地方公共団体、NPOからのヒアリングの重視という点が指摘されているところでございます。
廃棄物の定量情報の拡充につきましては、いろんな物質の流れの情報につきまして、物質フロー指標というような形、それから、各主体の取組状況を示すような取組指標という形で、循環基本計画のほうでフォローアップをしておりまして、そういったものを一層丁寧にやっていくということ。それから、廃棄物統計の精度向上と迅速化を進めていくということがございます。廃棄物統計の迅速化につきましては、平成21年度に調査を行いまして、例えば温暖化のインベントリーの見直しに反映しているということがございます。
それから、16ページのほうで、UNEPなどが行っております国際的な研究につきましても、日本に紹介したりということで、世界的な研究情勢をフォローしているところでございます。
あと、産業界や地方公共団体、NPOからのヒアリング結果につきましては、循環基本計画の第1回点検、第2回点検におきまして、各関係主体からのヒアリングを行っているところでございます。
17ページのほうで、今後の政策に向けた提言というところでございますけれども、循環基本計画にも盛り込まれております物質フロー指標と取組指標の分析を進めること、それから、廃棄物統計の一層の早期化・速報化と精度向上を進めていくことということが盛り込まれてございます。
私からの説明としては以上でございます。
○鈴木部会長 それでは、ただいまの事務局からの説明につきまして、ご意見等ございましたら、名札を立てていただきたいと思います。
それでは、再び藤井委員のほうから。たくさん名札が立っておりますので、可能な限り簡潔にお願いいたします。
○藤井委員 循環型社会の部会でも大分お話してきましたが、基本的には循環ということの中で安定した国内循環をまず置くということが、これからの方針の中でも少し打ち出されたかなというので評価したいと思います。
ただ、12ページにありますような、バーゼル条約に抵触するようなことが、実態としては適正に処理するということが原則であっても、実際に日本と途上国との間は、適正でない循環というか、ものの動きがあるわけで、ここの点については、アジアに公害問題を起こすことがないようなことをきっちりと監視しながら追っていくべきだというふうに思います。ぜひ途上国に負担というか、土壌汚染、空気汚染、大気汚染、水汚染を起こさないような形での、本来の循環ということを共にできるような社会を目指すということをやっていきたいと思います。
以上です。
○鈴木部会長 福川委員。
○福川委員 ありがとうございます。1つは5ページで、ここで「各種個別のリサイクル法の着実な実施」という表現がありますが、ここもいろいろな種類のものが、数種類のものが今個別の法律で出ておりますし、それなりに資金の負担を求めるものもあれば、システムを改善するものもあったりしますが、個別のリサイクル法の運用上、何か改善すべき点がないかどうか、今の仕組みで十分なのか、その辺についての評価をお伺いしたいと思います。
2つ目は11ページの東アジアですが、これも大変広範な視点で取り組んでおられて、高く評価をしたいと思います。いろいろな会合をするのと同時に、今、東アジアの中でこれを評価する仕組みというものをうまく織り込むことができないかどうかということをご検討賜りたいと思います。今年はAPECが日本で開かれるわけでありますが、APECの場などでリサイクルの問題というのはどういうふうに取り上げられるのか。できればぜひこれを大きく取り上げて、APECでの一つの目玉にされるのも一案かと思いますので、お伺いしたいと思います。
以上です。
○鈴木部会長 では、長辻委員。
○長辻委員 少し個別の質問になりますが、静脈物流システム、それから、循環型ビジネスモデルなどに関連して質問したいと思います。具体的にはセメント産業ですが、この業界の話を聞いてみますと、自治体の都市ごみ焼却場から出てくる焼却灰などをかなりの量、セメントの原料の一部として利用しているということです。一般にはあまり知られてないのですが、実は静脈産業としての役割を担当程度、果たしているということでした。
しかし、それが昨今のコンクリートから人へという流れや、景気低迷の影響もあって、セメントの需要が非常に落ち込んできている。それに伴って各地のごみ焼却場から出てくる灰の行きどころがなくなって困り始めているという話を耳にいたしまですが、そのあたりの実態の把握や何らかの対策は、なされているのでしょうか。また循環型ビジネスや静脈物流システムの中でのセメント産業の位置づけはなされているのでしょうか。確か石灰岩は日本が輸入しなくても済む数少ない天然資源の一つだと思いますが、そういう資源を使う産業の維持についてどのように考えていらっしゃるのかお尋ねしたいと思います。
以上です。
○鈴木部会長 中杉委員。
○中杉委員 一点だけです。13ページの下のほうですけれども、製品のライフサイクルの管理の話ですが、化学物質や重金属と有害物質という、言葉が少しおかしいなと思うのもあるんですが、このお話は基本的には出てきた製品がどうのこうのの話なんですが、実際にはもう一つ前に化学物質自体を廃棄されたときの問題を考えて評価をしていかなければいけないと、この前の点検小委員会で議論になった話ですが。そこら辺のところの連携をとる必要があるんだろうと思うんですね。今までの廃棄物というのは、出てきたものを何とか処理しましょうということでやってきたわけでけれども、それを遡って例えばEUのRoHSみたいな形で対応していくということが必要なので、もう少しそこら辺連携しながらということを書き加えていただく必要があるのではないだろうかというふうに思います。
○鈴木部会長 永里委員。
○永里委員 ありがとうございます。3ページの(2)循環型社会、自然共生社会の総合的な取組というのがございますけれども、そこの[2]自然界での再生可能な資源の持続可能な利用促進、これは「バイオマス日本戦略」に基づくバイオマス等の利活用ということが書いてありますし、[3]里地里山の保全等の取組についても含めて、陸上のバイオマスについて述べているような気がしますね。最近、研究開発も着実に進んでいますので、湖や海のバイオマス、特に藻類等の利活用についても考慮すべきではなかろうかと私は思います。
以上です。
○鈴木部会長 冨田委員。
○冨田委員 私も1点です。6ページの真ん中あたりに廃棄物発電についての考え方が書かれております。廃棄物を焼却したときの熱を回収して、発電で有効利用しようという考え方で、その考え方には全く賛成ですけれども、残念ながら廃棄物を焼却したときの熱というのは、腐食の問題等があって、あまり高温の蒸気は取り出せないという制約があったかと思います。したがって、発電する場合の効率が低いという問題があります。一方、都市部においては、熱需要がもともとありますので、発電ではなくて、廃棄物を焼却したときの熱をそのまま使うという考え方もあるかと思います。それについても一言加えていただければと思います。
以上です。
○鈴木部会長 佐々木委員。
○佐々木委員 ありがとうございます。私は、4ページと9ページと13ページにある中身のことについて、意見と質問をさせていただきます。
例えば4ページのエコタウンのことでございますけれども、記述が全体的に平板的な感じがいたします。例えばその記述の中に26都市の事例があるわけですから、少しでも何かに関わる中身に触れられるといいかなと思います。
それから、9ページと13ページのところの学校教育に関わる環境教育の事例でございますけれども、小学校の学習では資源循環型社会についての学びは社会科だけではないはずです。私の関わっている学校の授業では、全教科で関わりを持ち、循環型社会を構築する授業を推進している事例もたくさんありますので、そのあたりのことを記述する必要があると考えます。
それから、13ページのところにつきましては、これは誰でも書ける文章だろうというふうに私は思います。「学校教育において環境教育を充実していくとともに云々」、そのあたりの2行ですね。この辺、もう少しコンパクトで良いと思いますけれども、実例を入れた内容記述のあるピリリと渋い中身の表記をしていただければありがたいと思います。
ありがとうございます。以上です。
○鈴木部会長 木下委員。
○木下委員 ありがとうございます。7ページの下から3行目について、一点意見を申し上げたいと思います。
環境保全型農業というのは、言われてから久しいわけでございまして、現に我が国で様々な取組がいろいろな地域で行われているというのが実情だろうと思います。そういう観点からいたしますと、3行目に書いてありますように、「進める可能性も追求することが重要です」というような表現よりは、「環境保全型農業を進めることが重要です」というふうにすべきでなかろうかというのが私の意見でございます。
以上です。
○鈴木部会長 山本委員。
○山本委員 ありがとうございます。私は今後の政策に向けた提言で一つ意見を言わせていただきたいと思います。
地球温暖化の問題については、世界の排出量を2050年に半減しようというような、総量削減が国際的にも受け入れられつつあると思うんですが、資源の問題も、私も材料科学者の端くれでありますけれども、既に相当な量を我々は使用しているわけでありまして、2020年には、私の記憶では世界全体で800億トンの天然資源を使うという予想になっているかと思います。そこで、昨年、ワールドリソースフォーラムという物質材料関係の研究者の国際会議が開かれて、2050年に1人当たりの年間の天然資源の使用量を6トンから10トンに下げていこうと、こういう提案がされているわけです。我が国は現在、年間1人当たり14.5トン程度だと思いますが、6トン程度を2050年の目標に掲げる時期がやってきたのではないかと考えておりまして、この方面について総量をどう設定するか。それで脱物質化をどう図るかということがあってはじめて循環型社会ということが意味を持ってくると考えるわけであります。
次に、16ページに国連環境計画、UNEPが設立しましたリソースパネル、持続可能な資源管理に関する国際パネルの活動が記載されているわけでありますが、この資源パネルは、循環型社会づくりにおける、いわゆる気候変動問題におけるIPCCと同じようなパネルになりうるのではないかという国際的な期待が集まっておりまして、私は、日本の国際戦略としてこの資源パネルを全力を挙げて支援して、IPCCが今までやってきたような活動を資源パネルでやっていってはどうかと。それが「もったいない」とか、様々な省資源、リサイクル技術に富む日本の国際競争力をさらに高めるというふうに考えるわけでありまして、ぜひそういう観点からのご検討をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
○鈴木部会長 岡本委員。
○岡本委員 ちょっと細かい質問で申し訳ないですが、一点だけ。
11ページあたりに関係するものだと思いますが、中国とか韓国などからのいわゆる漂流物について、産業廃棄物的なものも流れてきたりして、海岸沿いの方たちは大変な思いをしていらっしゃると思いますし、自治体もその対応に苦慮されているというふうに思いますが、政府として具体的な対応策や協議をどのようにされているのかということを教えていただければと思います。
以上です。
○鈴木部会長 大塚委員。
○大塚委員 二点ございまして、2ページから3ページ、ほかにもたくさんあったと思いますけれども、バイオマスの利活用に関してかなり出ているんですが、量の話が書いてないものですから。定性的な話しか書いてなくて、数量的なこともお書きいただけるといいのかなと思いました。これはよくわからないのでお伺いしたいところがありますが、再生可能エネルギーという観点から、木質系のバイオマスは今のところ必ずしも効率性がよくないということが一方でございます。自然共生社会形成との統合という観点と循環型社会形成の統合という観点だけだと、極めて大きくクローズアップされるんですけれども、低炭素社会の形成の観点と、この3つが統合した場合にバイオマスをどのぐらい推進するかというのは、本当は全部統合することが必要だと思いますので、どのぐらいの量をやるかというのはいろいろ問題があると思います。今回そのことを書けるかどうかわかりませんけれども、ぜひそういう検討も進めていただければと思います。
それから、もう一点でございますけれども、12ページの[4]のエですけれども、これは先ほど大森さんがご指摘いただいたように廃掃法の改正と関連するところかと思いますが、バーゼル法で中古利用に係る輸出時の判断基準を明確化するというのは、日本だけこれをやるということなんですね。バーゼル条約からバーゼル法が出てきているんだけれども、日本についての基準を明確化するというご趣旨なんですよね。ちょっとそれは確認だけさせてください。
○鈴木部会長 いろいろご質問いただきましたので、お答えいただきたいのですが、私のほうから一つだけコメント、感想的なもので恐縮なんですが。
物質循環の確保と循環型社会と挙げられながら、どうも従来型の廃棄物になったものをどうするというようなイメージが非常に強くて、それに対して3Rであるとか、そういう話になっているのですが、資源循環そのものをどういうふうに考えるのか。例えばものづくりの段階でというようなところでも、9ページですか、2行しか書いてないんですが、ものをつくる、製造の段階からどういうふうに化学物質を管理していくのか。中杉委員のご指摘にも共通しますが、もっと上流側に遡って、資源をいかに使っていくかという、最終的には山本委員のご指摘になった世界全体でのリソースの利用という視点を持って、我が国も少し取り組んでいくということが必要なのかなと、そんなイメージをちょっと持ちました。
