大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣記者会見録(令和3年11月26日(金)10:50~11:17 於:オンライン)

1.発言要旨

本日、私から発言するのは2点で、まずCOP26を受けて市場メカニズムの拡大に向けて環境省としてどのようにこれから取り組んでいくかについて、そしてまた、福島県に私、出張させていただく件についてです。初めのCOP26を受けたパリ協定6条の世界的な実施について、今回のCOP26において、パリ協定6条のルールが合意されたわけですけれども、これはCOP全体の取りまとめに向けたこの環境情勢ということでも、非常に大きな意味があったと思います。要するにこの6条、長年の「宿題」だったものがまとまりそうだと、そういうことで、いろんな、例えば石炭とか、あるいは1.5度についての話とか、いろんな意見があったと思いますけれども、でもせっかくまとまりそうなんだから、ここでそれを逃しちゃいけないという意味で、非常に大きな機運の醸成という貢献があったと思います。今後、市場メカニズムを活用した世界での排出削減の進展が期待されるということです。6条ルールの交渉をリードし、世界に先駆けてJCMを実施してきた我が国として、今回の合意を踏まえて、3つのアクションに着手したいと思います。1つ目は、JCMのパートナー国の拡大、そしてアジア開発銀行、世界銀行、国連工業開発機関すなわちUNIDOなどの国際機関と連携した案件の形成・実施の強化です。今、現状では17のパートナー国があるわけですけれども、これに加えて、インド太平洋を重点地域として考えながら、新たなパートナー国を得るべく、関係国との交渉を加速化していきます。また、来年はCOP27がエジプトで開催されるということも踏まえると、アフリカにおけるJCMの実施も強化していきたいと思います。2つ目は、民間資金を中心としたJCMの拡大です。これまでは、政府資金を中心として、JCMプロジェクトが形成されていたわけですけれども、民間企業において、JCMを通じた国際的な排出量取引市場への関心が高まっていると承知しています。このため、年内に経済産業省等の関係省庁及び関係業界と共に、民間資金を中心としたJCMプロジェクトの形成に向けた検討を始めたいと思います。3つ目は、市場メカニズムの世界的拡大への貢献です。国連気候変動枠組条約の地域協力センターあるいは世界銀行と連携して、政府職員あるいは事業者の能力構築を支援していきます。具体的には、バンコクのアジア太平洋地域協力センターと連携して、政府内の体制構築支援、あるいは実施プロジェクトによる削減量算定等に必要な技術支援などを行っていきます。我が国としては、これらのアクションにより、JCMの拡充、市場メカニズムの世界的拡大に積極的に取り組むことで、世界の脱炭素化に貢献していくこととしたいと思います。それから、来週の29日、務台副大臣、穂坂政務官と共に福島県に出張して、伊澤双葉町長、松本楢葉町長、山本富岡町長及び吉田大熊町長にお会いさせていただくとともに、中間貯蔵施設の視察を行わせていただく予定です。各町長との面会では、中間貯蔵施設の整備を始めとする環境再生事業への御理解、御協力に対する感謝、そして福島の復興に対して全力を尽くす覚悟をお伝えするとともに、各町で抱えている課題についても意見交換をさせていただく予定です。さらに大熊町では、地元の方々との車座対話の機会を予定させていただいています。復興に向けた思い、あるいは町の未来についての話をお伺いさせていただきたいと思います。現場の声をしっかりと受け止めて、今後の政策に生かしていきたいと思います。私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)時事通信の武司です。質問なんですが、今年度の補正予算案が今日決定されますが、来年度当初予算からの前倒しになっている部分が結構多いと思います。大臣としては、どういった課題やテーマを特に重視されて今回の補正を組まれたのかという点について、よろしくお願いします。
(大臣)補正予算案については、11月の19日の金曜日に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を実行するために編成され、本日閣議決定する予定というふうに承知しています。この経済対策では、私としては、次の重要な3つの内容が盛り込まれたというふうに考えています。1つ目は、この2050年カーボンニュートラルの達成に向けた地域共生型の再エネ導入支援です。2点目は、国民の皆様のライフスタイル転換を促すための環境配慮行動へポイントを発行する取組の支援。3点目は、防災・減災、国土強靭化の観点から、軽石などの海岸漂着物対策。この3点です。COP26が終わったわけで、これから具体的なアクションの段階へと入っていくということだと思います。経済対策に盛り込まれた施策に対応するために、必要な予算を確保して、2050年のカーボンニュートラル・2030年度46%削減に向けた社会変革を実行していきたいと思っています。

