大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和3年1月8日(金) 10:44 ~ 11:05 :環境省第1会議室)

1.発言要旨

 今日は新年初めての閣議後の記者会見になるということですので、改めて今年もよろしくお願いします。今日は環境省関連の閣議案件はありませんでした。ただ、冒頭私から3点申し上げたいと思います。1点目が原子力防災会議、そして2点目が新型コロナに関する廃棄物の処理、そして3点目が、環境省が創設20年を迎えましたので、この年頭に当たってそういったことも絡めて一言触れたいと思います。まず1点目ですが、先ほど第11回原子力防災会議が開催され、先日5日、第5回福井エリア地域原子力防災協議会において取りまとめ、その内容を確認した美浜地域の緊急時対応について報告し、了承を頂きました。福井エリアとしては、高浜地域、大飯地域に続き、この美浜地域が3例目となります。詳しくは、会見の後、事務方から説明をします。これが1点目です。
 そして、2点目になりますが、一昨日6日に神奈川県にある感染性廃棄物の処理を行う施設である株式会社シンシア横浜R・Cセンターを視察しました。現地で感染性廃棄物の保管・処理状況などについて把握をするとともに、新型コロナウイルスの感染拡大下においても安全確実に処理を行う体制を確保いただいていることを確認しました。また、処理に従事されている方から生の声をお伺いしましたので、今後の感染性廃棄物の処理に関する施策に反映をしていきたいというふうに思います。新型コロナウイルスの感染が日本国内で初めて確認されてから間もなく1年がたとうとしていますが、昨日には東京都、神奈川県、そして埼玉県、千葉県に改めて緊急事態宣言が発出されました。そうした厳しい状況の中でも平時と変わらずに日々の廃棄物の処理に従事されている皆さまに改めて感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。また、国民の皆さまには、このような厳しい状況の中で医療機関や家庭から排出される廃棄物の処理に従事されている方々に思いを致していただきたいと思います。加えて、テレワークやステイホームの状況下で家庭からの廃棄物の排出量が増えることが見込まれる中で、ごみ袋をしっかり縛って封をするなど、適正なごみ出しに改めて御協力をお願いしたいと思います。
 そして、3点目になります。一昨日1月6日、2001年の環境省の創設から20周年を迎えました。今日はこの節目となる機会に環境省の歩みを振り返り、年頭に当たって今年の展望を述べたいと思います。環境省創設の目玉の一つは廃棄物・リサイクル行政の統合でありました。この新たな課題に向き合うことで、環境省は現場に密着した行政の経験を積んできました。また、東日本大震災後の福島の復興の事業や水害などによる災害廃棄物の処理にも注力をしてきました。現場対応の足腰を強化するため、2005年には地方環境事務所が発足して、その後も体制強化を図っています。これらを通じて、環境省は現場により近づいた仕事をする力をつけつつあると思います。これから半年、地域と暮らしの脱炭素に向けて、国・地方脱炭素実現会議におけるロードマップ作りをはじめとする作業に全力を挙げていきますが、職員の皆さんには、環境省設置以来培った現場力を存分に発揮していただきたいと思います。そして、環境政策のあらゆる分野で自治体や金融機関、事業者、生活者の皆さんと一緒に政策を進めていきたいと思います。また、前身となる環境庁設置当初から担ってきた原点である水俣病をはじめとする環境保健、水・大気、自然環境保全の分野でもそれぞれ重要課題に向き合ってきました。今後も、人の命と環境を守るという環境庁設置以来不変の使命を果たすべく、着実に取り組んでいきたいと思います。そして、この20年間、環境省の中心であり続けたものは気候変動の問題です。省庁再編で地球環境部から局になって以降、京都議定書の発効、パリ協定の締結といったグローバルな取組を進めてきました。昨年の菅総理の2050年カーボンニュートラル宣言を受け、環境省が政府全体の司令塔として、環境と成長の好循環の実現に向けた社会変革を実現できるかどうか、その真価が問われることになります。このような環境省創設以来20年間の歩みを経て、2050年カーボンニュートラルの実現に向け新たな地平に立ったときに、重要な政策手段となるのがカーボンプライシングであります。