それでは、お答えいただけるものはお答えいただきましょうか。
○大森循環型社会推進室長 たくさんご質問、ご意見をいただきまして、ありがとうございます。
まず最初に、藤井委員のご指摘につきましては、まことにそのとおりでございまして、アジアで公害問題を起こすことのないように途上国のイーウェストの問題などにおきましては、途上国での環境問題につながらないような形での取組をいろんな形でやっていきたいということでございます。
それから、福川先生のご質問ですね、個別のリサイクル法の問題点につきましては、それぞれいろいろな課題がございまして、それにつきましては、それぞれまた別途中環審のほうでも容リ法その他議論をしていただいているところでございます。あと、APECの話につきましては、今年の11月のAPECの首脳会議では、議題の一つとしてグリーン成長が取り上げられるということでございまして、そういう方向だと伺っておりまして、ご指摘の点については、首脳レベルがどういう方向で議論していただくことが可能かということをまた考えていければと思っています、リサイクルなのか資源なのかという観点でですね。どういう観点かというのも今後検討していきたいと考えております。
それから、長辻先生ご指摘のセメントの問題は、ご指摘のとおりセメント産業が、セメントの使用量が減っているというところで、そこに循環のいろんな、焼却灰その他セメントに投入することで循環利用を進めていたところがなかなかできなくなってきたという議論がございます。そういった点については、この下に置いておりますが、今年度の白書でもセメントの利用量がどのぐらい減ってきたかということを扱っているところでございます。今後、セメント産業の位置づけというか、循環資源の利用先の拡大といったようなことをさらに検討して、技術開発なりを進めていく必要があると考えております。
それから、中杉先生のご意見の「ものの製造段階と連携をする必要がある」というのは、まことにそのとおりでございまして、そういった点を追加できればと考えております。
それから、永里先生の海のバイオマスについては、まだそこまで検討ができておりませんが、どういうことを書けるかを考えたいと思います。
それから、冨田先生のご意見ですね、熱の利用ということで、廃棄物発電についても10%か15%かというような発電効率の議論がございますけれども、熱回収で熱として使っていくということも追加させていただければと思います。
それから、佐々木先生のご意見のエコタウンについては、すみません、記述が単調というご意見をいただきましたが、多少中身が書けるような形で検討させていただきたいと思います。また、学校教育についても、もうちょっと中身を充実させたいと考えております。
それから、木下先生のご意見の環境保全型農業についても、もうちょっと書き方を強化したいと思います。
それから、山本先生から「長期的に見て1人当たりの資源の利用量ということがどうか」というようなご意見をいただきましたけれども、そういった点も含めまして、中環審の循環部会のほうでは将来の長期を見て、それが2030年とか、2050年はちょっと長いかなということも考えておりますが、長期を見た循環型社会の姿を描いてみて、そういったところから個人の取組、そこがご指摘のような個人の1人当たりの量までいけるかどうかはちょっと不明でございますけれども、そういった長期を見渡した検討を始めたいということを考えております。
また、UNEPのリソースパネルにつきましては、資源のIPCC版を目指しているところでございまして、そういった支援を環境省でもUNEPのリソースパネルに対する支援と、その成果を日本に普及していくという両面で取組を行っていきたいと考えております。
あと、岡本委員からご指摘のありました漂流・漂着ごみにつきましては、法律もできたところでございまして、そういったところで取組の強化を行っているところでございます。
それから、大塚委員から「もうちょっと量を書いたほうが」というようなご意見もいただきましたので、量のイメージが書けるかどうか検討したいと思います。それから、バーゼルについての基準づくり、ちょっと確認いたしますが、これは国内での基準と認識しております。ここについては再度確認させていただきます。
最後、鈴木先生のほうから、廃棄物だけではなくて、資源循環というか、もうちょっとリソースというところも考えてというご意見をいただきました。廃棄物・リサイクル部としてのマンデートというものもございますけれども、先ほどの山本委員のご意見もありましたが、使える資源の効率的な利用というような観点も入れたような形での、全体の環境負荷の削減というような点に焦点をあてて、引き続き取組を進めていきたいと考えております。
ありがとうございました。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
それでは、続きまして、「生物多様性の保全のための取組」、これにつきましての報告をお願いしたいと思います。
生物多様性戦略室長、鳥居さん。
○鳥居生物多様性地球戦略企画室長 それでは、私のほうから「生物多様性の保全のための取組」に係る報告をさせていただきます。お手元の資料は資料3でございます。
4つございます重点調査事項のうちの1つ目でございます。生物多様性を社会に浸透させる取組でございます。特に、a)といたしまして、生物多様性に関する取組促進や概念の普及啓発、そして、地方公共団体による生物多様性地域戦略の策定、この2点がございます。
第2回の点検におきましては、まだまだこの「生物多様性」という言葉の認知度が低いということで、生態系サービスの概念なども含めまして、国民が正しく理解できるようにということでございます。
また、平成20年にできました生物多様性基本法に基づいて、地域版の生物多様性戦略というもの策定を進めていくこと、そして、地域における多様性の保全というものを進めるということが指摘されてございます。
主な取組でございますが、この基本法を踏まえまして、今年の3月に法定の初めての「生物多様性国家戦略2010」というものができました。これは、これから申し上げます重点課題のいろんなところにおいて取り組むべき内容について、政府として取り組むべき内容を掲げているところでございます。
一つひとついきますと、次の2ページにまいりまして、まず生物多様性に関する取組促進や概念の普及啓発ですが、企業をはじめとする幅広い事業者が取り組む方向といたしまして、「生物多様性民間参画ガイドライン」というものを、環境省として昨年8月にまとめました。
また、いろんなイベント等を通じて生物多様性の取組を深めたり、市民、NGO、行政担当者等による対話を行ったりしたということでございます。
また、いろんなNGO、NPOなどによる地域における多様性保全のための取組、例えば外来種の駆除だとか希少野生生物の保全などの取組を支援するための支援事業といったものを行ったということでございます。
それから、いろんなコミュニケーションワードあるいはロゴマーク、そういったものをつくって普及啓発に取り組むとともに、著名人による地球いきもの応援団というもので、その方々の日ごろの活動の中で生物多様性を一般の方々にも広める取組をしていただいたということでございます。
それから、今年が「国際生物多様性年」と言われる年ですので、今年の1月には、各界の各分野の方々から構成される国際生物多様性年国内委員会というものをつくりまして、国民運動として生物多様性の普及に取り組んでいくということを力を入れてやっております。非常に認知度が低いんですけれども、平成16年から21年までの5年間で、「多様性」という言葉を知っているという認知度は約6ポイント上昇したということでございます。
3ページの下ですけれども、地方公共団体による「生物多様性の地域戦略」、これまでのところ、ここに掲げてございますような地方公共団体で策定が進みました。先ほどご紹介した国の戦略では、平成24年度までにすべての都道府県で都道府県版の地域戦略の策定に着手するということを目標としております。
今後の政策に向けた提言でございます。4ページでございますが、いろんな取組を通じて、引き続き国民に広く多様性についての認識を深めていく、あるいは、民間事業活動の中で、単なるCSRだけではなくて、企業活動の中に生物多様性の保全というものをどうやって織り込んでいくのかということに取り組んでいただくということをさらに進めていくということでございます。それから、地方公共団体による地域版の戦略の取組の強化ということが課題だと思います。
5ページにまいりまして、2つ目の重点調査事項でございますが、地域における人と自然の関係を再構築するということです。4つ細かい課題があります。中長期ビジョン、そして、里地里山、農林水産業、それから、希少種あるいは外来種対策、こういったものでございますが、第2回の点検では、100年後の人口等を踏まえて国土のグランドデザインをより具体的に検討し、中長期的なビジョンを検討する必要、あるいは、生物多様性の保全に貢献する農林水産業の推進、さらに希少種あるいは外来種対策、あるいは、今、鳥獣問題が中山間地域で課題となっておりますが、そういうところに関する取組を進めるということが指摘されてございます。
6ページにまいりまして、主な取組状況でございます。まず、中長期ビジョンでございますが、先ほどちょっとご紹介いたしました「生物多様性国家戦略2010」でございますが、従来、100年後のグランドデザインというものと、概ね5年後、5年先を見越した取組というふうな国家戦略になっていたところでございますけれども、今般、閣議決定いたしました新しい戦略では、2050年を目処とした中長期目標、人と自然の共生を国土レベル、地域レベルで広く実現させ、我が国の生物多様性の状態を現状以上に豊かなものとすると、抽象的ではございますが、こういった目標を設けております。
そして、短期目標といたしまして、2020年までに取り組む内容として、[1]、[2]、[3]に掲げてございますような内容を記述したというものでございます。
次に、里地里山の保全・再生でございますけれども、うまくいっている事例などを集めてそれを情報発信するとか、あるいは、棚田や里山といった地域における人々と自然との関わりの中で形成されてきた文化的景観といったものの保存を進めるとか、上下流の連携というものを進める、あるいは、農林水産業のほうに目を向けますと、田園地域・里地里山の保全、森林の保全、これは農林水産省さんの施策でございますけれども、こういった施策を通じてより地域の生物多様性の保全に貢献する農林水産業を進めていこうという取組が進んでおります。
それから、絶滅のおそれのある種の保存、外来種対策でございますけれども、7ページの下に書いてございますように、国内希少野生動植物種が82種、そのうち47種については保護・増殖事業を行っているというものでございます。
8ページにまいりまして、種の保存法に基づいて、ワシントン条約に掲げられている国際希少野生動植物種の取引の規制だとか、トキをはじめとする希少種の野生への再導入といったような取組、外来種対策では、97種類の特定外来生物を指定して、輸入や使用等を規制する。あるいは、防除事業、駆除事業をしているというものでございます。
今後の政策に向けた提言ですけれども、まず里地里山に関しましては、管理を積極的に推進する森林と、自然の遷移を基本として森林の機能を維持・発揮できる森林への移行を促進させる管理を行うような森林、そういうふうに森林は大きく2つに分けて、総合的に判断しながら管理を行っていく必要があるという提言でございます。
また、里地里山の利用・管理手法を十分検討して、多様な主体に参加を促していくといったようなこともあるかと思います。その際にはNGOや農林漁業者をはじめとした、そして、行政、いろんな地域のネットワークをつくっていくというようなことも重要かと思います。
それから、農林水産業施策における生物多様性の保全をより重視した視点を取り入れた農業、林業、水産業というものを推進していくということでございます。
次に、種の保存、外来種対策等でございますけれども、これまでレッドリストの掲載種が多数あることに対して、種の保存法による国内種の数が非常に少ないという点が指摘されているわけでございますけれども、こういうことにつきましては、種の保存法の施行状況を十分評価をしながら、効果的な対策を講じていく必要があります。
また、種だけを指定して、それを単体的に保護していくということだけでは無理がございます。それが生息・生育している場所、生態系をきちっと保全していく必要があるということで、重要な地域をあぶり出して、保全上重要な地域、いわゆるホットスポットというものを特定して、先手を打って保全していくということも課題ではないかということを掲げさせていただいております。
重点事項の3番目でございますけれども、森・里・川・海のつながりの確保でございます。1つ目が生態系ネットワーク、そして、2つ目が自然の再生でございます。これは、流域全体の生態系管理の視点を考慮した生態系ネットワークを形成、あるいは、一度壊された自然をもう一度元に回復させる、再生させるという点が指摘されているわけでございますけれども、12ページのほうへまいりまして、20年度、21年度、「全国エコロジカル・ネットワーク構想」ということで、例えば指標種だとか希少な種、あるいは、生態系の多様性、そういった観点から、本来、生き物の視点から、このネットワークというものは、国土でどういうものが必要なのかというものを図化させていただいたということで、それに基づいて、今度は地域レベルでの土地利用、あるいは、先ほど申しました地域版の生物多様性保全戦略をつくっていただくということが次の課題かなと思います。また、自然再生につきましては、22年3月末現在全国21カ所で再生事業を実施しているということでございます。