(記者)化学工業日報の濱田です。ちょっと聞きたいのが、今日配られた参考資料で、大臣もお話になっていたと思うんですけれども、「インド太平洋を重点地域として、JCMパートナー国拡大」と、それから「アフリカにおけるJCMの実施を強化」とあるんですけども、そもそもこれJCMって、まずパートナー国にならないとJCM始まらないんじゃなかったと思うんですけども、これアフリカも、ということはパートナー国になることから始めるということでいいんですか。
(大臣)はい、そのとおりですね。COP26でこのいろんなルール、残りの「宿題」を片づけた格好ですけれども、この日本の、そういう意味ではJCMっていうものがこれから、頑張ってやっていこうという話ですよね。それで、結局我々としては、どういうことを実現していくか。国内においては、この地域脱炭素ロードマップと、そういうことに基づいて、来年度に向けて予算を獲得していく。それから、財投においても、資金を調達できるようにしていく。それと併せて、この海外でのJCMという仕組みを通じて、この脱炭素の動きというものに貢献していく。このJCMをやるときに、お互い相手との間で署名して、そしてお互いにこの手続について共有してやっていく。今、17の国との間でパートナーの関係を結んでるわけですけれども、まだの国があるわけですから、その国についていろんな状況も勘案しながら、パートナー国の関係を作っていく。近いところのほうが当然やりやすいわけですから、今までインド太平洋ということで来てますけど、来年のCOP27の議長がエジプトということであれば、それを機会に、手の届く範囲で、アフリカというものも、これから可能性がないわけではないかなというふうに考えています。
(記者)アフリカのJCMパートナー国第1号として、何かできそうだなというのはどこかあるんでしょうか。
(大臣)今から調整を行う具体的な国っていうのは、ちょっと今あまり言うべきじゃないかもしれないけれども、我々としては例えばインド太平洋において、17のどの国でカバーして、それからあとどの国があるのかなという発想ですよね。ちなみに、17の中にエチオピア、これは2013年に署名してる。あるいはケニアも2013年に署名してる。きっかけがないわけではないですね。そういう意味では、そこをどうやって現実的に広げていくかという発想で捉えていただければなと思います。