カーボンプライシングは、価格を通じて幅広く脱炭素に向けた行動変容を促そうとする仕組みであり、CO削減への努力が報われるようにするための仕組みであります。また、気候変動対策を強化する諸外国との間で、産業競争力上のイコールフッティングの判断基準ともなり得るものであります。また、脱炭素と経済成長を同時に実現していくためには、240兆円に上る企業の現預金や、国内で300兆円、世界全体で3000兆円にもなるESG関連の民間資金を脱炭素投資の方向に動かすことが不可欠であり、カーボンプライシングにはその歯車となるポテンシャルがあると思っています。私は、20周年に当たる今年、環境省にとっての最重要課題としてこのカーボンプライシングに取り組みたいと考えています。これまでも地球温暖化対策税の導入をはじめとして幾つかの重要な動きはありました。しかしながら、気候危機に直面している今、そして、脱炭素と経済成長を同時に実現するという現在の文脈においてカーボンプライシングは避けて通れないテーマであり、多くの環境省職員にとってもいまだ未完の政策課題であります。環境と成長の好循環につながる制度設計とそれについての国民的な合意形成ができるかどうかが鍵だと考えています。今日はこの後、新たに発足したカーボンプライシング制度検討チームの第1回の打合せを予定しています。今年をカーボンプライシングの実現に一歩踏み出す前進の年にしたいと思っています。最後になりますが、20年の歴史の中で変わらない思いは、水俣病をはじめとする原点と環境省のカスタマーは将来世代であると、そういう思いです。この思いを胸に環境省の責任を果たしていきたいと思います。歴史、経緯についてはお手元にお配りをしていますが、もしかしたらこれを見るよりも小峰さんや清水さんに聞いた方がよく分かるかもしれませんが、今後ともどうぞよろしくお願いしたいと思います。冒頭、私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)NHKの吉田です。幹事社から2点ほど伺いたいと思います。冒頭でかなり熱く御説明もあったかと思うのですが、1点目に、環境省が20年を迎えた今年の抱負を改めて伺いたいと思いまして、地球温暖化対策については、冒頭言われたとおり、カーボンプライシングについて思いを語っていただいたと思うのですけれども、先日も年頭訓示でも今年取り組みたいことを四つほど挙げられて説明されていたかと思うのですが、その他廃棄物処理行政ですとか、自然環境保護ですとか、公害対策についても今年の抱負を少し伺えればと思います。それが1点です。もう1点目が、昨日出されました緊急事態宣言による影響をもう少し詳しく伺わせていただければと思います。改めて環境省の現業への懸念や影響を伺いたいのですが、特に前回4月の場合ですと、冒頭に言われたとおり、家庭ごみが増加したりですとか、今も続いていますけれども、自然公園への来客数が減少したりですとか、そういった影響が環境省の所管行政の中にもありました。今回の宣言では今後そうした面についてどうなっていくのか御所見を頂ければと思います。
(大臣)まず1点目の今年の抱負、これについてはこの前、職員の皆さんへの年頭訓示で申し上げましたが、昨年三つの風穴が石炭、そしてカーボンニュートラル、カーボンプライシング、これが開いた後の今年、私としては四つの柱を挙げて環境省が一丸となって取り組んでいきたいと思っています。一つ目が、今後国会が開会をすれば、環境省はこの数年の中では最も多い4本という法律を提出する作業を今進めています。この法律関係のものをしっかりと成立に向けて努力をすること、これが一つです。そして二つ目が国・地方脱炭素実現会議、これは環境省として官邸の会議の事務を担う初めての会議体でもありますし、国と地方が両方ともカーボンニュートラルの実現に向けて歩んでいく上には不可欠な場でもあります。それに事務の責任を担う職員の皆さんと一致団結して取り組んでいこうと、いい政策をつくっていこうと、これが二つ目です。そして、三つ目が今言ったカーボンプライシング、これを前進の年にしたい。そして、最後の四つ目が、3月に東日本大震災から10年、こういう節目を迎える年でもありますので、特に福島県で我々環境再生の取組、そして今後のまちづくり、こういった面においてこの10年の節目に向けて更に強化できる政策も練り上げていきたい。