13ページにまいりまして、そういったネットワークの地域版を地域の施策にきちっと反映させていくということや、森林の保護地域を結ぶ生態学的な回廊を確保をしていくということも重要かと思います。そういう重要なところにつきましては、自然再生事業を推進していくということかと思います。
14ページにまいります。最後の重点調査事項でございますけれども、地球規模の視野を持って行動するということです。ご承知のように、本年10月に名古屋で生物多様性条約の第10回の締約国会議COP10が開催されますが、それを踏まえまして、まず日本の国際的な貢献、そして、生物多様性の総合的な評価、あるいは、モニタリングを実施していくということでございます。
指摘の内容といたしましては、COP10の成功に向けた取組、あるいは、生物多様性の把握、モニタリング・評価、そして、対応ということをきちっと順序づけてやっていくということが必要であるということでございます。
15ページ以降に主な取組が書いてありますけれども、1つは、議長国としての貢献として、COP10の大きな課題の一つである次の戦略の世界目標について、日本としてこう考えるという案を1月に提出してございますけれども、COP10での次の戦略計画のとりまとめに貢献していくこととしております。
また、COP10を契機とした生物多様性の重要性の普及ということも重要ですので、いろんな施策を行っていくということかと思います。
さらに、COP10で日本からの発信の一つといたしまして、SATOYAMAイニシアティブというものを掲げてございます。つまり、二次的な自然地域における自然資源の持続可能な利用・管理を世界的に進めていこうというものでございます。
16ページにまいりまして、生物多様性のモニタリングに関するネットワーク化ということでございます。つい先週、韓国で生物多様性版のIPCCと言われております「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」の設立について、UNEPの会議で設立に向けて一定の合意が得られて、12月の国連総会でさらに検討がなされる予定でございますけれども、そういった動きも踏まえて、日本として生物多様性の観測にどういう貢献ができるかということを引き続き考えていく必要があるかと思います。また、二国間の渡り鳥条約やサンゴ礁の保全などにも貢献しているということでございます。
17ページにまいりまして、国内のほうでございますけれども、生物多様性の総合評価委員会を設置しております。過去50年間で日本の生物多様性というのは非常にダメージを受け、現時点でもまだまだ非常に厳しい状況にあるということがわかってまいりました。そういうものを踏まえまして、今後の対策を打っていく必要があるということでございます。
自然環境保全基礎調査におきましては、植生図の作成を淡々と進めてございますが、国土の約半分で2万5000分の1縮尺レベルでの植生図の作成が進んでいます。
モニタリングサイト1000では、全国に約1,000カ所のサイトを設けまして、温暖化による影響なども含め人為的な影響をキャッチしているという状況でございます。
今後の政策に向けた提言でございますけれども、1つは、COP10をしっかりまとめるということが重要かと思っておりますし、また、先ほどご紹介したIPBESなどにございますように、国際的な生物多様性のモニタリング・評価、あるいは、シナリオの作成などにも貢献をしていく必要があるというふうに考えております。
ちょっと端折りましたけれども、説明は以上でございます。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして、いろいろご質問、ご意見があろうかと思います。
では、今回はこちら側からまいりましょう。大塚委員のほうから。
○大塚委員 どうもありがとうございます。10ページのところでちょっとお伺したいんですが、ほかのところにも出てきましたけれども、生物多様性の保全上重要な地域をホットスポットとして特定して、保全とか再生を進めるということは非常に大事だと思うんですけれども、これはもう少し具体的にお書きいただけると大変ありがたいと思うんですが。
他方で、鳥獣保護法区の、鳥獣保護法の特別な地域とか、あるいは、種の絶滅の法律の生息地とかに関して指定をしようと思っても、常に地権者との関係で問題があって、なかなか指定できないという問題が実際にはあるので、一般的にこれを特定しても、その後どうやって実効性のある対応をするのかというのはなかなかと難しいと思います。それは今までもやってきて難しいということがわかっているんですけれども、何かもう少し具体的にお考えになっていることがあったら書き込んでいただくとありがたいと思いますし、今ここでお答えいただければありがたいと思います。
以上です。
○鈴木部会長 では、櫻井委員。
○櫻井委員 5ページですが、地域における人と自然の関係を再構築する取組ということで、一番上の行に「鳥獣との関係の再構築」という表現はあるんですが、その後、5、6、7を拝見しますと、人と鳥獣のあつれき、農業サイドから言えば鳥獣被害、そういう問題についてあえて特記されない理由があるのかどうか、今どういう位置づけになっているかということを簡単にご説明いただければと思います。
○鈴木部会長 はい、筑紫委員。
○筑紫委員 どうもありがとうございます。私は7ページの生物多様性の保全に貢献する農林水産業の推進というところなんですけれども、ちょっと個別すぎるかもしれませんが、「里地里山」というのはよく出るんですが、ここで「里海」とありますよね。もう少し里海もアピールといいますか、大事なことだと思うので、里地里山と同じぐらい出されてもいいのではないかと思いました。
それから、もう一つ、例えばヨーロッパでは絶滅の危惧があるとされている地中海クロマグロなんですが、ああいったものが90%以上が日本に輸出されているということで、それなのに日本では例えば食品廃棄物が非常に多いわけですね。こういったことを考えると、国際的な観点から生物多様性の保全に貢献するために、実は私たちの食生活そのものを変えていかなければいけないのではないかというような視点というものは何か入れられないのでしょうかという質問です。
○鈴木部会長 長辻委員。
○長辻委員 鳥の例でお尋ねします。トキとコウノトリが復活していますけれども、これは考えてみれば一度日本国内では絶滅してしまった鳥ですね。絶滅してしまうと、これを復活させるのにどれだけの金と手間がかかるかということを示す、そのよい反面教師的な事例だと思いまです。それに対し、アホウドリは絶滅の一歩手前で、鳥類学者の長谷川博さんたちが一生懸命頑張って復活させたわけです。現在は完全復活に向けての最後の仕上げの段階を迎えており、2年前から、伊豆諸島の鳥島から小笠原諸島の聟島へのヒナの移送が行われています。
その移送費、ヘリコプターでヒナを鳥島から聟島に運ぶお金は環境省から出してないですよね。アメリカが出してくれていると思います。アホウドリは北太平洋全域で暮らす海鳥なので、アメリカにも関係のある鳥ですが、繁殖するのは日本国内ですから、復活を確実なものにするためのわずかなヘリコプターでの移送費も出せないというのはちょっと恥ずかしいのではないかと思います。COP10の開催にあたっては、この辺をもう少し自分自身でやっていくという姿勢が大事だろうと思います。
それから、トキが復活したことに関しては、佐渡市の農家の皆さんの協力に非常に大きなものがあって、農薬の低減、殺虫剤の利用についても随分工夫なさったようです。結果として、そこで育った米のブランド化をなさっていますよね、トキのマークをつけて。これと同様の取り組みが生物多様性の保全において、ほかのいろんな地域でもさまざまな形で展開され、農作物などのブランド化がなされていると聞いております。そうした事例の紹介にもっと力を入れていってはどうでしょう。生物多様性というわかりにくい概念が少しでも定着する助けになるのではないかと思います。
○鈴木部会長 林委員。
○林委員 14ページと15ページのCOP10とMOP5に関わる記述のところですが、全般に踏み込みが足りないかなと思いました。
まず、14ページのところにABSのことが書かれていて、Access and Benefit Sharingが非常に重要で、国際的な枠組みが構築されるよう議長国として貢献すべきと、ここに書かれているのは非常に評価されると思います。しかし、さらにこのABSについて、私は四日市の公害裁判と非常に似た意味があるんだと思っています。四日市の公害裁判は、裁判以前は垂れ流しをすればするほど企業が儲かった。したがって、そういう行動に企業が出ていたわけですね。その後、公害裁判の結果によって、企業は垂れ流すとそれが処罰の対象になって企業にとって大きな損害となり、企業の利潤関数の符号が逆転したという意味があるわけです。
そういう意味があるというのはどういうことかといいますと、経済のグリーン化というか、グリーン化された経済システムというのと同じように、生物多様性本位の経済システムに変えられるかどうかという意義が非常に大きいと思うんですね。そういう意味で、日本の経済界にとってもそれに早く踏み込むことが非常に大きなメリットになってくるのではないかというふうに考えるわけです。加えて、このシステム転換に日本が貢献することによって、途上国から信を得るということの非常に重要なところにきているんだと思いますね。それをうまくここに書き込んでいただけると、国がこういうものを事前に出しているということが非常に高く評価されると思います。
それから、右側のページの15ページの下から2つ目にMOP5のカルタヘナ議定書のことについて書かれておりますが、内容がほとんど書かれていなくて、会議をやりましたということしか書いていない。ここは、日本の国益という意味では、食料の大量輸入国でもあるので、予防原則ということをきちっと考えるということの重要性をMOP5が開催される以前に、この審議会の検討の中に書いておくということが必要かと思いました。
以上です。
○鈴木部会長 速水委員。
○速水委員 ありがとうございます。私は9ページの里地里山の保全・再生に関する取組のところなんですが、里地里山の問題というのは各地で様々な取組が行われているんですけれども、そこで育てられる木自体の利用価値というのは非常に少ないんですね。そういう点では、地域の中での例えば熱エネルギーをそこで循環していくという、極めて小さなエリアの中でのエネルギー利用というものが最近ヨーロッパでは非常に盛んになってきまして、極端にいうと自動薪つくり機とか、薪で非常に効率の良いボイラーが出てくるとか、あまり大きな視点ではないんですけれども、地域においては燃料の地域内循環、もちろんそこでお金も循環するんですけれども、そういう視点でも打ち出していかないと、里地里山というのが言葉だけで踊って、実際に地域の中でそれをやることで何らかのメリットが出てこないという形が現状だと思うんですね。その辺を少し踏み込めないかなというのが一つです。
それと、私もちょっと関係しているんですけれども、森林全体の生物多様性に関しては、民間主導の森林認証制度というのが世界的にはかなり活発に動いているわけです。日本ではゆっくりですけれども、実際に今までに認証されているのは2つの認証、国際的な認証制度と、もう一つは日本型の認証制度が動いているんですけれども、どちらも民有林、私有林レベルだとかなり広い面積が認証され始めましたし、公有林なども、それを使って森林にお金を入れる、税を入れるというか、予算を入れるための理由として、認証制度をきっちり使っていると。特に市町村合併をして、下流側のあまり森林となじみのない経済規模の大きなまちが、上流側の森林の多い地域と合併したときに、下流側のお金が上流に流れていくときのきっちりした理由づけに、生物多様性の確保というふうな意味合いを含めて、認証制度というのは非常にうまく動いているというのが最近見られる例なんですね。
認証制度の中での生物多様性の管理のレベルというのは、林野庁が言っているよりははるかに高いレベルを要求していますし、みんな管理をちゃんとやるという意識で、あえて金を払ってまで認証するわけですから。その辺の評価を、農林省は林業視点でやっているだろうけれども、環境省も生物多様性の視点で、あるいは、さっきのホットポイントではないですけれども、特に貴重な森林、「ハイコンサベーション・バリュー・フォレスト」という名前をつけているんですけれども、そういう森林の指定もやっているわけなので、もう少しそこに立ち入って、逆にいうと「調べてみて」という言葉がいいんでしょうか、評価をやっていって、そういうものを利用して行政コストを下げていくぐらいの気持ちを持ってないと、生物多様性というのは結構大変なことなので、民間の動きをどう使っていくというところも含めて森林認証制度というのをご検討されたらどうかと。
もう一つは、純粋に生物多様性だけを評価して、それをCO2の指標に置き換えて売買しようという動きも、これも私は関係したんですけれども、それなりに動き始めているんですね。結構大きな団体がそれを購入してPRに使うというのも動いているので、その辺の動きをしっかり押さえながら利用していくということをやっていかないと、広まっていかないのだろうというふうに思っています。