(記者)エネルギージャーナル社の清水です。ちょっと2点ほど伺いたいんですが、1つは幹事の質問にもあったと思うんですが、経済対策についてです。欧州やアメリカのインフラ予算を始め、やっぱグリーン成長への投資というのが、相当規模が大きいと思うんですが、自民党のほうでも、「新しい資本主義」という本部ができて、これから具体的な対策が実行されると思うんですけども、どうですか、自民党の資本主義の本部の会議でも、おそらく各省庁からのヒアリング等があると思うんですが、「成長と分配」の「分配」のほうの重点というのは分かるんですけども、「成長」に関して、冒頭申し上げたグリーン成長の規模感とか、あるいは今後どういう形で環境省は、施策的な体系をやっていくのか、その辺のお考えはありませんですか。それが1点です。
(大臣)規模感というのは、最終的に内閣総理大臣が決めることだから、私自身が今、自分の考えを言うっていうのは、必ずしも適切じゃないと思うんですけども、ただ、イノベーションっていうことが一番関係があると思うんです。今、グリーン成長って言われましたけど、グリーンとそれからイノベーションというのが、今の時代すごく結びついてるわけですから、イノベーションについて、いろんな国が、例えば隣の中国なんかも相当拠出してると、1つの計算によれば28兆円という話もある。政府全体で言ったら、今年度、大学ファンドということで10兆円新たにつけたわけですよね。それから2兆円がこのグリーンの関係のイノベーションでついたと。私的にはね、まだまだ足りないと思いますよ。この12兆円でやっているというのも、もともと試算によれば5兆円ぐらい日本はイノベーションに使っていたというから、5兆円と28兆円でえらい開きがあったなと、それを今年度10兆円とか2兆円増やしたといってもまだ開きがあるわけですから、まだまだ規模的には足りないな、もうちょっと頑張っていきたいなというふうに思っています。他方、やっぱり現実的な観点から取り組むということでいけば、既にこの地域の脱炭素ロードマップということで議論を始めているわけですから、それの予算の規模、スタート時点としてはある程度の額というものも想定しながら、今、財務省と調整しているわけですから、そういうものを最初の先行地域として、あるいは早い段階で100、あるいは場合によっては環境省的には100以上の地域と一緒に頑張っていきたいと思うんですけれども、そういう地に足のついた取組もやっていきながら、そして、海外において、JCMでもって貢献していくというところで現実にやっていきたいと思うんです。でも、規模的にはね、今、清水さんのおっしゃったように、私としても、もっともっとこれは全体として欲しいなと。あるいはつけるべきだなと。これは結局、今までトマ・ピケティとかが成長とそれから格差というものがどうしても、成長していけば格差は出るんだという議論もありましたけれども、新しい経済を作ろうとしているわけですからね。ですから、成長することによって、みんなが幸せになるという仕組みを作っていくのがこれからの政治の課題ですよ。したがって、相当、規模感も作り変えるわけですから、規模感も本当はもっともっと必要だと思うんです。「成長と分配」というのは、日本においても格差というものが少し意識されているわけですから、それはアメリカほどじゃないでしょうけどね。でも、格差があると民主主義は危機になるという感覚はみんなだんだん共有されているわけですから、これ大きな感覚で言ったら、今、民主主義全体と全体主義という、そういう文脈も見えてきてしまっているわけですから、そういう中でどういうふうに今回のこの新しい冷戦とも呼ばれるものを勝とうとしたら、やっぱり全体主義から見て、民主主義の国のほうが幸せだなというふうに持っていかなきゃいけない。そうしたら、成長することによって格差が大きくならないように、それがグリーンの1つの特徴だと思うんですね。そういう意味で、規模感をもっともっと私としては欲しいと思っています。ただ、全体はね、内閣全体でこれから決めていくことだと思いますけれども、そういう意見も反映されるようにやっていきたいなと思います。
(記者)自民党の本部への対応というのは、どうですか。
(大臣)政調会長の高市さんとの関係もいいわけですから、そういう中で、いろんな自分自身の考えも差し支えない範囲できちんと伝えていかないといけないなと思っています。
(記者)2点目ですが、CO2排出量の見える化、これ地球温対計画にもきっちり環境省が書いていると思うんですが、やはりこれ非常に重要だと思うんですよね。国民もやっぱりCO2対策へのやっぱり関心の醸成を図る意味でも。どうですか、そのCO2排出の見える化は、さっきおっしゃった100地域以上というようなところで具体的に進めていくんだろうと思うんですが、やっぱり自治体から見ると、エネルギーの使用量とかそういう基礎的なデータ、あるいはその、国がどのくらいCO2排出量減ったのかというような、いわば、対策と努力の成果というのがね、見える化の形で全然きっちり示されないというところがあると思うんですけれども、ちょっと細かい点になりますけど、非常に重要だと思うので、その辺、どういう具合に環境省は進めようとされているのか、ちょっとお話しいただければと思います。
(大臣)この間、COP26でグラスゴー行ったわけですけれどね、グラスゴーでカフェテリアがそれぞれあるわけで、外に出られないからその中で食事をすると、メニューがありましてね、メニューのそれぞれにCO2どれだけかというのが数字で出ているんですよね。だから、私なんか、そんなことが分かるのかねというような気持ちで新鮮な驚きと感動がありましたけれども、日本でなかなかそこまではできていない。そういう意味では、意識づけという観点では、これからだというふうに思うんですけど、見える化についてはロードマップの中でも示しているということで、これから具体的には経産省とかいろいろなところと協力して、今、清水さんの言われたこと、私ももっともなことだというふうに思いますから、具体的な手法とか、あるいは段取りとかということを相談していきたいなと思っています。

