大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和3年3月30日(火)8:51~9:11 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 今日の環境省関連の閣議案件はありませんが、冒頭、私から3点申し上げたいと思います。1点目は、土曜日に瀬戸内海の視察をしたので、その件を一言、そして2点目が、災害時のペットとの同行避難に関するチェックリストの公表について、そして3点目が、ちょうど今日の会見がこの年度の最後の会見になりますので、1月からのこの第1四半期、こういったところの動きを少し振り返りたいと思います。
 まず、1点目の兵庫県、香川県の視察でありますが、土曜日に、瀬戸内海環境保全特措法の改正、この国会審議に先立って現場を拝見させていただきました。兵庫県水産技術センター、そして明石市二見浄化センター、そして香川県に移って、高松市の庵治町、高松漁港などを訪問しました。今回の視察では、特に栄養塩類管理制度の創設というのが一つの大きなポイントでもありますので、それに強い関心を示されている漁業者の方々からの声を聞くというのが主なポイントでした。特にノリの養殖をやられている方にとってはノリの色落ち、これがやはり長年の懸念で、さらにイカナゴが名産ですから、イカナゴが激減をしているという、相場が相当値上がりをしているということを改めて聞きました。そして、一方で、ハマチの養殖業などの皆さんからすると、過去に赤潮による大打撃もあった経験もありますので、この栄養塩類に対しての様々な不安も含めた、そういった声も伺いました。いずれにしても、この栄養塩類管理制度、今までにない一律の水質規制からきめ細かい海域ごとの水質管理へという大きな転換をしていくものでありますから、環境省としてモニタリングの重要性も含めてこの法案の意義というものを改めて強く感じましたし、地域の方の期待と同時に、今後の環境省の責任、こういったことも非常に重いなということを改めて痛感ができました。そして、併せて、今回の法案には海洋プラスチックごみ、この観点も入れてあります、気候変動とともに。その観点からは、底引き網の漁業をやられている漁師さんから、20年前からこの海洋プラスチックごみの回収をしているその思いを直接聞きました。その方は20年前に自分の捕った鯛がビニール袋に絡まって苦しそうな様子を見たことがきっかけに、このままではいけないということで自らボランティアで回収を始めたということでした。そして、この香川県を訪問した理由の一つが、香川県は全国で唯一、海の側の自治体だけではなくて、内陸の自治体も含めてお金を協議会に出して、県を挙げてこの海洋プラスチックごみの回収・運搬などをやっている、これは香川方式、香川モデルとも言えるものです。これをやっぱり多くの自治体にも知ってもらいたい、そしてこういった取組が陸域と、そして海側と自治体が一致団結して取り組むようなこの取組は素晴らしいなということで現場を見させていただきました。知事とも意見交換をさせていただきましたが、サーキュラーエコノミーへの移行の必要性も含めて率直に意見交換させていただきました。今回の視察や意見交換を通じて、この栄養塩類の管理、そして海洋プラスチック、気候変動に対応すること、こういったことの重要性と法案の意義、これも含めて非常に有意義な視察になりました。お世話になった現場の皆さんに、改めて感謝を申し上げたいと思います。
 そして、2点目でありますが、同行避難チェックリストの公表ですね。環境省では、災害時に飼い主がペットと一緒に指定緊急避難場所や避難所に向かう「同行避難」を呼び掛けていますが、残念ながらまだ十分に浸透していません。先日、同行避難が原則であることを認識している飼い主の方が15%しかいないという報道がありましたが、最近の災害においても、避難をためらって自宅にとどまる飼い主や同行避難の受け入れに難色を示した避難所もあったように、飼い主にも自治体にも理解が行き渡っていないという現状があります。この状況を改善して、飼い主がペットと安心して避難できるようにするためには、まずは災害対応の最前線を担う市町村の職員に同行避難を正しく理解していただくとともに、平時に行っておくべき事項と災害時に行うべき事項を把握していただくことが重要であります。このため、今般、自治体の危機管理部局と動物愛護管理部局の双方が取り組むべき事項を分かりやすくリスト化したガイドライン、「人とペットの災害対策ガイドライン 災害への備えチェックリスト」を作成し、昨日公表するとともに、消防庁の協力も得て各自治体の動物愛護管理部局及び危機管理部局に周知を行ったところです。