ちょっと長くなって失礼しました。
○鈴木部会長 三浦委員。
○三浦委員 ありがとうございます。3点、意見を言わせていただきます。
まず7ページで、農水の生物多様性戦略が記述されていますが、国交省でも例えば景観農地の保全等景観や土地利用の側面から、あるいは、内閣府でも里山農地の担い手事業ということで市民参加の視点、農水は産業、生業からの視点で生物多様性の検討がされています。こういった省庁間の連携が必要であるということ、また支援もかなりのお金がそれぞれの省から出ているようですので、そういった支援費を統合することによって、より有効な生物多様性に対しての貢献ができるのではないかと考えます。
2点目は13ページの生態系ネットワークの話です。これも以前より単に国レベルだけではなく、都道府県の連携も必要だといわれておりますけれども、生態系保全とネットワークの形成を効果的に進める方策についてもう少し踏み込んだ記載が必要なのではないでしょうか。実際、さっき速水委員もおっしゃったように、河川流域の連携というのは非常に難しい現状を考えますと環境省が音頭を取って制度整備に対する支援あるいは指導というのが必要ではないかと考えます。
最後、18ページですが、これは簡単に一言。今後の政策提言として、我が国はリーダーシップを発揮するということを何度もうたっていらっしゃいますけれども、一方で他国とのパートナーシップをいかに築くかということを記載してもいいのではないかと思っております。以上3点でございます。
○鈴木部会長 森嶌委員。
○森嶌委員 いろんな方がおっしゃったので、なるべく重複を避けたいと思いますが、申し上げたいのは里地里山の話です。
6ページ、9ページ、我が国の里地里山の問題は、里地里山における過疎化、農村の高齢化との関係で出ているわけですね。従来ならば放っておいても里地里山を管理できたのが、今、農村で過疎化が起きているので、それを都市住民とネットワーク化したりいろんなことをして解決できないか探っているのではないでしょうか。先ほど速水さんがおっしゃったこともそれと関わっています。
COP10との関係で、日本政府はSATOYAMAイニシアティブというのを打ち出して、我が国はリーダーシップをとろうとしているようですけれども、里山について一つの考え方として、我が国はこういうことをやっていますと言うことはいいのですけれども、里山の話は、今申したような我が国の経済的・社会的なバックグラウンドを持って問題が出てきているわけですから、そういうバックグラウンドのない国に対して、我が国の里山を前提としたイニシアティブを提唱してみたところで、それをCOPで採用してくれとか、18ページに書いてあるように、世界各地に存在する自然共生の智恵や何とか伝統と合わせてと言ってみても、あまり説得性がないと思います。
特にCOP10の最大の論点は、ここにも書いてあるように、遺伝資源とそれの利益配分をどうするかという、南北問題の極めて強烈な利害対立の問題と、生物種の減少を、どのような目標を立てて、どのように食い止めるか、これも極めて南北が対立する問題で、日本のような問題意識と違うところに、SATOYAMAイニシアティブを引っさげてリーダーシップをとるとか、日本が議長国として責任をとろうとしても、この前のコペンハーゲンの議長国のデンマークよりももっとひどいことになると思います。この点でも、COP10で各国が何をしようとしているのか、何が問題になっているのか、ということをきちっと理解したうえで、COP10に臨まないといけないと思うのです。
先ほど大森さんがおっしゃった、3Rの問題も同じです。日本の3Rは、もとともごみ処理場問題があったので、ごみを減らすために3Rが出てきて、それを循環型社会というコンセプトに転換していったものです。ところが、よその国では、ごみ処理場不足の問題が前面に出ていないので、中国へ3Rのコンセプトを持っていっても、3Rそのものは、ごみのほう、リデュースに力点はなくて、むしろ資源のほう、リサイクルに力点が置かれる。そので、中国ではあまり3Rという言葉を使わないで、資源循環というリサイクルが強調される。ブラジルなんかに行くと、5Rと言っています。よその国では、3Rでごみ問題はあまり議論されません。
ですから、それぞれの国が政策課題として何を抱えているのかということを十分理解してやらないと、日本の問題だけを持ち出して、日本の経験を、と言っても、ほかの国は、日本が金を出してくれる限りでは乗ってくるけれども、金を出さなければ、「はい、さようなら」ということになります。先ほどからいろいろな方がいろいろなことをおっしゃいますけれども、日本の国内問題を議論する場合とは異なり、国際的にパートナーシップをつくったり、国際的にリーダーシップをとろうというときには、それぞれの国がどういう背景の下で、政策的にプライオリティーを持ってやっているのは何かということを理解した上でないと、一人よがりになってしまいます。
日本の3Rがごみの問題から出発したという当然のことを理解している限りにおいては、大森さんの先ほどの説明でちっとも構わないと思います。ごみの問題を先に説明しているのはおかしいではないかと、もしも委員がおっしゃったとすれば、それは日本の政策がどこから出発したのかということをあまり理解しておられないのではないか。基本計画の点検でごみ問題や3Rを書くとすれば、日本の問題がどこから出発して、今どこに到達しているかというところに、ごみ問題をきちっと位置づけて書けばいいと思うんです。将来、資源セキュリティの問題が出てきたときに、環境省としてはどう対応していくかというのを書くのが、政策を担当する行政の役割だと思います。
ちょっと里山から循環に飛びましたけれども、さっき最後にこの問題が出てきたものですから、大森さんの説明まで飛んでしまいましたけれども、COP10もぜひそういう観点から対応していただきたい。SATOYAMAイニシアティブを出されることは結構ですけれども、日本の状況と世界の状況とが違っているということを前提にしないと、どうしても上滑りしてしまうということです。ここに書いていることが悪いというのではなくて、そこはぜひとも頭に入れて書いていただきたいと思います。
以上です。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
この生物多様性の部分で、私の感想をちょっと申し上げますと、もう少し具体的に、例えば2020年、2050年のビジョンが出てきて、これは大変結構なのですか、それに至るために何をするのかというあたりがもう少し見えるといい。
それから、もう一つは、IPBESで議論が活発に動くようになれば議論されることになるだろうと思うのですが、生態系の経済的価値みたいなものをどこかの時期から議論し始めないと、各省庁の連携をどうとっていくのかというようなことでも何となく正当性みたいなものをきっちりと議論しにくくなると思いますし、COP10でそこまで話がいくのかどうかわかませんが、また日本が経済支援をなんていう話になったときに、一体どういう根拠に基づいて、「鳩山イニシアティブ」みたいなものを、どういうイメージで何をするのかと、そういう意味でも定量的な評価が生まれてくるといいと思う。ただ、経済評価というのは時によると非常に危険なこともあるので、その辺のところも意識してお考えいただければいいのかなと、そんなふうに思いました。
それでは、今いろいろご質問、ご意見が出ましたので、対応していただけますでしょうか。
○鳥居生物多様性地球戦略企画室長 できるだけ手短にお答えしたいと思います。
まず、大塚委員からのホットスポットに関するご指摘ですけれども、確かに希少種が集中するような地域をあぶり出していこうということで、それで今の保護地域とのギャップがあるのであれば、それを保護地域を網をかけるということが目指すべき方向だと思うんですけれども、それが無理な部分もあるので、その際どうしたらいいかというのは、並行しながらいろんな施策、法的強制力のあるもの以外の政策も含めて考えていきたいと思います。
それから、櫻井委員からの鳥獣の関係でございますけれども、ご承知のように、鳥獣保護につきましては、都道府県が特定鳥獣保護管理計画というのをつくって、個体数調整なり何なりという管理をやっておりますし、先般、被害防止のための特措法というのができまして、計画をつくれば市町村が捕獲の許可ができるというような対応になっておりますので、基本的には都道府県なり市町村がそれを進める。そして、国は指針を示すという方向で進んでいくということかと思います。
それから、筑紫委員からのご意見で、まず里海ですけれども、ご指摘のとおり、里海についても里地里山と同じようにしっかり位置づけていきたいと、それから、クロマグロからありました食品廃棄物ですけれども、「もったいない運動」ではないですけれども、生き物、食べ物を大切にするというのはある意味価値観みたいなものでありますので、自然環境教育とか生物多様性を普及する中で、きちっと伝えていく必要があると思っております。
それから、長辻委員からのトキ、コウノトリ、希少種の野生復帰の関係で、アホウドリで米国とのプロジェクトがありますけれども、とにかく一旦絶滅してしまったものを野生に復帰するというのは非常にお金がかかる、手間もかかるということでございます。アホウドリにつきましては、二国間の渡り鳥とかで共同事業ということもあって、私も詳しいことは承知しませんが、そういう面もあるかとは思いますけれども、象徴的な種を今やっておりますけれども、それ以外の種についてもぜひ広げていきたいと思っております。
それから、生き物ブランド、マークの普及につきましては、7ページの中ほどに、農水省が「生きものマーク」についてガイドブックをつくって普及をしているということが載っています。実は3月にガイドブックができたばかりですけれども、我々も連携してそういうものの普及を図っていきたいと思います。
それから、林委員からご指摘のありましたABSでございますけれども、まさに経済のグリーン化、生物多様性の内部化は、先ほど林先生からご指摘もありましたけれども、生態系サービスというものをどういうふうに経済的に評価していくかということで、今、TEEBと言われるような研究が進んでおりますけれども、そういったものに日本も参加して、生物多様性というわかりづらいものを、一つの経済的な評価をして見える化といいますか、わかりやすく、そして、経済の内部化をできるのかどうか、そういうものの検討に日本も積極的に参加をしていきたいと思っております。それから、MOP、カルタヘナでございますけれども、これももう少し踏み込んでかけるようにしたいと思います。
速水委員からのご指摘の狭いエリア、域内でのエネルギー利用などについてもちょっと書き込めないか検討したいと思います。また、FSCの認証制度みたいな話がございました。もう一段インセンティブを上げるような施策ということかと思いますけれども、そういうのも引き続き検討をさせていただきたいと思います。
それから、三浦委員からご指摘ございました生態系ネットワークの効果的な実施のための支援、これは先ほどのホットスポットをどう守っていくかということと多分関係すると思いますけれども、法的な規制措置だけではなくて、インセンティブを与える奨励措置みたいなものも、どういうものができるかを考えていきたいと思います。
それから、国際的な取組で、リーダーシップと合わせてパートナーシップというお話がございました。森嶌委員からもご指摘がございましたけれども、SATOYAMAイニシアティブを例にとりますと、日本の経験だけではなく、もちろん途上国の事情と日本の事情は違っております、これまでいろんな海外でのワークショップなどで意見交換をいろんな人としていく中で、海外では海外での取組、優良事例を集めて、それをさらに世界へ情報発信していく。そういう中で、地域のNGOや研究者、そして、国際機関がまさにパートナーシップを組んで、SATOYAMAイニシアティブを進めたいというふうにも思っておりますので、SATOYAMAイニシアティブに限らず、こういったいろんな主体との連携、パートナーシップを組んでいくということは、今後とも進めていきたいというふうに思っております。ということで、SATOYAMAイニシアティブも、決して日本の例を海外に押しつけるということではなくて、むしろ海外のいい事例、日本もむしろ教えられるようなこともあると思います。そういうのをまとめて海外に発信していこうというふうに思っております。
以上でございます。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
大体カバーしていただいたと思いますが、何しろ盛りだくさんであったものですから、予定の時間を既に30分以上、40分ぐらいオーバーしてしまっております。しかしながら、ここで5分ぐらい休憩をとらせていただいて一息ついていただいて、それからその後の環境研究・環境技術開発の推進戦略等を議題にさせていただきたいと思います。
再開はこの時計で25分にいたしましょうか。
午後4時18分 休憩
午後4時26分 再開
○鈴木部会長 それでは、再開させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
続きまして、「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」、これを議題とさせていただきます。
昨年12月から専門委員会を設けて、調査検討をしてきていただきました。その結果、推進戦略の改定案がとりまとめられて、パブリックコメントも行われております。事務局から説明をお願いしたいと思います。秦環境研究技術室長です。よろしくお願いします。