(記者)電気新聞の匂坂です。COP27の展望についてお伺いできればと思います。先ほど、冒頭にもありましたように、エジプトを議長として来年開催されますけれども、今回のCOP26では英国の議長としての存在感はなかなか目立ったと思うんですけれども、少し気が早いですが、次回のCOP27ではエジプトを議長として、どのような議論が予想されるですとか、政治的な駆け引きが起こりそうですとか、現時点で何か見立てが、もしありましたらお伺いできればと思います。
(大臣)大事なポイントですよね。私なんかCOP26を踏まえて、それをどういうふうに実現していくかというところでしたんですけど、ただCOP27の議長国のエジプト、フアードさんという女性の閣僚、すごくしっかりした方ですね。彼女を中心に多分COP27の進行というか運営がされていくんだと思うんですけど、エジプトも、なるほどなと、相当、これはきちっとした運営ができるんだろうなという印象を持ちました。現実に、今回、長年の「宿題」が取りあえずまとまったという大きなことがあって、全体としては、みんなこのイギリスのグラスゴーの中で、もう絶対に結論を出していこうという大きな流れがありましたから、エジプトに迷惑かけないように、今回でみんなできっちりやっていこうと、そこが大きかったと思うんです。それを踏まえて、どういうふうにこの2030年に向けてこの喫緊の課題、あるいは、もうみんなが思っているよりもっともっと早くやっていこうというのが、そこに集まっている人たちの総意ですから、エジプトにおいては、この長年の「宿題」がまとまったことを踏まえて、次の対策を考えていくんだと思うんです。資金の話も出てくると思いますよね。いわゆるアダプテーションということで、適応に対して途上国からは最後までいろいろとコメントがありましたからね。コメントがありつつも、やっぱりここでまとめないといけないということで、みんな英語で「in the spirits of compromise」とか必ず言って、気持ちとしては、まだまだアダプテーションの話、したいけれども、あんまりここでやっていると、せっかくまとまりそうなのにまとまらないからということで、全員が合意に向けた機運。ただ、そこに資金の話というのは厳然としてありますから、エジプトにおいては、エジプトの立場も踏まえると、途上国からのアダプテーションの期待というものが先進国に対してぶつけられるのかなという予想はしています。
(大臣)COP26の成果ということでね、今日もお聞きいただいて、それを踏まえて、環境省として3つの方向性ということをお話しさせていただいたんですけれども、やっぱり今回のいわゆる日本の貢献というのは、世情知られているより相当大きいものがあるなというふうに私的には思います。少し、1つずつ言っていますけれども、全体として、例えば、産業革命前に比べて1.5度、ここまでの言及に至るまで、みんな気持ちが、それぞれ意見があるわけですよね。その途上国の、さっき申し上げたようなアダプテーションの資金がちゃんとしていなければどうのこうのとか、それから、もちろん最終盤、石炭の話もありましたしね。だけれども、日本の、特に6条についてのこの提案。これ別に、単にそこで思いついたんじゃなくて、それまでの環境省においてのいろんな知見の蓄積、データの蓄積、そういう現実的なものがあって初めて成し得たことですから、それは、せっかくまとまっているんだからということで全体がまとまれた、大きな日本の貢献だと思うんです。なかなかその部分を報じられなくて、石炭についての部分とかいう面にのみ当てられたような報じられ方もあるように思うんですけれども、でも是非、全体を見ていただくと、市場のメカニズム、これについての日本の貢献が全体のまとまりを生んだというところあると思うんです。6条2項の中で「share of proceeds」というのかな、1つ、言ってみれば手数料みたいなものを蓄積して、アダプテーション、適応に回したらどうかという、最後まで途上国のみならず先進国の中でも一部環境問題に非常に意識の鋭敏なところがそのことにこだわりかけたんですけれども、全体見てみたら額的にはその部分がそんなに無茶な比率じゃないんだから、そこにこだわって6条についてのまとまりをまた今回できないということにならないようにしようと、その辺はアメリカのケリーさんもはっきり言っていましたしね。そういうふうに言ってくる先進国はあったわけですけども、その先進国に対しては、「もうそのことはここでは言わないでくれ」というふうに、いわゆるハドルと言うんですか、会議場でも個々集まってやる中で、そういう場面もありましたし、何としてもまとめなければいけないという切迫感がそういう言葉も生んだんだと思います。だから、そういう意味では、日本がせっかく6条について貢献し、まとまりそうなその雰囲気というか流れをどうしても最後までまとめるという方向でもっていこうというところで、全体のまとめができたと。議長としてはね、最後、言葉も詰まらせながら、若干忸怩たる思いというものをはっきり表情に出していましたけれども、それにもかかわらず、やっぱり全体としては前に進んだということだと思いますしね。それは見方によっては、もっと前にという気持ちを持っておられる方もあるし、その気持ちもよく分かるから、我々としては実現について加速化させていこうというところだと思います。そういう意味では、今回、日本の貢献というものが6条のみならず、その6条についてまとまりを見せていたことが、全体の合意を形成する際の機運の醸成に大きな役割を果たしたというところを少し共有させていただければありがたいと思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/6JOxri2MfrU

(以上)

配布資料

COP26 後の6条実施方針