大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣閣議後記者会見録(令和3年11月16日(火)10:30~10:55 於:オンライン)

1.発言要旨

本日、私から発言させていただくのは1点、COP26に参加した所感についてということです。英国・グラスゴーで開催されたCOP26に参加し、昨日帰国しました。2年ぶりに開催された今回のCOPでは市場メカニズムのルールや各国の取組に関する共通の報告様式などについて合意が得られ、パリ協定実施ルールを完成することができました。また、1.5度の目標の達成のため、今世紀半ばの排出量実質ゼロ及びその経過点である2030年に向けて、野心的な緩和策、適応策を締約国に求める内容が盛り込まれました。このように、パリ協定を着実に実施する上で非常に大きな成果が得られ、歴史的なCOPになったと思います。特に、市場メカニズムの実施ルールについては、我が国が行った提案がベースとなって合意が成立するなど、大きく貢献できたと思います。長年の「宿題」が解決したことで、世界の脱炭素化に向けた官民の動きが更に加速することを期待しています。また、ジャパン・パビリオンにおける展示及びイベントの開催等を通して、国内そして世界の脱炭素化に向けた日本の取組をアピールすることができたと思います。さらに、日本のNGOあるいはユースの皆様とも意見交換をさせていただきました。私自身も、10の国あるいは地域の閣僚の皆さんとの対面でのバイ会談を通して、人脈を構築させていただきました。また、気候変動問題をめぐる世界の情勢に直接触れることで理解を深めることができたと思います。今回、厳しい日程の中でしたけれども、会議冒頭に岸田総理が参加され、2030年までの「勝負の10年」に、我が国として気候変動問題に総力を挙げて取り組む決意とともに新たな資金面でのプレッジを表明するなど、我が国の存在感を示していただいたと思います。会議の成果については、昨日早速、岸田総理に御報告に上がったところです。総理からは、これからは「実行」のときであり、国内でも一層の気候変動対策に取り組むようにとの御指示をいただきました。引き続き、「環境問題国境なし」との心構えで環境外交に取り組むとともに、地域脱炭素の推進を始め国内外の気候変動対策に積極的に取り組んでまいりたいと思います。以上です。

2.質疑応答

(記者)幹事社のTBSの緒方です。大臣からもお話があった、COPの感想というか、所感についてお尋ねしたいのですが、出発前にアメリカと中国と特に話をしたいという発言があったかと思うんですけど、アメリカと中国とは具体的にどのようなお話があって、どういった成果があったのか教えてもらえますでしょうか。
(大臣)アメリカのジョン・ケリーさんは最も熱心なプレイヤーの1人だったと思います。今回、まとまった背景にはケリーさんの大きな働きがあったことは事実だと思います。それから、中国については、世界最大の排出国という意味で、この米中と会談を行って、その中では、この6条に関する話、あるいはこのアダプテーションの話等々、行わせていただきました。このことは、COP26の成功に向けて、非常に役に立ったんではないかなというふうに感じています。いろんな意見が各国あるわけですけれども、基本的にはみんな何とかまとめようということで、同じ方向を向いていたというふうに思いますし、その意味では一体感があったんじゃないかと思います。直接の対面で意見交換するということの意味も非常に大きかったと思いますので、そういう意味では、この米中のみならずいろんな主要な国との意見交換ができたということが非常に大きかったと思っています。