○秦環境研究技術室長 秦でございます。資料4及び参考資料4を使いまして、ご説明申し上げたいと思います。時間がかなり押しているとのことでございますので、資料4の別紙1というものを中心にご説明を申し上げたいと思います。
環境研究・技術開発の推進戦略でございますけれども、これはもともと平成18年の3月にとりまとめた5カ年の研究開発の戦略でございます。ただ、環境をめぐる状況というのは非常に変化が速うございますので、1年前倒しで見直しを図るということでご検討をいただいたものでございます。前後して恐縮ですが、別紙1の4ページ、5ページ目に検討の経緯及び検討にあたっての専門委員会のメンバー表をつけております。こういったメンバーにより昨年の12月から4月末にかけまして検討を進めてまいりました。
1枚目に戻りまして、基本的な考え方でございますけれども、大きく分けて3つございまして、1点目に、中長期の「あるべき持続可能な社会の姿」を念頭に置いて研究開発を進めると。2050年、2020年の社会像を達成するためにこの5年間で何を研究すべきかという観点から、研究課題をピックアップしました。
2点目に、我が国は世界トップレベルの環境技術を持っております。これを生かして世界に貢献する、と同時に経済を牽引していく、成長を促す、こういった観点を念頭に課題を選定いたしております。
3点目に、技術を「社会実装」させ、イノベーションを目指すと。ただ単に研究のための研究ということではなくて、社会へ適応していくということを念頭に課題を選定いたしております。
2枚目、重点課題の考え方でございますけれども、環境省では従来より脱温暖化、循環、自然共生、安全といった形で施策を進めてまいりまして、それぞれに応じた研究課題を設定してまいりましたけれども、今回の大きな特徴は全領域共通の課題を設定したということでございます。図の真ん中辺に重点課題1、2、3とありますが、持続可能社会のあるべき姿は何か、あるいは、それに転換するためどうするべきか、それから、国際的課題に対応するためにどうすべきか、こういった領域を超えた、文系的なものも含めた研究領域というものを明確に設定することにいたしました。そして、ここで得た研究成果を各領域にフィードバックしていこうということも念頭に置いております。
それから、2番目に、領域横断課題を明確に設定いたしました。例えば脱温暖化と循環も領域を横断する課題、例えば複数領域に寄与するWin-Win型の研究開発ですとか、あるいは、複数領域間のトレードオフを解消する研究開発、例えば脱温暖化と循環でいいますと、太陽光パネルが今盛んに広まっておりますけれども、こういったものの3R技術といったようなものはまだあまり研究がなされておりません。こういったものをしっかり研究開発していく必要があるのではないかと。こういった課題は政策課題にも直結してまいりますので、こういった領域横断的な課題というのを明確に設けたところでございます。
具体的な研究課題につきましては、別添の参考資料4というのが、皆様のお手元の一番最後の資料にくっついておりますけれども、各領域も含めまして、具体的な研究課題というのを議論しながら重点課題を整理してまいったところでございます。
参考資料4の内容を少し簡略化いたしまして、一覧表にしたのが別紙3でございます。こちらのほうに、今申し上げた領域、それから、重点課題、重点課題のサブテーマ、そして、具体的な研究・技術開発課題例ということで、一覧を整理しておりますので、併せてご参照いただければと思います。
こうした重点課題を踏まえて、今後どのように具体的な研究開発を進めていくのかというのが、また資料1に戻りますけれども、3ページ目の効果的な推進方策というところでございます。1.から7.まで記載をしておりますけれども、まず一番最初に、研究・技術開発の領域間の連携ということで、今申し上げたような横断領域の研究課題ですとか、あるいは、政策に直結するようなトップダウン型の研究を、例えば競争的資金制度などにおいて重点枠としてより拡充をしていくということを考えております。
それから、2点目、これは当然のことでございますが、産学官、府省間、国と地方との連携、これを今後もしっかりやっていくと。
3点目に、アジア等との連携、国際的な枠組みづくり。特に海外に日本の技術を持っていく際には、性能はいいけれども非常に高いといったような問題がございますので、受け入れやすい技術・システムの最適化ですとか、あるいは、国際標準化を積極的に進めていくとか、ルール形成などにも寄与していくと、そういった総合的な取組が求められるというふうに考えております。
それから、4点目に地域レベルでの研究開発の強化でございます。例えば前の議題でも話題になりましたけれども、温暖化に対する適応策、自治体レベル、地域レベルでどういった影響が出てくるのか、それに対してどう適応していくのかといったようなことは、もう研究に取り組まないと手遅れになるという段階まで至っております。こうした地域レベルでの取組を、地方の持つ環境研究所ですとか、あるいは、地方の大学といったようなところのこれまでの蓄積を生かして、国と連携しながら研究開発を強化していかなければいけないと考えておりますので、競争的資金制度における地域枠の強化にも取り組むべきだと考えております。
それから、5つ目に研究・技術開発成果の施策への反映。研究の成果を着実に政策に盛り込んでいくために、例えば私どもが所管しております国立環境研究所の中期目標・中期計画にしっかりと推進戦略を反映させていって、研究成果を刈り取っていくといったことをやっていかなければならないと思っております。
それから、6番目に国民への分かりやすい発信ということでございますけれども、例えば昨年の事業仕分けなどでも科学技術政策に対してなかなか厳しい仕分けがなされたといったようなこともございますけれども、一体何のために研究をしているのかと、その研究がどういう成果につながっていくのか、そういったことをしっかりと国民の皆様にも説明をしていくことが必要だろうと思っております。例えば私どもが持っております競争的資金制度におきまして、成果発表会というのを一般の方も招いて開催するという試みを昨年度から始めております。非常に評判がいいので、引き続きこういった取組を拡大していこうと思っておりますけれども、こういった国民との接点というのをより一層増やしていきたいと思っております。
それから、7点目にフォローアップでございますけれども、毎年度、この推進戦略につきましては、フォローアップをしていこうと思っております。そのフォローアップ結果を競争的資金の制度等へ反映していって、時宜に即した研究開発に取り組めるようにしたいと思っております。先ほど「研究課題例」と申し上げましたのは、2年3年たっていくと研究開発すべき課題もまた変わっていくだろうということが十分予想されますので、あくまで参考資料としてつけたものは例ということで、時宜に即した研究開発ができるような体制を組んでいきたいというふうに思っております。
以上ご説明したような内容をとりまとめて文章化したのが別紙2でございますけれども、こちらが推進戦略の案となっております。今ご説明したような内容を文章化いたしております。
それから、この研究開発の推進戦略につきましては、先月、パブリックコメントも実施いたしております。別紙4、1枚ペラでございますけれども、パブコメの結果11件の意見を頂戴いたしたところでございます。例えばアにありますように、体験学習を重要視すべきですとか、ウにありますように、今後の高齢化社会等の周囲状況を踏まえて国民の負担を最少化する研究開発を進めるべきといったようないろんなご意見を頂戴いたしておりますけれども、基本的に今回いただいたご意見につきましては、今回の戦略案に含まれうる内容だと思っております。今後具体的な研究課題を選定していくにあたって参考にさせていただきたいと思っております。
私からの説明は以上とさせていただきます。
○鈴木部会長 それでは、ただいまのご説明につきまして、何か特にご意見はございますでしょうか。
それでは、名札を。お2人でよろしいですか。
○佐和委員 あと1分ぐらいで退席しないといけませんので。
○鈴木部会長 では、特例で佐和先生に1分間だけ。
○佐和委員 こっちからスタートするんだったらそれで十分だったと思うんですが。
まず、普通、「グリーン・イノベーション」というような言葉を使うときには、エコ製品を開発するとかその他もろもろの、もっと意味を限定して言えば、CO2排出削減に効果のあるような技術というふうに解釈されていますよね。ところが、これ全体を拝見すると、別紙1の1ページ目の3のところにありますように、「技術を社会実装させイノベーションを目指す」ということは、イノベーションというのは、単に技術革新とか新しい製品開発という意味ではなくて、社会全体を変えるというような、もともと経済学者のシュンペーターなどはそういう意味で使っていたわけですけれども、そういう使い方をされているというふうに理解してよろしいわけですね。つまり、既に技術はあると、既にある技術を最適に組み合わせて大規模な普及により社会を変革すると。社会を変革するということがグリーン・イノベーションと、そういう極めてユニークなご指摘だと私は感じました。
特に、私、たまたま過去3カ月ぐらい、内閣府といいますか、総合科学技術会議でグリーン・イノベーション・タスクフォースというのをやっていまして、そこに参加していて、そこではグリーン・イノベーションを技術革新あるいは製品開発というふうに定義したんですね。だから、そことはかなり違うなということで、私はこの解釈は非常にユニークで、むしろいいことだというふうに思っております。
○鈴木部会長 それでは、善養寺委員。
○善養寺委員 質問ですが、競争的資金制度の詳細を教えていただけたらということと、これを見て思うことは、技術の先端、とんがったものを開発することに力点があるような感じがします。既にある技術のコーディネートをするのは各メーカーがやることではないようなところもあります。エコハウス1戸つくるにしても、最善なヒートポンプと地中熱利用をうまく組み合わせて暖房・給湯をやりたいなと思っても、それぞれのメーカーが保証しないので、つくれないというのが現状です。
この基礎的資金制度の意味がよくわかりません。私はあまり競争ばかりを重視した金の配分をすることよりも、そろそろ日本国企業としてこの先どういう戦略で海外に対応していくかなど、競争せずに仲良くやるというようなスキームの重要性もあるのではないかと思います。特に産官学とか、国と地方との連携とか、府省間の話をしますけれども、企業間の連携のコーディネートをするのに行政は大変力になると思います。そうでないと、企業間競争が激しすぎて、戦略的に海外に持っていくようなものがつくれないというような状況になっています。そして、それをどうにか越えていくためには、同じ省内での局別な障壁も越えていかなければいけない部分も出てきます。電機メーカーさんも大変それには頭を痛めております。
そういう点で、企業同士の連携だとか、横串的なコーディネートが重要に思います。あとは、国際的な標準化の話が出ていますが、海外のものを日本に受け入れるだけではなくて、日本の標準をアジアの標準化にどんどん入れていく。特に給排水、下水とか、これから発展する都市インフラや、それに伴う通信システムの方法とか、そういうものを日本のもので標準化していくことは、国が戦略的にやっていかないとできないと思うのですが、ここの中のどこかに含んで書いているのかも知れませんが、明確に書いたほうがいいのではないかなと思いました。
○鈴木部会長 福川委員。
○福川委員 3点申し上げたいと思います。
1つは、技術開発、これは内閣全体として取り組まなければならない重要な課題だと思いますので、ここで出てくる提案というものが、内閣全体として重点的に取り上げるという政治姿勢にもぜひ働きかけていただきたいと思います。
2点目は、国際的な研究開発の動向をぜひ視野に入れてほしいということでございます。ここでも例えば2050年の80%削減というようなことにするとすれば、炭化水素系のエネルギーへの依存というのは極端に減らしていくということになると思います。それからまた、最近、ロシアとか中国でも、核燃料サイクルとかあるいは核融合とか、新しい形に客観的に取り組んでいるわけでございまして、そういう世界の動きというものを視野に入れた形で、これは絶えず見直していくという形で新しい技術開発に取り組んでいただきたいと思います。
3番目は、今、佐和先生もおっしゃったイノベーションですが、2050年を念頭に置いてその目標を実践しようとするならば、社会的な仕組み、エネルギーの供給とか、あるいは、電気自動車なら電気自動車への充電のシステムだとか、あるいは、もっと水素系のエネルギーを使うということであれば、それをどういうふうに供給するかとか、いろいろな大きな変化があるので、このイノベーションというものは、「社会実装」というものを入れるときに、相当広い視野で全体を取り上げていただきたいと思います。
以上です。
○鈴木部会長 環境省の環境研究・技術開発の枠を超えた非常に重要なところがあると思いますが、その辺はむしろ総合科学技術会議の問題点として、こちらからもいろいろと申し上げなければいけないところもあるのかもしれません。
では、秦さん。