この四つを中心に取り組んでいきたいと思います。また、それ以外についてもというお話がありましたが、今日コロナの関係で廃棄物処理業に当たる皆さんにメッセージを私からもお届けしました。私自身、環境大臣になってからこの廃棄物処理業に対する理解を相当深めることができたことで、今まで感じなかった我々の日々の当たり前の生活の中で縁の下の力持ちとして支えていただいている皆さんに対する大きな感謝、そして敬意の気持ちを強く持っています。特におととい、横浜にあります株式会社シンシアさん、医療機関から出ている感染性廃棄物の処理を担っている、そういった会社ですが、今テレビや報道でコロナの対応が一色だと思いますが、その医療機関の皆さんに対する感謝というものはいろんなところで言われます。しかし、その医療機関から出る廃棄物、感染性廃棄物を処理している方がそこにいるから今のこの世の中は回っているわけです。私は改めて、この医療関係者の皆さんを含め、こういった廃棄物処理業の皆さんが日々働いてくれているから、我々の国民生活、そして医療関係の皆さんの体制、こういったことは全てつながっているということを改めて多くの皆さんと共有できるような1年にもしていきたいと、そういうふうにも考えています。そして、今後、緊急事態宣言が発出されてどんな影響が環境行政に生じ得るかという話がありましたが、まず廃棄物処理、これに関しては、昨年の緊急事態の宣言のときは、テレワークなどで家庭での活動時間が増えて廃棄物の発生場所がオフィスや飲食店などの事業所から家庭にシフトする、こういう地域がありました。今回この緊急事態宣言が特にこの1都3県ということを考えれば、1都3県での前回の緊急事態宣言下と同じようなシフトが起き得ると、こういうふうに思っていますので、環境省としては昨日付けで地方自治体に対して事務連絡を発出して、廃棄物の円滑な処理のために留意すべき点について改めて周知をしました。また、防護服などの調達の状況、廃棄物処理の変動状況などを注視して業務継続に必要な支援を進めるなど、新型コロナ感染症に関わる廃棄物の適正処理などの推進を図っていきたいと思います。次に、国立公園とかの影響もという話がありました。今回、緊急事態宣言の対象となる1都3県には三つの国立公園が含まれています。環境省では、対象地域の直轄施設について各都県の要請内容や地域の状況を踏まえて、閉館が必要か速やかに判断することとしています。また、第3次補正予算案に含まれる国立公園関係の事業は、予算成立後に直ちに誘客を行うものではなくて、パーティションやCO濃度センサー、こういったものの設置などの感染対策に係る経費についても支援するものであります。感染収束後の反転攻勢に向けて、国立公園におけるツアーイベントやワーケーションといった事業の実施に向けた準備を進めることは重要であると思います。今後、各業界のガイドラインを踏まえた感染対策の徹底などについて事業者に指導していくことなどを進めることで、将来的なこの緊急事態宣言の解除された後の国立公園にしっかり目が向けられるように我々としても準備はしたいと思います。最後に、我々のこの環境省内の働き方について一言触れると、内閣人事局からも出勤者の7割削減、これを目指すことの通知も出ています。ですので、そういった方針の中で我々の働き方も変えていきたい、そういうふうに思います。また、環境省独自の取組として、出勤をせざるを得ない業務というのがあります。例えばさっき私が言った法律の関係の作業、これは法制局の皆さんと協力をして、この法案作成の過程の中でいかにオンライン対応とかそういったものが可能なのか、これは私としても問題意識を持って法制局の皆さんとともにこの改善、また働き方の在り方も何かできることがあればというふうに考えていますが、それでも出勤せざるを得ない部分があるのも事実です。そういったときに、昼食を取る場合は、12時から1時というふうに固定をせずに柔軟に時差を昼食でも取る、こういったことを私としては環境省の職員の皆さんには積極的に取り組んでいただきたい、少人数で取っていただきたいというふうに思います。出張についても、1都3県からの出入り、そして1都3県の中で移動については、必要性を十分精査して可能な限り控えるとともに、ウェブ会議システムを積極的に活用するといった取組も行っていきたいと思います。必要な行政課題、こういったものが遅滞なく進むようにすることと、この緊急事態下の感染防止対策の徹底、この両立をしっかり図っていきたいと思います。記者会見の在り方も、他の省庁の動きなどを見ていますと、あとは記者クラブの皆さんの御理解があってこそですけど、オンラインの活用をどういうふうにできるかとか、今後もそういったことも考えさせていただければ、相談させていただければというふうにも思っています。私からは以上です。