(記者)NHKの岡本です。COPの関係でちょっとお尋ねしたくて、御質問をさせていただきます。昨日ですね、「COP、CMP、CMAの結果について」というリリースをしていただいて、今も、それに恐らく基づいて、冒頭、御発言があったかと思うんですけれども、実際、現地で私も拝見していましたけども、最終盤でですね、石炭火力の扱いについて各国でかなりいろいろな意見が出てですね、最終的に文言が修正されるというようなこと、大臣も現地で御覧になっていて、かなり大きな焦点になっていたんじゃないかと思います。ただ、そのことについて、「結果について」という中では、全くちょっと、触れていないということを私、拝見したんですけれども、これの理由とですね、あと石炭火力、今回こういった決定になったことについて、大臣はどういうふうな御所感かを教えてください。
(大臣)今、岡本さんが言われた文章でいけば、この「今世紀半ばでの温室効果ガス実質排出ゼロ及びその経過点である2030年に向けて野心的な緩和策、適応策を締約国に求める内容となっている。」ということ。その「野心的な緩和策」という中には、この石炭も入るというふうに読み込んでいただければと思うんです。石炭については、この排出削減対策が講じられてない石炭火力発電の低減、フェーズダウンということですね、に向けた努力を加速することがCOP全体の決定など、文書に盛り込まれたわけですね。我々としては、その内容、我々の政策、国内政策と十分整合的であって、日本も着実に脱炭素を進めていくというふうに思っています。明示的に記載していないというのは別に他意はありません。最終版で確かにね、いろんな、いろんな国というか、どの国かは当然分かっていただいているわけですけれども、まあ、そういうことがあって、盛り上がったっていうよりも、私は申し訳ないけど、中国はいつも会議の最後に目立とうとして、こういうことをやるというのは、もう癖は分かっていますから、それに加担する必要もないし、じゃあ日本が今からどういうふうにこれを収めていくかということに対しては、いろんな事情がある中で、日本として、この石炭の脱炭素化を進めていく。その中で、アンモニアの混焼等に非常に自信を持って今からやっていくわけですけれども、そういう日本の立場を言う場所でもなかったというふうに思いますのでね。パビリオンとかでもって、その脱炭素化、石炭火力についても脱炭素化が可能なんだということを発信はさせていただきましたけど、あの場で、この決定が全部もうまとまりかけた中で最後の最後に異議ありという中国の動きは「またやっているな」って思いましたし、たまたま全体の場所でABCDで並んでいる中で、CのChinaとIのIndiaがほとんど一緒のところにいたんで、そういう中で彼らが異議を唱えたんじゃないかなという気もしますけれども、我々、日本としては、最初、岡本さんも御存じかもしれません、その案で十分、国内政策的にも適合するということで、OKだというふうに思っていたんです。そんな中で、そういう動きがあったことに対して、日本として特に割り込む必要、私は感じなかったものですから、そういう中での受け止めというふうに見ていただければと思います。
(記者)今回、その「結果について」というところで、緩和の野心のところに入っているということなんですけれども、ただ、今回のその決定の中で、石炭火力に関する部分が重要であったというような認識はおありなんでしょうか。
(大臣)全世界的にね、あるいは環境問題に対して長年関わっておられる方々も含めて、この石炭に対してどう触れるかというのは非常に大きなところでしたから、我々も非常にそこの点では、気持ちというか、神経を使ったのは事実です。そういうところが、本当はね、もっとヨーロッパとかアメリカは別の表現したかったんだろうと思うし、日本としても、そういう意味ではフェーズダウン、「フェーズダウン」というのは、米中の共同文書の中で使われた言葉だから、中国的には、まあアメリカも納得してくれているんだから、このフェーズアウトじゃなくて、フェーズダウンしてくれという、そんな話だったと思いますけれども、ただ、そこは我々的には、米中という中での話も受けての、そういうものを黙示的に感じながらやっていたところです。
(記者)先ほどの質問で、「結果」の中に、明示的にはその石炭の話は環境省の発表では書いていないんですけれども、「他意はない」とおっしゃいましたが、これはその、重要だけれども、その含まれているうちの要素の1つであるから、個別には書いていないという、そういう理解でよろしいでしょうか。
(大臣)そうですね。そういうふうに理解していただければと思います。我々、相当気持ちというか、気を遣ったことは確かです。