○秦環境研究技術室長 佐和先生から「イノベーション」という言葉の使い方につきましてご意見ございましたけれども、私どもとしては、社会を変えていくための技術開発ということではなくて、でき上がった技術をいかに組み合わせて最適化をしてパッケージ化するのかと、そういったものをいかに社会に受容してもらうのかと、そういったところの研究も含めてイノベーションを起こしたいと思っておりまして、基礎的な研究とか応用的な研究というのはむしろ文科省さんとか経産省さんが盛んにおやりになっておられますけれども、私ども環境省といたしましては、社会に実際に適用していく部分を中心になってやっていくべきなのではないかなというふうに思っておりまして、そういったところに今回の推進戦略ではかなり力点を置いてきたつもりでございます。
それから、善養寺委員からご指摘のございました競争的資金制度でございますけれども、こちらは、私どものほうで持っている競争的資金制度という仕組みを用いまして、研究者の方々から研究の提案をしていただくと。それに対して、研究者の皆様方中心なんですけれども、第三者の方々に評価をしてもらって、この研究は合格、この研究はもう一歩ということで、仕分けをしてもらって、合格した人には研究費を出すと、そういった仕組みでございまして、各省庁とも類似の制度を持っております。
こういった中で、もちろん競争をしながらいい研究をピックアップして、それを政策に役立てていくと、そういったやり方をやっているのでございますけれども、ご指摘のあったように、異業種といいますか、他分野といいますか、他分野間の連携を図っていくために、もともと環境省は4つの競争的資金が省の中にあったんですが、現在それらを順次統合していくという作業を進めています。例えば廃棄物の競争的資金とそれ以外の競争的資金が合体することによって、領域横断的な研究がよりやりやすくなるといった効果もございますので、そういったところをやっていきたい、現在進めているというところでございます。
それから、日本の技術の標準化の話もございましたけれども、海外に技術等を売り込んでいくためには、日本で標準となっているものを海外でも標準にしてもらうという作業が非常に重要でございまして、現在、知的財産推進本部というところで、日本の技術をベースにいかに国際標準を勝ち取っていくかということについて議論を行っておりまして、例えば環境分野でも水イノベーションの分野といったところで特定戦略課題ということで重点的に進めるということが決められつつございます。
それから、福川委員から3点ご指摘ございました。まず1点目、内閣全体で取り上げるようにということで、現在、内閣府におきまして、科学技術基本計画の見直しを行っておりまして、それに対して私どもが作成していますこちらの推進戦略につきましてもご説明等をいたしておりまして、私どもの考えも反映していただくように努めているところでございます。
それから、2点目のご指摘、国際的な開発動向を視野に絶えず見直しをということで、これは全くご指摘のとおりでございまして、今後の具体的な研究課題の選定にあたりまして、海外の動向もしっかり見据えながら進めてまいりたいと思っております。
3点目のイノベーションの件につきましては、最初のお答えでご説明させていただきました。
以上でございます。
○鈴木部会長 それでは、この推進戦略につきましては、以上のような形で答申という形にさせていただいてよろしいでしょうか。これは年々いろいろと変貌もあると思いますし、先ほどのお話ですと、5年ぐらいを目処にということですか、こういう形で進んでいく。ご指摘がありました社会技術に関わるようなものであるとか、そういうところはこの形の中でぜひ、全領域共通で取り扱ったり、また、競争的資金ではありますが、行政ニーズあるいは国家ニーズに沿って課題を選んでいく、そういうようなことで進めていただければよろしいかと思います。
これはお認めいただいてよろしいでしょうか。
○善養寺委員 私はちょっと気に入らないというか……。
○鈴木部会長 それでは、具体的にどこを修文いたしましょうか。
○善養寺委員 「競争的における」だけではよくないと思っております。「トップダウン型研究、領域横断型の研究が競争的資金制度における」とあることではないと思っております。それは、いわゆる技術提案をして、学者が選ぶということだけではなくて、トップダウン型であれば、こういうことをやるためにみんな集まって、みんなで研究しようよというようなことだってあり得るとすると、それは競争的資金制度ではないと思えるので。私は、その「競争資金制度における」だけで切ってしまうことが、トップダウン型の研究とはちょっと矛盾するのではないかというふうに思えますので、競争型資金制度を前面に立てるだけではなくて、ちょっと線を引いたほうがいいのではないか思います。
○鈴木部会長 現在の環境研究・技術開発でしょうか、地球環境研究推進費、ここでも競争的で進まなければいけないというのはいわば国の縛りですよね。その中である種トップダウンを実際にはやっておられるわけですね。現在の仕組みではテーマSというのがあって、ご承知だと思いますが、そういう大型のものが一つずつ毎年動いているような状況のようなんですが、ここで競争的資金ではなくて、トップダウンですべて動くということになった途端に多分ほかのところからの縛りが出てきてお金が動かなくなると。
ですから、これは実行的なところでトップダウン的なテーマ設定というのは、テーマの大きさによっていろいろな組み方があろうかと思いますが、実際にこれを運用する部分で、善養寺さんが仰っておられることは、適正なテーマ設定を行うということで十分に可能ではないかと私は感じておりますが、それをどういう文章でここに書き込むかというのはなかなか難しいところかもしれません。
○善養寺委員 この記述はいいのではないかと思っております。
○鈴木部会長 何か具体的な修文案はありますか。
○善養寺委員 技術開発の連携という部分があれば、あえて「競争的資金制度における」ということを書く必要はないのではないかと思っておりました。というのは、それはどういうふうな手法論でやるかはその後の個別であって、トップダウン型の研究や領域横断型の研究を拡大するというところだけでいいのではないかと。
○秦環境研究技術室長 ここでは競争的資金制度について例示させていただいているんですけれども、実際には私どもが持っている技術開発のためのお金の3分の1ぐらいは競争的資金、3分の1ぐらいが国立環境研究所への運営費交付金、残りの3分の1は、各局各課が持っている調査研究のためのお金というのがまた別途ございまして、そういった中で、善養寺委員ご指摘のような各界が連携してやるような調査研究といったものが実際にはなされておりますので。
すみません、ここは競争的資金だけ特記したような書き方になっているんですけれども、実際にはうまく企業間で連携をしたような取組も別途なされておりますので、その辺はご理解いただければと思います。
○鈴木部会長 具体的には18ページのところの書きぶりですか、善養寺委員のおっしゃっているのは。
○善養寺委員 具体的に……。
○鈴木部会長 ここには、「例えば競争的研究資金制度において、現在は分野別に分かれている制度の統合を図る」、これは現在のものを統合。「領域横断分野の強化、トップダウン型の研究の拡大など、異分野の研究者が協働して研究・技術開発を進められる場を設定することにより、技術の社会実装につなげていくことが必要である。」、これは善養寺さんがお考えのところとどこがどう違うのか。
○善養寺委員 文章的には良いですけれども、こういうまとめの要約を出すときに、この一番最初のような書き方はやめたほうがいいのではないかということです。この要約文のほうです。
○白石環境政策局長 文章的には、今、善養寺委員のおっしゃったことが全部生きていて、もう一つ、要約版で私どもが説明するときにご指摘を受けて、これから注意いたしますが、要するに競争的資金が分割されていること自体が使い勝手が悪いので、それを横串で横断にしましょうということがこの会議のトピックの一つだったものですから、縦で分かれている競争的資金を統合しましょうという方向を打ち出しましたということが一つのトピックなものですから、こういうまとめ方をさせていただきました。
誤解のないような形での説明に心がけます。
○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
○善養寺委員 はい。
○鈴木部会長 それでは、このような形で答申としてまとめていただくということにいたしたいと思います。
報告事項がありますね。
○白石環境政策局長 もう一つあります。報告です。
○鈴木部会長 それでは、続きまして、議題の(三)、大変時間が遅くなって申し訳ありませんでした。「環境と金融の専門委員会の報告」、これを議題とさせていただきます。
昨年9月から専門委員会を設けまして、調査研究をしてきていただきましたが、この成果がとりまとめられました。専門委員会の議事進行、とりまとめを行っていただきました末吉委員長及び事務局のほうからご説明をお願いいたします。
○末吉委員長 鈴木部会長さん、発言をお許しいただき、どうもありがとうございます。それでは、私のほうから環境と金融に関する専門委員会の最終報告をごく簡単にご説明申し上げます。具体的には事務局からご説明いたしますけれども、その前に、委員長を仰せつかりました私のほうから若干ご報告をいたします。
まず初めに、中央環境審議会の皆様方にお礼を申し上げたいと思います。環境と金融に関するテーマはまさに時宜を得たものでありまして、専門委員会を設置して議論の場をおつくりいただきましたことを感謝申し上げます。お蔭様でこの専門委員会には、現実に金融の現場で第一線で働いていらっしゃるメンバーを含め多くの方に参加いただきました。これまで7回ほどの審議をいたしましたけれども、毎回大変活発かつ建設的な議論が交わされました。さらにつけ加えたいのは、毎回100名を超す多くの傍聴者にご参加いただいたことであります。
この委員会を運営するにあたりまして、委員長として私が絶えず持っていた視点を3つほど申し上げます。まず第1は、そもそも金融とは何だろうか、銀行は一体何のために存在するんだろうか、投資とは何だろうか、こういう視点を持ちたいと思っておりました。もとより、今、日本の金融界は、温室効果ガス25%削減を含む、日本をいち早く低炭素な社会につくり変えるための大きな役割を担っておりますけれども、そういった中でそもそも金融はどういった役割を担うべきか、どういった役割ができるのか、そういった視点を絶えず持ち続けたつもりであす。
それから、第2点は、金融界は一企業・市民としても大きな社会的責任を負っておりますけれども、その本業を通じてどういったことができるのか、社会における責任をどう考えるのかということであります。皆様よくご承知のとおり、海外の金融界は低炭素社会に向けて大きな取組を始めております。あえて申し上げれば、日本の金融界はその世界の流れに遅れをとっているのではないのかという気が強くしております。ですから、そういった中において、日本の金融界が社会における責任をどう果たしていくのか、そういった視点が2番目でありました。
それから、3番目は、金融の議論をしますけれども、実はこれは経済の話であります。産業の話であります。さらには日本の社会をどうするかの話に関わってまいります。ですから、金融の窓を通じながら、日本という社会、国全体がこれから21世紀に向けてどういう形をつくっていくのか、そういった視点も持ち合わせながら議論させていただきました。
この結果については、これから事務局よりご報告いたしますけれども、私が最後に申し上げたいのは、この専門委員会における議論はすべての始まりだと思っております。逆に申し上げれば、すべてこれからが重要であるということであります。願わくばこの議論を中心に金融を取り巻くすべてのステークホルダーが金融にもっと関心を持っていただきたい、日本の金融に対する監視の目をもっと厳しくしていただきたい。それとともに金融界がより自覚を深めて、低炭素社会日本をつくる上で、日本の金融界として何をなすべきか、さらにはそのことを通じて世界の低炭素化にどういった役割を果たすべきか、そういったことがこれからますます議論が活発になり実行されていれば、こんなうれしいことはないと思っております。
こういう機会を与えていただきまして本当にありがとうございました。改めて御礼を申し上げます。
○黒川環境計画課長補佐 では、事務局のほうから資料5の説明を簡単にさせていただきます。
これは報告書の概要というものでありまして、3ページでなっておりますけれども、1ページ目は環境と金融の関わりといった総論の部分でございまして、この部分は、先ほど末吉委員長からお話いただいたことが概ね書かれておりますので、省略をいたします。
次、2ページにまいりまして、一番上の(3)であります。そういう総論、そういう考え方を受けまして、具体的にどういう政策をやっていくべきかというのが大きなテーマでございました。そこで、[1]、[2]とございますような2つの政策が必要ということにまとめておりまして、1つが環境配慮行動の収益の安定化、要するに儲かるようにならなければ金融も動けないじゃないかというのが1つ目。2つ目が企業の環境情報の開示・提供の促進ということでありまして、企業の情報がないと、環境にいい企業に投資しようとしてもできないではないかと、そういう2点でございました。