チェックリストでは、例えば平時の対応としてペットの受入れが可能な避難所と受入れができない避難所とを公表しているか、そしてペットの飼育スペースを確保し、具体的な飼育方法を検討しているか、そしてペットアレルギーの避難者の動線と飼育スペースが重ならないようになっているか、また災害発生時の対応として動物救護本部の設置、放浪ペットの保護・収容、こういったことをリスト化し、それぞれに解説を加えています。ちょうど人事異動も多くあるこの時期に、全国の自治体に対して災害対応に当たる職員の引継ぎの際に今回のチェックリストや同行避難の周知を徹底いただくことも要請していきたいと思います。このチェックリストが広く活用されて、関係者の連携が強化されることで、災害時などの非常事態にも人と動物に寄り添うことができる成熟した国を目指していきたいと思います。なお、このチェックリストというのはこういったものになりますので、これが自治体の皆さんに周知をされていくということでもあります。
 最後になりますが、この四半期最後の会見ですから、この機会に年頭に申し上げた三つの移行、そして持続可能で強靱な経済社会へのリデザイン、これと福島の復興に関する今年の動きをちょっと振り返ってみたいと思います。まず、三つの移行の一つが、脱炭素社会への移行だということを申し上げています。これは本当に職員一丸となって進めてきたおかげで、相当政策の進捗が大きかったと思います。2月に、ゼロカーボンシティを宣言した自治体の総人口が1億人を超えました。そして、最近発表したゼロカーボン・ドライブ、そしてゼロカーボン・パーク、こういう新たな取組もスタートすることができましたし、カーボン・ニュートラルを目指す大学の連合、大学コアリション、これも100以上の大学に参加をいただく形で萩生田文科大臣とともに立ち上げに向けた準備を進めることができました。さらに、昨年末の国・地方脱炭素実現会議の議論を受けて、今ヒアリングを行って全国の自治体や企業などから様々知恵もいただいています。6月までにロードマップを策定して、今国会に提出した温対法、そしてライフスタイルを脱炭素化する新たな仕組みを活用して脱炭素のモデルケースを各地に作り出して脱炭素ドミノを起こしていきたいと思います。カーボンプライシングについても、昨年末の総理からの指示に基づいて、今、検討を再開して、経団連とも率直な意見交換ができていますし、経産省と密接に連携して更に検討を深めていきたいと思います。そして、2点目の移行のサーキュラーエコノミーへの移行についても、プラスチック資源循環法案、これを通称サーキュラーエコノミー法案と言っていますが、国会に提出をしました。この法律は初めてプラスチックという素材に着目をして、製造から廃棄までカバーする前例のない仕組みを導入するものです。そして、3月には経団連と循環経済パートナーシップを立ち上げて、先進事例を共有してこれから取組の促進について話し合う場をつくることができました。さらに、政府としては世界で初めてファイナンス面の支援についてサーキュラーエコノミーに特化したESGガイダンスを策定しました。加えて、3月2日、3日には世界経済フォーラムとこのサーキュラーエコノミーのラウンドテーブルを共催して、日本の取組の発信と先進事例の共有を行うことができました。そして、最後になりますが、分散型の社会、これについても先週、ゼロカーボン・ドライブ、これの発表と、そして再エネと電動車、これを組み合わせた日本としては初めての補助事業、この申請の受付けも始まりました。こういったことを一つ一つ積み重ねて三つの移行を進めていきたいと思いますし、自然公園法の改正法案にも盛り込んだ仕組みも使って、自然公園、国立公園なども魅力を高めていきたいと思います。瀬戸法のことはさっき冒頭触れましたが、この瀬戸内海という地域もサーキュラーエコノミーの先駆けとなるような地域になっていくことを私は期待しています。福島の復興については、最近、メディアの皆さんにも「福島環境再生100人の記憶」、この書籍も取り上げていただくこともありまして、ありがとうございます。私も来年度、東京を皮切りに全国各地でこの再生利用など福島の事業に多くの方に理解を深めていただけるような対話集会を開催するなど、理解醸成活動を抜本的に強化していきたいと思います。こうやって振り返ってみますと、この第1四半期は本当にものすごい勢いで職員の皆さんに頑張っていただいたおかげで、政策の進捗が大きく見られたと思います。これからも更にこの動きは加速を世界的にもしていくと思いますので、それぞれ緊張感を持ちながらその責任を果たしていきたいと思います。メディアの皆さんにおかれましても、第1四半期はお世話になりました。改めて、4月以降もよろしくお願いしたいと思います。今日は冒頭、以上です。