(記者)TBSの緒方です。今の質問とも少しかぶるところはあるんですが、石炭火力について、その廃止ではなく、削減になったことについてなんですが、日本としては3割ぐらい発電で石炭火力に頼っている部分はあると思うんですけど、正直日本として、言いづらい部分ももちろんあるかと思うんですけど、廃止ではなくて、削減になったことで、変な話、助かったまではいかないですけど、そういったところだったりとか、日本として、具体的にこの削減の数値目標とかがもしあれば教えていただきたいです。
(大臣)石炭に関しては、19%という話があるんですよね、まずね。主力電源として、その再生可能エネルギーを徹底的に導入していくということと併せて、この19%という数字に向けて努力していくということだと思います。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。何回かお話しいただいているところもあると思うんですが、今回のCOPに関してですね、6条、とても日本が大きく貢献した部分あると思うんですが、具体的にどの部分に貢献して、ルールブックが採択されたことによって、どのようなことが期待できるのか、もう一度教えていただければと思います。
(大臣)この6条の中で一番問題の1つはダブルアカウンティングという話ですね。NDCの内か外かという議論、内のほうでCO2、外のほうでメタンというふうなことがあった場合に、いろんな議論があったわけですけれども、日本が、そのプロジェクトを実施する国の政府がオーソライズ、承認したクレジットのみをパリ協定に基づく各国の削減目標、要するにNDCの達成に活用可能だと、こういうことで二重計上を防止できるじゃないかという案を出したわけですね。この提案でその、いわゆる、相当調整の対象をNDCに含まれる排出源からの排出削減に限るかどうかとか、要するにインサイド、アウトサイドの議論、あるいは、その相当調整の適用に当たっての猶予期間を設定するかどうか、グレースピリオドの話、これは全部そういうことを飛び越えることができるので、非常に大事な提案だったと思うんです。日本の中で、こういう意味で長年携わってこられた方々からこういう意見が出てきたということはものすごい大事なことだと思うんですね。いわゆる実務的な知識、あるいは経験、知見があって初めてできることですから、そういう意味で単に思いついたというよりも、本当に大きなその知見に基づいた提案があったと思うので、私は非常に大事なことだったな、あるいはすごかったなというふうに思っています。こういう残されたこと、前回のCOPで、もうほとんど、オールモストのところまで行きながら合意に至らなかったことが今回この合意できそうだということが、他のところ、石炭のことも含めて、そこでごねて全部ひっくり返すという責任を中国も取れなかったと思いますね。だから、6条でまとまりそうだというその日本の貢献というのは、このCOP全体のまとめに大きく貢献したと思います。6条だけのまとめというよりも、むしろ、この大事な部分でこれができることによって、大きな、例えば資金が官民で動き得る、そういうことまでいくわけですから、それを邪魔することはどの国もできなかったと思いますね。だから、6条のこの大きな提案の意味というものは、どっちかというと本当はもっと光が当てられてもいいぐらいじゃないかなと思っています。
(記者)その、今回とても貢献もあったと思うんですが、今回のCOPに関して、終盤の参加ではあったと思うんですけれども、成果をあえて採点するとしたら、大臣、何点だと思われますか。
(大臣)いや、僕はいつも謙虚にやっているつもりだから、自分で採点をするとしたら低い点をつけるんでしょうけど、それは私が採点するよりもほかの人がどう見ておられるかということであって、結果が全てということも政治の世界ですから、努力は一生懸命しましたけど、結果はそれぞれの方で判断していただければと思います。私はいつも全力投球、頑張ってやっているつもりです。
(記者)ちょっと内容は変わりますけれども、軽石に関してですね、福徳岡ノ場のものか不明ですけれども、関東、伊豆諸島に漂着をし始めているという話もあります。これに関しては、大臣としてはどのように受け止めて、また、具体的な対策などは指示されたりしていますでしょうか。
(大臣)先週以降、神津島沖、あるいは御蔵島等で確認されたことは承知しております。現時点で被害というものが確認されていないというふうに聞いているんですけれども、引き続き関係省庁とよく連絡、連携するように事務方には指示させていただいています。
(記者)特に具体的な支援の方法であったり、以前お話しいただいたときには、状況を把握するというお話だったんですけど、そこから進んでいることはあるんでしょうか。
(大臣)沖縄県及び鹿児島県というのが最初に出てきたわけですけれども、もうそことよく連絡を取って必要な予算規模の精査を進めています。これが不足することがないように、我々としてはしっかり措置していきたいなということで、今、調整中です。
(記者)務台副大臣から「補正予算も視野に」というお話もありましたけど、そういった対応を考えていらっしゃるんでしょうか。
(大臣)当然そうなると思います。
(記者)いつ頃にとかというのは、特にまだわからないですか。
(大臣)国会の審議次第だと思うんですけれども。