それを2.の具体的な政策の提案というところで4つの政策を提案しております。(1)、(2)、(3)、(4)というものでございますけれども、1つ目が、温室効果ガス25%削減に向けた対策に円滑に資金が供給される仕組みということでありまして、具体的に25%削減、今後10年で数十兆の投資が必要という点に着目しまして、特に家庭・業務部門といったところが遅れておりますので、そういうところでどういう仕組みが必要だろうかということを考えまして、リースの活用による低炭素機器の普及促進というのを提案いたしております。具体的には、初期投資が何百万と、いろんなものを低炭素機器にかかりますので、それについてリースで提供すると。それによって省エネメリットの範囲内でリース料を払っていく、実質負担がその場ではないような状態でものが導入できていく、そういう仕組みができるのではないだろうかということであります。
ただ、(1)の[1]の一番下の○でございますけれども、放っておいて、リース頑張ってねといってもできるものではありませんので、政府として資金面の支援を実施して、リース料の低減を図るということは必要ではないだろうかということでございます。
その下、その他の検討課題ということで、もちろんリースだけではなくて、ほかの税制優遇、オランダ、フランス、アメリカといったところであるような税制優遇の制度ですとか、国内だけでなく海外での投資といったことも当然検討課題としてございます。
次、(2)でございますが、年金基金による環境配慮投資の促進ということでございます。我が国は年金基金の取組がかなり遅れておりますので、[1]のところ、投資の際の環境配慮の方針の開示ということで、年金基金にこういうふうに環境配慮していますというのを開示してもらう仕組みが必要なのではないだろうかとか、次の[2]のところで公的年金基金、これは国民年金とか厚生年金を運用している基金でございますが、彼らは社会的責任がより高うございますので、率先してやってもらいたいというような話をまとめてございます。
次、3ページにまいりまして、(3)企業の環境関連情報の開示というところでございます。ここは大きく2つの点をいっておりまして、[2]のところ、有価証券報告書でございます。これは義務的に財務情報その他の情報を開示するというシステムなわけでございますが、逆に何でもかんでも開示すればいいということにはならなくて、財務情報と同程度の重要性があるものをということになりますけれども。
そこで2つ目の○のところ、今後、排出量取引とか環境税というものができていくというふうな前提で考えれば、財務情報と同程度に重要な環境情報は増えていくだろう。そういうことを考えますと、「金融商品取引法」と書いてございますが、金融庁で所管しております金融商品取引法の世界でどういう情報を開示していくことが必要なのかということを検討していくべきであるということを打ち出しておりまして、金融庁もそういうことを今後前向きに考えていこうじゃないかという考えだというふうに伺っております。
次、[3]の環境報告書でございますけれども、こちらは、有価証券報告書と違って自由にいろんなものが書けるわけでございますが、こちらは情報の比較可能性、信頼性の向上ということか必要ということで、「環境報告ガイドライン」を見直していこうじゃないかということを言っております。
最後に(4)でございますけれども、「日本版環境金融行動原則の策定」というふうに書いてございます。これまで(1)、(2)、(3)と申し上げてきたようないろんな取組があるわけでございますが、そういったものも含めまして、行動原則というものを定めて、金融機関、機関投資家といった方が参加して取組の輪を広げていく、そういった仕組みが有効なのではないだろうかということでありまして、2つ目の○にありますように、金融関係者による自発的なムーブメントとしてやってもらいたいということでございます。具体的には、行動原則はこういった[1]、[2]、[3]、投融資にあたっての環境要素の考慮ですとか、環境保全に資する金融商品の開発、取組状況の開示といったものがあるといいのではないだろうかというようなことを提言しているということでございます。
以上でございます。
○鈴木部会長 ただいまの末吉委員長及び事務局からご説明いただきました環境と金融に関する専門委員会の報告につきまして、いろいろとご意見があろうかと思います。ご質問あるいはご意見、ご発言、お持ちの方は名札を立てていただけますでしょうか。
4名の方でよろしいでしょうか。では、河野委員から。
○河野委員 金融についてこのような報告書が出され、この内容が実行されていくことは大変結構なことだと思っております。
その上で、3ページですが、投資家がいろんな意思決定をするのに企業の環境関連情報が適切に出されることが大事だということで、有価証券報告書を通じた環境関連情報の開示を進めるということが大事だということは個人的にもそうだと考えております。[3]について意見を言わせてもらいたいと思います。環境報告書による環境関連情報の開示についてです。ここに書いてあるとおりで、このようなことを進めるということは大事でありますが、これまでもこういう努力はやってきたわけであります。環境報告書の名称が、本日の報告書本体のほうにもありますように、「CSR報告書」や「サステーナビリティ報告書」というような名称に近年変更されつつあり、そういうほうがどちらかというと多くなっています。それに伴って環境関連情報が記載されている割合が、冊子による報告書の場合、非常に減ってきている。そういう中で、ガイドラインの見直しをしただけで、投資家に必要とされる情報が環境報告書と言われるものに載るかというと、なかなか載らないのではないか。何か一工夫、これとは別の工夫が必要なのではないかというふうに考えています。
それから、もう一つですが、環境報告書と言われるものが冊子から先進的企業を中心にウェブサイトに移っている。ウェブサイトのほうにだけという企業も出てきております。ウェブサイトで見る限り、スペースの問題はほとんどないわけです、無限にあると言ってもいいぐらいです。ところが、見たい情報が非常に拡散していて分かりにくい、そういう中で投資家向けの環境関連情報を企業にどうやって掲載してもらうかということも、ここに書いてあること以外に工夫が要ることではないというふうに考えています。
最後に意見というよりもっと先の話をします。ここでは環境報告書について自主的な取組を前提に書かれています。これはこれで結構なことだと思うんですが、環境報告書の発行企業数が横ばい状況にあるというようなことを考えますと、将来的には業種あるいは企業規模などを考慮に入れた環境報告書作成・公表の義務化ということも検討する必要があるのではないか。その場合、有価証券報告書との関係をどういうふうにするかという問題が生じるかと思いますが。
以上です。
○鈴木部会長 一とおり質問をいただいてからお答えいただきたいと思います。
櫻井委員。
○櫻井委員 ありがとうございます。私は、今、勤労者退職金共済機構というところに所属しておりますけれども、この報告書でいうところの年金基金などの公的年金基金の末席にいるような組織でございますので、その立場からちょっと発言をさせていただきたいと思います。
先ほど末吉先生は「これがスタート地点だ」というふうにおっしゃいましたけれども、スタート地点に立つのをやや躊躇するような発言になって誠に恐縮なんですが。ご承知のように公的年金の場合には、安全かつ効率的な運用というものを旨としておりますけれども、そもそもそのミッションとして環境政策を推進する、あるいは、別に環境政策でなくてもいいんですが、SRIで広く言われているような社会手的責任投資ことを推進するということは、法人のミッションとしてはあまり意識をしていない、少なくとも法律上は書いていないということがございます。
こういった議論を重々承知の上で申し上げるんですけれども、法人として環境配慮をした投資をすべきであるということには、受託者責任という意味で、なぜ環境に配慮した企業に投資をするのかの説明が必要です。また、例えば昨日、日銀が発表したように国際競争力に配慮した融資をすると、国際競争力を伸ばしていくというのも国の一つの大きな課題でしょうし、あるいは、私どもは中小企業の退職金を預かっておりますので、雇用を大切にする企業を評価するという立場もあろうかと思います。それらはSRI、最近ではESGというようですけれども、そういった投資姿勢として全部包括されるということであるかもしれません、が、公的年金基金は自主的に環境配慮投資をやるべきだという提言についはて、少し考えなければいけないかなという部分がございます。
また、これも末吉先生よくご承知のように、GPIFの運営の検討会のほうではつい先日、中間まとめがなされましたけれども、こういった環境配慮投資をするということについて賛否両論があるという、両論併記の中間報告もなされております。安定的かつ効率的な運用というのは市場のベンチマークとの対比で運用をしておりますので、どうやって環境配慮企業というものを選んでいくか、あるいは、そのパフォーマンスをどう評価するかということについては、まだまだ条件が整っていない部分が多いのではないか。本文中にはQUICK環境株指数みたいなものを例示してありますけれども、ベンチマークとして使えるものかどうか。また、いろんな会社がいろんな評価基準を持っているということは承知しておりますけれども、公的機関がどういう基準を持ってそれを判断するか。特に公的年金基金にはそれを判断するだけの人材は現在いないと思いますので、独法という制約の中でそういう人材を確保するのはなかなか難しいと思います。
直ちにスタート地点に立つというお話でございましたが、現状においてはまだまだいろいろ議論すべきところは残っているのかなということで、私のコメントとさせていただきます。
○鈴木部会長 善養寺委員。
○善養寺委員 大変期待しています。どんどん掘り下げていってほしいと思います。特に年金の件などは大変いいと思います。
一つ、これからお願いしたいと思うのは、「ベンチャーも」と書いてあるのですけれども、零細ベンチャーをどう具体的にやっていくのかです。個別に研究グループをつくってもいいぐらいではないかなと思います。会社の経営として、CO2削減のための機械を導入し、それに対するお金は、こういう考え方の中でも使えるのかも知れませんが、ベンチャーの環境ビジネスに対する融資というものが、なかなか事業が理解されないことや、事業規模の問題もあって融資が受けにくい。
多分、今後の金融機関の取組の輪を広げていく仕組みづくり中に出てくるのだと思うのですけれども、リスクを1銀行に押付けるのではなく、何行かでリスク分散する方法が必要です。よく大きなものであると、シンジケートローンを幾つかの金融機関が一体になって組みますが、そういうのをマイクロファイナンス的にも、幾つかの信用金庫とか金融機関が組んで、ベンチャーや零細企業のほうもリスクを分散するために幾つかを組んでパック化して、いつでもある程度の枠の中で自由にお金を動かせるような仕組みにならないと、資金繰りで年間に何度も大変な思いをするのは小さい企業では事業の停滞につながるので、何か新しい中小零細に対して枠組みを検討していただけたらと思います。
○鈴木部会長 では、冨田委員。
○冨田委員 有価証券報告書を通じた環境関連情報の開示というところについて質問させていただきます。
本文のほうを見ても必ずしも明示はされておりませんけれども、恐らく温室効果ガスの企業における排出量といったものを開示すべきではないかというような考え方があるのではないかと思います。一方、有価証券報告書を書かなくてはいけない人は、大企業だけではありません。また、温室効果ガスを大量に排出している人は、温暖化対策推進法の中で毎年排出量を算定して報告して、それが公表されるという制度が既にあるということを考えると、温対法の算定報告・公表制度と、有価証券報告書に情報を開示するということをどう整理、考えていらっしゃるのかをお聞かせいただければと思います。
以上です。
○鈴木部会長 森嶌委員。
○森嶌委員 まず、末吉委員をはじめとしてこういう問題に正面から取り組まれて、こういう報告書を出されたことに敬意を表します。
実は中環審も大分前から似たようなことを細々とやっていたのですけれども、今まで実を結んでおりません。これは結局、末吉委員が最初におっしゃいましたけれども、コーポレート・ソーシャル・リスポンスビリティも含めて、日本の金融界はレベルがまだ極めて低いからです。CRSについて、みな、総論は言いますけれども、実際には実行していないのですね。日本の金融業界は金儲け以外に関心はないということですから、有価証券報告書にせよ最初は強制規制するところからやらなければ、経済原則に任せてもダメだと思います。 環境報告書についても、ガイドラインとおっしゃいましたけれども、今の持続可能性報告書とかCSR報告書というのは、うちはこんなにいいことやっていますよということを書いてあるだけで、あれを読んでも、お化粧してきれいに見せているというだけで、あれで投資をする気になる人がいるのかどうか。コンシューマー向けPRなのか、自分のところの従業員に「うちはこんなにいいことをしているのだから、もっと働きなさい」と言っているのか、誰を相手にしてこのような報告書が出ているのかはっきりしません。
ですから、専門委員会がまだ続いているのかどうかわかりませんけれども、今後も継続するとすれば、投資家に情報を提供するには、これだけのものはぜひ出せと明確に示す必要があります。しかも、出した情報が最終的には利益に結びつくようにし、また、儲かるように政策を組み合わせたうえで、税か助成金か、やらない者には税を課すとか、やらせるために助成金を出すとか、最初は様々な誘導的な政策を組み合わせるということをやって、金融庁にもやってもらって、環境省だけでなく、財務省、金融庁とも連携し、最初はいろいろな政策を、規制的に組み合わせてスタートしないと、市場の原理に任せておいたのでは、日本では動かないと私は思います。