2.質疑応答

(記者)共同通信の武司です。米国のバイデン政権が4月22日から23日に気候変動サミットを開催すると発表しまして、菅首相も招待されています。首相はこれに先立ち、訪米も予定されていますが、冒頭発言で、第1四半期の様々な施策を紹介いただきましたが、大臣は気候変動担当大臣として、日本の気候変動施策のどのような取組を中心に、アメリカをはじめ国際社会にアピールしていきたいとお考えでいらっしゃいますか。
(大臣)まず、4月22日に開催されるサミット、これは世界の主要国の首脳が集まって各国の目標の野心の向上、こういったことについてハイレベルで議論する重要な場でありますから、11月のCOP26に向けて国際社会の気候変動対策を加速させるものとなることが期待をされています。その直前には日米首脳会談、これも計画されています。2050年カーボンニュートラルという目標を共有する日米の首脳間へ気候変動に関しても前向きなメッセージを発出いただけるものと期待をしていますし、しっかりと政府内の調整、準備を進めたいと思います。そして、先ほども地域のことをお話ししましたが、都市や地域からの脱炭素の取組、これが日本の中ではゼロカーボンシティに向けて進んでいること、そして昨日は夜、BSの番組でも紹介をしましたが、日本の協力の下で、東京の協力の下でクアラルンプールの2050年カーボンニュートラルが宣言をされたように、この脱炭素ドミノが東南アジアを含めて海外にも広がっていること、こういったこともアピールをしたいと思います。これからまさにいろんな国際会合がありますから、それら一つ一つに向けて、政府内一つとして対応できるようにしっかりと準備を進めたいと思います。

(記者)NHKの吉田です。風力発電のアセス要件の緩和について伺わせてください。昨日、河野大臣の再エネタスクフォースもありましたが、今後の環境省の方針について教えてください。また、規制緩和に対しては自然保護団体などから環境への影響を懸念する声なども出ていますが、この面に関して環境省としてどのように対応していくのか、その方針もお願いします。
(大臣)昨日、河野大臣の下でも再エネタスクフォースでこれが議題になりましたが、環境省は経産省と一緒に今年の1月に検討会を立ち上げて、3月25日の第4回の検討会で取りまとめの報告書案についておおむね合意に至りました。今回の検討会のポイントは大きく二つあります。一つが、1万キロワット以上から5万キロワット以上というふうにしたこと。そして、二つ目が、立地に応じた地域の環境特性を踏まえた効果的、効率的なアセスメントに係る制度の導入について検討すること。今回の取りまとめの結果を受けて、環境省としての対応について経産省と連携して早急に整理をして、2050年までのカーボンニュートラルを実現するという目標の達成に向けて、環境保全に適正に配慮して地域の理解の下で風力発電の最大限の導入を促進できるように必要な措置を講じていきたいと思います。