(記者)読売新聞の服部です。先ほど出勤者の7割削減という話があったのですけれども、大臣自身がテレワークをされる御予定はありますでしょうか。
(大臣)もちろん私自身も率先してやっていきたいと思います。あとは、この1月の国会開会に向けて必要な作業が相当詰まっている部分も事実としてあります。こういった必要な法律を作成する作業、そしてそのためにその関連やその他関連も含めて、さっきの国・地方脱炭素会議、そしてカーボンプライシング、福島の10年、この4本柱に関連する業務というのがかなり詰まっていることも事実です。ですので、出勤が必要なものとそうではないものをしっかり精査した上で、可能な限り私もリモートワークを実現していきたいと思います。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。2点ほどありまして、一つは、先ほど、1都3県で緊急事態宣言が出たわけですけれども、従前からプラスチックごみ廃棄物で処理場は相当満杯近くなってきているという話があったのに加えて、生活系や医療系の廃棄物が出てくる。医療系の廃棄物は東京では1、2カ所しか処理できない。ますますそれが増えてくるわけですから、処理場の体制が大丈夫なのかどうか、そこを1点伺いたい。2点目はカーボンプライシングに関連してですけれども、検討の問題意識としては揮発油税とかガソリン税とか自動車関連税の在り方も視点に入っているのでしょうか、その2点です。
(大臣)まず1点目については、感染性廃棄物の処理業者5社程度への聞き取りの結果では、昨年の緊急事態宣言下において感染性廃棄物の処理量は特段増えてはいないという、そういうことでした。このたびの緊急事態宣言を受けた影響については、引き続き感染性廃棄物の処理量の変動状況などを注視していきたいと思います。ただ、おととい私が視察した横浜の会社にお伺いをしたところ、倉庫があって、そこに段ボールの中に感染性廃棄物などの保管を、処理を待っているものですね、そういったものなども積まれていて、これはそれなりにやはり量が増えている。この緊急事態も含めて感染者が増えていますから、この現場の状況というのはよく私たちも把握に努めて必要な施策を打っていきたいというふうに考えています。そして、2点目のカーボンプライシングにつきましては、まず、これは何度も言っていますが、最初から出口を決めた議論をしてはうまくいかないというふうに思っていますので、間口を広く構えて、とにかく日本の今後の成長に資する新たな成長産業に構造変化をさせていけるかどうか、この成長に資する観点で我々としてはまず間口を広く議論を始めたいと。今日この後もチームとも議論をしますが、我々環境省の中では相当各国の状況の議論の蓄積があります。相当ヨーロッパの国々なんかの状況を見ても、まさにその取り方、そして使い方、これはもう幅広くありますので、日本にとって多くの方の理解を得ることができ、更に社会を前向きな方向へと成長に向けていける在り方は何なのか、とにかくまず広く構えて議論をしたいと思います。

(記者)毎日新聞の鈴木です。廃棄物処理の感謝を伝える文書なんですけれども、これは業界団体とかそういうところに届けられる予定があるのか、その辺を教えてください。
(大臣)これは昨年の緊急事態の中でも発出をさせていただいたことに続いて2回目となるメッセージです。それは、先ほども申し上げたとおり、本当にこの日々の生活を支えていただいている廃棄物処理業の皆さん、ごみ収集員の方や廃棄物処理現場、最終処分も含めて、携わっている皆さん、こういった方々に改めて思いを伝えたい。この発出先は今日中に全国の自治体、そして廃棄物処理関係団体、そういった皆さんにメールでお送りをする予定です。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/aruhRebxSTs

(以上)