(記者)日刊自動車新聞の村田です。私から1点お願いします。ハイブリッドを含むガソリン車の販売を40年までに停止するというのに、23ケ国が合意したと思うんですけれども、日本や米中など大国は合意を見送った一方で、グローバルでビジネスをする日本メーカーに影響は出てくると思うんですけれども、ここに対する大臣の御所感を教えてください。
(大臣)一部有志国による声明については、日本は参画をしていません、確かに。他方、同日、閣僚会合において、米国、ドイツを含む主要国とゼロエミッション自動車への移行に向けたアクションプランについては、日本としても合意をしています。自動車部門でそのカーボンニュートラルという方向性については、関係国の間で広く共有しているところですし、そういう意味では、この閣僚級で取りまとめたアクションプランに沿って、グローバルな取組をしっかりと進めていくということだと思います。我々の国が、その2035年までに新車の販売で電動車100%という目標を設定されているわけですから、その実現に向けて、包括的な措置を講じていくということになると思います。環境省的には、再生可能エネルギー調達を条件とした電気自動車等の普及を通じて、我が国における移動の脱炭素化を進めてきたところで、引き続き、関係省庁あるいは自治体と連携して、電気自動車等の普及を含めた脱炭素社会への実現に向けて取り組んでまいりたいと思います。

(記者)エネルギージャーナル社の清水です。COP26に関して伺います。野心の向上というのが合意されたと思うんですが、日本の30年中間目標の46%削減というのは、これはやっぱり見直しをする、今後、可能性というか、対応というのがあるんでしょうか。それと、石炭火力の話が出ていますけれども、石炭火力は30年以上の稼働を予定するわけでして、削減といっても、いつそのゼロにしていくのかという、やっぱり環境省の道筋というか考え方が必要だと思うんですが、その辺はどうお考えですか。以上、2点です。
(大臣)2030年に46%、あるいは、その高みの50%というのが1つあるわけですよね。50%というのは、これから世界の中で1つの大きな基準になると思います。だから、環境省的には46%を目指す中で50%に届くようにという今までの方向に変わりはないと思います。それから、石炭については、やっぱりその脱炭素化ということでアンモニアの混焼とか、現実にもう始めているわけですから、20%から始めて、これがどういう順番でいくかというのは6月から始めたばかりだけれども、実際にパイロットプラントを始めているわけですから、2050年にゼロというのはあるとしても、そのアンモニアの混焼100%までいけば、もう石炭火力発電所じゃなくなって、しかもCO2もゼロになるということでしょうから、それはまず実験してみて、それで実際にこれから更にこの数字が出てくるかどうか、それにもよるんだと思います。今のところ、やっぱり石炭火力については、再生可能エネルギーをできるだけ主電源として取り入れるということで、2030年代もできるだけ低いパーセンテージに石炭火力を落としていく、そういうところだと思います。
(記者)1つ目のところで、50%の高みを目指すという、「高み」というのはあくまで、言わば願望的な目標であって、政策的な裏付けはないわけですよね、まだ。そこをやっぱり修正して対応していくというのはお考えでしょうか、大臣は。
(大臣)現実的にものを考えるのが私の癖ですから、46%、高み50%、全然問題ないと思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/I7edhEwFjRM

(以上)