私が中環審の総合政策部会長をやっていた頃から環境省はやっていますが、全然だめなんですから、今日の末吉さんの意気込みを聞いて、これからまた始めるのだったら、私のときよりももっと強力におやりにならないとだめです。白石局長も覚悟を決めておやりにならないと、特に日本の銀行はなかなかおやりになりませんので、ということを申し上げておきます。
○鈴木部会長 それでは、ただいまいただきましたコメント、ご質問も含めてお答えをお願いします。
○黒川環境計画課長補佐 では、簡単にお答えいたします。
まず、河野委員からの環境報告書の関係でございますけれども、いただいたご意見も踏まえまして、ガイドラインの見直し、その他のものも含めていろいろ考えていきたいと思っています。
櫻井委員のご意見、まさに現場におられる方はそういうご苦労をされるんだなというのがよくわかったということでございます。我々も無茶なことをやれというつもりはないので、いろんな方とご相談をしていきながら、どういうふうにやっていけばうまくいくのかというのを考えていきたいと思っております。ただ、公的年金基金の取組が欧米に比べて遅れているというのは事実でありますので、そういうマインドを持ってうまくやっていけるような工夫を相談しながらできていければなと思っております。
善養寺委員のご意見でございます。ベンチャー、確かに今回、議論をそこまで全部深めることができなくて、ベンチャーキャピタルの方からもヒアリングをしたりいろいろしたんですが、なかなかそこまで深められなかったので、そういう問題意識は持っておりますので、今後いろんな検討をしていきたいと思っております。
冨田委員のご意見ですけれども、CO2排出量のみならず、有価証券報告書に書いていく中身、今後いろんな検討を進めていくということになると思います。温対法との関係ということでございますけれども、必ずしも有報に書く、今後の議論次第ですけれども、CO2排出量そのものというよりは、要は効率が悪い企業であればCO2排出量が多くなって、それが財務上のリスクになる、排出量取引制度ができればそうなるというような、どっちかというとそういう比較ができるような、生のCO2排出量というよりは、そういった比較ができるような情報とか、そういったものではないのかなと思っていますので、温対法とはそういう仕切りができるのではないか。まだ全然議論していないですが、そういう印象でございました。
それから、森嶌先生のおっしゃったこと、まさにおっしゃるとおりでございまして、中でも「政策との連動が重要」というふうに書いてあるところでございます。それをした上で市場原理と言いますか、市場を活用するんですけれども、その前提として政策も必要だというのは問題意識として持っていますので、そういうふうに検討していきたいと思っております。
○末吉委員長 それでは、私のほうから少し私自身の考え方を申し上げたいと思います。
まず、河野委員のご質問ですけれども、環境報告書の在り方はこれから大きく変わると思っております。私は環境に限らず様々な社会的責任に関わる情報の公開の義務化が進むと思います。義務として公表を求めるということになると思います。さらに、当然ながらその結果として報告内容の標準化が進むと思います。これは世界的な意味での標準化であります。と同時に、様々なステークホルダーがその情報を使って様々な行動を起こす、そのきっかけになる情報開示になると思っております。ですから、義務化、標準化、多様化ですね。後者が世界の流れでありますから、日本もその流れに追いついていかないと、結局は海外で決められたルールを押しつけられるだけだと、これまで歩んできた道の繰り返しになります。
それから、媒体も何も紙だけではありません。もう既に多くのものがウェブサイトで出ております。例えばCDPというカーボン・ディスクロージャー・プロジェクトというのがございますけれども、これは企業のカーボンの情報を出すプロジェクトでありまして、私もその一端を担っておりますけれども、既にこの情報はブルームバーグの端末で見られます。世界の投資家が毎日のマーケットを見る中で、三千数社のカーボン情報を見ながら投資行動を行っている、これが世界の現実であります。
それから、櫻井委員のご質問、年金の立場からのご意見、ありがとうございます。私もGPIFの運営の見直しに関わる検討の委員にお呼びいただきまして、SRI的というよりは、ESG的配慮をした投資を公的年金がやるべきだという主張をしてまいりました。公的年金で言えば120兆円の大きさであります。私的年金も入れると200兆円を超えます。この金額の大きさの責任を年金基金はもっと考えるべきであると私は主張しております。先ほど安定的・効率的なための基準から見ると、基準づくりとか人材がまだできてないというお話でありますけれども、海外では既に動いております。これまた日本がすべてが整わないと動かないという態度をとる限り、日本は同じような手遅れの状況になると、こういう具合に私は非常に懸念をしております。
それから、善養寺さんのご意見、期待、ありがとうございます。実は私どももマイクロファイナンスの在り方についてはもっと議論したかったのであります。ただ、部分的には地域金融機関の委員の方もおられましたので、地域金融機関が地方自治体などと協力して、こういった環境ベンチャーを含む新しい環境企業の立ち上がりをどういうサポートができるのか、そういう視点は持ちながら議論をいたしました。ご指摘の環境マイクロファイナンスについては、これからもっと議論が必要だと思っておりますけれども、視点は持っているつもりであります。
それから、冨田委員の有価証券報告書のお話でありますけれども、私は、この有価証券報告書は、日本においては非常に適切な企業の情報開示のツールであるというふうに受け止めております。ご存じのとおり、既にアメリカのSECは、現行法の下においてもCO2関連情報を出す義務として出すケースがあるぞということを、今年の2月に発表しております。SECの場合は、情状企業が対象でありますけれども、もっとより広くということであれば、公式の報告ということであれば、有価証券報告書は適切だと私は思っております。
ただ、これにはご承知のとおり罰則規定がありますので、どういった内容を書かせるのか、その性格性が欠けたときにどういった罰則をかけるのか、そういった議論はこれから必要であろうと思います。なお、念のために申し上げれば、日本の公認会計士協会は、有価証券報告書でこの種の情報を公開すべきであるという意見を既に出しております。
それから、森嶌委員のご指摘、私も、森嶌委員が大変厳しく見ておられる、銀行員を長くやっておりましたので、今、懺悔の気持ちでご意見を伺っておりました。確かに総論賛成、各論反対というのはあるんだろうと思います。ただ、10年前に比べますと、今の日本の金融機関は相当変わっております。これは正直申し上げて変わらざるを得ないんですよね、世の中が大きく変わり始めましたので、金融界だけいろんな意味で孤高を保つわけにいきません。変わらざるを得ません。ただ、その変わり方のレベルがまだまだというのが私自身の見方であります。
確かに強制とか規制、法律に基づく誘導というのも大変有効かと思いますけれども、その前に一つあるのがいわゆるソフトローですね。やわらかい法律によって誘導するといったことなどは、日本の社会においては非常に有効かと思っておりますし、あえて申し上げれば、金融庁の銀行検査などにおいてこの分野も見たいと、見るんだぞというような方向が出てまいりますと、金融は大きく変わるのではないかと思っております。
ただ、市場任せはだめだというご意見でありますけれども、一方では、企業が既にESGE対応をとり始めておりますから、市場においては、投資家あるいは消費者も含めて、企業のこういう環境行動に対して、社会から評価をするシステムが世界のあちこちに生まれ始めております。このことは間違いなく日本にも入ってくると思いますので、たとえ金融が動かなくても、社会からの厳しい監視の目が金融を動かしていくと、そういった流れも同時に起きてくるのではないかと思います。ただ、金融界の名誉のことで申し上げれば、大きく変わっておりますので、ぜひそういったような外部の圧力ではなくて、内部の議論の結果として新しい行動をとっていただきたい、そういったことを私は強く期待しております。
どうも委員の皆様ありがとうございました。
○鈴木部会長 どうもありがとうございました。
ある意味では保守的と思われてきた金融がこれから動いていく、社会全体がそういう方向に動いていくということがまず第一なのでしょうが、これに対しては私たちも大変期待の大きいものがあります。幸いなことに、この専門委員会はともかくこれからも引き続き活動していただくということでございますので、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。
それでは、この報告書につきましては、この後はどういう……、ここでいただいてということでよろしいですね。
どうもありがとうございました。大変時間もお待たせいたしまして、遅れてしまいましたが、これからもいろんな形でインタラクトさせていただきながら進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○末吉委員長 部会長はじめ委員の皆様方には、我々のというよりも、日本の金融界への関心をもっと高めていただき、温かい意味での叱咤激励をぜひお願いしたいと思っております。これからも引き続きよろしくお願いいたします。
どうもありがとうございました。
○鈴木部会長 どうもありがとうございました。
以上で主要な議題3つにつきましては、大分予定の時間をオーバーしておりますが、終了いたしました。
なお、まだこれから報告をいただく件がございますが、これにつきましては、簡単にお願いしたいと思います。
前回の第53回の部会以降の主な動向ということでございまして、環境影響評価法の改正案、それから、環境白書及びOECDによる環境保全成果レビュー、これにつきまして、事務局から報告を受けることといたします。よろしくお願いいたします。
○花岡環境影響評価課長 環境影響評価課長の花岡でございます。時間の都合もございますので、簡単にご説明させていただきたいと思います。お手元の資料6と、「環境影響評価法の一部を改正する法律案参考資料」が今回の資料でございます。あと、参考までに、机上には2月22日にいただきました答申の報告書もございますが、資料6についてご説明したいと思っております。
資料6は環境影響評価法改正後のフロー図でございます。この中で、黒字が平成11年に施行して以来10年たった現行法のフロー図でございますが、今回の改正案で盛り込まれておりますのが赤字、赤矢印で示してございます。対象事業のところは交付金事業の追加などが、また手続についても計画段階配慮事項の検討から、最後、報告書などを、さらに環境影響評価図書の電子縦覧の義務化などを盛り込んでおります。
答申の中で「すべきである」などというようなご指摘をいただいておりましたが、少し変わってきております部分がございまして、右のほうにあります、許認可権者が都道府県の場合、評価書に対する環境大臣意見がない部分について、意見を提出すべきということでお伺していましたが、地方分権に配慮して助言という形になってございます。あと、学識経験者の活用に関しましては、法律に書かなくても積極的にできるというご判断をいただいたことで、省令事項等で対応するような形になっておりますが、それ以外のものについては盛り込んだ形で法律案として組み立てておりました。
このいただいた答申に基づいてやってまいりました法律案につきましては、3月19日に閣議決定、3月31日、参議院のほうから本会議趣旨説明・質疑がございまして、4月6日、委員会で提案理由説明、4月8日、参考人質疑、13・15・20日と政府質疑がございまして、4月21日、参議院の本会議で全会一致で採決されてございます。その後、5月11日、衆議院のほうに、本会議趣旨説明・質疑の後、5月25日に政府質疑、5月28日に参考人質疑ということで、5月末までまいりましたが、その後の政局もございまして、質疑は止まっております。
今日、国会の閉会ということになってございますが、先ほど衆議院の環境委員会で継続審議の決議がされまして、17時目処で本会議が今動いていると思いますので、そこで正式に決定されれば、また次の国会に向けて継続審議という状況になってございます。
簡単ではございますが、以上でございます。
○川上総務課長 引き続きまして、もう一つの報告事項でございますが、お時間の関係もございますので、お手元の資料をご覧いただければと思います。
「図で見る環境白書」、それから、最後、資料8に「OECD対日環境保全成果レビュー」ということで、環境政策全般についてご指摘をいただいておりますので、後ほど資料でご覧いただければと存じます。
以上でございます。
○鈴木部会長 何か特にご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
よろしければ、以上をもちまして予定いたしました議事はすべて終了いたしました。
何か最後に事務局のほうからございますか。よろしいですか。
○白石環境政策局長 では、一つだけ。私が途中で中座したのは、衆議院でアセスメント法の手続があったもので、ちょっと出てまいりましたが、まだ本会議が開かれていない状況ではありますが、多分何とかなると思っております。
以上でございます。
○鈴木部会長 それでは、以上をもちまして本日の総合政策部会を閉会とさせていただきます。どうも長時間、最後までおつき合いいただきましてありがとうございました。
午後5時39分 閉会