(記者)読売新聞の山下です。自民党総裁選についてお伺いします。総裁の任期まであと半年となりまして、小泉大臣にも待望論が強いと思うのですけれども、現状、総裁選について御自身の出馬をどう考えているか教えてください。
(大臣)今、私の頭の中にあるのは、今年一連の国際会合を、いかに総理に日本の気候変動政策の進捗を効果的に国際社会に発信していただけるか、そして国内の産業界、国民、地方自治体、こういった一連の取組が足並みそろって進むように全力を尽くしていく、そのこと以外は頭にありません。

(記者)産経新聞の奥原です。昨日、日経新聞さんが一面で報じられていた件なんですけれども、政府が石炭火力発電所の輸出支援に新規案件を全面停止する検討に入ったと報じられました。これについてのコメントを伺いたいのですけれどもいかがですか。
(大臣)昨日夜のBSでも申し上げましたけど、これは私も環境大臣に就任して以降、石炭政策の見直しについては力強く進めなければいけないということで、厳格化、これに向けた政府内の働き掛けもしてきて、昨年には今後新たに計画される石炭火力輸出支援の厳格化が政府の中で合意を得ました。今、海外で新設をされる石炭火力に対する政府支援についてという報道などもお話しありましたが、昨年12月に決められた戦略で定められた方針に従って対応するというのが今の政府の方針でありますから、新規案件を全面停止するという具体的な検討に入ったという事実はありません。我が国の高い技術を維持しながら、同時に相手国のエネルギー政策や気候変動政策に関与を深めることで脱炭素化を促すという基本方針を踏まえて取組を進めて、脱炭素社会の実現をリードしていきたいと思います。なお、インフラ輸出の在り方については、これまでも国際的な動向を含む諸情勢を踏まえて不断の検討、見直しが行われているところでありますので、環境省としても関係省庁とそういった観点から十分に議論をしていきたいと思っています。
(記者)大変現実的な回答だったと思います。個人的には、急進的に新規案件をゼロにしてしまうというのはどうなのかなと思っていたので。そして、続けて伺いたいのですけれども、石炭火力の輸出によって、大臣はかねがね新設すると発展途上国に対して石炭火力発電所が固定化されるというような御回答をされています。実際に日本が輸出をやめた場合に、中国などの最上位のものは日本と同等のレベルかと思いますけれども、日本よりも効率の低い石炭火力などが輸出されかねず、発展途上国に対する中国の影響力の拡大であったりとかが懸念されると思います。シミュレーションの問題なんですけれども、日本が石炭火力の輸出をやめたことによって、例えば50年間スパンで全体の温室効果ガスの排出量の比較などといったシミュレーションはされているのでしょうか。
(大臣)日本の政策を決める中では、相当精緻な分析はやります。特に、例えば今後の2030年目標を総理が言っているように、2050年カーボンニュートラルと整合的なものにしていくという作業は、経産省、環境省を含めて政府内で相当精力的な緻密な作業をやります。もちろん、海外に対しての政策についても日本のこのインフラ戦略が変更されることでどういった影響があるか、そういったことも考えた上での昨年の12月の決定です。ですから、こういった諸情勢、そして国際情勢の変化、これを考えながら不断の見直しは必要なことはやると、そういったことです。

(記者)北海道新聞の佐藤です。本日付で厚岸霧多布昆布森国定公園の指定がなされると思うのですが、改めて、その新しい国定公園に期待されることは、大臣はどうお考えでしょうか。
(大臣)まず、今回の厚岸霧多布昆布森国定公園、全国で58番目の国定公園として今日指定を行います。この国定公園は霧多布湿原や別寒辺牛湿原をはじめとする湿原の景観や尻羽岬などの海岸景観を主とする地域を指定するもので、これまで30年以上にわたる地元の要望が関係機関の同意を得てようやく実を結んで国定公園の指定に至りました。今後の管理の主体は北海道となりますが、環境省としてもまさに今、自然公園法改正案を国会に提出させていただいているところでありますから、貴重な資源環境を有する厚岸霧多布昆布森国定公園において保護と利用の好循環が進むように必要な支援をしていきたいと思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/CG5GlcV5Lr8

(以上)